約 1,353,231 件
https://w.atwiki.jp/city_blues/pages/213.html
「なるほど、お話の方はよく理解出来ました」 十代の若々しい、大人と子供の中間に位置する様な青年らしい声音かと言われれば、そうでもなく。 かと言って、酸いも甘いもかみ分けた三十~四十代の落ち着いた声音かとも問われれば、そうとも言えず。 二十代の、青年らしい声音からは既に脱却し、大人らしい落ち着きを漸く得始めた、とも言うべき。そんな男の声が、ミーティングルームに響き渡った。 良く通る上に、何処となくセクシーさと言うものを感じ取れる良い声だった。本人がその気になれば、舞台声優としても通じる程の魅力的な声であろう。 だが現実は違った。男の選んだ仕事は、日本に於いて知らない社会人などいないと言っても間違いない程の超大手銀行の銀行マン、しかも男は、 数千を超す程の従業人の中のほんの一つまみとも言うべき、超が付く程のエリートだった。 「貴社の中の一部門である、アイドル部門をより世間的に認知させ、そして、社全体の業績を伸ばそうと言うプロジェクト。その遂行の為に、三億の融資が必要である、と」 「その通りです」 男の言葉に対してそう答えたのは、妙齢の女性であった。 もう華の二十代は過ぎたと言うべき年齢である事が、立ち居振る舞いからも窺える。着こなすスーツが、とても凛々しい。 大学を卒業したての女性では、醸し出せない空気だった。だがそれでも、日々摂生に努めた生活を、忙しい合間を縫って何とかこなしているのだろう。 化粧をしていると言う事実を差し引いても、彼女の肌は二十代後半の張りを未だキープしており、顔つきも、三十路を越えた年齢であると言うのにとても若々しい。 その厳しそうな顔つきと声音、そして身体から発散される風格は、一流企業に勤めるOLと言うよりは寧ろ、新進気鋭の企業の女社長とも言うべきものであった、 一方で、女性の眼前で、ミーティング・デスクの適当な一席に座るのは、なまめかしい黒色の、如何にも名の立つテーラーに仕立てて貰ったスーツを着こなす男だった。 サラリーマンの道を志して居なければ、きっと俳優にでもなれたであろう程の整った顔立ちをした男で、腕に巻いたロレックスと、 勝ち組の特権だと言わんばかりに履きこなすジョンロブが、この男をただのサラリーマンでないと言う事を雄弁に物語っていた。 男は――結城美知夫は、 新宿 は当然の事、日本全国津々浦々、果ては海を越えて外国にすらも支店を持つ、某有名メガバンク。その 新宿 支店の貸付主任であるのだ。 三億円である。事業融資の額としては、珍しくない。 それどころか、結城程の銀行マンであれば、億の金など毎日の様に右から左へと動かしている。三億など、ポンと貸してやる事だって、ある。 だがそれは、誰の目から見ても実績と信頼が確かな大企業である、と言う場合に限る。 実際には最近のメガバンクは従来通り大企業、或いは中小企業への融資を主としており、特に中小企業など、余程優れた業績やここ数年の決算、そして、 融資係を口説き落とせる見事なプレゼン力がなければ、先ず融資は受けられない。当たり前だが銀行は慈善活動で金を貸している訳ではない。 利子を設定し、本来設定した貸付金の額+利子で利益を上げる組織である。当然、貸し付けた本来の額が回収出来ねば、当然赤字であり、貸した融資係は大目玉だ。 況してや三億円など、到底回収出来ませんでしたで済まされる金額ではない。少しのミスで、エリートが窓際族にまで転落するのが当たり前なのがメガバンクだ。 それに相談者が推し進めようとしているプロジェクトは、いわば新しい芸能分野の開拓だ。先行きが見通せず、時の運次第でどうとでも転がる計画の為、真っ当な銀行マンであれば、いわゆる『貸し渋り』をしてしまう事であろう。 これが、弱小の芸能事務所やプロダクションであれば、結城は貸す気など微塵も起こさなかっただろう。 だが、相談された先の企業が、あの『346プロダクション』と言う事実が、結城に熟考の時間を余儀なくさせた。 346プロと言えば、国内の芸能プロダクションの大手とも言うべき事務所の一つである。 本社は 新宿 に構えられており、 魔震 前から存在した歴史あるプロダクションである。一時は 魔震 の影響で操業停止寸前にまで追い込まれるも、 当時所属していた俳優や歌手の頑張りや、当時の幹部首脳陣の精力的な指揮能力で、見事 魔震 前以上の地位を獲得するにまで成長した、強い企業だ。 芸能事務所の中では、間違いなく大手と呼んでも差し支えのない団体であった事だろう。但し、此処 新宿 での346プロの地位は、現在二位だ。一位から転落していた。 近年、悪魔的な手腕で急速にその版図を広げさせている、旧フジテレビ本社と同じ位置に、巨大なタワーと言う形の社屋を構える、日本最大のレコード社。 通称、UVM社の超が付く程の大躍進により、346は当然の事、日本中の音楽・芸能プロダクションはその頭を抑えられる形になっていた。 UVMだけが一強と言う訳ではないが、それでも、天を貫くバベルの塔のような本社を持つあの会社の牙城は、驚く程堅固だ。 それを突き崩す神の雷を、結城美知夫の顧客(クライアント)となる女性、美城は、アイドル事業に求めたのである。 彼女は言う。極めて悔しい話だが、UVM社が擁する歌手陣の層は、日本所か世界中の全プロダクションの中でも類を見ぬ程分厚く、高レベルだと。 真っ当な歌唱力やプロモーション能力で勝負を仕掛けるのは、無理があると美城、及び346プロは判断。だが手を打たぬ事には、何時までもUVMに頭を垂れ続ける事になる。 そして最近、と言っても此処数ヶ月の話であるが、346プロは、UVMは所謂、アイドル事業が手薄であると言う結論を弾き出したのだ。 手を出していないと言う訳ではないが、それでも、UVMのアイドル事業は、他の部門に比べて業績が奮わないと言うのが現状だった。 此処を狙わぬ手はない。アイドル活動と言うのは、無論歌唱力やダンスの技術も求められるが、それ以上に、年頃の女性が『頑張っている姿』を演出するのが重要である。 これを演出する事で、ファンの庇護欲やエールを送りたいと言う気持ちを助長させる事こそが、肝要なのだ。UVMは、その年頃の少女の活かし方を学んでいなかった。 『女の子の輝く夢を叶えるためのプロジェクト』、と言う御題目を掲げ、美城を含めたプロダクション全体が一丸となって推し進めるこのプロジェクト。 社の人間は、これを『シンデレラプロジェクト』と呼んでいた。シンデレラとは、この世で最も有名かつ理想的なサクセスストーリーだ。成程確かに、女の子の夢を叶える計画の名を冠するに、相応しい。 プロジェクトは今の所順調な経過を見せていたが、それでもやはり、躍進と言う程ではない。 年頃の子供と言うのは、堪え性がない。直に目に見えた成果を欲しがる生き物だ。早い話、直にでも大舞台に上がりたがると言う性を持つ。 美城にしたってそれは同じである。今のままでは、UVMに並ぶまで何年掛かるか。況してや相手は、プロデュース業に掛けては悪魔的な才能を持つブレーンがいるのだ。 つまり、此方のプロジェクトを考察し、自分達も同じようなプロジェクトを立てるかも知れないのである。そうなったら、UVMと346の間には、大きな差が開き、 永久にそれが埋まらなくなる。美城は、これを危惧した。だからこそ、即効的に効果が表れる自身の計画を推し進めようとしたのだ。 その為には、金が入用になる。 だからこその、今の融資相談であった。美城は、上に語ったような事柄を、パワーポイントなどで懇切丁寧に、そして自身の計画の有効性や効率の良さをプレゼン。 経営者、そしてアイドルを導く為の責任者としての目線からも、自分の計画が全く間違いでない事を、結城に今まで説明していたのである。 美城のプレゼンは、畑違いの結城から見ても、素晴らしい物だった。 346プロの業績や決算の良好さ、及び、プロジェクトにかける熱意を主張した上で更に、結城にも解りやすくこのシンデレラプロジェクトについて説明する、 と言う配慮が至る所に成されていた。更に、美城自体の人間性も優れている。プレゼンの最中に結城は、カマかけや試す意味で、 美城のプレゼンをつまらなそうに聞く演技をしていたが、「そんな演技など見飽きた」とでも言わんばかりに、彼女は平時の様子でプレゼンを続けていたのだ。 相当な手練である事が一目で見ても結城には解ったが、想像以上の傑物らしい。並の銀行マンならば、逆に呑まれかねないだろう。 美城の方からは、説明出来る事は全て説明し尽くした。 後はもう、結城からの鶴の一声を待つだけだ。彼が肯じるか、それとも首を横に振るかで、今後が決まると言っても良い。 「……宜しい。融資を致しましょう」 結城はたっぷり十秒程の時間を置いてから、そう言った。 「ありがとうございます」、と平素と変わりない声音と態度で、美城が一礼した。 特に喜んだ様子を見せないのは、この融資は言わばゴールではなく第一歩であり、言わばこの三億が振り込まれる事で、漸くスタートを切ったに等しいのである。 おちおち喜んでなぞいられない、と言うのが美城の本音であるのだろう。つくづく、抜け目のない切れ者だった。 とは言え、そんな美城の態度とは裏腹に、結城は全くリラックスしていた。 緊張した態度を演出しているのは、表面上だけ、内心は全く落ち着き払っている。 346プロダクションならば三億程度の金、自分の腕前なら容易く回収出来ると言う自信もそうであるが――もう一つ。 三億の融資を快諾したのには、上記の自信を上回る絶対の理由があったからに他ならない。 「シンデレラプロジェクト、素晴らしいお名前ではありませんか」 スックと席から立ち上がり、美城と、プロジェクターからスクリーンに投影されるプレゼン画面を交互に見渡しながら、結城は続けた。 「夢見る原石である女の子達を磨き上げ、立派な宝石へと仕立てるプロジェクト。まさに、全ての女性の夢である『シンデレラ』の名に相応しいですな」 「恐縮です」 我ながら、全ての歯が浮いて歯茎からすっぽ抜ける程の営業トークだと冷笑する結城。 無論、今しがた口にした言葉の通りの事など、全く思っていない。本心から、どうでも良いとすら思っている。 優れた社会人である美城なら、結城の歯の浮く台詞など、御見通しであろう。何せ相手は銀行マン。融資金の回収と利息の回収が出来ればそれで良い、禿鷹であるのだ。少女の夢の成就を願う人種の、反対に位置する人間である。 「それでは、お互いの為に、頑張りましょう。美城様」 「えぇ、今後とも、よろしくお願いいたします、結城様」 そう言って二人は互いに近付いて行き、固い握手を交わした。かくて、346プロへの三億円の融資が決定した。 新宿 での聖杯戦争が開催される、二日前の出来事であった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「聖杯戦争も始まったと言うのに、出勤か。精が出るな」 結城には、果たしてそれが何を意味し、何のバロメーターを表しているのか。 到底理解出来ない計器が無数についた大規模な機械の塊を見上げながら、手に持った資料に時たま目を配らせるジェナ・エンジェルがそんな事を口にした。結城の方には、目もくれない。 「貧乏人とエリート程暇のない人種はないのさ」 ネクタイを巻き終え、腕時計を確認し、時間的にまだ余裕がある事を確認してから、結城が言った。 大企業に就職出来たから、冷房の効いた部屋で優雅にデスクワークをして、高給を……。 そんな甘っちょろい現実など、ありえないと言う物だ。実際には見ていてうんざりする程の量の書類を処理したり、またある時は実地で様々な交渉事を行ったりと。 やる事は山ほどあるのだ。パレートの法則と言うものが有る。全体の数値の大部分は、全体を構成する二割が生み出していると言う冪乗則である。 これを企業に当て嵌めるとつまり、企業の利益の大部分は、二割の従業員が生み出しているのであり、残りの八割はいてもいなくても差し支えのない人間と言う事だ。 結城は当然、利益を生み出す二割に該当する人間であり、その中でも特に有能とされる彼の業務は、多忙を極めるのだ。暇など、ある訳がなかった。 「いいね、研究職って言うのは。暇がありそうで」 「馬鹿を言うな」 拗ねたような口調でそんな事を言う結城に対し、即座にジェナは切り返した。 「ルーラーなるクラスから、公式に聖杯戦争の開催の直達があったのだ。まさかこれを見逃す愚鈍な輩は、よもやいるまい」 「だろうねぇ」 「当然、 新宿 での戦いが激化する事は想像に難くない。今のお前の地位は、 新宿 の戦いを勝ち抜く上で有利に働くかも知れないそれだ。 業務を放棄して、そうそうに捨てて良い役割(ロール)ではない。それは解っているだろうが、どちらにせよ警戒しておけ」 「了解っと」 タバコを一本、吸い終え、ガラスの灰皿の上に突き立てながら、結城は返した。 如何にも適当そうな立ち居振る舞いだが、自身をエリートと公言するように、結城は恐ろしく頭のキレる男だ。ジェナの言葉を適当に流しなどいなかった。 「今日の予定は告げておけ、マスター」 「ハハハ、その言い方。何か役に立たない部下の動向を予め聞いて置きたい上司みたいだぜ」 「お前にはジョークの才能がない。さぞやあの神父も、愛想笑いに疲れた事だろうな」 最早ジェナには、さっさと話せ、とせかす事すらも億劫になり掛けていた。 彼女の心境の変化を読み始めた結城が、はいはい、と口にしながら、二本目の煙草に手を伸ばした。 「一昨日話しただろう? 僕の新しい融資先の話。其処に向うのさ」 「下らぬ芸能プロダクションの事だろう?」 「全くだよ、下らな過ぎて足を運ぶのもウンザリする。うちの銀行のヒラがやってるみたいな飛び込みの営業の方が、まだマシってもんさ」 「其処まで言うか」 タバコを口元にまで持って行き、紫煙をダラしなく吐き散らしながら、結城は言葉を続ける。 「美城とか言う女と融資交渉をしに行った時も、アイドルと言うか、所属してた奴らの顔を見て来たよ。笑っちゃうよ、小学生までいると来た。ガキの頃からアイドル活動何てしてたら、ロクな大人にならないぜ」 「お前のようにか?」 「随分と辛く当たるねぇ、キャスター」 キャスターの嫌味など、何処吹く風。痛痒すら、感じていない様子であった。 「それで、話を戻すけどさ。此処までの流れから凡そ解ると思うけど、僕はその芸能プロダクション……346プロって言うんだが、其処に視察に赴く事になってるんだ。一応融資先の様子を具に観察するのも、僕らの仕事だからね」 「346プロ……?」 まるで、家を出てから一時間程経過して、ふと、何かを忘れたのではないかと思い立ったような声音で、ジェナが言った。彼女にしては珍しい声のトーンだった。 その引っ掛かりの正体が何なのか確認する為、彼女は、部屋に置かれた端末状の装置に近付いて行き、慣れた手つきでそれを動かす。 端末に取り付けられた液晶画面に流れる文字。それを見て、得心した様にジェナが首を肯じた。「成程」、彼女は納得の様子を口にする。 「一人で納得しないでくれないかな」 「単刀直入に言おう、そのプロダクションにチューナーがいる」 「ワオ」 軽く驚いた様子を結城は見せる。自身の引き当てたサーヴァントが、 新宿 中に悪魔化ウィルス感染者……つまり、チューナーの事だが、これを撒いている事は知っていた。 だがそれも、 新宿 で活動している人間の総数を分母にして割り算すれば、ほんの微々たる総数に過ぎない。 これは、ジェナの、少数の優れた悪魔達のみをチューナーとして生かす事を許し、それ以外の雑魚悪魔はその場で処分する、と言う方針に基づいていた。 その方針がなかったらきっと、現在 新宿 で活動しているチューナーの数は倍増していた事だろう。 そんな現実を知っている結城だから、驚いていた。まさかチューナーが、融資先に所属しているなど、偶然にしては出来過ぎていた。 「もっと早くに、融資先の名前を言っておいた方が良かったかな? 君には興味がないだろうと思ってさ」 「気にするな。元々チューナーの管理をする気のない私に落ち度がある」 「する気がない、何だね」 悪辣な笑みが、結城の顔に刻まれた。銀行マンと言うよりは寧ろ、前科を重ねに重ね、それでもなお反省をしない生粋の犯罪者の貌だった。 対するジェナも、微笑みで返した。人を殺して喰ったような、そんな笑み。実際に、何百人もの人間をそうして喰らい尽くして来たのだから、始末に負えない。彼女こそは現代の、ソニー・ビーンであった。 「元々貴様も私も、この街が――世界がどうなろうが、知った事ではないだろう。今更な事を言うな」 「ハハ、ごめんごめん」 「今言った様な事もチューナー放任の理由でもあるが、それ以上に、職や年齢、住まいに纏まりもない、アトランダムにNPCをチューナーにしているのだ。これらを纏め上げるのは、限度と言うものが有る」 チューナーに選んだ人間達は、ジェナの言う通り何から何までバラバラだった。 性別を筆頭に、身長、年齢、人種等々、全てが全て、これと言った共通項を持たない。 ジェナが、素質があると睨んだNPCをチューナーを、選んでいるのだ。素質は性別や年齢を選ばない。上は八十を過ぎた老人、下は小学生の子供までいる。 これらだけなら、ジェナが保有するカリスマスキルで無理やり率いる事も出来るが、ある理由からこれは出来ずにいた。 住所の問題である。当たり前だが、ジェナがチューナーに選んだNPC全てが、同じところに住んでいる訳ではない。全員が全員てんでバラバラの所に住み、 NPCによっては区外も区外、埼玉や神奈川を住まいとしている者もいる。ジェナ・エンジェルと言う人物がチューナーの数だけ存在出来るのならばまだしも、そんな事は出来ない。 だからこそ、放任と言う選択を採らざるを得なくなる。ジェナとて、全てのチューナーを管理下に置いた方が良い事は百も承知だが、地理的、距離的問題から、それを出来ずにいるのだった。 「まぁ、キャスターの意図する所は理解した」 二本目の紙タバコを灰皿に押し付けながら、結城は腕時計に軽く目線をやった。 時刻は七時四十五分を回ろうとしていた。職場の近くの賃貸マンションを借りた為に、まだまだジェナと話すだけの時間的余裕はある。 「ところで、僕として知りたい情報は、誰がチューナーか、何だけどな。スタッフかい? それとも、歌手か、俳優?」 「貴様が嫌悪して已まないアイドルさ」 「な~るほど、近付きたくもないし視界に入れたくもない」 冗談めかして言う結城だったが、その黒く粘ついた瞳の奥底には、冷ややかな輝きがあった。 此処 新宿 に来る前も、何人もの女を冷淡を通り越して、冷酷とも言える程物扱いしてきた彼だからこそ放てる、凍て付いた眼光だった。 「名前は宮本フレデリカ。名前からも凡その察しは付くだろうが、混血だ。後藤君の調べでは、母親の方がフランス人らしい」 「ハーフか。あのプロダクションには外人も多かったからな。まぁ、フランス人ならば、ある程度は絞り込めるかな」 「この検体は、変身前の人間と変身後の悪魔に全く関連性がない事をお前にも解りやすく伝えられる良いケースだ。つまり、変身前の人間が強かろうが弱い悪魔にもなり得るし、その逆も然り、と言う事さ」 「で、強いのかい。この、フレデリカって言う女が変身する悪魔はさ」 「生前私が確認して来た悪魔のデータには無い存在だったが、確信を持って言える。高位の悪魔であると、な」 「成程ね。差支えなければ、その変身出来る悪魔の名前をお聞かせ願いたいんだが?」 結城としても、聞いて置きたい事柄だった。 ジェナの口から聞かされる、悪魔化ウィルスと言う作成物と、それによって得られる果実は、聞くだけで興味がたえない。 そして、チューナーが変身すると言う実際の現場を一度たりとも見た事がないと言う事実がより、結城の興味に拍車をかける。 と言うのも悪魔に初めて変身する際と言うのは高い確率で暴走を引き起こす可能性が高く、自分がその場に立ち会っていない時に絶対に見てはならない、 とジェナから厳重に注意されていた。暴走の余波で殺される可能性が高いからだ。この事実を語る時にジェナの真面目な口ぶりを、結城は重く受け止めている。 別段死ぬのは怖くないが、確かに、自分の引き当てたサーヴァントが作り上げたチューナーに殺されるなど、結城でも御免だった。 御免ではあるが、やはり怖い物見たさと言うものは確かにある。が、その怖いものをジェナは見せてくれない。だから仕方なく、その悪魔の情報を知る事で、溜飲を下げようとしていた。 「フレデリカと言う検体は、 新宿 のNPCを用いて作ったチューナー群の中で、特に抜きん出た強さを得るに至った」 其処で、一息程吐いてから、ジェナは続けた。 「――その悪魔の名前は――」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ パタン、と、黒光りするノートパソコンを閉じてから、一口。ムスカはカップに注がれたコーヒーを口元へ運んだ。 挽き立ての豆を使ったそれはとても馥郁たる香りを放っており、此処に、砂糖をほんの一つまみアクセント代わりに入れ込むのが、ムスカ流であった。 役割上ムスカは、嘗て 魔震 により壊滅的打撃を受けた 新宿 の調査を行う、某国の諜報員と言う事になっている。 何でも各国の軍部や研究機関は、 魔震 を研究し、それを軍事兵器に転用或いはエネルギー問題を解決させる重要な足がかりにしたい、と言う者がいるのだそうだ。 東京は世界でも類を見ない程スパイの潜伏数が多いと言うが、こと 新宿 を根城にする諜報員に関しては、ただの産業スパイなどとは一線を画するのだ。 ムスカは確かに諜報員であるが、その制約は驚く程緩い。定期的にやってくる本国の連絡員或いは、パソコンから送られてくるデータを確認するだけなのだ。 これではスパイと言うよりは単なる、金を持て余した富裕層の道楽と言った感は否めない。しかし、職務でガチガチに拘束されるよりも、動き易いと言うのは事実。 聖杯戦争の参加者として。偉大なる白貌の帝王の下で奔走するマスターとして。これ以上と軽やかなフットワークを行える役割はなかった。 国防に関わる組織、特に軍部であるが、此処では一般国民や諸外国向けに発表出来る研究と、そうでない研究が存在する。 どれだけ情報の開示権を国民が行使しようとも、絶対に表には発表出来ないしするつもりもない研究。 それは非人道的な実験や研究と言う訳ではなく、国防国益に関わる最先端の研究と言うべきものだ。軍部や国家機関では、そう言った物が研究され、 そう言った組織に関わる公務員達に真っ先にその最先端技術で拵えられた物品が、実験代わりに配られたりするものである。 今ムスカが使っているノートパソコンにしてもそうだ。諜報機関向けに作られたこれは、祖国――この世界での、だ――に報告或いは報告を受ける時のみ自動で、 彼が今いる国のプロバイダーを経ずにネット環境に繋げるモードに変更。如何なる方法でも、ムスカ個人を特定する事が不可能になる。 またそれだけでなく、祖国から報告をしたり連絡を受けとる時に使われる超プライベートコンピューターは、疑似的なカオス理論で構築されたプログラム故に、 外部からの侵入は現代の技術ではほぼ不可能。パスワードを解読し真正面から入ろうにも、パスワードは耐えず流動的に変動している為それも出来ない。 このプライベートルームに入るには、何と常にパスワードページが自動かつ秘密裏に行っている『虹彩認証』をクリアせねばならないのだ。 これをクリアする事で初めて、本国の諜報機関と連絡が取れる訳なのだが……これが全く使われない為に、今の今までムスカは存在自体を忘れていた。 それが、今になって急に使われ始めた。 プライベートコンピューターに入ってみると、ムスカに送られた連絡は何て事はない。 新宿 で暴れ回ったとされる、あの黒礼服の殺人鬼の詳細が解ったら本国に連絡しろ、と言うのだ。 如何も諜報部はあれを、日本やアメリカに匹敵する先進国のバイオテクノロジーの薫陶を受けたテロリストなのではないか、と疑っているのだ。 無理もない、あの殺人の手際を見せられれば、そうも思いたくもなる。だが実際には、それは違うのだ。あの黒礼服の男は、聖杯戦争に参加しているサーヴァント。 遠坂凛と呼ばれる女子高生が召喚した、狂戦士なのだ。真実はまさにこの通りだが、これを言った所でムスカの正気を疑われるだけだ。当然報告もしなかったし、そもそもする気も起きない。 「ふん、ランスローめ。そうとう出世と保身に必死と見える」 コーヒーを飲み終えてから、ムスカは忌々しげにそう呟いた。 ランスロー。フルネームをシン・ランスローと呼ぶこの男は、この世界におけるムスカの上司に当たる人物だ。 階級は准将。元居た世界でのムスカの階級より上である。ランスローは国益は当然の事、それ以上の自身の出世と安寧たる地位を固める事に躍起になっている人物だ。 有能である事は間違いないが、ムスカとは馬が合わない。ムスカ本人は否定する所だろうが、彼自身も同じような性格だからだ。これでは性格が合う訳がない。 ランスローは何としても黒礼服のバーサーカーの情報が欲しいらしく、 新宿 を担当するムスカに、その情報の収集を緊急かつ別件の任務と言う形で連絡してきたのである。 