約 2,900,321 件
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http //www.shinyashinya.com/ member ROCK FUJIYAMA BAND, 大黒摩季とフレンズ, ex-LUNA SEA No Sticks ROCK FUJIYAMA BAND / Rock Fujiyama ( 2007年1月24日 ) 大黒摩季とフレンズ / Copy Band Generation vol.1 ( 2004年3月17日 ) LUNA SEA / Singles ( 1997年12月17日 ) No Sticks 1997年12月10日 1. How Come ? / 2. Sunny-side Up / 3. 地下水道 / 4. どんなに君を愛したか僕は今でも覚えてる / 5. 子供を作ろう / 6. A Song / 7. Trap / 8. 落下する太陽 [ album mix ] / 9. 最後のキスのし方 / 10. 漂流者 [ album version ] produced by 秋元康 arranged by 青柳誠, 井上鑑, 後藤次利 西平彰 真矢 (vo)
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ミクスチャー(rock the beatz) / MIXTURE 【ミクスチャー】 来ましたね~、リズムもギターもグイグイ来てます。BM COREREMIXからの登場だ。【配信時】 来ましたね~、リズムもギターもグイグイ来てます。このコアなサウンドがたまらない!【pm14~】 ミクスチャー(Jack) / MIXTURE 他のBEMANIシリーズへの収録 収録作品 関連リンク ee MALLの配信曲として登場した楽曲。 ee MALLの稼動が終了した後はポップンミュージック14 FEVER!において、隠し曲の全解禁に伴い他のee MALL初出曲と共に常時プレイできるようになった。 初出がbeatmaniaからの移植曲で、担当キャラクターはMZD(2-2P)→コサイン(14-2P)と変更されている。 楽曲の背景はヘビーメタルを流用している。 rock the beatz / ASLETICS BPM 100-122 5b-8 N-14 H-24 EX-× 新難易度 5Buttons NORMAL HYPER EXTRA (12) (20) (30) × ハードコア、ヒップホップ、テクノなどの攻撃的な要素がミックスされ、そこにロック的な要素で解釈した、まさにアグレッシブなトラック。beatmania COREREMIXからの曲ではあるが、サブタイトル通り、よりディープに、よりコアな感じになっている。一瞬メドレー曲と勘違いしてしまいそうな気が。なお、ポップンにおける音源の構成は移植元のANOTHERと同じで、最後の8分を含めて連打の回数が増えているもの。 BPMは118-100-122に付き、118もしくは122に合わせるとやりやすいが、BPM100の部分が案外長いので遅く感じるなら少々辛いかも。この部分はノーマル(=5鍵Normalの簡易版)では交互連打に注意。ハイパーは5鍵Anotherと同じく、3個押しの連打が3箇所に出てくるのでタイミングを間違えないように。ただし、ポップンでは5鍵のようにスクラッチが連打と絡んではないので連打に意識できる。他は乱打系統の配置が続くが、最後の8分同時押し連打はしっかりと拾いたい。 他のBEMANIシリーズへの収録 beatmania CORE REMIXで初登場。 ANOTHER譜面は少しアレンジに違いがあり(移植元での連打部分の連打数が各部分で倍になっている)、ポップンも音源がこれに相当する。 なお、サウンドトラックCDではBASIC・HARDと同じになっている。 収録作品 ※ee MALL関連曲の配信時期に関してはee MALL曲を参照。 AC版 ポップンミュージック9~ポップンミュージック13 カーニバル ee MALL曲として配信。 ポップンミュージック14 FEVER!~ポップンミュージック16 PARTY♪ 14の隠し要素全解禁から常時選択可能になった。担当キャラクターをコサイン(14-2P)に変更。 CS版 ポップンミュージック14 FEVER! 関連リンク 楽曲一覧/ee MALL (楽曲一覧/ee MALL 2nd avenue)
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http //www.superfly-web.com/ CDMind Travel Wildflower Cover Songs Complete Best 'Track 3' Box Emotions 恋する瞳は美しいSuperfly CD Mind Travel 2011年6月15日 ( HP ) 1. Rollin Days / 2. Beep !! / 3. Fly To The Moon / 4. タマシイレボリューション [ extended ver. ] / 5. Eyes On Me / 6. Deep-Sea Fish Orchestra / 7. Secret Garden / 8. Sunshine Sunshine / 9. Morris / 10. Wildflower / 11. Free Planet / 12. 悪夢とロックンロール / 13. Only You / 14. Ah Wildflower Cover Songs Complete Best Track 3 2010年9月1日 初回限定盤 ( HD ) Disc 1 1. Wildflower / 2. タマシイレボリューション / 3. Free Planet / 4. Roll Over The Rainbow Disc 2 1. Fooled Around And Fell In Love / 2. ( You Make Me Feel Like ) A Natural Woman / 3. Hot N Nasty / 4. ( Please Not ) One More Time / 5. Rhiannon / 6. Honky Tonk Women [ live ] / 7. Bad, Bad Leroy Brown [ live ] / 8. Heart Of Gold [ live / cover of Neil Young ] / 9. Desperado [ live ] / 10. My Brother Jake / 11. Rock And Roll Hoochie Koo / 12. Late For The Sky / 13. Piece Of My Heart [ live ] / 14. Bitch / 15. Water Is Wide Disc 3 1. Fooled Around And Fell In Love [ acoustic ver. / cover of Elvin Bishop ] Box Emotions 2009年9月2日 ( m01 ) 1. Alright !! / 2. How Do I Survive ? / 3. Searching / 4. My Best Of My Life / 5. 恋する瞳は美しい / 6. やさしい気持ちで / 7. 誕生 / 8. Bad Girl / 9. See You / 10. 春のまぼろし / 11. アイデンティティの行方 / 12. Hanky Panky / 13. 愛に抱かれて 恋する瞳は美しい 2009年7月29日 ( m01 ) 1. 恋する瞳は美しい 2. やさしい気持ちで 3. スキップ・ビート [ live from NHK Hall ] 4. Late For The Sky Superfly 2008年5月14日 1. Hi-Five / 2. マニフェスト / 3. 1969 / 4. 愛をこめて花束を / 5. Ain t No Crybaby / 6. Oh My Precious Time / 7. バンクーバー / 8. I Spy I Spy / 9. 嘘とロマンス / 10. 愛と感謝 / 11. ハロー・ハロー / 12. Last Love Song / 13. I Remember
