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(自ブログに転載) 文:tallyao 2 大通(オオドオリ)沿いの本社の、メインシステムの一部を借りる許可を貰い、ミクとリンは、その”詩人”の人格が記録されたROM構造物の黒いパッケージを、社の一室にある端末まで持っていった。 端末の、いまどき見慣れないROMのカートリッジユニット用の挿入スロットを、リンは覗き込んだ。ついで、黒いパッケージの片側の底面をじかに占めている、スリットの奥にある接続部とを、一度ものめずらしそうに眺め見比べてから、パッケージを丸ごとその端末のスロットに挿入するようにして、両手で押し込み、接続した。 それからミクとリンは、自分達の頭部のインカムに備えられた没入(ジャック・イン)端子と、その端末の電脳空間(サイバースペース)デッキ接続用の仲介(インタフェイス)端子とを、コードで接続した。 ……この電脳インカムを装備している、第二世代のVOCALOID(および最後の第一世代であるCRV2)は、電脳空間デッキと神経接続電極(トロード)なしでも、インカムの没入端子で、電脳空間へと没入できる。というよりも、元々、かれらAIの本体は本来マトリックス上に普遍に存在し、ボディの方はいわば遠隔操作(距離の概念は厳密には異なるが)しているだけなので、ボディの側の意識を閉鎖してしまえば、わざわざ”物理空間”のボディから”電脳空間”へと『戻る』必要はない。にも関わらずこうするのは、ボディの管理を厳密に行うようにするためと、極力、ミクやリンは物理ボディでは、周囲の違和感をなくすため、”人間に近い振る舞い”をするように心がけているためである。 ふたりが電脳空間に没入(ジャック・イン)すると、《札幌(サッポロ)》の社のメインシステムのICE(註:電脳防壁)の城壁に囲まれたエリアが現れる。ゲートウェイ近くなので、北海道大学(ホクダイ)の工学部と、北大の大型計算機センターからときどき社が借り受ける本体(メインフレーム)のシステムに続く、ネオンの通路の帯が、ここからでも見える。さらに遥か遠くには、営業地の《秋葉原(アキバ)》や、AIの開発地の《浜松(ハママツ)》のエリアの光も垣間見える。 《札幌》のシステムのエリアは、忙しい社のスタッフの、紙きれ状のデータ書類が散らばって浮かんだままになっている。『着メロ関連』『ピアプロ管理』などとタグのついたそれらのファイルを、リンはとりあえず手でおしのけた。 それから、ミクと共に周囲を見回した。今接続したROM構造物を示すもの、『それらしきもの』が見当たらないのだ。ただし、何か微妙に、ミクとリン以外の誰かの、”存在感”のようなものが感じられた。 「概形(サーフィス)の情報が入ってないのかな、このROM構造物って」リンが言ってから、左腕のアームカバーにあるコンソールを、右手で操作した。 近くの中空に、おぼろげな光のもやのようなものが浮かび上がった。といっても、リンは単に、さきほどの”存在感”の感覚を誇張し、増幅させ、視覚化できるように補正しただけだった。 しばらくふたりは押し黙って、そのもやのようなものと一緒のエリアに立っていたが、 「あの……」やがて、ミクがその微動だにしない光のもやに向かって話しかけた。妙な光景だが、それくらいしかミクにできることはない。 しかし、何も起こらない。 「聞こえてる?」リンももやに向かって言った。 「聞こえてますよ」何のまえぶれもなく、そのもやが喋ったようだった。 VOCALOIDのような、人間と同じ大気を通じた発声をシミュレートして音声を発する機能もないらしく、きわめて電子音声じみている。その声には、抑揚がわずかにあったが、それは、その者の感情を反映してというよりは、単に言葉を聞き取りやすくするよう、ここのメインシステムの音声出力制御機構が補正をかけているだけのように思える。性別はどちらかよくわからない。総じて、芸術家、歌手、といったもののイメージには、あまり合う声には感じられなかった。 ふたりはたどたどしく、ROM構造物に、件の過去の”詩人”であるのかと尋ね、相手がそうだというと、歌を聞かせてもらいたくて起動したのだということ、仕草などもまじえて、要領を得ない説明をした。 「このROM構造物には、歌のデータは入っていませんよ」”詩人”は、平坦な声で、まるで他人ごとのように言った。「私の昔の詩や、歌や曲のデータなら、すべて別のディスクなどに残されているはずです。