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上条は自分の感性をそれなりに信じていた。 だから姫神と別れて学生寮に向かう途中の公園で、一人の少女を見たとき思わず立ち止まってしまった。 時刻は七時半。街灯なしでは道路を歩くのさえ危険なほど夜は深まっている。そんな中で少女は制服姿のまま、ずぶ濡れでベンチに 座っていた。こんな季節に水浴びはありえないだろうし、雨にうたれたなんて論外。となると——、 (強度(レベル)による迫害(いじめ)か……) 目の前の少女も学園都市において学生として生活しているからには能力を開発したのだろう。ここは時間割り(カリキュラム)で薬 を飲んだり、頭に電極をぶっ刺したりと外から見れば異様なことを平然と行っている。そのため全ての学生がなにかしら開発を施され 、その結果を背負って過ごしている。 しかし、それは能力の強度(レベル)に大きく依存する。 学園都市では暴力や学力ではなく能力の強度(レベル)が基本である。結局のところそういった個人の権力を示すものは、必然的に 上下関係を生み出してゆく。原因の全てが環境に依存しているとは思っていないが、当然のように自己の価値を否定されるのだ。周囲 からの反応は大きな一因となるだろう。 (くそっ、あれじゃ本当に風邪ひいちまうじゃねぇか!) 近くの自動販売機から暖かくて比較的飲みやすそうな『撫子ミルクティー』を買って少女に歩み寄る。少女は上条の気配に気づいて 顔をあげたので、持っていた缶を見せる。 「そんな格好じゃ風邪ひくだろ。これ、おごってやるから」 少女は手に持っている缶をじぃーっと睨みつけると、 「——ゴメン」 高めの透き通った声だ。 「ん?」 「おごってくれるんなら、アタシ冷たいのがいいかな。熱いの飲めないんだ」 少女の体は濡れて冷えていると思ったのだがどうやら取越し苦労だったようだ。しかし、飲めないとはどうゆうことだろう? 猫舌 なら冷めてから飲めばいいだけ。苦手とでも言えばいいはずだ。 (まぁ、言い間違いみたいなもんだろ。気にしても無駄かな) 缶を少女の隣、ベンチの上に置く。 「ったく、しかたねーな。ちょっと待っててくれよ?」 「うん」と頷いた少女を背にし、今度は『ヤシの実サイダー』を買ってベンチの隣に座る。 「ほら。これでいいか?」 「ありがと」 喜んで缶ジュースを受け取る少女を眺める。 遠くからではっきりと見えなかったのか、少女の制服はそこまで濡れているわけではなかった。少し湿っている程度と言えるかもし れない。短めに整えられた黒髪はしっとりとして街灯に鈍く輝き、風呂上りのような印象を受ける。しかし、少女の足元にはくっきり と大きな水溜りの跡が見受けられた。 (事情を聞くのは……やりすぎか? でもとりあえず家出かどうかは確認すっか。そうだったら、申し訳ないけど小萌先生にでも) 小萌先生はかなりの世話好きで、心理学を応用してまで家出少女を保護する人物。ぶつくさ言われそうだが信頼はできる。 「ね、アタシの顔なんかついてる?」 「うわぁあああっ!?」 無遠慮に見すぎたのか、少女が上条の顔を覗き込んできた。 「え? やっぱなんかついてるの? たはぁー……恥ずかしぃー」 「いや、そうゆうわけじゃ——」 そう言うと、お返しとばかりに立ち上がって上条を観察してくる。 「ふーん。……ほぇーっ……ん、……ふむふむ……」 (な、なんだよ。俺が見てたのそんなに嫌だったのか? そうなのか、そうなんだなそうなんですね!?) 上条は、今にもベンチの上で「ごめんなさい! でもワタクシ上条当麻に不謹慎な気持ちはありませんよ?」と土下座までして謝ろ うとしていた。潔い言えば聞こえはいいが、もはや情けない条件反射とも言える。 それを遮るように少女の顔がさらに近づいて、 「アタシ、因幡里数葉(いなばりかずは)ていうの」 「へ?」 いきなりの自己紹介だった。しかし上条を驚かせるのはこれだけではなかった。 「たはは、いきなりだったか……。んとね、キミが噂の上条当麻クンだね?」 このずぶ濡れ少女こと、因幡里数葉が言うには、一部で上条は有名らしい。 曰く、 「だってさぁ、夜にスキルアウトと追いかけっこしたり、街中で意味わかんない能力者と喧嘩してたり……果ては常盤台中学の超能力 者(レベル5)ともバチバチやってるじゃん? しかもかなりの入院経験者でお見舞いにはお菓子とおもちゃが大好きなシスターさん までやってくるらしいじゃない! こりゃ気になるってものよ。