約 1,636,789 件
https://w.atwiki.jp/emulife/pages/21.html
MU online 見方 J/J 鯖/プレイヤー J=日本 F=外国 M=混合 E 経験値レート S ステータスポイントレート lvlSP 転生に伴うステータスポイント D ドロップ率レート %のあるものは実質 例:E100・・・経験値が通常の100倍 Evil Spirits対応表 一覧 Borneo MuOnline 2 /Closed http //bmu2.mine.nu/index.php F/F E9000 D90% lvl600SP- 海外 蔵1.02d Lv600 新マップやセットアイテムがあるが、Lv600は酷すぎ C-ViZioS Mu F/M E0.8 D0.3 海外 ハートや、メダル、箱、宝石が高確率でドロップ DarkZorn /Closed http //sier.no-ip.info 8080 F/M E700 D0.6 海外 Frienz MU F/M E1250 or 40 D40 lvl400SP持ち越し 海外 蔵1.02 DS6BC7 season2 本鯖に近い仕様 サーバも軽く、多国籍向け 平片仮名会話できる HellEntryMU F/M E700 D70% 海外 HEROIA F/F E700 D100% 海外 蔵1.1T 少し重めのサーバ LockDown MU /Closed http //lockdownmu.com/ F/M E2000 D100% 海外 蔵0.99C++ DS4BC7 ちょっと変わったアリーナが楽しめる MU-Evil CG F/F E9999 D75% 海外 蔵1.01e muSFYCKE F/F E4 D80% 海外 蔵1.02D ハッスルし放題 MU-Kaimas F/M E99 D30% 海外 蔵0.97m+1.0e Lv1000 注意:混トロイ 宝石も少なく、マップも地味な仕上がり MuRebirth /Closed http //www.murebirth.com/home.html F/F E700 D80% lvl400SP300 海外 蔵1.01X セット装備 380装備 DS1-6 BC1-7 petフェンリル 建物や仕様にオリジナリティがある オートリセット MuRigel Philippines F/F E700 D50% 海外 蔵v.1.02d DS1-6 BC1-7 petフェンリル Soul MU F/F E1000 D90% 海外 蔵1.0z Sunrise MU F/F E D% 海外 Siason3 Episorde2 召喚師、新マップ完備 TosaMu Online F/F E1000 lvl350~400SP持ち越し 海外 蔵1.0M CC 結婚機能有り、店:+11装備販売 転生のしやすさは随一 結婚機能は(サーバアナウンスしてくれるが)果して必要なのかが疑問 UFO /Closed http //mu.ufogames.net/ F/M 海外 蔵1.21U+ zhyper F/M E500 D50% lvl400 海外 蔵1.02M 奇迹私服 F/F 海外 中国 鯖リンク集 中国GM咲盟 F/F 海外 中国 鯖リンク集 関連リンク mu.emu wiki Top 100 Mu Online sites 海外link GAMES top 100 海外link Free Private MU Servers 海外link
https://w.atwiki.jp/ssdmset2/pages/97.html
第4試合SSその1 運否天賦 「秘密院恭四郎?秘密院の当主の?お前あんなやばい奴とトラブったのか?」 「そんなに有名なの?その人。」 薫崎が知らないのは少し意外である。短くない期間社会の裏側と関わっているので、名前くらいは聞いたことあると思ったが。 コイツらしいといっちゃあらしいが、自分の関心のないことの知識が欠けすぎだ。 この依頼も、秘密院の情報を抜けるのが俺ぐらいだから頼んだ訳ではなく、いつもの情報収集の延長線上の感覚でやっているらしい。 単純なトラブルを抱えている訳ではなく、もっと複雑な事情があるのか。 俺は、独自に作成していた「将来薫崎が喧嘩を売りそうな相手リスト」の中から、秘密院恭四郎の情報を選び、メールで送信する。 「ほい、送った。コイツでいいのか?」 薫崎に確認を取る。 情報を集めたと言っても、分かっていることはそう多くは無い。 秘密院恭四郎。十八歳。希望ヶ崎高校所属。 世界中のメディアを支配する秘密院財閥の現当主。 両親は彼が幼い時に死亡。他の兄弟も相次いで死亡したため、当主の座を得る。 秘密院家の歴代当主と同じように魔人であるが、詳しい能力は不明。使用されたという目撃証言もない。 ダンゲロスハルマゲドンで幾人もの戦闘魔人を倒したことや、相次ぐ一族の不審死と関連付け、強力な能力を持っているという噂がある。 魔人剣術の使用者。こちらは使用が確認されており、大半の魔人なら殲滅可能な腕前である。 大まかにはこんなところか。 広大なネットの海から情報をかき集めても、わずかこれだけ。 俺の能力は、情報系能力者でもトップランクであると自負しているが、そもそもオンラインに無い情報は抜けない。 あまり自分の情報が流れないように普段から心がけているということだろう。 「へえ、こんな顔なんだ。…うん、好みじゃないなー。男前だとは思うんだけど。もっとチョロそうな人がいいや。」 薫崎の声が聞こえる。最後の言葉は聞き捨てならないが、問題はそこではない。 …こいつ、顔も知らないのか? 顔も名前も、立場も知らない、特定個人の情報を求めてきた。 普段コイツが買うのは「なんか良さげな場所教えて」、とか「襲ってきそうな人いない?」みたいな雑な情報だ。 それを考えても、今回は不自然極まりない。 「おい、いい加減説明しろ。何があった。」 俺の言葉に、薫崎は口を開け、驚きの表情を見せた。 「…言って無かったっけ?」 「聞いてない。」 「ああ、ゴメンね。ほんとゴメン。時間無いからさ。焦ってた。」 薫崎は申し分けなさそうな表情をすると、言った。 「ゴドー。ドリームマッチって知ってる?」 ドリームマッチ。 長い間、世界で起きている集団昏睡事件の原因。 「無色の夢」を見た二人の人物が、夢の中で戦う。 敗者に凶夢を、勝者に瑞夢を、それぞれ与えるという。 「…お前、選ばれたのか。」 知っている奴は少なくない情報であるが、秘密院の名前を知らない薫崎が知っている道理もない。 知っているとすれば、それは自分が参加者になっている場合くらいだろう。 「うん。だから、少しでも情報が欲しいの。」 …驚いた。勝つ気があるらしい。そんなに見たい夢があるのだろうか。 「…つっても、これ以上は多分調べらんねえぞ。」 時間を掛けて、別の手段を用いれば話は別だろうが、今回は時間がない。 「うーん。情報はこれでいいや。それとは別に、頼みたいことがあるんだけど、良い?」 「いいぞ。」 即答する。 断る理由はない。勝つなら勝つで、コイツの依頼を受けられる。 お得意様だし、こいつと話すのは、それなりに楽しい。 負けたら負けたで、こいつがいつ死ぬかの心配をしばらく(もしくは永遠に)しなくてよくなる。 まあ、勝ってくれるに越したことはないから、仕事は真面目にやるが。 ああ、詳しい話を聞く前に、これだけは言っておかねば。 「報酬は前払いで頼む。」 取れるものは取れる時に取る。 昏睡されて、踏み倒されるのだけは御免だ。 ☆ 薫崎香織。二十歳。私立 高卒。一人っ子。調香師の両親をもち、ともに健在。 十歳の時に「手のひらから香水を分泌する」能力に覚醒。異臭騒ぎを引き起こす。逮捕歴なし。 一見すると、普通の女性であるが、彼女の周りでは事件が多発している。 集団昏睡。集団暴動。乱闘。etc それらの事件に彼女が関与したというはっきりとした証拠はない。 証拠はないが、上記全ての事件が発生する数時間前に、彼女の姿が確認されている。 また、匂いを嗅ぐことで効力を発揮するドラッグを販売しており、その関係で暴力団とトラブルを起こしている。 トラブルを起こした暴力団では、彼女が現れた前後に、必ず内部抗争を引き起こしている。 これらを総合的に判断した結果、彼女は「匂いで敵を操る能力」を隠している可能性が高い。 現在の所在地は調査中。 これが、秘密院財閥のデータベースにおける、俺の対戦相手の大まかなプロフィール。 それを基にして、対策を立てる。 相手の能力は強力ではあるが、対処は容易。 匂いで人を操るのならば、匂いを嗅がなければいい。 問題なのは、相手が能力以外で何をしてくるか、だ。 普段ならば、対策をしっかり練れるが、今回は時間がない。 現実側を急襲しようにも、居場所が分からないので不可能だ。 決着をつけるなら、夢の世界しかない。 情報の収集は時間いっぱいまで継続するとして、他に今できることといえば、後は装備品の準備か。 持っていく品を吟味するため、倉庫へと移動する。 俺は必ず勝つ。 能力の有無など関係ない。 秘密院家の当主である以上、勝ち続けるのが俺の義務だ。 ☆ 気が付くと、グラウンドらしき場所にたっていた。 …これがドリームマッチか。 装備品を確認する。 薫崎対策のガスマスク。愛用の刀。拳銃と銃弾六発。装備には問題が無い。 次は周囲の確認。 自分が立っているのはおそらく校庭である。 周りを見渡すと、校舎が見える。 校舎には見覚えがない。 歩き回り、慎重に周りを調べる。 …誰もいない。薫崎の出現地点はここではないようだ。 学校の外に出たら即敗北となるのだから、薫崎がいるのは、校舎だろう そちらの方を向くと、学生服をきた少年がこちらへと歩いてくるのが見えた。 目には生気がなく、動きもどことなくおかしい。 顔をふらふらと回し、何かを探しているようだ。 男は、俺を見つけると、こちらへと走ってきた。 俺は構えを取り、相手を迎え撃つ。 戦略も技術もない。単なる突進。何も問題が無い。 相手のタックルを躱し、首を撥ねる。 少年の首は宙を舞い、地面に落ちた。 呼吸を整え、刀を鞘へと戻す。 …こいつは何者だ。 普通に考えるなら、薫崎の手によるものだろう。 何らかの方法で操って、俺にけしかけてきたのか。 とわいえ、さほど脅威ではない。 この程度なら、たとえ数十人いようと切り殺せる。 問題なのは、薫崎が何をやろうとしているか、だ。 自分の能力を直接俺に用いるのではなく、他の人間に使って俺を襲わせてきた。 俺があらかじめ匂いに対する対策を練ることを予測していたということ。 ここまでの判断ができる奴が、この程度でやれる、と思うはずがない。 目的があるとすれば、時間稼ぎか。 何か手がかりが残っていないか、と男の体を調べる。 小型のカメラが胸ポケットに仕込んである。 情報収集もしている。 見たいのならば見ればいい。見られて困るようなことは何もない。 薫崎の能力が直接戦闘に向いていない以上、校舎で隙を伺っている可能性が高い。 この短時間で少年を送りこめたということは、まだそこまで遠くにはいないはずだ。 居場所の特定もそう難しくない。 問題は、この場所が相手にとって有利すぎるということ。 人間がいて、罠を仕込む場所が多い校舎。 準備をさせればさせるほど、俺は不利になっていく。 早く見つけて殺さなければ。 校舎の入り口をみると、先ほどの男と似たような状態の学生たちが待ち構えている。 …校舎に入るには、全員殺せってことか。 刀を構えなおし、校舎へと突入する。 ☆ 「…また死んだ。これで十人目だぞ。」 ゴドーはタブレットを見ながら言った。 「能力は使ってる?」 「使ってねーな。これ。いい腕してやがる。」 ほれ、とゴドーは、タブレットの画面をこっちに向け、映像を再生させる。 …うわ、すごい。ほれぼれするくらいいい腕だ。 これなら確かに、能力を使う必要なんてない。 「能力が分かんないのはキツイな」 情報アドバンテージはあちらの方が大きい。 こっちにはゴドーがいるとはいえ、あちらのバックには組織がある。 情報収集能力ではかなわない。 特に私の能力は公的機関の記録に残ってしまっているから、秘密院君には筒抜けだろう。 自分の腕には自信があるが、秘密院君には通じないと思ったほうが良い。 とはいえ、分からないものはしょうがない。 「考えたってしょうが無いじゃない。どうせ考えたって分かんないんだしさ。」 「確かにそうだが。」 ゴドー眉にしわを寄せて、答える。 「弱すぎて使ってないって可能性もあるんだし。考えすぎても勝てるものもかてないよ。」 「つっても、ただ温存してるだけだったらどうするんだ?」 「その場合は諦めよう。」 私たちは二人とも直接戦闘に向いていないし、対策を取られていて、私の能力は彼に通じない。 相手が戦闘に特化した能力者だったら遅かれ早かれ死ぬ。 だったら、余裕のある内に全戦力をブッコンだ方が勝率が高い。 それでも届かないならしょうがない。 まあ何が悪いのかと言えば、至らない自分が悪いのだ。 結果は甘んじて受け入れよう。死にはしないし。 私の返答を聞くと、ゴドーは凄く微妙な表情をした。 「…お前、結構度胸あるよな。」 そう答えると、ゴドーは目の前にいる人たちに目を向けた。 そこには、三十数人の学生が立っている。 さっきの子たちの死は無駄じゃない。 より多くの子達を集める時間を稼いでくれた。 「放心」で意識が朦朧としている状態で、「暗示」を使った刷り込みを行えば、ある程度は言うことを聞いてくれる。 