約 3,532,037 件
https://w.atwiki.jp/chaosdrama/pages/4693.html
黒崎一護 朽木ルキア 阿散井恋次 井上織姫 石田雨竜 茶渡泰虎 朽木白哉 日番谷冬獅郎 浦原喜助 市丸ギン 藍染惣右介 グリムジョー ウルキオラ
https://w.atwiki.jp/000001/pages/20.html
コピペ…だと…2 コピペ…だと…3 ・来訪死神数(今日) - ・来訪死神数(昨日) - 来訪合計死神数 - 630 名前:名無しさんの次レスにご期待下さい[sage] 投稿日:2007/12/23(日) 12 37 57 ID 2gdELS0G0 師匠「最初の被害者が犯人だったんだ。面白いだろ?」 編集「意外な展開ですね。死体はどうしたんです?」 師匠「全部催眠術だったんだよ」 編集「なん・・・だと・・・?」 師匠「一護は単身敵地に乗り込むんだ」 編集「主人公の鏡ですね」 師匠「でも一人で行って帰ってきましたじゃあご都合過ぎるだろ?」 編集「現代の読者はそんなワンパターンは望んでいませんね」 師匠「だから助っ人がくるんだ」 編集「誰です?」 師匠「チャドと石田だよ」 編集「なん・・・だと・・・?」 師匠「それだけじゃない。SS界からも命令違反を犯してでも助けにくるんだ」 編集「燃える展開ですね。誰です?」 師匠「恋次とルキアだよ」 編集「なん・・・だと・・・?」 師匠「アモールは見たものを支配できる能力なんだ」 編集「まさに強敵ですね」 師匠「でも白哉には効かないんだ」 編集「なぜです?」 師匠「無敵バリアを張るからだよ」 編集「なん・・・だと・・・?」 154 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/02/08(金) 08 46 41 ID ABriruOsO 29 名無しさんの次レスにご期待下さい sage 2008/02/06(水) 15 19 13 ID TAd55WzA0 編集のなんだとシリーズにどっちか加わりそそうだな 師匠「ノイトラの鋼皮は歴代最硬で死神の刀じゃ傷付けられないんだ」 編集「それは強敵ですね。何か特殊能力でも使わないと苦戦しそうです」 師匠「でも剣八なら倒す事が出来るんだ」 編集「流石隊長ですね。でもどうやって?」 師匠「途中で硬さに慣れるからだよ」 編集「なん・・・だと・・・?」 169 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/02/09(土) 23 18 27 ID rLZxTzKyO 師匠「ノイトラはエスパーダ最強なんだよ」 編集「武器も変だし強そうに見えませんがなんでですか?」 師匠「一番堅いからだよ」 編集「何・・・だと・・・?」 279 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/02/22(金) 00 04 24 ID iYM2COZT0 師匠「けどそんな剣八をも圧倒出来る能力をノイトラは秘めてるんだよ」 編集「流石十刃ですね。どんな凄い能力なんですか?」 師匠「腕が4本になるんだ」 編集「なん・・・だと・・・?」 師匠「そんなノイトラが更なる新能力を発揮して読者を絶望の淵に叩き落とすんだ」 編集「4本腕に斬られて終わりじゃ寂しいですもんね。どんな新能力です?」 師匠「腕が6本になるんだ」 編集「なん・・・だと・・・?」 師匠「その絶望的状況を覆すべく剣八が一世一代の奇策を繰り出すんだ」 編集「剣八が策を!これは意外な展開ですね。どんな策を?」 師匠「剣を両手で振るんだよ」 編集「なん・・・だと・・・?」 164 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/02/09(土) 18 56 14 ID rLZxTzKyO 師匠「今回の人気投票で日番谷隊長が1位になったんだよ」 編集「流石映画の主役だけのことはありますね」 師匠「腐女子からダンボール一杯の葉書が来たんだ」 編集「何・・・だと・・・」 167 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/02/09(土) 23 11 25 ID 5YKFLjjeO 師匠「を、旨そうな匂いだな…カレーライスか?」 編集「いいえ、ナンてす。」 師匠「ナン…だと…!?」 編集「はい。ナンです。何回も言わせないでください。」 師匠「嘘…だろ…!?」 209 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/02/14(木) 00 02 22 ID Oh1+Fn4FO 師匠「読者の心を掴むにはキャラにカッコイイ台詞を言わすだけじゃだめだ」 編集「確かに。例えば何が必要ですか?」 師匠「台詞に使う漢字をあえて普通とは違う漢字に変えてキャラに喋らすんだ。するとキャラにオシャレさも加わるんだ」 編集「それはカッコイイ台詞として含まれるのでは?」 師匠「何度も言わすんじゃない。言ってるんだぜ?オシャレさが加わる…とな」 編集「なん・・・だと・・?例えば?」 師匠「例えば?だと?「聞く」をあえて「訊く」と書いたりしている」 編集「嘘・・・だろ・・?」 236 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/02/19(火) 00 21 48 ID vcOwUT1yO とあるコンビニにて~ 師匠 (オッ!ブリーチ読んでる!) 学生A「おい、電車遅れちまうからもういくぞ!」 学生B「大丈夫だって、鰤内容薄いからあと5分もあれば読めっからさぁ。間に合うって!」 師匠「なん・・だと・・!?」 学生A「だーかーらー鰤なんか一巻飛ばしでも内容把握出来んだろ?わかってんじゃん」 師匠「嘘・・だろ・・!?」 490 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/03/15(土) 13 50 42 ID qri/tIZX0 A「おーい、このゲームやろうぜ」 B「おう!」 A「じゃあせっかくだしムズイ度をハードにしてやろうぜ」 B「ムズイ度?」 A「え、お前漢字も読めないの?ほらこれだよこれ。」 B「・・・・・・・なぁ、難易度の難って「むず」じゃなくて「なん」って読むんだぞ・・・」 A「・・・・「なん」・・・だと・・?」 510 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/03/16(日) 01 30 24 ID UYgxT+/vO 久保「いや~自分で言うのもなんだが、ブリーチは漫画の演出やストーリー展開を進化させたと思ってるよ」 編集「勘違いしてんじゃねえよ!お前の糞漫画なんざネタにされるぐらいしか価値ねえよ!」 久保「何……だと……!?」 編集「糞漫画だから来週からタイトル“ウンコブリブリブリーチ”な!」 久保「嘘……だろ……!?」 572 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/03/17(月) 22 27 56 ID ZwxFKPKh0 510 久保「編集長!この編集が俺の作品の名前を“ウンコブリブリブリーチ”に変えるとかいってるけどなんなんだ」 編集長「あれ?もう変えたんじゃなかったの?」 久保「何……だと……!?」 編集長「それより、ストーリーの進み方が遅いって苦情の電話が殺到してるからもっと展開早くしてよ」 久保「嘘……だろ……!?」 編集長「それと http //ex21.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1198758140/ ここで君の作品がネタにされているから見といた方がいいよ」 久保「・・・く、くそおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」 588 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/03/18(火) 00 24 27 ID Efvpa9GCO 572 ~その後、帰宅中の電車にて~ 久保「あの編集部の人間は何なんだよ!ブリーチの素晴らしさが解らないとは愚かなな奴らだよ!」 学生A「お前まだジャンプ読んでんの?」 学生B「あぁ…何となく暇つぶしにな」 学生A「あれ?!ブリーチって、まだ続いてたんだな」 学生B「数秒で読めるから暇つぶしにもならんけどな!つまらねぇ糞漫画だよ」 久保「何…だと…」 学生A「そんなのずっと前から分かってることじゃね?」 学生B「ウンコブリブリブリーチの連載が続いてる事自体が『嘘…だろ…』って感じたけどなWW」 久保「なっ……ってか『ウンコブリブリブリーチ』がタイトル変更される前に浸透…してる…だと…!!!」 学生B「腹減ったな、これ食う?」 学生A「なんでナンなんだよW」 久保「ナン…だと…」 学生A「結構、食べカスが出るな…」 学生B「ブリーチのページ開いてナプキン代わりにしようぜ」 久保「ちきしょうぅぅぅぅーーーーーーーーー!!!」 学生A「なぁ、さっきからこの人キモくね?」 学生B「服装もオサレでキモいな」 学生A「そんなことより、ちょっと聞いてくれよ!この前母ちゃんがハワイにいってきたんだけど、どうやら浮気相手と………ペチャクチャ…」 ピロリ~ン♪(久保の携帯に編集からメール) 「タイトルですが『ウンコブリブリブリーチ』と『ウンコブリブリ』のどっちが良いですか?」 591 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/03/18(火) 00 55 38 ID vKZOfvgp0 588 久保「く・・・そ・・・編集め、こんなメール送りやがって・・・」 久保、仕事場に帰る 久保「ただいま・・・」 アシ「あ~、お帰りなさい」 久保「はぁ~・・・あれ?他のアシ連中は?」 アシ「なんか集英社から呼び出しがかかって他の作家さんのところにヘルプにいきましたけど」 久保「何・・・だと・・・!?」 アシ「何でも「ブリーチは背景白いから二人くらいぬけても大丈夫だとかいってましたね」 久保「嘘・・・だろ・・・!?」 アシ「ま、俺も同じこと思ったんすけどねwつか、俺も用事あるんで失礼します」 バタンッ(扉がしまる音) 久保「ちきしょぅ・・・・・・」 592 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/03/18(火) 01 15 30 ID hzx7xxRA0 久保「・・・ふふっ・・・ここで・・・一護が・・・ドン!・・・・・・」 ヴーンヴーン 久保「??!・・・・・・・・・ドコモショップ・・・か・・・」 久保「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ヴーヴーンヴーン 久保「??!・・・・・非通知・・・・・やめとこ・・・・」 久保「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 トゥルルルルルルルル 久保「はいもしもし?!・・・・・・朝日生命・・・?・・・いえ・・・特にないので・・・」 久保「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ピンポーン 久保「はいっ!・・・畳・・・?・・・いえ・・・いいです・・・・」 久保「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 久保「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 617 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/03/18(火) 21 06 05 ID tLmQlZRi0 592 久保「一人か・・・2chで工作でもするかな」 BLEACH好きな奴あつまれー 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 20 31 55.05 ID AO+E/GWHO 語ろうぜ! 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 20 33 15.76 ID ynn73ICp0 ねーよwwww 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 20 33 41.02 ID jgj0hZDq0 ブリーチ(笑) 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 20 38 59.05 ID wVu9e+j90 小学生がvipにくんな! 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 20 39 50.93 ID hq3pK474O 1氏ね 久保「何・・・だと・・・!?」 653 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/03/19(水) 21 22 35 ID gFCQ6izMO 編集「この間はごめんね。あんなこと言っちゃって。」 久保「いえ!いえ!いえ!分かってくれればそれで良いんですよ!」 編集「あ、そ!んじゃブリーチ今回のシリーズで打ち切りね。」 久保「何…だと…」 編集「君みたいな漫画は今すぐにでも打ち切りしたいんだけども情けで今シリーズまで伸ばしてあげたよ。」 久保「嘘…だろ…ちょっ、ちょっと待って下さいよ!僕はまだまだジャンプで連載続けたいですよ!」 編集「続けるって言われてもねぇ~仮に君がスポーツ物書いても引き伸ばすだけだからねぇ~」 久保「何…だと…」 編集「君がギャグ物書いてもつまんないんだよね~ギャグが固いんだよね~」 久保「嘘…だろ・・・」 編集「ん~そーだなぁ…そうだ!ラブストーリー物だよ!純愛物!」 久保「ラブストーリー物ですか…」 編集「それなら多少引き伸ばしても大丈夫だと思うよ!それにジャンプはバトル物ばっかりだから純愛物もあったほうがいいと思うよ!」 655 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/03/19(水) 21 44 32 ID gFCQ6izMO 久保「あの~」 編集「ん!どーしたの!」 久保「少年誌だからバトル物ばっかで少女誌だから純愛ばっかりなんじゃないでしょうか…」 編集「……」 久保「あ…あの…」 編集「はいはい!久保先生のお帰りだよ~」 久保「い!いや!ちょっと待って下さい!い!痛っ!乱暴に掴むなって!!」 編集「早くブリーチ終わらしてねー君の変わりにはいっくらでもいるからねー」 久保「ちょっと待ってよ~」 660 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/03/19(水) 23 49 21 ID 9U4Z+H8eO 師匠「今週のヨン様決まってましたね!」 編集「いや逆にバカに見えるんですが……」 師匠「何……だと…?」 編集「なんか最近になって勝手に考えたような作戦ですよね。私はわかりますよ」 師匠「嘘……だろ…?」 編集「最近のバトルも後出しジャンケンばかりですし、行き当たりばったりで書いてるのわかりますよ(笑)」 師匠「まじ……かよ…」 編集「あと、急な話ですが映画もやりましたしもう打ち切りですので」 師匠「まじ……かよ…?」 編集「まじ……だよ…」 726 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/03/21(金) 00 33 51 ID rgjtOP3Y0 編集「そういえば、BLEACHって背景にこだわってない・・・っていうか全体的に白いですよね?」 久保「俺の漫画に色は必要ない。キャラ毎にイメージ色を決めているからね。」 編集「・・・・・イメージ色・・・だと・・・?」 久保「イメージソングと同じようにキャラクターにも同調するような色があるんだよ」 編集「それはオシャレですね。たとえばルキアだと何色なんです?」 久保「ルキアは白だよ」 編集「結局白・・・かよ・・・」 733 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/03/21(金) 04 20 45 ID ttwdem2dO A「あの死神の漫画はマジに面白いよ!」 B「え?…どこが好きなの?」 A「頭脳戦、心理戦が詰め込まれてるって感じて読んでてハラハラするよ」 B「嘘……だろ……?まっ …まあ感性は人それぞれだからな…」 A「なんだよ?お前、面白いと思わないの?」 B「…いや……なんつーか……またちゃんと読んでみようかな……ハハッ…」 A「俺は面白いと思うけどなあ………デスノート」 B「そっちかよ!!! 俺はてっきりウンコブリブリブリーチだと思って焦ったよ!」 師匠「………定着してんなぁ…ウンコブリブリブリーチ…………」 A「ウンブリなんか読まねえよw」 B「だよなーw」 師匠「略した……だと……?」 師匠「…それよりも、その場合の“ブリ”は“ブリブリ”と“ブリーチ”のどっちからきてんだ?……」 ピロリ~ン♪(編集からメール) 『ウンコブリブリの原稿の進行具合はいかがですか?』 師匠「………“ブリブリ”の……ブリ……の方だったか………」 742 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/03/21(金) 22 25 08 ID 8uy0cRtL0 久保「アシA、ちょっと買い物に行ってきてくれ」 アシA「分かりました。何を買ってくればいいんですか?」 久保「この紙に書いてあるものがほしいんだけど、頼むよ」 アシA「えーと・・・あ、はい。分かりました。今行ってきます。」 ~2時間後~ アシA「ただいま戻りました。」 久保「おーありがと、ありがと」 アシA「えーと・・・まずは黒インクですね。」 アシA「それと・・・墨汁・・・あの、思ったんですけど、何で墨汁なんですか?」 久保「死神の衣装を塗るときは墨汁の方が雰囲気でるだろ?」 アシA「あー・・・なるほど・・・(嘘・・・だろ・・・?)」 アシA「それとホワイトとペン軸とペン先です。」 久保「はいはい」 アシA「あと、トーン各種10枚です。」 久保「何・・・だと・・・!?」 アシA「え?何か?」 久保「トーンは各種1枚だけでいいと書いてあっただろ?」 アシA「いや・・・トーンって消耗品じゃないですか?」 アシA「だから多めにあった方がいいかなーと思って・・・」 久保「莫迦が!!死神の衣装は黒一色、破面は白一色なのにトーンなんてどこに使うんだよ!」 アシA「いや、背景とか・・・」 久保「俺がそんな事すると思っているのか?」 アシA「(何・・・だと・・・!?)」 久保「背景だって岩場や砂場で手のかからないようにしてるというのに」 久保「トーン1枚で1ヶ月もたせるというのにいらない金使うんじゃねぇよ!」 アシA「何・・・だと・・・!?」 745 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/03/22(土) 00 30 31 ID LT2jslTOO 編集「ノイトラの腕が4本になったのには鳥肌が立ちましたね あの4本の鎌を縦横無尽に振り回されたら誰も近寄れませんよ 近距離型の剣八には手強い相手ですね」 久保「そうだろ?」 編集「でも腕が4本になるだけでは少しばかり地味ではないですかね」 久保「そう言うと思ってね 実はノイトラにはまだ切り札があるんだ」 編集「なんです?」 久保「腕が6本になるんだ」 編集「なん・・・だと・・・?」 久保「しかしそこは戦闘狂の剣八 そんなノイトラを圧倒するんだ」 編集「どうするんです?」 久保「刀を両手で振るんだ」 編集「なん・・・だと・・・? しかしノイトラは十刃で一番体が硬いんですよね? しかも腕が6本もあるのでそんなの防がれてしまうのでは?」 久保「そこがミソなんだ」 編集「どういうことです?」 久保「頭から一直線に突っ込んでくるんだ」 編集「なん・・・だと・・・?」 747 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/03/22(土) 01 31 08 ID WDdNIAgm0 久保「・・・って話を編集としたんだよ」 久保「イメージ色を思い浮かべたらBLEACHの世界がますます広がるだろ?」 アシA「はい、最初は何で背景が白いんだろうと思っていました(笑)」 アシB「でも、人によってキャラに対するイメージって違いませんか?」 久保「そうなんだ。だからAとBでも随分とBLEACHの世界が違うと思うよ」 久保「そして読者の数と同じ数だけBLEACHの世界があるんだよ」 アシA「想像力豊かな人ほど楽しめるってことですか!」」 アシB「物語だけじゃなくて絵柄にも夢があるんですね!」 久保「つまり、背景は読者自身が心の中で色付けするのさ」 アシA「俺は物語ごとに色を想像してますよ!」 アシB「そうかな?私はキャラ同士が出会うときにはじめて色が出るみたいな感じと思ってます」 久保「やっぱり人それぞれだから。BLEACHを自分の楽しみ方で楽しんで欲しいね」 久保「あと、BLEACH全体にもテーマ色っていうのがあってね…」 アシA「その意味どおりに主人公である一護がどんどん白に染まってるんじゃないですか?」 アシB「なるほど、でも、汚れた世界を浄化するって感じでもありますよね?」 久保「これも答えは読者の数だけあるんだよ。でもその答えが物語が進むごとにやがてひとつに収束するのさ」 アシB「すごい深いですね」 アシA「早く物語り進めてくださいよ!」 アシC「チワーッス!セブンでおにぎり100円だったんでたくさん買ってきましたよww」 久保「お帰り。ちょうどいい、アシCはBLEACHという物語がどんなテーマ色を持っていると思う?」 アシC「え?色なんてあるんスか?w だって背景白いですしwwそんなことより新しいおにぎりどうッスか?www」 久保「・・・何・・・だと・・・?」 アシA「空気・・・読めよ・・・・」 819 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/03/23(日) 22 43 57 ID VQlscr5N0 久保「ちょっと買ってきてほしい物があるんだけど~」 アシ「何ですか?」 