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https://w.atwiki.jp/chine_miku/pages/123.html
- 検証動画 前に作った替え歌作品の中で、 俺の声のピッチを上げるとあの人の声っぽくなる ということが判明したわけですが、 それを改めて検証すべく、こんなものを創りました。 新ジャンルのモノマネです。 ちなみにこちらが、いじくる前のバージョンです。 さらにどうでもいい情報ですが、 妹がしょこたんと同じ誕生日です。 今日はどうでもいいことしか書きませんでした。 戻る コメント へぇ~ -- 名無しさん (2010-05-17 18 06 40) 超面白いですっ!!!頑張ってくださいーーーー^^ -- かつお (2010-05-18 09 41 45) がんばれ=あるばむ おはやめに -- いつでもwktk (2010-05-18 15 21 34) 「トイレの神様」聴きました!これの替え歌、「明日もし君が壊れても」以来の期待!! -- 名無しさん (2010-05-20 23 32 38) アルバムまだかww -- 名無しさん (2010-05-25 19 07 32) 名前 コメント
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ルール 暫定だが以下のルールを検討中 Lv150、スキルLv140にする 強化は最大まで行う 奥義の検証はLv1、10の2段階 Lv10は可能なら 親密度を最大にする 攻撃力に補正がある リーダーにしない アチーブメントのステータス補正を防ぐためサブにする HP100%で維持する HP〇%以下のスキルは不採用とする 混沌の遺物で攻撃性能は上げない 攻撃力0のリジェネート遺物を装備する 攻撃系の装飾は付けない 命中や回避といった関係無いのはOK 溜めるを使用しない 溜めると次の攻撃が強化されるため前ターンは使用禁止 クリティカルは無しと有りで分ける n=クリティカル無し、cr=クリティカル有り 検証回数は3回まで 3回分のダメージを表記 強化スキルについて 一部の強化バフは使用しない 物理魔法限定、エレメント強化、クリティカル、奥義強化など パーティー参加で強化は禁止 【コキュートス】混沌適応:氷獄衣のような自動強化パッシブスキルは禁止 ①補正無し 一切のデバフスキルの使用禁止 ②デバフ有り 防御力-60%、全パラメータ-30% ③バフ有り 攻撃力+75%、スキルダメージ+100% ④バフ・デバフ有り ②と③両方 検証可能なキャラクター 最新の追加キャラクター バランス調整が行われている + 検証可能なキャラクター 検証対象候補 + 混沌獣・戦士型 HARD 第九章 4話 それぞれの思惑 エピソード05 知 物理 混沌種 混沌獣・戦士型 HP45,482 - 闇+25光-25 3455 力 火 4,143n 4,090n 3258 技 水 3,948n 3,895n 3412 技 氷 4,064n 3,990n 3290 速 風 3,710n 3,653n 3139 速 土 3,828n 3,790n 3248 知 闇 2,986n 2,900n 3060 知 毒 3,851n 3,734n 3143 心 雷 4,546n 4,456n 3127 心 光 5,513n 5,362n + ハムスケ HARD 第二章 5話 禁断の地 エピソード10 速 物理 獣種 ハムスケ HP113,990 - 闇毒-25 3455 力 火 4,907n 4,836n 3258 技 水 3,234n 3,170n 3412 技 氷 3,309n 3,265n 3290 速 風 3,710n 3,629n 3139 速 土 3,848n 3,762n 3248 知 闇 5,935n 5,838n 3060 知 毒 4,817n 4,688n 3143 心 雷 3,766n 3,753n 3127 心 光 3,736n 3,659n + ... HARD 第章 話 ??? エピソード ? 物理 種 ??? HP - 3455 力 火 3258 技 水 3412 技 氷 3290 速 風 3139 速 土 3248 知 闇 3060 知 毒 3143 心 雷 3127 心 光 テストプレイ + ボツデータ HARD 第四章 5話 ニグンとの邂逅 エピソード10 心 魔法 人間種 ニグン HP335,444 全状態異常耐性+100% 光雷+25闇毒-25 ①デバフ無し ②攻撃力+75%、スキルダメージ+100% ③防御力-60%、全パラメータ-30% ④攻撃力+75%、スキルダメージ+100%、防御力-60%、全パラメータ-30% n=クリティカル無し cr=クリティカル発生 青字=ダメージ増加補正 【アルベド】甘々な愛妻 土エレメント強化+37.5%素早さ+22.5%奥義ゲージ初期値+70%MPリジェネート+1 ①あなたの為の型作り スキル物理/土 84,236n 83,866n 82,902n ②あなたの為の型作り 159,744n 158,187n 156,065n ③あなたの為の型作り 267,950n 267,243n 263,005n ④あなたの為の型作り 508,490n 505,351n 504,454n ①純愛のなる形 スキル物理/土 106,705n 106,239n 104,093n ②純愛のなる形 204,718n 203,460n 203,101n ③純愛のなる形 339,427n 334,988n 329,365n ④純愛のなる形 647,341n 639,370n 627,414n ①この愛を受け止めて♪ 奥義Lv10物理/土 192,193n 191,606n 191,089n ②この愛を受け止めて♪ 320,693n 320,057n 319,593n ③この愛を受け止めて♪ 616,349n 616,183n 612,904n ④この愛を受け止めて♪ 1,021,178n 1,019,165n 1,013,310n 【マーレ】愛々しいショコラティエ 土エレメント強化+37.5%物理攻撃力+22.5%奥義ゲージ初期値+70%MPリジェネート+1 ①ちょこれいと? スキル物理/土 242,043n 241,423n 238,119n ②ちょこれいと? 416,999n ③ちょこれいと? 757,385n ④ちょこれいと? 1,347,345n ①おいしくなぁれ スキル物理/土 443,496n 437,791n 433,607n ②おいしくなぁれ 843,256n ③おいしくなぁれ 1,413,218n ④おいしくなぁれ 2,690,998n ①受け取ってください!! 奥義Lv10物理/土 249,414n ②受け取ってください!! 403,566n ③受け取ってください!! 793,099n ④受け取ってください!! 1,289,212n 検証結果 ①バフ・デバフ無し ②攻撃力+75%、スキルダメージ+100%、防御力-60%、全パラメータ-30% n=クリティカル無し cr=クリティカル発生 青字=ダメージ増加補正 赤字=ダメージ軽減補正 【ルプスレギナ】笑顔招く巫女 被ダメージカット+45%リジェネート+30%防御力+45%ガッツ1回(HP100%で復活) ①お焚き上げ スキル全体魔法/火 120,434n 119,864n 117,923n ②お焚き上げ 741,417n 739,305n 735,080n 【ジルクニフ】混沌適応:血焔衣 攻撃力+37.5%防御力+45%素早さ+37.5%奥義ゲージ上昇+37.5%HP30%以下の時、リジェネート+22.5% ①侵火 スキル全体魔法/火 153,593n 152,264n 151,083n ②侵火 833,216n 826,012n 822,010n ①君主の采配 奥義Lv10単体魔法/火 336,627n ②君主の采配 1,681,741n 1,657,082n 【ウルベルト】大災厄の魔 魔法攻撃力+37.5%魔法スキルダメージ+37.5%命中+Lv4MPリジェネート+1 ①露悪趣味 スキル単体魔法/火 ②露悪趣味 ①炎上上等 スキル全体魔法/火 ②炎上上等 ①爆宴業咎 奥義Lv10全体魔法/火 ②爆宴業咎 【九狐】混沌適応:冰心衣技タイプ 攻撃力+37.5%スキルダメージ+22.5%HP70%以上の時、スキルダメージ+45%氷エレメント強化+37.5%回避+Lv5 ①凍牙 スキル全体物理/氷 211,509n 207,921n 207,383n ②凍牙 821,795n 820,400n 795,286n ①舞氷刃 スキル単体物理/氷 443,826n 434,407n 432,523n ②舞氷刃 1,689,453n 1,687,992n 1,671,915n ①凍衝 奥義Lv10単体物理/氷 ②凍衝 【第十一席次】無限魔力技タイプ スキルダメージ+52.5%悪魔種キラー+30%氷エレメント強化+37.5%HP80%以上の時、MPリジェネート+1 ①氷針 スキル単体魔法/氷 489,517n 394,196n 382,083n ②氷針 ①氷礫 スキル全体魔法/氷 236,151n 234,086n 230,873n ②氷礫 ①隕氷 奥義Lv10単体魔法/氷 ②隕氷 【スライム子】聖夜の粘星衣技タイプ 防御力+45%被ダメージカット+37.5%攻撃力+37.5%スキルダメージ+52.5%バトル開始時、奥義ゲージ+20% ①粘性凝結幕弾 スキル全体物理/氷 292,780n 285,749 283,740n ②粘性凝結幕弾 1,199,623n ①悪戯な贈物 スキル単体魔法/氷・光 ②悪戯な贈物 ①粘・体・覚・醒 奥義Lv10全体物理/氷 ②粘・体・覚・醒 2,595,016n 【アルベド】甘々な愛妻速タイプ 土エレメント強化+37.5%素早さ+22.5%奥義ゲージ初期値+70%MPリジェネート+1 ①あなたの為の型作り スキル全体物理/土 84,236n 83,866n 82,902n ②あなたの為の型作り 508,490n 505,351n 504,454n ①純愛のなる形 スキル全体物理/土 106,705n 106,239n 104,093n ②純愛のなる形 647,341n 639,370n 627,414n ①この愛を受け止めて♪ 奥義Lv10全体物理/土 192,193n 191,606n 191,089n ②この愛を受け止めて♪ 1,021,178n 1,019,165n 1,013,310n 【マーレ】愛々しいショコラティエ速タイプ 土エレメント強化+37.5%物理攻撃力+22.5%奥義ゲージ初期値+70%MPリジェネート+1 ①ちょこれいと? スキル単体物理/土 242,043n 241,423n 238,119n ②ちょこれいと? 1,347,345n ①おいしくなぁれ スキル全体物理/土 443,496n 437,791n 433,607n ②おいしくなぁれ 2,690,998n ①受け取ってください!! 奥義Lv10全体物理/土 249,414n ②受け取ってください!! 1,289,212n 【シャルティア】祝宴煌装速タイプ 風エレメント強化+30%水エレメント強化+30%素早さ+22.5%命中+Lv5 ①水蛇の舞 スキル単体魔法/水 110,485n 110,180n ②水蛇の舞 652,826n 643,163n ①旋風・乱 スキル全体魔法/風 ②旋風・乱 ①旋風・大渦 奥義Lv10全体魔法/水風 ②旋風・大渦 【ナーベラル】電光石火のショコラティエ知タイプ 魔法攻撃力+37.5%命中+Lv4魔法スキルダメージ+37.5%素早さ+37.5% ①名状しがたき配合 スキル全体魔法/闇 328,120n ②名状しがたき配合 1,431,324n ①死に至る甘苦 スキル単体魔法/火・氷・闇 ②死に至る甘苦 ①這い寄る甘味 奥義Lv10単体魔法/火・氷・闇 ②這い寄る甘味 【ナーベラル】祝宴麗装心タイプ 魔法攻撃力+30%魔法スキルダメージ+37.5%雷エレメント強化+37.5%魔法スキルダメージ+37.5% ①纏雷撃 スキル単体魔法/雷 137,028n ②纏雷撃 ①電撃球 スキル全体魔法/雷 139,544n ②電撃球 ①紅蒼電槍 スキル単体魔法/雷 ②紅蒼電槍 ①紅蒼招雷 奥義Lv10全体魔法/雷 ②紅蒼招雷
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Gears of War Judgment VIP パス 1,600MSP Haven DLC パック 武器マスター DLC パック 1,000MSP (The Call to Arms Map Pack) Dreadnought DLC パック 160MSP (2013/5/14より5/28まで無料配信) 戦火の爪痕 DLC パック 1,000MSP (Lost Relics DLC ) 195.01MB Gears of War Judgment VIP パス 1,600MSP http //marketplace.xbox.com/ja-JP/Product/Gears-of-War-Judgment-VIP-%E3%83%91%E3%82%B9/90f9f695-e298-4c2e-a611-6bcf3d892f1b 2 つの拡張パック (マルチプレイヤー マップ 6 種類と、新モード 2 種類) 限定スキン 9 種類 XP が 2 倍獲得できる VIP プレイリストへのアクセス権 今後リリースされるマルチプレイヤー マップへの早期アクセス権 Haven DLC パック 期間限定で無料配信 http //marketplace.xbox.com/ja-JP/Product/Haven-DLC-%E3%83%91%E3%83%83%E3%82%AF/a87e840d-1eb8-461f-aba3-045251bcf07b 『Gears of War Judgment』ゲーム追加コンテンツ第一弾「Haven DLC パック」は、経験値 (XP) が一定期間 2 倍 (VIP シーズンパス購入者は 3 倍) ブーストし、「Gears of War」ファンに絶大な人気を誇るマルチプレイヤー モード「Execution」モードとマルチプレイヤー マップ「Haven」が含まれる。本ゲーム追加コンテンツは、米国男性誌「MAXIM」の提供により、期間限定で無料配信中です。 マルチプレイヤー モード「Execution」 マルチプレイヤー マップ「Haven」 武器マスター DLC パック 1,000MSP (The Call to Arms Map Pack) http //epicgames.com/community/2013/04/gears-of-war-judgment-call-to-arms-map-live-now-for-vip/ http //marketplace.xbox.com/ja-JP/Product/%E6%AD%A6%E5%99%A8%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC-DLC-%E3%83%91%E3%83%83%E3%82%AF/9758b7a5-8679-4c2f-8a37-3cda6f1b4650 VIPパス所持者には 2013/4/23 より。その他は全世界同時 2013/4/30 公開。 3 つのマルチプレイヤーマップと“Master at Arms”モード、6 種の装備とガンのスキンが用意される。 追加実績が10、総ゲーマースコアは250。 新マップ Terminal (OverRun と SURVIVAL) Blood Drive (Standard Multiplayer) Boneyard (Standard Multiplayer) “Master at Arms”モード 新しい Free for All モード ゴールは殴りやグレネード以外で20種類の武器を使うこと。 武器は自動的に次のものへ切り替わる。 Dreadnought DLC パック 160MSP (2013/5/14より5/28まで無料配信) http //marketplace.xbox.com/ja-JP/Product/Dreadnought-DLC-%E3%83%91%E3%83%83%E3%82%AF/18929e64-dc5a-498b-b207-004ac0ca3f2b# アメリカの男性誌 MAXIM の提供で OVERRUN (とSURVIVAL) 用マップ DREADNOUGHT が配信された。 マップのみで追加実績は無い 戦火の爪痕 DLC パック 1,000MSP (Lost Relics DLC ) 195.01MB 2013/6/25より配信予定 ( VIPパス購入者は 6/18 より無料先行配信 ) http //epicgames.com/community/2013/05/gears-of-war-judgment-dlc-lost-relics/ http //epicgames.com/community/2013/06/lost-relics-dlc-coming-june-18th/ http //marketplace.xbox.com/ja-JP/Product/%E6%88%A6%E7%81%AB%E3%81%AE%E7%88%AA%E7%97%95-DLC-%E3%83%91%E3%83%83%E3%82%AF/90c9f16e-0e3d-4094-9257-27ed66708ac4 4つのマップと1つのゲームタイプが含まれる。 マップ An Old Favorite Returns CHECKOUT New Maps LOST CITY MUSEUM WARD (OverRun) 新ゲームタイプ BREAKTHROUGH 攻撃チームと防衛チームに分かれ、防衛チームのpoolと呼ばれる場所にフラッグを設置/阻止するゲームの模様