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One Light One Light アーティスト Kalafina 発売日 2015年8月12日 レーベル SME デイリー最高順位 1位(2015年8月12日) 週間最高順位 2位(2015年8月18日) 月間最高順位 8位(2015年8月) 年間最高順位 111位(2015年) 初動売上 11708 累計売上 17644 収録内容 曲名 タイアップ 視聴 1 One Light アルスラーン戦記 ED 2 真昼 3 五月雨が過ぎた頃に ランキング 週 月日 順位 変動 週/月間枚数 累計枚数 1 8/18 2 新 11708 11708 2 8/25 15 ↓ 2314 14022 3 9/1 19 ↓ 1425 15447 2015年8月 8 新 15447 15447 4 9/8 ↓ 728 16175 5 9/15 494 16669 6 9/22 444 17113 7 9/29 273 17386 8 10/6 258 17644 2015年9月 44 ↓ 2197 17644 アルスラーン戦記 ED 前作 次作風塵乱舞 ラピスラズリ藍井エイル One Light blaze 関連CD 渦と渦 ring your bell アルシラの星
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29 Fingers Say It Ain t So In Bloom I Think I m Paranoid Time We Had Mississippi Queen Here It Goes Again Creep Blood Doll Wave of Mutilation Should I Stay or Should I Go Maps Gimme Shelter Brainpower Sabotage Blitzkrieg Bop Celebrity Skin I m So Sick When You Were Young Black Hole Sun Wanted Dead or Alive Learn to Fly Seven Orange Crush Main Offender The Hand That Feeds Day Late, Dollar Short Epic Suffragette City Ballroom Blitz Dead on Arrival Pleasure (Pleasure) Train Kept A Rollin Are You Gonna Be My Girl Paranoid Timmy and the Lords of the Underworld Welcome Home Go with the Flow Dani California Nightmare (Don t Fear)The Reaper Reptilia Electric Version Vasoline Detroit Rock City Can t Let Go Next to You Cherub Rock Tom Sawyer Enter Sandman Green Grass and High Tides Outside Highway Star Foreplay/Long Time Flirtin with Disaster I Get By Run to the Hills Won t Get Fooled Again
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「澪、お茶あるか?」 「あー、うん。聡は何を飲むんだ?」 「あいつ大会近いから、まだ帰ってこないぞ」 そっか、と澪が笑った。これじゃまるでお母さんだ。 高校を卒業してから、澪は私の家に住んでいる。 昔から私の家によく泊まる奴だったけど、卒業してからはそのお泊まり会が毎日続くようなものだった。 澪の両親は特に何とも思っていないらしく、澪が家に帰るのは日曜日の夕方だけだ。 もう同棲ということでいいんじゃないの、と家族はからかうけど、正直まんざらでもない。 澪と一緒に晩御飯を作ったり、お風呂に入ったりするのはとても幸せだ。 まるで本当の家族のように一緒に生活するできるなんて、私にはちょっともったいないと思ってる。 もちろん生活することだけじゃなく、一緒にいることや勉強することだって私にはもったいないと常々思うけど。 澪はいいお嫁さんになる。 だけど私が許さないってことにしておこう。 「ああ、総体があるのか」 澪は冷蔵庫からお茶を出して、テーブルまで運んだ。私は澪と作った二人分の夕食を皿に盛り付けている。 私一人でつくってもよかったのだけど、澪も手伝うと言って二人で色々とつくることも増えた。 澪は料理はすごく得意というわけではないけど、私を見習ってせっせと動く姿はとても微笑ましい。 だけどそれを表情には出せなかった。 「だから今日は帰りも遅いと思う」 「そっか、大変だなあいつも」 澪は二つ置いてあるコップそれぞれにお茶を注いで、箸を並べた。 私はお茶がコップに注がれる瑞々しい音を聞きながら、皿を両手に持ってテーブルまで運ぶ。 「手伝うよ」と澪も小皿だったりをテーブルに並べてくれた。 エプロンを解いて適当な場所に投げる。澪と向かい合って座る。 「……いただきます」 「いただきます」 「さっきはいきなり泣きついたりして、ごめんな澪」 食事も終わりにさしかかった時、私は切り出した。 「なんだよ改まって」 澪は笑顔でそう言ってくれる。 「……私、梓が怖かったんだ。やっぱり嫌われてるんじゃないかって。そ、そりゃあんなに一緒にいた仲間を疑うのは、悪いことだって……思うんだけど」 でも一緒にいた仲間だから、怖い。 澪はそんな私をなんて言うんだろう。 また優しい言葉で慰めてくれるんだろうな。 「……私が律でも同じことを思うよ。仲間だからこそ、思っちゃうってこと、あると思う」 澪はなんでこんなに優しいんだろう。 どうして、こんなにも胸にしみる言葉をかけてくれるんだろう。 救われる、なんて大層なもんじゃないかもしれないけど。 でも確かに澪の言葉は、私に癒しをくれている。 「それよりも嬉しいよ。そうやって悩んだり苦しんだりしてる事を、私に話してくれることが」 「澪……」 ちょっとだけ和らぐ胸の痛み。 自分でたくさん痛みを作ってたくせに、こういう時だけ澪に甘えたがる。 私は私を責め続ける。 それって、ただ澪に慰めてもらいたいだけなんじゃないのか? もう一人の自分の問いかけを振り払うために、声を出す。 「梓……何か言ってたか?」 私は梓が怖かった。だけどそれは私の被害妄想であってほしい。 澪は少し戸惑った顔で、答える。 「……お茶に誘われたよ。私と二人で行かないかって」 澪がどうしてそんな顔をするのかはすぐにわかった。 二人って、そういう意味なんだろうか。 わかりたくもない理由があるような気がして、私は何も言わなかった。 澪は取り繕うように、続ける。 「律が調子が悪いんなら、せめて私だけでもって意味だったんだろうけど……」 調子が悪い、というのは、澪が説明してくれたんだろうか。 だけど梓は私を連れて行こうとは言わなかったってこと。 もしかして本当に気遣ってくれたのかもしれないけれど、でも。 不安になる。 梓は私を除け者にしようとしたんじゃないかって。 やっぱり私、嫌われたのかなって。 「……梓は、『律先輩は大人だから、澪先輩がいなくても大丈夫』だなんて言ってた」 そうだったかもしれない。 梓にとっては私、頼れる先輩であったかもしれないけど。 でも今は、澪がいなきゃ。 梓にとっての先輩である『律先輩』は、もういない。 卒業以来一度も会ってないから、梓はまだあの時の私を覚えていてくれているんだろう。 「――おい、律」 目線を上げると、澪が鋭い眼差しでこちらを見ていた。 「……梓は、お前の事、大人だなんて言ってるけど……だからって無理はするな。私がいなくても大丈夫なんて言ってたけど、そんな律になってほしくない」 澪は強い口調なのに、ちょっとだけ顔は赤かった。 私は驚いて喉が震えるけど、その振動はただ驚いただけのものじゃなかったと思う。 「……もっと私を頼っていいんだぞ、律」 私の名前が澪の口から零れるだけで、嬉しい。 頼っていい。 