約 1,816,751 件
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/171.html
2920 蒔種の月(3巻) 第一紀 最後の年 カルロヴァック・タウンウェイ 著 2920年 蒔種の月15日 カエル・スヴィオ (シロディール) 皇帝レマン三世は、丘の上の見晴らしの良いところから、帝都にそびえる尖塔をじっと見ていた。彼には自分が温かい家、故郷から遠く離れ地にいることが分かっていた。この地の領主、グラヴィアス卿の邸宅は豪華なものだったが、帝都軍を敷地内にまるまる収容できるほどのものではなかった。山腹に沿ってテントが並び、兵士たちはみな卿自慢の温泉に行くのを楽しみにしていた。それもそのはず、そこにはまだ冬の空気が立ち込めていた。 「陛下、ジュイレック王子のご気分がすぐれないようです」 支配者ヴェルシデュ・シャイエに声をかけられ、皇帝は飛び上がった。このアカヴィルが草地の中、一切の音を立てずにどうやって近づいてきたのか不思議だった。 「毒に違いない」と皇帝はつぶやいた。「早急に治癒師を手配しろ。いくら給仕が反対しても、息子にも私のように毒味役をつけるのだ。いいか、我々の周りにはスパイが大勢いることを忘れるな」 「そのように取り計らいます、陛下」とヴェルシデュ・シャイエは答えた。 「現在 政局は非常に不安定でございます。モロウウィンドでの戦いに勝利するためには、戦場に限らず、いかようなる手にも用心するにこしたことはございません。それ故、私が申し上げたいのは、陛下にこの戦いの先陣から退いていただきたいのです。陛下の輝ける先人、レマン一世、ブラゾラス・ドール、レマン二世がそうしたように、陛下も先陣を切りたいというお気持ちは重々承知でございます。しかし、あまりにも無謀ではないかと思われます。私のような者の言葉にどうかお気を悪くなされないでください」 「さようか」と皇帝はこの意見に賛同の意を表した。「しかし、それでは私の代わりに誰が先陣を切るというのだ?」 「お身体が回復されれば、ジュイレック王子が適任かと。もしだめなら、左翼にファーランのストリグとリバーホールドのナギー女王を、右翼にリルモスの将校ウラチスではいかがでしょう」とシャイエは言った。 「左翼にカジート、右翼にアルゴニアンをあてがうだと?」と皇帝は顔をしかめた。「私は獣人を信用しておらん」 皇帝の言葉をアカヴィルはまったく気に留めなかった。皇帝の指す「獣人」とはタムリエルに住む原住民を意味するものであり、彼のようなツァエシとは別であることを十分に承知していたからである。「陛下のお気持ちは分かります。しかし、彼ら獣人がダンマーを嫌っていることをお忘れなく。特にウラチスは領地の奴隷がみなモーンホールドのデューク率いる軍隊に襲われたことを恨んでいます」 それを聞いた皇帝は渋々納得し、ヴェルシデュ・シャイエは下がっていった。皇帝は驚いたが、この時初めてヴェルシデュ・シャイエが信頼に足る人物、味方として優秀な人物であると思えた。 2920年 蒔種の月18日 アルド・エルファウド (モロウウィンド) 「今、帝都軍はどのあたりに?」と、ヴィヴェックは尋ねた。 「2日の行軍でここへ辿り着きます」と、副官は答えた。「我々が今晩夜通し行軍を進めれば、明朝にはプライアイの小高い場所へと辿り着けるでしょう。情報によりますと皇帝は軍の殿を務めることになり、ファーランのストリグが先陣を、リバーホールドのナギーとリルモスのウラチスがそれぞれ左翼と右翼につくそうです」 「ウラチスか……」とヴィヴェックはつぶやいたが、ある考えが浮かんだ。「ちなみにその情報は信用してよいのだな? その情報はどうやって手に入れたのだ?」 「帝都軍に潜んでおりますブレトンのスパイです」と副官は答え、砂色の髪をした若い男に、前に進み出るよう促した。ヴィヴェックの前へ出たその男は頭を下げた。 ヴィヴェックは微笑んで、「名はなんと言う? なぜにブレトンがシロディールと戦う我が軍のために働くのだ?」と尋ねた。 「私はドワイネンのキャシール・オイットリーと言います。この軍のために働いているとしか申し上げられません。諜報活動を行なう者はみな神のために働いているとは言いかねるからです。はからずも私はこの仕事のおかげで食べていけております」と男は答えた。 ヴィヴェックは笑って、「お前の情報が正しければそうであろうな」と言った。 2920年 蒔種の月19日 ボドラム (モロウウィンド) ボドラムの閑静な村からは、曲がりくねった河、プライアイを見下ろすことができる。それは非常にのどかな風景で、ささやかに木が生い茂り、河の東には険しい崖に囲まれた渓谷、西には美しく彩られた花々が咲きほこる牧草地が広がる。モロウウィンドとシロディールの境界でそれぞれの珍しい植物が出会い、見事にまじりあっていた。 「仕事が終われば、あとはたっぷり眠れるぞ!」 兵士たちは毎朝この一声で目覚めた。夜な夜な続く行軍だけでなく、崖に切り立つ木々をなぎ倒したり、溢れかえる河の水をせき止めたりしなければならなかった。彼らの多くは、疲れたと文句を言うこともできなくなるほど疲労困憊であった。 「確認しておきたいのですが……」とヴィヴェックの副官は聞いた。「崖道を進めば敵の上から矢や呪文で攻撃することができる。そのために木々をなぎ倒すのですね? 氾濫する河をせき止めるのは、敵の動きを封じ込め、泥沼の中で立ち往生させるためですよね?」 「半分は当たっておる」とヴィヴェックは満足げに答えた。ちょうどなぎ倒した木を運んでいた近くの兵をつかみ、「待て。その木の枝から真っ直ぐで丈夫な枝を選び抜き、それをナイフで削って槍を作るんだ。100人ぐらいの兵を集めてとりかかれば、我々が必要とする量は2─3時間で作れるだろう」 そう命じられた兵士はいやいやながら従った。他の者も作業に加わり、槍をこしらえた。 「このような質問は失礼かもしれませんが……」と副官は聞いた。「兵士たちにはこれ以上の武器は必要ないのではありませんか? 疲れている上、もうこれ以上の武器を持てやしません」 「あの槍は戦いで使うために作らせているのではない」とヴィヴェックはささやいた。「兵士たちを疲れさせておけば、今夜はぐっすり眠れるからな」ヴィヴェックが兵士たちを指揮する仕事に取り掛かる前によく眠っておけということだ。 ところで、槍というものは先端が鋭いのは当然のことながら、全体の重量とのバランスも大事である。最もバランスのとれた槍の先端部分には、よく見られる円錐形ではなくピラミッド型が望ましい。ヴィヴェックは槍の強度や鋭さ、安定さを測るため兵士に投げさせ、壊れれば新しいものを渡し、測定をくり返した。こうして兵士たちは疲労を抱えながらも槍の良し悪しを身をもってわかるようになり、最高の槍を作りだせるようになっていく。一度投げてみてから、ヴィヴェックは兵士たちにこの槍をどこにどのように配置するかを指示した。 その夜は戦の前日に行なわれる酒盛りもなければ、新米兵士たちが眠れず夜を明かすこともなかった。陽が落ちると同時に見張りを除いて皆が眠りに落ちた。 2920年 蒔種の月20日 ボドラム (モロウウィンド) ミラモールは疲れていた。この6日間、彼は賭博へ売春宿へと夜通し遊び回り、昼は昼で行軍を続けていた。ミラモールは戦いの日を待ち望んでいた。しかし、何よりも待ち望んでいたものは戦いのそのあとの休息だった。彼は皇帝指揮下の後方部隊についており、そこが死から一番遠い場所であるのは良かったが、一方で前方の兵士がこしらえたぬかるみだらけの泥道を歩かなければならず、寝坊してしまえば隊から取り残されてしまう危険性もあった。 野生の花々が咲き乱れる中を進むも、ミラモールたち兵士の足元は足首まで冷たい泥に浸かっていた。進むのには骨が折れた。ストリグ卿に指揮された軍の先陣ははるか遠く、崖のふもとの草地に見えた。 その時だった。 崖の上に、昇り行くデイドラのごとくダンマーの軍隊が現れ、たちまちに砲火と矢の雨が先陣に降りそそいだ。その時、モーンホールドのデュークの旗を掲げた一団が馬に乗って岸辺へ飛び出してきたかと思えば、東の谷間の木立へと続く浅瀬の川べりに沿って消えていった。右翼を固めるウラチスはそれを見るや怒号を上げて追跡した。ナギー女王は崖の軍隊に補足するため、自分の軍を西の土手に進ませた。 皇帝はどうしたらよいか分からなかった。彼が率いる後方部隊は泥道にはまってしまい、前に素早く動けず、戦いに参加できないのだ。しかし彼はモーンホールドの軍に包囲されまいと、東の森林に向け突き進むよう命じた。モーンホールドの軍とは出くわさなかった。しかし、ほとんどの兵士は戦いを放棄し、西へ向かっていた。ミラモールは崖の上を見ていた。 そこで背の高いヴィヴェックと思しき一人のダンマーが合図を送った。その合図を受けた魔闘士たちは西の何かに向かって呪文を発した。何かが起こった。ミラモールはそれをダムのようだと思った。ものすごい激流が左翼のナギー女王を先陣へと押し流し、そのまま先陣と右翼の隊は東へと流されて行った。 打ち負かされた軍が戻って来るのではないかと皇帝はしばらく立ち止まっていたが、すぐさま退避を命じた。ミラモールは激流がおさまるまで急いで身を隠し、それから出来るだけ静かに急いで崖を渡った。 モロウウィンドの軍は野営地まで退いていた。ミラモールが河岸に沿って歩いていると、頭上から彼らが勝利を祝う歌声が聞こえてきた。東の方には帝都軍が見えた。兵たちは河にかけられた槍の網に引っかかり、下からウラチスの右翼軍、その上にストリグの先陣、さらにその上にナギーの左翼軍の兵たちが数珠つなぎに刺さっていた。 ミラモールはその死体のポケットや荷物を漁り、金目のものを探していたが、すぐにその場を離れ河を下りて行った。水が血で汚れていないところに行くまでは、何マイルも先へと進まなければならなかった。 2920年 蒔種の月29日 ヒゲース (ハンマーフェル) 「帝都からあなた宛にお手紙が届いてるわよ」尼僧長はそう言いながらコルダへ羊皮紙を渡した。若い尼僧たちは笑みを浮かべながらも驚いた表情をしていた。コルダの姉、リッジャは頻繁に、少なくとも月に一度は手紙を書いてよこすのだった。 コルダは手紙を受け取り、お気に入りの場所、庭で手紙を読もうと出て行った。そこは砂色で単調な修道院の世界の中で唯一のオアシスであった。手紙自体には大した内容は書かれていなかった。宮廷内のゴシップや最新の流行ファッション(ちなみにワインダーク色のベルベット素材が流行るらしい)、ますますひどくなる皇帝の妄執などについてであった。 「あなたはこんな生活から離れて暮らせて本当にラッキーよ」とリッジャは綴っていた。「皇帝はどうやら最近の戦での大失敗は身内にスパイが潜んでたせいと確信してるみたい。私まで疑われる始末よ。ラプトガ様があなたにあたしと同じようなおかしな生活を送らせませんように」 コルダは砂の音に耳をそばだて、ラプトガにまったく逆の祈りを捧げた。 時は恵雨の月へと続く。 物語(歴史小説) 茶2
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/141.html
