約 211,525 件
https://w.atwiki.jp/tohokusf/pages/185.html
『ディアスポラ』著:グレッグ・イーガン 訳:山岸真 2006/1/13(Fri) 探検隊 【まえがき】 【作者について】 【登場人物】 【本編のあらすじ】[第一部] [第二部] [第三部] [第四部] [第五部] [第六部] [第七部] [第八部] 【まとめ】 【資料】 【まえがき】 「わからないところはばんばん飛ばす」のが一番の攻略法だ、というのは大森望の言ですが、わざわざ読書会をやるのですし、可能な範囲で全員の理解を深めた上で意見を、という流れを今回はとってみます。とはいっても、物理と数学はどんどん飛ばします。その手の解説としては、板倉充洋さんのサイト を参照のこと。 【作者について】 まずは、作者の人となりについてです。断片的な情報をまとめてみました。引用元は参考文献に入れてあります。当然ながら、文責は私にあります。 1961年、オーストラリア西海岸の大都市パース(『宇宙消失』の冒頭の舞台、その他の作品でも登場)生まれ。西オーストラリア大学で数学の理学士号を取得した。この間に自主映画制作に手を染め、その後シドニーで専門学校にはいるが、四週間で退学。同市の病院付属の研究施設でコンピュータ・プログラマとして勤務後、パースに戻って同様の職に就く。この職場での体験は、作品に直接活かされているほか、専門知識集めにも大いに役立っているもよう。 SFはこどもの頃から読んでいて、すでに十台前半で、1950年代の黄金時代の作家から、1960年代のニューウェーブ作家までが守備範囲だった。十五歳当時、特に入れあげていたのは、ラリー・ニーヴンとカート・ヴォネガット。十代後半からは主流文学に興味が移るが、ふたたびSFに惹かれたきっかけは、1985年に発表されたグレッグ・ベアの『ブラッド・ミュージック』らしい。 デビューは1983年。オーストラリアのファン出版社から、シュールレアルな要素を含む処女長編『An Unusual Angle』(未訳)が発表されるが、これは実際には十六歳のときの作品である。同年から短編も発表、最初はホラーを書く一方で、出版社に「ハードSF」を送って没になったりしていた。しかし、イギリスの<インターゾーン>誌編集長デイヴィッド・プリングルが『キューティー』を読み、全面的にSFに路線変更するよう助言した。(よくやった!)そうして1980年代末から本格的に作家活動を開始して今にいたる。 ここ数年来、大学時代に専攻した数学への情熱が高まっているらしく、2002年以来新作は発表されていなかったが、新作ノヴェラが2006年初頭刊行のアンソロジーに発表されることが決まった。(もしかしてヤチマ化か、と英米ファンならやきもきしていたかもしれないが、日本では、まだまだ年一回の単行本を楽しむペースは守られそうである。山岸真さん頑張ってください。) 公式の場には一切出ない覆面作家としても知られている。最近のインタビューもネットを介してのものなのだとか。サイトをたまに覗いてみると、政治的な発言をアクティヴに行っているようである。 ちなみに元々キリスト教徒であり、その価値観に少なからず影響されていることをインタビューで証言しているらしい。 ■長編小説 An Unusual Angle (1983年) 『宇宙消失』 Quarantine (1992年, 創元SF文庫→1999年) 『順列都市』 Permutation City (1994年, ハヤカワ文庫SF→1999年) 『万物理論』 Distress (1995年, 創元SF文庫→2004年) 『ディアスポラ』 Diaspora (1997年, ハヤカワ文庫SF→2005年) Teranesia (1999年,東京創元社刊行予定) Schild's Ladder (2002年) ■短編集 Axiomatic (1995年) Our Lady of Chernobyl (1995年) Luminous (1998年) 『祈りの海』 Oceanic and Other Stories (2000年, ハヤカワ文庫SF):日本オリジナル(山岸真編) 『しあわせの理由』 Reasons to be Cheerful and Other Stories (2003年, ハヤカワ文庫SF):日本オリジナル(山岸真編) 『TAP』(河出書房新社刊行予定) 日本オリジナル ■邦訳短編・インタビュー 『エキストラ』 The Extra (エイドロン 2 1990, IASFM1993/1) S-Fマガジン 1998/4 No.502 1994 Locus Award Short Story Nominee 『真心』 Fidelity (IASFM 1991/9) S-Fマガジン 1995/7 No.468 『チャルマーの岩』 Reification Highway (Interzone 1992/10) S-Fマガジン 1993/9 No.445 『ワンの絨毯』 Wang's Carpet (1995) S-Fマガジン 1998/1 No.499 1996 Locus Award Novelette Nominee 『ルミナス』 Luminous (IASFM 1995/9, 『90年代SF傑作選』 ハヤカワ文庫) 1996 Locus Award Novelette Nominee 『決断者』 Mister Volition S-Fマガジン 2003/8 No.568 『行動原理』 Axiomatic S-Fマガジン 2004/4 No.576 『ひとりっ子」 Singleton S-Fマガジン )2005/4 No.588 『無限大から逆に数えて [インタビュー]」Counting Backwards from Infinity SFマガジン 1999年11月号 『つかぬことをうかがいますが・・・』ハヤカワ文庫NF パース在住のグレッグ・イーガンさんが答えているらしい ■本人のサイト http //gregegan.customer.netspace.net.au/ ※移行者注:現在はこちら http //www.gregegan.net/ http //www.gregegan.net/BIBLIOGRAPHY/Bibliography.html を見ると分かるのですが、未単行本化短編は全部ただで読むことが出来ます。勿論すべて英語ですが。 ■学術論文 "Asymptotics of 10j symbols" http //arXiv.org/abs/gr-qc/0208010 "An efficient algorithm for the Riemannian 10j symbols" http //arXiv.org/abs/gr-qc/0110045 ■ネットニュースへの投稿一覧 http //groups.google.com/groups?q=author gregegan@netspace.zebra.net.au start=0 scoring=d 【登場人物】 ヤチマ:主人公。長身のアフリカ人のアイコン。 イノシロウ:金属質で白めの灰色で、手のひらから花がはえているアイコン。本田猪四郎(いしろう)からとられているのでは、という説あり。 ガブリエル:金茶色の短い柔毛で有性のアイコン。《C-Z》住人。 ブランカ:黒い影絵のアイコン。《コニシ》住人だが、 ディアスポラ には《C-Z》住人として参加。発展版コズチ・モデルを構築。 ラディヤ:ヤチマの先生。 ハシム:芸術家。イノシロウの友人。 オーランド・ヴェネティ:肉体人(男性、架橋者)トカゲ座の災害時に《移入》させられる。 リアナ:肉体人(架橋者、女性)オーランドの妻。 パオロ・ヴェネティ:伝統型完全人態のアイコンをとることが多い。オーランドの「息子」 カーパル:トカゲ座の異変に気づいたグレイズナー。その後《C-Z》へと移住。記憶の消去と人格書き換えを何十回も行った。 フランチェスカ・カネッティ:肉体人(架橋者) エニフ:男性で真空適応型肉体人のアイコン。 四つ足の星子犬、オスヴァルなどと呼ばれる。 アルナス:オスヴァル。 メラク:オスヴァル。 レナタ・コズチ:理論物理学者。 エレナ:パオロの恋人。 ハーマン:体節のある虫から膝のついた六本の脚が生え、その先に肉体人の足があるというアイコン。 リーズル:様式化された人間の顔が、羽のそれぞれに金色の反転のように入った緑と紺青の蝶のアイコン。 マイクル・シンクレア:コズチの生徒。 【本編のあらすじ】 それでは年表(資料1)を片手にヤチマくんの半生を辿ってみましょう。*は注です。 [第一部] 挿入されているのは旅の果てにヤチマとパウロが振り返っている所。 1 孤児発生 ヤチマ生まれる。 いかにして、仮想現実世界の市民(以下「コピー」で統一)は生まれるのかを描いています。本編でも屈指の難解さですし、ここで投げ出してしまう人も多いのではないでしょうか。 要は『攻殻機動隊』のオープニングなのだ、と解釈すれば分かりやすくなるかな?(資料2)こんな世界で物語は進行しますよ、と説明している訳です。 創出 による、個体発生→情報処理教育(ライオン!)