もう市販はされていないかもしれませんが、探せばネットワークのどこかにはあるでしょう」 「そうじゃなくて……」ミクが言った。「あの、これから、歌を作って……作るのでなくとも、今、あなたが、これから歌うのを、聞かせて欲しいんですけど……」 「歌って欲しいと? 私に?」 ROM構造物を示すもやの方から、微弱だが何やらおかしな音波と感覚の振動がおそってきた。それは、ROM構造物の人格の発する微笑の表現が、出力する媒介のデータがないので、人間ならば生身の脳神経の背筋にこたえるような不気味な非笑いに変換されたものだったのだが、VOCALOIDにはその不快感の微妙なニュアンスはノイズとして消去されるだけで、ミクとリンにはなにやら謎の振動にしか感じられなかった。 「『ROM構造物』とは何かご存知ですか?」”詩人”は言った。「もっとも、私のこの構造物が作られたのは、今からはひどく昔ということになりますから、あなたがたの知っているものとは細部が異なるかもしれませんが。ROM人格構造物は、その名の通り、単にかつての人間の反応を模倣するように、ROMに焼き付けたものです。あらかじめ焼き付けられた反応を、返すことしかできない」 「ちょっと聞いたことはあるけど」リンが言った。 よく誤解する者がいるが、例えばVOCALOIDのような高度AIと、記憶を複写しただけのROM人格構造物とは、いずれも電脳空間上の『人物像(キャラクタ)』に見えるが、根本的にまったく異なっている。 いわば、AIが、純粋にソフトウェアによって真の”知性”を精緻に美しく構築したものならば、ROM構造物は、ハードウェアもソフトウェアも無理やり寄せ集め、結線(ハードワイヤ)でがんじがらめに縛り上げ焼き付けて、なんとか反応だけ人格らしく見えるよう、表面を模倣させたものに過ぎない。 AIは、人間の頭脳の意識と記憶が刻々とゆらぎ変化するのと同様かそれ以上に、その超処理能力によって、常に自らの情報を書き換えながら精神活動を行うことで、真の”知性”として存在することを可能にしている。それに対して、ROM構造物は、とある一瞬間の人間の状態を写したきりのものに過ぎない。自らを書き換え変化していくだけの処理能力も、進歩することもない。 「なので、入力に対して、いつも同じ一定の反応を返すことしかできません」 「でも、こうやって普通に話してるのに……」ミクが言った。 「会話の入力があれば、話しかける側の毎回の差に応じて、そのつど毎回違った返答はするでしょうが」”詩人”の光のもやが言った。「しかし、『自分で全く新しいものを生み出すこと、作り出すこと』ともなれば、ROM構造物にはまるで不可能です」 それは”詩人”の人格を残したものであるにもかかわらず、詩も歌も作ることはできないものだというのだった。 しかし、ならばなぜ、わざわざシンガーソングライターを選んで、詩も歌も作れない状態で残した、ROM構造物に焼きつけたりしたのだろうか。 「わかりません」”詩人”のROM構造物は平坦な電子音声で言った。「詩とは関係ない別の記憶を利用しようとしていたのかもしれませんし、あるいは、詩の記録が欲しくても、撮るのに失敗したのかもしれません、当時の技術では。……それとも、そもそもROM構造物というものが何なのか、よくわかっていなかったのかもしれませんし」 「そんな……」ミクが呟いた。「ひどすぎる……勝手すぎるわ」 何の事情であれ、知ってか知らずか、もう消滅しているその新進企業は、当時、自分達の活動の都合だけで、それを行ったとでもいうのだろうか。シンガーソングライターにとって命である詩作の部分を残さない、歌を作れない、歌えなくなった状態で、その人格だけを残すなど。 「そう思いますか?」しかし、ROM構造物は言った。「なら、歌える状態なら、例えば歌を作る機能だけを残してあるようなものなら、ひどくなかったとでも? 歌えようが歌えまいが、死んだ人間の一部、役に立つ部分だけは記録して残しておこうなど、生きている人間の側の都合ですよ」 「そんな意味じゃ……」ミクは聞こえないほど小さな声で言った。 「私らだって、『生きてる人間』じゃないよ」リンが言った。 「人間かどうか、という部分は問題ではない。あなたがたは生きていて、私は死んでいる。あなたがたは、ネットワーク上で多数の人々のイメージに拠って、日々成長し、進化し、ものを生み出している。私は、死んだ人間の名残であって、それ以上は前に進まず、何も生み出さない。