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こなた「ねぇ?」 キョン「なんだ?」 こなた「このスレおもしろいからさ、次スレになっても見てていいかな?」 キョン「見ても良いけど、明後日は中間試験だぞ。勉強しなくていいのか?」 こなた「う゛…」 キョン「…それに、今日は開校記念日で休みだったってのに、一日中vipはないと思うぜ」 こなた「ぐふっ……」 キョン「まあ、試験勉強ぐらいは付き合ってやってもいいかな…」 こなた「…ありがとう」 図書館にて。 キョン「どうだ、少しは勉強はかどってるか?」 こなた「んー全然、それより、プリンスレが面白くて…」 キョン「おい、携帯をしまえ、ここは図書館だ。」 こなた「えー、外出中も良作をリアルタイムで支援したいのに…」 キョン「中間試験は明日からだ。少しぐらい自重しろ」 こなた「あっもうこんな時間。帰らなきゃ、ってなんでキミもついてくるかな?」 キョン「…まだ一時間程しか経ってないわけだが」 こなた「ぎくっ…」 キョン「折角、図書館来たんだし、俺の勉強にもなるだろうから、今から付きっきりで、お前の勉強をみてやるよ…」 こなた「…キミも少しは自重しろよ」 キョン「…」 こなた「まあ、付き合ってあげるけどね…」 キョン「で、どうしてお前の家に行かなきゃいけないんだ?」 こなた「いいじゃん、付きっきりで勉強みてくれるなら、家の方が周りに迷惑かけないでしょ?」 キョン「まあ、それはそうだが…」 こなた「まさか、女の子の部屋に行くとかで、緊張してるの?」 キョン「そんな訳ないだろ!」 こなた「まあそれに、明日の試験科目、4科目のうち、今持ってるの1科目しかないんだよネ」 キョン「やれやれ、俺は今日家に帰れるのか…?」 こなた「努力はするヨ」 キョン「その努力を是非とも見てみたいものだね」 こなたの家にて。 キョン「おい、お前の父さん、すんなり通してくれちゃたけど、本当に入っていいのか?」 こなた「…やっぱり気にしてんじゃん」 キョン「…いや、そうじゃなくて、でも…何でもない」 こなた「まあいいや。はい、ここだヨ、どうぞ入って入って」 ガチャッ…キィィ… キョン「…(何も言えないというのは、こういう時に使うものなんだろうな)」 こなた「どうしたの?」 キョン「…いや、何も、ただ単に凄いなと思っただけだが」 こなた「…幻滅しちゃった…?」 キョン「そんな事はないさ、じゃ、早速勉強はじめようぜ」 こなた「…うん」 キョン「まず最初に断っておくが、俺は理系分野の質問は答えられないかもしれん。その時は、諦めて答えなり何なりを見ること」 こなた「えー聞きたかったところなのに…ていうか、キミ文系分野も苦手じゃなかったかな」 キョン「…お前よりは勉強していると思うが」 こなた「まあね…」 キョン「…まあ、お互い解らない部分を助け合ってやればいいんじゃないか?」 こなた「うん…じゃあはじめは数学からやろう!」 パタッ キョン「お、意外と積極的だな、ってこれ啓〇館の中三の教科書じゃねえか!」 こなた「ああ、間違った間違った、こっちのほうだネ」 キョン「やれやれ、先が思いやられるな…」 前回までのあらすじ 中間試験を翌日に控え、キョンはこなたの家で一緒に勉強する事になった。こなたのマイペースに参りつつも、必死に勉強するはずだったが…。 こなた「で、どこが試験範囲~?」 キョン「一日前に、そりゃないぜ…軌跡と領域、三角関数の加法定理の前までだ」 こなた「げ…全部わかんないヨ」 キョン「お前が数学でわかる部分なんてあるのか?」 こなた「…式と計算」 キョン「…それって一年生の最初の方じゃねえか…」 こなた「そんな事はともかく、折角家に来てくれたんだし、ゆっくりしてってヨ」 キョン「実際ゆっくりしていく暇無いんだがな」 こなた「じゃあ、飲み物持って来るけど、何がいい?」 キョン「人の話を聞けよ!」 こなた「まだまだ時間はたっぷりあるんだし、だいじょぶ、だいじょぶ」 キョン「時計を見ろ、もう五時を過ぎてるぞ」 こなた「手伝ってくれるって言ったのは、誰だったかな(=ω=.)?」 キョン「わかった!寄るな、止めろその顔!」 こなた「ふん、それでいい」 キョン「(コイツはアイツ以上に厄介かもしれん…)」 こなた「ねえ…」 キョン「なんだ?」 こなた「この問題教えて~」 キョン「もう、これで五回目なんだが」 こなた「だって、わからないんだもん…」 キョン「げっ、これ演習問題じゃねーか、俺に解けるのか?」 こなた「とにかくやってみてよ」 キョン「仕方ないな…元々やると言ったのは俺だしな」 こなた「そうそう(=ω=.)」 数分後… キョン「あ゛ー、ダメだ!もう、考えられん!」 こなた「やっぱ共倒れか」 キョン「『やっぱ』って何だよ!予想してたのか?」 こなた「これはやはり答えを見るしなさそうだネ」 キョン「…いつになったら終わるんだよ?」 こなた「今夜は寝かせないヨ☆」 キョン「何だよ語尾の 『☆』は!」 キョン「もう七時か、なんか腹減ってきたな…」 こなた「折角だし、家でご飯食べていってヨ」 キョン「そうだな、頂くとするか」 こなた「はい、どうぞ!」 っξ キョン「早っ!て、チョココロネ?」 こなた「一応フラグたってたし」 キョン「作者の都合なんぞ聞いてない!」 こなた「まあまあ、遠慮せずに食べてよ」 キョン「…わかったよ、食うさ、頂きま…」 こなた「=ω=.)じーっ」 キョン「あの、食べにくいんですけど…」 こなた「キミがチョココロネをどうやって食べるか知りたいんだよネ」 キョン「普通にチョコが見えてる広いところから食べるが、何か?」 こなた「普通過ぎてつまんない!もっと変わった食べ方にしなさい!」 キョン「お前も何処かの誰かさんと同じような事言うんだな…」 こなた「ともかく、それ食べ終わったら次日本史だから、よろしく頼むヨ」 キョン「へいへい、わかりましたよ…」 キョン「じゃあ、次日本史だな」 こなた「よろしく頼むぜ!」 キョン「…えっと、試験範囲は最初からヤマト政権までか」 こなた「一番厄介な古墳時代withヤマト政権からやろうっと」 キョン「何だそのアーティスト名みたいなノリは!」 数分後… こなた「全然わからないよう…」 キョン「ん、どれどれ? 『埼玉県の稲荷山古墳出土鉄剣銘と、熊本県の江田船山古墳出土鉄刀銘に記されているワカタケル大王は、日本書紀では何天皇とされているか』 …雄略天皇だな、少し勉強すりゃ分かるだろ?」 こなた「だって、日本史難しいんだもん…」 キョン「やれやれ、幸い、俺らの学校が使ってる教科書は詳しいからな、読むだけでも勉強になるぞ」 こなた「それが出来たらこうはなってないって…」 キョン「あと、氏姓制度のように役職名が沢山出てくる時はノートに関係図を書いて、まとめれば非常に分かりやすいと思うぞ」 こなた「ふむふむ、なるほど…」 (チク、タク、チク…) キョン「(げっ、もう九時過ぎてる)俺が言う事はもう無いな。じゃ、そろそろ帰らせてもらうぞ、じゃあな!」 ガタッ… こなた「待って!」 キョン「…?」 こなた「帰らないで…」 キョン「なんで引き止めるんだ?」 こなた「だって、その…ほら、もう、こんな時間でしょ?…だから、泊まっていかない?」 キョン「お前…」 こなた「…嫌だったら、嫌って言ってもいいんだヨ?」 キョン「分かった、泊まってってやるよ…」 こなた「…ありがと」 キョン「どういたしまして」 こなた「これで明日の試験は安心だぜぇぃd(=ω=.)」 キョン「ちょ、おま…」 こなた「ニヤニヤ(本当はちょっとうれしいんだけどネ…)」 お泊まり編 ピッ キョン「ふう、これでよしと…」 こなた「どこに電話かけてたの?」 キョン「あのなぁ、俺は今日お前ん家泊まるためにお袋に 『試験の成績どうにかしたいから、国木田の家に泊まる』 って嘘つかなきゃならなかったんだぞ」 こなた「そんな一々細かく言わなくても…」 キョン「何せ、こんなことは初めてだからな…」 こなた「まあ気楽にいこうヨ」 キョン「…(コイツと一緒に居て、気楽にしてられっかってーの)」 こなた「折角女の子と一夜を過ごすんだし」 キョン「その表現は大いに誤解を招くからやめろ…」 数時間後… こなた「ふぁ~。ねむくなってきた~」 キョン「流石にそろそろ寝ないと、学習が頭に定着しないぞ」 こなた「え~徹夜しようと思ったのに~」 キョン「毎回毎回それで試験に集中出来ないんじゃないか? それに、お前の場合いつの間にか遊んでるだろ」 こなた「ギクッ…」 キョン「まあ、徹夜は美容と健康にも良くない。早く寝た方がいい…」 こなた「…わかった。寝る…」 キョン「それでよし」 こなた「じゃあ服、頼むね」 キョン「へっ?…っておい!」 キィ バタンッ キョン「年頃の娘が男の前で着替えるなよ!!」 こなた「だってよけてもらうの面倒なんだもん…ふぁぁぁ…」 ガチャ、ポイッ キョン「うわっ今度はなんだ?」 こなた「…それ、洗濯かごの中に入れといてね」 キョン「…へいへい、わかりましたよ…」 キョン「…『もってけ!セーラー服』とな」 キョン「ほら、洗濯物は持っていってやったぞ」 こなた「キミは一応居候の身なんだから、言葉を慎まないとダメだヨ」 キョン「…只今戻りました。如何致しましょう?」 こなた「そこまでする必要はないけどね…」 キョン「にしても、泊まるって言ったって、俺寝る場所ないな」 こなた「ここでいいでしょ…」 キョン「だって、ベッドは1つしかないし」 こなた「男は床で寝ろ(=ω=.)」 キョン「まあ、そうなるな」 こなた「あっ、で、でも、言ってみたかっただけだから… ベッドの半分使っても…いいよ…」 キョン「ん、何か言ったか?」 こなた「…このぉ鈍感フラグクラッシャーめ!」 ポカ、バキッ、グシャ キョン「痛い、痛いから止めろって、骨折れるから!」 こなた「…ふぅ、もう一回同じ事言うからちゃんと聞いてヨ…」 キョン「『ベッドの半分使ってもいいよ』てか?」 こなた「えっ…」 つづく!
