約 5,735 件
https://w.atwiki.jp/welovenorio/pages/95.html
新美術館【R-18】へ移転しました 現在、paint_bbsプラグインはご利用いただけません。
https://w.atwiki.jp/nakajima_miyuki/pages/57.html
1 2 3 4 5 中島みゆき検定 -1- + 中島みゆきのアルバム検定パート1 中島みゆきのアルバム検定パート1 powered by け んてーごっこ + 中島みゆきのアルバム検定パート2 中島みゆきのアルバム検定パート2 powered by け んてーごっこ + 中島みゆきの楽曲検定パート1 中島みゆきの楽曲検定パート1 powered by け んてーごっこ + 中島みゆきの楽曲検定パート2 中島みゆきの楽曲検定パート2 powered by け んてーごっこ + 中島みゆきの楽曲検定パート3 中島みゆきの楽曲検定パート3 powered by け んてーごっこ ※だれでも問題をつくれます! こちらのサイト(けんてーごっこ)
https://w.atwiki.jp/osimakai/pages/304.html
ウミコチョウsp-1 GASTROPTERIDA spp. 秋の浜 -1m
https://w.atwiki.jp/sinzyanru/pages/301.html
807 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 03 10 31.61 ID 8iqJxYAO 【組織(-1)と一緒♪】 秘密基地 ロビー 赤「…お前ら…決着の時だ!今日こそぶちのめしてやるから覚悟しやがれ!」 雑魚1「お?なんて言ってるんだぜ?この赤いのは?」 雑魚2「さぁな?馬鹿の言うことはわからないぜ」 怪人「…もはやなにも語るまい…いざっ…」 全員「「「「勝負ッ!」」」」 じゃらじゃら… 赤「しかしジャン卓なんてよく買ったな…」 雑魚1「まぁ、三人でお金出し合って買ったんだぜ」コトッ… 怪人「ポン」 雑魚2「またぁ?」 怪人「ふはは…勝てばよいのだ」 赤「でも三人じゃ出来ないだろ?麻雀」 コトッ… 雑魚1「女幹部さんが出来るんだぜ。しかも…」コトッ… 雑魚2「半端じゃなく強いんだぜ…」コトッ… 怪人「…うむ」コトッ… 赤「そんなに?女幹部さんが?信じられないな…」コトッ… 雑魚2「お、ロン!」パタッ! 赤「え!?マジかよ…」 雑魚2「ぶぁかめ!不用意に稗を捨てるからだぜ!」 808 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 03 12 03.88 ID 8iqJxYAO 【組織(-1)と一緒♪】② 怪人「役は?」 雑魚2「タンヤオのみだぜ?」 雑魚1「オイィ!?そんな安い手で俺の親を飛ばすんじゃないぜ、兄弟!」 雑魚2「おうよ!勝負の世界は厳しいぜ!」 赤「仲間割れかよ…シメたな…」 怪人「だな…」 雑魚1「あの時の誓いは嘘だったんだぜ!?兄弟ー!?」 雑魚2「なんのことだぜー?さっぱりわからないぜー」 雑魚1「…そ、そんな…」 雑魚2「もう一度言うぜ…勝負の世界は厳しいんだぜ?」 雑魚1「ぐっ…兄弟…いや、雑魚2!こっからは手加減なしだぜ!オラァ!」 雑魚2「ふっ…それでこそ我がライバルだぜ!勝負だぜ!」 雑魚1&2「「おぉおぁぁあ!!」」 じゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃら! 赤「おい、稗が落ちてるって!」 怪人「熱くなったらとまらんからなぁ…こいつらは。ハッハッハ」 赤「お前も拾えっての!」 雑魚1&2「「ぬぁあああ!!」」 じゃらじゃらじゃらじゃら… で… 雑魚2「あ…トビだぜ…」 雑魚1「ははは!ザマァないんだぜ!」 雑魚2「五千点しかのこってないくせに…」 雑魚1「勝ちは勝ちなんだぜー?」 雑魚2「くっ…ちくしょー!」ダダダ… 809 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 03 13 10.63 ID 8iqJxYAO 【組織(-1)と一緒♪】③ 赤「怪人はいくつ?」 怪人「6万に少し足りないくらいだな…」 赤「じゃ、怪人がトップだな」 怪人「ふはは!これが私の力だ!」 雑魚1「たまたまぜ、たまたま」 赤「だよなー」 怪人「な!?前も私が勝っただろーが!」 雑魚1「知らないぜ?なぁ?」 赤「あぁ、なんのことやらな?」 怪人「くっ…よかろう…次で思い知らせてくれるわ!」 赤「あ、でも雑魚2が…」 雑魚1「きっと逃げたんだぜ。どうする?」 怪人「…では私の勝ちということで…」 バン! 雑魚2「おまえら!覚悟するんだぜ!」 赤「お?戻ってきたな…」 雑魚1「またカモにしてやる…ぜ?」 女幹部「あの…これは?」 雑魚2「敵を…敵をとってください!女幹部さん!」 雑魚1「あ!助っ人とは卑怯だぜ!」 雑魚2「女幹部さぁん!お願いしますぅ!」 女幹部「あ、あの…」 810 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 03 14 21.71 ID 8iqJxYAO 【組織(-1)と一緒♪】④ 赤「おい、女幹部さんが迷惑してるだろ」 怪人「うむ。見苦しいぞ」 雑魚2「見苦しいのは怪人の胸毛だぜ!」 雑魚1「すね毛も実に見苦しいぜ!」 雑魚2「間違いないぜ!」 怪人「ほっとけ!お前ら喧嘩してたんじゃないのか!?」 雑魚1「ぜ?」 雑魚2「おいおい…あんなの喧嘩の内にはいらないぜ?」 怪人「………」 赤「あれで喧嘩じゃないのか…あ!女幹部さんも麻雀やりますか?」 女幹部「え?…その…いいんですか?」 赤「はい、みんなでワイワイやった方が楽しいですからね」 女幹部「なら…おじゃましますね」ニコッ 雑魚1「兄弟!」 雑魚2「おうよ!」 雑魚1&2「「本気モード!!」」 怪人「…なにが?」 雑魚1「我ら二人!」 雑魚2「一心同体!」 ザコーズ「「さぁ!かかって来るんだぜ!」」 赤「要は二人で相談しながらってこと?」 ザコーズ「「イエス!!」」 怪人「意味あるのか?」 女幹部「…ふふっ」 じゃらじゃら… 811 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 03 15 36.73 ID 8iqJxYAO 【組織(-1)と一緒♪】⑤ 女幹部「あ、ツモです。タンヤオ、平和、三色同順、ドラ一で跳満です…」 雑魚1「…残り三千点を切ったぜ…」 怪人「くっ…追い付けぬぅ…!」 赤「跳満か…あ、親でしたっけ?」 女幹部「は、はい…一応…」 雑魚2「あ!?」 赤「きっついな…半荘もつか?」 雑魚1「五千点くらい援助してほしいぜ…」 赤「誰がやるか!そんな余裕もない!」 雑魚2「怪人…!」 怪人「お、おい!だ、抱き着くな!」 雑魚1「くっ…冷たいぜ!」ダダダ… 雑魚2「だが…まだ負けたわけではないぜ!」ダダダ… 赤「おい、何処に…」 怪人「しかしお強い…」 女幹部「そんなことは…」 赤「いや、かなり強いですよ?」 女幹部「そ、そうですか?ふふっ…」ニコー バン! 雑魚1「待たせたぜ!」 雑魚2「さぁ…ここからが本番だぜ!」 首領「ぜー」 812 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 03 16 48.47 ID 8iqJxYAO 【組織(-1)と一緒♪】⑥ 怪人「しゅ、首領!?お前ら何を考えてるのだ!!」 女幹部「い、いけませんよ!こんな時間に…」 首領「えー?ダメなのー?…あかさん」 赤「え?俺?えーと…ほら、夜遅いし…」 首領「………」 赤「…あ、あんまりこういう遊びは…」 首領「あかさん…」 赤「す、少しならいいかな?」 首領「わーい!」 怪人「赤ー!おぬし、なんつーことを…!」 赤「だ、だって…」 女幹部「赤さん!…あ、いけません!首領!」 首領「ぜったいかつのー♪」じゃらじゃら… 雑魚1「応援してますぜ!」 雑魚2「後ろから!」 怪人「首領!そんなお年でこんな遊びを…!」 女幹部「首領、いけません!早くベッドに…」 赤「だって…だってあんな目で見られたら…」 じゃらじゃら… 813 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2009/10/05(月) 03 19 58.05 ID 8iqJxYAO 【組織(-1)と一緒♪】⑦ 組織一般病棟 503号室 男幹部「今頃何してるのでしょうね…皆さん…」 プス… 看護婦「あ、ごめんなさい!また…」 男幹部「3回目ですよ?注射外すの」 看護婦「すみません…まだ慣れなくて…あ、ごめんなさい!また…」プス… 男幹部「あぁ…!赤さん!私をここから救い出して下さい…!」ぶわっ! プス… 赤「ロン!」 怪人「ぐぁ!しまっ…!」 首領「あ、しゅりょうもロンなのー」 怪人「え?首領も!?」 雑魚1「ダブロンか…怪人死んだぜ」 雑魚2「ぜ」 女幹部「首領…もうお休みに…」 首領「やーなのー♪」 じゃらじゃら…
https://w.atwiki.jp/mochitukirank/pages/17.html
