約 3,170,973 件
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/1904.html
「YEAH!いいぜ小十郎!もっと跳ばせ!!」 「全く…童子の頃と同じ事を仰らないで下さい。」 つい先程から一転、上機嫌になった政宗にあきれるように小十郎は答える。 しかし大昔に行った紅葉狩りの事を、小十郎も覚えていてくれたのだろうか。 そう思うと政宗はひそかに嬉しかった。 「なぁ、小十郎」 「何か」 「お前って、頭いいけど時々バカだよな。」 「…突然なにを言い出すのですか。」 「だってそうだろ」 小十郎は言った。 いつか政宗の背負う業のすべてを知って尚愛し、 政宗自身も心から愛するような男が現れるのだと。 そしてその時まで、自分が命に替えても政宗を守るのだと。 くだらない、と政宗は思う。 いつか何処からか来る誰かを待たなくとも、 わざわざ縁談の中から探さなくとも、そんな男は今目の前に… こんなに触れ合うほど近くにいるじゃないか。 しかしそれを言葉には出さず、代わりに小十郎に縋る手に、そっと力を込める。 米沢城では、留守を任された家臣達が二人の帰りを 今か今かと待ち侘びていた。 おなごBASARA 最終9
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/1786.html
「佐助の、子…?」 そう呟いた次の瞬間、旦那の顔が耳まで真っ赤に染り、 それをまじまじと見る暇もなく、稲妻のような速さで俺様の右っ面に鉄拳がめり込んだ。 いやー…あれはキツかったね。身体が2~3米は吹っ飛んだ上に、 首の骨が「ゴギリ」ってイヤな音たてて、一瞬お花畑が見えたもの。 「た、戯れが過ぎるぞ佐助っ!! そ、そ、それがしもう帰るっ!!」 やや裏返り気味な声でそう叫ぶように言うと、旦那は物凄い速さで走り去った。 馬より速かったんじゃないかな、あれは。 「…戯れ、ね…」 その場に取り残された俺は、見事に腫れた頬をさすりながら なんとなく一人ごちた。 やっちゃったなぁ…・ 忍び人生は割と長いけど、こりゃその中で一番の失態かも知れないや。 なんせ主人…しかも月のものがようやく来たようなおぼこ娘に、 最後までじゃないけど手を出しちまったんだもんねぇ…。 こりゃクビ、もしくはお館様の巨大軍配で真っ二つにされちゃっても仕方ないか…。 そんな事を考えながら、俺もその場から立ち去った。 …なんだか、やけに虚しかった。 クビになるのもお咎めを食らうのも、別にどうって事ないよ。 …ただ、旦那がもう二度と、あの人懐っこい笑顔で 話し掛けてくれる言は無いのかもしれない。 そう思うと、自分のした軽挙盲動を心底後悔した。 「戯れじゃあ、ないんだけどね…」 っていうか、戯れじゃないからいけなかったのか。 忍なんてどれだけ腕が立っても、所詮道具に過ぎないのにね。 …その本分を見失った俺様はホント馬鹿。 イヤになっちゃうよ。 それから数日経ったある日。 また例の場所で仕事明けの休息を取っていた俺様は、 木に何か太いものが突き刺さるような振動で叩き起こされた。 恐る恐る下を伺うと、幹の下の方に何やら 風呂敷包みを括りつけられた一本の棒が深々と突き刺さっていた。 近付いてよく見てみると、それは棒ではなく槍だった。 それも旦那が日頃よく使っている練習用の槍だ。 これはもしかしなくても旦那からのものか? …まぁ辺りを見てもまるで人影はないし、かなり遠くからこの槍を投げて、 さらに目標に命中させるなんて芸当が出来るのは、この甲斐では旦那しかいないしね。 取り敢えず槍に括りつけてあった風呂敷包みを開けてみると、 中にはあの日俺が旦那に貸した上着と、一通の手紙が入っていた。 封紙の表には「佐助へ」と旦那らしい力の入った字で書かれている。 手紙には、こう書かれていた。 おなごBASARA 後編2