→市民に、といった流れで話は進みます。 さて、ヤチマが自分を命名するシーンですが、彼/彼女のアイコンは可愛い子ライオンに影響されているのだ、と誤読しておくと、後の理解がかなり容易になるかもしれません。『萌え単』理論!(資料3) また、ここで無限遠にある星へと向かう志が刷り込まれていることにも注目したいです。 無秩序な混沌(パンデモニアム):pandemonium 『決断者』(SFマガジン 2003/8)にも「百鬼夜行(パンデモニアム)認識モデル」というものが出てきます。そこでの作者註によると、デネットの『解明される意識』およびミンスキーの『心の社会』を参照すると良いらしいです。心理学上の認知に関するモデルなのだとか。ヒトが並列処理をどう行っているのかに関連しているらしいです。本書でも二冊が参考文献として挙がっていることから、「孤児発生」での発達段階に関する記述もこの辺りの議論を元にしているのでしょう。 観境:市民のいる空間、環境。scape。三次元とは限らないのが次でのミソ。 アイコン:アバターですね。 飛びまわる豚? 2 真理採掘 ヤチマ、イノシロウとの同居を始める。 いきなり幾何学の話。2つの命題について議論されていますが、この辺を「とばせ」ってことなのでしょうね。一応、本人のサイトを見れば、模式図と説明がありますので、興味があれば。ただ、ここで出てくる次元の違いについての議論が、後のポワンカレに関係してくるのはおさえておくと良いかと。 この世界での「芸術」の一例も出てきますが、なかなか素敵です。 真理鉱山 :数学者は誰もがこの山を掘っていることになっています。また、真理への到達には地道な努力をする必要がある、というイーガンの考えもうかがえます。 価値ソフト:イーガン読者ならおなじみのものですね。何を快と感じ、何を不快と感じるのかを決めてしまえる、つまりは「しあわせの理由」となるソフトです。 界面ソフト:巻末を参照 3 架橋者たち ヤチマ大地に立つ。 グレイズナーが登場します。これは《移入》してデジタル化されたいけど、肉体は捨てたくはない、と願った人たちの乗り物、またはその人格のこと。彼らは宇宙へ行き、SETIなどをやっています。 この章では、ヤチマ達がグレイズナーに乗り込む?ことで肉体人との交流を持ちます。遺伝子改変をやりすぎて深刻なディスコミュニケーションに陥った肉体人たち。それを繋ぎなおそうとする架橋者たち。この分散状況と現在とを繋ぐのが『万物理論』でしょうか。 「人格」を分けるかどうかで逡巡するのも、<ディアスポラ>への布石になっています。同様のモチーフとして、『宇宙消失』において、平行宇宙にいる無数の自分を消失させるのに悩む主人公が描かれています。更に、無限の命を持つことについても触れられていますが、これは『順列都市』で出てきた話ですね。といった辺りで、結構おなじみの命題でした。 タグ:巻末に注もありますが、私なりに解釈すると、タグはあくまでデジタルな情報であって、「感覚」とはクオリアのことなのでしょう。経験が神秘的なものになる、ともいわれていますし。 リヴィングストン:ヨーロッパ人で初めてアフリカを横断した人。 ジェロニモ:アパッチ族の戦士 居留地から何度も脱走し、アメリカ軍と戦いぬいた。 ハックルベリー:『トム・ソーヤーの冒険』『ハックルベリー・フィンの冒険』 マーク・トゥエイン (*1) ドロシー:『オズの魔法使い』 ライマン・F・ボーム 肉体人:不変主義者、水陸両生肉体人、夢猿人、架橋者などなどいろんな派閥がある。 [第二部] 4 トカゲの心臓 カーパル、トカゲ座の異変に気づく。 一ヶ月も月面で寝そべっていられるグレイズナーのまったり具合がなんともいえません。 5 ガンマ線バースト 再びアトランタへ。そしてカタストロフ。 ナノウェアを用いて、肉体人をポリスへ連れて行こうとする二人ですが、それを肉体人自身の許可なしに実行することはできません。なぜならそれは、自由を侵害することだから。他人の権利を侵害する権利は存在しないってことでしょうね。私は、他人をポアする権利はないってことでとらえてみました。後は法学部の人に任せます。 ポリス人は英語をしゃべっていて、肉体人はラテン語です。あと、この章では生態系の改変についての描写がありますが、もともと数学の博士号の人が物理にも生物にも強いのですね。専門化の進んだ現代科学において、これだけ学際的であることは、ホントに凄い。 メガタウ ギガタウ: 80メガタウは1日。半ギガタウは6.5日。 伝染性の強いパレスチナの有神論複製子群:上でも書きましたが、イーガンはもともとキリスト教徒です。 『時計仕掛けのオレンジ』の錯誤:暴力を行い得ないのは徳ではない、ということですね。 ブラフマー、シヴァ:ここではヒンドゥー神話の方。『暗黒神話』ではないです。ブラフマー(創造者)、ヴィシュヌ(保持者)と、シヴァ(破壊者)で三位一体となります。 6 分岐(ダイヴァージェンス) ヤチマ《C-Z》へ 5章での体験により、自身の弱さを認めるようなことをしなくなる複製子を走らせてしまったイノシロウ。「認めたくないものだな(ry 対比として、それでも前に進み続けるヤチマは 創出 にとって不要と判断されます。 そういえば確か、昔の会誌の名前が『divergence』でしたね。 [第三部] パオロとヤチマの会話は続く。 <長炉>について。ブランカとガブリエルとコズチの三角関係! 7 コズチの遺産 ガブリエル、ワームホールについて調べる。 さて、また難関がやって参りました。ここは話の根幹に関わるコズチ理論についてです。一応ディアスポラ数理研から孫引きしてみます。 {引用開始} 重力=空間の歪み、なので、重力の理論は空間を扱う話になります。この理論のなかでいろいろな素粒子も一緒に扱おうとすれば、空間と様々な素粒子がどのように影響を及ぼし合うかを考えないといけなくて大変です。しかし「実は素粒子ってのは空間に空いた穴で、様々な素粒子の種類は穴の空き方の違いで説明できる」ってことになれば、空間だけを扱えばよくなってすごく楽です。できるかどうか知りませんが。そのようなアイディアは物理業界で "matter without matter" とか呼ばれてるようです。架空のコズチ理論ではこれができるようです。 巻末の参考文献にある、 『ゲージ場・結び目・重力』 (Gauge Fields, Knots, and Gravity) by John C. Baez and Javier P. Muniain から訳して引用。 ワームホールとモノポールは理論物理において思弁の極北に位置し、SFと紙一重である。 ..中略.. 相対論研究者のジョン・A・ホイーラーは、ワームホールの「口」が電荷を持った粒子として振舞うという興味深いアイディアを提唱した。電気力線が一方の口に流れ込み、もう一方から流れ出すことで一方の口が負の電荷、もう一方が正の電荷を持つ粒子のように見え、その電荷は符号が反対で絶対値が等しい。もしワームホールの計量と、ワームホールを流れる電場(あるいはゲージ場)の相互作用を記述する理論ができれば、このようなワームホールが様々な安定状態をとり、それらが異なる世代の粒子に対応することを示せるかもしれない。さらに質量を計算することさえ出来るかもしれない。残念ながら、これらは現在のところ夢にすぎない。なぜなら..以下略 (コズチ理論とは)この夢が実現したという設定です。 {引用終了} 粒子を空間として扱う、というアイディアみたいですね。では、次行ってみましょう。 8 近道(ショート・カット) 長炉 によるコズチ-ホイーラー・ワームホールの実現化。 7章の850年後になってついに、ワームホールが実現化します。しかし、端と端を「光より速く」つなぐ筈のワームホールからはシグナルが出てきません。実験は失敗。しかもその失敗はコズチ理論の改良を要求するようなものでした。水素原子のスペクトルの観察などから、古典力学が見直されたのと同様のことが行われている訳です。 また《コニシ》と《C-Z》の差異が「コピー」の身体感覚という軸で語られます。それに伴い、「コピー」にとっての「愛撫」も出てきます。 「コピー」達の時間が均一ではないことも明らかになります。でも、それが何の影響ももたらさない、という議論は『順列都市』ですね。 高速化:処理速度を落として、待ち時間の短縮をすること 長炉 :線形粒子加速器 1400億km(冥王星の軌道の十倍以上) ユニット一つの質量は1g以下。 9 自由度 ディアスポラ 始まる。 ワームホールによる「ワープ」が不可能であることが分かったとき、《C-Z》ポリスの「コピー」達は、自分らのコピーを宇宙に向けて播種します。そして、舞台はフォーマルハウト行きの船。 価値ソフトの違いはいかんともし難いのですが、果たしてオスヴァル達を馬鹿にすることが賢明な判断なのかは疑問です。 さてついに、ブランカはコズチのアバターとの対話によって、 距離問題 を解決し発展版コズチ・モデルの構築に成功しました。 が、私は完全においてきぼりを食いました。ワームホールは距離を他の空間から奪ってくるから距離は短くなり得ない、だからショート・カットとしての役割を果たさないのだ、という最後のまとめを押さえとけばいいのでしょうか? 