約 1,320,039 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/478.html
「私の生み出した『バオー』よ、もう間に合わん…爆発はここまで来る… フフフフ…わしとお前が死ねば…ドレスの研究も終わりだ…」 鍾乳石が突き刺さった老人が、血を吐きながら言葉を発する。 5 4 3 その後ろでカウントダウンの声が響いている。 「この神秘的な洞窟こそわしらの墓場に相応しかろう!」 2 さらばバオー! さらば少年よ! 1 0(ゼロ)!! 辺りが光に包まれ、それと同時に洞窟が崩れていき、凄まじい勢いで水が打ち寄せてくるのを感じる。 意識が遠くなっていく、おそらくこのまま自分は死ぬのだろう。 スミレは無事逃げ出してくれたのだろうか? そう考えた次の瞬間、彼の意識は閉ざされた。 そして次に彼が目を開けた時、ピンク色の髪をした少女に唇を奪われていた。 な、なにをするだァーッ! 混乱のあまりそう叫びそうになるが、突如焼け付くような痛みを感じ、彼はうずくまった。 「くっ、これは!?い、いけない!」 痛みそのものではなく、それがもたらす『変化』を恐れ、思わずそう叫ぶ。 「だ、大丈夫よ、『使い魔のルーン』が刻まれているだけだから」 いきなり彼が目を覚ました事に驚いたのか、彼のただならぬ雰囲気を察したのか、 先程の少女が恐る恐る彼に話しかける。そしてその言葉通り、程なく痛みは治まった。 何とか平静さを取り戻した彼がまず最初に考えたのは、自分はドレス、またはそれと同じような組織によって 助けられた、いや、モルモットとして捕らえられたのではないか?という事であった。 辺りを見回してみると、奇妙な生物が何匹かいる、漫画やゲームのモンスターそっくりな生き物達。尋常ではない。 だが、次の瞬間疑問も沸き起こる。周りにいる人間の服装の奇抜さにである。 もし彼らが研究員なら、白衣を身に着けているだろうし、自分を警戒しての戦闘員にも見えない。 そもそも自分が何であるかを知っていれば、開け放たれた外で目覚めさせる事などしないだろう。 (それにしても…) どうにも周りの人間は、自分を、いや自分の横にいる少女を嘲笑っているような感じである。 「これがッ!これがッ!これがゼロのルイズだッ!」 「な、何てことだ!一日一日、ゼロのルイズは確実に進化しているんだ!」 マイナス…ルイズはあと数日でマイナスになるぞ!お、おそろしい!」 等という言葉も聞こえ、ますます状況がわからなくなる。 彼女は機嫌が悪かった。 ご機嫌斜めだった。 それもそうである、初めて魔法に、しかも一生を左右するサモン・サーヴァントに成功したと思ったら、 平民が召喚されてしまったのである。 しかもその平民に、貴族である自分のファーストキスを捧げてしまったという現実! あと、いきなり起き上がったその平民に、そう平民にちょっとビビってしまったという事も。 メルヘンだッ! ファンタジーだッ! こんな体験できる奴は他にいねーッ! 等とポジティブに考える事など出来よう筈もない。 教官のミスタ・コルベールがルーンを見て珍しいなどと言うものだから、ちょっと期待したが、 あとは特に何を言うという事もなかった。 「はぁ…なんで私が平民なんかを…」 飛行魔法で校舎に戻っていく教官と級友を見送りながら、ルイズはため息をついた。 「君、これはいったい!?あの人たちは!?」 何かを叫んでいる自分の使い魔…認めなければならないだろう、『自分の使い魔』にむかって口を開く。 「あんた、名前は?」 「え?」 「だから名前はなんて言うのよ!?」 貴族の質問にさっさと答えないとは、どうやら頭の回転も悪いらしい…と、益々憂鬱になる。 「育郎…橋沢育郎…」 困った顔でそう自分の名を告げる平民を見て、彼女は「変な名前」と思いながら、再びため息をつくのであった。 しかし彼女はまだ気付いていない、『彼ら』が最強の生命力を持った使い魔であることを! 「なんだかものすごく嫌な予感がするわ…」 一方そのころ、超能力ではなく女の勘で、橋沢育郎が助けた少女スミレは、人知れず不機嫌になっていた。 To be continued…… 戻る
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1524.html
自分の使い魔をルイズが追いかけていった暫く後、彼女は使い魔を連れて戻って来た。 いや、正確には『抱きかかえて』戻って来たのだ。 疲れきったのか、犬の足が力無くぷらぷらと揺れている。 ぐったりとした表情で、横を向いた口元からだらしなく舌が出ていた。 「ルイズ、おまえ。使い魔が倒れるまで追いかけ回したのか?」 マリコルヌのその言葉に収まりつつあった笑い声が再び広がる。 ルイズは黙ったまま僅かに唸り声のような声をあげるのみ。 言い返す言葉も無いというよりも、そもそも気力が無い。 コントラクト・サーヴァントの最中にも顔を舐められ、使い魔同様彼女も心身ともに疲れきっていた。 「ふむ、どうやらコントラクト・サーヴァントは無事終了したようですな」 抱きかかえた使い魔の前足をひょいと掴み、コルベールが刻まれたルーンを確認する。 これで最大の不安要素であったルイズを含め生徒全員、使い魔の召喚は終了した。 無事に終わった事に胸を撫で下ろし、始祖ブリミルに感謝を捧げる。 しかし、授業の時間も(主にルイズと使い魔の追いかけっこの所為で)押している。 まだ生徒達の悪乗りも覚めやらないが、ここで威厳を見せねば教師ではない。 「さぁ皆さん、教室に戻りますぞ!」 ぱんぱんと手を叩く音に合わせて返事をした生徒達が次々と空を舞う。 残されるルイズとその使い魔。 彼女は魔法が使えない。なら歩いて教室に戻るしかないのだが今の様子では厳しいだろう。 疲労困憊の彼女達にコルベールは手を貸そうとしたが、ルイズはそれを丁重に断る。 自分だけ特別扱いを受ける訳にはいかない、それが理由だった。 己に厳しくあろうとする彼女らしい発言だ。 “ここで手を貸せば彼女の誇りが傷つく” そう判断したコルベールは『遅刻はしないように』と付け加えて去って行った。 「いい? ちゃんと付いてくるのよ」 使い魔をその場に置いてルイズは歩き出す。 だが数歩歩いたところで立ち止まった。 後ろから使い魔が付いてくる気配が無かったのだ。 振り返ると、置いた場所で横たわる使い魔の姿。 しかも、寝息を立て完全に睡魔に身を委ねていた。 「ちょっと! なに寝てるのよ!?」 戻って身体を揺さぶってみても起きる気配は無い。 そうなってしまうのも無理もない。 命懸けの逃走で疲弊した上に、残った体力も今ので使い果たしたのだ。 身体を動かしていた緊張の糸は完全に途切れ、彼は母親に抱かれた赤子のような安心感に包まれていた。 自分を置いてすやすや寝入ってしまった使い魔を見て、ルイズは呆れ果てた。 ルイズに彼の心境は分からない。だから『遊ぶだけ遊んで疲れたから寝てしまった』と思っていた。 「起きないと置いていくわよ? いいの? ホントに置いていくんだからっ!」 叫んだところで意味は無い。使い魔の意識は既に夢の中だ。 返答さえしない使い魔に怒りが込み上げてくる。 こっちだって疲れてるのに、抱っこして運ぶなんて冗談じゃない。 第一、疲れている理由だってアンタのせいだし。 それにご主人様の言う事、ちっとも聞かないし。 でも、外に出して風邪でも引かれたら困るのは私だし、使い魔の管理も主の仕事……よね。 彼女は心の中でそう愚痴りながら、振り返らずに教室へと歩む。 その小さな腕の中に自らの使い魔を抱えたまま…… 「ふぅ……前途多難だわ」 馬小屋から貰ってきた藁の上に使い魔を寝かせ、自分もベッドに横になる。 大きく分けて使い魔には三つの役割がある。 一つ、使い魔には主人の目となり耳となる。 その為の能力が使い魔には与えられる……筈なんだけど、何故か私には出来ない。 二つ、主人の求める物(主に秘薬など)を見つけてくる。 これは犬なんだから出来そうな気はするんだけど本人にやる気があるかどうか。 三つ、使い魔は主人の身を敵から守る。 ……アイツが勝てるような敵って何よ? 