無論、ムスカとしてはその収集は聖杯戦争の参加者として行うべきものであるが、ランスローに報告するつもりなど毛頭なかった。 ムスカと、彼が引き当てたキャスターのサーヴァント、タイタス一世の聖杯戦争は、思わぬ横槍を入れられ、本来意図していたそれから逸脱してしまう事になる。 ムスカが、一世の生み出した骨董品や戯曲の類を 新宿 に流布するだけでなく、メディア等を通じてアルケア帝国の想念を蓄積させると言う作戦。 それは、キャスターの真の領地である、帝国の首都アーガデウムの顕現と言う王手まであと一歩の所で、難航を極めてしまっていた。 アーガデウムの顕現には、NPCが夢を見ると言うプロセスを経る事が大前提になるのだが、何者かが、 新宿 のNPC達に細工を施した結果、NPCが夢を見なくなり、 アーガデウムの顕現が予定より遅滞してしまったのである。現在ムスカは、そのフォローとリカバリーの為に、動かざるを得ないと言う訳だ。 まさかこんな早く、一世の神算鬼謀が露見したと言う事はあるまい。そう願いたかった。 ムスカも一世も、下手人は狙って一世の計画を邪魔したのではなく、向こうが目指す目的の過程と、此方の目指す目的の過程が、不運にも噛み合っただけだと、 思っているのだ。何れにせよ、そのサーヴァントはムスカ達にとって目下最大の敵であり、撃ち滅ぼされるべき存在だった。 聖杯戦争開始前に行っていたあのメディア戦略と並行して、一世の目となり耳となり 新宿 の情報を知悉し、彼に報告する事が現在のムスカの任務。 その一環として、今日ムスカは、在る場所に赴かなくてはならない。346プロ本社……今ムスカが贔屓にしている芸能プロダクションである。 言い換えれば、宝具・『廃都物語』を広く流布させる為の広告塔だ。その大事な広告塔が今日、大規模なライブを行う事になっている。 その打ち合わせに、ムスカは立ち会おうと言うのだ。他に重要な仕事は多いが、それと同じ程に、今回のライブも重要である。 「……頃合いか」 腕時計を確認してから、出かけの準備を行うムスカ。無論行き先は、346プロだ。 行きがけに、テレビの電源を彼は入れた。秘密裏に戦闘を行う事が鉄則の聖杯戦争で、まだ朝の八時すら回ってないこの時間帯に、サーヴァント同士の戦闘が近代メディアの俎上に上がるとは思えないが、一応、だ。 「それでは、次のニュースです。EUの社交界に衝撃が走っています。先日発表されました、イギリスのテオル公爵と日系人女性のカナエ・淡・アマツさんとの電撃結婚の――」 其処でムスカは、液晶テレビの電源を落とした。どうでも良いニュースだったからである。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 本来ならば結城は、八時前に出社した後、中身も何もあったもんじゃない朝礼を済ませてから、前日に仕上げた諸々の書類を確認。 訪問先である346プロへの準備を三十分程度で仕上げ、支度を終え次第其処に向かう予定であった。到着時刻は凡そ、九時かそこらだ。 だが現実は、予定時刻を大幅にオーバーして、九時半の到着となってしまった。時間にルーズな社会人は、何処でも嫌われる。 いくら結城の内面は悪辣と言う言葉でもなお足りない程醜悪なそれであったとしても、ビジネスマンとしての仮面を被っている時は、弁えるべき所は弁えるのだ。 それなのに、此処まで遅刻をしてしまった理由は、一つ。 新宿 二丁目周辺で大暴れを繰り広げたと言うサーヴァントのせいだ。 移動しながらスマートフォンで、事の詳細を調べてみると――詳しい情報が載っているとは思えない――、異形の右腕を持った少年が、外国人女性を抱き抱えがら、 突如 新宿 二丁目の交差点の前に出現。それを追うように、馬に騎乗したアングロサクソン系の外人が二名追随。 彼らと、何処からか現れた、頭に鉢巻を巻いた槍を持つ成人男性が交戦――其処からの詳細は、不明だった。 交差点周辺で巻き起こる、地獄から丸々持って来たのではと言わんばかりの灼熱と業火のせいで、現場まで中々レポーター達が入り込めなかったせいだ。 メディアから確認出来る情報はこれまでだが、TwitterやGALAXを筆頭としたSNS、Aちゃんねると言った巨大掲示板からだと、違う。 良く言えば度胸のある、悪く言えば目立ちたがりで命知らずの馬鹿が、身体を張って戦闘の模様を撮影してくれていたのだ。 此処が、組織だって動かねばならないメディアの情報提供力と、確証性や信憑性こそ薄いが個人と言うフットワークの軽さを活かしたアマチュアの情報提供力の差だった。 撮影者の腕の震えがダイレクトに伝わる、撮影された映像を確認した。まるで昔話の中に登場する鬼か何かかと見紛う、巨大な怪物が、炎を吐いて暴れ回っていたのだ。 何処の馬の骨かは解らないが、よく撮影出来た物だと結城も呆れてしまう。この化物の大立ち回りを撮影出来てなお生き残れていると言う事実。一生分の運を使い果たしたのではないだろうか。 間違いなくサーヴァント同士の交戦だろう。 独断と偏見から考えるに、鬼の方はバーサーカー、槍を持った方はランサーなのだろうが、帽子を被った男の方は、全く予想が出来ない。 この三者が暴れに暴れまくったせいで、交通機関に大幅な遅滞が生じていた。自動車の渋滞によってバスやタクシーも足止めを喰らい、 新宿 二丁目周辺の交通網は、 今や完全に麻痺しているに等しい状態だった。その頃には既に結城はバスに乗車している状態で、丁度渋滞に足止めを喰う形になってしまった。 亀のような運行速度でやっと一つ目の停留所に到着した結城は、このままでは埒が明かないと思い、電車で移動する事を決意。急な交通機関の変更。これが、結城が遅刻した理由であった。 移動の最中、ジェナが電話経由で連絡を入れて来た。向こうも、パソコンやらテレビ、はたまた別の情報網を使って、サーヴァント同士の大規模な戦闘を知り得ていたらしい。 電話の内容は当然、サーヴァント同士の戦いに巻き込まれてなかったのかと言う確認だったが、無事を告げると、「悪運の強い奴だ」、と。 心配していたのか否か解らないいつもの口調にジェナは戻っていた。そしてすぐに、「危険だからあのサーヴァント達が誰だったのかの確認に首を突っ込むな」、 と釘を打たれた。尤も結城としては、そんな事する気が起きない。動画を断片的に見ただけだから何とも言えないが、あんなのを調査する等、命が幾つあっても足りた物ではないからだ。 ――話を元に戻す。 遅れに遅れた結城が、346プロのオフィスビルで美城と顔を合わせ、先ず行った事は、遅刻に対しての謝罪だ。 予め遅れると言う連絡を入れてはいたが、それとは別に謝る必要があるのだ。美城も、結城が遅れたのは已むに已まれぬ天災に等しい事柄だと既に理解していたか。 特に彼を責めるでもなく、一言二言の労いの言葉の後、直に本題に移った。 本題とは即ち、346プロの各芸能部門等の様子確認である。 こう言った芸能界の事情は結城にとっては畑が違うにも程がある故に、彼らの活動風景を見た所で、本当ならば意味はない。 融資交渉の際に美城が行ったプレゼンで全ては完結している。――と、言ってもだ、それはそれ、である。 やはり三億もの大金を融資する以上は、それなりに慎重にならざるを得ないのだ。如何に346プロが大手の会社だと言っても、だ。 ……尤も、聖杯戦争の参加者である結城にとって、NPCが舵を取るメガバンクや、NPCが重役を務める芸能プロダクションの事情など、如何でも良い。 三億をポンと貸す事に簡単に同意した最も大きな理由がこれだ。じきに死ぬ人間である結城にとって、融資云々の話など知った事ではないのだ。だから、適当に済ませてしまったのである。 「それでは本日は、主にアイドル部門の仕事ぶりを視察する、と言う方向性で宜しいでしょうか?」 と、訊ねるのは美城である。場所は346プロのオフィスビルの応接間だ。ガラスのテーブルを挟んだ向かいのソファに、美城は座っていた。 訊ねられた事柄について、特に結城の方から異議はない。「それで結構です」、と彼が答えると、直に美城は、「では、別館の方へとご案内させて頂きます」と口にしながらソファから立ち上がる。 表面上はつとめて冷静そうに振る舞っているが、如何にも結城から見て、美城は焦っていると言うか、急いでいる風に見える。 ビジネスの場に関しては単刀直入さを好む傾向が強い事は、先の融資交渉で結城も把握していたが、今日に限ってはかなりキビキビとしていた。 無理もない、これは今日になって結城も知った事であるが、今日346プロのアイドル部門は、部門の存続が掛かっていると言っても過言ではない大舞台に立つ事になっているのだ。 つまりは、野外ライブである。魔震から 新宿 が完全復興してから丁度二十年が経過、『嘗ての悲愴さを吹き飛ばす程明るく、そして同時に被災者を偲ぶような荘厳さを』、 と言う御題目をコンセプトにしたこのライブは、大手プロダクションや各民放、芸能新聞の記者等の耳目が集まる事が既に確定しており、注目されているイベントだった。 346プロが主導するこのイベントには、上に上げたコンセプトも重要だが、其処には美城の、自社のアイドルを世間に強くアピールさせると言う怜悧な計算も、当然含まれていた。 美城は、このイベントを特等席から結城に見させる事で、自分達の実力を見せつけようと踏んでいるらしいのだ。 「随分な自信がおありだなこのお局様はよ」、と思わないでもない結城だったが、そっちの方針の方が、芸能プロダクションらしくて面白いではないか。 長々だらだらと、主力アイドルの自己紹介をされたり、練習風景を見せられるよりは、よっぽど面白いし、実力を見せつけると言う点でも理に叶っている。 この辺りのプロモーション能力は、流石芸能プロダクションの中で高い位置に存在する人物、と言えるだろう。 「ところで、美城様」 所謂、芸能人が練習、活動している離れの棟に移動する傍ら、結城が、世間話のつもりで話し始めた。 「何でしょうか」 「今日のライブについてですが、346プロは数多くのアイドルグループを、擁しているのでしょう」 「そうです。尤も、アイドルグループと言いましても、メンバーによっては他のグループを掛け持ちしている者もいるのですが……。無論これは、此方の戦略です」 「成程、掛け持ちしたメンバーのファンが増えれば、自動的に他のグループにもそのファンが流れる、と。その目測は今のところは?」 「数値の面から見ても、良好な結果を残せています」 「優れた戦略を立てる力をお持ちのようで。それでですが、今回のライブは貴社からしましても、絶対に失敗は許されないイベントと私は見たのですが、当然、今回参加するグループは皆、虎の子と言う事で間違いないのですか?」 「その認識で間違いはありません。ただ今回のイベントは、私の意向で全てが決まると言う訳でなく、私を含めためいめいのプロデューサーが担当する肝入りのグループも参加する事になっています」 結城は今の美城の一言で、本当ならば自分が推しているグループだけでイベントを仕切りたかった、と言う思いを感じ取った。 如何やら相当なワンマン気質であるらしいし、自分なりの強い軸を持っているらしかった。 「美城様の担当されているグループのお名前は?」 「プロジェクトクローネです。今回のコンセプト、『明るく、そして荘厳さを』、というコンセプトの後者の部分に相当するグループです」 「成程。ではそのグループが、今回の主役、と言う事で?」 其処まで言うと、鉄面皮とも言うべき美城の表情が、苦虫を噛み潰したような渋いそれへと変貌する。 「……本日の主役がそのグループのメンバーの一人である、と言う事実を鑑みれば、今回の主役、と言う言い方に嘘はないでしょうね」 「おや、随分持って回った言い方ですな」 「私としても、346としても、本来想定『していた』主役のグループは、間違いなくこのクローネでした。ですが何時だって、芸能人と言う生き物を人気と言う形で定義づけ、形作るのは、ファンや聴衆と言った存在なのです」 「ははぁ。つまり、ライブに赴くファンとしては、メインディッシュは別にある、と」 「そうなります」 とどのつまり美城が言っているのは、此方が意図した今回のイベントの主役と、実際ファンが捉えている今回のイベントの主役に、乖離が起こっていると言う事だ。 当たり前だが、芸能界程人気商売と言う言葉が当てはまる業界はない。基本的にファンは丁重に扱うべき存在だ、余程理不尽な欲求でない限りは、 プロダクションや芸能人はその意向にある程度従わねばならない。主役の逆転位は、受け入れなければならないのだろう。それが堪らなく、美城には悔しいらしいが、その悔しがり方が、結城には尋常ではないように映っていた。 「それで、ファンが捉える今回の主役とは一体誰なのでしょう?」 「『宮本フレデリカ』、と言うアイドルです」 「ほう、フレデリカさん」 内心で結城が驚いた事は言うまでもない。今朝方ジェナから知らされたチューナーの一人であり、特に強い悪魔に変身出来ると言うハーフの女であったからだ。 「元々はクローネのメンバーの一人だったのですが、此処最近、特に彼女が抜きん出て人気を獲得するようになって……。その事実を、彼女のプロデューサーが上に熱意を込めて主張し……イベントの最後に、ソロで持ち歌を複数歌う、と言う運びになったのです」 「私には余り想像が出来ませんが……、彼女は元々、そのクローネと言うメンバーの一員だったのでしょう? ある日突然彼女だけが、突出した人気を得ると言うのは……」 「そう、考えられません。ですがこれが事実なのです」 「原因の方は?」 結城がそう訊ねた瞬間、極限まで不快そうな表情をして、吐き捨てるように美城は言った。 「……此処最近、346プロのアイドル達に、フレデリカの担当プロデューサーを経由して取り入ろうとしている男がいるのです」 「……かなり下品で、下衆な考えである事を承知で言わせて貰いますが、かなり下心が見え透いた人のようですな」 「全くです」 考える所は、美城としても結城と同じであるらしい。 と言うよりは誰だって、同じ帰結に行き着くに違いないだろう。誰がどう見たってその男は、アイドルを食い物にして自らの汚れた欲求を満たしたい人間である以外、見られまい。 「私にはその男とフレデリカさんの人気の相関性が見えないのですが、一体どんな関係が?」 「簡単に言えば、メロディや詩の提供です。今フレデリカは、その男から供給されるメロディや詩を駆使して新曲を出しているのですが……これが予想以上にヒットしてしまいまして」 「それを流用しているのですか? お堅い346プロの事、そう言った外部からのアイデア提供は、一笑に付すものかと思っていましたが」 「普通であれば門前払いです。ですが……」 「……ですが?」 余程、言いたくないらしいのか。結城の目には美城が、言葉が喉元までせり上がっていると言うのに、中々それを吐き出せずにいるように見えた。 口にするのもストレスらしい。今にも耳や鼻の孔から、怒りの余り血でも噴き出んばかりだ。 「……優れているのですよ。その、提供される詩やメロディが」 その一言を口にするのに、三十分も掛かったみたいな重苦しい様子で、美城は言った。 結城は何となくであるが、何故アイドルに取り入って来たその男を、彼女が蜥蜴の如く嫌っているのか。その理由が大体掴めた。 要するに、只でさえ本心の読み取れないその胡散臭い男が気に入らないと言うのに、素性の知らぬそんな男が素晴らしいアイデアを此方に持ち込み、 事実それが功を奏している、と言う事実が受け入れ難いのである。話を聞くに、その男は346プロの正規の登用プロセスを受けた社員でもなければ、 その下請けの人間でも上役とコネで繋がった人間ですらない。本当に外部の住民なのだ。 美城の心情も、解らないでもない。彼女からしたら面白くも何ともないだろう。業界の関係者どころかアマチュアですらない素人の提供したメロディや歌詞が、 会社の庇護下にあるアイドルに歌われ、それがヒットを飛ばされるなど。プロとしての矜持を持っている人間ならば、誰だって眉を顰めてしまうだろう。 ――ただのNPCとは思えんな―― 美城の話した男の話を聞き、結城が先ず思った事はそれだった。 NPCと聖杯戦争の参加者の最大の違いは、日常に沿った動きをしているのか、それとも聖杯戦争に沿った動きをしているのか、と言う事だ。 九割九分九厘のNPCは、聖杯戦争の存在を知らないし、存在しているとすら思わない。彼らにとって神秘の類など、ないものなのだ。 故に、神秘や魔術の事を説明しても、信じるまい。だから彼らは、普段通りの日常に従事する事になる。 だが、ジェナの助手となっている後藤の例を見れば解る通り、聖杯戦争の参加者達が直接NPCにコンタクトを取る事により、彼らの間にいわば『バグ』が発生する。 そのバグとは即ち、聖杯戦争についての認識、或いは、神秘に類する力の獲得である。そのバグの発生したNPCは、高い確率で、元の日常に戻らない。 と言うよりは、戻れないと言うべきか。これもジェナに纏わるケースを見れば明らかだが、例えば悪魔化ウィルスを注入されてチューナーになったNPCは、 強烈な餓えや、悪魔の強大な力に酔いしれ、暴れる傾向にある事からも、戻れないと言う表現はある意味的を射ている。 フレデリカに接触した件の男の行動は、明らかに正常なNPCの活動とは言い難いものがある。 彼が聖杯戦争の参加者そのものなのか、或いは彼らにかどわかされたNPCなのか。それは結城にも解らない。 だがどちらにしても、警戒して然るべき存在である。自身のサーヴァントがジェナと言うキャスターだからこそ解るが、サーヴァントの中には、 NPCを手駒に変容させて扱うと言う者もいるのだ。戦闘力もなく、況してや余命いくばくもない結城では、最悪殺される可能性が高い。慎重に、事を見極める必要があるのだった。 美城と話しながら歩いている内に、別館の方へとたどり着いた。 此方の方は専ら、アイドルや歌手、俳優達の歌唱、演技の練習用、或いは憩いの場として使われる為の場であるらしい。 芸能プロダクションである以上、芸能人と会社の従業員が活動する場所を厳密に区切る必要があるのだ。 それを建物単位で分けるとは、346プロの資産の潤沢さ、と言うものが窺い知れると言うものだろう。 「今はライブ本番に向けて、参加アイドルの殆どが、めいめいの過ごし方をしていますので、結城様が見たい、と思われているだろうアイドルの練習風景は、見れない可能性があるかもしれません」 「おや、本番までもう十時間を大きく切っていると言うのに、最後の予行のような物をしないのですか」 「無論、しているグループもいるでしょう。ですが彼女らは本番に向けて、前日所か開催の遥か前から入念なリハーサルを行っています。 開催前の最後の数時間を、練習に当てるグループもあれば、極度の緊張を紛らわす為にリラックスして過ごすアイドルも、珍しくありません」 「成程、此処までスタートが近付いてしまえば、練習よりも気の持ちようの方が重要と考える娘も多い、と」 「その通りです」 「まぁ私としては……そうですね。美城様が先程口にしていた、宮本フレデリカ、と言う娘を見てみたいですね」 「……フレデリカですか。初めに申しておきますが、彼女はその……かなりのマイペースでして……、結城様の機嫌を損ねないかどうか……」 「彼女はその」、の部分で随分と美城は、次に続ける言葉を考えていた。 肯定的な意味でのマイペースと言う訳ではないのは、ニュアンスから察する事が出来る。 チューナーになる前のフレデリカは、結構な問題児か、美城にとっての頭痛の種か何かであったのだろう。 「いえいえ、問題はありません」 「そ、そうですか。それでは、中の方をご案内――」 其処まで言った時であった。 背後から明白に、美城を呼ぶ男の声が聞こえて来たのは。美城がその方向に顔を振り向かせるのと同時に、結城もつられてその方向に身体を向けてしまう。 果たして、其処には一人の西欧系の男性がいた。ネクタイ代わりにリボンを首元に巻き、濃いブラウンのスーツを身に纏った、一目見て紳士と解る男であった。 かけた眼鏡の奥の瞳に宿る光が知性的なこの男は、そう。ムスカその人であった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ムスカもまた、予定の時刻を大幅にオーバーして、346プロに到着した一人だった。 いざホテルから出よう、と言う段になり、フロントに設置された大型の液晶テレビが流していた、緊急速報。 それに、目が止まったのである。そして同時に、驚愕の表情も浮かべた。当たり前だ、こんな早々に、大規模と言うべきサーヴァント同士の抗争が、 テレビで放映されていたのだから。すぐにムスカは、ホテル地下のタイタス帝の拠点に赴き、これを報告。 事態を重く見たのは、ムスカよりもタイタスだった。タイタスはキャスタークラスとしては破格とも言うべきステータスと、近接戦闘能力の技量を持つ。 故に、相手の実力次第であるとは言え、中途半端な強さの三騎士程度なら、軽くあしらう事がタイタスは可能である。 但し、複数人で襲い掛かられた場合は、話は別になる。況してタイタスのクラスはキャスター。キャスターの陣地や拠点程、残しておいて得のないものはない。 同盟を組んで叩かれる可能性も高いし、タイタスがこれから行おうとしている目的が知られた場合、真っ先に叩かれる可能性があるとすら予測していた。 無論、露見しないように十重二十重の対策は練っているし、アーガデウム顕現の為にムスカ自身を積極的に動かしてもいる。 後は順調に時間が過ぎるのを待つだけ、なのだが、早々に此処まで派手な戦闘が起きたとなると、最早悠長に時間が過ぎるのを待つ、と言う事は出来ない。 最早平等に、戦塵と戦火が降り注ぐ可能性があるのだと言う事を把握、理解したタイタス帝は、今までムスカには働いて貰いつつ、拠点の防御力を向上させる事を決意。 そして同時に、タイタスから離れて一人で行動する事が多いムスカをサーヴァントの害意から守るべく、タイタスはある『魔将』にムスカの護衛を命じた。 このお膳立てに、時間が掛かった。何せその魔将はナムリスとは違い、まだ現世に呼び寄せていない存在であったからだ。『彼』を 新宿 に呼び寄せるのに、一時間ほどの時間が経ってしまった。 現在ムスカから離れた所から、その魔将は彼の動向を逐次見守っている。 その存在は、生前のタイタスと関わりを持っていた魔将の中では最も強い者であり、始祖帝が王位を獲得する遥か以前から彼に従って来た親友にして忠臣。 そして、世界中の英雄譚や神話の中に語られているような、竜殺しを成し遂げた英雄でもある。 それ故に気位が高く、気難しい性格の為、滅多にムスカの方に自発的にコミュニケーションを取ろうとしない。 どこか見えない所から、ムスカの事は見ている。少なくとも、美城や結城からは見えない所で。 「これはこれは、ムスカさん」 と言って美城は、気難しそうな顔つきを、営業用のスマイルに即座に返事させて、ムスカと呼ばれた男に声を掛けた。 あれだけオフィスビルでは嫌悪の念を示していたのに、実際に顔を合わせるとなると、業務用の笑みの刻まれた仮面を被る。やはり、この女性は中々の食わせ物らしい。 「結城様、此方が先程話された……」 「あぁ、この方が」 心中で結城は、この言葉の後、「アイドルを食い物にしようとしてる変態か」と続けた事は、言うまでもない。 「美城さん、そちらの紳士は、何方ですかな?」 と言ってムスカが、結城の方に目線を投げ掛けた。瞳の奥で、此方を疑うような光が静かに輝いている。ただの馬鹿ではないらしいと、結城は察した。 「此方は、我が346プロに新たに資金を融資して下さる、結城美知夫様です」 「結城です。評判の方は、美城様から伺っております。優れた作詞と作曲活動をなさる、と」 「ははは、齧った程度の文学と、道楽で世界中を旅した経験が、首の皮一枚で繋がっただけですよ」 美城の目には、さぞや厭味ったらしい謙遜に映った事であろう。 だが、ムスカとしては、自分が作詞作曲した……と『される』、アルケア帝国についての詩歌の事を聞かれる度に、ハラハラするのである。 そもそも、フレデリカに提供される歌詞の全ては、タイタス一世が手ずから仕上げた物なのである。 一世はそもそも、大帝国を裸一貫、徒手空拳で創り上げた建国者にして大王であると同時に、人間に様々な技術や文明を与えた文化英雄としての側面も持つ。 その文化の中には、文学や音楽と言ったものも含まれており、彼はそう言った詩歌を紡ぐ才能にも優れていたらしく、白く輝く毛並みを持った美しい白鹿を、 素晴らしい笛の音で油断させきった所を、首を刎ねて殺したと言う伝承すらある程だ。 ムスカが、メディアを通じてアーガデウム顕現の布石を打つと上奏した時、タイタスは自ら、アイドルに歌わせる歌を作詞作曲し、 これをムスカに下賜したのである。346プロの面々は、フレデリカが歌っている歌は、ムスカが考えた物だと誤認しているのだが、実際にはその大本は一世なのだ。 346プロの関係者に何時、「即興で作詞作曲してみて下さい」と言われるか、内心でムスカはかなりドキドキしていた。 出来る訳がない。文学の才能や世界中を旅した経験があると言う事実はある程度は本当だが、文学を作る才能ともなると、ムスカは門外漢の人物だ。 要するに、タイタスが作った詩歌を自分が作ったと主張しているのだ。