黒い矢 第2巻 ゴージック・グィネ 著 私が女公爵の邸宅で従事した最後の晩餐会には、驚いたことに、モリヴァ村長とヒオメイストが他の客と共に招かれていたのである。召使いたちは噂話に夢中である。村長の訪問は以前にもあったが、非常に稀である。しかし、ヒオメイストの出席は考えられなかった。女公爵のこのような行為は、何を意味しているのだろうか? 他の会食に比べればいささか冷たい雰囲気が漂っていたが、晩餐会そのものは滞りなく首尾よく進んでいた。ヒオメイストも女公爵も、口数は共に非常に少ない。皇帝ペラギウス四世に新しく生まれた息子と後継者であるユリエルについて、一同に議論を投げかけようとした村長であったが、その試みは人々の興味を余り惹かず失敗に終わってしまった。すると、ヴィルア卿婦人── 年上ではあったが、妹の女公爵よりも快活である── が、エルデン・ルートでの犯罪とスキャンダルとについて水を向けた。 「ここ数年、情勢が悪くなっているから、エルデン・ルートから離れるよう姉に言ったんです」と言って女公爵は村長と目を合わせた。「つい最近もモリヴァ丘に彼女の邸宅を建てられないか、そのことを話し合ったばかりです。でも、ご存知の通り、あそこはスペースが足りないでしょう? でも運よく、良いところを見つけました。ここから数日ばかり西の方の川岸の広い野原で、本当に理想的なところです」 「それは非常に結構ですね」と、言って村長は微笑むと、ヴィルア卿夫人の方に顔を向けた。「建設はいつから始められますかな?」 「その場所にあなたの村を移した、その日からね」とウォダ女公爵は言葉を返した。 村長は女公爵が冗談を言っているのだと思って彼女を見た。しかし冗談ではなかった。 「川岸に村を移したら、どれほど商益が上がるか考えてみてください」とヴィルア卿夫人は陽気に言った。「それに、ヒオメイストの学生たちも、その素晴らしい学校に通い易くなるでしょう? みんなのためになるんですよ。そうすれば、妹の土地を勝手に踏み荒らす者も少なくなり、心安らかになれるでしょうね」 「今はあなたの土地に入り込むようなものたちはいませんよ」とヒオメイストは顔をしかめた。「このジャングルはあなたのものではありませんし、いずれそうなることもありませんでしょう。村人たちがここを出て行くよう説得されるのは構いませんが、私の学校が移ることはありませんよ」 それから、晩餐会が和やかな調子に戻ることは決してなかった。ヒオメイストと村長が中座を申し出て、一同も客間に酒を求めて出て行き、私が呼ばれることもなかった。その夜は、壁越しに笑い声が漏れてくることはなかった。 翌日、その夜も夕食会が予定されていたが、いつものように私はモリヴァへと足を運ぼうとしていた。しかし、跳ね橋に差し掛かる前に、衛兵が私を連れ戻して言った。「何処に行くんだ、ゴージック? まさか村じゃないだろうな?」 「どうして行けないの?」 彼は遠くに立ち昇る煙を指さした。「今朝早くに火事が起きて、今も燃えてる。どうやら出火元はヒオメイスト学校だ。山賊の仲間の仕業だろうな」 「ステンダールよ!」と私は叫んだ。「学生は大丈夫ですか?」 「分からないが、生き残ってたら奇跡だろうな。未明の出来事で、ほとんどみんな寝入ってただろうからね。師匠の遺体、いや、『師匠だったもの』は見つかったそうだよ。それに、君の友達の女の子、プロリッサの遺体もね」 その日は失意のうちに過ごした。そんなことはありえないとは思ったが、私はあの2人の老貴族、ヴィルア卿夫人とウォダ女公爵が村と学校にいらだちを覚え、それらを灰にしてしまおうと企んだのではないかと直感した。夕食の席では、たいしたニュースでもないかのように、モリヴァでの火災についてほんの少し触れるだけであった。しかし、私は初めて女公爵が笑うのを見たのである。その笑顔を、私は死ぬまで決して忘れないであろう。 翌朝、私は村に行って、生き残った人々の手伝いが何かできないか見に行ってみることに決めた。召使いの間を抜けて豪華なロビーに差し掛かったところで、前の方から何人かの声が聞こえてきた。そこには衛兵とほとんどの召使いが集まっていて、ホールの中央に掛けられている女公爵の肖像画を指さしていた。 肖像画の女公爵のまさに心臓の位置を、1本の黒檀でできた矢が刺し貫いていたのである。 私はすぐに気づいた。それはミッソン・エイキンのものだ。彼が見せてくれた矢筒の中にあった1本、彼いわく、ダゴス・ウルで鍛え上げられた代物である。私はまず最初に安心した。親切に自分を邸宅まで乗せて来てくれたダンマーは、生き残っていたのだ。そして次に、玄関に集まった一同と同じことを考えた。どうやって、衛兵、門、堀、そして、分厚い鉄の正門を突破できたのだろうか? 私のやや後から来た女公爵は、明らかに激怒していたが、育ちの良さからか、その薄い眉を上げてみせただけであった。早急に召使い全員に、始終、邸宅の敷地を警備するよう新たな仕事を命令した。私たちは普段の仕事に加えて、厳重な警備を敷くことになった。 翌朝、この厳戒態勢にも関わらず、新たな黒い矢がまたも女公爵の肖像画を刺し貫いた。 こんなことが一週間も続いた。ロビーには少なくとも一人の人間を置くようにしていたが、どういうわけか、ほんの一瞬警備のものが目を離した隙に、いつも、矢が絵のところで発見されるのであった。 警備する者たちの間で、寝ずの番の間に聞いた物音や不審な出来事を知らせるよう、一連の複雑な合図が考案された。最初は、日中の不審な出来事の報告は城主が、夜間の出来事の報告は衛兵隊長が受け取るように取り決められた。しかし、女公爵は夜眠れないということなので、結局彼女に直接伝えることになった。 邸宅の雰囲気は、陰気から悪夢へと変わっていった。1匹の蛇が這い、堀を渡るのが目に入ったら、ウォダ女公爵は一目散に東の翼面に駆けて行き、丹念に調べ上げた。一陣の突風が芝生に生える木々の1本の葉をざわめかせただけでも、やはり「緊急事態」扱いだった。不運だったのは、偶然1人で邸宅の前を歩いていた旅行者たちである。彼らに何の罪も無いのは明白であるにも関わらず、まるで戦争に遭遇したように暴力が振るわれた。確かにある意味、戦争であった。 そして毎朝、彼女をあざけるかのごとく、正面玄関には矢が突き刺さっていた。 ある早朝の数時間、肖像画を警備する嫌な仕事に私も駆り出された。もう矢が見つからなければ良いのにと思いながら、その肖像画の正反対に置かれた椅子に腰掛けて、私は一瞬でも目を離さないようにした。ところで、読者には1つのものを眺め続けるという経験はあるだろうか? それは奇妙な効果を生むものであった。ほかの全ての感覚が消え失せてしまうのだ。そのため、部屋に駆け込んできた女公爵が私と肖像画の間に立ちはだかった時には、驚いたものであった。 「門からの道のむかいの木の陰で何かが動いているのよ!」と彼女はわめいて、私を脇に追いやり、おたおたと金色の鍵をかけ始めた。 彼女の体は乱心と興奮に震えて、鍵は上手くかからない。手を貸そうと彼女に近づいた時には、すでに女公爵の目は鍵穴を見つめてひざまづいていた。鍵は入ってくれたようである。 まさに、その瞬間、矢が到達した。しかし、決して肖像画まで届かなかった。 それから数年後、私がモロウウィンドで貴族を楽しませている頃、ミッソン・エイキンに再会した。私が邸宅の召使いから、名の知れた吟遊詩人に出世していたことに、彼は感心していた。彼自身はアシュランドに帰り、彼の師匠であるヒオメイストのように引退して、教師兼狩人という簡素な生活を送っていた。 ヴィルア卿夫人は街を移さないことを決め、モリヴァの村は再建されたそうだと、彼に話した。それを聞いて彼は喜んだが、私が本当に知りたかったことを尋ねるきっかけは見つけられなかった。自分の考えは馬鹿げていると思ったからだ。つまり、あの夏の毎朝、門に対して道を挟んだところに生えていたプロリサスの木の陰から、門と芝生と堀と鍵穴を通り抜け、ウォダ公爵の肖像画へと矢を放ち、最後には、彼女自身にも矢を放ったということだ。そんあことは明らかに不可能である。私は聞かないことにした。 その日の内に別れたが、彼はさよならと手を振って、こう言った。「ゴージック、元気にやってそうでなによりだ。あの時は椅子を動かしてくれてありがとう」 茶2 随筆・ルポルタージュ
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/32.html
第三の扉 アンアナー・オルム 著 Ⅰ. 私は唄う、斧の女王、エラベスの唄 手斧1本、二振りで、エルムの木も真っ二つ。 楽しむだけで、ヴァレンウッドも更地同然。 テル・アルーンに居たときに、アルヘデイルに教わった。 突きに打撃に立ち回り、全部教えてもらえたの 斧の華麗な躍らせかたを。 彼は色々教えたわ、オークの棘つき斧のこと ウィンターホールド大好きな、6フィートの巨大斧 西のエルフはくりぬき斧で 肉を切り裂き、口笛の音。 片刃の斧で頭2つ 両刃の斧なら10個は並ぶ。 暮らすところは伝説どおり 彼女の心を大斧で、断ち割った人と一緒に暮らす。 Ⅱ. ニエノラス・ウルワース、偉大な男は生まれも育ちもブラックローズ 斧の勝負でエラベスに、勝れる唯一の男だわ 木を切る勝負を1分間、彼女は50、彼53。 その時彼しか見えなくなった。 告白したら、彼ただ笑った。 彼は言う、斧の取っ手が彼の恋人。 それで欲望満たないときは ロリンシエという別の女性。 怒り渦巻く斧の女王 何か楽しい殺しかた 耳でささやくメファーラと、計画授けるシェオゴラス 夢見る気分で数週間、準備するのに大忙し。 競争相手を夜誘拐 死ぬか生きるか決めさせる。 Ⅲ. 沼地の家で目覚めると がらんとした家、三つの扉。 エラベス少女にこう言った。 1つの扉の裏側に、2人が愛するニエノラス。 1つの扉の裏側に、飢えた魔族が棲んでいる。 1つの扉の裏側に、自由に続く道がある。 エラベス少女にこう言った、1つの扉選びなさい 彼女の決断助けるために、選ばなかったら斧が決めると。 ロリンシエ泣いて、エラベス後悔 右の扉を開け放つ。 沼地に続く道があり、暗闇の中を走り去り ロリンシエにも部屋を出ろと。 聞かない振りしたロリンシエ、彼女の意思は固かった。 扉を開けたロリンシエ、ニエノラスがだいたい立っていた。 Ⅳ. エラベス嘘つき、魔族はいない。 第三扉の裏側に、ニエノラスの上半分。 茶2 詩歌
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/248.html
レマナーダ 第1章:サンクレ・トールとレマンの誕生 その時代にはシロディールの帝都は死して、記憶の中に残るのみとなっていた。戦乱とナメクジによるがごとき飢えと不道徳な支配者たちにより西が東から分離し、コロヴィアの別離が四百年にも及び、大地がこの別れにより病んでいたからである。かつては偉大であった西方のアンヴィルとサーカル、ファルクリアスとデロディールの王たちは、傲慢と慣れにより盗賊の王のごとき存在となり、盟約を忘れてしまった。国の中核においても状況は大差なく、神秘師や偽の聖蚕の王子たちが薬で正気を失うか邪なるものの研究に没頭し、玉座に座る者が不在の時代が何世代も続いた。蛇および蛇の警告は無視され、大地は亡霊や冷たい港の深き穴により血を流した。王者の栄光の証であるキム=エル・アダバルの護符でさえ失われ、人々はそれを見つけようとする理由すら見出せなかったといわれている。 このような闇の中でフロル王は、いずれも西方の息子たちや娘たちからなる、十八より一人少ない騎士たちを引き連れ、失われしトウィル以遠の地から出立したのであった。フロル王は啓示の中で来たるべき蛇たちを目の当たりにし、先人たちの描いた境界線を全て癒せればと考えたのである。そんな彼の前にようやく、太古の時代の女王であるエル=エスティアその人に似た精霊が現れた。その左手にはアカトシュの竜火を持ち、その右手には盟約の玉石を持ち、その胸には傷があり、その押し潰された両足に虚無をこぼし続けていた。エル=エスティアおよびキム=エル・アダバルを目にしたフロル王とその騎士たちは嘆き悲しみ、跪いて全てが正されるよう祈った。精霊は彼らに語りかけ、我は万人の癒し手にして竜の母であるが、汝らが幾度も我から逃れたように、我も汝らが我が傷み、すなわち汝らとこの地を殺すそのものを知るまで、汝らから逃れることにする、と口にした。 