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Battle for Blood 血の戦い マッチ3、落ち物 RTS 499円税込141.0MB 30秒以内に壮大な戦い! ※本作は日本語に対応しておりません 絶え間ない楽しさと興奮! 最初から血まみれの戦い。 30秒以内の壮大な戦い。 まったく新しいタイプのゲームが登場します! 戦争を始める準備はできていますか? 私たちの騎士、兵士、そして私たちの農民でさえ、行く準備ができています! 私たちを悪魔の隠れ家に導いてください! •楽しく、簡単にプレイできます! タイルを合わせて兵士を召喚します。 爆発的な楽しみ! •カジュアルゲーマーのための壮大な戦場体験! 本当に壮大な戦い、激しい婚約! •戦闘のためにあなたの軍隊を選んでください! あなたはどれほど戦略的になることができますか? •12種類の兵士。 アップグレードして、好きな兵士の組み合わせで戦ってください! •あなたを生き続けるのに役立つ5つの特別なアイテム! •戦うための60レベル、あなたはそれを気に入るはずです! •あらゆる段階でのさまざまな挑戦的なモンスター、INTENSE BOSS LEVELS !! ....。 この紹介に腰を下ろす時間があると思いますか? あなたのヒーローは行かなければなりません! 戦場でお会いしましょう! ストラテジー パズル メーカー YFC games 対応言語 英語 配信日 2021年2月4日 IARC_GENERIC 7+ 暴力 (軽度) 対応ハード Nintendo Switch セーブデータお預かり 対応 対応コントローラー Nintendo Switch Proコントローラー, タッチスクリーン プレイモード x , テーブルモード, 携帯モード プレイ人数 1 人 名前 コメント
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THE LOST BATTALION The Lost Battalions A Battle That Could Not Be Won. An Island That Could Not Be Defended. An Ally That Could Not Be Trusted.
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BATTLEAXE 1918 -バトルアクス作戦 1918- 目次 ブリーフィング 全体マップ チケット設定 陣地 登場兵器 解説 史実 コメント ブリーフィング HEADON MAP コンクエストモード / ヘッドオンマップ このマップでは、両軍が真っ向から対決して戦う。敵軍のチケットを先に『0』にした方が勝ちとなる。チケットは陣地を獲得したり敵兵士を倒すことで減らすことが出来る。 全体マップ チケット設定 陣営 比率(COOP) 減少速度(COOP) -% (-%) - (-) -% (-%) - (-) 陣地 陣地名 初期陣営 価値 白旗時間 確保時間 補足 --------------------未編集-------------------- - - - --------------------未編集-------------------- - - - 登場兵器 陸上兵器 --------------------未編集-------------------- --------------------未編集-------------------- 海上兵器 --------------------未編集-------------------- --------------------未編集-------------------- 航空兵器 --------------------未編集-------------------- --------------------未編集-------------------- 固定兵器 --------------------未編集-------------------- --------------------未編集-------------------- その他 --------------------未編集-------------------- --------------------未編集-------------------- 解説 未編集 史実 未編集 コメント コメントは最新20件が表示されます。 (過去のコメントを参照) 名前 コメント すべてのコメントを見る
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ITF (1996~2005) DJの大会では2番目に大きな世界大会。 DJ Hondaさんが率いるdj honda RECORDINGSが開催してるんだっけ? 世界的DJバトル大会を運営する団体I.T.F.(International Turntablist Federation) かつては世界20か所でそれぞれの大会が開催されていました。 日本からも代表が良い成績を修めています。 DJ Haraさんは準優勝してますしね。 引用元 ttp //blog.livedoor.jp/djgobouu/archives/3445483.html
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第二回対戦(36~70ターン) ページ 12 参加者 プレイ進行順 1:128 会社名:十波電鉄 本拠地:十波 路線案内:停車駅案内 過去:8ターン目(路線図),7ターン目(停車駅案内),(7ターン目路線図),6ターン目,5ターン目,4ターン目 2:開光灯 会社名:羽曳野鉄道(HR もしくは はびてつ もしくは びきてつ) 本拠地:羽曳野 3:ラス 会社名:出雲しんわの国鉄道(出鉄(いずてつ)) 本拠地:出雲 4:まりも 会社名:中央高速鐵道(なかてつ) 本拠地:中央 5:mizuiro 会社名:イヨテツ 本拠地:松山 6:Roa 会社名:岩倉西方鉄道 本拠地:岩倉 7:窓 会社名:大野鐡道(おおのてつどう、略:大鐡) 本拠地:豊後大野 +対戦データ +対戦データ(グラフ) ※googleスプレッドシート試験稼働中 現在は表示のみで編集はできません。
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アクセス制御 NINJA TOOLS 航空券 データ復旧 THE LAST BATTLE OF ニンジャ - アンケートページ このページは、ユーザーシナリオ「THE LAST BATTLE OF ニンジャ」のアンケート用ページです。 評価 投票数 ☆5 非常に面白かった。 3 ☆4 面白かった。 4 ☆3 普通だった。 2 ☆2 不満な所が目立った。 1 ☆1 面白くなかった。 0 このシナリオに対するコメントがあれば、こちらから。ただし、シナリオの内容そのものに関わらない内容の書き込み、シナリオ作者氏や、シナリオそのものへの誹謗中傷を目的とした内容の書き込みは禁止とします。シナリオについての雑談をしたり、攻略情報の質問・返答を書き込みたい場合は、外部掲示板をご利用下さい。 名前 コメント 忍者は前衛職のわりに(必要経験値も多く)HPに難があるので、これくらい優遇されれば他の職業とのバランスが取れると思う。 侍、忍者が攻撃力重視、戦士、ロードが防御力重視の職業となる職業バランスがすばらしいです。 中盤以降クリティカルを持った敵が多いのでちょっと辛いかも。 マップの構造が謎解きになっているのが良いと思う。 -- エルアキ☆ (2010-01-23 21 46 26) 総評はすでに別のところで書いたので割愛。シナリオ分岐は確かに1パーティーでマップ埋めたい人にはストレスだったかも。個人的には複数パーティーを作っていたので両方から攻略を進めるというLOL的な楽しみ方ができて面白かった。確かに忍者優遇だが、他の職業にも固有の性能を持つアイテムがあり忍者がいなくても十分楽しめると思う。 -- Hの人 (2007-09-03 07 14 52) 性格によってのシナリオ分岐が珍しい。ただ、その分岐イベントの為に行けない部分が出来たり、分岐関係で複雑には出来なかったかも知れないが、マップが手狭で単調な印象を受けた。だが、シナリオに関しては問題なく楽しめた。 -- n (2007-09-01 23 39 33) 外部掲示板でリプレイを連載していた者です。アドベンチャーノベルを書いている作者だけありテキストに雰囲気もあるし、マップの作りこみやアイテムの効果にもいろいろ工夫が凝らされていてなかなか楽しめました。難易度はそれほど高くないらしいですがノーリセットでやったら中盤かなり苦しみました。まだ全てを楽しみ尽くしたとは言い難いようです。攻略方法も3通りあるようですし、十二宮アイテムを揃えるまでやってみます。 -- Haplus (2007-05-14 14 22 46)
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暗闇の中でひっそりと息をひそめるのは一体の英霊機。暁王子とこルシファーだ。 それが跪く斜め後ろには黒いテントがあった。その中で戦士たちは最小限の焚き木で最後の打ち合わせをする。 「わが軍の撤退は完了しました」 「そうか。では、お前たちも撤退を」 「はっ」 テントの中の兵士たちはすでに用意していた荷物を抱え、去っていく。 逃げたかったわけではない。自分たちが早く逃げなければ作戦が遂行されないからだ。 十分もして誰も居なくなったテントの中、アサ王は安楽椅子に腰かけ嘆息した。 「テンシン……」 戦いの嫌いな彼女の死は、結果をして戦いを生み出した。 「これで、終わりにしよう」 不意に、背後に気配が生じた。アサ王が立ち上がり、振り返ろうとした瞬間、衝撃があった。 左肩に何かがぶつかった。 「フウゴウ。準備はもう万端なのか」 アサ王の左腕に抱きつくのは裸身の女だった。 肌は真珠のような光沢をもち、また程までしかない髪は七色に輝いている。誰もがこの女を見れば作り物と思うだろう。 事実、彼女は人間ではない。 ウリエル植民市の中にある非公式な市場には、市場で取り扱ってはならない英霊鉱を扱う場所があるという。 そしてウリエル植民市の旧貴族たちは英霊鉱に不老不死の効能があると信じてそれを体に埋め込む。 「おいおい、こんな美少女が抱き付いてるっていうのに、戦いの心配しかできねぇのかよ?」 「あいにく俺は心に決めたひとが居るのでね」 「一途だねぇ」 「それはどうも」 フウゴウはウリエル旧貴族の出だ。アサ王の猛攻を恐れ、死を恐れ、一家全員で英霊鉱を体に突き刺した結果、彼女だけが生き残った。 しかも、その後すぐ賊に入られて各地を見世物として売り飛ばされ回された結果、鬱憤がたまりどういうわけか英霊鉱が彼女の体内で溶け、英霊機に変化する能力を得てしまった。 その後ウリエル残党とともに明星の国と戦ってきたがアサ王と戦って負け、軍にスカウトされたのだ。 「ったく……」 残念そうにアサ王の腕から離れたフウゴウが頭を掻いた。英霊機となる時に服を着ていると毎回毎回服がダメになるので、彼女は戦闘の前になるとそこに誰が居ようと服を脱ぐし、過去の経験から彼女自身そう言うことに対する羞恥心が薄れているようだった。 「いいかい、キング。あんたは、あたしが殺すんだからな。絶対死ぬんじゃねえぞ」 「同じことをお前に言ってやりたいな」 フウゴウは戦いに参加し、功績を上げればアサ王に正式な決闘を申し込むことができる。そこでアサ王を斃すことが、彼女の目標であるという。 アサ王は焚き木の火を調整した。もう少し暗くても大丈夫だろう。ファントムにみられては面倒なことになる。 「……なんだ?」 焚き木を調整し、見るとフウゴウがなにか言いたそうな顔でこちらを見ていた。怒っているような、泣いているような顔だが部屋が暗くてよく見えない。 「もぉいいよっ。せっかく人が心配してンのに。ランファはよくあんたみたいなのと上手くやれたもんだぜ」 フウゴウはそういうとテントから出ていった。その後姿をアサ王は不思議そうな顔で見送った。 「?」 「あぁ、もう……」 テントから出たフウゴウはルシファーの隣に立ってその装甲を撫でた。 「お前のご主人様、ニブすぎるぜ」 ルシファーはちいさな唸りを持ってそれに応えた。 「へへっ。ンなわけぁねぇだろ。絶対にあたしを見せつけてやんぜ」