久保「この紙に書いてある物が至急ほしいんだ」 アシ「えーと・・・って、これ只のエロ本じゃないですか!!」 久保「どうしても必要なんだよ」 アシ「こんなもん何に使うんですか・・・?」 久保「こんなもん・・・だと・・・!?」 アシ「?????」 久保「いいか!この本には男の全てがつまってるんだ!」 久保「言うならば、男にとっての聖書(バイブル)」 久保「これがないと新しいアイディアが浮かばないんだ!」 アシ「新しい・・・アイディアだと!?」 アシ「こんなもんみても浮かぶのは乱菊の乳くらいでしょうに!!」 久保「だから必要なんだよ!!!!!」 アシ「何・・・だと・・・!?」 アシは久保の熱意に負け、しぶしぶ買いに行くことにした。 買ってる途中に知り合いに見つかりとても恥ずかしい思いをした。 アシ「(何で俺はこんなとこで働いてるんだろ・・・)」 そしてやめたいと思ってもやめれないので ―そのうちアシは考えるのをやめた。 843 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/03/25(火) 04 02 44 ID 7s0VCH0+0 師匠「で、これからウェコムンド編のクライマックスに突入させるんですよ」 担当「おお、そうですか!これから藍染達との対決ですね!」 師匠「いや、残った戦力全部使って空繰町を襲撃するんです」 担当「なん・・だと・・・・?(1年ちょいやってきた一護達の突入の意味は・・・)」 師匠「だけどそこにはすでに護廷十三隊の残りが全員終結してるんです」 担当「なん・・・・だと・・・(決戦は冬のはずじゃ・・・)」 師匠「だけど藍染達が移動した先の空繰町は実は、ソウルソサエティに作ったそっくりなレプリカと丸ごととっかえてあるんです」 担当「まじ・・・・・かよ・・・・・・(ギリギリはいらなかった家の人とかにばれてパニックになるだろ・・)」 866 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/03/25(火) 22 31 32 ID /nBNeBdI0 担当「大きく話が動きましたね。これは読者も期待大ですよ」 師匠「実はもっと読者が喜ぶ展開を用意してるんです」 担当「マジ・・かよ・・ あなたは凄いです!」 師匠「読者はずっと死神達の過去が知りたかったはずなんですよ」 担当「ほうほう」 師匠「そこで来週からいきなり過去編に入り読者の期待に答えます」 担当「なん・・だと・・」 師匠「過去編やるのはこのタイミングしかないと思いました」 担当「嘘・・だろ・・」 920 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/03/28(金) 02 27 12 ID oaqzEBP60 編集「あの…巻末コメに過去の話を~ って書かれてましたが…」 久保「ああ、やはりキャラのイメージ色を読者に想像させるには、キャラの過去の話が必要だろう?」 編集「どうでもいい・・・だろ・・・」 久保「この過去の話がこれからのバトルに繋がるんだ」 編集「なるほど・・・今回の過去編で一気に伏線を回収するんですね!」 久保「回収すると同時に新たな伏線も忍ばせるつもりだよ」 編集「新たに・・・だと・・・!?」 久保「今回はヴァイザートの面々の過去を主に紹介していくつもりなんだ」 編集「え?スミマセン、何ですかそれ?ヴァ・・・??」 久保「嘘・・・だろ・・・?」 921 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/03/28(金) 03 31 12 ID 2SrKnudgO 師匠「結構魅力的な敵が次々と現れるエスパーダ編、どうだい?」 担当「いやしかしチャンピオンのバキという漫画にはもっと凄い相手がいて・・・あれは僕もびっくりしました」 師匠「どうせたいした敵ではないだろう?ちなみにどんな?」 担当「かまきり」 師匠「嘘・・・・・だろ・・・?」
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3171.html
ミッドチルダ とある地下道 「―――――――」 不気味なまでに静寂の中を、一人の少女が歩いている。 腕には鎖が絡みついており、その先には正方形の形をした箱が二つ、繋がれていた。 「―――はぁ、はぁ」 おぼつきの悪い足取りで、少女は暗闇を進んでいく。 目的も、行く先もわからない。ただひたすらに前を見ては、疲労の身体に鞭を打つ。 そして、当てもなく孤独の世界をさ迷い続けている……何時までも何時までも。 ―――新たな交錯の引き金は、この少女から始まる 魔法死神リリカルBLEACH Episoade 6『Certain holiday of six mobile divisions』 魔法世界ミッドチルダ AM 0 13 「――――――――…。」 門をくぐり抜け、光の先に見えた場所――それは、新緑の森だった。 全体的に暗い所を見ると、どうやら今は夜らしい。一護は改めて辺りを見る。 しかし、何処を見ても覆い囲むような木々が広がっているだけだった。 ――ここが、魔法の世界なのか? 一護は早速疑問をぶつける。 「オイ、本当に此処で合ってんのか?」 「…座軸は間違いないはずだが…」 そう返すルキアも、どこか自信なさげだった。 しばらくすると、今度はチャドの驚きに満ちた声が聞こえてきた。 「おい…こっちを見てみろ」 チャドが指差す方向――少し高い丘より、下から見える光景――。 ――そこに広がるのは、未来都市のような街並み。 眩い月光の下に曝け出されるその都は、どこか現世とは違うものを感じさせる。 そして中央には、巨大な塔のようなものが、幾つか聳え立つように並んでいた。 彼等は間違いなく、魔法の地ミッドチルダに来ていたのだ。 「……すっげえな」 一護が、驚き半分にそう呟いた。 「だが……現世とはどこか似ているな…街並みとか」 同じく驚いた様子で、チャドもそう言った。 「なあんだ、あたしが想像してたのとは全然違うなあ」 ちょっと残念そうに、織姫が眼下の街並みを見る。 ――何を想像してたんだろう…ちょっと気になるところではあるが、発想が宇宙レベルの織姫に、どんな答えが返ってくるかわからないのでやめとく事にした。 「…そんな事はどうでもいいはずだ」 一護達の後ろで、そんな冷めた声が聞こえた。 振り向くと、冬獅郎達が自分そっくりの人形みたいなのを取り出していた。 「それ、義骸か?」 「ああ、霊圧を遮断する特殊な奴らしいが…」 死神が現世で活動する際、周りの人達に違和感がないように動けるよう作られた、擬似的な肉体。――それが『義骸』である。 ――で、あるのだが…。 「オイ、松本…これは何だ?」 自分の仮の体を見、若干怒りで震えるような声で、乱菊に訊く冬獅郎。 見てくれはどこからどう見ても自分そっくりであるのだが、彼の問題は一緒に来ている服装だった。 今、彼の義骸の服装は、薄手の白いワイシャツに、簡素な半ズボンという出で立ち。 しかも頭には、可愛い麦わら帽子を被っていた。 ――簡単にいえば、昭和の子供が着ていそうな服をしていたのだ。 「どうです? 隊長には何が似合うか一生懸命に考えたんですよ」 しかし、本人は何の悪びれもせず、寧ろ誇るように乱菊はそう言ってのける。 ギロリ、冬獅郎は乱菊を一睨み。 「…隊長の健康管理云々は考えてくれなかったんだな、どう考えても寒いだろコレ…」 確かに、段々と冷えるこの時期、そのうえ今は夜だ、いくら寒さに強い冬獅郎でも、寒いものは寒い。 しかし、乱菊は有無を言わせなかった。 「まま、隊長 ものは試しですって ちょっとでいいから着てみてくださいよ!」 「おい! やめろ馬鹿――」 皆まで言わせず、無理やり冬獅郎を義骸の中に押し込む乱菊。 そんな二人の漫才じみたやり取りを、一護達は遠巻きに見ていた。 「なあ冬獅郎、これからどうすんだ?」 「…既に本拠地は決めてある。これからそこに向かうぞ」 重い口調でそう言う冬獅郎だが、今の格好だと威厳すら感じられなかった。 これで今の時期が夏なら、背後に『少年時代』が流れていることだろう。 正直、一護達は笑いを堪えるのに精一杯だった。 「う~ん、やっぱり虫かごとかあった方が良かったかな?」 「松本……殴っていいか?」 「…それより、斑目達はどうした?」 ふと気づいたように、辺りを見回す冬獅郎。 「あれ? そういやいねえな」 随分静かだと思ったら、あの戦闘集団十一番隊の姿が影も形も無かったのだ。 本格的にどこに行ったか探し始める一護達。 「あいつ等何してんだ!?」 「…ム……」 「こっちにもいないよ!」 「…一護…」 「そういや、白哉もいねーぞ!」 「…ちょっといいか?…」 「何だよ!? チャド」 先程から肩を叩くチャドに焦れるように、一護が振り返る。 次の瞬間、彼の口からとんでもない言葉が出てきた。 「彼等なら、『俺達は勝手にすっから後はよろしく』…とか言って此処を離れていったぞ」 「「「「「「…ハァ!!!?」」」」」」 あまりの出来事に、一護達はただただ素っ頓狂な声を上げるだけだった。 「な、何で止めねーんだよ!!?」 「と…止めようとした時には、もういなくなってた」 「ど、どうします? 隊長」 冬獅郎は、不機嫌そうに頭をガシガシと掻き毟って言った。 「…仕方ない、放っておけ」 いまさら止めようとした処で、素直に言う事を聞く輩では無いということは、それなりに長い付き合いなのでわかっている。 本音を言えば、あまり管理局の連中に事を知られるようなことは避けたいのだが、彼等ならそう易々と捕まりもしないだろう。 ――それに、大体こうなることは、行く前からすでに予想できたことでもあった。 「あいつ等なら、戦いの時にでも来るだろ」 「白哉は?」 「…あいつとは元々別行動だ」 冬獅郎はそれだけ答えると、とりあえず今いる面子の確認をした。 白哉はともかく、敵の戦力が分からない今、十一番隊の連中がいないのは少し痛い感じもするが、まあ大丈夫だろう――とりあえず今はそう思うしか無かった。 「とりあえず、一旦降りるぞ。いつまでもここにいても仕方ないからな」 一護達もそれに頷き、山を降りる。 しかし、戦いの時は、直ぐそこまで迫っていた。 翌日 機動六課 訓練場にて 「……はぁ」 今日もまた、散々としごかれた新人達。 やっとのことで、朝の訓練が一段落し、なのはからの労いの言葉が掛けられた。 「みんな、お疲れ様。――でね、実は何気に、今日の模擬戦が第二段階クリアかの見極めテストだったんだけど」 「…え?」 咄嗟のことでついていけない新人達をよそに、なのはは一緒に教えていたヴィータと、長い親友の一人、フェイト・T・ハラオウンに訊く。 「二人はどうでした?」 「――合格」 「早っ!」 「ま、こんだけミッチリやってて、問題あるようなら大変だってこった」 当たり前だ、という調子でヴィータは言った。 二人の返答に、なのはも頷く。 「私も、みんな良い線行っていると思うし、じゃあこれにて二段階終了!」 「やったーー!!」 喜びに立ち上がるスバル達。どうやら先程までの疲労などすっかり忘れてしまったようである。 「デバイスリミッターも、一段階解除するから、後でシャーリーの所へ行ってきてね」 「明日っからはセカンドモードを基本形にして訓練すっからな」 「――え、明日?」 疑問符を浮かべるキャロに、ヴィータが答える。 「ああ、訓練再開は明日からだ」 「今日は私達も、隊舎で待機する予定だし」 「みんな、入隊日からずーっと訓練漬けだったしね」 あまりに簡単に放られた言葉。それを理解するのに、少し時間がかかったが。 その意味が、ゆっくりと分かり始めたときには、皆の顔は無意識に嬉しさに満ち満ちていた。 「――ま、そんなわけで」 「今日はみんな、一日お休みです! 街にでも出かけて遊んでくるといいよ!」 「はーーーい!」 元気いっぱいの新人達の声が、六課の訓練所内に響いた。 ミッドチルダ 首都クラナガンのとある建物。 見かけこそは他に立ち並ぶビルと何ら変わりはないものの、中を覗くと中々に異様な光景が広がっていた。――少なくとも、この地の人々はそう感じるだろう。 木で造られた廊下、階段。襖の扉や畳の部屋。いわゆる和式の造りだった。 その一つ、『執務室』と描かれた部屋にて、乱菊は頭を抱え込んで何やら唸っていた。 ――悩む彼女の前には、山のような書類の数々が散乱している。 「う~~、どうしよう…」 「松本…唸る暇があったら早くやれ」 隣の一際大きい隊長机で、冬獅郎の声が飛んできた。 彼の机にも、乱菊と同じ…否、その倍はあろうかという紙の束で覆われていたが、乱菊と違ってテキパキとこなす為、その減りはすごく早い。 「そんなこと言ったって…この数はないですよ!」 「早くしないと陽が暮れるぞ」 「…わかりましたよ」 渋々一枚の書類に手をつけるが、数秒も経たないうちにまた唸り始める。さっきからずっとこれの繰り返しだった。 乱菊のこのような態度には、理由がある。 ――それは数分前のこと。 「とりあえず、これからの方針を決めるぞ」 朝に行われた、ミーティングの時だった。 「繰り返しになるが、俺達がここに来た目的は、また何か企図している藍染の足取りを、少しでも多く掴むこと。 その鍵となるのが、奴の狙っているレリックという代物、これが藍染に渡る前に俺達がいち早く回収し、そこから――ここまではいいよな?」 冬獅郎は一旦区切って、皆がついてきているかどうかを見た。 簡単に確認すると、冬獅郎はまた続ける。 「だが、ここは異世界。勝手な行動はできねぇし、『少しでも』目立つものなら管理局の連中が即動き出して来るだろう、そうなるとますますやりずらくなる」 無駄に『少しでも』、を強調して、一護を睨む冬獅郎。 この態度には、一護もカチンときたようだ。 「じゃ、これからどうすんだよ!」 声を荒げて一護は、冬獅郎に喰ってかかる。冬獅郎は、一泊間を置いてから続ける。 「とりあえず問題なのは、この辺の地理だ。知ると知らないとでは、大きな差が出る…簡単には見つからないよう、結界を張ってはいるが、この場所自体安全の保証は無いからな。――だから、お前等に最初にやってもらうのは、その辺も含めた捜査だ」 冬獅郎は、そう言って皆を見渡した。 「怪しいところ、脱出の際に逃げ口になりそうなところ、――何でもいい、それを調べてくれ。無論何か進展があったら、すぐに連絡しろ。後で報告してもらうからな。」 「さっすが隊長!!」 ここで、乱菊が自分のことのように、嬉しそうに言った。 「ここまで考えてるなんて、やっぱりできる人は違いますね!」 「…メンバーを選出するぞ」 冬獅郎は、大して取り合わずに続ける。 「ペアに分かれて、黒埼・朽木、阿散井・茶度、あと井上だ。黒埼、朽木、阿散井は、既に素性がばれているかも知れないから、特に注意を払っておけ」 「…あれ?」 おかしいぞ、というような声を上げたのは、無論乱菊だった。 「隊長、あたしは?」 「テメエと俺は待機だ――当たり前だろ」 「え…えぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」 本人にとって予想外の展開に、乱菊は戸惑いを隠せない。 早速、冬獅郎に詰め寄る乱菊。 「な…何でですか!!?」 「理由は二つある、一つは、この世界は戸魂界よりも現世に近い。なら、現世に住む黒埼達の方が、俺達が見落としそうな事に気づく可能性があるだろ。――後もう一つ」 今度は、あえて乱菊と正面から向かいあい、ギラリと見据えて言った。 「――テメエが行ったら、仕事をしねえじゃねえか!」 考えてみれば、至極当然の判断といえた。 ただでさえ行くときに、任務より『そちら』の方に現を抜かしていたのだ。そうしない方がどうかしているといえよう。 しかし、乱菊は納得がいかないようだった。 「で、でもさっき地理の把握は重要って言ったじゃないですか!? だったら人手は一人でも多い方が…」 「待機する役も重要だろうが ――安心しろ、暇つぶしの物はちゃんと用意してある」 そう言って冬獅郎は、後ろの隊長机にある書類の山を指差した。 ―――すなわち、イッツ、デスクワーク。 瞬間、乱菊の血の気が一気に引いた。 「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!! な…何なんですかあの数!??」 「当然だろ、今回の任務についての報告書と確認書、それから十番隊の業務云々……まあ、あそこまで溜まったのは、いままでテメエが何かしら理由をつけてはさぼってきた所為なんだけどな。まあ自業自得という奴だ」 いい迷惑だ、と言わんばかりに冬獅郎はため息をついた。 異世界まで来ておいて、まさか見慣れた書類が出てくるとは、乱菊にとっては思いもよらないことであっただろう。 「まあ、アレが全部片付いたら、考えてやらんでもないけどな」 「た、隊長、何も今日やらなくても、明日やりますから!!」 「駄目だ テメエの『明日』は信用できねえ」 その後も、何とか自分も捜査したいことを抗議すること数十分、だが結局、冬獅郎は首を縦に振ってはくれなかった。 ――こうなったら最後の手段。 「隊長~~オ、ネ、ガ、イ♪」 遂には、色仕掛け作戦を使い始めたのだ。 この効果は、思わず一護達が赤面するほどのものではあったが、 『子供』+『長い付き合い』である冬獅郎に、通用するはずがなかった。 「いいから、や・れ」 そんなこんなで、軽く数時間が経過していた。 しかし未だに書類の山は、彼女を嘲笑うかのようにその場に鎮座している。 「隊長…もう無理ですぅ…」 「愚痴を零すぐらいだったら筆を動かせって何度も言ってるだろ!」 ただでさえ書類整備が苦手な乱菊。その上早く片付けようと逸る気持ちが全て空回りしているおかげで、どうしても集中する所は自然と書類の山の方へと言ってしまうのだった。 数分掛けて一枚仕上げては、未だに積もる書類を見て挫折に数十分―――この負の連鎖が、始まりから今までずっと続いていたのだった。 「隊長~~~」 「駄目だ」 「まだ何も言ってないじゃないですか!」 「言いたいことならわかる、仕事を名目に遊びに行きたいんだろ?」 この口論自体、もう何度目になるだろうか…。 しかし、同じ結果になるとはわかりつつも、乱菊は諦めきれないようだった。 「そんな、あたしだって、今回はあそっ…仕事の気持ちでちゃんと来ているんですよ!」 「遅えよ、今ホンネが聞こえたぞ。己の欲すら隠せない奴をどう信じろっていうんだ?」 「隊長は部下を信じるところから始まるんですよ?」 「だったらより信用されるようにもっと行動で示せ」 さらに三十分ほどの時間を要して、この口論にも決着がついた。 結局乱菊は、重い溜息と共に再び席に戻る。 そしてまた、目の前の宿敵と目を向けることとなった。 「―――隊長のケチ」 明らかに聞こえるように放られたその言葉、聞こえたか聞こえなかったか、しかし冬獅郎は先ほどの口論なんかまるで無かったかのように仕事の続きを始めていた。 乱菊も、渋々仕事に取り掛かる。 しかし、やはり同じことの繰り返し。 そして無駄に時間は流れていく。 「はぁ…………」 おもむろにつくため息。――冬獅郎の筆の動きが鈍った。 「はぁ~~~ぁ」 やるせなさそうに書類を見下ろし、またため息。――冬獅郎の筆が止まった。 「はぁ~~~あ~~~あ」 三度のため息。――冬獅郎の筆が震えだす。 「はぁ~~~~~~~あああ~~~~~~~~~あ~~~~~~あ」 今度はもはやため息ではないだろ と思えるくらいに長いため息。 ―――バキッと冬獅郎の筆が真っ二つに折れた。 「いい加減にしやがれ、ため息ばかりつきやがって!!!!!」 遂に堪忍袋の緒が切れた冬獅郎、机を思い切り叩いて乱菊に怒鳴りこんだ。 同時に、せっかく整理した書類が幾つか宙に舞い散る。 しかし、乱菊の態度は変わらない。 「だってぇ…本当にわかんないんですもん」 文字通り手を上げて降参の素振りをする乱菊。 そのあっさりとした態度に、冬獅郎は苛立ちを隠せない。 「……勝手にしろ!」 そう吐き捨て、再び仕事に戻る冬獅郎。 乱菊も、大して取り合わずにまた大きなため息をつき始める。 「はぁ…………」 ―――そんな状態が、さらに長い間続いた。 しばらくして、おもむろに冬獅郎が呟くように言った。 「……けよ」 「え、?」 「とっとと何処か行っちまえって言ってんだ!」 半ばキレ気味に冬獅郎は言い放つ。 ――瞬間、乱菊の表情がいきなりガラリと変わった。 「隊長……」 「仕事しねえで四六時中そんなウザッてぇため息ばかりしやがって…こっちまで集中できなくなっちまう…もういい、今回だけは見逃してやる。」 「た…たいちょ~~~~!!」 先程の鬱そうな顔はどこへやら、喜色満面の表情で乱菊は冬獅郎に抱きついた。 二人の背丈からして、丁度冬獅郎の顔は乱菊の神々の谷間にすっぽりと収まる形になる。 「隊長、ホントッ、大好きですよ!!」 「分かったっ…分かったから早く行け!!」 「は~~~い」 小気味良い返事をして、早速支度にとりかかる乱菊。 やっと谷間から解放された冬獅郎は、どこかやるせない表情で乱菊の机の書類を見る。 ――――今日中に終わるだろうか? 「準備完了っと」 「早っ!!!」 次に冬獅郎が乱菊を見たときには、既に万端整った彼女の姿が。 ―――この速さを髪の毛一本でもいいから仕事に回してはくれないのか? 最後に乱菊は、冬獅郎の方へ向いてニッコリ微笑んだ。 「じゃあ遊びに…じゃなかった……遊びに行ってきますね!!」 「ああ………? ってオイ!! 結局遊びに行くのが目的かぁ!!!」 冬獅郎が叫んだときには、乱菊の姿が影も形も無かった。 「……あンの野郎ォォォ!!!!!」 冬獅郎の空しい声が、部屋全体に響いた。 だが、乱菊には聞こえなかったようだ。 今の彼女の頭には、もはや『仕事』の二文字は消えていた。 「もしもし、織姫? あたしなんだけどさ、ちょっと付き合ってよ!? え、仕事? いいじゃないそんなの!」 人々が賑わう町の中で、当てもなくうろつく少女が二人。 高い街道の上で、久々の休日を満喫していたティアナが、おもむろに口を開いた。 「でもホント、こんなにのんびりするの、久しぶり」 「……だね……」 空を見つめながらそう返すスバル。同じく休みを楽しんでいる筈の彼女の瞳は、しかし心ここに非ずと言ったように虚ろだった。 その相棒の、何を聞いても上の空のような顔を見てティアナはやれやれ、と肩を竦める。 「あの子達のこと、考えてんでしょ?」 「…え!!! それは…」 「とぼけないの、何年アンタとコンビ組んでると思ってるの? それぐらいお見通しよ」 ズバリ的中されたことで大いに慌てるスバル。 ――そんな顔されたら誰だってわかるっての。ティアナは胸中でそう呟く。 「なのはさん達の手前、何とかするとか大見え切ったのはいいけど、その顔だと何にも考えて無いようね」 「……うん」 今度はしょぼくれた様にスバルは頷いた。 ティアナは、今までの人生の中でも、最も大きいだろうため息をつく。 「アンタさぁ、いい加減その場のノリとかでもの言うのやめなよね」 「別に、ノリとかそうわけじゃないけど…」 視線を再び空に上げて、そして心から思う。 ――本当にただ、仲良くなれたらと。 「できれば、このまま何も起ってなきゃいいんだけど」 そう願うスバルの知らない所で、事態は動き出す。 ――場所は変わり、研究施設。 「レリック反応を追跡していた、ドローンⅠ型6機、すべて破壊されています」 「ほう…」 モニター越しに女性と会話をするのは、白衣の男――ジェイル・スカリエッティ。 別に映し出されたガジェットの残骸を見、至極興味深そうな表情をした。 「破壊したのは局の魔導師か…それとも、アタリを引いたか?」 「確定はできませんが、どうやら後者のようです」 「すばらしい、早速追跡をかけるとしよう」 底冷えするような冷笑を湛えてそう言うスカリエッティ。 と、そこにコツコツとこちらへと来る足音が一つ。 「ねえ、Dr。それなら、アタシも出たいんだけど」 「ノーヴェ、君か?」 「駄目よノーヴェ、貴女の武装は、まだ調整中なんだし」 「今回出てきたのがアタリなら、自分の目で見てみたい」 どこかぞんざいな口調で頼む、ノーヴェと呼ばれた少女。 しかしスカリエッティは、ゆっくりと首を振った。 「別に焦らずとも、アレはいずれ必ず、ここにやってくる事になるわけだがね……まあ、落ち着いて待っていて欲しいね、いいかい?」 「……わかった」 渋々納得したかのように、ノーヴェは引き下がった。 その間にも、彼等は事も無げに話を進める。 「ドローンの出撃は、状況を見てからにしましょう。妹達の中から、適任者を選んで出します」 「ああ、頼むよ」 そう言って頷くスカリエッティの視線は、もう片方のモニターに映し出された、何者かに破壊されたガジェットの詳細の方に移っていた。 「…俺の手が必要か?」 不意に、スカリエッティの後ろから声が聞こえてきた。 ノーヴェとは違い、音も無く彼の背後を取る男。 男は、面妖な出で立ちをしていた。 全てが白く染まった様な、死覇装にも似た服を着こなし、頭部には虚の欠片と思しき物が付いている。そして精密機械を思わせるような感情の起伏が見られない顔。 その冷徹な表情で、彼は睨むように訊ねていた。 「君の出番はここじゃあ無いよ」 しかし後ろを取られにも関わらず、スカリエッティの声は平坦そのもので返した。 「『破面』の力というのが、どれ程のものか、確かに見てみたいところだが、ここで使うにはいささか早計というもの……当面君には別の場所で働いてもらうとしよう、頼むよ、ウルキオラ」 その言葉に、男――ウルキオラは特に異議を唱えることはしなかったが、いま一つ、確認するように訊く。 「別に構わないが、藍染様との契約を、忘れてはいないだろうな?」 「わかっているさ、私と君の主とは、少なからない仲でもあるのだからねえ――約束はちゃんと守るよ」 彼の謹直さに苦笑いを呈しながらも、スカリエッティは頷いた。 ―――ならいい、とそれだけ確認するとウルキオラもその場を後に去って行く。 「……後は」 そしてスカリエッティは再び視線をモニターに戻し、そこに映る高台――を感慨も無く見下ろす少女を見て呟いた。 「愛すべきもう一人の友人にも、頼んでおくとしよう」 「あ~~買った買った!」 大手を振って歩く二人の女性がいた。 道行く人が十人いれば十人、振り返ること間違いなしの美女二人が、両手に買い物袋を抱えて歩いている。 「あの…いいんですか? こんなに買っちゃって」 隣の巨乳美女、織姫が手荷物を見て恐る恐る訊くが、しかし乱菊はどうってことなさそうに返す。 「いいのよ! ちゃあんと経費から落としてきたし!」 「それ、いいんですか? 勝手に使っちゃったら日番谷君怒るんじゃ…」 「大丈夫、うちの隊長は懐が大きいから!」 にっこり微笑んで言い切る乱菊。―――冬獅郎の苦労はまだまだ絶えない。 アハハ、と織姫が苦笑いを呈しながら、何気なく道を歩いていたその時。 「……?」 ふと、何か気付いたように織姫が立ち止った。 「どうしたの織姫?」 「え、と…今何か聞こえませんでしたか?」 周りを見渡して、聞き耳を立てる織姫。 乱菊もそれに倣うが、特に怪しい音は聞こえてこない。 「別に何も―――」 カコン く低い音が、乱菊の耳にも響いた。 聞き間違いじゃない、確かに何かが…こっちに来ている。 「こっちです!!」 織姫が、角の路地裏に回った。 乱菊も織姫の後を追って角を曲がる。 次の瞬間、二人は驚きに目を見張った。 「乱菊さん…これは……」 今、織姫たちの目の前には、重度の怪我を負った、少女が倒れていた。 だが、乱菊が目を向けたのはそこだけではなかった。 「……この子…」 乱菊が彼女を介抱しながら、少女の腕に繋がれているケースを見た。 ―――それは、レリックのケースに他ならなかった。 「とにかく、隊長に報告しなきゃ」 彼女の瞳には、いつもの楽天的な表情が微塵にも消えていた。 仮本拠地内 執務室にて 「…………終わった……」 今しがた最後の生類整備を終え、やっとぐったりと机に項垂れる冬獅郎。 ―――結局、乱菊の分までやってしまった。 先刻ほどに乱菊が出て行った時は、目も当てられないほどに雑多だった副隊長机も、今や自分の机と同じように綺麗に整っている。 しかし、今広がる光景とは裏腹に、冬獅郎の心はストレスで曇りに曇っていた。 (やっぱり俺はお人好しか?) 自己嫌悪で悶絶する冬獅郎。こんな調子では本当にこれからが思いやられる。 ――もし、こんな時に何かありでもしたら。 「ん、何だ?」 それを告げるかのように突然、懐にある伝令神機から、連絡が来た。 嫌な予感がすると分かりつつも、冬獅郎は渋々電話に出る。 「――十番隊 日番谷だが」 「隊長ですか? あたしです!」 「……何だよお前か」 ただでさえ深い眉間をさらに寄せて、不機嫌を露わに訊く。 「一体今度は何があったんだ?」 「単刀直入に言います、路地裏で少女が大怪我で見つかったんです!!」 そらきた。 また新たに増えた厄介事に、冬獅郎は大きなため息を吐く。 「オイ…テメエまさか、それも俺の手が必要とか抜かすんじゃねえだろうな? それくらいの状況判断ぐらい自分でしやがれ―――」 「少女の持っていた物の中に、レリックと思しき物も見つかりました」 「!!!」 瞬間、冬獅郎の目が驚きに開かれた。 まさかこんなにむ早く見つかるとは―――。 どうやら、状況というものは、いつもやってきてほしくない時にこそ、起こってしまうものらしい。 冬獅郎は再び大きなため息をつくと、改まった声で訊き直した。 「…場所は何処だ?」 「あ、ここです! 隊長」 数分後、乱菊達の処に、えらくクールな、昭和風の少年服を着た冬獅郎が路地裏へと行き着いた。 「隊長…その服で来たんですか?」 勇気があるなあ、という目と、それはないだろう、という珍妙な目で冬獅郎を見る乱菊。 ―――どうやら自分がこれを着せたことは遥か遠い記憶の中に置いてきてしまったらしい。 「松本…テメエ後で覚えてろよ」 そう吐き捨てから、改めて織姫の結界術で治療中の少女と―――隣の鎖に巻かれたケースを見やった。 「………封印は?」 「一応、しときました」 「――そうか」 冬獅郎の視線は、レリックから再びケースへと移る。 正確には、ケースに繋がれている鎖に注目しているようだった。 「…これは……」 ――切れている鎖の先端。 冬獅郎がそこから答えを導き出すのに、そう時間はかからなかった。 「レリックはもう一つある」 「――え?」 「直ぐに動くぞ、松本、準備をしろ」 あまりの事についていけない乱菊を余所に、冬獅郎はすぐさま懐から丸い丸薬――もとい義魂丸を取り出し、口に入れた。 仮初の肉体から、彼の本来の姿が現れる。 黒い着物『死覇装』を身に纏い、さらにその上、護挺隊の頂点に立つ者のみ着用が許される『隊首羽織』そこに書かれている『十』の数字の白い羽織をなびかせ、そこに長身の愛刀を担ぐ。 同時に、先程まで不機嫌で歪んでいた顔も、威厳のあるものへと変わっていた。 「はぁ…仕方ないか」 渋々といった感じで、乱菊も冬獅郎の後に続き、義魂丸を口にする。 同じように身体から魂が引き剥がされ、冬獅郎と同じ死神装束の彼女が現れ出る。 その頃には、冬獅郎がレリックをケースから取り出し、先程までの自分の義骸に指示を出していた。 「とりあえず、お前達は拠点にまでこのレリックを届けてくれ」 冬獅郎の身体に入った義骸は、大仰な敬礼を取って答える。 「わかりました! 70%の確率で届けます!」 「100%の確率で届けろバカ!!」 多少の不安は残しながらも、冬獅郎と乱菊の義骸達は素直に指示を受け取り、速やかにその場を去って行った。冬獅郎は素早く乱菊に向き直る。 「松本、お前はまず今のこの状況を黒埼達に伝えろ。それが終わり次第、残りのレリック探索を始めるぞ」 「え~~~! 地下水の中を探し回るんですかあ?」 乱菊も開けられた地下道を見、不服そうな声を出す。 しかし、冬獅郎は有無を言わせない。 「松本、束の間の休息はもう堪能しただろ?」 その口調は、先程までの不機嫌が醸し出したようなものでは無かった。怒鳴るでもなく諭すでもない、ただただ静かで、そして重みのある声。 「こっから先はマジで取り組め―――でねえと、死ぬぞ」 「…わかってますよ」 面倒そうに返しながらも、もう彼女の瞳からは、いままでのお茶らけた感じは消えていた。 「あの、日番谷君…あたしはどうしたら…」 「お前は、そのガキをある程度治療したら保護しろ―その後は命があるまで待機だ。わかったな」 「え、でも―――」 その眼には、「自分も戦いたい」という意味が容易に察せられた。 だが危害を加えられない彼女の性分では足手まといになることは分かり切っているし、第一状況が状況、個人の我儘に付き合うほど、今は暇でも無かった。 「言ったろ、待機する役も重要だってな――だから大人しく待っていろ」 「大丈夫よ、直ぐに終わらせてくるから」 「…わかりました」 乱菊のその言葉に、織姫はただ頷くしかなかった。 そして、二人は再び地下水の入口の方に向き直る。 「準備はいいな、松本」 「何時でも」 簡素な返答――だが、それだけでお互いの準備ができたことが、長年培ってきた信頼でわかっていた。 「日番谷君、乱菊さん」 織姫は、二人が消える最後の最後まで、冬獅郎達を見送っていた。 「―――気をつけて」 「ん、ああ」 「これが終わったら、またショッピングの続きでもしようね」 二人は、それぞれ織姫にそう返すと、暗い地下水の穴の中へと消えていった。 「―――それにしてもこの子、どっから来たんだろう?」 目を覚ますまでの間、その場で治療することにした織姫は、改めて酷く傷ついた少女を見やった。着てる服や、痣だらけの身体を見ても、ただ地下水を歩いてきたにしてはおかしい位ボロボロだった。無論、レリックのケースを何故運んで来たのかも大きな疑問の一つ――なのだが……。 (…何だろう、この子…) それ以上に織姫の疑問を抱かせているのが、少女から感じる『霊圧』だった。 決して大きくは無い、むしろ小さい部類に入るくらいものではあるのだが、――どこか違う、織姫は理屈ではなく感覚でそう感じた。 死神のものでも虚のものでも無く、だが自分達ともどこかかけ離れているような…この感覚は一体……。 「ウオオオオオオオオオオオオオァァァァァァ!!!!!!」 今度は路地裏の奥で、地獄から聞こえてくるような、重く、響くような唸り声が聞こえてきた。 織姫は、一旦手を休め、恐る恐る向こう角で蠢く影を見た。 ――腕が、脚が。 人体の形相を留め得ないその姿態を見たとき、織姫の神経に戦慄が走った。 (虚だ……!! 何でここに?) 新たに湧き出る疑問。 虚は、自分に気づかず、その場から消えていく。 ―――このまま野放しにはできない。 「ゴメンね、直ぐ帰ってくるから」 織姫は少女に結界術を張ったまま、急いで虚の後を追いかけた。 角を曲がり、細道を通り、人気の無い路地裏を突き進み―――そして、見つけた。 長い時間を掛けてしまったが、漸く虚の影がその眼に視認することができた。 (せめて、これぐらいはみんなの役に立たなきゃ!!) そう意に決し、攻撃準備を整え、虚に向かって行こうとして―――不意に止めた。 「―――ガッ!!!?」 「……え?」 突然虚は、頭を抱え込んで苦しみだした。 それと同時に、虚の身体がみるみるうちに溶けだし始める。 鱗のようなもので覆われた皮膚は、不気味な音を立てながらドロドロに落ちて、その上から蒸気が立ち込める。 「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」 そして次の瞬間、原形すら留めずに、虚は字義通り蒸発して、消えた―――。 「……どうなってるの……?」 織姫は、わけがわからず、ただそこで立ち竦むだけだった。 そして、その同じ頃。 「―――あれ?」 「どうしたの、エリオ君?」 同じく束の間の休暇を楽しんでいたエリオとキャロは、ある街路地で足を止めた。 「いや、何か叫び声のようなものが聞こえたような――」 エリオは不審げに辺りを見回し、そしてすぐ角にある細道に目を向けると、そこに一目散へと駆け出した。 「あ、待ってよエリオ君!」 急いで追いかけるキャロを余所に、エリオは角を曲って、そして驚きに立ち止った。 後から来たキャロも、エリオが見ているものを見て、その理由を悟った。 道端に、不思議な光に包まれている少女が倒れていた。 「お…女の子? 怪我してる!」 「それと…何だろ、この光…?」 少女に駆け寄り、不思議に光るものにエリオが触れようとした時、それはふっと消えてしまった。 「な、何? 今の」 「と……とにかくスバルさん達に知らせないと!!」 慌てふためきながらも、少女の介護を始めるエリオとキャロ。 そんな彼等のやり取りを、頭上から遠巻きに見る小さな影が二つ。 「た…大変だ……」 さっきまで少女の、治療の担当をしていた織姫の分身体ともいえる小人――舜桜が、エリオ達と同じくらいに慌てて言った。 「とにかく、織姫さんに知らせないと…!」 時は進む、ゆっくりと。 世界は交わる、再びに。 そしてそれぞれの思いを胸に、彼等は衝突する。 ―――――――――――――――――――――――――――To be continued. 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3170.html
ミッドチルダ とある地下道 「―――――――」 不気味なまでに静寂の中を、一人の少女が歩いている。 腕には鎖が絡みついており、その先には正方形の形をした箱が二つ、繋がれていた。 「―――はぁ、はぁ」 おぼつきの悪い足取りで、少女は暗闇を進んでいく。 目的も、行く先もわからない。ただひたすらに前を見ては、疲労の身体に鞭を打つ。 そして、当てもなく孤独の世界をさ迷い続けている……何時までも何時までも。 ―――新たな交錯の引き金は、この少女から始まる 魔法死神リリカルBLEACH Episoade 6『Certain holiday of six mobile divisions』 魔法世界ミッドチルダ AM 0 13 「――――――――…。」 門をくぐり抜け、光の先に見えた場所――それは、新緑の森だった。 全体的に暗い所を見ると、どうやら今は夜らしい。一護は改めて辺りを見る。 しかし、何処を見ても覆い囲むような木々が広がっているだけだった。 ――ここが、魔法の世界なのか? 一護は早速疑問をぶつける。 「オイ、本当に此処で合ってんのか?」 「…座軸は間違いないはずだが…」 そう返すルキアも、どこか自信なさげだった。 しばらくすると、今度はチャドの驚きに満ちた声が聞こえてきた。 「おい…こっちを見てみろ」 チャドが指差す方向――少し高い丘より、下から見える光景――。 ――そこに広がるのは、未来都市のような街並み。 眩い月光の下に曝け出されるその都は、どこか現世とは違うものを感じさせる。 そして中央には、巨大な塔のようなものが、幾つか聳え立つように並んでいた。 彼等は間違いなく、魔法の地ミッドチルダに来ていたのだ。 「……すっげえな」 一護が、驚き半分にそう呟いた。 「だが……現世とはどこか似ているな…街並みとか」 同じく驚いた様子で、チャドもそう言った。 「なあんだ、あたしが想像してたのとは全然違うなあ」 ちょっと残念そうに、織姫が眼下の街並みを見る。 ――何を想像してたんだろう…ちょっと気になるところではあるが、発想が宇宙レベルの織姫に、どんな答えが返ってくるかわからないのでやめとく事にした。 「…そんな事はどうでもいいはずだ」 一護達の後ろで、そんな冷めた声が聞こえた。 振り向くと、冬獅郎達が自分そっくりの人形みたいなのを取り出していた。 「それ、義骸か?」 「ああ、霊圧を遮断する特殊な奴らしいが…」 死神が現世で活動する際、周りの人達に違和感がないように動けるよう作られた、擬似的な肉体。――それが『義骸』である。 ――で、あるのだが…。 「オイ、松本…これは何だ?」 自分の仮の体を見、若干怒りで震えるような声で、乱菊に訊く冬獅郎。 見てくれはどこからどう見ても自分そっくりであるのだが、彼の問題は一緒に来ている服装だった。 今、彼の義骸の服装は、薄手の白いワイシャツに、簡素な半ズボンという出で立ち。 しかも頭には、可愛い麦わら帽子を被っていた。 ――簡単にいえば、昭和の子供が着ていそうな服をしていたのだ。 「どうです? 隊長には何が似合うか一生懸命に考えたんですよ」 しかし、本人は何の悪びれもせず、寧ろ誇るように乱菊はそう言ってのける。 ギロリ、冬獅郎は乱菊を一睨み。 「…隊長の健康管理云々は考えてくれなかったんだな、どう考えても寒いだろコレ…」 確かに、段々と冷えるこの時期、そのうえ今は夜だ、いくら寒さに強い冬獅郎でも、寒いものは寒い。 しかし、乱菊は有無を言わせなかった。 「まま、隊長 ものは試しですって ちょっとでいいから着てみてくださいよ!」 「おい! やめろ馬鹿――」 皆まで言わせず、無理やり冬獅郎を義骸の中に押し込む乱菊。 そんな二人の漫才じみたやり取りを、一護達は遠巻きに見ていた。 「なあ冬獅郎、これからどうすんだ?」 「…既に本拠地は決めてある。これからそこに向かうぞ」 重い口調でそう言う冬獅郎だが、今の格好だと威厳すら感じられなかった。 これで今の時期が夏なら、背後に『少年時代』が流れていることだろう。 正直、一護達は笑いを堪えるのに精一杯だった。 「う~ん、やっぱり虫かごとかあった方が良かったかな?」 「松本……殴っていいか?」 「…それより、斑目達はどうした?」 ふと気づいたように、辺りを見回す冬獅郎。 「あれ? そういやいねえな」 随分静かだと思ったら、あの戦闘集団十一番隊の姿が影も形も無かったのだ。 本格的にどこに行ったか探し始める一護達。 「あいつ等何してんだ!?」 「…ム……」 「こっちにもいないよ!」 「…一護…」 「そういや、白哉もいねーぞ!」 「…ちょっといいか?…」 「何だよ!? チャド」 先程から肩を叩くチャドに焦れるように、一護が振り返る。 次の瞬間、彼の口からとんでもない言葉が出てきた。 「彼等なら、『俺達は勝手にすっから後はよろしく』…とか言って此処を離れていったぞ」 「「「「「「…ハァ!!!?」」」」」」 あまりの出来事に、一護達はただただ素っ頓狂な声を上げるだけだった。 「な、何で止めねーんだよ!!?」 「と…止めようとした時には、もういなくなってた」 「ど、どうします? 隊長」 冬獅郎は、不機嫌そうに頭をガシガシと掻き毟って言った。 「…仕方ない、放っておけ」 いまさら止めようとした処で、素直に言う事を聞く輩では無いということは、それなりに長い付き合いなのでわかっている。 本音を言えば、あまり管理局の連中に事を知られるようなことは避けたいのだが、彼等ならそう易々と捕まりもしないだろう。 ――それに、大体こうなることは、行く前からすでに予想できたことでもあった。 「あいつ等なら、戦いの時にでも来るだろ」 「白哉は?」 「…あいつとは元々別行動だ」 冬獅郎はそれだけ答えると、とりあえず今いる面子の確認をした。 白哉はともかく、敵の戦力が分からない今、十一番隊の連中がいないのは少し痛い感じもするが、まあ大丈夫だろう――とりあえず今はそう思うしか無かった。 「とりあえず、一旦降りるぞ。いつまでもここにいても仕方ないからな」 一護達もそれに頷き、山を降りる。 しかし、戦いの時は、直ぐそこまで迫っていた。 翌日 機動六課 訓練場にて 「……はぁ」 今日もまた、散々としごかれた新人達。 やっとのことで、朝の訓練が一段落し、なのはからの労いの言葉が掛けられた。 「みんな、お疲れ様。――でね、実は何気に、今日の模擬戦が第二段階クリアかの見極めテストだったんだけど」 「…え?」 咄嗟のことでついていけない新人達をよそに、なのはは一緒に教えていたヴィータと、長い親友の一人、フェイト・T・ハラオウンに訊く。 「二人はどうでした?」 「――合格」 「早っ!」 「ま、こんだけミッチリやってて、問題あるようなら大変だってこった」 当たり前だ、という調子でヴィータは言った。 二人の返答に、なのはも頷く。 「私も、みんな良い線行っていると思うし、じゃあこれにて二段階終了!」 「やったーー!!」 喜びに立ち上がるスバル達。どうやら先程までの疲労などすっかり忘れてしまったようである。 「デバイスリミッターも、一段階解除するから、後でシャーリーの所へ行ってきてね」 「明日っからはセカンドモードを基本形にして訓練すっからな」 「――え、明日?」 疑問符を浮かべるキャロに、ヴィータが答える。 「ああ、訓練再開は明日からだ」 「今日は私達も、隊舎で待機する予定だし」 「みんな、入隊日からずーっと訓練漬けだったしね」 あまりに簡単に放られた言葉。それを理解するのに、少し時間がかかったが。 その意味が、ゆっくりと分かり始めたときには、皆の顔は無意識に嬉しさに満ち満ちていた。 「――ま、そんなわけで」 「今日はみんな、一日お休みです! 街にでも出かけて遊んでくるといいよ!」 「はーーーい!」 元気いっぱいの新人達の声が、六課の訓練所内に響いた。 ミッドチルダ 首都クラナガンのとある建物。 見かけこそは他に立ち並ぶビルと何ら変わりはないものの、中を覗くと中々に異様な光景が広がっていた。――少なくとも、この地の人々はそう感じるだろう。 木で造られた廊下、階段。