星虹(スターボウ):亜光速で宇宙を航行するときに見えるだろう、とされている虹のこと。 カール・フリードリヒ・ガウス:天才 アバター:「コピー」ではなく、生前の資料を元に構築された仮想人格。 [第四部] 10 ディアスポラ 出発前のパオロの観境で。 11 ワンの絨毯 地球外生命体は千次元の世界にいた。 この章はヴェガ星系行きの船の中でのできごと。エレナとパオロアイコンは、肉体人のものですから、ブランカとガブリエルの接触とは異なります。 ここでメインとなるアイディアは、ワンのタイル=チューリングマシンというもの。(資料4)その上に、ヒトには認識できない千次元周波数空間の十六次元の切片などという概念が出てきます。これは、後のトランスミューターの「像」へと結実します。 9章に出てきたフォーマルハウト行きの船は木っ端微塵!などの事実も明らかにしつつ、ようやくポリスごとの立ち位置の違いが見えてきます。「現実」にどれだけの価値を見出すのか、ということですね。中でも現実重視で、他のポリスを「ひきこもり」よばわりしていた《C-Z》が惑星オルフェウスの「生命」を見つけてしまうという皮肉。イーガン節です。 ここで各コミュニティーの違いについて、少し整理してみます。「現実」へのこだわりで並べてみるとこんな感じでしょうか。 肉体人 グレイズナー 市民(シェイパー、「コピー」) 《カーター-ツィマーマン》ポリス 肉体人を市民にしようと、ネットワーク攻撃をしたりしている。「宇宙を理解し、尊敬せよ」が憲章。物質宇宙に一番こだわっている。 ディアスポラ を実行する。 《コニシ》ポリス シベリアのツンドラの地下二百メートルに埋められている。外の現実への関心が薄い。 《アシュトン-ラバル》ポリス 爬虫類を「創造」したりするような仮想現実派の最右翼。 境界ポリス その他大勢の意? 蛇足的なおまけなのですが、なんと小倉百人一首もワンのタイルなのですね。(資料5) ダイソン球:恒星を卵の殻の様に覆ってしまう仮想上の人工構造物。 カウフマン・ネットワーク:ライフゲームみたいなもの。 フーリエ変換:そういう計算があるのです。 レグルス:しし座の一等星 さて、10・11章をあわせると元々の『ワンの絨毯』になります。違いはポリスの説明が多少入っていることと、それに伴い「人間宇宙論」というものが語られている点。最後にパオロの心情吐露が入っている点です。 「人間宇宙論」というのは、もし物質宇宙が人間の思考によって創造されたのであれば、それを仮想現実より上に位置づける特別な理由はない、という《アシュトン-ラバル》の考え方。 パオロの述懐は「自殺」してしまう発想の元ともなっていて興味深いので、引用します。()は引用者。 「この不思議な、偶然の産物である美しさの何もかもが、人類と位相人類(「コピー」)が宇宙に向かって問いかけてきたあらゆる疑問に対するあらゆる答えの――問われることによって生み出される答えの――集合でしかない、ということがありうるだろうか?ありえない、とパウロはいまも信じていた――だが、その問いにはまだ、答えが出ていない。いまのところは」 [第五部] 12 重い同位体 惑星スウィフトの謎とは。 ここからはヴォルテール星系行きの船のお話。 オーランドという人は元肉体人なだけあって、「肉体」に対するこだわりが強いです。また、パオロを生んだのも元々の架橋者としての使命感からだ、ということが分かります。 ヴォルテール:本名フランソワ・マリー・アルエ 「私はあなたの意見に何一つ賛成できないが、あなたがそれを言う権利は命がけで守るつもりだ」という言葉はあまりに有名。 スウィフト:ジョナサン・スウィフト 『ガリバー旅行記』 リサージュ図形:これを描けるものさしを皆さんは、見たことがあるのではないでしょうか?歯車をぐるぐるまわすやつ。 13 スウィフト トランスミューターはいずこ? ようやく、第一部の冒頭の会話に出てきたトランスミューターが出てきます。普通忘れていますよね。文明はあるのに見つからない。《移入》したのか、 ディアスポラ したのか。実は別の「宇宙」へ出かけていたのです。そして、その鍵がスウィフトに大量に存在する中性子でした。 細かいことですが、車から車へとテレポートするのを「コニシ式」と呼んでいるのはいいですね。 トランスミューター:transmute 変質、変化させる。 transmutation 錬金術で卑金属を貴金属に変化させる、あるいは核反応によって元素を別の元素(あるいは同位体)に変化させる。 14 埋めこまれたもの 中性子に埋め込まれたデータは? 解読過程で、トカゲ座なんて目じゃないニュートリノ・バースト(コア・バースト)がやってくることが分かります。どうやらトランスミューターはそれから逃げ出したらしい。その方法として更に解読されるのが、ワームホールの形を制御すること。実は「長い中性子」はマクロ球の中で触媒として働いていたらしいです。ここは作品の肝で避けては通れない議論のような気もしますが、スルーします。 そして、上位宇宙へ! 陰極線管ディスプレイ:ブラウン管 [第六部] 15 5+1 マクロ球もしくはU*は5次元の世界だった。+1は時間のこと。 「コピー」の走っているポリスの外側が3次元の「現実」ではなくなってしまったら、そのときオーランドが寄って立てるものは?という問いが出てきます。 エキゾチックな現実:兎にも角にも、エキゾチック物質というのがワームホールには必須なのです。 16 双対性 @惑星ポワンカレ 時間表記がはずれます。五次元空間の描写は圧巻ですね。全くビジュアルはわかないけど、これぞ活字SFでしか表現できないイメージです。 さて、肉体人から始めて我々読者と作品世界とを架橋しているのがオーランドなのですが、ついにファーストコンタクトを行います。このヤドカリとの下りは、モンティパイソン的笑いなのではないか、という話題をみかけたのですが、私は悲しき性のように感じてしまいました。 ポワンカレ:アンリ・ポワンカレ(数学者) [第七部] 17 1の分割 つまりは、ここで分割された存在をもう一度戻そうとせざるをえないオーランドの強迫観念は悲劇的だ、と思うのです。 18 創造の中心 トランスミューター以外の知的生命体の存在も描かれつつ、宇宙についての語り。 [第八部] そして問い。パオロの行動原理とは何だったのか。 19 追跡 <ディアスポラ>によっていくつかの「宇宙人」とのコンタクトをとげた時代。 パオロとエレナの「分岐」この宇宙の探求と違う「宇宙」の探求。 20 不変性 そして、旅をしても変わらなかったもの。 ヤチマは精神発生のときに、ここまで来ることを宿命づけられていました。たどりついた二百六十七兆九千四十一億七千六百三十八万三千五十四レベル(偶数なので三次元)で気づくトランスミューターの「像」と「旅」の終わり。パオロとヤチマの「分岐」すなわち、自分の外にある可能性の追求の終了。 パオロとヤチマが「分岐」してしまうのは、自分の内にある可能性(数学)に没入できるかどうかの違いですね。本来「架橋者」であったパオロにはそれができなかった。 ヤン-ミルズ:C.N.ヤンとリチャード・ミルズ。量子色力学の人たち。 ワイル:ヘルマン・ワイル 【まとめ】 1.Philosophy Fiction(by坂村健、竹田Pじゃないよ)として 「意識と現実をとり去ったら、あとにはなにも残らない」という言葉からも伺えるように、イーガンはその二つの関係の話ばかりしています。これには「主観的宇宙論」そして「シミュレーション」という二つの軸がある、と思います。坂村健は「記述」への欲望を書いていますけど、私はそれを行おうとする主観の方を問題にしたいです。 「主観的宇宙論」とは、究極の唯我論ともいえましょうが、要は個人の「観測」が世界を変える力となってしまうような宇宙論/観のこと。もともとの『ワンの絨毯』にあった「人間宇宙論」の前提となっています。この点については本作には出てこないので、割愛します。三部作の中では、一番読みやすい「宇宙消失」から入ってみるのがオススメです。 シミュレーションに関しては、ヒトにまつわる問いとして、いくつかに分けられます。 1)ヒトが「コピー」へと《移入》するかどうか 2)《移入》した後での身体と「コピー」の差異 3)シミュレーション上でのアイデンティティの問題 4)シミュレーションで価値基準を自由に調節できる人格は、永遠の命を手に入れたとき何をするのか、という問い 4’)それをそのまま現実世界に持ってくるのが「しあわせの理由」へと繋がる「理由」への問い。これは同時に、《移入》の可否へとも繋がるような円環構造を描き出している、と思います。 さて、他のイーガンの作品を読んだことがある人ならお分かりの通り、これらの問いは彼の作品の中で何度も反復されています。おそらく、その度に進化/深化しているように思うのですが、それに対する考察は、今の私には手に余ります。揺さぶられることについての指摘は多くても、それを比較・検討するような評論は、寡聞にして読んだことがないです。 ちょっとわき道へ4)は輪廻と解脱の問題へとも繋ぐことが可能かもしれません。パウロが最後に行った選択は何であったか?実はゲーテルのお陰で、ヤチマには無限の可能性が残されていたりするんですけどね。