約 384,324 件
https://w.atwiki.jp/magicaloss_misasu/pages/5131.html
【7】 ブラックドッグ 2匹 サラマンダー 右上→1956-C(封) 右下→?-D 左上→?-B 左下→?-A
https://w.atwiki.jp/akebon/pages/2545.html
#ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (logo1.gif) 評価結果で、Sランクを獲るには、派生ページの点数100点以上と編集人数7名です。7名ギリギリではなく、それ以上の人数が必要です。編集しましたら、トップページの下にある名簿に自分の名前を入れて、チーム内コメントに「○○を編集しました。」と書き込んで下さい。3季目までは自選手のコメントの編集、4季目からは、派生ページまたは打撃成績・投手成績のうちのどれか1つを編集して下さい。wikiの編集は必ずしないと、チームは強くなりません。試合監督をする・しない方でも是非編集に御協力お願いします。編集で投稿の際、画像の文字通りに打たないと投稿が出来ません。注意点ですが、1日に数十回投稿すると、編集不可能になります。(プレビューを使いながらの編集が最適)更には悲惨なことですが、評価の時にランクが下がってしまいます。(投稿してから5分間ぐらいの間隔を置いて下さい) ----トピックス&派生ページ---- 日ハムBBS 更新履歴等 日ハム更新履歴などの派生ページ 日本ハム選手入退団情報 トレード、移籍、新入団、退団情報 日本ハム殿堂館 殿堂入り選手情報 リーグ戦前後半総括(日本ハム) 全チームのリーグ戦、前後半の流れです。 選手評価点(日本ハム)? 日本ハムの全選手の評価点です。 他球団との対戦成績・要注意選手(日本ハム)? 他球団の対戦成績と要注意選手です。 日本ハムの球史 チームの球史です。 全選手現役シーズン成績(日本ハム) 全選手の1季目からこれまでの成績です。 日本ハム成績 レギュラーシーズン&プレーオフの成績です。 タイトル獲得&野手・投手TOP10(日本ハム) ベストナイン含めた個人タイトル受賞&野手・投手のTOP10に入った選手です。 パリーグ戦展望&狙い目選手(日本ハム)? パ・リーグの展望とパリーグ球団の狙い目選手です。 日ハム流育成理論 一流選手への道のり これだけは憶えよう(日本ハム) wikiなど、基本的なことについて書いています。初心者の方はお勧めです。 トレードor移籍相談所 ここのページは全球団共通のトレードや移籍希望の方が気軽に参加できるページです。 wiki使い無しで堂々と挑む! 現在の日ハムは、wiki使いに頼らず戦っている状況。今や、不要論といってもいい。それに一切拘らず、現有戦力で黄金期を目指して正々堂々と戦っていく。 チーム状況 攻 走 守 先 中・抑 総 野手年俸 投手年俸 平均年俸 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (B.gif) #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (B.gif) #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (B.gif) #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (A.gif) #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (C.gif) #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (B.gif) 9500 9500 9500 ☆★☆第194回日ハム野手紹介☆★☆ 1番・左 ムネリン(パワプロ) 左打ち・ノーマル 2年目・23歳 PW MT 走 肩 守 コメント #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (E.gif)132 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (B.gif)6 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (C.gif)10 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (D.gif)8 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (D.gif)8 二年目に突入。俊足巧打が持ち味。将来に期待がかかる。 成績 打率 安打 本 打点 三振 犠打 盗塁 失策 タイトル 194 .312 192 3 31 72 3 23 4 2番・遊 ZIATAN(Ⅸ) 左打ち・ノーマル 18年目・39歳 PW MT 走 肩 守 コメント #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (C.gif)198 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (C.gif)5 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (D.gif)8 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (B.gif)11 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (A.gif)13 楽天から移籍の大ベテラン。最下位のチームの発起に期待。 成績 打率 安打 本 打点 三振 犠打 盗塁 失策 タイトル 194 .333 177 22 88 55 1 7 0 3番・中 ALEX(ALEX) 右打ち・ノーマル 12年目・33歳 PW MT 走 肩 守 コメント #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (B.gif)219 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (S.gif)8 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (S.gif)15 11 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (S.gif)15 楽天からの移籍選手即戦力としての期待大。 成績 打率 安打 本 打点 三振 犠打 盗塁 失策 タイトル 194 .304 165 22 74 63 1 20 0 4番・DH アイゼン(shspsp) 右打ち・ノーマル 21年目・42歳 PW MT 走 肩 守 コメント #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (C.gif)188 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (C.gif)5 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (D.gif)7 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (D.gif)7 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (D.gif)7 古くから日ハムに居る数少ない野手。チャンス◎の効果に期待。 成績 打率 安打 本 打点 三振 犠打 盗塁 失策 タイトル 194 .255 146 12 73 100 1 3 0 5番・二 瑠川(Ganju) 左打ち・ノーマル 3年目・20歳 PW MT 走 肩 守 コメント #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (E.gif)132 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (B.gif)6 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (C.gif)9 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (D.gif)8 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (B.gif)12 守備型としての能力が更にUP。