約 3,038,868 件
https://w.atwiki.jp/hiroki2008/pages/28.html
古泉消失 当初の予定では古泉が失踪する話だった いつか森園生をバイオレンスものでやってみたいと思う それはそうと古泉、お前色がいつもと……、俺がそう言いかけると古泉が目を丸くした。 「こ……こんなバカなことが」 「どうした」 古泉がガタリと椅子を引いて立ち上がった。「僕の持つ力が開放されてゆきます!」 古泉の輪郭がだんだんと赤い光の球体に包まれてゆく。「こんな……いったいなぜ」 「おい古泉大丈夫か。神人でも現れたのか」 「いいえ、ここは閉鎖空間ではありません。この通常空間では僕の力は使えないはずなのですが。ありえません」 古泉の球体がいっそう輝きを増してゆき、白く光った。俺は目を眇めた。 後ろを振り返ると長門が目を丸くしている。「……消失する」長門がそう呟く。 「これを!」古泉が、いや古泉の球体が赤い物体を差し出した。 「いったい何が起ってるんだ!?」 光の球体が徐々に縮小してゆき、古泉はそこから消えた。あいつの携帯が固い床に落ちる音がした。 部室の空気が数秒間、時間が停止したような感覚に襲われた。 古泉が目の前で消えた。それを見ていたのは俺と長門だけだ。 そのとき勢いよくドアが開いてハルヒが入ってきた。 「おっはよーみんないる?」 「あ、ああいる」俺の思考は今起ったことを理解するのに忙しくて、それを悟られまいとするも虚しく曖昧な返事をした。 「古泉一樹は今日アルバイトで欠席すると言った」長門が唐突に言った。 「あらそう。残念ね、自前でケーキ作ってきたのに」 「ハルヒ、お前が団員のためにケーキ作ってくるなんて、何を企んでるんだ」 「なんてこと言うのよ。わたしだって洋菓子のひとつくらいは作るわよ」 「お前が俺たちのためになにかしてくれると、その数倍の労力を要する見返りを求められるからな」 よもや忘れもしまい、いつぞやのバレンタインデー。アンド、ホワイトデー。 「えっへへ。それが分かっているならあきらめて食べなさい。腕によりをかけて作ったんだから」 長門はなにも言わずにさっさと食っている。まるで急げと言わんばかりに。 俺はふと思い立ち、「後で古泉んちに用があるから届けてやる」と俺の分のケーキともうひとつをより分けた。 「そう、じゃあ箱ごと持っていって」 「わたしも……これからアルバイト」 「有希もなの?みんな忙しいのね。じゃあ今日はこれにて解散」 言うが早いか、その後姿から煙が立っているんじゃないかと思える勢いでハルヒは走り去った。 「これからどうすればいいんだ」 「機関に連絡して」 指差した先に古泉の携帯があった。 「そうだな、森さんや新川さんになら連絡つくだろう」 古泉の着歴をひとつずつスクロールした。古泉、お前の交友関係を詮索するつもりはないが、事件解決のためだからな。 あった、森園生。 数秒して相手が出た。 「はい、森です」 「すいません、古泉の携帯からかけています。緊急を要する件で」 「あらキョン……君ですか?」 森さん、あなたもその名で俺を呼ぶんですか……。というか本名で紹介されたことないな俺。 「実は、古泉が目の前で消えました」 「え……」 俺は目の前で起ったことをかいつまんで説明した。 「新川とただちにそちらへ向かいます」 「いつも古泉がお世話になっております」 「はぁ・・いえいえこちらこそお世話に。はい」新川さんの丁寧な腰45度のお辞儀に対して俺は気の抜けた返事をした。 「そちらの機関に対抗する勢力の介入は考えられないでしょうか」 「なんとも言えません。古泉が消えた状況から考えて現代の科学では考えられない、一種の転送技術かなにかでしょうか」 新川さんは問うように長門を見た。 「古泉一樹はどの時空にも存在しない、統合情報思念体にも検知できない」 「ということは、少なくとも我々に対抗する勢力の及ぶ範囲ではないと考えるのが妥当かと」 「前にも似たような経験をしたことはあるんですが」俺は時空のねじれでSOS団が消えた事件を思い出した。 