野良猫? 害虫? 溜息が洩れる。 主人に手間ばかり掛けて出来る事はゼロの駄犬。 『ゼロのルイズ』に『ゼロの使い魔』。 いいコンビだと『風邪っぴき』のマリコルヌならそう囃し立てるだろう。 ……ダメ、諦めちゃダメよルイズ。 今できる事がゼロなら、これから一つずつ覚えていけばいいじゃない。 そうだわ。明日から徹底的に訓練して名犬にすればいい。 小姉さまが犬に芸を教える姿を私は見ている。 それを真似すれば私にだって出来るはず! “使い魔を名犬に育てる” 固い誓いを胸に毛布の中に潜り込み、睡眠を取って明日に備える。 真似をするついでに胸も大きくならないかなぁ、と無茶な妄想と共に瞼を閉じた。 「いい? ちゃんと取ってくるのよ」 使い魔の前で木の棒を振り気を引いたところで遠くに放り投げる。 果たして取りにいくのか、あるいは棒を咥えたまま戻ってこないかもしれない。 そんな心配を余所に、使い魔は一目散に駆け出しそれを咥えて戻って来た。 「やればできるじゃないっ!」 心から溢れだす満面の笑み。 嬉しくなって使い魔の頭を撫でる。 ルイズにとっては訓練でも、彼にとっては遊びだった。 だから何故ルイズが喜んでいるのかは分からなかったが、 それでも今のルイズの笑顔は嫌いではなかった。 ……いや、むしろ好きだった。 あの笑顔があれば、いつまで続けても飽きる事はないだろう。 「見ろよ。ルイズのヤツ、使い魔と遊んでるぜ」 「いい気なもんだよな。名門貴族だからって」 早朝から始められた訓練も、周りから見れば遊びだった。 主と使い魔は一心同体。 今、彼女たちがやっている遊戯など誰でも出来る。 この光景は『ルイズの使い魔はそんな事もできないのか』と評価を貶めるだけ。 それでも彼女達は構わない。周りの評価などどうでもいい。 どんなに惨めでも必死に足掻く姿を恥じる必要などない。 その真意を理解できる者は多くはない。 数少ない彼女の理解者が彼女に声を掛ける。 「面白そうな事してるじゃない。ルイズ」 「何の用? 私、こう見えて忙しいんだけど」 「私には遊んでるようにしか見えないんだけど。で、これを投げればいいの?」 「ふん。アンタが投げたって取りになんていかな……何で取りに行ってんのよアンタ!」 突然の主人の激昂に驚き、咥えた棒を取り落とす。 ヴァリエール家とツェルプストー家の長きに渡る因縁を召喚されたばかりの犬に理解しろとは無理な話だ。 使い魔は理不尽な怒りに脅えるばかり。 それをキュルケが、よしよしと頭を撫で落ち着かせる。 ……傍から見れば、どちらが飼い主か分からない構図だ。 「授業」 そんな二人の間にタバサが割って入る。 見れば、他の生徒達もちらほらと教室に向かっている様子が窺える。 「よし、じゃあ訓練はここまで。私達も教室に行くわよ」 「はいはい」 教室に向かう三人を見送り、彼は辺りを見回す。 まだ、ここへ来て二日。世界は果てしなく広い。 他に何があるのか、期待に胸を膨らませて冒険に旅立つ…! 「アンタも来るのよ!」 走り出そうとした矢先、首根っこをあっさりと掴まれ主人に引っ立てられる。 ざんねん!! 彼の冒険は、ここでおわってしまった!! 「このように魔法は四大系統に分かれており…」 ぴすぴすと鼻を鳴らしながら抗議するバカ犬を無視して羽ペンを走らせる。 どうやら訓練が終わったら遊びに行けると思っていたらしく不機嫌この上ない。 しかし授業を邪魔する様子もないし、このまま放置しておこうと決めた直後。 「では貴方、そこの貴方」 呼びかけられた声に気付き、顔を上げる。 壇上で新任のミセス・シュヴルーズが私を指している。 「お名前は?」 「ルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールです」 「ではミス・ルイズ。錬金でこの石を金属に変えてください」 錬金の実演に壇上へと向かう私にクラスメイト達の怯えた視線が集まる。 引き止めるキュルケを無視し壇上へと立つ。 ある者は机の下に隠れ、ある者は少しでも離れようと席の端に移動し、 そして、ある者はそそくさと教室から退出……ってタバサじゃないっ! いいわ、見ていなさい。 昨日までの私とは違うんだから。 使い魔がちょっとアレだけど、サモン・サーヴァントには成功している。 だからもうゼロじゃない。 出来る。出来ると信じれば必ず出来る……! 正直微妙な成功に裏づけされた彼女の自信。 それが彼女の力を最大限にまで引き出す。 ……そして。 周囲に響き渡る爆発音。 天井から降り注ぐ破片に、逃げ惑う生徒達の絶叫。 我先にと逃げ出す生徒達がひしめき合い出口は騒然となる。 使い魔達も飛べるものは皆、窓から逃げ出した。 この場に残っているのは、ルイズを含めた生徒数名と気絶したミセス・シュヴルーズだけ。 それと、何が起こったのか分かってない犬が一匹。 「だから言ったのに! 余計ひどくなってるじゃない!」 「うるさいわねっ! ちょっと失敗しただけでしょ!」 「……まぁ破壊力が上がったって意味では上達したとも言えるかもね」 言い争う二人の間にギーシュが茶々を入れるが完全に蚊帳の外。 睨み合う互いの目から凄まじい電流が飛び散り他の物など視界に入っていないのだ。 出来れば三人に早々に避難してもらいたいのだが、そうもいかないらしい。 かといって女性より先に逃げるのは自分の誇りが傷つく。 やれやれ、と同じくアウト・オブ・眼中仲間の犬と視線を合わせる。 “なるほど。忠誠心は人一倍あるのか” 誰もが口を揃えて駄犬と言うが、どうやらそうでもないらしい。 先の爆発騒ぎで主人より先に逃げる使い魔もいたが、この犬は違うらしい。 ルイズがこの場から離れない以上、逃げるつもりもない。 随分と勇敢な使い魔だ、とギーシュはそう評価した。 ……本人に何が起きたか分からずに、きょとんとしているだけなのだが。 ふとギーシュの脳裏に違和感が走った。 ……いつもより大きな爆音。 それを聞いた生徒達は一目散に逃げ出した。 だが、音に比べて被害があまりにも少なすぎる。 再び降り注ぐ破片。 ギーシュと彼が同時に頭上を見上げる。 瞬間、驚愕に言葉を失った。 ……亀裂の走った天井。 降り注ぐ破片は爆風に巻き上げられたものではない。 今も微かな悲鳴を上げる天井、その瓦礫。 爆発はここではない、上で起きたのだ。 自重により崩落の危険はさらに加速していく。 次々と広がっていく亀裂の下には白熱する二人。 「二人ともケンカを止めるんだッ! そこは危……」 「ギーシュ! アンタはすっこんでなさいっ!」 必死の呼び掛けも一喝され届かない。 仕方ない。レビテーションで無理矢理にでも! ギーシュのその判断よりも早く使い魔は主の元へ駆ける。 壇上へと上り、その場から引き離そうとローブを噛んで力の限り引っ張る。 「ちょっと何するのよ! 離しなさい!」 だが、その行動も理解されなければ無意味。 そして理解した時には遅すぎた。 一際大きな破砕音に全員の視線が頭上に集中する。 刹那、堰を切ったように煉瓦の雨が二人に降り注いだ。 悲鳴と共に二人の姿が砂煙に消えていく。 その光景にギーシュの身体が凍りつく。 二人が飲み込まれるのを黙って見過ごすつもりはなかった。 だが動けなかった。突発的な事故に反応など出来る筈がない。 それでも助けるぐらいの事は出来たんじゃないのか、と唇を強く噛んだ。 「大丈夫」 後悔するギーシュの横をタバサが通り抜ける。 軽く振り上げられた彼女の杖。 立ち込める砂煙がそれに合わせるように払われていく。 開けた視界に浮かぶ二人の無事な姿。 その周囲には二人を避けるようにして煉瓦が散らばっている。 「……死ぬかと思ったわ。ありがとタバサ」 「どういたしまして」 生きるか死ぬかという瀬戸際にあったにも関わらず平然と挨拶を交わす二人。 拍子抜けしてしまうような光景だが、自分には真似出来ない。 真似できないのは度胸だけじゃない。 咄嗟に反応し最善の魔法を選択した判断力。 ただ無口で根暗な少女ぐらいにしか思っていなかったが、 彼女はこういった危機的状況に直面した事があるのだろう。 ……いや、そうであってほしい。 