MK餅つき機RM-10SN 1升タイプ 暖房節約あると便利グッズ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2598.html
人と神姫と混沌としたナニカ@Act.Ⅰ-1 「えーと・・・・・・・・・あぁ・・・混んでるし・・・」 「・・・・・・・・・です・・・」 ある日、とある市内の神姫センター。ここに、高校生ぐらいのとある新米マスターとそのパートナーである神姫の二人組が居た。 「・・・・・・・・・止める・・・・・・です・・・?」 「・・・いや、やるさ。せっかく来たんだし、それにそのために準備してきたんだからさ」 「・・・・・・はい・・・です」 そのままあっちにうろうろこっちにうろうろする二人組。 「・・・・・・ホントに色んな人が居るな・・・」 肩に神姫を乗せて話してる人。 なにかマントを羽織ってる男。 他の神姫とじゃれあってる神姫。 何人かで固まってる神姫マスターと思しきグループ。 ゴスロリ少女。 絶叫してる高校生らしき男性。 スーツ姿の初老の男性 エトセトラetc・・・ 「・・・・・・・・・うん、なかなか濃いな・・・」 「・・・・・・?」 「ん?・・・・・・あぁ、こういう所はちょっと慣れて無くて、な」 「・・・なるほど、です・・・・・・」 「うん・・・・・・・・・お、空いた、かな」 そのまま、見つけた所にそろりそろりと近付いていく二人組。 向かう先には・・・・・・「バトルロンド」の筐体。 「・・・・・・えーと」 「さっき・・・・・・作ったカードを認証・・・するです・・・」 「あ、こうか」 とんっと、マスターの頭から筐体に降り立つ「薄紫の髪と紫水晶の瞳をもった白亜色の神姫」。 そのままその神姫の指示に従ってあれこれ操作するマスター。 ―――マスターの名前は、樫坂 脩。春休み真っ最中の高校2年生。 ―――神姫の名前は、クーティラ。銘打たれた型番は「テンタクルス型・マリーセレス」。 ・・・・・・・・・色々、始まります。 ※※ ※※ Ⅰー1 ※※※※ 「えーと・・・・・・・・・これをこうして・・・」 「・・・・・・・・・マスター・・・相手が・・・きた・・・」 「ん?・・・うわマジか・・・・・・」 筐体を操作する事数分、画面端でピコピコ対戦相手が見つかったメッセージが光っている。 「・・・・・・やる・・・です?」 「まぁ、な。ここまで来たらやらないって選択肢は無いだろうし」 「・・・わかった・・・・・・です・・・」 「ん・・・・・・まぁ、頑張るか。な?」 「あ・・・・・・・・・はい・・・」 ぽんぽんと頭を撫でてやると、クー―――長いから略している―――はてくてくと筐体に設置してあるカプセル状の物体の中に入っていった。 それにしても・・・・・・・・・ 「アレからもう四日か・・・」 ―――出会いは、四日前。 その時の脩は、とある神姫を探していた。 なぜ、その神姫を探していたのかは自分でもよく分かっていなかったが、なんとなくこの神姫があってそうだなといった感じだった。 という訳で、買いに行ったは良いがなんと公式ショップは運輸関係の事情で入荷待ち状態。公式ショップ以外の、量販店の取扱店も見に行くがそういう場所は元々の在庫が少ないのかなんなのか売り切れ。 なんとなく・・・だったものの、ここまで来ると意地でも欲しくなるのが人の何とやらで小さい取扱店も探してみるけどそもそも店舗が見つからず成果なし。 がっくりしながら帰ろうか思った矢先に、神姫取り扱いの看板が立っている玩具店を見つけ、望みを賭けて店内へ。これがプロローグの始まりである。 そして、望みが消えたと思った矢先に出てきたのが・・・・・・・・・今のクーティラであった。 最初、その神姫が自分の求めていた神姫だと、マリーセレスだと認識出来なかった。 白、白、白。 パッケージから見える範囲のパーツ、素体、そのほとんど全てが白。唯一見える髪だけは、白が混ざった淡い紫だった。 だから、本当に、その神姫がそうだと気付くのに少し掛かった。 そこから先は・・・・・・流れるように過ぎていった。 定価2割増しを即購入して、気付いた時には自宅。いくらかの不安と緊張でCSCをはめ込んでいき、起動手順を進めていった。 そして・・・・・・・・・・・・・・・見えたのは紫水晶の瞳。 ―――回想終了 「はっ・・・いけないいけない・・・えーと、武装は・・・」 片手剣=サーペンタイン、ハンドガン=イング・ベイカー、パンファーファウスト=ハフ・グーファ。 斧=エルヴァル・アクスは、ハフ・グーファとイング・ベイカーの組み合わせだからいいとして、後は・・・・・・・・・「アレ」か。 「と、えーと・・・・・・決定と」 多少時間がかかってしまったが、こっちは慣れてないので仕方ない・・・・・・うん。 ・・・ん? 「対戦相手の基本情報・・・?」 画面の一部にそんな項目があったので押してみる。 「・・・・・・・・・ふむ・・・」 すると、出てくるのは相手の神姫・マスターの名前、神姫の種類、戦績、等々。 武装とかそういうのは出てないけど、まぁ参考にはなる・・・か? んで、気になる神姫の種類はと・・・ 「えーと・・・・・・アルト・・・アイネス・・・・・・あー、確か、そうそう、近接戦が得意な神姫・・・だったはず」 色々調べたからなんとか覚えてた。 「マスター・・・」 「ん?あぁ、フィールドか」 「はい・・・・・・最初は、どうする・・・です?」 クーに呼ばれて画面を見てみると、フィールドに立っているクーの姿が見えた。 ・・・武装状態でもやっぱり白い。所々薄い紫や薄いピンクのラインが入ってる所以外は、触手状と言われてるスカートも後頭部に着けてるメット?も右手に持っているイング・ベイカーも真っ白。 唯一アレだけは白と青だけど、転送分に置いてある。 まぁ置いといて。 「うーん・・・・・・・・・相手、見えるか?」 「はい・・・正面・・・です・・・・・・多分、純正装備・・・です」 純正・・・あーと・・・確か大剣・ジークムントと両手剣・ロッターシュテルンの二つ、だったかな純正の武器だと。あとは盾・ヘルヴォルに、高パワーの副腕付きリアパーツ・・・とかだったはず。きっと、多分。 画面を見てみると、相手のアイネスの姿が見えた・・・・・・うん、記憶通り、かな。副腕に大剣と楯で本体に両手剣か。あとはアーマーも一式っぽい。 んで、フィールドは・・・コロシアム?・・・・・・えーと、「障害となる物が少なく、単純な実力・技術が試されるステージ」・・・・・・これ、運悪いんじゃないだろうか・・・ 「まぁ、うん。そーだな・・・とりあえず相手の様子を知りたいし、最初は守りかな」 「はい・・・」 「・・・頑張るか。な?」 「はい・・・・・・・・・はじまる、です」 [3...] [2...] [1...] 初陣・・・勝たせてやりたいしなぁ・・・ビギナーズラックよろしく、やってみるか。 「クー、とりあえず――――」 [Ready...Fight!] ▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△ 「てぇーい!」 「っ・・・・・・」 開幕、踏み込み、大剣の剣閃、ステップ。 「せぇーい!」 再び踏み込み、迫る一撃、ひらりと避ける。 「えぇーい!」 三度の踏み込み、三度の跳躍。 「えー・・・ベイカーで牽制しながら距離とってくれ」 「・・・はい」 右手に持っている、斧の刃を兼ね備えたハンドガン=イング・ベイカーをアイネスに撃ち込み牽制する。 「これくらい、痛くも何ともないよ!」 「・・・っ・・・・・・強引、です・・・」 が、それにも関らず全く変わらない勢いで斬り込んできたアイネスの一撃をステップで避ける。 アーマーが堅い・・・・・・です・・・ さらにひらり、ひらりと避けながらベイカーを放ちながら距離をとろうと動くが、アーマーと盾に自信があるのか構わずに攻め立ててくる。 ―――ひらり、ひらり、ひらり ―――白が舞い、白が踊り、黒が跳ね、黒が飛ぶ ―――風に乗る花弁のように、空に浮かぶ雪のように ―――海に浮かぶ葉のように、炎に揺らぐ影のように ―――・・・ 「このぉー!」 「しつこい・・・・・・です・・・」 追い縋るアイネスを避け、ベイカーを放ち、アーマーに防がれ、何度目かの再び踏み込み。 ・・・・・・・・・残弾も・・・少なくなってきました、か・・・リロードする暇は・・・・・・なさそうです・・・ 「・・・・・・マスター・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・マスター?」 「ん・・・・・・あぁ、悪い、ちょっとぼっとしてた」 「はい・・・・・・そろそろ・・・弾がなくなる・・・です」 一際大きく跳び、次いでベイカーを撃ちこみながら多少の距離を確保する。 少しの、膠着状態。 「あー、そうか・・・もっと威力が高いのじゃないとキツイかやっぱ・・・」 「・・・戦乙女型の装備は・・・・・・アーマー堅くて・・・パワーも・・・・・・ある、です・・・」 「うーん、本体に当てれれば関係無いんだろうけど、簡単じゃないだろうし・・・・・・ここはグーファを当てるしかないかな」 パンツァーファウスト=ハフ・グーファ・・・・・・たしかに・・・これなら、ダメージは高そう・・・・・・です・・・ 「でも・・・・・・そう簡単には・・・当てられない・・・・・・です・・・」 「だよなぁ・・・あの大剣、受け止めれそうか?