約 3,810,530 件
https://w.atwiki.jp/bmrog/pages/107.html
(rius) では始めましょう!ネームチェンジとイニシアチブ順に自己紹介をお願いします (r05_Mitsu) 【美月】「こほんっ、――祇堂美月。18に今年でなりました。」 (r05_Mitsu) 【美月】「時期に学生生活ともお別れかと思いながら……大学へ上がる予定もあったのですが、覚醒してしまったために、卒業後は本家に一旦入ることが決まったそうです。 で、えんぜ君という奇怪な丸型生物に会ったのですけど……アレは一体何なのでしょうね。」首をかしげてちょっと考え込み (r05_Mitsu) 【美月】「と、一応天界の使いとか言われてますが……とりあえず其れはよしとして、魔族……一度だけ戦闘をかわしましたが、アレは驚異的。世にはびこれば混乱を招くのは必至……当面の行動は、えんぜ君とカルテルというものの意向に沿いながら……むやみに力を使わない方向で……あと、せめてもの学生生活の最後を楽しく過ごせればと切に願うばかりです。」 (r05_Mitsu) 以上です。 (R04_far) 【ファレ】「妾はファレ!、まぁ、人間界では、里緒と名乗っておる。」 (R04_far) 【ファレ】「元々は魔族じゃったが、こっちへきてからというものなぜか調子も出ぬ。じゃから、基本的にはヒロインへは協力はしておるが、きつかると大変そうじゃな。」 (R04_far) 【ファレ】「兎に角じゃ、侵略する魔族は全て滅すべきじゃ!」 (R04_far) 以上です。 (rius_GM) ありがとうございます。では始めましょう (rius_GM) †Heroine Crisis TRPG† (rius_GM) (rius_GM) (rius_GM) (rius_GM) (rius_GM) ○ 二人の場合 (rius_GM) フリーのヒロインであるあなた方のもとに、黄昏の星教会より依頼が入ります。 (rius_GM) 最近、丘の上の旧大沢邸に魔族がすみついたのではないかとの情報。その裏付けをとってきてほしいとの内容です。 (rius_GM) 当然子供のお使いではないので、居ました終わりではなく、どういう相手なのかもしっかりと調べてほしいとのことです。 (rius_GM) ということで依頼を受けたあなた方は二人で屋敷に向かって歩いています (R04_far) 前回行った場所でしょうか。 (rius_GM) はい、そうです (R04_far) 【ファレ】「うむぅ・・・、こちらから出向くとはの・・・。」 (r05_Mitsu) 【美月】「?……」後ろを付いて歩きながら、つぶやくような声に首を傾げます (R04_far) 【ファレ】「なんでもないわ、行くぞ。」 (r05_Mitsu) 【美月】「ええ。あの――ファレ……さん?」 (R04_far) 【ファレ】「なんじゃ?」 (r05_Mitsu) 【美月】「差し出がましいかもしれないけど……年上を相手にはもう少しソフトな言い回しをされたほうが良いかもしれませんよ?」苦笑いをして、見た目上経歴上は年上だから少し気になったらしいです (R04_far) 【ファレ】「何か障害でもあるのかの?」 (r05_Mitsu) 【美月】「私には特に……いえ、今は社会道徳を説く時間ではないわね。ごめんなさい……」そうだ、私が古いのかもしれない……そう思えば口を今は紡ぎました。 (R04_far) 【ファレ】「かまうこともないわ。」 (R04_far) 【ファレ】「そうこうしておればついたじゃろう、さぁ、どう調べるかの。」 (r05_Mitsu) 【美月】「ええ、そうね。じゃあ、私も遠慮なく――」丁寧に喋るのをよそうと思って、後について歩く。 (rius_GM) 丘の麓にたどり着きます (r05_Mitsu) 魔力感知を、神経質すぎるくらいに行いましょう…って行動宣言して少しはいみあるのでしょうか>GM (R04_far) 【ファレ】「あそこじゃな、さぁ、どうやって気付かれずに、いくかの。」 (rius_GM) 丘の周りを馬鹿みたいに長い塀で囲んだ屋敷。これより近づくと門に誰かがいた場合は気がつかれます (rius_GM) GMの心にとめておきます>行動宣言 (r05_Mitsu) 【美月】「正面突破……というのは流石に無理でしょうね。裏手とか――回ってみる?」 (R04_far) 【ファレ】「そうじゃなぁ・・・、そうするとするかの。」 (rius_GM) 裏手にまわりますか? (r05_Mitsu) 私は裏手で賛成。 (R04_far) 私もそれでいきます (rius_GM) 裏手に回ると、表よりは小さな門。トラックが一応通れるくらいのが閉まっており、隣には通常の通用口が。周りを歩いてみてわかりましたが、屋敷はきちんと手入れがされており、壁なども穴だらけとかではないようです。 (r05_Mitsu) 【美月】「何者かが居るのは間違いなし……だけど、ただのホームレスとかだったら、冗談にもならないわね。」腰に手を当てて……苦笑いを浮かべる。 と変身はもうしてるのかしら? (rius_GM) お好きにどうぞ (R04_far) 【ファレ】「そうじゃな・・・、簡単に抜けられればよいのじゃが、難しそうじゃな・・・。」 (r05_Mitsu) 【美月】「時には愚考も愚作も必要……とね?とりあえず、正面よりは良いでしょう。此方から行きましょう。」 では、変身はまだかな。 (R04_far) こちらもまだです。 (R04_far) 【ファレ】「仕方がないの・・・、突入じゃな。」 (rius_GM) ある程度まで近づきますとカメラに気が付きます (rius_GM) 見られないように門を超えるには運動10、飛行があれば自動成功です (rius_GM) 普通にインターホンを押す選択もなくはないです (r05_Mitsu) 【美月】「とりあえず、どう攻める? 待っていても埒が明かないわよ?」 (R04_far) 【ファレ】「そうじゃな・・・、まぁ、妾が先にいっておる、まぁ、多少は知っておる者じゃし。」 (r05_Mitsu) 【美月】「先って!?……一人で大丈夫なの?」後についていこうかちょっと迷いながら……その後を付いていきましょう (R04_far) 【ファレ】「大丈夫じゃ、きっとの。」 (rius_GM) では、どうやって行きますか? (R04_far) チャイムでも鳴らしましょう。 (rius_GM) インターフォンを鳴らすと、前に聞き覚えのある声が聞こえて来ます。門まで送ってくれたメイドさんの声です。 (r05_Mitsu) 【美月】(インターフォン使うなら、わざわざ裏に回らなくて良かったんじゃないのだろうか……ん~?)とか一人ファレの背中で考え込む (rius_GM) w (R04_far) 【ファレ】「妾じゃ、里緒といったらわからぬじゃろうから、ファレともいおうかの。」 (rius_GM) 少しお待ちくださいのような受け答えの後、しばらくして門が開きます。 (rius_GM) 長いスカートのメイド服を着た青い髪の女性です。 (rius_GM) 魔力判定どうぞ12です (R04_far) 2D6+7 (kuda-dice) R04_far - 2D6+7 = [6,1]+7 = 14 (r05_Mitsu) 2d6+7 (kuda-dice) r05_Mitsu - 2D6+7 = [2,1]+7 = 10 (r05_Mitsu) orz (rius_GM) ファレにはわかります。魔族です。それほど瘴気も隠していません (R04_far) 【ファレ】「シギはおるかの。」 (rius_GM) 【メイド】 「あいにく留守にしております。どうぞこちらでお待ちください。お嬢様もお喜びになられます。」 屋敷の中に案内しようとしますが? (R04_far) 【ファレ】「うむ・・・、ならば待とう、もう一人おるがよいかの。」 (r05_Mitsu) 【美月】(こ、ここって敵陣とか、探索対象の屋敷じゃないのかしら?)ファレさんの後について……どうしたものかと、悩むわけです。 (R04_far) 【ファレ】「兎に角ゆくぞ、我は、シギと話にきたのじゃ。」 (rius_GM) 二人が案内に従っていくと、豪華な応接室に通されます。屋敷の中には自動で感知成功なくらい瘴気があるのに気が付きます。 (r05_Mitsu) 【美月】「ねぇ?ファレ……ここって」明らかに異質な空間に……流石に少し怪訝な顔をするのですね。 (R04_far) 【ファレ】「これはまた判りやすい事じゃ・・・。そうじゃな、魔族がいるというにおいじゃな。」 (rius_GM) 応接室で並んで待っていると、先ほどのメイドさんが紅茶とお茶菓子を持ってきます。 (rius_GM) 香りのよい茶葉、おかしは手作りのアップルパイのようです。 (r05_Mitsu) 【美月】(どう見ても相手の巣窟……なのよね。 素直にいただいて大丈夫なのかしら?)にっこりと笑いながら、視線をメイドとファレに向けて…どうしたら良いのか動作停止中 (R04_far) 【ファレ】「ほしいのであればもらうのもおかろう。」 (rius_GM) メイドさんは邪魔にならないように部屋から出ますよ。 (rius_GM) 2d6+6 (kuda-dice) rius_GM - 2D6+6 = [3,5]+6 = 14 (rius_GM) 2d6+3 (kuda-dice) rius_GM - 2D6+3 = [2,5]+3 = 10 (rius_GM) どうしましょう?手をつけますか? (r05_Mitsu) 【美月】「で、シギ――って相手が来るまでに、少し話を聞かせてもらえるかしら? 状況が……まったく飲み込めてないのですけど?」はぁとため息を漏らす (R04_far) 【ファレ】「そうじゃな、シギというのは魔族じゃな、しかもここに住んでおる。」 (r05_Mitsu) 私は一度様子見……と言うか、ちょっと頭抱えて、状況整理だけで手一杯……ね (r05_Mitsu) 【美月】「それで……依頼内容と照らし合わせると、思い切り状況が黒なのだけど?」怒っても仕方ないかと (R04_far) 【ファレ】「そうじゃな、怒るのは仕方ないが、妾はシギとの話のために来ておる、帰りたいのであれば帰るのもよかろうな、簡単に帰してくれるかは、あそこのメイドに聞くがよい。」少し声が冷たい声になっています。 (r05_Mitsu) 【美月】「大人しく帰してもらえるなら、さっさと帰りたい状況ではあるわね。――戦力的に、明らかに大負け覚悟の状況じゃないかしらね?」一応立ち上がって……部屋を見渡してみる (R04_far) 【ファレ】「そうかの、まぁ、妾は依頼と聞いただけで黙って調べるだけは無理じゃ、倒してしまうつもりでいくからの。」 (rius_GM) 多少豪華のところを除けばきちんとした応接室です。大きな窓があるので脱出するなら助けになるでしょう (r05_Mitsu) 【美月】「そんな危ない橋に話もなしに私を巻き込む根性が、図太すぎてあきれたわ……」退路はアレかと窓を見てため息が漏れた (R04_far) 【ファレ】「じゃぁ、放置がよかったかの?」 (r05_Mitsu) 【美月】「最初から調べる必要性が無かったじゃない……――本当に、かえって報告書を製作しても良いのかしらね。」困ったような、メイドに帰って良い?と本気で聞く始末でした。 (rius_GM) >居ました終わりではなく、どういう相手なのかもしっかりと調べてほしいとのことです。 (rius_GM) ということなのでもう少し情報は欲しいかも (rius_GM) そんな話をしているとバーンとドアが開きます! (rius_GM) ドアを開けて入ってきたのは格別小さい少女です。博倉学園の制服に身を包んだ少女はうれしそうに部屋に飛び込んできます (R04_far) 【ファレ】「シギ、何日ぶりであろうかの?」 (rius_GM) 【シギ】「戻ってきたのか!待っておったぞ!!」 人の話を聞いていません (R04_far) 【ファレ】「いいえ、話を聞きたかったからよ。」 (rius_GM) 【シギ】「なんだ、何でも聞くがよい!!」 (R04_far) 【ファレ】「お主は何のためにヒロインを襲う、いや、人間界へと侵略するんじゃ?」 (rius_GM) 【シギ】「決まっておる!この地に我が帝国を築くためだ!!」胸を張り、下から見下ろしつつ。 (R04_far) 【ファレ】「何のための帝国じゃ?」 (r05_Mitsu) 【美月】(私って、居なくても変わらないんじゃないのかしら?)……存在意義を感じないと言うか……部屋の隅っこでメイドさんと話してようかしら…… (rius_GM) 青い髪のメイドさんは気さくに話に乗ってくれますよ。 (r05_Mitsu) とりあえず、隅っこで世間話でもしてましょう……魔族でも、敵対しないなら、屠るってわけでもないし。 (rius_GM) まじめな感じの好感のもてるメイドさんです (rius_GM) 【シギ】「?? 我が為の帝国だ!」 何を言われているのか、いま一つわかっていない風で (R04_far) 【ファレ】「私利私欲かの。創って何をするつもりなのじゃ?ヒロインを犯すかの?人間界を魔界のようにするのかの?」 (rius_GM) 【シギ】「そうだ!わが望みが臣民の望みになる、そんな帝王になるために学習しておるのだ!!それが貴族の務め。私利私欲などというちっぽけな考え方が入る余地などないわ!」 (R04_far) 【ファレ】「ふむ、まだまだ子供じゃ。ならば民が望む事、それはシギが望む事と違えば望む事にはならぬという事ではないのか?」 (rius_GM) 【シギ】「今日の夜にカレーが食べたい、いやハンバーグが食べたい。そういう意見の相違はあるだろう。だがな、我が望むことはおいしいものを食べたい、そういう望みを満たすことなのだ。」 (R04_far) 【ファレ】「全てはシギの意に、そういう帝国なのなら、誰も心はついて行かないの、そして反乱が起こる、そして滅亡じゃ。」 (r05_Mitsu) 【美月】「コッチの相方も秘密主義で困ったものだけど――そちらの主君も随分ととんでるわね。」額を押さえて、物凄い討論に、メイドに何か同情を覚えた。 (rius_GM) 【シギ】「我が言葉が欠片も届いておらん。その意を持って人心が付いて行かぬような王者なら、その国は滅びるだろう。だがな……」 (rius_GM) 【シギ】「真の王者とは、その導きに民の意思が合わさりついてくるものよ!」 (R04_far) 【ファレ】「自然と合わさるわけもなかろう! 聞き入れることもせぬのはお主じゃろう!! 私利私欲とはそういう事じゃ!そういう考えであるのであれば、妾はどれだけかかったとしてもお主を倒すぞ。」 (rius_GM) 【シギ】「合わさる!王者たる我が日々努力してこそそれは合わさる。」自分の資質にかけらも不安を感じていない目でファレを見返し (r05_Mitsu) 【美月】「ん~だけど……今回は、うちの相方の負け――かしらね?」くすくすと笑いながら、面白い魔族も居たものだと、メイドさんをちらりと見て、なんか言わないのかなと (rius_GM) 【メイド】「まあ、魔界の帝王であんなことを考える人のほうが少ないんですけどね。」こっそり美月に囁く (rius_GM) 【シギ】「そして、お主が我が帝国に危害を加えるのなら、わが力を持って排除する!」 (R04_far) 【ファレ】「やれるものならばやってみるがよいわ!この前のようにはいくまいぞ!」 (r05_Mitsu) 【美月】「でも、彼女の考えは間違ってないわ……主とは、周りを見ないわけじゃないけど……周りが自然とほれ込んで付いてくるものよ。理論でセイジはやれるけど、覇道をいくなら、無言で背中で付いてこさせる魅力がないと――力でも、人徳でもね?……私利私欲……大いに結構じゃない?私は、格好良いと思うわよ?」くすくすと陰口を楽しむメイド+学生魔女 (rius_GM) 【メイド】 「そうですね。ほっておけないから、私もここに来たのですし。」 (rius_GM) 【シギ】「よかろう、表に出ろ!今度は一晩どころじゃなくお仕置きしてやる!!」 (R04_far) 【ファレ】「妾は理屈は嫌いじゃ!! ここは人間界じゃ、魔界でもあるまい、魔族が好きにしていいわけもなかろうが!」 (R04_far) 【ファレ】「望むところじゃ!今度こそ倒すぞ!」 (rius_GM) 【メイド】 「お客さまも行かれるのですか?」美月さんに (r05_Mitsu) 【美月】「見学……かしらね?うちの相方の問題みたいだし・・・それとも、暇つぶしに貴方が私の足止めでもする?」くすくすと笑って、手出しは見送るご様子。 (rius_GM) 【メイド】 「滅相もないです。ここは命をかけるところではありません」 (r05_Mitsu) 【美月】「それなら……待ってて見るのも良いんじゃない?」くすくすと笑って、(私ってば今回仕事無いなぁ)とか 後編へ続く Heroine Crisis TRPG/温泉屋敷と黄昏の星(後編・ファレside) Heroine Crisis TRPG/温泉屋敷と黄昏の星(後編・美月side)
