約 1,264,717 件
https://w.atwiki.jp/nightmarealice/pages/49.html
ハ-トの女王の領地 - 狂気に至る幻惑 説明しよう、ここは、大まかに分けると、1階部分と建造物の上、 地下の水中の三つに分けられる。1階は複雑に繋がっていて迷うぞ。 目的ゲートは1階に有るが見つけにくいし柵が閉じている。 アリス、君に開けることが出来るかな?、開けられたとして、 果たして、辿り着けるかな?。 馬鹿にしないでよー。 =================================================================
https://w.atwiki.jp/sevenlives/pages/1689.html
アメリカ国防総省【DoD】 読み:でぃーおーでぃー 英語:United States Department of Defense 別名: 意味: DoDとは、アメリカ合衆国国防総省の略式名のこと。 アメリカの国防、軍事を総括する官庁であり、軍人を含め約200万人の定員を擁し政府支出の2割近くを占める同国の最大の官庁である。 2009年08月25日 ペンタゴン?
https://w.atwiki.jp/englishlanguage/pages/861.html
DOD... Dodd, Loring Holmes. 1908. A Glossary of Wulfstan’s Homilies. Yale Studies in English XXXV. New York Henry Holt and Company.
https://w.atwiki.jp/gtavvehicles/pages/342.html
Dodo 概要 車体:レシプロ機 分類:飛行機 和音:ドードー ドア:2枚 モデル:デ ハビランド カナダ・DHC-2 ビーバー 日本語訳:ドードー鳥(重たくて飛べない鳥) 性能 重量: 最高速: 加速: 解説 名前だけでは実にGTA SA以来の登場となる飛行機。 元々は水上飛行機ではなくMammatusのような標準的なセスナ機であり、水上飛行機はそれとは別にSkimmerという飛行機が存在した。 今作のDodoはSkimmerとは違いフロートの下に車輪が付いているので、陸にも安定した着陸ができるなど大幅に利便性が上がっている。 エリータス トラベルにて50万ドルで購入できる。 モデル デ ハビランド カナダ・DHC-2 ビーバー
https://w.atwiki.jp/nicoplay/pages/142.html
総閲覧数: - 今日の閲覧数: - 昨日の閲覧数: - 【 演奏者基本情報 】 名前 :DOD 通称 :DOD 使用楽器 :エレキギター よく使われるタグ :演奏してみた 公開マイリスト : 【 作品・演奏の傾向 】 ここに作品・演奏の傾向の情報を記入してください 【 使用機材 】 ここに使用機材の情報を記入してください 【 備考・外部リンク 】 ここに備考・外部リンクの情報を記入してください 【 公開動画 】 個別動画 nicovideoエラー ( 正しい動画URLを入力してください. ) nicovideoエラー ( 正しい動画URLを入力してください. ) nicovideoエラー ( 正しい動画URLを入力してください. ) セッション動画 nicovideoエラー ( 正しい動画URLを入力してください. ) nicovideoエラー ( 正しい動画URLを入力してください. ) nicovideoエラー ( 正しい動画URLを入力してください. ) nicovideoエラー ( 正しい動画URLを入力してください. ) 【コメントフォーム】 (この奏者に対してのコメントとして下記に直接表示されます) 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/1548908-tf3/pages/1190.html
山路康平:終焉に至る軌跡1 攻略 合計40枚+00枚 上級01枚 溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム 下級17枚 クリッター ケルベグ×2 幻影の壁×2 素早いモモンガ×3 ダークファミリア×3 魂を削る死霊 プロミネンス・ドラゴン×3 マシュマロン 迷犬マロン 魔法12枚 浅すぎた墓穴 大嵐 サイクロン 終焉のカウントダウン×3 光の護封剣 封印の黄金櫃 平和の使者×3 レベル制限B地区 罠10枚 威嚇する咆哮×3 グラヴィティ・バインド-超重力の網- 魂の氷結×2 覇者の一括×2 和睦の使者×2 エクストラ00枚
https://w.atwiki.jp/shadowbane/pages/179.html
◎ Dodge 全ての武器攻撃とPowerに対して有効だが、Powerを回避する事は稀である。 DodgeのSkillを覚えるのはRogueのみである。
https://w.atwiki.jp/orirowavr/pages/236.html
『会場の準備が整いました。決闘の出場者はステージまでお越しください』 控室で待機していた善子の元にシェリンからの準備完了の知らせが届いた。 善子は一つ大きな呼吸をして、自らの頬を打って気合を入れると表情を引き締める。 意を決して楽屋を飛び出すと、すっかり様変わりした廊下を行く 無骨な石造りの通路は現代的なクリーム色の通路となっていた。 蛍光灯の光に照らされる足元に不安はないが、行く足取りには不安がにじみ出ていた。 いや、不安と言うより恐怖だろうか。 これより決まるのは己か相手いずれかの生死である。 明るいはずの廊下が死に向かう十三階段のようにも見えた。 蛍光灯の照らす通路を抜けきると反対側の入場口からは同じく対戦相手がステージに向かてくるのが見えた。 その顔には自らの勝利を疑わぬ不敵な笑顔が張り付いている。 善子はぎゅっと拳を握りながら、足を前へと運んだ。 ステージを構えるコロシアムへとたどり着いた彼女たちを出迎えたのは超満員の客席だった。 朧気な白い影のような何かが客席に所狭しと揺らめいている。 観客は脱落した参加者の複製体であるためか、不気味なまでに同じ顔をしていた。 それ以上に奇妙だったのは異様なまでの静寂だった。 演者の登場に対しても超満員の客席からは歓声一つない。 彼らはこの審査のためだけに生み出された亡霊の様なものだ。 発声する器官など与えられていない。 これまでに脱落した勇者の魂が集う死者たちの饗宴。 それはある種、冒涜とも言える光景だった。 そんな客席を善子は複雑な面持ちで見つめていた。 親友、師匠、仲間。 並ぶ客席には、どこか見覚えのある人影がちらほらと並んでいた。 当然ながら向こうからの反応はない。 愛美は客席を僅かに一瞥しただけで、興味を無くしたように視線を外した。 客席に妹の似姿は見当たらなかった。 世界に散布されることなく愛美に取り込まれた優美の魂は再現の対象に含まれなかったのだろう。 「それじゃあ、お先にぃ」 適当に手を振って、愛美は一足先にステージへと向かう。 緊張や気負いと言ったものは一切感じられない。 彼女にとっては全ての勝負が勝てるかどうかではなく、勝つのが当たり前の些事である。 【――――アイドルバトル 開始――――】 【先行】陣野愛美。 会場は静寂に包まれていた。 現実の観客と違い死者の観客は雑談などしない。 僅かな騒めきもない真なる静寂が世界を包む。 粛然たる世界は今、音を齎す者を待っていた。 突然、会場中の全ての照明が落ちる。 音のない世界から更に光すら奪われ、世界が暗闇に包まれた。 その闇を穿つように天上から一筋のスポットライトが落ちる。 だが、ライトの照らした舞台の上には誰もいない。 一本のスタンドマイクが置かれているだけだった。 まるで荒廃した絶望の世界のようだ。 暗闇は人々の不安を煽り、救いとなるはずの光の先には何もない。 そこに、天より救いが舞い降りる。 光と共に遥か高みよりゆっくりと落下する。 花嫁衣裳のような白い衣装が空気を含みふわりと翻った。 身に纏うのは伝説のアイドルのステージ衣装である。 少女を輝かせるための衣装がスポットライトを照り返しキラキラと光を放つ。 それはあたかも彼女自身から光が放たれているのではないかと錯覚するような幻想的な輝きだった。 それは何の種も仕掛けもない、ただ跳躍し着地しただけの行為。 だが超人的なステータスを持つ愛美にしかできない超演出だ。 彼女は常人なら落下死しかねない高みより舞い降り、音もなく着地した。 演出全てが女を引き立たせるためだけにあった。 その効果を持って、彼女はただ登場しただけでその場の全てを支配した。 まるで女神が降臨したかのよう。 いや、事実として彼女は神である。 アイドルが崇拝の対象となる偶像だとするのなら。 神と称えられた少女ほどアイドルに相応しい存在はいまい。 地上に舞い降りた女神は無言のままスタンドマイクの前に立った。 空気がピンと張り詰める。 世界が彼女の声を待っていた。 その緊張感を楽しむように女神は笑みを零し、すぅと息を吸った。 自身の楽曲など持たない愛美は既存の曲を歌うしかない。 彼女が選んだのは、神の恵みへの感謝を歌う世界一有名な讃美歌だった。 「Amazing Grace」 第一声で彼女は舞台を完全に掌握した。 それはまさに、神の声を耳にしたかの如く。 その圧倒的な存在感に、観客たちは一瞬にして呑まれてしまう。 「how sweet the sound」 オペラを思わす様な豊かな声量。 一切外れる事のない正確な音程。 心地よいと感じさせる完璧な音量。 聴く者の魂に直接訴えかけるような感情を籠めた歌声。 「That saved a wretch like me」 伸びやかで透き通るような歌声が響き渡る。 彼女の歌唱は、まるで天から降り注ぐ光のような奇跡の歌声だった。 聞くだけで心が浄化されていくよう。 彼女の歌声には、そんな不思議な魅力があった。 「I once was lost but now am found」 脳を揺さぶるような甘美な歌声がスタジアムを満たす。 歌に完璧があるのなら、彼女の歌声がその答えだ。 魂だけの存在であろうと震えるものがあるのか、観客は一様に心奪われたように動きを止めていた。 それは正しく、この地で散った歌姫に匹敵する歌声だった。 