そう思わない?」 加えて、 「それに同じ学校の子は『ストライクゾーンは幼女から教師まで』とか『角を曲がれば女の子にぶつかってる』とか『立てたフラグは 三桁を超えた』とか言われてるみたいだし。あぁ……なんか『カミやん病は空気感染するんだにゃー』とか『カミジョー属性は鉄壁の 女すら攻略するんや』とか意味わかんないことも言われてるよね」 と言うことらしい。 (あの野郎ども俺がいないところでそんな評価を……。この憎しみどうしてやろうか? ここは思い切って、階段の踊り場にある窓か ら二人を投げっぱなしジャーマンスープレックスで池にぶち込んでやるってのがいいか) と上条がクラスにいる二人の馬鹿への報復を考えていると、 「それなのに……無能力者(レベル0)、だもんね。そりゃ有名になるでしょ」 上条は今の因幡里の言葉に少しだけ影を感じた。 自分自身が無能力者(レベル0)だからこそ感じるものなのか、それとも因幡里自身が与えるものか。どちらにせよいい気分になる ような気配ではない。 とりあえず当初の予定どおり家出かどうか聞こうとした上条だったが、 「んじゃ、アタシそろそろ行くよ! これでアタシにもフラグが立ったみたいだし、また会えるかもね?」 「なっ、おい! ちょっと待てって!」 たははっ、と——少し変な笑い方だが——笑いながら因幡里は駆け出していってしまった。 一人残された上条はぼんやりと照らされた公園の時計に目をやって不意に思った。 インデックスを忘れていた。 ただ今の時刻は午後八時すぎ。寮に着くにはもう三〇分ほどかかるだろう。 帰宅すればあの欲望丸出し腹ペコシスターがいることを考えると、今から頭がズキズキと痛む上条だった。
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主従してご主人様に媚を売る職業 支援の要 転職条件 BASS30LV+冒険者30LV + ヒーラー30LVの状態で アルカディアシティ中央広場のメイド・ハルカに話しかける。 副職取得の選択肢が出てバトラー/メイドを取得することが出来ます。 前提としてメイド・ハルカのクエスト 「一般(レベル30)執事とメイド・1」 「一般(レベル30)執事とメイド・2」 のクリアが必要。 執事とメイド・2はイベントMAPなので他の人は入れないでござる VITある程度あげて無いと辛いと思われ 育成例 ヒーラーメイン必須 ■F V型 純支援 初期ステをVIT10 INT10 FAI10 精霊をFAIに 初めにINTを12にしてマジシャンを取る 各マスタリMAXで魔法0うめえwwwwwwwww ある程度のVITを確保してからFAIカンストまで振る FAIカンストすればVITにでも振ればいいんじゃね ■V F型 支援壁役 初期ステSTR10 VIT10 FAI10 精霊をVITに 初めにSTRを12にしてソードマンを取る 盾修練MAXで物理1うめえwwwwwwww ここから純支援と同じ ■S V型 将来性はあるようでないようでわからない スキル振り ■取っておけば困らない物 主従の儀(1Lv) 取らない人いる訳がない 全ては主人の為に(5Lv) 覚えてるだけでご主人様の能力うp それでこそ我が主(5lv) ご主人様にちゅっちゅして能力大幅うp いつもお側に(1Lv) 同じMAPにいるご主人様の所までワープ 私がついてます(5~お好み) ご主人様のSPを回復、SP消費がでかいから調整するといいかもNE! ■あると便利かもしれない物 こんなこともあろうかと ヒールの回復量よりは劣るが範囲回復、専用アイテムが無いと使えない お守りします ご主人様のダメージを最大4000分を肩代わりする、自分のHPに自信がないときは使うなよ! 今のうちです 相手の移動を封じるだけ、ボスにも効果があるけど移動を封じるだけだからフルボッコされちゃう
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とある日、上条当麻が目にしたのは、どこかで見たことある制服を着た学園都市最強のレベル5――一方通行だった。 白い髪にぎらつく赤い瞳、そしてミニスカート(!?)を翻し、叫ぶ言葉は予想だにししないもので……。 それより少し前、入院中の打ち止めはシスターズの副産物である一方通行のクローンの存在を知る。 最高の失敗作と呼ばれる囚われの筈のクローン。 しかし、なぜか救出に出たシスターズ達を打ち倒し、クローンはオリジナルを超える為に学園都市に解き放たれた――。 .. 名無しだったクローンに名前が与えられた瞬間、彼女にフラグが……! とある名無しの複製品 「お前を倒せば俺はオリジナルを超えられるンだよォ!」
