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前ページ次ページ鋼の使い魔 トリステイン魔法学院の敷地内で、もっとも広い中庭に集められた生徒達が、それぞれに整列して、教師達を待っている。 やがてそこに学園長オールド・オスマンを筆頭に、教師達は生徒に対面するように並んだ。 オスマンは拡声の魔法をかけた杖に両手を乗せて、集まった二百人近い生徒達に向かって声をかける。 「諸君。本学院の今年度上半期の学期は、本日の正午をもって終了し、ふた月ばかりの休暇に入るわけだが、本年度は隣国との紛争などもあり、領地に帰っても休まらない生徒もおるだろう。 そこで儂は、通年確保しておる夏季休暇中の在学許可の枠を広げ、例年より多くの生徒や教師が学院に残れるように準備しておる。勿論、係累等後見人の承認は要るがの。 この休暇をどのようにつかうのも諸君らの意思次第である事を言っておこう。避暑に赴くもよし、独自に何がしかの研究に励むのもよいじゃろう。しかしこの学院の責任者として、 諸君らが壮健であって次学期を迎えられることを切に願っておる。 ふた月後にまた会うとしよう」 生徒側から感謝の拍手が送られ、次に教師達を先導とした移動が始まる。移動は学院の内壁正門で止まり、再び整列する。オスマンはそこで正門に向かって杖を構え、魔法で厳重な鍵を掛けた。 この鍵は原則、次学期の始業式まで掛けられたままになっている。裏門や脇の出入り口がいくつかあるから、学院に残る者たちにとって不便というほどでもない。 祭事の時に鳴らされるいつもとは少し違った鐘の音が学院に響いた。 終業式が終わり、生徒達は各々の予定に従って行動しはじめる。既に学院の裏門の前には生徒達を迎えに来た大小の馬車が並んで待っているのである。ルイズ・フランソワーズはまず、私物をトランクに詰め込むところから始めた。 「といっても、大したものはないのよね。姉さまのところに大体揃っているし」 ルイズの夏季休暇は、王都トリスタニアでアカデミー研究員をしている姉エレオノールが住むヴァリエール家所有の別宅で過ごす予定である。暫くの寄宿だが昔から使い慣れた勝手知ったる場所で、 わざわざ持っていかなければならないものはそれほどない。 したがって、ルイズの手荷物は貴族の旅荷としては比較的軽量な規模に収まった。 それを運んだシエスタ曰く、 「えぇ。ミス・ヴァリエールのお荷物はとてもよく纏められていて、他のお嬢様達が大型トランクを三つはお使いになるのに、ミス・ヴァリエールはお一つしか使われてませんでした」 人一人は優に入るトランクを引っ張るシエスタを連れて、ルイズは学院の本棟から少し離れた小塔に向かう。そこはコルベールが自分の為に学院で用意した研究室だ。 塔の脇に建てられた小屋からは細く煙が煙突より伸びている。ルイズが小屋の中に入ると、壮年の男が小屋の奥に作られた炉の火を落としているところだった。 「早かったじゃないか。手伝いに行こうと思ったんだが」 「煤けた格好で手伝いに来られても迷惑だわ」 「聞いたかい相棒、嬢ちゃんは使い魔である相棒の手なんて借りたくないってさ」 「それは困ったな。明日から職の手を探さなくちゃならないな」 「あんた達……!」 ルイズの癇癪が弾けると同時に炉の中に残っていた小さな火がかっと燃えて弾けた。溜まった煤が炉口から噴き出して二人と一振りに降りかかる。 二人は盛大にせき込んで、ルイズは息を吐いた。 「まぁいいわ。あんたはもう準備できてるの?」 「そこに置いてある荷物で全部だな。あとはコルベール師に挨拶して終わりだ。あの人は休みの間も学院にいるらしいな」 「休暇の時くらい家に帰ればいいのにね。何処の出身なのか知らないけど」 壮年の男は己の荷物が入った背負い袋を身体にくくりつけた。月日に焼けた金髪を長く後ろに撫でつけ、その動きは実年齢よりもいくらか若々しい。