あと、脳のチューニングという話は鶴見済との共通点もあるように思います。 2.SFとして 上述の問いを必然的に孕んでしまうような状況設定の上手さ。「天才詐欺師」(by大森望)という称号はまさに彼にふさわしいものでしょう。先にも触れましたが、科学知識に関する造詣の深さは、当代随一です。 そして、時には嫌悪感しか覚えない/生理的にうけつけない、といわれてしまう一つの状況を徹底的につきつめる辺りも流石です。 3.読みにくさ 最近おもしろいエントリーを見つけました。(資料6, 7) 結局、SFの部分は多少分からないところもあるけれど、PFのところは万人に開かれているのだ、ということなのでしょう。問題はSFの部分をどこまで理解するかということと、PFを理解するために必要となる想像力です。ここが、SFという言葉を知らない人にアピールできるかどうかなのですが、難しいですね。この点で皆さんの読後感はどうでした? 4.作品全体を通じて この作品はつぎはぎのパッチワークとしてある側面は否めませんが、だからといって通低するものがないわけではありません。私は「行動原理」の違いから「分岐」してしまう人達というディスコミュニケーションの物語として読みました。確かバクスターの『タイム・シップ』にも出てきていたことですが、リソースがほぼ無尽蔵にあるなら、それをめぐっての衝突は基本的に起きないのですよね。だから、繋ごうとする架橋者たちは失敗する。(焼豚くんから指摘がありましたが、『順列都市』では計算リソースをめぐって衝突が起きていましたね) ただ注意しておきたいのは、この主張をそのまま現実へ持っていくことはできません。前提となるリソースの問題があるから。でも、これを「宇宙」規模のひきこもり物語として読んでしまいたい欲望もあったりなかったり……。 【資料】 1.http //d.hatena.ne.jp/ita/00020131/p1 2. イノセンスの情景 3. 京大SF研究会 「workbook 79」 4. http //en.wikipedia.org/wiki/Wang_tile 5. http //www.ogurasansou.co.jp/site/hyakunin/hyakunin02.html 6.http //bm.que.ne.jp/log/20051223.html#c01 7. http //d.hatena.ne.jp/kaien/20051228 【参考文献】 既刊邦訳すべて(含S-Fマガジン) mixiのイーガンコミュ ディアスポラ数理研 めちゃくちゃお世話になりました。 著作リスト Wikkipedia はてなキーワード 2019.01.02 Yahoo!ジオシティーズより移行 http //www.geocities.jp/tohoku_sf/dokushokai/diaspora.html なお、内容は執筆当時を反映し古い情報に基づいていることがあります by ちゃあしう
https://w.atwiki.jp/tohokusf/pages/109.html
日下三蔵/大森望 「年刊SF傑作選 量子回廊」 夢見る葦笛 ひな菊 ナルキッソスたち 夕陽が沈む 箱 スパークした 日下兄弟 夜なのに 刺身 はじめての駅で 観覧車 心の闇 確認済飛行物体 紙片50 ラビアコントロール 無限登山 ひきこもり 雨ふりマージ For a breath I tarry 雨々 バナナ剥きには最適の日々 W.H.石井 星魂転生 あがり
https://w.atwiki.jp/zgok0079/pages/452.html
ブラジルから来た少年 484 名前:名無しは無慈悲な夜の女王[sage] 投稿日:2008/06/19(木) 23 07 54 『ブラジルから来た少年』 アイラ・レヴィン SFっていうかサスペンスかも知れませんが、SF要素もあるので。 読んでて思ったのは、浦沢直樹のMONSTERっぽいなぁ、ということ。たぶん逆なんでしょうけど。 内容は…まあ、オチが分かった上で読んでいたのでサスペンス部分はあまり楽しめなかったのですが、 『ブラジルから来た少年』たちに関する描写にはニヤニヤできました。 合理的なように見えてめちゃくちゃ無駄と隙だらけな作戦も実に第三帝国らしくていい感じです。 あと、主人公もメンゲレ博士もじいさんなのに元気すぎだろJK。 総評:6点(内訳:ニヤニヤ度+少年かわいいよ少年度-少年こわいよ少年度-博士の口調がなんか惜しい度)
https://w.atwiki.jp/tohokusf/pages/137.html
東北大学SF研究会 短編部会 『小さき供物』 パオロ・バチガルピ 著者紹介 1972年アメリカ合衆国のコロラド州生まれ。 代表作は『第六ポンプ』、『カロリーマン』、『ねじまき少女』など。 オハイオ州オバーリン大学で東アジア学と中国語を専攻、在学中に中国へ数年間留学し、1996年に帰国。1999年に作家デビュー、環境汚染・資源枯渇問題・バイオテクノロジーなどを主題として数々の短編を発表した。2009年に発表した『ねじまき少女』はヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞、キャンベル特別賞、星雲賞など数々の文学賞を受賞。今後も活躍が期待される作家である。 作中用語解説 予備分娩 母体の汚染物質を胎児に送り込むことで排出させる除染法のこと。これを行うことで、次回以降の出産では健康な子供を産む確率が上がる。 パーネート(parnate) 分娩誘発剤の一種。 スキージー(sqeegee) 体内から汚染物質を排除するための薬剤。 ピトシン 陣痛を促進するホルモン、オキシトシンを含んだ薬剤で、陣痛の誘発、鎮痛・止血作用などがある。アメリカでは無痛分娩の促進と出産の高速化のため、出産時には欠かせない薬剤となっている。 あらすじ 環境や人体が高度に汚染された現代では、母体が汚染されているため、健康な子供を産むことが非常に難しいものとなっている。多くの新生児は身体障害・精神障害など様々な異常を抱えている。 健康な子供を産むためには、現在二つの方法がある。 ひとつは、予備分娩を行うことで、母体を除染する方法。 もうひとつは、薬剤を摂取することで、母体を除染する方法である。 主人公リリー・メンドーサは産科医として予備分娩に日々携わっているが、予備分娩で取り上げる胎児を人として扱わないことに、違和感を覚えている。 リリーとその夫ジャスティンは、胎児を人として扱わない予備分娩を避け、薬剤による除染を選んだ。しかし、母体除染薬スキージーは未承認薬であり、激しい副作用をもつ薬で、リリーの体には大きな負担となっている。だが、これは健康な子供を授かるためには必要な対価なのだ。 医療廃棄物として処理される胎児を見つつ、リリーは自分を納得させる。これは次に産む子が健康であるための必要な犠牲なのだと。 所感 この作品を読んで、まず頭に浮かんだのが漫画版『風の谷のナウシカ』だった。漫画版では、ナウシカは11人兄弟の末っ子という設定で、ナウシカ以外の10人の兄姉は全員母体の腐海の毒を引き受けて既に死んでいる。いわば10人分の予備分娩の上に、ナウシカがいるということになる。 ナウシカのように10人とはいかないが、この『小さき供物』の作品世界において、ほぼ全ての新生児は兄姉の予備分娩の上に生きる存在となる。自分の誕生の為に、必ず一人以上の血を分けた存在の犠牲があるというのは強烈な罪の意識の形成を促すことになると思う。自身が生まれてくるために、兄姉を犠牲にするということは罪になるだろうか。 この作品は、バチガルピの得意分野である環境汚染をテーマにした短編である。この作品世界において、環境汚染は「予備分娩」という社会の変質をもたらした。人類が引き起こした環境汚染が、環境を通して自らの身体と社会の変質をもたらしたのだ。ごく短い短編ではあるが、この作品世界の変容した社会観念や倫理観、法体系などにも非常に興味を惹かれる傑作である。 この作品のほかにも、SFマガジン700【海外篇】には、小松左京がSF作家を志すきっかけとなったロバート・シェクリイの『危険の報酬』、江戸から東京へと変化していく様を描いたブルース・スターリングの『江戸の花』、寡作で知られる作家テッド・チャンのヒューゴー賞受賞作『息吹』など11作が収録されている。どれもSF史に残る作家の傑作かつ単行本未収録作ばかりなので、ぜひ読んでいただきたい。 下村
https://w.atwiki.jp/zgok0079/pages/101.html
壜の中の手記 480 名前: ◆GacHaPR1Us [sage] 投稿日:2005/04/19(火) 22 47 08 壜の中の手記 晶文社ミステリ ジェラルド カーシュ (著), 西崎 憲 (翻訳) http //www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4794927320 もうなにも言うことはない、SFとミステリーの境界線というところでは シオドアスタージョンにも通じる多作作家、ジェラルド カーシュの短編集。 どれもいいんだけど、自分がいっちゃん好きなのは何と言っても カームジン・シリーズと言われる「カームジンと『ハムレット』の台本」 とにかく、カームジン氏のキャラクターが熱い。 その逆にもっともSF臭が強いと思われる「骨のない人間」、「ブライトンの怪物」あたりがちょっと弱く感じるのは 他の色が強すぎるからかな? 無論、10点。
