約 4,359,187 件
https://w.atwiki.jp/open2chkotewiki/pages/22.html
【GameMaster】 提供 Vikipedia 移動先 案内、 検索 基本情報 コテハン名 【Game Master】 トリップ ◆o.fS2EE6u6 レスの属性 煽り SS 活動開始時期 2014年 出身板 ニュース速報VIP板 主な出現スレ なりきり SS 別コテハン 黒珈琲 レーティング 0.00 (0 票) 【Game Master】 (ゲームマスター)は、おーぷん2ちゃんねる内の 主にニュース速報VIP板で活動していたコテハン。 概要 2015年1月にコテハンデビューした。 尊大な口調のレスで、世界は自分を中心に回っていると考えているのが特徴。 なりきりゲームスレを立て、他のユーザーと交流を取ることがある。 しかし、自分が飽きてしまいスレを放棄する場合があるため、評価は芳しくない。[1] 引退 2015年10月18日、コテハンによるおーぷん2ch自治組織「Numbers」設立を提唱する。 しかし、規制を受けたことにより組織としての活動を断念した。 同時にコテハンを引退し、SS書きとして活動することを宣言した。[2] 脚注 ^ 2015年2月16日「【バトルロワイアル】能力を授けるから廃れた学校で戦え」より出典 ^ 2015年10月18日「おーぷんの頂点に君臨してるGMだけどコテハンちょい集まってくれ」より出典 「https //2ch.me/vikipedia/index.php?title=【GameMaster】 oldid=4648」から取得 カテゴリ おーぷんVIPコテ名鑑 案内メニュー 個人用ツール ログイン 名前空間 ページ 議論 変種 表示 閲覧 ソースを表示 履歴表示 その他 検索 案内 最近の更新 今後の更新予定一覧 おまかせ表示 練習用ページ アナリティクス コテハンの一覧 ニュー速VIP ニュー速VIP+ ラウンジクラシック 自己紹介板 Open2chVIP 2ちゃんねる(その他) その他一覧 Vikipediaの項目一覧 過去の煽り合い レスの属性 煽りに関する理論 2ch外のサービス 用語・慣用句 コテの組織 コテ評価 VIPコテ史年表 コテハン流行語大賞 コテハンSSの一覧 おーぷんVIPコテ年表 ページの短縮URL https //2ch.me/vikipedia/?curid=1206 ツール リンク元 関連ページの更新状況 特別ページ 印刷用バージョン この版への固定リンク ページ情報 このページの最終更新日時は 2015年11月23日 (月) 08 15 です。 �c�C�[�g このページは 204 回アクセスされました。 プライバシー・ポリシー Vikipediaについて 免責事項 モバイルビュー
https://w.atwiki.jp/galgerowa2/pages/562.html
OVER MASTER (超越) 2 ◆Live4Uyua6 ・◆・◆・◆・ ひゅんと風を切り、一条の線が蛇の様に天井を這い次の瞬間、虚空に突き刺さりそこにあった何かを破壊した。 「はぁ、人使いの荒い」 やれやれと廊下の真ん中で肩をすくめるのはトーニャで、彼女は伸ばしていたキキーモラを巻き戻すと自身が破壊した物を見た。 天井から落ちて床の上でその残骸をさらすのは一見すれば監視カメラで、また正しく監視の為のカメラであった。 しかし、今さっきまで”見えていなかった”という事実が示すとおり、これはただの監視カメラではない。 「さて、次はこのあたりですか?」 トーニャは手に持つ見取り図を一見し、印が打たれた場所に再びキキーモラを走らせる。 甲高い風きり音が鳴り、また先ほどと同じく虚空から破壊された監視カメラが床の上へと落ちてきた。 それは、この仕事をトーニャに押し付けた九条が言うには、一番地の術者が目隠しの鬼道を施した”隠し監視カメラ”ということらしい。 「科学技術と道術の合わせ技ですか、種が割れりゃあたいしたもんではもんではありませんけど……」 再び見取り図に目をやってトーニャは溜息をつく。 鬼道の術を用い参加者に気づかれないよう監視カメラを設置する。なるほどそれは合理的かつ確実な方法だろうと思う。 だがしかし、それを実現する為にはできるだけ死角が生まれないよう無数の監視カメラを準備する必要がある。 それを取り付ける作業も、そこにひとつひとつ術を施す作業も気が遠くなるようなものだったというのは容易に想像できることだ。 そして、一番地とシアーズ財団の職員達は殺し合いが始まる2週間前から昼夜を問わずろくな休みもなく働き、それを成し遂げたらしい。 「どれだけお給金がよいのか知りませんが、敵ながらあっぱれ、賞賛を送るに惜しみはしないでしょうよ」 しかし、トーニャは無給なのだ。 もちろん、陣地を構えるにあたって敵方の監視装置が残っているなどとは話にならないので、働かなければならないのは理解できる。 最終的にこの世界より脱出し元の世界に帰ることこそが掛け替えのない報酬ならば、誰に文句を言う筋合いもないだろう。 だがしかし、ただの1フロア分だけと言っても相当な数。うんざりとし、溜息を吐くぐらいならば罰も当たらないのではないだろうか? 「怠け者のトーニャスキーなどとあだ名されても不愉快ですし、働きますか。ええ、地味な仕事は得意ですとも」 三度、風切り音が響き、そしてまた一つ隠されていた監視カメラが床の上に落ちた。 「――調子はどうかしら?」 エレベータホールから始まり、廊下を縫うように進み、そして反対側にある小ラウンジまでやって来た所でトーニャは声をかけられた。 振り返れば、彼女と同じく監視カメラ潰しに従事していた九条の姿がある。 ひとつ嫌みでも発してみるかと思ったが、誰より働いているのが彼女だけに自らを貶めるだけとトーニャは自重した。 「ええ、廊下に関しては粗方。そちらも予定通りなら合同で使う部分に関してはもうこれでおわりですよね。 後は個室ですが……これは使う部屋だけ対処すればいいでしょう。全室に手を回していてはいくら時間があっても足りません」 言いながら二人は手にした見取り図を交換し、それぞれがどれだけの隠し監視カメラを無効化したか確認する。 ほどなくして九条はうんと頷いた。 見立て通りにトーニャがよい仕事をしてくれたということで、それを見てトーニャも薄い胸の中で自尊心を小さく満足させる。 「そうそう、忘れていたけどこれを首輪の喉元に貼っておいて」 何かを思い出したのか、そう言って九条はポケットから一片の絆創膏の様なものを取り出し、トーニャへと手渡した。 受け取ったトーニャはそれをしげしげと観察する。 見た目にはただのシールにしか見えない。例えるならやはり絆創膏と言うのが一番近いだろう。何の変哲もないものだ。 となれば、その意味を推測するには使用方法から考えればいい。この場合は”首輪の喉元に貼る”――となれば答えは一つだ。 「これが、あの例の首輪についたカメラを塞ぐための電磁遮断シールですか……?」 トーニャの言葉に九条はええと頷く。 二人は先ほどまで隠されていた監視カメラを破壊していたが、彼らを監視するカメラはそれだけではなかった。 奇しくもこのホテルの直下にあるカジノで棗恭介が看過した通り、首輪の中にもそれは存在するのだ。 だとするならば、片方の監視装置しか無効化しないのでは片手落ちというものだろう。これは完璧でなくては意味を成さない。 そこで用意されていたのが、首輪の作成者である九条がハッキング用PCと同じようにひっそりと隠しておいたこのシールである。 一見ただの絆創膏ではあるが、中には複数種の電磁波吸収メッシュが重ねられており、あらゆる光学的観測を妨害する優れもの。 唯一、別系統の仕組みである盗聴機能に関しては対処できないが、これも専用のジャミング装置の設計図は予め用意されており、 後はドクター・ウェストが到着したならば彼に製作を依頼するだけで、心配はない。 また九条の管轄外ではあるが、一番地の術士による遠見と呼ばれる遠隔視に対しては那岐が簡易の対抗結界を張ってくれるということだ。 「なるほど、これでようやくカメラを意識して顔をキリっとしていなくともよいわけですか。にしても――」 二重三重に監視の網を重ねてくるとは主催側も中々ご苦労さまで。と、言ったところでトーニャの肩ががしと掴まれた。 誰が? と、問うまでもない。さっきから目の前にいて、彼女からしてみれば特に興味のない知識をつらつらと流している九条である。 この時、トーニャは九条の瞳にある危険な輝きを見てしまった。 そう、彼女がよく知るあのマッドサイエンティストを同じ、科学馬鹿が持つ”よくぞ聞いてくれました(←聞いてない)”という光を……。 「当初、会場中に設置された監視カメラと首輪の中に潜ませてあった監視カメラとはなんの連携もなかったの。 それぞれ個別に機能していても十分に監視には足りると考えられていたからよ。 けど、実際にシミュレートを行った結果。それは大きな間違いだということがわかったわ。 どこがというとそれは首輪についたカメラ。 汚れや影、衝撃などに関しては想定していたから特に問題はなかったのだけど、問題はカメラの向きだったのよね。 首輪にカメラを内臓する案は有限である通常の監視カメラから死角を無くす為の苦肉の策でもあったわけなのだけど、 しかし実際に搭載してみたら、その人間の視線と首輪のカメラの向きは一致してなくて ……いえ、それは解っていたのだけれども、想像以上に首輪から得られる画像に意味がなかったのよ。 それでまた首輪が私の元に戻ってきた。 まぁ、確かに首輪の作成者は私よ。 けれども、そもそも首輪の中に監視カメラをはじめとする測定器を搭載しろと言ってきたのはシアーズの技研であって――……」 (以下、九条さんのパーフェクト首輪作成教室は省略されました……全てを読むには”ここ”を押してください) 止まらない解説が始まってから時計の針が一周した頃だろうか、辟易するトーニャを救ったのは鳴り響いた携帯電話のコール音だった。 どうやらようやく博物館に戻った連中が帰ってきてくれたらしい。 その中には目の前の九条と同じく、いやなお酷い科学キチ○イのドクター・ウェストもいるにはいるが、 しかしこの場から解放してくれるならばなんでもいいだろう。と、トーニャは九条を促しエレベータホールへと引き返した。 ぐったりと肩を落とし、科学者相手にはいらぬ”Q”は送るまいぞと、そんな決心を新たにして――。 ・◆・◆・◆・ 「ふぇー……こんなに大きな厨房、美希は初めて見ました!」 「うっうー、私の家より広いですー」 「ああ何たるブルジョワジーブルジョワジー! 美希達はこんなに苦労していると言うのに……ぜいたくは敵だーっ」 「三食毎日もやし炒めで十分ですっ、ぜいたくは敵だーっ!」 新しき拠点、そして全てを終わらすための最後の地で彼女達は目の前に広がる光景に目を奪われる。 外観もさることながら内装も超一流、ならば当然そこに宿泊する客に食事を出す厨房も一級品。 見たこともない調理器具に目を輝かす少女達。 「この道具使い方がわかりませんっ! もやし炒めには不要だと思いますっ!」 「わぁ……冷蔵庫の中にも一杯だよ、柚明お姉ちゃん」 「そうね、これだけあれば当分の間は持ちそうね」 家庭用の物を遥かに凌ぐ大きさの冷蔵庫。 中には色取り取りの食材がたっぷりと収められている。 篭城の際、兵糧の心配はまったく必要なさそうだった。 「うー……これだけたくさん食材があるのにもやしだけありません……」 なぜかもやしが無いことに肩を落とすやよい。 