頼ることは、澪にとっていい事なんだろうか。 そうしてもいいって言ってくれる。 嬉しい。 だけどそうすることは、私にとって喜ばしい事じゃない。 澪に迷惑はかけたくない。 迷惑をかけてもいい――頼ってもいい、分かち合ってもいい。 澪はそう言う。 だけど私はそうしたくないんだ。 認められてるのに、私が認めようとしないの、間違ってるのかな。 「うん……ごめん、澪」 「だから謝るなよ」 このやりとり、何回やるんだろう。 まだ当分は、澪に謝る日々が続きそうだった。 ■ 田井中律ちゃん、通称りっちゃん。 元気いっぱいで大雑把な女の子。だけどいざという時は頼りになる部長でした。 だけど大学受験に一人だけ不合格して、そんな性格はまるでなかったかのように別人みたいになってしまいました。 澪ちゃんの励ましもあってか、澪ちゃんと一緒に予備校に通うことにして、来年あずにゃんと一緒に私とムギちゃんの通う大学を受けるみたい。 りっちゃんは、私たち軽音部がりっちゃんの事を嫌いになったんじゃないかと悩んでいる。 四人で同じ大学に行こうって決めた目標に本気じゃなかったんじゃないか? と言われるのが怖くてたまらない。 そして一人で色々と責任を取ろうと自分を責めている。 そして、仲間が自分を嫌うわけないのに、嫌ってるかもと思ってしまう自分を酷く嫌悪している。 そしてりっちゃんを追って澪ちゃんが大学を辞めたこと。 りっちゃんは、自分の所為で澪ちゃんに迷惑をかけたと思って、さらに自分を責めているようだった。 昔からそういうところは真面目な子だと澪ちゃんは言っていたけど、こんなにも自分で抱え込む子だなんて最近知った。 私は、りっちゃんの事を誤解していたかもしれなかった。 秋山澪ちゃん、通称澪ちゃん。 恥ずかしがり屋でクールで、繊細だけどかっこいい女の子。りっちゃんの幼馴染。 一人だけ大学に不合格になってしまったりっちゃんを追いかけて、澪ちゃんも大学を辞めました。 その時の澪ちゃんはとっても綺麗で迷いのない目をしていて、本当にりっちゃんと一緒にいたいんだなあってわかった。 それから一人でりっちゃんを励まし、今は二人で予備校に通っている。 澪ちゃんは、自分が大学を辞めた事に、りっちゃんが余計な責任を感じているんじゃないかと悩んでいる。 りっちゃんと一緒にいたい、という気持ちはあるけれど、自分が一緒にいることでりっちゃんをさらに苦しませているんじゃないかって不安になっている。 そして、りっちゃんが昔のように笑顔で笑ってくれなかったり、自分を構ってくれない事に寂しさを覚えている。 琴吹紬ちゃん、通称ムギちゃん。 おっとりぽわぽわしてて、いつも優しい女の子。お茶を入れるのが上手です。 りっちゃんの後を追って澪ちゃんと同じように大学をやめようとするけれど、澪ちゃんに止められてそのまま入学することになった。 実はりっちゃんのことが好きで、一緒に遊んだり恋人同士になりたいと考えているけれど、澪ちゃんという存在に阻まれている。 そして澪ちゃんに決して敵わない事を受け入れつつも悩んでいる。 私と一緒に大学に通っているけれど、いつもふと目線が遠くなる。 そんな時、いつもりっちゃんの事を考えているんだろうなって思う。 そして澪ちゃんと今、一緒に勉強したり歩いているということに嫉妬を覚えずには居られない。 りっちゃんに会いたいと思っている。 中野梓ちゃん、通称あずにゃん。 私たち四人の一つ下の後輩で、少し真面目だけどとっても可愛い女の子。ギターが上手。 私たちとの時間をとても大事にしてくれて、あずにゃんも私たちと同じ大学を必ず受けると約束してくれた。 りっちゃんに対しては、先輩としては尊敬しているようだし、来年同じ学年として受験することはなんとも思っていないみたい。 だけど実は澪ちゃんのことが好きで、いつも澪ちゃんと何かコミュニケーションを取ろうとしていた。 あずにゃんが入部した時は、澪ちゃんも比較的真面目だったから、きっとそういうところに惹かれたんだと思う。 あの二人は外見も似てて、姉妹みたいだねってからかわれていたから、そういう部分も理由に当たるかもしれない。 だから澪ちゃんの心を一人占めしているりっちゃんが、なんとなく疎ましい。大好きな先輩ではあるけれど、恋敵としてあまり好きではなく、嫉妬に悩んでいる。 そして私、平沢唯。 大学に一人不合格だったりっちゃんと、 りっちゃんを追って大学を辞めた澪ちゃん、 そして一人部長として軽音部を引っ張っているあずにゃんとは別れ、女子大の近くの下宿に一人暮らしをしています。 大学生活はそれなりに楽しいけれど、やっぱりりっちゃんや澪ちゃん、あずにゃんが気になって時には心配になったりもする。 ムギちゃんと行動を共にするけれど、純粋に大学生活を楽しめている、とは自信を持って言えない感じだった。 だからってそれを他の誰かの所為にしようとは思わないけど、四人で大学に入れたら、もっと楽しかったかなあと思っちゃう。 今が楽しくないわけじゃないよ。 ムギちゃんと一緒にいることや、新しい友達といたり、新しい生活で新しい何かを発見できたりするのはとても楽しい。 だけどもし四人だったら。 私一人でギー太をつつくだけに留まらないで、音楽のサークルか何かに皆で入って、 皆でわいわいしながら演奏したりお話できたんだろうなあと思うと、やっぱり今の生活は少しだけ物足りない。 やっぱりあの放課後が、楽し過ぎたんだと思う。 ……こんなこと思うから、りっちゃんは悲しいんだ。 一年先までその楽しみはお預けなだけなんだって思えば、早いものだけど。 一年もこうやって、一人でギー太を弾くだけなのかなあ。 ムギちゃんと二人っきりで、ずっとセッションしてるだけになっちゃうのかな。 来月向こうに帰ったら、五人で演奏したいな。 りっちゃんは多分私たちに会いたいとは思ってないと思うけど……でも私もムギちゃんも、りっちゃんに会いたいと思ってる。 あずにゃんは、ちょっと複雑だけど。でもあずにゃんはバンドメンバーとしてはりっちゃんのことが好きなんだ。 来月、どうにか会えないかなあ。 ■ 私と唯ちゃんが、実家に帰れるのは八月――つまりお盆の前の週辺りだ。 大学も夏休み入っているし、サークルにも入っていないから比較的時間に余裕はある。 大学に入って新しくできた友達は、バイトだったりとか運動部の大会なんかでなかなか家に帰る余裕はないそうだけど、 そうではない私たちは、やっぱり何処か『軽音部』の延長のまま過ごしているのかもしれない。 今日は、唯ちゃんの小さな下宿で一緒に楽器を弾くことにした。 四畳半という少し狭い部屋だけど、唯ちゃんはそれで十分らしい。 家具はきちんとそろっていて、昔訪れた唯ちゃんの自宅の部屋とどこかしら似た雰囲気を兼ね備えた部屋だった。 質素ながら味のあるテーブルが一つ中央にあって、クローゼットの周りには『がびょう』『貝柱』という謎の印字Tシャツが幾つも投げ捨ててある。 唯ちゃんの趣味も相変わらずだと思った。 時刻は夕方。窓からは少しオレンジ色の光が差し込んでいる。 唯ちゃんは正方形でとても小さなミニアンプをギターと繋げたりしている。 ケーブルとヘッドフォンが絡まったりして、解こうと一生懸命な姿は微笑ましい。 私はというとキーボードを机に置いて、電源を入れたりコンセントに繋げるだけでよかった。 ちなみに放課後ティータイムで使っていたあのキーボードは、実家に置いたままだ。 大切に取っておきたいし、皆との思い出が詰まっているから、五人の時だけ使おうと決めていた。 だから来年まで使わないだろうとこっちに持ってこなかったのだ。今使っているのは少し小さめの別の物。 唯ちゃんはというと、ギー太と呼ばれるギターしか持っていないので、それをそのまま持ってきたみたいだった。 アンプは部活で使っていた大きな物ではない。 それゆえに音もあまりいいとは言い切れないけれど、彼女は『五人じゃないから、音が悪くてもいいや』と言っていた。 五人で演奏することにこだわっているのは私と同じようだ。 「準備、できた?」 唯ちゃんがストラップを肩にかけるのを見て、私は声をかけた。 「あ、うん。ちょっと音量の調節はまだだけど、大丈夫だよね」 そうやって笑う。唯ちゃんの笑顔は、どことなく人を元気にしてくれる。 それはりっちゃんも同じだった。 ……今は、唯ちゃんとの演奏に集中しよう。りっちゃんの事を考えてたら、やることもやれない。 やりたいと思ってたこともやりたくなくなる。 「じゃあAにしようよ」 「Aでいいの?」 「うん」 A、というのは、私と唯ちゃんがこっちに来て作った幾つかの曲のうちの一つだ。 