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144 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/07/12(日) 11 11 42 ID 00N8M60C0 私は決めた。このレポート、いや、物語を転送する時代を。それを決めた。 過去に送るか未来に送るかは分からない、といつしかこれに書いたつもりなのだが、 とにかく、私は過去に送る事に決めた。 最初に「時は未来」と書いた事を思い出す。 思えば、あの時から過去に送ろうと決めていたのかもしれない。きっとそうだろう。 恐らく、私が決めた時代に送ることが出来れば、 この物語のネタが分かって面白いと感じる人が出てくるかもしれない。 万が一の場合、ミスを犯し、それ以前の時代にこれを転送してしまえば、 面白いと感じるどころか当たらない予言の書扱いされるのがオチだろう。 でも、それでも真実の一部に触れてくれる事に変わりは無い。それでいい。 これは馬鹿げていて、そして荒唐無稽な話だ。 これまで読んでくれた方はそう思っているだろう。 書いている私がそう思っているのだから、読んでくれている人たちだってきっとそう思うはずだ。 2999/12/25 18 24 この時刻からこの「Phase 3 -decisive battle-」は始まる。 まだ、決戦の火蓋は切られていない。だが、もう少しだ。もう少しで始まる。 145 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/07/12(日) 11 14 58 ID 00N8M60C0 破滅へと導く意思と永続へと導く二つの意思 その二つの意思が激突する時 壊れた円環は修復されあるべき姿へと還る 始まりと終わりの繋がる、無限の円環へ 2999/12/25 18 24 一度解散したユール達は時間通りにターミナルタワー屋上に集合した。 それから再度メトロのプラットフォームにある秘密通路からWSF基地に入り、 先に来た時よりは軍服を着た人々が多く歩く寒い廊下を歩き、そして作戦会議室へと入室した。 トルセが前に入室した時と同じく部屋の明かりを点け、 そしてユールは見慣れないショートカットの女性が一番奥で座っていたのを見た。 女性は外見上20代半ばに見え、髪の色はユールと同じ黒だった。 髪の伸びは首のあたりで止まっている。髪型はストレートヘアー。頼れる女性といった雰囲気を醸し出している。 ユール達は前に入室した時と同じ席に座り、トルセが進行役を務めるブリーフィングに臨んだ。 「えーと、この人はアヤさん。アヤ・イシカワさんです」 トルセはブリーフィングの準備を進めながら五人に言った。 アヤと呼ばれた女性は立ち上がって自己紹介を始めた。 「今晩は、皆。今日は協力してくれて感謝する。 トルセから紹介されたが、私の名前はアヤ・イシカワ。アヤでいい」 「よろしく」とアヤが言い、ユールは頭を下げ「こちらこそよろしくお願いします」と返した。 それに倣って他の四人も頭を下げて同じセリフを言い、そして動きを見せたホログラフを見つめる。 「前のブリーフィングの時に言った敵の兵器… 獅子型高機動制地兵器、蠍型高機動制地兵器、 烏賊型超高機動制地兵器、人型可変機動型制空兵器。この四つはもうWOS本部を出た。 WSF総帥はWSFカーニバル基地の視察のために今日来るという事になっているわ。 …言おうかどうか迷っていたくらいの機密事項だったの。さっきは言えなくてごめんなさい。 それで、WSF総帥は自分の飛行機と彼を護衛するかのように取り囲んでいる大型の飛行機、 中身は機密事項の輸送機ね。それを引き連れてカーニバルにやって来る」 「到着時刻は?」 クーリーが聞いた。 「計算してみると、ほら、皆のホログラフに出たと思うけど、22 00位に来ると推定されている」 それを聞いたクーリーは「やっぱトプランのアレか…」と呟いた。 そんなクーリーの姿を見ながらトルセは話を続けた。 「トップランカー決定戦、アレを一般客の集合というか陽動に使うって言ったよね? このタワーがシールドで護られている事も言ったよね?」 五人は無言で頷き、そしてトルセに続きを言うように求めるかのように押し黙った。 「大体の人はトプラン決定戦を見に、会場であるターミナルタワー内部に押し寄せる。 集まらない一般客は、WSFの兵士がどうにかして保護するか、タワーに入れてあげる。 だから、戦闘による死亡者の出るリスクは、私達を除いては全く無いから安心して」 死ぬ可能性があるのは私達だけ…それを幸運だとトルセは捉えているのだろう。 そんなトルセにユールは密かに尊敬の念を抱いた。自分が死ぬかもしれないという事に恐れを抱いていたからだ。 146 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/07/12(日) 11 24 26 ID 00N8M60C0 「それで」 トルセが言ってホログラフの動きに変化が見られた。 獅子型高機動制地兵器の姿が拡大され、その兵装が明らかになっていく。 「鬣の先端はレーザー照射装置になっている。喰らったらお終いよ。 耳の所はレーダーね。中の人がいないAI制御の兵器だから、高範囲レーダーを潰すのは得策だと思う」 ふむふむ、と五人は頷いている。いや、四人だ。 クーリーが手を挙げ、トルセにそれはなぜかと問うた。トルセは次のような例え話をし始めた。 例えば、人の顔をじっと見つめるだけでその人を殺せる能力をもったAという人物ががいたとしよう。 ただし、Aの能力は殺したい人物の顔の輪郭をハッキリさせておかなければならないとする。 視力が10.0のAならば、まさに脅威としか言いようがない。目隠しでもさせておかねば殺されてしまう。 しかし、視力の大半が失われてしまえば、遠くから攻撃する事が出来る。 つまりはそういう事なのだ、とトルセは言い、クーリーは納得し、そしてユールはトルセの次の言葉を聞いた。 「機密事項だけど、狭い範囲しか探知できないレーダーとウチのAIは相性が悪いのよ。 一応この兵器にもそんなレーダーは予備で積んでいるらしいけど、 耳の高範囲レーダーを潰せば視覚を奪ったようなものになると思うわ」 トルセが説明した兵器の他に、まだ二つの兵器がホログラフには示されている。 アリスがその他の二つの兵器について質問すると、トルセはこう答えた。 「顎髭の所、そこに放射状についている三枚のパネルのそれは ホログラフにも出ていると思うけど、レーザーブレード照射装置よ。 正面から接近戦を挑めばアレで焼き切られてしまう。 正面からの攻撃は有効じゃないってこと。死ぬ確率の方が多いし」 「じゃ、もう一つのコレは?胸の所に何か鉄柱が埋まっているような感じだけど」 「これは…バルカン砲だね。WSFが使っている中でもとびっきりの威力の。 それを喰らっても体はバラバラになると思うわ。 だから、絶対にあの兵器の正面に立っちゃ駄目。近づくなら正面以外ならどこでもオーケイ」 トルセはそこで言葉を切り、何かの操作をした。 すると、ホログラフの中の兵器の背中から後ろにかけてが青く光っていった。 「この青く光った部分は排熱のために何も武器を積んでいない。 排熱の効率を上げるためにも装甲は薄いし。だから、この青い部分が弱点」 「つまり、危険な真正面さえ避ければ楽勝な敵って所ね?」 「楽勝は言い過ぎだけど、戦いやすくなるといえばそうなるわね」 アリスの言葉を指摘しながらトルセは言い、次にホログラフ上の蠍型高機動制地兵器の姿を大きくさせた。 147 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/07/12(日) 11 41 32 ID 00N8M60C0 「この蠍について説明するわね。 これは……あのライオンと同じように正面方向に対しての攻撃力が高い。 でも、ライオンが抱えていた『横または後ろを取られ続けると弱くなる』 という弱点をこの蠍はこの針で克服した」 トルセが言い終わると同時に、ホログラフの中の蠍の尾にカメラが注目、拡大されていった。 そしてその尾、そして針の名前が表示される。 「超振動粉砕針?」 ユールは「一体何なんだこれは」と言いたげにそれを読み上げた。 「文字どおり、あの針は目に見えないけれどかなりの回数の振動を起こしている。 超振動しているから威力は物凄く高い。今回相手にする四機の近接攻撃手段の中では 他を超越する威力を持っているわ」 「つまり、喰らったら即死……ということですか?」 クーリーが言った。トルセが即答する。 「そうね、どんな相手でも」 「僕とユールは、あの大きな箱に乗り込むんですよね。それだったら……」 「生身の人間と比べれば明らかに耐久力はそっちの方が上よ。 でも、この蠍の針の前では誰もが皆等しいわ。注意して」 そう言ってトルセはまた何かを操作した。ホログラフが動きを見せる。 映し出されているのは蠍の口元のあたりだった。そこには何か円筒状のものが突き刺さっている。 「これは火炎放射器『クリーンアップ』よ。 普通の歩兵が使うような火炎放射器と威力は変わらないけど、 あれは連続一時間は使えるはず。戦闘時間から考えて、放射時間は無限と捉えてもらって構わないわ」 「ひでぇ」 アルベルトが言った。「あのライオンとは比べ物にならないほど強ぇじゃねぇか」 確かに、これまで並べられた情報から判断すると、獅子型高機動制地兵器と比べれば この蠍型高機動制地兵器の方が強い印象を抱かざるを得ない。彼の言い分はもっともだ。 しかし、トルセはこれを否定するかのように言った。 「弱点がない事は無いわ。奴は正面180度の視界しか得られていないし、レーダーを積んでないの。 カメラの視力は…世界記録を持つ人の数字を軽く超えるけど、後方の視界情報は全く得る事が出来ない。 それに、アレにはもう一つ弱点がある」 「もう一つの弱点だって?」アルベルトが噛みつくように言った。 「もう一つの弱点は」トルセはそこで切って続ける。 