約 2,463,747 件
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3499.html
『ある群れの越冬方法』 10KB 観察 越冬 捕食種 希少種 自然界 独自設定 少し変わった越冬の話です ゆっくりの群れ、と一言でいってもその形態は様々である。 ただゆっくりが集まっただけの群れ、長がいる群れ、ドスが治める群れ、 厳しい掟で縛られた群れ、選民思想を持つ群れ、人間と共存関係にある群れなどなど。 これはそんな数多くある群れの一つ、山の中にある少し変わった群れのお話。 ある群れの越冬方法 季節は秋の中頃。 落葉樹は葉を散らし、本格的な冬の到来が間近となっていた。 この時期になると野生のゆっくりは大量の食料を巣の中に集め、冬篭りに備えるのが普通である。 だが、山の中のとある群れのゆっくりたちは、そんなのとは無縁であるかのように、思い思いにゆっくりしていた。 そんな群れの中を、一風変わったゆっくりが跳ねている。 「あたい!」 青い髪に、背中に特徴的な羽を持つゆっくり…『ちるの』と呼ばれる種類だ。 ちるのは野生ではめったに見ることはない珍しい種類…俗に言う『希少種』のゆっくりである。 体は普通のゆっくりよりも小さく、成体になっても普通の子ゆっくりと同程度の大きさにしかならない。 しかもめーりんの頑丈な皮膚やもこうのぼるけいのなどといった特殊な能力を持たず、見た目相応非常に弱い。 そのため、ちるのは外敵がいない穏やかな環境でしか生きられないといわれている。 「ゆ!こんなところにばかのちるのがいるのぜ!」 「ほんとだよ!なんでばかなちるのがここにいるの!?」 「あたい?」 そんなちるのに目をつける数匹のゆっくりがいた。 親と思われる成体れいむと成体まりさ、そして子ゆっくりであるれいむとまりさが三匹ずつの、合計八匹の家族だ。 この一家は最近群れに入ったばかりの新参者である。 おそらく子供の数が多いのを出しにして、群れの恩恵に預かろうとしているのだろう。 「おちょーしゃん!あいちゅいじめちぇいいのじぇ?」 「もちろんだよおちびちゃん!ちるのでいっぱいあそんでね!」 「ゆゆーん!やったのじぇ!ばかにゃちるのはまりしゃのたいあちゃりでぼきょぼきょにしちぇやりゅのじぇ!」 「まりしゃもやりゅんだじぇ!」 「れいみゅもれいみゅもー!」 「??」 子ゆっくりがちるのに体当たりをしようとしたその時。 「むきゅ!あなたたちなにしようとしてるの?」 群れの長であるぱちゅりーが止めに入った。 「ゆゆ!おさ、いいところにきたのぜ!おさもいっしょにちるのをいじめるのぜ!」 「ちるのをいじめるのはゆっくりできるよ!おさもやろうよ!」 長ぱちゅりーも誘ってちるのを虐めようと言い出す一家。 しかしぱちゅりーは渋い表情をすると、一家を咎めるように怒鳴りつける。 「ちるのをいじめるですって?そんなことできるわけないでしょう!」 「「「「「「「「ゆゆ?」」」」」」」」 長の言葉に呆然とする一家。 騒ぎを聞きつけた周りのゆっくりたちも集まってくる。 「ゆゆ?どうしたの?」 「このいっかがちるのをいじめよう、っていいだしたのよ」 「ゆー!?いきなりなにをいいだすの!?」 「ちるのはれいむたちのともだちだよ!いじめるなんてゆっくりできないよ!」 「ぷくー!」 「ちるの、だいじょうぶ?なにかいたいことされた?」 「? あたい!へいき!」 周りのゆっくりたち全てが、一家を非難し、ちるのを庇った。 そんな群れのゆっくりたちを、一家は呆れたような目で見ている。 「ゆ…なにいってるのぜこいつら?」 「ちるのといっしょにいるからばかがうつっちゃったんだね…」 「「「「「「おおあわりぇあわりぇ」」」」」」 ちるのは弱いうえに深く考えることがないためゆっくりの中でも特にバカだというのが、ゆっくりの間では常識になっている。 そのため普通のゆっくりがちるのと出会ったら、ゆっくり出来ないとして虐めるケースがほとんどだ。 そういうゆっくり全体の視点で言えば、一家の方が普通でこの群れのゆっくりの方が異常、と言えるだろう。 「むきゅ、あなたたちはしんいりだからしらないでしょうけど… ちるのをいじめるとゆっくりできなくなるからやめたほうがいいわよ」 『……ぷ』 長ぱちゅりーの忠告を聞いて、一家は馬鹿にしたような笑い声を上げる。 「「「「「「「「げらげらげらげらげらげらげら!」」」」」」」 「どうしていじめちゃいけないのぜ?ばかをいじめるとゆっくりできるのぜ!」 「こいつらみんなばかだね!ばかなゆっくりはしんだらいいよ!」 「「「しんじゃほうがいいのじぇ!ゆぴゅぴゅ!」」」 「「「ばーきゃばーきゃ♪」」」 ひとしきり群れのゆっくりたちを馬鹿にした後、一家は帰っていった。 一家が見えなくなった頃、幹部のありすが長ぱちゅりーに話しかける。 「おさ、あのいっかをことしの『ふゆごもり』にさんかさせないほうがいいとおもうわ」 「むきゅ…そうね、ぱちぇもそうおもっていたところよ…… みんなそういうことよ!あのいっかに『ふゆごもり』のことをいってはだめよ」 『ゆっくりりかいしたよ!』 ぱちゅりーの言葉に群れのゆっくりは一同に返事をした。 そして…冬が訪れた。 例の一家は食料を十分溜め込んだと判断し、早々に結界を張って冬篭りを始めた。 「ゆふふ!みるのぜ!しょうりょうがこんなにあつまったのぜ! 「すごいよまりさ!これだけあればえっとうもらくしょうだね!」 「「「「「「おちょーしゃんしゅごーい!」」」」」」 「ゆふ、それほどでもないのぜ!」 家族に褒められて、得意げな顔をする親まりさ。 確かに巣の中には食料が山のように溜まっている。 「ゆふふ、じつはあのばかたちのおうちのなかをのぞいてみたんだけど…あいつらぜんぜんしょくりょうためてなかったのぜ」 「ゆゆ!そうなの!えっとうまえなのにしょくりょうをためないなんてどうしようもないばかだね!」 「そうなのぜ、だからあいつらえっとうできずにしんじゃうのぜ。ざまーみろなのぜ!ゆひゃひゃひゃ!」 本当は覗くだけではなく食料をちょろまかそうとしていたのだが、群れのゆっくりたちの貯蓄は不自然に少なかったため、たいして量を奪い取ることが出来なかった。 だがそんなことを一家は疑問に思わず、ただ群れがバカだからという答えで納得していた。 巣穴の中には群れのゆっくりたちを馬鹿にする笑い声が響き渡っていた。 一方―― 群れのゆっくりたちは全員、群れの中心にある広場へ集まっている。 寒々とした風が饅頭皮を撫で、震えるゆっくりが多い。 それでもゆっくりたちは何かを待つかのように、その場に留まっていた。 「…むきゅ、そろそろね」 長ぱちゅりーがそうつぶやくと、不意に近くの地面が盛り上がる。 地面の下から出てきたのは、一匹の巨大なゆっくりだった。 「くろまくー!」 ゆっくりれてぃ。 ドスと同じくらいに体が大きく、冬にしか活動しないという特徴を持つゆっくりだ。 雪の中の草花や虫、越冬中のゆっくりなどを食べる捕食種であることも知られている。 『ゆっくりしていってね!!!』 「むきゅ!れてぃ、ことしもよろしくおねがいするわ』 「くろまくー」 群れのゆっくりたちが一斉にれてぃに挨拶すると、れてぃは独特な長い舌を使って次々と群れのゆっくりを飲み込み始めた。 だがゆっくりたちは抵抗する素振りも見せず、ただ黙って為すがままにされている。 いや、飲み込んでいるのではない。 よく見ると、れてぃがゆっくりを口の中に入れる度に、両側の垂れた頬が少しずつ膨らんでいく。 「あたい…」 「むきゅ、そんなさびしそうなかおをすることはないわちるの。はるになったらまたあえるんだから」 「…またあえる?」 「ええもちろんよ。それじゃまたね、ちるの」 れてぃが最後に長ぱちゅりーを口に入れると、ちるの以外の集まったゆっくりは全員、れてぃの体内へと収まった。 最初はだぶだぶに弛んでいたれてぃの頬は、今は風船のように大きく膨らんでいる。 れてぃの頬はハムスターの頬袋のようになっており、普通は食べ物を溜め込む時などに利用される。 今回、れてぃは群れのゆっくりを頬袋に入れたのだ。 なぜそんなことをしたのか? 実はれてぃの体の中は冷たく、甘い不凍液で満たされている。 そのためゆっくりがれてぃの体内に入ると、少しずつ体温が低下していき、完全な冬眠状態に移行することが出来るのだ。 完全な冬眠状態に入ったゆっくりは、冷凍保存された饅頭と同じような状態になり、エネルギーの消費が極力抑えられる。 れてぃ自身が吐き出したり死んだりしない限り、ゆっくりは常にこの状態が保たれる。 れてぃの頬袋は、ゆっくりが冬眠するのに最適な環境となっているのだ。 しかし、地面に掘った穴に篭るといった一般的なゆっくりの越冬方法だと、昼と夜の気温差が激しいせいで完全な冬眠状態に移行するのが難しく、 余計なエネルギーを消費してしまう。 冬篭りの際に大量の食料を必要とするのも、それら無駄に消費したエネルギーをまかなうためだ。 また、急激な温度低下で餡子組織が破壊されて凍死してしまったり、捕食種や野生生物に襲われて食べられてしまったりといった危険もあり、 この方法で無事越冬できる個体は全体の四割にも満たないと言われている。 その点、れてぃの体内での越冬なら外敵に襲われる心配もなく凍死する可能性もない。 れてぃ自身にトラブルが起きない限り、越冬の成功率は100%を誇る。 まさにゆっくりにとって理想の越冬方法と言えた。 「くろまくー」 「え?みんなとなかよくできたかって?」 「くろまく」 「うん!みんなあたいとあそんでくれたよ!」 れてぃはちるのの様子を見て満足そうな表情をすると、ちるのと一緒にどこかへ跳ねて行った。 そもそもこの方法はれてぃとゆっくりたちの間に信頼関係がなければ成り立たないものであり、ゆっくりの常識から見れば不可能なものだ。 なぜなら、ちるのと仲が良いれてぃは、ちるのを虐めるゆっくりを嫌うからだ。 群れのゆっくりがれてぃの体内を利用した越冬が出来るのは、群れがちるのを仲間の一員として扱っていたからだ。 この群れでは、春から秋にかけて群れのゆっくりがちるのの面倒を見る代わりに、れてぃに越冬に協力してもらうというギブアンドテイクの関係を取っている。 なぜこの群れのゆっくりはちるのと仲が良いのか、どうやってれてぃの体内での越冬方法を思いついたのか。 それに答えられる者は少なくともこの場にはいないし、群れの最長齢の長ぱちゅりーですら覚えていない。 ただ一つだけ言えることは… 何らかの要因で信頼関係が壊れるか、れてぃが死ぬか、ちるのがいなくなるかするまで、この関係は続くだろうということだ。 その頃、『冬篭り』に参加出来なかった一家は… 「「むーしゃむーしゃしあわせー!」」 「「「「「「むーちゃむーちゃちあわちぇー!」」」」」」 食料がたくさんあるのをいいことに、節約することも考えず好き勝手に食い散らかしていた。 そもそもいくら食料が大量にあるとはいえ、六匹もの食べ盛りな子ゆっくりを抱えている時点で一家は詰んでいた。 まだ一日も経っていないのに、すでに食料は全体の十分の一も減っている。 せめて子ゆっくりが一匹か二匹だけだったら何とかなったかもしれないが、後の祭りである。 この一家に訪れる末路は、親が子を喰らい、子供同士で食い殺しあうお決まりの共食い地獄だろう。 だがこの一家はそうはならない。 「ゆゆ?なんかいりぐちがさわがしいのぜ!」 不意に結界を突き破って、触手のようなものが入り込んでくる。 「ゆぎゃああああああああ!なにこれええええええええ!?」 「こ、ここはれいむたちのゆっくりぷれいすだよ!かってにはいってこないで…ゆわあああああ!」 触手はれいむを捕らえると巣の外に引きずり出す。 「おそらをとんでるみた、ゆひいいいいいいいいい!?」 「ゆゆゆ!?なんなのぜえええええ!?」 れいむの絶叫を聞いてただ事ではないと感じたまりさは、巣穴の更に奥へと移動する。 その際餡子を分けた我が子を入り口の方に突き飛ばした。 「まりさはしにたくないんだぜ!おちびたちはぎせいになってね!」 「「「「「「「ゆ!?にゃにいっちぇりゅにょおおおおおおおお」」」」」」 しかし奮闘空しく、まりさは触手に捕まり巣穴から引きずり出されてしまう。 「おぞらをとんでるみだ…」 「くろまくー」 「れ、れてぃだああああああああああああ!」 触手と思われたのはれてぃの長い舌だった。 永い眠りから覚めたれてぃは相当飢えており、食べられるものを手当たり次第に探し回っていた。 「ゆひいいいいいいいいいいい!まりさをたべないでえええええええええええ! ゆ!そうなのぜ!まりさよりむれのやつらをたべればいいのぜ!」 「……」 「あのばかたちはたべていいからまりさはみのがしてほしいのぜ! ってどぼじではなじでぐれないのおおおおおおおお!? いやあああああああああじにだぐないいいいいいいいいいいいい!!」 まりさの懇願を無視してれてぃはまりさを飲み込む。 まりさが最後に見たものは、頬袋の入り口から見えるゆっくりした表情で眠った群れのゆっくりの姿だった。 後書き 短編にするつもりが予想以上に手間取ってしまいました 今回は観察系です 他の作家さんのネタを使わせてもらったりちょっと独自設定を入れたりして、 こんな越冬方法があったらいーなーって気持ちで書きました それではまた会いましょう 過去の作品 anko3412 親の心子知らず anko3430 子ありすと都会派な人形
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3677.html
『陽射しの中の…』 18KB 小ネタ 変態 現代 注意:HENTAI表現あり ※注意:この作品にはHENTAI的表現が含まれています、ご了承の上でご覧ください。 ----------------------------------------- それは幼い日の記憶。 セミの声、むせ返る空気、焼け付く陽射し。 目を閉じれば鮮やかに蘇る『彼女』との思い出。 学校というものに入ってから何度目かの夏休み。 いわゆる核家族と呼ばれる家族形式の典型だった僕の家は、子の休みなど関係なく親は働き、 少ない友人達は帰省や旅行で居なくなり、ただただ退屈な日々を過ごしていた。 そんなある日、気の向くままに訪れた公園で、僕は『彼女』と出会った。 「あれは…」 ふと木陰を見ると、鮮やかな赤の衣装に身を包んだ見慣れない女の子の姿があった。 目を閉じて木に背をもたれかけている。 全身の力を抜いているのか、投げ出したままになっている手足。 一見すると死んでいるようにも見えるその子に興味を引かれ、僕は近づいて声をかけることにした。 「ねえ、君こんなところで何してるの?」 「…」 女の子は何も答えずその大きな瞳をうっすらと開いて、こちらを見た。 「あれ…君、どこかで…?」 その顔に何故か既視感を覚え頭をひねっていると、女の子が口を開く。 「れいむはれいむだよ、どうつきさんだけど、ゆっくりだよ」 「えっ?うそ」 思わずそんな言葉が口をついて出てしまった。 それからよくよく観察すると、確かに輪郭は少し痩せているけど確かに不自然なほど丸い。 それにゆっくりれいむの特徴であるもみあげ飾りや大きなリボンもある。 けれど僕ははじめてみた時に人間の女の子だと思い込んでいたせいで、言われるまで全く気付かなかった。 「そっか、れいむはゆっくりなんだ、お散歩中?」 僕の問いかけにれいむはゆっくりと首を横に振る。 「ん~っと、あ、もしかしてあれ?ゆっくりしてたってやつ?」 またしてもれいむは首を横に振った。 「じゃあ何してたの?飼い主さんを待ってるの?」 「れいむにはかいぬしさんはいないよ、れいむはすてられたの」 ぽつりと呟くれいむの言葉に、僕は思わず息を呑んで、申し訳ない気持ちになってしまう。 けれどれいむ自信は特別気にした風もなく、ただ事実を述べたまでというような顔をしていた。 二人の間に沈黙が横たわる。 しばらくすると、ふと僕の幼心にきわめて単純な思考が発生し、僕はれいむの手を掴んで立つように促した。 れいむは面倒くさそうな表情をすると、しぶしぶ僕の行動に従って腰を上げる。 「ねえ、僕の家においでよ!れいむは野良なんでしょ?」 「でも…」 「いいから、ほら!」 僕はれいむの手を掴んだまま公園を後にし、ずんずんと家への道を進んでいった。 れいむはというと、抵抗する気力もないのか黙って僕の後をついてくる。 しばらく歩いて家に着くと、僕は慣れた手つきで家の鍵を開け、れいむを中に連れ込んだ。 そこで改めてれいむを観察すると、今まで外に居たせいか家の中に入れるのには少々汚らしい装いだった。 「まってて、今タオルもってくるから」 僕はそういって奥に入り洗面所から軽くぬらしたタオルを持ってれいむの元に戻る。 れいむはその間、ぼんやりと視線を動かして家の中を観察していた。 「おおきいおうちだね」 「そうかな?普通だと思うけど」 「まえのかいぬしさんも、そのまえのかいぬしさんも、あぱあとにすんでた」 「へえ、そうなんだ」 れいむは僕から受け取ったタオルで顔や手足を拭っていく。 人間と暮らしていた時間が長かったのだろう、身なりを整えると僕の後ろについてリビングに入り、 促されるままソファーに座り、すぐに大人しくなった。 僕の両親は家を留守にすることが多く、家を出るは早く帰るは遅い、なので子供でも簡単に飲み食い出来るものが常に備えてあった。 僕はそれをいくつか取り出して、れいむの座るソファーの前のテーブルに並べていく。 そこで初めて、ぼんやりとしていたれいむの目に力が宿るのを僕は見逃さなかった。 「今まで野良だったんだよね、おなかすいてると思って、食べなよ」 「いい…の?」 ここまで来てれいむは遠慮しているのか上目遣いに僕を見る、 けれど視線はお菓子をちらちらと見ているし、口の端には涎が溜まっているのが見えるほどだ。 「もちろん、僕も丁度おなかへってたし、一緒に食べよう」 「ありがとう!」 れいむはぱっと笑顔を咲かせると、手近にあるお菓子を手で掴んでは次々と口に運んでいった。 よっぽどお腹が減っていたのだろう、僕がその勢いに見とれていると見る見るうちに並べてあった皿の中身がなくなっていく。 4分の3程度を一気に食べ終え、最後にミルクをぐいっと飲み干し、れいむは満足そうに息をはいた。 そして急にはっとなり、恥ずかしそうに頬を染めてうつむいてしまう。 「ごめんなさい…」 「どうして謝るの?それよりお腹いっぱいになった?もっと持って来ようか」 「れいむもうおなかいっぱいしあわせーだよ、ありがとう」 「どういたしまして」 ご飯を終えた僕達は、他愛もないおしゃべりをして過ごした、といっても殆ど僕が一方的に話しかけるだけだったが。 しばらくするとれいむは股間に手をやってもじもじとはじめた。 「どうしたの?」 「あのね、れいむしーしーしたくなっちゃった」 僕の質問にれいむは恥ずかしそうに答える、なんだそんなことかと、僕がトイレの場所を教えてあげると、 れいむは一目散に駆け出していった、どうやら相当我慢していたらしい。 しばらくすると水を流す音がして、れいむがトイレから出てきた。 勢いに任せてつれてきてしまったけれど、身の回りのことを自分できちんと出来るれいむに、僕はすっかり感心してしまう。 嬉しくなった僕はれいむがゆっくりだということも忘れて二人で部屋に行き、いつも一人で遊んでいるゲーム機をセットして、 あまりやらない対戦型のゲームを起動させた。 「はい、これもって」 2プレイヤーに接続したコントローラーをれいむに渡すと、れいむは珍しいものでも見るように、 それを裏返してみたり振ってみたりして観察していた。 流石にゲームまではやったことがないらしい、それならそれでと僕はれいむにゲームの操作を含めて細かく実践を交えて説明してあげる。 するとれいむは案外と飲み込みが早く、みるみるうちに僕の言ったことを覚え、つたないながらも僕と対戦ゲームを楽しむことができた。 初めのうちは手加減しながら余裕を持っていた僕も、れいむの初心者ならではの動き、そしてだんだんと操作に慣れていくうちに歯ごたえが生まれ、 いつの間にか夢中になってれいむと二人でゲームをプレイしていた。 そして気付くといつもの間にか太陽は傾き、窓からオレンジ色の光が差し込んでいた。 「ふぅ、楽しかった、れいむは?」 僕がゲームを片付けながら聞くとれいむはこくりとうなづいた。 「あっ…」 僕が上げた声に、れいむはどうしたの?というように小首をかしげる。 けれど僕はれいむから視線をはずし、無言で片づけを続行した。 僕が見たのは、僕の片付けを眺めながら、床にぺたりと女の子座りをしているれいむのスカートのすそから伸びた、 まっしろな太ももだった。 もう少しで下着が見えてしまいそうなそれは、今まで何も考えていなかった僕に、れいむが女の子だということを強く意識させた。 まだやんちゃ盛りだった僕も、女の子に興味がなかったわけではない、意識しないようにしながらもちらちらと視線を送ってしまっていると、 れいむはそれに気付いたらしく静かにスカートの裾を整えた。 なんだか気まずい気持ちになってもう見ないようにとれいむに背を向けると、ふいにれいむが僕の背中に声をかけた。 「ねえ…」 「なに…っ!」 僕はれいむの呼びかけに振り返り、目の前の光景に驚きはっと息を呑む。 「きょうみ…あるの?」 れいむはさっきまで下ろしていたスカートの裾を指で摘み、パンツが見えてしまいそうなぎりぎりの部分まで引き上げて僕を見つめてくる。 僕は無言になってただただそのやわらかく膨らんだ太ももに目を釘付けにされてしまっていた。 するとれいむはゆっくりと座ったままスカートの裾を自らめくり上げた。 「うわっ!!」 僕は思わず声を上げて視線をそらす。 なんとれいむはパンツをはいていなかった。 