五人で演奏する機会はないけど、私は新規に曲を作り続けていて、暇な時にメロディを紡いだりしている。 そうやってできた曲は四曲ほどあって、完成した順にABCDと呼んでいた。 澪ちゃんがいないから歌詞もないので、今の時点では全てただのインスト曲。 ドラムパターンやベースラインも考えてあって、五人でまたアレンジしたりするのを楽しみにしている。 「じゃあ行くよ」 唯ちゃんが言って、首をリズムよく振った。 一、二、三。 私はリズムよく鍵盤を叩いた。唯ちゃんの、ジャーンという擬音がよく似合う音が適度な音量と強度で奏でられていく。 それから、頭の中に流れていく楽譜を追った。ドラムもベースもない薄っぺらな音色は、四畳半によく響いた。 ――。 楽しいけど。 楽しくない。 いつも私の横の位置で、楽しそうにドラムを叩くりっちゃんがいないのに違和感がある。 梓ちゃんのサイドギターも、澪ちゃんのベースもないのも……。 頭の中に思い浮かべた五人での演奏は、それで完全なもの。 そうでなくちゃいけなくて、それ以外であるとしっくりこない。 五人でなきゃ、やっぱり駄目なんだなって思う。 演奏は終わって唯ちゃんがジュースをコップに注いでくれた。 私は正座で座っていて、もうキーボードはケースにしまっていた。 少しして、唯ちゃんは訝しげな顔で尋ねてきた。 「ムギちゃん……あんまり楽しくなさそうだね」 そう思わないようにしていたのに、唯ちゃんはあっさり見抜いてしまった。 唯ちゃん、気を悪くしたかな。 「ううん、違うの……」 「嘘は言わなくていいよ。私も……そんなに楽しくないもん」 それは『私と一緒に演奏することが楽しくない』と言っているわけじゃない。 わかっていた。唯ちゃんも同じだった。 「五人でやりたいよね」 唯ちゃんは寂しそうに、すっかり日も落ちた窓の外へ目を向けた。 今、りっちゃんと澪ちゃんは何をしているんだろう。 あんまり連絡を取らないから、わからない。 もしかしたら予備校で二人で勉強をしているかもしれない。 晩御飯を一緒に作って、一緒に食べているかもしれない。一緒にのんびり座ってお話をしているかもしれない。 りっちゃんと澪ちゃんが一緒に。 一緒に。 二人にとって一番それがいいのに、私はそれを邪魔したいと思ってしまう。 りっちゃんが欲しい。 だけど澪ちゃんから奪えないんだ。わかってるんだ。 どうしようもないってことわかってるのに。 りっちゃんと澪ちゃんは、何年も一緒にいるんだ。 まだ出会って三年の私を、りっちゃんが好きになってくれるわけがない。 りっちゃんと澪ちゃんが一緒にいるのは、一緒にいる然るべき理由が何十何百もあるから。 理由なんてなくても、お互いの心がそうしているから。 だから私は、澪ちゃんには勝てない。 私は、膝の上の拳を握りしめた。 「ムギちゃんは……まだりっちゃんの事、好きなんでしょ?」 はっとして唯ちゃんを見ると、私の方を見ずにギターの手入れをしていた。 ばれていたんだ。 唯ちゃんって、やっぱり凄い子だ。 「うん……そうよ」 「会いたい?」 「……うん」 「じゃあ会おうよ。それで、気持ちを伝えたらいいんじゃないかな」 唯ちゃんの声は、いつもみたいに明るく元気なトーンではなく、冷静で、まるで言い聞かせるような優しさを含んでいた。 そうしたら? と言われて、できるものならやっているのに。 りっちゃんが好き。それを伝えて、りっちゃんはどう思うだろう。 もしそれで迷惑がかかったら。りっちゃんが嫌な思いになったらと思うと怖くて。 もしかしたら五人で集まることができなくなるぐらい、気まずくなっちゃうかもしれないのに。 気持ちを伝えたら、苦しいの終わるのかな。 「……りっちゃん、会ってくれるかな」 「りっちゃんは、怖いんだよ。皆に嫌われたんじゃないかって思ってる」 それをわかってる。 そんなこと絶対にないのに。 信じてくれてないのかな。 「『仲間が自分を嫌うわけないのに、嫌ってるかもと思ってしまう自分』も嫌いだとも思ってるはずだよ」 まるでりっちゃんの心を読んでいるように、りっちゃんの心情を読み上げる唯ちゃん。 唯ちゃんの言っていることが本当なら、りっちゃんは相当辛いだろう。 「だから、私たちは嫌ってないって言ってあげなきゃね」 そう言って、微笑んだ。 私は、頬を緩めて頷いた。 ■ お風呂からあがって、ボタンのパジャマで夜を過ごす。私はふと、本棚を見た。 律のドラムスティックが、本棚の隅っこで埃を被っていたのだ。 肝心の律はベッドの上で赤本を読んでいた。 唯たちのいる大学の物だろうけど、この時期から赤本に取り掛かるのは早すぎる。 それとも早いうちに対策を立てるつもりなんだろうか。 私もあの女子大の赤本は持ってるが、今はそれ以外の事に力を注いでいる。 気になるのは、律が勉強ばっかりってことじゃない。 あの律が、家でドラムの練習をしていないこと。 卒業して三カ月、ほぼ二十四時間毎日一緒にいるけれど、律がドラムの事話したことはほとんどない。 もちろん律の中では、ドラムというのは重要な位置を占めるものだろう。 五人で過ごした軽音部の核で、私と一緒にバンドを組もうって言った時、律がやるドラムだったんだから。 だから、律の中でドラムはまだ輝いているはずなのに。 それを触ろうともしないなんて。 「律ー、ドラムの練習しないのか?」 あまり深刻にならずに、問うと、律は何の気なしに返した。 「してる暇、あるのか?」 ――そうだけど。 確かにそうだけど。 私たちは浪人なんだ。律は受験に失敗して、私はその後を追って辞めたから、一般的に見れば負けたみたいなものだ。 本当は勉強をたくさんして、目指すべき大学に入ろうと努力しなきゃならないんだ。 そういうものなんだろうけど……。 「……澪だって、ベース弾いてないんじゃないのか?」 図星だった。 私は言葉をなくす。 でも律は、こっちを向いて目を細めた。 「――だけど澪、勘違いすんなよ」 「……え?」 「私さ……今も、いつでも、ドラムや澪のベース、大好きだから」 さっきの優しい瞳は、私の気持ちを汲み取ってくれたんだろうか。 もしかしたら律が、ドラムを嫌いになっちゃったかもって。 そう思ってた私が、ちょっと恥ずかしい。 そこだけは変わらないんだなあって。 嬉しい。 「……でも、しばらく叩けない」 律は切なそうに白い歯を見せた。 さっき心は温かくなったけれど、またちょっとだけ胸は痛んだ。 「――自信がない。こんなにたくさんの人に迷惑をかけて、澪を困らせて、梓や唯、ムギと会いたくないと思っている内は、叩きたくないんだよ」 律は赤本をテーブルに投げ捨てた。そして、仰向けで寝転ぶ。 この位置からでも表情はよく見えた。 「澪もわかってるんだろ?」 「……何を」 律の言いたいことはいつだって、なんとなくわかるんだ。 でも、それでも信じたくないんだ。 「私、変わっちまったよな」 「そ、そんなこと――」 反論しようとしたけど、言葉が出ない。 そんなことないよって、言いたいけど。 律は仰向けのままこちらに首を回して、笑った。 いつも律の笑顔は寂しそうだ。 それが私の心を揺らしているっていうのに。 「昔みたいに元気ないし、笑いもしない。馬鹿な事もしないし、澪をからかいもしないしさ」 律は、自分を客観視できる。 昔からそうで、いつだって大人だった。 だから安心して殴ったり、一緒にいたり、ときには頼れたりできた。 根本的なところは何にも変わっていないって、断言できるのに。 変わっちゃったことがこんなにも悲しいなんて。 「あ、でも……澪にとっちゃ、からかわれなくなったのはいいことか」 律がそう言った時、頭に浮かんだ記憶。 『すごい! 百点だ!』 『左利きなんだあー!』 『綺麗な髪だねー!』 『わあ、手の豆潰れちゃった!』 『澪ほどメイド服姿が似合う奴、なかなかいないぞー!』 ……。 いっつも殴り返してたけど、確かに嫌がってたかもしれないけど。 嬉しかった。楽しかった。好きだった。 そういうの全部、私と律にしかできないことなんだって。 だからそういうのも大切な時間で。 愛おしい。 またからかってほしい。いじってほしい。私に構ってほしい。 「嫌なんかじゃ……なかった」 無意識に漏らしていた。記憶から戻った時、律はこっちを不思議そうな目で見ていた。 私はゆっくり近づいて、律の倒れているベッドの端に座った。少し顔を左に向けると、律の顔がさっきよりもよく見える。 律は倒れたまま私を不安そうに見ていて、もしかして私、泣いちゃっていたかもしれなかった。 独白のように、私は言う。 