身なりからみて貴族ではない。しかし平民らしからぬ振る舞いに、 どこか気品がにじみ出ていた。 コルベールは自室に居た。窓の少ない塔の中は、埃っぽさと熱気が入り混じって、入ってくるものを立ち竦ませる不快さを感じさせた。 しかし塔の主人はそんなことはまったく気にしておらず、訪問者を快く迎え入れてくれる。 「おや、ミス・ヴァリエールにギュスターヴ君。今日は何か……?」 「はい。私はルイズについてここを離れますので、その間小屋の管理をお願いしたいのです」 自分の使い魔はこの禿頭の教師と仲が良いな、とルイズは前から思っている。趣味が合うのだろうか? そんな少女の呟きも知らず、コルベールは壮年の男――ギュスターヴの要請を聞きいれてくれた。 「ではお二人とも、休暇の間息災で」 「ありがとうございます。では」 「そう言えばシエスタは休まないのか?」 「メイド仲間のうちで何人かはこの機会に帰省するみたいですけど、私は残ってお仕事しますよ。お手当ても出るんですから」 「学院長も太っ腹よね」 裏門までの道でそう話していると、三人を誰かが呼びとめる。 振り向けば、赤髪の娘と青い髪を短く刈った少女が木陰から手招きしていた。 「ハァイ」 「なによキュルケ。私達急いでるんだけど」 赤髪のキュルケと言われた娘はルイズの険のある言葉に肩を竦ませた。 「ちょっと声掛けただけじゃない。もう少し肩の力抜いたら?」 「どうでもいいでしょう。で、何か用?」 「私達休暇中も学院に居るんだけど、何か休みの間予定があったら教えて頂戴、遊びに行ってあげるから」 「遊びに行って『あげる』ですって?」 ルイズのこめかみがぴくぴくと動いているのがギュスターヴから見える。この娘は感情の波が激しいことこの上ない。それを知っているくせに、キュルケはこう言い放った。 「だって貴方の事だもの。どうせ帰っても相手してくれるのがギュスだけじゃ、流石にギュスがかわいそうでしょう?」 「そ、そんなこと……」 「そんなことは、ないさ」 言いよどみかけたのを遮って、ギュスターヴは自信満々といった風に言った。 「俺たちはトリスタニアに行くんだ。ヴァリエールの末娘なら顔くらい見たい貴族だっているだろう。それほど暇じゃないかもしれないぞ」 「そうかしら?」 「そうさ。……だから遊びに行きたいなら素直にそう言ったらどうだ?」 「う……」 口ごもってキュルケは隣に居て沈黙を守る青髪の少女タバサに向けられた。 見返すタバサの目に表情はない。それが鏡を覗きこむような気分にさせた。 「……そうね。実はねルイズ。寮に残るのは女生徒ばっかりで男が全然いないの。当然よね、戦争になりそうなんだもの。だから退屈になったら、貴方のところにいってもいいかしら?」 ルイズは煮えかけた頭がだんだんと冷めてくるのがわかった。要するにキュルケは寂しいから構ってくれと言っているのだ。そう思えばほんの少し、自尊心がくすぐられる。 「来てもいいけど、姉さまも一緒にいるから居心地は保証しないわよ」 「あのお姉さんはいじり甲斐がありそうでいいわね」 キュルケの答えにルイズはさらに頭が冷めていくのであった。 寄越した馬車に乗せられたルイズとギュスターヴが到着するのが見えて、エレオノールは階下のロビーに降りることにした。 ヴァリエールの別邸は、王都の高級住宅街に数ある貴族の邸宅の中でも、上から数えた方が早い位に豪華な屋敷である。勿論ヴァリエール領にある本家と比べれば慎ましい出来であるが、調度品や建築の見事さは是非に及ばない。 ロビーでは使用人に荷物を託したルイズと、使用人について屋敷の奥へ行こうとするギュスターヴの後ろ姿があった。 それがちらっと見えただけでエレオノールは胸の奥がかっと熱く打たれてしまうのだ。 (あぁ、あの人もここで過ごしてくれるのね……) 一目会ったその日から、密かにエレオノールはギュスターヴへ思慕の情を募らせており、一時期は暇さえあればギュスターヴが立ち上げた百貨店に通いつめて、ギュスターヴの姿が無いか歩いたものだった。 ……その姿は周囲から「貴族の婦人が通い詰めるほど百貨店は良い店なんだ」というというように見られていたりする。おかげで店を切り盛りするジェシカは右肩上がりの左団扇である。 「……姉さま?」 出迎えに来てくれたらしい姉があらぬ方を見たままぼうっとしてるので、ルイズは手持無沙汰のままロビーに立たされる羽目になったのだった。 正気に戻ったエレオノールはルイズを連れて談話室に入ると、テーブルで薬湯と菓子を啄みながら学院での生活について事細かに聞き出し、オスマンが休暇中の寮滞在を認めた話を聞いて関心していた。 「よくそんな財布の余裕があったものね。アカデミーなんて予算を削られてしまうんじゃないかって汲々としてるのに」 「どうして?」 「軍備に国費がかかるからよ。アルビオンの奇襲で軍艦はほぼ全滅で、タルブでの合戦では勝ったけど王軍も被害甚大だそうだから」 そういうエレオノールに相槌をルイズは打てない。王軍の被害の一端は自分が行った虚無の発動が原因やも知れないから。 「王軍はタルブ戦役で功あった傭兵部隊を正規軍に組み入れたと聞くし、トリステインの格が落ちるというものよね。アンリエッタ女王には頑張ってもらいたいわ」 「姉さま、陛下を助けるのが私達貴族の義務でしょう?」 「当然よ。現にヴァリエール家は王家に資金と人足を供出したし、私もアカデミーでアルビオン軍が残した船から見つかった、砲弾の解析に駆り出されてるもの。うちで何もしてないのはあんたとカトレアだけよ」 「……仕方がないでしょう、まだ学生なんだもの……」 だがルイズは先日、内々にアンリエッタから彼女直属の女官としての権限を与えられているのだ。いざ王女からの命令があれば一目散に駆けつけなければならない。 その時は意外に早く訪れるのだが、ルイズとギュスターヴが別邸に着いたその日の夜、ギュスターヴはあてがわれた部屋で背中を伸ばしていた。 部屋を見渡すに一応、使用人用の部屋らしい。質素なベッドと椅子、テーブルと小さな衣装箱が一つだけ置いてある部屋だ。 「あまり歓迎されてないようだな、俺は」 独り言に答える声が荷物から帰ってくる。 「まぁ、仕えてる貴族のお嬢様がどこの馬の骨ともしれない男を連れてきているんだから、歓迎はされないわな」 答えたのは荷物に収まっている一振りの剣だった。知恵ある魔剣インテリジェンス・ソードの一つであり、古の虚無の使い魔『ガンダールヴ』が使っていたと自ら主張するデルフリンガーである。 「時に相棒よ。あんたはこれからどうするんだよ?お嬢ちゃんはひと夏ここで過ごすわな。その間それにつきあっているつもりかい?」 「そこなんだ、デルフ」 ベッドから起き上がって荷物からふた振りの剣を引っ張りだすと、それぞれをテーブルに乗せた。一方はデルフだが、もう一方は石でできた長剣だ。 「俺がルイズにアニマの使い方を教えたのは、一つにはそれがルイズの未来につながるものだと思ったからだ。この世界ではアニマの術を使えるものは居ない。ただ一人のアニマ術師になる。 あとはそれを自分で使いこなせるだけの精神を持っていれば自由に生きられるだろう」 世間知らずでわがままなルイズだが、ギュスターヴはそれが出来ると信じている。 「一つってことは、もうひとつあるんだな」 「始祖の祈祷書とやらが変化した卵型のクヴェルが気になる。鉛の箱にしまってあるが、あれは尋常な代物じゃない」 「アニマとやらが無い相棒に解るのかよ?まぁ、俺っちもありゃやばい代物だと思うどな……」 虚無に使われる立場のデルフから見ても、卵形と化した祈祷書は異常な存在なのだという。 「もしあれを再びルイズが手にする時があれば、ルイズ自身で制御できるようにならなきゃいけないだろう」 「それまでの訓練、ってことかい?」 「そんな時が来ないに越したことはないんだがな……」 ちらりと目が白い石剣を映す。 