https://w.atwiki.jp/iwannabethewiki/pages/2441.html
製作者 Anhimdm DL先↓ http //www.mediafire.com/download/xxf946ufib7idbc/I_Wanna_Be_The_Core.zip
https://w.atwiki.jp/armoredcoreforever/pages/339.html
ACV/ORDER MISSION 4 ACV/ORDER MISSION 4ORDER MISSION 31双角 片角 ORDER MISSION 32 ORDER MISSION 33 ORDER MISSION 34 ORDER MISSION 35 ORDER MISSION 36ビーハイヴ タイプS4 ORDER MISSION 37不言 ORDER MISSION 38 ORDER MISSION 39 ORDER MISSION 40ストームクレスト コンドル コメント ORDER MISSION 31 エリア MARINE FACILITY 敵対勢力 ミグラント 敵主戦力 AC:双角/片角 最大出撃人数 2名 作戦目標 敵ACを撃破せよ 攻略難度 6 成功酬額 440700Au チームポイント 210 ランクボーナス S:100 サブクエスト1 時間制限(1分以内にミッションクリア) サブクエスト1報酬 20000 サブクエスト1チームポイント 20 サブクエスト2 損害軽微(総ダメージ10000以下でミッションクリア) サブクエスト2報酬 30000 サブクエスト2チームポイント 30 双角 AP 45186 防御属性 KE CE TE - 1281 1865 3385 HEAD KT-2G2 CORE ZEUS CR210 ARMS KT-1S/AMUR LEGS KT-1N/BAIKAL 装備位置 武装 攻撃属性 攻撃力 LA UST-21 GLASGOW CE RA KO-8K2 KE SU UHR-67 AGARTALA CE LH UBR-05 CE RH USG-23 GENEVA KE 片角 AP 44456 防御属性 KE CE TE - 1284 1858 3392 HEAD KT-2G3/ILYA CORE ZEUS CR210 ARMS KT-1S4-2/ILKUT2 LEGS KT-1N/BAIKAL 装備位置 武装 攻撃属性 攻撃力 LA UST-30 MILFORD KE RA PASTEQUE AC106 KE SU UMM-20/H SURAT CE LH KO-7H2 CE RH KO-5K3/LYCAEND KE 赤い方が双角(前衛)、青い方が片角(後衛)。似たようなフレーム構成で似たような役割の武装、遠距離からのKEに弱いのも同じ。 はっきり言って砂砲の経験地稼ぎ用としか言いようが無い(笑)。戦闘開始に必ずその場で浮き上がってから行動するため、隙だらけである。軽量機でGB接近でとっついても良し、四脚で一方的に狙撃しても良し、遮蔽物使って近づいた後に物陰からこっそり片手うちしても良し。 ただしエネルギ耐性が高いため、月光で突っ込んで削りきれないこともある。 ORDER MISSION 32 エリア BURIED FACILITY 敵対勢力 ー 敵主戦力 未確認機射撃型 最大出撃人数 2名 作戦目標 指定領域内の敵を全て撃破せよ 攻略難度 3 成功酬額 チームポイント ランクボーナス S: サブクエスト1 サブクエスト1報酬 サブクエスト1チームポイント サブクエスト2 サブクエスト2報酬 サブクエスト2チームポイント ORDER MISSION 33 エリア BURIED FACILITY 敵対勢力 - 敵主戦力 未確認機突撃型 最大出撃人数 2名 作戦目標 4分以内に指定領域内の敵をすべて撃破 攻略難度 3 成功酬額 チームポイント 100 ランクボーナス S: サブクエスト1 サブクエスト1報酬 サブクエスト1チームポイント 損害軽微:10000 時間制限:3分。 Sランクを狙うと面倒なことになるミッションその1。俺は面倒が嫌いなんだ。 元から面倒な突撃型だが、自分で破壊しないと金を落とさない。全く面倒な奴だ。 更に面倒なことに射撃型や柱が誘導な面倒弾で邪魔してくる。更に突撃型は400ガトを弾く。これは面倒な事になった。 CE腕タンクにヒートキャノンかパルスキャノンを積んで後退しながら掃討しよう。CIWSも忘れずに。 ヒートキャノンは命中率、パルスキャノンは弾数とEN管理が問題。やはり簡単にはいかんな。面倒な事になった・・・。 ORDER MISSION 34 エリア ABANDONED CITY 敵対勢力 ミグラント 敵主戦力 偵察型 最大出撃人数 2名 作戦目標 指定領域内の敵を全て撃破せよ 攻略難度 3 成功酬額 チームポイント ランクボーナス S: サブクエスト1 サブクエスト1報酬 サブクエスト1チームポイント サブクエスト2 サブクエスト2報酬 サブクエスト2チームポイント ORDER MISSION 35 エリア MARINE FACILITY 敵対勢力 ミグラント 敵主戦力 戦車、航空ユニット、防御型 最大出撃人数 2名 作戦目標 指定領域内の敵を全て撃破せよ 攻略難度 4 成功酬額 チームポイント ランクボーナス S: サブクエスト1 サブクエスト1報酬 サブクエスト1チームポイント サブクエスト2 サブクエスト2報酬 サブクエスト2チームポイント ORDER MISSION 36 エリア UPPER AREA 敵対勢力 ミグラント 敵主戦力 AC:ビーハイヴ タイプS4 最大出撃人数 2名 作戦目標 敵ACを撃破せよ 攻略難度 5 成功酬額 222000Au チームポイント 160 ランクボーナス S:100 サブクエスト1 サブクエスト1報酬 10000 サブクエスト1チームポイント 10 サブクエスト2 サブクエスト2報酬 20000 サブクエスト2チームポイント 20 ビーハイヴ タイプS4 AP 39387 防御属性 KE CE TE - 1379 3042 444 HEAD UHD-10 TRISTAN CORE SURT CR114 ARMS WESER AM20 LEGS GRAPPA LG665 装備位置 武装 攻撃属性 攻撃力 LA ULR-22 OLYMPIA TE RA ULR-22 OLYMPIA TE SU KO-8K2 KE LH D/ULR-09 TE RH D/ULR-09 KE タイプS9と似たアセンだがこっちのほうがよりTE防御が紙。こっちも似たような武装で行けば完封出来る。 ORDER MISSION 37 エリア MARINE FACILITY 敵対勢力 ミグラント 敵主戦力 AC:不言 最大出撃人数 2名 作戦目標 敵ACを撃破せよ 攻略難度 5 成功酬額 269300Au チームポイント 150 ランクボーナス S:100 サブクエスト1 時間制限(30秒以内にミッションクリア) サブクエスト1報酬 10000 サブクエスト1チームポイント 10 サブクエスト2 損害軽微(総ダメージ5000以下でミッションクリア) サブクエスト2報酬 20000 サブクエスト2チームポイント 20 不言 AP 44425 防御属性 KE CE TE - 876 1773 3536 HEAD ROLANG HD41 CORE UCR-25/D RATRI ARMS UAM-23/I LEGS KY-4N3/JIUHUA 装備位置 武装 攻撃属性 攻撃力 LA UST-30 MILFORD KE RA KO-8K2 KE SU USM-14 MATHURA CE LH KO-2H5/STREKOZA CE ガン引きしつつロックオンを奪われるセントリーを撒くので時間制限の取得は難しい部類に入る。 ORDER MISSION 38 エリア HUGE CANYON 敵対勢力 ミグラント 敵主戦力 不明 最大出撃人数 2名 作戦目標 指定領域内の敵を全て排除せよ 攻略難度 4 成功酬額 73100Au チームポイント 140 ランクボーナス S:30 サブクエスト1 時間制限(3分以内にミッションクリア) サブクエスト1報酬 20000 サブクエスト1チームポイント 20 サブクエスト2 損害軽微(総ダメージ10000以下でミッションクリア) サブクエスト2報酬 20000 サブクエスト2チームポイント 20 出現するのは防御型・偵察型・ミサイル砲台で、問題無く終わる。 ORDER MISSION 39 エリア ALPINE BASE 敵対勢力 ミグラント 敵主戦力 偵察型、支援型、防御型 最大出撃人数 2名 作戦目標 指定領域内の敵を全て撃破せよ 攻略難度 4 成功酬額 チームポイント ランクボーナス S: サブクエスト1 サブクエスト1報酬 サブクエスト1チームポイント サブクエスト2 サブクエスト2報酬 サブクエスト2チームポイント ORDER MISSION 40 エリア BURIED FACILITY 敵対勢力 ミグラント 敵主戦力 AC:ストームクレスト/コンドル 最大出撃人数 2名 作戦目標 敵ACを撃破せよ 攻略難度 7 成功酬額 508200Au チームポイント 180 ランクボーナス S:100 サブクエスト1 サブクエスト1報酬 20000 サブクエスト1チームポイント 20 サブクエスト2 サブクエスト2報酬 30000 サブクエスト2チームポイント 30 ストームクレスト AP 34572 防御属性 KE CE TE - 2499 835 649 HEAD UHD-22 LANCELOT CORE UCR-10/A ARMS WIESENT ARM29S LEGS ULG-11 RAINIER 装備位置 武装 攻撃属性 攻撃力 LA URL-22 OLYMPIA TE RA AKAZIEN SR15 KE SU BARDANA SRM25 KE コンドル AP 44140 防御属性 KE CE TE - 813 1215 3660 HEAD HD-21 SEALEYE CORE UCR-25/A DURGA ARMS UAM-23/I LEGS KT-4N4/EMEI 装備位置 武装 攻撃属性 攻撃力 LA UPG-16/H TE RA LOTUS BR429 CE SU UCS-17 AMRITSAR KE LH UPG-27 TILTON TE RH BALSAMINA HH04 CE コンドルは近距離からプラズマガン、ストームクレストは中距離戦からレーザーライフルを仕掛けてくる。TE防御を疎かにしているとあっという間にAPが無くなるので注意。 コメント オダミ33 バトライ(UBR-05/R)、プラズマガン(UPG-27/E)、CIWS、重二でSランク。 -- 収支で29万程でした。 (2012-02-16 06 35 49) 何か面倒が嫌いな人がいるwww -- 名無しさん (2012-02-21 10 39 25) 面倒が嫌いでお馴染みのスティンガーさんが降臨しているな -- 名無しさん (2012-02-22 19 58 39) ってか面倒嫌いよ、誘導な面倒弾って何だwwwそんな面倒なのか -- 名無しさん (2012-03-06 13 52 17) 面倒な割にちゃんと説明してるのがまたw -- 名無しさん (2012-03-06 15 58 09) オダミ33にて。中二脚(ULG-21)、Wパルマシ、500のCIWS、EN回復力が8000越える程度の機体を用いたところ、なんとかSを取ることができました。右から一気にGBで行き、かつ地雷を踏まないよう気を付けてみたのですが、可能ならば検証よろしくお願いします。 -- 名無しさん (2012-04-14 21 23 38) プラズマガン(UPG-27/E)両手持ち、CIWS 300 中二脚 中央突破でSクリアーできました -- 名無しさん (2012-04-25 00 47 55) ↑オダミ33です -- 名無しさん (2012-04-25 00 48 49) ↑×3 中二(RAINIER)、パルマシ&バトライ、CIWS、EN回復5798でSランク 収支212270 -- 名無しさん (2013-07-01 21 27 46) 突撃型よりストームクレストとかいうガン逃げ芋砂の方がずっと面倒臭い -- 名無しさん (2023-07-30 14 55 38) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/achdh/pages/157.html
⑧*⑨*⑩ その中の一人が、最重要兵器開発要綱に参加していたテストパイロットの一人であり、現在ガロの眼前で対峙する男、ファントムヘイズであった── 姿を消した彼らが、何を思って紅い亡霊と共に裏側の戦場へエントリーしたのかは、現在ではまだ明かされていない。 財団崩壊後、オリジナルの紅い亡霊が関与したとされる戦闘記録は、非公式にではあるが幾つか残されている。その非公式記録についてはターミナルスフィアに所属しているガロも、保管資料から大体の詳細を知り得ていた。 彼の望むモノ。ファントムヘイズは、確かにそう口にした。 ガロはその言葉が意味する可能性を瞬時に記憶から弾き出すことができた。 確かに、紅い亡霊がそれを目的として代理人としてファントムヘイズを、騒乱の混乱に乗じて送り込んできたのだとすれば、目的としての筋道は立つ。 しかし、それは同時にこの騒乱が最初から唯では終息し得ないことを意味している。 「──随分と強情な事だな、貴様も。よく此処まで、AMS接続を維持できるようになったものだ」 『……貴様が何故この場に居たのか、それを問うつもりなどはない。──此処で、今度こそ、朽ちていけ』 始めからこの接触の結末などは決していた。かつてガロやファントムヘイズがレイヴンとしての道をたどってきていたからこそ、彼らは自身が生き残る為に他者を殺す。 ファントムヘイズのカメラアイから一際強い光源が溢れだし、ガロは操縦把付随のトリガーを引き絞ると同時にフットペダルを踏み込んだ。 姿勢制御システムの警告メッセージを度外視しして後方推進用ノズルから噴射炎を吐き出し、強引にシックフロントの機体を後方へと押し出させる。一方、至近距離からファントムヘイズの頭部へ目がけて放ったリニアライフルの砲撃は虚しく大気を切り裂き、ターミナルエリアの天蓋部に弾痕を穿った。一方のファントムヘイズは文字通り知覚外の瞬間速度で機体を右舷後方へ弾き飛ばし、ほぼ零距離からであったリニアライフルの砲撃を回避してみせていた。 その現存のどの機動兵器にもあり得ない空間移動能力をよく知るが故に、改めてガロは口許を歪めた。 ジシス財団で新規開発され、プロトタイプネクスト群に試験搭載された瞬間機動機構──クイックブースト。甚大な機体負荷と引き換えに、瞬間速度にして音速をゆうに超える移動能力を機体に齎す過ぎた技術。それがネクストと呼ばれた次世代型アーマードコア兵器の要足る技術のひとつであった。 ノイズによって激しく乱れる有視界の中、メインノズルから白緑色の噴射炎を吐き出して反転攻撃に転じたファントムヘイズが前方から迫る。右腕兵装の遠距離用狙撃銃から放たれた砲弾が頭部の左半分を吹き飛ばし、カメラアイから転送されてきていた外部映像の大半が消失、搭載センサー群も幾つかが致命打を受けて機能停止する。 接近機動を行いながらの連続射撃であるにも関わらずファントムヘイズは精密射撃を撃ち込み、シックフロントの機体がそれに合わせて文字通り大破していく。 それでもガロはフットペダルを踏み続けた。破砕した外部装甲の破片が周囲へ飛散し、シックフロントの機体が漸進から悲鳴を上げる。戦術支援AIが第一戦闘態勢での継戦限界を伝える直前、不意に有視界上部に暗がりができ、ガロはシックフロントが連結通路内へ滑り込んだことを察知した。 「悪いが、俺は死ねんよ。その度胸がないんだ──」 『貴様──!』 ファントムヘイズの狙撃銃の銃口が煌くと同時、既に各アクチュエータ機構に損消を受けて機能不全に陥っていた右腕を無理やり持ち上げ、ガロはトリガーを引いた。 リニアライフルから放たれた最後の砲弾が相手の放った銃弾と交錯し、その先にいたファントムヘイズの頭部を掠める。最早射撃反動にも耐えられなかった右腕部が砲身の反動と共に吹き飛び、直後、シックフロントの頭部に真正面から飛来した銃弾がカメラアイを全て吹き飛ばした。 それまで有視界を出力していたメインディスプレイが全て砂嵐に覆われ、メイン基盤をやられたらしい戦術支援AIが意味の成さない雑音のような言葉を垂れ流し続ける。 照明が粉砕してコクピット内部は不完全な闇に落ち、コンソールから漏れる稼働光とショートによる火花が辛うじて視界を確保。ファントムヘイズは此処で完全に破壊するつもりらしく、容赦のない弾幕がほぼ機能を停止したシックフロントに浴びせかけられる。 激しく震動するコクピットの中でコンソールを叩いて離脱プロトコルを完結させ、強引にハッチを開放してガロは外へ飛び出した。