「……律が私をからかってくれるの、ちょっと嬉しかったりしたんだ」 恥ずかしくて殴ったりもしたけど。 「でも、澪……いつも殴ってくるだろ? あれ、嫌だからかなって思ってて」 「――律は気付いてないかもしれないけど」 気付いてるかも知れないけど。 そんなに気にしない事かも知れないけど。 「私、律しか殴らないんだよ」 「……知ってるよ」 「なら、わかるだろ……私、律にしかできないんだ」 律にしかできない事。 それが私の、律に対する想い。 「律が、好きだから。大切だから。照れ隠し」 「……馬鹿だなあ澪」 「ば、馬鹿ってなんだよ」 「……でもさ、もし澪が嫌がって私を殴ってたとしても、私はいじるのをやめなかったなあ」 「……なんで?」 「澪が可愛いから」 「って、な、お前――」 瞬間、律が私にキスをした。 律は私の言葉を遮って、体を起こした勢いのまま唇を重ねたのだ。 「んっ……」 律の舌が入ってくる。 絡みつく少し湿った感触。 「っ……」 力が抜けて、抵抗も何もできやしない。する気もなかった。 目を閉じた分、暗闇で律の為すがままになっているような感覚。 私の五感は全て口元に集められているように、言いようのない感情がせめぎ合う。 体が熱くなって、顔も熱くなって。 風邪を引いたときのような、火照った高揚感。 口を結んだまま、律はゆっくりと私をベッドに押し倒した。 パサリという音が聞こえて、私の長い髪の毛がシーツと擦れた音だと悟った瞬間、律は唇を離した。 「っ、ぷは……」 私は情けない声を出してしまう。目を開けると、律は私を意地悪そうで――それでいて切なそうな目で見ていた。 微かに私たちの口と口の間に、透明な糸が張っている。 律は細い指でそれを絡み取ると、舐めた。 「澪は可愛すぎるんだよ……」 「り、律……ちょっとまっ」 律は私のパジャマのボタンに手を掛けた。 プチ、プチ。 小さな音は、大きく反響する。 律の手が、微かに私の胸に触れた。 「っ……あっ……」 「ごめん……嫌なら、嫌って言ってな」 律はいっつも優しい。 優しくて優しくて。 そんな律が大好きで。 「い、嫌じゃない」 私が強い口調で言ったためか、律は少し驚いていた。 律と『やった』ことは、何度もある。でも、『今の律』になってからは初めてだった。 体を重ねることは、初めてじゃないのに。 どうして嫌かどうかの確認なんてするんだ。 私の気持ち、知ってるくせに。 「……律じゃなきゃ嫌だ。私、律がいい」 「――私も澪がいい」 左手と右手を重ねて、指を絡ませる。離さないというようにお互いが強く握った。 律は、目の端に光るものを見せながら、笑った。 「澪じゃなきゃ嫌だ……澪とずっと、一緒に……ずっと……」 さっきの笑みが崩れて、泣き出してしまった。 私が気持ちを伝えると、律はいつも感傷的になる。 それでも涙を零して、掠れた声で私に想いを伝えてくれる。 「澪……」 「うん……いいよ、律」 もう一度、深いキスをした。 戻|TOP|次
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Hollywood Glam rock in the vein of Bulletboys/Black n Blue Tora Tora. Featuring Big Bang Babies drummer and Tuff bass player. Fronted by Joey Martell. Perris Records. 2004. Syanide Kick Syanide Kick 2005年7月26日 1. Intro / 2. Hollywood Angel / 3. Young And Wild / 4. Tonight / 5. In You Or On You / 6. Sky High / 7. I m Lost / 8. Let Me Down Easy / 9. Sister Groove / 10. Legs Up High ! produced by Joey Martell M Blaze
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http //ikuzawa-aik.com/ member HARD ROCKS, ex-TWINZER guest MANISH TWINZER / Like A Teen Spirit ( 1997年7月24日 ) TWINZER / Feel All Right ( 1994年8月21日 ) TWINZER / Oh Shiny Days ( 1993年11月24日 ) HARD ROCKS / Live @ Hard Rock CAFE Tokyo, Ropponngi, Tokyo June 11th 2008 MANISH / Individual ( 1994年10月24日 )
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玄関には、ちゃんと律の靴があった。 いるってわかっているから、余計に緊張する。だって何を話せばいいのかわからない。 話したいことも、言いたい想いも溢れすぎてて、言葉に出来そうもなかったのだ。 律が変だったのは、多分私の所為だ。 そうじゃなきゃ、あんなにおかしくなるわけないと思うのは自惚れかもしれないけれど。でもこの数日間、律は私に構ってばかりだった。 何が悪かったのか、わからないのが悔しい。 だけど謝るだけはしたい。 私が、律の事を好きでなくなりそうだったことを謝りたい。 靴を脱いで、上がる。まだ聡は帰ってきていないだろう。 誰もいないんじゃないかと錯覚するほどに静かな家。 足音は私のだけ。 静かすぎて、普段は聞こえないような床の軋む音が聞こえる。本当に律はいるのか怪しいぐらいだ。 でもいるんだ、律は。 階段を上る。ドアノブに手を添える。 変に緊張した。 「……」 唇を舐めて、入ろうとした。 その時だ。 「……澪ー?」 名前を、呼ばれた。 ――律だ。 律の声だった。 たかが何日ぶりのはずなのに、本当に久しぶりに名前を呼ばれた気がした。 他の誰かじゃない、律に呼ばれたんだ。 やっぱり律に呼ばれるのは、しっくりくるというか――そうあるべき感覚というのがある。 嬉しくて泣いちゃいそうで、ドアノブを捻る手が止まる。 でも私が来てるの、バレてるから。 「超能力者か」 いつもの私で、部屋に入った。 律は、自慢のおでこに熱覚ましのシートを貼っていて、首から下をすっぽり布団におさめていた。 最後に見た律は――調子が出ないと、放課後ねと言って部室を出て行った律だったから、 あの時よりも吹っ切れたような優しい瞳がこちらに向いているのに、私はなんとなく律がいつもの律に戻った事を悟った。 「わかるよ。澪の足音は」 律がそんな事を言うので、恥ずかしくて目を逸らしてしまう。 私だって、律の足音くらいわかるぞ。 そう返すのは後にして、私は荷物を置いて、律のベッドに背を預けるように座った。 「風邪どう?」 「まだちょい熱ある」 「……どうりでドラムに力なかったはずだ」 あの時から、もう風邪ひいてたんだ。 それに気付かないで、私は。 「学園祭の前……なのにな……」 律が布団に潜り込んでしまう。 やっぱり自分の事情けないとか、思っちゃってるんだろうか。 そんなことないのに。 「いいから早く治しなよ……皆待ってるからさ」 私は、律が入って膨らんでいる布団に頭を乗せた。 「……怒ってない?」 律の声は委縮していて、聞き取り辛いほどか細かった。 「ないよ」 唯やムギ、梓は、皆心配していた。 練習ができない事や、五人がそろわない事に。 だけど一番皆が心配していたのは、律の元気で明る声や、顔が見れなかったことだと思うんだ。 いや――それは、皆じゃなくて私だった。 「……澪は?」 怒ってるわけがなかった。 「……ないよ、当たり前だろ?」 私は自分に怒ってた。 なんで律がこんなになるまで、気付いてやれなかったのか。 きっと、ずっと前――もしかしたら、和と唯でお茶を飲んでいる時よりも、前……その時から、律は風邪をひいてたのかもしれない。 もう何日も前だ。それに気付かないで、もしかしたら、律の事冷たくあしらったりしていたかもしれない。 私は昨日まで、『律の事を好きじゃなくなっていた』かもしれないのだ。 馬鹿律って、この数日間言ってきた。 そりゃ律にも悪いところがあったかもしれないけど……。 馬鹿澪でもある。 