約 31,340 件
https://w.atwiki.jp/animerowa-2nd/pages/750.html
HAPPY END(19)◆ANI2to4ndE ◇ 終わったのかと思った。これで全部終わりにできるのか、と。 腐ってぐちゃぐちゃになった生ゴミみたいに最悪な場所はどうにかぶっ壊してやったんだ。少しはエンディングが近づいたっていいだろう。 もっともそれはハッピーエンドなんて上等なもんじゃない。いっぱい死んだ。守るって言った子も、守ると言ってくれた人も、みんな。 終わりになんてならないことは分かってる。まだあの蛸ハゲが残ってる。手下だっているかもしれない。 まだまだ。生きるか死ぬかの瀬戸際だってことは変わっていない。 読まずに死ねるか、ってセンセーなら言うんだろうね。 あたしは逆。書くまで死ねるかって、そう思ってる。 ああいや、本当のところを言うと今はちょっと違うかな。 書くだけじゃない。書いて書いて書きまくって、できあがった物を誰かに読ませずに死ねるかって、それが正直な気持ちなんだと思う。 だってそうじゃん。 いっぱい色んな人に読んで欲しいでしょ。こちとら死ぬ気で書いてるんだからさ。 「お目覚めかな、諸君」 頭上から投げかけられた高圧的な声に、薄明かりをさ迷っていたねねねの意識は目を覚ました。 ん、と重たい吐息を漏らしながら覚醒直後の頭を起こす。そうしてから初めて自分が硬質の冷たい床に寝転がっていたことに気付いた。 はっと閃くものがあって慌てて左右を確認する。ゆたか。舞衣。みんないる。まだ目が覚めきってないようだがとりあえずは無事だ。 男二人は既に立ち上がっており、スパイクは声の主を、ギルガメッシュは実につまらなさそうに何もない空間を、それぞれ睨んでいた。 ねねねがつられた視線はスパイクの方だ。子供二人が起きるのを助けてやりながら首を曲げ顔を反らす。 ねねね達がいる場所は、すでに実験の檻の中ではなかった。 幅の異なる同心円が柱状に積み上げられてできた玉座はかすかに見覚えがある形。 そのときの記憶は遠い過去のようであり、それでいて忘れることもできない。 会場を脱出したねねね達が招かれたのは、地獄を告げる始まりの場所だった。 あのときと同じように、玉座に座る者がいる。 今がその再現であるならそこに居る人物も同じであるはずだ。 「ようこそ、初めましてとでも言おうか?それとも見事脱出を果たしたことにまずはおめでとうかな?」 違った。居丈高な口調で喋る声は神経に刷り込まれたものではない。 視界に入った姿もまたうっすらと記憶に残る螺旋王のものではなかった。 どういうこと、と舞衣が呟くのが聞こえた。警戒するようにゆたかを庇っている。同じことをねねねも聞きたかった。 細身の長身を包むぴちりとした紫の衣装。僅かに覗くそれを幅広のマントがすっぽりと覆っている。 幅広の襟に包まれるような頭部を覆うのは特徴的な曲線を描く黒の仮面だ。後頭部にのみ幾つか突起が見られる。 それは、ゼロの衣装という名前でねねねに記憶されているものと寸分も違わなかった。 いったい誰が。混乱のままに吐き出されそうになったねねねの誰何の声は、なるほどねぇというスパイクの溜息のような声によってせき止められた。 「お前、ルルーシュか」 「な、あんた何言って……!」 それはねねねが真っ先に思いつき、そして同時に否定した可能性だ。 この衣装を着るに最も相応しい少年は既に死んでおり、この世にはいない。 そのはずだ。 「私はゼロだ。混沌とした状況に秩序を与え、皆を導く存在だよ」 筒のように長い体を玉座に沈め、頬杖と共に返された答えは否定とも肯定ともつかないものだった。 空いた手はいかにも説明してやってるという呈で気だるげに虚空に差し伸べられている。少しだけ癇に障った。 「……何かおかしいとは思ってた」 スパイクの言葉も直接の返答ではなかった。いつの間にか灯されていた葉巻から深々と紫煙が吐き出される。 続けられた声は、誰に聞かせるでもなく重く響いた。 「ドモンが最後に闘ってた相手、ありゃどう考えても人数外の奴だ。 敵さんのうちの誰か、とも思ったがそれにしちゃ使っていたロボットも動きもドモンに似すぎてる。 他の連中に関してもそうだ。百歩譲ってチミルフが生きていたのは『敵だから』で納得できるにしても、 舞衣が聞いたっていう死に際の妙な言葉、それを踏まえて見るキレの悪いドンパチ。 今考えてみりゃこっちが危険だって考えてた連中が軒並み消えちまったタイミングもできすぎてる。 ……一個一個は見慣れた街を歩いてるときにふと感じる違和感みたいなもんだ。すぐに錯覚ってことで忘れちまう。 今回もそういうもんかと思ったが、どうやら違ったらしいな。 ここまでくりゃ子供にだって分かる。寝返ったんだな、お前ら」 カミナの妙な言い種もこれで納得だと、口を器用に歪めながらスパイクは結んだ。 「ククク、ご明察だよスパイク君、その通りだ。 ルルーシュ・ランペルージ、東方不敗マスターアジア、そしてニコラス・D・ウルフウッドの三名は元々会場に降りていた怒涛のチミルフと共に獣人の元へと下った。 こちらが与えた情報を馬鹿正直に信じる君たちの様子は中々愉快だったよ」 言葉通り、一級の技術で作られた変声機に歪められた声が色を帯びた。 つまり、こいつらは。目の前にいるこいつは。 清麿殺しの犯人であるルルーシュ・ランペルージは生きていたと言うのか。 「ロージェノムに尻尾振って生き残ろうって腹かよ。意外とせこかったんだな」 小馬鹿にするようなスパイクの声には少しどいてもらおう。ねねねは両の手を力一杯握りしめた。 聞かねばならない。この少年が本当にルルーシュであるなら、ねねねには清麿の死の真相を問い質す義務がある。 でも、それはできなかった。 「それに関しては間違いだな。単刀直入に言おう……螺旋王は逃げた」 「……なんだって?」 ねねねが怒りを忘れる程に、もたらされた情報の衝撃は大きかった。 「冗談だろ?」 皮肉に笑っていたスパイクでさえ驚きを、隠しきれていない。 「残念だがこれが真実だよスパイク君! かの愚昧な王は天敵の接近に恐れをなし、無責任にも自らが始めた実験の一切を放棄し、逃亡したのだっ!」 全員の気持ちを代弁するスパイクの言葉を掻き消すように、大袈裟にマントを翻しながらルルーシュが立ち上がった。 堂々とした立ち姿はあたかも演説でもするかのように、いや、それは真実演説だったのだろう。 理解の追い付かないねねね達に構うこともなく、漆黒の先導者は腕を掲げ首を回す。 動きに迷いはなく、矢継ぎ早に飛ばされた声は高らかだった。 「螺旋王が恐れた敵の名こそアンチ=スパイラルッ!あらゆる多元宇宙に住まう全ての螺旋力を持つ者たちの監視者っ! そう、監視だ。奴等は我々の持つ螺旋力を恐れ、警戒している。 お前達も戦いの中で緑色の光を目にしたことはあるだろう……?それによって危機を脱する力を得たこともあるはずだ。 それだよ。その力こそが螺旋力。緑の光は人間に刻まれた二重螺旋の輝きに他ならない。 そもそも、アンチ=スパイラルに対抗しうる程の螺旋力保持者を生み出すことこそがこの実験の、そして螺旋王の悲願だったのだ」 アンチ=スパイラル。悲願。監視。 突き付けられる真実は一つ一つが鉛のように重く、真偽を計る暇もない。 これこそがゼロの仮面の本分と言うかのように、舞台劇のように整った弁舌は振る舞われ続けた。 「奴はそれを『真なる螺旋力』と呼んだ。 だが実際にそれを発現させる者は一向に現れず、焦りと恐怖に駆られたロージェノムは敵のほんの些細な挑発を決起に尻尾を巻いて逃げた…… くく、我々にとってはいい迷惑という他ないな」 「ちょっと待てそれじゃあ……!」 叩きつけられる情報の奔流に溺れそうになって、ねねねは二の句も考えずに声を発した。 何か重大な閃きがあるような気がするのだが言葉にならない。それが焦りとなって顔に汗を浮かべる。 混乱に駆られ右を見た。必死で追い付こうとしている舞衣と、単純に大声に慣れていないのか恐怖に耐える表情のゆたかが居た。 左を見る。苦虫を噛み潰したような顔で、それでもしっかりと立つスパイクが居た。 さらにその後方。ギルガメッシュは。 ──ギルガメッシュはどこに居る? ねねねの言葉は無視された。 「かくして実験は放棄された……しかしそれは決して我々の解放を意味する訳ではない! 役目を終えたモルモットはそのまま死ぬまで捨て置かれるだけだ。野に返してやろうなどと考える物好きはいない……」 玉座に身を沈め頭を垂れる。いかにもな悲しみの表現さえ、大袈裟と感じる余裕はもうない。 ざっとした理解でも現状の窮境は知れる。これが罠でなく全て真実だとすれば、正に万事休すだ。 が、陰鬱に沈み行くかと思われた男はU字を描くように勢いを戻し、再び立ち上がった。 「だからと言って座して死を待てと言うのか!?答えは断じて否!我々は愚かな獣ではない、知性と誇りをもった存在だ! だからこそ選んだのさ、我々自身の手によるアンチ=スパイラルの降臨をな!」 「な……!」 そうして伝えられたのは、凄まじい劇薬の存在だった。 「真なる螺旋力覚醒者を餌にアンチ=スパイラルを召喚し、多元宇宙を渡る技術を獲得する。それこそが我々に残された最後の手段だ」 一転して落ち着いた声音で告げられるが、返す言葉はない。 理解は、理解はできていない。天才作家と言われても、そこまでねねねの頭は良くない。 それでも頭の芯で確かに捉えた真実もあった。 こいつらは。敵を。 「君達も知っての通りヴィラルによって覚醒は果たされた。あの緑に混じる桃色の光こそアンチ=スパイラルをさそう誘蛾灯……だが、肝心の降臨はまだ果たされていない」 螺旋王ロージェノムさえ恐れた敵を、自分達の手で呼び込もうとしている。 「必要なのさ……更なる試練が」 ねねねは反射的に顔を上げた。今の発言は明らかにこれまでと雰囲気が違う。 一方的に投げつけられるだけだった言葉に、何か邪悪な色が混じった気がする。 一作家に過ぎないねねねの第六感は、果たして真実だった。 「覚醒者の力を!驚異を示すことがアンチ=スパイラルを呼び込む唯一の方法だ!一人でも多くの覚醒者の存在が、我々の生存確率を高める!」 「やばいな……!」 直感をいち早く行動に移すことができたのはたのは、やはりスパイクだ。素早く左右を確認し油断なく銃を構える。 ねねねはと言えば残る二人に注意を、それも曖昧な言葉で呼び掛けるくらいしかできない。不安気にこちらを見てくる視線を笑い飛ばせないのがもどかしい。 ルルーシュは宣言した。ねねね達を、言葉でもって蹂躙すると言うように。 「奮起せよ諸君!!」 ルルーシュが両手を大きく広げた。込められた意志の強さの、言葉だけでない全身での表現だ。 翼のように舞った両手に押されたマントが大きくたなびいて、中に隠された細い肢体を露にする。 「極限状態における感情の昂りこそが!真の螺旋力を得るための鍵となる!!」 その姿はいつかの未来、ルルーシュという少年が合衆国の設立を宣言したときと同じ。 変わらぬ誇りと覚悟を持って、ゼロの両手が堂々と力強く天へと突き上げられる。 「さぁ今こそ現れよ、最後にして最強の刺客!ニコラス・D・ウルフウ……!」 突き上げられた両腕の付け根、そこにあったゼロの仮面が中身である人物の脳髄ごとぱぁんと軽快な音を立てて弾けた。 呆然とするねねね達の耳に、かつかつと薄暗い無機質な床に響く足音が届く。 「……恥ずかしい真似は止めてくれへんか、にーちゃん」 暗がりから届けられる低い男の声。ねねねは聞き覚えがない。 ただ、耐えるように前を向いていた。 「出戻った死人はあんたで最後かよ……?」 スパイクは知っているようだ。冷静なようで、声に緊張が見られる。 異様に巨大な十字架。今しがた放たれたばかりの大型の銃。男の姿が露になる。 人生とは絶え間なく連続した問題集と同じだ。 揃って複雑。選択肢は酷薄。加えて制限時間まである。 「ニコラス・D・ウルフウッド……!」 ねねね達の世界は、そういう風にできている。 ◇ ひい、ふう、みい、よ。生き残ったのは四人かい。 あんときのモジャモジャが一人、いつやったか落ち込んだ顔しとった女が一人、あとは知らん。最後にしては締まりのない面子や。 茶番なんは、今に始まったことやないけどな。 まぁ、ええわ。 始めよか。 ◇ 【スタンピード】 暴走。あるいはカウボーイに追い回された家畜がパニックを起こす現象。 ◇ デザートイーグルの弾丸が駆け抜ける爆発的な気配を背中に感じ、間一髪玉座の影に滑りこんだスパイクは身を竦ませた。 同じように女三人が身を低くして弾道から隠れているのを確認する。蹴飛ばすように玉座の後ろに放り込んだのだがそのせいで自分が撃たれたのでは間抜けにも程がある。 いつの間にか居なくなっていたギルガメッシュのことは知らない。 「何がどうなってんのよ一体……!」 「知らねぇよ。どうやらあちらさんはやる気満々みてぇだがなっ!」 頭を抱えて伏せるねねねに答えながら、低い姿勢で ジェリコ941改を放つ。手だけを出し、当然だが片手撃ちだ。威嚇にさえなれば良い。 「いいか、絶対に顔を出すな。常に体は低くして、相手との間には何かしら遮蔽物を挟んでおく。 それから腰を低くしていつでも動けるようにしておくんだ」 僅かに顔を出した瞬間狙い撃たれた一撃に冷や汗が流れた。手短なレクチャーを即実践に移せるような超人を仲間に持った覚えはないが、できなければ高い確率で死ぬ。 「無茶言わないでってばっ!」 「む、難しいですっ……」 案の定鳴り響く銃声の間を縫って抗議が飛んできた。ゆたかはそもそもとるべき姿勢をイメージできないらしい。 「無茶くちゃなんだよ、こいつはな……!」 頬を吊り上げて笑ったのは少女達のタフさをではない、馬鹿馬鹿しいまでに不利な状況に対してだ。 今背にしている玉座を除けば後はぼんやりと光を放つ床がただ広がっているだけ。 遮るものが殆どないこの場所で銃撃戦など、ジョークにしたって誰も笑わない。話す前に自分が死ぬからだ。 「せっかく生き返ったってのに味方撃ち殺すのはどういうつもりだよ、あぁ!?」 返事はない。引き続き応戦しながら、ジェリコでは埒があかないとスパイクは荷物からイングラムM10を引っ張り出した。 ジンがまとめてくれた荷物の中にあったもので、まったく王ドロボウさまさまだ。 取り回しの利かない大型銃の弾薬が切れた頃合いを見計らい、一気に勝負を決めようと半身をさらしてイングラムを突き出す。 その瞬間に撃ち込まれたありえない量の弾丸がスパイクを穴だらけにするより先に身を隠せたのは、死んだような顔をした牧師の目が見えたからかも知れない。 「おいっ!何かさっきより激しくなってないか!?」 「あのドでかい十字架撃ち込んできやがったんだよ!バケモンだぜ、まったく……!」 申し訳程度に9mmバラベラム弾をばら蒔くが弾幕の厚みは比較にもならない。 手早くマガジンを入れ換えるが、早回しのような勢いで削られていく玉座に焦りを含んだ舌打ちが出た。 既に技術がどうの経験がどうのという世界ではない。応用の利かない場所で敵の火力が圧倒的に上回る以上、状況はとっくに終わっているのだ。 向こうがその気になればなす術なく殺されるしかない。 「答えろよ大将っ!えらく派手な紹介が耐えられなかったのかい?こっちはルルーシュに聞きたいことが山程あったんだがな!」 耳がいかれそうな弾薬の雨の中でスパイクは声を張り上げた。会話による引き延ばし、というよりは半ばやけくそだ。 当のルルーシュはと言えばあらかた血は流し終えたようで、ぐったりとした体を弾丸が舐めるに任せている。 のんきなもんだぜ、かすかに呟いて視線を戻す。 「ワイがいつあのもやしっ子を殺したっちゅうんや?」 いかにも鬱屈してますと言いたげな重苦しい声ではぐらかされ、またしてもちっと舌を打った。 「こいつの派手な演説、ありゃどこまで本当なんだぁ!」 やはり黒幕は螺旋王で今もどこかに隠れている。 そんな分かりやすいシナリオは、さすがに存在しなかった。 「残念ながら言っとったこと大体ほんまや。ま、ワイがこうしてるんがもやしっ子の言う『試練』のためかって言うと、そないに関係はないんやけどな」 それについては薄々感づいていた。 一瞬垣間見えた真っ黒なウルフウッドの瞳。前を見ている振りして過去のことしか考えていない濁った色だ。 そういう目をした奴は、大抵死んだ人間のことを考えている。 「はっ、死んじまったヴァッシュがそんなに恋しいかよ!」 半分はウルフウッドではない誰かに向けての嘲笑だ。弾倉を入れ換える短い間隔を除いて繰り出され続ける重機関銃の気違いじみた掃射は打開の糸口さえ見つけられない。 自動小銃、アサルトライフル、狙撃銃。後はせいぜいグレネード弾だが追い詰められたこの状況をひっくり返せる程扱いやすい武器ではない。 「おい、銃貸せ。一発ぶちかましてやらんと気が済まん」 だと言うのに、素人が突然おかしなことを言い出した。 「……馬鹿言うな。自分の足撃ち抜いた味方を笑うような趣味はない」 溢れ出す感情に必死で耐えようとする女の顔は、自然と荒ぶった気性を静めさせた。 本気で言ってる訳じゃないのは分かる。ただ、耐えるだけというのが性に合わない人種はいるものだ。 「作家先生の手がこんな物騒なもん振り回すためにあるとは知らなかったな」 「あたしだけ……あたしだけ何もしてないんだよ……!大きいこと言って守られるばっかりで……!我慢、できるか!」 銃声は止まない。ジリ貧なのは確実だろう。 「菫川先生……」 「悪いねゆたか、偉そうに説教までしといてさ」 ゆたかが慌てたように言葉を探し、胸の小竜が悲しげな声で泣いた。 さて、とスパイクは思う。どうしたもんかね。 今どうにか生きていられるのはウルフウッドの倦怠が動くことを止めさせているからだ。突撃でもされればそれだけで全滅する、紙のように薄い守りでしかない。 真なる螺旋力とやらに覚醒して見せれば良いのだろうか。それこそチープ極まる。 ご都合主義のブーイングに耐える自信はスパイクにはないし、吹っ切れてみるにはこれまで過ごしてきた現実は少しだけ苦過ぎた。 アニメのような現実を見せつけられもしたが、お手軽な逆転劇などそれこそ子供騙しのアニメにしか存在しない。 アニメーション。 そこでふと、自分達が銃とはまた別の絶対的な火力を持っていたことに気付く。 小さく、肩を叩かれた。 「スパイク、ここは私が」 決然として立つ舞衣の姿がそこにあった。 「……おっかないねぇ」 戦乙女と言うやつだ。スパイクとしては笑うしかない。 ◇ むせかえりそうな程に濃密な空気だった。 極度に圧縮されたそれは肺に入れた途端内側から体を焼きつくすようである。 しかも、それは精神的な疲労などが引き起こす幻覚などではない。 現実に、物理的な現象として気温が上がっているのだ。 狩りとる寸前の獲物を焦らして楽しむ肉食獣のような嗜虐的な瞳で、ウルフウッドを見下ろす灼熱の化物によって。 