約 1,264,717 件
https://w.atwiki.jp/ikeda_cribbed/pages/67.html
盗作検証に至る経緯 『ベルサイユのばら』で知られる漫画家・池田理代子が、2007年5月14日の朝日新聞で暗に山岸凉子『日出処の天子』を非難した。 「ある漫画家が、聖徳太子と蘇我毛人との「霊的恋愛」を描いた。『違和感を覚えました』。」 そこで文献を読み、仏教学者の助言を受け、『聖徳太子』を発表したと言う。 「『太子の顔に特定のモデルはありません』。しかし、史実にまじめに向き合った。」 ところが、その『聖徳太子』で描かれた太子は赤い唇に細面、長くたらした美豆良に生花をつけた髪型など、女性的な容姿。これのどこが「史実」? →池田理代子の描いた聖徳太子 伝統的な聖徳太子像を打ち破るこの独特の容姿は、山岸凉子が生み出したものだ。池田氏が『聖徳太子』を発表する10年も前に。 山岸氏は創作漫画として自由な描写を行ない、太子の髪に薔薇の花を飾った。 「史実にまじめに向き合った」はずの池田版聖徳太子も薔薇をつけている。当時の日本に薔薇は存在しないにもかかわらず! →薔薇を髪につけた太子 池田理代子『聖徳太子』4(中公コミック版)の表紙 これは歴史考証抜きで安易に山岸版を真似た、パクリではないの? →顔の比較 池田氏の発言に強い「違和感」を感じた有志が両作品を比較検証してみると、聖徳太子の特異な容姿にとどまらず、脇役の容姿・性格設定、史実にないエピソード、漫画技法(描法・構図・コマ割)等々、盗作疑惑箇所が大量に発見された。 それらの疑惑をまとめたのがこのWiki(※)。 そして盗作検証は今も進行中。→漫画サロン@2ch掲示板の盗作検証スレッド (※)このWikiは、盗作検証スレのまとめサイトが2008年1月下旬に「一時閉鎖」となったため、急遽作成されました。(→このWikiについて) サイト内に掲載している画像は検証目的のものであり、関係出版社及び作者の著作権を侵害するものではありません。 報道、批評、研究目的での引用は、著作権法第32条によって保護されています。 総計: - 本日: -
https://w.atwiki.jp/nakayokune/pages/412.html
#blognavi ビデオ版銀河英雄伝説外伝「汚名」の一節より 私は最初から無視されていた。 男としてはだ。 ・・・ いい人という言葉は 底の見えた男に対して女が放つ哀れみの言葉なのだよ・・・ ⊂⌒~⊃*。Д。)-з←アヒルの中の人 (ノД`)シクシク ガ━━(= ̄□ ̄=)━━ン!! ∑( □ *( □ *( □ *( □ *)ガビーン!! ( ーノー)o/"Ω ポクポクポク… 劇中では女にフラれたカイザーリング男爵?がそういったことを述べておりました。 作品自体はけっこう面白かったのでよしとしますっ! ・・・が、何気にこのパンチはきいたぜベイベー(ぇ $-2(かつてこういう言われ方でフラれたことが多々有るのはナイショ・・・カモ) 題名のようにホントに死に至らないようにしておきたいと思いますw 追伸 その1を書いた時に喉が痛い~って書いたのですが、実は本当に風邪で昨日一日熱を出して寝込んでましたとさヾ(´ー`)ノ カテゴリ [日記] - trackback- 2006年03月07日 09 43 04 昔、三年も付き合って成長してないなんて付き合ってる意味無いってフラれたことあります・・・。 -- 昔を懐かしむ歳になった鷹王 (2006-03-07 21 34 34) 名前 コメント #blognavi
https://w.atwiki.jp/jubeat/pages/1344.html
滅びに至るエランプシス 音楽配信メディアミックス企画『 ひなビタ♪ 』からの楽曲 アーティストそのものに関しては「恋とキングコング」を参照 ひなビタ♪放送局 第11回「なぞの段ボールさん」 にて公開 ボーカルは作中のキャラである春日咲子(CV 山口愛)と霜月凛(CV 水原薫) 実際の作詞はwac、作曲はTOMOSUKE、ギターはあさき REFLEC BEAT colette -All Seasons-との同時収録 後にpop'n music Sunny Park、GITADORA OverDrive、SOUND VOLTEX III GRAVITY WARSにも収録された スマホアプリ4作品にも収録されており、BEMANIにおける初収録機種はiOS版ポップンリズミン pop'nでのジャンル名は「浪漫歌謡」 BASIC ADVANCED EXTREME LEVEL 3 6 8 Notes 261 482 634 BPM 158 Time 1 56 Artist 日向美ビタースイーツ♪ ジャンル オリジナル Version saucer fulfill 譜面※外部サイト ■ ■ ■ この曲で手に入る称号 【全難易度クリア】滅びに至るエランプシス 【全難易度フルコンボ】その罪を償え…すべて滅ぶまで… 動画 - 譜面動画 譜面動画 - BASIC BASIC - ADVANCED ADVANCED - EXTREME EXTREME 譜面動画 EXTREME (シャッター+ハンドクラップ) - プレー動画 プレー動画 攻略・解説 各譜面の攻略に関する情報はこちらへ。 [EXT]ここからスタートで音符押し、その直後に1と16押してからまた音符押しと、しょっぱなからコンボを切られる可能性が高い。あとは出張必須な場所がある。 -- 名無しさん (2014-03-26 15 53 29) [EXT] 全体的な混フレ、やらしい出張など。8強に感じた。 -- 名無しさん (2014-03-26 17 09 58) [BSC]サビの入り(119コンボ目の9番)がやや遅ズレ気味でグレやすい。目押し推奨。また後半に8分配置が出てくるので、Lv3としては強めか。 -- 名無しさん (2014-03-26 20 44 23) [ADV]メロンパンと違い、こちらは曲・歌合わせの8分が中心。後半にこのレベル帯では珍しい2+3+14+15の出張押しがあり、それ以降は同時押しが増えてやや密度が上がる。 -- 名無しさん (2014-03-26 21 11 32) レベル8の中では少し難しい感じがした。でも個人的に譜面は楽しい。 -- 名無しさん (2014-03-29 12 41 39) [EXT]フルコンの場合、上記の音符押しの他、後半の「凛と咲誇れ」の歌詞の部分も高難度。素早い反応が必要で、べちゃ押しするとほぼ確実にコンボを切られる。 -- 名無しさん (2014-04-02 12 22 46) 9相当あると思うな 全体的に ノーツ的には8でも妥当かも知れないけど最初の密度薄さ考慮するとなかなか難しい -- 名無しさん (2014-04-09 01 06 12) [EXT]9弱くらいあると思われる。BPM 158の8分リズムがメインなので早くはないが単→同時→単がしれっと混ざっていたりする上に、譜面の密度も濃い目。表記上は640弱なのだが、上記にもあるように密度が薄い所はホントにスッカスカなので実質700前後の譜面とそう変わりない。 -- 名無しさん (2014-05-14 08 32 34) [EXT]混フレが苦手だとなかなかスコアが伸びない難曲。メロンパンや都会征服と同レベルだと思ってナメてかかるとFailedまで見えかねない。 -- 名無しさん (2015-05-31 02 03 12) 名前 コメント ※攻略の際は、文頭に[BSC] [ADV] [EXT] のいずれかを置くと、どの譜面に関する情報かが分かりやすいです。 ※体感難易度を書き記す際は、クリア難度・スコア難度のどちらかなのかを明記してください。 また、攻略と関係ない投稿・重複した内容は削除の対象になります 攻略とは無関係の話は該当する欄(情報交換&雑談) にてどうぞ。
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/24140.html
たたかいのはてにいたるまえに【登録タグ た ジェバンニP 曲 鏡音リン】 作詞:ジェバンニP 作曲:ジェバンニP 編曲:ジェバンニP 唄:鏡音リン 曲紹介 論理的な戦いに挑む人をテーマにした歌。 歌詞 彼はどんな時も冷静よ。冷酷なほど。 仮に私がヒステリックになるような時でも 不思議そうに見て、 あくまで悲しい落ち着いた声で。 なるほど。それは何故? そして、何かがを考え込むように ※ 深い深い思考の谷へ 彼は彼は沈んでいくの。 そうなって しまえば どんな声も彼には 届かず 聞こえず 彼だけの世界 深い深い論理の海へ 彼は彼は潜っていくの。 だれも いない それは彼だけの 孤独で 聖なる 戦いの世界 彼はどんな時もかっこつけてる子供みたい 仮に私がヒステリックになるような時でも、 不思議そうに見て、 あくまで大したことのないかのように。 なるほど。それで何? そして、何かを考え込むように Repeat(※) その時彼は、私には分からない 大いなる戦いに備える準備をする。 その戦いで、いかにシンプルに、 いかにスマートに、いかにショッキングに。 どんな戦い方ができるかを考える それは神聖な戦いの準備。 私にも、彼みたいな準備ができるかしら。 最後の確認をしましょう 戦いの果てに至る前に。 Repeat(※) コメント 意味深な歌詞ですね⋯ -- 名無しさん (2014-11-01 19 06 30) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/gtalcsvcs-vehicles/pages/112.html