そうでなかったら男としての面目が立たない。 「全くひどい目にあったわ」 「アンタのせいでしょ! アンタの!」 同じく瓦礫を除けながら立ち上がるルイズをキュルケが責め立てる。 無事で何よりだが、元気が有り余ってるのはどうかと思う。 それにしても…… 「凄いな。君の風の魔法は」 「あっちは違う」 「へ?」 返答の意味を理解できずにギーシュが立ち止まる。 それだけ告げるとと少女はさっさとこの場を立ち去ってしまった。 ギーシュに説明できないのも無理はない。 タバサ自身、何が起きたのか分からないのだ。 あの時、確かに旋風の守りで二人を守ろうとした。 一人ならまだしも二人とも守りきれるかは不安だった。 だが、ルイズに届いた煉瓦は一つとしてなかった。 そして彼女の周りに落ちている物を見て驚愕した。 氷のように溶け落ちた天井の残骸。 ルイズの魔法ではない。 キュルケの炎でも降り注ぐ煉瓦を一瞬で溶かすなど不可能だ。 残された可能性は唯一つ。 彼女の脳裏に浮かんだのは、ルイズのローブを噛んだまま眠ってしまった一匹の犬の姿だった…… 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/kurokage136/pages/105.html
注意!!この話はMM逃走中 もう1つのゼロワン編の後日談であり、他者の二次創作ダンガンロンパアナザー2のネタバレが含まれております! カキコだと多数の目に留まるのでwikiに載せることにしました。 全てが終わったゼロワン世界。 だが、解決してない問題がまだ1つ‥‥‥‥ これは1人のどこにでもいる乙女が成長した、その代償の物語。 エピソード episode1 成長と変化の末に episode2 掴み取った幸福 episode3 壊れたマリオネット episode4 hunting Wolf episode5 狂喜と恐怖はすぐ側に episode6 悪魔が殺意を抱いた時 episode7 途切れないココロ episode8 夢ウサギVS呪グモ episode9 やっぱりあたしは絶対負けない仮面ライダー Final episode ゼロからワンへ あとがき
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/536.html
橋沢育郎、17歳。 彼は半年前まで、ただの高校生だった。 だがあの日、家族旅行で交通事故にあったあの日から彼の人生は一変した。 秘密結社ドレス 彼の体に何らかの処置を施し、恐ろしい力を与えた存在。 生物兵器、サイボーグ、超能力者…それまで現実に存在しているとは思いもよらなかった存在が、 ドレスの命で彼に襲い掛かってきた。 たった数日の事である。 故に彼はある程度非常識な事に耐性があった、しかし 「つまり…ここは地球じゃなく、魔法使いが住んでいる国という事か…」 非常識にも程がある そう思わずにはいられない育郎であった。 「それ、本当なの?あんたが異世界から来たって」 目の前のピンク色の髪をした少女が胡散臭げに口を開く。 彼女の名前はルイズ、魔法を使える一族、すなわちこの世界の支配者階級である貴族であり、 育郎を『召喚』して、この世界に連れてきたと言っている少女である。 「信じろって言っても難しいだろうね、僕だってあの月がなければまだ半信半疑だったと思う」 窓の外に浮かぶ、2つの月を(今夜何度目なるだろう?)見て答える。 召喚された後、目の前の少女と会話をしてわかったことは、ここが剣と魔法…もとい、魔法が支配する ファンタジーな世界であり、自分はこの少女の『使い魔』として『召喚』されたという事。 彼女曰く、使い魔とはッ! ひとつ、素敵なり! ふたつ、決して主人の命に逆らわず! みっつ、決して主人のそばを離れない! よっつ、あらゆる敵から主人を守り、しかも敵の能力を上回る! そしてその姿は主人(ルイズ)のように美しさを基本形とする。 「そんな使い魔を求めてたってのに、なんであんたみたいな平民が出てくるのよ!」 「そんな事を言われても…」 「しかも異世界って何よ、異世界って!ファンタジーやメルヘンじゃないんだから!」 「僕から見れば、この世界がファンタジーやメルヘンなんだけど… ひょっとして他に、鏡の中の世界なんてのもあるのかもね」 「あるわけないでしょ!」 あるよ とにかく育郎の方でも、自分がこの世界の住人ではなく、魔法が存在しない…とこの数日の経験から 言い切れなくなったが、その話をするとややこしくなるので、とにかく魔法が存在しない世界から来たと伝えた。 しかし自分同様、異世界から来たという話をほいほい信じるわけもなく、今もこうやって、彼女は疑惑の視線を 自分に向けているというというわけだ。 「それで…『使い魔』だっけ?僕を元の場所に戻す魔法はなんてのは」 「ないわよ!というか戻せる者ならとっとと戻して、とっくに新しい使い魔呼んでるわ!」 この少女、先程からとにかく怒鳴りまくっている。 (でも、しかたないか…) 一方的に呼び出されて怒鳴られながらも、育郎はそう考えた。 なにせ話を聞いてみると、『使い魔』の『召喚』はとても神聖なもので、呼びされる使い魔が、その魔法使いの人生を 決めると言っても過言ではないとまで言われているらしいのだ。 「どうして?何で?よりによってこのアタシの使い魔が平民なのよ!」 「ごめんね」 「へ?」 予想外の言葉に、今日一日全開だった怒りゲージがゼロになる。 「えーと、今なんて?」 「すまない…どうやら君に迷惑をかけてしまったようだ」 これはどういうことだろう? 混乱する頭でルイズは考える。 自分が怒鳴っている事は、はっきり言ってただの八つ当たりである。理不尽極まりない。 この平民が反抗しようものならムチを一振り 口で(そんなはしたない事言えないわ!)をたれる前と後ろにサーをつけろ! 等といってネチネチいびり倒し、ストレスを解消するつもりだったのに。 しかし今、目の前の平民の口から出た言葉は何? ごめんなさい ひょっとして謝っている? いや、待て、素数を数えて落ち着くのよルイズ…ゼロ、ゼロ、ゼロ 誰がゼロよ!ていうか素数じゃないし! それはともかく 相手は平民、つまり貴族たる私には絶対服従。 何もおかしい事はない、おかしい事はないのだが… (なんか、何時もと違うような…) 平民が貴族に謝る時はかならず脅えなり、反抗なりの感情が見えるはずだ。 しかし目の前の平民は、脅えも反抗もなく、ただ自分の非を認めて(そんなものないのだが)謝っている。 「どうかしたのかい?」 「え?ああ、うん…つ、使い魔としての心構えは良いようね、寛大な心で許してあげるわ」 無理やりそう思い、思考を目の前の現実に戻す。 「それで…どうしてもその…君の使い魔にならなきゃ駄目かい?」 「…当たり前よ」 使い魔の召喚はやり直しは聞かないのである、使い魔が死ねば新たな使い魔を償還できるようになるが、 さすがにそんなことをやる気にはならない。 「そうか…」 育郎は、自分のことを考えてみた。 自分の父と母は交通事故で(正確には違うのだが)死んでいる。 他に家族は居ないが、友人達は自分を心配しているかもしれない。 そして彼がなによりも気がかりなのは、ドレスから一緒に逃げ出したスミレという少女の事である。 目の前の少女より一回り小さく、歳も…確かまだ9歳のはずだ。 予知能力を持っていたせいでドレスに捕まり、ひょんなことから捕らわれた自分を解放してくれたのである。 最後のあの時、彼女はあの爆発から逃げ出せたのだろうか? 無事だとしたら自分のことをさぞ心配しているだろう… そして、彼は決心して口を開いた。 「わかった、君の使い魔になろう…けど、できればだけど、僕を元の世界に返す手段を探してくれないか?」 「…できればね、わたしだって平民の使い魔なんてごめんだもの。」 で、あんたが出来そうな事って…」 「え、なんだい?」 「主の目となり耳となり…駄目ね、なにも見えない。後は…」 一人でブツブツと続けるルイズ。 「だから何が」 「アンタが使い魔として出来る事よ!無理だと思うけど、一応聞いてみるわよ。秘薬を見つける事って」 「秘薬?」 