「さすがにこんな綺麗なホテルまで来てもやしばかり食べるのはどうかと思うけど」 「ファルさんっ! もやしをバカにしてはいけませんっ。もやしは安くてその上栄養価も高くそれに……」 やぶ蛇だったとファルは後悔する。 その後たっぷりともやしの素晴らしさについて語られるはめになってしまうのだった。 「まったく……皆浮かれおって……」 と、頭を悩ませるアル。 そんなアルに笑顔で語りかける那岐の姿があった。 「まあまあアルちゃん。ようやく気の休める場所を確保できたんだし、ちょっとは破目外してもいいんじゃないのぉ?」 「我らは修学旅行に来たのではないのだぞ……生きるか死ぬか、常にその瀬戸際に立たされているのだ」 「ま、僕としては―――」 那岐はにんまりと笑みを浮かべはしゃぐ少女達を見回す。 「こんなかわいい美少女に囲まれてウッハウハの状態なんだよね~♪」 「汝という奴は……年長者の我らが若者を導いてやらねばならんのだぞ! なのに汝ときたら……」 「うっわーその台詞すっごく年寄り臭い。最近喋り方だけじゃなく中身までババ臭くなってない?」 「何がババ臭いだこの痴れ者が! この口調は地だッ! それを言うなら汝こそ妾以上に時を生きてるのにその軽さは何だ!」 「それこそ僕の地だもーん。じゃあアルちゃん、僕より年下なら年下らしく可愛らしく振舞ってもらいたいねっ」 「何、だと……?」 「まず口調だね。そんな大仰な喋り方じゃなしにもっと普通の女の子っぽく話してみてよ」 「な、なぜ妾がそのような口調をせねばならぬのだ……」 「九郎君もきっと喜ぶんじゃないかな~」 「なっ……なぜそこで九郎の名が出るっ!?」 「普段とイメージを変えて男のハートをガッチリ掴むのさっ! これぞギャップ萌えというやつ?」 「う、うぐ……」 そうこうしてうちに厨房を一通り見終わった桂がぱたぱたと足音を立ててやってくる。 那岐はチャンスとばかりにアルにアイコンタクトを取った。 「(さっ、まずは桂ちゃん相手に練習してみようか。年頃の女の子っぽくねっ)」 「(だからっなぜ妾が!)」 「アルちゃん。今日の晩ごはん何が食べたい?」 「(おい那岐! 本当にやるのか?)」 「(もちろん☆)」 「―――わら……あたしは何でもよい……いいよ。みんなと同じで大丈夫だから」 「…………………………」 空気が凍りついた。 桂の表情がありえない物を見てしまったと言わんばかりに固まる。 「ど、どうしたの桂。へ、ヘンな顔して……あ、あたしの顔に何かついてるかな?」 「…………………………」 固まった表情だった桂の目に涙が浮かび上がっている。 今にも泣きそうな、そんな顔だった。 「ごめんね……アルちゃん。わたし迷惑ばかりかけて……うぐっ……」 「ちょっ……違う、桂は何も……というか那岐ィィィィィィィッ!」 「あーあアルちゃんなーかしたなーかした~」 「誤解だ桂! 妾は決してそんなつもりでは……! 誤解だぁぁぁぁぁぁぁあ!」 ・◆・◆・◆・ 「……いったい向こうは何やってるのかしら」 「桂ちゃん……?」 「ま、そんなことより夕食の献立ね。大概の食材は確保されてるけど……」 桂をなだめるアルを尻目にファル達は夕食の準備に取り掛かる。 が、これだけの整った設備に色とりどりの食材。 何を作るべきか逆に迷ってしまう。 「もやし……」 「ってやよい……まだもやしに未練あるのかよ……」 「カレーに麻婆丼と来たから……うーん……」 18人分と大量に調理する必要がある以上、あまり手の込んだ物は作りにくい。 やはりご飯もので攻めるべきかと頭を悩ますファル。 「美希、ファルさんの故郷の食べ物が食べたいですっ! 確かイタリアでしたっけ?」 「そうね……ならリゾットと……生物から先に使いたいから魚を使ったマリネでも作りましょうか」 「イタ飯の定番、リゾットですねっ! 美希も大好物です!」 こうして今日の夕食の献立が決定した。 『きのこと鶏肉のチーズリゾット』と『野菜たっぷりサーモンマリネ』である。 ・◆・◆・◆・ 献立が決定しさっそく夕食の準備に取り掛かる少女たち。 大きな鍋にオリーブオイルを引き、玉ねぎとニンニクのみじん切り、しめじと刻んだ鶏肉を炒めていく。 十分に香りが立つまで焼き色が付いたら米を洗わずに鍋に入れ、さらにワインを加え炒める。 「うっうー、さっそくいい匂いが立ち込めてきました……」 「こうしてみたらなかなか本格的だな、こいつはうまそうだぜ」 「米が透明になったらチキンブイヨンを入れるのよ」 「なんというかー、ファルさんノリノリですねっ! すっかり場に馴染んでると美希は思うのですよ、ハイ」 「べ、別にそんなつもりじゃあないわよ、こうしたほうが私にとってもつ、都合がいいからじゃない」 「おおっと、腹黒キャラとは思えないツンデレ発言入りました~~~」 「そういう美希さんだって私と似たような人間じゃない……」 「はい! でも美希はこの場をしっかり楽しみますっ!」 苦笑するファル。 今まで考えもしなかった光景が目の前に広がっている。 楽しくみんなと料理を作る。こういうのも悪くない、と。 「う~玉ねぎが目にしみるよ……」 「桂ちゃん代わる?」 「大丈夫だよっ、わたしだって料理ぐらいはできるもんっ!」 「ならいいけど……手元には気をつけてね」 一方こちらはマリネを作る桂たち。 オリーブオイルとビネガーを混ぜたマリネ液にスライスしたサーモンを漬け込む傍らで、 レタスやトマトや玉ねぎを食べやすくスライスしてゆく。 「ところで……アルちゃん、さっきのことだけど……」 「桂……頼む、何も言うな……アレは忘れろ……」 心底凹んだ表情のアル。 かの一件はアルにとって封印してしまいたい忌まわしき出来事になってしまったようだ。 「あっ……!」 「桂ちゃん?」 「あはは、指……切っちゃった」 苦笑いしながら切った人差し指を柚明に見せる。 かなり深く切ってしまったようで赤い血がどくどくと流れ出していた。 「大丈夫大丈夫、すぐ治るよ」 この程度の傷、今の桂なら10分とかからず完治してしまう。 適当に血を拭いてしまえばいいのだが…… 「……………」 「……………」 もじもじと落ち着きのない仕草の柚明とアル。 二人とも顔が赤く、酩酊したように目がとろんとしている。 うっとりと、花の蜜に引かれる蝶のように二人の視線が指から流れ出る血に注がれていた。 「あはは……えっと、わたしの血なめる?」 こくこくと首を縦にふる柚明とアル。 だが二人分が舐めるには量が足りなさすぎた。 「のう柚明よ。年長者は敬わねばらならんよのう?」 「あらあら……十分な力を持った魔導書は桂ちゃんの血を飲むまでもないはず。ここは未熟者の私が……」 バチバチと火花を散らしているのが目に見える。 どちらかを肩入れするわけにもいかずおろおろしながら見守る桂。 と、その時だった。 「ちょっと待ったぁ二人とも! 僕を忘れちゃ困るねえ……」 柚明とアルの前に現れる那岐。 二人は怪訝な表情で那岐を見つめる。 「なんだ那岐? 我らは忙しいのだ。話なら後にしてもらおう」 「だからー、僕も桂ちゃんの血をなめたいなーって」 「「はぁ?」」 思わず声がハモる柚明とアル。 那岐は相変わらず飄々とした態度のまま。 「だって僕も人じゃなく鬼・妖怪の類だしー、贄の血の恩恵は十分受けられるんだよねっ」 「ならん! ならんぞ那岐! 汝が桂のゆ、指を舐めるなど決して……!」 「そうです! あなたが桂ちゃんの指をな、なめるなんて……はぅ」 「あれー? 男女差別は良くないよ~」 桂の血を巡って争う者にさらに一名が加わり、事態はさらに混迷を窮する。 そんな三人が膠着した状態を続けていた時、一人の人間が現れた。 「妙に騒がしいと思ったら……一体あなたたちは何をやっているの?」 「あ、ファルさん……」 「リゾットのほうは順調だからこちらを見に来たんだけど……」 「えっとわたしが包丁で指を切っちゃって……」 そう言ってファルの指を見せる桂。 先ほどよりは血は止まりつつあるものの今だ流れ出し、床に小さく赤黒い斑点を作っていた。 「すぐに治るから拭いて絆創膏貼ればいいんだけど……ほら、わたしの血って特殊だから」 「ああ、なるほど……それを誰がなめるかで揉めてたというわけね」 ファルは桂の血を狙う三人を一瞥すると、再び桂に視線を戻す。 「贄の血、ね……私から見ればただの血だけど……本当にすごいものなの?」 「当然よ、最高位の魔導書たる妾ですらその血の色香に惑うのだ。人ならざる物とって極上の美酒と言っても過言ではない」 「ふぅん……とてもそうは見えないけど……」 ファルは眼前に差し出された指をしげしげと見つめる。 指を伝いぽたりと滴り落ちる赤い血が視界に映る。 ファルは桂の手を取り――― 「あ―――」 桂が小さく声を上げた。 指先に絡みつく温かい粘膜の感触。 こそばゆい感覚に桂は身をよじらせる。 「あのっ……ファルさんがなめても……んん……っ」 ちゅぱちゅぱと音を立ててファルの舌が指に絡みつく。 つるっしたようなざらっとしたような何とも言えない感触が指先をやさしく撫でる。 指を流れる血を舐め取るだけにとどまらず、さらに血液を求めようと開いた傷口の奥まで舌を滑り込ませていった。 傷口に舌が触れる痛みで思わず指を抜こうとした桂だったが、ファルの口はがっちりと指を咥え込んだまま放さない。 「やっ……ちょっと強く吸い、すぎっ……い、たいっ……よぉ……」 ファルは上目遣いで桂をちらりと見てにやりと哂う。 ただ血の流れる指を舐めるという行為なのに、ファルの仕草はひどく妖艶で背徳的な淫らさを醸し出していた。 やがてファルは指からゆっくりと口を離す。 指からねっとりと唾液が糸を引きファルの舌とブリッジを作っていた。 ファルは口元に付いた唾液を拭うと笑顔で言った。 「ふぅ……ごちそうさま。でも、やっぱり私にとっては普通の鉄臭いただの血だったわ」 しゃあしゃあと言い放つファル、その視線はなぜかアルと柚明に向けられている。 悔しそうな表情のアル。 目の前の行為に顔を赤らめうつむく柚明。 那岐だけは妙に嬉しそうだった。 「おのれ……ただの人間風情が桂の貴重な血を……」 「はぅ……」 してやったりとにやりと笑うファルだった。 「いやいや良い物見せて貰ったよー眼福眼福。今度は僕の指もなめて欲しいな……こう、ちゅぱちゅぱーと♪」 「あら、指以外の所もなめてあげてもいいのよ? あなたが満足するまで、ね。くすくす……」 そうファルが言うと那岐は軽く肩をすくめる仕草で言った。 「あはは、遠慮しておくよ。ファルちゃんの口づかいにかかったら枯れるまで搾り取られそうだもんね」 「それは残念ね、うふふっ」 「ってさりげなく下ネタ会話してるでないわっ!」 「ねぇ、今のどういう意味? アルちゃん」 「桂は知らなくてもよいのだ……!」 「ファルさんが……那岐さんの……ドキドキ」 なぜか一人良からぬ妄想にふける柚明だった。 ・◆・◆・◆・ 「うっうー、もうすぐリゾットの完成ですよー」 「おう、仕上げの生クリームを入れるのを忘れんなよ」 「はい、わかりましたー」 「こちらの首尾は上々……って美希、何ぼーっと突っ立ってるんだよ……」 と、プッチャンは明後日の方角を向いて立ち尽くしてる美希に向かって言った。 美希ははっとした表情でプッチャンに向き直る。 「はい! 美希は女の子同士の背徳的な行為に驚愕しつつも興味津々でしたっ」 「はぁ? 何言ってるんだお前……」 「少しだけ憧れちゃいますね~。あっそうだやよいさん!」 「何ですか美希さん?」 「桂さん達に倣って、美希たちもパヤパヤしてみたいと思うのです!」 「……あの、ぱやぱやって何ですか?」 「やよい、お前が知る必要ねえ……てかアホなこと言ってんじゃねえよ!」 「えへっ☆」 こうして乙女たちの夕食作りはつつがなく進行してゆくのだった。 ・◆・◆・◆・ 「乗り物集まれ♪ (HEY! COMEON!) 色んな車~♪ (OH! YEH!) DON☆DON☆ 出て来い働く車~♪」 九条とトーニャが揃ってエレベータからロビーに出ると、上品で静かな雰囲気をもっていたはずのそこは混沌の坩堝と化していた。 何故、どうして――などと問うまでもない。 原因は明らかで、それは彼女達の目の前でロックと言う名の奇声を上げているドクター・ウェストと彼が持ち帰ったもののせいだ。 「オゥ、シィ――ット! それは我輩のセンシブルなハート並に繊細なパーツなのである。もっと丁寧に運べい! 天地無用! 天地無YO! おっと、こちらの赤と青のコードはどのプラグに挿したものか? 赤なのであるか? 青なのであるか? ここは燃える情熱のレ――ッド! が、しかし! ウェイト! 今考えていることの逆が正解だ! でも、それは大きなミステイク!? ええぃ! 一体どっちがどっちなのであるか! 言ってる我輩がミステリアス! ならば今はこの天才の閃きを――……」 ドクター・ウェストを陣頭指揮者として、博物館で見つけた彼の研究室がロビーの真ん中で組み立てられている最中であった。 壁や柱。外枠に関するものはアンドロイドの深優が淡々と運び、机や機械などは九郎と玲二がせっせと運び込んでいる。 そしてドクター・ウェストは忙しなく動き回り運び込まれた機材を組み立てているのだが……。 「おぉ――っと! これはこの研究所を構えた当初に我輩が片手間で作り上げた脳内オーディエンス発生装置ではないか! 若かりし頃の稚拙な造物に赤面するも懐かしさにノスタルジーがキュンキュン☆ っと、こちらにあるのは――……」 ”部屋の大掃除をしていたら何時の間に古い漫画を読み漁っていた現象”とでも言うのだろうか、忙しなくもそのペースは芳しくない。 とはいえ、彼に近づくのも憚れるのでとりあえず放っておこうと九条はロビーを横切り、外に集まっている者達の元へと進んだ。 ちなみに、気付いたらトーニャはその姿をくらませていた。 「あら? みんな何を飲んでいるのかしら?」 ホテルの玄関前のスペースには研究室を運んできた大型トレーラーと、ショベルカーが並んでおり、 そのショベルカーを囲んでなつき、クリス、深優の3人が小瓶に口をつけて何かを飲んでいる。 「元気になる薬だってミドリが」 「パワフルミン3000というそうですが、ごく一般的な栄養ドリンクです。 カフェインや糖分。微量のアルコール等々。脳を即席で活性化させるには有効と言えるでしょう」 「たくさんあるからママも飲みなよ。ずっと働き詰めだし」 なるほどと頷いて九条はなつきから栄養ドリンクを1本受け取った。 詳しく聞いてみれば、博物館に戻った際にまだ権利を施行していなかった碧がこれを選び持ち帰ったのだと言う。 栄養ドリンク・パワフルミン3000。3ダース(36本)セット――確かに彼女らしいセレクトだ。 「おーえす! おーえす! 気合を見せろ! 我がチャイルド・愕天王!」 声のする方を向いて見れば、件の碧が愕天王に機関車を引かせてホテルの敷地内に入ってくるところであった。 さすがのチャイルドも博物館からあれを引いてくれば疲れるのか精彩を欠く風に見えたが主の声に励まされると、またずんと足音を立てた。 「とりあえず、ここは深優さんと杉浦先生に監督をお願いしていいかしら?」 「ええ、任せてください。 ドクター・ウェストにどの程度の負荷を掛ければ制御できるのか、この半日で十分なデータは採れています」 心強いことだわ。と、九条は苦笑し、懐から封筒を取り出しそれを深優に預けた。 「盗聴データを送信する電波に干渉波をぶつける為の装置の設計図よ。あなたから博士に渡しておいて」 「なるほど。ジャマーですか。了解しました。最優先事項としてドクター・ウェストに処理させます。」 それじゃあよろしく。と、九条はその場を離れる。 娘はどうしたかと見渡せば、恋人であるクリスと手を繋いで機関車の傍へと駆け寄って物珍しげに見ている様子だった。 そんな、娘の少し幼げで可愛らしい姿にくすりと笑みを零すと、九条は踵を返しまた再びホテルの中へと戻った。 ・◆・◆・◆・ 「しかし……よくもまあこんなものを持ってこれたものだな……」 「僕も昔利用したことはあったけど……なつき達の国ではレール無しでも走れるんだね」 「いや、普通は違う筈……なんだが」 「普通は走りませんね」 汽車は良く知らないが、それでも電車はレールの上を走るものな筈、とも思うなつきだが少し自信が無くなってくる。 そんな彼女に、横から深優・グリーアの声が掛けられる。 いつの間にそこにいたのか、それとも最初からそこにいたのかクリスがそれほど驚いて居ない所を見ると、後者なのだろうか。 「本来は汽車というものはその巨大な車体故に方向転換や急停車が不得手です。 その為にレールを用いて一定の区画を移動するようにしています。 ですが、この機関車『トミー』は鋼鉄の車体が障害物をなぎ倒し、汽車にあるまじき駆動性を持つ事でレールが無い場所を走れます。 蒸気機関車と銘打ってはいますが機関は石炭では無く機関士等の人材も不要であるため一人で稼動できるようです。 事実上個人戦最強の機動兵器といってよいでしょう」 「いや、個人戦という次元の問題で無いだろう」 「それも、そうですね」 と、そこで深優は説明を切る。 なつきとクリスが二人だけであることに気付いたのだ。 「お邪魔でしたね、それではごゆっくりと」 無表情ではあるが、それでも少しの優しさを感じさせる顔で、深優は去って行こうとする。 クリスとなつきの邪魔にならないように、という確かな気遣いを込めて、だ。 「…………」 「? 何か」 「いや……お前、変わったな」 その、深優の行動に、なつきは思わず目を丸くしてしまい、思った言葉をそのまま口にだしてしまう。 キョトン、と目を丸くする深優。 「そう、ですか…?」 「ああ、間違いなく変わった」 以前の深優ならば、このような言葉など冷徹に受け流していたというのに。 今の彼女は、ある意味での親しみやすさが生まれている。 「……そういう、貴方もかなり変わったように感じますが」 「な……わ、私はだな……」 「まあ、深優ちゃんもなつきちゃんも色々あったみたいだしねー」 と、そこに新たな明るめの声、なつきと深優には聞きなれた、杉浦碧のもの。 どういうわけか、機関車の屋根の上から、なつきと深優の丁度中間辺りに降り立つ。 「あちらの方はもう良いのですか?」 「あーうん、大雑把に動かすならともかくこまごました力仕事は男の仕事でしょー」 ドクター・ウェストは放っておいても好き勝手し放題だし、むしろ手を出さないほうが無難。 玲二と九郎は力仕事に借り出されているが、他の面々にはもうそれほど仕事は無い。 そうして暇を持てあました碧は、楽しそうな光景を目にしてやってきたのだ。 「まあ、あれだけ色々あれば皆多少は変わるものよねー」 「そ、そういうものか」 「うん、そうだね。 なつきも、ちゃんと成長してるよ」 「う……そ、そうかな……?」 「うん、間違い無いよ」 言いよどむなつきに、そこは自分の役目とばかりに、クリスがフォローを入れる。 そこに浮かんでいるのは、確かな微笑で温かなものであった。 それで、なつきも落ち着きを取り戻す。 「んー……しかしこうして見るとクリスくんも変わったものだねぇ……。 前に温泉で見た時は細くて女の子みたいに頼りなさげだったのに、今はちゃんと男の子してるんだから…… 恋は人を変えるものだよねえ、本当に」 うんうん、と一人感慨に浸る碧。 確かに、以前に見た唯湖にからかわれていたか弱げな少年とは、まるで違う。 後ろ向き気味であったなよなよしさが抑えられて、代わりに包容力とでも言うべきか、頼りがいのようなものすら感じさせる。 その変化を齎したのは、間違いなく隣の玖珂なつきなのだろう。 (そういえば、男子三日会わざれば刮目して見よ、という諺があったね) この目で実際にそのような光景を見るとは予想してはいなかった。 これが、若さか、と何となく年寄り染みたことを考える碧であった。 「……まて、その温泉とは何だ?」 「え? んーと、あれはそう、昨日の昼過ぎくらいかなー……あたしと唯湖ちゃんが温泉に入っていると何やら人の視線が……」 「ミ、ミドリ!」 「…………続きを」 「一瞬、誰か別の女の子が居るのかとも思ったよーあたしは。 なんてゆーかか弱くて儚げーだし、肌も白くてキレーだしねぇ」 とっさに遮ろうとしたクリスを遮ってなつきが促す。 その際、碧の口元に一瞬、ニヤリと猫のような笑みが浮かんだが、その事に言及する人間は居ない。 なつきは気付かず、クリスは動けず、深優は特に止めるつもりも無いようだ。 「てゆーかあの大人しくてやさしそーな子がまさか…………『のぞく』……なんてねぇ……」 大げさに、それでいてさも恥ずかしかったかのように、顔を逸らす碧。 無論、『のぞく』の部分をワザと強調するように、タメまで入れて。 「…………クリス」 「いや、ね、なつき、あれはその、不可抗力で」 「……どんな不可抗力で女湯を覗く事になるのだ?」 「え、いや、そのオンセンの仕切りが無くて……」 「そんな事があるとでも言うのか!?」 背後に“ゴゴゴゴゴ”という文字を背負いながらなつきがクリスに詰め寄る。 すわそのままキッスか? という程の近距離だが、生憎と今の空気そんな甘いものとは正反対なくらいにドス黒い。 「あー、安心しなさいなつきちゃん、クリスくんの言うとおり不可抗力だから。 元々混浴という訳じゃなくて誰かが仕切りを外したんだねーきっと。」 「ほら……ナツキ」 「う…………」 そのまま鉈か鋸かそれとも新ジャンル『銃』かという騒ぎに発展しそうであったので、碧が助け舟を出す。 元々沸騰しやすいが冷めやすいなつきも、それで冷静さを取り戻し、顔を赤くする。 「まったく、少しは自分の恋人は信じてあげなさい」 「ミドリのせいだよ……」 「んー? 女の子の裸見といてそんな態度でいいのかなー?」 「……いや、それはごめん」 まあ楽しかったからいいんだけどね、と心の中でだけ言う。 そもそも別に見られた時にあんまり気にしてないのだから開き直れば良いのに、とも思うが。 まあそれではあまりにクリスらしくないのでこのくらいだろう。 などとお気楽な事を考えた碧であったが、突如近くに極大のブリザードを感じて振り返る。 「つまり……見たのは事実なんだな……?」 「え……あの、それはその」 「どうなんです?」 「え……、ま、まあ先生も唯湖ちゃんもスタイルいいし、クリスくんも立派な『オトコノコ』だったんだよねぇ……」 「…………」 スタイルいいし、の一文が火に油を注いだ事を悟った碧であったが、時既に遅し。 『オトコノコ』の部分で僅かに赤みが差した頬を誤魔化すように、勢い良くクリスに詰め寄り、襟首を掴む。 ズルズルと引かれていくクリスを見ながら、碧の脳内には『ドナドナドーナ、ドーナ』という歌詞が流れていた。 「いやいや、確かに恋は人を変えるものだわ……」 「そのようですね、少なくとも玖珂なつきのあのような態度など初めて目にします」 処刑場にドナドナされるクリスに合唱しながら誰にともなく放たれた呟きを、その場の空気など無かったかのような表情の深優が拾う。 その態度に碧は微妙に恨みがましい目を向けるが、まあ自業自得だろう。 と、そこで思う。 変わった、というならばそもそも一番変わったのは深優であるのだが。 果たして彼女を変えたのは何なのか。 「あーところで深優ちゃん」 「……? 何ですか」 「実際のところ玲二君のことはどう思っているのかね?」 「さて、ここなら邪魔は入らないな」 「以前にも言いましたが、私が彼に抱いているのは『同類』という感情だけです。 