「Was blind but now I see」 だが、如何に才能があろうともボイストレーニングも受けていない素人がここまでの領域に達する事はありえない。 彼女自身の芸術的才能があったとしても、ここまでの物ではない。 この心を強制的に揺さぶるような歌声には勿論、仕掛けがある。 スキル【歌唱(A)】 準備時間にこのスキルを取得した。 潤沢なGPを持つ彼女の強み。 ゲーム内におけるこれ以上ない正攻法である。 細かな音程、抑揚の付け方、間の取り方。 このスキルを持って、この地で聞いた歌姫の歌声を恐るべき再現度でトレースしていた。 歌姫の歌声と彼女自身の魅力とカリスマが合わされば、それはもはや全ての人間を魅了するに十分だった。 今の愛美は完璧な存在だ。 戦闘においてのみならず芸術に及ぶ全てにおいて。 見ているだけで麻薬のような多幸感に包まれる最高の娯楽にして至上の芸術。 愛美と言う存在そのものが一つの完成された芸術作品である。 「When we've been here ten thousand years」 歌声と共に愛美がゆっくりと手を伸ばす。 光に向かって、伸ばした指先までが美しい。 それは激しく目を引くようなダンスではなく、バレエのような優雅でゆったりとした舞だった。 ゆっくりした動作だからこそ、観客は一挙手一投足に注視して目が離せなくなる。 その美しさに、誰もが心を奪われ虜となる。 「Bright shining as the sun.」 細かで巧みな視線誘導。 人心掌握に長けた蠱惑的な動作は、目を引くという次元を通り越して目を奪われる魔性だった。 欠けていた半身を取り込み完成された愛美だからこそ成し遂げられた表現力。 今の彼女は手に入れた感情を魅せ付けるように表現できる。 「We've no less days to sing God's praise」 スタジアムと言う閉じられた小さな世界。 周囲を包む闇、彼女を照らす光、反響する全ての音、そこに渦巻く人々の感情。 その全てを彼女が支配していた。 「Than when we'd first begun」 やがて曲は終わりを迎える。 美しい余韻を残しながら、ゆっくりとスポットライトが絞られてゆき闇の幕が降りて行った。 客席に背を向け愛美がステージを降りる。 これ以上ないほど完璧なステージだった。 これが通常のステージだったのなら万雷の拍手が鳴りやまなかっただろう。 ステージ脇からそのステージを見ていた善子が息を呑む。 これが、善子が打ち倒すべき相手。 この壁を越えねば待つのは死である。 熱に浮かされたみたいにフワフワとするような感覚。 気合を入れるために、胸を張って背筋を伸ばす。 鳥肌が立つような緊張感。 痺れるような緊張に指先が震える。 この感覚には覚えがある。 脳裏に浮かぶのは伝説のアイドルに挑んだ運命の夜だ。 ■ 運命のアイドルバトル。 会場を埋め尽くすファンたちは赤と青の2本のサイリウムを手にしていた。 『ファン投票方式』による審査。 レイを支持するなら赤いサイリウムを、ひかりを支持するなら青いサイリウムを掲げるのがルールだ。 パフォーマンスを終え、ひかりは汗だくのまま息を整えながら審判の時を待っていた。 祈るように強く目を閉じ、意を決してゆっくりと目を開く。 スタジアムは赤と青に染まった。 殆どの観客が両手を上げて双方を支持したのだ。 一見しただけでは勝敗が分からぬほど拮抗した状況。 運営が正確な計測をしてジャッジを下そうとする中で、一早く勝者を称える様にひかりの腕を掲げるモノがいた。 レイだ。 王者であるレイが新しい王者を祝福する。 その瞬間、ひかりはアイドルの頂点に立った。 シンデレラガールの登場に日本中が熱狂冷めやらぬその翌日だった、秋葉レイの電撃引退が発表されたのは。 突然の引退発表に、ひかりも衝撃を受けていた。 丁度そのニュースを見た直後だった、ひかりのスマートフォンが震えたのは。 呆けていたのもあるだろう、知らない番号からにも関わらず不用意にも電話を取った。 電話越しに届いたのはよく知った声だった。 『Hi! ひかりちゃん』 「レ、レイさん!?」 『I'm sorry suddenly.電話番号はマネージャーさんに教えて貰っちゃった』 「い、いえ。それは構わないんですけど……あの、なんて言ったらいいのか……」 レイと話すのは前日のアイドルバトル以来である。 勝利した事を光栄に思えど後悔することは決してない。 だが憧れだった人の引退の一因となってしまったことは、少なからず喉の奥に引っかかっていた。 『don’t worry.引退は元々今年にするつもりだったの。それが少し早まっただけよ、気にしないで』 「そう……だったんですね」 少し胸のつかえがとれたような、寂しいような複雑な気持ちだった。 『that's right.結婚してアメリカに移住する予定なのよね』 「け、結婚!? アメリカ!?」 どちらも初耳の衝撃的な情報である。 伝説のアイドルと結婚するなんてどんなスーパースターが相手なんだろうか? さぞセレブな結婚式をするのだろうなぁ、なんて想像まで膨らんでしまう。 『It's wrong.残念ながら結婚相手は音楽番組のただのADよ。 彼は優しいだけのごく普通の人だけど、秋葉レイじゃなく秋原麗を愛してくれた人だから。 まあ出会いが音楽番組くらいしかないのは笑っちゃうけど』 そう言って当たり前の青春を過ごせなかった人はカラカラと笑った。 その声は少女の様に幸せそうだった。 『by the way.父も褒めていたわよ、あなたのパフォーマンス』 彼女の父はアイドルブームの火付け役である秋原光哉。 業界に多大な影響力を持つフィクサーである。 「本当ですか? 実の娘であるレイさんを倒した私の応援なんかしてくれるんですかね……?」 『rest assured.親子の情なんて意味のない物を仕事に持ち込むような人じゃないわ。 むしろ、今頃は新しいスタァをどう売り出すか、そればかりを考えてるはずよ。 敵に回すと面倒な人だけど利害が一致している値は頼もしい人だから、精々利用してやりなさい』 実の娘とは思えないドライな言葉だった。 恐らくこの親子の関係は余人には測りかねる尺度なのだろう。 『that aside.電話したのは今後について、少しお節介を焼こうと思って まあ小うるさい先輩のお節介なんて鬱陶しいだけかもしれないけれど』 「い、いえ。とんでもない……!」 冗談なのだろうけど、そう言う冗談は恐縮してしまうのでやめてほしい。 けれど、その心遣いはありがたかった。 『So.どう、実際に立ってみた頂点の景色って言うのは?』 「そう、ですね。勢いで挑んでみたモノの、いざ、レイさんに勝って、頂点に立って見ると、その……」 『不安?』 「…………はい」 素直に心中を吐露する。 頂点に立ってしまうと常に強い姿を見せなくてはならない。 こう言う弱音を吐ける相手も限られて来る。 『I agree.これからあなたの一挙手一投足に世間が注目することになるわ。 そして多くの人々の期待や羨望を一身に受けるだけじゃなく、謂れのない嫉妬や恨みを買う事もあるでしょう。 それを重荷に思ってしまうのは当然のことよ』 10年と言う間、先頭に立って業界を引っ張り続けた先人の言葉には重みがあった。 『まあ、私はそう言うのはあまり感じなかったんだけど』 「は、はぁ」 やはりこの人はモノが違う。 『いろんな不安もあるでしょうけど、先輩からのありがたいアドバイスよ。 ――――let's enjoy! 楽しみなさい、ステージを』 本当にシンプルなアドバイス。 だけど、それだけで不安に感じていた物が少しだけ晴れた気がした。 『それだけを伝えたかったの。それじゃあ、お忙しいでしょうしそろそろ切るわね』 「ありがとうございました! あっ。ご結婚おめでとうございます!」 『thank you.あなたも頑張りなさい。応援してるから。次の挑戦者に簡単に負けたりしないでよね』 「ぜ、善処します」 ■ ステージの前はいつだって不安だった。 レッスンしてきたことを出しきれるのかと言う不安。 集まってくれたファンたちを満足させられるのかと言う不安。 アイドルの頂点に立ってからは、それに相応しい振る舞いが出来ているのかという不安も付きまとっていた。 ましてや今回のステージには命がかけられている。 緊張感はこれまでの比ではない。 そう言った物を抱えて美空ひかりは、ステージに上がる。 その重さに足を引きずられてしまいそうになるけれど、懸命に一歩踏み出す。 一歩、ステージへと。 そして、ステージに立った瞬間、その全てが吹き飛んだ。 超満員の客席。熱気の残る空気。置かれたスタンドマイク。 恐怖や緊張は消えてなくなり。 残ったのはドキドキとワクワクだけだ。 ――――――さぁステージを楽しもう。 【――――アイドルバトル 攻守交替――――】 【後攻】美空ひかり。 愛美と違ってステージ衣装なんて上等なものはひかりにはない。 衣装は元から来ていた制服を改造した物である。 出来る限り汚れを落とたが、ボロボロの制服ではステージ衣装としてはみすぼらしい。 だから取り繕うのではなく、むしろ制服の傷を目立たせるようにアレンジして荒々しさを強調した テーマは「Alive&Survive」華麗さではなく生き残る強さを。 スタンドマイクを握りしめ、大きく息を吸い込んだ。 ステージの中央に立って客席全体を見渡す。 声を上げることも許されず、白く揺らめくだけの観客たちを。 「みんなー! 盛り上がってますかぁ!?」 そう観客へ呼びかけ、満面の笑みを浮かべた。 だが観客たちは何の反応を示さない。 客席にある影たちは感性だけを付与された再現体である、 客席に呼びかけたところで、反応などあるはずもない。 「どーしたぁ~? 返事が聞こえないぞ~!?」 ひかりは続ける。 だが、それは暖簾に腕押すような意味のない行為だ。 返ってくる声など、 「――――――声が小さぁああああい!!」 怒涛の様な煽り声に、客席から僅かに戸惑いの様な反応が返る。 それだけの事だが、僅かとは言え騒めくことすらしなかった再現体が感情を示した。 その反応に彼女はにっと悪戯に笑って、スタンドマイクあらマイクを引き抜くのだった。 ステージ脇からその様子を眺めていた愛美が興味なさげに尋ねる。 「ありなのぉ? ああいうの」 『アイドル勝負ですので』 これはパフォーマンス勝負ではなくアイドル勝負である。MCも競技に含まれる。 ふぅんと呟いて興味なさげにステージに視線を戻すのだった。 ひかりはあくまで観客たちと向き合う。 祈るようにマイクを両手で持って、客席を見渡しながら思いを伝える。 