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統合暦329年5月30日 初夏の訪れを予感させるような強い陽射しに辟易しながら これまた一緒に居るのが辟易するようなクラスメイトが、さも当然かのように隣を歩いていた。 「そういや、守屋君って格闘は得意だけどさ、剣とか銃も達者なの?」 「剣は兎も角、銃が得意な高校生って滅多に居ないんじゃないのか?」 守屋が至極、真っ当な返答をするが、少なくとも霧坂にしてみたら守屋は真っ当な高校生では無い。 守屋が紛争地域で重火器を振り回していると言われても、「ああ。そうだろうね。」と簡単に信用するだろう。 「いや、得意そうじゃん?第一、フツーじゃないんだし。」 普通じゃない。その言い方に少し憮然とするが、気持ちは分からんでも無い。 「確かに家はあんなだし、物心が着いた時から色々、叩き込まれたけど 他人を殺傷する目的の道具は持たされた事が無いんだ。 だから、機械術にしたって刃は潰してあったし、銃火器の類だって触れた事が無い。」 「そっか、ゴメンゴメン。じゃあ、守屋君が大会に出るとしたら格闘か自由形かな?」 守屋は聞き慣れない言葉に眉を顰め、霧坂に聞き返した。 「自由形ってなんだ?」 「大会の出場種目だよ。本来なら同じ武器同士で戦うんだけどね。 其々が得意な武器、ギアに最も適切な装備をして戦うんだよ。銃vs剣とかね。 流石にMCIとSCIで区分されるけどね。」 要はギアのバーリ・トゥードか。初めてギア部の見学に行った時の加賀谷と三笠の戦いをふと思い出した。 ソードライフルvsハルバート+ランス。アレも一種の自由形か。 互いに武器を合わせるよりも好き勝手な武器でぶつかり合った方が面白そうだ。 「面白そうだな。早く大会に出場してみたいもんだ。」 「ま、守屋君の場合はアイリス・ジョーカーの再調整からだね。」 前回の戦いで破損した左腕の修理がギア部の整備担当班の手に負えなかった為、工場送りになってしまったのだ。 守屋は自分の操縦技術が未熟だからと破損させてしまったと考えていたが、原因は少し違う。 アイリス・ジョーカーの反応速度を抑えていた為、守屋の動きをトレースする事が出来なかっただけに過ぎず 例え、大会上位の腕を持つ選手であっても、そうと知らなければ守屋と同じく機体を破損させていただろう。 ギアが工場から戻って来たら守屋はアイリス・ジョーカーの反応速度を調整しながら 単純動作を繰り返しながら、最適なパラメーターを設定する事から始めなければならない。 自動設定でも前回よりは比べ物にならないくらい動かし易くなるが、モーショントレースという性質上 MCI搭載機の性能を最大限引き出す為には最適値を見つけるのは必須事項だ。 何よりもMCI部門の大会出場者達は皆通って来た道であり、自動設定で出場するなど言語道断なのだ。 「早く、ジョーカーに慣れたいんだけどな…」 ぼやく守屋を霧坂が珍しく普通に宥める。 「適切な調節をしたギアがどれだけ扱い易いかはシミュレーターでも分かったでしょ? それに変な癖が付くといけないからね。守屋君はレギュラーなんだから、しっかりやらないと。」 霧坂がまともな事を喋るのは初夏の陽射しによる熱射病なのではと 微妙に失礼な事を考えながら、スタジアムに足を踏み入れた。 ギア部の選手陣は加賀谷の前に並び、活動前のミーティングを行っていた。 「よし。全員、集まったな。今日はシミュレーターを使った総当たり戦を行う。 1年…特に守屋は『まだ』対人戦を経験していないからな。」 「ええ。『まだ』未経験ですね。」 実際には宋銭高校の生徒と交戦し撃退しているのだが、そんな事実は無い事になっており 今回のシミュレーター訓練が初めての対人戦という事になっている。 「では、守屋はリヴァイド・ジョーカーのデータ。それ以外の部員はリヴァイドのデータを使え。 使用兵装は各自自由とする。守屋のみMCI搭載機になり、近接系の選手にはかなり大きなハンデを抱える事になるが… ギア選手としてのキャリアは無いも同然だ。つまり、負けたらかなり恥ずかしいぞ?各自、肝に銘じるように。」 シミュレーターに乗り込み、加賀谷の指示通りリヴァイド・ジョーカーのデータをロードし、兵装にナックルガードを選択。 戦闘準備完了。ギアのモニターがスタジアムの映像を映し出す。 既に相手のリヴァイドが待ち構えていた。全員の使用ギアがリヴァイドのせいで誰か全く分からない。 ライフルにショートソードを装備しているのは分かるが…誰がどの武器を得意としているのか守屋は知らない。 ただ、誰が相手であっても全力でぶつかるという気概。勝つにせよ負けるにせよ、得る物があるという思い。 あわよくば全勝したいという、ささやかな欲望を持っている程度だ。 開始の合図を待っていると相手ギアから通信が入る。 「やっほ、一番手は私だから、お手柔らかにね。」 「霧坂はライフルと短剣を使うのか…」 「ま、私も初心者だからね。色んな武器を使って模索中ってわけ。 守屋君は素手でやるの?って言うか、素手の方が強いんだっけ?」 「多分な。やってみれば分かるさ。俺もある意味、模索中だからな。」 そう言って、構えを取る、 「成る程ね。」 守屋が攻撃を仕掛けるには、距離を詰める必要がある。 しかも、SCI機は人間の至らない所をシステムを補ってくれる。例えば、ライフルのロックオン。 単純な命中精度だけなら、アームドギアにも匹敵する。 以前に加賀谷が高速飛来するロケットランスにライフルの砲弾を何発も直撃させる事が出来たのも 加賀谷の腕による所も大きいが、サポートシステムを適切に運用出来たからこそでもある。 特に飛び道具に事関してはSCI機の優位は非常に大きい。 更に守屋が距離を詰めようにも追いかけっこでは霧坂に分がある。 MCI機は総じてブースターや、スラスター等の推進装置が無いからだ。 とは言え、フィールドの広さは無限では無い、一方方向に逃げれば壁に遮られるし、飛べば天井がある。 エネルギーと弾数も当然、無限では無い。延々と機動力任せで後退しつつ、ライフルで狙撃すると言うわけにはいかない。 弾、エネルギーが尽きる前に壁際まで追い詰められる前に守屋を撃破しなければならない。 兎に角、守屋に攻撃をさせてはならない。守屋に格闘戦を挑むのは無謀過ぎる。 遠距離戦闘ならSCI機に分があるが、近接戦闘ならMCI機の独壇場だ。 何よりも、守屋の格闘戦技能ならばギアを通してとは言え、一撃で昏倒しかねない。 戦闘開始の合図と同時にライフルを二発。後方に跳躍し着地と同時に更に一発。 最初の二発を左腕で打ち払い、3発目を身体を逸らし回避。 霧坂が様子見をしている隙に距離を詰めるべく地を蹴った。 霧坂は距離を詰める為に疾走する守屋を見て、思っていた以上に早いなと思った。 だが、足が早い事など如何でも良い。銃弾を打ち払って無効化するなんて、どんな非常識だ。 「あれ…また左腕?」 以前、宋銭高校の生徒と戦った時も飛び蹴りを左腕で打ち払っていたのをふと思い出した。 まさかと思い。霧坂は左腕に一発、後方に飛び退り右腕に一発。 守屋は左腕で銃弾を打ち払い、右腕を狙った一撃を左前方に跳躍し疾走した。 「成る程。左腕は盾で、右腕は剣ってわけね。じゃあ、コレなら如何かな?」 右腕に向けて、マガジン一つを使い切るつもりで発砲する。 守屋は一発も被弾しない。SCI機の射撃精度が非常に高いのは既に聞き及んでいる。 リヴァイド・ジョーカーのモニタを最大望遠でリヴァイドのライフルの向きで着弾位置を マズルフラッシュで発砲のタイミングを計り、回避行動に移る。普通なら出来ない芸当なのだが SCI機に関しては話が違ってくる。攻撃が正確過ぎるが故に予測回避が容易なのだ。 そもそも、MCI機でSCI機に追いつける等と思い上がっていない。 安全に回避行動を取れるように充分な距離を取っている。 本格的に距離を詰めるのは弾が切れてからでも遅くない。 流石に連射されると回避は困難だが、回避だけに意識を集中させれば致命傷だけは避けられる。 現に奇跡的ではあるが、連射されたライフルの砲弾を全て回避した。正直、もう一度やれと言われても出来そうに無い。 「ふーん…やっぱりね。」 左側に攻撃を行うと左腕に打ち払われる。右側に攻撃を行うと、かなりの頻度で左側に飛び退く。 「素人相手に動きを読まれるのは如何なんだろうね?」 独りごちて、ニ発目のマガジンをセットする。 「これで撃ち止めだけど、これで充分かな。」 右腕に向かって、3発発砲。ワンテンポ遅れて何も無いリヴァイド・ジョーカーより遥か左の空間に向けて3発発砲。 霧坂の予測通り、守屋は左前方に向かって機体を跳躍させる。着地点には砲弾が3発。 「此処まで予想通りだとはね。3発と言わずに、もう5~6発くらい撃ち込んでおけば良かったかな?」 霧坂の放った銃弾は守屋機の脚部を撃ち貫こうと襲い掛かる。 「残念。そこはキルゾーンでしたとさ。足を潰されたら、まともな回避運動も取れないよね?」 霧坂は勝利を確信するが…守屋は無造作に左腕を振るった。 三発の砲弾を打ち払うが、度重なる強引な防御のせいで左腕が爆散する。 「これは…大失態だね。」 恐らく、手の内は知られてしまった。しかも、新たな攻撃手段を講じようにも残弾は僅かだ。 「この攻撃で得られたのは守屋君の左腕…うあ、割に合わないわ。」 必勝の策は守屋に通じず戦意喪失から来る痛恨の操縦ミスをやらかしてしまい勝負は一瞬でケリがついた。 「分かっていたけど、本当に強いわ。私の方が一ヶ月も長く乗ってるんだけどなぁ…」 「ま、要模索ってところか?」 悔しがる霧坂を前に軽くおどけて見せるが、霧坂の予測能力に肝を冷やしたのも、また事実だ。 (日常会話でもよく読まれるしな…俺って分かり易いのか?それとも、霧坂が異常なのか?) 強いて言うなら、どちらも正解である。 モニターから霧坂のリヴァイドが姿を消し、大剣を携えたリヴァイドが現れた。 「おー、来た来た。まずは一勝、よく頑張ったな!」 次の対戦相手から快活な声が届けられた。 「回避した先に銃弾ぶち込まれた時は流石に如何しようかと思いましたけどね。」 声の主は2年のレギュラー、阿部辰巳だった。黒髪に黒目、スポーツギア部の中で最も倭国人らしい顔立ちをしている。 「遠距離攻撃に対する防御手段や回避運動が単調過ぎるんだ。ま、気にする事じゃねーよ。 MCI同士の戦いで飛び道具使う奴なんて滅多にいないしな。」 阿部の指摘に、やっぱり分かり易いのかと少し凹む。 「ま、守屋とやる時はコレの方が良いだろ?」 阿部機は携えた大剣を両手で握り、腰溜めに構える。 とは言え、阿部機はMCIでは無くSCI機の為、レバーやペダル、モーションプログラムによって操作を行う。 使用出来るモーションプログラムの数にも限りがある。長丁場になればなる程、呼び動作だけで動きを読まれてしまう。 だが、MCIは搭乗者の動きをトレースする操縦システムだ。格闘戦に事関してはSCIのような制限は一切無い。 守屋にとって圧倒的有利な状況。 格闘戦における下地は完成していると言っても良い。だが、ギアの性能を完全に引き出すには至ってはいない。 (ま、後輩のレベルアップに付き合ってやるのも先輩の役目ってな。) 構えを崩さずブースターで距離を詰め、突き、切り上げ、振り落とし、薙ぎ払いの四連撃を放つが軽やかに避けられる。 (格闘戦だと回避運動も変則的になるんだな。) また単調な動きで避けるようなら注意の一つでもしてやらなければなと考えていたが、自分が口出しするまでも無い。 (今度は打たせてみるか。) 大剣を振るいながら、守屋が攻撃に転じ易いように攻撃と攻撃の間に発生するタイムラグを広げてやる。 (ブースターも無いのに早いな。流石に良い踏み込みをする。) 隙ありと守屋機は一瞬で距離を詰め、鋼拳を阿部機の左腕に叩き込む。 両手で持つ事が前提の武器だ。腕の一本でも落とせば攻撃能力は半減どころじゃ済まされない。 (何も教えてねーのに、よく理解している。ガキの時から鍛えたれてた言ってたな?) 確かに守屋の踏み込みは早い。攻撃も理に叶っている。攻撃パターンも多彩だ。 だが、その速さもMCIとしては早いと言うだけに過ぎない。阿部は慌てもせずに、ブースターを一吹かしして、一歩離れる。 (そういや、もう一発来るんだっけな。) 阿部機は大剣を持ち上げ盾の代わりに構え、守屋機の右回し蹴りを防ぐ。モヒカンと戦った時と同じだ。 「きっとそう読んでくれると思いましたよ。」 守屋の挑発気味の発言に阿部が眉を顰めようとするが、それよりも早くコクピットに衝撃が走った。 守屋機の左足刀が阿部機の右足に甚大なダメージを与える。 幸い欠損だけは避けられたが、踏み込みに頼った斬撃は後何発放てるだろうか? (足を潰されたのは初めてだな。よりによって手持ちのモーションパターンの踏み足は右と来たもんだ。 …手詰まりか。つーか、後輩の欠点を気付かされて如何するんだよ、俺。) 手詰まりと言うには若干、語弊がある。阿部の用意したモーションパターンには ブースターを活用した空対地、地対空のブースターを活用した攻撃プログラムがある。 だが、SCI機を使う予定の無い守屋にとって利益をもたらす攻撃では無い。 (やれやれ…後輩を舐め腐った罰だ。此処は花を持たせてやるか。) 満足に攻撃が出来ないまま阿部も守屋に撃墜され、次の対戦相手と相対する。 歳方アリア。阿部と同じく、2年のレギュラーで二丁のハンドガンを装備している。 「守屋、わたしゃ吃驚だよ。まさかギアに乗って一週間の奴が阿部を倒すとは思わなかったよ。」 「阿部さんも、此方に合わせて戦ってくれた上に手加減までされてましたから。」 「でも、余裕ぶっこいて負けるのは先輩としてどうよって感じなんだけどねぇ… まあ、先輩として立つ瀬が無いから、そろそろ負けてもらおうか!」 開始の合図と同時に距離を詰めて来る。 (てっきり、霧坂と同じようにアウトレンジからと思ったんだけどな…) 歳方はブースターの出力を最大値まで引き上げ守屋機に迫りながら、ハンドガンを発砲する。 二丁のハンドガンから吐き出された弾は守屋機に一発も被弾しない。 (当たらない?どうなっている?) SCIの精密射撃能力は人間のそれを大きく上回っている。 なのにも関わらず、歳方機の射撃は出鱈目だ。避けるまでも無く当たらない。 (アレはそもそも狙っていないのか?厄介だな…) こちらを狙っているのか狙っていないのか分からないが、モニタを最大望遠モードにしても見切るのは非常に困難だ。 ライフル程の攻撃力は無いが発射感覚が短い上に高速移動しながらの射撃の為、銃身が激しくぶれている。 これでは攻撃予測なんて出来やしない。 (霧坂みたいな丁寧な攻撃なら見切るのも簡単なんだろうけど、こういった雑な攻撃は見切れないみたいだねぇ。) 漸く、守屋が苦戦らしい苦戦…と言うか随分と戸惑っているようだ。助言くらいはするべきだろうか? 「守屋~。SCIの攻撃は確かに正確だろうけど、常に正確無比で合理的な攻撃をすると思ったら大間違いだよ。 全部が全部、合理的な攻撃なら霧坂の攻撃みたいに読み易い攻撃になっちゃうだろ?」 アドバイスの言葉を銃弾と一緒にプレゼント。牽制弾を数発。そして、本命弾を四発。 非有効射程距離からの、ただ当てるだけの銃弾。