約 3,247,508 件
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/168.html
2011年11月12日 韓国の出版社・三中堂(さんちゅうどう/サムジュンダン)(삼중당)が1978年から1981年にかけて刊行したミステリ叢書《三中堂ミステリ名作》全40巻のリスト。 訳者の一人であるファン・ジョンホ(黄鍾灝)氏の「韓国推理小説の現状」(『日本推理作家協会会報』1984年6月号(No.426))ではこの叢書は全48巻とされているが、韓国国立中央図書館の蔵書データを検索したところ40巻までしか見つからなかった。韓国のミステリファンのサイトなどを見ても、実際は全40巻というのが正しいようである。 三中堂ミステリ名作(1978-1981年、全40巻) 韓国語表記:삼중당 미스테리 명작 [三中堂미스테리名作] 韓国のcaspiさんのブログの記事で何冊かの表紙の写真が見られる → リンク 日本の作品は青で示す。 作者 一般的な邦題 作者名韓国語表記 韓国語タイトル 訳者 出版年 01 コナン・ドイル (シャーロック・ホームズの冒険 1) A. C. 도일 『셜록 호움즈의 모험 1』(셜록 호움즈의 冒險 1) イ・ガヒョン(李佳炯) 1978 02 コナン・ドイル 『恐怖の谷』 A. C. 도일 『공포의 계곡』(공포의 溪谷) ファン・ジョンホ(黄鍾灝) 1978 03 G・K・チェスタトン (ブラウン神父の冒険) G. K. 체스터튼 『브라운 신부의 모험』(브라운 神父의 冒險) チョン・ビョンジョ(鄭炳祖) 1978 04 E・C・ベントリー 『トレント最後の事件』 E. C. 벤틀리 『트렌트최후의 사건』(트렌트最後의 事件) チョン・ソンファン(鄭成煥) 1978 05 A・A・ミルン 『赤い家の秘密』 A. A. 밀른 『빨간집의 비밀』(빨간집의 秘密) チョン・ソンファン(鄭成煥) 1978 06 アガサ・クリスティ 『アクロイド殺し』 A. 크리스티 『애크로이드의 살해』(애크로이드의 殺害) ホン・ジュニ(洪俊憙) 1978 07 アガサ・クリスティ 『そして誰もいなくなった』 A. 크리스티 『열개의 인디언 인형』(열개의 인디언 人形) オ・イオン(呉理蘊) 1978 08 ニコラス・ブレイク 『章の終り』 N. 블레이크 『종장』(終章) チョン・ビョンジョ(鄭炳祖) 1978 09 エリック・アンブラー 『武器の道』 E. 앰블러 『무기의 통로』(武器의 通路) イム・ヨン(林英) 1978 10 イアン・フレミング 『007/カジノ・ロワイヤル』 I. 플레밍 『카지노 르와얄르』 ホン・スンビョン(洪淳昺) 1978 11 ロバート・マーカム 『007/孫大佐』 R. 마아캄 『손대령』(孫大領) チョン・ビョンジョ(鄭炳祖) 1978 12 ジョン・ル・カレ 『寒い国から帰ってきたスパイ』 J. 르카레 『추운나라에서 온 스파이』 チャン・ワンノク(張旺禄)シム・ミョンホ(沈明鎬) 1978 13 コナン・ドイル (シャーロック・ホームズの冒険 2) A. C. 도일 『셜록 호움즈의 모험 2』(셜록 호움즈의 冒險 2) イ・ガヒョン(李佳炯) 1978 14 エラリー・クイーン (エラリー・クイーンの冒険) 엘러리 쿠인 『엘러리 쿠인의 모험』(엘러리 쿠인의 冒險) イ・ガヒョン(李佳炯) 1978 15 E・S・ガードナー 『大胆なおとり』 E. S. 가아드너 『대담한 유혹』(대담한 誘惑) キム・ジェナム(金在枏) 1978 16 レイモンド・チャンドラー 『大いなる眠り』 R. 찬들러 『크나큰 잠』 チョン・ドゥビョン(千杜昺) 1978 17 ロス・マクドナルド 『地中の男』 R. 맥더널드 『지하인간』(地下人間) イ・ガヒョン(李佳炯) 1978 18 エド・マクベイン 『レディ・キラー』 에드 맥베인 『레이디 킬러』 キム・ウタク(金遇鐸) 1978 19 高木彬光 『破戒裁判』 다까기 아끼미쓰 『파계재판』(破戒裁判) チャン・ベギル(張伯逸) 1978 20 水上勉 『死の流域』 미나까미 쓰도무 『죽음의 유역』(죽음의 流域) キム・サンイル(金相一) 1978 21 コナン・ドイル 『緋色の研究』 A. C. 도일 『주홍색의 연구』(주홍색의 硏究) チョ・ウンジェ(趙雲済) 1979 22 アガサ・クリスティ 『オリエント急行の殺人』 A. 크리스티 『오리엔트특급의 살인』(오리엔트特急의 殺人) ペク・キルソン(白吉善) 1979 23 ジョン・ディクスン・カー 『火刑法廷』 J. D. 카아 『화형법정』(火刑法廷) ファン・ジョンホ(黄鍾灝) 1979 24 エドガー・アラン・ポー (ポー推理名作選) E. A. 포우 『포우 추리명작선』(포우 推理名作選) キム・ジョンス(金貞洙) 1979 25 レックス・スタウト 『料理長が多すぎる』 R. 스타우트 『요리장이 너무많다』(料理長이 너무많다) ユン・ジョンヒョク(尹鍾爀) 1979 26 エド・マクベイン 『はめ絵』 에드 맥베인 『찢겨진 사진』(찢겨진 寫眞) チョン・スンゴル(千勝傑) 1979 27 ペール・ヴァールーマイ・シューヴァル 『笑う警官』 P. 왈루우M. 슈왈 『웃는 경관』(웃는 警官) イ・ガヒョン(李佳炯) 1979 28 横溝正史 『蝶々殺人事件』 요꼬미조 세이시 『나비부인 살인사건』(나비부인 殺人事件) チェ・イルス(崔一秀) 1979 29 黒岩重吾 『真昼の罠』 구로이와 주우고 『대낮의 함정』(대낮의 陷穽) クォン・イルソン(権逸松) 1979 30 森村誠一 『野性の証明』 모리무라 세이이찌 『야성의 증명』(野性의 證明) キム・ジョンウ(金貞宇) 1979 31 F・W・クロフツ 『フレンチ警部最大の事件』 F. W. 크로프츠 『프렌치경감 최대의 사건』(프렌치警監 最大의 事件) イ・ギソク(李基錫) 1980 32 サマセット・モーム 『アシェンデン』 S. 모옴 『어센덴』 ハ・ヨンジン(河永辰) 1980 33 J・D・カー 『皇帝の嗅ぎ煙草入れ』 J. D. 카아 『황제의 코담배갑』(皇帝의 코담배갑) ファン・ジョンホ(黄鍾灝) 1980 34 ジョルジュ・シムノン 『黄色い犬』 G. 시므농 『황견』(黃犬) キム・イジョン(金義貞) 1980 35 坂口安吾 『不連続殺人事件』 사까구찌 앙고 『불연속살인사건』(不連續殺人事件) ヒョン・ジェフン(玄在勲) 1980 36 佐野洋 『金色の喪章』 사노 요오 『금색의 상장』(金色의 喪章) キム・ジョンウ(金貞宇) 1980 37 (世界推理傑作選) 『세계추리걸작선』(世界推理傑作選) イ・ガヒョン(李佳炯) 1980 38 アガサ・クリスティ 『無実はさいなむ』 A. 크리스티 『나는 결백하다』 (文龍) 1981 39 ジョン・ディクスン・カー 『魔女の隠れ家』 J. D. 카아 『마녀의 은신처』(魔女의 은신처) イ・ガヒョン(李佳炯) 1981 40 E・S・ガードナー 『義眼殺人事件』 E. S. 가아드너 『유리눈의 사나이』 イ・ガヒョン(李佳炯) 1981 01 『シャーロック・ホームズの冒険 1』 8編収録「ボヘミアの醜聞」、「赤毛組合」、「花婿の正体」、「ボスコム谷の惨劇」、「五つのオレンジの種」、「くちびるのねじれた男」、「青い柘榴石」、「まだらの紐」 13 『シャーロック・ホームズの冒険 2』 6編収録「技師の親指」、「独身の貴族」、「緑柱石の宝冠」、「ぶなの木屋敷の怪」、「銀星号事件」、「黄色い顔」 03 『ブラウン神父の冒険』 8編収録「飛ぶ星」、「イズレイル・ガウの誉れ」、「狂った形」、「神の鉄槌」、「アポロの眼」、「折れた剣」、「青い十字架」、「天の矢」 14 『エラリー・クイーンの冒険』 3編収録「七匹の黒猫の冒険」、「は茶め茶会の冒険」、「神の灯」 24 『ポー推理名作選』 5編収録「モルグ街の殺人」、「マリー・ロジェの謎」、「盗まれた手紙」、「「お前が犯人だ」」、「黄金虫」 34 ジョルジュ・シムノン『黄色い犬』 2編収録「黄色い犬」、「メグレのパイプ」 37 『世界推理傑作選』の収録作ドロシー・L・セイヤーズ「疑惑」 F・W・クロフツ「ブーメラン」(別題「一石二鳥」) サマセット・モーム「密林の足跡」 カーター・ディクスン 不明(直訳:「密室の犯罪」) M・D・ポースト 不明(直訳:「神の裁判」) ダシール・ハメット「カウフィグナル島の略奪」 E・S・ガードナー 不明(直訳:「怒った証人」) ヘンリー・スレッサー 不明(直訳:「悪人は地獄に」) 松本清張「顔」 (※以上のリストは韓国国立中央図書館の蔵書データを検索して作成した。) 主要翻訳者紹介 イ・ガヒョン(李佳炯):『シャーロック・ホームズの冒険』1・2、『エラリー・クイーンの冒険』、『地中の男』、『笑う警官』、『魔女の隠れ家』、『義眼殺人事件』、『世界推理傑作選』を翻訳 ファン・ジョンホ(黄鍾灝):『恐怖の谷』、『火刑法廷』、『皇帝の嗅ぎ煙草入れ』を翻訳 ヒョン・ジェフン(玄在勲):『不連続殺人事件』を翻訳 以上の3人については、河西出版社《世界推理文学全集》(全20巻)、《河西推理選書》(全36巻)の翻訳者紹介で紹介している。
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/260.html
2020年8月16日 松川良宏(非英語圏ミステリ研究家) [日本推理作家協会・本格ミステリ作家クラブ会員] 「フランス・ミステリ」を特集した探偵小説研究会の機関誌『CRITICA』第15号[summer 2020](2020年8月13日発行)で、当サイトにご言及いただきました。ありがとうございます。 ただ、当サイト内のフランスミステリ関連情報は、どこにどの情報があるのか、いまいちまとまっておりません。そこでこの機会に、当サイト内のフランスミステリ関連情報の一覧を作成しておくことにいたしました。 当サイトは頻繁に更新していたのは2015年の夏ごろまでで、それ以降はあまり情報を更新できていません。今回、更新・整理のきっかけを作ってくださったことに感謝いたします。 探偵小説研究会 公式サイト『CRITICA』第15号は2020年8月16日現在、古書店・盛林堂書房(東京、西荻窪)およびその通販サイトでのみ購入可能 『CRITICA』第15号で当サイト(及び筆者が実施した企画)に言及してくださった論考横井司氏「ささやかな読書量でフランス・ミステリの十傑を選んでみよう」 嵩平何(たかひら なに)氏「フランスミステリの紹介者たち」 Index 2014年の企画「フランスミステリベスト100」関連2020年の日本におけるフランスミステリの《位置》と、2014年の企画「フランスミステリベスト100」の背景 フランスミステリ必読リスト フランスミステリ邦訳一覧 フランスのミステリ賞受賞作の邦訳状況 フランスミステリの日本での評価本格ミステリ・ベスト10(原書房) このミステリーがすごい!(宝島社) 『週刊文春』ミステリーベスト10(文藝春秋) ミステリが読みたい!(早川書房) 『IN☆POCKET』文庫翻訳ミステリー・ベスト10(講談社) 東西ミステリーベスト100(1985年版、2012年版) フランスにおける日本ミステリ 関連ページ 2014年の企画「フランスミステリベスト100」関連 フランスミステリベスト100(2014年8月14日)Les cent meilleurs romans policiers français de tous les temps(「フランスミステリベスト100」の結果をフランス語原題で示し、英語で企画について簡単な解説を加えたページ) 関連:非英仏語圏ミステリベスト100(「フランスミステリベスト100」と連続して実施した相互補完的アンケート企画) Webサイト「翻訳ミステリー大賞シンジケート」に寄稿したもの実施要項Twitterにて「フランスミステリベスト100」アンケート実施!(2014年7月31日) 「書影付き」順位発表 ※ただし書影はamazonにデータがあるもののみフランスミステリベスト100結果発表!(その1)【1位~30位】(2014年8月20日) フランスミステリベスト100結果発表!(その2)【31位~69位】(2014年8月20日) フランスミステリベスト100結果発表!(その3)【70位~100位+作家ランキング】(2014年8月20日) リアルタイムの結果発表の模様Togetter「フランスミステリベスト100」結果発表(2014年8月13日) フランスミステリベスト100概要 2014年7月17日、当時筆者がWebサイト「翻訳ミステリー大賞シンジケート」で月一回の連載をしていた「非英語圏ミステリー賞あ・ら・かると」の記事内で実施予告。7月31日、「翻訳ミステリー大賞シンジケート」で実施要項公開。同日21時より8月12日24時までの約2週間弱のあいだ、Twitterにてアンケート回答を募った(ハッシュタグ #ATB仏ミス)。1人最大10作品まで(順位はつけてもつけなくてもよい)。高名な小説家や評論家、翻訳家のかたも含め、締切の8月12日までに67名の方から投票をいただき、翌8月13日に予定通りTwitterにて結果を発表した。 実施要項の公開などで「翻訳ミステリー大賞シンジケート」の場をお借りしたが、企画・主催者は筆者(=松川)個人であり、実施要項の策定や集計・発表も筆者が個人でおこなったものである。 なお、このアンケート企画の結果をフランスの人にも見つけてもらえたらいいなという思いで、拙いフランス語と英語で欧米向けページを作ったところ、実施半年後の2015年2月になってフランスのミステリ専門図書館「BILIPO」のFacebookアカウントにより捕捉され、「日本の読者が一番好きなフランスミステリはピエール・シニアックの『ウサギ料理は殺しの味』」という情報がフランス中に拡散され(てしまっ)たようである。(該当のFacebook記事) さて、本ページは本来、当サイト内に分散している「フランスミステリ関連情報」にアクセスしやすくするため、単にページの一覧(羅列)を作成して終えるつもりだった。ただ、2014年に筆者が実施したアンケート企画「フランスミステリベスト100」に関しては、2020年現在と当時(6年前)の状況の違いを踏まえた解説を新たに書いておく必要があると考え、以下に記しておく。 2020年の日本におけるフランスミステリの《位置》と、2014年の企画「フランスミステリベスト100」の背景 2020年現在でこそ、フランスミステリは集英社文庫やハヤカワ・ミステリ(いわゆる「ポケミス」)などで毎年ある程度の点数が翻訳出版され、そのなかで注目を集め、ミステリの年間ベスト10にランクインするような作品もある。今年度(2019年11月以降)でいえば、集英社文庫のギヨーム・ミュッソ『パリのアパルトマン』(吉田恒雄訳、2019年11月)および『作家の秘められた人生』(吉田恒雄訳、2020年9月予定)、ポケミスのエルザ・マルポ『念入りに殺された男』(加藤かおり訳、2020年6月)、ジャン=クリストフ・グランジェ『ブラック・ハンター』(平岡敦訳、2020年9月予定)、ほかにベルナール・ミニエ『魔女の組曲』(上下巻、坂田雪子訳、〈ハーパーBOOKS〉ハーパーコリンズ・ジャパン、2020年1月)などが刊行され、(来月刊行予定の2点はまだ分からないが)どの作品も高い評価を得ている(タイトルのリンク先はすべて、「翻訳ミステリー大賞シンジケート」内「書評七福神の今月の一冊」の該当月のページ)。 しかしこのアンケート企画を実施した2014年7~8月当時はフランスミステリの邦訳がほとんどなくなっていた時期であった。フランスミステリは日本では1970年代までは盛んに訳されていたものの、その後は急激に翻訳点数が少なくなっている*1。2014年当時の日本の若いミステリ読者にとって《フランスミステリ》とは、ごく一部の語り継がれる名作を除き、「過去に大量に訳されているらしいので読もうと思えば読めるけど、そもそもどんなものが訳されているか分からないし、入手困難なものも多いようだし、どの作品から手を付けていいかも分からない」ものだったといっていいだろう。 なお当サイトでは、「どんなものが訳されているか分からない」という状況を打破するため、2012年に「ポケミス非英語圏作品一覧」と「創元推理文庫海外ミステリ非英語圏作品一覧」、2013年に「ハヤカワ・ミステリ文庫非英語圏作品一覧」を公開した。「非英語圏作品一覧」といっても、実質的にはフランスミステリがリストのほとんどを占めていたわけである。 *1 +ポケミスで見るフランスミステリの刊行点数(クリックで展開) ポケミス(1953年9月創刊)でのフランスミステリの刊行点数は、1950年代が20点、1960年代が31点、1970年代が35点であったのに対し、1980年代前半は8点、1980年代後半は1点(フランソワ・ラントラード『バルザック刑事と女捜査官』高野優訳、1989年8月)、1990年代は10年間でたった1点(ロジェ・ラブリュス『罪深き村の犯罪』高野優訳、1991年8月)である。ポケミスではその後、ポール・アルテ『第四の扉』(平岡敦訳)が2002年5月に刊行されるまで、実に10年以上もフランスミステリの刊行がなかった。 つまり見方を変えれば、1985年1月~2002年4月の約17年間で、ポケミスではフランスミステリが2点しか刊行されなかったということである。(もっとも、ポケミスの刊行ペース自体が年代によって異なることにも留意する必要があるし、ポケミスだけで日本におけるフランスミステリの隆盛を判断するのも無理がある) 『ミステリマガジン』2003年7月号に「フランス・ミステリ必読30冊」(選者の記載なし/レビュー:小木曽郷平、香川勇人、川出正樹、不来方優亜、杉江松恋、南波雅、羽取慶治、福井健太、古山裕樹、村上貴史、与儀明子)が載っているが、雑誌のバックナンバーを入手または閲覧するのは必ずしも容易ではない。2012年に新版が出た『東西ミステリーベスト100』(『週刊文春』臨時増刊号 文藝春秋 / 2013年文春文庫)のように書店に行けばすぐに入手できるものではないのである。つまり2014年当時、フランスミステリを読む「指針」になるようなものはほぼ存在しなかったといっても過言ではないだろう。むろん、その「未知の沃野」へと徒手空拳で挑んでいくことこそ読書の醍醐味ではないかと考える読者も多いのではないかと思うが、個人的には、過去に邦訳された膨大なフランスミステリを読むための、なんらかの「指針」がほしいと思ったのも事実である。筆者は2012年版『東西ミステリーベスト100』を発売日の2012年11月21日に購入したが、その翌日、以下のようにツイートした。 東西ミステリーベスト100に続いて、投票対象をフランスミステリだけに限った『仏蘭西ミステリーベスト100』をどこか出してくれないかな。 午後11 13、2012年11月22日 2014年に実施した「フランスミステリベスト100」は、約1年8か月を経てこれを自分で実現した形であった。なお、上に引用したツイートにすぐさまリプライをくださったのは、探偵小説研究会の一員(当時および現在)である千街晶之氏であった。千街氏のリプライを以下に引用する。 ルルーやジャプリゾは当然ベストテンに入るとして、ピエール・シニアックがいきなり票を伸ばしたりとかカオスな結果になりそうです。 午後11 18、2012年11月22日 これはまさに慧眼としかいいようがない(千街氏は、当時も今も、筆者が最も信頼しているミステリ評論家のひとりである)。実際、2014年に実施した「フランスミステリベスト100」では、おおかたの予想を裏切り、ピエール・シニアックの怪作『ウサギ料理は殺しの味』が1位を掻っ攫ったのである(ルルーは3位、ジャプリゾは5位)。 このアンケート企画を実施した2014年当時、筆者は特にフランスミステリに詳しかったわけでも、たくさん読んでいたわけでもなかった。むろん、投票するに際してそれなりの冊数をまとめて読んだわけだが、「フランスミステリベスト100」は、そんなフランスミステリの初心者だった筆者が、「かつて邦訳されたフランスミステリ」について、どの作品がお薦めなのか、どの作品から手に取っていけばいいのか、なんらかの指針が作れないものかと思って実施したものである。 なお、「フランスミステリベスト100」の結果発表の約3週間後、文春文庫からピエール・ルメートル『その女アレックス』(橘明美訳)が刊行されて大ベストセラーとなり、以降、日本でのフランスミステリの翻訳出版状況は一変することとなった。集英社文庫からはエルヴェ・コメール、ミシェル・ビュッシら、新たなフランスのミステリ作家の紹介が続き、また《その女アレックス以前》に紹介されていたポール・アルテやジャン=クリストフ・グランジェらの作品の邦訳も再開され、まさに日本における《フランスミステリ再興(ルネサンス)》の様相を呈するようになったのである。*2 *3 *2=集英社の果たした役割/なぜ『その女アレックス』というヒット作が「潮流」の起点になり得たか【2020年8月17日追記】 +クリックで展開 もっとも、エルヴェ・コメールの初訳作品『悪意の波紋』(山口羊子訳、集英社文庫)が刊行されたのは2015年3月、つまり《その女アレックス以後》ではあるが、この作品の刊行は2012年12月刊の『このミステリーがすごい! 2013年版』に掲載された「我が社の隠し玉」で、『水の波紋』としてすでに予告されている。日本の翻訳ミステリ界が『その女アレックス』旋風に沸く中で、集英社の編集部がそれに続けとばかりに版権を取ったわけではないということである。また、ミシェル・ビュッシの初訳作品『彼女のいない飛行機』(平岡敦訳)は2015年8月に刊行されている。これもおそらくは、『その女アレックス』旋風以前に版権を取得したものだろう。 つまり、2014年以降の《フランスミステリ再興(ルネサンス)》は『その女アレックス』が一つの起爆剤となったとはいえるだろうが、それがピエール・ルメートルという作家の単発の人気で終わらず「フランスミステリ復権」へのひとつの流れとなったのは、時間的にはあとになったが、集英社文庫の支えがあったからこそだといえるだろう。集英社文庫が「点」を「線」に、あるいは「局所的爆発」を「一つの潮流」に変えたのである。 そもそも、『その女アレックス』を出版した文藝春秋は、ほかのフランス作家のミステリを続けて刊行したりはしていない。その点からみても、2008年に邦訳出版が始まった《ミレニアム》シリーズに端を発する北欧ミステリ・ブームや、2011年に邦訳されたフェルディナント・フォン・シーラッハ『犯罪』を契機とするドイツ語圏ミステリ・ブームと、2014年からの日本における《フランスミステリ再興(ルネサンス)》はかなり質の違うものである。北欧ミステリ・ブームとドイツ語圏ミステリ・ブームにもまた明確な差異があるが、この3つの違いについては時間があれば改めて述べたい。 *3=ポール・アルテの復活/《フランスミステリ再興(ルネサンス)》の成立過程【2020年8月17日追記】 (※注3は注2の内容を前提に書いたものです) +クリックで展開 ポール・アルテの邦訳が再開されたことも、『その女アレックス』のヒットとは関係がない。ポール・アルテは2002年から2010年にかけて、ポケミスで平岡敦氏の訳で9冊が刊行されたが、2010年10月の『殺す手紙』を最後に邦訳が止まっていた(短編の邦訳が『ミステリマガジン』に載ったことはあった)。そして2018年7月、福岡の小出版社・行舟文化(ぎょうしゅうぶんか)から、『あやかしの裏通り』を皮切りに、同じ平岡敦氏の訳で、日本では未紹介だった《名探偵オーウェン・バーンズ》シリーズの翻訳出版が開始された。この「アルテ復活」は、本格ミステリマニアで日本語も堪能なある福岡在住の中国人夫婦のミステリ愛と行動力によって実現したものである。筆者が知っている限りで、ざっと経緯を書いておく。(前にTwitterで書いたこともある) その福岡在住の中国人夫婦というのは、麻耶雄嵩作品や三津田信三作品の中国語訳を手掛け、霜月蒼『アガサ・クリスティー完全攻略』や権田萬治『謎と恐怖の楽園で』などの評論書の中国語訳もおこない、さらには自ら推理小説も上梓しており、またミステリ賞の審査員として陸秋槎らを発掘した張舟(ちょう しゅう)氏のことである(公開されていることだが、夫妻2人の筆名である)。 筆者が張舟氏から、なぜ日本ではポール・アルテの翻訳が出なくなったのかを尋ねられたのは、2016年6月のことだったと思う。東京で本格ミステリ大賞受賞者のトークショー&サイン会が開催され、張舟氏はこれに申し込んで上京してきていたのである。 筆者はそれ以前に、平岡敦氏が雑誌でポール・アルテをまた訳したい旨書いていたことを覚えていたし(『ミステリマガジン』2013年11月号[ポケミス60周年記念特大号]だと思うが、実家に置いてあるため、確認できない)、なにかのミステリ賞の授賞式に参加させていただいたときに平岡氏とお会いする機会があり、そのときにもご本人からそのご意向を伺っていた。そこで、それを張舟氏に伝えたわけである。 次に張舟氏に会ったのはその1年後、2017年6月の本格ミステリ大賞イベントのときだが、そのときに張舟氏から、「自分が設立する出版社でアルテを出すことになった。版権はすでに取れており、翻訳は平岡敦氏が引き受けてくださった」というようなことを言われて、その行動力に仰天することになった(その1年のあいだに、関連するメールはもらっていたのだが、見逃していたのである)。そしてさらに1年後の2018年7月、張舟夫妻が設立した行舟文化からポール・アルテ『あやかしの裏通り』が刊行された。