https://w.atwiki.jp/zgok0079/pages/100.html
祈りの海 437 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 02/11/23 00 59 イーガン「祈りの海」ハヤカワ おもしれえ。おもしれえよこれ。 これ1冊じゃ作家の資質なのかハヤカワの意図的な編集なのか分からんが、 アイディアはいっぱいあるのに、肝心のお話がどうもみんなおんなじテイストだ。 一人称単視点の夫婦関係の問題みたいのばっか。減点。 主人公がちとテーマを語りすぎ。だっせえ。また減点。 つうわけで合計8点。 でもそんなことどうでもいいぐらいおもしれえ。 601 名前: でへ 02/12/31 17 20 祈りの海 グレッグ・イーガン ハヤカワSF 短編集です イーガンってすごいですね。良いアイデアを持っていて、 それを十分生かした話を書ける人です。筆力があるので しょうね。 話が深いです、読後に余韻が残り、考えさせられる話が 多いです。 なかでも表題作が一番でしょうか。長編化を希望 9点(再読したら10点になるかも) 612 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 03/01/05 13 13 「無限の暗殺者」(『祈りの海』所収)/グレッグ・イーガン イーガン読むのはこれで三作目なんだが(他に読んだのは「宇宙消失」と 「ルミナス」)……なんか、なんか苦手だ、この作家。 面白いアイデア持ってるのに、なんですぐに引っ込めちゃうんだろう。宇宙 消失も、ようやくヘンなものが色々出てきたなと思ったところで終わっちゃっ たし。もっと世界がぐちゃぐちゃになる様子を描写して欲しかった。 世界を改変出来るガジェットが出てきても結局個人の問題に着地するあたり、 大変現代的な作家と言えるのかもしれないが……。 3点。 746 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 03/04/19 18 27 イーガン「祈りの海」ハヤカワ文庫 何でこうまで自己同一性にこだわるのだろう。私が私であることを思い知らされてきた身には、このひたむきさが眩しすぎる。 確かにSFとして面白く、文体も明るく読みやすいのは認めるが、読み進む内に段々結末が予想できるようになってきて意外性が少なくなった。 この中で好きなのは「百光年ダイアリー」「無限の暗殺者」 イーガンよ、どうせならもっと屈折してくれ。全体で8点 162 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2005/08/13(土) 21 03 30 「祈りの海」グレッグ・イーガン 7点 広く浅くをモットーに意図的に同じ作者のものを避けてSF読んでるんだけど なんとなくイーガンは現代風で読みやすいのでつい買ってしまう。 内容は同作者の短編集のしあわせの理由に比べて現代より(これは技術・年代的にといった意味だけでなく) な話題に集中して、さらに後味がイマイチすっきりしない話ばかりで少し気分が重くなった。 イーガンは現代版クラークみたいなやや楽観主義かと思ってたら結構黒いんだな 宇宙消失 464 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 02/11/27 00 39 イーガン「宇宙消失」創元 期待にたがわずおもしれえ。 しかし「収縮阻害」「固有状態選択」がまったく説明なしなのはイタイ。 選択以前の拡散中の自己は収縮後の語り手にとってはただの非実在の可能性になってしまうから ってんだけど、やっぱ読んでてちとしらけてしまう。 量子力学ってのは真面目な解説書読んでも十分狂ってるから、屋上屋を重ねた感じは拭えない。 ちょっとサービスして8点。 158 名前:名無しは無慈悲な夜の女王[sage] 投稿日:2008/05/20(火) 00 06 14 "宇宙消失" グレッグ・イーガン イーガンを読む。これは俺にとってドキドキ魔女裁判と同じくらいドキドキすることであった。 読む前はさぞかし読みにくいだろうと思っていたのだ。だってハードSFだし俺は頭が悪いんだぜ。 しかしイーガンは世評高く、避けては通れない道だと判断し心を決めて手を出すことにした。 メインのアイディアには「良く考えたなこういうの」と感心したけど、同時にもっと小説が上手い 作家が書けばとんでもない傑作になったんじゃないかとも思う。 例えばさぁ、主人公の妻との想い出とか、何かこう、もうちょっと切なさ出してもいいんじゃないの? ちょっとの工夫で感情移入できるのに。とか。 何か見当違いなこと書いてますか私。 まぁ、ふんだんに投入されたガジェット、(尻つぼみ感は拭えないものの)ラストのぐちょぐちょの展開に 興奮したことは事実だし、「何かすごいものを読んだ」という、「何かすごい感」を感じたことも事実。 この「何かすごい感」は並みの作家には出せないので、やはりイーガンは並みの作家ではないのであろう。 それだけでも読んだ価値はあったかな。 8点。 しあわせの理由 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 03/09/14 19 05 「しあわせの理由」グレッグ・イーガン まだ表題作しか読んでないんだが、素晴らしすぎる。 宇宙消失、順列都市、祈りの海収録短編と、どれもよく考えてあるし面白いんだけど、どうも 突き抜け感が足りなくて「なんかイマイチだなあ」と思ってたんだが、これはいい。 小説読んで泣いたのはこれで3度目だ。 10点。 216 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 03/09/29 21 37 イーガン「しあわせの理由」(ハヤカワ文庫) 「祈りの海」にいいのを集め過ぎたせいか、前のよりはちょっと 落ちるかなあ。 SFの平均レベルは上回ってると思うけど。 まあ好みの問題もある。特に前半の方はいまいち。 後半はさすがに傑作が多い。 「チェルノブイリの聖母」は、イーガンの社会派方面のセンスが 出た傑作だと思う。 「ボーダーガード」も、ちょっと難しいけど、凄いと思う。 「血をわけた姉妹」「しあわせの理由」はもちろん 傑作なのだけれど、なぜこれを最後にもって来るのかなあ。 どっちもアンソロジーに既収録。 大抵の読者は両方読んでいるだろうから、「ボーダーガード」までで、 本書の印象は決まってしまうだろう。 あと、「しあわせの理由」も、確かに傑作だけど、90年代のベストの 一つとまでいわれると、それほどでもないかなあ、という感じ。 こんなこというと、お前は分かってないといわれそうだけど、 いかにもイーガン節な感じが、ちょっと鼻につく感じがする。 というわけで前半が今一なのと、作品の配列が不満。 個人的な採点は 7点 ぐらいです。 351 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2007/01/03(水) 23 01 23 「しあわせの理由」 グレッグ・イーガン 「ひとりっ子」未読なので、こっちを読み返してみた。 が…どうも駄目です。文系だからか? 「適切な愛」 素晴しい洞察力ですね。理性の勝利だ。おめでとう。 「闇の中へ」 これだけは普通に面白かった。異様な空間の感覚を味わえた。 「愛撫」 金持ちのやることはわからん!それが当たり前。 「道徳的ウイルス学者」 惜しい。オチが滑った。 「移相夢」 ラヴクラフトの方が怖いw。 「チェルノブイリの聖母」 イワシの頭も信心ですから。お好きなように。 「ボーダー・ガード」 量子サッカーと宝石、どっちかで一本書けばよかった。 「血をわけた姉妹」 かえって理系の人のほうがこういう変な考え(双子のことね)に取り憑かれてるような? 「しあわせの理由」 「スキズマトリックス」を読んだ後では…。何でも好きに調節すればいいじゃん、としか思えないorz と言うわけで3点。 順列都市 422 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 02/11/17 00 12 「順列都市」イーガン なんだか難しくって、普通の本読むのの時間が倍かかった。 「こんな本読んでるなんて自分っておりこうさん」っていう気分になれた。 でも、読んでいるとなんだか悲しい気分になるのは、登場人物たちが、 みんな自分の目的を達成してるのにそれでも幸せになれてないからなのか。 それとも、本能的に順列都市が怖いからなのか。 もっとこういうの読みたいなー。 イーガン以外で何かお勧めないっすかね? 