襖の扉や畳の部屋。いわゆる和式の造りだった。 その一つ、『執務室』と描かれた部屋にて、乱菊は頭を抱え込んで何やら唸っていた。 ――悩む彼女の前には、山のような書類の数々が散乱している。 「う~~、どうしよう…」 「松本…唸る暇があったら早くやれ」 隣の一際大きい隊長机で、冬獅郎の声が飛んできた。 彼の机にも、乱菊と同じ…否、その倍はあろうかという紙の束で覆われていたが、乱菊と違ってテキパキとこなす為、その減りはすごく早い。 「そんなこと言ったって…この数はないですよ!」 「早くしないと陽が暮れるぞ」 「…わかりましたよ」 渋々一枚の書類に手をつけるが、数秒も経たないうちにまた唸り始める。さっきからずっとこれの繰り返しだった。 乱菊のこのような態度には、理由がある。 ――それは数分前のこと。 「とりあえず、これからの方針を決めるぞ」 朝に行われた、ミーティングの時だった。 「繰り返しになるが、俺達がここに来た目的は、また何か企図している藍染の足取りを、少しでも多く掴むこと。 その鍵となるのが、奴の狙っているレリックという代物、これが藍染に渡る前に俺達がいち早く回収し、そこから――ここまではいいよな?」 冬獅郎は一旦区切って、皆がついてきているかどうかを見た。 簡単に確認すると、冬獅郎はまた続ける。 「だが、ここは異世界。勝手な行動はできねぇし、『少しでも』目立つものなら管理局の連中が即動き出して来るだろう、そうなるとますますやりずらくなる」 無駄に『少しでも』、を強調して、一護を睨む冬獅郎。 この態度には、一護もカチンときたようだ。 「じゃ、これからどうすんだよ!」 声を荒げて一護は、冬獅郎に喰ってかかる。冬獅郎は、一泊間を置いてから続ける。 「とりあえず問題なのは、この辺の地理だ。知ると知らないとでは、大きな差が出る…簡単には見つからないよう、結界を張ってはいるが、この場所自体安全の保証は無いからな。――だから、お前等に最初にやってもらうのは、その辺も含めた捜査だ」 冬獅郎は、そう言って皆を見渡した。 「怪しいところ、脱出の際に逃げ口になりそうなところ、――何でもいい、それを調べてくれ。無論何か進展があったら、すぐに連絡しろ。後で報告してもらうからな。」 「さっすが隊長!!」 ここで、乱菊が自分のことのように、嬉しそうに言った。 「ここまで考えてるなんて、やっぱりできる人は違いますね!」 「…メンバーを選出するぞ」 冬獅郎は、大して取り合わずに続ける。 「ペアに分かれて、黒埼・朽木、阿散井・茶度、あと井上だ。黒埼、朽木、阿散井は、既に素性がばれているかも知れないから、特に注意を払っておけ」 「…あれ?」 おかしいぞ、というような声を上げたのは、無論乱菊だった。 「隊長、あたしは?」 「テメエと俺は待機だ――当たり前だろ」 「え…えぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」 本人にとって予想外の展開に、乱菊は戸惑いを隠せない。 早速、冬獅郎に詰め寄る乱菊。 「な…何でですか!!?」 「理由は二つある、一つは、この世界は戸魂界よりも現世に近い。なら、現世に住む黒埼達の方が、俺達が見落としそうな事に気づく可能性があるだろ。――後もう一つ」 今度は、あえて乱菊と正面から向かいあい、ギラリと見据えて言った。 「――テメエが行ったら、仕事をしねえじゃねえか!」 考えてみれば、至極当然の判断といえた。 ただでさえ行くときに、任務より『そちら』の方に現を抜かしていたのだ。そうしない方がどうかしているといえよう。 しかし、乱菊は納得がいかないようだった。 「で、でもさっき地理の把握は重要って言ったじゃないですか!? だったら人手は一人でも多い方が…」 「待機する役も重要だろうが ――安心しろ、暇つぶしの物はちゃんと用意してある」 そう言って冬獅郎は、後ろの隊長机にある書類の山を指差した。 ―――すなわち、イッツ、デスクワーク。 瞬間、乱菊の血の気が一気に引いた。 「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!! な…何なんですかあの数!??」 「当然だろ、今回の任務についての報告書と確認書、それから十番隊の業務云々……まあ、あそこまで溜まったのは、いままでテメエが何かしら理由をつけてはさぼってきた所為なんだけどな。まあ自業自得という奴だ」 いい迷惑だ、と言わんばかりに冬獅郎はため息をついた。 異世界まで来ておいて、まさか見慣れた書類が出てくるとは、乱菊にとっては思いもよらないことであっただろう。 「まあ、アレが全部片付いたら、考えてやらんでもないけどな」 「た、隊長、何も今日やらなくても、明日やりますから!!」 「駄目だ テメエの『明日』は信用できねえ」 その後も、何とか自分も捜査したいことを抗議すること数十分、だが結局、冬獅郎は首を縦に振ってはくれなかった。 ――こうなったら最後の手段。 「隊長~~オ、ネ、ガ、イ♪」 遂には、色仕掛け作戦を使い始めたのだ。 この効果は、思わず一護達が赤面するほどのものではあったが、 『子供』+『長い付き合い』である冬獅郎に、通用するはずがなかった。 「いいから、や・れ」 そんなこんなで、軽く数時間が経過していた。 しかし未だに書類の山は、彼女を嘲笑うかのようにその場に鎮座している。 「隊長…もう無理ですぅ…」 「愚痴を零すぐらいだったら筆を動かせって何度も言ってるだろ!」 ただでさえ書類整備が苦手な乱菊。その上早く片付けようと逸る気持ちが全て空回りしているおかげで、どうしても集中する所は自然と書類の山の方へと言ってしまうのだった。 数分掛けて一枚仕上げては、未だに積もる書類を見て挫折に数十分―――この負の連鎖が、始まりから今までずっと続いていたのだった。 「隊長~~~」 「駄目だ」 「まだ何も言ってないじゃないですか!」 「言いたいことならわかる、仕事を名目に遊びに行きたいんだろ?」 この口論自体、もう何度目になるだろうか…。 しかし、同じ結果になるとはわかりつつも、乱菊は諦めきれないようだった。 「そんな、あたしだって、今回はあそっ…仕事の気持ちでちゃんと来ているんですよ!」 「遅えよ、今ホンネが聞こえたぞ。己の欲すら隠せない奴をどう信じろっていうんだ?」 「隊長は部下を信じるところから始まるんですよ?」 「だったらより信用されるようにもっと行動で示せ」 さらに三十分ほどの時間を要して、この口論にも決着がついた。 結局乱菊は、重い溜息と共に再び席に戻る。 そしてまた、目の前の宿敵と目を向けることとなった。 「―――隊長のケチ」 明らかに聞こえるように放られたその言葉、聞こえたか聞こえなかったか、しかし冬獅郎は先ほどの口論なんかまるで無かったかのように仕事の続きを始めていた。 乱菊も、渋々仕事に取り掛かる。 しかし、やはり同じことの繰り返し。 そして無駄に時間は流れていく。 「はぁ…………」 おもむろにつくため息。――冬獅郎の筆の動きが鈍った。 「はぁ~~~ぁ」 やるせなさそうに書類を見下ろし、またため息。――冬獅郎の筆が止まった。 「はぁ~~~あ~~~あ」 三度のため息。――冬獅郎の筆が震えだす。 「はぁ~~~~~~~あああ~~~~~~~~~あ~~~~~~あ」 今度はもはやため息ではないだろ と思えるくらいに長いため息。 ―――バキッと冬獅郎の筆が真っ二つに折れた。 「いい加減にしやがれ、ため息ばかりつきやがって!!!!!」 遂に堪忍袋の緒が切れた冬獅郎、机を思い切り叩いて乱菊に怒鳴りこんだ。 同時に、せっかく整理した書類が幾つか宙に舞い散る。 しかし、乱菊の態度は変わらない。 「だってぇ…本当にわかんないんですもん」 文字通り手を上げて降参の素振りをする乱菊。 そのあっさりとした態度に、冬獅郎は苛立ちを隠せない。 「……勝手にしろ!」 そう吐き捨て、再び仕事に戻る冬獅郎。 乱菊も、大して取り合わずにまた大きなため息をつき始める。 「はぁ…………」 ―――そんな状態が、さらに長い間続いた。 しばらくして、おもむろに冬獅郎が呟くように言った。 「……けよ」 「え、?」 「とっとと何処か行っちまえって言ってんだ!」 半ばキレ気味に冬獅郎は言い放つ。 ――瞬間、乱菊の表情がいきなりガラリと変わった。 「隊長……」 「仕事しねえで四六時中そんなウザッてぇため息ばかりしやがって…こっちまで集中できなくなっちまう…もういい、今回だけは見逃してやる。」 「た…たいちょ~~~~!!」 先程の鬱そうな顔はどこへやら、喜色満面の表情で乱菊は冬獅郎に抱きついた。 二人の背丈からして、丁度冬獅郎の顔は乱菊の神々の谷間にすっぽりと収まる形になる。 「隊長、ホントッ、大好きですよ!!」 「分かったっ…分かったから早く行け!!」 「は~~~い」 小気味良い返事をして、早速支度にとりかかる乱菊。 やっと谷間から解放された冬獅郎は、どこかやるせない表情で乱菊の机の書類を見る。 ――――今日中に終わるだろうか? 「準備完了っと」 「早っ!!!」 次に冬獅郎が乱菊を見たときには、既に万端整った彼女の姿が。 ―――この速さを髪の毛一本でもいいから仕事に回してはくれないのか? 最後に乱菊は、冬獅郎の方へ向いてニッコリ微笑んだ。 「じゃあ遊びに…じゃなかった……遊びに行ってきますね!!」 「ああ………? ってオイ!! 結局遊びに行くのが目的かぁ!!!」 冬獅郎が叫んだときには、乱菊の姿が影も形も無かった。 「……あンの野郎ォォォ!!!!!」 冬獅郎の空しい声が、部屋全体に響いた。 だが、乱菊には聞こえなかったようだ。 今の彼女の頭には、もはや『仕事』の二文字は消えていた。 「もしもし、織姫? あたしなんだけどさ、ちょっと付き合ってよ!? え、仕事? いいじゃないそんなの!」 人々が賑わう町の中で、当てもなくうろつく少女が二人。 高い街道の上で、久々の休日を満喫していたティアナが、おもむろに口を開いた。 「でもホント、こんなにのんびりするの、久しぶり」 「……だね……」 空を見つめながらそう返すスバル。同じく休みを楽しんでいる筈の彼女の瞳は、しかし心ここに非ずと言ったように虚ろだった。 その相棒の、何を聞いても上の空のような顔を見てティアナはやれやれ、と肩を竦める。 「あの子達のこと、考えてんでしょ?」 「…え!!! それは…」 「とぼけないの、何年アンタとコンビ組んでると思ってるの? それぐらいお見通しよ」 ズバリ的中されたことで大いに慌てるスバル。 ――そんな顔されたら誰だってわかるっての。ティアナは胸中でそう呟く。 「なのはさん達の手前、何とかするとか大見え切ったのはいいけど、その顔だと何にも考えて無いようね」 「……うん」 今度はしょぼくれた様にスバルは頷いた。 ティアナは、今までの人生の中でも、最も大きいだろうため息をつく。 「アンタさぁ、いい加減その場のノリとかでもの言うのやめなよね」 「別に、ノリとかそうわけじゃないけど…」 視線を再び空に上げて、そして心から思う。 ――本当にただ、仲良くなれたらと。 「できれば、このまま何も起ってなきゃいいんだけど」 そう願うスバルの知らない所で、事態は動き出す。 ――場所は変わり、研究施設。 「レリック反応を追跡していた、ドローンⅠ型6機、すべて破壊されています」 「ほう…」 モニター越しに女性と会話をするのは、白衣の男――ジェイル・スカリエッティ。 別に映し出されたガジェットの残骸を見、至極興味深そうな表情をした。 「破壊したのは局の魔導師か…それとも、アタリを引いたか?」 「確定はできませんが、どうやら後者のようです」 「すばらしい、早速追跡をかけるとしよう」 底冷えするような冷笑を湛えてそう言うスカリエッティ。 と、そこにコツコツとこちらへと来る足音が一つ。 「ねえ、Dr。それなら、アタシも出たいんだけど」 「ノーヴェ、君か?」 「駄目よノーヴェ、貴女の武装は、まだ調整中なんだし」 「今回出てきたのがアタリなら、自分の目で見てみたい」 どこかぞんざいな口調で頼む、ノーヴェと呼ばれた少女。 しかしスカリエッティは、ゆっくりと首を振った。 「別に焦らずとも、アレはいずれ必ず、ここにやってくる事になるわけだがね……まあ、落ち着いて待っていて欲しいね、いいかい?」 「……わかった」 渋々納得したかのように、ノーヴェは引き下がった。 その間にも、彼等は事も無げに話を進める。 「ドローンの出撃は、状況を見てからにしましょう。妹達の中から、適任者を選んで出します」 「ああ、頼むよ」 そう言って頷くスカリエッティの視線は、もう片方のモニターに映し出された、何者かに破壊されたガジェットの詳細の方に移っていた。 「…俺の手が必要か?」 不意に、スカリエッティの後ろから声が聞こえてきた。 ノーヴェとは違い、音も無く彼の背後を取る男。 男は、面妖な出で立ちをしていた。 全てが白く染まった様な、死覇装にも似た服を着こなし、頭部には虚の欠片と思しき物が付いている。そして精密機械を思わせるような感情の起伏が見られない顔。 その冷徹な表情で、彼は睨むように訊ねていた。 「君の出番はここじゃあ無いよ」 しかし後ろを取られにも関わらず、スカリエッティの声は平坦そのもので返した。 「『破面』の力というのが、どれ程のものか、確かに見てみたいところだが、ここで使うにはいささか早計というもの……当面君には別の場所で働いてもらうとしよう、頼むよ、ウルキオラ」 その言葉に、男――ウルキオラは特に異議を唱えることはしなかったが、いま一つ、確認するように訊く。 「別に構わないが、藍染様との契約を、忘れてはいないだろうな?」 「わかっているさ、私と君の主とは、少なからない仲でもあるのだからねえ――約束はちゃんと守るよ」 彼の謹直さに苦笑いを呈しながらも、スカリエッティは頷いた。 ―――ならいい、とそれだけ確認するとウルキオラもその場を後に去って行く。 「……後は」 そしてスカリエッティは再び視線をモニターに戻し、そこに映る高台――を感慨も無く見下ろす少女を見て呟いた。 「愛すべきもう一人の友人にも、頼んでおくとしよう」 「あ~~買った買った!」 大手を振って歩く二人の女性がいた。 道行く人が十人いれば十人、振り返ること間違いなしの美女二人が、両手に買い物袋を抱えて歩いている。 「あの…いいんですか? こんなに買っちゃって」 隣の巨乳美女、織姫が手荷物を見て恐る恐る訊くが、しかし乱菊はどうってことなさそうに返す。 「いいのよ! ちゃあんと経費から落としてきたし!」 「それ、いいんですか? 勝手に使っちゃったら日番谷君怒るんじゃ…」 「大丈夫、うちの隊長は懐が大きいから!」 にっこり微笑んで言い切る乱菊。―――冬獅郎の苦労はまだまだ絶えない。 アハハ、と織姫が苦笑いを呈しながら、何気なく道を歩いていたその時。 「……?」 ふと、何か気付いたように織姫が立ち止った。 「どうしたの織姫?」 「え、と…今何か聞こえませんでしたか?」 周りを見渡して、聞き耳を立てる織姫。 乱菊もそれに倣うが、特に怪しい音は聞こえてこない。 「別に何も―――」 カコン く低い音が、乱菊の耳にも響いた。 聞き間違いじゃない、確かに何かが…こっちに来ている。 「こっちです!!」 織姫が、角の路地裏に回った。 乱菊も織姫の後を追って角を曲がる。 次の瞬間、二人は驚きに目を見張った。 「乱菊さん…これは……」 今、織姫たちの目の前には、重度の怪我を負った、少女が倒れていた。 だが、乱菊が目を向けたのはそこだけではなかった。 「……この子…」 乱菊が彼女を介抱しながら、少女の腕に繋がれているケースを見た。 ―――それは、レリックのケースに他ならなかった。 「とにかく、隊長に報告しなきゃ」 彼女の瞳には、いつもの楽天的な表情が微塵にも消えていた。 仮本拠地内 執務室にて 「…………終わった……」 今しがた最後の生類整備を終え、やっとぐったりと机に項垂れる冬獅郎。 ―――結局、乱菊の分までやってしまった。 先刻ほどに乱菊が出て行った時は、目も当てられないほどに雑多だった副隊長机も、今や自分の机と同じように綺麗に整っている。 しかし、今広がる光景とは裏腹に、冬獅郎の心はストレスで曇りに曇っていた。 (やっぱり俺はお人好しか?) 自己嫌悪で悶絶する冬獅郎。こんな調子では本当にこれからが思いやられる。 ――もし、こんな時に何かありでもしたら。 「ん、何だ?」 それを告げるかのように突然、懐にある伝令神機から、連絡が来た。 嫌な予感がすると分かりつつも、冬獅郎は渋々電話に出る。 「――十番隊 日番谷だが」 「隊長ですか? あたしです!」 「……何だよお前か」 ただでさえ深い眉間をさらに寄せて、不機嫌を露わに訊く。 「一体今度は何があったんだ?」 「単刀直入に言います、路地裏で少女が大怪我で見つかったんです!!」 そらきた。 また新たに増えた厄介事に、冬獅郎は大きなため息を吐く。 「オイ…テメエまさか、それも俺の手が必要とか抜かすんじゃねえだろうな? それくらいの状況判断ぐらい自分でしやがれ―――」 「少女の持っていた物の中に、レリックと思しき物も見つかりました」 「!!!」 瞬間、冬獅郎の目が驚きに開かれた。 まさかこんなにむ早く見つかるとは―――。 どうやら、状況というものは、いつもやってきてほしくない時にこそ、起こってしまうものらしい。 冬獅郎は再び大きなため息をつくと、改まった声で訊き直した。 「…場所は何処だ?」 「あ、ここです! 隊長」 数分後、乱菊達の処に、えらくクールな、昭和風の少年服を着た冬獅郎が路地裏へと行き着いた。 「隊長…その服で来たんですか?」 勇気があるなあ、という目と、それはないだろう、という珍妙な目で冬獅郎を見る乱菊。 ―――どうやら自分がこれを着せたことは遥か遠い記憶の中に置いてきてしまったらしい。 「松本…テメエ後で覚えてろよ」 そう吐き捨てから、改めて織姫の結界術で治療中の少女と―――隣の鎖に巻かれたケースを見やった。 「………封印は?」 「一応、しときました」 「――そうか」 冬獅郎の視線は、レリックから再びケースへと移る。 正確には、ケースに繋がれている鎖に注目しているようだった。 「…これは……」 ――切れている鎖の先端。 冬獅郎がそこから答えを導き出すのに、そう時間はかからなかった。 「レリックはもう一つある」 「――え?」 「直ぐに動くぞ、松本、準備をしろ」 あまりの事についていけない乱菊を余所に、冬獅郎はすぐさま懐から丸い丸薬――もとい義魂丸を取り出し、口に入れた。 仮初の肉体から、彼の本来の姿が現れる。 黒い着物『死覇装』を身に纏い、さらにその上、護挺隊の頂点に立つ者のみ着用が許される『隊首羽織』そこに書かれている『十』の数字の白い羽織をなびかせ、そこに長身の愛刀を担ぐ。 同時に、先程まで不機嫌で歪んでいた顔も、威厳のあるものへと変わっていた。 「はぁ…仕方ないか」 渋々といった感じで、乱菊も冬獅郎の後に続き、義魂丸を口にする。 同じように身体から魂が引き剥がされ、冬獅郎と同じ死神装束の彼女が現れ出る。 その頃には、冬獅郎がレリックをケースから取り出し、先程までの自分の義骸に指示を出していた。 「とりあえず、お前達は拠点にまでこのレリックを届けてくれ」 冬獅郎の身体に入った義骸は、大仰な敬礼を取って答える。 「わかりました! 70%の確率で届けます!」 「100%の確率で届けろバカ!!」 多少の不安は残しながらも、冬獅郎と乱菊の義骸達は素直に指示を受け取り、速やかにその場を去って行った。冬獅郎は素早く乱菊に向き直る。 「松本、お前はまず今のこの状況を黒埼達に伝えろ。それが終わり次第、残りのレリック探索を始めるぞ」 「え~~~! 地下水の中を探し回るんですかあ?」 乱菊も開けられた地下道を見、不服そうな声を出す。 しかし、冬獅郎は有無を言わせない。 「松本、束の間の休息はもう堪能しただろ?」 その口調は、先程までの不機嫌が醸し出したようなものでは無かった。怒鳴るでもなく諭すでもない、ただただ静かで、そして重みのある声。 「こっから先はマジで取り組め―――でねえと、死ぬぞ」 「…わかってますよ」 面倒そうに返しながらも、もう彼女の瞳からは、いままでのお茶らけた感じは消えていた。 「あの、日番谷君…あたしはどうしたら…」 「お前は、そのガキをある程度治療したら保護しろ―その後は命があるまで待機だ。わかったな」 「え、でも―――」 その眼には、「自分も戦いたい」という意味が容易に察せられた。 だが危害を加えられない彼女の性分では足手まといになることは分かり切っているし、第一状況が状況、個人の我儘に付き合うほど、今は暇でも無かった。 「言ったろ、待機する役も重要だってな――だから大人しく待っていろ」 「大丈夫よ、直ぐに終わらせてくるから」 「…わかりました」 乱菊のその言葉に、織姫はただ頷くしかなかった。 そして、二人は再び地下水の入口の方に向き直る。 「準備はいいな、松本」 「何時でも」 簡素な返答――だが、それだけでお互いの準備ができたことが、長年培ってきた信頼でわかっていた。 「日番谷君、乱菊さん」 織姫は、二人が消える最後の最後まで、冬獅郎達を見送っていた。 「―――気をつけて」 「ん、ああ」 「これが終わったら、またショッピングの続きでもしようね」 二人は、それぞれ織姫にそう返すと、暗い地下水の穴の中へと消えていった。 「―――それにしてもこの子、どっから来たんだろう?」 目を覚ますまでの間、その場で治療することにした織姫は、改めて酷く傷ついた少女を見やった。着てる服や、痣だらけの身体を見ても、ただ地下水を歩いてきたにしてはおかしい位ボロボロだった。無論、レリックのケースを何故運んで来たのかも大きな疑問の一つ――なのだが……。 (…何だろう、この子…) それ以上に織姫の疑問を抱かせているのが、少女から感じる『霊圧』だった。 決して大きくは無い、むしろ小さい部類に入るくらいものではあるのだが、――どこか違う、織姫は理屈ではなく感覚でそう感じた。 死神のものでも虚のものでも無く、だが自分達ともどこかかけ離れているような…この感覚は一体……。 「ウオオオオオオオオオオオオオァァァァァァ!!!!!!」 今度は路地裏の奥で、地獄から聞こえてくるような、重く、響くような唸り声が聞こえてきた。 織姫は、一旦手を休め、恐る恐る向こう角で蠢く影を見た。 ――腕が、脚が。 人体の形相を留め得ないその姿態を見たとき、織姫の神経に戦慄が走った。 (虚だ……!! 何でここに?) 新たに湧き出る疑問。 虚は、自分に気づかず、その場から消えていく。 ―――このまま野放しにはできない。 「ゴメンね、直ぐ帰ってくるから」 織姫は少女に結界術を張ったまま、急いで虚の後を追いかけた。 角を曲がり、細道を通り、人気の無い路地裏を突き進み―――そして、見つけた。 長い時間を掛けてしまったが、漸く虚の影がその眼に視認することができた。 (せめて、これぐらいはみんなの役に立たなきゃ!!) そう意に決し、攻撃準備を整え、虚に向かって行こうとして―――不意に止めた。 「―――ガッ!!!?」 「……え?」 突然虚は、頭を抱え込んで苦しみだした。 それと同時に、虚の身体がみるみるうちに溶けだし始める。 鱗のようなもので覆われた皮膚は、不気味な音を立てながらドロドロに落ちて、その上から蒸気が立ち込める。 「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」 そして次の瞬間、原形すら留めずに、虚は字義通り蒸発して、消えた―――。 「……どうなってるの……?」 織姫は、わけがわからず、ただそこで立ち竦むだけだった。 そして、その同じ頃。 「―――あれ?」 「どうしたの、エリオ君?」 同じく束の間の休暇を楽しんでいたエリオとキャロは、ある街路地で足を止めた。 「いや、何か叫び声のようなものが聞こえたような――」 エリオは不審げに辺りを見回し、そしてすぐ角にある細道に目を向けると、そこに一目散へと駆け出した。 「あ、待ってよエリオ君!」 急いで追いかけるキャロを余所に、エリオは角を曲って、そして驚きに立ち止った。 後から来たキャロも、エリオが見ているものを見て、その理由を悟った。 道端に、不思議な光に包まれている少女が倒れていた。 「お…女の子? 怪我してる!」 「それと…何だろ、この光…?」 少女に駆け寄り、不思議に光るものにエリオが触れようとした時、それはふっと消えてしまった。 「な、何? 今の」 「と……とにかくスバルさん達に知らせないと!!」 慌てふためきながらも、少女の介護を始めるエリオとキャロ。 そんな彼等のやり取りを、頭上から遠巻きに見る小さな影が二つ。 「た…大変だ……」 さっきまで少女の、治療の担当をしていた織姫の分身体ともいえる小人――舜桜が、エリオ達と同じくらいに慌てて言った。 「とにかく、織姫さんに知らせないと…!」 時は進む、ゆっくりと。 世界は交わる、再びに。 そしてそれぞれの思いを胸に、彼等は衝突する。 ―――――――――――――――――――――――――――To be continued. 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/timeleap/pages/128.html