「みなさん、突然こんなことに巻き込まれて色んな無念や後悔があったと思います。 一言では表せない、吐き出すことすらできなかった気持ちが」 そこには多くの死があった。 死者たちにはそれぞれの無念があっただろう。 「神様じゃない私にはその後悔は変えられません。何の意味もないかもしれない、それでも。 その気持ち、全部ステージに置いて行ってください」 その全てを、このステージに置いていって欲しい。 「私たち(アイドル)は全力でそれに応えるから」 辛い現実を忘れさせ一時の夢を魅せるのが、アイドルだから。 「それでは1曲だけですが楽しんでいってください――――美空ひかりで『届け!』」 イントロと共に照明が落ちた。 たった一度の命懸けのライブ。 楽しまないと損だ。 自分の観客も。 ひかりが前奏に合わせて足裏でリズムを取る。 点滅するフットライトの光がリズムに乗った足元を照らす。 「♪今日も上手くいかなくて やってらんない もう嫌になるじゃない」 歌い出しと同時に、ダンスが始まる。 細かなステップにメリハリの利いたシャープなダンス。 曲の盛り上がりに合わせてスタジアムにライトが灯り始めた。 闇が払われ光に満ちる。輝きは舞台からではなく客席から溢れ出していた。 それはまるで光の海のよう。 全ての観客にサイリウムを持つように求めた。 これがひかりの演出プランだ。 愛美のステージは徹底して主役を輝かせるためモノだった。 彼女の独り舞台なのだから、それが当然の最適解である。 だが、ひかりが求めた演出は違う。 自分自身に対してではなく、観客に対して求めた。 ライブはアイドルが一人で作る物ではない。 事務所にスタッフ、それにファンの存在は必要不可欠だ。 ライブは全員で作る。それがひかりの考えるアイドルライブだ。 光り輝くサイリウムの海が広がる。 その光に照らされ観客の顔がよく見えた。 白いシルエットでしかないが、光を照り返す客席に向かって指で作った銃を向けてウィンクを飛ばす。 「♪ひとりきりの夜 眠れないのもそう キミのせいだよ」 Bメロに入り曲のBPMが上がってゆき、ダンスも激しさを増してゆく。 汗一つ流さずどこまでも美しかった愛美とは対照的に、激しいダンスに汗が飛び散る。 必死で汗にまみれるその懸命な姿は、思わず応援したくなるような真摯さがあった。 ステップは軽やかに跳ねる様に。 客席全体にパフォーマンスを届けるために、ひかりは中央だけではなくステージ全体を広く使ってゆく。 「♪元気ない 作り笑い 分からないとでも思った?」 だがそれでも愛美のパフォーマンスには遠く及ばない。 愛美の完璧なパフォーマンスに比べれば、ひかりのそれは未熟で未完成なパフォーマンスだ。 これがコンクールだったなら愛美の圧勝だっただろう。 だが、これはコンクールではない。 観客の心をつかんだ方が勝ちのアイドル勝負である。 アイドルにはアイドルの戦い方がある。 「♪知ってるよ 苦しいことがあっても いつだってキミが頑張ってること」 愛美はいつであろうとどこであろうとも、先ほどと同じ最高のパフォーマンスを発揮できるだろう。 自分の歌いたい曲を歌いたいように歌うだけで大衆を魅了できるカリスマ。 それはそれで稀有な素晴らしい才能である。 だが、ひかりは違う。 その日、その時の客層や空気感に合わせた最適なパフォーマンスを提供する。 本来のメロディに合わせた完璧な音程ではなく、盛り上がりに合わせた最適な音程で歌う。 一時の夢を魅せるために少女たち(アイドル)は今を燃やすのだ。 その熱量を伝えるには、機械でも、中継でもダメだ。 同じ会場で一つのライブを作るこの形式でなければならなかった。 その熱はアイドルを一層燃え上がらせパフォーマンスにも熱が入る。 「いくよぉッ!!」 サビ前に観客を煽ってひかりが跳んだ。 空手を下地にした派手な動きがひかりの売りだ。 盛り上がりに合わせるように、いつもより高く跳ぶ。 高く高く跳び上がり、片脚を弧を描くように振り上げる。 パフォーマンスの成功に発声器官など与えられてい無い彼らの声援が聞こえた気がした。 アイドルはファンに元気を届け。 ファンの声援にアイドルも応える。 元気が循環するようにステージは盛り上がりを増してゆく。 それは愛美のステージにはなかったものだ。 愛美は他者の応援など必要としていない。 彼女は単独で完成して完全で完結している。 故に、愛美のパフォーマンスには「誰かのため」という観点が決定的に欠けていた。 彼女はステージで自分の美しさを魅せただけ、観客は芸術品を眺めるだけの傍観者だ。 この瞬間だけは現実を忘れさせるような一時の夢。 ファンも当事者になってステージを楽む。 互いに流れる汗すら美しい。 その熱に中てられたように、観客たちに変化があった。 判定を下すためだけに生み出された魂の複製でしかない存在。 不安定に揺れ動くだけだった魂が、音楽に合わせるようにリズムを取って揺れ始めた。 「♪いつだって どこに居たって 頑張ってる君へ 伝えたいよ」 それはここか殺し合いの舞台である事を忘れさせるような奇妙な光景だった。 リズムに合わせてサイリウムを巧みに振る者。 慣れない様子で指だけをトントンと動かしリズムを取る者。 サイリウムを振り回し激しくオタ芸を刻む影の一団もいた。 共通しているのはこのライブを楽しんでいるという事だ。 この盛り上がりを含めてアイドルライブである。 ひかりはアイドルフィクサーにより己の中のアイドルを失った。 だが、美空ひかりは与えられたスキルによってアイドルになったんじゃない。 そんなものがなくたって女の子はアイドルになれる。 夢を追い続ける限り、何度だって。 「♪私がいること ここにいるって この歌にのせて」 ひかりは自分がアイドルを始めた理由を思い出す。 昔、同じ道場に通う同い年の少年がいた。 その道場に居た子供は私たちだけで、競い合うように腕を磨いていた。 私たちはライバルで、勝負はいつも私の勝ちだった。 子供らしからぬ老成した子供だったから、今思えば少年は手加減していたのかもしれないが。 だがある日、突然仲の良かったその少年が道場を止めてしまった。 道場からは家庭の事情とだけしか聞かされなかった。 別れも告げず遠くに行ってしまったあいつに一言言わなければ気が済まなかった。 そんな思いを抱えていたときに、遠くに声を届けるアイドルを見た。 それはまるでどこまでも届く光のようだった。 だから、マイクを手に取った。 「♪私の想い 願い 君の所まで 届け 届け」 アリーナ最前列。 3階席の最後尾。 もっと遠くまで。 歌声は届く。 どんな世界だって。 他ならぬ親友がそう教えてくれた。 その歌声で立ち上がる勇気をくれた。 だから自分も、どこかの誰かに届けるために。 今も頑張っている、誰かに。 今も頑張ろうとしている、誰かに。 「――――――――――届けぇえええええええ!!」 ■ 二つの決闘が行われる中。 二つのエリアを繋ぐ橋の上で、黄昏の堕天使のアバターを纏う少女は未だにそこから動けずにいた。 このままここでじっとしていても何にもならない。 ここに落ち込んだ少女を励ましてくれる誰かはいないのだ。 そんな事は分かっている。 残酷なこの世界で友と呼べる人間と出会えたことこそが奇跡だったのだ。 訪れるのは命を狙う危険人物である可能性の方が高いだろう。 そうなれば少女の命など容易く刈り取られてしまう。 それも分かっている。 だが、どうしても動けない。 動くための気力が沸かない。 人間が動くには何か理由が必要だ。 元の世界の居場所を作ってくれた友人を失い。 この世界で心を救ってくれた友人をも失った。 良子は希望(アイドル)を失い、絶望と言う名の死に至る病に取り付かれていた。 「……………………なに?」 良子が沈み込んでいた顔を上げた。 繰り返す波と風が泣く音以外の、何かが聞こえたのだ。 誰かが近付いているのかと思い周囲を見渡すが、周囲には何の変化もない。 遮蔽物のない橋の上だ、透明人間でもない限り見逃すことはないだろう。 相も変わらず彼女は取り残されたように一人きり。 けれど、確かに聞こえる。 これは。 「…………歌?」 どこから響いているのか分からない、空耳のような歌声。 それは一人になった良子の生み出した幻聴だったのかもしれない。 曖昧で朧気で、強く吹き付ける風の音に掻き消されてしまいそうだけど。 けれど確かに、聞こえる。 頑張れと、懸命に誰かを励ます応援歌が。 きっと、この歌を歌っている誰かも、どこかで頑張っているのだろう。 そう思わせてくれるそんな歌声だった。 その歌声を届けくれる存在。 知らず、少女は存在の名を呟いていた。 「………………アイドル」 ■ 穏やかだった海を臨む教会は見る影もなかった。 教会は燃え落ち、堕ちた十字架は倒れ地に落ちる。 美しかった花畑は、火災に巻き込まれその殆どが焼け焦げていた。 風向きによって運よく生き残った数本の花だけが、名残の様にその彩を見せていた。 二人の男が雌雄を決した。 その傍らには血だまりが二つ。 立っているのは一人だけ。 立っているのは殺し屋だった。 殺し屋の胸元は袈裟と逆袈裟に切り裂かれX字の傷口が刻まれている。 傷口からは大量の血液が流れ続けており、その足元に血だまりを作っていた。 殺し屋は自らの胸元の傷口をなぞると、冷気で凍らせ止血を行う。 傷は深いが致命傷には至っていない。 義手を失ったのは痛手だが、まだ戦える。 視線を落とし血だまりに沈む正義を見つめる。 この世界の死体は光の粒子となって消える定めだ。 体が残っている以上、まだ死んでいないと言う事だ。 放っておいてもすぐに死ぬだろうが。 殺し屋は油断なく、トドメを刺すべく死に体になった正義へと近づく。 だが、暗殺者が珍しく驚愕したように目を見開いた。 吹き飛んだ腹部からは壊れたポンプみたいに血が流れていた。 止血もままならず作った血だまりの大きさはシャが作った物の比ではない、それこそ血の池の様である。 それでもなお刀を杖の様に付き、正義がその場で立ち上がったのだ。 手応えはあった。 内臓を吹き飛ばし、確実に仕留めたはずである。 多くの人間を殺してきたからこそ、その手ごたえを間違う筈もない。 どうしようもない程の致命傷である。 生きているのか奇跡だ。 だからこその驚愕がある。 「為什麼要站起來?(何故立てる?) 是技能?(何かのスキルか?)」 思わず殺し屋は問うていた。 正義はその問いに答えたと言うより、譫言のように呟いた。 「…………歌が………………聞こえた」 歌声が聞こえた。 臨死に幻聴が聞こえたのか。 