8.5点 889 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 03/05/20 23 06 「順列都市」イーガン ハヤカワ文庫 酔っ払いながら、電車の中で読了。 面白かったよ。「幸せの理由」「祈りの海」「宇宙消失」と読んできて一番いい。最初はコピーとかまた得意のアイデンティティものかと思ったが後半は人間原理のせめぎ合いだな。 「宇宙消失」でもそんな感じを受けたけど順列都市の方がはっきりしている。 コンピューターの中の生命はレムなんかでもアイデアはあったと思うが、イーガンはやはり只者ではないな。最後は自己の存在をより強く信じられるものが残る。 そこにはイーガンの当初?の自分が自分であることのこだわりよりも進んだ姿勢が見られる。 これなら次回作に期待がもてる。万物理論だっけ、より人間原理を追求するのか、もっと違った世界を見せてくれるのか期待が大。 とりあえず順列都市に9点 87 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 03/07/17 00 37 『順列都市』グレッグ・イーガン 面白い。凄いネタだ。 ……だけどさあ、なんかさあ、毎度毎度、議論が細かすぎるんだよなあ。で、いざその理論を 実践する段階になると結構さっさと終わってしまうという。 個人的には、読者に妄想の余地を多く残すくらい議論は簡潔にして、そこから世界がどうぐちゃ ぐちゃになっていくのかを多めに描いて欲しいんだけど。 9点 666 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 04/07/11 04 03 グレッグ・イーガン『順列都市』 後半あっさり流された気がする。登場人物の処理のしかたにも不満が。 広がったそれぞれのストーリーが最後にぐわっと収束していくもんだと思っていたんだがなあ。 まとまった一つの話って感じがしない。めくるめく世界観は圧巻なんだが。 7・5点 ディアスポラ 283 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2005/09/25(日) 11 39 05 イーガン「ディアスポラ」 相変わらずハードなネタてんこ盛りで、それだけで945円の元はとれた気分になる んだけども、メインになるコズチ理論が、難解なわりに衝撃度が小さい( 今までの長編にくらべて)のが難点か。触媒とかイカとかは良かったのだが。 アイデンティティー関係はいつもより控えめだったけど、冒頭の自意識の発生までの 描写はまさしくイーガン。思考モデル自体は借用とはいえ、それをここまで突き 詰めて描けるのはこの作家だけでしょう。 331 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2005/10/12(水) 01 00 25 「ディアスポラ」 グレッグ・イーガン とりあえず読み終えた、という感じ。 しあわせの理由、宇宙消失、祈りの海とイーガンを読んできたけど その中でも一番吹っ飛んでて、もっともハードであり、スペースオペラ的な壮大な世界観を 理論物理的な視点で描いた(あとがきにもハードSF版スタートレックとあったし)作品だった。 長編より短編のパッチワークといったその体制も、そのタイトルに合致している…のだろうか 自分の数学の対する理解力のおよばぬゆえに 8点 441 名前:でへ 投稿日:2005/11/04(金) 00 38 08 ディアスポラ ハヤカワSF G・イーガン 今までのイーガンの作品の中では、一番ストレートなSFでした。 SFという文学(?)の定義を、SFファン及びSFに関して興味を 持っている人たちが、どう捉えているかだろうけど、 私はそう思いました。 一流のハードSFであり、しかも思弁性も強い。 (私の求めるSFの真髄はここです。) 8点 再読すれば10点もありえる 1997年に原書は出ているので、もう少し早く読みたかった。 577 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2005/12/16(金) 00 46 22 イーガン「ディアスポラ」 連作短編的な構成のせいか、 物語としてはそつなくまとまっているが、 普通の宇宙ハードSFになってしまい、 イーガンらしさは希薄になった気がする。 わずかに数学への執拗なこだわりにかいま見えるぐらい。 バクスターの作品だと言われて読んでも あまり違和感がないかも知れない。 ま、とりあえず水準作。 7点 7 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/03/23(木) 03 26 52 しばらく前に書いた文章で当時貼るのをやめたのだが 最近二度目を読んだのでやはり書き込む。 さすがに作家本スレで投下する気にはなれない。 『ディアスポラ』グレッグ・イーガン ハヤカワSF文庫 あらすじは省略する。なかなかにエキゾチックな世界観である。 知的好奇心を持たない者、前進する意志を持たない者は 放っておかれるのではなく抹殺されてしまうのが基本。 主人公にではなく作者に。数学ファシズムの極北。 次に裁かれるのは飽くなき前進についていけない者。 そのような転向者、裏切り者は、死よりも悲惨な目に遭う。 具体的にはイノシロウ。 アイデンティティの喪失、自分が自分でなくなること。 これこそがイーガン宇宙においては最も重い刑罰なのだ。 トランスミューターには何故会えないのか? 最初から作者にその気がなかったのではないだろうか。 それぞれの宇宙に残された彼らのポリスを調査しないのは何故か? 墓荒らしになりたくないというのは本音だろうか? ホントはどうでもいいだけなのではないか? 私は一読者として期待した。五次元ヤドカリを見せられたら 当然それ以上のものをわくわくしながら待つしかないではないか。 でも出てこない。 私は限定宇宙1個のフィギュアなんぞでごまかされはしない。 最後にはやはり唖然とするほかなかった。今までの騒動が、思う存分引きこもれる ための環境整備だったのかと疑いたくなるほどだった。もっともこれは、 前進することしか考えてない人がいきなり目的を喪失するとこうなっちゃいますよ、という イーガン先生からのありがたい教えなのかもしれない。たぶん違うけど。 枝葉はたいへんに面白かった。ワンの絨毯は最高だった。 ヤドカリになっちゃう頑固なおやっさんや、主人公の空気の読めなさ加減には大いに 笑わせてもらった。 だが、根っこの部分で違和感を覚えざるをえない。 グレッグ・イーガンは他者に興味がないのだろうか。 同じ引きこもりなら私はタートルを選びたい。 自分の好きな物ばかりを周囲にならべたところで破綻するのが落ちだろう。 というわけで、悪いけど、五点。 万物理論 885 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 04/11/27 01 06 20 『万物理論』グレッグ・イーガン 創元SF文庫 統一場理論を超える、すべての物理法則を包み込む、単一の理論。 それを発表しようとする物理学者が、謎の組織に狙われる。 それに巻き込まれた科学専門の映像ジャーナリストは、やがて・・、 というハードSF。 壮大なホラ話の好きな人にはお勧め。 消化不良になるぐらいたくさんのアイデアが、ぎっしり入っている。 冒頭の殺害された死者がよみがえるシーンのアイデアだけで、 長編SFが、ひとつ書けそう。 性を超えた汎性という概念を持ち出し、ジェンダーSFとしても 読める。 ステートレスという生物工学によって作り出された人工島に 集まった無政府主義者による秩序ある社会を描いたユートピア小説 の側面もある。 とにかく、性、政治、宗教、生物学、物理学などの未来形が、めいっぱい 詰め込まれており、読みすすむうちに、近未来の地球世界がじんわりと 頭の中に浮かび上がってくる。 所々に出てくる主要な登場人物以外のキャラクターが、魅力的。 人工島に住む漁農家の女性とか、なぜかシンプルに描かれている 人間の方が印象に残っている。 詰め込みすぎで、散漫な部分もあるけれど、力作。 918 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 04/12/02 23 18 57 イーガン「万物理論」。 メインアイデアに関しては凄いと思うし、その論理的突き詰めや 様々な議論のディテールをここまで徹底してやるのも イーガン以外にはいないと思うのだが、雑多なこまごました 未消化のアイデアが、必ずしもメインアイデアと無関係に 多数投入されたまま放置されてノイズになっており、 特に前半は、視点が右往左往して読みにくいことこの上ない。 どうせ未消化に終わるのなら、完全にカットして話の焦点を絞ったほうが テーマがストレートに伝わりやすいと思うのだが。 未来社会にリアリティを与えようとせんがための意図的な ものなのかもしれないが、空回りしていると思う。 またストーリーも一本調子で工夫がないし、キャラクターも 金太郎飴。何より語り手に魅力がない。 かなり凝った未来社会の奇抜なディテール描写をしていながら、 主人公の倫理観や生活観が我々と大差ないのはいかがなものか。 