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・両手、なら・・・・・・なんとか、できるかも・・・です」 「ん、それじゃあベイカー撃ち切ったらサーペンタインに切り替えるか」 「はい・・・です・・・」 その時、スッとアイネスが動くのが見えた。 ・・・・・・きます・・・か。 「・・・てぇーい!」 「っ!」 ダンっと、今まで以上に強い踏み込みをして、副腕に持つ大剣ジークムントで斬りかかってくるのを身を翻して避け、振り返りざまにベイカーを放つ。 が、それを避けて更に斬りかかるアイネスの両手剣ロッターシュテルンをベイカーのエッジ部分でなんとか弾きバックステップ。さらに、追撃されないようにベイカーを撃ちこむ。 カチッ 「っ、弾切れ・・・・・・」 「隙だらけだよ!」 好機と見て飛び込んでくるアイネスの大剣の一撃を、とっさにベイカーを捨ててサイドスカート上部にマウントしてあったサーペンタインを逆手で引き抜き受け止める。 が、まだ、本体の両手剣が構えられ― 「グーファだ!」 「!!」 ―たのとマスターの指示で両サイドスカート先端部にマウントしてあるハフ・グーファを向け― 「読めてるよ!」 「あ・・・・・・!?」 ―アイネスのスカートが変形し、ハフ・グーファが弾かれたのは、ほぼ同時。 「テンタクルス型とは何回か戦った事があるからね、そういうのはお見通しだよっ!」 「・・・・・・・・・・・・・・・っぅ」 ギリギリと、押し込まれる。 力押しは苦手・・・です・・・・・・それに、パワーの高いアイネスなら、なおさら・・・です・・・ それに・・・ 「これで、チェックメイトだよ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 本体の両手剣を、ぴったりと突き付けられてしまう。 これは・・・・・・仕方ない、ですか・・・ 「あー・・・クー、ごめん。もっとうまく出来れば良かったんだが・・・・・・なかなか、なぁ・・・」 マスターの申し訳なさそうな声が聞こえてきます・・・ 「いえ・・・初めて、ですから・・・・・・・・・それに・・・ まだ・・・・・・負けて、ません・・・」 「・・・まぁな」 「え・・・・・・うわっ!?」 ―――途端「スカートの合間から撃ち込まれた弾丸」によって突き付けられた両手剣が弾かれる。 「なっ!?」 ―――至近距離からさらに複数の弾丸が撃ち込まれ、それを受けたアイネスは跳び退る。 「うぅ・・・・・・なんなのさいった・・・い・・・」 「・・・・・・・・・さすがに・・・いまのでは、無理です・・・か・・・・・・」 ―――そして、スカートの内側から現れる「青と白の浮遊する物体」。 その数―――八基。 「・・・・・・ビットって・・・えーー・・・」 「・・・・・・・・・マスター」 「ん、さいしょから使っておけばとか思ったけど、結果オーライだ。とりあえず、あとは出し惜しみ無しでいくぞ」 「・・・はい・・・・・・ショゴット・・・出番、です・・・」 八基のビット―――ショゴットと名のつけられた、人型の、どことなくメイド服の人形のような形をしたそれらを全て、アイネスに向ける。 それらの手にあたる部分には、ナイフの付いた銃剣。 「そうだな・・・とにかく、手数はこっちが上だから包囲しながら物量で攻め続けるのみか・・・・・・クー、いけるか?」 「・・・問題、無いです・・・・・・行きます・・・!」 [オーダー...螺旋の檻] 両手のサーペンタインを順手に持ちかえながら、周りに待機させていたショゴット全てをアイネスに向ける。 「うぅっ、あーもぅ!」 それと同時に、相手のアイネスが大剣と両手剣を繋ぎ合わせてダブルブレードとした武器、ジークフリードにして突撃してくる。 振るわれ剣戟をひらりと避け、間髪いれずに四基のショゴットによる射撃。 それをアーマー、副腕、盾で受けながらも構わず突撃してくるアイネスに今度は残りのショゴット自体を突進させ、自らも斬りかかる。 風を切る音と共になぎ払われ弾かれたショゴット、なぎ払った際に出来た隙を狙って斬り込むが受け止められるが競り合わずにすぐに下がり、すかさずまた二基ずつで二方向からのショゴットによる射撃。 それを振り切る様にダンっと踏み込んで斬りかかって来た一撃を二つの剣で受け止め、八基すべてによる射撃をするがすぐに離れられる。 そしてまた、ステップを刻みながら細かな指示を出して、剣閃を避ける。 ―――ひらり、はらり、ふわりと ―――刻むように、踊る様に、舞いあがる様に ―――白が、黒と、白と、黒が ―――青が軌跡を引き、赤が空気を切り ―――舞踏を、刻む 「ぅ・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!、右足だクー!」 「はい・・・!」 即、ショゴットに指示を飛ばし右足―――ショゴットによるダメージで小さくスパークを発している部分に集中砲火を開始する。 だが、それでもなお左足を軸に大きく動き避けてくる。 が。 「にがさない・・・・・・です」 「くぅ、この・・・・・・・・・・・・あっ!?」 そこを自ら両手のサーペンタインで斬り掛かり、抑え込み、そして 「・・・・・・チェックメイト・・・・・・です・・・片足だけでは・・・パワーも活かしきれない、です・・・」 「・・・・・・・・・・・・そんな・・・・・・」 八基全てのショゴットで取り囲み、先ほどの言葉をそのまま返す。 つづいて、相手側からのリタイアの宣告が表示された。 つづく......?
https://w.atwiki.jp/lyrical_yaruo/pages/192.html
パラグラフ/4-1 エクシア \\从/ ==  ̄ ̄ ̄ ―_―― ̄___―___ 、‐,ニ、 ` ー、 そ て ――_――__―___ ̄ ̄___ ̄― ヾー/=/三 ソ ` \ ゝ, そ=  ̄ ̄ ̄ ―――― ̄ ̄ ___―= ; '\ く '‐― ヽ "`/'^r .  ̄ ̄___ ̄ __ ̄ ̄―‐―― /≧,ゞ .'' .¨ヽ ヽ ―_  ̄ ̄ ――_ ̄___ ̄ ―――― ! ー i`ー-‐´. . . . . . .. \ ';f ==  ̄ ̄ ̄ ―_―― ̄___―___ / .丿 . . . . . . . . . . . . . . . . .ヽ i ―_____ ̄ ̄___ ̄― l.`ーイ . . . . . . . . . . . . . . . . . __ ヽ. l _―― ̄ ̄―‐― ___―= l 〈 . . . . . . . . . . ., --、/ ヽ i i\、 ―= ___ ̄ ̄―‐―― ヽ. ヽ . . . . . ./ ' l / `ーー;;、 _―― ̄___ ―――― ト、 ヽ . . / , ----‐' / 、 ヽ ――_―― ̄____―___ ヽ.ゝ‐`-{、__ 'ニ _ ィ' `ー--―ij_j\\从/____ ̄ ̄ ̄___ ̄\\从/ ,' `<´ \ そ て― ̄ ̄―‐ ___― そ て! ' ` ヽ \ ゝ, そ __ ̄ ̄―‐――ゝ, そ '´`ー--、 ヽ. \ "`/'^r . ̄___ ―――― "`/'^r .≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠【反prpr軍兵士】 政府の犬になりに行くのか!今のうちに動けなくしてやる!【System】 あなたは入隊申請を囲炉裏ネットに提出しに行く途中で反prpr軍の兵士に攻撃されました 次へ 戻る
https://w.atwiki.jp/suparoboogs/pages/274.html
R-1 T-LINKナックル 「うおおおぉっ!!」→「念動拳…!T-LINKナッコォ!!」→「破ぁぁっ!!」 「うおおおぉっ!!」→「くらえ!T-LINKナッコォ!!」→「破ぁぁっ!!」 「うおおおぉっ!!」→「うけろ!必殺!!T-LINKナッコォ!!」→「破ぁぁっ!!」 「うおおおぉっ!!」→「一撃粉砕!鉄拳制裁!!」→「破ぁぁっ!!」 天上天下念動破砕拳 「超必殺!」→「T-LINKソォォーード!!」→「破を念じて…刃となれ!!」→「破ぁぁっ!!」 「念動集中…!」→「天上天下、念動破砕拳!!」→「破を念じて…刃となれ!!」→「破ぁぁっ!!」 R-ウィング Gリボルヴァー・キャノン 「俺の狙いから逃げられるものか!」 「照準セェット!ファイア!!」 「リボルヴァー・キャノン!ランダムシューッ!!」 「Gリボルヴァー・キャノン!!」
https://w.atwiki.jp/pokemon-dreamworld/pages/21.html