だが空耳と呼ぶには余りにも明確な、ハッキリとした声。 懸命で、力強く、どこか励まされるような温かさがある、そんな歌声だった。 もう一度、立ち上がれと尻を叩かれているようでもあった。 その歌声は昔好きだった女の子の声に似ていた。 「ふっ」 懐かしさに思わず口元から笑みがこぼれた。 いつだって元気だった少女の姿が脳裏に浮かぶ。 あの少女はきっと今もどこかで元気にしているのだろうか。 「什麼(何を)…………?」 暗殺者は理解できないモノを見るように首を傾げた。 シャも戦場で愉悦の笑みを漏らすことはある。 だが、その穏やかな笑みは余りにもこの場に不釣り合いだ。 だが、分からないのは正義の方だ。 この歌声が聞こえていないのだろうか。 そうならば、まったく、もったいないことこの上ない。 正義は笑みの張り付いた口元を引き締め、服の袖で目元に付いた血糊を乱暴に拭う。 ここまで血塗れの状態では多少拭ったところで焼け石に水だろうが、多少の視界は確保できた。 そして杖にしていた日本刀を振り上げ、上段に構えを取る。 だが、息も絶え絶えで立っているのも精一杯の状態である。 構えたところで、まともな攻撃など出来るはずもないだろう。 などと言う油断を、シャは決してしなかった。 正義の眼は死んでいない。 立てた理由は分からないが、まだ諦めていないのはその眼を見れば理解できる。 この状況に及んでもなおシャに勝利することを微塵も諦めていない。 シャの殺してきた多くの人間の中にも、この手の輩はいた。 追い詰められても最後まで決して諦めない。そんな黄金の精神を持った輩が。 だが、その全てをシャは凌駕してきた。 殺し合いにおいてシャは敗北したことがない、当然だが。 今回もそうだ。これまでのように勝利するだろう。 現実ならば瀕死でまともな攻撃はでないだろうが、ここはVR世界である。 現実と見紛う程の精巧さの物理演算がなされているが、スキルと言う現実を覆す要素がある。 追い詰められるほど攻撃力が増すというのなら、攻撃に関する動作は保証されるはずだ。 つまりはこれが正義にとってのベストコンディションだ。 「……どうした? 俺を殺すんだろ? だったらさっさと掛かってこい」 立っているのも精いっぱいの状態で、正義はそんな挑発を投げた。 この期に及んでのその言葉に、殺し屋は歓喜するようにクッと喉を鳴らした。 殺し屋として多くの人間を殺してきたシャは手応えとしてわかる、正義の傷は致命傷だ。 ショック死しなかったのは大したものだが、放っておいても出血死は免れない。 わざわざシャが攻める必要などどこにもない。 ただ待っているだけで勝ちが転がり込んでくる。 だが、問題はそこにある。 命はこの手で摘み取ってこそ。 スリップダメージによる決着などつまらない。 そのような勝ちなど、この男が求めるはずがない。 正義が瀕死であるが故に、この手でトドメを刺すのならば攻めざるを得ないのだ。 それを踏まえた上でのこの挑発である。 果たしてどこまで計算していた? 最初からここまで計算しているのならば、それは。 「――――正気ジャないナ、オマエもサ」 口端を歪めて嗤う。 敵に出会った喜びを謳歌するように。 実力も経験も、ここまでの戦いの内容も全てにおいてシャが上回っていた。 にも拘らず、一撃勝負に付き合わざるおえない状況に持ち込まれている。 それが愉快でたまらない。 胸の傷は致命傷ではないにしても無視できるほど浅い傷ではなかった。 気功スキルで回復をしているが、攻撃にまで回す余裕はない。 逆に言えば回復を捨てれば攻撃にも使える訳だが、どうしたものか。 正義は上段に構えて待ちの姿勢だ。 傷の深さから動くこともできず、それしかできないのだろう。 回復を捨てたとしても、死に体の相手に遠距離からチマチマと責めれば勝ちは確実だ。 気で回復しながら万全の状態で一撃を放つか。 遠くからチマチマと削っていくか。 どちらを選ぶかなど決まっていた。 「我會騎(乗ってやるよ)、對那廉價的挑釁(その安い挑発に)」 腰を落とし左の拳を構える。 選択肢を突き付けられたのならば、確実な方ではなく面白い方を選ぶ。 その性格を理解した上の誘導なのだろうが、シャはそれを理解した上であえてその誘いに乗った。 なにせそっちの方が面白い。 互いに防御など考えない。 最大火力の一撃を叩き込むために捨て身の構えを取り合っていた。 極限の果てに視線が交わる。 敵と己、双方の死がすぐ傍に感じられる。 そこに赤い怒りや黒い殺意などない、透き通るような白い感情だけがあった。 もはや敵対心を通り越し愛着のようなモノすら感じられる。 同じ死に踏み込む同類、息遣いすら愛おしい。 共に命の弾ける刹那を待っている。 だが、弾けたが最後、この戦いはその一瞬で終わるだろう。 それがどこか名残惜しく、殺し屋は少年に問いを投げた。 「何故、ソコまでスル?」 シャは殺し屋である 常に標的をこちらから殺しに行く立場だった。 だからこそ、自らシャを招き入れるような相手はいなかった。 ここまでの勝ち筋を見出していたとしても、これは自死を前提とした戦術だ。 死にたくないだけならば、決闘状など送らず逃げていればよかったのだ。 あの幼子の仇討ちだとしても、そこまでする理由が分からない。 まして顔も知らぬ誰かを守護るためなど、シャには理解しがたい。 何故、自らの命を懸けてまでシャと戦うのか。 その問いに刀を振り上げた体制のまま正義は答える。 「そう生きると決めたからだ」 護国を担う大和の家に生まれ、幼少の頃からその理念と武道を叩き込まれた。 始まりは与えられたものだ、だが選んだのは正義自身だ。 投げ出そうと思えばいつでも投げ出せた。 それでもその生き方を続けてきたのは他でもない正義自身がそう決めたからだ。 己が決めた信念を貫く。 そのために死を賭して生きる。 正義の行いはそれだけの物である。 その答えはシャにもストンと理解できた。 「何故、お前は人を殺す?」 正義は問いを返す。 殺し屋は迷いなく答える。 「我殺故我在、ダヨ」 何かのために殺すのではなく、殺すからこそ我が在る。 過去も理由も、複雑な物など何もいらない。 己の存在意義などそれだけでいい。 それが何も持たぬ殺し屋の唯一の矜持である。 それで最後の応答が終わる。 この先は言葉はいらない。 守護と殺害。 詰まる所、正義とシャは方向性が対極であるだけの同じ穴の貉だ。 それぞれの信念と矜持、人生そのものがぶつかりあい、勝敗と言う形で優劣が付けられる。 頂点に在った太陽は、いつの間にか沈み始めていた。 教会の燃え滓から燻った炎が弾け、燃え残った花々が揺れる。 痺れるような緊張感に思わず殺し屋の口元が緩む。 いつまでも味わっていたいが、そうも出来ぬのが口惜しい。 長引けば正義は死ぬだろうし、何よりシャ自身が待ちきれない。 この堪え性のなさだけが暗殺者の欠点だ。 殺し屋が大地を蹴った。 その動きはこれまでで最速。 地面が縮んだと錯覚するほどの速度で間合いが詰まる。 フェイント一つ入れればそれで終わるこの状況で、シャが選んだのは最短最速の一撃。 加えて、リーチの差を埋めるべく体を半身にして指先を伸ばす。 己自身を槍とするような神速の抜き手だった。 迎え撃つ正義に迷いなどない。出来る事は一つ。 上段に構えた日本刀を振り下ろすという動作だけだ。 だが、その前に正義はすっと片足を引いた。 体を開き半身になって左手一本で刀を振り下ろした。 それはリーチを重視した片手面。 半死半生の男から繰り出されたとは思えぬ落雷の如き鋭さで斬撃が落ちる。 奇しくも辿り着いたのは互いに同じ最適解。 ならば必然、先に届くのは射程に勝る剣士の一撃だろう。 だが、そんな事は拳士も最初から承知している。 故に、その抜き手の狙いは正義ではなく、上から振り下ろされる日本刀に向かっていた。 斬撃と抜き手が衝突し、殺し屋の前腕に刃が食い込む。 瞬間、シャは蛇頭の様に手首を返すと、刃を巻き込む様にぐるりと腕を振るった。 赤い飛沫が散り、切り捨てられた左腕が宙に舞う。 だが、宙に舞ったのはそれだけではない。 左腕に巻き取られるようにして日本刀が跳ね上げられた。 血飛沫を間に、武器を失った剣士と両腕を失った暗殺者の視線が交わる。 果たして、笑ったのはどちらか。 【素手格闘】 互いに素手の場合、更にもう一段階能力が上がる。 正義が刀を手放した瞬間、その条件は満たされた。 暗殺者が足跡を深く刻むように、強かに地面を蹴った。 そして己が肉体を弾丸とするように肩口から突撃する 鉄山靠。この一撃にて全ての気を叩き込む。 瞬きにも満たぬ刹那の間に万華鏡のように目まぐるしく変わってゆく戦況。 正義は観察眼と明鏡止水の精神でその全てを見極めていた。 その手に残った武器は一つだけ。 背水の効果を最大限に乗せて、固く握り締めた最後の武器で殺し屋の突撃を迎え撃つ。 互いに己が持てる全てを乗せた、男たちの最後の一撃が放たれた。 およそ人間のぶつかりあいとは思えぬ爆発めいた衝突音が響く。 そして静寂。 全ての動きが静止する。 潮騒と吹きすさぶ風の音だけが耳を打つ。 動きを止めた二人の男の背後で、風に吹かれた花びらがだけ揺れていた。 決着は付いた。 ならば、これ以上すべきことはない。 後は互いに、この決着を受け入れるのみである。 「做得好(お見事)」 そう告げて、暗殺者は光の粒となって消えていった。 どこまでも愉しげに、いつもと変わらぬ笑みを浮かべながら。 敗北も二度目の死も、全て逸楽であるかのように。 先に届いたのは正義の拳だった。 フック気味に放たれたその拳は、シャの鉄山靠よりも早くその胸部に届いた。 文字通り防ぐ手のないシャはその直撃を受けた。 殺し屋の胸部を深くえぐっていた拳が敵の消失によって解放されゆっくりと引かれる。 衝突の衝撃で砕けたのか、正義の拳はどちらの血とも分からぬ赤で染まっていた。 その拳が力なく開かれ、そこから何かが零れて地面に落ちる。 それは何の変哲もない、その辺に転がっているただの小石だった。 武器と呼ぶには余りにもお粗末な代物だ。 実際、多少拳の重さが増した程度で対した効果はなかっただろう。 だが、それは素手格闘の追加条件を満たさぬための楔としては機能していた。 起き上がり刀を握っていた段階で正義の逆手には既に小石が握られていた。 それを気づかせぬ為の片手面である。 果たして、正義はこの決着のどこまで読み切っていたのか。 全てが計算通りであったわけではない。 想像以上にあの殺し屋は強かった。 幾つもの奇跡が重なり得た紙一重の勝利。 だが、少年は勝利した。 [シャ GAME OVER] ■ 「ありがとうございました…………っ!」 