有効なダメージでは無いが四肢を捉えていた。 (やろうと思えば、いつでもやれる…ってわけか。) 距離の詰め合いもそろそろ終わりだ。ハンドガンの有効射程距離になると同時に歳方機は発砲を止める。 それどころか、ブースターの勢いを緩めない。 (すれ違い様に背中に攻撃って所か…?正面からぶつかって膝蹴りで打ち落としてやる!) 全身のバネを使って跳躍し歳方機に正面から立ち向かう。 歳方は思わず口を吊り上げ、ニヤリと笑った。 (面白い子だ。MCIでSCIを相手に真正面から空中戦を挑んで来るだなんてね。) 歳方機は空中で一回転、膝蹴りを避け守屋機の背中に二発銃弾を撃ち込む。 「今、撃たれた所にSCIのブースターがあるんだよ。普通なら墜落だねぇ。」 (さて、これは手強いな。いや…) 反転し、再びこちらに高速接近する歳方機に向き直り、跳躍する為、全身のバネを撓ませた。 (また膝蹴りかい?愚直だねぇ…付き合ってやるよ。) 機体を跳躍させ歳方機の両腕を広げ正面に立ちはだかる。勿論、膝蹴りなどするつもりは無い。 先程と同じく回転しつつ逃げようとする歳方機にしがみついた。 「これは…何なんだ?」 「合理的且つ、非合理的な攻撃ですかねぇ…多分。」 「いや、多分って…」 因みにリヴァイドには他のギアにしがみ付かれたまま、高度を維持出来る程のパワーは無い。 更に対戦開始から常時ブースターを最大出力で稼動させていた事もあり… 「嘘っ!?エネルギー切れ!?」 態々、ご丁寧に再現された重力に引き摺り落とされる。 一瞬の油断が敗北に繋がった。それも空中で飛びつかれ地面に引き摺り落とされるという 合理性以前に不条理極まりない攻撃。そもそも、あんな攻撃をする奴なんて見たことが無い。恐るべし素人。 しかし、負けは負けだ。それも一番、不恰好な負け方をしてしまった。 「り~ん~…わたしゃ、もーダメだ。仇を取ってくれ~。無理なら私より情けない負け方してくれ~!」 次の守屋の対戦相手として内田燐が守屋と向かい合っていた。 「同じマニューバを立て続けに二回も使うからだよ。それからエネルギーの無駄遣いが多すぎ。」 守屋と歳方の戦闘記録を流し見しながら、歳方にアドバイスを流す。 「と言うか、子供の頃から戦闘訓練受けてるんだから私達より身体の使い方が巧い事くらい少し考えたら分かるよね?」 「もう良いよ。それ以上言われたら立ち直れそうにない…」 仕方が無いなぁ…と、話を打ち切り、守屋にスナイパーライフルを突きつけた。 「また飛び道具…」 歳方と戦って嫌と言う程に思い知らされた。 (相手が潰す気で来たら、手の打ちようが無い。) 遮蔽物の無いバトルフィールドで真正面で向かい合っている。 スナイパーにとって最悪の条件だが、MCIにブースターもスラスターも無い。 走る以外に高速移動を行う手段を持ち合わせていない。 勿論、ブーストダッシュと比較にならない程遅い。 「弾数はかなり少ないけど、早いし当たると痛いから注意してね?」 内田はその場から動きもせずに守屋に狙いを付ける。 守屋はすぐ様、サブモニタを最大望遠モードに切替、銃向を確認し着弾位置を予測する。 (狙いは胸部装甲…一撃で決める気か。) 左腕を盾代わりに構える。どれ程の威力を持つか分からないが、左腕と引き換えに見切る腹積もりだ。 (また左腕…本当に癖なんだね。) ナックルガードじゃなくて、素直にシールドを装備すれば良いのにと苦笑する。 アドバイスは後からでも出来る。今はやるべき事は守屋にギア戦の経験を積ませる事が最優先だ。 躊躇いも無くトリガーを引く。霧坂のライフルとは違いマズルフラッシュは無い。 突然、襲い掛かる衝撃に守屋は転倒する。幸運にも砲弾は左腕をもぎ取っただけで胸部装甲には届いていない。 (あ、そっか。SCIと違って中の人が驚けば、ギアも驚くんだね。一発目は命拾いしたけど、ニ発目はどうする?) 内田がライフルを構え直すと、守屋は慌てて立ち上がり右腕で胸部装甲を庇った。 あくまで正面から受け止め、攻撃を見切るつもりらしい。取り合えず攻撃力が高い事だけは理解したらしく ギアのつま先を軽く浮かせ、素早く後ろに倒れ込む準備もしている。 「度胸…あるね…」 「割と臆病ですよ?弾速が全然分からない以上、闇雲に突っ込んでも勝ち目無いですからね。 両腕と引き換えに見極めさせてもらいますよ。足が使えれば攻撃は出来ますからね。」 勝負を投げたわけでは無さそうだ。本気で右腕を犠牲にして足技で倒すつもりらしい。 だったら、足を狙えば内田の勝ちは確実になるのだが… (正面対決でそれは無粋だね。アリアちゃんも阿部君も、こういう気分で戦ったのかな?) 歳方と阿部が、守屋のやりたいように戦わせてやっていたのを思い出し納得した。 こうも馬鹿正直に正面から向かって来られるとアレコレ小細工するのも馬鹿馬鹿しくなってくる。 一方、守屋は視覚では内田機の砲弾を見切れないと分かると、集音センサーの感度を上げ 発砲音で着弾のタイミングを計る為に聴覚に意識を集中させていた。 発砲音が鳴り響くと同時に後ろに倒れ込もうとするが、既に遅い。 砲弾はナックルガードを弾き飛ばし、右腕の装甲を削り取っていた。 格闘戦には使えないが、まだ盾代わりにはなる。 再び、立ち上がり右腕を構える。 (発砲音が聞こえてからじゃ遅い。) 発砲音と同時に倒れ込む。受身を取るよりも早く右腕が宙を舞っていた。 右腕は耐え切れなかったが、受けた衝撃その物はかなり軽減されていた。 「距離を離せば大分、安全になると思うよ?」 「内田先輩こそ…足を狙えば、一発でケリが付きますよ?」 守屋機があまりにも凄惨な姿に変わり果ててしまった為、思わず口出しをしてしまったが 無粋な事を言ってしまったと後悔する。改めて、これはそういう勝負なのだと思い知らされる。 内田がトリガーを引いたと同時に守屋が右肩を前にして前に踏み込んだ。 前のめりに崩れ落ちる守屋機を内田は固唾を飲んで見守った。 「これで…防ぐ物が一個も無くなってしまいました。」 思いの他、余裕そうな口ぶりで立ち上がる守屋機を見て何故か、安堵した。 「こっちも残り一発。次が最後だよ。」 3回攻撃を受けて理解した。SCI機のようにブースターやスラスターがあるならいざ知らず この距離ではMCI機にスナイパーライフルの一撃を代償無しに無力化する手段は無い。 だからこそ、4発目の攻撃を右上腕部に被弾させ弾を消耗させる事に集中した。 どうせ避けられないのなら後ろに下がるよりも前に進む方が良い。それに内田から嬉しい報告も聞けた。 残りの弾数は一発。ならば、取るべき選択はこれだ。内田機を目指して真っ直ぐに駆ける。 (本気?自暴自棄になっているわけでは無いみたいだけど…こっちも追い詰められているのは同じだしね。) 気を取り直し、トリガーを引く。音に合わせて守屋機が身を沈め…地に伏した。 「直撃…守屋君、私の勝ちだね。」 少し不満だった。馬鹿正直に正面から突っ込んで来るくらいだから、 想像だに出来ないような奇策があるとか、こちらの攻撃を完全に見切ったのではと 変な話だが、自分を倒す下準備が整ったのではと期待していたからだ。 「いてて…先輩、ちょっとばかり気が早いですよ?」 戦闘情報を確認すると確かに守屋機のコンディションは最悪だが、撃破扱いにはなっていない。 「そっか、最後の最後でちゃんと回避出来たんだね!」 「いや…その…そうじゃなくてですね…」 やけに守屋の歯切れが悪い。 「どうしたの?」 「えーと、身を沈めてやり過ごそうとしたのですが…両腕が無いせいでバランスが取れず先輩が撃つよりも早く…こう、ガッシャーンと…」 運も実力の内とは言うが内田は開いた口が塞がらなかった。 間抜けな幕切れではあったが主兵装を無力化された事は事実だ。 「もう少し良いところまで行けると思ったんだけどなぁ…」 特に悔しそうには全く見えない。寧ろ、喜色混じりのぼやき声がスピーカー越しに鳴り響いた。 「ほんの少しでも行かせてしまうと負けかねないので…すいません。」 確かに守屋機は両腕が欠落し、度重なる転倒で薄汚れていた。 それに引換え、内田機はスナイパーライフルの弾が尽きただけで機体その物の コンディションは良好…開始位置からライフルを5発撃っただけで終わったのだから当然だ。 「大丈夫。良く頑張ったね!」 守屋が正式に入部する前、内田は守屋について噂を鵜呑みにしていたせいで 否定的な物の見方をしていたが、行動を共にするようになり一方的な確執は既に無くなっている。 当然だが、守屋は横暴な人間では無いし、無闇に暴力を振るうような人間でも無い。 力を誇示する事も無く、ただ一心で部活に精を出す普通の男子生徒と何ら違いは無い。 何よりも内田は歳方に、守屋は霧坂に事ある毎に振り回され厄介事を押し付けられる。 そんな受難体質という共通点もあってか二人の関係は他の部員と同様良好である。 さて、様々な思惑がありもしたが2年生レギュラー陣全員に勝利するという快挙を成し遂げしてしまった。 残るは3年生レギュラー。副部長、三笠慶。そして、部長、加賀谷望との対戦である。 この二人の戦いは入部前に一度見ている。自分の心をいとも容易く奪い取るような戦いをした二人と戦う事が出来る。 正直、勝算など全く無い。更に加賀谷に至っては三笠を一撃で落としている。 だが、守屋は意気軒昂。身近な所に自分を圧倒的な実力差で叩き潰してくれるような相手が居る方が強くなり甲斐があると言うものだ。 「此処まで負け知らずか。素質はあると思っていたが、大したもんだ。」 三笠は賛辞の言葉と共にハルバードを構え、背面ブースターを起動させる。 「だけど、此処まで来たら負けられないよな?」 まるで自分を倒してくれる事を期待するような口振りだと感じた。 実際、三笠は守屋の勝利を期待している。勿論、手加減は一切しないし自分も負けるつもりは無い。 だが、SCIとMCIが格闘戦で戦った場合、SCIの優位は機械制御された正確無比な攻撃のみである。 機体の仕様上、守屋が勝って当然の戦いである。 (MCI部門の個人戦…出場する以上、俺程度に負けるなよ…俺より強い奴なんてゴロゴロしているんだからな) 昨日今日、初めてギアを触ったような1年をレギュラーにするくらいだ。守屋にかける期待は非常に大きい。 (とは言え…負けるのも癪なんだよなぁ…) コンソールパネルを手馴れた手つきで操作し、背中のランスを消失させる。 (負けた時の言い訳用にな…) 「それじゃ、全員に勝つつもりで行きますよ!」 「上等だッ!!」 三笠機はブースターの出力を最大値まで引き上げ、守屋機目掛けて突撃。最初の一撃は小細工無しの渾身の一撃だ。 守屋もそれを察し、カウンター狙いで拳を構えた。力任せに攻めてくれるのなら、機体性能の差でまだ勝機がある。 (カウンターで頭部を潰す。巧くいけば一撃で三笠先輩を倒せる!) それで、倒せるような相手では無い。避けようともせずに、この場に留まっているのだ。カウンター狙いな事くらい見抜かれて当然だ。 カウンターは十中八九不発に終わる。問題は不発に終わった後、三笠は如何動く? 自分は如何動けば良い?カウンターを諦めて、接触される直前に跳躍し背後を取る? 論外だ。相手は性能差の不利を承知した上に力攻めを選んだというのに自分は逃げに転じるだと? それは逃げと変わらない。攻撃だろうが回避だろうが、真正面からだ。改めて、拳を握り直し、迫り来る三笠機を睨み付けた。 ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます) +... 名前
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統合歴329年7月28日 夏休みが始まり、真夏の青さに草木も生気を失うような炎暑にギア部の面子はくたばりかけていた。 何せ実機訓練でもやろうものならブースターから噴出される高熱の炎により発生する熱風が 夏の熱気を倍増してくれるのだからやってられない。 「だあああ!!やってられるかッ!!」 突然、雄叫びを上げスチール製のデスクに頭を叩き付ける。 ガァン!!と金属がへしゃげる音が木霊する。 「夏だ!!夏休みだ!!夏休みの定番!!夏合宿に行くぞ!!」 ガバッと立ち上がり、額から血を流しながら握り拳を作って皆に提案…最早、命令に近い。 八坂高校スポーツギア部の部長である加賀谷望は連日の猛暑の為か、普段の姿は見る影も無い程に壊れていた。 普段ならば沈着冷静な男なのだが、この時ばかりはただの危険人物である。 何とも言えない妙な迫力のせいでスポーツギア部、暴力担当…基、期待のルーキー守屋一刀も 変に逆らったり、無粋な突っ込みを入れる気にもなれず大人しく肯定する事しか出来なかった。 「良いですね。夏合宿。」 乾いた笑顔で肯定する守屋に気を良くしたのか。 加賀谷は亀裂の入った眼鏡をキラリと光らせ、額から血をダラダラと垂れ流しながら強く首肯した。 「そうだろ?そうだろ!特に守屋の為にもなるからな!」 「俺の為にもなる?」 「うむ。我々、ギア部はMCI搭載機が一機しか無いから矢神に協力を求めねば実機訓練が出来ないッ!! だが、合宿という名目でMCI機を保有する高校に襲撃を仕掛ければ、そんな問題など容易く解決出来る!!」 堂々と胸を張り、情け無い上に危険な言動で着実にキャラ崩壊進行中の加賀谷を 一先ず、見なかった事にして2年生の歳方アリアが悔しげに肯定する。 「それに私等じゃシミュレーターを使った訓練にも付き合ってやれないしな… せめて、阿部や副部長みたいに近接武器も使えれば良いんだけど。」 「近接戦は苦手だもんねぇ…」 歳方の嘆きに同じ2年生の内田燐も頷く。 元々、歳方は中近距離で連射性能の高いハンドガンでの牽制を 内田は長距離からの砲撃支援を其々担当しており近接戦闘に関しては畑違いの分野になる。 ましてやMCIの個人競技で射撃武器を使う選手など滅多にいない為、訓練にも付き合えず 自分達に出来る助言も守屋にとって、あまり意味を為さない。 元々の担当が違うのだから当然と言えば、当然なのだが同学年の他校生に 後輩の面倒を見させている現状に情けなさや、不甲斐なさ、申し訳なさを感じて溜息を吐く。 「宋銭高校の矢神が来るようになって以前よりはマシにはなったが、対人戦闘における経験があまりにも少なすぎる。」 副部長である三笠慶もその事は理解していたが、別段気にする様子は無い。 ギアの数が多い高校は忘れがちだが、ギアとは非常に高価なスポーツ用品で 八坂高校のようにギアを6機も保有出来るチームはそう多くは無い。 ギアの数が少ないチームなら普段の練習が他校との練習試合みたいなもので、大半の高校で行われている練習方法である。 「その通りだ。よって、夏合宿を利用してMCI搭載ギアを保有する高校に対し 時間が許す限り徹底的に!!それも片っ端から殴り込みをかけ殲滅する!!」 額からダラダラと血を流しながら加賀谷の変人度が加速気味に上昇していくが 涼しくなれば、恐らく頭も冷えて元に戻るだろうと思い、見なかった事にして 守屋は様々な高校のMCI担当の選手と戦える事を純粋に喜んだ。 矢神と練習を共にするようになってから、加賀谷から動きが格段に良くなっていると 褒められたのだが、自分がどの程度、マシになったのかが全然、分からない。 何せ、幾度と戦っても矢神に勝てない上に比較対照になる相手が矢神しかいないのだ。 初めに戦った頃に比べれば、あからさまな手加減をされる事は無くなったものの 矢神は本来の得物である剣を持ち出した事が無く、そんな様子も無い。 毎回、良い所まで追い詰める事が出来るのだが、後一歩という所で撃墜されてしまう。 矢神が常にギリギリの所で守屋に勝てるように手加減をしている為、実力差が全然埋まっている気がしない。 後一歩が踏み越えられないと錯覚してしまい、自分が成長していないのでは余計な焦りを覚える。 実際の所、出鱈目な勢いで差は狭まっているのだが、元々の実力差が天と地の差ほどあったのだから 分かり難いのも当然と言えば当然なのだ。それに加賀谷の見立てなら絶対に間違いはあるまい。 第一、矢神はMCIギアの選手としては最上層の存在だ。最下層の守屋が易々と敵う相手では無い。 だが、矢神は僅か1年で最上層の域まで到達出来てしまったのだ。自分には同じ事が出来るのだろうか? こんなにも恵まれた環境に身を置きながら、人並み程度の実力と結果では話にならない。 その為にも様々な敵を知り、己の力を知る事の出来る合宿という名目の遠征は今の守屋にとって打って付けであった。 何よりも矢神が期末試験で赤点を連発してしまい夏休み返上の補講授業で八坂に来る事も出来ない。 「では、明日からギアの数が揃っている高校に殴り込み…武者修行の旅に出るぞ!!」 「応!!…って、明日?」 まだ見ぬ多くの敵達との出会いや、武者修行という響きに守屋のテンションも急上昇するが 明日からとは急過ぎる。