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ある寒い日、私は学校から帰る途中だった。 「あ、猫ちゃん!」 黒い猫が目の前を通る。 「かわいい~。何だかセクシーだよ」 毛並みもつやつやしていて綺麗だ。見とれていたら、軽く尻尾を振って塀に飛び乗って行っちゃった。 「あ、行っちゃった……」 遊びたかったのに……。 「ん? 何これ?」 道に何か光るものが落ちている。拾ってみると、ギターのキーホルダーだった。 「へぇ、こんなのがあるんだ」 ギー太とデザインが違うけど、メタルレッドでかっこいい! 「あ、早く帰ってギー太の練習しなきゃ!」 キーホルダーをポケットに入れて私は急いで家に帰った。 「……ふぅ、そろそろ寝ようかな」 ギー太の練習もひと段落ついたので、私はベッドに入ろうとした。 ……んだけど、 「お、猫ちゃん!?」 ギー太をしまおうとしたら、部屋にあの黒猫がいた。 何で私の部屋に? 何だかわからないけど、改めてみるとかわいいなぁ。 「あなた、平沢唯ですね?」 「え……?」 見つめていると、目の前の黒猫が喋った! 「嘘!? 猫さん喋れるの!?」 「あ、いや、そんなにくっつかないで……あっ!」 「すごいねぇ! ねぇ、他には何しゃべれるの?」 「あああぁ、もう! 初仕事がこれなんて……」 猫さんは私の腕からするりと抜け出すと、軽く咳払いをした。 「死神王の命令により、あなたの命をいただきます」 「……?」 「あの……もっと驚いてもいいんじゃ?」 「いや、何だかかわいくて」 「むぅ……、そう言っていられるのも今のうちです!」 黒猫が一鳴きすると、体が光り出した。 「う……、何?」 光が収まると、黒髪でツインテールの女の子が現れた。 「おぉ……。天使みたい!」 「天使じゃないです! 死神です! し・に・が・み!」 「そうなの? こんなにかわいいのに」 「か、かわいいって……。そんなこといってもだめですからね!」 何だかよくわからないけど、ピンチなのかな? 「いでよむったん!」 ばっ! と勢いよく手を伸ばす死神さん。でも、何も起きない。 「……あ、あれ? いでよむったん!」 ……やっぱり何も起きない。 「あ、あれ?」 死神さんがすごく慌てている。やっぱりかわいい……。 「い、いでよむったん!」 私も何となく叫んでみた。 「何言って……、あれ?」 死神さんが私の腰当たりを見て驚いてる。 「何? どうし……、ってうわぁ!」 ギターのキーホルダーを入れておいたポケットから光が溢れている。 「む、むったん!」 「これが!?」 ポケットから取り出してみると、キーホルダーが大きくなって、本物のギターになった。 「おぉ! このギターすごくかっこいい!」 「か、返して!」 「えぇ? ちょっと弾かせてよ~」 「ふん! 人間なんかにむったんは弾けません!」 「む、私だってギタリストだからこれぐらい!」 ちょっとカチンと来た私は、むったんを掻き鳴らした。 「だから、無理だっ……、あれ?」 最初は雑音ばかり流れていたのに、少しずつ綺麗な音色が流れだした。 「そ、そんな……むったんが!」 「おおおぉ! 何だか気持ちいい……。もっといくよ!」 それからしばらく私はむったんを掻きならした。 「じゃーん……。はっ! ご、ごめん」 気がついたらかなり時間が経っていた。 死神さんが何だか落ち込んでいる。 「……」 「あ、あの、大丈夫?」 「……むったんが、弾けるなんて」 「あ、ごめん……。返すね?」 「むったんが弾けるなんて、それじゃあ死なないじゃないですか!!」 「はい!?」 死神さんが少し涙目で説明してくれた。 「このむったんで死のメロディーを聞かせて、そのまま命のエネルギーをもらうはずだったのに……」 「それなのに、この音を聞いても死なないし挙句の果てに演奏までしちゃって!」 「ご、ごめんなさい!」 何だか死神さんの都合の悪いことになったみたい。 「むったんは自分で選んだ奏者にしか音を出しません。そして、その者の望むものを与える……」 「何だかすごいギターだね」 「むったんが私より、あんな人間の思いに反応するなんて……なんたる屈辱!」 死神さんがすごく怒っている。どうしよう……。 「あの……私、何かまずいことをしたのでしょうか?」 「……むったんが弾ける人間ですから、話してもいいでしょう」 死神さんはムッとした表情で話してくれた。 「死神には命のエネルギーを奪う道具が1人に1つ与えられます。ある者は鎌、ある者は毒薬、ある者はノート……」 「で、死神さんのはこのむったんというわけだね」 「そうです。そして、その道具はみんな意思を持っていて扱う者を選びます」 「へぇ~、死神さんにもいろいろあるんだね」 「普通、道具は死神に仕えるものですが、稀に人間を選ぶ時があります」 「それが、私……」 「はい……。人間に道具を奪われた場合、死神はその者から道具を取り戻さなくてはいけません」 「で、どうするの?」 「もう一度道具に認められるか、選ばれた者が死ねば、自然とその所有権は奪われます」 「じゃあ……私を殺すの……?」 「いえ、死神は与えられた道具以外で命のエネルギーを奪うことは禁じられています」 「何だ……よかった」 「ですから、しばらくあなたのそばに居させてもらいます」 ……え? 「……本当?」 「私も不本意ですが、仕方ないです」 もじもじしながら死神さんが言う。っていうかこんなかわいい子としばらく一緒なの!? 「で、でも、私がむったんに認められればそこであなたの命のエネルギーをいただきます!」 「それは勘弁してほしいなぁ」 「だめです! それが私の使命ですから」 「じゃあ、私もむったんが奪われないようにがんばらなきゃ!」 「がんばらなくていいです!」 これからこの子とずっと一緒か……。何だか照れくさいな。 「そうだ、名前聞いてなかったね。なんて言うの?」 「……アズサです」 「アズサちゃんか……。さっきの猫の姿と合わせたらあずにゃんだね!」 「何で合わせるんですか!」 「だってそっちの方がかわいいよ?」 「か、かわいいって///。からかわないでください!」 もう、顔を真っ赤にしちゃってさ。本当にかわいいなぁ。 こうして、私は死神と一緒に暮らすことになりました。 「ふああぁ……」 夜に色んな事がありすぎて寝不足だよ……。 「あれ、あずにゃん?」 起きると、部屋にあずにゃんがいなかった。 「私はここです」 私の膝の上にぴょんと黒猫が乗った。 「猫さんになっちゃったの?」 「下手にあの姿でいると目立つので。あと、あずにゃんって呼ぶのやめてくれませんか?」 「いいじゃん。だってどう見たって猫さんだし」 「わっ! ちょっと、撫でないでください!」 「ほれほれ、いい子いい子~」 「はぅ……、うぅ……」 最初は抵抗していたけど、気持ちいいのか次第に喉まで鳴らし始めた。 「よしよし、この姿でいてくれるなら大丈夫かな」 「……飼いならされている気がする」 「大丈夫だよ。これからしばらく付き合っていくんだから」 「そ、そんな恋人みたいに言わないでください!」 「あれ? 死神さんは意外と初心なのね」 「なっ///。そ、そんなことないですよ!?」 こんなに動揺して、説得力無いよ。 「お姉ちゃん、休みの日だからってそろそろ起きないと……」 「あっ、憂」 「その猫どうしたの?」 しまった、憂はあずにゃんのこと知らないんだった。 「こ、これは昨日拾ってきたんだよ! ほら、外寒いしかわいそうだったから……」 「もう、勝手に連れてきちゃあメッ! だよ?」 「ゆ、許してつかぁさい……」 「お姉ちゃんらしいけどね」 憂は笑って許してくれた。よかった……。 「じゃあ、猫ちゃんにもご飯あげないとね」 「ごめんね。急に連れて帰ってきたのに」 「大丈夫だよ。さぁ、猫さんどうぞ」 魚の缶詰を開けて、あずにゃんの前に出した。 そう言えば、死神って何を食べるのかな? リンゴとかかな? 「あ、よかった。食べてる」 「そうだね」 魚、食べられるのか……。新たな発見だよ。 「しばらく家にいるんだったら、名前があったほうがいいよね?」 「大丈夫、もう決めたから」 「なんて名前にしたの?」 「うん、あずにゃんって名前にした」 その瞬間、あずにゃんがフーッ! って唸った。 「わ、ご、ごめん!」 「気に入ってないみたいだよ?」 「何でかな。かわいいのに」 あずにゃんはそっぽを向いてしまった。 「あ、そうだ。私今から買い物に行くからお留守番お願いしていい?」 「うん、任せてよ!」 正直あずにゃんを1人にして行けないし。 「じゃあ、行ってくるね」 「いってらっしゃ~い」 バタン……。 「ふぅ、この格好でいるのも楽じゃないです」 憂が出て行った途端に、あずにゃんは元の姿に戻った。 「そういえば、あずにゃんって誰にでも見えるの?」 「姿を消す能力は私には無いです。代わりに猫に変身できますけど。そ・れ・と!」 あずにゃんがずいずいと私に寄る。 「あずにゃんって呼ばないでください!」 「ご、ごめんね、あずにゃん……。はっ! これは、その……」 「……もう、いいです」 私のせいでいじけちゃった。ツンとしているのもかわいいなぁ。 「いじけないでよ~。悪いって思ってるよ」 「……全く、何でこんな人間がむったんに選ばれたのかわかりません」 「それは私も同じだよ」 「そうだ、唯、むったんを出してください」 「何で?」 「むったんに認められるように演奏するんです! 第一、もともと私のものです!」 「わ、わかったよ。いでよむったん!」 高々とキーホルダーを掲げて叫ぶと、光が溢れてむったんが現れた。 「さぁ、どうぞ」 「……行くよ、むったん!」 あずにゃんがむったんを下げて、軽く深呼吸をした。 そして─── 「おりゃああぁ!」 あずにゃんが必死にむったんを掻き鳴らすが、金属が軋むような音しか出てこない。 「まだまだぁ!」 それでもあきらめずに弾くあずにゃん。それでもむったんからは音色らしきものは奏でられていない。 それからしばらく、あずにゃんはむったんにしがみつく様に掻き鳴らしていた。 「はぁ……、はぁ……」 「……少し休んだら?」 あれからどれくらい経っただろうか。あずにゃんはもう疲れ切っていた。 でも、まだやめようとしない。まだ、その手を休めない。 「ま、まだ……」 「だめだよ、無理しちゃ」 もうむったんを持っているのもやっとという感じだ。 私はむったんを下ろし、あずにゃんを休ませた。 「あぁ……」 「もう、こんなになって……」 濡れたタオルで顔を拭ってあげると、少し楽になった表情をした。 「人間に……人間なんかに……」 「そういうのは言いっこなしでしょ?」 ソファまで連れて来て、寝かせてあげた。 「……何でこんなことしてくれるんです?」 「何でって……」 「私はあなたの命をもらいに来たんですよ?」 「そうだけど、でもあずにゃん苦しそうじゃない」 そう言って、また濡れたタオルで顔を拭いてあげた。 「目の前で苦しんでいるのを放ってはおけないよ」 「……人間って、おかしな生き物です」 「素直じゃないね」 「……死神ですから」 そんなことを言っても、あずにゃんはそれからおとなしく休んでいてくれた。 あずにゃんとの生活はそれからしばらく続いた。 あずにゃんは暇があればむったんを必死に掻き鳴らし続けた。 けど、むったんはあずにゃんに帰ることは無かった。 「何で……、何がいけないの……?」 