「ぱぱぱ、パンツ、どうしたのさ」 僕がそっぽを向きながら早口に言うと、れいむは 「お外で汚れたからすてちゃった」 と、くすくすと笑いながら答えた。 そのなんともいえない艶っぽい声に、僕は蜜に誘われる虫のように視線をれいむに向けてしまう。 女の子らしい丸みはあるものの少し痩せた二つの太もも、その真ん中ぴったりと閉じた割れ目が僕の視線を捕らえて放さなかった。 するとれいむは突然目を細めて嬉しそうに笑い声を出した。 「ど、どうしたの?」 「それ、おおきくなってるよ」 言われて一瞬何のことが分からなかったが、指を指されてはっと僕はいつの間にかズボンを押し上げていた股間を押さえた。 「かくさなくていいよ…」 れいむは四つんばいになってゆっくりと僕に近づき、立ったままでいる僕の腰に片腕を回した。 「な…なにをっ」 そしてもう一方の手で器用に僕のズボンの止め具をはずすと、そのままパンツに手をつっこんで素早く僕のものを取り出してしまう。 「あ…むっ」 「うわわわ!!!?」 突然かちんこちんになっていた僕のものを、れいむがおおきな口を開けてぱくりと咥えた。 初めて体験するむずがゆいようなくすぐったいような感覚に、僕は思わず腰を引いた。 するとちゅるんと音を立ててれいむの口から僕のものが抜け、僕はその場にしりもちをついてしまう。 「にげないでいいんだよ」 れいむは僕の腰にすがりついたまま、再び天を仰いでいる僕のものを口に含む。 目を白黒させながら声にならない叫びを上げる僕にお構いなしに、れいむは柔らかな口の中で僕のものを縦横無尽に転がした。 れいむの大きな舌が僕のものをべろりべろりと舐め上げるたびに、腰が砕けてしまいそうな衝撃が走る。 「うううううう!!!おしっこ!おしっこでる!」 お尻の辺りからむずむずと駆け上がってくるなにかに僕が思わず声を上げると、れいむは僕を見上げてにこりと笑ってから 目を閉じて僕のものをじゅるじゅると音を立て吸い上げた。 「!!!!!」 目の前が真っ白になり、僕のものが爆発した。 瞬間どろどろとしたものがれいむの口の中に次から次へと流し込まれる。 れいむは目を閉じたままそれを躊躇いなく飲み干した。 何が起こったか分からず、ただ熱に浮かされて乱れた呼吸を整える僕のお腹の上に、れいむがゆっくりと跨った。 「つぎはもっと、よくしてあげるよ」 「え…?」 そういうとれいむはまだひくひくと動きながられいむの唾液にまみれて光っている僕のものをつかみ、ゆっくりと腰を落とした。 湿っぽい音を立てて、僕のものがやけどしそうなほど熱い何かに飲み込まれる。 「うっ…うううう!!なに!?どうなってるの!?」 れいむは僕の反応にくすくすと笑うと、怪しい視線で僕を見下ろしながら、スカートの裾を両手でつまみ上げる。 するとれいむのスカートに隠されたそこでは、さっき見た女の子の割れ目がぱっくりと開き、僕のものをくわえ込んでしまっていた。 れいむはスカートの真ん中を口で咥えると、僕のお腹に手を当ててぐりぐりと僕の股間にれいむの股間をこすりつけた。 すると僕のものは自分ではなにがなんだか分からないほどにもみくちゃにされ、強制的に暴れさせられ、僕の脳はすっかりショートしてしまう。 少しも動かないうちに、僕はさっきのどろどろをれいむの割れ目の中に流し込んでいた。 「うふふ…あったかいよ…」 れいむはお腹を押さえて僕の発射をうっとりとした表情で受け止めた。 二度目の発射が終わると、れいむは僕の腕を引きながらころりと床に横になってしまう。 上半身が起こされた僕は腕を床について、霞む視界でれいむを見つめていた。 れいむは僕の視線が自分に向いていることを確認すると、腰を持ち上げて足を開き、ぴったりと閉じた割れ目を僕に見せ付ける。 ねっとりと粘液で濡れうっすらと開くそこを、れいむは自らの指で割り開いた。 ぽっかりと空いた穴の奥からどろりとした白い液が溢れ、れいむの丸いお尻を伝って床に垂れ落ちる。 「ねえ…いれてみて…」 誘われるままふらふらと体を起こし、僕はれいむに覆いかぶさった。 「そう、そこ…あんっ!」 れいむは手を使って僕をサポートしてくれ、僕のものは再びすんなりとれいむの穴に飲み込まれる。 「ど…どうしたらいいの…?」 「すきにうごかしてみて…そう…きもちいい…」 言われるままに拙い腰使いで僕はれいむの穴を掘り進んだ。 「きもちいい?」 「そう、きもちいい…いままでしたどれよりも…」 そう口走ってれいむははっとなり、申し訳なさそうな顔をした。 「ごめんなさい、ほかのひとのこといっちゃだめなのに…」 僕は何のことか分からず、言われるがままに腰をれいむの腰にぐりぐりと押し付け続けた。 やがてそれももどかしくなり、動きやすい方法を探すうちに、僕はれいむの足を抱えて腰を前後に動かすようになった。 ぐちゃぐちゃと派手な音を立てながら、れいむの穴になってしまった割れ目が僕のものを咥えて、その動きに合わせるように吸い付いてくる。 「あんっ…あっ…あっ…あぁっ!!」 れいむが短い悲鳴を上げ始めると、僕も段々思考が鈍ってただただ腰を動かす作業に没頭し始める。 れいむの足を抱えたままひざ立ちが辛くなり覆いかぶさってれいむを押しつぶすようにすると、れいむの顔がぶつかりそうなほど近くにくる。 僕らはどちらともなく近づくままに唇を重ね、より一つになるようにあらゆる部分を相手に押し付け続けた。 そして三度目の爆発をれいむの中で終えると、僕らは気絶するようにそのまま床に転がって眠ってしまった。 「きがついた…?」 うっすらと目をあけると、優しい微笑みを浮かべて僕を覗き込むれいむと目があった。 「ん…」 「ねてていいよ」 「うん…」 れいむは僕に膝枕をしてくれていたようで、ふっくらとしたぬくもりが僕の頭を優しく支えていた。 れいむの言葉に甘えることにして、僕はけだるい体をつめたい床に投げ出したままで目をあける。 「ねえ…さっきのなに…?」 「やっぱりしらないの?おとこのひとがいちばんよろこぶのがこれなんだよ」 それかられいむとのゆっくりとした会話の中で、僕は初めてさっきの行為がセックス、僕がしたのは射精だということを知った。 そしてれいむが行為の最中に言った、他の人の話はしちゃいけないという意味も。 れいむは初めの飼い主とセックスをしていたが捨てられ、次に拾われた人ともそういう関係になった。 けれどそこで前の飼い主のこととの話をすると、酷く怒られて、殴られたりしたこともあるらしい。 再び謝るれいむに、僕は優しく気にしなくていいと言った。 けれどその人の気持ちも少しは分かる、僕はたった一回身体を重ねただけで、もう絶対にれいむを離したくないと思うようになってしまった。 窓の外を見ると、意外にもあまり時間はたっていなくて、外はまだうっすらと明るさを残していた。 親が帰ってくるまでまだ時間があると分かった僕は、れいむにお願いしてもっとセックスを教えてもらうことにした。 れいむもそれを快諾し、僕らは僕のベッドに場所を移して再び体力が尽きるまで身体を重ね続けた。 れいむの知っている限りのことを次々と教えられながら枯れ果てるまでれいむの中で射精すると、僕達はお互いを抱いたままベッドの中で眠ってしまった。 物音に気付いてふと目を開けると、部屋の外から足音がするのが聞こえてきた。 その音と微かに聞こえる声に母さんが帰ってきたことを知ると、僕はれいむを起こして脱ぎ散らかしていた服を着た。 僕は高鳴る胸を押さえながら、れいむをつれて母さんの居る居間に向かった。 僕はこれから母さんにれいむを紹介して、僕達はずっとずっと一緒に暮らすんだ。 そう信じて疑わなかった。 けれど僕にぶつけられた母さんの視線は冷たく、投げかけられた言葉は僕の心を深く抉ることになる。 「そんなのひろってきちゃだめでしょ、家にはそんな余裕はないの、捨ててきなさい」 なんでもないことのように、母さんはそう言い放って視線をはずした。 僕にはそれが信じられなかった、もう少し考えてもいいんじゃないか、どうして僕の大切なれいむにそんな酷いことが言えるんだ。 僕は怒りと絶望と興奮で涙をぼろぼろとこぼしながら母さんに大抗議をする。 「どうしてさ、僕はれいむと一緒に”暮らし”たいんだ!わかってよ!」 「だめよ、うちじゃ”飼えない”の」 投げつける言葉を変えながら、結局はそこに行き着く問答を何度も繰り返す。 僕の後ろで黙っていたれいむが僕の手を握り、あきらめたように首を振って、僕と母さんの戦争は幕を閉じた。 あたりに響くのは虫の声と僕達二人の足音、二人の間には沈黙が横たわっている。 涙で目を真っ赤に腫らし、時折鼻をすすりながら僕はれいむの手をぎゅっと握って、二人が出会った公園まで連れて行った。 ずっと一緒に居たかったけれど、短い道のりはあっという間に終わってしまう。 僕は公園の入り口でれいむの手を握ったまま向かい合い、その大きな瞳を見つめた。 「ごめん、ごめんね」 「どうしてあやまるの?」 「ずっと…一緒に居たかった…僕れいむのことが…好きだ…」 子供ならではの短絡な思考、でもその時僕は本当に真剣にれいむのことが好きだった。 もう二度と離したくない、ずっと一緒にいたい、そう願ってやまなかった。 けれど残酷でわからずやの大人のせいでそれは敵わず、僕らはこうして別れなければならない、そう思っていた。 「明日から毎日ここにくるから!ずっとずっと、学校がはじまってもれいむに会いにきて夜までずっと…」 僕の言葉をさえぎるようにしてれいむは僕の頬にキスをした。 どうして頬なんかに、僕はじれったくなってれいむの肩をつかんで唇を重ねようとする。 けれどれいむは顔をそらしてしまい、僕の唇はれいむの頬に当たってしまった。 「どうして…」 今すぐ抱いてしまいたいほどに僕の愛しさは膨らんで、どうにかなりそうだった。 けれどれいむは僕の身体を両手で押して一歩後ろに身体を引いた。 「あのね…さいごにいっこ、おしえてなかったことがあったよ…」 れいむは俯きながらそう切り出す、僕は一言一句聞き漏らさないように真剣にれいむの言葉に耳を傾けた。 「にんげんさんと…ゆっくりは…”こい”をしちゃいけないんだよ、すきになっちゃだめなの」 「どうしてさ!」 思わず語気を荒らげる僕にれいむはビクリと肩を震わせた。 「しあわせーになんかなれないから、だよ!じゃあ、またあしたね!」 また明日、そういわれて僕はすっと毒気が抜かれるのを感じた。 れいむはぱっと顔をあげて、笑顔で手を振りながら公園の中に入っていく。 そうさ、また明日、明日の次は明後日、ずっとずっと毎日会いにくれば良い、一緒に暮らせない、ただそれだけ。 僕は希望が胸に生まれるのを感じながら、ぐいっと涙を拭って笑顔でれいむに手をふった。 「うん!またあしたね!」 そういって僕は背を向けて、公園を後にし家路に着いた。 それが僕とれいむの最初で最後の別れとなった。 次の日僕は朝かられいむに会いに公園に行った。 けれどれいむは公園を隅から隅まで探してもどこにも見つけることが出来なかった。 どうしようもない悲しみに僕がわんわんと声を上げて泣いても、ついにれいむは現れなかった。 今になって思えば、それが僕の気持ちを知ったれいむの、本当の意味での優しさだったのだと思う。 あれ以来なんど公園に足を運んでも、僕はただの一度もれいむの顔を見ることは出来なかった。 あれから何年もの年月が流れ、あのれいむがあれからどうなったか、今どうしているかは分からない。 僕に出来ることは、僕が好きだった『彼女』が、この空の下の何処かで幸せに暮らしていることを祈る、ただそれだけだった。 終 ----------------------------------------- お久しぶりです。 夏になると本当に日々が忙しく、好きなことをするのにもわざわざ時間を削ってねじ込んで捻出しなくてはならなくなってしまい、 なんだか疲労ばかりが残されてしまっています。 今回は某作品のオマージュですが、あまり深く考えずタイピング作業をしたためそうか?と思われてしまうかもしれませんが、 自分自身は楽しみながら創作できたのでよかったとは思います。 それでは次の作品で。 ばや汁でした。 いつも多数のご意見ご感想ありがとうございます! この作品へのご意見ご感想も、どうぞお気軽にお寄せください。 個人用感想スレ http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1278473059/ anko1748 かみさま anko1830-1831 とくべつ anko1837 ぼくのかわいいれいむちゃん anko1847 しろくろ anko1869 ぬくもり anko1896 いぢめて anko1906 どうぐ・おかえし anko1911 さくや・いぢめて おまけ anko1915 ゆなほ anko1939 たなばた anko1943 わけあり anko1959 続ゆなほ anko1965 わたしは anko1983 はこ anko2001 でぃーおー anko2007 ゆんりつせん anko2023 あるむれ anko2068 おしかけ anko2110 とおりま anko2111 おもちゃ anko2112 ぼくとペット anko2223 まちかどで anko2241 かいゆ anko2304 ぼうけん anko2332 とかいは anko2349 たたかい anko2369 ゆっくぢ anko2413 せんたく anko2427 ぶろてん anko2489 あこがれ 前編 anko2588 ひとりぼっちのまりさ anko2807 母の音 anko2887 僕とれいむと秘密基地 anko2949 野良れいむ anko3047 ぶろてん おまけ anko3058 実験01 クッキーボタン anko3067 わけあり おまけ anko3078 げすまりさ anko3090 てのりれいむ anko3096 雨 anko3107 ゆかりん anko3114 命の価値 anko3125 ちるの時々まりさ anko3129 はるですよ anko3452 れいむが愛したれいむ anko3529 てのりれいむと愉快?な仲間達 餡小話では消えてしまった作品も多数ありますので、過去作を読みたいと思っていただけた方は ふたば ゆっくりいじめSS保管庫ミラー-ばや汁ページ- http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/395.html をご活用ください。
https://w.atwiki.jp/hutaba_ranking/pages/156.html
※駄文、稚拙な表現注意 ※俺設定注意 ※あっさり小話第5弾です。 「あれっ?これって・・・」 俺がそれを見たのは散歩の途中のことだった。最近メタボ気味の俺はよく裏山を散歩するようにしているのだ。 そこに居たのはれいむとまりさ。大木のうろの中で2匹仲良く眠っている。 どうということもないゆっくりの巣、どこにでもあるありふれた風景。 ・・・のはずだった。 「なんでこいつ・・・こんな所に?」 俺は湧き上がる疑問を思わず口にしてしまう。そのけしてあり得ない光景に・・・ となりにいるのは 作、長月 「おじさん・・・れいむになにかよう?」 「・・・・・(ジロ)」 れいむ達が私の視線に気づいたようだ。まりさもジロリと俺を睨みつける。 「ああ・・・なんでそのまりさは怪我してるのかなって・・・」 慌てた適当な答えを俺は返す。 実際まりさの方は傷だらけだった。体のいたる所に薬草らしきものが貼ってあり、見てるこっちが痛々しいくらいだ。 「まりさはね、このむれをすくってくれたえーゆーなんだよ!!そしてこれはめーよのふしょーなんだよ!!」 エーユー?一瞬ドコモやソフトバンクなんかが思い浮かんだが関係ない。ゆっくりで携帯電話使う奴なんて胴付きのとかいはてんこぐらいなもんだし。 多分、英雄と言いたいんだろう。 「とくべつにはなしてあげるよ!!まりさのぶゆーでんを!!」 そう言うとれいむは頼みもしてないのにつがいのまりさの話をし始めた。どうやら、えーゆーのまりさをのことをよほど自慢したいらしい。 れいむによるとこのまりさ、子ゆっくりの頃から父親のみょんに剣術の英才教育を受けていたらしい。素質があった事もあり、めきめきと腕を上げたまりさは成体になる頃には父みょんの実力を追い越し、この辺りでは最強の剣(と言っても枝だが)の使い手になっていた。 実際ゲスゆっくりやれいぱーありすがこの群れを襲ってきたこともあったが、全てまりさが1匹で返り討ちにしていた。 そんな自他共に認める群れ最強のゆっくりだったまりさだが、そこへ最強の敵が現れる。 捕食種のゆっくりふらんだ。 「うー・・・しね・・」 「ゆぎぁああああああ!!ちぇんのあんござんすっちゃだめぇええええええ!!!」 「わがらないよぉおおおおおお!!!」 夜ごと遅い来るふらんに群れのゆっくり達は成すすべなくその命を散らしていった。群れの長であるぱちゅりーはなんとか被害を食い止めよう様々な策を考えるも、狡猾で知能の高いふらんに裏をかかれ犠牲者は増える一方だ。 「むきゅ・・・こまったわ・・・このままじゃぜんっめつっしちゃう・・・」 万策尽きたぱちゅりーはまりさにふらん討伐の命を下した。もうまりさの強さにすがる他に道がなかったのである。 最初まりさはこの命に躊躇した。 れみりあなら以前撃退したこともあるまりさだが、今度の相手はふらん。戦闘能力、知能共にれみりあよりはるかに上の相手。 今度こそ死ぬかもしれない。そう思ったからである。 しかしこのまま自分が行かなければまた群れの仲間がふらんの毒牙にかかることになる。次は自分の愛するれいむかも・・・それだけは嫌だ。 その思いがまりさを奮い立たせまりさを死地へと立たせた。 「ゆがぁあああああ!!!ふらんはゆっくりしねぇえええええ!!!!」 「うー・・・こいつ・・・つよい・・」 ふらんとの激しい戦いは1時間近くにも及び、その戦う怒号は群れで待っているれいむ達にも聞こえてきた。そして。 「・・・まりさたちのこえがしなくなったね・・・」 「むきゅ・・・まさかまりさがやられたんじゃ・・・」 気が気ではないれいむ達。最悪の想像が頭よぎる。しかしそれは杞憂に終わる。 「あっ!!まりさがかえってきたよ!!」 「ひどいけがだわ・・・はやく、やくそーのじゅんびを!!」 傷だらけのボロボロになり、足元もおぼつかない様子だが、口には討ち取ったふらんの帽子をくわえニヤリと笑うまりさ。 こうしてれいむ達の群れはふらんの恐怖から解放され、群れを救ったまりさはえーゆーと呼ばれるようになった。 「・・・ということがきのうのよるあったんだよ。」 「なるほど・・・そういうことだったのか。」 俺は全てに合点がいった。なぜこんな状況になったのかを。なぜこいつがこんな所にいるのかも。 「ありがとよ、れいむ。面白い話を聞かせてくれて。」 「ゆーん。まりさのぶゆーでんならいつでもきかせてあげるよ!!」 そう能天気にもみあげをピコピコさせて喜ぶれいむ。どうやら自分が陥っている状況に全く気づいてないらしい。 まぁ教えてやる義理もないんだがな。 「じゃあな、ま・り・さ。れいむと末永くゆっくりな。」 俺はまりさ、いや正確にはれいむがまりさだと思っているゆっくりに目配せする。 「うー・・・」 れいむの横でまりさの帽子を被ったふらんがニヤリと笑い返した。 それにしてもよく考えついたもんだ。殺したゆっくりのつがいに傷ついた自分の介抱をやらせるなんて。 俺は感心しながらその場を後にした。 後書き もうすぐ夏ということでちょっとホラーな話を。実際、倒したと思っていた殺人鬼が知らない間に自分の仲間と入れ替わってたら怖いですよね。 面白かった、ゆっくりできた、と言う方は下のゆっくりできたよ!!ボタンを押していただければ幸いです。 ご意見、ご感想、ご要望は感想用掲示板(長月用スレ)でおねがいします。URLも書いておきますので。 ふたば系ゆっくりSS感想用掲示板(長月用スレ) http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1274852907/ 今まで書いた作品 anko259 ゆっくりちるのの生態(前編) anko268 選ばれしゆっくり anko279 新種ゆっくり誕生秘話 選ばれしゆっくり番外編 anko292 ゆっくり見ていってね anko304 またにてゐ う詐欺師てゐの日々 anko313 VS最強のゆっくり 史上最低の戦い anko333 夢と現実のはざまで anko350 あるまりさの一生 anko385 ゆっくりを拾ってきた anko425 ゆっくり Change the World(出題編) anko448 ゆっくり Change the World(出題編2) anko484 ゆっくり Change the World(解答編) anko497 あるゆっくりできない2匹の一生 anko542 てんこがゆっくりするSSさん anko558 あるドスまりさの一生 とてもゆっくりした群れ anko577「餡子ンペ09」ゆっくりを愛でてみた anko613「餡子ンペ09」れいむと幸せを呼ぶ金バッジ anko633「餡子ンペ09」としあき博士のれいぱーありす矯正計画 anko735「餡子ンペ09」あるてんこの一生 メスブタの群れ anko764「餡子ンペ09」あるさなえの一生 ゆっくりは皆それぞれ(前編) anko791「餡子ンペ09」あるさなえの一生 ゆっくりは皆それぞれ(後編) anko932 誰も救われない話 anko1022 あるババ・・お姉さんの結婚 anko1057 もらうぞ anko1127 めすぶた祭り anko1224 あるちるのの一生 ずっと続いていく物語 anko1500 ある愛でお兄さんの午後 anko1530 どうして・・・ anko1638 とてもかわいそうなでいぶ anko1672 奇跡のドス anko1713 まりさときゃっしゅさん anko1775 ゆっくりしたおちびちゃん anko1836 希少種になる薬 anko1877 幸せまりさ一家
