約 1,319,749 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/308.html
アヴドゥルは夢を見ていた。 自分を襲った謎のスタンドと戦う、ポルナレフとイギー。 ポルナレフのため命を落とすイギー、そしてボロボロになりながらも勝利するポルナレフ。 強大なDIOのスタンド。 四人掛かりでも歯が立たず、能力の正体と引き換えに散る花京院。 一度は追い詰めるが、ジョセフの血で復活を果たすDIO。 最期の最期に、今まで発現しなかった能力で勝利を納める承太郎。 ジョセフが蘇生する姿を最期に意識が浮上する。 左手への激痛と共に………。 ルイズの契約のキスが終わり、顔を離すとアヴドゥルは唸り声と共に目を覚ました。 「ッ!?」 いきなり覚醒したためルイズは反射的に身を離す。 「グッ……ぬう……」 体を起こしつつ左手を擦る。 左手の痛みは引いていたが、触ってみると何か痣のようなものができていた。 さらに、目を覚ましたがアヴドゥルには訳が分からなかった。 (……ここはどこだ?それに……なぜわたしは生きている?さっきの夢は?) いきなりの日光にぼやける視界を細め、周りを見回す。 さっきまでDIOの館に居たはずだ。 しかし、今いる所は太陽の刺す野外だ。 それに………たしかに死んだはずだ。 謎の空間によって体がバラバラになっていったのを覚えている。 あれで生きているはずない、………普通ならば。 (すると……第三者のスタンドによって助けられたのか?) そんなスタンド聞いたことも無いが、可能性はソレしか浮かばなかった。 取り合えず、自分が生きていることについての考えを纏め。 今度は夢に付いて思考を移そうとするが、目の前から質問を掛けられ中断した。 いきなり唸り声を上げながら起き上がり。 自分を無視して何か考え込んでいるアヴドゥルにルイズの機嫌はさらに下がった。 (ただでさえ平民を使い魔にしなくちゃいけないのに、あまつさえご主人様である私をいきなり無視?…いい根性ね。 ルイズ興奮しちゃだめよ、落ち着きなさい、『素数』を数えて落ち着くのよ…………) ルイズが素数に勇気を貰っていると笑いを堪えた声が聞こえてきた。 「ゼロのルイズー、サモンサーヴァントで平民召喚してどーすんだよw」 誰かのその言葉を境に笑い声が再発する。 素数パワーなど消え、赤くした顔でルイズは嘲笑の声をもう一度睨み付け黙らせる。 落ち着くため小さく息を吐き、最初の質問をもう一度する。 「あんた誰?」 何故か生きている自分、そして目の前の少女。 直感的にアヴドゥルは理解した少女-ルイズ-によって自分が救われたことを。 そのため少々高圧的な聞き方に思うとこはあったが素直に答える。 「…アヴドゥル、モハメド・アヴドゥルだ」 口答えせず質問に答えたから気を良くしたのか、ルイズは機嫌を直し続けて話す。 「そう。あんた喜びなさいよ!私みたいな貴族の使い魔になれるなんて凄い名誉なんだからね!」 「……使い魔だと?」 「そうよ、あんたは使い魔になったの!…すっごく不本意だけど」 コルベールは契約が上手くいき、初顔合わせも終わったのを確認すると二人に近づいた。 始めて見る平民の使い魔、どんなルーンが刻まれたのか興味を持ち確認しようとする。 「どれどr……ッ!」 しかし、アヴドゥルと目が合った瞬間、杖を握り締め距離を取った。 コルベールのいきなりの反応にルイズが疑問の目を向けてくる。 「どうしたんですか?」 「……いや、何でもない」 頭を振るような仕草の後、大きな声で生徒達に言う。 「それでは儀式も済んだことだし教室に戻るぞ」 他の生徒達を纏めさっさと教室に戻っていくコルベール。 ルイズが少し不信に考えている横で、人がスタンドも使わず空を飛んで行く光景をアヴドゥルが眺めていた。 飛んでいる生徒からルイズへ言葉が飛ぶ。 「ルイズ、お前は歩いて来いよ~w」 「あいつ『フライ』はおろか、『レビテーション』すらまともにできないんだぜw」 去っていく幾人もの笑い声。 その場には、屈辱に震えるルイズとアヴドゥルがだけ残された。 ただ二人残され、今だに状況が理解できないアヴドゥル。 もう一人残った屈辱に拳を握りしめ、小刻みに震えているルイズに説明を求めた。 「ここは何処だ?さっきの使い魔というのは何だ?さっき飛んでいったのはなんだ」 いくら命の恩人らしかろうと、現状の疑問の前には関係なく詰め寄って行く。 ルイズは無知な使い魔に、これから説明する労力を思い、内心溜息を付きつつ答えた。 「あ~も~…答えてあげるから、寄って来ないで」 (なんで私だけこんなのが使い魔なのよ) 「いい、ここはトリステイン魔法学院よ」 「トリステイン?それに魔法学院だと?」 地名を聞いてもアヴドゥルには理解できず、魔法学院の単語がさらに困惑を生むがルイズは構わず続ける。 「そうよ。それであんたは私、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔ってわけ。 さっきのは魔法よ、見たことないの?………全く、魔法も見たこと無いってどんだけ田舎から来たのよ」 ボソリと、最期の言葉は小さく聞こえないように言った。 説明を聞いても理解できないアヴドゥル。 それを見たルイズは後の授業を休み、使い魔への説明に回すのを決めた。 「もういいわ。とりあえず付いてきなさい」 そう言い校舎へと歩いていくルイズ。 置いて行かれても困るのでアヴドゥルは付いて行く。 話しかけてみるが、 「後で聞いてあげるから黙ってて!」 と、怒鳴られてしまい歩きながら夢のことについて考えることにした。 (あの夢は何だったんだ) まるで現実のようなリアリティーがあった夢。 考え込んでいると校舎に着いたのかルイズが話してくる。 「あんたここで少し待ってなさい。先生に授業休むことを伝えてくるから。いいこと!ココでうろちょろせずに待ってるのよ」 地面を指差しココを強調し、ルイズは教室の中に入って行った。 「………やれやれだ」 こちらに有無を言わせない行動のため、つい承太郎の口癖が出てしまう。 ルイズを待ちながら、なんとなくマジシャンズ・レッドを出してみる。 半身ともいうべき炎の化身は変わりなく、それがなぜか安心できた。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/775.html
ジョセフが指先一本で天井からぶら下がっている。 数十秒ほどその体勢を維持した後、すとんと床に下りて水差しからコップに水を注ぐ。 そしておもむろにコップを逆さにしても水は零れない。そこから水面に指をつけて水をコップの形のまま取り出すと、水の塊を齧ってみせる。 「波紋が使えるとこういうコトが出来る。後はワルキューレブッちめたり傷を治したりも出来たりするというわけじゃ」 ルイズの部屋の中、ジョセフは改めて自分の持っている能力をルイズに披露していた。 基本的に表面上は平和なトリステインだけどもしもの場合に何があるか判らないから、というルイズの提案と、ジョセフも自らがルイズを主人とする以上は手の内を見せておくことが信頼に繋がる、と互いの思惑が噛み合って今に至る。 ワルキューレをブッちめるのは波紋のせいだけではないが、少なくとも一部を担っていることは確かだ。 ちなみにデルフリンガーは「夜更かしは健康に悪いんだぜー」と既に寝ていた。 「なるほど。で、そっちじゃその波紋を使える人間は、今じゃジョセフ一人だけなのね?」 主人の問いに、ジョセフはこくりと頷いた。 「わしが知ってる限りじゃがな。わしもわしの母も、誰かに波紋を伝える必要がなくなったからの。今じゃ吸血鬼を生み出す石仮面も、吸血鬼を餌とする柱の男もおらん。そして今ではスタンドという新たな力を人間は持つようになった。 波紋は使える様になれば老化を防止するし、寿命もそれに伴ってエラく長くなる。じゃが思うんじゃよ。果たして、人としての寿命を越えて生き続けるのは幸せなんじゃろうかな、と」 普段しないようなシリアスな顔に、ルイズは首を傾げた。 