「武器を捨てて、投降して」 いかに砂漠の暮らしが過酷だと言っても太陽がここまで間近に迫ったことはなかった。 人間で言えば肩に当たる部位に手を付きながら、竜を呼んだ少女は精一杯の威圧を込めてウルフウッドを見下ろす。 突き付けられたのはガンメンなるロボットに乗っていたチミルフを一方的に破壊しつくした極大の火力である。 原初の炎を前に一介の人間に過ぎないウルフウッドが抗えるはずもない。 「えらいしっかりした顔になったやんか……そんなでっかい子供まで連れて」 頭のどこかでは予想していたのだと思う。当然だ、会場内を我が物顔で蹂躙する化物の姿はウルフウッドも見ている。 それを従えている少女は、ウルフウッドが直に会ったときとは見違えるくらい生の充実に満ちた張りのある姿をしていた。 やっぱ女は強いな、ウルフウッドは思う。あるいは母の強さを形にしたらこういうものになるのだろうか、と。 命を育む力強さがあれば、繰り返される地獄にも耐えることができたのかもしれない。 耐えられなかった男は中途半端な攻め手を選んだあげく、惨めにもこうして追い詰められている。 「もう一度言うわ。武器を捨てて。これ以上戦うのは止めて」 続けられた言葉は先のものと同じく冷たかった。顔を合わせたことなど向こうはとうに忘れているのかも知れない。 それとも、いつまでもぐじぐじと過去を引っ張る己が愚かなのか。 状況的に見てウルフウッドの敗北は明らかだろう。怪獣が相手では人間であるウルフウッドは白旗を振るしかない。 かくして新たな螺旋の輝きを見せることなく戦いは終了し、生けるウルフウッドは死せるヴァッシュ・ザ・スタンピードに勝利した。 「……だからなんやっちゅうねん」 そして、仮初の目標を失くしたウルフウッドから欺瞞が剥がれ落ちる。 自らが定めた条件を満たしたところで満足感など得られるはずもない。 頭蓋を叩き続けていた呪詛はもう聞こえない。聞こえない程に、その意志はウルフウッドのものと一体化している。 ヴァッシュ・ザ・スタンピードはもういない。 馬鹿みたいに大きな志の半ばで死んだ。幾つもいくつも抱いていた目標を何一つ果たせずに死んだ。 死んだ男を笑うことはできない。 意志を通すこともせず、目的もないウルフウッドは不様に生き続けている。 「嬢ちゃんはワイがこうしたらどないするんや?」 ウルフウッドはパニッシャーを構えた。それまで使っていた重機関銃ではなく、逆側の十字架の頭頂部を前に。 透き通った音を立ててロケットランチャーの砲門が開く。 「あ、あなた一体何を考えてるの……」 毅然とした表情を保っていた少女が初めて狼狽の色を見せた。 敵を殺さずに戦いを終えるには覚悟がいる。 傍で見続けたウルフウッドには、誰よりもそれが良く分かる。 「投降する気はない……っちゅうことや。どないする。ワイに殺されてくれるんか」 少女は明らかにどう対応したら良いか困っているようだった。 死ぬと分かっていて抵抗する愚か者など彼女の過ごしてきた世界にはなかったのだろう。 それでも、そういう輩はいる。掃いて捨てる程に。 誰も死なせないためにはそういう連中も相手にする必要がある。 「その辺にしとけよ。その女はヴァッシュじゃない。八つ当たりするほどガキでもないだろ」 防壁代わりの玉座からモジャモジャ頭の男が出てきた。向けられた銃に、空いた手で大口径の銃を突き付ける。 右手にパニッシャー。左手にデザートイーグル。即席の二丁拳銃が産み出した歪な三角形が、僅かな均衡を形作った。 「……やっぱ、ワイはヴァッシュ・ザ・スタンピードが嫌いや」 地獄の果てまで連れ回され、大抵はろくでもないことばかりだった。 「俺は馬鹿野郎は嫌いじゃないぜ。もっとも、アンタみたいなタイプは別だがな」 カウボーイは追い詰められた獣にそう言った。 獣には言葉がない。 そして、一瞬のスタンピードが始まった。 パニッシャーとデザートイーグルが同時に火を吹いた。 ロケットランチャーは白煙を推進力にジグザグな軌道で怪獣の肩口にいる少女へ。 銃弾は横っ飛びに転がった男を捕らえられず、逆に放たれた弾丸はウルフウッドの手から白亜の十字架を奪い取った。 問題はなかった。ロケットランチャーは阻むものもなく化物の元へと到達している。 間髪入れずに爆発が起こり閃光が少女を包み込んだ。 舞衣ちゃん、ひっくり返った声でそう叫びながら子供が玉座の後ろから飛び出した。ウルフウッドはデザートイーグルの照準をそちらに定める。 その手に鈍く重たい衝撃が走った。しかし銃弾が貫いたのは急所ではなく、痛みもまだ追い付いてこない。 男は急に飛び出した子供に気を取られ、僅かに狙いを外したようだ。 次弾が放たれる一瞬の隙に照準の修正は終わった。 撃ち出された弾丸は狙い違わず少女の小さな体を吹っ飛ばし、それと同時に化物が放った反撃の炎がウルフウッドの体を焼いた。 ◇ 人間の体が焦げる、嫌な臭いが鼻をついた。 「今度は、死なせてもらえるんやろうな……」 半身を焼かれ死に体となったウルフウッドに対し、スパイクはジェリコの銃身を向ける。 泣きたくて仕方がないのに泣き方を覚えていない、そんな顔で男は天を見つめていた。 「誰も死なせずにやろうなんて……そうそうできるもんやないで……難しすぎるっちゅうねん」 でき損ないの牧師は死の間際にそんなことを言った。散々に人を殺して回った者の言葉にしては、不思議と真剣味があった。 「俺もそう思う」 静かに同意する。 「面倒なもんに絡んでもうたで……まったく」 「ああ、そうだな」 スパイクはそこで視線を横にずらした。生き残った女達の姿がそこにある。 舞衣は何とか無事のようだ。全身ぼろぼろだが、持ち前の力で防御したらしい。もうタフという言葉ではきかない。 ねねねはまた堪えているようだ。 ウルフウッドの銃弾に曝されなかった唯一の人物のはずなのに、彼女は他の誰よりも傷付いている。 そして、ゆたかは。 ゆたかは泣いていた。幼い顔をぐにゃぐにゃに歪め、溜め込んでいたものが一挙に溢れ出たように大粒の涙を流し続けていた。 恥も外聞もない、生きている者だけが見せる心底からの涙だ。 胸に抱かれた小竜は、もう死んでいた。 命を奪ったのは胸を穿った一発の弾丸だ。蘇生処置をする余地もなかった。 飛び出したゆたかがウルフウッドの殺意に曝された瞬間、彼は飛び出していた。 白銀の小竜は自らその傷付いた羽をはばたかせ、身代わりとなって主の命を繋いだのである。 「悪運の強い連中やで……」 自嘲気味に戦果を笑うウルフウッドをいや、とスパイクは否定した。 「死んだ人間にしてやれることはない。同じように、死んだ人間ができることなんてのもないんだ。 仮に俺達を皆殺しにできたとしても、お前はそうやって惨めに笑ってただろうさ」 「言ってくれるで……好きで死人やってた訳……ちゃうっちゅうねん」 沈黙の中に、ゆたかが泣く声だけが響いた。 生きている男は、死んだ男の声を聞く。 「なぁ……分かるか……二度目の生っちゅうもんが……地獄やった気分が」 「……あぁ、分からんでもない」 あっさりとしたスパイクの肯定をどう受け取ったのか知らないが、特に反応もせずにウルフウッドは続けた。 「最悪、やろ……?」 「いや」 闇を照らすように火花が一つだけ散り、ウルフウッドの体が揺れた。 「泥ん中から這い上がる気があるなら――そういうのも悪くない」 ◇ 皆思っていた。 もっと自分に力があれば、と。 自分がもっとしっかりしていれば悲劇は防げたのではないかと嘆いていた。 涙とともに出されるそれらは意味のない仮定だ。逆風ばかりの現実に対し何の力も持たず、事実は覆らない。 もっとこうだったらとか、仮にああだったらとか、努力もせずに語られるそれらは怠惰と同義だけれど。 ねねねは思った。本当に悲しいときくらいはそれが許されてもいいんじゃないだろうか。 胸の中でゆたかが泣いている。 「ごめんな、あたしがもっとちゃんと守ってれば……」 小柄な体を抱く両腕に力を込める。今にも折れそうな細く柔らかい感触が伝わってきた。 「私が、迂闊だったんです……」 舞衣が言った。暗い。虚ろだ。 ああもう、皆が皆自分が悪いの自分のせいだのと。そんなことを言っても何も前進しないのに。 うじうじするのは好きじゃないのに。 足が、進まない。 「守られるばっかりってのは辛いよな……」 ゆたかの頭に手を置く。抵抗はない。 自分も誰かにこうして欲しいのだろうか。認めたくなかった。 「辛い、です」 嗚咽に紛れて潰れそうになった、か細い声だ。 ゆたかの体はとても小さい。 「それでも、生きていかないといけないんだと、思い、ます」 ねねねは自分が落ち窪んだ泥のような目をしていることを自覚した。 ゆたかの言葉は正しい。そして感動的だ。 なのに言った本人も聞かされたねねね達もちっとも楽にはならず、汗と泥と血で汚れた体はとても汚い。 正しい言葉は正しいだけで優しくはなく。傷だらけの心に冷たくのしかかった。 それでも。 「そうだな」 肯定するのだ。意地というものがある。責任というのもある。 どれだけ醜くなっても、恥をさらしても。 生きてるんだと笑ってやれるしぶとさが必要なのだ。 ねねねはゆたかを立たせてやった。多少ふらついたのを横から舞衣が支える。 「行こう。もうちょっとだ」 はい、と二人は答え、ねねねは声を出して笑った。 顔の筋肉を歪めただけの、ひきつった、少し滑稽な笑みだった。 「これからどうすんの」 いつの間にか見守るように背中に立っていたスパイクにねねねは押し殺した声で聞いた。答えようがないのか、返事はない。 右も左も分からない場所で、案内人が務まりそうな者は皆死んだ。 諦めようとする者がいないのは唯一の救いか。絶望に変わらないといいけど。 ギルガメッシュはと聞いた。さぁねぇ、と軽い調子で返された。 「ルルーシュには聞きたいこともあったんだ。言いたいことだけ言って、死ぬなんてさ……」 語尾が震えてしまった。スパイクが話題の主に視線を向けたのが気遣いのように感じられて少しだけ悔しい。 ねねねも同じ方向を見る。さすがに直視はできないがそれでも遺体の悲惨さは知れた。 物言わぬ身となったルルーシュの細長い体は無慈悲な銃弾の雨に曝され、上質の素材で作られた衣装から皮膚やその更に奥が露出している。 自業自得だと言ってしまえるほど割り切った思考はできない。 頭部は大半が弾け飛んだせいで、末期の表情を知ることもできなかった。 こいつは自分が死んだことを理解できたのだろうか。分からない。 かすかに飛散した毛髪をいくら見ても答えは返ってこなかった。 しかし。 「何だ……?」 妙なものを見つけたと言うように、スパイクが呟いた。 時系列順に読む Back HAPPY END(18) Next HAPPY END(20) 投下順に読む Back HAPPY END(18) Next HAPPY END(20) 285 HAPPY END(18) ヴィラル 285 HAPPY END(20) 285 HAPPY END(18) シャマル 285 HAPPY END(20) 285 HAPPY END(18) スカー(傷の男) 285 HAPPY END(20) 285 HAPPY END(18) ガッシュ・ベル 285 HAPPY END(20) 285 HAPPY END(18) 菫川ねねね 285 HAPPY END(20) 285 HAPPY END(18) スパイク・スピーゲル 285 HAPPY END(20) 285 HAPPY END(18) 鴇羽舞衣 285 HAPPY END(20) 285 HAPPY END(18) 小早川ゆたか 285 HAPPY END(20) 285 HAPPY END(18) ジン 285 HAPPY END(20) 285 HAPPY END(18) ギルガメッシュ 285 HAPPY END(20) 285 HAPPY END(18) カミナ 285 HAPPY END(20) 285 HAPPY END(18) ドモン・カッシュ 285 HAPPY END(20) 285 HAPPY END(18) 東方不敗 285 HAPPY END(20) 285 HAPPY END(18) ニコラス・D・ウルフウッド 285 HAPPY END(20) 285 HAPPY END(18) ルルーシュ・ランペルージ 285 HAPPY END(20) 285 HAPPY END(18) チミルフ 285 HAPPY END(20) 285 HAPPY END(18) 不動のグアーム 285 HAPPY END(20) 285 HAPPY END(18) 流麗のアディーネ 285 HAPPY END(20) 285 HAPPY END(18) 神速のシトマンドラ 285 HAPPY END(20)
https://w.atwiki.jp/animerowa-2nd/pages/734.html
HAPPY END(3)◆ANI2to4ndE (――ウヌウ?――) 過去形になったのは、ガッシュの致命傷が瞬く間に癒えてしまったからである。 激痛が引き、鈍痛が治まり、重苦も軽くなって、万全の状態へと戻る。 折れていた骨が、再び接合し、血液の流れを正常に戻す。 潰れていた内臓が、巻き戻したように再生される。 裂けていた肌が、子供らしい玉肌に戻る。 死を覚悟した心は、活力を取り戻す。 復活する。 「こ、これは、いったい……?」 わけもわからず、ガッシュは弾かれるように起き上がった。 全身を見渡してみると、着衣やマントを含め、いたる箇所が新品同様に輝いている。 試しに飛び跳ねてみても、まったく苦痛を感じず、体調もすこぶる良好だった。 怪訝に思うガッシュだったが、ふと気づく。 後ろを振り向くと、ガッシュの赤い本が、〝金色〟に輝く姿があった。 本を持つねねねの表情は、驚嘆。 自身、魔本の発光に原因を見い出せない様子で、呆然と口を開閉している。 そんなときだ。 『不死者の再生能力をもってすれば、これくらい雑作もない……』 どこからともなく、落ち着いた大人の風格を漂わせる声が響く。 『なんたって死なないからね! どんな傷もあっという間に全回復さ』 続いて、同じ声が声色を変えて響いてきた。 一転して無邪気な子供のように聞こえる声を、ガッシュの耳は覚えていた。 まさか、そんなはずはない、とは思いながらも、つい振り向いてしまう。 傍ら、声の発信源として立つ礼装の男児を見た。 久方ぶりの顔ではにかんで見せ、ガッシュの顔を綻ばせる。 死んだはずのチェスワフ・メイエルが、そこにいた。 『お久しぶり、だね!』 チェスだけではない。彼の両肩に手を添え、姉のような微笑みを送るミリア・ハーヴェントの姿もあった。 共に不死者という肩書きを持ち、死ぬはずがなかった船上で、運命に翻弄された二人が……いる。 いつかと変わらぬ笑顔で、ガッシュに再会の言葉をかけ、頼もしく、温かく、包み込むように。 「チェス……ミリア……おぬしたち、いったいなぜ……!?」 『ピンチだったみたいだから、みんなで助けに来たのさ』 嬉しさのあまり、勝手に涙が零れた。 起こった事象の原因を究明する頭を、今のガッシュは持ち合わせてはいない。 ただ、仲間との再会が喜悦を齎し思慮を鈍らせる。目の前の敵が健在であることすら、 『おっと、ガッシュ。君が戦うべき相手はまだピンピンしている。みんなを守るんだろう?』 『――だったら、力を貸すぜ』 忘れそうになり、寸でのところで、高尚な男の声によって諭される。 巨頭のように聳えるグレンラガンに顔を向け直し、戦意を再燃させた表情で、睨み据えた。 ガッシュの闘争心に感化され、ねねねも改めて、金色に輝く本を構える。 そして唱えるのは、散っていった仲間たちの助力を受けての、新たなる術だ。 「シン・ガンズ・ブラックドッグ!!」 ねねねの言霊を鍵とし、ガッシュの周囲一帯に、漆黒の猟犬が顕現する。 影のように実態不確かなそれは、数にして六頭。 おぞましい犬歯をむき出しにして、グレンラガンの巨躯へと一斉に飛び掛った。 六頭の黒犬が、それぞれグレンラガンに牙を突きたてる。 貼りつくようにしつこく、逃走を許さぬほどに粘り強く。 ブラックドッグの異名を、その術技にまで浸透させ、グレンラガンの自由を奪う。 『喰らいついたら離すなよ、ガッシュ』 「ジェット!」 ガッシュの傍らでは、顎鬚禿頭の巨漢が愛銃たるワルサーP99を構え、黒犬を使役していた。 ジェット・ブラック。 彼の放つ獣の弾丸は標的を狙い撃ち、一撃必殺に至らずとも、喰らいついたら決して逃がさない。 『あら、そう言う割には弾幕が薄いんじゃない?』 グレンラガンが六頭の黒犬に噛みつかれている最中、それでは足りない、と女声が叱咤する。 ガッシュと並び立つジェットの反対側、ヴィクトリア朝式メイド服を纏う魔導師の姿があった。 「シン・クロスファイアー……」 ガッシュの周囲で、蛍火のような光球が舞う。 魔力スフィアと呼ばれるエネルギー体は、小さくはあるが数は無尽蔵、続々と出現を為し、 「……シュート!!」 未だ六頭の黒犬に絡まれるグレンラガンに、追い討ちをかけるように放たれた。 数も相まって、機関銃のような勢いで叩き込まれる魔力スフィアに、グレンラガンはたたらを踏む。 ガッシュの傍らでは、二丁の銃を構える船上メイド、ティアナ・ランスターがニッ、と微笑んでいた。 「チェス、ミリア、ジェット、それにティアナまで……おぬひたち、ひんだ、はずなのにぃ……」 『あーあー、泣くんじゃないわよガッシュ。いい男の子がみっともない』 『俺たち自身、驚いているがな。ま、最後のサプライズみたいなもんさ』 『ガッシュの想いが、奇跡を起こしたんだよきっと!』 『メークミラクルだね!』 ガッシュを支えるように佇む、四人の故人たち。 彼らは皆、宙に浮き、実体を持たず、淡い金色に包まれていた。 幽霊という単語を想起させ、しかしガッシュは深くは考えない。 こうやって、幾時間ぶりに会話をしていることが、なにより嬉しくてたまらなかった。 その嬉しさに比べれば、謎など些細なものだ。 「……主人公のピンチに、死んだ仲間が駆けつけるって? はは……使い古された少年漫画の展開じゃん」 金色の霊体は、金色の魔本を携えるねねねの目にも映っているのだろう。 不可思議な現象に思わず失笑が零れ、しかしそれらを否定する気は一切ない。 作家にとって、ご都合主義は嫌悪すべき概念であり、心強くもある切り札だった。 「いいネ。すごくいい。クライマックスにはこういう展開もアリってことね。ガッシュ、続けていくよ!」 「ウヌウ!!」 現パートナーであるねねねも戦意を取り戻し、勇みよくガッシュに再動を促した。 グレンラガンはまだ撃破したわけではない。反撃は加えたが、依然健在のままだ。 だからこそ、ガッシュの本を包む金色は、一層輝きを増す。 