「でも、律のドラムがないと……ちょっと寂しいかな」 律のドラム、だけじゃなく律がいないと寂しい。 でもそう言うのは、照れくさかったかな。 「私、走り気味でもさ……やっぱ意気が良くって、パワフルな律のドラム、好きなんだよ」 いっつも走ってばっかで。 同じリズム隊としては、とてもやりにくくて大変だけど。 そんなドラムが大好きだから。 「――」 律の顔のある方向へ目を向けると、律はこっちを見てにやついていた。 「あっ律、お前――」 「ふふ、あははは」 律は笑いだした。 私は、何か突っ込もうと思ったけれど、忘れていた。 「もう治ったー!」 律は勢いよく体を起こし、両手を広げる。 そのまま続けて顔を歪めてくしゃみをした。 「くしゅん」 「いや、治ってないから」 強がるあたりが、律らしいなと思った。 私は、布団を掴んで律を寝かす。 「ほら寝てなって……まだ熱あるんだから」 律は大人しく枕に頭を乗せて、私は布団をかけてあげた。 調子は、そんなにいいとは言えない。 部屋の中央の小さなテーブルには薬が置いてあったから、今日一日静かにしていれば明日から元気になってくれるだろう。 昨日は私に風邪をうつしてくれてもいいと思っていたけど、今は私と律のどちらかが風邪になるのは嫌だなと思った。 だから今日は、帰ろう。 「じゃあもう帰るな?」 そう言って振り返った。 でも。 「ええー、寝るまで傍にいてよー……」 手を掴まれた。 「ねえ、お願い澪ー……」 ああ、もう。 そんな声で言われたら帰れないだろ! 私は律を見て、溜め息混じりに言った。 だけど、笑みも零れちゃったかもしれない。 「やれやれ……」 呆れて見せた。でも本当は嬉しかった。 私も、律の傍にいたかったから。 「へへっ」 やっと見れた。 律の笑顔。 たった一回の笑顔でも、こんなに心を満たしてくれるのもやっぱり律だけなんだ。 ■ 「澪……」 手を握って、私は律の顔が見える位置に頬杖をついていた。 律が私の名前を呼ぶ。 「どうした?」 「……なんというか、ごめんな」 律は火照ったように少し赤みのかかった顔で謝る。 「澪も気分悪かっただろ、最近の私」 「……そりゃ、なんだか変だなとは思ったけど」 「私、澪に嫌われたと思ったんだ」 律はごまかすように目を細めて笑った。 「なんで、私が、律を嫌いになるんだよ」 「ほら、楽器屋でさ」 ……あ。 『ほら皆、待ってんだって』 『嫌だ』 『みーおーちゃーん』 『ちょ、律、危ないって』 『何やってんだよ澪ー』 『もういいよ、馬鹿律』 「……そのあと、私じゃなくて和とお茶に行っちゃったし……私の事、嫌いになっちゃったのかなって」 「ご、ごめん!」 私、律を傷つけてたんだ。 知らなかったけど、気付けなかったけど……私、何も考えず、馬鹿律なんて言って。 律の事放っておいて、和とお茶に行ったから……律が勘違いするのも、わかる。 もう全部私が悪いんだ。 「なんで澪が謝るんだよ、珍しいレフティを見てたいと思うのは当たり前だしさ」 「わ、悪いのは私だろ。あの楽器屋で、わがまま言ったのは私だし……考えなしに律の事悪く言ったし…… それに、律がお茶にするって言ったのに、私、和の方を選んで……」 「和と行くのは、別にいいだろ。友達なんだから」 「……」 「悪いのは、そうやって澪が和と仲良くなるのに嫉妬した私だよ」 律は自虐気味、というよりも自嘲を含んだ声色でそう言った。 嫉妬、してくれたのか。 「怖かったんだ。澪が、私の事忘れて、和や他の誰かと仲良くなるのが…… もう私の事、構ってくれないんじゃないかって、不安で」 「り、律の事は――」 「いいんだよ。だって、澪が誰かと仲良くなるのは当たり前じゃん。むしろ、喜ぶべきなんだけど…… それでも、嫌だったんだ」 嫉妬なんて。 私だって何度だってあるのに。 律は昔からとても友達が多くて、誰構わず話し掛けていたし、誰とだって遊んでいた。 まさに私とは対照的な奴。 私にとって、律は初めてできた友達で、親友だった。 だから、律が誰かと仲良くしているのを見ると、胸が痛かった。 そんな気持ちになるの、私だけだと思ってた。 「馬鹿律」 「いたっ」 私は律のおでこに、シートごとデコピンした。 「な、何すんだよー」 「お前な……今までどれだけ私も同じ思いしたと思ってるんだよ」 「は、はあ?」 律は訝しげに眉を傾けた。 やっぱり気付いていないのかよ。 「律、お前は浮気しすぎなんだよ」 「浮気って……」 「私には……お前しかいないんだよ。律はたくさん友達いるし、簡単に作れるけど…… 私、人見知りだから、自分から作るなんて……できないんだよ」 「……知ってるよ」 「だから、私いっつも思ってた。律が誰かと仲良くしてるの見て、怖かったんだ」 「澪……」 あの気持ち、わかってたはずなのに。 どうして律の気持ちに気付けなかったんだろう。 好きな人が誰かと仲良くしていたら、嫉妬すること、知ってたのに。 律が誰かに嫉妬するはずないと、思ってたのかもしれない。 律がそんな風に私を見てるなんて、思ってなかったから。 そんな風に、私の事想ってくれてるなんて。 「……馬鹿。私は澪だけだよ」 「本当に?」 「本当だって」 白い歯を見せる律。 その笑顔は、魅力的すぎる。 どうしてこの可愛さや、かっこよさに誰も気付かないんだろう。 気付かないままでいい。ずっと私の物でいいけど、皆にも知ってほしい。 複雑な気持ち。 「澪じゃない誰かといる時も、ずっと澪の事考えてる」 「……ありがとう、あと、ごめん」 「だからなんで澪が――」 「わ、私!」 律の言葉を遮って、叫んだ。 律の手をギュッと握りしめる。 そしてありのまま告げた。 「もしかしたら、昨日まで――律の事、忘れかけてたかもしれないんだ」 「――」 律は虚を突かれたように笑顔をなくした。 でも言葉に続きはある。 「律が私を構ってくれるの、嬉しかったのに。でも、和とのお茶やお弁当を邪魔されるの…… ちょっとだけ嫌で、ちょっかい出されるのも、なんだか嫌で。む、昔はそんなことなかったのに」 喉が詰まる。 だけど、だけど。 言わなきゃ。 「なんで律の事、ちょっとだけうるさいと思っちゃうんだろうって思って―― もしかしたら、もう律の事、好きじゃなくなったのかもって……怖くて」 律の事ずっと大好きでいたかった。 だから、律の事を嫌いに――嫌いとまでは行かなくとも、 好きという感情が消えている域まで行っちゃったのかも、と思うのは辛かった。 律は何も言わず、私の目だけ見つめてくれていた。 握り締めた手も、もっと強く握り締めてくれた。 「でも、気付いたんだ。昨日――律の事を考えただけで、泣けてきて……もう涙が止まらなくて。 会えない事が苦しくてさ……律の顔が見れない事や、律のドラムが聴けない事……私の名前を呼んでくれない事が、辛くて」 律の部屋でうずくまって、律の事だけ考えた。 知らず知らずに泣いていた。 鏡を見て、それに気付いた。 「そんな気持ちにしてくれるの、やっぱり律だけで……私には律しかいないって、改めて思ったんだ」 「澪……」 頬に、またなんだか違和感。 律と繋がっている手とは別の手で、そこを撫でた。 また濡れてた。 「……ごめん、律……私、これからは……ずっと……」 「ああ、ほら。泣くなって」 律はあったかい手で、涙を拭ってくれた。 律のお見舞いに来ておいてなんてざまだ……。 でも、やっぱり嬉しい。 「ありがとな、澪……私も、こんな気持ちにしてくれるのは、澪だけだよ」 「ひっく……こんな気持ちって……?」 「澪が誰かと仲良くしてるの見て、嫉妬するとか……泣き顔かわいいとか……ってああもう! 言わせんな恥ずかしい!」 「……っ……ふふ……あはは」 久しぶり、律。 それから、ムギたちが来るまで、色んな事を話した。 律が苦しかったのは原因を作ったのは私で、無意識のうちに律を苦しめていた。 私が謝れば律は私の所為じゃないと言ってくれるけれど、全ての原因は、私の律への気持が薄れかけていた事にあったんだ。 でも今は、薄れてなんかいない。 もう私には律しかいないんだって、本気でわかったから。 「大好き、澪」 「私もだよ、律」 こうやってずっと笑い合っていたい。 ■ あれから、私たちは私たちを誓い合った。 ずっと一緒だって。 そして今も、共にいる。 お互いがお互いを気遣いあいながらも、時には悩んで、相手の事を想いすぎて辛くなったりもするけど―― 隣にいる事に躊躇など覚えなかった。 律は、また一人で何かを抱え込もうとしている。 それを分かち合えるのは、私だけだって思いたいから。 こうして、今を一緒にいる。 戻|TOP|次