あまりにも急なので自分の聞き違いでは無いかと平静を取り戻し聞き直す。 「スポーツギア部は毎年、7月29日から8月6日は強化合宿期間だろう?当然だろ?」 「な゛…!?初耳ですよ!」 何を今更と言うような顔をされるが、そんな事を聞いた覚えなど全く無い。 思わず、霧坂の様子を伺うが、どうやら守屋と同じ状態のようだ。 互いに見合わせ、この眼鏡、頭大丈夫か?という表情をすると、霧坂は力無く首を横に振った。 「既に先方には連絡している!何も問題は無い!」 何故か、加賀谷は得意げな顔に満面の笑みで親指をグッと立て歯を輝かせる。 未だに額から流れ続ける顔の流血模様と相まって非常に鬱陶しい事、この上無い。 「すまんな。守屋、霧坂。見ての通り、加賀谷は夏になるとアホになるんだ。 連絡させたつもりが、まさか練習相手の学校にしか連絡していなかったとは…」 「ええ。最近、気でも違えたかの様な変わり様だったので心配していたのですが、此処まで酷いとは…」 ある種の熱射病のせいで人格崩壊を起こしてしまった加賀谷の頭が残念な事になってしまい 流石の守屋の一言も中々に容赦が無いが、それを咎める者は誰一人としていない。 「確かに壊れた部長を初めて見た時は軽く殺意を覚えたもんなぁ…」 しみじみと2年の阿部辰巳が呟き、歳方、内田の二人が「確かに」と声を合わせて頷いた。 「守屋君。GO」 霧坂が加賀谷を指差し首を掻っ切るジェスチャーを守屋に送る。何がGOだ。 統合歴329年7月29日 「そう言えば、その冷泉学園ってのは強いのか?」 例によって定位置である守屋の左隣に座っている霧坂に、これから向かう高校について訪ねてみた。 加賀谷部長曰く、多くの選手と戦うのが趣旨であって、相手の強さは度外視しているらしい。 ギア歴が一ヶ月だけ先輩の霧坂は唇に人差し指を当て、むーっと唸り冷泉について知りえる情報を搾り出す。 「んー…MCIが3機、SCIが7機。ギアの保有台数だけで言えば、かなりの大規模だね。 練習の幅や密度は八坂の比じゃ無い筈なんだけど…」 冷泉学園の活躍や目立つ選手の名前が思い浮かばず言いよどんでいると 仕方が無いなと、歳方が笑顔で助け舟を出す。 「れーせんなんてアレだ。数ばっかのザコだ。」 全く持って身も蓋も無い。だが、その通りなのだから仕方が無い。 「アリアちゃん、冷泉学園の中で言わないでよ?」 歳方の失礼極まる言動に内田は眉を顰めながら嗜める。 それが事実だとしても、それで騒動を巻き起こされては適わない。 そして、騒動が起こったら自分が真っ先に巻き込まれるのは分かりきっている。 (でも、今年は守屋君が居るから大丈夫かな?) 内田は守屋の事を自分と同じ受難体質だと思っていたが、今やその考えを改めている。 今や八坂高校スポーツギア部の受難体質は守屋一刀、一人だけだと。 「れーせんでも、大事な守屋のイケニエだからな。終わるまでは大切に扱ってやるって!」 「要するに八坂の敵では無い…と言うわけですか。」 何と無く、黒い羽と触覚、三角の鍵尻尾が似合いそうな笑い方だなと思っていると阿部が異を唱える。 「そうは言うけどな、もしかしたら守屋みたいな、スッゲェ1年が居るかも知れないだろ?」 宋銭高校も去年の全国大会までは完全に無名だったにも関わらず、矢神玲という イレギュラーの出現により強豪高校の一角を担うようになったという一例がある。 これまでが取るに足らないチームだとしても油断では出来ないのだ。 「あー…金だけはあるみたいだし、余所から強い選手を引っ張ってきてるとかってのも考えられるのか…」 実力はあるが設備の無い生徒、金はあるが実力のある生徒がいない学校の間ではよくあるやり取りで珍しい事では無い。 「ま、居ても居なくても守屋の餌食になるだけだろうがな。霧坂もしっかりな?」 当然の事だが、守屋一人を鍛えればそれで良いと言う話では無い。 いずれは霧坂もSCI団体戦の選手として八坂の中核を担う立場になる。 ならば、霧坂自身も守屋を煽って遊ぶばかりでは無く、そろそろ実力を見せてやらねばなるまい。 他の部員に隠れて目立たないが、加賀谷より課された訓練メニューは欠かす事無く消化しているし 守屋程の非常識な早さでは無いにせよ、着実に実力を伸ばしていっている。 力試しの機会を与えられて喜んでいるのは守屋だけでは無いと言う事だ。 「勿論ですよ。八坂の一年は守屋君だけじゃないってトコ、見せ付けてやりますよ!」 霧坂は握り拳を一つ作り不敵な笑みを浮かべ、守屋の胸を叩いた。 冷泉学園到着早々ギア部の面々に挨拶と簡単な自己紹介を済ませ実機訓練に移る。 守屋はアイリス・ジョーカーを起動し加賀谷の指示通り追加装備無しで冷泉学園の生徒と対峙する。 前髪が長く目があるのか無いのかよく分からない顔をしている上に特徴らしき特徴が無い3人組のMCI選手達に 守屋は山田A、山田B、山田Cと心の中で勝手に名前を付ける事にした。既に本名を忘れてしまったのだから仕方が無い。 冷泉高校の一番手は山田Aとナックルシールド装備のレイス・ジョーカー 「アレが噂のアイリス・ジョーカーか。生身の戦いと、ギアの戦いの違いを教えてやらないとな。」 そんな事を今更、教えて貰わずとも身内に嫌という程、叩き込まれているし、噂の中身の方が気になって仕方が無い。 矢神と練習するようになって動きが格段に良くなったと言われたが さて、一体どの程度、自分がマシになったのか…判断材料扱いして申し訳無いと思いつつ構えを取る。 試合開始のサイレンと同時に山田Aのレイスが拳を振るう。 (パーツの予備は潤沢なんだが…初日から潰すわけにもいかんか。) ガードを解き、バックステップで迫り来る鋼拳をやり過ごし、再び距離を詰める。 「戻りが遅い。」 レイスの稼動限界まで振り抜かれていた腕を山田Aが戻すよりも早く、左フックで更に押し込む。 胸部装甲と上腕の装甲が干渉し合い、火花を散らし装甲を歪め、あるいは弾き飛ばす。 弾けた装甲の破片にエネルギーパイプが引き裂かれ、レイスの右腕がダラリと垂れ下がる。 「そ、そんな!?たったの一撃で!?」 狼狽する山田Aの事など知った事かと言わんばかりに右フックで左肩部を強打、左フックで右腕を無かった事にして 左ローキックで右足をへし折り、腰部右膝蹴りを突き刺し、山田Aが体勢を崩し地に伏せるよりも早く右正拳突きで頭部を破壊する。 「まずは一人。」 機体の損傷状況、疲労状況を確認するが打撃の際に必要とされる衝撃緩和剤が規定通りに減っているだけだ。 打撃に使った部位も、まだまだ疲労状態には程遠く、もう少し無理をさせても問題無さそうだ。 「ギアに乗って精々、三ヶ月程度の一年に負けるなんて情け無い奴め…」 山田Aよりも前髪の長い山田Bがロングソードを上段に構え守屋を間合いの中に捉える。 「剣か…矢神さんと思って戦う…のは流石に可哀相だよな。」 山田Aと戦って冷泉学園の実力は大体分かった。レギュラー陣達の言う通りの実力しか無い。 山田Bの実力も顔と同様、大した差はあるまい。衝撃緩和剤を激しく噴出しながら跳躍するレイスを待ち構える。 狙いはアイリスの頭部か。機体を撓らせ身体全体で放たれる斬撃は古坂に比べれば格段に上だが… ロングソードが振り落とされるよりも早く肘裏に手刀を叩き込み両腕を破壊。零れ落ちたロングソードを奪い取り頭部を刎ねる。 「フェイントも無しか…残るは一人。」 山田A,Bよりも少し背の高い、山田Cに向き直る。 「アイツ等…一年だからって甘く見るなって言っただろうに!!」 地を蹴り、アイリスを貫こうとランスごと体当たりを繰り出す山田Cを跳躍とバックステップを織り交ぜながら攻撃を避けるが ブースターでは無く、脚力によって繰り出される緩急が激しい体当たりは捌き難く、避け続けるのも存外に難しい。 避け続けるのは面倒だと言わんばかりに、突き出されたランスを小脇で受け止め山田C蹴り飛ばし、ランスから引き剥がす。 山田Cが慌てて体勢を整えようとするが、それを守屋が許すはずも無く、奪い取ったランスで山田Cの頭部を貫き沈黙させる。 「レイス・ジョーカー、三機撃破。加賀谷部長、実機訓練完了しました。」 「よし。引続き、シミュレーター訓練に移ってくれ。整備とSCI組の実機訓練が終わり次第、また実機訓練に移ってもらう。」 アイリス・ジョーカーを仮設格納庫に収容し、シミュレーターを起動させる。 整備担当の部員曰く、衝撃緩和剤の補充だけ良いらしく、打撃に使用した部位の装甲交換も必要無いそうで もう少し激しい攻撃をするなり、攻撃を受けるなりして機体を損傷させて欲しいと頼まれる。 あまり気乗りはしないが、整備担当の部員達にも練習の場を提供し整備のノウハウを蓄積して貰わねばならない。 特に激しい損傷を受ける事になるであろう州大会中、肝心な時に修理する事が出来ないでは話にならない。 次の実機訓練ではもう少し激しく攻撃をしてみるかと思案しながら、リヴァイド・ジョーカーをシミュレーターステージに出現させる。 被弾による損傷よりも、自身の攻撃の反動で損傷を受ける方が前向きだしなと自分自身を納得させ山田トリオを待つ。 「本当に良いのか?」 「構わん。思う存分に叩きのめしてくれ。」 何やら山田達が驚き戸惑っているが、加賀谷はそれに対して意に介する事無く続けた。 「此方の選手はMCIと戦う機会が非常に限られている。極力、多く長く戦わせてやらねばならん。」 無論、其方が疲れているのであれば一旦、休憩を挟んでからでも構わないが。」 「舐めるなよ、八坂ッ!!俺達が勝つまで休憩など無いと思え!!」 加賀谷の皮肉を込めた気遣いに躊躇いがちだった山田達に気炎が立ち上る。 「一体、如何したのですか?」 置いてけぼりの状況で意味が分からない。 「何の事は無い。ただ3対1で戦うように頼んだだけだ。 それとリヴァイドの攻撃力を最低にレイスの防御力を最大にしておいた。」 シミュレーターだから出来る裏技なのだが、ただでさえ性能差があるにも関わらず 更に性能差を広げた上に3対1で叩き潰してくれと頼まれては、躊躇いもする。 「そして、あの物言いですか…そりゃあ、怒りもするでしょう。これは存外、手強そうだ。」 「得る物があるのなら負けても構わんぞ?」 得る物が無いから、こんなにもあからさまなハンデを付けたのだ。 それにも関わらず、この加賀谷の言い様は守屋の闘志に火を付けるには充分過ぎた。 「ハッ…上等だ。敗北どころか、膝を屈する事無く終わらせてやりますよ。」 加賀谷は些細な事で血気を逸らせる守屋と山田トリオに肩を竦め試合開始のサイレンを鳴らす。 それと同時に3機のレイスはリヴァイドを取り囲むようにして其々、慎重に必殺の間合いを取る。 まずは正面の徒手空拳の山田Aのレイスが地を這うようにリヴァイドに肉迫する。 姿勢を低くし視界の外から下半身のバネを使い急襲するのが目的なのだろう。 (姿勢を下げるのが早すぎる。それでは奇襲にならない。) 跳躍と共にリヴァイドの頭部目掛けて、レイスの拳が突き出される。 リヴァイドもまたレイスの拳に目掛けて拳割の要領で鋼拳を叩きつける。 迎撃成功。ダメージは無いも同然だが、レイスは空中で動きを止める。 今、こうしている間にも二人の山田が一撃必殺の攻撃と共に守屋に迫りつつある。 お前の相手は後回しだと山田Aに膝蹴りを叩き込み、更に機体を浮かせ中段蹴りを放ち距離を離す。 山田Aが蹴り飛ばされ、守屋の視界の外に出ていくと同時に、ロングソードを振りかぶる山田Bが視界に入ってくる。 防御力が跳ね上がっているせいで、先程と同じように一撃で腕を破壊して剣を奪うというわけにもいかない。 如何したものかと一瞬思案するが、すぐに中断。利用出来そうな物が手近にあるでは無いか。 ランスを携えリヴァイドを背後から刺し貫こうとする山田Cのランスの穂先を山田Bのレイスに受け流す。 山田Bは山田Cのランスに深々と突き刺され戦闘不能状態に陥る。 ランスが山田Bに刺さり身動きが取れない事を良い事に、山田Cの頭部に執拗な打撃を繰り返すが有効な打撃を与えられない。 とは言え機体その物は守屋の打撃に弾かれ、浮かされ、吹き飛ばされている。 つまり、ダメージにならずとも機体の動作に影響を及ぼす程の衝撃は発生している。 その衝撃は現実の物として再現されシミュレーター用のコクピットを激しく揺らす。 「となれば…搭乗者狙いで行くか。」 より衝撃の加わり易い胸部や腹部に正拳の連撃を浴びせ、股関節に膝蹴りを打ち上げる。 ダメージは無いに等しいが上下前後左右にコクピットを激しく揺さぶられ、山田Cが呻く。 生半可な攻撃では通用しないかも知れないと守屋が必要以上に連撃を叩き込んだせいで 気絶を通り越して胃の中の内容物が逆流しかけているのだ。 そんな山田Cの危機を知ってか知らずか、山田Aが復帰し守屋に飛び掛る。 「三笠先輩のブーストハルバードの方が1000倍早いな。」 山田Cへの攻撃を中断し、身体を半身程逸らし腹部に目掛けて膝蹴りで打ち上げ、空かさず背部に肘打ちで地面に叩き落す。 矢張り機体へのダメージは無いが、地面に叩き付けられた際に発生する衝撃の影響で山田Aは立ち上がれずにいる。 引続き、山田Cに打撃を与えようとするが座り込んだまま立ち上がる様子も無い。 最早、雌雄を決したも同然で、戦意の消失した相手にこれ以上の攻撃は酷だと構えを解き、一息吐く。 「撃破1、戦闘不能2。俺の勝ちですね。」 歴然たる性能差に数の利を与えてもこの程度かと加賀谷は肩を竦めた。 と言うよりも防御力を跳ね上げたのは大きな失態だった。ギアが守屋の攻撃に耐え切れても搭乗者は別だ。 死屍累々といった表現の似合う山田トリオを見て加賀谷は心から謝罪の言葉を述べた。 皮肉を込めたつもりは無いのだが、敵に気遣われ慰められては立つ瀬が無いと山田トリオは戦意を奮い立たせる。 「甘い!!甘いぞ!!八坂!!そして、守屋一刀!!」 これには守屋どころか加賀谷も驚いた。 空元気で怪我をされても困ると山田トリオのバイタル値を確認するが、アドレナリンの分泌量が多いだけで 身体的なダメージは死ぬようなレベルでは無く、訓練を続けても恐らく問題は無さそうだ。 問題があるのかも知れないが生憎、加賀谷は医者では無い。いざとなれば冷泉の顧問が責任を取る事になるだろう。 「俺達が勝つまで休憩は無いと言ったッ!!」 「この俺に持久戦を挑むつもりか?上等だッ!!」 (州大会下位校の選手では使い物にならんか。) 実際の所、SCI機の選手である加賀谷にはMCI機の選手としての守屋の実力を今一つ測りかねている。 確かに身体能力は優れていよう、尋常ではない成長速度である事も認めよう。だが、州大会上位に食い込むレベルでは無い。 此処までは分かっているが、どの程度のレベルなのかと問われると答える事が出来ない。 だから、適度な実力を持った敵を用意して守屋の実力を図り、今後の訓練方針を立てるつもりだったのだが 辛うじて州大会に出場出来る程度の実力の選手など最早、守屋の敵では無い。 (守屋が頼もしいのか、俺が用意した敵が弱過ぎたのか…) 膝を屈する所か、ただの一撃被弾する事無く一方的に山田トリオを攻め立てる守屋を見ながらしみじみと思った。 「なんだ、まだやっていたのか?」 守屋に破壊されたレイス・ジョーカーの修理が終わったにも関わらず、実機訓練を行う事も無く シミュレータールームに引きこもって、延々と轟音を立て続けているのだから一体、何をしているのかと 加賀谷に代わりSCI選手陣の指揮を取っていた三笠が守屋の様子を見に、シミュレータールームに現れた。 「三笠先輩。いえ、存外にしぶとい相手で。 守屋らしからぬ言動に三笠は首を傾げる。冷泉学園の選手など取るに足らない雑魚ばかりだ。 先程から延々と鳴り続けている轟音の正体は間違い無く、守屋の打撃により生じた衝撃をシミュレーターが再現している音の筈。 「しぶとい?経験が浅いとは言え守屋が苦戦するような相手じゃ無いと思ったんだが…」 「なんでも、俺に勝つまで休憩しないとか。」 口を動かしながら、斬撃を打ち払い回し蹴りを放ちレイスを弾き飛ばす。 「それに昼に様子見って…今、何時ですか?」 ランスの突進を蹴り上げ、がら空きになった胴へ鋼拳を突き入れる。 「もう5時前だぞ?守屋は兎も角、冷泉の連中、飯も食わずによく頑張るな。」 三笠が苦笑いしていると、守屋は半ば驚きながらレイスの鋼拳を受け止める。 「道理で腹が…」 受け止めた鋼拳を捻り上げ、足払いで機体を浮かす。 「減るわけだ。」 腕を押し込み、胴を蹴り上げ頭から地に叩き落す。 「てっきり、まだ二時くらいかと思っていました。」 戦闘不能になったレイス3機を見て満足げに答える。 「何セットやったんだ?」 まだ余力が残り気味の守屋に呆れる。 「ちゃんと数えては無いですが…80セットくらいですかね?」 「今ので183セットだ。最早、限界への挑戦だな。」 