そして見事、年末の各種のミステリランキングで上位に入ったのである。 長くなってしまったが、つまり2014年以降の《フランスミステリ再興(ルネサンス)》は、『その女アレックス』に端を発するひとつの流れというわけではなく、実際には、『その女アレックス』でルメートルを大人気作家にした文藝春秋、それ以前から着実にフランスの実力派ミステリ作家に目を付けていた集英社、そして並外れた行動力でアルテを復活させた行舟文化、といった別々の出版社の別個の動きが、なにか一つの大きな潮流に「見えた」ということなのだと筆者は考えている。とはいえ、それも「最初はそうだったのだろう」という話である。ジャン=クリストフ・グランジェの邦訳が再開されたのは、やはりその「潮流」(のように見えたもの)が影響しているのかもしれないし、ポケミスからサンドリーヌ・コレット『ささやかな手記』(加藤かおり訳、2016年)やソフィー・エナフ『パリ警視庁迷宮捜査班』(山本知子、川口明百美訳、2019年)が刊行されたのも、この「潮流」なくしてはありえなかったかもしれない。いまや《フランスミステリ再興(ルネサンス)》の潮流は、翻訳ミステリ界を形作る重要な要素のひとつとなり、厳然として存在しているといえるだろう。 このアンケート企画を『その女アレックス』邦訳刊行直前に実施したのは単なる偶然だったが、振り返って考えると2014年版「フランスミステリベスト100」は、ちょうど《その女アレックス以前》の日本のフランスミステリの状況を切り取ることができており、まさにベストなタイミングだったのではないかと考えている。仮に今後同趣旨の企画が実施された場合、《その女アレックス以後》の邦訳作品群により、ランキングの結果は一変することになるだろう。次はどこかの出版社や雑誌の企画で「正式」に実施していただきたいところだが、《その女アレックス以後》を反映した新たな「フランスミステリベスト100」のランキングを見られる日が来ることを期待している。 なお、「フランスミステリベスト100」はそれ単独で企画したものではなく、続けて実施した「非英仏語圏ミステリベスト100」と合わせて1つの企画となっている。後者では北欧ミステリやドイツミステリ、中南米ミステリなどが上位を競っているが、華文ミステリは非常に影が薄い。2014年当時、「華文ミステリ(ー)」という言葉は日本のミステリ読者のあいだではまったく一般的ではなく、邦訳もまだ少なかった。この言葉が日本のミステリ読者に広く知られるようになったのは、2017年9月に刊行された陳浩基『13・67(いちさん ろくなな)』(文藝春秋)の「帯」で使用されたのがきっかけであり、その後、陸秋槎(りく しゅうさ)の『元年春之祭(がんねんはるのまつり)』や『雪が白いとき、かつそのときに限り』などの邦訳が続いたことで、「華文ミステリ(ー)」、あるいは「華文推理」という言葉が日本のミステリ読者のあいだに定着することになったのである。「非英仏語圏ミステリベスト100」を仮にまた実施することがあれば、華文ミステリももっと存在感が強まっていることだろう。 完全に脱線するが、筆者は2016年ごろから、「非英語圏ミステリ3年周期説」というものを唱えている。 日本では3年に一度、非英語圏から界隈を席捲するミステリ小説が翻訳出版され、翻訳ミステリ出版業界を一変させる という、まあ冗談みたいなものである。 2008年、スティーグ・ラーソン《ミレニアム》三部作(スウェーデン作品)の邦訳が開始され、それ以降、スウェーデンのみならず北欧ミステリの邦訳が急増する 2011年、フェルディナント・フォン・シーラッハ『犯罪』(ドイツ作品)が邦訳され、それ以降、ドイツ語圏ミステリの邦訳が急増する 2014年、ピエール・ルメートル『その女アレックス』(フランス作品)が邦訳され大ベストセラーになったことにより、フランスミステリが再度注目され、邦訳がコンスタントに出るようになる ここから勝手に「3年周期」という法則を読み取り、「じゃあ来年(2017年)あたりに中国語圏ミステリ・ブームを引き起こす大作でも訳されないかな」という単なる冗談に過ぎなかったわけだが、2017年に陳浩基『13・67』が邦訳され、実際に華文ミステリへの注目度が一変することになるとはまさか思ってもいなかった。いや、『13・67』という作品のポテンシャルは当時原書で途中まで読んで知っていたので、『13・67』が邦訳出版されると知った際に、早くも「3年周期説」の実現を確信した、というのが実際に近いが。 そう考えると、今年、2020年はまさにその「3年周期」の年に当たる。今年は、2020年8月現在のところ、新たなブームを巻き起こすような非英語圏ミステリは翻訳されていないように思う。ただ、今年の翻訳ミステリ界で気になるのは、イタリアミステリの邦訳が増えていることである。把握している限りで、 イーゴル・デ・アミーチス『七つの墓碑』(清水由貴子訳、〈ハヤカワ文庫NV〉早川書房、2020年2月) アントニオ・マンジーニ『汚(よご)れた雪』(天野泰明訳、〈創元推理文庫〉東京創元社、2020年2月) マウリツィオ・デ・ジョバンニ『集結 P分署捜査班』(直良和美訳、〈創元推理文庫〉東京創元社、2020年5月) アンドレア・プルガトーリ『裏切りのシュタージ』(安野亜矢子訳、〈ハーパーBOOKS〉ハーパーコリンズ・ジャパン、2020年8月17日発売予定) の4点がある。あくまで「3年周期説」を唱え続けるとしたら、今年は「なにか飛び抜けた一作があったわけではないが、イタリアミステリが続々と刊行されるようになった年」として日本の翻訳ミステリ史に刻まれるべき年なのかもしれない。もっとも、「今年」はまだあと4か月半残っている。今年の終わりまでに、思わぬところから優れた一作が現れることもあるかもしれない。自分がちょっと発した冗談に囚われるのもおかしな話だが、今後も翻訳ミステリには引き続き注目していきたい。 フランスミステリ必読リスト 「フランスミステリ」の必読リストと、フランスの「ミステリ必読リスト」。 フランス・ミステリ必読30冊(『ミステリマガジン』2003年7月号)(2013年5月16日)附:2000年以降に日本で出版された主なフランス・ミステリ(~2013年) 附:森英俊編(編著)『世界ミステリ作家事典』で扱われているフランス語圏作家一覧 フランスのミステリ編集者が選んだ必読ミステリ100(2014年8月27日)フランスで2008年に刊行された『Le guide des 100 polars incontournables』(必読ミステリ100作ガイド)で選ばれている100作品の一覧。選者はフランスのミステリ編集者でありミステリの翻訳や創作も手掛けるエレーヌ・アマルリック(Hélène Amalric)。 100作品中、英語圏の作品が74作品、フランス語圏の作品が16作品、それ以外が10作品。英語圏の名作と並べて自国のどの作品を選んでいるのかという観点で興味深い。 関連:ポーランドのミステリ評論家が選んだ最重要ミステリ100(2014年8月28日)ポーランドで2007年に刊行された『Krwawa setka. 100 najważniejszych powieści kryminalnych』(ブラッディー・ハンドレッド: 最重要ミステリ100選)で選ばれている100作品の一覧。選者はポーランドのミステリ研究家・評論家であるヴォイチェフ・ブルシュタ(Wojciech Burszta)と、ミステリ研究家でミステリの創作も手掛けるマリウシュ・チュバイ(Mariusz Czubaj)の2人。フランス語圏の作品が4作選ばれている。 フランスミステリ邦訳一覧 当サイトでは、「北欧ミステリ邦訳一覧」(最終更新:2017年3月)、「南欧ミステリ邦訳一覧」(イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャ / 最終更新:2014年)、「ドイツ語圏ミステリ邦訳一覧」(最終更新:2014年)など、全邦訳を網羅することを目指して作成したリストを公開しているが、フランスミステリに関してはあまりにも量が多すぎるため、網羅的なリストは作成していない。 ただ、当サイトでは「ポケミス非英語圏作品一覧」などレーベルごとの非英語圏作品のリストを作成・公開しており、事実上、それがほとんど「フランス語圏の作品のリスト」であることが多い。 ハヤカワ・ミステリ(ポケミス)非英語圏作品一覧(2012年1月14日 / 最終更新:2020年8月17日) ハヤカワ・ミステリ文庫非英語圏作品一覧(2013年6月22日) 創元推理文庫海外ミステリ非英語圏作品一覧(2012年9月1日 / 最終更新:2018年11月6日) 文庫で刊行されたフランスミステリの一覧(2014年8月6日) - 「フランスミステリベスト100」のために作成した参考リスト また当サイトでは、日本で翻訳出版された非英語圏ミステリの年度ごとの一覧を作成していたが、2013年からスタートし、2015年秋ごろにストップしてしまった。 非英語圏ミステリ2013年の邦訳出版一覧 非英語圏ミステリ2014年の邦訳出版一覧 非英語圏ミステリ2015年の邦訳出版一覧 関連オランダ語圏ミステリ邦訳一覧 ロシア・中東欧ミステリ邦訳一覧 中南米ミステリ邦訳一覧 東アジアミステリ邦訳一覧 東南・南アジアミステリ邦訳一覧 中東ミステリ邦訳一覧 アフリカミステリ邦訳一覧 フランスのミステリ賞受賞作の邦訳状況 フランスのミステリ賞(2013年5月16日) - 受賞作の邦訳一覧 フランスミステリの日本での評価 年間ミステリランキング 非英語圏作品一覧(2012年9月9日 / 最終更新:2020年8月17日) 本格ミステリ・ベスト10(原書房) 順位 タイトル 作者 国 備考 2003年 第1位 第四の扉 ポール・アルテ フランス このミス4位、文春2位 第8位 死者を起こせ フレッド・ヴァルガス フランス 2004年 第1位 死が招く ポール・アルテ フランス 2005年 第1位 赤い霧 ポール・アルテ フランス 文春10位 2006年 第3位 カーテンの陰の死 ポール・アルテ フランス 2007年 第3位 赤髯王の呪い ポール・アルテ フランス 2008年 第1位 狂人の部屋 ポール・アルテ フランス このミス7位、早ミス3位 2009年 第3位 七番目の仮説 ポール・アルテ フランス 2010年 第3位 虎の首 ポール・アルテ フランス 第7位 騙し絵 マルセル・F・ラントーム フランス 2011年 第6位 殺す手紙 ポール・アルテ フランス 2013年 第10位 彼の個人的な運命 フレッド・ヴァルガス フランス 2015年 第10位 その女アレックス ピエール・ルメートル フランス このミス1位、文春1位、早ミス1位、IN☆POCKET1位 2016年 第7位 悲しみのイレーヌ ピエール・ルメートル フランス このミス2位、文春1位、早ミス5位、IN☆POCKET7位 2017年 第10位 傷だらけのカミーユ ピエール・ルメートル フランス このミス6位、文春1位、IN☆POCKET6位 2018年 第4位 黒い睡蓮 ミシェル・ビュッシ フランス このミス5位 2019年 第2位 あやかしの裏通り ポール・アルテ フランス このミス6位、文春8位 2020年 第5位 金時計 ポール・アルテ フランス このミステリーがすごい!(宝島社) 順位 タイトル 作者 国 備考 1996年 第10位 パパはビリー・ズ・キックを捕まえられない ジャン・ヴォートラン フランス 2003年 第4位 第四の扉 ポール・アルテ フランス 本ミス1位、文春2位 第9位 グルーム ジャン・ヴォートラン フランス IN☆POCKET10位 2008年 第7位 狂人の部屋 ポール・アルテ フランス 本ミス1位、早ミス3位 2015年 第1位 その女アレックス ピエール・ルメートル フランス 本ミス10位、文春1位、早ミス1位、IN☆POCKET1位 第6位 ハリー・クバート事件 ジョエル・ディケール スイス(フランス語) 文春4位、早ミス9位 2016年 第2位 悲しみのイレーヌ ピエール・ルメートル フランス 本ミス7位、文春1位、早ミス5位、IN☆POCKET7位 第9位 彼女のいない飛行機 ミシェル・ビュッシ フランス IN☆POCKET9位 2017年 第6位 傷だらけのカミーユ ピエール・ルメートル フランス 本ミス10位、文春1位、IN☆POCKET6位 2018年 第5位 黒い睡蓮 ミシェル・ビュッシ フランス 本ミス4位 2019年 第6位 あやかしの裏通り ポール・アルテ フランス 本ミス2位、文春8位 第8位 監禁面接 ピエール・ルメートル フランス 文春5位 『週刊文春』ミステリーベスト10(文藝春秋) 順位 タイトル 作者 国 備考 1997年 第10位 眠りなき狙撃者 ジャン=パトリック・マンシェット フランス 2002年 第2位 第四の扉 ポール・アルテ フランス 本ミス1位、このミス4位 2004年 第10位 赤い霧 ポール・アルテ フランス 本ミス1位 2012年 第6位 ルパン、最後の恋 モーリス・ルブラン フランス 2013年 第9位 HHhH プラハ、1942年 ローラン・ビネ フランス 2014年 第1位 その女アレックス ピエール・ルメートル フランス 本ミス10位、このミス1位、早ミス1位、IN☆POCKET1位 第4位 ハリー・クバート事件 ジョエル・ディケール スイス(フランス語) このミス6位、早ミス9位 2015年 第1位 悲しみのイレーヌ ピエール・ルメートル フランス 本ミス7位、このミス2位、早ミス5位、IN☆POCKET7位 2016年 第1位 傷だらけのカミーユ ピエール・ルメートル フランス 本ミス10位、このミス6位、IN☆POCKET6位 2018年 第5位 監禁面接 ピエール・ルメートル フランス このミス8位 第8位 あやかしの裏通り ポール・アルテ フランス 本ミス2位、このミス6位 2019年 第8位 わが母なるロージー ピエール・ルメートル フランス ミステリが読みたい!(早川書房) 順位 タイトル 作者 国 備考 2008年 第3位 狂人の部屋 ポール・アルテ フランス 本ミス1位、このミス7位 2015年 第1位 その女アレックス ピエール・ルメートル フランス 本ミス10位、このミス1位、文春1位、IN☆POCKET1位 第9位 ハリー・クバート事件 ジョエル・ディケール スイス(フランス語) このミス6位、文春4位 2017年 第5位 悲しみのイレーヌ ピエール・ルメートル フランス 本ミス7位、このミス2位、文春1位、IN☆POCKET7位 2019年 第7位 黒い睡蓮 ミシェル・ビュッシ フランス 本ミス4位、このミス5位 『IN☆POCKET』文庫翻訳ミステリー・ベスト10(講談社) 順位 タイトル 作者 国 備考 1998年 第9位 鉄の薔薇 ブリジット・オベール フランス 2002年 第10位 グルーム ジャン・ヴォートラン フランス このミス9位 2003年 第6位 夜鳥(よどり) モーリス・ルヴェル フランス 2004年 第7位 蜘蛛の微笑(のちに『私が、生きる肌』に改題) ティエリー・ジョンケ フランス 2014年 第1位 その女アレックス ピエール・ルメートル フランス 本ミス10位、このミス1位、文春1位、早ミス1位 2015年 第6位 悪意の波紋 エルヴェ・コメール フランス 第9位 彼女のいない飛行機 ミシェル・ビュッシ フランス このミス9位 2016年 第7位 悲しみのイレーヌ ピエール・ルメートル フランス 本ミス7位、このミス2位、文春1位、早ミス5位 2017年 第6位 傷だらけのカミーユ ピエール・ルメートル フランス 本ミス10位、このミス6位、文春1位 『IN☆POCKET』休刊(~2018年8月号)のため、2017年11月号での発表分をもって終了 東西ミステリーベスト100(1985年版、2012年版) 1985年 第16位 黄色い部屋の謎 ガストン・ルルー フランス 第23位 わらの女 カトリーヌ・アルレー フランス 第41位 813 モーリス・ルブラン フランス 第67位 シンデレラの罠 セバスチアン・ジャプリゾ フランス 第83位 男の首 ジョルジュ・シムノン ベルギー(フランス語) 2012年 第28位 黄色い部屋の謎 ガストン・ルルー フランス 第41位 シンデレラの罠 セバスチアン・ジャプリゾ フランス 第53位 わらの女 カトリーヌ・アルレー フランス 第92位 奇岩城 モーリス・ルブラン フランス フランスにおける日本ミステリ フランス語に翻訳された日本の推理小説/ミステリ(最終更新:2013年) 2012年に欧米で翻訳出版された日本の推理小説(2013年4月17日) 日本の小説の海外での受賞一覧(2014年7月7日) 『このミステリーがすごい!』過去のベスト10作品の英・仏・独訳状況(2018年12月11日)筆者は『このミステリーがすごい! 2019年版』(宝島社、2018年12月)に「日本ミステリー、世界へ――あるいは、ミステリー小説の真の国際化」(pp.134-135)を寄稿しているが、このリストはその記事と合わせて『このミス』に載る予定だったものである。残念ながらページ数の都合で掲載はされなかった。 なお、2013年以降については、当サイトのトップページで時系列順に日本ミステリの欧米での翻訳出版情報を載せている。日本ミステリのフランス語訳については、トップページを「【フランス語訳】」でページ内検索していただきたい。 関連ページ インターナショナル・ダガー賞 受賞作・候補作一覧英国推理作家協会賞(CWA賞)の最優秀翻訳長編部門の受賞作・候補作の一覧。フレッド・ヴァルガス、ピエール・ルメートルが何度も受賞している。 非英語圏ミステリ各種リスト
https://w.atwiki.jp/psalled/pages/56.html
アルファベット19時03分-上野発夜光列車- 19時03分 上野発夜光列車(廉価版) 3×3EYES ~吸精公主~ 3×3EYES~転輪王幻夢~ ACONCAGUA ARTDINK BEST CHOICE クーロンズ・ゲート -九龍風水傳- ATHENA Awekening from the ordinary life b.l.u.e. LEGEND OF WATER BIO HAZARD BIO HAZARD Director's Cut BIO HAZARD 2 BIO HAZARD 2 DUAL SHOCK ver. BIO HAZARD 3 LAST ESCAPE カプコレ BODYHAZARD B線上のアリス Cat The Ripper-13人目の探偵士- CLOCK TOWER ~The First Fear~ CLOCK TOWER GHOST HEAD Dancing Blade かってに桃天使! DANCING BLADE勝手に桃天使!2 DARK TALES From The Lost Soul DARKSEED DARKSEED II DEATH MASK DEEP FREEZE DEEP SEA ADVENTURE DEPTH SweepStation vol.1 DESERTED ISLAND ~デザーテッドアイランド~ DINO CRISIS DINO CRISIS (PlayStation the Best) DINO CRISIS2 DINO CRISIS2 (PlayStation the Best) DRUID 闇への追跡者 Dの食卓 COMPLETE GRAPHICS PlayStation the Best Dの食卓 コンプリートグラフィックス Echo Night ECHO NIGHT (PS one Books) ECOH NIGHT #2 ~眠りの支配者~ ECHO NIGHT#2 眠りの支配者 (PS one Books) ENIGMA Forget me not-パレット- GADGET ~Past as Future~ GERMS 狙われた街 GUNDAM 0079 The War For The Earth infinity Jaggernaut~戦慄の扉~ KOEI The Best 七つの秘館 KOEI THE BEST 遥かなる時空の中で KONOHANA (此花) True Report Major Wave シリーズ セプテントリオン~Out of the Blue~ Major Waveシリーズ Over Blood Major Waveシリーズ マリオネットカンパニー Memories Off Memories Off 2nd Memories Off 2nd 初回限定版 MYST MYST PlayStation the Best NIGHTRUTH-Explanation of the paranormal- #01 "闇の扉" NOT TREASURE HUNTER ノット トレジャー ハンター OverBlood PlayStation the Best PLANET LAIKA Prismaticallization R?MJ THE MYSTERY HOSPITAL R?MJ THE MYSTERY HOSPITAL PlayStation the Best RIVEN THE SEQUEL TO MYST Screen Septentrion ~out of the Blue~ SIMPLEキャラクター2000シリーズ Vol.9釣りキチ三平THEつり SuperLite 1500シリーズ KONOHANA (此花) True Report SuperLite 1500シリーズ エミーリア SuperLite1500シリーズ DEEP FREEZE SuperLite1500シリーズ Screen SuperLite1500シリーズ メモリーズオフ SuperLite1500シリーズ リングオブサイアス SuperLite1500シリーズ 信長秘録 下天の夢 SuperLite1500シリーズ 新生トイレの花子さん SuperLite 1500シリーズ プリズマティカリゼーション SuperLite1500シリーズ 魔紀行 The Best タカラモノ ディープシーアドベンチャー The Book Of WaterMarks THE DEEP 失われた深海 THEホラーミステリー ~惨劇館 ケビン伯爵の復活~ SIMPLE1500シリーズVol.74 THE 推理 SIMPLE1500シリーズ To Heart UFO UFO-A DAY IN THE LIFE- value1500 MYST value1500 ストーンウォーカーズ ZORK I あ行あかずの間 あかずの間(廉価版) アナザーメモリーズ アナザー・マインド ありす イン サイバーランド アルナムの牙 獣族十二神徒伝説 アローン・イン・ザ・ダーク2 ALONE IN THE DARK 2 イエロー・ブリック・ロード イバラード~ラピュタの孵る街~ ウエルカムハウス ウエルカムハウス2 エクソダスギルティ(限定版) エクソダスギルティ(通常版) エコエコアザラク エコーナイト PlayStation the Best エミーリア オーバーブラッド か行ガンパレード・マーチ クーロンズゲート(初回限定版) クーロンズゲート(通常版) クリック メディック クレイマン・クレイマン ~ネバーフッドの謎~ クレイマン・クレイマン PlayStation the Best クロス探偵物語1 ~後編~ クロス探偵物語1 ~前編~ クロックタワー2 クロックタワー2 PlayStation the Best さ行ザ・コンビニ PlayStation the Best サーカディア サイベリア サイレントヒル サイレントヒル (PS one Books) サイレントメビウス CASE TITANIC サウンドノベルエボリューション1 弟切草 蘇生篇 サウンドノベルエボリューション1 弟切草 蘇生篇 PlayStation the Best サウンドノベルエボリューション2 かまいたちの夜 特別篇 サウンドノベルエボリューション2 かまいたちの夜 特別篇 PlayStation the Best サウンドノベルエボリューション3 街 ザルツブルクの魔女 ザルツブルグノマジョ サンパギータ ~やるドラシリーズVol.3~ ジ・アンソルブド シスター・プリンセス (PS one Books) シスター・プリンセス2 シスター・プリンセス2 (PS one Books) シスター・プリンセス2 (初回限定版) シスタープリンセス シスタープリンセス ピュア・ストーリーズ シスター・プリンセス(初回限定版) ジャガーノート 戦慄の扉 シュレディンガーの猫 シルバー事件 シルバー事件(アスキー・カジュアルコレクション) ストーンウォーカーズ ストーンウォーカーズ(サンコレBEST) スパイクライブラリー#005 トワイライトシンドローム~再会~ すべてがFになる ~THE PERFECT INSIDER~ た行ダブルキャスト ~やるドラシリーズVol.1~ ちびまる子ちゃん まる子絵日記ワールド チョコレート♪キッス ツタンカーメンの謎 アンク てんたま ときめきメモリアル ドラマシリーズVOL.1 虹色の青春 ときめきメモリアル ドラマシリーズVol.1 虹色の青春 (ベスト) ときめきメモリアル ドラマシリーズVol.1 虹色の青春 (PS one Books) どこまでも青く…. どこまでも青く…. (初回限定版) トワイライトシンドローム ~再会~ トワイライトシンドローム スペシャル トワイライトシンドローム 究明編 トワイライトシンドローム 探索編 トワイライトシンドローム~再会~ (PS one Books) な行ナイトヘッド -ザ・ラビリンス- ナイナイの迷探偵 アルファベット …いる! 10101~”WILL”The Starship~ 19時03分-上野発夜光列車- 19時03分 上野発夜光列車(廉価版) 3×3EYES ~吸精公主~ 3×3EYES~転輪王幻夢~ ACONCAGUA ARTDINK BEST CHOICE クーロンズ・ゲート -九龍風水傳- ATHENA Awekening from the ordinary life b.l.u.e. LEGEND OF WATER BIO HAZARD BIO HAZARD Director's Cut BIO HAZARD Director's Cut DUAL SHOCK ver. BIO HAZARD 2 BIO HAZARD 2 DUAL SHOCK ver. BIO HAZARD 3 LAST ESCAPE カプコレ BLUE BREAKER BURST 笑顔の明日に BODYHAZARD BOYS BE・・・ この恋のゆくえ B線上のアリス Cat The Ripper-13人目の探偵士- Catch!