「嬢ちゃんに対する理由はそれでいいとして、あんたはその、なんだ……サンダイルってところに、帰りたくないのかい?」 「……帰りたいさ。帰って友人達に謝りたいな、黙っていなくなって済まないってさ」 「相棒は妻子居ないんだろ?その年でやもめたぁ、寂しいよなぁ……」 そこまで言って、デルフは何か閃いたようにカタカタと鳴った。 「解ったぜ、相棒がこっちに後ろ髪引かれて元の世界に帰る方法を探し渋っている理由。あんたは嬢ちゃんを自分の娘か何かみたいに思えて仕方がねぇんだ」 「ルイズが娘だって?」 「そうさ。手元で大事にしたいって気持ちがあるんだろ。だから離れるのを渋ってるのさ」 得意そうに魔剣は笑った。 だがそう指摘されたギュスターヴは、怒るでも笑うでもなく、むしろ神妙に表情を暗くして考え込んでしまうのだった。 「ど、どうしたよ?」 「……これが親の気持ちという奴のなのか?」 「いや、そうなんじゃないかって思っただけだよ。実際のところは知らないね」 そう言ってやるとギュスターヴはますます悩み深げにうつむいた。 皺を寄せて黙っている相棒をどうしたものかとデルフが考えていると、夜更けだというのに部屋を尋ねる者が居た。 「客だぜ相棒」 ノックにギュスターヴが答える間もなく訪問者は勝手にドアを開け部屋へと入ってくる。 部屋着に着替えたルイズだった。ルイズは部屋を一瞥し、自分の使い魔の境遇に文句をつけた。 「こんな貧しい部屋がこの屋敷にあったなんて知らなかったわ。私の使い魔に相応しくないと思うの」 「それで嬢ちゃんはどうするのよ?」 「明日から家令に言いつけて他の部屋を用意させるわ」 「別にこの部屋でいいだろう。気を使われると居づらくなる」 「あんたはそれでいいかもしれないけど、それで召使たちに舐められているんなら許しがたいわ」 部屋にやってくるなり青筋立てて息を巻くルイズに、先程まで考えていた事を頭に押しやり、ギュスターヴは言った。 「わざわざこの部屋に文句をつけにきたのか?」 「あっ、そうだったわ。姉さまと夕食を済ませた後、私宛に手紙が来たの」 これよ、とルイズが懐から出したのは小奇麗な封筒だった。送り主の名前はなく、ただ宛名だけが記されている。しかし、封蝋等の格式から見て、貴族の使う梟便で運ばれたものらしい。 「梟便?」 「伝書用に調教された梟に手紙を持たせて送るのよ。貴族の屋敷なら梟を受け入れる鳥小屋が天井裏にあって、そこに手紙を持った梟が入ってくるのよ。学院には何十羽も入ってこれる梟小屋が置いてあるわ」 「わざわざ梟に持たせるなんて手間暇かけるもんだな」 「中には自分の使い魔にやらせる人もいるけど……って、そんなことはいいのよ。問題はこの中身よ」 言ってルイズは剥がされた封蝋の下から便箋を取り出して見せた。その様子なら既に中身は確認済みなのだろう。 「読んでも構わないか?」 「汚さないでよね」 ギュスターヴは受け取ると、便箋に目を走らせる。ジェシカと手紙のやりとりをするようになって、一応日常の読文に支障はない。 「なんて書いてあるんだい?」 「かいつまんで言えばお茶のお誘いさ」 「茶ぁ?」 「もっと上品に言ってくれる?陛下からわざわざ謁見に来るようにという申し渡しよ。内々に送ってくるところを見ると、何か任務を与えられるんじゃないかしら」 一見、そう冷静にルイズは言っているが、内心では働ける事に喜んでいるに違いないと、ギュスターヴは思った。この娘のアンリエッタ女王への尊敬とトリステイン王国への忠誠は揺るがないものらしい。 「この手紙の日付を見ると明後日になっているな」 「そうよ。それまでに身の回りの物をそろえなくちゃいけないわね。明日は忙しくなるわよ」 「どうして?」 「休み一杯任務に費やすかもしれないから、明日のうちにめいいっぱい遊んでおくのよ。あと、買い物とか」 にひ、と意地の悪い顔をするルイズを少し疲れた気持ちでギュスターヴは見た。女の買い物に付き合うのはいつ何時でも大変なのだから。 前ページ次ページ鋼の使い魔