その才能を今此処で示して見せろと、今の今まで問われなかった事自体が、不思議でならない。 「ところで、結城さんは346プロダクション様に融資をされた、と言うらしいですが……」 「346プロダクション様程の資産とその運用能力、お客様である美城様の経営ヴィジョンが素晴らしい物だった、と言うのもそうですが……。若い女の子の夢を叶えさせてあげたい、と言うその心意気に口説かれましてね。フフ、ポンと融資してしまいましたよ。おっと、私が助平だとかそう言うのではないですよ?」 「ははは、面白い冗談を言うじゃあないか」 と、実に快活そうな笑みを浮かべるムスカであったが、内心では限りなく目の前の結城と言う男を嘲ると同時に、憐れんでやっていた。 恐らくこのプロダクションは、後数時間のうちに、破産寸前か、倒産にすら追い込まれる程の未曾有の大虐殺に巻き込まれる事を、結城も美城も知らない。 後数時間で、黒礼服のバーサーカーに扮したタイタス十世が、ライブに乱入し、其処に存在する観客やアイドルを殺し尽す事になっているのだ。 そんな事を予測するなど、NPC達は愚か、聖杯戦争参加者でも不可能だろう。そう言った意味で、ムスカは結城の事を憐れんでいた。 今の346プロは、砂上の楼閣。泥の上に建つレンガの塔だ。何時崩れてもおかしくない状態のそんな企業に大金を融資するとは、何とも間の悪い男であった。 ……尤も結城としては、融資した三億円が回収出来ようが出来まいが、如何でも良い事なのだが。そんな心境を、ムスカが読み取れる筈などなく。 「ところで、ムスカ様。フレデリカさん、と言う少女に歌詞等のアイデアを供給していると御伺いしたのですが、一体如何なる理由で?」 「元々私自身、フランスの出でね。彼女の母親は、フランスでも名家の御令嬢で有名なのだよ。最も、フレデリカ嬢の御母上は、私の事など知る由もないだろうが。兎に角、そんな彼女の娘さんが、アイドルとしてデビューしていると言うではないか。同じ国を母とする者として、何かサポートをしてやらねばと思いましてね」 無論これは、全て嘘である。フレデリカと接触する前に、予めムスカが練り上げた嘘八百の作り話だ。 とは言え、整合性も取れているし、何処か引っかかる要素もない。精々疑われる事があるとすれば、フレデリカの助けになりたいのではなく、 フレデリカの母親の名家と繋がりを持ちたいと言う下心のある男、程度であろう。無論それも織り込み済みだ。肝心なのは、聖杯戦争の参加者だと疑われない事。 果たして誰が、今のムスカの口上を聞き、ムスカが聖杯戦争の参加者だと疑えようか。 確かに、並のNPCや参加者であれば、今の嘘で騙し果せたかも知れない。 ムスカにとって最大の誤算があったとすれば、彼がただの金貸しだと思っている結城美知夫がその実、『枕』で政財界にパイプを繋いだ、二重の意味でのやり手であった事だろう。 ――後で動かしてみるかな―― 結城は頭もキレるし、行動力もある。今のムスカの証言で、彼への疑いが払拭出来ていたかと言えば、全く出来ていない。 結城はムスカをまだ疑っていた。自らの肉体を用いた接待でコネクションを得た、数々の有識者や有力者を動かし、この男の素性を調べる必要がある。 これでもなお、何の疑いもなければ、ムスカは確かに白なのたが……。人並み優れた演技力や、それを看破出来る瞳を持った結城は、高い確率で裏を調べれば、 ムスカなる男が白ではあり得ないだろうと考えていた。この男は現時点では黒とも言い難いが、しかし同時に、完璧な白でもなかった。黒寄りのグレー。それが、今のムスカの立ち位置であった。 「……所で、ムスカ様は今回如何なる御用向きで此方に?」 と、結城が訊ねると 「美城さんからお話を伺っているとは思いますが、私の提供した歌詞を歌ってくれる、フレデリカ嬢が主役になるコンサートなのでね。少し融通を効かせて、特等席で見させて欲しいと言う打診と、諸々の御話しをプロデューサー君に通しておこうと思いましてね」 これについても特に、疑うに足る要素はないだろう。 だが、この男が聖杯戦争に何らかの形で関わっているのではないかと思い始めている結城は、別の事を考えていた。 そもそもこの男は、何が目的で346プロに関わっているのか。ただの利益を掠め取りたいハイエナと言うのであればそれまでだが、直感が、違うのではないかと告げている。 告げてはいるが、それ以上の証拠はない。やはり後で、自分が動かせる有力者から情報を掻き集める必要があるだろう。 「実は私も、融資をした者の特権として、フレデリカさんのライブを特別に見させて貰う事になっているのですよ」 「ほう、それは幸運な!! 私の作った歌詞は、それはそれはお恥ずかしい物ですが、彼女の歌声は、きっと貴方の心にも響くと思いますよ」 「ハハハ、それは楽しみですなぁ」 燃えるような太陽が、純潔そのもののような、雲一つない青空に浮かんでいる。 全ての邪悪や猥雑な下心を灼き祓うようなその光の下で、二人の男は、如何にも紳士然とした態度と立ち居振る舞いで当たり障りのない会話を繰り広げていた。 二人は邪悪だった。腹に小刀を隠し持った曲者だった。自分以外の全てがどうなっても良いと考えている、我儘な子供だった。 この状況の本質が、蛇の格好をした道化が、互いに化かし合っていると言う事実を、まだ、誰も知らない。 【高田馬場、百人町方面(346プロダクション)/1日目 午前9:30】 【結城美知夫@MW】 [状態]いずれ死に至る病 [令呪]残り三画 [契約者の鍵]有 [装備]銀行員の服装 [道具] [所持金]とても多い [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争に勝利し、人類の歴史に幕を下ろす。 0.とにかく楽しむ。賀来神父@MWのNPCには自分からは会わない。 1. 新宿 の有力者およびその関係者を誘惑し、情報源とする。 2.銀行で普通に働く。 [備考] 新宿のあちこちに拠点となる場所を用意しており、マスター・サーヴァントの情報を集めています(場所の詳細は、後続の書き手様にお任せ致します) 新宿の有力者やその子弟と肉体関係を結び、メッロメロにして情報源として利用しています。(相手の詳細は、後続の書き手様にお任せ致します) 肉体関係を結んだ相手との夜の関係(相手が男性の場合も)は概ね紳士的に結んでおり、情事中に殺傷したNPCはまだ存在しません。 遠坂凛の主従とセリュー・ユビキタスの主従が聖杯戦争の参加者だと理解しました。 346プロダクション(@アイドルマスター シンデレラガールズ)に億の金を融資しました。 宮本フレデリカがチューナーである事を知っています。 ムスカと接触、高い確率で彼が聖杯戦争に何らかの形で関わっているのではと疑っています。 【ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ@天空の城ラピュタ】 [状態]得意の絶頂、勝利への絶対的確信 [令呪]残り二画 [契約者の鍵]有 [装備]普段着 [道具] [所持金]とても多い [思考・状況] 基本行動方針:世界の王となる。 0.アルケア帝国の情報を流布し、アーガデウムを完成させる。 1.本日、市ヶ谷方面で行われる生中継の音楽イベントにタイタス十世を突撃させて現場にいる者を皆殺しにし、その様子をライブで新宿に流す。 2.タイタス一世への揺るぎない信頼。だが所詮は道具に過ぎんよ! [備考] 美術品、骨董品を売りさばく運動に加え、アイドルのNPC(宮本フレデリカ@アイドルマスター シンデレラガールズ)を利用して歌と踊りによるアルケア幻想の流布を行っています。 タイタス十世は黒贄礼太郎の姿を模倣しています。模倣元及び万全の十世より能力・霊格は落ち、サーヴァントに換算すれば以下のステータスに相当します。 一日目の市ヶ谷方面の何処かで生中継の音楽イベントが行われます。(時間・場所の詳細は、後続の書き手様にお任せ致します) 遠坂凛の主従とセリュー・ユビキタスの主従が聖杯戦争の参加者だと理解しました。 結城美知夫とコンタクトを取りました 黒贄礼太郎に扮させた十世は、後述の魔将に託しています。 現在ある魔将が、ムスカの近辺防衛を行っています。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 撮影、或いはステージ本番直前の芸能人の過ごし方は様々だ。 時間まで楽屋で眠って過ごす者もいれば、穴が開く程見て来た台本をもう一度確認して見たり、或いはもう全てをやり尽くしたので時間まで身体を休めるなど。 大舞台を控えた歌手や俳優、役者にこそ、その当人の生の姿が拝めると言っても過言ではない。舞台に上がる芸能人は皆、テレビに向けた仮面を被っている。 その仮面を剥いだその下の顔こそが、その芸能人のある種の素であり、そして、本当の姿であるのだから。そしてそれは、生を映すその通りの鏡である。 346プロダクションのアイドル部門に所属する女性達の過ごし方も、種々様々だ。 リラックスして過ごしたり、本を読んで安定を図ったり、もう一度台本を読んだり踊りのリハーサルを行ってみたり、 酒を飲もうとして周りに止められたり、サイキックと称してスプーン曲げをやろうとして全然曲げられなかったり、後なんかドーナッツとか食ってたり。此処でも過ごし方は、十人十色だった。 魔震復興からニ十周年と言う節目に行う、346プロ主導の盛大なライブイベントに参加する事になっているアイドル達は、 プレッシャーの感じ方の差異こそあれど、その殆どが緊張状態と言っても良かった。理由は無論言うまでもない、そのライブイベント自体が問題なのだ。 参加するアイドル達の中には、大なり小なりの『ハコ』を借りて、ライブ等のイベントを行い、場数を踏んで来た者も、確かにいる。 だが、今回参加するアイドル達の殆どは、今回程大きなイベントを体験した事はない。 魔震復興からキリの良い数字に年に行う盛大なイベントであるだけに、各種キー局や芸能プロダクションが注目しているだけでなく、 観客動員数も、346プロが本気を出した為に相当数来る事が理解している。そして何よりも、このイベントを成功させた暁には、シンデレラプロジェクトは、 UVM社の台頭を一気に崩しかねない程の勢力になるかもしれない、と言う展望自体が、緊張の種となっていた。 大勝する可能性があると言う事は同時に、大敗する可能性も高いと言う事を意味する。今回のイベントでしくじれば、間違いなくシンデレラプロジェクトは痛手を喰う。それが解っているからこそ、皆は、気が気でない状態なのだ。 特に、プロジェクトクローネの面々など、今回の顔とも言えるグループである為、余計に緊張感が凄まじい。 真面目な性格をした鷺沢文香や橘ありす、アナスタシアの三人や、渋谷凛、神谷奈緒、北条加蓮のトライアドプリムスのメンバー達も勿論の事、 普段は緩く活動している塩見周子や大槻唯、果てはリーダー格の速水奏も。等しく、今回ばかりは緊張の面持ちを隠せていなかった。 気負い易く張り切りがちなありすは、疲労が残らない程度に本番時の動きをシャドーしているが、後数時間でスタートと言う現実からが、動きが固い。 書痴の気が強かった鷺沢は、最近フレデリカが歌っている歌に触発されてか、アルケア帝国の英雄について記された書物である『廃都物語』を読んではいるが、 如何にも泳ぎがちな目を見るに、内容は頭の中に入っていないだろう。大槻も塩見も、一見すれば落ち着いた様子を見せてはいるが、 普段のキャラクターが緩くて喋りたがりで通っている二人が落ち着いていると言うのは、今回のライブの重大性を認識している証でもあった。 トライアドプリムスとして場数を踏んで来た凛や奈緒、加蓮、LOVE LAIKAの片割れとして同じく数をこなしたアナスタシア、そして、クローネのまとめ役である奏も。 めいめいが、台本を読んでいたり、スマートフォンを弄っていたり、或いはただ座って落ち着いていたりとしているが、やはり、瞳から感じられる感情が普段と違う。 これが本当に、日本有数の芸能プロダクションのアイドル部門の中でも、指折りと言っても過言ではない実力を誇るアイドルユニットの、 本番前の姿なのかと疑いたくもなろう。年相応の少女達が発散させる、騒がしくも華やかな雰囲気が欠片も感じられない。 絶対にしくじれないと言う緊張感から、レッスンルームは、まるで通夜の様に静まり返っていた。 誰かが、思った。「こんなテンションで、本当にライブに成功するんだろうか」、と。その一人が思った事が、皆に伝播して行く。 感情は、伝わる。水面に落とした小石が落とした波紋のように。糸で牽引される人形のように。咳で風邪が移るように。 ――そんな空気を根底からひっくり返し、ナノマイクロレベルにぶち壊すように、レッスンルームに存在しなかった最後のメンバーにして、 今回のライブイベントの実質的な主役とも言える少女が、部屋にやって来た。勢いよくドアを開け、今日のライブなど何処吹く風、と言ったような様子で 「ボヌニュ~~~~イ!! クローネの皆さん!!」 皆が一様に、レッスンルームに突如現れた闖入者。 プロジェクトクローネの一員にして、今回のライブの大トリをピンで飾る主役、フランス人の母親譲りの金髪が眩しい少女、宮本フレデリカの方に顔を向けた。 なお余談であるが、ボヌ・ニュイ、Bonne nuitとは、フランス語でおやすみなさいの意味である。 「お~っとととありすちゃーん、元気?」 今の今まで、曲中の動きのシャドーをやっていたありすであったが、唐突なフレデリカの入室にビクッと身体を硬直させてしまった。 それに目を付けたフレデリカは、フンフンといつもの鼻歌を口ずさみながら、ありすの方へと近付いて行く。 「げ、元気かと言われれば、何も支障はないですが……と言うより、緩すぎですよフレデリカさん!! もうすぐ本番ですよ!?」 「ん~? 緊張してるよりはリラックスしてた方が、気が楽だよあ~りすちゃん」 「名字の方で呼んで下さい名字の方で!!」 「ままま、良いじゃん良いじゃん。あそうだ、緊張をほぐす方法知りたい? 知りたいでしょ。しょうがないなーありすちゃんは」 頭の中に思い浮かんだ言葉を、感情の赴くがままに口に出しているとは思えない程のマシンガン・トーク。この適当で弛緩した雰囲気は、正しく、平時の宮本フレデリカその人であった。 「そんじゃありすちゃん、手を出して」 「……人、って書いて呑み込むあれですか?」 「おぉ、物知り~ありすちゃん。そうそう、あれをやるんだけどさ、ほら? 私フランス人っぽいキャラでしょ? だからフランス語で書いてあげる」 「っぽいと言うか、アンタまんまフランス人とのハーフじゃん……」 一人だけ別の星からやって来たとしか思えない程のハイテンションを維持するフレデリカを見て、呆れたように口にするのは奈緒であった。 ありすの方は、これは手を出さないと次のステップに進まないな、と観念し、普通に右掌を差し出した。 白く嫋やかなその手を見て、フンフン、とフレデリカが一人で納得する。 「良い手相だね」 「書くんじゃないんですか?」 「あっははは、フレンチジョークフレンチジョーク。それじゃ書くね。鉛筆で良い?」 「指です!!」 「解ってるって解ってるって」、そう言ってフレデリカは、ありすの右掌に人差し指で文字を書いて行く。 「はい、どうだ!!」 「……私の気のせいでなければ、Humanって書いた気がするんですが」 「あ、凄いありすちゃん。小学生なのに良く解ったね、ひょっとしてTOEIC100点取っちゃったりする?」 「あ、あの……フレデリカさん……。あのテストは990点満点ですから、その点数は……凄く低いです」 遠慮気味に突っ込む鷺沢。後ろで、「と言うか今時の小学生だったらその程度の英単語位は……」、とひそひそ会話するのは、凛と加蓮が会話していた。 「……ぷっ、あは、あはははは!!」 一連の流れを見て、今まで茫然状態だった唯が笑い始め、吊られて、周子の方も笑い出す。 「あ~、何かばっかみたい☆ 絶対失敗出来ないライブだからって、緊張し過ぎだよ唯達はさ☆」 「そうそう、気負い過ぎだよあたし達。要するにさ、人が沢山見てる所で、リハーサルをやれば良いだけなんだよ本番って。いつも練習してる事を、練習通りに人前でやれば良い。変に緊張してたら、余計にミスっちゃうでしょ」 そう言って唯と周子は、今まで自分達が如何に、失敗出来ないライブと言う巨大な壁に怯えていたのか、と言う事を語り始めた。 本番までもう時間がないと言うのに、いつも通りのテンションのフレデリカを見て、彼女らも悟ったのだ。 ライブとリハーサルの違いなど、人が見ているか否かでしかない。リハーサルではミスなく、完璧に出来るのなら、人前で同じ事をやって失敗する訳がない。 後は、気の持ちようだろう。テレビ放映がある、日本のみならず世界のプロダクションも注目している。その事実に、委縮し過ぎた。 人がいる前で、リハーサルでいつもやっていた事を恙なくやって行けば良い。所詮、その程度に過ぎないのだ。 「……確かにそうかもね。変に肩筋張ってたら、出来るものも出来にくくなるし」 凛がそう言うと、加蓮やアナスタシアの方も首を縦に振る。 「ふふ、何か皆、素のキャラクターに戻って、緊張感が吹っ飛んじゃったわね。でも、これ位の心持ちの方が、かえってやり易いのは確かね」 「か、奏さん達がそう言うのなら……たまにはフレデリカさんも良い事をしますね。ね、鷺沢さん」 「え!? 私は、フレデリカさんは何時もムードに寄与してると思ってると……」 「ちょっと文香ちゃ~ん? 声がすっごい疑問気なんだけど?」 と言うフレデリカ。漸く皆が、クローネとしての仮面を被っている時の彼女らでない。 クローネと言うペルソナを剥いだ時の、素にして生の姿が戻って来た。後は、この精神的な安定感を維持したまま、クローネとしての姿を演じ、ライブを成功させるだけだ。 「リハーサル中何度も確認し合った事だから、もう今更って感じがしないでもないけど、やっぱ、やっておきたいから言うわね」 奏が、すぅ、と一息吸ってから、心の中に浮かんできた言葉を、口にし始めた。 「絶対、成功させるわよ!!」 アイドル全員が、威勢よく返事をした。 「うん」だったり、「はい」、だったり、一人だけ「ちゃーっす!!」だったり。返し方こそ種々様々だが、皆、ライブを成功させると言う決意だけは本物だった。 それを見て、フフン、と言った感じの笑みを浮かべるフレデリカだったが、突如、親の訃報でも聞かされたような真顔に表情を変え、そしてすぐに、痛みに苦しむような顔に成り始めた。 「……? シトー、如何しましたかフレデリカ? 顔色が優れないようですが」 真っ先に異変に気付いたのは、アナスタシアの方だ。 彼女の言葉を疑問に覚え、皆がフレデリカの方に顔を向けると、クローネの雰囲気を盛り上げた立役者は、腹に刀でも突き差されたように、顔を苦悶に歪めさせていた。 「ど、どうしたのフレデリカ? 体調が悪いの?」 訊ねる加蓮に対しフレデリカは。 「う、ううん大丈夫大丈夫!! ちょっとお腹が痛くなっただけだから、陣痛かな?」 「いやいやいや、駄目だろそれは!!」 真っ先に突っ込んだのは奈緒である。この歳のアイドルが妊娠は、それはもう、駄目だ。 「ねぇフレデリカ、本当に大丈夫なの? ひょっとして、その右腕の包帯から、痛みが来るんじゃ……」 「ほ、本当に大丈夫だから凛ちゃん!! この包帯は……そう、アレだよアレ!! 蘭子ちゃんや飛鳥ちゃんリスペクト!! ……でもちょっと、お腹痛いから、トイレ行ってるね!!」 「心配ないからホントホント!!」、その言葉がレッスンルームから廊下の方にフェードアウトして行く。 後には、キョトンとした表情を浮かべる、クローネの面々が遺される体となった。 ――一人として、今のフレデリカの言葉と強がりが真実だと、信じているアイドルはいなかった。 だって彼女が去り際に見せた表情は、今にも泣き出しそうなそれであったからだ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ あの白衣の女に、実験と称されて変なアンプルのような物を打ちこまれてから、一週間以上は経過しただろうか? 日に日に、餓えが強くなっていく。グラノーラシリアルを丸々平らげても、少ししかお腹が膨れない。お惣菜をこれでもかと食べても、結果は同じ。 体重が一日で二kgも増えるのではと思う程の量を食べても、体重にも体型にも、全く影響が出ない。つまり、何を食べても、飢えが満たされない。 何時からだろう。 人を見て、『美味しそう』だと思うようになったのは。そして、それに抗おうとする度に、全身が切り刻まれるような強い餓えに襲われるようになったのは。 それを抑えるのに、フレデリカは必死だった。此処最近は、プロダクションのアイドルを見る度に、強すぎる飢餓が彼女を苛む。 ――美味しそうだった。 ありすは、身体全部が美味しそうだった。鷺沢は、胸が柔らかくて、食べごたえがありそうだ。 アナスタシアは、雪国生まれのシミ一つない白い肌を舐めまわして剥いであげたい程に、食欲を喚起させる。 凛の内臓は、どんな味がするのか。奈緒の腸は? 加蓮は元々病弱だったと言うが、それが味に影響してないだろうか? 奏は手足が美味しそうだった。唯は飴ばかり舐めているから、ほのかに肉も甘い味がするのか? いや、そうしたら周子の方も―― おぞましい考えが、フレデリカの脳裏を過って行く。 胃液が喉から逆流して行くのを、必死に抑える。水洗金具を弾みでぐっと握る。果たして、誰が信じられようか。 見るからにか弱そうなフレデリカの握力で、金具が捩じ切れたのだ。それについても、驚く様な素振りを彼女は見せない。 アンプルを打ちこまれてから、ずっとこんな感じだった。本気で握れば、コップが砕ける、コンクリートの壁を殴れば、その部位が凹む。 今の彼女は、人喰いの衝動と引きかえに、人智を逸した身体能力を誇るようになった、怪物であった。 何を食べても、美味しいと感じられなくなったし、どんな料理の映像や画像を見ても、食欲を刺激されなくなった。 新宿 を行き交う人。人を見て、フレデリカは美味しそうだと思うようになり始めた。怖い。日に日にその衝動が強くなって行く。 飢餓を抑えれば抑える程、其処らを行き交う人間が、ずっと魅力的に、美味しそうに見えて来るのだ。 「やだ……怖いよ……助けて……」 普段のフレデリカからは、想像もつかない程の弱気のトーンでそんな言葉を吐き出した。言葉と一緒に、吐瀉すらしかねない程の、消耗ぶりだ。 レッスンルームでは、必死にあの場にいたメンバーを励まし、そのテンションの向上に寄与した。 自分があのテンションでなければ、フレデリカは完全に崩れてしまいそうだったからだ。これが――今のフレデリカの、生の姿だった。 無理やりにでも元気を装わねば、人喰いの衝動に呑まれかねない。何時如何なる時、人間の身体を貪らないか、今の彼女ですら解らなかった。 控室に置いてあった自分鞄を急いで持って来たままトイレに籠ったフレデリカは、そのチャックを勢いよく開け、中からある物を取り出した。 鶏のもも肉だった。無論、調理されていない。生のままのそれだ。これを彼女は無理やり口へと持って行き、それを齧り出したのだ。 今の彼女は、生の鳥どころか、焼かねば中の寄生中のせいで到底食べられない豚肉すら、食べても大丈夫な身体になっていた。 急いでそれを咀嚼し、彼女はそれを呑み込む。もう、生肉を食べて餓えを凌ぐ、と言う手段すら、余り通用しなくなっていっている。 「今日、今日を凌いだら……」 休もう。志希ちゃんみたいに休む時間を美城常務に申請して、メフィスト病院って所で治療して貰おう。 その為には、先ずライブを終わらせる必要がある。ライブは成功させる、クローネの皆と、笑顔で最高のライブを迎えたい。 絶対に、失敗は出来ない。だから――だから。 「神様……お願いします、私を……私を……」 救って下さい。掠れるような小声で、フレデリカは呟く。捩じ切れた水道金具を握り締め、フレデリカは涙を流し祈った。 彼女は知らない。この 新宿 には、救う神もいなければ、祈る神もいない魔都になってしまった事を。 彼女はもう、アートマを抱えたまま、夜を迎え、昼を迎え。そしてまた、夜を迎えるしかない。 彼女がその事実を知る事は、永遠に、ない。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ クーム・ルーム・ディーム クーム・ルーム・ディーム 七つの命のクーム・ルーム・ディーム 一人で旅立つクーム・ルーム・ディーム 二又道で迷っていたら 三つの国の 王様が来て 四ツ目の竜を 倒せと言った 五つの門をくぐり抜け 六年がかりで探しだし 七度死んで竜を倒した クーム・ルーム・ディーム クーム・ルーム・ディーム 七つの命のクーム・ルーム・ディーム ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 誰も知らぬ暗がりで、その大男は 新宿 の闇を堪能していた。此処は、アーガデウムが辺境の田舎としか思えない程、発展した街だった。 大量に行き交う人々。露天商がどの道にもおらず物を運ぶ馬車すら存在しないのに、確かに流通している大量の物資。そして、人々の活気。 全てが、アーガデウムとは比較にならない。