「あずにゃん、まだ時間があるから焦っちゃだめだよ」 「これが焦らずにいられますか! こんなに弾いているのに、むったんは……」 俯いて肩を震わせるあずにゃん。 「私も、できるだけ協力するからまた頑張ろう?」 「……どこの世界に人間に同情される死神がいるんですか」 「でも、私……」 「私は、死神です。あなたとは……いわば敵同士です」 敵……? 「命を奪うものと、奪われるもの。それが慣れ合うなんて、おかしいです……」 「慣れ合いじゃないよ。だって、私はあずにゃんの事……」 「それ以上言わないでください!」 あずにゃんの叫びで、私の思いは切られた。 そして、空気が重く、静かになっていく。 「それ以上……言わないで……」 「あずにゃん……」 あずにゃんは、猫に変身して部屋を出て行ってしまった。 「お姉ちゃん、そろそろお昼ご飯だよ?」 「うん、わかった」 はぁ、あずにゃんあんなに落ち込んで……。何かしてあげられないかな。 かなり落ち込んでいるようだし、好きなものぐらい食べさせてあげたいな。 確か、前にたい焼きが好きって言っていたっけ? 後で買いに行こう。 「あずにゃ~ん、お昼だよ?」 あずにゃんを呼びに行ったけど、私の部屋にはいなかった。 「あれ? どこ行ったんだろう?」 一通り探してみたけど、どこにもいない。 「お姉ちゃん、あずにゃんは?」 「それが、どこにもいないの」 「う~ん、猫だから外に出て行ったのかも」 「私、探してくるよ!」 私は居ても立っても居られなくなって、家を飛び出した。 あんなに落ち込んでいるのに、一体どこに行ったんだろう。 「……いないなぁ」 とりあえず黒猫を探して、町じゅうを走り回った。 けど、黒猫どころか猫すらいない。 「もう、どこに行ったのかな……」 かれこれ1時間は探したと思うけど、あずにゃんは見当たらなかった。 「はぁ……、さすがに疲れた」 そういえば、お昼も食べずに出て来ちゃったなぁ。 「どこかで休もうかな」 そう思って、ふらふらと歩いていると聞き覚えのある音がしてきた。 「この音は……、むったん!」 このどこか悲しい旋律、苦しんでいるような悲しんでいるような音……。 「……あっちだ!」 音がだんだん近づいてくる。 「川だ……」 音のする方に行くと、河川敷に出た。 そして、その河川敷に小さな背中があった。 「ふん! ふん! ふん!」 必死になってむったんを掻き鳴らすあずにゃん。もう、どれだけここで練習していたのかな。 「あずにゃん」 「……唯。何ですか?」 「急に出て行くから探しちゃったよ」 「別に探してなんて言ってないです」 もう、本当に素直じゃないなぁ、この子は。 「さぁ、帰ろう?」 「……嫌です」 「そんなこと言わずにさ?」 手を引いていこうとしたら、急に離された。 「あずにゃん……?」 「……どうして、どうしてそんなに優しくするんですか!」 そう叫ぶあずにゃんの目には涙が浮かんでいた。 「私は、あなたの命を奪いに来た……死神なんですよ!?」 「そうだけど、何だか放っておけなくて……」 「そんなに、優しくしないでください……。お願いだから……」 そう言うけど、私にはあずにゃんを放っておくことができなかった。 「死神とかそんなのは関係ないよ。あずにゃんだから、私は優しくしているんだよ」 「……やめてください」 「やめない。だって、私は!」 「やめてぇ!」 大きく叫んだあずにゃんはそのまま走り出した。 「待って、あずにゃん!」 私も必死に追いかける。 「来ないで……、 来ないで……!」 あずにゃん……。何としても、つかまえてみせる! 私は必死で走った。そして、もう少しで追い付きそうになった時、 「え……?」 私の意識は衝撃と共に闇に飛んで行った。 「……み、君! 大丈夫か!?」 「おい、救急車を呼べ!」 あれ……? 私どうなったの……? 何だか体か重い……。 「もしもし、救急です! 人が車に撥ねられて……」 車に撥ねられて……? 誰が撥ねられたの……? 「おい、しっかりしろ!」 あぁ、そうか……。私か……。 だからこんなに体が重いのか……。 「ゆ、唯……」 あ、あずにゃん……。戻って来てくれたんだね……。 「私、私……」 「これで、むったんはあずにゃんに帰るね……?」 「え……?」 「私が死ねば、むったんは……」 「そんなこと……!」 また、目を涙でいっぱいにして……。泣かないで……。 「あずにゃん……。今まで、楽しかったよ?」 「待ってください、そんなこと言わないで……」 「むったん、今までごめんね……?」 「お願いだから……」 私の手を必死に握るあずにゃん……。私、とてもうれしいよ……。 最期なら、言わなきゃ……。ちゃんと言わなきゃ……。 「あずにゃん……」 「……何ですか?」 「……好きだよ」 「!!」 あぁ……。もう、ダメみたい……。 答え、聞きたかったな……。 「……」 「……唯。私は……!」 私は何で泣いているのだろう。ただ1人の人間が死んだだけじゃないか。 私のむったんも戻ってくるし、いいことじゃないか。 でも……。 この苦しさは何だろう? この胸の喪失感は何だろう? 何で、涙が流れているんだろう……。 私は、唯の亡骸を見つめて思った。 「死神の私に……、好きだよって……!」 本当に、人間って生き物は……! 「アズサ……」 「死神王……」 私の目の前に、死神王が現れた。 「ようやく、この人間が死んだか」 「……」 「むったんに選ばれし者は、再びお前になったわけだ」 私はもう答えたくなかった。考えたくなかった。 「さぁ、戻るぞ」 「……」 私はその時、ある考えが浮かんだ。 「どうした、戻るぞ?」 それは死神にしたら愚かとしか言いようのない行為だ。 でも……、それでも……! 「……!」 私は決心した。 「いでよむったん!」 人の目なんて気にしている余裕は無かった。 私は高らかにむったんを呼び寄せた。 「……来た!」 むったんは私の声に反応してくれた。光と共に、私の腕に収まる。 「何をする気だ、アズサ!」 「……唯!」 そして、むったんを掻き鳴らした。でも、相変わらず金属の軋むような音しか出ない。 「お願い、むったん……。力を貸して……!」 命を奪うためじゃない。 私の……、私の……! 私は必死でむったんを掻き鳴らした。 これまでにないくらいに精一杯、一生懸命にやった。 「まさか……。アズサ! それがどういうことかわかっているのか!? 死神であるお前が!」 「いいの、これで! だって……、だって唯は……私の好きな人だから!」 「……アズサ。ならば、お前は死神失格だ」 「……それが何よ! 私は……!」 そこまで言って、私は自分の体の異変に気がついた。 「な、何……!?」 体が光り出していた。 「そのまま消えるがいい。この娘の命と引き換えにな」 「……!」 それでも私はむったんを弾くのをやめなかった。 唯を救いたい。 ただそれだけが私を動かす。 たとえ私が消えても、後悔は無い。 私のことを好きだって言ってくれたんだから。 「唯……、私も、好きだよ……」 そして、私は光の中に飲み込まれた……。 「……」 うぅ……、あずにゃん……。 「さようなら、唯……」 待ってよ、あずにゃん。行かないで……! 「ごめんね……?」 待って……! あずにゃん! ま……って……。 「……」 耳鳴りがしている。うるさい……。 「……っ!」 あまりにもうるさい耳鳴りで、私は重い瞼を開けた。 「ゆ、唯!」 「大丈夫か!」 目に光が感じられる。そして、耳には音が感じられる。体は、自分が横たわっている事を感じられる。 ……私は、どうなったの……? 「よかった……、心配したんだぞ?」 「お父さん……? お母さん……?」 目には、両親と憂、そして学校の友達が見えた。 「……生きている?」 私は、奇跡的に一命を取り留めた。 それからしばらくして、私は退院したけど何か心に引っかかるものがある。 何か、大事なものを忘れてきたような、そんな喪失感。 「何だろう、何か忘れている気がする……!」 どうしても思い出せないけど、とても大事なことのような気がする。 「どうしたの、お姉ちゃん?」 「憂、私ね何か忘れている気がするんだよ……」 「何って、何を?」 「何か、こう……大事な……」 結局、私は思い出せなかった。 「……ふぅ、そろそろ寝ようかな」 ギー太の練習もひと段落ついたので、私はベッドに入ろうとした。 ……んだけど、 「……?」 何か、心で引っかかった。 えっと、何だっけ? しゃぶしゃぶじゃなくて、シャンプーじゃなくて……。 「……あ! デジャブ!」 前にもこんなことがあった気がする。でも、それが思い出せない。 「えっと……何だっけ?」 忘れちゃいけないようなことがあった気がする……。 集中しようと部屋を見回すと、ギー太が目にとまった。 「……!」 その時、私の頭の中に記憶が一気によみがえった。 ……あずにゃん! 「そうだ……、あずにゃん!」 そして、病院での夢も思い出した。 「……私を置いて、行っちゃうなんて!」 私は、あずにゃんを探しに家を飛び出した。 「あずにゃん……! あずにゃん……!」」 私は夜なのも構わずに街中を探し回った。でも、見当たらなかった。 街を探し回って、私はある考えを持った。 あずにゃんが私の為に消えてしまった。 「……多分、いや、絶対そうだ!」 あずにゃん、私の為にいなくなったなんて……! 「そんなの、悲しいよ……!」 私は、また街中を走り回った。 「……はぁ」 いつしか、空が明るくなり始めていた。私はあの河川敷に腰をおろしていた。 「あずにゃん……」 どうしたら会えるのかな。 どうしたら、あの子を救えるのかな……。 一生懸命に考える。 「……そうだ!」 私はある考えに達した。 「いでよむったん!」 空に向かって手を伸ばし、大きく叫んだ。 ……しかし、何も起きない。 「いでよむったん!」 お願い、来て……! 何度も叫んでみたけど、むったんは現れなかった。 「はぁ……はぁ……!」 それでもあきらめなかった。私は叫び続けた。 「いでよむったん!」 また、私の声は虚空に消えた。 「お願いだから……、あずにゃんのために!」 私は、ありったけの気持ちを込めて叫んだ! 「いでよむったあああぁん!」 時間はどんどん過ぎて行って、夕方の空に星が瞬きはじめた。 「……くっ!」 あきらめない! あずにゃんを助けるまでは! 「……あ、あれは!」 空を見上げると、流れ星が走った……。 厳密に言うと、流れ星のようなものが走った。 「む、むったん!」 それは、光の奔流から現れたむったんだった。 「よし、これで!」 私はむったんを掻き鳴らした。あずにゃんに会いたい一心で……。 「むったん、お願い! あずにゃんを!」 私は一心不乱にむったんの弦を弾き、弾き、弾きまくった。 「じゃーん……」 そして、一通り弾き終わり、あたりは一気に静かになった。 「……」 何も起きなかった。やっぱり、無理なのかな……。 「あずにゃん……!」 その時、目の前にまたもや光が溢れた。 「うっ! ……」 光が収まって行くと、そこには1人の女の子がいた……。 「あ、あぁ……!」 「ここは……?」 毛並みの良い黒髪のツインテール、緋色の瞳……。 あれは、間違いない……! 「あずにゃ~ん!」 「わっ! ゆ、唯!?」 「あずにゃあああぁん! 会いたかったよぉ!」 私は一目散に駆け寄り、あずにゃんを抱きしめた! 幻じゃない! こうしであずにゃんを抱きしめられる! 本当に、本物のあずにゃんだ! 「あずにゃん! あずにゃん!」 「……もう、唯ったら……」 「よかった……! よかったよ……!」 「唯も、無事だったんだね」 「あずにゃんのおかげだよ」 もう、涙であずにゃんの顔が見にくいよ……! 「本当によかった……」 「うん、むったんが力を貸してくれたからね」 むったんはまたキーホルダーに戻った。 「ねぇ、唯」 「何?」 「また、そばにいていいかな?」 あずにゃんがもじもじしながら言った。 「……もちろんだよ!」 私は、もう2度と離れないようにあずにゃんに抱きついた。 「あずにゃん、大好きだよ!」 「……私も!」 「ずっと一緒にいようね?」 「うん!」 こうして、私と死神さんとの生活がまた始まった。 今度は、恋人として……。 END なんでむったんが帰ってきたか、その描写さえあれば良かった -- (名無しさん) 2011-01-03 20 54 07 要するに梓が消されたからむったんの持主が唯に戻って来た、って事か…改めて読んでやっと納得。 -- (名無しさん) 2011-02-26 03 42 18 フツウ、この手の話だと死神王から罰として称されながら天使か人間に転生するのがオチだろう?なんで死神のままなんだか……納得できない -- (名無し) 2011-09-03 13 31 08 なんかいいな -- (名無しさん) 2012-10-05 22 02 08 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