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3712.html
『犠牲』 18KB 仲違い 同族殺し 7作目 既出ネタかもしれません 誤字脱字があるかもしれません 日本語がおかしいところがあるかもしれません ≪犠牲≫ とある公園で四匹のゆっくりが楽しそうに遊んでいた。種類は「れいむ」「まりさ」「ありす」「ぱちゅりー」だ。 この四匹のゆっくりはみな幼馴染で、赤ちゃんの頃からずっと友達だった。 「ゆ~♪ゆっくりのひ~♪まったりのひ~♪すっきりのひ~♪」 「ゆふぅ。れいむのおうたさんはとってもゆっくりできるのぜ!」 「れいむのおうたさんはとってもとかいはね!」 「むきゅ!ぱちぇじゃそんなにゆっくりしたおうたさんはうたえないわ!」 あるときはれいむの歌をみんなで聞き、 「ゆおぉぉぉぉぉ!!!!!!」 「まりさはとってもあんよさんがはやいね!れいむじゃおいつけないよ!」 「さっすがまりさね!とかいよ!」 「むきゅぅぅ・・・ぱちぇはちょっとはしっただけでもくたくたよ・・・。」 あるときはみんなで駆けっこをし、 「みんな、みてみて!ありすのおうちさんをまたこーでぃねーとしてみたわ!」 「ゆぅぅ~。ありすのこーでぃねーとさんはすごいゆっくりしてるね。」 「すごいのぜ!こんなにゆっくりしたおうちさんはみたことないのぜ!」 「むきゅぅ。こんなこーでぃねーとさんのしかたがあるなんてぱちぇはしらなかったわ。」 あるときはありすのコーディネートしたおうちを見学し、 「むきゅ!きょうはぱちぇがおはなしさんをきかせてあげるわ!」 「ゆぅ~ん。ぱちゅりーはとってもものしりだね!れいむじゃそんなにたっくさんのことおぼえられないよ。」 「さすがぱちゅりーなのぜ。まりさじゃすぐにわすれてしまうのぜ。」 「ぱちゅりーのおはなしはとってもとかいはよね!きょうはどんなおはなしをきかせてくえるのかしら?」 あるときはぱちゅりーの話してくれるお話をみんなで聞いていた。 虫や草が豊富なこの公園では餌の心配も無く、四匹はずっとゆっくりしていた生活を送っていた。 だが、その日はいつもとは違かった。四匹が遊んでいると、一人の男性が公園の中に入ってきたのだ。 それ自体は何もおかしくないのだが、その男性は四匹を見つけるとそっちに向かって歩きだした。 「むきゅうううう!にんげんさんがこっちにくるわ!!」 「ゆうううう!!こわいよおおおおおお!!」 「だいじょうぶなのぜ!れいむはまりさがまもるのぜ!」 「みんな!!はやくにげましょ!!」 人間が自分たちに近づいて来ることに気がついた四匹は、すぐに逃げ出そうとした。 だが、ゆっくりと人間では移動速度が違すぎる。男は四匹に近づき、手にもっていた霧吹きを四匹に向けトリガーを引いた。 「ゆうぅ・・・。なんだかれいむねむくなってきたよ・・・。」 「まりさもなのぜ・・・。す~やす~やしたいのぜ・・・。」 「ありすもねむぃわぁ・・・。こういうときはねるのがとかいはよぉ・・・。」 「むきゅぅ・・・。ねちゃだめよぉ・・・・。」 霧吹きの中に入っていたのはラムネを溶かした水だったらしい。 強烈な眠気に耐えられず、四匹はその場で眠ってしまった。 四匹が眠ったことを確認した男は大きめの箱の中に四匹を入れ、その箱を持って公園を後にした。 「ぱちゅりー!ゆっくりおきるのぜ!!」 「むきゅっ・・・。」 まりさの呼びかけに反応してぱちゅりーは目を覚ます。目の前にはいつも一緒にいる見慣れた三匹のゆっくり。 そして、自分のいるこの場所は全く見覚えのない場所だった。 「むきゅう・・・。ここは、どこなのかしら?」 「ゆぅ・・・。ぱちゅりーにもわからないなられいむたちにもわからないよ・・・。」 「まりさもなのぜ。おきたらみんないっしょにここです~やす~やしていたのぜ。」 「まったく!ありすたちをとじこめるなんてとんだいなかものなのね!」 どうやら他の三匹もここがどこなのかわからないようだ。 ぱちゅりーはなぜ自分たちがこんなところにいるのかを考えてみた。 恐らく、自分たちがここにいる原因は公園にいたときに現れたあの人間だろう。それ以外には考えられない。 「むきゅ、ぱちぇたちがここにいるのはにんげんさんのせいじゃないかしら?」 「ぱちゅりーもそうおもうのかぜ?まりさもぱちゅりーとおなじかんがえなのぜ。」 「ゆぅ~ん。でも、にんげんさんはどうしてこんなことをするのかな?」 「そんなこといまかんがえてもしょうがないわ。それより、どうやったらここからでれるのかみんなでかんがえましょ。」 ありすの意見にぱちゅりーたちも賛成した。確かに、今考えるべきはここから逃げることなのだ。 とりあえず、自分たちのいる場所がどういうところなのか探ってみることにした。 ぱちゅりーたちがいるのは壁で囲まれている四角い部屋で、広さはそれなりにある。 天井には光を放つ物が取り付けられていて、ぼんやりと辺りを照らしている。 そして、壁の近くの床から棒が一本斜めに突き出しており、その近くには矢印が書いてあった。 それ以外は何もない空間だ。ともすれば怪しいのはこの地面から飛び出している棒と、下に書いてある矢印である。 「むきゅう・・・。このやじるしさんのほうこうにぼうさんをひっぱればいいのかしら?」 ぱちゅりーは棒を口に加え、矢印の方向に引っ張った。すると、『ガー』という音と共に棒がある壁の反対側の壁が横に開いた。 そして、開いた壁の向こうに外の景色が映し出された。見たことのない場所ではあるが、ここから脱出できることに変わりはない。 「ゆうぅぅぅうう!!!!すごいよ!!!!かべさんがどいてくれたよ!!!!!」 「やったのぜ!!これでそとにでられるのぜ!!!」 「やったわ!!!これでまたとかいはなせいかつがおくれるわね!!」 これで外に出られると思い、大喜びの三匹。 ぱちゅりーも嬉しくなり、外に向かおうと棒から口を離した。 しかし、ぱちゅりーが口から離した棒は引っ張る前の位置に傾き、それと同時に開いていた壁も『ガタンッ!』という音と共に閉じてしまった。 「どぼじでかべざんがじまっでるのおおおおおおおおおおお??!!!!!」 「ゆううううう!!!かべさんはゆっくりしてないでそこをどいてほしいんだぜ!!!」 「しまるなんていなかもののかべさんね!!」 壁が閉じたことに対して不満を言う三匹。しかし、ぱちゅりーはある考えが浮かんだ。 それを確認するために、ぱちゅりーはもう一度棒を引っ張りそして離した。 「ゆ!かべさんがあいてくれたy『ガシャンッ!』どぼじでじまっじゃうのおおおおおおおおおお??!!!!」 「(むきゅぅ・・・おもったとおりね・・・。)」 ぱちゅりーは自分の考えが間違っていないことを確信し、それと同時に絶望に包まれた。 「(むきゅ・・・、このぼうさんをひっぱっているときだけかべさんはひらくのね・・・。 でも、このぼうさんをひっぱってたらかべさんがとじるまでのあいだにそとにでることはできないわ・・・。 つまり、だれかがここにのこってぼうさんをひっぱってないといけないのね・・・。でも、ひっぱってたゆっくりは・・・。)」 ぱちゅりーはこの事をみんなに告げるべきかどうか悩んだ。 だが、この事をみんなに隠しておくわけにはいかない。ぱちゅりーは意を決し、自分の考えを皆に打ち明けることにした。 「かべさんはゆっくりしてないでもういちどひらいてね!れいむおこってるんだよ!!」 「ゆっくりしてないかべさんはまりさがせいっさいするのぜ!それでもいいのかぜ?!!」 「いなかもののかべね!ありすたちがとかいはだからってしっとしないでね!!」 「むきゅ、みんな、ゆっくりぱちゅりーのおはなしをきいてね。」 壁に対して怒りを露わにしている三匹にぱちゅりーは沈んだ声で話しかけた。 そして、この部屋の仕組みを三匹に説明した。 ぱちゅりーの説明を聞いた三匹は何を馬鹿な事をとぱちゅりーの発言を認めなかったが、ぱちゅりーが実践してみせたおかげで納得せざるを得なくなった。 「つまり・・・。だれかをここにおいていかないとそとにはでられないのかぜ・・・?」 「むきゅ、そういうことになるわ。」 「そ、そんなのいやよ!みんないっしょにここをでましょうよ!」 「ゆわあああああああん!!!どぼじでごんなごどずるのおおおおおおおお!!!!」 真っ青な顔で今自分の置かれている状況を確認するまりさ。 みんなで逃げようと不可能なことを言い出すありす。 ただただ泣きわめくだけのれいむ。 部屋の中を流れる重い空気。暫くの間、部屋の中にはれいむの鳴き声以外何も響かなかった。 あれからどれくらいの時間が経ったのだろうか。外の様子を確認することができないわけではないが、誰も外を見ようとはしなかった。 れいむもあれから少ししたら泣くのをやめ、他の三匹同様暗い顔つきをして黙ってしまった。 みんなで一緒に逃げようと言っていたありすだったが、彼女自身もそんな事は不可能だと解っていたのだろう。 あれから一度もみんなで逃げようだなんて言い出さなかった。 「おなか・・・すいたね・・・。」 れいむがポツリと呟いた。 「ちょっと、だまってなさいよ。このままじゃありすたちのだれかがしぬことになるのよ? そんなときに『おなかがすいた』だなんてどんなしんけいしてるのかしら?そうぞうもできないわ。」 れいむの言葉に対して突っかかるありす。嫌な空気が周りを満たしていく。 「ゆ・・・ごめんね・・・。」 「まったく。だれかがしぬかもしれないってときにじぶんのことしかかんがえないなんて・・・。れいむはなんてわがままなのかしら。 だいだい、れいむはいつも・・・」 「ありす、そこまでにしておくのぜ。」 れいむに対して文句を言おうとしたありすだったが、まりさに止められまた黙り込んでしまった。 だが、場の空気は嫌な感じのなままだ。 「ゆ!そうだ、れいむおうたさんをうたうよ! れいむのおうたをきいてゆっくりすれば、きっといいほうほうがおもいつくかもしれないよ!」 険悪な空気に耐えられなくなったのか、れいむが突然そんな提案を出した。 「おうたぁ~?まったく、おうたがいったいなんのやくにたつっていうのかしら?ほんとう、ばかってらくよね。なにもかんがえなくていいんだから。」 またもやれいむに突っかかるありす。日頃かられいむに対して思うことがあったのだろう。それがこの場に来て爆発してしまったようだ。 「ゆぅ~・・・だかられいむはれいむのおうたをみんなにきいてもらってゆっくりしてもらおうと・・・。」 「だからおうたなんかうたったってむだだっていってるでしょおお?!!そんなこともわからないの?!ばかなの?!しぬの?!」 「れいむはばかじゃないよ!!ゆっくりすればいいあんがおもいつくかもしれないってさっきもいったよね?!りかいできる?!」 「だからそれがむだだっていってるのよ!!おうたなんかうたってるひまがあるんならそのいいあんとやらをれいむもかんがえてね!」 「ありす!れいむ!けんかはやめるのぜ!!」 大声で怒鳴り散らす二匹を止めようとまりさが喧嘩の仲裁に入る。しかし、怒り心頭といった感じの二匹はまりさを無視して喧嘩を再開する。 「だいたいね、れいむはむのうすぎるのよ!ぱちゅりーのようにからだがよわいわけでもないのにかりにもいかずにずっとおうちでねてるし! ゆいいつできることといったら『おうたがうたえる』ことだけじゃない!そんなものがなんのやくにたつの?!このむのうが!!」 「れ、れいむはむのうじゃないよ!!!かりにいかないのはぱちゅりーもいっしょなのにれいむだけせめないでね!! それに、ありすだって『こーでぃねーとができる』くらいしかとりえがないよ!かりをしてるっていっても、まりさよりとってこれるごはんさんもすくないよ! あのこうえんさんはごはんさんがいっぱいあるかられいむだってやろうとおもえばかりくらいできるよ!!」 「じゃあどおしていつもかりをしないでねてるのよおおおおおおおおおお??!!!!!! それにぱちゅりーはあたまがいいからたべられるごはんさんとたべられないごはんさんをわけたりしてくれるでしょうがああああ!!!! れいむのようないなかもののばかとぜんっぜんいっしょじゃないわよおおおおおおお!!!!!」 「ゆわああああああああああん!!!まりさあああああああ!!ありすがれいむをいじめるううううううう!!!!」 「またそうやってまりさになきつくううううううううう!!!れいむはいっつもそうじゃない!!! まりさのめいわくをかんがえもせずにこまったら『まりさ』『まりさ』って!!!! まりさになきつけばぜんぶかいけつするわけないじゃない!!!まりさからもなにかいってやりなさいよおおお!!!!」 当のまりさはと言うと、れいむに泣きつかれありすから睨まれオロオロとしている。 ぱちゅりーは深い溜息をついた。いつかこうなるのではないかと思っていたが、よりにもよってこんな時に・・・。 ぱちゅりーは頭が良いことからみんなの相談役を請け負っていた。誰が決めたわけでもなく、自然にそうなったのだ。 相談役としてみんなの話を聞いているうちに、色々なことが解っていった。 まりさがれいむのことが好きであること。また、ありすがまりさのことが好きであること。 れいむはまりさの事を困ったら助けてくれる親友と思っているだけで、恋人としてまりさを見てはいないこと。 れいむに何かを頼まれたら断れないまりさと、そんな二匹の関係を見て嫉妬するありす。 この関係が続けばいつかきっと何かゆっくりできない事が起こることは分かっていた。しかし、どうすればいいのかは分からなかった。 そして、問題を先延ばしにし続けた。そして、その結果としてこのような最悪の展開が生まれてしまったのだ。 ぱちゅりーは己の愚かさを悔いた。しかし、今悔しがったところで何か問題が解決するわけでもない。 どうにかしてこの場を抑えなければ下手をしたら殺し合いにでもなってしまうかもしれない。それだけは絶対に避けなければならない。 「むきゅう!!みんな、おちついて!!おこったところでなにもかいけつしないわ! それよりも、これからどうすればいいかをみんなではなしあいましょう!!」 「はなしあったところでいったいなにになるっていうのよ!!!『これからどうすればいいか』ですって? そんなのわかりきってるじゃない!!だれかがぎせいにならないといけないのよ!!それいがいにここからでるほうほうなんてないわ!!」 「ゆ・・・そんなことないのぜ。みんなでかんがえればきっといいほうほうがみつかるのぜ・・・。」 「そ、そうだよ。だからありすもゆっくりしようね?ゆっくり、ゆっくり。」 ぱちゅりーの説得にまりさとれいむも加わりなんとかありすをなだめようとする。しかし、ありすの怒りはそんなことで収まったりはしなかった。 「だからいいほうほうっていったいなんなのよおおお??!!!!そんなのないってわかってるんでしょ?!!いいかげんげんじつをみなさいよ!!! そうよ!れいむがぎせいになればいいじゃない!!あんたみたいないなかものいきてたってなんのいみもないわ!!! だったらここでありすたちのためにぎせいになりなさいよ!!!」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおお??!!!!れいむしにたくないよおおおおおおおお!!!!!」 「あ、ありす!!それはひどいのぜ!!!」 「そうよありす!!!かんがえなおして!!!!」 「じゃあほかにだれがいるっていうのよ!!!みんなもいままでのせいかつをおもいだしてごらんなさいよ!! れいむはまりさやありすがごはんさんをとってきても『ありがとう』のひとこともなかったわよ?!!! れいむはじぶんがだれかにささえられていきるのがとうぜんだとおもってるようなげすなのよ!!! そんなげすいきるいみなんてないわ!!ここでしぬべきなのよ!!!!」 ありすは大声でそう言い放った。その目は真剣そのもので、本気でれいむに『死ね』と言っているようだ。 ありすにそう言われ、ぱちゅりーもれいむが今まで自分にお礼を言ったことなどなかったことに気がついた。 それに、ありすはれいむに嫉妬心まで抱いているのだ。ここまで怒る理由も分からないでもない。 だが、ぱちゅりーはやはり誰かを犠牲にするというのは最後の手段としてとっておきたかった。 誰かを犠牲にしなければ出られないことなど解ってる。だが、どうしてもその現実を認められないのだ。 何度自分に言い聞かせても、必ず『もしかしたらいい方法があるかもしれない』と考えてしまう。 結果、あの時と同じように問題を先延ばしにしてしまう。時間が解決してくれることなど無いと知りながら。 「・・・しね・・・。」 不意にれいむがそう呟いた。その表情は怒りに満ちていた。 「しね!!れいむにしねなんていうげすなありすはしね!!!なんでれいむがぎせいにならなきゃいけないの?!!ばかなの?!しぬの?! おれいをいわなかったからそれがなんなの?!!れいむをみてさんざんゆっくりしてきたんだからごはんさんをくれるくらいとうぜんでしょ!!! ほんとうにゆっくりしてないありすだね!!!そんなありすはれいむのぎせいになってここでしんでね!!!そのほうがありすにはおにあいだよ!!」 れいむはそう怒鳴り散らした。その姿は、どう見ても今まで一緒に過ごしてきたれいむと同じゆっくりには見えなかった。 れいむの言葉を聞いた瞬間、ありすは笑みを浮かべた。それはとても邪悪な笑いだった。 「ほらね!まりさもぱちゅりーもきいたでしょ!!!これがれいむのほんっしょうなのよ!!! 『じぶんをみてゆっくりしたんだからごはんをわたすくらいあたりまえ』?どうかんがえてもげすのかんがえかたじゃない!! まりさもめをさまして!そんないなかもののれいむからはなれてこっちにきなさい!!」 「うるさいいいいいいいい!!!しねえええええ!!!!れいむをげすあつかいするげすなありすはしねええええええ!!!!!」 「ゆうぅ・・・。ぱ・・・ぱちゅりー・・・。」 まりさは困惑した顔でぱちゅりーに助けを求めた。しかし、ぱちゅりーもれいむの豹変ぶりに面食らって呆然としていた。 そして、そんな二匹の隙を見たありすはれいむに素早く近づき、体当たりを食らわせた。 「ゆぎゃああああああああ!!!いたいいいいいいい!!!!なにするんだこのげすありすうううううううう!!!!」 「ふん!あんたみたいないなかものどうせじぶんからぎせいになんてなりはしないわ!!だからここでありすがころしてやるのよ!!」 ありすはれいむの上に乗り、何度もれいむを踏みつけた。 「ゆがあぁぁぁ・・・いだいいいいい・・・やべろおおお、れいむをゆっくりさせろぉぉ・・・・」 「しねぇ!!しねぇ!!しねぇ!!!」 「あ・・・ありすうううう!!なにやってるんだぜええええええ!!!!」 ようやく事態に気づいたまりさがありすを止めようと二匹に近づいていった。 「ゆがあぁ・・・・ばりざぁ・・・とっととれいむをたすけ・・・『グジャ』」 だが、時すでに遅し。れいむはありすによって踏み潰されてしまった。 「ゆふぅ・・・。まりさ、いなかもののれいむはころしたわ。だからありすといっしょにゆっくりしましょう?」 「あぁ・・・れいむ・・・。れいむぅぅ・・・。」 「むきゅぅ・・・。れいむ・・・。」 このときぱちゅりーは、ありすがれいむを殺してしまったことに責任を感じていた。 「自分がしっかりしていれば・・・」ぱちゅりーの中では自責の念が渦巻いていき、飲み込まれそうになっていた。 だから気づけなかった。まりさの変貌に。 「よくも・・・よくも・・・れいむを・・・!!!」 まりさはありすを睨みつけた。 「まりさもきいたでしょ!あのれいむのことばを!!あいつはげすなのよ!しんでとうぜんのくずなのよ!!」 「うるさいよ!!ゆっくりごろしをするようなげすはしねぇえええええ!!!!」 まりさはありすに体当たりを喰らわせた。 「ゆがああああああああ!!!」 まりさの体当たりを喰らったありすは吹っ飛び、壁に激突した。 そんなありすにまりさは何度も体当たりをする。 「よくもれいむをころしたなあああああああ!!!ころしてやる!!ころしてやるううううううううう!!!」 「ゆごぉあああ・・・やべて・・・。ぱちゅりー・・・たすけて・・・」 ありすに呼ばれようやく我を取り戻したぱちゅりー。 ぱちゅりーはまりさに近づくと、髪の毛を引っ張り体当たりをやめさせる。 「はなせえええええええ!!!!こいつはれいむをころしたんだあああああああ!!!!」 ぱちゅりーを振りほどこうと必死に抵抗するまりさ。しかし、ぱちゅりーも振りほどかれまいと必死にまりさの髪を引っ張る。 「ゆふぅ・・・。ゆふぅ・・・。」 数分後、まりさはようやく落ち着きを取り戻した。 「むきゅう、まりさ、おちついた?」 「ゆふぅ・・・。まりさはゆっくりおちついたよ、ごめんねぱちゅりー。」 「むきゅう、いいのよ。それより、ありすはだいじょうぶかしら?」 「ゆ!そうだったよ!!ありすごめんね!!まりさがわるかったよ!」 ありすの方を向き直り謝罪をするまりさ。しかし、ありすからの返事はなかった。それもそのはず、ありすはすでに事切れていたのだから。 「ゆ・・・ゆわあああああ!!!!ありずううううううううううううう!!!ごべんねええええええ!!ごべんねえええええええええええ!!!!」 ありすを殺してしまったことに気づいたまりさは、既に死んでしまっているありすに向かって謝罪を続けた。そして・・・ 「ごべんねぇ・・・まりさもすぐそっちにいくからね・・・。」 「むきゅ・・・!!まりさ、あなたまさか!!!」 まりさの言葉から不穏な空気を察知したぱちゅりー。 「まりさ!!やめなさい!!!そんなことしてもんないみのない『さぁ、おたべなさい!』わ・・・よ・・・。」 まりさは愚かにもお食べなさいをしてしまった。ぱちゅりーを外に出さないまま。 こうしてその部屋の中に残ったのは潰れたれいむとひしゃげたありす、まっぷたつになったまりさと生き残ったぱちゅりー。 そして、誰か一人を犠牲にすれば他の全員が生きられるはずだったあの装置だけとなった。 終わり あとがき 昔見た戦隊ヒーロー物にこんな風な構造の部屋に閉じ込められる話があったのを思い出した書いてみました。 至らない点も多かったと思いますが、少しでもゆっくりしていただければ幸いです。 今までに書いたもの anko3588 受け入れられない anko3595 横暴 anko3600 踏みにじる anko3608 餡子の雨 anko3628 約束 anko3657 消えたまりさ