セカンドを安心して任せられる。 成績 打率 安打 本 打点 三振 犠打 盗塁 失策 タイトル 194 .250 145 2 40 76 0 7 5 6番・一 石井拓郎(bazu-ka) 左打ち・ノーマル 1年目・22歳 PW MT 走 肩 守 コメント #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (D.gif)175 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (B.gif)6 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (E.gif)5 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (F.gif)4 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (D.gif)8 新規登録。足を引っ張らないようにしたい。 成績 打率 安打 本 打点 三振 犠打 盗塁 失策 タイトル 194 .227 123 8 45 112 1 2 0 7番・右 風雷(めと) 左打ち・ノーマル 3年目・20歳 PW MT 走 肩 守 コメント #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (F.gif)124 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (C.gif)5 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (B.gif)11 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (C.gif)9 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (C.gif)9 3年目の今期、自慢の走力を活かせるか。 成績 打率 安打 本 打点 三振 犠打 盗塁 失策 タイトル 194 .230 128 1 41 108 3 12 2 8番・捕 天武桜(なるに) 右打ち・ノーマル 1年目・22歳 PW MT 走 肩 守 コメント #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (C.gif)181 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (C.gif)5 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (E.gif)5 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (E.gif)6 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (E.gif)6 大卒22歳のルーキー。打力に期待。粘ればいい選手になるだろう。 成績 打率 安打 本 打点 三振 犠打 盗塁 失策 タイトル 194 .218 114 8 44 109 0 4 3 9番・三 アレックス(アレックス) 右打ち・ノーマル 3年目・20歳 PW MT 走 肩 守 コメント #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (E.gif)153 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (D.gif)4 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (B.gif)12 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (D.gif)8 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (C.gif)9 3年目となる今期に名無し化… 成績 打率 安打 本 打点 三振 犠打 盗塁 失策 タイトル 194 .217 111 4 37 87 1 14 3 ☆★☆第194回日ハム投手紹介☆★☆ 10番・先発 ミスプロ(米国血統) 左投げ・スリー 13年目・34歳 制球 体力 球速 球種 コメント 255 219 159km/h カーブ2Hスライダー3SFF2Hシンカー7 193回シーズンオフに楽天より移籍してた。日ハムを優勝に導くことができるか 成績 防御率 勝 負 S 回 奪三 四死 被本 タイトル 194 1.97 16 6 0 205.1 138 91 9 11番・先発 影松神事(king) 左投げ・スリー 19年目・40歳 制球 体力 球速 球種 コメント 216 168 146km/h カーブ6Hスライダー4ナックル7Hシンカー7シュート5 もうそろそろ足手まといになってきた。お金もないので転生予定中である! 成績 防御率 勝 負 S 回 奪三 四死 被本 タイトル 194 3.01 11 12 0 167.2 91 86 9 12番・先発 ドリーム6(ドリーム6) 左投げ・サイド 9年目・30歳 制球 体力 球速 球種 コメント 255 247 146km/h スローカーブ7スライダー4フォーク2 今やもう先発の柱となっている。今後に大きく期待できそうだ。 成績 防御率 勝 負 S 回 奪三 四死 被本 タイトル 194 2.60 12 12 0 215.0 133 103 14 13番・先発 西村健太郎(V冠) 右投げ・アンダー 7年目・28歳 制球 体力 球速 球種 コメント 216 191 154km/h スライダー7 6年目に突入。速球とスライダーのコンビネーションが冴える。 成績 防御率 勝 負 S 回 奪三 四死 被本 タイトル 194 4.13 3 12 0 152.3 75 93 21 14番・先発 ぶる丸(くま吉) 左投げ・スリー 5年目・22歳 制球 体力 球速 球種 コメント 211 229 141km/h カーブ4スライダー5フォーク3シンカー5シュート2 ×特殊能力改善で開花なるか。ここまでくると大器晩成型だと祈りたい。 成績 防御率 勝 負 S 回 奪三 四死 被本 タイトル 194 4.93 6 16 0 166 106 96 33 15番・中継ぎ えばーふろすと(Mid) 左投げ・アンダー 1年目・22歳 制球 体力 球速 球種 コメント 209 132 152km/h カーブ1スライダー5フォーク5シンカー1シュート1 193回オフにドラフト外入団。初回キャンプで当たりを引いたが、資金が減って一発病克服は当分先になりそう。 成績 防御率 勝 負 S 回 奪三 四死 被本 タイトル 194 5.53 3 5 1 94.1 64 61 14 - 16番・中継ぎ あるしゃーびん(夢庵) 右投げ・トルネード 2年目・23歳 制球 体力 球速 球種 コメント 206 181 141km/h カーブ3フォーク5シンカー4 新規選手。制球をあげて活躍したい。 成績 防御率 勝 負 S 回 奪三 四死 被本 タイトル 194 4.40 4 5 0 103 86 62 18 17番・中継ぎ マサト(sss) 左投げ・サイド 2年目・23歳 制球 体力 球速 球種 コメント 193 175 143km/h カーブ5スライダー2 新規入団選手である。カーブとスライダーで内野ゴロの山を築く。 成績 防御率 勝 負 S 回 奪三 四死 被本 タイトル 194 4.54 4 5 0 103 53 73 15 18番・抑え Jeng(Jeng) 右投げ・スリー 5年目・26歳 制球 体力 球速 球種 コメント 237 155 156km/h カーブ2スライダー2フォーク3Hシンカー7 守護神に定着。