そして精霊は彼らから逃れ、彼らは悪党と成り果てた自らを嘆きながら、手分けをして丘の間や森の中を探したのであった。彼女を見つけたのはフロル王とその従士の二人だけで、王は精霊に語りかけた。美しいアレッスよ、聖なる雄牛とオーリ=エルとショールの美しき妻よ、私は汝を愛している、そして再びこの地に息吹を吹き込まんと欲す。それも痛みを通じてではなく、盟約の竜の火への回帰をもって、東と西を統一させ、滅びを捨て去ることで。そして王の従士は見た、精霊が王に肌を曝し、近くの岩に「そしてフロルは丘にて愛した」と刻み、契りの場を目の当たりにしながら死んでいくのを。 残りの十五人の騎士たちがフロル王を見つけた時、王は泥の山にもたれかかり、果てていた。彼らはそこで道を別ち、何人かは正気を失い、トウィルの向こうにある故郷へと帰り着いた二人はフロルのことは口にせず、彼のことを恥と感じ続けた。 だが九ヶ月を過ぎると、かの泥の山は小さな山となり、羊飼いや雄牛たちの間でささやき声が聞こえた。丘が成長し始めて間も無い頃に少数の信者たちがその周囲に集まり、それを金の丘、「サンクレ・トール」と名づけた。そして彼の産声を耳にした羊飼いのセド=イェンナが丘を登り、その頂上にて丘から生まれし赤子を見つけ、「人の光」を意味するレマンと名づけたのであった。 そして赤子の額にこそキム=エル・アダバルがあり、ありし日の神に約束されし竜の火が燃えさかっていた。そしてセド=イェンナが白金の塔の階段を上るのを邪魔する者はおらず、彼女が赤子レマンを玉座に置くと、彼は成人のごとく言葉を発し、「我こそシロディールなり」と口にした。 第2章:騎士のレナルド、豚の剣 玉座が空位となった時期にて、蛮行に身を落とした王たちのくだらぬ紛争の中で、キム=エル・アダバルは再び失われた。西と東が結ばれることはなく、他の地はいずれもシロディールを蛇そして蛇のごとき人々の巣と見なしていた。そして以後四百年もの間、レマンの玉座は別たれたままとなり、忠実なる騎士たちの一団の画策のみが国境の崩壊を防いでいた。 この忠実なる騎士たちは当時名を名乗ることはなかったものの、その東方由来の剣と塗られた目で知られ、かつてのレマンの近衛隊の末えいであると噂された。その中の一員であるレナルドと呼ばれる騎士がクーレケインに力を見出し、戴冠までの道を手助けしたという。後になって初めて、レナルドがそうしたのが嵐冠の神ことタロス、当時の栄えある皇帝タイバー・セプティムに近づくためであったことがわかり、またさらに後に、レナルドが豚に師事していたことがわかった。 竜の旗の騎士たちには長きに渡る栄光こそが妻の役割を担っていた。彼らは他の者を知らず、かつて多くの海の向こうにて兄弟であり、今やペイル・パスの剣の降伏と呼ばれた法のもとで兄弟であった。吸血鬼の血を引くこの兄弟である騎士たちはレマン以後も何世代にも渡って生き長らえ、その寵児であったとぐろの王、ヴェルシデュ・シャイエを守り続けた。蛇の隊長のヴェルシューがレナルドとなり、そして黒き投げ矢がサヴィリエン・チョラックに食い込んだ際には北西の守護者となった。 [このあたりでページが破かれていることより、この古代の書物の残りの部分が失われていることがうかがえる。] 歴史・伝記 赤3
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/259.html
重装鎧の修理 重装鎧は罰を多く受けるために設計されたに違いない。着用者を守りながらも、あらゆる武器の攻撃を直接受け止めることになる。この鎧は軽装鎧のようなたくさんの細かな部品より、少量の大きい部品をつなぎ合わせて作られることが多い。 鉄と鋼は扱いが簡単である。熱するだけで形を整えられるからだ。修繕する時は焚き火程度の火力でも間に合う。この時、金属以外のものを加えるのは避けるべきだ。同時に、金属は常に節約するように心がけ、修繕していかなければならない。 もし何度も鍛造しなければならない場合、その部品は壊れやすくなる。大掛かりな修繕が終わった後、鎧を何度も加熱しておけば、壊れやすくなるのを防ぐことができる。鍛造が終わったら、必ず油の中につけておくこと。鍛造されたばかりの表面はさびやすいので、予防する必要がある。 ドワーフ製やオーク製の鎧を扱う場合、ハンマーを小さいものと大きいものの2種類用意したほうがいい。オーク製の鎧を加熱するときは慎重に行うこと。両方とも、ハンマーで少ない回数、思い切り叩くのではなく、小さいハンマーでたくさん、こつこつと叩くのが良い。 黒檀の鎧は熱した時のみ鍛造する。冷えているときに鍛造すると、小さな裂け目ができてそこから粉々に壊れてしまう可能性がある。デイドラ製の鎧は夜間に扱うのがいい…… 理想を言えば満月の下で。日食の間は絶対に避ける。赤い収穫の月の夜が最高である。 兵法・戦術 茶4
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/240.html
人類の誕生以前 シムレーンのアイカンター 著 人類がタムリエルを支配するようになる前、または歴史学者たちがタムリエル支配者の出来事を記録した年代記より以前の世界の出来事は、神話や伝説を通して、もしくは神々しくも見事な九大神教団の教義を通してでしか知ることができない。 便宜上、歴史学者たちは先史以前をさらに2つの長い期間に分ける── 深遠の暁紀、そして神話紀である。 深遠の暁紀: 深遠の暁紀は人類の始まる前の、神々の偉業が起こっていた時代である。深遠の暁紀は、アダマンチンの塔を設立しようとする世界から神々と魔法が大量に集団流出して終焉を迎えた。 “Merethic”という言葉は、ノルド語の文字通り「エルフの時代」から来ている。神話紀とは、アダマンチンの塔を設立する世界から神々と魔法が大量に集団流出した後から、タムリエルにノルドのイスグラモルが出現するまでの先史時代である。 この後は深遠の暁紀でもっとも目を引く出来事、つまり我々のような時代の産物とされる生き物の出現が起こることになる。 宇宙はアヌとパドメイのオルビス(混沌、もしくは全体)から形成された。アカトシュ(オリエル)が生まれ、「時」が始まった。神々(霊)が生まれた。ロルカーンは神々を説き伏せ──もしくは欺き─ 定命の次元、ニルンを創造させた。定命の次元はこの時、魔力の高い危険な場所であった。神々が歩くと、定命の次元と永続する全存在物そのものが不安定となった。 「定命の世界」を設計する建築家、魔法(マグナス)はその計画を終結させることを決め、神々はアダマンチンの塔(ディレニスの塔、タムリエル最古の建造物)に集結し、なにをすべきかを決めた。魔法が世界を終結させると、ほとんどの神はこの地を去った。残ったものは自分自身をほかのものへと形成し、現在もその地(エールノフェイ)に留まっている。ロルカーンは神々から非難を受け、定命の異世界へと追放された。彼の心臓は引き裂かれ、アダマンチンの塔から投げられた。そのかけらが地に降り立つと、火山が出来上がった。魔法(深遠の感覚能力)により、宇宙は安定された。そこから最終型である11の歴史が始まった(神話紀2500年)。 神話紀: 初期のノルドの学者によって、神話紀の年月は「時の始まり」── キャモラン王朝の設立、第一紀の0年度と記録される── から後方へと逆順することが解明された。神話紀に起こった先史の出来事は、彼らの伝統的なノルドのエルフ日付で記されている。ハラルト王の学者たちによって引用されるもっとも最初のエルフ日付は神話紀2500年である。これをノルド人は最初の年とみなしている。このように、神話紀は一番古い年である神話紀2500年から神話紀1年── キャモラン王朝設立の1年前、独立する都市国家として白金の塔を設立── まで続いた。 ハラルト王の吟遊詩人によると、神話紀2500年にはハイ・ロックのバルフィエラ島にタムリエル最古の建物として知られるアダマンチンの塔の建設が始まった(これは数々の未未発刊のエルフ年代記に記されている、歴史的には大体最古の日付である)。 神話紀初期には、タムリエルの先住民にあたる獣人── カジート、アルゴニアン、オークそのほかの獣人の祖先── がタムリエルのいたる所、文字を持たない社会で生活していた。 神話紀中期には、アルドメリ(エルフの始祖である人間)の難民が、破綻の運命に追いやられた今はなきアルドメリ大陸(「旧エールノフェイ」としても知られる)を去り、タムリエル南西部へと移り住んだ。最初の居住地はタムリエルの海岸線に沿って、広い間隔を取って形成された。後に、タムリエル南西部と中心の方の肥沃な土地に最初の内陸集落が見つかる。獣人がエルフに遭遇し、その洗練された、教養のある、科学的にも発展したアルドメリ文化は、原始的な獣人をジャングルや沼地、山、荒地へと追いやった。アダマンチンの塔は突出して強大な力持つアルドメリ一族のディレニに再発見され、支配された。サムーセット島に水晶塔が建てられ、のちに、シロディールの白金の塔となった。 神話紀中期には、アルドメリの探検家がヴァーデンフェル海岸の地図を作り、第一紀にはハイエルフのウィザードの塔をモロウウィンドのアルド・ルダイニア、バル・フェル、テル・アルーン、テル・モラに建てた。白金の塔(現在のシロディール)のまわりのジャングルにアイレイド(野生のエルフ)の集落が栄えたのもこの時代であった。ハートランドハイエルフとしても知られる野生のエルフは、深遠の暁時代の魔法やエールノフェイの言葉を維持した。表面上、アリノール高王へ捧げられた土地であったが、サムーセット島の独立国とハートランドの長きにわたる関係が、事実上、シロディールを水晶塔にいる高王から引き離していた。 神話紀中後期は高貴なヴェロシ文化の時代であった。現代のダンマーやダークエルフの祖先であるチャイマーは、力強く、野望に満ち、長命なエルフの一族であって、原理主義な祖先崇拝を信奉していた。チャイマー一族は預言者ヴェロシに従い、南西部にあった代々受け継いだエルフの祖国を離れ、今のモロウウィンドに当たる土地に移り住んだ。チャイマーは現世的な文化やドゥーマーの俗悪な慣習を嫌い、またドゥーマーの土地と資産を欲しがったため、何世紀にも渡って小競り合いや領土争いが起こった。自由な発想を持ち、人里はなれたところに住むエルフ一族のドゥーマー(ドワーフ)は科学の謎や工学技術、錬金術に力を注ぎ、現代のスカイリムやモロウウィンドから離れた山脈(のちのヴェロシ山脈)に地下都市や地域社会を築き上げた。 神話紀後期はヴェロシ文化の急落が目立つ。ヴェロシの中には、傾き、放置された古代ヴェロシ塔のそばにある村に移り住むものもいた。この時代、ヴァーデンフェル島からヴェロシの文化は消え去った。ドゥーマーの初期のフリーホールド植民地国家がこの時代から起こり始める。堕落したヴェロシは部族文化へと移行し、やがて現代のモロウウィンドの王宮へと発展し、一方では野蛮なアシュランダー種族へと存続していった。この種族文化が唯一残したものは、ばらばらに崩壊したヴェロシ塔とヴァーデンフェル島のアシュランダー遊牧民である。タムリエルの海岸に沿って建てられた、第一紀ハイエルフウィザードの塔もまたこの時代に打ち捨てられることになった。 またこの頃、文字を持たない人々、いわゆる「ネディックの人々」がアトモラの大陸(アルドメリ語で「アトモラ」、もしくは「エルダーウッド」)から移住して、タムリエルの北部に定住した。ノルドの英雄、タムリエルへの巨大植民地軍の先導者であるイスグラモルはエルフ理念に基づいてノルド語のルーン文字を翻字、発展させたことで高い評価を得ている。またイスグラモルは人類初の歴史学者とも考えられている。イスグラモルの軍はスカイリムのブロークン・ケイプの最北端にあるヒサアリク・ヘッドへと上陸した。ノルドはそこに伝説都市サールザルを建てた。エルフは人間を「涙の夜」の時に追い出したが、イスグラモルはすぐに500の仲間を引き連れて戻ってきた。 神話後期にはまた、伝説となった不死の英雄で、戦士で、魔術師で、国王である、ペリナル・ホワイトストレーク、ハラルド・ヘアリー・ブリークス、イスミール、ハンズ・ザ・フォックスなどの名前で知られる人物が、タムリエルをさまよい歩き、武器を集め、土地を征服していき、統治し、そのあと自ら築いた王国をぶち壊し、再びさまよい歩くのであった。 歴史・伝記 茶2