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「よくやるな………」 「ホント………」 両手にアニメグッズが入った袋を持たされたオレの疲れ切った呟きに、同じくオレと同じ荷物を両手に持された柊かがみが疲れ切った顔で頷いた。 恐らくこなたはオレ達の前にそびえる建物内で、嬉々としてアニメグッズを狩っている事だろう。 クソー!何でオレが見ず知らずのヤツと……こなたのヤツ、覚えてろよ!! 「ねぇ、アスカくん」 「…なんだよ?」 恐らく待ちくたびれたのだろう。 ここまで駅から一度もオレに話しかけて来なかった、柊かがみが話しかけて来た。 「こなたとは、どうやって知り合ったの?」 「…………」 「アスカくんって学校に通うの?」 「…………」 「前はどこに住んでたの?海外?」 「…そんなこと聞いてどうするんだよ?」 「え?……そ、その……ど、どうするって………」 オレが睨み付けると柊かがみはしどろもどろになった。 「興味本位だけで人の事、聞くなよ!」 「ご、ごめん………」 オレと柊かがみの会話はそれで打ち切りとなった。 ダメだ、何を話してもこいつ怒る気がする………。 あ~もう、こなた早く帰ってきなさいよ! 仕方ない携帯で……… 「げっ!」 私は携帯に映ってる時間を見て、思わず声を出した。 今から帰ったとしても門限過ぎるし……… ヤバっ、家に電話しなきゃ! 私は時間潰しも兼ねて家に電話をかけた。 『はい、柊ですけど~』 「あ、つかさ?私。 あのね、門限に帰れそうにないから、お母さんに伝えといてくれる?」 『うん、わかった……え?なに、お母さん…………』 近くにお母さんがいるらしく、つかさが受話器から離れる。 『もしもし、お姉ちゃん?』 「はいはい。何?」 『あのね、お母さんが今から言う物を買って来て欲しいって』 「わかったわ。で何を買って帰ったらいいの?」 「今の電話相手、妹か何かか?」 「そ、そうだけど………」 つかさとの電話が終わると、アスカが私に話しかけて来た。 まさか、あっちから話しかけて来るなんて………。 「…妹大事か?」 「…何でそんな事あなたに言わなきゃなんないのよ?」 「いいから、答えろよ!!」 「いい加減にしなさいよ!!」 アスカの怒鳴りに、私も怒鳴り返す。 高圧的なアスカの態度にさすがに私の堪忍袋の緒が切れた。 今まで、ちょっと睨んだだけで謝る様なヤツが、いきなりが怒鳴り返して来た事にオレは少なからず驚いた。 「さっきから何、あんた? 自分の事は聞くなって言っといて、他人には答えろ? 初対面だから下手に出てたら、調子に乗るんじゃないわよ!!」 コイツ、さっきまで猫被ってたな……性格が全然違うぞ………。 そんなことを思っている間にも柊かがみの攻撃は続く。 「だいたい、なんで妹って聞くと反応するのよ!? こなたに近付いたといい、まさかあんたロリコン!?」 「オイ」 柊かがみの指摘に青筋をたてるオレ。 そっちこそ、ちょっと黙ってれば好き放題……… 「でも、残念でしたー!つかさは私の双子の妹! 私とあんたと同い年だし、背も平均身長くらいあるし、あんたの趣味の対象外!!」 「アンタ………」 「なによ!?」 「妹のこと話してるぞ」 「え?あっ……し、しまった!……」 頭を抱える柊かがみ。 表情がよく変わるヤツだな。 さすがこなたの知り合い、どっか変わってるな。 「ちょっと!なにニヤけてんのよ!?」 「え?」 言われて気がついた……オレが初対面の相手に笑ってる事に………。 「アンタの百面相を見ると誰でも笑うだろ」 さっきと違い、今度は皮肉たっぷりの笑顔のアスカ。 …どうやら私は笑われているらしい。 「なんです――」 「オレにも、妹がいたんだ」 「え………?」 突然のアスカの言葉に一瞬、私の動きが止まる。 「…いた?」 少しの間があって私は口を開く。 「ああ……もういないけどな」 「………ごめん」 だから、アスカは『妹』というのに過剰ともいえる反応をしたのか………。 そして、瞳に宿る哀しみは恐らくその事が理由なんだろう。 「言っとくけど、同情をしてもらう為にこんなこと話したんじゃないからな。 アンタが勝手に自爆して、妹の事話すからこっちも話さなくなっただけだし」 「…わかってるわよ……でも、ごめんなさい………」 私がもし万が一、つかさを亡くしても、アスカと同じ事をいうと思う。 そんな事されても、掛け替えのない人は2度と戻って来ないのだから………。 「な、なに泣いてるんだよ!?アンタ!?」 「え?」 言われて気がついた……自分が泣いている事に………。 哀れんだ目でオレを見る、あるいは怒るというのを予想していたが、まさか泣かれるとは思ってなかった………。 オレの言葉に泣いたんではないだろうし……とすると………。 「なあ、大事か?」 「え?」 「妹の事」 オレはさっきと同じ質問を柊かがみにする。 「当たり前でしょ!!」 間髪入れず返ってきた答えにオレは理解した。 柊かがみは自分とオレと境遇重ね合わせて泣いた事に。 …コイツ見た目以上にお人好しだな……まあ、優しいと言うかもしれないけど。 「じゃあ、それでいい」 「え?」 「答えを聞いたから、もう貸し借りなしでいいぜ」 また泣かれても困るから、オレは出来るだけ自分を抑えて柊かがみに声をかける。 「…そ、そう言うことにしといてあげるわよ」 柊かがみの強気な態度にオレは思わず目を見開ける。 さっきまで泣いてただろ………。 「…アンタ、意地っ張りだな」 「お互い様でしょ?」 オレ達2人はしばしば睨みあい、やがてそっぽを向いた。 それで会話は完全に終了となった。 だがオレは、柊かがみといる事が苦痛ではなくなっていた。 「大丈夫?持てる?」 「まあ、これくらいなら大丈夫だ」 私とこなた達はこの駅で別れる為、私が持たされていた荷物を渡すのだが………。 「シンはこれくらい余裕ですよ。かがみんにはそれが解らないのですよ!」 自分が持つわけでもないのに胸を張るこなた。 『お前が言うな!!』 「…な、なんというシンクロ………。 これは、お二人さんフラグたちましたな」 ニヤリと笑うこなた。 「…フラグって、あれかこなたがよくやってる………」 「…でしょうね………。 ホントにくだらんことだけは考えつくんだから………」 「…アンタ、こんなのと、よく付き合ってたな………」 「これからあんたも付き合うことになるから………」 私達は小声で話し合った後、互いに溜め息をついた。 「じゃかがみー、バイニー☆」 「明日遅刻すんなよ」 「わかってるって♪」 袋の中を見ながら、軽く返事をするこなた……絶対明日遅刻するな……こいつ。 「じゃあねこなた、後シンも」 私に挨拶されると思ってなかったのか、ちょっと驚いた顔をするシン。 「あ、ああ……またな」 「うん、またね!」 私はシンに手を振るとくるりと周り自分の乗る電車が来るホームへと向かう。 こなたのお守りだけでも大変なのに、またおかしなやつと知り合いになってしまった……ホント勘弁してほしいわね。 そう思いながらも、私の口元からは自然と笑みがこぼれていた。 『ファーストコンタクト』かがみ編 ~END~ 前 戻る 次
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SHINKI/NEAR TO YOU Phase02-4 gavotte 「ヒューマノイド・インタフェイス?」 「そう。人によって呼び方は様々だが、ようは人体を模した駆動義体の総称さ」 現在の2030年代に入ってから、人は様々なロボットを実用化してきた。 武装神姫もそうしたロボット開発の中で創り出された、人のパートナーとしてのアンドロイドの一種だ。 武装神姫は日常生活におけるマスコットとしての要求から、その大きさは14から15センチとなった。その一方、医療における義肢・義体の研究、純粋労働力としての可能性の研究としてのロボット開発も行われていた。駆動義体とは、そうした目的で作られた人体、もしくはその部分的な要素を模した機器のことを指す。 「でも、等身大の駆動義体なんて存在するのかしら?」 ふたり仲良く首を傾げる伊吹に、神楽さんがちっちっちっと舌を鳴らす。 「何だってアンダーグランド……裏社会は存在するものさ。表向きにはないとされているものが、本当に存在しないとは限らないのだよ?」 神楽さんの話によると、一般レベルでは様々な法・倫理的な問題で人間大のアンドロイドは実在しないとされている。が、裏の社会ではすでにそういったものの開発に成功しているらしい。 驚くシュンたちだが「考えてもみたまえ。全高15センチのオート・マタが存在するんだ。だとしたら、それを等身大にしたものが開発されていても、何ら不思議なことはないだろう?」と神楽さんに言われると、なんとなく納得できる。 確かにたった全高15センチほどで、あれだけの機能を備えた武装神姫がすでにいるんだ。むしろ、技術的な面で言えば人間を模したロボットを作るなら、人間と同じ大きさの方がいろいろと面倒がないんじゃないか? 「早い話、そういうことだよ。実験目的、研究開発、または趣味嗜好などなど……アングラなところでは様々な需要があるのだよ」 具体的にはどんな?――試しにシュンが聞くと、神楽さんは「君は知らなくてもいいことだよ」といい笑顔で返された。 みんなの方を向くと「シュッちゃんにはまだ早いわよ」と伊吹にいい笑顔で肩を叩かれた。 「いや、待てよ? 