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あれから二年たった。 それぞれが元の日常に帰り、または新たな日常に踏み出し。 そして今。 あの戦いの中で絶対への進化を遂げた3人が、ある一室で真剣な顔で睨み合っている。 一人はかつて無能力者と呼ばれた少年。 一人はかつて真の名を忘れ去っていた最強。 一人は変わらぬ努力を続けてここまでたどり着いた少女。 絶対を冠する能力者達は、今、新たな戦場で互いにその手を振るい合っていた。 白い能力者が、米神を引きつらせながら右手を突き出す。 対する、それより若干年下に見える少女も米神を引きつらせながら、彼の右手に握られる3枚から、一枚を選ぶ。 引いたそれを確認して、舌打ち。本来なら青白い電光も走るのだが、何故かそれは発生しない。 最後に、残った黒髪のつんつん頭が、やけくそな笑みを浮かべながら、少女が念入りに混ぜた三枚から一枚抜き取った。 「はっは」 笑いながら少女と同様に念入りにシャッフルする黒髪の少年を睨み付け、白い能力者はもう我慢ならんとばかりに、 「おいこらてめェ!! いい加減この広域幻想殺し解きやがれ!!」 「いい加減泥沼なのよ!! ジョーカー巡り巡ってるのこれで何週目か判る!? 20回超えてるわよ20階!!」 「うっせえよ! そもそも美琴がこの勝負に常盤台給食セット(定価4万円)賭けるから、こちとら財布の厳しい身としては形振り構ってらんねーっつの!!」 「だったら俺ァ関係ねェだろーが!!」 「てめーだって勝ったら勝ったで喜々として奢らせるだろーがしかも二人分!! たまには上条さんの不幸を体感してみろってんだ!!」 レベル6に認定された3人の少年少女は、記憶術の授業中はやることが無いため、ババ抜きに興じていた。 逆に言えば、ババ抜きで能力の無駄遣いができるくらい、平和だった。 こんな風景が見れる最終巻だといいな、とちょっと思った。それだけ。
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学園都市のとある学区のとある病院。 そこに来る患者には不思議な人間が多かった。 例をあげれば、一万人を殺した『一方通行』だとか。 とある少女のクローン、『打ち止め』だとか。 ある日その病院に『常連』がやって来る。 そこに入院している一〇〇三二号という少女はその『常連』である少年に会いに行く。 「またですか、とミサカは溜息をつきます」 「な、なんだよっ」 「それで今度はどこの美少女を助けてきたのですか、とミサカは確認をとります」 「それ決定事項!?」 上条当麻というまたも怪我をして運びこまれたのである。 その少年から御坂妹と呼ばれるミサカ一〇〇三二号は無表情ながら呆れた様子。 「今回は違うっ!今日はだれかが捨てた缶コーヒーをふんで階段下まで転げ落ちただけだっ!」 そうなのだが、しかし。 「ミサカ二〇〇〇一号から『あの人に助けてもらった~ってミサカはミサカは~』 という報告が届いています、とミサカは真実を告げます」 「うっ!?」 缶コーヒーを踏んでもまだ体勢は立て直せそうだったのだ。 すぐそばで打ち止めが同じく転びそうでなければ。 それで打ち止めの手を引っ張って階段とは反対方向に倒し。 代わりに自分が落ちたと。 「まったく、あなたは雑草のようにどこでも根を張るのですね、という本音をかみ殺しつつ、ミサカは笑顔でごまかしました」 「なにもごまかせてないだろ、それっ!」 騒ぐ少年を見つめ、御坂妹は溜息をつく。 (どうして誰も彼もこの少年を好きなのでしょうか、とミサカは――) この少年は誰の心にだって根を張ってしまう。まるで雑草のように。 ミサカの敵は、多い。 病院は騒ぎ声が絶えない。 カエル顔の医者は苦笑して人を助け続ける。