速球派のHシンカーが武器。 成績 防御率 勝 負 S 回 奪三 四死 被本 タイトル 194 3.60 0 2 20 25 24 8 4 保存ページ 過去のトップページ(日本ハム)? 過去の派生ページ(日本ハム)? 過去の日本ハムの球史 過去の日本ハム入退団選手 自分の担当する箇所を更新したら表の中の自分が編集した枠に自分の名前を追加してください。 トップページ 第~回あけペナ 192 193 194 195 196 名簿・能力・年齢・年数 めと くま吉 Ganju 米国血統bazu-kaGanju 野手成績 アッキー 夢庵 ALEX 投手成績 夢庵 米国血統 コメントの一部更新 自選手のコメント更新 くま吉 king Mid くま吉 TOPページ保存 サザビー 夢庵 夢庵 派生ページ 第~回あけペナ 192 193 194 195 196 日本ハム成績 夢庵 夢庵 投手・野手ベスト10 めと めと 選手移動情報更新 king king Mid パリーグ戦展望 king king・Ⅸ 日本ハムの球史 shspsp shspsp shspsp 他球団との対戦成績・要注意選手 king king king 全選手現役シーズン成績 Ganju Ganju Ganju リーグ戦前後半総括 king king king 選手評価点(日本ハム) 夢庵 夢庵 通算訪問者 - 今日の訪問者 - 昨日の訪問者 - 最終更新日:2008年08月03日15時37分05秒
https://w.atwiki.jp/soushi2192/pages/89.html
北日本のある小さな村 生物兵器アサルト 共通ドロップ: 名前 レベル 体力 近距離(ダメージ) 遠距離(ダメージ) 経験地 表彰 ドロップ 生物兵器輸送兵 不明 12,000 衝撃(??) 貫通(??) - - 生物兵器輸送幹部 不明 45,000 衝撃(??) 貫通(??) - - 食糧
https://w.atwiki.jp/magicaloss_misasu/pages/6756.html
【11】 右上→11964-C 右下→?-D 左上→?-B 左下→?-A
https://w.atwiki.jp/sekoketi-mama/pages/593.html
https://w.atwiki.jp/3edk07nt/pages/247.html
1947.4.20 払暁 “兎の砦” 薔薇水晶に先導されて、薄暗く、入り組んだ壕内を進む。 天井に設けられた電球の間隔が広くて、隅々まで電灯が届かないのだ。 本当に、ウサギの巣穴みたい。歩きながら、真紅は思った。 「ここが……貴女の部屋」 前を行く薔薇水晶が足を止め、ロングブーツの踵を軸に、くるりと振り返る。 彼女が差し示す先には、物々しい鉄扉が、鈍色の輝きを放っていた。 「部屋数が少ないから……相部屋になる。それでも良い?」 「イヤとは言えないでしょう。寝泊まりできれば構わないわ」 キッパリと言い切ったところで、真紅は泣き腫らした瞼を細めた。 「……と言いたいところだけど、私も一応、女の子なのでね。 同居人は、男? だとしたら、お断りよ。廊下で眠った方がマシなのだわ」 「潔癖……見かけどおりね。安心して……ここは女の子だけの居住区だから」 薔薇水晶は唇を吊り上げ「ごゆっくり」と、嘲りにも似た笑みを浮かべる。 この娘は会ったときから、真紅に対して良い感情を抱いていないらしい。 ちょっとの仕種の中に、露骨な忌避の念が垣間見えていた。 真紅は不快さを誤魔化すように踵を返すと、宛われた個室の扉を開けた。 キュルキュルと、蝶番が耳障りな音を立てる。 顔が赤くなるほどチカラを籠めているというのに、とにかく重たい。 どうにか薄く開いた扉の隙間から流れ出るのは、埃っぽい空気と、甘ったるい人いきれ。 女性の部屋にありがちな生活臭が、真紅の鼻を突いた。 換気されてはいるものの、地下ということもあって、空気の流れが悪いのだろう。 ちょっと吸い込んだだけで、真紅は息を詰まらせた。 「ちょっとの辛抱よ」 鼻先を手で覆いながら、喘ぐような小声で、自分に言い聞かせる。 「仮眠したら、すぐにあの子たちを追いかけないと」 真紅は、父が誕生日にプレゼントしてくれた、24金の懐中時計を取り出した。 時計の針は、夜明けまで、もう間もないことを告げている。 朝になったら、オートバイを借りて追いかけるつもりだった。 空襲に遭うかも知れないが、多少の危険は覚悟の上だ。 ――∞――∞――∞――∞―― 1947.4.20 槐さんには、もっともっと、詳しい話を聞きたい。 でも、その欲求を遙かに超えて、あの子たちのことが気懸かりで―― 胸に蟠る不安に、私は押し潰されそうになる。 車長として経験の浅い蒼星石では、咄嗟の機転が働かないでしょう。 だけど、その一瞬が生死を分けることもある。 戦場という環境で、私たちは幾度となく、それを目の当たりにしてきた。 私が戻るまで、戦闘が始まらなければ良いのだけれど…… こちらの都合を考えてくれるほど、甘い敵ではないわよね。 ――∞――∞――∞――∞―― 真紅は薄暗い室内に踏み込んで、即座に固いベッドに横たわると、 日記代わりの手記をしたため、吐息した。 いつからだろう。着の身着のままで眠ることに、慣れてしまったのは。 『即座に行動できるように』という、一秒すら争う戦場では当然の配慮ながら、 最初は違和感を覚えて、なかなか寝付けなかったものだ。 それなのに、今は――衣服が汚れ、皺が寄ることにすら、無頓着になりつつある。 「こんなにも、だらしなくなった私を…… あなたはどうお思いになりますか、お父様?」 ブーツも脱がずベッドに寝転がる、ふしだらな娘と軽蔑する? それとも……たくましく成長したと、褒めてくれるのかしら? いずれにせよ、皮肉以外の何物でもない。 貶す権利も、褒め称える資格も、今や戦争の首謀者となり果てた父には無いのだから。 もしも対面して、そんな戯言を並べようものなら、断固として反撥するだろう。 『あなたなんかに――』 その一言を皮切りに、これまでの鬱憤が堰を切った様に、唇から迸る筈だ。 大好きな存在を罵倒しなければならない苦痛に苛まれながら、 それでも攻撃的な言葉を浴びせ続け、同時に、自分の心をも傷つけ続けるのだろう。 (……止めましょう。考えたところで、詮無いことだわ) パン生地を思わせる枕に頭を載せると、ふにゃりと沈み、カビ臭さが立ち上る。 こんな状況で、本当に眠れるのだろうか? 眉を顰めた真紅は、額に腕を翳して、瞼を閉ざした。 ……が、懸念したとおり、待てど暮らせど睡魔は訪れない。 半身を起こすのも億劫なくらい、身体は疲れ切っているのに、だ。 気持ちを落ち着かせようと深呼吸すれば、澱んだ空気を吸い込んで、余計に胸が悪くなる。 悶々としていた彼女の耳が微かな歌声を捉えたのは、何度目かの寝返りをうった直後だった。 「換気口を伝わって聞こえるのね。この旋律は…………エーデルヴァイス」 英語の発音では、エーデルワイス。小さくて白い花は、スイスの国花でもある。 真紅はベッドを抜け出て、天井ちかくにある通気口の真下に寄り、耳をそばだてた。 か細いけれど、淀みなく、きりりと通る美しい声だ。 「素敵な歌声ね。なぜかしら……不思議と、魅了されるわ。 どうせ眠れないのだし、出発まで歌を聴かせてもらうのも、一興というものね」 通気口を伝って聞こえるくらいだから、それほど遠くはあるまい。 この息が詰まる部屋に居るのも厭だったので、真紅は躊躇いなく、通路に出た。 しかし、右と左、どちらから聞こえてくるのだろう? 身動きを止め、澄ませた耳に届いたのは、歌声ではなく男の声だった。 「あれ? 真紅……」 「きゃっ?! ……あなたは、確か――」 「どうしたんだ、こんな所で。迷ったのか?」 真紅に声を掛けたのは、レジスタンスと行動を共にしていた少年だった。 埃にまみれた見窄らしい格好ではなく、白衣を纏って、どこぞの機関の研究員みたいだ。 改めて、ジェット技術を学びに、はるばる日本から来た技術者なのだと実感する。 けれど、真紅が目を見張った理由は、彼の変貌ぶりにではなく、彼の隣にあった。 「ジュン。そちらの人は、誰なの?」 不躾と承知しつつも、真紅はジュンの隣に立つ、黒髪の美しい娘を矯めつ眇めつした。 彼と同様、膝まである丈の長い白衣を、私服の上につっかけている。 