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Candy☆boy Candy boy nayuta/K∧N∧ Candy boy「Bring up...LOVE」(Amazon) 発売元・販売元 株式会社ドリームミュージック 発売日 2008.08.13 価格 1000円(税抜き) 内容 Bring up...LOVE 歌:nayuta 恋のカタチ 歌:K∧N∧ Bring up...LOVE instrumental 恋のカタチ instrumental 備考
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DRAGON FIST OAV ドラゴン・フィスト ORIGINAL SOUND TARCK OAV ドラゴン・フィスト ORIGINAL SOUND TARCK(Amazon) 発売元・販売元 制作:(株)ユーメックス 東芝EMI株式会社 発売日 1990.06.20 価格 2913円(税抜き) 内容 Lightning Bolt(臥龍昇天) 歌:橋本舞子 龍神の里 不思議な転校生 ふたつの過去 フェイロン・パワー 歌:村上日朗 恐怖のクローン実験 悲運の標的 幻想花 歌:橋本舞子 宝路の秘力 さよなら、冬香 Remind Forever 歌:谷口守 備考 「路」は「王」偏が付く。
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閉ざした水門を見張る偏在を残しワルドは立ち去った。 あの状況で脱出できるとは到底思えない。 だが最悪、誰かが助けに来る可能性を見越しての事だ。 使い魔がいなくなった事はすぐにルイズに気付かれるだろう。 その前に事を済ませる必要がある。 (まずはルイズ…彼女を手に入れる) その頃、ルイズはアニエスと手分けして彼を探していた。 捜索に当たる彼女の心中は穏やかな物ではない。 何故、気付いたやれなかったのか。 私はただデルフの言葉を鵜呑みにして安心していた。 その表情から暗い影を感じ取れていたというのに。 本心では私を戦いに巻き込みたくなかった。 戦いを嫌っているくせに参加する決意をしたのは私の為。 …いつもそうだった。 決闘の時もフーケの時も彼はいつも私の所為で傷付き、 何度も死にそうな目に合わされてきた。 それなのに彼はまだ私を守ろうと、私の役に立とうとしてくれる。 私はそれを当然だと思っていた。 使い魔は主人に絶対服従するものだと決め付けていた。 だけど、それは契約によるものなんかじゃない。 友達や仲間を想う気持ち、それが彼を動かしているんだ。 決闘のあったあの日、抱き上げて彼の無事を感謝した。 これからは自分が彼を守ろうと誓った。 胸の中の小さな命を守り通そうと決めたのだ。 それなのに、私は彼の事を見失った。 彼の実力を知ってからは、その強さに甘えていた。 私が守らなくても大丈夫だと考えていた。 だって強いから…私よりも強いんだもの、必要ないに決まっている。 だけど違った。 自分を殴り飛ばしたくなるほどの嫌悪に襲われる。 フーケのゴーレムと戦っていた時には判っていた。 どんなに姿が変わってもアイツはアイツだった。 彼は呼び出された時と変わらぬ小さな犬なんだ。 例えどんなに力を持っていても怖いし寂しいんだ。 一人でいるのは辛いし悲しい。 そんな事はずっと前から知っている。 それなのに私は一度も彼の胸の内を聞こうとしなかった。 何故一度も私が守るとは考えなかったのか…!? それは信頼なんかじゃない。 私は何も知ろうとしなかった卑怯者だ…! 目から大粒の涙が零れ落ちる。 悔しくて悔しくて、そしてとても悲しい。 