DeadDodo 概要 機種:小型セスナ機 和音:デッドドードー ドア:2枚 乗員:2名 実機:セスナ172スカイホーク 日本語訳:死んだドードー鳥 解説 このDodoについて詳しく言うと、通常のDodoは羽が切られているが、羽が切られていないDodoのことである。 当たり判定が、警察ヘリと似ており残骸が残らない。 Betaのみに登場したと思われる。 画像 imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 画像はGTA3 実機 セスナ172スカイホーク 460px-Cessna.f172g.g-bgmp.arp.jpg
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/930.html
~投薬一日目~ 特に大きな変化はない。 周りのゆっくりたちとも普通に遊んでいる。 食欲も旺盛でいたって健康。 ~投薬二日目~ ゆっくりパチュリーに何か教えてもらっていたらしいが、 あまり話をよく聞けていない。集中力が散漫になりつつある。 食欲や運動能力にはまだ影響がないみたいだ。 <メモ> ゆっくりれいむと遊ぶ約束をした ~投薬三日目~ 二日目の約束をすっぽかす。どうやら寝起きが悪いようだ。 心配したゆっくりれいむが巣まで見に来るが、涎までたらして寝ているのを見ると、 怒って帰ってしまう。10分ほど起こそうと声をかけたりゆすったりしていたが、効果なし。 昼過ぎに起きたため、食事の回数は三回から二回に。食欲減退などの症状は無い。 今日は巣の中でぼけーっとしていたので運動能力の減退は不明。 ゆっくりれいむとの約束は結局思い出さなかった。 ~投薬四日目~ 食欲に大きな減退が見られる。いつもの半分しか食べずに食事を終了する。 ゆっくりれいむに約束を破った事を注意され謝罪する。 ゆっくりパチュリーが果物をおすそわけに来たが、食欲がないと断る。 飛び跳ねる高さが若干だが低くなっているようだが、誤差かもしれない。 <追記> 資料と見比べた所、やはり若干跳ねる高さが低くなっている。 これによりゆっくりれいむと同じぐらいの足の速さになる。 ~投薬五日目~ 記憶に著しい障害が発生、友人であるゆっくりれいむやゆっくりパチュリーの事を忘れる。 身体能力も大きく減退。跳ねる事ができなくなる。 食欲も大きく減退し、今日は朝から何も食べていない。 ゆっくりパチュリーが数種類の薬草を食べさせるも症状は回復せず。 ~投薬六日目~ まったく動けなくなり、記憶や言葉をほとんど失う。 「ゆっくりしていってね」としか喋れなくなり、思い出したかのよう「ゆっくりしていってね」と言っている。 ゆっくりれいむから野菜を貰うが、それが何なのか分からないみたいだ。 「たべて」と言われても食べるという行為が分からないようで「ゆっくりしていってね」と返事するだけだ。 ~投薬七日目~ 昼過ぎに死亡を確認。 それまで痛がるような様子もなく六日目と同じ症状だった。 「ご期待に添えましたでしょうか?」 永琳は数枚の写真と報告書、それに何粒かの錠剤を人間に渡す。 「ええ・・・よかった。これでゆっくりたちも苦しまずに済みます」 「すぐに動きを封じる即効性の強いものもありますけど」 永琳が出してきた別の錠剤に人間は嫌な顔をする。 「そんなものを使ってはゆっくりが可哀想です」 「・・・そうですか、それでは私はこれで」 「ええ、ありがとうございました」 永琳が村の外れの畑まで来る。 「こら、お前ら、また人の畑を!!」 「ゆ?ここのやさいはれいむたちがさきにみつけたんだよ」 「忌々しいな、この野郎」 男が鍬を振り上げる。 「やめなさい、この馬鹿者が!!」 しかし、その鍬は振り下ろされる事はなく、さっき大声を出した男に取り上げられる。 「ゆっくりは人間の約束事が分からんのだ。そうイチイチ腹を立てるな!」 大声を出した男はゆっくりれいむ達に優しい言葉をかけ、森に帰させる。 「竹林の女医様にゆっくりが苦しまず死ぬ薬を作ってもらった。今後、酷いゆっくりにはそれを使う。お前もイチイチ目くじらを立てるな」 「俺ががんばって耕した畑の野菜を勝手に取っていって、それは酷くないのかよ!!」 「大根の一本や二本だろ。それぐらい我慢せい。ゆっくり達だって生きているんだ。そう簡単に殺しては可哀想だろ」 村の外で待っていたてゐは物陰からクスクスと笑っている。 永琳はてゐと合流し、迷い竹林を目指す。 「あの村、絶対にゆっくりを殺す気ないね」 「そうかしら?」 「だって、可哀想とか言ってるんだもん」 「でも、あの薬があれば・・・変わるかもしれないわ」 「えー、でも、アレってゆっくりが可哀想だから遅効性になってるんだよね?」 「いいえ、アレは即効性の毒薬よ。実際、二日目の段階で記憶に著しいダメージを与えてるのよ。痛がらないのは『痛い』って事を忘れてるだけ」 「エグーい」 「使用者が納得して効能が同じであればどんな道筋で効く薬でも良いのよ」 しばらくして、この村の近辺のゆっくりはほとんど死滅した。 「可哀想だけど、この薬なら苦しむ事はないからな」 そう言って薬を使い続けた。苦しくないから、苦しくないから、と言って。 by118 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/orirowavr/pages/216.html
三土梨緒は悔しそうに爪を噛んでいだ。 白騎士の力なら確実に殺せると踏んだが、失敗した。 小賢しい七三眼鏡に邪魔され、相手にはワープという切り札もありまんまと逃げられてしまった。 諦めと見切りが早いのは梨緒の悪い癖だ。 言いがかりをつけられ判断を早まってしまった。 学園生活も、それで何度しくじったことか。 日和った連中を利用する道を選んだ梨緒からすれば、悪評をまき散らされては立ち行かなくなる。 そうなる前に大日輪月乃を確実に見つけ出して絶対に殺さなければならない。 最大の問題はメールである。 七三眼鏡曰く10GPでメールが送れるという話だ。 正義にチクリメールを送られようものなら一瞬で終わりである。 なにせメールを出すなんて防ぎようがない。 だが、月乃には初期GPの10ptしかないはずだ。 塔の支配もせず、参加者の殺害を良しとしない奴らにGPを得る手段はない。 送れるメールは一通だけ。その一通を梨緒の悪行を伝えるためだけに使うか? いやしない。 安心を得るため、必死で否定材料を探す。 猶予はある。そう信じて梨緒は月乃を殺すために動く。 だが、どこを探せばいいのか。 走りだしたはいいが探す当てがなければ、動きようがない。 月乃が行ったワープが、どの程度の性能でどこまで跳べるものなのか。 情報がなさ過ぎて推測もたたない。 スキルか支給品かも不明である。 どうせならいっそ、沈んだ積雪エリアに跳んで海の中に沈んでいればいいのに。 もしくは地中か空中に放り出されてそのまま死んでくれれば楽だ。 まあそんな希望的観測を信じて、放置するわけにもいかないのだが。 確か、月乃たちは放送局を目的地にしていたはずだ。 そこに向かうかどうかでひと悶着あった、梨緒が責められる切っ掛けもその話だった。 ならば、月乃もそこに向かうかもしれない。 あのワープが位置まで指定できるとしたらならば、既に放送局にいる可能性すらある。 心当たりができてしまえば、そこに心が支配される。 逃げられてしまえば、梨緒は破滅だ。 立ち去る前に一刻も早く向かわなければという焦燥感に駆られる。 追い詰められたように目撃されるリスクも承知の上で梨緒は白騎士を呼び出した。 自分の痕跡を消すために痕跡を残す矛盾。だが、やらねばならない。 梨緒は幸せになりたいのだから。 その為ならなんだってやろう。 それに白騎士自体を目撃されるのは構わない。 正体不明のクリーチャーがいると知れたところで、それが梨緒と繋がらなければそれでいい。 騎士の背後で隠形の札を使っていれば身を隠せるばずだ。 白騎士の背後に登りしがみ付く。 隠形の札を使用して自らの存在が隠されたことを確認すると、白騎士を走らせた。 大森林をなぞるように草原を駆ける。 かつて狙撃手より逃げるために辿った道筋を、こんどは殺すために駆け抜ける。 風の如き馬の疾走はあっという間に中央エリアを抜け、諸島エリアにかかる橋に入った。 響く蹄の足音が石を打つ音に変わる。 軽快な音がテンポよく響き続ける。 そして再び音の種類が変わった時には、その建物が視界に入っていた。 それは海を臨む放送局だった。 小島に佇む小洒落たロケーションは殺し合いには似つかわしくない。 こじんまりとしたその建物の前で馬の足を止めさせる。 白騎士に頼らず意を決して自ら飛び降りた、おかげで今度は無事着地できた。 白騎士を消して、梨緒は放送局の押し扉を開き玄関を潜る。 月乃がいるかもしれない、そう考え出来る限り慎重な足取りで歩を進める。 放送局に侵入した彼女を迎えたのは受付にいたシェリンだった。 『はいはい。放送局のシェリンですよ。ご利用ですかぁ?』 場違いな呑気な声に苛立つ。 こいつがべらべらしゃべるんじゃ気配をひそめた意味がない。 「ここに大日輪月乃はいる?」 『このシェリンにご案内できるのはこの施設に関する情報だけです。他参加者の情報はお答えできませぇん』 使えない。 苛立ちを隠そうともせず舌を撃つ。 ならばと思考を切り替える。 「なら質問を変えるわ。今この施設に私以外の利用者はいる?」 『いいえ。現在ここにいる勇者はあなた様だけです』 最初からそう言えと言うのだ。 ともかくここに月乃はいないようである。 既にたどり着いて立ち去った後なのか、それともまだたどり着いていないのか。 その判断がつかない。 しばらくここで待ち伏せるべきだろうか? だが、放送局のロビーでぼーっと月乃を待っているだけでいいのだろうか? 焦燥感に駆られた状態でジッとしているというは苦痛である。 何か手を打っていないと落ち着かない。 次に取るべき手段に悩む。 そこで、梨緒は何かに気づいたように周囲を見た。 自分が今いる場所を改めて思い返す。 