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3400.html
『ベトベトするよ』 3KB いじめ いたづら 野良ゆ いつもの小ネタです。短いです 「にんげんさん!かわいそうなれいむに、あまあまをわけてくだざいぃぃぃ!!」 「あみゃあみゃ、よこしぇー!くしょにんげん!れーみゅは、おなかがすいちぇるんだよ!!」 公園の前を通ろうとしたら、薄汚いゆっくりが目の前に飛び出してきた。 母子共に肌の色が悪く、髪の毛もボサボサで、リボンはあちこち切れている。 物乞いをしてくる事から、野良での生活力に乏しい元飼いゆっくりといったところか。 「れいむたちは、このままじゃしんでしまうんでずぅぅぅぅ!おねがいじますうぅぅ!なんでもいいですから、あまあまをわけてくだざいぃぃ!!」 「しょーだよ!みんなで、たすけあいまちょー!って、くしょにんげんもいってたよ!だから、れーみゅにあまあまをちょうだいね!」 死んでしまうと言う割には、元気そうに騒いでいる野良親子。 何でも良いからと言いつつも、ちゃっかり「あまあま」を要求してくる親れいむと、何処で覚えたのか、「助け合う」などど喚く子れいむ。 人類と助け合うのは構わないが、ゆっくりと助け合う気など起こらない。 そのまま素通りしようかとも思ったが、ある事を思いついた。 「あーわかった。何でもいいんだな?ほれ、これをやろう」 俺は口から味の殆ど消えたガムを取り出すと、薄汚れた子れいむの底部に伸ばして貼り付けた。 そしてガムの付いた子れいむの底部を、公園内に置いてある理解不能な形をしたオブジェに貼り付けた。 「ゆゆー?!なにこりぇぇぇぇぇ?!にゃんだか、べーとべーとしゅるよ!ゆーん、ゆーん…ゆぴぃぃぃ!あんよがうごかにゃいぃぃぃ!!」 どうやら、ガムが底部に付いたことにより、子れいむはまともに歩けなくなったようだ。 そればかりか、ガムが接着剤の役目を果たしているようで、子れいむは怪しいオブジェと一体化してしまった。 必死に揉み上げをピコピコと動かし、体を伸ばしているが、それも虚しい足掻きだった。 「ゆっがぁぁぁぁ?!おちびちゃんがぁぁぁぁ!!どぼじでこんなことするのぉぉぉ?!おちびちゃんが、ゆっくりできないでしょぉぉぉ?!」 「そんな事はいいから、早く助けてやったらどうだ?可愛いおちびちゃんとやらが、泣いてるぞ!」 「ゆゆっ?!そうだったよ!れいむがおちびちゃんを、きゅうじょにむかうよ!!そしたら、いじわるなにんげんさんを、せいさいだよ!!」 凛々しい顔でそう宣言すると、親れいむは怪しいオブジェの前を跳ね回ったり、体を伸ばしたりと、忙しく動き始めた。 子れいむの貼り付いたオブジェの高さは、1mちょっとと言ったところなのだが、それでもゆっくりが跳ねて届く高さではない。 それでも親れいむは、舌を伸ばしたり、まるで飛ぼうとしてるかの様に、揉み上げをピコピコと動かしながらジャンプしたりしている。 「ゆびゃぁぁぁぁん!はやくたしゅけろぉぉぉぉ!この、のろみゃー!くじゅー!かわいーれーみゅを、こんなになかせりゅなんて、ゆっくちしにぇぇぇぇ!!」 「ゆがぁぁぁん!どぼじでそんなこというのおぉぉぉ?!おかーさんは、これでもがんばっているんだよぉぉぉ!おやのくろうもしらないで、もんくをいわないでね!!」 「ゆっぴぃぃぃぃ!おかーしゃんが、かわいーれーみゅをいじめりゅぅぅぅぅ!ゆびゃぁぁぁぁん!ゆっくちできにゃいよぉぉぉぉ!!」 「ゆわぁぁぁ!おちびちゃん、ゆっくり!ゆっくりしてねぇぇぇぇ!!」 好き勝手に文句を言う子れいむを、ぷくーっと膨らんで威嚇する親れいむ。 怒る親れいむに脅えた子れいむは、再び火がついた様に泣き出し、それを見た親れいむは、慌てた様子で再びオブジェの周りをウロウロと動き回る。 親子漫談に満足した俺は、公園の水道で手を洗ってから、公園を後にした。 野良親子は何時までも、ゆんゆんぎゃあぎゃあと楽しそうに騒いでいた。 完 徒然あき
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3397.html
『家族愛だってさ』 15KB 虐待 愛情 現代 長いの書きたい 親子の愛情というのは何よりも強いものである。その愛は人間以外の種にも存在する。だが当然のごとく、家族愛を存在させないことを選んだ種もいる。 しかし家族愛が存在するようで実はしないという、わけのわからない種もごく僅かだが存在する。にもかかわらず本人たち――いや、『それ自体』たちは言うのだ。 「おちびちゃんかわいいよ」 と。 暖かくなってきたこの時期、公園に行けばいくらでもそれらはいる。人間が行き来する公園という場所でありながらなぜそれらがいるのかは誰にもわからないが、とにかくいるのだ。それらは昨日仲間が殺されても、今日もそこに住み続ける。 出て行ったところで変わらないから出ていかないのか、そもそも出て行くという手段を考えつくだけの脳と能力がないのかはわからない。 その何の能もない、まるで世界が産んだゴミのような物体――それが、ゆっくりだ。 どう贔屓目に見ても能無しであるゆっくりの中でさえ最も能無しであるという噂があるれいむ種に関する一般的な認識は「母性が強い」だ。 そのれいむ種と並んでメジャーなまりさ種は、身を挺して家族を守るほどに「父性が強い」と考えられている。 はたしてこの認識は本当なのか。 ジャンパーを羽織って公園のベンチの横にひとり佇むこの男は知っている。 この認識は、真っ赤な嘘であるということを。 「ゆうん!おねーしゃんにはまけにゃいよ!ゆっくちはしりゅよ!」 「いもうとにまけたらあねとしてのぷらいどがゆるしゃないよ!」 今日もゆっくりたちは大声でわめきながら歩きまわっている。いつ見つかって殺されるかわからないのに。 しかし自由な行動をとることを我慢すると、今度はストレスでゆっくりできない。 ゆっくりできれば、生き死には考えない。というより、考える脳がない。 それを考えるとこの2匹は、いや、今生きている全てのゆっくりは。 生きているだけで奇跡だ。 「おい、そこのまりさとれいむ。こっち来い」 「ゆん……ゆゆ?に……にんげんしゃんだあああああ!!」 「ゆ……れいみゅたちはいまかけっこしゃんしてりゅんだよ?くそにんげんにりきゃいできりゅ?」 男は手招きをしてまだ小さいサイズのゆっくりである2匹に声をかけた。姉らしきまりさは人を怖がり、妹らしきれいむは無意味に人を煽る。 産まれたころから一緒にいた2匹であるだろうに、正反対の反応をする。 家族より、世界より、何よりも自分を信じるゆっくりならではの反応だ。 「お前らにな、あまあまをあげようと思うんだ。ほら、チョコレート」 「「ゆゆっ!?あまあましゃん!?」」 男はジャンパーのポケットから一個の一口サイズのチョコレートを取り出し、2匹に見せた。 妹れいむよりは賢そうな姉まりさも、チョコレートの前には思考が停止してしまったようで、涎を垂らしながら妹れいむと一緒に男のもつチョコレートを見つめている。 しかしはっと気がつくと、姉まりさは言った。 「にんげんしゃん……あのね、おかーしゃんとおとーしゃんにもあげてほしいんだよ」 「……ああ、いいぜ」 男は少し含み笑いをした後に了承し、姉まりさは喜び勇んで家があるらしい草むらの中に飛び込んだ。 姉まりさが草むらに入って少しすると、草むらの中からゆっくりのものらしき大声が聞こえてきた。 その声のする方向に男は歩き出す。 「にんげんさんがゆっくりにやさしくするわけないでしょおおおお!?おちびちゃんになんどもおしえたでしょおおお!!」 「ゆ……そ、そういえば、まりしゃわしゅれてたよ……ごめんにぇ、おかーしゃん」 「そうだよ、おちびちゃん……がんばってべんきょうして、りっぱなおとなになってね」 「それよりお前ら、このあまあまを食べないか?」 男は姉まりさと母親らしきれいむのお喋りを上から遮り、チョコレートを見せつけた。 「ゆ……あ、あまあまだあああああ!!」 れいむは男のチョコレートを見た瞬間顔色を変えて男に擦り寄った。 全身が薄汚れたれいむに擦り寄られ、男は露骨に嫌そうな顔をする。 「父親はいないのか?たぶんまりさだろ?」 「まりさはいまかりにいってるよ!それより、あまあまちょうだいね!」 さっきまで人間が怖いことを教えていたれいむは目先のたった一個のチョコレートに夢中で、何も考えていないようだ。 普段の生活そのものに責め立てられる毎日であるゆっくりであるので、この反応は仕方ないのかもしれない。 すぐにまりさは帰ってきた。 「ただいまだぜ!きょうはおはなさんがとれt……」 「まりさがかえってきたよ!だからはやくあまあまちょうだいね!」 「まあ、待て。あっちにお前の子供を忘れてるぞ。あのベンチまで付いてこい」 男はれいむとまりさと姉まりさを引き連れ、妹れいむの所に戻ってきた。 「ゆ!くそどりぇい、やっともどってきちゃにぇ!おそしゅぎりゅよ!ゆぷーっ!!」 両親を呼びに行っていたたった3分足らずの間で妹れいむの中では男はいつの間にやら奴隷ということになっていた。 しかし男はそれに無反応なまま、ベンチに座り、4匹を並べる。 始める前に、男は姉まりさに問う。 「なあまりさ、お前んとこの家族に愛はあるか?」 「もちりょんだよ!まりしゃのおかーしゃんも、おとーしゃんも、れいみゅも、みんなだいしゅきだよ! どんなゆっくりのかじょくも、まりしゃたちの『かじょくあい』にはかてにゃいよ!」 「そうかそうか……うふふ、うふふふ」 男は4匹に見えないように、小さく呻き笑う。 その笑いは、経験と知識と――実績からくる。 「さーて、あまあまをあげようかな」 すぐに笑いを収めた男は、座ったままジャンパーのポケットをまさぐり、少ししてジャンパーから出した握った手を4匹にもよく見えるように開く。 そこにはチョコレートが、『3つだけ』乗っていた。 「おっと、3個しかないや。悪いけど、誰か一人は我慢してくれないかな」 ――その瞬間、4人の眼の色がほんの少し――だけ、変わったように見えた。 4人は顔を見合わせ、無言で話し合う。 まず口を開いたのは、親まりさだった。 「……おちびちゃんも、れいむも、たべたいよね。まりさはがまんするよ、おとーさんだから」 「やったああああああ!!まりさありがとおおおおおお!!」 「え……しょ、しょんな、おとーしゃんもたべちぇよぉ!」 「はやくあまあまよこちぇえええええええ!!」 先ほどのまりさの言うとおりである。 愛に満ち溢れている。 その愛が、どこか少なめなように見えるのは、きっと気のせいだ。 「ほーれ、食え」 男は包装紙を開け、3つのチョコレートをばら蒔いた。 「ゆっひゃあああああ!!」 「あまあましゃんんんん!!」 親れいむと妹れいむがばら蒔かれたチョコレートに跳びかかる。親まりさは笑顔でじっとそれを見ていた。 親まりさのほうを見ていた姉まりさも、少ししてチョコレートのほうに顔を向けたが、既にそこには茶色く染まった砂しか残っていなかった。 「ゆ……ゆゆ!?あまあましゃんは!?」 「ゆ……ありぇ?おねーしゃんのあまあましゃんは?」 自分でもわかっていないようだが、妹れいむは二つ食べていた。 1と2の違いすらついていないほどに幼いか、それかそもそも知能の低い個体なのかもしれない。 「まーまー、まだ探せばあるかもしれないから騒ぐな。今食えなかった奴の分もあるかもな」 男はまたジャンパーをまさぐり始める。4匹は期待に満ちた目で男を見つめていた。 きっと今れみりゃが横を通り過ぎようと、きっと気づかないだろう。 4匹の期待を一身に浴びる男の手は、なんと今度は二つしかチョコレートが乗っていなかった。 「あらら……2つか。まあ、さっき食えなかった奴も2匹だろ?いいんじゃね?」 「ゆぅぅ……れいみゅもたべちゃいけど、しょうがにゃいね……」 「ーっと思ったら!あれまあ!これはさっきのたくさん倍おいしい特別なあまあまじゃないか! よかったなあお前ら!さっき食わないで!さっきなんかよりもっともっと美味い物が食えるぞ!」 もちろんこれは大嘘であり、さっきと全く同じ物である。 しかしゆっくりの思い込みの力をもってすれば、さっきより不味くたってさっきの数倍上等なグルメに変わる。 「さっき食ってないのはそこのまりさ2匹だな?よしお前ら、食え……」 そこまで言ったとき、妹れいむが泣きはじめた。 「ゆぐええええええん!!やぢゃあやぢゃあやぢゃあああああ!!れいみゅもとくべちゅなあまあましゃんたべちゃいよおおおおおお!! れいみゅがたべりゃれにゃいなんてしょんなことやぢゃあああああああ!!」 さっき2個もチョコレートを食べたというのに、1個も食べていない者の前でこの言動である。 両親も少し呆れ始めていたが、そこは子に対する愛情でカバー。 「わかったよ……おちびちゃん。こんどはれいむおかーさんががまんするよ。 とくべつなあまあまは、おちびちゃんふたりでたべてね!」 「え……それじゃ、おとーしゃんはどうしゅるの?」 「いいんだよ、おとーさんとおかーさんは、おとなだから。 しょうらいりっぱなおとなになっておんがえししてくれれば、それでいいんだよ!」 「おとーしゃん……」 目に涙を浮かべている姉まりさを尻目に、妹れいむは涙の代わりに涎を垂らしていた。 もう、男の手から目を離すことはない。 男はその親子愛の劇場に興味があるのかないのか、そもそも見ているのかいないのか。 ただただ包装紙を剥いていた。 「じゃあチビ2匹、食え」 また同じようにばらまき、姉まりさも妹れいむもチョコレートを口に含む。 妹れいむは、下品に食べ散らかす。 「むーちゃ!むーちゃああ!!し、し、ししし、ちあわちぇええええええええ!!」 おいしーしーを撒き散らし、チョコレートで茶色く染まった砂は今度は黄色く染められ、まるで糞尿のようだった。 「こんにゃにおいしいあまあまたべたこちょにゃいよおおおおおおお!!くちのにゃかにてんししゃんがいるみちゃいだよおおおおお!! れいみゅのからだ、いまにゃらおしょらをとべりゅみちゃいいいいいいい!!」 体と口と尿道でその旨さを表現する妹れいむ。 それを見ていた両親は、どこか『いらつき』を感じていた。 自分の意思で譲った親れいむでさえ。 「ゆふふふぅぅぅ~~~……おいちかっちゃー!くしょどりぇい、にゃかにゃかおいちかったのじぇ!」 「むーしゃ、むーしゃ……し、しあわせー」 すぐ横であんなに汚いものを見せられては、特別なあまあまも美味さが半減するというものだ。 下品な妹れいむの食べ様を見せられ、姉まりさはあまり味わうことができずにいた。 しかし食べていない両親は、ただただ嫉妬するだけ。 姉妹は気付いていないが、両親は少しだけ、妹れいむを睨んでいた。 それに気づいているのは、男だけ。 「いやー、お前らの愛はすごいなー」 男は完璧なタイミングで――合いの手を入れる。 「自分より子供を優先かー、さすがの親子愛だなー。 俺ら人間にはそんなこと無理だわー。でもゆっくりならできちゃうんだなー、すげーなー」 ゆっくりしているゆっくり>>>>>>>>>>>>>ゆっくりしてない人間 というふうに考えているゆっくりであり、自分は、自分たちは世界一崇高な存在であると信じているゆっくりである。 こんなふうにナルシズムを刺激してやれば、すぐ乗ってくる。 「も……もちろんだよ!れいむたちはゆっくりなんだよ?じぶんたちのことしかかんがえてないにんげんたちとはちがうんだよ?いっしょにしないでね!」 「そ……そ、そうだよ!まりさはいっこもたべてなくても、おちびちゃんたちがたべてくれたらそれでうれしいんだよ!」 そうかそうか、と軽く頷くだけでそれを流し、また男はポケットに手を突っ込む。 今度こそ4個出てきてくれ、と両親と、姉まりさは祈った。 妹れいむは涎を垂らしていた。 男の手には―― 「あらー、もう1個しかねーわ」 たったの、1個だけだった。 「でもー、おまえらはおちびちゃんに譲るよなー、親なんだからさー」 両親の顔色が、確かに変わった。 「さてそこのちっちゃいまりさ、れいむ。どっちにする?」 「……おとーしゃんにあげ」 「れいみゅがたべりゅよ!!」 男は必死で笑いを堪えながら、妹れいむの口の中にチョコレートを突っ込んだ。 そしてまた同じように、妹れいむは周りの空気を読むことなく、こんな美味いものが食べられる自分がいかに幸せに満ち溢れているかを全力でアピールした。 親まりさも親れいむも、それを見ているだけ。 睨んでいるだけ。 幸せいっぱいの、愛に溢れた家族に、溝ができはじめていた。 「さーて……そういやあと1個、今までよりもずっと、ずううーーっと美味しいあまあまがあったな……これだこれだ」 たった一つのチョコレートを―― 4匹の前に、見せた。 そして、言った。 「『このあまあまを、だれが食べる?』」 まず動いたのは、妹れいむだった。 「ゆ!それはもちろんれいみゅがたべちぇあげりゅ……」 「ふざけるなああああああ!!」 次に動いたのは――親まりさ。 「おまえはさっきからなんこたべればきがすむんだああああああああ!! にこも!さんこも!たくさん!たべすぎだこのくそちびいいいいいいい!!」 今まで1個も食べずに、すべて自己犠牲の精神で譲ってきたまりさが、ついにキレた。 何個食べれば気が済むといっても、妹れいむからしたらたまったもんじゃあないだろう。 自分の親が、自分に食べていいと言ったから食べたのだ。 「まいにち!まいにち!まりさはおちびちゃんのためにかりをしてきてるのに、なんでゆずってあげようってこころがないんだあああああああ!! それでもこどもかああああああああ!!」 ――それでも親か。 男は小さく呟いた。 「ま……まりさ、お、おちついて……」 「れいむはいいよねええええええええええ!?たべてばぁぁーーかりだもんねええええええ!? まいにちまいにちくっちゃねくっちゃね!それでかじをしてるつもりなのおおおおお!?」 まりさの言う「かり」とは、ゴミ漁りのことを指す。 まりさ自身がしていると思っている「かり」も、「かりをしているつもり」でしかないけれど。 まりさは、れいむを攻め続ける。 「う……うるさあああああい!!おまえがたいしたものをとってこれないからわるいんだろおおおおお!! れいむをゆっくりさせないげすはしねえええええええ!!」 母親と父親が、本気でキレている。 そんな様子を、姉妹2匹はよりそって見ていた。 妹れいむは、男に話しかけた。 「く……くしょどりぇいいいいい!!な、なんちょかしろおおおおお!!」 「なんとかっていわれてもな、人んちの事に顔突っ込むのも首突っ込むのもなあ」 「お……おきゃーしゃん、おとーしゃん、やめちぇよお……」 姉まりさは、必死で2匹を止めようとする。 仲裁に入ろうとしたが、親れいむに弾き飛ばされた。 「こどもはだまってろおおおおおお!!」 弾き飛ばされて気絶した姉まりさを、男はそっと拾い上げる。 それはほんの少しの善意からか、溢れんばかりの悪意からか。 「ゆ……く、くしょどりぇい!!どうにもできにゃいなりゃ、しゃっしゃと……」 どこかに行け、というのかと思いきや、妹れいむはとんでもないことを言い出した。 「いちばんおいちいあまあましゃんおいちぇ、しんぢぇにぇ!」 ……救えない。 男は笑いすぎて涙を流しながら、妹れいむにチョコレートを投げてやる。 もっちゃもっちゃと音を立てながら、妹れいむはチョコレートを噛む。 「ち、ちあわちぇえええええええええ!!」 もちろんその大きすぎる声に、気づかないわけもなく。 「このくそがきいいいいい、なにやってるんだあああああああああ!!」 「せいっさいだああああああああああああああ!!」 殺し合い一歩手前なまでに大喧嘩をしていた2匹は妹れいむという共通の敵を見つけ、喧嘩をやめ自分の子を殺しにかかった。 たった10分足らずで、家族愛なんて微塵も残さずに消え去った。 男は手の中の姉まりさを揺らして起こす。 「おい、起きろまりさ、起きろ。これから面白いものが見られるぞ」 「ゆ……きょきょはどきょ?」 半分寝ているような状態のまりさのまぶたをひっつかみ、無理やりその光景を見せる。 その光景を。 自分の両親が―― 自分の妹を―― 潰して、殺している光景を。 「ゆ……ゆわあああああああああああ!! いやぢゃ、いやぢゃあああああ!!ごんなのっ!ごんなの、みだぐないいいいいいい!!みぜないでえええええええ!!」 「駄目だよ、まりさ。現実は受け入れないと」 その後、まぶたは閉じられることはなかった。 ずっとずっと男の手によって開けさせられていた。 5分後、親れいむが親まりさを噛みちぎって殺した時、やっとまりさの瞼はは男の手から解放された。 「どうする?まりさ。お前が信じてたものぜんぶ、ここで消えたよ。 お前が大好きだった妹は親に殺され、お前のことが大好きだった親は殺し合い、家族の愛なんて、最初から『なかった』。 これからどうする?」 「…………」 まりさは何も答えない。 「お前は言ったな、どんなゆっくりにも負けない家族愛だって。 それは夢だよ。つくり話だ。夢物語だよ」 「まりしゃたちの……」 「ん?」 「まりしゃたちの……かじょくは、にせものだったの?」 男の手の平に砂糖水の涙が落ちる。 「いいや、そんなことないさ。ただ、本物でなかっただけさ。 本物でもないし、偽物にもなりきれない。最初っからないってわかってたら、どんなゆっくりも幸せなのになあ」 「…………」 「さて、これからお前も殺すけど、最後に何か言いたいことは?」 「……おとーしゃんとおかーしゃんの……いいつけどおり、りっぱなおとなに……なりたかった、のじぇ」 それを聞いた瞬間――ほんの一瞬だけ。 男のまりさを見る目が始めて「モノ」ではなく「生き物」を見る目になった。 「……そうか、来世に期待しろよ。 次こそゆっくりに産まれないようにな」 男は片手でそう祈りながら、まりさを握りつぶした。 終正あき
