約 2,787,423 件
https://w.atwiki.jp/yaruonw/pages/26.html
高町なのは 冥/天 /l /| | ./ .| ./ ー=二`ヽi/-─‐- 、_l/- ∠-,rー ̄ヽ. . . . . . . . . . .'、 .`ヽ /. /. ,.. . . . |. . . . . . . . . . . .i . . . l ゝ/,/. . . ,イ. . . . . . . . . . . . .; . . . | 'イ . . . .ト、. . . '>、-==-ゝ、 i _{ . . . . ,!ノ-'´`ヽ___ __\ バタッ _,.-' .,.-イ´ ` ´r ';ニ-‐=‐ `ヽ、 (_r'' ´(_|__ // \ ` `ー | _ /ヽ ,__ヽ | / ヽ '`ー─ ' ヽ' `ー-‐′ ─────────────────────────────────────────────── 【高町 なのは】:負けイベントだったのに…… ─────────────────────────────────────────────── <基礎ステータス > HP:290 MP:無制限 筋力 :6 知力 :22 器用 :18 知覚 :8 幸運 :16 敏捷 :18 <戦闘ステータス> 攻撃力 :6 (筋力+武器) 魔導力 :22 命中 :18 防御 :24(筋力+器用) 魔防 :40(知力+器用) 回避 :18(敏捷) 装備:レイジングハート・エクセリオン :攻撃+2 魔導+6 敏捷-3 重量4 バリアジャケット :防御+4 魔防御+4 <装備修正ステータス> 攻撃力 :8 (筋力+武器) 魔導力 :28 命中 :18 防御 :28(筋力+器用) 魔防 :44(知力+器用) 回避 :15(敏捷) ───────────────────────────────────────── 【特殊能力】 ───────────────────────────────────────── 「冥王」:攻撃魔法のダメージに+10の修正が入る。 「天才(魔)」:神が与えた天賦の才。魔法の消費MPが-5。 「マルチタスク」:フェイズ1で魔法が使用できる。 フェイズ1でためが必要な魔法を使用した場合、フェイズ2で発射する。 「非殺傷設定ON」:この能力はOFFにもできる。ONの間は、このキャラクターに撃墜されても 死なない。 「意地」:HPが1割を切ると、全能力が10ずつ上がる。 ───────────────────────────────────────── 【技】 ───────────────────────────────────────── ディバインバスター・手加減:砲撃魔法。威力は魔導+10+ 1のダイス目。射程:3 消費10→5 ディバインバスター:砲撃魔法。ため、1回。威力は魔導+35+ 1のダイス目。射程:3 消費30→25 スターライト・ブレイカー:砲撃魔法。ため、二回。威力は魔導+70+ 1のダイス目。 射程:直線範囲攻撃 消費60→55MP 防御魔法「プロテクション」:一定確立でタメのキャンセル技を防ぐ。1~3なら成功。3~6で失敗。 ───────────────────────────────────────── レイジングハート・エクセリオン「特殊効果」 カートリッジロード:所持者が魔法を使用する時、6発式オートマティックマガジンに 装填された魔力を代わりに使用する事で、 無尽蔵に魔法を使用できる。
https://w.atwiki.jp/pokexdeki/pages/121.html
【更新:18.1.8】 |\ ___ __ | \∠ _ . . . \ / / | > ' .  ̄ ̄ .ヽ、 . ヽ. / / j/ . ._ . .-- . 、 . . ヽ . .ー . .‐ .- 、 / / / ., . ¨ . . . . . . . . . . . . . . . . \ / / / / / . . / . / . . . . . . . . . . . . .ヽ j / / j〃 / ./ . . / / . / . . . . . . . . . ヾム.≦ _ l . , ' . / . . . /. ./. ./.. ..j i ヽヽ マj- _ . . \ /| . . / . / { . ; 斗 .十-j 、 . ハ . , r‐- .、! .', . , . } \ ヽ . . \ / . .| . . /l . . ,' . l / /l /l . ∧ ..l ヽ l \ .iヽ} . .', lヽ \. \ . . \ / . . . .∧ . .l ハ . .lヽ jl . .l l/ .j /_ ヽj ヽ!__ ',l . l . . l .j ヽ ヽ \ . . ヽ / . . ./ ヽ .j |.ム . |, . . 、 j_r==ミ z==.、j ./ . .//\ l ', . . .',. { . . ./ レヘ .!ヽ/ ハ´ wwx xww ヽ/ . 〃 \ | . l . . l .j . . .l `j l . i ハ _' _ ∠ イl \j j . . . . .| l . . ハ | . l 小、 l 〉 / . // / . . . l ヽ . . ヽ | . l |. 丶、 ヽ._ ノ イ . , ./ _/ . . . / \ _ , ゝ ヽ l |__ェ=i> _-_ <i=/ . /  ̄フ . . ./ ヽj  ̄ ̄ ̄  ̄ ¨/ ./7 ∠ - ィ7.ゝ- 、 z― ,〃=く /// ヽ二ヽ z― 、// _ ヽ ,r≠ ┴'、 / 〈∠, / ¨ マヽ (出典:魔法少女リリカルなのは) 初登場1スレ 2005。「写真のモデル探し」でモデルとして見つけた女の子。 後に、小話でやる実と話していたり、サンギ牧場で出会った事から旅をしているのかもしれない。 Pスキル スキル名 レベル 効果 備考
https://w.atwiki.jp/ugsearcher/pages/32.html
ねとらじページに戻る God knows... (Rap ver.) <verse1> どうして君は振り向かない 一方通行で過ぎる話題 君を縛るココロの鎖じゃあ声と音の向かい側 歌いたかっただけなんだ やっぱ不甲斐なかった 辛い体のSOSさえもそっけない返答で 平行線変わらない成長で二人は過ぎていくだけ? 無駄に頑張りすぎて砕けるのは何よりも君の為なのに いつまで経ってもLonely Wayでもこの想いは本気で 少しだけでいい振り向かなくてもいいからこの音を聴いて 雨の中での君との思い出 笑顔の二人並びお揃いで 楽しかったね あの時間までこの場所を... <hook> 二人は未来だって掴めそうな時にはどんな闇の中でもきっと輝いている 願いまで歌で飛んで欲しい 君に心が重なるよ 二人にGod bless... <verse2> 当然時にはあるだろう、俺と君の忘れがちな 無くした物に気づかないまま二人はすれ違い 今背中に気づく小さいね 震えた肩に 潰れかかった声で語りかける貴方にだけ 正直にLOVE 雑踏だらけの通りにこだまする胸の奥の言葉 飛び火したお気に入りのメロディが君の鼓動に直接響くだろう 夢にまで見た君との誓いを 心の中でまるで意味無いと そんな考えに させない為に今ここで... <hook> 二人は未来だって掴めそうな時にはどんな闇の中でもきっと輝いている 願いまで歌で飛んで欲しい 君に心が重なるよ 二人にGod bless... God knowsだけどコントロールだけはされないよ させないよ そうじゃないと終われない 俺の気持ちを伝えるまでは 歌える限り君へ歌おう いつかは君にも届くだろう <hook> 二人は未来だって掴めそうな時にはどんな闇の中でもきっと輝いている 願いまで歌で飛んで欲しい 君に心が重なるよ 二人にGod bless...
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/118.html
ディバインシューター(練習用) 魔力を集め、弾丸として打ち出すのはミッドチルダ式戦闘魔導師の基本中の基本。 なのはのディバインシューターは、その基本魔法に「誘導制御」を付与した誘導弾であり、なのはにとってはかつてのPT事件を戦い抜くために多用した主力の魔法でもある。 現在、自動誘導の機能は「術者の制御範囲から出してしまわないようにする」程度に押さえてあり、 その分、術者の思念操作に敏感かつ正確に応える操作性能を高めた設定になっており、「アクセル」のコマンドで弾体を加速することも可能にしている。 呪文は「福音たる輝きこの手に来たれ。導きのもと鳴り響け」 ラウンドシールド 戦闘魔導師が多用する、魔法陣を直接「盾」として使用する防御魔法。 防御面が魔法陣の向いた一方向のみに集中する分、防御力は高く、特に炸裂・貫通等系の攻撃に対して優れた制止力を持つ。 なのはは生来の防御出力の高さに加え、補助系魔法を得意とする結界魔導師のユーノが直接の師であることも手伝って、防御系魔法の練度が高い。 この盾を、なのははレイジングハートの助けなしでも両手同時発動で使いこなすことができている。 バリアジャケット着装 ミッドチルダ式の戦闘用防護服「バリアジャケット」の瞬間着装。 魔力によって編み上げられた衣服自体のみならず、その周辺に生成される不可視の防御フィールドによって衝撃や温度変化・魔力攻撃から術者の身を守る。 ディバインシューター レイジングハートのサポートを得て、全力で扱えるようになっているディバインシューター。 詠唱が不要となり、弾体速度と威力が飛躍的に向上している他、バリア貫通の効果も持っているため、防御の上からでも相手の魔力を削る強力な攻撃魔法である。 なお、なのはの攻撃魔法は基本的に物理破壊を伴わない非殺傷性魔法であり、対象の魔力のダメージを与えることで行動不能、あるいは昏倒させることを目的としている。 フライアーフィン なのはの飛翔魔法。魔力リソースが少なく、制御ミスによる落下や激突の危険が少ないかわり、空中機動性はさほど高くない。 その分、瞬間加速性能と最大速度に優れる飛行性能は自分の距離で足を止めて攻撃することが多いなのはにとっては最適な飛翔魔法と言える。 フラッシュムーブ フライアーフィンの特殊運用。脚部翼状フィンへの魔力追加により、瞬間的に爆発的な加速を行う。直線、もしくはゆるいカーブの軌道でのダッシュが可能。 ディバインバスター シューティングモードから放つ、なのはの主砲にして、一撃必倒の砲撃魔法。高めた魔力を環状魔法陣で増大・加速、対象目がけて一気に打ち出す。 バリア貫通の効果が付与されており、防御の上からでも容赦なく魔力を削り取る威力を持つ。 プロテクション ラウンドシールドよりも防御範囲が広く、より汎用性の高い防御魔法。 なのははこの魔法をオートガードに設定しており、なのは本人が咄嗟に魔法を発動できない際などは、レイジングハートが自己の判断で発動することもある。 リアクターパージ なのはのバリアジャケットの最終防御機能。防御限界を超えるダメージを受けた場合、自ら爆散することで衝突のエネルギーを相殺し、反らすことができる。 破壊されたジャケットの修復は戦闘中には困難であるため、術者の身を守るための最後の手段と言える。 封鎖領域 「魔法の監獄」の意味を持つ、ベルカ式の結界魔法。「術者が選択した条件に見合う対象」のみを残して時空間を切り取る。 監獄の名が示す通り、「結界内に閉じこめた相手を脱出させないこと」を主な目的としている。そのため、外部からの侵入は比較的容易だが、中からの脱出は極めて困難。 テートリヒ・シュラーク ベルカの騎士にとって、「武器攻撃に自らの魔力を乗せ、威力を高めた攻撃を放つ」のは基本中の基本。 ヴィータのこの技も同様で、鉄槌のアームドデバイス・グラーフアイゼンに自らの魔力を乗せ、単純な打撃に爆発的な破壊力を持たせている。 防御の上からでも吹き飛ばすその威力によって、命中・防御にかかわらず対象を容赦なく破壊する。技名は「痛烈な一撃」の意。 パンツァーシルト ラウンドシールドと同系の、魔法陣による盾。防御面は一方向のみだが、主に魔力攻撃に対して高い防御力を持つ。 シュワルベフリーゲン グラーフアイゼン・ハンマーフォルムから放つヴィータの射撃魔法。 ベルカ式魔法は、接触した物体に魔力を付与することに特化した魔法技術体系であり、魔力を体や物体から離したり、単独で飛ばしたりすることをほとんど想定していない。 そのため、遠隔攻撃は必然的に投擲や有線武器、実体を伴う射撃武器の延長上にあるものとなる。 「飛翔する燕」の名を持つこの攻撃魔法は、鉄球に飛翔・誘導制御・バリア貫通・着弾時炸裂といった効果を与え、ハンマーヘッドよって打ち出すことで成立する。 ラケーテンハンマー グラーフアイゼン・ラケーテンフォルムから放つヴィータの打撃攻撃。 魔力カートリッジを使用し、それを燃料として後部噴射口から推進剤を噴射、回転の遠心力も合わせて打撃力を高める。 ヴィータ本人の飛翔加速にも使用することができ、鋭いダッシュが可能となる。さらに鋭い先端部は対象の防御に食い込み、受け流すことを困難にしている。
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/76.html
魔法少女リリカルなのはViVid第1話 魔法少女リリカルなのはViVid第2話 魔法少女リリカルなのはViVid第3話 魔法少女リリカルなのはViVid第4話 魔法少女リリカルなのはViVid第5話 魔法少女リリカルなのはViVid第6話 魔法少女リリカルなのはViVid第7話 魔法少女リリカルなのはViVid第8話
https://w.atwiki.jp/tvsponsor/pages/3420.html
人気芸能人にイタズラ! 仰天ハプニング150連発2018冬(2018.12.27) 21時台0'30″…NISSAN(日産自動車)、ポリデント(グラクソ・スミスクライン)、amazon、SC Johnson、小林製薬、創味食品、高須クリニック、Cygames、AGC 終盤任意ローカルセールス枠 (1部)FJネクスト (2部)住宅情報館
https://w.atwiki.jp/tmnanoha/pages/112.html
この世界には様々な神話や伝承が存在する――― それは時に神を。時に魔を。 人の手によって祭り上げられた空想上の偶像を綴った物語である事が多い。 だが極稀に、人の身にて神話や伝承に身を窶す者達がいた。 星の記憶に永遠に刻まれるであろう、その生涯。 神魔の位にまで昇華した尊き魂。 彼らの存在は、偉業は、尊敬と崇拝を一心に集めて伝説となり 大人から子供へと永遠に語り継がれる事になる。 ――――英雄譚 英雄と呼ばれる者達の激動の一生を綴った決して色褪せぬ確かな記憶。 ある者は竜を。ある者は魔を。ある者は巨人を。 人間を遥かに超えたモノを相手に燦然と立ち向かい、耐えに耐えて奇跡を起こし――そして倒してのける。 彼らの戦いには楽なものなど一つとしてありはしない。 勝って当然の相手に勝利を収めたとして、そのような者を人は英雄とは呼ばない。 強大過ぎるものを相手に戦って戦って、そして勝ち続けてきた者だからこそ 人々から信仰にも似た憧憬の念を集め、その想念が彼らを人ならざる領域へと押し上げていくのだ。 逆に言えば英雄と呼ばれた彼らは常に奇跡を起こし続けなければならない。 人の身を超えた戦果をその都度求められ、期待に答え、己が限界以上の力を出し続けなければならない。 そしてそれが叶わぬ……もしくはその力に見捨てられた時―――彼らは死して伝説となり、その物語は締められる。 そう、ともあれ英雄譚と呼ばれる、人の紡ぎし神話に必要なモノ。 それは英雄と呼ばれるに相応しい強固なる固体と、運命すら捻じ曲げる奇跡と呼ばれる装飾と――彼らを引き立たせるための強大なる敵役。 ―――――― それがまさに今、ここに在る――― 己が身を護る白い法衣のほとんどを破砕され、傷だらけの素肌を晒す一人の魔導士。 銀の鎧は既に無く、小さな体に蓄えられていた無尽蔵な魔力のほとんどを使い切った騎士の少女。 彼女らは共に稀代の英雄であり、片や空で、片や剣で、その存在を強く人々の記憶に刻み付けてきた二人。 肩を並べて前方を見据えるその顔に死に行くものの陰など微塵も無い。 肉を抉られ、骨を砕かれ、何度と無く死の淵に立たされて……それでもここまで来た。 その運気の上昇に、その勝機の到来に―――昂ぶる魂 その戦意の高揚に、その奇跡の体現に―――昂ぶらずにはいられぬ肉体 あらゆる困難を乗り越え、勝ち続けてきた者には勝利の風が吹く瞬間が分かる。 あらゆるものが研ぎ澄まされて混ざり合う感覚。全てが己の力になっていく感覚。 もはや二人は人ではなく、それぞれ固有に立つ剣士と魔導士でもない。 その存在二人で一つの―――全てを貫き通す矛。 掴むべき勝利。進むべき明日 全ては目前に在り、もはや何の迷いも無い。 互いの最後の力をその身に溜めて―――― 今、強大なる者……人類最古の英雄王を打倒する! これが彼女達の英雄譚。 その一節に記される戦い。 ――― 黄金の王との邂逅 ――― その最終節である――――― ―――――― この世のものとは思えない光景は未だ眼前に――― 遥かな高みに広がる空が、その踏みしめるべき地が錆に塗れた橙色に染まっている。 そしてその狭間にあるは虚無の空間。暗黒の亀裂。 深く……とても昏い闇の孔。 実際には空や地に見えていたのは、切り裂かれていた世界の断面だ。 空間は世界の理の外に通ずる亀裂。 全ての存在が在るべき事を許されない死の海と呼べるものであった。 裂かれた天地がその身を摺り合わせ軋ませる歪な音は、まるで滅びに咽び泣く慟哭のよう。 そんな終わる世界、全てが壊れゆく空間にて―――未だ挫けぬ輝きがある。 騎士王によって具現化された理想郷アヴァロンはこの滅びの空間にあってなお、その存在を否定される事無く輝く。 そしてそれによって護られた二人―――高町なのはとセイバーが往く。 英雄王の乖離剣の一撃によって起こされた天地の破壊と創造。 その全てを飲み込む空間断層が今、閉じようとしている。 切り分けられた天と地が、それぞれを空と大地と認識しセカイを形作る事――それ即ち世界の再生。 再生であるが故に、その前段階において男が放った死界は全ての存在を許さない。 創世の前の破壊とは即ち、この世の全てを一度、更地に戻すこと。 その工程において消滅を免れるモノなど在りえない。 有り得ないからこそ……そこから生還し攻撃してくる敵の存在もまた有り得ない! 故に男は今、完全に無防備。 不可能を可能にしたセイバーのアヴァロン。 そこから繰り出される最後の一撃が―――全ての決着をつけるのだ! ―――――― 「ナノハ……準備はいいですか?」 「うん………いつでも」 セイバーの緑水晶の如き瞳に火が灯る。 その気勢が増大し、身体を極限まで凝縮させ力を溜める姿は気高き神獣の如し。 それとは対照的に熱い炎をその内に閉じ込めた高町なのは。 逆に冷気すら感じさせる研ぎ澄まされた戦意はまるで一撃で相手を撃ち抜く狩人のそれ。 二人の役割、やるべき事は既に決まっている。 騎士は、ただ往くだけ。 視界が開けた瞬間、鞘による遮断領域を解き、敵を見据え、そこへ向かって突っ込む。 最短距離を一直線に、全てを賭けて踏み込む。 