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/1788.html
生け花の稽古を放棄した政宗は、特に行き先も決めず 馬の走りたいように走らせた結果、あまり馴染みのない場所に辿り着いていた。 米沢城からかなり離れているだろうその深い森は 一面彩やかな紅葉に染まり、今にも燃え立たんばかりだった。 「…so beautiful…すげぇな。」 ゆったりと馬を歩かせながら、政宗は馬上からその美しさに眼を細める。 (…出て来て正解だったぜ。四六時中城に引きこもってたんじゃ、 生きてても死んでるのと変わりゃしねぇからな。) そんな事を思いながら上機嫌で馬を進ませていると、 樹々の隙間から何かがまばゆく煌めいているのが目に入る。 政宗は馬上から降りると、手頃な木に馬を繋いだ。 そしてその輝きに引き寄せられるようにして、森に踏み入った。 「池か。」 湖とまでは行かないが、かなり大きな池がそこに広がっていた。 澄んだ水が日の光を弾いてきらきらと輝き、赤や黄色の落葉が 錦のように水面の端々を彩っている。 適当な場所に腰掛け、政宗はしばしその光景に見入った。 奥州の短い夏と長い長い冬の狭間に、 一瞬だけ紅く燃えて消える、儚い季節。 政宗の一番好きな季節でもあった。 小十郎も連れて来ればよかった。 そう自然に考えた自分に、政宗は舌打ちする。 稽古を放り出した上に一人で飛び出したのだから、 城に帰れば当然盛大に叱られ、長い説教が待っている事だろう。 だが、小十郎に叱られる事も説教も慣れっ子の政宗には、 それは別にどうと言う事はない。 政宗が憂鬱に思っている事は、また別に存在した。 「なーにが稽古だよ。馬鹿こじゅ。」 そう呟きながら、政宗は兜を脱いだ。 秋とは言え僅かに日差しが熱を持っていたし、辺りに人の気配も(ついでに忍の気配も) 無いので、少しくらい窮屈な物を脱いでも良いだろうと判断したのだ。 本当は鎧も脱ぎたかったが、再び着るのが面倒そうなので止めた。 秋風が髪に触れるのを感じながら、政宗はぼんやりと思い出す。 まだ本当に幼かった頃…小十郎に連れられ、こんな風に見事な紅葉を見た事があった。 我儘を言って輿には乗らず、結局小十郎の馬に乗せて貰い、 もっと速く走れとねだっては小十郎を困らせていた。 その時の小十郎の困り顔を思い出し、政宗は口の端で密かに笑った。 まだ何も失っておらず、本当の苦しみも知らなかった頃の話だ。 遠い昔と言うよりは、他人の思い出を垣間見ているような 気分で、政宗はその情景を思い起こした。 楓の葉が、ひらりと肩に一枚舞い降りる。 彩かなそれを手に取り、眺めながら政宗は呟く。 「…俺にお前らの万分の一の綺麗さでも有ったら、 稽古しても絵になったろうな…。」 幸い、その寂しげな呟きを聞く者も、今にも折れてしまいそうな 儚さを覗かせる細い背中を見る者も、この場には居なかった。 〈その頃の米沢城〉 「おい!戦でも始まんのか?片倉様がバリバリに武装して馬で出てったぞ!」 「ああ、なんか野伏りがネジロにしてるって噂の森に 筆頭が入ってくの見たって報告が有ったらしいぜ?!」 「マジかよ?!俺らも加勢に行くべ!」 「バッカ!片倉様に「俺の留守中は死んでも城を守れ」って言われてんだよ! 地獄見てーのかテメー!」 「い、いや。片倉様にだきゃあ怒られたくねぇ…(ブルブル)」 「…だろ?(ブルブル)」 おなごBASARA 小ネタ