恐らくは彼も同じように考えているでしょう」 一瞬、不思議そうな顔をした深優であったが、すぐに碧の聞きたいことに気が付いたのだろう。 特に迷いもなく告げる。 「んーでもさ、本当にそれだけ?」 「それだけ、とは」 「いやさ、そもそも感情って一種類とは限らないでしょ、まあよっぽど強ければ別だけどね。 同類てのは深優ちゃんと玲二君の大雑把な分類だけじゃない? そうじゃなくてさ、深優ちゃん自身はどう思っているのかなー、てね」 そう、たとえば、鉄乙女のように鬼と化す程の憎悪ならば別だろう。 けれど、普通はもっと色々入り混じった感情を抱くものだ、それが近しい相手であればあるほど、に。 少なくとも、影響を及ぼされる程の距離の相手に感じる感情が、同類、だけというのは考えにくい。 「……それは、確かにそうですが、大雑把な分類だけではいけないのですか?」 「いやまあいけないってことは無いけどさー、あたしたちの能力ってその辺が割りと大事っしょ? なつきちゃんは多分いい方向に変わった、クリスくんとおかあさんの影響だね。 んで、そもそも変わった、ていうならあたしの知っている中で一番変わったのは深優ちゃんな訳でさ。 だからその辺りの原因はどこいらにあるのかなーと」 「よく……わかりません」 「もしかして、なつきは、胸を、気にしてるの?」 「う、うるさい!」 「んーとほらさ、頼りになる、とか一緒にいたい、とかそういう気持ち、無い?」 「玲二の戦闘力が頼りになるのは間違いの無い事ですし、彼の技術には学ぶところが多いので一緒に居たいとは思います」 「あーいやそうじゃなくてね……」 そういう、割り切れる気持ちの話ではない。 それはそもそも他者に対しては兎も角、本人には大きな変化は及ぼさない類のものだ。 そうではなくて、 「特に用事は無いんだけど一緒に居たいとか、側にいると何となく心が落ち着くとか。 もっと近くにいたい、とかそういう感情の事、心当たり、無い?」 「僕は、なつきの身体が一番好きだよ」 「ば、ばかを……言うな」 一緒に居たいか、と聞かれても何とも思わない、が気が付けば一緒に居ることが多いのは間違い無い。 アリッサの時のように使命ではなく、今の状況では一緒にいる理由もそれほど多くは無い、のにだ。 ちらり、と一瞬、玲二の居る方向に目を向ける。 「私は…………」 「なら、今からでも確かめて、みる?」 「…………う」 「…………あー、ごめん深優ちゃん、それ宿題ね」 「……え?」 「はいはい、そこの二人は少し自重しなさい。 いまさら不順異性交遊には文句言わないけど、流石に明るいうちから事に及ぶのは先生としては見過ごせないしね。 親御さんも何も言って無いんだからイチャイチャするのは日が暮れてからのんびりとやりなさい」 パンパン、と手を鳴らしながら碧が遠くのバカップルに声を掛ける。 深優が俯いて考えている間に、何時の間にやら碧はそちらの方向をしかと見据えていた。 「イ、イチャイチャなどしていないぞ!」 「寝言は寝て言いなさい、聞いてくれる人いるんだし」 「元々はミドリの所為だと思うけど……」 「細かいことは気にしないの」 適当に恋人達をあしらう碧。 そう、あの二人は、間違いなく恋人同士だ。 恋人、その言葉が、深優の心に僅かな波紋を広げ。 「玲二の事をどう思っているのか……ですか」 人間の恋愛感情について、知識としては与えられている。 ただ、それを自分自身に当てはめるとどうなのか。 例えば、クリス・ヴェルティンと玖珂なつきは間違いなく恋人同士なのだろう。 互いに互いを大事に思い、おそらくは己の身をいとわず、相手を助けようとする。 一方的な愛情ではなくて、互いの想いが結び合っている状態。 玲二は、果たして自身を危険に晒してまで助けてくれるのか? 答えは……否、だと思う。 けど、万が一にそうしてくれたとしても、それは多分恋愛という感情には含まれない筈。 何故なら彼には深優などよりも、いや、玲二自身よりも優先するべきものがあるのだから。 (けど、それは判っていた事……) と、その時、遠くから夕餉が近いことを告げる声が響く。 その声は、ある意味では深優には福音であった。 「ほらほら、深優ちゃんもこっちおいでー。 ご飯の前に大浴場でのんびり足のばそー」 「よし、行くぞクリス」 「はいはい、なつきちゃんはこっちねー」 「……わかりました」 己の思考を打ち切り、歩みを進める。 玲二は、深優の事など、見てはくれない。 そのどうしようも無い事実に、かすかに、気付かぬままに唇を噛む。 かつて、アリッサと共に居た時とは別種の寂しさ。 寂しさとやるせなさの混じったような理解しがたき感情。 未だ雛鳥でしかない少女は、己の感情を、理解しきれないでいた。 OVER MASTER (超越) 1 <前 後> OVER MASTER (超越) 3
https://w.atwiki.jp/galgerowa2/pages/563.html
OVER MASTER (超越) 3 ◆Live4Uyua6 ・◆・◆・◆・ 食欲を掻き立てる香りと和気藹々としたざわめきが満ちている。 そこは七階の端に位置するバンケットルーム(小宴会場)で、昨日がそうであったように夕食を兼ねた報告会が行われていた。 「おやおや今晩はイタリア料理ですか。カレーライスを和食と分類するならばこれで和洋中と制覇したことになるのでしょうかねぇ。 となれば、次あたりは私にお鉢が回ってきて本格露西亜料理を? ……ありえなくもない話ですか」 独り言やや多めなトーニャの機嫌はすこぶるよい様子であった。 九条より解放されて後、浴場にて命の洗濯を終え、さて夕食だと着てみればあのきち……ドクター・ウェストの姿がないのである。 それとなしに深優に聞いてみれば、今頃は飯抜きで残業に勤しんでいるらしい。 なんでも人体間接における可動範囲の可能性に言及、実践した結果。彼は深優に泣いてやらせてくださいと懇願したのだとか。 「ふふ。どうやら、あれにいらぬ手間を掛けさせられるということはもうなさそうじゃありませんか」 ドクター・ウェストがいれば、「このさみしんぼさんのツンデレめ」などとふざけたことを言い、またキキーモラを走らせていただろう。 だが現実としていない。余計な手間もストレスもなく、平穏においしい夕食の味に集中することができる。素晴らしいことだ。 物足りない? いやいやそんなことはないだろう。ツンデレなんて失礼な話だ。もっとも、深優にお株を奪われることで出番が減るのは懸念すべきだろうが。 「確かに、ただの扱いやすい女……などと見られるのも癪ですねぇ」 ドクター・ウェストの相方なんていう見られ方は最悪だが、ではないとしたら何か少しはアピールがいるかも知れない。 そんなことをなんとなしに思い、トーニャは口の中ですっぱいトマトを噛み潰した。 「九条さんの言っていることはよくわかんないですけど、お料理の味はよーくわかります。すごくおいしいです!」 やよいがしめじを口の中でむぐむぐさせている向こうで、九条は全体に向けて本日行ったことや得られた成果を発表していた。 例えばこのホテル内にある監視装置をある程度無効化したことや、那岐が率いて東側を回っていた組が博物館で得た支給品に関してなど。 またそこから留意すべきところや、今後の方針についての再確認などなど、全体における情報の共有化を目的としたものだ。 とはいえ、言葉の通りにやよいはあまり理解していない様子で、聞いている風ではあったが意識はごはんばかりに行っている様だった。 「おいおい、まったくやよいときたらこの手のことに関しちゃあ頼りねぇ限りだな。 まぁ、そこは俺がついていて半人前同士が合わさって一人前ってことなんだが……って、何見てんだ? 美希!」 食事中ということで今は右手でなくやよいの左手にはまっているプッチャンが、やよいを見つめる美希を牽制する。 さてこいつは普通(?)の女の子と思っていたのだが、ファルや桂達に当てられたのか少し危ない領域へと足を踏み入れかけているらしい。 個人個人の趣味趣向に関して、ましてや色恋沙汰に口を出すほどプッチャンは野暮な男ではないが、しかし対象がやよいとなると話は別だ。 「あははー☆ いやですよぉ、ちょっとやよいさんが可愛いなぁって思ってただけじゃないですか。 さすがアイドルの卵さんなのです。美希めも学園ではお花ちゃん達なんて言われていましたが、いやはや」 「……うぅ? そのお花ちゃん達っていうのはさっきのぱやぱやと関係があるんですか?」 「だから、知る必要はねぇって言ってるだろう!」 さて、今まで他人事だと思っていたぱやぱや領域の侵食。 もしかしたら、これからは真剣に警戒しなくてはならないのかもしれないと、プッチャンは心中で奇妙な覚悟をするのであった。 「どうしたんだ、クリス? 食が進んでないみたいだが、口に合わないのか? これはクリスの故郷の料理だろう?」 ボールに入ったマリネを自分の取り皿に移しているところでなつきはクリスの異変に気付き、彼に声をかけた。 クリスの目の前には半分ほどまで食べられたリゾットの皿があって、もう残り半分に手をつける様子もなく彼はぼうっとした表情をしている。 何か憑き物が落ちたような、そんな見る者に不安を感じさせる顔でどこを見るのでもなくただスプーンを握って固まっている。 「……え? えっと、どうしたのなつき?」 「どうしたって、今ぼーっとしてたじゃないか。お腹が痛いのか? それとも何か変なことを考えてるんじゃないだろうな?」 クリスのなつきに対する時の表情はいつものままだ。故になつきはそこに壁があるんじゃないかと不安になる。 問い詰めても、きっとクリスは大丈夫だとしか言わないんだろうと。 それが本当なのか、弱みを見せたくないからか、それほど信用がないのか、強がっているのか、なつきは読み取れなくて、それが悲しい。 自分が馬鹿だからクリスに呆れられているんじゃないかとも、そんな風な考えも浮かび、また考えてしまう自分を愚かだと思ってしまう。 好きで、そしてこんな状況だからこそ拭えない1の不安が自身の中で10にも100にも膨らんでしまうのだ。 「あ、……あぁ。……ちょっとね、故郷……と言うのも変かな、元の世界のことを思い出していたんだ」 「元の世界?」 聞き返すなつきにクリスはうんと頷く。 ファルの作った正真正銘の生まれ育った世界の料理を食べて、その味にその世界を懐かしんでいたのだと。 ほんの三日前までは今のような状況に陥るなんて夢にも見ていなかった。 音楽の街であるピオーヴァへと移り住み、ファルテニストを目指してただ黙々と音楽学院に通う大きな変化のない日々。 すぐ傍にトルタがいるのが当たり前で、リセもいて、ファルもそこにはいて、そしてそれだけでなくて――……。 「もしかしたら、これは夢なんじゃないかなって。少しだけ思ったよ」 「クリスっ!?」 あの時の自分とあの時の自分が将来に見ていたもの。そして今の自分と今の自分がこの先に夢見ているもの。 全く違う。文字通り、世界を渡るかのようにそれは変わってしまった。 だから、思い出した以前の世界がどこか遠く、それこそ幻の様に取り戻せないものだと感じてしまった。けど―― 「なつき」 「ク、クリス……」 ――ここは確かな現実なのだと、クリスは握ったなつきの手の温かさにそれを実感する。 この手と繋がっていれば、なつきと一緒ならば、目の前の現実を見失うことはないだろうとそう確信する。 全く思い描きもしなかった異世界の、しかも幾多の可能性が存在するという曖昧な世界にいるけれども、この手を繋いでいれば大丈夫。 「ありがとうなつき」 「え? え? どういたしまして……じゃなくて! いつでも自己完結するんじゃないっ!」 