「でも、やっぱり不老長寿って人類の憧れじゃない? 私なら使ってみたいとか思うけれど」 ルイズの疑問は、若さゆえの無邪気さだけで象られていた。ジョセフはどうにも表情の判別の難しい微苦笑を浮かべた。 ジョセフは毛布の上にあぐらを掻くと、幼いばかりの主人を優しい目で見上げた。 「わしが母リサリサと初めて会った時、母は50歳じゃったが見た目はどう見ても二十代後半じゃった。母は言ったものだ、『若さは麻薬のようなものだ。無くても生きていけるが、手にすると抜け出すのが難しくなる』とな。 わしは妻スージーQと共に老いる為、生まれた時から使っていた波紋を止めた。そうでなければ、わしはずっと若い姿のまま老い行く妻を見続けることになるし、妻はずっと変わらぬわしを見続けながら老いて行かねばならん。……そんなのは地獄じゃわい、夫婦揃ってな」 重い内容の言葉も、ジョセフが言えば随分と軽く聞こえるようになる。それがジョセフの持って生まれた人徳とも言えた。 ただルイズはなおも納得できないという顔をしている。 『それが本当の若さなんじゃよなあ。手の中にあるうちは全くその尊さが理解できん』と、しみじみ見つめるジョセフ。 「それに人間、終わりがあるから生きてけるんじゃ。終わりが無くなれば、狂うしかないんじゃよ。狂うしか、な」 かつて戦った宿敵達の顔がジョセフの脳裏を過ぎる。吸血鬼も柱の男も、自らの生存のためにあまりにも大きなものを大量に他人から借り続けなければならなかった。 そんな者達と戦うジョースターの血統は、言わば取立て屋と言ってもいい。人から取り上げすぎたものを取り立て、人々に返す。祖父ジョナサンも、父ジョージ二世も、自分も、そして承太郎も。きっと、子孫達も。 「難儀な血筋じゃわい。……しかしそう考えると、もしやすればジョースター家というのは、この世界からわしの世界に流れていったメイジの末裔なのかもしれんな」 この世界での貴族は、メイジとして得た力を世界のために役立てる、というお題目はある。一万人に一人しか素質が無いはずの波紋を親子三代で顕在させたジョースター家は、もしやすればメイジの血筋かもしれない、と考えてもおかしくはなかった。 「かもしれないわね。だとすると……メイジも波紋って出来るのかしら! ねえジョセフ、ちょっと教えてよ!」 キラキラと目を輝かせるルイズに、ジョセフは思い切りコケた。 「ルイズ! お前わしの話聞いとったんか!」 「それとこれとは話が別でしょー? もし私が波紋使えるなら、それはそれで『ゼロ』なんてイヤァな仇名から脱出出来るのよ! 四系統とかそこらへんの区切りから外れるのはこの際目をつぶるわ!」 早速輝かしい未来を想像して目に流れ星を幾つも飛ばすルイズ。 ジョセフはどうにもガックリと肩に重い物が圧し掛かったのを痛感していた。 (どーにもウチのルイズは妄想癖が強くていかんわいッ。将来エラい詐欺とかに引っかかりそうで目も離せんじゃないかッ) まだ召喚されてから一ヶ月も経っていないと言うのに、ジョセフはすっかりルイズの祖父としての気分をいやと言うほど満喫していた。 サイフをスッた名前も知らない子供を友人と呼べるジョセフにとって、それより長い間寝食を共にしていればワガママ小娘のルイズを孫として扱うのは非常に簡単なことではある。 何より実の孫がアレでアレなので、見た目可愛らしいルイズはむしろ承太郎よりも実の孫としてほしいなーとか考えるのはジョセフがスケベだからという理由だけではない。きっと。 「スタンドは諦めるわ、どうやって出すのかちっとも判んないし! でも波紋ならもしかしたら可能性があるかもしれないわ! やるだけやってみてダメなら諦めるわ!」 『言う事聞いてくれるまで引き下がらないわよモード』になったルイズを見て、ジョセフは深くため息をついた。ああこうなったら絶対に引き下がらんわ、と諦観を決めた。 「一応言っとくが、波紋だって一万人に一人しか使える素質が無いんじゃ」 「もしかしたら一万人に一人が私かもしれないじゃない!」 そう力説するルイズの目は、「一万人に一人が私かもしれない」どころか「一万人に一人こそが私!」と信じきっている! コーラを飲めばゲップが出るくらい確実だと言う位にッ! (うわすげえ。こんな根拠の無い自信って一体どっから出てくるんじゃ) かつて自分が無数の人々に思わせた思いを、ジョセフは自分で抱くことになった。 これは真実を突き付けない限りは諦めない。そう確信したジョセフは、やむなく一応テストをしてみることにした。 「えーと、じゃな……参ったな、人に波紋を教えたコトなんぞないからどうやればいいのかちっとも判らんが……そうじゃな。まず一秒間に10回呼吸するんじゃ」 ジョセフの言葉に、は? と言わんばかりにイヤな顔をしたルイズ。 「何それ。ふざけてるの?」 「波紋呼吸の基礎中の基礎じゃ。この世界にあまねくエネルギーを集約する為に必要なことなんじゃ。ちなみにわしは当然出来る」 ジョセフさんの一秒間に10回呼吸が炸裂するッ! ルイズさんドン引きだッ! 「続いてそれが出来るようになったら、十分間息を吸い続けて十分間息を吐き続ける。最低こんぐらい出来んと、波紋使いとしての素質なんぞないということじゃの。 ……なんなら、もっと早く素質があるかないか判る方法もある」 人外の呼吸法に早くも尻込みしたルイズは、すぐさまジョセフの垂らした釣り針に食いついた。 「そんな便利な方法があるんなら早く教えなさいよ!」 これで波紋使いへの道が開ける、と信じて止まないルイズの目を見ていると、この期待を挫けさせるのはどうにも気が引ける。 が、こういうものは早いうちに折って置いた方が治りも早い。 「素質がある人間じゃと、人体にあるツボを突く事で一時的に波紋が使える様になる。素質が無かったらちぃと痛い目にあうだけじゃ」 結果? 逆切れしたルイズさんがジョセフさんを鞭打ちしまくりましたよ。メルヘンやファンタジーじゃないんですから。 「ゼィ…ゼィ……この犬……ご主人様が罰を与えてるってのに波紋使うなんて卑怯だわ……」 「わしだって鞭打ちが痛いことくらいは知っておりますからの」 息を切らすくらい鞭を振るっても、反発波紋を流すジョセフに効果が無いことは判り切っててるがそれはそれということだ。 肉体と精神の疲労で床にペタンと座り込んだルイズに、ジョセフは緩い苦笑を浮かべながらゆっくりと近付く。 「まああれじゃよ。わしは波紋と魔法は、パンとヌードルのような関係じゃと思っておる」 「……あによそれ」 子供の頃のホリィが叱られて拗ねた時のように涙目で見上げるルイズの頭を撫でてやりながら、ジョセフは言葉を続ける。 「パンもヌードルも小麦粉から作るが、作り方の違いで似て非なる食材になりよる。波紋も魔法も同じじゃ。この世界にあまねくエネルギーを集約することで物理現象を超越した現象を起こすことが出来る。 エネルギーの捏ね方が違うんじゃが、メイジは魔法を使うことが出来るし、波紋使いは波紋を練ることが出来るということじゃ。少なくともルイズはデカい爆発が使えるんじゃから、そのうち使える場面も出てくるわい。それにわしが使い魔なんじゃし、な」 パチンとウィンクしてみせるが、ムカついたルイズはジョセフの脇腹をチョップで突いた。 「おふっ。だから何するんじゃよルイズ!」 「ふーんだ。いいわよどうせ私はゼロのルイズよ。お偉いミスタ・ジョセフジョースターには私の気持ちなんかわかるわけないのよ。ふーんだ」 ああこりゃ何言っても聞いてくれそうにないわい、と判断したジョセフは、苦笑しながら毛布に座り直した。 もし文字通り万が一ルイズに波紋の素質があったとしても、ルイズに波紋を教授する気は毛頭無かった。 様々な「人を超越した者」との激闘を潜り抜けたジョセフは、不老不死の幻想を根こそぎ失っていたのもあるが、本当に波紋を使いこなせたところでルイズの仇名が『ゼロ』なのは変わりないだろうと考えたからでもある。 この世界のメイジは伝統や形式に凝り固まっているのはよく判る。