約 3,502,884 件
https://w.atwiki.jp/kswc_kesc/pages/367.html
2021年秋の観測会 2021年秋、いつのまにか時旅くんとKちゃんが野辺山に行っていました。 バイク&自転車での移動、お疲れ様でした(笑)
https://w.atwiki.jp/reshia/pages/12.html
HTMLの基本 基本はタグ。文章に記をつけていくところから。 はじめの一歩 文章に「しるし」をつけていくことからはじめる。 次のような文章があった場合 私のブログは、2005年1月から始まりました。 もし「私のブログ」の部分をクリックしたときに 自分のブログに飛べるようにするには 次のように文章に「しるし」をつける。 a href="http //whoinside.blog3.fc2.com/" 私のブログ /a は、2005年1月から始まりました。 この文章をウェブブラウザで見ると、次のようになる。 私のブログは、2005年1月から始まりました。 さらに「2005年1月」の部分に色を赤色にしたい場合は、つぎのようにする。 a href="http //whoinside.blog3.fc2.com/" 私のブログ /a は、 span style="color red" 2005年1月 /span から始まりました。 タグ このように文章につける「しるし」のことを「タグ」と呼ぶ。 タグは、次のような名称を持っている。 基本は 要素名 要素の内容 /要素名 である。 要素名には、そのタグの種類を書く。 たとえば、リンクを貼りたいなら「a」、画像を貼り付けたいなら「img」 文字を装飾したいときなどは「span」となる。 また、「a」などのように、タグの種類を「要素名」として書くだけでは 機能として不十分なものがある(「a」はリンク先を示す必要がある)。 そんなときは、次のように「属性」を指定する。 要素名 属性名="属性値" 要素の内容 /要素名 また、属性に関しては「属性値」だけを持つものもある。 要素名 属性値 要素の内容 /要素名
https://w.atwiki.jp/makochang/pages/17.html
HTML HyperText Markup Language(ハイパーテキスト・マークアップ・ランゲージ)
https://w.atwiki.jp/wiki4_mikan/pages/4.html
https://w.atwiki.jp/schwarze-katze/pages/492.html
ザワザワ・・・・ ザワザワ・・・・ 「汝 神の僕 スロゥチャイム家の僕 ヒトの子 ヨシヒト」 およそ10年の歳月を費やして改築された巨大な礼拝堂は、紅朱館と対を成すスキャッパーのシンボル。 ヒトの世界からやって来た設計技師が綿密な計算を繰り返し設計した聖導教会の礼拝堂。 3000人を軽く収容できる広大なホールは中央に柱を一本も使わない画期的な設計だ。 「汝はその生涯において傍らの女を妻とし 健やかなる刻も 病める刻も 試練の刻も」 巨大な屋根の重量が応力となって直接負担になる部分をドームにした見事な設計と施工。 ヒトの世界の高度な建築技術が惜しみなくつぎ込まれたこの施設は、ヒトがただの性的玩具ではない事の証明でもあった。 「その身朽ち果てる日まで変わらぬ愛を誓い 対価を求めぬ無償の奉仕を施し」 中央の通路にはこの地域の女達が何年も掛けて紡いだ部厚いビロードの絨毯が敷かれている。 真っ赤なその通路には華奢な肩の露になった純白のウェディングドレスに身を包むヒトの女と漆黒のタキシードをまとうヒトの男。 そして、その後ろの立つイヌの男女。 深い蒼のサテンシルクに見事な刺繍の入った豪華なドレスに包まれるイヌの女。 大きな勲章を幾つも胸に飾り、大剣を携えるイヌの男。 共に優しい笑みを浮かべ、事の成り行きを見守っている。 「主の命の有るや無しやを問わず その命に代えて決意を貫く覚悟を神に誓うか」 小さな手帖に書かれた台詞を読む聖導神父は、そこまで読むと顔を上げてヒトの男を見た。 「はい 誓います」 満足そうに頷く神父は再び手帖に目を落とす。 細かい字でびっしりと書かれた台詞の列。 ゆっくりと目を走らせる神父は優しく笑っている。 「汝 神の僕 スロゥチャイム家の僕 ヒトの子 リサ」 長いレースのついたヘッドオーナメント越しに見えるリサの笑顔。 横目に眺めるヨシはその姿に見とれている。 「汝はその生涯において傍らの男を夫とし 健やかなる刻も 病める刻も 試練の刻も」 一言一言。確かめるように僅かに頷くリサ。 その言葉が身体へとしみ込んで行く様な不思議な感覚。 「その身の土へと還らん日が来る刻まで 不義不貞の罪を犯さず 永久なる無償の愛を誓い」 そっと顔を上げヨシを見るリサ。 ―― そんなことするわけ無いよ・・・・ っとでも言いたげな眼差しに笑みが添えられている。 「主の命の有るや無しやを問わず その命に代えて決意を貫く覚悟を神に誓うか」 僅かな沈黙。 「はい 誓い・・・・ます」 そっと目を閉じて自らに言い聞かせるように。 ・・・・誓います。 もう一度静かに呟く。 神父は両手を高く挙げ、大聖堂のホールへと押しかけたロッソムの民衆へと声を挙げる。 「子等よ 神の子等よ 汝らの前に立つ男と女は生涯の愛を神に誓った」 ホールを押し包んでいた押し殺すようなざわめきがフッと消える。 静まり返って風の音が聞こえる大ホール。 ただそこに集まる民衆の声なき声で押し包まれるような圧迫感。 大ホールからの視線を背に受けて、ヨシとリサは立っていた。 「この婚礼に賛同するものは祝福の声を挙げよ 異議を唱えるものは沈黙の抗・・・・・ 」 神父の声が終わらぬうちに、大ホールから溢れかえるほどの拍手が轟く。 全ての音を押しつぶして埋め尽くすかのような、圧倒的大音声の祝福の声。 無意識に顔を見合わせたヨシとリサの表情がフッと緩む。 再び両手を高く上げた神父はホールに漂っていた静寂の波を呼び戻した。 静まるまで僅かな時間を要したが、この幸せな場ならば、それは必要経費と言うところだろうか。 「汝 神の僕 スロゥチャイム家49代当主 アリス・ホゥデル・スロゥチャイム」 シルクのドレスを僅かに払い、アリス夫人は神への敬意を示す。 「汝が僕らは今日を持って夫婦となった そなたはこの僕たちの婚礼を承認するか」 神聖な儀式の場と言うべきホールの中央。 アリス夫人の浮かべる笑みの意味は皆が良く分かっている。 「えぇ 承認します」 ヒトと比べイヌの生涯は長い。 この場で愛を誓ったヒトの夫婦の子供達が、きっといつかこの場で結婚するだろう。 その子供の、そのまた子供の、そしてまたその子供の。 幾つもの世代を超えて脈々と受け継がれていく物を、このホールに詰め掛けたイヌ達は見るだろう。 その日を楽しみにする者たちのために。 この地域を統べるイヌの領主は将来を誓った。 「この礼拝堂の中に集う者たちは皆 そなた達新たな夫婦の婚礼を見届けた証人となった」 ヨシはリサの手を取り、リサを軸にしてクルリと後ろへ向き直った。 優雅なデザインのウェディングドレス姿にイヌの女達からも、そして男達からも溜息が漏れる。 そんな声を気に止めるでも無く、2人は深々と一礼した。 再び沸き起こる拍手。2人はもう一度一礼する。 「ヨシヒト そなたが父より受け継ぎし 夫婦の証をそなたの・・・・ 妻へ」 一度言葉を切って、わざわざ妻と念を押した神父。 その手に乗せられているリングを受け取ったヨシは、リサの手を取ってレースの付いた上品な手袋を取った。 まるで芝居のワンシーンでも見るようなウットリとした眼差しでリサはそれを見ている。 自分の指へと納まるリングが、まるでどこかの女優の演じるシーンの様に。 そっとリサの手からヨシの手が離れた。 リサはまだ自分の指が自分のものである実感を得られずにいる。 「リサ」 優しく呼びかけた神父の声に、リサは自分を取り戻したようだ。 「そなたの夫の父母がそなたへと託した夫婦の証を そなたの夫へ」 僅かに頷いたリサは神父からリングを受け取る。 磨き上げられたリングの表面に自分の顔とヨシの顔が映った。 笑みを浮かべるヨシを一度見たリサは恥ずかしそうにヨシの手から手袋を取ると、その指へリングを押し込む。 2人の指へと収まる対のリング。 手を並べその輝きを確かめ合う2人の肩に神父は手を乗せた。 「そなた達は今日この日より神の愛と正義と威徳をもって夫婦となった」 ヨシとリサが同じタイミングで頷く。 その息の合った動きに目を細める神父は、なぜか急に好々爺の笑みを浮かべた。 何かたくらんでるぞ・・・・ そう思わせる笑みだ。 「ヒトの世界では重要な儀式だそうだ ヨシヒト そなたの父がそう言っていたぞ」 「え?」 「新たな夫婦よ 永久の愛を誓うならば その証を立てよ」 「はい?」 急に話しを振られうろたえる二人。 会場のアチコチから小さな笑い声がこぼれる。 「誓いの口付けを」 え゙ぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!! 流石に面食らったヨシ。 でも、リサは笑っていた。 まさか衆人環視の場でキスさせられるとは・・・・・ 「リサ いい?」 「うん もちろん」 「知ってたの?」 「知らなかったの?」 「うん」 どぎまぎとうろたえるヨシを他所に、リサは涼しい顔だ。 「あなたの手でケープを取って」 「取るって」 「開けてくれればいいよ」 「・・・・オヤジは教えてくれなかったよ」 「お父さまらしいじゃない」 ウフフ!と笑うリサ。 ヨシは観念したように長いケープへと手を伸ばした。 僅かに俯くリサ。 ヨシはまるでブラウスのボタンを外すような錯覚を感じながら花嫁のケープを捲り上げる。 その長いケープの向こう。 リサの目には涙があった。 「リサ、愛してる」 「わたしも」 静かに目を閉じたリサを抱き寄せてヨシはそっとキスした。 「よろしい! いまこ 神父の最初の一声だけしかヨシには聞こえなかった。 会場を埋め尽くした民衆からの、その割れんばかりの祝福と拍手の声が音が響きが、ホールの中で渦になっている。 やがてちょっと静かになった赤絨毯の上。 振り返ったヨシとリサはアリス夫人とポール公へ深々と一礼する。 「アリス様、御館様。今後ともよろしくお願いいたします」 うんうんと頷くアリス夫人だが、ポール公はちょっとウルウルしている。 我が子アーサーと共にマサミと育てたもう一人の息子のようなものだ。 目を細め笑いたいのだが、細めれば涙が溢れ出す。 無情な矛盾に苛まれつつ、ポール公は無理やり笑っている。 「ヨシ。予定より半年早いが・・・・ まぁ、仕方ないな」 「そうですね。あと半年たったらリサは歩くのも大変だと思います」 ウフ!と笑うリサの笑顔にみなも幸せな気分になった。 新しい命がこの世にやってくる。 皆で祝うべき慶事の為に、この式は春へと前倒しになっていた。 「さぁ、二人とも。広場へ行きなさい。大切な事よ」 「はい」 ヨシとリサは二人して頷く。 そのままリサの手を引いてヨシは広場へ掛けていった。 「あなたたちも行きなさい。でも、ジョアンは暴れちゃ駄目よ」 「はい、お母様」 既におなかの張り出し始めたジョアンの手を引いてアーサーが広場へと出て行った。 目を細め眺めるアリス夫人の背後、タダとミサのカップルが付き人として残っている。 そして、複雑な表情を浮かべるマリアはマヤと共にアリス夫人の傍らでその光景を眺めていた。 「みなさん!お陰さまで今日僕は妻を娶りました。でも、まだまだ学ぶ事は多いです。これからもよろしくお願いします。そして、妻を紹介します。名はリサです。あまり表を出歩きませんが、見かけたら御声掛けください。これからもよろしくお願いいたします」 笑みを浮かべ見詰め合う二人が手を繋いで民衆に深々と頭を下げた。 新たな婦長の御披露目を兼ねた挨拶。 春節祭の御祭り騒ぎが幸せな二人の披露宴になった。 「リサ、きっと幸せにするよ」 「大丈夫!だって今も幸せだから!」 「リサ、あっちを見て」 ヨシが指差す先。 紅朱館を見下ろす小高い丘の上にそびえる千年杉の巨木の下。 小さな墓石が二つ。広場を見下ろしている。 「父さん、母さん。ありがとう」 「お義父さま、お義母さま、よろしくお願いします」 二人揃ってもう一度頭を下げた先を民衆も見る。 うららかな春風が舞う日の午後。 この地に生涯をかけた夫婦の墓石が静かに見守っている。 聖導教会の楽隊が音楽を奏で始め、広場には十重二十重の輪が出来た。 聖騎士が剣を抜き、それにあわせ賑やかな音楽が始まる。 笑顔と歓声と楽しい音楽と。そして、幸せな女達の歌声。 「ここまで来たな。やっと」 「そうね」 「ひとつの区切りだな」 広場を見下ろす聖導協会のベランダへと歩み出たポール公とアリス夫人。 かつて、寂しく貧しく緩慢な滅びに瀕していたスキャッパーの街が、今は明るい光に溢れていた。 誰彼かまわず手を取って踊り始める輪の中心。 ヨシはリサと楽しいそうに踊っている。 その光景が遠い昔に見た、マサミとカナの姿に重なって見えた。 「マサミが見たらなんと言うかしらね」 柔らかな笑みを浮かべたままアリス夫人もその光景を眺めている。 笑顔と笑い声の溢れる広場の中心。 リサの笑顔に皆が幸せだった。 「・・・・あら?」 「どうした?」 「ほら、あそこ」 アリス夫人の指差す先。ポール公も目を凝らした先。 そこにはヨレヨレのトレンチコートに袖を通すマダラのイヌの男とヒトの娘が立っていた。 広場に広がる踊りの輪を見て笑みを浮かべるイヌの男。 