「あぁ、えっと……ごめんね、なつき」 「寂しいじゃないか……」 存在を確かめたいのなら手を繋ぎ、想いを伝えたいのならば言葉を交わす、それでも気持ちが伝わりきれないならば口付けを。 「僕の世界のこともまたなつきに教えてあげるね」 「うん、じゃあ私の話も聞いてくれよ。その……夜は長いし、な」 クリスとなつき。少しすっぱいキスをして、今の気持ちを伝え合う。 「――という訳で、このホテル全体に僕が簡単な結界を張らせてもらった。 アルちゃんや深優ちゃん、他にも鋭い人がいっぱいいるからね、夜襲奇襲に関しては心配しなくてもいいというわけ。 いやぁ、こういう時はこの眠らなくてもすむ身体がありがたいやら……って、みんな僕の話聞いてる~?」 はぁ、と一通りの報告を終えて席に着いた那岐は大きな溜息をついた。 リラックスしてくれているのはいい。無駄に緊張したり深刻なよりかは断然ましだ。けど、やっぱり、ものには限度があるような気がする。 「落ち込むことはないわよ那岐君。 彼女達がああやって何の憂いもなくいられるということは、私達のバックアップがうまくいっている証じゃない」 九条の言葉を聞いて那岐は苦笑いする。 確かにその通りではある。来る主催者側との決戦に向け、事実を正確に受け止め、それを続けていたら最後まで気がもたないだろう。 なので、その時が来るまで無駄な力を使わないよう、また心身の調子を整える為に那岐もムード作りに貢献しているのだ。 「それに、みんな心の底じゃ解っている。 この中の誰かがいなくなってしまうかもしれないこと、それよりもひどい結果が待っているかもしれないこともね」 「だから今のうちにはしゃいでおこう……じゃあ、ないよね」 「ええ、みんな強い。それはみんなの生きる姿を見続けてきた私とあなたが――」 ――よく知っているさ。と、那岐はほっとした笑みを浮かべた。 勿論。彼はここにいる全員に対し強い信頼をよせている。歴代の中でも最も変てこで、最も強いHiME達だろうと。 「ただ、僕は……今回ばかりは自分もあの子たちの隣で一緒に戦いと思ってただけなんだよ」 「女の子からのけものにされて拗ねていたのね。可愛いところがあるじゃない」 「そ、それは否定しないけどね~……」 「こんなおばさんが隣にいるだけじゃあ不満かしら? あなたからすれば全然若いとは思うんだけど」 「そりゃあ、あの子達とは比べるべくも――って、嘘! 失言、じゃなくて言い間違いっ! むつみさんは超プリチー!」 鬼が――笑う鬼が其処に居た。まるで、いつぞやの阿修羅姫のように。静かに笑って、けど底知れぬ、鬼が。 「あぁ! やっぱりなつきちゃんのお母さんなんだなぁ! そういうところは――って、か、勘弁してくださいよ!」 あっちでいちゃいちゃ、こっちでぱやぱや、楽しく楽しくそしてところにより恐ろしい(?)夕食の時間はゆるやかに過ぎてゆく。 ・◆・◆・◆・ 長い長いホテルの廊下。 その廊下を一人の少年――クリス・ヴェルティン――は腕を伸ばしながら歩いていた。 その端整な顔を若干疲労に滲ませながらある場所に向かっていた。 「お風呂……余り浴槽に浸かるってのは無かったけどいいものだね」 そこはお風呂。 クリスがこの島で出会った一つの文化だった。 クリスは専らシャワーのみの生活であったからこの文化はクリスにとって斬新だったのだ。 そういえば唯湖とも温泉に入ったなと思い出しながらゆっくりと歩く。 本来はなつきと一緒に入ろうと誘ったのだが他の女性陣に凄い剣幕で睨まれたので渋々一人で入る事に。 「別にやましい気持ちなんてないんだけど……はぁ」 何か盛大な誤解を受けた気がしてクリスは思わず溜め息を付いてしまう。 元々、今日の移動による疲れもあったのだ。 体も少し悲鳴を上げているしさっさと入ろうとクリスは更衣室に入っていく。 その更衣室がやたら大きく豪華でクリスは嘆息しながらもそそくさと自分の衣服を脱いでいった。 そしてタオルを一枚持って大浴場へ。 クリスは大浴場のドアを開けた瞬間 「……わぁ」 大きく深い感動の溜め息を付いた。 それはあまりにも浴場が大きかったから。 一度に何十人も洗えそうな洗い場。 大きなサウナと気持ち良さそうなジャグジー。 そしてまるで泳いでも何ら問題ないような何十人も入れる大きな風呂が奥に鎮座していた。 クリスは何処か楽しい気分になりながらその奥の風呂に向かう。 やっぱりなつきと一緒に来ればよかったと思いながら。 きっと楽しいだろうにと少し後悔しながらも。 だが 「……あ」 「……」 その楽しげな表情が一転して戸惑いに変わる。 風呂の奥の隅に居た者。 壁にもたれながらゆっくりと入浴していたのは吾妻玲二だったのだ。 クリスは玲二と余り話した事はない。 それに加え玲二自体、暗殺者で事実ほんの前まで殺し合いを肯定していた人間だったのだ。 さらに玲二は杏を事実上殺害した本人でもある。 クリスとしては玲二に対して苦手というより戸惑いが強かった。 とはいえ、わざわざ遠く離れて入る理由もない。 クリスはゆっくり風呂に入りながらザブザブと玲二の近くまで進む。 そして玲二2メートルぐらい離れた位置で止まりそのままゆっくり肩まで浸かっていく。 隣に玲二は居るが彼は気にせずクリスに対して振り向く事はなかった。 「………………」 「………………」 そしてお互い静かに入浴したまま五分程度の時間が流れていく。 互いに喋る事も無くゆっくりと。 クリスは玲二に対して何か話そうとするも言葉が詰まってしまう。 余り話した事もないから何を話せばいいのか迷ってしまう。 元々クリスは話すのは苦手な方だ。 それに加え玲二は何処か人を遠ざけているイメージがあって尚更どう話せばいいのか分からない。 元々殺し合いに乗っていた人間である事も影響していた。 安易に踏み込む事はできず、そして踏み込んだとしても何処まで踏み込んでいいかも分からなかった。 それ故にクリスは喋ろうと喋りかかるもそのまま黙るという行為を何度も繰り返し戸惑ってしまった。 しかし、それでも何か言葉をかけなければならない。 クリスはそう覚悟を決め口をあけようとする。 その時だった。 「……おい」 「……え?」 玲二がクリスに向けて言葉を発したのは。 クリスは不意を取られる形になり戸惑ってしまう。 そんなクリスを玲二は無視して言葉を続ける。 それは 「クリス・ヴェルティン……お前は護るものが多いな」 クリスに対する不快感と嫌悪感が混じった皮肉の言葉。 何処か苛立ちが感じられるような。 そんな声だった。 驚くクリスを尻目に玲二は喋り続ける。 「恋人である玖我なつきの他にも来ヶ谷唯湖……そして場合によってはファルシータ・フォーセット、九条むつみも護るつもりなんだろう?」 上げた名前はクリスにとって縁が深い者達。 クリスの最愛のものであるなつき。 クリスが救ってあげなければならない唯湖。 そしてクリスの友人であるファルとなつきの母親であるむつみ。 クリスは彼女達を出来れば護りたいと思っていた。 そんなクリスに対して玲二が冷たく言う。 「それだけ多くて……護れるのか? お前は? 取りこぼしたりはしないのか?」 「それは……」 クリスに出来るのかと聞く。 その人数は玲二にすると多くて考えられなかった。 そしてクリスは即答できなかった。 風呂から静かに湯気立ち上る中、答えられなかったクリスに対して何の感情も見せず玲二は言葉を続ける。 「それに……お前に力はあるのか。護る力が。それだけの人達を……俺には有る様には思えないが」 「……」 クリスに力はあるかと。 元々クリスはただの学生でしかない。 少し魔術系の道具を使えるだけで後はただの少年でしかないのだ。 そんなクリスに沢山の人を護れるのかと。 「……力も無ければ……何も出来なければ……迷えば……護れず失うだけだ」 返答できないクリスに冷たく結論を言う。 力も無ければ護れないと。 玲二が失うという言葉を発した時何処か哀しい表情をしたのをクリスは気付かない。 クリスは言葉を失いただ黙るだけ。 何もかも正論だった。 だからこそ答えられなかったのだ。 今のクリスではその正論には勝てることは出来ない。 力が無いのは事実であったから。 そのあまりに正しい意見に言葉を失うだけだった。 それでもクリスは考える。 何か出来ないかと。 そんなクリスを尻目に 「……俺は一人で手一杯だ……しかも……それでも護れなかった……」 玲二はひとりそう呟いて。 そのまま立ち上がる。 その体には無数の傷。 キャルを護ろうとして負った傷だった。 クリスをその場において風呂から上がろうとする。 しかし、何か思い出したように止まり 「クリス」 振り返らずクリスに対して告げる。 「来ヶ谷唯湖は何が有ったかは知らないが……今、主催側に居る……つまり、俺にとっては敵だ……キャルの仇であり敵だ」 慈悲も無く残酷に。 クリスにとっては聞きたくない言葉を。 静かに躊躇いも無く玲二を言った。 「だから―――来ヶ谷唯湖に会ったら、俺は躊躇い無く殺す……何の感情も無く、慈悲も無く、迷いも無く……ただ殺す」 殺すと。 ただ、殺す。 それは敵であるから。 そんなシンプルな理由。 玲二にあっては絶対の理由だった。 そんな玲二に驚き少し顔を怒りに歪め玲二に何か言おうとする。 だがその直後 「だから―――俺より早く着け。そして護って見せろ」 声を変えることも無く。 だがどこか優しく感じられるように。 そう、クリスにいったのだ。 会ったら殺すしかない。 だから、その前に唯湖に会って見せろと。 「悔やむ前に―――俺より早く辿り着いて見せろ」 そう、クリスにエールを送るように。 大切なものを持った人間に。 激励の言葉を玲二なりに贈って見せたのだ。 「……俺は間に合わなかった」 そう哀しく寂しく呟いて。 間に合わなかった者が、護れなかった者が。 まだ可能性がある者に間に合って欲しいと応援するように。 そう、静かに告げた。 「……少し喋りすぎた」 玲二はそう呟き風呂から出て行った。 残されたのはクリス一人のみ。 クリスはお湯を掬ってみる。 透明なお湯。 そこに映るのはクリスの顔。 その顔は玲二の問いに対する答えを真剣に考えて。 玲二の応援の意味をしっかりと受け取って。 前に進もうとする顔だった。 ・◆・◆・◆・ 「汝も衣替えか? そういうものも存外に似合っておるの?」 浴場を後にし、PCの設置された作戦室へと出向いた玲二にかけられた第一声がそれであった。 アルが言葉に発したとおり、玲二の身を包む衣装は度重なる戦闘によって襤褸となったスーツから別のものへと変わっていた。 今現在。彼が着ているのはダーク系のスーツとは真逆の、黄色や赤と原色が派手に散りばめられたアロハシャツである。 「お前の相棒から押し付けられたものだ」 あくまで自分の趣味ではないと言外に滲ませ、玲二は一つの椅子に座り机の上に広げられていた資料を手に取る。 彼の言葉を聞いたアルの方はというと、ぷにゅぷにゅとしたダンセイニの上で小さな頬を膨らませていた。 相棒――つまりは彼女のマスターたる九郎から押し付けられたとは一体どういうことなのか? 服を譲ることに関しては問題はない。見るに見かねて新しい衣装を玲二に譲ったというのなら、お人好しなだけで悪いことではない。 問題はとすると、その新しい衣装の出所だ。以前確かめた時にはこんな派手なものを九郎は持っていなかった。つまり―― 「あのうつけめ。桂といい、柚明といい、ただ一度の機会をなんと捉えているのか」 ――例の博物館で手に入れたのだろう。 もっとも、あそこに飾られている物は珍妙で傍目にすぐ有用と解る物ばかりではなかった。 故に、ならばとりあえず解り易い物を手に取るというのも一つの方法ではある。がしかし、明らかに有用でない物を取ることもないだろう。 「まぁ、よいわ」 小さく溜息をつき、アルは視線を手にした紙へと戻す。 