圧倒していたのは最初の内だけで、後の方はただただ一方的な虐殺みたいなものである。 「シミュレーターって言ったって、かなりの衝撃を受ける筈だぞ? それにも関わらず、守屋の攻撃を183セット…肉体の強靭さだけなら驚嘆に値するな。」 「機体が再起動しないな…遂に死んだか。」 聞こえないならば気にする事も無いかと、加賀谷が失礼極まり無い事を言う。 ある意味、死んだも同然の状態で山田トリオの限界への挑戦は終わりを迎えた。 そして、山田トリオはスポーツギア史上、歴史的な連敗記録を樹立したのである。 「そんな事よりも、もうすぐ祭の時間だ。二人とも早く来いよ。」 「祭…ですか?」 夏合宿とは全く関係の無さそうな単語に守屋は胡乱な表情で首を傾げる。 「折角の夏休みなんだし、練習ばかりじゃ息が詰まるだろ?各地の行事も一緒に楽しんでしまおうって魂胆さ。」 確かに魅力的な魂胆だ。明日以降は何処の選手と戦い、何をして遊ぶのかと思うと 夏休み特有のトコトン夏を楽しめ的なノリで、テンションが跳ね上がる。 「素晴らしいだろう!!女子の浴衣姿はお前も好きだろう!!」 空調の効いた管制塔に居たせいか、はたまた他校生が居た為、自重していたのか知らないが 加賀谷の目が煩悩に薄汚れ、合宿前のテンションに戻り不穏な叫び声をあげる。 「………」 守屋は死んだ魚の様な目をして口を噤んだ。 「まあ…何だ。こんな奴でも部長なんだ。そうドン引きしないでやってくれ…」 「大好物に決まっているッ!!」 加賀谷を遥かに凌駕し、これまでに無い程の気合を込め守屋が咆哮する。 「お前もかよ!?」 「三笠先輩はお嫌いですか?女性の浴衣姿は。」 そんな突っ込みなど意に介するどころか無駄に凛々しく真面目な表情で三笠に問いかける。 「同じ男として同情を禁じ得ない。あの魅力が分からんとは…最早、お前に語る事は無い。すぐさま死ね。」 三笠が口を開くよりも早く、加賀谷が殺気を迸らせる。意味不明なノリで殺されては溜まったものでは無い。 単純な殴り合いの喧嘩ならば十中八九、三笠が勝つだろうが何せ、このノリだ。 第一、暑さの余り自らの頭を叩き割って意味不明な言動を口走る男に勝てる気がしない。 「嫌いだとは一言も言っていないし寧ろ好きだ。ただ、守屋が煩悩を表に出した事に驚いただけだ。」 三笠は降参するから勘弁してくれと両腕を上げ、突っ込みの理由を語る。 守屋は部活と武に一辺倒の男で、色事に限らず歳相応の愚にも付かないような欲望を剥き出しにしている所を誰も見た事が無い。 守屋一刀を知る者なら誰でも驚き戸惑って当然だ。 「自分も男ですから。」 とは言え、本人の言うとおり守屋も若く健全な高校生だ。三度の飯より女が好きと言うわけではないが 人並み程度に煩悩を持つし是だけは譲れない拘りもある。それが浴衣を初めとする倭服だったと言うだけの事だ。 「しかし…祭ですか。では、自分も支度をしてきます。」 「集合場所は冷泉学園の校門前だ。あまり遅いと置いて行くぞ。」 三笠の言葉に頷き、踵を返し外に向かいながら、モバイル機を起動させる。 目の前に冷泉学園周辺のマップデータを呼び出し、目当ての店を検索し 店員達に自分の目当ての品を置いているかを問いかける。 八坂も統合歴以前は倭国の一部だったのだから、置いていない店の方が少ないとは思うが… 祭となればアレが無くては話にならない。 「部長達も事前に言っておいてくれれば、家から持って来たというのに…困ったものだ。」 一つも困っていない顔をして目当ての品物を販売している店へと歩き出した。 程無くして、待ち合わせ場所である冷泉学園の校門前に向かうとそこには霧坂が一人で待っていた。 「守屋…君?」 霧坂は守屋の見慣れない姿に驚き戸惑うが守屋は霧坂の姿に喜ぶ。 「霧坂も浴衣か。分かっているじゃないか。」 霧坂は群青の生地に大振りの紫陽花をあしらった浴衣にベージュの帯に小梅の意匠を模った帯留を巻き 長いブロンドアッシュの髪をアップにしてパールビーズの花簪を刺し、うなじを強調する髪形に変わっていた。 「へへ。どーよ?」 「よく似合っている。可愛いじゃないか。拝んでも良いか?」 霧坂の恰好は守屋のモロ好みで珍しく厭味一つ言う事も無く即答で賛辞の言葉を並べ立てた。 「お、意外な反応。」 守屋が世辞など言う筈も無い。それが霧坂が相手なら尚更だ。 霧坂は守屋の言葉が心からの賛辞であるという事を見抜き、素直に喜んだ。 「浴衣の似合う女性は地球の宝だからな。」 「チッ…そういうオチかよ。」 喜びもほんの束の間、守屋にとってみれば浴衣が似合う女であれば誰でも眼福。 似合いさえすれば誰でも良い事に気付き、浮かれていた自分が馬鹿みたいだ。 「ん?」 「別に~それよか、守屋君こそ格好良いじゃん。何か似合うというか自然というか…」 漆黒の生地に真紅の裏地に龍の刺繍が入った帯。 遥か昔、倭国が戦国と呼ばれていた時代に傾奇者と呼ばれる者達さながらの出で立ちである。 「砕牙に居た頃は倭服着る事の方が多かったしな。それにしても皆、遅いな。遅かったら置いて行くぞとか言ってたのに…」 「既に置いてかれているの。でも、一人放置していくのも可哀相だから態々、こうして待っていたってわけ。 本当に置いていくとは何とも無常な先輩方だ。だが、この状況は絶好の機会だ。 昔からやってみたかった事を霧坂に実行する事に決めた。 「悪いな、待たせたか?」 「ううん。今来たところ」 霧坂が浴衣姿とこの機会、思わず調子に乗って倭国定番のネタを振るが模範解答的な返しに思わず絶句する。理由は特に無い。 「何で、ネタ振りした守屋君がドン引きしてんのよ?」 期待通りの返しをしてやったというのに、確かにこれは理不尽極まりない。 「そりゃあ、不慣れなネタ振りなのは分かるけど、もう少し頑張るべきじゃない?」 「すまん。流石に其処までの領域には到達していない。」 守屋の敗北宣言に珍しく霧坂は情けない男だと肩を竦め、定位置である守屋の左隣に立ち祭りの会場へと足を向けた。 ぬか喜びさせたり、理不尽な対応をされたのだ。これでもかってくらい奢ってもらわないと割に合わないというものだ。 ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます) +... 名前
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統合歴329年6月1日 朝連を終え、クラスメイトの霧坂と雑談しながら校舎に向かうべく校内モノレールの到着を待っていた。 守屋一刀がスポーツギア部に入部してから毎日のように繰り返すようになった普段の日常である。 しかし、到着時刻になってもモノレールが到着しない。 「あれ…今日って平日だよな?」 何かの問題が発生しない限りプログラム制御されたモノレールは秒単位で正確に動く。 到着予定時刻になってもモノレールが到着しないとなれば、今日が実は祝日でダイアが変わっている。 もしくは… 「わ…守屋君、アレ…」 霧坂が喜色満面で校舎を指を指す。 絶対にロクでも無い事だと指の先に目を向けると矢張り、ロクでも無い事だった。 ニュースで何度か見た事のある光景が自分の目の前で繰り広げられようとは。 「…何かとトラブルの尽きない学校だな?」 やれやれと肩を竦めると霧坂から辛辣な言葉が返ってきた。 「今年度、一番大きなトラブルを起こした人が言う言葉じゃないと思うのだけど?」 「…俺は被害者だ。」 憮然としながら答えるが、如何したものやら…校庭には武装したスポーツギアが校舎に火器を突き付けていた。 機体は兎も角…ギアが装備している火器が問題だ。ミサイルポッドにロケットランチャー。そして、バズーカ。 「アレって、前みたいに他校生が乱入して来たってのとは違うよね?」 「一介の学生が戦闘用の兵装を易々と手に入れられてたまるか。」 さて、如何したものだろうかと頭を抱えていると霧坂を喜ばせ、守屋を辟易させる事態が発生する。 新手の登場である。それもよりによって、スタジアムの中に4機新手のギアが現れた。 「7機…目的はギア部の機体か?」 「アイリス・ジョーカーもそうだけど、スカーレットにクランも最新型だしね。 歳方先輩のブクレスティアに内田先輩のブレイジンも能力特化型の高性能機。 阿部先輩のリヴァイド・カスタムにいたっては八坂が誇る魔改造機! あの手の違法ギアに狙われても仕方が無いかもねー。」 妙に嬉しそうな霧坂はさて置き、此方も此方で非常に危険な状況に晒されている。 奴等の目当てがスポーツギアだと言うのなら、此の侭放置しておけば身の安全だけは保証される。 「さてと、どーしよっか?」 霧坂の頭の中に後退の二文字は無い。これを如何にかするつもりでいる。 いや、如何にかさせる気でいる。勿論、如何にかするのは守屋だ。 「どうしたものやら…」 とぼけて見せるが、諦めた方が早い。 「守屋君がやっつけらんない?」 意訳すると今すぐ片付けろという事らしい。 幸い此方側に来ている連中は作業要員らしく火器の類は装備していない。 校舎を占拠している連中を相手するよりは幾らか楽だろう。 「上手くいけば君はヒーローだ!守屋君頑張ってね~!」 (そんな事言ってる場合じゃないだろ…) この状況を楽しんでいる霧坂の声援を辟易しながら背中で受けつつ格納庫へ向かって駆け出した。 辟易するが変にパニック起こされるよりはマシだ。それ以上に今後もこの手のトラブルが我が身に降りかかる気がしてならない。 何故か、そんな気がしてならなかった。そして、その未来視は概ね正解。 勿論、それを知るのは当分、先…守屋が忘れた頃になるのだが。 愚にも付かない思考を中断、工場から戻ってきたばかりのアイリス・ジョーカーを視界に入ると妙にやる気が出るから不思議だ。 霧坂に言われて渋々だったが、八坂高校とギア部に舐めた真似をした報いを受けてもらわねば。 それに守屋の名が示す通り、守る事を生業とする一族だ。 「こんな事、お前の役目じゃないんだが、付き合ってもらうぞ。相棒。」 今回で共に戦うのは二度目。守屋が相棒と称した鋼鉄の巨人、アイリス・ジョーカーを起動。 ジェネレーターの唸り声はさながら獣の咆哮。共に戦える事を喜んでいるようにも感じ否応無しに心が猛る。 最終調整もまだ完了していないが初めて戦った時に比べたら、搭乗者のレベルも上がっている。 数が多い上、試合ではまず出て来ないであろう戦闘用の兵装を持っている敵も居る。 「ハッ…知った事かよッ!!」 態々、行儀良くシャッターを開け、戦闘開始などやるつもりは無い。 床を蹴り、勢い良くシャッターを突き破り、手近なギアにスライディングタックルを繰り出す。 違法ギアの脚部はアイリス・ジョーカーの脚部と格納庫の壁に挟み潰され崩れ落ちる。 「まずは一機。」 倒れた違法ギアの頭部を踏み潰しながら、残りの3機に向き直る。 「まだギアを隠し持っていやがったか!」 残りの3機がブースターを吹かし離脱しようとしているが既に手遅れだ。 「隠していたんじゃない。お前達の目が節穴だっただけだ。」 上昇しきるよりも早く足を掴み、地面に叩きつけコクピットに鋼拳を振り落とす。 違法ギアとは言え大半は強奪したスポーツギアだ。コクピット周りの装甲を破壊するのは容易では無い。 だが、守屋の打撃で殺傷は出来ずとも搭乗者を昏倒させる事が出来るのは最近のシミュレーター訓練で実証済みである。 「残り二機。」 「畜生!校舎に居るガキ共がどうなっても…」 違法ギアの搭乗者が悲痛な叫びをあげるが知った事では無い。 仲間に攻撃指示を出す前に殲滅する。俺とジョーカーなら出来る。 全く、根拠の無い自信と確信を胸に秘め、戦闘不能になった違法ギアをジャイアントスイングの要領で 空に離脱した違法ギアに目掛けて放り投げる。見事直撃、二機は錐揉みしながらスタジアムの真ん中に墜落。 「残り一機。」 アイリス・ジョーカーに飛び道具等の固定武装は無い。今更、格納庫に戻ってライフルを取って来るのも間抜けだ。 幸い、飛び道具の代わりになりそうなモノも都合良く、アイリス・ジョーカーの手の中にある。 今し方、撃破したギアの頭部である。守屋は高校球児さながらのポーズで振りかぶり、投げた。 「デッドボール。脳味噌飛び出て再起不能ってな。」 アイリス・ジョーカーが投げた剛速球は違法ギアの頭部を一撃で撃抜き、大地に叩き落した。 「ベースボール部ってのも悪く無いかも知れないな…」 ギアを通したにも関わらず、驚異的なコントロールに自画自賛する。 確かに守屋ならば野球部に行っても優秀なデッドボーラー兼、乱闘担当として重宝されるだろう。 「守屋君、次は校舎の敵。行けるよね?」 「此処でリタイアするくらいなら最初から戦っていない。」 アイリス・ジョーカー起動から一分が経過しようとしていた。 違法ギアの搭乗者達がどれくらいの頻度で連絡を取り合っているのか? 校舎側の敵ギアのレーダーがアイリス・ジョーカーの反応を捉えているとしたら? 違法ギア4機を秒殺したからと言って安心出来る状態では無い。 此処から先は時間との勝負だ。事態を進めてしまった以上、後戻りは出来ない。 「だよね!良い物があるから、こっちに!」 霧坂はアイリス・ジョーカーのレーダーに方向指示用のマーカーを表示させ守屋を誘導。 守屋が向かった先には何故か、射出用のカタパルトが鎮座していた。 「…もう、何でもアリだな。この学校。」 「あはは…何かねスポンサーが折角だから買ってみようって…」 折角だから何なんだ。これには流石の霧坂も苦笑するしか無いようだ。 しかも、使われた形跡が全く無いと来ている。実際、何時何処で使えば良いのか分からない。 「本当に役に立つ日が来るなんて思わなかったけどね。」 「確かに…これが最初で最後と願いたいがな。霧坂、カタパルトの射出制御を頼む。」 カタパルトの射出口に機体をセットしコントロールを管制塔に居る霧坂に委ねる。 「オッケーオッケー、超特急で吹っ飛ばしてあげるよ。」 霧坂の妙に嬉しそうな声が、何故か守屋の恐怖心を煽った。 「一つ確認しておきたいんだが…この全く使われた形跡の無いカタパルト…使い方分かるんだよな?」 「んーん。こんな使い道の無い上に訳の分からない物に時間を費やしてらんないってば。」 と言う割には妙に手馴れた手付きで、コンソールを叩いている。 「ま、この手の装置の操作方法なんてどれも似たようなものだしね。あ、機体の固定スイッチ見っけ。」 カタパルトから離れようとするが時既に遅し、アイリス・ジョーカーはカタパルトの射出口の中で電磁ロックされる。 何故、よりによってそんな面倒な物を見つけてくるんだと泣きたくなるが状況が状況だ。霧坂を信じるしかない。 「頼むから、しくじるなよ?」 「大丈夫!少しミスってもMCIって頑丈だし!」 聞き捨てならない言葉を聞いて、相棒を見捨てて逃げ出したくなった。 今は霧坂を信じるしか無いのだが、信用出来る筈が無い。 こうなっては自分の運を信じるしか無い…信じるしか無いが八坂に転入して以来、ケチの付きっ放しだ。 よくよく考えたら、霧坂よりも自分の運の方が信用ならない。 最早、頼る事の出来る相手は相棒であるアイリス・ジョーカーの装甲だけだ。 「えーと、突入角?意味分かんない。取り合えず、真っ直ぐ一直線。」 「お前、俺を殺す気か?実は俺の事、相当嫌いだろ?」 「割りと好きだけど?ほら女は愛嬌、男は度胸って昔の人も言ってたしね?」 そんな、ン千年も昔の言葉を持ち出されても納得が出来るわけが無い。 守屋の嘆きを一切無視して、霧坂は面白半分、勘任せでカタパルトの射出設定を終え 校舎にバズーカを突きつけている違法ギアに【照準を合わせて】射出スイッチを押した。 「準備完了、れっつごー♪」 (もう如何にでもしてくれ…) 小さく映っていた校舎が一瞬で大きくなり、通り過ぎていった。 辟易する程、景色が高速で流れていく光景を見て、守屋はただただ戦慄する他無かった。 (霧坂の奴…ッ!俺をライフルの砲弾か何かと勘違いしているんじゃないのか!?) この侭ではバズーカを持った違法ギアと頭から衝突する。 当然だ。霧坂は違法ギアに照準を合わせ、さながらカタパルトが飛び道具かのように守屋を飛ばしたのだから。 そして、放物線を描くように守屋を飛ばせば安全に着地出来たのにも関わらず、一直線の直撃コースである。 (俺…何かアイツに恨まれるような事したか?) 恨みは無い。ただ使い方をよく分かっていなかった。 更に言えば、初めて触る装置が存外に面白くて、悪乗りしてしまっただけだ。 幸い、視界の中に違法ギアが入ったお陰で恐怖も嘆きも忘れて、思考が切り替わる。 足から着地が出来るようにと機体を半回転させ敵機の肩部に目測で狙いを付ける。 違法ギアをクッション代わりに使い衝撃を全て押し付ける腹積もりである。 だが、最悪の場合、ギアの搭乗者を圧死させる危険性がある。それは守屋自身も承知している。 