あれは長門がやったことだったが、少なくともここにいる4人の記憶には古泉が存在している。 「あれとは違う現象」長門もそう言った。 「その、文庫本をしばらくお借りしていいでしょうか」 机の上にあったはずの例の文庫本が消えていた。「アレは?」 「これ……」いつのまにか長門が持っていた。ハルヒに見られないようそっと隠したのだろう。 新川さんは証拠物件を扱うように白手袋をはめてジップロックの袋に入れた。 「機関に持ち帰って分析させていただきます。話を聞く限り、内容は読まないほうがいいでしょう」
https://w.atwiki.jp/hiroki2008/pages/107.html
施療院 妊婦にはアルコール厳禁になったのでカットした部分 「ああ、あとハルヒが面白いものを作ってまして。ちょっとこれを嗅いでみてください」 「なにかしら。これはお酒?」 「ちょっと味見してみてください」 朝比奈さんは少し咳き込み、 「すっごい強いわ。焼酎? テキーラかしら」 「ハルヒがどういう製法で作ったのか分からないんで何なのか分からないですが、麦芽から作ったウイスキーの元になる蒸留酒というか」 「こんな時代に作り出すなんてすごいわね」 「薬用にするか、あるいはこのまま売ってしまってもいいかもしれません」 「いいかもしれないわね。ロードシップに相談してみます。お酒好きだから」 俺は困った顔をしながら、 「もしかしたらスコットランドの地場産業が歴史から消えてしまうかもしれませんが」 「もうこの際だから既定事項になんて構っていられないわ。やれることはなんでもやりましょう」 言っちゃったよこの人、さすが酒の力は強い。
https://w.atwiki.jp/hiroki2008/pages/29.html
みくるとの再会 当初みくるは未来に帰ってしまった設定にしていたのだが 時系列が合わないので没にした (後日、涼宮ハルヒの経営Ⅰで使われた) 長門が消えて3日が過ぎた。 ハルヒには、おおかた実家にでも不幸があって帰ったんだろうとごまかしておいたが、信じたかどうかは定かではない。 3日ということはタイムトラベルで別時代に行ったわけではないということだ。 なぜなら、戻ってくる可能性があるなら即現れるからだ。 それが1分後でも2分後たいした違いはない。ところがそれが3日間ということは、少なくとも長門の自時間で3日間、 戻って来れない事情にあると考えるべきだろう。 朝比奈さんがかけつけた。つまり未来から戻ってきた。 「涼宮さん、おひさしぶり」 「あら、みくるちゃんじゃないの。帰ってたんだ」 「お元気そうでなによりです」 「どう?スイスの大学は。いい男捕まえた?」 「やだ涼宮さん、そんなことしませんよぅ」 「赤くなってるところを見るといい獲物がいたようね」 「ちがいますってばぁ」 未来に帰っても朝比奈さんは朝比奈さんだ。スイスの土産ですと小さな箱をくれた。 俺が、開けてもいいですか、といい終わらないうちにハルヒが早々と中身を検めている。 「キョン!金塊よ金塊!スイスゴールドよ!」 「ほんとかオイ」 「やだ、それチョコレートですよ」 なるほど、スイスといえば金塊チョコか。 にしても、わざわざアリバイ作りのためにこんな高価なものまで、と苦笑めいた俺の表情を見てか、 「あら、ほんとにスイスにいるんですよ今」と俺だけに聞こえるように言った。 「えっそうなんですか」 「スイスのある研究所で働いてるの」 「へー。やっぱ時間関係ですか」 「スイスだけにね、ってちがうちがう」ナイス乗りツッコミ。 「あとでちょっと話せます?」と腕時計をさして尋ねた。 「ええ、少しなら時間あります」 涼宮がチョコを食い終えて満足顔で帰ってから、俺と朝比奈さんは駅前の喫茶店に入った。 「長門が消えてからもう3日になります」 「だいたいのことは小泉くんに聞きました。その本ってのは……」 「今、古泉が機関で調べてもらってるみたいです。