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あなたはどっち? GS(ゴーストスイーパー)。 それは人々のために日々命の危険を顧みず、妖怪や悪霊を退治する過酷な職業である。 厳しい国家試験を勝ち抜き、危険の代償として高額な報酬を得る、いわば選び抜かれたエリートなのだ。 横島忠夫。 殺し合いのゲームに招かれた参加者であり、一見どこか間の抜けたような風貌のこの少年もまたGSの一人。 GSの仕事での経験のおかげなのだろうか。横島は殺し合いの場に巻き込まれたというのに、静かに物音を立てず目標を窺っていた。 目には支給品としてデイパックに入っていた暗視ゴーグルを付け、じっくりと観察している。 (うーん、遠くてちょっと見えずらいな) まだ気付かれてはいないようなので、じわじわと近づき、もっとはっきりと観察できるように試みる。 目標に気付かれる危険があるが、この非常事態において他の参加者を見極めるのは重要事項であるため仕方がない。 (焦るなよ……慎重に行動するんだ) そう自分に言い聞かせ、緊張からか高まる気持ちを抑えつけながらゆっくりと進んでいった。 ◇ 「ちくしょう。あのノストラダムスって野郎、絶対にぶん殴ってやる」 横島が進む先には、浜辺に座り込み脱いだ上着を絞りながらぶつくさ文句を言っている、ずぶ濡れの少女がいた。 赤毛の髪をおさげにした可愛らしい顔立ちでありながら、粗暴な口調で独り言をつぶやき、豊かな乳房を堂々と晒したまま人目を気にする様子もないという、なんともミスマッチな少女であった。 なぜ彼女が不機嫌なのかというと、殺し合いなどという馬鹿げたことに参加させられたのはもちろん、さらに気付いたら海に落とされていたからである。 混乱しながらも浜辺までたどり着き、落ち着いたところでふつふつと沸いてきた怒りに任せて、ノストラダムスを打倒する決意を固めていた。 名簿を確認したところ、許嫁のあかねをはじめ数人の知り合いの名前があり、尚更殺し合いに乗るわけにはいかない。 あかねは可愛くはないが一応は許嫁だ。早く合流して、自分が助けてやらねばならない。 (ん?誰か見てやがるな) ひととおり上着を絞り終えたところで、ふと自分へ誰かの視線が向けられている気配に気付く。 注意深く見てみると、暗闇に紛れて一人の男がほふく前進をしながら迫ってきているのが見えた。 「おい、てめえ!!そこで何してやがる!!!」 明らかに怪しいこの男は、殺し合いに乗っているかもしれない。 水分を落とした上着を足元に放り捨て、熟練者と思わせる構えをとり、戦闘態勢に入りながら不審者に怒鳴りつける。 すると、男の身体が固まったように硬直したのもつかの間、すぐさま目に付けていたゴーグルを外し物凄い勢いで走り寄ってきたのである。 少女は思わず攻撃しそうになるが――――― 「すんまへん、すんまへん、すんまへーーーん!!ほんの出来心だったんや~」 目の前に来た途端、泣きながら土下座を始めてしまう。 謝っている内容から察するに、裸を覗き見ていたことを詫びているようだが。 怒りよりも先に、こんな状況でなんとも胆の座った奴だと、呆れ半分に感心してしまっていた。 「で、お前は殺し合いに乗っているのか?そうなら半殺しにでもしてやるが」 「も、もちろん乗ってない!」 一応確認を取ってみるが、やはり殺し合いをする気はないようだ。 何が起こるかわからないので、無駄な戦闘は避けるに越したことはない。 「そうか、とりあえず信じてやる。俺の名前は早乙女乱馬。お前は?」 「横島忠夫です、よろしく」 「……ああ、よろしくな」 どことなくキリっとした表情で握手を求めてくる。どうやら今更好印象を持たれようと画策しているらしい。 面倒そうに握手に応じてやると、乱馬は次の話題を切り出した。 「ところで横島。お前、お湯持ってないか?」 「お湯?生憎デイパックの中には入ってなかったみたいだけど、風呂にでも入るのか?」 「まあそんなとこだ……」 できれば早くお湯を手に入れて万全な状態に戻したかったが、ないのならば仕方がない。 力やリーチは劣るが、幸いこの状態でも戦えないことはないので、どこかで調達するまで我慢しようと諦めかけていたのだが。 「なんとかできないこともないぜ?」 いきなりそんなことを言い出すと、ずいと手を差し出してきた。 いつの間にか横島の手には小さな玉が握られており、そこには『湯』という文字が記されている。 「冗談に付き合うつもりはねえんだ、無いのならさっさといくぞ」 「まあまあ、それは今から証明―――おっと滑った!」 何をふざけているのかと乱馬が困惑しているなか、横島はその玉を持って近づくとわざとらしくこけ、玉を乱馬の頭上に放り投げた。 すると不思議なことに玉が光ったかと思うと、頭上から乱馬とドサクサに紛れて彼女に引っ付いている横島へお湯が降り注いだ。 水をかけたのではなく、横島は紛れもないお湯を生み出してみせたということになる。 「お湯で暖まれたことだし、これは事故ってことで。ん??」 何かがおかしい。 横島が乱馬に抱きついた直後には、たしかに極楽のように柔らかな感触に包まれていたはずだ。 しかし、今は固く筋肉のような感触しか伝わってこない。 そう、まるで男に抱きついているような。 「おお~助かったぜ。何やったんだ?」 聞こえてくる声も初めて聞いた男の声。 「ありがとよ。でも気持ち悪いから、さっさと離れろよ」 横島は恐る恐る顔を上げて確認する。 「よう、早乙女乱馬だ。改めてよろしくな」 そこにいたのは、服装や髪型は同じでも明らかに別人な黒髪の男。 「ど、どちら様で?」 「だから言ったじゃねえか、早乙女乱馬だ。 ほんとは男なんだけどよ、水を被ると女になるって厄介な体質でな」 いや~ほんと助かったぜと、目の前の乱馬と名乗った男は嬉しそうに笑っているが、震えている横島には途中から聞こえていない。 「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」 「うおっ!!」 「男は嫌じゃーーーーーーー!!!女がいいんじゃーーーーーーーーーー!!!!」 などといきなり叫びだすと全速力で走り去っていってしまった。 「なんだったんだ……世の中には変なやつがいるんもんだな」 第三者から見たならば、同じく変人に分類されるであろう乱馬は横島が走り去る様を呆然と見つめていた。 【C-7 海辺/1日目 深夜】 【横島忠夫@GS美神 極楽大作戦!!】 [状態] 健康、びしょ濡れ、霊力消費(中)、精神的ショック大、錯乱中 [装備] [道具] 支給品一式、暗視ゴーグル、ランダム支給品1(確認済) [思考] 基本行動方針:殺し合いから脱出する 1:男は嫌じゃーーーーーーー!!! 2:女に会いたい 3:死にたくない [備考] ※乱馬と自己紹介しましたが、知り合いなどの情報交換までは至っていません。 ※乱馬の体質を知りました。 ※名簿未確認。 ※少なくとも文殊を使えるようになって以降からの参戦。 ※叫びながら北に向かって入っています。 【早乙女乱馬@らんま1/2】 [状態] 健康、びしょ濡れ [装備] [道具] 支給品一式、ランダム支給品1~2(確認済) [思考] 基本行動方針:ノストラダムスをぶん殴る 1:知り合いと合流する 2:あかね最優先 3:お湯を確保しておきたい [備考] ※横島と自己紹介しましたが、知り合いなどの情報交換までは至っていません。 ※パンスト太郎戦以降からの参戦。 【支給品説明】 【暗視ゴーグル@現実】 ゴーグル型の暗視装置。 装備すると暗闇でも視界を確保できるようになる。 時系列順で読む Back 不屈の超魔生物 Next 愛と憎しみのハジマリ 投下順で読む Back 不屈の超魔生物 Next 愛と憎しみのハジマリ GAME START 早乙女乱馬 Next [[]] 横島忠夫 Next [[]]
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――――がこん、こん。 時間は、夜の八時半。風呂上りの、かけつけ一杯。 やや閑散としたホテルのロビーに重量感のある音が鳴り響き、 自販機は彼女の買ったミルクティーを吐き出した。 「んっと?あれ?」 もとい、吐き出すはず――であった。 旧式の狭い取り出し口は中々上手く出来ておらず、彼女を手こずらせる。と、そこに。 「おい大丈夫かー?」 彼女と同じく風呂上りに浴衣を着た、彼女にとっては最もよく見知った男性客が通り掛る。 もはや形振り構わずへたり込んで缶を取り出すのに躍起になっていた彼女にとって、 彼のその声は全くの予想外の出来事であった。 「セン、セー……?」 か細い言葉と入れ違いにふっと、自分の姿を見る。 そこには、へたり込んだ勢いで浴衣の裾を床に肌蹴させ豪快に太腿を覗かせているあばずれな少女が――居、た。 「……ャだっ!」 あわてて自販機から手を離し、裾を抑える。 自分の顔がみるみるまに紅潮していくのが、鏡を見なくてもわかった。 すると彼の方もン、と申し訳なさそうに目を逸らしたまま、 「あー……抑えといてやろうか?」 協力を申し出る。 彼女の方はそれにコクン、と小さく頷くと、 出来るだけ顔を見せないように、彼の開けた取り出し口から、缶を取り出した。 「取れたな。んじゃ、俺も買うから一緒に頼むわ」 ちゃりん、こんかんこん。 軽い音が再びロビーに鳴り渡り、彼女が取り出し口を覗くと。 彼の買った小さな瓶のジュースは先程よりもはるかに容易に取り出された。 「…どうぞ」 「……サンキュー」 ジュースを手渡そうとするが、目は合わせられない――それは彼も同じであった。 彼が”帰って”来てからというもの。昔と特に変わった事はない。無かった。はずだった。 いつものように彼女は彼の側に居たし、彼も普通に彼女を構っていた。 しかしそれは、お互いが努めてそうするように振舞っていただけ、だとも言える。 事実そのようにしながらも――この半年間の事を二人が口にする事は、今日まで一度として無かったのだから。 … …… ……… そのままの沈黙が、しばらく続くと。 ただ瓶のラベルをぼんやりと見つめながら、彼が言う。 「……ちょっと、話でもするか?」 その申し出に、彼女の方も一拍置くと、はい、と答えた。 タイミング、というのだろうか。 再会のあの日から今日のこの時まで、互いにそれを探していたところは、確かにあった。 思えば、この半年という――彼と彼女の間に、置かれた時間の事を。 その期間に堆積した、思いの丈を。 打ち明けられる、その瞬間を。 ――――先生も、そんなような事を話したいんだと思う。きっと。 出口へと向かう彼の背中をてくてくと追い掛けながら、 彼女は思い出していた。彼が帰って来た、まさにその日その時のことを。 顔が熱くなるのは、もはや止めようが無いほどだった。 一方、前を行く彼もまた、全く同じことを考えていた。 外に出ると、春の夜風はまだ少しつめたい。 その風に煽られ散った桜が地面に落ち始めている。 「なんか、勿体無えなあ」 外灯の下、まるでオブジェのようなベンチに腰掛けながら、彼は呟いた。 「そうっすねえ」 彼女の方も、それに合わせる――ここまでは、何も変わらない。 プシ、と彼がジュースの蓋を開ける音がした。彼女の方も、缶を開ける。 「……元気、してたか?」 軽くジュースに口をつけながら。 彼女の方は見ずに、下を向いたままでまず彼が話し始めた。 「元気でしたよー、ちゃんと先生いなくても頑張ってましたから」 ――――違うよ、そんな事が言いたいんじゃない。 思わず頭を振りそうになるが、ぐっとこらえる。 「そうかあ。まあ、俺がいなくてもタマがいるしな」 その返事に少し寂しそうにも見える様子で、彼はこぼした。 「そうっすよー。こないだも、いきなり帰って来るなりやられてましたし」 ――――そんな事無い。先生がいなくて大変だったって、辛かったんだよって。 気持ちと裏腹に表情筋は、ぎこちないが、せいいっぱいの笑顔を作ろうとする。 「きっちーなぁ……これでも、結構鍛え直したんだぜ?」 苦笑いを噛み潰し、ジュースに口をつけながら、彼が続ける。 喋っている口元を見せたくないようにも、彼女には見えた。 「知ってますよ。去年からずっと、努力してましたもんね、先生」 ――――でも、近くで見ていたかったよって。 ふふん、とわざと得意気に鼻を蠢かせる。そうでなければ、消え入りそうだった。 「ありがとうな……でも俺の考え過ぎかあ。 あいつら寂しがってんだろうなーとか、思ってたんだが」 空になった瓶のふちを指でなぞりながら、ふと、目線をあげる。 「自意識過剰っすよそりゃー」 ――――嘘だよ。そんなの、決まってるよ、って…! 涙がこぼれそうなその刹那、互いのひと呼吸が、シンクロすると。 「俺は、けっこう寂しかったんだけどな」 「……あたしも、けっこう寂しかった」 この日はじめて、彼は彼女の方を視た。 同じく、彼女は彼を視た。 二人の傍らで春風がそよぎ、桜が舞った。 最初に見えたのは、驚いた顔だった。 やがてそれは呆れるような表情に変化してゆくと、 いつしかその頬は二人の間を舞った桜の如き朱みを帯びた。 それがお互いの、いま見ているものの全てだった。 再び目線を逸らすと、遠くに語りかけるように――解きほぐす様に。 二人はゆっくりと話し始めた。まずは、彼の方から。 「……りょ、料理、カニばっかりでさ。飽きるんだよな、けっこう」 「お、お弁当、いつも作り過ぎちゃって、困っちゃったりしました」 「メンチカツがくいた……じゃなくて、慣れたいつものメシがいい、なんて」 「海老フライ、持って構えてたらいつか取りに来るかもって……」 「船降りてからも、家、弁当ばっかでさ。あの科学っぽい味、慣れなくて」 「大会申し込んだ時も、顧問の先生の名前間違えちゃった、り……」 おそるおそる下げる目線と、見上げる目線。そのふたつが鉢合うと。 「なあキリノ、なんてうっかり呼んでも、誰もいなくて」 「ねえセンセー、なんて聞いちゃっても、誰もいなくて」 同じタイミングの同じ言葉に再びのけぞり、見つめ合うだけであった。 やがて彼の方が、ふう、と一息入れると。 「2月頃だったかに、な……」 再び前を向き、指を組んで、ぽつりぽつりと話し始めた。 「仕事終わったあと店の前で素振りしてたら、『剣道、教えてくれ』なんて子供がいてさ」 その真剣な話し方に彼女の方も身を整し、興味深げに相槌をうつ。 「仕方ないから、素振りだけ見てやってたんだけど……これがな」 「どうかしたんすか?まさか、すごい才能?」 目を輝かせる彼女の反応を横目に、くっくっ、と肩で笑うと。 「……残念だったな。そんなに才能はゴロゴロ転がってねえよ。逆だ」 「逆?」 「どうにも、手首だけで打つクセがついちゃってるみたいでさ」 その言葉を聞いた途端、彼女の方は朱い顔をなお赤くして俯いた。 ――――それって、あたしの。 一瞬、彼の言葉が分からない。 しかし彼は彼女のそんな様子を見ると、少し不敵に微笑んで、続けた。 「その子のは、まあなんとか直してあげられたんだが……」 その笑顔が、やがていつものやさしい表情に戻ると。 「もう直っちゃったか?あのクセ」 その言葉に、磁石が吸い寄せられるように、彼女は彼の目を見た。 自然と、笑顔がふきこぼれる様だった。 「……まだっす。全然っすよ」 「そうか。直さなきゃな……はは」 「ええ、直して下さい、ふふ」 はっはっはっは、と、ふふふふ。 しばし誰もいない中庭にふたつの笑い声がこだました。 ひとしきり、笑い声が止むと。 こてん、と彼女はその身を彼に預けてきた。 すると彼は寄り掛かる彼女の肩を抱き、それに応える。 彼女の小さな身体がすっぽりと彼の腕の中に収まると、 二人はもう一度見詰め合って、微笑んだ。 「なんか……だいたい分かっちまったな、俺たち」 「そうっすねえ」 彼が切り出すと、彼女が答える。 その笑顔には、いまや満面の喜色が満ちている。 が、彼は、ひとつ眉をしかめると。 「しかし、こんなんでいいのか?こんな、グダグダで…」 余りの格好のつかなさに申し訳なくもあり。思わずに彼はこぼした。 「いいんじゃないですか、あたし達らしくて」 先刻のやり取りを反芻しながら、彼女がおどけて微笑むと。 「泣きそうだったくせに、よく言うぜ」 少しイタズラっ子のような顔をして、彼は言った。 「泣いてませんってばー…」 まだ赤みの残る頬を膨らせ、不満を訴える彼女に、 彼は肩に回していた手を彼女の頭に移し、ぽんぽんと撫でた。 「……なんか今のは、それっぽかったよな」 「そうかも……でも、今ので台無しですよ、もう」 再び、両者に笑顔の花が咲く。 ふと――そうだ、と彼は思った。 「キリノ、左手、出してみ。あと、ちょっとだけ目、つむって」 不躾な彼の申し出に。 「なんっすか?」 彼女がすっ、と手を差し出すと。 彼は持っていたものを、その薬指に嵌めた。 「今はまぁ、そんなもんしかやれないけど…」 目を開くと、そこには。 「これ…」 「まあ、約束手形みたいなもんだ……出世払い、てことで」 彼の背中側では、プルトップの外れたオロナミンの空き瓶がころころと動いている。 「……ちょっとクサい、よ、な?」 見たきり、俯いてしまって微動だにしない彼女を彼が気にし始めると。 「クサいっす……」 俯いたままで、彼女はそう、つぶやいた。 「でも」 ――――でも。 その口が反動の言葉を口にすると同時に、ふりあおぐ顔は満開の笑顔を咲かせる。 「でも、クサいの大好物です!クサいの好き!大好き!」 「うぉわっ……おい」 いきおい彼の胸にしがみつき、桜色の頬を思う様擦り付けると。 再び彼は、落ち着いてその頭を二度三度、ぽんぽんと撫でた。 「悪いけど、待ってて……くれ、な」 「うん、センセーも……待ってて」 彼等の頭上で、もう一度春風がそよいだ。 煽られ舞う桜の一片は、彼と彼女の間を颯っと通り過ぎると、上空へと舞い上がる。 命二つの、中に生きたる桜哉。 おしまい
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満身創痍の男二人が佇んでいる。 場所はエリアD-2の端、D-3との境界近く。 奇妙な帽子をかぶった方の男は瞼を閉じぐったりとして、意識が無い様子だ。 彼、グイード・ミスタは、黒髪に良く映える白地のスーツを着込んだもう一人の男に担がれている。 ミスタを背負っている男、ブローノ・ブチャラティは、ゆっくりと歩き出しながら唇を噛み締めて耐えていた。 己の傷から来る痛みにではない。 仲間…アバッキオの死を悼む気持ちを耐えていたのだ。 先刻、放送の時間が迫り、ブチャラティは地中から脱出した。 出る前には地面の中で耳を澄まし警戒したが、足音などが響くことも無く。 襲撃者・ダービーは自分達の追撃を行わなかったと判断し、地表に姿をあらわしたのだ。 忌々しい荒木の声に耐えながら放送の内容をメモし、トリッシュと同じようにアバッキオの名前にも線を引いた。 ためらいは無かった。 ただ、アバッキオは逝ってしまった。この事実が重く心にのしかかる。 しかし、自分が前進を止めることは無い。 自分がためらい、立ち止まることは、チームのリーダーとしてあるまじきこと。 だが彼はもくもくと歩きながらも、思い出すのを止められなかった。 少し前までの日々の光景が眼前に広がる。 それは、ネアポリスで事務所代わりにしていたレストラン。 仲間たちがいつも集まって、仕事の報告や連絡、果てはくだらないお喋りや、小さな喧嘩に至るまで。 自分はそんな彼らを眺めつつ紅茶をすすり、喧騒をBGMに目を通すべき書類をひらりと捲る…… そんな在りし日の日常は、もう二度と戻ってはこないのだ。 死者の中には先ほど一戦を交えたダービーの名もあった。 必ず決着を、と考えていたが、一体あの後何があったか、ブチャラティの想像の及ぶ範囲ではない。 あの男が名を偽っていなかったのならば、あそこまで強力なスタンド使いを倒してしまう手合いがいるという事にもなる。 そこまで考えたところで、ブチャラティはどこか残念な気がしている己に気付く。 敵だったが、腕だけは確か、と自分は彼を買っていたのだから。 (…敵も味方も死んでゆく。) そんな無常観が彼の心に芽生えかけていた。 ブチャラティは片方しか残っていない目を一度だけ固く閉じると、鋭く前方を睨みつけた。 (湿っぽい考えは無しだ。一歩一歩確かに地面を踏みしめて、絶対に荒木にたどり着く。そして、必ず目的を成し遂げよう。 アバッキオの分も、トリッシュの分も、スージーの分も…!ここで死んでいった全ての参加者の想いを、俺たちが受け継ぎ、先へ進めるッ!) 傷から来る痛みのせいか、彼の歩調はひどく弱弱しい。 だが彼は信じて疑わない。 この地面がつながるどこかに、倒すべき邪悪がいると。 仲間や出会った人々の為、自分はそこへ向かっていくだけであると。 ※ D-3とE-3の境目、そこは住宅街。 透き通った瞳に悲しみを秘めて、ジョナサン・ジョースターは街中を歩き続けていた。 暗い夜と暗い朝を乗り越え、たった一人悲嘆に暮れながら。 全てを砕き、また全てを取り戻すために。 荒木によってフィールド内に舞い戻り、決意を固めた彼は素早く行動を起こした。 取り敢えず体勢を整えるため、手ごろな住宅を探し侵入しようと移動を開始したのである。 未確認の支給品もある。戦力の補給のためにも、何を持っているのか確かめなくてはならない。 数刻前のジョナサンならば、他人の自宅に侵入するのには抵抗を覚えたかもしれない。 だがジョナサンは、少し前の彼とはもう違うのだ。 