何かすっげー気になるんですけど……」 「…………えいっ」 「イタタタタッ!? ちょっ……足っ、足踏まれてるんですけど、伊吹さん!? つーか本気でいたっ……痛い、痛いってのっ!?」 耕一とチカが苦笑する。なんかその心配する表情がグサッとくるのは何故だ? 「ま、戯れるおふたりはそっと無視しておくとして……そのヒューマノイド・インタフェイスというものを使えば、チカさんが本物のヴァイオリンを弾くことは可能なのですね?」 「そうさ。しかし何ぶん非合法……げふっげふん。あ~、あまり良い子のみんなはまねをしてはいけないよ的な代物なので、いくつか制限がある」 神楽さんは指をひとつ立てる。 「まず、このことに関しては他言無用とすること。ここに集まったメンバ以外には、秘密を厳守してもらう。これは君たちのためでもある、絶対に他には喋ってくれるなよ」 ふたつ目の指。 「ひとつ目から分かると思うが、この方法での演奏を一般人の前で行うものNGだ。あくまでも必要最低限の関係者だけを集めた……まあ、ごく内輪でのリサイタルということになるね」 みっつ目。 「この方法ができるのは、今回一回のみだ。……別にバトル前に言っていたことは、ハッタリという訳ではないのさ。調達できたといっても、引っ張り出す名目をでっち上げて今回限りという取り決めとなっている。つまり――」 そこで神楽さんは耕一とチカを見て、ニヤリと笑った。 「あとから、あの時やっぱり本物のヴァイオリンを弾いておけばよかった……なんて後悔の念を抱いても、残念ながらもう協力はできないよ?」 ギョッとした顔でみんながチカを見た。 みなの見つめる先で、チカは驚いた眼差しを神楽さんに向ける。 「そんな……いえ、そういうことじゃなくて……。でも……」 「チカさん、あなた自身が疑問に思ってしまっているのではないのですか?」 今まで黙っていたゼリスが、ゆっくりと口を開く。 「本物のヴァイオリンを弾くことが、本当に自分の音色を見つけることになるのだろうか――と」 ゼリスの言葉に、ビクリとチカが肩を振るわせる。 「本当はもう気づいているのでは? ――本物のヴァイオリンがなくとも、あなたの創るべき音色は、その胸の内にあるということに」 チカがギュッと自分の胸に手を当てる。そこに息づくもの――神姫の感情中枢たる機関〝CSC〝。そこから紡がれる彼女の心――自らのマスターを想う気持ち。 「例え私たちの手足が人を機械的に模した縮小に過ぎないとしても、ヴェイオリンの音が電子的に再現された複製に過ぎないとしても、それを奏でるあなた自身――CSCから産まれる私たちの感情は、心は。まぎれもない私たちの――あなた自身の本当の想いです」 「私自身の――想い」 ポツリとチカが呟いた。 ――それはとても大切なもの。でも、それが実際何なのかは分からない、見えないもの。 だから、みんな勘違いしたのだ。 ――それは人間だって、自分自身のことだって、何かと問われれば明確な答えなど返せない。すごくあやふやなもの。 チカ自身も勘違いしていたこと、手段と目的を取り違えていたことに。 ――心。 それにゼリスは気づいていたのだ。そのために独りで反対したり、ワザと邪魔をしてみせたりしたのだ。 すべては本当に大切なことを気づいてもらうために。 ――それは、確かに誰もが持っている。人も、神姫だって。 ゼリスは最初からチカのことを、同じ立場の親友として、誰よりも心配していたんだ。 「大切なのは、弾く楽器ではなく、誰かを想って音楽を奏でるあなた自身です。あなたは、あなたの音色を奏でればいいのですよ」 ゼリスはチカの肩に手を置き、瞳を真っ直ぐに見つめた。その彼女の瞳、朝露に濡れた新緑のようなそれは、優しい色。 「私は……」 チカがその唇から、言葉を搾り出す。彼女の小さな体の中では、様々な葛藤が駆け巡っているのだろう。 「そのくらいにしておきたまえよ、ゼリス君。その先は彼女が一番良く分かっているはずさ。後は彼女自身の問題だよ」 ぐるりと神楽さんが一堂を仰いだ。 この場にいる誰もが、温かい目でチカを見守っていた。 チカがどんな答えを出そうと、誰もがそれを肯定する……と。 「さあ、命題だ。仮初の人の身を得、真のヴァイオリンという名のイコンを求むるか、否か――。君はどちらを選ぶんだい?」 悩める少女は、側らに立つ、最も大切な人の顔を仰いだ。 そこにあるのは、彼女の大好きな優しい笑顔。どんな答えを出そうとも、その意思を尊重する。彼女を認めると言っていた。 それに勇気付けられ、チカは静かに口を開いた。 「私は――」 ♪♪♪ 開幕。 シックな装いに身を包んだ彼女を、燕尾服を着込んだ少年が付き添う。 優しく差し伸べられた手を、白い小さな両手で大切に包む。 招かれた場所は、とある屋敷の一室。 観客は少年少女とふたりの人形、黒い影法師。 彼らに囲まれて、車椅子に佇むひとりの老紳士。 五人は彼女に勇気と奇跡をくれた、魔法使い。 老紳士は大切な家族。彼女の隣に立つ少年にとっては師。 彼女にとって、音の素晴らしさを教えてくれた恩師。 緊張した彼女を察して、隣に立つ少年が笑む。 優しい笑顔、大好きな笑顔。それだけで体を包む緊張という鎖から解き放たれていくのを、彼女はその身に感じた。 彼女を想い集まってくれた人たちへ、今日という日を与えてくれた喜びに、感謝を込めて。 少年がタクトを取り出し、少女はヴェイオリンを手に取る。 それは今宵一夜限りの。 慎ましやかで温かな、彼と彼女の音色のリサイタル――。 ♪♪♪ 六月といえば梅雨だ。先週までの雨も途絶え、今週の日曜は朝から暖かな日差し。 梅雨前線と高気圧のおしくら饅頭も、どうやら軍配が上がるのはもうすぐそこだ。 「今年の夏は暑くなるかなぁ~」 「そうですね。記録的な事例から、空梅雨のあとは猛暑が訪れる確率が高いと言えます」 だかだらとベットに横になりながら、なんとなしのシュンの独り言に、机の上から返事が返ってくる。 どうやらゼリスはシュンの机の上に陣取っての、ネットサーフィンの最中らしい。 「ぢゃんぢゃぢゃ~ん、優ちゃん登場!」 ガチャリとドアが開き、妹の優が部屋に入ってきた。 そのままニコニコ、ささっと机に向かい「何してるの?」とゼリスに話しかける。 わいのわいのと今度は優も一緒になって、ふたりはキーボードをカチャカチャしだした。 「お前ら、人の部屋に勝手に入ってきて騒ぐなよ……」 無駄だと分かっての投げ槍な講義は、キャアキャア騒ぐふたりに黙殺される。 シュンは読んでいた雑誌を放り出して、ベットに身を投げ出した。 あ~あ。日曜の朝から騒がしいヤツらめ。 「あっ、新着メールが届いてる。差出人は……チカちゃん?」 「そのようですね」 その遣り取りにシュンはハッとベットから身を起した。 あの一見以来、耕一たちとはまだ一度も連絡を取っていなかった。今ふたりはどうしてるんだろう? 「……ふむ。おふたりともあれから元気にしていらっしゃるようですね。耕一さんの音楽の修養の方も、チカさんのヴァイオリンの方も、順調に励んでいらっしゃるようです」 「そうなのか?」 シュンも優の後ろから、PCモニタを覗き込む。三人一緒になって同じ画面を覗きながら、ゼリスが文面を読み上げる。 「それで……ほう。おふたりは今度ヨーロッパに旅立たれるそうですね」 「ヨーロッパ?」 「はい。どうやら本格的に音楽の勉強をするために、耕一さんが留学なさるそうです。それにチカさんも一緒なさるそうです」 モニタに映し出された文章では、以前から海外留学の話があり悩んでいたが、最近になってやっと決心がついたので、ふたりで欧州に旅立つことにした事。向こうでもお互いに支えあって頑張ることなどがしとやかな文面で綴られ、最後に『しばらく逢えなくなってしまうけど、帰ってきたら必ずまたみなさんをヴァイオリン演奏にご招待致します』と締めくくられていた。 「そっか……ふたりとも頑張ってるんだな」 シュンの言葉に、ゼリスがこくんと頷いた。 あの日見た、ふたりの互いに寄り添う姿。きっとふたりなら遠い異国の地だって、うまくやっていけるに違いない。 感慨深げに目蓋を閉じるシュンとゼリスに、ひとり優だけが憮然とした顔をする。 「チカちゃんって、前に家にやってきたヴァイオリンの神姫だよね? そういえば、私だけあの後何があったか聞いてない。私だけ仲間はずれ~えっ! 結局チカちゃんは本物のヴァイオリンを弾けたの?」 優がぷっくり頬を膨らませる。シュンは苦笑しながら優の頭をポンポン叩く。 「別に仲間はずれにしてないっての。あの後なあ……」 と、そのとき聞きなれたメロディがどこからともなく聞こえてきた。開けっ放しのドアから、優の部屋の細工時計が10時を告げる音色を運んできたのだ。 「あ――っ!? もうこんな時間。黒猫キッドが始まっちゃうよ~っ」 「うわっと?」 いきなり優は奇声を上げると、椅子の上でピーンッと飛び上がり、大急ぎでリビングへと駆けていく。 ……そんなに慌てるほど大事か、黒猫キッド。 「ふう、慌てて階段から転げ落ちるなよ……」 やれやれとシュンが椅子にかけると、ゼリスがジッとモニタを見つめていた。 やっぱりゼリスなりに、親友の旅立ちを想っているのか。あるいは、ひょっとしたら寂しさを感じてるのかも知れない。 「ゼリス……」 シュンが声をかけると、ゼリスはこちらを振り返り、そのままシュンの頭に飛び乗った。 「ほら、シュン。急がないと今週の黒猫キッドを見逃してしまいますよ」 「はいはい、了解~」 ったく。少しはしおらしいところもあるんじゃないかと思ったら、すぐこれだ。 まあ、しおらしい態度なんかされたら、それはそれで調子が狂っちゃうけどな。 ゼリスを頭に乗せ立ち上がりながら、シュンは窓の外に目を向ける。 いつも道理の日曜の午前、雨の恵みによって芽吹いた新緑を、爽やかな青空が照らしていた。 FINE & ……To be continued Next Phase. ▲BACK///NEXT▼ 戻る