#blognavi いよいよ放映3年目に突入したアニメ『BLEACH』。このDVDから新章突入。現世に戻ってきた一護とルキアたちを待ちかまえていたのは、魂を狩る者たちバウントだった。バウントたちは死神たちの世界「尸魂界(ソウルソサエティ)」へ強襲する。原作マンガにはないオリジナルストーリーだけど、熱く盛り上がる展開は圧倒的。いまやバウントを演じる声優がキャラクターソングCDを出すほどの人気になっている。霊力を吸収し、無敵になるバウントに対して、一護たちはどうするのか。はたして護廷十三隊の隊長達はどのように立ち向かうのか。風雲急を呼ぶ、尸魂界(ソウルソサエティ)!(志田英邦) BLEACH バウント・尸魂界強襲篇1〈完全生産限定版〉 [DVD] いまいち カテゴリ [DVD] - trackback- 2007年01月25日 00 39 22 名前 コメント #blognavi
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3201.html
真上は見渡す限りの空、眼下は見通す限りの街の絶景。 少女は、下界に広がる風景を感慨も無く見下ろしている。 その表情には、喜怒哀楽、どれにも当てはまらない、まるで機械の様であった。 「私の可愛いルーテシア」 そんな彼女の前に、一つの通信が流れた。 モニターに映るのは、周りは何故か毛嫌いされている彼。 自分の―――唯一の願いを叶えてくれる『恩人』からのものだった。 「一つ頼まれてくれてもいいかい?」 魔法死神リリカルBLEACH Episoade 7『The world that intersects again』 ミッドチルダ 地下道 薄暗い洞窟のような道に反響して歩く音が二つ。 黒い着物を靡かせ、刀を携え、草履を鳴らす。レリックの探索に潜り込んだ、冬獅郎と乱菊だった。 「うへぇ、汚いなぁもう」 跳ね返る水飛沫の中を走りながら、乱菊はそうぼやいた。 先頭を切る冬獅郎は、そんな彼女に目もくれずにただ前進する。 「隊長、ホントにレリックがこんなところにあるんですか?」 「―――さあな、あいつ等に訊いたらどうだ?」 不意に、冬獅郎は足を止め、肩に担ぐ刀に手を掛けた。 乱菊は目の前の光景を見て、ため息をつく。 「…素直に話を聞かせてくれそうには見えませんけどね」 「松本、どうやらお喋りもここまでのようだ」 彼女達の前に躍り出たのは、カプセル状のような単純な構造をした機械、ガジェットだった。 アームを蠢かせ、中央のセンサを光らせて、行く道を阻んでいる。 「―――来るぞ!!!」 その言葉を合図に、ガジェットは徒党を組んで襲いかかってきた。 冬獅郎達の決死の探索が敢行されている間、当の一護達は―――。 「ふぁ~~~~あ、眠ぃ」 「一護、少しは真面目に調べんか」 「へ~へ~、っても何も無いけどな、見飽きた光景ばっかだけどな」 未だに気が抜けたような顔で一護は何気なく辺りをキョロキョロ見渡した。 最初は鮮明だったこの世界の光景も、何事も無く歩くだけを繰り返していく内にすっかり退屈なものと変わってしまった。 「平和なのは良いことだけどよ、事を起こすんだったらもっと『ストレート』な方法とか無えのかな? 何かまだるっこしくてよ」 「仕方なかろう、この地の者に悟られずに動くのが我々の使命なのだからな」 隣を歩くルキアは、簡潔にそう述べると何か異変が無いか調べ始めた。一護も、面倒臭げに辺りを見てみる。―――やはり特に変わった様子は無かった。 と、そんな歩く二人に連絡が入った。 「何だ……?」 携帯を開き、内容を確認するなり、ルキアの眼が変わった。 「一護、どうやら事は『ストレート』に運んでいる様だぞ」 「…何だって?」 同時刻 とある地下室 薄暗い中を駆けていくのは、若きストライカー達。 阻むガジェット達を順調に倒していき、その行きつく先にこの幅広い空間へと彼女達は出ていた。 案の定、レリックのケースは直ぐに見つかった。 「ありました!!」 ケースを持ってキャロは皆にそう伝えた。 他の皆も、少しだけ安堵の表情を浮かべた刹那。 (ん……?) 微かだが、何か低いが聞こえた。 微妙にだが、音がだんだん大きくなっていくのがわかった。 ―――何者かが、こちらに近づいてくるのを理解した。 「何この音……」 音は小刻み鳴りながら、自分達の周囲を、囲むように動きまわる。 音はやがて重く響かせながら、通った跡を破壊していく。 不意に、音は鳴り止んだ。それは、攻撃の前兆だった。 黒く光る魔力弾が、キャロの頭上を襲った。 「―――きゃああっ!!!」 対応しきれなかったキャロはそのまま飛ばされ、爆炎の中で大きな影を見る。 その影は再び自分に向かっていき―――。 「でぇりゃあァ!!!」 助けに来たエリオによって、押し戻された。 しかし、その反撃として肩に傷を負ってしまった。 「エリオ君!!?」 傷付きながらも、必死にキャロをかばうようにエリオは立つ。 謎の正体は、紫の羽を羽ばたかせながら、ゆっくり地に降りた。 その姿は、人間の様な体躯をした昆虫―――俗に言う召喚獣だった。 視線がその召喚獣に集まる中、先程落としたケースを拾う少女が一人。 「あ…それは……」 「―――邪魔」 その一言を言い放つと、問答無用でキャロに向かって砲弾を放った。 咄嗟の反応で防ぐことはできたが、出力の差でバリアは破られ、エリオ共々柱に叩きつけられた。 「うおぉぉぉぉぉぉ!!」 直後スバルが介入。怪物に向かって攻撃を入れるが、避けられてしまう。すると今度はギンガが、重い拳を放った。 攻撃は防がれたが、結果的には少女との距離を大きく引き離した。 その隙にスバルは、勝手にその場を去ろうとする少女に呼びかけた。 「こらぁ!! そこの女の子、それ危険なものなんだよ!? 触っちゃだめ、こっちに渡して」 しかし少女は、スバルの言葉が聞こえなかったかのように無視して歩きだそうとして、直後いきなり刃を宛がわれた。 「ごめんね、乱暴で……でもね、これ本当に危ない物なんだよ」 姿を消していたティアナが、少女にタガーを向けて冷静に告げる。 少女は、感情の無い瞳をティアナに向けて、暫く大人しくしていたかと思うと―――。 (1――――2―――) ゆっくりと、しかし行き成り目を瞑った。 (『サーレンデホイル』!!!) 瞬間、強烈な爆音とフラッシュが辺り一面を覆った。 あまりの光と音の強さに、スバル達はよろける。無論ティアナも例外では無かった。 その隙に、悠々と少女は歩きだす。 「くっ…!!?」 ティアナは慌てて、少女に銃口を定めるが怪物の蹴りで遠くに飛ばされた。 それでも狙いはちゃんと定まっており、少女に魔力弾を放つが、 「なっ…」 身を呈してまで、怪物は少女を庇った。 弾が当たった所には、鎧の破片が崩れ落ちる。 少女は、これだけの事にも関わらず平然とした落ち着きで、援護に来た『もう一人の仲間』を見上げた。 「ったくもう、あたし達に黙って勝手に出かけちゃったりするからだぞ。ルールーもガリューも」 その先には、小柄な―――全長約二十あるか無いかの小人だった。 不思議な服装に黒い羽を生やし、燃えるような紅い髪をした彼女―――は、少女ルーテシアに呆れた調子でそう言った。 「アギト……」 「おう、ホントに心配したんだからな」 アギトと呼ばれた小人は、二ヤリと笑ってスバル達に挑発の目を向けた。 「ま、もう大丈夫だぞルールー。なにしろこのアタシ!! 『烈火の剣精』アギト様が来たからな!!」 大胆的にそう言うアギトの周囲から、ポンポンと小さい花火が飛び出す。 そしてスバル達に指をさすと、大声でこう怒鳴った。 「おらおらァ!! お前等まとめて、かかってこいやぁ!!!!」 さらに同時刻 別の地下室にて 「――っと」 立ちふさがる様に向かっていくガジェット達。 その放つ閃光を避けながら、冬獅郎は敵の懐に一気に潜り込んで…そのまま何も無かったかの様に敵の包囲網を易々と突破した。 無論ガジェットは、向きを変え邪魔者を排除すべく狙いの標準を合わせる。 しかし冬獅郎は、立ち止りはしたがガジェットの方には振り向きもせず……。 「……この程度か」 何時抜いたのか、刀を鞘に納めていた。 瞬間、冬獅郎が通った後にいたガジェット達は、突然機能を停止したように動きが止まったかと思うと、次には身体の断面がゆっくりとスライドされ、綺麗に上半身と下半身が分離した。 爆ぜもせず、何事も無かったかのように斬られていくその様と、白く光る氷の跡が付いた切断面には、ある種の芸術を思わせる程に美しくできていた。 「お見事、隊長」 「松本…後ろ」 芸術品となったガジェットの残骸を見て、心底感心する乱菊の背後から、巨大なガジェットがアームを蠢かせて殺到する。 「わかってますよ――――」 慌てる素振りすら見せない乱菊は、振り向き様に鋭い一閃を放った。 それが刀だと分かった時には、ガジェットの視界は真っ二つに両断され、大きな爆発と共に消えていった。 しかし乱菊は、自分が斬ったガジェットと冬獅郎とのを見比べて、しかめっ面を作る。 「やっぱ隊長のように上手くいかないなあ」 「…下らねえ、先進むぞ」 再び、暗い道を走りだす冬獅郎達。ガジェットを苦も無く斬り捨て、暫くは爆発音がBGMのように流れ続ける。 だが、そうする間にもガジェットは所狭しと現われ出てくる。正直キリが無かった。 「意地でも通さないつもりのようですね」 「…のようだな、だが」 視界に映るガジェットを両断し、阻むガジェット達の先、行き止まりの壁の奥から霊圧の衝突があるのを冬獅郎は感じていた。 「それもこれまでだ。…突入準備はいいな?」 「何時でも」 残りのガジェットを全て斬り払い、視界が開けたところで、二人は顔で見確かめる。 その表情でお互いを確認すると、改めて前に向き直り―――そして肩の刀に手を掛けた。 「3」 歩が速くなる、足音が小刻みに刻まれる。 「2」 隠していた霊圧が解放される、辺り一面が重苦しい威圧で覆われる。 「1」 目前の標的を見据えて、そのまま一気に壁まで詰め寄り、そして。 「―――0」 刹那の感覚で刃は抜かれ、白刃の煌めきが行く手を阻む壁を覆った。 「でェりゃァァァ!!」 アギトの放つ炎弾が、地下水の中で大きく爆ぜた。 爆風に煽られないように、上手く柱の陰で新人達はやり過ごす。 「ティア、どうする?」 相手の様子を見ながら、スバルは訊ねる。 「任務はあくまで、ケースの確保よ。撤退しながら引き付ける」 その言葉の込められた意味を、スバルは長年の付き合いから即座に理解した。 「こっちに向かっているヴィータ副隊長とリイン曹長に上手く合流できれば、あの子達を止められるかも―――だよね?」 (よし、中々良いぞスバルにティアナ) 不意に念話で聞こえてきたのは、ヴィータの声だった。 今は恐るべき速さで、スバル達の援護に向かってきていた。 (ヴィータ副隊長!?) (あたしもいるですよ!) 今度は、ヴィータと違って朗らかな声が念話で聞こえてきた。 (二人とも、状況を読んだナイス判断ですよ!) (お前等はそこにいろ、今から突入する) その声に、安心感からかスバル達の顔が若干解れた。 が、事はそううまく運ばない――――。 (――――――――――!!!?) ふと急に、何かに気づいたようにヴィータが不自然に会話を切った。 リインも、息を呑む声が隣で聞こえた。 (ヴィータちゃん、これって……) (ああ、ヤバいな) (あの……どうしたんですか?) 疑問に感じたスバル達に急に、ヴィータの珍しく焦った声が響いてきた。 (気をつけろ!! アタシ達の他に、誰かがそっちに向かっていやがる!!) その言葉を聞いた瞬間、スバル達は、目の前に迫る巨大な反応を感じ取った。 「――――っ!?」 ふと、何かに気づいたようにアギトが顔を上げた。 その表情には、驚愕で占められている。 「ルールー大変だ!! 何かがこっちに近づいてきて……」 不意に、アギトの言葉はそこで止まった。今、彼女の中は新たに増えた疑問でいっぱいだった。もはや先程まで見せていた余裕の表情など、もはや何処にも無かった。 (何だよ…この…反応……え……2つ、いや3つに…増えた?) アギトは、理解できなかった。 最初まで、確かに遠巻きだが、大きな魔力がこちらに『1つ』来ることは分かっていた。 けど、今感じている反応は―――こちらに来ているものとはまた別の反応が、こっちに近づいてきている。 しかも、こちらの方ははかなりの至近距離。その上両方の反応はどちらも自分達より遥かに大きいときている。 (冗談じゃねえ!! こんだけデケェの今まで気づかなかったって言うのか?) 唖然とした調子で空を見つめるアギト。流石に旦那がいない今では、この相手ばかりは勝てる気がしなかった。 とにかく、今の状況をルーテシアに伝えようとして。 「おい!! ルールー――――」 言い切らないうちに、巨大な轟音が辺りに響いた。 壁が突然、真っ二つに裂けて壊れたのだ。急なことに驚き、そして皆その場所に注目する。 瓦礫の崩れる音を背景に、現れ出てきたのは―――。 「………え!?」 銀髪を靡かせた、小柄な少年だった。 「また子供……?」 その場にいた全員がポカンとする中、スバルとティアナは、驚きで目を開いていた。 「ティア、あの子の服装……」 「ええ、そうね…」 彼等が身を包む漆黒の衣装は、忘れようとも忘れられなかった。 少年は、厳格な表情で自分達を目で射殺すように見つめている。 「隊長、あれは」 今度は少年の隣に立つ、魅力的な美女が、レリックのケースを指した。 「どうやら、アタリだったようだな」 一言、そう確かめると、少年――冬獅郎は、一歩前へと踏み出る。 「レリックを渡せ」 深い双眸で周囲を見渡しながら、冬獅郎はゆっくりと告げる。 その言葉には、普通の少年とは思えない程の覇気があった。 「有無は言わせねえ。できないというなら力づくでも……」 そこまで言いかけた時、スバル達の視界に何者かの影が過った。 「っな!? ガリュー!!!」 アギトの慌てた声が聞こえる。ルーテシアの召喚獣、ガリューが、命令も無く独断で、冬獅郎達に向かって駆け出していた。 ガリューの判断は、理屈ではなく野生の本能からであった。 目の前に立つ二人の者達、その振る舞いにガリューは、本能的な危機感を覚えたのだった。 主を危険から護る為、主の目的を無事完遂させる為。ガリューは先手を切って、未知の強敵に刃を向けようとして――― 「―――――え?」 そして、ガリューの姿は消えた。 否、ルーテシア達の傍を通りすぎて、その後ろに叩き付けられていた。 「ガ…ガリュー………?」 アギトが唖然とした顔でガリューの方を見た。 見えなかった。 ただ、ガリューが冬獅郎に拳を放とうとした瞬間、冬獅郎の影が薄らと動いたのはわかったが……それだけだった。 次元が違う―――嘗て無い緊張感が今、スバル達に走っていた。 「もう一度言う」 鋭い眼光で周囲を睨みながら、冬獅郎は噛み締めるように言葉を吐く。 それと同時に、底冷えする様な何か―――背筋どころか、骨の髄まで凍えさせる位の寒気が、辺りを覆い始めた。 「レリックを素直に渡せ。でねえと……」 更に一歩踏みより、肩の刃をゆっくり抜き放ち、 そしてスバル達の元に、歩んでいって……。 「テメェ等、死んでも知らねえぞ――――」 今度は、上方から爆音が轟いた。 「何だ……!?」 突如起こった出来事に、冬獅郎の表情が曇る。 そして巻き上がる煙幕にいる影を、眼を凝らして見つめた。 その中、微かに揺らめく小さな影をその視線に捉えた刹那。 「だぁりゃぁぁぁぁ!!!!!」 叫び声と共に煙を突っ切って、赤い何かが、冬獅郎の懐に飛び込んできた。 「―――――――――!!」 振り上げた鉄の男爵、グラーフ・アイゼンが瞳に映った時、冬獅郎の中の本能が『危ない』と、激しく警鐘を鳴らした。 一瞬の速さ。冬獅郎は刀で鉄槌の一撃を防ぎ、鍔迫り合いに持ち込む。 油断はしてなかった。だが、ガリューより数倍速い弾丸のような動きが、冬獅郎の判断を若干鈍らせていた事が原因だった。 そして今度は、驚いたように目の前の人物を改めて視認した。 「………っな…ガキ!?」 激しい形相で競り合っているのは、自分と同じ位の背丈の少女だった。 そしてそのせいで、徐々に力押しで負けてきていることに、気付くのが半秒遅れてしまった。 「おぉオラァァァ!!!」 冬獅郎は、身体が軽くなる感覚を覚えた後、今度は視界が目まぐるしく変わりだし始めた。 自分が吹き飛ばされていると分かった時には、壁に思い切り叩き付けられた後だった。 「隊長!!?」 乱菊は、信頼できる上司がいとも簡単に飛ばされた事に驚き、慌てて彼の方へを振り向こうとして―――。 「『捕らえよ 凍てつく足枷』」 先の少女とは違う、また別の声が聞こえ、今度はそちらを見やる。 次に現れ出てきたのは、不思議な呪文を紡ぐ―――人形程の大きさしかない小柄の娘。 その片方の手をルーテシア達の方に向け、もう片方の手は乱菊を向けている。 その両の手から出ている、銀色の三角形の紋章から、魔力の発動される。 「『フリーレスフェッセルン』!!!」 突如、足元から湧き出る氷の渦が、 ルーテシア達は反応が間に合わず、氷の牢に閉じ込められる。 一方の乱菊は、その場を飛び退くことで危機を逃れていたが。 「――――――!!!」 「ここまでだな」 刃物の様にデバイスを構えるヴィータが、乱菊の喉元を正確に捉えていた。 このヴィータ達の大活劇に、スバル達はただただ空いた口が塞がらなかった。 「や……やっぱ隊長達って」 「凄い……」 そんな彼女達の気付かない所で、徐々に辺りの大気は冷え始めていた。 「お前等が、スバル達の言ってた『レリックを持ってった奴等』の一人か」 年相応の顔には合わない、厳しい双眸が、乱菊の瞳を正鵠に射抜く。 「素直に答えりゃ悪い様にはしねえ、弁護の機会だってちゃんと用意する。そこのガキ共もだ」 今度は凍らされた中にいるルーテシア達の方を見やってそう言った。 しかし、乱菊は絶体絶命な状況にも関わらず、冷めた視線でヴィータに訊ねた。 「……アンタ達が、時空管理局ってやつら?」 「質問してんのはこっちだぞ!」 ヴィータの怒気のある声を無視しながらも、乱菊は、先程吹き飛ばされた隊長の場所を見やりながら、意味深に言った。 「どっちでもいいけど、気をつけた方がいいわよ。あたしはともかく―――」 今度はヴィータの方に向き直り、こう続ける。 「うちの隊長は、怒らせると怖いから」 「――――――!!?」 刹那、辺りを包んでいた怪しげな悪寒が、ヴィータ達に牙を剥いた。 先程までは腹を満たした獣の様に、どこか大人しげで、物静かなものだった。 だが今は違う。再び空腹を満たそうと、狡猾に自分達に狙いを定めている…そんな感覚だ。 (―――ヤバい!!) ひやりと伝う汗、身体は震えるほどに冷えているのに、中は緊張感からか心臓の呼応が高鳴っていく。 まさかと思い咄嗟に振り向き確認するが、先程吹き飛ばした筈の彼の姿が、やはりそこには無かった。その上隙を見た乱菊が、勢いよくその場を離脱してしまった。 だが、ヴィータはそこまで気を回す余裕がなかった。 「……上だ!!!」 薄暗い暗闇を覆う天井。ヴィータは、その中に際立つ髪色をした少年の影が過ぎるのを見る。その手に持つ長刀、斬魄刀から今まで殺気で包んでいた冷気が集束し始める。 「霜天に坐せ―――」 その呟きと共に、溢れ出す冷気が唸り声を上げる。 「―――『氷輪丸』!!!」 その言葉と共に、今度は周囲の冷気が具現化。巨大な氷の龍を創り上げた。 水と氷で象られたそれは、傍から見る者であれば美しさで魅了されることであろう。 だが当事者から見ればそれは、圧倒と恐怖でしかなかった。 今ヴィータ達が抱いている感情は、まさしく後者であった。 龍は低い唸り声を上げながら、感情の無い目で標的を見据える。 次の瞬間、龍はヴィータ達を喰らおうと大口を開けて迫ってきていた。 「―――――っリイン!!!」 「……え?」 未だに状況をのみ込めて無いリインを引っ掴み、ヴィータは思いっきりその場から離れた。氷の龍は、かまわず数秒前までヴィータ達がいた場所に向かって衝突、巨大な水飛沫と氷の弾丸となって弾け飛んだ。 水と氷の織り成す雨は、触れるもの全てを例外無く氷結させていく。柱を、床を、天井を。 体よく避けていたヴィータも遂に、その中の一つの氷の破片を喰らってしまった。 「――――がっ!?」 「ヴィータ副隊長!!」 そのまま氷の雨に追いやられるように、ヴィータはスバル達の元まで退散する。 