彼女が今見ているのは九条が主催者側より持ち出した極秘資料の一部。 部屋を見渡せば、アルと玲二の他にも、トーニャ、深優、那岐とが同じ様に机を囲んで資料に目を通しており、 奥の方では持ち出した張本人である九条がPCを操作し、優先度の高いものを選んでプリントアウトする作業を行っていた。 「とりあえず概要を掴む為のものに関しては以上よ。 その他の資料に関しては直接このPCで閲覧してちょうだい。ファイリングしておいたから目当てのものを探すのに手間はいらないはずだわ」 九条の言葉を聞き、室内の面々はそれぞれの仕草や短い言葉でそれに応答した。 監視の目に関してはもう心配いらなくなったのでこうしておおっぴらな作戦会議を行えるようになったが、壁の耳に関してはまだだ。 故に、迂闊な言葉を漏らさぬよう全員が口を開くことに慎重になっている。 「じゃあ、私はウェスト博士の様子を見に行ってくるわね」 言って、九条は扉を潜り部屋を後にした。 主催者の聞き耳を閉じる装置はドクター・ウェストにその作成を依頼しており、その成果を確認しに行く為である。 「ふむ、では妾も一度席を外そうかの。黙したまま引き篭もっておっては息が詰まるわ」 ダンセイニの上から小さな体躯を弾ませ、アルは読んでいた資料を机の上に戻すとダンセイニを後ろにつけて部屋を出て行く。 それから四半時が経ち、同じような理由でトーニャが部屋を後にし、那岐も結界の様子を見てくると告げて部屋を去った。 静寂が満ちた部屋に残されたのは、互いに元より口数の少ない深優と玲二の2人。 2人とも無言のまま、ただそうするだけといった風に机の上に広げられた資料をひとつひとつ丁寧に精査している。 苦痛や退屈な様子も感じさせず、かといって怒りや喜びがあるわけでもなく、ただ黙々と目的を成すためだけの機械のように。 「深優。少しつきあってくれ」 更に半時ほどが経ち、資料を一通り見終えた玲二が椅子から腰を上げて深優に呼びかけた。 夜の帳も落ちきった頃。男女が2人でとなれば何か想像できる台詞だったかも知れないが、しかし2人に間に色香はない。 机を半周して玲二はPCの前へと改めて腰を下ろす。それが何を意味するのか、理解し深優もその隣へと移動した。 ”……――あーあー、マイクのテスト中。マイクのテスト中である” と、丁度その時、室内に、いやホテル内全体にあの狂科学者の声が鳴り響いてきた。 無駄な部分を省き要点だけを摘まんで言うと、どうやら件のジャマーが完成し正常に作動を始めたとのこと。 一言で済む内容ではあるが、彼がそれを一言で済まさないのは周知の事実だ。 話は脱線と暴走を繰り返し、果て無き妄想の世界へ――と行きそうな所で唐突に途絶えた。 恐らくは、そこに同席しているであろう九条がマイクのスイッチを切ったか、またはトーニャが熾烈なツッコミを入れたかだろう。 ともかくとして、これ以降は無理に口を閉じる必要もなくなったのだ。都合がいいと、玲二は早速深優に言葉をかけた。 「標的側の戦力評価をしたい。知っている範囲で構わないから協力してくれ」 了解しました。とだけ深優は言葉を発する。 無駄口を吐けるようになったからといって互いにそうする性分ではないのだ。変わらず、ただ最低限の範囲のみで口を利くだけである。 「島の地下に蜘蛛の巣状に……いや、例えるならば蟻の巣かこれは」 「ええ。要所要所に部屋と呼べるような空間があり、その間を細い道が連絡しているという点ではその例えが的確でしょう。 戦力を展開できる空間が限られているだけに、その点だけを見れば少数精鋭となるこちら側が有利とも判定できます」 2人がまず開いたのは、おそらくは決戦の舞台となるであろう主催本拠地の立体見取り図であった。 それは殺し合いが行われていた島の地下に広く張り巡らされており、例えた通りに一見すれば蟻の巣のように見える。 「だが、戦場や移動ルートが限られるということはそれだけ相手も対処しやすいということだ」 言いながら玲二はキーボードを叩いて画面にいくつかの情報を浮かび上がらせた。 それは通路の間にある隔壁の仕組みや、防災用の対処機構。また侵入者に対する警戒装置などの情報であった。 「どうやら直接的な対人攻撃システムなどはないようですね。 防災や警戒のシステムに関してもこの規模の建物なら平均的と言える程度のものです」 「この情報が正しければというのが前提だがな。 それにただの隔壁だけでも戦力の分断やルートの誘導には使える。首輪で位置が知れる以上、これは明らかに不利な点だ」 位置が知られてしまっては、少数精鋭でのゲリラ戦はその根底からして成り立たない。 主催本拠地に対侵入者用の催涙装置や火器などが存在しないのは僥倖であったが、それも人を配すればいいだけのことであって 決して手放しで喜べるものでもなかった。やはり、数に劣る参加者側が根本的に不利であるのは変わらないだろう。 「深優。この量産型アンドロイドの戦力はお前を基準とした場合、どの程度のものになる?」 次に玲二が当たったのは、直接対決することになるであろう主催者側の戦闘員に関するデータであった。 そしてその中で特に気になったのが、彼の隣にいる深優をベースにシアーズ財団が量産化した戦闘アンドロイドの存在である。 一般職員や警備兵などは数こそいるものの、アルの魔法やHiMEが呼び出すチャイルドの前ではさして問題にならないだろう。 だが、30体強ほどとこちらの数よりも多く配備されている戦闘アンドロイドがその大元である深優に匹敵するとしたらそれは大きな問題だ。 「現在、私のメモリ内に残っている情報がこの資料に記されているものよりもバージョンが前のものなので正確には答えられませんが、 エレメントやチャイルドと言ったHiME固有の能力を無視した場合、量産型の能力は私の6割から8割程度となります」 深優の評価に玲二は口を強く結んだ。 決してそれは楽観できる情報ではない。 例え個体単位で深優よりかは劣るといっても、逆にこちら側も全員が深優のように強力なわけではないのだ。 更に数でも劣るとなれば、まともにぶつかった場合――全滅は必至のことだろう。 加えて、主催者側には神崎黎人をはじめとする一番地の人間が操るオーファンといった存在もある。 これも深優から聞けば、HiMEの操るチャイルドからは格段に劣るものの、特殊な性質から一般的な銃や火器は効果が乏しい相手らしい。 「玖我なつきであればオーファンを倒すことは容易いでしょうが、玲二では倒しきることは難しいでしょう。 逆に戦闘アンドロイドに相対した場合。玲二であれば撃退が可能でしょうが、玖我なつきには難しいかもしれません」 深優の解説を受けながら玲二は一通りのデータをチェックし、そしてそれらを閉じると微かな溜息を漏らした。 「……どうやら、俺一人でどうこうできる相手ではないらしい」 席を立ち、玲二はそう零した。 独断先行も可能性としては考えていたが、しかしそれは心の内に仕舞っておけばよかっただろう。 なのに、まるで聞かせるかのように呟いてしまっていた。どうしてなのか? その答えは本人にとっても不明瞭だ。 「神崎黎人の暗殺ですか」 「ああ。俺はいつだって独りでそうしてきた。それがファントムであり、そして俺は結局亡霊でしかない」 玲二は深優の方は見ようとせず、ただ暗い瞳で虚空を見つめている。 その在り様は、与えられた名前の通りに音も無く命の灯火を吹き消して行く亡霊に相応しい。 そしてそんな亡霊に対し、科学と歯車によって生み出された人ならざる少女はなんら臆することなく言葉を投げかけた。 「暗殺に関しては決して悪くない提案だと言えます。敵との総力戦が無謀である以上。司令官を狙い打つは必定。ですが――」 「――そう。単独では無理だ。神崎を包む守りは堅く分厚い。お前や、あいつらの協力は必須だ。つまり、逆に言えば」 俺がお前達に協力し連携を取る必要がある。と、玲二は深優の方へと振り返った。 見合わせる2人。亡霊の男と機械の少女の顔に表情はない。しかし、それは彼らに心や感情がないことを意味するのか? 「よろしくたのむ」 そんなことはない。如何なる成り立ちであろうとも彼と彼女は人間に他ならない。 「こちらも協力体制の継続を歓迎します」 ただ少しだけ、少しだけ不器用な生き方をしている。ただ、それだけの話なのである。 ・◆・◆・◆・ 719号室とプレートのついた扉を一応はという程度にノックしてトーニャはその中へと入り込んだ。 「お。トーニャちゃんおっかえりー」 迎えるのは同室を使う碧の明るい声と、レトロ調で揃えられたツインルーム。 薄い色のシーツが敷かれたベッドが二つ。その間には小さなテーブルがあり、奥の壁は一面が硝子で星月夜が壁紙の代わりをしている。 最低限の用心をということでどの部屋も二人以上で寝泊りすることになっており、この719号室ではトーニャと碧がそうであるということだった。 「あ! ちょっと、何を勝手に人のものに手をつけているんですかっ!」 扉を後ろ手に閉め、一歩二歩と進んだところでトーニャの目が見開き声があがる。 見やればベッドに腰掛けている碧の手にはあの”蜂蜜酒”。トーニャは隠しておいたのだが、全く油断も隙もないといったところだろう。 「んっんー、これは先生が没収しちゃうな~♪ だって、トーニャちゃんまだ未成年じゃない。だとしたら、学校の先生としては風紀上これを看過することはできにゃいのだよ。うん」 「今更何をっ! ここではそのような世俗の決まりなど関係ないでしょうに。 じゃああれですか? 碧さんは立派な大人だと? ええ、ええ、認めましょうとも……――”自称17歳”を撤回するのならばね!」 トーニャの熾烈な反撃に碧はうぐぅと唸る。 年齢制限などというラインを出したことが裏目となった形で、押しても引いても負けとなれば最早これは王手に他ならない。 「いやーん。トーニャちゃんこわーい♪ み・ど・り・泣いちゃう☆」 「ええい、気色悪い! どーでもいいからそれを返しなさい。それは私の所有物です!」 などとやり取りするものの、実は互いにこれを独占するつもりなど毛頭ない。 そのつもりなら碧もトーニャの帰りをわざわざ待ちはしなかっただろう。所謂、スキンシップというやつである。 もっとも、トーニャの側からすれば宛がわれた人物がまたしても要ツッコミ人物となれば、やや辟易するかも知れなかったが。 「”酒は百薬の長”とは中国の古典からの言葉だけどね、この蜂蜜酒ってのは実際にそうだったこと知ってる?」 「いえ、寡聞にて存じ上げませんが、ご教授いただけるのですか? 先生殿」 結局一緒に呑むこととなった二人はテーブルを挟みベッドに腰掛けて相対している。 備えつきのサイドボードからグラスと、そして冷蔵庫から氷を取り出すと、酒瓶の栓を開け酒宴の準備を整えた。 「この蜂蜜酒はミードって言うんだけど、ここに生薬や香料を加えたもののことはメグセリンって呼んだの。 でもってそのメグセリンって名前が英語の薬――メディスンの語源じゃないかなーって言われているわけ」 「なるほど。意外と物知りなんですねぇ」 「おいおいー、これでも私は学校の先生だよー? 専門は日本史だけどさ。古典や古代文明なら割と手広く好きだったりするわけよー。ロマンティックだし!」 「私は昔のことよりもこれから先のことに興味を持ちたいですけれどもねぇ」 言い交わして二人はグラスを手に取り、軽く乾杯して透明な液体を口の中に流し込んだ。 味は蜂蜜酒という名前のイメージからすると意外とさっぱりとした感じで、ほの甘くて口当たりもよく中々に飲みやすい。 溜まった疲れを溶かすのにもちょうどいい。そう二人が思った時――異変は起こった。 「な、な……何事ですか? これは……!?」 「うっそ? たった一口で悪酔い!?」 二人の目の前に見える世界が一変していた。 