「シン・ノーベル・フラフープ!!」 ガッシュの指先に光が灯る。空を切るように輪を描くと、光の軌跡は徐々に拡大し、巨大なわっか状の光線と化した。 ガッシュは指先を軽く振り、一回転、二回転、三回転、十分に遠心力をつけ、解き放つ。 新体操に用いられるような光のフラフープは、輪投げの要領で頭からグレンラガンに嵌り、途端に縮小。 ジェットの銃とティアナの魔法による弾幕がやんだ瞬間、矢継ぎ早の連撃としてその巨躯を縛り付ける。 『上手い上手い! ガッシュ、結構こっちの才能もあるよ!』 「ウヌウ! アレンビーも手を貸してくれるのだな!?」 『もっちろん! さあ、みんなで倒すよ、あのデカブツ!』 『――んじゃま、夫婦初の共同作業といきましょうか。俺の愛しのアレンビー』 ガッシュの傍らに現れた新たな助っ人は、一人の少女と一羽の鳥。 ピッチリとしたレオタードは本物の新体操選手を思わせ、人語を発する黒い鳥はやたらとキザっぽい。 そんな二人のやり取りが、懐かしく。ガッシュはうれし涙を溜めながら、アレンビー・ビアズリーとキールに感謝した。 『役立たずの相棒はどっかでおねんねしてるみてーだしなぁ! ここはいっちょ、俺たちが……』 「ウヌウ! ジンからおいしいところを掻っ攫うわけだな、キール!」 『そーゆーこと。派手にいくぜご両人! LOVEなら俺とアレンビーだって負けちゃいないってね!』 キールが金色を纏いながら羽ばたき、ガッシュの右腕に縋りつく。 全身を撓らせ、篭手のような形態で絡みつくと、大きく開けたくちばしをグレンラガンへと向けた。 フラフープに身を拘束されているグレンラガンは、この瞬間のみ単なる木偶の坊と化す。 銃口となったくちばしが標的を狙い撃つには、十分な条件が整った。 「シン・キール・ロワイヤル!!」 ガッシュの右腕、キールのくちばしから、金色の光線が放たれた。 その輝きはグレンラガンから溢れ出る碧と桃の色を埋め尽くし、天空を金一色に染め上げる。 さしもの巨体も直立不動とはいかず、放たれた金色の奔流に一歩、また一歩と後退を余儀なくされる。 「ヌゥォオオオオオオオオオオ!!」 力の解放は続き、衰えるどころか火勢を増して、ついにはグレンラガンの装甲を削ぐに至った。 光線の放出が終わると同時、キールはガッシュの右腕から飛び立ち、グレンラガンの惨状を見て不満げにごちた。 『しぶてーねぇ。あれだけくらってまだ壊れないなんて』 『あっちもそれだけ必死ってことでしょ。ほらガッシュ! 今度はあっちから攻めてきたよ!』 鉄壁を誇っていたグレンラガンが、ここにきて守勢を強いられていた。 そんな戦況を覆さんと、今度はグレンラガンのほうから、攻勢に出るため踏み込んでくる。 超重の歩みが地響きを生み、愚直な突進にガッシュは一瞬、対処法を悩んだ。 術で迎え撃つか、回避すべきか、決断を迫られる間際、 『引くなガッシュ! 真正面から投げ飛ばせ!!』 「――!」 渋みのある男声に促され、自然と足は前へ出た。 駆け込んでくるグレンラガンに真っ向から対するため、ガッシュもまた走る。 衝突の瞬間、 「シン・ラウザルク!!」 上空に現れた灰色の雲より、ガッシュに雷が落ちる。 狙いすましたような落雷は、しかし天災ではない。 構わず、ガッシュはグレンラガンのつま先を掴み、 「ヌゥ……」 そのまま持ち上げ、突進の勢いを殺した。 地から足が離れ、バランスを崩したグレンラガンの比重を、小柄なガッシュが抱えきる。 ぐらっ、と大地が震え、巨体が宙に浮いた。 「……おぉおおおおおおおおおおおお……」 両腕で抱えたグレンラガンのつま先を支点に、激震。 ぐらん、ぐらん、とグレンラガンがやじろべえのように揺れ、ガッシュはそれを身動き不可能と見るや否や、 「……おおおらあああっしゃああああああああ!!」 柔道における一本背負いの要領で、豪快に投げ飛ばした。 自身の何倍もの体格を、法則すら無視して地にたたきつける。 下敷きになった建築物は軒並み倒壊し、グレンラガンは残骸に沈んだ。 『剣持勇直伝の一本背負い! 上出来だガッシュ。なかなか筋がいいぞ』 「ウヌウ……まったく重みを感じなかったのだ。すごい、すごいぞ勇!」 こげ茶色のスーツを着た年配の刑事が、ガッシュと万歳三唱する。 自身、ヴィラルに同じ技をかけた経験があり、ガッシュとは夢を語り合った仲である、剣持勇だ。 『っと、気を抜くなよガッシュ。奴さん、まだやる気満々みてぇだぜ』 「ウム。皆が力を貸してくれる……私とて、まだまだやれるのだ!!」 続々と駆けつけてくる仲間たちの魂に、ガッシュの戦意は鼓舞され、戦闘続行の原動力となる。 装甲を損傷し、地面に勢いよく激突したグレンラガンも、大破には至っていない。 悠然とした動作で起き上がり、二本の足で屹立してみせる。 その巨大さゆえ緩慢なグレンラガンの立て直しを、〝地獄の傀儡師〟は行儀よく待ったりはしない。 「シン・サスペリア・バルカディオン!!」 グレンラガンが起き上がった瞬間を狙い、矢継ぎ早に仕掛ける。 唱えた術の効果はグレンラガンの周囲、取り囲むように出現した二種七体の人形の姿で反映される。 ティアナと同じようなヴィクトリア朝式メイド服姿のドールが三体、包丁を握っていた。 スティックタイプのお菓子の箱を胴とし、割り箸を手足とした不細工な工作が四体、漂うのみ。 それら七体が皆人間大の大きさを持ち、、グレンラガンを幻惑するように周囲を旋回。 ときには包丁で襲い掛かり、ときには口からミサイルを発射し、ときにはお茶を零し、ときには口をパカパカと開け閉めし、翻弄する。 四体のメイド人形と四体のバルカン300を操るのは、人形繰りの技巧に長けた犯罪芸術家、高遠遙一だ。 『安易な横文字は好きではありませんのでね……タイトルをつけるならば、〝地獄の人形劇〟とでもいったところでしょうか』 「ウヌウ! ティアナとバルカンが踊っているようなのだ! すごいのだ!」 人形劇とはよく言ったもので、グレンラガンは悪い魔女、人形たちは七人の小人を連想させた。 それでいて術としての性能も抜群に発揮できており、見るものに楽しさを与える点が、奇術師としての創意工夫の結果でもある。 ガッシュは爛々と眼を輝かせ、グレンラガンは鬱陶しそうに腕を振り回し、高遠は鷹揚に微笑んでみせた。 「シン・レード・ザ・ペーパー!!」 地獄の人形劇が繰り広げられる中、舞台上、グレンラガンを包囲するように紙吹雪が舞った。 一枚一枚が国旗のように大きく、それでいて鉄板のように硬質化している。 まるで意思を持ったように飛び回る紙がグレンラガンの装甲に触れると、一閃の傷が走った。 それが無数、接触するたびにグレンラガンを切りつけていく。 グレンラガンの周りを、さながらミキサーのように、轟然と紙が踊り狂う。 「ウヌウ、これはいったい誰の術なのだ?」 見覚えのない技にガッシュがいぶかしみ、術を唱えたねねねのほうへ目を向けた。 そして、彼女の左右に浮かぶ〝紙〟を構えた女性と女の子を見て、すぐさま理解する。 ガッシュだけではない。ガッシュと共に戦っている友――菫川ねねねにも、心強い仲間がいたのだ。 『書きましょう、先生。その本には、まだまだ加筆できる部分が残っているんですから』 『本で戦う作家なんて、紙使いよりよっぽど変。けど、ここ一番なんだから踏ん張ってよね』 「安心すれ。気合とか、根性とか、そういうのは作家の専売特許だってーの」 絶望に暮れていたねねねはすっかり元の調子を取り戻し、歯を覗かせて笑っていた。 読子・リードマンとアニタ・キング、二人の紙使いに励まされながら、心の力の放出を続ける。 『気合と根性……ですか。それなら、刑事を務める私とて得意とする分野です。なにせロスでは――』 『オッス! それならわたしだって負けてないッス!』 『おいおい私を誰だと思ってるんだ? 無敵のパルコ・フォルゴレだぜっ!?』 「だー! あんたら三人はなんのために出てきた!?」 かと思えば、ここぞとばかりに新たな立会人が三名、ねねねを激励しに馳せ参じる。 クラシックなスーツを着こなす眼鏡の男性と、体操着にブルマ姿の女児、そしてイタリアの英雄パルコ・フォルゴレだった。 やんややんやと騒ぎ立てる三人は、やはりねねねにも縁深い者たちなのだろう。 ガッシュも思わず、笑顔をほころばせる……なにはともあれ。 後ろで術を唱えてくれるパートナーと、彼女を支える仲間たちに、ガッシュは安堵を覚え――Vの体勢を取った。 「う、ウヌウ!?」 『ウヌウ、ではぬわぁ~い! Vの体勢を維持せよ、ガッーシュ!!」 両腕を空に向かってピンと伸ばし、足は爪先立ち。 体のラインでアルファベットの『V』を形作り、ピタリと停止。 『荘厳回転(グロリアスレヴォリューション)3・6・0(スリー・シックス・オー)……』 グレンラガンの周囲を覆っていたメイド、バルカン300、硬質化した紙が次々と回転しだし、 華麗なるVの最強術を放つための条件が整った。 「シン・チャーグル・イミスドン!!」 三百六十度回転を続ける人形と紙から、V状の光線が一斉放射される。 一つは天に向かって雲を突き、一つは地に向かって路面を穿ち、多くはグレンラガンに向かって、装甲を破壊していった。 広範囲高威力ながら、命中率もなにもあったものではない無造作で乱雑な攻撃は、ガッシュにVの体勢を指示するビクトリームによるものである。 『ぬぅわぁーっはっはっは! 見たかアホタレめぇ!! 生前見せられなかった華麗なるビクトリーム様の本領発揮よぉ』 「ウヌ……ビクトリームまで来てくれたのだな」 『あたぼうよガッシュ。なんてったって君と僕はマブダチじゃあん?』 「うっ、ウヌ……ウヌウ?」 思わぬ助っ人に半ば困惑するガッシュだったが、この攻撃が決定打となった。 Vの光線がやみ、人形や紙も消え、後に残ったのはボロボロの外観を纏うグレンラガンだけとなる。 火花を散らす裂傷、歪み拉げた装甲、熱で溶解し始める四肢、焼き切れた計器を示す煙。 もはや、ここの状態から挽回してくるはずもあるまい、と一瞬思うが、すぐに首を振る。 初手としてバオウ・ザケルガを決めた際の再生能力。 あれを視野に入れれば、やはり完全破壊を見届けなければ勝ち鬨をあげる気にはなれない。 駆動もやっとといった様子のグレンラガンに、ガッシュは気を引き締めなおし、右腕を振り上げた。 『そうだ……やるのなら、もっと徹底しろ』 ガッシュの背後に、褐色肌の傷面が立つ。 仰々しい刺青を彫った右腕が、ガッシュの振り上げた右腕とシンクロし、 「シン・スカー・クロウ・ディスグルグ!!」 ガッシュの背後の傷の男(スカー)、そのさらに背後……浅黒い肌色を纏った巨大な右手が、具現化した。 その右手はスカーの動きに、ひいてはガッシュの動きに合わせ、グレンラガンを掌握せんと放たれる。 ほぼ同一の大きさを誇るそれは、グレンラガンの巨躯を強く握り締め、瞬間、閃光が迸った。 破壊を告げる錬成反応。掌の中のグレンラガンは、巨大な掌の握力と分解効果に襲われ、ついに大破した。 「う、ウヌウ……容赦がないのだ……」 『容赦はしなくて正解だ。ガッシュ。もう、誰も死なせるな』 「……ウム。わかったのだ、スカー」 慌しくも、死亡直後に駆けつけて来てくれたスカーの魂。 自身が不甲斐ないばかりに守れなかった仲間の想いを、ガッシュが受け継ぐ。 スカーの術によって大破したグレンラガンは、爆発こそしていないものの、既に満身創痍を越えた損傷度合いだ。 胸部のサングラスは粉々に砕け、両腕部は肩口からもげ、脚部はどうにか無事なために、転倒だけは免れている状態である。 『だけど油断しないで。シモンのグレンラガンは、頭のラガンさえ無事なら、まだ復活する可能性があります』 そう、助言を届けにやって来たのは、グレンラガンというガンメンを人並み以上によく知る少女、ニアだった。 ガッシュの肩に手を添えながら、エメラルドグリーンの輝きを纏った眼差しを向ける。 「ニア。私は……もう、誰にも死んでほしくはない。守りたいのだ。ねねねやジンを、みんなを、みんなで螺旋王を倒すのだ!」 『思いは一緒よ、ガッシュ。シモンやヨーコさんも、ここにはいないカミナさんも……そう、あなたのパートナーだって』 ガッシュの肩に添えられたニアの手が、そっと離れる。 代わりに、ニアのものよりは大きい、武骨な手が乗せられた。 魔界の王を決める戦いの参加資格にして武器たる本を、掴んで離さず。 どんな衝撃を受けようともページを開き、敵に渡しはしなかった強固な手。 触れただけでも心強い、絆の握力を肩幅に感じる。 振り返らずとも、ガッシュは最高のパートナーの存在を察知した。 『……よく。よく頑張ったな、ガッシュ』 「いいや……まだ終わってはいないのだ、清麿」 賛辞にはまだ早い、とガッシュは確固たる意志で敵を睨み据える。 紫電の眼差しは魔界の王子として、最後の関門を射竦める。 傍らの親友、高嶺清麿は友の成長を鑑み、フッと微笑んだ。 『そうだな。まだ終わっちゃいない。俺たちの戦いは、まだまだ続くんだ』 「ウヌウ。そのためにも、ヴィラルとシャマルはここで倒す! ……しかし清麿、私の本のあの輝きは、いったいどうしてしまったのだ?」 『俺にもよくわからんが、あの本を通じて映像が見えたんだ。死んだはずの俺たちに、危機に立ち向かうガッシュたちの姿が送られてきた』 『ここにいるみんなはそれを見て、ガッシュの助けになりたいと思い駆けつけてきたんです』 清麿とニアが、ガッシュを支えるように寄り添う。 その後ろには、金色に輝く本を携えたねねねと、読子とアニタの姿が。 さらにチェスやミリア、ティアナ、ジェット、アレンビー、キール、剣持、高遠、ビクトリーム、スカー……志を同じくする仲間たちが、一同に会していた。 『さあガッシュ。グレンラガンを倒すために、最後の術を。私やシモンの、大グレン団のみんなの力、受け取って』 『イメージするのはバリーの術だ。グレンラガンにも負けないような特大のドリルで……天を突け、ガッシュ!!』 「おぉおおおッ!!」 皆に支えられて、ガッシュはここに立っている。 親に捨てられ、世知辛く暮らしてきた幼少時代。 そのときの記憶すら失っての、闘争への強制参加。 けれど得られたものは大きく、ガッシュは立派に成長した。 自身をここまで導いてくれた全てのものに感謝し、応えるために。 ガッシュは、右腕を天高く掲げ――今、最後の術を発動する。 「シン・ドルザケル――ッ!!」 ねねねの持つ魔本が、オーロラのように眩く、鮮明な輝きを発する。 螺旋力を象徴する碧と、ガッシュを象徴する金色、書本来の色である赤、混じって合わさる煌き。 宿した心の力はねねね一人のものではない、多くの仲間から授かった力、容量は底なしの無尽蔵。 ガッシュの右腕を包む雷撃の塵が、逆巻き渦となる。 それは空に昇っていくにつれ先端を鋭く研磨し、螺旋を形成する。 グレンラガンのギガドリルブレイクにも匹敵する、巨大な電撃のドリル。 旋回とともに迸る閃光は、雲を裂き、天蓋を穿ち、月まで届いて螺旋の王に脅威を届ける。 これが、決着の一撃だ。 『……ガッシュ。最後に一つだけ確認したい』 「ウヌ、なんなのだ清麿?」 『おまえの居場所は、ここにあるのか?』 矛を向ける間際、清麿がガッシュに問うた、意味深長な一言。 ガッシュは深くは考えず、心で理解し、質問に答える。 「ウヌウ! なにを言っているのだ清麿。私の居場所はここにある。ここ以外のどこにもありはしない。 ヴィラルとシャマルを倒し、皆を守り、螺旋王を玉座から引き摺り下ろし、元の世界に帰って、また王を目指すのだ。 いや……目指すのではない。私は、王になる。ねねねが力を貸してくれる。皆をしあわせにする、王に。 聞いてくれ清麿。清麿がいなくなっても、私は戦えるのだ。大きな声で、自分の夢を叫ぶことができるのだ」 ガッシュは大きく息を吸い込み、全世界に響き渡るように宣誓する。 「私は――やさしい王様になるのだぁああああああああああああッ!!」 力一杯の叫びが、仲間たちの胸に届く。 清麿は、ただ笑った。 共に覇業を駆け抜けた、かつての戦友として。 ガッシュの勇ましさを嬉しく思い、彼の頭をわしゃわしゃと撫で回す。 『それでこそガッシュだ! なら問題はねぇ……おまえは、〝この世界〟で王になる! 絶対にな!』 「ウヌウ! 絶対なのだ! だからいくぞ清麿! この一撃で――」 ガッシュは決着の一撃、雷撃のドリルを、グレンラガンに放つ。 悲願の成就、闘争の終焉、誰もがしあわせに暮らせる未来を目指して―― ……そんな、お話。 願いは空に、遠い遠い宇宙の裏側にまで届く。 望んだのは現実としての幸福、それがまやかしだと気づかなければ。 走り抜けてきた過去は、決して無駄ではないはずだから。 馬追い声のように響く騒がしき後方は、振り返らない。 灯台の如きゆらめきへ一目散、前へ、愚直なほど前へ。 こうだったらいいのに……という、拙く儚い想い。 れっきとした現実には違いないが、現実とは違う場所。 はじめて味わう極上の形に酔いしれて、永遠に気づかず。 全ての艱難辛苦から逃れ、脱落者として目を背けた隔離世。 部分的にでも違和感を覚えたのなら、あるいはどうだろうか。 夢には違いない。それでも、命の風鈴は音を奏でることをやめ。 死の間際に見た安楽の名前は――あるいは、多元宇宙迷宮と呼ばれる幸せの形なのかもしれない。 ◇ 「――戦士の旅立ちだ。しばしの間だけ、時間をくれてやる――」 人が見る夢は儚いものだと、誰かが呟いた。 詩人でもなく、歌人でもなく、絶望を知った者の嘆きである。 夢は叶う。夢は叶えるもの。夢を叶えるために、人は頑張る。 ただ、夢は叶わずして潰える場合もある。悲しい事実として。 少女の頃から作家になりたいと願い、見事夢を叶えてみせた菫川ねねねは、思い知る。 夢は、潰えるのだ。 ここでは、ひとつ。純粋無垢な少年の、年相応な願いと、不相応な志が、一挙に。 夢は、潰えたのだ。 ガッシュ・ベルの、王になりたいという願いは、もう―― 「あ、ああ……」 ドリルという名の矛を収めたグレンラガンが、見下ろす。 頭部と胸部、二つの顔で崩れ落ちるねねねを、見下ろす。 ヴィラルとシャマルは黙して表情を隠し、ただ見下ろす。 ねねねの目の前には、無残な子供の体がひとつ、横たわっていた。 グレンラガンのドリルを受け止めるも、そこで力尽き、直後の攻撃に耐えられなかったガッシュ・ベルのなれの果てである。 本来の体の頑丈さもあって、まだ人の形は保てていた。 だが、全身各所からは骨が飛び出て、関節は逆方向に曲がり、肌の色は血に染まった赤で満たされている。 顔つきは、明らかな死人の形相。微かに聞こえる荒い呼気が、まだ辛うじて存命しているという事実を知らせていた。 「がっ……あぁ……」 潰えようとしている命に、ねねねは語りかけるべき言葉を見失う。 辺りを見渡してみれば、破壊の名残の他に、無数の物品が転がっていた。 ビチビチと跳ねるブリ、墓標のように突き刺さる扇、容器から零れた薬剤に、潰れたバルカン300。 