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亡くなった茶道家の父は、礼儀作法に非常に厳しい人だった。 今でもよく覚えている。 ある日俺は寺子屋から帰ると、茶箪笥の中に見たこともない高級な和菓子があるのを見つけた。 きっと、両親は奮発して高いものを買ってきてくれたのだろう。 俺は勝手にそう判断し、それを一人で無断で平らげた。 仕事から帰ってきた父は烈火の如く怒った。 あの菓子は、俺のために買ったのではない。 里長を招いて茶会をする際に、皆に振る舞うために購入した大事な菓子だったのだ。 泣いて謝る俺の尻を父はばしばし叩き、真っ暗な蔵の中に閉じ込めた。 あの時ほど、父が恐いと思ったことはない。 結局、父は大事な茶の席で大恥をかく羽目になり、俺は怒られても仕方のないことをしたのだ。 そんな父もあっけなく亡くなり、俺は父の跡を継いで茶道を教える仕事に就いた。 今では何とか、妻と一緒に食べていけるだけの稼ぎもある。 夜。ガラス戸を叩く音がしたので俺は立ち上がった。 こんな夜更けに誰だろう。 戸を開けると、そこには丸っこい物体がある。 金髪にカチューシャ。ゆっくりありすと呼ばれる饅頭生物だ。 「こんばんは、とかいはなおじさん」 「ああ、こんばんは。どうしたんだい、こんな夜に」 このありすとは初対面ではない。 今日の午後、縁側で一緒に簡素なティータイムを楽しんだゆっくりだ。 俺が縁側で湯飲みを片手に羊羹を食べていると、このありすが森の方から庭にやって来た。 垣根から顔を覗かせ、ありすは遠慮がちに俺に挨拶した。 「ゆっくりしていってね、おじさん」 「ああ。ゆっくりしていくといい」 「ありがとう。おじさんはしんせつなひとね。ありすも、おじさんのおにわにいてもいいかしら」 「庭を荒らさなければ、別に構わないよ」 「あら。ありすはとかいはよ。にんげんさんのおにわをよごすようなことはしないわ」 ありすの言ったことは嘘ではなかった。 ありすは俺の近くまで出てくると、口にくわえていた野苺を静かに食べ始めた。 よくいるゆっくりのような「むーしゃむーしゃ! しあわせー!」といったような大声を上げることもない。 都会派、と自称するだけあって、ありすの食べ方はゆっくりにしては品がよかった。 俺は少し気をよくして、抹茶に砂糖を入れて冷ましてからありすに差し出した。 「ゆっ! とってもおいしいおちゃね! おじさんはすてきなひとだわ」 ありすとはしばらくの間、なかなか楽しい茶会の時間を過ごすことができた。 時には、作法にこだわらず自然体で茶を楽しむのも素晴らしい。 茶を飲み終わるとありすは野苺の茎を片づけ、森へと帰っていったはずだ。 なのに、いったいどういう風の吹き回しだろう。 「おじさん、ひるまのおれいよ。ありすのつくったいんてりあなの。うけとってほしいわ」 ありすが口にくわえて差し出したのは、きれいに形の整っている押し花だった。 木の葉っぱの上に一輪の花がくっついている。 恐らく、ゆっくりの涙か唾液によって固めたものだろう。 あの不器用なゆっくりが作るものとは信じがたいほど、それは手が込んでいる。 「ありがとう。遠慮なく受け取らせてもらうよ」 たとえそれがゆっくりが作ったものであっても、誠意がこもっていることに代わりはない。 俺はお礼を言ってありすから押し花を受け取った。 「ゆっくり! おじさん、ありすとおともだちになってほしいわ」 俺が受け取ったことで、自分が受け入れられたと思ったのか、ありすはそんなことを言ってきた。 「君と友達にかい?」 「おじさんはとってもいいひとだから、ありすはおともだちになりたいの。また、いっしょにてぃーぱーてぃーをたのしみましょう?」 ありすはニコニコと笑っている。 あまりにも、ありすの笑顔は無防備だった。 だからこそ、俺は首を横に振った。 「残念だけど、それは無理だよ。今日のことはもう忘れて、お家に帰りなさい」 「…………ど、どうして。もしかして、ありすはいなかものだったの? おじさんのめいわくだったの?」 ありすのうろたえ方はかわいそうなくらいだった。 まさか、否定されるとは思っていなかったのだろう。 それもそうだろう。俺とありすとは、本当に仲良くやっていたのだから。 「いいや、そうじゃない。ありすはゆっくりとは思えないくらい都会派だったよ。でも、駄目だ」 「……おじさん。…………どうして?」 「君がゆっくりで、俺が人間だからさ。俺と君とでは、種族として違いすぎるんだ。人間には、近寄らない方がいい」 まだすがるような目をしてくるありすを、俺は優しく突き放す。 「今は仲良くできても、きっといずれどちらも不幸になる。俺たちは、絶対に相容れないんだよ」 俺はかつて、下らない過ちを犯した。 ゆっくりのしたことに本気で怒り、ゆっくりが分からないことを無理に分からせようとした。 人間の常識でも、ゆっくりにとっては常識ではない。 なまじ彼らは喋ることができるから、意思の疎通ができると思ってしまう。 実際はそうではない。人間とゆっくりとは違いすぎる。 あの不毛な体験は、俺の記憶の中に嫌な過去として位置づけられている。 あれは、この家に引っ越してきてすぐのことだった。 俺は今日のように、庭を眺めようと縁側に出ていた。 やや古くはあるが、実に趣のある家と庭だ。 何気なく見ていても、あちこちに風情があって飽きることがない。 しばし休息を取ろうと、俺は茶を点て茶箪笥からおはぎを一つ取り出した。 行きつけの和菓子店が作る、徹底的に痛めつけて味をよくしたゆっくりを材料にした名菓だ。 俺は茶碗と皿をお盆に載せ、縁側に戻ると座り直した。 ほっとする一息だ。 誰のためでもなく、自分のために点てる茶も悪くない。 茶の香りは奥ゆかしく、午後の静かな時間と相まって幻想郷を桃源郷に変えようと誘う。 柔らかなその誘いに、しばし身を委ねていた時のことだった。 「ゆっゆっゆ~♪ ゆっゆっゆ~♪ おさんぽおさんぽ~♪ まりさのおさんぽたのしいな~っ♪」 せっかくの気分が、たちまち台無しになった。 垣根をがさがさとうるさく揺らし、小動物らしからぬ不用心さで飛び出してきたものがいる。 金髪に黒い帽子。小生意気そうな表情。ゆっくりまりさだ。 サイズは大きめのリンゴくらいだろうか。どうやらまだ幼いゆっくりのようだ。 まりさはへたくそな歌を歌いながら、ぴょんぴょんと跳ねて庭を横切ろうとしている。 人間の耳には、ちょっとゆっくりの歌のセンスは理解しがたい。はっきり言って不快だ。 ……それにしても、散歩なのだろうか。 だとしたら、何という無警戒だろう。 俺の住む里では、あまりゆっくりにいい顔はしない。 畑を荒らす害虫として駆除されることもしょっちゅうだ。 付き合いで俺も幾度かかり出されたことがある。 里のあちこちに作られた巣を壊し、泣き叫ぶゆっくりを袋に詰めて加工場に引き取ってもらう。 「にんげんさんやめてよ! やめて! まりさたちはゆっくりくらしてただけだよ! なんでこんなことするの! ゆっくりしてよ!」 「おちびちゃんをもっていかないで! れいむのだいじなおちびちゃんなんだよ! やめて! ひどいことするなられいむにして!」 「ゆあああああん! きょわいよおおおお! おかあしゃああん!おとうしゃああああん! たすけちぇよおおお!」 俺はあまり彼らのお喋りが人間のようで好きになれないが、農家の人が言うにはあれはただの鳴き声だそうだ。 意味などない。ただの饅頭の発する音。人間のような思考はない。 そう思っているからこそ、簡単に駆除できるのだろう。 里は決して、ゆっくりにとって安全な場所ではないのだ。 それなのに、この警戒心皆無の動きは何だろうか。 「ゆっ! にんげんさんがいるよ。おにいさん、ゆっくりしていってね!」 俺の足元にまで近づいて、ようやくまりさは俺の存在に気づいたらしい。 まりさはぐいっと体と頭が一緒の部分をもたげ、俺の方を一心に見つめてそう言った。 きらきらと輝くような瞳だ。 実に無邪気な、人間の子どもでさえもここまであどけない目つきをしてはいない。 俺と仲良くできる、と無条件で信じ込んでいるのがよく分かる。 「……あ、ああ。ゆっくり、しているよ」 「ゆっ! ゆっ! ゆっくり! ゆっくり! おにいさん、ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね!」 俺はまりさの迫ってくる気迫にあっさり負け、返事をしてしまった。 途端にパアァ……とまりさの顔がさらに明るくなる。 ぽよんぽよんとまりさは反復横跳びをして、返事が来た喜びを全身で表現した。 きっと、これで俺とまりさとは仲良くなった、と思い込んでいるのだろう。 ゆっくり、という言葉を連発することから、余程その響きが気に入っているらしい。 「ここはまりさのみつけたゆっくりぷれいすだよ! おにいさんもゆっくりしていいからね!」 「え? いや、ここは俺の家で、君のいるところは俺の庭なんだが」 「ちがうよ! まりさのゆっくりぷれいすだよ! まりさがおさんぽしててみつけたんだよ! まりさのすてきなゆっくりぷれいすだよ!」 「……まあ、そうだよな。君たちに人間の家とか庭とか分かるわけないだろうし」 「ゆっ! ゆっ! おにいさん、へんなこといわないでよね。まりさちょっとこまっちゃったよ。ゆっくりしようね!」 「はいはい。ゆっくりゆっくり」 ああ、これがお家宣言という奴何だな、と俺は一人納得していた。 まりさにとっては、ここは自分が見つけた場所なんだろう。 俺という人間は、ついさっき気づいた。つまり、庭が先で俺が後だ。 だから、まりさにとってここは先に自分が見つけた場所ということになっているのだろう。 どうでもいいことだ。 どうせ、飽きたらすぐにどこかに行ってしまうだろう。 俺はまりさのかん高い声と、妙に人の神経を逆なでする口調に少しいらついたが、怒るほどではなかった。 そもそもここは借家だ。まりさが何と言おうが、あまり執着心はない。 まりさは楽しそうに俺の周りを転がってみたり、あちこちに顔を突っ込んで匂いを嗅いだりしていたが、不意にさっきよりもさらに目を輝かせた。 「ゆゆっ! おいしそうなおかしがあるよ! とってもおいしそうだね! まりさたべたい!」 ゆっくりは感情がすぐ表に出る。 まりさの目は、俺の隣にある皿に置かれたおはぎに釘付けだった。 おはぎに焦点を合わせたまま動かない目と、よだれの垂れている口元、そして舌なめずりをする舌。 露骨に「食べたいよお!」という欲望がむき出しになった顔だ。 「駄目だ。これは俺のお菓子だよ。まりさにあげる食べ物じゃないんだ」 「えぇぇ……。うらやましいなぁ…………おいしそうだなぁ……まりさもたべたいよぉ……」 餌付けして居座られても困る。 俺はちょっと大人げなかったが、皿を持ち上げてまりさから遠ざけた。 まりさはすぐさま縁側に這い上がって、おはぎに噛み付きかねない勢いだったからだ。 まりさの視線は、器用におはぎを追って動いた。 もう、関心はおはぎに固定されたらしい。 仕方のないことだ。 ゆっくりは極度の甘党だが、野生のゆっくりが甘いお菓子を食べることなどできない。 常に甘いものに飢えているゆっくりの目の前に、大好きなお菓子が置かれたのだ。 飛びつこうとするのも無理もない。 「いいなぁ………おにいさんだけいいなぁ………まりさもほしいなぁ……たべたいなぁ……むーしゃむーしゃしたいなぁ………」 さっさとあきらめて出て行けばいいものを。 そうすれば、それ以上おはぎを見続けて焦がれることもないのに。 俺はそう思ったが、まりさの取った行動は正反対だった。 俺のそばにべたべた付きまとって、懸命に自分をアピールし始めたのだ。 俺の機嫌を伺うように顔をのぞき込んでみたり、チラッと流し目を送ってみたり、実にうっとうしい。 口からは、俺が羨ましい、自分も食べたい、と馬鹿の一つ覚えのような言葉が連発される。 俺がそっぽを向くと、そちらに回り込んでぴょんぴょん跳ねたりぷりんぷりんと尻を振ってみせる。 少しでも俺の気を引こうと、まりさは手を尽くしているらしい。 だがそれは、俺にしてみれば不愉快な行為ばかりだ。 人のものを欲しがるという態度が気に入らない。 ましてや、あきらめが悪くしつこいならばなおさらだ。 茶の席でこんなことをしようものなら、即座に追い出されても仕方がない不作法だ。 「いいなあ! まりさもほしいよ! ほしい! おかしほしい! おかしたべたい! たべたい! たべたいよお!」 ついに、まりさは我慢できなくなったらしく、大声で俺に頼み始めた。 いや、もはや図々しく要求している。 それにしても、ゆっくりは体は小さいのに声がやたらとでかい。 小さな子どもが耳元でどなっているようで、耳がおかしくなりそうだ。 「ちょうだい! まりさにもちょうだい! おにいさん! ねえ! ねえねえねえ! きいてるの!? おにいさん! おにいさんってば!!」 「駄目ったら駄目だ。いいか、これは俺のものなんだ。君にあげるものじゃない。いい加減あきらめろ」 「おにいさんのいじわる! けち! まりさおこったよ! ぷんぷん! もういいよ! おにいさんなんかしらない!」 とうとうまりさの堪忍袋の緒が切れた。 俺のことを一方的に非難すると、ぷりぷり怒りながら垣根の中に潜り込んでいった。 