仕込みにさっきより時間を掛けたから、もっといい動きをしてくれるだろう。 「うん。そろそろいいかな。」 「暗示」の方が、そろそろ聞き始める時間だ。ここで、刷り込みをすれば、私の言うことを聞いてくれるようになる。 私は能力を発動させ、若い肉体向けに調整した「暗示」を分泌させる。手のひらから分泌された香水は、彼らの鼻に届き、嗅覚を、そして脳を刺激する。 朦朧とした頭の状態で、特定の刺激を与えることで、彼らの脳は、鳥の刷り込みのように、最初に見た人間(つまり私)を従うべき人間と誤認する。 「よーし、上向いて。」 私の声に反応し、全員が上を向いた。 「右手挙げて。」 全員が右手をあげる。 …よし、成功だ。 これで最低限の判断力を持ち、私の言うことを聞いてくれる駒の完成。 「で、これからどうすんだ?」 その様子を見ていたゴドーが言った。 「私は皆を連れて、秘密院君が来るのを待ってるから。ゴドーはさっき言ったの、やっといて。」 彼は下の階から順々に見て回っているようだったから、ここまで来るのには少し、時間がかかるだろう。 なら、アレの準備をする時間だってある。 できれば使いたくはないが、保険はあるに越したことがない。 どうせゴドーは戦力にならないのだし、こっちにいるよりは意味がある。 「…マジでやんの?アレ。」 嫌そうな顔をする。そんな表情をされると、私が悪いことをしているみたいな感じになってしまう。 いや、確かに褒められたことじゃないけど。やって損はないはずだ。 「まあアレはあくまで最終手段だよ。大丈夫だって。たぶんこの人数なら押し切れる。奥の手もあるし。」 「お前の大丈夫はイマイチ信用できねえんだよなあ。」 ゴドーは溜息を吐き、失礼なことを言うと、荷物を持って外へでる。 「じゃあ私達は待ってよっか。秘密院君が来るのを。」 エントランスにいた生徒たちは、私の言葉に反応し、扉の方へ向く。 無駄に急いだり、他人を押しのけたりすることもない、自然な動きだ。 うん。いい動きだ。これならどうにかなりそう。 皆の力があれば、魔人の一人くらい余裕で殺せる。…多分。 私は後ろで応援するから。死ぬ気で頑張って欲しい。 ☆ 薫崎の位置は特定した。 生徒を操って、教室で籠城している。 生徒の数は三十人程、配置も確認。 扉側に多く配置されており、窓側には数人立っているだけだ。 …これならば問題ない。勝てる。 壁をよじ登り、窓の前に行くとガラスを破って、中へと侵入する。 窓側の何人かが反応し、俺を倒そうと襲い掛かってくる。 先ほどの奴ら達と比べて動きが早い。が、遅い。 彼らの間をすり抜け、薫崎の方へと向かう。 薫崎も銃を構えているが、それが発射されるよりも俺が切り殺す方が早い。 薫崎の体から血が飛び出て、手から拳銃が落ちる。 …手ごたえが浅い。殺し損ねたか。 後ろから飛びかかってくる生徒を避け、後退する。 派手に血が飛び出たものの、致命傷ではない。 先ほどの奴らよりも的確な、生徒の攻撃を避け、次の機会をうかがう。 次はしくじらない。 俺は再び生徒をかいくぐると、薫崎の下へと向かう。 完璧なタイミング。今度は確実に首を刎ねられる。 ぶううん 今まさに切りかかろうとした瞬間、何処からか羽音が聞こえ、俺は首筋に熱い痛みを感じた。 …失念していた。匂いに反応するのは、人間だけではない。 特定のにおいは、虫の行動を制御する。薫崎が操れるのは人だけではない。先ほど近づいたときに、匂いを付けたのか。 意識が一瞬朦朧とし、踏み込みが甘くなる。 首を狙っていた太刀筋は、手元が狂い、胸元を切りつけた。 即死でこそないが、致命傷に近い。 自分の意識と動きが、少し、ずれる。 生徒たちが襲い掛かってくるのを避けつつ、考える。 毒はそう簡単には回らない。俺が毒で死ぬより早く、薫崎の命は尽きるはずだ。 しかし、コイツは油断がならない。 これ以上何かをする前に殺さなければ… もう一撃加えようと、足を進める。 毒のせいで足が上手く動かせない。 生徒の一人が、俺に飛び交かかり、動きが止まる。 振り払おうとするが、上手く力が入らない。 薫崎の方を向くと、何かのスイッチを手にしている。 ズドン! 爆発音と共に、天井が崩落した。 ☆ 爆音を聞こえる。薫崎がスイッチを押したのだろう。 天井に爆弾を設置して、自分ごと生き埋めにするなんて、思いついても、普通、やらない。 薫崎曰く、「運が良ければ、自分が死ぬ前に相手が死んでくれるよね」。 …やっぱりあいつはどこかおかしい。思いついても普通やらないだろうに。 「どうせ死にはしないから」と、最後の最後に運任せの策を持ってくるなんて、馬鹿としか言いようがない。 アイツの馬鹿に巻き込まれて秘密院もかわいそうに。 俺の体も徐々に消えていく。 外を見ると、グラウンドが徐々に消えていっているのが見えた。 夢の戦いが終わったということか。 自分の体を見ると、徐々に透明になっていっている。 さて、勝利したのはどちらなのだろうか。 ☆ 目が覚めると、いつもと違う天井が目に入ってきた。 ベッドから体を起こし、向きを変えると、コーヒーを飲んでいるゴドーが目に入った。 「…うーん。おはよう。ゴドー。」 …思い出した。 ゴドーを夢の中に連れていくために、彼の家へ泊めてもらったんだった。 ドリームマッチの記憶は覚えているということは、私はどうにか勝利したらしい。 最後はグダグダになってしまったとはいえ、勝ちは勝ちだ。 「飲むか?」 ゴドーはコーヒーを差し出す。 ありがとう、と言って、私はそれを受け取った。 「結局、お前はどんな夢を見たんだ?」 「うん?夢なんか見てないよ。」 「あ?」 「だって、夢でなんでもできたって面白くないでしょう。」 現実は不自由で、不完全で、自分の思い通りになんか全然なってくれない。 それが嫌になる人の気持ちは分かる。わかるけど、だからこそ上手くいった時は凄く嬉しい。 叶えたいものがあっても、簡単にそれを成し遂げてしまっては、充足感も何もあったものじゃない。 自分の手で、苦労して、成し遂げるからこそ嬉しい。 私はそれが何よりも好きなのだ。 「じゃあ、なんでリタイアしなかったんだよ?そっちの方が楽だろ。」 「ペナルティが嫌だったからだけど、それ以外に理由がある?」 何時目覚めるか分からない悪夢なんて誰だって嫌だろう。 そりゃあ全力だって出す。 秘密院君も本気だったし、あれぐらいはやらないと。 ゴドーは何も言わず、呆れたような表情をしている。 …まあ人の意見はそれぞれだし。分かってもらえない時だってある。 少し、寂しいけれど、仕方がない。 何も得られない戦いだったけど、たいていものはそうだろう。 「ああ、でも。何も得られなかったわけじゃないか。」 「何のことだ?」 ゴドーは聞き返す。 う。つい口からこぼれてしまった。 ゴドーは怪訝そうな表情でこっちを見ている。 「いや、何でもない。何でもない。…ねえ、それよりなんか食べ物ないの?お腹空いちゃった。」 ゴドーはこっちをしばらく向いていたが、立ち上がって台所へと向かった。 ふう。注意をそらせてよかった。 ゴドーの部屋に泊まれてよかった、なんて恥ずかしくて口には出せない。
https://w.atwiki.jp/menofwar/pages/71.html
検索 -resource resource +entity entity +-fauna -fauna +-vehicle -vehicle +-vehicle tank_medium +-vehicle mk4 mk4f.def +construction construction +flora flora +fx fx +humanskin humanskin +inventory inventory +landscape landscape +particle particle +service service +interface interface +action action +background background +cursor cursor +editor editor +font font +pages pages +profiles profiles +scene scene +skin skin +text text +map map +editor_tut editor_tut +multi multi +single single +1 1 +2 2 +3 3 +bonus bonus +shader shader +bump_specular bump_specular +debug debug +postprocess postprocess +shadow shadow +set set +ability ability +blow blow +breed breed +rus rus rifle.set +difficulty difficulty +environment environment +interaction_entity interaction_entity +construction construction special.inc grenade.inc fauna.inc +interaction_terrain interaction_terrain +multiplayer multiplayer +units units soldiers.set squads.set vehicles.set +panel_control panel_control +registry registry +stuff stuff +stuff gun 120mm_l50 +talk talk +target target +tip tip +vision vision +properties properties +animation animation +human_fsm human_fsm +selection selection +shadow shadow +texture texture +common common +fx fx +land land +wound wound +music music +sound sound +animal animal +chicken animal ddie.wav(動物の鳴き声などが収録されているフォルダに存在する謎のサウンド) +cannon cannon +crush crush +detonation detonation +fire fire +hit hit +human human +mission mission +push push +vehicle vehicle +weapon weapon +world world +video video +environment environment +intro intro +mission mission
https://w.atwiki.jp/azounoman/pages/16.html
1412 Equals are Equals 問題 http //acm.pku.edu.cn/JudgeOnline/problem?id=1412 解答方針 構文解析については1460 Firefightersと基本的には同じ. 解答例 import java.util.*; public class Main { public static void main(String[] args) { Scanner sc = new Scanner(System.in); while(true){ String ans = sc.nextLine(); if(ans.equals(".")) break; Polynomial anspoly = (new Evaluator(ans)).evaluate(); while(true){ String sample = sc.nextLine(); if(sample.equals(".")) break; Polynomial samplepoly = (new Evaluator(sample)).evaluate(); if(anspoly.equivalent(samplepoly)) System.out.println("yes"); else System.out.println("no"); } System.out.println("."); } } } class Evaluator{ String str; int size; int c; Evaluator(String s){ str = s.concat("$"); size = s.length(); c = 0; } public Polynomial evaluate(){ return expr(); } private Polynomial expr(){ Polynomial ret = term(); while(true){ while(str.charAt(c)== ) c++; if(str.charAt(c)== + ){ c++; ret = ret.plus(term()); } else if(str.charAt(c)== - ){ c++; ret = ret.minus(term()); } else