167 :1/12 ◆8z/U87HgHc:2007/12/01(土) 17 44 13 ID ??? 日が暮れかけ群青色に染まろうとしている空の中を、一つの大きい影……鳥が緩やかに飛行している。 その鳥は、何かを探すように目を光らせ地上を見下ろしながら、ブツブツと言葉を呟きだした。 「人間は無意識の内に磁場の元に引き寄せられる……か。 どこから生まれた言い伝えかは知らぬが、それが真ならば……」 鳥は目線を動かし、地上を濃く染める膨大な木々の群れを見据える。 「サイシ湖から一番近い『磁場』……あの『生命の森』に、人間達はやってくるはずだの。ほっほっほ」 鳥はゆっくりと笑いながら、再び地上を見下ろし何かを探すように視線をギョロギョロと滑らし始める。 ……それから数分の時が経った時、地上を見下ろす彼の目線の先に、二つの小さな影が現れた。 「……おっ!?」 鳥はそれを視認した瞬間、期待の入り混じった一声を上げた。 そして鳥は、地上をゆっくりと歩いているその二つの小さな影に向かって目を凝らす。 ……数秒後、鳥の表情に喜色が走った。 「……やはり、だっ! わしの予想通り、奴らは『磁場』へ……『生命の森』へ向かっていたっ!」 鳥は顔に浮かばせた喜色をみるみる強めていきながら、不気味に首を横に傾かせ、興奮したように叫びだした。 「さっそく一句できたぞっ!ほほ、快調じゃのォ~~~ 哀れかな 飛んで火にいる 夏の虫 ほほっ! 彼らならきっと……わしにいい句を沢山提供してくれるだろうのォ!! ほほほほほっ!!」 鳥は壊れたような高笑いを残しながら、大きく翼をはためかせどこかへ向かって飛び去っていった。 168 :2/12 ◆8z/U87HgHc:2007/12/01(土) 17 46 05 ID ??? 「わあ、お空もう暗くなってきたねフライゴン……」 「ですねー。こんな場所だと、暗いとちょっと怖いなあ……」 辺りは暗い闇に包まれようとしている。 夜の始まり、夜行性のポケモンが寝床から起き始める時間帯だ。 ――この世界の時間の表現はどうなのか知らないけど…… ……いや、この世界の文化が人間から伝えられたものなら、時間の表現もやはり同じなのかな? ともかく、今の時間を人間の世界の表現で言えばおそらく『8時か9時』と言ったところかな。 いつものぼくなら、旅から一旦帰ってきてごはんも食べ終わり、そろそろお風呂に入り始める時間。 つまり就寝の一歩手前くらいの時間だ。 そんな時間帯だけれど、『今のぼく』はお風呂に入る支度もしていなければ、自宅にもいない。 じゃあ、一体今ぼくは……ぼく達は、何をしていると思う? どこにいると思う? 歩いているんだ。鬱葱と生い茂る『森の中』を。 見回せば木しかない。 見上げれば、濃い群青色の空を黒いまだら模様が覆っている。 ……なぜ、ぼくはわざわざこんな森に入ったのか。 自分自身でも上手く説明がつけられないけど、この森には、ぼくを強烈に引き付ける『何か』があった。 ぼくの『予感』や『期待』といった物を刺激し増幅させる魔力めいた『何か』が、この膨大な木の集まりの何処かから染み出していたのだ。 端的に言えば……『ぼくのポケモン』が、あるいは『この世界を抜け出る方法』が。 この森の何処かに存在している……そんな気がしたんだ。 第二話 「不安の流れ」 169 :3/12 ◆8z/U87HgHc:2007/12/01(土) 17 49 54 ID ??? 「あー、このまま野宿ー、なんて事になったらヤだなぁ~~。ぼく寝袋とかなんて持ってないし、からだとか髪の毛が汚れちゃう……」 「だ、大丈夫ですよコウイチくん! もしそうなったら、ボクがコウイチくんのお布団になりますからっ」 「えっ! ……い、いや、いいよぉ。さすがにそれは遠慮しておくよ……」 「いやあ、遠慮しないでいいですよー。そのくらいボクには苦にも何にもなりませんよ」 「そ……そお? そぉ~~? じゃ、じゃあ野宿する事になったら頼むねっ! 野宿する事になったらだけど……」 「はァ~~い」 まったく、フライゴンは本当にいい子だ。ここまでぼくの事を思ってくれてるなんて、 トレーナー冥利につきるというか何というか、大事に育てた甲斐があったってもんだねっ! ……でも、さすがにポケモンの上に乗って寝るなんて気が引ける。フライゴンもおもっ苦しくてよく寝付けなくなるだろうし。 野宿なんて、出来ることなら避けたいんだ。そのためにはこの森を早く抜けなければいけない……のだけれど、出口が見つからない。 こんな感覚を覚えたのは、かなり前のことだけれど『ハクタネの森』の探検以来だ。 ……まぁ、だからって『怖い』だとかそんな感覚は一切無いけどね。 何たってぼくの隣には、何よりも頼れるこのぼくのポケモン……フライゴンがいるのだから。 たとえば凶暴なポケモンが襲ってきたところでやっつけてくれるし、 本当に迷ったみたいだったら、彼の背中に乗って空飛んで脱出できるしね。 ……そうは理解しているのだけれど。 なぜだか、ちょっとだけ……そう、ほんのちょっぴりだけれど『嫌な予感』がするんだ。 身を竦めるほどでも足取りが鈍くなるほどでもない……本当にほんのちょっぴりの嫌な予感。 歩いている間ぼくはフライゴンと絶え間なく話をしているけれども、それでもこのちょっぴりの 『嫌な予感』は、十字キーの股にこびりついたちょっとした汚れのようにしつこく離れようとしない。 ……これは短い人生の中でのぼくのちょっとした『法則』というか『ジンクス』ってやつなんだけど…… こういうちょっとした『嫌な予感』って……意外と当たるんだよね、なぜだか。 今回はどうだろうか? そう思い始めてからほぼ間もなくして……その答えは出た。 170 :4/12 ◆8z/U87HgHc:2007/12/01(土) 17 53 00 ID ??? 「見下ろせば 死地へ赴く 子の頭」 「?」 不意に、風のさざめきを割ってそんな声が聞こえてきた。 5・7・5のリズムに乗せた言葉の塊……俳句?川柳? そしてその言葉が聞こえてきたのは、およそぼく達の頭上……そのせいで音波が拡散され正確な方向は掴めない。 「今なんか、聞こえた……よね」 「聞こえました……ね」 フライゴンと一度顔を見合わせ、声の主を探ろうと同時にまっすぐ上を向く。 その瞬間、また声が聞こえてきた。 「夏夕べ 空を見上げる 阿呆の面」 「アホ!?」 突然バカにされた。それもよく分からない俳句に乗せられて。 なんだかよく分からないけれど、とにかくぼく達を陰から見て嘲笑ってる奴がどこかにいるんだ。 首をぐいぐい捻り、闇に塗れ複雑に絡み合う木々や葉っぱの間を目を凝らして見るけど、 何者かの影なんてどこにも見えない。 自分の見えない場所から俳句だけ言われるのがひどく不気味で、ぼくは心なしか冷や汗を流していた。 先程までの『嫌な予感』がれっきとした『不安』に変わっていく。 「幼子が 畏怖に汗ばむ 森の奥」 また、ぼく達の様子をそのままヘンな俳句にされた。 不気味だと思うと共に、苛立ちが募っていく。 「フライゴン……誰かいた?」 「いや、何も……あっ!」 フライゴンは驚きの一声をあげ、ある一点に向かってビッと腕を向けた。 何かを見つけたんだ。ぼくは急いでその方向を見つめる。 ……幾多の木々のどれか……てっぺんの木の枝からもう少し上、 空にインクを垂らしたようにポツポツ浮かぶ葉っぱの群れの一端に、小さい二つの赤い光があった。 いや、これは光じゃない……『目』だ。 171 :5/12 ◆8z/U87HgHc:2007/12/01(土) 17 55 30 ID ??? 「まず『三つ』か……『三つ』で限界だが、これは幸先のいい…… 『二つ』ではなく『三つ』……これは幸先がいいのォ~~~! 最初と最後以外に余分に一つあるこの余裕……ほっほほ! 安定感が比べ物にならぬ! 意外や意外や意外、ここまで『二つ』と『三つ』の間に高い壁があるとは! これも収穫だの……ほほ! 本当に幸先がいい……これからの収穫を予想しただけで身震いが起こるのォ! 期待が止まらん、ほっほほ!!」 『そいつ』は何か意味の分からない事をベラベラと喋っているが、ぼくはそれに耳を貸さずひたすら目を凝らすのに集中する。 どんどんと、『そいつ』の全体像が見えてきた。 鳥……? かなりでかそうだ。 ……それにしても、頭上から突き出るあの二つの角のようなものは、どこかで見たことのある形だ。 夜……・『光る目』……そうだ、こいつは……! 夜行性の鳥ポケモンの代表、そしてこのでかさから言えば恐らく『それ』の進化系。 間違いない! こいつは…… そこまで思考が到達した瞬間のことだ。 「さて、人間諸君。これからワシに多大な収穫をもたらしてくれるであろう君達に、名も教えないのは失礼かもしれんの。 一つ、自己紹介させてくれないかの? 文化を重んじる者は礼儀も重んじる物だからの」 『そいつ』はそう言うと同時にその翼を大きく広げ、止まっていた木の枝から足を離れさせた。 こちらに降りてくる。ぼくは咄嗟にそう思ったし、実際そうだった。 翼を軽くはためかせ、『そいつ』はあっという間にぼく達の前に降り立った。 「!」 姿が完全に露になったそいつのプレッシャーに、ぼくは……フライゴンも、思わず後じさりをする。 そいつは一度微笑むように目じりを上げると、先程ぼくの思考も辿り着いたその名を口にした。 しかも、もう一つの衝撃の事実と一緒にだ。 「ワシはヨルノズク……魔王軍飛鳥部隊三幹部のヨルノズクだ。ほっほ!! よろしくのォ、人間諸君!!」 172 :6/12 ◆8z/U87HgHc:2007/12/01(土) 17 58 07 ID ??? ヨルノズク! 夜の草むらによくいるホーホーっていうふくろうポケモンの進化系だ。 ぼくは夜には大体自宅に帰ってるから、実際見たことはあまり無い。 そして、こんな間近で見たのはたぶん初めてだ…… いや、そんなことよりもだ。 問題はこのヨルノズクが『魔王軍』……要するに『悪いヤツ』だってことだ。 『人間は魔王の完全復活に重大な鍵を握っている』と、ハスブレロ村長が言っていたけれど…… あれが本当だったなら、ヤツの狙いは確実にぼくだ。 