「・・・・・・あぁ、もうそんな時期か」 「まさか、あの子が来るとはねぇ」 「随分立派になったな」 指差すアリス夫人に気が付いた男は帽子を取って挨拶した。 取り除かれた帽子の下からはピンと立つ耳が見える。 そして・・・ 「えぇ、隣に立っているのは・・・・アシスタントかしらね」 「どう見てもヒトの娘だ。嫁と言うことはあるまいな」 マダラのイヌに促されそのヒトの娘はスカートの裾を持って挨拶した。 機械的に正確なその動きはまるでからくり人形のようだ。 表情までもが機械的な・・・・ と言うよりまったく無表情といって良い状態。 まるで感情そのものが欠落でもしたかのような、そんな印象を受ける。 「マヤ。あそこのイヌを紅朱館の客間に入れなさい。春の巡回に来た議会の査察員よ。粗相の内容に気をつけなさい」 マヤを呼び寄せ指示を出すアリス夫人。 僅かに頷くマヤが駆けて行っくと、となりに居たマリアがそっと近づいた。 「お母様。あの査察員の方は旧知の方でしょうか?」 「・・・・まぁ、知らないって事は無いわね。古い話しよ。あなた達には関係の無い時代の話。気にしなくていいわ」 何となく引っかかる言い方に聞こえたマリアは若干怪訝な表情を浮かべもう一度査察員を見た。 ちょうどマヤが歩み寄ってあれこれ話しをしているところだ。 査察員の荷物を持とうとしたマヤを制止し、傍らに居た無表情のヒトの娘が荷物をまとめている。 「あの子・・・・ 人形 かしらね」 「 人形 か。或いはそうかもしれん。表情の類がまったく見えぬ」 「昨日から軍の調査官も来てると言うのにねぇ」 「タイミングの悪さは仕方が無い。主導権争いをここまで持ち込まれても困るんだがな。まったく、どいつもこいつも・・・・」 苦虫を噛み潰す表情のポール公は忌々しげに頭をかいた。 空気の読めない・・・・とかではなく単なる定期的な行動なのだが、それにしてもタイミングが悪すぎる。 「でも・・・・何年ぶりかしらね。こうやって同時に来てしまうのは」 「何事もなければ良いのだがな・・・・ なんせあいつは・・・・・」 「そうね」 しばらく黙って思案するアリス夫人とポール公。 眼下遠く話をしているマヤの声は聞こえない。 しかし、聞こえなくとも話の内容は分かると言うもの。 小さくため息を吐いたアリス夫人が唐突に振り返った。 「ミサ」 「はい」 「あのお客人が客間に入ったら食事の手配を。丁重にもてなしなさい」 「はい、かしこまりました」 エプロンを締めなおしたミサが客人の元へ走って行った。 心配そうにその姿を見ていたポール公がふと目を上げると、紅朱館の窓から下を覗く軍の調査官が見える。 一人・・・・二人・・・・。若いイヌの軍人が顎をしゃくって何やら品定めをするような風だ。 周囲を見回すポール公は、すぐ傍に立っていた兵士に声を掛けた。 「軍曹!」 「ハッ!」 「実弾を装填しろ、何か起きたら迷わず撃て」 「どっちをでありますか?」 「もちろん・・・・上だ」 「ヤヴォール!」 歯切れよく返事をした兵士が銃に実弾を装填し様子を伺っている。 幸い何事も無くミサは客人の下へと走り寄り挨拶している。 マダラのイヌも帽子を取って挨拶した。 「何事も起きないようだな」 「そうね。定期巡回ならすぐに済むわね。厄介事は御免だわ」 もう一度イヌの男の荷物を持とうとしたマヤとミサを静止し、ヒトの娘が荷物を持ち上げた。 そして、マヤの道案内より早くイヌは歩き始めた。 首をかしげ振り返るマヤ。その表情は不思議一杯だ。 「春だって言うのに波乱の予感ね」 「あぁ。この春は王府の統計調査も入るはずなんだがなぁ」 アリス夫人は笑いながら手を振って早く行けと指示を出す。 春の宴にやってきた客人が紅朱館へ吸い込まれていっても、大きな踊りの輪が消えることは無かった。 ***********************************************************2*********************************************************** 「ドウ!ハイヤァ!」 手綱を捌いて馬の足を止めたヨシが振り返る。 陽光のこぼれる森の中の道。 清々しい風の流れる峻烈な空気を胸いっぱいに吸い込み、ヨシは空を見上げてゆっくりと吐き出した。 「君は馬が上手いね。恐れ入ったよ。君に馬を教えた人物も相当に乗馬術の長けた存在のようだね」 前日にやって来た査察員はサムと名乗った。 フルネームを聞きたかったヨシだが、サムは「知らないほうが良い事もある」と明確な回答をしなかった。 ル・ガル議会の両院は特別に編成された国土査察組織を編成している。 各地域の貴族領を巡回し国力の正確な調査や評価を行う情報統計チーム。 国家の全領域において様々な情報収集を行い、それを分析し報告し判断を仰ぐ為の資料を整える。 そして時には『議会派』にとって有利になるような工作を隠密裏に行う作業チーム。 王府と議会と軍がそれぞれに対立し、その間をうまく立ち回って私服を肥やす議会派貴族官僚や平民出自の実務官僚らの手足。 複雑な利権や利害関係が絡みつく微妙なパワーバランスを維持する為には、このような『どの会派にとっても』容赦なく切り捨てて本体の安全を図れる組織と言うのは必要なものらしい。 「サム様。ここから見るのが一番早いかと」 「・・・・執事殿。 う~ん、なんと言うかその・・・・ さま付けはやめて欲しいんだが」 「しかし」 ピンと立った耳を僅かに左右へと動かして音情報に注意を払うマダラのイヌ。 しかし、その毛並みはいつかスキャッパーへと来たオオカミのようだ。 「いや、良いんだ。どうも変なんだよ。安っぽいマダラだからさ。さま付けなんて勿体無いよ」 「そうですか」 スキャッパーのスロゥチャイム領を馬で駆ける査察員サム。 議会の関連職員と言う事でヨシもそれなりに警戒していたのだが。 その実、そこに立つ査察員は何処にでも居る使えない公務員そのもののような風体でしかなかった。 優れた功績をあげようとはせず、致命的な失敗を犯さぬよう冒険もせず。 目立たぬよう、周囲から浮き上がらぬよう、万事控えめな振る舞いのサム。 昼行灯に過ごすつまらない、取るに足らない存在。 難しい問題は「事実だけを報告して上司に判断を仰ぐよ」とだけ答えている。 しかし、そんなサムには似つかわしくない存在がここにもう一人いた。 サムの後ろに跨るヒトの娘はミーシャと言うらしい。 「ミーシャさん、だいじょうぶですか?」 ヨシがそう訊ねてもミーシャは自分から言葉を発せず、一旦サムを見ている。 サムが了解しない限り、ミーシャは基本的に自分から言葉を発しないで居た。 「いいよ。大丈夫だ」 サムは笑いながらミーシャに囁く。 ミーシャはちょっと下を向いてヨシに応えた。 「問題ありません。お気使い無く」 「そうですか」 公務員であるサム以上に控えめで大人しく、そして、万事サムの指示を待つ人形のようなヒトの女。 いや、年の頃で言えばミサより幼いかもしれない。想像の範囲内で言えば、14才から16才と言うところだろうか。 まだ幼さの残る顔立ちと共に華奢でか細い体のラインが、年齢をより一掃判断しがたいものにしていた。 「ところで執事殿。このエリアは?」 馬で駆け上がってきた峠道の鞍部。振り返れば領内の穀倉地帯が丸見えだった。 かつてこのエリアは底無しの腐泥地帯だったのだが、排水路の整備と20年近い連続客土事業により、今はル・ガル南部でも屈指の一大耕作地域に変貌している。 遠い日、マサミが描いた夢の実現に向けた設計図の、そのおよそ半分へ約30年の歳月を掛けてようやくたどり着いていた。 「一区画はおよそ10リーグ四方の正方形です。馬耕を行いやすいようできる限り正方形を目指しています」 「素晴らしいね。マサミさんはここまで考えていたのか」 「あの、父をご存知なんですか?」 「あ・・・・ いや、まぁ、なんだ。知識の上だよ。余計な詮索はしない方が良い。君も、もちろん、僕もね」 ちょっと口ごもったサムは手綱を左手へ持ちかえると、空いた右手で額をさすった。 その仕草がまるで父マサミの様に見えるヨシは不思議そうな顔をしている。 「さて、次は排水路だね。最終的に何処へ繋がっているのかな?」 「あ、それはあっちの・・・・」 ヨシが指差す先は峠を越えた反対側だ。 まだまだ広大な湿地の残るエリアはほ場整備がまったく進んでいない地域だった。 エミール指揮の下、今日も軍が動員され、まずは幹線排水路を掘っていた。 「排水路に流れ出た水には腐泥が混じります。それを直接川へ流せば下流のネコの国から文句が来ますので、現在は・・・・」 「一旦湿地へ流し込ませてると言うわけか」 「はい。川の堆積地域で客土用の基礎砂を掘り返した穴を使い調整池を作っています。そこへ一旦流し込むプランです」 「なるほどね。ミーシャ、メモしておいて」 コクコクと頷いたミーシャは小さなノートを取り出しメモ書きしている。 ヨシがそれとなく覗いたそこには、細かな文字でびっしりとメモが書かれていた。 「さて、ではその堆積地域を見せてもらおう。良いかな?」 「もちろんです」 左の手綱を返して馬の向きを変えたサムはヨシよりも速く馬の腹を蹴った。 まるで目的地が分かっているかのような馬捌きなのだが・・・・ 「サムさん!」 「ヨシ君、早く着たまえ!君が先行せねば」 慌てて馬を加速させるヨシだが、馬の捌き方はサムのほうが一枚上だった。 馬上で後ろを振り返ったミーシャがサムに何かを話しかけている。 言葉を聞いたサムは振り返る事も無く、自らの背後で馬に跨るミーシャの右足をポンポンと叩いた。 ―― 父さん・・・・ ようやく追いついたヨシが見たものは、サムの背中に抱きついてうっすら微笑むミーシャの笑顔だった。 「サムさん 変な話ですが御2人を見ていると父と母を思い出します。仕草まで良く似てます」 「 ・・・・ハハハ! 気のせいだよ。人間弱気になればそうなるさ」 笑いながら駆けて行くサムとミーシャ。 遠い日、ようやく馬に乗れるようになったヨシがマサミと共に峠を越えてルカパヤンへ行った日の事をふと思い出す。 マサミの背には母カナが居た。ミーシャと同じようにマサミへ抱きついて、そして笑っていた。 ―― お父さん、ヨシが追いつかないわ ―― 心配ないさ、男の子には冒険が必要だ。おっかない経験が将来役に立つ。 マサミの手がカナの右足の膝をポンポンと叩いた。 カナは振り返ってヨシを手招きし、そしてまたマサミの背に抱きついて頬を寄せている。 ―― 父さん・・・・ 本当に良く似てるよ・・・・・ 「いや、気のせいじゃないです」 「じゃぁあれだ。たまたま。偶然と言う奴だ」 「そうでもないと思うんですけど・・・・」 もう一度笑い出したサムが笑顔でサムアップしている。 「ヨシ君、そんな事ばかり言ってるとオヤジさんが心配するよ」 「そうですね」 「さぁ、ドンドン済ませて帰ろう。すっちゃらか公務員だからね、報告書が大変なんだ」 顎を引いて上目遣いに物を見ながら馬に乗る姿までサムはマサミに似ていた。 そんな姿を見ていたヨシの心の中で、馬に乗ったマサミがゆっくりこっちを振り返ったような気がした。 同じ頃。紅朱館の一室。 軍装に身を包んだ3人のイヌが資料の山を調べていた。 「軍籍台帳はこれで全部ですね?」 事務的かつ怜悧な口調で確かめるイヌの男。 「間違いない。以上がスキャッパー軍区在籍の台帳だ」 やや不機嫌ながらも直立不動で明瞭な回答をするエミール。 その襟に付いた柏葉の飾りが付く横線に星が三つの階級章は地域でも上から数えたほうが早い筈なのだが。 しかし、無地に星ひとつの階級章しか付いていないくたびれた軍服の調査官に対してはできる限り丁寧な回答をしている。 階級の上下を超えた権限も軍には存在する。 警察機構と軍事機構の両方を兼務する重要ポストからやってきた調査官は、軍の階級とは別に詐称を行えば逮捕監禁する権限も持っている事になる。 やはり、そこはそれ。それなりの対応をしておかねば・・・・・ 「で、あとどれ位で終わるんだ?」 のんびりとした口調でダルそうに尋ねたのはアーサー。 軍籍における彼の立場は、この地域の軍を統べる責任者の立場だ。しかし、その格好はラフそのもの。 仮にも軍中央から派遣されている調査官なのだから、それ相応の応対をするものな筈なのだが。 傍らに立つマヤの抱えた盆からティーカップを取って優雅に茶などしばいている。 「ちゃっちゃ終わらせよう。デスクワークは嫌いなんだ。まぁなんだ、その・・・・ けつが腐る」 のっそりと立ち上がってティーカップをマヤに渡し窓際へと立つアーサー。 だらしなくウーンとばかり両手を挙げて伸びをすると、肩やら首やらをコキコキやり始める。 さすがのエミールも少し引く程の姿。 調査官の表情に剣呑な物が混じるのは否定できない事実のようだ。 「申し訳ありません。手早く終わらせます」 「よろしく頼むよ。筋金入りの放蕩息子でさ。嫌なものは嫌なんだ」 ドサリ!と音を立ててもう一度椅子に腰を下ろしたアーサー。 屈強な体に連なる長い足を優雅に組んで下あごを指でさすりながら、上目遣いに調査官をじっと見ている。 その視線の強さは、次期領主として、そして、母アリスより受け継ぐ公爵たる威厳を備えつつあった。 まるで猟犬のような強い視線が調査官を貫く。 その威圧感に3人の軍属は僅かながらも気圧されていた。 「申し訳ありません。ユァーグライス・アーサー」 「いや、俺はまだそんな立場じゃない。家令位だよ」 フフンと笑いつつも敬称のあとに名を呼び捨てにされた部分で、アーサーの髭が僅かに震えた。 場の空気が少しだけ淀んだのをマヤが気が付いたのか、カップのお茶を捨ててポットから新しいお茶を注いだ。 「アーサー様、新しいお茶が入りましたよ。