約 3,070,264 件
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/62.html
「ヤマトんちはお通夜もダメだって。俺らと遊んでなかったら死ななかったって言われた。」 真也が寂しそーに言った。 「一平の方は明日、斎場に1時だ。単車は乗ってくんな。家族に迷惑かけんな。タバコも吸うな。」格さんがみんなに伝えた。 「あと、学校行ってる奴らは制服な。行ってない奴は礼服用意してこい。目立とうとすんな。んじゃー解散。」 そー言って俺達は解散した。 朝、真也が迎えにきた。 「学校の奴らも結構来るんじゃねーかな。タクシー使おうぜ。」 真也はタクシーを止めに国道に向かう。あの日から一平の単車はウチに置いてある。一平の親に言ったら、いらないって言われた。親からしたら大切な息子を殺した単車だ。見たくはないはずだ。 斎場ではみんな制服か礼服だった。学校の友達も来てた。もちろん香織も。香織は泣いてた。ジローや幸雄も友達の死を悲しんだ。 一平の母ちゃんは憔悴しきってた。父ちゃんは気丈にふるまってる。 一平の両親が俺達に気づいた。二人とも頭を下げる。 頭なんて下げないでください。ヤマトのとこみたいに罵られた方がよっぽど心が楽だ。 この日一平は煙になった。 「いまから格さんちに集合だって。格さんの奢りで飲みだって。」 格さんちはレストランだ。今日は俺達のために貸し切ってくれる。 「ちょっといい?」 一平の母ちゃんに声をかけられた。 「はい。」 俺はそれしか言えない。 「あの子が事故に合う直前まで一緒にいてくれたんでしょう。最後までありがとう。最後はどうだった?」 俺が言葉に詰まると信義が言った。 「あいつ、挨拶してきましたよ。大きく手を挙げて、「じゃーな。」って。」 「あの子、みんなには挨拶してったんだ。ずるいなぁ。私のとこには来なかった。」 一平の母ちゃんは泣きながら微笑んだ。 隣にいた香織は泣いてる。 俺も涙が出そうだったけど我慢した。 「もうこんな事はやめなさい。私はこんな事になってあなた達のお母さんが悲しむ姿はみたくないもの。」 一平の母ちゃんはそう言うと戻っていった。 香織はきっと今日の一平と俺を重ねて泣いてる。そー考えるとまた胸が痛くなった。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/46.html
一瞬何が起こってるか分からなくなった。頭の中は真っ白。ただわかってる事は、自分が限りなくヤバくて、香織との約束を果たせそうにないって事だけだった。パトカーが停まる。 5台も来やがった。 俺はどーにか逃げられないか考えた。単車捨てて走って逃げてもどうせ捕まる。それなら… 押しがけするしかない。(押しがけって言うのは、セルやキックでかからない単車をギアを入れた状態でクラッチを握り、ひたすら押して行き、スピードが乗ったらクラッチを離して無理矢理エンジンをかけるって言う荒技。よいこのみんなはマネするなよ!) 奴らがパトカーから降りてきたら終りだ。 俺は全力で単車を押した。 警察は慌てて降りてきたけど、こっちは命がけ。キャブの機嫌が直ってれば、エンジンはかかるはず。 警察が俺の腕を掴んだ瞬間、エンジンがかかった。 でも、奴らは執念深い。俺の腕を掴んだままはなさない。俺はそのまま警察を引きずり20メートル位走った。 最後は信号に叩き付けて無理矢理離して逃げた。俺は助かった。 しかし、一難去ってまた一難。前の方が止まってる。奴らはどーやら交差点で大掛りな検問をしてやがった。 残されたのはウチのチームの連中だけだ。後からもパトカーが迫ってくる。 俺と信義は格さんに言った。 「俺達が道を開くからそこから逃げろ。」 「俺がパトカーの隙間に突っ込むから後に続け。止まったら終りだ。」 信義と真也が歩道を走って警察を誘導する。俺は全開で検問に突っ込んで行く。六尺棒(警察が使う長めの武器)が頭の上をブンブン通り過ぎる。前に立ちはだかる警察官を俺は撥ねた。 道は開いた。 俺はこけた。 でもすぐに立て直してそのまま抜けた。 ウチのチームは全員逃げられた。 一平は行方不明だった。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/94.html