ガッシュの所持していた荷物が散乱しており、しかしその中に彼の命を助ける万能薬に等しき道具は存在しない。 いや、あるいは――と思い立ち、ねねねはすぐ近くにあったジッポライターを拾い上げる。 剣持勇の遺品となってしまったそれを使い、ガッシュの赤い本を燃やそうと試みた。 本が燃えてしまえば、魔界の王を決める戦いからは脱落し、生きたまま魔界に強制送還される。 そんなルールを聞き覚えていたからこその行動だったが、結果は知識とは食い違った。 (燃えろ……) 赤い本にいくら着火しようとも、焦げ一つつかない。 火力が不足しているわけではなく、熱がまるで伝わらないのだ。 ライターの火種を近づけようとしても、手が寸でのところで止まってしまう。 (燃えない……なんで……どうして……) これだけが、ガッシュを救える唯一の手段であると信じていたのに。 燃えない紙など話と違う……とねねねは悲観に暮れ、思い出す。 ある種、魔物のパートナーを務める上では重要な事項を、失念していた。 (魔物とそのパートナーは……自分で自分の本を燃やすことが、できない) 清麿やガッシュから聞き及んでいた予備知識は、追い風となってねねねの闇を深くする。 魔界の王を決める戦いは厳正かつ過酷、白旗を揚げることは許されないのだ。 心根のやさしい魔物でも、闘争に参加しなければならないように、制約を設けられていた。 (……ッ! 知るか……そんなの、そんなの知ったこっちゃない!) そんなルールは、この世界では適用されない。 ねねねはガッシュの本来のパートナーではなく、代理人なのだから。 そう都合よくルールが捻じ曲げられていれば、どれだけ楽だったろうか。 (燃えろ……燃えろ……本……燃えて……) 作家である自分が、本を焼却することにここまで躍起になっている。 おかしな違和感を覚え、それでもねねねはライターを本に押し付けた。 ライターを押し当てる手は熱気を帯び、しかし火傷など恐れず、がむしゃらに。 (螺旋力でもなんでもいい……理屈じゃないんだろ……気合でどうにかなるんだろ!) 自分の愚かな願望を、肯定してくれる声がほしい。 ただ一つの命を救いたい、そのために道理を蹴っ飛ばすだけの気合がほしい。 気合なら負けていない、根性なら負けていない、やってやるという意志は―― (……………………誰かっ!!) 結局、本を燃やせない、ガッシュを救えないという結論を叩きつけられ……折れる。 何度も点火を繰り返すうちに、親指の皮が剥け、痺れる。 ライターが手からぽろっと零れ、拾えない。 (誰か……誰かこの本を燃やして――――っ!) ねねねは、声なく願った――そうこうしている内に、 ガッシュの口から奏でられる擦れた空気の音は消え、 「…………っ…………ぁ…………――――――――」 音とも声とも識別できない呻きの後、完全に沈黙。 微かに脈動を続けていた心臓も、停止。 ガッシュは、絶命した。 「――――っ!!」 ねねねは、嘆きの絶叫も、悲しみの嗚咽も出せず、歯を食いしばった。 涙で頬を濡らし、眼鏡を鼻先までズラしてなお直そうとはせず、死に絶えたガッシュを見つめ続ける。 くしゃくしゃになって、泣き崩れようともせず。そんなことが無駄であることは、大いに思い知ってしまっていたから。 ねねねの眼前には、未だ健在のグレンラガンが聳え立っている。 もう、なにをやっても無駄だと悟った。 潰えたのは夢だけではない。命も、希望も――意地さえも。 なにもかもがドリルに打ち砕かれて、粉として舞う。 だからこそ――ねねねは、静かにそのときを待った。 グレンラガンを操る二人の男女は、そんな弱者の諦観を重んじはしない。 敵はあくまでも敵として。愛の障害を滅ぼさんと、拳を振り上げる。 大仰な技や武器はいらない。今のねねねに抗う術などないのだから。 終わりを迎えよう。なにもかも捨て去って、今日に沈もう。 そして、グレンラガンの拳が振り下ろされた。 「超級……覇王……ッ!」 その鉄槌がねねねに下される、わずかの間。 グレンラガンの頭部目掛けて、竜巻状のなにかが飛来する。 「……電影だぁあああああああああああああん!!」 その竜巻は、捻りを加えた回転が大気を巻き込む様。 その竜巻は、単純に名を与えるだけならば突撃の二文字で事足りる。 その竜巻は、だからこそグレンラガンの巨体を揺るがす。 流派東方不敗が奥義、超級覇王電影弾でもって、男は戦闘に介入した。 不意の攻撃をこめかみの辺りに受け、グレンラガンが揺れる。 ねねねを潰さんとしていた拳は寸前で停止、引き戻される。 体勢を立て直したグレンラガンの視点は、もうねねねには向いていなかった。 唐突に現れた、鉢巻きの武闘家。 ヴィラルもシャマルも面識はあるものの、ねねねの一味とは認識していなかった新たなる敵。 「ヴィラル! シャマル!」 グレンラガンに一撃を与え大地に降り立ち、間髪入れず敵対者を名指しするその男。 ねねねたちとは別働班、作戦が狂った際のメンテナーとして準備していた、その男。 ――ドモン・カッシュ。 「俺はおまえたちが愛し合う仲だと認め、だからこそ頼む!」 いきなりの先制は、ねねねの窮地を救うためのものにすぎない。 彼は格闘家であり、だからこそ不意打ちなどといった戦法も好まない。 如何な外道、如何な関門とて、その身一つで打ち破ってこそのガンダムファイターだ。 「一対一だ――俺を、追って来い!」 ドモンの思惑はいったいなんなのか、ヴィラルとシャマルにそう言いつけ、この場より走り去ってしまった。 取り残されたねねねは、ドモンに声をかける暇も与えられず、再び一人となる。 ドモンが介入したところで、変わらない。絶望の再開だ。 しかしグレンラガンは、ねねねに再び拳を振るおうとはせず、歩み出した。 ドモンが走り去っていった方角に、ねねねには一瞥もくれることなく、追撃を開始する。 ねねねはその為様を、呆然と見送った。物言わなくなったガッシュの亡骸を抱えながら。 「……おねーさん」 やがてねねねのもとに、姿を消していたジンが現れた。 着古した黄色のコートをさらにボロボロにし、よろめいた足取りで近寄ってくる。 今までどこでなにをしていた、と咎めることはできない。ジンとて、それなりの深手を負っているのだろう。 虚ろな目を向けるねねねに、ジンは気を失っていたところをドモンに助けてもらったと証言した。 即死しなかっただけ儲けものだ、といつもの軽口に、しかし笑みは纏わない。 ねねねにかける言葉はなく、ただガッシュを抱き、黙る。 「ドモンが来てくれなかったら、ヤバかった……いや、もう事態はヤバイなんてレベルをとうに超えちまってる」 スカーが死に、ガッシュも死んだ。 これ以上の絶望が、あるとでもいうのだろうか。 「それでも、だ。菫川ねねねと王ドロボウは生き永らえた」 残った事実を、ジンは告げる。 だから――? そう、ねねねは問いたかった。 でも今は、喋る気力も失せてしまっている。 「これを、どう受け取る――?」 ジンの問いかけに答えを用意するのは疎か、頭で考えることすらできはしない。 強く、強く……壊してしまいそうなくらい、強く。 ガッシュを抱いて離さぬことで、ねねねはジンに応えた。 ◇ 駆けつけてすぐに、ジャンクのように投棄されていたジンを発見した。 重傷ではあったが、瀕死まではいかず、意識もあれば体もちゃんと動いた。 ドモンはジンに事のあらましを聞き、スカーが死んだことも知った。 ――男は走る。誇りを捨てろ、魂を売れ、悪魔になれという囁きを受けて。 「なにがガンダムファイターだ。なにがキング・オブ・ハートだ」 脅威とは思っていたが、彼らの愛がこうも容易く仲間の命を絶つとは、思わなかった。 スカーの死を嘆き、遅れを取った自身の不甲斐なさを戒め、だからこそ闘争心が湧いた。 もう誰も死なせはしないと、そう決意した矢先に、死に絶えたガッシュと死の間際にあったねねねを発見した。 ――男は駆ける。力を欲しながら、欲望の目的を考えながら、ただひたすらに。 「スカーが死に、ガッシュも死んだ。俺たちは、屈するしかないのか?」 犠牲者は二名、勇猛果敢な二人の士が命を落とした。 彼らに対し、ドモンがしてやれることは追悼でも仇討ちでもない。 想いを継いでの、計画の成功――元の世界へ、生きて帰ることだ。 ――男は目指す。選択の間へ、懊悩と熟考を繰り返しながら、しかし本能の導くままに。 「……ふざけるな!」 猛りに合わせた怒声が、熱気に満ちた空気を劈いた。 疾駆する足は、焦熱を帯び、追跡者を突き放す。 逃走に徹しているこの状況を悔しく思い、舌を打つ。 愛を知る者として、ここにはいない伴侶を思いもした。 彼と彼女の愛を真っ向から受け止めるには、力不足だ。 仲間を守るにも、戦闘欲を満たすにも、己では力不足だ。 「俺は――悪魔には屈しない! この拳で、必ずや勝利を掴んでやるッ!!」 そして、ドモン・カッシュはその空間に辿り着いた。 好敵手を引きつけた先、自身が悪魔と称す力に縋るため。 否――仲間のために、己のために、約束された勝利をこの手に掴み取るために。 時系列順に読む Back HAPPY END(2) Next HAPPY END(4) 投下順に読む Back HAPPY END(2) Next HAPPY END(4) 285 HAPPY END(2) ヴィラル 285 HAPPY END(4) 285 HAPPY END(2) シャマル 285 HAPPY END(4) 285 HAPPY END(2) スカー(傷の男) 285 HAPPY END(4) 285 HAPPY END(2) ガッシュ・ベル 285 HAPPY END(4) 285 HAPPY END(2) 菫川ねねね 285 HAPPY END(4) 285 HAPPY END(2) ジン 285 HAPPY END(4) 282 愛に時間をⅣ ドモン・カッシュ 285 HAPPY END(4) 285 HAPPY END(2) 東方不敗 285 HAPPY END(4) 285 HAPPY END(2) チミルフ 285 HAPPY END(4) 285 HAPPY END(2) 不動のグアーム 285 HAPPY END(4)
https://w.atwiki.jp/animerowa-2nd/pages/752.html
HAPPY END(21)◆ANI2to4ndE ◇ 「すっげぇ音したよな。お前、まだ痛むんじゃないのか?」 「うるさい、黙っていろ。気が散る」 ねねねは何も言わなかった。その代わり強かにルルーシュの頬を叩いた。 まだ赤みが退かないのを揶揄してくるスパイクが鬱陶しい。 監視役のつもりか何か知らないがあまり広いとは言えない機内だ。腹の読めない相手と二人というのは良い気分ではなかった。 (もっとも、こちらが何もしなければ身の安全は保証されているも同然だ。連中の甘さには感謝、だな) 手探りで操縦システムの解析を続けながら思う。ほぼ確実な帰還方法が手に入った以上、ルルーシュとしてもこれ以上ことを荒立てる気はない。 まさかギアスが効いた訳でもないだろうが、最初のときと同じくアンチ=スパイラルがふらりと戻ってきた。 そして置いていったのが翼竜を模した奇抜なデザインの、ルルーシュの常識に照らし合わせて言うなら飛行機械だ。 元々は偶然舞い込んだ未来の技術らしく、螺旋王が改修改造の後、多元宇宙を渡る術としていたのだという。 『自らモルモットの道を選ぶとはね。期待はしないが、せいぜい長い目で見させてもらうことにするよ』 アンチ=スパイラルの言だ。未知の技術を説明もなしに置いていったのは観察対象に余計な刺激を与えないようにという配慮だろうか。 嫌がらせの可能性も高い。 多元宇宙の移動だけならカテドラル・テラの転移システムも使えるのかも知れないが、会場に直結されたシステムはかなりのダメージが蓄積されており、使う気にはなれなかった。 使用には複数の螺旋力が必要、しかし複数人の移動に耐えられるとは思えないジレンマだ。人間離れした精緻な技術を持っているのでもなければ使おうとは思わないだろう。 「ま、せっかく拾った命だ。せいぜい大事にするさ。誰かさんのお陰で監視付きだがな」 「ふん。あれだけ規格外の存在だ。どうせすぐ意識もしなくなる。むしろ神様が見てるとでも思えば、その軽薄な態度も少しはましになるんじゃないのか?」 違いない、とかわされる。柳に風だ。 やはり、この手のタイプは好きになれない。 作業が一段落したのでルルーシュはふぅと息をはいた。 「使えそうなのか?そうじゃなきゃ困るが」 「使われている技術は全く理解できんがユーザビリティの高さは異常だ。殆どがブラックボックスの状態になるが、既に登録されている世界への移動程度なら問題ないだろう」 十分僥倖と言うべきだろう。今思えば可能性としてはヴィラルと同じ道を辿る方が高かった。 現実を知らず、甘い夢に溺れ瓶詰めのモルモットとして余生を送る皮肉な愛の戦士。スザクを殺した報いとしては上々だろう。 ともかく、これでナナリーの元に帰る目処はついた。今度こそ本当に、条件はクリアだ。戻れば戻ったでまた忙しくなる。 「……ああそうだ。一個言い忘れてたことがある」 そのとき、背中越しのスパイクが、さも今思い出したという調子で言った。 「ニアがな、山小屋の一件、庇ってくれてありがとうだってよ」 既に、帰還後のプランに考えを巡らせていた俺に。 悪夢はもう過去のものとして切り捨てようとしていた俺に。 淡い水色をした少女の言葉は、確かにさくりと突き刺さった。 「……ま、なるようになったな」 もう一度言おう。 (俺は、この男が嫌いだ) 【スパイク・スピーゲル@カウボーイビバップ―――――――――――生還】 【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ―――生還】 ◇ 「ゆたかがいきなり倒れたりするから皆びっくりしたわよ」 「ご、ごめん舞衣ちゃん。何か安心したら急に……」 「もう、本当に死んじゃったかと思ったんだから」 言いながら心中で舌を出す。 緊張の糸が切れた途端気絶するように眠ってしまったのは舞衣も一緒だ。 「それにしてもここ、宇宙だったんだってね。正確に言うと月面」 「凄すぎて全然実感湧かない……」 「あはは、それを言うなら別の世界だってことの方が」 舞衣とゆたかはけらけらと、年相応に笑った。 玉座の間は広大な空間であり、透けた天井からは綺麗に光る宇宙が見えた。 二人はカグツチの肩で寄り添うようにして座り、できるだけ空に近い場所から、時が止まりそうなくらい穏やかな気持ちで外を見ている。 数々の暴力を振るった神代の竜も、今だけは二人を見守ろうと言うのか最低限の炎だけでふわりと空中に静止していた。 どこかへ遊びに行こう。二人だけで交わした約束。 ちょっとした星間旅行だった。 「……あの子の、フリードのお弔いも、してあげないとね」 「……うん」 クロスミラージュが告げた名前があの小竜のものであると、教えてくれたのはストラーダだ。 小さくて勇敢だった白い竜は、本来の主をこの戦いで失っていたのだと言う。 恐らくは、主もまた誰かのためにその命を散らしたのだろうと、無口な従者はそれだけを言った。 幾度舞衣を助けてくれたか知れない寡黙な魔槍は、どこか誇らしげに降り注ぐ光に照らされていた。 フリードや、ストラーダだけではない。 二人がこうしていられるのは数えきれないくらい沢山の人達のお蔭だ。 Dボゥイ。相羽タカヤ。重ねられた掌から同じ人を想っていることが伝わってくる。 「そうだ」 思い出さなければいつまでもこうしているところだった。 舞衣は荷物の中からごそごそと事前に用意していたものを取り出す。 「ゆたか、はいこれ」 手渡したのは一対になっていた原色に美しく煌めくクリスタルの片方だった。 小さな手のひらに収まりきらないそれは、見ようによっては人間のようにも見える。 「きれい……でもどうしたのこれ」 見え方が変わるのを楽しむようにクリスタルを空にかざすゆたかに、物語を言って聞かせるように説明する。 「ねねね先生に聞いたんだけどね。 このクリスタル、Dボゥイとか相羽シンヤって人とかが、その、変身するのに使うとっても大事なものなんだって」 現実感の薄い単語に雰囲気を壊されそうになる。けれど直ぐに笑った。 自分も似たようなものか。 「って言っても今は全然危険とかはなくって、単なる綺麗な水晶らしいんだけど。 どうかな。どっちがどっちのかまでは分からないけど、あたし達の思い出に」 待っていればそこに持ち主が現れると信じているみたいにクリスタルをぼうっと見つめるゆたかにウインクを一つ。 そっと、力の抜けた小さな手にクリスタルを握り込ませる。 「……うん!」 ゆたかはそう言って満開の花のように朗らかに笑った。 打ち鳴らされた水晶が、チンと優しい音を立てた。 【小早川ゆたか@らき☆すた―――――――――――――――生還】 【鴇羽舞衣@舞-HIME―――――――――――――――――生還】 ◇ 首尾よく天の鎖の回収を済ませたギルガメッシュはざくざくと遠慮のない足取りで廃墟と化した会場跡地を歩いていた。 戦いの舞台となった場所は王都テッペリンの中の一区画を占拠する形で存在している。 会場世界を覆っていた結界や殻はロージェノムの螺旋力が生み出したもの。だが中のものまで全てがそうという訳ではない。 既に在るものを持ち込んで済ませた、というものも多い。 ギルガメッシュの周囲に散乱している、瓦礫と化した大怪球フォーグラーなどもその一つだ。 「……む」 足が止まる。瓦礫の荒野に人影があった。 「え……?何だ、アンタか……」 どれだけあるかすら知れないがらくたの山を掘り返していたのはねねねだった。 一瞬何かを期待するような目をしたが、そこにいたのがギルガメッシュだと気付くと露骨に落胆の色を見せる。 「随分だな綴り手よ。何をしている」 「……別に、何でもない。ちょっとした時間潰し」 はぐらかそうとしても無駄だ。大方死んだ者の形見でも探しているのだろう。 この大怪球は、そのものが王ドロボウの墓標である。 「……雑種の考えることは分からんな。まぁ良い、我も貴様を探しておったところだ」 「アンタがあたしを……?一体なんで」 手を止め初めて訝しげにするねねねに、ギルガメッシュは持っていたものを掲げて見せる。 『イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに捧ぐ』と題された、それは一篇の小説だ。 意外な物を見たと言うように、ねねねの目が細まった。 「読んだが中々に楽しむことができた。急造の感は否めぬが貫かれた揺るがぬ意志は我が認めよう。 よりにもよって聖杯なぞのために書かれた稀代の珍品、我が材に加える価値は十分にあろうよ」 「あ、いや、何か誉められてるのかどうか良く分かんないけど……まぁ、楽しんでもらえたなら良かったよ」 自作が舞い戻ってきたのが意外なのかそれともギルガメッシュの好評を受け止めきれないのか。 