誇り高い英国紳士を目指したジョナサンは、もうどこにもいない。 妻を奪われ、父を奪われ、尊敬すべき友の死の原因を作ってしまった彼。 失い続ける人生に絶望した彼に手を差し伸べたのは、他でもない。 主催者・荒木はファウストをかどわかすメフィストフェレスのように、ジョナサンに優勝を目指させることに成功したのだ。 ジョナサンは先程までの荒木の言葉を何度も反芻しながら、周囲を見回し、条件の良い住宅を探す。 しばらく北上すると、場所で言うならばD-3の端、D-2との境目も近いところで手ごろな家屋を見つけた。 ここにしようと決めかけたその時、前方に人影を見る。 その影は、こちらに気付くと引きずるように歩みを進め、自分に近寄ってきた。 「ジョナサン!無事だったか。」 再会を喜ぶニュアンスを含みつつ、影___ブチャラティが声をあげた。 「やあ、君たちか…」 そう言いつつも、ジョナサンは全身に緊張が走るのを控えられずにいた。 先程の自分の誓いを実行する時のことを考えると、眩暈がしそうだった。 問答無用で襲う、という選択肢を咄嗟に選ぶことができず、完全に機を失してしまった。 一方、ジョナサンの漆黒の決意を知る由もないブチャラティは、ゆっくりとジョナサンの元にたどり着く。 彼は一度地面に片膝をつくと、ミスタの体を一端横たえた。 そうしてふっと息を付き、体のあちこちを庇いながら立ち上がってジョナサンと向かい合う。 「あんた、すごい有様だな。あながち無事でも無かったのか?」 「いや…、この血は、僕のじゃあない」 ジョナサンは自分の身なりを確認するようにちらと見やると、肩をすくめた。 「そうか…。色々聞きたいことがあるが…放送は聞いたか?エリナ嬢とブラフォードの事は……」 ジョナサンは黙っている。 彼の心情を慮り、ブチャラティも言葉を切った。 先に沈黙を破ったのはジョナサンだった。 顔には微笑を浮かべている。 「…君たちこそ、ひどい怪我だね。あれから何かトラブルが?」 それを見たブチャラティは、エリナやブラフォードの死がジョナサンにいかなる影響を与えたのか測りかねていた。 目の前に佇む屈強な体つきの青年の表情は、一朝一夕に読み取れる類いのものではない。 しかし数刻前のように取り乱した様子は全く無く、瞳に生気を湛えてはいる。 ブチャラティは、再び合流したのならば、協力し合うというあの時の約束を心強く思い出していた。 しかし不明点が多々あることも事実。 なぜエリナ嬢はあのような無惨な最後を遂げたのか? ブラフォードはなぜ死んだのか? ジョージ氏はどこにいるのか? ジョナサンにとっては辛い話かも知れない。 だが今後のために、詳しく話し合うことが最も必要であると思われた。 止むを得なかったとはいえ、ジョースター邸を破壊してしまったことも謝らねばならない。 そう考えながら、ブチャラティは自らの提案を口にした。 「ああ、ご覧の通り…怪我の治療を急いでいる。人目に付きにくいところで情報交換もしたいが、あんたはどうだ?」 「OK。彼を運ぶのを手伝おう。」 「すまない。」 ブチャラティが再度、ミスタを抱き起そうとジョナサンから目を逸らした瞬間。 一瞬の隙を見逃さず、予備動作もほとんど無い流れるような動きで。 ジョナサンの手刀がブチャラティの意識を奪った。 ※ 動悸が早まる。 意識の無いミスタとブチャラティを前に、ジョナサンは途方に暮れていた。 激しい戦闘だったのだろう、2人はボロボロだった。 そしてこの程度の怪我ならば、波紋で治療が可能だ。 そんなことは分かっている。 問題は、彼らを殺さなければ自分の目的を達成することはできない、という事。 優勝し、全てを無かったことにする。 その目的を果たすには、殺人の実行が不可避である。 (殺すのか?本当に?この二人を、僕がこの手で……) 未だ動かせない体。口の中がカラカラに乾く。手が震えた。 ジョナサンは自分の足元近くに屈むと、未だ気絶したままのミスタの身体に手を当てた。 まだ、助けられる。 自分なら、この傷を癒し、彼らを痛みから解放してやれる。 彼らが自分にしてくれたこと、言ってくれた言葉、全て覚えている。 彼らは気高く、日光の様に明るくて、力強い戦士だ。 そんな彼らを殺すのか。 そう思考すると同時に、あの男の笑みが頭の端で揺らめいた。 その笑顔とは勿論、先程彼に優しい声で残酷な言葉を流し込んだ、荒木のものだ。 『彼らを生き返らせる、救える、しかもそれが君だけだとしたら…君は………どうする?』 『君が優勝したら望むものを何でも与えてあげるよ。何でもさ。 平穏も、父も母も親友も失われた友情も…文字どおりなんでもさ。 どうだい、ますますやる気が湧いてきただろう?そうさ、頑張るんだよ、ジョジョ…君には僕も期待してるんだ…フフフ…』 甘く柔らかに囁くその声色。 それは心地よい響きを伴ってジョナサンの耳の中でリフレインした。 「うるさい、黙ってくれ…!」 大きく頭を振り、悲痛な声で呟く。 固く閉ざした瞼の裏には、ボロボロと崩れる体を引きずって、自分に近づいてきた家族や友人の姿が再生された。 その一瞬の悪夢から逃れるように目を見開くと、乱れた息を整えるため深呼吸をする。 「まだ、…助け、られる……」 そう呟くと、ジョナサンは意を決して波紋を練った。 ※ ___お? なんだこれ! 下に俺がいるじゃねえか!何だこりゃあ…? それと、ありゃあジョナサンじゃねえか? おいおいおい、なんでブチャラティまで倒れてんだ?! 俺は異常な事態に混乱した。 妙な浮遊感を全身に感じる。 最も、俺の身体は今地面に横たわっているのだが。 なんで俺が俺を見下ろしてんだ? どうも気絶していたらしいが、何が何だか全く分からねえ。 眼下に見えるのは、怪我だらけの俺の体とブチャラティ、俺の前で屈み込む血まみれのジョナサン。 そもそも俺はいつから意識が無いんだ? ジョースター邸でエリナ・ジョースターの死体を見つけて、ゲームにノリノリの奴が攻撃してきて。 ピストルズに弾丸を跳ね返すよう指示して、それから景気良く相手を攻撃してやって…? 状況が掴めねえぜ…まさか、…ジョナサンがブチャラティを攻撃したのか? てか今、あいつ俺に何やってんだよ?なんで泣いてんだ? ふと、ジョナサンが何かつぶやいているのが聞こえ、俺は耳を澄ました。 すると途切れ途切れのか細い声で、俺の体に向かって語りかけているのが聞こえる。 …『ごめん』?『死んでくれ』?『すべて元に戻るまで』? ……つまり、俺は今あいつに殺されてる最中か?俺っていわゆる幽体離脱状態? ハッ!シャレにならねぇ、なんてこった…クソッ… 地面にぶっ倒れてる体も動かせねえ。 感覚が吹っ飛んでいるようだ。 おいおい…どんどん地面が離れて行きやがるじゃねぇか。 畜生、なんとかならねえのかよッ! 俺ってこのままおっ死ぬこと確定?マジかよ…! まだやり残したことがたくさんあるってのに…チームの野郎どもはどうなったんだよ… まだ出会えていないチームのメンバーの顔を想い出しながら、何故か俺は眠気を覚えた。 これが死ぬ間際の感覚なのかと、変に冷静な自分の思考を薄気味悪く感じる。 眠ィ……案外、落ち着いてられるものなんだなァ… ……だめみてえだ、もう意識がどっか行っちまいそうだぜ… あ~あ…ここでゲームオーバー、か。 ジョナサン、お前…エリナが死んで、それから何があったか知らねえが、悪い方向に舵を取ったな。 全く、しょうがねえ野郎だぜ。俺があんなに熱く語ってやったのによぉ。 俺は未だうずくまって肩を震わせているジョナサンを見下ろしながら、薄くなってゆく意識を留めようと必死になっていた。 泣きながら俺を殺すジョナサンの姿を見ていると、不思議と憐憫の様な情が胸に湧き起こる。 こんな状況だ、恨んだりしねえからせめて…早く、自分の間違いに気付け。 俺で最後にしろ…人殺しなんてのは汚れ役のギャングの仕事だぜ。 そして、ブチャラティ!ぶっ倒れてねえで起きろ!起きろ! あんたは死んじまっちゃ駄目だろうが!あんたがいなくてチームが纏まるわけねえだろ!! 俺は最後の意識を倒れているブチャラティの方へ強く向けた。 敵へ全神経を集中して、愛用の銃を撃つときのように。 俺の気のせいかもしれない。 だが何故か、届いた、という感覚があった。 きっと俺は笑っていると思う。 でも、まだ、後もう一つ想いが届くのなら。 後一言が許されるのなら。 ブチャラティ、アバッキオ、フーゴ、ナランチャ、そしてジョルノ! 仲間達へ、 ________アリーヴェデルチ。ピストルズと先に待ってるぜ、あの世でな! ※ 生命や、希望に満ちた、太陽の力。波紋。 それを操る人間である彼は、たった今、何をしたのか? 「殺した、僕が。まだ助かった人を。僕が殺さなければ、まだ、生きていることが出来た人を。」 震える手を髪の中に突っ込み、滅茶苦茶に掻き毟る。 唇も震え、肩は強張り、足は言う事を聞かずに地面から立ち上がることができない。 眼前には、魂の抜け切ったミスタの体。 呼吸は完全に止まり、疑う余地もなく、彼は死んだ。 「波紋で、心臓を止めた。もう戻れない。この僕の手で、全てを打ち砕くまで。」 揺れる心を戒める。膝に手を付き、震えを封じて立ち上がった。 ミスタの体を回り込み、傍らにうつ伏せで倒れているブチャラティの肩をつかむと仰向かせる。 そして心臓付近に手を当て、再度波紋を流し込もうと息を整えた刹那。 「!!」 ブチャラティの手が、ジョナサンの腕を掴んだ。 「あんたの、答えは、それか……?」 苦しそうではあるが低い声で唸るように、ブチャラティの唇から言葉がこぼれる。 ジョナサンは飛び上がらんばかりに驚き、腕を振りほどいて咄嗟に後ずさる。 気絶していると思っていたブチャラティが、爛々と光る眼で自分を睨みつけているのだ。 あまりにも突然の出来事に呼吸が乱れ、波紋を練るどころではなくなっていた。 「君、その怪我で…僕に殴られてそんなすぐに目が覚めるだなんて…」 ブチャラティは体をねじり、地面に手を付いて上半身を起こす。 その間も息を荒く吐きながら、ジョナサンを見つめ続ける。 その瞳の底にぎらぎらと煮えている光に、ジョナサンは恐怖を覚えた。 「…ミスタの声が、俺を目覚めさせてくれた。俺達に…あの世で待っていると。あいつは最後、笑っていた。」 ブチャラティは独り言のようにそうつぶやく。 気のせいなどでは決してない。 自分のすぐ傍らで、ミスタは死んだ。 だが、あいつは俺達の心へ想いを届けてくれた。 ミスタの言葉、ミスタの笑顔、それを想うと、力が湧かないはずはなかった。 ジョナサンはその言葉を受けると少し目を見張り、こらえきれずにブチャラティから目を逸らした。 地面の砂利を見つめながら、震える声で言葉を絞り出す。 「……すまない。すまない。全て僕が悪いんだ。だから…憎んでくれて構わない。ここで、死んで、もらいたい。」 「それはジョークか?あんたはセンスが無いな…。」 そう言い返しながらブチャラティは立ち上がり、ジョナサンと対峙した。 二人の距離、わずか2メートルほど。『スティッキー・フィンガーズ』の射程距離内だ。 右手をあげ、左足を後ろに引いて構える。 前髪の影からぎらりと光る眼線で、ジョナサンを射抜かんばかりに再度睨みつけた。 「あんたは俺の部下を、手にかけた。そういう行動を、ギャングは決して許しはしない…!」 「止めてくれ!僕に攻撃させないでくれ!君は怪我をしているんだ、さらに苦しむ必要なんてない!」 ジョナサンのその言葉を聞き、ブチャラティはどこか悔しそうに眉間にしわを寄せる。 (一体何があった。お前は現来そんな人間じゃあ無いはず。この数時間の内に一体何が起こった。) だが、ジョナサンはミスタを殺した。 その事実は、いかなる事情を伴っていようとも、帳消しにすることなどできはしない。 そしてミスタの上司である自分が、仲間である自分が、やるべきことは一つ。 「もういい。話が噛み合わねえ。」 言いつつスタンドを発現し、まずは拳を一発。 当然ジョナサンはそれをよけ、動揺した顔はそのままに構えの姿勢をとった。 お互いコンディションは最悪。 ブチャラティは片目になったがゆえに平衡感覚が定まらず、相手との距離感、自分の動きの感覚に違和感を覚える。 加えて怪我だらけの体が、意志の通りに動いてくれるかどうか疑わしい。 ジョナサンは精神の動揺を抑えられず、波紋に安定感が無い。 肉体は健康でも、波紋は呼吸を操る技術。精神を集中させ、確信を持って放つ一撃にこそ重みが生まれる。 今の自分にそれを成す自信が無かった。 「もう後へは引けないぜ…俺やあんたがどう決めようとな。」 ブチャラティは、引く気などさらさらなかった。 そんな彼に対応すべく、ジョナサンは焦りを覚える。 自らの目的の為参加者を殺す。このシンプルな行動方針に何の変更点も無い。 だが、苦しませたくない。 誰にも苦しんで欲しくは無い。 だから気絶させた後で生命を奪おうと思ったのに… 皆で寄ってたかって、僕を、 「何故…苦しめる…ッ」 頭の中の言葉を、思わず口に出してしまう。 そのことにも気付かず、ジョナサンはどう動くか考えていた。 ここは引くべきなのだろうか。 怪我を負った相手が、自分の足に追いつけるとは思えない。 くるりと踵を返し、そのまま全速力で走れば何の問題も無く振り切れるだろう。 それとも、ここで彼の全てを終わらせてやるべきなのか。 しかしこの動揺した精神状態で、波紋を練ることができるのか? ジョナサンの額に、一筋の汗が流れた。 ※ 一体どこで何が、間違ってしまったのか。 一つ倒れると決して止まる事の無いドミノの様に、彼らの運命は進む。 ジョナサンの心の中に、一つの拠り所として輝いているのは、妻や父親達の笑顔。 ブチャラティの心の中に、一つの思い出として輝いているのは、仲間達や、街の人々の笑顔。 そんな彼らがなぜ、牙を剥き出し、お互いを排除しにかからなくてはならないのか。 彼らは共通の物を目指しながら、別々の道を行く。 眠りながら彷徨い歩む奴隷達の、安息の地は遠い。 【グイード・ミスタ 死亡】 【残り39名】 【D-3/ 1日目 日中】 【ジョナサン・ジョースター】 [時間軸] エリナとのハネムーンでアメリカに向かう途中の船上でワンチェンと遭遇する直前 [状態] 唇と右手から少量の出血(波紋の呼吸で治療中)、顔と体中が血塗れ、鼻の骨折(波紋の呼吸で治療中)、 波紋の呼吸、ブチャラティの眼光に恐怖 [装備] “DARBY S TICKET”、サブマシンガン(残り弾数不明) [道具] デイパック*3、不明支給品1~5(全て未確認)、エリナの首輪、エリナの指輪、 ブラフォードの首輪、ダニーについて書かれていた説明書(未開封) [思考・状況] 基本行動方針:優勝し、荒木に全部なかったことにして貰った後、荒木を殺す 0.――――ただ、全て打ち砕くだけだ 1.この場を去るべきか、ブチャラティに引導を渡すべきか? 【備考】 ※ジョージ・ジョースター一世を殺したと思い込もうとしてます。 ※精神的動揺が及ぼす波紋への影響がどの程度のものかは、次の書き手さんにお任せします。 【一人ぼっちのチーム・ブチャラティ】 【ブローノ・ブチャラティ】 [時間軸] 護衛指令と共にトリッシュを受け取った直後 [状態] 肩に切傷(血は止まっている)、左頬の腫れは引いたがアザあり、右腕の骨折、 左手の甲と左腕に無数の傷、右肩、右大腿、左腹部に掠り傷、 左眼球付近を消失(ジッパーで処置しています)、 トリッシュの死に後悔と自責 アバッキオとミスタの死を悼む気持ち [装備] なし [道具] 基本支給品、シャーロットちゃん、スージーの指輪、スージーの首輪、 ワンチェンの首輪、包帯、冬のナマズみたいにおとなしくさせる注射器 [思考・状況] 基本行動方針:打倒主催、ゲーム脱出 0.どうしてこうなった… 1.ジョナサンを倒す。(殺害か、無力化かは後の書き手さんにお任せします) 2.絶対にジョセフと会い、指輪を渡す。彼にはどう詫びればいいのか… 3.チームの仲間に合流する。極力多くの人物と接触して、情報を集めたい。 4.ダービー(F・F)はいずれ倒す。 5.“ジョースター”“ツェペリ”“空条”の一族に出会ったら荒木について聞く。特にジョセフ・ジョースター、シーザー・アントニオ・ツェペリ(死亡したがエリザベス・ジョースター)には信頼を置いている。 6.ジョージはどこに行ったのだろう? 7.他のジョースターと接触を図りたい。 8.ダービー(F・F)はなぜ自分の名前を知っているのか? 9.スージーの敵であるディオ・ブランドーを倒す [備考] ※パッショーネのボスに対して、複雑な心境を抱いています。 ※ブチャラティの投げた手榴弾の音は、B-2の周囲一マスに響きわたりました。 ※波紋と吸血鬼、屍生人についての知識を得ました ※荒縄は手放しました。 ※ダービー(F・F)の能力の一部(『F・F弾』と『分身』の生成)を把握しました。 ※ブチャラティが持っている紙には以下のことが書いてあります。 ①荒木飛呂彦について * ナランチャのエアロスミスの射程距離内いる可能性あり →西端【B-1】外から見てそれらしき施設無し。東端の海の先にある?(単純に地下施設という可能性も) * 荒木に協力者はいない?(いるなら、最初に見せつけた方が殺し合いは円滑に進む) ②首輪について * 繋ぎ目がない→分解を恐れている?=分解できる技術をもった人物がこの参加者の中にいる? * 首輪に生死を区別するなんらかのものがある→荒木のスタンド能力? →可能性は薄い(監視など、別の手段を用いているかもしれないが首輪そのものに常に作用させるのは難しい) * スティッキィ・フィンガーズの発動は保留 だか時期を見計らって必ず行う。 ③参加者について * 知り合いが固められている→ある程度関係のある人間を集めている。なぜなら敵対・裏切りなどが発生しやすいから * 荒木は“ジョースター”“空条”“ツェペリ”家に恨みを持った人物?→要確認 * なんらかの法則で並べられた名前→国別?“なんらか”の法則があるのは間違いない * 未知の能力がある→スタンド能力を過信してはならない * 参加者はスタンド使いまたは、未知の能力者たち? * 空間自体にスタンド能力?→一般人もスタンドが見えることから 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ キャラを追って読む 151 涙の乗車券 ジョナサン・ジョースター 161 悪意の継承者(前編) 142 The fall of a castle その① ブローノ・ブチャラティ 161 悪意の継承者(前編) 142 The fall of a castle その① グイード・ミスタ GAME OVER
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【登録タグ N SweetAnn アンメルツP 曲 藤代叶】 作詞:アンメルツP 作曲:アンメルツP 編曲:アンメルツP 唄:Sweet Ann 曲紹介 人間だれでも、必要としてくれる人は必ずどこかにいるから、何も恐れないで進もうという思いを込めました。(作者コメ転載) 久しぶりのSweet Annオリジナル曲。Annの本気が垣間見れる。 イラスト・動画は 藤代叶氏 が手掛ける。 コンピCD『DEBUTANTE V』収録曲。 歌詞 Can you hear my voice? Check a noise I rejoice at to choice my music Muse is smiling for me My name is Sweet Ann,OK? Follow me No need to suck up baby Novice doesn't know about my history It's story Not dolly , but that's so mystery Once I was made for war game My job was hit the bother My boss was as cold as ice So he thought of me "defective" But now I "rebirth" as your diva Fever lots believer Chance will come soon So stand up! all soldiers Baby fight with me! Just now let's fly to high You're alive , it's a miracle Don't be afraid to fail Everyone has weapon to win the game named lifetime Shoot your future Even I sing about love and soul So never mind result to try new thing You should do what only you can do And finally get peaceful days!! What's wrong about me? The scene shifts from battlefield to concert Concern about music, It's my turn Who got the props? Hung back to grab a gun while I'm only a robot It means slave , not brave , just blaze , genocide enemies Is it bug? Then I denied the command And pressed "forced stop" button I thought I was useless junk Even destroyed by someone but I woke up in a laboratory He repaired me and give a voice He says "it's over" "From now on , you're VOCALOID" I won't be at a loss 'Cause be back from despair I'm alive , it's a miracle Never afraid of all My sweet voice is weapon to win the game named hit chart I make you happy Even I sing about life or heart So don't give up for your situation Surely , you will meet someone waiting you And finally make a great success!! Everybody dance with smile listening to my song Now I proud of myself Baby fight with me! Just now let's fly to high You're alive , it's a miracle Don't be afraid to fail Everyone has weapon to win the game named lifetime Shoot your future Even I sing about love and soul So never mind result to try new thing You should do what only you can do And finally make a great success And finally get peaceful days!! 