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/73.html
バレンジア女王伝 第3巻 スターン・ガンボーグ帝都書記官 著 第2巻では、バレンジアが新たに建てられた帝都に温かく迎えられ、一年近くの間、まるでずっと行方の知れなかった娘のように、皇帝一家から愛されたところまでを紹介してきた。数ヶ月間、帝都領地の女王としての義務と責任を学んだあと、シムマチャス将軍が彼女を護衛してモーンホールドへ送り届けた。この地でバレンジアはシムマチャスの手引きを得て女王として国を治めた。そして彼らは少しずつお互いを愛するようになり、やがて結婚した。彼らの結婚と戴冠を祝う盛大な式では、皇帝自らが司祭として儀式を執り行った。 数百年の結婚生活を経て、息子ヘルセスが生まれ、祝賀と喜びの祈祷で迎えられた。後になってわかったことだが、このめでたい出来事の直前、モーンホールド鉱山の奥から混沌の杖が持ち去られていた。盗んだのは謎めいた吟遊詩人で、ナイチンゲールと呼ばれた男だった。 ヘルセスが生まれてから8年間、バレンジアは娘を生んだ。シムマチャスの母親の名をとってモルジアと名づけられた。夫婦は幸せに満ちていた。しかし、その直後、不可解な理由から帝都との関係が悪化し、モーンホールドに不穏な空気が漂い始めた。原因究明と関係修復の努力は無駄に終わり、バレンジアは子供たちとともに帝都へ行き、皇帝ユリエル・セプティム七世と直接話すことにした。シムマチャスはモーンホールドに残り、不満を訴える領民や不安がる貴族たちに対応し、反乱を食い止めることになった。 皇帝との謁見の際、バレンジアは魔力を使って皇帝の正体を見抜き、その瞬間、恐怖と困惑に襲われたのであった。なんとあの混沌の杖を盗んだナイチンゲールではないか! だが彼女はつとめて平静を装った。その夜、シムマチャスは農民の反乱に敗れ、モーンホールドは反逆者の手に落ちた。バレンジアは誰に助けを求めたらよいのか途方にくれてしまったのだった。 だが、まるで今までの不運を埋め合わせるように、天はその運命の晩、彼女に味方した。皇帝とシムマチャス両方の旧友であるハイ・ロックのイードワイヤー王が訪問してきたのであった。彼はバレンジアを慰め、友情と協力を誓い、彼女の言うとおり皇帝が偽者であると断言した。皇帝になりすましているのは帝都軍の魔闘士ジャガル・サルンであり、ナイチンゲールは彼が持つ様々な顔の一つであるという。ターンは隠居し、彼の任務は助手リア・シルメインが引き継いだと言われていたが、そのリアは後に謎の死をとげたのであった。どうやらなんらかの事件との関連が疑われ、処刑されたこになっていた。しかしリアの亡霊はイードワイヤーの夢に現れ、真の皇帝はターンに拉致され、別次元に監禁されていると告げたのだった。そのことを元老院に知らせようとした彼女は、ターンに混沌の杖で殺されたのである。 イードワイヤーとバレンジアはともに、偽皇帝の信頼を得るために画策した。そのころ、偉大な力を秘めたチャンピオンという名でしか知られていないリアのもうひとりの仲間が、帝都の地下牢に閉じ込められていた。リアは彼の夢に現れ、逃走の準備が整うまで待つように告げるのであった。こうして、彼は偽皇帝を倒す計画を練り始めたのだった。 バレンジアは引き続き偽皇帝に近づき信頼を得た。彼の日記を盗み読みし、混沌の杖を8等分にして、それぞれをタムリエル各地の遥か彼方に隠したことを知った。バレンジアはリアの仲間の牢獄の鍵を入手し、看守を買収し偶然を装って彼の手の届くところに置かせた。バレンジアとイードワイヤーにすら名前のわからないチャンピオンは、リアが衰えつつあった力で開けた辺ぴな通用門から脱獄することができた。ついにチャンピオンは自由の身になり、すぐさま偽皇帝の打倒にに立ち上がった。 数ヶ月かけて盗み聞いた会話と盗み見た日記から、バレンジアは混沌の杖8つのかけらを探し当て、リアを通じてチャンピオンにそれぞれの隠し場所を伝えた。そして、一寸たりとも時間を無駄にすることなく、計画を行動に移したのであった。まず、ハイ・ロックにあるイードワイヤーの祖先の領地ウェイレストへ向かった。そしてターンが送り込む手下たちを回避し、復しゅうを図ることに成功した。ターンは、(バレンジアからは見透かされていたかもしれないが)、決して愚か者ではなく、非常に狡猾な男であった。彼は考えうるだけの策を弄してチャンピオンを突き止めて消そうとしたことは確かであった。 今日では周知のとおりだが、あの勇敢で不屈の精神を持つ名もないチャンピオンは、混沌の杖のかけらを全て集めることに成功し、混沌の杖によってターンを倒し、真の皇帝ユリエル・セプティム七世を救い出した。そして王政復古の後に、セプティム王朝を長年統制してきたシムマチャスを称える記念式典が帝都で行われたのである。 バレンジアとイードワイヤー王はともに苦難と危険を乗り越える中で互いに惹かれあい、帝都からそれぞれの領地へと帰ったその年に結婚した。バレンジアと前夫との間に生まれた2人の子供も、彼女とともにウェイレストへゆき、彼女の留守中はモーンホールドによって摂政が代理で統治することとなったのである。 今も、バレンジア女王はヘルセス王子とモルジア姫とともにウェイレストに暮らしている。イードワイヤーが他界すれば、またモーンホールドへ戻るだろう。 結婚したとき、イードワイヤーはすでに老いていた。従って、エルフと違って残念ながら世を去る日はそう遠くないとされている。しかし、それまでは、イードワイヤーとともにウェイレストを治め、やっと手に入れた平穏で幸せな生活をバレンジアは送ることとなるだろう。 歴史・伝記 茶4
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/151.html
帝都の略歴 第4巻 帝都歴史家 ストロナッハ・コージュ三世 著 本著の第1巻では、初代皇帝タイバーから第8代皇帝の時代までの歴史を概観した。第2巻では、レッド・ダイヤモンド戦争以降の6代の皇帝について論じた。第3巻では、続く3代の皇帝の受難、すなわちユリエル四世の失意、セフォラス二世の非力、そしてユリエル五世の英雄的な悲劇について語った。 ユリエル五世が遠く海を隔てた敵国アカヴィルで命を落とした時、皇位継承者のユリエル六世はまだ5歳であった。実際、彼が生まれたのは父であるユリエル五世がアカヴィルへ旅立つ直前のことであった。ユリエル五世の他の子は、平民との間にできた双子で、彼が旅立った直後に生まれたモリハーサとエロイザしかいなかった。そのため、第三紀290年にユリエル六世は即位したが、彼が成年に達するまでのあいだは、ユリエル五世の后でユリエル六世の母親であるソニカが摂政として限られた権限を持ち、実権はカタリア一世の世から変わらず元老院が握ることになった。 元老院は勝手な法律を広めては利益を貪っていたため、なかなかユリエル六世には帝政にかかわる実権を渡さなかった。彼が正式に皇帝としての権利を認められたのは307年、彼が22歳の時である。それまでにも少しずつ皇帝としての責任ある立場を任されてはいたが、元老院も、そして限られた摂政権しか持たない彼の母親でさえ、その支配力を全て彼に譲るのを嫌がり、先延ばしにしたためである。彼が帝位につく頃には、帝政に関する皇帝の権限は拒否権を残してほとんどなくなっていた。 しかし、ユリエル六世はこの残された拒否権を積極的に行使した。そのせいもあって、313年までには彼は名実ともにタムリエルの支配者となった。彼はほとんど忘れられていたスパイ組織と衛兵隊を有効に利用し、元老院の中で反抗的な者を威圧したのである。異母妹のモリハーサは(意外なことではないが)彼の最も忠実な味方であり、彼女がウィンターホールドの男爵ウルフェと結婚し富と権力を得てからは、さらに頼りになる勢力となった。賢者ユガリッジの言葉を借りれば、「ユリエル五世はエスロニーを降伏させ、ユリエル六世は元老院を降伏させた」のである。 ユリエル六世が落馬し、帝都で最も優れた治癒師の尽力にも関わらず命を落としたため、彼の最愛の妹モリハーサが帝位を継承した。このとき25歳のモリハーサは、外交官たちから(立場上のお世辞もあったであろうが)タムリエル一の美しさであると称えられた。彼女は教養があり、快活で、運動神経と政治能力に恵まれていた。彼女はスカイリムから大賢者を帝都に招き、タイバー・セプティム以来二人目の帝都軍の魔闘士を持つ皇帝となった。 モリハーサは彼女の兄が始めた政策を引き継ぎ、帝都州の政治を真の意味で女皇の(そして後に続く皇帝たちの)支配下に置いた。しかしながら、帝都州の外においては、女皇の支配力は少しずつ弱まっていた。反乱や市民戦争が、女皇の祖父セフォラス二世の時代から有効な対策がとられないままに各地で激しさを増していた。モリハーサはやり過ぎない程度に注意深く反撃と鎮圧の指示を出し、反乱を起こした地域を少しずつ支配下に戻していった。 モリハーサの戦略は効果的ではあったが、慎重すぎたためにしばしば元老院の反感を買った。そんな一人、アルゴニアンのソリクレス・ロマスは、女皇がブラック・マーシュの自分の領地の危機に軍隊を派遣しなかったためひどく怒り、殺し屋を雇って彼女を第三紀339年に暗殺した。ロマスはすぐに捕らえられ裁判にかけられ、最後まで無罪を主張したが処刑された。 モリハーサに子供はなく、妹のエロイザは4年前に高熱で他界していた。そのため、エロイザの25歳になる息子、ペラギウスが皇帝ペラギウス四世として即位した。ペラギウス四世は彼の叔母の仕事を受け継ぎ、反乱を起こした王国や領地を少しずつ皇帝の支配下に取り戻していった。彼はモリハーサの冷静さと慎重さを受け継いだが、残念ながら彼の戦いは彼女のようにはうまくいかなかった。各地の王国は長い間皇帝の支配を離れていたため、その支配がどんなに寛大であろうとも皇帝の存在自体が疎まれるようになっていたのである。しかし、ペラギウスが29年間の安定した統治の後この世を去る頃には、タムリエルの諸地方はユリエル一世の時代よりも結束を固めていた。 我々の現在の皇帝である、ペラギウス四世の息子にして栄光あるユリエル・セプティム七世陛下は、大伯母モリハーサの勤勉さ、大伯父ユリエル六世の政治力、大伯父の父ユリエル五世の武勇とを受け継いだ。二十一年間にわたり、彼はタムリエルを統治し地上を正義の光で照らした。しかし第三紀389年、帝都軍の魔闘士ジャガル・サルンが謀反を起こしたのである。 ターンはユリエル七世を別次元に作りあげた牢獄に閉じ込め、幻惑を使って皇帝の地位を乗っ取った。その後10年間、ターンは皇帝としての特権と利益を欲しいままにしたが、ユリエル七世の始めた帝政の強化には無関心だった。今に至るまで、ターンの真の目的も、君主に成りすましている10年間に何を得たのかも完全にはわかっていない。第三紀399年、謎めいたチャンピオンが王宮の地下で魔闘士を倒し、別次元に捕らわれていたユリエル七世を解放した。 解放されて以来、ユリエル七世はタムリエルの全土を支配下に置くための戦いを精力的に続けている。ターンの邪魔によって勢いが落ちたのは事実であるが、近年の戦いが証明しているように、タムリエルをタイバー・セプティムの時代以来再び皇帝の栄光のもとに統一し黄金時代をもたらす希望は残されている。 歴史・伝記 緑3