if(str.charAt(c)== ) ||str.charAt(c)== $ ){ break; } else{ // } } return ret; } private Polynomial term(){ Polynomial ret = factor(); while(true){ while(str.charAt(c)== ) c++; if(str.charAt(c)== + ||str.charAt(c)== - || str.charAt(c)== ) ||str.charAt(c)== $ ){ break; } else{ ret = ret.mul(factor()); } } return ret; } private Polynomial factor(){ while(str.charAt(c)== ) c++; if(str.charAt(c)== ( ){ c++; Polynomial ret = expr(); c++; return ret; } else{ if( 0 =str.charAt(c) str.charAt(c) = 9 ){ int retnum = num(); Polynomial ret = new Polynomial(retnum); return ret; } else{ Polynomial ret = atom(); return ret; } } } private int num(){ int retnum = 0; while( 0 =str.charAt(c) str.charAt(c) = 9 ){ retnum = retnum*10 + (str.charAt(c)- 0 ); c++; } return retnum; } private Polynomial atom(){ char v = str.charAt(c); c++; while(str.charAt(c)== ) c++; if(str.charAt(c)== ^ ){ c++; while(str.charAt(c)== ) c++; int k = num(); return new Polynomial(v,k); } else{ return new Polynomial(v,1); } } } class Polynomial{ TreeSet Term terms; public Polynomial(){ terms = new TreeSet Term (); } public Polynomial(int x){ terms = new TreeSet Term (); if(x!=0) terms.add(new Term(x)); } public Polynomial(char v,int k){ terms = new TreeSet Term (); terms.add(new Term(v,k)); } public Polynomial(Polynomial p){ terms = new TreeSet Term (p.terms); } public boolean equivalent(Polynomial p){ Polynomial p1 = new Polynomial(this); Polynomial p2 = new Polynomial(p); Polynomial sub = p1.minus(p2); return sub.terms.isEmpty(); } public void add(Term t){ if(terms.contains(t)){ Term s = terms.tailSet(t).first(); Term c = s.contract(t); terms.remove(s); if(c.coefficient!=0)terms.add(c); } else terms.add(t); } public Polynomial mul(Polynomial p){ Polynomial ret = new Polynomial(); for(Term t this.terms){ for(Term s p.terms){ ret.add(t.mul(s)); } } return ret; } public Polynomial plus(Polynomial p){ Polynomial ret = new Polynomial(); for(Term t this.terms) ret.add(t); for(Term t p.terms) ret.add(t); return ret; } public Polynomial minus(Polynomial p){ Polynomial ret = new Polynomial(); for(Term t this.terms) ret.add(t); for(Term t p.terms) ret.add(t.neg()); return ret; } } class Term implements Comparable Term { int coefficient; int pow[] = new int[26]; public boolean equals(Object o){ Term t = (Term)o; for(int i=0;i 26;i++){ if(this.pow[i]!=t.pow[i]) return false; } return true; } public int compareTo(Term t){ for(int i=0;i 26;i++){ if(this.pow[i]!=t.pow[i]) return this.pow[i]-t.pow[i]; } return 0; } //integer x public Term(int x){ coefficient = x; for(int i=0;i 26;i++) pow[i] = 0; } //term a^k public Term(char v,int k){ coefficient = 1; for(int i=0;i 26;i++) pow[i] = 0; pow[v- a ] = k; } public Term mul(Term t){ Term ret = new Term(0); for(int i=0;i 26;i++) ret.pow[i] = this.pow[i]+t.pow[i]; ret.coefficient = this.coefficient*t.coefficient; return ret; } public boolean contractable(Term t){ Term ret = new Term(0); for(int i=0;i 26;i++){ if(this.pow[i]!=t.pow[i]) return false; } return true; } public Term contract(Term t){ Term ret = new Term(0); for(int i=0;i 26;i++) ret.pow[i] = this.pow[i]; ret.coefficient = this.coefficient + t.coefficient; return ret; } public Term neg(){ Term ret = new Term(0); for(int i=0;i 26;i++) ret.pow[i] = this.pow[i]; ret.coefficient = -this.coefficient; return ret; } }
https://w.atwiki.jp/ssdmset2/pages/3.html
更新履歴 取得中です。 ここを編集
https://w.atwiki.jp/ssdmset2/pages/62.html
口舌院 焚書 プロローグ 宇宙暦五〇八年――銀河の片隅の保養惑星「ネオ宇宙沖縄」宙域にて。 音を越えた旧世紀、光を越えた今世紀、そして次の世紀は何を越えるというのだろうか――? 次の世紀の住人達は越えるものも見当たらず、泥濘のような平和に足元まで浸っている。それは怠惰の末に意志を食い潰し、人類は緩慢な滅びに向かうことを望んだからなのかもしれない。 正義の帝国対悪の共和国と言う「昼ドラ(ソープ・オペラ)」でも使い古されたネタである。 福祉のゆりかごに抱かれたいい年のおっさんが妄想している。帝国の還暦も何度目? 定期的に訪れる懐古趣味といえば都合はいい。 そんなこんなな三文(スペース)オペラの幕開けだ。星々の海に乗りだすがいい――。 んー……はいはい、と。当の帝国の皇女様は昨日読んだ紙の本の内容を思い出していた。 姓名は自称するところ「口舌院(くぜついん)・焚書(ふんしょ)」。 つまり立って歩いてるだけでここ宇宙世紀において電子情報に押しに押されて文化財にまで押しこまれた紙の本を焼き払うことを宣言しているのだ。端的に言ってしまえば、まぁ困った貴人である。 外見は、控えめに言って「紙(神)」だろう。 人類が上位次元である二次元へ上昇(アセンション)する手段は今世紀に至っても確立されておらず、人々はなおあがき苦しんでいた。 すべての芸術家が理想の「二次元美少女」に少しでも近づこうとする中、焚書を一目見たネオ宇宙彫像画の大家(たいか)は己の生涯を賭したところでけして辿り着けぬ境地を知った。 理想のイデアたる二次元を三次元上に落としこもうとする彼の中でのすべての試みが、ネオ宇宙少女漫画雑誌『張王(ちゃお)』にのおまけにくっついていたペーパークラフトに堕した瞬間である。 三次元上に現出した二次元の存在、つまり焚書は絵に描くことしかできない究極の美少女であった。 が、そんなこと今はどうだっていい。 帝国第七方面艦隊沖縄分遣支隊――旗艦「ご機嫌いかが、私はいつも元気です(※古日本語直訳)」第三艦橋。人類史を紐解いてみても有数の大帝国、その力の一端に皇女様はいきなり捕まっていた。 ≪「宇宙」という冠詞を加えただけでリゾート地としてのブランドは健在なのね。安直だけど。≫ 首元にネオ宇宙日本刀の切っ先を突き付けられながらも焚書はわりとそれとそういったどうでもいいことを考えていた。思考は漏れ出し、焚書の紙(髪)に焦げ目(電子)と言う名の文字情報を走らせる。 それは、前世紀の住人であるところのもう一人の囚われ人をして感嘆せしめるほどに流麗な筆の流れであった。 ところで常人であるなら、この鉄火場でそんなことを考えたりはしない。 あなたと同じ旧世紀――つまりは西暦二〇一六年前後、日本人としての価値観を半分宿すこのおひいさま(姫様)はのんき、ということになるのだがそこはご理解いただければ幸いである。まぁ、皇族なんてのは、だいたいがこんなものである(偏見)。 あぁそうそう。異なった時間軸か、もしくは並行する別世界からやってきた彼女の片親と皇統との馴れ初めについて詳しく語るとすれば、ラノベ(※ライトノベルの略、若者向けに皇室賛美を謳う右派小説のことを指す)八冊分の分量が必要となるのでここは割愛としよう。 ちなみにこれからのエピソードについて微に入り細に穿って記述するとなれば、ネオ宇宙広辞苑の「く」からはじまって「ん」で終わる分くらいは必要となる手前、所々省略させてもらうことを先に断っておこう。 故に、偉大にして聡明なる口舌院焚書様の右斜め前百二十三度くらいに、異世界からやってきた親戚筋のおっさんが捕まっていた、その事実を今更思いだしたように記述したとこととてご容赦いただきたい。 彼はこうしている間にも背景で常に喋りまくっているのだが、残念ながらそのすべてを記録に残すわけにはいかない。主にそこを削らせていただくはやむを得ないことなのである。 具体的には前世紀の文豪太宰治の名作『走れメロス』の分量、一万字程度に収まるように編集せねばららない。 「いやまさか宇宙艦隊に包囲されるとは思ってはみなかったね弟君はさぞ君のことが嫌いとみえる骨肉の争いというか口舌院的には塹壕口内炎(ざんごうこうないえん)と言うべきなのだろうか戦場なだけに皮肉なものだね僕が≪話が長いわ≫口舌院言論(くぜついんげんろん)である以上君が眠る時間がないというものでイライラするのもわかるだがそのおかげで無色の夢が詰まったネオ宇宙神田神保町(うちゅうかんだじんぼうちょう)で買った古書は僕が読むことになったしそれでいいじゃないか≪いい加減黙って≫それにしても――」 ≪話なげー≫ 若干苛々(イライラ)とした様子で口を開きもせず、それでも礼を、腰まで伸ばした髪の上に書き散らす。 ≪丁寧に講釈ありがとう? 言論≫ わずかばかり髪がゆれる、それだけのしぐさ。それだけで懐かしく、いとしく思える墨の香りが艦橋内に薫り、染み渡るようだった。 艦橋に詰めていた要員は老若男女を問わずわずかばかりも逃すまいと深呼吸をする。美少女の吐息だけを吸って生きられるなら酸素はいらないという先人の教えに倣った結果である。 これには分艦隊司令官「砂糖ヶ原(さとうがはら)・リオデジャネイロあきこ」宙軍准将も苦笑い。かぐわしきに最も近いというのに、刀の穂先を首筋に置いたまま微塵たりとも揺るがせないことを褒めるべきだろうか? いいや、砂糖ヶ原は悦んでいたのだ。 