https://w.atwiki.jp/basara-voice/pages/27.html
武田信玄 おお…見よ、京の都じゃ… 見よや幸村、都じゃ… 武田信玄:死亡時 叱って…くだされ…お館…様… 幸村! お前は死んでは…ならん!!! 真田幸村・武田信玄:幸村死亡時 やれやれ、ザマねえや… 見事じゃ! 忍の死に様、とく見たぞ! 猿飛佐助・武田信玄:佐助死亡時 …お主か、わしか いずれか めいうんつきたりや… 武田信玄・上杉謙信:川中島の合戦 真田幸村 お館様ぁ!果たしてみせましたぞぉ! おおお館様ぁ!お館様あああああああ! 真田幸村:勝利時 日本一ぃ! 真田幸村:BASARA技終了時 腕が鳴りますな、お館様! 真田幸村:国決定時 お館様に仇なすは、この幸村の槍に散る… 織田の野望、ここについえたり! 真田幸村:本能寺決戦 頂戴いたす! 真田幸村:アイテム入手時 なんの!寒さなど吹き飛ばぁす! 真田幸村:最北端一揆 めおとで戦とは、は、はれんちである! 真田幸村:姉川 利家とまつへ 猿飛佐助 いざ、忍びまいる 猿飛佐助:キャラ選択時 あんたら、どんだけ死ねば満足なんだ…! 猿飛佐助:多数撃破時 真田隊、制圧 猿飛佐助:拠点制圧時 さぶっ!早く終わらせて退散しようぜ 猿飛佐助:最北端一揆 はいはい、追えってんでしょ!しゃあねえ 猿飛佐助:摺上原(2の長谷堂城猛追戦でも使用) ったく…バカに付き合うもんじゃねえなぁ… 猿飛佐助:死亡時 あの男はやばい、ここで仕留める 猿飛佐助:山崎(光秀へ) …覚悟してくんな、魔王の旦那 猿飛佐助:本能寺(信長へ) ふうん、あんたがねえ… なあ、解放してやんなよ、いろんな奴をさ 猿飛佐助:謙信へ
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/1789.html
とある城のとある座敷で、年端も行かない子供が二人 戯れていた。男の子と女の子のようだ。 「ほらほら、返して欲しけりゃここまで来いよ!」 「返して…お人形返して…」 「もっと早く走れよ。のろま!」 「かえして…かえして……(くすんくすん)」 「あっ!泣いてやんの!みっともねぇ~」 「…(しくしく)」 最初は仲良く遊んでいたのに、穏便ならぬ様子に 子供達の守役が現れる。 「こらッ!姫様!お客様を苛めていかがなさいます!!」 「いじめてなどない。遊んでただけだ。(つーん)」 「若、もう大丈夫ですよ。泣き止んで下さいまし。」 「……(しくしく)」 「長曾我部の若様、それに守役殿、申し訳ございませんでした …ほら姫様もお謝りなさい!」 「うるさいぞ小十郎!オレは謝るようなことはしておらぬ!」 「また汚い言葉を使って…お尻を叩きますよ!」 「やってみろ!べーだ!!」 「……(しくしく)」 「若様、しっかりして下さいまし。それだから「姫若子」などと 噂されるのですよ?」 「……(しくしく)」 「やーい、馬鹿こじゅー!捕まえてみーろ!」 「待ちなさい!このクソ餓鬼ぁぁ!!」 「(…まぁ伊達の姫君ほど元気になれとは言わないけど…(^^;)」 <そして現在> 「な~んて事、よく有ったよなぁ。あの時はお前がこんな 別嬪になるとは夢にも思わなかったぜ?!」 「…俺はお前が男で、しかも海賊になってるたぁ夢にも思わなかったよ。 っていうか、ここ数年で何が有ったんだお前。」 昔を懐かしむ(?)元親と政宗だったとさ。 (おわり) おなごBASARA 続②