涼宮の自伝みたいな本で。 俺が一人称で書いてることになってるらしいんですが」 「今回のことは私の知る限り、私たちの未来には関わってる事件ではないみたいなんです」 「つまり、長門が無事戻ってくるかどうかは分からない?」 「それは禁則事項なんですが、長門さんそのものが時間的制約を受けない人ですから。 未来に存在してもそれが今回消えた長門さんなのかどうかは分かりませんし、 情報統合思念体が用意したバックアップコピーかもしれません」 「つまり同位体ってやつですか」 「ええ。私たちから見れば異時間同位体です。長門さん達から見れば、情報をリンクしているものを同位体と呼ぶみたいですが」 つまり長門は未来に存在するわけだ。朝比奈さんは遠まわしにそう言っている。 「以前長門が暴走したとき、俺がハルヒ一同SOS団が存在しない世界に行ったときのことですが」 「ええ」 「未来からの干渉で修復しましたよね」 「ええ。それが規定事項でした」 「あのときと同じようにいかないんですか。つまり、長門が消えてしまう前に止めに入るとか」 「それが、今回のは規定ではないんです。 つまり、そのとき私がいなかったということは止めに入ることは規定ではないということです。 それに長門さんの組織には干渉しない暗黙のルールみたいなものがあって、簡単に手は出せません」 「なるほど」 「それに私たちが干渉するのは時空震が起るような場合だけですから」 「つまり今回は長門個人に降りかかった災難と」 「そういうことになります。今のところは静観するしか」 「そうですね」 「でも、私がこうして来ているのは可能な限り支援するためなので。できることはなんでもします」 「ありがとうございます。でも、古泉もあいつの機関もですけど、なにひとつ情報がないんでどうしようもなくて」 「これは重要なことなんですが、私のいる時代では今回の件は歴史として残ってないんです。 抹消されたのか、元々なかったのかは分かりませんが」 とすると、今回の件は朝比奈さんのいる時代では存在しない歴史ということか。どうなってるんだ。 「そうですか……」 ふたりともしばらく無言のままお茶をすすっていた。たぶん、長門やハルヒたちと遊んだ日々を思い出しているのだろう。 「未来からも今回の件を観測しています。未来でも情報統合思念体とは接触できますから」
https://w.atwiki.jp/hiroki2008/pages/70.html
ハルヒの無限ループの部分 古泉とハルヒのウエディングは後日別の話でまとめるので使われなかった部分 「恋愛は恋愛、フォロー役とは別です。あなたにはあなたの役割を担っていただかないと」 「むぅ……」 この野郎、ジョンスミスの名前を封印しろとまで言ったくせに都合のいいときだけ逃げを打つのか。歴史を書き換えてまで役を譲った俺の苦労はなんだったんだ。 「じゃあハルヒはいったいどうしたいんだ」 「この状況からして、涼宮さんは自分が花嫁じゃないことに不満なんじゃないでしょうか」 「ハルヒが長門に嫉妬してるってのか」 「いえ、そういう意味ではなくて“自分が花嫁衣装を着ていない”ことが不満なのではと」 自ら仕切るから任せろと言っておきながら自分が主役じゃないと気に入らないのか。まったくわがままなやつだな。 「それはもう、この披露宴なら誰でも主役になりたいものです」 「そうなんですか?朝比奈さん、喜緑さん」 「ええ」 「そうですね」 二人とも異口同音に同じ反応をした。 「ということはだ、古泉。もうやることは分かってんじゃないか」 「えっ、と申しますと?」 「ここでハルヒにプロポーズしちまえ」 墓穴を掘ったな古泉。お前が自らの理屈で自分の首を絞めることになろうとは笑いが止まらん。 「それはいくらなんでも無茶が過ぎると思いますが」 「んなこた分かってるさ。だがこのループを抜け出せる方法がそれ以外思いつかん」 「よそ様の披露宴でプロポーズなど聞いたことがありませんが」 「いいんだよ、ハルヒに前例なんて適応できるわけないだろ」 「いくらなんでも早すぎます、無茶ですよ……」 「俺に任せろ。