148 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/07/12(日) 11 49 58 ID 00N8M60C0 「あの蠍の全身はとても固い。装甲を攻撃で全部剥がすとなると相当な長期戦になる。 次の敵の相手をする事も考えれば、15分程度でカタをつけたいのよ。 でも、正攻法で行こうとしたらそれは無理。でも、脚を積極的に狙えば…… この八本の脚は比較的に装甲が薄いの。ここを攻撃する。 航空部隊がこれを狙うのは難しい。だから地上部隊がライオン戦と連戦になる。 それは航空部隊も同じなんだけどね。負担は地上部隊の方が上になるわ」 それを聞いたアルベルトはため息をついた。それと同時にアリスもため息をついていた。 どうしてそんな所が…双子だから?とユールは思いながらトルセに言った。 「航空部隊って、私とクーリーの事よね?」 「そうだけど」 「私は戦闘機を支援する支援機だけど、アル達の手伝いは出来ないの?」 「戦闘機に乗るのは…クーリーね。彼が大きな一撃を決めようとしたらね、 カーニバル自体の被害が広がりそうで……クーリー」 「何でしょう」 「ライオンの時もそうなんだけど、蠍と戦うときは威力の弱い兵装でもって地上に向けて撃って」 「分かりました」 「それと、ユール」 「なに?」 「クーリーもそうなんだけど、後であの箱型の飛行機の操縦方法を教えるけど、 兵装の一部を教える事は出来る。ちょっとした作戦があるんだけど、どうだろう」 トルセ、そしてアヤ以外のこの部屋にいた人々は一斉に「どういった作戦なのか教えて欲しい」 という旨の言葉を言った。トルセは顔をしかめ、一つ間を置いてから言った。 「ユールの支援機にある対地支援兵装『バインドレイン』というのがあるの。 特殊な弾を使って、敵の動きを封じるの。使いようによってはいい感じにアシストできる。 ユールはある程度ダメージを負った蠍に向けてこれを撃って、蠍の動きを封じる。 そしてクーリーが蠍の上でホバリングして撃つ。アルベルトとアリスも脚を撃つ。これで勝てる」 トルセはそう断言し、「次は烏賊型超高機動型制地兵器について」と言って装置を操作した。 149 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/07/12(日) 12 00 35 ID 00N8M60C0 トルセが装置の操作を終え、ホログラフ上に烏賊型超高機動制地兵器の拡大図が映し出された。 ユールはそれを見てある違和感を覚えた。 「トルセ」 「ユール、なに?」 「これは…本当に、イカなの?」 確かに、これをイカと呼ぶのならば違和感はあり過ぎた。 普通のイカをイメージしてほしい。海中をゆらゆら泳ぐ。八本の脚をもって。 決して直立した姿勢でイカは生きてはいない。死んでも柔らかい体をしている。 しかし、この兵器はそんな所までは再現していなかった。 カクカクした八本の脚。その先端に取り付けられている高威力レーザー砲。 その脚に接続する鳥の足跡のような胴体。 脚と胴体の接続部分に浮遊する二枚の分厚い板。 そして、胴体の三つの頂点には四面体が載っていた。 そんなフォルムを果たして烏賊型、などと呼べるだろうか。 そこにユールは、いや、彼女の友人たち全員は疑問を抱いていたはずだ。 トルセは「イカよ」と答え、そして解説を始めた。 「これは海上で機動力を発揮するように作られている。 これにはアンチグラビティコアを搭載しているんだけど、 そういう特質を持った物を使っているの。だから、絶対に陸地には上がらないと思うわ」 「どうして」 「この機体の一番の強みは機動力。地上に上がれば海上での機動力は四分の一も得られない。 のろのろと動く的にしかならないし、装甲は他の三機と比べるとダントツに薄いから。 それで、コイツにはユールとクーリーの航空部隊で攻撃に当たってもらう。 コイツの強みは八本の自由に発射角度を照射中でも変えられるレーザー砲よ。 それに旋回能力だって高い。普通の動きだって速いから、逃げられるし、攻撃される。 ダメージ覚悟で速攻で当たった方がいいわ。弱点は胴体の頂点にあるこの正四面体ね」 トルセがそう言うと、ホログラフ上では正四面体がアップになった。 「これはこいつのジェネレータ。 このサイズで最高の運動能力を得るには、内部にジェネレータは詰められなかったみたい。 蠍の時の作戦のようにどうにかして動きを止めるかして奴を止め、 そしてこのジェネレータを破壊すれば私達の勝ち。イカは海に沈んでいくわ。 もっとも、素早く動くコイツに攻撃を与えられるかが問題なんだけど。 でもこいつを遥かに上回る厄介な敵が最後に待ち構えている。これよ」 150 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/07/12(日) 12 08 22 ID 00N8M60C0 トルセは操作をしながら言う。 「さっきのイカも、次に紹介する奴もそうなんだけど、 地上部隊は一切手出しはしないで」 「何で」「どうして」 「ハモらなくていいから。台詞もあってないから。流れ弾が当たったらどうするの。 それで、次はこれ。『人型可変機動型制空兵器』ね。これについて話すわ」 トルセが言って、また例のようにこの兵器のアップ姿がホログラフ上に映し出される。 逆さづりになっている鳥だった。猛禽類のような、そんな鳥。だが、どことなく人に見える。 だが、その二本の脚は異常に長く、エネルギーを用いずとも 簡単に色んな物を切断できそうな程に鋭利なように見える。 (これが、この兵器を人に見える錯覚を生んでいるのかもしれない、とユールは思った) 更に、体からはその体長の数十倍程度はありそうなチェーンがくっついていた。 これらの兵装にトルセが解説を加える。 「この兵器は制空兵器とは言っているけど、制地兵器の役割も兼ねているわ」 「マルチロール、という訳か」クーリーが呟いた。 「そう。クーリーが言うように、これはマルチロールタイプ。 空にも地面にも攻撃しやすいように作られている。 翼の先端は全てレーザー照射装置。数えるのが面倒なほどの数があるわ。 そして、この異常に長い脚。モデルみたいよね。 そんなのはどうでもいいんだけど、コレは一応ブレードになっている。 近づくのは危険よ。離れていても翼のレーザーとこのチェーンがある。 この鷲みたいで人間のような兵器が動きまわればチェーンも動く。 ブンブン動く。ヤバいくらい動く。あり得ない程に暴れまわる。 その運動エネルギーを直接敵に叩きこむもの、これは相当な威力を持っているわ。 蠍がショートレンジタイプ、ライオンがミドルレンジタイプ、 イカがロングレンジタイプだとするなら、この鷲みたいな奴はオールレンジタイプといったところね」 トルセが説明を終了し、そしてホログラフの映像が黒くなって消えた。 そして彼女は五人に渡すものがあると告げ、再度兵器廠へついてくるように言った。 151 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/07/12(日) 12 14 43 ID 00N8M60C0 相変わらず寒い廊下。この時間帯になって初めて見かける軍服の人々。 クーリーの隣、それも全員の最後尾で、ユールはそれらをどこか無感情な目で見て歩いていた。 彼女の頭に、先のブリーフィングで伝えられた事は最小限のそれしか残していないかった。 彼女が感情を潜め、重要な情報も忘却してまで考えていた事。 それは私や私達にとってあまり大切な事ではないかもしれない。 だが、彼女にとっては大切な考えるべきことであり、その為の時間でもあった。 私は、何という事を言ってしまったのだろう。 どうしてあの時、クーリーに酷い事を言ってしまったのだろう。 あの時だって、もっと前の時だって、私が困った時に彼は必ず手を差し伸べてくれた。 私のヒーローのような人だったんだ、クーリーという人は。 でも、それが当たり前のように思えていたんだ。 いつの間にか、私は愚者に成り下がっていた。それを当然だと思うのが愚かだったんだ。 それでも、クーリーは時々私の顔を何度か見てくる。 何か異常が無いか、具合が悪そうかどうか、見てくれる。こんな今でも心配してくれている。 私が小さい時から、私がクーリーの家に引き取られた当時から、 彼は私と一緒に行動していた。私の事をよく気遣う、今となんら変わらない善い人だった。 そんな人と会えた事に誰かに感謝すべきなのだろう。 そんな人と親友と呼べる関係になれたことを感謝すべきなのだろう。 だが、誰に?一体誰にそれを感謝すべきなのだろう。 神様だろうか。全ての人々を愛してやまない神様だろうか。いや、違う。 ならば死んでしまった両親だろうか。いや、それも違う。 二人と友人関係であったクーリーの両親は私の事をかわいそうに思って引き取った。 そうクーリーの両親から聞かされたじゃないか。でも、それでも違う。 そしたら、一体誰に感謝すべきなのだろう。一体、誰に? 152 :carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle-:2009/07/12(日) 12 25 09 ID 00N8M60C0 私がクーリーという素晴らしい人と出会えた事。それは誰に感謝すべきなのだろう。 分からない。一体誰を有り難く思えばいいのかは分からない。 でも、私がやらなくてはならない事が一つだけある。 私は、これからもクーリーと一緒にいたいんだ。だから、そのために。 「クーリー!」 「ユール!」 ユールはクーリーの名前を、一瞬遅れてクーリーはユールの名前を叫んだ。 お互いの顔は吃驚したようになって、そして申し訳なさそうな表情を浮かべていく。 二人の前を行く五人は二人の呼びかけの声に反応して振り返えり、足を止めた。 近くを横切って立ち止まった何人かの軍服の注目の視線も浴びながら、ユールが口を開く。 「クーリーに言わないといけない事があるんだ」 「僕も、君に言わなくちゃいけない事がある。けど、ユールが先に言っていいよ」 クーリーの返答を受け、ユールは頭の中で自らが言うべき言葉を並べた。 一つのテーマの中に。何個かの単語を並べて。自分の気持ちを。彼に。 「…ごめんなさい。私、クーリーの優しさを… いつの間にか当然の事だと思っていた。だから……」 ユールは頭の中で上手く纏めたはずの言葉を言えなかった。 言葉を重ねるうちに彼女の両眼からは涙が零れ落ちていき、もう言葉を続けることが出来なかった。 「ユール…」クーリーが優しく呼びかける。 「僕も悪かった。君のためだと考えて能天気な事を言っちゃったけど、 もうちょっと言葉を選ぶべきだった。特にこんな状況じゃね」 それから「ごめんね」と続けてPSCRを手に持ち、 そこから緑の布地に白のチェック模様の綺麗なハンカチを取り出した。 右手で涙を拭うユールは左手でハンカチを受け取り、そしてそれで涙を拭いた。 涙を拭いた後のユールの顔は赤くなっていた。まるで、赤ん坊が思いっきり泣いたような顔だった。 クーリーは無言でユールの頭を数回なで、そしてポンと軽く叩き、そして言った。 「これで仲直りだ。さ、一緒に行こうよ」 クーリーは笑顔で右手を差し出し、ユールは相変わらず赤い顔で笑った。 それからハンカチを持ち替えて左手を差し出し、元通りの仲に戻った二人は足を一歩前に踏み出した。 157 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/07/28(火) 01 11 51 ID RzMvA/8+0 それから数分が経ち、舞台は兵器廠に移る。 