皆様も一息いかがですか」 「・・・・そうだな。皆に茶を振舞ってくれ」 「はい」 優雅にお茶を注ぐマヤの手には純白の手袋。 パーラーメイドとしての役目をこなすマヤは、肩飾りの付いたドレススタイルの優雅なコスチューム。 レストラン・スキャッパーのホールにもこの格好で出るのだから、エロヒトマニアなイヌやらネコやらのヒト鑑賞にやってくる来店客に取ってはたまらない存在なのかもしれない。 例えそれがイヌだったとしても、目的別にメイドを使い分けるなどかなりの高階層貴族でなければ出来ない相談なはず。 しかし、ここにはヒトのメイドが何人も居て、それぞれが別の目的を持っている。 「恐れながら申し上げますが・・・・ 平民には手の届かぬ高級品が何人もウロウロしているなど・・・・ 聊か癪に障りますな」 安っぽい軍服に身を包む調査官でもっとも古株と思われる灰色のイヌは、マヤを見ながら愚痴るように言った。 「そう仰らず。私はここで生まれましたから。それよりお茶をどうぞ」 マヤは金の縁取りが付いた純白のティーカップを配りながら、やや不機嫌な表情のイヌ達に愛想笑いを浮かべている。 一つ一つの動きが丁寧で繊細で、そして優雅だ。 屈強なイヌの軍人の、その太く節くれだった指でグッと摘まめば潰れてしまいそうなマヤの細い指。 その指で角砂糖を一つ二つとカップソーサーに添えている姿に、イヌの軍人は複雑な表情だ。 「このマヤもそうだが、俺には一緒に育った兄弟みたいなものだ。だけど、俺たちイヌのほうが寿命が長いからなぁ・・・・ まぁ・・・・」 何かを言いかけて飲み込んだアーサーの、その何となく寂しそうな表情にロートルの軍人は何かを気が付いた。 「配慮の足らぬ言葉でしたな。どうか許されたい。申し訳ない」 「ま、良いんじゃないか。普通の感想だろ」 マヤから受け取ったカップを口に運びながら、アーサーは立ち上がって窓の外を見た。 皆にお茶をサーブして歩いたマヤが元の場所へと戻って愛想笑いしながら澄ましている。 湯気の立ち上るカップ越しに眺める窓の下。領地を巡回して歩いた議会の狗が帰ってきたようだ。 出迎えたリサに査察員は帽子を取って挨拶する。サムと名乗ったあのイヌもここに居る軍の調査員も同じイヌなのだが。 「あっちはイヌ。こっちは・・・・狗だな」 小声で呟くアーサー。幸いにもその声は調査員の耳には入らなかったらしい。 直立不動で事の成り行きを見守っていたエミールも、マヤからもらったカップのお茶を飲んでいる。 良い香りの漂う部屋の中。粛々と進む書類チェックをよそに、アーサーは窓に移ったマヤの背中を眺めていた。 日のとっぷりと暮れたその日の晩の事。 「調査は3名ですか?」 「そうだが、君は一人かね?」 「いえ、私のほかにアシスタントが一人。こっちは私の保護したヒト・・・・ですがね」 紅朱館の客間にある廊下で軍の調査員と議会の査察員サムが鉢合わせしたのは、その日の夜遅くなった頃だった。 婦長・ハウスキーパーのリサが部屋へ持ち込んだ夕食を平らげ、軍の調査員は風呂へと向かうところだったようだ。 客間の中は身重なリサの付き人を務めるイヌの若いメイドが片付けていて、ルームメーカーたちがベットメイクをしている真っ最中だ。 「なぜ公務員風情がヒトのしかもメスを抱えている?」 「まぁ・・・・話せば長くなりますが・・・・ 要するに最初に保護したのが私なもんですからね。成り行きで預かりですよ」 困ったような表情を浮かべてサムは笑った。 額をさすりながら精一杯の作り笑顔なのだが、その背中に隠れたミーシャはカタカタと小刻みに震えている。 「第1世代かね?」 「いえいえ、おそらく3世代か4世代でしょう。迷いヒトだったものですから」 迷いヒト。野良と同義の言葉。 この世界での高級品とはいえ、様々な事情でヒトはまったく所有権フリーのまま出歩く事がある。 落ちたばかりの第1世代は当たり前。 第1世代同士の妊娠でヒトを抱えきれなくなった者が山に置き去りにしたりして発生する第2世代の野良。 この手はかなり生存確率が低いとして、発見しだい保護するよう公務員は義務付けられていた。 また、ヒトの置き屋で生まれてきた子供をヒト買いが買い取ったあと、何らかの事情で檻から逃げ出して野良化する事もある。 途中で病に倒れ、山に捨てられたまま自然治癒し野良になったケースも有った。 そして、もう一つ。公式には否定されるも、実際にはよくある話。 ヒトの置き屋や高級階層の愛玩奴隷として子供のうちから躾けられるヒトの調教施設からの脱走。 主に危害を加えない。 主の命令に100%従う。 主の望むままに振舞う。 魔法や薬物や生命の危機すらある拷問を加え、自我消失し生きた人形のようになるまで徹底的に躾けられたヒトの存在。 それは、資源も食料も無いル・ガルの隠されたもう一つの恥ずべき特産品・・・・ 「所有権を主張したヒト買い業者が居ましたが、その場での話し合いで解決が図られず・・・・ やむを得ずこの手で処分しました」 「本当かね?」 「えぇ、所有権を認めなければこの娘を処分して、それから裁判で争うと喚きましたので・・・・ね」 「で、刑法236条4項とヒト管理法の特別条項26条の適用かね」 「えぇ、そんな所です。ついでに言えば・・・・公務員倫理規定第36則、ヒトの保護義務の遂行、および国家機関への届出ですな」 サムの背後で震え続けるミーシャの、そのか細い体が目に見えるほど震えていた。 廊下で対峙したイヌの男たちは皆、よく分からない雑種の毛色をした胡散臭い姿だ。 何に怯えているかは容易に想像が付くのだが、やはり軍人は鈍いのだろうか。 「あ、ミーシャさん。どうかされましたか?」 ちょっと抜けるような声で唐突に話し掛けてきたのはミサだった。 一抱えもあるリネン道具を持ってサムとミーシャの部屋に行くところだったようだ。 「すいません。お取り込み中だったでしょうか」 ミサのあとからタダがさらに大きな包みを持って現れた。 部屋を片付け夜支度といった感じだ。 そこへ軍の調査員3人分を支度し終えたリサがやってきて、あっという間にその場のヒトが4人になる。 「二人とも邪魔をしないの。仕事しなさい」 「はい、ねぇさま」 震えるミーシャにじゃね!と手を振ってミサは客間に消えていった。 手伝いにやってきたイヌの若いメイドも部屋へ入って行き、笑い声と共にバサバサと音を立てている。 「姉上さま。兄貴は?」 「まだ奥様と御館様のところだと思うけど。どうしたの?」 「いや、姉貴がジョアンねぇさんと風呂に行くって言ってたから、その間にアーサーの兄貴が話があるって・・・・ あ・・・・」 状況を上手く飲み込めていなかったタダの一言にその場の調査官や査察員の目が注がれる。 呼び出して話をするのなら、それは調査の対象と言って良い。 決して軽くは無い失言に、タダは目に見えるほど青くなっている。 「タダ君と言ったね。それはどんな話か分かるかね」 先に反応したのは軍の調査官だった。 話の相手は領内の全域で事情を掌握する執事と、そして執事と同等以上に責務を預かる時期領主。そして軍の地域指令。 その立場から言って、調査官である以上は話を聞かないわけにはいかない。 「あ・・・・ その・・・・」 「言い難い事かね」 「・・・・立場上そうなります」 しばらく考えた調査官が次に切り出した言葉は、ある意味でタダやリサの想像をはるかに超える一言だった。 「やむをえない場合は君の立場を国家の持ち物とし、この場から引き剥がして自白を強要する事になる」 「え?」 「我々も出来ればそんな事はしたくないし、それに、スロゥチャイム卿は上級公爵であられるからして、我々も後にきつい沙汰が待っている。だがしかし、国家を裏切るわけには行かない」 ロートルの調査官は聊かも逡巡することなく冷厳と言い放った。 その言葉が何を意味するかを理解できないわけじゃない。 少なくともここ紅朱館でこの先も生きていくと言う事はまったく出来ないであろう。 先ほどまで震えていたミーシャですら震えるのを忘れ話に聞き入っている。 「あの、そのような事が制度上可能なのでしょうか?」 唖然とするタダをよそにリサは冷静に聞き返した。 少なくとも、ここまでそのような法制度や議会権限があるとは聞いたことが無かった。 つまり、その場限りの脅しではないか。リサの推論はごく当たり前なのだろう。 しかし・・・・ 「可能だよ。昔は問答無用で連れて行けたんだけど、今は制度が改正されて事後承諾でも良いから主の認証が必要になった」 あっけらかんと口を開くサム。 「でもなっただけで、実際にはよくある話だ。君の父親であるマサミさんだって少なくとも生涯2度ほど王府に取り上げられそうになっているしね。」 だが・・・・ 「ただね、その都度にマサミさん自身やスロゥチャイム卿や、そして協力者の強い抵抗でそれは阻止されている。一度などポール公が騎馬軍を率いて国軍と対峙したことすらあった・・・・ そうだよ」 「本当ですか?」 「あぁ、こんな事は嘘を言ってどうに成る物でもない。後にポール公はその毅然とした態度と騎士道の精神を現時する矜持を持って爵位に列せられ、公式に男爵の一代爵位を得た。それはある意味ですごい事なんだよ」 呆然と話を聞いているタダを笑いながら見ていたサム。 調査官らはサムの次の言葉を待っていた。 「ただね、事後承諾でも主の認証が必要って事だけど、そんなの形式的な事さ。どれ程抵抗しても国家規模で誘拐的な身柄拘束を行われたらどうしようもない事だ。そもそもこの地域を軍で包囲して君を差し出さない場合は焼き払うと警告された場合。領主殿は領地と君のどっちを取ると思う?」 真顔で話すサムはジッとタダの目を見ている。 僅かではない恐怖の色があるものの、それ以上に強い信念の色も見える。 「まぁ、君を連れて帰って取調べし自白したとしても、軍属たる調査隊の方々は後に色々と・・・・ね。平民ならぬ階級の方々には我々には想像も付かない方法で報復する方法もある。みなまで言わなくても・・・・ 分かるだろ?」 「だから、出来れば荒事を避けて穏便に君の口から話を伺いたいと言うことだ」 にやっと笑った調査官の口元には牙が覗いている。 二の句に困るタダを見ながら、調査官は言葉を続けた。 「君らは自覚が無いだろうけど、ヒトと言うのは本来高級品なんだよ。我々のような平民風情にはこんな職業でもない限り、生涯縁の無い存在だ。だから、そういうものを扱えるとなったら少々の無理もしかねない。どうだね、ここは一つ」 居並ぶイヌの意気に気圧されてタダは言葉に詰まった。 でも、ここではっきりしておかねば後が困る。 「実は、私もよく分からない話なんです」 「ほほぉ。では、分かる範囲でよろしい」 「・・・・こちらの婦長様は私の実の兄と結婚しまして・・・・」 「それは知っている」 「で、実は今、妊娠中と言うことでありまして」 「ほほぉ!それは目出度いですな。生まれてくる子は既にどなたかへ売却の算段が付いたとか・・・・ですかな?」 「『はい?』」 リサとタダが見事にハモッて聞き返した言葉。 売却の算段????? 不思議そうな顔をするリサとタダ。 調査官もまた不思議そうな表情を浮かべて聞き返した。 「まさかスロゥチャイム卿はお手元に置かれるつもりなのか。少なくとも卿は執事殿と婦長殿、さらにご子息夫人の側女とご息女の側女。そして君と既に5人もヒトを抱えておられる。これだけで税額は相当なはずだが。さらに増えれば栄えるスキャッパーとは言え困るのではないかと・・・・」 ヒトに税金が掛かる。そんな話は聞いたことが無いぞ? あっけに取られるタダ達が言葉を失っているとき、廊下の奥から聞きなれた声がしてきた。 「うちの執事見習いをあまり苛めないでくれるかな。まだ修行中なんだ」 リサとタダが振り返る先。 ヨシとマヤを連れたアーサーが笑いながら立っている。 「それに婦長は身重だ。腹の中の子供に何かあったら・・・・ 貴様ら全員生かして帰さんぞ」 唇を片方だけ吊り上げるようにして鷹揚に笑うアーサーの、だが、その目だけはまったく笑っていない。 それどころか、居城館内にも関わらず左の腰からは戦用の大剣をさげ、腰部分には短く細身の小剣が2本下がっていた。 そして、それ以上に調査官達が身構えたもの。 それはアーサーの一歩後ろに立つ執事の右手。 腰の後ろへと回され、緊張し浮き上がる腱の張り具合を見れば、何かを握っているのは明白だった しかも良く見れば上着の左脇が僅かに膨らんでいる。 その内側に拳銃のホルスターを入れているのがうっすらと浮き上がっている。 執事の腰にある物。 それは先ほど調査したヒトの世界から落ちてきた自動拳銃と考えるのが自然だろう。 この至近距離で撃たれれば、一撃で絶命するのは間違いない。 執事までは大股で飛び掛っても5歩は必要だ。 まずは公爵の長男が持つ剣を掻い潜り、執事へと到達して反撃を受けないように絶命の一撃を加える。 限りなく難しい戦闘だが上手くいかねば間違いなく死ぬ。 そもそもにアーサーは父親とフェルディナンド将軍譲りの剣の腕だ。 数秒で片が付かねば為す術無く全滅させられるか、それに近い被害を蒙るのは目に見えている。 まったく丸腰で居る調査官達は一瞬のうちに極度の緊張を強いられた。 「簡単に説明しよう。これは軍関係には提出していない書類だが」 査察官のサムへふと目をやったアーサー。向けられた視線の力強さにサムは驚く。 まったく不機嫌そうな眼差しで調査員を見るアーサーの、その視線の剣呑さはその場の空気ですら変えるほどだ。 「まず執事夫妻は主を持たない。執事夫妻はスロゥチャイムファミリーそのものである。こちらのマヤは妻ジョアンの付き人故に領主の責任下ではあるか隷属はしていない。そっちのタダとミサは私の妹マリアの隷下であり、後にボールド家の物となる。