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/96.html
アレッシア・オッタスの アンヴィル案内書 美しきディベラ、愛の女神! 私たちと子供たちを祝福してください! 私の名はアレッシア・オッタス。皆様に、アンヴィルの全てをお伝えしましょう。 アンヴィルは海辺にあり、一見するととても美しく見えます。しかし、細部に目を向ければ不愉快なものが多く目につくでしょう。水辺の景色は魅力的なものですが、町の外の船着場や港の周辺では船乗りや物乞いなど、汚い身なりの人々がうろついています。アンヴィル城は清潔でよく管理されているし、城壁に囲まれた家々のうち、いくつかはきれいで立派です。しかし、それ以外の家は住む人も無く荒れ果て、あるいはみずぼらしく剥がれ落ちた壁土がそのままにされています。町中では異常者や酔っぱらいの姿がいたるところに見られます。 アンヴィル城 アンヴィルの領主は、ミローナ・アンブラノクス伯爵夫人です。彼女の夫、コルヴァス・アンブラノクスは何年も前に失踪しましたが、軽薄で不真面目な人物で、馬鹿騒ぎをしては醜聞を振りまく癖があったため、伯爵夫人は彼がいなくなってかえって平穏な生活を送れるようになったといわれています。伯爵夫人自身は、高潔で敬虔な素晴らしい領主であると人々から慕われています。もしも彼女が衛兵に命じて船乗りや物乞い、怠け者、泥棒たちをみな町の外に追い出したなら、アンヴィルは今よりずっと住みやすくなるでしょう。 アンヴィルの地区 アンヴィルは5つの地区に分かれています。アンヴィル城は街壁の外の港を見下ろす場所に建っており、チャペルゲート地区の門から道が城へと続いています。壁に囲まれた街は3つの地区、東のチャペルゲート地区、西のウェストゲート地区、そしてその間に位置するギルドゲート地区に分かれています。港は街壁の外にあり、ウェストゲート地区の門から行くことができます。 チャペルゲート地区 シロディール中を探しても、ここより美しい聖堂にはお目にかかれないでしょう。聖堂と街壁の間には美しいディベラ像のある静かな庭園があり、瞑想にもってこいです。聖堂の向かいには素敵な庭園と、礼拝する人々を風雨から守ってくれる屋根つきの回廊があります。残念なことに、住民たちはこのような素晴らしい聖堂にほとんど興味を示さず、礼拝する住民もごくまれです。頭の軽い女司教のせいなのか、伯爵夫人が自ら礼拝に来て模範を示そうとしないからなのか、どちらの理由かはわかりません。 ギルドゲート地区 アンヴィルの最も栄えている地区はギルドゲート、正門、もしくは北門を入ったところにあります。この地区には、アンヴィルで最も立派な建物と最もみすぼらしい建物が隣り合って建っています。ギルドはよく管理されたきれいな建物のほうに属します。この地の魔術師ギルドと戦士ギルドはシロディール各地のギルドの中でも特に野心的で生産的です。魔術師ギルドの代表者であるキャラヒルは魔術の研究者として名声を得ており、交霊術、召喚術、黒魔術を公に批判しています。戦士ギルドは人材に恵まれて精力的に活動しており、シロディールにある他のギルドに見られるような無責任でやる気の無い態度とは無縁です。それに対して、魔術師ギルドのすぐ隣の建物は閉鎖された廃屋で、見苦しく荒れ果てていて本当に目障りです。 ウェストゲート地区 ウェストゲート地区は、アンヴィルの住宅街です。この地区にある家はみすぼらしく、荒れるにまかせてあります。住民はだらしがなく無気力ですが、唯一の例外はアンヴィルの有名人、アルゴニアンの女流作家クイルウィーブでしょう。彼女は下層階級の人間や犯罪者の悲惨な運命や陰謀の計画を描いた低俗な本を何冊か出しています。彼女の存在は、アルゴニアンが罪深く不誠実で、役立たずの人間未満の存在だという偏見を助長しているといえます。 港 船着場は補修がされておらず、荒れ果てて不潔です。船倉や今にも崩れそうな港湾倉庫からはあらゆる種類の悪臭が立ち上っています。役立たずたちがどこからか集まってきては、ここで日向ぼっこをしたり、噂話や無駄話をしたり、ワインやエールを買うために物乞いをしようか、盗みを働こうかと考えたりするのです。そこではミラベル・モネーという優しい女性が家のない船乗りのために宿を提供していますが、残念ながらその間違った慈善は単に酔っぱらいと怠け者を甘やかすことにしかなっていません。そんな無益なことをしている暇があるならば、彼女はあの不道徳な怠け者たちに九大神の教えと生産的な仕事を教えるべきでしょう。港はそんなありさまですが、南に行くと素敵な灯台があり、その上に上って遠く眺めれば、アンヴィルの城、町、そして港もそれほど不愉快には見えないでしょう。 九大神があなたを守り導いてくださいますように! 地理・旅行 茶3 アレッシア・オッタスの コロール案内書 ステンダールを称え、九大神を称え、全ての聖人を称えよ! 私の名はアレッシア・オッタス。皆様に、コロールの全てについてお伝えしましょう。 コロール城 コロールはコロール州の州都であり、女伯爵アリアナ・ヴァルガによって統治されています。彼女は非常に正しい女性で、彼女の娘は美しく貞節な、レヤウィン伯爵夫人のアレッシア・カロです。 アリアナは敬虔なアカトシュの信奉者で、ステンダール聖堂での礼拝を欠かさず、領民の良き模範となっています。彼女の夫、故チャラス・ヴェルガ伯爵もまた信望厚い信仰のディフェンダーでステンダール信者だったので、彼がスカイリムの異教のノルド人との戦いで命を落としたという知らせは領民に大きな悲しみをもたらしました。アレッシア・カロはレヤウィン伯爵の良き妻であり、コロール伯爵の子女としての本分を尽くしています。彼女はよくコロールに戻り、素晴らしい母親のもとを訪ねています。 素晴らしいことに、城に仕える魔術師もまた(他の多くの魔術師が神の教えと信仰を軽んじているのと違って)公正で敬虔な九大神の信徒です。彼女、シャネルは、不信心ものを罰しようとする正しい人々のために魔術を教授しているので、へたな魔術師ギルドのいかがわしい魔術師たちに教わるぐらいなら彼女のところへ行くべきでしょう。 女伯爵は毎日大広間で会議を開いています。(もちろん、日曜日以外ですが)彼女には素晴らしい使者や執事がおり、城は品格と秩序が保たれています。また、城には地下牢があるのですが、残念ながら衛兵たちは怠慢で、町中にたむろする物乞いや泥棒、博徒、詐欺師を捕まえてせっかくの牢屋に放り込もうともしません。 コロールの地域 コロールは5つの区域に分かれています。門を入ったところはファウンテン・ゲート地区で、美しい泉があり、大戦で犠牲になった人々に捧げられた聖サンクレ・トールの像が立っています。泉の周りには2件の宿屋、雑貨店、鍛冶屋があります。そこから東への道は城へ、北への道はグレート・オーク広場へ、西への道は聖堂通りと西コロールへ、それぞれ通じています。西の聖堂へ行く道の途中には本屋があり、聖堂より西は西コロール地区で、井戸の周りに簡素な小屋が集まっています。グレート・オーク広場の周りには魔術師ギルドと戦士ギルド、そしてたくさんの立派な家があります。 スタンデール聖堂 スタンデール聖堂は美しい建物で、巡礼の祈りと瞑想に申し分のない場所です。毎週日曜日の朝には、この町の正しい人々とよき領主が礼拝のために聖堂に集まります。しかし嘆かわしいことに、女伯爵という素晴らしい模範がありながら、コロールの住民の多くは怠惰で信仰を軽んじています。きっと、魔術師ギルドと戦士ギルドの構成員が悪い手本になっているせいでしょう。聖堂の女司祭、オラグ・グラ=バーゴルは親切で正しい老婦人で、魔術師ギルドの邪悪な異教徒から呪文を買うくらいなら彼女から買ったほうがずっと良いでしょう。 コロールのギルド 戦士ギルドを率いているのは優秀で誉れ高いヴィレナ・ドントンですが、その構成員は粗野で汚い言葉で話し、たいてい支部で怠けているか、町中をうろつきながら耳障りな雑談をしているかのどちらかです。彼らがスタンデール聖堂での礼拝の習慣を身に付けて行いを正せば、戦士ギルドはずっと良くなるでしょうに。ただし、戦士ギルドの優秀な鍛冶屋は特別です。彼女はよく聖堂で礼拝をしています。 コロールの魔術師ギルドにいる学者は役立たずばかりで、生徒たちは本を読んだり罵りあったり、悪臭のする薬を調合して時間を潰しています。彼らは教養があって正しい言葉づかいができますが、懺悔と祈りによって魂を磨くこともしないくせに、そんな学問がいったい何になるというのでしょう? ここの魔術師ギルドで呪文や薬を買うことはできますが、そこで払うお金は彼らにくだらない娯楽や怠惰な時間を提供するだけでしょう。 商店とサービス ノーザン・グッズ商店のシード・ニーアスはアルゴニアンですが、他のアルゴニアンと違って賢く、誠実で、丁寧な応対ができます。素晴らしいことではないですか? 彼女は商才があり、その成功の技術を教授していますが、店の品物を安く売ってくれることはないでしょう。 火炎と鋼鉄鍛冶店の鍛冶師、レッドガードのラシーダは優秀な職人であり、その技術を教授しているようです。彼女は日曜の礼拝に毎回来ていますが、人間的に未熟で礼節に欠け、行儀や身なりも良くはありません。 レノア書店はきれいな店構えで品揃えも豊富ですが、信じられないことに『九大神の十戒』を一冊も置いていませんでした。しかも、女店主は一度もスタンデール聖堂へ来たことがありません。いったいどういうことでしょうか? この町に、食べ物と寝床を提供してくれる宿は2軒だけあります。一軒は上品で清潔で、立派な人々になじみにされている宿です。もう一軒は粗野で不潔で、酔っぱらい、泥棒、オークの溜まり場になっています。一方は身なりの良い上品で礼儀正しい婦人が、もう一方はだらしのない若い女性が経営しています。宿の名前はそれぞれ「オーク・アンド・クロージャー亭」と「グレイ・メア亭」です。清潔で安全な寝床を提供してくれるのはどちらの宿か、もうおわかりですね。 コロールの著名人 作家キャスタ・スクリボニアはコロールに住んでいます。彼女は教養があり、各地を旅した経験を持ちますが、彼女の著作はあまりおすすめできません。なぜなら、彼女の作品はどれもロマンスとゴシップと、他の低俗な娯楽を題材にしていて、主人公たちは九大神を信仰する者なら誰もが持っているはずの美徳、道徳、貞節、神への崇敬を見せず、読者の子供たちの悪い手本となりかねないからです。 コロールの不名誉な特徴 魔術師ギルドや戦士ギルドの近くのグレート・オークにはよく町民が無為に集っては雑談をしています。ホンディターという名の狡猾な男が、周辺の土地で起こること全てを知っています。彼はお金と引き換えにスキルを教えていますが、この男を聖堂で見かけることはなく、どうも罰当たりな行動や深酒、喧嘩に耽溺しているようです。 コロールは殺人や泥棒の多い町です。彼らはなんと家で犯罪の技術を教えて授業料を稼ぐことさえあります。衛兵はいったい何をしているのかって? 残念ながら、彼らを町中で見かけることはありません。 コロールの物乞いは身なりは汚いですが、健康で態度が良く、陽気です。いい気分になるために小銭を恵んでやってもよいでしょうがそのお金はすぐに賭け事や強い酒などのくだらないことに使われてしまうので、彼らのためにはならないでしょう。 九大神の祝福とご加護がありますように! 