一度兵器廠中央に集合し、バレンタイン姉弟とキリーとトルセが散った。 ユールはアヤの顔を見た。ブリーフィングの時は遠くてよく顔が見えなかったが、 近くで見ると落ち着いた大人の女性、というような雰囲気が漂っているように感じた。 辺りには作業服を着たWSFの兵士と思われる人々が 色々なコンテナを作業機械を使って運送しているのをユールは見た。 「爆発物につき取扱注意」と赤色に塗装されたコンテナには書かれてあった。 右に流れていったそのコンテナを見送った後、ユールは左を振り返った。 そこにはエメラルドグリーンの直方体があった。隣には綺麗な青の立方体もある。 二つの箱にそれぞれ数人の作業員がくっつき、何かの作業をしているようだ。 アヤが自分のPSCRを取り出し、中から二つのゴーグル付きのヘルメットのような物と、 いつの時代で使っていた?と思わず言ってしまいそうな分厚い本を取り出した。 そしてユールとクーリーに口を開き、一つの質問を投げかけた。 「今からあの二機の戦闘機、支援機の操縦方法を教えるのだが、ここに二つの教え方がある」 ユールはアヤの言いたい事が分かった。 ヘルメットのような物を使ってか、それともあの分厚い本、いやマニュアルを熟読して あの機体の操縦方法を熟知しなければならない。私なら、間違ってもマニュアルは使いたくない。 「どっちの方が楽で、どっちの方がタメになりますか?」クーリーが尋ねた。 「どっちも、この意識シミュレータの方」 アヤはそう答えてクーリーに二つのヘルメットを渡した。 「意識シミュレータ?」とユールはオウム返しをしてアヤに聞いた。 「あの椅子に座って、それを被って。 ヘッド・マウント・ディスプレイ…HMDのゴーグルをつけて目を瞑って」 ユールはアヤに言われた通りに行動した。隣のクーリーを見ると、彼も指示に従っていた。 二人は椅子に座り、ヘルメットに備え付けられていたゴーグルを着用し、目を瞑った。 158 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/07/28(火) 01 17 07 ID RzMvA/8+0 「目を開けて」アヤの声がしたのでユールはそれに従った。 満月に照らされる何処かの海がユールの足元に広がっていた。 いや、彼女の足は海面から何十メートルも離れていたから足元とは呼べないかもしれない。 そして、視界全てが薄い緑に染まっていた。 下を見ても、上を見ても、左右を見ても、どこを見ても世界は薄い緑を通してユールの目に映る。 そして、ユールの目の前にはポップンの筐体があった。 画面はよく分からないものを表示している。選曲画面やプレー画面以外の何かの画面という事のみ分かる。 一体これは何だ?とユールが疑問に思う間もなく、何かが彼女の頭を殴ったような衝撃の感覚が彼女を襲った。 痛い、と感じる間もなく何かが流入していく。何か。これは何だろう。 情報だ。誰かが経験した動作、その情報をそのまま自分の頭の中に流し込んでいる。 感覚的に言えばそうなるだろうとユールは思考の片隅で思った。 不思議な感覚だった。まるで義務教育九年間で得られる情報を一気に流し込まれ、 そしてそれら全てを習得しているような感覚。確かに自分のものにしていく感覚。 ユールは不意にこの情報が何なのかが分かった。この支援機の操縦方法、応用の操作等だ。 筐体の画面を見る。初めて見た時には何が何だか分からなかったが、今では大体が分かる。 クーリーの家で音ゲー以外の何かのゲームをプレーさせてもらった事があるが、 大体そのゲームで言う所の「ゲーム画面」のような物で、要はどのボタンを押せばどの兵装を撃てるかが分かるというものだ。 これによれば、トルセの言っていた「バインドレイン」は右緑ボタンを押しっぱなしにすれば連続して撃てるはずだ。 「ユール」 いきなりアヤの声が聞こえた。 「なに、アヤさん?」 「アヤでいいわ。さん付けしないで」 「分かった。で、何?」 「たった今情報転送が終わった。意識シミュレータ内でしか今得た知識は使えないが、 このシミュレータの中で得た知識を実践し、経験として現実世界に持ち帰って」 「分かった。ところで、クーリーはどうしたの?」 「彼にも同じ事を言っておいた。でも、彼は高所恐怖症なんだって?」 「IIDXの何か気分の乗る曲でもかけてあげる事は出来ないかな? 前にクーリーはそうやって観覧車を克服したけど」 「BGM機能か。一応このシミュレータにはついている…」 「『エース』だ。観覧車の時に『エース』を聴いていたよ」 「『ダブルエース』ではなくて『エース』? 気分が乗るなら『ダブルエース』を聴いた方がいいと思うが、分かった。 これから一時間だけ時間を取るから、しっかりと私達のエースになって頂戴」 159 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/07/28(火) 01 24 28 ID RzMvA/8+0 アヤはユールとの通信を切って振り返った。 キリーとトルセ、そして後ろにはギター型エネルギー銃を ベルトで肩にかけているバレンタイン姉弟の二人がいた。 アヤが二人を見つめていると、アリスが心配そうにアヤに言った。 「アヤさん」 「だから、アヤでいいから。聞いてなかった?」 「すみません。気を取り直して…アヤ」 「何?」 「意識シミュレータって…大丈夫なんですか?」 さて、懐かしい解説の時間だ。 意識シミュレータって一体何だ?と思われているだろう。 特に過去の人間には。こう言うのも、この時代の一般人に街角アンケートの形で 「意識シミュレータと呼ばれる、仮想空間における訓練プログラムを知っていますか?」 などと訊けば、何を言っているんだと言わんばかりの顔を返答として返すだろう。 それだけ一般に広まっていない存在だし、広まる訳が無い存在なのだ。 意識シミュレータは、正しくは「意識シミュレータ装置」と呼ぶ。 もうお分かりだと思われるが、これは「意識空間での多種訓練を行うための装置」である。 意識空間とは人の意識の中で形成される場のようなものであり、 脳内のそこをつかさどる箇所に機械が干渉する。あのヘルメットがその機械にあたる。 機械は色んなシミュレーションや各種訓練を行うための空間を意識空間として生成する。 脳科学なんて全く分からないので、これが適切な説明かといえば全く分からない。多分間違えているだろう。 簡単に言えば、脳内で色々な事が出来る機械。色んな幻想、妄想を見せ、 それらが満たす空間の中でシミュレーション、訓練を行う。それが「意識シミュレータ装置」である。 アヤの言葉を使うなら、これの呼び名は「意識シミュレータ」だ。 この解説を見て頭が痛くなってきた、という読者はいないだろうと思う。 しかし、私の頭が痛くなってきた。 ちゃんと解説したつもりだが、きちんと伝えられたかが大きな疑問である。 頭の痛みを和らげるためにも、本筋の話を進めるとしよう。 160 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/07/28(火) 01 28 43 ID RzMvA/8+0 「大丈夫って、何が?」 アヤはアリスにそう返した。アリスは少しイラっとしたような顔をして言う。 「ユールとクーリーの事ですよ。 初めて知りましたよ、意識シミュレータだなんて」 「一般公開していないからな。というかコレは機密事項だった」 「……安全性は?」 「え?」 「安全性は大丈夫なんですか?不安材料は無いですか?これに、そういった物は?」 「不安材料は無い。今のところ、エラーを起こしたという事例は無い」 アヤの即答にアリスは納得のいかないような顔をして背を向けた。 トルセがアヤの横顔を見る。明らかに不機嫌な顔をしていた。 「アヤ、ちょっと」 トルセがアヤを少し離れた場所へ連れ出した。 三人に自分たちの話し声が聞こえないような所まで歩き、立ち止まった。 そこでトルセが青色のコンテナを背もたれにしてアヤを見た。 アヤもトルセと同じ姿勢を取って彼女の話を聞く。 「アヤ、イラつくのも分かるけど…」 「そんな顔してる?」 「してる。結構怖いよ、その顔」 「いつもこんな顔じゃないか」 「そうかもしれないけど、彼女の言い方には少し問題があったかもしれないって事。 それを話題にして話がしたかったからここに連れてきたんだけど」 「…何が言いたいの」 アヤの不機嫌な顔が更に歪んできた。それでもトルセはアヤの目を見て言うべき事を言う。 「彼女の言い方は悪かった。でも、彼女には仲間を思う気持ちがあったんだよ」 「それは分かるさ。ただ…」 「素人は黙っていろ、と」 トルセが鋭く低い声でそう言うと、アヤは少しの間逡巡してから返した。 「……何と言うかな、そんな感じだ。否定はしない」 161 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/07/28(火) 01 33 14 ID RzMvA/8+0 「でもさ」トルセが言った。 「素人とかそんなの関係なしにさ、 『彼』はユールに気の合う仲間と組ませて戦わせてあげたいって言ってた」 「『彼』って、あの人惑いの剣の人格?」 「うん。前の二度目の闇との戦いの時、仲間は沢山いたけど 『彼』は仲間達が傷つくのは見たくないとか思ったらしくてね。 だから殆ど彼一人で色々背負っていたから、死んじゃった」 その言葉を受けたアヤは何かの違和感を感じ取ってトルセの言葉を遮った。 「待って」 「どうしたの」 「二度目の戦いが起きたのと『彼』が死んだのはかなり離れている」 「色々事情があったそうよ。『彼』はあの剣を創って、そして闇との戦いに勝利した。 でもあの剣に込めた秘術が……ごめん、これから先は『彼』にも教えてもらっていない」 「いいよ。別にそこまで気にしてはいないから」 「そう…そういうことがあったから『彼』は普通では考えられない死に方をした。 どんな死に方かは言えないけど、『彼』はユールにそういう風に死んで欲しくないって言った。 それを回避するには、自分の信頼できる仲間と一緒に戦うしかないって。 そうする事で、ユールの命の安全が保障されるって」 アヤはそれを聞いて少しだけ笑った。 トルセはそれを見て「何がおかしいの」と聞くと、 「だって、戦いに行くのに命の安全って」 アヤはそれだけを言って返すと、今度は大笑いした。 それを見たトルセは怒った風に言った。 「ユール達は絶対死なせない。そう『彼』が言っていたでしょう? 私とアヤは直接戦闘には参加せずにサポートに回るけど、 その成果次第で彼女たちの生死が分かれるんだよ。 だから、素人の彼女たちを、プロの私達が精一杯サポートしないと…!」 162 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/07/28(火) 01 39 45 ID RzMvA/8+0 「元々あの二機は」 アヤがトルセに言った。トルセはアヤを睨むようにして見上げる。 「元々、何?」 「元々、あの二機は私とトルセに為に開発されたものだ。 無限に等しい力を持つと検査結果が出たアンチグラビティコア二基が 人惑いの剣と共に発掘された時、剣と共にこちらへ寄越された時、トルセは言ったじゃないか」 「何て?」 「『これで私達の航空部隊が完成する。