したがってスロゥチャイム家の直接隷下にはヒトの奴隷を持たぬ形となっておる。故に、婦長リサが生んだ子供の処遇を執事と相談したのだが・・・・」 アーサーに並んでいたヨシがニヤッと笑った。 その笑みの意味をリサはおそらく瞬時に理解しただろう。 「やがて生まれる我が子の付き人として登録する事にする。ヒトは10ヶ月かかるがイヌなら6ヶ月で生まれてくるからな」 「ですから、当家スロゥチャイム隷下にはヒトは存在しません。すべからく領主以外の持ち物であるか、さもなくば被雇用者です」 「故に、複数のヒトを所有する課税対象とはなっていないのだが、理解してもらえたかな」 話を聞いていた調査官も査察官も、その両方共に納得したようなしないような、そんな表情だ。 絶妙に法の抜け道を突いた節税策であり、そして、生物としての尊厳を守る手立て。 「・・・・ところで、執事殿夫妻は誰をも主を持たぬ、純粋な被雇用者と言うことは、逆に言えば誰かが所有権を主張した場合は?」 至極当然の質問をする査察官。 事の成り行きをミーシャは興味深そうに聞いていた。 「うーん・・・・ 考えたことなかったなぁ ヨシ、どう思う?」 「いや、それは俺に聞かれても・・・・ っつうか、親父は死ぬが死ぬまで主はアリス様ではなくジョン公だって言ってたし」 「じゃぁ法の制度から言ってお前も爺さんの持ちもんだな」 「そうなるね」 「まぁ、面倒な事をガタガタ抜かす馬鹿野郎は俺が切り捨ててやる。その覚悟があるんなら話は別だがな」 2人してワッハッハと笑い、気の置けない友人のように会話するイヌとヒトの男。 その光景があまりに不思議なのだろうか。ミーシャは自分の理解を超える光景に言葉を失っている。 「ってな訳で、所有権を主張する場合は俺の爺さんと話をつけてだな・・・・ まぁ爺さんがうんって言ったら良いんじゃないか」 「言えればって事・・・・ ですね、残念ながら」 しばしの沈黙。 もっそりと口を開いたのは、例のロートルの調査官。 ぽりぽりと頭を掻きながら言葉を選んでいる。 「言うなれば・・・・ 富が富を生む螺旋ですな。王府城下にはヒトの繁殖で大儲けする貴族がたも複数おります」 ロートルの目がじっとリサやマヤを見ている。心中決して穏やかではないのだろう。 僅かに震える口ひげの揺れ具合が、なんとも言えず苦虫を噛み潰すようだ。 「私は貧しい職人の家に生まれました。父は戦役で戦死。母は流行り病であっけなく死にました。行くあても無く軍に志願してここまできたのですが・・・・ 妻も娶らず養子も取らず、ただただ国家のイヌでありたいと願ってきたのですがね」 年老いたと言うにはいささか早いのだが、その毛艶の失われた灰色の体毛や、栄養不足で先端が割れた爪や、そして、やや濁り始めた瞳の色合いが語る、貧しさゆえの悲哀。年齢以上に老けて見える現実。 嘘偽り無い、イヌの国家の現実。いや、真実と言うべきかも知れない。 言葉を失ったロートルの隣。まだまだ若いイヌの兵士もじっとマヤを見ていた。 足元から頭にかけて走る視線の先が、マヤのバストの膨らみを捕らえている。 まるで値踏みでもするようないやらしい眼差しで舐めるように・・・・。 「私の駐屯寮近くにも赤線街があります。国内の様々なところから売られたり買われたりして集まってきたイヌやその他の種族の女が居ます。しかし、そこにヒトの女は居ません。ヒトの女が居るのは城下の歓楽街に店を構える大きな浴場の上の高級娼館だけです。あそこへ入るには私の給料じゃとてもじゃありませんが・・・・無理な相談です。3か月分は必要ですからね」 もう一人の調査官も同調するかのように言葉を継いだ。 中年でやせ細った体のイヌの男は筋肉こそ付いていれども、頬はこけ毛並みが貧相だ。 「小官は軍務についてもう100年になりますが、それでもやはりヒトの女性に手を触れるのは難しいですな。なにより、そんな事に現を抜かせば妻に離縁されてしまいますし」 乾いた笑いが少しだけこぼれ、何かとても気まずい空気が辺りを支配した。 重苦しい沈黙。そして、呼吸の音。 「ヒトの女を抱いてみたい。どこかの貴族が使い古した年増なヒトの女ではなく、若いヒトの女を。貧しい平民の本音です」 中年のイヌはそこで言葉を切ると目を閉じて拳を握り締めている。 もう一度訪れた重苦しい沈黙。 居た堪れない雰囲気に耐え切れなくなったのか、ロートルの調査官は自分の胸に手を当てて頭を下げた。 イヌの軍人がヒトの女にぺこりと頭を下げる。その光景をミーシャは理解できなかった。 「気を悪くするかもしれないが、はっきり言わしていただく。富める貴族の家で今宵の食事も寝床の心配もせず、ヌクヌクと飼われて暮らすヒトの存在というのは、貧しい者にとっては憧れではなく憎悪の対象足りうるものです。あなた方はもう少しそれを自覚したほうがいいでしょう。やがて人生の終点を迎えるイヌの愚痴です。どうか許されたい。しかし、忘れないでいただきたい」 頭を上げたイヌの軍人はピシッと踵を揃え背筋を伸ばすと、無帽のまま挙手敬礼した。 その両側にいたイヌの調査官も同じように敬礼する。 教科書通りの見事な姿勢で手を下ろした軍人3人は器械体操のように回れ右して廊下を歩き始めた。 後ろを振り返ることなく歩くその姿に、ヨシ達はイヌのもう一つの真実を見た気がした。 「なかなか厳しいことを言うな。あのイヌ・・・・」 呟くようにこぼしたアーサーの一言。 ヨシはじっと妻リサとマヤを見ていた。 「私達そんな実感をしたこと無いからなぁ・・・・」 不思議そうに首をかしげるマヤ。 リサは小さく溜息をついた。 「売られる怖さなんて忘れてたわ。でも、なにか悪い事したかしら・・・・」 リサとマヤは顔を見合わせて困惑している。娼婦ならばともかく、二人はスロゥチャイム家の単なる従者でしかない。 見ず知らずの者から興味本位で抱きたいなどと言われれば、困惑するなと言うほうが無理な相談なのだろう。 「ご両人ともお気をつけなさい。もっとも、お二方に手を出せば若領主どのも執事殿も黙ってはおられないかと思いますがね」 その場を取り繕う様に言葉を発したサムはにやりと笑っていた。 その後ろに隠れていたミーシャだけが不安そうな表情のまま、その場の空気を眺めているのだった。 ***********************************************************3*********************************************************** 紅朱館の領主執務室は3方を窓に囲まれた見晴らしの良い構造になっている。 それぞれの窓の外には大きなバルコニーが備えられ、領地を見下ろす様な形になっていて見晴台の役目も兼ねていた。 その執務室の中央。 一段低くなった部分には大きなソファーが向かい合わせて置かれていて、その周囲には窓の桟より低い本棚が部屋の壁より離れたところを一周している。 万が一にもここで銃撃戦などが発生した場合、身を隠せる遮蔽物を多く置いたほうが良いと言うマサミの意見はこんな所でも活きているのだった。 「余計な事は言ってない?」 やや険呑な口調ながらアリス夫人の目は笑っていた。 「えぇ、もちろんですとも。マサミさんとの約束でもありますし」 ソファーに深く腰掛けるマダラの男はそう答えてからお茶を啜った。 「もう30年か・・・・ 年月と言うのは早いものだな」 感慨深いと言う風のポール公はジッとマダラの男を見ている。 「私の顔に何か?」 「いや、そうではない。ただ、マサミの若い頃の顔立ちを思い出したのだよ。お前にはやはりそれが残っている」 「そうですか」 マダラの男・・・・ サムはどこか嬉しそうに答えた。 「ヨシ君やタダ君はどうですか?」 「あの子達はカナの色が濃いかしらね。どちらかといえばマヤの方がマサミ似だと思うわね」 「言われて見ればそうかもしれません。マヤ君の眼差しは父によく似ています・・・・ おっと」 おっと失言と言わんばかりにビックリな表情のサム。 「気をつけろよ? 絶対だぞ?」 ポール公はもう一度年を押す。 「はい、肝に銘じます」 「うむ」 フフフ・・・・ ポール公は急に優しい笑みを浮かべる。 「要するに、査察なんぞ形式的なもので・・・・ お前はあの子たちが心配なんだろう? 軍が来るのを知って様子を見に」 「そんな事はありません。職務の一環です。でも、まぁ・・・・」 苦笑いするサムを眺め、アリス夫人もポール公も、まるで家族と話をするような笑みを浮かべている。 「ところで、あの娘はどうしたの?」 「ミーシャですか?」 「そう」 ちょっと困ったような表情のサム。 本来は領主夫妻の聞き取り調査中な筈なのだが、立場が完全に入れ替わっている。 「3年ほど前に王都近くの森で見つけました。裸で倒れている女がいると村人が大騒ぎしていたので急行したのですが」 「ソティス近く・・・・か」 「あの娘は王都の調教施設から逃げ出したんです。完全に精神が壊れてしまっていて最初は大変でしたが・・・・ 今は何とか人並みになりました。でも・・・・」 「あなたのヒトに対する想いは・・・・ 並々ならぬ物ね」 「そうですかね? うーん、何となく公務員の義務くらいに考えていたんですが・・・・・ でも、恩義もあります」 「カナに?マサミに?」 「両方です」 サムは視線を床に落とし浮かない表情になっている。 垂れ耳ならぬピンと立った耳が心なしかションボリとしていた。 「実はネコの国へ出向を命じられました、あの王宮のある街へ短くても10年ほど。おそらく20年は居る事になります」 「ネコ? それは・・・・ どっちの任務?」 「主に裏課業ですね。あの国へ入り込んでいる工作員が1人2人と行方不明になってます。おそらくは・・・・・」 怪訝な表情のアリス夫人が鋭い視線をサムへと注ぐ。 同じように執務席へ腰掛けていたポール公も視線を向けた。 「つまり、お前はそれの裏支えと言うわけか」 「はい」 「ならばあの娘を連れて行っては何かと拙かろう。どうするつもりだ?」 言葉に詰まったサムの重い沈黙が続いた後、ふと顔を上げた彼が見たものは、何かを企むかのようなアリス夫人の笑みだった。 「困るならここへ置いていきなさい。預かってあげるわよ」 「え゙? あ! いや・・・・ あの・・・・ その・・・・」 「連れて行くと困るでしょ? あなたに何かあったらどうするの? あの子はネコの商人に連れ去られてどこかの物好きの・・・・」 立て板に水の勢いで畳み掛けるアリス夫人の言葉がサムを貫いた。 返答に困り言葉を飲み込むのだが、迷っている暇はなかった。 「ここならヒトが何人もいるし、この街全体で見ればヒトのコミュニティも出来てるくらいだし。それに」 「あ、い!いや!連れて行きます!えぇ、連れて行きますとも!」 ニコニコと笑うアリス夫人の企みが少しだけ見えたサムは慌てて口を挟んだ。 そのあまりの狼狽振りにポール公がニヤリと笑う。 「まぁ、遊び相手なら不足はないだろうが根無し草で終わらせるには・・・・ 勿体無いなぁ」 「ポッ ポール閣下・・・・」 「あの娘が子を成したらお前は育ての親だ。ん?ヒトの子を育てるのは楽しいぞ?」 「あ・・・・ え、えぇ。 まぁ・・・・」 宙を泳ぐサムの視線が所在無げに彷徨って、そのまま床の豪華なじゅうたんの模様を眺めていた。 しかし、畳み掛けるような夫妻の言葉にサムはふと何かに気が付いた。 妙な違和感。発言の中にある矛盾。 一瞬の間に多くの事を考えたサムだったが・・・・ 「そういえば先ほど例の査察官らとアーサー君の会話の中に気になる言葉があったのですが」 「どうしたの?言ってみなさいよ」 ちょっと興味津々と言った風なアリス夫人が笑っている。 「いや、じつは、先ほどの会話の中でアーサー君がかなりご機嫌斜めでして」 「それがどうかしたの?」 「あ、まぁその、例の査察官らが言うにリサ君の子供の件でと言う話しなんですが」 「じれったいな。スパッと言ってみろ」 夫妻の顔を一度じろっと眺めたサム。 「リサ君は妊娠中ですか?」 サムの口を付いて出てきた言葉に夫妻は一度顔を見合わせたあとで、タイミングまでばっちり揃って驚いた。 「『え゙?』」 しばしの沈黙。 夫妻の目が怖いほどにサムを見ていた。 「あ、いや、まぁ・・・・ 廊下で会話してるときにアーサー君が。リサ君のお腹の子に何かあったらお前ら生かして帰さぬと」 「・・・・あの馬鹿息子がそう言ったのか?」 「はい。腰から戦太刀を下げてまして。それにヨシ君は拳銃を持ってました。正直、心臓が縮まる思いでしたよ」 サムは笑みを浮かべてクックックと笑った。 「婦長は身重だ。お腹の子に何かあったらお前ら・・・・生かして帰さぬ・・・・と。私にも凄まれましたよ」 何がそんなにおかしいのだろうか? いや、むしろ嬉しいと言う表情にも見える。 しかし 「あの子はあなたにもそう言ったの?」 「はい、私も数に入っているでしょうね」 「あの馬鹿・・・・ 怖いもの知らずと言うのも良し悪しだが・・・・」 クックック 噛み殺した笑いを浮かべたポール公の優しい眼差しがサムを見た。 「おまえにそう言うとはなぁ」 「そうね。知らないって怖いわね」 夫妻の笑みがサムに注がれる。 「でも、知らないと言うのは恥ずかしいだけでは無い。時には幸せな事もある。マサミさんはそう言われました」 マダラなイヌの男のどこか辛気臭い表情は、マサミの名を出すときだけは嬉しそうな顔になる。 「サム。あなたの真実を知ったらあの子達は驚くでしょうね」 「そうだな。知らぬ方が良いとも思うが。それでもいつかは知らねばならん」 「あの、その件ですが。出来ればヨシ君とアーサー君にだけで」 「どうしてだ?