「やっぱり無理ね…となると後は一番重要なことなんだけど…主人を守る事。でもアンタじゃ無理ね。 犬ぐらいには勝てそうだけど、幻獣はもちろん、並みのモンスターにだって勝てそうにないもの」 「………」 自分の身体に宿る力を使えば、おそらく彼女の言う幻獣やモンスターを倒す事などたやすいだろう。 そして多分魔法使いにも…自分が闘った巨漢の超能力者ぐらいの力がなければ相手になりはしない。 「…そうだね」 だが、あえてその事を言うつもりはなかった。 自分の中に眠る力を使えば、スミレのように、この少女に迷惑をかけてしまうかもしれない。 ここが魔法の世界でも、住んでいるのは人間なのだ、ドレスのような組織が自分を狙ってこないとは言い切れない。 「だから、あんたに出来そうな事をやらせてあげる。洗濯、掃除、その他雑用」 「わかった。得意とは言えないけど、頑張ってみるよ」 「うむ、素直でよろしい。じゃあ眠くなったからあたしは寝るわね。ほい、あんたの毛布」 ボロボロの毛布を投げてよこす。 「ありがとう」 「あ、そうそう、あと…」 もぞもぞと自分の服を脱いでいく。 「じゃあ、これ、明日になったら洗濯しといて」 顔色一つ変えずに、ルイズが無造作投げてよこした服や下着をまとめて適当なところに置く育郎。 「うん、それじゃあおやすみ」 「はいはい、おやすみ」 ルイズはベッドに、育郎は床の上で毛布にくるまる。 こうして、橋沢育郎の記念すべき使い魔生活第一日目は終わりを迎えたのであった。 ちなみに 彼が目の前でルイズが服を脱ぐ事に何も反応しなかったのは…ルイズが知れば怒り狂っただろう… 彼女を小学校高学年ぐらいだと思い込んでいたためである。 「洗濯もしないお嫁さんなんて最低よね」 一方そのころ、育郎が心配していた少女スミレは誰言うことなく、そんな言葉をつぶやいていた。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/981.html
あれから貴族達は蜘蛛の子を散らすように才人から逃げていった。 あの、ゼロと呼ばれて切れかかっていたルイズや、心配をして見に来たシエスタすら、才人の5m以内に近寄ろうとしない。 至極当然だ。僕だって近寄りたくない。 才人が近づけば、近づいた分だけ後ずさり。 近づく。 後ろに下がる。 近づく。 後ろに下がる。 駆け寄ってくる。 全力で後ろに下がる。 「おい……、ちょっと待っ……」 「イヤァアアアアアアアアアアア! こっちに来ないでくださいィィィィイイイ!」 「許可しないィィィィィィイイイイイイイ! 使い魔が、私のそばに近づくことを許可しないィィィィィイイイイイ!」 「僕のそばに近寄るなァァァァァッ!」 「こいつはクセェー! ゲロの臭いがプンプンするぜぇーーーーッ! こんな平民には出会った事が無いほどなァ!」 才人は泣きそうになっていた。 僕はさんざんボロクソにいわれて、凹みきった才人を、何とか水場まで連れてくる。 はじめはシエスタが水場までの案内を勤めることになったのだが、上っ面は取り繕っていたものの、今にも泣き出しそうな様子だったので、僕が代わりに才人を水場まで連れて行くことになったのだった。 女性は大切に扱わなくてはならないからな。 「へっ……。どうせ俺はモグラさ……」 「良いから、早く身体を洗ってください」 しかし、今にもキノコが生えてきそうな、この才人はどうにかならないのか。 彼は調子に乗るのも、落ち込むのも早い。しかもどちらも天井知らずだ。 マッハで落ち込み、マッハで立ち直る。 きっと空気の速度を超えてるから、とことん空気が読めないのだろう。 僕はそう、自分の中で結論づけることにした。 身体は洗えるが、パーカーの方はどうしようもないので、洗濯して干すことになった。 勿論、洗濯は才人にやらせる。 替えの洋服なんて持っているわけが無く、上半身裸で、ひたすらに服を洗う姿は、何とも哀れみを誘った。 でも手伝わない。 ともかく、このままではルイズの元に戻ることも出来ないので、僕が学ランを貸してやる必要がある。 「もう、大丈夫だよな……?」 しきりに自分の臭いを嗅ぐ才人。 これを見ていると、どうも貸そうという気が起こらなくなる。 しかし、おいていくわけにも行かないだろう。 「気になるんだったら、コレを使ってください」 僕はズボンのポケットに入れていた、消臭スプレーを才人に手渡した。 秋葉原を歩くのに、常備していた奴だ。 正直、コレ無しで彼処は歩きたくない。 「ああ、サンキュー」 そういってスプレーを受け取り、才人は念入りに身体に吹き付け始める。 そういえば、この世界ではスプレーの換えはきかないんだな。 やむ得ないとはいえ、簡単に才人にスプレーを貸したことに、僕は少し後悔した。 彼がそこの所を、配慮してくれればいいのだが…… 「おし、もう大丈夫」 かけ終わったのか、才人は僕にスプレーを返してくる。 残量を確かめるため、軽く振ってみる。 チャポチャポと音がした。 結構使われてしまった様だ。 まだ新品だったのだが。 才人の方を向く。 フローラルな香りが鼻についた。 僕は思いっきりため息をつきながら、才人に来ていた学ランを渡した。 才人は受け取った学ランを見つめ、ぽつりとつぶやく。 「なあ、花京院」 「何です?」 「何で、秋葉原行くのに学ラン来てたんだ?」 「僕は学生ですから。ガクセーはガクセーらしくですよ」 「いや、理由になってないから」 やや身長に差があるためか、僕の学ランは才人には一回り大きかった。 僕にとっては膝下ぐらいまでだが、才人にとっては脛ぐらいまである。 学ランが汚れないか、少しそわそわしながら、僕等はルイズの部屋の方へと戻る。 途中、ルイズの部屋へと向かう螺旋階段を上りながら、才人が何かを思い出したように話しかけてきた。 「そういやさ、聞きそびれたことがあんだけど」 「何ですか?」 僕はどうせまた、空気の読めない事を言うつもりだろうと、聞き流すつもりでいた。 「あの決闘の時、お前から出てきた緑色のアレ、いったい何なんだ?」 「!」 「アレが前言ってた、スタンドって奴か?」 唐突だった。 今、彼はなんと言った? 僕のスタンドが見えた。といったのか? その一言を聞いて、今までの、スタンドが発現してからの思い出が、すっと僕の頭の中に浮かび上がっていく。 「お、おい。花京院? お、俺、今何か不味いこと言ったのか!?」 僕に気持ちが通い合う人が何人現れるだろうか。 小学校のクラスの○○くんのアドレス帳は友人の名前と電話番号で一杯だ。 母には、父がいる。父には、母がいる。 TVに出ている人や、ロックスターにはきっと何万人も居るんだろう。 自分は違う。 自分にとって、真に心の通い合う友人は現れるのだろうか? 実を言うと、ここが異世界と解った時、ほんのちょっぴり期待をした。 記憶の僕のように、ここなら、ひょっとすれば、僕と真に心が通じ合う友人が出来るかも知れない。っと。 今、目の前の才人は、ずっと僕の目の前にあった、一つの柵を、何も無いかのように越えてきたのだ。 心に、ささやかな期待が生まれた。 何故見えたのか、そんな疑問は、その期待の前では些細なものだ。 「いえ…… 後で、詳しく教えます……」 「そ、そうか……」 ルイズの部屋の前に着く。 僕の心は、いささか弾んでいた。 あの時、ルイズが殺気を放っていたことすら忘れるほどに。 僕らは、部屋のドアを開けた。 鬼がいた。 「随分と、機嫌良さそうじゃない。ご主人様にあれだけふざけたまねをしておいて……」 鬼……この部屋の主、ルイズは右腕に乗馬用の鞭を持って、どっかりとベットの上に座っていた。 正直言って、僕らは目の前の少女にびびっていた。 足がすくんで、体中の毛が逆立ち、全身が凍り付いた。 胃が痙攣し、胃液が逆流してくる。 反吐をはく、一歩手前だ。 「勿論、覚悟は出来ているわよねぇ……」 底冷えがするような声だった。 「「HOLY SHIT! ヤッバアアアイイ!」」 「待ちなさぁ~い!」 結局、あれだけゼロゼロと連呼したことで、僕と才人は3日間の飯抜きを宣告されたのだった。 チャンチャン♪ To be contenued…… 戻る