もし見つけ出したなら彼に謝ろう。 『ごめんなさい』って言おう。 恥ずかしくても構わない。 これは言わなくちゃいけない事なんだから。 壁に額を押し当てて泣く彼女の背を見つけ、ワルドは声を掛けた。 「大丈夫かい、ルイズ?」 「あ…ワルド様」 振り返りながら袖で涙を拭い取る。 熱くなった頬をごまかしワルドに向き合う。 こんな姿は見せたくないという彼女の精一杯の虚勢だった。 嘆く彼女の姿にワルドは困惑した。 (まさか使い魔を捕獲した事に気付かれたか…?) だが、行方不明になった事は判ってもどうなったかは知るまい。 平然を装いながら彼はハンカチを取り出して彼女の頬を拭う。 「泣かないでおくれ、僕のルイズ。 初陣を前に緊張するのは仕方ない事さ」 「違うんです…私、アイツを利用していた! アイツは道具なんかじゃない! それを知ってたのに…」 喚きだすルイズの姿にワルドの眉が跳ね上がった。 涙の理由が彼女の使い魔と知って不意に嫉妬に駆られた。 思わず言うべきではない反論がワルドの口から漏れる。 「何を言っているんだルイズ。 たかが使い魔じゃないか、メイジにとっては手足に過ぎない。 自分の手足を気遣ってどうするというんだ?」 「そうじゃないの…。 私は彼を守りたい、彼が私を守るように。 契約なんかじゃない、私の意志で」 見上げるルイズの目には静かな力が篭っていた。 それにワルドは言葉を失った。 まるで母親が子供を思うかのように、 恋人同士が互いの事を想う様に彼女は告げた。 この主従には決して裂けぬ絆があるとワルドは確信した。 もはや彼女の使い魔を捕らえた今、説得する事は不可能だろう。 せめてルイズを先に説き伏せていればガンダールヴも従ったかもしれない。 脅迫する事も無理だ。そのような手段に出れば彼女は自決する。 懐にハンカチを戻すワルドの手に硬い感触が当たる。 それはミス・シェフィールドから渡された魔法薬。 その瞬間、彼は息を呑んだ。 脳裏に浮かぶのは別れ際に告げた彼女の言葉。 “飲んだ人間の心は永遠に失われ貴方に従属する。 ある意味では婚約者を殺す事になるのかしら” 「戦いたくないなら戦わなくてもいいってアイツにそう言ってやりたいの。 ウェールズ陛下は私が説得するわ、だから!」 「ルイズの気持ちはよく判ったよ、僕も一緒に探そう。 でも、その前に気持ちを落ち着かせた方がいい」 そうルイズに言ってワルドは城内に駆けていく。 そして戻ってきた時には手に杯を持っていた。 中にはホールで出された高級ワインが満ちている。 それを彼女に差し出しながら、彼は語った。 「はい、どうぞ。飲めば少しは気が楽になるよ」 「え…ええ、ありがとうございますワルド様」 一瞬、躊躇を見せたが彼女は杯に手を伸ばした。 ワルドの言う通り焦っても仕方がない。 気分転換も必要かもしれないと彼女は思ったのだ。 そして受け取ろうとした瞬間、ワルドの手がびくりと震えた。 「ワルド様…?」 「あ、ああ。済まない、どうやら少し酒が回ったらしい」 そう弁明しながら彼女に杯を手渡す。 “いつも余裕ぶった子爵にもお茶目な所があるんですね”と、 彼女は笑いながらそれを一息に煽った。 喉を鳴らして彼女の中に流し込まれる赤い雫。 刹那。彼女の手から杯が滑り落ちた。 カランと乾いた音を立てて地面を転がる。 ワルドの視線の先、そこに立っているのはルイズではない。 桃色の髪を靡かせる彼女に良く似た『人形』。 その瞳は意思の輝きを失い何も映さない。 彼女が彼女足り得る『決定的な物』が欠け落ちた姿。 「お…おお……」 それを前にして初めてワルドは己が罪を知った。 彼の手元から零れ落ちた瓶が地面に砕けて散った。 自分の婚約者だった、愛くるしかったあの少女はもういない。 僕が殺したのだ、自分の手で、彼女を! まだ取り返しがついたかもしれない。 あの使い魔の危険性を伝えて彼女を説き伏せる。 彼女を一番に想うならそれだって出来た筈だ。 