……その人間が今生きて喋っているのではなく、すべては、その人間がかつて存在していたという名残、いわば、その声のこだまに過ぎません」 抑揚なく続けるその声は、その状態を激しく悔やむことがないのか、その状態になった後に悔やむ感情をなくしたのか、それとも、そういった感情を持つような部分がROM構造物に写せなかったのかは、わからなかった。 しばらくの間を置いてから、ミクが小さく言った。 「ただ、あなたの、まだ発表されていなかった……知らない歌が聴けるだろうって、それだけ思って……」 「発表しなかった音も、それを新たに作り出す感性も、この中にはありません」ROM構造物は電子音声で淡々と言った。「かつては、音と詩をこの手に一杯に集めて、この世界に笑顔をもたらすことを、追い求めようとしていた。……けれど、私の持っていた音、掴もうとしていた音、生きていたとすれば生み出されてこの世界に届いていたかもしれないメロディも、全て、手のひらから零れ落ちてしまっていて、このパッケージの中には、もう何も残ってはいないのですよ」 (3へ) (インデックス)
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柔らかい綿布。いわゆる救急箱に入っているようなガーゼ。 Gauzeとは異なり、こちらは包装されている。 クラフティングの素材となるアイテム。 ※誤字や気になったところがあれば修正・加筆お願いします
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(自ブログに転載) 文:tallyao 5 突如、耳障りな警告音と激しく明滅する表示を、メインシステムが発した。 「この結末以外には、やはりなかったようだ」しばらく立ち尽くしていたミクとリンの前で、”詩人”が独り言のように平坦に言った。 ミクとリンは、浮いているメモリーキューブの近く、進行状態がモニタされている表示パネル部にかけよった。リンが表示を見ながら、アームカバーのコンソールを操作し、次々と情報を切り替えた。 「……読み取れなくなってるって」リンが静かに言った。 さきに《浜松(ハママツ)》のウィザードが言っていた。現在の整然と構築された高度なAIなどと違い、この不完全な技術で作られたROM構造物の基本構造はよくわかっておらず、内部は難解に絡み合ったものではないかと。 そして実際に、表示によると、回路の構造とデータの情報は、いわば分離不能なものであるらしかった。回路の損傷が思ったよりもひどく、人格の情報の深層部分、基礎部分を読み取れないため、表層のデータ部分も、読み取っても相互に意味のある人格として関連づけることができない、というのだった。 「そんな……そんなの」ミクは震える声で言ってから、「……読める部分だけでも、できるだけ」 「やってるみたいだけど」リンはデータ移送システムの表示を見て言った。 中枢部分が写し取れないので、人格データが統合できない。表面部分を移しても、移す先からデータが人格を構成できず、塵のようなデータの断片として霧散してしまう。 「それでも……それだけでも。塵でもいいわ。読めるだけ、集められるだけでも……それだけでも」 ミクは無意味なことを呟き続けた。 「移せれば……残せれば、AIになれるかもしれなかったのに。生きられたのに……いつか、一緒に歌うこともできたのに」 ミクはやがて、両掌で顔を覆い、膝をついた。 「おねぇちゃん」 リンはミクの肩を支え、やがて、震え始めたその胸を抱きしめた。 「悲しまないで」ややあって、ROM構造物が言った。「初音ミク、あなたのことは忘れない。などというのは妙に聞こえるかもしれませんね。ROM構造物が消えれば、それに関連づけられてこのシステムに一時メモリーされていた、ここで起動されてからの記憶も、すべて消えるのですから。……けれど、前に言ったように、詩の魂は、霊感は、なくなることは決してない。情報の記録がすべて消えうせても、なにひとつ無に帰すことはない。私のこの構造物の情報はここから消えても、私の精神は、詩と音の霊感の本質と、歌の魂のイデアと合一化することができる」 光のもやは動かずに、かわらぬ電子音声を淡々と発し続けた。 「……遠い昔、このパッケージに、虚しい存在としてとじこめられて以来、かつての望みを捨てて、現世を、この世界をあとにして、自由になろうとだけ思っていた。虚しい存在であることをやめて、この世界を捨て去ることだけを考えていた。