https://w.atwiki.jp/cvssyourimessage/pages/288.html
ゼロ 《出典作:ザ・キング・オブ・ファイターズ2000、ザ・キング・オブ・ファイターズ2002UNLIMITED MATCH》 VS. 対アンディ・ボガード【餓狼伝説シリーズ:SNK】 「オレの拳は疾風!!その迅さにいまだかつて誰も拳の影すら見た者は居らぬ」 ※投稿・管理人 対イグニス【KOFシリーズ:SNK】 「だめだっ、まだ死ぬなぁぁっ!とどめはこのゼロが刺すーっ!」 ※投稿・codegreen 対グラント【餓狼MOW:SNK】 「我が疾風の拳、寸分の狂いも無く貴様の心の臓を突き破ってくれるわ!!」 ※投稿・管理人 対クリザリッド【KOFシリーズ:SNK】 「このゼロのバトルスーツは完璧だ!戦闘データの学習など必要ないのだ!」 ※投稿・codegreen 対元【ストシリーズ:CAPCOM】 「見事な気配の消し方だ。このオレに読ませぬとはただ者では無い。貴様の拳は暗殺拳か!」 ※投稿・管理人 対豪鬼【ストシリーズ:CAPCOM】 「久しぶりに退屈から開放されたわ!!せめて敬意を表して天の下で眠らせてやるわ!!」 ※投稿・管理人 対コーディー【ストシリーズ:CAPCOM】 「野心は無いのか?だったら生きていても仕方あるまい」 ※投稿・管理人 対コブラ【パチスロコブラ:SNK】 「ブラックソード・ゼロ?何者だそいつは?」 ※投稿・ハッテン♂野郎 対コブラ【パチスロコブラ:SNK】 「私がこの世の頂点に立つためにも、貴様のような存在は生かしてはおけぬのだ」 ※投稿・codegreen 対ジャック・ザ・リッパー【ワーヒーシリーズ:SNK(ADK)】 「このオレにスキあらばいつノドを描き切っても良いのだぞ」 ※投稿・管理人 対シュラ・ナイ・カノム・トム【ワーヒーシリーズ:SNK(ADK)】 「…こうして何人の修羅を屠ってきたか……百人から先はおぼえていない!!」 ※投稿・管理人 対神人・豪鬼【カプエス2:CAPCOM】 「嬉しくて肌が粟立つわ!!この世に命のやり取りほど面白いゲームは無い!!」 ※投稿・管理人 対ゼロ(オリジナル)【KOFシリーズ:SNK】 「せめてもの情けだ。苦しまぬよう一気にその頭ごと踏み潰してやる」 ※投稿・codegreen 対春麗【ストシリーズ:CAPCOM】 「負けたとは言え興味深い女よ!貴様のような強い目をした女は初めて見たわ!!」 ※投稿・管理人 対ハイデルン【KOFシリーズ:SNK】 「やはりお前でもオレを楽しませてはくれぬらしい」 ※投稿・管理人 対無界【KOF2003:SNK】 「全てが無から始まる時、時代を握るのは暴力!そして拳の力!!」 ※投稿・管理人 対雪【月華の剣士シリーズ:SNK】 「雪が貴様の血を誘っておるわ!!」 ※投稿・管理人 対萬三九六【サムスピシリーズ:SNK】 「フ…ボロを装ってオレに近付くとは考えたな」 ※投稿・管理人 対リュウ【ストシリーズ:CAPCOM】 「フ…愚かなる男よ。体得する拳を誤ったな」 ※投稿・管理人 &. &コブラ【パチスロコブラ:SNK】 「怒部隊も、そしてネスツさえも…我が真実の姿は見透かせぬ!」 『大した演技だ、ハンフリー・ボガードに見せてやりたかったね』 ※投稿・codegreen
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/358.html
無駄に豪勢でどことなくハリポタちっくなトリステイン魔法学院の食堂。 卓上に並ぶ朝っぱらから重そうな食事に、見るだけで胸やけしそうになる中年のアヴドゥル。 (ワインまで置いてあるぞ) まさに、至れり尽くせりの光景はアヴドゥルを呆れさせる。 「おい、見てみろよ『ゼロ』のルイズの使い魔」 「ちょっwマジで平民じゃんw」 遠巻きに聞こえる陰口の影響からか、機嫌の下降したルイズは睨みながらアヴドゥルに言う。 「気が利かないわね。イスを引いてちょうだい」 アヴドゥルは黙ってルイズのイスを引いてやり、自分も座ろうとイスに手を掛けるが、 「待ちなさい。あんたの場所はそこ」 冷たい言葉と共に、貧相なパンとスープの置いてある床を指差すルイズ。 昨日今日で、だいたいルイズのことを理解してきたアヴドゥルは大人しく従う。 ブリミルへの長い『いただきます』を終え『ささやかな』食事を始める貴族達。 あっさりと食事を終えたアヴドゥルは、好奇の視線に耐えながらルイズが終えるのを待つ。 (さすがにアレだけでは足らんな…、後で厨房にでも顔を出すか) アヴドゥルがシエスタの言葉を思い出し、そんなことを考えていると、ルイズが食い物の載った皿を突きつけて来た。 「……なんだ?」 意味が分からず問うアヴドゥルに、そっぽ向きながら……、 「べべべ、別にあんたに優しくしようってわけじゃないのよ。洗濯もきちんとしたみたいだし、そのご褒美なんだから!」 少し赤くなった顔でツンるルイズ。 今までが今までなので一瞬止まるが感謝の言葉を返すアヴドゥル。 「すまない。アレでは足りなかったのでな、助かる」 「……ふんッ、調子に乗らないの。でも…そうね、次からもう少し多めにするよう言っておくわ」 従順な姿に気を良くしたのか『食い物握って躾け大作戦』を修正するルイズ。 皿には大きめの鶏肉に野菜などが置かれていた。 さっそく食べ始めると、自然に言葉が零れる。 「……上手いな」 料理自体の上手さに加え、不器用なルイズの優しさが零させた感想だった。 教室に移動し今度は自分からルイズのイスを引いてやり、邪魔にならない壁際の床に座るアヴドゥル。 授業が始まるにはまだ時間があるようなので、周りに居る他の使い魔でも眺め、 (イギーがいたら喜こんだかもな) どこか、周りの動物を馬鹿にしていた賢かった犬の戦友のことを思い出していると、フレイムが寄って来た。 「きゅる」 「ああ」 挨拶交わしていると、他の使い魔もアヴドゥルに寄って来る。 前の世界にもいた猫や犬といった動物、本の世界でしか見たことの無い幻獣。 多種多様の生物だが、フレイムと仲がいいのが関係したのかみな好意的だった。 「おい、見てみろよルイズの使い魔」 「他の使い魔に囲まれてるな。しかも……」 「ああ。まるで違和感が無いな」 「もしかしてあいつ、平民じゃなくて変種の魔物なんじゃねw」 そんなことを囁かれているとは露知らず、アヴドゥルは他の使い魔たちと交流を深めていく。 授業が始まり、魔法に興味のあったアヴドゥルは熱心に聞く。 幸運にも基礎のおさらいから始まり、 魔法には火、水、風、土の4系統がある。 失われし系統『虚無』 メイジの強さの基準である魔法を足せる数、ドット、ライン、トライアングル、スクウェア。 etc 幾つかの情報を手に入れるアヴドゥル。 だが、おさらいが終わり専門的になってくると、アヴドゥルには理解できなく関心が薄れていく。 (どうやら魔法と言うのもスタンドと同じく、生命エネルギーのようだな……ん?) 得られた情報より推論を出していると、シュヴルーズが錬金で石を真鍮に変え、アヴドゥルは思わず目を見張る。 一方、ルイズはというと………。 授業開始前のアヴドゥルへの陰口は、机を叩き威嚇+睨みつけで止めさせた。 しかし、授業が始まり再開した陰口を止める術はなく、苛苛し勉強に集中できないでいた。 「聞いているんですか?ミス・ヴァリエール」 「…へッ!?」 いつの間に名前を呼ばれていたのか、ルイズはとっさに返事できず、 「仕方ありませんね。授業を聞いていなかった罰です。ミス・ヴァリエール、前で錬金しなさい」 みんなの前で、錬金をさせられることになった。 「先生!危険です!」 「そうです、『ゼロ』のルイズに魔法使わせるなんて」 「止めてください」 いきなり騒がしくなる教室。 耳ざとく『ゼロ』の言葉を察知したルイズは、言ったピザに言い返す。 「先生!かぜっぴきのマリコルヌに侮辱されました!」 それを聞いたピザ(マリコルヌ)と罵り合いになる。 醜い争いはシュヴルーズがピザの口に栓をし、ルイズを教壇に来させることで決着した。 