皆が知っている方が良いではないか」 「まぁ、そうなんですがね・・・・・ 」 「・・・・サム。おまえは コンコン 唐突に部屋のドアがノックされ会話がふと途絶えた。 執務室の中の眼差しがいっせいにドアへと注がれるなか、アリス夫人は出来る限り平穏な声で「だれ?」と誰何した。 「奥様。私です、リサです」 「入りなさい」 「失礼します」 ガチャリ ドアを開けて入ってきたリサ。 隣にはミサが立っている。 そして 「あら、噂をすれば」 その隣にはミーシャが立っていた。 「あ、あの・・・・ 夜分に失礼します」 ペコリとお辞儀をして小さくなっているミーシャ。 花柄のパジャマを着てその上からガウンを羽織っている。 「ミーシャ。その服はどうしたんだい?」 「あ! 旦那様 あっ すっ すぐ脱ぎます。申し訳ありません!」 いそいそと服を脱ぎ始めるミーシャ。 サムは慌てて走っていってミーシャを抱きしめた。 「いいんだ!いいんだよ。その服を着てても良い。いつも言ってるじゃないか。人前で服を脱いではいけないと」 「・・・・申し訳ありません」 ミーシャは僅かに震える声で謝罪の言葉を口にしている。 「この服はどうしたんだい?言ってごらん」 「あ、あの。ミサさまに・・・・ いただきました」 「そうか。何も問題ないよ。貰ったと私に言えばいい。私が駄目だといったら服を脱ぐんだ。いいね?」 「はい」 サムはふと振り返ると、急に余所行きの態度に改まった。 「あの、公爵様。斯様なものをいただいたのですが宜しいのでしょうか?」 そのあまりに余所余所しい仕草がおかしくて、ポール公もアリス夫人も笑いを堪えるのに必死になっている。 「あの。サムさま。余計な事をしましたでしょうか? 申し訳ありません」 ミサがミーシャの隣でちょっと恐縮しながらも、舌を出して苦笑いしている。 その自然な表情で尚且つ身分の差を感じさせない振る舞いに、サムはなんとなく眩しいものを覚えた。 「あー サム君。それはうちのミサのお下がりだろう。公務員の薄扶持ではヒト用の服を買うのも辛かろう」 「そうね。ミサもミーシャも気にしないでいいわよ。ミーシャはその服が気に入った?」 アリス夫人の優しい言葉にミーシャはサムを見る。 少しだけ頷いたサムを見て安心したミーシャは、初めてまっすぐにアリス夫人を見た。 「あの・・・・ はい。すごく可愛いです。こんな服は初めて着ました」 「そう。じゃぁ着てて良いわよ。凄く似合ってるじゃない」 「あ ありがとう・・・・ ございます」 再びペコリとお辞儀をしたミーシャがサムの腕の中で安心した表情を見せている。 自己判断と決断が出来ていない。 夫妻の眼差しの先にいるミーシャは、このままでは生きて行けないほどにも見えた。 「ところでリサ。今サム君から聞いたのだが・・・・・」 「あぁ、そうよそうよ。あなたちょっとこっちに来なさい」 リサを呼んだアリス夫人。 不思議そうな表情を浮かべつつ夫妻の元へと歩み寄ったリサを、アリス夫人は急に抱きしめた。 そして クンクン クンクン クンクン 胸元から腹を通って下腹部まで臭いを嗅ぐ。 「あ、あの。奥様?」 「変ね。あなたの体臭は変わってないわ」 ポール公もリサの手を取って手首のうちの臭いを嗅いでいる。 「そうだな。俺の鼻も違いが分からん」 部屋中の者が不思議そうに見ている光景。 リサは気が付いたようだ。 「・・・・実はまだなんです」 「じゃぁさっきの言葉は出任せか」 「あら、残念ねぇホントに」 苦笑するリサがペロッと舌を出した。 「アーサーさまが最初に言われたんですよ。妊娠中と言う事にしておこうって」 「・・・・あのバカ息子め。余計な期待をさせおって」 「でも、なかなかに策士よね。ちょっと足りなかったけど」 フンと笑ったポール公がにやりと笑ってサムを見た。 「何かあったら適当な理由を付けて始末するつもりだったんだろうな」 「でも、理由付けとしては聊か強引が過ぎるわね」 「仕方あるまい。アレにとってはヨシもリサも兄弟のようなものだ」 一旦言葉を切ってカップのお茶に口を付けるポール公。 その振る舞いはあくまで優雅でダンディだった。 「逆上したといえば理由にはなる。認められるかどうかはともかくな」 「でも、やっぱり・・・・ ちょっと残念ね。ガッカリ」 心底残念そうな夫妻を見るミサ。 サムもミーシャも不思議そうだ。 「あの、奥様」 「ん?ミサ、どうしたの?」 「妊娠すると臭いって変わるんですか?」 「変わるわよ。ヒトの鼻じゃ気が付かないだろうけどね」 へー そういわんばかりの驚く顔を浮かべるミサ。 サムもミーシャも驚いている。 「私も最初は驚いたわよ。ミサが生まれる前にアヤさんの臭いを奥様が気が付いて言い当てたときは本当にびっくりした」 アヤ・・・・ ミサは少しだけ寂しそうな風だ。顔も知らぬ母の名が出てきたのだ。 寂しいと言うよりやるせないと言うほうが近いのかもしれない。 「あぁ、そういえば・・・・」 ふと立ち上がったアリス夫人が執務室の鍵付き書庫を開けると、中から大きな封筒を取り出した。 紐とボタンで口を留められた封筒を開けると、中からは絵画とは違う絵が出てきた。 あ、写真だ! 部屋の中に広がるケミカル臭。 独特の臭いがふんわりと漂う中、アリス夫人は一枚の写真を取り出しニヤリと笑った。 「ミサ。ここへ来なさい」 夫人に呼ばれたミサがタタタと駆け寄ると、そこにはドレスアップして椅子に腰掛ける若いヒトの女性と、寄り添うように立つヒトの男が立っている写真があった。 「奥様・・・・ これ・・・・」 「あなたのお父さんとお母さんの若い頃よ」 「おかあさん・・・・・」 スッと立ち上がってミサの隣に立つポール公。 リサもスッと近づいた。 「ミサは母親似だな。目元が良く似ている」 「ほんとだ。ミーちゃんのお母さんも美人だったのね」 しばらく皆無言で眺めていたのだが、アリス夫人は再び写真を封筒へとしまった。 「ミサ。お母さんに会いたくなったらここへ来なさい」 「はい」 ちょっと涙ぐむミサを、今度はリサが複雑な表情で見ている。 そして、ミーシャも。 「ミサ。お前は幸せだぞ」 ポール公の大きくて無骨な手がミサの頭をなでた。 「お前は自分のルーツが分かっている。父も母もな。ヨシやタダたマヤもそうだが」 「そうね」 写真を封筒に収めたアリス夫人がリサの肩を抱き寄せて、その頭を抱きしめた。 リサの浮かべた複雑な表情の理由。ミサはやっとそれに気が付いた。 「ねぇさま。あの・・・・」 「ミーちゃん、よかったじゃない」 「でも、ねぇさま」 「私のお母さんは奥様だから。だから寂しくないわよ」 ふとアリス夫人の顔を見上げたリサ。 微笑むその表情には寂しさが混じる。 「自分のルーツを知ることって重要なことよ。でも、それを全く知らないヒトも・・・・ 今は多いわね」 「そうだな。色々と・・・・ 不幸な事が多い世界だ。残念だが」 ちょっと深刻な顔をしている夫妻だが、そのどこかに密かな企てが紛れている事にリサは気が付いた。 「そういえばサムさまのお部屋の支度が終わってないんです。支度してきます」 どこか大げさな口調のリサがアリス夫人の手を離れる。 その仕草に確かな成長を感じ取った夫妻。 執事と婦長のコンビが重要な案件を難なく乗り切るだけの才覚を得つつある。 うんうんと満足そうにポール公は頷く。 「ミサ、リサと一緒に部屋を支度なさい。もう遅いから急いで」 「はい、奥様」 指示を出したアリス夫人の目はサムを見ている。 その目が何を言わんとしてるのか。 「ミーシャ。婦長殿の手伝いをして来るんだ。良いね?」 「はい旦那様」 部屋の扉前でもう一度お辞儀をしたリサとミサが出て行く。 ミーシャも見よう見まねで同じ仕草を取った。 重厚な音を立ててドアが閉まると、アリス夫人はニヤリと笑ってサムを見る。 「明日の公務のときはあの娘を置いていきなさい。ここであの娘が勤まるかどうか、リサに見させましょう」 「そうだな、それが良い。リサもそろそろ子が出来そうだ。もちろんヨシの子だがな。リサの育て上手はカナ譲りだ」 「そうね、なにも心配要らないわよ。あなたがネコの国から帰ってくる頃にはあの娘の家族があなたを迎えるわよ」 うへぇ~とでも言いたげな恨めしい表情を浮かべたサム。 「サム。お前も見たろう? あの娘が死ぬまで、お前はただの根無し草で終わらせる気なのか?」 「・・・・・・・・わかりました。申し訳ありませんが、よろしくお願いします」 「よし、話は決まったわね。明日中に色々と手続きを済ませておくわね。あの子も学校に入れましょう」 楽しそうな夫妻のガッカリなサムのコントラスト。 これも人生経験のなせる業と言うのだろうか。 恨めしそうなサムは、じっと執務室の片隅に掲げられたマサミの肖像画を見つめるのだった。 ***********************************************************4*********************************************************** チュンチュン・・・・ 朝靄に煙る午前6時のロッソム中央通は、朝刊を配る新聞屋の小僧さん達と牛乳を配って歩くウシの一族の仁義なき戦いの場でもあった。 近郊の広大な酪農地帯から大きな人力車を牽いてやってくるウシの男達。 「・・・・ミノタウロス」 ウシの男を初めて見た時、マサミはそう呟いた。 他の種族の男では考えられないような力を持っているウシ一族。 だが、大きな牛乳タンクを40本近く積載したリアカーの積載重量は軽く1tと越えているのだろう。 ちょっとした段差や上り坂ですらも心の準備をして押し上げ引上げしつつ歩くのだった。 その歩みの鈍いリアカーを邪魔そうに見ながら軽快に駆けて行くのは鳥系種族の新聞配達。 短い距離は地上を走り、通りから家並みを越えて向こう側へと向かう時は家の上を文字通り飛び越えていく。 その飛び越えた先にリアカーが停車していて、暢気に牛乳を買う家の大きな瓶へ牛乳を柄杓で分けている事もある。 ズシリと重い新聞を抱え着地体制に入ったところで視界に入る牛乳売りのウシの女達。 頭上から勢いをつけてキックが降ってくるのだから彼女らも頭上警戒が欠かせない。 今日も通りのアチコチでぶちまけた新聞にこぼれた牛乳が掛かってしまい、双方共に商品にならなくなって喧嘩している様子が見られるのだった。 「ね?言ったとおりでしょ?」 「・・・・ほんとです」 紅朱館の勝手口。 とは言っても館のスタッフだけで軽く100人を越す人数が働くこの施設では、勝手口ですらも下手な建物の玄関より大きい。 その前で朝刊の到着と牛乳屋を待っているリサの隣。 ミサのお下がりの小さなワンピースにメイド見習いの掛ける薄緑の前掛けをしたミーシャが通りを見ていた。 「ここではね、新聞はあっち側の玄関から。牛乳はこっちの勝手口から貰うの。そうすればぶつからないでしょ?」 「・・・・そうですね」 リアクションに乏しいミーシャの、その搾り出すような声を根気良く待っているリサ。 何をするにも主の了解を取らないと安心できない用に躾けられてしまった性格は、一朝一夕で改善できるものではない。 ―― ちょっと面倒だけど。でも、あなたがそれを出来ないと困るのよ? 前夜遅くに突然アリス夫人から指示を受けたリサはさすがに面食らっていた。 公務員の査察官が連れて歩いていたヒトの娘を一人前の女中に育てろと言われたところで、果たしてその取っ掛かりすらも見えないでいるのだった。 ―― かなり依存性の高い精神構造だ。自分で考え、判断し、決断し。そして行動する。 ―― それが出来ねばあの娘に未来は無い。リサ。頑張って教えてやると良い。 ポール公の言葉にリサは何か別の目的があるのを薄々感づいている。 きっとこの子もここで生きていく事になるんだろう。 もしかしたら誰かのお嫁さんにと考えているのかもしれない。 それとも無くば、どこかにまだ知らぬ夫ヨシの弟がいるのかもしれない。 いや、やがて旅立つタダとミサの二人が抜けた後、自分の片腕として働く存在になるのかも。 何から教えればいいんだろう? カナさんは何から教えてくれたんだっけ? えっと・・・・・ 「・・・・あの、婦長様」 ミーシャの呼びかけで我に帰ったリサ。 「どうしたの?」 「・・・・旦那様を起こしに行ってきても宜しいでしょうか」 申し訳なさそうな声で了解を求めるミーシャはどこか不安そうでもあった。 殴られたり蹴られたりと、生まれ育った所ではそんな行動で良いか悪いかを示されて来たに違いない。 だから、何をするにもいちいち了解と承認を求めるのだろう。 誰だって殴られたり蹴られたりするのは嫌だ。痛い思いはしたくない。 寒々しい程に怯えているミーシャの姿が、遠い日の自分の記憶に重なっていた。 「あら、もうそんな時間かしら」 あえて勤めて平静な態度を取ったリサ。 緋色の生地に豪華なレースの袖飾りが付いたワンピースの袖口をめくれば、そこにはアリス夫人から貰った細身の腕時計。 コチコチと正確な時間を刻む時計の針は6時半を回ったところだった。 「・・・・旦那様はいつも7時に起きられますので」 「じゃぁまだ20分あるわよ」 「・・・・その前に今日のお召し物を用意しておくのが私の務めですので。それと・・・・」 「それと?」 急に困ったような表情になったミーシャ。 何か秘め事があるのだろうか? それとも・・・・ 「いっ いや、良いです」 「一緒に行きましょう。その方が良さそうね」 「あ! いっ 良いです!大丈夫です!一人で行けます!」 驚くような強い拒絶がミーシャの口から漏れる。 その振る舞いに少しだけ只ならぬものを感じたリサ。 俯いてモジモジするミーシャの肩をポンと叩いた。 「行ってきなさい。大事な仕事なんでしょ?」 