「俺が死ぬくらいなら…お前が死ねぇぇぇぇぇッ!!」 自分が死なない事が絶対条件だと判断し、違法ギアのパイロットは見捨てる事に… 寧ろ、殺意を込めて飛び蹴り気味に違法ギアの肩口に着地すると同時に衝撃緩和剤を全放出。 MCIギアの脚部にはブースターが無い代わり、過剰スペースに足技用に大量の衝撃緩和剤が収納されている。 本来ならば打撃の威力に応じて自動的に緩和剤が放出されるのだが、今回に限って言えば自動制御に頼るまでも無い。 分かってはいたが緩衝材を全放出しても、まだ全然足りないくらいだ。 殺しきれなかった衝撃は足元の違法ギアがある程度、肩代わりしてくれるがこちらも無傷とは言えない。 脚部フレームが悲鳴にも近いような軋む音を立てながら歪み裂けていく。 モニタにアイリス・ジョーカーのダメージレポートが次々に更新されていくのを見るのは流石に怖気が走る。 遂にイエローのフォントがレッドに切り替わり、試合の即時中断を求め出した。 (こんな出鱈目な試合があってたまるか…) 漸く、装甲が軋む音が止み、無残な姿になった違法ギアから飛び退き、地面に着地する寸前に胴回し蹴りを見舞い ミサイルランチャーを装備している違法ギアに向けて吹き飛ばし体制を崩した隙に距離を詰め頭部を掌底で叩き潰す。 崩れ落ちる敵機のコクピットブロックに膝蹴りを一撃。蹴りを打つ度に脚部のダメージレポートが更新されていく。 (緩衝材無しで足技はヤバイな…) 脚部の緩和剤が尽きている上に装甲もフレームもあらぬ方向に折れ曲がっている事もあり 蹴撃の衝撃が、自身の脚部にも甚大なダメージを与え、足技どころか歩くだけでダメージが蓄積されていく。 コクピット内部でアラートがけたたましく鳴り出すが無視して、最後の一機に向き直る。 「これで残りはお前一人だ。ここで自首すれば他の連中よりは軽い罪で済むと思うんだが?」 「ガキが調子に乗るなッ!」 違法ギアがロケットランチャーをパージし腰部からダガーを引き抜く。 流石にこんな至近距離でロケットランチャーなんて撃てば、自滅するのがオチだ。 (それにしたって、ダガーは無いだろ…) ダガーの一閃を左腕部のナックルシールドで軽々と受け止め、頭部をもぎ取りコクピットブロックに拳打を叩き込む。 「こちとら毎日、シミュレーターで鍛えられているんだ。お前等如きに負けるわけが無いだろ…」 やれやれと肩を竦めると、左腕部の反応が妙に軽い気がする。 サブカメラで機体の状況を確認すると左腕の肘から先が綺麗に切断され足元に転がっていた。 倒したギアのダガーを改めて見ると刀身から薄っすらと光が放たれていた。 「ビームコートダガー…こんな物騒な代物、何処から持ち出してきたんだか」 柄、または刀身等に低出力のビーム発生装置を取り付けた安価で粗悪なビーム兵器もどきだ。 だが、安価で粗悪とは言え腐ってもアームドギア専用の戦闘兵装で威力の程はこの通りである。 一歩間違えたらコクピットの中で蒸発していたかも知れないと思うと、流石に冷や汗が流れる。 「霧坂。殲滅に成功したぞ。」 「お疲れ様!警察に違法ギアの引き取りをお願いしといたから。」 「ついでに業者も呼んでくれ。ジョーカーも限界気味だ。」 そう言うと同時に脚部から火を噴き転倒する。左腕、右足欠損。左足も外部装甲が剥がれ落ちフレームが歪み骨格が剥き出ている。 更に機体の隙間からは緩衝材と燃料が飛沫となって漏れ出し、誰の目から見ても再起不能である。 「だ、大丈夫!?死んでないよね!?」 珍しく慌てる霧坂を見ていると妙に安心する。元気そうにしていると、また何かやらかしかねない。 「そうだな。霧坂が変な飛ばし方をしなけれ、こんな事にはならなかったんだけどな。」 実際、戦闘で受けたダメージはビームコートダガーで切り落とされた左腕だけで下半身の惨状は霧坂がもたらした事だ。 「まあまあ、結果オーライって事で」 「物的被害しか出てないから結果は上々か…だけど、次からはミスんなよ?俺だって、まだ死にたくない。」 事実、結果オーライなのだから驚きだ。被害は決して小さくは無いがどれも金で解決出来る問題だ。 とりわけ騒ぐ必要も無いが釘を刺しておかなければ、また何処かで殺されかけてはたまらない。 「はーい。肝に銘じときまーす。それは兎も角、業者さん呼ばなきゃだね。」 「だな…これじゃ、修理どころかパーツごと交換だな…」 (悪いな相棒…工場から戻って来て早々、また工場行きだ。) 全く持って搭乗者に恵まれないギアである。 漸く巡り会えた搭乗者は乗る度に工場送りになる程の損傷を受けてしまうのか。 もしも、アイリス・ジョーカーに意思があるとすれば、八坂高校から一目散に逃げ出すだろう。 この調子では次回搭乗時は頭部を潰され正真正銘の敗北を喫する事になりかねないからだ。 統合歴329年6月2日 今日も今日とて、霧坂は其処に居るのが当然という顔をして守屋の隣に並んび 守屋は今更ながら如何してこうなったと辟易しながら学校へ向かっていた。 「結局、被害らしい被害も出なかったし違法ギアも7機撃破! これぞヒーローの活躍だよね~♪守屋君って結構、ヒーロー体質だったり?」 大辛勝とは言え、1対4、1対3と立て続けに戦っていずれも秒殺で勝利を治めている。 霧坂は、その様を眼前で見ているのだから、そう評するのも無理は無い。 「どうだろうな…ああいう事やるの初めてだしな…」 興奮気味の霧坂に比べて、守屋のテンションは昨日からかなり低い。 「そっけない…もしかして、怒ってる?」 ある意味、殺されかけたのだから普通なら怒りもする。 だが、別に守屋は怒っているわけでは無い。結果オーライで終わったのは事実だし 終わった事も引き摺っても仕方が無い。恐らく、昨日のような無茶は二度とやらないだろう。 何故か?単純に霧坂がMCI搭載ギアが動く姿を見るのが好きだからだ。 それだけの為にギア部に入部し、守屋をギア部に引き入れたと言うのに宋銭の生徒と戦ったせいで アイリス・ジョーカーは工場送りになり、自分の欲求を満たす事が出来ずにいた。 漸く、工場から戻って来たと思ったら違法ギアの乱入である。 実に守屋は自分の欲求を満たすのに最適な人物であった。奇襲とは言え一瞬で違法ギアを4機片付けたのだ。 当然の事ながら興奮もするし、悪乗りもする。だが、自分が悪乗りした結果がこの様だ。 そこは守屋も何と無く理解している。利己的な考えに基づいた上で、あんな事はやらないと言っているのだ。 迷惑をかけてごめんなさい。反省しています。二度とやりませんなど言われるよりも余程、信用出来るというものだ。 「別に昨日の事なら少しも怒っていない。ただ今度は停学何週間かな…とか思っていただけだ。」 違法ギアを7機破壊し、人的被害を一切出さずに事件を鎮めた。物的被害のみでいずれも金で解決出来る。 出来るが問題はその金額である。アイリス・ジョーカーの修理費用は勿論、その他の校内施設の修理費用。 相場は分からないが、全て合わせると目玉が飛び出る程の金額になる事は間違い無いだろう。 「だ、大丈夫だよ!昨日だって警察庁から表彰されたんだし…それと…ほら、メディアにも取り上げられたんだし? が、学校の評判も…多分、上がっただろうし…ね?きっと、多分、大丈夫!!」 「そこは嘘でも断言してくれ…」 「あ、あはは…ご、ごめん…」 守屋の顔に暗い影が覆い被さっているように見えて、無理にでも笑い飛ばそうとするが無理だ。 流石に退学という事は無いだろうが、流石の霧坂でも素直に謝罪する事しか出来なかった。 守屋が教室に着くと、中に居る生徒は皆、静かになる。停学が明けてから続く慣習みたいなものである。 教室棟の廊下を文字通り血の海に変え、その血の上の真ん中で返り血塗れで立っていたのだから、脅えもする。 そして、昨日の事件である。違法ギアを自分達の目の前で一方的に叩きのめした。 スポーツギアは今、最も勢いのある娯楽である。元々は戦闘兵器だが試合の内容自体はクリーンなものだ。 なのにも関わらず、燃料や緩衝材を撒き散らし、けたたましい音を鳴らしながら装甲やフレームを歪ませ、最後は爆発。 大半の生徒は守屋をこう評している。『鋼鉄の破壊神』と。 そんなわけで、八坂高校の生徒と守屋の間には深い溝があり、昨日の一件で更に溝が深まった。 ギア部のメンバー以外で守屋に話しかけるような命知らずの生徒は一人も居ない。 だからこそだ。守屋はクラスメイトに声をかけられて少しばかり驚いた。 「あ、守屋・・・君。り、理事長がスタジアムに来るようにって…」 (伝言か…昨日のアレは…ヒーローとかじゃなくて脅えさせるだけに決まっているよな。) 流石に鋼鉄の破壊神とか呼ばれている事は知らないが 顔も名前もよく覚えていないクラスメイトの脅えっぷりに ただでさえ深い溝が更に深くなっている事を何と無く感じ取り、無言で頷いた。 「何の用だろ?」 「昨日のアレだろ?ちょっと行って来る。」 静かな教室に守屋の声はよく通る。 昨日のアレという言葉に反応する生徒が数名。 教室に長く居ると生徒の反応に心が折れそうになるので辟易しながら廊下に出る。 これではまるで苛められっ子だ。実際、昼休みは屋上で独り寂しく食事をしているか スタジアムのシミュレーターで黙々と訓練をしているかのどちらかで、苛められっ子に近い行動パターンだ。 尤も生徒からすれば猛獣が居る檻の中に放り込まれたような気分で気の休まる時が無いのだが。 「守屋君、私も行くよ。」 廊下を足早に進んでいると霧坂が後を追って来た。 どうして、コイツはこう大人しく出来ないのだろうか。 「霧坂…もうすぐ授業、始まるぞ?」 「だーいじょーぶ♪私も理事長に呼ばれたって事にしてもらっておいたから。 それに昨日のアレは私にも責任があるわけだし…ね?」 てっきり呼び出しを利用してサボる気だと決め付けていただけに 霧坂の口から責任なんて言葉が出て来て絶句するしか無かった。 それにしても遂に理事長の呼び出されるとは…コイツはいよいよ退学か。 何故か着いて来てしまった霧坂が説得してくれるのではか期待してしまうが間違い無く状況を悪化させるだけだろう。 今更になって気付いて追い返そうとするが既に手遅れだ。既に理事長の目の前に居るのだから。 「やあ、守屋一刀君だね?」 「はい。」 理事長と言う割には若い男が守屋の姿を見るなり屈託の無い笑顔を向ける。 怒りが通り越してという奴なのだろうか、笑顔の若い理事長の姿はさながら死刑執行人に見えた。 「先日の騒動でご迷惑をおかけしました事、申し訳御座いませんでした。」 謝って解決するわけでは無いが、理事長に向かって頭を下げる。 死人が出なかっただけマシというだけの話に過ぎず、かなりの被害額が出ている筈だ。 あまりの申し訳無さに思わず謝罪の言葉が勝手に出てしまったのはルーツが倭国人だからだろうか。 勿論、出来れば処分は反省文だけで勘弁して下さいという思いも大いにあるが。 「おや?謝る事は無いんじゃないのかな?」 「え?」 守屋がふと顔を上げると、理事長から笑顔が消える代わりに心底、不思議そうな表情をしていた。 何故、この生徒は自分に向かって頭を下げて謝罪の言葉を述べているのだろうかと。 「今日は君にお礼が言いたくてね。人的被害を一切出さず、違法ギアを無力化し無事に逮捕出来た。 君のお陰で誰も傷付かず、悲しまずに済んだ。本当に有難う。」 屈託の無い笑顔を守屋に向けられ守屋は仰天するしか無かった。 霧坂はさて置き、クラスメイトは独り残らず自分を恐れているというのに、感謝の言葉を受けるとは。 「お、俺はただ衝動的に動いただけで…一歩間違えれば大惨事に…」 「確かにそうだね。だけど、結果が全てさ。君の行いが八坂高校の生徒と職員、452名を救ったんだ。 誰も君を罰する事なんて出来やしないさ。寧ろ、僕等大人が不甲斐ないせいで君に全て押し付けてしまって申し訳無く思うよ。」 罰せられるのが当然くらいの気持ちで来ていた守屋には理事長の言葉はどれも寝耳に水である。 だから、驚き戸惑う守屋の態度が理事長は不思議でならなかった。 「君は大人でも簡単には出来ない事をやってのけた。誇るべき…にも関わらず、何故そんなに罪悪感を持っているのかな?」 罪悪感だらけで咄嗟に言うべき言葉が見つからない。言葉を詰まらせていると理事長は言葉を続けた。 「君が何を思うと誇っても良いだけの事をやった。君の行いに勇気を持った者、感謝の念を持った者が居る事を忘れないでくれ。 そういった者達の為にも、あまり自分を卑下しない事だね。」 「そうだよ?私もその一人だしね?」 理事長と霧坂の一言を嬉しく思う反面、霧坂が言うと胡散臭く感じるから不思議だ。 「それで…授業中にも関わらず何故、君が此処に?」 処罰無しなら、最初から霧坂が居ない方が良かった。 折角、丸く納まりそうだったのに一騒動起きそうだ。 「守屋君に停学処分とか下すんだったら私も一緒に罪を被ってやろうかと思ってね。 守屋君を違法ギアに差し向けたのもアイリス・ジョーカーをカタパルトで校庭にぶっ飛ばしたのも私だからね。」 「おいおい…酷いな。僕がそんな事をする人間に見えるのかい?」 「そんな事言ったって、大人の世界は理屈や結果だけじゃ通らない事ばっかりでしょ?」 「霧坂、言葉が過ぎるぞ。」 普段の霧坂からは想像も出来ない程、刺々しい物言いに守屋もまたきつく嗜める。 折角、丸く納まりそうなんだ。お前は空気か地蔵のように大人しくしていてくれと思ったが 霧坂は守屋の心配なぞ何処吹く風だ。 「あ、言ってなかったっけ?コレ、私の従兄。ただのギアオタク。でもって、ギア部の顧問にしてスポンサー。」 色んな意味で衝撃的な事実である。八坂栄治(ヤサカ エイジ)34歳。 本来、アームドギアマニアだったのだが、今から10年程前に開催されたマシンフェスタにて初公開されたスポーツギアに魅せられ スポーツギアチームを結成する為、資産家である両親から金を無心しようとするが放蕩息子にそんな大金を引き渡す筈も無い。 金が欲しければ仕事を手伝えという流れになり、八坂高校の理事を勤める事になったらしい。 そして、現在。理事長という立場をフル活用しスポーツギア部を設立し ギアスタジアム一棟、MCI一機、SCI五機、シミュレーター10台、カタパルト一基を購入 とんでも無いドラ息子である事と同時に、霧坂の血縁者である理由がよく分かった。 きっと、霧坂を男にして金を持たせたらこうなるに違いないと失礼極まり無い事を考えていた。 「まあ、そんなわけで、今後も従妹を宜しく頼むよ。」 そればかりは本気でご免被りたい。既に限界気味だ。 理事長の不穏なお言葉はただの社交辞令だと聞き流す事にした。 ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます) +... 名前
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ゆなぽのところで行われた大会にひょっこり出場する インセインのcoopをやろうとスレに呼びかけたが、誰も来なかったので外人とやったようだ だがact2と3が残っていたので、かおつきさんとcoopをやる しかし事前の予想通り車の部分で詰んでしまう 結局クソゲー認定される その後配信外でもcoopを行って打開
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「ギリギリだけど何とか間に合ったね。」 「聖誕祭に孤児院へプレゼントを届ける。霧坂にしては珍しく良いアイデアだと思う。 確かに俺に出来る事があるなら何でも協力するとは言ったが…この格好は何なんだ?」 「あ、やっぱり知らないか。旧暦時代、聖誕祭はクリスマスって呼ばれていたらしいんだけど サンタクロースっていう紅白の衣装を纏った集団が子供の所にプレゼントを運んでいたらしいの。」 「成る程。それで俺は赤の着ぐるみで、お前は白い衣装ってわけか。」 「そう言う事!」 「それは良いが、この気味の悪い着ぐるみは何なんだ?」 「トナカイよ。」 「トナカイ?」 「うん。旧暦の大崩壊時代に絶滅した伝説の聖獣で、一説によると天を駆ける能力があったんだって。 地球上の子供達へプレゼントを贈るという役目を果たす為の交通手段として必要不可欠だったみたいね。」 「そうなのか…しかし、このトナカイとやら、あまりにも不気味だぞ? 子供達を怯えさせてしまわないだろうか…」 「伝説の聖獣だよ?皆、大喜び間違い無しだって!」 「なら良いんだが…」 (ま、何もかもが嘘なんだけど。) 「孤児院に着いたら、ちゃんとソレ被ってよね?」 「…分かった。」 「それから、孤児院が違法ギアに占拠されたり、性質の悪い借金取りとかが来たら…」 「心配せずとも一行で殲滅してやる。」 「それは心配してないけど戦う時、着ぐるみ脱がないでね?」 「トナカイの格好で戦えと?」 「それは勿論。」 「借金取り相手は兎も角、違法ギア相手に着ぐるみでは太刀打ち出来んぞ。」 「大丈夫!大丈夫!ちゃんと武器も付いてるし」 「武器…だと?」 「額のゲッ○ードリルに、眉間のサンダー○レーク、頭にはアイ○ラッガーが装備されてるから。 因みに音声認識。いざっていう時には気合入れて叫んでねん♪」 「………聖誕祭にお前とは二度と付き合わん。」 子供達がトナカイ(?)に扮した守屋を見て、どんな反応をしたのか 守屋がトナカイ(?)の格好で違法ギアと戦ったのかはまた別のお話。 http //ux.getuploader.com/sousakurobo/download/231/GearsX%5C%27mas.jpg ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます) +... 名前