スバル達も慌てた表情で、ヴィータの所へと駆け寄った。 「あの、大丈夫ですか?」 「ああ……大丈夫だ」 しかしスバル達の目には、とても『大丈夫』のようには見えなかった。 というのも、先程氷の破片を喰らったヴィータの左肩が、いつの間にか凍りついていた。他にも、まちまちだが水飛沫を被った所々が既に氷結している。防御能力が高い騎士甲冑を纏っているにも拘らず、その姿は無残なものだった。 「それより、もう一方の子供の方はどうした?」 「え、さっきリイン曹長が捕まえたはずじゃ…」 「いねえよ。もう逃げてる」 そんなはずは、とリインが放った氷の痕を確認してみるも、その中に彼女達の姿は無かった。 すると今度は、自分達の存在を示すように突如、地響きが起こり始めた。 破壊の唸りは徐々に大きく高鳴り、柱は崩れ始め床や天井は亀裂を作っていく。 兎にも角にも、このままいては危険だ。 「ギンガ、スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、お前等はケースを持って直ぐにここから出てあいつ等を追え! 戦闘指揮はリインが取る」 「わかりました、けど副隊長は?」 「アタシは……」 凍りついた肩を無理矢理にでも動かしながら、崩れ落ちていく瓦礫達の向こう側に潜む、虎の瞳を見据えながらヴィータは身構えた。 「あのガキに訊きたいことがある。早く行け!!」 「……………………」 崩壊していく地下道、瓦礫が隣に落ちてこようとも冬獅郎は、冷静そのもので深い双眸を見渡す。 しばらくして、隣に乱菊がやって来る。 「隊長、大丈夫ですか」 「ん、ああ」 「ビックリしましたよ。急にトバされるんですもの」 「ああ、そうだな」 適当に返答しながらも、彼の眼は変わらずある一点を見定めていた。 その先には、自分を吹っ飛ばした少女が立って同じくこっちを睨んでいる。 服は先程の龍の雨で所々白んでいる上、特に左肩は無惨と思う程に凍りついているでにも関わらず、その眼は変わらず強く輝いていた。 一瞬の黙考、冬獅郎は判断を下す。 「松本、お前は上空へ出てレリックを何としてでも確保しろ。奴等程度なら、お前の実力でもなんとかなるだろ」 「隊長は、どうなされるんです?」 「俺は………」 鉄槌を構えて待つ紅の少女を見やり、冬獅郎も倣って迎え撃つ態勢を取った。 「あのガキを止めてからだ。とっとと行け」 「『ウイングロード』!!!」 スバルはそう叫んで、地面に向けて思い切り拳を突きたてる。 刹那その下から、魔力で形成された文字通りの「道」が造られ始める。道は螺旋状に描かれながらも、天井で小さく光る空を指した。 その上に登りながら、スバルを先頭に、ギンガ、リイン、レリックケースを運ぶエリオ、そして何やら話しこんでいたティアナとキャロが地上を目指した。 一方、乱菊側。 「唸れ『灰猫』!!」 そう言い放ち、乱菊は斬魄刀を鞘から抜いた。 すると刀の「刃」の部分がそっくりそのまま消え、周囲に不気味な灰が漂い始める。 やがてその灰は、乱菊の頭上に集まり始め、次の瞬間天井をぶち破り大穴をあけた。 ―――空の光が、一気に辺りを照らしていく。 「じゃあ隊長。お先に」 「ああ。後で行く」 決壊寸前の部屋には、二人の子供がお互い睨みあうように残された。 「お前等は一体何だ? 何でアタシ達に敵対すんだ!!?」 先に口火を切ったのはヴィータだった。 しかし冬獅郎の答えはあまりにもそっけなく返ってきた。 「人に物を訊ねるときはまず自分から、じゃねえのか?」 その言葉に一瞬カチン、とくるヴィータであったが、必死に感情を抑えながらも答える。 「時空管理局 機動六課 スターズ分副隊長 鉄槌の騎士ヴィータだ!! さあ名乗ったぞ、 テメエ何者だ!!!」 ほとんど怒鳴り口調で答えたヴィータは怒りで捲し立てる様に訊ねた。 冬獅郎はどこまで答えるか少し考えながら、やがて呟くようにこう言った。 「護挺十三隊 十番隊隊長 日番谷冬獅郎だ」 ヴィータは、始めて聞く意味不明な単語に首を傾げた。 「ゴテイタイ? 十番隊長? 聞いたことねえぞぞそんなの、何処の組織だ!?」 「そこまで答える義理は無え」 ゆっくりと攻撃態勢を整えながら、冬獅郎は言葉を切った。 ヴィータも、何時懐に入れてもいいように前屈みになる。 「じゃあ力づくでも聞き出してやる」 「できるならな、そうしろ」 会話はここまでだった。二人の間には、まさに一触即発の空気が流れ始めていた。 崩れる瓦礫の音にも、揺れる地響きも関係ない。相手の動作、それだけで動き始める戦闘の合図だった。 (デバイスじゃねえみたいだな) (斬魄刀じゃ無いみたいだな) お互い見知らぬ獲物を見やりながらも、二人は構えを崩さない。 やがて彼らの間で数時間、実際では一秒するかしないかの時間。 二人の間に、大きな瓦礫が落ち始める。その破片が二人の視界を体良く覆った瞬間。 (*1) 地の蹴る音が鳴り響き、刀と鎚が激突した。 「だめだよルール―、それはマズイって」 崩れゆく地下室を見つめながら、アギトが心配もそこそこにルーテシアに告げた。 今その上には、巨大な昆虫が地震を起こして地下室を崩壊させようとしていた。 「埋まった中からどうやってケースを探す? あいつ等だって強いけどさ、潰れて死んじゃうかもなんだぞ?」 「これくらいのレベルなら、多分死んでないよ」 仲間内に対しても、ルーテシアの返事はそっけないものだった。 「ケースは、クアットロやセインに探し出してもらう」 「良くねえよルールー!! あんな変態ドクターやナンバーズの言うことなんか聞く必要無いって!」 またか、と思わんばかりにアギトは、ルーテシアを思って口に出す。 どうも彼女は、自分の身の危険に関しては、余りにも鈍感すぎる。 ルーテシアがどんな『想い』で、レリックを集めているのかは、それなりの付き合いでしか無い自分でも、凹凸の無い表情をしてても良く分かっているつもりだ。 だがそれだからこそ、わかっているからこそ、あの科学者達に良いように担がれているようで気が気で無いのだった。 しかし結局、彼女は自分達の警告を聞こうとはしなかった。 今でもまだ、ルーテシアは自分の道を独りで進んでいる。 そして、それは今回も同じ。 べシャ――――、と。 盛大な轟音を最後に、巨大な昆虫地雷王は、地下室を完全に潰してしまった。 「あ~~あ、やっちまった」 「ガリュー、怪我、大丈夫?」 しかしルーテシアは、地下室の事などまるで気にせず、その平坦な瞳を大切な相棒に向けた。ガリューはコクリ、と肯定の意味で返した。 「戻っていいよ、アギトがいてくれてるから」 これは感情が無いように見える彼女なりの優しさからだった。 しかし、ガリューは気になる様に下の、潰れた地下室をただ見ている。 請けた事柄はすぐ実行してくれる、一番信頼している彼の仕草に、ルーテシアは少なからず疑問を覚えた。 「ガリュー?―――――」 そのときだった。 完全に崩れた地下室から、急に爆音が轟いた。 ビルほどの大きさもある筈の地雷王は、しかしその衝撃で大きく吹き飛ばされ。辺り一面、砂と埃で溢れ返った。 「な、なんだあ……?」 戸惑いを隠しきれないアギト達は、その方へと目をやった。 地面から何かがせり上がったかと思うと、その中心からアイゼンを振り上げ突進するヴィータと、氷輪丸を構えて迎え撃つ冬獅郎の姿が躍り出た。 先の交戦で学習した冬獅郎は、ヴィータの、最初の勢いに乗った最初の一撃を仰け反って回避、間髪入れずに放つ第二撃を狙って反撃した。 再び交わる武器の衝突。火花は燃え散らし、大きな摩擦音を響かせる。 暫く拮抗したかと思ったのも束の間、冬獅郎の方が再び押され始めていた。 「くそ……」 「おらぁぁぁぁ!!!」 激しい鍔迫り合いの結果、遂に剣が弾かれ、冬獅郎がまた飛ばされる――筈だった。 「――――っな!?」 冬獅郎がいきなり空中で静止したかと思った瞬間、今度はヴィータの視界が目まぐるしく変わり始めた。 原因は単純だった。打ち合ったアイゼンに、鎖の様なものが巻きついていたのだ。 それが彼の刀の一部と分かった頃には、彼が遠心力を利用して自分を吹き飛ばすと理解した時には、自分は近くの建物の壁へと突っ込んでいった。 (――――どうだ?) 飛んでった跡を確かめながら、冬獅郎はその場に佇んで様子を見る。 反応は、鉄球の魔法弾数発、という形で直ぐ返ってきた。冬獅郎は慌てず、最小限の動きだけで見切りながらまだ同じ方向を睨んでいた。何時来られてもいいように。 「だぁぁぁりゃあああ!!!!」 刹那の感覚で、正に紅の弾丸となったヴィータが、冬獅郎目掛けて突っ込んできた。 冬獅郎は攻撃を避け、そのまま大きく距離を保つ。再び彼の周囲には、冷気と寒気で満たし始めていた。 攻撃が来る――だがヴィータも、それの予感を感じてただ何もじっとしてるわけじゃ無かった。 「アイゼン、『カートリッジロード』!!!」 ≪Missile Form≫ 機械音の返答と共に、魔力が注ぎ込まれ、その元となった薬莢が排出される。 すると今度は、ヴィータの足元から紅い三角形魔法陣――ベルカ式紋様が現れ、それと同時にアイゼンの先端に、細いピックとジェット機が付けられた『ラケーテンフォルム』と移り変わった。 (アレ造られるより先にぶっ飛ばす!!) (霊圧が上がって武器も変わった…過程はどうあれ、俺達の斬魄刀と大差は無いらしいな) ヴィータの武器の変化を見ながら、冬獅郎は分析する。 戦闘で驚きによる隙をなくすため、価値観や固定観念を捨ててこの戦いに挑んではきたが、結果的には自分達とほぼ同じか、と冬獅郎はそう認識した。それより今は、あの攻撃をどうやってかわし、尚且つ反撃をするか検討し始める。 対するヴィータは、鎚からジェット噴射したかと思うと、その場でグルグルと回り始めた。回転は時が経つにつれ早くなり、遂にそのまま冬獅郎に狙いを定め突進してきた。 攻撃は、予想よりも速いスピードで冬獅郎へと向かっていく。 「――っ氷輪丸!!」 叫ぶや否や、冷気は氷と変わり、大気は冷気と変わっていく。 やがてそれは、再び巨大な氷龍を象り始めるが、それより先にあちらの攻撃が届くだろう。大幅に退いた筈の自分との距離は、既に至近距離と言えるぐらいにまで縮まっていた。 (この距離じゃ無理だ、だったら) 間に合わないと知るや氷の龍を崩して今度は盾を展開、ヴィータの攻撃を真正面から迎え撃つ態勢を取った。 「『ラケーテン・ハンマァァァァ』!!!」 魔力と推進力が伴った重い一撃が、氷の盾に直撃。ドゴンと低重音が辺り一面に響き渡った。 「……凄い」 「副隊長と互角に渡り合ってるよ…あの子」 今までの戦いの一部始終を見ていたスバル達が、感慨深げにそう呟いた。 フォワード陣が見上げる空には、閃光が弾けては消え、衝撃音が未だに轟いている。 「ホント凄いわねえ、隊長と戦い合えるなんて」 ふと、背後からそんな声が聞こえてきた。 後ろを振り向くと、乱菊がスバル達と同じように空を仰いでいた。 しかも、その脇にはレリックのケースを抱えていた。 「――――――え!!?」 その場の全員が今度は乱菊に驚きの目を向けた。先程まで持っていた筈のエリオは、その中でもさらに呆然としていた。 「か、返してください!!」 そう言って慌てて乱菊に向かって行ったスバルだったが、乱菊は彼女の頭上を大きく飛び交い、あっさりと向こうに軟着陸をした。 「これはアンタ達の荷じゃ重すぎるわ、もう帰りなさい」 「そういうわけには、いきません!!」 すかさずティアナは銃口を向け、乱菊目掛けて魔力弾を放った。 数十にも上る弾丸を、やはり乱菊はものともせずに躱していくが、心の中ではこの攻撃に疑問を持っていた。最初から当てるつもりでは無く、まるで何処かに誘導していくような。 (今よ、エリオ!!) 軽快に避け続ける乱菊の背後から、一筋の光が走った。 ティアナの攻撃で気を取られてる隙に、エリオが後ろを取ったのだ。 (『ストラーダ』!!!) ≪Sonic Move≫ 排出口から薬莢が飛び、魔力を大幅に上げる。 エリオは地に屈んで一瞬力を溜めると、刹那勢いよく乱菊に向かって突っ込んでいった。 眼前には、意図を理解した乱菊の驚いた顔が見え―――そして消えた。 「え…!?」 「エリオ君!!」 確実にケースを取り返せる距離まで来ていたのに、エリオは乱菊とすれ違うことすらなく、そのまま地面に叩きつけられた。 「ど、何処に行ったの……」 「はぁいここよ」 声がする方へ振り向いてみれば、乱菊は手を振って立っていた。スバル達は彼女を見て唖然とした。彼女のいる位置は、エリオの正反対、いままで注目してた筈のスバル達の真後ろにいたからだ。 (て…転移魔法!?) (嘘!? だってあの一瞬で…) 余りの事態に呆気にとられるスバル達を見て、乱菊はやれやれと首を振り、諭すようにこう言った。 「あたしの『瞬歩』も見切れないようじゃ、この先の戦いなんてついていけないわよ。悪いことは言わないから、後はお姉さん達に任せな―――うわっ!!?」 突如乱菊の背後で、何かが爆発、炎上した。 慌てたように上空をみると、そこには両手に炎を灯したアギトの姿があった。 「それはアタシ達のもんだぁぁぁ!!!」 そう叫ぶや否や、掌から火球を作って乱菊達に向けて放つ。 火球は着弾するごとに燃え上がり、巨大な火柱を起こした。 「いきなり危ないじゃないの!!」 炎弾を避けつつ、怒ったように乱菊は呟きながら―――不意に後ろを向き刀を抜いた。 刹那、刀の振り下ろした先には、大きな拳が止められていた。 その拳を突きたてた本人、ガリューを乱菊は睨んだ。 「レディーを後ろから狙うなんて感心しないわね……とは言っても人じゃないから仕方ないのかしら?」 その言葉が癇に障ったのか、ガリューは刀を勢いよく弾くと怒涛の拳撃を乱菊に向けて繰り出し始める。 「あら、怒った!?」 片手で剣を構えながらも、乱菊は自分のペースを崩さずに受けて立つ。 瞬間、凄まじい剣と拳の応酬が繰り広げ始めた。しかしケースを小脇に抱えている所為で上手くバランスが取れないために、乱菊が徐々に押され始めていった。 遂に剣筋を弾かれ、ケースを思い切りはたき落された。 「しまっ……」 宙を舞っていくケースを取ろうとするが、ガリューに邪魔され辿りつけない。 そんなことをしてる内、今度はケースがいきなり消えた。正確には、誰かが取って行った。 「―――あの子!!」 その正体であるエリオは、上手くケースを取り返すと、そのまま乱菊達を距離を置いた。 「それは私達の」 すると突然背後から、あの平坦な声が聞こえてきた。 振り向くと、既に魔力を掌に溜めてるルーテシアの姿があった。 「―――返して」 「エリオ君!!!」 その言葉と共に、泡を食うエリオに向けて砲弾と、予測してたキャロの炎弾が飛び交った。 「フリード、『ブラストフレア』!!! 予め上空にいた小さき竜、フリードの炎が、ルーテシアの砲弾を上手く相殺した。 「何で…こんなことするの」 キャロは悲しげな眼で、ルーテシアに訊いた。 しかし彼女は、変わらぬ表情でそっけなく返す。 「あなたには関係の無いことでしょ」 「そんな、悲しいこと言わないでよ!!」 キャロは、悲哀を込めてそう言った。平坦な顔をしながらも、どこか昔の自分と同じ悲しいものを背負って生きているようで、捨て置けないのだった。 だがルーテシアは、やはりそんなキャロの言葉には耳を貸さず、再びケースに狙いを定めた。 「……このままじゃジリ貧ね」 今の状況を冷静に見つめるティアナが、誰彼となく呟いた。 遥か向こう側では、ヴィータと謎の少年が今でも激しい空中戦を繰り広げており、自分達の上空には小さい妖精が、ところ構わず炎弾を放っている。あの女性は召喚獣と未だ戦い続けており、エリオとキャロは、あの少女とケースの取り合いで争っている。 「ティア、あたし達はどうしたら……っと」 傍を掠めた炎を避けながら、スバルは訊ねる。 ティアナの答えは、直ぐに返ってきた。 「とりあえず曹長は、あの小人をお願いします。スバルとギンガさんは、あの戦ってる二人。あたしはエリオ達の援護に向かいますから」 「オッケー!」 「わかった。じゃあ―――――」 そう言いかけたギンガの瞳が、遥か向こうから来る、蒼い光を捉えた。 その光は、だんだんと大きくなっていき、まだ気づいてないスバルの方へ飛んできていた。 「っスバル、伏せて!!!!」 そう言うより先に、ギンガがスバルの前に出て盾になった。 閃光はギンガを覆い炸裂、大きな爆発を起こした。 「ギン姉!!!」 「大丈夫よ…」 弱弱しくもギンガは返事を返した。 直撃する寸前、なんとかバリアで防ぎきっていたのだ。 それよりも、先の砲弾が現れた直線状に、人が立っている所に注目する。 (あの人が、これほどの攻撃を……?) ギンガの前に歩いてやって来るのは、約二メートルはあろうかという巨人。 小ざっぱりとした服装に薄黒い肌、傍から見れば、なんでこんな場所にいるのが不思議なくらいな一般市民の格好だった。 だが、彼をそう思わせない所が二つあった。 一つは、彼自身から大きな魔力を感じること。そしてもう一つは、右肩から腕にかけて厳つい鎧を装着していることだった。 そして、そんな彼の横を過ってもう一人。 「――――――!!?」 その影は、遥か高く上空に駆けあがると、そのままスバル目掛けて落ちていく。 その姿を見て、スバルは一瞬出遅れた。今自分に向かってくる人物は 「破道の三十三――――」 忘れられない記憶、『彼』の隣で親しげに話していた人物の一人だったからだ。 「―――『蒼火墜』!!!」 刹那再び、巨大な閃光が迸る。 スバルは着弾する前に、躱すことはできたが、余りの光りの強さに目を覆った。 「貴方は―――」 光の向こうにいる女性を、眩しく思いながらも見つめる。 『可愛らしい』ワンピースを、『凛々しく』着こなしながら、彼女も自分を見た。 「貴様とは、前にも会ったな」 その女性―――ルキアはそう言ってスバルと対峙した。 場所は変わり、とある建物の屋上 「ディエチちゃあん、ちゃんと見えてる?」 「ああ」 風がよく靡く高台に、不可思議な出で立ちをした女性が二人。 そのうちの一人は、片手に布で巻かれた巨大な棒状の物を持って、隅々まで広がる蒼い空を一望していた。 「遮蔽物も無いし、空気も澄んでる。良く見える」 「そ、それならいいわ」 対するもう一人の方は、どこか薄気味悪い笑みを浮かべながら、下界に目をやった。 今頃下では、何も知らない馬鹿で可愛いピエロ達が、楽しそうに踊り狂っているのだろう。 そう考えるだけで、彼女の笑みは更に深く、そして陰惨なものになっていく。 「魔導師も死神も、互いの事何も分からずに勝手に潰しあってくれて助かるわ~~。お陰でこの上なく事が順調に運べそうだもの」 彼女は眼鏡をつり上げ、冷えた笑顔を浮かべて愉快そうにこう言った。 「さぁて、パーティーの始まりよ。せいぜい私達を楽しませなさい」 ―――――――――――――――――――――――――――To be continued. 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/chaosdrama2nd/pages/818.html
黒崎一護 朽木ルキア 阿散井恋次 井上織姫 石田雨竜 茶渡泰虎 朽木白哉 日番谷冬獅郎 浦原喜助 市丸ギン 藍染惣右介 グリムジョー ウルキオラ
https://w.atwiki.jp/youtubeani/pages/463.html
レッドクリフ - 名無しさん 2009-10-10 00 24 05
https://w.atwiki.jp/shizuokaocn/pages/24.html
2ちゃんねるのBLEACH関連スレを荒らすぶひ婆/静岡OCNについてまとめるページです。 対策考案、批判等を目的とせず、ただまとめるだけです。 作品、キャラクター、各スレ、企業とは一切関係ありません。 閲覧の注意 作品やキャラクターと書き込み内容が無関係だと判断できない方の閲覧は推奨しません。 荒らし行為をそのまま引用しているので下品な表現が数多くあります。 内容について 脚注、解説などは必ずしも正しいという保障はありませんので、自己判断を推奨します。 見落とし、または内容が最新でない可能性があります。 引用について 各スレッドから引用しています。 引用の際、アンカ記号全角化、URLのh抜きの改変をしていることがあります。 削除依頼が出されたものは、元スレッドにログが残っていないことがあります。 削除要請板の各スレッドのログでそれらの削除依頼が確認できます。 他の作品について 他の作品の関連スレッドでも荒らし行為をしていることが判明しています。 膨大なため、このまとめではあくまでBLEACH関連スレを中心にまとめます。 リンク等について リンクはご自由に。 荒らしに対する煽り等にこのまとめを使用することは推奨しません。
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3094.html