彼女の両手に携えたエクスカリバーはもはや広範囲を薙ぎ払う対城のそれとは程遠く 敵に密接し断ち切る対人並のレンジでしか放てないものとなっているが、それでも――― あの男を黄金の鎧ごと一撃で薙ぎ払えるのはもはやこの剣をおいて他に在り得ない。 対して魔導士のする事は、騎士の踏み込みより一瞬早く上空に飛び上がり 少女を援護するように上空から砲撃を叩き落すこと。 「………マルチタスク」 レイジングハートに指示を飛ばす高町なのは。 フラッシュムーブにていち早く制空権を奪い、最大火力であの男を狙い打つその時を――心静かに待つ。 その時とは即ち橙色の天が蒼い色を取り戻し、彼女の愛した空が戻ってくる時。 いつの間に夜が明けていたのか……その大気が、どこまでも続く白み始めた空が彼女に語りかける。 空戦魔導士、高町なのはの魔法―――その地盤が……復活した事を! master!! 「分かってる!」 体内のリンカーコアが回転を始める。 彼女の内で集めた力が正しく循環し、その地盤、即ち世界に流れ込み――― この大地にて再び発動するミッド式魔法! 「エクセリオンバスター……フォース・バースト!」 高らかに謳い上げる砲撃魔法の詠唱。 当然の事ながら、もはや集束砲は使えない。 二度の集束砲を放った高町なのはの肉体は既に全力全開に耐え得る余力を残しておらず 何より先程の天変地異により、大気中に点在していた残存魔力が全て吹き飛ばされてしまった。 故に体中でかき集めるだけかき集めた、これが今のなのはの精一杯。 死力を尽くしたフルバースト・エクセリオンバスター。そのトリガーを今、セットする! 「………テイクオフ」 全ての工程が整い、今まさに晴れようとしている死海の向こう側に飛ぶべく構える彼女。 騎士より先に飛び出し、彼女が目標に到達するための道を切り開く。 これが恐らく、この戦いでの自分の最後の仕事になるだろう。 だからやり抜こう―――このラストショットだけは絶対に、確実に! それを勝利の祝砲にすべく、彼女は今……! 「フラッシュ……!!」 「ダメだッッッ!!! 飛ぶなッッッ!!!」 その時、ビクンッ!と高町なのはの肩が震えた。 「っっ!?」 飛び上がろうとした魔導士の耳に叩きつけられた絶叫。 その怒声じみた声に、ほとんどの工程を終えて離陸寸前だった高町なのはがテイクオフを強制カットし、前につんのめってしまう。 身体を必死に持ち直して彼女は声の主―――セイバーの方へ向き直る。 「………セ、セイバーさん?」 切迫した騎士の声……不測の事態である事は明らかだ。 事態を掴もうと少女に声をかける高町なのはのの目に映った少女の貌に今―――深い苦渋が刻まれていた。 共に昂ぶり戦意の塊と化していた筈の彼女。 その目が大きく見開かれ、口が半開きになっている。 (…………ど、どうして―――) 信じられないといった騎士の表情は、突然にして彼女の意識を支配した戦場における彼女の「直感」。 卓越した危機回避能力。未来予知じみた第六感が――――告げていた。 ――― 紛れもない……「死」の予感を ――― 空に続いて地が、大地としてその存在を認識し 生物を育み、踏み締める事の出来るカタチを創る 焦燥に駆られる高町なのは。 このラストショット―――タイミングを逸しては、もはや二人に勝機は無い。 「セイバーさん……! どうするのっ!?」 「っ――――!」 だがセイバーはついには首を縦に振らなかった。 なのはを御するように手をかざし、魔導士を決して飛ばせないようにする。 前方を穴が開くほど睨み据えながら口をギュッと引き結んだ顔にはもはや 先程まで場を覆っていた勝利の予感など微塵もない。 イイイイイイイイイイイイイ―――、!という、断裂面同士の軋む音が消え 扉が閉まるように、上下に分け放たれた空間断層が完全に閉じていく。 そして世界が再び命を取り戻した時―――――そこは市街地ではなかった。 いや、周囲は市街地のままであったのだが……… 二人が立つ半径500mを中心にして、まるで草木一本生やす事を許されない荒野が広がっていた。 まるで巨大なシャベルで大地を掘り起こしたかのように抉られた大地。 それが横長の地割れとなってこの地に傷跡を作る。 その世界を切り裂いた跡地にて敵を―――― 二人は英雄王ギルガメッシュの姿を再び見据えた そして……………絶句する。 自らの置かれている状況に――― 「――――セイバー。 重ねて言うが……我はお前を認めているのだぞ? 理想郷より帰還せし誇り高き騎士王よ。」 騎士は問答を返せない。 返せないが故に―――続く男の独演。 「その尊き身に対し、王としてもてなす事も叶わぬほどに――我が無粋な男に見えるか?」 返せなくても仕方が無い事……… その問答を返せる唯一の存在が―――完全に言葉を失っていたのだから。 ―――――― この闘いを「英雄譚」と称した事に未だ異存は無い。 しかして、英雄を祀る叙事詩としてこの物語はあまりにも不安げで頼りなく波間をたゆたう。 何故ならば、その物語には決定的な何かが未だに決まっていなかったからだ。 即ち――――――誰がための英雄譚であるか……… ――倒すべき敵というモノが ――倒されるためだけに存在するモノが ここにはまだ存在し得ない。 二人の前に現れた男。 彼もまた、己が存在を示すために戦う英霊だ。 倒されるだけの存在では断じて有り得ない。 故に勝利の風は最後まで両者の間を彷徨い続け、どちらの身を祝福するか最後まで分からない。 そして結末が決まったとしても……それが後世に残る物語になる事は決して無い。 全ては神々の遊戯盤にて行われる狂言に過ぎないのだから――― ―――――決着は間もなくつくだろう。 この長かった戦いにもようやく終止符が打たれようとしている。 その向かい合う両者の表情。 命運を分けるであろう最後の激突が―――始まろうとしていた。 ―――――― 「ところで騎士王よ? 先ほどは大層な高説を唱えていたようだが――― まさか我が御前にて、かつて見せたモノと同じ芸当を披露する気ではあるまいな?」 男が―――その真紅の瞳が騎士の少女の全身を下から上へ嘗め回す。 先程まで眼前に下りてきた勝利を疑いもせずに掴もうとしていた、その表情が……歪んでいる。 「ハ、―――ハハ……」 それが楽しくてしょうがない――― そうだ。この瞬間こそ男の望んだ光景の終着。 セイバーの誇る最終宝具。 彼女が全幅の信頼をおいたソレを目の前で踏み躙り、絶望のどん底へ落とし込む。 折れてなお咲こうとする花をぐしゃぐしゃに握り潰す快感―――これぞ王のみに許された至高の愉悦であろう。 二人が死の世界から帰還し、初めに視界に映ったのは―――鎖。 まるで漁師が漁に使うような網の目のように張り巡らされた―――鎖。 その黄金の鎖が、少女の張ったアヴァロンを……遮断領域を取り囲むようにして現界。 だ円状に展開する決して侵されざる世界をそれは外から絞め潰そうと、ギチギチと音を立てて結界そのものに絡み付いていた。 それはまるで球状のものに巻き付いた投網であり、無造作に編み上げた鎖の鳥籠のようにも見えた。 当然、その戒めが絶対の世界であるアヴァロンを絞め潰し、二人の身に届くことは無い。 もとより男に天の鎖で理想郷を打破しようという意思は無い。 だがそう―――鎖はまさに彼女たちの出口を塞ぐためのもの。その進退を完全に窮ませるためのもの。 そして縛鎖の向こう……宝物蔵から顔を覗かせる王の財宝。 その数は―――― ――― もはや1000を超えていた ――― それはセイバーの、なのはの総身を震えさせるに足る異様な光景。 英雄殺し――――全ての原典を内包するが故にそう呼ばれる王の財宝。 今まで一度に射出される宝具の数は100前後であり、それでもとても凌ぎ切れなかったというのに……今は更にその10倍! 歪む…………あまりにも密集した刃の射出口同士が鬩ぎ合い、空間が歪む。 セイバー達が奇跡を体現したのならば、男のこれもまた奇跡なのだろうか? 歪に過ぎる奇跡。 こんな光景、有り得ない……常軌を逸しすぎている。 ―――恐らくは英雄王の持つ無尽蔵の宝具の全てが今ここに在る。 完全に開ききった宝物蔵は男の財のありったけ。 超規模・開放状態のゲートオブバビロン――― 至近距離にて密集するように陳列された刃の群れが前方に……側面に………上空に! 二人の前面におけるあらゆる角度から、その獰猛な牙を光らせていた。 「…………英雄、王…」 呻くような声で男の名を口にするセイバー。 その焦燥する女の姿を満足気に愉しむギルガメッシュ。 結界外に張り巡らされた天の鎖は二人がアヴァロンの外に出る、もしくは理想郷を消失させた場合 彼女達の身体にガッチリと食い込み、巻き付き、動きを拘束するのだろう。 そして身動きの取れなくなった彼女らの無抵抗の肢体に、男は容赦なく間断なく……降り注がせるつもりなのだ。 ―――この居並ぶ全ての宝具を…… 二人を殲滅するにはあまりにも余りある、その力。 串刺しなどという生易しいものではない。 このような埒外の数の宝具の投擲をその身に受ければ、躯が原型を留めている事すら――否、細胞の一片を残す事すら難しい。 世界の創造に敵を巻き込むなどという遠回りな滅びなど必要ない。 眼前の敵を誅殺するためだけに繰り出す――― これぞ、ウト・ナビシュテム――――天地波涛す終局の刻! エヌマエリシュと並ぶ男の最後の切り札。 ギルガメッシュの全てを総動員した完全殲滅陣形! 「ア、アーチャー……よもやッ…」 「よもや、何だセイバー? この我が阿呆面を晒して黙って待っている光景でも幻視したか? そこまで男子に甘えたくなる気持ちも分からないではないが、ちと気が早すぎであろうよ。ク、クク……」 「ぐっ………」 まるでこちらの最後の飛び出しを見越したかのような布陣―――これは………果たして己がミスなのか? エア発動後にこれだけの備えを瞬時に行える筈がないという疑問を差っ引いたとしても この男に限って―――英雄王ギルガメッシュに限っては 己が最強の一撃を「防がれた事を考慮に入れて」戦っている事など有り得ない、という確信込みでの勝算だった。 自らの力が及ばない事などあってはならない。 己が力に対する絶対の過信、慢心こそが男の自我、強さの源でもあったはずなのだ。 ならば本当に―――その自我を曲げるほどに男は騎士王を認めていると言う事なのか? それはセイバーにとって誇りに感じるべき事なのか? (……………) 何にせよ――――これでは歯が立たない……… …………分かっている。 少女には分かっている。 重々、承知している筈だった――― 男の強大さなど骨身に染みているつもりだった。 だが、その記憶と照らし合わせてなお…… (これが――英雄王の本当の力だとでも言うのか…?) ―――― 今の彼は強すぎる ―――― ケタ違いどころではない―――まさに異次元の強さ 以前において自分はそれほどまでに手を抜かれていたと屈辱に染まる暇すら今の騎士にはない。 愉悦に崩れぬ王が、油断に溺れぬ王が、これほどまでに圧倒的だったとは…… セイバーは知らない。 この姿こそ英雄王ギルガメッシュが最も力を発揮する姿。 かつて、ともに強大なサーヴァントであったライダー、征服王を一瞬で屠り去った 王としての愉悦や慢心はあれど油断は無しという―――人類最古の英雄の、最強を体現する姿であったのだ。 ―――――― 勝利の架け橋となる筈だったアヴァロン――― 騎士王の誇る最強の防御宝具でさえも、この窮地を脱するに至らなかった。 それは確かに何者も通さぬ神域の護り。 規格外の護りに自らの絶対の一撃を防がれ、完全に崩された状態で奇襲を受け――かつて男は騎士王に敗れた。 しかしてそれは十全のタイミングに男の慢心、騎士の勇気が相まって起こった奇跡。 エアがその発動を極限まで相殺され、エヌマ・エリシュが不完全なものに終わり 振り抜けなかった一撃を引く事も押す事も適わずに、ギルガメッシュはその身を聖剣の一撃に晒すより他に道が無かった。 しかし此度は完全に振り抜いた―――技を出し切った状態だ。 乖離現象に巻き込まれ、死に体の状態で理想郷を具現した騎士セイバーであったが、この時点で体勢を崩されているのはどちらか? それは空間断層の只中に巻き込まれ、前後不覚の状況で敵の場所すら特定できず 九死に一生の思いで遮断域の内に逃げた―――彼女たちの方。 断層による破壊が収まり、再び攻撃態勢を取るセイバーと魔導士を前にして―――男は悠々と次弾を装填出来る時間を得ていたのだ。 「どうした? いつまでその届かぬもの、とやらにすがるつもりだ? あまり男子を待たせるものではないぞセイバー」 変わらない―――目の前の男の、愉悦と不遜に満ちた表情を崩せない。 あれだけの力を振り絞っても、あれだけの奇跡を体現して見せても、勝利の女神は二人にまるで微笑んではくれない。 何者をも貫く矛を、決して挫けぬ勇気を二人は示した。確かに示したのだ…… 無敵、最強と謳われた両者。 彼女らを常に祝福してくれた勝利の風は確かに二人の頬を優しく撫で、その予兆を示した。 だから二人は確信していた―――勝てる!と。 越えられぬものなどない!と。 「ギル、ガメッシュ―――英雄王……」 故に悔しげに、あまりにも悔しげに、唇を血が滲むほどに噛み締めてセイバーは再び男の名を呟く。 「左様―――」 そのうわ言の様な呟きを受けて黄金の王は、戦慄に震える声にて紡がれた己が名を 余韻を愉しむかのように謳い上げる。 「我こそは貴様らでは敵うべくも無い最強最古の英雄王。 このギルガメッシュの名を刻み、恐れと憧憬を絡めて讃える時間をくれてやろう!」 確かに吹いた彼女らの勝利の風、その勢いなどまるで意に返さず―― 「存分に勤しむが良い…………フ、フ―――フハハハハハ、ハハハッ!」 どんなに勇気を振り絞っても、奇跡を起こしても超えられぬ…… 今日、二人の前に立ち塞がったモノが示した―――――決して崩せぬ壁。 最古の英雄譚にその名を記された、英雄の祖と言うべき者の力。 その力が二人に吹いた勝利の風を―――根こそぎ吹き飛ばしてしまったのだった。 「………………」 まるで追い詰められた手負いのケモノのような形相で、騎士は黄金の王の相貌を食い入るように見据えている。 低く唸るような吐息――――― 罠にかけられ、その身を戒められ、獰猛な牙を剥き出しにしながらも、もはや威嚇するしか術のない獅子。 戦の申し子と言われた彼女は、決して自ら膝を付き、負けを認めてしまうような事は無い。 生前においてアーサー王は、戦場を共に駆ける同胞に敗戦の辛苦を味わせた事など唯の一度もないのだから。 故に――苦しむ。 隣に付き支えてくれる魔導士に対する尽きせぬ謝意と情けなさ。 己が約束された勝利の剣の指し示す先が、勝利の架け橋ではなかった事への悔恨は計り知れない。 「大丈夫」 ハッとして高町なのはの顔を見る騎士の少女。 その震える手に―――聖剣を握る手に、なのはははそっと自分の手を添えた。 「まだ五分に戻っただけ……冷静さを欠いちゃダメだよ…」 優しく包み込まれるような、それでいて力強さに満ち溢れた声だった。 この窮地において、絶望的な戦況において、このような声を出せる人間をセイバーは知らない。 その横には決して挫けぬ瞳が―――エースオブエースの精悍な相貌が覗いている。 「予定の戦果には届かなかったかも知れないけれど、あの地獄から生還出来た。 今はそれだけでも十分………違う?」 男のあれほどの力を前にして未だ彼女は勝利を諦めていない。 戦術で相手に上をいかれた自分を責める事もしない。 「―――ナノハ」 「大丈夫……突破口は必ずある。 どうすれば良いか最後まで考えよう」 もはや戦況が絶望的である事など周知であるはずなのに――何という……何という不屈か。 アヴァロンが紡ぎだす遮断領域ももうすぐ消える。 これ以上、鞘を発動させ続ける事は出来ない。 それはセイバーの残り僅かな魔力すら消耗させ、最後に残した一撃分の力すら消費してしまう事を意味する。 そうなれば終わりだ。もはや希望は完全に費えるであろう。 だから、そうなる前に討って出なければ……この残り僅かな刻を以って考えなければ…… 戦況を切り開き、あの最強の敵を倒す術を。この状況を打開出来る策を。 …………… 練りだせるのか?――― この僅かな時間で そのような神がかり的な戦術を…………… ―――――― (………………) 悲哀に染まる騎士の顔――― (―――――駄目だ……) 苦渋に満ちた少女の顔が、覗き見る高町なのはの相貌を映し出す。 彼女の事を、その言葉を聞くほどに騎士王の表情が―――陰り一つ見せなかった目が、揺らぐ。 (それは……それだけは、駄目だ…) 勝利を諦めたわけでも心が折れかかったわけでもない。 だが、むしろこの状況下で既に次に取るべき行動を瞬時に練り出し――― 否、この状況でもはや「それ」しか無い事に思い至る自身に対し、少女はかぶりを振って叱咤する。 あの男――アーチャーの張った完全包囲網 こちらを確実に絡め取り、宝具の斉射を至近距離で浴びせる。 食らえば間違いなく絶命を免れないであろう宝具の群れ。 それは普段の広範囲を薙ぎ払う従来のバビロンではなく、至近距離で確実に相手に打ち込む――止めの一撃だ。 故に男は今現在、彼女達から見て中間距離―――つまりはミドルレンジ。 距離にして10mと離れていない箇所に身を置いていた。 射手の心理……射撃を確実に相手に当てたがる時、当然相手は出来うる限り間合いを詰めようとする。 故に10m―――目視必中の間合い。 そのような距離、セイバーにとっては近接の間合いと変わらない。 自分ならば一足飛びで斬りつけられる間合い。 英雄王の予期せぬリカバーに全ての希望を絶たれたかに見えた状況だが 見れば見るほど……まだ、絶対に勝てないという状況ではない。 決して届かない距離ではないのだ―――― その身を串刺しにされようと最低、心臓と頭さえ吹き飛ばされなければ体は動く。 敵は乖離剣エアを握っていない。 全開の突撃で鎖を引き千切り、豪雨のような宝具の斉射を掻い潜って懐に飛び込めば――敵にこちらの聖剣を防ぐ手段は無い。 (……………) 勿論、そんな特攻が簡単に通用するのなら騎士も魔導士もとっくにこの相手を倒している。 成功率は限りなく低いのは間違いない。 しかし、この絶望的な戦況にて常に届かぬ地点にて佇んでいた敵が、最後の一刀が届く位置にギリギリ陣取っているという事実。 それはセイバーにとっては唯一にして最大の光明―――全てを賭けるに値する勝機であったのだ。 (……………) だが、そう。 勝負所もやるべき事も決まっていたセイバーの口元が再びギュっと引き結ばれる。 ここで苦渋の様相、騎士を躊躇させている要因が思考に絡んでくる。 鞘の力を解き、決死の突撃を慣行し、目と鼻の先にいる英雄王に最期の一撃を叩き込む。 それで……勝利する事は可能だろう。 しかしその場合――――魔導士は………高町なのははどうなる? 彼女がこの至近距離で、あの宝具の雨を食らえば万に一つも助かる確率は無い。 天の鎖に四方を囲まれている以上、一瞬でもアヴァロンを解いたら 彼女はその網の目のような縛鎖に捕らえられてしまうのは必定。 それを一瞬で引き千切る馬力も、もはや魔導士には残っていないだろう。 つまりは自分が理想郷の具現を解き、最期の攻防に踏み込むということは この共に戦ってくれた心優しい魔道士を――――見捨てる、ということ……… 白き魔導士が無残にも串刺しになり、切り裂かれ、バラバラになる、その屍を踏み越えて―――勝利を掴むということ。 隣でこちらの身を案じてくれているなのはの顔を見れば見るほどに、騎士は焦燥の極みに落ちていく。 情けなかった………己の猪武者ぶりに本気で泣きそうになる。 