パイロットシートから身を起こし、膝をついたシックフロントの脚部を足場にして地上へ転げ落ちるようにして飛び降りる。 文字通り聴覚を聾する弾幕の反響音が耳を劈き、連絡通路内右サイドの欄干から歩行通路へ滑り込むと、ガロは一発でも当たれば常人なら全身が消し飛ぶ銃弾が押し寄せる弾幕の中を走りだした。 前方数十メートルに設置されている非常用扉を見つけて低く這うような姿勢を保って一気に駆け寄り、作動レバーを引き起こして堅牢な構造の非常用扉を引き開けた。その隙間へ身体をねじ込ませようとした時、不運の衝撃がガロの身体に食いついた。 「──!」 右肩をほんの僅かではあるが掠めていった銃弾がガロをいとも簡単に弾き、その身体が非常用扉の真横へ弾き飛ばされる。頭部から通路上へまともに倒れ込んだガロは歪む視界の中、食道からせりあがってくる物体を強引に呑み下して即座に立ちあがった。姿勢のバランスに不具合が生じている事にすぐ気づき、違和感のする方へ視線を向けるとそこに在るはずの右腕が、肩から消し飛んでいた。 衝撃波で飛沫になったと思しき肉片の残骸が背後に散らばっており、其処でガロは右腕が掠めていった銃弾で吹き飛ばされた事に気付いた。 「くそ──」自分ですら聞こえない忌々しげな言葉を吐いた時、加えてしっかりと見開いていたはずの右目も視界が閉ざされている事に思い当たる。巻き込まれて衝突してきた瓦礫片か何かが頭部を直撃し、右目を潰したらしい。残された左手を右目に当てると、どろっとした赤黒い血が手のひらに纏わりついた。 吐き気がするのは、そのせいか── その場で気絶しても良いほどの重傷を負いながらガロは両足に力をこめて足を進め、今度こそ転がりこむようにして非常用扉の先の非常用連絡通路へ入り込んだ。閉めねばならない扉は既になくなっている為そのままにして、ガロはふらつく足取りで通路の奥へと左手を壁に付きながら進んでいく。 数十メートル続いた角を曲がる頃には、いつのまにか後方から轟いていた銃撃音は止んでいた。シックフロントが完全に消し炭になったか──長年連れ添った搭乗機の最後に立ち会えなかった事を悔やむべきだったが、今のガロには前進するだけの気力しか残されていなかった。 吹き飛んだ右腕の痛覚は意識で無理やり遮断してはいるが、熱を帯びた頭の中の意識が混濁し、とりとめのない思考が彷徨う。 視界はフィルターがかかったように黒くぼやけ、辛うじて自身が自分の足で立って進んでいる事を認識できているのがやっとの状態だった。 「こんな傷を負ったのは、初めてだな……」 戦場で重傷を負った事は何度となくあるが、手足一本を失うほどの傷を受けたことは20年近い戦場生活の中では、覚えている限りでは一度もない。それを誇っている訳ではないが、それを成し遂げさせてくれた自身の幸運に対しては密かな感謝を感じていた。 そして、こんな重傷を負っても尚、自身が今辛うじて考えているのはその傷の事などではなく、この状況をどうやって脱し、生き延びるかということだった。混濁している意識とは別なところで、極めて冷静な思考形態を保っている自身の頭の奇妙な現実に驚き、また、同時に落胆してもいた。事実、ガロは口許に奇妙に歪んだ笑みを浮かべている。 ──この後に及んで、やはり自分は戦場から降りる事を考えられないでいる。 それは自分にとって、誇るべきモノでもなんでもない。 降りないのではなく、降りられないその過去から続くしがらみに呆れているのだ。 そこからくる冷め切った思考に現状救われているとはいえ、ガロはそれに限っては素直な感謝を述べるつもりは一切できない。 そんな事を考えながら何本目かの非常用連絡通路を曲がった時だった。 「──やっと来たか」 視界に入るよりも先に届いたその声に反応し、前方に視線を向ける。通路の暗がりに面した壁にもたれ、そいつは口許に咥えた紙巻煙草を転がしていた。 滲む視界では正視できないが、その第一声に関しては記憶にしっかり残っていたため、ガロはそいつの名を呼ぶことができた。 「お前、ハルフテル……」 「何やら乱痴気やってると思って見に来てみたら、まあ驚いたもんだ。財団のあんな遺物が、核部に紛れ込んでいたとはね」 その野次以外のなにものでもない言葉にどう返事をしたものかと考えていた時、ハルフテルは「眼もやられたか……」と呟き、続いてこっちへ来いと言った。 その言葉に従って傍へ歩み寄った時、ガロは不意に左肩を抑え込まれ半ば無理やり床へ腰を下ろさせられた。 「中々、良い塩梅にヤられたもんだなアンタ。──動くなよ」 ぼやけた視界の中でハルフテルが何やら腰元のポーチから携行型注射器の様なものを持ち出し、それを首元へ遠慮なく突き刺した。わずかに鋭い痛みに目をしかめ、暫く──とはいっても数分程度だろうが──してぼやけていた視界にすうっと透明感が差し込み、残された左眼の視力が元に戻り始める。白熱していた意識もいつの間にか冷まされており、そこでようやくガロはこちらに背を向けて二本目の煙草に火を点そうとしていたハルフテルの痩せた全身をはっきりと見咎めた。 「急場凌ぎだが、今のアンタには充分だろうさ。──後の事は知らんがな」 「すまん──」 その言葉に、ハルフテルは片眉を上げて形容しがたい表情を作ってみせる。何の染みか分からないような汚れのついた白衣を身に纏った痩せ男は、肺腑に貯め込んでいた紫煙を周囲へゆっくりと吐き出し、 「勘違いするなよ。──アンタなら、一人でも適当に遣り遂せただろ。でもそれじゃあ困るから、此処に来ただけなんだ」 相変わらず遠慮のないその言葉に浅く息をつき、ガロは正常な視力の戻った左眼を肩のあたりから吹き飛んだ右腕に映した。傷口からの出血は既に止まり始めており、申し訳程度の血滴だけが数滴、床上に血たまりを作っていた。 ──体内血中に巡る初期治療用微小構造体。軍事技術として広く確立されている医療技術だが、それを独自理論を持ってエンシェントワークスは調整開発し、その技術が以前からガロにも導入されている。その治癒効率は一般に普及しているものとは段違いであり、事実として吹き飛んだ右腕の傷口はものの数分で出血が止まろうとしている。恐らく、今しがたハルフテルが打ち込んだ機能補助用プログラム構造体も一役買っているのだろう。 「……どういう事だ?」 「あの女からアンタが仰せ付かった任を全うしてもらう──ついてきてくれ」 それ以上は何も問わなかった。ハルフテルの背中が追及の類を拒否していたこともあったが、彼が直前に言った言葉を信用していたことが主な要因として挙げられる。二十代半ばという齢にしてかつて財団の兵器開発部門にも携わり、財団解体後はターミナルスフィア隷下のエンシェントワークスの中心人物としてもその敏腕を振るっている彼は、意味のない言葉を吐くことは決してしない。 それを最初に直感したのが、ちょうどハルフテルと初めて面を合わせた頃だった。 ──アンタは運が良い。また、戦場に戻れるんだからな…… 付いて来いと言われてから体感時間にして数分後、二人は地下核部を更に数階降りた下層設備の前に居た。そこは既に何年も使用されていないらしく、空間全体に埃っぽい臭いが沈殿している。設備空間自体は何らかの兵器格納庫のようであり、ハルフテルに連れられたガロの眼前には堅牢、かつ巨大な隔離扉が聳える。その脇に在るコンソールを何でもないようにハルフテルが起動し、数秒後、背景に同化して全く動く気配のなかった隔離扉が重い摩擦音を立てながらスライドしていった。 「電源が、生きているのか……?」 「さっき配線を弄ってブースから流しておいたのさ──入れよ」 そう言いつつ先行して隔離扉の先の設備空間へ踏み入れた彼にガロも続く。 「どこだったかな……ああ、此処此処」 一切の暗闇に落ちた何らかの設備空間の中で、内壁に手を這わせていたハルフテルが目的の照明レバーを見つけ、それを両手で引き落とした。 ぶうん、と低い稼働音が一瞬大気を伝播してから数秒の空白の後、天井手前の照明から順に照明灯が点灯していく。それに伴って設備空間の全貌が明るみに曝され、すべての照明から光が灯された時、ガロは視界に見えたその光景に目を瞠った。 「これは──ネクスト兵器……」 無造作に積み上げられた兵器群の残骸が、設備空間の中に山となって放置されていた。 「全部ウチの失敗例、此処は廃棄保管所だよ。幾ら捨てても人目につかないんで、重宝してるんだ」 ジシス財団解体後から間もなくして、ターミナルスフィア隷下のエンシェントワークスは遺された技術情報を元に独自のネクスト技術開発を始動した。その主導者であるノウラの要求を受け、ガロ自身も再びテストパイロットとして開発計画に直接関与してきた為、同技術者集団の中で秘密裏に試験機体が製造されている事について関知し得ていた。 ──が、此処まで造られていたとは。俺が関知していたのは、一部に過ぎなかったという事か? 「見てみるか? 汚染処理はしてある、心配するな」 そう言うハルフテルの双眸に虚偽の色はなく、純粋な興味も相まってガロはその廃棄機体がうず高く積った群々へ足を向けた。ほとんどの機体は完全に分解されていてその全容は分からないが、少なくとも数十機近い廃棄機体が一緒くたになって捨てられている事までは分かる。その中の何機かには、テスト搭乗者として乗り込んだ記憶のある機体も混じっていた。 「──懐かしいものもあるだろう? この第一保管庫が現場から一番近かったんで、寄ってみたんだが」 そんな事をのたまうハルフテルの言葉を適当に聞き流しつつ、その塵の山を巡り始めてからしばらく後、ガロはその中に一際巨大な体躯の機体を見つけ出した。 「こいつは──……」 その機体は他のものと異なって分解工程を経ておらず、武装こそは解除されているがほぼ完成形の姿のままで他の廃棄機体の群に混じり込んでいた。 ガロはその機体構造を一瞥し、自分の頭に残っている記憶と符号してようやく眉をひそめた。 「所員はさっき避難シェルターへ全員入った。蓄積情報もすべて移転行程を終えている。──奴さん、まだ待ってるみたいだなあ、──ガロ?」 後ろでいつの間にかウェアラブルモニターを取り出して画面を注視していたハルフテルが言う。 見覚えのあるその機体に歩み寄って手を付き、 「まさか、使えるのか──」 振り返りはしなかったが、それでもハルフテルがどういう表情を作っているかは容易に想像がついた。彼は──この痩せ男はもともとそういうつもりで、自分を此処へ連れてきたのだ。 「搭載兵装は隣の保管庫に閉ってある。今作業用アームを下ろす、其処で待っていろよ……」 此方の意図を聞くこともせずハルフテルがその場から足音を響かせて設備空間内の内壁階段へと向かっていくのを確認し、それからガロは改めて眼前の機体を見上げた。 「久しぶりだな──【マルシア】……」 天井部の作業用アームが起動し、内壁通路先の管制室でアーム制御を行うハルフテルの姿を見咎め、その場から作業圏外へガロは下がる。器用に一回で二つの牽引フックにアームが取り付けられ、びんと張ったワイヤーが激しい摩擦音を生じながら巻き上げられていく。やがて廃棄機体の群を押し退けながら先ほどガロがマルシアと名を呼んだ機体が全貌を現す。 ──ハルフテルの言葉に倣う訳ではないが、本当に懐かしい姿だった。 作業用アームはそのまま並行移動すると残骸の山から離れた場所へ、吊り下げていた巨大な機体を下した。それでも重量感を感じさせる機体が重い接地音を発しながら、前のめりの待機姿勢へ固定移行する。 管制室での作業を終えたハルフテルが機体の傍へ歩み寄ると、白衣の懐からウェアラブルコンピュータとケーブルと取り出して、それを機体脚部の補助端末と接続した。 「アンタが一番最初に搭乗した機体だ、憶えているか?」 「ああ……。──あの後、解体処分されたものとばかり思っていたが」 「俺もそうするつもりだったさ。──"彼女"は随分と運が良い」 ハルフテルはウェアラブルコンピュータで作業を続けながら、彼女と呼んだその機体を僅かに見上げる。 「機体状態は問題ない、コクピットへ入ってみろ」 手際よく所定作業を終えた痩せ男が顎をしゃくり、その言葉に軽く頷いてみせたガロは脚部に自らの足をかけた。そこを基点に脚部の何ヶ所かを足場に蹴りつけて跳躍し、瞬く間にコア背部のハッチへ取りついた。すぐ傍の外皮装甲板をこじ開け、その中にあったコードスキャナとハンドレバーを交互に見つめる。 「解除コードは?」 「Ex‐0001:1154‐Marsiaだ」 その言葉通りにパスコードを傍のコードスキャナに打ち込み、ハッチシステムがパスコードの正常認識を軽い電子音で伝える。すぐそばのハンドレバーを引き上げた。 ハッチシステムが作動し、コクピット機構が後背部に取りついたガロの眼前に滑り出してきた。長らく使用されていなかった特有の据えた臭いが鼻腔を刺激するも、そんなどうでもいいことは無視し、ガロはすぐさまコクピット内部のパイロットシートへ身を滑り込ませた。慣れた手つきでコンソールを操作して、コクピットをコア内部へと収容させる。 続いて機体制御システムを起動させ、投射型メインディスプレイ及びサブディスプレイが淡い青色の光を伴って眼前に次々と出力、機体制御情報がアップロードされていく。 戦闘補助システム──統合制御体の名を持つ戦術支援AIが起動プロトコルの完結を告げ、ガロは片腕に操縦把を握り込み、フットペダルを軽く一度踏み込んだ。 待機姿勢に在った実働試験型ネクスト機──コード:マルシアがその巨躯を持ち上げ、自らの両脚で立ち上がった。統合制御体に口頭指示して、機体状態の再チェックを進行させる。 メインディスプレイに3Dモデルで出力した機体情報図が記され、各部位の稼働効率のスキャニングが行われていく。 通信要請が入り、コンソールを叩いて回線を確立。 『機体状態はどうだ──?』 「三年も放置されていた割には良好だ。シートの座り心地は最悪のようだがな……」 『そりゃ運が良い』 数十秒後機体状況のスキャニングが無事終了し、ディスプレイ上に【All Green】の文字が表記される。 『隣接格納庫の隔壁扉を開放する。其処で搭載武装を回収、専用運搬設備へ移動してくれ』 「了解──。機体コード:マルシア、移動を開始する」 有視界左舷の隔壁扉が完全に開放され、それに合わせてガロはフットペダルを踏み込んで設備空間内を通常歩行で移動、隔壁扉を潜り抜けた。 その先も大体似たような設備空間であり、見渡せる限りの有視界には搭載状態を解除された無数の搭載兵装が、格納棚に整然と並んでいた。統合制御体に適合兵装の検出プロトコルを指示し、いくつかの兵装がピックアップされる。 機体に搭載可能な適合兵装を引き出し、腕部マニピュレーターに搭載できる兵装を持ち上げる。 「適合兵装の回収完了、運搬設備へ搭乗する」 重い駆動音を立てて設備空間から直結している独立稼働型の運搬用昇降機に、マルシアの機体を搭乗させた。 けたたましい警告音が鳴り響き、警戒灯の赤々しい明滅と共にマルシアを載せた大型資材運搬用の昇降機が上昇を開始する。 『昇降機の正常稼働を確認……通信可能圏外まで約二分だ。問題はないか──?』 その問いに対し、ガロは忌憚なく疑問を返した。 「──俺は、──何分持つ?」 『良くて二分──最悪なら、最初の接続負荷で終わりだろうな』 良くも悪くも、ハルフテルという痩せ男は極めて優秀な技術者である。その彼が一切の逡巡なく突き返してきた事実は、ガロの口許に苦い笑みを浮かばせた。 「了解──。間もなく電波障害下へ進入する」 『あの程度の遺物にヤられてくれるなよ。ちょうど良い機会なんだ』 「其れが、お前の魂胆か。ノウラは無関係だったんだな──?」 その憶測にハルフテルは返答を遣さず、代わりに何らかの意図を含ませ、くっと喉で笑ってみせた。 「──壊れかけとはいえ、生体CPUを切り刻んだ代物だ。──俺は運が良い」 それを最後に通信回線がハルフテルの側から解除され、間もなくして上昇中の昇降機が電波障害環境下へと進入した。コンソールを叩いて機体制御態勢を第三種広域警戒態勢から第一種戦備態勢へ移行し、続けてマルシア本来の戦闘機能を起動させるべく、AMS機構を起動させる。 パイロットシート上部からせり出した接続機構がガロの頚部へ降下し、接続プロトコルの待機段階へ移行する。 「持って二分、か──悪ければ、」 ──悪ければ、死 実動試験機体【マルシア】に最後に搭乗したのはジシス財団解体直後の三年前──あの頃は万全のバックアッププログラムを背景に起動試験が行われた。 その結果は、過度の接続負荷による継続意識の断絶── ガロの保持するAMS適性──ネクスト兵器を制御する為に絶対不可欠な根源的要素と、それと対をなし役割を果たす統合制御体に不備があった為、実働試験機体【マルシア】の起動試験は未達成のままとなり、最終的に機体は廃棄処分となった。 ──今回はバックアップ態勢も何もない。悪ければ死、とはつまりそういう事なのだ。継続意識が断絶した時点で、もしも生命維持機能に関して問題が露出すれば、それは自身の速やかな死を意味している事になる。 その死の見解は、ハルフテルやノウラ、自分の間で著しく異なっている。 つまり、その死を承りたくはない自分としては、異なる手法を取らねばならないだろう。 