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3606.html
『風景』 29KB いじめ 観察 日常模様 妊娠 赤ゆ 独自設定 久々に。盛り上がりには欠ける話なので注意 リハビリに表現の描写を過剰気味に一発書いてみた *注 ・ヤマなしオチなしの淡々モノ ・テンプレ乙 ・ゆっくり視点 ・殆ど喋らない ・ゆっくりの性描写あり ・独自設定あり れいむの目には壁が映っていた。 いや、正確には壁『だけ』が映っていた。 れいむと壁の間には何も無く、誰もいない。ただガランと広がっているだけなのだ。 「・・・・・・・・」(ゆぅぅ・・・・・) だがしかし、れいむはその壁を見続けていた。 れいむはどこかに跳ねて行こうともしない。 ―――――――― 当然だ。れいむのあんよは真っ黒に焼き潰されており、移動することなど出来ない。 れいむは別の場所を見ようともしない。 ―――――――― 当たり前だ。れいむの周囲は前を除いてがっちりと別の壁で固められており、正面以外を向くことなどできない。 れいむは何も喋ろうとしない。 ―――――――― 出来るはずがない。れいむの口は溶かされて肌と一体化しており、話すどころか存在すらしていないのだから。 れいむはただ、目の前の風景を見続けていた。 『風景』 れいむはずっと昔から、現在の風景を見てきていた。 それはもう、ゆっくりの少ない記憶領域では思い出せないくらい昔からずっとだ。 「・・・・・・・・」(ひまだよ・・・・) れいむの日常は刺激というものが存在していない。 まず自分自身で何かする、ということが出来ない。 あんよが焼けているため動くことが出来ず、周囲を固められているので身じろぎも難しく、口が無くなっているため独り言すら言えない。 そして外部から何かされる、ということも無い。 何もなく誰も居ないこの場所では音が鳴ることなど殆ど無く、見える景色は壁ばかり。明かりも蛍光灯なため、光の変化すら乏しい。 ぽかぽか太陽も無ければ涼しい風も吹かないこの場所は、温度でさえ一定である。 「・・・・・・・・」(とっっっっても・・・・ひまだよ・・・・) れいむには食事でむ~しゃむしゃする楽しみも、うんうんを出してすっきりー!する解放感も無い。 れいむの後頭部には二本の管が刺さっており、それぞれ食事代わりの栄養補給と排泄を無くす為の吸引を行っているからだ。 「・・・・・・・・」(つまんないよ・・・ひますぎてゆっくりできないよ・・・れいむ、もっとなにかしたいよ・・・) れいむはそんな、変化という刺激が無い時間をただ延々ジッとし続けなければならない。起きてから眠るまで、ゆっくりからすれば長い時間を常にだ。 それはゆっくりすることを何よりも好むゆっくりにとっても望ましくない事だ。退屈とゆっくりは違うということである。 この生活においてれいむが出来ることは2つだけ。目の前を見続けること、胡乱な餡子脳で考えを巡らせること、それだけだ。 「・・・・・・・・・・・・・」(・・・しかたないよ・・・・きょうはもう、れいむはす~やす~やするよ) 一日中ただ目の前にある壁を見続けるだけ、それ以外は一切何も無し。ひたすら退屈なだけで、考えるようなことなど何もない。 だからいつも、れいむは早々に眠りにつく。 「・・・・・・・・・・・・・」(めがさめちゃったよ・・・でも、もうれいむす~やすやはできないよ・・・) だがその眠りは長くは続かない。 全く動いていないため疲労が少なく、体が眠りを欲していないのだ。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」(つまらないよ・・・つまらないよぉ・・・・) 眠ることが出来なくなると、途端に一日が長くなる。 というより起きてから寝るまでを一日としているだけで、そもそもの時間の経過が分からない。 子供が大人に成長するほどの月日が流れたのか、日が昇りそして沈む程度の時間が経ったのか、それともまだ1分もしていないのか、全く把握できていない。 れいむの日常とは、そんな退屈との戦いの日々である。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」(ひまだよぉ・・・・ぴょんぴょんしたいよ・・・・こ~ろころやの~びのびがしたいよぉ・・・・) 次の日、れいむは退屈の中で叶わぬ想いを抱きながら一日を過ごした。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(だれかといっしょにゆっくりしたいよぉ・・・れいむ、ひとりぼっちはイヤだよぉ・・・) そのまた次の日、れいむは誰かが傍にいればいいのにと想いながら、一匹だけで何も無い一日を過ごした。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(ゆぅぅぅぅ・・・ゆっくりできない・・・これじゃゆっくりできないよぉぉぉ!ゆっくりしたい!ゆっくり!ゆっくりぃぃぃ!!) さらに次の日、れいむはゆっくりできないと心の中で癇癪を起しながら、しかしやっぱりそれまでと変わらぬ一日を過ごした。 次の日も何もなかった。 次の次の日も何も出来なかった。 次の次の次の日もやはり何も起きない。 次の次の次の次の日も何も出来ず何も起きない。 次の次の次の次の次の日もやっぱり何も無く、誰も居ない。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(だれかぁ・・・・ゆぅぅぅ・・・・れいむに・・・・なにか・・ れいむを・・・・ れいむが・・・) 次の日も、 その次の日も、 さらに次の日も、 そのまた次の日も、 さらにその次の日も、 さらにさらに次の日も、 ゆっくりできることも、ゆっくりできないことも、何も無かった。 「・・・ ・・・・・・ ・・・・・ ・ ・・・ ・・・」(だ…かれいむの…こ…にきて…ぉ…れみりゃ…もいい……、れ…むとい…しょに… ) 何も出来ず何も起きない時間が長く続く、それは徐々に精神を蝕んでいく遅行性の毒のようなものだ。 その毒はゆっくりと全身を巡っていき、やがて心が死ぬことになるだろう。 そうなればれいむはれいむで無くなり、ただの一匹の狂った廃ゆんと化すことになる。 「 ・・ ・ ・ ・ ・・ ・・・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・・ ・・ ・ ・ ・・・」 (あ ? いむ、い ?うな て んだ ?れい ?だれ ? ? らない ・ ・?) れいむも次第に心が、精神が、壊れていっていた。思考が怪しくなり、自分が生きているのかすら分からなくなっていく。 れいむの現状は人ですら辛いと感じるもの、ゆっくりである身で耐えきれるようなレベルではない。 だかられいむが今まで死なずに生きてこれたのは、決して心が特別に強いからなどではない。 ガチャ 「・・・・・!!!」(ゆぴっ!!?) ただ単純に、れいむが壊れきる前にやってくる『非日常』による刺激を与えられていた、それだけだ。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 音が響く。 それまで無音だった日々に、たった一つだけ音が響き始めていた。 コツ コツ コツ それは何かが固い床を叩く音。 音はまるでリズムをとっているかのように、一定の間隔をもってれいむの居る空間に響いている。 「・・・!?・・・・?」(ゆ!?ゆゆゅ!?・・・あ、あれ?れいむは・・・ゆ?・・・・このおと、は?) そしてその音という刺激に、れいむの意識は急速に回復していった。 そのまま、れいむは急に響きだした音に頭が混乱しながらも、意識を音へと向ける。 コツ コツ コツ コツ コツ コツ 「・・・?・・・・・・・??」(ゆ?・・・・ゆゆゆゆゆ?・・・・これ・・・このおと・・・たしか・・・) 一定の間隔で聞こえてくるこの音。それにれいむは聞き覚えがあった。 精神が壊れかける日常を過ごしても尚れいむの記憶に残っているこの音、その正体は ―― コツ コツ コツ 「・・・・・・・・!?!?」(この・・・このおとは・・・!にんげんさんのっ!?) 人間が歩いてくる音である。れいむは人間の靴が床を叩く音を、それまでの度重なる経験によって記憶に刻みこんでいた。 そして同時にこの音が聞こえる時はれいむへの『行為』が迫っているのだということも、否応なくれいむは思い出していた。 コツ コツ コツ コツ コツ コツ 「・・・・・ッ!・・・・・・ッ!」(きてるっ!にんげんさんがれいむのほうにきてるよぉぉぉ!!?) れいむの目に映っているのは相変わらず壁だけだ。 だがそこにたった一つ音という要素が加わるだけで、全く違ったものへと変化していた。 音が響く度にれいむの目に映る壁はぐにゃりぐにゃりと歪み、隆起と沈降を繰り返して生き物のように蠢きだす。 音が少しずつ大きくなる毎に壁についていた汚れや傷が大きくなっていき、まるで魔物のように恐ろしいモノへとなっていく。 れいむに見える風景は、そんなゆっくりとは程遠いものへと成り果てようとしていた。 もちろん実際にはそんな変貌を遂げているのではない。 だがそのようにれいむには見えてしまうのだ。心を締め付ける『恐怖』という感情によって。 そう、れいむはこの後の『行為』を心底から恐れていた。例えそれのお蔭で変化の無い日常を生きてこれたのだとしても。 コツ コツ コツ コツ コツ コ 「・・・・!!・・・・・・・・ッ」(ゆひっ!と、とまったよ・・・で、でも) 途中で音が止まる。だがそのことがれいむに安堵をもたらすことはない。 いつだって必ず途中で音は止まるのだ。そして少し経ったら再び聞こえ始めるようになる。 停止と再開を繰り返す音のリズムはれいむの心に多大な重圧を掛けており、じっとりとした汗がれいむの肌に浮かんでいく。 コツ コツ コツ 「・・・・・っ!」(れいむのあんよさん、うごいてよ!!にんげんさんがれいむのところにきちゃうよ!ゆんやぁぁぁぁ!うごいてよぉぉぉ!!) ここから今すぐに逃げ出したい ―――― 焦げたあんよはぴくりとも動かない コツ コツ コ 「・・・!・・・っっ!」(いやだよ!れいむ、もういやだよ!もうあんなこといやなんだよぉ!) 少しでも此方に来る人間から離れたい ―――― れいむの周りを固めている壁が身じろぎすら許さない コツ コツ コツ 「・・・・!・・・!・・・!!」(やだよ!やだよやだよやだよ!やだやだやじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!) 泣き叫んでこの重圧を少しでも紛らわせたい ―――― 溶けて消えた口が音を出すことは決してない コツ コツ コ その後もれいむの焦燥など関係ないとばかりに音は停止と再開を繰り返し、そして コツ コツ コ ガタッ 「・・・・・・・・!!!!!」(あ・・・あぁ・・・・・に、にんげん、さん・・・・!!) れいむの目に、人間が映りこんだ。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ カチャ カチャ 「・・・・ッ!・・・・・ッ!・・・・・ッ!」 (や、やめてね?・・・にんげんさん、そんなことしてないでゆっくりしてね?れいむといっしょにゆっくりしてね?) れいむの目に映りこんだ人間はそのまま、れいむの目の前で『行為』の準備を始めた。 これも記憶にある光景。人間はいつも見せつけるかのようにれいむによく見える位置で準備をしていく。 自分への道具を用意していく様を見せつけられるこの時間は、れいむが最も嫌いでゆっくりできないと感じるモノである。 カチッ ピッ 「ッ!!!」(ゆっ!!) だがその時間は長くは無い。すぐに準備は整い、れいむへの『行為』が始まるからだ。 人間がれいむのあんよ近くにあるスイッチを押すと同時に、れいむへの『行為』は始まる。 ヴィィィイィィィィイィィィ 「ーーー!ーーーーー!!」(ゆぁぁぁぁぁぁ!!?や、やめてぇぇぇぇぇぇ!!?) 最初の『行為』、それは強制的な発情である。 れいむの乗っている床が、身じろぎ出来ない程に密着している周囲の壁が、ブルブルととても細かく振動する。 その揺れは当然れいむへと伝わり、体を激しく揺さぶっていく。 ヴィイィィィィィイィッ 「ーーーーっ!ーーーーーーーーーーっ!!!」(ゆぅぅぅぅ!!れいむすっきりしたくないよぉぉぉぉ!!やぁぁぁぁ!!) ゆっくりは振動によって発情する。れいむも揺さぶられることによって、体内の奥底から否応なく快楽を引き出されていく。 だがその気持ちよさとは裏腹に、その行為に対して感じるものはゆっくりしたものから程遠い。 相手のことなどお構いなしに無理やり与えられる快楽は、叩きつけるかのような衝撃をれいむの精神に与えており、むしろ暴力に近しい。 ヴィィィイィィィイィィィイィィ 「ーーッ!!ーーーーーーーっ!!ーーーーーーーーーーーっ!!!!」 (ゆっぐぅぅぅ!!ぎ、ぎぼちいいげどぎぼぢわるい”ぃぃぃぃ!!やべでぇぇぇぇぇぇぇ!!) 与えられ続ける振動は温もりに欠け、れいぱーだって少しはマシだろう最悪なすっきり行為となる。 だがそれでも込み上げてくる快楽に抗うことは出来ず、れいむの体は心とは無関係に高みへと上り詰めていく。 次第に嵐のような振動に見える景色が白濁し、殴りつけるような快楽に体が散り散りになったような幻覚を覚える。すっきりへと至る前兆だ。 ヴィィイイィィィ 「 ! !!!!!!」(ずずずずっぎり”ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?) そして数瞬後、れいむの体は予想通りにすっきりへと至った。 ゆっくりでは実現不可能な凄まじい振動によってもたらされる極大の快楽と、どこまでも無機質に行われた行為に対する最低最悪な心地がない交ぜとなり、れいむの意識が飛ぶ。 そして同時に、れいむの意識が混沌と化すのを狙って人間が動いた。 プスッ 人間はいつの間にかその手に注射器を持っていた。その針先をれいむの額付近へと差し込むと、素早く中身を注いでいく。 注射器の中身、それは他のゆっくりから採取された精子餡だ。それをれいむのすっきりと同時に流し込むことで、疑似的な交尾を再現したのだ。 にょきにょきにょきっ 「・・・・・!・・・・・・!!」 (ゆぁ・・・ぁ・・・おちびちゃん・・・・しょうらい、れいむのすてきなだんなさんと・・・・いっしょにつくろうとおもってたのに・・・・) そんなことをされれば当然のようにゆっくりはにんっしんする。れいむも注射器を刺された所から植物型にんっしん特有の茎が勢いよく生えてきた。 そして茎の途中に小さな蕾が出来ていき、直ぐにちっちゃなゆっくりの形を成し、赤ゆの前身であるつぼみゆっくりとなり ―― ぶちっ 「っ!!!」(ゆぁぁぁぁぁっ!!?れいむのかわいいおちびちゃんがぁぁぁぁぁ!!!?) その段階で人間の手によってれいむの額から茎が毟り取られた。 無理やりで出来たとはいえ自分の餡子を分けた子供が顔も見ぬうちに奪われていく。それは母性の強いれいむからすれば心を引き裂かれる所業だ。 だがそのことをれいむが悲しむ暇はない。 カチッ ピッ ヴィィィィィイィィィイィィ 「~~~~~~~~っ!!~~~~~~~っっ!!!」(ゆぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!?ゆらさないでぇぇぇぇ!!?やべてぇぇぇぇぇぇぇ!!) れいむの『行為』は、一回では終わらないのだから。 再度始まった振動による快楽の強制が、れいむの意識を再び漂白していった。 ・ ・ ・ しばし後、れいむは何度目になるのか分からないほどの回数、すっきりを強制させられていた。 ヴィイイィィィィィィィイイイィィィィィ 「 !!! っ!!!! !っ!!」(かひゅっ!?すっぎりぃ!?こっ!?) プスッ 一回だけでも心身共に負担の大きいすっきりを複数回である。その意識はすでに彼方へと飛び曖昧と化している。 そんなれいむの額にはすっきりの回数だけ生えて毟られた茎の跡が痛々しく残っている。 にょきにょきにょきっ ぶちっ カチッ ピッ ヴィィイィィィイィィィィィイ 「ーーー!!!~~~~~~!!!!―――――――――――――!!!!」(ゆぎっ!!びゅっ!ゆごががががが!?) 人間はまるで機械のように同じ行為を繰り返す。れいむを発情させ、すっきりと同時に注射し、生えてきた茎を毟る。 淡々と、淡々と、繰り返し、繰り返し、リピートし続ける。人間の行為が止まるのが先か、れいむが壊れるのが先か、といった具合だ。 ヴィィィィィイィィィィィイイィィィィ 「 !!!」(っっっすずずっきぎきりりりり”ぃぃいぃぃ!!!?) プスッ そして再びれいむの体がすっきりへと至る。同時に死に際のように痙攣するれいむの額に注射器が刺さり、中身がたっぷりと注がれていく。 すぐさま刺された所から毟り取られた茎の跡をかき分けるように、今回のすっきりによって出来た茎が新しく生えてきた。 にょきにょきにょきっ ぶちっ カチッ ピッ ヴィィイィィィイィィィィィイ 「!!!?ーー!?!?!?!?―――――――――――――!!!!??」(ゆ”っ!!ゆ”ゅ”ゅ”ゅ”ゅ”ゅ”っ!ゆ”びゅぼぼぼぼっぼ!?) そしてやはり即座に茎は毟り取られ、次のすっきりが始まる。だがれいむにそのことを正確に認識する余裕はない。 あるのはただ繰り返される快楽の暴力による精神的苦痛と、着実に近寄ってくるすっきり死の予感だけだ。 ヴィィィィィイィィィィィイイィィィィ 「 !?!!?」(っす”ずっぎきり”り”り”り”ぃ”ぃ”い”ぃ”!!!?) プスッ れいむがすっきりに至ると同時に注射器が刺さり中身が注がれる。 にょきにょきにょき 「ーーーーーーーーー!!」(っ!?ゆぼっ!?びぃ!!) 刺された所から茎が急速に生え、それは同時にれいむの体力をゴッソリと削っていく。それによってより死の気配が濃厚になる。 れいむに残された体力からすればこの茎が限界だった。あと一度でも茎を生やせば、そのまま黒ずんで死ぬことになる。 ガタッ コツ コツ コツ コツ 「――――――――――――」(ゆげっ・・・げっ・・・ゆぶふぉ・・・ゆ”・・・・ゆ・・・・ゅ・・・・) だが今回、その茎は毟り取られることはなかった。ここで唐突に、人間がそれまで繰り返してきた行為を止めたのだ。 人間はれいむの額から茎がしっかりと生えたことを確認すると、そのまま立ち去っていく。 コツ コツ コツ コツ コツ コツ コツ コツ 「 ・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・」(ゅ・・・・ゆ”・・・・れい、む・・・まだいぎで・・・る・・・の?) 人間の歩く音が次第に遠ざかり、やがて消える。 これがれいむの『行為』が終わった合図だ。いつもいつも、こうして最後の時だけは子供はすぐには奪われない。 ボンヤリとした頭でれいむは、今回も何とか生き残ったことを理解した。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ れいむの目には壁が映っている。 いつも見ている正面の壁、だがそこには以前と異なり、壁以外に別のモノも映っている。 「・・・・・・・・」(れいむの・・・おちびちゃんたち・・・) 「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」 それは前回の『行為』によって出来たおちびちゃん達だ。 額から生えた茎に実ったおちびちゃん達は、まだつぼみゆっくりであるが故に声も出せなければ身じろぎも殆どしない。 だがその存在は確かなゆっくりを与えるものであり、れいむの殺風景な景色に彩りを加えている。 「・・・・・・・・」(おちびちゃんはかわいいのに・・・・ゆっくりできるのに・・・・) しかしれいむの表情はどこか晴れないものだ。その目は悲しみに満ちており、さらに何とも言えない複雑な感情を表している。 それはおちびちゃん達の将来を知っているが故であり、さらにおちびちゃん達が『どんなゆっくりなのか分からない』が故である。 そう、れいむは今茎に実っている我が子がどんな種のゆっくりであるのかが全く分からないでいた。 通常であれば茎に実っているゆっくりの種類はれいむ種と番の種族だ。 だが直接注射で出来た茎では、その元となる精子餡が誰のものなのかなど欠片も知ることができない。 ゆっくりできるおちびちゃん達のことを愛しく思いながらも、そのおちびちゃんが誰なのかさっぱり分からない。 その事実はれいむの心にシコリを作っており、おちびちゃん達から感じるゆっくりに影を落としていた。 