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授業中、何度も携帯をパタパタしたけど連絡はなかった。 おかしいなあ……澪先輩たち、正午に合格発表って言ってたのに。 もし結果がわかったら真っ先に私や憂にメールするって約束してくれたのに。 携帯の画面に新着メールの表示はない。もう正午はとっくに過ぎて、あと五分ほどで授業自体が終わってしまう。 さっきまで緊張したり、合格しますようにって祈ってたけどなんだか拍子抜けだ。 もしかして私に連絡するの忘れてるのかな? チラリと憂の方を見ると、机の陰で携帯をじっと見つめていた。 どうやら彼女にもメールは届いていないようだ。憂にもメールが来ないなんてどういうことだろう。 そうこうしていると、午前の授業終了を告げるチャイムが鳴った。 結局先輩たちからは何の連絡も来なかった。 起立して礼をすると、教室は弁当を広げるクラスメイトで騒ぎ立つ。 何の表示もない画面を見つめながら座っていると、純がやってきた。 「梓ー、先輩たちから何か来た?」 「ううん……さっきから待ってるんだけど来なくて」 純の後ろから憂が顔を覗かせる。 「憂は唯先輩から何かなかったの?」 憂は不安そうに首を振った。 「何かあったのかな……」 「まさか、全員不合格とか」 純が縁起でもない事を言った。 「いや、唯先輩や律先輩ならともかく、澪先輩まで落ちるってのは」 考えられない。澪先輩が落ちるなんて考えられない。 元より成績がよかったみたいだし、公立の推薦狙えるレベルだったのだ。 そりゃ先輩たちの受けた女子大もそこそこのレベルだけど、澪先輩に限って落ちるなんてことはあり得ないだろう。 「じゃあなんで連絡ないんだろうね」 純が私の机にお弁当を置いた。 結局連絡がないまま、私は自宅に帰ってきていた。もう五時になろうとしている。 (……先輩たち、どうだったのかな) 澪先輩に電話をしたら電源が切られていたし、メールの返事もない。 他の三人の先輩にもとりあえず電話を一通り掛けてみたけど、全員出なかった。 四人全員と連絡が取れないなんてどういうことだろう。 何かの事件に巻き込まれたとかじゃないよね……。 落ち着けないまま一人でギターを弾いていると、携帯が鳴った。 「……!」 やっとだ。画面には律先輩の名前が表示されている。 澪先輩ではなかったのはちょっと残念だけど、でもようやく先輩たちと話せる。 おおよそ全員合格してお茶を飲みに何処かに寄っていて、電源を切っていただけとかであろう。 「はいもしもし! 律先輩ですか?」 声高にそう尋ねるが、向こう側はいたって静かだ。 「律先輩?」 数秒の沈黙の後、返事。 「梓……」 この違和感はなんだろう。 冗談なんかじゃない。空気が。 律先輩の声は酷くか細くて、普段の先輩とは印象が大分違う聞こえ方だった。 先輩は少し何かを溜めて、ゆっくりと告げた。 「――ごめん。私だけ落ちた」 え? という疑問詞だけが頭に浮かんで浮かんで、消えなかった。 「本当にごめん」 悟りを開いたような声色に、鳥肌までも感じる。 律先輩だけ不合格? 想像していた笑顔の未来は、音を立てて壊れたような気がした。 何を言えばいいかわからない。 「あ、あの……えっと、え?」 「混乱しちゃうよなそりゃ。本当にごめん。私だけ不合格だったんだ」 不合格不合格。律先輩だけが。 じゃあ澪先輩は合格してるの? 何を考えてるんだ私は。 律先輩が落ちちゃったのに。澪先輩の事を考えてる。 むしろべったりだったあの二人が別れることに喜んでいるなんて。 「え、でも他に滑り止め受けてますよね……?」 「……澪たちがいなきゃつまらないから全部辞めてきた」 えええ、ってことは律先輩浪人? 私は追いつかない心と言葉に焦る。 「じゃ、じゃあ、浪人するんですか」 わざわざ聞かなくてもわかる。でも言葉を紡がなきゃ気まずい。 あんなに快活な律先輩が、ここまで静かなのは変だから。 やっぱり落ちたことショックなんだろうな……。 「予備校に通うよ。一年後、もう一回同じところ受ける」 「じゃあ私と一緒ですね」 一年後先輩と同時に受験かあ……なんかやっぱりおかしいなあ。 もしそれで合格なら同い年だし、律先輩ではなくて同級生になってしまう。 滑稽な関係になっちゃうな。それはそれでまたからかわれちゃうかもしれないけど、それもいいかな。 五人でまた色んな事できたり、澪先輩と色んな事話すの楽しみだな。 律先輩がこのままニートになるんじゃないかと心配していたけど、どうにか立ち直ってくれそうだとわかって。 さっき頭の中で砕けた明るい未来は、少しだけ色を取り戻した。 後一年、私と律先輩は先輩たちの待つ女子大をそれぞれ頑張って合格するんだ。 なんだか勉強する気が出てきた瞬間だった。 律先輩は申し訳なさそうに言った。 「実は……澪も大学を辞めたんだ」 「――」 「だから、澪と頑張ってもう一回あの女子大に合格する」 「――」 え? 「――ごめんな梓。もう私、先輩じゃないけど……でも皆でまた音楽やりたいからさ……一年遅れだけど、またバンド組もうな」 うんそうですね。やりたい、バンド活動したい。 いつまでも放課後ティータイムでやりたいって。 思ってたし、澪先輩や唯先輩、ムギ先輩とも皆で音楽やっていきたいって思ってる。 だから受験生の私はあの女子大に向けて頑張ってた。 でもそれは二の次で、やっぱり何処か澪先輩と一緒にいたいって思ってた。 私、澪先輩の事が好きなんだ。 そういうの駄目だとか、女同士だとか――澪先輩には律先輩がいるから駄目だって思って。 ずっと我慢してきて。だから律先輩が落ちちゃったて聞いて、内心喜んでる私がいた。 やっと、やっと澪先輩と律先輩が離れるって。 距離が開いちゃうって。 そんな状況に喜んでる私は、なんて悪い子なんだろうって思う。 だけどそうだった。 律先輩はいつだって澪先輩を一人占めしてた。私だって澪先輩の事大好きだ。 二人きりで演奏だってしたかったし、お話したり勉強だって教えてほしかった。 だけど澪先輩の視線の先には、いつだって律先輩がいたんだ。 それが悔しくて。どうして私を見てくれないのって。 嫉妬だって笑われるから表情にも出さないで生活してきた。 澪先輩の事諦めようって思って唯先輩やムギ先輩とも仲良くした。 でも無理だった。 やっぱり部室で視界に映ってるのは、いつだって澪先輩だった。 澪先輩が大好き。 なのに、また律先輩に取られちゃうなんて。 澪先輩はやっぱり律先輩を選んじゃうんだって。 どうしようもないというのはこの事か。何か叫んだり捌け口を探したい。 でもそんなのない。私の心の中に黒いモヤモヤした痛みはすぐに広がって、袋小路に迷い込む。 痛いの嫌いだから、何処かへ行ってと心の中で懇願したって、この痛みはすぐに引いていかない。 「梓……?」 「み、澪先輩も……ですか」 「私も馬鹿だって思うけど……でもあいつがそう決めたんだ。二人でやっていくよ」 馬鹿だって? 私は奥歯を噛み締めた。 澪先輩は律先輩が大好きで、それで大学を辞めた。 そうは言ってないけど絶対そうだ。その選択を馬鹿だなんて罵る権利は、律先輩にだってないはずなのに! だからってそう律先輩に言う勇気もない。 馬鹿なのは律先輩だ。だから落ちたんだ。 澪先輩の気持ち、何にもわかってないのに。 どうして澪先輩は律先輩しか見えないの? 「じゃあ……本当にごめんな」 律先輩は終始元気がないまま、電話を切った。 去年の事を思い出す。 大好きな澪先輩の姿や、放課後ティータイムの皆の姿。 お茶を飲んだりお話したり……色んな事をしたけど、やっぱり澪先輩の隣にいるのは律先輩だった。 そこにいるのが当たり前のように。いなきゃいけないと見せつけるかのようにいつも一緒にいたあの二人。 私なんかじゃ、律先輩には敵わないのかな。 片手に携帯を持ったまま、私はその場に座り込んでしまった。 ■ 「この前やった模試を返すぞ」 予備校での授業も午後に入って、私は少しだけ疲れていた。 元々勉強を頑張るタイプではないし、受験前も本気でバリバリとやったということはない。 私には澪という心強い味方がいたので、きっと大丈夫だと信じていたからだろう。だから失敗したんだ。 今でもいつも澪と一緒に勉強するけど、わからないと駄々をこねたり、すぐに諦めるような事はしなくなった。 本当にわからないところだけ澪に質問するようにする。 澪の解説は昔から丁寧でわかりやすい。正直高校の先生や塾の先生よりも頭に入ってくる。 