まりさにしてみれば、仲良くなった人間が自分だけお菓子を楽しんでいるように思えたのだろう。 俺は少しまりさがかわいそうになったが、すぐに自分の考えを改めた。 「じぃぃぃぃっ…………………………じぃぃぃぃ…………………………」 わざわざ声に出して、自分がいることをアピールしているのはなぜだろうか。 まりさは森に帰ろうとはしなかった。 生け垣の下から、まりさの食欲でらんらんと輝く二つの目が俺を見ていた。 まりさ本人は隠れているつもりだろう。 だがこちらからは、じーっとおはぎを見つめるまりさの姿が丸わかりだ。 ああ言ったものの、菓子への未練はそう簡単に断ち切れないのだろう。 ふと、俺の心に子どものようないたずらが思いついた。 この状態で、俺が席を外したらどうするだろうか。 十中八九、まりさはおはぎを食べてしまうだろう。 その現場を俺が押さえたらどんな顔をするだろう。 さぞかしうろたえるだろう。どんな言い訳をすることだろう。 泣いて謝るだろうか。それともちょっとすねてから謝るだろうか。 「わあ! そうだった。用事を思い出したぞ。すぐ部屋に戻らなくちゃ! 急ぎの用だから、おはぎはここに置いていこう!」 俺がわざとらしく大声を出すと、まりさが生け垣の中で身じろぎしたのが分かった。 「どこにいるか分からないけど、もしまりさがいたら困るからちゃんと言っておかなくちゃな!」 まりさが俺のおはぎだと言うことを忘れては困るので、ここでもう一度繰り返す。 「まりさ! これは俺のおはぎだからな! 絶対に食べちゃ駄目だぞ! まりさのおはぎじゃない。俺のものだぞ! 食べたら怒るからな!」 俺の声はまりさに聞こえただろう。 しかし、まりさの目はもうおはぎの方しか見ていない。 本当に聞こえたのだろうかと怪しく思うが、さっきから食べるなと連呼してあるから、あれが自分のものではないことぐらい分かるだろう。 では、実験の開始だ。 俺は縁側から立ち上がり、家の中に入って柱の陰に隠れた。 俺が身を隠してすぐ、まりさは生け垣の中から飛び出してきた。 駄目だこれは。 ゆっくりには、人間のものとそうでないものとの区別が付かないようだ。 あっさりとまりさがおはぎを平らげて実験終了かと思ったが、そうではなかった。 まりさは縁側に飛び乗ると、おはぎの載っている皿に顔を近づけた。 しかし、ぱくりと噛み付くことはなかったのだ。 「ゆうぅ……おにいさん……たべちゃだめだって……どうして……こんなにおいしそうなのに……」 俺は耳を疑った。 なんだ。ちゃんとまりさは理解していたんだ。 俺がいなくなっても、おはぎが自分のものではなく人間のものだと覚えていたのだ。 ゆっくりの記憶力を俺は侮っていたが、どうやら考えを改めなくてはいけないようだ。 「いいなあ……たべたいなあ……おいしそうだなあ……おにいさんうらやましいなあ……まりさもたべたいなあ……」 まりさはよだれをたらたら、未練もたらたら流しながらおはぎに心を奪われている。 食べられないと分かっているなら見なければいいのに、と思うのだが、まりさはじっとおはぎを見つめてうっとりしている。 それが欲望を加速させるニトロであることに、まりさは気づいていない。 「たべたいよぉ…むーしゃむーしゃしたいよぉ……くんくん……くんくん……ゆぁぁぁ……いいにおいだよぉ……くんくん………」 どこにあるのか分からない鼻をひくつかせ、まりさは餡子の甘い匂いをいっぱいに吸い込んでいる。 もはや舐めるようにまりさはおはぎをあちこちから眺め、ほとんどくっつきそうなくらいに顔を近づけている。 これは駄目だ。 絶対にまりさは我慢できない。 俺の予想は的中した。 「ちょっとくらいならいいよね! おにいさんにわからないくらいなら、たべてもだいじょうぶだよね!」 分かる分からないの問題じゃなくて、そういうことを口にしちゃいけないだろ。 俺は柱の陰でまりさの行動に突っ込む。 「なめるだけだよ! ぺーろぺーろするだけだよ! それくらいならおにいさんもわからないよ!」 まりさはきっと、自分で自分を騙しているのだろう。 いけないことだと分かっている。 でも、どうしても食べたい。 ならば、これくらいなら分からないと自分に嘘をつき、信じ込もうとしているのだ。 「ぺーろぺーろ…………し、し、し、しあわちぇええええええ!!」 ついに、まりさは俺の警告を無視した。 ゆっくりの体の割に大きくて分厚い舌が口から伸びると、ぺろりとおはぎの餡子を舐めてしまった。 次の瞬間、まりさは幸福そのものの顔で叫んだ。 まりさは冗談抜きで輝くような表情で、甘いものを味わう幸せを表現していた。 「しゅごくおいちい! しゅごくおいちぃよおおおお! あみゃいよおおお! もういっかいぺーろぺーろ! ぺーりょぺーりょおおお!!」 まりさは歓喜のあまり涙を流している。 よく見ると、下半身からちょろちょろと何か流れ出している。 失禁しているのか? 不快になる俺を置いてきぼりにして、まりさはもう一度おはぎをべろりと舐める。 前回は罪悪感からか恐る恐るだったが、今回は舌で餡子を削り取るような舐め方だ。 あれでは、おはぎの表面に舐めた跡が残るだろう。 まりさの罪はこれで確定したわけだ。 「ち! ち! ちあわしぇぇええええええ!! おいちぃいいいいいい!!」 再びまりさは嬉しさのあまり大声を出す。 こっそりと盗み食いをするつもりだったが、あまりのおいしさに声が出てしまうのか。 もう、こうなってしまっては一直線だ。 止まるわけがない。止められるわけがない。 「むーしゃむーしゃ! むーしゃむーしゃ! あまいよおおおお! おいちいよおおおお! むーしゃむーしゃ! むーしゃむーしゃぁあああ!」 まりさは、おはぎにかぶりついた。 一口で三分の一をかじり、もぐもぐと噛む。 途端に、まりさは口から餡子をこぼしながら叫んだ。 「すごいおいしいっ! おいしいいいい! あまいよお! まりさむーしゃむーしゃするよ! むーしゃむーしゃ! おいしいよおおおお!」 もう夢中だった。 まりさはおはぎにぱくつき、もぐもぐと噛み、ごくりと飲み込む。 ずっと我慢していた甘さへの渇望を満たせる喜びで、まりさの顔は緩みきっていた。 「まあ、そうだよなあ……」 俺は、茶箪笥に向かいながら苦笑していた。 怒りの感情はわいてこなかった。 きっと、父が里長のために用意した茶菓子を勝手に食べた俺も、あんな感じだったのだろう。 俺は、まりさに子どもの頃の俺を重ねていた。 大事な茶の席で使うはずの茶菓子を、無断で食べてしまった俺。 食べるなと厳命されながら、甘味の誘惑に勝てなかったまりさ。 どちらも、似たようなものだ。 悪いと分かっていても、ついついやってしまう。 それを責めるのは、いささか大人げないと言えるだろう。 ……この時の俺は、まだ正常だった。 俺は代わりの茶菓子のきんつばを取り出し、皿に載せた。 さて、まりさはどんな顔をするだろう。 俺が怒ると、何て弁解するだろう。 俺はいたずらが成功した子どもの顔で、縁側へと向かったのだった。 縁側に置かれた皿には、おはぎの代わりにまりさが載っていた。 半分幸せ、半分物足りない顔で、まりさは皿をぺろぺろと長い舌で舐め回している。 「おや、おはぎがないぞ。しかもそこにいるのはまりさじゃないか。さては盗み食いしたんだな。悪い奴め!」 芝居気たっぷりに、俺は恐い顔をして縁側に姿を現した。 皿の上に乗っかり、しかも皿を舐めていたまりさに逃げ場はなかった。 「ゆううううううっっっ!?」 まりさはびっくりして跳び上がった。 こちらを向くまりさの口の周りは、おはぎの餡子ですっかり汚れている。 「ゆあっ! あっ! ゆああっ! おにいさんっ! ゆっくりしようねっ! ゆっくりっ! ゆっくりっ!」 「まりさ、口の周りが餡子で汚れているぞ! 言い訳しても無駄だ。あれだけ食べるなと言っておきながら、よくも俺のおはぎを食べたな!」 まりさのうろたえた様子は、本当に面白かった。 何度も空になった上に自分の唾液でべとべとになった皿と、怒った顔をした俺とを見比べている。 まりさが混乱しているのがよく分かり、俺は内心笑いを噛み殺していた。 「まりさ! この悪いゆっくりめ! 人のものを勝手に食べちゃったら、何て言うのかな!?」 おろおろとしているまりさに、俺は親のような顔で言ってみた。 もちろん、この状況は俺が作ったものだから、まりさが拗ねたり泣いたりしても怒る気はなかった。 一回でもいいから「ごめんなさい」と言えば、それで俺はすっきりしただろう。 「まりさも食べたかったのか。じゃあ、これも半分あげるよ」 面白いものを見せてもらったお礼に、きんつばを半分食べさせてやるつもりだった。 ……そもそも、ゆっくりに本気で怒るなんて大人げないだろう。 こんなことを考えるほど、かつての俺は甘かった。 ゆっくりという饅頭がどれだけ人間とは異なる存在なのか、理解していなかった。 そして、ゆっくりという饅頭がどれだけ人間を苛立たせる存在なのか、体験していなかった。 まりさはしばらくおたおたしていたが、いきなりにっこりと笑った。 それまでの困惑した様子が嘘のような、あっけらかんとした笑顔をこちらに向けた。 「おかしとってもおいしかったよ! もっとちょうだいね!」 俺は絶句した。 何だって? 今、こいつは何て言ったんだ? おいしかった? もっとちょうだい? 「何を言ってるんだ? あれは俺のお菓子だぞ」 「うん! でもおいしそうだったから、まりさがまんできなくてたべちゃった! すごくおいしかったよ!」 まりさは初対面の時とまったく同じ、無邪気な顔でニコニコと笑っている。 自分が悪いことをしたという自覚がないのか? 野生動物だから、目の前にある餌をただ貪るだけだったのか? そうじゃない。 まりさは一度ためらっている。 おはぎが俺のものであるということは、知っていたはずだ。 「食べちゃ駄目だって言っただろ。聞こえなかったのか。それとも、忘れちゃったのか?」 わすれちゃったよ、とまりさが言ってくれれば。 そうすれば、俺は納得していたはずだ。 単なるおはぎ一つのことだ。 俺が食べられなかったからといって、子どものように怒ることはないはずだった。 しかし、まりさの返答は違った。 「ずるいよおにいさん! おいしいおかしをひとりじめして! おかしはみんなでたべるからおいしいんだよ!」 「まりさ、君が全部おはぎを食べちゃったせいで、俺の食べる分はなくなったよ。全然みんなで食べてないじゃないか」 「おにいさんおかしをもうひとつもってるでしょ! まりさはおなかがすいてたんだよ! そっちもはんぶんちょうだいね!」 たかがゆっくり如きの馬鹿な言い草。 そう片づけてしまうには、俺は若すぎた。 いや、片づけてしまえないほど、俺はこのことについてトラウマがあったのだ。 呆れ果ててものも言えない俺を差し置いて、まりさは俺の手のきんつばに向かってジャンプする。 「まりさおかしだいすき! もっとちょうだい! ねえ! ねえ! ねえ! きいてるの!? まりさはおかしだいすきなんだよ!」 俺はまりさを見た。 まりさは俺を見ていない。 俺の手にあるきんつばしか眼中にない。 俺の存在など、まりさには邪魔なだけなのだろう。 「おにいさん! おにいさんってば! きいてるの! ねえきいてよ! まりさにそれちょうだい! まりさもっとたべたい! おかしたべたいよお!」 俺の心情の変化は、大人げないと批判されても仕方がない。 しかし、俺の心の奥から、自分でも信じられないほどの怒りがこみ上げてきた。 ただの理性のない獣ではなく、こいつはゆっくりだ。 どんな形でも、まりさが一度でもごめんと謝れば当然許すつもりだった。 これは俺の仕組んだいたずらだ。それくらいの余裕はあったはずだ。 それなのに、俺の手にあるきんつばに向かって、羞恥心の欠片もなく飛びつくまりさをみていると、怒りしか感じない。 かつて俺は、何度謝っても父に許されなかった。 心底反省しても、許してもらえなかった。 やがて雷親父の怒りはおさまったのだが、その間俺は家の中で針のむしろにいた。 かばってくれる祖母がいなければ、俺は父を憎みさえしただろう。 あの嫌な経験は、俺の中でしこりとなって残っている。 人のものを勝手にかすめ取ることが、どれだけ悪いことなのか身に染みていた。 それなのに、こいつは。 こいつは人のものを食っておきながら謝りもせず、もっとよこせと催促するのか? 自分が何をしたのか分かっていながら、恥知らずにもこちらに要求するのか? たかが饅頭風情が、人間の食べ物をよこせとうるさく詰め寄るのか? 俺はゆっくりの生態に詳しくなかった。 もし詳しい人がこれを読めば、当然失笑することだろう。 何を馬鹿なことをしているんだ、ゆっくりにいったい何を期待しているんだ、と笑われて当然だ。 俺の間違い。 それは、ゆっくりを人間のように扱ったことだった。 俺はきんつばを地面に落とした。 こんなものが血相を変えるほど欲しいのか。 勝手にしろ、と俺はまりさにきんつばをあげた。 「ゆっゆ~♪ おいしそうなおかしさん、ゆっくりまりさにたべられてね! むーしゃむーしゃ! しあわせーっっっ!」 地面に落ちたきんつばに、まりさは飛びついた。 落とした俺に目もくれず、がつがつと貪っていく。 遠目から見ればまだ耐えられるが、近くで見ると本当にこいつは汚らしい食べ方をする。 