地理・旅行 茶2 アレッシア・オッタスの シェイディンハル案内書 健やかな心身にアーケイの祝福を! 私の名はアレッシア・オッタス。皆様にシェイディンハルの全てについてお伝えしましょう。 シェイディンハルを訪れる人はまず、緑の大草原やコーボロ川の土手に経つ優雅な柳の木、よく手入れされた庭園、花でいっぱいの垣根、そういったものに目を奪われることでしょう。手入れの行き届いた家々、その石壁にほどこされた細工や、ガラス、金属、木材を組み合わせた美しい装飾は、シェイディンハルという町の裕福さを物語っているかのようです。 しかし、その裏に何が隠されていると思いますか? 犯罪、醜聞、それに数々の不道徳です! シェイディンハルは、3つの区域に分かれています。北の丘の上にはシェイディンハル城の中庭と城壁があります。その下に、東門から西門へ、東西に道が走っています。コーボロ川はこの道からだいたい南北に流れており、町の南半分を2つの区域に分けています。聖堂は東側の区域、そして市場は西側の区域にあります。市場側の区域には全ての商店、宿屋、ギルドが集まっています。聖堂区域には聖堂と住宅街があります。コーボロ川には北と南の2箇所に橋がかかっていて、南側の橋の途中には小さな公園になっている中州があります。 シェイディンハルは東ニベンに位置していますが、その文化は、ここ半世紀の間にモロウウィンドから移民して来た、ダークエルフたちによって作られたものです。彼ら移民の多くは、モロウウィンドの窮屈な社会と腐敗した宗教支配を逃れて来た人々です。シロディールにおいては、ゼニタールの守護の下、かの地よりも自由で活発な経済活動の機会を見出すことができたのです。 シェイディンハルの伯爵もまた、そうした移民の一人です。アンデル・インダリス伯爵はモロウウィンドのフラール家の出身ですが、より多くの成功の機会を求めてこの地にやってきました。 伯爵はシロディールの貴族社会において異例の速さで上位に登りつめましたが、その理由については謎が多く、シロディールの伝統ある名家の人々は伯爵を身のほど知らずな成り上がり者と陰口を叩いています。さらに、ラザーサ・インダリス夫人がシェイディンハル城の階段で何者かに撲殺され遺体で発見された事件は人々の好奇の目を惹きつけ、伯爵の浪費癖、不倫、激情と事件の関係について黒い噂が絶えません。 シェイディンハルのアーケイ聖堂に訪れる人はほとんどいません。そもそも、模範を示すべき伯爵が一度も聖堂に足を踏み入れたことがないのです。ただし、彼の場合は九大神のもとに現れて審判を受けることを恐れているのかもしれませんが! シェイディンハルの大主教、司祭、治癒師は感じのよい人々で、神に忠実な神学者ですが、この地の聖職者で最も尊敬されているのはアーケイの生ける聖人・エランディルでしょう。彼は魔術師ギルドや帝都戦技大学で不正に行われている黒魔術に反対する運動を精力的に行っています。 シェイディンハルの2つの宿屋はどちらも一見良さそうに見えますが、一方の宿屋「ニューランド」を経営しているダークエルフは下品な異教徒の無法者で、もう一方の宿屋「シェイディンハル・ブリッジ」の経営者は高潔で敬虔な帝都民の夫人です。行き届いたサービスと安くておいしい食事、殺人鬼や泥棒の心配をせずに安心して眠れる安全で清潔な寝室、そういったものを求めるならどちらの宿屋に泊まるべきかはもうおわかりですね。 シェイディンハルの本屋を所有し経営しているのはアルゴニアンのマッハ=ナーです。私は彼より無礼で不愉快な人物にお目にかかったことがありません。しかし、本屋の品揃えは素晴らしく値段も手ごろです。 シェイディンハルの住宅は、最も貧しいものの家でさえみな清潔で見栄えがよく、庭なども手入れが行き届いています。家の中に入って家具や内装を眺めたいなら、住民に言えば喜んで迎え入れてくれるでしょう。(もちろん、早朝や夜中に訪ねたりしなければ、です!)ただし、だまされてはいけません! いくらその住民がどこから見ても立派な人物に見えたとしても、彼らの多くはあなたを招きいれたとたん豹変し、下品で粗野な態度で獣のように襲いかかってきます。彼らと人間らしい会話を交わすよりも、殺されて地下室に投げ込まれる可能性のほうがずっと高いのです。そのような粗暴で卑しい人々の多くがオークだというのは別に驚くべきことではありません。 それでも、シェイディンハルで一番の著名人、画家のライス・ライサンダスの家だけは訪ねる価値があります。彼自身はアトリエにこもって制作に没頭していることが多く、面会は難しいのですが、かわりに優しく親切な夫人があなたを招き入れ、壁にかかった彼の絵を見せてくれるでしょう。 九大神に従い、栄光へと向かいましょう! 地理・旅行 茶3 アレッシア・オッタスの スキングラード案内書 ジュリアノス、全ての正義と知恵はあなたと共に! 私の名はアレッシア・オッタス。スキングラードの全てについて皆様にお教えしましょう。 スキングラードはワイン、トマト、チーズの名産地として名高く、またシロディールでも最も清潔で、最も安全で、最も栄えている町の一つでもあります。ウェストウィルド高地の中心部に位置するスキングラードは、古き良きコロヴィアの至宝であり、コロヴィアの美徳である独立、勤勉、強い意志を象徴する存在です。 スキングラードは、城、ハイタウン、聖堂の3つの区域に分かれています。そして、ハイタウンを囲む壁に沿って、橋の下を街道が東西に貫いています。ハイタウンの西にはギルドや宿屋「ウェストウィルド」があり、北の道沿いには多くの商店や高級住宅街が並んでいます。町の南半分はというと、東の端に聖堂が、そして中央の通り沿いにスキングラードのもう一つの宿屋「トゥー・シスターズ」があり、庶民の住宅が周囲に点在しています。いくつかの門や橋が、街道を越えてハイタウンと聖堂を繋いでいます。スキングラード城は南西の高い丘に、町から完全に独立して建っています。町から城へ行くには、町の東の門からのびる道が城へ通じています。 スキングラード伯爵のジャナス・ハシルドアは長年スキングラードを治め、魔術師としての名声も高い人物です。彼は人との交わりを非常に嫌っており、全ての面談を断っています。また、彼は不信心にも九大神への礼拝を怠っています。領主が模範を示さなければ、領民はいったいどうやって徳を身に付けるというのでしょう? しかし、それでもなお彼は人々から尊敬され、スキングラードは順調で平和な領国の模範となっています。実際に、この町では犯罪、ギャンブル、路上の酔っ払いなどは全くと言って良いほど見られないし、スキングラードのワインやチーズはタムリエル全土で高値で取り引きされています。 スキングラードには宿屋が2軒あります。そのうち、宿屋「トゥー・シスターズ」はオークが経営しています。この宿屋は清潔で良く管理されており、すばらしいことに騒動や酔っ払いとは無縁です。もう一方の宿屋は感じの良い帝都民の女性が切り盛りしています。両方の宿屋の経営者ともにジュリアノス聖堂に礼拝に現れないので、食べ物や休息を求めている巡礼の皆様にどちらの宿屋をお勧めするべきかはわかりません。 しかし、おいしいロールパンをお探しならば、聖堂区域にあるパン職人サルモの店は間違いなくおすすめできます―― この店のパンは最高です! スキングラードの他の名産品―― トマトとチーズ―― については、各人の好みによって判断が異なるでしょう。また、これを読んでいる皆様はスキングラード名産のワインには興味がないでしょう、酒は人の心を乱し、心の乱れは罪につながるのですから。 この地の魔術師ギルドは他の土地のそれと変わりませんが、戦士ギルドはゴブリン狩りを専門としており、ウェストウィルドを旅する人々に質の高いサービスを提供しています。それにしても町の鍛冶屋が自身を指して“悩める者アグネッテ”と呼んではばからないことには驚かされます。いったいなぜそのような恥知らずなことができるのでしょうか? 九大神をいつも胸に! 地理・旅行 茶3 アレッシア・オッタスの 帝都案内書 アカトシュを称えよ! 帝都と全ての民に祝福を! 私の名前はアレッシア・オッタス。皆様に、帝都の全てについてお伝えしましょう。 帝都について 帝都におられるお方といえば? そうです、タムリエル皇帝ユリエル・セプティム、信仰のディフェンダーにして、聖タイバー・セプティム、主タロスの血統であり、神聖なる国家と法の主、九大神とともにあるもの。私たちはみな、皇帝の善良さと神聖さを知っています。彼はよく、最高神の神殿で九大神と聖人たちに祈りを捧げています。 では、皇帝が住んでおられるのは? 帝都の中心部にある王宮の白金の塔です。白金の塔は遠い昔、邪神デイドラを信仰するアイレイドたちによって建てられました。邪教の古代文明が積み上げた石の塔が、今では帝都の正義と信仰を象徴する記念碑として神に捧げられているのですから、本当に素晴らしいことです。帝都の王宮を訪れる人々は聖人や伯爵、魔闘士、歴代皇帝が眠る墓地を散策し、町のどこからでも見える白金の塔を畏敬の念を込めて見上げるのです。 王宮にある長老会の会議室は、一般の立ち入りは禁止されています。また、帝都衛兵の古式ゆかしい武具に驚嘆するかもしれませんが、彼らは粗野で非礼なのであまり近づかないほうが良いでしょう。 帝都の地区 帝都は10の地区に分かれています。中心地にあるのが王宮で、残りの9地区がその周りを囲んでいます。王宮の北西の地区がエルフガーデンで、住みやすい住宅街です。 そこから反時計回りに、次の地区はタロス広場地区です。ここは王宮の西にある高級住宅地です。南西にあるのが神殿地区です。神殿地区の壁の向こう側、街の外には悪臭漂う不潔な波止場地区があります。王宮の南東は庭園地区で、そこの壁の向こう側には評判の悪い魔術師ギルドのアルケイン大学が建っています。東にあるのは悪名高い闘技場地区です。そして最後に、王宮の北東はなんでも手に入る商業地区です。商業地区の壁の外側には獄舎地区があります。 神殿地区 私が住んでいるのは帝都の神殿地区ですが、ほんとうに美しいところです。最高神の神殿に礼拝に来られることがあれば、ぜひうちを訪ねてください。夫と娘もご紹介します。ここはとても素晴らしい地域で、住んでいるのは感じのよい上品な人たちばかりです。ただ、帝都の他の地域と同じく、物乞いがうろうろしているのが玉にきずです。 庭園地区 この美しい庭園では、あの有名な九大神の像を見ることができます。中央の像が主タロス、皇帝タイバー・セプティムです。しかし、この九大神の中心という名誉な位置に、最高神アカトシュを差し置いてタロスが彫られているというのはいかがなものでしょうか。実際のところ、この恥ずべき間違いの元凶は、タロスの子孫である皇帝を必要以上に賛美しようとした長老会です。 商業地区 帝都商業会議所の前には、商人による詐欺の被害を訴えにくる人々の行列が絶えません。ここは不潔な地区で、商店が捨てた木箱がそこら中に積み重なり、気味の悪い茸や菌類がびっしりと生えて、敷石はぬるぬるした汚れですっかり覆われています。ここへは自分で買い物に行くよりも、使用人を使いに出せるならそうしたほうが良いでしょう。 アルケイン大学 ここはひどく汚く、荒れた、スラムのような場所です。屋外には一人の生徒も魔術師も見当たりません。彼らは暗い地下室に座って異端の書物に没頭しているか、巻物に難解な悪文を書き付けるのに忙しいのです。 アークメイジの塔の中には、帝都の太陽系儀が置かれています。魔術師たちはそれを使って天文学の研究をするのです。なんと愚かな! そんな馬鹿げた高価な機械を覗き込んでいる暇があれば、どうして神の御業に目を向け、教えの通り九大神を崇めないのでしょう? 