約 3,056,288 件
https://w.atwiki.jp/henroy/pages/116.html
nothing(前編) ◆7pf62HiyTE 03.池波流ノ介の悪夢 池波流ノ介がゆっくりとその意識を覚醒させる。 「私は……確か……」 記憶の糸をたぐり寄せる――そう、あの時眼前にいた外道衆の1人にして殿である志葉丈瑠を付け狙う敵腑破十臓を斬るべく挑み―― 「負けたのか……」 殿の手を煩わせぬ為に1人で挑んでおきながらこの体たらく、結果として十臓を野放しにし殿や多くの参加者を危険にさらす事となってしまった。 「そうだ、あの子は!?」 そんな中、あの場にいた少女の存在を思い出した。 強大な砲撃を繰り出し両名の戦いを止めるべく介入したまだ幼い少女、彼女の身を案じ周囲を見回す。 彼女は結果として流ノ介の妨害をしたわけだが彼女自身に悪意はない、単純にこの殺し合いで誰も死んで欲しくないだけなのは流ノ介自身も理解している。 だが彼女は知らないのだ、外道衆がどういった存在なのかを。 奴らを野放しにすれば多くの人々の命が脅かされる、侍として外道衆は何としてでも斬らねばならないのだ。 それでなくても、この場には外道衆の総大将血祭ドウコクもいる。奴を倒さぬ限り参加者に未来はない。 そしてドウコクの打倒を可能とするのは志葉の当主つまりは殿だけが使える封印の文字だけだ。 その殿への負担をかけぬ為、殿への障害となる者を排除しなければならない。 それは十臓などと言った外道衆だけではない、殺し合いに乗り殿の身を脅かす者全てに言える。 だが、恐らく彼女はそれをも止めるだろう。もしかしたらドウコクすら殺すなと言うかもしれない。当然それを容認するわけにはいかない。 しかし、彼女はまだ幼く何も知らないだけなのだ。 誰だって目の前で他者が傷つく姿を見たくはない。そういう意味で言えば彼女の行動は至極当然の行動だ。 「だがあれ程の砲撃を撃てば……」 が、彼女の繰り出した砲撃はあまりにも強大すぎる。戦いを止める威嚇の為である故当てるつもりは無かったのはわかるがそれでも過剰な威力だ。 シンケンジャーである自分や外道衆である十臓ならば直撃しても致命傷にはならないだろうが、普通の銃器を持っている普通の人間に当たったらどうなる? 彼女はそれを――自身の力が一転して人を傷付けるものである事を理解しているのか? とはいえ今はその事はどうでもよい。問題は彼女の安否だ。十臓自身は殺し合いに乗っていないと言っていたがどこまで信用出来るかわからない。 仮に言葉通りであっても彼女が十臓を止めるべく立ち塞がるならば奴が斬るのは想像に難くない。 しかし幸か不幸か彼女の姿は見当たらない。これは彼女が無事である事を意味しているのか―― だが、それ以上に流ノ介は違和感を覚えた。 「ここは……」 それは今自身がいる場所だ。おどろおどろしい雰囲気が漂い、眼前には巨大な河が広がっている。 「まさか……三途の川か?」 何故外道衆の本拠地である三途の川にいるのか? 流ノ介の理解が追いつかないでいる。 そんな中、目の前に誰かが立っているのが見えた。 その人物は流ノ介のよく知る人物。そう―― 「とのぉ……!!」 殿、すなわち丈瑠だったのだ。あまりにも不甲斐ない戦いをした為、顔を合わせづらくはある。それでも早々に守るべき殿と再会出来た事は素直に嬉しい事だ。 だが、殿の様子が何処かおかしい、自分に失望したのか? いや―― 「なっ……」 殿は自身の持っていたショドウフォンを地面の上に置き――そのまま振り返り河の方へと進んでいったのだ。 「な、何故なのです! 殿!!」 流ノ介の叫びに構う事無く殿は河へと進んでいく、 「!! その手にあるのは……裏正……何故殿が!?」 そして見た、殿の手には十臓の得物である裏正が握られているのを。 何故十臓の裏正が殿の手にあるのか? それ以前に、何故殿はシンケンジャーとしての力であるショドウフォンを捨てたのか? そして何故流ノ介の声を聞くことなく河へと進むのか? 「待て……確か裏正は……」 裏正は只の妖刀ではない。裏正は筋殻アクマロがある野望を果たす為に十臓の家族の魂を閉じこめた上で作り上げ十臓に持たせたもの。 もっともその野望は果たされる事無くアクマロは十臓に斬られ、最終的には自分達が撃破してはいる。とはいえ、名簿に何故か名前があった事が少々引っかかるが―― さて、十臓の家族はずっと人斬りに走ろうとする十臓を止めたいと願っていた。もっとも、十臓は裏正に込められた魂、そしてその願いを知りながら平然と人を斬り続ける外道に落ちたわけではあるが。 では、今殿が裏正を持っているのにどんな意味があるのか? 「まさか……」 明らかなる殿の奇行、それらを突き詰め1つの結論を導き出す。 「何故ですか殿!! 答えてください!!」 だが流ノ介はそれを受け入れる事が出来ない、いや出来るわけがない。何故長きに渡り志葉の当主として外道衆と戦い続けてきた殿がそれを捨て―― これはきっと悪い夢なのだ―― あの殿が○○に○ちる事など―― 悪い夢なら覚めて欲しい―― 「こんな事など……あるわけがない……!」 そう呟く中、 「そんな筈ありません!!」 気にしていた少女の叫びが聞こえてきた―― 01.明堂院いつきの推察 それは、邪悪の神との戦い―― 『全ての光を飲み込むこのブラックホールを前にお前達など無力……』 この世の全てを飲み込む混沌にして闇の意思そのもの―― ラビリンスや砂漠の使徒等敗れ去った邪悪なエネルギーが宇宙を彷徨い出会い融合し全てを飲み込む宇宙最大の力として復活した存在―― その力はあまりにも絶大だったが―― 『何があっても私達の心は暗闇に飲み込まれたりはしない!』 『どんな時も私達の心の光は明日を目指して輝くの!』 『たくさんの素敵な出会いが多くの成長と新しい旅立ちに繋がっていく!』 『私達は決して立ち止まらない! 例え大きな困難にぶつかっても!』 『大好きなみんなと歩みたい、光り輝く未来は絶対に手放しません!』 自分達は決して諦めず立ち向かい―― 『下らん、例えそれが叶ったとしてもお前達はもうボロボロなんだぞ……』 プリズムフラワーの力を全て使い切った事で妖精達の世界と自分達の世界を繋ぐ事が出来なくなり別れる事になったとしても―― 『ハミィ達妖精と私達はお互いを思い合う心で繋がってるの!』 『絶対負けない! 何があったって私達は真っ直ぐ自分達の明日へと……進むんだからー!!』 勝利し――そして―― 『………………んん……?』 『『『お花の種です!!!』』』 『『これってもしかして!!』』 それは奇跡だったのかもしれないが―― 『でもどうしてこっちに戻って来られたんですか?』 『虹の種から新しいプリズムフラワーが咲いたですぅ』 これからも皆一緒の未来を掴んだ――筈だった。 ――が、その未来は再び脅かされる―― ある時、明堂院いつきが気が付くと暗い広間にいた。 そして加頭と名乗った男による殺し合いの説明――当然だがいつき自身そんな話に乗るつもりは全く無い。 しかし、話が進む内に見過ごせない事が起こったのだ。 首輪のデモンストレーションの為に3人の首輪の爆破が行われた。それ自体はまだ良い、だがその中に砂漠の使徒の三幹部の一人クモジャキーがいた事が問題なのだ。 確か砂漠の使徒は自分達が打ち倒した筈、当然クモジャキーも浄化された筈だ。 つまり、存在する筈の無い者がこの場にいるという事が問題なのだ。 いつきの脳裏にすぐさまあの時戦った最悪の相手、ブラックホールの姿がよぎった。あの時も前に倒したらしい敵が浄化された邪悪な心のみを集めた上で復活させるという事をやっていた。 それを踏まえるならば浄化したはずのクモジャキーが再びいてもなんら不思議はない。とはいえ殺す為だけに蘇らせた理由がいまいち不明瞭ではある。 だが、ブラックホールは既に倒した筈。まさか倒せなかったのか? 何かしらの方法で戻ってきたのか? あるいは再び宇宙を彷徨い別の邪悪なエネルギーと融合し更に強大となって戻ってきたのか? はたまた全く別の存在だというのか? どちらにしても以前戦ったブラックホールに最低でも匹敵、恐らくは遥かに超える存在だという事は確実だ。 不安がないわけじゃない、恐怖がないわけじゃない、それでもいつきは確信していた。 友達や仲間達が力を合わせればどんな強大な相手でも決して負けはしないと―― そう、花咲つぼみ、来海えりかや他のプリキュア達、そして―― 「よかった、ゆ……」 何とか周囲を見回し彼女の姿だけは見付ける事が出来た。同じ様に殺し合いに巻き込まれた以上若干不謹慎ではあるが、一番頼れる仲―― 「りさ……ん?」 だが、彼女の姿を見た瞬間、その安心は脆くも崩れ去った。 彼女の表情があまりにも哀しく見えたのだ。その瞳の奥にどことなく暗い影を落としているのを感じたのだ。 それがあまりにも不可解だった。目の前で人が死んでいるとはいえあの月影ゆりがあそこまで暗い表情をするのだろうか? 全く別の理由がある様な気がした―― 何であれ穏やかではないという事は確かである―― そして別の場所に転移したいつきは早々に名簿と支給品の確認を行った。 が、やはり頭には疑問が浮かんだ。名簿を確認した所つぼみ、えりか、ゆりの名前は確認出来た。 そして自分達とは若干違うもののプリキュアである桃園ラブ、蒼乃美希、山吹祈里、東せつなの4人も確認した。 ここが最初に浮かんだ疑問だ。プリキュアの仲間は21人いたがその内で8人しか、それも砂漠の使徒と戦った自分達4人とラビリンスと戦った4人という偏ったメンバーしか連れてこられていない。 