「・・・・・・・・」(おちびちゃん・・・・れいむの・・かわいいおちびちゃんたち・・・) 「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」「……」 子供を身ごもったゆっくりとしては異様な静けさのまま、れいむの日々は過ぎていく。 ・ ・ ・ すこし後、れいむの茎に実ったつぼみゆっくり達は成長し、赤ゆっくりと呼べるサイズにまで大きくなっていた。 ここまでの日々、れいむは多少影を感じていたものの以前とは比べ物にならない程のゆっくりを感じてきた。 日に日に大きくなっていくおちびちゃん達、その成長という変化を感じられる毎日の楽しさは、前の何も起きない時とは雲泥の差があった。 「・・・・・・・・」(ゆぅ・・・おちびちゃんたち、とってもゆっくりしているよぉ・・・・・・・) 「…ュッ…」「……」「…ゅ」「……(ピクッ)」「……」「ゅ…」「……」「……(プルッ)」 今ではおちびちゃん達は偶に小さな声を出したり、僅かに体をピクピクさせたりしており、自分から外界へと働きかける動きを取っている。 小さな命の揺りかご達が懸命に生まれる準備を整えていくその様子、それは何よりも尊いものだとれいむは感じていた。 だがしかし ―― 「・・・・・・・・」(おちびちゃんたちがゆっくりそだっているのに・・・れいむは・・・れいむは・・・!) それらに対してれいむが何か手伝ってやることはできない。何かするにはれいむの状態が致命的に悪い。 消された口ではおちびちゃん達に話しかけることは当然できないし、身じろぎすら殆ど出来ない状況では何か行動することは困難だ。 「・・・・っ!・・・・・・」 (れいむ、おかあさんなのに・・・おちびちゃんたちをゆっくりさせる、おかあさんなのにっ・・・おうたもうたってあげられないなんてっ!) 「……」「…ゅ…」「…ゅっ…」「……」「……(プルプル)」「ゅ…」「…ゅぅ…」「……」 お歌でおちびちゃん達をゆっくり安らかな気持ちにさせることも出来ない。 体を軽く動かして茎を揺らし、上下左右にゆ~らゆらさせて楽しませることも出来ない。 れいむに出来ることはただおちびちゃん達を見続けること、それだけなのだ。 それは母性が強く子育てが何よりも上手だと思っているれいむからすると、何とも落ち着かない歯がゆい想いを湧き立たせることだ。 「・・・・・・・・・・・っ!!っ!!」 (そもそもれいむのおちびちゃんたちはれいむとおなじれいむなのかな?それともまりさ?ありす?ぱちゅりー?みょん?ちぇん?それとも・・・・? ・・・ゆぅぅぅ・・・わからないよぉぉ・・・おかあさんなのにっ!れいむはおちびちゃんたちのおかあさんなのにぃぃぃ!!) さらに言うと、れいむは未だにおちびちゃん達の種別が分からないでいた。 何故なられいむからはおちびちゃん達の髪の毛やお飾りといった、種別を判断できるようなものが見えないためだ。 なぜ見えないのかと言うと、理由は茎の伸び方が通常とは異なっているためである。 前回の『行為』で最後の方、茎はそれまでに毟られた茎の跡をかき分けるように生えてきていた。 その影響なのか、普通なら横方向に伸びるはずの茎が、れいむの場合は縦方向へと伸びてしまったのだ。 そのためおちびちゃん達は普通よりも高い位置に実っており、れいむはおちびちゃん達を真下から見上げる形になっていた。 だかられいむから見えるのはおちびちゃんのあんよ部分のみ、それもおちびちゃんが茎の外向きに実ることから後ろ側が主になる。 あんよの後ろ側、そこはつまるところお尻である。お尻を見て種別を判断できるような特殊技術を、当然れいむは持ち合わせていなかった。 「・・・・・・・・・・!!」(ごめんねぇ!れいむダメなおかあさんでごめんねぇぇっ!ゆえぇぇぇん!) 「…ゅっ!…ゅっ!ゅゅっ!」 「・・・・・・・・・っ!!」(ゆぇぇん!ゆぅぅぅん!ゆぅぅぅぅん!ゆぇぇぇ・・・・ゆ?) 「ゅっゅっ!…ゅっ!ゅゅっ」 「・・・・・・・・・・!!」(おちびちゃん?・・・・もしかしてれいむをはげまそうと・・・?) 「ゅっ!」 「・・・・・・・・・!!!」(ゆぅぅぅ!やっぱりそうなんだね!おちびちゃんは『まえも』そうやってくれたね!!やさしいおちびちゃんだよぉぉ!!) だがしかし、れいむはおちびちゃん達の種別は分からなくても、それぞれを見分けることは出来ていた。 今も一匹のおちびちゃんがれいむを励ますかのように声を出しているのを聞いて、さらにその子が以前も同じような事をしたおちびちゃんであることを認識していた。 (余談だが、励ましの声はれいむの思い込みである。単に件のおちびちゃんが割かし声を頻繁に出す個体なだけだ。) 「…ゅっ!…」「……ゅゅ(プリンッ)」「……ゅっ」「ゅ、ゅ……」「…ゅ~…」「ゅ…」「…ゅ!」「……ゅぅ」 「・・・・・・・・・・・♪」(ほかのおちびちゃんたちも!・・・ゆふふ、そうだね、みんなゆっくりしたおちびちゃんだものね!) ゆっくりは通常、お飾りによって個体を見分ける。逆に言うと、お飾りさえついていれば唯の石ですら我が子に見える。 そんな中、れいむはお飾りが見えないにも関わらずそれぞれの個体を見分けている。それは中々に凄いことのように思えるだろう。 がしかし、それは決して『茎を通して繋がった親子の絆で分かる~』などといった感動的なものでは無い。もっと単純だ。 「・・・・・♪♪♪」 (あにゃるさんがきゅっとしまったあのおちびちゃんはきっとたくましいゆっくりになるよ! ちっちゃくてきゅうとなあにゃるさんのおちびちゃんはきっとびゆっくりになるよ! あにゃあるさんがおおきいあのおちびちゃんはドスみたいにおおきくそだつにきまってるよ! ほかのおちびちゃんたちだって、みんなとってもゆっくりしたあにゃるさんだよ!! そんなあなにゃるさんをもつおちびちゃんたちは、とってもゆっくりしたおちびちゃんだよ!!!) そう、れいむは自分のおちびちゃん達をそのお尻についているあにゃるによって見分けていた。 れいむから見えているのは一直線に並んだ尻、尻、尻。その光景はさながら尻の大名行列だ。自然、そこにある差異が目立つことになるという訳だ。 「ゅゅ……」「……っ」「……」「……ゅ、」「……」「ゅっ…」「……」「ゅ~…」 「・・・♪♪♪♪♪」 (おちびちゃんたちのあにゃるさんをみているだけで、れいむはゆっくりできるよ!おちびちゃんのあにゃるさんはれいむにとって、てんしのあにゃるさんだよぉ!) れいむにとっておちびちゃん達の顔とはあにゃるの形であり、おちびちゃん達の個性とはあにゃるの特徴である。 あにゃるから感じ取ったそれぞれのおちびちゃん達の情報(思い込み)を、れいむは餡子脳内で形にすることでこれまでゆっくりを感じてきていた。 無論、種別も分からない状況なので脳内のおちびちゃん達はどれも薄ボンヤリとした像にしかならない。 だがれいむにとってはそれだけでも十分なゆっくりだった。 「・・・♪♪♪・・・♪♪♪・・・♪♪♪」(おちびちゃんたち!ゆっくりしていってね!!) 現に今、れいむはそんな尻とあにゃるしか見えないおちびちゃん達によって、嘗てでは考えられない程に生き生きとした日々を送ることが出来ている。 おちびちゃんが小さな声を挙げる度に心が癒され、微かに体をプルプルさせるのを見る度に体の奥がほっこりと温かい気持ちになっていく。 あにゃるをヒクヒクさせるおちびちゃんを見るれいむの目からは感動の余り涙がポロポロと溢れ出しており、誰が見ても幸せそうな表情に見えるだろう。 おちびちゃんの存在はれいむの毎日を満たしてくれる、そんな掛け替えのないモノであった。 ガチャッ 「・・・・・!?!」(ゆ”っ!!?) だがそんなれいむの幸せな『非日常』に、再びあの音が響き渡った。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ コツ コツ コツ 音が響く。 れいむの所に再び人間がやってきた、その証である音が。 「・・・・・・!」(ゆぁ・・・ゆああぁぁ・・・!) そしてその音を聞いたれいむは、目の前が真っ暗になるような絶望を感じていた。 なぜなられいむは知っているからだ。かつてれいむに非日常の始まりを告げたこの音が再び聞こえる時、一体何が起こるのかを。 「・・・!・・・!!」(や、やだよ!とられたくない!れいむはもうおちびちゃんをとられたくないよぉぉ!) この音が再び聞こえる時、それはれいむの非日常の終わり。つまりおちびちゃん達が奪われるということであった。 だかられいむはおちびちゃん達が実って直ぐの頃、悲しみに満ちた目をしていたのだ。いつかこの子達も奪われるのだ、と。 だがれいむはそうと知っていながらもおちびちゃん達にしっかりと情が湧いていた。ただ苦しみが増すだけだというのに。 そうしている間も音が響く。 れいむの心情など関係無く、ただ無機質に冷たく、かつてと同じように。 コツ コツ コツ 「・・・・・っ!!」(にげないと!おちびちゃんをまもるためににげないと!にげないといけないのにぃぃぃ!!!) 逃げ隠れておちびちゃん達を守りたい ―――― 真っ黒に焼けたあんよは決して動かない コツ コツ コ 「・・・っ!・・・っ!」(にげてぇぇ!おちびちゃんんんんん!!) せめておちびちゃん達だけでも振り落すことで逃がしたい ―――― 固定された体は微動だにしない コツ コツ コツ 「・・・・!・・・っっ!・・・!!」(ゆんやぁぁぁ!!!だめだよぉぉ!!ゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!) 何としてでもおちびちゃん達を守りたい ―――― 口の無いれいむではお口の中に隠すことは勿論、声で威嚇することも、ぷくーすることもできない どう足掻こうとも、れいむは何も出来ない。ただ次第に大きくなってくる音に絶望を膨らませるだけ。 そして、 コツ コツ コ ガタッ 「・・・・・・・・!!!!!」(ゆあ・・・ゆあ、あああ・・・ああぁぁぁ!!) かつてと同じように、れいむの目に人間が映りこんだ。 ・ ・ ・ カチャ カタッ カタッ 「・・・・・!・・・・・!!」(とらないでね!にんげんさん、おねがいだからとらないでね!れいむのおちびちゃんをとらないでね!) れいむは目の前の人間に必死になっておちびちゃんを奪わないように訴えかけようとしていた。 唯一自由に動く目を使い、人間とおちびちゃん達の間で視線を行き来させ、何とか伝えようとする。 だが人間はれいむの方など見ず、ただ茎の様子を確認しながら手元に持っている紙に何やら書き続けている。 「・・・・!・・・!」(ほら!おちびちゃんたちはゆっくりしてるでしょ!?かわいいでしょ!?だから、だから!!) れいむの行動はマルッと無視されているのだが、れいむは構わずその行動を続けていた。 元よりそのような事しかできないし、だからといってただ奪われるのをじっと待つこともできないのだ。 以前の行為の際のように朦朧とした意識の中で奪われるのではない上に、おちびちゃん達には大きな愛情を感じている。 放っておくなど出来なかった。 カタッ カチャ カタ 「・・・・!~~~~~!!」(とらないでねっ!!れいむのおちびちゃんたちを!あにゃるてんしさんたちをとらないでねっ!!) 「ゅ~?」「ゅっ!」「……??」「……?」「ゅっ…ゅっ…」「ゅっゅゅ!」「ゅゅゅ~!」「ゅ?ゅ?」 だがそれも無駄なこと。 れいむは涙を流しながら訴えかけ、おちびちゃん達は初めて見る人間に興味を示し、人間はれいむ達を無視して書き続ける。 誰もかれもが相手のことなど考慮せずに自分中心の行為をしているのみ。意思疎通など叶うはずがない。 故にれいむの想いが通じることも、れいむの願いが叶うことも決して無い。 スッ 「ーーーーーーーーーーー!!!!」(あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁぁぁぁぁぁ!!!だめっ!や”べでぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”!!!) 「…!!」「…ゅ?」「ゅ~!」「ゅっ?」「ゅ!」「ゅゅ?」「…??」「ゅゅ~!」 書き終えた人間の手がれいむの茎へと伸びる。 非日常を終わらせる手が、れいむからおちびちゃんを奪っていく手が、しっかりと茎を握り 「ーーーーーー!!!------!!!!」(ゆ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”っっっ!!!!!!) 「ゅ♪」「ゅ?」「ゅ~♪」「ゅっ?」「??」「ゅ~」「ゅゅっ?」「ゅゅ~♪」 ブチッ れいむは結局おちびちゃん達の顔を一度も見ることなく、永遠の離別をさせられたのだった。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ れいむの目には壁が映っている。 何も無く、誰もいない、そんな壁だけが映っている。 「・・・・・・・・」(・・・・・) 以前はそこに、少しずつ大きくなっていく命の輝きが、天使のようなおちびちゃん達がいた。 だが今は居らず、そのことがれいむの心にぽっかりと穴を空けていた。 おちびちゃん達を奪われたれいむは心に大ダメージを受けており、放心状態で日々を過ごしている。 「・・・・っ!」(・・・・・おちび・・・ちゃん・・・っ!) れいむの脳内には時折おちびちゃん達と過ごした楽しい頃の記憶が過る。 だがそれはゆっくりを感じさせることなどではなく、むしろ現状との落差を、最早感じることが叶わぬ楽しき日々を痛みとして伝えてくる。 「・・・っ・・・っ・・・っ」(どうじで・・れいむがこんなめにぃぃ・・・ゆえええぇぇぇぇぇ・・・) そんな想い出が脳裏を掠める度にれいむの目から悲しみの涙が零れ落ちる。 なぜ自分がこんな目に合わなければならないのか、どうしてこんなゆっくりできない思いをしなければならないのか、と。 悲しくて苦しくて、体が張り裂けそうな想いで一杯であった。もし口さえあれば、即座に自殺のための『お食べなさい』をしていただろう。 だがしかし、れいむの悲しみの深さとは裏腹に、その想いは急速に消えていくことになる。 れいむの後頭部に刺さった二本の管、食事と排泄を肩代わりするそれが強制的にれいむの中身を循環させ、ゆっくりできる想い出も今の感情もすべて押し流していくからだ。 結果、すぐにれいむは今の記憶を忘れ、退屈な日常へと埋没していくことになる。 もし思い出すときが来るとすれば、それは次の非日常が始まるその時だ。 れいむはただ日常と非日常を繰り返し続ける。 いつか死ぬ、あるいは解放されるまでずっと。 れいむはただ、目の前の風景を見続けていた。 ~終~ 後書き ええ、そうです。ただあにゃるを連呼させたかっただけです、はい。 次は話そのものに盛り上がりを持たせたのを書こうかなぁ 過去の作品 anko2643 ある変わったれいむのお話 anko2658 もの好きなゆっくりの日常 anko2677 アグレッシブてるよ anko2682 オーソドックスなものたち anko2704 アクティブこまち anko2711 妖精たちの幻想郷 anko2716 足りないものが多いぱちゅりー anko2823 愛するが故に anko2840 ポジティブぱるすぃ anko2858・anko2859 スカーレット・チャレンジャー 前編 後編 anko2872・anko2891 ゆ食世界の風景・朝食 昼食 anko3072~anko3074 にんっしんと赤ゆのそれぞれ・植物型 動物型 卵生型 anko3215 トラブルしょう anko3296 野菜を得たまりさ
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3177.html
『ちるの時々まりさ』 10KB 愛で 小ネタ 思いつき小ネタです 「う~…さぶっ、しばれるねぇ…」 退屈な休日友達のいない学生には時間ばかりが余っている、 けれど飯を作るのも面倒だったので、コンビニで済ますかと外にでると、 太陽が出ているというのに凍えるほどの気温だった。 小さいころは、ドラゴンだー!などとはしゃぎながら出していた白い息も、 もうこの年になると見るだけで憂鬱な気分になる。 すぐに家に戻ろうかとも思ったが、かといって食う物は無い。 さっさと済ましてしまおうと、身体を縮こまらせながら歩いていると、通り道にある公園で珍しいものを見た。 「あれは…」 「~♪~♪」 公園の真ん中、雪が積もって人はやすやすと入れない位置に、青くて丸い生き物が、ふよふよと漂っていた。 ぬいぐるみのような顔だけの生き物は、ゆっくり、確か名前はちるのと言ったか。 普通野生ではあまりお目にかかれない種類だけど、今日は特別寒いせいか人目に付くところまで遊びにきたみたいだ。 「おーい、ちるの~だよな?」 「あたいはちるのだよ!あたいさいきょー!」 僕が声をかけると、ちるのは元気に声を上げて答えてくれた。 どうやら正解だったらしい、ちるのは一人で地面スレスレのところを楽しげに漂っている。 地面、といっても積もった雪だ、僕から見ると大体胸くらいの高さにいるだろうか、近づきたくてもこれでは近づけない。 軽く手を振ると、キリリとした顔でこちらを向いてくれ、キメ顔に集中しすぎたのか、 ぽすりと音を立てて雪の上に着地すると、再び楽しそうにふよふよと浮き上がる。 まるで空中を散歩しているかのように漂ったり、時に雪の上をスケートでもするかのようにそれなりの早さで飛んだり、実に楽しそうだ。 「ゆっくりは風の子元気な子ってところですか、おぉ寒い寒い」 なんだか微笑ましい気分になったけど寒いものは寒い、僕はコンビニに向かい足を速めた。 コンビニで買い物を済まして元来た道を戻ると、さっきのちるのが雪の上に着地して、ぼーっと空を眺めていた。 「なにしてるの~?」 僕が声をかけると、ちるのはちらとこちらを見てから、再び顔を上げてしまう。 しばらくすると、独り言には聞こえない大声で、ちるのは独り言をつぶやいた。 「あたいつまんない!ひとりぼっち、や!」 そこらへんの汚い野良と違って、珍しいちるのと遊んであげたいのは山々だったが、 僕にはちるのの居る位置までたどり着く気力は無かった。 仕方ないのであきらめて家に向かう、少し歩いたところで、ふといいことを思いつき、 走って家に戻って買ってきたコンビニ弁当を置き、急いでもう一度公園へと足を運ぶ。 その途中で僕は、近所迷惑にならない程度の音量で 「ゆっくりしていってね!」 と、言い続けた。 すると二階建てのアパートの付近で、僕の呼びかけにこたえる声がした。 「ゆっくりしていってね!」 「そこか…ゆっくりしていってね!」 僕がそう声を上げるたび、同じように声が返ってくる、その声を頼りに近づいていくと、 アパートの一号棟と二号棟の間に人一人が通れる程度の隙間があった。 ひょいと覗くと、そこはいくつかの暖房の排気口があるらしく、雪が溶けていてほんのりと暖かかった。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ…ゆっくりしていってね!でもこっちにこないでね!」 明らかに自分達の仲間でないものが近づいてきたのが分かったのだろう。 声の主は、その隙間に無造作においてある、ままさんダンプの影から聞こえてきた。 恐らく除雪用においてあって、あまり普段使われていないのだろう、確かに小動物が隠れるのには丁度いいかもしれない。 近づいていってそれをひっくり返すと、中から一匹の黒い帽子のゆっくりが顔をだした、ゆっくりまりさだ。 「ゆっくりしていってね」 僕が笑顔でそういうと、向こうも挨拶を返してくれた、しかしその顔は引きつっている。 「ゆ、ゆっくりしていってね、おにいさんなんなのぜ、まりさなんにもわるいことしてないのぜ」 まりさはビクビクとしながらこちらの様子を伺っている、隙あらば逃げ出そうという感じが丸出しだが、 僕は先手を打ってひょいとまりさを持ち上げた。 「うあぁあああ!!!はなせーはーなーすーんだぜー!」 「あぁ、こら!暴れるなよ、別にとって喰ったりはしないさ」 「ほんとなのぜ?も、もしかしてまりさをかいゆっくりにしてくれるのぜ?いいこにするのぜ!?」 「やだよ、なんでそんなことしなくちゃいけないのさ」 「しょんぼりぜ…」 まりさを小脇に抱えると、僕はアパートの間を抜けてちるのの居る公園へ向かった。 ちるのはまださっきの位置に居て、ぼんやりと空を眺めていた。 「お~い」 僕が声をかけると、ちるのはこちらをちらと見たけど、またさっきと同じように視線を戻してしまう。 けど今回はさっきとは少し違う、僕はかかえていたまりさを掲げると、ちるのに向かってひょいと投げた。 「おそらをとんっぜっぜっ!いじゃ!いたいのぜ…」 まりさは数回少し固めの雪の上でバウンドしてちるのの目の前でうつぶせで静止する。 それに興味をひかれたちるのと、顔をあげたまりさの目がばっちりと合っていた。 「お友達、つれてきてやったぞー」 「あそぼ!」 ちるのはぱっと笑顔を輝かせて、まりさの周りをくるくると回った。 「のぜ?みたことないゆっくりなのぜ、なんていうなまえなのぜ?」 まりさは突然のことに少々困惑しているらしい。 「あたいちるの!あたいさいきょー!」 ちるのはお友達に会えて嬉しいらしい、跳ねるように飛び回りながら、お得意の叫び声を上げていた。 「さいきょー?ゆへへ、まりささまをおいてさいきょーをなのるなんて、ひゃくおくこーねんはやいのぜー、まりさはとってもつよいのぜ?」 「あたいさいきょー!」 にらみ合いが始まり、まさかケンカか?とも思ったが、始まったのはいたって平和なじゃれあいのようなもので、 僕は少し離れた位置からその様子を微笑ましい気持ちで見守っていた。 小一時間ほど立っただろうか、しばらく眺めていると、どうもまりさの様子がおかしい。 「ぜ…ぜぜ…さむ…いの…ぜ…」 「まりさ!どうした!」 