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【検索用 わたしのなかのあなたかすき 登録タグ 2022年 CeVIO わ 可不 曲 曲わ 駄菓子O型】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:駄菓子O型 作曲:駄菓子O型 編曲:駄菓子O型 唄:可不 曲紹介 地雷カワイイ感じの曲を書きました! あなたはいま誰か好きな人いますか? 曲名:『わたしの中のあなたが好き』(わたしのなかのあなたがすき) 歌詞 (noteより転載) (ちゅるりらりれりるりるりるら) (ちゅるりらりれりるりるりるら) あなたが今 何を思って 何に傷ついて 何に喜んで いようがいまいが関係はない わたしはあなたが好きなだけなの わたしの中のあなたが好き ほんとのあなたに興味はないよ わたしの中のあなたが好き あなたの気持ちはどうでも良いの あなたが好きなわたしが好き あなたである意味も実はないよ あなたが好きなわたしが好き よく似たほかの誰かでも良いの 雲の隙間が それを選んで そこにいたってだけで そこに微笑んで いたのが理由で運命とかない わたしはあなたが好きなだけ だからごめんねって そうだよね あなたのこころの奥底の 誰にも見せない静かな線を わたしが響かせられたなら 恐らくその声は美しいの あなたの中のミュージアムの 誰も気づかない油絵展を わたしが近くで見られたら 邪魔されずにただ向きあいたいの わたしの中のあなたが好き ほんとのあなたにもう会えないよ わたしの中のあなたが好き あなたの気持ちはただ虚しいの あなたが好きなわたしが好き 好き わたしが好き あなたが好きなわたしが好き わたしはわたしを好きだったの コメント 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
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「あなたと過ごす季節(pure ed.)」(オリジナル)を初音ミクに歌わせてみた旧 http //www.nicovideo.jp/watch/sm1334607 http //www.nicovideo.jp/watch/sm1334607 Vocaloid2のオリジナル曲 使用Vocaloidは初音ミク 製作者はchiffonP 一つ前のページにもどる
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元スレURL 歩夢「大切なあなたへ」 概要 あなたがスクドルたちのサポートに専念するのはある事情が… それが両者の溝を生んでいき… タグ ^上原歩夢 ^あなた ^虹ヶ咲 ^シリアス ^感動 名前 コメント
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【検索用 ねむるあなたのてをにきって 登録タグ SONIKA 2013年 VOCALOID ね 曲 曲な (бεб)P】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:(бεб)P 作曲:(бεб)P 編曲:(бεб)P 唄:SONIKA 曲紹介 愛する人との別れがテーマです。 恋人か、友人か、家族か・・・愛する人を思い浮かべて聞いてください。 曲名:『眠るあなたの手を握って』(ねむるあなたのてをにぎって) 歌詞 (piaproより転載) 目を閉じたあなたのその頬に ひと雫 流れる涙 掌に伝わる温もりが 儚く消えてゆく前に 「愛してる」なんて要らないから 握り締めた手を 握り返してよ 「永遠に」なんて言わないから いつもの笑顔で 笑いかけてよ ひとつだけ 願いが叶うなら 何もかも無くしてもいい あなたさえいるなら それでいい そんな事 祈ってばかり 「愛してる」なんて要らないから 瞳を開いて 私を見てよ 「永遠に」なんて言わないから 私の名前を呼んで欲しいの 「愛してる」なんて要らないから 溢れる涙を そっと拭ってよ 「永遠に」なんて言わないから 涙乾くまで 側にいさせて 「愛してる」なんて言わなくても あなたの想いは届いているよ 永遠に忘れはしないから あなたが私の側にいた事 コメント 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
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***** 私は恐れていた。 同性愛者として、世の中からどのような目で見られるのか…その視線を恐れた。 恋をすることなく、普通に生きることに退屈さを感じながら、 「普通」からはみ出し、 「みんな」から違ってしまい、 「異端」として罵られることを。 好奇と嫌悪の目に見られることを恐れていた。 あれから…曜子との関係は続いている。 但し、二人きりで逢うのは、一週間で一度だけ。 曜日は決まっていない。 私から誘うことはない。 でも彼女に誘われたら私は断らなかった。 その日が無理なら別の日に必ず二人で逢うことにした。 再会したあの日と同じように、レストランで食事をし、ホテルのバーでお酒を飲み、夜を明かした。 周囲から見れば仲のよい友人にしか見えなかっただろう。 曜子は私にまとわりつくような行為は一切取らなかった。 困らせるようなことは何もしない。 逢うのは必ず一週間に一度。 メールも電話も必要最低限。 どこに行きたいとも、言わない。 逢うのはいつも同じレストラン、ホテル。 彼のことをとやかく言うような愚かなことも何一つしなかった。 それが却って不気味だった。 私は曜子の手のひらの上でもて遊ばれているようだった。 ゆっくりと、しかし確実に絡めとられてゆく。 そうして彼女から離れられないようにさせられていった。 私はいつのまにか、曜子から連絡が来るのを、彼女に逢う日を、心待ちにするようになっていた。 私は曜子に恋をしていたのだろうか? 未だに恋とは何かわかりかねている私にとって、 そのときの自分の心の動きを恋と名付けてよいものかどうか判別できなかった。 もし私が曜子に恋をしているのだとしたら、長年の疑問に答えを出すことができる。私が今まで恋をしなかったのは…相手を男性に限定して考えていたからだ、と。 けれどそれは私にとって恐るべき真実だった。 恋を知らぬこと以上に、世間から白眼視されることの方が、 私にはよほど恐怖だった。 だから私は真実をねじ曲げ、奥底に押し込めようとした。 「ねえ澪。私、あなたの彼に会いたいわ」 ある日、曜子の口から、恐れていたひと言が漏れた。 「やあね、そんな引きつった顔をして。何もしやしないわよ」 曜子はカラカラと笑った。私は嫌だと断った。 「嫌ならいいわ。その代わりもう澪とは二度と逢わない」 私は押し切られるようにして、二人を引き合わせた。 彼は、私と曜子の偶然の再会を興味深く聞き入って相づちを打った。 へえ、そんな偶然もあるものなんだね、と。 昔から仲が良かったの?と聞く彼に、曜子は笑顔で答えた。 「そうなんです。私たち、高校時代親友だったんですよ」 「でも大学が別々になってから連絡が途絶えちゃって…再会できたのは運命なのかもしれませんね」 「最近よく澪には付き合ってもらってるんです…私、澪のことが大好きなんです」 そういって曜子は私の方を見た。 その表情にはいつも通り蠱惑的な笑みが浮かんでいた。 彼は私の高校時代を知らない。 昔、音楽をやっていたこと、女子高にいたことくらいしか知らない。 唯のことも、ムギのことも、梓のことも、そして、 律のことも、知らない。 曜子と私が高校時代親友だったと言われて信じてしまうくらい、 彼は私のことを知らない。 その日の晩。曜子から電話がかかってきた。 シャワーを浴び終えたばかりだった私は、慌てて電話を取ると、職場から呼び出されたと嘘をつき、まだ湿っている髪もそのままに彼のアパートを飛び出した。 曜子は私のアパートの前に立っていた。 「ごめんね、急に」 「困るよ」 私は不愉快な感情を隠さなかった。 曜子がこんな行動を取るのは初めてだった。 私は今まで私が築いてきた「普通」の生活が揺らぎ始めていることに恐れを感じていた。 「あら、髪、湿っているじゃない」 「いいよ、そんなこと、どうでも」 「よくないわ、風邪ひくわよ。冬だもの。1月よ、今」 「そんなことどうだっていいって言ってるだろ。なんで急に電話なんてしてきたんだ」 「何を怖がっているのよ」 「何も怖がってない」 「怖がっているわ」 「怖がってない!」 「大きな声を出さないで…取りあえず中に入れて。いいでしょ?」 扉をあけて、私が先に部屋に入る。 私について部屋に入った曜子は後ろにまわして右手で鍵を締めた。 「ねえ、澪」 後ろから声をかけられて振り向くと、不意をつかれて唇を奪われた。 