やがて昇降機の制御システムが当該階層への到着を報告、ガロはシステムに指示して隔壁扉の開放を遅らせた。 ──奴さん、待っているみたいだな 野獣のような六感を持つファントムヘイズの事だ。ハルフテルの言葉通り、あの男は此方が死んだとは一切思っていない。だからこそ、第四ターミナルエリアで待ち続けているのだ。 既にマルシアは当該戦域に踏み込んでいる。 「AMS接続プロトコルを開始──プロトコル完結後、情報制御態勢を順次移行する」 『了解。アレゴリー・マニピュレイト・システム接続プロトコル、開始します──』 頚部内蔵型接続ジャックへ待機態勢に在ったAMS機構が自動処理で接続される。その不快な感触を自身で確かめた後、コンソールキーを叩いて情報処理を開始した。 ──瞬時に流れ込み始める、膨大な情報群の奔流 接続コードから入力されるデジタル情報が神経系統を通じて大脳新皮質へ伝播し、自身の脳機能がそのデジタル情報を細部解析する。視覚野に直接情報映像を出力するインナーディスプレイが構築され、そこへ更新情報群が羅列情報となって流れ始める。 鉛の塊のような重みが脳部に圧し掛かり、その圧力にガロは眉間に力を入れた。 情報転送処理が次第に円滑化して一定の安定率に至り、統合制御体が規定報告を伝える。 『AMS接続プロトコル完結、第二種戦闘態勢を固定維持──。負荷数値64,85%、第一種戦闘態勢への態勢移行は此れを随時可能です』 ガロは接続弊害である精神負荷から押し寄せる嘔吐感を意識の隅へ追いやる。口頭で制御システムに指示し、隔壁扉が開放されるのを確認、ガロは統合制御体に軽く意識を傾けた。 ガロの意思判断に呼応した統合制御体が機体姿勢を更新し、メインブースタから白緑色の噴射炎を吐き出してマルシアの巨躯を前方連絡通路へ押し出した。 高性能型レーダーと搭載センサー群を稼働、ECM工作による電波妨害工作を容易く払いのけて当該戦域の環境情報を収集し、インナーディスプレイへと出力する。 ──第四ターミナルエリアに、ファントムヘイズはまだいた。 此方のレーダー展開に既にファントムヘイズも反応した事だろう。 接敵までの距離は直線にして約800メートル。 ガロは通常ブースタを連続噴射して迷うことなく第四ターミナルエリアへ続く連絡通路を突き進み、最後に直結する通路へと機体を進入させる。 搭載カメラアイが直線状にファントムヘイズの機体を捕捉、メインディスプレイに拡視界映像として転送。ファントムヘイズが急速転回して機体をこちらへ向け、右腕部に携えていた遠距離狙撃銃を跳ね上げた。 それと同時、瞬間加速機構であるクイック・ブーストの動発を統合制御体へ伝達し、メインノズル及び背部内蔵型追加ノズルから強化推力を齎す噴射炎が轟然と吹き出す。コクピット周囲に内蔵設置されている対G緩衝機構が幾らかの加速度負荷を軽減するが、それでも強すぎるG負荷がガロの巨躯をシートに押し付ける。 従来の機動兵器では到底実現し得ない瞬間推力を持ってマルシアの機体が飛び出し、前方から飛来した銃弾を外部装甲で軽く弾き飛ばし、そのままいとも簡単に第四ターミナルエリアへと機体を進入させた。 百数十メートルの間合いを取って敵機と対峙し、マルシアの機体を停止させる。 此方の気配を既に気取っていたのだろう回避機動を取らず、ファントムヘイズから特定回線での通信要請が入る。統合制御体に軽く指示して回線を確立した。 『──貴様、其れは何だ。──、一体何処の誰が産んだネクスト兵器だ……』 →Next… ⑩ コメントフォーム 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/crisissuffe/pages/12.html
crisissuffeとは 2008年6月15日結成。今日で設立から5924日です。 チーム「crisissuffe」の由来 Crisis= 危機;重大な局面 suffe = 経験する;耐える ちょうどMaximum Attack 4 RELOAD 2008の真っ最中に結成され Maximum Attackを頑張って乗り切ろうという意味だったような気がします。 (2人で夜中にノリで立ち上げたのは内緒です。) チームに加入しているからチーム員とだけ遊ぶとか そんな縛りは一切ありません。楽しく遊びましょう。 ただ、何か困ったときはチーム員に頼ってください。 活動内容 日ごろなにやってるんだろう・・・ 活動ロビーは検討中です。 集会日時は検討中です。 活動目的は検討中です。 活動時間は各自バラバラで把握できていません。(夜が多いかも) チーム参加規約(仮) 他のプレイヤー及び運営者に迷惑を掛けない。(※重要) 以上。 マナーを守ってプレイできる人なら大歓迎です。 (何か付け足す事があれば連絡ください。) 入団方法 現在リーダー権限を持っているのは†フレストニア†又はミルトです。 この2名のどちらかに参加の意思をお伝えください。 チーム員の枠が現在10名です。あと先着5名様です。 退団方法 ロビーの受付カウンターでチームメニューから退団できます。 退団は自由ですが、できれば一声掛けてください。 その他
https://w.atwiki.jp/achdh/pages/154.html
⑤*⑥*⑦ 含みを持たせた言葉にガロが冷静な返答をよこす。 中央メインモニターに都市全域への戦力配備状況が次々と舞い込み、統合司令部の指揮機能確立に従って戦線が徐々にではあるが、確立しつつある。 「此れからが本当の戦場だ。──貴様らが何を望んでいるのが、ゆっくり教えてもらう事としよう」 かつて自らが与えた叡知を使い統一連邦は何を求めているのか、この騒乱の終わりの時にどんな結末が用意されているのかを想起し、ノウラは口許を大きく歪めた。 AM08 05── * ──その戦闘は後に【ナヴラティロヴァの惨禍】と呼ばれ、30年以上に渡って戦争史に語り継がれる事となった。 『──完全な奇襲及び殲滅戦闘だ。目に映る者全てを逃すな、徹底的に蹂躙しろ』 無線を介した部隊指揮官のその声に、作戦に投入されたレイヴン達は各々返事を返す。 青白い光を放つメインディスプレイ下のコンソールに指を走らせ、強襲殲滅型に調整の施した搭乗機の機体制御態勢を第一種広域警戒態勢から第一種戦闘態勢へ移行する。 急場仕立てで用意された機体のコクピット内は埃の据えた臭いが酷く、慣らされていないシートは座り心地が悪い。搭載されている戦術支援AIもかなり旧式のもので、女性のプログラムヴォイスは割れていた。しかし、今はどうでもいい事に関して文句を垂れる状況ではなかった。 周囲は最も暗い時刻の闇夜に呑まれ、周囲で出撃命令を待つ友軍機の機影すらまともに視認できない。有視界索敵は困難であると判断し、夜間戦闘支援システムを起動した。投射型メインディスプレイに出力されている有視界が暗緑色に染まった時、再び無線を通じて部隊指揮官が口を開く。 『状況は最早詰み切った。総員、出撃──』 その号令が伝えられ、荒涼地帯に鎮座する軍艦の亡骸の影に待機していた強襲部隊は移動を開始した。その部隊の前衛として急造機体をブースタ噴射で進ませ、暗緑色の有視界前方に目標地点を捕捉する。 頭上を友軍の航空戦力部隊が追い越し、その数分後、先制攻撃としての重爆撃が制圧目標である要塞都市に対して加えられ始めた。広大な敷地面積と堅牢な防衛体制を持つ要塞都市に向けて、無数の誘導ミサイルが降下し、それを迎撃ミサイルシステムと高射砲群の弾幕が出迎える。 眼前の都市上空部にいくつもの火球が産まれ、それらの下降に従ってついに都市全域へ誘導ミサイルの戦火が齎された。瞬く間に要塞内部の各所で火の手が上がり、ようやく出撃してきた敵航空戦力が空中で交戦を開始する。混乱に紛れて荒涼地帯を縦断していた強襲部隊に航空戦力が接近し、それを旧式レーダーが捕捉。 『敵航空部隊に構うな、突出するぞ』 そう言うと指揮官は強化推力機構であるオーバードブースト・システムを起動、背部ノズルから高出力の噴射炎を吐き出して先行増速した。それに続いて後続機もオーバードブーストを起動し、上空から降り注ぐ弾幕の中を突出していく。大地に突き刺さった火線が粉塵を散らし、運悪く致命打を受けた友軍機から順にその場で爆散していく。それでも強襲部隊は止まらず、それらを置き去りにして進んでいく。 この作戦で、止まる事は許されていなかった。 一度走り出したら、全てを燃やし尽すまで止まってはならない── それが、この戦場の前線に取り残されたレイヴン達の可能性だった。 自分を含め、もとより国籍も社籍もない無色の烏達の集まった部隊だ。これからどういう戦闘を全うしようが、それを言い咎める者は居はしない。そして、そうしなければ彼ら自身が生き残れないのだ。 強行突出の中で六機が大地に散り、その犠牲を払って強襲部隊は要塞都市の外郭部全容を肉眼で捉えた。既に秘密裏に接近していた工作部隊によって仕掛けられた爆薬が外郭部を吹き飛ばし、一際大きな轟音が周囲を突き抜ける。大型掘削機が貫通痕に残った瓦礫片を取り払い、瞬く間に三ヶ所の侵入経路が構築される。 『全機止まるな。このまま都市内部へ進入、各機殲滅戦闘を開始しろ。幸運を祈る。そして願わくば、また会おう──』 まるで遺言とも取れる言葉を指揮官が残し、彼の機体が真っ先に外郭部に空いた貫通痕へ突入していく。 さらに三機、友軍機が突入までに破壊される。AC機体一機がようやく通れるほどの貫通痕をギリギリで通過し、都市内部へと進入した。 その時、否応なく実感した。 嗚呼──今、自分は死地を迎えるのだと── 市街地で展開されている戦闘は既に初めから死線を迎えており、自分は奥歯を噛みしめるとフットペダルを大きく踏み込んだ。 陽が二度上ったその日の夕刻、後に【ナヴラティロヴァの惨禍】と呼ばれる事になる戦闘は終結した。 参戦した主戦力、45人のレイヴン達によって要塞都市は完全に制圧され、非戦闘員二万人を含む敵対軍勢力は殲滅された。 戦闘終息の時を迎えたレイヴンは、わずか6名だった── 30年後──閉鎖型機械化都市【エデンⅣ】── AM07 42── 営みの軌跡が灼け墜ちていく──。誰が咎められるというのか。醜くも、また美しくもなく、ただそれは我々の生み出した産物を我々の生み出した産物が蹂躙しているというだけの事実に過ぎないのだ。 果てに迎える物が全てを無価値としてしまう灰だというのなら、我々がその是非を問う事は無為以外の何物でもない。 我々はそれを前にして、何も問えはしないのだ。 『──多数ノ動体反応、接近』 旧式も甚だしい戦術支援AIが戦況報告を極めて機械的な声で発した。ラヴィは原型を留めない残骸となって燃え盛る匡体が散らばる幹線道路を視界全面を意識しながら、メインディスプレイ上のレーダーを同時に注視した。 理路整然としていながらも多重都市構造によって複雑な市街形態を形成する商業区画の各方面から、ラヴィの現着現場に向けて数十の熱源反応が急速接近してきていた。動体反応は各個で動いているように一見して映るが、其処にはある規則性と一切乱れない規律性が介在しているのをラヴィは一瞬で見抜いた。 「増援か──」 レーダー上で目視できる反応数は14機──純粋兵力にして機動分隊規模の機影を確認しながらも、ラヴィは彼我の戦力差に対して一切の焦りを抱いてはいない。搭載センサー群が収集する情報群とレーダー上から推測できる要素を吟味した結果、その14機から成る増援勢力がAC戦力である事を最悪、且つ不可避の可能性として挙げる。自身が搭乗する四脚機体──バーンアウトの機体状態をディスプレイで確認、ラヴィはフットペダルを踏み込んで隔壁前道路から手近な幹線道路へと滑り込んだ。頭上を多重型幹線道路と複雑に絡み合う摩天楼が埋め尽くし、区画全域の大停電状態にある地上は正しく闇の深遠に落ちていると言えた。 夜間戦闘用システムを稼働中の暗緑色の有視界に意識を払いつつ、前方多方向から突出してくる動体反応の状況をレーダーで逐次更新していたが、有効戦闘射界へと動体反応が侵入した瞬間、レーダー上から全ての動体反応が消失した。 その突然の事態にラヴィは眉を顰めてみせた。搭載センサー群の幾つかも機能不全を起こし、ディスプレイ上に[- Seach Error -]の警告メッセージが次々と出力される。 「ECM攻勢──慎重だな……」 複数の搭載電子機器が同時に機能不全を起こす理由としてそれ以外の可能性はなく、また、接近機動からECM展開までの手際の良さを鑑みるに、相当な場数を積んだ練達の戦闘部隊なのだろうとラヴィは行きつく。 動体反応を捕捉する手立ては有視界索敵と当てにならない電子索敵装置、圧倒的な戦力差を前に普通ならば諦めざるを得ないだろう。 しかし、ラヴィは動体反応捕捉から消失までの僅か十数秒の間、対向し得る手立ての欠片を見出していた。 火器管制システムを両腕部兵装へ固定維持し──主兵装である右腕武装のグレネードライフルに意識を傾注する。レーダー反応消失からの経過時間は24,5秒──思考をフルに回転させて状況のシミュレーションを行い、経過秒数が31,5秒に達した瞬間、ラヴィはフットペダルを大きく踏みつけてメインノズルから噴射炎を吐き出し、バーンアウトの機体を発進させた。ビルの影から飛び出して迷いなく向かいの影へ入り込み一区画先の車道へ機体を滑り出させる。 隠密機動を持って接近してきていた動体反応のうちの一つ──一機のAC機体とほぼ正面から対峙、グレネードライフルのトリガーを絞る直前、有視界に捕捉した敵性動体はラヴィにとって感嘆とも言える判断速度でビルの影に滑り込んでいった (やはり腕がいい──だが、些か直線的、といったところか……) 前方右舷へ姿を潜ませた目標は追わず右腕兵装の射撃態勢を維持したまま発進、機体を後進させて右舷同区画へ入り込む。 それは戦術支援AIの行う所の戦況計算と定義するにはあまりに不定形であり、少なくともラヴィにとっては意識的にやっている類のものではない。予知や予測ではなく、ラヴィの身体に刻みこまれた決して消える事のない、戦場の経験則が彼を正しい戦況へと運ばせているといっていいだろう。 その経験則は、ラヴィを現戦域に留まらせるつもりはなかった。ラヴィは投射型メインディスプレイに商業区画の 全域詳細を模した3Dマップを出力した。 「ふむ──」 遮蔽物を最大限に利用した市街戦を展開するにしても、致命的なECM環境下と明白な戦力差の前では此方が先に消耗し切る可能性が非常に高い。ならばそのあらゆる不利な複合要素を覆し、戦況をイーブンに出来る戦域を自ら選べばいい。 其処に最適な場所をマップから検索出力して最短かつ最適なルートマップを表示、ラヴィは迷いなくメインブースタを吹かした。ナビゲートシステムから外れたルートを意図的に選択肢、現区画を飛び出した。 機能復旧の見通しが立たない搭載センサー群は変わらずエラーメッセージを出力し続けている。魔天楼が頭上に林立する幹線道路を最大推力で前身し、前方120メートルに肉眼で目視できる交差路手前の角へ急速転回した。人工の要害として盾になるビルの影に紛れて正規進路であった交差路を迂回し、その間際に其処でラヴィの通過をアンブッシュしていた動体目標を有視界に捉えた。 しかしラヴィは自ら先制を加えるような真似はせず、そのまま素通りして再び人工の迷宮の中へ紛れ込んだ。 搭載センサー群による情報収集に頼らずとも、敵性動体群の動向を的確に把握する術がラヴィには備わっていた。先ほど隔壁設備前で交戦した強襲型MT部隊──帰属組織を示す部隊章などが見当たらない所属不明部隊であったが、殲滅するまでの手合わせの中でラヴィはその部隊の身元についておおよその推測を立てていた。 その手合わせの時と同様、ECM環境下に身を溶け込ませてラヴィを追う未確認AC部隊もまた、非常に洗練された戦術展開を行っている。ラヴィがECM環境下に曝されても的確に目標を捉える手腕である事を確認する手腕を持ち、また、迎撃展開に最適なポイントへルートマップに頼らず移動しようとしている事も既に把握している。 相当に練達の精鋭戦力に違いない、ラヴィは推測していた。ただ、其処にはおおよそラヴィがこれまでにくぐり抜けてきた戦場で対峙してきた敵対勢力──大手傭兵仲介企業帰属や根無し草のレイヴンのような泥臭さは一切伴っていない。 戦術展開の速度や配分、そして何よりも戦場全域を包み込む異様に無機質な気配が、敵対勢力の何たるかを伝えてきていた。 「450メートル──、来るか……」 指定現場までの直線距離は450メートル、既に軌道幹線道路に機体は乗っているためこれ以上の有効な回避行動は必然的にとれなくなる。ラヴィは前方直線道路の左右で待ち受けているであろう敵性動体数を数え、戦術支援AIに指示してオーバードブースト・システムの起動プロトコルを進行させる。 フットペダルを大きく踏み込んでメインブースタから高出力の噴射炎を吐き出し、バーンアウトの鈍重な機体を最大推力で押し出す。軌道幹線道路の六番交差路を過ぎた時、ラヴィの推測通り、過ぎ去り際の有視界両端に動体目標が二機、映り込んだ。肉眼捕捉から間髪入れずブースタを調整噴射して機体を後方へ転回させ、ラヴィはグレネードライフルのトリガーを引いた。後背から牽制射撃を行うべく飛び出してきていた動体目標二機目がけて榴弾が飛翔し、牽制射撃の弾幕に被弾して路上を一際大きな火球が埋め尽くした。