恋人と別れるくだりなど、陳腐すぎてあきれた。 またオチもちょっと安易な感じがする。 個人的にはぶっ壊れる宇宙を見たかったが、これはまあ好みの問題か。 力作だと思うが、物語作家としての技量がついていっていない感じ。 最近の長編では、もっと進歩しているかもしれないので、 次作に期待したい。 7点(アイデアだけなら9点) 427 名前: ◆GacHaPR1Us [sage] 投稿日:2005/04/03(日) 18 06 10 万物理論 創元SF文庫 グレッグ・イーガン (著), 山岸 真 (翻訳) http //www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4488711022 のっけから圧倒的な科学力でぼくらを責めるSF質量のでかさはまったく健在。 でも、どっちかってーと脳の構造や生物学、医学関係の知識が多い。 最初の頃、エピソードの一つとして描かれた、「自発的自閉症者協会」のくだりで 読んでいくうちに、いったいロークがなにを主張しているのか?がわかって来るに従って、 この事実に対してどう感じるのか?で、その人物の愛の定義が見えてくるように思えた。 あのアイディアは秀逸だよ。エピソードの一端で終わらせるには勿体ないくらいだ。 ACが絡んでくる後半のパートがちょっと苦しくなってくるのは、物語を終わらせるための 方便だと思って、我慢するしかないであろう。 8点 181 名前:でへ 投稿日:2005/08/24(水) 00 07 11 万物理論 グレッグ・イーガン 創元SF すでに星雲賞に選ばれているので、いまさらの感があるのだが 面白かったので書評をあげる 読み応えのある本でした。 ハードSFであり、スペキュレィティブ(思弁的)な面もあり、非常に面白かった。 厚さもあり読むのに2週間くらいかかった、時間がかかったのは、夜を徹して 読み通すような、わくわくするような面白さがなかったせいもある。 (私にとっては、難しかったという意である) 9点 以前、9点をつけた、山田正紀の「神狩り2」よりは面白いと思う。 でも正紀様のほうが私は好みでした。 まさきさま 下から読んでも まさきさま ですから(わら (C)田中啓文 945 :名無しは無慈悲な夜の女王:2007/03/20(火) 00 04 53 万物理論 グレッグ・イーガン 読書することにとにかく集中力を要する。 あらゆる物事を難解、複雑、曖昧に表現し、分かりにくくすることが目的であるかのような内容に頭がくらくら。 最低でも、量子力学とひも理論の概略を知らないと理解することは不可能。 ガジェットは大ネタ小ネタのオンパレードでとても賑やか。ただし前述のとおり難解。特に最後の大ネタは ものすごくイメージがつかみづらい・・・ 宇宙消失はもう少しイメージしやすかったけど、この本は私にはチョット難解すぎました。 まさにハードSF。 6点。 ひとりっ子 190 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/12/24(日) 00 25 50 Gイーガン ひとりっ子 「行動原理」「真心」 持ち味の疑似科学的論理展開は無く、SF的ガジェットを用いた習作って感じ。 導入に1作置くだけならまだしも、二つ並べられると鬱陶しい。 序盤で落とし方が見えてしまうのも難点。それぞれ2点、4点 「ルミナス」 再読になるが、やはり面白い。 チャンの「ゼロで割る」と似た題材だが、数学を現実のメタファーとして扱ったチャンと比べ、 数学をそのまま現実世界に叩き付けた力技がいかにもイーガンらしい。8点 「決断者」 これはどう捉えればいいのか、正直よく分からない。 最後のページを読んだ感じだと、「自己を客体化する」事への畏怖が語られているようにも思えるが… 「ルミナス」ともども95年発表だが、この2作にはサイバーパンク的、もっと言えばスプロールシリーズの雰囲気が濃いのは何故だろう。 5点 「ふたりの距離」 まず訳題が微妙だが、まあ仕方ない。 これも最初の2編と同様の掌編。イーガンにしては題材の扱いがあっさりし過ぎてる。4点 「オラクル」 これは失敗作と言わざるを得ないのではないかと。 特に多世界解釈がらみのSFネタは消化不良もいいところ。 連作未来史や複数のプロットが同時進行する長編から1つのエピソードを抜いてきたような感じ。 3点 「ひとりっ子」 イーガンにしてはネタの突き詰め方が甘い気がする。 量子コンピュータの「遮蔽」云々あたり特に。 導入のエピソードも必要性が分からない。 ストーリーテラーとしての微妙さは相変わらずだし。 5点 総評 5点 イーガンだと思わなければそこそこ楽しめる…かもね 正直言って期待はずれだった 289 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/12/25(月) 21 55 38 ひとりっ子 グレッグイーガン 自分は数学や物理の一般向け解説書をよく読むのだが、イーガンはSF小説よりも SFを使った数学解説書を書いた方がいいんじゃないいかと思った 題材は面白いと思うがストーリーや人物に入り込めない どうも自分にはイーガンは向いてないようだ 5点 342 名前: ◆usodeOn2Q2 投稿日:2007/01/03(水) 13 08 21 『ふたりっ子』 グレッグ・イーガン うーん、率直に言って期待外れ。 まぁ事前の期待値が大きすぎたから、肩透かしを食った感じというか。 収録作品のうち、既に読んでいた『ルミナス』に匹敵する作品が、 唯一『ふたりっ子』だけだったのは意外だった。 それにしても、『ルミナス』は久しぶりに読んだが、面白い。 しかし、かつてSFがそれほど得意でない知人に、 『ルミナス』を勧めて読んでもらったことが有るが(無理強いに近い)、 割と酷いことをやったのかなw、と少し反省した。 ちょっと難易度が高過ぎたかもしれないw。 以下に各作品について簡単に感想。 『行動原理』、『真心』は凡作に感じた。 『決断者』は今回読んだ作品群の中で、最も理解できなかった作品w。 小説の最後に参考文献が載ってたが、あれを読んだら理解できるようになるのか? 『ふたりの距離』は、ジョン・ヴァーリィーの<八世界>シリーズを彷彿とさせる。 もちろん、イーガンの方がテーマを深く掘り下げているが、 個人的には男女の関係(?)に興味が薄いので、まぁそれなりに……。 『オラクル』は、過去を舞台にした改変世界ものだが、 元ネタの過去の事例に精通してないので、小説世界に馴染むのに時間が掛かった。 でも『ルミナス』、『ふたりっ子』に続く評価を点けてもよい作品だと思う。 『ふたりっ子』は、今回の短編集がハードSF寄りの作品が多い中(編・訳者の言葉より)、 既刊の『祈りの海』、『しあわせの理由』に入っていても違和感がない作品だと感じた。 個人的にあまり得意でない量子論ネタだったので、途中理解が至らない場所もあったが、 それでも“イーガンらしさ”を満喫できる作品。 評価 7点 444 :名無しは無慈悲な夜の女王 :sage :2007/01/25(木) 10 13 45 ひとりっ子/イーガン/ハヤカワ文庫 多世界解釈の憂鬱ってイーガンはマジで心配してるのか・・・ このテーマでは読者の共感は得られないと思うのだけど。 ただ小説としてはオラクルはオチも決まっていて面白い。 ルミナス、一人っ子、オラクル以外はオマケか?という感じの ちょっと微妙な・・・ 8点 プランクダイヴ/SFM記念号 ついでに積み残してたプランクダイヴも読んでみた。 科学パートも人物パートも良くわからん・・・ 本当に傑作なのかこれは。。。 529 :でへ :sage :2007/02/11(日) 15 28 59 ひとりっ子 グレッグ・イーガン ハヤカワSF文庫 表紙が気に食わなかったので、読むのが遅れた 悪い言い方をすれば、相変わらずのイーガン節 ルミナスは既読だったので除くと、 オラクル、ひとりっ子が面白かった 各作品ごとに評価すると、6-8点くらいか 総合点は、イーガンなので+1点して8点 (w ひとりっ子の題名はもう少し訳を考えて欲しかった Axiomatic 578 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2005/12/16(金) 01 02 48 Greg Egan "Axiomatic" 第1短編集 未訳の4編を読んだ。 "Closer"がずば抜けた名作。<宝石>もの。 相互理解と愛とは相容れないという話。 これ何で訳されてないんですかね。 あとは「行動原理」と同じ<インプラント>ものの "The Walk"もまあまあ。 ナンシー・クレスの無眠人同様の 遺伝子操作による天才児育成もの"Eugene"も、 ありがちなオチだが水準作。 "The Moat"も遺伝子ものだが、 普通のアイデアストーリーで底が浅く今一。 "The Seeing"は幽体離脱を扱った アイデアストーリーで平凡。 既訳分含めると総合8点
https://w.atwiki.jp/244614/pages/53.html