~気持ちセンセーション~ Pandora Max Series Vol.4 CLOCK TOWER ~The First Fear~ CLOCK TOWER GHOST HEAD Dancing Blade かってに桃天使! DANCING BLADE勝手に桃天使!2 Dark Messiah DARK TALES From The Lost Soul DARKSEED DARKSEED II DEATH MASK DEEP FREEZE DEEP SEA ADVENTURE DEPTH SweepStation vol.1 DESERTED ISLAND ~デザーテッドアイランド~ DINO CRISIS DINO CRISIS (PlayStation the Best) DINO CRISIS2 DINO CRISIS2 (PlayStation the Best) Dr.リンにきいてみて! 恋のハッピーフォーシーズン DRUID 闇への追跡者 Dの食卓 COMPLETE GRAPHICS PlayStation the Best Dの食卓 コンプリートグラフィックス Echo Night ECHO NIGHT (PS one Books) ECOH NIGHT #2 ~眠りの支配者~ ECHO NIGHT#2 眠りの支配者 (PS one Books) ENIGMA EVE The Fatal Attraction EVE The Fatal Attraction (ゲームビレッジ・ザ・ベスト) EVE The Fatal Attraction (限定版) EVE The Lost One EVE The Lost One (ゲームビレッジ・ザ・ベスト) EVE ZERO (限定版) EVE ZERO (通常版) EVE ZERO (ゲームビレッジ・ザ・ベスト) FADE TO BLACK FLAGSHIP WORKS バウンティーハンターサラー ホーリーマウンテンの帝王 Forget me not-パレット- Fun!Fun!Pingu(限定版) Fun!Fun!Pingu(通常版) GADGET ~Past as Future~ GERMS 狙われた街 Get Backers奪還屋 GUNDAM 0079 The War For The Earth HARD EDGE サンコレBest HUNTER×HUNTER~奪われたオーラストーン~ (PS one Books) infinity Jaggernaut~戦慄の扉~ KOEI The Best 七つの秘館 KOEI THE BEST 遥かなる時空の中で KONOHANA (此花) True Report Lの季節 -A piece of memories- Lの季節(初回限定版) -A piece of memories- LASVEGAS DREAM 2 ラスベガス ドリーム 2 Lost Sword 失われた聖剣 Major Wave シリーズ BLUE BREAKER BURST 笑顔の明日に Major Wave シリーズ NOel 3 MISSION ON THE LINE Major Wave シリーズ セプテントリオン~Out of the Blue~ Major Waveシリーズ Over Blood Major Waveシリーズ キャプテン・ラヴ Major Waveシリーズ マリオネットカンパニー Major Waveシリーズ リトルラバーズ シーソーゲーム Memories Off Memories Off 2nd Memories Off 2nd 初回限定版 MYST MYST PlayStation the Best Mystic Mind 揺れる想い NIGHTRUTH-Explanation of the paranormal- #01 "闇の扉" NOT TREASURE HUNTER ノット トレジャー ハンター NOёl 3 mission on the line OverBlood PlayStation the Best PLANET LAIKA Quantum Gate ~悪夢の序章~ Prismaticallization R?MJ THE MYSTERY HOSPITAL R?MJ THE MYSTERY HOSPITAL PlayStation the Best RIVEN THE SEQUEL TO MYST Screen Septentrion ~out of the Blue~ SHADOW AND SHADOW SIMPLEキャラクター2000シリーズ Vol.9釣りキチ三平THEつり SNKベストコレクション ザ・キング・オブ・ファイターズ 京 SuperLite 1500シリーズ KONOHANA (此花) True Report SuperLite 1500シリーズ エミーリア SuperLite1500シリーズ DEEP FREEZE SuperLite1500シリーズ Screen SuperLite1500シリーズ フランベルジュの精霊 SuperLite1500シリーズ メモリーズオフ SuperLite1500シリーズ リングオブサイアス SuperLite1500シリーズ 信長秘録 下天の夢 SuperLite1500シリーズ 新生トイレの花子さん SuperLite 1500シリーズ プリズマティカリゼーション SuperLite1500シリーズ 魔紀行 The Best タカラモノ ・・・いる! The Best タカラモノ ディープシーアドベンチャー The Best タカラモノ ゆうわくオフィス恋愛課 The Book Of WaterMarks THE DEEP 失われた深海 THE DEEP 失われた深海(ベスト版) THE LAST REPORT THE カジノ SIMPLE1500シリーズ Vol.49 THEホラーミステリー ~惨劇館 ケビン伯爵の復活~ SIMPLE1500シリーズVol.74 THE 推理 SIMPLE1500シリーズ THE 恋愛アドベンチャー~おかえりっ!~ SIMPLE1500シリーズ Vol.81 To Heart Tから始まる物語 UFO UFO-A DAY IN THE LIFE- value1500 HARDEDGE(ハードエッジ) value1500 MYST value1500 ストーンウォーカーズ ZORK I あ行 あいたくて・・・ ~your smiles in my heart~ あかずの間 あかずの間(廉価版) アナザーメモリーズ アナザー・マインド アニメチックストーリーゲーム1 カードキャプターさくら ありす イン サイバーランド アルナムの牙 獣族十二神徒伝説 アローン・イン・ザ・ダーク2 ALONE IN THE DARK 2 イエロー・ブリック・ロード イバラード~ラピュタの孵る街~ ウエルカムハウス ウエルカムハウス2 エキスパート エクソダスギルティ(限定版) エクソダスギルティ(通常版) エコエコアザラク エコーナイト PlayStation the Best エミーリア エルフを狩るモノたちII エルフを狩るモノたち-完全版- オーバーブラッド オーバーブラッド2 オーバーブラッド2 PlayStation the Best か行 カウントダウンヴァンパイヤーズ ガンパレード・マーチ クーロンズゲート(初回限定版) クーロンズゲート(通常版) くのいち捕物帖 クリック メディック クレイマン・クレイマン ~ネバーフッドの謎~ クレイマン・クレイマン PlayStation the Best クロス探偵物語 クロス探偵物語1 ~後編~ クロス探偵物語1 ~前編~ クロックアドベンチャー クロックタワー2 クロックタワー2 PlayStation the Best ゲゲゲの鬼太郎 呪いの肉人形館 ゲットバッカーズ奪還屋 (PS one Books) ごちゃちる PANDORA MAX SERIES Vol.5 ごちゃちる(限定版) PANDORA MAX SERIES Vol.5 コブラ・ザ・シューティング さ行 ザ・コンビニ PlayStation the Best サーカディア サイコメトラーEIJI サイベリア サイレントヒル サイレントヒル (PS one Books) サイレントメビウス CASE TITANIC サウンドノベルエボリューション1 弟切草 蘇生篇 サウンドノベルエボリューション1 弟切草 蘇生篇 PlayStation the Best サウンドノベルエボリューション2 かまいたちの夜 特別篇 サウンドノベルエボリューション2 かまいたちの夜 特別篇 PlayStation the Best サウンドノベルエボリューション3 街 サラリーマン金太郎 THE GAME ザルツブルクの魔女 ザルツブルグノマジョ サンパギータ ~やるドラシリーズVol.3~ ジ・アンソルブド じいさん2度びっくり!! CG昔話 ジェイルブレイカー シスター・プリンセス (PS one Books) シスター・プリンセス2 シスター・プリンセス2 (PS one Books) シスター・プリンセス2 (初回限定版) シスター・プリンセス2 PREMIUM FAN DISC シスタープリンセス シスタープリンセス ピュア・ストーリーズ シスター・プリンセス(初回限定版) ジャガーノート 戦慄の扉 シュレディンガーの猫 シルバー事件 シルバー事件(アスキー・カジュアルコレクション) スーチーパイアドベンチャー ドキドキ・ナイトメア スーパーアドベンチャーロックマン スクウェア ミレニアム コレクション パラサイト・イヴ2 スターウォーズ エピソード1 ~ファントム・メナス~ スタンバイ Say You! ストーンウォーカーズ ストーンウォーカーズ(サンコレBEST) ストリートファイターII ムービー スナッチャー サイバーパンク・アドベンチャー スパイクライブラリー#005 トワイライトシンドローム~再会~ すべてがFになる ~THE PERFECT INSIDER~ ゼイラムゾーン センチメンタルグラフティ た行 タイニーバレット ダブルキャスト ~やるドラシリーズVol.1~ チェイス・ザ・エクスプレス ちびまる子ちゃん まる子絵日記ワールド チョコレート♪キッス ツインズストーリー きみにつたえたくて・・・ ツタンカーメンの謎 アンク ディスクワールド てんたま ドキドキプリティリーグ Lovely Star ときめきメモリアル ドラマシリーズVOL.1 虹色の青春 ときめきメモリアル ドラマシリーズVol.1 虹色の青春 (ベスト) ときめきメモリアル ドラマシリーズVol.1 虹色の青春 (PS one Books) ときめきメモリアル ドラマシリーズVOL.2 彩のラブソング ときめきメモリアル ドラマシリーズVol.2 彩のラブソング(ベスト) ときめきメモリアル ドラマシリーズVol.2 彩のラブソング (PS one Books) ときめきメモリアル ドラマシリーズVol.3 旅立ちの詩 ときめきメモリアル ドラマシリーズVol.3 旅立ちの詩(ベスト) ときめきメモリアル ドラマシリーズVol.3 旅立ちの詩 (PS one Books) ときめきメモリアル2 Substories ~Dancing Summer Vacation~ ときめきメモリアル2 Substories ~Dancing Summer Vacation~(コナミザベスト) ときめきメモリアル2 Substories ~Leaping School Festival~ ときめきメモリアル2 Substories ~Leaping School Festival~(コナミザベスト) ときめきメモリアル2 Substories ~Memories Ringing On~ ときめきメモリアル2 Substory ~Memories Ringing On~ (コナミ・ザ・ベスト) ときめきメモリアル2 Substories 1 (PS one Books) ときめきメモリアル2 Substories 2 (PS one Books) ときめきメモリアル2 Substories 3 (PS one Books) どこでもハムスター びっ!クリック探検隊 どこまでも青く…. どこまでも青く…. (初回限定版) ドルフィンズドリーム トワイライトシンドローム ~再会~ トワイライトシンドローム スペシャル トワイライトシンドローム 究明編 トワイライトシンドローム 探索編 トワイライトシンドローム~再会~ (PS one Books) な行 ナイトヘッド -ザ・ラビリンス- ナイナイの迷探偵 ぬくもりの中で ノベルズ ~ゲームセンターあらしR~b
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/123.html
2011年5月1日 2011年5月6日 ペルシア語圏について追加 大きな地図で見る 日本のミステリは西アジアでも刊行されている。 このページでは、国際交流基金が作成している「日本文学翻訳書誌」を基礎資料として、それに独自に調査した分を加え、西アジアの言語に翻訳された日本のミステリをまとめている。なお、「日本文学翻訳書誌」では現地での刊行タイトルはすべてラテン文字に転写され、アルファベットにつける特殊記号も削除されているが、このページでは現地の表記に戻している。 ※トルコ語に含まれる特殊なアルファベットおよび、アルメニア文字、グルジア文字、アラビア文字、ペルシア文字を使用しています。携帯電話等では表示されません。 Index トルコ鈴木光司 アゼルバイジャン アルメニア松本清張 グルジア松本清張 アラビア語 ヘブライ語 ペルシア語 リンク 「★追加」と注記した書籍は、国際交流基金のデータに掲載されていないものである。 トルコ トルコ語:話者数 約8300万人 鈴木光司 Halka / 『リング』 Sarmal / 『らせん』 Düğüm / 『ループ』 Doğum Günü / 『バースデイ』 4冊とも、2008年、トルコ・イスタンブールの出版社「Doğan Kitap」から刊行。著者名の現地表記は「Koci Suzuki」。翻訳者はHüseyin Can Erkin氏。 「Doğan Kitap」のサイトに掲載されている鈴木光司のプロフィール トルコのミステリが邦訳されているかは分からないが、トルコのノーベル賞作家オルハン・パムクの『わたしの名は紅(あか)』(邦訳刊行2004年)はミステリとして読める作品である。トルコ語版Wikipediaを見ると、「カテゴリ:推理作家」( Kategori Polisiye yazarları )には英米の推理作家コナン・ドイル、アガサ・クリスティ、レイモンド・チャンドラー、ダシール・ハメット、パトリシア・ハイスミス、ミネット・ウォルターズ、アレグザンダー・マコール・スミス、ローレンス・ブロック、ドナ・レオン、ヴァル・マクダーミド、英語で執筆しフランスで作品を発表していたチェスター・ハイムズ、フランスのブリジット・オベール、レオ・マレ、フランス語で書くベルギーの作家ジョルジュ・シムノンと並んで、Ahmet Ümit(1960年生まれ)、Celil Oker(1952年生まれ)という2人のトルコの推理作家の記事がある。 Ahmet Ümit(アフメト・ユミット?)は1996年にギリシャで刊行したトルコ語の推理小説『霧と夜』が代表作で、これはトルコ語で執筆されたサスペンスとしては初めて諸外国語に翻訳された作品らしい。ドイツ語には『霧と夜』ほか数作品が翻訳されている(『霧と夜』のドイツ語版はスイスで刊行、ドイツ語では『夜と霧』【書影右側】)。また、『Masal Masal İçinde』(物語は物語の中に)は韓国語版が刊行されている。ほかにスペイン語に翻訳されている作品もある。Celil Oker(ジェリル・オケル?)は1999年にデビューした推理作家で、長編4作品がドイツ語に翻訳されスイスで刊行されている(【書影左側】は、ドイツ語版『ボスポラスの雪』)。 ほかに、著作が英語やドイツ語、フランス語に翻訳されているトルコの推理作家に、メフメット・ムラート・ソマー( Mehmet Murat Somer )がいる。この作家については、catalystさん( @biotit )が英語で著作を読んで、こちらのページ(→リンク)で詳しく紹介している。この作家は、ウォール・ストリート・ジャーナル2010年7月5日の記事「米ミステリー界へ海外から新たな旋風」(日本語)で、東野圭吾や吉田修一らとともに取り上げられている。 また、トルコに出自を持つ推理作家に、現在はドイツに居住しドイツ語で執筆しているアキフ・ピリンチがいる。『猫たちの聖夜』とその続編の『猫たちの森』が邦訳されている。 アゼルバイジャン アゼルバイジャン語:話者数 約3000万人 アゼルバイジャン語はトルコ語と同系統の言語で、相互の理解度がかなり高い。国際交流基金のデータでは、日本のミステリのアゼルバイジャン語への翻訳はない。日本文学全体では、児童文学作家の松谷みよ子の『龍の子太郎』と、遠藤周作の『海と毒薬』がアゼルバイジャン語に翻訳されている。 (蛇足だが、アゼルバイジャン語ではアーサー・コナン・ドイルを「Artur Konan Doyl」(アルトゥール・コナン・ドイル)、アガサ・クリスティを「Aqata Kristi」(アガタ・クリスティ)と、ラテン文字圏であるにもかかわらず異なる綴りで書いているのが面白い。2人の名前はロシアではこのように発音されるが、アゼルバイジャン語も1990年代初めまではロシアの文字で表記されていたので、その影響でこうなっているのだろう。) アルメニア アルメニア語:話者数 約700万人 松本清張 Ստորջրյա հոսանք (1968年刊行)書影 / 『深層海流』 (著者名表記: Մացումոտո, Սեյտյո )(マツモト・セイティオ) Կետեր և գծեր (1973年刊行)/ 『点と線』 (著者名表記: Մացումոտո, Սեիտե )(マツモト・セイテ) Երկիր անապատ (2010年刊行)書影、書影 / 『球形の荒野』か? (著者名表記: Մացումոտո Ս. )(マツモト S.) (★追加) 『深層海流』は1965年にロシア語版が出ているので、アルメニア語版はおそらくその重訳だろう。『点と線』もロシア語訳があるが、ロシア語訳の刊行が1973年よりも早かったかどうかは分からない。『球形の荒野』は、1979年にロシア語訳が出ている。 『点と線』のデータは現地のネット書店等では見つからなかったが、中西印刷株式会社の中西亮氏が世界各地で集めた文字資料を国立民族学博物館がデータベース化した「中西コレクションデータベース」で書影を見ることができる。 →中西コレクション アルメニア文字資料一覧 (蛇足 アルメニア語版『点と線』やグルジア語版『黒い福音』の著者名が「マツモト・セイテ」となっているのは、松本清張のロシア語表記「Мацумото, Сэйтё」(マツモト・セイチョー)の最後の文字「ё」を「е」に置き換えてそれぞれの文字に転写したからだと思われる) アルメニア語で書かれたミステリの話題は目にしたことがない。アルメニア語版Wikipediaの検索窓で「 Դետեկտիվ ժանրի գրողներ 」(推理作家)を検索してみると、コナン・ドイル、アガサ・クリスティ、ガストン・ルルーが引っかかったが、アルメニアの推理作家の記事は見当たらない。 グルジア グルジア語:話者数 約600万人 松本清張 შავი სახარება (1975年刊行?)(国際交流基金のデータでは1972年)/ 『黒い福音』(著者名表記: მაცუმოტო, სეიტე )(マツモト・セイテ) 『黒い福音』はロシア語に翻訳されているので、おそらくその重訳だろう。この作品はほかにリトアニア語版も出ている(これもロシア語からの重訳だと推定される)。 『点と線』はグルジア語では「 წერტილები და ხაზები 」と書くようで、グルジアのミステリ関連の掲示板でタイトルが挙げられているのを見たが、グルジア語に翻訳されているのかは分からない。 グルジア語で書かれたミステリの話題は目にしたことがない。グルジア語のWikipediaを見ると、「カテゴリ:推理作家」( კატეგორია დეტექტიური ჟანრის მწერლები )には英米の推理作家コナン・ドイル、アガサ・クリスティ、ジョン・ディクスン・カー、ダシール・ハメット、ロス・マクドナルド、ディック・フランシス、チャールズ・パーシー・スノー、ヒュー・ペンティコースト、ハドリー・チェイス、ジョー・ゴアズ、シドニー・シェルダン、レイ・ブラッドベリや、ロシア語で書くグルジア出身の推理作家ボリス・アクーニン、フランス語で書くベルギーの推理作家ジョルジュ・シムノンの記事があるが、グルジアの推理作家の記事は見当たらない。 アラビア語 アラビア語:世界に約2億8000万人の母語話者 国際交流基金のデータでは、日本のミステリのアラビア語への翻訳はない。日本文学全体を見ると、クウェートやイラク、シリア、レバノン、アラブ首長国連邦、オマーン、エジプトで、夏目漱石や三島由紀夫など、日本の代表的な小説家の作品の翻訳が出ている。 ちなみに、アラビア語版Wikipediaの「推理小説」を機械翻訳で見ていたら、いまいち文意は不明だが、少年向け作品の節で『名探偵コナン』やその作者青山剛昌の名前が書かれていて、こんなところまで江戸川コナンの名声は届いているのか……と驚いた。(アラビア語版Wikipediaの「名探偵コナン」の記事も詳しくて驚く。作者の「青山剛昌」の記事もある) アラビア語で書かれたミステリの邦訳があるという話は聞いたことがない。Abdelilah Hamdouchiという人が書いたミステリの英訳版『The Final Bet』の紹介文に、「Abdelilah Hamdouchiは、アラビア語で推理小説を書く最初の作家たちの一人だ」と書かれている。調べてみると、この作品のアラビア語の原著『al-Rihan al-akhir』(الرهان الأخير)(原綴りはラテン文字転写からの推定)が刊行されたのが2001年のようなので、アラビア語でミステリが書かれるということ自体が今まであまりなかったのだろう(といっても、英語圏で日本のミステリ作家がほとんど知られていないのと同じように、アラビア語圏のミステリ作家も実際にはいるが英語圏で知られていないだけかもしれない)。Abdelilah Hamdouchiはモロッコのシナリオライターで、この『The Final Bet』もテレビドラマ用に書かれたものだとのこと(『The Final Bet』の著者紹介)。 ヘブライ語 イスラエルの人口約720万人のうち、約520万人がヘブライ語母語話者 国際交流基金のデータでは、日本のミステリのヘブライ語への翻訳はない。日本文学全体を見ると、村上春樹や夏目漱石の作品のほか、『源氏物語』などがヘブライ語に翻訳されている。 ヘブライ語から(直接・間接問わず)日本語に訳されたミステリは、バチヤ・グール『精神分析ゲーム』(イーストプレス、1994年)、『教授たちの殺人ゲーム』(イーストプレス、1996年)、シュラミット・ラピッド『「地の塩」殺人事件』(マガジンハウス、1997年)などがある。 ペルシア語 イランを中心に、約7000万人の母語話者 国際交流基金のデータでは、日本のミステリのペルシア語への翻訳はない(日本文学のペルシア語への翻訳自体が、1件も登録されていない)。 ペルシア語で書かれたミステリ、またはイランで出版されたミステリの話題は、いずれにしろ目にしたことがない。フランスに Naïri Nahapétian というミステリ作家がいて、この人はこちらのインタビュー記事で、イラン出身でイランを舞台にして推理小説を書く初めての作家だと紹介されている。ただ、彼女はイランのアルメニア系の家族に生まれ、幼少期からはフランスで暮らしているようで、執筆言語はペルシア語ではなくフランス語だし、イランの推理作家とも言い難い。彼女のデビュー作『Qui a tué l'ayatollah Kanuni?』(2009)は、オランダ語(Achter gesloten deuren)やスウェーデン語(Vem dödade ayatolla Kanuni?)に翻訳されている。 探偵作家クラブ(現・日本推理作家協会)会報第73号(1953年6月)に「インドとイランの状況報告」という記事が載っている。この記事では、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)会報の1953年3月号にイランの探偵小説事情が報告されているとして、その内容を伝えている。それによれば、テヘラン滞在中のMWA会員が、イランのある地方雑誌にパトリック・クェンティンの作品のペルシア語訳が掲載されているのを発見したのだという。この会員もペルシア語は読めず、それ以上のことは不明とされている。 おそらくペルシア語版Wikipediaのこのページ「رده جنایینویسان」が「カテゴリ:推理作家」だと思うが、ここにある記事はコナン・ドイルとアガサ・クリスティの記事のみである。 リンク 邊見由起子「エジプトとトルコの出版事情―出張報告」(国立国会図書館 アジア情報室通報 第5巻第2号(2007年6月) 「日本ミステリの海外刊行」に戻る