何故他のプリキュアを連れて来なかったのだろうか? いや、連れて来なかった事はむしろ喜ばしい事なのだが疑問を感じた事に違いはない。 次に感じた疑問はダークプリキュアとノーザの存在だ。ダークプリキュアは砂漠の使徒の幹部で特にゆりとは深い因縁のある相手だ。ノーザの方は聞いた程度しか知らないものラビリンスの幹部でラブ達と敵対していた筈だ。 が、その両名は何れも打倒した筈(ノーザの方は聞いた程度の話だが)、勿論ブラックホールが主催側にいるならば復活は可能だろうが何かが引っかかる。 いや、実の所ダークプリキュアがいるだけならば単純に復活させたで片付けても良い。 しかし、あの時のゆりの表情がどうしても引っかかったのだ。それを見落とせば取り返しのつかない事になりかね―― 回りくどい言い方は止めよう。何かの理由で殺し合いに乗るのではないのか――最悪そう思わせるものを感じさせたのだ。 勿論、あのゆりが殺し合いに乗るなんて信じたくはないし信じてはいない。だが、あの表情はどう見ても何時もの彼女ではない。 では、何時もの彼女ならばどう考えるだろうか? プリキュアとしての経験も一番豊富であり優れた洞察力のある彼女ならば自分同様、ブラックホールの存在をある程度想定出来る筈だ。 ブラックホールの存在に気付いたならばいかなる理由があろうともまず殺し合いに乗る事はあり得ない。 加頭の話では優勝者にはあらゆる報酬が与えられる、だがブラックホールが黒幕だとするならば連中の言葉はほぼ確実に嘘だ。 黒幕がブラックホールで無いとしてもそれと同等あるいはそれ以上の力、性質を持っていると考えて良い。どちらにしても連中の言葉は何も知らない参加者を殺し合いに乗せる為の嘘だろう。 だがしかしだ、どうもゆりの表情を思い返すにその事に気付いている様子は感じられない。 ブラックホールの存在に気付かない? つぼみやえりかだったらあの異様な状況に感情的になって見落とすかも知れないが、ゆりが見落とすというお粗末な事をするとは思えない。 「まるでブラックホールの事を知らな……まさか……」 いつきの脳裏に1つの仮説が浮かんだ。確かにこの仮説ならばダークプリキュアにノーザ、そして見せしめとしてクモジャキーが殺された事にも一応の説明が付く。 「だけど、ゆりさんがあんな表情を見せる理由なんて……」 ――ある。確かにあのタイミングならば十分に可能性がある。 「……いや、まだそうだと決まったわけじゃないか……」 とはいえ、これはまだ仮説レベルの話。可能性は高いものの決め手に欠ける。 だが、念頭に入れておいた方が良いだろう。この仮説次第ではラブ達が自分達を知らない可能性もあるし、 下手をすればつぼみやえりかが自分を同じプリキュアではなく、ファッション部の部員あるいは生徒会長としか認識していない可能性もある。 気を取り直し、支給品の確認を進める。共通の支給品と自身の変身道具を除く支給品は3つ(あるいは3種ともいうべきか)あった。 その内の2つの確認を終え最後の1つの確認をする。 「……」 その最後の支給品をジッと見つめる。 「……」 いや、自分でもこの場では若干不謹慎だとは思う。だが、 「……」 何故か目が潤み頬がどことなく染まってしまい、 「か……可愛い……」 そう口にしてしまう。そうだ、そのウサギのぬいぐるみがあまりにも愛らしかったのだ。そう呟いてしまう程に。 「いや、こんな事やってる場合じゃないか……」 それは本当に何の変哲もないぬいぐるみだ。いつき個人は嬉しく思わないでもないが、武器としても全く使い道のない道具をわざわざ支給する加頭達主催陣の思考を疑ってしまう。 「……そういえばブラックホールとの時もすごろくしたんだっけ……」 本当にブラックホールが絡んでいてもおかしくはないなぁ――そう考えつつ、都合良く説明書きが見つかったので確認をする。 「……確か名簿に……ああ、この人がこの子に……」 そして名簿を確認していると、 ──ドゴオオオオオオオオオン!! 轟音が轟いてきた。何かが直撃した音なのだろう。 戦いの音だとしても明らかに大きすぎる、それこそダークプリキュア程の力を持った参加者同士の戦いの音だ。 「まずい、急がないと!」 十分に時間をかけたこともあり確認は済んだ。支給品をデイパックにしまい急いで駆けだした。 「待ってて!」 そう口にしながらいつきは走る。向かうべき方向は轟音が響いた方向、つまりはB-7にあるホテルへと走った―― その時のいつきは色々考えていたこともありほんのわずか周囲への注意力が若干落ちていたのかも知れない。 そう、もう少し周囲への警戒を強めていれば早々にえりかと合流出来ていた可能性があったのだ。 不幸にもその後えりかは死を迎える事になる。しかもその下手人はゆりというおおよそいつきが考えた最悪のケースだ。 とはいえ、えりかと合流出来た選択が正しく、合流出来なかった選択が間違っていたとは言い切れない。 何故ならいつきがホテルに向かったお陰で出血多量の重傷を負った1人の参加者を助ける事が出来た。向かわなければ再起不能、最悪死亡していた可能性もある。 また、えりかの所に向かった場合は十中八九彼女を捕らえたダークプリキュアとの戦いになっただろう。 1対1では難しいものの2対1ならばある程度戦えるだろう。だが、その周囲には多くの参加者がいた。 殺し合いに乗った参加者の介入、戦いに巻き込まれる参加者の存在を踏まえるならばその結末は予測不可能。数人の犠牲が出る事も否定は出来ない。 IFの話に意味など皆無、そう言ってしまえばそれまでだ。だが、いつきのとった選択が必ずしも間違いとは言い切れないという事を読者諸兄にも理解して貰いたい所である。 ここまでの話がこの殺し合いが始まってから高町なのは及び池波流ノ介と合流するまでのいつきの動向である。 02.高町なのはの憤慨 ホテルの一室では今もシンケンブルーに変身していた男性が眠り続けている。 先の戦闘でのダメージも大きく多くの血を流したのだ、一朝一夕に意識を取り戻すわけもないだろう。 だが、現状の2人が出来る応急処置は終わった、ホテルにあるものだけでこれ以上の手当は難しい所だ。 「本当だったらすぐにでも病院に連れて行かなきゃいけない所だけど……」 しかし、殺し合いの舞台となるこの島には病院らしき施設はない。 そもそも殺し合いの舞台に人の命を助ける為の病院がある事自体ある意味おかしいのだからむしろ当然の流れではある。 更に言えば、仮にあった所で人々が集まるのは明白で同時に殺し合いに乗った参加者も数多く集う惨劇の場となる。それを考えれば病院が無いのも仕方がない事だろう。 ともかく、今は彼の回復を待つしかないだろう。 「せめてユーノ君がいてくれたら……」 そうなのはが呟く。治療魔法が使えるユーノ・スクライアがいたならば彼の治療も上手くいっただろう。 「なのはの友達?」 「はい! ユーノ君にフェイトちゃん、私の大事なお友達です!」 そう強い口調でなのはは答えた。 「……ところで、いつきさんの方は友達が巻き込まれたりしていないんですか?」 「ああ、そういえばまだ話していなかったね……」 そう言っていつきは自身の仲間(もしくは友達)について詳しく説明する。 「そんなに沢山の人が……」 「みんなボクに負けないぐらい強いからそう簡単にはやられないとは思うけど出来るなら早くみんなに会いたい」 「はい、フェイトちゃんだって私に負けないぐらい強いけど私も早く会いたいです。フェイトちゃんと力を合わせれば誰にも負けません!」 またしても強い口調でなのはは答えた。 その後、更に2人は互いの大まかな事情、いつきからはプリキュアや砂漠の使徒との戦いに関する事を、なのはからは魔法や時空管理局に関する事を語った。 あまりにも違いすぎる世界に2人は驚愕する。 なにしろなのはから見れば人知れず悪い奴らと戦っているプリキュアの存在など想像もつかなかったし、いつきにしてみても魔法は今更だが多くの次元世界を守ろうとする管理局の存在は驚くに値する存在だからだ。 「……何処が魔法なんだろう?」 そして思わずこう呟いていた。 「あれ……でも確かダークプリキュアさんやクモジャキーさんは倒したって……」 「ボクもそれは気になったけど……主催者側にブラックホールかそれぐらいの相手がいるなら出来ると思う」 いつきは更にブラックホールとの戦いの事を説明し、更にブラックホールあるいはそれに匹敵する存在が主催側にいるという仮説を話す。 「そんな……でも倒した筈なんですよね?」 「ただ、また宇宙を彷徨って邪悪なエネルギーを集めて戻ってきたかも知れないんだ……」 そんな凶悪な存在に対し流石になのはも動揺する。 「でもそれだけの相手なら流石に管理局も気付く気が……」 数多の次元世界を管理する管理局といえど管理外世界つまりは地球規模の戦い程度に関わる事はない。 それ故、いつきが語った戦いに全く管理局が関わらなかった事に疑問は全く無い。 だが、ブラックホールクラスになると話が別だ、それを放置すれば他の世界が脅かされる事になる。数多の世界に影響を及ぼすとなると管理局も黙ってはいないはずだ。 いつき自身も気にはなったもののそこにばかり気を回すわけにはいかない。 「あ、そうだ……なのは、キミに渡さなきゃいけないものがあったんだった」 「渡さなきゃいけないもの?」 そう言っていつきはデイパックからあるものを取り出す。 「はい、これなのはがキミの妹……ヴィヴィオにあげたものだよね」 それは何の変哲もないウサギのぬいぐるみである。だが、 「え?」 