真紅の視線を感じて、娘は恥ずかしげに身を捩ったものの、気後れすることなく、 ジュンに紹介される前に、自ら名乗った。 「こんばんわ……あ、この時間だと『おはよう』になるのかな? まあ、いいや。私は、柿崎めぐ。桜田くんと共に、日本から来たのよ。 貴女が今でてきた部屋の先住人ってわけ」 「柿崎は、僕の同僚なんだ。元々、僕らは民間の航空機会社の技術見習いでね。 将来を嘱望されて抜擢……と言うと聞こえがいいけど、実際には人材不足なのさ。 僕ら以外は爺さんばっかりだから、長旅に耐えられないんだよな」 「たとえ冗談にしても、その見方はひねくれ過ぎよ、桜田くん」 軽口を叩いて肩を竦めるジュンを、めぐが溜息混じりに諫めた。 「結菱社長も、柴崎専務も言ってたじゃない。 戦争はもうすぐ日本の敗北で終わるから、戦後の復興の為に、技能を磨いてこいって」 「う……まあな」 鈴の音を思わせるめぐの声に、ジュンは口ごもって、唇を尖らせる。 そんな彼の様子を、不甲斐なさげに眺めていた真紅は、ふと、歌声のことを思い出した。 もしかしたら、この、めぐという娘が声の主だったのかも……。 「ねえ、今さっき歌っていたのは、貴女なの?」 「? なんのこと」 「僕たちは、ずっと一緒に居たけど、柿崎は歌ったりしてないぞ」 怪訝そうに眉根を寄せた二人だったが、寸間を得ず、めぐは手を打ち鳴らした。 「桜田くん。ひょっとして、彼女のことじゃないかな」 ジュンも思い当たったらしく「ああ!」と歯を見せる。 「うん……きっと、そうだ! なんだよ真紅、彼女の歌が聴きたいのか?」 「え、ええ。寝付けないものだから」 「そっか。だったら付いて来いよ。すぐそこだから、案内してやるよ」 言って、先に出たジュンの腕に、めぐがするりと腕を絡めた。 「私も付いてこうっと。あの娘の歌は好きだから」 「うん、僕もだ。あいつの歌を聴くのも、久しぶりだな」 そうするのが当たり前であるかのように、二人は自然な態度で寄り添って歩く。 真紅の眼には、職場の同僚と言うより寧ろ、恋人同士に映った。 (私……もしかして、邪魔なのかしら?) 二人の背中を、ぼんやりと眺めながら、真紅は少し遅れて足を踏み出した。 とある一室の前で、二人の足が止まる。彼女が宛われた部屋から20mほど離れた場所だ。 閉ざされた鉄扉の隙間から、幽かに、くぐもった歌声が滲みだしてくる。 ジュンが呼びかけつつドアを叩くと、内側から元気のいい返事があった。 「はいなのー。いますぐ開けますなのよ」 鉄扉が内側へと引き込まれ、愛くるしい笑みを湛えた娘が、ぴょこんと顔を覗かせた。 真紅の幼なじみの、雛苺だ。 午前四時を過ぎた頃であるのに、この娘は疲労の色ひとつ見せていない。 雛苺が背にした薄暗い室内からは、依然としてエーデルワイスの歌が漏れ聞こえてくる。 「こんな時間まで起きてたのか、雛苺。あんまり感心しないな」 「ぶー。ジュンとめぐだって、夜更かししてるクセにっ」 「あのな、僕たちは遊んでるワケじゃないんだぞ。アレを完成させるために――」 「ヒナだって、遊んでるんじゃないのよー」 子供の口喧嘩みたいな応酬が始まると、めぐが「まあまあ」と、間に割って入った。 そして、室内を親指でさしながら、めぐは雛苺に笑みを向けた。 「今日は、彼女……調子よさそうね。歌を聴かせて欲しいんだけど、いい?」 「雛苺。私からも、お願いするわ」 ジュンの後ろから進み出た真紅を一瞥すると、雛苺は瞬く間に表情を曇らせた。 「みんなで聴いてくれた方が、あの子も喜ぶから大歓迎なのよ。 だけど……真紅の服は……」 「あ、そっか。あいつ、軍服を見ると怖がるんだっけ」 雛苺に相槌を打ったジュンは、やおら自分の白衣を脱いで、真紅の肩にふわりと掛けた。 「これ、羽織っておけよ。ボタンを掛けておけば、服も目立たないだろ」 「あ…………ありがとう」 控えめに礼を言うと、真紅は戦車兵の黒い軍服を恥じるように、白衣の端を掻き寄せた。 俯いた彼女の頬が、うっすら色付いて見えたのは、光の加減だろうか。 それとも、服越しにとは言え、肩に触れた異性の手の温もりを意識したのか。 「さっさと入れよ、真紅。元々は、お前が歌を聴きに来たんだからな」 対して、ジュンはいつもと変わらず、不躾な口調で促す。 馴れ馴れしく“お前”呼ばわりされて、真紅は咎めるように彼を睨んだ。 ……が、文句を言うことはなく、ぷいっと顔を背け、室内へと姿を消した。 めぐは、辛うじてジュンにだけ届くような小声で、そっ……と囁いた。 「優しくするのは、私だけにして欲しいなぁ」 「え? なんだって?」 「……ううん、なんでもなーい。さっ、私たちも行こう♪」 ジュンは釈然としない顔のまま、めぐに手を引かれて、雛苺の部屋に踏み込んだ。 室内は、真紅の部屋と同様、澱んだ空気に満ちていた。お世辞にも、清潔とは呼べない。 けれども、部屋の奥に置かれたベッドに腰掛け、美声を奏でる娘は、目を見張るほど美しく―― 例えるなら、エーデルワイスの花のような、白くて可愛らしい女性だった。 『掃き溜めに鶴』とは、正しく彼女のような存在を言うのだろう。 真紅は、まるで人魚の歌に魅入られた船乗りのように、白い娘の元に引き寄せられていった。 徐に、歌が止む。娘は、どこか虚ろな眼差しを、真紅に向けていた。 「――貴女は……だぁれ?」 訊ねる彼女の右眼は、血に塗れた包帯で覆われていた。 ~ ~ ~ ――同時刻 スターリングラード某所 煌々と照明の点された室内には、異様な雰囲気が漂う。 薬品の匂いと、饐えた臭い。ガラス管を渡ってゆく気泡が、こぽこぽと笑う。 ある場所では、しゅうしゅうと立ち昇った蒸気が、室内に溶けていく。 別の箇所では、ぽん! ぽん! と、何かが吹き出る音が響いていた。 立ち並ぶ巨大な七つの円筒水槽は、見る者に水族館を彷彿させるだろう。 けれど、水槽の中には、生物の影など全くない。 ただ、薄気味悪い液体が満たされているだけ……。 その部屋の一角。 純白の診察台の上に、息を呑むほど美しい娘が、全裸で横たわっていた。 瞼は閉ざされているものの、胸の双丘は、規則正しく緩やかに上下している。 健やかな寝息を立てる娘の様子を、診察台の脇に立ち、見下ろす人影が――ふたつ。 どちらも白衣を纏い、口元にはマスクを着用していた。 「いよいよですね、フォッセー博士」 メガネを掛けた黒髪の人物が、たどたどしいフランス語で、対面する人物に話しかける。 博士と呼ばれた若い女性、コリンヌ=フォッセーは、こくりと頷いて、返事をした。 「あなたの協力には、本当に感謝しているわ。 いよいよ…………あの人の理想である『アリス』の時代が、幕を開けるのよ」 二人の会話を、夢の終わりを告げるヒバリの声と聞いたのか―― 娘の瞼が、す……っと見開かれた。
https://w.atwiki.jp/3edk07nt/pages/240.html
1947.4.18 オルシュティン近郊 真夜中の廃墟に蠢く、何者かの気配―― 雨の後の湿った夜風が、ピリピリした緊迫と、一触即発のニオイを運んでくる。 それを嗅いでしまうと攻撃されそうな気がして、知らず、真紅は息を詰めていた。 注意深く、物陰を見回していく……と、潜んでいる人影が複数、確認した。 服装は統一されておらず、正規軍でないことは明らかだった。 つい最近に、レジスタンスや難民が流れてきて、住み着いたのかも知れない。 「……撃ってこないわねぇ。ホントに囲まれてるのぉ?」 砲塔に設けられたピストルポートで、水銀燈は外の様子を窺いつつ訊いた。 ポートが小さすぎて、全体が見渡せないらしく、声に苛立ちが紛れている。 「ああ、もうっ……あったまくるわねぇ」 焦れた水銀燈は舌打ちすると、真紅の隣に上がって、むりやり頭を並べた。 ただでさえ狭いキューポラは、たちまち窮屈な空間となる。 自ずと、互いの息がかかるくらい身体が密着して、蒸し暑さが増した。 真紅は頬をくすぐる彼女の吐息に耳を染め、不平を言おうとしたものの、 ぐっと呑み込んで顎をしゃくった。 示された方角のペリスコープを覗いた水銀燈は「あらぁ」と、いたって暢気に呟く。 「思いっ切り、パンツァーシュレッケで狙われてるじゃなぁい」 「こちらが抵抗の素振りを見せないから、様子を見ているんでしょうね。 ちょっとでも砲塔を旋回させようものなら、すぐにロケット弾が飛んでくる筈よ」 「様子を見るくらいだから、好戦的で無秩序な部隊じゃないみたいだね。 試しに、ボクが白旗を掲げて出てみようか?」 