この銀河で最高の美少女を手中に収め、最も近いこの場所で血潮を浴びる権利を有したことを。その血はどれほどに美味であろうか、 ただ、同じ空気を吸いこむだけで悦に浸る輩を蔑み、心の中で嘲った! あぁ、彼女の心中――昏い喜びに浸っていたことに誰が気付いただろうか。 ……いた。 一瞥(いちべつ)だ。 横顔を見る。薄目で見る。実に平凡だ。平凡な感情だ。皇女は目を閉じた。 声を聴く。欹(そばだ)てて聞く。実に美声だ。皇女は耳を澄ませた。 口舌院言論はナイスミドルだ。焚書は脳裏に浮かんだイメージを努めて追いだす。 噤んでいた口を、開く。 舌を、動かす。現帝の女院たる焚書は号して――。 「口舌院」。 ≪ねえアッキー≫ 「私はね 三十一文字(みそひともじ) 越えてるよーな おはなしなんて 聞きたくないの」 ≪改名なさい≫ 口舌院焚書は長話が嫌いだった。ついでに言うと長い姓名も嫌いだった。 つまりは名付けの母親(ゴッドマザー)になってやるから、弟を裏切って私の下に就け。反乱の片棒を担げということであった。 「……」 しばしの沈黙が場を支配する。 その声に、口舌院言論を除く一同が呆(ぼう)――となっても何もおかしくはなかった。 真球の珠を転がすように淀みなく何よりも自由で、何よりも透き通っている。神が配置した綺麗な音階が演奏される。 いいえ、むしろこれは音の神(トルネンブラ)そのものか。この美しい音! 愛らしい声は! 誘いを受けたこと、何より拝聴したこと、武人としてこの上なき誉であろう。 だが、軍人として受けた教育が屈服を許さない。 これ見よがしに下手な歌を詠われて、たまらず返しの歌を吐きだす。 これが名歌であったなら首をはねていただろう。力ある言葉に身が焼かれる一瞬――前の一瞬に。 リオデジャネイロあきこはこの一瞬のために生きているのだから。意味のないツイート(つぶやき)であるからこそ双方は命を拾ったことになる。 「神に嫌われ 古に倣いて 弟(おと)殺し 独り立つには やらねばならぬか」 名付けに神性を見出すのは洋の東西を問わず、この銀河においても例外ではない。父たる神、母なる神、それに代わって教え導く「代父母」の思想に「神(ゴッド)」が冠されたのは当然のことかもしれない。 だが、リオデジャネイロあきこは「カインとアベル」の故事を引き合いに出してこれに反撃する。 「音」と「弟」を掛けた詞(ことば)についての解釈は大いに分かれるだろう。 そればかりではない。生涯数えて五(こ)百と八(ば)の歌合戦、注釈研究、有職故実(ゆうそくこじつ)は数知れず、星の数。 つまり世の中、暇人が多かった。 ≪……の最期に一服する時間を頂戴≫ 機械化とAI任せが過ぎたあまり一兆総活躍しない社会と化したネオ宇宙大日本帝国。 そんな中、ピラミッドの頂点の一歩前に立つ皇女「口舌院・焚書」はおそらく銀河一多忙な人物である。 説得は無理と踏んだか、あきらめたか、本当に珍しく暇を乞うた。部下に対して一日に十三時間労働を強いる彼女は自分にも厳しい。 「――許可します」 短歌を詠む素振りがあったら即座に首をはねよ、それが先程は未遂に終わった事の流れである。方面艦隊ひとつと引き換えにして構わないから姉上を弑(しい)しせしめよ、それが生きていたなら賢君と名高い、もうひとりの弟宮(おとみや)の遺訓であった。 無論、彼は姉の手によって既にこの世の人ではない。 だが、従兵の三角定規・クアラルンプール山田はそのような事情を知る由縁もなく、その言葉を待ち望んでいた。美少女と同じ空気を吸いたい――、それはひどく平凡で当の焚書は一顧たにしない感情である。 無論、先程から空調は切ってある。髪が燃えるその煙を、芳香を味わうために今、息を止めているのだ。酸素の味すら煩わしく思えたためである。 この距離では言葉さえ聞き取れず、読み取れない。ならば香りだけはと、そう思いながらも眼を皿のように研ぎ澄ます――。 くるりくるくる、くるくるり。ちょっきん。 可愛らしい仕草で直(すぐ)と伸びる紙色の髪の内、一房ばかりを束ねていた黒い(インク)リボンをするするとほどく。即座に巻き取り、≪ちょきんちょきん≫と可愛らしい丸文字を周囲にあざとくも見せびらかせる。 振袖をゆすって、ぽおんと掌の上に転(まろ)びでた和鋏でちょちょっと切り取る。 これから作るのは文字通りの髪巻き煙草である。焚書の髪に練り込まれた有機コンピューター「ひとまるくん」は今から己の一部を燃やされると知っていてなお、けなげにも硬化をやめない。 すべては言葉がこぼれないために。 帯に留めた流行りのアニメキャラを象った根付をそっと撫で、印籠型の煙草入れから細刻みの次に刻みが細かいシャグ煙草を取りだす。 いささか余談になるが、焚書はアニメが大好きである。ジャンルは問わない。 続いて喫煙も好きなのだが、中身は前近代の読者が思うそれとは異なる。文字通り言葉を燻すのだから。 新鮮な【言の葉は】普段喫んでいる味だ。 しかし、白と黒、卸したてで新しく薫るインクもよいものだが、焚書が特に好んだのは経年の熟成によってセピアに変色した古書であった。煙る草、紙もまた草である。 旧暦二〇XX年に講談社より出版された『ダンゲロス1969(著:架神恭介(かがみきょうすけ))』を中心に様々な古本、稀覯本を刻み、ブレンドした逸品『ラクティ☆パルプ』。 現役女子高生を焼いた匂いに混じってどこか蟹らしい風味が美味しい。それ以上に恋に【燃え尽き融けて】いく切なくも甘い海鮮風チョコレートの味がこの宙を渡る船に祝福を与えるようであった。 これには部下のメキシコ人、ティアモの監修も得ている。彼にはざっと数百年前の時間軸に飛んでもらい、とある高校生のところに出張してもらったがつい最近帰ってきたところだ。 遥か未来の日本人である焚書の下にはワールドワイドな人材が揃っていた。 西暦時代の煙草が有したニコチンやタールの害とは無縁。何より頭にいい。 いささか余談になるが、口舌院焚書が一番好きなひみつ道具は「アンキパン」である。こうして彼女の手によって現実となったのだから。記憶は記録となり【消えていく】ことはない。 シュッ、チッ ボゥ・・・・ジジ・・・・―――― 灰が落ちる。ポイ捨ては厳禁と言うことで足元では旗艦艦長、浪漫農園(ろまんのうえん)・北広島ジョニーが口を開けて待っていた。体勢については想像にお任せする。 これは司令官は艦において便乗者に過ぎない規則上の優先と言うもので、根性焼きははしたない。煙草の【落ち葉拾う舌】ならばというおくゆかしい感情から生まれたやむを得ない職掌と言える。 代わりに、処刑と言う最大級の誉れであり穢れをいただいたというのは先述した通りである。 それを見て口舌院言論はぽんと思いついたことを喋りくる。いいえ、実はずっとしゃべくっていたのだが、それを周囲が気に留めないのは訓練の賜物である。臣民の納税は無駄ではなかった! 口舌院言論は変態チックな白スーツに、古めかしいアポロキャップが恐ろしいほど似合っていなかった。重ねるが彼の挙動に誰も気を留めないのにはもうひとつ理由が≪うるせー≫……約一名例外。 「ほう君たちはカニバリズムを志向しているのだねカニバリズムとはつまり蟹ばるつまり壇ノ浦で蟹が死肉をほうばることに忌避感を覚えた山口県民が生み出した方言と言われている要するにMANGAやTSUNAMI同様二十一世紀初頭に日本語おや君たちの言う古日本語だったねから国際語に輸出されたひとつと言われているのだがいやはや懐かしい香りがするこれはみんなで行った言葉狩りの匂いだね言葉狩りと言うのは口舌院家では紅葉――【君に届けよ】」 時に、記憶という現象は五感の内「嗅覚」と特に密接に関わっていると言われている。 細かい原理については省くが、心理迷彩によって外界と視覚を訴えかける文字情報を遮断し、聴覚に働きかける詠唱も努めて防いでいたが、従兵のクアラルンプール山田に辿り着いた匂いは防げなかった。 そう、誘導したというのもある。言葉と文字に寄り添う口舌院であるなら誰もが警戒した。その裏を突いた。もし、タバコの煙がアルファベットであったら、焚書の首は落ちていたのだから。 【言の葉は】 【燃え尽き融けて】 【消えていく】 【落ち葉拾う舌】 【君に届けよ】 「言の葉は 燃え尽き融けて 消えていく 落ち葉拾う舌 君に届けよ」 クアラルンプール山田の口を借りて完成した三十一文字の魔法は即座にその威力を示す。ボーイ―ソプラノが第三艦橋に響き渡り、目指すは一直線、炎の舌と言うか十億度の火炎放射が口舌院焚書に突き刺さる! ……予想外の方向から、予想外の誰かが、予期せぬタイミングで、しかも口から火炎放射。 美少年の口から火炎放射。なんで!? たとえ、どんな知恵者としても火炎放射だけは読み切れない、その自信があった。この衝撃と動揺に、書籍で言うなら新刊本から古本屋送りになるくらいの年齢であるリオデジャネイロあきこもネオ宇宙日本刀を反射的に手放さざるを得ない。 そして、この瞬間、焚書の首は自由になるものであり――。 「死ねえ!!!」 それと同時に、二〇〇〇億度からなる熱と光の束が第三艦橋周囲の空間を抉っていた。 この混乱の中で為すべきことを為したのが銀河第一の詠み手だった。 「我が姓(かばね) 奏(そう)してこれを 口舌院 燃(も)す書すなわち 日嗣(ひつぎ)の薪」 「万(よろず)の星 落ち続く空 汝らここに 誰もが欲する 夜明けとならん」 「地に足を 我を見るのだ 東へ西に 暗と星の 端境(はざかい)にて」 重力制御から離れ、地の楔から解き放たれた焚書がまずしたことは、己に視線を向けさせること。 今天照(イマアマテラス)ここにありと天下万民に知らしめることだった。すべて宇宙の孤児となった乗員、私が照らし、地を定める。 地球がまだ地球と言われていた時代では当たり前の常識をこの時だけは思いだすことをはじめる。音の早さで秩序を取り戻す第三艦橋で、続々と被害報告が上がってくる。 ところで口舌院焚書と口舌院言論は当たり前のように健在だった。 焚書の髪に練り込まれた知育型データベースの名は「ひとまるくん」。「ひとまる」とは「人麿」であり「火止まる」。紙色の髪は実に繊維質でありながら今年で二五三三億度の炎を止めるほど耐火性に優れており、何より綺麗で美味しかった。 つまり十億度の熱線とは二五二二年前に通り過ぎ去った温度であり――、二〇〇〇億度もまた彼女を殺すには五三四年遅すぎたのである。 そして、たった数首の歌、それだけでこの場は掌握された。 それだけだ。それだけである。続いて潜宙(ステルス)していた、焚書の旗下にある宇宙艦隊が出現したことも決定打では無かったのだ。たとえそれが分艦隊の十倍を越える規模であったとしても。 焚書にとっては喜ばしい。皇統に対する狂信的といってよい教育はここに結実した。 最初からひれ伏していたものがいた気もするが、おそらく気のせいだろう。 焚書にとっては皇族に対する敬愛を通り越した崇拝が前提の作戦と考えれば複雑な気分だったかもしれないが、そこは使えるものは何でも使おうというエゴの精神である。 完敗? いや、最初から負けていた。 宮中のさえずりスズメどもの暗闘が表立っての殺害を許容しなかった結果がコレであった。 分艦隊を切り離し、サボタージュを決め込んだ方面艦隊司令長官の面の皮の厚さを見習うべきだろうか? それとも忠義の相手を選べ、軍人としてのキャリアアップを果たせという親心だろうか? 砂糖ヶ原・リオデジャネイロあきこは考えた。 それ以上に、凡俗の感情に流されたことを武人として恥じた。 ≪アッキー≫ ≪私の百人一首になりなさい≫ 三十一文字紡ぐ時間があれば貴様を灰(ハイ)と言わせてやる。本気で私を怒らせないでと囁いた。 百人一首とは大将首を口説き落としては自分の部下にコレクションしようという焚書の悪癖である。既に三十四人ばかりが首を狩られて(ヘッドハンティングされて)、さんざこき使われていた。それを思えばひるみもするだろう。 だが、今の充実した八時間労働、定時退庁。惜しいが、惜しくない。 「再びを 垣間見るには 御簾(Miss)もなく 表返る碁に 白もなし」 「今一度 歌壇に埋まらず 歌合戦 誉となして 凱歌と帰る」 今はただ銀河最強の歌人と歌合戦を出来る好機にすべてを捨てた。 弟君との紅白歌合戦が目前に迫っていることもわかっている。白組リーダー直々の誘いを断るなど愚の骨頂。 けれど、戦いたいのは歌人としてか、武人としてか、今はわからなかった。 ≪( ゜Д゜)ハァ?≫ 澄まし顔をしながら顔文字を髪上に流すのはひどくミスマッチだった。 けれど、それと同時に目まぐるしく紙色の髪に縦横無尽、墨色の電子文字が走る。はじめは白に黒が混じる程度だったのが、古今東西、名句が飛び交う内に比率が傾いていく。数千年分の蓄積は第七世代には荷が重いか。 終いには本人さえも言葉にならない何かをぶつぶつと呟きだしていた。 身体強化の短歌、と言っても言葉に出さないうちには自己暗示の範疇に過ぎないのかもしれないが、それだけで自称身長一八〇センチ(※実際は一五〇センチ)の小柄な体から、陽炎のように熱が立ち上るのを感じた。 「オセローの 真似事するか それよりも 兵棋の駒に 顔を赤めよ」 「幻を 友とする者 我は好まじ 無職の夢で 現見直せ!」 叱責の歌を詠う。人類の九十八%が無職となったこの銀河でそんな夢に何の意味があるのだろうか? 仕事とは趣味である。だが、二〇〇億人もいれば趣味でも戦争は出来る。他の列強に征服戦争を挑み、全宇宙を統一する。そんな稀有壮大な夢を夢と笑う声を焚書は許さない。 