ぼく達の世界の野生のポケモンは基本的に人間は襲わないけれど、 こいつらは間違いなくぼくを襲ってくる。ニワトリがミミズを食べるように一つの躊躇いもなく。 さらわれるのか? それとも……死なされちゃう、のか? 「……コウイチくんには手を出させないぞ」 フライゴンはぼくの心中の不安を読み取ったかのようにそう言い、ぼくの前に出た。 さすがフライゴン! 頼りになる……! フライゴンはまっすぐヨルノズクを睨みつける。 それに対しヨルノズクは、対抗するように睨み返す……という事はなく、フライゴンの視線を恐れるようにすぐ目を逸らした。 「ほっほほ……言っておくが、ワシゃ戦いはちょいと嫌いでの…… そういう暴力的なことはなるべくワシゃ遠慮したいのだがのー」 「なに?」 拍子抜けしたようにフライゴンの表情がふっと緩んだ。 ぼくも同じだ。こいつ……もしかして俳句を言うためだけにここに出てきたっていうのか? 突然、そのヨルノズクは全くの敵意も何も感じさせない半笑いの表情でこう言い出した。 「ワシゃそれなりに歳での……ブンブン動き回ってのチャンチャンバラバラは体に障るからの。 こう言っちゃあなんだがー……見逃して欲しいのだがの」 「はぁ?」 173 :7/12 ◆8z/U87HgHc:2007/12/01(土) 18 01 25 ID ??? ぼくは、気がついたら思い切り感嘆符を口から出していた。 当然だ。『自分から出てきておいて見逃してくれ』? 何を言ってるんだこいつ! さっきの村長と違ってまさかコイツ本気で『ボケ』入ってるのか? 「ね、ねぇコウイチくん……あのおじさんこー言ってますけど」 フライゴンが振り返りぼくの耳元でそう囁く。 「う、うん……言ってるね」 ぼくはどう対処していいか困っていた。フライゴンも困ったような顔をしている。 『見逃してくれ』と言ってる相手をやっつけるのはアレだし、だからって簡単に見逃すのもアレだ…… ……そうやって迷っていると、不意にヨルノズクがこう言い出した。 「あのな、言っておくが……」 フライゴンはその言葉にパッと振り向き、ふたたびヨルノズクを見据える。 ヨルノズクの表情に、笑みは無かった。 鋭い眼を光らせ、プレッシャーを放っている。 「お前らは大人しくワシを見逃してくれ。ワシは戦わないしお前達に手は出さない。戦いは嫌いだからの…… だが『ワシはお前を見逃さない』。『竜のお前はズタボロに倒され、人間のお前は魔王様の下へ連れて行かれる』。 いいか、お前達は無事に帰れない。肝に銘じておけ……お前達はたったいま『火の中にいる』のだ!」 ヨルノズクは突如片方の羽を高く上げた。 それと同時に、複数の葉ずれの音が同時に鳴る。複数の何かが、幾多もの木の中から現れた! 「コ……コウイチくん、上、見てください!!」 「!?」 ぼくは上を向き……そのまま辺りを見回した。 無数の木の葉をバックに、幾つもの陰が浮かんでいる。詳しい種類は分からないが間違いなく『鳥ポケモンの群れ』。 もしや、全員このヨルノズクの手下……いや、『もしや』じゃない。『確実にそうだ』!! 「ほーっほほ! そういう事じゃ人間諸君。では、ワシゃ文字通り高みの見物といくかのー!!ほっほほほ!!」 ヨルノズクは高笑いだけ残し、バッと飛び去ってしまった。 そして、複数の鳥ポケモンが……おそらくぼく達目掛けて一斉に急降下を始めた! 「コウイチくん、下がってて!」 174 :8/12 ◆8z/U87HgHc:2007/12/01(土) 18 04 42 ID ??? 「句とは即興なり!! 感動とは鮮度を保つことが難しいもの…… 体験した感動はその場でそのまま書き記さねば、よい句などはできないのだ!! 巣の中で小一時間難しく頭を働かせて書き上げた句など、たかが知れた物にしかならぬ。 ワシは魔王軍に入り、己の最たる感動は何かを知ると同時に、それを理解した! そしてワシのその最たる感動とはっ! 苦しみ、もがく若者を見ることにより芽生えるのだっつ! 四面楚歌の窮地に立たされ、命をすり減らし必死にあがく若者を見ることにより芽生えるのだっつ! ワシにとってその様は、積もる初雪に輝く銀山よりも、紅葉に燃える赤山よりも、 蛙飛び込む水の音よりも、何倍も何倍も感動を得られるものなのだ!! さぁ、若者達よ。ワシに至上の感動をプレゼントしておくれっ!! ほっほっほ!!」 「フ、フライゴン……!」 敵ポケモンは一体何匹いるのだろう? ともかく、確実に20匹以上はいる。 ぼくは野鳥観察官じゃないから詳細な数なんて見当もつきそうにないけど、 ともかく…… こんな数のポケモンに襲われるのなんて、生まれて初めてだっ! 1対2の経験ならある。だけどそれ以上は一切ない。1対3もなけりゃ1対4もない。 しかし、今回は『1体20X』だ。 フライゴンは持ちこたえられるのだろうか? 心配で、ぼくは後ろに下がるのを躊躇う。 しかし、敵ポケモン達は思いのほか早く、もうぼく達のかなり近くまで近づいてきていた。 「コウイチくん!!下がってくださいっ!!」 「あっ」 フライゴンは、ぼくを手で押し退けた。 それと同時に、フライゴンは翼を大きく広げ強く力を込め始めた。 175 :9/12 ◆8z/U87HgHc:2007/12/01(土) 18 07 56 ID ??? 「なんだなんだ? 何をやってるんだぜあの竜?」 「気にすんな! 突っ込んで奴の体を嘴でザックリ刺してやるだけよ!」 まるで矢のように急速な勢いでフライゴンに突っ込んでいく鳥ポケモン達(近づいてくるにつれ、そのポケモンが『スバメ』や『ポッポ』などである事が分かった)。 その『矢』が、四方八方から何本もフライゴン目掛けて飛んできているのだ。。 ぼくは、経験の無い事態に慌てフライゴンへの命令が全く頭から出てこない自分に焦っていた。 焦っている間にも、『矢』は依然急速な勢いでフライゴンへ飛んでくる。 やがて、幾多の『矢』はもうフライゴンのすぐ近くへ・…… 「フライゴン!! とにかく頑張って打ち落とせェーーー!!」 「ぐがっ!!」 間もなくして、悲鳴が聞こえた。 それも、『幾つもの』だ。 もちろんフライゴンの悲鳴じゃない。鳥ポケモン達の悲鳴。 向かってくる『矢』に対し、フライゴンは硬質化させた翼をたたきつけたのだ。 何匹かの鳥ポケモンが崩れ落ちると同時に、すぐに『矢の』第二陣はやってきた。 しかし、そのどれもフライゴンの体に至ることは無い。 フライゴンはまるで舞うように硬質化した翼……『鋼の翼』で、力強く的確に襲い来る『矢』を撃ち落していったのだ。 『矢』達は、みな空しく悲鳴を上げ落ちていく。 軽く30匹は、フライゴンの翼の攻撃のみで倒れていっただろうか。 やがて敵の軍勢は尽きたのか、もう矢はこちらへ向かってこなくなった。 フライゴンは息を切らしているが、まったくの無傷だ。 余裕勝ちだ。完封勝利だっ。笑いが込みあがってくる。 「や……やったやったー、フライゴン!! さすが……」 そう言ってぼくが近寄ろうとした……瞬間。 パシュッ! 176 :10/12 ◆8z/U87HgHc:2007/12/01(土) 18 10 22 ID ??? 「うあっ!」 空気が切り裂かれたような音と共に、 突如フライゴンは呻き声を上げながら、体の一部を手で押さえた。 その手の中から、鮮血の筋が漏れ体を伝っている。 フライゴンが何者かに攻撃されたんだ。敵はまだどこかにいるということだ。。 「フ、フライゴン!? だいじょうぶ!?」 ぼくがフライゴンに駆け寄ろうとした、その瞬間。 パシュッ! 「あっ!」 再び空気が切り裂かれる音と共に、ぼくの頬に熱い線が走った。 そして、そこから生暖かい血が垂れてくる。 さきほどフライゴンを傷つけた『何か』が、ぼくの頬を切り裂いたんだ。 痛みはほとんど無かったが、見えない場所からの攻撃への恐怖に胸が犯される。 ……しかし、その恐怖はすぐに晴らされた。 「そこだっ!」 フライゴンはそう叫び、瞬時にある方向へ向かって竜の息吹を吹き出した。 フライゴンの口内から放たれた熱の奔流が、斜め前方の木の中へ入っていく。 それから間もなくして…… 「にぎゃっ!!」 その方向から悲鳴が聞こえ、ぼとりと丸っこい黒い塊が落ちてきた。 フライゴンの息吹に撃ち落されたんだろう。ぼくはそちらに駆け寄り、落ちてきた塊の正体を確かめた。 「これは……」 177 :11/12 ◆8z/U87HgHc:2007/12/01(土) 18 14 57 ID ??? おそらくぼく達に『エアスラッシュ』を打ち込んだのであろうそのポケモンは、ホーホーだった。 あの敵、ヨルノズクの進化前……確実に、ヨルノズクの手下のうちの一匹だ。 歯車のような文様の目をぐるぐる回してる。一目で完全に気絶してる事が分かる。 「どうです?」 フライゴンが駆け寄ってきた。 「見ての通り気絶してるよ」 フライゴンはほっと安心したように顔を綻ばせる。 「そですか。こいつがボク達を狙ってたんでしょうけど……まさか狙ってたのがこいつ一匹だなんてことは……」 怪訝な顔でフライゴンがそこまで言うと、上空から『あの』声が空から降ってくるように辺りに響き渡った。 「ほっほ、第二章の開幕の合図だよォ、人間諸君!! さぁさぁさぁ、ここからは一層厳しくなるゾォォ!! ほっほっほォ!!」 ヨルノズクの声が響き渡った瞬間、突如辺りの木々がまた一斉に葉擦れの声を上げた。 「!?」 再び夜空に幾つもの影が浮かび上がった。それも、ホーホーと同じ丸っこい影がだ。 