この極限の状況において咄嗟に思い浮かべたのが、パートナーを見捨ててでも勝利を掴みにいくという、信義に反する行為だったのだから。 「――――――」 その時――― (………ッ!???) 葛藤に苦しむ騎士の背筋を―――特大の悪寒が襲った。 「っ、!!」 セイバーが、そのおぞましいほどの象念に思わず顔をしかめてしまう。 全身を舐めつけられるような感覚―― 目の前の男の真紅の瞳が怪しげな光沢を放ち……少女をねぶるように見やっていた。 それはかつて初めて男が騎士王を見初め、怖気が走る妄言を吐きかけながらセイバーを手に入れると公言したあの時と同じ貌――― 苦悩し、苦しみ、悶える騎士を、男は愉悦と共に眺めていたのだ。 「ま、さか――――」 少女の口からギリリ、と歯の軋む音が漏れる。 そうだ………この状況――――出来すぎだという気持ちはあった。 この期に及んで、勝利の可能性がまだ微かに残っている事に。 あれほどの力の差を見せ付けておきながら、男がわざわざこちらの領域内に身を晒している事に。 偶然で片付けるにはあまりにも―――それも全て…… (わざとか―――英雄王……その距離に陣取ったのは…!) 壮絶な瞳を称えて少女は、眼前の男にその意だけで問いかける。 しかして答えなど決まっていた。 全ては……男の掌の上で―――― 「どこまでもッッ!! 貴様ァァッ!!!!」 突如、少女から上がる怒りの咆哮に驚くなのは。 英雄王との間に交わされた機微が理解出来ず、目を白黒させるしかない。 そして今や、騎士の薄緑の双眸から放たれる感情は殺気などという生易しいものではない。 あらゆる怨嗟を詰め込んだ思念を叩き付けるように、彼女は王を睨み付ける。 (選べセイバー。そのような端女、早々に唾棄し―――我に向かってくるが良い。 そこで二人揃って串刺しになるなどという選択を、まさか剣の英霊たるお前が選ぶわけではあるまい? 今ならば、そら―――万に一つでも我を打破する事も可能であるぞ。) それは英雄王からセイバーに宛てた…… ――― 最期の二択 ――― (幕だセイバー。これ以上の茶番は不要。 孤高の剣としての誇りを、お前が貫き通した王の矜持を、再び取り戻せるか否か――― 我に示すが良いアーサー王。その本当の姿、お前が孤独と共に培ってきた輝きを。) 無限の欲望が創りし世界にて、男はやはり傲岸不遜の権化。 己の描いた脚本――その九分九厘を、この盤上にて完成させたのだ。 そう、あとはカーテンコールだけ――― 圧迫されるような空気が場を支配する。 三者の想いが絡まり錯綜する中――― 「……………ナノハ―――――もはや術は無い」 口を開くセイバー。 「セイバーさんッ!?」 「貴方は――」 耳を疑い、気色立つ高町なのはに対し――― 少女の冷めた口調が………騎士の揺るがぬ決心と裏腹に紡がれ、、 ―――魔導士、高町なのはの耳を鋭く抉るのだった。 ―――――― なのはが呆然とした口調で騎士の少女に問い返す。 「………今、何て言ったの?」 その声が震えているのは怒りか、それとも動揺によるものか。 「もう一度だけ言います……ナノハ」 その怒気を孕んだ声とは対照的に、冷淡に事務的に まるで生前の一切の感情を捨てた王の貌を以って――― 「逃げろ、と言った。 残った力の全てを振り絞り、何とか逃走を成功させて欲しい。 これはやはり私の戦……貴方が関与するべきでは無い。」 セイバーは共に戦ってきた魔導士に言い放ったのだ。 「ここまで来て、またそれ? いい加減にしないと本気で怒るよ?」 「残念だが口論を繰り広げている時間は無い。 逃げる事も難しい状況ですが、貴方の技量ならば九死に一生を得る事もあるでしょう。 少なくともここに留まって、貴方が出来る事はもはや何も無い。」 このような状況下で先ほどと同様、またも諍いを始める両者。 だが先程の口論と違い、そこには温もりが――― 少なくとも騎士の口調には相手の身を気遣う優しさが無かった。 まるでもう用済みだと言わんばかりの信じられない言動が少女の口から紡がれていたのだ。 つまり――それは選んだという事か…… 戦場にて築いた絆。 メイガス・高町なのはとの友情よりも 英霊としての、サーヴァントとしての勝利を――― ギルガメッシュの誘いに乗り、宿敵との決着をつける事を優先したという事か―――? 「…………セイバーさんはどうするの?」 「知れた事。次で今度こそ奴の体に聖剣を叩き込む。 あの堅牢な鎧ごとアーチャーの肉体を断ち切るにはこれしかない。」 「なら、私も空から……」 「駄目だ。 宙には絶対に飛ぶな。 いかに空の闘いが得意な貴方でも、あそこまで制空権を握られてはどうしようもない。 そもそもどうやって周囲の鎖を掻い潜って宙に舞うと言うのです?」 「じゃあ、地上からどうにかして…」 「魔術を撃つ気ですか? あのような長いスタンスを取らねば撃てない術がこの局面で何の役に立つ? 宝具の掃射を食らって終わりだ。 それに貴方の術は彼の鎧を貫けない。あの下に守られた肉体に直接攻撃できるのならともかく―― その手段がない以上、あんなものは牽制にすらなり得ない。」 この会話は言うまでもなく英雄王に筒抜けだ。 故に作戦会議として成り立ってない。 ただの仲間割れ―――醜い言い争いに過ぎない。 ク、と含み笑いを禁じえないギルガメッシュである。 「セイバーさんの真意は分からないけど…… でもここに来て共に闘う事を許してくれないなんて…… 納得出来ない。貴方を見殺しにしろって言うの?」 「見殺し、か――それも的外れな意見なのだメイガス。 申し訳ないがあの男の目的は私を殺す事ではなく侍らせる事が目的。 初めから私以外眼中になく、この身は敗れても命だけは助かる。 故に私の命を救うために戦うという、貴方の行為自体が無為な事だった。」 傍で聞いていた王の目がピクン、と動く。 そしてなのはも―― 「ウソだよ」 確信を以って少女の言葉を否定する。 「敵の意図がどうあれ、貴方はそんな選択を絶対にしない。」 誇り高い騎士にとって敵に侍らされ陵辱されるなど言葉にするのも阻まれるような恥辱の極みであるはず。 しかもそれを、今相対している相手の前で言葉にするなど――明らかにおかしい。 少女が本心で話していない事は明らかだ。 「セイバーさんは絶対に投降なんてしない。 最後まで……力尽きるまで戦っちゃう人……だから私は――」 「メイガス。足手纏いだと言われなければ分かりませんか?」 しかし騎士の本意に踏み込もうとした高町なのはに対し――騎士が敷いたのは限りなく堅固な心の防壁だった。 「言葉が悪かったようです。 私一人でならいくらでも活路が開けると言いたかった。 そして貴方がいると逃げる事も出来ない」 「セイバーさん……」 「自惚れるなタカマチナノハ。 その程度の力で英霊同士の闘いに介入出来ると―――自分が役に立っているとでも思ったのですか? 此度の戦い、私が助けねば貴方は何回死んでいた?」 「っ………」 「我が命運は我が剣にて切り開く…… もはや茶番は終わり―――そういう事です」 理想郷の気高き光に包まれた彼女達―――その絶対遮断領域が消えようとしている。 それはまるで二人の間に生まれた絆すらも消滅させてしまうかのように見え。儚げで悲しき残光を称えている。 風が―――言い知れぬ物寂しさを感じさせる。 「……………分かった」 滅多に表情を表に出さないエースオブエース。 高町なのはの顔が落胆に染まる。 「足手纏いなら……しょうがないよね」 少女を助けたいと、救いたいと思った。 それが所詮は自分の自己満足、エゴに過ぎないと言うのなら――― なのはにも術は無い。黙って引き下がるしか無かった。 「でも、逃げろと言われても……これは流石にきついな…」 今や周囲は完全に鎖で包囲されている。 どの方向に飛び上がろうと、戒めを回避する術は無い。 そして前方の空間には一発で致命傷――― 掠っただけでその肉体の半分を持っていかれるであろう宝具が1000以上。 まるで大火災の中、置き去りにされ放置された赤子に「避難所まで歩いて逃げろ」と言わんばかりの状況である。 「運がよければ道が開ける事もあるでしょう。 あとは――貴方の思うようにすれば良い」 それを重々承知の上で騎士は魔導士を捨てていく。 その言葉に―――はっきりとした拒絶の意を汲み取り 受けた高町なのはもこれ以上、言葉を紡ぐ事はなかった。 騎士に背中を向ける高町なのは。 それを一瞥する事も無く男と向かい合う騎士。 あまりにも儚げで呆気ない―――剣の英霊と空の英雄の別れ。 二人の髪を別離の風が撫で……栗色のツインテールが、金の頬髪がさらりと揺れる。 「ご武運を」 「セイバーさんも…」 それが次元を超えて出会った二人の戦士――― その間に交わされた最後の言葉だった。 ―――――― これで全て―――男の望んだ展開の通りになった 孤高の剣となった今のセイバーは彼が――英雄王ギルガメッシュが彼女を見初め 手に入れると思い至ったあの時の姿そのものだ。 この下らない遊戯盤の上に具現した「もどき」で終わる輝きでは断じて無い。 愉悦……? 否、違う 周囲に張り巡らされた1000を超える宝具。 エアすら見せ技にしての全力掃射。 それは男の渾身―――紛う事なき持てる力の全てだ。 この王をして、全ての力を示して相手をねじ伏せる事以上の敬意があろうか? それはかつて―――ついには手に入れられなかった輝き。 自身の力を以ってしても決して届かなかった理想郷。 自身を上回ったアヴァロン、そしてセイバーという誇り高き騎士に対する敬意。 故に回りくどい程に苦心し、この状況を作り上げたのだ。 奇しくも第五次聖杯戦争の完全再現。 アヴァロンからの騎士王の一撃をここに完全粉砕し 真なる意味で彼女を屈服させ、手に入れるがために――― 「―――――」 ギルガメッシュの口が歪に吊り上がる。 迫る決着を前にして男の胸の鼓動すら高まる。 古の戦場を駆けた、闘神としてその名を遺した彼女が全ての迷いを捨て、目の前の自分を斬りに来る。 ただそれだけの機能と化していくのが分かる。 先程の魔術師との問答には何か引っかかるものを感じたが――― だが、もはやそのような事はどうでも良い。 王同士の邂逅に散々水を差したあの端女が終局をもたらす王の断罪を前に逃げ果せる余地など微塵も無いのだ。 高町なのははここで死に、セイバーは陥落する。 それが王の下した裁可―――覆されることの決してない裁可であったのだから。 騎士王と英雄王。二人の間に在った様々な不純物――その一切が消えようとしている。 自分に残った全ての力を集約し今、一つの剣そのものと化す騎士の王。 両者の間の空気がぐにゃりと歪み、人ならざる者が発する戦意……そして偉大なる王同士の纏う王気が交錯する中 緊張が高まり、殺気が天を突いたその時………始まる――― 「―――――――エクス……」 「な、なに!?」 最後の激突が―― その周囲一体が―― 「カリバァァァァー!!!!!」 ―――――――眩い黄金の光に包まれた!!!!! ―――――― 辺り一面がまるで太陽の直射を受けたかのように光に飲み込まれ―――集いし全ての者の視界を奪う! 三度発動する約束された勝利の剣。 エクスカリバーを携えた少女――己が最強にして最後の一撃を打ち放ったサーヴァントセイバー。 ――――だが……! 「――――何のつもりだ!? セイバーよ!!!」 その眩い光の中、自らの腕で目を覆いながらにギルガメッシュは叫ぶ。 そう、騎士王最後の聖剣発動は………英雄王に届く事はなかった。 彼女の身を護る銀の鎧の魔力をも換装して編み上げたエクスカリバーは間違いなくセイバーの残していた最後の力だった筈。 ――――それを彼女は、その場で……男に決して届かぬ間合いで発動させた。 ミスではない。 自身の魔力残量を考えれば、その宝具発動が対人のそれにまで落ち込んでいる事を把握出来ないセイバーではない。 そして光が周囲に撒き散らされる際に男が見たセイバーの動き。 彼女はその場にて腰を落とし――体ごと巻き込むような横薙ぎで周囲を薙ぎ払った。 「セイバー………… この愚か者めが―――!!!」 つまりは始めから――― やり切れぬ憤怒に染まるギルガメッシュ。 始めからその剣は男を狙ったものではなく、周囲に展開する天の鎖を薙ぎ払う事に使用するつもりだったのだ。 まず障害となる縛鎖を一蹴してから踏み込む戦法? 否、それは無意味。 全てを廃した裂帛の突進にて鎖を千切り飛ばし、全ての宝具を蹴散らし、英雄王に肉迫して剣を叩き込む。 セイバーが勝つためにはもはやそれ以外の手段などなかった。 鎖を薙ぎ払うためにエクスカリバーを使用してしまっては男を鎧ごと斬る出力を出すことは不可能。 つまりセイバーは勝つ道を――――自ら捨てた……… そして恐らくは自分に残った最後の力で逃走路を切り開き、高町なのはを助ける事を選んだのだ。 「あのような痴れ者のために勝負を投げるとは……失望したぞセイバー! もはや己が信念も英霊としての誇りも捨てたという事か!」 ここまで周到にお膳立てを整え、騎士との因縁の対決を再現したギルガメッシュ。 この盤上で己が愛でる花の輝きをようやっと取り戻したと喜色に染まった矢先の――― 最後の最後で意中の相手からの裏切りにあったのだ。 男の怒りは留まる所を知らない。その殺意は止め処もなく溢れ出し、主人の意が上空にまで陳列された全ての刃に宿る。 金の閃光に網膜を焼かれ未だ視界は戻らないが、もうそんな事は関係ない! 光の向こうで愚かしいその身を晒している騎士と魔導士を全ての宝具掃射を以って殲滅する。 「よかろう そんなに二人仲良く果てたいというのなら――― 我が温情である! 望みどおりに送ってくれよう…!」 男の下した決定にはもはや微塵の迷いも無い! 己が宝物庫に最後の勅を下し――――全てに終止符を打つべく英雄王がその威光を発する! ………………… その時――― ――――――光の中にて雄雄しくはためく翼に…… 未だ男は気づけない――― ―――――― 「何をもたくさと……ッ!!」 その一室に金切り声が響く。 「数多の敵を震え上がらせてきた白いアクマが!! いつまでみっともなく………格下扱いされているおつもりですのっ!?」 それはかつて魔導士に完膚なきまでに打ちのめされたナンバーズの少女の声。 無意識の言葉であっただろうか? 応援や激励の類では断じてないが――― 魔導士と彼女らは敵同士。 撃ち、撃たれの間柄。 高町なのはの破滅を願いこそすれ、勝利を願う事などあり得ない。 しかしだからこそ―――― 自分たちの宿敵が貶められる事はある意味 自分を貶められる事よりも辛いものだという事か? だから叫んだ………? 思わず叫んだ………? ――― その余裕かました馬鹿野郎のド肝を抜いてやれ!!! ――― と。 彼女の鼓動にそれが響いたであろうか? 彼女の胸にそれが届いたであろうか? 彼女の背中を――後押し出来たであろうか? ……………… ………………出来た――筈だ。 例え敵であったとしても―― 次に顔を合わせる時は殺し合いだったとしても―― その、世界を巡って届く想いに善悪などない。 人の心が力になるなど夢物語と笑うだろうか? 否、その想いを、世界に託された願いを、全ての期待を背負い力と為すのが――― 「英雄」と呼ばれる人種なのだとしたら………… ―――――― その光の翼が最強の英霊を打破するという事象もまた―――必然であったのだろう。 先のセイバーと高町なのはの仲違い……その随所に散りばめられたキーワード。 その残った力の全てを振り絞り、何とか―――成功させて欲しい 難しい状況ですが、貴方の技量ならば九死に一生を得る事も在り得よう 少なくとも、ここに留まったとて……貴方が出来る事はもはや何も無い ―――そこに込められし決起の言葉 最後の一撃はセイバーがメイン、なのはがサポートというシフトだった。 だがギルガメッシュの戦力展開は完全にセイバーを意識してのもの――― 故にシフトをスイッチ。 自身の剣で抜くと見せかけてノーマークに等しい高町なのはに最後の一撃を託す。 空には絶対に飛ぶな あのような長いスタンスを取らねば撃てない魔術がこの局面で何の役に立つ? これは攻撃方法。 砲撃ではなく近接での一撃を示唆した言葉――― 先の戦いでの屋内の対峙で、彼女の全集中力を込めた突きを肩口に貰った時の感覚を信じる。 条件さえ揃えば、彼女の打突は英霊をも打破する矢になりえるという事を。 それに貴方の術は彼の鎧を一撃で貫けない あの下に守られた肉体に直接攻撃できるのならともかく そしてアドバイス――― 出来る事なら鎧に覆われていない部分を狙う事。 私一人でならいくらでも活路が開けると言っているのです 運がよければ――道が開ける事もあるでしょう 自分がその剣で天の鎖の包囲網を撤去し――― 男へと通じる道を作るという意思表示。 それがセイバーがなのはに当てた……冷淡な言葉に隠されたメッセージの全貌。 あまりにも無謀。 男を前に己の意思を伝えなくてはならないとはいえ、明らかに無理があり過ぎる…… こんなメッセージを正しく受け取れる者がいるはずが無い…… 故にセイバーは――― あとは――貴方の思うようににすれば良い その真意が伝わらず、なのはが言葉通りに撤退する事も視野に入れていた。 元々この共闘は圧倒的不利な状況で互いを生還させる事が意図。 ならば彼女が無事に逃げ果せてくれるだけでも良いと思っていたのだから。 もっともその場合においても、彼女は勝利を捨てていたわけではない。 それこそ這ってでも英雄王の元に辿り着き、男を斬り捨てるつもりだった。 彼の投げかけた身勝手な二択など知った事ではない。 高町なのはを死なせず、ギルガメッシュを打倒する――始めから少女が狙うは完全勝利のみ。 勝負を投げた? 英雄の誇りを捨てた? 何の事か? 男の意図通りに動いてしまう事こそが彼女にとっては敗北であろう。 英雄王の思惑を完全に覆し勝利を達成する事に全力を注ぐ。 それこそが―――騎士の示した英雄の誇り。 しかして……苦笑するセイバーである。 這ってでも男を斬る、一人で戦う、という覚悟はどうやら徒労に終わったようだから。 (まったく貴方という人は……) あんな無理くりで不器用な即席の暗号を、まさか汲んでくれる者がいた事に驚きを隠せない。 この一連の意思疎通おそらく彼女達同士だからこそ出来たのであろう。 高町なのはにとって、セイバーにとって、この魔導士は、剣の騎士は――― あまりにも自分に近くて、互いの胸に秘めた想いや有り様があまりにも透けて見えてしまって…… だからこそ――――― ―――――― ――― 胸に宿るは熱き彗星 ――― それがいつだって彼女に無限の力を与える。 様々な想いを背負って彼女は飛ぶ。 エクスカリバーの奔流に遮られた視界の中、見据えた敵の位置を微塵も失わず それは何の躊躇いもなく一直線に―――飛ぶ! 黄金の閃光を掻き分けて進む彼女はまるで光の天使の如し!! 「な、に……!?」 男の発した声が大気に溶けて消える。 ―――刹那の出来事 言葉を交わす事は勿論、最強の英霊をして反応すら出来ず、宝具を降らせる暇すらなかった。 「言ったよね……」 周囲を遮った光の奔流から飛び込んできたのはセイバーではなく高町なのは! その事実に完全に虚を突かれた事もあったが――― 「貴方は案外、あっさりと堕とせるかも知れないって。」 ―――何より彼女は、速かった ―――あまりにも速かった 物理的な速さで言うのならばセイバーの方が上かも知れない。 だが、その秘めた炎が燃え盛れば盛るほど沈着になっていく、高町なのはの内で極限にまで高まった集中力。 それが紡ぎ出した「意」を感じさせないほどの無空の踏み込み。 