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憂鬱だ。 残暑の厳しい陽光と温風に晒されながら、白井黒子は溜め息をついた。 時は大覇星祭二日目。前提が体育の延長戦とはいえ、超能力者同士が戦うSFアクション的な行事である為か来場者数も 入院者数も犯罪者数も急増する時期である。それ故、警備員(アンチスキル)や風紀委員(ジャッジメント)が忙しくなる時期で もある。初日こそさほど大きな事件は無かったものの、二日目以降になると大胆な行動に出る者が多くなるので、今頃警備員 (アンチスキル)や風紀委員(ジャッジメント)はてんてこ舞いのはずだ。 そんな戦乱真っ只中のこの時期に、白井は公園のベンチにいた。隣に同胞の初春飾利を連れて。 「白井さん、何独りで慨嘆してるんですか?車椅子取れてもまだ行動の自由を許されないことに、ですか?それとも愛しの御 坂嬢に会いに行けないことに、ですか?それとも―――」 「いい加減に黙りやがらないとワタクシの鉄矢があなたの喉にパイルパンクですわよコンチクショウ」 「なんですかー。いいじゃないですかー。まだ話し始めてから五分しか経ってないじゃないですかー。ですかですかーっ」 「……ついでに頭にも打っときます?」 「うひゃー、空間移動(テレポート)能力者は怖いですねー。……って、本当に鉄矢取り出してマジでヤル気ですかさいですか 本当にごめんなさいいいいいい!」 脅しで出した金属矢に本気で狼狽える初春に白井は再度、溜め息をついた。 傷が治ってきた白井は漸く車椅子から開放され、リハビリ兼気分転換で公園に来たのだが、途中でたまたま会った初春に 捕まったのだ。正直に仕事(くに)に帰(けえ)れ、と言ったが彼女は午前中は非番らしく、白井とも話がしたかったらしいので、 暇つぶしに聞いてやることにしたのだが……。 「―――そ、それでですね、白井さん。例のあのパフェ屋さんがまた新作を出したらしくて、食べに行ったらそれがもうものすご く美味しくて美味しくて。しかも当日限りの限定品だったので得しちゃいましたよー。白井さんの分も買っておきたかったのです けど私ので売り切れて―――」 さっきからずっとこうである。どうも『会話』がしたいのではなく『土産話』をしたかっただけのようだ。白井としては風紀委員の 仕事に関する話とか、もっとマシな『会話』がしたかったのだが、目の前の少女はそんな話をしてくる気配は微塵も感じられな い。しかも甘党の白井を差し置いて人気パフェ店の限定メニューの話をしている。 憂鬱だ、と白井は再三溜め息をついた。 周囲の喧騒が遠くのもののように聞こえる。 「あっ、そうそう白井さん。もうそろそろ常盤台中学でフォークダンスが始まる時間ですね」 と、急に初春が話を振ってきた。白井はうんざりしたような顔を向けて、 「……、それがどうかしたんですの?」 「あ、気付いてませんね」初春は意地悪そうに笑いながら、「それには御坂嬢も参加するらしいですよ。なんでも相手は自分自 身で選んでいいとか。御坂嬢は一体誰と一緒に舞踏するんでしょう?目当ての男性はもう見つけているんでしょうかねー?そ のまま二人でいい感じになっちゃったり?」 明らかに挑発しているような言い草。 しかしこれは乗ったら負け、と感じた白井は冷静に、 「知りませんの、そんなこと。風紀委員に入っている以上、どうせ参加できませんし、お姉様が誰と踊っていようが、それはお 姉様がお決めになったお相手。そこに手出し口出しするほど、わたくしは幼稚じゃありませんの。まあ、あの殿方なら話は別 ですけど―――」 言いかけて、白井黒子は気付いた。気付いてしまった。 お姉様なら。御坂美琴なら、必ず選ぶだろう。借り物競争のときもそうだった。数ある第一種目に参加した高校生の中から “彼だけ”を選んだ彼女なら、今回もきっと。 あの殿方。あの殿方、あの殿方、あの殿方あの殿方あの殿方あの殿方あの殿方―――――― 白井の脳裏にとある少年の顔が浮かんだ瞬間、 がたん!と勢い良くベンチから立ち上がった。 「!!し、白井さん!?」 予想だにしなかった白井の行動に初春飾利はびくうっ!と喫驚した。辺りの人々からも視線が集まる。 一方、白井は気にもせず、 「……うふ。うふふふふふふふふふ。若造が。調子に乗って。あンの若造がぁああああああああああああああああああ!!」 大喝一声、彼女の姿が虚空へと消えた。周囲から驚きの声が上がる。 「えっ?ちょ、白井さんー!?もう能力使っていいんですかー!?ってか待ってくださいよー!!」 初春の声も最早虚空へ響くだけ。おそらく白井は八十メートル先まで空間移動しているだろう。 「ああもう、面倒くさいんですからー!」 しかたなく初春は白井が向かったと思われる方向―――常盤台中学へと向かって走り出した。