曲を歌い終えると、ひかりは大きくお辞儀をした。 勢いよく顔をあげると、ひかりは汗だくの笑顔のまま客席全てに手を振り続けた。 拍手も歓声もないが充実感だけはあった。 『パフォーマンスが終了しましたので、それでは続いて審査に移ります』 両者のパフォーマンス終了を確認して、司会進行役のシェリンが姿を現した。 対戦相手である愛美も舞台に上げられ、スポットライトがそれぞれのアイドルを照らす。 舞台に立つ二人のアイドルの表情は対照的だった。 愛美は変わらぬ自然体。自らの勝利を疑っていない。 ひかりは覚悟を決めた表情で、緊張を押さえるように息を整えていた。 全力は尽くした。 どのような結果になっても後悔はない。 『先攻:陣野愛美を支持する場合は赤。後攻:美空ひかりを支持する場合は青に審査員の色分けを行います。 それでは判定を開始してください』 赤青。 シェリンの言葉に従い、白だった観客が徐々に色づいてゆく。 青赤青赤赤青。 客席が徐々に彩りに染まってゆく様をひかりは祈るように見守っていた。 青赤青青赤青赤青青青赤赤。 逡巡していた審査員も決断したのか加速度的に色が広がって行く。 青青青赤青青青青青赤青青青赤赤青青青青青青赤青。 そして、客席は美しい空のような青に染まる。 所々にまばらな赤が散見できるが、数えるまでもなく勝敗は明らかだった。 『決闘種目:アイドル対決は勇者:美空ひかりの勝利となります!』 電子妖精から決着が宣告される。 ひかりは歓喜すると言うより、安堵したように息を吐いた。 これは殺されていった全員で掴み取った勝利だった。 その横で愛美が、呆気にとられた顔で呟く。 「―――――なにこれ?」 ありえない敗北。 到底、納得できるものではない。 「ふざけないで! 私の歌は完璧だったはずよ!? あんな客に媚びただけの不完全なパフォーマンスに負けるはずがないでしょ!?」 客観的に見ても愛美のパフォーマンスの方が上だった。 ひかりもそれを認める。 「そうね。確かにあなたのパフォーマンスは素晴らしかった。けれど、完璧ではなかったはずよ」 「――――――――――」 そう言ってひかりは愛美の左肩を指さす。 愛美が言葉に詰まる。 その指摘は事実だった。 体全体を使ったパフォーマンスや視線誘導で巧みに誤魔化していたが。 魔王の攻撃を受け、彼女の左腕は肩から上に上がらない状態になっていた。 彼女は完璧だった。 粗で言えばひかりの方が圧倒的に多かっただろう。 だが、ひかりは思春期の可能性を体験するような眩さにあふれる粗削りだったのに対して。 愛美は完璧だったが故に、僅かな粗が酷く目についた。 それもまた勝敗を分けた一因だった。 焦りと屈辱に愛美の腕が震える。 味わったことのない人間としての激情が愛美を焦がす。 「こんなことが…………」 認められない。 認める訳には行かない。 こんな事で、失っていいはずがない。 「――――あっていい訳がないでしょ!!」 一瞬でその激情は振り切れた。 感情の猛りは憎悪の化身により形を成し、その身を白く染め上げる。 神の領域に達した真人。 その速度は音すらも置き去りにする。 その力は少女など触れるだけで消し飛ばすだろう。 魔王すら屠り去った神の如き一撃はしかし。 『決闘中の暴力行為は禁止されています』 世界(システム)によって阻止された。 如何に神の如き力を得ようとも、それは所詮枠組みの中の力に過ぎない。 枠組みそのものである世界には勝てるはずもない。 『敗者への罰則(ペナルティ)を実行します』 電子妖精が無慈悲な宣告を告げる。 後ずさる愛美の体から粒子が噴出する。 「嘘よ、そんな…………」 いやいやと首を振る。 それを繋ぎ止めんと自らの体を抱きしめるが、放出は止められない。 愛美は何者にも負けぬ力を手に入れた。 彼女を殺せる参加者は一人としていないだろう。 だが、これより与えられるのは世界による死だ。 「嘘よおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!!」 神の絶叫。 その魂の総量に見合う大量の粒子が空に向かって渦となって飛んで行った。 それと共に、役目を終えた観客たちが同じく光となって消えて行く。 日の落ち始めた空に一斉に命が流れてゆく。 美しい光の海。 その命の奔流を眺めながら、ひかりは想う。 例え無慈悲にアイナの命を奪った相手だったとしても。 その命を終わらせたという事だけは忘れてはならない。 その事実を噛みしめながら、闘技場を後にしようとした。 「? …………ッ??」 何が起きたのか。 気が付けば、天地が逆転していた。 善子の体はコロシアムの客席に叩きつけられていた。 「くぅ……ッ!?」 衝撃に息が止まる。 どうやら、ひかりの体はテニスボールのように客席まで吹き飛ばされたようだ。 石造りの客席を吹き飛ばしながら強かに背を打った。 下手をすれば背骨に甚大なダメージがあるかもしれない。 背を抑えながらよろよろと立ち上がる。 未だに事態は把握できていない。頭には混乱が残っている。 だが、すぐに立ち上がらねば致命的な事になる、それだけは理解できた。 コロシアムの中心にソレは居た。 まるで蛹から羽化するように、真人の殻を突き破りながらソレは現れた。 ソレを目にした瞬間、背の痛みを忘れるような怖気が全身に奔る。 理性よりも早く本能で理解できた。アレはこの世界に存在してはならない異物だと。 それは白い赤ん坊だった。 いや、一見するとそう見えるというだけで、ただの肉塊でしかないのかもしれない。 肉塊は病的なまでに白く、充血した眼球のように赤い線が雷鳴のように走っていた。 肉塊は沸騰したように沸き立ちながら膨れ上がり、腐り落ちる様に崩壊していく。 破裂と膨張を繰り返しながら、白い肉塊が苦悶とも歓喜ともつかない雄叫びを上げた。 「ああああああああああああああああああみみいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃッ!!!」 割れたガラスを飲み込んだような罅割れた絶叫がコロシアムに木魂する。 理性などなく、本能のみが残された獣の叫びは聞くだけで身が竦むような圧があった。 愛美は完全魔術によって、いくつもの魂を取り込み融合した存在となっていた。 一つの命に魂は一つ。 生命における絶対不変の法則だ。 複数の魂を押し込められる、そんな許容を持つ器は通常の人間にはない。 ならばこそ、巨大な器を持つ陣野愛美が完全魔術を与えられたのは必然であった。 その陣野愛美をもってしても万を超える魂の総量を受け止めるには人の形を捨てざるを得なかった。 肉体と言う器を失っても存在を保てたのは存在の核として強靭な自我を持って繋ぎ止めていたからである。 魂は陣野愛美と言う強靭な器に押し込められていたに過ぎない。 だが、システムによるペナルティによって愛美の魂はそこから排除された。 核がなくなり、器が壊れてしまえば押し込められた中身はどうなるのか。 その答えがこれだ。 殻である愛美の器を失い、人の形や大きさすら保てず膨張と崩壊を繰り返している。 核である愛美の魂を失い、その『残骸』だけが残った。 物理破壊などの外的要因による死ならば、そうはならなかっただろう。 核である魂だけが取り除かれるという例外に例外を重ねた結果、起きた不具合(バグ)である。 核を失った、複数の魂の融合体。 その主導権を握るのは、その中で最も意志の強い存在だろう。 魔王すらも押しのけ、表に出た意思は双つに分かれた魂の片割れだった。 「あ美あみアみ愛ミあ美あみ愛美ア美愛みアみぃぃッ!」 姉妹だった物の残滓を探すように白い赤子が四つ足のまま首を振る。 未だに彼女の魂は戦いの中にあった。 意識が入り混じっている。 コロシアムの中心で白い肉塊が膨張と崩壊を続けながら暴れ狂う。 肉塊から伸びた波打つ触手のような肉が無差別に叩きつけられ砂埃を舞わせた。 コロシアムで暴れ狂う『残骸』を客席から見降ろしながら善子は立ち上がる。 ピキリと背中に電気のような痛みが奔るが、こらえながら視線を周囲に這わす。 コロシアムの出入口は闘技場の東西にある二か所と客席にある東西南北の四カ所。 客席に吹き飛ばされた善子に一番近いのは客席北側の出口だ。 無理をすれば走れるとは思うが、逃げられるか? 「なっ………………!?」 そんな逡巡している間に、瓦礫の砕ける音がした。 伸びる様に膨張した肉塊が出口を破壊したのだ。 逃げ道をつぶされた。 理性がないようで要所は心得ている。 本能に刻まれるまで戦い続けた残骸の中の何者かだろう。 瓦礫を撤去すれば出られなくもないだろうが、そんな事をしている隙に殺されるのがオチだ。 破壊されたのは最寄りの北側の出入口のみだが、別の出入口にたどり着くのも難しいだろう。 そこに向かったところで、また先んじて破壊されるのがオチだ。 つまりもう、戦うしかない。 「……ちなみに、アレに決闘を挑むって言うのは認められるの?」 『アレとは何の事でしょう?』 シェリンが心底不思議そうに首を傾げる。 惚けているわけではないだろう。 AIであるシェリンがそんなことをする必要がない。 あの『残骸』は本来存在するはずのないバグだ。 システム側の存在であるシェリンには認識できていないのだ。 世界に破綻は広がっている。 その象徴がこの『残骸』だ。 『残骸』を見つめる。 全てが強さの上限に達したような、あの怪物ほどの凄みは感じない。 だが、この世界に存在してはならないような、不気味な不安定さがあった。 決闘と言う手段は封じられた。 つまり倒すには物理的に破壊するしかない。 アイドル美空ひかりの時間は終わり。 ここからは空手家美空善子の時間だ。 「コォ―――――――ッ」 息吹で痛みを和らげる。 先ほどの衝突で砕けた客席を蹴りだし、それを追うようにして駆けだす。 客席の上方から下り坂を一気に駆け抜け、闘技場へと飛び出す。 座椅子は触手のような肉の鞭に弾かれ砕け散った。 砕け散る椅子の破片を掻い潜って、振り上げた拳を叩き込む。 「ッ―――――セイッッ!」 肉塊が弾けた。 まるで水風船でも殴ったように柔らかい。 反射行動の様に弾けた傷口から細かな肉の槍が伸びる。 それを善子が手刀で払うと、千切れるように飛んで行った。 手応えはある。 理性のない動きも単調で読みやすい。 決して勝てない相手ではないだろう。 だと言うのに背筋に悪寒が止まないのは、背中に負った怪我のせいか。 その悪寒を振り払うように、蠢く肉の隙間を縫って蹴りを放つ。 穿つような蹴りは肉塊の中心を打ち付け、容易くその体を破壊した。 