ちるのはまりさの突然の変化に戸惑っているようだった。 まりさは全身をぶるぶると震わせ、その場で固まってしまう。 「うぅ…も…だめなの…ぜ…もっと…ゆっくり…した…か……のぜっ…」 その言葉を最後に、まりさはころりと転がって、ピクリとも動かなくなった。 「ま…まりさああああああああ!!!!あああああーーーーーー!!!!」 「え、うそ、死んだの?」 あぁまりさ、君の尊い犠牲は忘れない、ちるのと遊んでくれてありがとう。 僕が心の中で手を合わせながら見ていると、ちるのはまりさのおさげを咥えて、こちらに飛んできた。 僕の目の前にまりさを置いて、ちるのはその場でわんわんと泣き出してしまう。 「まりさがああああ!!まりさがじんじゃっだーーーーー!!!」 その声は意外と大きい、僕がちるのを片手で撫でてあやしてやりながらまりさの頬を叩くと、数回に一回まりさはぴくりと瞼を動かした。 どうやら生きてはいるらしい、寒すぎて仮死状態になってしまったのだろうか。 しかしわんわん泣くちるの、近くでみるとやっぱりめんこい、非常にめんこい。 「なあちるの、うちの子にならないか?」 「ん…?ぐすっ…」 ちるのは目に涙をためたまま、僕のいっている意味が分からなかったのか顔をかしげてしまう。 「えっと、僕と友達になって、一緒に暮らさない?どう?」 「ともだち!」 ちるのはその響きに瞳を輝かせ、きゃっきゃとはしゃぐ。 さっきまで泣いていたのが嘘のようだ、僕が笑顔をみせると頬をすり寄せてじゃれ付いてきた。 「あははっ、うわっしゃっけ、おいおいやめろって、ははは」 今までずっと外に居たからか、それともそういう性質なのか、ちるのの身体はまるで氷のように冷たかった。 珍しいゆっくりと友達になり、そしてその子を飼えるという興奮で、僕は胸が躍った。 ちるのを従えて家に帰ると、すっかりとお弁当は冷め切ってしまっていた。 「ところで何でキミがここにいるんでしょ」 それから数日、あの時さすがにあの状態で外に放り出すのもかわいそうかと思い、せめて身体が温まるまで、と思い家に入れてやった野良まりさ。 けれどこいつは、いつの間にか僕の家に居ついてしまっていた。 「みっずくさいこといわないでほしいのぜ、まりさもともだちなのぜ!」 「ともだち!あたいさいきょー!」 一度は外に蹴り出したものの、その日は幸か不幸か猛吹雪。 心を鬼にしようと思っても、家の玄関フードにかじりついて切なそうな声を上げるまりさと、僕に瞳で訴えるちるのに、 さすがの僕も折れてしまい、それからずるずると、という感じだ。 「ん~、あったかいしつないにひんやりちるのはきもちーのぜー」 「あたいさいきょー!あそぼ!あそぼ!」 「あそぶのぜ~」 一緒に暮らしてみて分かったのだが、ちるのはかなりおばかな性格で、それにテンションも高く、 可愛いには可愛いのだが、なかなか疲れるゆっくりだった。 そしてこのまりさ、元野良の癖に妙にほんわりとしていて、緊張感が無い。 テンションの高いちるのにまりさをあてがっておくと、僕がかかわらなくても部屋の隅っこで遊んでいたかと思えばいつの間にか寝ていたり、 とにかく勝手にじゃれあってくれているので殆ど手がかからない、そういう点では正解だったのかも知れない。 勝手に飼うことを決めてしまったのでどうなることかと思ったが、家族もすんなりとこの二匹のことを受け入れてくれた。 それどころかもしかしたら僕よりもこの二匹のことを可愛がっているかもしれない。 たまには勉強でもしようかと机にむかっても、後ろから聞こえてくる、のぜのぜあたいあたいが気になってしょうがない。 「あーもー!僕もまぜろよぅ!」 「おー、なにしてあそぶのぜ?」 「まりさっかー、ボールはまりさ、ゴールはゴミ箱」 「ひどいのぜっ」 「あはは!やるー!あたいさいきょー!」 「よーし、ほらまりさ、逃げないとけるぞー」 僕とちるのがずんずんとまりさに迫る、まりさは僕らに背を向けて狭い室内をぴょんぴょんと飛び回る。 「つかまってたまるかなーのぜー」 僕とまりさとちるのの笑い声が部屋に響く。 偶然の出会いだったけど、僕達の絆は、なんとなーく強く結ばれている気がする。 これからも、ずっと一緒。 おしまい。 -------------------------------------------- なんとなくちるのネタ、ということでせっかくだから寒い地方の方言を意図的にほんのちょびっとだけ入れてみました もし意味がわからなければぐーぐる先生にきいてみてください ばや汁でした。 いつも多数のご意見ご感想ありがとうございます! この作品へのご意見ご感想も、どうぞお気軽にお寄せください。 個人用感想スレ http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1278473059/ 今までの作品 anko1748 かみさま anko1830-1831 とくべつ anko1837 ぼくのかわいいれいむちゃん anko1847 しろくろ anko1869 ぬくもり anko1896 いぢめて anko1906 どうぐ・おかえし anko1911 さくや・いぢめて おまけ anko1915 ゆなほ anko1939 たなばた anko1943 わけあり anko1959 続ゆなほ anko1965 わたしは anko1983 はこ anko2001 でぃーおー anko2007 ゆんりつせん anko2023 あるむれ anko2068 おしかけ anko2110 とおりま anko2111 おもちゃ anko2112 ぼくとペット anko2223 まちかどで anko2241 かいゆ anko2304 ぼうけん anko2332 とかいは anko2349 たたかい anko2369 ゆっくぢ anko2413 せんたく anko2427 ぶろてん anko2489 あこがれ 前編 anko2588 ひとりぼっちのまりさ anko2807 母の音 anko2887 僕とれいむと秘密基地 anko2949 野良れいむ anko3047 ぶろてん おまけ anko3058 実験01 クッキーボタン anko3067 わけあり おまけ anko3078 げすまりさ anko3090 てのりれいむ anko3096 雨 anko3107 ゆかりん anko3114 命の価値 餡小話では消えてしまった作品も多数ありますので、過去作を読みたいと思っていただけた方は ふたば ゆっくりいじめSS保管庫ミラー-ばや汁ページ- http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/395.html をご活用ください。
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3523.html
『たまたま』 16KB 制裁 自業自得 妊娠 番い 野良ゆ 赤ゆ ゲス 現代 19作品目。若干テンプレ風です。 注意書きです。 1 制裁分は若干薄めです。 2 基本、人間はあまり行動しません。 3 スジが通っていない可能性があります。 それでもOKという方のみ、どうぞ。 「ゆっ……、でてきたのぜ!」 「まりさ!あのにんげんにしようよ!あいつ、よわそうだし!」 「ゆゆ~ん、れいみゅ、おにゃかぺこぺこ~!」 「まりちゃもなんだぢぇ!」 ……そこはとある街中の、とあるゴミ捨て場。 そのゴミ捨て場の陰に、薄汚れた野良ゆっくり達が隠れていた。 成体サイズと赤ゆサイズのゆっくりれいむとゆっくりまりさが一匹ずつの、計四匹の親子だった。 そんなゆっくり親子達の視線の先には、どこにでもあるようなコンビニがあった。 ……正確に言うと、ゆっくり親子達が見ていたのは、コンビニから出てきた、二十代位の年齢の、ほっそりとした体格の青年だった。 その手にはコンビニの袋が握られており、買い物をしていた事が分かる。 青年はゴミ捨て場の方へとやって来た。 ゆっくり親子達が隠れている事には気付いていないようだった。 「ゆっ!いまなのぜ!」 青年がある程度近付いて来た事を確認したまりさがそう言うのと同時に、全員がゴミ捨て場の影から姿を現した。 「……何だ?お前ら」 青年は怪訝そうな顔をしながら、ゆっくり親子達にそう尋ねた。 「ゆっへっへ!くそじじい!まりさたちは、くそじじいがそこのこんびにからでてきたのをみていたのぜ!」 「そのふくろのなかには、たべものがはいっているんでしょ?くそじじいにはもったいないから、れいむたちによこしてね!」 「しょーだしょーだー!」 「よこちぇ~!」 ……このゆっくり親子達の目的は、コンビニから出てきた人間から食べ物をたかる事だった。 「嫌に決まってるだろ。そこら辺の生ゴミでも食ってろよ」 そう言って、青年はゴミ袋の山を指差した。 「へっ!そんなくそまずいものなんかより、そっちのふくろのなかのたべもののほうが、おいしいにきまってるのぜ!」 このゆっくり親子達は、以前何度か人間からお情けで食いかけの食べ物を恵んでもらった事があった。 それにより、普段人間が食べている食べ物に味をしめしてしまったのだ。 「ぐずぐずしないで、さっさとおもにのれいむにたべものをよこしてね!」 そう言ったれいむの腹は、確かに膨れていた。 どうやら胎生にんっしんっをしているらしい。 「おなかのあかちゃんのためにも、えいようがほしいんだよ!わかったらさっさとよこしてね!」 「はやきゅよこちぇー!」 「ぐじゅぐじゅしちぇると、しぇいっしゃいっしゅるのぢぇ~?」 れいむが自信満々にそう言い、後から赤ゆ達二匹がニヤニヤと笑いながらそう付け足した。 「面倒臭ぇなぁ……。家に帰ってから食べようと思ったんだが……」 そう言って青年はコンビニ袋から菓子パンを一つ取り出し、ビリビリと袋を開け始めた。 「ゆっへっへ!なかなかものわかりがよくてたすかるのぜぇ!」 素直にパンを渡すと確信していたまりさは上機嫌であった。 「誰がお前らにやるもんか。今ここで俺が食べるんだよ」 「はあぁぁぁぁっ!?なにいってるのぜえぇぇぇぇっ!?」 「くそじじいぃぃぃぃっ!!れいむたちのたべものをたべるなあぁぁぁぁっ!!」 「いつの間にお前らのものになったん……、あっ!」 そう途中まで言いかけていた青年が、急に慌てたような声をあげた。 見ると、男の手にあったはずの菓子パンが、地面に落ちていた。 どうやら袋を開ける途中で手が滑ってしまったらしい。 「こりゃ食えねぇな……」 青年が少しがっかりした様子でそう言った。 「ゆっへっへ!ばかなくそじじいなのぜ!」 「このたべものは、れいむたちがもらうよ!」 「ゆわ~い!やっとたべれりゅ~!」 「なのぢぇ~!」 「あっ、おい……」 青年が止める間もなく、ゆっくり親子達は菓子パンに群がっていた。 「れいみゅがいちば~ん!」 最初に菓子パンに齧り付いたのは、赤れいむだった。 「ゆっ!れいみゅ、ぢゅるいのぢぇ!」 「おちびちゃん!ひとくちだけにしてね!おかあさんだってたべたいんだから!」 他の家族達はフライングした赤れいむに対して文句を言ったり食べ過ぎないよう言った。 ……が。 「ゆ……、ぶ……」 赤れいむはその問い掛けに答える事なく、顔を真っ青にして、汗だくになりながら頬を膨らませ、ブルブルと震えていた。 「お……、おちび……?」 何か様子がおかしいと思ったまりさが赤れいむに声をかけた。 「ぶ……、ぶべえぇぇぇぇっ!?」 まるで、それが合図であるかのように、突然赤れいむが口から餡子を吐き出した。 「お、おちびぃっ!?」 「おちびちゃあぁぁぁぁんっ!?」 「れいみゅうぅぅぅぅっ!?」 他の家族達は、何故赤れいむが口から餡子を吐き出しているのか、全く分からなかった。 「ゆ……、ご、ごれ……」 赤れいむは口から餡子を吐き出しながら、何かを訴えたいようだった。 「な、なんなのぜ!?おちび!!」 まりさが赤れいむの言葉を促した。 「ご……、ごれ、どぐ、はいっぢぇ……、べぇっ!?」 そう言った赤れいむは、その直後に餡子を吐き出し、白目をむいてビクビクと痙攣し出した。 「おちびちゃあぁぁぁぁんっ!?おきてっ!?おきてよおぉぉぉぉっ!?」 「ゆわあぁぁぁぁっ!?れいみゅがゆっくちしてないのぢえぇぇぇぇっ!?」 「あーあ、やっぱこうなるわな」 生死の境目をさまよっている赤れいむに必死に呼びかけている家族達とは対照的に、青年があっけらかんとそう言った。 「く……、くそじじいぃぃぃぃっ!?おちびにいったいなにをしたのぜえぇぇぇぇっ!?」 「いや、普通ゆっくりが『カレーパン』食べたらそうなるだろ」 「「「……ゆ?」」」 「お前ら、カレーパン知らないのか?それ辛いんだぞ?普通のゆっくりが食べたら餡子吐き出すに決まってんじゃん」 「な……、なんでそんなものをたべさせたのぜえぇぇぇぇっ!?」 「あのなぁ……、それを食べたのは」 「ゆがあぁぁぁぁっ!!まりさたちをどくさつしようとするくそじじいはしねえぇぇぇぇっ!!」 青年の説明がまだ途中にも関わらず、まりさは青年に飛びかかった。 ……が、とても遅い速度だったので、青年は一歩下がるだけで簡単に避ける事が出来た。 「おいおい、話を聞けって」 「うるさいぃぃぃぃっ!!」 まりさはもう一度青年に飛びかかったが、同じように避けられた。 「ゆぎいぃぃぃぃっ!!よけるなあぁぁぁぁっ!!」 「いや、当たったら汚れるし」 「があぁぁぁぁっ!!」 自分の渾身(笑)の体当たりを二度も避けられ、汚物呼ばわりされたまりさは、完全に頭に餡子が昇っていた。 「しねえぇぇぇぇっ!!しねえぇぇぇぇっ!!」 半ば半狂乱になり、叫び声をあげながら、まりさは何度も体当たりを仕掛けるが、その度に青年に移動され、全く当たらなかった。 「なぁ、もう止めたらどうだ?色々と危ないし」 「だばれえぇぇぇぇっ!!」 青年のその言葉を無視し、まりさは青年に飛びかかった。 青年はその体当たりを横に避けた。 ……そして、体当たりを避けられたまりさの着地点には……。 「な……、なんでこっちにくるのぢえぇぇぇぇっ!?」 赤まりちゃがいた。 まりさと赤まりちゃの間には青年が立っており、どちらも相手の存在に気付かなかったのだ。 「おちびちゃあぁぁぁぁんっ!?よけてえぇぇぇぇっ!!」 少し離れた場所にいたれいむがそう言ったが……。 ブチッ。 「ぴゃあぁぁぁぁっ!?いぢゃいぃぃぃぃっ!?」 一歩も動けなかった赤まりちゃは、底部を押し潰されてしまった。 「お、おちびっ!?ご、ごめんなんだぜっ!!」 まりさはすぐに赤まりちゃの底部からどいたが、赤まりちゃの底部は完全に潰れ、裂け目から餡子が漏れ出ていた。 「いぢゃいのぢえぇぇぇぇっ!?はやきゅなんとかしゅるのぢえぇぇぇぇっ!?」 赤まりちゃは痛みから体をよじらせているが、それが餡子の流出を速めている事に気付いてはいなかった。 「ばりざあぁぁぁぁっ!?はやぐなんどがじでえぇぇぇぇっ!?」 れいむは目を血走らせ、まりさに何とかするように言った。 「ゆ、ゆうぅっ……!」 「だから止めろって言ったのになぁ」 「く……、くそじじいぃぃぃぃっ!!ぜんぶおばえのせいなのぜえぇぇぇぇっ!!」 自分の愛する娘がこうなってしまったのは、全部この糞ジジイのせいだ。 毒入りのパンを食べさせ、自分に娘のあんよを潰させた、このゲスだけは生かしておけない。 まりさは自分がやった事を棚に上げ、全ての元凶と思い込んでいる青年に飛びかかった。 「やれやれ……」 青年は呆れた様子で、まりさの体当たりを避けた。 「ゆうぅっ!?」 ……まりさの目の前には、ゴミ捨て場のゴミ袋の山があった。 「ぶ、ぶつかるのぜぇっ!?」 まりさはそう叫んだものの、勢いは止まらず、そのままゴミ袋の山へと突っ込んで行った。 「ぎいっ!?」 「ばりざあぁぁぁぁっ!?なにやってるのおぉぉぉぉっ!?はやくこのくそじじいを」 「ぎ……」 「……まりさ?」 「ぎゃがあぁぁぁぁっ!?いだいぃぃぃぃっ!?いだいのぜえぇぇぇぇっ!?」 突然、ゴミ袋の山の中から、まりさの苦痛に悶える声が聞こえてきた。 「ま、まりさ!?いったいどうしたの!?」 れいむはまりさの姿を必死に探し、そして見てしまった。 「いだいぃぃぃぃっ!!ごれどっでぇぇぇぇっ!!」 ……まりさの頬と底部に、茶色の何かの破片のようなものがいくつも突き刺さっていた。 「あぁ、誰かビール瓶捨てたな?……ここはビン類は捨てちゃいけないのになぁ……」 青年の言った通り、まりさの近くにはビール瓶が数本転がっていた。 まりさがビール瓶の束にぶつかった際に、そのビール瓶が割れて刺さったのだろう。 「……ところで、あいつ、助けに行かなくて良いのか?痛がってるぞ?」 青年はまりさを指差しながら、れいむにそう言った。 「はあぁぁぁぁっ!?れいむはおもになんだよおぉぉぉぉっ!?あぶないにきまってるでしょおぉぉぉぉっ!?」 れいむは何を言っているんだとばかりの表情で叫んだ。 どこまでも他力本願である。 「あぁ、そっか。お前自分の番も平気で見捨てるようなやつなのか。それじゃあしょうがないな」 「ゆっぐ……!ま、まりさ!れ、れいむがいまいくからね!あとでくそじじいをせいっさいっしてね!」 結局、青年は助けに行く気が無いと分かったれいむは自分が行く事にした。 ……が。 「ゆふぅ……、ゆふぅ……」 にんっしんっ中のれいむの歩みははっきり言ってかなり遅かった。 跳ねての移動が出来ないので、ズリズリと這って移動していた。 「でいぶうぅぅぅぅっ!!はやぐくるのぜえぇぇぇぇっ!!」 「まっててねえぇぇぇぇっ!?もうすこ……、いっ!?いぎいぃぃぃぃっ!?」 突然、れいむがその場でブルブルと震えだした。 「……あ」 青年の視線の先には、れいむの産道からふてぶてしい笑顔をのぞかせている赤ゆっくりの姿があった。 黒髪が見えたので、恐らくれいむ種なのだろう。 「お……、おぢびぢゃん……!うばれぢゃだべえぇぇぇぇっ……!!」 れいむにとって、我が子の誕生はとても喜ばしい事なのだが、今の状況はタイミングが悪いとしか言えなかった。 ……しかも、今れいむが向いている方向の先には……。 「ばりざあぁぁぁぁっ!?はやぐそのびんをなんどがじでえぇぇぇぇっ!?」 ……そう、まりさとビール瓶の破片があったのだ。 このまま赤れいむを産もうものなら、間違い無くまりさかビール瓶のどちらかに当たってしまう。 「む……、むりなのぜえぇぇぇぇっ!?うごけないのぜえぇぇぇぇっ!!」 ……が、まりさはその場から一歩も動けず、ビール瓶の破片もそのまま。 かと言ってれいむ自信が方向転換するのも無理。 「ゆゆ~ん!きゃわいいれいみゅがゆっくちうまれりゅよ~!」 そして、ミチミチと音を立て、赤れいむが徐々に産道から出つつあった。 「だべえぇぇぇぇっ!?」 れいむの叫び声も空しく……。 スポン! 「ゆゆ~ん!」 赤れいむは放物線を描く様に飛んでいき、そして……。 「ゆぴいぃぃぃぃっ!?」 「ゆぎゃがあぁぁぁぁっ!?」 勢い良く、まりさに激突した。 「おぢびぢゃあぁぁぁぁんっ!?ばりざあぁぁぁぁっ!?」 れいむは自分の番と我が子の元へ行こうとした。 「べっ!?」 ……が、バランスを崩し、前のめりに倒れてしまった。 ……しかも、それだけではなかった。 「はぎいぃぃぃぃっ!?おなががいだいぃぃぃぃっ!?どぼぢでえぇぇぇぇっ!?」 倒れてから数秒後、再び腹部を激痛が襲ったのだ。 「ぴいぃぃぃぃっ!?くらいのぢえぇぇぇぇっ!?なんででれないのぢえぇぇぇぇっ!?」 れいむの腹部から、そんな甲高い悲鳴が聞こえてきた。 れいむの腹部の中にいた赤ゆは、一匹だけではなかったのだ。 しかも、れいむは前のめりに倒れているので、中の赤ゆは産道から出れずにいた。 それはつまり、れいむが何とかして態勢を立て直さないと、延々と出産の痛みに襲われるという事になる。 「はぎゃあぁぁぁぁっ!?いだいぃぃぃぃっ!?」 ……そして、れいむはにんっしんっ中の運動不足が災いし、全く体を動かす事が出来ずにいた。 誰かが手を貸してやらないと、れいむは死ぬまでこのままだろう。 ……一方、まりさと産まれた赤れいむは。 「ぱぴゃらぺぴっ!?ぺぺぴゅぴぉっ!?」 まりさは両目をグリングリンと回しながら、口から泡と奇声の両方を出していた。 赤れいむが激突した際に、ビール瓶の破片がさらに体の奥深くまで刺さり、中枢餡を傷つけてしまったのだろう。 こうなってしまっては、二度と正常な状態に戻る事は出来ない。 「ぴゃあぁぁぁぁっ!?れいみゅのおめめがあぁぁぁぁっ!?」 赤れいむの方は、まりさの体から飛び出たビール瓶の破片が、右目に突き刺さっていて、宙づり状態になっていた。 赤れいむは痛みから必死に体を振っているが、余計刺さる深さが増えるだけだった。 ……と言っても、赤ゆにそんな事を理解出来る知能は無いのだが。 「ど……、どぼぢでえぇぇぇぇっ!?どぼぢでごんなごどになっだのおぉぉぉぉっ!?」 数分前までは、あんなにもゆっくりとしていた家族なのに。 一体どうして、皆がこんな有様になってしまったのか。 その原因が、れいむには分からなかった。 「数分足らずでこの有様か……。まるで生きてる死亡フラグだ」 ……そして、その声を聞いて、全ての元凶が一体何なのか理解する事になった。 「く……、くそじじいぃぃぃぃっ!!お、おばえのせいでえぇぇぇぇっ!!」 そうだ、愛するまりさとおちびちゃん達、そして自分がこんなに苦しい思いをしているのは、全部こいつのせいだ。 こいつさえいなければ、こんな事にはならなかった。 ……れいむの頭の中は、青年に対する憎悪で一杯だった。 「……一言、良いか?」 「なんだあぁぁぁぁっ!?」 「俺、お前らに何かしたか?」 「……は?」 青年のその言葉を聞いたれいむは、一瞬餡子脳がフリーズしてしまった。 「……は、はあぁぁぁぁっ!?なにいってるのおぉぉぉぉっ!?」 「だってさ、俺、お前らに何もしてないじゃん」 「なにもしてないわけがないだろおぉぉぉぉっ!?」 