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/113.html
2012年6月13日 『韓国ミステリ史 第四章』では、1980年代から20世紀末までを扱っている。 目次 第四章 1980年代~20世紀末: 韓国ミステリ界の隆盛期第一節 韓国ミステリクラブから韓国推理作家協会へ(1)韓国推理作家協会の創設(1983年) (2)韓国推理作家協会主催 韓国推理文学賞 受賞作一覧 (3)韓国推理作家協会と日本推理作家協会の交流 第二節 スポーツ新聞や雑誌での新人作家発掘(1)スポーツ新聞の新春文芸公募 (2)『小説文学』長編推理小説公募 (3)『季刊推理文学』と金来成推理文学賞 第三節 ミステリ専門の出版社も登場(1)国産ミステリ出版の活況 (2)ミステリ読者の団体「韓国ミステリクラブ」の結成 (3)翻訳ミステリの出版 (4)苦戦するミステリ雑誌 第四節 20世紀末: 出版不況の影 第五節 邦訳された1980年代~20世紀末の韓国推理小説 参考文献 第四章 1980年代~20世紀末: 韓国ミステリ界の隆盛期 第一節 韓国ミステリクラブから韓国推理作家協会へ (1)韓国推理作家協会の創設(1983年) 1970年代半ばからのキム・ソンジョン(金聖鍾)の活躍やその後の翻訳ミステリ叢書の創刊ラッシュなどにより、韓国では推理小説の読者層が大幅に拡大され、推理小説ブームとなった。この時期の韓国での推理小説ブームは日本の新聞でも取り上げられている。 新聞記事「純文学の韓国でなぜか推理小説ブーム」朝日新聞1981年10月1日朝刊、6面 韓国の読書界にちょっとした異変が起こっている。推理小説は育たない、という定説を破って、最近、韓国人作家の推理小説がやたらに売れるようになったのである。純文学中心の韓国文壇では、まだ異端者的存在だが、学生やサラリーマン層に圧倒的な支持を受けている。(中略)ブームの火付け役は、"韓国の松本清張"といわれる延世(ヨンセ)大出身の作家金聖鍾(キム・ソンジョン)氏。 (原文は振り仮名なし) 同記事内にはキム・ソンジョンの写真付きインタビュー記事もある。もっとも、キム・ソンジョンの作品が初めて邦訳されるのはこの20年後の2001年(『ジャーロ』2001年夏号)になってからである。 このような推理小説ブームの中、1972年に結成されていた韓国ミステリクラブが母体となって、1983年2月8日、韓国推理作家協会(한국추리작가협회)が設立される。初代会長は韓国ミステリクラブでも会長を務めた英文学者のイ・ガヒョン(李佳炯)(이가형)。なお2代目会長にはイ・サンウ(李祥雨)(이상우)が就任し、1991年から2005年まで15年間会長を務めた。その後、3代目会長(2006-2008)にキム・ソンジョン(金聖鍾)(김성종)、4代目会長(2009-2011)にイ・スグァン(李秀光)(이수광)が就任し、2012年にはカン・ヒョンウォン(강형원)(本名はカン・ヒョング [姜亨求、강형구])が5代目の会長に就任している。韓国推理作家協会の当初の会員数は30人ほどだったが、20世紀末には80人ほどになっている。 韓国推理作家協会の当初の主な事業は、韓国推理文学賞(한국추리문학상)の選定・授与や、アンソロジー『韓国優秀推理短編コレクション』(한국 우수 추리 단편 모음집)の編纂だった。韓国推理文学賞の第1回(1985年)の大賞はヒョン・ジェフン(玄在勲)(第二章参照)、第2回(1986年)の大賞はキム・ソンジョン(金聖鍾)(第三章参照)が受賞している。 『韓国優秀推理短編コレクション』は1984年に刊行されたのが最初で、1986年にVol.2、1987年にVol.3、1989年にVol.4が刊行されている(収録作一覧)。1998年からは、韓国推理作家協会の編纂でアンソロジー『今年の推理小説』(올해의 추리소설)が毎年夏に刊行されている。1998年版のみ、『コリアン・ミステリ 韓国推理小説傑作選』(バベル・プレス、2002年)というタイトルで邦訳が出ている。(1990年~1997年にもアンソロジーの刊行があったかもしれないが確認できていない) 1988年からは毎年夏に、ミステリ作家とファンの交流イベント夏季推理小説学校(여름추리소설학교)を開催している。2011年の第24回夏季推理小説学校は7月29日から7月31日にかけて開催され、「歴史推理小説を知る」「日本の推理小説のすべて」などの講義が行われた。 写真:「日本の推理小説のすべて」の講義 - 『ハヤカワミステリマガジン』の歴史が紹介されている(韓国推理作家協会会員の推理作家チョン・ソッカ(鄭石華、정석화)氏のツイートより) また、2002年創刊の『季刊ミステリ』(계간 미스터리)は韓国推理作家協会が編者を務めている。『季刊ミステリ』は韓国内外の短編推理小説や評論、最新のミステリニュースなどを掲載するほか、短編ミステリおよび評論を募集する季刊ミステリ新人賞(계간 미스터리 신인상)により新人発掘も行っている。2008年冬号に掲載された季刊ミステリ新人賞受賞作、ソン・シウ「親友」(좋은 친구)は『ハヤカワミステリマガジン』2012年2月号に訳載されている。 (2)韓国推理作家協会主催 韓国推理文学賞 受賞作一覧 ※受賞作で邦訳されているものは1作もない ※この賞はいまも続いているが、ここでは1990年代までのものを示す ※新人に対する賞は「新人賞(신인상)」とされた時期と「新鋭賞(신예상)」とされた時期があるが、このページでは「新人賞」に統一する ※韓国推理作家協会会員の推理作家ソン・ソニョン氏のブログ記事「歴代韓国推理文学賞、新人賞、その他受賞作整理」(2010年10月6日)を参照した ※大賞の受賞には韓国推理作家協会の会員で、かつ推理小説の創作活動を5年以上していることが条件となる。新人賞には特に条件はなく、会員以外でも受賞できる。(『韓国推理作家協会 会員手帳 1993』「推理文学賞授賞規定」参照) 韓国推理文学賞 大賞 韓国推理文学賞 新人賞 第1回(1985年) ヒョン・ジェフン(玄在勲、현재훈)(1933 - ) 『絶壁』(절벽) チョン・ギュウン(鄭奎雄、정규웅)(1941 - ) 『影絵遊び』(그림자 놀이) 第2回(1986年) キム・ソンジョン(金聖鍾、김성종)(1941 - ) 『悲恋の火印』(비련의 화인) チョン・ヒョヌン(鄭賢雄、정현웅)(1949 - ) 『女子大生殺人事件』(여대생 살인사건) 第3回(1987年) イ・サンウ(李祥雨、이상우)(1938 - ) 『悪女、二度生きる』(악녀, 두 번 살다) ユ・ウジェ(柳禹提、유우제)(1955 - ) 『夜』(밤) 第4回(1988年) ノ・ウォン(魯元、노원)(1931 - ) 『危険な外出』(위험한 외출) ハン・デヒ(韓大煕、한대희)(1952 - ) 『華麗なる情死』(화려한 정사) *注1 第5回(1989年) イ・ウォンドゥ(李源斗、이원두)(1938 - ) 『暴君の朝』(폭군의 아침) カン・ヒョンウォン(강형원)(1956 - )キム・サンホン(金尚憲、김상헌)(1955 - ) 『青い王冠』(푸른 빛 왕관)『恍惚のゲーム』(황홀한 게임) 第6回(1990年) - - アン・グァンス(安光洙、안광수)(1955 - ) 『死刑特急』(사형 특급) *注2 第7回(1991年) ハン・デヒ(韓大煕、한대희)(1952 - ) 『憤怒の季節』(분노의 계절) チャン・セヨン(張世娟、장세연) 『広開土魔王』(광개토 마왕) 第8回(1992年) カン・ヒョンウォン(강형원)(1956 - ) 『ソウル・エッフェル塔』(서울 에펠탑) イ・テヨン(李泰栄、이태영) 『悪魔の駆け引き』(악마의 흥정) 第9回(1993年) ユ・ウジェ(柳禹提、유우제)(1955 - ) 『不死鳥の迷路』(불새의 미로) カン・ジョンピル(姜鍾弼、강종필)(1960 - ) 『都市の誘惑』(도시의 유혹) 第10回(1994年) イ・スグァン(李秀光、이수광)(1954 - ) 『死者の顔』(사자의 얼굴) ペク・ヒュ(白恷、백휴)(1960 - ) 『楽園の彼岸』(낙원의 저쪽) 第11回(1995年) イ・ギョンジェ(李慶載、이경재)(1928 - ) 『日本を裁判する』(일본을 재판한다) チャン・グニャン(張根亮、장근양) 『核心』(핵심) 第12回(1996年) - - - - 第13回(1997年) ペク・ヒュ(白恷、백휴)(1960 - ) 『サイバーキング』(사이버 킹) ファン・セヨン(黄世鳶、황세연)(1968 - )チェ・チョリョン(최철영) 『美女ハンター』(미녀 사냥꾼)『赤き十字架のコウモリ』(붉은 십자가 박쥐) 第14回(1998年) - - - - 第15回(1999年) キム・ヨンサン(金容相、김용상)(1942 - ) 『殺人者の仮面舞踏会』(살인자의 가면무도회) チェ・サンギュ(崔尚圭、최상규) 『悲しい出会い』(슬픈 만남) *注1 『華麗なる情死』および『華麗なる情事』の両方の意味をかけたタイトル(「情死」と「情事」がハングルでは同じ表記) *注2 『死刑特急』ではなく『私刑特急』かもしれない(「死刑」と「私刑」がハングルでは同じ表記) 1984年にも韓国推理文学賞が実施されており、チョン・ゴンソプ(鄭建燮)(정건섭)(1944 - )が長編推理小説『罠』(『덫』玄岩社、1983年)で新人賞を受賞している。授賞式は1984年2月7日。このときの主催は韓国ミステリクラブだったようである。チョン・ゴンソプは『罠』をはじめとして初期にはアリバイトリックなどを用いたクラシカルな作品を発表したが、1980年代後半からはスパイ小説『死の天使』(죽음의 천사)などに代表されるスリラーを発表するようになった。邦訳に、大韓航空機爆破事件を題材にした長編小説『真由美 最後の証言』(光文社、1988年)がある。 主な大賞受賞者 第1回(1985年)大賞受賞者 - ヒョン・ジェフン(玄在勲)(현재훈)(1933-1991)第二章参照。邦訳なし。 第2回(1986年)大賞受賞者 - キム・ソンジョン(金聖鍾)(김성종)(1941 - )第三章参照。韓国推理作家協会3代目会長(任期:2006年~2008年)。邦訳に『最後の証人』(論創社、2009年)、『ソウル 逃亡の果てに』(新風舎文庫、2005年)、「帰ってきた死者」(『ジャーロ』2001年夏号)、「失踪」(『コリアン・ミステリ』)。 第3回(1987年)大賞受賞者 - イ・サンウ(李祥雨)(이상우)(1938 - )韓国推理作家協会2代目会長(任期:1987年~2005年)。新聞記者出身の作家。『スポーツソウル』や『スポーツトゥデイ』などのスポーツ新聞の創刊やその経営に携わっている。1961年に新聞連載『新・林巨正伝』(歴史小説?)でデビュー。ミステリではチュ・ビョンテ警官シリーズなどで知られる。1987年、『悪女、二度生きる』(악녀, 두 번 살다)で第3回韓国推理文学大賞。『悪女、二度生きる』と『犬と詩人』はベストセラー。ほかに、初心者向けミステリ入門書『イ・サンウの推理小説探検』などの著書がある。エドガー・アラン・ポーの翻訳もしている。邦訳に「地獄への道行き」(『コリアン・ミステリ』)。 第4回(1988年)大賞受賞者 - ノ・ウォン(魯元)(노원)(1931 - )スパイ小説の第一人者。KCIA(韓国中央情報部)の元局長という異色の経歴の作家。50代なかば過ぎから推理小説を書き始めた。ペンネームの「ノ・ウォン」は「no one」(=誰でもない)から来ている。1988年、『危険な外出』(위험한 외출)で第4回韓国推理文学大賞。『背信の季節』(배신의 계절)はテレビドラマ化され話題になった。ほかの代表作は『三号庁舎』、『夜間航路』など。邦訳に「ブラック・レディ」(『コリアン・ミステリ』)。 第10回(1994年)大賞受賞者 - イ・スグァン(李秀光)(이수광)(1954 - )韓国推理作家協会4代目会長(任期:2009年~2011年)。1983年デビュー。推理小説のほか、歴史小説も多く発表している。1994年、『死者の顔』(사자의 얼굴)で第10回韓国推理文学大賞。邦訳に長編実録小説『シルミド 裏切りの実尾島』(ハヤカワ文庫NV、2004年)、「その夜は長かった」(『ミステリマガジン』2000年10月号)、「月夜の物語」(『コリアン・ミステリ』)。 (3)韓国推理作家協会と日本推理作家協会の交流 1984年3月、東京で開催された国際ペン大会に当時の韓国推理作家協会会長だったイ・ガヒョンが韓国代表として参加し、その機会に中島河太郎と面会している。この面会の様子は中島河太郎が『日本推理作家協会会報』1984年6月号(No.426)掲載の記事「李会長訪問」で伝えている。また正確な年は分からないが、その数年前には中島河太郎は韓国ミステリクラブ総務のファン・ジョンホ(黄鐘灝、황종호)と何度か書簡のやり取りをし、面会もしている。 1990年代に入ると日韓の推理作家協会の交流が活発になる。1990年8月に韓国推理作家協会の代表団が来日。1992年6月には、韓国・釜山(プサン)市海雲台(ヘウンデ)の推理文学館(추리문학관)(1992年3月開館)で日韓の推理作家協会の交流会が行われ、日本推理作家協会からは生島治郎、山村正夫、豊田有恒、麗羅、大沢在昌、西木正明が参加した。 推理文学館前での日韓推理作家集合写真(韓国側の参加者、クォン・ギョンヒ氏のブログ記事) - 1枚目の写真は1992年3月の開館式の日のもの。2枚目の写真が1992年6月8日の日韓交流会の日のもの。 1993年5月には韓国推理作家協会の代表団が再度来日。しかし残念ながら、この後交流は途絶えている。これらの交流をきっかけに、1993年には韓国で日本推理作家協会推薦・韓国推理作家協会編訳『日本サスペンス傑作選』(일본 서스펜스 걸작선)が刊行されている。山村美紗、赤川次郎、小泉喜美子、阿刀田高、夏樹静子、戸川昌子、多岐川恭、原尞、森村誠一、生島治郎、大沢在昌、麗羅(収録順)の短編を収録。同年に韓国で『韓国サスペンス傑作選 金来成(キム・ネソン)から権敬姫(クォン・ギョンヒ)まで』(한국 서스펜스 걸작선 김내성에서 권경희까지)が刊行されているが、これは日本では翻訳刊行されなかった。 詳細記事:日本推理作家協会と韓国推理作家協会の交流 (1990年代) 韓国推理作家協会と台湾の推理作家の交流 1989年には、台湾の推理作家・林仏児(りん ふつじ)の招待で韓国推理作家協会の一団が訪台している。韓国の推理作家イ・サンウ氏のブログでその際の写真を見ることができる(リンク先、上から6枚目の写真)。「歓迎韓国推理作家協……」と書かれているのが読める。 イ・サンウ氏の説明によれば、写真は後列左から、キム・サンホン(金尚憲)、イ・ガヒョン(李佳炯)、イ・サンウ(李祥雨)、イ・ギョンジェ(李慶載)、林仏児、キム・ナム(金楠)、チョン・ヒョヌン(鄭賢雄)、前列左から、ハン・デヒ(韓大煕)、パク・ヤンホ(朴養浩)、キム・ソンジョン(金聖鍾)、ユン・フミョン。(前列一番右の人物は不明) ちなみに林仏児(りん ふつじ)は1980年代の台湾ミステリ界における最重要人物である。詳細は「台湾ミステリ史 中編」を参照のこと。 第二節 スポーツ新聞や雑誌での新人作家発掘 (1)スポーツ新聞の新春文芸公募 このころの韓国では推理小説のメインの発表の場は新聞だった。韓国最初のスポーツ新聞である『日刊スポーツ』(일간 스포츠)(1969年創刊)は1970年代からキム・ソンジョンらの推理小説を掲載していたが、ソウルオリンピック(1988年)の開催決定や1982年のプロ野球発足などでスポーツ新聞の発行部数が増大し、これも推理小説の読者の増加に拍車をかけた。一方、大手の新聞では文学作家による推理小説が掲載されるようになった。『中央日報』や『韓国日報』などには、チョ・ヘイル(趙海一、조해일)(韓国語版Wikipedia)、キム・ソンイル(金成一、김성일)(韓国語版Wikipedia)、イ・ビョンジュ(李炳注、이병주)(韓国語版Wikipedia)、パク・ポムシン(朴範信、박범신)(韓国語版Wikipedia)らが推理小説を連載した。パク・ポムシンは韓国推理作家協会の会員にもなっている。邦訳に『掟』(角川書店、1989年)(原題『틀』)があるが、これはミステリではない。 1985年創刊の『スポーツソウル』(스포츠 서울)は推理小説を掲載しただけでなく、1986年から新春文芸公募に推理小説部門を置き、短編推理小説を公募した。邦訳のある作家ではファン・セヨン(1995年受賞)とイ・ウン(1996年受賞)がここからデビューしている。なお『スポーツソウル』の創刊を主導したのは、のちに韓国推理作家協会の会長にもなるイ・サンウである。イ・サンウは新聞記者出身の作家で、いくつかのスポーツ紙の創刊や経営に携わっている。 ファン・セヨン(黄世鳶)(황세연)(1968 - )1995年、短編ミステリ「塩化ナトリウム」(염화나트륨)が『スポーツソウル』新春文芸公募・推理小説部門に入選してデビュー。1997年、『美女ハンター』(미녀사냥꾼)で韓国推理文学賞新人賞を受賞。2011年、短編「スタンリー・ミルグラムの法則」(스탠리 밀그램의 법칙)で韓国推理文学賞の黄金ペン賞(황금펜상)(2007年新設の短編賞)を受賞。長編の邦訳に『第二次朝鮮戦争勃発の日 D-DAY』(扶桑社ミステリー、2004年)、短編の邦訳に「天の定めた縁」(『ミステリマガジン』2000年10月号)、「本当の復讐」(『コリアン・ミステリ』)がある。 イ・ウン(李垠)(이은)1996年、短編ミステリ「ほくろのあるヌード」(점이 있는 누드)が『スポーツソウル』新春文芸公募・推理小説部門に入選してデビュー。2003年に長編ミステリ『誰がスピノザを殺したか』を発表し、本格的な作家活動を始めた。2007年には美術商である自身の知識を活かした長編ミステリ『美術館の鼠』(邦訳2009年、講談社《アジア本格リーグ》)を発表。以来、『不思議な美術館』(수상한 미술관)(2009年)、『美術館占拠事件』(미술관 점거사건)(2011年)などの美術業界を扱ったミステリを主に発表している。 チョン・ソッカ (鄭石華)(정석화)(1965 - ) ※カタカナでは「チョン・ソクファ」「チョン・ソックァ」とも表記されうる2000年、短編ミステリ「夫をひどく愛する女」(남편을 지독히 사랑하는 여자)が『スポーツソウル』新春文芸公募・推理小説部門に入選。それ以前から編集業のかたわら作家活動をしており、1999年には同年公開の韓国映画『シュリ』(쉬리)のノベライズを担当。このノベライズ本は同年のうちに邦訳『シュリ ソウル潜入爆破指令』(文春文庫、1999年12月)が出ている。オリジナル作品の邦訳はない。 (2)『小説文学』長編推理小説公募 1983年10月15日、小説文学社から不定期刊行物『ミステリ』(미스터리)が出版された。2号まで刊行されたのち、3号からは同社の出版する雑誌『小説文学』の別冊付録となっている。なお2号では「ミステリ」は副題となって『推理小説 ミステリ』(추리소설 미스터리)というタイトルになっており、別冊付録のときは単に『推理小説』というタイトルになっていたようである。掲載内容は国内外の短編ミステリや評論。日本の作品では、1号に森村誠一「魔少年」、2号に同じく森村誠一の「侵略夫人」が訳載されている。 『推理小説 ミステリ』2号と、小説文学1984年12月号別冊付録『推理小説』の書影 (推理作家のイ・サンウ氏のブログ記事、2011年7月8日) なお小説文学社からは1983年、森村誠一の『狼たちの夜会』(流氷の夜会)が出版されている。当時の新聞広告には、「日本推理小説の天才森村誠一が日本の『小説宝石』と韓国の『小説文学』に同時連載した作品『狼たちの夜会』は連載中、両国の推理小説読者たちを熱中させた」と書かれているが、この日韓同時連載が正式に許可を取ったものだったのかは分からない。韓国が万国著作権条約に加盟したのは1987年のことである。 『小説文学』は長編推理小説の公募も実施した。第1回(1985年)はユ・ウジェ(柳禹提)『死のセレナーデ』(죽음의 세레나데)が受賞、第3回(1987年)はカン・ヒョンウォン『証券殺人事件』(증권살인사건)が受賞した(『証券殺人事件』は後に『見えざる手』(보이지 않는 손)に改題)。 ユ・ウジェ(柳禹提)(유우제)(1955 - )1985年、長編ミステリ『死のセレナーデ』が『小説文学』第1回長編推理小説公募で受賞作となりデビュー。1987年、『夜』で第3回韓国推理文学賞新人賞受賞。1993年、『不死鳥の迷路』で第9回韓国推理文学大賞受賞。邦訳に短編「敵と同志」(『コリアン・ミステリ』)がある。 カン・ヒョンウォン(강형원)(1956 - )本名はカン・ヒョング (姜亨求、강형구)。弁護士を務めながら作家活動を行っている。1987年、長編ミステリ『証券殺人事件』(後に『見えざる手』に改題)が『小説文学』第3回長編推理小説公募で受賞作となりデビュー。1989年、『青い王冠』(푸른 빛 왕관)で第5回韓国推理文学賞新人賞受賞。1992年、『ソウル・エッフェル塔』(서울 에펠탑)で第8回韓国推理文学大賞受賞。2012年1月より、韓国推理作家協会の5代目会長を務める。作品の邦訳はない。 (3)『季刊推理文学』と金来成推理文学賞 1988年12月にはキム・ソンジョンが『季刊推理文学』(계간 추리문학)を創刊。さらに創刊号で、長編推理小説を公募する金来成(キム・ネソン)推理文学賞を立ち上げた。 『季刊推理文学』創刊号(1988年冬) 表紙・目次等の写真 『季刊推理文学』3号(1989年夏) 表紙・目次等の写真 創刊号は金来成を特集しており、「初めて発掘公開する金来成の短編ミステリデビュー作」というあおり文句のもと、日本のミステリ雑誌『ぷろふいる』1935年3月号に掲載された金来成のデビュー作「楕円形の鏡」(日本語作品)の韓国語訳が掲載された。ほかに金来成の変格短編「霧魔」(拙訳)や、金来成についての評論なども掲載されている。創刊号には特集記事以外では座談会「韓国推理文学の展望」や韓国内外の短編ミステリが掲載され、日本の作品では松本清張「証言」が訳載された。 『季刊推理文学』は韓国の初の推理小説専門誌だとされている。1980年代末から1990年代にかけて韓国ではいくつかのミステリ雑誌が創刊されているが、どれも長続きしていない。『季刊推理文学』も1991年9月発行の第10号(1991年秋号)を最後に休刊となっている。金来成推理文学賞も全3回【注】で終了した。 金来成推理文学賞 受賞作一覧 受賞者 タイトル 第1回(1990年) クォン・ギョンヒ(権敬姫、권경희)(1959 - ) 『痺れた指先』(저린 손끝) 第2回(1991年) イ・スンヨン(李勝寧、이승영)(1963 - ) 『ミス・コリア殺人事件』(미스코리아 살인사건) 第3回(1992年) イム・サラ(林紗羅、임사라)(1963 - ) 『愛するとき、そして死ぬとき』(사랑할 때, 그리고 죽을 때) 韓国の江戸川乱歩ともいわれる金来成(キム・ネソン)(韓国ミステリ史特別編参照)の名を冠した金来成(キム・ネソン)推理文学賞は長編推理小説を公募する新人賞で、受賞作は推理文学社から刊行された。なお金来成の名を冠した文学賞にはほかに、金来成の死去直後に制定された来成(ネソン)文学賞(1958-1960、非公募、京郷新聞主催)があるが、これは推理小説の賞ではない。 金来成推理文学賞の受賞作で日本語に翻訳されているものはない。『コリアン・ミステリ 韓国推理小説傑作選』(バベル・プレス、2002年5月)には、第2回受賞者のイ・スンヨンの短編「隠しカメラ」と第3回受賞者のイム・サラの短編「標的」が収録されている。 第1回受賞者のクォン・ギョンヒ(権敬姫)氏のブログ記事へのリンク第1回金来成推理文学賞授賞式の写真 右から3番目がクォン・ギョンヒ(権敬姫)氏 受賞作『痺れた指先』の書影など 受賞時に新聞に掲載されたインタビュー記事 1(スポーツソウル1990年4月25日)「日本の作家の三島由紀夫の『金閣寺』が特に好きで、推理小説ではイギリスのアガサ・クリスティ、日本の森村誠一、韓国のキム・ソンジョンの作品を多く読んで来た」と紹介されている。 受賞時に新聞に掲載されたインタビュー記事 2(民主日報1990年5月3日)記事では「韓国初の女流推理作家」などと書かれている。またインタビューに答えて「暴力やセックスを排し、知的なゲームを中心にし、社会問題などを提示しながら文学性の高い推理小説を書いてみたいと思っている」ということを語っている。 金来成推理文学賞はいわば韓国版の江戸川乱歩賞とでも言えると思うが、第1回金来成推理文学賞でのクォン・ギョンヒの受賞と、公募制になった最初の回の江戸川乱歩賞(1957年)での仁木悦子の受賞は、単に女性作家ということ以外にもいろいろとオーバーラップする点があるように思えて興味深い。 注:金来成推理文学賞は李建志(り けんじ)「現代韓国ミステリの思想と行動(上)」(『創元推理 20号 人形の夢』2000年10月)では全4回の公募があったとされている。韓国推理作家協会の公式サイトでは全3回とされており、メールで問い合わせたところ、第4回の募集は行われていないとの回答を得た。 