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/1900.html
次に来るだろう衝撃に備えて政宗はきゅっと目を瞑ったが、 なかなかそれは訪れなかった。何事かと恐る恐る目を開けようとしたその時、 強く腕を引かれ、抱き締められた。 「!!」 あまりの事に一瞬何が起きているのか分からなかった政宗だったが、 背中に回された強い腕の感触に 自分が小十郎の胸の中に抱き込まれているのだと気付くや、 白い頬をかぁっと紅潮させた。 「こ、小十郎…?!」 「…全く…あなたと言う御方は…!」 鎧に覆われた厚い胸に顔を押し付けられる形になっているので、小十郎の表情は分からない。 しかし耳に響くその声がひどく切実で、背中を痛いほどの力で抱く腕が ほんの僅かに震えている事に、政宗は気が付いた。 「何故いつも、この様に無謀な事をされるのです… 何故もっと、家臣や民を労るように御自分を大事にしては下さらないのですか…!!」 「小十郎…」 「姫様の身に何か有ったなら、この小十郎に… 伊達家に仕える者達に如何にせよと申されるのか…」 「……」 「もうこの様な振る舞いは、これっ切りにしていただきたい…!!」 「…分かったよ…分かったから……」 泣くな。 そう言いかけて、やめた。その代りに自らの腕を小十郎の背中に回し、 出来るだけ優しくさすった。 「Sorry、小十郎。…俺が悪かった。もうこんな事はしねぇよ。」 「…本当でしょうな。」 「……たぶん」 煮え切らない政宗の言葉に、一瞬脱力したように小十郎の腕が緩んだが、 ひそやかに聞こえた「仕方のない御方だ」という呟きが 僅かに笑みを含んでいたので、政宗は安心した。 そして、小十郎に「姫様」と呼ばれたのも、こんな風に抱き締められるのも、 随分と久しぶりだとひっそり微笑んだ。 おなごBASARA 最終5
https://w.atwiki.jp/bsbwiki/pages/16.html
舞台「戦国BASARA」 2009年7月3日~7月12日 東京ドームシティ シアターGロッソ 【出演者】 武将 伊達政宗:久保田悠来 真田幸村:片岡信和 片倉小十郎:吉田友一 猿飛佐助:村田洋二郎 濃姫:長澤奈央 森蘭丸:椎名鯛造 明智光秀:谷口賢志 織田信長:窪寺昭 アンサンブル 今井靖彦 高橋光 浅井宏輔 高橋玲 高田将司 宇田卓也 岡田貴義 細川晃弘 渡邊昌宏 澤江晃史 竹中寛幸 佐久間祐人 八巻正明 竹内諒太 一内侑 植野正浩 大畑真彦 永島真之介 平野雅史 村瀬啓佑 音野暁 石井寛人 【スタッフ】 原作:CAPCOM(「戦国BASARA」シリーズ) 作・演出:西田大輔 脚本協力:むとうやすゆき 監修:小林裕幸(CAPCOM) 舞台監督:粟飯原和弘 照明:千田実(CHIDA OFFICE) 音響:前田規寛(M.S.W.) 舞台美術:角田知穂 舞台美術製作:ジャンジャックアートスタジオ 衣装・美術監修:株式会社エレファントチョップ エグゼクティブプロデューサー:齊藤孝司 プロデューサー:関口賢・三角大・西田美由紀 ラインプロデューサー:竹内忠宜 企画・製作:舞台「戦国BASARA」製作委員会 制作:株式会社H&M アクション協力:JAE(ジャパンアクションエンタープライズ) 主催:TBS 東京ドーム 東京ケーブルネットワーク イーエス・エンターテイメント 協力:株式会社アガペー AND ENDLESS 株式会社イクスライン 株式会社エースクルーエンタテインメント 株式会社ソサエティ オブ スタイル 株式会社2年3組 BESIDE(宮津ルーム) 株式会社プロマージュ 株式会社メインキャスト