否、『レコンキスタ』より袂を分かち彼女を守る道もあった。 それを選ばなかったのは…僕には彼女以上に大切な事があったからだ。 先に進みには何かを切り捨てていかなければならない。 トリステインを裏切り『レコンキスタ』に身を寄せたように、 今度はルイズを、愛する者を切り捨てた。 何故、こんな事になってしまったのだろうか。 いつの間に自分はこんな生き方しか出来なくなったのか。 何かを得ようと足掻く度に、大切な何かを失っていく。 …そして失った物は二度と戻る事はない。 「ルイズ…」 その名を呼んで彼女を抱き留める。 しかし、それにも何の反応を示さない。 彼女への想いを流し切るように涙が溢れた。 小さな体を抱き締めながら無くした物の大きさに咽び泣いた。 自分にそんな資格などないと分かっていながら。 「…もう君はこれ以上苦しまなくて済むんだ。 それに君の使い魔も戦わないでいい。 誰も傷付かなくていい、これが最良の選択なんだ」 弁明じみた独り言を囁きながら彼女を頬を撫でる。 流れ落ちた涙の跡は既に乾いていた。 彼女の泣き顔も笑顔も思い出せない。 残されたのは霞みがかった思い出だけ。 「さあ行こう。二人で世界を手に入れよう」 彼女の手を引いて歩き出す。 もう後戻りは出来ない。 全てを得る為には前に進むしかない。 それがトリステインを、ルイズを裏切った僕に出来る償い。 犠牲にした者達の為にも、僕は大義を成さなければならない。 そうでなければ彼女達の犠牲が無駄になる。 それだけは決して許されない。 生命を感じさせない冷たい手を引きながら彼は呪った。 どうせやるならルイズと共に自分の心を壊して欲しかった。 気が狂いそうになる自責の念と後悔に押し潰されながら思う。 しかし、はたと気付いて彼は笑った。 「は…ははは…」 壊す心はどこにある? 人形のように言われるがままに国を裏切り、ルイズを壊した僕のどこに? 既に僕の意思などどこにも無かった。 ミス・シェフィールドは知っていたのだ、薬を渡せば僕が必ず使うと。 彼女惜しさに裏切る事も警戒する必要は無いと。 だから僕は連中に操られない。 そんな事をせずとも既に彼の手中の手駒なのだから。 ワルドは知った。 彼が最初に切り捨てた物は“自分の心”だったと…。 「……なんという事だ」 建物の陰で息を潜めていた影が呟く。 その視線の先にはワルドとルイズの姿。 まるで信じられない物を見るかのように二人を見据える。 月明かりを浴びて輝く金髪。 使い魔を捜索する為に分かれたアニエスがそこにいた。 彼女は聞き込みでワルド子爵と共に行動していたという情報を得ていた。 そこで先にワルドを探して彼の行方を聞こうと思ったのだ。 そして中庭へと出て行くワルド子爵の姿を見つけて後を追った。 だが、そこで驚くべき物を目撃してしまったのだ。 「まさか、こんな事が…」 アニエスの顔が赤く染まり震え上がる。 彼女の手は傍らに置いた小銃に掛かっていた。 いつでも撃てる様にしておいたそれを退かす。 そして再び顔を出して、彼女達の姿を追う。 彼女が見据えるのは、しっかりと握られた二人の手。 まるで『俺に付いて来い』と言わんばかりの強引さ。 それを前にしてアニエスの心臓がドキドキと高鳴る。 「二人の逢引の瞬間に出くわすなんて…」 百戦錬磨のアニエスと言えど、恋の方は訓練生。 突然、ワルドがルイズを抱き締めた時は心臓が破裂するかと思った。 そりゃあ生きて帰るか分からない決戦前だ。 愛する者がいるなら思いの丈を伝えたいと思うのは当然。 『戦場から帰ったら結婚しよう』ぐらいの事は言うだろう。 もしルイズが拒否したのにワルド強硬手段に出ようものなら、 アニエスは発砲してでも彼を止めるつもりだった。 年端もいかない少女を押し倒す背徳な光景を思い浮かべ、 込み上げる怒りと鼻血を堪えながら彼女は建物の影で銃を構えていた。 (しかし、まさかルイズの方も悪からず想っていたとは) 抱きすくめられたにも拘らず微動だにせずワルドを受け止めた。 それは愛ゆえに成せる事だと彼女は解釈する。 前後の経緯から彼女はこう推測した。 ①ルイズが杯を煽る瞬間、ワルドがプロポーズした。 ②その発言に驚き杯を取り落とすも、彼女はそれを受けた。 ③それに感激してワルドは感涙しながらルイズを抱き締めた。 ④ここから先はアニエスの妄想、よって記す事さえ憚られる。 顔を真っ赤に染めながら城内に入っていく二人を見届ける。 ようやく二人がいなくなった事に安堵の溜息を漏らす。 しかし恥ずかしがりながらも彼女は二人を好奇と羨望の目で見ていた。 自分にもああいう相手が出来るのだろうか。 思えば軍務に感けていて、そういった経験は無いに等しい。 しかし、まるで興味が無いかといえば嘘になる。 だが、自分の周りにいる男は軟弱な連中ばかりだ。 アニエスを見る彼等の視線に恐怖以外の物はない。 貴族であるギーシュとて例外ではない。 何人もの人間を思い浮かべては消していく、 そんなアニエスの脳裏に突如として浮かぶ一人の姿。 それはモット伯の侍従を務める、あの桃色の髪の少年だった。 瞬間。熟れたトマトの如くアニエスの頬が赤く染め上がる。 「違ァァう! 私はノーマルだァァーー!!」 アニエスが重なり合う月に向かって吼える。 必死に否定する雄叫びもアルビオンの風に飲まれて消えた。 同時刻、城門を警備していた衛兵達の断末魔と同じように。
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ヤッターマン ヤッターマンの歌|音屋吉右衛門[世良公則×野村義男] imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 ヤッターマン「ヤッターマンの歌」(Amazon) 発売元・販売元 株式会社ドリーミュージック 発売日 2008.01.30 価格 1000円(税抜き) 内容 ヤッターマンの歌 Days 〜デイズ〜 ヤッターマンの歌 〜カラオケ〜 備考 初回ワイドキャップ: imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。
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初恋限定。 -ハツコイリミテッド- TVアニメ『初恋限定。』オリジナルサウンドトラック 初恋限定。 オリジナルサウンドトラック(Amazon) 発売元・販売元 発売元:株式会社ランティス/Mellow Head 販売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント 発売日 2009.08.05 価格 2857円(税抜き) 内容 feel your heart Future Stream 歌:スフィア 乙女日和 はりきっていこ〜 恋の瞬間 first love impression 噂の野獣Z そよ風に乗って 小さな好日 恋のエチュード 現在進行形 心は曇り空 悩みの原因は… ワンダフルデイズ 夢の中のワルツ 冴えないなぁ… あなたの横顔 この恋の辿り着く場所 そして、歩き出す 天邪鬼な彼と彼女 それってどうなの? トラブルサムタイム その瞳に映るもの ノートの落書き wishful thinking! パニック・ウェーブ 煩悩の囁き 並んで歩こう 恋愛の交差点 pure heart 幻想の場所、それぞれの道の上(OST ver.) 歌:marble 切なさは愛しさ この気持ち、伝えたくて 素直になれない もつれる言葉 あなたが好きだから 初恋limited(TV size) 歌:marble 備考
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