口舌院焚書は現実主義者である。夢を夢のまま終わらせず、いつだって現実に変えてきた。 だが。それが今とは限らない。 既に彼女のものになった艦隊で、排出口のスイッチに手を伸ばしたのも彼女であった。睨みつける視線はそのままに、戦う機会すら与えられず、ぽかりと開いた暗黒の渦の中にリオデジャネイロあきこは落ちていく。 何に使うか専門家以外には理解不能な松本式メーターが並ぶ中、でたらめに押した計器の中に緊急脱出用ポッドの射出ボタンがあったのは狙ったことではない。どうとでもなってしまえと思ったのは確かだ。 次会った時こそ、あの長い名前を変えてしまえばいい、そう思わなければついふて寝をしてしまいそうだった。 「いや、いいの。あのままだと消してしまいそうだったから」 五七五も今は忘れて自分に言い聞かせるようにしていう。 「いや驚いたね君がここまでお膳立てしておいて見逃すとはあの宙流を辿ると第二皇子派の艦隊だったねああそうだそろそろ宇宙子午線を越える頃じゃないか子午線の祭りをしなくてはねというか僕はどうして眠りながら喋っているのだろうかまぁ睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠と言うものがあって僕はそのどちらも的確に休みながら喋り続けることが出来るわけでいやこれでは言論の自由と言うものが形無しじゃないかいつもの十分の一も喋れていないね――」 文字を挟んで口舌院言論の自由を奪う気にも今はなれなかった。 ただ、私が戴冠するその日になったら言論の自由を大いに制限してやろう、憲法改正だ。そう思っただけである。 「『無色の夢』を見てる寝言でもこんなにうるさいのね……。本家の人たちかわいそう」 割と自分のルーツには敏感な焚書であった。 改めて思索に浸っていると、それに割って入る声あり。今度は意図的に無視しているのになぜか混ざってくる言論ではなく、通信手だった。端正な顔、なのになぜか右目付近に青あざを作った 「殿下、折鶴より通信入っております」 ≪つないで≫ 折鶴とは秘密魔人結社『手折結党(たおるけっとう)』七十二代目党首「折笠(おりがさ)ネル」が設計(※彼女も百人一首の一人である)を担当し、素材および資金提供「口舌院焚書」の下、建造された最新鋭ネオ宇宙戦艦である。 当初はそのあまりに短い名前に、造幣局からセンスを危ぶまれたが、設計者が発した「お馬鹿!」の一言でGOサインが出たという武勇伝も残されている。 職人が一枚一枚手漉きで仕上げた最高級和紙をふんだんに使用した装甲は二五三三億度の熱戦をものともせず、七十二層に折りたたまれたハニカム構造はそのどこかでG7級の大質量兵器を防ぎ、こと防御力において銀河最高と呼ばれる今時珍しいハンドメイド軍艦であった。 その外観はバカな鳥ことフェニックスの骨、もしくは折り紙の鶴を想起させた。 「殿下。素極端役(すごくはやく)詠(よむ)でございます。言祝ぎも望まれてはいないようなので修辞は排して手早くお伝えいたします。全次元における無色の夢の罹患者リストが完成しました。ただ今……そちらに送付いたしました」 ≪ありがとう≫ 名は体を為すって素敵なこと。素極端役詠は自分の役目を果たすと即座に通信を切った。 たぶん、砲撃を指示したあの人のことは言わなくていいんだろーなー、そう思いつつ凄く脇役なままこの一幕から退場するのであった。 ……話を「ご機嫌いかが(以下略)」に戻そう。 ≪こういう単純な仕事だとやっぱりAIは早いわね。ペーパーベースにすると折鶴が潰れちゃうのが難点だけど。≫ 「紙装甲の意味が変わる日を目撃できるとは僕も運がいい話は変わるが君の胸部装甲もなかなかに紙じゃないか≪うるせー!≫いやいや紙と言うことは色々なものを書き込めると言うわけでつまり陰影を書くことで「胸の話はやめろって言ってんだろーが!!」」 キレた。完全無欠な二次元美少女は運命的に貧乳であるという不可逆的要素も抱えていたのであった。口舌院言論もそこはさるものである。 所詮、短歌を除けば身体能力は並みの小娘に過ぎない焚書のパンチを軽々と避けるや話を続行する。 「つまり無色の夢とは本来目的を持たない魔人が起こした現象では無かったが君が一旦白紙の紙にしてしまった=能力者本人を殺したことで暴走状態にある理解で合っているかな?」 ≪論理に飛躍があるかもしれないけど、今まで仄めかしてる部分も含めると、ね……正解よ。≫ 三点リーダを加えたのはいささかの躊躇を示すためだろうか、真意を感じ取ってほしい甘えと解釈するにはいささか彼女を侮り過ぎかもしれない。だが、言論以外の誰にも見せない顔であることは確かである。 七五調でなく普通に喋る焚書はこのプロローグでは割とコモンだが、人生丸々振り返ってみればスペシャルウルトラシークレットホロな挨拶みたいなもの、略してSUSHIみたいなものである。 「本当のことを言うとね。銀河の姫様なんて言われても昔のアニメみたいに飽き飽きしていたの。世の不思議は大体解き明かされちゃったし、AIが人間様置いてけぼりにしちゃってさー、勝手に進歩発展しちゃってさー。 人間そがい―、神は死んだ―、って言っちゃてたわーけーよー。この意味不明な魔人能力に覚醒するまではSOS団でも立ち上げようかなーって。ほらほら喜んだら? 美少女が身の上話してんのよ?」 「魔人能力は埒外で無限の可能性を秘めた存在だからね演算の果てに有限の可能性へと人類を貶めたAIへのカウンターには十分と言うことかな元々君のいた宇宙に魔人はいなかったつまりそれこそ君が不思議を追い求める理由か」 「そう。短歌を除けば私の能力も拉致って来た魔人も違う≪系≫の宇宙からやってきたもの。違う発想、無限に通じるのは夢幻の発想だけど、私は夢のままで終わるなんてこと絶対に認めない。……認めない」 無色の夢――、それは確かに暇人(非魔人)だらけの宇宙でただ一人の魔人として生まれた皇女様にとっては娯楽なのかもしれない。だけど、ひどく切実で現実の願いでもあるのだ。 「だから、夢をばらまいた。魔人能力者を集めれば何でもできた! それこそあの『迷宮時計』のようにたった一人で神様の真似事が出来る超E.F.B級能力者なんて可能性の海を探せばいくらでもいた! でも、私が生まれて十七年間私以外の魔人はこの銀河に、この宇宙に一人も生まれない! 母様に捨てられた私は本質的に孤児なんだ! みなしごは仲間を探さなければならないの。そのためなら……」 たとえ、何千億、何兆という人間が死のうとかまわない、そう言おうとして止めた。きっともっとひどいことになるからと言おうとしてやっぱり止めた。 代わりに短歌を口ずさむ。帝国の皇女と言う共通幻想の果てに、この宇宙でなら超新星爆発くらいは起こせる、そんな極致にまで辿り着いた。だけど、足りない。魔人がいる宇宙を作るためには時間が――足りない。 「言の葉を くべる果てこそ ビッグバン ロゴスと言ったか 神よそこどけ」 「夢に見た 既視感なんて 知らないよ アニメで見たよ それで通るさ」 それで落ちついたか、焚書は深呼吸を一つ。 ≪私も近々無色の夢を見てみるわ。その時は合図するから起こしてね?≫ 口舌院言論はウィンクをした口舌院焚書の顔を見て、銀河の歌姫も眠り姫になるならさぞ可愛らしい顔になるだろうなと、そう思った。 ≪ついでに、いろはのやつに私の歌集を返してって言っといて。あの後ろから読むと、どいちゅ語になるやつ≫ それは勘弁だった。 ≪どうせ私をさっき撃ったのもいろはだったんでしょ?≫ お見通しだった……。
https://w.atwiki.jp/ssdmset2/pages/100.html
「オフ会」 「あっ、あの、僕、黄金沢湧水っていいます。」 「お、あなたが!どうも、五月女水車っす!」 「よ、よろしくお願いします。」 「よろしくです! 黄金沢さんも魔人なんですよね?」 「そ、そう。僕の能力は、あの、膀胱ってあるじゃないですか、フヘヘ、ご存じですか?膀胱。尿が溜まる臓器なんです、僕すごい好きなんですよ、膀胱、いやらしい感じと清らかな感じが共にあって、好きなんすよね…。胱って字がいいですよね、光ですよ?神々しさすら感じますよね、それでいて誰もが持つ臓器なのだからすごい。」 「わかる」 「あっ、能力の話でしたね、で、その僕の膀胱に、しこたま溜めるんですね、尿を。」 「ほうほう!!」 「「しこたま」ってやらしくないですか?」 「非常にやらしい!」 「ですよね!僕、綺麗な女の人に耳元で「しこたま」って囁いてもらうのに憧れてるんで…囁いて欲しいっす…。 それはそれとして、溜めた尿を、女の人の膀胱に転送するのが僕の能力っすね。”中出し”と呼ばれるタイプの能力ですね。」 「あー、中出し派なんですか。俺はぶっかけ派なんですよ。俺の能力は、女体化して、尿を操る。それだけですけど、一応尿道を逆流させれば中出しもできます。ただ、パンツあると少し大変なんで、基本はやっぱぶっかけですね。」 「僕、最近流行りの「膀トレ」で膀胱を鍛えてるんで、人より結構大き目の膀胱を持ってるんすよ。」 「うーん…別に否定するわけじゃないですけど、俺苦手なんすよ、膀トレ。だって、量がある程度制限されるからこその尿じゃないですか。」 「でも、だから凄い量溜まって、それが転送されるんで女の人からしてみたら大パニックなんすよ。」 「あー…それは、いいかも。」 「いいですよね!」 「うん、いい!」 「ですよね!」 「うん!!」 ※このSSはフィクションです。芸能人がオフ会に参加するの?とか言った君はぶっかけか中出しか選んでね! 参考資料 黄金沢 湧水(第11次ダンゲロス・ハルマゲドン)
https://w.atwiki.jp/ssdmset2/pages/120.html
第10試合SSその1 少女たちは悪夢に踊る (0) これを定命の者は瑞夢と呼ぶのであろうか。 それともこれは我が忘れえぬ悪夢であろうか。 カランコロンと下駄が鳴る。 心地よい音色の足音を響かせ少女は歩く。 「そんなん、気にしてんの?」 ヤレヤレといった大げさな風で目の前の少女は首を振った。 「しかしだな、ゆうしゃよ」 「暗いッ!!暗いなァ自分!!」 「しかしだな」 「だいたいな、こんな暗ァいトコに引きこもっとるからアカン言うてんねん」 「だがな」 「むー」 困ったように眉毛を八の字にして少女は頬を膨らます。 しかし、すぐに目を細め、意地悪そうにニヤァとしかし楽しそうに笑う。 そして、私に向かって手を差し出した。 「ホンマにちょっとだけ勇気出して見ィな」 「私はゆうしゃではないのでな勇気など出さぬ、そして別に引きこもりでもない」 その手はあの巨大な聖剣“断罪剣”を振るう手にしては細く白い。 その手を私は掴むことはできなかった。 代わりに、背中を死ぬほど蹴り飛ばされて外に追い出されるのだが。 それがゆうしゃと私の出会いである。 繰り返す、繰り返し、夢を見る。 はかいしんも夢を、見るのだ。 カラコロと下駄がなる。 少し淋しげな音色の足音で少女は歩く。 「せやねぇ、残念やけど」 と困ったように少女は眉を八の字にした。 「そもそも、貴様はゆうしゃではないか」 「せやね、せやからちょっとの間ゆうしゃはお休み、お別れやね」 「次に会うときは決戦だな、私とお前は戦う定めにあるのだ」 「そんな定めは知らんけどね、でも期待しといてええよ」 ニヤァと意地悪そうに、しかし楽しそうに笑う。 ゆうしゃが、はかいしんと共に歩くことはない。 そんな事はわかりきっていた事ではないか。 20年いや10数年前の事だ。 約束は未だ果たされていない。 所詮は定命の者と破壊の化身。 そんな約束に期待などしない。 繰り返し、繰り返し夢に見る。 はかいしんも夢を見るのだ。 これを定命の者は悪夢と呼ぶのであろうか。 それともこれは我が忘れえぬ瑞夢であろうか。 (1) 少しばかり昔の話をしよう。 闇に生きる者達の話。 彼らが最初に歴史に登場するのは、そうだな。 越後の龍と呼ばれた上杉謙信と甲斐の虎と呼ばれた武田信玄が何度目かの決戦を行ったとき、そう川中島の合戦だ。 上杉家文書にはこのように記録されている。 「戦場にて舞うが如き者どもあり、武器を持たず、甲冑を身につけず、しかしながら精強なり」と 織田信長の一代記である信長公記には武田の騎馬軍団を鉄砲隊で打ち破った長篠の戦の記録がある 「武田方に異様なる出で立ちの一軍あり、裸にして鉄砲の弾は当たらず。明智光秀、数百の兵を失いて信長公の機嫌、甚だ悪し」 そう彼らこそ闇に生きる者達。 己が骸を踏みしだき山河を血で染め歴史の影に朽ちる異能の者共。 忍者。 影と呼ばれ、草と呼ばれ、忍びと呼ばれし者。 或いは乱破(らっぱ)、軒猿(のきざる)、屈(かまり)。 そして戦国の世において甲斐国を治めた武田信玄が召抱えた者達を素破(すっぱ)と呼んだ。 真田幸村として名を知られる真田信繁もまた甲州素破の流れを汲む武将であり情報戦を得意としたと伝えられている。 情報を出し抜くことをいう“すっぱ抜く”とは彼ら素破を語源とするのは広く知られている。 民俗学者の柳田国男は著書「民に潜みし忍」において素破は様々な職を持ち世間に溶け込んでいた事でも知られ、その職能に応じて獣の名を持つ組を作っていたと著している。 木こりや猟師として山谷をめぐる山犬。 旅芸人や歌い手、即ち猿楽を源流とした廻り猿。 僧侶や歩き巫女は手を合わせる仕草から拝み蠅。 そして、性風俗に関わる夜の者は娼婦の俗称である夜鷹と呼ばれた。 俗に素破鷹(すっぱだか)と呼ばれるこの者達は徒手空拳による恐るべき殺戮術の使い手であったとされ一糸まとわぬ姿で戦場を駆け抜けた。 