時間にして数秒足らずだが、それでも後方からの追撃を遅らせる事が出来る。その大きな機会を生かす為、操縦把上部のスイッチを押し込んだ。オーバードブーストシステムが起動し、専用の後方ノズルから吐き出された過剰推力が時速500キロでバーンアウトの機体を押しだした。後方の牽制射撃の失敗を見越してさらに前方に待機していた二機の動体目標の間を切り抜けて置き去りにし、複数の車道合流点となる軌道幹線道路へ進入。 『熱源反応、急速接近。地対地ミサイルデス』 後方搭載カメラの有視界から把握した戦術支援AIが多数の熱源反応──地対地ミサイルの接近を報告し、ラヴィはバーンアウトの機体を左右へ振りまわす。いくつかのミサイル弾頭が軌道を著しく反らして左右の建築物へ衝突、大規模な爆発を起こして瓦礫片を周囲へ撒き散らす。 『熱源反応、サラニ14基捕捉──』 後方道路の空域全てを埋め尽くすミサイルが接近し、最早機体のみでの回避行動は不可能な物量が押し迫る。その時眼前に軌道幹線道路の終着点が飛び込み、ラヴィはオーバードブーストの前進推力を強引に跳ね上げた。後方から急追してくるミサイル群を従えてそのまま前方の広大な空間へ飛び込むと同時、オーバードブーストシステムを機能解除、その場で機体を転回。バーンアウトを正面に迫るミサイル群と対峙させる。余剰推力によって高速で滑走を続ける中火器管制システムを背部兵装と左腕兵装へ転換、連装型榴弾射出砲を前方展開した。さらに内部保機兵装も準備し、激しく流動する有視界の中に迫るミサイル群を捕捉、ラヴィは背部グレネードキャノンから二発の大型榴弾を射出、同時に内部保機兵装及び左腕兵装の腕部携帯型無反動砲からもロケット弾を撃ち放った。ミサイル群の前列に飛び込んだ榴弾が派手に炸裂して後続のミサイルを巻き込み、路上周囲十数メートルに在った建築物を強大な爆圧で吹き飛ばす。加えてそこへ進入したロケット弾の焼夷弾頭が誘爆して可燃性ジェルを飛散させ、周囲一帯に数千度の炎を撒き散らした。 対炎熱装甲を持たない機体では到底乗り越えられない、超高温の炎の海が前方軌道幹線道路にたゆたい、その境界線を越えて飛び込んで来ようとする動体反応は見受けられない。 その事実を確認してから、ラヴィは自身が飛び込んだ広大な施設空間を見渡した ──商業区画第8ターミナルエリア。 理路整然にして複雑怪奇な都市形態を持ち、それに合わせて同様の構造となった数十の交通形態が共有する交通施設の要衝のひとつである。多くの幹線道路やリニアレールが合流する場所でありその為だけに一区画分が各ターミナルエリアに用いられている。周囲には乗り捨てられた自動車やリニアモーターが鎮座している。適度な遮蔽物と回避機動、及び目視戦闘を行うに十分な広さである。 各兵装の次弾装填の完結を確認した時、前方数十メートルに広がっていた炎の海が不意の轟音と共に弾け飛んだ。続けざまに数発の爆発が響き、砕片と共に赤々しい炎が周囲へ散らばっていく。飛散した炎が散乱し、周囲の大気が醜く歪曲した幹線道路の奥から、そいつらは現れた──。 十四機から編成される未確認AC部隊──最前衛の一機が飛散した炎の残り火を踏み砕き、一糸乱れぬ統率力を持ってターミナルエリアへと進入してくる。 その無機質な気配は、まるで戦場の死神のようであった。 やが十四機のAC部隊は前方に二重横列重体を形成し、約数十メートルの間合いを隔てて停止した。 そして最前衛の一機からオープンチャンネルで通信要請が入る。 なんと行儀のよいものだと胸中で頷き、先の一連の攻防に対する称賛も含めてラヴィは回線を接続した。 『何とも手際の良いものだな、レイヴン──?』 ひどく落ち着きのある、悪く言えば機械じみた声だった。 「エスタブリッシュメントにしては中々やるものだよ、お前達も……」 『野烏如きがそんな言葉を吐くとは……』 随分と賢しげな言葉をのたまうその側面から、前衛機に搭乗しているのだろう指揮官格のパイロットの気質を推し量ることができた。しかし、ラヴィの意識の方向は其処ではなく、パイロットの吐いたその言葉の意味に向いていた。 「──随分と古い身の上を語ってくれるのだな」 その要点のみを端的に表現した返答を聞き、発声音からまだ若年だと推測できる指揮官は素直に関心の声を上げる。 『全く、光栄な事だ。──貴君の様な死神と、こうして戦火を交える機会に恵まれたのだからな?』 ターミナルスフィアへ参入する以前のラヴィの記録を直接知る者は、すでに少ない。五年前に発生した兵器災害では多くの人類が死滅し、それ以前に関する戦場の記憶などは多くが保存文献などを残して人々の記憶から抹消されている。ラヴィがフリーランスのレイヴンとして戦場に在ったのはそれ以前の話であり、一連の交戦から此方の身元を割り出したとしても、それ以前の記録について知る者はなかなかいないはずだった。 その言葉に対しては返答を遣さず数秒の空白のみが過ぎると、再び指揮官格の男が言葉を紡ぐ。 『──とはいえ、此方にも規律は在る。速やかに武装解除し、投降するのであれば生命の保障は利くが?』 慇懃とは程遠い口調にラヴィは軽く口許を歪めた。投降するよりもなによりも、統一政府の精鋭部隊が何故この混乱に乗じてエデンⅣへの武力行使を仕掛けてきたのか、その事について軽い興味を抱いていた。 だが、それも先方が応えなければ無意味な話であり、またそういった類の問題はノウラのような人間が担うべき仕事に過ぎない。その分水嶺を理解していたが故に、ラヴィは、 『笑わせるなよ、──灼け堕ちろ』 それはラヴィからの明らかな宣戦布告。その言葉に応じて、横列隊形を取っていた敵性目標が同時に戦闘態勢へと移行する。戦術支援AIが既に整理出力してきていた敵性部隊の詳細情報は把握済みであった。 ──統一連邦政府標準規格のアーマードコア兵器。その機体性能については、長く戦場に居座り続けているラヴィにとっては特筆すべきものはなかった。 両手に操縦把を握り込み、ラヴィはかつて死神の眼と呼ばれたその双眸に獰猛な戦意を滲ませた。 AM07 55── * 手足が自分の物だと、夢に見る意識が自分の物だと、そう確信できた頃には五日が経っていた。 目を覚ました時に傍に立っていた、気崩した黒スーツを着こんでいたその男は言った。 『アンタは運が良い。また、戦場に戻れるんだからな……』 AM08 25── 『敵性目標、沈黙──。当該戦域の全敵性動体の沈黙を確認』 搭乗機体【シックフロント】搭載の戦術支援AIが、自らプログラム生成して設定した女性の合成音声を発して周囲戦況を更新する。 閉鎖型機械化都市商業区画──特にグローバルコーテックス支社周囲の戦域は強固な防衛戦線が展開され、ガロと同じく依頼を受けたかなりの数のレイヴンが作戦に投入されていた。その為に、彼我の兵力差で侵攻にかかってきていた旧世代兵器群を相手取りながらも、一機の戦力的消耗すらなく該当戦域の第二次制圧を完了した。だが、既に侵攻勢力の第三波が接近しており、周囲へ展開して散らばっていた友軍戦力が統合司令部の召集に応じて防衛戦域へと再び集う。 統合司令部によって構築されているデータリンクを通じ、友軍部隊の展開状況を確認。作戦遂行に当たって致命的な損傷を受けた機体はまだない。しかし、第三波を切り抜けた時、どの程度の戦力が残っているかを考えると其処はガロにとっても疑問だった。 商業区画該当戦域に投入されているAC機体は十機──今回の騒乱に参戦したAC戦力の半分近くに当たる。その十機中半数はグローバルコーテックス専属のレイヴンであり、彼らは恐らく作戦遂行不能になるまで戦闘行為を続行するだろ。だが、他はどうだろうかとガロは考えた。 他のAC戦力は閉鎖型機械化都市【エデンⅣ】に駐留する独立勢力のモノであり、その大半は素性の知れない有象無象だ。何機かはエデンⅣで主催されているコーテックスアリーナでも見かける名だが、それでもアリーナ下位に過ぎない。 戦力を以下に温存して第三波を乗り切るか──それが次の戦闘の要諦になってくるだろうと見たてを立てたところで、ガロはようやく自身が最も素性の知れない類の人間だという事に気付いた。端から見れば自身も独立勢力の一レイヴンに過ぎない。 コンソールを叩いて機体状態を確認する傍ら、僅かに自嘲の笑みを浮かべた。 支社建築物群周囲の空域防衛網を飛行中の広域偵察機から転送されてくるレーダー情報をメインディスプレイに出力し、商業区画外の敵性目標の動向を戦術支援AIに収集させる。都市内部全域は無論の事、どうやら都市外部シェルター周辺でも戦闘行為が散発しているらしい。商業区画には第三波の後方に、第四波第五波の攻勢反応が展開しており、区画全域が動体反応で紅く染まっているといえる。 他の管理区画はそれ程でもないのかと思っていたが、興行区画の一点にのみ動体反応が異常な密度で集中している箇所があった。 「何だ此処は──」 その赤く染まった動体反応の渦中に一機、友軍機反応を捕捉する事ができた。どうやら敵性反応は全てその友軍機に向けて侵攻しているようであり、その異様な光景にガロは眉をひそめた。 まるで、その友軍機が興行区画の敵対勢力を全て引き寄せているように見える。 そう自分で言葉にしてみて、ようやくあり得ない話ではない可能性にガロは自分が言っている事に気付いた。 (まさか、生体CPUが其処に……) 出撃前にメインシステムへノウラから転送されてきたデータファイルの件に思考を巡らした。自身がラヴィを増援によこした先で、不明襲撃勢力と交戦していたアザミ──その傍に何故か居合わせていたのが、コーテックス帰属のランカーレイヴン・ソリテュードという男と、その存在を公式に確認されていない凍結資材の生体CPUだった。 ノウラはそれら幾つかの事案に関して安易な推察を述べはしなかったが、今回の騒乱について最悪の可能性を考えるならば、恐らく彼女でなくても、早かれ遅かれその事実関係に行き着くだろう。 コーテックスアリーナ施設からの脱出を図る際に旧世代兵器と接触したリサも、その事実関係について信憑性の在る報告をしてきていた。 ──旧世代兵器群をエデンⅣ失陥の混乱材料に、統一連邦内の不明勢力が武力行使を仕掛けてきた。 その目的が何であるか、アザミからの報告事項から鑑みれば予測するに難くない。 有機体戦術支援機構──生体CPUの簒奪── 何故この時期に、この規模を持ってなのか、それは迎撃勢力である此方側には現時点では知るべくもない。 ただ、この騒乱の鎮圧が失敗した時、どういった結末をエデンⅣが迎えるかについては想像力を働かせなくとも分かる。 第二種狭域索敵態勢で稼働中のレーダーが、外周経済区画へ侵入してきた侵攻勢力第三波の機影を捕捉する。統合司令部から速やかな排撃命令が通達され、ガロは戦術支援AIに指示してレーダー展開を第一種戦闘態勢へ移行させた。 侵攻勢力の純粋兵力は大隊規模から成る対機動兵器戦用個体のパルヴァライザー──単純な兵力比では第二波とは比べ物にならない増援である。 恐らく第三波防衛戦闘からが、この騒乱の本番といえるだろう。そうなれば、誰も無傷では済まされない。つまり、今回の統合司令部主導による防衛戦闘は最初から一定量の人的消耗を視野に入れたものであり、それをわずかにでも軽減する為にエデンⅣ全域から駐留勢力の素性を問わずAC戦力が招集された。 それであっても、この都市に押し寄せる数千以上の鋼鉄の波を押しとどめられるかどうかは今後の状況次第によるが…… 興行区画はセントラルタワーに異常集中している侵攻兵力の質量とその原因も憂慮すべき事実だが、それと比較して劣らない物量の旧世代兵器群が、コーテックス支社へ向けて商業区画を侵攻してくる。 騒乱鎮圧の失敗──其れは閉鎖型機械化都市【エデンⅣ】を実質統治してきたグローバル・コーテックス支社の失陥、そして同時にエデンⅣという人類最後の庭園そのものの陥落をも意味する。 ──それが統一政府が最後に望む今回の騒乱の結末であり、すべてが灰に葬られる事で統一政府の事実関係も消え去ることになるだろう。そうまでして彼らを果断に踏み切らせたのが何なのか、ターミナルスフィアに長らく関与してきたガロにはある程度の推測が経っていたが、それを敢えて思考の海から追い落とした。 今は眼前に迫る死の影に向きあわねばならないのだ── 『敵性部隊第三波、前衛個体を捕捉しました』 戦術支援AIの報告に沿って視点を動かし、区画設備の緊急照明群によって照らし出された待機中の航空施設から滑走路の方を見やった。粉砕した設備防壁の瓦礫を踏み砕き、青白い眼光をカメラアイに湛えた極めて人型に近い群影が通常歩行で迫る。 『統合司令部より現場各機へ、現在商業区画第五避難ラインより一般市民の避難誘導を通常歩兵軍が展開中だ。地下シェルターへの避難が完了するまで、敵第三波の侵攻を食い止めろ』 その指令にレイヴンが各自返答を遣す。つまり、いくら戦力消耗を招こうともAC戦力は決して防衛ラインを割って退避する事は許されないことを意味している。 人型機動兵器:アーマードコアに乗って戦場に臨み始めてから、ガロは既に二〇余年が経つ。その中で経てきた戦場と今回は比ぶべくもない。遍く在る戦場の一類に過ぎない。死地に臨む事に慣れるとはどうしようもない話だが、ガロには最早他の道で生きる場所が残っていないことを自らが良く悟っていた。 だからこそ、それを良しとしなかったのであれば──かの財団から放逐された際にノウラの誘いに乗らず、戦場の一線から引退できたのだ。 とどのつまり、自分は戦場という世の最前線と果てに取り置かれたどうしようもない人間なのだ── 市街戦闘に当たって各レイヴンに、明確な戦術展開は通達されていない。だが、戦場を日頃の常とする人種であるからこそ彼らは、そういった事態にあっても最大限の戦果を発揮する事を求められるのだ。そして、失敗しない限りその要求にこたえるのが烏の名を持つ兵士達の特質だった。 搭載センサー群から得られた情報によると、敵性部隊の主武装は市街戦に適した実弾兵器群である。 搭乗する機体【シックフロント】は閉鎖環境下における射撃戦、特に前衛戦闘を主眼に置いており機体構造中外部装甲に優れている。搭載兵装──右腕のリニアライフルと左腕レーザーライフル、及び背部兵装のミサイルコンテナの使用状況を確認。継続戦闘に仔細なく、ガロは一瞬の逡巡もなく管制塔の影からシックフロントの機体を飛び出させた。 →Next… ⑦ コメントフォーム 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/armoredcoreforever/pages/244.html
メニュー トップページ はじめに AROMORED CORE V 発売前情報 パーツリスト(準備中) ミッション攻略(準備中) 5用語辞典(準備中) 初代シリーズ ARMORED CORE ARMORED CORE PROJECT PHANTASMA ARMORED CORE MASTER OF ARENA 2シリーズ ARMORED CORE 2 ARMORED CORE 2 ANOTHER AGE 3シリーズ ARMORED CORE 3 ARMORED CORE 3 SILENT LINE Nシリーズ ARMORED CORE NEXUS ARMORED CORE NINE BRAKER ARMORED CORE FORMULA FRONT ARMORED CORE LAST RAVEN 4シリーズ ARMORED CORE 4 ARMORED CORE for Answer ポータブルシリーズ FAQ ARMORED CORE 3P ARMORED CORE 3 SILENT LINE P ARMORED CORE LAST RAVEN P 携帯シリーズ パーツリスト(準備中) MOBILE1・2 MOBILE3(準備中) 共通 用語辞典 公式用語辞典 その他 編集練習 総合コメントフォーム 2chロボットゲーム板スレテンプレ 外部リンク ARMORED CORE OFFICIAL PARTNERSHIP バトルTV - AC.net 合計: - 今日: - 昨日: - トップページの合計: - 更新履歴 取得中です。 ここを編集 ↑※本来のメニューページを編集するので、ここでは使わないこと
https://w.atwiki.jp/earth_core/pages/14.html
EarthCoreとは 「EarthCore」は、マインクラフトの世界で経済要素を取り入れているサーバーです。プレイヤーは自らのビジネスを構築し、資源の管理や取引を通じて経済的な成長を目指せ。 EarthCoreの特色 地球再現サーバーEarthCoreでは、お寿司などの食べ物と銃などの武器が独自に追加され、プレイヤーに多彩な食文化と戦略的な戦闘を提供しています。
https://w.atwiki.jp/achdh/pages/159.html