「待ちなさい、蒼星石」 静かに、だが強い語調で、真紅は装填手用ハッチに指を掛ける蒼星石を引き留めた。 「車長は私よ。どうするかは、私の判断に従いなさい」 言って、襟元に巻いていた真っ白い絹のスカーフを外し、水銀燈の瞳を見つめた。 「私に、もしもの事があった時には…………みんなを頼むわね、水銀燈」 「はぁ? いきなり、なに言い出すかと思えば、バカじゃなぁい? もしも……だなんて危ぶむくらいなら、最初っから、私に任せておきなさいよ。 おばかさんの真紅よりは、よっぽど巧く交渉でき――」 「いいから、下がっていなさい。これは命令よ」 有無を言わせぬセリフでありながら、あくまで穏やかに……。 負けず嫌いの水銀燈は、更に食い下がろうとしたが、結局、渋々とキューポラを降りた。 ここで言い争っていても埒があかないことは、彼女とて承知している。 そして、真紅が時に我を曲げない強情さを発揮することも、理解していた。 「ありがとう、水銀燈」 「……ふん。おばかさんの真紅なんか、のこのこ出てって、撃たれちゃえばいいのよ」 「貴女に心配してもらえるなんて、嬉しいわね」 「ほぉんと、救いようのないおバカさんだわ」 水銀燈の憎まれ口に笑顔を返しつつ、真紅は砲塔の上に誰も乗っていないことを確かめた。 もし外に襲撃者が居て、ハッチを開けた途端に手榴弾を投げ込まれたら、一巻の終わりだ。 だが、幸いにも、近接している者は皆無だった。 真紅は、襲撃者たちを刺激しないよう、ゆっくりとハッチを押し上げていった。 その段階ではまだ、不用意に頭を出したりしない。 用心のため、利き腕とは反対の手でスカーフの端を摘み、ハッチの外に伸ばした。 撃たれるかも知れない。弾が当たったら、どれだけ痛いのかしら? 激しい動悸に見舞われながら、恐る恐る……ゆっくりと振ってみる。 ――反応は、何もなかった。銃弾どころか、人の声すら飛んでこない。 意を決した真紅は、慣れた身のこなしでハッチを擦り抜け、砲塔の上に立ち上がった。 雨上がりの、じっとりと湿り気を含んだ夜風に、金色の糸束がたゆたう。 物怖じしない彼女の態度は、言い知れぬ威厳を――覇者の気迫を――放っており、 襲撃者たちに少なからぬ動揺を与え、畏縮させた。 けれど、怖いのは真紅とて同じ。 堂々と振る舞っていても、いつ撃たれるか分からない恐怖で、両脚が小刻みに震えている。 僅かでも気を抜けば、膝がカクンと折れてしまいそうなほどに。 夜中でよかった。昼間なら、脚の震えを見られて、怖れを悟られていただろう。 真紅は自らを奮い立たせるため、気取られないよう深呼吸して…… 凛とした眼差しを、廃墟に潜む者たちへと走らせた。 「何者なの! 姿を見せなさい!」 静寂を破って、夜闇に谺する真紅の声。 気を張っていたつもりだったが、少しだけ語尾が震えていた。 それを虚勢と見抜かれたのか、廃墟の中から応える声は無い。 (やはり徹底抗戦しかないの?) 本意ではない。だが、生き延びるためならば、銃を撃つことを躊躇ったりしない。 父を止めるため軍属となった時から、人を死に追いやることも、覚悟の上だった。 反応がないなら、仕方がない。先制して、廃墟に榴弾を撃ち込むまでだ。 黒髪を逆立たせた青年が、ティーガーⅢの前に立ちはだかったのは、 真紅が胸の内で心を決めたのと、ほぼ同時だった。 わりと小柄な体躯で、やけに額の広い男だった。 鋭い目つきと、口元に浮かべた薄ら笑いに、自信家らしさが滲み出している。 武器は携えていないが、真紅を射竦めるように睨みながら、歩み寄ってくる。 車内では、金糸雀が前面機銃に指を掛けて、いつでも撃てる体勢に入っていた。 それを察してか、車体から約5メートルの距離で、青年の歩が止まる。 30秒ほど、異様な緊迫感が漂う中、青年はゆっくりと右腕を上げた。 「攻撃は中止だ」 その一言で、肌を刺し、身を斬るほどに張り詰めていた殺気が、雲散霧消する。 パンツァーシュレッケを構えていた少年も、緊張の糸が切れたように惚けていた。 顔を突き合わせて、初めて気付いたのだが、少年はメガネを掛けていて、 どこか臆病な印象を、見る者に抱かせる顔立ちをしていた。 (東洋系の顔つきだわ。日本人……かしらね) 真紅に、じっと見つめられていると察した彼は、気まずそうに顔を背けた。 他人との付き合いが、あまり上手ではないようだ。 「すまなかったな。見慣れないシルエットだったから、敵の新型戦車と誤認した。 まあ、こんな深夜に単独行動してたんだし、自業自得ってもんだろ? 夜間にありがちな不慮の事故さ。死人が出なかっただけ、マシだと思えよ」 車体の前方から投げかけられた声に、真紅は我に返った。 振り向くと、リーダー格の青年が腰に両手を当てて彼女を見上げ、ニヤニヤしている。 その、いかにも自分たちには否がないという口振りに、真紅の神経が逆撫でされた。 「べらべらと、おしゃべりな男ね。あなたは何者? 名乗りなさい」 「こりゃまた…………随分と気の強ぇ嬢ちゃんだぜ」 青年は人を食った態度で肩を竦め、くっくっ……と含み笑った。 そうやって相手を逆上させ、心理的な優位を得ようという企てだろう。 思惑どおりに踊ってやる義理もない。真紅は腕組みして、青年を冷ややかに見下ろした。 「ひとつ忠告してあげるわ。男の多弁は品位に欠けるわよ。 それと、無駄口を叩く暇があるのなら、履帯の修理を手伝いなさい」 「……ほぉ。良家のお嬢様って感じなのに、いい度胸してるな、あんた」 包囲され、相手の気分ひとつで生死が決まる状況に置かれていながら、 少しも動揺しない真紅の気丈さに圧されて、青年の口元から薄ら笑いが消えた。 「ただの世間知らずだったとしても、そういう威勢の良さは、嫌いじゃないぜ? 俺は、ベジータだ。この寄せ集め部隊の隊長を務めている。 ……お、来たな。で、こいつが――」 ベジータと名乗った青年は、廃墟の中から歩み出てきた人物を…… あのメガネを掛けた気弱そうな少年の姿を認めて、がっしりと肩を組んだ。 「俺の頼もしい相棒だ。日本人でな、仲間内じゃあ、ジュンって呼んでる。 手先の器用な奴だから、武器の手入れなんかをしてもらってるんだ。 キャタピラの交換は、こいつに手伝ってもらうといい。 足りないなら、必要なだけ人手を貸すぜ」 「……解ったわ。そうそう……すっかり名乗り遅れていたわね。 私は、真紅。このティーガーⅢの車長よ」 真紅の自己紹介に、ベジータは「よろしくな」と、片手を上げて応じたが、 ジュンと紹介された少年は、無愛想に顔を背けて、決して目を合わそうとしなかった。 正規軍ではないが、まあ、少なくとも盗賊まがいの連中でもなさそうだ。 真紅は身軽に砲塔から車体へとステップして、ぬかるんだ大地に降り立った。 「私の仲間も紹介しておくわ。貴女たち、大丈夫だから出てきなさい」 その呼びかけで、水銀燈が真っ先に顔を覗かせる。 彼女は、するりと砲塔の上に飛びあがって、両腕を夜空に突き上げた。 夜の静けさもあって、彼女の背中が鳴る音が、やけにハッキリ聞こえた。 「あ~ぁ。戦車の中って窮屈だから、身体中の関節が痛いわぁ」 などと軽口を叩きながらも、金糸雀と翠星石に手を貸す気遣いを忘れない。 勝手気ままな性格の彼女だけれど、これでなかなか、面倒見のいい一面もあった。 実際、水銀燈は五人の中で最年長。みんなにも、実の姉みたいに慕われている。 そんな彼女たちの逞しさに、ベジータとジュンは感嘆の念を覚えていた。 試作型とはいえ最新鋭の重戦車を操り、数多の敵を撃破してきた勇士たちが、 こんなうら若い乙女だなんて……誰が想像しようか。 「驚いたな。搭乗者は全員、女の子なのかよ。大したもんだと思わないか、ジュン」 「意外にアタマ固いのな、お前。こんな時代だぞ。能力さえあれば、男も女もないだろ」 「それもそうか。お前の同僚も、彼の工房で働いてるんだからな」 「ああ……久しぶりに会いたいよ。あいつ、元気でいると良いんだけど」 娘たちの様子を眺めつつ、内輪の話を交わしていた彼らだったが、 最後にひょいと躍り出た蒼星石を目にするや、雷に撃たれたように背を伸ばし、絶句した。 まぬけに口を半開きにして、一見すると少年にも見える娘に、異様な視線を送っている。 奇妙な気配に気付いた真紅は、蒼星石を庇うように、彼らの視界に割って入った。 「乙女の姿を舐めるように見回すなんて……想像以上に下劣な連中ね」 「う……いや、その……じ、じゃあ、後のことは任せたからな、ジュンっ!」 「なっ?! そりゃないだろっ!」 言葉を濁して、ベジータは早々に立ち去ってしまった。 