ここからは俺が仕切る」 目が裏返ったかのような画面蒼白の古泉がブツブツとつぶやいていた。今までずっと無茶を通してきた俺にはもう怖いものなんてない。人生がすべて計画通りのお前とは違ってだな、行き当たりばったりの俺には定石なんてものは存在しないんだ。 俺は古泉にハルヒを押し付けようとして、古泉は役柄のおいしいところだけを引き受けようとする。二人とも相手に嫌な仕事をさせようとしているのが見え見えなのだが、まあ今までの半分くらい肩代わりさせてもバチは当たらんだろう。 「長門、唐突ですまんのだが」 「……心得た」 なにが必要かすでに分かってくれているらしい。 「……鉛筆」 なぜこんなもんが俺のポケットに入っているのか、虫でも知らせたんだろうかね。 「一本でいいか」 「……十分足りる。あと、貴金属」 「古泉、そのカフスボタンとタイピンをよこせ」 「これですか」 古泉が安物のアクセサリーを着けるわけはないし、たぶん金かプラチナだろう。 長門が詠唱すると鉛筆が宙に浮かび、印刷された部分が剥離し、木が二つに分離し、芯だけが残った。その芯が白熱化しキラキラと光る小さな粉になって螺旋を描いた。一瞬だけ光る球になって広がり、やがて小さくなって長門の手の上に降りた。キャラメルくらいの大きさの透明な石が乗っている。カフスボタンとネクタイピンを握り締めて手を開くとやたら豪勢なダイヤの指輪が現れた。 「な、長門。これはちょっと大きすぎるって。せめて一とか二カラットくらいにしてくれ」 「……そう」 「いいじゃありませんか、大きいことはいいことです」 「しかしこのサイズのダイヤの値段を知ったら目んたま飛び出すぞ」 「僕の涼宮さんはそれくらいじゃ驚きませんよ」 余裕かまして言ったなこの野郎。じゃあこれで行こうじゃないか。そのへんのセレブでも持てないようなカラット数のダイヤモンドでな。 俺はハルヒからヘッドセットを取り上げ、長門にキューサインを出し披露宴タイマーをリスタートした。 『れでは、アレ?』 「はなはだ異例だとは思いますが、ここで新郎より媒酌人へのサプライズがあります」 ふつうは両親への手紙とか友人一同からのプレゼントなんかがサプライズなのだが、祝い事だからまあこういうハプニングもありだろ。 「ハルヒと古泉、ちょっとステージに上がってくれないか」 「なんなのよこれは。ぜんぜん聞いてないわよ」 ハルヒがブツブツ言いながら着物の裾を気にしつつ歩いてきた。俺はマイクに向かってしゃべった。 「ハルヒに、古泉。お前達にはいろいろと世話になったが、今までこれといったお礼もしていない。だからこれは俺たち二人からのお返しだ」 俺は長門手作りのダイヤの指輪を古泉に渡した。 消失長門の思い出 三章が書かれる前に七章に存在していた断片 白い透き通るようなウエディングドレスをまとった長門の隣に、もうひとりの影が見えた。ぼんやりとかすんで、俺が涙目で姿がにじんで見えていたのかそれとも本当にそこにいたのか。メガネをかけた長門だった。目をこすってよく見ようとすると、そいつは俺を見て少しだけはにかんで、スッと消えた。ずっと前に、長門が世界を改変してしまったあとに生まれた人間の長門。あいつのことはずっと心のどこかで消化不良のままひっかかっていた。メガネの長門はあれからどうなったんだろう。もしかして向こうの世界はまだ存在していて、俺が消えたあと一人ぼっちで暮らしているんじゃなかろうか。そんな心残りがいつまでも漂っていた。 あのときの長門はお前の記憶の中にいるのか、それとも別の存在だったのか。それをこのヒューマノイドの長門に直接尋ねたことはなかった。 長門は怪訝な表情で俺を見ていた。 「……なに」 「い、いやなんでもない。古い知り合いがいたかと思ったんだが気のせいだった」 たぶん長門には分かっていたんだと思う。なにも言わなかったが、ただうなずいていた。