第三節 ミステリ専門の出版社も登場 (1)国産ミステリ出版の活況 キム・ソンジョンやイ・サンウの作品がベストセラーになると、明知社(명지사)、現代推理社(현대추리사)、推理文学社(추리문학사)、南島出版社(남도출판사)などの推理小説専門の出版社も登場する。そしてそれらの出版社や、ほかに小説文学社、ヘネム出版、ヘンニム出版などが国産ミステリを多く出版した。 韓国のミステリファンのDELIUS氏がまとめた以下のページで、1980年代の韓国の国産ミステリの新聞広告を見ることができる(翻訳ミステリも数点含む)。 1980年代の推理小説新聞広告 (1980年~1986年) (2011年12月1日)キム・ソンジョン(金聖鍾)やチョン・ゴンソプ(鄭建燮)などの推理作家の作品の広告のほか、パク・ポムシン(朴範信)やイ・チョンジュン(李清俊)などの文学作家が書いた推理小説の広告も見られる。4枚目の写真は森村誠一『狼たちの夜会』(流氷の夜会)の広告。10枚目の写真はフレデリック・フォーサイス『第四の核』、12枚目の写真はロバート・ラドラム『(?)』およびケン・フォレット『獅子とともに横たわれ』の広告。 1980年代の推理小説新聞広告(1987年~1989年) (2011年12月1日)キム・ソンジョン(金聖鍾)やチョン・ゴンソプ(鄭建燮)のほか、ヒョン・ジェフン(玄在勲)、イ・サンウ(李祥雨)、ノ・ウォン(魯元)、カン・ヒョンウォン、ハン・デヒ(韓大煕)、『季刊推理文学』の広告などが見られる。2枚目の写真はジョン・ガードナーの作品の広告。 1996年には韓国推理作家協会の企画による国産ミステリの選集《韓国ミステリコレクション》(全23巻20作品、高麗院メディア)も出版されている(ラインナップ)。 (2)ミステリ読者の団体「韓国ミステリクラブ」の結成 【2012年6月20日追加】 1990年7月、韓国推理作家協会が主催する第3回夏季推理小説学校に参加したミステリファンの約20名が中心となり、ミステリ読者の団体である韓国ミステリクラブ(한국미스터리클럽)が結成されている。主な目的はミステリの読者の拡大と、ミステリの批評の場の提供。同年のうちに会報の発行も開始しており(1991年説もあり)、年末までに会員数は200名近くになっている。1992年に韓国推理作家協会が作成した小冊子では、当時の韓国ミステリクラブの会員数は約350名とされている。 韓国ミステリクラブ制定 推理文学読者賞 受賞作一覧 受賞者 タイトル 備考 第1回(1992年) イ・スンヨン(李勝寧、이승영)(1963 - ) 『ミス・コリア殺人事件』(미스코리아 살인사건) 第2回金来成推理文学賞受賞作 第2回(1993年) イ・スグァン(李秀光、이수광)(1954 - ) 『その日のことは誰も知らない』(그날은 아무도 모른다) 第3回(1994年) イ・イナ(이인화)(1966 - ) 『永遠なる帝国』(영원한 제국) 邦訳2011年、文芸社 ※イ・スグァンの受賞作は『その日のことは誰も知らない』ではなく『憂国の目』(우국의 눈)とも言われる。詳細不明。 ※イ・イナの経歴をネット上で検索してみると、「推理文学読者賞」(추리문학 독자상)ではなく「推理小説読者賞」(추리소설 독자상)受賞となっている。第3回から賞の名称が変わったのかもしれない。 ※1994年2月に韓国ミステリクラブ会長となったパク・ヒョンサン(박형상)のブログの写真(リンク)を見ると、第4回・第5回も実施されたことが分かるが、受賞者が誰だったのかは分からない。第4回と第5回は「推理小説読者賞」という名称になっている。また、第6回以降が実施されたのかは不明。 イ・イナの『永遠なる帝国』は1993年に韓国で出版されベストセラーになった作品。正祖(チョンジョ、在位1777~1800)時代の宮廷での変死事件に始まるミステリで、映画化もされている。『ハヤカワミステリマガジン』2010年10月号の洋書案内コーナーや、『創元推理』20号(2000年10月)および『創元推理21』2001年夏号(2001年5月)に掲載された李建志「現代韓国ミステリの思想と行動」でも紹介された作品である。 この韓国ミステリクラブは少なくとも1994年までは存続したようだが、その後の活動については不明である。 (3)翻訳ミステリの出版 1970年代末からの翻訳ミステリ叢書の出版ブームも終わりを見せず、1980年代から1990年代にかけては主に以下のような叢書が出版されている。 この時期の主な翻訳ミステリ叢書《自由推理文庫》(자유추리문고)(1986年、全50巻、自由時代社) - SFも数冊含む。日本の作品なし 《アガサ・クリスティー・ミステリー》(1985年~1990年、全80巻、へムン出版社[해문출판사]) 《Qミステリ》(1989年~1992年、全46巻?、ヘムン出版社) - 日本の作品は森村誠一『人間の証明』 《キム・ソンジョン精選 最新世界推理小説》(1982年~1993年、全16巻、大作社・推理文学社) 《キム・ソンジョン選ミステリシリーズ》(1988年~1993年、全16巻、南島出版社) 1990年代以降、翻訳ミステリの出版に大きな貢献を果たした人物にミステリ研究家・翻訳家のチョン・テウォン(鄭泰原)(정태원)(1954-2011)がいる。高麗院メディアのミステリ・シリーズ(全20巻)、時空社のエラリー・クイーン選集(全20巻)など、およそ500冊の企画、出版に携わり、そのうち70冊ほどを自ら翻訳している。英語だけでなく日本語にも堪能であり、1990年代には中島河太郎と書簡のやり取りをしていた。2000年代になってからは東野圭吾『白夜行』、首藤瓜於『脳男』などを翻訳している。 1980年代の韓国では、日本の作家では1970年代に引き続き、松本清張、森村誠一、梶山季之が人気を博した。『日本文学翻訳60年 現況と分析 1945-2005(일본문학 번역 60년 현황과 분석 1945-2005)』(召命出版、2008年)(邦訳なし)によれば、1980年代の韓国で多く翻訳された日本の作家(推理作家以外も含む)は順に、三浦綾子、森村誠一、梶山季之、松本清張、井上靖、遠藤周作、曽野綾子、落合信彦である。それらの作家に数では及ばないが、1980年代前半には西村京太郎、西村寿行、笹沢左保らの作品の翻訳も始まっており、1990年代にかけてそれぞれ10冊から15冊程度翻訳出版されている。 同書を見ると、1990年代には村上春樹と村上龍が翻訳数の1位・2位となっており、推理作家では森村誠一、梶山季之とともに赤川次郎が上位に入っている。赤川次郎の作品が最初に韓国語に翻訳されたのは1980年代前半だが、1990年代末に三毛猫ホームズシリーズを中心として多くの作品が訳された。 1999年には韓国・テドン出版より日本推理作家協会・韓国推理作家協会共編の日本の短編ミステリのアンソロジー『Jミステリ傑作選』(J미스터리 걸작선)(全3巻)が出版されている。この翻訳を担当したのは前述のチョン・テウォンである。 早川書房『ミステリマガジン』2000年10月号では「コリアン・ミステリ・ナウ」と題する韓国ミステリの特集が組まれている。この号に掲載の記事で、2000年当時の韓国における日本ミステリについてチョン・テウォンは以下のように書いている。 鄭泰原(チョン・テウォン)「韓国ミステリ事情」(『ミステリマガジン』2000年10月号) 最近は綾辻行人の〈館シリーズ〉、鈴木光司『リング』『らせん』、東野圭吾『秘密』『白夜行』などの人気が高い。少年物では『名探偵コナン』、『金田一少年の事件簿』が若者の心を摑んでいる。 綾辻行人の作品が最初に韓国語に翻訳されたのは1997年で、《館シリーズ》第1作の『十角館の殺人』から第6作の『黒猫館の殺人』までが鶴山文化社より同時刊行された(なおその後、21世紀になってから十角館、水車館、迷路館、時計館は再刊されたが、人形館と黒猫館は再刊されておらず、入手難の状態が続いている)。東野圭吾の作品が最初に韓国語に翻訳されたのは1999年である。 また、島田荘司の『占星術殺人事件』は1990年代の韓国では異なるタイトルで三度出版されている。最初は1991年で、タイトルは『顔のない時間』(얼굴없는 시간)とされていた。翌1992年には『アゾート』(아조트 )というタイトルで同じ出版社から刊行され、1997年には原題を直訳した『占星術殺人事件』(점성술 살인사건)というタイトルで、また同じ出版社から刊行されている。 (4)苦戦するミステリ雑誌 ミステリの単行本や叢書の出版はそれなりに活況を呈していたが、ミステリ専門誌の出版は必ずしもうまくいかなかった。前述のとおり、1988年12月にキム・ソンジョン(金聖鍾)が中心となって創刊した『季刊推理文学』は、約3年後の1991年9月発行の第10号(1991年秋号)で休刊となっている。ただこれは、この時期の韓国のミステリ雑誌としては比較的長く持った方だった。1990年1月に創刊された『月刊推理小説』(월간 추리소설)(途中で『月刊推理小説ダイジェスト』[월간 추리소설 다이제스트]に改題)は、同年4月号(第3号)をもって休刊となっている。1994年4月にはチョン・テウォン(鄭泰原)が編集長を務める『月刊ミステリマガジン』(월간 미스터리 매거진)が創刊されたが、この雑誌も1年も持たず、1994年4月号から1994年11月号までの全8冊で刊行を終えている(韓国国立中央図書館の蔵書は全8冊だが、ネット上では全部で9冊出ているという情報もある/未確認)。1997年には韓国語版『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』(엘러리 퀸 미스터리 매거진)と韓国語版『アルフレッド・ヒッチコック・ミステリ・マガジン』(알프레드 히치콕 미스터리 매거진)が創刊されたが、どちらも年内に2冊出ただけで休刊となっている。 『月刊推理小説ダイジェスト』1990年4月号(最終号)の表紙・目次写真 (推理作家のイ・サンウ氏のブログ記事、2011年6月22日)目次の写真を見ると、江戸川乱歩「月と手袋」が連載小説として訳載されていたことが分かる(完結したのかは不明) (なお2012年現在は、韓国推理作家協会編のミステリ雑誌『季刊ミステリ』の刊行が2002年の創刊以来続いており、2012年春号で通巻35号に達している) 第四節 20世紀末: 出版不況の影 1990年代後半から、アジア通貨危機(1997年)などによる出版不況が韓国ミステリ界に影を落とし始める。創作を発表する場が減り、出版点数も激減。国産ミステリが1年に10冊も出ない低迷期に入る。長編推理小説賞を公募していた金来成推理文学賞は1993年に終了していたが、2000年代に入るとスポーツ新聞の短編ミステリの公募もなくなってしまい、新人のデビューも難しくなった。 次章で扱う内容をやや先取りして言えば、その後翻訳ミステリのファンの増加で韓国におけるミステリ出版は再び活気を見せ始めるが、韓国の創作ミステリ界はそこから取り残されたような形になってしまった。韓国の創作ミステリ界がこの停滞から抜け出す兆しを見せ始めたのは、ここ3、4年のことである。 第五節 邦訳された1980年代~20世紀末の韓国推理小説 原著刊行1981年:金聖鍾(キム・ソンジョン)『ソウル 逃亡の果てに』(祖田律男訳、新風舎、2005年)(原題『나는 살고 싶다』) 原著刊行1988年:鄭建燮(チョン・ゴンソプ)『真由美 最後の証言』(李鍾相[イ・ジョンサン]訳、光文社、1988年)(原題『마유미 최후의 증언 언니 미안해』) 原著刊行1993年:イ・イナ『永遠なる帝国』(武田康二訳、文芸社、2011年12月)(原題『영원한 제국』) 原著刊行1997年:朴商延(パク・サンヨン)『JSA 共同警備区域』(金重明[キム・ジュンミョン]訳、文春文庫、2001年5月)(原題『DMZ』) ※映画の原作小説(映画のノベライズ本ではない) 原著刊行1998年:『コリアン・ミステリ 韓国推理小説傑作選』(祖田律男ほか訳、バベル・プレス、2002年5月) - 短編13編収録。韓国推理作家協会編、1998年版『今年の推理小説』の翻訳。 『コリアン・ミステリ 韓国推理小説傑作選』の収録内容は「韓国ミステリ 読書案内」を参照のこと。ほかに『ミステリマガジン』2000年10月号に韓国の短編ミステリが4編訳載されている。(以下のあおり文句は目次より引用) 『ミステリマガジン』2000年10月号 (特集 コリアン・ミステリ・ナウ)「その夜は長かった」 李秀光(イ・スゴァン)(※当ページではイ・スグァンと表記)――霊魂となって現世を彷徨う男の悲哀 「天の定めた縁」 黄世鳶(ファン・セヨン)――妻が盗み見た、殺人計画を綴った夫の小説 「精神病を引き起こす脱毛剤」 白恷(ベク・ヒュ)(※当ページではペク・ヒュと表記)――画期的新薬の恐るべき副作用とは!? 「妻を守るために」 李源斗(イ・ウォンズ)(※当ページではイ・ウォンドゥと表記)――癌ノイローゼの男を待ち受ける皮肉な運命 参考文献 韓国ミステリ史 参考文献 (新しいウィンドウで開きます) ※便宜のためWikipediaのリンクを貼っている箇所がありますが、Wikipediaを情報源としては使用していません。 『韓国ミステリ史 第一章』(20世紀初頭~1930年代) 『韓国ミステリ史 特別編 - 金来成(キム・ネソン)(1909-1957)【1】』 『韓国ミステリ史 特別編 - 金来成(キム・ネソン)(1909-1957)【2】』 『韓国ミステリ史 第二章』(1940年代~1960年代) 『韓国ミステリ史 第三章』(1970年代) 『韓国ミステリ史 第四章』(1980年代~20世紀末) ←今見ているページ 『韓国ミステリ史 第五章』(1990年代末~21世紀初頭)(未公開) 『読書案内』
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/108.html
2011年2月3日 2011年8月7日:増補(詳細はページ最下部の「第二章 更新履歴」参照) 『中国ミステリ史 第二章』では、1910年代から1940年代まで(中華民国時代)の中国の探偵小説(偵探小説)/推理小説/ミステリの歴史を紹介している。 目次 第二章 1910年代~1940年代: ホームズ、ルパンからフオサン、ルーピンへ第一節 中国ミステリ草創期: 上海の「青」と「紅(あか)」(1)程小青(てい しょうせい)/名探偵フオサン (2)孫了紅(そん りょうこう)/怪盗紳士ルーピン (3)同時代の中国探偵作家 第二節 中華民国時代の探偵雑誌(1)中国初の探偵雑誌 (2)終戦後の探偵雑誌創刊ブーム 第三節 同時代の日本から見た当時の中国探偵小説界 第四節 邦訳された19世紀末~1940年代の中国探偵小説 参考文献 第二章 更新履歴 第二章 1910年代~1940年代: ホームズ、ルパンからフオサン、ルーピンへ 第一節 中国ミステリ草創期: 上海の「青」と「紅(あか)」 (1)程小青(てい しょうせい)/名探偵フオサン 【主要参考文献:老蔡(ラオツァイ)(2009)「百年華文推理簡史 二、程小青与霍桑(上)」、「二、程小青与霍桑(下)」】 中国で探偵小説の創作及び理論面での基礎を築いた人物は、程小青(てい しょうせい/チョン シャオチン)(1893 - 1976)である。 1893年、上海生まれ(日本では甲賀三郎、イギリスではドロシー・L・セイヤーズ、アントニイ・バークリーが同年生まれ)。12歳の時にコナン・ドイルのホームズものを偶然目にして虜になり、16歳で創作を開始。1914年、上海の新聞『新聞報』(新闻报)の文芸特集ページ「快活林」で行われていた公募に短編「灯光人影(とうこうじんえい)」が入選。この作品の主人公の霍桑(かくそう/フオサン)はシャーロック・ホームズ型の探偵で、ワトソン役は包朗(ほうろう/バオラン)。この作品が読者の好評を得たため、霍桑が探偵を務める物語はシリーズ化され、30年以上にわたって愛される人気シリーズとなった(ほぼ同時期の1917年、日本では岡本綺堂の半七捕物帳シリーズの掲載が始まっている)。 「灯光人影」の入選の前にいち早く彼の才能を見抜き小説創作の指導をしていたのは、小説誌の編集長を務め、西洋作品の翻訳で名高かった医師の惲鉄樵(うん てっしょう/ユン ティエチャオ)(恽铁樵)である。 1919年、霍桑シリーズの「江南燕(こうなんえん)」が当時の人気俳優・鄭君里(てい くんり/ジョン チュンリー)(郑君里)主演で映画化されたことから、このシリーズはさらに知名度と人気を高めた。 1915年、大学付属中学の臨時英語教師になった程小青は、そこでアメリカ人教師と知り合って英語の能力を格段に高め、英語で小説が読めるまでになる。翌年には、程小青ほか数名が翻訳した『ホームズ事件簿全集』(福尔摩斯探案全集、全12巻)が刊行されている。これは中国語の文語に訳したものだったが、1930年には程小青らにより口語訳の『ホームズ大全集』(福尔摩斯大全集)も刊行されている。程小青が翻訳に携わったのはホームズシリーズのみにとどまらず、ヴァン・ダイン、レスリー・チャータリス、エラリー・クイーン(『ギリシャ棺の謎』)、さらには中国人探偵が活躍するアール・デア・ビガーズのチャーリー・チャンシリーズなど、大量の作品を翻訳している。 程小青の探偵小説への貢献は創作および国外ミステリの翻訳にとどまらず、その能力は探偵小説論でも発揮された。また彼はアメリカの大学の「犯罪心理学」、「探偵学」などを通信教育で受講するなどして、当時の最先端の知識を得ていた。 1946年には、程小青の探偵小説74編を収録する『霍桑事件簿全集』(霍桑探案全集袖珍丛刊)全30巻が刊行された。1949年の新中国成立後は旧来の探偵小説を書くことは禁止されてしまったが、1957年からは実際の事件に題材を採った大衆向けスリラー小説を書くようになり、どれも20万部を越える大ヒットとなる。中国で名高い映画「徐秋影案件(じょしゅうえい あんけん)」(1958)は、程小青の小説に基づくものである。(日本では1957年、松本清張が『点と線』の連載を開始し、いわゆる「社会派推理小説」の時代が幕をあける) 晩年の10年間は、中国で知識人が迫害にあった文化大革命の時期に当たり、彼も迫害を受けることになった。かつてともに探偵小説の翻訳などを手掛けた仲間が病死したり、あるいは自殺に追い込まれたりする中で、1975年には妻をもなくし、彼も自身の作品の改訂版全集を出すという夢をかなえられないまま、1976年、北京にて没。享年83歳。 近年中国では、1997年の『霍桑探案集』(全6巻)など何度か作品集が刊行されているが、ほとんど品切れになっているようだ。現在新刊で入手できるのは、10編収録の短編集『血手印(血の手形)』(華夏出版社、2008年)。また、2007年には『近現代偵探小説作家程小青研究』という研究書が刊行されている。 また、2006年にはハワイ大学出版からフオサンものの英訳短編集"Sherlock in Shanghai Stories of Crime And Detection"が出ている(著者名の表記は Cheng Xiaoqing )。翻訳はほかに少なくとも、イタリア語訳"Sherlock a Shangai"(2009年)が刊行されている。 (2)孫了紅(そん りょうこう)/怪盗紳士ルーピン 【主要参考文献:老蔡(ラオツァイ)(2009)「百年華文推理簡史 三、孫了紅和他的“反偵探小説”」】 1920年代から40年代末までの中国探偵小説界を支えたもう1人の人物として、孫了紅(そん りょうこう/スン リャオホン)(孙了红)(1897 - 1958)が挙げられる。 1897年、上海生まれ(程小青の4歳年下/日本では海野十三、木々高太郎が同年生まれ)。彼は紙とペンさえあればどこでも小説を書き始めるような男で、喫茶店で小説を書いては、周りの人に見せて喝采を浴びていた。雑誌に小説などを発表していたが、1923年のある日、『アルセーヌ・ルパン全集』(亚森罗苹案全集、1925年出版)の翻訳に誘われ、そこから探偵小説創作の道へと入る。1923年11月には、ルパン(Lupin)をもじった魯平(ルーピン)(鲁平、Luping)という怪盗紳士探偵が登場する短編「傀儡劇(かいらいげき)」(傀儡剧)を雑誌『偵探世界』に掲載する(日本ではこの年、乱歩がデビュー)。この作品は好評を得てシリーズ化され、怪盗紳士ルーピンはこの後約25年間にわたって活躍することになる。探偵小説の創作以外に、いくつかの探偵小説雑誌の編集長も務めた。また恋愛小説も執筆している。 孫了紅の作品は「反探偵小説」(反侦探小说)と呼ばれている。これを聞くと、日本に少なからずいる「アンチ・ミステリ」ファンは色めき立ってしまうかもしれないが、これは単に彼の作品が当時の一般的な探偵小説と異なり、探偵ではなく怪盗を主人公にしていることからきた名称である。 程小青とは交流があり、探偵小説論を交わし互いに刺激し合った。霍桑(フオサン)が登場する作品を孫了紅が書いたこともあった(「鴉の鳴く声」(鸦鸣声))。当時上海では、二人の名前にそれぞれ「色」が含まれていることから、二人のことを「青紅(あおあか)コンビ」(青红帮)と呼んでいた。ただ、老蔡(ラオツァイ)(2009)によれば、孫了紅の創作の量は程小青ほど多くはなく、また孫了紅の作品は出来不出来の差が大きいという。 1949年の新中国成立後は、旧来の探偵小説雑誌や探偵小説は発行が禁止されてしまったため、劇団の劇の脚本を書いたり、新聞でスリラー小説(驚険小説/惊险小说)を連載したりした。若い頃から病弱であったが病状が悪化し、1958年没。享年61歳。同年に書きあげ新聞連載された反スパイ小説『青島迷霧(チンタオ めいむ)』(青岛迷雾)が最後の作品となった。 現在中国で手に入る孫了紅の単行本は、5編収録の短編集『血紙人(血染めの紙人形)』のみである。 同時代のアジアの動向 インドネシアでは、1926年に程小青の霍桑(フオサン)ものが翻訳されている。1929年には、代表作の1つである「江南燕」が訳された。(柏村彰夫(2010)) 上海でルパンの名をもじった怪盗紳士ルーピン(魯平)が活躍していた頃、朝鮮半島ではルパンシリーズの作者ルブランの名をもじった探偵ユ・ブラン(劉不乱)が活躍していた。探偵ユ・ブランを創造したのは、早稲田大学留学中の1935年に日本の雑誌『ぷろふいる』でデビューし、江戸川乱歩とも親交があった韓国ミステリの始祖・金来成(キム・ネソン、1909-1957)である。探偵ユ・ブランは『ぷろふいる』1935年12月号に掲載された「探偵小説家の殺人」で劉不乱(りゅう ふらん)として初登場。金来成は1936年に朝鮮半島に戻り、以降はユ・ブランが活躍する探偵譚や乱歩風の変格短編を朝鮮語で執筆していた。(金来成についての詳細は、「韓国ミステリ史 特別編 - 金来成(キム・ネソン)(1909-1957)」) (3)同時代の中国探偵作家 【主要参考文献:老蔡(ラオツァイ)(2009)「百年華文推理簡史 四、民国時期的其他原創作品(上)」、「四、民国時期的其他原創作品(下)」】 程小青、孫了紅と同時期に中国で活躍した探偵作家に以下のような人たちがいる。 陸澹安(りく たんあん/ルー ダンアン/陆澹安)(1894 - 1980)程小青のフオサンシリーズ、孫了紅のルーピンシリーズとともに「中華民国時代の三大探偵小説シリーズ」と呼ばれる李飛(リーフェイ)シリーズの作者。当時の探偵小説作家の中で唯一、法律の専門教育を受けた人物だった。1923年に創刊された中国初のミステリ雑誌『偵探世界』では、程小青らとともに編集を担当。作品数があまり多くないため、後世に与えた影響は程小青や孫了紅ほど大きくはない。 兪天憤(ゆ てんふん/ユー ティエンフェン/俞天愤)(1881 - 1937) 張碧梧(ちょう へきご/ジャン ビーウー/张碧梧)(1897 - 没年不明) 趙苕狂(ちょう ちょうきょう/ジャオ ティアオクアン/赵苕狂)(1892 - 没年不明) 中国では2002年に、20世紀に発表された中国ミステリの傑作短編を集めたアンソロジー『20世紀中国偵探小説精選』(全4巻)が刊行されている。この時期を対象とする第1巻の収録作品は以下のとおりである。 『20世纪中国侦探小说精选(1920-1949) 少女的恶魔』(少女的悪魔)程小青「案中案」 程小青「白紗巾」(白纱巾) 孫了紅「藍色響尾蛇」(蓝色响尾蛇) 陸澹安「夜半鍾声」(夜半钟声) 兪天憤「白巾禍」(白巾祸) 張碧梧「箱中女屍」(箱中女尸) 趙苕狂「少女的悪魔」(少女的恶魔) 何朴斎(か ぼくさい/ホー ピャオジャイ/何朴斋)「鸚鵡緑」(鹦鹉绿) 徐卓呆(じょ たくがい/シュー ジュオダイ)「臨時強盗」(临时强盗) 同時代のアジアの動向 タイでは1912年にホームズが初めて翻訳されたのに続いて、モーリス・ルブランのルパンものや、エミール・ガボリオ、ガストン・ルルーの探偵小説などが多数翻訳・翻案され、圧倒的な人気を博した。創作では、前述のラーマ6世『トーンイン物語』に続いて、ホームズものの翻訳者だったルアン・サーラーヌプラパンによる『黒い絹と悪霊の顔』(1922)、シーラット・サパーポンワット『それから永久に』などが発表された。1930年代に入るとこのジャンルはやや下火になったが、パイサーン・サーンブット『私の王女』(1937)、アルンプラサート『邪悪な巣窟』(1938)、タンマティアンの〈探偵チューチュープシリーズ〉(1938~)、ディンソー『探偵チェム博士』(1941)などが書かれた。(宇戸清治(2009)) 第二節 中華民国時代の探偵雑誌 【主要参考文献:老蔡(ラオツァイ)(2009)「百年華文推理簡史 五、民国時期的偵探雑誌(上)」、「五、民国時期的偵探雑誌(下)」】 【2011年8月7日加筆】 (1)中国初の探偵雑誌 少し時間をさかのぼって話を始めるが、1923年というのは日本のミステリ史においても、そして中国のミステリ史においてもエポックメイキングな年であった。