そんな中で新たな力に目覚めたとか言われても、それを世間に認めさせるのは最低でもルイズが自分くらいに年を取った頃になってしまう。下手したら死ぬまで認められない。 それを考えれば、少なくとも「魔法が爆発するだけじゃないようになる」可能性に賭ける方がまだ勝ち目があるというものだ。 (何なら魔法が使えなくとも、このジョセフ・ジョースターのイカサマハッタリに人心掌握術を仕込んでもいい。このハルケギニアを掌握することもきっと出来る――) だがこの誇り高い少女は、世界を掌握することよりも魔法使いとして認められることを選ぶだろう。波紋を使いたいと言ったのも、せめて魔法の代用として使いたいと言っただけだ。決して本心から波紋を使いたい訳ではないのだから。 一度は老いることを選んだ自分が波紋を再開する気になったのは、タフでハードな日々を潜り抜ける為の必要悪だった。だが、今は少し違う。 (ま、しばらくお嬢ちゃんを見守ることにしよう。なあに、波紋使ってたら残り時間は幾らでも延びるわい) むくれてベッドに戻るルイズの後姿を見守る視線は、掛け値なしに祖父のものだった。 外から時ならぬ轟音が聞こえたのは、そんな時だった。 「なんじゃッ!?」 祖父の顔から戦士の顔に表情を一変させたジョセフは、窓を開け放って外の様子を伺う。 「何!? 何なの!?」 ルイズも遅れてジョセフの脇から顔を覗かせる。 ランプの灯っていた室内から月明りの空に一瞬瞳孔が調節された後、見えたのは宝物庫の辺りで巨大な何者かが暴れている光景だった。 「なんじゃありゃあッ……」 「ゴーレムだわあれ! 大きいっ……30メイルはあるわ!?」 ゼロでも流石はメイジ、巨大な何者かの正体をすぐさま看破した。 すぐさまルイズは身を翻し、杖を掴んで部屋を飛び出そうとする。 「ハーミットパープルッ!」 ジョセフの右手から迸る紫の茨が、じたばたと暴れるルイズを押し留める。 「離して! 宝物庫には王国から管理を任されてる貴重な宝物がたくさんあるのよ!? そんなところであんなのに暴れられたら……!」 「勘違いするなルイズッ! 今から階段下りたら時間がかかるっちゅうこっちゃッ!」 そう叫んだと同時に、茨を引き寄せてルイズを腕の中に収めたジョセフは…… 「きゃあああああああああッッッッ!!!?」 開いた窓から、一気に地面へと飛び降り! そのままルイズと共にゴーレムへと駆けていったッ! To Be Contined →
https://w.atwiki.jp/chaosdrama2nd/pages/177.html
《アコール()/Accord》 アイコン アコール 年齢 不明 性別 不明(女性?) 種族 アンドロイド 「記録、開始―――」 人物 『ドラッグオンドラグーン3』(DOD3)に登場した人物。 眼鏡を掛けた黒髪ツインテールの女性。白地の巨大なトランクケースを持ち歩いている。 その正体は「旧世界」と呼ばれるところから派遣された記録者で、機械の体を持つアンドロイド。 数多に分岐した「多元世界」と、それらの分岐を引き起こす「特異点」となる存在の観測をしている。 観測する側のため本来ならゼロ(原作DOD3主人公)たちの行動には干渉できない(するべきではない)が、 あまりにもバッドエンドを多く見すぎたため、自らの業務違反にならない程度にあれこれと口出しをするようになる。 その言動は普段は人を小馬鹿にしたような物であり、ゼロとの掛け合いがコミカルなものになることもしばしば。 本編中では武器屋を営んでいるが、通信販売という形を取っているため店先に立っていることは無い。 また関連作『NieR Automata』の武器屋でも彼女の名前を確認することができるが、 同作の設定資料集によれば『NieR Automata』の世界にもアコールは存在しているとのこと。 カオスドラマにおけるアコール 『復活の「R」 ~in the Reincarnated world~』に初登場。 「特異点」と呼ばれるヒロを観測し、時に彼に接触しては謎の言葉を残して消える神出鬼没の存在として描かれている。 『劇場版カオスドラマ 混沌ジェネレーションズ FOREVER 』でも重要な個所で登場した。 『大乱闘カオスマッシュピード』では、Su-Ga官房長官の命により案内人としてすべてのキャラクターに大乱闘への招待状を渡した。 すべての真実が明らかとなった時、大乱闘部の舞台を静かに俯瞰し事の行く末を見守っていた。 物語の終盤にて「ある人物」と会話している様子が見られ、本編で実際に起きた大事件を予見していたような描写が見られた。 『僕らの物語』にて、その正体が『紳士淑女のお茶会』のメンバーの一人であることが判明。 自身と同類の存在らと共に世界の行く末、その物語を観測する集団の一人として活動している。 関連ページ 復活の「R」 ~in the Reincarnated world~ 劇場版カオスドラマ 混沌ジェネレーションズ FOREVER 大乱闘カオスマッシュピード 僕らの物語 関連画像 キャラクター紹介へ戻る コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/37208.html
ゼロクリーチャー ゼロ呪文 ゼロクロスギア ゼロ城 カードリスト MAS 《Code:ERROR》 《》 SR 《魔零門 ロストマジカ》 《》 VR 《零装 ゼロンマデュラ》 《》 R 《》 《》 UC 《》 《》 C 《》 《》 P 《》 《》
https://w.atwiki.jp/zeromoon/pages/91.html
「私はね魔術師なんだ……」 その言葉はとても悲しげで切なげでまるで届きそうで届かない星に向かって手を伸ばそうとしているみたい。 私は思う、この人はこんなにも凄い魔法使いなのになんで私のことをそんな風な目で見るのだろうかと。 私は魔法の一つも使えない魔法使いだと言うのに…… ほんの僅かな時間を経てまどろみから醒める、目の前には染みの浮いた見知らぬ天井があった。 「此処は……」 「お目覚めですか? ミスヴァリエール」 隣から掛けられた声に振り向くと、そこには学園で何度か見かけたメイドが居た。確かシエスタと言う名前だったっけ? なんでこんなところに。 「あのミスヴァリエール、ミスタコルネリウスは一体何処に……」 そう言われて唐突に思い出す、ウェールズ様、レコンキスタ、去り際のアイツの笑顔。 私にとって無敵としか思えないアイツが見せた儚げな微笑。 「あの馬鹿っ!?」 その意味に思い当たった時、私は全力でアイツのことを罵倒していた。 去り際にアイツに撫でられた頭が疼く。 召喚した時は平民だと思って随分失礼なことを言ってしまった。 私なんか、いや私が知るどんなメイジも及びもつかない魔法使いだと知った時は恥ずかしくて死にそうだった。 私の使い魔をやってくれるって聞いた時は耳を疑い、その後すごく嬉しい気持ちになったっけ。 教えてくれた異世界の魔法は私に貴族の誇りをくれた。 覚えている、なんで私なんかの使い魔をしてくれるのか?と聞いた時の寂しげなアイツの顔を。 ――何、恐いお姉さんの下から助け出してくれた命の恩人に報いるだけのことさ 覚えている、なんで私なんかの面倒をこんなに見てくれるのか?と聞いた時の怒ったようなアイツの顔を。 ――しょうがないじゃないか、私は君の使い魔なのだから。魔術師として一度結ばれた契約を軽視はできんよ。 覚えている、なんでこうまでして私を助けてくれるのか?と聞いた時の嬉しそうなアイツの顔を。 ――知らなかったのかい? 魔術師と言う人種はね馬鹿みたいに身内にだけは甘いのさ! そう言って赤いコートを翻しておどけたように笑うアイツの背中は、"眠り”のルーンによって齎らされる強制的な意識の断絶を前にして私の心に焼きついて離れない。 「あの馬鹿……そう簡単に死なせるもんですかっ!」 血が出る程に唇を噛み締めながら、私は呟いた。 ○ ○ ○ それはまさに悪夢だった。 レコンキスタの先鞭を務める竜騎士達が見たのは、ただ草原に一人立ち塞がる赤い外套のメイジであった。