そんな所に、男はいた。そして、死と言う安寧すらも奪われたのだと、半ば諦めていた。 自分を呼びだしたあの男が、嘗て同じ釜の飯を食い、同じ杯の酒を回して呑んで。 一角獣を仕留めた事を喜び合い、黄金樹の立ち並ぶ河縁を歩いた男とは、別の男である事は理解している。 理解していても、魔将としての宿命が、彼への反逆を許さない。自らを始祖帝と称するあの男は、大男が認めてるタイタス一世とは、全く別の存在である。 それなのに彼に犯行が出来ないのは、全く別の存在であるのに、彼もまたタイタスの影であるからに他ならない。 故に、魂と、その在り方を縛られている。あの男の理想に殉じ、魔将になった事に悔いはない。 だが、大男が嘗て無二の友と認め、嘗ての崇高な理想から既に乖離を始めたあの男は、既にタイタスではなかった。 そんな男に魂を縛られた生前。自らの宿命を御子が漸く断ち切り、魔将の全員が死と言う安息を得られたのに。 今また、彼らはその魂と肉体を縛られ、タイタスの傀儡となっている。これが宿命(さだめ)であるか。大男は、自らの境遇を嘆きつつも、最早どうにもならないのだと、諦めていた。 「……お前もまた、奴に囚われたるか」 護衛を行うようタイタスから命令された、ムスカと呼ばれる男を思いながら、最強の魔将は口にした。 お前の行く道は破滅だと、助言したくともそれが出来ずにいた。タイタスの魔術の為だ。 擦り切れた黒灰色のローブから覗く、鷹の如く鋭い瞳には、憂いの輝きが悲しげに沈んでいた。 鬼神の如き強さを誇る魔将、『ク・ルーム』は、この星の大気の底で、自らの滅ぶその時の到来を、待ち望んでいるのだった。 【高田馬場、百人町方面(346プロダクション)/1日目 午前9:30】 【宮本フレデリカ@アイドルマスター シンデレラガールズ】 [状態]精神的疲労(極大)、飢餓(極大)、チューナー [装備]クローネのアイドル衣装 [道具] [所持金] [思考・状況] [備考] ジェナの手によりチューナーにさせられています。アートマは、右腕の半ばに巻かれた包帯に隠されています。 変身出来る悪魔は[検閲]です。 【高田馬場、百人町方面(???)/1日目 午前9:30】 【魔将ク・ルーム@Ruina -廃都の物語-】 [状態]健康、憂鬱 [装備]二振りの大剣、準宝具・魔将の外衣(真) [道具]タイタス十世@Ruina -廃都の物語- [所持金]とても多い [思考・状況] 基本行動方針:タイタスの為に動く 1.ムスカの護衛 2.道具である十世を守り抜く [備考] タイタスにより召喚された、魔将です。サーヴァントに換算すれば以下のステータスに相当します。 【クラス:セイバー 筋力A 耐久B 敏捷B 魔力A 幸運E- スキル:勇猛:C 対魔力:C 戦闘続行:EX 異形:A 心眼:C 】 準宝具の魔将の外衣は、Cランク相当の対魔力を付与させると同時に、『7回までは死んでも即座に復活出来る』と言う効果を持ちます。 タイタス十世は黒贄礼太郎の姿を模倣しています。模倣元及び万全の十世より能力・霊格は落ち、サーヴァントに換算すれば以下のステータスに相当します。 【クラス:バーサーカー 筋力D+ 耐久E 敏捷C 魔力D 幸運E- スキル:狂化:E+ 戦闘続行:E 変化:- 精神汚染:A- 呪わし血脈:EX】 ※十世を直接的、間接的問わず視認すると、NPC・聖杯戦争の参加者に幸運判定が行われ、失敗するとアルケアの想念が脳裏に刻まれます。(実害は皆無だが、アルケアの夢を見るようになる) 時系列順 Back 満たされるヒュギエイア Next 仮面忍法帖 投下順 Back 太だ盛んなれば守り難し Next ワイルドハント ←Back Character name Next→ 15 夢は空に 空は現に 結城美知夫 48 Cinderella Cage 15 夢は空に 空は現に ムスカ
https://w.atwiki.jp/city_blues/pages/235.html
☆語るに及ばず。 新宿 という街は、とにかく目の疲れる場所である。 耳目を惹き付ける為に奇抜さを追求した看板程度ならまだしも、建築法を逸脱している疑いすら浮かぶ間取りの鉄宿。 周辺事情を真面目に考察すれば、攻撃的な彩色がむしろ防衛的な虚勢に見える個人店舗は枚挙に暇がない。 そして何より、中身以上にカテゴリの数が多いと思わざるを得ない、道を行き交う人間の外見。 系統樹に埋没すまいと着飾り、かつ自分の内面を虚実交えて表現しようと工夫を凝らしている者。 熟慮の果てにそういった努力も女々しいと斬って捨て、独創性が暴走して自分でも訳の分からなくなった姿に落ち着いた者。 パーソナリティなど知ったことかと、その日の気分によって七変化するノン・ポリシーが体外にまで染み出した者。 各々の思想・事情が絡み合い、混沌のファッション・ショウと化したこの街。それ故に、歩く二人の少女も衆目を引きすぎることはなかった。 「ゆえっち、大丈夫なんかね。どう見ても普通の病気じゃなかったけどね」 「うつうつします……」 一人は、口元のピアスと肩口から腰に納まった、無骨な斧を連想させる髑髏付きのギターが特徴的な少女だ。 日系人ではないが流暢な日本語と、十人に聞けば七人は認める程度の整った顔立ちから常時作られる遠慮のない笑顔が、棘だらけのパンクな衣装の与える印象を中和していた。 一人は、水着だった。水着で出歩いていた。恥部を隠しているだけ 新宿 では遠慮しているのだと言わんばかりの格好である。 隣の少女とは対照的に"陰"のオーラを纏っている彼女を、往来を歩く男たちもそれほどまじまじと見つめはしない。服装と雰囲気とのギャップが、好色家の初動を止める役割を果たしている。 「しかしうっちゃん、本当に着いてくるのね。音楽とか好きだったっけ」 「トットが楽しそうだったから」 「なんせ、新宿きっての大イベントだからね。飛び入り魔としてはほっとけないからね」 「飛び入り魔?」 「正規の手段を取らずにステージに出て、盛り上げて去っていくお仕事のこと」 「お仕事……?」 「手順を丸暗記するくらい経験を積んで、下準備と逃走経路の想定をしっかりやれば、何でも仕事になるのね」 いずれ音楽界に革命を起こす、と豪語する親友を微笑ましげに見る水着の少女が、ふと腰に手をやる。 取り出した携帯には爆発事故発生、という物騒なニュースが入ってきていた。現在地からそう遠くはない。 このニュースだけでなく、最近新宿の街は物騒だ。保護者からも外出は極力控えるよう言われているが、友人の晴れ姿?は見逃せない。 しかし、この調子ではイベント自体が中止になってもおかしくない。 「可愛い後輩のお見舞いの後に無法者をやるんだから、そうなっても天命なのね。その場合はトットのオンリーステージになるのね。無人ライブ」 「一人でも聴くから、がんばって」 「うおお! あっ、師匠から電話なのね」 ライトハンド奏法でぎゃりぎゃり、とギターをかき鳴らした直後、慌てて電話に出る少女。 鋲・ベルト・皮・棘・包帯を多用した、正にステージ衣装と言った彼女の頬に朱が差す。 楽しげに談笑する友人を見て、水着の少女もまた笑顔になる。何事にも拘泥せず、己の心に正直に走り続ける。そんな彼女を見て思う。 なるほど、この友人ならば愛でられるアイドルでも、芸術という茨の道を歩むアーティストでもなく、満天に輝き全てを照らすスターになるのが相応しいのだろう、と。 ☆北上 聖杯戦争のマスターに与えられる特権の一つに、己のサーヴァントとの念話能力の取得がある。 日常生活を送る上では便利なものだが、学校と自宅ほど距離が開くと不通となってしまう。 マスターの心体に著しい負荷がかかればサーヴァントは気付くというが、ちょっとした用件を伝えるにはやはり通信機器は必要だ。 例えば今日のように学食が混んでいる時、アサシンに連絡を入れれば彼女の宝具により家まで一っ飛び。 家にある余りものを適当に食べる事で食費を節約できる上、気分が乗らなければそのまま学校を脱けることもできる。 午前中の授業を受けている間は、耳に入ってくる噂話にとにかく気が気ではなかった。 自分が普段通りに生活しているというというのに、軍靴を並べて競い合う御同輩たちは 新宿 の至る所で大暴れ。 聖杯戦争の関係者であることを隠す為に市井に身を潜めるのはいいが、いつ"普段通りの日常"に宝具が飛んでくるのか分からないのでは困る。 アサシンを見れば、ペアで購入した携帯電話で誰かと談笑していた。いつになく楽しそうだ。 NPCに接触する事は控えると言っていたが、髪の毛収集で外出した際に綺麗な髪の子をナンパでもしたのだろうか。 純真一途というには気が多いこのサーヴァントが相方だ、常に自分だけを監視してくれているとは期待しない方がいいだろう。 咄嗟の事態で脱落するのに怯えなくてはならないほど切迫した今の 新宿 の状況では、むしろ自宅に籠もっていた方が安全かもしれない。 通話を切ったアサシンに、今後の戦略を相談する。彼女も同種の懸念を持っていたらしく、淀みなく言葉を紡ぐ。 「思ったよりも展開の変転が早いですからね。今日はもう学校に行かなくてもよいでしょう」 「専守防衛……って奴、やめてもいいの? このアパートで篭城ってあんまりいい結果になりそうには思えないんだけど」 新宿 の時代観に合った受身の戦略を捨てて徹底防衛に回るには、自分とアサシンだけでは難しいといわざるを得ない。 逃げ回り、身を潜め、最小の労力で敵を仕留めるのに適したアサシンの能力ですら、防戦に徹し続けて勝利を掴むには足りないと北上は思う。 この街は狭いのだ。ここ半日で聞き知った事件の半分でも聖杯戦争の関係者の仕業だとすれば、戦場どころか狩場としても窮屈すぎる。 くだんの、一瞬で車両十数台を爆散させて交通網を遮断したテロ屋がサーヴァントだとすれば、四、五時間もあれば全域を廃墟に出来るだろう。 正午に発令された新たな討伐対象のサーヴァントに至っては、間違いなく現在進行形で廃墟の山を増やしている。討伐が済んだのなら、主催者からそれと伝えてくるだろう。 討伐令の意味するところ―――無法や騒乱への牽制など全く意に介さない主従がいて、それらを仕留めた善良な主従は未だ存在しない。 矢面には立たないにしても、前者が本格的に狩猟を開始する前に暗殺なり懐柔なりの対処をしなくては"詰む"という確信があった。 「もちろん、ただ逃げ腰でいるとは言いませんよ。どうやら街中に悪魔の類が放たれているようですし。私が偵察に出ましょう」 「……我慢が利かなくなってるわけじゃないよね?」 「まさか」 見破られるとは、と続くんじゃないだろうな、とアサシンの心中を探る。彼女の性格はマスターとして概ね理解しているつもりだ。 水晶玉で 新宿 のあちこちを眺めている中で、魅力的な髪の毛を持つ人々に魅了され陶酔している姿は何度も目撃している。 魔法少女、という職業に就いていた生前のアサシンは、雇い主の方針に従って隠密に徹していたという。 しかし英霊となり生前の制約から解放された今、憂慮すべきは彼女の生き様ではなく性格だ。 髪に対しては自制が利かなくなるアサシンに対しては、釘を刺しておく必要があった。 こちらの意を読み取ったのか、微笑を浮かべたアサシンが一礼して身支度を整え始める。 水晶玉で新宿の街を遠視して見つけた、気になるいくつかのポイントを伝え、それに関するニュースをチェックするよう言い残して姿を消す。 挙動に浮つきや油断は見られない。ならばひとまずは任せよう、とテレビの前に腰を下ろした。 昼のニュース番組では、 新宿 を襲う未曾有の緊急事態を声高に叫び、各方面を非難するコメンテーターが幅を効かせていた。 「まるで戦時下ですよ」という他人事のような言葉に、少し呆れて笑ってしまう。 「平和はやっぱり長続きしちゃダメだね」 本心から出た呟きに、何故かチクリと胸が痛んだ。 【歌舞伎町・富山方面(新宿三丁目周辺、北上(ブ)の暮らす安アパート)/一日目 午後 13:20】 【北上@艦隊これくしょん(ブラゲ版)】 [状態] サボリ 満腹 [令呪] 残り三画、背中中央・艤装との接合部だった場所 [契約者の鍵] 有(ただしアサシンに渡してある) [装備] 最寄りの高等学校の制服 [道具] なし [所持金] 戦勝国のエリート軍人の給料+戦勝報酬程度(ただし貯金済み) [思考・状況] 基本行動方針:聖杯が欲しい 1.アサシンに偵察を任せ、テレビを見る。 2.危機に直面した場合、令呪を使ってでも生き延びる。 ☆バッター バッターとセリューが打たれた犬のような主従を拾ってから、三時間ほどが経過していた。 聖杯戦争の参加者に三時間も与えれば……特に、バーサーカーを有するマスターに三時間も与えれば、流血沙汰は一度や二度ではないはずだろう。 しかし彼らは汚泥で煉られた悪鬼、人魂を虫食む天魔、それらを産み出す魔人のいずれとも交戦せず、魔力の激突を感知してもそちらに穂先を向けていなかった。 二組の主従が集うは、四ツ谷信濃町方面……彼の『メフィスト病院』のお膝元、目と鼻の先といっても過言ではない、一軒の空家。 元は薬局だったのだが、店主一家が数日前に「存在する意味が分からない」と言う嘆きを残して夜逃げしたらしい。 困る人間もいるまい、と間借することになったのはバッターの提案によるもので、わざわざここを選んだのは、単純な理由。 番場とシャドウラビリスを襲ったセイバーの主従、そして聖杯戦争の競争相手を治療した『メフィスト』という男へ探りを入れる為であった。 怯える真昼と唸るシャドウラビリスを引きずって南元町の外れ"食屍鬼街"に向かったバッターの強行偵察は空振り。 日本国の常識から外れたような無法者の集団は、銀蝗の魔人に関する記憶を失って呆けていた。 数名を死なせないよう慎重に拷問して弱らせ、バッターが使役するAdd-Onsの所持するスキル"透視図法"により暗示を破ったが、去就は不明だった。 一方セリューは、元患者である番場組や保険証を持っていないバッターに代わり、メフィスト病院に隠密偵察を仕掛けていた。 元々昼間の 新宿 では精力的に慈善活動を行い、警察官を目指す女性という役割も生真面目にこなしていたセリューには、NPCの知り合いもいる。 その中にメフィスト病院で逗留している男性がいたのを幸いと、見舞いの形で正面から堂々と訪問したのだ。 「あの病院凄いですよ! 患者がみんな笑顔なんです!」 「落ち着けセリュー。メフィストとは接触できたのか」 「本人とは会えませんでしたが、お見舞いの帰りに気になって、という体で検査をしてもらったお医者様や患者さんから聞き込みをしてきました」 己のマスターがぶらぶらと振る右腕を凝っと見つめるバッター。 調査の取っ掛かりになれば、とセリューが自傷した上腕骨のヒビは、目視では完治しており、施術の痕もない。驚くべきは、そこに魔術の痕跡さえも一切存在しない事だ。 バッターの目から見れば、あの病院施設自体が魔術工房などという低レベルに収まらない"神殿"の域にあることは明白だった。 だがメフィスト病院が宝具でありスタッフもその付属品だったとしても、骨折を魔術の行使なし、手術なしで"復元"と言ってもいいほど完全に治療しているのは異常だ。 半死であった番場真昼をベスト以上のコンディションに戻している事から予想はしていたが、メフィストという医者のサーヴァントは相当に条理を超えた存在であるらしい。 「えーとですね、話を聞いた方の半分以上が、ドクターメフィストの事を思い出すだけで絶頂したり失神したりして難航したのですが」 「口封じの呪いか?」 「いえ、普段からよくあることらしく、テキパキと処理はされていましたね。それで、悪い評判は一切ありませんでした」 「あ、あの病院は、おお医者さまをうやまってやがりになる人ばっかだって、(真夜が)言ってました」 「? 番場さんの言う通りでしたね。従業員は例外なくドクターメフィストに憧れ、患者さんは例外なく彼と病院に感謝している。理想的な医療施設じゃないでしょうか? まあ、妄信的すぎて少し怖い感じはしましたが……。腕前だけではなく、容姿もズバ抜けて優れているらしいので、不自然とまでは言えないかと」 言って、セリューが周囲を見渡す。元々真夜が本戦の開始前に集めていた情報、潜伏先の候補であったこの旧薬局には、薬や家具がそのまま残されていた。 そもそも鍵すらかかっておらず、一同は首を傾げたものだが、メフィストというサーヴァントの美しさに当てられて忘我した結果、と思えば納得が行く。 番場たちも恐怖や困惑が先に来なければ、時系列すら魅了されて殺到し、そこにいるだけで時の流れが崩壊してもおかしくないあの医師の虜になっていただろう。 バッターはセリューの報告を聞き、鰐の顎門を開閉する。思案する彼を尊敬の眼差しで見つめるセリューに、真昼が声をかける。 「セリューさん、すごい、です。私なんて、病院の中、全然見ずに出てきちゃったのに」 「いえ、番場さんは本当に怪我してたわけですし! 悪漢に襲われて助かった後だったんだから、動転してても恥じることはないですよ」 「ゥゥゥゥ……」 真昼の手を取って上下するセリューを見て、シャドウラビリスが間に入ってくる。 シャビリスには、セリューが己のマスターにスキンシップを取っていると割って入る癖があった。 セリューは苦笑しながら機械の少女の頭を撫で、「そうだ」と懐から何かを取り出した。 「これおみやげに……って、番場さんも貰ってますよね」 「あ……じゃあ、交換しましょう、煎餅」 メフィスト病院の受付で貰える贈答品、まったく変わりのないそれを意味なく取り替えるセリューと真昼。 微笑ましい光景だった。バッターの左腕が、その場の誰にも反応できない速度で得物(バット)を振るまでは。 片手とはいえ、掛け値なしの全力のスイングだった。ごうん、と風を切る音が薬局全体に轟く。 「バッターさん!?」 驚愕の声を上げるセリューが一拍遅れて気付く。"バッターの全力の一撃の後に、壁や床が崩れる音が聞こえなかった"事に。 バットの先端は、バッターの左後方の壁……その30cm手前で静止している。……否、静止させられている。 凶器が食い荒らした軌道上、一瞬カラにされた空間に大気が戻っていく。ありえない現象が生んだ在り得ない兇風を浴びて、壁の前に赤い影が浮かび上がった。 何故今までそこにいたのが分からなかったほどの長身。だらしなく伸びた髪、だらしなく開いたスーツの胸元。全身の気怠げな印象を、爛々と輝く瞳だけが否定している。 「ちょちょちょちょーいwwwwホントにいたのは良いけど勘よすぎですよバーサーカーくーんwwwwwww(SSが)もうはじまってる!wwwwwwwwwwwwwww」 「お前の叫びは何処にも届かない。呪われた旅人よ、お前を浄化する」 不快な嘲笑を上げる、性別も年齢も不詳な存在―――間違いなくサーヴァントだろう―――に、バッターが第二撃を喰らわせようと一歩踏み込んだ。 ☆赤のアサシン メフィスト病院を出て二十と三秒後、ベルク・カッツェは気配遮断スキルを存分に活かして―――喚き散らしていた。 「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!! ウッゼェェェエェェェェェエ!!!!!!!!!!!!!!!!」 周囲のNPCは咆哮……否、発狂しているカッツェに目を留める事もなく歩き続けている。 異形の両目を凝凝と見開き、憎悪と苛立ちを吐き出すカッツェは、これだけしても脳裏から離れない一人の男の代わりと言わんばかりに地面を踏みしめる。 アスファルトが足型に凹み、やがて粉砕されて白煙と異臭を上げてもなお、"赤"のアサシンの憤懣は滾っていた。 この道化じみた男がこれほどまで正直な怒りを発散しているのは、もちろん魔界医師メフィストのせいであった。 他者など、何の価値もない心とかいう物に感けた愚鈍な猿に過ぎないというベルク・カッツェの持論は、今しがた粉々に打ち砕かれた。 召喚された直後、メフィストの顔を一目見た瞬間に、「この男を、永遠に忘れたくない」と茹った脳に強制上書きされた感覚が彼にはあった。 今、あの男は何をしているのか。誰と一緒にいるのか。誰を見ているのか。誰に見られているのか。なんとしても知りたい。 カッツェに未来永劫生まれるはずのなかった、個人への固執……独占欲……恋! カッツェだからこそ、その感情は抑え込むことが困難だったといえる。 まともな情緒を育んだ人間や英霊ならば、対策とまではいかずとも、その経験からメフィストの美貌と自分の内面に"折り合い"のようなモノをつけることが出来たはずなのだ。 「糞がぁ……冗談じゃねぇぞぉ……」 心臓の鼓動が静まらない。暴れた為ではない、恋のせいだ。 他人の不幸を楽しむ事に対してはアクセル全開となるはずのカッツェの性癖と思考は、メフィストの不幸を想像することが出来なかった。 自分が変質していく、という危機感が苛立ちを加速させる。宝具である『幸災楽禍のNOTE』の衰えが感じられる。萎えている、のだ。 周囲のNPCにCROWDSアプリを配布して愚行に走らせるのがベルク・カッツェのやるべきことなのだろうが、それをやる気が起きない。 仮にこの新宿の全住民の悪意を束ねても、メフィスト一人に対する関心を上回る事はないとわかっているのだ。 「 」 もはや喋る意味もないな、と溜息をつくカッツェに、在りし日の面影はない。 最初に見つけたサーヴァントに殴りかかって脱落しようかとさえ考え始めていた。 そんなカッツェの肩が、背後から叩かれた。攻撃ではない。普通に、である。 「あ?」 「え? え? 手?」 気配遮断は機能しているし、サーヴァントも感知していない。 振り向いたカッツェの目には、30手前の、歩きスマホをしているOLが映る。NPCだ。 ただのNPCが、気配遮断中のアサシンを発見するなど……いや、発見していない。 OLはきょとんとして棒立ちになっており、その視線はカッツェに止まっていなかった。 そこでカッツェが気付く。自分の肩を叩いた手はOLの物ではない。宙に、手が浮かんでいた。 注がれるOLの視線を厭うように、浮かぶ手が振るわれる。手刀が、OLの首を切り裂く。 その人ならぬ力は、サーヴァントのそれだった。周囲の人間が悲鳴を上げ、OLが崩れ落ちる。 彼女が落とした携帯は通話状態になっていた。声が、カッツェの耳に届く。 『悪逆の英霊、ベルク・カッツェ。お目にかかれて光栄です』 「お目にかかってないでしょwwww誰wwww」 カッツェは、自然と口から出る嘲りに自分自身驚いていた。 先ほどまでは全くやる気がなかったというのに、精神テンションが少し上がっている。 NPCを伝書鳩以下の扱いで使い捨てて悪びれる風もない電話の先のサーヴァントから、痛快なまでの悪辣さを感じたからだろうか。 『 新宿 の聖杯戦争にアサシンとして召喚された、貴方の名声に及ぶべくもない小物のサーヴァントでございます』 「ミィと同じクラスっすかwwwwwwwwwwちょwwwwwwww非通知wwwwwwwww割と最近の英雄サン?wwwwwwwwww」 『余りお調子が良くないようなので、まずは用件だけお伝えします。貴方に会っていただきたい、面白い者たちがいまして……』 相手の不調を見透かすような慇懃無礼な態度……それを意図して行っている小賢しさ。 普段ならまだしも、悪意と煽りに餓えている今のカッツェには、その声は福音にすら聞こえた。 何故自分の真名を知っているのか。そもそも、どこで自分の存在を認識して接触して来たのか。謎だらけだが、今はどうでもいい。 つらつらと自分の都合を語る相手を軽口で囃し立てながら、少しでもあの美影身に引きずられる意識を縫い止める。 潔く諦めるなど、どれだけ変質しても、やはりベルク・カッツェには出来ないことであった。 ☆セリュー・ユビキタス 突如出現した敵サーヴァントに対し、セリューは即座に両目を見開いてそのステータスを確認した。 特に突出した点はない。敏捷値を除けば全体的に己のサーヴァントに劣る能力の相手だ。 アサシンの強みのスピードも、室内という限定空間に加え数の利も自分達にあるこの状況ならば然程の問題でもない。 実際に、バッターの殴打を浴びて天井に激突し、受身すら取らずに薬品棚へと落下していくではないか。 しかしセリューは、痩躯の男に対し何とも言えない不吉な予感を感じ取っていた。 一目見ただけで看破できる悪人というのは、そうそういるものではない。 ただの市民にしか見えない人間が突如として悪の本性を現したりもするし、どう見ても尋常ではない格好の正義の味方も存在する。 悪党の取り締まりを生業とするセリューは、外見の第一印象に惑わされる事がないよう心がけ、相手が悪と分かれば即断罪してきた。 彼女なりの規律はしかし、目の前のサーヴァントによって脅かされつつあった。 「バッターさん、この敵は……」 「災害のような相手だ。世界をかき回しながらも、目的意識がない。どうやら、悪意だけがこいつに意味を持たせているようだな」 「なになにワニさんwwwそんなナリして~~~~……心療医かっ!wwwwカウンセラーかっ!wwwwwww病院にはもう寄ってきましたんーwwwwwww」 芸人のような声を上げながら、伏せていたアサシンがビデオ映像のコマ戻しの如く立ち上がる。 押し倒された薬品棚のガラスも、割れた瓶から零れ散った薬液も、バッターの猛撃も、その道化た動作に影響を与えていない。 