腰を下ろしているベッドも、その下の床も、さらにその先まで、何もかもが透けてゆらゆらとまるで蜃気楼のように見えていた。 そう見えるだけで、感触からそのままそれらがあるというのは判るが、しかしまるで宙にぶら下げられたような感覚で身動きが取れない。 全てが曖昧な世界の中、確かにはっきりと見えるのは酒を飲んだお互いの姿だけ――ではなく。 「碧っ! 後ろっ! それっ!?」 「え、え? ……って、ええぇぇぇえええっ!? これって、どういうこと!?」 トーニャが指差す背後。碧が振り返ると、そこには半透明の壁にめり込むような形で彼女のチャイルドである愕天王が鎮座していた。 しかし彼女はチャイルドを召喚してはいない。ましてや暴走というわけでもない。怪獣の主である碧には解る。つまりこれは―― 「呼び出す前の姿。ずっと私の傍にいてくれてる……」 ――そういうことであった。 よくよく観察してみれば、顕現させた時に比べると愕天王の姿にも少しの違いが見られた。おそらくは待機状態の姿なのであろう。 「……これは一体。ただの酒ではなかった。ええ、それはいいでしょう。ならば、つまり私達に見えているのは?」 現世ではない力の有様か。と、トーニャは碧のチャイルドと、己の背中から伸びたキキーモラを見て推測する。 酒を飲んだ者以外だと、人妖や怪異。それに類する見えないものがよく見れて、逆に普段見えるものは透けて見えるらしい。 キキーモラに流れる力も今はオーラという形で見ることができた。そして―― 「あれが、媛星……なんですか」 天より愕天王に流れ込む力。それを辿って首を持ち上げてみれば、そこには月の隣に並ぶ真紅の妖星の姿があった。 媛星からは水が零れるかのように幾筋も光と見える力が地へと流れ落ちていた。 その一つは碧の愕天王で、おそらくはその光の下にはそれぞれ一人のHiMEと一体のチャイルドが存在するのであろう。 「媛星の実在をこの目で確かめられたことはよいでしょう。ええ、納得できました。が――」 「――こ、これ。どうやったら元に戻るの?」 那岐や九条らの口先からでしかその存在を聞かされていなかった媛星。 落ちてくれば人類絶滅などと言われても、見えないものを信じるのは難しかった。騙されているかもしれないという懸念は零にはならない。 その問題が偶然にしろ解決したのはよいだろう。だが、この状態はどうすれば解除されるのか? うろたえる二人の耳に新しいノックの音が届く。 「碧よ。ここに九郎が寄っておらぬか?」 透けた扉の向こう側にいたのは、”はっきり”とその姿が彼女達の目に映る、魔導書の化身アル・アジフであった。 「ふむ。ようやっと思い出したわ。これはただの蜂蜜酒でなく”黄金の蜂蜜酒”というものじゃの」 アルは酒瓶の口の近くで鼻を鳴らし、困惑する二人にこの酒の正体を解説した。 一見すればただの酒でしかなく、アル自身も今まで気づいていなかったがこの黄金の蜂蜜酒は魔術ドラッグの一種なのだ。 その効果はトーニャと碧が体験した通り、目に見える世界の位相をずらし現世には映らぬものを見られるようにするというものである。 また飲んだ者自体の位相をもずらすために、現世における物理的な干渉を大幅に減じるという効果も得られる。 「用途としては、トランス状態になることでより”直接”的な魔術を行使してみたり、 素養のないものがこれを使って見えざるものと交信を試みたり――などといったところじゃな。薬は薬でもこれは麻薬じゃ」 麻薬と聞いて二人の顔が青褪める。 この奇怪な現象は収まらないのか。また収まったとしても禁断症状や後遺症が出るのではないか。などと不安の種は尽きない。 「とりあえずこの酒は没収するとして……安心せい。別段、後遺症などはありはせん。 トランス状態も酒が抜ければ同時に元に戻る。 浴場にでも行って湯でも浴びてくるとよいであろう。そのままでは中々醒めぬ酒ゆえにな、何もしなければ朝まではそのままじゃ」 では、もう用はないとアルは酒瓶を手に踵を返した。 後に残されたトーニャと碧はと言うと、互いに見合わせるとおっかなびっくりと透ける床の上を進み、見えない戸で指を突いたりしながら これも透けている浴衣などを取り、いそいそと湯浴みの支度を進めるのであった――……。 「やれやれ、あやつときたらどこをほっぽり歩いているのやら……」 719号室の隣。割り当てられた部屋である718号室に戻ってきたアルは酒瓶をベッドに投げ、やれやれと溜息をついた。 ここも隣と変わらぬツインルームではあるが、アルの相方である九郎の姿はない。そこにいるのはダンセイニだけだ。 「……魔導書を放ったままのマスターがどこにいるか」 「てけり・り」 悪趣味な殺し合いの島。 そこに放り込まれて2日ほど。色々あり、ようやく再会できたというのに、その後ときたらろくに接する機会がなかった。 今日にしても、半日の我慢と思えばむしろその後が楽しみなぐらいであったのに、しかし九郎は部屋には戻って……こない。 「何を考えておる。あやつも……妾も……」 「てけり・り」 「うむ。待つ女などとは妾の性分ではない。あの放蕩マスターをまた探しにゆくとするか。 今度こそは首根っこ捕まえて、自分が誰にとっての何かをとくと教育してやることにしようぞ。ついて参れ」 「てけり・り」 この階にいなければ下かとあたりをつけ、アルは部屋から出るとダンセイニを引きつれエレベーターホールへと向かった。 OVER MASTER (超越) 2 <前 後> OVER MASTER (超越) 4
https://w.atwiki.jp/starsiege_deadzone/pages/30.html
概要 装備品に付与される 特定のMasteryを2,4まで上げるとバフを得られる他、特定の箱や扉を開くのに必要な場合がある。 6まで上げると特定のAbilityのバフを得る Medic Lv 付与能力 2 ヘルスパックの使用時間を短縮 4 シールドパックの使用時間を短縮 6 蘇生時に自分のヘルスとシールドが全回復する Recon Lv 付与能力 2 Cybridsの場所がミニマップに表示される 4 フラッシュライトの距離が伸び、照らしている場所に隠れている敵を発見出来るようになる。 6 Stealth終了時に4秒間20%のダメージボーナスを得る Hacker Lv 付与能力 2 ドアの開放時間を短縮 4 ターミナルハッキング時に追加ポイントを獲得 6 スキャンフィールドが相手に見えなくなる Agility Lv 付与能力 2 ダメージを受けると2秒間移動速度が30%増加(クールタイム15秒) 4 ダッシュ速度が15%増加 6 Relocateが+1チャージされる Trapper Lv 付与能力 2 罠にかかった敵が判るようになる 4 マイントラップに引っかからなくなる 6 Proximity Mineに4秒間のスロー効果を追加 Acoustics Lv 付与能力 2 グレネードでダメージを与えた敵を5秒間表示する 4 発砲した敵をミニマップに表示する 6 Motion Sensorの有効範囲内にいると正体を暴かれたり位置を特定されたりすることがなくなる。 Engineering Lv 付与能力 2 ルートボックスを開ける時間を短縮 4 スペシャルルートボックス(金箱)が開封可能になる 6 Turretを1つ追加する Heavy Armor Lv 付与能力 2 最大ヘルスが20増加 4 最大シールドが20増加 6 Dome Shieldを通過した敵にダメージを与える +30から20へ弱体化 Cybrid Killer Lv 付与能力 2 Cybridへのダメージが30%増加 4 Cybridからのダメージが30%減少 6 Decoyが別のプレイヤーを攻撃するようになる Evasion Lv 付与能力 2 シールドが無い場合、アビリティーによる発見を防ぐ 4 しゃがんでいる間はCybridから先に攻撃されなくなる 6 Phase shiftが終了時再使用か早めに終了できるようになる
https://w.atwiki.jp/stones/pages/193.html
■Nasty Music (20 Bit-01) (1CD) The King Biscuit Flower Hour ■Lacerated (20 Bit-02) (1CD) The King Biscuit Flower Hour ■So Much Younger Than Today (20 Bit-03) (1CD) 1966.7.28 BACK / NEXT
https://w.atwiki.jp/kirby_return/pages/105.html
Section 6 Data master1/Step01.dat x4 0x41FCE148 31.61 x8 0x42E8A8F6 116.33 xC 0xC36D51EC -237.32 x10 0x3FA8F5C3 1.32 x14 0x41270A3D 10.44 x18 0x41675C29 14.46 x1C 0x4236CCCD 45.7 x20 0x3DCCCCCD 0.1 x24 0x00000000 0.0 x28 0x00000000 0.0 x2C 0x00000000 0.0 x30 0x3E4CCCCD 0.2 x34 0x00000000 0.0 x38 0x00000000 0 x3C 0x00000000 0 x40 0x00000000 0 x44 0x00000000 0 x48 0x00000000 0 master2/Step01.dat x4 0xC2960000 -75.0 x8 0xC0266666 -2.6 xC 0x43180000 152.0 x10 0x3FDC28F6 1.72 x14 0xC1200000 -10.0 x18 0x00000000 0.0 x1C 0x41840000 16.5 x20 0x3DCCCCCD 0.1 x24 0x00000000 0.0 x28 0x00000000 0.0 x2C 0x00000000 0.0 x30 0x3E99999A 0.3 x34 0x00000000 0.0 x38 0x00000000 0 x3C 0x00000000 0 x40 0x00000000 0 x44 0x00000000 0 x48 0x00000000 0 master3/Step01.dat と master4/Step01.dat x4 0x433663D7 182.39 x8 0x426AA3D7 58.66 xC 0x41C00000 24.0 x10 0xC1273333 -10.45 x14 0x3C23D70A 0.01 x18 0x00000000 0.0 x1C 0x41B33333 22.4 x20 0x3F000000 0.5 x24 0x00000000 0.0 x28 0x00000000 0.0 x2C 0x00000000 0.0 x30 0x3F000000 0.5 x34 0x00000000 0.0 x38 0x00000000 0 x3C 0x00000000 0 x40 0x00000000 0 x44 0x00000000 0 x48 0x00000000 0
https://w.atwiki.jp/neondaoc/pages/28.html