現世と霊界をつなぐ長い長い道のり。 宙には優雅に舞う黒い蝶 そこの中心には、二つの人影が歩いていた。 「座軸は?」 「未確定だ」 「オーイ、またかよ? 今度はドコに飛ばされんだ?」 「さあな、まあ空座町ではないことだけはたしかか」 ただひたすらに長い道を歩きながら、二つの人影は言葉を交わす。 その一人は黒い着物を纏い、腰には刀を帯びていた。 「出るぞ、地獄蝶を放せ」 「へーへー」 唐突に、周りを舞っていた黒い蝶がゆっくりと前に出てきた。 刹那――、目の前にいきなり和式の門が姿を現した―――。 扉はゆっくりと開き、その先には光に包まれていた。 「何が何でも確保してこいか…」 黒い着物の男がそう言って、手に持つ資料を見やる。 そこには赤い結晶の写真が載っていた。 「なんつーか、これも死神のする仕事じゃねえよな」 「…そうでもなかろう」 扉の光の先には、赤い空が立ち込めていた。 それでも彼等は、歩みを止めず、先に進む。 魔法死神リリカルBLEACH Episode 3 『Crossing World』 海鳴市 結界内 午後零時二十分 「―――――…」 長い時間、そこに佇んでいたような気がした――。 一護はまだ、そこにいるモノに対して、今の状況に、完全に理解しきれてなかった。 ―――目の前に現れた、奇怪な形のモノ――― 巨大な丸型の形をした――真ん中にいくつもの目らしきものがつき、周りにはベルトのような太いアームが、ゆっくりと蠢いているという、簡単な構造をしたモノ―――見た目からして、それは機械ということはわかる。 ――だが、こんな機械は16の人生で見たことがないし、よしんばあったとしても、なぜ今オレの目の前に――― そんな、いろいろな憶測が頭の中で飛んでいたなか――― 「――――――!!」 ソイツは、いきなり太いアームを伸ばして襲いかかってきた。 「――――くっ!!」 頭で考えるより先に、まず体が動いていた。 間一髪のところで伸びたアームを避け、一護はそのまま距離をとる。 しかしソイツの攻撃は終わらない。もう一つのアームを伸ばし、一護に追い打ちをかけてきた。 しかし今度は一護も遅れをとらない。 二つ目のアームが、一護を叩きつけようと真上から襲ってきた、だが一護はギリギリでそれを見切りかわすと、返す刀でアームを斬り付けた。 アームの先端は吹き飛ばされて宙を舞い、音をたてて落ちていく。 「なんなんだ? コイツは」 一護は大刀を担ぎながら、改めてソイツを見やる。 切れたアームを不気味に動かしながらも、確かにソイツは自分を見ているようだった。 (俺のことが見えるのか?) ちなみに、足はあるけども今の自分は幽霊のような存在だ。 織姫やチャドのような霊的濃度の高い人間の例を除いて、自分が見えるのは同じ霊体の者だけのはずだった。 だけど確かにソイツは―――― 「トモダチになりたいってカオじゃあねえよな…」 確かに自分を見ているようだった。 何故か『敵』と認識して―――。 「――――っと!!」 また飛んできたアームを避け、今度は一気に距離を詰める。もう攻撃は喰らわない、 よくわかんねえけどそっちがその気ならもう容赦しねえ―――、 一護はそう決意し、愛刀『斬月』を高く掲げてそのまま敵の懐にまで―――、 (――――?) 急に、一護の動きが緩くなった。 しかもよりによって敵の目の前で、ふらつくような状態になってしまった。 (―――何だ??) 敵はしてやったりとばかりに切れたアームを一護めがけて叩きつけた。 一護はなんとか防ぐが、押し返すだけの力が出ない。 いや、力が入らないといった方が正しいか。 あまりの出来事にまだ理解しかねる様子の一護 (何なんだ、一体―――) しかし思考は途中で中断せざるをえなかった。急激な力の集中を感じたからだ。 よくみると、『丸い敵』の真ん中についている目のような部分から、光が集束していた。 一護はそれに、本能的な危機感を覚え―――。 (――――――ッ!!!) そして、目の前が真っ白になった。 海鳴市 結界内 同時刻 真っ赤に染まった海鳴市、他の人々は意識の外に消え、仮初の静寂が訪れていた。 その閑散とした海鳴市を眼下に置きながら、飛んでいくのは二つの光。 戦闘状態となった、なのはとヴィータだ。 その顔は先ほどとは打って変わり、真剣な表情で無人の海鳴市を見つめていた。 「一体、何を見たんだろうね、シャマルさん」 「さあな、まあ、アイツがあそこまで慌てるとなると相当な事なんだろうけどな」 それは、ほんの数分前の会話だった―――。 滞りなく結界の配置を終え、自分達も出撃の準備途中だった、そのときだった。 いきなり、シャマルの慌てた声が、念話ごしに、自分達に響いてきた。 (な、なのはちゃん!! ヴィータちゃん!!) (? どうした、シャマル) (なにかあったんですか?) (そ…それが……) なのは達の問いかけに、シャマルはすぐには答えなかった。今起こっている状況を、頭で必死に整理しているようだった。なのは達も急かしたりせず、シャマルの言葉を待った。 (西の方角…にガジェットの…Ⅰ型の方だけど…反応があるみたいなの……え…と、数は大体10~20ぐらい…かな) ゆっくり、言葉を選ぶようにシャマルは話し始めた。しかしその情報にヴィータは首をかしげた。 (そんだけか? 別に慌てるほどの情報か?) (そうですよ それぐらいだったら全然許容範囲内です) 安心させるように、なのはが続けた。もとより増援の可能性を無視してるわけじゃなかったし、それに元々自分達の今回の任務は、新人達に余計な邪魔をさせないよう、援軍の殲滅が主であった。だから逆に援軍のガジェットの少なさに、少し拍子抜けする思いがあるくらいだ。 まあ確かにその援軍をレリック探索に当てず、そんな遠い所に呼び出すことに少々の疑問は覚えるが…―― (え…いや、そうじゃない…違うの!!) シャマルの念話ごしの叫びに、なのは達は思考を中断させられた。 何が彼女をそこまで慌てさせるのか。 (問題はそっちじゃなくて……えーと、何て言えばいいのかなあ…) またシンキングタイムに陥りつつあるシャマルに、ヴィータが助け船を出した。 (アンノウンか何かか?) (そうそれ!! アンノウンが現れたのよ!!!) (ガジェットの新型か何かまた出てきたんですか?) (うーん、何だろ…よくわからないの…ガジェット…じゃないのは確かなんだけど…) いくら問答を繰り返しても埒が明かないと思ったのか、ヴィータがついに切り出した。 (わーった!! アタシ達が見てくりゃいいわけだろ! どうせもう出なきゃなんねえとこだったし) 確かに、と頷くなのはを横に、ヴィータは続ける。 (んで…そのヨクワカンネエヤツは、何匹くらいいんだ?) (……驚かないでよ…) しばらくの沈黙の後、シャマルは恐る恐る答えた。 (あくまでおおまかだから正確な数はわからないけど………それでも7~80…全部足したら3桁は間違いなくいってるわ…) (………え??) (し……7~80!!!?) 唐突にでた大仰な数字に、二人とも驚きを隠せなかった。 ―――どんな強さかもわからない敵が、少なくも80以上……。 流石になのは達も、戦慄を抱かざるをえなかった。 (((………………))) しばらくはお互い言葉も出ずに佇んでいた。が、そうしてもしかたが無いと思ったのか、なのはが切り出した。 (と…とにかくこんなことしても始まんないよ スバル達が頑張っているのに私達が怖気づいちゃしょうがないでしょ) (た…確かにそうだな まだ勝ち目はねえって決まったわけじゃあねえんだ まあ、なるようになるさ) ヴィータも、なんとか落着きを取り戻し、あくまで冷静に、現状を推測する。 (と、なると…もうアタシ達は出た方がいいな) (そうだね、いつレリックの方に攻め込んでくるかもわからないし…そうだ、シャマルさん) と、なのはは最後になるだろう質問をシャマルに聞いた。 (敵の位置は本当に西の方角だけですか? あと、アンノウンの外見についてなにか特徴的なものは、何かないですか?) なのはの質問に、しばらくの間はあったものの、シャマルはゆっくりと答え始めた。 (ガジェットは、散り散りにもう動き始めているけど、そのアンノウンは…ずっと一か所に固まったままだわ…) (じゃあ西の方角にいくルート上にいるガジェットを教えてくれ 行きがけにアタシ達が退治しとくから) (わかったわ…じゃあその時に連絡を入れるから) (それじゃあもう行かないと…そうだシャマルさん、アンノウンの外見は…) (…それは……会えばわかるわ…) 結局、最後の質問にはシャマルは答えなかった。 「なんにせよ、レリックの方は完全に新人達に任せるしかなくなったな」 眼下にガジェットはいないか確認しながらヴィータが言った。 アンノウンについては新人達には報告していなかった。知ったところで現状、どうしようもないし、むしろ余計な不安を与えてしまって任務に支障をきたすかもしれないためだった。 「大丈夫だよ みんな強くなってるし、ちょっとやそっとのことで折れるはずがないのは、ヴィータちゃんだって知ってるでしょ?」 「まあ、そうだな」 「とにかく今は、そのアンノウンに全力で取り組まないと、そういえばヴィータちゃんとの空も久しぶりだね」 「ああ…そういやそうだな」 そんな会話をしながら二人は飛んでいた。これから起こるだろう激戦のために、少しでも余裕をもたすために。 そして二人は、今や未確認生物の屯している、魔の西の方角へと突き進んでいた。 巨大な丸型の機械――――俗に言うガジェットⅢ型は、目の前の目標の消滅の確認をしていた。 目前には自らが放った光線の跡から、もうもうと煙が立ち込めていた。 この距離で避けられるはずがなく、受け止めたのであれば少なからずとも当然生命反応があるはず。 それがないということは、攻撃が直撃して跡形もなく消え去ったことに他ならなかった。 事実そう認識し、ガジェットは一緒に吹き飛んでしまったであろうレリックの探索に移行しようとした時だった。 ――――巨大な魔力反応を、上空から感じた――― 「ウオォォォォォォォォォォォラァァァァァァァァァ!!!!」 ガジェットがその反応に気づいた時には既に遅かった―――。 巨大な、包丁のような大刀で一閃。真っ二つに割れていた。 ガジェットは音をたてて崩れ落ちた後、巨大な轟音とともに爆散した。 一護は、攻撃の瞬間に上空に回避しただけであり、吹き飛んだわけではなかった――。 「…結局何だったんだ?……アレ…」 斬月を担ぎながら、先ほどまで猛威をふるっていた、今はただの残骸と化したガジェットをしげしげと眺めながら一護はそう呟いた。 気のせいか、急に力が抜けるような症状も、今は無くなったようだ。 だが未だにこの状況が理解できてないことに変わりはなかった。 ――これは一体何なのか? 何が目的だったのか ――何故空は赤くなったのか? ――何故急に力が抜けるようなことが起こったのか? さまざまな疑問が浮かんではくるものの、この状況で答えが浮かぶはずもなかった。 とにかく――、ここにいたところで事態が好転するわけがないことは確かだ。 「とりあえず、チャド達の所へ戻ってみるか…」 一護はそう決め、仲間達の所へ戻ろうとするところで気づいた。 (……どうやったら戻れるんだっけ?) 一護はその場で蹲って、まずどうやって帰るか検討し始めた、その時だった 「――――!」 また力が抜けていくような感覚、そして何者かの気配――今度はかなりの数だ。 周りを見渡すと、先ほどのガジェットより一回り小さい、平たく言えばカプセルのようなガジェット達が自分の周りを取り囲んでいた。 「――ったく、何が起こったかはよくわかんねえけど…」 一護はまず、周りのガジェットの数を確認した。取り囲んでいるのはほんの数体だけだが、奥にはもっといるのを感じた。 「とりあえず、しなきゃならねえことだけはよくわかったよ」 その言葉を皮切りに、ガジェット達は一護目掛けて一斉放射を開始した。 たちどころに一護のいた場所は、爆炎で包まれる。 しかしその爆炎の中に一護の姿は無く―――、 いつ動いたのか、ガジェットの一体を切り裂き破壊していた。 ガジェット達は素早く、先の攻撃を躱されたことに反応し、一護の姿を追うが―― 「いっくぜぇぇぇ!!」 その時には既に、もう一体のガジェットが爆散していた。 海鳴市 結界内 同時刻 「―――おっと!!」 ガジェットの放つ光線を避け、スバルは後方に下がった。 続いて上空にいるガジェットの攻撃をうまく避け、改めて今の状況を確認した。 ――目に見えるガジェットは5体。上空には3体。 「バカ、スバル!! やたらに近づかない!!」 同時に、後ろからティアナの叱咤が飛んできた。 「あ、ゴメン!!」 続いてきたガジェットの攻撃を躱しながら、スバルは一旦、ティアナのいる建物の陰に隠れた。ここからなら、ガジェットの攻撃はひとまず来ない。 「無暗に突っ走んなって言ってるでしょ」 「アハハ…ゴメン」 「まあいいわよ、それで、何体?」 「えと…見える限りじゃ地上に5、上に3」 別に何も考えずに突っ走ってきたわけじゃない。 それを聞き、ティアナはすぐさま指示を出す。 「じゃああたしは下、アンタは上ね」 「OK!」 数秒後、ガジェット達の前に、いきなりティアナが躍り出てきた。 すぐさまガジェット達は攻撃を開始するが、それはティアナには当たらず、全て通り抜けた。それが幻術とわからず、ただひたすらに攻撃を繰り返すガジェット達。上下含めて、全ての視点がティアナに向いた時。 「『ウィング・ロード』!!」 その叫びとともに、上空に文字通り『道』が展開された。 その道に沿ってスバルが勢いよく、上にいるガジェットの一つに向かって行った。 「『リボルバー――」 右手に装着しているリボルバーナックルからカートリッジが一つ、排出された。 同時にナックルスピナーが高速回転を始め、魔力が上昇する。 「――シュート』!!!」 リボルバーナックルから巨大な空砲が放たれた。 いままでティアナの方に集中していたためにそれらしい対処もとれるわけが無く、 ただただ、空砲のなすがままに吹き飛び、壁に衝突。爆発して消えた。 すぐさま、ガジェット達は今度は上空にいるスバルに狙いを定めるが―― 「『クロスファイア――」 建物の陰から現れた『本物』のティアナが地上のガジェットめがけて攻撃を放っていた。 「――シュート』!!!」 ティアナの周囲に形成されていた魔力弾が、一斉に飛んで行った。 魔力弾は独特の軌道を描きながらも、寸分違わずガジェットに命中。同じように爆散した。 ――これで、進路を阻むものはいなくなった。 「ナイス! ティア!!」 そう言いながらティアナの前に合流するスバル。 「当たり前でしょ、さっさと行くわよ」 ティアナも簡単に返し、駈け出した。スバルも後から付いてくる。 ――今回の作戦は、今二手に分かれている状況を利用し、挟み込むようにしながらレリックの確保を行うつもりだった。 レリックの居場所はそう遠くなかったし、敵対するガジェットもいままでの戦いの中では何故か少ない方だった。 ――まあだからと言って慢心していいわけには入らないのだが、現状それで十分通用するレベルではあった。 (エリオとキャロも、順調にいってるみたいね) これなら、上手くいきそうだ。そう思いながらも、油断せず、前を見る。 突然、先を走っていたスバルが、急に止まった。 「ティア、これ…」 「…AMF!? かなり高濃度ね」 ティアナも、『そこにあるもの』を感じ、顔を顰めた。 「スバル、ここから先は『慎重』に行くわよ」 慎重に、を強調してティアナはスバルに顔を近づけながら言った。 「わかった、わかったってば!!」 ティアナの態度に辟易しながらも、スバルはゆっくりと様子を見る。 ――この角の先、最初にレリック反応があった場所だ。 奇襲や罠の可能性がないか、ちゃんと確認しながら、スバルとティアナは、角の向こうを見た。 「「―――――――!!!!!」」 二人が見た場所には、予想だにしなかった光景があった。 「なに……これ…」 「あ…あたしが知るわけ……ないでしょ」 二人の見た光景――それはガジェットの残骸だった。 今はもう見る影もない鉄屑がほとんどであったが、それでも原形を留めたものだけを数えてもかなりの数があった。 この状況でAMFが途切れず継続しているところを見ると、まだ近くにガジェットが潜んでいる可能性があるわけであるが、問題はそこじゃ無い。 (こんな高度なAMFの中でこれだけの数、戦ったっていうの?) 信じられない、といった表情でティアナは見ていた。 魔力の結合を解き、魔導師の力を無力化する、ある意味反則的とも思えるAAA ランクのフィールド系魔法、『AMF』。今、感じる効力の重さから見ても、並みの魔導師なら呪文一つ唱えることすらできないであろう。 しかし、現にこうしてガジェットはあられもない姿に変わっている。レリック反応が近いこの場所で、隊長たちが倒していくわけもない。――となると可能性は一つ。 自分達の知らない第三者の介入―――少なくともAMFのあるこの状況下でも力を振るえる程の強力な術者か。 「スバル、ちょっと―――」 ティアナは、同じように呆然としている相棒に呼びかけようとした、その時だった。 上から、大きな爆発の音が轟いた。 「「―――!!」」 とっさの反応で素早く上を見やるスバルとティアナ。上には、先ほどの爆発音の名残か、煙がゆったりと上がっているのが見えた。 「――――スバル!!」 「―わかってる!!」 ティアナが言うより早く、スバルはもう駈け出していた。ティアナも急いで後に続く。 魔法が使えないために近くの建物から上がっていく羽目にはなったが、そんなことはどうでもいい。 この状況の解明のため、一心にスバル達は駆け始めた。 海鳴市 結界内 とある屋上 「―――ゥオラァッ!!!」 その叫びとともに放たれた剣閃が、また一つのガジェットを真っ二つに断ち切った。 同時に、背後からガジェットの射撃が来たが、一護はそれを防ぐではなく、弾いて防御した。弾かれた光弾は途方もない方向に飛び着弾、爆発を起こす。 「――撃たせるか!!」 続けて二発目を放とうとするガジェットに、一護は一瞬で詰め寄る。 次の瞬間には、ガジェットの胴体は綺麗に寸断されていた。 そんな一護の前に、今度は這い出てくるように現れるものがいた。 「なんだよ、またオメーか」 最初に出会った、あの丸型ガジェットである。 丸型ガジェットは、一護を確認すると早速一護に向けてアームを放った。 一護も、ガジェットめがけて駈け出した。襲ってくるアームの攻撃には、必要最低限の動きだけで躱しており、当たるどころか掠りもしない。――すると今度は光線を放つつもりか、魔力を収束し始めた。 次の瞬間には極太の閃光が周囲を覆ったが、それすら一護を捉えることが叶わなかった。 「――遅ぇ!!」 気がつけば一護は背後に回っており、振り向く頃には他のガジェットと同様、上半身と下半身が既に分かれていた。一護は睨むように辺りを見渡した。 すると同時に、周りにいた残りのガジェットは、恐れをなしたのだろうか、急に退散を始めた。 「……やっと終わったか?」 一護はようやくといった感じで一息つき、いまだ立ち込める赤い空を眺めた。 (――結局アレは何なんだ?) わかったことと言えば、何故か自分を狙ってくることだけ。正体や目的等、それ以外は一切分からずじまいで終わってしまった。 「何か…また振り出しに戻っちまったな……」 これからどうするか、また悶々と考え始めた時だった。 ――不意に、どこからか足音が聞こえてきた――。 (――――!) 一護ははっとして、隣のビルの方へ見やった。――聞き間違いじゃない、確かに音がする。最初は小さなものだったが、だんだんと大きくなっていくのもわかる。 ――こっちに近づいてきている。 ――またさっきの奴か? と思い、斬月を構え、じっと待ちかまえる一護。数秒後、向かいのドアは大きな音をたてて吹きとんで行った。 「―――な、何だ何だ!!?」 予想外の出来事にたじろきながらも、一護は、埃が立ち込める――ドアがあった場所に立つ人物を凝視した。――そこには二つの人影があった。 ――しかも、そのうちの一人の顔、いやその髪の色には、見覚えがあった。 「……オメーは…」 結界によって静寂に包まれた、あるビルの中、長い長い階段をひたすらに駆けていく二つの影。 「ねえティア、音が止んだよ」 ローラーブーツの状態でもものともせず、先陣を走るスバルが言った 「大方、戦いがひと段落ついたみたいね」 後に続くティアナがそう返した。だが上にいる巨大な魔力反応は依然としてそこにあった。――今魔法がまともに使えない状態で、闇雲に突っ込むのは危険だろう。 ティアナがそう逡巡していると、スバルがまた叫んだ。 「ティア! 屋上のドア、見つけた!!」 「スバル、ここから先は慎重に…」 「……え……?」 ティアナがそう言うのと、スバルがダイナミックにドアをぶち破るのが、ほぼ同時に起こった。 「……何でアンタはそう人のハナシを聞かないの…?」 怒りを通り越して呆れを見せるティアナはさておき、取り合えず周りを見渡すスバル。そして、すぐ目の前にいた――少々驚いている、彼を見て、スバルは驚きに目を見開いた。 ――彼は、いや彼のその派手な髪の色には、見覚えがあったからだ 「…アナタは……」 海鳴市 結界内 西の方角 そこには、地獄絵図にもなる戦いがあった。 「だぁぁぁっ!!」 ヴィータが叫びながら、相棒『グラーフアイゼン』を振り下ろす。――否、叩きつける。 叩きつけられた対象は、悲鳴をあげ、塵となって消えさる。 しかし、この瞬間にも別の方向から所狭しと、『奴等』は現れる。 キリがない攻防にヴィータが舌打ちした、その時。 (ヴィータちゃん、下がって!!) ヴィータは、指示通りに後方に大きく飛び上がる。 瞬間、桜色の光弾が数十、寸分違わず奴等の顔面に命中。同じように消えてなくなっていった。 「あんがと、なのは―――」 そう言いつつ、手から魔力弾を生成、なのはを後ろから襲う奴を、 「―――ラァ!!」 魔力弾をアイゼンで叩きつけ、吹っ飛ばした。 「ありがと、ヴィータちゃん」 「ああ…」 同様に後を追うように消えていく奴等を尻目に、なのはとヴィータは背中合わせに構えを取る。既にかなりの時間、戦闘を行っているが、敵の数は一向に減らない。 「こいつ等、一体どっから湧いて出て来るんだ!?」 「本当…無限に出てくるね」 シャマルが慌てる一因となった、西の方角に大量発生したアンノウン。 ――その正体は、魑魅魍魎の如き千差万別な姿をした怪物たちだった。 強さこそ大したものではないが、空の亀裂から這い出てくるという、見たこともない魔法でどんどんと現れ出てくるそいつ等は、数にモノを言わせるように襲いかかってきた。 これまでの戦いでわかったことといえば、仮面を攻撃すれば早く倒せるということ、倒すと腹の底に響くような悲鳴を上げながら消えていくということだけだった。 「コイツ等、ガジェットの亜種か?」 「それにしちゃ、なんか生生しくない…?」 今自分達が追っている次元犯罪者、通称『Dr』の創り出した、新しい発明品かとも考えていたが、戦っていくうちにそれはないように思えてきた。 機械にしては、あまりにも精巧すぎるし、時折上げる唸り声には――何と言うか、怨嗟の念を感じるのだ。―――生きとし生けるもの全てに対する、恨み、妬み、嫉み、悲しみ――。 これが人の手で創られたようにはとても思えなかった。 (スバル達、大丈夫かな……) 再び襲いかかって来た怪物を倒しながら、なのはは任務を遂行中であろう新人達を思った。 それなりに修羅場はくぐり抜けてきたこともわかってはいるし、そう簡単には折れないことも知ってはいる。 それでも今自分に起こっている状況と同じことが、彼女たちにも起こってはいないかどうか、一抹の不安は感じていた。 ――が、ここで持ち場を離れれば、この怪物たちが一気になだれ込んでくるかもしれない。 そうなったら収容がつかなくなる…それだけは避けねばならない。 それに、それでは何より彼女たちを信用していないことにも繋がる。それは彼女たちにとって侮辱以外の何者でもないだろう。 ――だからあくまでその不安を覚えるのも一時だけ、今は彼女たちの任務の支障をきたさないよう、ここで怪物たちを食い止めるだけだ。 そう心に決め、また向かってくる怪物の一匹を消滅させ、一瞬スバル達のいるであろう方角に目をそらし――― 「―――――え?」 ――驚き、目を見張った。 「オイ コイツ等どうしたんだ?」 その時、後ろにいたヴィータが不可解、といった声を上げた。 先程まで自分達に襲いかかって来た怪物達が、急に大人しくなったと思ったら、唐突に空を仰ぎ始めたのだ。 