梨緒は一つの手段を思いついた。 放送局。 全体に声を届けるというこの施設を使って月乃の言葉を信じるなと伝えるのはどうだ? 悪評を巻き散らされる前に先手を取って相手の悪評をまき散らす。 いきなり流れる声を信じる人間も少ないだろうが、梨緒には演説スキルがある。 スキル効果を考えれば可能だろう。 「シェリン。この施設の使い方を教えて」 ■ 『放送室はそこの通路を進んだ先ですよー』 案内に従い、受付の横にある細い通路を進んだ先。 その突き当りに放送室はあった。 何やら様々なスイッチがならんだ机の中心に一本のマイクが突き立っている。 学校の放送室もこんな感じだった、ような気がする。 まあ放送部でもないのではっきりとしたことは言えないが。 電子妖精より受けた説明によれば、なんでもエリア1マスに対して3GPが必要となるらしい。 つまり会場全体に声を伝えるには8×8×3で192pt必要となる計算だ。 沈んでしまった積雪エリアを無視するにしても、100pt以上が必要だ。 現在梨緒が持つGPで届けられる範囲は12マス。 中央エリアくらいならカバーできるが月乃がどこに跳んだのか確証がない。 悪評をまき散らすなら月乃がいる周辺でなければ意味がない。 確実に月乃を追い詰められるのならば踏ん切りもつくだろうが。 確実性のない方法に貴重なGPを使うのをもったいないと感じてしまう。 逡巡の末、やはり使えないと、そう結論付けた。 やはり引き返そうと放送質の防音扉を開く。 その時、梨緒の耳に扉が開かれる音が聞こえた。 気のせいではない。 誰かがこの放送局に来たのだ。 慌てたように手にかけた扉を閉じて放送室へと引き返す。 月乃がやってきたのか? 心臓が高鳴る。 思わず思わず放送室に戻ってしまったのは悪手だった。 月乃であろうがそうでなかろうが、放送局に来たのなら放送室(ここ)を目指すに決まっている。 ここまで通路は一つ、回避して逃げ出せる非常口もない。 放送設備以外何もないこの部屋で隠れるのは無理だ。 出会いは不可避である。 今のうちに白騎士を出しておくべきか。 そう考えて首を振る。 それは相手が月乃じゃなかった場合に面倒な事になる。 月乃を殺すのも急務だが、新たな寄生先を見繕う必要があるのだ。 出来る限り穏健派とは交流を深めキープはしておきたい。 だが、今の梨緒には月乃を排除する義務がある それを終えるまで下手に手を組むこともできない。 面倒だ。 ああ本当に面倒だ。 「あら。先客がいたのね。こんにちは」 そうして迷っているうちに、それは現れた。 穏やかな語り口の黒髪の女だった。 月乃ではない。 だがそれに匹敵するほどの整った目鼻立ち、ひらひらとした露出の高い服。 見たことはない。売れない地下アイドルだろうか。 「…………こんにちは」 出来るだけ距離を取るように壁際に背を預けながら、ひとまず挨拶を返しつつ出方を伺う。 少なくとも、問答無用で襲い掛かってくるような輩ではなさそうである。 「あなたもこの施設が使いたくって来たのかしら?」 「……そういう訳じゃないわ。どんなものか見に来ただけ、使うんならどうぞ」 「そうなの。まあ私も様子見に来ただけなのだけど」 そう言って微笑む。 女はちょうど入り口を塞ぐ位置に立っている。 意図的なモノか偶然かわからないが邪魔なことこの上ない。 女は興味深そうにスイッチだらけのコンソールを見つめていた。 「神のお声を世界に届けるのにちょうどいいと思ったのだけれど、GPを消費するんじゃちょっと使いづらいわね」 神とか言いだした。 宗教家だろうか。宗教なんて胡散臭いイメージしかない。 怪訝そうな顔で押し黙る梨緒に気づいたのか、女は梨緒に視線を向けた。 「名乗り遅れたわね。私はイコン教団の教祖イコンです。イコン教団、ご存じかしら?」 「……ごめんなさい初耳だわ」 どう返したものかと一瞬迷うが、正直に答える。 イコンは激昂とも落胆とも違う感情の動きを見せ、何かに納得したように一人頷く。 「知らない……そう、そうなのね」 小さな声でなにかをぶつぶつと呟く。 そして、改めて梨緒を見つめる。 「あなたは神の世界の住民という事ね」 「違うけど……」 電波なことを言いだした。 梨緒は引いたが、後方は壁だった。 この女には梨緒が神様にでも見えるのだろうか。 「よいでしょう。無知なる者に啓蒙するもまた巫女の努め。私があなたに神の教えを説きましょう」 心の底から素晴らしいものを語るように教祖は語り始めた。 「結構よ。宗教には興味ないの」 「無知は罪ではありません。知ろうとしない事こそ罪なのです。 神の世界の住民に神お教えを説く、これもまた天啓でしょう」 こちらの話など聞いていない。 その顔は自分を正しいと疑っていない人間の顔だ。 女がカツンと足音を立てて歩を進める。 「世界は不完全で人間もまた不完全な存在です。 生きとし生ける限り、人の生には様々な苦痛や苦悩があるでしょう。 古来より数多の神は人に試練を与えるのみで人を救いはしなかった。 けれど我が神は違う。全ての人間をお救いになられる。あれ程現実に人をお救いになられた神は存在しない。 何の学もない孤児も、何の力もない老人も、何の価値もない罪人も、わけ隔てない愛で、お救いになられるのです。 神は唯一無二の完全なる存在、我ら信徒は己が命を神に捧げることで自らも完全なる存在となれる。これほどの至福がどこにありましょう? 我が神こそこの世界の唯一の救い。不完全な人が、完全なる存在となれる唯一の道なのです。 貴女も我が神を信仰しその命を捧げる最上の至福を味わいたくはありませんか?」 恍惚とした表情で女は語る。 その演説に寒気がした。 女の話が理解できないからではない。 女の話が理解できたからだ。 不完全な三土梨緒を捨てて完璧な栗村雪になる。 程度は違えど、その理想の方向性は同じだった。 だから、この女の言葉は毒の様だ。 だが違う。 決定的に違う点が一つ。 それは生と死。 梨緒は生きるために完璧になりたいのだ。 死を前提として語るこの宗教女とは違う。 「興味ないって、言ってんでしょうが!」 その誘惑を振り払うように叫ぶ。 頭が熱狂する。 この女はダメだ。 利用できない。 ならば梨緒にとって無価値な存在だ。 ならば殺す。 殺していい存在だ。 白騎士を呼び出す。 恍惚とした表情で神を語る女を引き裂いてしまえ! 「うぐっ!?」 唐突に、梨緒の体が痺れるように固まった。 何が起きたのか分からなかった。 先手を取ったはずなのに、倒れているのは梨緒の方だった。 それは神罰。 神の供え物を攻撃とする者を問答無用で罰するカウンターである。 イコンすら認識していない不意打ちだろうと、攻撃を行おうとした段階で神罰は下る。 「ッ!?」 だが、驚いたようにイコンが飛び退く。 腹部の衣服ハラリと落ちる。 露になった白い腹に一本の紅い線が走り、つぅと雫を垂らした。 あと数センチ深ければ内臓が転び出ていただろう。 その目が敵を捕らえる。 梨緒ではない、それはこの狭い一室にあまりにも不釣り合いな巨大な異形だった。 「召喚獣!? いえ、ゴーレム!?」 人馬一体の白銀の騎士。 あるいはイコンにとってはこの不可思議な施設比べれば見慣れた存在だったのかもしれない。 どちらにせよ、イコンにとってこれはマズい。 使用者の意志を介さず攻撃を行う自立型の非生物。 敵意や攻撃の意志に反応する天罰の対象外。 召喚スキルはイコンの天敵に他ならない。 神託の巫女。 直接戦闘は担当ではないが、あの激動の時代を生き抜いたのだ、荒事に巻き込まれることには慣れている。 神の威光を介さぬ愚かな敵対者に命を狙われることも少なくなかった。 その判断は早い。 身を反転させ、背を向けて出口へと向かう。 だが、白騎士の方が早い。 容赦なく馬上より稲妻のような斬撃が放たれる。 だが、その一撃はイコンの背後の防音扉に引っかかって斬撃が僅かに遅れた。 その隙に身を低くして潜るようにして躱す。 この狭い室内で小回りが利かない巨大な白騎士は本領を発揮できない。 イコンは文字通り切り開かれた扉より抜け出てそのまま通路を駆け抜けた。 白騎士はその背を追わなかった。 馬体で狭い通路を駆け抜けるのが難しいというのもあるが、最大の理由はその背後。 麻痺している梨緒の存在だ。 白騎士の役割は梨緒の守護。 指示がない限りは敵の殲滅よりもそちらを優先する。 彼女がダメージを追って動けない以上、白騎士がこの場を離れることはない。 「ッ…………っ」 万能薬を使用した梨緒が立ち上がる。 傍らの白騎士を見つめ、取り逃したことを認める。 月乃に続き二人目の失態だが梨緒にそこまでの焦りはなかった。 要は、話の信憑性の問題だ。 危険人物の場合、梨緒と同じく集団に潜り込むようなスタンスでもない限り誰かに話すという機会自体がないだろう。 故に無暗に悪評をき散らされる可能性は低い。 何より、国民的アイドルの言葉ならまだしも、イカれた宗教女の言い分など誰が信じるというのか。 依然として、梨緒の優先目標は大日輪月乃だ。 梨緒は壁から離れると、念のため白騎士を侍らしながら放送局のロビーへと向かって行った。 [F-7/放送局/1日目・午前] [三土 梨緒(ユキ)] [パラメータ]:STR:E VIT:D AGI:C DEX:D LUK:B [ステータス]:健康 [アイテム]:人間操りタブレット、隠形の札、不明支給品×1(確認済) M1500狙撃銃+弾丸10発、歌姫のマイク、焔のブレスレット、おもしろ写真セット [GP]:36pt [プロセス] 基本行動方針:優勝し、惨めな自分と決別する。 1.大日輪月乃を必ず殺す。 2.正義と合流して守護してもらいたい ※演説(A)を習得しました [イコン] [パラメータ]:STR:E VIT:B AGI:C DEX:D LUK:D [ステータス]:腹部に軽傷 [アイテム]:青山が来ていたコート、受信機、七支刀、不明支給品×1 [GP]:0pt [プロセス] 基本行動方針:神に尽くす 1.愛美の道を阻むものを許さない 2.何人かの参加者を贄として神に捧げる 3.陣野優美を生かしたまま神のもとに導く 065.知らせて芸術 投下順で読む 067.サメ×アイドル×殺人鬼 時系列順で読む 信頼 三土 梨緒 キミを知るために 魔王システム イコン 天上楽土