そしてその影は、先程のスバメ達と違ってこちらに向かってくる気配は微塵もない。という事は…… 「コウイチくん、危ない!!」 「撃てェ!!」 ヨルノズクの合図と同時にフライゴンはぼくを抱きしめ、そのままその場を飛びのき横なりにゴロゴロ転がった。 数コンマ後、空気が切り裂かれる音が降り注ぎ、ついさっきまでぼく達がいた地面に幾つもの深い傷跡が出現した。 「……!」 「それなりに間髪いれず連発してきますよ、あいつら……ほら、また来た!!」 178 :12/12 ◆8z/U87HgHc:2007/12/01(土) 18 17 37 ID ??? ヨルノズクは、今まさに感動の境地にいた。 眼下では、人間と竜がホーホー達の見えない攻撃を飛び回り必死で避けている。 ヨルノズクはその二人の動きと表情を必死で追いながら、内なる興奮を我慢できず喉から解き放っていた。 「ほっほっほっほっほォォォ!! いいぞっ、その動き、その顔っ、その必死さっ!! すごい、すごいゾォォォ、句が湧き水のようにどんどんどんどんどんどんどんどんどんどん湧いてくるのォォォ!!! また一句!! また一句!! また一句!! また一句!! ああああああァまた一句!! また一句!! また一句!! 多多益々弁ずとはよく言ったもの、これだけ句が浮かべばそれなりに当たりもあるだろうし当分は困ることなかろうて。ほっほっほ!!」 「!?」 ぼくとフライゴンが避けている途中、興奮したようなヨルノズクの声が森中に響き渡りだした。 「コウイチくん、あそこにいますよ!」 フライゴンがヨルノズクのいるであろう方向へ指を差す。 ぼくは顔を挙げ、大木の頂上から文字通り高みの見物しているヨルノズクの方へ視線を向けた。 闇に馴れたぼくの目は、一目でヨルノズクの様子を脳に伝えるに至る。 ……そのヨルノズクの様子を見た時、ぼくは何とも言えぬ不気味な感覚にとらわれた。 ヨルノズクはまるで壊れたカラクリ人形のように首をぐるぐると高速で回転させ、 俳句短冊へ筆を走らせるように、翼をシャカシャカと空になぞっている。 ヨルノズクというポケモンは難しい事を考えているときには首を180度傾けると聞いたことはあるけど、 あんなにグルグルと頭を高速回転させるなんて聞いたことないぞっ。 言葉も出せないほど呆気に取られているぼくに、不意にフライゴンがこう言った。 「……コウイチくん、ちょっと今からボクあいつ倒してきますっ」 「……えっ?」
https://w.atwiki.jp/pokemon-dreamworld/pages/37.html
485 :1/14 ◆8z/U87HgHc:2007/12/31(月) 18 43 32 ID ??? 『ダメ男』とは、まさしくこの私のような者のことを言うんだろう…… 賞味期限切れ直前の弁当が入ったコンビニ袋片手に、 人っ子一人通らない深夜の住宅街を歩きながら、ふと私はそう考える。 最近は常日頃こう考えてばかりだ。 それほどに、私がいま置かれている状況は暗い物だった。 私はユンゲラー族のユリル・ゲル。 成人してもう何年経ったか分からないが、このテレキシティで未だに定職に就けずにいる。 いい歳をしてアルバイトの給料と安いギャンブルで稼いだ収入のみが私の生活源で、 これといった楽しみや趣味もなく、ぼやけた意識で毎日を過ごしている。 勿論、好き好んでそんな生活を続けているわけでもない。 ある意味、仕方がないのだ。 このテレキシティでは、よい職に就くには大前提として『超能力』の腕がよくなくてはならない。 まぁ超能力と一口に言っても種類は様々であり、 人によって何に優れているか何に劣っているのかとは違うのだが、 その『何に優れているか』によって、自然と何の職に就けるかが決まってくるのだ。 しかし、その超能力の腕が何一つとして一定のラインに達していない場合は、立派な職には就けないのである。 486 :2/14 ◆8z/U87HgHc:2007/12/31(月) 18 45 46 ID ??? 『立派な職などに就かなくていいのでは?』と思うかもしれないが、 それはどっこい、なにより私個人のプライドが許さない。 よくわからぬ無名企業や俗な職に就くなど、経歴が傷つくだけではないか。 意味がない。全くもって、意味がない…… ……かといって立派な職に就くために日々超能力の腕を磨いてるかというと、そういうわけでもない。 確かに超能力は本人の努力しだいでどうにでもなるが、 それにもやはり『才能』という一定のブレが、どうしようもなく個人個人にあるわけだ。 そして私は、その『才能』は一般のラインよりも下…… 言うなれば劣等生に近しいのである。 ……『ぐだぐだ言わず人一倍努力しろ』という声が聞こえてきそうだが、 どうもその『人一倍努力』という言葉は癇に障って仕方がない。 生まれつきの差を埋め合わせるための努力? 人一倍努力して初めて他人と同じラインに立てるなど、馬鹿げている。 影の努力だとか何だとか、そんな腋の下の匂いがプンプン漂ってくるような言葉など、 聞いただけで虫唾やら鳥肌やらが体中を覆うようだ。 ……要するに私は、『プライドだけは高く、高望みするだけするが実際には何もしない』という典型的ダメ男…… ……ということを完全に自覚し、あまつさえ自己嫌悪に陥りながらも結局は何もしないという、完全なダメ男なのだ。 487 :3/14 ◆8z/U87HgHc:2007/12/31(月) 18 47 27 ID ??? そんな私に引き換え、私の弟は優秀だ。 弟は念写の類の能力に優れており、今や立派なカメラマンとして仕事をたっぷりもらっているらしい。 年間の収入も、生活の充実ぶりも、およそ私とは比べ物にならないだろう。 同じ親から生まれてどうしてこうも違うのか。この世には平等のカケラも無い。 私はこれから先、充実した生活を送れる日は来るのだろうか……? 物憂げに、夜空を見つめる。 星一つない夜空。まるで黒いカーテンで青空を覆っているかのよう…… ……!? 私はふと、目を疑いそうになった。 その黒いカーテンの下を、『巨大な鳥の影』がゆるやかに這っているのだ。 要するに、夜空を鳥が飛んでいる。それも、ただの鳥とは思えないほどに巨大な鳥の影…… 「なんなのだ、あれは……」 ふとそう言葉を漏らしてしまうほどに、私はその光景に圧倒されてしまった。 もし弟がこの場にいたのなら、迷わず何枚も写真を撮っているのだろうな…… そんなことを考えながら、その巨大な鳥の影に見惚れていると……その影に、ある変化が起きた。 ……巨大化している。鳥の影が、どんどんと巨大化してきている……!? いや、違う。巨大化してきているのではなく、降りてきているのだ。 巨大な鳥の影が……いや、『鳥』が。今まさに私の近くへ降りてこようとしているのだ。 488 :4/14 ◆8z/U87HgHc:2007/12/31(月) 18 50 31 ID ??? 本能的に逃げ出そうとした、その瞬間だった。 「ぐっ、ぐっ!」 突如、謎の強風が私に襲い掛かってきたのだ。 それまでほとんど風も吹いていなかったのに、あまりに前触れの無い強風の襲来。 そのとてつもない風圧に押され、私は思わずよろめきその場に倒れてしまった。 「ぐうぅ~~……何なんだ、一体……」 その謎の強風は、私が倒れてしまってから間もなくして止んでしまった。 ……全く持って不可解な現象。 だがとりあえず私は、その不可解な現象の意味を脳内で探るよりも、 地面にぶつけてしまって傷んだ腰を撫でさすることと、その場から立ち上がるのに努めることを優先した。 ……立ち上がりそして顔を上げた瞬間、私は心臓が飛び上がり、また倒れてしまいそうになった。 立ち上がった私の目の前に……いつの間にやら、あの『巨大な鳥』が立っていたのだ。 140cmばかりはある私の背丈よりも大きいその鳥が、威圧感を内包したその鋭い目つきで、私を見下ろしていたのだ。 「あ……あ……」 つい先程まで夜空をゆったりと飛んでいたはずの鳥が、今は私の目の前に立っている。 私はその巨大な鳥の姿に圧倒され、動けなくなっていた。 ……その『美しさ』に。 街灯もない夜の住宅街にいて尚、その鳥の毛並みの非常なほどの美しさはありありと伝わってくる。 鬣のようなその立派な頭の羽も相まって、神々しいほどの美しさがその鳥全体を覆っていた。 そしてその美しさが、威圧感となってこの私を圧倒し、この場に釘付けにしているのだ。 言葉も上げれず逃げることも出来ず、ただその鳥を見続けていると……鳥がふと口を開いた。 「こんばんは」 489 :5/14 ◆8z/U87HgHc:2007/12/31(月) 18 53 38 ID ??? 鳥が、言葉を喋った。 「!!」 私はその言葉に、再び驚愕した。 目の前のその巨大な鳥は、確かに言葉を喋った。私に「こんばんは」と挨拶をした。 この鳥は、『モンスター』としてしっかりと教育を受けていた鳥だったのだ。 私は、はたと思考を巡らせる。 ……この鳥は、このテレキシティに、この私に、何の用があるというのだろう。 このテレキシティと彼の住む町とで、友好……外交関係を結んでほしいとでも持ちかけるつもりだろうか。 いや、それなら私のようなただの一般市民に、それもこんな深夜に、話しかける意味などない。 ……それならば、ただの気まぐれ? ただ、異種族と対話がしてみたいというだけ? 私は思考に結論をつけるより前に、落ち着いてその鳥に対話を試みてみた。 