多少しどろもどろになりながらねねねが眼鏡の縁を直す。 「……何ならサインでもしようか?」 整理が付いたのか冗談めかして言ってきた。 ギルガメッシュは即答する。 「うむ。ならば署名を許す」 「うぇ!?」 今度こそ予想だにしていなかったようなこんがらがった反応が返ってきた。 無礼千万である。しかし、ギルガメッシュは眉を寄せるのではなく口を上げることでそれに答えた。 「どうした?まさか我が冗談も解さぬ朴念仁だとでも思ったか?」 「あぁほんとそう……あ~いや……何でもない」 はぐらかされた先は寛大な心で聞かなかったことにし、ギルガメッシュは質の悪い紙に記された原稿を手渡す。 ついぞ見せたことのないその素直な動作がまた意外だったのか、慣れた手付きでペンを走らせながらもその目はどこか違うところを見ていた。 「英雄王サマがあたしの読者、とはね……」 困惑混じりの呟きは、どこか楽しんでいるようでもあった。 【ギルガメッシュ@Fate/stay night―――――――――――――――生還】 【菫川ねねね@R.O.D(シリーズ)――――――――――――――――生還】 ◇ 再び無為な作業に戻ったねねねをよそに、ギルガメッシュは風がその身をなぜるに任せる。 度重なる戦闘の結果、気流が発生しているのだろう。頬をくすぐる生暖かさは不快ではなかった。 此度の戦い、王の余興とするにはあまりにその器は小さかった。 王が得たものは何もなく。 失ったものもまた何一つない。 それでも、輝くものならあったか。 いずれ、ギルガメッシュの在り方は何も変わらない。生者も死者もその全てを受け止め、この世の中心たる英雄は生きていく。 『King』 すっかり手に馴染んだデバイスが合成音を鳴らす。 ギルガメッシュも同じタイミングで気付いた。遮るもののない荒野であるはずが、不思議と今になるまでそれを認識していなかった。 ねねねも気付いたようで、作業を止め近づく。 そして、それが何であるか理解すると同時に、ばたりと崩れ落ちた。 「あ……あぁ……」 一体の、粗末なつくりのかかしだった。 折れた木材や奇怪に曲がった鉄骨。このような場所では今まで顧みる者もいなかっただろう。 有り合わせの材料で作られたと一目で知れるそれは、人の形と判断するのも困難なでき損ないである。 が、それを風雨から守るように着せられた一着の衣服は、紛れもなく人間のもの。 「信じらんない、夢でも見てるみたい……ほんとアイツは……」 風に揺らればたばたとはためく薄汚れた黄色いコートは見慣れた、不敵な少年の愛用品。 胸元に垂れ下がった木のプレートには、王ドロボウの精神を具現化したような派手な色使いでデザイン化された人間の顔が、歯を剥き出しにして笑っていた。 「生きてるんなら生きてるって言えばいいのにさ……ジン」 まなじりをこするねねね。土に汚れた顔は歓喜に歪んでいた。 しかし、ギルガメッシュの真眼を誤魔化すことはできない。 コートの下半分を染め上げるように撒かれた血は尋常な量ではなかった。 仮にあの爆発を生きおおせたとしても、その後生きていられる道理はないのだ。 何よりもギルガメッシュが死んだと判断した。王の決定を覆すことなど、何者にもできはしない。 所詮、末期の一時を手に入れた王ドロボウの、最後の悪ふざけに過ぎない。 「現実逃避も大概にせよ。奴が生きているはずなど……」 ふと、違和感が襲った。 「ん?」 英雄王とも思えぬ疑問の表情で胸元を探る。 黄金の鎧を模した装束の中に、何かがある。 これまで何も感じなかったのが不思議だった。差し込んだ手をごそごそと動かす。 一枚の紙切れが出てきた。 「領収書」と銘打たれた紙面には、次のような文言が簡潔に記されていた。 『威張りくさった"王の財宝"頂きます。 HO! HO! HO! 起きぬけの王ドロボウ』 ギルガメッシュの世界が、ぴしりと音を立てて止まった。 ──じゃあその前にあんたの財宝を盗んで、目の前からオサラバさせてもらおうかな。 そう、奴は最初から言っていたではないか。 「ククク……クはははははは……!」 鍵剣はなくなっていた。 王ドロボウが一度返した物を二度と盗まないと何故言える。 恭しく鏡を差し出してみせたその裏で、悪戯の舌を出していたのではないか。 慢心さえも盗んで見せた男が、英雄王の目を盗めないなどということがあろうか。 「………………………………………………………………………………ククククク。 ふふふはははははは……………………フハハハハハハハハハハ………………… アーッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハ!!! 王ドロボウめ、我の宝物庫を丸ごと盗みおった!! クックク……見事だ。見事という他あるまい。あそこにはこの世の全てが詰まっておるのだぞ? クク、貴様などに扱いきれぬ程のありとあらゆる財宝がなぁ。まったく、貴様は一体どこまで我を虚仮にすれば気が済むのだ? この我を出し抜いてよもやただで済むとは思っておるまいなぁ? 本来なら、貴様がどこまで逃げようとこの我が直々にその小癪な頭蓋を叩き潰してくれるところだ。 だが良かろう!!敢えてこの我が許そうではないか!! かの聖杯を引っくり返したところで、貴様のような大馬鹿者は一人とておらんだろうよ! 領収書は王の名において確かに受け取った。宝物庫の一つや二つ、持っていくが良い!! ハーハッハッハハッハッハハッハッハッハッハッハッハッ………………………………!」 哄笑。 ぴたりと、一時の静止。 そして。 「…………………………なぁどと言うと思ったかあぁっ!!!?」 ギルガメッシュは激怒した。 【ジン@王ドロボウJING――――――――――――HO! HO! HO!】 ◇ 長いようで短かった一日が終わりを告げた。 安らかに眠る娘の寝顔にふっと頬を緩ませて、ヴィラルはずれた毛布をかけなおす。 昼間はあれだけやんちゃをしていたのに、寝てしまえば大人しいものだ。 ヴィラルは自室に戻ると、樫で作られた上質な安楽椅子にゆったりと身を任せる。 開け放たれた窓の外は夜の帳にすっぽりと覆われていた。風が運ぶリナリアの香りが心地好い。 季節が巡れば耳を楽しませてくれる虫たちも姿を見せるだろう。 その前に夏がくる。照れ臭いので口に出したことはないが、少し先の小川で蛍が無数に飛び交う幻想的な光景が、ヴィラルは好きだった。 時間はゆっくりと流れていく。焦ることはない、戦いは終わったのだから。 「ん……何を言ってるんだ、俺は」 戦いに明け暮れた闘争の日々はとうの昔に終わっている。もう正確な年月も分からない、遠い昔だ。 なのに何故、まるでたった今まで戦い続けていたような気になっているのだろう。 そういえば、自分たち家族はいつ頃からここに住み始めたのだったか。 そもそも、ここはどこなのだろう。 ――ヴィラルさん、起きてるんですか? 扉越しに聞こえたシャマルの声がヴィラルのはっと意識を取り戻した。 「あ、ああ……シャマルか。そろそろ寝ようと思っていたところだ」 ――そうですか。風邪を引かないようにしてくださいね。 愛しい妻の声にヴィラルはあいまいに気遣いを返す。 気付けば、妙な気分はすっかりどこかへ消えてしまっていた。 悪い夢、のようなものだったのだろう。 ――おやすみなさい。ヴィラルさん。ずっと一緒にいましょうね。 おやすみと、言った声には明瞭さが取り戻されていた。 遠ざかっていくシャマルの気配に、ヴィラルは初夏の風にも似た爽やかな幸福を得る。 「俺は今、幸せだ」 この世界の誰よりも。 敢えて声に出してそう言った。 柔らかな毛布に身を沈め、ゆっくりと目を閉じる。 明日も、その先も、ずっとこんな穏やかな日々が続いていくのだろう。 ひどく満ち足りた気持ちになった。 眠りに落ちるさなか、ヴィラルは何か大きな存在に笑いかけられたような気がした。 【ヴィラル@天元突破グレンラガン――――――――――――――HAPPY END】 ◇ 【スカー(傷の男)@鋼の錬金術師――――――――――――――――――――――――――――死亡】 【ガッシュ・ベル@金色のガッシュベル!!―――――――――――――――――――――――――死亡】 【ドモン・カッシュ@機動武闘伝Gガンダム――――――――――――――――――――――――死亡】 【シャマル@魔法少女リリカルなのはStrikerS―――――――――――――――――――――――死亡】 【東方不敗@機動武闘伝Gガンダム――――――――――――――――――――――――――――死亡】 【カミナ@天元突破グレンラガン―――――――――――――――――――――――――――――死亡】 【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン――――――――――――――――――――――――死亡】 【チミルフ@天元突破グレンラガン――――――――――――――――――――――――――――死亡】 【不動のグアーム@天元突破グレンラガン―――――――――――――――――――――――――死亡】 【流麗のアディーネ@天元突破グレンラガン――――――――――――――――――――――――死亡】 【神速のシトマンドラ@天元突破グレンラガン―――――――――――――――――――――――死亡】 【螺旋王ロージェノム@天元突破グレンラガン―――――――――――――――――――――――死亡】 【フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS―――――――――――――――――――――死亡】 【クロスミラージュ@魔法少女リリカルなのはStrikerS feauturing 天元突破グレンラガン――死亡】 ◇ 【アニメキャラ・バトルロワイアル2nd―――――――――――――完】 時系列順に読む Back HAPPY END(20) Next 「紙は我らの天にあり。なべてこの世は事も無し」 投下順に読む Back HAPPY END(20) Next 「紙は我らの天にあり。なべてこの世は事も無し」 285 HAPPY END(20) ヴィラル 289 メビウスの輪から抜け出せなくて 285 HAPPY END(20) シャマル 285 HAPPY END(20) スカー(傷の男) 285 HAPPY END(20) ガッシュ・ベル 285 HAPPY END(20) 菫川ねねね 286 「紙は我らの天にあり。なべてこの世は事も無し」 285 HAPPY END(20) スパイク・スピーゲル 287 ソング・フォー・スウィミング・バード 285 HAPPY END(20) 鴇羽舞衣 292 未定 285 HAPPY END(20) 小早川ゆたか 292 未定 285 HAPPY END(20) ジン 285 HAPPY END(20) ギルガメッシュ 288 それが我の名だ~actress again 285 HAPPY END(20) カミナ 285 HAPPY END(20) ドモン・カッシュ 285 HAPPY END(20) 東方不敗 285 HAPPY END(20) ニコラス・D・ウルフウッド 285 HAPPY END(20) ルルーシュ・ランペルージ 293 LAST CODE ~ゼロの魔王~ 285 HAPPY END(20) チミルフ 285 HAPPY END(20) 不動のグアーム 285 HAPPY END(20) 流麗のアディーネ 285 HAPPY END(20) 神速のシトマンドラ 285 HAPPY END(20) 螺旋王ロージェノム 285 HAPPY END(20) アンチ=スパイラル
https://w.atwiki.jp/animerowa-2nd/pages/744.html
HAPPY END(13)◆ANI2to4ndE ◇ 「さて、色々と聞かせてもらおうか」 フォーグラーの外壁に突き刺さり、むなしく回転音を響かせるラガンを尻目に、ジンが安堵する。 ラガンがコクピット席に運悪く不時着――コクピットの破壊の心配が無くなったからだ。 昼寝をした兎は夜にヘマをしなかった。躍起になって亀にリベンジを果たした。 しかし事態は褒められたものではない。そこらに撒き散らされた出血の跡が、ジンの傷の悪化を物語っている。 『JING! まさかこれはアンチ・シズマフィールドではありませんか!?』 やや不可解さが残るジンの一連の行動に、たまらずマッハキャリバーが口を出す。 ギルガメッシュの顔が不機嫌そうに歪んだが、手を出すまでには至らなかった。 彼もまた、マッハキャリバーと同じく疑問を抱いたからであろう。 『アンチ・シズマ管は最後の一本が行方知れずだったのでは……』 「何が、足りないって? 」 だが確かにあったのだ。マッハキャリバーの解析データをも狂わせるリアルが、目の前に。 マッハキャリバーだけではない。ねねねも舞衣もスパイクもゆたかも、この場にいれば目を疑っていた。 幻の第3のアンチ・シズマ管。フォーグラーの胎内で踊る。 『確かに同一のエネルギー反応が……どこでそれを!?』 余談だが、ジンとシズマ・ドライブの出会いは、丸一日前に遡る。 足となり籠となり活躍していた――消防車を運転し続けた彼には、ある疑問が浮かんでいた。 “朝昼晩と走らせているのに、燃料が減っている気配を全く感じない”。 ひょんな好奇心でエンジンを調べた少年は、未知の世界へと足を踏み入れたのだ。 「簡単な話さ……2つの物を3人で公平に分けたい時――どうすればいいかな?」 断っておくが、消防車の持ち主である“めぐみ”の住む世界にはシズマ・ドライブが存在しない。 この消防車は彼女の愛車をシズマ・ドライブ仕様にチューンナップした別物なのだ。 消防車本体ではなく、運転マニュアルと鍵“だけ”を支給された理由にも、この意図が含まれていたのかもしれない。 消防車本体はめぐみの所有物とは言い難い物になっている、と。 「貧乏性に救われたよ」 それから、彼は暇をみては各施設の動力炉を適度に物色していた。 この世界に存在する一部の施設は、螺旋王による建造だと推測をつけた理由も、この考えが基。 ただ、彼が出会った者はシズマ・ドライブを知らなかったので、発想の昇華には至らなかった。 消防車の持ち主も見つからなかった事を加え、いつしかシズマ・ドライブはジンの脳の隅に追いやられていた。 「スカーが調べてくれた」 本題に戻るが、彼の好奇心が再び目を覚ましたのは、ヴィラル&シャマルと対峙する直前だった。 ねねねがスカーに人知れずアンチ・シズマ管の簡単な調査を依頼していたのだ。 「“未知の物質ゆえ、俺の手には負えそうにない。 だがこの上なく安定している。こんな物質は見たことが無い”ってね」 ドロボウは金のなる音を聞き取っていたのだ。活路という砂金が湧き出る音を。 ねねねがスカーの言葉に失望できる理由は、そして心の奥に隠していた彼女の狙いは、なんだったのか。 スカーの返答は彼女を落胆させるものだったのだが、その依頼に意味が無いはずがない。 「酸素を盗もうなんて洒落てるよねー……固唾を呑む大捕物。窒息しちまいそうだ。 ところが事実は小説より奇なり……世界中の酸素を消滅させる危険は、大怪球を作った世界では未然に済んじまった。 10年は持っちゃうんだよね。その間にシズマ・ドライブを壊して、酸欠で死んだ人間なんていなかった」 ジンがねねねからシズマ・ドライブの話を聞き出せたのは、それからすぐ後だった。 ねねねがガッシュと戦闘の準備をしていたので、やや手間がかかったが、それなりの収穫をジンに与えた。 詳細名簿と支給品資料集を読んだねねねの記憶……BF団、国際警察機構、フォーグラー、シズマ・ドライブの情報。 「あ、そうそう。スカーはこうも言ってたかな。 “これも同じく……溶液と核はともかく、それを包む特殊ガラス管は特色のないものだ”」 ジンの抜け目の無さはここにある。 この世界のとある場所から拝借していた普通のシズマ管を、彼はこっそりスカーに見せていたのだ。 スカーの鑑定はアンチ・シズマ管の時と同じく不透明だったが、その鑑定は黄金の鉱脈を掘り当てた。 「アンチ・シズマ管もしかりさ。 みんながあれほど駄々草に扱っていたのに、機能に問題は生じなかった。 それだけフォーグラー博士たちが作り上げたこのシステムは素晴らしかった。 その性能が薬であれ害であれ極上の安定性を持っていたんだ。 常に沈み静まりエネルギーを運ぶ半永久機関だったわけで……こんな話を聞いたらさ―― ――"3/等/分"したくなっちゃう 俺ってばケチな泥棒ですから。切った張ったのイカサマは慣れてるし……方法は企業秘密だけど」 ◇ 2本のアンチ・シズマ管から溶液を三分の一ずつ抜き取り、別の空の容器に移す。 さすれば等量の溶液が入った管が3つできる。3本目の容器は普通のシズマ管を拝借すればいい。 『本物の2つが両端に挿入されているのも狙い通りですか』 「ビンゴ。-/+/-(負正負)のバランスも考えて、ね」 もちろん悔いはある。どんな副作用が起こりえるのか、それは誰にもわからない点。 特筆すべきは3つの溶液のそれぞれに入る核。内1つは、従来のシズマ管に頼らざるえなかった事実。 アンチ・シズマ管とシズマ管の、核と溶液の正確な差異は、スカーをもってしても解読できない代物。 『万が一の事があったら、どうするつもりだったんですか。 濃度、質量、システムの微細な変動で、どんな拒絶反応が起きるか……』 2本分の溶液は3つにできても、肝心の2つ核を3等分する危険は冒せなかった。 3本とも本物に近づけるために、彼が選んだ妥協は"元の3分の2になったシズマ管を3本用意する"ことだった。 「それはそれで千載一遇(狙い通り)なのさ」 アンチ・シズマフィールド発生による全シズマ・ドライブ救済が失敗に終わるとき。 それはBF団エージェント、幻夜が起こした地球静止作戦におけるシズマ・ドライブ破壊現象の再来を招くのか。 事態はそれに留まらず更に悪化するかもしれない。何しろ肝心のアンチ・シズマ管さえ不完全なのだから。 従来のシズマ・ドライブをフォーグラーに装着させた場合を含めて、これまでとは一線を画す実験なのだ。 「2本揃っただけでも……“惨劇”を起こすには、十分だったのかな? 」 地球静止作戦を超える災害。完全なるエネルギー静止現象“バシュタールの惨劇”の再来。 即ち、菫川ねねね著“イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに捧ぐ”の実現もジンは覚悟していた。 もっとも、彼はねねねの本を読んでいたわけではないし、ねねねの口から聞いたわけでもない。 