「じゃあ聞くけど、何で赤れいむはカレーパン食べたんだ?」 「それはじじいがおと……、ゆっ……?」 れいむはそこまで言いかけて、ある種の違和感を感じた。 「何で赤まりさはケガをしたんだ?」 「それはじじいがまりさをよけ……、ゆっ……!?」 青年の二つ目の質問に答えようとしたれいむは、その違和感に気付いた。 「何でまりさは傷だらけになった?」 「ゆ……、ま、まりさがごみすてばに……」 「何でお前が産んだ赤れいむは傷だらけのまりさにぶつかった?」 「れ、れいむがうごけなかったから」 「何でお前は今倒れているんだ?」 「れ……、れいむが、ころんで」 「……な?これで分かったろ?」 「ゆ……」 れいむはここにきてようやく、青年が何を言いたいのかを理解する事が出来た。 ……いや、理解しなければいけない、と言うべきか。 「全部、お前らが蒔いた種なんだよ。お前ら自身の責任で、こうなったんだ。ゆっくり理解しろ?」 「ゆ……!ゆうぅっ……!?」 「俺は何度か『やめろ』って言ったのに、それを全部、お前らは無視したんだよ。自業自得だ」 「う……、うるさいよおぉぉぉぉっ!!じごうじとくでも、なんでもないよおぉぉぉぉっ!!ぜんぶ、くそじじいのせいだあぁぁぁぁっ!!」 れいむは認めたくはなかった。 自分達がこうなってしまった原因が、自分達にあったという事実を。 自分達が喧嘩を売った青年には、一切の非が無いという事を。 「……じゃあ、こう言った方が良いか?俺も、お前らも、誰も悪くない。……ただ、運が悪かっただけで、こうなったんだ」 「ゆ……!」 「良いじゃないか、それで。それなら誰が悪いって言い争う必要も無いし。じゃあな、俺、さっさと家に帰って寝たいし」 青年はそう言うと、れいむに背を向けて歩き出した。 「ま、まって……、いっ!?いだいぃぃぃぃっ!?おぢびぢゃん、おながのながであばれないでえぇぇぇぇっ!?」 れいむは叫び声を上げたが、結局青年は振り返る事は無く、徐々に遠ざかっていき、やがて見えなくなった。 「ゆ……、ゆ……、ゆ……」 「ま、まりちゃの、あんよ……!」 「ぱっぴぷぺぽぉっ!!ぱっぴぷぺぽぉっ!!」 「ぴゃあぁぁぁぁっ!れいみゅのおみぇみぇぎゃあぁぁぁぁっ!?」 「くりゃいのぢえぇぇぇぇっ!!きょわいのぢえぇぇぇぇっ!!」 「いだいぃぃぃぃっ!!だれがだずげでえぇぇぇぇっ!!」 後に残されたのは、身も心もボロボロになった、野良ゆの親子達だけとなった。 ……いや、後にこの場に新たな人間が加わる事になるだろう。 ゴミ捨て場の隣の電柱柱に、一枚の張り紙が貼られていた。 ……その張り紙には、『野良ゆ駆除員巡回区域』と書かれていた。 それがいつになるかは分からないが、必ずその駆除員と言う名の死神は、野良ゆ親子達に訪れる事になる。 この野良ゆ親子達はとことん運が悪いのかと言うと、そうでもない。 何故なら、今日までこの野良ゆ親子達は、生きる事が出来たのだから。 野良ゆにとって、一日一日を生きていけると言う事は、とても幸福な事なのである。 その有難味に気付く事が無いのが、ゆっくりなのだが。 ……そして、この野良ゆ親子達がこうなってしまった原因は、ただ一つだけ。 「あぁ……、今日もいるぜ。やっぱゴミ捨て場は一番野良ゆが集まる場所だからなぁ……」 今日は、たまたま運が悪かった。 ……ただそれだけ、なのである。 END あとがき テストも一旦落ち着いてきたので、SSを投下する余裕が出来ました。 ……が、あと数日もすれば、レポート提出という地獄が待っているので、結局地獄からは抜けられないのですが。 ですので、これからは色々と忙しくなると思います。 私のSSを心待ちにしています、という希有な方はあまりいないとは思いますが、次のSSを投下する間が延びます。 出来れば、両方とも両立していきたいところですが。 ご意見、御感想、お待ちしています。 作者:ぺけぽん 感想用掲示板はこちら http //jbbs.livedoor.jp/otaku/13854/ ミラーはこちら http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/1.html 今までに書いたSS anko1656 クズとゲス anko1671 うにゅほのカリスマ求道記 anko1767 あなたは、食べてもいい○○○○? anko1788 そんなの常識ですよ? anko1926~1928 二人はW ~Yは二度と帰らない~ anko2079 しんぐるまざー anko2750 無意識だから anko2786 ともだち anko3189 おちびちゃんは大切だよ! anko3210 バクユギャ anko3221 根本的な間違い anko3249 お兄さんは興味が無い anko3261 それぞれの願い anko3319 好みは人それぞれ anko3330~3331 HENNTAI達の日常~メスブタの家出~ anko3343 HENNTAI達の日常~駄メイドの休日~ anko3360 可哀想なゆっくり anko3419 優秀or無能
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3140.html
『てのりれいむ』 13KB 愛で 小ネタ 独自設定 思いつき 何かとストレスを感じることの多い現代社会。 ふと癒しを求めてなんとなく覗くだけのつもりで入ったペットショップの一角に、珍しいものを見つけ、 値段も手ごろだったのでついつい購入してしまった… 家に帰り小さな厚紙で出来た箱を開けると、中から出てきたのは一匹のゆっくりだ。 「ゆぅ~!」 彼女はゆっくりれいむ、といっても店員いわく遺伝子改良を受けた自然界には居ない人口品種で、 なんと胴付きにもかかわらず手乗りサイズなのだ。 品種名は、そのまんまでミニ胴付きゆっくりというそうだ。 「ゆっゆっ」 私がれいむの前に手を差し出すと、れいむはちっちゃな腕を伸ばして私の指に絡め、 全身を使って手のひらに這い上がり、立ち上がって満面の笑みを浮かべる。 サイズは丁度つま先から頭まで含めてジャンガリアンハムスター程度だろうか、これでもすでに成体らしい。 店員の説明によると、ちいさすぎる体格のため、頭のサイズが赤ちゃんゆっくり程度しかなく、頭はそれほどよくないとか。 「ゆ!」 どうやら言葉も満足に話すことは出来ないらしい、けれど異常行動などがあるわけではない。 まぁ言ってしまえばおしゃべりの出来ないゆっくりといった程度で、今のところ特に問題は感じなかった。 私は以前に買っていたハムスター用のケージを取り出し、余っていた床材のチップを敷き詰めてれいむをその中に入れてやった。 れいむは初め、私の手を離れたがらなかったが、私が次々と設置していくケージ用の内装に気をとられ、目を輝かせ始める。 やはり基本は小屋だろう、れいむには少し小さめかもしれないが、あれば何か使ってくれるかもしれないと思い、埃を落として中に入れる。 次に水ボトル、よく見るとカビがこびり付いていたので念入りに洗ってから水をいれ、外を拭いてから設置する。 これには特に興味を示したようで、ぺたぺたと触ってなにやら真剣みを帯びた表情をしていた。 だがボールの部分に手を突っ込んでしまい、水が溢れ出して服がびちょぬれになり、べそをかきはじめてしまった。 「なにやってるんだか、ほら、ここをこうするんだよ」 ティッシュを使ってれいむについた水をとってやりながら、頭を指で掴み、ボール部分を舐めてみるように促した。 しかしどうも勝手が分からないらしく、うまくいったかと思っても今度は顔に水をぶちまけてしまい、再び泣き出す始末。 どうやらコレはれいむには合わないらしい、目を離して危険が生じるかもしれないので別の手段を捜すことにして取り外した。 れいむの身体を乾かしてやってケージに戻す、さて完成してしまった、これからどうしたものか。 遊び道具のようなものは、大体ハムスターの歯型がついていたりしたので捨ててしまっていた。 れいむはケージの枠を両手で掴んで、まるで刑務所内にいるような仕草でこちらをじっと見ていたが、 私がリアクションを取らないとわかると飽きたのか、一人遊びを始めた。 足元にあるチップを掴んで口に入れ、食べれないと分かると吐き出し、両手でチップを抱えてぽいぽいと投げる。 どうもそれが気に入ったらしい、水辺で遊ぶ少女のように、ばっさばっさとチップを飛ばし、山を作っていく。 出来た山に突進し、もふんと衝撃が吸収されて、細い手足がチップの山に埋まってしまう。 そのままごろごろと転がって、感触を確かめると今度は小屋に歩いていき、中に入って顔を出す。 入り口は顔の大きなれいむには狭めだが中には余裕があったらしい、近くにあるチップをかき集めて中に運び、 ふんわりと敷き詰められたところに頭から入り込み、どうもそこで落ち着いたのか、入り口から足だけだして固まってしまった。 「ゆくり~」 小屋の中からくぐもった声が聞こえる、ゆっくり出来ているらしい。 ふと、れいむの動作に夢中になってしまっている自分に気付く。 どうも私はやはりこういう小動物に弱いらしい、正直見ていて飽きない。 しかしいつまでも眺めているわけにも行かない、ようやく思い出したが食べ物を何も用意してやってなかった。 れいむが入っていた箱には、小さな小冊子が入っていて、習性の紹介や食べる物などの飼い方が簡単に記載されていた。 それを読むと基本的には何でも食べるらしい、ただ味の濃いものはよくないらしい。 甘いものを与えすぎると舌が慣れてしまいそれ以外のものを食べなくなってしまうとも書いてあった、気をつけよう。 冷蔵庫を漁ると白菜くらいしかペットが食べれそうなものは入っていなかった。 私はそれを小さくちぎってれいむのケージに放り込んだ。 するとそれに気付いたれいむは小屋から這い出して、白菜に近づいていく。 顔を近づけて匂いを嗅ぐような動作をした後、ちっちゃな両手で端を掴んで、白菜の端っこにがぶりとかぶりついた。 私の小指の先ほどの大きさを二回三回と口に含み、ほっぺを膨らませながらもぐもぐと租借したあと、ごくりと飲み込み、ぱっと笑顔を咲かす。 「ゆぅ~ん♪」 どうやらちゃんと食べれたようだ、私はほっと胸をなでおろす。 床のチップを少しどかして固め、スペースを作って、漬物用の小さな皿を二枚置いて一方を食べ物いれ、一方を水入れにしてやった。 水はどんな間違いが起こっても中に入っておぼれたりしないように、浅くしか入れていない。 補充が少々面倒だが、このくらいのほうが手をかけてやれて丁度良いだろう。 食べ物、水、寝床、大体必要な物はそろえたはず、問題があれば起こり次第解決すればいいだろうと、目を離してテレビをつける。 ニュースや天気予報、たいして面白くないバラエティ番組にお堅い内容のドラマ。 あれでもないこれでもない、とチャンネルを動かしていたら、ケージがかしゃかしゃと音を立てる。 「ゆぅ~ん!ゆうーん!」 何事かとそちらを見ると、れいむが瞳をうるうるとさせてこっちを見て何かを訴えている。 ケージの中を覗いてみても特に問題は感じない、私が近寄ると、ケージの入り口付近に移動し再びケージの枠を掴んでかしゃかしゃとやり始めた。 どうやら外に出たいらしい、しょうがないと私がケージを開けてやると手のひらの上にぴょんと飛び乗って、座り込んでしまった。 「しょうがないね、まったく」 私はそのままれいむを手のひらに乗せてテレビ観賞をすることにした。 しばらくすると突然れいむがむくりと起き上がり、なにやらそわそわとし始める。 「ん~?どした?」 私が指で顎の辺りをぷにぷにとつついてやっても、じゃれようとせずあたりを見回す。 やがてぶるぶると身体を震わせて、突然れいむはスカートを捲り上げてしゃがんだ。 可愛いおしりが顔をだして、そのままいわゆるうんちポーズで固まるれいむ。 「あれ?ま、まさか」 「う~んう~んっ」 目をぎゅっと瞑って力みはじめるれいむ、よく見るとおしりの間から黒い塊が顔をのぞかせていた。 「あらっ、本当かいまったく、ティッシュティッシュ…」 素早くそばに置いてあるティッシュを引き出して手のひらとれいむのおしりの間に滑り込ませると、なんとか手に直接付着することは免れた。 汚いなと思ったが、所詮これは餡子の塊、匂いも特にしなかった。 しかしれいむにとっては自分の排泄物は臭いのか、嫌そうな顔をしながらティッシュの端を掴んでうんうんを隠してしまう。 そのまま捨てようかとも思ったが、そういえばあのケージの中にトイレを作っていないことを思い出す。 戸棚からもう一枚漬物用の小さな皿を取り出し、それに先ほどれいむがしたうんうんをすりこんだチップを乗せてケージの端っこに入れてやる。 私の思惑通り行けば、これでここをトイレとして認識してくれることだろう。 初めのうちはところかまわず粗相をしてしまうかもしれないが、頭ごなしに怒るのは得策ではない、 きちんと場所を指定してそこを使い続けるように仕向けてやれば自然と覚えるものである。 排泄が終わるとれいむはすっきりしたのか、また私の手のひらの上で丸まり、今度は寝息を立て始めてしまった。 このままケージの中に入れてやろうかとも思ったが、その寝顔があまりに可愛かったのでそのままにしてやることにしてテレビ観賞を続けた。 私が寝るためにれいむを起こしてケージの入り口に手をそえ、入るようにと指示する。 れいむは目をこすりながら素直にしたがって、自分の家に向かった。 しかしその途中、再びれいむはあの時のようにそわそわとし始める。 しばらくきょろきょろとした後、私の思ったとおり匂いのする方に走っていき、トイレとして設置した皿の前で立ち止まってスカートをめくる。 そのままれいむは立ったまま力み、少しするとちょろちょろと音を立ててれいむの股間から皿に向けて水が迸った。 「し~~~!」 しーしーがだんだん勢いを失っていき、れいむがぷるぷると身体を震わせる。 終わってスカートを掴んでいた手をぱっと離すと、れいむはやはり匂いが気になるのか、足元のチップを両手で掘り、ばさばさとトイレの上にかけた。 まだ一度なので確信とまでは行かないが、どうやらトイレの場所は把握してくれたらしい、一日目としては上々だ。 私はれいむにお休みの挨拶をして部屋の明かりを消す。 れいむは私にひらひらと手をふっておうちの中に引っ込んでしまった。 私はそれを見届けてから寝室に行き、疲れに身を任せて深い眠りに落ちた。 私とれいむの出会いから数ヶ月、どこで間違ってしまったのだろう、れいむはすっかり生意気に育ってしまった。 「ぷぅ~!」 仕事が疲れて家に帰ると、頬をぷくーと膨らませてれいむが私をにらみつける。 これはご飯を催促しているので、決して私の帰りを歓迎してくれているわけではない。 ケージを開けるとぴょんと飛び出して、テーブルの上で両手を広げてぴょんぴょんと飛び跳ねる。 「ゆぅ~!ぷくー!ぷっきゅ~!」 「はいはい」 れいむは食欲旺盛で、多いかな?と思ったくらいの餌を用意して出かけても、必ず全て平らげてしまう。 逆に食べすぎになってしまうこともあるようなので、私はいつも気をつけて出かける前はギリギリの量しか与えないことにしていた。 今は以前のような野菜くずではなく、きちんとペットショップから買ってきた餌を与えている。 折角帰ってきてコミュニケーションをとる機会なので、スティックタイプの餌を手渡しでやることにした。 「ほーれ、餌だぞ~」 「ゆっ!ゆっ!」 れいむは笑顔一つ見せず、真剣な顔で餌に飛びつこうとする。 私がひょいひょいとちらつかせていると、ついに両手で端を捕まえて、がぶがぶとかじりついてしまった。 「よく食べるなぁ」 みるみるうちに餌が短くなっていく、どんどんと減っていき、ついに私が持っているところまで来て、れいむは勢いあまって私の指にかじりついた。 「いてっ」 と言ってもたいした痛みが走るわけではない、少し強い洗濯ばさみではさまれた程度だろうか。 そのまま持ち上げると、れいむは噛み付きをやめないので身体ごと持ち上がってしまう。 「ゆ~」 しばらくもぐもぐと口を動かした後、私の指から口を離してテーブルの上に落ち、ころころと転がった。 「ゆぅぅ!」 そのことで勝手に腹を立て、れいむは自分でケージの中に入って扉を閉めてしまう。 以前買ってあげたミニ胴つき用のおもちゃで一人遊びを始め、私に甘えるような仕草は殆どしない。 なんだか寂しいような物足りないような気持ちになってしまう。 たとえるならば、子供が反抗期を迎えた親の気持ちに近いのかもしれない。 あの手この手を尽くせばれいむの気を引けないこともないが、仕事で疲れた後はそんな気分にもなれないので、 れいむのケージを適当に眺めたままぼ~っとテレビを見て晩酌をするのがこの頃の日常だ。 私が飼いはじめた頃は本当に開発当初というやつだったらしく、その後一気にブームに火がついて、 今では会社でもうちのペットが~という話題の殆どはこのミニ胴つきの話だった。 やはり普通のゆっくりと違い買うスペースの心配も無く、胴つきだから行動範囲を制限してやれば不慮の事故というやつがおこりにくい。 知能もあまり高くなく、まあ育ち方しだいで生意気だと言ってもたかが知れている程度だ。 それに何と言ってもこの可愛らしい外見が、妖精を飼っているみたいで素敵だと評判になっているらしい。 値段も私が買った時の3倍以上の価格がついてペットショップに並んでいた、世の中分からないものだ。 久しぶりに酒が進んでしまい、アルコールが回ってきて思考が混濁していく。 「ゆ!ゆぅー!」 れいむがケージの中から呼んでいたので、入り口をあけてやるとれいむがひょいと飛び出し、私のほうに何か物を飛ばしてきた。 ころころと転がるそれは怪我が無いように設計された軽いスチロール素材の『ミニ陰陽玉』だ。 ペットショップにれいむを連れて行ったときにせがまれて買ってやったやつと記憶している。 れいむを見ると、期待したような目を向けてくるので、人差し指でボールをれいむのほうにぴんと弾いてやる。 軌道がすこしそれてしまったが、れいむはそれを追いかけて飛びついてキャッチし、またこちらに投げ返してきた。 ピンッ、キャッチ、投げ返されて、ピンッ、キャッチ、投げ返される。 ある時少し強く弾きすぎて、れいむはそれを受けきれず、頭に強くヒットしてしまった。 「ゆぅ~…ひっ…ゆぇぇ~~~~~」 れいむは痛かったのか、大声をあげて泣き出してしまう。 「あぁ、ごめんごめん」 私がれいむを引き寄せて頭を撫でてやると、少し泣き止んで私の手に頬ずりをしてきた。 たしかにれいむはこの頃以前に比べると生意気になった。 だがふと思うと、もしかするとそれは私にも責任があったのだろう。 元々あまりペットを世話してやるような余裕はあまり無かったのだが、れいむを衝動買いして、 初めのうちはちゃんと世話をしていても、やはりこの頃疲れて帰って、餌をやったらそのまま就寝、ということも少なくなかった気がする。 そう考えると、ずいぶん寂しい思いをさせてやってしまったのかもしれない。 ベソをかくれいむを手のひらですくって、もう一方の手で優しく何度も何度も撫でてやると、 ふとれいむは以前のような可愛らしい笑顔の華を咲かせてくれた。 それを見ると私も久しぶりになんだか嬉しくなってしまって、胸の奥がむずむずするような、優しい気持ちになれるのを感じていた。 大事にしてやろう。 当たり前のことだが、もう一度素直にそう思うことが出来た。 これからも私とれいむの付き合いは長そうだ。 おしまい。 --------------------------------------------- う~ん、なんだか中途半端でしょうか…たいした物語も無いただの愛で、 日常的な場面だからこそ難しいなと感じてしまいます。 ばや汁でした。 いつも多数のご意見ご感想ありがとうございます! この作品へのご意見ご感想も、どうぞお気軽にお寄せください。 個人用感想スレ http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1278473059/ 今までの作品 anko1748 かみさま anko1830-1831 とくべつ anko1837 ぼくのかわいいれいむちゃん anko1847 しろくろ anko1869 ぬくもり anko1896 いぢめて anko1906 どうぐ・おかえし anko1911 さくや・いぢめて おまけ anko1915 ゆなほ anko1939 たなばた anko1943 わけあり anko1959 続ゆなほ anko1965 わたしは anko1983 はこ anko2001 でぃーおー anko2007 ゆんりつせん anko2023 あるむれ anko2068 おしかけ anko2110 とおりま anko2111 おもちゃ anko2112 ぼくとペット anko2223 まちかどで anko2241 かいゆ anko2304 ぼうけん anko2332 とかいは anko2349 たたかい anko2369 ゆっくぢ anko2413 せんたく anko2427 ぶろてん anko2489 あこがれ 前編 anko2588 ひとりぼっちのまりさ anko2807 母の音 anko2887 僕とれいむと秘密基地 anko2949 野良れいむ anko3047 ぶろてん おまけ anko3058 実験01 クッキーボタン anko3067 わけあり おまけ anko3078 げすまりさ 餡小話では消えてしまった作品も多数ありますので、過去作を読みたいと思っていただけた方は ふたば ゆっくりいじめSS保管庫ミラー-ばや汁ページ- http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/395.html をご活用ください。