魔術師たちは貴重な本を集めた巨大な図書館を持っていますが、意地悪くも一般の利用者は締め出しています。しかし、これは特に非難すべきことではないし、惜しくもありません。なぜなら、彼らの集めるような本は確実に不道徳でとるに足らない内容でしょうから。 帝都波止場地区 この場所は本当に最低です。この場所を歩いていて、殺された女子供の死体につまづくことはそう珍しくありません。タムリエルで最もたちの悪い人種は商人と船乗りですが、ここにはそういったごろつきが集まってきては市民の稼いだお金を騙し取る算段をするのです。賭博、人身売買、スクゥーマ、その他のもっと恐ろしい罪が港湾倉庫や船倉で行われています。彼らを取り締まるべき衛兵は何をしているかですって? どこにも見あたりません。 帝都獄舎地区 この牢獄は陰惨で身の毛のよだつような場所で、じめじめした不潔な建物の中のいたるところに、鎖、やっとこ、手枷、足枷、その他あらゆる拷問道具が置かれています。でも、肝心の囚人はどこでしょう? いません! 衛兵があんなにも怠けているせいで、牢獄はいつもからっぽなのです! 帝都のいたるところに衛兵の姿が見られます。彼らも町中に居る盗賊や強盗がこわいので、常に数人で一緒に行動しています。どうして彼らが、鬱陶しい物乞いどもをまとめて牢屋に入れてしまわないのか不思議でなりません。犯罪者は大胆で、白昼、町中で犯罪に出くわすことも珍しくありません。ある恥知らずのならず者などは、彼の武具が帝都獄舎から盗んだものであるとおおっぴらに自慢しているほどです。いったい、どれほど看守が怠けていればそんなことが可能なのでしょう! 犯罪者を牢に閉じこめておくべきはずの看守の上司が賄賂を受け取っているため、看守たちは恥知らずにも職務を怠っているのです。 闘技場 この場所については説明する必要がないでしょう。皆様が足を運ぶような場所ではありません。怠惰で愚かな人々だけがここへ来て勝ち負けに金を賭けたり、時には自分で血を流して戦ったりするのです。そんな無益な戦ができるなら、どうして町中にたむろする強盗や物乞いを駆逐することにその力を使わないのでしょう。 九大神の祝福とご加護がありますように! 地理・旅行 茶2 アレッシア・オッタスの ブラヴィル案内書 恵みあふれる母なるマーラ、我らを病からお守りください! 私の名はアレッシア・オッタス。ブラヴィルの全てについて皆様にお伝えしましょう。 ブラヴィルは例えるなら、下水口のふたにぞっとするほど汚らしいごみがたくさん溜まっているような光景を思い起こさせる町です。この町はシロディール中で最も貧しく、最も汚く、最も古ぼけて、最もみすぼらしく、最も多くの犯罪者、酔っぱらい、スクゥーマ中毒者が住みつき、最も多くの住人が獣じみた下等人種もしくは外国人です。あとはここにデイドラを崇拝する邪神教の集会でも加われば、間違いなく極悪非道、品性下劣な最悪の町と言えるでしょう。しかし、おぞましいことに、ブラヴィルでは実際にそれよりも邪悪で堕落した邪神崇拝が秘密裏に行われているという噂です。 この町は陰気で殺伐としており、常に重苦しい空気が漂っています。また、気候はじめじめとしており、大気は汚れています。というのも、町の下水が流れ込むラーシウス川の淀みからは悪臭が立ち上り、ニベン湾の低地には同じく悪臭を放つ沼地が広がっていて、疫病と害虫の温床になっているのです。 町の建築物の見苦しさと乱雑さは度を超しています。住宅、商店、ギルドの建物の柱はひび割れ、裂け、腐って軟らかく、緑のカビで覆われています。いっそのこと崩れ去ってしまえばその後に新しくましな家を建てることもできるでしょうが、彼らは今ある家の上にまた汚らしい家を建て、そのおかげで家々は三階、四階とまるでこやしの山のように見苦しくその高さを増してゆくのです。物乞いや泥棒は通りの頭上に張り出したバルコニーで無為に時間を潰し、ごみやガラクタを不運な通行人の頭の上に投げ捨てるのです。建物の屋根の上にぐらぐら揺れながら建っている信じられないほど不潔な小屋に、一家全員が暮らしていたりします。 ブラヴィルの住民は不愉快で不誠実です。彼らの生活は洞窟に住むゴブリンより少しましな程度で、今にも崩れそうな不潔な小屋に勝手に住みついています。町の住民は2つの階級に分けることができるでしょう。一方は密輸業者、スクゥーマ中毒者、強盗、泥棒、殺人者たちで、もう一方はこうした犯罪者がカモにする物乞いや愚鈍な役立たずたちです。 ブラヴィルの支配者は犯罪者のリーダーたちです。町の衛兵は、スクゥーマ密売人の親玉に雇われています。エルスウェーアとブラック・マーシュにほど近いこの町に多くのアルゴニアンとかカジートが住んでいるのは不思議なことではありませんが、オークの多さには驚かされます。しかし、これらの下等な人種たちは他の下等な人種と問題なく共存しています―― ちょうど泥棒や獣がお仲間を見つけては群れ集うのと同じように。 ブラヴィルの町は区画整理などされていませんが、不運にもこの町を歩くことになった人々のためにいくつかの目印をご紹介しましょう。城へは、崩れそうな橋で川を渡って東へ。聖堂は西です。商店やギルドは東側の壁と川を背にして並んでいます。聖堂と商店・ギルドの間の地域はブラヴィルのスラム街です。 城は、ブラヴィルで唯一の石造りの建物です。この城は庶民の住む掘っ立て小屋と同じぐらい汚く建てつけも悪いですが、それでもアンヴィルや帝都で一番貧しい物乞いの家と比べれば少しはましかもしれません。レギュラス・タレンティウス伯爵は家柄も良く、かつてはトーナメントでチャンピオンになり名声を得たこともありますが、領民に言わせれば今では単なる役立たずの酔っぱらいです。伯爵の息子のゲリアス・タレンティウスは典型的な親の七光りで、犯罪者とスクゥーマ中毒者が好き勝手に振る舞える社会の維持に大いに貢献しています。 聖堂の建物の石でできた部分は、崩れるがままでカビに覆われています。木材を組み合わせただけのぼろぼろの柵で囲まれた墓地は乱雑に荒れ果てています。女司教はマーラの敬虔な信奉者ですが、九大神見捨てられたこの町の犯罪と不正は彼女の手には負えないでしょう。女司祭は聖堂を訪れる数少ない人々に好かれていますが、この町の大多数の住民は生涯一度も聖堂に足を踏み入れることはないのです―― 盗みや物乞いに入る場合を除いては。 また、この町の宿屋の評判も最悪です。宿屋に入るには、まず玄関に寝そべった酔っぱらいと彼らが吐いたものを乗り越えなければならないでしょう。宿の中では、暗がりのごろつきや博徒やスリが、不注意な旅行者をあっという間にカモにしてしまいます。そのような宿に泊まろうとする物好きな旅行者は、眠っている間に殺されたとしても文句は言えません。 それに比べれば、ギルドはまだ清潔で酔っ払いも見当たらず、比較的平穏が保たれている場所といえます。もし必要に迫られてブラヴィルで夜を越すことになった時は、戦士ギルドか魔術師ギルドに泊まるのが最善でしょう。ギルドにいる人々も野蛮で不道徳ですが、少なくとも安全に眠れる場所だからです。 商店もブラヴィルの他の部分と比べれば、まだましと言えるでしょう。商店は泥棒対策のために厳重に見張られており、店内では暴行や殺人の心配はありません。 もしあなたが何かの不運でブラヴィルを訪れることになってしまったとしたら、町に入ってすぐにそこから出たくなることでしょう。そのときは気をつけてください、町を出るあなたの後ろから追いはぎと殺し屋の群れが追ってこないように。 九大神を称え祈りましょう! 地理・旅行 茶3 アレッシア・オッタスの ブルーマ案内書 父なるタロスよ、我らをお守りください! 私の名はアレッシア・オッタス。皆様に、ブルーマの全てをお教えしましょう。 ブルーマはニベンの町だと思われがちですが、スカイリムとの境界に近いことと、ジェラール山脈高地の寒く厳しい気候のため、実際はニベンよりもノルドの特色が強い町です。ブルーマは常に寒く、雪に覆われており、市民を凍死から守るために町のいたるところに火鉢が置かれ、絶えず火が焚かれています。ジェラール山脈の森林では木材が豊富に採れるため、ブルーマのあらゆる建物は木で造られており、どんな金持ちもみな暗く薄汚れた木造の小屋のような住居で暮らしています。このような気候の中で暮らすノルド人が、あのように飲んだくれで異教徒の野蛮人になるのも不思議はありません。なぜなら、厳しい気候の中では人間にできることは限られており、寒さをごまかすために前後不覚になるまで酒を飲もうとするものもいれば、身を切るような寒さや容赦ない風からひと時逃れるためだけに罪を犯すものもいるのです。 ブルーマ城もまた隙間だらけで寒く、装飾はぞんざいで、火鉢の煤のために薄汚れています。場内は煙と灰のにおいが充満しています。高い天井は立派ではありますが、そのせいで火が焚かれても城内は一向に暖まりません。石造りの部分も煤と汚れで完全に覆われているので、そこに施された見事な彫刻も今では全く見ることができません。その石造りの部分と全体の大きさをのぞけば、ブルーマ城は庶民の住む貧相な木の小屋と何一つ変わりません。 女伯爵ナリナ・カーヴェインはハートランドのニベン人で、熱心に礼拝に通い、領民にも敬われていますが、交渉の場においては狡猾で無情な一面を見せ、抜け目のないやり口と裏切り行為で評判の人物です。ブルーマの施政は効率的で秩序が守られています。頑固なノルド人の隊長が率いる衛兵たちはよく訓練されており精力的で、そのため泥棒や強盗の心配はありませんが、ノルド人の特徴である酔っぱらいと暴動ばかりはどうしようもありません。 町から城に行くには、町の西にある城門が城の中庭に通じています。商店、宿屋、ギルドは町の北と西の城門の前にある高台の上や、その下の聖堂の北側に集まっています。ブルーマの町の南半分は聖堂を中心として、住宅が町の東と南の内壁に沿って並んでいます。通りは狭く、並木などは植えられていません。この寒さの中では草木を植えても枯れてしまうのです。しかし、建物が小さい町に密集しているため、散策に時間はとられないでしょう。 ブルーマのニベン人たちは聖堂での日曜礼拝を敬虔に行っていますが、下層民は罪深くもノルドの異教の神を信仰し、彼ら独自の迷信や非文明的な儀式をあらためようとしません。 ノルド人の鍛冶屋は名匠が多いので、ブルーマで品質の良い武器や防具を買うことができるのは当然ですが、一方でノルド人は無学で読書をしないため、この町で本を手に入れるのは難しいでしょう。この町の戦士ギルドおよび魔術師ギルドはお粗末で人材も不足しています。誰しも、こんな寒く薄暗い町のギルドに派遣されたいとは思わないのでしょう。ただし、少なくとも魔術師ギルドはきちんと管理され、暖かく保たれています。(それにしても、いったいどのような恐ろしい魔術でその暖かさを生み出し、保っているのでしょう? 想像したくもありません) 皆様に九大神の祝福とご加護がありますように! 地理・旅行 茶2 アレッシア・オッタスの レヤウィン案内書 全ての労働にゼニタールの祝福を! 私の名はアレッシア・オッタス。レヤウィンの全てを皆様にお教えしましょう。 エルスウェーアとブラック・マーシュという野蛮な発展途上の地方に挟まれた土地に位置していること、またトパル湾から帝都へのニブン川の水上交通を守るという重要な役割をもつことから、レヤウィンは石垣と守備隊に囲まれた強固な要塞都市です。 ブラックウッドの沼だらけの自然の中にあるにもかかわらず、レヤウィンは明るく陽気なよく栄えた町です。道路は広くきれいだし、住み心地の良さそうな広い家々は木骨作りやしっくい塗りで、多くの家の壁はまるで今塗られたばかりのような美しい色で彩られています。町のいたるところに木々や花が植えられ、静かな広場や池の周りは瞑想をするのにもってこいの場所です。