智光先輩んちに着くとまだ時間は7時半。格さんは智光先輩を起こしに行った。 「なあ、なんかヤバくねーか?俺、ちょっと心配になってきたんだけど。」 真也が急に言い出した。 「大丈夫って思うしかねーな。今日1日我慢すれば明日からは無関係だろ。それにもー金使っちゃって持ってねーだろ?」 俺が聞くと真也はうなずいた。 「だったらしょーがねーよ。ここまで来たら覚悟決めるしかない。」 内心、心配なのは俺も一緒だ。これが縁でヤクザになんか入れられちまったら目も当てられない。いま智光先輩の組が人手不足なのは格さんから聞いてて知ってる。 「…おう。今日は早くからわりぃな。」 智光先輩が出てきた。左手は包帯が巻かれてる。 「おはようございます。今日はよろしくお願いします。」 俺と真也の目は左手に釘付けだ。 「…寝起きだからちょっと待ってろ。そー言えばお前ら「女優霊」ってビデオ見た事あるか?いまかけといてやるから観てろよ。」 格さんがギクッとした顔になる。 「兄貴、時間ないですから。今日は止めときましょうよ。また後でにしましょう。」 「…何、俺に意見してんだテメー。お前らは見たいよな?」 格さんが後ろで首を振ってるけど、智光先輩には逆らえない。 「…見たいです。」 「そーだろ。じゃーちょっとこれ見て待ってろ。格田、ビデオ入れてコイツらに見せとけ!」 智光先輩が部屋を出ていく。 「…なんで断らなかったんだよ。」 格さんがうらめしそーに言った。 「…わりぃけどあの空気じゃ無理だわ。智光先輩どーしても見せたかったんだろ?ちょっと付き合えばいいだけだから大丈夫だろ?」 「…俺、これ見るの3度目。早送り一切なしの2時間ノンストップだ。しかも今日は事務所に8時半集合。見終わるまで動かしてもらえねー。」 「…参考までに聞くけど、遅刻したらどーなるの?」 「考えたくねーけど死ぬほど怒られるんじゃね。兄貴はともかく、下っ端の俺は10分前には事務所にいなきゃ怒られる。ヤバい。」 大変な事になった。智光先輩のわがままで俺達全員がヤクザに怒られる。そんな迷惑な話、聞くわけにはいかない。 「…なんとかしようぜ。初対面のヤクザに怒鳴られるとかそんなの想像したくねー。」 智光先輩が戻ってきた。 「お前らちゃんと見とけよ。おっかねーから。」 俺達にとってはビデオの内容より遅刻する方がおっかねー。 「先輩、今日は何時に集合なんですか?」 真也が言った。やればできる子だって俺は信じてた。 「8時半だから心配すんな。見終わってからでも間に合うから。」 ダメだ。何言っても通じない。俺達はあきらめた。でも格さんがしつこく言ったのと、信号を命がけで止まらずに進む智光先輩の運転のおかげでなんとか時間には間に合った。事務所に着くといかにもな人達が全員ジャージ姿で集合してる。えらいっぽい人が話はじめた。 「今日は休みのとこ申し訳ない。途中何人か手伝いに来るけど、基本的には今いる人数でやることになると思う。各自怪我しない様にやってくれ。」 ヤクザは真面目な奴が多い。そこら辺のリーマンなんかより真面目に働くし、真面目に悪い事をする。根が真面目な奴じゃないと務まらねー。 「お前ら事務所の中はヤバい物でいっぱいだからしっかり守れよ。」 智光先輩が言う。俺は聞いてみた。 「…先輩、ヤバい物ってなんですか?あと守るって何やればいいんですか?」 「…そーだな。チャカとかかな。」 「!?」 「嘘だよ。あと守れってのは敵が来たら体張って戦えって事だ。そんな事より無駄口たたいてねーでさっさと働け。」 冗談なのかどーかわからない。さっさと終わりにして帰りたい。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/100.html
最初は何言ってるのかわからなかった。ただ、次の日の新聞には載ってたから間違いないらしい。竜が殺したのは1コ上の先輩。喧嘩して殴り殺しちまったらしい。一応チームのメンバーじゃねーけど地元は一緒だから全員知ってる。次の日、俺達は集まった。 「…なんでこんな事しちまったんだろーな、アイツ。」 真也が言った。俺も信じられない。 「アイツ、こんな事する奴じゃなかった。誰か最近の竜に会った奴とかいねーの?」 誰もわからない。みんな最近はほとんど付き合いがなかった。ただ俺だけは拓ちゃんと連絡が取れる。拓ちゃんちに電話してみた。 拓ちゃんは家にいた。いまから来てくれる事になった。 「竜は“天地”って連中のとこに出入りしてたんだ。」 天地。聞いた事ない。 「それって族なの?」 「…難しいけど族じゃない。