防衛体制は完全に整う。 パイロットは私とアヤ。私が二番機でアヤが一番機』みたいなこと。 人惑いの剣は、今作戦の最終目標を倒すのに必要なんだろう? それまでユールは控えていればいい。あの二機には私達が搭乗すればいい。 あの素人達に事前情報を教え、そしてあの四機を倒させるなんて無茶言うな。無理だ」 「無理なんかじゃない。ユールは必ず勝ってくれる。 彼女は死なないし、彼女の友人たちも死なない。いえ、死なせない。 ねぇ、今だけでいいから、ユールとクーリーにあの二機を貸してあげましょうよ。ねぇ」 トルセは最後に頼み込むように言った。 アヤは少しの間考えた様子を見せ、そして「仕方がない」と返して続ける。 「奴らが機体を大破させたら、後でシメてやるけど、いい?」 「シメるのは駄目だけど、別のアイデアを考えておくわ」 トルセはそう返し、そして自分のMPDで誰かに連絡を取った。 MPDから洩れる音声とトルセの話によると、会話内容は何かを持ってきて欲しいというものようだ。 アヤは通話を切ったトルセに聞いた。 「トルセ、今の電話は…」 「あの双子の防護服を持ってくるように頼んだ。あと、数点の装備品をね」 「あの防護服と、あの靴とアレ?」 アヤの問いにトルセは首肯で返し、それからアヤに言った。 「ユール達の訓練が終わったら、アヤが私の代わりに言っておいて」 「何を」 「三つの部隊名とユール達五人のコールサインの発表」 「そうか。忘れていた…で?」 「航空迎撃部隊名は『ノエル』で。ユールがログ、クーリーがクウ」 「分かった。次」 「地上迎撃部隊名は『ダブルエース』で。アルがスペード、アリスがダイヤ」 「次」 「特殊部隊名は『ルーズ』キリーはダンサー、私がルセ。 アヤは…自分で好きなように名乗って。それじゃ」 それだけ言ってトルセは兵器廠を出ていくための道を歩き出した。 アヤはトルセに託された伝言を復唱し、そして元の場所へと早足で動きだした。 175 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/08/10(月) 21 50 52 ID vrLAzWIt0 さて、私の思う所をここに書かせて頂きたい。 物語のテンポを崩す事を了解してはいるが、どうしても書きたい事だ。 今までの話を振り返ると、SFファンタジーのような雰囲気が出ているだろうと思う。 何と言えばよいのか、過去の時代には出来なかった事がこの時代では出来ているはずだ。 例えばPSCRが挙げられる。私がこれを書いている時間から10年程前に開発されたものだからだ。 それと、年代的に無理だと思われる物が一つだけある。 アンチグラビティコアを用いた技術だ。これだけは絶対にあり得ない。 このコアが採掘できるようになったのは今から約100年前からとされている。 しかもその採掘場所は海底。海底に突っ込んだ隕石を採掘し、コアとして利用しているのだから。 いや、私が言いたいのはそういう事ではない。そういう事ではなく、別の事だ。 私の主観だが、ファンタジーという世界観での戦いとは剣や魔法が出てくるものだと思っている。 それにSF、つまり空想科学を持ち込むと、どこか現実のようでそうではない物が現れる。 例えばこの話で言うならばAGCVだろう。アンチグラビティコアを埋め込み、宙に浮く乗り物だ。 それにユール達が使用する兵器や武器。これらも読んでくれている人々にとって 空想科学の産物以外の何物でもないのでは、と思う。 だから、SFファンタジーの世界観での戦いは(私の主観だが)どこか現実味を欠いた現実になる。 ファンタジーでは剣と弓を操り、悪を滅ぼしていく者が勇者となる。 だが、私の考えるSFファンタジーは、武器の代わりに最先端の技術が用意され、 魔法の代わりに空想科学が奇跡を起こす。それに、誰もが勇者にも英雄にもならないし、誰もがなれない。 ユールの持つ剣に宿っている「彼」ですら、私にとってすれば英雄ではない。 私にとって「彼」は世界を救った勇者でもない。ただの人としか見る事が出来ない。 ファンタジーならば、主人公は強大な力を持っており、それをもってして悪を打ち破る。 その主人公は勇者となり、伝説となって英雄として語り継がれるだろう。その話の中で。 だが、SFファンタジーにおける戦いとは「戦争に近い戦い」ではないだろうかと感じる。 箱の戦闘機に乗り、ギターを模した銃を撃ち、踊ってエネルギーを溜めて放出する。 三つ目はどうかとは思うが、これは実際の戦争での戦闘に近い所があるのではないだろうか。 選ばれた存在も何も関係ない。シリアスな命のやり取りの戦いで、誰もが平等に戦い、誰もが等しく死ぬ。 それが、SFファンタジーにおける戦いのあり方なのではないか。 長くなってしまったが、簡潔にまとめるとなるとこうだ。 ユールは光に選ばれた存在だとか何だとか言われていた。 確かに彼女自身には変化が起きていた。この時、まだ彼女が気がついていないだけで。 だが、それを考慮しても彼女は一人の人間として戦いに臨む。 選ばれたとか、そういう使命感は一切抜きで。彼女は何者にも代えられない大切なものを守るために戦った。 あの時、ユールは私にそう言った。 他の四人も、それぞれに守りたい大切なものを抱えていた。だから皆で戦ったのだ。 自分だけではなく、皆で。誰もが自分の大切なものを守ろうとする姿勢を見せる、一人の人間として戦った。 176 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/08/10(月) 21 57 40 ID vrLAzWIt0 物語が再開した時刻は21 45だった。出撃まであと10分前である。 ユールとクーリーが意識シミュレーションを終えた後、 ユール達五人は徹底的に念入りに敵の大型制圧兵器四機の特徴について覚えこんでいた。 それから「ダブルエース地上迎撃部隊」として 地上迎撃にあたるバレンタイン姉弟に四点の装備が用意された。 靴の形をした加速器、背中に背負うリュック型飛行用ユニット、全身防護のための黒と赤のパワードスーツ、 ユール達が意識シミュレータ内で使用していたものとほぼ同一のゴーグルである。 キリーには「ルーズ特殊部隊」としてターミナルタワーWSF基地に残るように伝えられた。 一緒に戦えないのが残念だ、とキリーは不平を洩らしたが、 「キリーが踊って『パワー』を溜めておかなきゃ『トラップ』が仕掛けられない。 だからどうしても、キリーにはここに残って欲しい」 とアヤがなだめた。その声色も、その表情も、トルセと密談していた時と前後すると 幾分か柔らかくなったように見える…のは気のせいだろうか。 最後に「ノエル航空迎撃部隊」として航空迎撃にあたるユールとクーリーは もう戦闘機に乗り込んで中の異質な雰囲気に慣れるように言われた。 異質な雰囲気?とユールは訝しがりながらもエメラルドグリーンの箱に走って飛び込んでいった。 ぶつかる、と誰もが思っただろうがユールの体は箱の中に吸い込まれていき、 箱型のゼリーの中に人がいるような錯覚を第三者達に与えた。 かなり異質な搭乗方法だが、これがこの機体の正しい搭乗方法なのだから仕方が無い。 ユールが搭乗したが、クーリーは足を一歩も踏み出していなかった。 それをアヤが見て、そして彼女はクーリーに言った。 「怖気ついたか?」 「いいえ。最期に、もしかしたらの最期ですけど。まだ死ぬわけにはいかないんで。 …考えたくも無いけど、もし、それを迎える前に聴きたい音ゲー曲があるんです。少し長いですが」 構わないさ、とアヤが返し終わったのと同時にクーリーはMPDを取り出し、 ポケットからイヤホンを取り出して曲を聴き始めた。 carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle- St.2へ続く コメント 名前 コメント
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226 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/09/20(日) 23 40 26 ID nvs7nVtF0 カーニバル上空 ステルス空中管制機「フェニックス」 20 25 スタッフ達に混じって自分の成すべきことを成し遂げているイロン。 観察役のスタッフから、ライオンの首がもげた事、 即ちユール達の勝利を聞き、それを伝えるためにルセコネクションで連絡した。 「勝った!あいつらだけでどうなる事かと思ったが、何とか倒せたな!」 「えぇ。やっぱり剣、いや彼、いや…彼女の言葉を借りるならマキナかしら? 彼の思惑通りに展開は出来ているようね。スペードの怪我は予想外だったかもだけど」 「マキナ?…あの人惑いの剣の事か。そんな風に言っていたな」 「そうそれ。それで、そっちに戦力の用意は出来てる?」 「彼らといつでも交代できるよう、10人の精鋭を用意していたが、取り越し苦労だったな」 「総帥がどこにヘリを着けたか覚えてる?」 そう聞かれたイロンは直ぐに自分の端末を操作し、求めている情報を探し出す。 「あった。そこから方位189に10キロほど離れた所にある島だ」 「えっと……あった。ドラム缶みたいな形をした島ね?」 「ただの長方形だろ…そう、その島。で、それが?」 「作戦があるんだけど、次に総帥が仕掛けてきたら、まずこっちで迎撃するでしょ?」 「決まってんだろ。それが?」 「迎撃して巨大兵器の注意を引いている内に、総帥のいる島を襲撃する」 考えたな、とイロンはルセの作戦を評価した。 防戦一方ではなく、こちらから仕掛けてみようというのだ。クロスカウンターのようだ。 しかし、それには問題点がある。フェニックスに搭乗するWSFの精鋭兵士たちの事だ。 「しかしなぁ、こっちは空に浮かぶ空母じゃない。フェニックスごと島に行くのか?」 「いいえ、乗り物はこっちで用意しておく。タワー屋上にでも置いておくわ。 とりあえずカーニバルタワーの上空へ移動してくれない?そうでないと」 「あぁ。兵士たちが降りられない。今そっちへ飛ぶように言うよ」 そう返して、イロンはスタッフ達に先の無線の事を伝えた。 スタッフ達は指示を受け、すぐさま自分たちの成す仕事にとりかかった。 227 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/09/20(日) 23 46 56 ID nvs7nVtF0 所変わって、舞台は第一ブロックへ移る。 獅子型高機動制地兵器はバレンタイン姉弟が属する 地上迎撃部隊「ダブルエース」によって止めを刺された。 戦闘中に右足を負傷したアルベルトと、傷らしい傷をそれほど負っていないアリスは 航空迎撃部隊「ノエル」のクウことクーリーが搭乗する機体から伸びる 機械腕に抱えられ、アルベルトの治療のためにターミナルタワーの屋上を目指していた。 アルベルトの負傷の進行状況は、深刻という程でもないが、 相当なダメージを与えるものとなっていた。戦いの緊張から解放されたアルベルトは 次の兵器と戦うまでの間、自分の右足を襲う激痛と戦わなければならなくなった。 アルベルトの右足には、紛れも無く穴が開いている。 足に装着していた加速器が、本来の役割とは違う防具の役目を果たしていなければ 彼の右足はとうに吹き飛んで存在していなかったかもしれない。 苦悶の表情を浮かべ、獣のような唸り声を上げる。 