「・・・・はい すいません ちょっと離れます 申し訳ありません」 見よう見まねのお辞儀が少しだけ上達したミーシャ。 クルッと振り返ってタタタと駆け出したその姿にリサはちょっとした興味を持った。 「ここ、お願いね」 リサのすぐ近くに立っていたイヌのメイドへ指示を出し、リサはそっとミーシャの後を追った。 何をそんなに隠しているのだろうか? 何か重要な事だろうか? 婦長の職責として把握しておかなくちゃ・・・・ 野次馬根性的な覗き見趣味も手伝ってか、リサは体を泳がせるようにして客間の中を見渡す覗き穴のところへとやってきた。 小さな小窓の蓋をそっと開けると、客間の片隅の小さな飾り鏡に設えられたマジックミラーの裏側から部屋を一望できるのだった。 「旦那様 旦那様 朝ですよ」 ベットの上でまだ意識を失っている調査官のすぐ脇。 ミサはサムの耳元で囁くように呼んでいた。 「旦那様」 決してその体に触れる事無く、ミーシャは耳元で囁いている。 どこか怯えたような表情で、だがしかし、決然とした覚悟を持って。 「旦那様 どちらにおいでですか」 しばしの沈黙。音の無い世界に流れる緊張感。 リサも息を殺してジッと見ている。 「オ レ ヲ ヨ ビ オ コ ス ノ ハ ダ レ ダ … 」 昨夜見た査察官の声とは似ても似つかぬ声だった。 そして、本能的に恐怖を感じるような、まるで猛獣の唸り声をそのまま言葉にしたかのような。 湧き上がる不安に口から息が漏れそうになり、リサはとっさに口を押さえた。 「貴方じゃ有りません。私の旦那様をお呼びしているのです。お帰りくださ――」 眠っていたはずの査察官の、まだ布団の下にあったはずの手が突然動き、声の主を追い帰そうとしたミーシャの口を押さえた。 大きな手がミーシャの口をグッと掴み、顎の骨に痛みが走っているのだろう。 苦悶の表情を浮かたべミーシャの目に涙が溜まる。 だが、彼女の手はまだベットの上。決して査察官の手に触れようとしていないのだった。 「ゴメンナサイネ コノバカオトコツレテカエルカラ」 査察官の口から今度は女の声が聞こえた。 どこか上品で、そして遊びなれたような艶っぽい声。 それと同時にミーシャの口を押さえていた手がふと離れ、糸の切れた人形の様にベットへと落ちた。 「旦那様 早くお越しください もう朝ですよ」 ンンン・・・・・ ノソリと動き出した査察官。 イヌの耳が付いているだけで体はヒトと同じのマダラ。 その動き出しはヘンリーと同じだね・・・・ マジックミラーの裏側で見ているリサは胸のうちでそう独りゴチた。 「そうだよ。マダラは皆同じだよ」 「え?旦那様?」 「あぁ、ごめんごめん。朝から独り言だ」 リサの隠れるマジックミラーへ向かってパチリとウィンクするサム。 隠し部屋の中でこれ以上無いくらいにリサは驚いた。 ・・・・ばれてる? うろたえる事無く息を殺し続けられたのは婦長のプライドだろうか。 「お疲れ様でした。朝の勤めをさせていただきます」 ミーシャはやおら査察官のパジャマに手を掛けてズボンを下ろそうとしている。 傍目に見ているリサは瞬時にそれが何かを理解した。 と言うより、物心付いた頃に繰り返し躾けられていた、優しいくも恐ろしいネコの男を思い出した。 隠し部屋を見通された未知の物への恐怖と戦慄。 見てはならないものを見てしまったと言う後悔。 思い出したくは無い過去がフラッシュバックしてきた不快感。 声を出さぬよう必死に堪えつつ、リサは狼狽を覚えた。 「ミーシャ。今日はいいよ。もうそれをしなくて良い」 「でも、旦那様。私は旦那様の――」 査察官の腰の辺りに陣取っていたミーシャをヒョイと抱き寄せたサム。 ジッと見つめてからさらに両手でミーシャの頭を抱き寄せ、そのまま熱いキスをした。 「いつもありがとうミーシャ。だが、そろそろ俺も一人で起きられそうだよ」 「旦那様?何かあったのですか?」 「君が呼び寄せてくれなくても、もう大丈夫だよ。あと2人だ。随分強敵が残ってしまったがね。それに」 淡々と語っていたサムがふと気付くと、ミーシャは両目一杯に涙をためている。 「旦那様 私は捨てられるのですか?」 「何を心配してるんだい?そんな事はしないよ」 「でも・・・・」 「大丈夫だよ」 もう一度ミーシャにキスをして手を解いたサム。 だが、今度はミーシャがサムに抱きついた。 「ミーシャ。何も心配いらないよ。今までと変わらないさ」 「でも・・・・」 限界を越えてこぼれた涙がシーツの上にぽたりと落ちた。 「今朝方からこちらの婦長様に連れられてお城の中を歩いています。まるで新人の様にして」 「それはねミーシャ。いつか君がそれをしなければならないときの為に『嘘です!』 いよいよ我慢ならずミーシャは肩を震わせ泣き始めた。 「ミーシャ。聞き分けの無い事を言っちゃいけない。大丈夫だよ。君を手放したりはしないから」 ミーシャとサムのやり取りを聞きながら、リサはいよいよアリス夫人の目論見の真意が見えてきていた。 つまり。あの子の親離れ、主からの切り離しを行えと言う事なんだろう。 だが・・・・・・ 「ミーシャ? 僕は僕の仕事をする。君は気の仕事をする。その二つが完璧で無いと君は僕とはいられない。わかるね?」 「はい」 「じゃぁ、今日の仕事に戻りなさい。いいね?」 コクリと頷いたミーシャ。 そのまま立ち上がるとサムの為に服を用意し始める。 「あぁ、それも自分で出来る」 椅子の上にあった服をヒョイとツマミ上げ、いそいそと着替え始めるサム。 だが、ミーシャに背中を見せて着替えるサムの正面はリサの隠れるマジックミラー側。 寝起きで未だに隆々と起き上がったサムの アレ が、リサの目を釘付けにした。 ・・・・凄い 思わずゴクリと生唾を飲み込むのだが、鏡を見るサムがニヤリと笑っているのに気が付いた。 ・・・・やっぱりばれてるな どうしよう 「なんなら一度くらい試してみるかい?」 「旦那様?今何か?」 「あぁ、また独り言だ。頭の中でね、誰かがブツブツうるさいんだよ。どっかで監視してるのかもしれないな」 アッハッハと笑ってやり過ごしたサムが着替え終わる頃。 リサはスッと小部屋を抜け出して廊下へと歩み出た。 ・・・・あんなの見ちゃったらさぁ なんとも困ったような表情を浮かべつつ再び時計の針を確認する。 時刻は既に7時半を回っていた。 既にスロゥチャイムファミリーは朝食の時間だ。 専用の食堂は既に皆動いているだろうか? 「・・・・あの、婦長様」 唐突に後ろから呼び止められて飛び上がらんばかりに驚いたリサ。 振り返るとミーシャが立っていた。 「ミーシャさん、査察官さまはもう」 「はい、先ほど起きられました」 「では朝食を用意しましょう。手伝ってくれる?」 「・・・・はい」 努めて平静を保っているフリなのだが、どうにもこうにも・・・・ ・・・・まだまだ修行が足りないな 涼しい顔でケロッと嘘を付き、すぐにばれるような言い訳をシレッと吐いてその場を取り繕う。 そんな事を平然とやってのけていたカナの姿を、リサはふと思い出した。 朝食後 「じゃぁ行ってくるからな。良い子にしてるんだぞ?」 「・・・・はい、旦那様」 「そんな不安そうな顔で見るな」 紅朱館の正門前。 領内の重要箇所を視察するために馬上の人となった査察官をミーシャが見上げている。 リサと並んで見送るのだが、その表情は不安で一杯だ。 まるで捨てられる子猫の様に怯え切っていて、そして儚げですらあった。 「・・・・旦那様、必ずお帰りください」 「あぁ、大丈夫だよ」 「・・・・本当ですか?」 「もちろんだ」 「・・・・本当に本当ですか?」 どこまでも不安そうなミーシャ。 サムが思いかねて差し伸べた手を両手で包んで自分の頬に当てている。 その仕草があまりに可愛かったようで、サムは思わずミーシャを馬上に抱き上げてギュッと抱きしめてしまった。 「良い子にしてるんだぞ?婦長殿を困らせたらいけないよ。執事殿もだ。それと、ご飯はちゃんと食べるんだよ。僕が居ないときは勝手に食べて良いからね。それと、トイレに行きたくなった時は我慢しないで言うんだよ。それから・・・・・ クドクドと長くサムの諸注意が続く。ミーシャはそれに一々コクコクと頷いていた。 ちょっと呆れてリサがそれを見ていると、ややあってそこにヨシが自分の馬を連れてやってきた。 「あ、はい、お昼のお弁当」 「あ~ そっか。ありがとう」 「気をつけてね」 「うん、大丈夫だよ。それより、あっちに気をつけて。何かあったら頼むってアーサーに言ってあるけど、ジョアンの事もあるから」 領内へ出て行く夫を見送る妻。 ヨシとリサの関係をミーシャが眩しそうに見ているが、まだまだサムの注意は続いていた。 「その心配はないよ。だって今日は・・・・・」 「あぁ、そうだったね」 この日。軍の調査官らはここ紅朱館で地域総括相談役のバウアー卿を迎える事になっている。 エミールの父であり、そして地域軍総責任者ポール公の相談役ともなれば、その権力は絶大だ。 木っ端役人以下の調査官などあっという間に粛清の対象となりえた。 「まぁ、そんな訳で行って来るからね。ミーシャ、困った事があったリサに相談するんだよ?」 「はい、執事様」 「サムさん、では参りましょう」 「うん、じゃあ行こうか」 よっこいしょと馬からミーシャを下ろしたサム。 落ち着いていたミーシャが再び泣きそうな表情になっている。 「ミーシャ。人前でメソメソ泣いたらいけないよ。今夜寝るときに怖かった話を全部聞いてあげるからね」 「はい、旦那様」 馬の腹を蹴って駆け出すサムとヨシ。 少しだけ駆けてからサムが心配そうに後ろを振り返ると、遠くに絶望的な表情のミーシャが立っている。 その隣では笑顔のリサが手を振っていた。 「サムさん。心配要りませんよ」 「そうなんだがね・・・・ 大丈夫かな・・・・ やっぱり心配だな・・・・ ご飯食べるかな・・・・ トイレ我慢して泣き出したりしないかな・・・・ 「・・・・サムさん、あの」 「うん、大丈夫だよな。うん、きっと大丈夫だ・・・・」 だめだ。この人も大して変わんないや・・・・ ちょっと呆れてサムを見るヨシ。 この二人が種族を超えた兄弟である事を知るものは、城内にですらほとんど居なかった・・・・・・ 「見ろポール。あの子達が出て行くぞ」 「ジィさん、あんまり脅かすな」 「そうではない。今度はドジを踏むなよ。あの娘たちにカナと同じ事があったなら、ワシがお前さんらを粛清してやる」 紅朱館の執務室にある大きな窓から下を眺めていたポール公とバウアー老。 老いたりとは言えまだまだ矍鑠とするバウアー老は剣を杖代わりにして立っていた。 「もう2度とあんな事はおきませんよ。させません」 「本当か?」 「えぇ、常に護衛を付けおきます。特殊作戦軍の赤魔道士を呼んでありますし、それに」 やや離れた所で立って見ていたアリス夫人が唐突に話に割り込んだ。 「今回の3人は本当にただのイヌのようね。それに、多少は真面目だわ」 「しかし、化けの皮をかぶっているだけかもしれないぞ?」 「女の勘。とでも言っておこうかしら」 人生のベテラン3人が怖い顔で相談する後ろ。 城内と言うのに剣を腰から下げているアーサーが立っている。 その隣には最近になって最前線の一般兵卒に支給され始めた旋条銃を肩にかけるエミール。 ヒトの世界の小火器と同じく、銃身の内側にライフリングを切られたこの最新式の騎兵銃。 従来と同じ丸い弾でも命中精度と殺傷力が桁違いだった。 「父上、母上。カナさんの身に何か起きたのですか?」 不思議そうに尋ねたアーサー。エミールもまた不思議そうに見ている。 しかし、ふと振り返った父ポールの表情が途端に険しく曇るのを見て、それが尋常な事態ではない事を悟った。 そして、苦虫を噛み潰しているかのような表情の母アリスを見て、少なくともそれはただの失敗談では無い事を理解した。 「聞きたい?」 「・・・・できれば」 慎重に返答したつもりだったのだが、僅かな心身の乱れを漏らしてしまった気がした。 「アーサー、君は次期領主だ。知っておかねばならん。だが、今の態度はいただけん。もっと鷹揚と構えよ」 軍人として常に緊張感のある生き方を求めるバウアー老の叱責が飛ぶ。 幼い頃より父ポールが説教されているのを見てきたアーサーもまた、この老人に頭が上がらないで居る。 「もっと精進します」 「うむ、宜しい。して・・・・ 領主閣下」 バウアー老は常にアリスに対して閣下をつけ敬意を払う。 例えそれがどんな席であっても、未だにバウアー老の心には威厳あるジョン公が大きく構えていた。 バウアー老の心中にあるジョン公のその威徳の果てが未だに尾を引いている。 バウアー老は言う。 自分はジョン公の犬である。 生涯それを誇りにしている、と。 「やはり、あなた達は知っておかねばいけませんね。あの日の事を」 「・・・・何かあったのですね。マサミさんとカナさんに」 「えぇ。とても辛い事が・・・・」 コンコン 「誰だ?」 ドアのノックに対し威厳ある声でアーサーが誰何した。 次期領主として育てられたアーサーの、その少しずつ身に付いた振る舞い癖で一番板についているのがこれだった。 「タダヒトです。ミサも。あ、キックさんも一緒に」 アーサーが視線を父ポールに送った。 ポールは軽く頷きアリスに視線を送る。 アリスはアーサーの眼を見てから軽く頷いた。 「入っていいぞ」 「失礼します」 ガチャリ 静々と部屋に入ったタダとミサ。キックがその後ろに立っている。 だが、その部屋の中の空気が不思議な緊張感に包まれているのに気が付いた。 「姉貴に呼ばれて来たのですが、何か御用でしょうか」 マヤはジョアンと共にアーサーの自室で待機している。 アーサーがそのマヤに命じたのは、タダとミサを母アリスと父ポールのすぐ傍に置いておく事だった。 「今日はここで書類を作ります。その手伝いをしなさい」 「はい、奥様」 笑顔で答えるミサ。 タダはなんとなくその対応が気になっていた。 「タダ?何かあったの?」 「あ、いえ。でもなんかちょっと変だな?って感じです。途中からキックさんも一緒に」 アリス夫人の鋭い視線がキックに向かうのだが、彼女もまた修羅場をくぐってきたようで平然としている。 「軍の調査官の皆様は朝食を終えて調書の作成に取り掛かってられるようです。お部屋からはお出になられません」 「・・・・そう。誰か付いている?」 「メルさんがベテランのイヌを何人か連れて話し相手にと、お部屋に」 ウンウンと軽く頷いて窓の外にもう一度視線を向けたアリス夫人。 眼下ではリサとミーシャが作業服姿の城のスタッフと打ち合わせをしていた。 だが、その男たちは皆が軍の特殊部隊なんだろう。 努めて漏れぬように振舞うようで、見るものが見ればすぐに分かる振る舞いだった。 「まだまだね。あの若い子達も」 ボソリと一人ごちたアリス夫人がガラスに反射するタダの眼差しに気が付く。 「タダ。どうしたの?」 「なんか・・・・ 何かを恐れてる気がします」 何気ないタダの一言。 おそらく本人も気が付いていない違和感を感じるその正体。 「あなたは昔から勘の鋭い子だったわね。それはカナ譲りなのかしら」 再び窓の外の遠くを見つめるアリス夫人。 ポール公もまた口ひげをいじりながら、窓の下遠くを走っていくサムとヨシを見ていた。 「タダ。ミサもだ。今日は夜までこの部屋を離れてはいかん。よいな」 「はい、心得ました、御館様」 不思議な緊張感に包まれた室内。 張り詰めた表情のアリス夫人とポール公。 杖代わりに持つ剣の握りを何度も確かめるバウアー老。 何かを知っているはずのキックですら涼しげな表情で居て、どこか何かを警戒する風なのをミサは不思議そうに見ていた。 第11話 前編 了