独り残されたジュンにすれば、この状況、針の筵もいいところだ。 しかも、気まずい雰囲気を嗅ぎつけた水銀燈が加わったから、事態は悪化するばかり。 最後には、五人の娘にぐるり囲まれ、危うく濡れ衣を着せられそうになって―― 「だぁーっ! お前ら、うるさーいっ! さっさとキャタピラ直すんだろっ」 修理の二文字を楯に取って、茶を濁すほかなかった。 ――∞――∞――∞――∞―― 1947.4.18 まさか、こんな所で足止めを食うなんて……想定外だわ。 敵との遭遇戦を避けるために、少し遠回りをしたのに―― これじゃあ、本末転倒じゃないの。 それにしても、どこまで信用していいのかしらね。 彼らは、パルチザンだもの。少なからずドイツ軍に反感を抱いている筈よ。 ポーランド併合後、SSやゲシュタポは、随分と酷いことをしてきたらしいし。 ――嫌なものね。他人を疑うことって。 だけど、あの二人は…… ベジータとジュンだけは、信頼しても良さそうな気がする。 私の、甘ったれた考えかも知れないけれど。 ――∞――∞――∞――∞―― 幸いなことに、地雷による損傷は、転輪にまで及んでいなかった。 その為、砲塔脇のラックに下げていた予備の履帯を交換しただけで修理は完了した。 所要時間は、およそ2時間。それでも、作戦行動中にあっては重大な遅れだ。 全体で見れば、たった1両の遅滞。 だが、この鋼鉄の獣は、戦局を一変させるだけの破壊力を持っている。 それだけに、僅かな遅れでさえ許されなかった。 他の娘たちが、車内に戻って出発前の点検を行っている間、 真紅は習慣づいた手記を綴り、ジュンは、履帯の最終確認をしていた。 お互い、何を話していいのか分からず――その必要も感じないまま―― ただ背を向け合うだけ。夜の闇が、ヤケに重たかった。 そこに、いきなり砂漠の乾いた風みたいな軽い声が吹き抜けて、 二人に絡みつく沈鬱を払い飛ばした。 「よお、お疲れさん。案外、早く終わったな。 夜が明けちまうんじゃないかと、気を揉んでたんだぜ」 いつもの薄ら笑いを浮かべて、ベジータが温かいコーヒーのカップを手に歩いてきた。 「まあ、飲めよ」と差し出されたカップを、ジュンは礼を言って受け取り、啜った。 だが、真紅は険しい目をしたまま、受け取ろうとしない。 仕方なく、ベジータは苦笑いながら腕を引いて、自分の口に運んだ。 真紅が邪険な態度をとるのは、やはり先程の件が、尾を引いているのだろう。 今も睨まれているのに、ベジータは一切、弁解しようとしない。 ジュンは思い詰めたように彼を横目に見ながら、真紅に話しかけた。 「そんな目で、こいつを見ないでやってくれよ。さっきのには理由が――」 「おい! ジュンっ」 語気強く、話を断ち切ったのは、ベジータの声。「余計なコトは喋るんじゃねえ」 「だけどな、ベジータ」 「俺の事は、どうでもいいんだよ。それより……折り入って、あんたに頼みがある」 「私に? なにかしら」 真剣な表情のベジータに気を呑まれて、真紅は身を強張らせた。 なにを頼もうと言うのだろう。聞いてみないことには、可否もままならない。 彼女は、ひとつ頷く。それは――話を聞いてあげるという合図。 ベジータは心持ち、表情を和らげた。 「恩に着るぜ。頼みというのは、あんたらに同道させてくれってことさ。 俺たち47人は、ある場所を目指してるんだが、なにぶんにも装備が脆弱でな。 敵の戦車部隊に出くわしたら、殆ど対抗手段がないんだ」 彼らが保有する対戦車兵器パンツァーシュレッケは、有効射程が150m程度。 対して、敵の戦車は1000m離れた場所から砲弾を撃ってくる。 これでは、最初から勝負にならない。 「それによ、俺たちが随伴することは、あんたらにだってメリットがあるだろ」 「……そうね」 ちょっとだけ考え込んで、真紅は返答した。 戦車に乗っていると、どうしても視界が狭まって、敵の発見が遅れてしまう。 今回のような単独行動だと、その遅れが致命的となり得た。 その点で、歩兵が随伴してくれれば、索敵の面で大いに心強いのである。 「事情は解ったわ。同行したいのならば、勝手になさい。 私たちは上からの命令に従って、オルシュティン経由でワルシャワに向かうわ。 それでも良ければ、だけれど」 「充分だ。俺たちの目的地は、その途中にあるからな」 ベジータは、ニヤリとジュンに笑いかけて、コーヒーを呷った。 ジュンも、嬉しそうにはにかみ、カップを唇に運んだ。 「これで、先生の工房に辿り着けそうだな、ベジータ。 あいつにも、久々に会えるのか……楽しみだよ」 先生―― それに、あいつ……とは、何者なのだろう? ジュンの嬉しそうな態度から察して、かなり親しげな人物らしい。 なんとなく女の直感を刺激された真紅は、興味本位で、ジュンに訊ねてみた。 「ねえ……先生って?」 「ん? ああ……真紅が知ってるかは分からないけど、エンジュって人だよ。 まだ若いのに、すごく優秀な技術者でさぁ。 その人の所でジェット技術を学ぶため、僕はもう一人の同僚と、日本から来たんだ」 「んで、俺たちはエンジュが率いている反抗組織と合流するために、 兎の砦と呼ばれる、彼の地下工房を目指してるってワケだ」 ジュンとベジータは、その後も色々と話し続けていたが、真紅の耳には残らなかった。 突如として飛び出した名詞を聞くなり、彼女の思考は真っ白になっていたのだ。 エンジュ―― 槐―― それは、かつて父の元で新エネルギーについて研究していた人物を表す言葉。 ずっと昔、彼女が実の兄のように慕っていた青年の名前であり、 父ローゼンの失踪と時を同じくして、行方を暗ました男の呼称であった。
https://w.atwiki.jp/3edk07nt/pages/235.html
1947.4.16 東プロイセン ラステンブルク郊外 「距離…………3000。11時方向」 赤色灯が点された薄暗い空間に、若い娘の、低く押し殺した固い声が流れる。 狭い室内に立ちこめる空気はピリピリと張り詰めて、息苦しいほどだ。 ――とても蒸し暑い。気流というものが、殆ど感じられなかった。 だが、その場にいる誰もが、白く瑞々しい柔肌に汗をまとわりつかせていながら、 文句のひとつも言わず、黙々と人いきれを堪えていた。 「翠星石、貴女の方でも『毒ヘビ』との距離を、見積もってちょうだい。 索敵状況は、どうなっているの、金糸雀?」 カールツァイスの双眼鏡を目元から離すことなく、真紅は指示を飛ばす。 すぐに、打てば響くような反応があった。 ヘッドホンを通じて、最初は操縦手席にいる翠星石から。 それが終わるのを待って、無線手である金糸雀からの報告が続く。 「距離は……んん~……およそ2900ってトコですぅ」 「履帯音より照合したかしら。敵はT-34sが1両、自動人形が6体。 頻りに、暗号で通信してるわ。斥候と見て、まず間違いないかしら」 「……ありがとう。いつもながら優秀だわ、貴女たちは」 敵の姿は、砲塔上部に設けられたペリスコープを通して、真紅も確認していた。 これから狩ろうとしている獲物からは、片時だって目を離したりしない。 にも拘わらず、わざわざ二人に確認を取ったのは、万全を期するためだった。 情報は持ち寄った数だけ、その信頼性を増すものだからだ。 加えて、迅速な意志の疎通を図る訓練……という目的もある。 些細なコミュニケーションを繰り返すことで、仲間意識を強め、信頼関係を築く。 それによって、一蓮托生をイメージさせて、各自のベストを尽くさせるのだ。 今しがた二人の娘が見せた鋭敏な反応も、これまでの積み重ねの賜物だった。 双眼鏡の向こうにいる敵は、ディーゼルエンジン特有の褐色の排煙を上げながら、 ゆるゆると接近してくる。金糸雀の報告どおり、T-34s『バジリスク』だ。 ソ連軍の中戦車T-34/76の改造型で、自律制御型の無人戦車である。 『毒ヘビ』と言ったら、この物騒な【おもちゃ】を指していた。 その周りを、カカシかヤジロベエのように一本脚で跳ねているシルエットが、6つ。 背丈は、丁度、子供くらいの上背だろうか。 こちらもT-34s同様、自動制御の機械人形だ。『ポーン』と綽名されている。 純然たる工業製品で、動力はバッテリーと油圧。 大量生産を念頭に置いた設計により、複雑で繊細な動きは犠牲にされていた。 そもそも、スチール製の外観からして、造りの粗雑さは瞭然である。 プレスしたままの、のっぺりした曲面を描くボディは、塗装すら施されていない。 跳ね回る自動人形が反射する陽光は鋭利で、双眼鏡を覗く真紅に、瞳の痛みを覚えさせた。 