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2143.html
書きたかった事 ゆっくりの動物型妊娠の正体は卵胎生だったんだよ ゆっくりブリーダー 無意識に精神的でしかも真綿で首を絞めるような虐待を目指すよ ちぇえええええん(*´∀`) 注意点 賢いゆっくりが出てきます バッジ設定とかあります 幻想郷の住人が出てきます(村人Aとかじゃないよ) 書きたい事は迷走してます 作者 チェンマガツ 「むきゅぅ……もうだめね……」 今まさに天寿を全うしようとしているゆっくりぱちゅりーがいる。 息は弱々しく、精根尽き果て眼を開く気力もないようだ。 「ちぇんは……」迫り来る死への不安からかぱちゅりーは伴侶の名を呼ぶ。 「ここにいるよー」 今にも泣きそうな笑顔でゆっくりちぇんがぱちゅりーの正面で声を振り絞る。 二匹がいるこの部屋には無表情な男が肘を抱えた状態で直立している。 男がこうしてゆっくりの静かな死を見守るのは何度目だろうか。 といっても男にとっては死の回数は別段気に掛ける事では無かった。 「ちぇん、…ぱちゅりーとちぇんの子どもたちを……」 「まかされたんだねー、わかるよー」 「それを聞いて…、安心したわ」 この場には二匹の子供はいない。正確にはまだ生まれていない。 「お兄さん…」 「なんだ?」ぱちゅりーの最期の言葉にしっかり耳を傾ける。 「今まで…わからなかったことが、ようやくりかいできたわ……」 男は無言で続きの台詞を待つ。 そして消えていく声だったがしっかりと聞こえた「これが死、なのね……」と。 最期の表情はどこか笑っているようでそれでいて無念が滲み出ている、そんな気がした。 我慢できずちぇんの頬を一筋の涙が流れる。 これまで一緒だったのにひとりこの世に残された寂しさ。 とても利口でいつも笑みを絶やさなかったパチュリーへの愛しさ。 何も出来なかった自分への悔しさ。 ちぇんはすべてに耐えようとしていたが依然涙は止まらなかった。 ちぇんの様子を観察しながら男はそっとぱちゅりーを持ち上げる。 もう既に動く事は無いと分かっていてもこの暖かさからは命を感じずにはいられない。 彼らにあるとするならまだ魂は体の中にあるような、そんな感覚だ。 ぱちゅりーを抱える男に足下のちぇんが物言いたげに見つめてきた。 「もう手の打ちようがない。ぱちゅりーは限界まで生きた」 そう言うとちぇんは肩を落としたように俯き、男は部屋を立ち去さろうとドアに近づいた。 ドアを開けると冷気が廊下から部屋に滑り込んできた。 暖房の効いた部屋からの移動で、もはや意識が無いながらも献体に影響が出ては困る。 刺すような冷気にぱちゅりーを晒さぬよう出来るだけ腕でくるみ部屋に背を向けて呼びかける。 「ちぇん」そう言うと俯いていたちぇんがこちらに顔を向けたような気がした。 「泣きたいときは泣いた方が良い」 そう言い放って部屋を出てドアを閉めると後から悲痛な叫び声が聞こえてきた。 ぱちゅりーを抱えた男はこの家の地下に設けた部屋に入っていく。 まずぱちゅりーの帽子を取り小さい袋に入れ、本体を部屋の中心に鎮座している台にそっと乗せる。 そして男は本来の姿に着替えていった。 白衣を着て、マスクとゴム手袋をはめ、眼鏡をかける。 ゆっくり加工所、ゆっくり生態研究部門で働いていた頃の正装である。 男はゆっくりの研究に没頭するあまり生産的ではないとして解雇されたのだ。 現在は飼いゆっくりのブリーダーとしての表の顔と今でも研究を続けているサイエンティストの裏の顔があった。 まずはぱちゅりーの頭に手際よく電極を左右対称に八本刺していく。 近くにある機械の電源のスイッチを入れると脳波の電気信号として表示される。 この様子だと完全に死の状態に陥るのはすぐだと判断した男は次の機材の準備をする。 部屋の奥にある機械を調整し始めた。 これはゆで卵を輪切りにするようにゆっくりを空気の刃で輪切りにする装置だ。 脳波が完全に止まった電気音が部屋に鳴り響くと急いでぱちゅりーをこの装置に設置した。 死んでからは中身の餡子の腐敗が進行するため時間との勝負となる。 輪切りにし終えたら、真ん中付近の大きい円状のパーツ二つを台に戻して残りを冷凍保存する。 小さいパーツは真空パックに丁寧に詰め込んだ後タッパーで密閉し、同じような容器が整然と並ぶ冷凍庫に入れる。 大きいパーツの一つは餡子だけを取り出しミキサーで撹拌させ、もう一つは目視観察に用いる。 撹拌の作業が終わるまでにぱちゅりーだった物の断面図を写真撮影し、内容物の種類、割合、分布、硬度を調べていく。 一般的に飼いゆっくりは野良のそれと比べ、運動量が少なく、ぱちゅりー種なら顕著になる。 それ故ゆっくりの中身を構成する餡子は体内であまり流動することなく、 色や柔らかさが異なる餡子が眼でも確認できるほど一匹の体内に何種類も見て取れる。 色が薄く硬い餡子はとてもまずく、逆に色が濃く柔らかいものはとても甘くなっている。 そのことからある程度はその餡子を持つゆっくりの生活状況が見て取れるのだが。 「先代のものより明らかに色の濃い部分が多くなっている」 メモを取りながら考えてみるが、男はこの状況に対する原因が全く思い当たらない。 飼育日記を確認しても先代のぱちゅりーと比較したが特に変わったことをした覚えもない。 ぱちゅりー種持ち前の病気の線も考えたが、健康優良児だったことは認められていた程だ。 ふむ、と唸りながら混ぜ終わった餡子を糖度計にかけ、また薬匙で一口すくって食べてみた。 「甘いな……」 糖度計に目をやると値にして5ポイントの上昇が確認できた。 ゆっくり出来ていたはずのぱちゅりーは何故苦しみながら死んだのか? 「ぱちゅりーはゆっくりできたのかわからないよー」 泣き腫らした赤い眼のちぇんは男に呟く。 ちぇんと男は敷地内でも一番広く日の当たる部屋に移動している。 ここからは庭で遊ぶゆっくり達も見えるし、なによりこの暖かさがちぇんにも子供達にも良い影響を与えると判断したからだ。 男はゆったりとしたソファーに腰を掛け、膝の上にゆっくり用座布団にちょこんと座ったちぇんごと乗せている。 「おにいさんはどうおもう?」 「そうだな……」 男は実験室で書いたレポートを思い出しながら考えた。 『……5世代目以降のゆっくり達の内容物の餡子に糖度の著しい上昇という目立った変化 が現れている。1世代目の平均10.8ポイントから下がり始めた糖度は5世代目で平均1.2 ポイントにまで減少。しかし6世代目からそれぞれおよそ5ポイントずつの大きい上昇 率でついに8世代目で平均16.0ポイントに到達した。原因は未だ不明。これらは……』 「私はぱちゅりーは幸せではあったと思う」何故かちぇんの眼を見ながら言う事は出来なかった。 「ちぇん、お前は悲しんでばかりもいられない。ぱちゅりーとの宝物を守っていかなくちゃならないからな」 「うん、わかるよー」 男はそう言ってちぇんの気分を逸らそうと試みる。 二匹の宝物とは二匹の子供達である三個のゆっくりの卵だった。 ぱちゅりーは卵を産んだために餡子の糖度が上がったのか?いいや、それは違う。 これまで男が育てたゆっくり達は最初のものから全て卵から孵化し卵を産んでいたからだ。しかもぱちゅりーの産んだ卵の数は平均より少なかった。 男が加工所から追い出されたのはゆっくりの卵に起因している。 度重なる実験から男はゆっくりの体内妊娠型増殖は実は卵胎生によるものだと気が付いた。 この世には卵を自分の体内で孵化させ、ある程度育った後体外に排出する魚や動物が存在している。 これに注目した男は野生のゆっくり種が稀に鶏のような卵を生み出すことを重視し実験を重ね、 ゆっくりは植物型増殖、似非妊娠型増殖、卵型増殖の3タイプの増殖方法が可能であることを確証させたのだ。 つまり植物型を除けば、ゆっくり達の増殖方法はは卵を体内で孵化させるか、体外で孵化させるかの違いでしかないのだ。 また関連研究により厳しい環境で親が生き残れないため卵を産むのでは無く、 卵を産むからさらに死期を早めていることも発見した。 これは卵の殻を構成するカルシウムが体内孵化の場合ほぼ必要なかったり再吸収されるのに比べ、体外孵化の場合不足した分を補う必要があり、 また卵を産むことによる急激なカルシウム欠乏による運動能力の低下や内容物の崩壊から死に至ると結論づけた。 しかしこれらのゆっくり界の新発見は加工所にとっては意味のあるものではなく、男は解雇を余儀なくされた訳だ。 卵による増殖方法はゆっくりの死期を早めるとはいったものの、勿論きちんとカルシウムの摂取を促せば通常の方法と遜色なく行える。 そうなると俄然卵型増殖の利点が生かせるようになる。 一点目は親の情報を多く引き継ぐ事。 これは生まれた後すぐにでも狩りの仕方や巣作りの方法を親から習わなくてもいい事から分かるように、 多くの記憶情報や行動規範を赤ゆっくりに引き継がせる事が出来る。 二点目は孵化するまでの時間が長い事。 この時間を胎教に利用して生まれた直後から人間界のルールやマナーを憶えた状態に躾けることが可能となる。 この『ゆっくり達を卵で増やす』という方法で男は幻想郷屈指のゆっくりブリーダーの地位を獲得し、 研究施設兼ゆっくり達との家を建てるまでになっていた。 男の育てたゆっくりはとても賢く人間生活にとけ込むには充分過ぎるほどだった。 8世代目ぱちゅりーについて悶々と考えていると呼び鈴がなった。 おきゃくさんがきたよと玄関のほうからゆっくり達の声が近づいてきた。 腰を上がる前に男はちぇんの頭をそっと撫でながら言い聞かす。 