足で蹴り飛ばしたくなる誘惑を抑え、俺はまりさが食べ終わるまで待った。 「ゆっくりおいしかったよ! まりさこんなにおいしいおかしはじめてたべたよ! もっとたべさせてね!」 舌で口の周りをべろべろ舐め回しながら、まりさはさらにお菓子を欲しがる。 こいつは、お菓子をくれた俺にお礼さえ言わなかった。 無神経な物言いに、俺の心はもう動かない。 腹立ちはピークに達しているため、火に油を注いでもこれ以上燃えないのだ。 「もうないよ。これで終わりだ」 「ゆぅぅ……そうなんだ。まりさ、もっとむーしゃむーしゃしたかったよ……おかしおいしかったのになあ……」 たちまちまりさの顔は悲しそうになる。 体の大きさからして結構な量を食べたのに、こいつは満足しないのだ。 ますます俺はゆっくりが嫌いになった。 「じゃあもうまりさはかえるね! おにいさん、またおいしいおかしをちょうだい! まりさまたくるからね!」 「ああ、ちょっと待つんだ、まりさ」 「ゆゆ? おにいさん、どうしたの? まりさはおうちにかえるんだよ」 食うだけ食ってさっさと帰ろうとするまりさを、俺は呼び止める。 振り返って首を傾げるまりさ。 俺は両手を伸ばして、その丸っこい顔と体をつかんだ。 「ゆっ! おそらをとんでるみたい! まりさとんでるよ! とりさんみたいにおそらをとんでるよ!」 いちいち実況中継するのがうるさい。 それに、この状態は飛んでるのではなく浮いてるだ。 食べたせいか、まりさの体はそれなりに重量がある。 手に持つとちゃんと重みが伝わってくる。 饅頭皮はもちもちとしていて、手触りがなかなかいい。 まだ若いからだろう。手首を回して横と後ろを見てみたが、傷らしいものもない。 「ゆゆっ? なんなの? そんなにみつめられると、まりさちょっとはずかしいよ~」 俺が見とれているとでも思ったのか、まりさは顔をちょっと赤らめてもじもじし始めた。 恥じらいとかそういった感覚はあるのか。 ならばなおさら、好都合だ。 「まりさの両目はきれいだね」 俺はいきなりまりさを誉めた。 まりさはきょとんとしていたが、すぐにとても嬉しそうな顔になる。 「とってもきれいだよ。きっと、ゆっくりの中では一番きれいな目をしているんだろうね」 「ゆゆ~ぅ。それほどでもないよ~。でも、まりさすごくうれしいよ! うれしい!」 両手で持ち上げられた状態で、まりさは嬉し恥ずかしといった感じで体をぐねぐね左右に振っている。 表面上は恥ずかしそうだが、明らかにまりさはこちらの言葉に期待している。 俺がじっと見つめていると、伏し目がちになりながらも時折チラッとこちらを見てくる。 もっと誉めて、と思っているのが丸わかりだ。 お望み通り、俺はまりさを誉めちぎった。 「まりさの髪の毛もきれいだよ。とてもきれいでまるで黄金の小川みたいだ」 「ゆゆん! まりさのかみのけさんはまりさのじまんだよ! みんないっぱいほめてくれるんだよ!」 「まりさの歯は白くて整ってるね。虫歯もなくていい歯をしているよ」 「はさんはだいじだよ! むーしゃむーしゃするときにはさんがなかったらたいへんだよ!」 「まりさの帽子は素敵だね。よく手入れがされていて、ほかのゆっくりたちも羨ましがるだろうね」 「だって、まりさのたからものだもん! ゆっへん! まりさはおぼうしさんがいちばんだいじなんだよ! まいにちまりさはおぼうしをごーしごーしあらうんだ! きれいきれいにしてからおぼうしをかぶると、とってもゆっくりできるよ!」 すっかりまりさは誉められて有頂天になっている。 見る見るうちに、まりさの顔は幸福を絵に描いた笑顔になっていく。 まだだ。 もっともっと、まりさを舞い上がらせてやろう。 俺はさらにまりさの誉めるべき点を、大事にしているであろう点を探す。 「まりさのお家はどんなところだい? きっと、とても住みやすい場所だろうね」 「ひろくてゆっくりできるすてきなおうちだよ! まりさのたからものがいっぱいあるんだ!」 「まりさの家族はどうかな? まりさはどう思ってる?」 「みんなだいすき! おとうさんだいすき! おかあさんだいすき! いもうとのれいむもまりさも、みんなみんなだ~いすき!」 「まりさには友達がいるだろう? 友達のことはどう思ってる?」 「みんなゆっくりしてるよ! ありすもいるし、れいむもまりさもいるよ。いっしょにあそぶとすごくたのしいよ!」 「じゃあ、最後にまりさのゆん生はどうかな。まりさは今まで生きてきてどうだった?」 「とってもしあわせだよ! まりさゆっくりできてしあわせ! まりさはしあわせなゆっくりだよ!」 「そうだろうね。まりさは幸せなゆっくりだよ。俺にもよく分かる」 「ゆ~ん♪ おにいさん、まりさてれちゃうよ~♪ ゆんゆん♪ ゆっくり♪」 最後にまりさはとびきりの笑顔を見せて締めくくった。 本当に、まりさは幸せそうだった。 まりさの言葉を聞いて、俺もよく分かった。 こいつは生まれてからずっと、ゆっくりにしては恵まれた環境にいたのだ。 さぞかし、幸福なゆん生を送ってきたのだろう。 これからも、それが続くと信じて疑わないのだろう。 「じゃあそれ、全部俺がもらうよ」 手始めに、君の片目をもらうことにしよう。 いきなり両目を奪ったら、これから始まる喜劇が見られなくなるからね。 俺はまりさを片手で持つと、右手の人差し指をまりさの左の眼窩に突っ込んだ。 まりさは指を突っ込まれても、2秒ほどは笑顔のままだった。 きっと、俺の言葉の意味が分からなくて頭の中を素通りしたのだろう。 別に構わない。こちらも、まりさが理解してからこうするつもりなどなかったのだから。 柔らかい感触が指に伝わってきた。 つるんとして湿った眼球を避けて、その裏側の餡子に指先が届いた。 やや温かい。 「ゆっ……ゆぅ……ゆ゙! ゆ゙ぎぃ゙い゙い゙い゙あ゙あ゙あ゙!! あ゙あ゙あ゙ぎ゙い゙い゙い゙い゙い゙!」 まりさはどぎついまでの絶叫を張り上げた。 この声は聞いたことがある。 ゆっくりを里の皆で駆除していた時、えらく気合いの入った男が一人いた。 人の二倍も三倍もゆっくりを狩る彼の回収したゆっくりは、どれもずたずただった。 彼の持ち場からは、今のまりさと同じ悲鳴が止むことがなかった。 ゆっくりの鳴き声ということで誰も気にしなかったが、あの男はゆっくりを生きたまま解体していたのか。 俺は慎重に指先で眼球をつまみ、引っ張る。 視神経やら筋肉やらの抵抗はなく、思った以上にあっさりとまりさの目玉は顔から抉られた。 俺は激痛で歪んだ顔をしているまりさに、それを見せてやった。 「や゙あ゙あ゙っ! や゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙! まりざの! まびぢゃのおびぇびぇえええええええ!!」 自分の目と見つめ合うという状況は、なかなか希有なものじゃないだろうか。 俺の手の中と眼球と目があって、まりさはさらに大声で叫ぶ。 「い゙ぢゃい゙ぃい゙い゙い゙い゙い゙!! がえぢでっ! まりぢゃのおべべがえぢでよおおおおお!!」 隻眼から大量の涙を流しながら、まりさは俺に目玉を返すよう訴える。 ぽっかりと開いた眼窩からは、どろりと餡子混じりの涙が流れる。 果たして、これをまりさの眼窩に突っ込んだらまた機能するのだろうか。 俺は改めて、こいつの眼球をしげしげと眺めてみた。 材質は寒天か白玉だろう。 ゆっくりの顔についている時はあんなにも表情豊かなのに、こうして抉り出すととたんにただの無機物になる。 「おにいざんがえじでえ! おめめがえじでよおお! どうじで! どうじでごんなごどずるのお!? まりざいだいよおおお!」 「君だって、勝手に俺のお菓子を食べたじゃないか。だから俺も、君から勝手に目をもらうよ」 俺は痛みに苦しみもがくまりさにそう言った。 まりさは一瞬、信じられないものを見る目で俺を見た。 不愉快だ。 自分がそうしたというのに、自分が同じようにされるのは嫌なのか。 「がえじでっ! がえじでっ! それはやぐまりざのおかおにもどじでよおおおおおお!!」 「お菓子を返してくれたら戻してあげるよ。ほら、早く返して。そうしたら戻してあげる」 「でぎないよお! できないよおおお! もうおがじざんだべじゃっだがらがえぜないよおおおお!!」 「じゃあ、これも返してあげない」 泣き叫ぶまりさを尻目に、俺は指先に力を込めた。 ブヂュッ、とあまりにもあっけなく、まりさの二つとない左目は潰れて四散した。 目の前で自分の体の一部を潰されたショックで、まりさは泣きわめく。 「や゙ぎゃあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!! お゙め゙め゙ぇ! お゙め゙め゙ぇ! まりざのずでぎなおべべぇえええええええ!!」 ねっとりとした液体が、潰れた眼球から流れ出した。 恐らくシロップだろう。 これでもう、まりさの顔から左目は永遠に失われた。 どんなことがあっても、まりさはこれからずっと片目で生きていかなければならないのだ。 俺は眼球の残骸を庭に放り投げた。 「次はまりさの髪の毛だね。それももらうよ」 「だめぇ! だめだめだめえええええ! やだあ! まりさのおさげさんむしっちゃやだあああああ!」 必死に体を捻って、俺の手から逃れようとするまりさ。 だが、その力はあまりにも弱く、抵抗と呼ぶにも値しない。 俺はまりさの帽子から出ているお下げを掴み、ぐいっと力任せに引っ張った。 「い゙ぎゃ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙! あ゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙! いだいっ! いだいいだいいいい!」 お下げは根本から千切れて手に残った。 なぜ根本からだと分かるかというと、皮と餡子がわずかながらくっついてきたからだ。 俺はまりさの帽子を取り上げた。 「おぼうしさんっ! それまりさのおぼうしさんっ! かえして! まりさのおぼうしさんかえしてね!」 邪魔になるから、俺は帽子を自分の頭に乗せた。 傍目から見ればかっこわるいが、この際気にはしない。 「これだけじゃ足りないな。もっとまりさの髪の毛をもらうよ」 「やだああ! やめてね! まりさのかみのけむしらないで! いたいのやだああ! むしるのだめえええええ!」 まりさの声は、昨日の俺が聞いたら痛々しくて手を止めたくなるものだったに違いない。 いくら何でも、菓子を勝手に食べられたくらいで目を抉って髪を抜くなんて、と不快感をあらわにしたことだろう。 だが、今の俺はまったく嫌悪感がなかった。 まりさのきらきら光る金髪を指で掴み、お下げと同じようにして引っこ抜く。 雑草を抜くようなブヂッという手応えを残して、一つまみの金髪が手に残った。 「いぢゃあああああいいい! あちゃま! あちゃま! まりぢゃのあぢゃまああああああああ!!」 まりさは涙を流して激痛を訴える。 髪の毛は地肌ごと引き抜かれ、まりさの頭には小さな穴が空いていた。 気にせず、俺は次々とまりさの頭から髪の毛をむしり取る。 「いびゃい! いびゃいよっ! おにいざんやめでっ! まりざのがみのけっ! だいじな! だいじながみのけなのっ! いぢゃいいぃっ! どうじでぇ? どうじでごんないだいごどずるの!? まりざなにもわるいごどじでないのにいいいいいい!」 自称「悪いことをしていないまりさ」は、俺が手を止める時には「まばらに頭に髪の毛が残っている禿まりさ」になっていた。 完全な禿にするよりも、所々に残っている方が無様さに拍車がかかる。 俺と最初に出会った時の若くはつらつとしたまりさは、もうどこにもいない。 ここにいるのは、片目に穴が空き、髪の毛のほとんどをむしられた不細工なゆっくりだ。 「ゆっ……ゆぐっ……ゆぐぅ……いだいよぉ……まりさのかみのけさん……みんなにほめてもらったかみのけさん…… ゆっくりかえってきてね……いだいぃ……まりさのあたまにゆっくりかえってきてねえ! はやくかえってきてねええええ!!」 まりさは俺の足元に散らばる自分の髪の毛を見て、涙をぽたぽた落としている。 その悲しそうな顔は、ゆっくりを駆除していてもなかなかお目にかかったことがない。 どうやら、本当にこいつの髪の毛は仲間の間でちやほやされていたようだ。 それを苦痛と共に失った気分はどんなものだろう。 「もらったけど、やっぱりいらないね。こんな汚い髪の毛」 俺は下駄の足でその金髪を踏みにじり、土の中にねじ込んだ。 「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙! や゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」 まりさの悲鳴がかん高くなる。 俺は自分の頭にかぶっていた帽子を、まりさに返してあげた。 「おぼうしさん! まりさのだいじなおぼうしさん! ゆっくりおかえり! おかえりいいい!」 大あわてでまりさは帽子をかぶる。 大事なものだということもあるが、同時に禿を隠したいのだろう。 まりさは俺をにらみつけた。 