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『君が変わっても~いつか君が変わるとしても~』 「ねえ、ちょっと私の話を聞いてくれない?」 「う~ん……今日は良い天気だな」 「朝、目が覚めて……気づいたら体が小さくなってたの」 「昨日が雨だったから空は青くて綺麗だし」 「黒子がすぐに目を覚まして抱きつかれて――まあ、その瞬間に電撃浴びせたから 名前通りに真っ黒に焼いておいたけど」 「やべぇ、授業中に寝ちまいそうだな……」 「10万ボルトしか流せなかったのよね。やっぱり知識と経験があっても 体が変化してる分、能力の制御の仕方が違うのよね」 「居眠りしてまたまた補習なんてパターンは避けたいしな…… しばらくトラブルに巻き込まれてないとはいえ、どうなるか分からないから 普通に授業を受けられるときはちゃんと受けないと進級もできなくなるくらい 単位がやばくて大変なのが上条さんの現状なのですよ」 「あんた、気づいてるんだったらこっち向いて話してくれない?」 「うう……せっかくの晴天が早くも曇りのち雨になりそうで 当然ながら上条さんは傘など一本も持っていないのです」 「ついでに雷注意報も出てるわよ」 「――おい、ちゃんと制御できないんだろ。無闇に使うなよ……ほれ」 「ちょ…何すんのよ!な、撫でるなー!」 「癖っ毛を直してやったんだよ……って直ってねえ」 「――――馬鹿、ちゃんと直してよ。……わわ、クシャクシャにしないで!」 「おお、本当に小さいな。十歳ぐらいか? あの子にそっくり――というか、あっちがそっくりなのか。 その服はどうしたんだ?」 「黒子から借りたのよ。勝手にだけど。幸い変な服とか下着はなかったわ」 「?……でも、おまえが白井の服の着ることなんて(サイズ的に)まずないから 返したら永久保存するんじゃないか?こう、家宝にして崇めるとか」 「うう――本当にやりそうだから怖いわね。焼却処分するわけにもいかないし。 余計な問題が一つ増えたわね」 「それとさ」 「何よ」 「途中まで歩かせて悪かったけど、靴が合わないんだったら先に買った方がいいだろ」 「え……あ、うん。そうね」 「まだどこも店が開いてないから、それまでどっかで休むか」 「――ってあんた、単位がやばいんじゃなかったの?」 「何言ってんだよ。それどころじゃないだろ? 俺が右手で触っても元に戻らなかったんだ。 どうなるか分からないし……とりあえず、いつもの病院に行ってみるか」 「……ありがと」 「じゃあ、行きますか。ほら」 「べ、別に手を握る必要ないんじゃ……」 「どこかの腹ペコシスターさんみたいに迷子なられちゃ困るしな。 あと歩くのが早かったら早めに言えよ。体力も落ちてるんだろ?」 「うげェ……」 「羨ましいなぁってミサカはミサカは瞳を輝かせてあなたに期待したり」 「おまえ、今自分がガキじゃねェって状況が分かってんだよなァ?」 「分かってるよってミサカはみ…えっと」 「無理して他の妹達の真似なんざしなくてもいいだろォ」 「そ、そうかなってミサカはミサカは子供っぽくないかなって不安だったり」 「何馬鹿なこと言ってンだよォ。さっさと行くぞ、――――」 「……うん!ってミサカはミサカはあなたと手を繋いで歩けてとても嬉しかったり」 「くっつくな!歩き辛ェだろ、このクソ……」 「何かなってミサカはミサカはあなたの瞳を覗き込んでみたり」 「何でもねェよ。前見て歩きやがれ」 「♪」 「――見慣れない靴なのですが、これはもしや……お姉様の物ですの?」 「ん?そうよ。ちょっとした記念ってことで残しておいてあるの」 「この頃からゲコ太が――にしてはほとんど汚れていませんわ。 新品同様……よほど大切な物でしたの?」 「そうね。これは魔法が解けても残ってる――『ガラスの靴』みたいなものだから」 (今はもう――二度と履けない靴だけどね) 「ところでお姉様。私の古着は何処へ?」 「そうそう……それだけど、知り合いが欲しがってて――」 「はあ、つまり。戻ってこないのですね」 「代わりにだけど、今度ショッピング行くときに新しい服買ってあげるわよ」 「――そ、それはつまり……お姉様からのプレゼント、と解釈してよろしいんですの!?」 「え?」 「嬉しいですわ……ああ、どうしましょう。永久保存して家宝にしたいくらいですわ!!」 完。