「そしたらちぇん、この前のように子供達にゆっくり生きる知恵を授けてやってくれ」 ちぇんは文字を読む事ができる。その為マニュアルを渡しておけば卵の世話ができた。 「わかったよー」 そう言ってちぇんは子供達の元に跳ねていった。 この家を訪れる人は多かったが今日は特に来客の予定は入ってなかったはずだ。 玄関に続く廊下を歩きながらゆっくり達を部屋に入るようにうながしていく。 ふと男はぱちゅりーの死が近づいたときに飼いゆっくりのバッジを認定する機関に近いうちに訪れるよう連絡を入れていたのを思い出した。 訪問させる用件は、ぱちゅりーに与えられた特に優秀であると認められたバッジを返納するためだ。 バッジの流用を防ぐためにバッジのついた帽子ごと返納しなければならないのがいささか辛いところではあるが。 しかしこうもタイミング良く来るものなのだろうかと心によぎったが気に留めなかった。 「お待たせしました」 そう言って男は開けたドアのノブを握ったまま固まってしまった。 扉を開くとそこにいたのは金色の長い髪でところどころにリボンをし、 紫色の瞳で貫くような視線をこちらに向ける女性だった。 「あの、どちら様で?」 少女趣味な洋服をきてフリルの付いた日傘を差すような認定機関の職員を男は知らない。 「はじめまして、私妖怪をやっております八雲紫と申します」 そして扇子で口元を隠しながらさらっと物騒な事を言ってのけた。 「異変を解決するためにあなたを殺しに参りました」 男は咄嗟にドアを閉める。 冗談じゃない! 俺がいつ妖怪に反感を買うことをした。 跳ね上がる心拍数は抑えきれず、思考もうまく回らない。 混乱する頭に最初に思い浮かんだのはちぇんの心配だった。 急いで先程の部屋に戻る。 とこかくあいつだけは逃がしてやらねば。あいつは何かと賢い。 あいつなら他のゆっくりを先導して避難させることができる。 最悪の場合でもその先生き延びる事もできるだろう。 「ちぇんいるか? ちぇん!」 そう言って飛び込んだ部屋には、 「あら、お邪魔しております」と玄関先で見た妖怪八雲紫が既に入り込んでいた。 そしてその手にはちぇんの姿があった。 「……そいつだけは離してやってくれないか」一瞬息を呑んだが、なんとか懇願してみる。 「意外と冷静な人間なのね、血が凍ってる見たい」 口元をゆるめて不敵な笑みを浮かべる妖怪。 どうしていいかも分からずうろたえるちぇんに大丈夫だと無言で男は頷いてやる。 部屋の中にいる誰もが動く事の出来ないほど緊張の糸が張りつめている。 その均衡を崩したのは紫であった。 「貴方はどうしてこの子を解放させたいのかしら」 「それは……」 即座に答える事ができない。何故男はちぇんを離して欲しいと願ったのか。 「それは、大事な大事な実験道具だからよね」 「えっ…!!」自分を抱く突然の訪問者の言葉に驚いたちぇんが彼女の顔を見上げた。 「貴方の知的欲求を満たすためにゆっくりを用いた実験を行った。そして生まれたのが ここにいる子達。ちぇん、あなたもその内の一人よ」 紫がちぇんの表情を覗くと驚いているようにみえる。ついでにとどめとばかりに言葉を続けた。 「それに死んだこの子達を貴方、バラバラにして食べてるわね。もちろんあのぱちゅりーも」 男は否定する事は出来ずに沈黙を通す、その男の行動にちぇんは絶望を感じていた。 どうして違うと言わないのか、本当にそんな事をしているのか、今まで育てられたのもそんなことするためなのか。 ゆっくりの中ではゆっくりを食べる事はタブーである。 百歩譲って男は人間であるが、家族とも思っていたものに仲間が食べられたことはショックだった。 「どおじで……」ちぇんが涙が混ざった声で呟く。 「どおじで、ばちゅりーをだべじゃっだの゛おおぉぉぉ!!!う゛ああぁぁぁぁ!!!」 いつか、いつかこの日が来る事は分かっていたつもりだった。 その時は自分の口から伝えたかったが、言う勇気がなかった。 今、紫に自分の裏の顔を告げられ、激しく責め立てられるととても胸が痛んだ。 自分から言えばある程度柔らかい表現で説明できたのかも知れない。 しかし他人に言われたのであれば、取り繕う為の言葉は言い訳に過ぎない それゆえ男は沈黙を貫き通した。だが解せないのはちぇんの台詞だこれではまるで……。 滝のような涙で泣くちぇんを余所に紫はさらに男を突き放す。 「それとは別に貴方は、ゆっくりという種の存在を脅かす事をしているわね」紫の目がキッと鋭くなった。 「最近生まれたゆっくり達は一見幸せな一生を終えたが、実際の所苦しんで死んでいってている、違う?」 どうしてこの妖怪はここまでの情報を知り得ているのか男は疑問に思った。 「あぁそれ紛れもない事実だ。実験結果がそう示している」 「ならあなたの生み出したゆっくり種の血がなんらかの事故で野生種の血に入り込んだ とき、ゆっくりはゆっくりできなくなる。そうなるとゆっくり種がこの幻想郷から消 えてしまいかねませんので、そうなる前にあなたには消えて頂きます。」 男は身構える。逃げるにしてもちぇんを置いてはいけない。なんとか隙を見つけなければと思案する。 「でも何を苦しむ事があるんでしょう? あなたはわかってますよね、ちぇん」 この台詞もまた紫に先に言われてしまった。自分がわからないことは直接本人達に聞けば良かった。 何がそんなにお前達を苦しめているのかと。 しかし目の前の妖怪は不思議な事を言う。ちぇんはその答えを断言できるような言い方だ。 ちぇんは飼いゆっくりとしては至って普通のゆっくりだ。あのぱちゅりーと同じ八代目ではあったが、 ぱちゅりーほど聡明でもなかったし、どちらかといえばその記憶力や思考力、 また行動パターンなどは普通のゆっくりレベルに近いものがあった。 「ゆっ? おねえさんのいってることはわからないよー」 それも当然だ。ちぇんにはそれほど難しいことは分からないのだ。 「……そう、貴方はとぼけるつもりなのね」 不意に向けられた禍々しい殺気にちぇんは咄嗟に紫の手から足下に飛び降りる。 「わかるよーおねえさんはゆっくりできないひとだねー。ここはちぇんのゆっくりぷれ いすだからさっさとでていってね!!」と頬を膨らませて怒るちぇん。 「ちぇんたちはとてもゆっくりできてるよ。おにいさんはわるくないよ!!」 「ちぇん止めろ!」男は慌ててちぇんを制した 紫に対してこれ以上の挑発は良くない。相手の機嫌を損なえば殺されかれない。 しかしちぇんは止めようとしなかった。いつもなら命令はちゃんと聞くのに意固地になっているようだ。 「ちぇんはちぇんだよ!! みんなもぱちゅりーもゆっくりだよ!! ちぇんたちは ゆっくりできるからゆっくりできないおねえさんはゆっくりでていってね!!」 「そう。つまりあなた達はただのゆっくりと変わらないし、そこのお兄さんはあなた達 が苦しむような事はしてない。そう言いたいのね。」 「そういってるのわからないの?ばかなの?」 「えぇ、理解しました。あなたがそう言うならそこの人間は不問としましょう」 「これでおにいさんはかんけいなくなったね」 紫はそう言うとちぇんには興味を無くしたように男の方を向く。 一方のちぇんはとても安心したような表情だ。 ただ二人のやりとりを見ていて男の頭は混乱していた。 先程のちぇんの非難や会話の内容がただのゆっくりのそれと変わらないじゃないか。 飼いゆっくりとしては普通とはいったが、粗暴な野良ゆっくりの様な話し方をしたことは今まで無かったのに。 「ですが」 紫はほっとしているちぇんに再度話しかける。 「ですがあなたは私を侮辱しました。ただのゆっくりならどうなるかわかってわよね」 言い終わるが早いかちぇんは蹴り上げられ空を舞う。 時が速度を緩め、ちぇんがゆっくり回転しながら壁に叩き付けられるまでが男にははっきり見えた。 鈍い音と声にならない音が漏れる。 男はすぐさまちぇんの元へと駆け寄った。危害を加えた紫に目もくれず、ただちぇんの元へと。 「おい、ちぇん! しっかりしろ!」男はちぇんの怪我の様子をくまなく調べながら呼びかける。 体を不用意に揺らしては中の餡子を漏らしてしまうので、見える範囲の穴を手で塞ぎながらちぇんの意識を確認する。 「お…お兄さん……」ちぇんは苦痛の混じる声で男の存在を確認する。 「大丈夫かちぇん! いいからあまり喋るな!」男は蹴られて穴の空いた特に重傷の部分の様子を確認する。 傷の様子は決して良い状態とは言えない。自然治癒は難しくこちらで補修する必要がある。 「お兄さんが、助かって…良かった…よ」 何と言った? いや、誰が言った? ゆっくり独特のアクセントが抜けてまるで人間が喋ったようなそんな言い方だった。 「ちぇ…ん?」男は目の前のゆっくりの名前を問うた。 「そうだよ……、ちぇんだよ」 ちぇんは自分はちぇんだと言う。当たり前だがますますちぇんではないような錯覚に陥る。 「ごめんね…今まで隠してきて……」ちぇんは痛む体のはずだが穏やかな表情だ。 「ホントはねもっと早くこうしてれば良かった……。お父さんも、お母さんも、ぱちゅ りーも、他の兄弟もみんなお兄さんとゆっくりじゃない会話したかったんだよ」 絶句している男に優しい目をしたちぇんはゆっくり語っていく。 「私達ね、みんな人間になりたがってた。人間になってお兄さんとお食事したり、手を つないで散歩したり、仲良く遊んだりしたかった……。でも私達はゆっくりだった。 お兄さんは私達をゆっくりとしてとても愛してくれた。だから私達はゆっくりとして お兄さんと接した。それでも幸せだった。でもやっぱり人間になりたかった。知識が 膨らんで、思考が止まらなくなった頃からゆっくりできなくなった。ゆっくりできな いから人間になりたかった。人間になればお兄さんの生活を助けて上げられるのに、 自分達の身の回りのことは自分達で出来るのに。でもやっぱり私達はゆっくりだった。 お兄さんの不器用だしどこか機械的だけどとても暖かい愛が嬉しかった。