「キス、したくなっちゃったから♪」 「やめろよ、そういうことするの」 「あら、何言ってるの?こういうことするの、大好きなくせに」 「バカなこと言うな」 「何怒ってるのよ。本当なら澪が私に怒られなきゃいけないところよ」 「なんで私が怒られなきゃならないんだよ」 「私は今日一日、恋人が別の男といちゃつく様子を見せられていたのよ、 つらかったわ。とてもつらかった」 「お前が会わせろって言ったんじゃないか!」 「そうよ。でもいざ会うと、やっぱりつらいものよ」 「勝手だな」 「勝手よ。でも恋ってそういうものじゃない」 「私にはわからない」 「そうね、澪にはわからないわ。嘘ばっかりついてる澪にはね」 「私は嘘なんてついてない」 「そうね、澪は正直なところもあるわ。だって私の誘いを絶対に断らないもの」 「…それは」 「認めたくないの? そうよねずっとそうやって大事なときに嘘をついて、 自分を偽って、逃げるのね。 『まとも』じゃなくなくなっちゃうのが怖いんでしょ? 無理よ、あなた。もう『まとも』じゃなくなっちゃっているわ。 今更なによ。 昔からずっと、あなたは嘘ばっかり。 そしてこれからも嘘をつき続けるの。 『まともな』フリをし続けるためにね」 「…何が言いたいんだ」 「本当にわからないの?」 「わからない」 「結婚するんでしょ、あの男と」 「…聞いたのか」 「聞いたわ。あなたが席を外した時にね。喜んでいたわよ、彼」 「…」 私はため息をついて、ソファに座り込んだ。 曜子はコートも脱がず立ったまま、私を見下ろしている。 「隠していたわけじゃない。そのうち言おうと思っていたんだ」 「別に私、そんなこと気にしないわよ。澪が結婚しようが、しまいが」 「…そうなのか?」 「関係ないわよ。だって私、澪と結婚したいわけじゃないもの」 「それに結婚してもしなくても… どうせ澪は私を捨てるわ」 「…そんなことは」 「あら、本当? じゃあ一生、私の側にいてくれる?」 「…」 何も言い返すことができなかった。曜子はいつものように私の瞳を見て、言った。 「うそつき」 「…用事はなんなんだ。呼び出したんだから何かあるんだろ?」 私は話題を変えた。こんな話をするために、呼び出したんじゃないだろう。 「来てくれて嬉しい、本当に嬉しいわ。 少なくともあの男よりは私のことを愛していてくれるのね」 それともなにかしら。 私があなたたちの『しあわせな結婚』を邪魔するとでも思った? それで必死になって駆けつけたのかしら?」 「本気で怒るぞ」 「怒りなさいよ。 澪、あなたには本気で私を怒ったりなんてできないわ。 だってあなた、私を愛していないもの。 愛していないことに後ろめたさを感じているわ。 欲望に溺れてただそれを目当てに私と付き合っていることに、 罪の意識を感じているでしょう。違う?」 私は我慢ができずに曜子の頬をはたいた。 乾いた音がして、彼女の横顔が赤く腫れた。 「あら。少しはかっこいいこともできるのね」 「…バカにするな」 「ついでだから、もう一つ教えてあげるわ。 私ね、言っちゃった♪」 曜子はたのしそうに、本当にたのしそうに笑って言った。 「あなたの彼にね、『私は澪と付き合っているんです』って♪」 「な…」 「最初はね、理解できなかったみたい。 だからね…丁寧に説明してあげたの。 私と澪が、どれだけ逢瀬を重ねているか… どれだけ互いを求めあっているのか…。 ウフフ…傷ついてたみたいね~♪自分の婚約者が浮気してた…しかも『女』と」 私は何も言い返すことができない。 「あら?もしかしてまったく気づいてなかったの? さっきまで彼と一緒にいたんじゃなかったの?」 いたさ。でも…わからなかった。私の目にはいつもと変わらないように見えた。 「あらあら…澪ったら、本当に彼のこと、何一つ見ていないのね。 どうなっちゃうのかしらね?あなたたち。 結婚、ダメになっちゃうかもね」 音を立てて崩れていく。 大切なものを代償にして、手に入れたいと願った『まともな』人生が。 「アハハ、いい気味よ。罰が当たったのよ」 曜子の甲高い笑い声が、部屋中に響いた。 「澪、あなたはこれまで一体、どれだけ多くの人を傷つけてきたのかしら?これはね、その報いよ」 私の目を強く見据えて、言い放つ。 「あなたは、きっと誰にも愛されない。 目の前の相手を愛したフリだけして…それが嘘って気づいたとき、 相手がどれだけ傷つくと思う? ずっと嘘をついて、たくさんの人を傷つけて… どれだけ罪を犯したかわかっているの? それなのにまるで純粋無垢なフリをして、 これからも嘘をつき続けて…『まともに』生きていこうなんて…」 『わたしはぜったいゆるさない』 今まで必死で守ろうとしてきたことが、全て壊されてしまった。 恋を知らず、そして「まともに」生きていくことも叶わず。 「でもね澪。私はそんなあなたが大好きよ。愛しているわ、澪」 曜子は私を…自分から離れられなくしようとしているのだと思った。 私はもう、それでもいいような気がしていた。 「まともに」生きていくことができないのなら、曜子と生きてもいいように思えた。彼女なら…彼女だけは、私を愛してくれる。 誰か一人でも私を必要としてくれたなら、それだけで私は生きていける。 「だからね、あなたのことが大好きだから…今日はね、どうしても伝えたいことがあったの」 「私たち、別れましょうか」 「澪に逢うのはこれで最期。もうあなたの前には現れないわ」 「なんで…私が結婚するからか…?」 「ううん」 「じゃあなんで…」 「傷つけてやりたかったからよ」 「なんで…なんでそんな…」 「私だけは、あなたのことを愛していると思った?」 「……」 「そうよ。愛しているわ、澪。 だからあなたと別れるのよ、あなたのためよ。 狂ってしまいなさいよ、外れてしまいなさいよ。 『まともに』生きようなんて…あなたには無理なのよ。 恋をしたらね、狂ってしまうの。 澪、あなたはずっと、恋をしていたでしょう? 狂っていたのよ。それなのに本心を閉じ込めた。 だからあなたの恋心はいびつに歪んでしまった。 そうやって苦しんでるあなたを見ているの…ツラかったわ。 だからなんとかしてあげたかった。 無理をするのはやめなよ…そんなのちっとも『まとも』じゃないわ。 私はね、傲慢なことを言うようだけど、これが私の役目だと思っているの。 あなたのこと、大好きだから。愛しているから。 澪を愛している私だから、あなたを縛り付ける鎖から解き放ってあげなきゃいけないって思っているの。 素直に、なりなよ」 曜子の瞳は赤く潤んでいた。 彼女が泣くの見るのは、はじめてのことだった。 「ねえ、澪。 少しは…ほんの少しくらいは…私のこと、好きだった?」 「…………ああ」 「そう。ありがと。 でも…『好き』って言葉に出して言ってはくれないのね」 私は自分でどうにもならないくらい残酷らしい。 いつも嘘ばかりついているくせに、なんで肝心なときに…やさしい嘘をつくことくらいできないのだろう。 「わかってるわ。私は澪を抱くことを、澪は私に抱かれることだけを望んだ。 ただそれだけの関係でしょ。それも今日でおしまい」 「…ごめん」 「いいのよ。私が澪をそうしたんだから。 …こうしてね、まだ澪が私に抱かれたいと思ってくれているうちに、 澪の身体が私を覚えているうちに、別れを告げようと思っていたの。 それに…あなたを傷つけてやりたかったの。 そうすれば、澪は私のことを覚えていてくれる。 ずっと忘れずにいてくれる。 忘れられるのは悲しいもの。高校生のときみたいに。 今日だって、呼び出せば必ず澪はやってくるってわかってた。 あなた、ホントにエッチなんだから」 曜子は笑った。 でもその瞳にはいつものように私を惑わせる光は宿っていなかった。 「私…こうして澪のこと…『秋山さん』じゃなくて『澪』って下の名前で呼ぶことができるだけで…本当に幸せだったわ。 ありがとう、澪」 「ありがとう、曜子。曜子に逢えて、私、よかった」 「うそつき。あなたのうそにはもう、うんざりだわ」 そう言いながら言葉とは裏腹に、曜子はフッとほほえんだ。 そして、スッと手を伸ばし、私の二の腕を掴んだ。 「ほら、行くわよ」 「え?どこに!?」 「決まってるじゃない。 桜ヶ丘に帰るのよ」 「はぁ!?何で?!」 「はいこれ、高速バスのチケット」 「おい!いつの間にこんなもの…何なんだよ一体!」 「善は急げっていうでしょ、ほら、もたもたしない!」 曜子は強引に私を連れ出してマンションの外に出た。 そこにはもうタクシーが待ち構えている。 「思ったより待たせちゃったわ。悪いことしたわね」 「ちょ、ちょっと!わけがわからないよ!ちゃんと説明してくれ!」 「いつまでもうじうじしてたら何も変わらないの。 私みたいに行動に出さないとダメ」 「え?」 そうして私をタクシーに押し込むと、駅に向かうよう運転手に言付けた。 「さよなら、秋山さん。 ちゃんとお膳立てしたあげたんだから、気持ち、伝えないとダメよ」 『さよなら。秋山さん』 4