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統合歴329年8月3日 「祭りで戦い、山で戦い、平原で戦い、牧場で戦い、今日で5日目か…」 八坂高校スポーツギア部一年生、守屋一刀は夏合宿の出来事を思い返していた。 7月29日、冷泉学園にてレイス・ジョーカー3機を徹底的に捻り潰した後に冷泉地区の夏祭りに参加。 7月30日、藤宮高校のアクト・メイレーンを撲殺後、藤宮山の大林で森林浴を満喫した。 8月1日、峰葉学園のディーヴァに執拗且つ理不尽な脚技で蹴り倒し、キャンプファイアを楽しんだ。 8月2日、茂弓高校のルナメタルを斬殺。茂弓自然公園で牛の乳搾りを体験した。 夏合宿にしては明後日の方向へ突き進み過ぎている気がしないでも無いが 八坂高校スポーツギア部の部長、加賀谷望(夏仕様)のイカレ具合に比べればマシだ。 「夏の定番と言えば、海だあああああああああああああッ!!!」 「いや、違うだろ。…違わないけど。」 公共の場で咆哮する加賀谷から数歩離れ守屋は無関係を装い、口の中でぼそりと突っ込みを入れる。 小気味よく後頭部を引っ叩いて、なんでやねんと突っ込みたいのだが、アレの仲間と思われるのは勘弁願いたい。 「海はさて置き…今日は守屋も油断出来ない相手だぞ。」 守屋が憮然としていると、八坂高校スポーツギア部副部長、三笠慶から刺激的なお言葉が投げかけられる。 「お、遂に強敵の出現ですか?」 見知らぬギアに見知らぬ選手との戦いは楽しい。だが、相手が強いと尚楽しい。 だからこそ、実に楽しそうに待っていましたと言わんばかりの表情で三笠に向き直る。 「ああ。宝仙高校はウチと同じで団体戦主体のチームで、個人戦にはあまり力を入れて来なかったんだ。 だけど、今年になってからウチと同じで、少しばかり状況が変わってしまってな。」 「MCI搭載機を一機導入、適合する一年生が一名入部。だけど、練習相手が居ないという事ですか?」 「ああ。その上、初の対人戦で全部員を撃破したそうだ。」 成る程。同じ一年生で置かれた立場も似ている。相違点を上げるとすれば守屋は初の対人戦で全部員の撃破に至ってはいない。 それどころか初の対人戦で守屋を敗北至らしめた男に未だ、ただの一度も勝利する事が出来ないでいる。 苦虫を噛み潰したような表情で、その男…加賀谷に目線を移すと不穏当な言動と共にを咆哮し 周囲の歩行者を恐怖の渦に陥れていた。通報されてしまえ。 守屋は再び目線を逸らし他人のフリをしながら何故、コレに勝てないのかと自問自答する。 考えるまでも無い。猛暑のせいで無残な姿に壊れてしまったが、コレとて八坂州五指に入る猛者なのだ。 いくら素質があるとは言え、スポーツギアを始めて半年にも満たない素人が如何にか出来る相手では無い。 それは重々承知している。事実、どんなに強くなってもその差が埋まらないのだから。 (納得いかねぇ…) 一人で悶々としながら、思考の海に意識を埋没させてしまったせいで、迂闊にも危険人物の接近を許してしまう。 恐怖の大王と化していた加賀谷が、爬虫類の様な目付きで腰を振りながら、ゆっくりと守屋ににじり寄って来たのである。 先輩達に助けを求めようとするが因みに三笠を初めとする上級生達は既に退避済み。裏切り者め。 加賀谷は守屋との距離が1mという所で大きく跳躍。守屋の頭上を飛び越え、空中で4回転半、着地と同時に守屋に指を差す。 「似た者同士、お互いに切磋琢磨して来い!!」 見事としか言い様が無い筈なのに気持ち悪いとしか形容が出来ない。 と言うか、お前の運動神経は壊滅的な程に悪いんじゃなかったのか。 宝仙高校に到着後、加賀谷は宝仙高校のスポーツギア部を恐怖の渦に…基、挨拶へ出向き 仮設格納庫の中で整備担当の部員達に最終調整の為に指示を飛ばす。 あのイカれたノリで、まともな指示を出せるとは思えないが、状況が悪くなった例は一度も無い。 納得は出来ないが腐っても加賀谷望だ。信じるしかあるまい。 (それよりも今日の対戦相手だな。) 仮設格納庫の中ではアイリス・ジョーカーの足元で整備担当の部員達が右往左往して非常に慌しい。 試合前はいつもだが、アイリス・ジョーカー担当の部員達は特に忙しく走り回っていた。 加賀谷は守屋が対戦するギアを見るなり急遽、守屋機の構成を変更するよう命じたからだ。 最近、定番装備になりつつある右腕のブレード内臓シールドは兎も角、脚部の追加衝撃緩和剤ユニットが並から特盛に変更。 そして、今回、初めて使用する有線式チャクラム内蔵シールドが左腕に装着されようとしていた。 「いよいよ、換装パーツの解禁ですか。」 「今日が総仕上げみたいなものだからな。」 予備のパーツは多めに用意してあるが、追加装備に関しては元々のストックと流通量が少なく ある意味で本体よりも貴重な為、易々と破壊されても困るし格下相手に持ち出すような代物では無い。 だからこそ、追加装備を使う時は破壊されても惜しくないような相手と戦う時に限られる。 「それに加賀谷が急な構成変更を命じるくらいだ。搭乗者と同じでギアも難物って事だろ。」 だとしても、生身でもギアでも使った事の無いチャクラムなど持たされても使い所が分からない。 だが、加賀谷の教育方針は戦いを通じて自分で気付けという物で、細かな指示やアドバイスを出す事は滅多に無い。 ただ急な装備変更を指示するくらいだ。使いこなす事が出来れば戦いを有利に運ぶ事が出来るだろう。多分。 「加賀谷曰く、備えあれば楽しいな…だそうだ。」 「それは楽しいですね。全然、意味が分かりません。」 「俺も分からん。だが、この界隈で宋銭を除けば最強の相手だ。油断はするなよ。」 宋銭を除けば最強。三笠の言葉を受け、宋銭高校スポーツギア部の二年、矢神玲の事を考える。 この男もまた加賀谷と同様、底の見えぬ男だ。そして、恐らく8月12日に行われる地区大会でケリを付ける事になる。 シミュレーター訓練での戦績は散々な物で正直、勝てる見込みは全く無い。 妙な焦燥感に駆り立てられるが、今は目の前の敵だ。 「分かりました。アイリス・ジョーカー出しますよ。」 お前に用は無いと湧き上がる焦燥感を心の奥底に追いやり、アイリス・ジョーカーを立ち上げる。 宝仙高校のギアスタジアムの中に機体を歩ませると既に対戦相手が腕組みして待ち構えている。 だが、素手でやり合う気は無いらしく足元には巨大な棍棒のような武器が鎮座していた。 「君が噂の守屋一刀君だね?私の名前は片桐セイナ。今日の共同訓練、お手柔らかにね。」 「ああ。宜しく頼む。」 最近、勝手に変な噂らしきものが一人歩きしているような気がしてならない。 アイリス・ジョーカーのサブモニターには対戦相手である片桐セイナの屈託の無い笑顔が表示されている。 青みがかったショートヘアに翠の瞳に絆創膏。少女と言うよりはまるで少年だ。 (眼は…紅くないな。) 初の対人戦で全部員を完膚無きにまで叩き潰したという事前情報から察するに紅眼の仕業だと思っていたのだが 紅い眼を持つわけでも無ければ、ふざけた保護者に、ふざけた訓練を課せられたような雰囲気も無い。 何にせよ、油断出来る相手では無い。守屋機はブレードを引き伸ばし、いつでも跳躍出来るように腰を落とす。 試合開始の合図がスタジアムに鳴り響く。敵が来るのを待ち受けるのは性に合わない。 守屋機は地を蹴り、砂埃を巻き上げ、白煙を吐き出しながら片桐機に肉迫する。 一歩一歩、地を蹴る度に地面が抉れ、砂煙と土塊が宙に巻き上げられる。 低空を飛翔する戦闘機のような勢いで迫り来るアイリス・ジョーカーの勇姿を片桐は楽しそうに口の端を吊り上げた。 (良い気迫をしている。部長達なんかよりもずっと楽しませてくれそうだよ。) まずは小手調べ。加速の勢いに乗せたブレードを片桐機の腹部に目掛けて一閃。 だが、手応えは無い。片桐は守屋機の斬撃に合わせて機体を前転させ、攻撃を潜り抜ける。 機体が背中合わせになると二人は機体に急制動を掛け脚部から白煙と化した緩衝材を勢い良く吹き出す。 だが、それも一瞬。両機は機体を急反転させながら再び攻撃に転じる。初動はほぼ同時。 ぶつかり合った武器が大きな火花を迸らせ、機体に纏わり付く白煙を弾き飛ばし、膠着状態を生み出す。 だが、力任せに押さえ込もうとする片桐に付き合うつもりなど無い。守屋機は半歩身を引きブレードを折り畳み 片桐機の踏み足に足払いを仕掛け体勢を崩す。片桐は慌てて立て直そうとするが、それよりも守屋が追撃に移る方が早い。 守屋は片桐が対応出来ないと判断すると更に間合いを詰めながら鋼拳を5発叩き込む。 片桐機は守屋の容赦無い連撃に機体を激しく揺さ振られ、装甲を軋ませる。 それでも守屋は攻撃の手を緩めない。片桐機の頭部目掛けて、左足を蹴り上げる。 頭を潰されては堪ったものでは無い。両腕を交差し如何にか体勢の立て直しを計る。 ガードを崩されたはしたもの、何とか頭部への攻撃は防いだ。今度は此方の番だと反撃に転じようとする。 (ガードが崩れたな…) 一度、攻撃に転じた守屋が易々と反撃を許す筈も無く、蹴り抜いた左足を踵落としの要領で再び片桐機の頭部に襲い掛かる。 一発一発が一撃必殺の威力を秘めている癖に、弱点に対する猛襲も執拗と来たもので、とんでもない奴だと片桐は舌を巻く。 「あはは…冗談じゃねーわ。」 此処一番で漸く回避行動が間に合った。守屋機の踵落としは空を切り地面に激突し小さなクレーターを作った。 本当に冗談じゃないと苦笑いしながら、安全圏まで飛び退く。全く余裕の無い状況だが片桐の表情は実に楽しそうだ。 「こりゃ、相手の土俵に合わせてたら勝てねーわ。」 片桐は自分自身の戦闘能力と、愛機イーゼル"イェーガー"で守屋に近接戦闘を挑む愚を悟り、更に後退。 だが、後退した片桐を守屋が逃がす筈も無く、ここぞとばかりにアイリス・ジョーカーは撃ち出された砲弾の如く疾駆する。 あの脚力と技量だ。瞬き後一つ終える頃には間合いを詰められるどころか、攻撃を終えているだろう。 「ま、こっちもそうなんだけどね。」 守屋機の鋼拳が片桐機を打ち貫くよりも早く、片桐は攻撃に転じる。 今まで打撃に使っていた打突武器を腰溜めに構え、イーゼル・イェーガーの名が示す通り引鉄を引く。 爆音と共にマズルフラッシュが放たれ、破壊エネルギーを纏った巨大な砲弾が勢い良く吐き出される。 「生憎と私と、この子の本領はこっちでね。守屋君はどーよ?」 流石に一撃でスポーツギアを沈黙させる程の威力は無いが、ほぼゼロ距離。 回避なんて不可能と言っても過言では無いし、ダメージも五分と五分だ。 「どーも何も、扱うのも扱われるのも苦手だけど…特にアレだ。ソードライフルなんて最悪だ。」 景気良く噴出される白煙に気も止めず機体を急制動させ姿勢を落とし砲弾をどうにかやり過ごす。 守屋は忌々しげに顔を歪め、真紅の機体と優等生の皮を被った変人を思い浮かべる。 そして、歳方や内田の二年生の二人組みもそうだ。飛び道具を使う相手に良い思い出が無い。 「ソードライフルでは無いけど、これも中々の逸品だよ?」 片桐は守屋以上に忌々しげに顔を歪める。いや、忌々しいと言うよりは悔しげと形容する方が正しい。 何せ苦手だと言っておきながら、奇襲じみたゼロ距離からの砲撃を避けられてしまっては立つ瀬が無い。 「MCIの銃使いか…面白そうだな。」 忌々しい得物ではある。だが、MCI同士の戦いで飛び道具を持ち出す相手と戦う機会は滅多にない。 SCIと異なり、MCIには照準システムや制御装置が無く、命中精度は劣悪。相手に被弾させるにはかなりの錬度を要する。 しかし、近接武器と打ち合いが出来る程の耐久性と質量を持つ銃身を軽々と振り回し あきらかに不向きな筈の長物を短銃さながらの早撃ちなんて芸当までやってのけるパワーがある。 MCIに飛び道具など愚の骨頂…そんな一般的な認識を改めさせられるには充分な相手。 そして、何よりもこんな珍しい相手と戦うのは実に面白い。 「中長距離用のキャノンライフル。装弾数はそんなに多く無いから弾切れするまで頑張って逃げてね。」 片桐は今度は此方の番だとでも言いたげな様子で楽しげな口振りで守屋機に銃口を突きつける。 事実、楽しんでいた。ギア部に入部して四ヶ月、ただ一度の敗北も許した事が無い自分が初めて追い込まれたのだ。 それも、熟練の猛者では無く自分と同じ高校からスポーツギアを始めた、同じ一年生を相手にして。 これまで上級生相手にしか戦って来なかった二人は同級生相手に負けてたまるかと牙を剥く。 「弾切れするまで撃たせる程、悠長な奴に思われていたのか…俺が易々と撃たせると思うなよッ!!」 気迫と共に片桐機に鋼拳を打ち飛ばすが、拳が届くよりも早く片桐は機体を真上に跳躍させ守屋の打撃から逃れる。 「跳躍力は奴の方が上か!」 追撃し空中戦を挑もうとするがアイリス・ジョーカーの脚力では追い付けない。 落下して来るまで大人しく此処で待つか?飛び道具を持っている相手に?論外だ。阿呆としか言い様が無い。 後退しながら回避行動を取り、片桐機の着地を待ってから反撃に転じるのがベターな選択なのだろうが それでは無難過ぎて、とても面白く無い。啖呵を切った以上、正解も不正解も関係無く前に出るべきだ。 出るべきなのだが、前に出る為の手段が無いのでは如何しようも無い。 (いや、良い物があるじゃないか。) 守屋は忸怩たる思いで機体を後退させようとするが、頭のイカれたボスが持たせた武器の存在を思い出す。 左腕のシールドに内臓された有線チャクラム。流石に飛び道具扱い出来る程の射程距離は無い。 だが、空中の片桐を叩き落すには充分過ぎる射程距離だ。 片桐が地上の守屋に銃口を向けるよりも早く、左腕を片桐機に突き付けチャクラムを射出する。 チャクラムは甲高いうねり声をあげて風を切り裂き、片桐機の腹部を食い破ろうと襲い掛かる。 だが、片桐は動揺する事無く、極めて冷静に対応する。 「打撃に比べたら遅いし、軽い。」 再びキャノンライフルを棍棒のように持ち、迫り来るチャクラムを弾き返す。 更に落下エネルギーを伴いキャノンライフルの砲身を守屋機の頭部に叩き落そうと猛襲する。 流石に意地を張って良い攻撃では無いとチャクラムを巻き戻しつつ、安全圏まで飛び退く。 危機一髪。隕石と言わんばかりの勢いで地面を抉り、片桐機の各部から景気良く緩衝材が噴出される。 更に砂煙と土塊が柱のように巻き上げられ、片桐機の姿を掻き消す。 (使い所がよく分からんな。) 再びチャクラムが収められた左腕を一瞥する。 (加賀谷部長が持たせてくれた以上、意味はある筈なんだが…) 使い道の分からない武器に気を取られていても仕方が無いが、加賀谷ならどう戦うのかと一瞬、意識を思考の海の埋没させる。 迂闊にも程がある。先程、守屋は片桐が見せた一瞬の隙を付き、七発の打撃を一瞬で叩き込んだ。 片桐は守屋と同じ事をキャノンライフルで返礼。だが、放たれる砲弾は七発どころでは済まされない。 砲身からはフルオートで悪ふざけかとしか思えない量の弾が吐き出される。 とは言え、MCIの命中精度なぞSCI機と比較にならない程、劣悪だ。避けるまでも無く易々と当たる物では無い。 だからと言って、余裕をかましてもいられない。アイリス・ジョーカーを中心にけたたましく降り注がれる弾幕の雨。 避けずとも当たりはしないが、何処へ向かって飛んで来るかも分からない以上、抜け出す事も出来ない。 シールドで機体を覆い機体に降り注がれる砲弾の雨をやり過ごすが、この場に縫い止められているのも同然だ。 「砲撃が止んだ………ッ!?」 片桐がマガジンを入れ替えている隙に防御体勢を解き絶句する。 一見出鱈目に放たれた砲弾の雨は守屋機だけで無く、大地にも降り注がれ 綺麗に整地されていたスタジアムは見る影も無い程、無残な姿に変わり果てていた。 だが、今の守屋には変わり果てたスタジアムの姿を認識する事が出来ない。 何故か? 執拗なまでに降り注がれた弾幕の雨によって、盛大に巻き上げられた土煙と土塊は スタジアム全体を覆い隠し、一寸先すら見る事も叶わないのだ。 土煙の結界。