だが、肉体は繰り返される膨張により、すぐに修復されて行く。 『残骸』の肉体は善子の攻撃でも破壊できる程に脆い。 だが、それ以上の膨張力によってすぐに修復されてしまう。 これではキリがない。 「…………いやッ!」 違う、と気を吐くように言葉にした。 キリはある。 千切れた肉片は光の粒子となって消えていた。 この世界で死亡した人間の消え方と同じように。 『残骸』は核を失ったばかりで安定していない。 膨張と共に崩壊を繰り返しているのがその証拠だ。 この膨張と崩壊は愛美が取り込んだ数人分の魂が形を保てず漏れだしているのだ。 このまま崩壊して消滅するのか、新たな核を定めて安定するのか、それはわからないが限界はあるはずだ。 ならば、やるべきことは至極単純。 再生力が尽きるまで、再生力を上回る速度でブチのめす。 「――――ハァッッ!」 気合一閃。 左右から襲い掛かる肉の触手を回し蹴りで弾き飛ばすと、一気に畳みかける。 叩きこまれる拳の連打。 余りにも脆い『残骸』の体は次々と破裂する様に吹き飛んでゆく。 だが、吹き飛んだ肉片はすぐさま膨張によって補われ、爆発的に広がった肉片は再生に留まらず槍の様に伸びて善子の脇腹を掠めた。 「…………くっ」 だが、引かない。 歯を食いしばって前に出る。 ここが勝負時だ。 「ならっ、こういうのは…………どう!?」 善子が腕を振るうとキラリと空中で何かが光った。 そしてその腕を引くと、『残骸』の全身がボンレスハムの様に絞めつけられた。 トラップに使用したテグスの余りを巧く『残骸』の全身に巻き付けたのだ。 『残骸』が膨張を続ける限り自ら締めあげられる事となる。 だが、そうなったところで、膨張は『残骸』の生態だ。 止めようと思って止められるモノでもない。 拘束された状態で無理に膨張を続けたことで腕らしき肉が千切れる。 血とも体液ともつかないネバついた何かと共にボトリと落ちた。 善子はこれを好機と見た。 容赦なく、拳と蹴りの乱打を叩きこむ。 一撃ごとに肉体は弾けるように削れてゆく、その速度は膨張よりも早い。 「ぐぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 『残骸』の絶叫。 トドメとばかりに善子は天高く踵を振り上げる。 「ドォ頭カチ割りィ――――――ッ!」 最後の肉片を叩き潰すべく。 師匠譲りの稲妻のような踵落としを見舞う。 「ッ!?」 だが直前。その動きが僅かに鈍った。 その隙を突くように、テグスの隙間から伸びた針が善子の足を貫く。 踵落としは届かず、善子はその場に転がり落ちた。 「ッ……マズ…………った!」 トドメを刺すあの一瞬、躊躇ってしまった。 『残骸』の中にアイナの面影が見えた。 敵を撃ち抜く覚悟はあっても、味方を撃ち抜く覚悟が足りなかった。 足を貫かれ倒れこむ善子。 『残骸』の膨張力に耐え切れなくなったテグスがついに引きちぎられた。 抑えられていた衝動を解放するように、死の津波となって一気にコロシアムを埋め尽くす程に広がって行く。 絶望が希望を呑み込むように、白い腐肉は善子の全身を飲み込んでいった。 [陣野 愛美 GAME OVER] [美空 善子 GAME OVER] ■ 『おめでとうございます! 全エリアの支配権を獲得しました! 優勝目指して頑張ってください! 特別ボーナスを選択して下さい』 場違いに明るい祝福の声が響く。 現れた電子妖精に勝者は緩慢に視線だけをやった。 死の淵に立っている状態でありながら、明鏡止水のおかげか意識だけははっきりしている。 お陰で文字通り身を裂くような激痛までがいつまでもクリアだが、いい気付だろう。 「GPを選択する」 正義は特別ボーナスからGPを選択した。 【豪傑】の称号を持つシャを倒したことにより90ptのGPを獲得している。 ここにボーナスを加えれば正義のGPは233ptとなる。 死亡寸前のこの状態で不可解な選択だった。 この期に及んでGPが何の役に立つのか。 「このGPを使って問い合わせがしたい」 正義はそう切り出す。 だが、電子妖精はにべもなくこの要望を突っぱねた。 『問い合わせを行うのであれば交換機を使用して下さい』 「見ての通りだ。悪いが、交換機の所まで動けるほどの余裕はないんだ。 せめてシェリンが中継して回答するくらいの融通を利かせてくれないか?」 『そのようなサービスは受け付けておりません』 AIは感情があるようで、その実、感情を機械的に再現しているだけだ。 判断を委ねたところで杓子定規な返答しかできない。 なので問い方を変える必要がある。 「なら、”それが可能か問い合わせる”くらいはしてくれないか?」 シェリンに問い合わせるのではなく、シェリンに問い合わさせる。 判断をゆだねるのではなく、判断できる人間へのつなぎとする。 『確認します』 そう言って電子妖精はどこかに消えた。 ひとまず、第一段階はクリアである。 このゲームを始めた人間は存在する。 AIやプログラムの暴走である可能性も考えた。 だが、それを否定する材料があった。 ポイント使用して質問をした時、何者かに問い合わせる待ち時間があった。 それはつまり、問い合わせる先があると言う事である。 そう思わせるためのただの演出という可能性もあるだろう。 だが、例外的な判断が下されたのならば、それを判断したその裏にいる誰かの存在の証明に他ならない。 その何者かこそが、この最悪なゲームの元凶。倒すべき黒幕である。 何者かに問い合わせる時間。 いつも以上に長く感じられる、いや実際に長いのか。 もどかしいが、正義にできるのは黙って待つ事だけである。 『お待たせしました。回答を預かって参りましたので、ご返答します』 何とか出血多量で死亡する前に回答が来た。 だが安堵するには早い。 問題はその回答がどうなるかだ。 『特別にシェリンを介して質問に回答することが許可されました。 この私がデータベースに直接接続を行い代理回答いたします』 超法規的処置が通る。 それ自体が一つの大きな回答である。 シェリンはいざ知らず、その先に居る誰かはそれすらも理解した上での回答だろう。 無論、質問を取り次がせたのもブラフではない。 233ptのGPで質問できる回数は4回。 その為に取得したGPである。 「最初の質問だ。このゲームの目的は何だ?」 正義に残された時間はあまりない。 単刀直入に核心を問うた。 感情のない電子妖精は表情を変えず、変わらぬ微笑を浮かべたまま回答する。 『極限状況において世界に与えられた枠を打ち破る魂が存在するか、その検証が主な目的となります。 覆すべき世界として仮想世界『New World』を設定しました。 勇者という呼称は元となった『New World』における設定の流用と言うのが主ですが。 全を覆す個という存在、これを勇者と定義しその出現に期待を込めてそう呼称しています。 現在、目標を達し世界を凌駕する魂に至ったのは勇者『陣野優美』勇者『美空ひかり』の2名となります。 しかし両勇者とも命を落とし脱落したため回収は不可能となりましたが、ステータスの計測は完了しており、これより解析作業が行われる予定です』 淡々とシェリンは秘されていた目的を語る。 相槌を打つ余裕すらないのか、正義は無言のままただ指を動かしていた。 聞いた内容を漏らさぬようメモを取っているようである。 「2つ目の質問だ。何故俺たちが選ばれた?」 参加者たちが何故選ばれたのか。 『勇者の選考理由は3通りあります。 エントリー期間中に『New World』にアクセスした人間。 エントリー期間中にネットワーク上で話題となった人間から適性が高いと判断した人間。 そして『New World』の元となった異世界の住民。 外部から介入してきた例外が1名存在しますが、以上いずれかの条件を満たした対象から選定されています』 大方は正義の予想通り。 異世界と言うのは魔王がいた世界の事だろうか。 だが、まだ疑問は残る。 「その選考基準に当てはまらない参加者もいるようだが、例えば邪神はどうなる?」 邪神を名乗るあの幼女。 強いて言うなら異世界の住民という事になるのだろうが、他ならぬ魔王が邪神を違う世界の神であると言った。 条件に当てはまらない。 『『New World』に対して高次からの観測がありました。 これをアクセスと定義し参加する勇者として加えました』 邪神は高次元からの超常的視点により『New World』を捉えた。 それをアクセスと定義され魂の一部を捕らわれた。 他の参加者もこういった強引な解釈によって集められたのだろう。 「3つ目の質問だ。全ての支配権を得る事とゲームクリアの関連性は?」 ヒントから具体的な答えを問う。 GPを使用しようとも回答できないモノもある。 直接的な回答は不可能である可能性が高い。 『全ての支配権を得た人間が出現した時点で、ゲームは次の段階へ移行します』 だが、今なら。 正義が全ての支配権を獲得した今ならば、その条件は変わっている。 『次の段階へ移行すると、中央エリアに『救いの塔』が出現します。 塔の頂点に世界の支配権を持つ者がたどり着いた時点でゲームクリアとなります。 救いの塔に辿り着いた勇者は帰還(ログアウト)。その後、世界の支配権と優勝賞品が引き換えられます』 「その場合、他の参加者はどうなる?」 『クリア者が出た時点でゲームは終了。その他の勇者の魂(データ)はその時点で破棄となります』 つまり支配権を持つ物が塔に辿り着いた時点で他の参加者は終わり。 支配者を塔に辿り着かせない妨害と支配権の奪い合いに移行する。 それが次の段階。 恐らくこのルールと支配権の奪い方について公開される手筈なのだろう。 そうなれば支配権を持つ者は賞金首のように全参加者から狙われる事となる。 その狙われる当事者である正義は、その事実を気にすることもなく質問を続けた。 「支配権を持たない人間が塔に辿り着いた場合はどうなる?」 『塔の使用は可能ですが。ゲームは終了せず継続されます』 これで聞きたいことは聞けた。 次の質問へと移る。 「4つ目の質問だ。このゲームを始めた黒幕は誰だ?」 シェリンの先にいる人間。 この質問が始まった時点でその存在は明らかになった。 名前を聞いたところで分からないだろうが、聞いておかねばならない。 だが返っていたのは要領を得ない回答だった。 『我々の創造主です』 「つまり、このゲームの作成者という事か?」 既にあるVRゲームが乗っ取られたのだと思っていた。 そうでないと理屈に合わない不合理が多すぎる。 『そうであり、そうでありません』 電子妖精はこれを否定も肯定もしなかった。 