「貴方は確かに凄く強いけれど……ちょっと油断しすぎだと思う。」 それに剣の英霊の後押しが加わる。 聖剣で360度を薙ぎ払い、なのはの突撃を確認後、そのまま余勢をかってもう半回転。 風王鉄槌の収縮・開放をコンマの位で撃ち放ち、彼女の背中を暴風で後押ししたのだ! その風の加護を全身に受けて―――― 「どんなに強くたって……最善を尽くしていない人は 堕ちる時は呆気なく堕ちるんだって事を覚えておいて……」 幾枚の羽をなびかせながら、栗色のツインテイルをはためかせながら 白き魔導士は地を這うように滑空する! その両手にA.C.Sを携え、最強の英霊を貫かんと飛ぶ―――エースオブエース! レイジングハートに同化しているかのように、その杖に全身を絡ませて 少しでも大気との接地面積を減らして空気抵抗を少なくしようと試みるその姿勢。 それは体を極限まで捻り込んで力を出すアスリートに似ていた。 初めから「突貫する」という目的にのみ作られた一筋の矢そのもの。 射手同士の戦いで男に対し、今まで遅れを取ってきた魔導士であったが ここにきて自身を巨大な矢と化して飛ぶ高町なのはに対し―――もはや王の間合いは完璧に犯される。 そして魔弾として全ての宝具を装填したが故に…… ギルガメッシュの両手は今、完全な丸腰状態!!! ここに来て完全殲滅の布陣が逆に裏目に出た英雄王。 「これが――――答えか………!」 自分に向かってきた者は全くの意中外の存在。 その事実に乾いた呟きを漏らす男。 ――高町なのは ――セイバー 彼女達は共に、その力で時代を切り開いてきた英雄なのだ。 幾度の困難な戦場にて奇跡を起こし、勝利を手繰り寄せてきた二人なのだ! その二人に――――三度…… 三度も全力でのトライアルを許した。 いかに最強の存在とて、この両者にそれだけの機会を与えてしまえば…… それは抜かれるだろう。抜かれざるを得ない。 「セイバァァァァァァアアアアアア!!!!」 最強最古の英雄王の絶叫が、巨大な落雷が落ちたと思わせるほどの轟音に掻き消された! この偽りのセカイに雷鳴のような音が響き渡る! その雷鳴は…………否、ナニカが衝突したような音は――― ―――――― ――――――――――――全てが決まった音だった………… この世界にも太陽は昇る―――― 周囲を包んだエクスカリバーの黄金の光が収束され 変わりに雲の晴れた大空から差し込む淡い朝日がその荒野に……三つの人影を映し出す。 剣を中断に薙ぎ払った姿勢のまま、少女は苦しげな吐息を漏らす。 最後のストライク・エアで体に残ったほぼ全ての魔力を使い果たした騎士が 剣を支えに何とかその場に立ち――――前方の、戦いの結果を見やる。 今度こそ……今度こそはと願う、その視線の先に移る白い背中を称えた女性。 巻き込むように体ごとぶつかるように……己が全体重、己が全てを乗せて彼女は相手に飛び込んだ。 その衝撃は筆舌に尽くし難いもので、彼女の杖を握り締めた両手の皮が剥け、血を滲ませている。 体の所々に発する鈍痛はどこかの筋を切ってしまったものだろう。 体内から込み上げてくる胃液に咳き込むのを必死に堪える。 もはやその相手に寄り掛かるようにしていないと立っていられない。 ゼェ、ゼェ、と肩が大きく上下し、その青ざめた顔には大量の汗が浮かんでいる。 そして息も絶え絶えながらに至近距離にて睨み据える彼女の瞳の先にある あらゆる障害を突き通す勇気の槍を叩き込んだ相手……英雄王ギルガメッシュ。 男はただ、ただ無表情。 その結果に声を発する事もなく、感情を顕すこともなかった。 ただ自らの胸に突き立ったソレ―――A.C.Sの桃色に輝く刃を……感情の篭らない目で見つめるのみ。 ―――――― 「やった……?」 固唾を呑んで見守る戦闘機人たち。 クアットロがまるで静止してしまったかのような光景に対し呟くように、状況に対する意見を求めた。 「…………」 その場を沈黙が支配する。 閃光を思わせるような快心の一撃。 これで倒せない敵などいるわけがない。 倒せたはずだ…… 膠着した三者の均衡 。 時が止まってしまったかのように動かない三人。 「………浅い」 だが、状況をいち早く察知したのは七女セッテ。 ナンバーズ内、最も冷静な思考を持つ彼女の見立て。 そしてその一言がまるで引き金であったかのように――― ―――――― のそりと動き出したのは黄金の鎧の男。 それを受けて、魔導士の身体も動き出す。 「ッッッ!!」 その場で踏ん張るように足のスタンスを広げ、至近距離にて英雄王と対峙するエースオブエース。 なのはの一撃はギルガメッシュの体の中心、ちょうど胸部の真ん中辺りに正確に突き込まれていた。 だがセイバーの一撃ですら弾き返す黄金の分厚いチェストプレート。 それに阻まれ、セッテの指摘通り、なのはの渾身の一撃が致命傷になることはなかったのだ。 鎧に覆われていない部分を狙えというセイバーのアドバイスだったが あの火急の事態に自らの限界を超えた踏み込み―――そこまでの精度を求めるのはやはり酷であったのだろう。 「――――――何だこれは?」 男がズイ、とその場にて踏み込む。 胸に刃が突き立った状態で前方に踏み込む! その行動により、彼の胸部により深く、魔導士の槍が突き込まれていく。 「何だ――――これは?」 だが男は止まらない! 自傷行為に等しい前進を続けながらに王は呟く。 その声は怒りと失望という、男の強大な負の感情を内包していて 心弱き者が聞いたらそれだけで心臓が止まりかねない。 セイバーが……彼女が自分を斬るか、自分の力か彼女を蹂躙するか その二つに一つの勝負であるはずだった。 だのに――― ―――― 何故、自分にこのようなモノが刺さっている? ―――― 「んっ……!」 魔力の刃に仮にも体を貫かれているというのに 構わず前進してくる男の身を――なのはは押し留められない。 奥歯を噛み締めて男に刃先を差し込んだまま、その場に踏ん張ろうとする魔導士。 だが下半身にまるで力が入らず、後方にたたらを踏むように押し寄られてしまう。 無論、そのような事をすれば男の身とて無事には済まない。 一歩、また一歩と前進する毎に男のチェスト部分から血が滴り落ちる。 ズブリ、ズブリ、と傷口に魔力刃が食い込んでいく。 「……………あッッッ!??」 であるにも関わらず、ソレに短い悲鳴を上げたのは高町なのはであった。 男の圧力を押し留めようと苦心する彼女に、無造作に歩み寄った男が――― その顔面を片手で鷲掴みにしていたのだ! 「このような陳腐な力で――我を抜けるとでも思ったか」 「ゥ、ッッッ!!!!」 ビクン、と……彼女の体が弓なりにしなる。 なのはより頭一つ大きなギルガメッシュ。 その黄金の手甲が彼女の頭部全体を掴み上げ、指がこめかみに食い込んでいる。 更に上方から圧力をかけられ、なのはの立つ両の足元がメリメリと地面に埋まっていく。 「崇高なる王同士の席に愚物が割り込み、全てを台無しにしてくれた―― その罪……貴様はおろか、貴様の五族知人全ての命を以ってしても贖えぬ」 人は本当に怒りを感じた時、その様相は極めて穏やかなものになるという――― 「小虫に意を裂くまでもないと見逃していただけだというのに――― どこまで思い上がるのか……端女」 それは今の英雄王の姿が如実に表している。 「きゃ、ッ! うぅッ………」 背骨に、足腰に、全身に強烈な負荷がかかり、悲鳴を上げるなのは。 まるで無慈悲な子供に捕獲された蜻蛉や蟷螂などの弱い生物が、戯れに体を弄ばれ破壊されてしまうかのように――― その首が、細い体が、捻じ切られるように歪な方向へと曲がっていく。 メギャリメギャリ、と男の爪が顔面に食い込む。 エヌマエリシュの直撃に晒されBJの再構築もおぼつかない彼女には今、その防護機能がまるで効いていない。 そんな普通の人間の女性と変わらないなのはの体を捻り潰す事など英霊にとっては、それこそ蜻蛉の体を折り曲げる程に容易い事なのだ。 「ナ、ナノハ―――!」 視界に友の絶体絶命の光景を捉え、助けに入ろうとするセイバー。 その足が――ガクンと落ちる。 「ぐっ……!?」 場にヒザを付く騎士。 少女とて限界に達していた。とても他者の助力をする余裕などない。 だが、このままでは彼女が……! 体を引きずるように英雄王と魔道士の間に割って入ろうとする騎士! 「だ、大丈夫………ッ!!」 それを――――押し留めたのは、潰されかかった高町なのはの言葉。 場に響き渡る、鈴のような声。 弱々しく捻じ切られようとしている肢体から出た声のあまりの力強さに セイバーが、そして目の前のギルガメッシュでさえ目を剥く。 覇王の意地に相対し、彼女もまたエースの誇りがある! 意地と意地のぶつかり合いで負けるわけにはいかない! 男の鎧は堅牢鉄壁―――なのはの膂力、近接技能では一撃で突き抜く事は叶わなかった。 それに貴方の術は彼の鎧を一撃で貫けない あの下に守られた肉体に直接攻撃できるのならともかく セイバーのアドバイスを受けた時から、自分の刃が鎧を貫けない事は分かっていた。 しかし、だからといって的の小さな頭部を狙う余裕は無い。 故に彼女の取るべき道……その手段は一つしかなかった。 結果として貫通を許すことは無かったレイジングハートの穂先ではあるが だがしかし、その先端さえ突きこんでしまえば―――! ……………………………… もはや彼女は悲鳴を上げなかった。 苦痛に顔を歪ませる事もしなかった。 悲鳴も苦悶の表情も敗北した人間から出るものだ。 ならば彼女には……勝利者には似つかわしくないものであろう! 「……高町なのは」 「―――なにィ?」 その顔に微笑すら称え―――彼女は男に「自分」を刻み込む。 「私の………名前」 最後までこの強大なる王を相手に膝を付かなかった。 恐怖に――折れなかった。 その気高き背中は、ミッドチルダの全ての魔道士の誇りそのもの。 地球生まれの魔法使い。 彼女の名は――――高町なのは! 「今度、会うときは……」 一言一言を紡ぎ出すようにゆっくりと相手に聞かせる。 決して無視なんかさせない。 肉体を捻じ切られん程の痛みに絶え、決して離さなかったレイジングハートの柄。 その弾奏に最後の魔力を込め……全ての準備を終えた時――― ――― 彼女の足元に巨大な魔方陣が出現した! ――― 「………ちゃんと名前を呼んで」 その全身が桃色の光に包まれる!!! はためく6乗の翼がレイジングハートの穂先に生成されるっ!!!! 「女ぁぁッッ!!!」 「ブレイクゥゥゥゥゥゥ……」 男がなのはの頭部を圧壊し、その端正な顔を握りつぶす――――それよりも早く! 「シューーーーーーーーーートッッッッッッ!!!!!!!」 ゼロ距離で放たれたエクセリオンバスターが鎧の内に隠された男の肉体。 その心臓に―――直接、魔力を叩き込んでいたのだ!! ―――――― この歪なるセカイの果てで――――― 桃色の閃光が――――黄金の残光を余さず掻き消した……… ―――――― 至近距離で放たれたエクセリオンバスターACS。 その眩いばかりの桃色の爆光に飲み込まれた黄金の鎧と白い法衣。 周囲に舞い散る粉塵から目を覆いながら―――騎士は事の一部始終を見届けた。 「………っ!」 一切の恐れ、迷いを孕まぬ無双の踏み込み。 軋む体を推しての必殺の突貫。 英霊の彼女をして賞賛の意を送らずにはいられない一撃。 それは確実に――――英雄王の肉体を砕いていた。 (アーチャー………英雄王) 少女の胸中に今、勝利の余韻と共に複雑な思いが混在する。 (出来れば我が剣にて……) 男の今わの際の絶叫。その怒りはセイバーにもひしひしと伝わった。 かつて敗れた事に対する雪辱とか尋常な勝負をするとか――そのような心積もりがあったとでもいうのか? あの男に限ってそれはないと思いつつも、騎士の胸には小さなしこりが残る。 どちらにせよ宿敵を相手に尋常な勝負が出来ず、このような形になったのは事実。 その胸に一抹の虚脱感を感じてしまう潔白な騎士である。 (貴方が戯れにナノハを殺そうとしなければ…… 彼女を巻き込むような行動を取らなければ……) 男に立てる義理など無い。 もともと傷だらけのこちらを一方的に蹂躙しようとしたのは向こうなのだ。 だがそれでも騎士として此度の勝利は、やはり複雑な思いが先立ってしまう。 そんな思慮に耽るのも一瞬――― ややもして天高く舞い上がる爆発の中から浮かび上がる影を騎士の目が捉えた。 それは言うまでも無い……大地に雄々しく立つ白い法衣の魔導士。 万夫不当の英雄王を見事、討ち果たした魔法使い――高町なのはのその勇姿に他ならない。 「終わったよ……セイバーさん」 「…………はい」 その顔はススだらけで、全身は泥と血に塗れていた。 鞘でいくらか回復したとはいえ身体の芯に届いてしまったダメージは未だその肉体を蝕んでいる事だろう。 だというのに、何という―――何という頼もしい姿か。 (まったくサーヴァント顔負けとはこの事だ…) 苦笑交じりにゆっくりと魔導士に近づいていくセイバー。 だが……瞬間―――なのはの膝がカクン、!と折れる。 「っ! ナノハ!!」 崩れ落ちそうになる魔導士に慌てて駆け寄り、肩を抱き止めるセイバー。 その脱力したか細い体に触れ―――改めて彼女がただの人間の女性だという事を再認識するセイバー。 こんな頼りない肉体で彼女はずっと戦い続けて来たのだ。 この剣の英霊と。人類最古の英雄王と。 「ありがとう……流石に疲れたよ…」 「酷い顔です……ナノハ」 「セイバーさんも目の下にクマが出来てる」 二人は正直な感想を漏らし―――クスっと笑いあう。 「逃げられるなら逃げても良かったのです…… だのに、こんな体で貴方という人は…」 「うーん。 でも、あんな悲痛な顔で逃げろって言われたら逆に逃げられないよ?」 「む…」 セイバーが心外だという顔をする。 「そんなに酷かったですか? 私の芝居は? これでもかつて施政に携わった事のある身―― 冷淡な様相を作る事には慣れているのですが。」 「その冷淡さがちょっと行き過ぎた感じかな。 私もそこら辺、いつも苦労してるから……余計に分かっちゃったのかも知れない。」 心無い罵声を浴びせた自分の、その心の奥に込めたメッセージを正確に受け止めてくれた目の前の魔導士。 誰からも理解されなかった王として歴史に没した彼女にとって、これほど嬉しい事は無い。 「人に何かを伝える時、相手に憎まれてでも言わなきゃいけない事は必ずある。 そういう時は鬼にならなきゃいけないから……」 敵を欺くためとはいえ、友を切らねばならない痛み。 心優しい騎士の冷淡な瞳の奥に隠された苦渋。 なのはとて教え子達の失敗を修正する時、嫌われようと冷血な悪魔のような面を被って接せねばならない。 故に分からぬ筈が無かったのだ。 高町なのはに、その苦渋が。その葛藤が。 「「…………」」 両者―――それ以上会話が続かず、互いに目を逸らしてしまう。 言葉で濁そうとしても照れ隠しにすらならない。 そこに込められた感謝の気持ち。深い情愛の気持ちが溢れてきて、何かこそばゆい気持ちになってしまう。 「………勝ったんだよね。私たち」 「ええ、間違いありません。 アーチャーの気配は完全に消えている。」 「そう……セイバーさんが言うなら安心だ。」 サーヴァントは同じサーヴァントの存在を感知出来る。 あのラストショットにて英雄王の気配―――存在が完全に消えたのを騎士は確かに感知した。 英雄王ギルガメッシュは確かに、この魔導士の手によって打ち倒されたのだ。 「……………強かったね。本当に」 「最強の相手です。私は未だ彼以上の敵を知らない。 今宵、二人掛かりでも――正直、勝てたのが不思議なくらいの。」 「そうだね。これっぽっちも余裕なんてなかった……」 そうだ……余裕など全く無かった。 相手の身を気遣う余地などどこにあったというのか? そんな事をしているうちに自分は少なくとも二回は死の淵を覗いていたのだ。 (それでも……) それでも―――出来れば命を奪いたくはなかった。 それはセイバーの時も思った事。 微塵でも手心を加えればその地に無残な躯を晒していたのは自分だったとしても しょうがないといえばしょうがないのだとしても――― 人の命を奪った事。 それは絶対に忘れてはいけないのだ。 故に高町なのはの目が今宵、戦場となった舞台を、激戦となったこの地を この戦いの一部始終を記憶に刻み込むために、周囲を取り囲む市街地 そして敵の切り札によって抉られた巨大なクレーターと、それを中心に広がる荒野。 それらを次々と見据え――――― 「………………」 ……………… 「……………え?」 口から呆けたような声を漏らした。 その目が宙を泳ぎ―――高町なのはは唖然とした表情を浮かべる。 「ナノハ?」 「ねえ、セイバーさん………」 その様子に騎士が怪訝な顔を浮かべる。 なのはの瞳は今、自身がエクセリオンバスターで打ち払った地点をただ見据えている。 未だ爆発の余波で粉塵が舞い上がっていてよく見えないその一点を。 その箇所。英雄王がいた筈の地点を今一度見据え――― 「倒した、んだよね…?」 高町なのはは再度――騎士に確認の言葉を求めた。 「―――先ほども言いましたが…… 英雄王の存在は消えている。それは間違いない。 心配をするのも無理からぬ事ですが、もはや――」 「でも、相手の武器がまだ消えてないよ……?」 ―――――― ………、、、、、、、、、 サーヴァントは、他のサーヴァントを感知する事が出来る――― アサシンのように気配遮断をしてくる者は例外だが 彼らはその魔力を敏感に感じ取り、互いに認識し合う者――― だから未だ爆発の余波は消えずともセイバーは、その気配が消えていた事により 英雄王の打倒を信じて疑っていなかった。 なのはにしても必殺の手応えが、直接止めを刺した感触が手に残っているのだ。 仕損じたなどあり得ない。 だからこそ、それは最初―――魔導士にとっては小さな疑問でしかなかった。 対してセイバーは、その絶対のルール――― 相手の気配が消えているという感覚に目が曇り、本来見なければならないものを失念していたとしか言いようが無い。 なのはの言葉に………目を大きく見開く騎士。 そして改めて爆炎渦巻くその前方にて――― ――― 王の財宝 ――― 男を象徴する無尽蔵の宝具の蔵。 1000以上の凶悪な光を称えた刃の切っ先。 それが煙に巻かれながらも―――チラホラと見え隠れしている事実を見据えて茫然自失。 ――――消えていない………? 王の財宝が。ゲートオブバビロンが――――未だ健在…? サーヴァントが滅びた以上、特殊な魔術礼装で繋ぎ止めていなければ その身体の一部分や武装を現界させ続ける事は不可能。 だというのに、これは―――異常事態。あまりにも不吉な予感に苛まれる魔導士と騎士。 その……………矢先の事だった。 「―――――ッ!!!」 「く、うッ……!!!」 セイバーが一瞬、呆気に取られた後に……ビクン、とその身体を震わせた。 身体を支えあっていたが故になのはにも伝わるその動揺。 少女のこめかみから、つ―――、と冷たい汗が滴り落ちる。 サーヴァントは……サーヴァントを感知出来る。 初めは間違いかと思うほどに小さな気配だった。 それが爆炎の中、風船が膨らむかのように徐々に大きくなり、膨れ上がっていく。 驚愕と戦慄に染まっていく騎士の表情。彼女の震える口から――― 「ま、まさか………そんな………」 搾り出すような口調で紡がれた言葉が―― ――――――全ての現状を物語る……… 「レイジングハートッ!!!」 Yes master! escape as soon as possible! セイバーのその様子、その様相で十分だった。 瞬間、なのはが騎士の了承も得ることなくその身体を抱きかかえ、全速力で宙に飛び上がる! 