マスターレベル マスターレベルとは、全100個の偉大なる試練(要するにクエスト100個)に挑戦し成し遂げた者に与えられる特別なスキルです。 勝敗を左右する重要かつUber(めちゃすごい)なスキルもあれば、使いどころの怪しいスキルもあり、うまく使いこなすことが プレイヤースキルの見せどころになっています。 Battlemaster 主に殴り職(TANKやアタッカー)が習得出来るスキルです。TANKは悩んだらコレ。 Lv なまえ 効果 使い方 コメント 1 Sapping Strike 敵プレイヤーやペットとその周囲の敵のスタミナを25減らす 範囲350 最大16人まで巻き込む 武器スタイル(条件なし) End(スタミナ)消費がヤバいです 2 Faultfinder 敵プレイヤーやペットに対する攻撃に20.0DPSのEssence属性ダメージを20秒間付与する 無詠唱魔法(Instant)再詠唱2分 デメリットが無い、とりあえず使いましょう 3 Power Leak 敵プレイヤーやペットとその周囲の敵のpower(MP)を110減らす 範囲350 最大16人まで巻き込む 武器スタイル(条件なし) End(スタミナ)消費がヤバいですが、キャスターはこれ食らうと泣けます 4 Grapple 敵プレイヤーやペットを10秒間動けなくする、但し自分は12秒間動けなくなる。食らった敵は殴られなくなる。 射程150 無詠唱魔法(Instant) 再詠唱1分 使用にプレイヤースキルを要求されます 5 Essence Flames 範囲350以内の味方(自分含む)の武器に、10%の確率で発動するEssence属性のダメージ魔法を付与します 武器スタイル(条件なし)効果時間15秒 壁や扉を殴る時にどうぞ 6 Throw Weapon 敵プレイヤーやペットに手に持った武器を投げつけます 射程700 再使用は10秒 投げた後は10秒間武器攻撃が出来ない 職業によっては、これしか飛び道具が無い場合も 7 Essence Sear 周囲(の敵)に15%のEssence属性を下げるデバフを与えます 範囲350 武器スタイル(Essence Flamesからの2段目) 便利だが使う余裕が中々見当たらない 8 Body Guard グループメンバーを武器による攻撃から完全に保護します。保護される味方が動くと効果はありません。有効範囲150 無詠唱魔法(Instant)再詠唱0秒 立ち回りが要求される、神スキル 9 Essence Dampen 敵プレイヤーやペットのDEX(器用さ)を15%下げます 範囲350 武器スタイル(条件なし)効果時間15秒 微妙過ぎますが、2段目を使う為に必須 10 Essence Shatter 敵プレイヤーやペットとその周囲の敵が持つ有利な効果のある強化魔法(Buff)をランダムで1個解呪(ディスペル)します。 範囲350 武器スタイル(Essence Dampenからの2段目) リアルラックを要求される、運が良ければ凄いことになる Banelord ダメージディーラ(DPS職)が習得出来るスキルです。取れるならこれを取りましょう。 Lv なまえ 効果 使い方 コメント 1 Zone of Unmana 周囲の敵プレイヤーの詠唱速度を20秒間50%低下させる。 リキャスト5分 2 Primal Agony 周囲の敵プレイヤーのHp/Pow/Endを10%減少させる。 リキャスト5分 3 Oppression リキャスト5分 4 Inexorable Defeat 周囲の敵プレイヤーの消費Endを20秒間50%増加させる。 リキャスト5分 5 Tactical Insight 周囲の味方プレイヤーに攻撃が命中する確率を30秒間15%低下させる。 リキャスト5分 6 Snaring Tendrils of Power 周囲の敵プレイヤーに50%スネアを付与し、自分はスタンする。効果時間10秒 リキャスト5分 7 Chaotic Power 周囲の味方プレイヤーの攻撃が命中する確率を30秒間10%増加させる。 リキャスト5分 8 Agony Transmission 周囲の敵プレイヤーのHp/Pow/Endを20%減少させる。自身のHpを大きく消費する。 リキャスト10分 9 Demoralization 周囲の敵プレイヤーのスペックを30秒間50%減少させる。 リキャスト5分 10 Banespike 周囲の味方プレイヤーの攻撃ダメージを10秒間増加させる。 リキャスト5分 エッセンス属性 Perfecter Lv なまえ 効果 使い方 コメント 1 Purging Wave 範囲内のグループメンバーのDisease状態を解除する。 キャスト4.0秒 射程2,000 2 Purify Senses 対象(味方)のNearsightとSilence状態を解除する。 キャスト3.0秒 射程1,500 3 Sphere of Rejuvenation* 範囲内の味方プレイヤーのHpを100/5sec回復するWardを設置する。 リキャスト5分 キャスト20.0秒 範囲350 4 Greatness Concentration上限が20%増加する。 パッシブ 5 Font of Power* 範囲内の味方プレイヤーのPwを5%/5sec追加回復するWardを設置する。 リキャスト5分 キャスト20.0秒 範囲350 6 Determination Field* 範囲内の味方プレイヤーの受けるMezmerizeの効果時間を25%減少させるWardを設置する。 リキャスト5分 キャスト20.0秒 範囲350 7 Leaping Health 30秒以内に使用する1回のシングルヒールを範囲化する。 リキャスト5分 8 Restore the Soul 対象(味方)のRez sickを解除する。 9 Dissonating Ward* 範囲内の敵プレイヤーのPowを減少させるWardを設置する。 リキャスト5分 キャスト20.0秒 範囲350 10 Rampant Healing 30秒以内に使用する1回のグループヒールを範囲化する。 リキャスト5分 *リキャスト時間共有 Convoker Lv なまえ 効果 使い方 コメント 1 Summon Wood 2 Prescience Node 範囲内のステルス状態を視認できるようになるWardを設置する。Speedwarpとリキャスト共有。 リキャスト5分 キャスト2.0 範囲1,000 3 Power Trap 4 Speedwarp 範囲内の敵プレイヤーのスピードバフを無効にするWardを設置する。PrescienceNodeとリキャスト共有。 リキャスト5分 キャスト2.0秒 範囲2,000 5 Summon Warcrystal 6 Battlewarder 7 Dissonance Trap 8 Brittle Guard 20分間BrittleGuardを召喚する。BrittleGuardは1回だけmelee攻撃を防ぎ死亡する。 リキャスト5分 9 Summon Mastery 20秒間ペットのレベルを増加させる。 リキャスト10分 10 Crystal Titan Stormlord Lv なまえ 効果 使い方 コメント 1 Dazzling Array 2 Vacuum Vortex 3 Enervating Gas 4 Inebriating Fumes 5 Mental Siphon 6 Focusing Winds 7 Choking Vapors 8 Sense Dulling Cloud 9 Energy Tempest 10 Arcing Power Sojourner Lv なまえ 効果 使い方 コメント 1 Unburdened Warrior 2 Unending Breath 3 Reveal Crystalseed 4 Unmake Crystalseed 5 Ancient Transmuter 6 Gateway 7 Resistance of the Ancients 8 Forceful Zephyr 対象(敵プレイヤー)を10秒間掴みランダムな方向へ強制移動させる。掴まれている間はダメージを受けない。 1分間の免疫あり 9 Phase Shift 10秒間魔法や近接攻撃に対してほとんど無敵状態になる。 10 Mass Gateway Spymaster Lv なまえ 効果 使い方 コメント 1 Pickpocket 2 Decoy 3 Enduring Poison 4 Sabotage 5 Tanhlesnare 6 Poisonspike 7 Lookout 8 Siege Wrecker 9 Essence Flame 10 Blanket of Camouflage Warlord Lv なまえ 効果 使い方 コメント 1 Siege Master 2 Bolstering Battlecry 3 Cowering Bellow 4 Resillient Will 5 Guided Strike 6 Energizing Aura 7 Cleansing Aura 8 Defending Martyr 9 Leadership 10 Warguard
https://w.atwiki.jp/asigami/pages/360.html
曲名 アーティスト フォルダ 難易度 BPM NOTES/FREEZE(SHOCK) Quickening dj TAKA SuperNOVA 激11 150 333/13 STREAM VOLTAGE AIR FREEZE CHAOS 67 93 7 40 36 譜面 http //eba502.web.fc2.com/fumen/ddr/festival/quicken_4m_fes.html 動画 http //www.youtube.com/watch?v=JhuO8YnG66s (x2.0,NOTE) 解説 最初の方にある長い地団駄が特徴的。形は踏みやすいのでリズムだけ気をつけよう。 前半は音合わせ譜面、後半は8分踏み譜面になっている。ラストの滝は65連と長くビジステップも絡むので要注意。 名前 コメント コメント(感想など) フォルダEXTREMEになってたので直しました -- 名無しさん (2012-02-15 21 21 02) 地団駄でVOL上げられるし8分滝もBPM速いわけじゃないから落ち着いて捻れる。良譜面 -- 名無しさん (2012-11-23 15 51 05) 地団駄抜けたと思えば不意にスライドさせられる箇所が忘れた頃にやってくるからコンボを切りやすい。このレベルのプレイヤーは交互踏みを心掛けているはずだから戸惑うと思う。 -- 名無しさん (2012-11-23 18 08 46) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/pokecharaneta/pages/14204.html
草案 プレイヤーキャラ ルカリオ 名称不明(主人公) ブレイズキック必須 -- (ユリス) 2016-12-18 20 46 16 草案 バシャーモ 主人公 ブレイズキック必須 -- ( さなえ【ポケモン創作えほん】) 2023-03-31 16 32 11
https://w.atwiki.jp/kusoblog/
Master of Epic 通称MoEのつまらないクソブログをリストアップしていく非wikiです 荒らし対策のため編集不可能にしてあります MoEクソブログ クソブログと言えばそこら中に氾濫しています、読んでもちっとも面白くないブログの事ですね、 クソブログは特にネトゲ関係なんかにも多いです、MoEクソブログと言えばかなり多いですね。 そんなクソブログ達をどんどんリストアップしてクソ認定していこうという趣旨の非wikiです