相変わらず要領を得ない。 突き詰めたところでこれ以上は分かりそうになさそうである。 正義に残された残り時間を考えれば、この質問にそう長く時間を懸ける訳にもいかない。 「それでは最後の質問だ」 『残念ですが、質問を行うにはGPが不足しています』 質問は既に4度消化された。 GPは33ptしか残っておらず、質問を行う50ptには不足している。 「いいや、問題ないはずだ。ゲームルールに関する確認事項ならGPを使わずとも質問できるはずだろう?」 GPを使用るするのはゲーム内で説明されない項目を知ろうとした場合の話だ。 基本的なゲームルールの確認関してはその限りではない。 「支配権を持つ人間が死んだ場合、支配権はどうなる?」 『支配権は殺害した勇者に移譲されます』 いつぞやと同じ問いを繰り返した。 命の刻限が迫り、正義にとって一秒を惜しむ状況である。 ならば、これが無駄な問いである訳がない。 「では、質問を少し変えよう。このまま俺が死んだ場合――――支配権はどうなる?」 『――――――――』 シェリンはすぐに回答できなかった。 AIであるシェリンが、あろうことか言葉に詰まっていた。 正義に致命傷を与えたシャは既に死亡している。 それが意味するところは、つまり。 「そうだ、支配権は行く先がない」 行く先がなくなれば支配者なしの初期状態にクリアされるだろう。 本来であればそれでも問題はない。 再び塔を訪れ支配権の上書を行えば解決する問題だ。 だが、この殺し合いにおいてはそうではない。 「逆順にしたのは失敗だったな」 元のVRゲームから殺し合いに合わせるために調整した項目。 このゲームにおいてエリアは増えるのではなく除外されるのだ。 雪の塔と炎の塔をエリアは既に除外されており、新たに支配権を獲得することは不可能となっていた。 そうなると、正義の持つ雪と炎の支配権がクリアされると、このゲームはクリア不可能の詰みとなる。 「致命的な――――――バグだ」 『ガ――――――ガガ』 処理不可能なタスクを押し付けられ、電子妖精がフリーズする。 電子妖精にノイズが奔る。歪みは激しさを増して広がってゆき、その存在を散り散りに掻き消してゆく。 崩壊は電子妖精だけに留まらなかった。 テクスチャが剥がれたように世界の色が変わる。 配色を間違えたようなサイケデリックな色に染め上げられ、空に割れたようなヒビが奔る。 現実と見紛うほど精巧な世界。 精巧であるからこそ一つのバグで大きく歪む。 世界の崩壊、それに合わせる様に正義の意識も限界を迎えようとしていた。 いや限界など、とっくに超えていた。 その意識を辛うじて繋いでいるのは強い使命感だ。 出来る限りの事はやらなければならない。 そうでなければ死んでも死にきれない。 それは何のための使命か。 誰に強制されたわけでも、何の報酬があるわけでもない。 ただ誰か一人でも生き残るならば、それだけで報われる。 シェリンから聞き及んだ話は全てメールにしたためていた。 情報などこれから死にゆく者に意味はなくとも、これからも生きる者には意味がある。 送信先は連絡先を把握しており、生存している可能性のある人間全て。 月乃、ソフィア、アルマ=カルマの三名である。 この中の誰が生き残っているのか分からない。 もしかしたら、全員が死んでいて誰にも届かないかもしれない。 もしかしたら誰にも届かないかもしれない。 もしかしたら何一つ役に立たないのかもしれない。 それでも、何か希望が残せる可能性があるのなら。 祈りながら、メールの送信を選択した。 [大和 正義 GAME OVER] ■ 『『New World』を愛顧いいただき、ありがとうございます。 この度、進行不能となる致命的なバグが発生したため、強制的に『New World』を終了させていただくこととなりました』 機械的な音声が世界中に響き渡る 茜色に染まり始めた空は割れ、大地は歪む。 少女が走り出した途端、世界が変わった。 『GPについてはサービス終了まで引き続きご利用いただけますのでご安心ください。 未使用のGPの払い戻しはありませんので必要であれば強制終了までに使用するようよろしくお願いいたします』 まるで世界最後の日だ。 この世界はもうダメだとありありと突き付けられるようである。 『強制終了は10分後を予定しております。最期の時まで『New World』をお楽しみください』 崩壊する世界の中で、声を無視して良子は脇目も振らず中央エリアに向かって走っていた。 先ほど正義からメールが届いた。 そこにはこのゲームの目的。参加者の選考理由。ゲームのクリア方法。全てが書かれていた。 そしてその最後にはこう書かれていた。 『中央エリアに出現した救いの塔に向かえ』と。 その指示に従い、中央エリアに向かって良子は走り出していた。 いつ崩れるとも分からぬ不安の足場。 大地は所々ノイズのような暗闇が広がり、崩れ落ちたように欠損していた。 「わっ、と、と!?」 地面に走る黒いノイズをよける。 そこに在るのは穴などではない、何もない無だ。 落ちればどうなるかなど想像したくもない。 一言に中央エリアと言われても広大である。 どことも分からぬ塔を探すともなれば、それなりの手間がかかる。 慎重に進みたいが、いつ崩壊するとも分からない状況では急がねばならない。 だが、その心配は杞憂に終わった。 程なくして、それは目に入った。 遠目でもそうであるとすぐにわかる。 白亜の塔。 中央エリアの中央。 闘技場のあったはずの世界の中心にそれはあった。 その白さは壊れ行く世界の中で輝くように聳えていた。 目的地が決まれば迷う事はない。 救いへと続くその道筋を駆け抜ける。 だが、あと僅かで塔の麓に到達すると言う所で、良子は足を止めた。 塔の入り口を巨大な赤子が塞いでいた。 巨大と言ってもせいぜいが大柄な成人男性程度の大きさだが、赤子を思わせるのは不気味なまでの頭部の大きさだろう。 膿のように白い肉の塊は崩壊する世界よりも不気味な死をイメージさせる。 それはこれまでに出会ったどの殺人鬼ともましてやサメの少女とも違う。 アバターの外見設定などでは留まらない、異物。 この世界で初めて出会う正真正銘のモンスターだった。 ああ、それなのに。 「ヨ………ちゃ…………」 怪物が呻きをあげる。 どうして良子は、目の前の肉塊に懐かしさのような感情を抱いているのか。 見たことのない怪物は確かにこう言っていた。 ―――――ヨシコチャン、と。 見覚えなどあるはずもない怪物に、その真名を呼ばれる。 姿も声も仕草も、何もかもがまるで違うのに、それでも何故か彼を感じる。 「……………………勇太、くん」 その名前を口にした途端、想いが雫となって溢れだした。 目の前の相手がそうであると理解できた。 魂の『残骸』。 様々な意識の入り混じるその主導権は、もっとも意志の強い者が握る。 そして今、その主導権を握ったのは勇者でも魔王でもなく、どこにでもいるただの少年だった。 ただ友を慮る、そんなどこにでもあるような思い。 そんなものが他の意志を押し留めていた。 教室から遠い、校舎の片隅の空き教室。 こっそり持ち込んだお菓子を食べながら下らない話をして。 ゲームしているみんなの横で漫画を描いて、飽きたらまたお話をして。 そんな何でもない、どこにでもあるような放課後の風景が脳裏に浮かんでは消えて行く。 終わることなど考えた事もない、何の意味もなく、それでも確かに価値のあった風景。 そして、もう取り戻せない当たり前の日々。 嘆き喚いて、この未練にしがみ付きたい。 けれど。 だが、それでも。 全ては終わったのだ。 受け入れなければならない。 泣こうが喚こうが絶望しようが、何をしようとも現実は変わらない。 どれだけ残酷で理不尽であろうとも、もうどうしようもない事なのだ。 あるのは受け入れるか受け入れないかと言う、自分の心の在り様だけ。 「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 『残骸』が叫ぶ。 少年の意思が推しとどめられたのは一瞬の事。 より強い本能に塗り替えられそれも奥へと消え去って行く。 少女の脳裏に過った思い出たちの様に。 今や、目の前にあるのはただの排除すべき障害でしかない。 ならばこそ友達(ソーニャ)が大切な物(HSF)の終りを受け入れた様に、良子もその終わりを受け入れなくてはならない。 「…………クッ」 崩壊を始める茜色の空。 白亜の塔の下で白い肉塊と対峙する。 世界は黄昏に沈もうとしていた。 ならば、ならば――――――!! 「クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」 『残骸』の雄叫びにも負けぬ、弾けるような高笑いが轟く。 自らの存在を示す様に、堕天使はピンと天を指さした。 ならば、せめて自分らしく。 「天を照覧せよ! 偽りの太陽と月は剥され運命の扉は開かれた!! これより世界は真なる黄昏に堕ちる。 これより先はすなわちこの我! 『黄昏の堕天使』の時間であると知れっ!!」 朝でもなく夜でもなく、すなわち黄昏。 天使でもなく悪魔でもない、すなわち堕天使。 決め台詞に特に意味など無い。 ただ己らしく、最高に楽しく己を鼓舞すると言霊を吐くだけである。 成すべきことは一つ。 自分にできることも一つ。 最初からずっと掲げていた方針。 †黄昏の堕天使 アルマ=カルマ†として相応しい行動を! これこそが散って行った者たちへのせめてもの手向けだ。 「ウルズの鎖を越え、スクルドへと我は征く――――――――我が道を阻むならば相応の報いがあると知れ」 白い羽が舞い散った。 黒翼の片翼を持つ堕天使の逆背から白翼が広がる。 片翼の堕天使が、最終戦争にて封じられた白い翼を取り戻したのだ。 【封印されし天使】 それは良子が勝手に決めただけのこのゲーム内に存在しないスキルである。 正義からのメールにはこのゲームの目的が書かれていた。 世界を超える魂。 己らしさこそ魂の輝き。 世界観など超えて征け。 少女が望めば世界は変わる。 有馬良子は根本的に戦闘に向いていない。 良し悪しではなく人間的な向き不向きの問題だ。 この世界においても我道やソーニャに頼りきりで、援護程度の事しかできなかった。 彼女の本文は空想を広げる事である。 普段はその力を漫画に出力していたが、この世界では違う。 空想を広げるのは漫画ではなくアバターに。 妄想の翼を広げる イメージするのは最強の自分。 †黄昏の堕天使 アルマ=カルマ†になる。 「さぁ、盲目なるその眼を開きとくと見よ! 