上空に舞い上がった魔導士が何の躊躇いもなく踵を返し、微かに残った魔力の全てを推進力と化して――― その場に背中を向け………この場から飛び去っていたのだ! ―――――― 高町なのはのエクセリオンバスターACSを心臓に撃ち込まれ―――英雄王ギルガメッシュは確かに滅びた。 サーヴァント殺しとも言える彼女の魔力ダメージによる砲撃。 それを急所である心臓に叩き込まれたのだ。 いかな最強の英霊といえど無事に済む筈が無い。 だが―――最古の伝承に記された男の書記において完全なる不老不死こそ成し得なかったその身ではあれど 男はその人の世の禁忌に最も近づいた半神半人の魔人であると伝えられている。 事実、肉体年齢を自由自在に変え、百億を超える憎念にその身を食い千切られても蘇生を果たす肉体は 予め黄泉路に干渉するほどの備えさえ出来ていれば―――「死」すら滅びを与える事は出来ない。 それは蔵の中で静かに起動していた―――反魂の香 万が一にもセイバーの聖剣が己が身に届き、肉体を断ち切った際にそれは発動するはずであった。 其は謂わば、男が自らに課した保険。 砲撃によって立ち込める爆発が粉塵を濛々と撒き散らす中で――― ――― 大地に黄金の王気が巻き起こる! ――― それは天を貫く巨大な竜巻のようだった。 たちどころに周囲の粉塵を吹き飛ばし、上空の雲を消し去り、辺りを包み込む後光。 その中心に佇む、まるで一つの芸術の粋を集めて作られた彫像のような完成された肉体。 その体は誰もが見惚れるほどに傷一つなく……神々しい光を放ちながらそこに在った。 所々にウルクの御子を象徴する文様を刻まれた肢体。 新生された身体に、金色の帯状のものが巻きつく。 その帯はやがて、質量を持った黄金の鎧となり、再びこの偉大なる王の身を守れる喜びに打ち震える。 完全に視界の晴れた大地にて、もはや疑うべくも無い――― ――――――――何事も無かったかのように佇む偉大なるウルクの王 ―――悪夢は未だ終わらず………… 完全に蘇生した英雄王ギルガメッシュが今、上空を 自分を殺した者の姿を…… 何の感情も無く―――見やっていた。 ―――――― もはやその動揺を。もはやその焦燥を。 二人に抑えろ、などという無体な事が言えるだろうか? 「不死身だなんて……」 戦略的に距離を置いたのでも、有利な状況を作るべく空に陣取ったわけでもない。 「あれだけの強さを持っていながらその上、倒しても蘇生する…? 冗談じゃない…」 状況がもはや自分たちに一抹の慈悲をも与えてくれない。 騎士の様相から全ての状況を悟った魔導士が、ほとんど反射的に自分たちが今取り得る、唯一の行動を取る。 「不死身―――それは、無い筈だ…… 我が剣は一度、確かにあの者を打破した。その時はあんな…」 セイバーの声にも全く力がない。 そう――あのような事態は起こらなかった。 だが、少女の言葉など今や何の役にも立たない。 現に敵は眼下にて自分達を睨めつけている。 もはや二人の視界にもそれははっきりと映っている。 粉塵を吹き飛ばした黄金の風―――それを纏いし肢体が悠然と大地に佇んでいる。 いくら否定しようと、懇願しようと、それが拭えぬ事実なのだ。 英雄王は健在……全てを振り絞り、ようやっと倒したと思った矢先の復活。 あまりにも理不尽。 あまりにも埒外の戦力。 そして自分達に残された力はもう無い。 この戦いが始まってから魔導士の心の片隅に置いていた選択肢――― 事ここに至って高町なのはに一切の躊躇は無かった。 (負けだ………私達の…) ここに来て最も分かり易い行動の指針を示してくれたが故に なのははセイバーの了承を取らず、取る必要すら感じずにそれに踏み切った。 ――――勝率O% 力尽きる寸前の自分らに出来る事は、生還するために取れる行動は もはや―――撤退…………それしかなかったのだ。 ―――――― 「――――ナノハ」 「だめ」 「ま、まだ何も言っていません!」 後ろを振り向く事も無く、ただ一心に高く高く舞い上がり、戦地から離れていく魔導士。 騎士があげようとした言葉をなのははピシャリと切り捨てる。 「残るって言うんでしょ? だめ」 「………」 「そんなろくに動けない体で残って何をする気…? 手立てはあるの? 勝率は?」 「確かな勝算はありません……だが、私は知っている。 あの男は決して不死身などではない…」 確かな事だ。 それは男を打破したセイバーだからこそ言える真実。 「恐らく―――英雄王の復活を促したのもまた宝具である可能性が高い。 詳細は分かりかねますが、ともあれ反魂などという強大な作用をもたらすもの。 連続して使用出来る事はあり得ない。 ならば逆にそれが使えぬ今こそ勝機が―――」 「で、復活したあの人の体力、魔力が100%回復していると仮定して 今の私たちで勝てる確率は…?」 「………」 その騎士を抱き抱える手に力が篭る。 ………分かっている。 なのはの方がどう見ても正しい。 だが、それでもセイバーは引かない。 「確かに勝率という点では限りなく低いだろう。 だが、それでも私は騎士だ…… ことにあの男を前にして勝負から背を向ける事など…」 そうだ。なのはに言われるまでもない。 勝率などもはや叩き出せない事など騎士が一番良く分かっている。 だが、それは彼女の剣―――約束された勝利の剣に託された幾多の想いを裏切る思考だ。 この聖剣を携えて戦に臨む以上、彼女に敗走など許されない。 剣の英霊である彼女がそれを為すという事は、英霊として存在するその身を汚泥に塗れさせ、死する事に等しい。 「尋常な勝負じゃないよ。 だってセイバーさん、初めからケガしてたもの。」 「それは詭弁だ。戦場に立つ以上、常に万全の状態で敵と相対出来るとは限らない。 どのような状況であれ、出会った瞬間から一騎打ちというものは始まるのです。 そしてあの男とは―――己の存在の全てを賭けて戦わなくてはいけない相手…… どうあっても彼との戦いだけは逃げるわけにはいかない。」 名誉や名声などという上辺だけのプライドではない。 それは即ち、英霊としての在り方。 事に少女と男はかつて王としての対談を初め、何度ともなく邂逅を果たした。 その立場、信条の面でも決して引けぬ者同士である事を認識し合ったのだ。 故に――― 「ナノハ。一つだけあの男と意見を同じくするところがある…… 貴方が初めに我々の戦いに介入せず、この選択を取ってくれていれば――― 話はここまでこじれていませんでした。」 魔導士は答えない。 無言を以って少女に答える。 そうさせない、と……絶対に許さない、と。 「恩を仇で返す言葉なのは事は百も承知です。 助力は感謝している……貴方がいなければここまで戦えなかった。 だが矛盾するようだが、それでも私は――彼とは一騎打ちにて雌雄を決したい。 あの男を前に背中を見せる……そんな恥辱には―――耐えられない…」 嗚咽のような声で想いを吐露するセイバー。 断固として認めぬ相手に、何とか分かって貰おうと懇願する響きがあった。 ここでなのはの手を力づくで振り解いて男の前に立ち戻っても――そんな事をしても彼女はまた自分を追ってくる。 そして自分と男との勝負……否、この有様では勝負と呼べるものになるかも怪しいが とにかくそこに介入し、劣勢に立つ自分を命がけで守ろうとするだろう。 「あまり困らせないで……」 「元より避けて通れぬ道なのです。分かって欲しい」 「そう……じゃあ私も残るよ」 ………やはりだ。 予想通り過ぎて怒りを通り越して呆れてしまう。 「ですから、どうしてそうなるのですッ!!」 「私にだって誇りくらいあるから」 彼女のこういう所は、頑固で絶対に引かない所も含めてあのマスターにそっくりだ。 つい、声を荒げてしまう少女。 それに対し―――高町なのはは静かに答えた。 「セイバーさんの誇りとはちょっと違うけれど、私にだって全てを賭けて目指してきたものくらいある。 死ぬと分かってて、それでも貴方を置いて一人で逃げるっていう事は―――その誇りに反する行為なの。」 セイバーにとって敵に後ろを見せる事が誇りに悖る行為なら なのはにとっては救える人をむざむざ死なせてしまうことが何よりの背反行為。 「そんな事をするくらいなら一緒に戦うよ。 二人ならまだ活路が開けるかも知れないし…… 多分、私は高確率で死んじゃうと思うけど」 「く……卑怯です、ナノハ」 「セイバーさん」 怨嗟の声を上げる騎士に対し、一貫して冷淡な声で対応していた教導官の声色が変わる。 「自分だけが悔しいと思わないで。 私だって…………悔しいよ」 その少女の体に回した腕。 がっちりと胴を抱き寄せ 絶対に離すまいとする両の腕から伝わってくるなのはの想い。 「私だってこんな風に逃げた事なんてほとんど無いよ。 必死で身に着けてきた戦技がここまで通用しなかった事も。 悔しくて情けない気持ちはセイバーさんと一緒。」 この屈辱……このやるせなさ……それは一人のものではない。 こう言われては、セイバーも何も言えなくなってしまう。 自分の憤慨のみを叩きつけてしまっていたが――― 自身と同様、これだけの技量を収めた人間がその技に誇りを持っていない筈がないのだ。 「だからね。二人で耐えよう……この悔しさに。 一人で押し潰されちゃう屈辱なら、二人で半分こにすれば良いんだよ……」 戦女神と称されるに相応しい強さと美しさを誇る二人 その背中にあまりにも重く、不似合いな響きを持つ言葉――敗戦という二文字。 「………次は勝とう」 唇を噛み締め、雪辱を誓う高町なのは。 「今度、戦う時は絶対に勝とう……今よりもっともっと強くなって」 静かながら断固とした意思を内包するその言葉。 その表情をセイバーは―――黙って見つめていた。 それは未だに己が肉を持つ人間にのみ許された答え。 既に体が消滅し、魂の記録によってしかこの世に現界する事を許されない、そんな自分では到底至れぬ答えだった。 「――――そうですね。 貴方は……強くなる。」 今よりもずっと――――― もはやどれほど鍛錬しても自分が今より強壮に生まれ変わることは無い。 対して、彼女にはまだまだ「先」がある。 きっと果てしなく強くなるだろう。 その才能、その資質。 あるいはこの身を―――そして英雄王をも凌駕するやも知れない。 「済まなかった。タカマチナノハ」 そんな彼女の未来を、過去の遺物に過ぎない自分の意地で潰してしまってはいけない――― 「貴方の意思を尊重します……共に逃げましょう。」 「…………うん」 その身を静かになのはに預ける少女。 剣の英霊は一人、思いを馳せていた。 この年若きメイガスに一抹の羨ましさを抱いきつつ そしてもはや頭の片隅にもほとんど残っていない記憶に哀愁を感じつつ 強くなりたくて、国を救いたくて剣を振り回していた非力な少女。 王の剣を抜く以前の自分―――その譲れぬ願いのためにヒトである事をやめた自分。 それに後悔など微塵も無い。 だが、今この身の傍に在る一人の戦士のように人間としての道をひたすらに往きながら願いを叶えようとしていたら 自分はいったい、どのような道を歩んでいただろう……? 騎士は苦笑する。 今更な話だ。 そんな例えには全く意味が無い。 (英雄王……) ともあれ今の自分の気持ちは決まった。 一回だけ……この屈辱に塗れよう―――― (我が不明を許して欲しい。 いずれもう一度、私は貴方の前に立つ。 その時こそ、この決着は必ず……) 決意も新たに騎士王は、未だ大地に佇んでいる英雄王に向け―――己が意を示すのだった。 ―――――― エースと呼ばれたSランク魔導士を、騎士王の名を冠する英霊を二人纏めて敗走に追い込んだ――― 間違いなく最強無比の力を示した男の名は―――英雄王ギルガメッシュ。 「――――」 だというのに………男の双眸にはまるで光がない。 落ち窪んだ真紅の瞳が何もない虚空をさ迷っている。 「逃げる―――我から逃げるというのか?」 遥か遠くに消えようとしている背中。 今度こそ手に入れる筈だった輝き。 それが掌中から零れ落ちてゆく失望が―――男の声には含まれていた。 「騎士王が自ら敵に背を向け――」 暗黙の了解の筈だった――― そもそも初めからおかしかったのだ。 騎士王と英雄王との間柄は王同士の、決して他者の介入を許さぬ 意地と理念と誇りのぶつかり合いであった筈。 「その聖剣を自ら汚すというのか―――」 で、あるならば………この目の前の惨劇は何なのか? 何故―――騎士王が自分に対して背中を向けているのか? かつて自分に「手に入らぬからこそ美しい」とまで言わせた、光り輝くその姿。 そう。この世の全てを掌中に置いた男だからこそ、彼が真に愛でる物とは――― 掴もうとした我が手を傷つけるほどに強く、そして我が強大な力を以ってしても決して折れない かつて男が天上天下に唯一、友と認めた彼のような強さを持った存在をこそ……何よりも愛するのだ。この男は。 ――――ならば今一度、問う この勝負は本当に…………英雄王の勝ちだったのか? 王としての力を全て使って臨んだ。 傲岸不遜を旨とする王が泥臭いほどの全力だった。 エアを打った後の後詰など考えた事もない。 反魂など、少なくとも闘いにおいて使ったこともない。 それもすべてはセイバー……この女になら見せても良いと思ったからだ。 騎士王にそこまでの価値を認めたからこそ、男は常時は決して使うことの無い戦い方。 そして宝具まで駆使して、彼女の前に立ったというのに――― だというのに……… 結果はまるでその思惑を外れ――― 度重なる下卑た横槍に介入され、セイバーを手に入れられなかったばかりか この下らない世界の影響か知らないが――彼女はその輝きをすっかり失ってしまっている。 ―――汚らわしい 男の長きに渡る記憶において、ここまで世界に反発された事など今まであっただろうか? こんな不快感は「実」を蛇に食われた時以来…… ―――汚らわしい 汚らわしい あのような下衆の刃に、仮とはいえこの身を晒し打ち滅ぼされた。 王である自分が有象無象の刃に倒された。 「ああ――――そうか」 ――― もはや全てが目障りだと ――― 止まっていた男の思考が、取りあえずは一つの結論を紡ぎだす。 王の期待を裏切った。 王の寵愛に泥を塗った。 王の御姿を汚した。 まずはそれに対する報いを受けさせねば始まらない。 男の貌は――――この戦いにおいて初めて見せるものとなっていた。 怒気もなく殺気もなく、そして王としての威厳すら消えていて そこにいるのは……ただの魔人。 かつて世界の全てを薙ぎ払った、黄金の殲滅者としてのみ存在する一人の魔人が佇んでいた。 「ゲートオブ―――バビロン」 抑揚のない声が滅びの序曲を奏でる。 男の財の全てを投げ売った豪奢なる破滅のパーティの始まりだ。 さあ、これがレクイエムだ…… この下らない物語の幕を―――― ―――― 下ろそう ―――― ―――――― master!!!!!!! 「分かってるッ!!」 僥倖ではあった…………… ここまで相手の追撃が全く無いこと。 飛んだ瞬間に串刺しにされる事も已む無しな状況だったというのに、結果かなりの逃走距離を稼げた。 反魂におけるタイムラグと王の失意の時間における恩恵。 ここまで確かに僥倖ではあったのだ…… だがあともう少し……もう少しで男の射程外に飛び出せたという刹那で―― ――― それは始まった ――― 100を超える宝具の掃射が豪雨なら、1000を超えるソレは一体何に例えれば良いのだろう? 彼らは王の号令を今か今かと待ち望んでいたのだ。 男の声に反応するや彼らは我先にと扉を潜り、上空に浮かぶ今宵の主賓に向かって襲い掛かっていた。 地上から撃ち放たれた全く出し惜しみの無いゲートオブバビロン。 そう、出し尽くすつもりなのだ―――男は。 眼前の無礼者を狩り尽くすのに全ての財を投げ打つつもりなのだ。 それはもはや、先の天地創造と比べて劣らぬ凄まじい光景だった。 剣が、槍が、斧が、鎌が――――逃げる二人を追走する。 ソレを一口で表すなら簡単だ。 今まで開いた扉から一度に100の刃が飛び出していた。 それが、同じ大きさの扉で同じ秒数で十倍の刃が飛んできていると思えばよい。 本来この宝具は100や200の展開で十分……否、それが最適の使い方である筈なのだ。 このような超規模・展開は明らかに非効率。 密集し、追撃の折、あまりにも隣接した刃同士が互いにぶつかり弾け飛び 刃で埋め尽くされた空間の所々から宝具同士の衝突による大爆発が起こり、標的に辿り着く前に落ちてしまう刃も多い。 だが、愚問だった…… 男が今更、効率や利便性を考慮に入れて宝具を展開しているはずがない。 あるのはただ、その力のすべてを以って不埒なものを跡形もなく押しつぶす。 ただ、それだけだった。 獲物を我先にと求め狂う人喰いの群れはまさに凶刃。 刃同士が擦れるギチギチ、という音は本当に生き物のようだった。 その宝具の放つ千の光沢一つ一つがまるで一枚一枚の鱗――そう、その宝具の群れの行軍。 汚れた者を追い立てる王の心境を表したのか、それは期せずして男の最も忌憚するカタチ―― ――― 鎌首をもたげた巨大なヘビの如きカタチを造り出す ――― 「………何という…」 これがあの男の、英雄王ギルガメッシュの出し惜しみ無しの力…… 地上から吹き出るように放たれた宝具の群れに、その威容に戦慄を覚えざるを得ない騎士王。 「しっかり掴まって! 振り切るッ!!」 男の宝具の追撃はまさに罪人を追い立て駆り尽くす魔人の軍勢そのものだ。 いつぞやの剣&盾のシフトはおろか、この世に現存するどのような盾、鎧、城壁でもアレを防げるものなど存在すまい。 逃げるしかない……逃げるしか――― だが次々と乱れ飛びながら追撃してくる宝具の群れは、その全てが放出された魔矢である。 つまりいくらなのはが全速力で飛んだとしても速度でこれらを上回るには少し足りない。 機銃の弾より早く動ける戦闘機が無いのと同じである。 だが、機銃の弾は確かに速いが、当然どこまでも平行に飛ぶわけではない。 それにはれっきとした射程というものがあって、範囲外に身をおけば弾丸は決して身体に届く事は無い。 「フラッシュムーブッッ!!!」 だからこれで……一気に視認外の領域に退避出来る! Master...your energy is... 「大丈夫! これでラストだからっ!!!」 フライアーフィンにあらん限りの魔力を叩き込むなのは。 発動する、ブーストによる瞬間移動じみた加速。 白と銀の影がその瞬間、慣性をまるで無視したかのような推力を得て飛翔! そして、今まで彼女らのいたその空間を――― 「ッ!? きゃああぁっっっ!!!」 「ぐっ!?」 刃の群れ……否、巨大な蛇の顎が薙ぎ払った!!!! ソレが通り過ぎた余波、上昇気流だけで彼女達は姿勢制御を失い、きりもみ状に吹き飛ばされる。 ぐるんぐるんと縦に七回転ほどして、ようやっとカバーに成功するなのは。 今まで自分達のいた地点を見やり―――魔導士はその光景に戦慄を覚えずにはいられない。 すぐ後ろを通り過ぎた巨大な宝具の群れ。 その巨大な顎は戦艦すら飲み込むほどの規模だった。 10mは離れていたはずなのに、その通り過ぎた衝撃波だけで自分らを吹き飛ばしたのだ。 (あんなのにまともに飲み込まれたら……) そうだ……骨も残らない。 だが何はともあれこれで凌いだ筈……! あとは男の視認の外にまで一気に飛び去れば、このスカイチェイスは高町なのはとセイバーの逃げ切りで幕を――― 「ナノハっ!! あれを!」 「え!? …………あ…」 セイバーの怒号が飛ぶ。 そしてそれを受けたなのはが愕然とした表情を作る… 「痴れ者が。まさか我が御前から逃げ果せられると――― 本気で思っているのではあるまいな?」 ………幕を閉じさせるわけがない! 二人は男を怒らせた。 