「ひどいよ! おにいさんひどい! やめてっていったのに! まりさがやめてっておねがいしたのに! どうしてこんなことするの! おにいさんはゆっくりできないよ! きらい! だいっきらい!! まりさのおめめもどして! かみのけももどしてよお!」 「ああ、まりさはやめてって言ったね。聞こえたよ」 「だったらどうしてこんなことするの! まりさいたかったよ! すごくいたかったよ! どうしてえええ!」 「だから? まりさが止めてって言ったから何なの?」 まりさは口を閉じた。 涙がいっぱいにたまった右目で、こちらをじっとにらんでくる。 まるで、自分はかわいそうな被害者であるかのような顔だ。 「君だって、俺が食べちゃ駄目だと言ったお菓子を食べたじゃないか。同じことだよ。俺も、君が止めてって言っても髪の毛をもらうよ」 「そ……そんなこと……。そんなの……。そんなのやだよおおおお! やだあ! やだやだやだあああああ!!」 「次はまりさの白い歯だね。それももらうよ」 「やだあ! やだあああ! やじゃびゃびぎぃぃぃ!!」 俺は大声を張り上げるまりさの口に、親指と人差し指を突っ込んだ。 手にまりさの口内の濡れた感触が伝わった。 上顎の奥歯を一本掴み、力任せに引っ張る。 予想よりも遙かに力を必要とせず、まりさの歯は引っこ抜けた。 「あびっ! ばびびっ! あびっ! あびや゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ゙っ゙!!」 歯の抜けた歯茎から粘性の低い餡子をびゅっびゅっと拭きつつ、まりさは絶叫した。 俺は指先でつまんだこいつの歯をじっくりと眺めてみた。 色は真っ白だ。形は人間のものとよく似ている。 少し力を入れただけで、あっけなく歯は砕けた。恐らく砂糖でできているのだろう。 「びゃびぇでっ! いびゃいびょ! しゅびょびゅいびゃいっ! いびゃびいいいい!! 」 たった一本歯を抜かれただけで、まりさは顔をぐしゃぐしゃにして激痛を訴える。 ろれつの回らない様子から、これがまりさにとって初めての激痛なのがよく分かる。 だが、俺は一本では満足しなかった。 怯えきったまりさの視線を無視して、俺はさらに口に指を突っ込んだ。 「びゃべびぇえええええええ!!」 上顎の歯を四本ほどつまむと、一気に引っこ抜く。 一度目で力加減が分かったから、二度目の抜歯は簡単だった。 ブチブチッという歯茎の千切れる音と共に、俺の手はまりさの口から抜かれた。 まりさの大事にしていた、きれいな白い歯と一緒に。 「い゙ぎゃびい゙い゙い゙い゙い゙い゙!! ゆ゙びあ゙あ゙あ゙あ゙! あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙! あ゙あ゙あ゙あ゙っ! びぎゃい゙い゙い゙い゙い゙!」 目を抉ってやった時よりも、数段上の悲鳴が聞こえた。 さすがに、これを近距離で聞くとこちらも鼓膜がおかしくなる。 麻酔なしで歯を何本も一度に抜かれたのだ。 こいつがこれだけ叫んでもおかしくない。 「ぼうやだああああああ!! やだああああああ!! まりざいだいのやだああああああああ!!」 まりさは俺の手の中でめちゃくちゃに暴れる。 どうやら、歯を失っても喋れるようだ。 そうでなくては。 こちらも、これでこいつのすべてを奪い尽くしたとは思っていない。 俺はまりさを地面に降ろした。 まりさは、まさか助かると思っていなかったのだろう。 一瞬きょとんとして地面を見ていたが、次の瞬間ものすごい勢いで泣き出した。 「ゆわああああああん! ゆえええええええん! もうやだああ! おうちかえるうううう! まりさおうちかえるううううう!!」 泣きながら、まりさはぴょんぴょんと跳ねて庭を突っ切る。 生け垣に頭から体当たりし、中に無理矢理潜り込んだ。 火事場の馬鹿力という奴だ。 まりさはゆっくりらしからぬ速さで俺の家から逃げ出した。 「おうちかえる! まりさはおうちにかえるよおおおお! おとうさあああん! おかあさああん! まりさもうやだよおおおお!」 泣きじゃくるまりさの声が遠ざかっていくのが分かった。 さて、後を追うことにしよう。 まだまだ、こいつから頂戴しなければならないものはあるのだから。 逃げるまりさの後を追うのはあまりにも簡単だった。 「ゆええええん! ゆええええん! ゆっくり! ゆっくりいいい! ゆっくりしないでにげるよおおおお! いたいよおおお!」 何しろ、まりさは大声で泣きながら逃げているのだ。 あれだけ小さな生き物が、よく全力疾走しながら大声を出せるものだ。 幻想郷の人間である俺は、それなりに妖怪との付き合いもある。 だが、あんな奇怪な存在などゆっくり以外にいない。 「おうちかえる! まりさはおうちかえるよ! かえって! おうちかえって! ゆっくりする! ゆっくりしたいよおおお! おとうさんとすーりすーりする! おかあさんとすーりすーりする! いもうととごはんさんむーしゃむーしゃする! ゆっくりするうう!」 一度も振り返らず、いっさんに巣に向かったまりさは実に愚かだった。 姿を隠しもせずに大声を出して、あれでは後を追ってきて下さいと言わんばかりだ。 森に入ってしばらくしてから、まりさは大きな木の根元で立ち止まると叫んだ。 「おかあさあああああん! おとうさああああん! まりさだよおおおお! かわいいまりさがかえってきたよおおおお!」 わざわざ出迎えを要求するとは、ずいぶんと甘ったれた子どもだ。 だが、こいつの尋常でない声の調子に驚いたのだろう。 「おちびちゃん? どうしたの? ゆっくりしてないね!」 「ゆっくりしていってね! おちびちゃんだよね! どうしたの?」 「おねえしゃんどうちたの? ゆっくちちてないにぇ!」 「ゆっ! おえねしゃんだ! おねえしゃんおかえりなちゃい!」 「どうちたんだじぇ? こわいいぬしゃんかとりしゃんにおいかけられたにょ?」 巣穴にかぶせてあった木の枝が取りのけられ、中からゆっくりの家族が姿を現した。 両親のまりさとれいむ。 それにこいつよりも体の小さな、れいむが二匹とまりさが一匹。 舌足らずな口調と体の大きさで、妹だとすぐ分かる。 「ゆええええええん! ゆえええええん! おかあさああああん! おとうさあああん! まりさっ! まりさあああああ!!」 まりさは家族の顔を見て安心したのか、一目散に両親の所に跳ねていった。 その側にくっつくや否や、まりさは大声でわんわんと泣き出す。 「おちびちゃんそのおかおどうしたのおおおお!? きずだらけだよおおおお!」 「おめめがかたっぽないよおおおお! それに……おちびちゃんのはがおれてるよおおおお!」 「ゆああああ! おねえしゃんいちゃいいちゃいだよおおお!」 「おねえしゃんいちゃいの? れいみゅがぺーろぺーろちてあげりゅにぇ!」 「まりしゃもぺーろぺーろしゅるんだじぇ! ぺーろぺーろ! ゆっくちなおっちぇにぇ!」 俺が隠れていることに、家族一同誰も気づいていない。 泣き沈むまりさを慰めようと、両親はまりさに優しくすりすりしている。 妹たちも同様だ。懸命に舌でぺろぺろとまりさを舐めて、何とかして落ち着けようとしている。 確かに、こいつが自慢するだけのことはある、仲のよい家族だ。 しばらくまりさは泣いてばかりだったが、ようやく安心したのかぐずるだけになってきた。 「ゆっ……ゆぐっ……こわかったよお……まりさすごくこわかったよおおお!」 「よしよし、もうだいじょうぶだよ。なにがあってもおとうさんがまもってあげるからね。こわいことなんてなにもないよ」 「そうだよ。れいむたちがついているから、おちびちゃんはあんしんしてね。ゆっくりあんしんしていいからね!」 「ゆぅ……ゆっくりありがとう、おとうさん、おかあさん……。まりさ、うれしいよお…………」 「さあ、おとうさんにおしえてね。どうしてそんなけがをしたの?」 「……ゆうぅぅ…………こわいにんげんさんが……にんげんさんが……おにいさんがまりさにひどいことしたんだよおおお! やめてっていったのに! やめてっておねがいしたのに! おにいさんがまりさのおめめをとっちゃったんだよおおお!!」 再びトラウマを想起したらしく、まりさは泣き始めた。 意外なことに、親のれいむとまりさはこんな事を言った。 「おちびちゃん! どうしておかあさんのいいつけをまもらなかったの! にんげんさんにちかづいちゃだめだっていったでしょ!」 「そうだよ! おとうさんもおしえたでしょ! にんげんさんはこわいよ! ゆっくりできなくされちゃうよっていったでしょ!」 「だって……だってえええええ! おいしそうなおかしがあったから! すごくおいしそうだったから! まりさだってえええ!!」 「ま……まさか…おちびちゃん? もしかして、それを…………」 「ゆええん! ゆわああああん! たべちゃったよおおお! たべたかったんだもん! おいしそうだったもん! まりさだってたべたかったんだもん! すごくおいしそうなおかしだったんだよ! まりさちょっとたべただけなのにいいい!!」 「どうしてそんなことするの! にんげんさんのたべものはたべちゃだめだってあれほどいったのにどうして! どうしてええ!」 「そんなことしたらにんげんさんおこってあたりまえだよおおおおお! おちびちゃん! なんでそんなことしたのおお!?」 俺は感心さえしていた。 この家族は本当にまともだ。 きちんと、人間にちかづいてはいけないと、人間の食べ物を食べてはいけないと両親は教えているのだ。 これなら、人間に駆除されることもなく、森でひっそりと生きていけるだろう。 それなのに、こいつはわざわざ人間の里まで下りてきて散歩なんてしていた。 長女だから甘やかされたのか。 あるいは、もともとこいつだけ特に馬鹿なのか。 どちらでもいい。 俺のプランは既に決まっていた。 「ゆわああああん! まりさゆっくりできなかった! ゆっくりしたかったのにゆっくりできなかったよおお!」 「よしよし、おちびちゃん。もうだいじょうぶだよ、だいじょうぶだからね。ここまでくれば、にんげんさんもおいかけてこないよ」 「いたかっただろうね。ゆっくりできなかっただろうね。さあ、きょうはもうゆっくりおやすみ。ぐっすりねむればゆっくりできるよ」 「れいみゅおねえしゃんにおくちゅりとってくるにぇ! ぱちゅりーおばしゃんのところまでいってくりゅよ!」 「まりしゃもついていくんだじぇ! まりしゃのおぼうちにおくちゅりをいれればだいじょうぶだじぇ!」 「れいみゅはおねえしゃんといっしょにおやしゅみーしてあげりゅよ! いっしょにおやしゅみしゅるとあっちゃかいよ!」 「ゆぅぅ……ありがとう、おとうさん、おかあさん、まりさ、れいむ。こわかったけどもうゆっくりできたよお…………」 一致団結して、傷ついた長女を慰めようとする家族。 実に、理想的な家族の形じゃないか。 両親に抱きしめられ、妹たちにすり寄られ、あれだけ泣いていたまりさに笑顔がようやく戻った。 「ゆっくり! まりさもうだいじょうぶだよ! いたいのもうへいきになってきたよ!」 片目と口内の痛みをこらえて、まりさが家族に笑いかけた時を見計らい、俺は一歩を踏み出した。 たった一歩で、俺はまりさと家族たちの前に立ちふさがる形になる。 「やあ、まりさ。確かに、素敵な両親と妹だね。君の言った通りだ」 俺の出現に、まりさはあんぐりと口を開けた。 その顔が、見る見るうちに恐怖で引きつる。 「ゆ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」 この声も駆除の時によく聞いた。 隠れ家を壊して中のゆっくりと対面した時、よくゆっくりは目と歯茎をむき出してこういう声を出す。 よほど驚き、しかも怖がっている時の声らしい。 顔といい声といい、はっきり言ってグロテスクだ。 「やだあああ! おにいさんやだああああ! こわいよおお! ゆっくりできないよおおお! ゆんやああ! ゆんやああああああ!!」 まりさは家族のど真ん中で、パニックに陥って泣き出した。 下半身から勢いよくしーしーが噴き出して、地面に水たまりを作る。 恐怖のあまり失禁したらしい。 「おとうさああん! こわいよおおお! おかあさあああん! このひとだよお! このひとがまりさのおめめを! おめめをおおおお!」 まりさは泣き叫びながら両親に助けを求める。 おおかた、恐い人間を両親によって追い払ってもらおうという魂胆だろう。 まりさに水を向けられた親のれいむとまりさは、俺の方を怯えた目で見た。 「にっ! にんげんさん! おこるのやめてね! ゆっくりしようね! ゆっくりしていってね!」 「そっ! そうだよ! いっしょにゆっくりしようね! おねがいだからおこらないで! おこらないでね!」 びくびくしながらも、親れいむと親まりさはまりさをかばう形で俺の足元に近づく。 しかし、俺が聞いたのは二匹の身の程知らずな主張ではなく、卑屈なお願いだった。 俺が二匹をにらむと、たちまち両親は体を縮める。 人間とゆっくりとの実力差がはっきり分かっているようだ。 「ゆえええん! ゆええええん! どうしてええ! このひとはまりさにいたいことしたよ! ひどいこといっぱいしたよお! いっぱいいたいことしたゆっくりできないわるいひとだよおお! わるいおにいさんだよおお! ゆえええええん!」 分かっていないのがここに一匹いる。 当てが外れてがっくりしたのだろう。