セリューは、鼻歌を歌いながら踊り始めたアサシンを睨みつける。 あまりにも"人間性"から逸脱したその軽骨ぶりは、到底許容できるものではなかった。 「そこのふざけたアサシン! 貴様のマスターはどこにいる、サーヴァントに愚鈍な振る舞いを許す悪のマスターにこのセリュー・ユビキタスが鉄槌を……」 「だーれが愚鈍だゴルァァァァァ!」 不快も顕わに怒声が走る。一転して凶相を晒したアサシンが、手近な椅子をミサイルもかくやの速度で投擲したのだ。 息を呑むセリューの眼前に、シャドウラビリスが無言で躍り出た。人間の目には光の線が走ったとしか見えない斬影が走る。 大斧によってティッシュ箱から砂塵の一握ほどのサイズまで不揃いに寸断された木片は、セリューと背後で震える真昼に届く事なく地に落ちた。 「アアアアアアアアアアアアア!!!」 「ちょえwwww普通に喋ってもいいんやでーwwwバーサーカーだとしてもwwwwwww」 またも軽薄な態度に戻ったアサシンの挑発を聞いてか聞こえずか、シャドウラビリスが遮二無二吶喊を図った。 戦斧はフローリングに疵痕を残しながら、隙だらけのサーヴァントを脇腹から両断せんと迫る。 致命のタイミングで撃ち込まれた一閃が、アサシンを錐揉みに回転させて跳ね飛ばした。 シャドウラビリスの虚ろな目に、困惑の色が混ざる。その色彩を驚愕へと深める光景が、直後に訪れた。 「じゃんか♪じゃんか♪そいや♪そいや♪」 遠慮ない勢いで地面に激突し、うつ伏せになっていたアサシンが平然と立ち上がる。 バッター、シャドウラビリスというバーサーカークラスのサーヴァント二体の攻撃を受けてもまるで怯んだ様子がない。 最高水準の耐久力を持つ、鉄壁のサーヴァントなのか。否、剛健とは程遠い。 無窮の武錬を誇る、術理極めし求道の英霊だというのか。否、老練には程遠い。 それは偶然……適当にかざした防手や、力を受ける方向がたまたまに最高の結果を生んだかのような埒外だった。 しかし、アサシンは幸運のステータスが高いわけでもない。 セリューのマスターとしての眼力で推し量れない、スキル・宝具に、何らかのからくりがあるのは明白だった。 「はぁ~~~やっぱりバトルってつまらないよねぇ。観戦が一番ッすわ~~~www」 「お前の望みを叶える義理はない。何も見えず、誰にも見られない処へ還るがいい」 普通に考えるなら、得体の知れない能力からは一時撤退して敵サーヴァントの素性を探る、マスターを探し出して暗殺するという選択肢もあるだろう。 しかしバッターはその定石を頭の端にも留めず、兇眼を研ぎ澄ます。バーサーカーとして召喚された彼に、逃げの一手はない。 実力を異能という不確定要素で誤魔化す事が、いつまでも続くはずもない。多面的な攻撃を行えば、いずれは捉えられると判断したようだ。 己のサーヴァントを心の師と仰ぎ、全幅の信頼を置くセリューもまた、悪漢を前に退くつもりは毛頭なかった。 「始原光体アルファ」 ポウ、と光が灯る。何の前触れもなく出現したその球体は、並々ならぬ威容を発散していた。 ただの攻撃ではない―――そう察したのか、半歩下がったアサシンが息を呑む。 光球が、背後からアサシンを抱いている。転移としてもあまりに唐突な、理不尽すら感じる奇襲。 振り払い、真横に飛ぶアサシンに不調が見られた。右手が僅かに麻痺し、視界の半分が暗闇に覆われている。 光球が鎖を放つ。罪人捕らえるべし、とばかりに射出された白銀の鎖は、悪魔を拘束した際の数倍の速度でアサシンに迫る。 「デバフやっべwwwこれ絶対クールタイム12だわwwwwバフ……こっちもバフ…バフ……バ……バ……バード・グォォォォォwwwwwwwwwwwwwwww」 しかし、アサシンの余裕はまるで崩れない。片足を上げ、バレリーナのような動きで鎖を回避して宙に舞い上がる。 同時に、その全身を四条のリングが覆う。一瞬だけ鎧を纏った戦士の姿が映り……消えた。 完全に実体が隠れている。先だっての気配遮断などは比較するにも当たらない隠身術。 不快な笑い声は消えていないにも関わらず、アドオン・アルファは『敵はいない』と判断したのか鎖を引き戻す。 バッターが指示すれば再度の射出は可能だが、その事実はアドオンの強みである自律機能が今のアサシンには有効でないという事を示していた。 マスター二人の背中を冷や汗が伝う。暗殺こそアサシンクラスの真骨頂とはいえ、面と向かった状態でこれだけ完璧に姿を消せるとは。 今セリュー達に攻撃の矛先が向けられれば、サーヴァントの守りも追いつくまい。 「そこか」 「痛ったい! ウッソだろこいつwwwwww」 しかし、セリューの動揺は杞憂だった。 0コンマ数秒の目配りの後、あらぬ方向へ飛び上がったバッターの兇器が見えない何かを殴りつける。 轟音、驚笑と共に風を切って何かが壁に激突した。正体は、人間大の罅痕を見るまでもない。 セリューの目が、バッターの手に握られた数房の赤い髪を認めた。 あの長髪を掴み、引き寄せてバットで殴打したらしい。 汚らわしいとばかりに放られた髪が、追撃に走るバッターの猛進に煽られて四散する。 横顔を通り過ぎる髪を見ても、尚本体の存在は感知できない。バッターにしか見えていないようだ。 「鞭か」 バッターが腰を落とし、直後に彼の背後の壁に亀裂が入る。攻撃すらも、余人には気付かれずに行えるのか。 亀裂の位置から見えない何かが壁をなぞる様に天井に向けて破壊を拡げていく。 鞭のような武器と思しきそれは、再度バッターに向けて振り下ろされる。 セリューがそう理解したのは、バッターが横っ飛びに移動し、直後に床に陥没ができたからだ。 「バッターさん! 一体何が……」 「アムネジア・エフェクトだ。"管理者"の手で魂を変造された生物……ガッチャマンが得る異能の一つ」 「ちょちょちょwwwおかしいでしょwwwwなんで知って」 「お前の固有能力は特に万能だ。その本性がなければ、浄化が困難な存在だっただろうな……ベルク・カッツェ」 「……何だ、お前?」 真名を明かされたアサシン―――ベルク何某が、笑みを止めた。 セリューには見る術もないが、表情も恐らく笑ってはいまい。 バッターからの悪気ない軽視を察して苛立ったのか、材料すらなく真名を看破され不気味に感じているのか。 後者だとしたら、逃亡の恐れもある。セリューは番場に耳打ちして、シャドウラビリスに対し出口を固める指示を出すよう提言。 その間、バッターと姿なきアサシンは睨み合いを続けていた。 セリューの思考は未だ至っていないが、バッターがアサシンの素性を看破し得た裏付けは彼の持つ対霊・概念スキルと真名看破スキルにある。 戦闘開始の瞬間から、バッターはアサシンの真名を探り当ててその英霊歴を知ることで先手を取るべく、"ワイド・アングル"による看破を試みていた。 だが、アサシンの第一宝具が、バッターの狙いを崩すべく、真名秘匿の効果を発揮してそれを妨害していた。かの幸災楽禍は、特定の条件下において万能である。 こと騒乱・扇動を引き起こす為ならば……この場合は、バッターの実力を引き出して 新宿 を更なる狂騒に導くに足る存在かどうか見極める為にならば。 不発に終わった兇眼、しかしバッターはその眼光を緩めなかった。否、彼のアイデンティティゆえに、その暴力的な両眼は常に魔貌と共にそこに在ったのだ。 アサシンが最大戦闘力を発揮する姿、Gスーツを纏うガッチャマンへと変じた際に、その愚直なまでの選択が功を奏した。 ガッチャマンとして真っ向から戦う時、アサシンの力は確かに増すが、英霊としての本領を発揮できるとは言い難い。加えて、精神に常時の物とは別の異常を抱えていたのが災いする。 数多の文化を崩壊させた、宇宙をホームグラウンドにしながらも地球の英霊史に刻まれる規格外の道化……それ程の存在が一瞬見せた濁りが、バッターを彼の真名へと辿り着かせた。 真名が明らかになり、敵がガッチャマン……神に近い存在により、生前でありながら魂を加工された"霊"の属性を持つ相手と分かれば、対霊・概念スキルが活きてくる。 磐石のはずの気配遮断スキルは感知効果によって意味を成さず、肉持たぬ霊・魔・概念……優先して浄化すべき存在に対し、サーヴァントとしての霊器は強靭さを増していく。 「バッターさん、ステータスが凄い事になってますよ! 今こそ正義の鉄槌を!」 セリューが歓喜の声を上げる。それに応えるかのように、殺人バットが常時に倍する魔力を帯びた。 あまりにも狭いグラウンドを、バッターが進塁する。命というボールを、いかなる球種で逃げようと打ち果たす為に。 ☆ベルク・カッツェ カッツェもまた、セリューと同じく歓喜に心を震わせていた。 変な女の言うがまま、らしくもないガチバトルを挑んだ目的は達成されつつあった。 ノリの悪い、心の揺るがない、スカした気に食わないワニ野郎ではあるが、このサーヴァントは最高だ。 悪逆の徒であるカッツェは敏感に、バッターから発散される濃厚な『悪意』を感じ取っていた。 本人がどう思っているかまでは知らないが、挙動、言動の全てが暴力によって思いを遂げる外道のオーラを帯びている。 浄化がどうのと言っていたが、カッツェから見ればバッターの願いは破壊・粉砕・滅却。"全てを台無しにする"事に他ならない。 「うおおおおwwwみwwwwなwwwwぎwwwwっwwwwてwwwwwきwwwwwたwwwwwwwwww」 場を盛り上げるために一旦我慢して下げたテンションが再び最高潮に達する。 これこそ、ベルク・カッツェが求めていた展開だ。 未開の猿が踊る様は見ていて楽しいものではあるが、あの美影身に注がれる己の思いを止めるには至らない。 ならば、同じサーヴァント……それも自分と同質の存在から悪意を浴びるという手はどうか。 その試みは見事に成功し、彼の心には再び悪意の灯火が揺らめき始めていた。 「ミィはwwwwミィは元気ですwwwwwwwwww故にダッシュで脱兎wwwwwwwww」 カッツェのGスーツが、残像を残して廊下へ続く扉に駆け出した。 アムネジア・エフェクトを考慮に入れなくとも、サーヴァント以外には目でも追えない疾走。 だがそれを阻むように、マスターからの命令を受けていたと思しき機械少女のサーヴァントが行く手を塞いでいた。 速度を落とす事なく飛び上がる。バッター以外には、未だ気配遮断の効果は継続しているはず。 相手の防御など考慮に入れない、カッツェの全力の飛び蹴りがシャドウラビリスに迫り、同時にバッターが呟いた。 「撃て」 「アアアアアアアアアアア!!!!!!」 ビクン、と痙攣したようにシャドウラビリスの腕が跳ね上がる。 自分に向けられている拳を見てカッツェが身を捩ると同時、シャドウラビリスの肘先から青い蒸気が噴出された。 猛烈な勢いで放たれた攻撃の正体を、空中で反転する視界の端で捉える。その鉄塊は、華奢にも見える前腕だった。 鼻先を掠めるチェーンを、尻尾を変化させた鋭鞭で切り払う。ゴトン、と前腕が床に落ちる音がした。 からくり仕掛けの戦士も、サーヴァントであれば整備は必要ない。魔力さえ供給すれば破損した箇所を補うことはできる。 しかし、機構として霊器に染み付いた前提はある。カッツェとて、NOTEを破壊されれば仮に無限の魔力供給があっても消滅は免れない。 チェーンパンチもまた、線を断たれれば糸を繋ぐまでは本体に戻れないのが道理。 片腕を失ったシャドウラビリスを一蹴しようと回り込む。反応している様子はない。 ロケットパンチが放たれてから2秒半が経過しているが、バッターは急ぐ素振りもなくこちらへ歩いてくるだけ。 カッツェがシャドウラビリスの横面を殴り飛ばすのを阻む要素は、何一つないはずだった。 「ないはずだったーーーーーーwwwwwwwwwwwwwwぐええええーーwwwwwwwwww」 脇腹に鋼の感触が押し当てられていた。Gスーツが凹むほどの衝撃がカッツェを横転させる。 もんどりうったカッツェの目に映ったのは、空中で何の助けもなく浮かぶシャビリスの前腕。 ありえない光景だが、未だカッツェの喜悦を崩すには至らない。 「どういうことなのwww」 「餓えた鉄の豚には、過ぎた"エサ"を与えただけの事だ」 倒れ伏すカッツェに向けてか、シャドウラビリスに向けてか、バッターが唸った。 見れば彼女の肘先、ロケットパンチの射出口から光が走っている。 その光には、カッツェも見覚えがあった。バッターが侍らせていた光球の輝きに酷似しているではないか。 聖霊を思わせる威光が、彼女とその腕を繋いでいた。本来の機能を失ったチェーンは一瞬で錆びて、赤砂へと成り果てた。 耳を澄ませば、微かに歌劇が聞こえる気がした。光に乗って、迷宮に封じられた牛頭の王子の嘆きが轟いている。 アームがシャドウラビリスの頭上まで浮遊し、掲げられた肘先に再接続される。 身切れた箇所から漏れていた光は……聖霊の具現たる白き光は彼女の左目から一握だけ噴出して消えた。 右目には、黄色い破壊衝動の光が変わらず宿っているが、光を失った左目は正気の色を取り戻している。 機械少女のマスターが息を呑む気配がした。カッツェは、バッターの言葉の意味するところを理解した。 「なるwwwwサーヴァントをアップデートしたってわけですかwwwwwwww」 アサシンの女から得たバッターたちの情報と、実際に戦闘に入った印象を照らし合わせ、疑問に思っていた点があった。 それは、『あまりにも、無難に戦闘が進みすぎる。』―――という事。 バーサーカー同士が同盟を組むというのが、まず異常な事態なのだ。 だというのに互いに足を引っ張り合うこともなく、各々の役割を守っている。 異常ながら理性を残すバッターはともかく、シャドウラビリスにはマスターの細かい指示を受けることなど出来そうには見えない。 同盟を組んだ後、バッターが狂犬の手綱を握る為に何らかの手段を講じたのではないか、とは薄々勘付いていた。 気弱そうなマスターに令呪を使わせた、といった所ではないかと予想していたが、実体は想像を超えて驚嘆に値する。 カッツェにはあの光体の本質を推し量る程の知識はないが、それが自律している事は挙動から読み取れていた。 あのセベクの如き悪鬼は、知性を持つ霊体を仲間の霊器に直接組み込む事で、暴走の危険を軽減させたのだ。 英霊の矜持を理解する存在であれば忌避するであろう暴挙を平然と行うバッターは、やはり聖者などではない。 "自分と同じ存在"に相違あるまい、とカッツェは得心する。 「そこの可哀想なバーサーカーちゃんには、個人的に同情を禁じ得ないwwwww君には負けたよwwwwwwww許してwwwwww」 「姿は見えないけど、どうせ神妙な顔なんてしてないんでしょう! 惑わされずに正義執行してください、シャドウラビリスさん!」 「そ、それでお願いする……ます……」 「EEEEEE……εεεεァァァァ!!!!! 死……んド……きナ……!」 「ええええwww負けを認めた相手に攻撃とかwwww死体蹴りかwwwwww」 いやこれは第二ラウンドだ、とばかりに大斧を顕現させ、躊躇なく振り下ろすシャドウラビリス。 だが、その攻撃は地面を穿つ。カッツェはこの戦闘が始まってから一度も動揺していない。 全ては目的を―――バッターの悪意を堪能し、自分を取り戻すという目的を達成する為のお遊び。 幸災楽禍の加護が、『カッツェ自身の悪意』という騒乱に対する最大の火種を大火に導く為、その真価を発揮する。 極限まで上昇したカッツェの敏捷値は、強化されたバッターとシャビリスのそれをゆうに凌駕した。 バッターの目の前に、玩弄のGスーツが超高速で移動していた。 シャドウラビリスの攻撃の余波に対応しようとしていたバッターが、初めて虚を突かれる。 この隙を生む事だけが、カッツェの狙いであった。 バッターの悪意をより深く理解し、あの美影身の痕跡を完全に消すのだ。 「ミィは本当反省ぽんwwwwwww熱いベーゼで仲直りんwwwwwww」 Gスーツを脱ぎ捨て、バッターの厚い胸板にしな垂れかかる。 粘膜接触によってこそ相手の内面を深層まで理解できるという己が持論に従って、カッツェは鰐の下顎に唇を這わせた。 不浄不遜の接吻が、女三人の視線を引き付ける。理解不能な感情が飛び交う中、カッツェとバッターだけが、共有した"それ"を見ていた。 ――――――――――――――――――――――――――― スイッチは OFF になった。 ☆バッター 「―――"見たな"」 問いに、答えは返されなかった。 土石流のように流れる嘔吐物を眺める。 自分と同じ姿になった道化が垂れ流す、後悔と絶望の混合物。 道化は、『信じられない』といった目つきで、こちらをただ見ていた。 不快な哄笑が聞こえなくなったのはいいが、全く不愉快だ。 「両目とも、恐怖で満たされた目だ」 かって、同じ言葉を吐き捨てた。その時と同じ思いを抱いている。 いや……自分自身の眼は、あの子のそれよりも……。詮無き事だ。 自分を模した"迫り来る災害"が、こちらから距離を取ろうとしている。 一歩、進む。二歩、退がられる。一歩、進む。二歩、退がられる。 鏡写しの存在は、必然的に離れていく。己の全体像が見える。 「ミィは……てめえは……」 「既に、"通り過ぎた災害"だ」 搾り出すように呟く道化に、繋がりを感じる。 目の前の存在は、自分の全てを知った。 あるいは未来永劫現れることのない、バッターという存在の真なる理解者なのかもしれない。 それでも、浄化は成されなければならない。神聖なる任務を果たさねばならない。 「『Demented Purificatory Incarnation ――――』」 バットを、脇に放る。 好んで使う武器ではある。だが、浄化は血塗られた両手の爪で行うべきだろう。 バーサーカーのサーヴァントとして召喚されたが故の、縛りのようなものだ。 迷い子に預けたエプシロン以外のアドオン球体を出現させる。 際限なく輝きを増す一対の父と子、アルファとオメガ。 セリューが、指示通りに退避を始めた。間に合えばいいのだが。 目の前の存在に歩み寄る。もはや、逃げる術はない。逃がす意思もない。 爪が届く位置まで来た。様子を窺う鉄の女の廃熱音だけが部屋に響く。 鰐の顔を天に向ける。唾吐く事なく、ただ牙のみを見せ付ける。 「―――― 『The Batter』」 自身の真名と共に、宝具の真名を解放する。不要な動作こそが、必要な運命を手繰り寄せるのだ。 この地を浄化させるという意思が世界を包む。楔となる存在を抹消する事で、人理を天意で塗り潰すのだ。 周囲が白く染まっていく。ベルク・カッツェが 新宿 に置いて占める何十分の一かを、白い世界に変えるのだ。 かって、ガーディアンを倒した時と同じように広がる光。"何か"を切るように、爪を振り下ろす。 しかし、その結果は。かってのそれとは、別の物になった。 ☆セリュー・ユビキタス 『俺はバーサーカーだ。お前というマスターを護るのは向いていない』 バッターの言葉を思い出しながら、セリューは全力疾走で薬局の廊下を駆ける。 光球……バッター本人にも正体が分からない、"象徴する何か"がその光度を激しく増したのは、合図だった。 あの合図を見たら、どのような状況であれセリューはバッターから迅速に距離を取らなければならない。 世界に対する管理者……この 新宿 という閉鎖世界においては、自分達に対し討伐令を出した主催者か。 それらに致死の一撃を加えることで、バッターという存在"そのもの"である宝具は発動する。 バッターの言う浄化とは、具体的にはその宝具の発動によって世界を悪のない場所へと変えることを指すらしい。 生前にガーディアン、という存在を倒した時にはその支配下にあったエリアが一度に浄化されたという。 そこまで語ったバッターが、思い至った仮説があった。 契約者の鍵を見るまでもなく、サーヴァントの召喚に主催者の助力があったのは明白だ。 セリューや番場に、魔術的な知識は一切ない。魔術師としての素養も最低ライン上であろう。 『サーヴァントとして召喚された英霊に何か仕掛けをしているかも知れないし……相争わせて最後の一人を決めるという 聖杯戦争の形式からして、サーヴァントが脱落する事に彼奴等の狙いが隠されている可能性は高い』 故にサーヴァントはガーディアンと同じ特性を持ち、管理者の権能の一旦を分け与えられているのではないか。 バッターの"浄化"によってサーヴァントを倒した時、この 新宿 のエリアの一部が浄化できるのではないか。 それを続けていけば、主催者に接触する機会も生まれるのではないか。聴くセリューは、相槌を打つのが精一杯だった。 セリューにとってはまったく畑違いの事というのもあり、とりあえず記憶だけして理解は後回しにしたのだが……。 背後に迫る神聖な気配を感じて、頭ではなく心で理解できた。バッターの推測は正しかったようだ。 「あれが、バッターさんのいう浄化された世界! 凄い!」 善も悪もない、等と謙遜していたが、セリューが背中から感じる新世界の鼓動はまさしく正義の為のもの。 悪の念が全くないあの世界には、きっと正しさが満ち溢れることだろう。しかし、今は見惚れている暇はない。 浄化に巻き込まれていく薬局の壁や床は一瞬で色を失い、"死"を連想させる。 飛び回る蝿も同様で、地に落ちて本来の色を失ったその姿からは意思の力が希薄に感じる。 魂が抜けかけている、とでもいうのか。目障りで不潔な蝿も、魂魄だけとなれば嫌悪感もなくなる。 人間もああなるとすれば少し物悲しくはあるが、悪が蔓延る現状の世界よりは遥かにマシというものだろう。 正義の意思を持つ罪なき者ならば、たとえ肉体を失っても健全な魂だけが住む社会を作り上げられると、セリューは信じていた。 とはいえ、今自分がああなるわけにはいかない。胸に燃える正義の炎を静めるとすれば、バッターと共に浄化を成し遂げた後だ。 「くっ……!」 だが、セリューの足取りは平時より重い。普段なら20秒もあれば抜けられる距離を、1分かけても半分しか移動できていない。 戦闘の余波で廊下が歪んで足場が悪く、さらに番場の手を引いているという事もあるが、バッターに供給する魔力の消費が主な原因だった。 バッター自身が持つ魔力が豊富な為、これまで感じたことの無かった消耗。 宝具が効果を発揮したからというだけでなく、シャドウラビリスと融合した光球に魔力が流れる感覚もある。 理性を僅かに取り戻したとはいえ、遠慮も躊躇もなく暴れるのが彼女だ。 アドオン球体の力を憚ることなく振るい、浪費しているあおりがバッターのマスターであるセリューに来ているのだろう。 バッターが浄化に全霊を傾けている今になって初めて感じたということは、普段は彼がこの消耗を肩代わりしているのか。 そう思うと、突き放したような態度を取る事もある己のサーヴァントへの信頼が増し……申し訳なくも感じる。 「あっ!?」 「セ、セリューさん」 足を掴まれたような感覚と共に、セリューが転倒した。 足元に目をやるが、躓くようなものは何も無い。断続する眩暈のせいか、と結論付けて立ち上がる。 あと十歩も駆ければ、薬局からは抜けられるだろう。だが、浄化がどこまで広がるかも分からない。 太ももに活を入れようとして、薬局から抜け出る前に浄化に追いつかれると悟る。 番場を見捨てて一人で逃げればそれを先送りには出来るだろうが、根本的な解決にならない。 一度保護すると決めた相手を切り捨てるなど、正当な理由も無く出来るセリューではなかった。 せめてと番場を抱き寄せ、自分の後ろに回らせる。浄化の見えない壁と対峙しながら、セリューの心に様々な思いが去来していた。 事を成せなかった無念もある、浄化を受ける不安もある。しかし何よりも、自分を信頼してくれたバッターの期待に応えられないのが悲しい。 「―――――ッ!?」 頬を伝う涙が、ぴちゃんと肌の上を跳ねた。 浄化の衝撃ではない……暖かい手が、愛しむようにセリューの耳を、額を、髪を撫でている。 視界に映るその手は、背後に居るはずの番場の物ではない。 困惑するセリューの耳に、鈴を転がすような美声が届いた。 「……やはり、手入れが足りませんね」 言葉の意味を考える間もなく、何かに引っ張られるような感覚がセリューを襲う。 番場の悲鳴が聞こえる、と気付いた直後、視界は一変していた。 屋外……薬局の反対側の歩道に、セリューはいた。膝の上では番場が目を回している。 浄化は薬局を丸々覆ったところで止まっていた。諦めた自分を恥じるセリューの背後から声がした。 「貴女のサーヴァントの力……なのでしょうが、凄まじい物ですね」 聖杯戦争の関係者―――そう気付き、弾かれるように向きなおる。 視界に捉えた女性は、御伽噺から抜け出したような美しさのサーヴァント……またもやアサシンだった。 柔らかい笑顔からは、敵意は感じられない。だが、油断は禁物だ。 バッターも、討伐令を出された自分達を狙う主従に注意しろと言っていた。 警戒の視線を飛ばすセリューに構わず、女性は更なる言葉をかけてくる。 「そう身構えなくてもいいでしょう。私は貴女の首を取りにきたわけではありません」 「その言葉を信じる根拠がどこにある」 「もう見せていますよ」 女アサシンが、白磁のような右手人指し指を唇に当ててセリューに示す。 指先には水滴が乗っていた。右手の中指に填められた指輪に、見覚えがある。 「私の能力で、貴女の窮地をお助けさせていただきました」 「自分の手で仕留めなければ、討伐報酬を得られないと思っての行動でないとは言い切れない」 「疑り深いですね」 じりじりと後ずさるセリューをにこやかに見つめながら、女アサシンは言葉を続けた。 