なのはは何処か惚けた様な返事をした。 「あれ? どうしたの?」 「あの……いつきさん、私……お兄ちゃんとお姉ちゃんはいるけど妹はいません……」 「え?」 「それに、そのぬいぐるみにも全く見覚えがありません……」 「でも、名簿を見たら高町ヴィヴィオっていう子がいたから……」 「私のお父さんもお母さんも日本人です、幾らなんでもヴィヴィオって名前を付けたりしません!」 「言われてみれば……でもここに……」 と、いつきは一緒に入っていた説明書きを取り出す。 「『ヴィヴィオのぬいぐるみ 高町なのはがヴィヴィオに送ったぬいぐるみである』……本当だ……」 その説明書き、そして名簿にある高町なのはと高町ヴィヴィオという同じ高町の性を持つ者の存在。 それらを統合して考えればなのはとヴィヴィオが姉妹、あるいは親戚関係にあると推測するのは無理からぬ話だ。 「でも本当に私知らないです。ヴィヴィオちゃんの事だって同姓というだけだと思って……」 そう口にするなのはを余所にいつきは頭を抱えていた。 結論から先に述べよう。いつきはこの謎について一つの答えを出していた。 なお、その説明書きが主催側が仕掛けた嘘という事については全く考えてはいない。 今の通り本人に確認すればすぐにわかる嘘に意味など無いし仮に騙した所で殆ど問題にはなり得ない。 ではこれが事実ならば―― 「まずい……」 「どうしたんですか、いつきさん?」 「なのは、落ち着いて聞いてくれる。もしボクの推測通りだったら多分ヴィヴィオは君の家族だよ」 「ええぇ!? どういう事!?」 唐突にそんな発言が飛び出しなのはの声も大きくなる。 「いや、多分今のなのはにとっては全く知らない子だと思うけど、これから先で家族になる子だよ。どういう形かまではわからないけど……」 いつきの推測はまさしく大正解だ。ヴィヴィオは後になのはの娘となる少女だ。 もっともその過程までは予想出来ないだろう。ある事件で保護した重要な少女をそのまま娘にするという展開など比較的普通の中学生に推測出来るわけがない。 「ええぇ……でもどうしてヴィヴィオって名前を……」 なのはにとってはどうにも実感の湧かない話ではある。それでも、ヴィヴィオ側の視点ではなのはを家族と思っている可能性がある。 それを踏まえるならばその事についても考えておくべきだろう。 が、一方のいつきは未だに頭を抱えていた。 「あれ、いつきさん、どうしたんですか……」 「……これもボクの推測だから確実ってわけじゃないけど……参加者の多くは違う時間から連れて来られている可能性がある」 「違う……時間?」 いつきの言いたい事を具体的に語ればこういう事だ。 いつき本人は砂漠の使徒との戦いを終えた後のタイミングで連れて来られている。 だが、一方でつぼみがプリキュアになった直後から連れて来られているとしよう。(注.あくまでも例え話であり実際にそうというわけではない) いつき自身から見ればつぼみは同じプリキュアの仲間だ。 しかしつぼみから見た場合はいつきは生徒会長の少年でしかない。 恐らく、つぼみ視点から見ればいつきも守るべき対象という事になる筈だ(実際、いつき自身プリキュアになる前にはデザトリアンにされた事もあった)。 つまり、参加者間での情報に食い違いが発生するという事だ。 また、この応用で、倒したはずのダークプリキュア等がいる理由も説明が付けられる。それこそ倒される前から連れて来れば何の問題も無い話だ。 「……でも、それって大きな問題なの?」 だがなのははまだ事の重要さを理解していない。例え違う時間軸から連れて来られたとしてもユーノはユーノ、フェイトはフェイトだからだ。 しかしいつきはそうは考えていない。 あの時のゆりの表情、それはきっと深い悲しい出来事に遭ったものだ。 確かにゆりは長きに渡る戦いの中でパートナーの妖精であるコロンを失う等哀しい経験をしている。 だがそれ以上に哀しい経験をあの最終決戦でしているのだ。 それは砂漠の使徒の指揮官であるサバーク博士の正体がゆりの父親で、 激闘の果てに打ち倒したダークプリキュアがサバーク博士こと月影博士がゆりことキュアムーンライトを元に作り出された生命体、言うなればゆりの妹とも言える存在だという事が判明した。 しまいにはやっと再会出来た筈のサバーク博士が砂漠の使徒の王デューンによって殺されたのだ。 これらの一連の出来事、特に月影博士の死により彼女は復讐鬼に堕ちかけた。実際はつぼみの説得によりそれを乗り越えデューンとの最終決戦に望んだが―― が、実はこのタイミングこそが重要なのだ。そう、もしゆりが『月影博士の死の後、つぼみの説得を受ける前』から連れて来られたならばどうだろうか? 客観的に見てもゆりはあまりにも辛い経験をしている。幾ら自分達プリキュアの中では一番年上とは言えその本質は17歳の少女でしかない。 このタイミングならば殺し合いという状況に気圧され堕ちる可能性は否定しきれない。 優勝して月影博士を取り戻す事を望んだって全く不思議はない。 これが杞憂であればそれにこした事はない、だが実際にそうだったとしたら―― 「――というわけだから、もしかしたら……」 ともかく、万が一ゆりが優勝を狙いであり、なのは達の襲ってきた場合の事を考えその事を大まかに説明をする。 「……でもちゃんと話をすればわかってもらえる筈です」 「うんボクも話はするつもり……」 無論、いつきも説得はするつもりだ。事情がどうあれ背後にブラックホールがいるならばまず優勝しても願いが叶う筈がない。 それにちゃんと伝えれば十分ゆりを踏みとどませる事は出来る筈だ。 とはいえ懸念はある。そもそも話をする状況になるのかどうかという問題がある。 自分達はゆりを信じているし、ゆりの方も自分達が信じていると判断するはずだ。 つまり、仮に指摘した所ではぐらかされればそれで話は終わりだ。何しろこの仮説自体確証があるわけではなく否定されればそれ以上の追求は出来ない。 また、何とか説得したとしても、素直に聞いてくれる保証は全く無く、恐らくは戦いになる筈だ。正直、キュアムーンライトに対抗しきる自信は無い。 「……ただ、これはボクの方だけじゃなく、なのはの方にも言える事だけど」 「え?」 「……確か、なのはが魔法に出会った事件の中で敵対していたって言っていたよね」 先の情報交換でなのはが魔法に出会った事件について大まかな説明はされている。当然、最初はフェイトと敵対していた事も説明済みだ。 「その時期から連れて来られているなら、なのは達の事を敵だと思っているだろうし……」 「例えそうでも、フェイトちゃんが人を殺す何て事絶対にしません」 「でも、なのはだって言っていたよね。フェイトのお母さんを喜ばせる為にジュエルシードを集めていたって、その為に無茶な事もしたって……だから……」 無論、いつきもなのはの友人を疑うマネなどしたくはない。 だが、気付いてしまった以上、その最悪の可能性から目を背けるわけにはいかない。しかし、 「そんな筈ありません!!」 なのははそれを認めるわけにはいかない。確かにジュエルシードを巡って何度も戦ったがフェイトは自分達を見逃してくれた事もあった。 本当は心優しい少女なのだ、そんな彼女が幾ら母であるプレシア・テスタロッサの為とは言え他の人を皆殺しにするわけがない。 だからこそ今までよりもずっと激しい口調でいつきの言葉を否定した。 「うう……ここは?」 その時だった、今まで意識を失った流ノ介が目を覚ましたのは。 時系列順で読む Back 友へのQ/相棒との再会Next nothing(後編) 投下順で読む Back 友へのQ/相棒との再会Next nothing(後編) Back ニアミス 池波流ノ介 Next nothing(後編) Back ニアミス 高町なのは Next nothing(後編) Back ニアミス 明堂院いつき Next nothing(後編)
https://w.atwiki.jp/kenasadumajapan/pages/15.html
https://w.atwiki.jp/henroy/pages/117.html
nothing(後編) ◆7pf62HiyTE 04.nothing 「なるほど……そういう事だったか……」 流ノ介が意識を取り戻し、3人はこれまでのいきさつや互いの事情について説明をした。 「……あんまり驚いている様に見えないですね」 魔法や管理局、それにプリキュアに関する事を聞いているならばもう少し驚いても良いが流ノ介は至って落ち着いている。 「いや、実は自分達のいる世界とは別の世界が存在している事はこの身をもって経験している……あの時は1人ゴミばかりの世界に飛ばされ辛かった……」 『Are there such world ?(そんな世界あるんですか?)』 少し前にガイアークと戦った事があり、その時にガイアークと戦っていたゴーオンジャーと共闘する事になった。 その際に流ノ介達シンケンジャーの面々はそれぞれ別の世界の飛ばされた事があった。 その為、自分達の住む世界以外にも世界がある事程度は今更驚く事でもない。 「それに通りすがりの仮面ライダーが訪れた事もあった」 また、別の世界から通りすがりの仮面ライダーが現れた事もあった。 「あの時は源太の奴が仮面ライダーに折神を盗まれたりアヤカシが仮面ライダーになったりして大変だった……」 「それ、本当に仮面ライダーだったんですか?」 「何故か病院が写真館になったりもした」 「何故写真館なの?」 