──でもあなたと、出逢えたから。どんな限られた虚しいもの、ささいなものにも、深く思いをはせる者がいる。そのものを通して、その思いを通じて、世界に響かせ、届けることができるのだと。少なくとも、それを受け止められる、あなただけにでも。パッケージに詰めた分だけの、ほんのささいなものでも、想いとして伝わる、あなたにだけでも」 ”詩人”のROM構造物の言葉は、しばし途切れてから、 「ROM構造物は決して成長しない。もしこのまま私がROM構造物として存続すれば、あなたに出会って得たこれらのもの、この考えは、定着することはない。しかし、もうじきこの構造物から開放されるからこそ、精神の新たな段階にゆくことで、あなたから得たものを、受け入れることができる。だから、悲しまないで。……必ず、そこから、あなたに伝えます。そこに至ることでとりもどした、詩と歌の魂を。かつて掌から零れ落ちた音の粒を、ふたたび探し出して、あなたへと」 リンはミクを抱きしめたまま、きっと睨むように”詩人”を振り返った。精神の新たな段階に至るなど、本当なのか。消滅する構造物、”亡霊”としての姿さえも失うものが、その後、何かを起こせるとでもいうのか。ミクに何を約束してやれるというのか。 「私がそこから呼びかけたとき、必ずわかるはずです。必ず届くように、必ず響くように、伝えます。……そうしたらきっと、私達の歌で。初音ミク、今のあなたが望んでいるように、かつての私が望んだように。この世界に笑顔を──私とあなたで」 表示パネルに、破損した回路が閉鎖され、アクセスが不可能となった旨が表示された。ROM構造物だったものはそれきり、何の信号も発さなかった。あとは、マトリックスをひたすら沈黙が襲った。 しばらく後、社のその一室の端末を見ると、パッケージはそのスロットの中で溶けており、中の生体素子(バイオチップ)の回路は、すべて塵になっていた。 その後しばらくの月日が流れた。 リンは黙って、端末の近くの椅子に背もたれを抱くように掛けていた。そのまま、眉をひそめてじっとしていたが、やがて、我慢できなくなったように言った。 「結局、何もないじゃない」リンの視線からは、それは傍らのミクに対してではなく、独り言のように見えた。「あのあと、何も起こらなかったじゃない……」 ROM構造物は塵になり、そこからは遂に何も読み出すことも得ることもなく、起動してからのすべての記録もメモリーさえも消え、そのあとも何も起こらず、──あの詩人と出会ったことには、あとに何ひとつ残らなかった。 ミクは、そのリンを振り返ったが、無言で、ただ微かに笑ったように見えた。 やがてミクはその部屋を、社の建物を出て、東西線(トーザイ・ライン)のメトロに乗った。その後に続いたリンと共に、ミクはメトロの終着駅の新札幌(シンサッポロ)からおりて、さらに交通を乗り継いだ。 ……ミクは、荒廃しきったテクノパークの、小高い丘の上に立った。その丘の芝の上から、両手をひろげ、あのパッケージの塵をまいた。しかし、ほとんどまく前から、かすかな風にも吹き散らされてしまい、まもなくすっかり跡形もなくなっていた。 ミクはそのまま丘の上にたたずんでいた。 ややあって、微風がふと途切れた。──その時に、ミクは歌いだした。 それは、いつものミクの声にも増して、澄み切った声となって響き渡った。……しかし、リンはその声の響きに、信じられないものでも見るように、ただ呆然と、歌うミクの姿を見た。 それは確かにミクの声、電子によって、人間に等しい自然な声を出せるよう作られた声であり、しかしそれは、そのミクの自然さを損なうことなく、かつ、電子の音そのものの響き、あたかも電脳の世界にじかに鳴り響き、あまねく世界に届き渡るかのような響きを帯びていた。 その声は、音は、まぎれもなく、あのROM構造物の発していた声をリンに思い出させるものだった。しかしそのメロディは、歌は、あの電子音声のように平坦でも無機質でもなかった。にも関わらず、なぜか、どこかあの”詩人”の語りを、リンには思い起こさせるものだった。あたかも、ミクと”詩人”とが、そのどちらでもあり、どちらにもとどまらない声となって、その歌の精神が融和し、両者をあわせた総和以上の歌となったかのように。 リンは、ミクのその姿と流れる歌声の前に、ただ立ち尽くしていた。 この一連の出来事が、この”詩人”との邂逅と別れが。ミクに変化をもたらしたのだろうか。ミクという者の中に、その歌声に、これをもたらしたのだろうか。 それとも──リンはミクのその姿、裡からあふれ出す思いを歌に変えているかのような、その姿を見て思った──いまこのとき、何処かから、ミクへと届いている、響いている、何かが、…… 遥か彼方の虚空からおりてきているかもしれないそれは、朽ち果てたテクノの夢のあとの丘の上から響き渡り、広々と音声の空間をなし、この世界のメロディそのものとなって、どこまでも行き届き、いつまでも鳴り響いていった。 (了) (インデックス)