または砂塵の牢獄とでも形容すべきか。 戦闘兵器の意匠を凝らしただけの競技用の砲弾で此処までの事が出来るのか? いや、競技用の砲弾で、これ程の芸当をやってのけるとは。 これまでに経験した事の無い状況に守屋は片桐の発想にただただ驚嘆する事しか出来ない。 「これは一体、どう動くべきか…?」 驚嘆ばかりもしていられないのだが、突拍子も無い展開に二の足を踏めずにいると爆音と共に砲弾の洗礼が再び降り注がれる。 視界が最悪なのは片桐も同じ筈にも関わらず、迫り来る砲弾は先程とは比べ物にもならない正確さで守屋機を捉える。 片桐が放った砲弾は7つ。その内の2つは地を抉り、3つはシールドに阻まれ、2つは左肩と右膝を捉えた。 「そりゃ、同じ場所にずっと突っ立ってりゃ目隠ししたって当たるに決まってるよ!」 「ダメージになったのは2発だけだ。下手糞。」 負け惜しみも良い所だ。兎に角、いつまでも立ち尽くしていては蜂の巣にされてしまうだけだ。 幸い、砲弾によって切り裂かれた砂の結界が片桐が居る位置を教えてくれる。 跳躍力では遅れを取ったが、瞬発力はアイリス・ジョーカーに分がある。 守屋機は砲弾によって作られた道を辿り真っ直ぐに爆走する。 撃ちたければ撃てば良い。一発や二発で撃ち落される程、柔な機体では無い。 それに単純な損傷の度合いで言えば、片桐の方が上だ。 どんなに傷付けられても片桐に追いついた時、腕なり脚なりが動けば逆転は容易い。 「なんだ。3発は防がれたんだ。今度こそ、これでおあいこ…かな?」 爆音が立て続けに7回鳴り響き、吐き出された砲弾は背後からアイリス・ジョーカーに襲い掛かる。 「後ろを取られただとッ!?」 外れた4発の砲弾は大地を蹂躙し、残る3発は守屋機の後頭部、背部、腰部に喰らい吐き盛大に転倒させる。 「あんな見晴らしの良い所を真っ直ぐ、走ってるんだもん。そりゃ狙うに決まってるっしょ! それよりも、これでお互いに直撃5発。これで振り出しかな?」 何が振り出しなものか。視界は最悪だというのに、片桐は守屋の姿をはっきりと捉えた上に 音も無く守屋機の背後に回り、見事に頭部を撃ち抜いたのだ。 だが、頭部を撃たれたとは言え、視界が一瞬明滅しただけで破壊には遠く及ばない。 「一発や二発、首を撃たれたくらいじゃ破壊はされんか…」 わざと声に出して呟く。声は震えていない。声が裏返ったりもしていない。 いつも通りの、普段通りの自分だ。ただの杞憂らしい。 何が杞憂なのか? (矢張り、負ける気がしないな。) 絶対的に不利な状況。だと言うのにも関わらず、守屋は諦める以前に己が敗北する事など全く考えていない。 厳密には考え付かないでいた。この状況でも、己が敗北するイメージが全く掴む事が出来ないのだ。 不利な上に猛暑のせいで、遂に頭がイカれたのか?それとも、無意識の内に虚勢を張っていたのか? そんな不安があったのだが、どうやら普段通り過ぎる程、いつもの自分だ。だったら普段通りにやれば良い。 そう片桐の言った通り、これでおあいこ。ただ振り出しに戻っただけに過ぎないのだ。 ぶつかり合う一年生。交差する砲撃と鋼拳。 だが、守屋一刀を良く知る二人の男。守屋を圧倒する二人の男は違う感想を持つだろう。 加賀谷望。そして、矢神玲の両名がこの場に居たら口を揃えてこう言う筈だ。 『アイツは追い込んでからが厄介なんだ。』 結果だけを見れば確かに華々しい戦果と言えよう。 結果だけしか見ないから守屋一刀の本質を見間違えてしまう。 確かに過去の戦績を遡ってみると、綺麗な勝ったり圧倒的な勝利を納める事は滅多に無い。 戦えば必ずと言って良い程、機体を壊す。メーカーの工場で修理を依頼した回数も少なくは無い。 この場に矢神が居たら、加賀谷と同じ事を言っただろう。 「アイリス・ジョーカーが転倒した時点で徹底的に追撃するべきだった。 最早、イーゼル・イェーガーに勝ち目はない。」 守屋機はありとあらゆる箇所に砲撃を受け無残な姿に変貌している。 あまり良い傾向では無い。だが、そんな事はいつもの事だ。 (精々、いい気になってぶっ放していれば良いさ…) 砲撃に晒されながら状況を整理する。イーゼル・イェーガーを撃破する為に。 装甲が弾け、欠落していくが放っておけば良い。結果的に奴を殴り飛ばせば帳尻は合うのだから。 それに砲弾に晒され続けるのも悪い事ばかりでは無い。 立て続けに放たれる砲弾によって砂の結界は切り裂かれ視野が広くなる。 「成る程…そういう事だったのか。」 結界と形容してはいるものの、所詮は白煙、土煙、土塊を巻き上げて作った粗悪品だ。 目暗ましその物が有効な手段とは言え、容易く破綻する。 それを理解していたからこそ、片桐は意図的に地を抉り結界の再生を行っていた。 それなのにも関わらず、破綻したのは何故か?何故、守屋に見破られたのか? 片桐は見てしまったのだ。砂の結界の隙間から転倒するアイリス・ジョーカーを。 アイリス・ジョーカーの装甲が欠落する様を。そして、興奮気味に己の勝利を確信する。 後、数発も砲弾を叩き込めば、勝利出来る。あの守屋一刀に。 片桐は興奮状態に陥り只管、砲弾を撃ち込む。自身の攻撃で砂の結界が薄くなっていく事も気にせず。 結界など無くても自分の勝利は確定的だ。結界の事なぞどうでも良い。 勝利への確信と興奮が片桐から冷静さと判断能力が欠落していく。 矢継ぎ早に砲弾が撃ち込まれるが、何処から来るのか分かりさえすれば避けられないにせよ対応は難しくない。 「とは言え…応用力に関しては片桐の方が上か。俺もまだまだだな。」 密度の薄くなった結界の外側から、此方に銃口を向ける片桐機を見て、またも驚嘆する。 片桐はMCI機の中でも随一の跳躍力を生かし、守屋機を中心に跳び回りながら空中で砲撃を浴びせていたのだ。 更に発砲時の大き過ぎる轟音を利用し、着地時の衝突音を掻き消し、音も無く背後に回ったかのように見せかけた。 常に鳴り響く発砲時の轟音は音が大き過ぎて、逆に位置の特定が出来ないという性質を利用したのである。 それだけでは無い。MCI搭載ギアは性質上、陸地での格闘戦が主となる。 空中戦を行うという発想が無い。それ故に、常に目線は前後左右。試合中に空を仰ぎ見る癖が無い。 だから多くの選手は対戦相手が上に居る筈が無いという固定概念に囚われる。 互いに生身で戦っているのでは無くギアで戦っているのだから人間と同様の戦い方をする必要は無い。 メーカーや、製造時期、開発コンセプトによってギアの性能は実に多彩で、その性能を引き出す為には 生身の人間同士の時のように戦うだけが全てでは無いし、それだけでは強豪選手に勝利する事は出来ない。 勝手にギアの戦い方を決め付け、自分自身の力だけで戦い続けて来た結果がこの様だが ギアの応用力や限界に対する認識を改めさせられたのは大きな収穫だ。 何より、今やるべき事は後悔したり感心する事では無い。そんな物は寝床の一人反省会の時にやれば良い。 今やるべき事。それは… 「さて…勝ちに行くか。」 片桐が使っている手品は全てタネを明かした。片桐は丸裸にされたも同然。 だが、思考は乱さない。冷静且つ、油断無く片桐機を追う。 砲撃を警戒しつつ、機体を走らせていると銃口を此方に向ける片桐機が見えた。 まるで自分が狩る側だと言いたげに無防備な姿を晒し攻撃を当てる事だけに集中している。 キャノンライフルが周囲に爆音を轟かせながら、巨大な砲弾を吐き出し 守屋機の頭部を食い破ろうと砂煙を、土塊を切り裂きながら猛進する。 片桐は迫り来るアイリス・ジョーカーの事など露知らず、嬉々として砲弾叩き込み、 弾が切れてはマガジンを入れ替える作業に没頭していた。 もしも。そんな言葉に意味など無いが、もしも、片桐が守屋機の姿だけで無く、進行方向も確認していれば 先程から守屋機が居るであろう予測位置にマガジン2発分の砲弾を叩き込んだにも関わらず AIが試合終了のサインを。片桐の勝利を宣言しない事に疑いを持てば違う結果にもなったのだろう。 片桐は着地と同時に新たなマガジンを挿入。最早、動き回るまでも無い。棒立ちで発砲し続ける。 確かに格闘戦能力の高さだけに事関して言えば、最強の相手だったと認めよう。 だが、それでも、この私に撃ち落されて終わる事には違いは無い。いつもの対戦相手と何が違う? 機体の頑丈さも認めてやるべきか?などと思いながら最後のマガジンを装填する。 「え…?最後…?」 有り得ない。今回用意したマガジンは7個。この一戦で使い切る為に用意したわけでは無い。 7つもあれば二戦くらいは無補給でいけると思って事前に持ち込んでいたのだ。 此処に来て漸く、片桐は異変を感じ取る。 「守屋君を追い込んで、トドメを刺すつもりで…」 散々、発砲しまくった挙句、最後のマガジンを装填した。 片桐は大粒の汗を滝のように流しながら、情報モニタを確認する。 興奮しまくった挙句、発砲しまくって自分が勝った事に気付かず、アイリス・ジョーカーに追撃を仕掛けた。 いくら競技用の弾頭とは言え、これだけの直撃弾を与えたのだ。大怪我をさせているかも知れない。最悪の場合… だが、情報パネルはアイリス・ジョーカーの健在を示している。 「これだけ撃ったのに!?なんで、撃破出来てないの!? って、そもそも被弾していない!?なんで!?どうなってるの!?」 MCIギアに搭載されている簡素で粗悪なレーダーがアイリス・ジョーカーの現在位置を表示した。 そんなレーダーが相手ギアの現在位置を捉える事など出来る筈が無い。出来るとすれば… 片桐が狼狽していると突然の衝撃がコクピットを揺さぶり、イーゼル・イェーガーのモニターがブラックアウトする。 「な、何…どうなってるの、これ…」 「敵が前から来るとは限らない。片桐と同じ事をやっただけだ。」 イーゼル・イェーガーは首を切り落とされ、糸の切れた操り人形のように地に崩れ落ちた。 大見得切って頭部を刎ね飛ばしたは良いものの、改めてステータスパネルを確認すると普段通り、最悪としか言い様が無く グリーンランプなんて物は相変わらず無縁で、全身レッドとイエローの見事なコントラストで彩られていた。 ついでに派手に動き回ったせいで、衝撃緩和剤の特盛も完食寸前。 (五体満足で勝てたのはある意味進歩か?) 「あーもー、悔しいなぁ…って言うか、飛び道具は苦手なんじゃないの!?」 「一度、攻略の糸口が見つかればいくらでも逆転出来るさ。 それと手加減している癖に戦い方が一々、雑過ぎる。」 攻撃が雑な上に集中力が持続しないのは本人の問題なので、それはさて置き 片桐が、もっと姑息に無慈悲に攻めていれば守屋を容易く撃破出来ていたであろう。 にも関わらず、特に前半は此方の能力を測るかのように観察しながら戦っていたように感じられた。 「べ、別に舐めてたわけじゃないってば…」 片桐は怒られた子供のように小さくなるので、守屋は別に怒ったつもりは全く無いと肩を竦める。 「州大会でやり合う相手なんだし?色々と出し惜しみさせてもらっただけだよ。」 「成る程。だったら、次にやり合う時は全て暴かせてもらうさ。」 どんな手札を持ち出そうと、今回と同様に正面から叩き潰してやれば良い。 それにアイリス・ジョーカーがボロボロになるのは何時もの事だ。 何もかも普段通りなのだから州大会でもボロボロにしたり、されたりしながら敵を倒せば良い。 統合歴329年8月5日 「まさか残りの合宿期間を丸々、遊びに使うとは…」 宝仙高校のスポーツギア部に別れを告げ、八坂高校スポーツギア部のメンバー達は 当初の目的…では無いが、それなりにお目当てになっていた海水浴場へと訪れていた。 加賀谷の入手した情報によると守屋達の行動可能範囲でまともな練習相手になりそうな高校が無いそうだ。 あんまり雑魚ばかりと戦っても仕方が無いし、あまり手の内を晒すような真似もしたく無いので遊んでしまえという事らしい。 些か物足りない気分もするが、青い空の下で青い海に浮かんでいると、こういうのも良いかと戦意が薄れてくる。 「ま、頑張った自分へのご褒美って事で!何だかんだで全勝中なんだって?」 「そういう霧坂こそ、一度も撃破されていないんだってな?」 加賀谷曰く、霧坂はSCI乗りの一年生の中では、この界隈でトップクラスの技量を持つらしい。 「そりゃ、加賀谷部長のスパルタ訓練メニューだって毎日こなしているし 対人戦の回数と人数だけなら守屋君よりも上なんだからね。」 そう言うと霧坂はそれなりに豊満な胸を張り、得意げな笑みを浮かべる。 「成る程…そういや、霧坂とはまだ実機でやり合った事無かったな。」 良い感じに揺れる霧坂の胸には目もくれずに波に揺られながら、顔を合わせる事も無く青空を眺めながら口を開く。 初めて、シミュレーターで対戦した時は悉く、動きを読まれ左腕を破壊され胆を舐めた事を思い出す。 「守屋君がSCIに乗るんだったら相手になるけど?」 まるで守屋の態度が、お前には女としての魅力は全く無いが、搭乗者としてならアリだと言っているようで 流石の霧坂も表情を憮然とさせる。卑猥な表情で見らるのも勘弁だが、女としては矢張り誉められたいものである。 「無理を言うなよ。」 そんな霧坂に気付いた様子も無く守屋は半笑いで勘弁してくれ降参だと両腕を上げる。 「さらりと恐ろしい事言うからだよ。それよか他に言うべき事があるんじゃないの?」 「あ?ああ…可愛いな?」 「あー…」 さり気無い所か直球で誉めろと言わんばかりの態度で守屋に迫るが、お気に召さない所か何の感慨も無いらしく 浴衣姿の時とは打って変わって、適当に取って付けたような誉め言葉に霧坂は憤慨を通り越して軽く眩暈がした。 一先ず、海パンを奪い取り、そこいらに居る女の子を手当たり次第に呼びつけて 守屋を晒し者にするのは基本としてどうやって報復してやろうか。 それともアレか?根本的な考え方が間違えていたのか? この場合、ハイレグビキニでは無く、スク水を着てくるのがベターだったのか? (何で、私が守屋君なんかの為に、そんなモノ着てあげなきゃいけないのよ。) そもそも、守屋がそんな事を望んでいる筈も無く、ただの言いがかりでしか無い。 そんな感じに失礼な事を思案していると、守屋と霧坂を呼ぶ三笠の声が聞こえる。手には海の定番アイテムである西瓜が。 何か最近、コイツ等仲良いなとか思いながら守屋の後に続いて三笠の元に向かうと守屋の鍛え上げられた背筋が目に付く。 見事に鍛え上げられてはいるが生憎と地上最強の生物程では無く、鬼の形相の様な背中では無い。 意外と普通の人間と大差無いんだなと少しばかり残念な気分に陥りながら、定位置である守屋の左隣に並んだ。 ↓ 感想をどうぞ(クリックすると開きます) +... 名前
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wiki文化が弱くなってきてるからここは編集が盛り上がるといいね - 名無しさん (2019-09-12 12 48 15) 雑談や質問できるページがあったらいいなと思いました とりあえずDiscordだけ作りました。あとは自由に使ってほしい - 名無しさん (2019-09-23 22 27 00) ttps //steamcharts.com/search/?q=gears+5 - 名無しさん (2019-09-23 22 27 10) ttps //discord.gg/uSASJaH - 名無しさん (2019-09-23 22 27 47) PCを新調して当ゲームを動かすのに余裕のスペックを用意できたのですが、まだこのゲームのプレイヤーは存在しているだろうか、6待ったほうがいいのだろうか - 名無しさん (2022-03-02 23 52 50) Ultimateの100円期間中に割引で買いました。プライベートHordeの - 名無しさん (2022-09-17 20 40 16) 連投ごめんなさい。プライベートHordeがやりたかったのですが、わかりづらかったです。 - 名無しさん (2022-09-17 20 40 53) 解決済みですか?一応書いておくとホードのカスタムを選んで画面左上の「プライベートマッチをホスト」を選んで決定するといけますよ - 名無しさん (2022-09-18 15 44 02) プライベートHordeがやりたかったのですが、わかりづらかったです - 名無しさん (2022-09-18 15 38 50) ごめん。ミスりました - 名無しさん (2022-09-18 15 39 09) 対戦などで狙う敵をマークする方法って変わりましたか? XboxONEコントローラーでのXboxONE利用です。 - J・ド素人フェニックス (2022-09-22 01 51 27) 上記マークする方法解決しました。LTで狙いを定めた相手にBボタンを押すんですね。お騒がせしました。 - 名無しさん (2022-10-01 15 38 18)