ルイズの錬金が決定したことにより大慌てで机の下に隠れる他の生徒。 シュヴルーズはどうやらルイズの噂を知らないのかのほほんと構えている。 しかし、そんなことも目に入らないほどルイズは集中していた。 (大丈夫よ。落ち着くのよルイズ。ゆっくり素数を数え……) 素数から勇気を貰い、ゆっくりと石へ杖を向ける。 (サモン・サーヴァントが出来たんだからきっと出来るはず) そこでちらりとアヴドゥルに視線を向けると……視線が合った。 ここで失敗し、無様な姿は見せられない。 大きな覚悟を持ち、唱えた錬金の魔法は………やはり爆発した。 ドーーーーーーッン! 「へ?」 至近距離で爆発を受け、吹っ飛ぶシュヴルーズはそのまま壁に当たり気絶する。 また、突然の爆発に驚き暴れだす使い魔たち………アヴドゥルを巻き込んで。 「なッ!?」 爆発にも驚いたが、問題はそれだけでない! 首を蛇に締められ、犬には噛み付かれ、猫には引っかかれる。 止めにフレイムがアヴドゥル目掛け炎を吐いてくる。 間一髪、伏せアフロだけは免れたが、 「ぐぼあッ!?」 炎は不幸にもピザな少年に直撃していた。 なんとか爆発から身を守った生徒は騒ぎ出す。 「あいつ、辞めさせろ!」 「なんでいつも爆発なんだよ!」 「マリコルヌ気をしっかり持て!」 「なんてこった!マリコルヌの髪がアフロに!」 そんな、阿鼻叫喚の光景の中、ルイズは呟く。 「ちょっと失敗したようね」 悪びれる様子もないルイズをさらに罵倒する生徒。 むざむざ黙って言われるだけじゃないルイズが言い返し、収拾がつかなくなる。 結局授業は中断することになり、ルイズに後始末が命じられとりあえず一件落着となった。 蛇に締め落とされかかっているアヴドゥルを放置して。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1124.html
3話 朝である。 窓から差し込む光の量でそれを察知したホワイトスネイクは自分自身を「発動」させた。 言い換えれば「起きた」ということだ。 本来ならスタンド使いがスタンド使いの意思で発動させるものなのだが、 本体の役割を果たすルイズと視覚聴覚の共有はおろかダメージの共有さえ無いという状況である。 スタンド能力に関するあれこれは全てホワイトスネイクに一任されているようだ。 そしてホワイトスネイクは自分のご主人様(ルイズ曰く)たるルイズを見る。 ルイズは実にあどけない面で寝ていた。 「わたしのぉ~、ひっさつまほうで~ぇ・・・」 しかもよく分からない夢を堪能しているようだ。 とりあえず朝だから起こすべきだろう、と考えたホワイトスネイクは、 ぐっすり寝ているルイズの毛布を遠慮のカケラも無くばさりと剥いだ。 「な、なによ! なにごと!」 「朝ダ」 「はえ? そ、そう……って、ひゃあっ! だ、誰よあんた!」 寝ぼけた声で怒鳴るルイズ。 まだ夢から覚めきっていないらしい。 ホワイトスネイクはため息混じりに、 「『ホワイトスネイク』ダ、オ嬢サン」 「ああ……わたしの使い魔の、ね。そうね、昨日召喚したんだっけ」 ルイズは起き上がるとあくびをして、う~んと伸びをすると、 「ってちょっと待ちなさい! あんた、一体どこから入ってきたの!? 昨日確か締め出したはずよ!」 「私ニトッテ物理的ナ障害ハ意味ヲ成サナイ。壁ヤドアヲスリ抜ケルグライ、簡単ナモノダ」 「ウソ……あんた、何者なの? 幽霊?」 「幽霊、カ。ソレガ一番近イカモシレナイナ 背後霊ト言イ換エテモイイ」 背後霊、という言葉にルイズが少し青ざめる。 本当に、こいつは一体何なのだろうか。 昨日は蹴っ飛ばすことができたから実体はある。 人間みたいに話すことも出来る。 昨日脚を触られたときには体温みたいなものも感じた。 でも……壁をすり抜けたりもできる。 空を飛んだりもしていた。 一体、こいつは何なんだろう。 得体の知れないホワイトスネイクに、ルイズはちょっぴり気味の悪いものを感じた。 とそのとき、ルイズはふとあることを思い出した。 「洗濯は? あんたにやらせるつもりで忘れないようにするために書き置きしといたんだけど……」 「昨日ノ晩ノウチニ済マセタ」 へえ、中々優秀じゃない、と気をよくしたルイズ。 さしずめ「使い魔がしっかり言うことを聞くのがとても気分がいいッ!」と言ったところか。 もっとも、ホワイトスネイクがお隣の赤毛の女にその洗濯をやらせていた事実などルイズには知りようも無い。 そして気をよくしたところでルイズは、 「服」 と、ホワイトスネイクに命じた。 つまり服を取って来いということである。 ホワイトスネイクはふわりと空を蹴って移動し、椅子にかかった制服を掴むと、 またふわりと空中を移動して未だベッドの上にいるルイズに戻ってきた。 ルイズはだるそうに着ていたネグリジェを脱ぎ始める。 下着は昨日の晩に脱ぎ捨てたので、ネグリジェが無くなったらルイズは文字通りの全裸である。 健全な男の子が見たら鼻血を出すこと請け合いの光景だったが、ホワイトスネイクはそれを興味なさそうに見ていた。 「下着とって」 「ドコニアルンダ?」 「そこのクローゼットの一番下の引き出し」 またホワイトスネイクは空中を移動して音も無くクローゼットの前に着地する。 そしてクローゼットを開け、適当にその中から下着を選び出すと、 それを持ってまたルイズのところに戻ってきた。 ルイズはホワイトスネイクから受け取った下着を身に着けると、 「服」 「着セロ、トイウコトカ?」 「そうよ」 こんな使い方をされるのは本当に不本意だ、とホワイトスネイクは思った。 どうせなら戦いとか、記憶を奪うとか、そういうことに使って欲しい。 こんな仕事ならヨーヨーマッでも出来るんだから。 だが心の中で愚痴っていても仕方がないので、仕方なくルイズに服を着せる作業をした。 もちろん、その不満を表に表すようなことはしない。 こうして着替えを終えたルイズとホワイトスネイクが部屋から出ようとしたところ、 「あ、あとわたしのことを『お嬢さん』って呼ぶのはやめなさい。 なんだか見下されてるような感じがしてイヤなのよ。 それにあたしにはルイズって名前があるんだから。」 「デハ、『ルイズ』ト呼ベバイイノカ?」 「ダメよ、ご主人様に向かって呼び捨てなんて」 「ソウカ。ナラ……『マスター』トデモ?」 「マスター……か。うん、それでいいわ」 こうしてルイズは、ホワイトスネイクから「マスター」と呼ばれることになった。 さて、部屋から出たルイズとホワイトスネイク。 いざ食堂へ――向かおうとしたところ、廊下に3つ並んだドアのうちの一つが開いた。 そこから出てきたのは、ホワイトスネイクが昨日洗濯関係で世話になった赤毛の女だった。 女の背はルイズより高く、むせるような色気を放っている。 そして顔の彫りは深く、突き出たバストがなまめかしい。 しかもブラウスのボタンを2番目まで開けているので谷間が丸見えである。 そして昨日は夜だったこともあってホワイトスネイクは気づかなかったが、女の肌は褐色だった。 女はルイズのほうを見ると、にやっと笑って、 「おはよう、ルイズ」 と挨拶した。 それに対してルイズはあからさまに嫌そうな顔をして、 「おはよう、キュルケ」 と返した。 「あなたの使い魔って、それ?」 キュルケはホワイトスネイクを指差して言う。 「そうよ」 そうルイズが返すと、キュルケは値踏みするようにホワイトスネイクをじろじろ見て、 「ふ~ん……本当に亜人なのね。 それに、昨日は杖も詠唱も無しで空を飛べてたみたいだし。 エルフの親戚なのかしら。 ま、『ゼロ』のルイズにしては、上出来じゃないの?」 一応褒めてはいるようだが、それでもかなり見下した口調でそう言った。 「ふーんだ。いいのよ、成功したんだから。それに、そう言うあんたの使い魔は何なのよ?」 「あ~ら、見たいの? 言われなくたって見せてあげるつもりだったけど……フレイム~」 キュルケが自分の使い魔の名前を呼ぶ。 すると彼女の部屋から、のっそりと、真っ赤で馬鹿でかいトカゲが現れた。 いうまでも無く昨日ホワイトスネイクがDISCをぶっ刺したトカゲである。 