「ま、この真ん中に刺さってるレプリカにもちょっと細工を"施し続けている"けどね」 ともかくジンは舞衣とカグツチをフォーグラーの内部に無理やり突っ込ませようとしなかった。 わざわざフォーグラーから距離を取らせたのは、惨劇の巻添えを防ごうとした魂胆があったのかもしれない。 ねねねの心に隠れる本音を、ジンはそれとなく感じ取っていたのであろうか? 「無様だな」 満身創痍のドロボウの高説をギルガメッシュが吹き飛ばす。 相変わらずの口調で、相変わらずの態度で、相変わらずの視線で。 王ドロボウの賭けに、彼は成果を見出せずにいた。 「身を削って鍵を手にしたはいいが、貴様には夥しいほどの赤い錠が絡みついた」 「久しぶりの窮地(デート)だったから、おめかししたくてね」 「死女神と逢引きするためにそのまま後世へ婿入りか」 ふんぞり返る王の前で、ジンは永遠の忠義を誓う兵隊長のようにお辞儀をする。 そして懐から血塗(love wrapped)の鏡を取り出し、大げさに差し出した。 「これを我に渡してどうするつもりだ。口止め料か」 「寿命三ヶ月分をはたいて手に入れました。何も言わずこれを受け取って頂きたく……身だしなみに役立つかと」 彼が手渡した鏡は、日常品どころか非日常の貴重品。 かつてガッシュ・ベルの世界で生まれた究極の魔力タンクになる魔鏡なのだから。 魔力を使うギルガメッシュには、まさしく分相応なお歳暮だ。 「――その度々吐く下卑た口ぶりを止めろ。何が王ドロボウだ」 しかし王ドロボウの微笑みに、英雄王は真面目腐った。 相手へ慇懃さを感づかせるのにジンの振る舞いは今更すぎた。 「これで何度目だ。我と余計な争いを避けようとしているのか?―――身の程を弁えろ。 盗んだ金の毛皮を被った羊が、王に"譲る"とは何事か!ならば最初から衣を借るでない!!」 もはや英雄王には王ドロボウが口先三寸の卑屈屋にしか見えなかった。 財を奪う才能に長けているかどうかはともかく、行動は不愉快の連続だった。 一度盗んだものでも、持ち主が見つかればあっさり宝を返す。 挙句、次から次へと献上してご機嫌を取ろうとするばかり。 「いけないかな?見返りがなければ、泥棒は協力なんてしない」 その皮も剥がれてしまった。 顔を上げて笑うジンに、ギルガメッシュの怒りが篭る。 「……貴様はどこまで我の期待を裏切ってくれる」 「投資。これは投資なんだよギルガメッシュ。投資させるしか能のない品を、持っててもしょうがないよ。 働き者の王ドロボウは剣も門も鏡も揃えたんだぜ。チップをくれたっていいじゃないか」 ぼんやりと抱いていた疑問へのあっけない答え――献上ではなく出資。 お気に入りの財は、盗んだ当人から持て余されたゆえに、三品と値切られてしまったのだ。 『――JING!あなたはそんな腹積もりで私たちと接していたというのですか!?』 この宣戦布告に等しい愚弄に、第三者も黙っていられなくなったようだ。 王の具足として働くマッハキャリバーは、本当は王と王の対立に関して、最後まで見届けるつもりだった。 鴇羽舞衣一行に接触したときのように、我が道を進まんとするギルガメッシュが、わざわざ先回りしてジンに会ったからだ。 だからマッハキャリバーは、ジンとギルガメッシュの双方に……何らかの狙いがあると信じていた。 「何時も王が王であるように、泥棒はどこまでいっても泥棒なのさ。 そこで“王子様”にもう一つ頼みがある。ナンパして欲しい女がいるんだ。イザラっていう、夜が似合う娘でね――」 しかし王ドロボウの侮辱はマッハキャリバーの信頼をも裏切った。 デバイスとしての立場であるゆえに、その思いも一塩どころの騒ぎではない。 「この悪党が」 "それ"ゆえだったのかは定かではない。 有機体と無機体の間で感情の交差が生じていたのか。お互いの思いは等しく同一であったのか。 マッハキャリバーとギルガメッシュは、動いていた。お互いの脳と心がまるで繋がっているかのように。 その動きは神速、流麗。ギルガメッシュの制裁は、ちっぽけな人間の若き血潮を、風のキャンパスに塗りつけた。 「……出来心、だった……反、省は」 泥棒は全身から鮮血の花を満開させる。 死を招いたのは献花に仕込まれていた翻意のトゲ。 そして、心に巣食う悪の種。 「し、て……い、な…………」 薄汚れた心を皮肉るように、命の一輪挿しは艶やかに色めく。 地に伏した泥棒は枯れ草となり、いずれ野に帰るだろう。 赤い赤い種子を巻き散らして、大地に芽を蒔いたのだから。 「花泥棒のフリはよせ。余罪がないとは言わせんぞ」 ああ哀れな哀れな王ドロボウ。救われず掬われて、裏切りの道を―― 「我を盗んでおいて」 ――いまだ、歩まず。 ◇ 『King!どうしたのです、いつものあなたなら有無を言わさず処罰を下している!』 マッハキャリバーの意見はもっともであり、至極真っ当だった。 ギルガメッシュは前のめりになって倒れている下手人を睨む。 怒っている。心の底から怒っている。しかしそれ以上は進まない。進められない。 王の心に絡むのは違和感。有り触れているようで、どこか有り得ない揺らぎ。 考えてみれば、それはずっと前から始まっていた。 「さて何処で盗まれ始めていたのか」 「……わかってるくせに」 死んだはずの男が、懐から種明かしを放り投げる。 空の容器がカンッと地面に跳ね返り、ギルガメッシュにラベルを見せる。 深紅王の赤絵の具(クリムゾン・キング・レッド)。 古今東西の死骸を沈めた血底湖(クリムゾンレイク)から生まれし、最高純度の出汁(クリムゾンレーキ)。 「――欲ってのは金と一緒で困りモノ。多くても少なくても厄介で。この世に存在する全てそのもの、さ」 甦るドロボウの転職先はゾンビにあらず、真っ赤な大嘘を着込んだ詐欺師。 慇懃の殻はついに破れ、むき出しになった意識は獲物を舐める。 王ドロボウが王ドロボウ足る究極の証明書。その支配は生命の如何に関わらず万物の心を侵し喰らうのだ。 ギルガメッシュは己の根底に潜む“欲”をジンに盗まれていた。 「だがな、そんな欲さえ自分の手足同然にコントロールできる奴が、王ドロボウなんだよ」 ジンがギルガメッシュを盗もうと動き出したのは、高速道路の移動中のこと。 初対面の対応と印象を踏まえ、早急に手を打つべしと考えていた。 その第一歩は、直接的な“支配”その物ではなく確認。 博物館に到着する頃、ジンは彼の実力と気質を客観的に半分以上読み取っていた。 “慢心しても油断はしない”という不可解なロジック。 人知を超えた存在であり、人間らしい惑いを持つ男を取り囲む二律背反。 「落とし所は、都落ち……でも、無駄な戦いはお互いのためにならない」 博物館の問答から数度の献上の儀式まで、全ての振る舞いは王ドロボウの計算。 だがこれらの行動は間接的に過ぎない皮算用。見積もりはどこまで行っても見積もりで、決定打には程遠い。 妥協点の模索に、ジンは徒に時間を消費するばかりだった。 「すっかり忘れていたよ。自分の専売特許を」 ジンが打開案を閃いたのは――いや、思い出したのは首輪の解除で螺旋王の介入がほんの少し崩れた時。 使用許可証がおりたので、“欲の支配”のブランクは明けて微小な復活を遂げた。 ……己の力がそれまで封じられていた事をジンは本当に気づいていなかったのだろうか? そして力が解き放たれた瞬間を、本当に気づいていなかったのだろうか? 偶然にせよ必然にせよ、機は巡った。 ギルガメッシュの殺意は、危害を加える頃にはすでに掠め取られていた。 彼の怒りは過去に入札されて攻撃の気概を失ってしまった。ゆえにジンを仕損じたのだ。 「フェアじゃないのは百も承知さ。俺にはあんたに殺されてもいい場面が少なくとも10回はあった。 だけど……“必要とするときだ”と割り切って、先手を打たせてもらったよ」 「我の他にも、その力を施す事はなかったのか? 」 「こういうのは、やたら滅多に使うもんじゃないのさ」 この世の全ての欲の支配。そこに待つのは、無垢で無知で無害な者からの財の放棄。 何と刺激のない物盗り。何と謂れのない賞金首か。 人民総ドロボウ時代になっても、決して成りえぬ世界(エデン)。 「このまま我の慢心を全て支配する、か」 だがギルガメッシュは焦らない。焦る必要がないからだ。 彼の器は幾万年から続くこの世そのもの。無から始まる“存在”の肩書きを持つ全てが彼の欲。 「侮るな。この程度の支配、撥ね付けられなくて何が英雄か。この世の全てはとうに背負っている。 仮に貴様が世を支配できたとしても、我を染めたければその3倍の力を持って来いというのだ」 王は全てにおいての超越者であり孤高の存在なのだ。 その英雄王の欲は、人智では計り知れるはずがない。全てが奪われるなど、通常では到底ありえない。 「……ん~と、おっかしいなあ」 下賤な者たちの王を気取りながら、その実、何の背景も感じられぬ泥沼のような少年。 王と肩を並べようと奮闘した朋友のような輝きもない。 王の高みを目指し歩を揃えて進もうと望んだ臣下のような輝きもない。 王の考えを理解できないと別の道を選ぶ民衆のような輝きもない。 「ちゃんと連れてきたんだけどなあ」 思えばこの男は、真っ向から関わろうとしていたのか。 英雄王から何かを感じ取ろうとしていたのか。これまでの喜怒哀楽はどこまでが本当なのか。 欲を支配できる男の欲は湧き上がる心の思念さえ怪しい。 節々から漏れる念は“理解できない”呆れより、“最初から理解するつもりなどない”放棄。 「ほら」 王ドロボウは、英雄王に対し理解しないことを最大の理解と考えていたのだろうか。 “誰か”が彼を理解している。だったら“誰か”に委ねてしまえ、と。 「ピンピンしてるぜ」 ジンはギルガメッシュに汚れたアイパッチを差し出した。 真の持ち主はギルガメッシュと決闘した衝撃のアルベルトだが、彼には知る由もない。 ギルガメッシュがこの世界で見た持ち主は別人だ。彼もよく知っている―― 「――やめろ」 王ドロボウが空けた英雄王の心の隙間に、捨て去った過去のカケラが飛び込む。 一度去ったものの二度は入ることの叶わぬ檻に2人の侵入者の笑い声。 同盟者でも、好敵手でも、暗殺者でも、泥棒でもない。 「だから、なんだというのだ……!!」 それは、ほんの少し前に忘れ去ったはずだった。 蜘蛛のようにクセのあるアルト。鎖のような硬さが残るテノール。 止まっていた友愛の囁きが、ギルガメッシュの拳を握らせる。 『僕たちは、かつて君と一緒にいたが死んでしまった。君と共に歩むことは、もうできない』 『でもあたしたちの傍に金ぴかがいたように“金ぴかの傍にはあたしたちがいた”。それは変わらないでしょ』 ギルガメッシュの背中に、二重奏のエレジーが浴びせられる。 その声にはかつてないほどの郷愁を思わせる稀有な口調。 今の彼には誰が後ろに立っているのかわかっている。そ知らぬ振りが、いつまでもつか。 「……中々ふざけた物を見せてくれるなぁ王ドロボウ!こんなまやかしに我が今更――」 神より産まれたギルガメッシュ。 彼の眼がそんなにも赤いのは、日がな一日、空を見続けていたからなのか。 彼の傲慢は傲慢に違いないが、それは万象を救う希望になろうとした為のものなのか。 人類を導く希望は……これからも酷薄な世界に裏切られるかも知れない。 『不思議、だよね』 しかし――昨日歩いた道々は彼を裏切らない。 『あたしたち、あんたと一緒にいるの、意外と楽しかったんだから』 「――っ!!」 太陽 泣かすにゃ 刃物は要らぬ。狐 黄泉入り 涙雨。 意固地 ほどくにゃ 刃物は要らぬ。鎖 寂れて 腐り縁。 とどのつまり、逸予な泥坊は扇って歌っていただけ。 第三者から見れば、事態の深刻さを理解するには無理な話。 『『だから“その時”まで』』 姿形さえ無い者だったとしても。二度と会えぬ者だったとしても。 一生省みなかったとしても。永遠に彼方に忘れ去らせたとしても。 近すぎず、遠すぎず、熱すぎず、冷たすぎず。 “彼ら”はギルガメッシュに寄り添いながら、見つめ続けてくれているのだ。 『『待ってるよ』』 太陽のように……ずっと。 ◇ 「迂闊に愚者へ機嫌をとらせるもんじゃないよ。胡麻を摩っていた鉢の中に、賢者の心臓を放り込むんだから」 大怪球フォーグラーから一筋の蒼い線が空に伸びる。 トラック地点で準備する陸上選手のように、ギルガメッシュはウィングロードを目視していた。 外壁の狭間を吹き抜けて、強風は競技開始のファンファーレを鳴らす。 「世の中には賢者も愚者もちょっとずつ必要なのさ。だから俺みたいな罪深い職業も成り立つわけ」 この世界を動かしたのは善良な聖者でも狂った悪魔でもない。 螺旋遺伝子を奮い立たせて螺旋力に覚醒した者。 一辺通りの枠に収まろうとせず、己を伸ばして先を行かんとする者たちだった。 「さーて大魔術第二幕の始まり始まり」 ジンは腕を限界まで伸ばし天を指差す。目標は遥か空に聳えるバスクの女。 予てからこの世界の結界に大きく絡んでいると目星を付けていた、月。 「あんたが全力を出せばアレは絶対に落ちる」 ギルガメッシュから離れて数m、フォーグラーのコクピット。ジンは大股を開いてぶっきら棒に座り、空を見上げる。 彼はギルガメッシュが正真正銘の本気を出すのを望んでいた。 相手はお高くとまった箱入り娘。射止めるためには一握の慢心も薮蛇になる。 「何か言いたげそうだけど……ま、深く考えないでよ。そのご自慢の武器は英雄王ギルガメッシュが選んだ財だ。 どんなに慢心を失おうとも、全てを奪われちゃこっちが困る。全部が奪われたら、あんたがあんたでなくなる。 そうなったら財の価値は十二分に発揮されるのか……ちょい不安」 かつて王ドロボウは言った。輝くものは星であろうと月であろうと太陽であろうと盗むと。 ギルガメッシュは、太陽を化身である英雄王への比喩と解いた。 王ドロボウは、英雄王たる所以の“慢心”もまた、化身そのものと解いていた。 「英雄王は、慢心せずして成らずさ」 仮に慢心を捨て去れたとしても、その境目をギルガメッシュが気づくことは決してない。 どこまでが慢心なのか否かの線引きは人の数だけ答えがある。欲も本能も基点も過去も。 ギルガメッシュ本人でさえ、己が納得する慢心の放棄の確認自体が“慢心”になるかもしれない。 「これが博物館で問われたギルガメッシュに対する俺の答え」 手元に未来永劫あらんとするが、一度盗られれば決して取り返すことの出来ない財。 それは生涯という房から一秒一秒を実として落とす、時の流れのように。 慢心は英雄王が英雄王でなくなって初めて消える。それはギルガメッシュが王の立場を追われてこそ。 王のままでは、心の奥底のそのまた奥の底のずっと先に、無尽蔵のお神酒が湧き続ける。 成されると仮定された消失に収束するまで、ギルガメッシュは王ドロボウに永遠に盗まれ続ける。 「――憎らしい男だ……だが許そう」 進みゆく喪失感にギルガメッシュはフラッシュバックする。 思慮を教授せし友人と王の道を辿ろうとした儚き従者を失った、あの瞬間。 それでもギルガメッシュは歩いた。決して悔やまず、決して退かず、決して媚びず。 彼らが信じた道が間違いではないことを示すために、再び孤高に身を投じた。 「盗られた分は貴様にくれてやる」 しかし現れた。また現れたのだ。 王の道を、今度は理解ではなく盗むことで辿ろうする只管な愚か者。決して省みることの無い覇道の跡を、全て奪おうとする影。 あまつさえ過去を掘り起こし、呼び出そうとする始末。 3度目は得られぬであろう、と考えていた巡り合わせが、英雄王の傍に再びやってきたのだ。 「奪い尽くせるのならやってみせよ」 かくして英雄王と王ドロボウの奇妙な寸劇は、第一幕を閉じた。それぞれの道を進む王は、本来ならば交わらぬはずだった。 互いにわかっていたことはただ一つ。 彼らはこれからも己が信じた道を進む。鏡のように立ちはだかる相手が現れても、それは変わらない。 勝手に皮肉り、勝手に嘲笑し、勝手に気遣い、勝手に気配る。 「これもまた“美しさ”か」 英雄王は笑う。王ドロボウに、盗まれてしまったから。 懐かしき己の詩に流れる涙、未来を省みれなくなるくらいの過去。 そして、いずれは“これから”も。 「盗みの永久機関……誠心誠意、循環させていただきます」 劇はまだまだ終わらない。終わり無き旅路が前にあり、旅の足跡もまた終わり無し。 今度はきっと大丈夫だろう。影が失われることはないのだから。 「我が振り向くのは、もう少し先でいい」 英雄王は、省みない。 ◇ 王ドロボウに 盗まれたんじゃ 絶望だ だが その絶望は、 なんと 希望に似ていることか―― (隻腕指揮者エギュベル著 『未亡人たちの演奏旅行』プロローグより) ◇ 「南の国の英雄王、北極星に旅立った」 吹き抜ける風に顔を覆いながらも、ジンは大怪球フォーグラーの外壁を伝い、空を昇る。 ギルガメッシュの一件が片付いたので、彼は次の仕事に取り掛かっていたのだ。 「風の靴を供につけ、筆耕寝子が起きるころ。王子は行方をくらませた」 その仕事とは、フォーグラーの外壁に突き刺さったまま、何の動きも見せようとしないラガン。 空回りだったにしろ、一度はラガンはグレンの投球によってジン達を襲撃しようとしていたのだ。 ヴィラルとシャマルが何を思ってこんなことをしたのか、ジンには確証がなかった。 「東も西も南も北も、家族は必死で探したが――」 ラガンはアンチ・シズマフィールドが展開した後も、何もしてこなかった。 ギルガメッシュがフォーグラーから飛び出した後も、ずっとこのままの状態を保っている。 ギルガメッシュの力を恐れて沈黙を守っていたにしては、なんとも不気味な待機。 「旦那!賽はもう投げられたんだ。この後に及んで、妾(フォーグラー)に走るのかい。 人生はゲームじゃないんだ……帰りなよ。後押ししてくれた奥さんが草葉の陰で泣いてるぜ」 ジンは超伝導ライフルを、外しどころの無い相手の顔に突きつけて、引き金に指をかける。 そこはかとなく聞こえるエンジン音から察すれば、ラガンの機能はまだ停止していない。 しかし返答はない。無機質な顔が綻びるはずもなく、沈黙は貫かれたまま。 「?!?!?」 ――が、応答アリ。 大規模な振動が湧き上がり、赤ん坊をあやす様に大怪球を揺り動かせる。 それはこの世界の崩壊を示す自然災害ではなく、限定された異常事態。 乖離剣・エアに開けられたフォーグラーの風穴が、着々と塞がり始めていたのだ。 「……愛こそ天下、か」 ジンはラガンの登頂に飛び乗り、超電導ライフルを白く包まれたラガンの防風壁に向ける。 機体とパイロットを傷つけぬよう、銃口は壁のヘリを水平に突きぬけるように狙う。 敵を気遣ったのは、その先に隠れる諸悪の根源の存在を暴くため。 「とっくに巣立っていたとはね」 破れた壁から中を覗いたジンは感嘆の息を漏らす。 白月の夜空に晒された操縦者ヴィラルの意識は、既に途切れていた。 両手はしっかりとレバーを握り締めているが、目は曇り口からは涎を垂らしっぱなし。