SRとかスティードとかアメリカンな感じ単車乗ってる連中。チーマーと族の真ん中みたいな奴らかな。よく駅前とかにたまってんじゃん。アイツらだよ。」 ちょっとわかった。変なコール切って走ってる奴らだ。 「竜はそこの先輩にかわいがられてたんだよ。たしか神田って名前の先輩だな。殺しちまった奴はその神田の友達みたいだ。神田と金の事かなんかで揉めてて、竜が取り立て頼まれたって言ってた。殴ったとこが悪かったのかもな。」 拓ちゃんは淡々としゃべった。 「その神田って奴は捕まらなかったの?なんか納得いかねーな。」 「竜の性格考えればきっと口は割らないよ。あとは神田が黙ってればわかんねーからな。捕まらないんじゃん。」 「…おまわりが捕まえねーならどーしようもねーよ。」 信義はそー言ってたけど俺は納得いかなかった。 次の日、駅で俺はそいつらを襲った。生まれてはじめて自分から喧嘩を売った。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/99.html
引越しは問題なく終わった。途中ちょっとおまわりが見にきたぐらいでこれと言って何もなかった。やっと終わった。時間は4時。帰れる。 「お前ら表の車洗っとけ。それが終わったら兄貴が飯連れてってくれっから。」 智光先輩が言った。まだ帰れねーのかよ。俺と真也は渋々表のベンツの洗車をはじめた。 「クソ、いい車乗りやがって。悪い事やって稼いでんだろーな。」 車を洗いながらつぶやく。 「でもあのぐらいの歳でベンツ乗れるんだからけっこうヤクザって儲かるんだな。俺も格さんみてーにヤクザんなろーかな。」 真也が羨ましそーに言った。たしかに智光先輩の兄貴はまだ30ちょっと過ぎたぐらいだ。 「バカじゃねーの。よっぽど才能ないとこんな生活出来ねーよ。それに危ない橋渡ってんだから常に危険にさらされてんだぜ。そんな思いまでしていい車なんか乗りたくねー。いくら俺達が族だからって族の上にこれしかねー訳じゃねーだろ?俺はもっと真っ当な事していい生活してーよ。」 「たしかにな。我慢も嫌いだし、痛いのも嫌だし。俺達には向かねーな。」 俺達は笑いながらそんな話してた。すると上から声が聞こえてきた。 「洗車終わったかー?そろそろ行くぞ!」 智光先輩の声だ。俺達は洗車を終わりにして飯食いに行った。 「今日はご苦労だったな。なんでも好きな物食え。」 智光先輩の兄貴が焼肉屋に連れてきてくれた。でも好きな物食う様な雰囲気じゃない。俺と真也は安い肉とご飯だけを頼んだ。 「なんだ、そんだけか?遠慮しねーでもっと食え。格田、コイツらの分も頼んでやれ!」 やたら気前がいい。気持ち悪いぐらいに。絶対裏があるに決まってる。 「ところで兄ちゃん達は格田と同じ歳なんだよな?学校はおもしれーか?」 きた。当たり障りないように答える。そっからは大変だった。なんとか断る事ができたけど、最後にいつでもこいって名刺もらった。ヤクザも人手不足なんだ。じゃなきゃこんなガキ勧誘しない。ヤクザなんか一見けっこう自由気ままな様に見えるけど実際は大変だ。どんな道も楽じゃねーって思った。礼金もらったけど二人で飲んで使っちまった。やっぱり俺はヤクザなんかよりコイツらとバカやってる方が楽しい。 帰り道、信義から電話が入った。竜が人を殺して逮捕された。って。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/63.html
「…まだ続けるの?」 香織は俺に言った。 「一平君みたいにいつか死んじゃうかもしれないんだよ?」 「…そーだな。でも俺は…」 「かっこつけんなよな!!残された方の気持ち考えてよ!死んじゃう方はそれで終わりになるかもしれないけど、残された方はそのまま生きてかななきゃならないんだからね!!」 返す言葉が見つからない。 「さっきの一平君のお母さん見たよね?あんなに悲し思いさせるんだよ?自分のお母さんがあんなになった時の事考えてた事ある?お腹痛めて産んだ子があんな事で死んじゃうんだよ?…もうやめてよ。」 そー言うと香織はまた泣き出した。 いつもだったら、「俺は死なない。」とか言ってごまかすけど今日は無理だ。 「…俺はみんなを裏切れない。一平の事もヤマトの事も。」 香織に殴られた。今日はビンタだ。 「それなら勝手に走って勝手に死ね!!」 そー言って香織は帰っていった。 俺は格さんちに向かう。 「何、辛気臭い顔してんだ。