https://w.atwiki.jp/hiroki2008/pages/32.html
エピローグ 記憶の改竄内容が変わったので没になったエピローグ のはずなのだが結果的に一部採用された 最後の一文は掲載直前にこのエピソードから抜粋したもの 「情報統合思念体が、谷口流に関する記憶も消したほうがいいと言っている。論理的逆説を招きかねない」 「ちょっと待ってくれ。できればそれは取っておきたいんだが」 卵が先かニワトリが先かっていう問題だろう。 だがそれを消してしまったら俺が苦労して長門を探し出した記憶が曖昧になる。 長門を見つけ出したあの瞬間を、俺は忘れたくない。 「……わたしもそう思う。そう伝える」 「また会おう。作中でね」 あのとき、谷川氏が別れ際に見せた笑顔が忘れられない。もう一生会うことはないだろう。少なくともこちらからは。 しかしこれもまた、谷川氏も含めた一連の現象が、また別の世界の誰かの頭の中に存在する世界であるかもしれないということを、 俺は否定できないでいる。
https://w.atwiki.jp/hiroki2008/pages/14.html
長門有希の日記Ⅰ 学校から帰った。涼宮ハルヒおよびSOS団の動向に特に異常は認められなかった。今日も安泰。 マンションに入る。エレベータには誰も乗っていない。 わたしの部屋の様子がいつもと違う。 赤外線で見る。わずかながらドアから放熱している。 壁の向こうの熱光学反応を見る。台所付近に通常は存在しない粒子が漂っているのを確認。 用心深くドアを開ける。先ほどの粒子がわたしを包む。 誰も潜んでいる様子はないが、可視光と赤外線を切り替えながら廊下を進む。 台所を中心に室温が三度上昇している。 空気振動から察するに排気ダクトは機能しているようだ。 台所の壁を透視する。誰もいない。 意を決して中に入る。 「・・・」 IHクッキングヒーターに鍋が置かれてあった。まだ熱い。フタを取る。中身は・・・カレー。 これは・・・いったい誰が作成したのか。貝杓子を取って味をみる。 「ひとつひとつの具の切り方があまい」 わたしは分析を続けた。 「肉の炒め具合も香辛料の量もあまい。だからわたしに気づかれる」 気配を感じて振り向くと後ろで朝倉涼子が絶句していた。「・・・」 喜緑江美里が応える「な・・長門さん、そのカレー朝倉さんが作ったのよ」 朝倉涼子は目頭を押さえて走り出した。「あんまりだわっ」 うかつ。 「長門さん、あんな言い方よくありませんわ。追いかけて謝ってらっしゃい」 喜緑江美里が言う。言われなくてもそうする。 マンションを出た。 GPSで朝倉涼子の現在地を確認。衛星がひとつ軌道位置からずれている。NASAに連絡しなくては。 朝倉涼子は駅前の公園にいた。まるで探してくれと言わんばかり。 朝倉涼子は公園のベンチに座ってうつむいていた。近寄っても顔をあげようとしない。 「・・・すまない」わたしは謝った。 「いいわよ。どうせわたしの作るカレーなんてその程度のものよ」 「・・・すまない」わたしはもう一度謝った。 「わたしはここ数日カレーのレシピの研究に多大な時間を割いていた。 その結果他人の作る料理を分析するという悪い習慣を身に付けてしまった。 先ほどの言動は、不本意」 「そんなことはどうでもいいわ。わたしだって料理してみたいのよ。 誰かに食べてもらって、おいしいって言われたいのよ」 「・・・」要点が分からないので待つ。 「あなたは知らないでしょうけど、急進派ではね、いつもトップでないとだめなのよ。 ミスをしないかといつも見張られていて、誰かに足を引っ張られないかとビクビクしてる。 だからわたしは他人を思いやる気持ちをなかなか持てなかった。 地球に来て、それが大切なんだと知った」 わたしは朝倉涼子の隣に座った。 「わたしはね、誰かが喜ぶ顔が見たいだけなのよ。それがどう? 教室ではいつも優等生でいなくちゃならない。 涼宮ハルヒは目を合わそうともしない。SOS団には妙な結束が出来て中に入りこめない」 朝倉涼子は、人間で言うところの、いわゆる長女なのだ。 皆から尊敬されうらやましがられる存在でなければならない。 間違いを犯してはいけない。そんな暗黙の空気が彼女の生活圏を包んでいる。 「泣いても・・・いい」 わたしは朝倉涼子の肩を抱いた。 「ありがとう」 でも朝倉涼子は泣かなかった。強がりはオリジナルの個性のようだ。 「あなたの作ったカレーが食べたい」わたしは言った。 朝倉涼子はまだ離れない。気温が下がってきた。わたしは少しだけ体温を上げた。 END