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——十二月。 世間一般では年末に向けて何かと忙しくなり、かつ、20日を過ぎればあるイベントに向けて大いに盛り上がる次期である。 超能力開発を目的として作られた学園都市においてもそれは同様である。 色とりどりのイルミネーションが煌びやかに町並みを飾って浮かれた雰囲気になり、道を行きかうのもその多くがカップルで 連れ立っている姿が多い。 そんな賑やかな喧騒の中で、不機嫌な様子で歩く学生の姿があった。 「まったく、クリスマスだのイブだのと浮かれまくって。私たち学生の本分はこんな浮かれているべきものでは無いでしょうがっ! どいつもこいつも色恋に走りまくりやがってっ!!」 ぶつぶつと呟きながら苛立ちもあらわに大股でずんずんと進んでいくのは吹寄制理。 面倒見がよく、その委員長気質なところや、ある男子生徒に対する行動からも「頼れる姉御」「吹寄姐さん」「対上条最終兵器」 などと呼ばれている。 彼女がいきり立っているのには訳がある。 冬休みに入り、常日頃から頭を痛ませる原因となっている男子生徒とも顔を合わせる機会が減り、少しのんびりできると思って いたのにばったり会ったのだ。 しかも、会うなりいきなりそいつは「こんな時期なのに何の出会いも無い上条さんに優しい手を差し伸べてください!」などと抜 かして迫ってきたのだ。 当然、そんなあほなことをいう頭に教育的指導(なんだか周りを見ていて感じていた自分のいらいら含む)の渾身のヘッドバット を喰らわせたやったわけだが。 というか、自分だってそんな出会いなんかあるわけないのだ。 なまじ相手が普段の言動に自覚の無い男だったので余計に腹が立ったのだ。 そんなことがあったので街の様子が一層気に障ってくる。 はぁ、と溜息をついて上を見上げる。 耳から入ってくる音楽は無理だが、こうしていればとりあえずカップル連れの姿を見ないですむ。 すると、吹寄はあることに気がついた。 「あ、月が大きい……」 見れば、どうやらもうすぐ満月になりそうな様子である。 後ろを通り過ぎるカップルの会話を漏れ聞くところによると、どうやら24日に満月を迎えるらしい。 よく言われるホワイトなんとやらにならなくても、月を眺めてロマンチックに〜などという言葉は右から左へ聞き流すが、月を眺め るのも悪くは無いかも、などと思った。 ちょうど、寮の部屋にはこの間通販で買ったある品物がその他大勢と一緒に置いてある。 先だっての流星群が観測されると話題になったころ、夜星空をずっと見上げていても首が疲れず肩がこらないとの広告に惹かれ て買ってしまったその名も『見上げるクン』、首に巻く保温性の覆いと頭を支える補助棒がついているものである。 肩が疲れずしかもアルファ波が出るとのことで勢いで勝ったはいいが、あいにくと予定の日は雨で使う機会が無かったのである。 「ま、使わずに置いとくのもなんだしね……」 そうと決まれば話は早い。早速寮に帰って準備をしようとさらに足を速める吹寄だが、さらにあることに気が付いた。 実はその商品、二個セットで買うとさらにお買い得ということで二個注文してしまったのだ。 届いた商品を見て自分のポカミスに恥ずかしくなったものだが、さて、どうするか。 実を言えば周りが浮かれている最中に一人寂しく月を見るというのもなんだかなぁ、というものだ。 いやいや、別に浮かれようなど気にするわけではないのだが、何となく『独り』じゃない『一人』でいるのもしゃくに障る。 となれば誰かを誘ってみるのもいいかもしれない。 「うーん……」 だが、生憎とクラスメイトの女生徒たちはそれぞれ予定があるらしいので、今から自分の思いつきに誘うのも気が引ける。しかし このまま一人で見る訳にもいかない。どうするか。 などと頭を悩ませていた時、ふとある男子生徒の姿が浮かんだ。 「なっ、何でこんなときにあいつのことを思い出さないといけないのよ!」 とひとしきり呟いていたが、他にいい案も思い浮かばず、さりとて、このままあの男を誘うというのも何だか気分が良くない。 「まぁ、あいつも出会いが無いとか騒いでいたし。ふむ、どうしようかしらね……」 すると、ちょうどそこに別のカップルの声が聞こえてきた。 