⑩*⑪*⑫ 昇降機の下降制御情報によると、現在地下高度は千数百メートルまで下がっている。エデンⅣ全域に散在する区画隔壁管理局の運営する昇降機でも通常では、地下数百メートル程度の経済管轄階層までしか降りられない。それより先へ進むには、制御システムに専用コードでアクセス指令を出すかプログラム自体を改竄する方法と取らねばならない。 地下核部構造体は複数の空間層によって構築されているが、不定勢力の依頼主が指定してきた作戦領域はその最下層区域であった。 その最下層へ、間もなく到着する── 数十秒後、昇降機の停止と共に制御システムが最下層区域への到着をプログラムヴォイスで伝え、隔壁扉が開放される。 「動体反応はない、が──」 前方に伸びる連絡通路は赤黒く点滅する警戒灯によってその全貌を淡く映し出しており、ルートマップ上でゼクトラの現在位置を把握。搭載レーダー機能を戦術支援AIの性能支援と併せて並列展開させ、広域及び狭域警戒態勢で反応検出を行ったが、機体周囲半径500メートルには少なくとも動体反応は見当たらない。 作戦領域──当該戦域である場所のその状況に不審を抱き、右腕部に携える短機関砲の発砲態勢を固定維持して、アザミは通常歩行による隠密索敵を開始する。 薄暗くはあるが夜間戦闘支援システムを起動するまでもない連絡通路を緩慢な速度で進行し、ルートマップ上直線距離に最下層区域北方ターミナルエリアの広大な設備空間を確認。其処へレーダー索敵が及んだ時、ターミナルエリア内に動体反応が検出された。 (敵か──にしては、動かんな……) レーダー機能が検出した動体反応はターミナルエリア内に僅か一つ、それ以外の物体反応は見当たらず、無論周囲空間にも同様のものはない。加えて、その動体反応は恐らく此方のレーダー波を捕捉しているはずだが、それにも関わらず、ターミナルエリアからの所定行動を一切取る気配がなかった。 通常歩行による索敵姿勢を固定維持し、アザミはゼクトラをターミナルエリアの方向へ転進させた。 動体反応の検出から約十分後、ターミナルエリアに直線上に直結する連絡通路へ行き当たったが、その時点でも動体反応は一切の機動行動を起こす様子がない。 アザミはその事を不審に思いながらも機体搭載兵装の運用状態を再確認、瞬時に戦闘機動へ移行できるよう準備してその連絡通路をターミナルエリアまで通過した。 ──廃棄線路と資材の残骸が散在、天蓋部まで凡そ百数十メートルもある広大な設備空間がゼクトラの有視界に姿を現した。暫く進んだ後、レーダー機能が検出した動体反応の方向へ頭部のカメラアイを転回させる。 一番初めに捕捉した時と変わらない座標位置に、その"AC機体"は鎮座していた。口頭指示するまでもなく自己判断した戦術支援AIが捕捉機体の詳細解析を展開する。 その間にゼクトラの機体を捕捉機体のほぼ正面へ移動させ、約220メートルの距離を取って停止した。 (AC機体のようだが──少し違うか……?) 望遠拡視界に出力したその機体を一瞥した所、外部機体構造はミラージュ社純製のアーマードコア機体【ガイア・モデル】のように見える。が、アザミがそのアーマードコア機体をガイアモデルに酷似したものだと感じたのは、明らかに既存の同種機体と比較して異なる視覚的情報が散見されたからであった。 事実、詳細解析を行っていた戦術支援AIも当該情報なしの結果を導き出している。 ──両腕部搭載の突撃型ライフル銃と思しき兵装は見慣れない形態をしており、それは少なくともアザミの記憶の中に見当たるものはなかった。両背部兵装に其々搭載されている兵装についても、同様である。 それが実働試験用の新規開発兵器だというのなら驚くに値はしないものだが、アザミはそれらを搭載する機体自体に最も注視していた。 限りなくガイアモデルに近い中量型二脚機体──しかし外部構造に見られる若干の差異として、推力機構と思しきスラスターノズルが構造体各部が挙げられる。 所属を示す部隊章などもなく、眼前に捕捉した機体はまさに未確認機そのものであった。 さて、どうしたものかとアザミが幾つかのコンタクトの手段を考えていると、前方未確認機からの通信要請の受信音がコクピットに不意に響いた。その受信音をカットした後、アザミは自らコンソールを操作してその未確認機との回線を確立した。 数秒の緊迫した空白が両者の間を包み──、 『ぬるい戦場だったろう、──"一つ手の射手"?』 低く静かな、しかし聴く者に確かな緊迫感を伝える鋭い声音。それが、アザミの古い戦場で呼ばれていた俗称を口にした。抑揚に乏しく端的なその声音と言葉は、それを久しく耳にする事のなかったアザミの意識の奥底を強く揺さ振り、過去の記憶を思い出させた。 ──影を捕まえられるまで、生かされて、生きていけ…… 今はもう戦場を下りた一人の友の言葉が、脳裏をよぎる。 「……──アンヘル。クライアントは、お前か……」 グレイエンバー作戦以前、所属を共にしたレイヴンとして部隊を率いたかつての同志の名を、そう呼んだ。地上は商業区画で緊急依頼を送信してきた不定勢力のケリー・アルトマンという人間は、恐らく眼前の未確認機に搭乗する彼の事だと、アザミは瞬時に悟った。依頼データの文末に添えられていた標語、それを部隊に広く知らしめたのが彼──アンヘル・セラ・イ・ナダルという男である。 ──戦場の挽歌を詠え 常に最前線に在り続け、戦場で幾多の死線に曝されながら友軍を勝利に導いた、かつてミラージュ社陸軍に存在した精鋭機械化空挺部隊──レッド・シーカーズの誇りだった。 半ば独り言のような問いに、アンヘルはそう言ったニュアンスを強く孕んだ気配を流して見せ、アザミの六感はそれを鋭く感じ取った。 『──"グレイエンバー"を生き残っていたとは、初耳だな』 「──憶えている人間を探すのも困難では、仕方のない話だろうな……」 変わらず抑揚に欠けた口調ではあるが、その裏側に確かな感情の揺らぎが介在しているのをアザミは手に取るように理解する事ができた。かつてアンヘルとは同部隊のレイヴンとして多くの戦場を共にし、──"グレイエンバー作戦"の際も、部隊が散り散りになる直前まで協同していたのだ。心を感じる事はできなくても、それを察する事はできる。 たったの数人ではあるにせよ、部隊員の生存者がいるという話をこの五年間でちらほら聞いたものだが、その中に彼に纏わる事実情報は一切含まれていなかった。 そんな噂話すら出る余地もないほど、"グレイエンバー作戦"で姿を消した彼は死んだと思われていたのだ。 武装地帯の最前線に押し寄せた数万の軍勢を前に致命的な戦火に呑まれゆく中、彼は幾名かの部下を率いて戦闘を継続した。確かな記憶として残っている訳ではないが、朧げな赤錆色の映像の中に、確かにその際へ立とうとしていたアンヘルの姿をアザミは憶えていた。 状況がどうであれ古い戦友との再会を喜ぶべきなのだろうが、アザミはその期待を容易に受けれなる事はしなかった。操縦把のセーフトリガーを引き、提げていたゼクトラの右腕を持ち上げる。携えた短機関砲の砲口をガイアモデルのコア中枢部へ突き付けた。 「昔話は余り趣味じゃない。──アンヘル、何の為に此処へ来た?」 ──この騒乱の渦中に在って緊急依頼を寄こしてきた【ケリー・アルトマン】とクライアントが、アンヘルである事を疑う余地はない。しかし、依頼内容と実際の当該現場における状況の比較事実は著しく異なっている。 其処に何らかの猜疑を抱くなという事自体が難題であり、たとえ相手が五年振りに再会する死んだと思われていた旧友だとしても、それに対する兵士としての義務を変える事などはしない。 だからこそ先日も、その延長線上で一人の古い知己と別れを交わしたのだから。 ──長く戦場を共にした戦友であろうと何だろうと、五年という時間さえ在れば、人間はどこまでも変わる。 アザミはかつてのその戦友の一人を前にして、レイヴンとして在る以上に冷酷でいた。 アザミのその鋭利な態度を前に、しかしアンヘルは僅かな意識の揺らぎすらも見せることはしない。それは往来の彼の性質に依るものではなく、彼もまた、この五年の間に相応の密度を生き抜いてきた故である。 互いの心理を探り合う緊迫した時間が過ぎ、やがて未確認機のカメラアイが僅かに動いてゼクトラを正視する。その細やかなカメラアイの機能動作気付かなければ何でもない程度のものだ。しかし、明らかに既存のAC機体とは異なる高精度の反応動作である其れに気付いたアザミは、やはり未確認機がミラージュ社純製のガイアモデル機体を模しただけの、全く異なる兵器である事を確信した。 その細やかな挙動は人間のそれであるような── アンヘルは気配を一切変えず、先ほどのアザミの問いに答えるべく口を開いた。 『──お前を、殺す為だ』 殺意の膨張は見られず唯、事実としての言葉のみをアザミは静かに受け入れた。 最後まで肩を並べて戦い抜いた彼の、アンヘルの五年越しの致命的な言葉に驚きはなかった。 兵器災害からの五年間──その間に彼の選択した意思が、その言葉をアザミに告げさせたのだ。 何故、と自ら問うつもりはなかった。代わりにアザミは問い返す。 「何処で、私を知った──?」 ──グレイエンバー作戦を境にミラージュ社を去った後、執拗な追撃を振り切る為にアザミは公的記録を全て削除した。その為にターミナルスフィア所長であるノウラの手をも借りた。徹底的な情報及び偽装工作の末、自身はグレイエンバー作戦後の何処かの戦場で戦死した──それが最後の公的記録として残されることとなった。 当然、"グレイエンバー作戦"の記録抹消の為に生存者の粛清を行っていたミラージュ社もそれを最終報告記録とした。本人と判断できる死体が見つからなかった為に掛けられた懸賞金はそのままとなったが、少なくともグレイエンバー作戦を生き抜いて軍から逃亡した"アザミ"という人物は死亡した、という事ことになったのである。 その真相を、アンヘルは何処で知ったというのか── 俄かに伝わる都市伝説のような噂のみで確信したとは、冗談でも考えられない。 『──あらゆる手を使った、と言えば満足か? だが、案ずるな。此れは──私の私闘だ』 決定的な決別の言葉。此方の問いに答えることは終ぞしなかった。が、その言葉から察する限り、何処で知ったか、その全容を知るのは自身のみにとどめていることを、アンヘルは暗に述べている。 完全に無視された訳ではないが、問いの答えを逸らされたという事だ。 「そうか……では構わん。幸運を、アンヘル──」 『残り火同士の喰い争い、か。幸運を、ファイーナ──』 その言葉の交わりを最後に、交信を終了。 有視界に捉えた未確認機が機体重心を下げ、戦闘態勢を確立する。その異様なまでに円滑な機体動作はやはり人の挙動を全て反映したかのようである。 ──アザミは既に、その未確認機の可能性に行き着いていた。 「……【NEXT】、お前も企業に下ったのか……」 断定するのは早計かもしれないが、外部構造体にミラージュ社純製のAC機体であるガイアモデルを採用している事から、眼前の"未確認ネクスト"機体の製造元はかつての帰属企業であるミラージュ社の可能性が高い。 ──財団存続時に既に幾つかのネクスト兵器は試験実働段階にまで到達してはいた。しかし、それらは支配企業群の開発技術を集約したが故に実現した叡智に過ぎなかった。 超過技術とも言えるネクスト技術は財団の組織的解体に伴って各支配企業へ分散、その後新たなネクスト兵器の開発競争が水面下で継続されている所までは、アザミも把握していた。 直接関与している訳ではないが、ターミナルスフィアの研究施設へノウラに幾度か連れられ、其処でネクスト兵器なるものの実態を目の当たりにしていたのだ。 だが、どの支配勢力も──一部例外はあるにせよ──実働型ネクストの開発にはまだ到達していない、というのが此れまでの見解だった。 ──その見解を改める事実が今、アザミの眼の前にいる。 アザミは自らの戦意を極限にまで研ぎ澄ますが、その意図とは裏腹に"明確な死"という可能性を意識していた。 ネクストという存在が持つ戦略的兵器価値は十二分に理解している。自身がAC機を駆るレイヴンであるからこそ、尚更その重大性について分かっているつもりだった。 従来のアーマードコア兵器では、もしも実働型ネクストを相手にした時、勝つ術はない。 つまり、今自分はその瀬戸際に立たされているのだ。 それを強く認めながら、しかし回避する為にアザミはネクスト兵器を正面に見咎めて戦意を研ぎ澄ます。 術がないというのは戦場で訪れる幾つかの瀬戸際で、従来の意識を引き剥がせなかった場合に限る。 戦場の幾つかの瀬戸際に、セオリーは通用しない。 生き残りたいのなら、生き残る事の出来る可能性を見出すしかない。 ──ミラージュ社製のネクスト兵器、か。 操縦把付随のトリガーにかけた指に力を込め、 カメラアイから転送されてくる有視界に閃光の如き光が溢れた事を意識した時には、既に眼前にネクスト兵器が肉薄していた。正対に位置していたにも関わらず知覚外の速度で迫った脅威は、既に左腕部の突撃型ライフルの銃口をゼクトラの頭部に突き付けている。 視覚情報の認識反応は遅れた──しかし、強化内骨格体の自身の体に刻みこませた経験則は意識の外側から行動判断を送り、アザミは推力用フットペダルを踏み込んでいた。 最大推力で吹かした噴射炎がゼクトラの機体を右舷真横へ弾き飛ばし、刹那よりも短い差で煌いたライフルの砲口から吐き出された銃弾が、ゼクトラの頭部外部装甲を掠める。 残余推力をそのままに迎撃姿勢を構築すべくゼクトラを機動転回、空間を切り貼りするような知覚外の速度で移動してきた敵性目標へ機体を向ける。 ──其処に既に姿はなかった。白緑色の噴射炎の陽炎のみが前方の空間をたゆたい、間もなくしてかき消える。狭域索敵態勢のレーダーに視線を巡らす前に敵性目標の位置座標を予測確定、明確な行動判断の前にアザミは左腕部ターレットを最大展開し短機関砲を後背部へ向けた。 短機関砲による高密度の火線が空を切り、敵性動体は瞬間推力による回避行動から後方上空へと機体を浮上させていた。左腕部ターレットを固定維持したまま機体を急速展開させ、ゼクトラのカメラアイを敵性目標へと向ける。背部兵装から展開されたグレネードキャノンの長大な砲身が、ゼクトラに突き付けられていた。 「──!」 グレネードキャノンの砲口の煌きに併せて短機関砲による応対射撃を展開、前方高密度に張った集中弾幕が榴弾飛翔体を直撃し、巨大な爆炎が有視界を埋め尽くす。応酬とばかりに背部コンテナを展開、爆炎の裂け目に捕捉した敵性目標へ向けてマイクロミサイルを射出。 後の先を取った事により敵性目標が燻り出される格好で、マイクロミサイル群の追撃を受けながら右舷へ飛び出す。分割ディスプレイに出力している拡視界映像で、敵性目標の背部兵装が今度は逆側に転換されているのを肉眼で捉え、アザミは明確な意思判断を待たずにフットペダルを踏み込んだ。 滑走進路をなぞるように逆進し、予測射線に向けてばら撒かれた重拡散銃の弾幕を明後日の方向へやり過ごす。数秒と持たずに撃墜されたマイクロミサイル群が立て続けに爆発を起こし、赤々しい火球が空中に幾つも浮かび上がる。反転攻撃に転じた敵性目標が重拡散銃と突撃ライフルの砲口を向けた時、それよりも一拍早くアザミは再度マイクロミサイルを同時射出していた。予め火器管制システムに設定しておいた飛翔起動パターンを戦術支援AIが自律選択し、そのプログラムを搭載したマイクロミサイルが敵性目標へ向けて不規則なアウトラインを取りながら飛来していく。 反転攻撃を中断せざるを得なくなった敵性目標が急速接近してくるマイクロミサイル群の迎撃射撃に転じ、重散弾銃から放たれた無数の火線が雷鳴の如き砲声と共に大気を切り裂く。弾薬消費の効率性を度外視した事により、敵性目標はミサイルコンテナ群の接近を一切許さず、全て同時に撃墜し切る。 轟く残響音が冷め遣らぬ間に爆煙を突き抜けた対重兵器用の散弾の雨が降り注ぎ、しかしそれらが牽制射撃である事は疑いようもなく、アザミは軽くブースタを吹かして弾幕を機体後方へやり過ごす。何発かの弾をわざと装甲で弾いていなし、その損害度を戦術支援AIが解析して報告する。 『右肩外部装甲、小破。第一種戦闘態勢継続維持に問題ありません』 掠める程度に止めた散弾銃の銃弾は、しかし通常ACの規格兵装と比較するとやや衝撃力や搭載火力に長けているといえる。 「重い──が、それほど大差はないか……?」 外部構造体を既存ACであるガイアモデルから流用しているとはいえ、内部駆動構造に至っては全くの別物である事は此れまでの戦闘推移を見ていればだれでもわかる。機体自体のペイロード限界も底上げされている事は、搭載兵装から確認できるが、それらが持つ火力脅威は既存ACと比較して致命的な差がある訳ではないことを、アザミは察知した。 それでも、正面から喰らえば致命傷は避けられんだろうが── 交戦開始から現在までの時間推移は、8,65秒── ネクスト兵器相手に最初の数秒をよく継戦維持できたというのが、アザミの見解だった。それだけの継戦行為を可能にしたのは、彼我の差とすら言える機体機能である訳ではなく、搭乗者であるアザミ自身や敵性目標の未確認機に搭乗するアンヘルに長らく染み込んだ経験則を互いが理解していたが故である。 アザミは最初の数秒を乗り切る可能性を、大きく其処に賭けていた。 ──アンヘルは、変わっていない。 かつてミラージュ社陸軍が保有していた精鋭機械化空挺部隊──レッド・シーカーズはその運営方針の通り、敵地内部へ深く先行潜入し、速やかな指揮機能の破壊や兵站部隊の排除と言った前衛撹乱戦闘に特化していた。 