もはや戯れで済ませてくれる筈がないのだ! 「何だ―――アレは……!?」 彼女達と男との距離が再び縮まっていく。 セイバーが目を見開く。 それは豪奢な光沢を放ちながら飛来する、小規模な一軒家程の大きさもある何か―― なのはの飛行速度に匹敵する程の凄まじい速度で地上から迫ってくる小型の建造物。 そして周囲に再び生まれ出る―――ゲートオブバビロンの発射口。 王の財宝が一つ。ヴィマーナ――― 古代インド最古の古典に登場する、星間飛行すら可能にする飛空船の名称である。 多くの叙事詩に、姿を変え、形を変えて登場するこの船は英雄たちの織り成す幾多の戦争に使用されてきた戦略兵器。 その原典が今ここに――――― 「くっ……逃げる事すら出来ないなんて…!?」 あろう事か航空戦技教導隊のトップエースが空で追い詰められるとは…… 英雄王の力は留まる所を知らない。ついに高町なのはの特異な領域をも犯し始める。 本来ならばここは迎え撃つところだ。 戦場が空であるならば、航空機動隊の力は如何なく発揮される。 相手が何であれ、遅れを取る事は無い筈だ。 「相手の事を鬼とか悪魔とか罵声を浴びせたくなる気持ち……… 今、少しだけ理解できた、かな……」 しかして乾いた苦笑を漏らす魔導士。 そう。本来ならば迎え撃つ…… だがそれも自分が万全の状態だったならの話だ。 今の自分には、あの英雄王と打ち合う戦力などどこにも残っていないのだ。 (……聖剣さえ…!) セイバーが苦渋に満ちた顔で臍を噛む。 エクスカリバーさえ撃てれば……あのようなモノ、巨大なマトに過ぎない。 中にいるギルガメッシュごと薙ぎ払ってくれたものを。 だが騎士もまた魔道士と同じ。今や聖剣どころか満足な立ち回りすら出来ない。 ただなのはに猫の様に抱えられて大人しくしている以外に術が無い有様だ。 どうすれば良い…どうすれば……… ―――――― 「はぁ……はぁ……はぁ…」 完全に後ろを取られた状況下で、決死の敗走は続く。 矢継ぎ早に打ち出される王の断罪の魔弾を後ろ手に、一発のヒットも許さずに飛翔する白き翼。 「ナノハ……!」 「大丈夫……大丈夫だから!」 否、許さないのではない。 一発のヒットすら許「せ」ないのだ! 被弾が即ち、即撃墜に繋がってしまう! 初めは凄まじい飛行速度と気流に遮られ、また彼女自身が全くそういう素振りを見せなかったが故に聞こえなかった 魔導士の激しい動悸と吐息が今、セイバーの耳にはっきりと聞こえてくる。 ―――― ゼェ、ゼェ……ハ、ァ…… 英霊である自分が驚きを感じるほどに今まで涼しい顔をして戦っていた高町なのは。 だがセイバーをして履き違えていたと言わざるを得ない。 それほどの頑強さにして不沈ぶりを見せ付ける高町なのはは―――人間なのだ。 そのバイタリティ。肉体の数値。スタミナ。それらが英霊と並ぶなどという事は有り得ない。 元々、頑健でない体にそれ程の強度を与えているのはひとえに彼女の精神力。 精神が肉体を遥かに凌駕しているという例はまさに彼女のためにあるような言葉だ。 「まだ……まだ、いける! ここで堕ちるわけには………」 だがもはやそれも尽きようとしている。セイバーにもはっきりと感じ取れる。 抑え付けていた彼女の体内から噴き出す、意志の力などでは到底隠せぬ程に蓄積された疲労とダメージ。 尋常でない体の震え。明らかに呼吸困難に陥っている吐息。 痛みに痛みを重ねたような苦痛に苛まれ、漏れる呻き声。 「レ、レイジングハート……は、何とか、出来ないかな…?」 Master...you are... 「お願い……もう少し、持たせて…」 You exceeded a limit... 「分かってる……分かってるよ……でも……」 車はガソリンがなければ動かない。 その燃料の最後の一滴まで絞りつくせばどうなるかは自明の理。 虫の良い話なのは彼女とて百も承知だった。 決定的だったのは先程のフラッシュムーブ――― デバイスは確かに進言した。 主人の魔力残量がもはや風前の灯だということを。次で打ち止めだということを。 だがそれでもバビロンを避けるために必要な措置だった。 そして、そのまま急加速で逃げ切るつもりだった。 敵の宝具の猛追をかわし、そのまま男の視認外に逃れる。 そこでまさか―――敵にあんな飛行手段まで備わっていたなどと言ってももう遅い。 魔力エンプティという魔導士にとって致命的な状態が、その最後の防波堤を崩し 済し崩し的に全てのダメージが彼女の体を一気に侵食し始めたのだ。 もはやなのはの体はいつブレーカーが落ちてもおかしくはない。 「セイ、バーさん……」 「何? 何ですか!? ナノハ…!」 「イザという、時のために……レイジングハートの操り方だけ、教えておくね…」 「なっ……馬鹿な! 何を言っている!」 「大、丈夫。 オート航行出来るように、インプットしてあるから…… 登録者以外でも、暫くは動かせる……」 後方から轟音去来! 死に体の彼女らに射出される宝具の群!! 「ッ! ナノハ! 後ろです!」 「く、ああぁぁぁあッッッ!!」 ケモノのような絶叫を上げながら彼女は10時の方向にその身をロールさせる。 瞬間、後方のヴィマーナから発射された魔弾が二人の背中や肩を掠めていった。 「ぅ、く……」 かろうじて回避運動を取る空戦魔導士だったが、その行為の一つ一つが確実に彼女の命を削っていく。 ミッドの魔導士たちに「舞い」と称された華麗な空戦技術。 だが今の彼女にその面影は無い……本能のままに、ただ本能の赴くままに彼女は飛ぶ。 自分が力尽きればここで終わってしまうのだ。 空の人間の誇りにかけて―――ここで役に立たなければ 一体、自分は何のためにこの戦闘に介入したのか? 「う……ぅぅ、っ!」 だが矢継ぎ早に打ち出される後方からの射撃は留まる事を知らない。 魔銃の乱射をフラフラと、夢遊病者のように右に左に体を傾かせながらかわしていく高町なのは。 この状態でもなお、被弾を回避しているのはまさに天才としか言いようが無い。 その天性のカンと忍耐。そして強固な意思は健在なれど――― それに反するように………ついには推力が、速度が、高度が下がっていく! その様相はまるで力尽きる寸前の長距離走の選手のようだった。 限界を超えてなお本能がゴールを目指す。 這ってでも最後まで走り抜こうと足を動かす。 だが―――意思とは逆に、電源の落ちた体は最後は力なく無残に地面に倒れ伏すのみ…… 「駄目、か……残念だけど、ここまで… あの敵に飛行手段があると読めなかった私の落ち度だ… セイバーさん……レイジングハートを、お願い…」 その、あまりにもあっさりと紡がれた言葉は―――言うまでも無い。 自分を捨てて逃げろという意味だ。サーヴァントに。この騎士王に。 セイバーが激昂交じりの怒号を発する。相棒のデバイスも諸共に。 !? No!! My master!!! 「何を弱気な! 散々、共に逃げようと言っておきながらっ!」 「どうしようもないの……! あまり困らせないでっ!」 己が身の限界を、このままでは到底ゴールを拝めない事を悟り――― 魔導士高町なのはは覚悟を決めた。 「どうやら私は………最後まで、付き合えな、い。 今、レイジングハートに簡易プログラムを施したから真っ直ぐ飛ぶ分には問題ないと思う。 これで何とか………逃げ切って…!」 区切り区切りに、苦しげに一言を紡ぎ出すなのは。 二人は無理でも一人なら……自分という重りを廃し、この小柄な少女だけになれば恐らく速度は更に上がる。 後方の英雄王の追撃をかわし、逃げおおせられる確率も高くなる。 「このコを――レイジングハートをお願い…… それで……はぁ、はぁ、余裕があったらでいいから…… もし時空管理局の魔導士に会えたら、この顛末を……」 master! don.t be hasty my master!! 「ありがとう……ごめんね、レイジング、ハート…」 彼女とあまりにも長い間、時を同じくしてきた勇気の名を冠する杖には感情があった。 インテリジェントデバイスという、機械的に組み込まれたAIという枠を超えた―――それは単なる思考でなく信頼関係。 この強く優しい主人に対する友愛、尊敬。 その強い想いはマスターの決意に対し、命令を拒否し、悲哀の叫びをあげさせるに十分なものだ。 だが、もはやプログラムは組み込んだ。 彼女が優れた魔導士で、このデバイスをほぼ100%制御しているが故に どれほど強い想いを持とうとレイジングハートは彼女のオーダーに決して逆らえない。 ――― 要は二人で死ぬか一人が助かる可能性に賭けるか ――― それだけの事。当然の判断だ。 最善を尽くし、全ての力を示してなお全員の生還が難しい――― ならばそんな時は誰かが犠牲になって他の誰かを生かす。 それもまた―――戦場の慣わしなのだ。 「――――分かりました」 「うん……」 終始無言で彼女の苦しみ喘ぐ姿を、その決意の言葉を聞いていた騎士の少女が優しい声で答える。 「ありがとう……分かってくれて。 正直、もっと反発、されるかと思った……」 「ナノハ」 「うん……」 騎士とて戦場を駆ける者。その誇り高き決意に胸を打たれないわけがない。 その慈愛に満ちた温かい声は魔導士の決意を賞賛してくれているのだろうか? 「私はかつて、人の心が分からない――― かの者とは歩めない―――そう言われた事がある。」 「…………?」 「しかし取りあえず今は―――貴方の心積もりは十分に理解したつもりです」 「うん………」 その言葉を聞けて良かった…と、なのはの体から力が抜けていく。 彼女とてまだまだ生きたかった。死にたくなどなかった。 それでも……結果としてこの身に死が降りかかるのならば――― ――― 自分は最期まで、誰かを救う者でありたい ――― それが彼女の彼女たる所以。 高町なのはという人間の根幹だ。 「要は――――」 その悲壮な決意を受けて 葛藤に悩み、苦しんだ決心を受けて――― 「私に喧嘩を売っている、という事ですね?」 騎士はにこりと笑って………それを一蹴した。 ―――――― 「え、………」 最後の最後――― いきなりちゃぶ台返しをかまされたショックで、降りかけた意識を無理やり覚醒させられる高町なのは。 ぎょっ、という顔で騎士の顔を見る。 「何を一人で勝手に盛り上がってるのか知らないが――― 返す返す人に、命を大切に、と言っておきながら自分はそれですか…?」 もう一度言う……少女のそれは慈愛に満ちた顔だった。 口元に微笑を称えた聖女のように優しい相貌。 一片の険も感じられないその顔で―― しかして紡ぎ出すは、騎士王の……今宵、最大の憤怒を込めた言葉である。 「そんな事、言ってる場合じゃ……お願い、セイバーさん!」 「ほう―――」 時間がもうない。その焦りが口に出てしまう高町なのは。 に対し表情はそのままに応対するセイバーである。 「貴方はどうあっても私を愚弄せねば気が済まないらしい」 よく見ると、笑っているのは口元だけで―――少女の目はまるで笑っていなかった。 「散々言っている事ですが……何故、私はこんな所で貴方に抱き上げられているのでしょうか? 一騎打ちに水を刺され、果てはただの荷物、ただの救助者扱い――― こんな時はむしろ私を捨てていけばよい。 それこそが望むところだというのに。」 「駄々をこねないで言う事を聞いて…!」 魔導士の焦りはやがて苛立ちになり、ついには声を荒げてしまう。 だが途端、その弱りきった内臓から競り上がってくる感覚にゲホッゲホッと咳き込む彼女。 「………頼むから……余裕ないの……もう」 「忘れるなメイガス―――私に騎士の誇り、約束を捨てさせてでも共に生き残ろうと言ったのは貴方だ。 その責任も取らないうちに自分は一人で自己満足の脱落ですか? 貴方も戦士なら己が出した言葉の責任くらい自分で取って貰いたいものです!」 「私だって死にたくないよ!! でも……もう本当に、術が無いの…」 セイバーの容赦のない言葉に答える高町なのは。 その言葉が、弱々しいものに変わっていく。 彼女は優れた戦技と冷静な判断の出来る武装隊員だ。 だから本当に万策が尽きてしまった事に気づくのも早い。 そうでなければ高町なのはが、あの無敵のエースが「もうダメだ」などと口が裂けても言うものか。 「貴方はもう喋るな。ナノハ」 だが、その称えた微笑をしまい込み―――前方を見やる少女に……騎士の顔が戻っていく。 「もはや余裕が無い事は私にも分かる。 他に何もしなくて良い――― この出力を維持する事だけを考えて欲しい。 出来ますね?」 息も絶え絶えの高町なのはに有無を言わせず自分の意を伝えるセイバー。 「ま、まさか………セイバー、さん」 言葉少ない少女の意図をいち早く感じ取り――― 「無理だよ……貴方の凄さは知ってる。 けど、それでも……」 魔導士がかぶりを振った。 それはあまりにも無謀――苦し紛れにすらならない愚行だ。 そしてそんなやり取りをいつまでも許すほど敵も甘くはない。 飛空挺の周囲に次々と現れる殺意の具現。 二人を打ち落さんと口を開く、宝具の発射口。 「確かに私一人では無理でしょう。当然、貴方の力を借りる。」 「貸そうにも、その力がもう無いの…… 私はもうお荷物なんだよセイバーさん! 私を抱えたまま、逃げ切るなんて出来っこない!」 「ある。 一つだけ貴方に残された力が―――」 そのセイバーの言葉が最後まで紡がれる前に――― 「ッッ! くっ……!!」 後方で再び、落雷のような音が響き渡る! 轟音一閃! 弾き出される宝具の群れ! 再び蛇の顎と化した凶刃の束が―――彼女たちを食らい尽くそうと、その背中に迫っていた! その攻撃に追われ、レイジングハートの舵を大きく下に捻ったのは……何とセイバー! なのはの握っている杖の両手部分に自分の手を重ね、その上から握るようにして 体力の尽きた高町なのはの代わりに回避運動を担った剣の英霊! その行動により急降下の軌道を取った両者は、後方から飛来する宝具の大軍勢を避ける事には成功した。 「ダ、ダメッ……それじゃ振りが、大きすぎるッ……」 だが………… 「くっ……」 操舵主である魔導士・高町なのはが力尽きたのだ。 この事よって、飛行が制御不能になる事はやはり止められない。 たまたま乗り合わせた乗客が操舵手の代わりを務める事など出来ない。 だからこそなのははセイバーが無事に圏外に飛び去れるよう レイジングハートに一通りの逃走ルートをセッティングして自動航行モードに切り替えたのだ。 しかし機体は今、慣れないセイバーの操舵によりガクンと大きくバランスを崩し 急降下の体制を取ったまま地面に向かって突っ込んでいく。 やはり――無理だった。 セイバーが高町なのはの代わりに回避、航空を担当するという試みは英雄王の一薙ぎで脆くも破綻した。 当然だ。 いかに卓越した戦闘能力を誇るセイバーとはいえ、その人生において駆け抜けた戦いの全ては地上におけるもの。 地を駆け、剣にて敵を打ち倒すスキルには長けていても空を翔るスキルなどは持ち合わせていない。 そんな彼女に、ぶっつけ本番で高町なのは以外には使いこなせないとまで言われたピーキーなデバイス レイジングハートを使いこなし、空を飛べと言うほうが無理な話であったのだ。 「こ、これじゃ……もう」 なのはが絶望的な状況に唇を噛み締める。 リカバリーの介する余地の無い完全な墜落の軌道。 ―――堕ちる!!! 騎士王が、エースオブエースが 翼折られ、その身を堕天させていく! 「味気無い幕切れよな――」 英雄王と騎士王の宿命の邂逅が―――まさかこのような結末を迎えようとは。 勝利を得るのが自分である事に変わりは無い。 真の力を解放した男に匹敵するモノなど全ての次元を探し尽くしてなお、見つけられる筈がない。 だから男に初めから勝敗の興味などは無かった。問題はその中身だ。 逃げ惑う鼠を駆り立てるために、自分はその蔵の全てを起動させ、己が無双を誇る乖離剣を抜き 反魂という保険までかけてこの戦いに臨んだのではない。 その視線の先に映る―――かつて自分の目をも見張らせた愛しき女。 だが今、女はその誇り高き身を貶め、ドブ鼠に等しい情け無い姿を晒している。 その鼠どもは眼前にて男の一薙ぎで惨めに失墜。 ほどなくその身体を地に叩きつけられ、見る影の無い肉塊と化すだろう。 飛空船にて居を構える男――英雄王ギルガメッシュが墜落していく両者を見やっていた。 さもつまらな気に。ゴミでも見るような目で。 ただぼんやりと―― ―――――― 「う、うう………く、うううううッッッ!!!」 その身を振り絞るような声が大気を切り裂く音に掻き消される。 渾身の力を込めてピッチを戻し、何とか飛行状態を回復しようとするなのは。 「だから、言ったのに……」 だがよもや取り返しはつくまい……悔しげな言葉が彼女の口をつく。 ここまで加速のついた急降下を立て直すのは相応の力がいる。 今の魔導士の残り体力、魔力では到底不可能だった。 もはや希望は完全に費えたのだ。 「セイバーさんだけでも助かったかも知れないんだよ……!」 「貴方の屍を踏み越えてのうのうと生きろと言うのか?この私に?」 「二人して死んじゃったら何の意味もない!」 騎士の無謀な試みを責める高町なのは。 彼女が感情を露に相手を批難するのは珍しい。 それは自分の最善と思われた行動を土壇場で覆された事もあるが――恐怖が紡ぎだした言葉でもあっただろう。 彼女の記憶にはっきりと刻まれた「墜落」の恐怖…… その痛み、苦しみを思うと、今でも彼女の歯はカチカチと震えてしまう。 時を待たずして訪れる破滅――それはもう止められない。 「ナノハ」 地面に叩きつけられ、その身が崩壊していく感覚。 それを今一度味わなければならない。 もっとも、魔力切れでリカバーすら出来ない今回は痛みを感じる暇もなく木っ端微塵だろうが。 だが、その最期を前に体を強張らせる魔導士の耳に――― 「確認する―――何としてでも二人で生き残る。 その意思に嘘偽りはありませんね?」 「………え…?」 その少女の落ち着き払った声が―― 「それが適わぬ今、己が死んででも私を――英霊を救いたいなどと大言を吐く。 ならば多少その身が屈辱に塗れようと異論はないのでしょうね?」 ―――否、酷く据わったような声が届く。 その不気味なほどに落ち着いた声に青ざめていたなのはの顔が騎士に向く。 そして、その近くに在った彼女の顔が―――爛々と輝く瞳が 絶望に満ちたこの状況下でまるで怖じぬ動じぬ戦意を以って高町なのはの総身を貫く。 「正直、迷っていた……これは、この行為は貴方の誇りを甚く傷つけてしまうのではないかと。 だがナノハ―――命をかけて私の役に立ちたいというのであれば、この程度の恥辱には当然耐えられる筈だ。 私ももはや貴方を相手に微塵の遠慮もいらないという事が今―――ようやく分かった」 「セイバー、さん……何を?」 今わの際だというのに―――なのはは自分が死ぬという現実より目の前の少女から目を逸らせない。 そのあまりの迫力に。有無を言わさぬ……王気に。 「この私の誇りを何の躊躇いもなく傷つけ、我が身に説教まで施したからには――― 責任は取ってもらいます。 共に生き残るために貴方にはせいぜい尽力して貰わなければ。」 静かながら、まくし立てるような言葉だった。 少女もまた自分の中でスイッチが切り替わっていくのを感じている。 今までの自分は所詮、余所行きの自分。 サーヴァント――従うモノとして培った偽りの自分だ。 そして真の自分は―――この現世において最も信頼するマスターにすら見せるつもりのなかった姿。 そんな着の身着のままの自分を彼女は今、開放しようとしている。 セイバーは今こそ、目の前の魔導士に己が最愛のマスターを重ね合わせていたのかも知れない。 細部はまるで違うが、確かに似ている所はある。 