まりさは泣きながら両親をけしかける。 きっと、この聡明でしっかりしたゆっくりたちは、子どもたちの脅威を何度も退けたに違いない。 さぞかし、まりさは両親の力に信頼を置いていたことだろう。 俺など、両親があっさりやっつけてくれるものと思っていたのか。 だが、現実は両親が俺に頭を下げ、機嫌をうかがう言葉を発するだけだ。 「まってね! ゆっくりまってね! おちびちゃんはびっくりしているだけなの! ほんとだよ! ゆっくりしんじてね!」 「おちびちゃんはほんとはとってもいいこなんだよ! ね!? ね!? にんげんさん! おこってないよね! ね!?」 親れいむと親まりさは、ひたすら俺にゴマをする。 何としてでも人間さんを怒らせてはいけない。 怒ったら、きっと自分たちは皆殺しになる。 その恐怖がありありと伝わってくる。 俺はしばらく、この後どうしようとかと考えていた。 足に何か柔らかいものがぶつかった。 顔を下に向けると、妹のチビまりさと目が合う。 「ゆっくちまつんだじぇ!」 「おぢびぢゃんどうじでえええ!?」 「おぢびぢゃんやべでええええ!?」 俺の足に体当たりしてふんぞり返るチビまりさの目は、まるで勇者様気取りだ。 どうやら、このチビまりさは両親の脇をすり抜けて俺に特攻したようだ。 一方、親れいむと親まりさは鎮静化しつつあるはずだった事態がぶち壊れたことで、顔をこわばらせて悲鳴を上げている。 さらに足に当たる二つの感触。 チビまりさに続いて、チビれいむが二匹俺の足に体当たりした。 「おにいしゃんだにぇ! おねえしゃんにいちゃいことをしたわりゅいにんげんしゃんは!」 「どうちてこんにゃことしゅりゅの!? おねえしゃんいちゃいいちゃいだよ! りかいできりゅ!?」 「にんげんしゃん! じぶんがわりゅいことちたってわかったのじぇ!? だったらはやくおねえしゃんにあやまるんだじぇ!」 横一列に並んだ、哀れなまでに勇ましい妹たちの戦列。 どのゆっくりの目も闘志に満ち、俺を敵として判断したのがよく分かる。 憎き姉の敵。 絶対に許すものか、という気構えさえ伝わってきた。 「どうちてもあやまらにゃいなら、れいみゅもおこりゅよ! ぷくーしゅるよ! ぷくーっっ!」 「れいみゅもぷくーしゅりゅよ! にんげんしゃん! れいみゅのぷくーではんせいしちぇにぇ! ぷくーっっ!」 「はやくあやまるんだじぇ! あやまらないともっときょわいめにあうんだじぇ! ……ゆゆぅ! もうまりしゃもおこったんだじぇ! まりしゃもぷくーするんだじぇ! おねえしゃんのいちゃいいちゃいをにんげんしゃんにもわからせりゅんだじぇ! ぷくーっっ!」 いっせいに三匹は、頬と体を風船のように膨らませる。 これも何度か見たことがある。 「おちびちゃんはおかあさんがまもるからね! ぷくーっ!」 とか言って、駆除しようとする人間に体を大きく見せるのだ。 ゆっくりの威嚇で間違いないだろう。 そう言えば、あのれいむはどうしただろうか。 確か、面倒だから回り込んで、先に子ゆっくりの方を袋に入れた気がする。 親ゆっくりは「やべでぐだざあい! おぢびぢゃんなんでず! まりざがのごじでぐれださいごのおぢびぢゃんなんでず!」と泣いていた。 つまり、まったくの無意味なのだ。 「………あ…………ああ………やめ……て……やめて……おちび……ちゃん…………」 「に……にんげん…さん………おちびちゃんを……おねがいだから……ゆるして……ね…………」 それが分かっているのは両親だけだ。 親れいむと親まりさは、もはや絶望さえ漂いだした目で俺に許しを請う。 後ろでは、ようやく泣き止んだまりさが潤んだ目で妹たちを見つめていた。 「まりさぁ……れいむぅ…………。まりさ……すごくうれしいよお…………」 姉のために健気に立ち向かう妹たちに、まりさは感動しているらしい。 ついさっき、自分が俺に半殺しにされたことなどもう忘れたのか。 「なあ、まりさ」 俺は足元で膨れた三匹を無視して、まりさに話しかける。 「この妹たち、俺がもらうよ」 「はやくあやまっちぇ! れいみゅがぷくーしちぇるのになじぇあやまらにゃいの! がまんちてにゃいではやぶぎゅびゅぶぶぅぅ!!」 俺がしたのは簡単なことだ。 ただ、一歩を踏み出しただけだ。 それだけで、一番端で膨れていたチビれいむが下駄の裏で潰れた。 「れ…れいみゅがあああああああ!!」 「ど…どうぢでええええええええ!!」 「いもうと……まりさの……れいむ……れいむがああああああああ!!」 隣のチビまりさとチビれいむ、そしてまりさは一撃で妹が潰れたショックで大声を上げる。 特にチビたちは、発狂したのかと思うくらい口を開けて泣き叫んでいる。 「あ……あ……おちびちゃん……が……」 「そん……な……おち……び…ちゃん…………」 親れいむと親まりさのショックは、子どもたちに比べて少ないようだ。 こうなることを、ある程度予期していたからだろう。 俺は足を上げた。 そこには、かろうじて無事な顔で呻き、ぐしゃぐしゃに潰れた下半身を動かす不気味な塊があった。 即死は免れたらしい。 チビれいむは生まれて初めて味わう苦痛が、同時にゆん生最後の体験であることが分かり、餡子混じりの涙を流していた。 「いぢゃいよぉ……おにゃかがいぢゃいよぉ………あんよしゃん……どうちでうごがにゃいの………… やじゃあ……れいみゅじにだくにゃいよぉ…………れいみゅ……れ……い…みゅ…………」 口から吐いた大量の餡子に埋もれるような形で、チビれいむは死んだ。 チビれいむは即死できなかったことを恨んだに違いない。 ごく短い間だったが、途方もない苦痛を味わってから死んだのだから。 まずは一匹だ。 俺はすぐに両手を伸ばし、動けないでいるチビまりさとチビれいむをつかんだ。 「やめちぇ! やめちぇにぇ! はなちちぇ! れいみゅをはなちてにぇ!」 「やめりゅんだじぇ! まりしゃをはやくはなしゅんだじぇ! はなちぇえええええ!」 手の中でじたばたともがくチビたち。 先程の勇ましさはどこへ行ったことやら。 俺が顔を近づけると、「「ゆっぴいっ!」」とそろって悲鳴を上げて失禁した。 手の中に生温かい液体の感触が伝う。 「やめちぇえ! おにいしゃん! れいみゅをはなちてくだしゃい! もうぷくーちまちぇん! ちまちぇんかりゃあああ!」 「まりしゃをたしゅけてくだしゃい! まりしゃはばきゃなゆっくちでしゅ! もうちましぇん! たしゅけちぇえええええ!」 俺は、徐々に握力を強めていった。 指に力を入れ、二匹を握り潰していく。 「ゆぶっ! ゆぶぶっ! ゆぶううううううう!」 「ゆぐっ! ゆぐうう! ゆぐううううううう!」 少しずつ、力を加えていく。 だんだんとチビまりさとチビれいむの体の形は、ボールから瓢箪に変わりつつあった。 懸命に力を入れて握力に抗おうとしているが、無駄な努力だ。 閉じた口からわずかながら餡子が垂れ始める頃になると、二匹は露骨に苦しみだした。 顔を左右にぶんぶんと振り回し、苦痛から逃れようと無駄な努力をする。 「ちゅっ! ちゅっ! ちゅぶれりゅうううううううううう!!」 「ちゅぶれりゅ! ちゅぶれりゅよおおおおおおおおおおお!!」 こんなところでも、ゆっくり特有の「自分の行動を声に出して表現する」習性は変わらない。 二匹は白目をむいて絶叫した。 ぱんぱんに膨れ上がった顔は真っ赤になり、ゆっくりとは思えない不気味な形に変形している。 「やべでぐだざい! やべでぐだざい! ぐるじんでまず! おぢびぢゃんぐるじがっでまず! もうやべでぐだざあい!」 「おねがいでず! おぢびぢゃんをごろざないでぐだざい! がわりにれいぶがじにまず! れいぶががわりにじにまずがら!」 「やめて! やめてよお! まりさのいもうとだよ! かわいいいもうとだよおお! はなして! はやくはなしてえええ!」 親れいむと親まりさは、顔を涙でべちゃべちゃに汚しながら、俺の足にすがりついている。 濁りきった声で、俺を止めようと必死だ。 それなのにまりさは、キンキンとかん高い声で離れた場所からわめくだけだ。 俺はさらに力を入れた。 「ぶぼぉっ!」 「ぶびゅっ!」 あっけなく、二匹の口とあにゃるから餡子がほとばしり出た。 グロテスクなお多福のような顔になったチビまりさとチビれいむの顔が、さらなる苦しみで歪む。 ここが限界だったようだ。 たちまち餡子が流れ出て小さくなっていく体を、俺は地面に落とした。 「おちびぢゃん! おちびぢゃあああん! へんじじでっ! へんじじでよおおおお!」 「おかあさんだよ! れいむおかあさんだよおおお! ゆっぐりじでえ! ゆっぐりじでえええ!」 「ゆ゙っ……びゅ……ぼっ………ぶっ……ぶぶっ…………」 「ごっ……びぇ………べっ……ゆ゙っ……ゆ゙ゆ゙っ…………」 すぐさま顔を近づける両親。 瓢箪の形になったまま戻らないチビたちは、もはや命が尽きる寸前だった。 何度も呼びかける親の声も聞こえないらしく、わずかに体を痙攣させて呻くだけだ。 それなのに、ぎょろりと飛び出しかけた目だけは血走って、今も終わらない苦痛を訴えている。 やがて呻き声は止まり、虚空をにらむ目がゆっくりと濁っていく。 チビまりさとチビれいむは、最後まで苦しみながら死んだのだ。 「まりさのかわいいいもうとおおおおお!! どうして! どうしてころしちゃうのお! まりさのいもうとなんだよ! かわいいいもうとなんだよ! ゆっくりしてたよ! どうして! どうしてこんなひどいことするのおおおお!!」 すすり泣く両親に何の遠慮も示さず、まりさは跳びはねながら俺を非難する。 よく見ると、まりさも目から涙を流していた。 これで、まりさのかわいい妹たちは全滅したことになる。 二度と仲良く家族で団らんはできないだろう。 もう、頬をすりつけることも、顔を舐めることもできない。 惨めに潰れたチビれいむと、変形しきったチビまりさとチビれいむの死体が、現実を突きつける。 「何を言ってるんだ、まりさ。あのチビたちは俺のものだよ。だから、俺がどう使おうと勝手じゃないか」 「ちがうよ! まりさのいもうとだよ! おとうさんとおかあさんがうんだまりさのかわいいいもうとなの! おにいさんのじゃないよ!」 「さっきまではね。でも、俺のものだって主張すればそうなるんだよ。生かそうが殺そうが、俺のものに文句を付けないでくれないか」 「やめてよ! やめてええ! まりさにいじわるしないで! おにいさんきらい! だいきらいだよ! どっかにいって! かえって!」 「君がお菓子を返してくれたらね。さあ、早く返して。返してくれたら全部元に戻してあげるから。ほら、早く返すんだ」
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作戦 「最終目的」 バロ様にお嫁にもらってもらう 「作戦目標」 バロ様と親しくなる 自分の想いを伝える 『作戦案』 まずは自己紹介、名前を名乗って会えて感激していることを伝える 上質のお酒を食料倉庫から(勝手に)持ち出しバロ様に飲んでもらう おつまみも作って持っていく(自己流おつまみよんた饅その他手製おつまみ各種) バロ様の隣に移動してお酌することでまず物理的に距離を縮める 女は度胸、照れと恥じらいは捨てて挑む。ただし慎みは忘れない 酒に酔って倒れる場合はバロ様の胸元に倒れこむよう努力する 前日に美容によいと聞く温泉に入って女を磨いておく 場が盛り上がってきたら告白、自分の想いを伝えられなければこのお見合いのの意味は無い 色仕掛けは効かない可能性があるのでこれに頼らない 言葉で伝えるのが困難な場合出せなかった恋文を渡し、想いを伝える 妾でもいいからもらってもらう、正妻の座にこだわらない 渋い漢(かくたさん)を墜とした実績を持つ坂下真砂姐さんから漢の墜とし方を聞いておく お見合いは戦いだ!押してダメなら押し倒せ! 引いてみて相手がよろめいたなら押し倒せ! とにかく押し倒せれば勝ちだ!(と思う…たぶん) (SS) 「決戦2日前」 深夜のよんた藩食糧倉庫に警報が鳴り響きました、あちこちを警備兵と警備用ヤドカニオウ子機が走り回り何かを懸命に追いかけていました。 食糧倉庫内でもその大騒ぎとは無縁の場所、数ある通気口の一つに人影がありました。 それは2日後にお見合いを控えているはずのフィサリスでした。 なぜ朝には嬉しさの余り自分の部屋を3周も転がった彼女がここにいるのでしょう?本来ならお見合いの準備に追われているはずです。 しかも彼女は胸から下は通気ダクトの中という不自然極まりない姿でした。 「あ、マスター、ここにいたヤドね」 その時近くから自分に呼びかける声が、その方向を見るとフィサリス専用小ヤドがこちらにやってくるところでした。 「ずいぶん早かったわね。で、首尾は?」 「上々ヤド、ところでマスター。何でそんな体勢ヤド?」 実は彼女はよんた藩国に潜むグルメハンターの一員だったのです、今夜は仲間と共に幻の食材があると聞いた食糧倉庫に盗みに入ったのです。 結果としてはそれは失敗し仲間は散り散りに逃げたのですがそれはまた別のお話。 「…マスター、まさか」 小ヤドが自分の主の不自然な体勢に何か思い当たったようです。 「ええそうよ、通気口に胸がつっかえて出られなくなったのよ!いいからさっさと抜くの手伝ってよ」 小ヤドは「何年前のギャグヤド」などとぼやきながらもてつだいました。なかなかデキたAIです。 「じゃあ目的のものを見して」 通気口から体を引き抜いたフィサリスが小ヤドの後部ヤド収納部を覗き込みました、どうやら彼女の目的は別のものにもあったようです。 「ウィスキーはシングルモルトの一級品、燻製もスモークチーズから全て注文通りね」 「言われたとおり全部最高級品ヤド…でもマスターこれって窃盗ヤド、犯罪ヤド」 そこには各種酒類、肉、野菜、燻製品が詰まっていました。 「それは違うわ、私はお城の厨房を預かっている身よ、そこで使う食材をちょっと私的な事に消費するだけよ」 「それは横領って言うヤド!もし百歩譲っても職権乱用ヤド!」 「職権の有効活用といいなさい、ほらグズグズしないで逃げるわよ!」 そう言うと1人と1機は駆け出しました。 「ああ、バロ様!愛のたっぷり籠ったおつまみをあなた様に!」 乙女の暴走の行き着く先はいずこ。 最高級のお酒が持ち出せてはしゃぐフィサリス ほろ酔いフィサ嬢(色気アップ作戦)