強襲、奇襲、威力偵察、殲滅戦闘を旨とし、徹底的な撹乱戦闘によって目標を達する。レッド・シーカーズの任務達成率は同種部隊の中では群を抜いており、それら技術の基礎を作り上げた兵士の一人がアンヘルという敏腕レイヴンであった。 烏から山猫になっても、アンヘルはそのスタイルを変えていなかったらしい── もし、そうでなければ、アザミは自身が最初の三秒足らずで即死していたであろう事を理解していた。 他の展開戦術を秘匿している可能性が有ることも重々承知しているが、それを出さずに最初の数秒をやり合った事はかなり大きな意味を持つ。 だが、此処から先はそう上手く行きはしないだろう。 アザミが此処まで考えているのなら、同じ部隊のレイヴンであったアンヘルが同様の思考に行き着いていない道理はない。つまり、此処から先は互いに別に道を歩んだ五年間で培った戦場での経験がモノを言う事になる。 しくじれば、それは速やかな己の死── 「アンヘル、貴様がどんな戦場を歩んできたのか聴かせてくれ……」 幾多もの戦場を潜り抜けてきたかつての戦友、その男が自身の預かり知らぬ時間の中でどのような戦場を過ごしてきたのか、致命的な決別の中ですらアザミはそれの一端を知りたいものだと意識のどこかで僅かに願った。 ネクストが正面から通常兵器とやり合ってその殲滅に掛かる時間に、数秒もかからない。初見であるにも関わらず、過去の双方の接点のみでそれを覆してみせたアザミを警戒しているのだろう。爆煙の向こうに姿を隠すアンヘルは、牽制射撃から次の機動を起こさずに此方の出方を見ているようだった。 次が始まれば、一連の結実まで恐らく、数秒の間もない。 アザミは素早くコンソールを叩き、此れまで一度しか実戦で使う事の無かった機体制御システムの起動プロトコルを完結させた。続いて戦術支援AIに口頭指示し、 「BICS(ブレイン・インターフェース・コントロール・システム)、起動──」 『了解しました。BICシステム起動プロトコル、開始します──』 コクピット後方部の収納設備から出た接続機構が、アザミの頚部に施されたインターフェースへ物理接続される。それと同時に同調システムの処理プロトコルが進行、頭の中に砂のざらつきのような不快感が巡る。 『BICシステム、起動完結しました。此れより第一種戦闘態勢をBIC制御下に固定維持します──』 砂のざらつきが収まり、アザミはBICシステムによって高精度で再起動したフレームシステムを意識した。自身の視覚行動をBICシステムの接続によって認識したフレームシステムが追従していく。その精度の余りの滑らかさについ、アザミは口許を僅かに歪めた。 システム下に入ったフレームシステムを扱い、アザミは若干下げていたゼクトラのカメラアイを上空へ向ける。ゼクトラのその明らかな変化を敵性目標が認識し、未確認機は後方ノズルから噴射炎を吐き出してゼクトラに肉薄する。コンマ数秒しかかからないその接近機動に対し、アザミは此れまで使用しなかった右腕部兵装──物理型射突ブレードに意識を傾注、右腕部を跳ね上げた。 互いの視線がカメラアイを介して交錯し、此方の迎撃行動に瞬時に反応した敵性目標が有視界内から掻き消える。アザミは強化内骨格施術の恩恵である義眼の卓越した動体視力を用いてその軌跡を追い、フレームシステムがそれに同調する。 しかし、有視界内に完全に機影を捕捉するのを待たず、アザミは操縦把付随のトリガーを絞った。 強装炸薬の燃焼によって長大な鋼鉄の杭が、ゼクトラの近接周囲を迂回しようとしていた敵性目標に向けて射出される。杭の突端部が外部装甲を捉えるも、敵性目標は致命打を受ける前に瞬時にその場から回避機動を取った。 (やはり一芸では終わらんな……) 明確な意思判断を待たずに敵性目標が刹那以下の展開にすら反応できたのは、その機体に搭載されているであろうAMS機構による機体制御の賜物に違いない。 此処から付いていけるか── ──アザミが先に起動したBICシステムは、そのAMS機構に酷似した機体制御技術である。正確に言えば酷似しているのはAMS機構であり、BICシステムは遥か以前から軍事用技術として確立されていた代物に過ぎないが。ネクストに搭載されているAMS機構は従来の類似機構を遥かに凌ぐ高精度の機体制御を可能としており、いくらアザミがアンヘルの行動を先読んでいるとしても、何れ応対行動に遅れが生じるであろう事は、本人が最も分かっていた。ならばと、アザミはゼクトラに搭載していたBICシステムを起動したのである。 最も、それで機体機能の差が詰められるはずはないという事も重々承知している。 従来のBICシステムの大半が大脳部皮質機能を経由して高精度の情報伝達を実現している。しかしネクストに搭載されているAMS機構は、ノウラの話によれば大脳新皮質という従来では扱われなかった分野を用いる事によってさらに高精度な情報伝達を可能としているらしい。 しかしAMS機構は、大脳新皮質に特異な神経回路構造を備えた者だけが正常に機能制御できる代物であり、普及させるには現在の技術力は余りに乏しすぎると、彼女は言っていた。 ──アンヘルは、その適性を保持していたというのか 空間認識能力を大幅に底上げしたフレームシステムで、地上百数十メートル前方へ後退した敵性目標を有視界に捕捉──アザミは戦況が致命的な域に達する前に動いた。 火器管制システムを右背部コンテナへ転換──垂直発射式ミサイルを上空へ向けて連続射出した。戦術支援AIによるプログラム修正を受けた計八基のミサイル群が急速上昇し、順次投下高度に達する前に分解した弾頭部から小型子弾が広範囲に向けて散開した。 戦術支援AIが支援態勢段階を跳ね上げ、有視界外を含む交戦域全域に拡散する小型子弾の豪雨の落下軌道を解析捕捉、メインディスプレイに落下軌道を随時更新出力する。 漆黒の豪雨が降り注ぐその下で、二機の機動兵器は同時に接近を開始した。 「果てが、見えるぞ──」 此方の出方と同様、落下軌道を全て解析捕捉したのだろう敵性目標は瞬間推力による高機動を極力抑える。過度の移動能力を齎すその機能を用いては、無秩序に落下してくる小型子弾への接触爆発に対する対応が遅延する事をよく理解している。 アザミは大きく口許を歪め、先行落下してきた子弾群を的確に回避或いは撃墜しながら眼前の敵性目標へ迫り往く。敵性目標も進行の障害になる落下子弾のみを突撃ライフルをバースト射撃で撃ち落とす。 敵性目標のその慎重とも言える出方にアザミは可能性を見出した。 火器管制システムを左背部コンテナへ転換、戦術支援AIに射出ミサイルの回避軌道をインプットさせる。着弾目標までの回避軌道を瞬時にシミュレーションさせ、その完結と同時にアザミは操縦把付随の射出スイッチを押し込んだ。マイクロミサイル群は射出後急速上昇し、次々と落下してくる子弾群をインプットされた回避機動に従って糸を縫うように避け、上空へ急速上昇していく──それが着弾目標へ過たず吸い込まれていくのを有視界の隅で見送った直後だった。 精密射撃によって安全軌道を自ら切り開いた敵性目標のネクストが、後方ノズルより出力を絞った──それでも充分な推力を齎す噴射炎を吐き出して弾丸の如く迫り来る。 アザミはその眼前から迫りくる強襲機動に対し、応対射撃を前方ではなく上空へ向けて展開した。短機関砲によりばら撒いた弾幕が上空から落下してきていた子弾群を次々と誘爆発させる。無数の小さな爆炎が頭上を赤銅色に染め上げ、多重の炸裂音が広大な空間を反響していく。 固定維持していた左背部コンテナに残存のマイクロミサイルを前方へ向けて全基射出、同時にコンテナをその場へ切り離す。前方から殺到するマイクロミサイルをネクスト機体は突撃ライフルによる高密度射撃で撃ち落とし、その端から見れば悪あがきにも取れる攻撃の中を突き抜けて突進攻撃を仕掛けてきた。 その交錯の間際こそが、アザミの予測していた結実の時だった── 頭上に広がる爆炎の海を突き破って落下してきた無数の物体──マイクロミサイル群の直撃を受けて崩落した天蓋部の大きな瓦礫片が頭上から降り注ぎ、眼前に肉薄してきていたネクスト機体を直撃した。大質量の瓦礫片の直撃を受けて機体バランスを崩したネクスト機体がその場で機動を中断、その完全な停止状態を捕捉したアザイは其処へゼクトラを突進させた。 機体姿勢を持ち直すも退路を塞ぐ瓦礫片に意識を取られていたネクスト機のカメラアイと、視線が交錯── 右腕部に備えていた射突型物理ブレードの刀身を敵性目標のコア中核部に向け、アザミはトリガーを引き絞った。突進推力を上乗せした鋼鉄の杭を至近距離から撃ち放ち── 結実まで数秒足らず──アザミの見立ては間違っていなかった。しかし、その思いもよらない形で飛び込んできた終幕にアザミは目を瞠った。 「何だ、それは──」 コア中核部を貫くはずだった鋼鉄の杭は、その手前でコクピット内部への侵入を停止していた。そして、ネクスト機の機体周囲を巡るように環流する薄い白緑色の膜の存在に其処でようやく気づき、アザミは不意にそう遠くない記憶を思い出した。 →Next… ⑫ コメントフォーム 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/achdh/pages/162.html
⑬*⑭/ /第十四話 ノウラは既に、事実関係の大半を知り得ていた。 だからこそ、当事者達からの直接の言葉などは無為に等しきものであると断じ、代わりに彼らに告げるべき事実を告げる為に、次の口を開いた。 「──我々一族は、貴君等に多くの叡智を与えた。貴君等、統一政府が衰退した人類の復興の一助となり、賢明な統治者として君臨するであろう事を、望んだからだ」 ノウラは語る。自らの身体に流れる、何世代にも渡って受け継がれてきた血筋を。自身の一族が統一連邦政府と共に在り続けてきた過去を。彼らが今回の件──【エデンⅣ騒乱】で、人類の今後の在り方を確実に変えてしまう失態を犯した事を、彼ら自身に思い知らせる為に。 「貴君等の先達の遺した遺産を見誤り、貴君等は自ら王道を踏み外した。──末路は、自らが語れ」 十数時間前──【エデンⅣ騒乱】の引き金を引いた政府一派の暴走を、賢人会議は止める事が出来なかった。──正確には、黙認したのだ。統治者としての権勢が徐々に衰退していく中、それに焦燥を感じていたが故に彼らは致命的な過ちを犯した。 結末として、閉鎖型機械化都市【エデンⅣ】の都市機能の大部分を破壊したに留まらず、数百人の一般市民の死者とそれを遥かに上回る数千人の負傷者を出した。事態の真相の片鱗は【エデンⅣ】の管轄企業体であるグローバル・コーテックスも把握し、また、他の支配企業へも情報が伝播しつつある。 ──過ぎた叡智を、過ぎた手段で求めようとしたが故、統一政府は致命的な過ちを犯した。 最早、この後にやって来る世界情勢の混迷期の潮流を押し留める事はできはしない。 ──統一連邦の時代は、間もなく終わりを告げるのだ。 その末路を、統一連邦の失陥という形で来るべき時期に自らが露呈しろ──ノウラはそう言ったのだった。 絶望感にも似た退廃的な空気が仮想議事堂を包み込む中、ノウラの対面に位置して来賓椅子に静かに座る統一連邦の長である老人が、僅かに口を動かす。 「齢一世紀──老いた我々を捨て置き、ノウラ、お前は、過ぎたる叡智を何処へ連れて行こうという?」 歴史そのものと言っては過言でない程、統一連邦と共に一世紀という時間を過ごしてきた老人は言う。賢人会議の中では理事会議長のみが、ノウラの血筋──統一連邦に多く協力してきた学者一族の最も古い記録を直接知る人物である。ノウラもその名のみしか知らぬ、一族の始祖である曾祖父の姿を、対面の老人は一世紀も前の時点で顔を合わせている。 老醜染みたその面白みのない問いに対し、ノウラは僅かに口許を吊り上げて歪んだ笑みを創り上げた。 「──我々が望むは、世の安寧。貴君等では、其れを成し得なかっただけの話だ」 酷薄に努め、且つ極めて冷淡な口調でノウラは宣告する。古い石像のように固い表情を一同に介した賢人達が並べるその中に在って、唯一苦笑の笑みを静かに浮かべる者がいた。向かって右側の位置座標の来賓椅子に腰かける男は浮かべていた笑みを即座に隠し、双眸をノウラへ向けた。互いの視線が、僅かに交錯する。 ノウラは来賓椅子から腰を上げた。それを追うように理事会議長が言葉を投げかける。 「その為に、お前は世界を戦乱に招き込むつもりか──」 「引き金を引いたのは、統一政府──貴君等だろう。分水嶺を勘違いするべきではないな。では──」 終幕の言葉を自ら紡ごうとした瞬間、ノウラを中心とする全周囲に視覚化された膨大な量の情報群が出力された。眩い光源を伴う羅列情報群は忙しなく明滅しながら出力と削除を繰り返し、その光景にノウラは小さく嘆息した。傍らに立つメイヴィスに視線を送ると同時、全周囲で周回していた羅列情報群が一斉に霧散──代わって理路整然と形式立てられた電子防性プログラムの羅列情報群が緩慢な速度で周回出力を開始する。 「──最早、貴様等如きに我々は止められんよ」 それが、彼ら賢人会議への最後の言葉となった。それを待っていたメイヴィスは仮想空間への接続態勢を解除し、ノウラの位置座標が消失。周囲の景色が一瞬完全な闇の深遠に落ちた後、数秒のデジタル処理を経てノウラの意識構造は現実へと帰還した。 控え目な光源の照らし出す無機質な設備空間内を一瞥し、ノウラは頭に装着していたヘッドマウントディスプレイを取り外した。傍らに立っていたメイヴィスが手を差し出し、その手を取ってノウラは席から立ち上がる。 「大丈夫ですか──」 「ああ、仔細ない。お前のおかげでな?」 「過分な言葉です、ノウラ──」 どんな状況にあっても一切態度を崩さない書記官の佇まいに息をつきつつ、ノウラは若干疲労のたまった肩を揉んだ。 最後に安全保障理事会が仕掛けてきた電子攻勢──かなり周到に組み上げられた攻撃プログラムであった事はノウラも容易に理解していた。恐らく、自身達にとって最悪の結末が語られた場合、ノウラの意識構造をその場で即破壊する腹積もりだったのだろう。 そんな統一政府の暗愚な性質をよく知っていたノウラは、専属書記官であるメイヴィスを連れだち、彼女に直接電子防衛に当たらせたのだ。彼女の技術力であれば、選任安全保障理事会直属の情報技術部門──電子戦術対応部の電子攻勢など、赤子の手を捻るようなものだった。 メイヴィスが傍のデスクに置いたパソコンのディスプレイを注視し、 「ノウラ、外部から通信要請です。──理事会議員、マルティン・ローゼンタール氏です」 「──接続しろ」 「分かりました。ホログラム通信で出力します」 そう言い、メイヴィスがコンソールを素早く叩いて接続処理を完結させる。通信設備のみが置かれた無機質な空間内、ノウラの眼前にデジタル映像体が構築され、やがてそこに見覚えある男の構造体が現れた。 先程、仮想空間内で最後に視線を交えた人間だ。 政治的分野においてノウラにとって非常に古い知己であるその男──マルティン・ローゼンタールは、顎に蓄えた髭を撫でた後、ダークスーツのポケットに手を収めた格好で口を開いた。 『……時期は早まりそうだな』 「──それは、どうか。奴さんも一枚岩には見えなんだが?」 『振りだけだろう。此方の事ならば、心配は無用だ……』 「ならば私は問わん──。統一連邦内での今後の対応は、其方の采配に一任するとしよう……」 ノウラのその提案に、マルティン・ローゼンタールはおどけるように軽く肩をすくめて見せる。統一連邦政府内における彼の勢力の立場上、十数時間前に統一政府の起こした【エデンⅣ騒乱】に彼は関与していなかった。もしも関与していたのなら、【エデンⅣ騒乱】は何らかの形で回避できたはずである。 『有史史上、例の無い試みか──我々も踏み外さんよう、互いの足元を見ておかねばな?』 そう含みを持たせた言葉をマルティンは残し、軽く手を上げて別れを意図する。そして、極めて短い会話のみでホログラム通信は終了した。 わざわざホログラム通信で直接話を交わす必要はない。彼がそれをしてきたのは、単なる意思確認と社交辞令の類だろう。彼が述べるべき事柄は、専用ネットワークを通じて中間報告書が手元に送られてくる手筈になっている。 彼のデジタル映像体が消失した座標の空白をしばし見つめ、ノウラはメイヴィスを連れだって手狭な設備空間を後にした。 「──スリーパーからの成果は?」 「掛けられた最後のプロテクトが中々、堅牢のようです」 「成程──」 埃の積もった連絡通路を慣れた足取りで進み、ノウラとメイヴィスの後に薄く埃が舞い上がる。非常用階段から複数階下った先の階層に無尽に伸びる連絡通路の最奥部に設えられた一室の前へ、ノウラは到着する。 扉の前の哨戒兵に目線で指示し鈍重な隔離扉を開かせると、鼻腔をつく異臭が流れ出てきた室内へとノウラは臆する事無く踏み込んだ。光源の絞られた薄暗い室内、その中央に立つ数人の屈強な男達に「空けろ」と言い、ノウラは彼らに囲まれて尋問椅子に座らされていた一人の男の前に立った。 ひどく殴打された顔面から滴った流血がまだ若い男の衣類を赤黒く濡らし、そいつはノウラの気配に気づいて醜く腫れ上がった顔を上げる。 「時間が惜しい。