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/2030.html
「政宗様ッ!!」 「うわっ」 有無を言わさぬ勢いでがしりと両の肩口を掴まれ、 政宗は思わず困惑の声を上げる。 「怪我は有りませんか!?下郎共に無体な仕打ちを受けては居ねぇでしょうな?!」 「け、怪我はねぇし、Rapeもされてねぇ!だから落ち着け、小十郎」 「小十郎はいたって平静にござる!」 「どこがだよ!」 どう見ても平静ではない小十郎の険しい顔に、政宗は今更ながら 「やっちまった」と内心青冷めた。小十郎は日常的に小言を言ったり叱ったりするが、 本気で怒ったり取り乱したりする事など殆どない男だ。 …戦場で、政宗が命に関わるような無茶をした時以外は。 「…まぁ、今回の事は責めますまい。 民を無法者から救う為になさった事なれば。」 つい取り乱した自分をひそかに恥じるように 淡々とした小十郎の言葉に、政宗は問い返す。 「…そう言えばお前、どうしてその事知ってるんだ?」 「此処に来る迄の道で出会った、政宗様の馬に乗った娘から 事の子細を聞きました故。」 小十郎の応えに、政宗の表情が僅かに緊張する。 「あの娘はどうした?無事だったろうな?!」 「…ひどく泣いてはいましたが、怪我ひとつ無いようでしたし、 聞かれた事にもきちんと答えておりました。 家まで送りましたので、今頃は家族の元でしょう。」 「…そうか、そいつは良かった。」 小十郎の言葉に、政宗は心底ホッとしたように胸を撫で下ろす。 逃がしたはいいが、落馬したり他の野盗襲われたりはしていないか ひそかに心配だったらしい。 「それで、此処への到着が遅れました。」 「いや、Coolだぜ小十郎。…これで娘を放って俺の所に来たりしたら 許さねぇ所だった。」 政宗は、改めて周囲を見回した。地面に転がる無数の野盗共の死体は、 それでも政宗に襲い掛かって来た者の半数に過ぎない。 残り半数はあっと言う間に戦意を無くして何処かしらに逃げた。 もう、この近隣に近付こうとはしないだろう。 「ま、何にせよあの娘が無事で良かったぜ。 ならず者共の慰み物になるなんざ、あんまりに可哀相だからな。」 「…自分もそうなる所だったとは、思わないのですか。」 「Ah?」 何かを押し殺すように重い小十郎の声に、しかし政宗は深刻さを欠いた様子で応える。 小十郎が心配するような事態にはどう転んでもならないと、分かっていたからだった。 おなごBASARA 続③1
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/2029.html
『小十郎…儂は生まれて初めて、天の采配を恨むぞ…。』 片倉小十郎はその森に足を踏み入れるなり、眉を顰めた。 鉄錆と、獣の臭い。大量の血と、それに誘われた山犬のものだと知れる。 物音は無い。しんと静まり返る森は、戦い終わった戦場の空気と、ひどくよく似たものをその身に包んでいた。 地に転がった肉を食んでいた山犬は、近付く人間の気配を察すると素早く闇の中に姿を消した。 無益な争いを好まない分、動物とは賢いものだと小十郎は思う。 灯りは無くとも、青白い月光に目の前に広がる惨状はしらじらと明らかになった。 数にしておよそ二十人程度だろうか。いかにも野盗か野伏せりかといった風体の男達の骸が散乱している。 小十郎は表情も無くそれらを見下ろすと、どれも刀傷で絶命している事を認めた。 政宗がやったのだろう。それは分かっている。 しかし肝心の政宗の姿が何処にも見えない。 「政宗様!何処に居られるのか!」 そう声を張り上げて呼ぶが、返事はない。 