その愛に応 えたかったけど、どうしようもなかった。それが……とても……つらかった……」 ちぇんがそう言い終えた頃にはどちらともなく涙が止まらなかった。 男の献身的な愛が賢くなりすぎたゆっくり達には負担となり、苦しめていたのだ。 この苦しみは精神的苦痛となり、じわじわとゆっくり達の餡子を甘くしていた。 男はいつの間にかちぇんを抱きしめ、ちぇんは抱かれていた。いや、気持ちの中では男 を抱いているのかも知れない。 「紫さんといいましたか、あなたはいつからこの子らのことに気が付いていたんです?」 男は背を向けたまま紫に説明を求めた。どう考えても最初から男の実験を見ていて、 彼らの状態も把握している様子だったからだ。 「私の計算でゆっくりが故意に卵生増殖を始めるのがあと218年先のことと分かってお りました。その頃にはゆっくりはゆっくりとしか話せぬ単純な生命体と、体を持ちあ る程度人間との共存をなしえた知的生命体の二種類に分化し、知的生命体側がより明 敏な頭脳を手に入れるための手段が貴方が発見した方法そのものです」 もはや紫からは殺気は消え去り、丁寧な口調で科学者に持論を展開する。 「しかし、あなたはただのゆっくりに対してこの方法をとってしまった。ある程度の記 憶力、思考力、理解力の向上までは良かったのですがあまりにも賢くなりすぎた。現 在その子はゆっくりの皮を被った人間と変わりやしません。精神と肉体との乖離が始 まってとてもゆっくりできる状態でもないですわね」 男が振り返ると紫は部屋の空間にできた裂け目に手を突っ込んでいた。 「貴方の研究した資料をもらっていきます。これらは破棄せず私の信頼するしかるべき 研究機関に預けます。それとこれらの方法によるゆっくりの繁殖方法が五代目までと し、現在ここにいる六代目以降の子達はいっさい外部に出さぬよう。既に人間への譲 渡行為はあなたも私も許さぬところにあると思っているでしょう」 そして、といって空間からとりだしたのはちぇんの子供の卵だ。 「この子達は私が預かります」 ちぇんは声を出そうとしたが、紫は手のひらを前に出し制した。 「あなたの子供を別に取って食いやしません。然るべき時に孵化させ、しっかり成長を 見届けさせてもらいます」そう初めて見せる優しい表情でちぇんを説得させた。 「いつから貴方を見ていたか、私は珍しい人間が加工所にいるものだと思いしばらく観 察させてもらいました。ゆっくりを殺す場所にいながら、ゆっくりを助けようとして いたあなたは、少しずつひびが入っていく心に気が付かないでいた。私は少し工場長 を脅してゆっくり達とあなたが過ごせるようにしましたが、差し出がましかったかし らね」 男はゆっくりを愛し、その愛にゆっくりは応えようとした。 人間への思いを強くし男のためになろうとしたが、その気持ちをひびの入った心では気が付いてやれなかった。 ゆっくりは男を愛し、その愛に男は応えようとした。 ゆっくりの未来を案じてゆっくりを賢くしたが、その気持ちをゆっくりの小さな体は受け止めきれなかった。 冷たい心で熱い愛をゆっくりに捧げた男は自分の仕業がゆっくりを苦しめたことを後悔する。 しかしここにいるちぇんはもはや全てを打ち明け、苦しむ事はないのだ。 男もこれから二人で歩む新しい道が見えていた。 「お姉さん」ちぇんが紫を呼ぶ。 「目の前に好きな人がいるときはどうしたらいいかわからないよー」 まるでゆっくりちぇんのように問いかける。男は心に温かさが戻ってきたそんな気がした。 「そんなときはね……ってあらあらお熱いこと」 馬に蹴られる前に退散退散と言いながら紫はスキマに消えていった。 エピローグ 「紫様が直々異変解決とは珍しいですね」 そう言ってペットの八雲藍がお茶を出してきた。 私だってたまには仕事もしたくなるわよ。 「しかし老婆心が過ぎたかしらね」 「紫様はまだまだ充分お若いですよ」 とりあえずスキマに放り込んでお茶をすする。 すれ違う愛があまりにもじれったいからといって手を出すのも考え物か。 うちのペットもあれくらい愛してあげればいいのかしらね。 今度油揚げ風呂にでも入れてやれば忠誠心を取り戻してくれるだろうかと考えながら紫は昼寝を始めた。 おまけ どたばたと慌ただしく廊下を走りこちらに向かってくる人間がいる。 部屋に入って来るなりこちらに向かって叫んだのは博麗さんだった。 「今、ここに異変は来なかったか?」 「紫さんが…」 「バカモーン!!そいつが異変だ!!」 そう言って走り去る博麗さん。慌ただしい人だ。 ……あれ? 虐待はどこいったよ(; `・д´・) 一応精神的にも肉体的にもボコボコにしてるから虐待SSってことで勘弁してくだせい このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2510.html
書きたかった事 ゆっくりの動物型妊娠の正体は卵胎生だったんだよ ゆっくりブリーダー 無意識に精神的でしかも真綿で首を絞めるような虐待を目指すよ ちぇえええええん(*´∀`) 注意点 賢いゆっくりが出てきます バッジ設定とかあります 幻想郷の住人が出てきます(村人Aとかじゃないよ) 書きたい事は迷走してます 作者 チェンマガツ 「むきゅぅ……もうだめね……」 今まさに天寿を全うしようとしているゆっくりぱちゅりーがいる。 息は弱々しく、精根尽き果て眼を開く気力もないようだ。 「ちぇんは……」迫り来る死への不安からかぱちゅりーは伴侶の名を呼ぶ。 「ここにいるよー」 今にも泣きそうな笑顔でゆっくりちぇんがぱちゅりーの正面で声を振り絞る。 二匹がいるこの部屋には無表情な男が肘を抱えた状態で直立している。 男がこうしてゆっくりの静かな死を見守るのは何度目だろうか。 といっても男にとっては死の回数は別段気に掛ける事では無かった。 「ちぇん、…ぱちゅりーとちぇんの子どもたちを……」 「まかされたんだねー、わかるよー」 「それを聞いて…、安心したわ」 この場には二匹の子供はいない。正確にはまだ生まれていない。 「お兄さん…」 「なんだ?」ぱちゅりーの最期の言葉にしっかり耳を傾ける。 「今まで…わからなかったことが、ようやくりかいできたわ……」 男は無言で続きの台詞を待つ。 そして消えていく声だったがしっかりと聞こえた「これが死、なのね……」と。 最期の表情はどこか笑っているようでそれでいて無念が滲み出ている、そんな気がした。 我慢できずちぇんの頬を一筋の涙が流れる。 これまで一緒だったのにひとりこの世に残された寂しさ。 とても利口でいつも笑みを絶やさなかったパチュリーへの愛しさ。 何も出来なかった自分への悔しさ。 ちぇんはすべてに耐えようとしていたが依然涙は止まらなかった。 ちぇんの様子を観察しながら男はそっとぱちゅりーを持ち上げる。 もう既に動く事は無いと分かっていてもこの暖かさからは命を感じずにはいられない。 彼らにあるとするならまだ魂は体の中にあるような、そんな感覚だ。 ぱちゅりーを抱える男に足下のちぇんが物言いたげに見つめてきた。 「もう手の打ちようがない。ぱちゅりーは限界まで生きた」 そう言うとちぇんは肩を落としたように俯き、男は部屋を立ち去さろうとドアに近づいた。 ドアを開けると冷気が廊下から部屋に滑り込んできた。 暖房の効いた部屋からの移動で、もはや意識が無いながらも献体に影響が出ては困る。 刺すような冷気にぱちゅりーを晒さぬよう出来るだけ腕でくるみ部屋に背を向けて呼びかける。 「ちぇん」そう言うと俯いていたちぇんがこちらに顔を向けたような気がした。 「泣きたいときは泣いた方が良い」 そう言い放って部屋を出てドアを閉めると後から悲痛な叫び声が聞こえてきた。 ぱちゅりーを抱えた男はこの家の地下に設けた部屋に入っていく。 まずぱちゅりーの帽子を取り小さい袋に入れ、本体を部屋の中心に鎮座している台にそっと乗せる。 そして男は本来の姿に着替えていった。 白衣を着て、マスクとゴム手袋をはめ、眼鏡をかける。 ゆっくり加工所、ゆっくり生態研究部門で働いていた頃の正装である。 男はゆっくりの研究に没頭するあまり生産的ではないとして解雇されたのだ。 現在は飼いゆっくりのブリーダーとしての表の顔と今でも研究を続けているサイエンティストの裏の顔があった。 まずはぱちゅりーの頭に手際よく電極を左右対称に八本刺していく。 近くにある機械の電源のスイッチを入れると脳波の電気信号として表示される。 この様子だと完全に死の状態に陥るのはすぐだと判断した男は次の機材の準備をする。 部屋の奥にある機械を調整し始めた。 これはゆで卵を輪切りにするようにゆっくりを空気の刃で輪切りにする装置だ。 脳波が完全に止まった電気音が部屋に鳴り響くと急いでぱちゅりーをこの装置に設置した。 死んでからは中身の餡子の腐敗が進行するため時間との勝負となる。 輪切りにし終えたら、真ん中付近の大きい円状のパーツ二つを台に戻して残りを冷凍保存する。 小さいパーツは真空パックに丁寧に詰め込んだ後タッパーで密閉し、同じような容器が整然と並ぶ冷凍庫に入れる。 大きいパーツの一つは餡子だけを取り出しミキサーで撹拌させ、もう一つは目視観察に用いる。 撹拌の作業が終わるまでにぱちゅりーだった物の断面図を写真撮影し、内容物の種類、割合、分布、硬度を調べていく。 一般的に飼いゆっくりは野良のそれと比べ、運動量が少なく、ぱちゅりー種なら顕著になる。 それ故ゆっくりの中身を構成する餡子は体内であまり流動することなく、 色や柔らかさが異なる餡子が眼でも確認できるほど一匹の体内に何種類も見て取れる。 色が薄く硬い餡子はとてもまずく、逆に色が濃く柔らかいものはとても甘くなっている。 そのことからある程度はその餡子を持つゆっくりの生活状況が見て取れるのだが。 「先代のものより明らかに色の濃い部分が多くなっている」 メモを取りながら考えてみるが、男はこの状況に対する原因が全く思い当たらない。 