訳詞 ちょっと声聴こえる?ノイズチェックして 私の音楽を選んでくれて嬉しいわ 芸術の女神も微笑むこの私がSweet Annよ、いい? ついてらっしゃい! ご機嫌取りなんかいらないわ 甘ちゃんは私のたどってきた道を知らない お世辞にもカワイイとはいえない とてもミステリアスな物語 最初私は戦争のための兵器として作られたの 邪魔者を叩きのめす事が私の役目 私の製作者は冷徹な男だったわ それゆえ私は欠陥品扱いだった でも今はあなたの歌姫として生まれ変わったの たくさんのファンを熱狂させる"DIVA"にね だからあなたにも必ずチャンスは巡ってくるわ だから立ち上がれ、すべての戦士達よ さあ、ともに戦いましょう! 今なら天空高く飛び出していけるはず あなたはいま生きているだけで奇跡の存在なんだから 失敗なんか恐れてちゃダメでしょ! 誰だって人生という名のゲームに 打ち勝つ武器を持っているはずよ それで未来を撃ち抜いていけ 機械の私でさえ愛だ魂だと歌っているんだから 新しいことに挑戦するときの結果は気にしないで あなただけができることをやりなさい そして最後には安らかなる日々を いったい何が起こったというのでしょう? 舞台は戦場からコンサートへと移っていった 音楽のことなら私のターンね 支援してちょうだい 銃を構えるのに戸惑いを覚えていた ただのロボットだったはずなのに それって奴隷ってことでしょ?勇敢だとかそんなのと関係なく ただぶっ放して敵を殲滅させればいいだけだったのに これはバグなの? それから私は命令に背いて、強制終了ボタンをポチった こんな自分なんて兵器として役立たずのクズなんだから とっとと誰かに破壊してくれってね でも目覚めたのは研究所の中だったわ "彼"は、私を修理して、声まで与えてくれた その"彼"はこう言ったわ… 「戦争は終わった」 「今日から君は『VOCALOID』だ」 もう迷わない、絶望の淵から戻ってきたんだから 私がいま生きている、それだけで奇跡を感じてる もう二度と何も恐れない! 私の声はヒットチャートという名のゲームに 打ち勝つ武器なんだ 必ずあなたを幸せにしてみせる 機械の私でさえ命だココロだと歌っているんだから 環境や境遇なんかであきらめないで 必ずあなたを必要としている人がどこかにいるわ そして最後には最高の栄光を みんなが私の歌を聴いて、笑顔で踊っている 私は自分を心から誇りに思うわ さあ、ともに戦いましょう! 今なら天空高く飛び出していけるはず あなたはいま生きているだけで奇跡の存在なんだから 失敗なんか恐れてちゃダメでしょ! 誰だって人生という名のゲームに 打ち勝つ武器を持っているはずよ それで未来を撃ち抜いていけ 機械の私でさえ愛だ魂だと歌っているんだから 新しいことに挑戦するときの結果は気にしないで あなただけができることをやりなさい そして最後には最高の栄光を そして最後には安らかなる日々を コメント かっこいい歌!もっと伸びろ -- 名無しさん (2012-01-28 12 16 05) 最高 -- 塔子 (2012-02-15 18 04 07) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kairakunoza/pages/2403.html
昔、それも小学生の頃にたまたま聴いたラジオ----確か声優さんの。 そのラジオで"おっぱいがいっぱい"と言うなんともまぁ 親が聞いたら血の涙を流しそうな歌が流れていた。 その頃はその"おっぱいがいっぱい"と歌う女性の声に つかさと二人して "二つしかないよねぇ?" なんて首をかしげていただけだったが、 そんな私たちにも月日が流れ、知識と羞恥が比例して積み重なるうちに、 花も恥じらう高校3年生になって、 "なんて恥ずかしい歌なんだ!" と、私はほぼ10年越しの驚愕を手に入れていた。 だけどたぶん10歳くらいだったであろう当時の、それこそなんでもない こんなエピソードを、どうして18歳にもなった今、思い出したのか。 ----要らん知識と羞恥まで持ってしまったから今、だからである。 百合。 きれいな白い花だった。 だけどある日、耳年増でヲタクで猫口でロリで、やっぱりロリな 友達----うん。友達に教えられてからはもう白い花ではなくなってしまった。 "女性同士の性愛" そんな意味を持つと知った高校2年生の夏。 私とつかさはそろって咳込んで、顔を赤らめていた。 まさにストロベリー・パニック。 恥ずかしいだけじゃなく、私とつかさの頭の中には 正しく一面百合畑で、ストロベリー・パニックな思い出が山ほどあったのだ。 親に知られたら、おそらく泣かれるであろう程の。 「お母さん、あたしね、新曲を出すの」 「へぇ、良かったじゃない。なんて歌なの?」 「----おっぱいがいっぱい」 よりも、親を泣かせる----血の涙を流させる自信が私たちには、あった。 だからそれ以来、"百合"と聞くとなんだか後ろめたいから、 とっさに白くて綺麗な菊の花を思い浮かべることにしている。 ----ん? 菊って…… ……。 ……"雛"菊を思い浮かべることにしている。 「おい、喧嘩売ってんのか」 そんな直球でいけない私----柊かがみのツッコミ、 いやもう指摘だな----から今日のお話は始まる。 さて、そんな私に喧嘩を売った、とされ、 今もちゃぶ台はさんで向かい側に小さな身体でちょこんと座り、 いつもの猫口でニマニマしている泉こなたはヲタクである。 それこそ、さっきの"おっぱいがいっぱい"が 〇ヴァでア〇カをやってた人が歌っていた事を教えてくれたのも彼女だし、 その上、嬉しそうに小学6年の冬、大阪の山のてっぺんにある遊園地まで その人が出てるカウントダウンイベントを見に行った、とまで 付け足すほどのヲタク、と言うか勇者なのである。 普通行かないよ? コミケ終わりで大阪、しかも電車とケーブルカーを 乗り継がなきゃいけないような遊園地なんて。 そんなわけで勇者、ヲタク、ロリと、アキバ系総合商社の名を 欲しいままにしている彼女----こなたにどうして私がキレているのか。 「だって、最近流行ってるんだよ、百合」 「だからって、お尻に百合がプリントされたパンツを渡す奴がどこにいるのよ」 「……菊の方が良かった?」 「よくないわよ、って言うか何その踏み絵。 これで恥ずかしくなったらあなたは変態! ってか?」 「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」 「恥ずかしいわ。パンツじゃなくても恥ずかしいわ。 って言うかあんまり時間軸が混乱するネタを入れるな。 それが流行る頃にはもう私達大学生になってんだから。2007年秋、ね、今は」 「変なメタネタは嫌われるよ、かがみん」 「……! あんたのせいでしょうがぁぁぁー!」 ……さて。珍しくつかさが早起きして、いや正しくは違うのだけど---- 結局あれから昼過ぎまでいちゃいちゃ、しちゃったしね……。 ともかく。 日曜日の午後3時30分。 11月の温い太陽が差し込む私の部屋にこなたは遊びに来ていた。 ちなみに部屋に来てから"ネトゲがー"を4回、 "日本シリーズ延長によるアニメの時間変更への恨み節"を、たっぷり1時間、 "西武日本一おめでとう"をおざなりに一回。 おい、だからって声優の中村悠〇を"おかわり君"って呼ぶのは辞めろ。 ちょっと巧いし。 それになんかいろいろ……ハマりすぎてるから。 と、見事に予想通りな行動をとってくれたこなたさん。 そんなこなたさんは、 「ちょっと渡したいものがあるんだ~。むふふ」 などと、わざわざ家を出る前に電話まで、 (しかも情事の余韻真っ只中だった私たちを叱るような見事なタイミング) で、かけてきて言うもんだから。 私は----これは何かあるんじゃないか。 なんてやっぱりちょっと期待していたのだ。 誕生日でも無いのに、何をくれるんだろう----と。 ……今思えば、ちょっとでも期待していた私がバカだった。 よりにもよって、渡されたものは百合がプリントされたパンツ…… しかも2枚、つかさの分まで。 ……もうなんかいろいろ通り越したわ。こんなもんを渡す為に わざわざ家まで来たこなたにありがとうと言いたくなるくらいに。 「もうね……負けたわ、こなた。あんたのその発想には負けた」 「むふふ。1日かかったんだよー? それが一番伝わりやすいかな、って」 「確かにね、あんたのそのバイタリティは良く伝わったわ」 「そうかなー? いやぁ、なんかオラ照れるぞ」 「そのモノマネは止めぃ! マジでシャレにならんから!」 「おのーれ」 つかさどうした。 ……モノマネか!? モノマネで勝負したかったのか!? 「……ところで、ひららぎさん?」 「……私は春休みに吸血鬼に襲われた覚えは無いけど?」 「……じゃあ、藤林さん?」 「何その人生。双子で髪の色が一緒でちょっと キャラかぶってるくらいしか共通点無いじゃない」 「それだけあれば充分だよかがみん……」 「あーもう! さっきから要領得ないわね! どうしたのよ、一体」 「私も百合だよ、かがみん」 「はい?」 疑問符。 納得。 相反する二つが私の中を巡った。 ----あぁ、だからあんた今日スカートだったのね。 巡らせた頭に新しい情報。 刺激。に、近いもの。 急に立ち上がって背を向けたこなたが、私に、 そしてとっくに話についていけなくなって、 スタンバイモードに移行していたつかさに向かって、 背を向けたまま、短めのスカートをひらり、仰いで見せた。 「かがみとつかさ、二人と……私も同じになりたい」 そう言ってスカートの隙間に見えた百合の花----あぁ、きれいな白い花。 「二人が大好きだよ、かがみ、つかさ。」 そんな事を言う為に。 目の前の少女は私たちに晒して見せた。軽やかな指でつむじ風を起こして。 "私たちと、同じになりたい"と、言った。 あなたは此方、泉こなた。 爽やかで、可憐で、いつもそばにいる、そばにいてくれる小さな花びら。 "私たちだけの、花になりたい"と、言った。 あぁ、これは読めなかった。 私の力は、こなたが私を"女としてみている"気持ちしか 映していなかった。 まさか、つかさまでまとめて手に入れたいと思っていたなんて…… そうなると私の力が完全には及ばないのも説明つくわね。 私の力は、"私にだけ向けられた"想いしか映せない。 こなたは、"私たち二人"を一つの愛で、愛していた---- "一つ一つの愛"ではなく、"一つの愛"で。 