アリスがアルベルトに 「死なないで!死なないで!もう少しだから!!」 と声を送る。このダメージでショック死する事は無かったが、 もう時間が時間だ。一刻も早く処置を施さねば、アルベルトは出血多量で死んでしまう。 そんな二人を自機から垂らしている機械腕で持って移動させるクーリーは カーニバルタワー屋上である物を見つけた。仮設の手術室のようで、 よく医療を取り扱ったTVドラマで見る手術室にある器具や寝台が並べられている。 その近くには白衣を着た少し太り気味の男と、その助手たちであろう 若い男女七名が寝台を取り囲んでいた。準備は万端のようだ。 「スペード、ダイヤ、あともう少しだ。10秒もしないでそこに着く。すぐに治る。気をしっかり持って」 「クウ…か……もし…か…した……ら…俺は…」 「大丈夫死なない絶対死なない!見て、あそこの医者たち。あの人達がちゃんとやってくr」 「最期に……なる…かもしれ…ない、お前を、お前らを…普通の…名前で…呼びたかっ…た」 「死に真似なんてよしなさい!ほら、着いたからね! 体を預けて!私がお姫様だっこしなきゃ動けないでしょ!?行くよ!!」 「あぁ…姉貴……」死人が話す言葉のように、アルベルトの返したそれは聞こえた。 228 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/09/20(日) 23 51 40 ID nvs7nVtF0 (アイピーエス細胞と瞬間増血剤(※4)を用意しろ。いや待て、先に止血が先だろう! 一体君たちは何をやっているんだ!――どうだ、そこの君、彼の傷口は?) (銃創以外にダメージはありません。何かに感染した様子も見られません) (そうか、よし、このまま処置を続けるぞ! この子供を死なせては、後々厄介になってしまうからな、気合いを入れてかかるぞ!) ユールは機体内蔵の指向性マイクを使い、ターミナルタワー屋上で処置を受けている アルベルトの様子を窺っていた。指示をする医師とそれに従う医師のやり取りを聞きつつ、 イロンからの哨戒飛行命令を受け、アルベルトの身を案じながら周囲に注意を払った。 クーリーはアリスをタワーに立たせ、哨戒飛行を続けるユールの横に機体を並べる。 彼はログコネクションでユールと無線で会話を始めた。 「初めて命をかけて戦ったけど、ログ、大丈夫かい?」 「それは…いいえ、あまり良くないわ」 「そうだね…彼も怪我、しちゃったし。 次は何なんだろうな、蠍だとしたらちょっと不安だな…」 「何で?」 「そりゃ、奴が一撃必殺を繰り出す針をもっているからさ。 スペードがやられて、一番頭に来ているのは誰だと思う?」 「ダイヤかしら」 「そうだよ。彼女がどんな行動を起こすか分かったもんじゃない。 僕たちがもっと団結していかないと、次がどうなるか分からないよ」 ユールは無言を応答とし、クーリーの言葉を待った。 「ま、仲間ってのは信じ合うからこそ仲間って言うんだよね。 お互いが信頼しあえば、大丈夫だ。絶対に」 ユールの首にかけられているマキナが言った。 クーリーは「剣の人?」と答え、ユールがそれに返す。 「彼の名前はマキナ」 「マキナって……あぁ、あの駅前の喫茶店のマスターが言っていた、アレ?」 「かもしれないし、違うと思う。私の前任者のような人だよ」 「表現としては大体合っているかな。アr…ダイヤだったかな。 彼女が危なくなったら、僕がどうにかして彼女を守ってみせよう」 (※4 瞬間増血剤というのは、輸血効率を飛躍的に上昇させた輸血剤のような代物。 人体の造血システムに作用するものと、増血剤の進化版としての二種があるが、 アルベルトに投与されたのは両方だった) 229 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/09/20(日) 23 55 34 ID nvs7nVtF0 「ちょっと待って、ネックレスがどうやってダイヤを?」 クーリーはマキナにそう訊ねた。 実際問題、そうなのだ。どうやってネックレスが一人間を守るというのか。 「それは、彼女のおかげだよ」 マキナはそれを言ったきり、再び喋る事は無かった。 「彼女って…君かい、ログ?」 「別に私は何も。マキナは人を乗っ取るって言うけど、そんな気配は無いし」 「まぁ、あまり期待しないで、哨戒飛行を続けよう」 「…スペード、助かるといいんだけど」 「大丈夫。彼はそう簡単には死なないから」 2999/12/25/ 20 30 enemy huge offensive weapon hi-speed ground-to-ground attacker "SCORPION”’is approaching! ターミナルタワー内のWSF基地で、ルセが見ているの一つのモニターにそう表示された。 次の敵兵器が襲来したのだ。ブリーフィングで二番目に紹介した「蠍型高機動制地兵器」だ。 ルセはこれを受け、直ぐにタワー屋上に戦闘機を配備するよう通達したが、 未だにアルベルトの治療を続けているとの返答を受け、ため息をついた。 どこかに移動してからアルベルトの治療を続ければよいではないかと思われるだろうが、 彼の状態はそれが出来ないほど危険なものなのだった。 「おいルセ、東の海に異常が見られた。何だありゃ?」 「イロンね?蠍が来たわ。海面すれすれを高速飛行してこっちに近づくコンテナがある。 あの中に入っているの……ノエル2、応答して!」 「え、あの海から物凄い勢いで飛沫が出ているのって…」 「そう、蠍!今の内に攻撃して沈めておけばだいぶ楽になる!」 「卑怯だけど、どうこう言ってられないよ!」そう言ってノエル2ことクーリーは 一気に機体を加速させて東へと向かった。ユールも慌ててその後に続く。 230 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/09/21(月) 00 07 10 ID STG3w4xH0 「なぁルセ、お前の作戦、今は決まりそうにないぜ」 「……医師団に告ぎます。現在治療中の彼をどこかに移動させ、そこで治療して下さい」 イロンからのルセコネクションによる無線通信にルセは無言で応対し、 オールコネクションにしてタワー屋上の医師団の通信役に指示を出した。 「お言葉ですが、今の彼は大変危険な状態です。 後三分で一通りの処置を終えますので、それまで待って下さい。お願いします」 「分かりました。三分後にそこから立ち退き、治療を続行してください」 そう言ってルセは無線を切り、そしてため息をついた。 何故こうも上手くいかないのだろうか。全ては私のミスなのだろうか…… そう思考を巡らせていたルセの耳に、この司令部の部屋の自動扉がしゃっと開いた音が入る。 ルセが座ってた椅子を回転させて振り向くと、そこには汗だくになったキリーが立っていた。 「終わりましたよ…パワーゲージ、満タンです」 「御苦労さま。後であの部屋に戻っておいて。あなたのケアをするから。 それで…一体どういうメニューを立てて、短時間でフルパワーに出来たの?」 「MAXシリーズで詰めようかなって思ったんですけど、天ヒーにしておきました」 「ごめん、略称って分からない。とりあえずすぐに戻って。 指示があるまで休んでいいから。何か聞きたい事とかある?」 「話に聞いたんですけど、アルが右足を撃たれたって…」 「大丈夫。うちのプロがしっかり治療にあたっているから。心配しないで」 分かりました、とキリーは言って退室する。 その後ろ姿を見送り、ルセはパワーゲージをどのように使うかを考えていた。 キリーの溜めた力はどこにでも展開する事が出来る。カーニバル全体がそういう構造を取っている。 だいぶ前に先述したが、パワーゲージが1/30で缶を粉々に粉砕できるほどの力を有している。 しかし破壊力は必ずしもパワーゲージの使用量に比例するとは限らない。 加速度的に使う分量だけの破壊力を発揮できる、と資料にはある。 このゲージを5/30使うだけでも、ブロック間を繋ぐ橋を一本落とす事は十分に可能である。 蠍が橋の上に来た時、これによって橋を破壊し、海へと落としてフィニッシュを決める。 別のやり方もあろうが、ルセはこれが最良のような気がしてならなかった。 231 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/09/21(月) 00 14 11 ID STG3w4xH0 その頃、クーリーは海面に触れそうな高度で高速移動する巨大なコンテナに攻撃を加えていた。 操縦は積んでいるAIに任せ、コンテナと並走してカーニバル側に移動しつつ、 DPモードによるエネルギーライフル射撃を試みていた。 ユールもクーリーと挟撃するようにコンテナと並走し、左右の速射砲を撃ち続ける。 しかし、両者の攻撃は当たらない。狙いは正確なのだが射線がずれてしまうのだ。 その為、コンテナの姿を隠すかのような大きな飛沫が連続的に飛ぶ。 ユールはイロンにオールコネクティングで無線連絡をした。彼女なら何かアドバイスをくれるかもしれない。 「イロン!コンテナに攻撃が当たらない!!」 「ノエル1、もしかしたらそのコンテナはアードを積んでいるのかもしれない」 「でも、この大きさじゃ、積もうにも詰めないんじゃ…」 「きっと改良が進んだんだ、僕はそうじゃないかと思うよ」 「ノエル2の言う通りかもしれない。技術は日進月歩するんだ、考えられなくは無い」 そう言ってイロンは無線を切った。 畜生、とクーリーの声が聞こえる。このコンテナを海に落とす手段が無い。 よってユールとクーリーは役目を果たす事が出来ない。 「じゃ、これならどうなのよ!?」 ユールは叫び、コンテナと並走する機動を止め、コンテナの上部に移動し、 そこで並走しつつ、かなり近い距離で密着するかのような高度を保ち、 「バインドアーム…発射!!」 その号令と同時にユールは左右の黄ボタンを同時に押し、 機体下部から巨大な黄色の腕を伸ばし、コンテナに突っ込ませる。 流石にアードを積んでいるとはいえ、これを回避する事は出来なかったようだ。 黄色の腕がコンテナの両側を持ち上げる。 ユールの機体の上にはコンテナが身動きとれない状態で固定されている。 今しか攻撃のチャンスは無い、とユールは考えてクーリーに叫ぶ。 「クーリー、決めてやって!」 オーケイ、とクーリーは返し、DPモードにして、一瞬にして距離を詰め、 両サイドのエネルギーライフルの装備でコンテナにラッシュを仕掛ける。 瞬く間にコンテナはダメージを受けてへこみ、中の蠍も無傷では済まない様子を見せつける。 「決める!」とユールが呟き、黄色の腕を一旦下ろし、そして勢いよく振りあげる。 コンテナは天高く舞い上がり、それよりも少し高度の高い所にユールの機体が移動する。 ユールはすぐさま赤ボタンを連打し、レールガンを出現させ、それを連射した。 コンテナのアードは先のダメージで破壊されたようで、ユールの放った弾体は全段命中した。 232 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/09/21(月) 00 21 45 ID STG3w4xH0 レールガンの全ての弾体を浴びたコンテナは、空中で爆発し、中から巨大な蠍を吐き出した。 しかし蠍は第三ブロックには落ちず、そのまま東レイヴン海へと落ちていく。 蠍に潜航能力は無い。落ちれば最後、海中の資源ごみとなるだろう。 落ちていく。