飼育日記を確認しても先代のぱちゅりーと比較したが特に変わったことをした覚えもない。 ぱちゅりー種持ち前の病気の線も考えたが、健康優良児だったことは認められていた程だ。 ふむ、と唸りながら混ぜ終わった餡子を糖度計にかけ、また薬匙で一口すくって食べてみた。 「甘いな……」 糖度計に目をやると値にして5ポイントの上昇が確認できた。 ゆっくり出来ていたはずのぱちゅりーは何故苦しみながら死んだのか? 「ぱちゅりーはゆっくりできたのかわからないよー」 泣き腫らした赤い眼のちぇんは男に呟く。 ちぇんと男は敷地内でも一番広く日の当たる部屋に移動している。 ここからは庭で遊ぶゆっくり達も見えるし、なによりこの暖かさがちぇんにも子供達にも良い影響を与えると判断したからだ。 男はゆったりとしたソファーに腰を掛け、膝の上にゆっくり用座布団にちょこんと座ったちぇんごと乗せている。 「おにいさんはどうおもう?」 「そうだな……」 男は実験室で書いたレポートを思い出しながら考えた。 『……5世代目以降のゆっくり達の内容物の餡子に糖度の著しい上昇という目立った変化 が現れている。1世代目の平均10.8ポイントから下がり始めた糖度は5世代目で平均1.2 ポイントにまで減少。しかし6世代目からそれぞれおよそ5ポイントずつの大きい上昇 率でついに8世代目で平均16.0ポイントに到達した。原因は未だ不明。これらは……』 「私はぱちゅりーは幸せではあったと思う」何故かちぇんの眼を見ながら言う事は出来なかった。 「ちぇん、お前は悲しんでばかりもいられない。ぱちゅりーとの宝物を守っていかなくちゃならないからな」 「うん、わかるよー」 男はそう言ってちぇんの気分を逸らそうと試みる。 二匹の宝物とは二匹の子供達である三個のゆっくりの卵だった。 ぱちゅりーは卵を産んだために餡子の糖度が上がったのか?いいや、それは違う。 これまで男が育てたゆっくり達は最初のものから全て卵から孵化し卵を産んでいたからだ。しかもぱちゅりーの産んだ卵の数は平均より少なかった。 男が加工所から追い出されたのはゆっくりの卵に起因している。 度重なる実験から男はゆっくりの体内妊娠型増殖は実は卵胎生によるものだと気が付いた。 この世には卵を自分の体内で孵化させ、ある程度育った後体外に排出する魚や動物が存在している。 これに注目した男は野生のゆっくり種が稀に鶏のような卵を生み出すことを重視し実験を重ね、 ゆっくりは植物型増殖、似非妊娠型増殖、卵型増殖の3タイプの増殖方法が可能であることを確証させたのだ。 つまり植物型を除けば、ゆっくり達の増殖方法はは卵を体内で孵化させるか、体外で孵化させるかの違いでしかないのだ。 また関連研究により厳しい環境で親が生き残れないため卵を産むのでは無く、 卵を産むからさらに死期を早めていることも発見した。 これは卵の殻を構成するカルシウムが体内孵化の場合ほぼ必要なかったり再吸収されるのに比べ、体外孵化の場合不足した分を補う必要があり、 また卵を産むことによる急激なカルシウム欠乏による運動能力の低下や内容物の崩壊から死に至ると結論づけた。 しかしこれらのゆっくり界の新発見は加工所にとっては意味のあるものではなく、男は解雇を余儀なくされた訳だ。 卵による増殖方法はゆっくりの死期を早めるとはいったものの、勿論きちんとカルシウムの摂取を促せば通常の方法と遜色なく行える。 そうなると俄然卵型増殖の利点が生かせるようになる。 一点目は親の情報を多く引き継ぐ事。 これは生まれた後すぐにでも狩りの仕方や巣作りの方法を親から習わなくてもいい事から分かるように、 多くの記憶情報や行動規範を赤ゆっくりに引き継がせる事が出来る。 二点目は孵化するまでの時間が長い事。 この時間を胎教に利用して生まれた直後から人間界のルールやマナーを憶えた状態に躾けることが可能となる。 この『ゆっくり達を卵で増やす』という方法で男は幻想郷屈指のゆっくりブリーダーの地位を獲得し、 研究施設兼ゆっくり達との家を建てるまでになっていた。 男の育てたゆっくりはとても賢く人間生活にとけ込むには充分過ぎるほどだった。 8世代目ぱちゅりーについて悶々と考えていると呼び鈴がなった。 おきゃくさんがきたよと玄関のほうからゆっくり達の声が近づいてきた。 腰を上がる前に男はちぇんの頭をそっと撫でながら言い聞かす。 「そしたらちぇん、この前のように子供達にゆっくり生きる知恵を授けてやってくれ」 ちぇんは文字を読む事ができる。その為マニュアルを渡しておけば卵の世話ができた。 「わかったよー」 そう言ってちぇんは子供達の元に跳ねていった。 この家を訪れる人は多かったが今日は特に来客の予定は入ってなかったはずだ。 玄関に続く廊下を歩きながらゆっくり達を部屋に入るようにうながしていく。 ふと男はぱちゅりーの死が近づいたときに飼いゆっくりのバッジを認定する機関に近いうちに訪れるよう連絡を入れていたのを思い出した。 訪問させる用件は、ぱちゅりーに与えられた特に優秀であると認められたバッジを返納するためだ。 バッジの流用を防ぐためにバッジのついた帽子ごと返納しなければならないのがいささか辛いところではあるが。 しかしこうもタイミング良く来るものなのだろうかと心によぎったが気に留めなかった。 「お待たせしました」 そう言って男は開けたドアのノブを握ったまま固まってしまった。 扉を開くとそこにいたのは金色の長い髪でところどころにリボンをし、 紫色の瞳で貫くような視線をこちらに向ける女性だった。 「あの、どちら様で?」 少女趣味な洋服をきてフリルの付いた日傘を差すような認定機関の職員を男は知らない。 「はじめまして、私妖怪をやっております八雲紫と申します」 そして扇子で口元を隠しながらさらっと物騒な事を言ってのけた。 「異変を解決するためにあなたを殺しに参りました」 男は咄嗟にドアを閉める。 冗談じゃない! 俺がいつ妖怪に反感を買うことをした。 跳ね上がる心拍数は抑えきれず、思考もうまく回らない。 混乱する頭に最初に思い浮かんだのはちぇんの心配だった。 急いで先程の部屋に戻る。 とこかくあいつだけは逃がしてやらねば。あいつは何かと賢い。 あいつなら他のゆっくりを先導して避難させることができる。 最悪の場合でもその先生き延びる事もできるだろう。 「ちぇんいるか? ちぇん!」 そう言って飛び込んだ部屋には、 「あら、お邪魔しております」と玄関先で見た妖怪八雲紫が既に入り込んでいた。 そしてその手にはちぇんの姿があった。 「……そいつだけは離してやってくれないか」一瞬息を呑んだが、なんとか懇願してみる。 「意外と冷静な人間なのね、血が凍ってる見たい」 口元をゆるめて不敵な笑みを浮かべる妖怪。 どうしていいかも分からずうろたえるちぇんに大丈夫だと無言で男は頷いてやる。 部屋の中にいる誰もが動く事の出来ないほど緊張の糸が張りつめている。 その均衡を崩したのは紫であった。 「貴方はどうしてこの子を解放させたいのかしら」 「それは……」 即座に答える事ができない。何故男はちぇんを離して欲しいと願ったのか。 「それは、大事な大事な実験道具だからよね」 「えっ…!!」自分を抱く突然の訪問者の言葉に驚いたちぇんが彼女の顔を見上げた。 「貴方の知的欲求を満たすためにゆっくりを用いた実験を行った。そして生まれたのが ここにいる子達。ちぇん、あなたもその内の一人よ」 紫がちぇんの表情を覗くと驚いているようにみえる。ついでにとどめとばかりに言葉を続けた。 「それに死んだこの子達を貴方、バラバラにして食べてるわね。もちろんあのぱちゅりーも」 男は否定する事は出来ずに沈黙を通す、その男の行動にちぇんは絶望を感じていた。 どうして違うと言わないのか、本当にそんな事をしているのか、今まで育てられたのもそんなことするためなのか。 ゆっくりの中ではゆっくりを食べる事はタブーである。 百歩譲って男は人間であるが、家族とも思っていたものに仲間が食べられたことはショックだった。 「どおじで……」ちぇんが涙が混ざった声で呟く。 「どおじで、ばちゅりーをだべじゃっだの゛おおぉぉぉ!!!う゛ああぁぁぁぁ!!!」 いつか、いつかこの日が来る事は分かっていたつもりだった。 その時は自分の口から伝えたかったが、言う勇気がなかった。 今、紫に自分の裏の顔を告げられ、激しく責め立てられるととても胸が痛んだ。 自分から言えばある程度柔らかい表現で説明できたのかも知れない。 しかし他人に言われたのであれば、取り繕う為の言葉は言い訳に過ぎない それゆえ男は沈黙を貫き通した。だが解せないのはちぇんの台詞だこれではまるで……。 滝のような涙で泣くちぇんを余所に紫はさらに男を突き放す。 「それとは別に貴方は、ゆっくりという種の存在を脅かす事をしているわね」紫の目がキッと鋭くなった。 「最近生まれたゆっくり達は一見幸せな一生を終えたが、実際の所苦しんで死んでいってている、違う?」 どうしてこの妖怪はここまでの情報を知り得ているのか男は疑問に思った。 「あぁそれ紛れもない事実だ。実験結果がそう示している」 「ならあなたの生み出したゆっくり種の血がなんらかの事故で野生種の血に入り込んだ とき、ゆっくりはゆっくりできなくなる。そうなるとゆっくり種がこの幻想郷から消 えてしまいかねませんので、そうなる前にあなたには消えて頂きます。」 男は身構える。逃げるにしてもちぇんを置いてはいけない。なんとか隙を見つけなければと思案する。 「でも何を苦しむ事があるんでしょう? あなたはわかってますよね、ちぇん」 この台詞もまた紫に先に言われてしまった。自分がわからないことは直接本人達に聞けば良かった。 何がそんなにお前達を苦しめているのかと。 しかし目の前の妖怪は不思議な事を言う。ちぇんはその答えを断言できるような言い方だ。 ちぇんは飼いゆっくりとしては至って普通のゆっくりだ。