「詳しくは知らないが世界の破壊者と呼ばれていて私達の世界も破壊される所だった」 「「それの何処が破壊!?」」 さて、仮面ライダーの話についてだがここで1つ重要な事に触れねばならない。 あの場には本郷猛、一文字隼人という2人の仮面ライダーがいた。だが、流ノ介の世界に仮面ライダーは存在しない。それ故彼等は別世界の仮面ライダーという事になるだろう。 「待てよ……」 と言いながら名簿を確認する。 「どうしたんですか、流ノ介さん」 「いや、確か……あった、ユウスケの名前だ」 「五代雄介?」 「ああ、確か仮面ライダー達の1人がユウスケと呼ばれていた覚えがある……」 「じゃあこの人がその?」 「……だが妙だな、確か後の2人の名前は無い……それに……本当にこの名前だったか?」 何にせよ以上の経験がある為、別世界の存在についてはある程度免疫があるということだ。 情報交換も終わったならば今後の方針を決めなければならない。普通に考えれば仲間達との合流を果たす事だろうが―― 「いや、私は今すぐにでも十臓を追う。だから仲間との合流は君達に任せる、源太なら首輪の解析の力にもなってくれる筈だ」 そう言って立ち上がろうとする。 源太は自力でモジカラの力を解析しシンケンゴールドに変身する為のスシチェンジャーを作り上げた。 それ故に一朝一夕とはいかないものの首輪解除において大きな力になってくれる筈、流ノ介はそう考えたのだ。 「ちょっと待ってください、応急処置はしたけどその怪我じゃまだ……」 「そんな事はわかっている! だが十臓を野放しにすれば殿や他の参加者の命が危ない!」 万全な状態でも破れ去った以上、負傷している状態では戦いにすらならないだろう。それでも流ノ介は1人でも戦いに向かうつもりだ。 「やっぱり殺すつもりですか……」 そんな流ノ介に対しなのはは憤りを隠すことなく口にする。 「言いたい事はわかる。だがさっきも説明したが外道衆は人々を苦しめる存在だ、奴らを野放しにしては殿のみならず君達の仲間の命が危うい」 十臓を斬るのは殿への負担を軽減する意味合いが強い。とはいえ、人々を守る為にも外道衆を放置するわけにはいかない。 「でも殺すなんて間違っています! 殺さなくても済む方法が……」 「奴に説得など通じない! あの男は自分を止めようとした家族の魂が宿った妖刀を使い平然と人を斬り続けている真の外道、そんな奴に君の言葉など決して届かない!」 「家族が封じ込まれた妖刀!?」 その事にいつきが驚愕しつつも流ノ介の言葉は続く。 「それに君の言い方だと筋殻アクマロや血祭ドウコクも殺すなという事になるのだろう?」 「はい! あの人達だってお話すればきっと……」 「そんな甘い事でこの世が守れるか! 君は何もわかっていない……はぐれ外道である十臓と違いあの二人は本物の外道、人々を苦しめる事など何とも思っていない奴らだ」 「でも何か大事な理由が……」 「そんなものはない! あった所で自分の欲望を満たす為だけだ、話をするだけ時間の無駄だ」 「だったら……力尽くでも言う事を聞かせます! そうすればきっと……」 流ノ介の言う通り口だけの説得など届かないかもしれない。だがそれならフェイトと解り合った時の様に全力全開でぶつかりあえばきっと届くはずだ。 なのはの頑なな姿勢を見て、恐らくどう言っても止めてくるのは明白なのは流ノ介も理解した。 一方のいつきは殆ど黙り込んでいる。 心情的にはなのはに賛同しているわけだが流ノ介の言い分もわかるのだ。外道衆がこの世界を脅かすのであれば倒す事もやむを得ないのは理解している。 どちらも正しいが故に口を挟めないのだ。 「これ以上私がどういっても引くつもりは無いのだな……」 「はい! だから……」 「だが私も引くつもりはない、そうなれば君は力尽くでも私を止めるつもりだな」 「勿論です!」 「ならば私を殺すという事だな」 「ええ!?」 「どうしてそうなるんですか!? 私は誰も殺すつもりなんて……」 「言っておくが、例え君にこのショドウフォンを奪われても意見を変えるつもりはない。この身1つだけとなっても奴の所に向かうつもりだ」 「そんな怪我でしかも何の武器も無い状態で行くなんて自殺行為です」 中立を保っていたいつきも流ノ介を止める為口を挟む。 「そんな事は百も承知だ、だが私は侍として……殿……ひいてはこの世を守らなければならないのだ……例えこの命が尽きてもだ……それでも私を止めるというのならば、君の力で私を殺すしかない」 「この力は人殺しの為にあるんじゃありません!」 なのはにとって魔法の力は大切な人達を守る為、自分の意思を通す為の力だ、決して人を傷付ける為の力ではない。それ故に流ノ介の言葉に力強く反論する。 「君は何か勘違いをしていないか? 確かに君の……いや、我々の力は人々を守る為のものでありいたずらに人を傷付けるものではない。だが、所詮は力でしかない、使い方を誤れば簡単に人を殺せるとても危うい力だ」 「そんな事はわかっています、でも私はこの力で人を殺したりなんてしません!」 「いや、何もわかっていない! あの砲撃で誰も死なないなんて本気で思っているのか、巻き込まれる者がいないかと考えなかったのか?」 本当ならば売り言葉に買い言葉の様な形で触れるつもりはなかったものの、なのはの行動は何れ大きな問題を引き起こす。それ故に流ノ介はあの時の砲撃について口を出した。 「大丈夫です、ちゃんと周囲は確認しました。それに説明してなかったけど私達の魔法は非殺傷設定って言って人を傷付けない風にも出来ます。だから……」 「仮にそうだとしてもむやみやたらに放って良い力ではない! それに仮に君の魔法そのものは人を傷付けないものであったとしてもそれによって起こる衝撃や風までは非殺傷には出来ないだろう」 「それは……」 流ノ介に言われて気が付いた。確かに魔法そのものは非殺傷ではあっても巻き込まれた事で起こった崩壊までは非殺傷には出来ない。 「それにだ……いつきがここに来たのはなのはの砲撃を見たからだな」 「はい……誰かが戦っているかと思って……」 「そのお陰で私の命が助かった事については素直に感謝している。だが、殺し合いに乗った者を呼び寄せる可能性だってあったのだ。 もしこの場に来たのがいつきではなく、アクマロやドウコクであったなら……私も君も殺されていただろうな」 良くも悪くもなのはの砲撃はホテルでの戦いに大きな影響を与えている。流ノ介にとっては良い方向に傾いたがそれはたまたまでしかない。 彼等の知らない所ではその影響で状況が悪く転がっている事があるのだろう。 「でも……」 なのは自身もそれがわからないではない。それでもあの時の行動が間違っていたとは思えない。 「なのは……ボクも流ノ介さんの言う通りだと思う」 「そんな、いつきさんまで……」 「キミがそういうつもりじゃないのはわかる。だけどボクはあの砲撃で誰かが傷ついたかもしれないと思ったから急いだんだ。つぼみ達も同じ事をしていたと思う。 知らなかったからだけど、君の砲撃が危ないものだと思ったのは確かなんだ。 それにね……ボクも武道をやっているからわかるけど、力は使い方を間違えれば簡単に人を傷付ける事が出来るんだ。非殺傷に出来るから大丈夫って問題じゃないんだよ」 「はい……」 武道を嗜む者にとってはその力が人を傷付ける危ないものである事は容易に理解出来る。 心・技・体とはよくいったもので、彼等は技や体だけではなく、まずは心を養うという事なのだ。 それ故に、幼い頃から武道を嗜んでいたいつきはその事を強く理解し、なのはに諭すのだ。 諭されるなのはの方も元々家に道場がある関係もありそれが全く理解出来ないわけではない。 「それに……レイジングハート、聞きたいんだけど非殺傷って絶対に解除出来ないの?」 『No, it can be canceled , Mr. Itsuki.(いいえ、解除は可能です。Mr.いつき)』 「(ん、『Mr.』?)」 「レイジングハート……?」 いつきの質問の意図が読みとれずなのはの頭に疑問符が浮かぶ。 「やっぱり……なのは、フェイトはキミと互角だって言っていたよね。もし、非殺傷の状態でなのはと同じ事をしたならば……」 「……それこそ多くの犠牲が出るだろうな、殺すつもりで撃ったならばまず間違いない。」 なのはが答える前に流ノ介がその問いに答えた。 「そんな、さっきも言ったけどフェイトちゃんがそんな事をする筈がありません!」 だが、いつきや流ノ介がどう言おうともなのははフェイトを信じている。いつきも危惧はするものの信じたい気持ちは汲みたい所だ。 流ノ介もその心中は察している。それでも、 「君達が友を信じたい、戦いたくない気持ちはよくわかる。だが1つ言っておく、もしフェイトにしろゆりにしろ殿に仇なすならば私は彼女達を斬らねばならない」 殿を守る為、最低限の事は触れておかねばならない。 「……!」 「そんな!」 「君達にとって友が大事である様に私にとっても殿が何よりも守らねばならない存在だ、君達がどう言おうとも譲るつもりはない」 そう、なのは達に譲れぬものがある様に流ノ介にも譲れないものがあるのだ、それは誰がどう言おうとも変わるものではない。 「それにいつき、君だって私やなのはの事ばかりに構っているわけにはいかないのだろう。仲間達への合流だけではなくゆりへの説得やダークプリキュアの打倒を考えなければならないのではないか?」 「それは……」 「ちょっと待ってください! いつきさん、本気でダークプリキュアさんを殺すつもりなんですか!?」 ここでなのはが口を挟んできた。 「え!?」 「ちょっと待て、君はいつきの話を聞いていなかったのか。