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あなたに贈る物語(前編) ◆AZWNjKqIBQ 螺旋王が実験を執り行う為に用意した何処かの世界、何処かの時代、何処かの街。 正方形に切り取られ、等しい升目で句切られた殺戮の遊戯盤――その、中央に近い位置にそれはある。 物語を銀板に跳ね返すことで見る者に伝える装置。切り取られた四角の中に世界を覗かせてくれる魔法。 決して越えることの出来ない境界線を跨いで、それぞれに夢想を垣間見せる鏡。 摩訶不思議の箱――映画館が其処にある。 ◆ ◆ ◆ 薄い色の絨毯が敷かれた広いロビー。 その端に連なって並んでいる、待ち合いをする為のテーブルとそれを囲む椅子。 丁度十を数えるテーブルと椅子のセットの内、九つまでは全くの空。逆に残りの一つには人が集まり、雑多な物がその上にあった。 ゲームのプレイヤー。ステージに放り込まれたアイテム――それらが記された、虎の巻。さらには裏技を可能とする特殊な携帯電話。 雑多な情報が書き込まれた数枚の地図。各人の推測や憶測が書き留められた無数のメモ紙。働きっぱなしのサインペン。 奔放で理知的な殺人狂であるラッド・ルッソを見送り、真っ白な少女であるイリヤに自由を与え再び映画館の中へと戻ってきた3人。 銀髪の中に同じ色のナイフの切れ味を持つ明智健悟。心の出口を捩り、それを隠す菫川ねねね。ためらいの無い少年。衛宮士郎。 ――その3人はそれぞれの席に戻り、間もなく始まる定時放送までの時間をさらなる考察をする為に当てていた。 各人が道程で拾い集めてきた個々の情報により、このゲームの盤上にあるほとんどの事が明らかとなった。 後はそれぞれの点の間に線を引き、浮かび上がってくる図形が何かを探る作業に入るだけ……――だが。 「3人寄れば文殊の知恵……だってのに、何であんたは急に黙り込む?」 ねねねの前に座る明智。先刻までは饒舌にその知性から得られた推論を吐き出していた彼が、何故か戻ってきてから無言だった。 その神妙な表情は、とても物事が順調に推移している現状を喜んでいるものではない。むしろ、そう――…… 「うまく事が運びすぎています」 ――彼はこの状況に対し、大きな懸念を抱いていた。 ◆ ◆ ◆ 「……話を聞かせてもらおうじゃない」 そう言うねねね。そして、怪訝な顔でこちらを覗き込む士郎の二人に、明智は一つ決心をしてそれを語り始めた。 「――まず、私の考えている前提条件を言いましょう。螺旋王は常に私たちの話を聞き、姿を見ています」 聞き捨てならない発言に身体を揺らす二人。それを片手で制し、明智は言葉を続ける。 「超科学や魔法が存在すると確認できた今。 その方法を論じる必要はありませんし、もうそれに抵抗するのも無意味です。 なので、私はあえて口に出して語りましょう。今の状態――あまりにも螺旋王の想定通りに進んでいると。 不自然なまでに集中する情報。そして、今盤上に配置された駒の位置を確認して私はそれを確信しました。 私達は螺旋王の描いたシナリオ――その線上を滑り降りているだけ。 ……残念ながら、私だけではここで匙を投げざるを得ません」 「あんた……急に投げ出すって――!」 すでに身体を半分乗り出していたねねねを再度明智は手で制す。 発言内容は投げやりであったが、しかし表情は冷徹な知性を湛えたままだった。 「私だけでは……と言ったでしょう。 3人寄らば文殊の知恵――その通りですよ。あなた達には私と同じ立場に立って協力してもらいたい。 だから、今話すのです」 不可解な発言に説明を要求する二人に、明知は自身の中だけで密かに進めていた考察を披露した。 それは彼の脳内に蓄積されている大量の犯罪者データから導き出された、螺旋王に対するプロファイリングの結果。 「……劇場型や、見立て。犯罪者が自らが起こす犯罪の中に、何らかの思想やアピールを持たせることは多々あります。 螺旋王が犯罪者と言えるかは、彼の世界を知らない私に断言できることではないですが、しかし犯罪でなくともそれは同じこと。 彼が最初に実験だと称した様に、この殺し合いには何らかの意味があり、彼は私達に何かを期待している。 それは、彼が放送で繰り返し意味深な発言をしていることからも明らかです」 それが解ればどうなるんだ? ――と、士郎が明智に尋ねる。 螺旋王の目的。それが殺し合いを眺めるだけでないとしたら、自分達にとってどんな意味があるのかと。 「はっきり言いましょう。 彼は殺し合いの結果――ではなく。その過程で発生する何かを発見。データを収集することを目的としています。 もちろん。ある程度はそれが得られるという確証を持ってです。 そのために私達を盤上に配し、自らが作り上げた仮定の上を私達がなぞるのを見守り、放送という手段で微調整している。 ……そして恐らくは、それは彼が螺旋力と呼ぶものに関わることなのでしょう」 定時放送により、繰り返し聞かされてきた『螺旋力』の存在。 あそこまで露骨ならば、何らかの意味があるのだろうと明智の前の二人も気に留めていたところではある。 「殺し合いの中で……って言うんなら、やっぱ火事場の馬鹿力みたいなものなのか? その螺旋力ってのは」 「解りません。それに近いのかも知れないし、全く別のものなのかも知れない。 私が私だけでは無理だと感じるのがこの部分です。所詮、私はここに集められた一世界の住人でしかありません。 魔法、魔術、錬金術、超能力、超科学――常識も法則すら違う世界から集められた82人。 それを全て把握しているのは、現在の所は螺旋王のみ……」 「だから、殺し合いに首を突っ込むよりも人集めを優先するってわけか……」 「ええ。螺旋王の目的を読み、それを先取りできればこの殺し合いを途中で終わらせることができるかもしれません。 または、その為の交渉材料にできる可能性もあります」 聞き手側に専念している二人に頷くと、明智はさらに言葉を紡ぐ。 「螺旋王に対し、82人の知恵で立ち向かいたい。しかし、それはもう不可能です。 ですが、この現状が私の考えている通りならば、まだ望みは――いや、ここにしか望みはない。 なぜならば――……」 ――それはと、明智が螺旋王に課せられた自分達の役割。そして、その中に潜む逆転の芽。それを語ろうとした時。 その発言は、何時の間にか迫っていた定時放送――螺旋王の声により遮られた。 『人間とは面白いな』 そんな、まるで自身が天上の神であるかの様な言い回しから始まったそれに、3人は慌てて紙とペンを手に取る。 またしてもつぎ足されるであろう死者の名前を前に、言いようの無い緊張が高まりペンを持つ手に力を込めさせた。 『人の身に刻まれた二重螺旋の為せる技、か――』 前置きの中で語られるそれに、3人は反応する。 やはり、キーワードは『螺旋』。しかも、今回は具体的に『人間の中の二重螺旋』と新しい情報が提供された。 先に己の推論を語った明智も、それを聞かされたねねねと士郎も、やはり螺旋王はこの実験で螺旋力を得るのが目的だと再確認する。 それが、螺旋力を持った人間を直接確保したいのか、それとも人間が螺旋力を獲得するプロセスを見出したいのかはまだ不明だが。 しかし、そんな目まぐるしく回転する3人の頭脳も、続けて発表された死者達の名前にぴたりとその動きを止めることとなった。 (そうですか。彼らはもう……) 剣持勇。そして、金田一 一……その二人の仲間の死に、明智の心は僅かに震える。 だが、それも最悪の想定の中からは出ていない結果。その覚悟によって感情よりも理性を優先させることに成功した。 彼の隣に座っている士郎も、ランサーの脱落と未だ数を減らさない死者に驚きはしたものの取り乱す程ではない。 それよりも、二人が驚いたのは――…… 「う、嘘……センセー……が?」 ――目の前で、まるで子供の様にボロボロと涙を零すねねねの姿であった。 ◆ ◆ ◆ 西には熟した果実の様に真っ赤な太陽。そして、それに押し出されて長く伸びる影が向かうのは夜を目前とした蒼い空。 薄く白い姿を現し始めた月の下。映画館の中の3人と同じく、外に一人残ったイリヤも放送を聞いていた。 (ランサーが消滅……そうか、それで) それで、聖杯のシステムが反応したのかと、ランサーの死を知ったイリヤは納得した。 そして何故彼が本来の名前でなく、サーヴァントのクラス名で呼ばれているのかも同時に納得する。 (でも、だとしたら随分中途半端だわ……?) 螺旋王が自身を聖杯として利用しようと考えているなら、贄……つまりはサーヴァントがランサーの1体だけというのはおかしい。 もう一人、ギルガメッシュという名の英霊が召喚されているが、こちらはクラス名でないので扱いが不明だ。 聖杯に注がれるにはあまりにも大きな存在ではあるが、しかし――…… 「……意味がわかんない」 ――とりあえずは、イリヤはその問題を無視することにした。それよりも、今は特訓なのであると……と、 「あらシロウ。私は一人で大丈夫だって言ったでしょう?」 目の前に現れたのはつい先ほど別れたばかりの士郎であった。 特訓中の姿を見るのは、おめかし中の姿を覗き見ることと同義。いくらシロウと言えどダメ! と、イリヤは追い返そうとする。 「いや、覗きにきたんじゃないんだ。 明智さんが、イリヤにお願いがあるって……菫川先生を励ましてくれってさ」 「ネネネが……?」 そうか。そう言えばヨミコという人は、彼女の大事な人なんだとネネネから教えてもらっていたことをイリヤは思い出す。 ならば頼まれるまでもない。今まで何度も助け、面倒を見てもらったのだからと映画館の入り口へと向かった。 と、内へと向かう自分と入れ違いに映画館から離れていってしまう士郎をイリヤは呼び止める。 「あれ? シロウはどこに行くの?」 「やっぱ、元気ない時は飯だと思ってさ。 