「私がそのつもりで労力を割いたのなら、悠長に喋って好機を逃すような真似はしませんよ……ほら」 「!」 女アサシンが指差した先……薬局の扉が、巨大な腕に内側から破られる。 地面を掴み、這いずるように建物を破壊しながら現れたのは、上半身だけの雄牛の怪物だった。 両肩には、バッターとシャドウラビリスが騎乗している。バッターはもちろん、シャドウラビリスも浄化の影響を受けていない。 アドオン球体を取り込んだ恩恵か、と番場に安堵するよう伝えようとしたセリューの傍らに、いつの間にか近寄って来た女アサシンがいた。 番場の頭を撫でるその姿からは、悪意は感じられない。セリューは、この女アサシンを信用することにした。 雄牛が消え、バッターが猛然とこちらに駆け寄ってくる。問答無用で振り下ろしたバットは、しかし女アサシンに当たることはない。 その一撃が地面に向けられていたにも関わらず、アスファルトに破壊がもたらされていない様には、見覚えがあった。 「わかったわかったwwwwwもう本当にミィの負けでいいなりwwwwwwwwww」 嘲笑が遠ざかっていく。セリューが息を呑み、バッターを見遣る。 あの状況から、赤髪のアサシンは浄化から逃げ仰せたというのか。 「無事だったか、セリュー」 「は、はい。こちらのアサシンさんに助けられて……それより、浄化は発動してるのに何故あっちのアサシンは!?」 「霊魂を七割ほど削ったところで、奴が受肉している事がわかった。これは、サーヴァントとしてはありえない。ヒトの原型、アダム・カドモンに近い存在だ」 霊核の粉砕を消滅の目安として破壊を進めていたバッターの疑念に乗じ、本来在るべき霊核を持たないアサシンは宝具を展開、逃げおおせたという。 女アサシンに険しい視線を配りながらも、バッターはセリューにこれは重要だぞ、とばかりに言って聞かせる。 「浄化の範囲も異常に狭すぎる。奴は俺たちとは違い、聖杯戦争の主催者に召喚された存在ではないかもしれない」 「やはり……」 女アサシンの呟きに、バッターが眼光を強める。 仲裁しようと口を開きかけるセリューだが、ここは思いとどまった。 たまたま通りかかってセリューの危機を救った、などという事はありえない。 この女アサシンも、先の騒乱に一枚噛んでいる可能性は高い。 バッターもまた、その言質を取ってから対応を決めたいようで、相手の言葉を促すように首を鳴らした。 「私がここに来たのは、メフィスト病院を調べる為ですが……貴女方の内偵も、進めさせていただいておりました」 「アサシンならば妥当な動きだ。俺たちの情報を探り、何を企んだ」 「NPCを大量に殺しているという布告が真実かどうか確かめ、悪党の類なら誅罰を与えようと考えていました」 「それは誤解です! こんなおかしな討伐令を出す連中に騙されないでください! 私達は正義です!」 セリューが純粋な瞳で訴える。女アサシンは「わかっていますよ」と短く告げて、バッターを、そして無色に変貌した薬局を見た。 「真っ当な英霊ならば、褒章をぶら下げられたからといって討たれる謂れなき者を追ったりはしません」 「俺たちに討たれる謂れがない、と判断した理由があるのか」 「貴女たちが殺めたNPC、今朝の時点では121名、現時点では123名でしょうか? それら全てが、悪漢やその庇護を受けた者や……悪魔の類でしたからね」 女アサシンがバラバラ、とバッチのような物を落とす。ヤクザの代紋……全てセリューたちが潰してきた組のものだった。 聖杯戦争が始まって半日の間に起きた戦闘で討ったNPCまで把握されているのには、セリューも驚いた。 ここまで調べがついているのなら、自分達が正義の味方だということは誰にとっても明白だろう、と頷くセリュー。 だが、バッターはそう単純でもない。完全に動向を把握されている手段を置いても、目の前の女を信用できないと直感していた。 「セリューを助けたのは何故だ」 「打算ですよ。正義の使徒たる彼女とその仲間たちなら、私の懸念を祓う力になってくれるのではないか、と思いまして」 「一体どんなお悩みが? 主催者を倒すなら、是非……」 「それ以前の問題です。あのアサシン……ベルク・カッツェ。あの英霊は、本来サーヴァントとして魔術師に召喚できるようなものではありません」 それについては、バッターも同感だった。アレを御せるマスターなどいるはずもない。 自分の意思、または英霊より上位の存在に招かれなければ、召喚に応じるはずもないだろう。 聖杯という願望器でもなければ不可能であろう受肉を果たしていることから、後者の可能性が高い。 それが主催者の手によるものでないとすれば、事態はあまり面白くない。 「星亙りの災禍を召喚した者に、心当たりでもあるのか」 「御名答です。あれを召喚した者はメフィスト病院にいます……召喚した時刻は、今日の13時過ぎ。場所は、同じくメフィスト病院」 「えっ!? さっき潜入して捜査したけど、そんな気配は」 「召喚の瞬間、あの病院内に居なければ……そして、サーヴァントでなければ、察知は困難だったでしょう。しかも、カッツェ以外にも数体が召喚されているようです」 バッターが、カッツェの無意味な言葉の中に『病院』に寄った、というフレーズがあったと思い出す。 「街に蔓延る汚鬼や羅刹の根源ではなかったが、やはり唯の道楽でもなかったというわけか」 「令呪の縛りがないサーヴァントの厄介さは、それらの比ではないでしょう。このままでは、この街は魔界の有様になりかねません」 「バッターさん! いますぐメフィスト病院を攻めましょう!」 「落ち着いてください、セリューさん。まだ話は終わっていません」 女アサシンはハンドバッグから一枚の紙を取り出し、セリューに手渡した。 新宿 の地図であり、多数の黒点と少数の赤点が書き込まれている。 「この地図には、先ほど話題に出た悪魔の出現ポイントと、その周辺を探索して私がサーヴァントの気配を感じた位置を記しています」 「こんなに沢山……」 「貴女方を見つけたのと同じ能力での調査ですので、信憑性はあると思いますよ。……もうお解かりでしょうが、私の懸念とはこの無軌道な連中が 聖杯戦争そのものを破綻させ、NPCとはいえ無辜の民が血の海に沈むことです。それだけは、なんとしても止めたい」 「お前が惨劇を止めるための熱意を持ち合わせているようには見えないが」 「恥ずかしながら、若さを失って青春の情熱を保てなかった人間でして」 「いえ、まだまだお若いですよアサシンさん! 一緒に悪党を倒しましょう!」 「そうですね。でも私は、ベルク・カッツェ以外の病院産サーヴァントの足取りを追わなければならないので一旦……」 「ならば、俺たちはお前が調べた場所に赴こう。協力を感謝する」 だが、お前はここで浄化する―――その言葉を呑み込んで、バッターは女アサシンに向かって歩を進めた。 対霊・概念スキルは反応していない。このサーヴァントは、汚された魂の徒ではない。だが、度し難い毒婦だ。 バッターはこの女を浄化せねばならぬと強く直感していた。セリューを納得させる手間を考慮しても、今消せるならば消すべき相手だと。 迫るバッターの足を、女アサシンが止める。たった二言の呟きで。 ........ 「ああ、そうだ。バッターさん」 セリューも口にせず、本人も名乗らなかった真名を事も無げに呼ぶ、最初の呟き。 ................... 「あなたの家族が来ていますよ」 そして最後の呟きは、バッターの思考を一瞬止めた。いかなる驚愕にも、いかなる疑念にも揺るがなかった、 浄化者 の思考がコンマ1秒にも満たぬ間凍りつく。 バットに手を伸ばした次の瞬間、女アサシンは消え遂せていた。霊体化しての移動、追えばあるいは捕らえられるかもしれないが、リスクの方が大きい。 訝しむセリューを「行くぞ」と促して、バッターは一瞬の凍結を過去の物とした。あの言葉が想起させた"それ"は、もう終わっていることだ。OFFになった結末以前の話だ。 自分の内面を完全に模したベルク・カッツェですら、"それ"に辿りつく事はない、人理から抹消された点に過ぎない。観測できるのは、同じく人理から消えた者のみ。 ほとんどの英霊は親、あるいは妻、そして子を持つヒトの大系に属する。天や地の属性にも、無から生まれた存在はそう多くない。 女アサシンは、大概の英霊が共通して持つ過去を揺さぶり、察した危険を脱しただけだ。バッターは至極冷静に結論付け、歩き出すのであった。 【四谷、信濃町(メフィスト病院周辺、薬局前)/1日目 午後1:45分】 【セリュー・ユビキタス@アカメが斬る!】 [状態]魔力消費(中) [令呪]残り三画 [契約者の鍵]有 [装備]この世界の価値観にあった服装(警備隊時代の服は別にしまってある) [道具]トンファーガン、体内に仕込まれた銃 免許証×20 やくざの匕首 携帯電話 ピティ・フレデリカが適当に作った地図 メフィスト病院の贈答品(煎餅) [所持金]素寒貧 [思考・状況] 基本行動方針:悪は死ね 1.正義を成す 2.悪は死ね 3.バッターに従う 4.番場さんを痛めつけた主従……悪ですね間違いない!! 5.メフィスト病院……これも悪ですね!! [備考] 遠坂凛を許し難い悪だと認識しました ソニックブームを殺さなければならないと認識しました 女アサシン(ピティ・フレデリカ)の姿形を認識しました 主催者を悪だと認識しました 自分達に討伐令が下されたのは理不尽だと憤っています バッターの理想に強い同調を示しております 病院施設に逗留中と自称する謎の男性から、 新宿 の裏情報などを得ています 西大久保二丁目の路地裏の一角に悪魔化が解除された少年(トウコツ)の死体が放置されています 上記周辺に、戦闘による騒音が発生しました メフィスト病院周辺の薬局が浄化され、倒壊しました 番場真昼/真野と同盟を組みました 【バーサーカー(バッター)@OFF】 [状態]健康 魔力消費(中) [装備]野球帽、野球のユニフォーム [道具] [所持金]マスターに依存 [思考・状況] 基本行動方針:世界の浄化 1.主催者の抹殺 2.立ちはだかる者には浄化を [備考] 主催者は絶対に殺すと意気込んでいます セリューを逮捕しようとした警察を相当数殺害したようです 新宿に魔物をバラまいているサーヴァントとマスターがいると認識しています 自身の対霊・概念スキルでも感知できない存在がいると知りました 女アサシン(ピティ・フレデリカ)を嫌悪しています 『メフィスト病院』内でサーヴァントが召喚された事実を確認しました。 ………………………………………… 【番場真昼/真夜@悪魔のリドル】 [状態]健康 [令呪]残り零画 [契約者の鍵]無 [装備]学校の制服 [道具]聖遺物(煎餅) [所持金]学生相応のそれ [思考・状況] 基本行動方針:真昼の幸せを守る。 1. 新宿 からの脱出 [備考] ウェザー・リポートがセイバー(シャドームーン)のマスターであると認識しました 本戦開始の告知を聞いていませんが、セリューたちが討伐令下にあることは知りました 拠点は歌舞伎町・戸山方面住宅街。昼間は真昼の人格が周辺の高校に通っています セリュー&バーサーカー(バッター)の主従と同盟を結びました 【シャドウラビリス@ペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ】 [状態]健康、魔力消費(小)、Add-On(ε)により霊器強化(若干の理性獲得、(ε)のアビリティの一部を使用可能、チェーンナックルが無線パンチに変化、ステータス向上) 令呪による命令【真昼を守れ】【真昼を危険に近づけるな】【回復のみに専念せよ】(回復が終了した為事実上消滅) [装備]スラッシュアックス Add-On(ε) [道具] [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:全参加者及び 新宿 全住人の破壊 1.全てを破壊し、本物になる [備考] セイバー(シャドームーン)と交戦。ウェザーをマスターと認識しました。 メフィストが何者なのかは、未だに推測出来ていません。 理性を獲得し無駄な暴走は控えるようになりましたが、元から破壊願望が強い為根本的な行動は改めません。 ステータスが以下の値に向上 筋力C(A) 耐久C(B) 敏捷C→B(A) 魔力D→B(A) 幸運D→E(E) 宝具B ☆ピティ・フレデリカ 『えー! 師匠はライブ見に来ないのねー? こっちはもう会場に着くのよー』 「ええ。急用が出来てしまって。でも、動画サイトとかで中継しているんでしょう? 活躍、期待していますよ」 『師匠に借りた最新のギターが唸るよ! うおおおお!』 ギィィン、と電話の向こうからけたたましい音響が鳴り響く。 今朝会ったばかりの相手に対するとは思えない馴れ馴れしさ、いやこれは親しみ深さというのか。 ともかく、1NPCの少女のハイテンションぶりに、ピティ・フレデリカは頬を緩めた。 早朝、彼女はメフィスト病院に患者として送り込んだ男の周囲から少しずつ髪の毛を収集、映像を切り替えて内偵を進めていた。 奇病難病の患者を優先して取捨選択し、メフィストが直接診察したという少女に目を付けた矢先の事だった。 見舞い客の中に、自分の知る外見をしたNPCが居た。魔法少女として薫陶を与えた愛弟子、トットポップと瓜二つの少女だった。 自身が英霊となった今、驚くほどのことでもないが、本来の彼女は故人である。B市での騒動の際に、暗殺屋に殺されたのだ。 「私と同じ名前のアイドルもいるとか。よければ、サインでもお願いしておきましょうか」 『オーケーオーケー。弟子として師匠のお願いを聞くのは当然のことだものね』 「では、失礼しますね。宮ちゃんにもよろしく」 電話を切って、嘆息する。当然の事だが、トットポップに似たNPCは魔法少女ではない。外見と性格だけ同じの別人だ。 しかしそれでも、その似姿を見たフレデリカはいてもたってもいられなかった。 マスターが学校に行って一人きりだったという事もあり、リスクは承知の上で家を飛び出し、メフィスト病院の周辺で待ち伏せた。 偶然を装って接触した瞬間は、感極まって言葉も出なかった。フレデリカにとってトットポップは愛弟子の一人、というだけの相手ではない。 彼女の死が、自分を見つめ直して新たなステージへ進む切欠となったのだ。 生前の彼女を、NPCとはいえ生きている彼女と照らし合わせる事であの時の最初の想い……弟子への打算なき愛情を再認識する事が出来た。 それだけでも、 新宿 に来て良かったと言えるだろう。後は、あの時の第二の感情、弟子を殺された怒りを反芻する事が出来れば最高だ。 トットポップのNPCはギターの技量を完璧には再現していないようで、魔法少女として強化された身体機能・感覚機能をフル活用、 更にトットポップとの交流の中で記憶していたギターの奏術を再現する事で、謎の占い師ルック流れギタリストとして心酔を得ることが出来た。 師匠、師匠と呼んでくる可愛らしい姿にうっとりしながらも、彼女が独自に計画していたライブ乱入計画に色々と入れ知恵を行った。 二日前まであのライブに出るアイドルのマネージャーの髪がコレクションの中にあり、ライブ会場の詳細は記憶していた。 不慮の事態でマネージャーが死亡した際の映像を見て、担当アイドルの一人……奇しくも自分と同じ名を持つ少女に興味を持ち、色々と調べていたのが役に立った。 今日のライブも興味深く見物させてもらうつもりだったが、更に楽しみが増えたわけだ。 「……おっと、いけませんね。愉悦ばかりに気を取られず、サーヴァントとしての勤めも果たさなくては」 まずは、カッツェへのフォローだ。水晶玉を取り出しながら、携帯で電話をかける。 バッター達との戦闘の中で散らばったカッツェの毛髪を、セリューを救う際に回収しておいた。 ベルク・カッツェの素性を、その姿を見るだけで看破できたのは、彼の英霊に髪にまつわる逸話があったからだ。 『人の子に髪を切られ、取り込まれた』という逸話が。 しばらくコール音が続き、電話を取ったカッツェは意外と上機嫌だった。怖ろしい英霊だ。 『おいすーwwww』 「御無事でしたか。どうでしたか、件のサーヴァントたちは?」 『最ッッッ高に胸糞悪かったんだけどーwwwwwwwとんでもない奴に嗾けやがって、月夜の晩ばかりじゃねーぞwwwww』 「乱星の魔人、ベルク・カッツェほどの御方の力をお借りして対価を払わない、などとは言いません。これからは背中に怯えて過ごすとします」 『その隙だらけの背中でよく言えたものだな(キメ声)。wwwwwwwwwwwwそのうち見つけて遊びにいっちゃいますよーんwwwww』 心底楽しそうに嘲弄言語を投げかけ、通話を切断したカッツェは、フレデリカの居場所から半キロ程離れたビルの屋上に立っている。 バッターから全力で離脱し、深手を負っているがそれを欠片も匂わせないのは流石というべきか。 水晶玉でカッツェの動向を確認しながら、感心して両手を打つフレデリカは、怯えとは無縁であった。 「さて、こちらは……成る程、メフィスト病院に突撃してもらってもよかったけど……」 セリューに水晶玉のチャンネルを切り替え、バッター達が自分の渡したデタラメな地図に示された地点に向かっている事を確認する。 バッターはフレデリカが自分を利用しようとしている、と気付いたのか、バーサーカーならではの狂気からか、フレデリカを殺そうとしていた。 それを察して虚言で混乱を生じさせて逃走することに成功したフレデリカであったが、バッターたちがこう動く事は予想の範囲内。 彼らは、「目的の為に」「殺す」というシンプルな思考で動いていながら、その目的が他者に理解不能という壊れた歯車のような存在だ。 軌道がシンプルなのだから、多少疑わしい相手からの情報でも一応確認に向かうだろうとフレデリカは予想し、見事的中した。 「聖杯戦争を勝ち抜く為に、自分達を利用しようとしている……くらいの読みでいてくれればいいのですが」 協調という言葉から最も遠い位置にいるバッターとも、物分りがいいようでいつ爆発するか分からないセリューとも、一緒に行動することは避けたい。 あの主従が、件のライブ会場に介入するのは出来れば避けたかった。狂人が相手では、弟子を殺されて怒る正義の魔法少女が絵にならない。 その手の展開の怒りの対象としては分かりやすい悪人がベスト。次点で、悲しくも望まぬ力を与えられた悲劇のヒロインなどもいいだろう。 よって、ライブ会場から露骨過ぎない程度に離れたメフィスト病院や地図上の赤点のポイントに、バッターたちを導いたのだ。 「いくつかは、本当に怪しい場所もありますし……メフィスト病院に至っては、ね……」 フレデリカがベルク・カッツェの存在を感知したのも、メフィスト病院の中に手を伸ばし、髪を回収している瞬間だった。 召喚の瞬間に、病院内にいた感知能力の高いサーヴァント以外には気付きようもない魔力波動。"英霊召喚"。 カッツェと電話越しに交わした会話と、バッターの「受肉していた」という言葉から、マスターに依存しない規格外の存在として召喚されている事が分かる。 仮にあの魔界医師・メフィストがカドモン・サーヴァントを戦力として使うつもりならば、聖杯戦争の趨勢が傾く程度で済む。 だが何か別の目的で彼らを喚んだのならば、想定すら出来ない何かが起こる……ならば、同じく想定できない要素をぶつけてみたかったのだが。 「やはり、黒幕より正義の魔法少女を目指すべき、という天啓でしょうか」 思い通りにいかない状況に、妙な理屈を当てはめて頬を染めるフレデリカであった。 【四谷、信濃町方面/須賀町/1日目 午後1:45分】 【アサシン(ピティ・フレデリカ)@魔法少女育成計画】 [状態]健康 [装備]魔法の水晶玉、NPCの髪の毛×6、北上の髪の毛、セリュー・ユビキタスの髪の毛、番場真昼/真夜の髪の毛、ベルク・カッツェの髪の毛 [道具]NPCの髪の毛を集めたアルバム、北上の髪の毛予備十数本、セリューの髪の毛予備一本、ベルク・カッツェの髪の毛予備一本、契約者の鍵 [思考・状況] 基本行動方針:北上の願いを肯定、聖杯を渡してあげたい 0.北上の周囲を警戒。なにかあれば北上を引き戻す。 1.PM2:00に行われる、新国立競技場のコンサートを何らかの方法で観る。 2.メフィスト病院に最大限の警戒。 3.NPC・参加者問わず髪の毛を収集し、情報収集の幅を広げる。 [備考] セリュー・ユビキタス&バーサーカー(バッター)を確認しました。 番場真昼&バーサーカー(シャドウラビリス)を確認しました。 赤のアサシン(ベルク・カッツェ)を確認しました。 予選期間中に起こった事件のうち、NPCが認知している事件は全て網羅してあります。 メフィストの噂(医術・美貌)をかなり詳細に把握しています。同時に彼を『要警戒対象』であると判断しています。 髪の魅力には耐え切れないと確信しているので、視界に入れないよう努力します。 『メフィスト病院』内の重篤患者(NPC)の髪の毛を入手し、内偵を進めています。 『メフィスト病院』内でサーヴァントが召喚された事実を確認しました。 ☆ベルク・カッツェ 「き……き……き……キターーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!wwwwwwwwwwwwww」 交差点で、突如中年男性が雄叫びを上げる。 動揺する周囲の人間に、男性は見境なく殴りかかる。 押し倒した老人の顔面を全力で殴打する男性の拳からは、骨が露出している。 動かなくなった老人を見て正義感に目覚めた若者が横合いから中年の男に蹴りを入れる。 次の瞬間、青年の脇から軽自動車が突っ込んだ。 信号を無視して人を跳ね飛ばした車は、ブレーキも踏まずに対向車線に飛び出す。 正面衝突した高級車からは近日の緊張から過剰になっているのが見て取れるSPが飛び出し、銃を抜いて軽自動車を包囲する。 銃声が鳴り響く。高級車の周りに陣取り、守りを固めていたSPの一人が、事もあろうに警護すべき車両の中に発砲していた。 「いや~~~~やっぱり好きなんすね~~~~こういうのが~~~~」 その場で最も目立つ長身でありながら、誰からも視線を浴びていない赤髪のサーヴァント、ベルク・カッツェ。 怒号と悲鳴が飛び交う地獄の光景をただただ楽しむその態度は、平時のカッツェのものであった。 「あのワニ野郎wwwwケダモノだけに空っぽの中身だったけどこうなるとありがたいわ~~wwwwwwwwww」 バッターの内面。通り過ぎた災害、と自称した、既に終わってしまっているそれは、カッツェに多大な驚愕と、倍する恩恵を齎した。 白い、白い世界。抑止力も及ばない、万物の営みが終息した、真の意味での原風景。 それを、バッターの心象を通して視たカッツェの心からは、メフィストへの恋の呪縛は消え去っていた。 もし再度メフィストの魔貌を目にしても、一度受けた屈辱を経験値として今度は受け流せるだろう。 宝具の力も、数分前の非ではなく高まっている。消滅を危ぶむほど著しく傷付いた霊器も、強く躍動を始めていた。 「んでんでんでんでーーーーwwwwwwwwwwwwwwwww自分らしくで行くにゃんwwwwwwwwwwwwww」 狂騒のサーヴァントは、 新宿 に混沌を撒き散らす。 ……何者かの目論見通りに、己の意思で以て。 【歌舞伎町、戸山方面/1日目 午後1:45分】 【アサシン(ベルク・カッツェ)@ガッチャマンクラウズ】 [状態]実体化、肉体損傷(中)、霊器損傷(中)、魔力消費(大) [装備] [道具] 携帯電話 [所持金]貰ってない [思考・状況]真っ赤な真っ赤な血がみたぁい! 基本行動方針: 1.血を見たい、闘争を見たい、 新宿 を越えて世界を滅茶苦茶にしたい 2.ルイルイ(ルイ・サイファー)に興味 3.バッターに苦手意識 [備考] 現在 新宿 の街のあちこちでNPCの悪意を煽り、惨事を引き起こしています。 時系列順 Back 魔胎都市〈新宿〉 Next シャドームーン〈新宿〉に翔ける 投下順 Back 復習の時間 Next 一人女子会 ←Back Character name Next→ 22 未だ舞台に上がらぬ少女たち 北上 アサシン(ピティ・フレデリカ) 38 仮面忍法帖 セリュー・ユビキタス 59 The proof of the pudding is in the eating バーサーカー(バッター) 38 仮面忍法帖 番場真昼/真夜 バーサーカー(シャドウラビリス) 33 黙示録都市<新宿> 赤のアサシン 48 Cinderella Cage
https://w.atwiki.jp/vocaloidchly/pages/6567.html
作詞:river 作曲:river 編曲:river 歌:初音ミク 翻譯:yanao 基於相互尊重,請取用翻譯者不要改動我的翻譯,感謝 love 如果你可以的話 我們可以交往嗎 突然被這麼問 該怎麼辦才好呢? love love love 我不懂啊 突然啊你 握住了我的雙手 雖然你說得很小聲 但真的只要有愛就沒問題了? love love love 我不懂啊 低垂著的笑臉 突然沉默了下來 在那之後我啊 該怎麼辦才好呢? love love love 我不懂啊 向著你的側臉 伸出了雙手 雖然問了好幾次 但真的只要有愛就沒問題了?