所詮一人――と侮りがあったことは否定しない。だが彼らをして悪魔と言わしめるだけの恐ろしさがその赤い外套の青年にはあったのだ。 「Repeat!」 青年が一言唱えるたびに紅蓮の焔が舞い上がる、詠唱の間を突こうとした同僚が火達磨になるのを見て新米の竜騎士である“彼”は全速で逃げ出したくなった。 在り得ない、スクウェアかそれ以上の火力を出していることもそうだが、それだけの威力のある魔法を使いながらもただ一言しか詠唱しないことも、自身を守る弾幕の如く魔法を展開していると言うのに精神力に一切の翳りを見せないことも。 「なんだ、なんだお前はぁぁぁぁ」 自身に迫る炎の波を見つめながら、“彼”は絶叫した。 「私かい? 私はねただのしがない魔術師さ」 帰ってきた声には自嘲と“彼”に対する羨望が入り混じっていたことに、果たして“彼”は気づいたか。 いや気づくまい。 これだけのことを為しながら赤い外套の魔術師がこの上なく“彼”のことを羨ましがっていたなど、絶対に“彼”は気づくはずがない。 「さて幕だ」 寂しげにぽつりと呟いたその言葉と共に、“彼”の体を焼き払う灼熱の炎。 唯一の幸運は熱いと思う間も無く“彼”の体が骨まで消し炭になったことだろう。 「――なんて、無様」 “彼”の遺体を眺めながら、齢五十を越えた魔術師は嘆息する。 まるで当り散らすような魔術師行使、これはアオザキに笑われても仕方が無い。 一面の焼け野原となった草原に足を踏み出し、直前に“彼”が行った奇跡に思いを馳せる。 「こうも容易く成し遂げられては本当に形無しだな……」 風吹くところ何処にでも現れる風のユビキタス。 紛うことなき第二魔法を行った魔法使いの遺体を足蹴に、真紅の魔術師は歩いていく。 「知っているかいミスヴァリエール、私たち魔術師と言う人種は魔法使いの成れの果てなんだ」 かつて桃色の髪の魔法使いに語った言葉を、まるで詩のように呟きながら。 「追い抜かれ、骨董品に成り下がった神秘の担い手。届かないと分かってもかつての奇跡 魔法 に向かって挑み続ける愚か者達」 まるで聖人が海を割るように人の波を真っ二つに切り裂いていく。 「私はねこの世界に来て驚愕したよ、奇跡が神秘によらず成立した魔法使いで溢れたこの世界にね」 けれど…… 「これほど素晴らしい世界なのに、何故これほど私の心は空虚なのだろうね」 今ならば分かる、かつての自分がどれほど奢り、くだらない虚栄に満ち、そして溢れんばかりに充実していたのかと言う事を。 魔術師は思う、きっとあの日あの時あの場所でただがむしゃらに魔術の徒として高みを目指す自分は死んだのだろうと。 「さてと、これで粗方……」 パンとシャンパンの栓でも抜いたような音が鼓膜を叩き、魔術師はゆっくりと自分の胸へと視線を落とした。 そこには冗談のような小さな穴が空いており僅かに血が流れている。 あまりにもちゃちな傷すぎて、最初魔術師はそれが何によって抉られた傷なのか分からなかった。 「あっ、あああ、化け物っ、化け物っ……!」 体の下半分を失った兵士が握り締めた鉄の塊が、真っ黒な煙と硝煙の匂いを吐き出しているのを見るだけは。 そして理解してしまえばあとはもう笑うしかなかった、誰よりも魔術師たろうとしていた自分が魔法が現役の世界で、魔力によらない攻撃によって死ぬなど笑い話でしかない。 「危ないな」 笑いながらそう告げると、自分を撃った兵士の横を悠然と通り過ぎる。 直せない傷ではないし、脈々と受け継いできた魔術刻印が死ぬことを許さないだろうが、しかしもはやなにもかも馬鹿らしくなってしまった。 「嗚呼、アオザキ。こんなことなら君に殺されておけばよかった……」 ○ ○ ○ 無人の野となった戦場を私は走る。 土の焦げる匂い、空気の燃える匂い、人の焼ける匂い。 むせ返るような血の匂いと、死体が腐る匂いで吐き気が止まらない。 走って、走って、そして辿りついた先で――私は魔法のように恋に落ちた。 見渡す限り焼け焦げた闇に溶け込む真っ黒な草原で、彼はもとから赤いコートを血で染めながらぼんやりと月を見上げていた。 右手に以前一度だけ見せてくれた写真を掴み、焦点の合わない目で透明で視線で空に浮かぶ二つの月を眺めていた。 でも私には分かってしまったのだ、この人が見ているのは月などではなくもっともっと遠くにいる誰かの影だと言う事に。 どうしようもなくコイツが死に惹かれていると言う事に。 「アルバ……」 私は、どうしようもなくコイツを振り向かせたかった。 「コルネリウス・アルバ!」 叫んでも、喚いても、コイツは私に視線を向けようとはしない、それが本当にどうしようもなく悔しかった。 「こっちを見て! 私をちゃんと見なさいよ! なんで、なんで私のことを見てくれないよ!」 ――私はもう『ゼロ』じゃなくなった筈なのに、師匠であり目標でありもっとも身近な相手である筈の相手一人振り向かせることさえ出来ない。 「いいわ、それなら力づくでも振り向かせて見せるから」 コイツにだけは絶対に私のことを認めさせたい。 心の奥底から沸きあがってくる殺意にも似たこの気持ちは、『恋』以外名付けようがないと思われた。 『空の境界』より『コルネリウス・アルバ』召喚
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/181.html
第二章 乱心の『ゼロ』 朝、リゾットは日の出と共に眼を覚ました。 普段は3時間も眠れば十分なはずだが、やはり疲れていたらしい。 (毎日同じ服を着ているわけにもいかない…。服を調達しなければな…) そう考えつつ鏡の前で自前の櫛と小さな手鏡を取り出し、身だしなみを整え、細かいチェックをする。 暗殺者というと身なりにかまわないイメージがあるかもしれないが、リゾットは違う。 暗殺者だからこそ常に自分の状態に気を配る必要があると考えていた。 ボスとの戦いで受けた傷は傷跡すら残さず消えていた。 ルイズに召喚された影響なのだろう。他に理由として考えられることがない。 リゾットが身支度する間、ルイズはずっと平和そうに寝ていた。 前夜、朝になったら起こせと言われたことを思い出し、リゾットは声をかける。 ルイズは寝ぼけていたらしく、一瞬リゾットを思い出せなかったらしいが、何とか思い出した。 「服と下着…」 要求に従って下着と制服を出してやる。 「着替えを手伝いなさい」 「……」 返事がないのでルイズがリゾットを見返すと……不審そうな顔をしていた。 具体的に言えば、「何を言ってるんだ、コイツは?」と顔に書いてあった。 「着替えを手伝いなさいったら。早くしなさい、愚図ね!」 「イカレてるのか…? こんな朝から」 「口の利き方に気をつけなさいといってるでしょう!」 聞くなりルイズはリゾットを殴ろうとしたが、上体をわずかにそらしてかわされた。 「着替えくらい、一人で出来るだろう」 「貴族は従者がいるときは一人で着替えたりはしないのよ!」 「自分の面倒も見れないのが貴族なのか」 ルイズがまた怒りで顔を赤くした。これ以上ないほど表情の読みやすいタイプだ。 「いいから手伝いなさい! さもないと食事抜くわよ!」 無一文のリゾットが雇い主のルイズに食事を抜かれるとなると金か食事を盗むしかなくなる。 なるべく波風立てずに恩を返して自由になりたいリゾットとしては、それは困った。 「分かった。手伝ってやる…。しかし……恥ずかしくないのか?」 「はぁ? なんで使い魔に恥ずかしがらなきゃいけないのよ。…ほら、さっさとしなさい」 「他人に服を着せるのは慣れてないんだ。少し待て……。まったく…手がかかる」 (元々人権には縁遠そうな世界のようだが、この分だと人間扱いされないのだろうな) リゾットの推測はこの後、すぐに実証された。 『アルヴィーズの食堂』に到着すると、三列の食卓には富豪もかくやという豪華な飾りつけがされており、その上には豪勢な食事が並んでいた。 「毎朝こんなところで、こんな豪華な食事をしているのか?」 「毎食よ。それに、礼儀作法の勉強でもあるの。