ダークプリキュアは砂漠の使徒として人々を苦しめてきたんだろう。外道衆同様倒さなければならない存在じゃないのか?」 流ノ介は半ば呆れ気味に反応する。 「違います! だってダークプリキュアさんはサバー……月影博士……ゆりさんのお父さんがゆりさんを元にして造ったんですよね?」 「そうだけど……」 「だったら、ゆりさんの妹です。そんな彼女を殺すなんて言わないでください!」 「それは……」 「だが聞く所によると、彼女はゆり……キュアムーンライトを倒す為に造られた存在ではないのか?」 「きっかけはそうだったかも知れません。それでもダークプリキュアさんを殺して良い理由にはなりません! それに……闇のプリキュアなんていう哀しい呼び名で呼ばないでちゃんと名前で呼んでください」 「いや、そもそも本名知らないし……それに他の名前があったかどうかも……」 なのはの頑なな姿勢は既に2人も思い知っている。だが、 「何故君はそこまで彼女に肩入れするんだ。殺すなというだけならばまだわかる、だが君の言い方はまるで……」 「それは……」 『Master would Dark precure overlaid Ms. Fate.(マスターはダークプリキュアにフェイトを重ねたのでしょう)』 口ごもるなのはに代わりレイジングハートが答えた。 「レイジングハート! それは……」 『Explanation is required.(説明は必要です)』 本来ならばあまり人に話すべき事ではない。だが、何の説明もしなければ2人がなのはを信頼してくれなくなる。 幾らマスターの言葉が正しいとしても状況的には流ノ介やいつきの方に分がある。 更に散々話を聞かせてと対話を求めておきながら自分からは何も話さないのではそれこそ信頼されるわけもない。最低限の説明はするべきだろう。 「わかりました……実は……」 そしてなのははフェイトの事情、つまり元々はプレシア・テスタロッサが失った娘であるアリシア・テスタロッサを蘇らせる為に産み出されたものだという事をおおまかに説明した。 その事実にはいつきも驚愕し流ノ介も真剣な表情で耳を傾けている。 「なるほど、生まれ方が違っても同じ命というわけだな……だが、私は別に彼女が作られた存在だから倒しても良いと言っているわけではない」 そもそもダークプリキュアが人間ではないから殺せ、というわけではなく彼女がこの世界を脅かす存在だから倒さなければならないと言っているに過ぎないのだ。 「でも……」 「君がダークプリキュアをどう思っていても構わない。だが、これはいつき達プリキュアの問題じゃないのか?」 「わかりました……」 「……ところで、いつきもプリキュアだったな」 「あ、はい。そうですけど」 「しかし見た所普通の……」 そう言い切る前になのはが口を出す。 「そのデバイスで変身するんですよね、試しに変身してくれませんか?」 言われてみれば散々プリキュアに関する事を説明したがその力がどれだけのものかは説明していない。 それ以前にこの場に来てから一度も変身すらしていない、いざという時の為にも一度変身した方が良いかもしれない。 ちなみに本来ならば他人には基本秘密なのだが、ブラックホールが関わっている可能性もあり、ダークプリキュアに関する説明も必要であったのでいつきは敢えて隠す様なマネはしなかったのである。 「うん……そういえば何時もだったらポプリが種を出しているんだけど……」 おもむろに2人から距離を取りシャイニーパフュームと同時に支給されていたプリキュアの種(本来ならばいつき自身も語っている通りパートナーの精霊であるポプリが出している)を構える。 『What!?』 「服が変わっただと!?」 と、突然いつきの服が何時ものからノースリーブのワンピースへと変化し、 「髪が伸びた!?」 更にショートだったいつきの髪が瞬時にロングにまで伸び、 「プリキュア! オープン・マイ・ハート!」 そう口にしプリキュアの種をシャイニーパフュームに装填しそのままパフュームを自身の躰に吹き付けていく。 そうしていく内に吹き付けた部位が次々と変化していく。 更に伸びた髪を両サイドで束ねていき同時に髪色も金色に変化し花の髪飾りも装着される。 そして大体の変化も完了しパフュームは現れたココロパフュームキャリーに収納され腰へと装着され―― 「陽の光浴びる一輪の花! キュアサンシャイン!!」 キュアサンシャインへの変身を完了した―― 「……あれ、2人ともどうしたの? 私……何かおかしかった……?」 「一人称まで変わっているのか……いや、服が変わるだけだと思ったからな……最早別人ではないのか……」 何しろ、キュアサンシャインの姿は今までのいつきと180度違う姿と言っても過言ではない。それ故流ノ介の驚愕も無理からぬ話だ。 だが、一方のなのはは石の様に固まっている。 「あれ? なのは……どうしたの?」 「えぇぇぇぇぇぇぇ!!」 ホテルになのはの絶叫が響き渡った。 「まさか……」 「イツキサンッテイツキサンッテ……ソノ……ナニ?! エット……ダッテ??? ウソ?!?! エェェェェェ……」 「……やはり君達は彼女を男だと思っていたんだな」 「あぁ……」 「だって、自分の事を『ボク』って言っていたし男の制服着ているし……」 今更な話ではあるが、いつきの服装は自身の制服、それも男子用制服を着ている。 なのは自身『さん』付けで呼んではいたがそれはいつきが女子だと気付いていたわけではなく、性格的にしっかりしていた事や何となく『君』付けではなく『さん』付けした方が呼びやすいと無意識で感じていたからである。 「レイジングハート!?」 「Sorry , I think she is a man too.(すみません、私も彼女は男だと思っていました)」 「流ノ介さん!?」 「……私は最初からいつきが女だと気付いていたぞ」 流ノ介自身シンケンジャーとして招集される前は歌舞伎役者をしており、女形(女性の役を演じる)も経験している。 その関係もあり、いつきが男子制服を着ているが女の子であることを看破出来ていた。何かしらの理由があると考えていたので敢えて口は出さなかったという事だ。 『Like there was something similar in the past...(以前にも似た様な事があった様な……)』 「あー……その、大丈夫。つぼみも最初私の事を男だと思っていたから」 「それフォローになってないよー!!」 ともかくいつきも元の姿に戻り今後の方針を再び話し合う。ちなみに既に時刻は4時を過ぎている。 「さっきも言ったが、私はこのまま十臓を捜しに向かうつもりだ」 流ノ介の方針は変わらない。見たところある程度ならばなのはといつきでも十分戦える様だ。その為、2人と別行動を取っても問題は無いと判断した。 「……怪我の具合もそうですが、アテはあるんですか?」 だが、いつき達としては怪我の事も考えこのまま1人行かせたくはない。また、十臓が何処にいるかもわからない現状も気になる所だ。 「十臓は殿を狙っていた。恐らくはここに向かうだろう。何故この島にあるかはわからないが……」 と、地図のB-2にあるシンケンジャーの拠点ともいうべき志葉屋敷を指し示す。少し距離はあるが道なりに行ける分迷わず行ける筈だ。 「だから君達とはここでお別れだ、源太や殿にあったらよろしく頼……」 「だったら私も一緒に行きます!」 と、なのはが同行を申し出た。 「ちょっと待て、それは私を止める為だろうが私は止まるつもりはない。そんな暇があるなら他の場所に向かって君達の仲間と……」 「その近くに翠屋がありますよね、そこは本当だったら私の家なんです。きっとユーノ君やフェイトちゃんはそこに向かっている筈です」 志葉屋敷の比較的近く、C-1にはなのはの実家である翠屋があった。つまりホテルから向かうならば丁度流ノ介と進行方向は同じとなる。 そういう理由がある以上、流ノ介になのはを止める事ができない。 「流ノ介さん、怪我をしている貴方やなのはを放っておく事は出来ません。ボクも貴方達と同行します」 「………………わかった」 「また『ボク』に戻ってる……」 流石にこの流れでいつきを1人にするわけにはいかず、流ノ介は渋々ながらも同行を了承した。 「あ……志葉といえば……あの、流ノ介さん。渡したいものがあるんですが」 と、いつきはデイパックから1つの書状を出す。流ノ介はそれを受け取り、 「これは……志葉家の家紋……何故君が?」 「ボクに支給されたものです」 「中は見たのか?」 「ええ、失礼……だとは思ったけど、何かがわからなかったので……すみません」 「いや、それは構わない……本来ならば家臣である私が勝手に見て良いものではないが……だが……」 それは間違いなく志葉家当主である殿に宛てられたもの、それを家臣でしかない流ノ介が先に見て良いものではない。 しかし、この状況下だ、何か重要な事が書かれていた場合それを知らなければ命取りになる。故に―― 「殿……御免!」 流ノ介はその中身を確かめる。そしてかつてない程真剣な表情で読み進めていく。 「……いつきさん、あの中には何が書かれていたんです? 読んだんですよね?」 「読んだと言えば読んだけど……ちょっとよくわからないんだ……」 「どういう事?」 前述の通り、書状の中身はいつきも確認している。だが、書かれている内容はわかるもののそれがどういう意味を示しているかまでは完全に理解出来てはいない。 それもその筈だ、そこに書かれている事は志葉家に関わる重要な事項、その中身だけで事情を知らない者がその意味を把握出来る道理もない。 