概要 国作り戦争3から参加した 最初は、特攻兵器を大量に生産しており兵器の質も悪かったが徐々に精度が上がって行き大和武尊を作る頃には、艦艇の制作の質が上がって行った。 最初の戦争中は、第二次地球戦役発生中に木との戦争で人に助けて貰いながら戦争に勝った。 歴史 国作り戦争3 大東亜連邦 (地球領なし) 国作り戦争4 大東亜連邦(地球領アラスカ、極東管区等)から新大東亜連邦(地球領太平洋諸島の一部)から草薙帝国(新大東亜連邦の領土と同じ) 国作り戦争5(SF国家運営) 草薙帝国 国作り戦争3では、参加後直ぐに姉御達に国ノート等の書き方を教わった。その後架空惑星に国家を建国その後にハインツの同盟に参加した。その後木と開戦し見事木に勝利した。 国作り戦争4では、木とアナリアと同盟関係を構築した。その後レムリアと姉御達の同盟に加盟した。姉御がからあげに宣戦布告したのに乗じてからあげに宣戦布告するもSF好きの参戦により泥沼化した。中米の領土にSF好きが侵攻で戦争に発展した対ローマ戦争により敗退し極東管区を河城取られた(その後河城がジョンさんに譲渡した)その他の新大陸領は、SF好きに割譲した直ちに新皇帝が国名を変えて新大東亜連邦を建国した同時期独立した零星共和国が建国した。その時点で大東亜連邦に残っていた領土は、ミクロネシアのみだったその後パラオなどに進駐し領土を急速に拡大した。 その後また河城との戦争が起きそうになるが、新銀河の傀儡になり未然に防がれた。しかし河城の一部の軍が新銀河領に侵攻したため参戦した。その後皇帝が死亡したため国名を草薙帝国に変更した。 国作り戦争5(SF国家国営)にてカナダに草薙帝国を建国した。領土は、カナダ、カリブ諸島を保有しアメリカの傀儡で、新大陸同盟を結成した。 (別OCの副管でもある)
https://w.atwiki.jp/qusf/pages/49.html
旧月報。SF研の一般人代表。ポケモン、音ゲー、格ゲー(主に北斗)等々広く浅く趣味を持っているが、エロゲをやらないせいで話についていけない><
https://w.atwiki.jp/netofok/pages/108.html
SF映画史に残る傑作映画『12モンキーズ』を新たな世界観で映像化した海外ドラマ。 1995年、SF映画の常識を破壊し、全世界に衝撃を与えた映画『12モンキーズ DVD』。ブラッド・ピットが初めてアカデミー賞にノミネートされた名作としても、映画史にその名を刻んだ。 公開当時は賛否が激突したが、今もなお全編に散りばめられた謎について、SNS等で熱い議論が交わされている。 あれから20年、時は満ちた。今や最高峰のスタッフを揃えるテレビドラマ界なら、映画が残した謎のすべてにエキサイティングな答えが出せる。「HEROES/ヒーローズ」と「NIKITA/ニキータ」のメガヒットメーカーたちがタッグを組み、遂にテレビドラマ化が実現した。映画から進化を遂げたのは、展開の速度と物語の深さ。人類滅亡の謎を追って過去へ旅する設定はそのままに、スピード感溢れる新時代のタイムトラベルが謎解きを加速する。さらに徐々に明かされていく登場人物たちの過去からも目が離せない。 主人公のコールには、12モンキーズ シーズン1 DVD「NIKITA/ニキータ」のバーコフ役で大ブレイクしたアーロン・スタンフォード、過去で彼を支えるライリー博士には『J・エドガー』のアマンダ・シュル。さらに『コズモポリス』のエミリー・ハンプシャーが、女性に変わったブラッド・ピットの役を強烈な存在感で演じている。
https://w.atwiki.jp/tohokusf/pages/136.html
東北大学SF研究会 中編部会 『折りたたみ北京』 郝景芳(かく・けいほう、ハオ・ジェンファン) 著者紹介 1984年中華人民共和国天津市生まれ。女性。 清華大学で物理学を専攻し、研究所でさらに専門的に学んだ後、経営学博士号を取得。2016年に『折りたたみ北京』でヒューゴー賞中長編小説部門を受賞。 『折りたたみ北京』は2012年に中国で「清華大学学生論壇水木社区」のSF版に発表され、2015年にケン・リュウにより英訳、米国で発表された。SFマガジンにはケン・リュウによる英訳版からの翻訳という形で掲載されている。 作中用語解説 折りたたみ北京 中国各地からの労働者の流入による人口過密を解決するために、50年前、北京は折りたたみ式に改造された。 北京は三層からなり、片面を第一スペース、もう片面を第二スペースと第三スペースが占めている。第一スペースは人口500万人で、主に官僚や知識階級などの上流階級が居住している。第二スペースは人口2500万人で、学生やその他の中流階級が居住している。第三スペースは人口5000万人で、2000万人のごみ処理従事者とそれを支える3000万人のサービス業従事者が居住している 北京は二日間を三つに分けて“交替”しており、06 00~30 00(二日目06:00)が第一スペース、30 00~46 00(二日目22:00)が第二スペース、46 00~06 00が第三スペースの割り当てとなっている。また、各面の重量比を同じくするため、人口・構造物ともに少ない第一スペース側の土壌はもう片面より厚くなっている。 第二スペースと第三スペースはダストシュートで直結されているが、第一スペースと第三スペースは直結していないので、ごみ処理場を介しての侵入は出来ない。第三スペースから第一スペースに行くには、“交替”の際にうまく隙間から入っていくしかない。 登場人物紹介 ラオ・ダオ 月収1万元(16.5万円) 48歳、独身の男性。最下層の第三スペースのごみ処理施設で働いている。一人娘のタンタンのために、幼稚園の学費としてまとまった額のお金を必要としている。ペン・リーに頼み、階層を超えた手紙の密輸の手ほどきを受ける。 タンタン ラオ・ダオの義理の娘。ごみ処理施設に捨てられていたところをラオ・ダオに引き取られた。音楽とダンスが好き。 ペン・リー 60代の男性。若いころ第一スペースに侵入し、禁制品の密輸で財を成した。4回侵入し、5回目につかまって以来、密輸はしていない。 チン・ティアン 月収10万元(165万円) 第二スペース在住の大学院生。第一スペースで行われたシンポジウムで出会ったイー・ヤンに一目ぼれし、再び彼女と連絡を取るため、ラオ・ダオに高額な報酬とともに彼女への手紙を託す。 イー・ヤン 月収40万元(660万円) 第一スペースの銀行の頭取付補佐。既婚者。ウー・ウェンという夫がおり、チン・ティアンとの交際はいわば浮気であった。ただ、ウー・ウェンとの結婚はあまり乗り気ではなかったようだ。 ウー・ウェン イー・ヤンの夫。第一スペースで「老人」の下で働いているが、ミスが多いようだ。「老人」にごみ処理に関する提案を行うが一蹴される。 ジー・ダーピン(ラオ・ジー) 52歳の男性。元陸軍准将で現在は第一スペースにある国営企業の業務支援を行う機関に勤務。第三スペース出身。同郷のよしみで、ラオ・ダオを助ける。 老人 この「折りたたみ北京」の影の支配者。彼の都合に合わせて“交替”を遅らせることすら出来る。ジー・ダーピンとウー・ウェンの上司。 あらすじ 第三スペースのごみ処理場で働いているラオ・ダオは、音楽が好きな一人娘のタンタンを音楽教育を行う立派な幼稚園に入れてやるために多額の教育費を必要としていた。ラオ・ダオは、第二スペースの大学院生チン・ティアンから依頼された手紙の密輸を実行するため、元密輸人のペン・リーから第一スペースに侵入するための手ほどきを受けた。 第一スペースに侵入し、イー・ヤンに手紙を渡すことは出来たものの、ヤンは既婚者で、チンとの交際は浮気だった。ヤンから口止め料として、自身の月収の10か月分をまとめてもらったが、ヤンにとってそれはたった1週分の収入に過ぎなかった。 自身とヤンの間にある格差に動揺し、第一スペースの公園をさまよっていたところを警備ロボットに見つかってしまい、危うく拘束されるところであったが、運よく同郷の元軍人ジー・ダーピンの起点によって助けられる。 ラオ・ジーの職場である宴会場に招かれたラオ・ダオは、第三スペースと第一スペースの格差を思い、物思いにふける。第三スペースは不可触な存在なのだ。ラオ・ジーの話を聞き、ラオ・ダオは話の内容こそ半分も分からなかったが、何を言いたいのかは分かった。第三スペースは不可触ではあるが、北京の経済を守るために必要な犠牲なのだ。 途中足を挟まれ負傷したものの、依頼を完璧にこなし、ラオ・ダオは第三スペースに戻ることが出来た。この48時間のうちに、ラオ・ダオは様々な体験をした。ラオ・ダオはタンタンの将来のために、またごみ処理場へと通うのであった。 所感 現代中国の格差と社会矛盾を、「折りたたみ北京」という突飛なアイディアの中で描き切った傑作。題名こそ出オチ感があるが、作者の経営学的なアプローチによって魅力的な物語構造となっている。 前回自分が担当した『あなたの人生の物語』とは、作者が中国系である点、非自然科学的アプローチが図られている点で、一致が見られる。この『折りたたみ北京』を英訳したケン・リュウも中国系で、アジア的世界観による幻想的な作風が魅力的な作家である。アジア系SFに興味を持った方は、ぜひケン・リュウの作品に触れていただきたい。 下村