https://w.atwiki.jp/the_breakers/pages/70.html
01.BREAKERS STOMP! 02.Da Doo Ron Ron (The Crystals) 03.涙のCOOL DANCING 04.悲しきNO NO BOY 05.悲しみあふれでて 06.屋上の落伍者 07.ダイヤルを廻すだけでいいのに 08.NOT SO GOOD 09.アンダルシアに憧れて 10.Beautiful Delilah(Chuck Berry) 11.Loudy Miss Clowdy (Lloyd Price) 12.Boom Boom (John Lee Hooker) 13.Hi-Heel Sneakers (Tommy Tucker) 14.Fortune Teller (Cyril Neville) 15.I Can Tell (Rory Storm And The Hurricanes) 16.Bring It On Home To Me(Sam Cooke) 17.Everybody Loves A Lover (Doris Day) 18.BEATにしびれて 19.Peanut Butter (The Marathons) 20.二人の合い言葉 このライブにておっちゃんが脱退することを告知する。正確には84年2月に行われた。
https://w.atwiki.jp/city_blues/pages/164.html
【OP、登場話】 No. タイトル 登場人物 場所 作者 12 伊織順平&ライダー 伊織順平&ライダー(大杉栄光) - ◆GO82qGZUNE 15 荒垣真次郎&アサシン 荒垣真次郎&アサシン(イリュージョンNo.17{イル}) - ◆GO82qGZUNE 21 ザ・ヒーロー&バーサーカー ザ・ヒーロー&バーサーカー(クリストファー・ヴァルゼライド) - ◆GO82qGZUNE 【本編】 No. タイトル 登場人物 場所 時刻 作者 01 二人の少年 伊織順平&ライダー(大杉栄光) 歌舞伎町・戸山方面(戸山住宅街、一般住宅の一室) AM1 00前後 ◆GO82qGZUNE 09 終わらない英雄譚 ザ・ヒーロー、バーサーカー(クリストファー・ヴァルゼライド) 歌舞伎町・戸山方面(歌舞伎町一丁目) AM0 05 ◆GO82qGZUNE 13 DoomsDay 桜咲刹那&ランサー(高城絶斗)ザ・ヒーロー&バーサーカー(クリストファー・ヴァルゼライド)睦月&【EX】ビースト(ケルベロス) ザ・ヒーロー&バーサーカー(クリストファー・ヴァルゼライド)→早稲田、神楽坂方面(早稲田鶴巻町・住宅街)睦月&【EX】ビースト(ケルベロス)→早稲田、神楽坂方面(山吹町・睦月の家) AM8 00 ◆GO82qGZUNE 19 心より影来たりて 荒垣真次郎&アサシン(イル) 早稲田・神楽坂方面(神楽坂一等地、元遠坂邸の近く) AM2:00 ◆GO82qGZUNE 29 軋む街 伊織順平&ライダー(大杉栄光) 伊織順平→四ツ谷、信濃町方面(内藤町・新宿高校)大杉栄光→市ヶ谷、河田町方面(河田町・あけぼのばし通り) 正午 ◆GO82qGZUNE 32 開戦の朝 荒垣真次郎&アサシン(イル) 落合方面(聖セラフィム孤児院) AM7:00 ◆GO82qGZUNE
https://w.atwiki.jp/city_blues/pages/27.html
Case1:区内某商社に通う商社マン、加藤俊也の場合 加藤俊也は率直に言って、相当に出来の悪い営業マンだった。顔が悪い上に口下手で、その上性根も根暗なそれ。とどめに、営業の業績も、社内で最低と来ている。 上司の心証はもとより、同僚の心証も頗る悪く、給湯室に足を運べば女性従業員が陰口に華を咲かせる代表の社員だった。 次の人事異動の時には窓際部署に配置される事が約束されているような男。自主退職を、誰よりも望まれる男。 それが、某商社の従業員が、加藤俊也と言う男に抱いていたイメージであった。 ――それが、ある日を境に、別人になっていたのである。 どもりがちだった口調からはどもりが消えてなくなり、性格も身体の中身を全て変えたように明るいそれに変わり。 顔の悪さだけは流石に変え難かったが、服装と髪型を清潔なそれに変えるだけで、大分見違えるようになった。 だが一番変わったのは、外見ではない。その成績が百八十度転換したのだ。 加藤はものの三日間で、社内で一番優秀な営業マンが月に成立させて来る商談契約の数と同じ数の契約を取り付けたのである。 超人的を通り越して、最早悪魔的な営業手腕であると言わざるを得ない。社内の誰かが言った。加藤は悪魔と契約したのではないかと。 加藤俊也はたった二日で、それまでの自分のイメージの払拭に成功した。 コミュ症の無能と言うイメージが、一転。口達者で明るくて、その上に成績も良い。忽ち彼は、社内でも一目置かれる出世頭の一人へと躍り出た。 加藤は一昨日、極めて大口の商談契約を取り付ける事が出来た。 その契約先との商談を成立させる為、様々なライバル会社が接待をしたり袖の下を送ったりしていた。 加藤の通う商社は、その接待合戦に出遅れた。今更接待をした所で、最早時間の無駄だろうと社の幹部達も諦めていたのだ。 それなのに彼は、商談を成立させて来たのだ。接待もしていなければ袖の下もなく、商談を成立させた加藤を、社は英雄だと称賛した。その営業手腕を魔法のようだと褒め称えた。 そしてそれが、加藤俊也の最期の契約となった。 商談を成立させた後、加藤は何を思ったのか――自分の営業手腕に過度の自信を抱いたのか 彼は歌舞伎町の暴力団事務所に足を運び、営業を開始し、カチコミか何かかと勘違いした構成員のリンチを受け重傷を負った。 路上にほっぽりだされた加藤は、通行人の通報を受け、その後病院へと搬送された。 頭蓋骨陥没、全身の複雑骨折、神経断裂、脳挫傷。特に大脳に致命的なダメージを負ったという。 加藤が今後言語障害と全身マヒと付き合って行かねばならないと言うのは、彼を診断した医師の談であった。 Case2:区内某大学に通う学生、柿木健介の場合 一言で言うのならば柿木健介は、女と縁のない学生だった。つまり、童貞だ。 女っ気がまるでなかった高校までの生活。柿木は自分の人生は大学に入学した時に変わるのだと本気で信じた。 だから高校二年から本気で受験勉強をし、その甲斐あって、見事難関私立への現役入学に彼は成功した これで自分の大学のネームバリューにつられて、女が寄って来ると、入学前に本当に夢想した。 だが、モテない。あれだけ勉強して良い大学に入ったのに。何故なのか。結論を言えば柿木は自分のキャラクターを弁えていなかった。 似合う顔じゃないのに、髪の色を茶に染めた。似合いもしないのに、洒落た服も買った。そして何よりも、似合うキャラじゃないのに、チャラついた雰囲気を醸し出そうとした。 つまり柿木は、自分がどう振る舞ったら良い印象で見られるか、と言う事に全く気付いていないのだ。 良い大学に入ったエリートなのに、雰囲気も軽くて親しみやすい。それが柿木の狙った、女性に好かれる自分の造型であった。 ……実際柿木が、彼の入ったサークルの同級生や先輩からどう見られているのかと言えば、空回りしまくった痛い奴、なのだが、本人だけがそれに気づいていない。 それがある日を境に、急に女性に好かれるようになった。 何かが変わったと言えば、何も変わっていない。顔も髪型も服装のセンスも、同級生の知る柿木健介のそれ。 何も変えていないのに、モテ始めた。同級生が寄ってくる、区内の女子高の生徒が寄ってくる、何故だか知らないが、女性ウケが途端によくなった。 サークルの人間に、自分が童貞を捨てた事を意気揚々と柿木は自慢し始めた。十回は射精したとも言っていた。 真偽は流石に不明だが、少なくとも、女性が寄り付くようになったのは、事実である。 柿木は、自分の灰色の高校生活の事を思い出すのか、大学生よりも高校生と付き合う傾向が強い学生だった。 バイト先や、歌舞伎町、高田馬場など、女子高生がたむろする場所などこの区には数多い。 其処で柿木はナンパをし、彼の心意を知らずに、ホイホイとついて行く女性が後を絶たない。 一昨日、柿木は意気揚々と、サークルに入った事により出来た学友に、女子中学生を抱いた事を自慢した。 流石に今回ばかりは反響が大きかった。「やるなぁ」と言う声もあれば、「ロリコンかよ」と非難する声もあった。 しかし、多くの男達の羨望を一挙に集める事は出来たのは事実。性欲も満たせ、自尊心も満たせる。柿木健介は、これ以上となく満ち溢れた性生活を送れていた。 ――翌日柿木健介は、殺人の現行犯で逮捕された。 犯行内容は常軌を逸していた。世田谷区の住宅街に足を運んだ柿木は、ある一軒家へと押し入り、その家に主婦に暴行。 主婦が面倒を見ていた生後数ヶ月の女児の膣に、男根を突き入れたのである。身体の機能もまだ完成し切っていない赤ん坊が、当然これに耐えられる筈もなく。 膣の破ける凄まじい痛みに悲鳴を上げて、赤ん坊はその場で死亡。強姦罪以前に、殺人罪で起訴されたと言う訳である。 当然柿木健介が、彼の在学していたW大学から除籍、退学処分にあった事は言うまでもない。 Case3:歌舞伎町で水商売に従事する女性、高山良子の場合 高山良子は歌舞伎町で、仕事に疲れた男達の接客業……身も蓋もない言い方をすれば、キャバクラ嬢として働く女性だった。 顔と身体のプロポーションが仕事上の全てとも言えるこの業界において、高山は、かなり微妙なラインの女性であった。歳も、顔も。 指名された男性から、「君指名写真と随分顔が違うね?」と遠回しに言われた回数は、数知れない。 本当ならば頬を引っ叩いてやりたいところなのだが、腐っても客商売。朗らかに笑って「やだ~社長さんったら~」と言って場を和やかにしなければならない。 昔ならばいざ知らず、今はインターネットもSNSも高度に発展した時代である。 今日日キャバクラに限らず、風俗もソープも、どの嬢が外れでどの嬢が当たりかと言う情報は、その店の名前で検索をすれば簡単に把握が出来る。 指名する程の女ではない。それが某ちゃんねる及び、キャバクラ店の評価サイトが、高山良子に対して下した評価であった。 高山は女性である――いや、こんな仕事に従事する女性だからこそ。 女性と言う生き物が抱き続けるだろう究極の野望、永遠に美しくありたいと思うのは、至極当然とも言えた。 しかし、そんな願望が叶う等とは、本気で高山も思っていなかった。当たり前だ。高山はじき二十八になるいい大人だ。 同じキャバクラ仲間と話す。キャバクラ嬢を止めたらどうするのかと。嬢などいつまでもやってられる仕事ではない。 今の内に一生分の金を稼いで貯金をし、適当な所でパートをして過ごすか。或いは、誰だっていい。 理想は堅実な会社員、最悪ヤクザとでも結婚をして、場を固めるのがセオリーなのだ。その店で一番人気の嬢などは、若くして数千万にも届く貯金があるなどザラだ。 高山には、数十万の貯金しかない。これでは到底今後の人生を乗り切れない。所謂正規雇用の社員になろうにも、職歴欄にキャバクラ嬢など書ける訳がない。 これからどうやって生活をすればよいのか、眠ろうと布団の中に入ると、その不安の影が脳裏にチラつくのだ。――美しささえあれば!! 全てが解決するのに!! ある日を境に、高山良子は非常に美しくなった。人間性が、と言う意味ではない。その顔面からプロポーションに至るまで、全てが変わっていた。 顔付きはその店で一番人気の嬢を遥かに超え、身体つきは肉感的で非常にエロチシズムに溢れていて。 元の高山を知る店長や嬢達は、どの整形外科の先生に手ほどきされたのかとしつこく聞いて来た。高山は自慢げに、「神様が授けてくれた」と返すだけ。 別人のようになったその日から、高山はたちまち店の人気嬢となった。それまで一番人気であった女性の人気を、全て一瞬で掻っ攫ってしまった程である。 気を良くして指名した男達が、高い酒を注文してくれる、ぼったくりに等しい価格のフルーツの山盛りやおつまみをジャンジャン頼んでくれる。 店の売上にも直接的に貢献してくれる上に、それまで得られなかった、男性からチヤホヤも獲得出来る。高山良子はまさに、人生の絶頂の最中にいる気分であった。 そんな高山が昨日から行方知れずになってしまった為に、店は一時騒然となった。数日間も店に来ないし、足立区の住まいの方に連絡を寄越しても反応がない。 何処ぞの悪い男にでも引っかかったのではないかと同僚のキャバクラ嬢や従業員達は噂した。本来ならばやりたくない手段だが、店長が警察に行方不明者届も出した。 最初に高山良子が店に来なくなった日と同日、同姓同名の老婆が、高田馬場駅の裏路地で野垂れ死にしていた事がニュースとなっていた。その老婆は九十歳であった。 Case Special:連続殺人犯、雨生龍之介の場合 「すげぇよアンタぁ、こんな事が出来る何て!!」 新宿 は歌舞伎町の裏路地を所在地とする、小ぢんまりした内装のバー『魔の巣』にて、見るからに軽薄そうな雰囲気の男が、熱っぽい声で賞賛した。 薄暗い室内、ムーディーなBGM、黙々とグラスを拭き続ける顔中髭だらけのマスター。如何にも落ち着いたバーだったが、その部屋の中で、この男だけが浮いていた。 蠱惑的で洒脱そうで、それでいて何処か軽そうなこの男は、 新宿 の繁華街の夜には相応しそうな男ではあるが、少なくとも『魔の巣』で酒を飲むには、子供っぽい。 雨生龍之介。魔の巣のカウンター席にて、ジン・トニックを飲みながら楽しそうにiPadを操作している男の名前である。 「いえいえ、それ程のものではございませんよ」 龍之介の左隣の席で、ウイスキー・ソーダを口にする男が、控えめな声で謙遜する。 ずんぐりむっくりと言う言葉が、これ以上とない相応しい体型の男だった。背は龍之介よりも頭二つ、いや、下手したら三つ分ほども小さい。 脚も子供の様に短く、胴回りもとても太い。人間の体について研究している学者が彼を見れば、胴長短足のサンプルとして即座に採用を決めかねない程の男だ。 だが、男は酒を飲んでいる事からも解る通り、断じて子供ではなかった。黒いスーツに山高帽、茶の革靴を着こなすその様は、子供とは思えない。 いや寧ろ、下手な人間が着ようものなら即座に浮くであろう黒尽くめの服装が此処まで似合っていると言う事から見ても、ただ者ではない事が窺える。 そして極め付けが、男の顔つきだ。異様に大きい垂れた目と、張り付いた様に浮かべている、白い歯を見せつけるような薄気味悪い微笑み。 ある者がこの男を見たら、きっと不気味で近寄り難いと思うだろう。だが一方、ある者がこの男を見たら、不思議な親近感を覚える事であろう。兎に角、不思議な魅力を醸し出す男だった。 「だって、見てくれよこれ。 新宿 の商社に勤めるサラリーマンが重傷、W大学の学生が殺人の罪で逮捕、歌舞伎町で老婆が老衰で野垂れ死に……」 尚も熱が冷めやらないのか、龍之介は言葉を止めない。 「一見して共通点がなさそうに見えるこの三人、俺は間近で見たから知ってるぜ。全員アンタの『客』だった人間じゃないか!!」 「ホッホッホ」 山高帽の男は、耳に残る特徴的な笑いを浮かべて、龍之介の言葉を濁した。 「アンタすげぇよ本当に、人を幸せにしておきながら、後からそいつの大事なものを命も幸せも全部奪って行く何て……本物の悪魔だぜ!!」 「龍之介さん、それは違いますねぇ。私は悪魔でもなければ、人の命も幸せも不当に奪ったつもりもありませんよ」 「へ? でもあんた、三人とも無事にすまさせてないじゃん。ホラ、これ」 言って龍之介は、手元に置いてあった、山高帽の男のiPadを操作し、先程見ていたニュースのタブを開いた。「どれどれ」と山高帽の男が覗いてみる。 新宿 の商社のサラリーマンを暴力団構成員がリンチした事件、W大学の学生が生後間もない赤ん坊をレイプして殺人した事件、歌舞伎町で野垂れ死にした老婆……。 龍之介は知っている。この三人は、目の前の山高帽の男が、彼らが浮かべていた満たされない表情に気づいて近づいて来て、商品をセールスした客であると。何故知っているのかと言えば、話は単純。龍之介は近場で、その様子を見ていたからに他ならない。 「龍之介さん、私はあくまでもセールスマンです。しかも私は、日本で一番セールスマンの基本に忠実なセールスマンだと、自負しておりますから」 「その基本って?」 「セールスマンは相手の需要を満たさねばならない、と言う事ですよ。私の場合は、『ココロのスキマ』を埋める事を重視しております」 言い終えてから、男はウイスキー・ソーダを呷った。「ココロのスキマねぇ……」、と龍之介は考え込む。 「要するに、不満って事で良いのかい、それって」 「乱暴な言い方ですが、その通りですな。龍之介さん、先程貴方がiPadで示したその三人は、ある時期までは確かに幸せだったのですよ。それは保障致します」 「でもあんたが死なせるよう仕向けたじゃないかこう……『ドーン!!!!』って言って人差し指突き差してさ」 言いながら龍之介は、山高帽の男に人差し指を突き付けるジェスチャーをして見せる。 普通の人物であったら失礼だと言って叱りそうなものであるが、この男はあいも変わらず、ふてぶてしい笑みを浮かべているだけだった。 「龍之介さん、私の商売する状況を見ていた貴方なら解る筈ですよ。私があの三人に商品を売りつける際に、私は条件を付けた筈です」 「条件……あ~あ~、言ってたなそういや。何て言ってたのかは忘れたけど」 「自分に自信がつくようになり、話し上手の聞き上手になれるネクタイを差し上げた加藤俊也さんには、『自分の会社よりも大きい規模の取引先とは取引してはいけない』。 女性に好かれやすくなるワックスを差し上げた柿木健介さんには、『高校生以下の年齢の女性とは絶対に交際してはならない』。 顔から身体までを自分が理想とする美女にしてくれる化粧用品一式を差し上げた高山良子さんには、『貢物は絶対に受け取ってはいけない』。……と。この三人はこのような条件を付しました」 「みーんな破ったよな」 言ってから、龍之介はジン・トニックを口へと運んだ。 「私は自分でもお人よし過ぎて悩んでいましてねぇ、困っている人を見かけるとついつい助けてしまいたくなるのですよ」 本当かよ、と言った目線に流石に山高帽の男も気付いたらしい、直に言葉を続けた。 「龍之介さん、人の満たされない心と言うものは解消されるべきだと私は思っておりますし、不幸でいるよりかは幸福でいる方が絶対に良いに決まっていると、私は思っております」 ――「ですが」 「幸福は一極に集中させてはなりません。不幸だった人がある日幸福になり、人生が薔薇色になる。それは素晴らしい事だと思います。 ですが、その方が幸福になり過ぎる事によって、今度はそれまで幸福だった人が不幸になり、今不幸の中にいる方が更に不幸になる。 解りますか龍之介さん? 私の扱う道具は、幸福になり過ぎる事も十分可能です。しかし、なり過ぎてはいけないのです。『節度を持たねば』なりません。 そうしなければ人は……幸福を貪り続けるだらしのない人になってしまいますから」 カラッと、山高帽の男が、ウイスキー・ソーダの中の氷を揺らして見せた。ロックアイスは、三つあった。 「セールスマンは、契約と責任を重んじます。私は契約を遵守致しますが、それは相手にも強います。 享受した幸福の度量によって、契約違反のペナルティは決められねばなりません。ですので、龍之介さん。私は相手の不幸を奪っているのではありません。殺しているのでもありません。幸せの代償を払って貰っているだけなのです」 「……な……」 「?」 何処か疑問気な顔付きで、山高帽の男が龍之介の事を見上げた。 「何て、COOLで、CLEVERで、STOICな考え方なんだ、旦那ァ!!」 龍之介は、目の前の男の――自分の懐に今もしまわれている、契約者の鍵だか言う青色の鍵に導かれてやって来た小男の言に、感動を覚えていた。 当初龍之介は、東京の 新宿 などと言う街に訳も解らず呼び寄せられ、しかも聖杯戦争だか言う茶番劇を行わねばならないと聞いた時には、心底辟易していた。 帰りたいとすら思った。誰かが勝手に解決してくれないか、と思っていたくらいには、聖杯戦争など如何でも良かった龍之介だったが……いやはや、この男と出会えたのならば、存外悪い物ではなかったのかも知れない。 雨生龍之介はもといた世界に於いて、司直や捜査機関の手を巧みに掻い潜り、猟奇殺人を繰り返していた連続殺人犯であった。 今まで殺害してきた人数は両手の指の数を超える程。死刑など確実とも言える人数を殺して来ていながら、この男が今まで犯人として疑われてすら来なかったのは、 この男の殺人の手口が洗練されたそれであり、かつ、捜査の目を絶妙に掻い潜る方法を本能的に行っているからに他ならなかった。 龍之介にとって殺人とは一種の芸術表現であり、――本人達は同列にするなと激昂するだろうが――哲学者が命題(テーゼ)を求める行為に等しいのである。 彼は『死』と言う現象が如何なるものなのか、解体しようと試みていた。アニメやコミック、小説に映画などで表現された死と言うのは、嘘っぱちのそれ。 死んでいるのはこの世にいる人物ではない非実在の存在或いは役者がこう演じろと言われて演じているだけのそれで、実際には死んでいないのだと解ると、 実にチープなものとしか映らない。彼は死を理解しようと、解体しようと、様々な行為を行ってみた。つまりは――殺人である。 実にいろいろな方法を試した。刃物も使った、電気も使った、水も使った、酸素も使ってみた。 原形を留めぬ程バラバラにして見た事もあれば、出来るだけ綺麗な状態で殺そうと努めた事もあった。 殺す対象も様々だ。男も殺したし女も殺した。大人も子供も老人も。外国人だって殺して来たかも知れない。 色々な方法を試しに、色々な人物を殺して行く内に、雨生龍之介はある種のスランプ、マンネリに陥った。 どうも此処最近の殺人は、昔にやったそれをなぞっているような気がしてならない。二番煎じはなるべく避けたい龍之介にとって……、殺人を一種の芸術表現だと思っているフシがある龍之介にとって、これは死活問題であった。 現状のスランプを打破する為に、龍之介は、一度原点に立ち戻ってみようと考えてみた。スランプやモチベーション低下に悩まされる芸術家が良く取る方法である。 龍之介の原点とは、実家であった。彼は実に五年ぶりに田舎へと戻り、家族が寝静まった頃を見計らい、自分の表現行為の始点となった実家の土蔵へと足を踏み入れた。 彼の姉が、最後に見た時とは全く変わり果てた姿で、彼の事を出迎えてくれた。雨生龍之介の姉は、五年前から行方知れずであった。 当然だ、何故ならば龍之介の許されざる芸術活動の最初の犠牲者こそが、彼女の実の姉であるのだから。 ――その姉の亡骸の横で、青い鍵が光り輝いていた。 思わず眼を龍之介は擦った。茶と、酸化して茶味がかった白色と、中途半端な黒色の三色しかない土蔵の中で、リンのようにその鍵は淡く光っていたのだ。。 誘蛾灯に誘われる羽虫みたいにその鍵に近付き、手に取った瞬間――雨生龍之介は、実家の田舎から、都会も都会の東京都新宿区……いや、 新宿 に転送された。 新宿 を舞台に行われる、どんな願いでも叶える事が出来る聖杯を賭けた聖杯戦争? 人類史に名を遺した英雄や異なる世界の強者達をサーヴァントとして従える? どれもこれも、龍之介には魅力に映らない。 そもそも龍之介は殺しは好む所ではあるが、戦争が好きなわけではなかった。それに、どうもこの聖杯戦争と言う催し。 他人から「やれ」と言われているような気がしてならないのも、龍之介の意欲を更に下げる一因となっていた。 御誂え向きに、 新宿 でどう過ごすかと言う役割すらも与えられてしまっている。元居た世界と同じように、フリーターが、 新宿 での雨生龍之介のロールであった。 主催者に申し出れば棄権させて貰えるかなぁ、と考えていた所、土蔵に落ちていた鍵――契約者の鍵と言うらしい――に導かれ、目の前の山高帽が姿を現した。 聖杯戦争のクラスに当てはめればキャスターと言うものに相当するその男は、相当な変り者だった。 如何にも満たされていなさそうな人物を見つけては、その人物に声を掛けて行き、巧みな話術で商品を与え――何とタダ!!――、 商品を与えた際に付け加えた条件をその人物が破れば、重大なペナルティを与える。その様子を見て龍之介は思ったのだ、自分が求めていたのはこれだったのだと。 龍之介は思う。考えてみれば、自分が今まで取った方法は、少々独り善がりな感が否めなかったと。 つまり、『殺』に至るまでの物語性(ストーリー)がないのだ。相手との対話がないのだ。コミュニケーションがないのだ。 ただ相手を殺し、その死に様を観察して終わり。これでは、『死』と言うものを理解出来る筈がない。 しかし、殺す相手とコミュニケーションを取り、対話をし、関係を深めて行き、その後で殺すと言う事は極めて危険な行為だ。警察に足がついてしまう。 だから今まで、相手とのコミュニケーションは最小限度に抑えていたのだが、今は四の五の言っている場合ではないだろう。 それに此処は、元居た龍之介の世界とは違う上に、龍之介の創造を遥かに超えた力を振うキャスターだっているのだ。 新宿 でなら思う存分、この場で考えたメソッドを活用出来る。龍之介はそう考えたら、此処 新宿 に来れたのも、存外悪い事ではなかったのかも知れないと、今になって思い始めていた。 「なぁ、旦那。俺にさ、旦那の話術と、アレ教えてくれよ!! 『ドーン!!!!』って奴!!」 元の世界に戻ったら、目の前のキャスターの話術を使い、龍之介は死と言うものを解体するつもりでいた。 話術を学ぶ事は、その重要な足がかり。しかし山高帽のキャスターは明らかに、龍之介の提案に難色を示した風に、ウイスキー・ソーダを口にしていた。 「ホッホッホ、ドーン、は貴方には無理かもしれませんが、話術が知りたいと言う事は……ふぅむ、弱りましたな」 「え? 駄目なのか?」 「いえ、口下手を直す道具ならば幾つもあるのですが、私は先程も申し上げましたように、ココロのスキマを埋めるセールスマン。 貴方はどうも悩みとは無縁そうな上に、私のマスターですからねぇ……。はてさて、どういたしましょうか……」 「そ、そんなぁ。何とかならないかなぁ、旦那ぁ」 自分を拾ってくれと縋りつく子犬のような態度で龍之介が口にする。ややあってから、山高帽の男が口を開いた。 「ではこう致しましょう。今から貴方は私の補佐です。私のサラリーマン活動のサポートに回って下さい。 無論私も貴方にセールスの機会を与え、話術の何たるかを教えて差し上げますが……やはり話術は数と経験、そして上手い人から盗むもの。それで宜しいですね?」 「OKOK!! それで十分だよ、『メフィスト』の旦那!!」 「ホッホッホ……メフィスト、と言うのは、ゲーテのファウストに出てくるメフィストフェレスの事ですかな? 私のような太っちょでチビの男がメフィストと呼ぶとは、本物のスマートなメフィストから怒られますよ龍之介さん。 ……そう言えば貴方には私の名刺を渡しておりませんでしたな。私とした事が迂闊でした。最初に会った時に自己紹介をしたきりでしたね。この名刺をお納め下さい」 言ってキャスターは懐の名刺入れから名刺を取り出し、それを龍之介へと手渡す。 「あ、どうもッス」、と、一端の社会人ならアウト以外の何物でもない返事をしながら、龍之介は渡された名刺に目をやってみた。 ――ココロのスキマ、お埋めします。