歴史小説の大家、司馬遼太郎は全裸を示す“すっぱだか”という言葉は彼らを語源としていると語った。 その恐るべき殺術が世に知れ渡るのは関ヶ原の合戦の少し前、 江戸城にて行われた御前試合の只中であった。 家康公の前に座りたる男。 真田幸村の兄にして徳川方についた真田信之が推薦した素破鷹の棟梁である松羽田火太郎(まつぱだかだろう)。 小柄な男であったという。 その姿を初めて見た徳川家康は男を侮った。 なぜなら、その男は一糸まとわぬ姿。 つまりは全裸であったからだ。 しかし家康の知恵袋と言われた怪僧天海は黙って首を横に振り。 公儀隠密衆を作り上げた服部半蔵は静かに男を指差した。 家康は半蔵の指差した先を見て驚いた。 その股ぐらには小柄な男からは想像もつかぬような巨象が鼻を垂れているではないか。 いやまて、垂れている、象は頭を垂れている。 巨象は未だ静かなるままであった。 この巨象が怒りを発し天に向かって吠えたならば如何に巨大な化物になるというのか。 しかるに… 「ばかあああ!!ばか!!」 (2) 「なんだ、小娘。話はここからが良いところなのだぞ」 私は話のこしを折られ少し憤慨した。 目の前に座る少女は頬をふくらませた。 座る、といってもここは破壊神殿の祭壇の間。 3LDK二階建て庭付き。 すべてのサイズが私に合わせて巨大であるが故に少女はダイニングテーブルの上にちょこんと座り、私は肘掛け椅子に腰掛けている。 常人の十倍はある私の体躯からみれば少女は手のひらほど体つきである。 「小娘って言うのやめて」 「ふうむ、しかしこれは破壊の化身たる私が定命の者を呼ぶときの風情というものであってだな、様式美の一環だ」 「ばか!!それだけじゃない!!なに今の!?セクハラ!?」 セミロングの髪を編み込んだ少女は顔を真っ赤にして怒鳴った。 眼鏡の奥から怒りの瞳が私を見据える。 「何を言う、貴様の使う武術が如何に由緒正しきものか冥土の土産に教えてやろうというのだ」 「そんな土産、自分で持ってけ!!ばか!!しね!!」 「そもそも、大江戸大迷宮時代にはグレートな魔族や毒の巨人すら一撃で屠りさったのだぞ?佐渡島ゴールデンダンジョンの話を知らんのか?」 「そういう話はしてない!!ばか!!」 「しかし、私が召喚した溶岩魔神ボルカノスや氷の女王ブリザリスとの戦いはじっくりと見せてもらった、あれは正しく初里流の…」 「じっくり…」 そういって少女は両手で胸を隠す。 彼女の上半身は下着姿であった、なので隠すといってもブラジャーを両手で隠した形だ。 胸の形も良く大きめだ。 下半身はスカートとストッキングは履いているが靴や靴下はない。 健康的な肉体は白く、柔らかそうな印象を受ける。 「いやまて」 「ばか!!へんたい!!変態!!こっち見んな!!ばかあ!!」 「まて、小娘」 「ばか、やっぱり変態だ!!ばか!!」 眉を八の字にした少女は椅子を掴んで私に向かって投げつける。 通常の10倍のサイズの椅子を、だ。 ごう!!という音と共に巨大な椅子、まあ私にとっては普通のサイズだが、椅子が私の顔面めがけて飛来する。 当たれば流石に痛いだろう。 私は右手をかざし椅子を受け止めた。 すると椅子は粉々に砕け散る。 ああ、特注サイズの椅子は結構高いのだが。 夢の中であるから気にしないでおこう。 凄まじい力。 これがこの少女の魔人能力という物だろう。 この世界の人間には一定の割合で魔人と呼ばれる異能者がいる。 彼女の場合は常人を超えた身体能力といったところか。 配下との庭での戦いでは脱いだセーラー服が相当の重さであったようで、脱ぎ捨てた服がずしりと地面にめり込み「バカなあんな重さを身につけて戦っていただと?」と思わず感心してしまった。 「危ないではないか」 「ばか!!変態!!」 「そう言う意味ではないというのに」 「乙女の恥じらいを知れ!!」 「す、すまん。だがな、魔王クラスの攻撃を避けるその技は正しく初里流の忍び武術、たしたものだぞ」 「褒め言葉じゃない…」 「鎧を纏わず、攻撃を避ける。一撃で魔を屠る鋭い一撃。まさしく退魔の忍び!!」 「ばかあああああああああ!!」 テーブルの上に置いてあった食器や花瓶などが乱れ飛ぶ。 少女は涙をうっすらと滲ませて怒り心頭といった様子だ。 「な、何を怒る」 「知ってるぞ!!変態!!それえっちなヤツだろ!!ばか!!ばかあああ!!」 「な、なに?そうなのか?」 攻撃を受け流しながら慌てて異世界の知恵の魔王ソフィリアンにリプライを送る。 ああ、裸の女性の忍者が戦うパソコンのゲームにそういうのがありましたね、とすぐ返信が来た。 「なんと、テレビゲームにもなっておるのか。ほれみろ、貴様の流派は広く一般に知られて…」 「ばか!!死ね!!」 あ、エロいヤツです18歳未満禁止っていうやつですね、と知恵の魔王から追記が来た。 はやく言え!! 「いや、すまぬ!!そういう意味ではない!!謝ろう!!悪かった!!知らなかったのだ!!」 「ほんとう、だな」 「ああ、勿論だ。定命の者の性癖など私の預かり知るところではない、いずれ世界ごと破壊する予定であるからな」 「ばかなの?」 少し怒りを納めてくれたようだが逆に憐れまれてしまった。 中二病とでも思われたか。 「貴様も知っておろう、破壊の化身たる“はかいしん”の事を」 「…あれ、君のことなんだ」 「ほう、流石に知っておったか」 「ゆうしゃにボコボコにされた、ひきこもりだって」 「うっ…」 「めちゃくちゃ不器用だって」 「ぐぐっ」 「それから…」 「ま、まて。待つのだ、流石の私と言えども心が傷つく。はかいしんのピュアハートを破壊するつもりか貴様、貴様こそが破壊神を破壊するものとでも言うつもりか」 六本ある手の一本を前に出し少女の言葉を止める。 一本の腕で頭を抱える。 ぐぬぬ、フレンドリーさが過ぎて侮られているとは思ったが初対面の少女にここまでボロカスに言われるとは。 うっかり世界を壊してしまって魔王に怒られたとき以来だ。 「何もしていないのに世界が動かなくなった」と言ったら、ジト目で「余計なところ触ったり押したりしたでしょ」と世界オンチ呼ばわりされた時以来だ。 傷つく…。 「でも、けっこう良いヤツだって言ってたよ」 「慰めはいらぬ」 「泣いてるの?」 「泣いてなど、泣いてなどおらぬわ!!」 落ち着こう、大声を出したので喉が渇く。 私は冷蔵庫から1500?入のコーラを取り出し、女性の前でゲップをしてしまうのは失礼だと思い至り、冷蔵庫に戻した。 冷蔵庫を見渡す、ビール、カルピス。 ふむ、ヤケ酒というのも良くないな。 カルピスを取り出してグラスに注ぎよく冷えた水を入れて混ぜて飲んだ。 ふう、少し落ち着いた。 「貴様も、飲むか小娘」 とグラスにカルピスを注いだところで気がついた。 サイズが違うのだ。 十倍のサイズというのは高さ十倍幅十倍奥行十倍で容量は千倍だ。 このグラスでは定命の者には大きすぎるな。 ふと見ると、すこし溢れたカルピスの原液の雫が少女の足にかかっていた。 白いねっとりとした液体が少女の足に。 「やっぱり…変態だな、殺すしかないな、社会的に」 「いやまて!!違う!!これは事故だ!!まて、警察に電話しようとするな!!そもそもケータイは圏外であるぞ!あ、ウチの固定電話を!そんなでかい電話を普通に持つんじゃない!!それにここは夢の中だ!!警察には繋がらんぞ!!」 ぎぎぎ、と少女がこちらに首を向ける。 ベトベトのストッキングを脱ぎ捨てると床にメキリと突き刺さった。 「バカな、そんな重いストッキングを履いて今まで?」 「夢?」 「あ?ああ、そうだ夢の世界だ」 「夢で女の子にエロい事をするとか、欲求不満なのか…ばかなのか、死ねばいい」 「ちがう!!」 「変なところに連れてきてムキムキのおっさんやエロいお姉さんに襲わせたくせに!!」 「破壊神殿の庭園の守護者をおっさんとか言うてやるな、ボルカノスがいじけているじゃないか、エロいお姉さんって別に褒め言葉じゃないぞブリザリス!!」 怪我を治療中の部下に声をかけながら私は少女の方に向き直した。 「夢の説明は受けておらんのか?」 「聞いたけど…。あれ、君が言ってたんじゃないんだ」 「違うな」 「センスが同じだから」 「中二っぽいと言いたいのかもしれんが違う」 「じゃあ、あれは本当なの?」 「恐くな、この数百年のうちに何度かそういう現象に巻き込まれた者の話を聞いたことがあるし、実際に巻き込まれた者を見たこともある。破壊の化身たる私が巻き込まれるとは思いもよらなかったがな」 少女は少し考え込む、無理もなかろう。 如何に超常が世にある世界とは言え、俄かに理解できるものでもあるまい。 しかし、それは私の思い違いだったようだ。 「でも、あれ酷くない?」 「酷いとは、なんだ」 「だって勝っても別に夢が叶うとかじゃなくて良い夢見られるだけでしょ?負けると一生悪夢ってデメリット大きすぎじゃない」 なるほど、確かにそう考えれば報酬と罰則が不釣合だ。 だからといってどうなる、理不尽とはそういうものなのだ。 「定命の者にとってはそうかもしれぬな、だが永劫を生き。蘇る私にとってはどちらにせよ些細なことだ」 「でも、永遠だよ。いやでしょ?」 「定命の者にはわかるまい、私が生き、世界を破壊し続ける事とそう大差はないのだ」 「やっぱりさ」 「なんだ?」 「楽しそうじゃないよね」 「何を言っておるのだ?」 「楽しくないから引きこもってるんでしょ?」 「なるほどな、喧嘩を売っているわけだな」 「そういう訳じゃないんだけどそれでもいいや」 「何?」 「外でも引きこもって夢の中でも引きこもってるのは楽しみがないからでしょ」 少女は立ち上がる。 「顔が犬になっちゃった人がいてさ」 「それがどうしたというのだ」 「スッゴイ虐められてたわけ、犬語しかしゃべれなくてさ。もう暴れるしかないよね」 「何の話だ」 「寝たきりで家族もいないお婆ちゃんがさ。いきなり中華武将の魂を身に宿してさ、もうムキムキでさ。ペットの犬も馬みたいになっちゃってさ。暴れるしかないんだけど強すぎてみんな逃げていくの」 「わけがわからんな」 「女の子なのにさ、エロい触手が生えてきたら。同性の友達できないよね」 「それがなんだ」 「占いで人を幸せにしようとしてさ、失敗して友達がいなくなったり」 「なんだと言っている」 「星を見るのが好きだっただけなのに、隕石になっちゃったり」 「だから、何の話だ!!」 「だからさ!!うまれつき破壊の化身だったりするとさ!!」 「……」 「遊び相手が居ないんじゃないかなって思うんだけど」 はあ? 何を言っている。 いや、何を言っているかはわかる。 理解も、できなくはない。 あの、ゆうしゃと同じ考えを持っているというわけだ。 ふ、ふふ。 「ふは、ふはーっはっはっは!!この私がさみしいとでも言うのか?遊び相手が欲しいとでも?」 少女は眉を八の字にして困ったような表情をした。 「そうじゃないの?」 「バカを言うな!!私に触れたものは全て!!破壊される運命だ!!かつて、同じ様なことを言った者もいたが、結局成し得なかったよ!!」 「だからさ、難しいことは良くわからないけどさ」 少女はニヤリと意地悪そうに、そして楽しそうに笑った。 「遊んであげるって言ってんの」 「なるほど、愚かなようだ、夢の中とは言え死の苦痛は免れんぞ」 「健康で頑丈なのが売りなんで大丈夫だよお、それに」 「それになんだ」 「女子高生からの誘いを断るのは、恥ずかしくない?」 「馬鹿馬鹿しい、もう十分だ」 私は腕を振り上げて、無造作に少女をなぎ払った。 (3) 破壊の力を込めた一撃に耐えられるものなどいない。 赤い光に包まれた私の巨大な腕が机ごと塵に変えてゆく。 ぬるり。 そう、そのようにしか表現のしようがない妙な動きで。 少女はその一撃を避ける。 「そもそも、当たらないしね」 ニコリと少女は笑みを浮かべた。 「ほら、次は?」 返事を返すでもなく腕を繰り出す。 六本の腕。 別に本数は自由に変えられるが腕は六本くらいが丁度いい。 小技を使うのはゆうしゃと戦って以来だが、それも仕方ない。 次々と六本の腕を複雑な動きで繰り出す。 それを少女は奇妙な動きでぬるりぬるりと避ける。 流石は初里流、侮り型き武術。 「おっと、ほりゃ、ぬわっ!?」 蹴りを繰り出す。 腕などフェイントに過ぎない。 それも避けられる。 だが、もう一撃の蹴り。 当てるためではない。 冷蔵庫を蹴り飛ばす、バラバラになって降り注ぐ冷蔵庫の残骸は面の攻撃だ。 部屋の隅に追いやられては避けようもあるまい。 「破壊の力で一気に塵になれば苦しまずに済んだものを」 瓦礫に押しつぶされ、肉塊と成り果てよ。 「うおりゃあ!!」 顔に何かが当たる、痛い。 「ぐおあっ!?」 冷蔵庫の残骸か。 「だからさ、言ったよね。頑丈だって」 少女は眼鏡を床から拾い顔にかける。 髪を束ねていたバンドやリボンがなくなっている。 ブラジャーも外している。 形の良い胸がわずかに揺れた。 身につけるのはパンツ一枚のみ。 「見るなよ、変態」 「なんだ、それは」 「説明いるの?脱げば脱ぐほど強くなる武術だって歴史から説明してくれたのは君でしょ」 その域を超えている。 なるほど、魔人能力というやつか。 瞬時に少女の姿が消え…。 「ごがああああああああっ!?」 殴り飛ばされた、顔を。 「見るなよって言ったでしょ?よそ見してると殴られるよ、危ないから」 「ぐぼあっ!!」 更にみぞおちに蹴りが入る。 はかいしんである私にみぞおちだから急所であるということはない。 