今日は俺の奢りだから奴らの分まで飲んで弔ってやれ。」 格さんはやっぱり俺達の頭だ。 真也が言った。 「追悼とかってやるんだろ。どーすんだ。」 「49日は外そうぜ。その間は走るのもなしだな。」 格さんがそー言った。 「じゃーさ。49日明けたら奴らがびっくりする様なでかい追悼してやろーぜ。俺、一平の単車直して出るよ。あいつらが道に迷わないよーに送ってやろーぜ。」 さっき香織に言われた事ももちろん忘れてない。けど、俺達はやっぱり暴走族でこのやり方以外知らない。 「そーだな。ちゃんと送ってやらないとな。喪が明けたら盛大に弔ってやろーぜ。」 そう言って俺達は飲んだ。俺はあいつらを裏切らない。いまはそれしか考えられなかった。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/32.html
奴らはどーやって調べたのかわからないが、ウチの学校に20台ぐらいで来て暴れまわった。飯田先輩がキレて出て行ったらしいが、数には勝てずに血祭りにあげられ、マッキーが拐われた。一平は職員トイレにたてこもり、難を逃れたらしい。香織んちにいた俺は、格さんからベルが入り、電話して全てを知った。 俺達は戦争の準備をし、東龍会の地元に突っ込むことにした。今度ばかりはちょっと死ぬかもしれないと思ってたが、これも道だ。俺達は止まらないし曲がらない。 俺と信義は、二人だけでマッキーを助けに東龍会の地元に突っ込んだ。 ジローから聞いた話では東龍会の連中は、ボーリング場を集合場所にしてて、そこに行けば必ず誰かしらいるって言うなんとも頼りない情報だけだった。俺と信義はそれだけを頼りに、ボーリング場を目指した。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/59.html
タクシーの中は無言だ。真也も信義もさっきのヤマトの姿を見ちゃってる。手の平が嫌な汗で濡れてる。 無言のまま病院に着いた。外には救急車が停まってる。ヤマトの家族はまだ来てない。俺は受付で、 「さっき友達が運ばれたはずなんですけど。」 そー伝えると看護婦さんは無言だった。 「てめぇなにやってんだよ!!」 外で信義の怒鳴り声が聞こえる。 ヤマトは袋に入れられてた。 「あきらめてんじゃねぇよ!!早く袋から出せ!!死んじまうじゃねーかよ!!」 信義の声が虚しく響く。 「やめなさい、もう亡くなってるんだ。」 救急隊員に言われてはじめて俺達はヤマトが死んだって認められた。 信義が救急隊員から手を離す。 俺達は真っ白になった。 「…一平の方に行こうぜ。アイツは大丈夫だよ。ここにいるのは辛い。」 真也が言った。 「あぁ、そうしようぜ。ここにいてもきっと迷惑かかるから。」 俺は同意した。一刻も早くここを離れたかった。ヤマトの家族が悲しむ姿はみたくない。 俺達は待たせてあったタクシーに乗った。 「…東病院まで。」 俺達はどこか「死」ってものに対する考えが甘かったんだと思う。つきつけられた現実を認めたくはない。 「…一平は大丈夫だ。ちょっと唸ってたし。」 説得力は全然ないけどいまはそれしか言えない。 病院に着くと救急車はもーいなかった。 また同じ様に受付に行く。 「さっき友達が運ばれてきたんだけど。」 看護婦さん言いにくそうに言った。 「…霊安室に安置されてます。いまは御家族の方がいますので、前のソファーでお待ちください。」 何を言ってるのかわからなかった。 「ふざけんなよ、嘘言ってんじゃねーよ。さっき唸ってたんだぜ、死ぬ訳ねーだろ!!認めねーぞ。俺は絶対認めねぇ。」 後から肩を叩かれた。格さんだ。 格さんはソファーに座ってうつ向いてた。 「あいつ、血なんて出てないし、怪我だって全然してないんだぜ。なのになんで…」 格さんは言葉を詰まらせた。俺が霊安室に行こうとすると、 「…やめとけ。いまは家族が入ってるから。そっとしといてやれよ。」 格さんは消え入りそうな声で言った。 現実が襲ってくる。2人は死んだんだ。 霊安室から一平の親父が出てきた。 「一平と友達でいてくれてありがとうな。こんなに大事にされて、アイツは本当に幸せだったと思う。」 泣きながら俺達に言う言葉が胸に刺さった。 俺は涙が出なかった。またひょっこり霊安室から歩いて出てくるんじゃないか。そんな気がしてた。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/113.html