落ちていく。落ちて――― 予想される飛沫の音は上がらなかった。 蠍が海面に浮いている。いや、そういう風に見えるが、実際に「浮いて」いた。 「馬鹿な!!!」 そう叫んだのはキリーだ。続いてユールとクーリーも驚きの声を上げる。 「嘘でしょ!?」「やったと思ったのに!!」 しかし、これは現実なのだと言わんばかりに 蠍は海面すれすれの高度を保ち、遅いスピードで第三ブロックへと近づいていく。 ノエル航空迎撃部隊ことユール達二人は蠍に追いつき、攻撃を加えていく。 しかし、蠍の超振動粉砕針が的確に二人を捉えて突いてくる。 これを回避しながら戦うのは難しい。針は秒間2回は連続攻撃できる連射性能を持つ。 それに、どんな敵も一撃で倒せるというチートじみた攻撃力だ。脅威と言わずして何と呼べるだろう。 この時、フェニックスとWSFカーニバル支部の間で、イロンとルセの通話が記録されている。 「おい、蠍にあんな能力があったか?」 「いえ、そんなデータは…ないわ。ないのよ」 「技術は日進月歩だ、それならデータを載せるだろう」 「えぇ、ユール達とブリーフィングをした時の敵兵器のデータは 全てWSF本部にハッキングしてダウンロードした、正真正銘のデータなの。 それに、取得日時は昨日よ?日進月歩の説が当てはまると思う?」 「いや…あんな巨体を浮かすだけの技術は、一日じゃ無理だ」 「それじゃ、私達は偽物のデータを掴んだってことにわけ?」 「そうかもしれない…大体、あのライオンだって 最初にスペードが決めた時に勝負はついたはずなんだ。なのに、復活するなんて変だ」 「そうよね…もう、あのデータは信用ならないのかも」 「だが、敵の攻撃パターンを大体掴むことはできる。 現にあの蠍、針であの二機を攻撃している。大丈夫だ、彼らなら」 「あら、いつからそんな信頼を寄せたの?」 「ライオンを倒した時からだ。まさかやってくれるとは思わなかったからな」 233 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/09/21(月) 00 27 17 ID STG3w4xH0 ユールとクーリーは必死で蠍の進路を食い止めようとしていた。 しかし、あの超振動粉砕針の前には手も足も出ない。 超高威力の近接武器が蠍を固めている。分厚い装甲も、同じ役目を果たしている。 二機の飛翔する箱がいくら攻撃しようと、簡単に壊せる相手ではなかった。 「ねぇ、蠍の視界は正面180°じゃなかった?」 「そうだ、そうだったよログ、ありがとう!」 短いやり取りを交わし、二人は蠍の前で迎撃するのを止め、 後ろに回り込んでから総攻撃をしかけ始める。 それでも蠍の固い装甲が鉄壁の守りを見せる。戦略も何もあったものではない。 はっきり言って、二人の打つ手は無かった。 「これじゃあ、橋を落として…っていうのも出来ない。 航空部隊の攻撃だって、全くって訳じゃないけどダメージは与えられないし… あ、脚を破壊したら水面フローティング機能も無くなるかもしれない! ……航空部隊じゃ、狙うのは難しいかなぁ…うーん……」 ルセは司令部で呟いていた。周りはスタッフがいて、皆が同じ難しい顔をしている。 ここまで蠍の防御能力が高いとは思っていなかったのだ。 戦闘の経過を見ると、ハッキングして入手したデータに比較すると それに比べて倍近くの防御能力を有していると推測してしまった。 知ってしまった大きな事実。勝ち目は今のところ見いだせないでいる。 ルセはオールコネクションでユール達二人に叫ぶ。 無茶とは知りながらも、どうにかして頑張ってほしいと願っていた。 「どうにかして奴の脚を狙って!」 「無理でしょ!海面すれすれを飛んで、着水したらこっちがオジャンよ!」 「そうですよ、あなた達ならできるかもしれないが、こっちは素人…うぅ!!」 「クウ、大丈夫!?」 「今まで我慢してきたツケかな。凄く気分が悪い」 「どうにかして耐えて!少しかもしれないけど、ダメージは確実に与えられている!それじゃ頑張って!!」 無責任にも程がある!と憤慨したクーリーは意を決して180°回転して背面飛行に移行、 徐々に機体を海面に近づけ、手近な脚一本に狙いを絞って鍵盤を猛烈に連打していった。 234 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/09/21(月) 00 34 28 ID STG3w4xH0 クーリーの決死の攻撃によって蠍の右の一本の脚を破壊する事が出来た。 が、蠍はバランスを崩し、体の一部を着水させながらなおも突き進んでいく。 蠍のバランスの脆い所をユールがレールガンで徹底的に叩く。 次第に蠍の巨体が海に引きずり込まれるかのように沈んでいくが、 第三ブロックまで残り500メートルも無い。この調子では蠍が上陸してしまう。 ユールは食い止める事が出来なかったと悟り、ルセとイロンに向けて叫ぶ。 「ゴメン、海上での迎撃、撃墜は失敗した!」 「そうか…よくやった。いま、スペードの治療が終わった。 これから総帥のいる島に総攻撃をかける。 WSFの部隊が行くから、君たちは加勢しないで良い」 「私達だけじゃあの蠍は倒せそうもないですって!」 「えぇい、リーダーのお前がそんな弱気でどうする! いいかよく聞け、この世に絶対倒せない敵なんてものは存在しないんだ!分かったか!?」 イロンから短い説教を受け、ユールはすぐに心を取り戻し、 はい!と返事をして蠍への攻撃に移った。その時である。 「いざとなったら、僕が君たちを助ける」 マキナの小さな、それでも確かに聞こえる声がユールの耳に届いた。 ガシャアアアァァァ!!!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオォォォ……ドーン!!バーン!!! 色んな音が響いた。これらを採集すれば、きっと私好みの音楽が作れるだろう。 とうとう蠍が第三ブロックの港を破壊しながら上陸した。当然、港はぐしゃぐしゃだ。 第三ブロックについてはだいぶ前に先述したが、ここでもう一回書いておこう。 私自身が確認したいし、忘れている人もいるかもしれないからだ。 第一~第三ブロックは中世ヨーロッパの街並みである。 どのブロックでもひっきりなしに曲が流れているが、 流れている音楽のジャンルは、第一、第二ブロックのものと異なっていた。「ロック」である。 GFdmで人気の曲が園内スピーカーに大音量で響き渡る。 円形の島の中心から、クモの巣を張り巡らすように通路をかたどる建築物に囲まれている 広大な中央広場のライブステージでは、ひっきりなしに誰か彼かがバンド演奏をしている。 しかし、今はターミナルタワーで開催されている「トプラン決定戦」のために誰もいない。 そんな第三ブロックで、これから戦闘が開始されようとしている。 今度ばかりは誰かが死ぬかもしれない。誰もが少なからずそう思いながら、戦いのゴングが鳴らされる時を待つ。 237 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/09/23(水) 23 38 10 ID M5Pu08Oh0 2999/12/25 20 36 ノエル航空迎撃部隊の抵抗を切り抜け、第三ブロックに蠍が上陸した。 ただ上陸し、ただ上品にそこでつっ立ってくれるのなら全く問題は無い。 しかし蠍は兵器だ。高機動な制地兵器だ。そんな要求がまかり通ると思ったら大間違いである。 第三ブロックのライブステージとも言える中央広場の 巨大な円卓の上にアリスが臨戦態勢の構えを取っている。 ネックには手をかけず、ただひたすらにオルタし続けていく。 こちらから向かって迎撃するような真似はしなかった。 蠍が素直に広場に通づる道を通る訳がなく、辺りを滅茶苦茶に破壊しながら進むのだから アリスが自分から打って出る真似をしないというのは賢明な判断といえよう。 蠍は対になっている鋏を用いて前方に立ちふさがる障害物を切断、 針で粉砕し、通り過ぎる体で跡形もなくしていく。 そうしてようやくアリスの前に蠍が姿を現した。 キシャー!と奇声を上げ、口から炎を噴きながら体当たりしてくる。 アリスは加速器を使って右に走って避ける。 蠍の衝突の衝撃によって円卓が壊れていく音が辺り一面に響き渡る。 その音を聞いてからアリスが振り返り、 (あの蠍の全身はとても固い。装甲を攻撃で全部剥がすとなると相当な長期戦になる。 次の敵の相手をする事も考えれば、15分程度でカタをつけたいのよ。 でも、正攻法で行こうとしたらそれは無理。でも、脚を積極的に狙えば…… この八本の脚は比較的に装甲が薄いの。ここを攻撃する。 航空部隊がこれを狙うのは難しい。だから地上部隊がライオン戦と連戦になる。 それは航空部隊も同じなんだけどね。負担は地上部隊の方が上になるわ) ブリーフィングの時のルセの言葉を噛みしめながら、狙いやすい脚一本に狙いをつけて緑の弾を撃った。 爆音が響き、着弾とともに狙いをつけられた蠍の脚が吹っ飛ぶ。 アリスはそれを見届け、走って距離を取りながらチャージショットの準備をした。 238 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/09/23(水) 23 43 51 ID M5Pu08Oh0 「始まったな」 そう呟いたのは、ターミナルタワーの上空で滞空するフェニックスのイロンである。 彼女は観察役のスタッフと共に、アリスと蠍の戦いを観戦する。 アリスが二本目の脚を破壊したのを見て、アリスは観察役に言う。 「残りの六本の脚をこの調子で壊せたら、倒せるかもしれないな」 「そうですね。でも、そんなに上手くいくのでしょうか」 「心配するな。彼らならきっとやってくれるさ。 それより、島攻撃部隊の出撃準備は出来ているのか?」 「大体の準備は出来ているようです。 兵士輸送用のヘリが一機、地表攻撃機が二機。 これだけあれば、あの規模の島を制圧出来ます。 それに、あの島には総帥と数名の護衛しかいないはずです。大丈夫です」 イロンはその言葉を聞いてニヤッと笑い、最終的な準備が出来次第、即出撃するよう通達した。 「始まったか…」 そう呟いたのは、一通りの治療を終えたアルベルトだった。 簡素な移動式ベッドから起き上がり、周りの制止を振り切って装備を整える。 ゴーグル、パワードスーツ、加速器、ジェットパック、そしてギター型の銃。 それらをすべて装着したアルベルトは、医療班の一人の男に話しかける。 「なぁ、あそこで戦ってるの、俺の姉貴なんだよ」 「そのように話は聞いております」 「頼む。姉貴一人じゃ心配だ。行かせてくれ」 「駄目です。無理をしたら足の傷が…」 「アンタらのお陰でこの傷は塞がったよ。 だがな、姉貴を失ったら、その傷は一生塞がらない! 悪いがな……俺は姉貴を助けに行くぜ!!」 そう言うとアルベルトは加速器を使って医師団から離れた。 一直線に東に向かって走り、タワー中央で出撃し始めのヘリ一機と攻撃機二機を追い越し、 追い越した三機が動き始めると同時にタワーを覆っていたシールドが解除され、 タワーの縁でジェットパックを使って飛び上がったアルベルトは 島攻撃部隊と共にターミナルタワーを後にした。 239 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/09/23(水) 23 48 49 ID M5Pu08Oh0 アリスと蠍の戦いは、アリスがアドバンテージを握っていた。 