猛然と迫り来る、機械の群。ヤツらの稼働目的は、人間の殲滅。 こうして彼女たちの前に現れるまでにも、多くの命を屠ってきたことだろう。 与えられた仕事を忠実に、かつ淡々と処理することは、機械の本分に則った行為だ。 ……が、それは所詮、向こうの都合にすぎない。 人類は、道具として使役するために、機械を生み出したのだ。 たかが一介の道具に過ぎない機械の義務に付き合い、殺されてやる義理などない。 ましてや、戦わずして滅びを待つなど……愚かしいにも程がある。 だからこそ、真紅は仲間の娘たちと共に、過酷な戦いへと身を投じたのだ。 ――すべては、生き延びるため……。 それだけの為に、彼女たちは猛獣の名を冠する鋼鉄の塊を、飼い慣らしてきた。 機械を手足の如く操って、多くの機械を破壊してきた。 「蒼星石、Pzgr43/44(徹甲弾)装填。2500で撃つわ。急いで」 「了解、真紅」装填手である蒼星石が、30kg近い128mm砲弾を両腕で抱え、 蹌踉めきながらも砲尾へと押し込み、淡々と報告する。「装填完了したよ」 「早いわね、上出来よ。金糸雀、その後の索敵状況に、変わりはない?」 「自動人形を随伴させたまま、道なりに近付いてくるかしら。 ……まだ、気付かれてないみたい。数は、増えも減りもしてないかしら」 「それは、なによりだわ。 茂みに潜んで偽装しているとは言っても、油断はできないものね」 言うと、真紅は双眼鏡から顔を逸らせて、ふ……と、詰めていた息を吐く。 暑い。まるでサウナにでも入っているように、全身から汗が噴き出してくる。 ややもすれば、熱気に中てられ、クラクラと気を失ってしまいそうだ。 早く狩りを終えて、風に当たりたい。それは真紅のみならず、全員の本音だった。 水筒の温い液体で、その場しのぎに喉を潤した真紅は、彼女の目の前―― 戦車兵の証である黒い軍服を纏った砲手の背中に、ひたと視線を送った。 「そろそろ出番よ、水銀燈。砲弾も少なくなってきたわ。外さないでね」 「ふふっ……誰に言ってるの、真紅ぅ」 砲手の娘は、単眼式のTZF.9f照準器を覗き込んだまま、不敵に含み笑う。 真紅には見えていなかったが、彼女は嗜虐的に歪めた唇を、ねっとりと舐めていた。 落ち着き払って微動だにしない背中が、揺るぎない自信のほどを窺わせた。 水銀燈が覗いている照準器には、距離を測るため、三角形の指針が七つ並んでいる。 底辺と高さが4シュトリヒの主指針と、底辺と高さが2シュトリヒの補助指針だ。 中央に主指針があって、その両脇に3つずつ補助指針が配されていた。 ちなみに、1シュトリヒは360°÷6400で算出される単位で、 英語ではミル角と呼ばれる。 「この128mmなら、3000でも百発百中よ。一撃でジャンクにしてやるわぁ」 「心強いわね。頼りにしているわよ」 水銀燈の背に微笑みを投げかけて、真紅が再び双眼鏡を覗き込もうとした矢先、 金糸雀の切迫した叫び声が、ヘッドホンを通じて全員の耳に届いた。 「砲塔の旋回音を確認っ! こっちの位置を特定されたかしらっ」 偽装から突き出した砲身を、探知されたのだろう。 機械人形のクセに、敵もなかなか目がいい。 真紅は小さく舌打ちして、金糸雀に負けないくらいの大声で叫んだ。 「水銀燈っ、照準の調整は済んでいるわね?」 問われて、水銀燈は照準器から目を離しもせず「当然よ」と短く答えた。 その声は掠れていたが、緊張のためか、暑さによる渇きのせいかは、判然としなかった。 敵戦車は今や、主指針の三角形の頂点に、ピタリと収められている。 真紅と翠星石の報告によって、照準器の距離設定は、調整ずみ。 射角も方位角も、すべて問題なし。敵の移動に合わせて、微調節するのも怠りない。 そればかりか、優秀な砲手である彼女は、指針から敵との距離すらも逆算していた。 「今2500……ってとこねぇ。あっちの76.2mmじゃあ、まだ射程圏外よ。 まぐれで届いたところで、こっちの前面装甲を撃ち抜けやしないわ」 その数字を聞いて、真紅の表情が、少しだけ和らいだ。 「――そう。こちらは悠々、有効射程内ね。水銀燈! 射撃用意!」 「いつでも良いわよぉ。 ちょぉっと遠いけどぉ……任せておきなさぁい。当ててみせるからぁ」 「信じてるわよ。翠星石は、移動する準備をしておいて」 「はいですぅ!」 ヘッドホンから、操縦席に座る翠星石の、元気のいい声が返ってくる。 真紅は双眼鏡を手に、ペリスコープを覗き、命令を下した。 「Feuer!」 水銀燈が、主砲の俯仰調整ハンドル脇にある発射レバーを、右手で軽く引く。 直後、爆音を轟かせて、55口径128mm砲が火を噴いた。 戦闘室内の空気も、ズシンと震えて、彼女たちの肺腑を圧迫する。 ヘッドホンで保護していなかったら、すぐに鼓膜がイカレるだろう。 放たれた徹甲弾は初速920m/s超で空を切り、T-34s目がけて飛んでいく。 そして、約2.7秒の後、真紅が見守る先で、敵の前面装甲を穿っていた。 車内で砲弾が誘爆したらしく、T-34sの砲塔が、フワリと宙を舞う。 「命中……撃破確認。蒼星石、念のため次弾装填よ」 「解ったよ。次も、Pzgr43/44で良いのかい?」 「ん……そうね。それで良いわ。 さあ、急いで離脱するわよ。自動人形や攻撃機に、捕捉されない内に」 「RM動力機関、始動したですっ。いつでも発進できるですよ」 「Panzer vor! 金糸雀は索敵を継続」 「うっし! 行くですよ、ティーガーⅢ。キリキリ歩きやがれですぅ」 「諒解かしら!」 翠星石と金糸雀の返事が重なった直後、獰猛な鋼鉄の獣は大地を揺らし、歩を進める。 まとわりつく偽装の枝葉を振るい落としながら、65tの巨躯を白日の下にさらした。 通常、戦車には引火しやすいガソリンエンジンではなく、ディーゼルエンジンが積まれる。 しかし、ティーガーⅢは化石燃料に頼らない、最新鋭のRM動力機関を搭載していた。 ポルシェ博士の電気自動車理論を、優秀な科学者の顔を併せ持つ職人ローゼンが発展させ、 45年のベルリン攻防戦が始まる直前、たった一機のみ試作された動力機関である。 それを、ティーガーⅡのシャーシを改造して組み込んだのが、ティーガーⅢだった。 128mmという巨砲を載せるため、砲塔も僅かながら、大型化されている。 長く突き出した128mm/L55の砲身には、実に40本以上の白線が描かれている。 キルマークと呼ばれるソレは、文字通り、敵戦車の撃破数を示していた。 その殆どはT-34s相手に稼いだスコアだったが、M26A『アリゲーター』や、 JS2c『クロコダイル』も少なからず含まれている。 どちらも自動制御化された戦車で、重装甲・強武装を誇る強敵だ。 ティーガーⅢをも一撃で粉砕し得るだけに、できれば遭遇したくない相手だった。 移動を始めて間もなく、索敵していた金糸雀が、悲鳴に近い声を上げた。 「真紅っ! 周囲3000圏内に、新たな敵の反応多数かしらっ! T-34sが5、自動人形は……さ、30近くいるかしらぁーっ?!」 やはりね――と、真紅は独りごちて、ヘッドホンのマイクに命令を吹き込む。 斥候が動いているならば、その後ろに本隊が居るのは当然のこと。 発見された時点で、無線で増援を呼ばれたことは、予想の範疇だった。 ココロの準備ができていただけに、真紅は落ち着き払って対応してゆく。 「まずは、毒ヘビから黙らせるわよ。 自動人形は、後回しでいいわ。ヤツらが接近するには、まだ距離があるもの」 優先順位は、長射程で破壊力のある戦車が一番。自動人形は、二の次だ。 とは言え、自動人形も侮れない存在である。 手榴弾は勿論、対戦車兵器を携行するタイプの人形もいるから、肉薄されれば危険だ。 その対抗手段として、主砲には7.92mm同軸機銃が装備されている。 いざとなれば無線手の金糸雀も、前面のMG34機関銃を撃つ役目を担っていた。 「翠星石、すぐ左手にある窪地に入ってちょうだい。起伏を掩蔽地にするのよ。 砲塔、三時方向に旋回。分散される前に、毒ヘビを退治するわ」 ただちに真紅の指揮どおりの動きを見せる。 窪地から砲塔だけを突き出す格好で、彼女たちの戦車は停止した。 水銀燈が、足元のペダルを踏んで電動モーターを呻らせ、砲塔を敵に向ける。 優れた砲手がどうかは、概ね、この時点で解る。 旋回させすぎたりせずに、必要最低限の時間で、ピタリと敵を照準に納められるか…… その僅かな時間にこそ、明日への扉を開くためのカギが隠れていた。 真紅が距離を告げ、水銀燈が素早く微調節を済ませる。 