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上関原発を止めるために、皆で知恵を結集し、考えるサイト 上関原発問題が気になるあなたへ-何をすればいいのだろう?
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149 :名無しさん@ピンキー 2010/04/12(月) 15 49 54 ID MY52vm9v 以上です。 またムラムラ来る時までごきげんよう 151 :名無しさん@ピンキー 2010/04/12(月) 18 43 56 ID nrzENjGe お客様の中に、 149がムラムラして収まらなくなる呪詛を使える方はいらっしゃいませんか? 152 :呪詛 2010/04/13(火) 15 56 13 ID v69qf5WX あるショタをね、黒髪さらさらヘアで手足以外色白の、 それをこう裸で大股開かせてさ、膝と手首で天井から吊り下げるの。 そうなるとショタは何にもできないよね。 俺はそれをじっくりと視姦しながら、お尻の穴くんくんするの。 ショタは当然罵声を浴びせてくるよね、でも体中くんくんし続けるの。 腋とかさ、臍なんかもいい、 そうしたらよ、だんだんだんだん桜色のおちんちんが勃起してくるの。 そうなったらこっちのもの、指にローションたっぷりつけて窄まったお尻にねじこむの。 ショタは強気だから声は上げないよ、でもこっちも男だからね、前立腺がすごいのわかっちゃう。 で、指お腹側に曲げてさ、こうこりっこりこりっこり、って前立腺の筋をいじくるの。 激しくなんてしない、もうホント上のとおり、こりっこり、ってタイミング。 そしたら吊ったショタの腰が前後に揺れ始めるのね。 「気持ち言い?」って聞いても顔に唾吐くだけで答えないんだけど、息は荒いよ。 俺は気長ーにくりくりくりくり前立腺をこね回す。 手は疲れてくるけどショタの可愛い反応見ると疲れって吹っ飛ぶよね。 だから自分でもひどいなー、ってくらい延々と尻穴を嬲ってた。 で7分33秒した時ね、あ、ちゃんと計ってたんだよ? そん時についにショタが1回目射精したのね。 こう垂直に勃ったペニスの鈴口から真っ白い雫が溢れて幹を伝ってね、 すでに包皮の剥けたカリ首あたりに透明な先走りが絡み付いてたんだけど、 それを押しのけるぐらい真っ白な一筋なんだよ。 でその一筋が玉袋の下から零れ落ちたと思った瞬間ね、追う様に鈴口からどぐどぐっと濃いのが溢れ出すの。 ペニスが反り返るみたいに何度も跳ねて、濃いのが塊になって幹を雪崩れ落ちた。 ほら火山の土石流ってあるじゃない、あれの真っ白いのみたいな感じだね。 その濃いのが幹から玉袋・門渡りと伝って肛門に突き刺した手にまで流れて来るんだよ、興奮したなぁ。 それが1回目の射精。 153 :呪詛2 2010/04/13(火) 15 56 39 ID v69qf5WX ま当然そんなのじゃ終わらない。それから何度も同じ事繰り返して、何度も射精させた。 白濁は回を追うごとに薄くなって、4回目なんかはもう水9割のカルピスぐらいだったけど、 案外でるね、前立腺こりこりしてると。 でも6回目、正確には5,5回目くらいかなぁ、のちんまい射精の後、ショタが言うんだ。 「もお゛やべてぐだざい゛ッ……!!」って。 正直ちょびっとだけ怖かった。普段より低い、痰が絡んだみたいな声だったし。 俺もそろそろいいか、と思ったんだけど、涙と鼻水でぐずぐずになった顔見てると可愛くてさ、 もうちょっとだけ虐めちゃった。 ゆるゆるになった尻穴から指抜いて、萎びたペニスの根元にちょっとおクスリ注射して。 それでまたフル勃起になる。ショタはありえない復活に何か声上げてたね。 それからはショタを背後から抱きかかえて、可愛いペニスにオナホールを被せてシゴきまくり。 クスリの効果か、前立腺を炙るような熱さから解放されてすぐの「蒸らし」効果からか、 ショタはもう逝きまくった。 それまでお利口系だった顔から舌出して、涎垂らして、 「イグイグイグイグイグイグいぐぅっ!!!!!」って叫ぶんだよ? 場所は俺の部屋で、畳にショタの透明な射精液がぼたぼた落ちていく。 畳汚しちゃダメじゃない、って耳元で叱ったら、 ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、って何度も繰り返しながらやっぱり射精。 それから何時間かしてようやくショタを開放したら、完全に腰が抜けてた。 涙たっぷり浮かべて訴えてやる、とか言ってたけど、結局そうはならなかった。 それどころか翌月、真っ赤な顔で家の前に立ってるんだ。 聞けばあの体験以来、普通のオナニーじゃ物足りなくなっちゃったらしい。 「気が済んだら絶対訴えるよ、絶対だよ!」 ショタは俺に正面向いて抱かれながら、そんな事言うの。 「そうだね、終身刑だね」 俺がそう言って腸の奥を突き上げると、ショタは腰を仰け反らせて溜めてたのを盛大に射精する。 細かい飛沫になったそれは、2人の身体にまるでウィディングベールみたいに降り注ぐの。 それからさらに年月経った今は、そのショタ俺にめし作ってくれるの。 おでんとか手羽先をこんにゃくと一緒に炊いたのとか、俺こんにゃく入り料理好きで、 ついでだから裸エプロンのショタの後ろからあのオナホみたいにこんにゃくを使う。 でザーメンだらけのそれを食すの。 美味しいね、って俺が言うと、ショタの答えは決まってる。 「……ボクのじゃやだよ」 って、彼はいっつもそういうの。 おわり
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■ Emacs 全般で利用できる設定 【お知らせ】 2019/04/19 追記 helm を利用している場合、次の設定も行うと shell-mode をさらに便利に利用できます。 helm から comint の入力履歴を検索するための設定 helm で peco もどきのコマンドを使うための設定 2015/10/12 追記 Emacs-25系で、shell コマンドの挙動が変わった(other-window に shellバッファが表示されるようになった)ので、その対策を行いました。 【本題】 dired と連携して shell を利用している場合、tramp にによる ssh や docker の接続なども利用して複数の dired バッファを開き始めると、その dired バッファに対応する shell を選択したり cd したりするのが面倒になり、ついつい新規で shell を作成(C-u M-x shell)してしまいます。 以下は、開いているバッファの default-directory を確認し、同じロケーションの shellバッファ を探して表示した後、同じディレクトリに cd してしてくれる設定(shell-mode 用)です。 動作仕様は次のとおりです。 shellバッファ は other-window に表示します。 該当の shellバッファ がない場合は、新たに shellバッファ を作成し、表示します。 該当の shellバッファ がある場合は、そのバッファを表示し、必要であればコマンドを実行したバッファと同じディレクトリになるように cdコマンド を発行します。但し、フォアグラウンドプロセスが走っている shellバッファは、ポップアップの対象外とします。 同じロケーションの shellバッファ が複数ある場合には、一番最近に表示した shellバッファ を選択します。 shellバッファ 上でコマンドを発行した場合でかつ複数ウィンドウが表示されている場合には、その shellバッファ を表示しているウィンドウを削除します。 universal-argument(C-u)付でコマンドを発行した場合には、常に新しい shellバッファ を作成し、表示します。 以上の機能は、tramp による ssh や docker の接続先でも動作します。 (require cl-lib) (require shell) (require tramp) (setq shell-file-name "/bin/bash") ; Mingw版 Emacs から Cygwin の bash を使う場合は、"bash" とすること (setq shell-command-switch "-c") (setq explicit-shell-file-name shell-file-name) ;; other-window がなければ開き、その window に移動する ;; http //d.hatena.ne.jp/rubikitch/20100210/emacs (defun other-window-or-split () (interactive) (when (one-window-p) (split-window-sensibly)) (other-window 1)) ;; ロケーションが同じ shellバッファ を other-window に表示する (defun shell-popup () (interactive) (cl-labels ((shell-quote-argument-2 (arg) (replace-regexp-in-string "[\x00-\x09\x0b-\x2c\x3b-\x40\x5b-\x5e\x60\x7b-\x7d\x7f]" "\\\\\\ " arg)) (shell-other-window (buffer-name) (let ((current-directory default-directory)) (cond (( = emacs-version-number 25) (switch-to-buffer-other-window buffer-name) (shell buffer-name)) (t (other-window-or-split) (let ((default-directory current-directory)) (switch-to-buffer buffer-name) (shell buffer-name)))) (comint-goto-process-mark) (unless (string= (expand-file-name default-directory) (expand-file-name current-directory)) (comint-delete-input) (insert (concat "cd " (shell-quote-argument-2 (file-local-name current-directory)))) (comint-send-input) (sit-for 0)))) ;; process-mark のある行に comint-prompt-regexp にマッチする文字列があるかだけの簡易な判定をしている (shell-prompt-p (buffer-name) (save-excursion (set-buffer buffer-name) (comint-goto-process-mark) (forward-line 0) (looking-at comint-prompt-regexp)))) (if current-prefix-arg (shell-other-window (generate-new-buffer-name "*shell*")) (if (and (string-match "^\\*shell\\*" (buffer-name)) (not (one-window-p))) (delete-window) (cl-loop for buffer in (buffer-list) if (and (string-match "^\\*shell\\*" (buffer-name buffer)) (let ((current-directory (buffer-local-value default-directory buffer))) (or (and (not (tramp-tramp-file-p default-directory)) (not (tramp-tramp-file-p current-directory))) (tramp-equal-remote default-directory current-directory))) (or (not (get-buffer-process buffer)) (shell-prompt-p (buffer-name buffer)))) return (shell-other-window (buffer-name buffer)) finally return (shell-other-window (generate-new-buffer-name "*shell*"))))))) ;; キーバインドを設定する (global-set-key (kbd "C-c s") shell-popup) ;; 次は、必要であれば設定してください (global-set-key (kbd "C-x o") other-window-or-split) MinGW版 Emacs を利用している場合は、次の設定も検討ください。 