ないが、痛い事に変わりはない。 ひゅん。 少女が空中に眼鏡を投げ上げる。 「ヘヴィメモリーズ」 やけに格好いいポーズでそれをキャッチする。 ずしり、と少女の足が地面にめり込む。 眼鏡を顔にかけ、外す。 「身につけた物の重さを100倍にする能力」 少女は眼鏡を空中に投げ上げる 漫画のような格好いいポーズで眼鏡をキャッチ。 ず、ずんと音を立て少女の足が地面にめり込む。 「増えた重さに見合ったパワーを得る、OK?」 やたらと格好いいポーズで眼鏡を装着する。 「そうやって説明したほうが格好イイでしょ?」 「確かにな」 「様式美ってヤツよ」 ニヤリと意地悪そうに、でも楽しそうに笑う。 私も笑っているのだろう 「計算は苦手だけどさあ、100倍を何回も繰り返すとさあ。眼鏡の重さはどれくらいになるんだろうね」 「そのうち地球の重さは超えるだろう」 「数えてなかったけど、もう結構なことになってるのかもしれないね、地面にめり込むのはアレ、重さ関係ない演出みたいなもんだし」 「そうか」 「決着をつけようよ」 「よかろう」 確かに強い。 だが、力だけではどうにもならぬ。 はかいしんを止められるのはゆうしゃだけ。 それは、ゆうしゃがただ強いという意味ではない。 「うりゃあ!!」 少女は凄まじい踏み込みで大地を踏み砕き、破壊神殿は粉々に砕け散る。 さらばだ私の庭付き3LDK。 高くジャンプした少女は必殺の蹴りを繰り出す この一撃は地球をも壊す一撃。 流石だ。 だが、はかいしんは世界を壊すゆえに神なのだ。 「破壊の波動!!」 私の全身より光がほとばしる。 夢の世界もこれで終わりだ。 いかに夢であろうとも、それすら壊すのが破壊の化身の力。 部下も、空間も、少女も、光の中に消え去った。 (4) 目を開けると少女がいた。 「じろじろ見るな、ばか」 少女は嫌そうに眉を八の字にして頬を膨らませる。 恥ずかしいのだろう、耳まで赤い。 眼鏡もパンツすらも破壊の光で消滅した。 完全なる全裸だ。 だが、何故か少女は消えていない。 私は、首から下が消し飛んでいた。 少女の体を淡い光が包んでいる。 少女の健康的な尻に見覚えのある模様が見えた。 「小娘それは」 「見んなってんだろ!!」 「ごぼろぁ!!」 殴られた。 勇者の紋章。 ゆうしゃにしかない。 「なるほどな…」 そういうことか 「女子高生の裸見て、何を納得したか知らないけど」 「私の力を受けられるのは“ゆうしゃ”のみ、お前がそうだったとはな小娘」 ぼぎゃ!! 「ぐわー!?」 殴られた。 「何をする!?」 「何をするじゃない!!私は小娘じゃない!!」 「??」 少女はビシッと自身を指差した。 「松羽田かの子」 「やはり松羽田…初里流の…ごばあ!!」 また殴られた。 「そうじゃない、私の名前だ」 「だから何を言っている」 「君の名前」 「は?」 「はかいしん、じゃないでしょ?名前」 「名前など、どうでも」 「よくない、勝ったのは私だ、教えてもらう権利がある」 「そんなやくそ…ぐわー!!」 殴られた。 「ジェノサイド・デストラクション・オーバーキル・ブッコワース」 「なげーよ」 「はかいしん、でよかろう」 「いいや、良くない。ジェノサイド・デストラクション・オーバーキル・ブッコワース」 少女は私の名前を呼んだ。 「なんだ、松羽田かの子」 私は少女の名前を呼んだ。 「いつでも相手してあげるからさ、いつでも遊びにおいでよ。ただ街はあんまり壊さないように」 「ふはっ!!私は破壊の化身だぞ?」 「それくらい頑張れ、女子高生の全裸を見ながら死ねるなんて。まるで夢みたいでしょ?」 「まったく、たいした悪夢だよ」 「ばか!!いっぺん死んで来い!!」 少女の腕が私の頭を握りつぶした。 (5) 「ヌワーハハハハハ!!世界はもう終わりだな!!ゆうしゃよ!!」 私は高らかに宣言した。 「いつでも良いっていったけど、またお前かあああ!!ジェノサイド・デストラクション・オーバーキル・ブッコワース!!」 目に涙を浮かべた半裸の少女が吠える。 そして私は殴り倒された。 タッタッタと軽いリズムで少女の足音が去っていく。 空が青い。 闇の底では感じられなかった事ではあるな。 カランコロンと下駄が鳴る。 心地よい音色の足音が響く。 「どうや?ウチの娘は」 「酷い娘だ、おかげで私は毎夜悪夢にうなされておるわ」 「そう?我が子ながらええ子やと思うんやけどな」 「悪夢は変わらんが暇ではなくなったな、見事なゆうしゃだったよ」 「せやろ?」 目の前には艶やかな和服姿の女がいる。 背には巨大な聖剣“断罪剣”が輝いている。 「ごめんなあ?まさかウチが結婚したのがそないにショックやったやなんて」 「お前を悪夢の世界から救ったのは」 「あ、旦那の事?いやあ、変態でな、阿呆でな、でもめっちゃ格好ええ旦那の事?」 「のろけか」 「いやあ、君が悪夢から救われるなら俺はこの先悪夢を見続けるって真顔で言うんやもん、惚れるやろ?」 「なるほどな、のろけだな!!ゆうしゃよ!!」 「ま、あれでイケメンやし?ギリシャ彫刻風いうの?芸能人で言うと阿部寛?」 「その話はまだ続くのか?」 「でも全裸やろ?思わず言うてしもたわ、何でまっぱだかなん?て」 「だろうな」 「もうギャグやね。この勇者カナン・ブレイブハートが今や松羽田カナンやもん」 「ゆうしゃは続けているのか?」 「そらもう、見てのとおりや」 「なぜ来てくれなかった?」 「んー、だってねえ」 「だって何だ」 「君は中性的な美形やけど。女の子どうしは恋愛でけへんよ、はかいしんちゃん」 「…そうか、私は振られてしまったか」 「娘に惚れたらあかんよ」 「考えておく」 私は空を見上げた 「わかっているさ、これも悪夢なんだろうな」 私は失恋した。 なんという悪夢だろう。 私は声を出して笑った。 松羽田かの子SS 「少女たちは悪夢に踊る」 おわり
https://w.atwiki.jp/ssdmset2/pages/115.html
第9試合SSその2 陽の死んだ日 江ノ島に美術館などない。 今からこの島は消滅するッ! 午後5時、夕日が海を照らす。東海道を下って来たのは一台の戦闘ヘリだ。運転席には金髪の青年、銃座には金髪の幼女が座っている。 ロリー太 小梅は江ノ島へ観光にやってきた。 早くも戦いが始まろうとしている! 二人は戦いのルールに不満はなかったが、昼過ぎから現実での戦いを挑みたいと思い始めた。これは人間が生まれながらに罪を背負っていることを考えればなんらおかしいことではない。それにこれはこれで夢の戦いらしいとは言えまいか。 かくしてカインはアベルの羊を奪いにやってきた。 「無駄な労力じゃない?ゆるキャラは東京タワーで討ち取られたニュースが流れてたよ?」 「いや、奴は生きてる筈だぜ。手負いの獣は必ず江ノ島に戻る。そこを仕留めよう。」 「もうお兄ちゃんったら!思考のブレーキが壊れてるんだから!」 小梅は嘆息した後、地上に餞別の花束を投下した。 そんな江ノ島では内乱が勃発していた。殺しの楽しさを覚えた原住民がそこかしこで暴れまわり、生きているのは狂人だけだ。それもこれも謎のショートスリーパーと戦車が軽率に殺し合った為である。 ふと地上を見下ろすとサイボーグ奉行がロケランをこちらに構えていた。 「ヘイお兄ちゃんんんんん!RPG!RPG!」 「慌てるでないわ小梅!ブラックホークダウン!ブラックホークダァーウン!」 ミサイルの激突した戦闘ヘリは黒煙を上げながら地面に墜落した。 「この奉行所はアイディード将軍のものだ!」 ロリー太王子は江ノ島がソマリア並に危険だと悟った。 だがこんな時こそ救いの神は現れるものだ。 ヘリの残骸から這い出たロリー太王子の前には二人の人間がいた! それは人間ですらなかった。 妖精ちゃんとヤンキーの幼女だった。 「無事ゲロスか、少年。」 妖精ちゃんが手を差し伸べた。ロリー太王子はその声に聞き覚えがあった。無職の夢の中で。 妖精ちゃんとは金髪に紫綬を纏い、長身痩躯、中東系の顔立ちで十字架を背負った大妖精だ。彼の名はダンゲロスくん。デュラン大佐に敗北した彼が趣味ではなく強くなる為に女装しようとするのは極めて当然だ。(趣味ではない。) マイナスイオンとの触れ合いで何度でも復活する彼はロリー太王子 小梅とは同じタイプの能力と言える。 一方、ヤンキーの幼女は女子高生のブレザーを着て金髪ロングヘアに空気椅子をしながら両手を突き出しているので間違いなく幼女だ。 小梅とロリー太王子にはこの男の幼女の正体が何となく分かった。 「お前が…アイディード将軍か。」 「お兄ちゃんッ!?」 ロリー太王子は頭の打ち所が悪かったのだ。ヤンキーの幼女が幼女将軍アイディードだと思えば全ての辻褄が合う。 すると驚くべきことにアイディード将軍は話し始めた。 「話し合いで…解決したかったんや。」 「マジでッ!?」 「ちょ聞いてや。 俺は幽くんやろ?ほら、渾名。 ほんで身内に竜ちゃん5人おってな。昔な、誰が本物か決着つけよいう話なってん。」 竜ちゃん。それはヤンキーにそういう名前の奴がやたら多いという話なのだが、ロリー太王子はソマリア内乱のことを暗に示しているのだと一人合点した。 「それでな、桃鉄の一番強い奴が竜ちゃんいうことなってん。まあ結局…そいつはキングボンビーになったけどな。」 「そんな、どうして妖精ちゃんが戦いの場に!?」 小梅は理解を諦めて妖精ちゃんの方に話を振った。 「俺たちと同じ夢を見ないかというわけゲロスよ。」 三人は直感で理解した。対戦者達は互いに惹かれ合い江ノ島に集ったのだと。 「良いだろう。」 ロリー太王子はダンゲロスくんの差し伸べた手を取ると、一人頷いた。 皆で協力する。ありえない事が起こった。同じ趣味を持つ変態だったのだ。三人の化物が意気投合してしまった。 女装は道徳。世界を救う。全人類はこの事実に感動すべきではないか。 「それで?三人で協力して何をするんだ。言っておくが俺は幼女の好みには煩いぜ。」 「コラァ」 (まあ、先ずはこの江ノ島の惨状をなんとかしないとな。) そんな事を考えてたロリー太王子の顔面を、いきなり幼女将軍アイディードは殴った。邪魔だからだ。 破綻者に論理は通用しない。 元々が研ぎ澄まされた殺意を暴走させた危険人物達だ。 憎しみではない。相手を認めているからこそ、一度全力でぶつかる!! たとえ、どんな結果になろうとも! ぶっ殺す!! 惨たらしく死ね!! これは対戦相手の事を認めているからなんだ!!血と臓物を振り撒けよ!!湯気の上で開封したカップラーメンのスープの素みたいにグチャグチャのベトベトになりやがれ! 人間が本当に生み出せる芸術が殺し合いくらいなのは江ノ島の現状を考えれば火を見るよりも明らかだ! 「グボァッ!…フッ、そうだな。俺も心の何処かにわだかまりが有ったんだ。『夢の戦い』を避けて、俺たちの結束はあり得ないよなぁー!」 「互いを尊重するからこそ真の殺意が沸くのゲロスうううう」 「えっ?あっおおオオオオオオオ!!」 ロリー太王子 小梅!!! 妖精ちゃん!!! アイディード将軍!!! 日本よ、これが美術館だ!!! 平成の桃園の誓いとも言える究極の友情の深め合いが命を賭けて始まりました。彼らは互いの覚悟を認め合うからこそ、防御など不要としゼロ距離での肉弾戦をします。 「勝った奴が兄貴だっ!小梅の祝福を受けるお兄ちゃんだ!」 そんな事を考えているのはロリー太王子だけなのだが、三人は三つ巴の体制になった。ロリー太王子の傍らには小梅が立つ。 間合い無しの殴り合い。決着は一瞬だろう。 「ダラァーッ!」 ロリー太王子の右ストレートが空を切る!妖精ちゃんは既に数メートル上に跳躍している。 妖精ちゃんの蹴り!それは空気椅子をしながら両手を突き出すアイディード将軍の顔面を狙っている! 瞬間、アイディード将軍が消える。アイディード将軍の全身、全体重がロリー太王子の右拳の上に乗っていた。テレポートしたとしか思えない! 将軍の頭上には妖精ちゃん!不可避の落下は連鎖する! 落下…否、落下しない!?アイディード将軍と妖精ちゃんが宙に浮いている。 小梅ウインドだ!小梅の足元から発生する強風が彼のスカートを翻し、恥じらう!その姿を見たロリー太王子は興奮! 「お前達の位置からは…小梅のパンツは見えないだろう?」 「ほだら俺のパンツを喰らえやー!」 「パンチ…ゲロスううううッラァ!」 興奮で強化した王子の蹴りが妖精ちゃんの顔面に命中! アイディード将軍が消える。彼はロリー太王子の顔面に押し付けるように空気椅子をしながら両手を突き出していた。テレポートしたとしか思えない!臭い!王子が気絶! そして、妖精ちゃんは最後の力でマイナスイオンを収束させパンチラを放つ!アイディード将軍の顔面に命中!目が腐る! マイナスイオンと小梅ウインド、そしてテレポートがぶつかり合い…三者は相討ち!気絶した! ☆ 意識から江ノ島が消滅する。 江ノ島に美術館などない。 それは中国地方、岡山県、倉敷美観地区、 大原美術館だ。 倉敷と言えば旧幕府直轄領として有名であり、現代でも当時の面影を見ることが出来る。 中二病の奴が一度は戦ってみたい場所ランキングトップ12にも入ると言われるアイビースクエアも倉敷にある。 そして街の中央に流れる川の傍らに美術館がある。 実業家、大原孫三郎が設立した大原美術館は近現代の美術品を中心に蒐集、展示している。 大原美術館、別館。件の絵画は今はそこに展示されている。 熊谷守一『陽の死んだ日』 三人が転送されたのはその絵画の前だった。 