号令一下、128mmが轟音を放ち、たちまち一両の戦車を屠った。 砲身から廃莢されると同時に、刺激臭のする硝煙が吐き出される。 そのニオイは、戦闘室内に充満して、彼女たちの軍服に染み込んでいった。 しかし、機械である敵は、怯むということを知らない。数を頼りに圧してくる。 すぐに真紅が方向と距離を見積もって指示を飛ばし、水銀燈が砲塔を旋回させ、 蒼星石が砲弾を装填する。その一連に要したのは、およそ20秒。 それ以上かかっているようでは、まず生き残れない。 約1分の間に3回の砲撃が行われて、ことごとく命中、撃破する。 戦車の誘爆に巻き込まれた自動人形の首が、爆風によって引きちぎられた。 油圧のオイルを撒き散らしながら倒れ、そのまま動かなくなる。 その様子を、真紅は双眼鏡を通じて、澄んだ蒼い瞳に焼き付けていた。 けれど、いちいち感傷になど浸っていられない。 破壊することにも、破壊されることにも、もう慣れきっていた。 残り二両となったところで漸く、敵も分散を始めた。 一両が囮になり、もう一両はティーガーⅢの後背へ回り込もうとしている。 戦車は前面装甲こそ分厚いが、側背面や上部装甲は薄く、弱点だからだ。 そのことは、戦車兵の常識として、必ず頭に叩き込まれる。 ティーガーⅢにおいても、この戦闘のセオリーに例外はなかった。 「翠星石っ、後退しつつ左旋回! 砲塔は三時に固定のままよ。 まずは、後ろに食い付こうとしている敵を一撃するわ!」 ティーガーⅢは、その巨躯に似合わず、素直に真紅が思い描いたとおりの動きをする。 真紅が「いい子ね」と呟くのと同時に、128mmの徹甲弾が発射され、 また、T-34sが一両、一瞬にして鉄屑と化した。 残った一両は、ティーガーⅢめがけ、猛然と突進してくる。 全速を出していることは、吐き出しているディーゼルエンジンの黒煙で判断できた。 だが、それは完全に機を逸した、無謀とも言える突撃だった。 「引き際というものが解ってないのね。ふふ……教育してあげるわ。 砲塔、12時方向に旋回よ。距離、1800!」 「自動人形との距離も、2200を切ったかしらっ!」 「Pzgr43/44装填完了したよ、真紅っ」 「こっちも照準いいわよ、真紅。いつでも撃てるわ」 戦闘室内に殺気だった怒号が飛び交い、生死をかけた数秒が流れる。 こちらが撃つのが先か。それとも、敵に撃破されるのが先か。 敵の砲撃が、先だった。しかし、走行しながらのため精密さを欠いていた。 ティーガーⅢの遙か前方に着弾した徹甲弾が、僅かに土を巻き上げたのみ。 「Feuer!!」 真紅の号令一下、巨砲が火を噴き、車内の空気が震える。 その一撃は、T-34s砲塔前面の装甲を易々と撃ち抜き、沈黙させていた。 数秒の後、爆発、炎上する様を一瞥しただけで、真紅は次の命令を発する。 「次は、残った自動人形どもを一掃するわよ。翠星石、微速後退。 蒼星石、Sprgr.L5.0(榴弾)を一発だけ装填。 金糸雀は、索敵しつつMGの射撃準備に入って。対空警戒は、私がするわ」 真紅は命じながら、ハッチを静かに開いて、僅かに頭を覗かせた。 狙撃タイプの自動人形が随伴していないことは、既に確認していたし、 もし居たとしても、2000m以上の距離が開いていれば、銃弾など届かない。 榴弾の砲撃が済むのを待って、真紅は思い切って、上半身を乗り出した。 彼女の瞳に映る美しい蒼穹は、立ちのぼる黒煙によって、薄汚れていた。 弾薬食料の補給のため、ラステンブルクの司令部および補給廠へ向かう道すがら。 真紅は換気と見張りを兼ねて、キューポラのハッチを開き、半身を乗り出していた。 ある程度の広さはあっても、所詮、気密性の高い鋼鉄の箱。 換気ファンは常に回されているが、暑苦しさと、息の詰まる感じは拭いきれない。 さっきの戦闘による硝煙のニオイも、まだ車内に残っていた。 ここが自分たちの棺桶になるかも知れない。そう思うと、流石にゾッとしなかった。 吹き過ぎる風が、汗ばんだ肌を優しく撫で、彼女の金髪を靡かせる。 戦闘の興奮で火照った身体が、心地よく冷やされていった。 ふと、草原に転がっている、赤茶けた物体が真紅の視界に入った。 破壊され、打ち捨てられたままの自動人形だった。 のっぺりとした装甲の体躯は、量産目的であっても、造りが粗雑すぎる。 損壊の激しい人形は雑草に抱かれながら、どこまでも高く蒼い空を、恨めしげに見つめていた。 (この子もまた、被害者なのかも知れないわね) 真紅は、後方へと過ぎ去っていく壊れた人形を目で追いながら、 胸の中で問いかけた。 (――お父様。あなたは、何をお考えなのですか?) 今はどこにいるとも知れない、偉大なる職人―― 彼女たちが駆る、この鋼鉄の猛獣を生み出した科学者にして、 自動人形たちの原型、オリジナル・ローゼンメイデンを作り出した男へと。 (お父様…………なぜ、こんなにも虚しい戦いを続けさせるのですか? もう、世界は充分すぎるほど傷つき、荒れ果ててしまいました。 人々は、自ら流した血と涙の海で溺れて、沈みそうになっているのに…… どうして、まだ混乱の渦を拡げ、人類を滅びに向かわせようとするの?) 真紅には、父の考えが全く解らなかった。 解らないからこそ、再び父と相見え、問い質そうと思った。 そのために、なにがなんでも、生き延びてやろうと決意していた。 『闘うことは、生きること……』 かつて、父が教えてくれた言葉。 そんなものが、彼女の心の拠り所になっているなんて、なんとも皮肉だった。 ――∞――∞――∞――∞―― 1947.4.16 今日の戦果は、6両のT-34sと、自動人形が35体。 けれど、こんな戦果なんか、焼け石に水でしかない。 敵はすぐに、損害を補充してくるもの。 私たちは――死んだら、それで終わり。修理も補充も効かない。 私たちは、いつまでこんな戦いを続けなければならないの? いつになれば、埃と硝煙にまみれ、汗と血で汚れた軍服などではなく、 煌びやかなドレスに身を包んで、幸せな乙女として暮らせるの? 教えてください、お父様。 ――∞――∞――∞――∞―― 日記代わりの手帳に想いの丈を綴って、真紅はそれを、軍服の胸ポケットに押し込んだ。 不条理な現実に憤る感情を、華奢な身体に詰め込んで押し潰すように、 力強く……。 世界を巻き込んだ二度目の大戦は、もはや枢軸軍も連合軍もなく…… 人類と自動人形の群は、武器を手に、非生産的な戯れを繰り返していた。 この『Panzer Garten』で――
https://w.atwiki.jp/wiki9_ra-men/pages/2532.html
食べた日:2008/5/30 『くろく』で2杯喰いの1杯目、気まぐれ限定の「海老香油のしおらぅめん」(780円)を。 08.5.30%20%82%AD%82%EB%82%AD%20%82%A6%82%D1%8D%81%96%FB%89%96%82%E7%82%A4%82%DF%82%F1%20215%94t%96%DA.jpg 今回の限定は、先週同様、無化調らしさを全面に出したラーメンです。 透明感が高い、非常にあっさりな塩スープに、香ばしい海老の香味油を浮かべています。 香味油を作る際に使ったと思われる桜海老を麺に絡めて食べると、更に香ばしさあふれる味わいに。 麺も専用麺。 08.5.30%20%82%AD%82%EB%82%AD%20%82%A6%82%D1%8D%81%96%FB%82%CC%96%CB.jpg 平打ちの中太ストレート麺。 ツルツル感が強い麺で、その食感や形状は、まるで稲庭うどんのようです。 塩の唯一の弱点である香ばしさを補った、pure系の美味しいラーメンでした。 住所:仙台市宮城野区榴岡2-2-12 アーバンライフ橋本1F by hiro (2008年 215杯目) 最近このてのピュアーな塩スープが多いですねぇ。 たまらなく旨そうです(爆 -- 和尚 (2008-06-01 17 49 47) 和尚さ、マイドです。 創作系も好きですが、やっぱりこういうpureなラーメンが、一番「くろくで食べてるなぁ」と感じ取れます。 -- hiro (2008-06-01 19 22 39) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/magicaloss_misasu/pages/5262.html
【6】ジャバウォック、ドラゴンスネイル、ワイバーンx6 右上→2204-C 右下→?-D 左上→?-B 左下→?-A