「……あなたの、名前はなんですか?」 あれこれ考えるよりも、先ずは対話だ。 勝手な予測を立ててそれで納得するよりも、相手から聞いたほうが手っ取り早いに決まっている。 「……ワタシは……」 鳥は、私の言葉にすぐさま反応し口を開いた。 ……次の瞬間その鳥が口にした言葉は、私を再び驚愕させることになった。 「ワタシの名は、ピジョット。 魔王軍……飛鳥部隊の幹部を務めている、ピジョットだ」 490 :6/14 ◆8z/U87HgHc:2007/12/31(月) 18 56 06 ID ??? ――魔王軍だと!?―― 心臓がドクンと波打ち、同時に嫌な汗が体からにじみ出てくる。 芽生えかけていた好奇心が、すぐに恐怖へと変換された。 魔王軍の恐ろしさは、学校で存分に教え込まれた。 端的に言えば、無差別殺人や誘拐を頻繁にする集団…… 要するに、『犯罪集団』だということを。 この鳥は……『ピジョット』は、その犯罪集団の一員であることを自ら名乗ったのだ。 このピジョットが目の前に降りてきたときから既に微かに感じていた『死の危険』が、一気に現実的なものになる。 一刻も速くこの場を逃げなければ――死ぬっ。 「なにを黙りこくっている? ワタシに名乗らせたのだから、次はキミが名乗る番だろう…… 名刺でも構わない。キミの身分、名前、このワタシに教えてくれ」 ピジョットは落ち着き払った口調でそう言いながら、ゆっくりと歩み寄ってくる。 それと同時に、心臓が恐怖に打ち震える。冷や汗が頬を伝う。息が乱れる。 ――逃げろっ!!―― 「!」 私は迷わずピジョットに背を見せ、その場から逃げ去ろうと駆け出した。 ――こんなとこで死にたくないっ! まだ私には輝かしい未来があるはずなんだ、それを体験する前に死ねるかっ……! 脚力を総動員しようとする……が。 その矢先、私の腕が何者かに引っ張られた。 到底振り払うことは出来ないくらいのすさまじい力で。 ……振り返らずとも分かる。いま私の腕を掴んだのは……捕まえたのは……魔王軍の、ピジョット。 私は逃げることが出来なくなった。 492 :7/14 ◆8z/U87HgHc:2007/12/31(月) 18 59 41 ID ??? 「なぜ逃げる」 頭の後ろから響く、冷徹な声。 私の胸が、警鐘を打ち鳴らし続けている。 無意味な警鐘。もはや手遅れでしかない警鐘。 まだ実際に体を傷つけられてはいないので些かの余裕はあるものの、 それでも吐き気を催してしまいそうな恐怖が胸のうちにまとわり付いている。 ――死ぬのか。私は、殺されるのか。 「ワタシはキミに名を名乗った。それなのに、なぜキミは背を見せ逃げようとする? あまりに一方的。キミのやった行為……それはほとんど暴挙だよ。 『理性ある者』……すなわち、『街に生きるモンスター』としてはな」 「ひっ……?」 ピジョットが案に相違してまともな事を話し出したことに若干驚きながらも、私はその口調の冷徹さに恐怖を募らせる。 「キミがワタシと真正面から話し合う権利を自ら放棄するというのならば、 このワタシも、きみと対等に話し合う権利を放棄してもいい、という事なのだ。……分かるかな?」 「えっ」 「このままキミが逃げるというのならば……ワタシは、キミを『エサ』と見なしていい、そういう事になる」 「ひいっ」 ピジョットの言葉。自分自身の命に関わる言葉なのだから、私は瞬時に理解する。 要するに、『逃げれば殺す』ということ。 ……そして逆に言えば、逃げずに真っ向から話し合えば殺さないということ。 とても信じることは出来ないが、いまや私の命はピジョットの胸先三寸。応じざるを得ない。 私はゆっくりと、ピジョットの方へと向き直った。 「……フフフ、そうだ、それでいい。向き直り対話する……それこそが『理性ある者』として正しい姿。美しいということだ……フフフ」 493 :8/14 ◆8z/U87HgHc:2007/12/31(月) 19 04 41 ID ??? 「『理性に根ざした知恵』というのは分かるかな? 街に生きるモンスターとして当然持っていなければならぬ知恵のことだ。 理性に根ざした知恵は、すべからく対話のための知恵。向き合い情報を交換し合うための知恵。 お互いの価値観を理解し合い、尊重し合うための知恵のことだ。 それを自ら放棄するなど、理性ある者……すなわち『モンスター』の行動ではない。 向き合い対話してやっと、モンスターとしての知恵…… 理性に根ざした知恵、すなわち『知性』はその役目を果たしたことになるのだ。 危うくキミは、モンスター以下のただの獣へと逆戻りしてしまう所だったな。フフフ」 向き合った途端ピジョットは、まるで教科書を読むかのような口調で自論を展開しだした。 ……言っていること自体はともかくして、この自論を展開するに至ったのが さきほど私がこのピジョットに背を向けたことに基づいているのならば、それは全くいわれのないことだ。 最初に『魔王軍』などと名乗って恐怖を煽ったのは誰だ。 『魔王軍』と最初に名乗られてしまっては、よほどの命知らずでない限り普通は真っ先に背を向けて逃げるだろう……! ……こいつは、魔王軍という存在が世間に一体どういった存在として認識されているかを、ちゃんと自覚しているのだろうか? 「さぁ、キミの身分と名前を、ワタシに教えてくれ」 「……」 ピジョットは改めて私に名を名乗ることを要求し始め、私は意味もなく少し躊躇してしまう。 だが、事実上こちらの命を相手に握られているこの状況、無論断ることは出来ないし、その必要もない。 「わ、私は……ユンゲラー族の、ユリル・ゲル。無職……です」 無意識に声を震わせてしまいながら私がそう名乗ると、 ピジョットは今まで恐ろしいくらい無表情だった表情を緩く綻ばせた。 「なるほど、ユリル・ゲルくん。フフフ、よろしく」 「は、はぁ、よろしく……」 ……相手の『よろしく』の挨拶に、私もよく考えず『よろしく』の挨拶を返したが、 一体、ピジョットのこの『よろしく』にはどれだけの意味が込められているのだろう。 不安の念を感じざるを得ない。何せ相手は魔王軍、犯罪集団の一員であることには変わりないのだ。 ……そう思っていると、ピジョットはそれを見透かしたかのようにこう言った。 494 :9/14 ◆8z/U87HgHc:2007/12/31(月) 19 07 15 ID ??? 「安心しろユリル・ゲルくん。 ワタシは、何もキミを傷つけたりだとかさらったりだとか、そんな事をするつもりは微塵もない。 ワタシが得をし、そしてキミも得をする。いわゆるギブ&テイク。 そんな双方に美味しい話を持ってきただけさ」 「美味しい……話?」 ピジョットは私の不安を払拭させようとしてるのだろうが、逆に一層不安は強まってしまう。 私を油断させるために口からでまかせを言っているとしか思えない。 ……疑ったところで、どうしようもないのだけれど。 「キミは、『人間』を知っているね?」 「人間……ですか?」 無論知っている。知らないはずがない。 この世界に文化や言語を伝えたという、異世界の種族。 私はとりあえず黙って頷いてみせる。その人間が一体どうしたというのか。 私が頷いたのを確認すると、ピジョットは懐から何やら一枚の紙切れを取り出し、私に手渡した。 「……こ、これは?」 その紙切れには、11桁の番号の羅列が記してある。 ……携帯電話の、番号? 「その人間が、いま一人この世界にやってきていることは知っているかね? ……いや、知ってても知らなくてもいい。 ともかく、その人間がもしこのテレキシティにやってきたら、この番号に連絡してそのことを教えてほしい」 「え……この電話番号に連絡して、人間がきたことを、教える?」 私はその突飛な申し立てに困惑して、ほぼ相手が言った通りそのままに聞き返してしまった。 「そう、そういうことだ。……無論、ただでやれとは言わないよ。 さっきワタシが言ったとおり、キミも『得をする』…… キミが私の言うとおり人間の存在を教えてくれたのなら、これをやると約束するよ。フフフ」 「え……」 ピジョットは不敵な笑みを浮かべたまま、またその懐をまさぐり、 何かを羽に乗せて、それを私に差し出してきた。 「こ、これはっ……!?」 495 :10/14 ◆8z/U87HgHc:2007/12/31(月) 19 10 39 ID ??? ピジョットが差し出してきたその『モノ』に、私は驚き声を上げそうになる。 金。札束だ。 ざっと見積もっただけでも相当の額はある。50万……60万……いや、100万……? 少なくとも、先ほどピジョットが提示した条件とは『逆に』全く釣り合っていない金額。 このピジョットは先ほど『美味しい話』と言っていたが、美味しい話どころの騒ぎではない。 「本来はこの程度のこと部下に任せるのだが、事情があって現地の者にお願いするほか無かったのだ。 とりあえず、我々は人間を心から欲している。その人間様を我々魔王軍の元へ招待できると考えれば、 それくらいの金額は微々たるもの。我々は資金繰りには特に困っていないのでね」 「……」 ピジョットの羽の上の札束に、目が釘付けになって離れない。 ……『電話をかけて教える』……ただそれだけの行為で、これだけの金額を手にしていいものだろうか。 理不尽なまでの『テイク』。お互いに得をするとは言っても、幾らなんでも割合が偏りすぎている。 ……明らかにおかしい。どう考えても、これは何かの罠……罠じゃないか…… 罠? 