黄昏の堕天使、真の力をなぁ!」 堕天使の背に巨大な魔法陣が広がり、その力を示すように紫の雷が奔る。 いざと言う時のために使おうと思っていたとっておき。 ここまで使う機会はなかったけれど、使いどころは最初から決めていた。 支給品【特殊エフェクト】。 行う動作が派手になるだけで、実際の破壊力が上る訳でもない。 何の効果もなく役に立たないアイテム。 だが、カッコいい。 最高に気分がアガる。 堕天使が漆黒と純白の両翼をはためかせる。 外見設定で設定しただけのお飾りでしかない飛べない翼。 だが、しかし、少女は広げたその想像力の翼で黄昏の空に飛翔した。 大人になれば忘れてしまうような思春期特有の思い込み。 そう願う事、それこそが未来を創造する。 白い眼帯を投げ捨てる。 その下に封じられし金色の瞳が妖しく輝いた。 色違いの赤と金の瞳を輝かせ、天空より黄昏の堕天使は高らかに宣言する。 「さぁ! 最終戦争 -†- アルマゲドン -†- の開幕である!!」 終わる世界の中心で。 正真正銘の最終決戦が開始された。 曖昧な空に光の線を引くように、白と黒の羽をまき散らしながら堕天使が空を征く。 その周囲を縦横無尽に飛び回る球体があった。 ショックボールだ。 飛び回っているように見えるが、実際は超能力などではなく空中での3次元的お手玉をしているだけなのだが。 エフェクトの効果も相まって周囲に走る守護のようだ。 高速で飛び回りながら一つも落とすことない超絶技巧である。 「終焉堕天使より恵みをくれてやろう――――――爆滅終ノ嵐(バースト=テンペスト)!」 上空からショックボールを放り投げるだけの絨毯爆撃。 色とりどりのド派手な爆発と共に衝撃波が次々と広がり、『残骸』を吹き飛ばしてゆく。 「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」 テンションに任せたヤケクソ気味な高笑い。 強がりのようなそれだけで、絶望を吹き飛ばすような高揚がある。 だが、エフェクトは見せかけ。 実際は『残骸』の消滅にまでは至らない。 外部からの刺激に『残骸』の生存本能が反応した。 肉塊はアメーバのように広がると、上空の堕天使を包み込むように飛び掛かる。 だが、それを弾く様にパチンと巨大な雷電が弾けた。 「――――――慈悲なる轟雷帝王(ゼウス・インディグネイション)」 ド派手な輝きはエフェクトの効果だが、電撃は本物。 棒状のスタンガンを押し当てた事により、ネバついた筋肉が硬直し地面に落ちる。 その隙に堕天使は窮地を脱するように空を駆ける。 べちゃりと地面に落ちた『残骸』がコポコポと沸き立つ。 白い腐肉がスライムみたいに融けて混じって、全身を不気味に震わせながらその形を変える。 人の形を捨て、全身が巨大な手のような形となった。 巨大な手はゴムのように伸びて上空を飛ぶ堕天使の足を掴んだ。 「ッ…………いッ!!」 堕天使が短い悲鳴を上げる。 不定の肉塊。手の平は既に鋭い牙へとその形を変え、足首を掴むのではなく噛み付いていた。 足首に牙をを喰らい付かせたまま、ずいと地上へと引きずりこむ。 地面に叩きつけるとともに、そのか細い足首が噛み千切られた。 激痛に絶叫を上げようとする堕天使の口をトリ餅のようにネバついた白い肉が塞ぐ。 穢れなき堕天使の体を腐肉が飲み込んでいく。 藻掻くように手を伸ばす。 だが、全身に纏わりつく腐肉から針が付きだしその手を貫いた。 まるで鉄の処女(アイアンメイデン)のように全身を串刺しにされる。 痛みに動きの止まった所に、次々と針が刺さる。 容赦なく全身を串刺しにして、突き刺さった針は内部から棘を枝分かれさせた。 内側から体中を蹂躙すると、腹を食い破るように引き裂いた。 「ぁ…………ぁっ」 奇妙なオブジェと化した堕天使が小さな喘ぎのような声を漏らす 白い腐肉が中央から避けるように割れ、その顎を開いた。 巨大な絶望の顎がひらかれ全ての希望を託された堕天使を喰らう。 崩壊する世界。 洞のような絶望が次々と希望を食らって行く。 そんな凄惨な光景が繰り広げられていた。 絶望の果てに全ては無意味に終わる。 そんな光景が、ガラスの様にパリンと割れた。 「――――ジャスト一分である」 1分間の幻術を見せる幻惑の魔眼。 『残骸』は良子の想像力の檻に囚われていた。 眼帯を外しその魔眼が露になった瞬間から、全ては幻であった。 その隙に全ての準備は整った。 両腕に巻かれていた封印(白い包帯)は解かれた。 「来たれ、来たれ、来たれ、黄昏より来たれ! さぁ! 準備は整った! くくっ。いでよ我が内に封じられし黒炎を纏いし漆黒の黒龍よ! 3000年ぶりの目覚めだ! 存分に暴れよ黒龍! 最終戦争で我の片翼を奪いったその最強を見せつけるがよい!」 年数は適当その場のノリだ。 設定も今考えた。 最高にイカしてる。 堕天使の内より漆黒の龍が飛び出した。 魔界の黒い炎を纏う龍が白い肉塊へと巻き付く。 そのまま黒炎は『残骸』周囲を回り続け黒い繭の様に包み込む。 肉塊の再生力を上回る火力。 オーブンのように白い肉を焦がしながら黒繭が徐々に小さくなっていく。 必然、その中にある『残骸』もまた。 「さらば。我が最愛の宿敵よ! さらば、我が妄執の盟友よ! さらば、我が安息の日常よ……!」 全てに別れを告げる。 伸ばした掌に、そこに収まるほど小さくなった繭を重ねる。 未練や後悔、執着に。 「――――――さらば」 虚空を握り潰すと、それに合わせる様に漆黒の炎が消滅する。 その跡には、何も残らなかった。 ■ 『繰り返します。進行不能となる致命的なバグが発生したため、強制的に『New World』を終了いたします』 無機質な警告音が繰り返される。 世界の崩壊は止まらなかった。 『強制終了時にはゲーム内に残存する保存されていない魂(データ)はすべて破棄されますので、ご了承ください』 一方的な告知にご了承も何もない。 同好会のみんなが運営の横暴さを嘆いていたが、こう言う事かと今更中がらに実感する。 『それでは。強制終了までの僅かな時間ですが、最期の時まで『New World』をお楽しみください』 『残骸』を乗り越えた良子は塔の螺旋階段を駆け抜けていた。 遅刻寸前の学校の階段を駆けるように、色違いの翼を羽ばたかせ十段飛ばしで階段を駆け上がる。 ――――救いの塔。 その意味を、良子はようやく理解した。 同好会のみんなだったならもっと早く、それこそすぐにでも気づいただろう。 なにせ、その役割は最初からその名が示していた。 救い(セーブ)の塔(ポイント)。 ゲームならば当たり前にある、状態を保持するための機能。 四つの塔は勝者を決める物だとしたならば。 救いの塔では生還を保証する物である。 この二つが合わさって勝者の生還は成し遂げられる。 世界の支配者である正義は死亡し勝者はいなくなった。 だが、ゲームが崩壊したとしても魂を維持する救いの塔の機能は生きている。 故に、正義が矛盾を指摘するのは自らが支配権を得て塔が出現したあのタイミングしかなかった。 塔の頂上に辿り着く。 円形のフロア。大理石の様な白くツルツルとした足元。 その中央には四つの塔の頂点にあったのと同じ、光り輝くオーブがあった。 輝く白いオーブ。 先ほどの『残骸』の様な白。 あるいは、何か希望のような。 良子がここまで辿り着けたのは良子だけの力ではない。 ずっと助けてくれたみんなが、ここまで導いてくれた。 良子を立ち上がらせてくれた誰か。 そしてまたその誰かを支えた誰か。 そのどれが欠けたとしてもここに辿り着くことはできなかっただろう。 多くの希望や願いがあった。 その願いの果てに良子はここにいる。 黒い虚無が浸蝕するように塔へとたどり着く。 円形のフロアが端からハラハラと崩れ始めた。 絶望に追いつかれないように、一歩踏み出す。 カツンという足音が響く。 手を伸ばす。 その希望に触れる。 瞬間、世界が白に包まれた。 [New World SHTU DOWN] [有馬 良子 LOG OUT] 082.ハッピー・ステップ・ファイブ 投下順で読む 084.エピローグ -私らしく君らしく- 時系列順で読む Deep Blue Sea シャ GAME OVER 大和 正義 GAME OVER リベンジマッチ 陣野 愛美 GAME OVER 美空 善子 GAME OVER ハッピー・ステップ・ファイブ 有馬 良子 エピローグ -私らしく君らしく-
https://w.atwiki.jp/magichappy/pages/1240.html
▼● A Spoonful of Sugar アモーラさんに薬を作ってもらった。 早速、ドラギーユ城にいる ラジュリーズに届けよう。 南サンドリア ※ヴァナ時間0時経過後。 Amaura ……ほら、薬ができたよ。 持ってきな。 Amaura どこの誰に使うんだか 知らないが、助けておやり。 だいじなもの 鎮静薬を手にいれた! 鎮静薬 ケルヌンノスの樹脂を材料に、 アモーラさんが作った秘薬。 痛みを軽減するのが目的で、 怪我や病気そのものを治すことはできない。 Lilisette ありがとう! アモーラさん! Amaura ……リリゼット。 前も言ったが、それは病気を治す薬じゃない。 Amaura 症状と痛みを、一時的に 軽減する役割しかない。ただの鎮静薬、 気休めじゃ。勘違いしちゃいけないよ? Lilisette ……うん、 わかってる……。 Amaura あんたの父親は、どんな 薬をもってしても治せなかったからね……。 Lilisette ……。 Lilisette さ、[Your Name]。 届けに行こう。 Amaura ……ほほほ、あの泣き虫が なかなか立派になってねえ。 Amaura 小さい頃は、ハーフだなんだって からかわれて、よくうちに 真っ赤な顔して、駆け込んできたんじゃよ。 Amaura 親を亡くしてからは ひとりで寂しそうにしててねえ。 アタシがよく相手をしてやったもんさ。 Amaura しかし…… Amaura ……どうやら、友達を 見つけたようじゃな。 Amaura ……ほほほ、あの泣き虫が なかなか立派になってねえ。 ▲ 白い涙、黒い泪 彼の世に至る病 国務、携えし ■関連項目 アルタナミッション , 南サンドリア Copyright (C) 2002-2013 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
https://w.atwiki.jp/victoryguy/pages/18.html
redkeyに至る階段