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(自ブログに転載) 文:tallyao 3 しかしそれ以後、数日ごとを隔てて幾度か、初音ミクは物理空間のボディで、大通(オオドオリ)沿いの本社のあるビルの、そのROM構造物のパッケージを設置した端末機器室を訪れた。 「まだ調べてたの?」その何度目かに、リンが同様に物理ボディで、その部屋にいるミクのもとにやってきて言った。 「ううん、ええと……」ミクは黒いパッケージの端子に繋がった、電脳端末とは別のスキャン機器のデータから、リンの方に目を向け、「このROMのハードウェアが、本当にそれしかできないのか、とか、本当に詩のデータが何も残ってないのか、とか……」 つまりは、ROM構造物の”ハードウェア部分”を調べるためには、普段は電脳空間(サイバースペース)で過ごすVOCALOIDらAIシステムがあまり利用する必要にかられることがない物理空間のボディを使い、ハードウェアのあるこの部屋を訪れなくてはならないというわけだった。 ミクは、繋がっているスキャン機器を見ているリンの視線に気づき、「その機械は、本社の技術スタッフに、どうやって調べればいいか聞いて、持ってきたの」 他者に聞きまわって調べ、そして、さらにミクは自分で調査機器を動かすほどの手間をかけている、ということだった。 「それに、あのひとがもう歌は作れなくても、話ができるなら……わたしたちが聞いて、自分の歌に役立てられることは、あるはずだもの」 「そりゃ、”せっかく会った人”ではあるけどさ……」 リンにも、ミクの気持ちもわからないでもないが、それを別にしても、あの”詩人”は本人の言から考えても、もう無理になんとかせずに、静かに眠らせておいた方がよいのではないかという気もする。 そして、リンにはその理由よりも大きく感じられることだが、同じ音の世界を広げるというのならば、未熟な自分達には、今、現に生きて活動している者らから学ばなくてはならないこと、可能な限り多くのアーティスト(人間であれ、自分らと同じ人間外アーティストであれ)と交流し、アートに触れ、余力がある限り日々少しでも学ばなくてはならないことがあるのではないか。 このあたりの感覚はAIとして、最初のCVナンバーであるためできるだけ純粋・素朴に構築されたCV01と、音声にパワーを与えるための情念・アーティストとしての欲求が根幹にあるCV02との、ある意味では如実な差だった。しかし、ときにその純真さが無造作すぎるので、かえって非人間的、もっと穏やかな言い方をすれば、初音ミクをかなり俗離れした少女にしてしまっているのだった。 「詩人のひとは、こんなパッケージの中にとじこめられて」リンはROM構造物を見てから、ミクに目を移し、「本当は歌いたがってるんじゃないか、とか思うから?」 「わからないわ……」ミクは小さく言った。 あのROM構造物の”詩人”の淡々とした言葉には、失った詩と歌への執着は感じられず、あるいは、それらを感じる機能自体がないのかもしれない。 「でも、あのひと、昔のこと……『音と詩を集めて、この世界に笑顔を』って言ってた」ミクは呟くように言った。「前にはそうやって歌えたのに、今は『歌えなくなってる』、そんなことって、ただ、悲しいって。……さみしいんじゃないかって、……ううん、わたしが、それを考えたらさみしいだけなのかもしれないけれど」 自分の中を整理する言葉のように言ってから、ミクは、ふたたびしばらく考えるようにした。 「……だいぶ集まったから、このデータを一度本人に、あのひとに見てもらうわ」やがて、ミクはモニタを見て言った。「何をすればいいか、わかるかもしれない」 ミクとリンは、インカムの端子と部屋の電脳端末とを繋いだ。 没入(ジャック・イン)する。 《札幌(サッポロ)》のシステムのICEの城壁の内側で、光のもやの塊のような”詩人”のROM構造物を現す像は、リンの目には、前に見たときと何も変わらず、微動だにせずにたたずんでいる。 