喪黒福造(もぐろふくぞう)……。 【クラス】 キャスター 【真名】 喪黒福造@笑ゥせぇるすまん 【ステータス】 筋力E 耐久A 敏捷E 魔力A 幸運A 宝具EX 【属性】 混沌・中庸 【クラススキル】 道具作成:- 後述する宝具により所持しない。 陣地作成:D 魔術的な陣地の作成は出来ないが、代わりに、自らがセールスしやすい状況の作成に長ける。 本人曰く、『魔の巣』と呼ばれるバーが一番仕事がしやすいとの事。 【保有スキル】 魔術:C+++(EX) キャスターは空間転移等の高位の魔術を扱えるが、取り分けて得意とするのがガンドである。 キャスターのガンドは大魔術・儀礼呪法と言った多重節の魔術に匹敵する威力を持つが、フィンの一撃は出来ない。キャスターのガンドは精神干渉などに偏っている。 と言うよりガンドに限らず、キャスターは直接的な攻撃手段に成り得る魔術を一切保有していない。……後述する宝具が発動すると、カッコ内の値に修正される。 話術:A+ 言論にて人を動かせる才。国政から詐略・口論まで幅広く有利な補正が与えられる。 キャスターは特に一対一の対話に優れており、『心の隙間』に入り込むようなその話術は、悪魔的とさえ言える。 不死身:B キャスターは異様に死に難い。ランク相当の再生と戦闘続行を兼ねたスキル。 【宝具】 『こんなこといいな、できたらいいな(四次元アタッシュ)』 ランク:E-~A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1 キャスターがセールスする商品の入ったアタッシュケースが宝具となったもの。 キャスターのアタッシュケースの中はある種の亜空間になっており、アタッシュの体積以上の物品が何品も入り込んでいる。 自らをセールスマンだと名乗るこのサーヴァントが取り扱う商品は、現況に不満を抱く人物の悩みを即自的に解決する品そのもの。 生前の様に土地や不動産、現在の状況を即座に解決する『チャンス』まではセールス出来ず、あくまで解決するアイテムのセールスのみに留まる。 生前科学的、魔術的、空想科学的な物品の数々を扱って来たキャスターが、この聖杯戦争においてセールスする物品とは即ち『宝具』。 キャスターはE-~Aまでのランクに相当する宝具を、聖杯戦争の参加者及びNPCに、譲渡する事が出来る。 この宝具を用いた際に消費する魔力は、あくまでその宝具が本来有していた魔力から消費され、魔力を完全に消費し終えた宝具はその場で消滅する。 セールスマンを自称するキャスターは、その信条により、『武器に類する宝具は絶対に取引しない』し、『概念や逸話の具現化した宝具も譲渡不可』。 また、『キャスター及びそのマスターが、セールスする商品である宝具を自らの為に扱う事も出来ない』。 ともすれば相手にだけ利益を与える宝具に思われるが、この宝具を相手に譲渡する際にキャスターは1つだけ契約を付ける事が出来る。 相手がその契約を破った時、キャスターは後述する宝具の発動を可能とする。 『契約違反(ドーン!!!!)』 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1 キャスターによって譲渡された宝具を譲り受けた者が、キャスターから付された契約を破った時に初めて発動可能となる宝具。 この宝具が発動した場合、魔術スキルのランクをカッコ内の値に修正。契約違反者に対して行う魔術の成功率が『対魔力や所持スキル、宝具の性能を無視して100%になる』。 キャスターが契約違反者に使う魔術は主にガンドであるが、この宝具が発動した場合に相手に舞い込む効果は、 性格の改変、社会的地位や信頼の喪失、成功しかけていた計画の頓挫、肉体の欠損、急激な老化、果てはその場で即死する等、聖杯戦争の範疇が許す限りの力を揮う事が可能。 譲渡した宝具のランクが高ければ高い程、契約違反者に致命的な効果を与える事が出来るが、逆に低い場合には、軽微な効果しか発動出来ない。 また、宝具を譲渡された者が契約を違反せず宝具を使い切った場合、或いは宝具の効果が気に入らずクーリングオフをした時も、この宝具を発動する事は出来ない。 あくまでもキャスターが言い渡した契約を破った者にしか、この宝具は効果を発揮しないのである。 【weapon】 名刺: セールスマンの基本。自己紹介の際には必ず相手に与える。何故なら彼は、律儀なセールスマンだから。 【人物背景】 現代人のちょっとした悩みを解決する為に日々奔走する、人の好いセールスマン。幸福の運び手。 そして、セールス締結時に交わした契約を絶対に遵守する、厳しいサラリーマン。都会の魔王。 【サーヴァントとしての願い】 不明 【マスター】 雨生龍之介@Fate/Zero 【マスターとしての願い】 特にはない。強いて言えば、キャスターと一緒に立ち回る 【weapon】 【能力・技能】 天性的な殺人隠蔽能力。警察がどうやって自分を発見して来るか朧げながらに解っている 【人物背景】 死の意味を知る為に殺人を続ける殺人鬼。芸術家・哲学家崩れ。 四次聖杯戦争開始前、もっと言えばキャスター召喚前の時間軸からの参戦。 【方針】 キャスターの話術と『ドーン!!!!』を学びたい
https://w.atwiki.jp/keio_unyo/pages/39.html
13運行 桜上水駅4#出庫 〔 前運用 平日:21運行 休日:17運行 〕 回送 8003 〇-桜上水 0605 → 0620 東府中 ┐ 普通 6401 └ 東府中 0622 → 0624 競 馬 ┐ 普通 6400 ┌ 東府中 0632 ← 0629 競 馬 ┘ 普通 6403 └ 東府中 0642 → 0644 競 馬 ┐ 普通 6402 ┌ 東府中 0655 ← 0653 競 馬 ┘ 普通 6405 └ 東府中 0702 → 0705 競 馬 ┐ 普通 6404 ┌ 東府中 0715 ← 0713 競 馬 ┘ 普通 6407 └ 東府中 0722 → 0724 競 馬 ┐ 普通 6406 ┌ 東府中 0732 ← 0729 競 馬 ┘ 普通 6409 └ 東府中 0737 → 0739 競 馬 ┐ 普通 6408 ┌ 東府中 0747 ← 0744 競 馬 ┘ 普通 6411 └ 東府中 0752 → 0754 競 馬 ┐ 普通 6410 ┌ 東府中 0802 ← 0759 競 馬 ┘ 普通 6413 └ 東府中 0807 → 0809 競 馬 ┐ 普通 6412 ┌ 東府中 0817 ← 0814 競 馬 ┘ 普通 6415 └ 東府中 0822 → 0825 競 馬 ┐ 普通 6414 ┌ 東府中 0832 ← 0830 競 馬 ┘ 普通 6417 └ 東府中 0837 → 0840 競 馬 ┐ 普通 6416 ┌ 東府中 0847 ← 0845 競 馬 ┘ 普通 6419 └ 東府中 0852 → 0855 競 馬 ┐ 普通 6418 ┌ 東府中 0907 ← 0905 競 馬 ┘ 普通 6421 └ 東府中 0915 → 0917 競 馬 ┐ 普通 6422 ┌ 東府中 0930 ← 0927 競 馬 ┘ 普通 6425 └ 東府中 0938 → 0940 競 馬 ┐ 普通 6426 ┌ 東府中 0949 ← 0947 競 馬 ┘ 普通 6429 └ 東府中 0957 → 0959 競 馬 ┐ 普通 6430 ┌ 東府中 1009 ← 1006 競 馬 ┘ 普通 6433 └ 東府中 1017 → 1019 競 馬 ┐ 普通 6434 ┌ 東府中 1032 ← 1029 競 馬 ┘ 普通 6437 └ 東府中 1038 → 1040 競 馬 ┐ 普通 6438 ┌ 東府中 1050 ← 1047 競 馬 ┘ 普通 6441 └ 東府中 1056 → 1058 競 馬 ┐ 普通 6442 ┌ 東府中 1108 ← 1105 競 馬 ┘ 普通 6445 └ 東府中 1116 → 1118 競 馬 ┐ 普通 6446 ┌ 東府中 1131 ← 1128 競 馬 ┘ 普通 6449 └ 東府中 1138 → 1140 競 馬 ┐ 普通 6450 ┌ 東府中 1150 ← 1147 競 馬 ┘ 普通 6453 └ 東府中 1156 → 1158 競 馬 ┐ 普通 6454 ┌ 東府中 1208 ← 1206 競 馬 ┘ 普通 6457 └ 東府中 1216 → 1218 競 馬 ┐ 普通 6458 ┌ 東府中 1228 ← 1225 競 馬 ┘ 普通 6461 └ 東府中 1236 → 1238 競 馬 ┐ 普通 6462 ┌ 東府中 1250 ← 1247 競 馬 ┘ 普通 6465 └ 東府中 1256 → 1258 競 馬 ┐ 普通 6466 ┌ 東府中 1309 ← 1306 競 馬 ┘ 普通 6469 └ 東府中 1316 → 1318 競 馬 ┐ 普通 6470 ┌ 東府中 1328 ← 1325 競 馬 ┘ 普通 6473 └ 東府中 1336 → 1338 競 馬 ┐ 普通 6474 ┌ 東府中 1349 ← 1346 競 馬 ┘ 普通 6477 └ 東府中 1356 → 1358 競 馬 ┐ 普通 6478 ┌ 東府中 1409 ← 1406 競 馬 ┘ 普通 6481 └ 東府中 1416 → 1418 競 馬 ┐ 普通 6482 ┌ 東府中 1428 ← 1425 競 馬 ┘ 普通 6485 └ 東府中 1436 → 1438 競 馬 ┐ 普通 6486 ┌ 東府中 1448 ← 1445 競 馬 ┘ 普通 6489 └ 東府中 1456 → 1458 競 馬 ┐ 普通 6490 ┌ 東府中 1508 ← 1505 競 馬 ┘ 普通 6493 └ 東府中 1515 → 1517 競 馬 ┐ 普通 6494 ┌ 東府中 1527 ← 1524 競 馬 ┘ 普通 6401A └ 東府中 1634 → 1536 競 馬 ┐ 普通 6400A ┌ 東府中 1545 ← 1543 競 馬 ┘ 普通 6409A └ 東府中 1555 → 1557 競 馬 ┐ 普通 6408A ┌ 東府中 1607 ← 1605 競 馬 ┘ 普通 6417A └ 東府中 1614 → 1616 競 馬 ┐ 普通 6418A ┌ 東府中 1627 ← 1625 競 馬 ┘ 普通 6425A └ 東府中 1635 → 1637 競 馬 ┐ 普通 6424A ┌ 東府中 1646 ← 1644 競 馬 ┘ 普通 6433A └ 東府中 1653 → 1656 競 馬 ┐ 普通 6432A ┌ 東府中 1708 ← 1705 競 馬 ┘ 普通 6441A └ 東府中 1713 → 1715 競 馬 ┐ 普通 6438A ┌ 東府中 1726 ← 1723 競 馬 ┘ 普通 6447A └ 東府中 1734 → 1736 競 馬 ┐ 普通 6440A ┌ 東府中 1746 ← 1743 競 馬 ┘ 普通 6447A └ 東府中 1752 → 1755 競 馬 ┐ 普通 6442A ┌ 東府中 1802 ← 1800 競 馬 ┘ 普通 6449A └ 東府中 1813 → 1815 競 馬 ┐ 普通 6444A ┌ 東府中 1823 ← 1820 競 馬 ┘ 普通 6451A └ 東府中 1832 → 1834 競 馬 ┐ 普通 6446A ┌ 東府中 1842 ← 1840 競 馬 ┘ 普通 6453A └ 東府中 1849 → 1851 競 馬 ┐ 普通 6448A ┌ 東府中 1859 ← 1856 競 馬 ┘ 普通 6455A └ 東府中 1904 → 1906 競 馬 ┐ 普通 6450A ┌ 東府中 1914 ← 1911 競 馬 ┘ 普通 6457A └ 東府中 1919 → 1921 競 馬 ┐ 普通 6452A ┌ 東府中 1929 ← 1926 競 馬 ┘ 回送 8177 └ 東府中 1933 → 1938 高幡不-△ 高幡不動検車区入庫 高幡不動検車区出庫 普通 5214 ┌ N新宿 0032 ← 2322 高幡不-〇 普通 5605 └ N新宿 0041 → 0054 桜上水-△ 桜上水駅2#入庫 〔 翌運用 平日:11運行 休日:11運行 〕 1運行 高幡不動検車区51#出庫 回送 8166 ┌ 飛田給 1926 ← 1910 高幡不-〇 回送 8175 └ 飛田給 1929 → 1933 東府中 ┐ 普通 6459A └ 東府中 1935 → 1938 競 馬 ┐ 普通 6454A ┌ 東府中 1944 ← 1942 競 馬 ┘ 普通 6461A └ 東府中 1950 → 1953 競 馬 ┐ 普通 6456A ┌ 東府中 1959 ← 1956 競 馬 ┘ 普通 6463A └ 東府中 2004 → 2006 競 馬 ┐ 普通 6458A ┌ 東府中 2016 ← 2014 競 馬 ┘ 普通 6465A └ 東府中 2024 → 2024 競 馬 ┐ 普通 6460A ┌ 東府中 2036 ← 2034 競 馬 ┘ 普通 6467A └ 東府中 2044 → 2046 競 馬 ┐ 普通 6462A ┌ 東府中 2056 ← 2054 競 馬 ┘ 普通 6469A └ 東府中 2104 → 2108 競 馬 ┐ 普通 6464A ┌ 東府中 2116 ← 2114 競 馬 ┘ 普通 6471A └ 東府中 2122 → 2124 競 馬 ┐ 普通 6466A ┌ 東府中 2133 ← 2130 競 馬 ┘ 普通 6473A └ 東府中 2141 → 2144 競 馬 ┐ 普通 6458A ┌ 東府中 2151 ← 2149 競 馬 ┘ 普通 6475A └ 東府中 2156 → 2158 競 馬 ┐ 普通 6470A ┌ 東府中 2204 ← 2202 競 馬 ┘ 回送 8515 └ 東府中 2208 → 2210 府 中 ┐ 回送 8508 ┌ 東府中 2219 ← 2217 府 中 ┘ 回送 8181 └ 東府中 2229 → 2240 高幡不-△ 高幡不動検車区51#入庫
https://w.atwiki.jp/sanpomemo/pages/6.html
肩こりの酷い日のストレッチなどのケア方法のメモ このごろ何故かまた急に冬並みに寒くなってしまいました、最近調子の良かった肩と首の調子が 随分わくるなってきてしまったので今日からしバラく肩こりと首コリのストレッチをしようと思っています とくに首まわりが固くなってくると頭痛になったり姿勢が猫背になってしまったりしてしまうので、 ヨガ教室やストレッチ整体院さんでおしえてもらったストレッチポーズでシッカリケアしようと思います 天気もいいので今日は散歩をしてきました、なかなか晴れた日がなかったけど今日はようやく良い天気になりました 折角なので今日は新宿公園から四谷にかけていっぱい歩いてきました。 みんな考える事はおなじなのかジョギングしたりお散歩してる人がちらほらと見受けられました。 明日も今日くらいはれてくれるならまた散歩しにいくんだけどなあ、なんか曇ってきたしあやしいかなあ 今日は台風のせいか肩こりがきになります 今日から明日にかけて台風だそうです、気圧が安定しないせいか後頭部やら肩がきになります 少しストレッチしてみましたけど、スグにダルさが戻ってしまいますね。 明日の朝には台風がぬけて調子が戻ってくれると助かるんですけど、今年は早い時期に台風がきたから こんな肩こりの日が続くとおもうといやだなあ 冷房で肩と背中のこりが強くなったきがします 最近暑いせいで、ついに会社や電車の冷房が入りました。 むかしから冷房が苦手なので背中とか首肩に冷房が直接あたると毎年肩こりが悪化して頭痛になったりして困っています 今年は早くから冷房がはいったのでなにか対策になる運動や柔軟体操を考えておかないといけないなあ。 何時もお世話になってるストレッチ整体院さんでなにかメニューを考えてもらおうかな 11月にはいって寒さが厳しくなってきました いよいよ年末まできました、さすがに寒さが厳しくなってきたので冬物のコートをきていますけど帰宅途中風が強いと首が冷えて肩に力が入って凝ってきてしまいますね。かえったらお風呂につかってほぐしていますけどそろそろ限界かなあ、最近の自粛でなかなか整体にいけていなかったから今月中に四ツ谷のなじみの整体院にいって肩こりのストレッチをしてもらってこようと思います
https://w.atwiki.jp/city_blues/pages/30.html
そこには静謐のみが存在した。 日が陰り出した夕刻、赤みがかった光が差し込む鳥居は、そこから一歩踏み入れた瞬間から明確に空気の質が変質する。そこはまさしく聖域であった。 新宿という雑多な街の一角にあって、しかし都会の喧騒とは無縁なそこには一切の雑念がなく、ただ清廉な空気が満ちるのみ。 古びた社殿が存在するその場所は、名を鴉羽神社といった。 「どうしたもんかな、本当に」 鳥居と社殿を繋ぐ短い参道に一人の少年が立っていた。鴉羽神社の居候兼神職見習いとして籍を置く彼は、中肉中背で特徴らしい特徴を持たない、言ってしまえばどこにでもいそうな雰囲気の少年だった。 少年は学校の帰りだろうか、黒い学生服を着たまま両手で竹ぼうきを持って参道の落ち葉を黙々と片付けている。風に揺れる木々のざわめきだけが場を支配する中、ざっざっ、という規則的な音が心地よい響きを加えている。 彼が置かれている現状を鑑みればいっそ滑稽なほどに平和的な光景である。しかし、少年が醸し出す朴訥な雰囲気が、その違和感を封じ込めていた。 「ねえキャスター、そこらへんまるっと全部手っ取り早く解決できたりしないかな」 「何を指して言っているのかあやふやにもほどがあるぞ、マスター。せめてもう少し具体的に物を言ってくれ」 少年以外には誰一人として存在しなかった静謐の空間に、しかし虚空から答える声があった。いいや声だけではない。いつの間にか少年の背後にはもう一人学生服の少年が静かに佇んでおり、マスターと呼ばれた少年の春の陽気のようにのほほんとした言葉を切って捨てる。 「まあ、言わんとしていることは分かるさ。つまりこの聖杯戦争の根本的解決、マスターが言いたいのはそれだろう?」 「うん、それそれ」 相も変わらない呑気な返事にキャスターと呼ばれたもう一人の少年は少し頭が痛くなるのを自覚した。召喚の際、マスターが聖杯を望まないと聞いた時も開口一番サーヴァントに何を言ってるんだこいつはと思ったが、どうにもこのマスターには打算とかそういう類のものがないらしい。 生前もそうだったが、どうにも自分はこの手の人間には弱いらしい。もう少しくらい腹に一物を抱えていたり悪辣だったりしたほうがよっぽどやりやすいと心から思う。 「……正直なところ、最後の一人まで残る以外にはどうすることもできないというのが現状だな。聖杯戦争というシステムからしてそうだが、そもそも自ら聖杯戦争に挑む人間には代えがたい願いというものがある。中には当然、人の命など歯牙にもかけない悪党だって存在するだろう。そんな連中を相手に、仲良しこよしでやっていけるほど甘い戦いじゃ決してない」 「そっか。うん、まあそうだよね」 茫洋とした雰囲気を微塵も変えようとしない主に、キャスターは本当に分かっているのかと口に出しかけるがすんでのところで呑み込んだ。 「それで、結局マスターはどうしたいんだ。願いがないなら帰還を目指すのもいいだろう。それまで俺が守るし、生き残りたいから戦うというなら共に戦おう。逃げたいなら逃げればいいし、戦いたくないなら隠れていればいい。やはり聖杯が欲しいというのならそれに否やは言わないさ。だから」 「それに対する僕の答えは決まってるよ、キャスター」 言葉を遮りマスターたる少年は静かに振り返る。朴訥とした雰囲気はそのままに、しかしその双眸は決意で引き締められていて。 「僕は誰かの犠牲を認めない。願いのために誰かを殺すことを強制する聖杯なんて願い下げだし、そんな聖杯を求めて起こる戦いだって全部止めたいと思う」 その答えは考えられる中では最も困難で最も滑稽なものだった。しかし少年は伊達や酔狂でこのようなことを言っているわけでは断じてない。 〈新宿〉に招かれる直前、少年の前に二つの選択肢が提示された。自らの命と日本の未来と引き換えに大切な相棒と親友を生き永らえさせるか、二人を犠牲に束の間の平穏を手にするか。 どちらかしか選べず、それ以外の選択肢などない状況。しかし少年は第三の答えを探すことを選んだ。 その時の少年に、何か具体的な解決策があったわけではない。その当てがあったわけでもない。言ってしまえばそれは単なる青臭い感情の発露であり、いっそ愚かと断言してもいいものだったが。しかし少年はどこまでもそういう人間で、その芯を変えることはどうしてもできなくて。 そんな少年だからこそ、聖杯戦争に対する答えも決まりきっていた。 「というのが僕の考えなんだけど、どうかなキャスター」 「……」 キャスターは比喩でも何でもなく本気で頭を抱えていた。 馬鹿だ馬鹿だと散々思っていたが、まさかここまで底抜けだったとは思いもしなかった。よりにもよってそれを選ぶのかと、正義の味方気取りもいい加減にしろよと思って。 ―――けれど、だからこそ自分が彼のサーヴァントに選ばれたのではないのかとも思う。 「……分かった。マスターが決めたのなら俺もそれに従おう。全く、なんでこんなのが俺のマスターなんだか」 「またまた、本当は嬉しいくせに」 なんかムカついたので軽く蹴りを入れてやる。何すんだと突っかかるマスターは、しかし怒りの感情は一切顔に浮かべていない。 やはり、どうにもこういうタイプは苦手だ。 かつてキャスターは文字通りに世界の命運をかけた戦いに身を投じた。 最初は単なる巻き込まれで、やれ宿星だやれ運命だと自分の意思などほとんど介在しないものだったが。それでも、守りたいと願う人々が次々とできて。 だからこそマスターの言葉も理解できる。理屈とかそういうものではないのだ、これは。 嬉しいという指摘も図星だ。別に正義の味方を気取るつもりはないが、それでも悲劇を失くしたいという気持ちに嘘などないのだから。 キャスターの口元には、抑えきれないくらいの笑みが浮かんでいた。 【クラス】 キャスター 【真名】 緋勇龍麻@東京魔人學園剣風帖 【ステータス】 筋力B 耐久C 敏捷B 魔力B 幸運C 宝具A++ 【属性】 中立・善 【クラススキル】 陣地作成:C 魔術師として自分に有利な陣地を作り上げる。 龍脈・龍穴から力を汲み上げる方陣を作成可能。 道具作成:- キャスターに道具作成の適正はなく、このスキルは機能していない。 【保有スキル】 気功:A 瞬間的な気の放出により身体能力を強化する。 発剄による攻撃や自身に限定した回復能力など様々な技に転用できる。 陽の古武術:A 日本古武術の一派。現代のものとは異なり、源流のひとつである。ランクB相当の見切りと矢避けの加護のスキルを内包する。 カリスマ:C 軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。 心眼(真):B 修行・鍛錬によって培った洞察力。 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理” 逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。 【宝具】 『黄龍甲』 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1 陰陽五行の中央に位置する黄龍が彫られた黄金に輝く手甲。真名解放と共に、手甲・無銘に重なるように出現する。 耐久・魔力を1ランク上昇させ、時間経過で自身の傷を癒す効果を得る。 『黄龍の器』 ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:- 龍脈を流れる膨大な気を自らの肉体に無尽蔵に取り込み、己の力とする。龍脈の上に専用の方陣を組み上げた状態でのみ発動可能。 この宝具を発動している間、キャスターの幸運が2ランク、それ以外のステータスが1ランク上昇し、後述する『秘拳・黄龍』が発動可能となる。 龍脈から直接力を得ているため陣地内では宝具発動を含むあらゆる魔力消費を必要とせずAランク相当の透化・対魔力スキルが付与されるが、発動後は時間経過と共に方陣が徐々に破壊されていく。 キャスターの宿星であり、キャスターの存在そのものと言える宝具。 『秘拳・黄龍』 種別:対城魔拳 レンジ:不定 最大捕捉:不定 陽の古武術に伝わる秘奥義であり、気功の究極形。龍脈から汲み上げた力を金色の龍にも似た姿の発剄として放出し、大規模な破壊として撃ちだす。 上述の宝具『黄龍の器』が発動している状態でのみ発動可能。龍脈の上に作り上げた専用の方陣がより完全な形で残っているほど威力・範囲が上昇する。 ただし、この宝具が発動し終わった時点で方陣は完全に破壊される。 【wepon】 手甲・無銘 【人物背景】 古武術を修め、「陽の黄龍の器」を宿星とする高校生。 新宿都立真神学園に転入したことをきっかけに、人ならぬ《力》を得た少年少女たちと出会い、東京に巣食う闇との戦いに巻き込まれていくことになる。 最終決戦において変化なき存続を選択した後はエジプトに行ったり宝探し屋と間違われていい年して再び高校生になったりしている。 いわゆる喋らない系主人公というやつだが、アニメ版の設定は一切含まないものとする。 【サーヴァントとしての願い】 マスターを守る。 【マスター】 七代千馗(しちだい・かずき)@東京鬼祓師 鴉乃杜學園奇譚 【マスターとしての願い】 日本滅亡を回避しつつ白や零を死なせない道を探る。 【weapon】 呪言花札 白札と鬼札を除いた48枚を所持。 地形に張り付けることで様々な結界を張り、道具に張り付けることで伝承の武器へと変じさせる力を持つ。使用には当然魔力を必要とする。 【能力・技能】 秘法眼:あらゆる超常を見抜く魔眼。不可視の存在を視認しあらゆる隠蔽効果を無効にするが、使用には魔力を必要とする。 封札師:あらゆる呪符を封じ従える異能、及び手にした物品の力を限界まで引き出す資質。彼が手にした物ならば玩具や生活用品の類であろうと銃火器や刀剣類を超える火力を発揮する。 道具作成:物同士を組み合わせて新たなアイテムを作成可能。例:砂糖+輪ゴム=ガム。ガム+レトルトカレー=カレーガム 【人物背景】 図書館のアンケートにより秘法眼を見出された少年。高校二年生。 国立国会図書館収集部特務課から呪言花札の回収を命じられ新宿は鴉乃杜學園に転校することになる。 こちらも喋らない系主人公だが札に憑かれた燈治と弥紀を迷いなく助けようとするあたり結構な善人。あと仲間のコンプを目指してプレイすると底抜けに明るくてお人よしな熱血漢みたいな性格になる……ような気がする。 本編の第九話終了後、第三の選択肢を選んだ状態から参戦。 【方針】 聖杯戦争を止めるために動く。
https://w.atwiki.jp/wind-and-leaf/pages/15.html
2007.06.23(土) WOAライブ@新宿Golden Egg 場所 新宿 Golden Egg 時間 19 00~(出演順:5番目) 金額 1500円 境界線 夜明けは誰にでも美しい moon Farewell come together