「……! ……何だと……! 馬鹿な……この中身が事実だとしたら……!」 流ノ介の表情が固まる。そして全てを読み終えた瞬間、思わず書状を落としてしまう。 「え、どういうこと……」 その書状をなのはが拾い読もうとするが、 「達筆で読みにくいの……レイジングハート……」 『Please don't count on me.(私をアテにしないでください)』 それでも何とか読み進めていくが事情を知らないなのはにはその意味が理解出来ない。 だが、項垂れる流ノ介の様子を見る限り、彼の行動原理の根底が揺らぐ程の事が書かれている事は理解出来た。 それでは読者諸兄に、あの書状が何かを説明しよう。 あの書状はアクマロを撃破し正月を謳歌していた時に志葉家に届けられたものだ。 ではその内容は如何に? それを語る前にこの時点の丈瑠以外のシンケンジャーが知らない志葉家の事情について触れねばならない。 長きに渡りドウコク率いる外道衆とシンケンジャーの戦いが繰り広げられた。 だが、ドウコクの力は凄まじく戦いは苛烈を極め外道衆はシンケンジャーの中心である志葉家の一族を執拗に攻撃し―― 先代シンケンレッド、つまり志葉家十七代目当主の時には志葉家の弱体化は激しく最早風前の灯火となっていた。 それ故このままでは志葉家の断絶、この世の滅亡の危機の可能性も出てきた。。 その為、封印の文字を習得するまで何処かに隠れる必要が出てきたがシンケンレッド抜きで外道衆との戦いが厳しいのも事実であった。 その時先代シンケンレッドは自身は戦い抜くしかないと口にし望みを次の世代、つまりは間もなく生まれる自身の子に託そうとした。 だが、その子が成長するまで素直に外道衆が待ってくれる道理もない。そこで―― 影武者を立てる――そしてこの時点で既に水面下で準備は進んでいた―― 先代は不完全ながらも封印の文字をドウコクに使う事でその命を懸け次の世代を守り最後の望みを託した。 そして外道衆の目を欺く為、侍の家系ではないもののモジカラの才能のある者を影武者に選んだのだ。 その影武者こそが丈瑠だったのだ。 さて、後に生まれた十八代当主である薫は姫ではあったものの目眩ましには好都合であれ人知れず暮らす事が出来た。 ところで、影武者を立てたのは封印の文字の完成の為というのもあったが、シンケンジャーの柱である志葉家の最後の一人を隠し十九代二十代へと次への柱が強く育つのを待つ目的もあった。 それ故、本来ならば薫の世代で表に戻る予定ではなかった。事を急げばそれこそその為に命を賭した先代や丈瑠に次のシンケンレッドの役目を託し散った丈瑠の父の行為が無に帰することになる。 それ為、影とは言えシンケンレッドとしてこの世を守り十八代目当主を全うする覚悟で丈瑠も日下部彦馬も望んでいた。 だが、薫自身が影武者の影として生きるのは侍として卑怯とそれを良しとしなかった。 故に死ぬ者狂いで封印の文字を習得し、ドウコクを封印する準備が整えたのだ。それは奇跡とも言うべき事である。 では、本題に戻ろう。先の書状には本来のシンケンレッドにして志葉家の当主が丈瑠と彦馬に宛てたものだ。それを確認した2人はこう口にしている。 『にわかには信じられませぬ……本当であれば喜ぶべき事ではありますな……といってここにきて全てを明らかにするとはとても……』 『とにかくこっちで動ける事は何もない……今まで通りにしているだけだ……』 『はぁ……』 『爺……もしその時になったら……その時の事か……』 このやりとりから真の当主である薫が封印の文字を完成させた旨が書かれていたのはおわかりだろう。 同時にそう遠くないタイミングで外道衆と決着を着けるべく志葉家へと戻るのも容易に推測出来るだろう。 事実としてその直後、丈瑠達にとっては早すぎるタイミングではあったが薫はシンケンレッドとして戻ってきた。 それは同時に――丈瑠のシンケンレッドあるいは志葉家当主の影武者としての役目を終えた事を意味する―― 「どういうことなの……確か封印の文字って……?」 「ドウコクを封印する為に流ノ介さんの殿……丈瑠さんしか使えないモジカラだった筈……」 『But, if certain it is written here...(しかしここに書かれている事が確かならば……)』 流ノ介自身は2人にドウコクを倒せるのは志葉の当主、つまりは丈瑠だけが使える封印の文字だけだという事を説明していた。 だが、この手紙に書かれている事が事実ならば封印の文字を使えるのは丈瑠ではなく本来の当主つまりは薫という事になる。 だからこそ(何とか解読した)なのはとレイジングハート、そして予め目を通していたいつきの頭には疑問符が浮かぶ。 ――が、それが意味しているのはそれだけではない。 薫が封印の文字を完成させたという事は薫が本当の志葉家十八代目の当主である事を意味し、それが書状に記されている事になる。 同時にそれは丈瑠が殿ではなく影武者である事を示している事になる。 そう――命を懸けて殿である丈瑠を守るという流ノ介の行動方針は――根底から覆った事を意味する―― なお、仮に同じ内容を源太や十臓、更にはアクマロやドウコクが知った所で影響は殆ど無い。 ドウコクにとっては偽物と知った事で怒り狂うだろうがその行動が変わるわけではない。 アクマロにとっては仮に知った所で、自身の目的に影響を及ぼすわけでもない。 十臓が丈瑠を狙っていたのは只斬り合う為でしかなくやはり全く影響はない。 源太がシンケンゴールドとして丈瑠の為に戦うのは丈瑠が志葉家当主だからではなく、幼き頃からの友人だから、それゆえ殿で無くなっても丈瑠の為に戦う事に変わりはない。 だが、流ノ介だけはそうはいかない。流ノ介はシンケンジャーの中でも侍の役目に忠実である。 その為、流ノ介にとって真に守るべき対象は殿ではなく姫という事になる。暴論ではあるが最早丈瑠を命を懸けてまで守る必要など全く無い。 とはいえ、この地においての行動方針自体が覆るわけではない。 どちらにせよ外道衆が斬らねばならぬ存在である事に変わりはなく、元の世界への影響を考えるならばドウコクは打倒すべきである事は明白だ。 封印の文字が使えない以上、絶望的な状況ではあるもののそこで諦めるなど言語道断だ。侍として最後まで戦い抜くべきだろう。 丈瑠を絶対に守らなければならないという前提が消えた、それだけの話でしかない。 「まさか……そんな……」 そう言いながら再びなのはの持つ書状を手に取り再び確認する。 書かれている中身が間違いであってくれ、そう願いながら再び読み進める――だが書かれている内容が変化する事はない。 何故ここまで流ノ介は動揺しているのだろうか? いや、書かれている内容を必死に否定しようとしているのだろうか? 丈瑠を守るという方針が根底から覆ったとはいえ、侍として人々を守る為に戦う部分は変化していない筈だ。 かつて、舵木折神を釣り上げに向かった際に出会った男に指摘された事がある。 『何故侍は戦わねばならない?』 『それは代々志葉家に仕える侍は殿と共に……』 『そんなのは親に刷り込まれただけだ、侍も殿もアンタが決めた事じゃない、教科書通りに生きているとそれが崩れた時どうしようもなくなる、空しさだけが残る』 その時、丈瑠達他のシンケンジャーのメンバーは毒にやられ、治療の為には舵木折神が必要という事で急ぎ釣り上げる必要があった。 しかし釣り上げは難航していた。その最中、丈瑠は毒で動くのも辛い状態を押して戦いに出向こうとし流ノ介にも、 『いいか、俺は適当にお前を選んで行かせたんじゃない。お前なら出来ると思ったからだ……それまで少しでも被害を減らしておく……』 そう伝えたのだ。そして再び釣りに戻った流ノ介に男が再び指摘したが、 『確かに親に教えられた事です。でもさっきの殿の声を聞いてはっきりわかりました。戦っているのはそれが理由じゃなかったって…… アヤカシからこの世を守る……殿は命を懸けてそれを実行しています。強い意志と力で……初めて会った時も…… あの殿なら命を預けて一緒に戦える……そう決めたのは自分です! 親じゃない……その戦いがどんな結果でも空しいはずがないです! 絶対に無いです!』 そうはっきりと答えたのだ。 だからこそ動揺しているのだ、本来ならば姫を守るのが侍として正しい選択だ。だがそれは教科書通りの答えであり流ノ介自身の答えではない。 だが丈瑠を守り続けていたのはそうではない。命を懸けて戦おうとする丈瑠ならば命を預けられると自分の意思で決めたのだ。 それもまた決して間違っては言えないだろう。 故に迷うのだ、今後自分はどうするべきなのかを―― と、ここで先の悪夢の事を思いだした。 「まさか……あの夢はこれを暗示していたというのか!?」 あの夢では丈瑠がショドウフォンを捨て裏正を持って三途の川を渡ろうとしていた。 ショドウフォンを捨てる、これは影武者の役目を終えシンケンジャーではなくなるという意味で良いだろう。 では何故裏正を持って三途の川を渡ろうとしたのか、これはまさしく十臓同様外道に堕ちる事を意味している。 あの時点では只の悪い夢だと断じて深くは考えなかった。だが、今はそうは思えない。 いつき達から聞かされた事が事実なら、丈瑠が殿の座から去っていった時期から連れて来られた可能性は十分にある。 その時期ならば丈瑠が外道衆と戦う必要性は全く無い。だが―― 「いや、だからと言って何故十臓の様に外道に堕ちなければならないのだ……!」 そう、ずっと外道と戦い続けてきた丈瑠が外道に堕ちる理由がわからないのだ。 