言い様のない不安を押さえ込みながら、さらに森の奥に踏み入ると、 見慣れた鉄の塊が地面に打ち捨てられるように転がっているのが目に入った。 それは、見間違える筈もない。弦月の前立てに飾られた政宗の兜だった。 慌てて拾い上げると、それは血飛沫を浴びている訳でも、ひどく破損している訳でもない。 ただ、その主の姿だけが見当たらなかった。 「政宗様…ッ!!」 小十郎がもう一度主の名を呼ぶと、背後に生えている枝振りの見事な樹の上部がガサガサと騒ぎ、 声が降って来た。若い娘のものだった。 「小十郎か?」 「…!政宗様?!そこに居られるのですか?!」 「ああ。」 「何故そのような所に…ご無事なのですか?!」 「一遍に聞くんじゃねぇよ。これから説明する。…もうその辺に山犬は居ないな?」 政宗の問い掛けに、小十郎は律義に周囲を見回す。 「居ないようです」 「OK 今降りる。」 再び枝を揺らす音が響き、地面に藍色の影が降り立った。 それは兜を被っていないことを除けば、稽古事を嫌がって城を出た時と まるで変わった様子のない政宗だった。 「お、兜拾ってくれたのか。Thank Youな。」 小十郎の手から兜をかっさらうと、いつものように被り、顎紐を締めた。 「ったく山犬には餌と間違われるわ、逃げた木の上じゃ兜に虫が入るわ 参ったぜ…って、どうした小十郎?」 おなごBASARA 続②6
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/1785.html
不意に、くすりと旦那が小さく笑った。 こういう仕草は、年頃の女の子らしいなぁ。 「ん?なーに?」 「いや…いつも思ってた事だが、佐助は優しいな。」 「いーえいえ。こんなの俺様の優しさのホンの一部ですよ?」 「佐助なら、きっと良い父親になるだろうな。」 そう言ってにっこり微笑む旦那の笑顔は 花に例えるなら向日葵か黄色いチューリップか…ってな感じで、 さっきから地味にムラムラ来てた俺様には 少しばかり刺激が強かった訳さ。 …だから俺は、気が付くと 自分でも信じられないような行動に出ていた。 「佐助…?」 急に間近に近付いて来た俺を不思議そうに見る 旦那の唇に、俺は自らのそれを重ねた。 抵抗を封じるようにその腰や背中に腕を回してみたけど、 旦那は特に抵抗もせず、されるがままだった。 身体が強張ってたから、たぶん自分が何をされてるのか 分からなくて、混乱してたんだろう。 抵抗が無い事でさらに歯止めが聞かなくなって、 旦那の口唇をしばらく犯していると、その喉から 苦し気な声が漏れ始めたので、唇を放した。 開放された旦那はしばらく荒い呼吸を繰り返し 、涙で潤んだ眼でこちらを見た。 「…さ…佐助……何を…」 「…ねぇ、旦那。」 その耳元に囁きかけると、 赤い上着に覆われた肩がビクリと揺れる。 「お館様の次で構わないよ…だから」 耳元で話されるのが嫌なのか、旦那は顔を俺の方に向けた。 茶色の大きな澄んだ眼には、やけに真剣な俺の顔が 小さく映り込んでいる。 「…だから、俺の子も産んでよ。」 旦那の眼が、さらに大きく見開かれた。 (つづく) でも次回もエロが有る訳じゃありませんので御了承くださいm(_ _)m 〈おまけ〉その頃の奥州。 「政宗様。琴の御稽古の時間ですぞ。」 「Ah?琴なら習わなくても弾けるぜ。」 「それは熱唱琵琶でございます。さぁ先生がお待ちですよ!」(むんず) 「嫌だ!やーだー!!放せっ馬鹿こじゅー!!」(ずるずる) 小十郎は今日も政宗をお稽古事に引っ張って行くのでした。 (おそまつ!) おなごBASARA 後編