この年、日本の雑誌『新青年』は4月号を初の「創作探偵小説号」とし、翻訳ではなく日本のオリジナルの探偵小説を特集するという新たな試みに出る。そしてこの号に掲載された「二銭銅貨」で華々しくデビューしたのが、江戸川乱歩である。この号では乱歩の作品を含め4編の創作短編が掲載されたが、その中には上海を舞台にした松本泰の短編「詐欺師」もあった。 日本人がイマジネーションの中の魔都・上海を描き出していたとき、現実の上海でも、今まさに中国ミステリ史における重大事件が起ころうとしていた。1923年6月、中国初の探偵小説雑誌『偵探世界』(世界書局)の創刊である。中国の作家によるオリジナル作品を重視し、中華民国時代の探偵小説界の三大巨頭、程小青(てい しょうせい)・孫了紅(そん りょうこう)・陸澹安(りく たんあん)の作品を多く掲載したほか、探偵作家以外の小説家にも積極的に声をかけ、探偵小説を依頼した。ただし、この雑誌自体は探偵小説専門というわけでなく、探偵小説が一番多いとはいえ、ほかに武侠小説や冒険小説も掲載していた。小説以外に、程小青による「科学と探偵術」、「探偵小説作法の管見」等のコラムも掲載された。程小青の名前は編集委員としてもクレジットされていたが、実際には程小青は編集に参加していないと言われている。彼の名前がクレジットされているのは、当時すでに探偵作家として名声を博していた彼の名前を借りて売り上げにつなげようと出版社が考えたからである。月2回刊という刊行ペースに創作小説の供給が追い付かなくなり、次第に作品の質が低下したことで読者離れを招き、全24冊、1年という短命に終わったが、この雑誌が後の中国ミステリ界に与えた影響は大きかった。 その後の中国の探偵小説雑誌としては、1938年9月創刊の中国第二の探偵小説雑誌『偵探』があった。当初は月刊、のちに月2回刊となったこの雑誌は、バックナンバーが散逸しており研究はまだ進んでいないとのことだが、1941年刊行の第54号の存在が確認されており、現在知られている中華民国時代の探偵雑誌では、最も刊行号数が多いものである。 なお、日本初の探偵雑誌は、1916年から3年ほど刊行された『探偵雑誌』(実業之世界社)というタイトルの探偵雑誌だとされている。 (2)終戦後の探偵雑誌創刊ブーム 終戦後、日本では1946年3月創刊の『ロック』を皮切りに、探偵雑誌が多数創刊された。1946年には『ロック』に続いて、『宝石』(3月)、『トップ』(5月)、『ぷろふいる』(後に『仮面』)(7月)、『探偵よみもの』(11月)が、1947年には『黒猫』(4月)、『新探偵小説』(4月)、『真珠』(4月)、『妖奇』(後に『トリック』)(7月)、『Gメン』(後に『X』)(10月)、『フーダニット』(11月)が創刊されている。もっとも、これらの雑誌はほとんどが2~3年ほどで廃刊になっており、1940年代に創刊された雑誌で1950年代になってまだ刊行が続いていたのは、『Gメン』(『X』)(~1950年)、『探偵よみもの』(~1950年)、『妖奇』(~1953年)、そして『宝石』(~1964年)だけである。 中国でも戦後になると探偵雑誌の創刊ブームが訪れる。中国で戦後最も早く創刊された探偵雑誌は、程小青が編集長を務めた『新偵探』だが、この創刊は日本の『ロック』創刊よりも早い1946年1月のことだった。続いて同年のうちに、『大偵探(だいていたん)』(4月)、『藍皮書(らんひしょ)』(7月)が創刊されている。 『新偵探』は月2回刊。編集長の程小青は、創刊号から毎号のように霍桑シリーズを掲載し、またレスリー・チャータリスのセイントシリーズを翻訳するなど、自ら健筆をふるった。雑誌は創作が大部分を占めたが、翻訳ではほかに、エラリー・クイーンの短編「アフリカ旅商人の冒険」なども掲載された。創作作品の不足のため次第にページ数が少なくなり、約半年、全17号を刊行して廃刊となった。 『大偵探』は、孫了紅が初代編集長を務めた月刊の探偵雑誌。『新偵探』とは異なり、こちらは翻訳作品を主軸としており、欧米黄金時代のアガサ・クリスティ、エラリー・クイーン、ジョン・ディクスン・カーの作品や、ジャック・フットレルの作品などを翻訳掲載した。また、犯罪実話も人気を博した。『新偵探』が休刊になると創作も載せるようになり、次第に創作の割合の方が多くなっていった。孫了紅もルーピンシリーズの「藍色響尾蛇」(蓝色响尾蛇、別名「1947年の怪盗ルーピン」(一九四七年的侠盗鲁平))を連載している。 『藍皮書』は不定期刊。探偵小説のほか、ホラー小説、武侠小説も掲載された。創刊号には、当時『大偵探』の編集長だった孫了紅も小説を寄せており、孫了紅はのちには『藍皮書』の編集長にもなっている。孫了紅は、金庸などに影響を与えた当時一番人気の武侠作家、還珠楼主に執筆を依頼し、これにより『藍皮書』の売り上げは大幅に上がった。さらに程小青のフオサンシリーズの連載や、孫了紅のルーピンシリーズの掲載もあり、『藍皮書』当時の一番人気の探偵雑誌となった。 1949年1月には、探偵小説雑誌『紅皮書』が創刊された。この雑誌にも孫了紅のルーピンシリーズが掲載され、またたく間に『藍皮書』と並ぶ人気雑誌となった。そして、中国の探偵小説界はこのままの形で発展していくかに思われたが、1949年、新中国=中華人民共和国の成立により、状況は一変する。(以降、第三章) 第三節 同時代の日本から見た当時の中国探偵小説界 【2011年8月4日新設】 日本の雑誌『新青年』は、1930年代に中国の探偵小説を4編訳載している。この4編は、江戸川乱歩編「翻訳短篇探偵小説目録」(『探偵小説年鑑 1951年版』岩谷書店、1951年 巻末)に記載されていない。 (タイトルに付した振り仮名は、実際に『新青年』で振られているもの) 掲載号 ページ タイトル 作者 翻訳者 1930年夏季増刊号(11巻11号) pp.100-113 「白玉環」(はくぎょくくゎん) 武進呂侠 記載なし 1931年新春増刊号(12巻3号) pp.278-290 「無名飛盗」(ウー ミン フェイ タオ) 張慶霖 記載なし 1933年夏季増刊号(14巻10号) pp.125-138 「賭場母女」(トゥ チャン ムー ヌー) 幸福斎 呂久餘七 1935年夏期増刊号(16巻10号) pp.161-169 「絶命血書」(チュエ ミン シェー シュ) 呂侠 阿羅本洋 どれも初出情報や作家の経歴等の親切な情報は付されていないが、調べてみると、このうち呂侠(ろきょう/リューシア)の2作品は、1907年に刊行された呂侠『中国女偵探』(商務印書館)に所収のものであることが分かった。1907年というのは、中国で次々とホームズ物やその他の欧米探偵小説が翻訳され、また中国の作家が見よう見まねでオリジナルの作品を発表しはじめていた時期である。この本には、原題で示すと「血帕」、「白玉環」、「枯井石」の3短編が収録されているが、このうち1作目と2作目が『新青年』に訳載されている(2作目の「白玉環」の方が『新青年』では先に掲載されている)。なおこの『中国女偵探』は、「こちら(中国のサイト)」で全ページを画像ファイルで見ることができる。作者の呂侠は、中国の史学家の呂思勉(ろ しべん、1884-1957、中国語版Wikipedia)と同一人物だという説があるようだ。 張慶霖(ちょう けいりん/ジャン チンリン)と幸福斎(こうふくさい)は、1923年に創刊された中国初の探偵小説雑誌『偵探世界』などに作品を発表していた作家のようだが、『新青年』に掲載された作品の原典は分からない。この4作品については、のちに別ページでまとめる予定である(※現在未公開「アジア推理小説翻訳史 中国編(1) 『新青年』掲載の忘れられた四短編」)。 上で示したように、早くも1930年代には中国の探偵小説が日本で翻訳されていたわけだが、これらの短編は発表年も作者のプロフィールも付されず、ただ翻訳されて掲載されただけだったので、これでは中国の探偵小説界について知りようもなかった。中国の探偵小説界についてある程度まとまった情報が入ってくるのは、戦後になってからである。 戦後、江戸川乱歩を中心に探偵作家が集まって、土曜会という探偵小説を語る会が毎月1回開かれるようになった。1946年6月に始まったこの土曜会では、1947年から1950年の間に計3回、中国の探偵小説についての講演会や座談会が行われている。 (1)東震太郎 講演「中国の探偵小説界」(第13回土曜会、1947年6月21日) 1947年6月21日、すなわち探偵作家クラブ(現・日本推理作家協会)創設の日に開かれた第13回土曜会では、探偵作家クラブ会員で作家の東(あずま)震太郎氏が「中国の探偵小説界」と題する講演を行っている。最初に日本のミステリ界で中国の探偵小説について詳しく紹介したのは、おそらくこの東震太郎氏だと思われる。 東震太郎 講演「中国の探偵小説界」要旨 (「第13回土曜会記録」『探偵作家クラブ会報』第2号(1947年7月))「ビガース(米)の伸査礼(チャーリーチャン)探偵は、人物が温厚謙遜なので好まれている。」 「ルパン、ドイルは夙に翻訳され、わが乱歩の「D坂の殺人事件」「二銭銅貨」「白髪鬼」「蜘蛛男」等も訳されている。」 「創作は至って少く、張恨水、耽小適等の作品も、人情本又は之に類するものであり、曹禹も実録物を書いている。」 「種本は、康煕年間に多い公案物(裁判物)が主で、中にも「龍図公案」(包公案)はその模倣が多い。この本は例の「棠陰比事」と同じくわが「本朝桜陰比事」の淵叢で大岡政談的な物語が六十三種も収録されている。又、謎々的な一種の暗号めいた「柏案驚奇」と云った本も好まれている。」 上記の第13回土曜会記録が掲載された号には、東震太郎氏のエッセイ「中国の探偵小説」も掲載されている。東氏はそこで、中国の探偵小説を3つに分類している。(判読不明の文字は■で示す) 中国の探偵小説(1)実録もの(耽小適(人情本作家)曹禹(劇作家)その他) (2)公案もの ― 棠陰比事(明末■■) ― 龍図公案(一名包公案)(清■) ― その亜流 (3)翻訳もの ― ルパン物、ドイル物、乱歩もの(二銭銅貨、D坂の殺人事件、白髪鬼、蜘蛛男等) アメリカの推理作家アール・デア・ビガーズが創造したチャーリー・チャンは、ホノルル警察の警部で中国系アメリカ人という設定。このころには少なくとも、程小青訳のものが刊行されていた。現在ではチャーリー・チャンの中国語表記は陳査理(チェン・チャーリー/陈查理)が普通だが、このころは伸査礼(シェン・チャーリー)と書いていたんだろうか。 中国のオリジナル作品の現状や発展については、東氏はかなり悲観的な見方をしている。東氏は戦前はジャーナリストとして大陸におり、終戦前後には上海にいたそうだが、残念ながら程小青や孫了紅の活躍や、終戦後の探偵雑誌の隆盛については、東氏の耳には入らなかったようである。東氏が挙げている中国の三人の作家は、推理小説関連の文献では名前を見掛けたことがない。今ほど情報が手に入りやすい時代ではないので仕方がないが、中国における創作探偵小説の実情の紹介としては、やや的外れのものだったと言わざるを得ないだろう。(ここで名前が出ている張恨水、耽小適(耿小適?)、曹禹については、のちに別ページでまとめるかもしれない) (2)柴田天馬 講演「中国文学に現れた犯罪、探偵」(第18回土曜会、1947年11月22日) 東震太郎氏の講演から5か月後には、『聊斎志異(りょうさいしい)』の完訳者である中国文学者の柴田天馬が土曜会に招かれている。この回では主に中国の古典文学作品に現れる侠盗についての話がなされたようで、19世紀末以降の中国探偵小説の話題は出なかったようである。(『探偵作家クラブ会報』第7号(1947年12月)) (3)江戸川乱歩、ロバート・ファン・ヒューリック、辛島驍、魚返善雄ほか 座談会「中国の探偵小説を語る」(第47回土曜会、1950年5月27日) この前年に『狄公案(てきこうあん)』の英訳を出したロバート・ファン・ヒューリックと、中国文学者の辛島驍(からしま たけし)、同じく中国文学者の魚返善雄(おがえり よしお)を招いて座談会が行われた。その模様は、『宝石』1950年9月号に座談会「中国の探偵小説を語る」として掲載されている。ここで辛島氏は、中国の探偵小説史を第一期から第七期に分類して説明しているが、ここで「第七期」とされているのが19世紀末から20世紀初頭のホームズなどの西洋文学の翻訳時期のことであり、その後の程小青や孫了紅の登場についてはこの座談会では触れられていない。 結局、この時期には中国の創作探偵小説の実情について、正しい情報は伝わらなかったようである。 乱歩は中国以外にも、インドや韓国などアジア各地の推理小説に興味を持ち、情報を集めていた。しかし、1965年に乱歩が死去して以降は、アジアの推理小説に目を向ける人はおらず、日本のミステリ界において「アジア」の存在は忘れられたものとなった。日本のミステリ界においてアジアが「再発見」されるのは、21世紀になり、島田荘司がアジア各地の本格ミステリに目を向け始めてからのことである。 第四節 邦訳された19世紀末~1940年代の中国探偵小説 【2011年8月4日訂正】 清末から中華民国時代の中国探偵小説で、一般流通の書籍・雑誌等で翻訳された作品は、第五節で紹介した『新青年』掲載の4編以外には見当たらない。 2004年の第4回本格ミステリ大賞で評論・研究部門の候補になった井波律子『中国ミステリー探訪 ― 千年の事件簿から』(日本放送出版協会、2003年)は、中国ミステリの歴史を4世紀にまでさかのぼり、そこからの歴史を丁寧にかつ読みやすく紹介した好著である。基本的に19世紀以前の作品を紹介しているが、最後の方で程小青と孫了紅にも言及があり、フオサンシリーズの中編「舞宮魔影(ぶきゅうまえい)」と、ルーピンシリーズの「血染めの紙人形」(血紙人、1942)のあらすじが詳しく紹介されている。 ネット上では、この時期の上海の探偵小説については、ブログ「中国推理小説研究会」の上原草さんが、作品のあらすじを詳細に示しながら丁寧な紹介をしていらっしゃいます。程小青のフオサンシリーズや孫了紅のルーピンシリーズのほかに、趙苕狂(ちょう ちょうきょう)の失敗探偵シリーズなどにも言及があります。 また、Webサイト「翻訳書肆・七里のブーツ」では、フオサンシリーズの「別荘の怪事件」(別墅之怪)が全訳されて公開されています。(程小青のフオサンシリーズの英訳が出ていることは、このサイトで知りました) 参考文献 中国ミステリ史 参考文献 (新しいウィンドウで開きます) 第二章 更新履歴 2011年2月3日:公開 2011年8月4日~7日「第三節 同時代の日本から見た当時の中国探偵小説界」を新設。 中華民国時代の探偵雑誌についての記述を第三章から第二章に移動して「第二節 中華民国時代の探偵雑誌」とし、大幅に加筆。 『中国ミステリ史 第一章』(19世紀末~1910年代) 『中国ミステリ史 第二章』(1910年代~1940年代) ←今見ているページ 『中国ミステリ史 第三章』(1940年代末~1970年代) 『中国ミステリ史 第四章』(1970年代末~1990年代) 『中国ミステリ史 第五章』(1990年代末~21世紀初頭) 『中国ミステリ史 第六章』(現代)
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/119.html
2011年5月2日 日本の推理小説のイタリア語訳本のリスト。 関連ページ:イタリア推理小説略史 (2012年7月1日) ついさっきまで知らなかったのだが、イタリア語版Wikipediaをさまよっていたら、イタリアには1946年に刊行を開始したミステリ叢書「ジャッロ・モンダドーリ」(Il Giallo Mondadori)(英語版Wikipedia)というのがあるのを知った。なんでもその前身は1929年に刊行を開始していて1946年に現在の名前になったそうだが、1946年から現在までですでに3000冊を超えていると聞くと、イタリアはあまり推理小説が盛んなイメージではなかったのでちょっと驚いてしまう。日本でいえば、1953年から早川書房が刊行している「ハヤカワ・ポケット・ミステリ」に相当しそうだが、「ジャッロ・モンダドーリ」も翻訳作品中心であるものの、イタリアの国内作品もそれなりに収録しているというところがポケミスとは異なっている。 イタリア語版Wikipediaには、この叢書のNo.3026(2011年3月刊行)までの全リスト(イタリア語版Wikipedia)があったので、まずそこから日本の推理作家の作品を探した。以下に引用する。Wikipediaのリストは100冊ごとに1ページになっており、全31ページにわたる。左端のNo.をクリックすることで、該当のページが開くようにした。 イタリアのミステリ叢書「ジャッロ・モンダドーリ」(Il Giallo Mondadori)で刊行された日本の作品一覧 No. イタリア語タイトル 著者 原題 刊行日 321 Vita da cani Milton K. Ozaki (A Fiend In Need) 1955年3月26日 887 Tre per la forca Milton K. Ozaki (Case Of The Cop's Wife) 1966年1月30日 1049 Appuntamento per un massacro Milton K. Ozaki (Wake Up And Scream) 1969年3月9日 1065 Carcere nero Milton K. Ozaki (Inquest) 1969年6月29日 1149 La morte è in orario Seicho Matsumoto (松本清張) (Ten To Sen) 『点と線』 1971年2月7日 1170 Mai gettare la spugna Milton K. Ozaki (Never Say Die) 1971年7月4日 1334 Settimana di morte Robert O. Saber (Time For Murder) 1974年8月25日 1969 L'ascia, il koto e il crisantemo Seishi Yokomizo (横溝正史) (Unugamike no Ichizoku) 『犬神家の一族』 1986年10月26日 2008 Di amore si muore Masako Togawa (戸川昌子) (The Lady Killer) 『猟人日記』 1987年7月26日 2051 Tempesta d'autunno Shizuko Natsuki (夏樹静子) (The Third Lady) 『第三の女』 1988年5月22日 2112 Come sabbia tra le dita Seichō Matsumoto (松本清張) (Suna so utsuwa) 『砂の器』 1989年7月23日 2332 Un bacio di fuoco Masako Togawa (戸川昌子) (A Kiss of Fire) 『火の接吻』 1993年10月10日 2519 L'abbandono Natsuki Shizuko (夏樹静子) (Tenshi ga kiete iku) 『天使が消えていく』 1997年5月11日 2570 Il palazzo dei matrimoni Seicho Matsumoto (松本清張) (Kuroi Sora) 『黒い空』 1998年5月3日 2598 Il treno del mistero Kyotaro Nishimura (西村京太郎) (Misuteri Ressha Ga Kieta) 『ミステリー列車が消えた』 1998年11月15日 2672 Filastrocca per l'assassino Keigo Higashino (東野圭吾) (Hakuba sanso satsujin jiken) 『白馬山荘殺人事件』 2000年4月16日 (『犬神家の一族』の原題の綴りが間違っているが、Wikipediaの執筆者の誤りなのか、それとも奥付けでそもそも誤っているのかが分からないので、とりあえずWikipediaに書かれたまま引用する) No.1から順に見ていって、「Ozaki…、日本人見つけた!」と思ったら違っていたのが、ミルトン・K・オザキである(そもそも、尾崎姓の推理作家は尾崎諒馬ぐらいしか思い当たらないが、まさか翻訳されていないだろう)。ミルトン・K・オザキはここで見掛けるまでその存在を知らなかったのだが、日本人を父に持つ日系アメリカ人推理作家で、執筆に使用したのは英語だそうだ(英語版Wikipediaの「Milton K. Ozaki」など参照)。なお、上の表に入れたRobert O. Saberは、オザキのペンネームである。(2011年5月6日追記:探偵作家クラブ(現・日本推理作家協会)会報第1号(1947年6月)に、「シカゴ探偵作家クラブ 日本人会長」と題するニュースが載っており、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)シカゴ支部の支部長に「Milton Ozakiといふ日本姓の人」が選出されたと伝えている。美容院主であり探偵作家である、アメリカの著名出版社の小説賞を受賞している、などと簡単に紹介している。ただし、作品を読んだことがある人はいなかったようで、「その作品も作家の人となりも今の所不明である」としている。) 日本語で書かれた作品で最初にこの叢書から刊行されたのは、松本清張『点と線』。これが1971年に刊行されているが、日本の作品が次に出るまではなんと15年の歳月を待つ必要があった。1986年に横溝正史『犬神家の一族』が出ると、その後90年代の終わりまでに犬神家を含め日本の作品が8作品刊行される。しかし2000年代に入ると、2000年に東野圭吾『白馬山荘殺人事件』が刊行されただけで、その後11年間日本の作品の刊行はない。なんとも残念ではあるが、とはいえ、次にこの叢書に収録される日本の作品はなんなのか、楽しみにしていたいと思う。 なお、この叢書ではほかのアジア諸国の作品は刊行されていないようだが、ほかの出版社まで見ると、中国のミステリ作家・何家弘(か かこう/ホー ジアホン)の『瘋女』(のちに『血之罪』に改題)のイタリア語訳『La donna pazza』(英訳すると"The crazy woman")が2007年に刊行されている。この作品は、イギリスの新聞『ガーディアン』でアジア10大推理小説の1つに選ばれ、中国の作家莫言も絶賛している作品で、ほかにフランス語訳も出ている。イタリアは、欧米諸国の中ではいち早く台湾の島田荘司推理小説賞に協賛しており、2011年夏に決定する第2回受賞作は台湾や中国、日本のみならず、イタリアでの刊行が決定している。イタリアは欧米諸国の中でも、比較的、アジアのミステリ界へ視線を向けている国だと言っていいだろう。 (イタリアではほかに、中国ミステリの創始者・程小青(てい しょうせい/チョン シャオチン)の作品集『Sherlock a Shangai』(2009年)も刊行されている) 2011年5月2日追記 イタリアではジャンルとしてのミステリのことを「ジャッロ」(黄色)と呼ぶというのは以前にどこかで聞いたことがあったが、その由来になったのが上で紹介したモンダドーリ社の叢書だそうだ(マリネッラ・ヴァーネ・デトレフス「現代のイタリア・ミステリー事情」(光文社『ジャーロ』第3号[2001年春号]、翻訳:山中なつみ)参照)。特徴的な黄色い表紙を使ったこの叢書(英語版Wikipediaに写真あり)は、1929年に「リブリ・ジャッリ」(I libri gialli、=黄色い本)というシリーズ名で刊行が開始され、1946年に現在の「ジャッロ・モンダドーリ」という名称になった。 このページのリストについて このページの以下のリストは、イタリアのネット書店「Libreria Universitaria online」でイタリア語に翻訳されていそうなミステリ作家(英訳やフランス語訳、ドイツ語訳がすでに出ている作家など)の名を検索して作成しているもので、イタリア語訳が出ている日本のミステリ作家の完全なリストではない。また、短編のイタリア語訳に関しては、基本的にフォローできていない。ネット書店「Libreria Universitaria online」のデータには上述の「ジャッロ・モンダドーリ」のデータはなぜか登録されていないようなので、「ジャッロ・モンダドーリ」での刊行作品については、イタリア語版Wikipediaでの記述を参考にしていることをお断りしておく。 また、まず作家で選んで、それぞれの作家について翻訳状況を書いているので、なかにはミステリではない作品も含まれる。 ※ミステリを含む広義のエンターテインメント作家の作品について調べています Index あ行有栖川有栖 (Alice Arisugawa) 石田衣良 (Ira Ishida) 江戸川乱歩 (Edogawa Ranpo) 岡本綺堂 (Kido Okamoto) か行北方謙三 (Kenzo Kitakata) 桐野夏生 (Natsuo Kirino) 栗本薫 (Kaoru Kurimoto) さ行島田荘司 (Soji Shimada) 鈴木光司 (Koji Suzuki) た行高見広春 (Koushun Takami) 戸川昌子 (Masako Togawa) な行夏樹静子 (Shizuko Natsuki) 西尾維新 (Nisio Isin) 西村京太郎 (Kyotaro Nishimura) は行東野圭吾 (Keigo Higashino) ま行松本清張 (Seicho Matsumoto) 湊かなえ (Kanae Minato) 宮部みゆき (Miyuki Miyabe) や行横溝正史 (Seishi Yokomizo) アンソロジー リンク 更新履歴 以下、ISBNをクリックするとネット書店「Libreria Universitaria online」の該当ページが開くようになっている。 