普通に考えて、ピジョットからしてみれば私に罠を仕掛ける必要など一つもない。 なにせこちらの『ギブ』は、たとえ報酬がなくとも構わないくらいに低いのだ。 報酬を釣り上げまくって、私の欲を煽る必要は一つもない。 ならば、答えは一つ。このピジョットの金銭感覚がズレにズレまくっているということだ。 ……『なにせ相手は魔王軍』……常軌を逸した犯罪集団。それならば、金銭感覚すらも常軌を逸していても不思議ではない。 ……え……? ちょっと待てよ…… だとすると、これって……え? もしかして…… 私にとって、『ものすごく美味しい話』なのでは……? 497 :11/14 ◆8z/U87HgHc:2007/12/31(月) 19 16 57 ID ??? この魔王軍の者に会えたのは、実は物凄く幸運なことなのでは……? 一生に一度あるかないか、という程の幸運なのでは……? 「では、よろしく頼むよゲルくん。……では、ワタシはこれで……」 「待って。待って……ください」 「ん?」 ピジョットが飛び去ろうと羽を広げ始めた所を、私は慌てて呼び止める。 訪れたかもしれない『幸運』を受け入れるのにあたり、どうしても気にかかることが一つあったのだ。 「その人間を貴方の元に、魔王軍の元に招待する……その理由はなんなんですか? 何のために?」 話を聞いていればこのピジョットたち魔王軍は、どうしても人間を自分達の元へ招待したいらしいが、 彼ら魔王軍は犯罪者集団。『神』と呼ばれる人間を利用して、何か悪事をしでかそうとしている可能性が高い。 もし後にこれがきっかけで何か大事が起きれば、私は間接的ながらもそれに加担したことになるのだから、枕を高くしては眠れなくなる。 私はただそこだけが気にかかっていた。もしかしたら私は、彼ら魔王軍の悪事の片棒を担がされようとしているのかもしれないのだ。 ……ピジョットは私のその問いを受けると、またお得意の不敵な笑みを浮かべ、こう答えた。 「……フフ、そこまで教えてあげる義理はないが……あえて教えてあげれば、 我々魔王軍のため……つまりは、この世の中のためさ。ウフフフ」 ……『この世の中のため』……? 私がその答えに呆気に取られ困惑していると、ピジョットは強風を立てて夜空へと飛び去っていってしまった。 ……ピジョットは『世の中のため』と断言していたが、 それが、およそ私たちの考えとは確実にズレているであろうことは容易に想像が付く。 ほぼ確実に、私は『悪事であろうこと』の片棒を担がされかかっている。 ――だが、あの金額は魅力的だ。 人間がまだこのテレキシティに訪れるかは分からないが…… そもそも分からないからこそあのピジョットは私に報告を頼んだのだろうが、 もし来たとしたら。そして、それを私が耳に入れる……あるいは目撃したとしたら。 ……私は確実に、この番号へ電話をかけるだろう。 私は無意識に、目を大きく開いて夜空を見つめていた。 498 :12/15 ◆8z/U87HgHc:2007/12/31(月) 19 20 45 ID ??? ―――――――― 「あァ~~~~~つゥ~~~~~いィ~~~~~よォ~~~~~!!」 生命の森を抜けてから数十分、テレキシティまでの道のりである広い草原を歩いている途中、 じりじりと照りつけてくる太陽に耐えかねたのか、フライゴンが軽く泣きながらそう叫びだした。 その様子に呆れたジュカインは、たまらずそのフライゴンに向かってこう言った。 「ったく。お前、砂漠のポケモンなのにこの程度で暑がるなんて意味わかんねーよ! 心地よい暑さじゃあねえかよ。お天道様がニコニコ笑ってて、こっちまで笑顔になっちまうぜ……クケケッ」 「どーこーがーっ!! うわぅ~~~暑い~~~~体が焼けるぅ~~~~ せんぷうき~~~! クーラー~~~! メノコちゃんどこ~~~!」 緑色の体の至る場所から汗を掻きながらそうやって泣き言を繰り返すフライゴンは、 確かに、元が砂漠出身のポケモンだったとは到底思えない。 ……夏は外に出るときは大抵ボールの中、家の中では冷房ガンガンの部屋で遊ばせる…… ぼくがそんな育て方をしたせいで、フライゴンはこんな暑さに弱いポケモンになっちゃったのかもしれない。 ……よォしっ。ここは一度、トレーナーとして責任とってちゃんと教育してあげないとっ! 500 :13/15 ◆8z/U87HgHc:2007/12/31(月) 19 23 14 ID ??? 「ねぇ、フライゴン? 暑くて汗をかくってのはいいことなんだよっ」 「ふえっ、いいことお~~? こんなどろどろになるのがあ~~~?」 納得のいかないような表情を浮かべるフライゴンのその問いに対して、ぼくは勢いよく頷く。 「汗をかいたら代謝が活発になって、そのぶん健康になれるからねっ! どろどろ汗をかくたびに体が強くなって、お病気になりにくくなるんだっ。 ぼくも日焼け止めクリームくらいは塗りたいケド…… 元気な体がつくられてると考えて、ここはがまんだよフライゴンっ!」 フライゴンの目をまっすぐ見据えて、ぼくは勇気付けるようにぎゅっと手を握ってやる。 そうするとフライゴンはぼくの手を握り返して、元気よく頷いてくれた。 「はいっ、分かりましたコウイチくんっ! 病気になってコウイチくんに迷惑かけないためにも、ボクがまんしますよォっ!」 「うあっ、さすがフライゴン、いい子いい子~」 「えへへへ……」 とても素直なフライゴンに感激して頭を撫でてあげると、フライゴンは満足そうに目を細めた。 やっぱり子供は素直じゃないといけないよね…… なんて風にぼくが感慨に耽ってると、横からジュカインが。 「おいフライゴン……おまえ大人なんだから、子供のコウイチに撫でられて嬉しそうにしてんなよ……ったく」 ……そういえば確かにそうだけどね。 501 :14/15 ◆8z/U87HgHc:2007/12/31(月) 19 26 04 ID ??? 「しかしまあ、改めて思うが……コウイチお前、育ちがお坊ちゃまのクセして、よく出来てるよな」 フライゴンを撫でていると、ひょっとジュカインがそんなことを聞いてきた。 確かにぼくのお父さんは企業の社長だから、ぼくの家柄は結構金持ちだけれど…… 「ん、そうかなあ? 普通だよこのくらいっ」 「いやあ、普通じゃないってー。金持ちの子供なんつーのはさ、 もっとこうホラ、生意気で高慢ちきな感じだろ?」 「何だって~~?」 聞き捨てならない発言にぼくは反応してしまい、気が付いたときにはぼくの舌は回り始めていた。 「違う違うっ! そんなのは勝手なイメージだよっ。イメージイメージっ! お金持ちってのはちゃんと躾が行き届いてるんだから、生意気で高慢ちきなんてそんなの逆だよっ、真逆っ。 そういう生意気な金持ちってのは、よっぽど親がバカなんだ。それでそんなバカなヤツが金持ちになれる例なんて稀だし、 だから高慢ちきなお坊ちゃまが出来上がるのも稀なんだよっ。分かるっ? 分かるっ!?」 「そ、そうなのか……?」 「そーなのっ!」 「ご、ごめんなさ~い……」 しゅんとして黙りこくってしまうジュカイン。……熱弁しすぎたかも。 でも、何で『お坊ちゃま』=『生意気』なんて勝手極まりない妄想じみたイメージが、こう浸透しちゃってるかな。 ジュカインに限っては、そういう類のお坊ちゃまに酷い目に合わされた経験が実際あったから別にいいにしても、 なーんでそーゆーイメージが一般的に広まっちゃってるかな、ぼくらの世の中はーっ!? ぼくみたいなまともな子が割を食うことをちゃんと考えてんのかな、一部の生意気なお坊ちゃんと、それを広める奴らはっ! 「ねっ、そー思うでしょ、フライゴンっ!」 「……は、はい……(な、なにが……?)」 502 :15/15 ◆8z/U87HgHc:2007/12/31(月) 19 28 39 ID ??? それから数分後、ひたすら前を見つめながら歩いていたジュカインが、ふと嬉しそうに声を上げた。 「あっ、ほらほらコウイチ、フライゴンっ! 見ろよ、見えてきたぜテレキシティがっ!」 「えっ!」 ジュカインが前方……地平線の奥を、指差す。 その指に従って、目を凝らして前方を見据えると…… かすかだが、見えた。 幾つものビルの頭。ビルの群れ。 ぼくらの世界に存在するものとほとんど変わらない『都会』の象徴が、 地平線の向こうからひょこりと顔を出しているんだ。 「わあ~っ、本当に見えてきたっ! すごいすごーい!」 「……」 はしゃぐフライゴンを傍目に、ぼくは言葉にならない衝撃を受けていた。 この世界に来てから今まで近代的な文明を一切目にしていなかったせいか、 族長さんから『大都会』と聞いたときも、ぼくは無意識下に『都会といってもたかがしれている』と思っていた。 だけども、ぼくら人間の世界でもまるっきし近代文明の象徴である『ビル』が、いま確かに風景の奥に幾つも存在している。 このポケモンの世界にも、確かに近代的な文明というものは存在していたんだ。 ……次第に衝撃は感動に変わっていき、どんどんと胸を満たしていく。 「カハハッ、驚いてるなコウイチ。あんな近代的なモンがあるなんて思ってもなかったかい?」 「うん、思ってもなかったよ。だから、スゴく楽しみ……!」 気が付けば、ぼくの口は自然と笑みの形を作っていた。 この世界に来てから、ぼくはいま一番ワクワクしているかもしれない。 エスパーポケモン達の住まう大都会、『テレキシティ』……さて、どれほどのものかなっ!? 第三話 「お坊ちゃま」