呼吸の有無はわからない。 口は開けど再度は閉じず。目は開けど光は見えず。ただ倒されるは握られたレバー。 「あんた達の愛は、生きる事さえ凌駕しちまうのかい」 ラガンの外傷は修復を始め、ヴィラルを再び外界から遮断させる。 死んでいるのかも生きているのかもわからない生命が、螺旋の殻に包まれる姿にジンは納得した。 2人にとって愛の巣だった機神は、そのまま棺桶になっていた。 ヴィラルとシャマルはあの激闘の終焉と共に、眠りに就いていたのだ。 「ハートに火が点いちまってるというのに……まだ、諦めていない」 そして取り残された膨大な螺旋力だけが、彼ら――グレンとラガンを動かしていた。 あの投擲は、ヴィラルとシャマルの意思が乗り移った『ラガン・インパクト』だったのだろう。 敵がどこにいるのかもわからぬまま、当てずっぽうに放たれた非常識。 いくら螺旋遺伝子に反応するとしても、グレンラガンは直接の生命の持たぬ機械なのに。 「でも、これ以上は狂気の沙汰よ。披露宴は終わったんだ」 ジンはラガンから、外壁が完全に直りつつあるフォーグラーの内部に、飛び降りた。 行き過ぎた愛をガソリンとして、ラガンが動き続けるのなら、フォーグラーの修復は合点がいく。 偶然にもフォーグラーに突き刺さったラガンは、アンチ・シズマフィールドごと本体を乗っ取ろうとしているのだ。 落日した三日月が太陽になれば、あの悪夢が甦る。今度の聖誕祭はいつもより赤が増えるだろう。 「そろそろ地獄巡り(ハネムーン)にでも行って――」 ジンは天使の羽根のようにふわりとコクピットに着地する。 「――っ!?」 その刹那―― 無防備に舞っていた蝶を絡めるが如く、数多の触手がジンの体に巻きついた。 縄は一気に緊張し、蜜柑の果汁を搾り出すように下手人を締めあげる。 「ガッ!!!……ガフッ……! 」 嘔吐。コクピットの椅子に、溢れるほどの赤が降り注ぐ。 この赤は絵の具のように手垢のついた模造品ではなく、人が生けるための必需品。 「……あの世行き……の……切符、に」 ドロボウをお縄に頂戴させた保安官の正体。 それは大怪球フォーグラー――いや、螺旋の力に乗っ取られた臨界球フォーグラーガン自身だった。 外壁の表面に装備されていた沢山のレーザーアームが、己が体を突き破ってまで、襲い掛かったのだ。 彼らは内部にいた異分子(ウイルス)の存在を本能で察知し、追い出そうと考えたのかもしれない。 「払い戻しは、きかないん……だよ……! 」 転生を迎えたフォーグラーの胎内でジンの弱音が空しく響く。 骨身に染みる圧力に、五臓六腑たちが悲鳴を上げていた。もう強がりだけでは隠し通せない。 即ちこれは、王ドロボウもまた、この世界で幾多の無茶を潜り抜けてきたという証明なのだ。 「なんせ俺たちは、生まれつき極刑を言い渡されてるんだからな」 凍てついた視線を亡霊たちに向けて、ジンは右手を淡い緑色に輝かせる。 光は右手から銃全体に染み渡り、更なる輝きを増していく。 正体不明の眩さは留まることなく、ジンを中心として広がっていった。 「どのみち、こんな窒息しそうな棺桶は……ご免こーむる……」 ――幼少期の王ドロボウには、右手を懐へ隠す癖があった。 理由を尋ねられても“必要とするときじゃないから”の一点張り。 母親から五年越しの誕生日祝いに、とあるプレゼントが贈られるまで、やりとりは繰り返されていた。 「こっちにはどんな物語にも、どんな文献にも載ってない」 思い出の品の名は“王の罪(クリム・ロワイアル)”。 お披露目会で破壊され日の目を見ることのなくなったジンの必殺技。 エム・エルコルド(Amarcord)産の知られざる傑作となったのも今では良き思い出だ。 鳥の相棒から乳離れして以来、産まれて初めてになる単独発射(一人立ち)。 「誰もが笑顔でハッピーになれる」 狙いは超新星の核の中心にあたる、コクピットに備え付けられた自爆装置への誘爆。 侵食に純応し過ぎてエゴとなった塊は、芯から根こそぎ駆除しなければならない。 結果あらゆる迸りを受けたとしても、彼には相応の覚悟がある。 それは職業柄、分かりきっていることなのだから…… 「――――パーティーが待ってるんだ!!!」 少年は、迷わず引き金を引くのだ。 ◇ 余すところ無く軋轢と閃光を走らせて、大怪球が崩れていく。 二次災害も甚大。円らな瞳が大粒の涙を散布するように、周囲を巻き込んでいく。 その上空で、どこ吹く風と言わんばかりにカグツチが舞う。 銀の龍の背に乗るは、この発破解体の前兆を偶然にも感知した鴇羽舞衣一行。 「これで……よかったの? 」 舞衣は誰かに向かって問いかける。面と向かって言わなかったせいか、誰も彼女に答えようとしない。 彼女は知っていた。ジンが何のためにフォーグラーに行ったのか。 運び役も買って出たし、ジンの頼み通り迷うことなくゆたかたちを避難させた。 しかし最後の最後でHIMEは騙された。ジンの用意した三本目のアンチ・シズマ管の種明かしを知らなかった。 “イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに捧ぐ”の存在も、彼女はまだ知らなかった。 「ねぇ!よかったっていうの!?」 舞衣の質問に何も答えることができず、ゆたかはフリードを強く抱きしめて俯く。 彼女は何も聞かされていなかった。舞衣がジンと空に上昇する少し前から、彼女の意識は闇に落ちていたから。 眠り姫が覚醒したときには、何もかも終わった後だった。 「爆発が起こったのは、アンチ・シズマフィールドが発生した後だ」 ジンが余分に保管していたシズマ管をデイバッグから取り出して、しれっとねねねが返事をする。 彼女の右手で淡く光るシズマ管の内容物は、とても穏やかに状態を保っている。 一度アンチ・シズマフィールドが展開されれば、シズマ・ドライブが世界を崩壊させることは永遠に無い。 螺旋王に作られし酸素欠乏のバッドエンドは、遂にお蔵入りとなったのだ。 「作戦は失敗じゃない。あたし達が無理に付こうもんなら……終わってたよ」 抑揚を押し殺して話すねねねは、この結末を薄々予感していたのかもしれない。 “イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに捧ぐ”は彼女の悲願だった。 存在を直接伝えずとも、情報を回りくどく、ジンに仄めかしていたのかもしれない。 「……ジンが一度でもそう言った!?ねねねさんが彼に聞かなかっただけじゃない!!」 ジンが皆に絵空事を話し始めてからカグツチに乗るまで、ねねねは彼を止めることはできなかった。 “それでもジンならやってくれる”という得体の知れぬ期待を、ねねねは選んでしまったのだ。 淡々とする彼女の態度は、椿姫の役を買って出た裏返しかもしれない。 「聞かなくたって分かるだろ」 ねねねの肩を掴んで迫る舞衣を、無骨な男の腕が引き止める。 この現状に堪え切れないと目で訴える彼女に、スパイクは一枚の手紙を見せた。 “領収書”と銘打たれたその筆跡に、舞衣は見覚えがあった。 「いい奴だったさ。俺たちが知ってる通りのな」 舞衣が手紙を受け取ると、スパイクはそれっきり何も言わず、葉巻に火を点けながら背を向けた。 ◇ “領収書” 王様からの永遠のお預け 確かに盗ませていただきました 太陽も月も紛い物ですが 民が飢え死ぬことはありません 盗んだ物を“使う”のは もっと相応しい方にお譲りします 根無し草の王ドロボウは 盗むことにしか興味がありません なぜなら盗むことは 多分 最高の賛美だから 今までも 未来も 終わることなく この世が賛美に値する限り 王ドロボウは 盗み続けるでしょう ◇ スパイクは未だ自壊し続けるフォーグラーの末路を見届けながら、煙を吸い込む。 口に広がるかすかな苦味が、湿りきっていた顔を歪ませた。 彼が吸っている葉巻は、先ほど地上で口から落とした一本ゆえ、少し砂がついていた。 (メメント・モリ……失敗しても、せいぜい死ぬだけってか) 砂埃は払ったつもりだったでも、こういった物はなかなか落ちないものだ。 本当は不衛生極まりないのだが、スパイクは敢えて煙を味わった。 この葉巻はジンから譲り受けた、言わば置き形見であり、最後の接触に立ち会った証だから。 (螺旋力とやらがそっぽを向くわけだ) いまいち腹の底が見えずとも、どこか脱力させられるあの少年は、信頼に値していた。 そのジンがいつの間にかスパイクのズボンに初心表明を投函していたのだ。 あの質問に対するジンの答えがこれだとしたら、自分は何と答えるべきだろう。 (本当に“死ぬには良い日”だったのかよ。冠を捨てちまった王様は、眠るしかねぇんだぞ) 月明かりで淡くなった夜に、深く長く煙を吐き出すと、スパイクはチラリと後ろを見る。 向こうではジンの手紙を食い入るように読みながら、同志が思い思いの感情をぶつけていた。 心の奥底では孤独を良しと受け入れているスパイクとは違い、彼女たちはどれほど真っ直ぐか。 (あいつらみたいに、惹かれてみろってのか。涙が出るくらい――……ん?) ぼんやりと見ていた両目を擦ってスパイクは視界を明確にする。 小さな小さな何かがカグツチに向かって来たからだ。 飛来物はねねねたちの肩を通り過ぎ、持ち前の動体視力で捉えていたスパイクの右手にパシッと綺麗に収まった。 それはジンが持っていた死芸品、夜刀神。刀身には一枚の紙が結び付けられていた。 『あなたの頭上に輝く星が流れた夜に あなたの故郷でお会いしましょう HO! HO! HO! 永らえの王ドロボウ』 咥えていた葉巻を投げ捨て、賞金稼ぎはすっくと立ち上がる。 顔をぐしゃぐしゃにしている淑女たちへこの紙切れを渡すために。 文面の意図を読みとれば、これは待ち合わせの約束。 いつどこで会えるのかはわからない。実に気の長い話だ。 (またな、王ドロボウ) ……それでも、遅かれ早かれ――巡り合えるはずだ。 含み笑いを添えて、スパイクは同志に手紙を差し出す。 あんたは、どうなんだい DO YOU HAVE COMRADE? 時系列順に読む Back HAPPY END(12) Next HAPPY END(14) 投下順に読む Back HAPPY END(12) Next HAPPY END(14) 285 HAPPY END(12) ヴィラル 285 HAPPY END(14) 285 HAPPY END(12) シャマル 285 HAPPY END(14) 285 HAPPY END(12) スカー(傷の男) 285 HAPPY END(14) 285 HAPPY END(12) ガッシュ・ベル 285 HAPPY END(14) 285 HAPPY END(12) 菫川ねねね 285 HAPPY END(14) 285 HAPPY END(12) スパイク・スピーゲル 285 HAPPY END(14) 285 HAPPY END(12) 鴇羽舞衣 285 HAPPY END(14) 285 HAPPY END(12) 小早川ゆたか 285 HAPPY END(14) 285 HAPPY END(12) ジン 285 HAPPY END(14) 285 HAPPY END(12) ギルガメッシュ 285 HAPPY END(14) 285 HAPPY END(12) カミナ 285 HAPPY END(14) 285 HAPPY END(12) ドモン・カッシュ 285 HAPPY END(14) 285 HAPPY END(12) 東方不敗 285 HAPPY END(14) 285 HAPPY END(12) ニコラス・D・ウルフウッド 285 HAPPY END(14) 285 HAPPY END(12) ルルーシュ・ランペルージ 285 HAPPY END(14) 285 HAPPY END(12) チミルフ 285 HAPPY END(14) 285 HAPPY END(12) 不動のグアーム 285 HAPPY END(14) 285 HAPPY END(12) 流麗のアディーネ 285 HAPPY END(14) 285 HAPPY END(12) 神速のシトマンドラ 285 HAPPY END(14)
https://w.atwiki.jp/animerowa-2nd/pages/732.html
HAPPY END(1)◆ANI2to4ndE 空に表情は無かった。世界にも色はない。 代わりにただぼうと鉛のように重たい空間が果てしなく広がっていた。 大地に相当する平面に起伏は見られず、遥かに見える土くれが辛うじて山のように見える他には、自然物さえも存在しない。 不思議な空間であった。 無限地獄さながらの世界を、横に切り裂くように一条の光が走る。 続いて、寄り添うようにいくつもの爆発が起き、爆風と衝撃が通り抜けた。 それが呼び水となったのかのように次々と新たな閃光が走り、限定された空間が色を得る。 生物に類するものは一切存在しない。そう思われた世界にさえ人はいた。 一騎当千の巨神が隊を成し、万古不易の英傑たちが手に手に武器を持って空を駆る。 更に遥か上空では、終末を思わせる凶鳥が甲高い声を響かせて鳴いていた。 相争う無数の人間たち。 友の遺志を継いだ男は次の瞬間光輪の塵となり、泣くことしかできない少女は誰にも気づかれぬまま踏み潰され標本と化す。 愛する者は、繋いだ手を残して消えていた。 果てしなき絶望の末に、一滴の水滴のような光がささやかな終焉のときをもたらした。 渦を巻くようにゆっくりと広がるうねりは全てを平等に包みこみ、飲み込んだものたちの生をそっと奪って行った。 光は半球となり、自らを閉じ込めていた世界の殻を乗り越えてなお、消えることなくまたたき続けていた。 天の光はすべて星。 そして死が始まる。 ◇ アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 最終回 『HAPPY END』 ◇ 「ギィイイイイイガァアアアアアアアア!!」 「ラァアアアアアブラブゥウウウウウ!!」 「ドリル――ブレイクゥウウウウウ!!」 はるか高く天元すら突破して、愛に狂った男と女の叫びが木霊する。 猛り狂う叫びに呼応し、薄緑と桃色の輝きがグレンラガンより放たれた。 その右腕には全身を上回る巨大なドリル。 それを携えたグレンラガンが全身を唸らせ回転を始める。 高速で回転する機体にあわせ碧と桃色の眩い光が交じり合ってゆく。 それはまさしく無限の可能性を秘めた螺旋遺伝子の象徴、二重螺旋。 光を放つグレンラガンがその身全てを一つの螺旋と化して大地を突き進む。 それはまさしく冗談めいた光景だった。 恥ずかしいまでの愛の告白を聞かされたかと思えば、突然の合体。 さらには馬鹿みたいに巨大なドリルがこちらの命を奪わんと迫っているのだ。 嗚呼……コレを冗談と呼ばずして何と呼ぼう。 まして、そんな冗談にこちらの命は脅かされているのだ、もはや悪夢と呼んで差し支えない。 差し迫る悪夢。 ガッシュはあまりの自体にあっけに取られ、ねねねにはそもそも反応できるだけの力がない。 故に、その一撃に辛うじて反応できたのはスカーとジンの二人だけだった。 最初に動いたのは王ドロボウ、ジン。 すぐ脇のねねねを抱きかかえ、足元のガッシュの襟元をつかむと、持ち前の俊敏さを発揮して瞬時に身を翻し、そのまま一目散に駆け出した。 だが、迫る一撃はあまりにも巨大、あまりにも強力。 反応できたとして、どうしようもない代物である。 いかにジンの俊足を持ってしても、被弾するまでに攻撃範囲から逃れることは不可能だ。 その必死の足掻きを嘲笑うかのように、天にも迫る巨大なドリルは眼前まで迫り、ジンの視界から太陽を覆い隠す。 伸びる影が地面を染め、ジン達は巨大な闇に飲み込まれた。 ――――駄目か。 ドリルが視界全てを埋め尽くす光景を前に、そんな王ドロボウらしからぬ諦めがジンの脳裏をよぎりかけた、瞬間。 その横合いから閃光めいた紫電が奔った。 影を払う閃光。 それはスカーの右腕が生み出した錬成反応の輝き。 スカーが選んだ破壊の対象は、自らが起立するその大地であった。 右腕に触れるあらゆる要素が分解され、その破壊に従って彼らが踏みしめていた大地が崩壊する。 蜘蛛の巣のようなヒビが走る。 地面が波のように隆起する。 崩壊に応じ弾け飛ぶ岩石。 ささくれの様に地表が湧き上がる。 その一部、湧き上がった大地がグレンラガンの行く手に割り込んだ。 それはあたかも彼らを守る盾のように。 「無ゥウ駄ぁだぁああああああ!!!!」 突き進むドリルの裏から、ヴィラルの叫びが響き渡る。 その言の通り、突き進む愛の前にして、この程度の障害などなんの妨げにもなりはしない。 押し進むドリルは立ち塞がる岩壁を物ともせず、それこそ障子を突き破る容易さで急造の盾を打ち破った。 だが、スカーにとってもそれはたいした問題ではない。 もとよりそんなもので防げるモノだとは思ってはいないし、防ぐつもりもない。 地面を崩壊させた狙いは別にある。 スカーが引き起こした大地の崩壊。 それは、当然ながら、その場にいたジン達をも同時に飲み込んだ。 スカーの狙いはそれである。 スカーもジンと同じく、放たれた攻撃がかわしたところでどうにもできない類のモノであることを瞬時に悟っていた。 故に、彼は半ば強制的に彼らをドリルの攻撃範囲から排出することを選択した。 その瞬時の判断と、適切に破壊すべき箇所を選択し実行した決断力は賞賛に値するだろう。 事実、大地の倒壊は彼らが駆け抜けるよりも早く彼らを運び、遠くの地面へとジンたちを放り出した。 ジン以外の二人は受身も取れず背から大地に叩きつけられたため、まったく無事とは言いがたいが五体は健在。 あれほどの一撃に対する成果としては十分に僥倖だ。 多少乱暴ではあったが、あの状況では最善の一手だったと言えるだろう。 もし問題があったとしたならば、ただ一つ。 破壊の中心、それを巻き起こした張本人――――スカーだけは、その場を大きく動くことは叶わず。 その攻撃から、逃れようがないという一点だけだろう。 「スカーーーーーー!」 スカーの意図に気づいたジンの叫び。 それすらも打ち消す激しさで、ドリルが地面を貫き抜ける。 それはスカーが巻き起こした破壊とは比べ物にならないほどの圧倒的な破壊行為。 駆け抜けた跡に残った地形はもはや変わり果てていた。 進むドリルは触れる全てのモノを許しはせず、軌道上のあらゆるものすべてが消滅。 一文字に刻まれた大地の傷跡は深く、生み出された溝は谷と称して差し支えなかった。 「…………う、うぬぅ」 その傍ら。 辛うじて破壊を免れた大地の上でガッシュ・ベルは身を起こした。 立ち上がるなりガッシュは強かに打ち付けた背の痛みをおくびに出さず、大きな金色の瞳を凝らし辺りを見渡した。 目に入るのはただ朽ち果てた大地。 