それに、ラッドが仲間を連れ帰ってきたら大所帯になるだろう? だったら、今の内にこの近くを回って食材を確保しておこうかなって思ったのさ」 それは素敵な提案だと、イリヤの白い頬が赤く高潮した。士郎が持つ料理の腕前は自身の舌が覚えている。 螺旋王より与えられたモノによる灰色の食生活が、薔薇色のものに変わる予感。それに期待は高まり、お腹もク~とその存在をアピールした。 「非常時だしさ。そんなに期待されても、どれだけできるかは解んないけど……うん。努力するよ」 「シロウの料理を食べれば、ネネネもアケチもきっと元気がでるわ♪」 離れてゆく背を手を振って見送り、イリヤは改めて映画館の中へと向かう。 妖精と謳われる少女の足取りは軽い。その足元では車輪の従者が静かに明滅していた―― ◆ ◆ ◆ 「さて……と、スーパーかコンビニ。それともレストランか……?」 夜を迎える寸前の茜色と紫が混じった風景の中に立ち士郎は思案する。 映画館を基点に、南の総合病院-デパート方面。そして、南西の駅の方までは繁華街が続いている。 言葉で挙げた以外にも、食材を得られる場所は多くあるだろう。 だがしかし、あくまでちょっと食材を調達しに行く……というだけである。選り好みをしている内に、誰かに襲われてしまっては本末転倒だ。 ある程度、幅広い種類の食材が得られるならそれでいい――と、士郎はその足を進め始めた。 (……言峰綺礼) 死んだはずの男が此処にいることは、最初に名簿を見た時から知っていた。 そして、合流したイリヤ達が持っていた詳細名簿を見て、その男が同姓同名などの勘違いでないことも確認したばかりだ。 何故生きているのか? それは考えない。問題とするのは、そう遠くはない場所にいるという事。 放送前に明智が確認した時には、北を流れる川の向こう。丁度、自分が向かう予定のあった図書館の近くにあの男はいた。 そこからあの男がどちらに向かったかは解らない。彼の目的も、彼がここで何をしているのかも…… (………………………………) 色の濃さを増してきた影の中。その中からあの男がこちらを見ているかも知れない。そんな錯覚に身体が強張る。 あの常に闇色の服を纏っていた男。彼が自分を覗いて、またほくそえんでいるのではないかと…… 「やっぱ、大人数で食べるなら鍋かな? 夜は冷えるし……」 そんな軽口を意図的にこぼし、士郎は錯覚の中ですら自分を蝕むあの男を振り払う。 死に際のロイドに教えられた事。それを自身を支えそして抑える楔とし、現在の自分がしなくてはならないことを再確認する。 「腹が減っては戦はできぬ――だな」 大通りに面した商店街の大きなゲート。それを潜り、士郎は食材を求めて独り暗闇の中へと進んで行った―― 【C-5/北東部-商店街/一日目/夜】 【衛宮士郎@Fate/stay night】 [状態]:疲労(中)、心労(中)、腹部と頭部を強打、左肩に銃創(処置済み)、軽い貧血 [装備]:クラールヴィント@リリカルなのはStrikerS、バリアジャケット [道具]:支給品一式(一食分消費)、レガートの金属糸@トライガン [思考]: 基本方針:螺旋王の実験を食い止める。イリヤを守る 1:商店街で食材を調達。早々に、映画館へと帰る 2:言峰が近くに来ている可能性があるので警戒 3:1に成功すれば、映画館内で全員分の晩飯の用意 4:イリヤの様子は常に気にかける 5;ラッド達が帰ってきて状況が落ち着けば、鴇羽舞衣の説得に赴く 6:善悪に限らずできるだけの人を救いたい。が、止むを得ぬ場合は―― [備考]: ※投影した剣は放っておいても30分ほどで消えます。真名解放などをした場合は、その瞬間に消えます。 ※本編終了後から参戦。 ※チェスに軽度の不信感を持っています。 ※なつきの仮説を何処まで信用しているかは不明。 ※ロイドの言葉を受け、ある程度ですが無駄死にを避けてより多くの人を救う選択を意識できる様になりました。 ◆ ◆ ◆ 広くはあるが、空調によりその温度を暖かく均一に整えられたロビー。だが、その端にあるレストルームの中は冷え込んでいた。 青いタイルの敷かれた内装。空調が届かないというだけでなく、その雰囲気が其処を冷ややかに感じさせるというのもあった。 だが、今この女性用レストルームの中が寒々しいのは、そういう理由のせいではなく―― 「……あぁぁぁぁああぁぁっ! うっ、うわぁあああぁああぁぁぁあん!」 ――万遍なく響き渡る大きな泣き声のせいであった。 泣いているのは、菫川ねねね。声を張り上げ、嗚咽を漏らし、誰に憚ることなく、まるで幼児の様に泣いている。 彼女のたった一人の『センセー』――読子・リードマンの死が知らされた時。彼女はあの時の少女時代へと戻ったのだ。 他人にも、そして自分自身に対しても微塵たりとも思わせてなかった寂しい自分。独りぼっちだった少女の時へ。 「えっ、えぅ……! センセーが……センセー……ッ! うわぁああぁああぁ――!」 何で本を『書く』のか? どうして、ねねねは13歳という若さで作家としてデビューしたのか? それは勿論、読んでもらう為だった。大切な人に自分の書いた本を読んでもらいたい。作家になった自分の本を読んでもらいたい。 多くの人に読んでもらい本をたくさん出して人気が出れば、本は海を越えその人の元まで届くだろう。 その時は少ししかなかった自覚。それを理解させてくれたのが『センセー』。彼女の、いや本にとっての最高の『読者』――読子・リードマンだった。 「……どうしてっ! なんで、センセーがっ! っあ、ふあぁ、うっく……!」 ただ我武者羅に書いていた少女時代。本の向こう側に、自分の世界をひたすらにぶつけていたその時に彼女は現れた。 まるで本の中から現れた様な、ファンタジーでミステリアスな存在。一回り近くも年下の自分に、まるで子犬の様にじゃれついてきて…… ともかくとして、様々な事がありねねねは変わった。『読子』を知ったから。そして――『読者』を知ったから。 彼女の作家としての才能も更に花開いた。ただの物珍しい、若さだけが特徴の作家ではなく。物語を創造し、本を読者に齎す作家に。 「ま、まだ……っ、読んで、ない……ほ……ぅ、うええぇぇぇえええん!」 菫側ねねねが新刊を出せば、読子は世界のどこからでもやってきて、涙を零しながら感想を述べサインをねだった。 程無くして、読子が読む本をねねねは書き。ねねねが書く本を読子が読む。それが当たり前の習慣になる。 貴重な作家としてねねねは幾度も危機に陥ったが、そんな時はやはり読子が助けに来て、時には逆に読子はねねねの本に助けられた。 波乱万丈ではあるが、幸福だったサイクル。グルグルと永遠に書き続ける限り、読み続ける限り続くと信じていたサイクル。 「……っく! あぁっ、私が――私が――っ!」 だが、サイクルは唐突に途切れた。 どうしてか、ある日を境に読子は現れなくなる。そして、片輪を失ったねねねの筆もその時――折れた。 いつしか、読子に読んでもらわなければ本が書けない。ねねねの中で、読子はそんな存在になっていたのだ。 ねねねは読子を探し――そして、見つからない。そんな時がひどく長く続いた。何時の間にかにねねねは大人になっていたが、 もう本は書けなくなってしまっていた…… 「もう……もぅ……私はっ! あっ、ああぁぁぁああぁぁあ……」 螺旋王の実験が始まった時。読子の名前を見て心を躍らせたのは、ねねねの誰にも話せない秘密である。 どんな時でも、自分の危機に読子は駆けつけた。今回もそうであると、ついに読子が自分を救う危機が訪れたと、密かに歓喜した。 だが、どこかに不安があったのも事実。イリヤに言った『覚悟』という言葉。何よりもそれは臆病な自分の心を抑えるためのものだった。 近くに見えてはいるのに、ギリギリで指先が届かないそれが……今度こそ決定的に離れていってしまうのではないかと。 そんな不吉な予感に苛まれていたのだ。イリヤとフォルゴレがいなければ、どこかで独り泣いていたかもしれない。 「――っぅ。…………っ! ………………………………! …………!」 そして、ついに予感は現実となった。 菫川ねねねはもう独りぼっち。 もう――書くことも――読んでもらうことも――何もできない。 ◆ ◆ ◆ 独りきりとなったロビーの中、明智はいつかの様にどこかで聞いているはずの螺旋王に語りかけていた。 「これが……これも含めて全てがあなたの計算通りなのでしょう。 ならば、私はあえてそれに乗ります。あなたの期待通りに……そしてあなたの期待を僅かにでも上回ってみせる。 それが私の――明智健悟から螺旋王への挑戦です」 フ……と、些か自嘲気味に笑うと明智はその身を再び椅子の上へと収めた。 この螺旋王の実験。結末までは予測できなくとも、すでにルールは全て理解している。と、明智は確信している。 齎された情報――人物像。仕掛け。エピソード。それらの無数の点が浮かび上がらせる螺旋王の狙い。それが何かという事を。 参加者全員での殺し合いによる実験。 それがお題目でしかないことはすでに明らかにしている。ならば、参加者に課せられた真の目的は何か? それは一人一人によって、違う。各人がそれぞれに、 フラスコの中に注がれた多種多様な化学物質の様に個別の役割を持たされ、そしてそれぞれの化学反応を期待されている。 それは大きく別ければ4つに分類できる。 1つ目は、殺し合いを推進するための物質。殺害による実験の推進を肯定し、積極的に活動する物質。 2つ目は、先にあげた物質の働きを阻害する物質。