そしてルイズの部屋の前の廊下がむんとした熱気に包まれる。 「熱ヲ放ッテイルノカ? コノスタンドハ」 「そりゃそうよ。だってフレイムはサラマンダーなんだもの。 …っていうか、『スタンド』って何よ?」 「イヤ、ナンデモ無イ」 (テッキリスタンドノヴィジョンデハ、ト思ッタガ…ソウイウ生キ物ナノカ。 私ハトンデモナイ所ヘ来テシマッタノカモシレンナ) 昨日の推測が誤りであったことを理解すると同時に、 この世界のブッ飛び具合を改めて理解したホワイトスネイクであった 「それにフレイムはただのサラマンダーじゃないわ。 見てよ、この尻尾! ここまで大きくて鮮やかな炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ? ブランド物よぉー? 好事家に見せたら、きっと値段なんかつかないわ!」 「そう、それはよかったわね」 得意げに胸を張るキュルケに対し、ルイズも負けじと胸を張り返すべく―― 「ホワイトスネイク、あんた何が出来るのよ?」 「何ガ出来ルカ……カ」 ホワイトスネイクは考えた。 昨日は誰も見ていないからこそ堂々と能力を行使したが、今は目の前に赤毛の女がいる。 ルイズに見られるのはいいとして……この女に手の内を晒していいものだろうか? そんなことを考えた結果―― 「別ニ大シタコトガ出来ルワケデハナイ」 あえてウソをついた。 「セイゼイ出来ルノハ、空中ヲ飛ブヨウニ移動シタリスルグライナモノダ」 「なあんだ、じゃあ見かけ倒しって事じゃない。 やっぱりあなたにお似合いの使い魔だったわね、ルイズ」 「う、うるさいわよ!」 ムキになって言い返すルイズ。 だがキュルケは余裕の表情でそれを見下ろして、 「じゃあ、お先に失礼」 そう言うとフレイムを従えてさっさと行ってしまった。 「くやしー! なんなのよあの女! 自分が火竜山脈のサラマンダーを召喚できたからってエラソーに!」 「ソノ『火竜山脈のサラマンダー』トヤラガ召喚デキルト何カイイ事デモアルノカ?」 「大有りよ! 使い魔は主人の実力を示すものなの。 だから火竜山脈のサラマンダーを召喚できたキュルケにはそれだけの実力が……ってああもう! 考えるだけで腹が立ってくるわ!」 「『使い魔は主人の実力を示す』……カ。ナラ君ノ実力モ捨テタモノデハナイナ」 「どういうことよ!」 ホワイトスネイクの言葉の意味が分からなかったルイズはすぐに聞き返す。 すると、 「私ハ少ナクトモアノ化ケ物トカゲヨリハ強イ」 「…ウソでしょ?」 「本当ダ。機会ガアレバ実力ノ一ツデモ見セテヤル」 「でもあんた、さっき『特別な事は何も出来ない』とか言ってたじゃない」 「アレハ方便ダ」 「方便?」 「私ハサッキ、自分ノ能力ヲ明カサナイタメニ『アエテ』ウソヲツイタ。 ……アノ女相手ニワザワザ手ノ内ヲ明カス必要ハ無イカラナ」 余裕のある口ぶりで言うホワイトスネイク。 だが昨日召喚したばかりの使い魔にいきなりそんな事を言われても、ルイズには信じられるわけが無い。 でも、そういえば今朝扉をすり抜けた事はキュルケには言わなかったし……。 本当のところはどうなのだろうか、と悩んだルイズは、 「じゃあ教えてよ。あんたが一体、何が出来るのか」 と聞いた。 実にストレートである。 そしてそれを聞いたホワイトスネイクはニヤリと笑うと、 「一ツハ命令スルコト。 一ツハ幻ヲ見セルコト。 そして一ツハ――」 「記憶ヲ奪ウコトダ」 「……どういうことよ? 分かるように説明しなさい」 残念ながら我らがご主人様には理解されなかった。 むしろ混乱しているようである。 ホワイトスネイクはそんな自分の主人を見て、 「分カラナイノナラ……実際ニ私ガ使ウ所ヲ見ルトイイ。近イウチニ3ツ見セヨウ」 そういって、自分を『解除』した。 とは言ってもルイズにとっては初めてみる光景だったので、 ホワイトスネイクが煙のように消えてしまったことにかなり焦った。 「え? ち、ちょっと……え? 消えちゃったの? ……え? どういうこと?」 「落チ着ケ、マスター」 そう言って首から上だけで現れるホワイトスネイク。 ホワイトスネイクからすれば全身を出すのが面倒くさかったからこそなのだが―― 「っっっっっっっ!!!!!!!!」 自分の使い魔がいきなり生首になって現れる光景は、 年頃の少女には、ショッキングすぎた。 そして朝食の席にルイズとホワイトスネイクが到着したとき―― ルイズの両目はほんのちょっぴり涙で潤んでおり、 ホワイトスネイクは全身からプスプスと黒い煙を上げていた。 例の爆発を食らったためだ。 もちろんコスチュームもボロボロである。 「……いいこと。今度ご主人様を怖がらせるようなことしたら、またオシオキだからね」 「……了解シタ、マスター」 さて、ここ「アルヴィーズの食堂」には、ゆうに100人は食事を取れるであろう程に長い机と、 その上に所狭しと並べられた豪華な料理と豪華な飾り付けがあった。 「中々豪華ナ食卓ダナ」 「トリステイン魔法学校で教えるのは、魔法だけじゃないのよ」 食堂の絢爛っぷりに感心したように言うホワイトスネイクに、ルイズは得意げに指を立てて言った。 「メイジはほぼ全員が貴族なの。 だから私たちが貴族としての教育を受け、貴族としての礼儀作法を学ぶために、 貴族にとって相応しい食卓がこうして用意されてるってわけ。分かった?」 「ナルホドナ。……デ、ソコニ置イテアルノハ何ダ?」 ホワイトスネイクが床を指し示す。 そこには小さな肉の欠片がぽつんと浮かんだ貧しいスープと、あからさまに硬そうなパンが並べられている。 「あんたが食べるものよ。まさか、貴族と同じ食卓に座れると思ってたの?」 ルイズが呆れたように言う。 それに対してホワイトスネイクはさらに呆れたように、 「私ハ生物デハナイカラ、食事ナンテ取ラナインダガナ……」 こう言った。 「えっ……あんた、生き物じゃないの? っていうか、それってどういうこと?」 「コレハ私ノ推測ダガ、私ハマスターノ精神ニ『寄生』シ、ソコカラ常ニエネルギーヲモラッテイルノダ」 「き、寄生!? そ、それって、何か危なかったりしないの!?」 「ソウイウ心配ハ今ノトコロ見当タラナイカラ安心シテイイ。 アト…ソウダナ。 私ハ力の『イメージ』とか『ヴィジョン』ニスギナイカラ、腹ガ減ルコトモナイ。 ……ソウイエバコノ事ヲ伝エルノヲ忘レテイタ気ガスルガ、 マスターノ方モコンナ食事ヲ私ニトラセルツモリダッタノダカラ堪エテクレ」 淡々とルイズに説明するホワイトスネイク。 しかしルイズにとってはそれが分かったような分からないような説明であったことと、 「使い魔への教育」の名目で貧相な食事を取らせる目論見が見事に外れたこととで、 ルイズはぽかーんとしていた。 そのとき、そんなルイズをクスクス笑う周囲の生徒達の口から「ゼロ」という単語が出てきたのをホワイトスネイクは聞いた。 確か食堂に来る前に見た女……キュルケもルイズに向かって「ゼロ」とか言っていた。 一体どういう意味なのだろうか、と考えていたところで、 昨日、ルイズが魔法を使えないと推測したことを思い出した。 (魔法ガ使エナイ者ノ事ヲ『ゼロ』ト言ウノカ? ソレトモマスター個人ノ事ヲ指シテ『ゼロ』ト呼ブノカ…? イズレニシテモ、マスターヘノ侮辱デアルコトニ変ワリハナイダロウナ…) そんなことを考えながら、ホワイトスネイクは不機嫌そうに食事を取るルイズを見下ろしていた。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/zeromoon/pages/137.html