tramp で開いた shellバッファ 内で cd した際、そのバッファの default-directory 変数が適切に再設定されない不具合?を改善するための設定です。 ただし、他への影響があるかもしれませんので、その点をご理解のうえ利用してください。 設定しない場合でも、cd の動作が不安定にはなりますが、shellバッファ を表示する機能に影響はありません。 (advice-add comint-substitute-in-file-name around (lambda (orig-fun rest args) (if (file-remote-p default-directory) (cl-letf (((symbol-function substitute-in-file-name) (symbol-function identity))) (apply orig-fun args)) (apply orig-fun args)))) 変更履歴 2013/09/17 このページを作成した。 2013/09/24 cd する際に、もし shell バッファに入力途中の文字列があれば、削除するように対策した。 2013/09/24 ローカル変数 default-directory の参照方法を変更した。 2013/10/08 Emacs-24系でも動作するように見直しを行った。 2013/10/13 shellバッファのカーソル位置がバッファの中間位置に移動してしまうことを対策した。 2013/10/21 フォアグラウンドプロセスが走っている shellバッファは、ポップアップしないようにした。 2013/11/13 cd するときにパスをシングルコーテーションで括っていたが、Linuxで動作しなかった(~ が展開されない)ので削除した。 2013/11/14 cd コマンドを発行するかどうかの判定が Linux で正しく行われいなかったのを対策した。 2014/11/05 cd する際のディレクトリに shell-quote-argument の処理を通すようにした。 2015/03/05 flet系 の関数の利用を labels系 の関数の利用に変更しました。 2015/03/05 cd のパラメータのクオート関数をローカルに定義して利用するようにした。 2015/09/13 advice を Emacs-24.4 以降の書式に見直した。 2015/10/12 Emacs-25系で、shell コマンドの挙動が変わったので、その対策を行った。 2018/03/27 shell-file-name 変数等の設定を追加した。 2018/06/19 Emacs-26系で動作しなかったので対応した。 2018/10/09 shell-popup 関数の設定内容を見直した。機能に変更は無し。
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承 〜起承承承転結 「起」を受けて、物語を発展・展開させる部分である。ここで主人公は様々な困難に直面し、葛藤を繰り返しながらも、有形無形の援助を受け、それらを乗り越えてゆく。いわば、物語の本編といってもいい。 童話作家のきむらゆういち氏は、「きむら式童話の作り方」の中で「物語の構成は起承承承転結という流れにするのが最も作りやすい」といっている。 わかりやすいのが桃太郎である。 桃太郎の旅立ち(起)犬を仲間に(承)サルを仲間に(承)キジを仲間に(承)鬼ヶ島で鬼退治(転結) 物語の性質上、転結の部分がひとくくりになっているが、この項の本題ではないのでこのままでよしとする。 この三つの「承」では、「繰り返し」が重要なキーワードとなっている。つまり、同じような出来事(誰かを仲間にする)が、中味を若干替えつつ起きる(犬→サル→キジ)というのがポイントとなる。 この「繰り返し」のテクニックは、手軽な割に強力で応用範囲も広く、非常に効果的で、様々な場面で用いることができる。 いくつか例を挙げてみよう。 パターン1 名探偵もの 起:主要人物が登場承:第1の殺人承:第2の殺人承:第3の殺人(転結):名探偵、犯人を見破り、犯人を捕まえる パターン2 戦闘アクションもの 起:ライバルの登場。「戦う理由」の提示承:ライバルに負ける(完敗)承:少し成長するも、やはりライバルに負ける承:さらに成長し、ライバルと互角の戦いを演じるも、痛み分け(転結):最後の戦いに勝利する パターン3 宝探しもの 起:宝の地図を見つけ、旅立つ承:船が嵐に襲われる承:船が海獣に襲われる承:船が海賊に襲われる(転結):宝島を発見。「宝」を手に入れる さて、この「繰り返し」の手法は、マンガ雑誌などで、長期間にわたって連載されている作品で多用されている。テレビアニメになった週刊マンガ雑誌の作品の大半で、「敵が現れる→敵を倒す→もっと強い敵が現れる……」という繰り返しが行われているのはご承知の通りである。 ただし、この手法は、「いずれ飽きられてしまう」という重大な欠陥を持っていることに留意しておきたい。この手法だけに頼って物語を引き延ばし続ければ、遅かれ早かれ、「×××(あなたの作品名)? 最初はおもしろかったんだけどね……」などといわれるようになるだろう。 きむら氏の「承承承」というのは、繰り返しの効果を最大限に利用しつつ、読み手に飽きることなく物語を読んでもらえるぎりぎりのラインである、といえるだろう。 →転 ←起承転結
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《虹の園を守る戦士 キュアホワイト》 キャラクターカード コスト4/緑/CP5000/RANK1 【プリキュア】 ボーナスアイコン RANK+1 このカードは、自分の「キュアブラック」がフロントにいる場合、 ランク+1を得る。 闇の力のしもべたちよ! ふたりはプリキュア/ふたりはプリキュアMax Heartで登場した緑色・【プリキュア】を持つキュアホワイト。 キュアブラックがフロントにいる場合、ランク+1を得るテキストを持つ。 条件次第でランク+1となるが、コストは1高いものの、常時RANK2かつ、コネクト持ちの《屈せぬ心 キュアホワイト》が存在してしまっている。 さらに、キュアブラックが存在していなければ、バニラに等しく安定感が低い。 しかしこちらは《雪城 ほのか》と同じコストである。 そのため、追加登場先としてはなかなか優秀な選択肢となる。 関連項目 キュアホワイト キュアブラック 収録 ふたりはプリキュア/ふたりはプリキュアMax Heart 01-058 R
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自らの意思に関わらず一方的に招集された異界の東京都で、これから殺し合いをしなければいけないらしい。 『魔法少女リップル』こと細波華乃がその事実を知覚した時、舌打ちしたくなる衝動なんかよりも先にまず芽生えた危惧は、友人である『魔法少女スノーホワイト』もまた自分と同じ境遇に陥っていないかということだった。 強大な敵によって命を奪われることへの恐れ故、だけではない。彼女の清く繊細な心を磨耗させるに至ってしまった、二年前のあの悲劇が繰り返されること。彼女の内側に残る傷がまた抉られてしまう未来を想像するのが、何より苦々しかった。 もしスノーホワイトもこの地にいるなら、せめて、彼女のそばにいることが先決だ。 そういうわけで、パートナーとして召喚されたライダーのサーヴァントと共に、かれこれ一週間以上の期間を「スノーホワイトが聖杯戦争の参加者として東京都内にいるか」の確認のために費やし、 「マスターの友達は巻き込まれていないんだろう? それだけは幸いだったね」 「……はい」 スノーホワイトが東京にいる可能性は低いと見て良いだろう、との結論をひとまず下すことにした。 聖杯戦争に関係するものと見られる事件や事故について、報道から噂話まで大小問わず情報を集めては現地へ向かい、時には敵意を露わにする他のサーヴァントとの交戦を強いられながら。 いずれの場面においても、スノーホワイトが関与したと思われる痕跡は全く発見されなかった。特に誰の指示がなくとも、有害な支配者や簒奪者の鎮圧のために活動することが想像に難くないスノーホワイトの影が、見当たらない。 つまり、そもそも彼女はここにいないということだろう。 徒労だとは思わない。やっと一本、緊張の糸を切れたのだ。その安堵感を胸に抱いた今、考えるべきは己の身の振り方だ。 午後の都市を二人乗りのバイクで駆けながら、華乃はライダーの背中に身を預けている。街のパトロールの時に相乗りさせてもらうのが箒だった頃のことを、なんとなく思い出したりした。あいつも確か、昔はバイク乗りだったか。 「どうする? 今日もこのまま、他に仲間になれそうな誰かを探すのを続けようか?」 「……その前に、聞きたいことが」 ライダーは、善良な気質の勇者である。 世界征服だったか人類滅亡だったかを企む悪の組織を壊滅させ、人々の自由と平和を守り抜いたという、わかりやすいくらいの正義のヒーロー。女の子の憧れが魔法少女なら、ライダーは男の子の憧れか。 そんなライダーは、聖杯戦争の場でも平和を享受する命や尊厳が身勝手に脅かされるのを良しとしない。 この戦争の必勝法とかいう儀式のためと言って、罪のない民間人を生贄にしようとしたサーヴァントと対峙したことがあった。数日前のことだ。 どうせいずれ消えゆく塵芥共だ、先のない人生を我のために捧げるのが有効活用というものだ。誰に咎められる筋合いもあるまい。 げらげらと嘲笑する醜悪なキャスターに対して、リップルとなった華乃は怒りを抱き、その感情はすぐに怯みへと変換された。許さん、と叫んだライダーが、自分以上に激怒していたから。 その後、キャスターはライダーに蹴り飛ばされ、刺し貫かれ、爆死した。 完全に戦意を喪失したマスターのことは、二人で見逃すことにした。不必要な殺生を好まないのは共通のようだ。似たような蛮行をしでかす相手でもない限り、ライダーの側から積極的に仕掛けることは無いのだろう。 「今日、夢を見ました」 「夢?」 聖杯に懸ける個人的な望みを特に持たないライダーと、穏便に生還することが第一目標の華乃。 殺し合いとしての聖杯戦争には積極的でない二人の方針が、「聖杯を求めない者達と協力し、異界の東京から脱出するためのルートを構築する」「人を無闇に傷付けることを悪びれない危険人物に対しては、武力によって抗う」という形で順当に纏まるまで、時間はかからなかった。 「たぶん、ライダーの昔の夢です」 「……そうか」 いかにもな好青年といった様子のライダーと共闘を続けることに、なんら不都合は生じていない。期間限定のパートナーとしての関係は確立されている。 とりあえず気が合う。とりあえず手を組める。とりあえず、目上なので敬語で話す。そんな無難極まる関係性でも、十分に事足りている。 良好な交友関係を手広く持っていると何かと便利であることは、よく知っている。しかし、親友と呼べるまでいちいち親交を深める必要があるかというと、また話は別である。 「……詳しく聞いても、大丈夫ですか?」 だから、ただの個人的な興味のみによって、華乃はライダーの過去を詮索しようとしている。気分を害して心理的な距離を置かれるリスクを承知の上で、ライダーへと尋ねる。 深く痛ましい傷を二度も負った貴方が、なぜ今でも笑えているのか。そんな問いを、これから投げ掛ける。 らしくもない真似に及ぶのは、自身の感傷が刺激されたからだろうか。わからない。この情動に、相応しい名前を決められない。 「停めてもいいかな? この話をするなら、ちゃんと落ち着ける場所の方が良さそうだ」 「……お願いします」 ライダーからの了承を得て、近場にあったはずの大きな公園を行き先に指定する。 