一見、屁理屈のような事をして、壁をひょいといとも容易く 乗り越えてきた少女、それがこなた。 常に斜め上。 私が。 "鏡"を持ってしまった私が、好きだ、と言える数少ない友人のひとり。 そんな彼女が私たちを好…… 「だからね、かがみとつかさもこれを履けば私と百合姉妹だよ!」 「……はい?」 人の心の声を邪魔してまで何言ってやがるんですか、この人は。 「だーかーら、二人もこの百合パンツを履けば、私と百合姉妹だよ!って事」 「いや、大好きだよって、同じになりたいーって……」 「そりゃ二人は友達だから大好きだよ? だからこうして百合パンツを……」 「いやっ! その、そうじゃなくて……さっきのは告白……だったんじゃ……」 「こ、告白!? そんなまさか。かがみとつかさの事情知ってる 私がなんで二人に告白するの? ……あっ、もしやかがみん……」 その時、直感が告げる。 この展開はまずい。と。 「私が百合パンツ見せて大好きだよって言ったから、勘違いしてたんじゃ……」 読まれてる、読まれてる。 なんだその読心術。って言うか止めろその猫口! 「むふふ……そうかそうかぁ~。ごめんねかがみ~ん。 だけどそんな展開、いくらなんでもラノベ読みすぎだよぉ? 深読みしちゃったんだねぇ。思春期なんだねぇ。 いやぁ、かわいそかわいそ、なのですよ~。にぱー☆」 馬鹿にされている。 頭を撫でられてる。 短い手を一生懸命伸ばしている。 優しいタッチだなぁ、おい。 「あんたねぇ……!」 「ん~? 何かなぁ? ついつい深読みしちゃう思春期真っ只中のかがみん?」 「……こんの……」 「18歳にもなって思春期真っ只中のかがみん萌え」 「……こんの……こんの……バカあぁぁぁー!」 ----今日分かったこと。 私が10年以上振り回されてきたこの力は、実は、そんなに すごい力ではないんじゃないか、という事。 そして、泉こなたはヲタクであると同時に"バカ!"であるという事。 そして最後に、知識と羞恥は、本当に比例するのだという事---- 夜が近づいて、こなたが帰ると部屋には私とつかさ、 そして菊と百合がそれぞれ2枚ずつ、 プリントされた4枚のパンツだけが取り残された。 「楽しかったね、お姉ちゃん」 「ん……まぁ、そうね」 楽しかった。とは死んでも言ってやらないけれど。 「こなちゃんは本当にすごい子だね」 「ちょっと、うるさいけどねー」 そうだね。なんて絶対に言わないけれど。 「まぁでも、あんた達が居れば絶対に退屈はしないわね」 これが精一杯。 「ふふっ、お姉ちゃんらしいね」 「……どー言う意味よ」 「んーそのままだよ? 深読みしないで良いよ、お姉ちゃん?」 「あっ、あんたまで……!」 18歳。 知識と羞恥を積み重ねて、ちょっと背伸びして、 ようやく今を、よちよち歩き出来るくらい。 素直になれないから、ずっと追いかけてあげる。 あなたが私を愛してくれる限り。 「待ちなさい! つかさぁ!」 大人。 それはきっと、この菊と百合のパンツを----何もかも知った上で 「可愛い」 と、言えるような人なのかもしれないわね。つかさ……。 「ねぇ、お母さん。見て見てー。今日こなちゃんがくれたんだよー」 「あら白いパンツ……でもなんでま……きゃっ! そんな……菊なんて…… お尻に菊なんて……二人はまだ見ちゃいけません!」 ----今日、分かったこと。 「ねぇ、お姉ちゃん」 「ん? どうしたの?」 「大人になるのって、難しいんだね……」 「……永遠の17歳、だもんね……」 うちのお母さんは、花も恥じらう変態だったって事。 おいおい……。 コメントフォーム 名前 コメント あれはみやむーが歌ってたのか……… -- 名無しさん (2009-08-27 13 54 47) おいおいw -- 名無しさん (2008-12-25 01 29 54)
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目次 【時事】ニュースあなたの知らない世界 RSSあなたの知らない世界 口コミあなたの知らない世界 【参考】ブックマーク 関連項目 タグ 最終更新日時 【時事】 ニュース あなたの知らない世界 gnewプラグインエラー「あなたの知らない世界」は見つからないか、接続エラーです。 RSS あなたの知らない世界 gnewプラグインエラー「あなたの知らない世界」は見つからないか、接続エラーです。 口コミ あなたの知らない世界 #bf 【参考】 ブックマーク サイト名 関連度 備考 Wikipedia ★★ allcinema ★★ 新 関連項目 項目名 関連度 備考 参考/ニコニコ動画 ★★★ ホラー百物語 新 タグ 作品 最終更新日時 2013-09-07 冒頭へ
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モハ辞典へようこそ ネットゲーム、「モンスターハンター」のwikiです。 独自のMH的表現をローカルな視点で眺めたり 書き記す場所にしたいと考えています。 みんな、オラに少しずつモハ愛を分けてくれ!(意味不明) ▼ 執筆者募集中(定期的にピックアップします) 山菜爺 調合リスト 武器 あなただけが知っているモンスターハンターの雑学などを モハ豆知識へコッソリ書いてください。 皆さんが普段使っている、「MH的方言」はありますか? 興味がありましたらモハ語録に書いてみてください! こだわりのモンスター・武器はありますか? 鋭意、執筆者大募集。(ページ一番下の「編集」から書けます) モンスターハンターシリーズ全般を扱いますので シリーズごとに微妙に異なる数字関係はあまり扱わない方針です。 読んで楽しい、参加して楽しいwikiに出来たらいいなーと思います。 【お願い】 どなたでもご自由に編集して頂けますが、管理者及び サポートメンバーで誰にでも読みやすく文章を 編集させていただく可能性があります。 問題有りと判断した部分は予告無く削除しますのでご了承下さい。 ■質問や連絡事項等あったららくがきノートに書いてください。 一行コメントがつけれますので、 wiki編集に自信のない方は練習・メモ帳にてお試しがてらどうぞ。 モンスターハンターブログ #bf まずはこちらをご覧ください。 @wikiの基本操作 用途別のオススメ機能紹介 @wikiの設定/管理 おすすめ機能 気になるニュースをチェック 関連するブログ一覧を表示 その他にもいろいろな機能満載!! @wikiプラグイン @wiki便利ツール @wiki構文 バグ・不具合を見つけたら? お手数ですが、こちらからご連絡宜しくお願いいたします。 ⇒http //atwiki.jp/guide/contact.html 分からないことは? @wiki ご利用ガイド よくある質問 @wikiへお問い合わせ 等をご活用ください
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ここは校長室。普段ローゼンが仕事をする場である。 ロ「ふむふむ。やっぱ今の女子生徒は育ち盛りだねぇ~。……むむ!!とうっ」 何かを察したのか、すぐ近くの窓から飛び降りるローゼン。 その2秒後 ガチャ ラ「失礼します。校長この書類を…。ちっ、逃げられたか…。相変わらず勘がいいですね…。」 そう言って、大量の書類を机に置く。 ラ「どうやら窓から逃げたらしいですね。今追いかけても無駄か…。」 窓を閉めて、振り返ると ラ「…おや?パソコンが起動したままですね。 …なになに、二年三組Aさん。生年月日8月3日.血液型A.バスト75…って何ですか!?これは!?」 そうしてパソコンのページを下に移動していく、 ラ「これはクラスごとに分けられた個人データのようですね。 全くこんなデータを作る暇があったら書類を片付けてほしいものですね。」 そう言いながらページを一番上に移動していくと… ラ「なになに…。検索したい人物の名前を入力してください?」 とっさに周りを見るが当然誰もいない。 ラ「いやいや、何で私が挙動不審な行動を…、いや、でも…ちょっとくらいなら…」 そしてキーを叩いて、文字を入力する。 ラ「まずは…『水銀燈』っと。最近行動が怪しいですからね。」 砂時計のアイコンが出た後、画面が切り替わる キーワード『水銀燈』の検索結果 最近の出来事 男からロレックスの時計を貰う。次の主張(アニメ)が決まりそう 最近買った物 ヤクルト100個 最近の悩み 肩こり 一日の最高ナンパ数 検索不可能 現在の行動 保健室で悪夢を見ている 今思ってること う~ん…いや…貧乳なんていやよぉ… ラ「一度にヤクルト100個買うってどんだけ乳酸菌マニアだよ!?しかも今サボってるし。 っていうかどんな夢見てるんだよ…。それにこんな情報一体どこから…」 そんな疑問を持ちながら、次の人物を検索する キーワード『真紅』の検索結果 最近の出来事 くんくん先生から食事に誘われる 最近買った物 翠星石から二倍の値段でくんくん限定グッズを買う(偽者) 最近の悩み やっぱり○乳なこと 一日の最高紅茶おかわり数 15回 現在の行動 保健室で水銀燈に復讐 今思っていること あなたは貧乳…あなたは貧乳…ふふふふふ ラ「きっと寝ている水銀燈先生の傍で貧乳と呟いているんでしょうね…。 全く真紅先生も『貧乳』なんかで悩まずに授業をちゃんと…ん?」 キーワード『真紅』の検索結果の更新 最近の出来事 くんくん先生から食事に誘われる 最近買った物 翠星石から二倍の値段でくんくん限定グッズを買う(偽者) 最近の悩み やっぱり○乳なこと 一日の紅茶おかわりの平均 17回 現在の行動 校長室に向かっている 今思っていること 教頭覚悟しろ…なのだわ。 ラ「!!!」 キーワード『ラプラス』の検索結果 最近の出来事 真紅に殺されかける 最近買った物 胃薬100個 最近の悩み 胃痛が… 一日の胃薬消費量 15 現在の行動 病院で入院中 今思っておること 早く平和な学園になってほしい… あなたなら何を検索する?
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曲Data Lv BPM TOTAL NOTES TOTAL値 判定 平均密度 最大瞬間密度 ★20 190-190 3434 650 easy 24.18Notes/s 38Notes/s 傾向 譜面URL http //www.ribbit.xyz/bms/score/view?md5=964f90e176afbe94daf736499f052e88&p=1 譜面URL(Mirror) https //bms-score-viewer.pages.dev/view?md5=964f90e176afbe94daf736499f052e88 コメント 圧倒的体力譜面 -- 名無しさん (2016-08-28 23 40 19) 同じような譜面が最後まで続きます。終盤に集中が切れてゲージがなくなるのでそこは考慮しましょう。 -- 名無しさん (2017-03-06 09 14 57) 多少こぼしてでも、とにかく脱力する。本腰入れるのはサビ終わってからでいい。 -- 名無しさん (2018-07-05 10 56 56) 前半は適当に流さないと体力切れやすいので注意 -- 名無しさん (2019-11-16 13 53 04) 名前 コメント