見る者の目を惹きつけて離さないその絵はフォービズムとも取れる荒々しい作風であり、一見すると抽象画のようにも見える。 だが画面左端に描かれた蝋燭を見た瞬間、次第に何が描かれているのか分かる。 絵の作者の長男、幼き熊谷陽の死に顔を。 まあそんな事とは関係なく、三人は飛び起きると、現実での戦いの続きを開始した! 小梅がいない。ロリー太王子はまずそのことに気が付いた。 次に気が付いたのは、夢の報酬の事である。 三者は互いの右拳を突き出すと、一撃で対戦相手の頭部を粉砕するパンチを放った。 妖精ちゃんはマイナスイオンの力で身体強化、ロリー太王子は小梅の姿を思い出し興奮することで身体強化、アイディード将軍は同じ場所に無限にテレポートし続けることで理論上無限の加速を得た拳を叩き込んだ。 爆ぜる肉体。アイディード将軍の拳は妖精ちゃんの顔面を打ち砕き、妖精ちゃんの拳はロリー太王子の顔面を粉砕した。 ロリー太王子の拳は、アイディード将軍に届かなかった。 勝てない。 この戦いに勝って"しまう"と、対戦相手は悪夢を見て"しまう"。 それはマズイ。何故なら、ロリー太王子は永遠に報酬の夢を見るつもりだから。 悪夢はいつか覚めない保証はない。だが、報酬の瑞夢が覚めない保証は"ある"。 それはマズイ。だって、対戦相手は現実世界の自分の傍らに居るのだから! 自分が寝首を掻かれて死んだらどうなる?それでも夢を見られると言うのか?無理だ! 一瞬の逡巡が勝負を決した。ロリー太王子の拳がアイディード将軍に届く前に、妖精ちゃんの拳が王子を死に至らしめた! 勝者、アイディード将軍!勝因、運! それでも戦いは終わらない。既に絶命している妖精ちゃんは尚ビームを放つ。将軍の心臓が粉砕する。アイディード将軍は気迫だけで空気椅子をしたまま上空に飛び上がると、妖精ちゃんにタックルをする。 ロリー太王子は死にながらソレを眺めていた。 ああ、この絵は『陽の死んだ日』と言うのか。そう思った。 ☆ 暗い夜道を一人歩くロリコンの男、勇者ロリコン。かつてロリー太王子と呼ばれたおっさんの成れの果て。彼はピンク色のモヒカンヘアにクロノトリガーの主人公みたいな格好をし、やたら上手いオカリナを吹きながら太陽にほえろの主題歌みたいな曲を演奏していた。タピオカタピオカ。 道を歩いていると、泣いているヤンキーの幼女がいた。 「これ、どうしてこんなところに居るんだい。」 「それはね…お前さんを食べるためだよ!」 ヤンキーの幼女の服が弾け飛ぶと、そこにはソマリア人がいた。 「ヒイイィィ!オカマァァァァ!」 突然ソマリア人のオカマに襲われた勇者ロリコンは命からがら逃げ出すと、道端に設置された幼女屋台に逃げ込んだ。 「聞いとくれよ大将、今そこにオカマが居てさあ。」 「ヘェ?それはこんな顔だったゲロスウゥゥゥ!」 幼女屋台の大将、妖精ちゃんが突然全裸になるとそこにはユダヤ人が! 「ヒイイィィ!オカマァァァァ!」 突然ユダヤ人のオカマに襲われた勇者ロリコンは命からがら逃げ出すと、自宅に逃げ込み事の次第を女房の小梅に話した。 「聞いとくれよ女房、今そこにオカマが居てさあ。」 「ヘェ?それはこんな顔だったでゴワスゥゥゥゥ!」 恐怖のあまり、勇者ロリコンは絶命していたそうな。 ☆ 崩壊した江ノ島には三人のオカマがいた。傍らにはロリコンが地に伏せている。 「此度の聖杯戦争は女装のクラスとして現界せしめし我らの勝利となりましたな。」 ダンゲロスくんが言った。 「恐怖というものには鮮度があります。いずれこの男が目覚めし時には真の恐怖を味わわせて上げましょう。」 小梅が言った。 「何が何だか分からないが、俺はあんたに着いて行く。」 牛沢幽也は言った。 「いい景色ね。マイナスイオンを感じるわ。」 サイボーグ奉行の髪が風に揺れた。 「あぁ?ん!いい景色だわ?!」 圧倒的なエロスがそこにあった。興奮した四名は思わずマイナスイオンにしゃぶりつく。 「風が、風が気持ちいいのぁー。」 マイナスイオンはまさにププッピドゥといった感じである。 「もう我慢の限界でごわすー!」 突如野太いオッサンの声で叫ぶマイナスイオン。風の勢いがさらに増し、ハゲのオッサンとなる!!そう、マイナスイオンはセクシーさで周囲を魅了してから全裸になって正体を現しショックを与える事に快感を見出す真の変態だった! 「アアアアアア」 この事実に四名は絶望の悲鳴を挙げながら口から目から血を噴出し絶命!江ノ島は崩壊! マイナスイオン梅子はやっぱり強い。そう思うサブイネンだった。
https://w.atwiki.jp/ssdmset2/pages/99.html
これは本戦に至る物語(幕間)――。 『第3試合:ビル建築現場 試合SSその2/Zero ~海と地の輪舞~』 春の生暖かい風が吹く。空は曇りで、月明かりは届かない。 夜の闇が灰色の町を覆っていた。 渦巻く暗雲の下、赤い鉄骨の構造体が街灯に照らされ浮かび上がっている。 ありふれた夜の町の光景。 その静寂を切り裂くように、喘ぎ声が木霊した。 「ひゃあぁっ……んっ……か、かってにしないでえぇぇぇ!!」 薄緑色の髪をした少女が、地上10mに位置する鉄骨にしがみついている。 顔は紅潮しており、息は荒い。 そして垂れ下がる髪の毛を巻き付けるようにして、一振りの杖がぶら下がっていた。 茨が巻いた禍々しい棘の杖。 その杖が突然喋り出した。なんとこの杖、お喋り機能付きである。 「クッハッハ!我が茨は鋼よりも硬く絹よりしなやか!八つ裂きになって死ねィ!」 どこから声を発しているのかは分からぬがとにかく杖が喋った。 そして杖から、凶悪な棘を乱杭に生やす……茨が生じた! 「やめてえぇっ!このちからで、ひとをきずつけたくないっ!!」 「我が怨敵、邪悪なる海の神性よ!ここで会ったが40億年目!必ず死なす!」 少女の悲痛な叫びなど聞こえないというふうに杖が咆哮を上げる! それに応じるかのように、茨が巻きひげをつくりながらどんどん広がっていく! 「わたしっ、こんなのたのんでないぃっ!たのんでないよぉっ!!」 シュルシュル! 茨が鉄骨に絡みながら何かを追うように広がっていく! 「いままでは黙ってお前に従っていたがなァーッ!!アイツを見つけたとなりゃ話が別よぉーッ!!」 シュルシュル! 茨が何かを追うようにどんどん伸びていく! 「こっ……このちからはぁっ……!!ひとのためにっ、つかうってぇぇっ!」 「うるせェァアーーッ!!今はお前が従う番だ!!黙って力を!痛みを!寄越せェッ!!」 「あああぁぁぁっ!!いばりゃぁぁぁぁ!!いばりゃきちゅうぅぅぅぅっ!!」 この少女、織音アイリはマゾだ。心優しきマゾだ。 そして先ほどから何やら喚いている杖は『茨姫の杖(リトル・ブライアローズ)』。 所持者の痛みをその力に変えるこの杖から供給される痛覚に、アイリは快楽を感じている。 特に先程のものは効いたようだ。 アイリはよがり狂い、脊椎反射で鉄骨に腰を振っている。 「ふん。ようやく静かになったなァ。じゃあ行くぜェーーー、エウレカァァァアァ!!」 シュシューッ! ひときわ太い茨がとぐろを巻いて、跳ね、何かを追いかける! 「紅い茨は槍の如く―――喰らい砕け、ブライアローズ!!」 バキィーッ!! 締め付けられた鉄骨がブチ折られた!この茨の破壊力は鋼をも砕くというのか!? こんなものを喰らえば、例え不死身の生命力を持っていたとしても無事ではすむまい! そして茨の先端が追う数m先に――異形の少女! 肩から下に100本の触手が生えており、それらは海産物――タコとかカニとかクラゲの原型がある! そんな彼女が悲鳴を上げる! 「リハーサル(※無色の夢)と違ーーーーう!!」 異形の少女は触手を鉄骨に伸ばし、手繰り、立体的に機動する。 その背後からブライアローズが襲いかかる! 100本の内幾つかのイカ触手の先から、タチウオを生やしこれで茨に応戦! だが無残! イカタチウオ触手は茨に裂かれ、切り身と化した! そもそもタチウオは太刀みたいな魚であって泳ぐ太刀では断じて無い! せいぜい歯が鋭いぐらいである!分かっているのか……分かっているのか、エルレカーン!? そう、この異形少女の名前はエルレカーン!この戦いに巻き込まれた、哀れな少女だ! そして彼女の心の中に声が響く!精神の同居人、エウレカだ! (ほらほらファイトファイトー♪頑張らないと刺し身になっちゃうゾ☆) 「エウレカァァァーーーー!見てないでいつもみたいに手伝いなさいよーーーーッ!!」 (いやー、相性って奴があってぇ。私が出張ってもアイツには勝てな……ああ後ろ後ろ!) ゆらめく67本目の触手についているタコ眼球が、背後から迫り来る鏖殺茨を捉えた! 100本ほどの茨が渦を巻いて迫り来る! 触手バトルだ!!!! オーソドックスにダイオウイカの鈎爪付き極悪触手!無残!イカ刺し一丁! ならばとオニヒトデの毒針付き青黒触手!オニヒトデ無残!環境保護、サンゴを守れ! 電気ビリビリ!シビレエイの発電器官!!あっそれ水中じゃないと効果薄いんで。無残! ブライアローズが迫ってくる!ヤバイ! (既存の生物から流用して手抜きしないでホラホラ!独自の発想力!宇宙!マハトマ!) 「やればいいんでしょやればァァーーーーッ!!」 黒い硬質ゴムみたいな蠢く超触手!チェーンソー触手!電撃を纏うポリプ! 宇宙風プロペラカッター!光の流法・輝彩滑刀!超々高圧ウォーターカッター! これらはやや善戦するも、茨の棘が突き刺さったところから溶け始めた! 「だめじゃない!!なによアレーッ!!インチキだわー!!」 (あちゃーっやっぱコレなんだよなー。専門用語で言う所の神性特攻の棘がなー!) 「に、逃げましょう!逃げるわよ!」 (ちょっとそれはタンマタンマ!!悪手だよエルちゃん!!) 27 :エルレカーン:2016/04/19(火) 23 05 25 チョウチンアンコウのランプを生やして逃走を図る!目眩ましだ! フラッシュバン!閃光が辺りを包む! 徐々に視界が戻る。茨はどうなったのか……。 ダメだ効いてない!まるで意味が無かった! それどころかさっきの間に、何本かの触手が茨に捕まっている! それらがそのままエルレカーンを飲み込もうと伸びてきた! (うわーっ!何やってんですかエルちゃーーーーん!!) 「ああもう!切って切ってぇーーーー!」 カニ触手が茨に捕まった触手をことごとく切り離す! しかしそれが原因でエルレカーンは体勢を崩し、墜落!鉄骨に激突!気絶! (うわーっ!シスターにぶち抜かれたときといい相変わらず油断しすぎですぅ、起きてー!!) 茨が彼女を周囲を取り囲み、棘の檻を形作っていく。 もはやここまでか。 このまま肢体をバラバラに引き裂かれ、目覚めぬ永遠の悪夢に囚われてしまうのか。 後悔の念が押し寄せる。 自分が背負った業、因縁、宿命の戦いにエルレカーンを巻き込んでしまった。 こんなことになるなら、外に出なければ良かった……。 エウレカが諦めかけた、その時! 「らめぇ!!らめれしゅぅっ!!」 茨の杖の持ち主、緑髪の少女――織音アイリが叫んだ! 「こっ、このぉっ………バカ杖……んっ……!!」 アイリが杖を手繰り寄せ、抑えこむ。その華奢な腕に、棘が食い込む。 「あっお前バカやめろ!あとちょっとなのに!いいところなのにィーーーーッ!!」 未練がましい咆哮が響く。アイリは杖を更に強く抱く。棘が食い込む。 「あぅっ…!いばりゃっ!いばりゃささってりゅぅぅぅ!!いたいっ!のがぁっ…ぁ! きもちよすぎてぇっ、おかしくなっちゃぅぅぅ!ああああああぁぁぁぁぁぁっ……!!」 「やめろォ!!こ、こんな小娘如きにこの我が!!この我がァーーッ!!」 (何が起こったんです!?) 広がっていた茨が杖のもとへ収縮する。 「いうこときけないっ……子にはぁっ、おしおきぃっ、ですっ!」 アイリは震える手で、杖の先を、自らの秘部へと運んでいく。 棘の杖を、自らの、秘部に。 「わっ……わたしのなかでっ……!大人しくしていてくださいっ……!!」 「うわあああああああーーーーッ!!よせ!やめろ、やめてくれぇぇぇーーーー……」 「えへへっ……じつは前からいっかいやってみたくてぇっ……! ゆ、ゆめだから!ゆめだからだいっ、じょうっ……くっ……んっ、はぁ」 これぞマゾヒズムの新境地ローズファック。 アイリの中を、針で刺すよ痛みがのぼっていく。 「あああぁぁぁっ!!いばりゃぁぁっ!!いばりゃはいってくりゅぅぅぅっ!! あはっ、あっ、あついっ、おなかのなかぁっ、あついよぉっ……!!」 杖とアイリが一つに交わる。 直結部から朱殷色の光がとめどなく溢れ出し、ビルの建築現場を飲み込んだ。 ◯ 「あれ、私、どうして――」 エルレカーンが目を覚ます。 周りを囲んでいた茨は消え、薄暗い街灯に照らされる鉄骨だけがあった。 (ど、どうやら助かったみたいですねぇ……?) 狂気を統べる海淵の神エウレカでさえも、動揺を隠し切れない。 「あの子、どうなったかしら……」 (ま、まあ……所詮ただの夢ですし?死んではいないでしょう……多分) 突如、街灯が激しく明滅を始める。 一時の夢の戦いが、終わりを告げようとしていた。 (えー、譲られたとはいえ勝ったには違いありません。どんな夢を願うんで?) 「勿論、この体を治す夢よ。ああ、でも……」 一息置いて。アイリが居た場所を見つめる。 「あの子にもう一度会うってのも――――悪くないわね」 無色の夢を見たときから、あの子とは仲良くなれそうだなって……思ってたから。 ほら、どこか似てるじゃない?あの子と私。 夢でも構わない。一時だけでも、ゆっくりお話したかったわ。 アイリって呼んだり、したかったの……。 (本戦に続く)