あ行 有栖川有栖 (Alice Arisugawa) 『赤い月、廃駅の上に』に収録されている短編「海原にて」のイタリア語訳が、2011年2月にイタリアで刊行された雑誌『ALIA storie』に掲載された。(翻訳者のマッシモ・スマレ氏のサイト(イタリア語・日本語・英語)参照)。 (マッシモ・スマレ氏は、かなりの数の日本の短編小説をイタリア語に翻訳している。以下では作家ごとに逐一挙げることはせず、一番下の「アンソロジー」のところで扱う。) 石田衣良 (Ira Ishida) Tokyo nights / 『池袋ウエストゲートパーク』 ISBN 9788834712078 (2006年) 江戸川乱歩 (Edogawa Ranpo) (イタリア語版Wikipedia) La belva nell'ombra / 『陰獣』 ISBN 9788831756587 (1992年)(書影なし) ISBN 9788831761901 (1995年)(書影なし) ISBN 9788831780292 (2002年) Il mostro cieco / 『盲獣』 ISBN 9788871681085(1994年)(書影なし) L’inferno degli specchi / 短編集 表題作『鏡地獄』 2011年4月発売。英訳版短編集"Japanese Tales of Mystery Imagination"からの翻訳、9編収録。新聞販売店などで雑誌扱いで流通している。書店では販売されないが、この種のものは書店で流通する一般の書籍よりもかなり部数が多いとのこと。(マッシモ・スマレ氏よりご教示いただきました) 書影等はこちらを参照のこと(イタリア語) Weirdletter L’inferno degli specchi di Edogawa Ranpo 岡本綺堂 (Kido Okamoto) Detective Hanshichi I misteri della città di Edo (2011年)(リンク) Detective Hanshichi Indagini nelle strade di Edo (2012年3月)(リンク)(第2巻は『Detective Hanshichi Indagini nei vicoli di Edo』というタイトルでも出ている? リンク) ほかに『Detective Hanshichi Misteri e indagini nell'antica Edo』(2012)も出ている。上記の2冊のセット販売。 収録作は分からない。1巻の方に「奥女中」を訳した「La dama di compagnia」が収録されているようではある。 か行 北方謙三 (Kenzo Kitakata) Tokyo noir. Chi semina odio raccoglie vendetta! / 『檻』 ISBN 9788854113039 (2009年) この作品は2006年9月に英訳が出ている。 桐野夏生 (Natsuo Kirino) (イタリア語版Wikipedia) Le quattro casalinghe di Tokyo / 『OUT』 ISBN 9788873058175 (2003年) ISBN 9788854503229 (2009年)(2003年版と表紙が異なる) Morbide guance / 『柔らかな頬』 ISBN 9788873059875 (2004年) Grotesque / 『グロテスク』 ISBN 9788854502482 (2008年)(書影なし) Real world / 『リアルワールド』 ISBN 9788854503533 (2009年) L'isola dei naufraghi / 『東京島』 ISBN 9788862510806 (2010年) Una storia crudele / 『残虐記』 ISBN 8862511116 (Giano、2011年11月) 栗本薫 (Kaoru Kurimoto) 『グイン・サーガ』 1巻 L'uomo leopardo. Saga di Guin vol.1 ISBN 9788842913481 (2005年) 2巻 Il guerriero. Saga di Guin vol.2 ISBN 9788842913498 (2006年) 3巻 La battaglia di Nospherus. Saga di Guin vol.3 ISBN 9788842913504 (2007年) ほかに、漫画版『グイン・サーガ』や漫画版『パロスの剣』も刊行されている。 さ行 島田荘司 (Soji Shimada) 講談社BOXから刊行中の『Classical Fantasy Within』(現在8巻まで刊行、全12巻予定)のイタリアでの刊行が予定されている。(『本格ミステリー・ワールド2011』(南雲堂、2010年12月)より) デビュー作の『占星術殺人事件』は欧米では英語版やフランス語版が刊行されているが、イタリア語版は刊行されていない。 鈴木光司 (Koji Suzuki) (イタリア語版Wikipedia) Ring / 『リング』 ISBN 9788842912811 (2003年) ISBN 9788846204530 (2005年) ISBN 9788850209897 (2006年) Spiral / 『らせん』 ISBN 9788842913313 (2004年) ISBN 9788850211302 (2006年) Loop / 『ループ』 ISBN 9788842913306 (2005年) ISBN 9788850213825 (2007年) Dark water / 『仄暗い水の底から』 ISBN 9788842913849 (2006年) ほかに、『リング』の漫画版なども刊行されている。 た行 高見広春 (Koushun Takami) (イタリア語版Wikipedia) Battle royale / 『バトル・ロワイアル』 ISBN 9788804586876 (2009年) 「ジャッロ・モンダドーリ」ではないが、同じモンダドーリ社から刊行。 戸川昌子 (Masako Togawa) (イタリア語版Wikipedia) Di amore si muore (1987年 ◆ジャッロ・モンダドーリ)/ 『猟人日記』 Un bacio di fuoco (1993年 ◆ジャッロ・モンダドーリ)/ 『火の接吻』 Appartamenti per signore sole / 『大いなる幻影』 ISBN 9788879720854 (1994年)(書影なし) ISBN 9788878181403 (1997年)(書影なし) 3作とも、欧米のさまざまな言語に翻訳されている人気作。特に『猟人日記』は、ノルウェー語、スウェーデン語、デンマーク語など北欧諸言語にも翻訳されている。 な行 夏樹静子 (Shizuko Natsuki) Tempesta d'autunno (1988年 ◆ジャッロ・モンダドーリ)/ 『第三の女』 L'abbandono (1997年 ◆ジャッロ・モンダドーリ)/ 『天使が消えていく』 『第三の女』は、フランス語訳『La promesse de l'ombre』(暗闇の中の約束)がフランス犯罪小説大賞を受賞しているので、その余波を受けてイタリアでも刊行されたのだろうか……と思ったら、フランスでの刊行は1989年で、実はイタリアの方が先に刊行されているのだった。イタリア語のタイトルは「秋の嵐」。なお、1987年に出た英訳版『The Third Lady』が、この作品の欧米諸言語への最初の翻訳である。 『天使が消えていく』は、英語を含め、欧米の他の言語には翻訳されていないと思われる。 西尾維新 (Nisio Isin) Death note. Another note. Il serial killer di Los Angeles / 『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』(2006) ISBN 9788863463095 (2009年) ISBN 9788863465334 (2009年)(書影なし) ISBN 9788863468601 (2010年)(書影なし) xxxHOLiC AnotherHOLiC / 『xxxHOLiC アナザーホリック ランドルト環エアロゾル』(2006) ISBN 9788864680743 (2011年4月)(書影なし) 筆名の表記は「Nisio Isin」。戯言シリーズは『クビキリサイクル』と『クビシメロマンチスト』の英訳が出ているが、イタリア語訳は刊行されていない。 西村京太郎 (Kyotaro Nishimura) (イタリア語版Wikipedia) Il treno del mistero (1998年 ◆ジャッロ・モンダドーリ)/ 『ミステリー列車が消えた』 この作品は、1990年に英訳『The Mystery Train Disappears』、1992年にフランス語訳『Les Dunes de Tottori』が刊行されている。イタリア語のタイトルは単に「ミステリー列車」となっているが、フランス語のタイトルが「鳥取砂丘」になっているのと比べたらだいぶましだろう。西村京太郎の作品は、フランス語訳はほかに『名探偵なんか怖くない』など数作が刊行されているが、イタリア語訳および英訳はこの1作のみ。 は行 東野圭吾 (Keigo Higashino) Filastrocca per l'assassino (2000年 ◆ジャッロ・モンダドーリ)/ 『白馬山荘殺人事件』 La seconda vita di Naoko / 『秘密』 ISBN 9788884909565 (2006年) Il segreto del lago / 『レイクサイド』 ISBN 9788860731913 (2007年) Il Sospettato X / 『容疑者Xの献身』 ISBN 8809770692 (Giunti Editore、2012年9月) L'impeccabile / 『聖女の救済』 ISBN 8809781627 (Giunti Editore、2013年9月) 東野圭吾作品の欧米諸言語への翻訳は、2004年8月に刊行された『Naoko』(『秘密』の英訳)が最初かと思っていたが、「ジャッロ・モンダドーリ」にすでにその4年も前に『白馬山荘殺人事件』が収録されていたようだ。『Naoko』以前には他にも、ドイツ語版『レイクサイド』(Mord am See、2003年7月)が刊行されている。このイタリア語版『白馬山荘殺人事件』が、おそらく欧米諸言語に翻訳された最初の東野圭吾作品である。上でも書いたが、イタリアはミステリがあまり盛んではないという認識はやはり見直す必要があるようだ。 ま行 松本清張 (Seicho Matsumoto) (イタリア語版Wikipedia) La morte è in orario (1971年 ◆ジャッロ・モンダドーリ)/ 『点と線』 Come sabbia tra le dita (1989年 ◆ジャッロ・モンダドーリ)/ 『砂の器』 Il palazzo dei matrimoni (1998年 ◆ジャッロ・モンダドーリ)/ 『黒い空』 1971年に「ジャッロ・モンダドーリ」で刊行された松本清張『点と線』が、おそらく初めてイタリア語になった日本の長編ミステリだと思われる。 湊かなえ (Kanae Minato) Confessione / 『告白』 ISBN 8862510918 (Giano、2011年5月) 宮部みゆき (Miyuki Miyabe) (イタリア語版Wikipedia) Il passato di Shoko / 『火車』 ISBN 9788834712368 (2007年) イタリアではほかに、漫画版『ブレイブ・ストーリー』も刊行されている。『火車』は、ほかに英訳『All She Was Worth』やフランス語訳『Une carte pour l'enfer』などが出ている。 や行 横溝正史 (Seishi Yokomizo) L'ascia, il koto e il crisantemo (1986年 ◆ジャッロ・モンダドーリ)/ 『犬神家の一族』 松本清張の『点と線』以来、実に15年ぶりに「ジャッロ・モンダドーリ」から刊行された日本の作品。横溝正史作品のイタリア語訳はこの1作のみ。なお、英訳が出ているのも『犬神家の一族』のみである。隣国のフランスでは、『犬神家の一族』のほか、『悪魔の手毬唄』、『八つ墓村』 が刊行されている。 アンソロジー 小説家であり翻訳家でもあるマッシモ・スマレ氏が、主にアンソロジー『ALIA』(既刊10巻、公式サイト、公式サイトの一部の日本語訳)で、数多くの日本の短編をイタリア語に翻訳している。スマレ氏のサイトから、主なもののみ挙げる。より詳細な情報は、マッシモ・スマレ氏のサイト(News、Publications)(イタリア語・日本語・英語)をご覧ください。 ALIA giappone. Antologia di narrativa fantastica (2007年1月)浅暮三文「遠い」、朝松健「紅紫の契」、小松左京「蚊帳の外」、小中千昭「原理主義的なる恐怖の始まり」、栗本薫「走馬灯」、皆川博子「流刑」、宮部みゆき「いつも二人で」、津原泰水「天使解体」 ALIA sol levante. L'arcipelago del fantastico (2008年6月)早見裕司「夏の少女」(日本に先駆けてイタリアで発表)、ひかわ玲子「白い影」、北野勇作「カメ天国の話」、小林泰三「海を見る人」、栗本薫「パソコン日記」、牧野修「夜明け、彼は妄想から来る」、皆川博子「たまご猫」、柴田よしき「つぶつぶ」、田中啓文「火星のナンシー・ゴードン」、筒井康隆「台所にいたスパイ」、山田正紀「死蠟」 Foglie multicolori. Racconti dal Sol Levante (2010年1月)浅暮三文「行列」、「小さな三つの言葉」、坂東眞砂子「冷たい手」、江國香織「溝」、「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」、井上雅彦「赤とグリーンの夜」、角田光代「ロック母」、菊地秀行「踏み切り近くの無人駅に下りる子供たちと、老人」、松本侑子「花の寝床」、皆川博子「骨董屋」、三浦しをん「骨片」、「冬の一等星」、宮部みゆき「囁く」、大沢在昌「雷鳴」、太田忠司「公園の怪獣」、桜庭一樹「遺憾ながら」、辻仁成「さめながら見るゆめ」、横森理香「飯と、汁と、漬物と」 ALIA storie. L'arcipelago del fantastico (2011年2月)有栖川有栖「海原にて」、ひかわ玲子「黄金の王国」、松本侑子「赤萩の家」、立原透耶「インビジブル」(日本に先駆けてイタリアで発表)、高野史緒「空忘の鉢」、矢崎存美「初恋」、マッシモ・スマレ「Storia romantica di code e di canini」 (『ALIA』のこの号については、高野史緒さんがブログで詳しく紹介していらっしゃいます。「イタリア・デビューしました」(2011年4月4日)) スマレ氏のサイトには書かれていなかったが、2003年発売の『Alia. L'arcipelago del fantastico. Antologia di narrativa fantastica』に、海野十三、夢野久作、早見裕司の短編が掲載されているようだ。 (2011年9月14日追記:スマレ氏のツイートによると、この巻に収録された海野十三の作品は、「千年後の世界」と「人造人間(ロボット)殺害事件」。) リンク 朝日新聞グローブ (GLOBE)|Best seller 世界の書店から 第8回(2009年4月20日)イタリアの書店での売れ行きランキング。ミステリが上位を占めていることが分かる。 朝日新聞グローブ (GLOBE)|Best seller 世界の書店から 第28回(2010年2月22日)イタリアの書店での売れ行きランキング。1位はジャンリーコ・ カロフィーリオの作品。 更新履歴 2012年9月24日 - 2011年刊行の湊かなえ『告白』、桐野夏生『残虐記』、2012年刊行の東野圭吾『容疑者Xの献身』を追加。 2013年12月9日 - 東野圭吾『聖女の救済』を追加。 関連記事 イタリア推理小説略史 「日本ミステリの海外刊行」に戻る
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/188.html
2012年5月12日 大きな地図で見る 「オランダの推理小説」というものが日本でことさら取り上げられることはほとんどない。オランダの外交官・東洋学者・探偵作家のロバート・ファン・ヒューリック(1910-1967)は例外的に日本での知名度が高いが、その作品が「オランダの推理小説」だと意識されることはあまりないだろう。ファン・ヒューリックは中国を舞台とするミステリを英語で執筆していたからである。 とはいえ、オランダと日本の推理小説界の因縁(?)は浅くない。西洋の探偵小説が初めて日本語に翻訳されたのは江戸時代末期だとされるが、その翻訳探偵小説はオランダの作品だったのである。また、江戸川乱歩は前述のロバート・ファン・ヒューリックと親しい付き合いがあったほか、日本ではまったく無名のオランダの探偵作家W・G・キエルドルフと手紙のやり取りをしたりもしている。以下では日本との関係をメインに、オランダ推理小説の歴史を紹介する。 関連記事:「オランダ語に翻訳された日本の推理小説/ミステリ」(2012年5月12日) Index 江戸時代に邦訳されたクリステメイエルの短編探偵小説2編 江戸川乱歩とオランダの探偵作家の交流 W・G・キエルドルフによるオランダ探偵小説略史(20世紀初頭~1950年代) 1960年代以降の主なミステリ作家 オランダ推理作家協会とフランドル推理作家協会 江戸時代に邦訳されたクリステメイエルの短編探偵小説2編 今から151年前、江戸時代末期の西暦1861年(明治元年は1868年)、洋学者の神田孝平(たかひら)(1830-1898)がオランダの短編探偵小説(または探偵実話)2編を和訳している。これが西洋の探偵物の最初の邦訳だとされている。神田孝平自身がつけた訳題は「ヨンケル・ファン・ロデレイキ一件」と「青騎兵并(ならびに)右家族共吟味一件」。1997年に西田耕三氏が神田孝平の訳文を現代語に訳して出版した際には、タイトルは「ヨンケル・ファン・ロデレイキ殺人事件」、「青騎兵とその家族の捜査の顚末」としている。現代語の方が分かりやすいので、以下、これらの作品については西田耕三氏の訳題を使うこととする。 「ヨンケル・ファン・ロデレイキ殺人事件」と「青騎兵とその家族の捜査の顚末」の作者はオランダのヤン・バスティアン・クリステメイエル(Jan Bastiaan Christemeijer、1794-1872)。この2編は、1820年に出版のクリステメイエル『刑事裁判および人間の過失の実録からなる文書』(短編5編収録、訳題は宮永孝氏に拠る)に掲載されたのが最初だと目されている。その前年にはクリステメイエルの同様の趣旨の短編7編を収録する本が出版されており、1830年にはその2冊を合わせた全12編収録の本が出版されている。神田孝平はこの1830年出版の本から2編を選んで翻訳したのである(この1830年版はGoogleブックスで全ページ閲覧可能)。 この2編は神田孝平が1861年に翻訳してからすぐに広く世間に知られた訳ではなく、最初は写本の形で回し読みされた。「ヨンケル・ファン・ロデレイキ殺人事件」の方は1877年から1878年にかけて「楊牙児(ヨンゲル)ノ奇獄」というタイトルで雑誌『花月新誌』に連載されたのが世に出た最初で、1886年には『和蘭美政録 楊牙児奇談』(Googleブックスで全ページ閲覧可能)というタイトルで出版されている。これらは神田孝平の訳文のまま世に出た訳ではなく、一部が省略されるなど他人の手が加わっていた。なお、エドガー・アラン・ポー(1809-1849)の「モルグ街の殺人」が初めて邦訳・新聞掲載されたのが1887年、須藤南翠(1857-1920)の「殺人犯」の発表が1888年、黒岩涙香(1862-1920)の「無惨」の発表が1889年である。「ヨンケル・ファン・ロデレイキ殺人事件」の邦訳が世に出たのはそれらよりも早かったことになる。 「青騎兵とその家族の捜査の顚末」の方は、1892年に『日本之法律』に「探偵小説 青騎兵」というタイトルで連載されたのが世に出た最初である(川戸道昭氏の論文「ミステリー小説のあけぼの」で明らかにされた)。同時期に『日本之少年』にも連載された。のちに『新青年』1931年4月号にも掲載されている。 さて、探偵小説の嚆矢とされるエドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人」が発表されたのが1841年なので、クリステメイエルの作品はそれよりも早いということになる。法政大学教授で、原典およびクリステメイエルについての詳細な調査を行った宮永孝氏は論文「楊牙児(ヨンケル)奇獄」(2011)で以下のように書いている。 ポーの先の探偵小説【注:「モルグ街の殺人」】が活字となる二十年ほど前に、オランダにおいてちゃんとした探偵小説が存在したのである。が、オランダ語といった特異な言語のせいか、世間の注意をほとんど惹かず、また大して問題にもされず、こんにちに至っている。 同論文(こちらで全文閲覧可能)の末尾には、宮永氏による 「ヨンケル・ファン・ロデレイキ殺人事件」のオランダ語原典からの翻訳「ヨンケル・ファン・ロデレイケ一件――別名 喜劇の表題(タイトル)によって発覚した二重殺人事件」が付されている。気になる方は、ぜひこちらで実際に読んでもらいたい。 なお、中島河太郎氏は宮永孝氏の調査結果を紹介しつつ、「日本探偵小説史」で以下のような見解を示している。 中島河太郎「日本探偵小説史」『日本探偵小説全集12 名作集2』創元推理文庫、1989年2月、p.609-610より引用 ともかく日本の最初の翻訳探偵小説の身許がようやくつきとめられた。原作は一八二〇年刊行のオランダの作品となると、ポオの「モルグ街の殺人」より、さらに遡ること二十年あまりである。肝腎の原著者については皆目分らないし、また構成の上から眺めても、果たして小説として書かれたか疑問が残らないわけではない。「楊牙児」は(――ネタばれ――)に趣向があり、「青騎兵」は二つの事件を交錯させ、他人を陥れようと種々のトリックを弄するおもしろ味はあるが、ともかく推理的部分は薄弱で、本格的構成はポオに譲らなければならない。 西田耕三氏による神田孝平の訳文からの現代語訳(「ヨンケル・ファン・ロデレイキ殺人事件」、「青騎兵とその家族の捜査の顚末」)は、西田耕三編『日本最初の翻訳ミステリー小説 吉野作造と神田孝平』(耕風社、1997年)に収録されている。「青騎兵とその家族の捜査の顚末」が現代語で読めるのはおそらくこの本だけだろう。なおこの本には、神田孝平が和訳した「ヨンケル・ファン・ロデレイキ一件」と「青騎兵并(ならびに)右家族共吟味一件」、および1877年に『花月新誌』に掲載されたバージョンの「楊牙児ノ奇獄」も収録されている。 おまけ:なお、SFで最初に邦訳されたのもオランダの作品だそうだ。北原尚彦『SF万国博覧会』(青弓社、2000年)によるとその作品は、ジヲス・コリデスの『新未来記』。1868年に近藤真琴によって訳され、その10年後に刊行されたとのこと。横田順彌『日本SFこてん古典』にあらすじ紹介などがあるそうだ。 江戸川乱歩とオランダの探偵作家の交流 江戸川乱歩(1894-1965)がオランダの探偵作家のロバート・ファン・ヒューリック(Robert van Gulik、1910-1967)と交流があったというのはよく知られた話だろう。ファン・ヒューリックは中国の裁判小説に題材をとった狄(ディー)判事シリーズ(ハヤカワ・ミステリで全作品邦訳されている)で知られるが、外交官・東洋学者でもあり、日本語・中国語に堪能だった。乱歩は1949年の大みそか、高島屋の古書展でファン・ヒューリックが中国語から英訳した『Dee Goong An』(狄(ディー)公案)を入手。乱歩はこの中国の探偵小説を「長篇本格探偵小説の体をなしていて西洋のガボリオやボアゴベイに比べても、大して見劣りしない」(探偵作家クラブ会報第33号、1950年2月)と称賛している。乱歩は古書店の店主を通じてファン・ヒューリック本人とも連絡を取り、1950年5月の土曜会(探偵作家クラブの月例会)に招いたりもしている。その模様は、雑誌『宝石』に掲載の座談会「中国の探偵小説を語る」(1950年9月号)で読むことができる(ロバート・ファン・ヒューリック『柳園の壺』[ハヤカワ・ミステリ、2005年]巻末にも一部再録)。なおファン・ヒューリックはオランダの推理作家だが、作品は英語で執筆した。最初の創作"The Chinese Maze Murders"の邦訳が『迷路の殺人』と題されて英語版に先駆けて出版されたのは1951年のことである(2009年刊のハヤカワ・ミステリ版のタイトルは『沙蘭(さらん)の迷路』)。 乱歩は1957年、ファン・ヒューリックの仲介で、オランダの探偵作家のW・G・キエルドルフ(Wilhelm Gustave Kierdorff、1912-1984)と手紙のやり取りをしている。キエルドルフが乱歩に送った手紙によれば、キエルドルフは1956年、オランダの探偵作家クラブであるジェフリー・ギル・クラブ(Geoffrey Gill Club)を創設。