「なあ、なのは…こいつ等、何見て―――」 一斉に崇める様に仰ぎ見る怪物達を不気味に思いながら、怪物の見やる方向――なのはが見ている方へ振り向き――同じように目を丸くした。 「な…なんだよ…あれ……」 空に、大きな亀裂ができていた。 怪物たちが現れるときにできる、あのひびと同じようなものが――向こうの方角にも現れ出ていたのだ。 ――しかもここから見えるということは、かなり巨大なものなのだろう。 「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」 瞬間、巨大な咆哮がなのは達を襲った。 振り返ると、いままで仰ぎ見ていた怪物達がまた、一斉に動き始めたのだ。 慌てて、なのは達は怪物達の進行を阻止する。 「何なんだよこいつ等、急に…!!」 先頭に立つ怪物達を体良く倒しながら、ヴィータは叫んだ。 どうやら怪物達は、あのひびに向かって行こうとしているようだった。 「そんなの…わからないよ…!」 なのははそう返しながら、愛機『レイジング・ハート』を構え、――なるべく敵を多く巻き込みそうなところに狙いを定め、放つ。 正確に放たれた桜色の閃光は、直線状にいた多くの怪物を巻き込み、消滅に追いやる。 しかし―― (だめだ…後からどんどん出てくる) 閃光の跡にはもう、後続の怪物ですぐに埋め尽くされてしまった。 (スバル……みんな…) 一時と決めていたはずの不安を今、なのはは強く感じていた。 しかし、持ち場を離れない――離れるわけにはいかない。 怪物の動きが活性化した今、なんとしてもこれ以上の進行を阻まなければならなかった。 (無事で、いて…) ただ、ひたすらにそう願う。 それだけだった。 とある建物の屋上で、一護とスバルはしばらく、呆けた表情でお互いを見ていた。 ――まさかこんなところで偶然の再会ができるんて、誰が想像できただろう。しかも、無人となり、代わりに変な機械がうろついている、この場所で。 「―――知り合い?」 スバルの異変に気づいたティアナが、窺うように訊いてきた。 「いや、まあさっき知り合った、って言うか……」 スバルがしどろもどろにそう答えた。 ティアナは、今度は一護の方を振り向いた。スバルと同じように若干驚いた表情をしていた彼―― この状況からしてさっきのガジェットを倒した犯人というのは明白だったが、とりあえず敵意は無い様に見えた。 「まあ、いいわ とりあえず…えーと、そこのアナタ」 そう推測するや、さっそくとばかりにティアナは一護に質問をぶつけた。 「いったいドコの所属? 何でこんな処にいるの? その持っているもの、デバイス?」 矢継ぎ早の質問に、一護が慌てて遮った。 「ちょっちょっ…ちょっと待った!! こっちこそ訊きてえことがあんだ。あんた等こそ何者だ? さっきの連中は何だったんだ? あんた等の仲間か?」 「私達は時空管理局よ。知っているでしょ?」 「……何だそれ…?」 呆けた表情で返す一護に対し、ティアナは若干驚いた。 嘘をついているようには見えない、本当に知らないようだった。 「え…時空管理局を知らないの? じゃあアナタ何者…?」 「だから知らねえって ってかお前等―――」 いまさら気づいたように一護が訊いた。 「俺のこと、見えるのか?」 今度はスバル達がきょとんとする番だった。 「え…どういうこと?」 「そんなの当たり前―――」 会話はそこで途切れた。 不意に、巨大な魔力反応を感じたからだ。 (((―――――――!!!))) 一護達は急いで、気配のする方向へ見やった。 一見、何も無いただの空のようにも見えたが、普段ならあるはずもないモノが、そこにはあった。 ―――空に亀裂ができていた―――。 凝視しなければ目に見えないだろうそれは、徐々に、ゆっくりと、しかし確実に広がっていった。 やがて、遠くからでもわかるくらいに巨大なものにまで広がったとき、ソイツは亀裂を割いて現れた。 ――仮面を被った、全身真っ黒な巨人。 亀裂を割いた手からでもその大きさがうかがえる、とにかくそうとしか形容し難い程に単純な構造、だが圧倒的な威圧感を感じさせる。 ―――『大虚(メノス・グランデ)』 幾百の虚が折り重なり、誕生するとされる文字通り『巨大な虚』である。 その大虚が今、首から上を乗り出して一護達を見下ろしていた。 と同時に いつの間にか自分達の周りにも、小さいが同様の亀裂が生じていた。その亀裂から割いて現れるのは、同じように仮面を被った怪物―――虚だった。 その中には、カプセル状の機械、ガジェットも混ざっていた。 「……シニガミィ……!!!」 「―――――くそっ!!」 一護は素早く斬月を構え、辺りを見回した。 数だけでも、さっきの数倍はいるのは確かだ。 「え? な…何これ、ティア!!」 「…あ…あたしが知るわけないでしょ!!」 一護と背中合わせになるように、スバルとティアナも臨戦態勢に入る。 だが正直なところAMF下のこの状況でどこまで戦えるか。 この窮地を脱するには、どうやら彼の力も必要になりそうだった。 「…とりあえず、あんた等とこいつらとは仲間じゃねえってことはわかったよ」 「こっちもよ…どうやら話はコイツ達を倒してからになりそうね…」 「…だな…こっちも訊きてえこともあるしな……!」 ――会話が終わった瞬間、周囲にいた虚達が一斉に襲い掛かってきた。 海鳴市 結界内のとある場所 赤く染まった空に、小さな光が現れた。 その光はどんどんと大きくなり、やがて一つの姿を創り出した。 すなわち、和式の門。 襖はゆっくりと開かれ、まず黒い蝶が躍り出てきた。 次に現れるのは、二つの人影。そのうちの一人は一護と同じ黒い着物――死覇装を纏っていた。 「何だ、空が赤いぞ?」 「――どうやら既に始まっているようだな」 一人がそう言って周囲の霊圧を探り始め――急に驚愕の表情をした。 「ん? どうした」 「―――この霊圧」 最初に驚きの表情を見せていた彼女だったが、今は喜色の笑みを浮かべていた。 死覇装を纏ったもう一人も、同じように霊圧を探り、その理由を知った。 「久しぶりだな―――」 知らず、二人は駆けだしていた。 「―――『一護』!!」 「……くっ……」 怪物―――虚の攻撃を躱しながら、ティアナは苦い表情で周囲の敵の数を確認した。 ガジェットだけでも数十―――白い怪物の数はそれ以上にいた。おまけにその怪物の力は未知数。 そして自分達を高みからみやる巨大な怪物、今は大人しいが、いつ攻撃してくるとも限らない。 ――ここはやはり下手に出るより様子を見た方が――。 「うおおおおラァァァ!!」 「――――え……」 そう考えていたティアナを尻目に、一護はすでに虚の大群に突っ込んでいた。しかも素人目で見ても無茶とわかるぐらいの闇雲さで。 「―――――ダァ!!」 しかし何十と来る攻撃を彼は的確に躱し、返す刀の光は確実にガジェットと虚を葬っていた。 虚は断末魔のような悲鳴を残しては消え、ガジェットはイカれた音を奏でながら爆発していく。 この完全な独り舞台を、スバルとティアナは(ティアナは違う方の意味で)唖然として見ていた。 「か…かっこいい…」 男気溢れる特攻に、スバルは惚れ惚れしているようだった。 「スバル…あれはね、本来なら『無茶』とか、『無謀』とかそういう言葉が入るものなのよ…」 アンタは真似しないでよ と後からティアナは付け加えながら、現状を確認する。 最初は天を覆う程にいた敵達も、今は 「とりあえず、ガジェットを優先的に潰すわよ」 ティアナが的確にそう指示を出した。理由は、いまだ怪物の戦闘力はどこまでか判別し難いものがあったからだ。彼は当然のように闘っているが、それだけでは判断材料にはなりえない。 それにガジェットを全部倒せばAMFも解け、魔導師としての本来の力が発揮できる。 「うん、わかった」 スバルはそう頷いた。 本当は、AMF内でも力を振るえる彼にそのことを頼もうともしたのだが、その時には既に彼は虚達に向かって走りゆく後だった。 ――…もしかしたらAMFのことについては実は何か知っていて、優先的にガジェットを破壊してくれるか、という淡い期待も抱きはしたが、今の戦いぶりを見てもそれは無いとみていいだろう。 とりあえずティアナは、彼の第一印象の項目に『スバルと同じタイプ』と付け加えた。 「いい? あたしは今魔法は使えないけど、アンタには格闘術があるから、なんとかなるでしょ。それからガジェットを追う時も、なるべくあの子のなるべく陰に隠れるようにしなさい。あと――」 その時、下から大きな影が現れた。 見上げると、一際大きい虚が腕を振り上げて迫って来ていた――。 ((――――!!)) 反応が間に合わない やられる―――――そう思った瞬間 「うおおおおおぁぁぁぁ!!!」 スバル達に襲いかかってきた虚の顔面に、大きな塊みたいなものが飛んできた。 ――それがガジェットだとわかった頃には、虚共々視界から消え失せていた。 あまりの事に茫然としていると、遠くから、一護の声が聞こえた。 「オーイ、大丈夫か?」 「あ…はい、大丈夫…です」 スバルは力なく答え、ティアナは信じられないような目で一護を見ていた。 ――突き刺したガジェットをそのままブン投げて助けるなんて、狂気の沙汰じゃあない。 訂正、『スバルより酷い』。ティアナは項目を書き直した。 「助け方にしても、もっと色々…――」 そう愚痴るティアナの眼前に、あの巨大な怪物がもぞもぞと動き始めるのが見えた。 ――見間違いじゃない、来る――。ティアナはそう直感した。 「危ない!!!」 そう叫んだときにはもう遅かった。 巨大な怪物――大虚は頷くように顔を動かした後、ゆっくりと口を開いた。 刹那――、そこから槍にも見える巨大な舌が、恐るべき速さで―――虚達を突き刺した。 「「「!??」」」 突然の出来事に驚き、スバル達は目を丸くする。 しかしその間にも槍のような舌が、的確な狙いで虚――のみならず、ガジェットまでも巻き込んで突き刺していく。 ――そしてその狙いは、遂に直線状にいたスバルにまで及んだ。 「!!?」 「―――スバ…――」 あまりの事にただなすすべなく、立ち竦むスバルと―― 咄嗟のことに、叫ぶティアナの声と―― そんなスバルの前に、黒い影が眼前を塞いだことが―――同時に起こった。 ―――血が飛び散った。 空には巨大な刀が大きく弧を描きながら舞い飛び、あらぬ処へと落ちていく――。 「―――!!」 スバルが気づいた時には、一旦舌を戻し、突き刺した虚達を食べる大虚がいた。虚は断末魔の声を上げながら、大虚の口の中へと消えていく。 ボロボロと落とすのは虚の血と、同じように食われたガジェットの部品達だった。 そして、眼前には腕から血を流す彼がいた――。 「――大丈夫か…?」 「―――え…あの…」 急な出来事にしどろもどろにしか返せないスバル。 しかし、敵は待ってはくれないようだ。今度は、巨大な魔力反応を、大虚から感じた。 「「「―――!!!」」」 大虚が大きな口をあけていた。――また舌を使った攻撃か? 否、それにしては魔力が大きすぎる、それに口のところには小さな光が、どんどんと大きくなっているのが見えた。一護はこの攻撃を知っていた。 (ヤベェ――『虚閃』だ!!) 自身の霊圧を口のもとへ収束、巨大な破壊光線を放つ大虚のみに与えられた大技、『虚閃(セロ)』。 斬月がないこの状況で今、この技なんか使われたら――― 「ぐっ―――!!」 一護は慌てて辺りを見渡すが、愛刀の姿は見当たらなかった。――下にまで落ちて行ったのか。 そうこうしてる間に、光が赤く輝きだし――そして次の瞬間、光が収縮した。 ――――――来る。 「――くそ!!」 せめて、後ろにいる彼女だけでも――― だが、遅いのはわかっていた。―――もう間に合わな――― 「咆えろ 『蛇尾丸』!!!!!」 不意に――、そんな声が聞こえてきた 次に聞こえてきたのは、大きな衝撃音。 大虚の頭に向かって、何かが叩きつけられていたのだ。 これから放つはずだった虚閃の光は、しかしこの攻撃で口が閉じるかたちになってしまい、一護達に当てる予定だった破壊の光は、大虚の口の中で炸裂した。 「え? 何!?」 「なんなの…?」 驚くスバルとティアナだったが、彼、一護はこの攻撃を知っていた。 「ウオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」 他の虚と同様、大声をあげてゆっくりと消えゆく大虚 だが一護が注目したのは大虚ではない、その上に舞う刃だった。――剣とも鞭とも見えるこの攻撃を使える者は、一護の知る中ではたった一人しかいない。 「メノス相手にグロッキーたぁ、随分だな」 その声は、一護達のすぐ横から聞こえてきた。 「雑魚ばっか相手で、腕が落ちてきてんじゃねえか? 一護!!」 大虚の消えた方を見やりながら、大股で一護に近づく、一護と同じ黒い着物を着る彼。 「―――――恋次、恋次なのか!!?」 「よお!!」 彼、阿散井恋次はそう言ってニヤリと笑った。 一護はしばらくの間、驚きに目を見張っていた。 「恋次、お前どうしてここに―――?」 「何のことはねえよ、仕事だ仕事」 そう言って恋次は周りを見渡し――、一瞬スバルと目が合った――そして向こうのティアナを見――再び視線を一護に戻した。 「…お前一人か? 恋次」 一護が間髪入れず訊いた。 「いや」 ここで恋次は含んだ笑みを、一護に見せた。 「もう一人来てるぜ――テメエもよく知ってるやつが」 今度はティアナの後ろで爆音が轟いた。 「たわけが! 戦闘中に斬魄刀を放すなど言語道断だぞ!!!」 慌てて振り向くティアナ達と同時に、そんな声が響く。 そこに居たのは、落ちたはずの一護の斬月を担いだ、小柄な女性。 可愛らしいワンピースみ身を包みながらも、凛々しく立つその死神。 「まったく貴様は…やはり私がおらぬと何も出来ぬようだな」 まさかの再会に、一護の顔がほころんだ。 「―――ルキア!!!」 「久しぶりだな、一護!!」 彼女――朽木ルキアもそう返した。 と、せっかくの場面を空気を読まない残りの虚達が襲いかかって来た。 「一護!!」 ルキアはそう叫んで、斬月を一護に向けて投げる。 一護はそれを受け取り、そしてその所作のまま迫ってきた虚を一気に斬り下ろした。 後から続いた虚達も、恋次の蛇尾丸の餌食となり消えていく。 「やっぱり腕が落ちたみてえだな! 前より動きが鈍くなってるぜ、一護!」 「テメエこそ腕を上げたようには見えねえな! 蛇尾丸の動きが止まって見えるぜ、恋次!」 「――何だとテメエ!!」 「おお、やるかコラ!!」 同時に幼稚な口喧嘩も始まってしまったが、しかし罵倒し合いながらも、割って入ってきた敵達は悉く倒されていった。 「じゃあいいさ、こいつ等を多くぶっ飛ばした方が一番強えってのはどうだ?」 「おおいいとも!! 俺は腕が落ちてねえことを証明してやらあ!!」 むしろこの口喧嘩で、二人の動きはより活発になった。 もはや戦いというより、一方的な虐めのようにも見えなくはない。 この戦い(?)を、スバルとティアナはただ唖然として見ていることしかできなかった。 「す…すごい…」 「え…ええ、そうね…」 と、言葉で表現することも難しい、凄惨な光景がそこにはあった。いつの間にかたくさんいたはずの虚やガジェットも、いまや両手で数えられるほど、その残りにも容赦なく、敵は片っぱしから斬られていく。 ――そんな暴れる二人の前に、遂に最後の敵が現れた。 「おお、またテメーか」 「へっ 変な形しやがって!」 今までAMFを張っていた、ガジェット・ドローンⅢ型である。 ガジェットは目の前にいる一護と恋次を認識すると、『敵』と判断し攻撃に移行するが――、 「これで――」 「――終わりだァ!!」 その時にはもう、二人の斬撃が装甲を切り裂いていた時だった。 ――結局何にもやらせて貰えずに、最後のトリは儚く散っていった。 「今のは俺の方が速かっただろ!!」 「いーや、俺の斬撃の方が一瞬速かったわ!!」 「いやいや、俺の斬撃のおかげでアイツを倒したんだろうが!!」 「いやいやいや、俺の斬撃の方が一ミリ深かったぜ!!」 虚達は消え、再び舞い下りた静寂――に、そんな口喧嘩が聞こえてきた。 先程のガジェットへの止めについて、二人は大いにもめている最中だった。 次第に喧嘩はエスカレートし、遂には刀まで抜き出す始末。 「――やっぱり『こっち』で勝負をつけるしかないようだな」 「上等だ! 俺は腕が落ちてねえってこと証明して――」 「止めんか、莫迦者共!!!」 今まさに全く意味のない戦いが起ころうって時に、ルキアの鉄拳制裁が、二人の顔面にクリーンヒットした。 「恋次!! 私達が何のために現世へと赴いたのか、よもや忘れたわけではあるまいな!?」 あまりの威力によろめく二人に向けて、ルキアの怒号が飛んだ。 恋次が呻きながらも答える。 「わ…忘れたわけじゃねえけどよ…」 恨めしげに一護を見る恋次、しかしルキアには取りつく島もなく、次にはこんなことを言いだした。 「――あまり素行が悪いと、兄様に告げるぞ」 次の瞬間、恋次の顔が一気に真っ青になった。 「し…失礼しました!! もうしません、もうしませんから隊長だけにはッ……!!!」 「わかれば良いのだ、わかれば…」 (こっ……怖え…) 先ほどの調子とは一変、悪魔のような笑みを浮かべるルキアと、そのルキアに必死になって土下座して謝る恋次。 そんな二人を、若干顔を引きつらせながら見てた一護は、後ろにいる、いまだどんな状況なのか分からず呆然としている彼女――スバルの方を見た。 「大丈夫か?」 そう言い、手を差し出す一護。 「あっ…うん…」 まだ上手く状況はわかってないまま、手を掴むスバル。 そのまま一護に引かれ、なんとか起き上った。――まだ手は掴んでいた。 「大丈夫? スバル」 そう言ってスバルの横に、ティアナは来ていた。 「あ…うん、何とか」 とここにきて、ようやく自分がまだ彼の手を掴んだままだったということに気づいた。 慌てて手を放すスバルだったが、彼はそのことに気づかず、恋次達に何か訊いていた。 「お前ら何でこんなとこに来てんだ? 仕事って何だ?」 「別に大したことじゃねえよ、探しモンだ、探しモン」 恋次が面倒臭そうに答え、今度はルキアが詰問する。 「というか、貴様こそ何故こんな処にいるのだ?」 「まあ、アレだ…色々あってな」 話をはぐらかす一護。ここに至るまでの回想を、流石に話す気にはなれなかった。 ルキアも大して追及したりせず、また訊いてきた。 「まあいい――そうだ一護、其処らでこんなモノは見なかったか?」 そう言い、一枚の紙を広げるルキア。 「「―――な!!」」 それを見て、スバル達が逆に驚いた。 その紙に写っている赤い結晶――それは間違いなくレリックだった。 そして、それだけでは終わらない。 「ああそれか? お前らが捜してるモンってのは―――あるぞ」 「「「「!!!!」」」」 この言葉に、今度は一護を除く全員が驚愕した。 「ホ…ホントか? 一護!!」 「ああ…これだろ?」 周囲のリアクションに若干戸惑いながらも、一護は懐から取り出した。 赤く煌めく結晶―――確かに写真と同じ、レリックだった。 「なんか、やけに逃げまくる虚を追っかけて、倒したらそいつがあったんだ」 説明を付け加えながら、よく見えるように手を翳す一護。皆の、その予想以上の食いつきぶりを、一護はよく理解できなかった。 「で…これは何なんだ?」 「ああ、それは――」 「『レリック』…数あるロストロギアの中でも、かなり危険な代物よ」 ルキアが言いかけた時、割って入るようにティアナが説明しだした。 「私達は、それの確保を命じられてここへ来たの―――それはあまりにも危ないものだから」 「…そんなに危ないもんなのか……?」 一護が、ゆっくりと冷や汗を流しながら言った。 「…その気になったら……世界一つ簡単に潰せるわ」 その言葉を聞いて、一護はゆっくりとルキアを見――ルキアも頷いた。―――そして手にある小さな結晶を、改めて見た。 ――じゃあ何か、俺は世界を壊せるほどの爆弾を今、手に持っているってことか?――― 「……冗談じゃねえよ!!!! なんでそんな危ないモンこんなトコロに落ちてんだよ!! てか何でそんなモン俺は拾っちゃってんだよ!!!」 半狂乱になりながら叫ぶ一護を宥めようと、今度はスバルが口を開いた。 「あ、だから私達はそんな事を起こさないように上手く処理するのが目的なんです!――それが私達時空管理局の仕事ですから」 時空管理局―――そう聞いたルキアと恋次は、何故か顔色を変えた。 「―――ホントか!!」 対する一護は、冷や汗だらだらでスバルに詰め寄っていた。 「ホ――ホントですよ」 スバルはちょっとたじろきながらも、きっぱりとそう答えた。 一護はしばらく疑問に感じていたようだが、スバルの邪気のない眼を見て、思い直した。 (――嘘をつくような眼じゃないよな) と、同時に新たな疑問がよぎった。 「じゃ、あの虚や変な機械は、コイツを狙ってたってことか?」 「…あの変な怪物、虚って言うの?」 「そっちこそ、あの変な機械について、何か知ってるのか?」 様々に浮かぶ疑問について、一護とスバルはしばらく言い合ってたが、やがて潮時かと思ったティアナが、一護とスバル、そしてルキア達を見てこう言った。 「まあ、色々知りたいこともあるだろうけど、こっちも訊きたいことがあるから、一緒にご同行願えないかしら? あなた達は敵ではないようだしね」 それには、一護も頷いた。 「ああ、わかった。こっちも訊き―――」 「一護」 不意に、恋次が会話を阻んだ。肩に手を置き、スバル達に聞こえないよう囁くように、こんなことを言った。 「一旦退くぞ。――そいつは渡すな」 「―――え?」 一護は、しばらくその言葉を理解できなかった。 しかし、そのときには恋次とルキアは既に行動に移していた。 「済まないが、それは承服しかねる」 「ワリィが、コイツはもらっていくぜ」 「「――――え?」」 今度はスバル達が唖然とする番だった。 しかし、そう言う間に恋次は、同じように呆然としていた一護を引っ掴んでビルを飛び降りていた。 ルキアも、今から飛び降りようとしているところだった。 「待っ―――」 慌てて止めようとするスバル達に、ルキアは何かを唱えていた。 「済まぬな」 そう呟くのが聞こえた後、ルキアは叫んだ。 「縛道の一『塞』!!」 「―――え…」 もう少しで彼女に届くはずだった自分の手は――、 しかし次の瞬間、いきなり後ろに回ってしまった。――まるで見えない縄で縛られたかのように、両腕は後ろで固定される。 「―――ティア!!」 しかし、振り向いても自分と同じように、見えない縄に必死で抵抗しているティアナの姿があった。そうこうする間に、ルキアも一護達の後を追うように飛び降りて行った。 二人が下を見やったときにはもう、彼等の姿は無かった―――。 「どうして……」 スバルはただ、そう呟くしかできなかった。 ――――――――――――――――――――――――――――――――To be continued 前へ 目次へ 次へ