直接話をしなければ納得など出来るものではない。 「どういう事……?」 流ノ介の動揺は傍にいる2人にも伝わってくる。 「多分……丈瑠さんが殺し合いに乗っているかもしれない事に気付いたんじゃ……」 「ええっ!? だって丈瑠さんずっと外道衆と戦って来たのに……」 「あの紙に書かれている事が確かなら、丈瑠さんはずっと本当の当主の代わりに戦っていた事になるよね。でも、もしもその役目が無くなったら……」 いつき自身、幼き頃から武道を続けていたのは病弱な兄明堂院さつきに代わって明堂院流を継ぎ兄を守る為である。言うなれば兄や家の為と言ってもよい。 だが、ある時祖父から武道は己の生きる道を極める為だと助言を受け、さつきからもいつき自身の道を歩んで欲しいと言われたのだ。 そうは言われたものの、いつき自身武道を取り上げられたら何が残るだろうかと本気で思い悩んだ。 しかし、つぼみ達の助言もあった為、可愛いものが大好きだという心に素直になりファッション部に入った。 だが、もしあの時つぼみ達の助言がなければずっと迷い苦しんでいたかもしれない。 「自分には何も無いと考えて……そうなったらどうするか……」 「そんな事ありません! 流ノ介さんの話が確かなら凄い剣の腕があるじゃないですか! それだけでも十ぶ……」 なのはとしては全力でフォローしているだけだ。だが、それは流ノ介にとって捨て置けない言葉だった。 「剣……まさか……その為に人を斬り外道に堕ちるというのですか……とのぉ……!」 只ひたすらに人を斬り続けて外道に堕ちた十臓という前例がいる。丈瑠が剣のみに生きようと人を斬り続ける可能性は否定出来ない。 あの夢で裏正を持っていたのは十臓と同じ道に堕ちる事を暗示していたのだろう。 「何故だ……何故私は殿の心中に気付けなかった……」 丈瑠の苦しみに気付けなかった自分を責める流ノ介である。 無論、影武者である事実は外道衆に絶対に知られてはならない。それ故、例え家臣であってもそれを看破される様な言動は決して許されない。 そういう意味では丈瑠は完璧に演じていたと言えよう―― だが、どんなに隠そうとも完璧に隠す事は不可能だ。 かつて通りすがりの仮面ライダーが現れた事があった。 その仮面ライダーは仮面ライダーのいるあらゆる世界を巡り旅を続けてきた。 しかしその仮面ライダーは世界の破壊者とも呼ばれた事もあり、彼を受け入れる世界は何処にも無かった。 だが、シンケンジャーのいる世界には仮面ライダーの存在はなく、存在する必要も無かった。 当然その仮面ライダーが受けいられる事もない。だが、 『ライダーは必要なくても、この俺門矢士は世界に必要だからな』 と平然と言い放ちシンケンジャーの危機にかけつけた。 『士、俺はお前が破壊者だとは思っていない』 『根拠は?』 『無い………………強いて言えば侍の勘だ。世界は知らないが俺達はお前を追い出す気はない』 『折角だがこの世界につくつもりはない、何しろ俺は通りすがりの仮面ライダーだ』 丈瑠が彼を受け入れたのは本当に侍の勘だったのだろうか? 例えば世界から受け入れられる事の無い彼の姿に影武者であるが故に、最終的には侍の世界から離れる事になる自身を重ねたりはしなかったのだろうか? 彼の言葉にシンケンジャーとしての自分が必要なくなっても丈瑠自身としては必要であると救われたと思わなかっただろうか? おそらく丈瑠自身にもわからない事だろう―― どんなに嘆こうとも志葉家の当主、つまりは殿である丈瑠はもう何処にもいない。 流ノ介は動けぬまま――自身の影を踏みしめていた―― そんな彼をなのはといつきは見ている事しか出来ないでいる―― 彼女達の探している友ももういないかも知れない中―― 【1日目/早朝】 【B-7/ホテル】 【池波流ノ介@侍戦隊シンケンジャー】 [状態]:左脇腹に重度の裂傷(応急処置済み)、体力消費(中)、モヂカラ消費(小)、非常に大きな動揺 [装備]:ショドウフォン@侍戦隊シンケンジャー [道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3、志葉家の書状@侍戦隊シンケンジャー [思考] 基本:血祭ドウコクの撃破および、殺し合いの阻止 0:殿…… 1:十臓が向かうであろう志葉屋敷に向かう。そして十臓と遭遇したなら今度こそ倒す。 2:ドウコクを倒す、だが封印の文字が無い状況で倒せるか? 3:丈瑠と会い今一度話をする。 [備考] ※参戦時期は、第四十三幕『最後一太刀』終了後(アクマロ撃破後)以降、第四十四幕『志葉家十八代目当主』までの間です。 ※丈瑠が影武者である事に気が付きました。 ※ドウコクの撃破を目指すのは、単純に避けられない戦いであることにくわえ、他の参加者の安全確保のためという意味合いが強いです。 殺し合いの阻止よりも、ドウコク撃破を優先しているというわけではありません。 ※参加者の時間軸の際に気付いています。 【明堂院いつき@ハートキャッチプリキュア!】 [状態]:健康 [装備]:プリキュアの種&シャイニーパフューム@ハートキャッチプリキュア! [道具]:支給品一式、ランダム支給品1 [思考] 基本:殺し合いを止め、皆で助かる方法を探す 1:なのはや流ノ介と行動する 2:仲間を捜す 3:ゆりが殺し合いに乗っている場合、何とかして彼女を止める。 [備考] ※参戦時期は砂漠の使徒との決戦終了後、エピローグ前。但しDX3の出来事は経験しています。 ※主催陣にブラックホールあるいはそれに匹敵・凌駕する存在がいると考えています。 ※OP会場でゆりの姿を確認しその様子から彼女が殺し合いに乗っている可能性に気付いています。 ※参加者の時間軸の際に気付いています。 【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】 [状態]:健康 [装備]:レイジングハートエクセリオン(待機状態)@魔法少女リリカルなのは、バリアジャケット [道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3、ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのは [思考] 基本:殺し合いを止め、皆で助かる方法を探す 1:いつきや流ノ介と行動。 2:流ノ介に同行しつつ翠屋に向かい仲間と合流。 3:フェイトちゃんが殺し合いに乗るわけなんてない。 4:絶対に目の前で人殺しはさせない。力尽くでも止める。 5:ヴィヴィオ……って私の……? [備考] ※参戦時期はA's4話以降、デバイスにカートリッジシステムが搭載された後です。 ※参加者の時間軸の際に気付いています。 【支給品解説】 志葉家の書状@侍戦隊シンケンジャー 明堂院いつきに支給、 第四十四幕にて丈瑠と彦馬の元に届けられた志葉家の家紋入りの書状。 その際の彦馬達の言動から、薫が封印の文字を完成させた事が書かれている模様。 ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのは 明堂院いつきに支給、 StS第12話にて聖王医療院の売店でなのはが購入しヴィヴィオにプレゼントした普通のうさぎのぬいぐるみ。 なお第17話における六課襲撃によりボロボロとなった。 時系列順で読む Back nothing(前編)Next 戦いは始まる 投下順で読む Back nothing(前編)Next 魔法、魔人、悪魔 Back nothing(前編) 池波流ノ介 Next 変身超人大戦・開幕 Back nothing(前編) 高町なのは Next 変身超人大戦・開幕 Back nothing(前編) 明堂院いつき Next 変身超人大戦・開幕
https://w.atwiki.jp/bemani_cd/pages/230.html
CD情報 CD名 リリース日 アーティスト Nothing Else Will Stand 2014.04.27 GUHROOVY http //www.guhroovy.com/blog/archives/2014/04/guhroovynothing.html Track No. 曲名 アーティスト 演奏時間 01 HARDCORE GUHROOVY 02 6am Tokyo Funky Town (feat. Akira Complex) GUHROOVY 03 The Wall Of Fayth GUHROOVY 04 Rock The Dancefloor (feat. DJKurara) GUHROOVY 05 HYPE THE CORE (Extended Ver 2) GUHROOVY 06 C.D.O.T. GUHROOVY
https://w.atwiki.jp/kbhyakka/pages/650.html
There's Nothing Like This(1990) By OMAR Genre R B/Soul Hyakka 7.7 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/17344.html