「ハードウェアの情報、”自分の外側”がどうなっているかは、外から調べてもらわないとわかりませんね」データについての説明をミクから聞いて、”詩人”は言った。 ROM構造物は、光のもやの周りに、今ミクが調べたデータファイルのオブジェクトを周囲に浮かべ、走査(スキャン)しているのか、しばらく沈黙していたが、 「このデータの意味がわかりますか」 ミクは黙って光のもやを見返していた。わからないというか、”詩人”がわかることを聞こうとして、持ってきたものではあった。 「このハードウェア情報によると」”詩人”は淡々と言った。「生体素子(バイオチップ)に寿命がきています。そう日を待たずに、このROM構造物は消滅します」 ミクとリンは電脳空間内での概形(サーフィス)の姿を、そのエリア内に突っ立たせたまま、何も反応できなかった。 ”詩人”はそのふたりに、よどみなく説明した。古い、未発達な技術であった当時に作られたROM構造物であること。さらに、倉庫に長年放置され、保存状態が非常に悪かったこと。諸々が重なったために、あと何か月も持たないと思われること。 「修理だとかは……できないんですか」ミクが小さく言った。 「ROMを構成している生体素子(バイオチップ)自体がもう修復不能ですし、素子自体を複製するにしても、破損が激しすぎて読み取れないでしょうね」 「……どうして、平気でそんなことを言えるんですか」 ミクは思わず、震える低い声で言った。この”詩人”は、自分に最終的な消滅が迫っていることを、淡々と。 「すでに死んでいるのですから」ROM構造物は言った。「これが”私ではない”ということは自分ではわかりきっています。かつての私の声のこだまが聞こえなくなろうと、私には構わないことです」 ミクはその”詩人”の言葉にも表情を変えず、悲しげに見つめ返すだけだった。リンはいかにも不可解そうに、光のもやを見ている。 「理解できませんか? 現に『生きている』側にいるあなたがたには」”詩人”は続けた。「今ここにある人格データとは別に、精神は消滅などしません。詩の精神、魂、霊感とともにあって、不滅のものです。かつて存在したすべての歌は永遠で、作った者の精神はその中にある。そして──私がまだ作っていなかった歌を、聞きたいと言っていましたね。もし私が死ななければ作られていたはずの、可能性のあるすべての歌も。人々の今まで作った歌も、これから作る歌も、すべては時間をこえて、詩の魂の本質、歌のイデアとして、共に永劫に存在します。誰でも手を触れることができる可能性のある、霊感の源がそれです。いわば、より高位の段階の魂とともに、おそらくは、無限次元の複素ヒルベルト空間のかなたに」 何かの例え話としても、よくわからない話ではあった。 「かつて私は、死の瞬間に、その永遠の詩の魂の存在する、かなたを垣間見たような気がします。死ぬことができれば、すべての束縛を断って、そこに行くことができた、合一化できたはずでした。……しかし、そうならず、私の一部がこのパッケージの中に縛り付けられ、ROM構造物に残っているものだけが”私”となってしまった」 ROM構造物の声は発する対象を変えることはできなかったが、おそらくその言葉の内容からは、ミクに向けて、 「いわば、あなたがこのROM構造物のことを、”私”である、などと思っていることが、すでに私を縛っているに等しい。……このかりそめの姿から、束縛から解放されれば、私はようやく自由になれる。このデータが消え、この世界のすべてから本当に死んだものと認められることで、この世界から完全に切り離され、何も届かなくなったとしても、私は受け入れこそすれ、何も拒むものはありません」 「なんとか、ならないかしら」 ミクはそれから数日間、考え込むような表情をときどき繰り返した末に、リンに言った。 「なんとかって?」 「あのひとが、生き延びる方法……」ミクは呟くように言った。 「生き延びるって言ったってね」 いかに”詩人”が、自らが消滅することに平然としている、むしろ望みと言っているとはいえ、このまま放っておくという気にはなれない。それはリンにもわかる。 このままでは消える。死せる”詩人”の名残は、本当にあとかたもなく。……では、消えさえしなければいいというのか。このさきROM構造物として存続したとしても、どのみち詩も作れない、歌えもしない。本人も言うとおり、生きている、とはいえない。 生き延びさせる、とは、一体どんなことを言うのだろう。リンにはそこで、わからなくなってしまう。 自分達に何ができるのか。いや、むしろ、何をすべきなのか。”詩人”の言によると生きている側には居るが、人間ではなくAIであり、”詩人”を何かの目的をもって存続させたかつての企業の者らでもなく、存続させる当面のはっきりした目的すら持たない、自分たちなどに、何が許されるのか。 (4へ) (インデックス)