https://w.atwiki.jp/hiroki2008/pages/93.html
涼宮ハルヒの懺悔 ハルヒの告解は最初本当に懺悔する内容だった ── 神父さま、あたしは罪を犯しました。 十年前のことなんだけどさあ、あ、この十年前っていうのはあたしのいた時代の十年前ってことね。通っていた中学校に不法侵入をしました。それだけならただの家宅侵入罪なんだけど、忍び込んでなにをしたかっていうとグラウンドに落書きをしただけなのよ。っていうか実際に書いたのはあたしじゃなくて、ジョンスミスとかいう不良高校生なんだけど。問題はその後よ、そいつがどこ行ったのかぜんっぜん分かんないの! 市内に住む外国人にかたっぱしから電話かけてみたんだけどそんなやつ知らないっていうし、似顔絵を描いて近所の高校生に聞いて回ってもナシのつぶてなのよ、住基ネットにもいないし警察にも私立探偵にも見つけられないなんて信じられる? よくあるじゃない、そして彼は忽然と姿を消した、チャララーン次回へ続くみたいな安っちいドラマ。ふざけんじゃないわよ! 謎を残すだけ残しといて迷宮入りとかどんな連載打ち切りよ、あたしがどんだけ苦労して探しまわってたか知ってんの!!ハァハァ、ごめんちょっと乱れたわ。 モノは相談なんだけどさあ、神様の力でなんとかしてくんない? 全人類の中からジョンスミスを見つけ出してほしいのよ。お賽銭なら弾むわ、ホラホラこれでなんでも好きなもの買いなさい。あれ、穴が小さくて入んないわ、どうやってお金入れたらいいの、え、これじゃ足りない? アンタねぇ、この不景気の世の中どこに福沢諭吉をタダで恵んでくれる奴がいるっての、非課税の宗教法人だからって贅沢言ってんじゃないわよまったく。 ちょっと聞いてんの神父さん。顔色悪いわ、あんたのほうが天に召されそうじゃん。え、なに泡吹いてんの……お坊さん呼ぼうか?
https://w.atwiki.jp/hiroki2008/pages/56.html
五 章 キョンに遭遇しただけで記憶を消すほどのことはないと判断して採用されなかった案 古泉の記憶抹消 「古泉、まことにすまないんだが」 「未来の僕の記憶と一致しない、因果律に抵触するんでしょう」 「実はそうなんだ」 やけに勘のいいやつだ。 「いいいですよ。記憶を消してください」 「ごめんね、古泉くん……」 朝比奈さんが古泉の首筋にちょんと触れると、古泉はフラリと気を失って倒れかかった。俺はあわてて脇を支えた。
https://w.atwiki.jp/hiroki2008/pages/5.html
更新履歴 @wikiのwikiモードでは #recent(数字) と入力することで、wikiのページ更新履歴を表示することができます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_117_ja.html たとえば、#recent(20)と入力すると以下のように表示されます。 取得中です。
https://w.atwiki.jp/nicomad_srs_event/pages/1037.html
[部分編集] http //www.nicovideo.jp/watch/sm14039656 投稿者コメント1.コメント2.コメント3.コメント この作品のタグ:PV 化物語 第46回MAD晒しの宴 レビュー欄 名前 コメント PV 化物語 第46回MAD晒しの宴