なっしんぐれふとふぉーみー【登録タグ N あえりあ 巡音ルカ 曲】 作詞:あえりあ 作曲:あえりあ 編曲:あえりあ 唄:巡音ルカ 曲紹介 あえりあにとっては初のVOCALOIDオリジナル楽曲。その前に般若心経メタルコアを作っていたことは別に秘密でもなんでもない。 今作は英語ルカの上にメタルコア作品に仕上がっている。 イラストと動画をWeatherH、エンコードをDEATH姫が担当。 歌詞 (歌詞カードより転載) fraud. that the world is slowly ending, and someday there will be no humans. but if it's true, then what are we living for? it must be far to painful, living a miserable life in a world filled with despair. I seemed that I had somehow fallen into the sea of worthlessness Or perhaps I had never even taken off to begin with I could'nt shut my eyes from that reality i can't found mine. the meaning to my being here and now there's nothing left for me. i don't want them to suffer like i did I may be trying to atone. trying to atone. days full of happiness that i never noticed. i have lost that time, You will walk this life as how ever unchanging. the impulse that was moving me forward is disappearing. The sky is falling me down. Ask forgiveness as this little white. And I remember to close my eyes gently. Landscape and I, gradually dyed. We are in the bed, Repeat the blunder of the past recall. Than necessary, like self-mutilation. If I was not me at that time I bet me will fail and allowed. But it's not absolutely. never born again, myself. i wish i could rebuild my lives. but it's Foolish delusion. Don't involving people in my mistake. I never born again. I just wish my pulse stopped buried in snow. 歌詞の日本語訳 偽り 世界はゆっくりと終わりに近づいていて、 いつの日か人類は滅びるだろう。 だがもしそれが本当なら、 私たちは何の為に生きているの? こんな残りカスの世界、絶望の中で哀れに生きるなんて淋しいだろう。 私はどうやら不毛の海へと落ちてしまったらしい いや、最初から飛び立ってさえいなかったかもしれん その事実に目をつむってはならぬ そして私は見つけられなかった。 私がここにいる意味を。 そして俺にはもう何も残されていない。 彼らには私のような思いをさせたくない。 私は罪滅ぼししようとした。 罪滅ぼしを。 気づかないままに終わってしまった俺の満たされていた日々。 俺はその時間を失ってしまった。 あなたはまた今と変わらぬ人生を歩むことだろう 私を衝き動かしていた物が消えていく。 空が私へと落ちてくる。 この小さな白に許しを乞う。 そして私は静かに目を閉じて思い出す。 風景と私は少しずつ染められていく。 私たちはベットの中で、 過去の失態を繰り返し思い出す。 必要以上に、自傷的に。 あの時の私が私でなかったならば、 きっとあの失敗を許したでしょう。 だけどそれは絶対にない事。 私よ、もう生まれてこないでください。 私は人生をやり直すことを望んでいました。 だけどそれは愚かな妄想なのです。 私の過ちで人を巻き込んではいけないのです。 もう生まれてこないよ。 雪に埋れて私の脈が止まってくれたら良い。 コメント こういう曲が埋もれるのは悲しい。もっと評価されないかなぁ。 -- 名無しさん (2013-02-12 22 58 03) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/unkocombo/pages/18.html
Regret nothing ~Up Not Key Out~ 意味 〜内の単語の頭文字でウンコ 読み りぐれっとなっしんぐあっぷのっときーあうと 原曲 Regret nothing ~Tighten Up~ {}内は読み方を示す 歌詞 あの時漏らしてなければ トイレ行けてたら… 「もしも」は仮定の話 現実は何も変わらない 「俺は弱い」あきらめたら 取り返しつかない ほどウンコを漏らして 身動きさえも取れなくなる 痛くない 痩せ我慢 作り笑いで 人として?俺として 誤魔化すしかない ひとつだけ 流せない 黒歴史 目の前に すぐ使えそうな トイレが ないのなら この場を 動けない i can go nowhere 逃げ出せる場所はないんだ 向き合って 戦うべき Regret nothing 偉い人も 強い人も 大人になっても 絶対 勝てないはず 過去に置いてきた 悔しさに 勇気あれば 踏み込めたなら 漏らさず{ださず}に済んだろう この心の傷跡 時間だけはもう 戻せない 他人{ひと}のせい にも出来ない その記憶 Can t delete 何もかも 腹痛と言う 運命の中 漏らしても ゲラゲラ 笑うな 誰のため なんて言うつもりもなくて 最大限 我慢{どりょく}したしるしを i can go nowhere 残すしかないと信じてる 自分はもう 欺くな Regret nothing 果てしなく 続く 明日のために誰も 準備している「それ」は本当に必要? 目に見えるもの たくさん集めてみても 役に立たない ほらそれより 後悔しない 強さを持て つまり… Regret nothing 目の前に すぐ使えそうな トイレが ないのなら この場を 動けない i can go nowhere 逃げ出せる場所はないんだ 向き合って 戦うべき Regret nothing
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/32738.html
【登録タグ N オカメP 初音ミク 曲 色人万騎】 作詞:色人万騎 作曲:オカメP 編曲:オカメP 唄:初音ミク 曲紹介 今シーズンもう8匹ゴキブリを殺めました(´っ,,;ω;,,c`) どっから湧いてくるの?(作者コメより転載) サムネのイラストはピアプロより、Ruuya氏のものを使用している。 歌詞 (PIAPROより転載) 雨模様の空 僅かな日差しが木々の 隙間からユラユラ輝いて眩しい 『気付いた』 風が吹き 歪められた過去見える 心の動揺から 絶望の幻影にかわる 『届かない』 時間の進行から 深淵の運命にかわる 『助けるよ』 世界は嵐と輝きの Refrain 溢れ出してく雨 構わず流れてく B2 『見つけた』 目覚めたら居場所があるか不安で 心の底から 希望の未来(あす)にかわる 『口付ける』 呪縛の開放から 時間の進行へかわる 『早く目覚めて・・・』 永遠の時間 眠り続けた だから現在(いま)優しくしていけるかな 目の前にいる あなた信じる 抱きしめて 震えがおさまる力(ちから) 孤独の状況から 二人で行動をするよ 『空高く』 最初の場所から 終わりを見届けるよ 『使命だよ』 悲しい瞳と 抱きしめてくれたこと 『忘れない』 使命を終えたら 一瞬で消えてくから 『もう・・・』 Nothing I can't do. コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/monnnasigma/pages/65.html
作詞・作曲・編曲:湖山信太郎 Z46イメージソング 手をかざして終わりを告げ 手を返してまた散ってゆく 幾度となく 嗚呼とめどなく 繰り返され また繰り返し 何も言わず 今は厭わず ただただ抱きしめておくれ 奇しくもその名は未完の私を象る 無いはずの傷が疼いて 空疎の栄光 景も差さぬ場所で今も待ち望む 呪いのような運命を撫でてくれる それだけで渇望が満たされ生まれ変われる? 貴方の色を刻んで 教えて、愛する人よ 真逆の私を嘲笑う 無いはずの嘘がちらついて 空疎の栄光 景も差さぬ場所で今も待ち望む 呪いのような運命を撫でてくれる それだけで渇望が満たされ生まれ変われる? 貴方の色を刻んで 教えて、愛する人よ 愛する人よ……
https://w.atwiki.jp/mtgflavortext/pages/9988.html
何も残らなければ、すべての可能性が等しくなる。 When nothing remains, everything is equally possible. 神河救済 【M TG Wiki】 名前