学校は首にこそならなかったけど無期停だ。毎日暇すぎる。夜はみんな集まって走るからいいけど昼間なんて本当にやる事がない。最初は結構真也も遊んでくれたけど俺につきあってたら出席日数が足りなくなるって事でちゃんと学校行きだした。遊ぶ相手が欲しい。そんな時、格さんから電話が来た。 「真也に聞いたぞ。暇で面白そうな事探してるんだって?暇ならウチ来いよ。ちょっと頼みたい事あるんだ。」 退屈が大嫌いな俺は二つ返事だ。アイツもヤクザだから正直めんどくせーけど、暇よりは何倍もいい。 格さんちに着くと表に見慣れない4駆が止まってる。誰かいるのか? 「お邪魔します。」 そー言って2階にあがると格さんの部屋に巨漢が一人いた。この人は加藤君って人で智光先輩とか仁さんのタメの先輩だ。でも他の先輩達とは違い偉ぶらなくて俺達みたいな奴らにも良くしてくれる大好きな先輩の一人。 「加藤君こんちわっス。今日はどーしたんスか?こんなむさ苦しいとこまで来て。」 加藤君は笑いながら、 「オウ、元気にしてっか?今日はお前らに頼みてー事があってよ。むさ苦しいとこまで来ちゃったよ。」 って言った。 「なんスか?ヤバい事なら引き受けないっスよwwww」 笑いながら俺も返した。でもちょっとだけ格さんの顔がひきつった。ヤバい、地雷踏んだかも。 「実はよ。お前らウチの実家がヤクザやってんの知ってるよな?」 加藤君の実家はヤクザだ。ただどちらかと言うと、智光先輩んとこみたいに武闘派な方ではなくて、テキ屋とか(縁日の屋台)メインの地域密着型の組だ。俺も夏場は加藤君ちのテキ屋でバイトしてた。 「知ってますよ。それがどーかしたんスか?」 ちょっと言いにくそうに切り出した。 「…実はよ。ウチの実家の奴の嫁さんが組の金持って逃げたんだ。子供と一緒に。そんでその子供ってのがお前らの1コ下でさ。川城の特進クラスに行く様な出来のいい奴なんだけどさ。ソイツのいま住んで家を見つけて欲しいんだ。」 …思ってた以上に厄介な仕事だ。めんどくせーから断りたかったけど俺が暇なのは格さんが言ってるはずだ。逃げ場はない。 「そしたらソイツの顔写真だけ下さい。あと、見つけたらどーします?俺は無理矢理とかは嫌ですからね。」 「心配すんな、ウチの人間一人付けるから。見つけた後はソイツに任せろ。」 …ヤクザじゃーねーか!俺は四六時中ソイツと一緒にいなきゃならねーのかよ。気が重い。 「あと一つ頼みたい事があんだよ。聞いてくれるか?」 まだあんのかよ。一つで十分じゃねーか。 「なんですか?掛け持ちで出来そうならやりますけど。」 「俺の女ってわかる?アイツクラブとかで唄ってるじゃん。最近、変なメールが届くらしいんだ。ストーカーちっくなやつ。」 加藤君の女は俺達のタメだ。クラブで唄うシンガーみたいな事をしてるのは聞いた時がある。 「ストーカーっスか?そりゃーおまわりの仕事じゃないっスかね?」 これ以上面倒事は持ち込みたくない。なるべく断る方向に持って行こーとした。「たしかにそーなんだけどな。いつもならシカトなんだけど、今回は犯行予告みたいなヤツが届いてよ。今週の土曜日カルマで死ぬより後悔させてやるってメールだったんだ。俺ももちろん行くんだけどなんか心配だからつきあってくんねーかな?」 カルマは駅南にあるクラブだ。加藤君の女はいつもそこで唄ってた。なんかめんどくせー事になってきた。断りたいけどここまで頼まれたら断れない。俺はしょうがなく受ける事にした。 「わかりました。なんとか時間作ります。そのかわり兵隊用意して下さい。あと電話。いつでも連絡とれなきゃまずいんでPHSじゃなくて携帯。」 まだいま程携帯が普及してない頃だ。ガキの俺達には贅沢品だった。 「わかった。ありがとな。」 加藤君はそー言って帰っていった。 この時はまだ自分が大変な事に巻き込まれてるって実感は全くなかった。
https://w.atwiki.jp/guide/pages/2214.html
いつもご利用ありがとうございます。 以下の時間帯で緊急にメンテナンスを行っております。 対象 www49.atwiki.jp , www50.atwiki.jp 時間 2011年10月13日 午後00時00分頃~ 午後01時00分頃 この度は、大変ご迷惑をおかけし申し訳ございません。 その他お気づきの点などございましたらお気軽にお問い合わせください。 これからも宜しくお願い致します。