この学院は魔法だけじゃなく、貴族たるべき教育全般をするのよ」 支配階級の贅沢振りに呆れながらも椅子を引き、ルイズを座らせてやる。 隣の席に着こうとしたリゾットは、ルイズに押しとどめられた。 「あんたはあっち」 ルイズの指し示す方を見ると、床の上に粗末なスープと硬そうなパンが置いてあった。 「……あれが…俺の食事か?」 「当然でしょ。使い魔が主人と同じものを食べられるとでも思ったの? 使い魔は外で食事をするところを『私が』、『特別に』中で食べさせてあげるんだから、感謝しなさい」 ルイズが恩着せがましく言う。どうやらこれも使い魔に対する教育の一環らしい。 仮にも暗殺チームのリーダーという管理職に就いていた以上、リゾットとて人を動かす機微は知っているつもりだ。 その中でも『働きに見合った報酬を渡す』というのは最重要といってもいい。 リゾットのチームが反逆した原因の一つもそれなのだから。 だが、昨日からの扱いを見る限り、この世界の貴族たちはそんな思考はないらしい。 「……この世界の封建制が革命で崩壊する日も近いな……」 腹立ちを恩義で抑えつつ、リゾットは床に座るのだった。 朝食後、ルイズとリゾットは教室に入った。 大学の講堂のような教室には、たくさんの生徒が様々な使い魔を引き連れていた。 だが、使い魔が人間というのはルイズだけのようで、ルイズはそれをネタに散々揶揄されていた。 ルイズはいちいちそれに言い返す。リゾットに対する嘲笑も含まれているのだが、リゾットは無視していた。 いちいちアホに構っていられないからであるが、それでも貴族の差別意識はうんざりした。 気を紛らわすために雇い主の観察をする。 同じ侮辱でも言われた内容と相手によって怒りの度合いが違うのが実に面白い。 特にルイズは自分の(主に胸の)発育不良と『ゼロ』というあだ名について気にしているようで、 キュルケという赤毛の女にそれについて馬鹿にされた時は怒りの頂点に達したようだった。 「もう許さない…。ツェルプストー、今日こそ決着をつけてあげる!」 「これ以上恥を上塗りするのはよしたほうがいいんじゃない? ただでさえ、貴方は魔法も色気も『ゼロ』なのに」 お互い火花を散らしているところで、リゾットはルイズの袖を引いた。 「何よ! 邪魔しないで!」 「教員が来た。……座ったほうがいい」 入ってきた女性教員が咳払いをする。 ルイズはまだ腹に据えかねるようで、キュルケと最後に視線の火花を散らせるとしぶしぶ座った。 リゾットも席に座ろうとするとルイズが睨み付けてきたので、黙って階段に腰を下ろす。 「皆さん、春の使い魔召還は大成功のようですね。このシュヴルーズ、みなさんの使い魔を見るのを毎年、楽しみにしているのですよ」 そして教室を見渡すと、リゾットに眼をとめた。 「おやおや、また変わった使い魔を召喚したようですね、ミス・ヴァリエール」 シュヴルーズのとぼけた声に、教室中から忍び笑いがもれる。 「だって『ゼロ』だし。召喚が成功したのか怪しいもんだ。その辺の平民引っ張ってきたんじゃないか?」 誰かがそういうと、忍び笑いは大笑いに変わった。 「いい加減なことをいわないで、かぜっぴきのマリコルヌ!」 「誰がかぜっぴきだ! 俺は風上のマリコルヌだ!」 シュヴルーズが頭を押さえながら杖を振ると、二人がすとん、と座った。 (便利なものだな…) 二人に説教をし、さらに笑う生徒の口を赤土で塞ぐシュヴルーズを見ながら、リゾットは感心していた。 そして授業が始まった。 リゾットは静かに講義を聞いていた。聞いているだけでも色々なことがわかる。 魔法には土、水、火、風、虚無の五つの属性があり、メイジはそのうち一つは必ず使えること。 虚無の属性の使い手は失われていること。いくつ属性を使えるかによって四階級が存在するらしいこと。 メイジにはみな、それぞれ二つ名のようなものがついていること。 スタンドとは違い、一つの属性でも様々なことができるらしいこと。 講義が進むと、いよいよ実践になり、シュヴルーズという女教師がただの石を真鍮に変化させていた。 リゾットがあまりに真剣に見ているので、ルイズが話しかけてきた。 「そんなに面白いの?」 「興味はある……。魔法がどういうものかという好奇心はな……」 答えてから、ふと浮かんだ疑問を口にする。 「メイジの二つ名はやはり使う属性から決まるのか?」 「そうよ。ミセス・シュヴルーズは『赤土』で土、マリコルヌは『風上』で風」 「なるほど…。聞けば分かるってわけか……。ではルイズ、お前の『ゼロ』は?」 「それは……」 「ミス・ヴァリエール! 使い魔と語らうのもいいですが、今は授業中です!」 シュヴルーズからの叱責がとぶ。 「は、はい。すいません…」 「授業を聞いていましたか? お喋りするほど余裕があるのなら、この『錬金』は貴方にやってもらいましょう」 そういった途端、教室中の生徒がびくっと反応した。そして続々と反対意見が挙がる。 「先生、やめといた方がいいと思いますけど」 「そうです。無茶です、先生!」 「『ゼロ』に魔法を使わせるなんて!」 「ルイズの魔法の失敗率は世界一ィィィィッ! できるはずがないィィィィィッ!」 シュヴルーズは何をそんなに反対するのか分からない。 「失敗を恐れていては進歩はありません。さあ、ミス・ヴァリエール。やってごらんなさい」 ルイズが意を決したように教壇へ向かっていくと、ある者は机の下に隠れ、ある者は教室から逃げるように出て行く。 わけが分からず、リゾットが観察していると、ルイズは一心に杖を掲げ、呪文を唱えた。 次の瞬間、ただの石が爆発を起こした。 結局、ルイズは爆発によって吹き飛んだものを魔法を使わずに片付けられることを命じられた。 「つまり……お前は魔法成功率『ゼロ』のルイズ……ということか」 「黙りなさい!」 石の破片を投げてくる。リゾットが石を掴んで塵取りに捨てると、また石が飛んできたので、これも掴む。 「気落ちするな。俺の召喚には成功したじゃないか。……仮に爆発しかできないとしても、要は頭の使い様だ」 くだらねー能力と仲間に言われ続けても自信を持ち続けたホルマジオを思い出す。 「うるさいわね! 元々魔法が使えない平民のあんたなんかに私の気持ちは分からないわよ!」 「じゃあ、いつまでもそうやって不貞腐れてるわけか? 失敗したことは仕方ないだろう。……不貞腐れる暇があったらお前も掃除をしろ」 「何で私が掃除するのよ。主人の罪は使い魔の罪。貴方がやりなさい」 リゾットはそのスタンド能力(持続力:A)に反映されているように我慢強い。 何しろあの癖の強い暗殺チームのリーダーだったのだ。ギアッチョなどはキレやすいため、普通に会話するのもかなりの根気を要した。 どんな性格や思想だろうとやるべきことをやって成果を出せば評価するし、それなりにうまく付き合う。 だが、反面、責任を果たさず、成果も出さないくせに威張り散らす人間は我慢ならなかった。 そういった意味で、今、ルイズはリゾットの地雷を踏んだ。 「つまり……自分に罪はあるが、俺に押し付けるからいい……。そういうことだな?」 リゾットの視線が強く、鋭くなっていく。 「お前は俺の恩人だ…。だから命令されれば従う……。部屋の掃除もしよう。洗濯もしよう。食事が貧しくても耐えよう。だがな…」 ルイズの右腕を掴む。その意外な力強さにルイズは思わず一歩引こうとしたが、動けない。リゾットの暗黒を映したような眼が近づく。 「な、何よ…? 使い魔の癖に」 「自分のやったことくらい、自分の手も汚せ! どこまで甘ったれるつもりだ!」 「わ、分かった…。やるわ…。そんなに怒らなくたって……」 途端に、リゾットは離れた。そのまま無言で片付けを再開する。 ルイズは思わず座り込んだ。大人しい使い魔の恐ろしい一面を目の当たりにして、立っていられなかったのだ。 放心していたが、しばらくすると屈辱が沸いてきた。 「な、何よ。何よ……。平民の癖に……! 使い魔の癖に……!」 ブツブツいいながらも、机を拭き始めた。その後、昼食が終わるまで、二人は一言も口を利かなかった。 昼食後、リゾットは部屋の掃除を済ませ、洗濯をしようとしていた。