アリスにはノエル航空迎撃部隊の支援がついているし、 何より彼女には蠍にはないものを持っている。 それは「心」だ。機械も同様に人工知能、即ちAIは持っている。 しかしそれを人の心と同じと考えるのは少し違ってくる。 あまり大きく踏み込んで書くと、あらゆる方面からのバッシングを浴びそうなので控え目に書くが、 人の心をもった機械なんて存在しない。そんなAIなどあり得ない。 機械が人になりたいと思うのをおこがましいと思っているのではない。 ただ、それが「あり得ない」と思うだけ。それだけなのである。 話がそれてしまった。本筋に戻そうと思う。 アリスの心が思う事は「大切なものを守る」ということだ。 それはユール達五人が全員一致で思っている事だが、大切なものの定義は五人ともバラバラだ。 彼女の場合、それは「アルベルトの命とカーニバル」になる。 前者は達成できるかどうかは分からないが、後者はこの頑張りでどうにか出来る。 その思いがアリスを強くしている。 色んな装備で強化された身体能力+αのαが、その心の力なのだ。 崩れ果てた円卓の瓦礫の中、ギターを構えるアリスと機械仕掛けの蠍が対峙している。 既に蠍は右の脚部を二本、左の脚部も二本やられている。圧倒的にアリスが有利だ。 コントロールバランスをどうにかして保っている蠍相手に 万全の状態のアリスがやられるはずがない。誰もがそう思っていた。 その考えは甘かった。 油断をしていたわけではない。だが、甘かった。 蠍の攻撃パターンは「突進→敵を追い回すように火炎放射→針の一刺し」であった。 しかし、そのパターンは六回目のシークエンスに突入してから変わった。 アリスは次の突進に備えて身構えていた。 今までがずっと同じワンパターンな戦法で蠍が戦っていたのだから、 そうするのは必然と言えるかもしれない。 しかしアリスの予想に反し、蠍は右の鋏をアリスに突き出した。 ジェットパックを併用して飛び下がるアリス。そこへ蠍の追撃が入る。 左の鋏が空を飛ぶアリスを叩き落としたのである。 勢いを持って石畳に叩きつけられるアリス。 武道の経験も無いので、ろくな受け身が取れず、悶絶する。 そこに蠍が高速で接近し、火炎放射器を収納する口を開く。 アリスが起き上がった頃には、既に蠍は炎を吐いていた。 240 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/09/23(水) 23 52 41 ID M5Pu08Oh0 炎が蠍の口から吹き出す。 それは勢いをつけてアリスを包み込もうとする。 そこに一つの影が割り込んだ。 「うおおおおぉっ!!あちちちちちちち!!!!!」 謎の影が出す声は、確かにアルベルトのものだった。 彼はアリスの盾になるような位置に立ち、結果として彼女の盾になり得ている。 「ちょっと涼しくしてやるぜ、そりゃ!!」 アルベルトが叫びながらネックの青ボタンを押さえ、思い切りピックする。 すると巨大な氷の塊のような弾体が炎の発生源、即ち蠍の火炎放射に向けて飛び、着弾する。 ガキイィィンッッ!!!と辺りに物が凍てつく音が響く。 火炎放射も止み、石畳が焼け焦がされたのを見ながらアリスは弟の声を聞く。 「俺は大丈夫だ!さ、チャージショットで火炎放射器を粉々にしてくれ!」 見ると、蠍の口の中にある火炎放射器は氷漬けになっていた。 これに強烈な衝撃が加われば、ほぼ間違いなく粉々に砕けるだろう。 アリスは迷わず緑ボタンを押さえ、ピック。 緑の弾体が爆音と同時に発射、飛翔、着弾する。 それと同時に、蠍の火炎放射器が氷漬けのまま粉々に砕け散っていく。 「よし!」「よし!」 珍しく二人の声が、セリフを一致させてハモった。 蠍は攻撃手段の一つを失くし、稼働可能な脚を総動員して後方にジャンプ、二人と距離を取る。 勿論、この間にも蠍は上空からクーリーの攻撃を受けている。 しかし、攻撃の威力や蠍の防御力の関係上、有効なダメージソースになり得てはいない。 蠍が攻撃パターンを変えてきた以上、蠍の動きに一層の注意を払わなければならない。 次に繰り出されるのは鋏か、突進か、それとも一撃必殺の針か。 答えは突進だった。アルベルトが左、アリスが右に避ける。 この後は火炎放射が来るのだが、それが無い以上どんな攻撃が来るか分からない。 蠍はその場でジャンプをして反転しながら尻尾を横薙ぎに振り回した。 尻尾はアリスに当たり、吹き飛ばして蠍が着地、次にアルベルトを左の鋏で突いた。 ギターを盾にしてアルベルトが鋏を受け止め、しかしそれでも彼の体は後方に吹き飛ぶ。 この一連の動作、大型の機械の動きとは考えられない程の俊敏さを見せつけている。 ライオンの機動もかなり速いものであったが、蠍の機動はライオンを上回っていた。 241 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/09/23(水) 23 56 25 ID M5Pu08Oh0 「あっ!」 ユールはアリス、アルベルトの攻撃を受けた場面を見、体をこわばらせた。 「マキナ、あの二人が…」 「大丈夫。僕がいる」 「あなたがいるからって…」 「すまないが、君の体を借りる」 「え?」とユールが返す。マキナが答える。 「僕は『魔剣』とか『人惑いの剣』とかって言われている。 それがどういう意味か、分からないと思う。…これからする事は、その意味を成すって事だよ」 マキナが喋り終わると、マキナ自身が強烈な光を発した。 ユールはその光を見ていくうち、自分の意識が急速に薄れていくのを感じていった。 それからしばらく、ユールは呆然としていた。 彼女は自分の意識を取り戻し、下の戦いぶりを見る。 蠍が本気を出してきたようだ。地上部隊の二人はどう見ても苦戦している。 それを見たユールは筐体をいじくり始めた。 「自動操縦にして…設定は滞空でいいか。…無線はこうか。 コネクション設定はクウ…こちらノエル1。ノエル2、聞こえるかい?」 「聞こえる…誰だ?ログじゃないな、答えろ!!」 「何で分かったんだ…君の言うとおり、僕はノエル1じゃない。 僕は彼女の体を借りている。外見は彼女だが、中身は僕だ」 「体を?…お前、マキナか?そうなんだな!?」 「察しが良い。いや、良すぎる…君は本当に一般人か? それにしては勘が研ぎ澄まされすぎてる感じがするが… まぁいい、ちょっと僕は地上部隊の手助けをしてくる」 「ちょっと待て。マキナ、ここから飛び降りる気か?」 「安心してほしい。もう既に、彼女の体は人間を超越している」 「なんだって?」 「そのまんまの意味さ。彼女は身体能力のレベルで言えば あの強化服を着た双子より少し上の程度まで進化している。『光』のお陰でね。 だから、ここから飛び降りても彼女は死なない。 もっとも、この時点で彼女の体が駄目になれば、僕も死んじゃうわけで。死ぬわけにはいかないんだ」 「機体はどうするんだ」 「自動操縦にしておいた。滞空させているから、護衛はよろしく。 地上への攻撃は僕が代わって担当しよう。すぐに決着はつくと思うから」 そう言うとユール、いやマキナは「すっ」と体を機体から離れた。 何の抵抗も無しにユールの体が重力に沿って落ちていく。 それを見つめるクーリーが呟く。 「マキナ…ユールを頼んだぞ……」 242 :carnival (re-construction ver) Phase3 -decisive battle-:2009/09/24(木) 00 06 46 ID CXjxjKMN0 アリスが攻撃を受けた後、彼女は無線でアルベルトに蠍を挟撃する作戦を伝えた。 蠍の後ろに回った方が残った脚をチャージショットで破壊するというものだ。 しかし、そう簡単に破壊させてくれそうに無かった。 アリスは自分と蠍が一対一で戦闘を始めていた時、 その時の蠍は本気ではなかったような印象を持ち始めていた。 後ろに回ったアルベルトが撃つ。 蠍が軽快なフットワークで回避する。 建造物に流れ弾が被弾、倒壊。 アリスが後ろに回るべく加速器を使って移動。 蠍が尻尾を振って接近を許さない。 不意に針が槍のようにアルベルトに向かって突き出される。 アルベルトが体を回転させて針を回避、攻撃を惹きつけるべく蠍の前へ出る。 鋏や針を使った攻撃がアルベルトに集中する。 その隙にアリスが五本目の脚を破壊。 蠍が自身の装甲をパージ(破棄)。バランスコントロールを管理する。 そんな中、蠍の上に影が上から落ちた。 その衝撃で蠍が地に伏せる。アルベルトがその影を認めると、大声で叫んだ。 「おい!なんでお前がそこにいるんだ!!」 「お前」と呼ばれたのは紛れもなくユールだった。 だが、その様子はいつもの彼女とは違う。雰囲気が違う。 そしてそれとは別に、彼女がここにいる事自体が異常だった。 その異常性に気づいたアリスがユールに叫ぶ。 「ちょっと、飛行機はどうしたの!?」 「自動操縦」とそっけなくマキナは答え、右手を自分の首に持っていく。 そして剣を結んでいるネックレスに手をかけ、ブチッと音を立てて鎖を壊した。 すると同時に剣が巨大化、大剣として機能するようになる。 「ログ、お前どうする気なんだ?」 「決まってる。蠍をぶっ壊す」 話し方がユールのそれではなかった。 そんな事はアルベルトもアリスも感づいている。 だが、今は状況が状況。そんな事でどうこう言っていられない。 「元々この体に宿っていた心は眠っている。今の彼女はこの大剣の心が支配している。 この蠍をぶっ壊したら元に戻すよ。全部ね」 ユールの体を借りるマキナは、双子にそれだけ言うと、宙返りをしながら蠍から飛び降りた。 carnival (re-construction ver) Phase 3 -decisive battle- St.5へ続く コメント 名前 コメント
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3つの道から一つを選んでゴールを目指せ!14部屋で突破だぁ! アイテムは持たせられるがたったの一度しか機能シマセーン。ピンチに能力が上がるやつは避けた方がいい。つーか、持ってくるな! 進む道は全てランダム。ただし!部屋に入る前にメイド(?)さんにヒントを聞く事が出来るよ(ほとんど答えと同じだがな)。 野生ポケモンからはバトルせずに逃げる事が可能(ピラミッドは酷だよなぁ)。 「運」が試される(運も糞もねーだろ)。 部屋とメッセージ トレーナー…… でしょうか……? ひとの けはいを かんじるの ですが……回復なしでトレーナーとBATTLE!! 手持ちポケモンをぜ~んぶ回復してくれる神なお部屋 なにかが ささやく ような ものおとが きこえたの ですが……いきなりダブルかよヲイっていうような部屋(意味不明) ふつーにするーできる部屋 なぜだか すこし だけ なつかしい ふんいきを かんじるの ですが……ポケモンの攻撃を受けて状態異常されるお部屋(冷凍ビームノーダメージで凍りづけかよ!) ジェントルマンが気まぐれで1~2匹回復してくれるそうです! ポケモンの においが ただよってくる ようなきが するの ですが……非常に腹が立つ野生ポケモンが出現してくるみたい。 回復ありで腕の立つトレーナーさんと戦う …… どの みちの さきからも おそろしい けはいを かんじます……アザミがでてくる部屋(しかし弱いよなぁ。ファンの人すみません) 攻略法はまた後で。 何かあればどうぞ。 名前 コメント