会員は約50名。クラブの名称になっているジェフリー・ギルとは、オランダ探偵小説の創始者とされるイファンス(Ivans、本名:Jakob van Schevichaven、1866-1935)の作品で主人公を務めるイギリス人探偵の名前だという。乱歩のもとにはこのジェフリー・ギル・クラブの機関誌『MYSTERIE-Detective』も送られてきている。キエルドルフは機関誌の第3号で日本の探偵小説と探偵作家クラブについて紹介したいと書いているが、それが実現したのかは分からない。キエルドルフは乱歩のほかにも、フランス版EQMMの編集長のモーリス・ルノール(Maurice Renault)、アメリカのドナルド・A・イェイツ(Donald A. Yates)、デンマークのシャーロック・ホームズ・クラブ創設者のヘンリックセン(Henriksen)、フランス在住のペルシャ人フレイドン・ホヴェイダ(Fereydoun Hoveyda、邦訳書に『推理小説の歴史はアルキメデスに始まる』[東京創元社、1981年]等)、オーストラリアの探偵作家アーサー・アップフィールド(Arthur Upfield)など、世界中の探偵小説関係者と連絡をとっていたようだ。キエルドルフが乱歩に送った最初の手紙の原文(英語)は、日本探偵作家クラブ会報第133号(1958年9月)に全文掲載されている。乱歩とキエルドルフの手紙のやり取りがどれぐらい続いたのかは分からない。乱歩はキエルドルフの最初の手紙に対して「詳しい返事を出しておいた」(日本探偵作家クラブ会報第119号、1957年5・6月)と書いているので少なくとも1度は返信したようだが、お互い手紙を1通送ったきりで終わってしまったのかもしれない。 乱歩は海外のミステリ事情の紹介に熱心で、1960年11月の日本探偵作家クラブ会報第158号では英国推理作家協会(CWA)会報1960年8月号の記事を紹介している。それによれば、オランダのジェフリー・ギル・クラブのJacqueline Kempeesが英国推理作家協会に、オランダの推理小説界を紹介する手紙を寄越してきたのだという。英国推理作家協会に寄せられたこの手紙では、ジェフリー・ギル・クラブの会長はピム・ホフドルプ(Pim Hofdorp)とされていた。乱歩は気付いていなかったと思われるが、ピム・ホフドルプというのはW・G・キエルドルフの筆名であり、つまりホフドルプとキエルドルフは同一人物である。 ところで、W・G・キエルドルフとは一体何者だったのだろう。オランダ語版Wikipediaの記事をGoogle翻訳で英語に直すという不確かな方法に頼って紹介すると、W・G・キエルドルフは1912年2月4日生まれ。ピム・ホフドルプ(Pim Hofdorp)という筆名で、1959年から1980年にかけて、オランダのハーグを舞台とする推理小説シリーズを発表した。このシリーズにはハーグについての地誌学的・歴史学的知識がふんだんに盛り込まれていたそうだ。1984年6月9日逝去。残念ながら、その作品の邦訳はない。 W・G・キエルドルフによるオランダ探偵小説略史(20世紀初頭~1950年代) 『探偵倶楽部』1958年7月号にはW・G・キエルドルフの「オランダの探偵小説」という記事が載っている。キエルドルフが乱歩に送った最初の手紙の原文(英語)を読んでみると、その手紙にはキエルドルフがフランス語で書いたオランダ探偵小説略史が同封されていたことが分かる。手紙によれば、モーリス・ルノールが創設したフランスの探偵小説愛好クラブ Club Mystère Fiction の会誌に寄稿したものだという。『探偵倶楽部』に載った記事は、おそらくはこれを翻訳したものだろう。ちなみにネット上を検索してみたところ、Club Mystère Fictionの会誌の目次を紹介しているページがあった(リンク)。キエルドルフの寄稿"Le Roman policier aux Pays-Bas"(オランダの探偵小説)はClub Mystère Fictionの会誌の第5号(1955年11月・12月)に載ったようである。 この時期には乱歩は探偵雑誌『宝石』の編集長となっていたので、キエルドルフの原稿がライバル誌である『探偵倶楽部』に載ったのは少々不思議である。 以下、W・G・キエルドルフ「オランダの探偵小説」に従って、オランダの1950年代までの探偵小説略史を紹介する。 この記事によれば、オランダ探偵小説の創始者であるイファンス(Ivans、本名:Jakob van Schevichaven、1866-1935)は1910年にデビュー。この特異な筆名は本名の一部を拾って作られたものである(J + van + S → Ivans)。イファンスの探偵小説で探偵役を務めるのは、シャーロック・ホームズそっくりのイギリス人名探偵ジェフリー・ギル(Geoffrey Gill)。ワトソン役はオランダの法学博士ウィレム・ヘンドリクス。ジェフリー・ギルの探偵譚は1930年までにオランダ国内に10万人の読者を獲得し、北欧の言語にも翻訳されたという。 イファンスの後継者とみなされていたのが探偵作家のハファンク(Havank、本名:Hendrikus Frederikus van der Kallen、1904-1964)。この筆名はイファンスの筆名と同じやり方で作られている(H + van + K → Havank)。ハファンクはパリ警視庁のシルヴェール警部(Silvère)とその助手シャルル・カルリエ(Charles C.M. Carlier、通称Schaduw[影、シャドー])を主人公とする探偵小説を執筆。2人はヨーロッパ各地で活躍。時にはオランダが舞台になることもあったが、基本的にはフランスが舞台の作品が多い。 大手出版社のブルーナ社が1947年、新人探偵作家発掘のためのコンテストを開始。これによりオランダの探偵小説は飛躍することになる。受賞者の中で特筆すべきはアムステルダムの新聞記者、ヨープ・ファン・デン・ブルーク(Joop van den Broek、1926-1997)。彼の受賞作の『ナドラのための真珠』(Parels voor Nadra、1953)は、ジャカルタの質屋で盗まれた真珠の財宝が主題になっている。この作者はアメリカのハードボイルド、特にミッキー・スピレーンの影響を受けていたという。同時期には、ベルト・ヤーピン(Bert Japin)、アプ・フィッセル(Ab Visser)、ハリエット・フレーゼル(Harriët Freezer)、エリーネ・カーピット(Eline Capit)、ボプ・ファン・オイエン(Bob van Oyen)など続々と若手の探偵作家が登場している。 ちなみにブルーナ社は、ミッフィーで知られるディック・ブルーナ(Dick Bruna)の父が経営していた出版社である。ディック・ブルーナはブルーナ社の推理小説のペーパーバックの表紙デザインを手がけており、その数は2000点以上にのぼるという。その一部は輸入雑貨店assistonのサイトのこちらのページや、古書店dessinのサイトのこちらのページなどで見ることができる。 前述のハファンクの作品もブルーナ社から出版されており、ディック・ブルーナが装丁を手がけていた。ハファンクの作品は邦訳がなく、日本のミステリファンの間でその名はまったく知られていないと思うが、この名前は日本のディック・ブルーナファンの間では有名であるらしい。「ハファンク」と日本語で入力して検索してみると、結構な数の情報がヒットする。 ハファンクは創作のほかに英米探偵小説のオランダ語への翻訳も行っていた。1961年に出版された江戸川乱歩のオランダ語訳短編集『Griezelverhalen uit Japan』の編訳者でもある。もちろん日本語からではなく、1956年に出版された江戸川乱歩の英訳短編集『Japanese Tales of Mystery Imagination』から重訳したものだろう。この乱歩のオランダ語訳短編集もブルーナ社から出版されており、ディック・ブルーナが装丁を手がけたようだ。表紙イラストはこちらで見られる。同社より1981年に新装版が刊行されているが、表紙を見てみると、乱歩の名前よりもハファンクの名前の方が目立っている(リンク)。 ほかの特筆すべき作家に、W・H・ファン・エームラント(W.H. van Eemlandt、本名:Willem Hendrik Haasse、1889-1955)がいる。彼は1953年、65歳で探偵作家デビュー。アムステルダム司法警察のアールト・ファン・ハウトヘム警視(Aart van Houthem)を主人公とする探偵小説シリーズを1953年から1955年の3年間で12作発表した。1955年11月逝去。その作品はドロシー・L・セイヤーズと比較されることもあったというが、キエルドルフは、むしろジョルジュ・シムノンのメグレ警部ものと共通する点が多いと述べている。なお、娘のヘラ・ハーセ(Hella Haasse、1918-2011)もミステリ作家ではないが有名な作家で、父よりも早くデビューしている。ヘラ・ハーセの作品は邦訳される予定があるらしい。 キエルドルフ「オランダの探偵小説」に記述されているのはここまでである。この記事はW・H・ファン・エームラントの1955年11月の死去に言及があり、また1955年のことを「去年」と書いていることから、1956年に執筆されたもの(または1956年に発表することが予定されていたもの)だと推定できる。この記事がClub Mystère Fictionの会誌の第5号(1955年11月・12月)に載ったとする推定とは辛うじて矛盾しない。または、乱歩のもとに送られてきたのは、キエルドルフがClub Mystère Fictionの会誌に寄稿したものに少々加筆したものだったのかもしれない。 1960年代以降の主なミステリ作家 1960年代以降のオランダのミステリ界について、日本で知られていることは少ない。ここでは邦訳のある作家について紹介する。 ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンク(Janwillem van de Wetering、1931-2008)はオランダに生まれ、南アフリカ共和国、イギリス、日本、コロンビア、オーストラリアなど世界中を渡り歩く。日本を訪れたのは哲学の勉強を通して禅に興味を持ったためで、京都で一年半ほど座禅三昧の日々を過ごしたという。その後オランダに帰国して警察官となり、1975年、40代で推理作家デビューした。代表シリーズはアムステルダム警察のフライプストラ警部補(Grijpstra)とデ・ヒール巡査部長(de Gier)のシリーズで、日本では第4作まで邦訳されている。ほかに、日本人の斎藤警部が主人公の短編作品などもある。 ティム・クラベー[ティム・クラベとも表記](Tim Krabbé、1943- )はウェテリンクより10歳以上年下だが、デビューはティム・クラベーの方が早い。1967年にデビューし、現在も執筆活動を続けている。1995年には、前年発表の『マダム・20』(邦訳1996年、青山出版社)でオランダ推理作家協会の黄金の首吊り輪賞を受賞している。邦訳は『マダム・20』のほかに、『失踪』(邦訳1993年、日本放送出版協会)と『洞窟』(邦訳2002年、アーティストハウス)がある。 トーマス・ロス(Tomas Ross、1944- )はオランダ推理作家協会創設の主導者で、会長も務めた人物。本名はウィレム・ホーヘンドールン(Willem Hogendoorn)。1980年ごろから政治小説やサスペンス小説を発表しはじめた。1987年、1996年、2003年に黄金の首吊り輪賞を受賞。1990年にはスウェーデンの推理作家マイ・シューヴァルと合作した『グレタ・ガルボに似た女』がスウェーデンの出版社から刊行されている(邦訳は1993年、角川文庫)。この作品は、それぞれが一章ずつ書き、その原稿を粗訳とともに相手に送り、送られた方がそれに自分なりに手を加えて、また翻訳をつけて送り返す、という方式で執筆されたもので、完成までに3年かかったという。マイ・シューヴァルはマルティン・ベックシリーズの共同執筆者であった夫のペール・ヴァールーが1975年に死去して以来創作から遠ざかっており、『グレタ・ガルボに似た女』は15年ぶりの新作となった。 《世界のミステリ》を特集した『ミステリマガジン』1999年3月号にはオランダの推理作家、クリス・リッペンの短編「芸術」が掲載されている。クリス・リッペン(Chris Rippen、1940- )は48歳で推理作家デビュー。1991年に発表した第2作"Playback"で翌年、オランダ推理作家協会の黄金の首吊り輪賞を受賞。『ミステリマガジン』1999年3月号に短編が掲載された当時にはオランダ推理作家協会の会長も務めていた。 ところで、オランダの南に隣接するベルギーの北半分(フランドル地方)ではオランダ語が使用されており、もちろん、オランダ語で推理小説を執筆している作家もいる。クリス・リッペンの作品の邦訳が載ったのと同じ『ミステリマガジン』1999年3月号には、オランダ語で作品を執筆するベルギー人作家ボブ・メンデスの短編「国王への報告書」も掲載されている。ボブ・メンデス(Bob Mendes、1928- )は1989年に会計士の仕事を辞めてから本格的に執筆活動を開始。1993年には"Vergelding"(復讐)でオランダ推理作家協会の黄金の首吊り輪賞を受賞。1997年には"De kracht van het vuur"(火力)で再度同賞を受賞した。 ベルギーの推理作家としてはジョルジュ・シムノン(Georges Simenon)とスタニスラス=アンドレ・ステーマン(Stanislas-André Steeman)が有名だが、二人はベルギー南部の出身で、創作活動にはフランス語を使用した。 オランダ推理作家協会とフランドル推理作家協会 オランダ推理作家協会(Genootschap van Nederlandstalige Misdaadauteurs[略称 GNM])は1986年創設。同年より毎年、オランダ語で書かれた年間最優秀のミステリ作品に黄金の首吊り輪賞(Gouden Strop、公式サイト)を授与している。この賞の名前は先に言及したヨープ・ファン・デン・ブルーク(Joop van den Broek、1926-1997)が1982年に発表した『黄金の首吊り輪』に由来する。Gouden Strop賞は『ミステリマガジン』1998年4月号p.53では「黄金の首吊り輪賞」、1999年3月号p.35、p.61では「金の投げ縄賞」という訳語が使われている。また、2008年11月号p.66では単に「オランダ推理作家協会賞」とされている。このページでは仮に黄金の首吊り輪賞という訳語を使用しておく。 オランダ推理作家協会は1997年より、年間最優秀新人にシャドー賞(De Schaduwprijs、公式サイト)を授与している。この賞の名前はハファンクの作品に登場するシャドーに由来する。オランダ推理作家協会が主催する賞にはほかに、GNM巨匠賞(De GNM Meesterprijs)がある。 オランダ推理作家協会(GNM)が1986年に創設されたのち、1991年にはベルギー北部のオランダ語使用地域(フランドル地方)でフランドル推理作家協会(Genootschap van Vlaamse Misdaadauteurs[略称 GVM])が創設されている。フランドル推理作家協会は2002年より、オランダ語で執筆された年間最優秀のミステリ作品にダイヤモンドの弾丸賞(Diamanten Kogel)を授与している。前述のボブ・メンデスは2004年、"Medeschuldig"でダイヤモンドの弾丸賞を受賞している。2004年以降、ダイヤモンドの弾丸賞の対象にはオランダの作家の作品も含まれるとされた。 フランドル地方の推理小説を対象とするミステリ賞としては、フランドル推理作家協会が主催するダイヤモンドの弾丸賞以外に、エルキュール・ポアロ賞(Hercule Poirotprijs)というのもある。 関連リンクオランダの推理作家一覧 - オランダ語版Wikipedia フランドル地方の推理作家一覧 - オランダ語版Wikipedia 邦訳されたオランダの推理小説/ミステリ (日本のamazon内に作成したリスト) 関連記事 江戸川乱歩と交流のあった海外ミステリ作家の紹介オランダのロバート・ファン・ヒューリック、W・G・キエルドルフ(当ページ) ソ連のロマン・キム 韓国の金来成(キム・ネソン) ミステリ略史オランダ(当ページ) ソ連/ロシア スペイン・ポルトガル・中南米 イタリア チェコ推理小説略史 インド推理小説探求・受容史
https://w.atwiki.jp/nicoworld/pages/606.html
ミステリーとは、エンターテイメント作品のジャンルのひとつである。 探偵が事件の謎を解く推理物という意味で使われることが多いが、広義には、恐怖よりも好奇心が強調された怪奇物(UFO、UMAなど)も含まれることがある。 この項目では、第十幕で出てくる、前者に属するネタを解説する。 泉コナンタ → 漫画「名探偵コナン」が元ネタだとおもわれるが、これもまたホームズの作者コナン・ドイルからきている。 影の警察 → 小学生、とあるので漫画「秘密警察ホームズ」がもとであろう。 ミケネコ金田一 → 年齢を考慮すると、漫画「金田一少年の事件簿」と赤川次郎著の「三毛猫ホームズ」シリーズが元と考えられる。ただし、ホームズはメスなのだが。 ベーカリー街 → かのシャーロック・ホームズの住んでいたベーカー街より。 一介の修道士 → 修道士カドフェルが元……かもしれない。 灰色の脳細胞 → 有名な名探偵エルキュール・ポアロの口癖より。 極上の謎を喰らうことを求めて…… → 漫画「魔人探偵脳噛ネウロ」の設定である。 コカイン中毒 → かのシャーロック・ホームズはコカイン中毒である。 ミシシッピ川 → ホームズならぬチャールズ卿とワトソンが主人公のアドベンチャーゲーム「ミシシッピー殺人事件」より。船に仕掛けられた罠もこれが元ネタである。 こんや 12じ だれかが 犬 → ゲーム「かまいたちの夜」に出てくる予告状の文面「こんや 12じ だれかが しぬ」より。 ヤス → ゲームポートピア連続殺人事件におけるボス(主人公)の助手。
https://w.atwiki.jp/medadictionary/pages/2319.html
ミステリーダー メダロット一覧 ⇒ ま行 - S 探偵型メダロット(DTT) 登場作品 S ミステリーダー 機体概要 メダロット探偵団関連施策メダたん メダロット謎 機体説明メダロットS 登場人物としてのミステリーダー漫画「メダたん」、メダロットS 関連機体 機体性能メダロットS 機体概要 メダロットS初出の探偵型メダロット。 メダロット探偵団として公開された、3体のメダロットのリーダーである。 探偵モチーフのメダロット自体は、メダロットRにて登場したパイプブレインに次いで2体目。 こちらはシャーロック・ホームズがモチーフのパイプブレインとは異なり、探偵という職業そのものがモチーフという違いがある。 共通点は、いずれも索敵に関する行動および技を扱う点である。 上半身は探偵ーー恐らくはシャーロック・ホームズのイメージが投影されている。 頭部側面や脚部には、レンズの様なパーツが装着されている。 頭部左側面には虫眼鏡が付いていて、後頭部のマニピュレータで保持されている。 後述のメダたんでの描写によると、マニピュレータは自由に動かせる。 また、頭部パーツ使用時には虫眼鏡が顔前面に移動する。 下半身は19世紀の自動車を思わせ、パーツ名もそのままクラシッカー。 メダロット探偵団の3体は共に、本作にてシリーズ初参加となる倉持キョーリュー氏によってデザインされている。 メダロット探偵団関連施策 ミステリーダーをはじめとするメダロット探偵団のデザイン画公開と共に、様々な施策が行われた。 メダたん あかうめ氏作、イマジニア監修による、メダロット探偵団3体の活躍を描いた漫画、全10話。 タイトルは、「メダロット探偵物語」の略である。 作中の台詞や背景が示している様に、世界観はメダロットSメインストーリーと同一である。 メダロット公式チャンネル内メダロットニュースで3話までが先行公開。 その後、週刊メダロット通信、メダロット社公式Twitter(現X)、メダロット公式チャンネルで公開。 なお本作の後日談は、メダロットSリリース2.5周年イベント「祝祭!ロボトル〜2.5th Anniversary編〜」にて描かれる。 メダロット謎 メダロット社公式Twitter(現X)アカウントで公開された、謎解きゲーム、全10回。 毎週火曜日21時にツイートされ、正解発表は翌週のメダロットニュース内で行われた。 機体説明 メダロットS ピックアップガチャで入手出来る期間限定初期ランク☆3メダロットとして登場。 探偵メダロットの元祖たるパイプブレインとは異なり、多数の格闘能力を備えた武闘派メダロットとなっている。 各パーツの技は、探偵の推理をメダロットの技で再現したものとなっているが、 格闘攻撃が多い点に関しては シャーロック・ホームズの作中にて名前が出たのみの格闘術、バリツを意識した可能性もある。 頭部パーツは本作初出の新技となる、ファイターコア。 レーダーサイトとファイトブーストの効果を同時に付加する効果を持つ。 成功値に2つの技による補正が掛かることで、マイナス症状の付与を回避するカスリの発生を抑えられる。 この点もあって、両腕パーツと相性が良い。 右腕パーツはプラス症状を消し去り真実を暴く、エフェクトクリア。 男性型のエフェクトクリアは、オリンディアースに次いで2体目である。 左腕パーツは閃きで難事件の解決を狙うフラッシュで、ヘヴィパーツに該当する。 初期ランク☆3かつ、腕パーツのフラッシュは珍しい。 冷却値が高めのため、フラッシュの弱点である攻撃後のペナルティが比較的少なく済む。 味方のクーラーやクーラープラントで補うと、隙を減らせる。 またパーツ単位なら、脚部特性アブスコンドとの組み合わせも良い。 右腕のエフェクトクリアとは妨害クリアを解除して強力な妨害効果を与えられるため、相性が良い。 脚部特性はランドクルーザー。 車両型脚部の苦手地形を補える上、通常の地形相性ではAまでが最高のため、草原では地形相性で有利に立てる。 ヘヴィリミットは左腕を支えられる1。 加えて充冷値も、男性型車両脚部の中ではビーストキメラに次ぐ高水準。 素早く現場に駆けつけて謎を解き明かそう。 強力な妨害効果を相手に与えることが出来るメダロットだが、直接戦闘能力においては、さすがに単体では力不足である。 ワトソンーー強力な格闘攻撃を使うメダロットを入れてやると、自身の持つファイターコアもあって、ロボトルを解決に導けることだろう。 ▲ページ上部へ▲ 登場人物としてのミステリーダー 漫画「メダたん」、メダロットS メダロットのみで構成された探偵団、メダロット探偵団のリーダー。 通称はリーダー。 キッキーとベルと共に、地道な活動で実績を上げており街の人々からの評判も良い。 しばしば何もしゃべらない長考モードになるが、この時はキッキー曰く、灰色の電子頭脳がシャカシャカしてるとのこと。 ホームズだけでなくポワロの要素も持ち合わせていたようだ。 メダたんを経て、メダロットSリリース2.5周年イベント「祝祭!ロボトル〜2.5th Anniversary編〜」にて登場。 アラセとクロス、そしてメダロットシリーズにおける探偵の先輩、ソルトとアニスがキッキーを助けたところに姿を見せる。 この時、一時はソルト達とアラセを自分のライバルと見なしてしまう。 だが同じ探偵なら協力した方がいい、というアラセの言葉を受け入れ、ロボトルでその実力を測った。 + メダロット探偵団の真実 リーダー達メダロット探偵団のボスは、タイサン達新ロボロボ団だった。 メダロット探偵団は、怪事件を探ることでその渦中にあるであろうレアメダルを手に入れられると踏んだ、新ロボロボ団に利用されていた 明言されてはいないが、メダたんの時点で新ロボロボ団に利用されていた可能性がある。 だが、アラセ達の説得でタイサン達と袂を分つこととなった。 ▲ページ上部へ▲ 関連機体 (機)械傑メダロット探偵団 ミステリーダー メダロット探偵団のリーダー ワンダーベル メダロット探偵団のエージェント サイドキッキー メダロット探偵団の名犬 マスターの名にかけて!探偵メダロット パイプブレイン 真実を索敵で解く安楽椅子探偵?ホームズ型 ミステリーダー 証拠は手と足で探す武闘派探偵?探偵型 ▲ページ上部へ▲ 機体性能 メダロットS 名称:ミステリーダー (パーツ性別:男) アルバム メダロットによる探偵団のリーダーをコンセプトに開発されたメダロット。物事に隠された謎を解くことを得意とし、ロボトルにおいては相手の弱点を突くトリッキーな戦いを好む。 ※ステータスはLv90時のものです。 頭部:ディテクトール(DTT00) 装甲 成功 威力 充填 冷却 回数 Hv スキル 技 3599 - - 761 789 2 - たすける ファイターコア 右腕:ソルブアリドル(DTT00) 装甲 成功 威力 充填 冷却 Hv スキル 技 2999 909 1119 525 607 - かくとう エフェクトクリア 左腕:サドゥンイデア(DTT00) 装甲 成功 威力 充填 冷却 Hv スキル 技 2999 1289 1114 681 828 ○ かくとう フラッシュ 脚部:クラシッカー(DTT00) 装甲 射対 格対 回避 充冷 タイプ Hvリミット 脚部特性 3949 917 1276 947 933 車両 1 ランドクルーザー 地形相性 荒野 砂漠 山地 岩山 草原 森林 市街地 アリーナ 凍土 水辺 サイバー C D C D S D A S C D S ▲ページ上部へ▲ メダロット一覧 ⇒ ま行 - S