あのぱちゅりーと同じ八代目ではあったが、 ぱちゅりーほど聡明でもなかったし、どちらかといえばその記憶力や思考力、 また行動パターンなどは普通のゆっくりレベルに近いものがあった。 「ゆっ? おねえさんのいってることはわからないよー」 それも当然だ。ちぇんにはそれほど難しいことは分からないのだ。 「……そう、貴方はとぼけるつもりなのね」 不意に向けられた禍々しい殺気にちぇんは咄嗟に紫の手から足下に飛び降りる。 「わかるよーおねえさんはゆっくりできないひとだねー。ここはちぇんのゆっくりぷれ いすだからさっさとでていってね!!」と頬を膨らませて怒るちぇん。 「ちぇんたちはとてもゆっくりできてるよ。おにいさんはわるくないよ!!」 「ちぇん止めろ!」男は慌ててちぇんを制した 紫に対してこれ以上の挑発は良くない。相手の機嫌を損なえば殺されかれない。 しかしちぇんは止めようとしなかった。いつもなら命令はちゃんと聞くのに意固地になっているようだ。 「ちぇんはちぇんだよ!! みんなもぱちゅりーもゆっくりだよ!! ちぇんたちは ゆっくりできるからゆっくりできないおねえさんはゆっくりでていってね!!」 「そう。つまりあなた達はただのゆっくりと変わらないし、そこのお兄さんはあなた達 が苦しむような事はしてない。そう言いたいのね。」 「そういってるのわからないの?ばかなの?」 「えぇ、理解しました。あなたがそう言うならそこの人間は不問としましょう」 「これでおにいさんはかんけいなくなったね」 紫はそう言うとちぇんには興味を無くしたように男の方を向く。 一方のちぇんはとても安心したような表情だ。 ただ二人のやりとりを見ていて男の頭は混乱していた。 先程のちぇんの非難や会話の内容がただのゆっくりのそれと変わらないじゃないか。 飼いゆっくりとしては普通とはいったが、粗暴な野良ゆっくりの様な話し方をしたことは今まで無かったのに。 「ですが」 紫はほっとしているちぇんに再度話しかける。 「ですがあなたは私を侮辱しました。ただのゆっくりならどうなるかわかってわよね」 言い終わるが早いかちぇんは蹴り上げられ空を舞う。 時が速度を緩め、ちぇんがゆっくり回転しながら壁に叩き付けられるまでが男にははっきり見えた。 鈍い音と声にならない音が漏れる。 男はすぐさまちぇんの元へと駆け寄った。危害を加えた紫に目もくれず、ただちぇんの元へと。 「おい、ちぇん! しっかりしろ!」男はちぇんの怪我の様子をくまなく調べながら呼びかける。 体を不用意に揺らしては中の餡子を漏らしてしまうので、見える範囲の穴を手で塞ぎながらちぇんの意識を確認する。 「お…お兄さん……」ちぇんは苦痛の混じる声で男の存在を確認する。 「大丈夫かちぇん! いいからあまり喋るな!」男は蹴られて穴の空いた特に重傷の部分の様子を確認する。 傷の様子は決して良い状態とは言えない。自然治癒は難しくこちらで補修する必要がある。 「お兄さんが、助かって…良かった…よ」 何と言った? いや、誰が言った? ゆっくり独特のアクセントが抜けてまるで人間が喋ったようなそんな言い方だった。 「ちぇ…ん?」男は目の前のゆっくりの名前を問うた。 「そうだよ……、ちぇんだよ」 ちぇんは自分はちぇんだと言う。当たり前だがますますちぇんではないような錯覚に陥る。 「ごめんね…今まで隠してきて……」ちぇんは痛む体のはずだが穏やかな表情だ。 「ホントはねもっと早くこうしてれば良かった……。お父さんも、お母さんも、ぱちゅ りーも、他の兄弟もみんなお兄さんとゆっくりじゃない会話したかったんだよ」 絶句している男に優しい目をしたちぇんはゆっくり語っていく。 「私達ね、みんな人間になりたがってた。人間になってお兄さんとお食事したり、手を つないで散歩したり、仲良く遊んだりしたかった……。でも私達はゆっくりだった。 お兄さんは私達をゆっくりとしてとても愛してくれた。だから私達はゆっくりとして お兄さんと接した。それでも幸せだった。でもやっぱり人間になりたかった。知識が 膨らんで、思考が止まらなくなった頃からゆっくりできなくなった。ゆっくりできな いから人間になりたかった。人間になればお兄さんの生活を助けて上げられるのに、 自分達の身の回りのことは自分達で出来るのに。でもやっぱり私達はゆっくりだった。 お兄さんの不器用だしどこか機械的だけどとても暖かい愛が嬉しかった。その愛に応 えたかったけど、どうしようもなかった。それが……とても……つらかった……」 ちぇんがそう言い終えた頃にはどちらともなく涙が止まらなかった。 男の献身的な愛が賢くなりすぎたゆっくり達には負担となり、苦しめていたのだ。 この苦しみは精神的苦痛となり、じわじわとゆっくり達の餡子を甘くしていた。 男はいつの間にかちぇんを抱きしめ、ちぇんは抱かれていた。いや、気持ちの中では男 を抱いているのかも知れない。 「紫さんといいましたか、あなたはいつからこの子らのことに気が付いていたんです?」 男は背を向けたまま紫に説明を求めた。どう考えても最初から男の実験を見ていて、 彼らの状態も把握している様子だったからだ。 「私の計算でゆっくりが故意に卵生増殖を始めるのがあと218年先のことと分かってお りました。その頃にはゆっくりはゆっくりとしか話せぬ単純な生命体と、体を持ちあ る程度人間との共存をなしえた知的生命体の二種類に分化し、知的生命体側がより明 敏な頭脳を手に入れるための手段が貴方が発見した方法そのものです」 もはや紫からは殺気は消え去り、丁寧な口調で科学者に持論を展開する。 「しかし、あなたはただのゆっくりに対してこの方法をとってしまった。ある程度の記 憶力、思考力、理解力の向上までは良かったのですがあまりにも賢くなりすぎた。現 在その子はゆっくりの皮を被った人間と変わりやしません。精神と肉体との乖離が始 まってとてもゆっくりできる状態でもないですわね」 男が振り返ると紫は部屋の空間にできた裂け目に手を突っ込んでいた。 「貴方の研究した資料をもらっていきます。これらは破棄せず私の信頼するしかるべき 研究機関に預けます。それとこれらの方法によるゆっくりの繁殖方法が五代目までと し、現在ここにいる六代目以降の子達はいっさい外部に出さぬよう。既に人間への譲 渡行為はあなたも私も許さぬところにあると思っているでしょう」 そして、といって空間からとりだしたのはちぇんの子供の卵だ。 「この子達は私が預かります」 ちぇんは声を出そうとしたが、紫は手のひらを前に出し制した。 「あなたの子供を別に取って食いやしません。然るべき時に孵化させ、しっかり成長を 見届けさせてもらいます」そう初めて見せる優しい表情でちぇんを説得させた。 「いつから貴方を見ていたか、私は珍しい人間が加工所にいるものだと思いしばらく観 察させてもらいました。ゆっくりを殺す場所にいながら、ゆっくりを助けようとして いたあなたは、少しずつひびが入っていく心に気が付かないでいた。私は少し工場長 を脅してゆっくり達とあなたが過ごせるようにしましたが、差し出がましかったかし らね」 男はゆっくりを愛し、その愛にゆっくりは応えようとした。 人間への思いを強くし男のためになろうとしたが、その気持ちをひびの入った心では気が付いてやれなかった。 ゆっくりは男を愛し、その愛に男は応えようとした。 ゆっくりの未来を案じてゆっくりを賢くしたが、その気持ちをゆっくりの小さな体は受け止めきれなかった。 冷たい心で熱い愛をゆっくりに捧げた男は自分の仕業がゆっくりを苦しめたことを後悔する。 しかしここにいるちぇんはもはや全てを打ち明け、苦しむ事はないのだ。 男もこれから二人で歩む新しい道が見えていた。 「お姉さん」ちぇんが紫を呼ぶ。 「目の前に好きな人がいるときはどうしたらいいかわからないよー」 まるでゆっくりちぇんのように問いかける。男は心に温かさが戻ってきたそんな気がした。 「そんなときはね……ってあらあらお熱いこと」 馬に蹴られる前に退散退散と言いながら紫はスキマに消えていった。 エピローグ 「紫様が直々異変解決とは珍しいですね」 そう言ってペットの八雲藍がお茶を出してきた。 私だってたまには仕事もしたくなるわよ。 「しかし老婆心が過ぎたかしらね」 「紫様はまだまだ充分お若いですよ」 とりあえずスキマに放り込んでお茶をすする。 すれ違う愛があまりにもじれったいからといって手を出すのも考え物か。 うちのペットもあれくらい愛してあげればいいのかしらね。 今度油揚げ風呂にでも入れてやれば忠誠心を取り戻してくれるだろうかと考えながら紫は昼寝を始めた。 おまけ どたばたと慌ただしく廊下を走りこちらに向かってくる人間がいる。 部屋に入って来るなりこちらに向かって叫んだのは博麗さんだった。 「今、ここに異変は来なかったか?」 「紫さんが…」 「バカモーン!!そいつが異変だ!!」 そう言って走り去る博麗さん。慌ただしい人だ。 ……あれ? 虐待はどこいったよ(; `・д´・) 一応精神的にも肉体的にもボコボコにしてるから虐待SSってことで勘弁してくだせい このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/gt_psp/pages/40.html
DODGE(ダッジ)(全9車種) NO 車種名 価格 最高出力(PS/rpm) 最大トルク(kgfm/rpm) 駆動形式 車両重量(kg) 総排気量 シェア トレード ダッジ チャージャー 440 R/T 70 ダッジ チャージャー Super Bee 426 Hemi 71 ダッジ ラム 1500 LARAMIE Hemi Quad Cab 04 ダッジ SRT4 03 ダッジ バイパー GTS 99 ダッジ バイパー GTS R コンセプト 00 バイパー GTS-R Team Oreca レースカー 00 ダッジ バイパー GTS-R Team Oreca レースカー 00 ダッジ バイパー SRT10 03