強情なところ。我が身を犠牲にして他の人間を助けようとするところ。 自分を唯の人間扱いして我が身を呈して護ろうなどと言い出すところ……しかも素で。 少女は舐めるな、と 馬鹿にするな、と言いたかった。 この英霊を、最強といわれた剣の英霊をただ救われるだけの存在と思うな、と そんな思いで身が――――はちきれそうだっ!!! 「ッッッッッ!」 そんな尋常でない少女の様相に目を奪われていた魔導士であったが 今、まさに眼前に迫る大地を前にしてはそのような事は些事である。 無残に木っ端微塵になる肢体。 もはや逃れられぬ結果に、ぎゅっと目を瞑り表情を強張らせる高町なのは。 「――目を閉じるなメイガス。そして私を見よ」 「え……?」 だが、そんななのはとは裏腹にどこまでも、どこまでも声が据わっていく騎士。 少女は苦笑する。 思えばマスターとも――自分は幾度となくこうやってぶつかったものだ。 今、彼女を支配するのは怒りと、意地と、そしてなつかしさ。 そろそろ始めよう――― ―――――― 騎士が、その行動を起こし……なのはが驚きに目を見開く。 初め、なのはは騎士が何をしてきたのか分からなかった。 何が起きているのかもまるで認知できなかった。 セイバーが、高町なのはの後頭部に手を回し―――頭の髪を掴み、ぐいっと強引に引き寄せたのだ。 「え、い……痛ッ!?」 その行為に一瞬息が詰まるなのは。 少女の行為はそれだけに留まらず、一体何を思ったか…… セイバーは高町なのはの身体。その腕。その足。 全身を引き寄せて――己のそれと絡ませるように密着してきたのだ。 「え………えっ…?」 それはまるで恋人同士の抱擁。 否、腕による抱擁どころか、足、その他全身を絡ませた様相はまるで伽のような――― 落着まであと五秒 一回り小さな少女の身体が魔導士の肢体に艶かしく絡んでいく。 目を白黒させてしまう高町なのはの、息の詰まるような声が喉から漏れる。 服の上から合わさる胸から、互いの心臓の鼓動がはっきりと聞こえてくる。 そして――騎士の少女の顔が自分の顔に近づいてくるのだ!? なのはとて無菌部屋で育ってきたわけではない………これは所謂――― (………え、ええっ!?) 何か声を上げようとしたが、状況が状況だけに流石の彼女も二の句が繋げない。 この数秒後には地面に激突し、その身が砕けるという状況で 同性の少女で今日会ったばかりの騎士相手から、そのような行為をされる謂れは無い……。 ――――落着まであと二秒 顔に互いの息がかかるほどに密接する両者。 なのはの荒い呼吸。その負傷による苦しげな吐息が――目の前にあるセイバーの顔に当たる。 そしてセイバーの吐息もまた間近に。 なのはの鼻腔をくすぐる、野に咲く花のような香り。 セイバーの西洋人形のような顔が更に――更に近くなり、このままでは………… (! …………) その顔を背けようとして―――― 頭部は騎士の右手にがっちりと押さえ付けられている事を思い出す。 「こ、こんな時に何を!? 悪ふざけも大概に……!」 「―――目を逸らすなと言った筈です」 その言葉には一切の抵抗を許さない響きがあった。 そしてもはや拒む暇もなく、少女の唇が魔道士の唇に重なる――― …………………… ―――――その寸前で…… 接近は……止まっていた。 「―――恐いのですか?」 「……意味が、分からない…」 唇を奪われてしまうと思い、本能的に身体が強張ってしまった。 その醜態にカァ、と目頭が紅潮していくなのはである。 明らかに挑発されている。 この一見、4~5歳は年下に見える少女に冷静を旨とする自分が翻弄されている。 ――――落着まであと…… 死を前にして自分は何をやっているんだろう? そんな疑問すら沸かない不思議な感覚――― 魔導士の耳元に吐息がかかる。 こそばゆさにピクンと身体を震わせる高町なのは。 まるで全身を包み込まれたような……否、体内にまで入り込まれたようなその感覚。 そして全てが終わる―――その直前 なのはの脳に騎士の言葉が直接届く。 「―――疾く駆けよ。 白き駿馬……我が意のままに!!!」 ―――――― ……………… ―――――そして二人は大地に激突する。 白と青の外袴。金と栗色の髪が縺れ合い、絡み合いながら…… その地に消えていく――― 「駆けよ―――タカマチ……ナノハ!!!」 再び響く騎士の声。 勇猛果敢な戦場の鬨の声。 その瞬間――――― ――――――――――――――大地が爆ぜた!!!!!!! 高速で地面に刺さるような軌道で墜落した彼女たち。 大した体重の無い二人が、まるで隕石の落下のような―― これほどまでの爆発を伴うほどの激突をしたのだ。 もはや生存確率は万に一つもないであろう。 間違いなく衝撃で四散した彼女達。 あとはそう―――土煙が晴れた時、その地に無残に潰れた二人の死骸を認めて終わり。 英雄王の言葉の通り、それはあまりにも味気無い結末。 そう――――― 皆がそれを受け入れるしかないと思っていた。 敵はあまりにも強すぎた。 対して二人には抗う術など残されていなかった。 この結果は………必然だった。 誰も予想しない 予想出来るはずが無い ここから二人が――― 最後の逆転の狼煙を上げる事など………誰が予想し得ようか? ―――――― 再び立ち上がる剣気は、まるで躍動し舞い上がる竜のように 再び羽ばたく翼は、まるで炎の中から蘇る不死鳥のように 爆ぜた大地の爆炎から、その身を宙に躍らせる――― 真なる奇跡が、今――― ―――――― ――― 英雄王を倒す ――― それには、この二人の英雄が力を合わせなければならない。 個々の力では駄目だ。 エクスカリバーも。スターライトブレイカーも。アヴァロンも。ACSも。 凄まじい力を秘めた技なれど、それは各々の個としての力でしかない。 ――― 力を合わせる ――― そう、初めからこれが前提だったのだ。 この極限状態で異なる世界の二人の英雄は壁を壊し 心を通わせ―――パートナーとして真なる融合を果たす。 青白い魔力と桃色の魔力がまるでマーブルのように絡み合い混ざり合う――― それは文字通り、身も心も同化させる行為だったのであろう。 身を摺り寄せる程に密着したセイバーが 高町なのはにその呼吸、鼓動、気の流れを……合わせていく。 これは一番初めにしなければならない事だった 戦場にて、駆るものと駆られるものの心が離れていては―――生き残る事など到底、出来ない。 サーヴァントセイバー。彼女は「騎士」だ。 確かに空を自在に駆けた事の無い彼女。 単身では翼の無いセイバーに空戦をやれというのはあまりに無理な話だろう。 だが――ならば翼あるものに「騎乗」した場合はどうか? 大空を翔る空の王者の力を借りた時……彼女はやはり無力であるのか? 否、それはセイバーの持つスキルの一つ。 騎乗スキル―――― 思い起こされるは第四次聖杯戦争。 自身より二回りは大きいリッター級の化け物二輪。 V-MAXを自身と同化したかのように自在に駆り立て、ライダーの宝具と互角のカーチェイスを演じて見せた彼女。 騎士は駿馬と共に駆ける者。 つまりは騎兵としての一面も持ち合わせている。 事ここにいるのは全ての騎士の頂点に立つ者。 馬上にて、戦の全てを制してきたアーサー王である。 当然、ライダーのサーヴァントに該当するほどの能力を持ち合わせていても何の不思議もない。 その彼女が今、翼あるモノ―――「高町なのは」に騎乗した。 人間を「馬」として扱う事に一縷の躊躇のあったセイバー。 飛び荒ぶ間も、その構想はあれど最後まで躊躇っていた騎士の王。 彼女に乗る事に……彼女を傅かせ、蔵を置き、服従させて、使役する事に。 だが、もはや二人にとってそんな事は些事であっただろう。想いは同じなのだ。 「そうでしょう? ナノハ」 「ああ、うぁ………ッ!?? 何これ……凄ッ!!」 なのはがたまらずに裏返った声を漏らす。 脊椎をワシ掴みにされたような感覚を受け、体内に稲妻が走る。 もはや自分の意思では動かない筈の肉体。 焼きつき、循環する事を止めた魔力回路。 起動するはずの無い身体に余さず火が灯る。 それは彼女が体験したことの無い不思議な感覚だった。 自分の中に別の力が、異なる意思が入り込み、体内から何かを根こそぎ引きずり出されていくような――― そんな有り得ざる感覚の元に身体が、まるで自身の意思とは無関係に動き地表スレスレで墜落を回避。 その「力」が迫りくる地面を逆に蹴りつけ、まるで飛び爆ぜるような異常な軌道で二人を宙に押し上げていたのだ! 空戦の常識をまるで無視した軌道。 慣性を、力学をまるで無視した、もはやマニューバの域に収まりきらないもの。 「はぁッッッ!!!」 「ちょ、セイバーさん……ッ!?」 そんな事を考える余裕が今の高町なのはには無い。 上空にて事の趨勢を見やっていたヴィマーナが、彼女らが墜落回避としたと見るや 再び、凄まじい宝具射撃を開始したのだ。 そして上空から間断無く降り注ぐ爆撃を騎士は気合一閃、まるで縫うように駆け抜けていく。 そう……高町なのはを駆って、である。 今、なのははセイバーに引きずられている状態。 首根っこを引っつかまれて走らされているようなものだった。 思うままにならない肉体。意思とは無関係に動く身体に顔をしかめながら、目だけを動かして少女の顔を見る。 「や、やめて……こんなの、って…ッ!」 「黙っていろと言った筈だ」 「あッ!?」 眼前に在る騎士、セイバーの横顔。 その瞳―――薄緑色の底に沸々と燃えている猛き炎。 有無を言わさずに「なのは」という騎馬を振り回すセイバー。 騎乗と言ってもその背に腰を下ろすような従来の騎乗ではない。 抱擁の形でまるで横からしがみつく様な姿勢はとても騎手として機能するような姿ではない。 だが、そんな状態でセイバーは一回り大きな高町なのはの肉体を完全に支配している。 「委ねよメイガス―――この騎士王に」 魔導士を、その奥にある心すらも打ち貫く力を秘めた言葉。 何という精悍で揺ぎ無く、満ち溢れた声。 これが伝説にその名を馳せた騎士の王の本当の姿か! 「私が貴方を生還させてやる―――必ずだ」 身なりはあくまで年若い少女。 なのはも話していて、つい彼女を少女扱いしそうになるほどに この騎士は可愛らしくて、年相応の可憐さを持っていた。 だが、この目の前の少女もまた英雄王と並び称されるほどの――ヒトを遥かに凌駕した強大な王なのだ! 千の兵を率いて国を守り、万の敵を畏怖させた伝説の騎士王。 その気勢のままに彼女は戦場を駆ける。 その姿のあまりの猛々しさに、高町なのはの喉にコクリと生唾を飲む音が響く。 瞳の深い緑色に――身も心も雁字搦めにされそうになる。 「ち、違う! そうじゃないっ!!」 「ぬ、うっ!?」 だが………セイバーによって操られていたその軌道がガクン、と揺れる! 今度は少女が驚きに眼を見張った。 留まる所を知らぬ凶刃の爆撃の合間を縫って飛ぶ二人。 その前方に、バリケートのように降り注ぐ宝具の束。 それを先読みしたなのはがセイバーの意思を撥ね付けて舵を奪い進行方向を鋭角に変えたのだ! 宝具の壁とほぼ直角に曲がる二人。 斜めに回転しながら方向を転換させる軌道は、もはやこの世に現存するどのような航空機を以ってしても不可能な領域だ。 「何のつもりだ――ナノハ」 セイバーの目の前にある瞳が危険な光を放つ。 力づくで組み伏せられてその体に跨られてしまった――格付けの済んだ両者である。 だが……だが―――彼女を知る者は識っている。 高町なのはを組み伏せられる者など次元中を探してもいるものかと。 いとも容易く、無遠慮に背中に鞍を置かれる者である筈が無いという事を! セイバーに対し、なのはが鋭い眼光を返す。 「―――我が手綱を拒むか……メイガス」 「拒まない……この選択は多分、間違ってない。」 額と額が擦れるほどの至近距離。 バチバチとぶつかる騎士と魔導士の戦意。 「驚いたよ……こんな手を隠していたなんて。 まさかお馬さんにさせられるとは夢にも思わなかった。」 「私のために命を捨てるのだろう? ならば死ぬ気で走れ―――我と共に!」 「今はそれしか道がないから馬でも鳥でも何でもやるよ。 でも全てを委ねるわけじゃない…… 教導隊の魔導師をそう簡単にねじ伏せられると思わないでね!」 「―――――ならば、見せてみよ……タカマチナノハ!!」 頭上から降り注ぐ爆撃を避けながら両者は睨み合い、意をぶつけ合う。 やがて、その口元に不敵な笑みを浮かべるセイバー。 「そう。今は共に抗う時だ。 我が剣を前に決して折れなかった者が、あの男相手には折れる――― そのような事、私は認めない……絶対に許さない!」 その言葉にハッ、とする魔導士。 セイバーの言い知れぬ怒りと、そしてやるせなさ。 その正体。抑えきれぬ憤慨を、事もあろうに自分が与えてしまったという事に―――彼女は今……気がついたのだ。 折れたつもりは無かった。 やるだけの事をやって、それでも至らないが故の最善の措置のつもりだった。 だが―――騎士にとってそれは最大級の侮辱なのだ。 否、自分とてそのはず。 パートナーがその身を犠牲にして自分だけを生かそうなどと言い出したら 自分は素直にそれに乗れるだろうか? 身も心も折れてズタボロになっている者を犠牲にして、命を拾う事に耐えられるだろうか? ―――――耐えられない。 そのパートナーを引っぱたいてしまうかも知れない。 しっかりしろ、と……寝惚けるな、と…… 騎士は今、あえて無体な仕打ちを彼女にする事で高町なのはを発奮させたのだ。 「ごめん……どうかしてた」 必死だった。 目の前の者を救おうと無我夢中だった。 だが、そんな善意が時に人を傷つけてしまう事もあるのだ。 パートナ-は共に生還するからこそパートナー。 最後まで共に最善を尽くすのが盟友だ。 それを信じられず、片方の思いが一方通行になった時―――二人の関係もまた費えるのである。 「謝る必要は無い。 貴方と私の勝負も、まだ終わっていないのだから。 私と貴方の意地。誇り。矜持。信念…… どちらが上か―――決着をつけましょう、ナノハ。」 「うん………望むところだよ!」 絆を完全に修復した両者が諸共に不敵な笑みを作る。 「ところでセイバーさん……私たちって」 「……む?」 「典型的なイタチごっこだよね……」 「……………」 思えばずっと同じ事で、自分たちはケンカしている気がする。 あくまで道理を通しただけ。 借りも貸しも作りたくはない。 どこまでも対等の関係でいたい。 後方のギルガメッシュにもそうだが、何より目の前のこの相手に負けたくない。 男の介入で決着つかずになってしまったが―――魔導士と騎士との戦いもまた終わってはいないのだ。 そうだ……その通りだ! 一方的に護ろうなどと、一方的に救おうなどと、何ておこがましい―― それは互いを、互いの力を甘く見る行為だ。 無敵を冠する両者だからこそ、片方に一方的に寄りかかるなど許されない。 ――― それは期せずして辿り着いた二人の真なる絆のカタチ ――― だって気づいてしまったのだから。 今ようやっと…… ――― ああ、この人は ――― ――― この者は ――― ――― 自分に似ているんだ ――― 、と。 ―――――― 「負けないよ……セイバーさん!」 「望むところです! ナノハ!」 鏡に映った写し身の如き魂を持つ彼女たち。 支えあいながら、時にはぶつかり合いながら―――二人は高みを目指す! 英雄王ギルガメッシュという、決して届かぬ筈の高みへと! 沸々とその力が沸いてくる!両の手を重ねる! なのはの人差し指とセイバーの中指が絡み そして魔導士の手が、その上から騎士の手がレイジングハートの柄を優しく握る。 セイバーの騎乗を許したなのはと、なのはにその身を委ねたセイバー。 レイジングハートを中心にして、左構えの魔導士と右構えの騎士。 まるで左右対称のシンメトリー。 身を寄せ合い、息が届くほどに密着して、決して互いを離さぬようその身をしっかりと抱き寄せながら――二人は飛ぶ! そのフォルム……白い法衣と青い外袴が風に任せて翻り、それはまるで両翼のように―― まさに空の王者、戦闘機の如き姿を空に映し出す! たどたどしかった軌道に躍動感が加わり、落ち込んでいた速度が、その推力を取り戻す。 二人のどこに……どこにそんな力が残っていたのだろうか? もはやゴミ掃除と何ら変わらぬ、その程度の価値しか見出していなかった英雄王の眼前に、今……一つの究極が誕生した! 「――――」 ヴィマーナ内―――― 台座にてギリ、と歯を軋ませる音が響く。 ゲートオブバビロンの掃射を、その手を緩めず 男は一切の容赦も無く二人に死の凶刃を降らせる。 それを―――奴らは悉く回避する! 青と桃色の入り混じった尾を引く一条の彗星。 「ナノハ―――貴方にはここで借りを返したい! その発言や行動に私の方が聊か、やきもきしっ放しでしたので!」 地を駆ける駿馬の如く、空を舞う鷲の如く――かつてない躍動を以ってソレらは飛翔する! 「我が手綱にて存分に振り回して差し上げますので その覚悟はいいですか? メイガス!」 「………セイバーさん。 ひょっとして、まだ怒ってる?」 「はい。とても」 「うふふ……恐いなぁ」 ニコリと笑うセイバーに、気まずそうに顔を背ける高町なのは。 だがそれも振りだけだ。 高揚する戦意、抑え切れないほどの荒ぶる気勢を暴発させないよう 互いを制御するために行うコミュニケーションに他ならない。 「じゃあ、その怒りを力に変えてアップトリム40!」 「上昇か……了解です!!」 事実、突っけんどんな言葉とは裏腹に、騎士の手綱によるなのはの身体にかかる負担は激減している。 荒々しくも細心の注意を払った騎乗――― こちらの性能を100%把握し、無理の無い稼動域にて最大の効果を叩き出す。 やはり彼女は最高の騎手だった。 まさに人馬一体と化した騎士王とエース。 総力を挙げたゲートオブバビロン――― その切っ先が地表を埋め尽くす前に、降り注ぐ宝具の雨に向かって真正面から飛び込む両者! 千を超える弾幕をまるで意に介さずに上昇する彗星。 鯉の滝登りのように、自らに打ち付ける瀑布を意にも介さない。 これだけの凶刃に向かっていっているというのに―――二人の身には刃がかすりもしない! 重ねた体がセイバーに教えてくれている! 空の飛び方を――次にどうすればよいのかを! 溶け合う心がなのはに示してくれている! 騎手の技量を――この者と飛べばどれほどの事が出来るのかを! 「見切りが甘い! セイバーさんなら、もっとシャープに突っ込める筈!」 「なるほど―――貴方の性能ならば、か! 流石のじゃじゃ馬ぶりです。ナノハ!」 「褒めてないよね……それ」 「最大級の賛辞ですが?」 まるで空というキャンパスに描かれた芸術のような見事なバレルロール! 迫る剣の群れを回転しながら、旋回三連続。 そして速度を全く落とさずに上昇! 有り得ない――捕らえられない―― これほどの刃の掃射が、王の財宝が、その宝具の顎が! 「ナノハ………往きますよ! 英雄王を―――討つ!!」 「ひひーん!」 「ぶっ!?」 途端、ガクンとバランスを崩す両者。 あまりの事に騎手がつんのめり、体勢を維持し損なう。 その背中に、顔面スレスレに………王の宝具が通り過ぎる。 「………………」 危ないところだった―――― 「今のは何だメイガス…? ふざけているのですか…?」 「ごめん、忘れて……」 「貴方がそういう茶目っ気を発揮する人間だとは思いませんでした……」 「うう……許して…」 「体力、気力共に限界と見受けましたが―― なるほどあれは芝居でしたか。案外に余裕があるものだ」 「ち、違うの…本当に」 顔を真っ赤にして否定する魔導士だ。 出来心とはいえ、滑りまくった感がありあり。 