しかし、一つの問題に気づく。 (どうやって洗濯したものかな…) 洗濯や掃除はできる。ただし、それは洗濯機や掃除機といった文明の利器があってこそだ。 掃除はごみを拾って捨てたり、箒で掃いたり、雑巾がけをしたりすればいいのは分かるが、 洗濯の方は洗濯板を使うといっても洗剤の分量や気をつけるべき生地まではとても知らない。 第一、洗濯板も洗剤もここにはない。洗剤に至ってはこの世界にあるのかどうかも分からない。 (ルイズに聞いてみるか…) 先の件など忘れたように、リゾットは自分の雇い主を探しにいくのだった。 一方、ルイズは中庭で気落ちしていた。 リゾットは最初、自分を慰めようとしてくれていたのだ。それを八つ当たりしてしまった。 それに、リゾットがルイズに信頼も忠誠も抱いていないのが気にかかった。 そぶりを見ていれば分かる。命令に従ってはいるが、それは「仕方なく」やっているだけで、本心から仕えているのではないことが。 使い魔に信頼されない主人など笑い話にもならない。メイジ失格だ。 (うん、決めた。とりあえずさっきの件は水に流そう) まだくすぶり続けるリゾットに対する理不尽な怒りはぐっと抑え、そう決める。 謝るということも考えたが、それは貴族たることに拘るルイズにはどうしてもできなかった。 そこにリゾットがやってきた。 (冷静に、冷静に) 言い聞かせながら使い魔の到着を待つ。やってきたリゾットは開口一番、こう言った。 「ルイズ、洗濯板はどこだ?」 その一言を聞いた途端、ルイズの全身が硬直した。 「……な、なんですって!?」 しばらくして聞き返してくる。気のせいか声が震えていた。 「だから、洗濯板はどこにある?」 リゾットは再度同じ問いをし、硬直しているルイズを見て原因に気づき、一言付け加えた。 「誤解してるなら言っておくが、お前の胸の話じゃあない」 プッツーーーン!! 元々怒りがくすぶっていた時でもある。『洗濯板』、そして『胸』。 自分のコンプレックスを想起させるそれら『単語』を聞いた瞬間、ルイズの自制心は月まで吹っ飛んだ。 「こ…ここここ、この…馬鹿使い魔ーーー!!」 叫びとともに最短・最小の詠唱・動作で杖を振り…リゾットとルイズの間の空間が爆発した! 爆発によって自らも地面に投げ出されたルイズだが、すぐさま跳ね起きる。 「どこに逃げたの!? 出てきなさい! 馬鹿使い魔!」 続けざまに魔法を唱え、次々爆発が起きる。逆上の余り、目は開いていても見えていない。 それを見ながら、ルイズと逆方向の茂みに投げ出されたリゾットが呟く。 「破壊力B…くらいはあるか………。これだけやれれば十分じゃないか…」 「どこよ! どこに隠れたのよ、このイカ墨!!」 ルイズが理性を取り戻すのはこの十分後である。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/311.html
アヴドゥルは暗闇の中、花京院と相対していた。 DIOの能力の秘密と引き換えに死んだはずだが、傷を負っている様子などなく佇んでいる。 「……は…………く……」 何か言っているようだが小さく聞こえ辛い。 意識し聞くため近づこうとすると、足が勝手に止まった。 『行ってはいけない!』はっきりとアヴドゥルを止める。 しかし、花京院も自分と同じような目にあい、生き返ったのかもしれない。 仲間への熱い思いが静止を無視し、アヴドゥルを先へと進めた。 「花京院!大丈夫か!?」 俯き加減で何か呟いていた花京院の肩を掴む。 反応はないが近づいたことにより、声が聞こえるようになった。 「アヴドゥルに『渋い男の世界』なんてありませんよ…ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから」 「なッ!?」 いきなり一度やられる前まで、ちょっと意識していた『渋い男』を否定され驚きの声を上げるアヴドゥル。 「いきなり何を言うッ、花ky…「答える必要はない」 言葉に被せられ冷たく拒否される。 「『アヴドゥル』?『アヴドゥル』とはブ男のこと…『花京院』とは美形のこと……… 死に様を壮大に飾った者のことだ。過程は問題じゃあない。読者の心に残らず死んだ奴が『アヴドゥル』なのだ」 ガガガーーーーーッッッンン!!!!!? アヴドゥルに生涯最大の衝撃が襲い掛かった。 密かに気にしていた事を。 無駄死にキャラスレが立つ度、名前が挙がるのを気にしていた事を! 仲間である花京院から告げられた。 アヴドゥルは衝撃のあまり、立つこともできなくなり膝をついた。 (………何も言い返せん。) DIOというラスボスの秘密と共に散った花京院。 しかも途中に回想シーンまで付いて、辞世の名言と共に逝っている。 それに比べ自分はどうだ! 仲間の命は救った、しかし、相手は中ボス。 しかもその後、ポルナレフのために命を掛けスタンドを使ったイギーに完全に食われている! 愕然とした差に打ちのめされたアヴドゥルは、顔を上げることすら出来ない。 「しかし!」 花京院の強い否定の言葉が響く。 「アヴドゥルさん! あなたの命がけの行動ッ! ぼくは敬意を表するッ!」 前言と全く違う言葉にえッと、アヴドゥルは驚き花京院を見上げる。 「良いッ! ディ・モールト、ディ・モールト(非常に、非常に)良いですッ!良い死に様でしたッ!」 花京院の一転変わった暖かい言葉に思わず涙ぐみ、下を向いてしまうアヴドゥル。 完全に先ほどまでの罵声をわすれたようだ。 「…………なので」 ぷちッ…ぷちッ…ぷちッ…ぷちッ…何かが外れる音が聞こえた。 続いて、ジィーーーーーッとジッパーを下げる音が響く。 先ほどの静止以上にアヴドゥルの脳内に警報が鳴り響いたが、ツンデレにやられてしまったアヴドゥルは気付かない。 上げた視線が花京院のモノと交わる。 いつの間にかベンチに座っていた花京院は、重く響く声でこう言った。 「 や り ま せ ん か 」 素肌に纏った学生服、そして最大まで降ろされたジッパーの中は……… 「ヤッダー バァアァァァァアアアアアッ!!!」 何故か出た謎の魂の叫びと共に、その場から少しでも離れようとする。 しかし、腰が抜けたのか這い蹲ってでしか移動できない。 ゆっくりと近づいてくる花京院を感じ、アヴドゥルは最後の叫びを上げる。 「わたしのそばに近寄るなああーーーーーーーーーッ」 自分の声を聞きながらアヴドゥルは、両手を天使に引っ張られているな感触を受け、夢から覚めた。 がばッ! 飛び起きたアヴドゥルは覚えてもいない夢に酷く恐怖した。 しばらく深呼吸を繰り返し、落ち着きを取り戻す。 (どんな夢だったのか覚えていない。だが一つだけいえることがある。) 心の言葉の最後を口にする。 「ツンデレは危険だ」 深刻な顔でツンデレと発現するアヴドゥル。 そして、正反対に毛布を少し跳ね除け、くー…くー…と涎を垂らし安眠するルイズ。 対照的なご主人様と使い魔の初めての朝であった。
https://w.atwiki.jp/0458250333/pages/119.html
ゼロ 種族:マギドール 性別:男性 一人称二人称 わたくし・様(ただしギーゼラがいつでも変更することが可能) 所属:刻み続ける歯車王朝 アライメント 秩序・中立(ギーゼラ次第で変えれる) 容姿:少年の姿でギーゼラ好みの姿 服装:ギーゼラがギーゼラ好みに着せ替えている主に少年服・執事服 特殊技能 執事系技能・エーテル補給可能 詳細:歯車王に従える少年型マギドール ギーゼラが歯車王に就任した際に記念として造られたギーゼラ好みの少年の見た目をしており、身の回りの世話をしている他、研究等の助手でもある 最高品質レベルなマギドールで最高品質の魔導ギアが取り付けられている
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2349.html