『せっかくの満月が曇りだったらどうする〜』 甘々な会話はこの際置いておいて、その内容からヒントをもらうことにする。 「そうね、賭けてみることにしますか。その日がちょうど晴れてたら、あいつを誘ってみようかしらね。それなら面白そうだし」 こうして、吹寄の予定が一つ増えた。 現金なもので、そうなると今までつまらなかった周りの景色も別に気に障らなくなった。 それどころか、その日が早く来ないかと思うほどである。 一つの懸案事項が解決されて、すっかり気を良くした吹寄は足取りも軽く帰宅していった。 さてさて、彼女の賭けがどうなったのかは、一人の乙女の秘密である。
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トントントントン グツグツグツグツ 「ん、もう朝かー」 「起きましたね、おはようございます。朝はお米でよかったですか?とミサカはもう作っちゃったけど確認を取ります」 「あー、ご飯の方がパンより好き―ッ!? ・・・じゃなくて御坂妹!?」 「はい。 アナタのスイートエンジェルミサカ10032号こと御坂妹です。」 朝起きたら上条当麻の御坂美琴のクローンである[妹達](シスターズ)の一人、御坂妹が居た。 彼女はキッチンから顔だけ出すと布団から驚いた顔を向けてくる上条をよそに部屋の中央に置かれたちゃぶ台の上へと おそらく彼女が作ったものであろう朝食をテキパキと運んだ。 メニューはご飯に味噌汁、あと焼き魚、それにたくわん。 「あ、あのこれって?」 「全てミサカが作りました、ご飯は炊飯ジャーにセットされていたので実際に調理したのは味噌汁とお魚だけです。 漬物は冷蔵庫にあったので勝手に使わせてもらいました、とミサカは手料理という武器を使って家庭的なところをアピールしてみます」 ほかほかのご飯からは湯気が出ていて、お味噌汁からは食欲をそそるいい匂いが漂ってくる、加えて焼き魚は絶妙な焼き加減であり、 朝食としての点数は上条当麻的に80点をマークした。 しかもドッキリ効果もあいまって+20点合わせて100点だ。 「俺たしか寝る前に鍵かけたよなぁ、御坂妹お前、どうやって入ったんだ?」 すると御坂妹はオレンジ色のエプロンの下に着ていたいつもの常盤台中学の制服のスカートからあるものを取り出して上条へと見せた。 ヒヨコのマスコットがついた鍵? 鍵自体はなんだか上条にも見覚えがある。 「合鍵で堂々とお邪魔しました。 まだアナタはそのとき就寝中でしたのでミサカの朝食も兼ねて2人分の朝食を作成したというわけです」 「あ、合鍵ィ!? そんなもの渡した覚えがないんですが―」 「気のせいではありませんか?とミサカは更なる追求を逃れるために甲斐甲斐しくアナタのお茶碗に山盛りのご飯をよそってみます」 「え、あ、サンキュ。 はむ、いや、えっとそのうまいなご飯、焼き魚なんて絶品だぞ、えっと何の話だっけ?あれ?」 上条に背を向けて見えないところで御坂妹は小さくガッツポーズをしていた。 上条はといえば起きたら朝食ができている幸せにすっかり呑み込まれていて御坂妹がなんで合鍵を持っているのかなんてことは 焼き魚を食べている間にどっかにいってしまった。 それからしばらく上条は御坂妹が用意した朝食を堪能し最後にずずーと味噌汁を飲み箸を置いた。 「ふー食った食った。 ご馳走様でしたっとな、いやぁー御坂妹は料理できるんだな、意外って言えば意外だったぜ」 すっかり満腹になって機嫌もよくなった上条はだらしなくゴロンと横になると幸せそうな顔で脱力した。 「満足してもらえたようでミサカとしても満足です。 お望みならば毎日でも作りに来ますよ、とミサカはさりげなくアタックしてみます」 「毎日・・・それは非常に魅力的な言葉ですなぁ、御坂妹はいい嫁さんになれるぞと思うぞー」 「アナタの発言はたまにどこまで本気なのかわかりませんね、その発言が100%本気なのならミサカには異存は無いのですが この場合は多分社交辞令で言っていると思うので素直にありがとうございますと謙遜しつつ答えます」 そして御坂妹は上条が使った食器を持って再びキッチンへと姿を消した。 どうやら洗い物までしてくれるようだ。 あまりにも至れり尽くせりな環境に上条当麻はとても幸せだった。