陽はまだ沈まない、そんな頃合いでの話であった。 ◆ 『仮面ライダーBLACK』は、世界を滅亡の危機から救うために『シャドームーン』を抹殺した。 それから時を経て、『仮面ライダーBLACK RX』もまた『シャドームーン』を葬った。 『南光太郎』は、生涯において二度、『秋月信彦』との永遠の別れを経験したのだ。 ◆ 「そうさ。悲しみと怒りだって、俺を突き動かす感情だった」 ライダーが二度成し遂げた、悪の組織の討伐。 一度目と二度目の共通点を一つ挙げるなら、その過程でライダーが無二の親友を喪ったことで。 相違点を一つ挙げるなら、戦いを終え一人旅立ったライダーの背中が、孤独という影を背負っていたか否かということだ。 「今度はちゃんと救えたものがあったから、綺麗事を言える余裕があるだけじゃないかと言われたら……そうなのかもしれない」 世紀の因縁に決着をつけた後、たったひとりの戦いに疲れ果てて眠る――はずだったライダーは、しかしその後も生き延び続け、やがて別次元から襲来した未知の帝国との戦いへと身を投じることとなった。 新たな敵。新たな仲間。地獄から蘇り、また還った友。その果ての勝利。 待ち人のいない孤独の中でエンドマークを打ったライダーの物語に紡がれた続編は、喪失という痛みを更に刻みながらも、暖かな光差す方角を指し示す終わりを迎えたのであった。 「それでも……いいや。だから、マスター、俺は誓って言える。大事な人達にめぐり逢える明日が来て、俺は救われた。光が見えない中でも、闇雲にでも、生きていて良かったと言えるんだ」 ライダーは聖杯を求めない。奪われ潰えた友との青春を取り戻したいとは、望まない。 力を合わせて生き抜いた仲間達。正義の系譜を継いだ先達。二度目の死の間際、その勇敢さにかつての人柄を見出せたような気がした友。 溢れんばかりの思い出の熱を、ライダーは胸に抱きながら。 「俺は、世界を愛している。みんなが……信彦が生きた、この世界を」 そう語るライダーの顔は、夕陽に照らされ影を差しながら、尚、眩しく見えた気がした。 「……すごく、ヒーローって感じですね」 そんな言葉を絞り出し、熱がそろそろ抜けてきた干コーヒーの、最後の一口を飲み干した。 どこか似ているようで、やはり華乃とは異なる人生を歩んだ英雄への称賛だった。 「俺にとっては、当然のことをしてるだけだよ」 「当然だと言えるのが、凄いんです」 「それを言うなら、マスターだって人助けをいつも頑張ってるんだろう?」 「それはまあ、そうなんですけど……」 おそらくは昭和の頃から形作られたような『魔法少女』のパブリックイメージを、ライダーも持っているらしい。 残念ながら、華乃達の立場は必ずしもそうではないので、訂正しなければならない。気まずくなりすぎない程度に、簡潔に。 「詳しくは言わないですけど、魔法少女って、思ってたよりも嫌なことの方が多いんです」 「そうなのかい?」 「……友達が殺されました。それで、私と同じ魔法少女を殺しました。ただ、憎くて」 「……そうだったんだね。すまない」 「いえ」 自らの罪を伝えたのは、過去を打ち明けてくれたライダーへの礼儀のつもりでもあるのだと、横に振った首の動きで伝える。 法で裁けない身である華乃への糾弾が飛んできたりすることは、無かった。 「正しい魔法少女じゃなくなっても構わないと思って、自分の気持ちにケリをつけて」 ライダーのような正義感や責任感でもなんでもない、ただの私怨の清算を終えた。 やり遂げて燃え尽きて、引退者だとか舞台を降りた者だとか言われそうな身のまま、死んだように生き続けるのだと思っていた。癒えない傷を咎としたまま抱えて朽ちて、いずれこの世から去りゆく生き方。 「……結局今も、こんな風に魔法少女を続けています」 しかし、この灰燼は今も静かに燃えている。 「誰かがいるんだね?」 「はい……スノーホワイトを放っておけないので」 後悔する前に自分で選ぶ。そんな彼女の意志の土台は、時を経ても未だに消えない後悔だ。 彼女自身が納得できる選択を、認めることにした。かつて憧れた清廉さから遠ざかっていく彼女を、支えていこうと思った。 だから、華乃は魔法少女として、何よりもスノーホワイトの隣へと帰らなければならないのだ。 喪わないために。後悔をしないために。そう「選んだ」。 「……それに、悪いことばかりでもないんです」 「と言うと……?」 「あの日死んだ友達……トップスピードからいろいろ学んだおかげで、前よりは人付き合いできるようになりました」 これでもだいぶマシになったんです、今の私。なんて軽い自虐もまた、距離感を縮めるためには必要な手法であるとも、今は亡き彼女の態度から教わったことだ。 彼女を真似ているおかげで、最低限の世渡りができている。コミュニケーションが得意なわけでもないこんな自分が、善い人間であることを取り繕えている。あの日々の記憶は、今日の糧として昇華されている。 ああ、と。今更ながら納得する。 聖杯の力で亡き友を蘇らせたいとの望みが、不思議なほどに湧くことの無かった己への、納得だ。 「……やっぱり私は、今更だけど、正しい魔法少女に近くありたい」 この世の全てをぶっちぎる『トップスピード』を名乗った友の、十九歳という享年に追いついてしまった華乃は、今、願う。 過ぎ去った命への罪悪感を抱きながら、それでも、破廉恥な生き様だとしても。 今を生きる友に恥じない姿であれたらいいなと、細波華乃――魔法少女リップルは夢見るのだ。 「……魔法少女というのがどんなものなのか、本当のところ俺にはよくわからないけど」 「はい」 「マスターはきっと、良い魔法少女なんじゃないかな」 ぺこりと頭を下げて、礼を言った。ライダーの賛辞が妥当であるか、判別などつかないが。今は否定せず、受け止めておくことにした。 人との心理的な距離が近付くとはこういう感覚なのかもしれないなとぼんやり思いながら、ほっと浸る時間が、何秒か何分か続いていた。 「うん、今日のところは冷える前に一旦戻ろうか、マスター」 「……あ、うん」 口から零れた音を遅れて拾い、返答に敬語を失念してしまったと気付く。しまった。気が緩んでいた。 上目遣いにライダーの顔を覗くが、なんら気を悪くした様子は無かった。 これで良いのだろうか。話す口調を変えるタイミングというものは、あいつからも教わっていないのだ。 丁度良い機会に、おっかなびっくりの手探りでも試してみるべきだろうか。トップスピードでもスノーホワイトでもない、また新しい友人ということになるのかもしれないライダーを相手に。 【クラス】 ライダー 【真名】 南光太郎@仮面ライダーBLACK RX 【パラメーター】 筋力:B 耐久:B 敏捷:B 魔力:B 幸運:A 宝具:A++ (BLACK RX変身時) 【属性】 秩序・善 【クラススキル】 対魔力:A A以下の魔術は全てキャンセル。 事実上、現代の魔術師ではライダーに傷をつけられない。 騎乗:A 幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。 【保有スキル】 世紀王:- 五万年に一度、世界を統べる『創世王』の座を懸けて殺し合う運命を課せられた者。 暗黒秘密結社ゴルゴムとの戦いではなく、怪魔界からの侵略者クライシス帝国との戦いの物語を基にして召喚された南光太郎は、このスキルを保有していない。 太陽の子:A+ 『キングストーン』が太陽エネルギーを吸収することで、荘厳なる奇跡の進化を遂げた戦士。 ライダーの全身、そしてライダーが繰り出す攻撃の悉くは『太陽』の属性を有している。 また太陽光を浴びている間、戦闘力の一時的な強化や、ダメージや消費魔力の回復の促進といった恩恵を受けることができる。 変身:B ライダーは『キングストーン』の力を引き出すことで、光の王子「仮面ライダーBLACK RX」に変身する。 さらに別形態である悲しみの王子「ロボライダー」、怒りの王子「バイオライダー」への変身も可能。 ライダーの強みである、どんな危機でも乗り切る適応力を象徴するとも言えるスキル。 仕切り直し:C 戦闘から離脱する能力。 または、不利になった戦闘を初期状態へと戻す能力。 滅国の陽射:A クライシス帝国による地球侵略からの防衛戦は、五十億の民の上に君臨する支配体制に抗っての、帝国最強を自負する戦士達との争いであった。 ライダーが勝利を重ねた末に帝国を壊滅へと追いやった、その戦歴を象徴するスキル。 大規模な組織や国家の類を率いていた(またはそのような体制側に属していた)経歴を根拠として英霊となった者、または聖杯戦争内で現にそのような状況となっている者との戦闘に及ぶ際、ライダーは戦闘において有利な補正を得ることができる。 弱きを容易く捻り潰す圧制者が相手であるほど、カウンターとしてのライダーの脅威性は増強されていく。 【宝具】 『太陽の輝石(キングストーン)』 ランク:A++ 種別:対界宝具 レンジ:1~999 最大捕捉:9999人 人類が生まれるはるか昔から存在していた暗黒秘密結社ゴルゴムの崇めた、神器の一つ。 ライダーの力の源となる神秘の輝石。ライダーの莫大なパワーは、このキングストーンから供給されている。 太陽の光があるかぎり、この宝具は魔力を生み出し続ける永久機関である。 単純なエネルギー攻撃はもちろんのこと、相手の超能力を無効化・反射し、空間を遮る時空の壁すらも破壊する。 そして、キングストーンはそれ自体が高潔な意思を持ち、時にライダーへ神託のように語りかけることがある。 『再誕の青飛蝗(アクロバッター)』 ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~100 最大捕捉:2人 ライダーの『騎乗兵』としての象徴である二つの宝具の、一つ。 かつて破壊されたゴルゴムの神器『バトルホッパー』が、仮面ライダーBLACK RXの誕生に呼応して再生・進化した姿。 バッタを模したバイクであり、自我を持ったスーパーマシン。 キングストーンのエネルギーと共鳴した力の倍増や自己修復機能を備えている。 ライダーがロボライダー、バイオライダーの形態となっている場合、それぞれ『ロボイザー』、『マックジャバー』へと名と姿を変える。 『煌光の重装騎(ライドロン)』 ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~100 最大捕捉:4人 ライダーの『騎乗兵』としての象徴である二つの宝具の、もう一つ。 クライシス帝国で設計された装甲車。ゴルゴムのクジラ怪人が遺した生命のエキスによって完成・起動した。 アクロバッターと同じく自らの意思を持ち、呼びかけに応じていかなる場所へも駆け付ける。 地上だけでなく水上・水中・地中の走行、果ては異なる時空間へさえも突入可能。 車体全部の突起や体当たり攻撃による戦闘を行うこともできる。 【weapon】 自身の肉体、及び聖杖リボルケイン。 ロボライダー時、バイオライダー時にはまた別の武器を用いる。 【人物背景】 秘密結社ゴルゴム、そして侵略者クライシス帝国に立ち向かい、勝利した青年。 二つの大きな戦いの中で、南光太郎は大切な存在を何度も失った。 しかし、最後には掛け替えのない絆の思い出を胸に、輝ける明日へと駆け出したのであった。 【サーヴァントとしての願い】 自らの生涯にもう未練はない。 自由と平和、そして愛を守るために戦い続ける。 【マスター】 細波華乃(リップル)@魔法少女育成計画limited 【マスターとしての願い】 穏当な方法による、聖杯戦争からの生還。 【能力・技能】 忍者装束の魔法少女「リップル」に変身することができる。 過去の戦いで負った傷により、隻眼隻腕の姿である。 固有の能力は『手裏剣を投げれば百発百中だよ』。 投げたものを目標に命中させる。目標は投擲時に決定し、投げた後に変更することはできない。 リップルが投げるもの=手裏剣という扱いのため、実際は何を投げても効果が発動する。 【weapon】 手裏剣やクナイ、忍者刀など色々。 コスチューム付属の手裏剣は弾切れの心配不要。 【人物背景】 森の音楽家クラムベリーによって仕組まれた、試験という名の殺し合いを生き残った魔法少女。 現在は、同じく生き残りにして友人である魔法少女スノーホワイトを支えるため、「魔法の国」での出世を目指して活動中。 参戦時期は「limited」本編開始前。 【方針】 脱出ルートを確立するため、協力できそうな陣営を探す。 殺人はなるべく避けたいが、悪党との対決には容赦しない。
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第25話「家を守るは主婦の仕事」 家族を養うのは旦那の仕事、家を守るは妻の仕事とはいつの時代でも同じなのか。 自軍防衛のために曹丕の妻甄姫は息子と共に修羅場と化した長安に向かう。 手に持つ笛ではなく、DVで鍛えられたビンタと鋭さのある蹴りが彼女の武器。 両親に似ても似つかないゴツい息子曰く、「家内はもっと修羅場だし」 その頃、別の領土へ曹操目当てに攻め込んでいた貂蝉は挑発にブチギレていた。 【登録タグ】 ゲーム プレイ動画 おでんの人の貂蝉軍 笛のお姉さん 無双 おでんの人は教祖命 フルボッコ無双 チョロ松はもはや無双武将