恥ずかしくて死にそうな高町なのはである。 「馬になるなんて初めての体験で…… その、何か、楽しくなっちゃって…」 …………………… セイバーはもはや何も言わない。 複雑な笑みを浮かべるだけだ。 余裕など無い筈だ。 今も敵の攻撃を容易く裁いているわけではない。 一秒後には直撃を食らい、散華している確率の方が遥かに高いのは変わらず。 だのに二人は今――全く死ぬ気がしない。 これ程の刃の雨を掻い潜っていながらそれに当たる気がしない。 「――――目障りだ!!」 英雄王の苛立ちはもはや頂点に達する。 その怒りが、まるで大気をぐにゃりと歪めてしまう程に。 だが、その怒りを以ってしても今の二人を阻む事は出来ない。 そうだ―――楽しい! 戦に愉悦を感じる二人ではないが、この相棒と戦うのは楽しかった。本当に楽しかった。 期せずして出会った戦闘の天才同士。 その二人の感性が織り成す無限の可能性。次から次へと沸いてくる戦術。 相手がどれだけ強くても、どれほどに死に直面しても、それに拮する手段が次々と沸いて出てくる。 ―――ベストパートナー 高町なのはもセイバーも、各々既にそう呼べる伴侶というべき人がいる。 誰よりも何よりも心を通わせ、その生涯を共に生きる人がいる。 その者達の名誉にかけて―――今の相手を安易に「ベスト」と断ずる事は決してしない。 「―――風よ……今一度」 それでも―――よかったと思う。 この騎士と、この魔導士と轡を並べて戦う事が出来てよかった、と。 出会えてよかった、と……二人はそう思わずにはいられない! 「爆ぜよッッッッ!!!!!!!!!」 セイバーの咆哮一閃、再び紡ぐは風の鉄槌! 杖から生成された桃色の翼に若草色の風が纏われる! その腰に構えた聖剣に集まる暴風の力もまた魔導士と同じ――騎士に残された最後の力であった。 だが躊躇いは無い! マスターの探索。聖杯戦争の勝利。 いずれも譲れない事象なれど 今はこの盟友に報いるため、彼女と共に戦った末に逝き付いた先があの世だった、などという結果にだけはしない! その想いが――願いが――この彗星に更なる推力を与える! この日、無限の欲望が生み出した異空間にてあらゆる飛行物体を凌駕するモノが現れる。 高町なのはという翼を駆る騎士の王。 それは竜を凌ぎ、天馬を超え、あらゆるモノを上回る強大さで空を支配する。 高出力の戦闘機のフルブーストに高性能AI。 そして風のロケットエンジンを搭載した桃色と薄緑の炎を纏った神域の空戦魔導士&騎士。 それが慣性をまるで無視した軌道にて、全ての宝具の嵐をかいくぐり――――抜けた! まるで天を貫く竜が如く、その身を躍らせた彼女達。 そしてついに、ついに――― 追いすがるヴィマーナから逆に、上方――― 空戦におけるウィニングポジションを取ったのだ!! 「我が目障りだと言っているのだッ! 疾く消え去るのが礼儀であろうがッッ!!」 男の怒号一閃! 全ての魔矢がかぶりを振って上方に発射口を向ける! だが、遅い! もはやソレを阻めるものは何も無い!! 敵を見事撃退した余勢で、完全な勝利を求め 敵を深追いし過ぎた挙句、返す刀であっさりと討ち取られる それは戦において一番気をつけないといけない事であり、初歩だ あれほどの猛威を振るった最強の英霊でさえ、こんな基本的なミスで打ち滅ぼされる。 それが―――戦いの怖さ セイバーの瞳が獲物を狩る時の危険な光を灯す。 なのはの青白く燃える闘気が場に翻る。 (今度こそ………今度こそ!!!) そうだ。 何度跳ね返されても、何度阻まれても決して諦めず そうやって希望を――勝利をつかんで来たのだ! 「絶対に通すッ!! いくよ! レイジングハートッッ!!!!!」 Yes my master!!!!!! I send victory to you!!! もはや男の苦し紛れのように投じたいくつかの宝具。 それを―――二人は空中で分かたれるように左右に離れて回避! そのまま各々が王の飛空挺に向かって急降下する!! なのはとて、セイバーとて、これで自分たちの方が強かったなどと間違っても思わないだろう 二人掛かりで全く歯が立たず、耐えて偲んで逃げて―― その末に偶然落ちてきた勝利を拾ったに過ぎないのだから 稲妻のように降下する騎士王セイバーとエースオブエース高町なのは! 「だああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁああああああああああッッッッ!!!!!!!!!」 「やああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁああああああああああッッッッ!!!!!!!!!」 裂帛の気合がシンクロする! 左右に分け放たれた両者が、目にも止まらぬ速さで降下し標準をつける! それとは即ち―――飛空挺ヴィマーナの両翼! 「ぬう、う――――貴様、らァッッ!!」 虚空からエアを抜き放つ英雄王。 再び彼女達を飲み込もうと、その円柱状の剣が回転を始めるも―― ――― 時既に遅し ――― 空を両断する閃光が2陣。 それがヴィマーナを宙に浮かせている羽を通り過ぎる! 「く、お――!?」 途端―――その失墜に大きくバランスを崩す英雄王。 通り過ぎた紫電、そのあまりの速さに一呼吸遅れて 右の翼がまるでナイフで切られたバターのように本体から斬り落とされ 左の翼の中央に大きな穴が穿たれる! それでも彼女らの勝因を、男の敗因を挙げるとするならば―― 彼女たちは失わなかった どれほど絶望的な状況に晒されても、どれほど痛めつけられ、その身を砕かれようと 決して自分を失わなかった 両翼を失った英雄王の駆る古代の宇宙船がその推力を失い、墜落を始める! 二つに分かたれた流星。 高町なのはが落ちるセイバーを先回りして抱きとめ、空中で再びその身を一つにする! 対して男は―――その憤慨から、怒りから、自分を見失ってしまった 汚らわしい敵を一掃しようと、王という玉座を自ら立ち、敵と同じ戦場に立ってしまった 故に――敵の攻撃がその身に届いた もし彼が、強大な王なままであったなら 彼女たちの最後の攻撃でさえ、受け止め弾き返していただろう 「おおおお――――おおぉぉおおッッッ!!!???」 その巨大な飛空船がなすすべも無く落ち続け――― ―――――、、、、、、、 地を揺るがす巨大な轟音が……なのはとセイバーの耳を震わせた――― 地面を削りながら、えぐりながら、それは艦首をひしゃげさせ 機体を倒壊させ、その雄大な威容が見る影も無く潰れていく。 巨大な質量がその大地に及ぼす影響は計り知れない。 その地表を深く深く抉り取り、その地層の奥の奥まで犯す巨大な船。 そして――ほどなくして上がる火柱 目を覆う閃光。 鼓膜を破るほどの轟音と共に、古代の宇宙船たるヴィマーナ。 英雄王の駆る飛空挺は、天にも届く巨大な炎の中に――――――消えていった。 ―――――― 「…………やった…?」 「…………」 その様相を―――その威容を――― 自分達の為した事でありながら、信じられないといった体で見守る騎士と魔導士。 「勝った……?」 「…………」 うわ言のように繰り返すなのは。 その手が、その体が、彼女らしからぬ精神の高揚によって震えている。 セイバーも同様に暫くの間、その意思を言葉に出来ない。 「セイバ-さん……」 「…………ええ」 「……」 「恐らくは――」 その言葉を聴いた瞬間、その言葉を口にした瞬間 今度こそ――今度こそ! 終わったんだと…… 自分達は勝ったんだと…… その勝利の余韻にようやっと浸ってもいいんだという思いから、感極まる空と剣の英霊たち。 「全然、実感が無い……また生き返って来ないよね?」 「―――ええ」 「正直、何度もダメかと思った…」 「―――ええ」 「本当に勝ったんだよね。私達……」 「―――ええ」 疲労と消耗の極みにある肉体は何かの支えがなければ起立している事も難しく しっかりしなくてはという意思と反して……その体が騎士の少女にしなだれかかってしまう。 支えとなった少女も、その肩にかかる彼女の頭に手を添える。 「私達の……勝ちです――ナノハ。」 歓喜に抱き合う二人の英雄。 そして一言。力強い騎士王の声がなのはの耳にやさしく響く。 その勝ち鬨の言葉を以って――― この長かった戦いに……ようやく終止符が打たれる。 強大な敵を見事、撃墜した余韻にいつまでも浸っていたい衝動にかられる二人。 苦しかった。あまりにも苦しかった戦い。 空中だというのに、その場にへたり込んでしまいたい彼女達。 だが余韻に浸っている暇も、相手の安否を確認する余力もありはしない。 残った力を振り絞り、途絶えかけた意識と体に鞭打ちながら、彼女たちはその場を後にする。 「疲れちゃった、ね……」 「全くです」 もはやそれは彗星とは程遠い、傷だらけのツバメ達――― 折れかかった羽を気遣い合いながら―― 二人は、朝日昇る空の向こうへと―――― 消えていったのだった。 高町なのは&セイバーVSギルガメッシュ ギルガメッシュ撃墜 なのは&セイバーの勝利―――――??
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/141.html
ディバインシューター(練習用) 魔力を集め、弾丸として打ち出すのはミッドチルダ式戦闘魔導師の基本中の基本。 なのはのディバインシューターは、その基本魔法に「誘導制御」を付与した誘導弾であり、なのはにとってはかつてのPT事件を戦い抜くために多用した主力の魔法でもある。 現在、自動誘導の機能は「術者の制御範囲から出してしまわないようにする」程度に押さえてあり、 その分、術者の思念操作に敏感かつ正確に応える操作性能を高めた設定になっており、「アクセル」のコマンドで弾体を加速することも可能にしている。 呪文は「福音たる輝きこの手に来たれ。導きのもと鳴り響け」 ラウンドシールド 戦闘魔導師が多用する、魔法陣を直接「盾」として使用する防御魔法。 防御面が魔法陣の向いた一方向のみに集中する分、防御力は高く、特に炸裂・貫通等系の攻撃に対して優れた制止力を持つ。 なのはは生来の防御出力の高さに加え、補助系魔法を得意とする結界魔導師のユーノが直接の師であることも手伝って、防御系魔法の練度が高い。 この盾を、なのははレイジングハートの助けなしでも両手同時発動で使いこなすことができている。 バリアジャケット着装 ミッドチルダ式の戦闘用防護服「バリアジャケット」の瞬間着装。 魔力によって編み上げられた衣服自体のみならず、その周辺に生成される不可視の防御フィールドによって衝撃や温度変化・魔力攻撃から術者の身を守る。 ディバインシューター レイジングハートのサポートを得て、全力で扱えるようになっているディバインシューター。 詠唱が不要となり、弾体速度と威力が飛躍的に向上している他、バリア貫通の効果も持っているため、防御の上からでも相手の魔力を削る強力な攻撃魔法である。 なお、なのはの攻撃魔法は基本的に物理破壊を伴わない非殺傷性魔法であり、対象の魔力のダメージを与えることで行動不能、あるいは昏倒させることを目的としている。 フライアーフィン なのはの飛翔魔法。魔力リソースが少なく、制御ミスによる落下や激突の危険が少ないかわり、空中機動性はさほど高くない。 その分、瞬間加速性能と最大速度に優れる飛行性能は自分の距離で足を止めて攻撃することが多いなのはにとっては最適な飛翔魔法と言える。 フラッシュムーブ フライアーフィンの特殊運用。脚部翼状フィンへの魔力追加により、瞬間的に爆発的な加速を行う。直線、もしくはゆるいカーブの軌道でのダッシュが可能。 ディバインバスター シューティングモードから放つ、なのはの主砲にして、一撃必倒の砲撃魔法。高めた魔力を環状魔法陣で増大・加速、対象目がけて一気に打ち出す。 バリア貫通の効果が付与されており、防御の上からでも容赦なく魔力を削り取る威力を持つ。 プロテクション ラウンドシールドよりも防御範囲が広く、より汎用性の高い防御魔法。 なのははこの魔法をオートガードに設定しており、なのは本人が咄嗟に魔法を発動できない際などは、レイジングハートが自己の判断で発動することもある。 リアクターパージ なのはのバリアジャケットの最終防御機能。防御限界を超えるダメージを受けた場合、自ら爆散することで衝突のエネルギーを相殺し、反らすことができる。 破壊されたジャケットの修復は戦闘中には困難であるため、術者の身を守るための最後の手段と言える。 封鎖領域 「魔法の監獄」の意味を持つ、ベルカ式の結界魔法。「術者が選択した条件に見合う対象」のみを残して時空間を切り取る。 監獄の名が示す通り、「結界内に閉じこめた相手を脱出させないこと」を主な目的としている。そのため、外部からの侵入は比較的容易だが、中からの脱出は極めて困難。 テートリヒ・シュラーク ベルカの騎士にとって、「武器攻撃に自らの魔力を乗せ、威力を高めた攻撃を放つ」のは基本中の基本。 ヴィータのこの技も同様で、鉄槌のアームドデバイス・グラーフアイゼンに自らの魔力を乗せ、単純な打撃に爆発的な破壊力を持たせている。 防御の上からでも吹き飛ばすその威力によって、命中・防御にかかわらず対象を容赦なく破壊する。技名は「痛烈な一撃」の意。 パンツァーシルト ラウンドシールドと同系の、魔法陣による盾。防御面は一方向のみだが、主に魔力攻撃に対して高い防御力を持つ。 シュワルベフリーゲン グラーフアイゼン・ハンマーフォルムから放つヴィータの射撃魔法。 ベルカ式魔法は、接触した物体に魔力を付与することに特化した魔法技術体系であり、魔力を体や物体から離したり、単独で飛ばしたりすることをほとんど想定していない。 そのため、遠隔攻撃は必然的に投擲や有線武器、実体を伴う射撃武器の延長上にあるものとなる。 「飛翔する燕」の名を持つこの攻撃魔法は、鉄球に飛翔・誘導制御・バリア貫通・着弾時炸裂といった効果を与え、ハンマーヘッドよって打ち出すことで成立する。 ラケーテンハンマー グラーフアイゼン・ラケーテンフォルムから放つヴィータの打撃攻撃。 魔力カートリッジを使用し、それを燃料として後部噴射口から推進剤を噴射、回転の遠心力も合わせて打撃力を高める。 ヴィータ本人の飛翔加速にも使用することができ、鋭いダッシュが可能となる。さらに鋭い先端部は対象の防御に食い込み、受け流すことを困難にしている。
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/929.html
魔法少女リリカルなのは TRANSFORMERS クロス元:トランスフォーマー 最終更新:15/09/06 ●第一部――――●第二部 第一話―――――第一話 第二話―――――第二話 第三話―――――第三話 第四話 第五話 第六話 第七話 第八話 第九話 第十話 第十一話 第十二話 第十三話 第十四話 第十五話 第十六話 第十七話 第十八話 第十九話 第二十話 第二十一話 第二十二話 第二十三話 第二十四話 第二十五話 第二十六話 第二十七話 第二十八話 第二十九話 第三十話 第三十一話 第三十二話 拍手感想レス :蠍型の機械はメカザラックじゃなくてスコルポノックというらしいですよ。 :映画版TF大好きなのでこのクロスは嬉しいですね。次の更新を楽しみにしています。映画ではバリケードが撃破されるシーンがなかったので、その辺を書いて欲しいです。 :デストロン人数増量?これはサイバトロン側の登場が待ち遠しいです!ヴォリケンリッターとマイスター、アイアンハイド、ラチェットの共闘なんてのもいいかもw(立ち位置似てるから) :映画では秒殺されたボーンクラッシャーの大暴れを希望! :久々の更新感激しました!次はいよいよメガザラック戦ということで楽しみにしています(アイツは映画じゃ初戦の後どうなったか曖昧でしたから最終決戦できっちりケリを着けてほしいですね)。 応援・感想のコメントなどはこちらへどうぞ コメントページ TOPページへ このページの先頭へ
https://w.atwiki.jp/lem_nameless/pages/120.html
...... ... .. ..... .. ... .... ... .. ,.、 .. ... ........ .... / _ \..... ... .. .. . ⌒ーl 八 jー'⌒ .... ... ... ..... \. _FL!「!LFl. / .... . ... ,. -‐''"¨´ ̄ ̄ヒrr┬r‐ri、 、 ..... .. ... . . / __ _l ! ̄_ ̄ !′ !_ .. .... . よろしい…… . . / / l_lヽ二.ノ } \ .... . . i / `ーi´ ノ _____j ... 死ぬ前に神の力 .. | `¨>=、_ {. /i_/ \ .. . '、 / } \_____l / ハ、 ヽ、 ... とくと目に焼き付けておけ!! ヽ、 ! __ jjヽ ヽノ,イL、 \ ,.イ! .. \__У、 }_ノノ゙´`ー―‐'´ !__辷r、ヽ_//\ ...... / __ { / iヽ \ヽ`L_ __ヽ、 .. .. { ri´! ヽ⊃ ! ヽ }_} l_| 〉ノ .. `' ヽj ヽ、 | } } `´ . ...... .. | \ ,.イ^! レ' ... .... .... .. l /`ヽ.______,/ l ! .. .. .... ... .... .. l ! | | l l .. ... ... ..... l ! j ! l ! .. .. ...... L._| | | ___j´ .. .. .. .. L_ ! _.ノ´ ...... .. ..... ...  ̄| r‐く | .... ..... ...... .. .. ヽ{. }' ........ ..... .......... ヽ.ノ .............. 旧ページ 必要最低ステ GODを攻略するにあたって、必要なステを考える。 最初のGODである、フィグルの森Gの必要ステータスは以下のとおり。 攻撃 449 防御 396 命中 211(229) 回避 257(275) 幸運 207 ()内は幸運137未満の場合。 Lv70前提・都市バフ・スキル発動時の補正は含まない。 攻撃力は、一つの目安なので、スキル発動して449以上だと特に問題はない。 これぐらいあればストレスなく狩れると思う。 ウォルブズの兵種は軽装のため、重装ストライカーなら大体449の9割程度、遠隔ストライカーなら1割増しぐらいの攻撃力が必要になる。 防御力は最低ダメージに抑えるにはこれだけ必要ということ。これも兵種によって変動する。 命中は100%になる必要命中値。幸運補正がかかるため、幸運が137から離れるほど、命中は229に近い値が必要になる。 回避は敵からの攻撃が15%になる必要回避値。これも幸運補正がかかるため、幸運が137から離れるほど、回避は275に近い値が必要になる。 幸運は207あると、幸運補正が最大限に受けられるため、上記必要命中回避値で良くなる。逆に137未満だと必要値が多くなる。 207以上あっても幸運補正は伸びないため、気をつけたい。 フィグルの森でこの程度なので、他のGODであるがどれだけキツイかがよくわかると思う。 ちなみにデガート遺跡の必要回避はもう少し低い(敵の命中がフィグルの森より低いため)。 必要ステータスを算出するのに、解析情報を使用しているため、本当にこの値が正しいかは運営にしかわからないので、 一つの目安として考えてほしい。