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1-2 すーはー、すーはー 大きく深呼吸して肺に目いっぱい空気を取り込んでゆっくりと吐く。 もう一度繰り返して静かに目を閉じる。 「あー、その、これまあ一応だけどこれでも食べなさいよ・・・違う、駄目だこれじゃ義理っぽい」 少し考えもう一度 「き、昨日作ったんだけどよ、よかったら・・・・駄目だ、なんかキャラが違うし」 もう一度 「はい、あーんして・・・・・駄目、これは私の方が恥ずかしい」 突然、わしゃーわしゃーと自分の頭をかき乱して御坂美琴は叫んだ。 「あーもう!!、なんでチョコぐらいでこんなに悩まないといけないのー!!」 ふと自分の腕時計で時間を確認する、そう、いつもコレぐらいの時間にアイツはここを通る(事が多い) 意識したらドキドキと心臓が暴れだしてきた気がする、もしかして顔が赤くなってるのだろうかやたらと暑く感じる。 「と、とりあえずチョコを・・・・あれ?」 ごそごそ、スカスカ、ごそごそ、すかすか 「おっかしいわね、学校出たときは確かにあったのに?メッセージカードは残ってるのに」 薄っぺらい学生鞄の中には教科書の類はまったく入っておらず、いくつかの小物と青色のメッセージカードだけが入っていた。 スタタタタタタタタ!! バビュン! そんな美琴の視界の端を見覚えのあるツンツン頭が通り過ぎた。 「ちょっと!!」 なにか聞こえるけど現在絶賛逃亡中の上条当麻にそんな余裕は無い。せいぜいが 「あん?」 なんて言う気の無い返事をするのがせいぜいだ。 だがその相手はトップスピードで走る上条に並走してきた。 「って御坂!? いま急いでんだよ!」 「人が声かけてんだから立ち止まりなさいよ、少しは!! ってなんでそんなに急いでんのよ!?」 「あーもうこれだ、これ」 上条は右手に持った3つの紙袋を美琴に見せたがそれを見た少女の髪がなぜか帯電しだす。 「なんだってアンタが『ソレ』持ってんのよ!? あとほかの2つも見るからにバレンタインチョコって感じだし!!」 「どうみてもバレンタインチョコだっての!?べつにいいだろそんなの!!」 「よくないわよ!!何で私が渡すはずだった『ソレ』をアンタが既に持ってんのよ!!」 はい? 上条の頭に疑問符がいっぱい飛び交う。 上条の持っているモノは全部で3つの紙袋、姫神からもらった赤い小さな紙袋と吹寄制理からもらった通販っぽいパッケージのチョコ あとはこの事件の発端のピンク色のリボンでラッピングされた紙袋 紙袋を見つめたままバチバチやってる美琴を見てから少し考えて 「必殺鞄パスINチョコ×2」 「へ、わわわわ、」 自分の鞄を開けて姫神と吹寄のチョコを放り込み鞄を並走する美琴へと投げ渡す、美琴はキョトンとしながらもつい受け取ってしまう。 残ったピンクリボンの紙袋を手にとってリボンを解いてみる。 人生ほんとうに何があるかわからない。いいかげん、この感想にも飽きた。 「カエル・・・・?」 「カエルじゃない!!ぴょン子とゲロ太!」 「居たか?」 「居ないぜ」 「こっちも」 「逃げ足はえー」 「吹寄様のチョコォォオロローン」「上条め、あいつが死ねば姫神さんのチョコは俺の物に」 上条のクラスメイト達はもはや完全に上条当麻の敵と化した。 「こうなったらあれだぜぃ、アオピー、人海戦術で探すのが吉だぜぃ」 「なんも捻りがないなぁ、ソレ。 絶対にありえないとは思うが…… その妄想に一票や!」 言うとクラスの一同は思い思いの方向へと散っていき、土御門だけが残った。 「やぁ悪いね、催促したみたいで変な芝居までうたせちゃったみたいだね、土御門」 「そんなことはどうでもいいがステイル、なんでお前がここにいる?それによりによってそいつまでいるのかよ?」 陽気な口調で話しかけながら路地から赤い髪の大男が現われた。 「 ある大魔術が何かの誤作動だかで作動してしまったらしくてね、その事後処理にボクが派遣されたってわけさ、魔術のことは魔術師にってね」 「大魔術―だと、それでソレの出番ってわけか?随分と大層な大魔術らしいな」 「ああ、ある意味最恐って言い方をしてもいいと思うよ、あくまでも僕の主観だけどね。 なにせかつての聖人が残した大魔術さ」 言って赤い『魔術師』はソレの名前を告げた。 「その大魔術は聖バレンチヌスの結界、言うまでも無く聖ジョージ級の大魔術だよ、僕は面倒だからこう読んでるけどね ―『告白儀式』(ハートトゥハート)ってね」 次回に続く・・・のか?