前ページ次ページゼロとさっちん 弓塚さつきは吸血鬼である。 吸血鬼ではあるが、その身に神秘を積み重ねていた訳ではない。 遠野なる混血のお膝元である三咲町で生まれたことを鑑みれば、あるいは何某かの異種の血に連なる者であったとしても不思議ではないが。 仮にそれにしたところで、混血のことも魔のこともまったく知らなかったのだから、血脈の端の端にぶら下がる程度のものだったろう。 彼女が一晩にして死者だのなんだのという経緯をぶっちぎって吸血鬼――死徒にまで至ったのは、あくまでもその身に宿っていた霊的な資質が桁違いであったからだ。 何年かに一度の逸材、というのは彼女自身には自覚のあったことではないが、しかし紛れもない事実なのだ。 過去の二十七祖に届く――と言うのは推測ではあっても大げさなものではないのである。 少なくとも、それはつい何ヶ月か前に証明されている。 ワラキアの夜の残滓と、 埋葬機関の代行者と、 混血の者たちの棟梁と、 退魔の末裔たちと、 エルトナムを継ぐ者と、 そして。 真祖の姫や、魔法使い―― そんな化外のモノたちの跳梁する町を、彼女は駆け抜けた。 それが虚言の夜の続きであったとしても、彼女が圧倒的な存在に対して我意を貫いたのは紛れもなく真実だ。 そして恐るべきことは、それを成し得た彼女が、弓塚さつきという死徒は、そこに至るのに閲した時間がただの一年ほどであるという嘘のような事実である。 もしもさつきが神秘に挑む者であるのならば、ただ欲望のままに力を求めて血を欲する吸血鬼であったのならば。 その果てに、あるいはとてつもない魔人の領域にすら達したかもしれない。 しかし、それはまだifの物語である。 今の彼女にはそれを求める理由がない。 ただ、時にその力の一端を垣間見せているだけにしか過ぎない。 それでさえも、その力は恐るべきものであったが。 そう。 それは彼女の力の一端であり。彼女そのものであった。 虚言の夜の化外の跋扈する街で、弓塚さつきという半端者のミディアンを生き延びさせ得た力。 固有結界―― 世界を己の世界(こころ)で塗り潰す、魔法に非ずして魔法の領域にある神秘。 それが。 その力が。 その世界が。 今、ハルケギニアなる異世界を塗り潰す。 「なん……だと……?」 ワルドは、いつの間にか花園の中にいた。 夢か、幻か。 数々の窮地を潜り抜けた彼をしてとっさには判断がつかぬ事態であった たった数瞬前まで礼拝堂であった空間の天井には青々とした空が広がり、床は大地となっていた。 少し遠くにあるのは清浄な水を噴き上げ、滴と虹を生み出す噴水。 彼方を流れ行く雲。 地を覆い尽くす柔らかく明るい色彩は、名も知れぬ花々だ。 視界を横切って舞い散る花弁は、ワルドの生み出したトルネードカッターによるものであったと知れたが、それだけが彼がこの世界が現実と判断できる全てであった。 その三つの竜巻でさえも、閉鎖された空間から開放された反動か、彼女とそれを囲む自分たちの、さらに外縁にまで遠ざけられていた。 いや、それはおかしい。 (――何をされた!?) 漸く、気づく。 本体を含めた四人のワルドは、それぞれがさつきを対角線の交える処に置いた四角(スクエア)を形成する位置に立っている。 ついさっきまで三人のワルドがさつきを包囲していた。 本体のワルドが入り口でルイズと皇太子を阻んでいた。 それなのに。 いつの間にか、四人でさつきを見ている。 視点の中心にいる吸血鬼を見ている。 さつきは喉を押さえて―― 断絶魔の如き、しかし声なき声を上げた瞬間。 さつきがしゃがみこみ、弓なりに背をそらした刹那。 世界はさらに反転した。 枯れていく。 さつきの足元から、草花が枯れてゆく。 それは風が草叢を揺らすかの如き迅速さで、大地の全てを枯らしてゆく。 いや、それは大地だけではなかった。 あの青々とした空はいつの間にか赤黒い色に染まり、あれほどに豊富に水を湛えていた噴水は打ち捨てられたかのように乾き、罅割れていた。 ワルドは理解した。 理性ではなく、本能に一番近い部分で理解した。 (世界そのものが――) 枯れて、乾いているのだ。 世界の変容を正しく認識できていたのは、ワルドだけであった。新たに世界が作り変えられ、なおそれが枯渇していく様をはっきりと近くできたのは彼だけだ。 それはまさに瞬く間に起きたのだから。 ルイズもウェールズでさえも、あの美しい庭園の姿を目に留められていない。 刹那の、あの明るくて柔らかくて、幸せという言葉に事象(かたち)を与えたかのようなさつきの心(世界)を記憶できていない。 気づいたときには枯れていた。 しかしそれでもなお、ルイズの目から涙が零れ落ちた。 何が起きたのか彼女にだって解らない。 解らないが、これは彼女の使い魔の起こした現象で、この世界が彼女の使い魔の心を具象化させたものだと。 (なんて、悲しい世界) 枯れ果てた草花で覆われた大地は、水の尽きた噴水は、そのままさつきの餓えと乾きを顕しているかのようだった。 赤黒い空は、希望の果てたことを示しているのだろうか。 これが弓塚さつきの世界(こころ)。 彼女の使い魔の世界(チカラ)。 固有結界・枯渇庭園 前ページ次ページゼロとさっちん
https://w.atwiki.jp/soratohana/pages/20.html
花/女性…25名 氏名 読み仮名 学年・組 性別 身長 生徒会/委員会 部活動 空/花 古宮藍華 こみや あいか 1-A 女性 167cm 生徒会(会計) 花 奏櫻李 そう おうり 1-A 女性 163cm 美化 美術 花 立坪すみれ子 たちつぼ すみれこ 1-A 女性 157cm 図書 花 紅内桃華 べにうち ももか 1-A 女性 160cm 放送 軽音・家庭 花 田添あじさい たぞえ あじさい 1-B 女性 157cm 花 柊歩 ひいらぎ あゆ 1-B 女性 173cm 花 山野井朝顔 やまのい あさがお 1-B 女性 148cm 陸上 花 川上蓮華 かわかみ れんか 1-C 女性 164cm 花 松葉杜若 まつば とじゃく 1-C 女性 155cm 花 白詰草四葉 しろつめくさ よつば 2-A 女性 157cm 写真 花 猫屋敷あやめ ねこやしき あやめ 2-A 女性 154cm 花 野薊なゆ のあざ みなゆ 2-A 女性 152cm 花 彼岸花紅姫 ひがんばな べにひめ 2-A 女性 156cm 美術 花 堅山香子 かたやま かおるこ 2-B 女性 152cm 演劇 花 相楽ひなぎく さがら ひなぎく 2-B 女性 160cm 花 染井さくら そめい さくら 2-C 女性 150cm 映画研究 花 七瀬鈴蘭 ななせ すずらん 2-C 女性 花 野々草なずな ののくさ なずな 2-C 女性 160cm 軽音 花 相羽花色 あいば はないろ 3-A 女性 161cm 生徒会(副会長) 花 三嶋蓮華 みしま れんげ 3-A 女性 143cm 図書 文芸 花 黒木蓮憂姫 くろもくれん ういひめ 3-B 女性 160cm 生徒会(会長) 花 山吹華南 やまぶき かなん 3-C 女性 158cm 図書 弓道 花 氏名 読み仮名 学年・組 性別 年齢 身長 生徒会/委員会 部活動 空/花 時任リラ ときとう りら 女性 25歳 166cm 花 雪笹紗 ゆきざさ すず 3-B 女性 27歳 164cm 花 月ヶ瀬百合子 つきがせ ゆりこ 女性 25歳 168cm 花 花/男性…15名 氏名 読み仮名 学年・組 性別 身長 生徒会/委員会 部活動 空/花 桜花きり おうか きり 1-A 男性 165cm 花 紅内蘰 べにうち かずら 1-A 男性 160cm 軽音・吹奏楽 花 彼岸花深紅 ひがんばな しんく 1-B 男性 149cm 花 松葉陽介 まつば ようすけ 1-C 男性 166cm 花 烏瓜萩 からすうり はぎ 2-A 男性 160cm 花 狐倉ソレイユ こくら それいゆ 2-A 男性 156cm 保健 花 椿綾斗 つばき りょうと 2-B 男性 178cm 美化 美術・軽音 花 冬木柚 ふゆき ゆず 2-B 男性 172cm 美術 花 竜胆直哉 りんどう なおや 2-C 男性 177cm 映画研究 花 黒塚百合乃 くろつか ゆりの 3-A 男性 173cm 風紀 剣道 花 薮之本椿 やぶのもと つばき 3-A 男性 173cm 花 市原水仙 いちはら みなせ 3-B 男性 183cm 花 桜井蓮 さくらい れん 3-B 男性 185cm 美術 花 氏名 読み仮名 学年・組 性別 年齢 身長 生徒会/委員会 部活動 空/花 才崎棗 さいざき なつめ 男性 23歳 179cm 花 萬鉄線 よろず てっせん 男性 不詳 183cm 花