タルブを後にし、『燃える水』がある村へ向かうシルフィードの背に、ルイズは乗っていなかった。 「体調が悪いからゼロ戦を運ぶ竜騎士に連れて帰ってもらう」と言ったルイズの言葉にジョセフは嘘を感じ取ったが、あえてそれに深く突っ込もうとはしない。前日の草原でコルベールから告げられた言葉は、彼女に少なからぬショックを与えていたことを知っているからだ。 「……あんまり無理しちゃいかんぞ」 そう言って頭を撫でるジョセフから、ルイズは黙って俯くことで自分の表情を隠す。 結局ルイズは一足先に学院へ帰り、ジョセフ達はゲルマニアへ向かうこととなった。 目的地の村では『燃える水』は実に豊富な湧出量を誇っていた。しかし燃料としては少々燃え過ぎるのが難点の為、あまり需要はないと村人は言っていた。 その為、樽十本分もの『燃える水』を驚くほどの安価で買えたのは僥倖だった。 ロープで繋いだ樽をレビテーションで浮かせ、シルフィードに引かせて学院に帰った頃にはそろそろ日も暮れようとしていた。 早速『燃える水』を媒介としたガソリンの錬金に挑戦するコルベールをよそに、他の面々は旅の疲れを落とすべく大浴場へ向かう。浴場に行けないウェールズは、ジョセフに湯を張ったタライとタオルを塔に運んでもらっている。 ジョセフは平民用の蒸し風呂へ向かう前に、のんびりした足取りで部屋へと帰っていく。 ドアをノックもせずに遠慮なく開けると、部屋の中に主の姿はない。 「……ふぅむ。まあそうだろな」 予想の出来ていた光景に頬をかきつつ、沈み行く日の光を頼りに勉強机へ歩いていく。 そこには旅に出る前にはなかった封筒がある。ヴァリエール家の家紋が描かれたそれを開けると、中から一枚の便箋が落ちた。 その便箋には、非常に簡潔な言葉だけが書かれていた。 『使い魔クビ。早く帰れ』 内容を一読してからもう一度愉快げに音読し、けらけらと笑い声を上げる。 「全く……」 一頻り笑った後、小さく溜息を付いた。 タルブで別れた時に、ルイズが何を考えていたかなど手に取るように判る。 五日後に帰ることが出来るなら帰してあげたい、けれど一緒にいればその決意が揺らいでしまうかもしれない。だから自分は日蝕が終わるまで帰ってこない。そうすれば使い魔は勝手に帰るだろう、と。 「……ルイズよォ、わしにはハーミットパープルがあるんだぞ。ちょっと頑張ればすぐに見つかるんじゃ」 誰に聞かせるでもない独り言を言いながら、便箋をもう一度封筒に入れて元の場所に戻す。 そしてタオルを手に蒸し風呂で汗を流し、すっかり暗くなった頃にウェールズの部屋へ足を向けた。 「やあ、ごゆっくりだねジョジョ。ミス・ヴァリエールはどうしたんだね?」 ドアを開けたジョセフに、ギーシュが声を掛けてくる。今夜部屋に来たのはジョセフが最後だったようで、他のメンバーはルイズ以外全員揃っていた。 「ああ、その件についてちょいとわしから話があってな」 別段深刻でもない声に、黒い琥珀に記憶されている面々はせいぜい主人がまた何かしらかんしゃくを起こしたのだろう、とアタリをつけた。 「わし、使い魔クビになったんで故郷に帰ることになった」 あまりにもあっけらかんと言い放たれたので、言葉の意味を完全に理解するのに全員数秒の時間を要した。 僅かに訪れた沈黙の後、キュルケはワイングラスを小さく唇に傾けて、たおやかな笑みを浮かべる。 「……ごめんなさいね、私何かヘンな言葉を聞いたようだけど。疲れてるのかしら。もう一度、ゆっくりと仰ってくれないかしらミスタ・ジョースター?」 「あー。わし、ルイズから使い魔クビになっちまったんで、いい機会だから故郷に帰ることにしたんじゃよ。具体的に言うと、四日後辺り? 多分それまでルイズは帰ってこないんじゃないかなァ」 これ以上ないほどあっさり紡がれる言葉に、今度こそその場にいる全員の目が一斉にジョセフへ向けられる。 まだジョセフの言葉に真偽を付けかねる中、最初に口火を切ったのはギーシュだった。 「……それは性質の悪い冗談、というワケではないんだね、ジョジョ?」 「冗談でこんなコト言ったらお前らが怒るのくらいは知っとるよ」 「ダーリン、今度は何やらかしたの? 何なら私達がルイズに取り成してあげるわよ」 「どうしてわしがなんかやらかしたのが前提なんか判らんが、まー……あれよ、今回はやむにやまれん事情っつーのがあってな? お互い合意の上なんで心配はしてくれんでもだいじょーぶぢゃ」 「ふむ……それは残念だ、ミスタ・ジョースター。しかし……本当にいいのかい?」 ウェールズの疑問は、その場にいる全員の疑問だった。 ジョセフがルイズを猫可愛がりしているのは何度もこの目で見ているし、ルイズも憎まれ口はきいていても悪い気はしていないのも明らかだ。詰まる話、相性が悪いわけではない。むしろ良好な関係だと言っていい。 だがもっと根本的な疑問がある。メイジと契約した使い魔がどこかに去ってしまうなどということは、この場にいる全員が聞いた事が無い。そもそもジョセフが召喚されてからハルケギニア貴族の常識を覆す出来事ばかりではあったが、それにしても極め付けである。 タルブの草原でコルベールがルイズ達に告げた考えに、メイジ達が至るには然程の時間を必要としない。 名門公爵家の生まれなのに魔法を使えず、ゼロと呼ばれて蔑まれたルイズを再びゼロに戻すばかりか、使い魔が不在というメイジとして致命的な欠陥を持つことになる。 それについては、昨日コルベールから受けた説明で理解している。ジョセフは、ほんの少し寂しげな表情を浮かべた。 召喚されてから今まで見たことのない類の表情に、(ああ、こんな顔も出来たんだ)と誰かが思ったとしても不自然ではなかった。 「この機会を逃したらあと十年は帰れんらしい。それにわしの主人がそうすると決めたんでな。なら、わしもその心配りを黙って受け取るべきだと思うんじゃよ」 老人の割には軽薄な雰囲気を色濃く漂わせるジョセフが、年相応の穏やかな口調で喋る言葉に、友人達は彼の決意の程を感じ取った。例え女王の言葉であっても考えを曲げることは出来ない、という確信があった。 もし彼の意志を曲げることが出来るとすれば、主人であり可愛い孫娘であるルイズしかいない。だがそのルイズがこの場にいない以上、ジョセフがここを去るのは変え様がないという結論に達するのは、当然の結果とも言える。 室内に訪れた気まずい沈黙を破ったのは、切なげに視線を俯かせたギーシュだった。 「そうか……。せっかく仲良くなれたというのに、本当に残念だよジョジョ。だが使い魔をクビになったとしても、また会えないことはないはずだ。今度の夏休みにでも会いに行こうと思うんだが、君は何処に帰るんだね?」 社交辞令にも似た何気ない問い掛けだが、ジョセフはほんの一瞬だけ、どう答えるべきか悩んで視線を宙に彷徨わせた。 「あー……まあどうせ隠さなくちゃならんコトでもないから、もうぶっちゃけちまうか。実はわし、ここじゃない別の世界から召喚されちまっててなー。帰れるチャンスは四日後しかなくて、それを逃したら次は十年後っつーワケなんじゃ」 次から次へと繰り出される爆弾発言のラッシュは、メイジ達の常識を粉微塵に粉砕するには破壊力が大きすぎた。息をするように嘘を吐けるジョセフだが、ここで嘘を言うメリットはさしてないはずだった。 ここでそんな嘘を言う理由は「二度と魔法学院の連中と会う気が無いという意思表示」か、さもなくば「どうしても故郷をひた隠しにしなければならない事情」があるか。 前者だとすれば、そもそもこの夕食の場に来る意味もない。四日ほど姿をくらまして、そのまま帰ればいいだけの話だ。とすれば考えられるのは後者だが、ジョセフの故郷がスタンド能力を持つ者ばかりというのなら、確かに隠さなければならない。 系統魔法とは異なる先住魔法の使い手ばかりとなれば、故郷を知られるということは故郷を討伐するべく軍勢が送り込まれるのは火を見るよりも明らかだ。 だが、そうだとすれば召喚された直後の奇行と称していい無知な様子に説明が付けられない。多種多様な悪知恵が働くくせに、魔法やメイジに関しての知識が完全に欠落していた。 そこから導き出される答えは、ジョセフの発言は嘘ではない、と言うことだ。 「……ちょっと待ってくれ、ジョジョ。