https://w.atwiki.jp/re_notitle/pages/63.html
NAME 救急車 MAIN WEAPON SUB WEAPON CPU GRAPHIC CARD MEMORY SOUND CARD HEAD PHONE MOUSE MOUSE PAD KEY BOARD DISPLAY DISPLAY MODE MOUSE SENSI
https://w.atwiki.jp/akusennkutou/pages/6.html
(2006年01月06日) 何やってるんだろうね
https://w.atwiki.jp/freememo/pages/70.html
概要 コメント 概要 HyperText Markup Languageの略。 Webページを記述するためのマークアップ言語。W3Cが作成している規格で、最新版はHTML 4.01。 TOP コメント 名前 コメント TOP
https://w.atwiki.jp/kswc_kesc/pages/166.html
2010年12月~2011年1月 年末年始観望会 2010年12月30日から2011年1月2日にかけて、長野県野辺山にて年越し観望会に行きました。 天候は快晴、恐ろしいまでに快晴。
https://w.atwiki.jp/monosepia/pages/11140.html
(※mono....新型コロナ(COVID-19)による感染症が存在する前提でのページ作成) ロング・コビッド / ワクチン接種の後遺症 / ※【専門医の本音】新型コロナ後遺症患者の大半は下民のクズ!後遺症はゴミ箱だ! / 平畑光一 あら〜NHK、朝日が創価学会の平畑クリニックと手を組んでコロナ後遺症の宣伝ですか。仲良しですね。コロナワクチン接種歴も明確にしないと、ワクチンで後遺症を防げるなんて言えませんから是非明らかにしてくださいね。 あとNHKはコロナワクチン後遺症もちゃんと取り上げてくださいね。 https //t.co/xZCLY23B6w — れいちぇる (@KxJ9j1QXMZ9fGdX) May 8, 2024 コロナ後遺症 Long COVIDの衝撃の調査結果;後遺症はコロナが他の風邪により少なかった😅 風邪症状群を以下3つに分け、1年後に中等から重度の体調不良がある割合 ・コロナ陽性:3.0% ・風邪症状のコロナ陰性:4.1% ・インフルエンザ陽性:3.4%… — J Sato (@j_sato) March 15, 2024 コロナ後遺症 Long COVIDの衝撃の調査結果;後遺症はコロナが他の風邪により少なかった😅 風邪症状群を以下3つに分け、1年後に中等から重度の体調不良がある割合 コロナ陽性:3.0% 風邪症状のコロナ陰性:4.1% インフルエンザ陽性:3.4% 本論文の🇦🇺クイーンズランド州の最高保健責任者を含む著者「"コロナ後遺症"などという言葉は、何か独特で例外的なものがあるかのような誤った印象を与えるため、そろそろ使うのをやめるべき」 https //eurekalert.org/news-releases/1037611 ※ Long COVID ‘indistinguishable’ from other post-viral syndromes a year after infection 感染後1年で他のウイルス後症候群と「見分けがつかない」 / (機械翻訳) + ... クイーンズランド州の最高保健責任者を含む著者らは、「ロングCOVID」のような用語は、ウイルスに関連する長期的な症状について、何かユニークで例外的なものがあることを誤って暗示しているため、使用をやめる時が来たと述べています 報告書と議事録 欧州臨床微生物学・感染症学会 注 以下のリリースは、欧州臨床微生物学・感染症会議(ECCMID 2024、スペイン、バルセロナ、4月27-30日)からの特別な早期リリースです。このストーリーを使用する場合は、会議のクレジットを記入してください** スペインのバルセロナ(4月27-30日)で開催される今年の欧州臨床微生物学・感染症会議(ECCMID 2024)で発表された新しい研究によると、Long COVIDは季節性インフルエンザやその他の呼吸器疾患と区別がつかないウイルス後症候群として現れるようで、感染後1年で中等度から重度の機能制限が増加するという証拠はありません。 クイーンズランド州保健局の研究者による研究は、オミクロン株に曝露されたクイーンズランド州のワクチン接種率の高い集団[1]において、long COVIDが医療システムに与える影響は、long COVIDの症状や機能障害の重症度ではなく、短期間にSARS-CoV-2に感染した人の数が非常に多いことに起因している可能性が高いことを示唆しています。 この知見は、感染後12週間でCOVID-19をインフルエンザと比較したところ、進行中の症状と機能障害に差が見られなかったという、同じ著者らによるBMJ Public Health誌に掲載された以前の研究に追加されるものである[2]。 オーストラリアでは、COVID規制の緩和に伴うワクチン接種率が高く、その後、国民がオミクロン株に曝露したため、long COVIDの発生率は低くなっています。この病気で報告される症状には、倦怠感、ブレインフォグ、咳、息切れ、嗅覚と味覚の変化、めまい、頻繁または不整脈などがあります。 オーストラリアのクイーンズランド州に対するlong COVIDの影響をより深く理解するために、研究者らは、2022年5月29日から6月25日の間に、COVID-19のPCR感染が確認された人(成人2,399人)とCOVID-19のPCR陰性者(成人2,713人 インフルエンザ陽性995人、PCR陰性1,718人、呼吸器疾患の症状がある)を含む18歳以上の症状のある人5,112人を調査しました。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)およびインフルエンザの検査報告は、クイーンズランド州の公衆衛生法に基づき、PCR検査の要請に応じて義務付けられており、その結果はクイーンズランド州保健局の届出条件システムに記録されます。 PCR検査から1年後の2023年5月と6月に、SMSリンクで配信されるアンケートを使用して、参加者に進行中の症状と機能障害の程度について尋ねました。 全体では、全回答者の16%(834人/5,112人)が1年後に進行中の症状を報告し、3.6%(184人)が日常生活動作における中等度から重度の機能障害を報告した。 年齢、性別、ファーストネーションの地位などの影響力のある要因を調整した後、COVID-19陽性の成人は、COVID-19陰性の症状のある成人よりも診断後1年後に中等度から重度の機能制限を持つ可能性が高いというエビデンスは見つからなかった(3.0%対4.1%)。 さらに、インフルエンザに罹患した症状のある成人995人と比較しても、結果は同様であった(3.0%対3.4%)。 興味深いことに、この分析では、中等度から重度の機能障害を報告する可能性が高いのは、50歳以上の高齢者であり、めまい、筋肉痛、息切れ、労作後の倦怠感、疲労の症状がある人であることもわかりました。 「ワクチン接種率の高い人口を抱える医療システムでは、パンデミック中にCOVID-19の症例が多かったため、long COVIDは明確で重篤な病気に見えたかもしれません。しかし、進行中の症状や機能障害の発生率は、他のウイルス性疾患と区別がつかないことがわかりました」と、クイーンズランド州の最高保健責任者であるジョン・ジェラード博士は述べています。「これらの知見は、COVID-19後の転帰を他の呼吸器感染症後の転帰と比較すること、およびウイルス後症候群のさらなる研究の重要性を強調しています。」 さらに、「さらに、『ロングCOVID』のような言葉を使うのをやめる時が来たと考えています。彼らは、このウイルスに関連する長期的な症状について、何かユニークで例外的な何かがあることを誤って示唆しています。この用語は、不必要な恐怖を引き起こし、場合によっては、回復を妨げる可能性のある症状の長期化に対する過度の警戒を引き起こす可能性があります。 著者らは、この知見は関連性であり、有病率を表すものではないと警告している。彼らは、入院した参加者や持病のある参加者がコホート内で特定できないことなど、いくつかの限界を指摘している。また、オミクロン株の波では、他のSARS-CoV-2変異株と比較してlong COVIDのリスクが低く、オミクロン株が出現した時点でクイーンズランド州の人々の90%がワクチン接種を受けていたため、long COVIDの重症度が低いのは、ワクチン接種や変異株が原因である可能性があると指摘している。 記事の公開日 2024年3月14日 COIステートメント 著者は利益相反がないことを宣言します。 免責事項:AAASとEurekAlert!EurekAlertに投稿されたニュースリリースの正確性について責任を負いません。貢献機関によって、またはEurekAlertシステムを介した情報の使用のために。 そろそろ真相を! コロナ後遺症 Long COVIDの人でワクチン接種をしていない方は何%ですか? ワクチン接種をした人が大部分なら、それはワクチン接種後症候群PVS!https //t.co/ihD1ssIy8h https //t.co/AKmXJXd15W — Stray (@K9FCR) March 15, 2024 ※ Post-Vaccination Syndrome A Descriptive Analysis of Reported Symptoms and Patient Experiences After Covid-19 Immunization 「medRxiv(doi https //doi.org/10.1101/2023.11.09.23298266)」より View ORCID ProfileHarlan M. Krumholz, Yilun Wu, View ORCID ProfileMitsuaki Sawano, Rishi Shah, View ORCID ProfileTianna Zhou, View ORCID ProfileAdith S. Arun, View ORCID ProfilePavan Khosla, Shayaan Kaleem, Anushree Vashist, View ORCID ProfileBornali Bhattacharjee, View ORCID ProfileQinglan Ding, View ORCID ProfileYuan Lu, View ORCID ProfileCésar Caraballo, View ORCID ProfileFrederick Warner, Chenxi Huang, Jeph Herrin, David Putrino, Danice Hertz, Brianne Dressen, View ORCID ProfileAkiko Iwasaki / (機械翻訳) この論文はプレプリントであり、査読を受けていない[これはどういう意味か?]まだ評価されていない新しい医学研究の報告であるため、臨床診療の指針として使用すべきではない。 + ... 要旨 はじめに コビッド-19ワクチン接種後の慢性ワクチン接種後症候群(PVS)が報告されているが、その特徴についてはまだ十分に明らかにされていない。 