それは澪だからなのか、澪の解説が良いからなのかはわかりかねるけど。 先生が一人一人名前を呼んで、模試の結果の紙を返していく。 澪は緊張した面持ちで今か今かと待っていた。私は少し呆れて声をかける。 「なんだ澪。結果が楽しみなのか?」 「そうだな。自分自身手応えはあったと思うんだ」 澪の名字は『秋山』だから出席番号一番、ということはない。 予備校の在籍番号というものはあるが、それは先着順で、澪と私は一番違いで澪が先だ。 だから澪が席を立つと同時に私も立つ。高校時代は出席番号が離れてて、澪のテストの結果が楽しみだったな。 とある雑誌で好きな子のテストの結果が知りたい人が多いと書いてあったけど、どうやらマジなようだ。 「律はどうなんだ? よかったのか」 「ぼちぼちだな。やっぱりずっと高校時代に頑張ってきた人には敵わないよ」 この予備校のクラスはそこそこレベルの高い連中が何人かいる。 予備校に入学してすぐに行ったテストでクラス三十人中何位だったかでレベルが決まると風の噂で聞いたが、 私は二十三位で下位もいいところだった。澪は十一位とバリバリで上位だった。 やっぱり上位になる人は高校時代もずっと勉強してきた人だろうし、多分大学受験をするつもりはなかったんだろうなと思う。 難関大学を受けるつもりで自分から浪人した人が上位を占めているのだろう。 受験に失敗してここに来たのはせいぜいこのクラスの半分に満たないだろう。 澪の名前が呼ばれて、私と同時に席を立った。縦に並んで、教卓で待つ先生から順番に結果を受け取る。 この模試はこの予備校校内の模試で、全校生徒――とは行っても浪人生の学年――の総合順位が出る。 それなりに大きな予備校だから、確か浪人生は百人ぐらいいたかな。 先生は私たちに渡すと、また別の生徒の名前を呼んで行く。澪が席に戻りながら私に尋ねた。 「何番だった?」 「……六十七番」百人中。 正直微妙すぎる。中の下か。 今は六月で、入試に失敗してから一ヶ月くらいは本当に勉強はしなかったし、本格的に勉強を始めたのは予備校に入学した四月からだ。 まだちゃんとやり始めて二ヶ月。澪もそう簡単に伸びないと言ってくれる。 やっぱり高校時代に本気で勉強していなかったからかな。 「澪はどうだった」 「二十五番……」 「すげえじゃん」 いや冗談抜きですごいと思う。 「あ、ありがと」 澪は照れながら席に座った。可愛いなあ。 本当、私にはもったいない奴だよ。 少なくともいっつも調子こいてたくせにいざって時に一人だけ失敗する大馬鹿野郎な私なんかより、澪にお似合いな奴はいっぱいいる。 美人だし綺麗な髪だし何やらせても器用だし、そりゃちょっと怖がりだったり恥ずかしがりやなところもあるけど……。 考えれば考えるほど、葛藤は渦巻く。 お似合いな奴はたくさんいるけど、誰にも渡したくない。 澪の事、大好きだから誰かと一緒になってほしくない。 私と一緒にいてほしい。 でもそんな大層な事望むほど、私はそれだけの事を澪にしてやれる自信もない。 だけど澪が大学辞めるって言ってくれて、内心嬉しくもあった。 澪が遠くに行っちゃうんじゃないかって怖くて。 似たような気持ちになった事は何度もある。澪が他の誰かと仲良くなったりした時、嫉妬したり。 ああいう気持ちに似た何かというか……。 情けねえなあ私って。 「律?」 「え、な、何?」 「さっきから何回呼んでると思ってんだ?」 ごめんと謝ると、澪は少し目を逸らしてしまった。 最近ずっと澪に謝ってばっかりだ。 そういうのが澪をさらに悲しませちゃうってのはわかってるのに。 だけど私の全てがなんとなく罪になっているというか、失敗が何でも罪悪感に変わってしまっていた。 澪が今隣にいるのも、一緒に勉強してるのも、全部私が受験に失敗したからなんだって思うといたたまれない。 もちろん受験に成功していてもいつだって澪の傍にいるつもりだし、一緒に勉強はするつもりだった。 だけど状況はまるで違い、浪人なんて風当たりはまるでよくないし。 三年生の時元気一杯だったくせに受験に失敗なんて恥ずかしいったらありゃしないよな。 あーあ、高校時代に戻りたいなあ。 「で、なんだよ」 教室はまだ模試を返す喧騒に飲まれている。 澪に問うと、携帯の画面を見せてきた。 そこには、ムギらしい少しぽわぽわしたような……それでいて落ち着いた物腰を感じる言葉遣いで文章が綴られている。 ムギはあんまり変わらないみたいだな。 「……八月、唯たち帰ってくるんだな」 また胸が締め付けられる思いだった。 唯とムギは女子大の近くでそれぞれ一人暮らしをしている。 ムギは家の援助もあってかそれなりにすごい、ほぼ一戸建てみたいなところに住んでるらしい。 唯は唯で質素ながらも生活に支障はないところに住んでいるようだ。 卒業式から一回も会ってないから様子はよく知らない。 たまにメールがくる程度だった。だけど返事をしたことはなかった。 「でさ、ムギたちが会わないかって言ってるんだよ」 澪が何を言いたいのかなんとなくわかってた。 だけど。 「澪一人で会ってきなよ」 「えっ……」 携帯を澪に突き返しながら言うと、澪は顔をしかめた。 まあそうだよな。 「な、なんでだよ!」 一応教室なので、澪も声は抑えつつも私に怒鳴った。 模試の返却で教室自体は騒がしい。だから怒鳴る澪の声も、そんな教室の喧騒に飲まれた。 なんでって。 なんでだよ。 「……なんとなく、会いたくない」 皆と一緒にいたこと。 一緒に演奏してた事。 大学も四人で一緒に行こうって言ったこと。 私だけ受験に失敗したこと。 皆来年があるって言ってくれたこと。 そういうの全部、私の中で生きている。 だから、前みたいにいられない事が悩ましい。 自分が恨めしいんだ。 確かに来年がある。来年受験するよ。皆と同じ大学に行けるって夢は叶う。 だけど溝はできちゃったと思う。 努力が足りなかったって思われて、『皆と同じ大学に行く』という夢に本気でなかったって思われても仕方ない。 仕方ないけど、そういう風に思われてる。この結果に恐ろしさだって感じる。 皆で笑いあってたのは『過去』だったんだ。 皆いい人だ。澪も唯もムギも大好きな友達だ。 皆私の事をなんとも思ってないかもしれない。 別に『本気じゃなかった』なんて思ってなくて、本当に私の事を心配したり、期待して待っててくれてるかもしれない。 私の事を蔑んだり、嫌いになったりはしていないと思う。 だけど、皆がそうでも私がそうじゃない。 私は私が嫌いになった。 皆が見ていた『田井中律』は、こんな子じゃなかったと思う。 だから、会えない。 会いたくない。 澪以外と会いたくない。 ■ 私が皆に会いたくないって言った時、澪に嫌われるかもって思った。 放課後ティータイムの中で、私はムギと唯、そして梓を信じ切れていない。 大好きな友達で仲間だ。一緒にバンドを組んでいたいし笑いあっていたい大切な奴らなのは私も分かっている。 とってもいい奴で、誰かを悪く言ったりだとか、そういうことはしないんだって私だって思う。 だけど、だけどだけど。 やっぱり私の事、見損なったり、軽蔑したりしてるんじゃないかって。 不安で怖い。怖くて怖くてたまらない。 私が皆なら、受験に失敗した友達を見てなんて思うんだろう。 しかもその友達が、受験の時期だっていつもハイテンションな奴だったりしたら。 誰かにいっつも頼ってばかりで、鉛筆を転がして受験を乗り越えようとしてる奴がいたら。 やっぱり勉強真面目にしてなかったんだろ、って。 そう思っちゃうかもしれない。 だから怖い。 また皆で笑いあえるようになるのに、時間がかかる。 まだ会うのには早すぎる。 でも澪だけは。 澪にだけ傍にいてほしい。 わがままだって思われちゃうかもしれないけど。 私にとって澪は、そういう相手で。いてくれなきゃ、私はこんな不安と罪の重さに押し潰されちゃうかもしれない。 澪がいなかったら、どうなっていたんだろうって思う。 澪がいなかったら澪がいなかったら。 澪がいないなんて嫌だ。 澪が大学を辞めたって言った時、ちょっとだけ胸が痛かった。 また私の所為で澪に迷惑かけたって。 それもこれも全部私が落ちたからなんだなあと思うと、また責任と罪は体中に重く圧し掛かった。 澪は私の所為じゃないって言ってくれたけど、私が落ちなきゃ澪は大学を辞める必要もなかった。 折角公立捨てたのに、全部パアなんだなって思うとまた私の中に痛みは広がっていく。 だけど澪は言ったんだ。 そうするのは全部、律と一緒にいるためだって。 そんな一言だけで、私はここにいれる。 生きていられるんだ。 戻|TOP|次