住民のアルゴニアンとカジートの低俗で大衆的な性質を無視すれば、レヤウィンは巡礼者にとって感じの良い安全な町だと言えるでしょう。 レヤウィン伯爵はマリアス・カロといい、彼が最近花嫁に迎えた美しく賢いアレッシアは、あの信望厚いコロールの女伯爵アリアナ・ヴァルガの娘です。伯爵夫妻は帝政化を熱心に推進しており、ニベン人によるハートランドの帝都文明である、伝統的な勤勉さ、礼拝の習慣、遵法精神などを辺境の未開人たちに広めるために尽力しています。 町はニベン川西岸に建てられた高い幕壁に囲まれています。町の東端にある2つの門の中にはさらに城壁があり、その中にはレヤウィン城が川の深い部分をまたぐように建っています。ゼニタール聖堂は町の北西、西の門にほど近い場所にあります。商店、宿屋、ギルドは全て聖堂の南側、町の西半分に密集していますが、そこ以外にも良い本屋と貿易商の店が一軒ずつ、西の門からのびて町を東西に横切る道の北側にあります。住宅街は町を南北に走る大通り沿いにあり、住宅街の東にはニベン川の曲がりくねった部分を囲い込んで作られた深い池が2つあります。 ステンダール聖堂と伯爵夫妻は、ニベン文化の恩恵を辺境の地に住む原住民に広めるために協力し合っています。グリーン・ロードおよび最近開通したトランス・ニベン周辺での盗賊による被害があるにもかかわらず、守護神ゼニタールの祝福のおかげでレヤウィンの産業・貿易は栄えています。 レヤウィンの自慢のタネは、シロディール随一(もちろん、帝都州は別にして)の商店や商人の質の高さです。さらに、職人や戦士ギルド・魔法ギルドの講師にいたるまでが、優れた能力を持っているのです。中でも、サザン書店には注目です―― この本屋を経営しているのはなんとオーク(!!!)で、『こどもの神学』の在庫を切らしません。この本は、神の教えを本当の意味で理解していない人々にも易しく読めるのでおすすめできます。 最近、戦士ギルドのライバル組織とも言える傭兵会社「ブラックウッド団」がこの地に新しい本部を建て活動を始めました。ブラックウッド団の構成員のほとんどはアルゴニアンとカジートですが、役員たちは礼儀正しく、丁寧で上品な言葉遣いで話すことができるようです。彼らは私に、ブラックウッド団は値段とサービスの品質で積極的に戦士ギルドと競争すると話してくれました。(これは帝国民として正しい行いであり、ゼニタールもきっとお喜びになるでしょう―― 新進の事業は産業の繁栄にとって有益です) 残念なことに、レヤウィンに住む全てのアルゴニアンとカジートが、ブラックウッド団の構成員のように勤勉で模範的な人々ばかりなわけではありません。町中ではどんな時間でもアルゴニアンのトカゲどもやカジートのネコどもが道端にたむろし、無駄話をしています。彼らがほんの少しの時間でも自分自身と家をきれいにすることに費やしてくれたならよいのに。 九大神を称え、罪に背を向けましょう! 地理・旅行 茶3
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/247.html
ウルフハース王 五つの歌 ショールの舌 ウルフハース王の最初の歌は太古のもので、およそ第一紀の500年頃に書かれたものとされている。グレヌンブリアの沼地にてアレッシア派の軍勢が打ち破られ、その戦いでホアグ・マーキラー王が倒されると、アトモラのウルフハースが族長会議によって選ばれた。彼のスゥームが非常に強かったため、口頭で宣誓をするわけにいかず、誓いの儀は書記を介して実施されたとされている。書記たちは戴冠直後にウルフハース王による最初の布令、すなわち伝統的なノルドの神々の業火による復権である。旧態の信仰は違法とされ、僧侶たちは火あぶりに処せられ、その聖堂には火が放たれた。以後、ボルガス王の影響が一時的に弱まることになった。その狂信ぶりにより、ウルフハース王はショールの舌、北方の竜イスミールなどの異名で知られるようになった。 カインの息子 ウルフハース王の二番目の歌は、彼の偉業が古き神々にとっていかに好ましきものであったかを讃えたものであり、ウルフハースが東方のオークたちと戦い、その族長を声の力で地獄送りにした様子や、竜によって傷つけられたハイ・フロスガルの418番目の段を再建した話が盛り込まれている。彼が配下の軍勢が風を引かないように雷雲を飲み込んだことにより、ノルドたちはウルフハースをカインの息の異名で呼ぶようになったとされている。 戸を叩く老人 ウルフハース王の三番目の歌は彼の死に様を歌ったものである。敵側の神であるオルケイは以前からノルドたちを破滅に導こうと画策しており、アトモラでも彼らの年齢を奪ったりしていた。ウルフハース王の強大さを目の当たりにしたオルケイは、再び時喰らいしアルドゥインの亡霊を呼び寄せる。これによりノルドたちのほとんどは年齢を喰われ、六歳児の姿となってしまう。少年となったウルフハースは今は亡き神々の族長であるショールに、ノルドたちを救うように嘆願する。ショール自身の亡霊がこれに応じ、時の始まりでそうしたように霊魂の次元にてアルドゥインと対決して勝利し、オルケイの臣下であるオークたちを破滅に追い込む。天での戦いを見ていた少年ウルフハースは新たなスゥーム、「巨竜をかように揺らせばどうなるか」を体得する。彼はこの新たな力を使ってノルドたちを正常な姿に戻すが、一人でも多く救おうと焦る中で自らの年齢を戻し過ぎてしまい、グレイビアードたちよりも高齢となり、死んでしまうのであった。ウルフハースの火葬の際の炎はカインの炉にすら達したとされている。 灰の王 ウルフハース王の四番目の歌は彼の復活を歌ったものである。東方の王国のドワーフと悪魔たちが再び戦いを始め、ノルドたちはそれをきっかけにかつての領地を奪い返せないかと目論み始める。侵攻が計画されたものの、率いてくれる強大な王がいないために見送られてしまう。そこへダゴスの悪魔が登場し、敵意は無いと言い張り、ノルドたちに素晴らしき話を聞かせる。神々の族長ショールの心臓の在り処を知っているというのだ。ショールは遥か昔にエルフの巨人たちに殺され、その心臓はノルドたちに恐怖をうえつけるために旗の一部として使われたのだった。この策は当初功を奏していたが、イスグラモルが皆を正気に戻すと、ノルドたちは反撃に転じたという。自分たちがいずれ敗北することを悟ったエルフの巨人たちは、ノルドたちのもとにその守護神が戻ってしまわないよう、ショールの心臓を隠してしまったのであった。ダゴスの悪魔がもたらしたのはそれほどの朗報だったのである。彼によればショールの心臓は東方の王国のドワーフと悪魔たちが手にしており、最近の動乱はそれが原因になっているとのことだった。ノルドたちがダゴスの悪魔にかように仲間を裏切る理由を問うと、悪魔は同族の者たちは時の始まり以来お互いを裏切り続けてきており、これもその一環だと答え、ノルドたちもそれを信じた。「舌」たちがその歌でショールの亡霊をこの世に再び呼び寄せると、ショールは昔同様に軍勢を集め、撒かれて久しいウルフハース王の遺灰を集めて再生させた。これはショールが有能な武将を配下に欲したからであるが、ダゴスの悪魔もその武将の役をくれと懇願し、聖戦の担い手としての自らの役割を強調した。これによりショールは灰の王とダゴスの悪魔の両方を武将として傘下にかかえ、スカイリムの息子たち全員を引き連れて当方の王国へと進軍したのである。 赤き山 ウルフハース王の五番目の歌は実に悲劇的なものである。災厄の生き残りたちは赤い空のもとに帰ってきて、その年は太陽の死と呼ばれることになった。ノルドたちはダゴスの悪魔に騙されたのであった。ショールの心臓は東方の王国では見つからず、そこにあった事実すらなかったのである。ショールの軍勢が赤き山に辿り着くやいなや、悪魔とドワーフたちが大挙して襲いかかってきたのである。敵の妖術師たちが山を持ち上げてショールの上に落とし、ショールは時の終わりまで赤き山の下敷きになってしまう。スカイリムの息子たちは惨殺されてしまうが、その前にウルフハース王がドワーフオークのドゥマラキャス王を倒し、その一族の破滅を不可避として一矢報いた。その後、悪魔のヴェクが灰の王を地獄へと送り、戦いは終焉を迎えた。しばらくの後、カインがイスミールを地獄から救い、その遺灰を天へと持ち上げ、息子たちに裏切りによって流された血の色を見せたのである。そしてノルドたちはあれ以来、二度と悪魔を信用することはなくなったという。 *** 灰の王ウルフハースの秘密の歌 赤き山の真実 ダゴス・ウルが約束した通り、ショールの心臓はレスデインにあった。ショールの軍勢は内海の最も西方にある沿岸に近づき、その向こうにドワーフの軍が集結する赤き山を見た。斥候からの報告によると、ダークエルフの軍はナルシスを出発したばかりで、ノルドたちと戦うドワーフ軍に加勢するにはしばらくかかるだろうとのことであった。ダゴス・ウルの話では裁官たちが王の信頼を裏切り、ダゴス・ウルをロルカーン(レスデインでのショールの呼び名)のもとへと送り、荒ぶる神がドワーフたちの不遜に鉄槌を下すことを期待したそうだ。ネレヴァルとドワーフたちの和平こそが、ヴェロシの法の破滅に繋がるのだと。ダゴス・ウルいわく、それこそがダークエルフの集結が遅い理由なのだと。 増強される軍勢 そしてロルカーン(レスデインでのショールの呼び名)は言った、我がドワーフ共に復讐の鉄槌を下すのは、裁官たちが思うような理由のためではない。とはいえ、奴らが奴らに味方する輩共々、我が手で死ぬことに変わりはない。ネレヴァルとやらは、最も強大なパドメイの一人であるボエシアの息子である。彼は裁官たちが何と言おうと同族にとって英雄であり、十分な数の兵を集めて激しく抵抗してくるであろう。我々にも増援が必要だ。すると、裁官たちと同じくらいドワーフ共を死なせたいと欲していたダゴス・ウルがコゴランへと赴き、ダゴス家のチャプティル、ニクスハウンド、魔術師、弓兵、そして奪取した黄銅人たちを呼び集めた。そして灰の王ウルフハース、白髪のイスミールは、そのノルドの血を抑えてオークたちと和平し、多くの戦士を得たものの魔術師はまるでいなかった。赤き山を目前にしてもなお、ノルドたちの多くは宿敵と手を組む気にはなれず、戦意を捨てる寸前にあった。そこでウルフハースは言った。自分のいる場所がわからんのか? ショール様が誰なのか知らんのか? この戦争の意味がわからんのか? すると兵たちは王から神から悪魔たちからオークたちへと見渡して、その何人かは理解し、それも心底理解し、その何人かこそがその場にとどまったのである。 破滅の太鼓 ネレヴァルは月の影の音から作られた、キーニングなるダガーを身につけていた。彼のそばには神のものとおぼしき大槌を携えたドワーフの王デュマクと、アズラの息子であり、亡霊の鎧を着込んだ不死身のアランドロ・スルがいた。彼らは赤き山の最後の戦いでロルカーンと対決した。ロルカーンは心臓を取り戻していたが、長い間離れていたため、時間を必要としていた。ウルフハースはスルと戦ったものの、スルに打撃を与えることができず、重傷を負って倒れたが、その前に叫びによってスルを失明させた。ダゴス・ウルはデュマクと戦い、これを倒したが、その前にサンダーが主君の心臓に命中していた。ネレヴァルはロルカーンに背を向け、怒りに任せてダゴス・ウルを打ち倒したが、逆にロルカーンから致命傷を受けてしまった。だがネレヴァルはこの早すぎる死を偽装し、ロルカーンの脇腹に不意打ちを喰らわせた。調律の力をもつサンダーの一撃によりロルカーンの心臓は固化しており、ネレヴァルはキーニングでこれを切り出すことができた。心臓を切り出すとロルカーンは倒され、万事が終焉を迎えたように思われたのであった。 歴史・伝記 紫1