見渡す限り無事な大地など存在しない。 それを見てなおガッシュは諦めない。 ただ純粋な祈りを込めて、そこにいるべきはずのスカーの姿を探していた。 そして、それは程なくして見つかった。 抉れ果てた瓦礫の陰に、見えるのはイシュヴァール人特有の褐色の肌と額に刻まれた十字傷。 見紛うこともない、その特徴は間違いなく探し人のそれである。 だが、その姿を認識したにもかかわらずガッシュは歓喜するでもなく立ち止まり絶句していた。 それも仕方あるまい。 倒れこむスカー。 その姿は見るも無残なものだった。 僅かながらに呼吸しているのは見て取れる。 まだ生きているのは確かだろう。 だが、彼の切り札であり、実兄より受け継いだ形見でもある破壊の右腕は肘の先から見当たらず。 左足は膝から先を紛失しており、右足は根元から欠けている。 そして、傷口からは、鮮やか過ぎるほど真っ赤な血液が止め処なく溢れていた。 壊れた蛇口のように血液が垂れ流される。 流れる血液が小さな川を作り瓦礫の間を滑り落ちていった。 このまま放っておけば確実に死に至ると、ガッシュでも理解できるほどの致命傷だった。 立ち上がる足を失い、荒廃した大地に横たわるスカー。 そこに大きな影が重なった。 それは人型にして人あらざる鉄巨人の影。 太陽に輝く赤いボディに、不敵に笑う二つの顔面。 語るまでもなく、ヴィラルとシャマルの二人が操るグレンラガンである。 放っておいても確実に息絶えるであろう相手だが、今のヴィラルに抜かりはない。 たとえ0.1%でもこの愛の障害になりえるものならば、全て確実に打ち滅ぼすのみ。 許容もなく、慈悲もなく、遥か高みより見下ろす赤い巨人はスカーに向けて右腕を振り上げる。 その腕が振り下ろされてしまえば、両足がないスカーにはそれを避ける術はない。 待つのはより確実な死だ。 だというのに、スカーの瞳にはそんなものは一片たりとも映ってはいなかった。 真紅の瞳に映し出されているのは、自らに死をもたらす鉄槌ではなく、自らを遠く見つめる三人の姿だった。 それを見て何を思うのか、今にもこちらに駆け出してきそうな顔をした三人とは対照的に、スカーの表情は常と変わらぬ仏頂面。 睨み付けるような鋭さを放つ眼光も相変わらず。 こんな状況下においても恐怖や痛みといった感情は見て取れない。 それはきっと、彼が無念に散ったイシュバラの民の痛みと悲しみを抱え生きてきた覚悟の証なのだろう。 復讐と贖罪に彩られた人生の終わり。 告げるべき言葉はただ一言。 「―――――行け」 届くかもわからぬ程小さな声。 それでも確かに、万感の想いを込めたその一言は菫川ねねねの耳に届いた。 その言葉を受けたねねねは奥歯を噛み締めながらも、スカーに背を向け走り出す。 直後。ズドンと、背後で大地を揺らす音が響いた。 同時に聞こえる何かが潰れる嫌な水音。 それが何の音であるかを知りながらも、いや、知っているからこそ止まるわけにはいかなかった。 この身は我等の剣となる。 彼は最後までその役割を全うした。 ならば、その彼に報いるためにもねねねは生き延びなければならなかった。 生き延びて、彼女もまた自らの役割を果たさねばならなかった。 「ッ―――……カ野郎!」 だが、それでも、言葉は口から漏れていた。 それは誰に向けての言葉だったか。 未だ殺し合いを止めない獣たちへか。 自らを犠牲にしたスカーへか。 それとも、何もできない無力な自分に向けてだろうか。 振り返りもせず、彼の最後を見届けることもせず。 悔しさと歯がゆさに、血がにじむほど唇を噛み締めながらも、ねねねは走り続ける。 敗走ではない。 逃避でもない。 全ては明日を掴むために。 遥か遠い、ハッピーエンドを目指しながら。 ◇ 「おう、やっとるやっとる」 ヴィラルとシャマルが駆るグレンラガン、翻弄される蟻の生き残り、それらを遠巻きに眺める三つの機体。 ルルーシュ・ランペルージによって差し向けられた使者たちは、並び合い、与えられた作戦に想いを馳せる。 ――ヴィラルとシャマル及びグレンラガンの回収。 作戦を遂行するには、まずグレンラガンの戦闘を止めなければならない。 東方不敗を召喚したような強制転送システムは既に機能を失いつつあり、今は凍結も不可能なほどに、会場全域で綻びが生じている。 今頃は、参加者たちの首に嵌められた輪も役目を追え、自壊しているに違いなかった。 剣を鞘に収めるには力ずく、天元突破を為した雄を相手にすると心がけ三人がかりで、そういう算段だったが、 「しかしとんでもない暴れっぷりじゃの。あれではとても近づけん」 三機のうちの一体――ゴリラのような長い腕に、甲殻虫を思わせる装甲と触覚を併せ持ったカスタムガンメン、ゲンバーが微動する。 搭乗者のアルマジロ、四天王がひとり不動のグアームは、グレンラガンの猛威を観察しながら尻込みした。 「臆したかグアームよ。四天王が二人も出張っているのだ、やれなくてどうする」 三機のうちの一体――両腕、脚部に鋭い刃を備え、胴体に武骨な顔を浮かばせるカスタムガンメン、ビャコウが一歩前に出る。 搭乗者のゴリラ、怒涛の名を捨てた武人チミルフは、勇ましくも闘争の舞台に恋焦がれた。 「まあそう力むな、チミルフよ。要はあれをどうにかすればいいのだろう? やり方なぞ無数にある」 三機のうちの一体――機械仕掛けの鉄馬に跨る、漆黒のモビルファイター、マスターガンダムと風雲再起が諌める。 搭乗者の老人、東方不敗マスターアジアは鷹揚に微笑み、目の前の大命に向き合った。 彼ら、実験場に降り立った三名の使者。 それぞれが愛機を持ち出し、当初予定していた『試練』の尖兵として、交渉材料の回収に参じた。 実際に天元突破を為した大物を前にして、さてどうするか、と構えたところで東方不敗が案を提示する。 「今の奴に、力ずくといった手段は失策であろう。儂らはなにも、潰し合いをしにきたわけではない」 「ぬ、ぬぅ……では、いったいどうやって奴を止める? 言葉で説得をしろとでも言いたいのか?」 「そのまさかよ。チミルフ……他でもない貴様が、黄泉路より帰還せし勇者としてな」 マスターガンダムのコクピットの中、東方不敗は不敵に微笑んだ。 怪訝に唸るチミルフ、反応を返さぬグアームを尻目に、自らが考案した策を述べる。 「ルルーシュの言葉を思い出してみるがいい。あの二人は儂らほどではないが、事の裏側を把握しておる。 迎えが来たとしてもさして怪しまれることはあるまい……ましてや、死んだと思われた上官ともなればな」 ククク、と笑う東方不敗の言葉には、説得力があった。 チミルフを押し黙らせ、熟考に至らせる。 「もとより、儂は後衛を言い渡されておる。今はまだ隠れ潜み、万が一の事態に備えよう」 「懸命じゃな。チミルフよ、まずはおぬしがヴィラルのもとへ向かえ。ワシも後衛に回る」 「む、グアームもか?」 ルルーシュの采配では、チミルフとグアームがヴィラルと接触、東方不敗がバックアップに回る予定だった。 だからこそ東方不敗の提案にも頷けたチミルフだったが、ここで割り込んできたグアームには些細な異を覚える。 「あの様子では、小競り合いを続けていた者たちも長くないじゃろう。 チミルフが駆けつける頃には、戦闘も終局。説得なぞ、おぬし一人で十分ではないか」 「しかし、王は――」 「細かい交渉の内容はワシらに任せる。そう言ったのは、おぬしの王じゃろが。 確実に王の期待に応えるならば、周囲で起こるやもしれんイレギュラーに目を配らせていたほうが、懸命じゃと言っとる」 音吐朗々たる声で唱えるグアームの言霊は、『王』という絶対のキーワードを持ってチミルフを黙らせた。 ルルーシュの作戦を肯定するならば、この場は東方不敗とグアームの言にこそ理がある。 力ずく、などという発想が生まれてしまったのは、間近でグレンラガンの奮闘を見てしまったがためか。 ロージェノムの螺旋力を凌駕し、天元突破を実現して見せた勇士、ヴィラル。 シャマルという伴侶を得て、豪快に駆る合体ガンメン、グレンラガン。 武人として、情念を燃やさずにはいられない相手であることは確かだ。 チミルフは喉が鳴るのを自覚し、生唾を飲み込む。視線は、遠方のグレンラガンに釘付けだった。 「決まりだな。では、儂とグアームは後衛に回る。チミルフよ、尖兵は任せたぞ」 「尖兵か……ぐふふっ、おぬしにピッタリの役目ではないか。がんばれよぉ」 「言われるまでもない……! 生憎だがおまえたち二人の出番はない。必ずや、王の期待に応えてみせよう」 チミルフは意を決し、操縦桿を固く握る。 彼の操縦するビャコウが一歩、強く大地を踏み締めた。 そして、悠然と歩を進めて行く。焦らず、じっくりと、戦場の渦を目指して。 「……さて、と。おぬしもなにやら悪巧みの最中か? のう、東方不敗よ」 ビャコウの背が徐々に遠ざかっていくのを見やりつつ、グアームが東方不敗に語りかける。 「悪巧み、とはまた……貴様の大切な同志に知れては、事ではないのか?」 東方不敗もまた、グアームに言葉を返す。互いに、惜しげもなく本音を言い合うつもりだった。 「凍結システムを始め、首輪、転送装置、そして他の計器も……あの碧色と桃色の奔流は、磁場を歪める砂嵐じゃよ」 「ふん……今さら小言を聞かれようが、瑣末にすぎんというわけか?」 「惜しいの。小言だからこそ、上手くは拾えないんじゃよ。この実験場、おぬしやルルーシュが思っている以上に、限界きとるぞ?」 監視の目を恐れず、グアームは大胆不敵に笑いを零す。 自らが招きいれた同士たちへの、裏切りにもなりかねない言動を添えて。 隣に立つ東方不敗が、同じような立場にいる人間だということも知りながら。 「さて、ワシは好きにやらせてもらうがおぬしはどうする? 自分の悪巧みを続けるか?」 「ふっ、喰えぬ男よのぉ。儂の胸中を知っているでもなく、あえて座視するというのか?」 「なに、予想はつく。ワシとおぬしの思惑は交わらん。敵にも味方にもなりえぬほどにな」 そう言って、グアームも動く。 ゲンバーの巨躯を巧みに操り、チミルフとはまた違うルートで、天元突破の中心点を目指した。 取り残された東方不敗は、それを後ろから見送る。視線を傾けながら、マスターガンダムの双腕が微かに持ち上がった。 しかし、すぐに下ろされる。間合いは愚か、射的距離からも脱したゲンバーを、余裕の態度で送り出したのだった。 「このまま後ろから始末してしまってもよいのだがな。儂はおぬしほど、あの小僧を見縊ってはおらんのだ。 今はまだ同志として……後衛の任に就き、獣人どもの仕事ぶりを観察させてもらうとしようではないか」 そして、東方不敗も動いた。 マスターガンダムの騎乗する鉄馬が、颯爽と大地を駆ける。 先人たちとはやはり違うルートで、生け贄の待つ遊技場を目指した。 信じ、従い、行動する者―― 見限り、裏切り、暗躍する者―― 先見据え、身焦がれ、挑戦する者―― 三者三様、遣わされた三人の男たちは、それぞれの思惑に遵守して突き動く。 ある者は王手と、ある者は一里塚と、ある者は最後の詰めと捉えて。 どこからどこまでが、誰の術中なのか……考える者もいなかった。 時系列順に読む Back 始まりは終わりの始まり(後編) Next HAPPY END(2) 投下順に読む Back 始まりは終わりの始まり(後編) Next HAPPY END(2) 282 愛に時間をⅣ ヴィラル 285 HAPPY END(2) 282 愛に時間をⅣ シャマル 285 HAPPY END(2) 282 愛に時間をⅣ スカー(傷の男) 285 HAPPY END(2) 282 愛に時間をⅣ ガッシュ・ベル 285 HAPPY END(2) 282 愛に時間をⅣ 菫川ねねね 285 HAPPY END(2) 282 愛に時間をⅣ ジン 285 HAPPY END(2) 284 始まりは終わりの始まり(後編) 東方不敗 285 HAPPY END(2) 284 始まりは終わりの始まり(後編) チミルフ 285 HAPPY END(2) 284 始まりは終わりの始まり(後編) 不動のグアーム 285 HAPPY END(2)
https://w.atwiki.jp/1548908-08/pages/995.html
The splendid VENUS(ザ・スプレンディッド・ヴィーナス) パック:神秘なる銀河(P) 05645210 効果モンスター 星8/光属性/天使族/攻2800/守2400 このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、 フィールド上に表側表示で存在する天使族以外の全てのモンスターの 攻撃力と守備力は500ポイントダウンする。 また、自分がコントロールする魔法・罠カードの発動と効果は無効化されない。
https://w.atwiki.jp/yugio/pages/114.html
The splendid VENUS 効果モンスター 星8/光属性/天使族/攻2800/守2400 このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、 フィールド上に表側表示で存在する天使族以外の全てのモンスターの 攻撃力と守備力は500ポイントダウンする。 また、自分がコントロールする魔法・[[罠カード]]の発動と効果は無効化されない。 プラネット・シリーズ 光属性 天使族 天使族補助 最上級モンスター 能力弱化
https://w.atwiki.jp/1548908-card/pages/1904.html
デッキ:人気レシピ:【Dragoon D-END】 デッキ解説:DS2009仕様 Dragoon D-ENDでのビートダウンが目的のデッキ。 Dragoon D-END、D-HERO Bloo-Dなどが主力。 デッキ構築において エクストラデッキに入るためDragoon D-ENDは是非3積みしたい。 融合素材となるD-HERO Bloo-DやD-HERO ドグマガイも最低2枚ぐらいは投入しておきたい。 また、D-HEROの強力なドローソースであるデステニー・ドロー、HEROサーチのE・HERO エアーマンも投入しよう。 王宮の弾圧などを使われた場合も想定したい。 相性のいいカード E・HERO エアーマン、D-HEROを手札に持ってこれるため安定性が上がる。そのままデステニー・ドローに繋げても強力。 ミラクル・フュージョン、E・HERO アブソルートZero。この2枚を保険として、融合召喚を狙ってみる。 E・HERO プリズマー、Dragoon D-ENDの融合素材を落としてくれる上そのまま融合召喚につなげることが可能。 E・HERO フォレストマン、沼地の魔神王。融合を引っ張ってこれる。やはりE・HERO エアーマンの存在などから、E・HERO フォレストマンが優先だろうか。 沼地の魔神王はミラクル・フュージョンの種となってくれるのでこちらも投入しておいて損はない。 このデッキの弱点 王宮の弾圧等は天敵。特殊召喚を封じられてしまう。サンダー・ブレイクなどで対策したいところ。 神の宣告等で融合召喚を阻止されると厄介。 パックの出現条件が厳しい2009では、E・HERO エアーマンやデステニー・ドロー等がデッキ構築を困難にする。 プレゼント(入手困難なカードを活用してもいい。 サンプルレシピ 合計40枚+15枚 上級0?枚 上級0?枚 沼地の魔神王 ダーク・グレファー ゾンビキャリア E・HERO プリズマー ×3 E・HERO フォレストマン ×2 E・HERO エアーマン D-HERO ドゥームガイ ×3 D-HERO ディフェンドガイ ×2 D-HERO ディアボリックガイ ×2 D-HERO ダッシュガイ D-HERO ダイヤモンドガイ ×2 D-HERO Bloo-D ×2 D-HERO ドグマガイ ×2 魔法13枚 融合 ×2 異次元からの埋葬 ×2 デステニー・ドロー ×2 闇の誘惑 ×2 増援 生還の宝札 死者蘇生 ミラクル・フュージョン サイクロン 罠04枚 魔のデッキ破壊ウイルス 転生の予言 聖なるバリア-ミラーフォース- 激流葬 エクストラデッキ15枚(シンクロはお好みでどうぞ) Dragoon D-END ×3 E・HERO アブソルートZero E・HERO ジ・アース スターダスト・ドラゴン ×2 ブラック・ローズ・ドラゴン ×2 A・O・J カタストル ゴヨウ・ガーディアン ダーク・ダイブ・ボンバー ダークエンド・ドラゴン レッド・デーモンズ・ドラゴン 氷結界の龍 ブリューナク
https://w.atwiki.jp/kabukifinal/pages/8.html
ずっとレトロジックのゲーム保管用ハードの中で眠っていた作品を、2006年になってやっと公開致しました。まだサークル名が、レトロジックに変わる前の作品です。 このころはまだ、真面目な作品を作っていこう!!と頑張っていた頃で、シリアスなファンタジーアクションゲームとなっております(一部シリアスじゃないキャラも登場・・・)。 人間と仲良くなりたいと思っている悪魔の少年「ソフィア」の、悪魔と人間の間のジレンマ、そして真の仲間とは何なのか。をテーマに物語が繰り広げられていく・・・はずだったんですが、歌舞伎FINALが第一話を作り終えた瞬間、達成感を感じてしまい、話が大きくなる前に終わってしまいました(アホ)。 操作方法はニコニコ王国物語と同じで、方向キーで左右上移動、Aキーで攻撃です。ニコニコ王国物語と比べると簡単になっていますので、アクションが苦手な方でも安心してお遊びいただけます。 ※ただいま配信中※ JEWEL LEGEND第一話ダウンロード
https://w.atwiki.jp/1548908-09/pages/403.html
タッグデュエリスト:The splendid VENUS(DU) タッグ:デーモンの召喚(DU) タッグ名:天使と悪魔の融合 解説:レート1380 】使い。 攻略 デッキ名:光の惑星 ※アルカナフォース0-THE FOOL(DU)のコピー未編集。未収録カードを発見したら削除願います。 編集求む。50音順求む。 ※チェック・50待ち 合計40枚 上級08枚 アルカナフォースXIV-TEMPERANCE 天空騎士パーシアス 光神テテュス The splendid VENUS×3 光神機-桜火×2 下級15枚 アルカナフォース0-THE FOOL オネスト×2 コーリング・ノヴァ×3 ジェルエンデュオ シャインエンジェル×3 勝利の導き手フレイヤ×3 天空の使者 ゼラディアス マシュマロン 魔法07枚 大嵐 神の居城-ヴァルハラ×2 サイクロン 死者蘇生 ライトニング・ボルテックス×2 罠10枚 神の宣告×2 群雄割拠×3 激流葬 御前試合×3 聖なるバリア-ミラーフォース- エクストラ00枚