殺害を良しとせず、他の物質の存在を守ろうとする物質。 3つ目は、それ自体は無力であるが劇的な変化を期待されている物質。螺旋王が最も重視する物質だ。 4つ目は、この仕組みに気付き、3つ目の物質が螺旋力を発現するのを促進させる物質。 螺旋王は1番目と2番目が作り出す状態の中で、3番目の物質が4番目を触媒に変質することを目論んでいる。 それが彼の言う、螺旋力の発現。 そして、明智は自分が4番目に該当すると考えている。 螺旋王にこの仕組みに気付く知性を期待され、意のままだと気付いてもその通りに動くであろう駒。それが自分だと。 (……そして、高嶺清麿。彼が今ここに加わろうとしていることも、またそうなのでしょう) 出会ったばかりのラッド・ルッソが迎えに行った高嶺清麿という少年。 名簿の情報とラッドの証言から彼も『4番目』だろうと、明智は当たりをつけていた。 (私の隣には金田一君が……と思っていたんですがね。これは私個人の願望でしかありませんでしたか) 今は亡き少年探偵に心の中だけで追悼を繰り返すと、明智は机の上に手を伸ばしコーヒーカップを取った。 そして映画館の事務所内にあった安物のコーヒーメーカーから淹れたコーヒーを喉に流し込む。 物腰はあくまで普段通りにスマート。思考も眼鏡の奥の眼差しもどちらも至極冷静。明智健悟にブレは無い。 ◆ ◆ ◆ 陶器のタイルを叩く小さな足音。 それが入ってくると同時に、まるで目覚まし時計の様だった一つの箱は鳴り止んだ。 「ネネネー? 大丈夫……?」 まるで自分より幼い子供に向ける様に、イリヤは声をかける。 もうすでに泣き声はやんでいるが、迷子の子供の様なそれは入ってくる前から聞こえていたからだ。 「………………うん、大丈夫……ごめんねイリヤ。偉そうなこと言ってたのに、この様で」 壁越しに聞こえる声は少しだけ精彩を欠いていたが、それでも菫川ねねねの声だった。 しかし、間にある扉を開くことができないのがその虚勢の限界を表している。 それだけで、イリヤにもねねねがどれほどに悲しんでいるのか理解することができた。 「えっとね。今ね、シロウが晩御飯の材料を集めにいっているの。 シロウのご飯はとてもおいしいから……きっとネネネも元気でるよ。 ……ああ、そうだ。私も手伝うわ! そしたらネネネももっと元気になるよね――」 「――ありがとう。イリヤ」 静かな部屋の中に、さっきよりは力強い声が響く。 ねねねがこのまま何処かに行ってしまう……そんな不安を、とりあえずは払拭できたことにイリヤは安堵した。 最愛の人を失いどん底にいるねねねをそこから引き上げる方法を、幼いイリヤは知らない。 ただ寂しさだけは理解できるから、せめて一人きりにはしない様にと手を差し伸べるのだ。 「泣いたらさ……メイクが落ちちゃって。みんなに見せれる顔じゃあないから――」 「うん。わかるよイリヤも女の子だもん。先に言ってるからゆっくりおめかししてきてね」 コツコツと、再び小さな足音を立てるイリヤ。と、何かに気付き真っ白な髪を広げてターンした。 「そうだ。アケチからの伝言。 ネネネに物語を書いてほしい――って。 ラセンオウが書いた筋書きを、唯一上書きできるのはサッカであるネネネせんせーだけだ……って、言ってたよ」 それじゃあね。と、最後に見えないねねねへと手を振ってイリヤはその場から姿を消した。 ◆ ◆ ◆ 明智に、託された仕事を終えたことを告げイリヤは再び映画館の外へと出てきた。 真っ赤だった太陽はもうほとんど消えて、わずかに空の端っこに紫色が残るのみ。空気も冷え始めていた。 しかし、其処こそが相応しい舞台だと言わんばかりに、新雪の髪を持った少女は踊る。 「マッハキャリバーも寂しいよね」 本来の主人を失った車輪の従者にイリヤは囁きかける。 「ねねねも……そして、シロウがいなくなったら私も同じになっちゃう。きっと、私がいなくなっても……」 だから、もうだれも一人ぼっちにはしないようがんばろう。 独りになった人がいるなら、走っていって手を差し伸べよう――そうイリヤは決意し、皆の幸福を願う。 「これからもよろしくね。マッハキャリバー」 『はい。マスター』 藍色の空の下。街燈が作り出す黄金のスポットライトの中。真っ白な少女は星に願いを告げる。 【C-5/映画館-外/1日目/夜】 【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】 [状態]:健康 [装備]:マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、バリアジャケット [道具]:支給品一式(一食分消費)、ヴァルセーレの剣@金色のガッシュベル!!、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル!! [思考]: 基本:シロウと一緒にゲームを脱出! 1:マッハキャリバーからベルカ式魔法について教わる 2:シロウが帰ってきたら、料理をお手伝いする 3:その後はみんなで晩御飯 4:シロウ、アケチ、ネネネの言うことを聞いてがんばる 5:聖杯については考えない。シロウにも内緒 [備考]: ※フォルゴレの歌(イリヤばーじょん)を教えてもらいました(イリヤ向けに簡単にしてあります)。 ※チチをもげ!(バックコーラスばーじょん)を教えてもらいました(その時にチチをもげ!を完璧に覚えてしまいました)。 ※バリアジャケットが展開できるようになりました(体操着とブルマ)。 ※聖杯にランサーの魂が取り込まれました。 ※マッハキャリバーより、「プロテクション」「シェルバリア」「リカウティブパージ」を習得中です。 【プロテクション】:魔法障壁を張り、攻撃をガードします。 【シェルバリア】:半球状の結界を張り、外部からの干渉を遮断します。一定時間持ちますが、それなりの魔力を消費します。 【リアクティブパージ】:バリアジャケットを自ら爆破し、その威力で攻撃を防ぐテクニックです。 時系列順で読む Back その少女、ゼロのリスタート Next あなたに贈る物語(後編) 投下順で読む Back その少女、ゼロのリスタート Next あなたに贈る物語(後編) 209 情報と異変 衛宮士郎 225 エミヤ 209 情報と異変 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン 228 刻無―キズナ― 零 209 情報と異変 菫川ねねね 213 あなたに贈る物語(後編) 209 情報と異変 明智健悟 213 あなたに贈る物語(後編)
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唯「あつい~……」 憂「もうすっかり夏だね」 唯「セミの音のせいで余計あつく感じるよ……」 憂「扇風機つけよっか?」 唯「うん、お願い」 ピッ 憂「はい、ずっと風に当たるのも体によくないから首振りにしておくね」 唯「あー……すずしい〜……」 憂「クーラー苦手なお姉ちゃんには厳しい季節だね」 唯「毎年最高気温がどうってテレビでやってるからうんざりだよ……。地球温暖化のせいかなあ?」 憂「うーん……どうだろうね」 唯「憂は夏が好き?」 憂「きらいじゃないよ。外に遊びにいけるから、プールとか!」 唯「ああ、それもそっかあ」 憂「あとは花火とか、お祭りとかも多いし」 唯「たしかに楽しいイベントは多いね……」 憂「お姉ちゃんは夏がきらいなの?」 唯「そうだねえ。アイスがおいしい季節ではあるけど……」 憂「あっ、じゃあかき氷作ろっか」 唯「おおっ、気が利くね!」 憂「かき氷機と氷取ってくるね!」 唯「私も手伝うよ!」 憂「じゃあシロップ取ってくれる?」 唯「ラジャー。えーっと……あった!」 憂「何味?」 唯「ブルーハワイ。かき氷機あった?」 憂「……えーっと、あった! 氷とお皿も用意したし、準備万端!」 唯「氷セットしまーす!」 憂「はーい! 回すね!」 シャリシャリシャリ 唯「わあ〜っ……! 削れた氷がお皿に落ちるのはいつ見てもきれいだね……」 憂「お姉ちゃん、昔から好きだったもんね」 唯「かき氷も好きだけど、できていく様子も好きだよ」 憂「うふふ」 シャリシャリシャリ…… 唯「できたー! 次は憂の分だね、私がやるよ」 憂「じゃあお願いするね」 唯「憂も見ててね、氷が積もっていく様子」 憂「うん!」 シャリシャリシャリ 憂「本当にきれいだね……雪みたいだよ」 唯「夏だけど、見ていると涼しい気持ちになれるんだよ」 憂「少し風流だね、お姉ちゃん」 唯「えっへん!」 シャリシャリシャリ…… 唯「よし、できた。二人分完成! シロップかけて〜っと」 憂「食べよっか」 唯憂「いただきまーす!! はむっ」 唯「うぅ〜……」 憂「つめたーい!」 唯「これぞ夏だねえ……」 憂「夏だねえ」 唯「あ、憂のベロ青くなってるよ」 憂「お姉ちゃんのも青いよ!」 唯「……ふふっ、私たちそっくりだね!」 憂「ほんとだね」 唯「はあ〜……夏はあついのがいやだけど、憂と二人でゆっくりできるからやっぱり夏もいいかなあ」 憂「私もお姉ちゃんとのんびりできるからしあわせだよ」 唯「ありがとう、憂。 ……わたしは、あなたをあいス」 憂「えっ?」 唯「……なーんてね、えへへ。かき氷おいしいね」 憂「うん、おいしいね!」 おしまい あとがき タイトルは朝ドラ「ごちそうさん」のサブタイトルを一部改変 戻る