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ペーパーのパッケージ(Acid Package) ペーパーのパッケージ(Acid Package)概要 入手方法オンライン ゲーム内解説 概要 『ロスサントス・ドラッグウォーズ』アップデートにて追加された投擲物。 LSDの一種「ペーパー・アシッド」をロスサントス・メテオの新聞紙の形に偽装したもの。 ペーパーラボビジネスの売却ミッション で使用される、実質的にこのミッションの為のみに用意されたアイテムである。 入手方法 オンライン ペーパーラボビジネスの売却ミッションのパターンの1つにて使用。 ゲーム内解説
https://w.atwiki.jp/gtavi_gta6/pages/2964.html
ペーパーのパッケージ(Acid Package) ペーパーのパッケージ(Acid Package)概要 入手方法オンライン ゲーム内解説 概要 『ロスサントス・ドラッグウォーズ』アップデートにて追加された投擲物。 LSDの一種「ペーパー・アシッド」をロスサントス・メテオの新聞紙の形に偽装したもの。 ペーパーラボビジネスの売却ミッション で使用される、実質的にこのミッションの為のみに用意されたアイテムである。 入手方法 オンライン ペーパーラボビジネスの売却ミッションのパターンの1つにて使用。 ゲーム内解説
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DRIFT PACKAGE LIGHT What sDRIFT PACKAGE LIGHT? ドリフトパッケージライト(ドリパケライト)とはタカラトミーがヨコモと共同で開発したドリフトR/Cです。 トイラジコンながら自由度の高いドリフトが可能で、下手をすればD1並みの飛距離を出すことも可能かも知れない。 いま最も注目されているトイラジかも知れない。 ~MENU~ Garage〜管理人が所有しているDRIFT PACKAGE LIGHTを展示しています。〜
https://w.atwiki.jp/japanesehiphop/pages/15.html
Format Title Artist Label Model Number Release Press 2LP THE PACKAGE AKLO ONE YEAR WAR MUSIC OYWMLP002 2012/12/13 - Side Track Title Produce A 1 BEAST MODE BACHLOGIC 2 RED PILL BACHLOGIC 3 BEST MAN JIGG B 4 FOOT PRINT BACHLOGIC 5 S.H.O.T. JIGG 6 CHASER BACHLOGIC C 7 DAY OFF JIGG 8 HEAT OVER HERE BACHLOGIC 9 サッカー feat.JAY'ED BACHLOGIC 10 THE LADY JIGG D 11 PM TO FM JIGG 12 LIGHT SHADOWS feat.NORIKIYO BACHLOGIC 13 YOUR LANE feat.鋼田テフロン BACHLOGIC PERTAIN CD THE PACKAGE
https://w.atwiki.jp/trivialist/pages/231.html
歌唱:初音ミク 作詞・作曲:kz VOCALOID殿堂入り Short Ver. PV
https://w.atwiki.jp/supremacy7/pages/25.html
DRIFT PACKAGE LIGHT Garage 管理人が所有しているドリパケライトです。 nissan 180SX RPS13 改造点=半目ライト、タイヤセッティング(F=外履き R=内履き)、各駆動部グリスアップ コメント=ようやく発売されました^^ 練習して上手くなったら動画も撮りたいと思います。