手短に済ませろ──」 「わかりました」 同調したメイヴィスが動き、拘束状態に在る男の後背へ回り込む。その行動に気付いた男が俄かに抵抗の動きを見えるも、尋問官の一人が男の頭を鷲掴みして強引に挙動を封じ込んだ。 メイヴィスが軽く頷き、ポーチから取り出したウェアラブルコンピュータを起動、それを介して接続用コネクタを自身の頚部と男の専用ジャックに接続する。 メイヴィスが男の機械化電子脳に電子介入を直接開始し、それに伴って男の挙動が硬直したように停止した。 その奇なる光景を視界に収める中、腰元のポーチに差していた携帯端末が振動し、ノウラはそれを取り出す。小型の投射型ディスプレイを出力し、その中に見覚えのある青年の顔が現れた。 『──まだ途中だが、一応特定はできたぞ』 「ほう……、それで?」 短く先を促すと、ディスプレイの中のハルフテルは手元のコンソールを操作し、データファイルをノウラの携帯端末へ転送する。そのデータファイルを解凍してディスプレイに出力し、その映像付き詳細情報を一瞥した。 『──プライマルアーマー機構だと、断言して良いだろう』 「そうか……。よもや、此れほど早く実戦投入してくるとはな──」 『ああ。だが、然程憂慮すべき事態でもないんじゃないか?』 「どういう事だ──」 『記録映像をよく見てみろ……』 そう指示され、ノウラはタッチパネルに触れて一個の映像ファイルを再生した。映像にはミラージュ社純製のAC機体を模したネクスト兵器の姿が在り、その周囲を半透明の白緑色の膜が還流していた。 十数時間前、【エデンⅣ騒乱】の渦中で此の未確認機体と交戦した自社の契約戦力【AC】が記録したものでありる。契約戦力──ゼクトラが至近距離から撃ち放ったと思しき射突型物理ブレードは、その敵性機体が周囲に還流させる分厚い膜に完全に遮られている。 一拍あまりの空白を挟み、その膜によって守られていた敵性機体のカメラアイにセンサー類の再起動を示す光源が溢れ、その違和感にノウラは今しがたハルフテルの言った言葉との関連性に気付いた 「──まだ、未完という事か?」 『出力機構のエネルギーの大半を、同機構へ回している可能性が高い──つまり、環流制御技術に関しては未完成の域を出ていないという事だ。本来なら、たかだか数年程度で完成する代物じゃないからな』 「──そうか。だが、安堵するには少々重大な事実だな」 『まだ言うべき事はあるが──時間がないんだろう? 此方も報告書を纏めておく。好きな時にでも取りに来てくれ』 ハルフテルのその言葉がそのままの意味を指しているのならば、ミラージュ社が実戦に先行投入してきたネクスト兵器にはまだ言い足りないことがあるらしい。ノウラは言葉に出さず、代わりに軽く頷いて携帯端末での映像通信を解除した。 ポーチに端末を指し直し、ついでにソフトパックから紙巻煙草を一本抜き出して咥える。 「──お前達にとって、憂慮すべき事態は既に超過しているようだ」 ──三年前のジシス財団解体以後、統一政府が最も恐れてきた可能性。 財団解体と共に分散した旧世代の兵器技術が、各支配企業によって何れは実用化されるであろう未来。 世界情勢を席巻する兵器災害に対する要として開発研究されてきたネクスト兵器が、自己利益を求める者達によって自らに牙を剥く事が何を意味しているのか。統治組織として著しい形骸化を重ねて来ていた統一政府は、それを重々承知していた。 それに対する抑止力を保持する為だけに、統一政府は都市をひとつ丸ごと巻き込んで【エデンⅣ騒乱】という惨禍を演出した。ネクスト兵器に対抗できる兵器もまた、ネクスト兵器を置いて他には存在しない。そして、対等ではなく抑止力としての絶対的優位性を持つネクスト兵器の開発を統一政府は迫られていたのだろう。ノウラは、【エデンⅣ騒乱】の最中で、統一政府が執拗に求めていた対象の存在から、そんな因果関係を推測していた。 財団崩壊後、統一政府に手を貸して従来の抑止力──ナインボール・コピーの開発計画に関与していたからこそ、その次に彼らが迎える統治危機がどんなものであるかが、ノウラには手に取るように察知する事ができた。 統一政府が手に入れようとしている絶対的抑止力としての兵器価値を持つ戦力── 「──ナインボール・セラフ、か……」 そう呟いた時、メイヴィスによる強制的な電子支配下によって身体機能を簒奪されているはずの男の瞼が、僅かに動いたような気がした。 元々は、グローバル・コーテックス【エデンⅣ】支社の通信技術部所属の通信技官──というのが、この男の表向きの素性である。実際は、この男が【エデンⅣ騒乱】のお膳立てを内部から進めた元凶の一人──統一政府が複数送り込んできた潜伏工作員であった。 十数時間前に都市防衛戦闘が収束し、統合司令部内の第一種戦闘態勢が解除された直後の隙を狙い、この男は施設の人気のない連絡通路でノウラを背後から刺殺しようとした。 統一政府の関与を疑い始めた時点で既にその可能性にも思考を及ばせていた為、ノウラがその潜伏工作員を逆に無力化する事は難儀な話ではなかった。 ネクスト研究を行う組織として、ひとつの独立勢力として統一政府の動向を確かめたかったノウラは、潜伏工作員をターミナルスフィアが直轄管理する形骸企業の施設へ移送──必要な情報を絞り取れるだけ絞りとった。 統一政府と過去に密接な関係性を持ち、現在は独立勢力として旧世代技術分野の発展に著しい影響力を持つターミナルスフィア──その長を務めるノウラは、統一政府にとって非常に邪魔な存在だったのだ。【エデンⅣ騒乱】が成功しようとしまいと、最終的に統一政府の送り込んだ潜伏工作員はノウラを殺すつもりだった。 電子介入によって搾取した情報の中には、統一政府の狙った旧世代の凍結資材──公式には存在すら確認されていない生体CPUの詳細すらも載っている。通信技術部に潜伏する中で、生体CPUの正確な所在を把握したのだろう。しかし、どこで生体CPUの存在を知ったのかどうかについては、その情報はまだ眼前の男から搾取できていなかった。 最も強固なプロテクトプログラムが最後に展開されており、それを無効化する為に現在、メイヴィスが直接電子制圧を試みているのである。 ノウラは安易な推測を述べないが、もし最も整合性のある可能性を考えるとしたら、 ──統一政府と過去に接点を持っていた人間が、生体CPUの近くに居たとしたら? 尋問椅子に座る男の方へ視線を移したのと、男が宿す眼に変化が現れたのはほぼ同時だった。 それまで虚ろな色しか宿していなかった双眸が激情を湛えた獰猛な色にがらりと変わり、ノウラはその劇的な変化に目を見開いた。 潜伏工作員が電子処理脳に展開させていた電子防性因子は此れまでの尋問段階で既に駆除されており、現在はメイヴィスによって身体機能も含めて完全な制圧下にあるはずなのだ。 それを行っているメイヴィスの方を見やると、彼女は僅かな驚愕の感情を切れ長の双眸に映し出している。 そして男が野獣のような表情に変貌したかと思うと、恐ろしく低いうなり声を上げながら手足を縛っていた拘束縄を強引に引き千切った。 それと同時、電子干渉を受けたらしいメイヴィスが男の後背へ弾き飛ばされる。 手首足首からの出血をも無視する男は覆い被さるように抑えにかかった尋問官の兵士達を跳ね退け、ノウラ目がけ両腕を突きだして突進してきた。 両手の爪先が首筋に届く刹那、ノウラは脇に立っていた尋問官のホルスターから自動拳銃を抜き取り瞬時に発砲した。くぐもった銃声が狭い室内に響き、胸部に至近距離から銃撃を喰らった男が前のめりに倒れ込む。 鮮血をぶち撒けながらうつ伏せになった男はそれでも止まらず、這いずってノウラのもとへにじり寄ろうとし、ノウラはその男の双眸を見た。 自身の意識を失い、野獣のような攻撃衝動に支配された眼── ノウラは足元にまで近づいてきた男の後頭部に銃口を突き付け、引き金を引いた。 「──……」 指揮系統を完全に失った男の体がごとん、と床に伏せ、そいつが完全に沈黙した事を確認する。 一瞬で騒然となった室内、複数の兵士が男の身体を囲み、既に死体へと変わっている事を念入りに確認する。ノウラは手に握った自動拳銃を持ち主の尋問官へ手渡し、その光景を離れた場所で見守っていたメイヴィスに歩み寄った。 「何があった、メイヴィス?」 「──カウンター性エマージェンシー・プログラムです」 発動の際に発生した僅かな隙に、電子攻勢を受けたらしくメイヴィスは接続状態に在るウェアラブルコンピュータから調整用補整プログラムを自らの電子処理脳へインストールし始める。 「一撃を喰らうとは、お前らしくないな──」 「かなりの手練のようです──しかし、あのプログラムは……」 自身に一撃を喰らわせたカウンタープログラムに、メイヴィスは何かしら思い当たる所があるらしい。彼女の素性の片鱗は統一連邦に求める事も出来る為、あっても可笑しくはない話だろうとノウラは思った。 死体からこれ以上の情報を抜き出すことはできない。 ノウラは手頸に嵌めた腕時計に目線を落とした。 既に事態は急速に動き始めている。 統一政府自身が引き金を引いたのだ。 最早、今後加速する潮流は誰にも止められない 止められないのなら、その流れに乗らねば淘汰されていくのみ。 「機構会議がそろそろ始まる──行けるか、メイヴィス」 「ええ、問題ありません」 20分後──グローバルコーテックス【エデンⅣ】支社主導による機構調整会議が開催される。 長らく、この計画に賛同した者達が望み臨もうとしてきた一つの極点の始まりが、其処に在る。 * AM03 25── 機構調整会議の開催上として設けた仮想空間には、既に招聘した傘下企業の代表等が集っていた。仮想空間への映像体のアップロード後、今回機構調整会議の緊急開催を決定したコーテックス支社長のエウヘニアは初期の位置座標から一歩踏み出す。 自然背景を模した空間映像は緑に溢れ、小川の静涼としたせせらぎがこの空間に集うものの心の緊張感をいくらかでも和らげてくれる。 傍に立つ秘書官の女性がエウヘニアに近づき、軽く耳打ちした。 「既に大半の信任を得ています。残りの者も、この審議次第だと……」 「そう、わかったわ──」 涼流の岸辺の方々に集まる企業代表達の注目の視線を受けながら、エウヘニアは水辺まで歩み寄る。水底で小魚達が鈍色に煌めく様子を一時見下し、それから静かに待っていた参加者たちの方を振り返った。 小さく、しかし長く息を吸い込む。 「諸君に集まってもらった経緯は、既に承知の事と思うが──我がグローバルコーテックス【エデンⅣ支社】の今後の進退についてだ」 淀みなく、今回述べるべき事柄に触れる。流石は百戦錬磨の企業代表達と見るべきか、その重大な案件を前にしていずれもが研ぎ澄ました雰囲気を湛えて静かに佇んでいる。 エウヘニアは続ける。 「──約百年前の大戦後、我々支社グループは衰退した人類社会の復興の為に、コーテックス本社と協同して尽力してきた。しかし、五年前、世界情勢を席巻した兵器災害以降、本社は徹底的な中央集権化を推進し、傘下企業を直接統合するばかりか、武力侵攻を行ってまで自社権益の確保に走りつつある。その様な本社の暴走を喰い留め、グローバルコーテックスを在るべきものとするために我々【エデンⅣ支社】は今日の繁栄を築いてきたはずだった。──しかし、どうか。今回の騒乱に際して本社は我々【エデンⅣ支社】の被った被害規模を把握しているにも関わらず、何ら有効な支援策を講じようともしていない。──本社は我々を恐れていたのだ。我々一同が崇高な理念と志を持って、グローバルコーテックスの繁栄に勤めてきたその事実、我々が企業グループの権益を簒奪するのではないかと。だからこそ、本社は支援復興策を講じず、我々支社グループが経済管轄企業として充分に衰退するのを傍観しているのだ……」 静かな口調で、しかし強い意志をこめてエウヘニアは言い切った。そして、今後のグループ一同の進退を問う言葉を次に紡ぐ。 「私は狂言を好まない。此処に集ってくれた志在る諸君らに、忌憚無く問おう── ──我々の新生、分離独立は可能か?」 その、堅固な意思を確かめる言葉に、一同は変わらず研ぎ澄ました表情を持って受け止める。 この場に在って、異を唱える者はいない。 「──よろしい。我々グローバルコーテックス【エデンⅣ】支社は、今後本社経営管轄下からの実質離脱を計る。然るべき機会を持って我々支社グループは分離独立──グローバルコーテックス改め、独立後企業体名を、【グローバル・アーマメンツ】として新生する──」 * 『──【グローバル・アーマメンツ】として新生する──』 そう締め括られた言葉を、ノウラとメイヴィスは仮想空間内の離れた位置座標、小川は上流の岸部からしかと耳にしていた。機構調整会議へ非公式という形での招待をエウヘニアから受けていた為である。 「動き始めましたね、ノウラ」 「──我々は進むぞ」 混迷の時代への潮流を、誰もが明確な意図を持って早めようとしている。 ──【エデンⅣ騒乱】は、閉鎖型機械化都市一つを巻き込んだ未曽有の大惨禍として、その後の戦争史に名を残すこととなる── * ──【エデンⅣ騒乱】勃発から約二時間後 AM09 55── 「──安全圏離脱を確認。機体制御態勢を第一種戦闘態勢から第三種広域警戒態勢へ移行処理します──」 閉鎖型機械化都市【エデンⅣ】から遠く離れた帰還領域への到達と同時に、アンヘラが機体制御態勢の移行処理を完結する。第三種広域警戒態勢への移行に合わせてAMS接続負荷が不意に軽減され、頭の中に直接圧し掛かっていた重圧が消失した解放感にアンヘルは胸中で小さく息をついた。 足りないAMS適性のいくらかをアンヘラを通じてごまかしAMS接続を実現しているとはいえ、機体制御に最低限必要なAMS接続ですら搭乗者の心身負荷はかなり高い。生命の安全を保障された機動試験ならばともかく、そうでない実際の戦場では負荷効率は著しく悪化してしまう。 「申し訳ありませんでした、アンヘル様──」 「気にするな……」 此方の接続負荷による身体損耗についてアンヘラは言及したらしいが、それについて咎める術をアンヘルは持ち合わせていなかった。機体制御システムの根幹である統合制御体との仲立ちをする重要な要素として、アンヘラは最大限の支援態勢を尽くしていたのだ。それは直接AMS接続を介していたアンヘルが最もよく理解していた。 数十キロに渡って伸びていた廃棄軍事ラインの終着点に到り、統合制御体に軽く語り掛けて地上へ直結する連絡通路に進路を取る。最低限の警戒灯が灯る連結通路を巡航機動で疾走する傍ら、 「──何故、排撃しなかったのですか?」 咎めるような口調ではない、しかし、心底理解しかねると言ったような僅かな抑揚を含んだ言葉。 その問いに対する返答を簡単に口にする事はできない。アンヘルにとってそれは難しいものだった。 だからこそ、アンヘルは偽りなく簡潔に述べた。 「──友だからだ」 共に長い年月を戦場で過ごしたかつての戦友だったから。 閉鎖型機械化都市【エデンⅣ】が未曽有の騒乱劇に見舞われていた中、グローバルコーテックスを中心に構築されていた防衛ネットワークシステムにアンヘラは直接電子介入していた。その中で、ナインボール・コピーの撃破が報告され、その時点でアンヘルは元来与えられていた任務の消失を確認、基幹基地への帰投を意思決定した。 地下核部で交戦した友に別れを告げる直前に、その報告と意思決定をしたから見逃した──そう言えば自分にとっても彼女にとっても詭弁になることは違いなかった。そして、アンヘル自身がそう述べる事を許さなかった。 その一瞬の空白による逡巡を天秤に掛けたことは、疑いようがない。 しかし、数十分前のあの戦場に際して、アンヘルは願った。 最も親しく戦場を駆け抜けてきた友との別れが、こんなモノであって良いはずはないのだと。 かつていくつもの死線を潜り抜けてきた戦友達の始末を、自身の手で行うと決めた以上、相見える者が何者であろうと眼に付いたならば、即座に葬るつもりですらいた。 自身の退路を断つ為に、偶然に故意を含めてネクスト兵器まで持ち出したのだ。 ──だが、友はその彼我の戦力差からやって来る死の瞬間を、互いの生命が天秤に乗る局地にまで運びこんだ。 死に損ねた兵士としての己と友──綺麗な死に様を今更望んだ訳ではない。 しかし、彼女とはもう少しこの螺旋の中で戯れたい──アンヘルはそう思ったのだった。 アンヘルの駆るネクスト機体【カルディナ】が連絡通路の終結点へ到着し、それを先行して確認していたアンヘラが隔壁扉を開放。巡航速度をそのままにアンヘルはカルディナの機体を地上へ滑り出させた。 周囲一面に広がる荒野──しかし到る箇所に兵器の残骸と思しき金属片が埋没し、その錆びた姿を曝していた。 ──古い戦場か その荒涼とした景色を視界に収めつつ、広域警戒態勢にあるレーダーで友軍の派遣した機体回収機の接近を捕捉する。 見渡す限り何処までも続くその光景を見つめ、やがて地平線の果てからやって来る回収機の機影を肉眼で捉えた時、アンヘラが口を開いた。 「──では何故、殺そうとしたのですか?」 「──かつて、友だったからだ」 成すべき夢想の為に切り捨てねばならない、過去の重圧。 螺旋から永久に抜けられないのなら、下るか上るかを選択せねばならない。 お前はどうだ、ファイーナ── 第十三話 終 →Next… 第十四話 コメントフォーム 名前 コメント