方法 2022年5月から2023年7月にかけて、コビッド-19ワクチン接種後にPVSを自己報告し、オンラインのYale Listen to Immune, Symptom and Treatment Experiences Now(LISTEN)研究に参加した18歳以上の241人を対象とした。彼らの人口統計学、健康状態、症状、試した治療、および全体的な経験を要約した。 結果 参加者の年齢中央値は46歳(四分位範囲[IQR]:38~56)、女性192例(80%)、非ヒスパニック系白人209例(87%)、米国出身211例(88%)であった。PVSを発症した参加者のうち、127例(55%)はBNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech社製)を、86例(37%)はmRNA-1273ワクチン(Moderna社製)を接種していた。ワクチン接種から症状発現までの期間の中央値は3日(IQR:1日~8日)であった。ワクチン接種から症状調査完了までの期間は595日(IQR:417~661日)であった。Euro-QoL視覚的アナログスケール得点の中央値は50点(IQR:39~70)であった。最も多かった5つの症状は、運動不耐性(71%)、過度の疲労(69%)、しびれ(63%)、ブレインフォグ(63%)、神経障害(63%)であった。調査完了前の1週間で、参加者は不安(93%)、恐怖心(82%)、心配事に圧倒される(81%)、無力感(80%)、不安(76%)、抑うつ(76%)、絶望感(72%)、無価値感(49%)を少なくとも1度は感じたと報告した。参加者は、自分の状態を治療するために20回(IQR:13~30)の介入を行ったと報告した。 結論本研究では、コビッド-19ワクチン接種後にPVSを報告した患者は、多くの治療を試みたにもかかわらず、健康状態が低く、症状負荷が高く、心理社会的ストレスが高かった。この病態を理解し治療するために継続的な調査が必要である。 利益相反声明 ハーラン・クラムホルツは、過去3年間にElement Science社、Eyedentify社、F-Prime社から費用および/または個人的な報酬を受け取っている。彼はRefactor HealthとEnsight-AIの共同設立者である。ヒューゴ・キンドレッド・プラットフォームを開発したパーソナライズド・ヘルス・データ・プラットフォーム企業ヒューゴ・ヘルスの共同設立者であり、ヒューゴ・ヘルスの株式を持っている。配偶者はヒューゴ・ヘルス社の役員。エール大学利益相反委員会が本研究への関与を監督。Journal Watchの編集者: マサチューセッツ医学会の心臓病学の編集者であり、UpToDateのセクションエディター。イェール・ニューヘブン病院を通じてメディケア&メディケイド・サービスセンターから、またイェール大学を通じてヤンセン、ジョンソン・エンド・ジョンソン・コンシューマー、ファイザーから契約を結んでいる。岩崎明子はRIGImmune、Xanadu Bio、PanVを共同設立し、パラタス・サイエンシズとインビジ・シールド・テクノロジーズのコンサルタントを務め、ロシュ・ホールディング・リミテッドの取締役。Yuan Luは、米国国立衛生研究所、Patient-Centered Outcomes Research Institute、Sentara Research Foundationから研究助成を受けている。Jeph Herrinは、米国国立衛生研究所の複数の研究機関、Patient-Centered Outcomes Research Institute、米国心臓協会、Agency for Healthcare Research and Qualityから研究プロジェクトのための資金援助を受けている。Chenxi HuangはNational Center for Advancing Translational Science of the National Institutes of Health (UL1TR001863)からK12資金援助を受けている。Bornali BhattacharjeeはYale-Mayo Clinic Center of Excellence in Regulatory Science and Innovation (CERSI) (U01FD005938)の助成を受けており、Cesar Caraballoはその助成を受けている。他の著者には開示すべき金銭的関係はない。 資金提供 このプロジェクトは、一部Howard Hughes Medical Institute Collaborative COVID-19 Initiativeの支援、一部National Institutes of Healthの一部門であるNational Center for Advancing Translational ScienceのCTSA Grant Number UL1 TR001863の支援を受けた。本論文の内容は著者個人の責任によるものであり、必ずしも米国国立衛生研究所の公式見解を示すものではない。 著者宣言 関連する倫理指針がすべて遵守され、必要な IRB および/または倫理委員会の承認が得られたことを確認する。 はい 記載された研究に承認または免除を与えた IRB/監督機関の詳細を以下に示す: LISTEN(Listen to Immune, Symptom and Treatment Experiences Now)研究については、イェール大学の施設審査委員会(Institutional Review Board)が倫理的承認を与えた。STROBE報告ガイドラインに従った。Hugo Healthの共同設立者であるHarlan Krumholzは、Hugo Kindredプラットフォームを開発し、イェール大学の利益相反委員会が彼の関与を監督している。 私は、必要なすべての患者/参加者の同意が得られ、適切な機関書式が保管されていること、また、含まれる患者/参加者/試料の識別情報は、研究グループ以外の者(例えば、病院スタッフ、患者または参加者自身)には知らされておらず、個人を特定するために使用できないことを確認します。 はい すべての臨床試験およびその他の前向き介入研究は、ClinicalTrials.govのようなICMJE承認の登録機関に登録されなければならないことを理解します。私は、原稿で報告されたそのような試験が登録されていること、および試験登録IDが提供されていることを確認します(注:遡及的に登録された前向き試験を投稿する場合は、試験ID欄にその試験が事前に登録されなかった理由を説明する文を記入してください)。 はい 関連するEQUATORネットワークの研究報告チェックリストやその他の関連資料(該当する場合)など、すべての適切な研究報告ガイドラインに従った。 はい 脚注 Harlan Krumholz と Yilun Wu は共同筆頭著者である。 COVID-19 SARS-CoV-2プレプリントコレクション(medRxivおよびbioRxiv)に掲載された論文。 そんなに 殺したいのかね。https //t.co/Ncm0rT1Zxa pic.twitter.com/z5INLpyG6R — Laughing Man (@jhmdrei) February 25, 2024 ほら、きた。後遺症治療薬にアリセプトだってさ。グルタチオンなどの解毒じゃなくて、本物の薬が登場してきた。いずれ新薬も出てくる。これはもういつもの流れ。薬害おかわり状態。こんなことは最初からわかっていたことですけどね。どうせ解毒なぞできないからこそ、毒薬が活躍するチャンス。 https //t.co/Q7byDe4VSJ pic.twitter.com/9NSvmKqN6k — 自粛マスク蛋白マン (@1A48wvlkQc6mVdR) April 6, 2023 いーーーっ? ドネペジル(先発薬の商品名アリセプト)飲ませるの? 認知症治療で利益が不十分だとして、フランスが保険適用から外した薬やけと。。。 新型コロナ“後遺症”に認知症の薬が有効か 患者から期待の声(テレビ朝日系(ANN)) https //t.co/kQkNCvvRRe — 鳥集徹 (@torutoridamari) April 5, 2023 T. S.@tstateiwa 4月5日 認知症に対しては、診断が合っていれば、40人に1人は効果が出るとか。まあ、私は、中止したことはあっても、処方したことはないです。 丹羽伸夫(ゼット変人)@nobuoniwa 4月6日 記事曰く、「この薬(*)は脳内の神経伝達物質「アセチルコリン」を増やす働きがあります。」 (*ドネペジル) それならタバコにも含まれるニコチンで良いでしょう。 tabuchi y@TabuchiY 4月6日 友人はドネペジルで認知症は抑えられないだけでなく、吐き気と食欲不振で激やせしました。ふらふらになりました。止めたけれど、家族が飲ませたいのだと。 ななや@nanaya_voice 4月6日 アリセプト服用し出してから、おとなしかった夫が怒りっぽくなり妻に手を上げるようになった患者さんがいました。 認知症が進んだからという人もいるけど、薬で性格変化する人もいます。 薬に頼りすぎる現代人の考え方を変えた方がいいと思います。 kazuya nishio@kazz2403 4月6日 10年近く前、アルツハイマー型認知症が進んだ義母に処方されました。 すると徘徊などに対して注意する義息子の私に凶暴性を発揮し、拳を上げて鬼の形相で殴りかかってくるのです。 医師に伝えて中止してからは認知症は進行したものの、笑顔で温和な性格に戻りました。 もふもふ@SPnHa0ycNOQwgTZ 4月6日 爺ちゃん認知症の薬飲んで悪化した 1年足らずで介護2→5になって老健に入ったよ 薬が合わなかった場合失うものが大きい若い方は慎重に 生活が困難になっても老人なら介護サービスや施設が沢山あるけど若い人は少ない 【マスク】 / 【マスクの危険性】 新しい研究 ドイツの研究チームは、マスクの悪影響に関するシステマティック レビューを発表し、「マスクによる悪い症状がコロナ後遺症と誤解されている可能性がある」と警告している。 結果:… https //t.co/Iz402ECndb pic.twitter.com/2BphXf51RW — You (@You3_JP) April 9, 2023 ※ Physio-metabolic and clinical consequences of wearing face masks—Systematic review with meta-analysis and comprehensive evaluation 「Frontiers(05 April 2023)」より You@You3_JP 新しい研究 ドイツの研究チームは、マスクの悪影響に関するシステマティック レビューを発表し、「マスクによる悪い症状がコロナ後遺症と誤解されている可能性がある」と警告している。 結果: マスクが血中酸素濃度と呼吸量の低下、心拍数、血圧、皮膚温、湿度の上昇を引き起こし、マスクの着用が疲労感、不快感、呼吸困難、蒸し暑さをもたらしたことは明確だった。 マスクによる頭痛、にきび、肌荒れ、呼吸困難、熱感、かゆみ、発声障害、めまいなどの症状の有病率が有意であった。 考察: マスクは酸素の取り込みと二酸化炭素の放出を阻害し、呼吸機能の代謝を低下させる。 短時間のマスクの着用でも、マスク誘発性疲労症候群(MIES)とその影響による生理・代謝障害が確認された。MIESは、特に脆弱な集団にとって、長期的な臨床的影響を及ぼす可能性がある。これまで、マスクに起因する症状の一部がコロナ後遺症の症状として誤って認識されてきた可能性がある。 結論: マスクの有害性は、ウイルス感染に対する有効性の利用可能なエビデンスに基づいてリスクとベネフィットを評価されなければならない。有効性に関する信頼性の高い実証的エビデンスがないため、マスク着用は法律で強制されることはもちろん、義務化されるべきではない。 ◆ コロナ後遺症で脳が縮小【Twitter検索】 COVID-19による後遺症だって? 長期に渡るロックダウン、コロナ禍での過大な精神的ストレスや常時マスクによる血中酸素不足、ワクチン接種による作用との関連性は疑わないのか? ためにする調査としか良いようがない。 死ぬ疫病ですね。 コロナウィルス 米国で新型コロナ感染後遺症による就労困難者、400万人以上とシンクタンク推計#ノーマスク#マスクをはずそう 血液異常は身体を共有するお腹の中の子供にも起こるhttps //t.co/h1Yon1sqDx 感染者は脳が縮小pic.twitter.com/1hx1exqWu7 妊婦https //t.co/pyoxkVOuv7 — アイサ (@ststst205s) October 1, 2022 ■ 「人生が壊れた」コロナ後遺症 10人に1人の“なぜ” 最新の研究で見えてきた 後遺症を引き起こす“体の仕組み” 【テレメンタリー2022】 ANNnewsCH ※mono....2回目のワクチン接種後に倦怠感、嗅覚異常に改善がみられ、以後恢復へ向かった、という説明。monosepiaは評論しない。病気というのは言葉と密接な関係にあることが改めて感じられる動画だった。 ,