だが、そうなると別れてしまえば本当に二度と会えないじゃないか! いきなりそんなことを親友たる僕達に言うだなんて……!」 普段のキザったらしい口調を忘れ、年頃の少年に似つかわしい感情を隠さず張り上げた声に、それまで無言を貫いていたタバサがそっと手を挙げ、ギーシュの言葉を制した。 「二人が出した答えに私達が口を挟むべきではない。このステーキの鉄板が冷めてしまったとしても、ジョセフが翻意するとは到底思えない」 「だが、それにしたって!」 「はいはい、ミスタ・グラモン。ショックなのは判るけど、タバサの言う通りよ。ここで私達が一斉に力ずくで止めればどうとでもなるけれど……それはダーリンにとっていいことなんかじゃあないわよね。ダーリンが故郷に帰ると言うのなら、友人達が最後にどうすればいいか。 貴方も、ダーリンをジョジョと呼ぶのなら……ジョジョ本人の意思を尊重すべきじゃないかしら?」 穏やかに諭すキュルケに、ギーシュはそっと唇を噛んだ。 「判ってる……判ってるよ、ミス・ツェルプストー。だが、ジョジョは……僕にとって、かけがえのない……親友なんだ……」 それだけ言って、力なく目を伏せる。 ふと訪れた数秒の沈黙に、ジョセフはいつも通りの軽い声と共に手を二つ叩いた。 「ほらほら、辛気臭いのはそのくらいにしちまおう。ギーシュがわしを親友と思っているのと同じくらい、わしはお前達を大切な親友だと思っとる。一緒にいた時間こそは短いかもしらんが、お前達と会えて本当に良かった」 同じテーブルに付く一同を見回すと、沈んだ雰囲気を変えるように普段と変わらない明るい声を上げた。 「さァ! あと四日しかないと考えちゃいかん! 逆に考えろ、あと四日もあるってな! 四日もありゃ別れを惜しむにゃ十分すぎる時間がある! ほらほら、もうスープが冷めちまったぞ、これ以上メシが冷めたら勿体無いじゃろ?」 ジョセフの言う通り、テーブルに並んだ皿から立ち上る湯気は目に見えて消えていた。 * 次の日の朝、ジョセフはアウストリの広場に置かれたゼロ戦のチェックに勤しんでいた。 ハーミットパープルを機体に這わせながらコクピットに腰掛けて、操縦桿を握り、各部スイッチを押していく。 どこも問題ない稼動をし、修理しなければならない所も特にない。後はガソリンを入れればこの機体は自由に空を駆ってくれるだろう。 うむ、と満足げに笑ってから、コクピットの後部に備え付けられた通信機を取り外しにかかる。そうでないとただでさえ大柄な身体のジョセフには狭っ苦しくてしょうがない。 どうせハルケギニアにはこの通信機を使う相手もいないのだから、コルベールに渡せばこれを分解して内部構造を理解することで、また何かしらの新しい発明の助けになるはずだ。 取り外した通信機をコクピットから降ろすと、ゼロ戦に立てかけてあったデルフリンガーが暇そうに声を掛けてきた。 「しっかし相棒よ、コレがマジで飛ぶんかね」 「飛ぶ飛ぶ。だが不思議なことがあってな」 「なんだね不思議なことって」 「コイツが飛ぶ理由ってのは、まあ掻い摘んで話せば翼に大量の風を受けることで発生する揚力で空を飛ぶって建前なんだが」 「ふんふん」 「実はその理屈だけだとこんなでっかくて重いブツが飛ぶだけのパワーは発生せんのだ」 「じゃあ飛ばないんじゃないかよ」 「でも何故かは知らんが飛んどるんだよなぁ」 「なんでそうなるのか理屈も判らんような得体の知れない代物を使ってるのかよ、相棒の世界じゃ」 「そんなこと言ったら魔法だってよく判らん理屈だろ。錬金なんか明らかに質量保存の法則余裕無視しとるじゃないか。どうして薔薇の花びら一枚に魔法かけたら青銅のゴーレムが出来るんじゃ」 「相棒の世界にだってスタンドがあるんだからおあいこじゃね?」 「それもそうか」 飛行機が飛ぶ正確な理由を考察する前に、この話題に飽きた使い魔と剣はあっさりと休戦協定を結んでいた。 「それにそんなこたぁどうでもいいんだよ。お前さん、貴族の娘っ子はどうするんだね」 暢気にテレビを見ていたらヨダレ垂らした牛が映った時のような顔をして、ジョセフは横目でデルフリンガーを睨む。 「……お前、わしにどうしても答えを言わせる気か」 「ああ言わせたいね。貴族の娘っ子も大概強情っばりだが、相棒も負けず劣らずってヤツだ。やっぱりなんのかの言ってメイジが呼び出す使い魔は似た者が召喚されるんだねェ」 ケケケ、と意地悪く笑い声を上げるデルフリンガーに波紋蹴りを叩き込んだ。 「ぐぉ! だから俺っちは波紋とスタンドには対応してないって言ってるだろ! いい加減に覚えろ耄碌ジジイ!」 「やかましいッ!」 口をへの字に結んだまま、デルフリンガーを鞘に収めると有無を言わさず波紋入りハーミットパープルで縛り付けて勝手に顔を出せないようにした。 「帰れるんなら帰るがな。だがそれでも、関わっちまったのに放って帰ってメデタシメデタシで終わらせるワケにもいかんだろ……」 はぁ、と溜息をつくと、通信機を肩に担いでコルベールの研究室へと歩き出した。 * 所変わって、トリステイン王宮。 アンリエッタの居室にルイズはいた。 ジョセフ宛の手紙を書いた後、馬を飛ばしたルイズが向かったのはアンリエッタのいる王城だった。 今実家に帰れば、両親や下の姉のカトレアに何があったのかを聞かれることになる。遅かれ早かれ、洗いざらいありのままを語らされてしまうだろう。 そうなれば、学校を勝手に休んで実家に帰ってきたのをこっぴどく叱られるだけではなく、下手すればせっかく元の世界に帰す目処が付いたジョセフをありとあらゆる手段で押さえ付けてくるだろう。 トリステインどころかハルケギニアに並ぶ者無しのスクウェアメイジである母にかかれば、ジョセフでも太刀打ち出来る光景が全く想像出来ない。 かと言って学院にいれば、自分でも何をするものか判ったものではない。しかし他に行く当てがある訳でもない。 消去法的に、ルイズはアンリエッタのいる王城へ向かわざるを得なかったのであった。 だが一週間後に望まぬ政略結婚を迎えようとしている幼馴染は、まるで処刑の日を待つ死刑囚のように表情と感情を失っていた。 突然やってきて面会を願ったルイズに少しばかりの笑みを見せはしたものの、それだけだった。 四日ばかり滞在させてほしい、と言う幼馴染に、アンリエッタは適当な客間を用意した。 「ごめんなさいね、ルイズ・フランソワーズ。これからドレスの仮縫いをしなければいけないの」 形だけの笑みを向けられたルイズは、知らず知らず彼女から目を背けていた。 『ああ、私のルイズ。いつになったら、私はこの鳥篭から出られるのかしら』 そんな言葉を、笑っていない笑顔から読み取ってしまったから。 アンリエッタ本人がそう言った訳ではない。王女本人が、そんな意思をルイズへ伝える意思があったかどうかさえ確かではない。 しかし、ルイズ自身はそう感じてしまった。 それは幼馴染の内心を感じ取ったのかもしれない。勝手に幼馴染の内心を思い浮かべただけかもしれない。 だがルイズは、虚ろな笑みに応える術を何一つ持っていない。 魔法も使えず、使い魔もいない自分には何も出来ないという事は、他ならぬ自分自身が一番良く理解しているからだった。 To Be Contined → 戻る
https://w.atwiki.jp/duelvideo/pages/691.html
【呼称】ゼロ 【使用デッキ】(★:1000回再生) 聖騎士 sm21361790 sm21429779 sm22164192 青眼白竜 sm22492717 青眼の白龍 sm22559313 アーティファクト ★sm22900278 スクラップ sm22911589 竜星 ★sm23379673 青眼シャドール ★sm23386655 HC sm23618015 スピリットデスサイズ sm23957414 クリフォート ★sm24048790 純聖騎士 ★sm24486035 影霊衣 ★sm24700462 列車人形 sm25232459 【出演動画】とにかくデュエルだ! 【twitter】 【備考】 名前 コメント