約 35,695 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2139.html
ウサギのナミダ ACT 1-21 ■ ……これは、どういうことなのだろうか。 マスターは映し出された朝のニュースを、チャンネルを変えては見直している。 同時に、PCを立ち上げて、ネットのニュースサイトも激しくチェックしていた。 いずれも、同じ出来事を伝えている。 『金曜日の夜、全国の盛り場などで、いわゆる神姫風俗の摘発が一斉に行われました。 これは警視庁主導による、初の大規模摘発となります。 警察によると、今回の摘発により、神姫風俗の経営者、その時風俗店を利用していた客など、検挙者は約四百人。 これは深夜の発表時の集計で、最終的には千人を超えると見込まれています』 『最近、ネットを中心に、神姫を虐待する映像が多数出回っており、社会問題となっていました。 こうした世論の声の高まりにより、今回の一斉摘発が行われたと見られています。 神姫の虐待は、MMS保護法違反にあたり、実刑が課せられる場合もあります』 『T県の神姫風俗店『LOVEマスィーン』では、経営者を含む六名が、風俗営業法違反およびMMS保護法違反で検挙。 店で働かされていた、約20体の神姫が保護されました。 また、店に来ていた9人の客についても、MMS保護法違反の疑いで取り調べを受けています』 『今回の一斉摘発は、東京、大阪、名古屋、札幌、福岡など、大都市圏を中心に行われました。 専門家は、警察は今回の摘発によって神姫風俗の一掃を狙った、と見ています』 はじめ見ていたストレートニュースの番組が終わると、すぐにワイドショー形式のニュースを見る。 こちらも、同じニュースを大々的に報じていた。 別のチャンネルも、その次の番組も。 ニュースの内容は理解できたけど、信じられなかった。 いったい何が起こっているのだろうか。 □ いったい何が起こっているのだろうか。 「おい、遠野! 何をした? いったい何が起こってる!?」 「俺が知りたい」 大城の問いに、俺は素直に答えた。 俺が何かしたというのなら。 それは先日、日暮店長に相談したことだ。 しかしそれは五日前の話で、それがこんなに大規模な動きにつながるものなのか? いくらなんでも早すぎる。 だが、ニュースでは、他の神姫風俗店の名前は出していないのに、『LOVEマスィーン』の名前だけはどの番組でも伝えていた。 それは、日暮店長が動いたことの証ではないのか? 「すまん、大城。用事ができた。後でかけ直す」 「な……ちょっと……!?」 大城には悪かったが、俺は一方的に電話を切った。 そして、テレビとネットから情報を集める。 概要は分かった。 約束通り、日暮店長は動いてくれた。 しかし、警察の動きは俺の想像を遙かに超えている。 神姫風俗を一掃……? いったい、何がどう動いてこんなことになっているのか、俺には理解できない。 時計を見る。 時間は八時半。 「ティア、出かけるぞ」 「え、ど、どこへ……?」 「エルゴだ!」 俺は手早く着替えをすませ、最低限の持ち物だけ持って、ティアを胸ポケットに収めると、アパートを飛び出した。 何が起きたのか、確かめなくてはなるまい。 ■ ホビーショップ・エルゴまでは二時間もかかるというのに、マスターは突然家を飛び出した。 今日報じられている出来事は、エルゴと関係があるのだろうか。 マスターが何かしたのだろうか。 それにしたって、信じられない。 突然、神姫風俗がなくなってしまうなんて。 わたしがいたお店『LOVEマスィーン』のことも放送されていた。あれは、お店がなくなってしまった、ということなのだろうか。 エルゴに向かう途中の電車の中、マスターは携帯端末を使って情報をチェックしている。 携帯端末用のテレビ放送を見て、ネットの情報をチェックして……わたしが見た大型掲示板の書き込みも読んでいる。 マスターは無言だった。 携帯端末を見る表情は、真剣そのものだ。 □ 俺は駅に着くと、エルゴまでの道のりを走った。 時間はすでに十時半になろうとしている。 店は開店しているはずだ。 今回の事件について、一刻も早く確認しなくてはならない。 後で思えば急ぐことでもないはずなのに、気ばかりが焦っていた。 ほどなく、エルゴに到着した。 俺は躊躇せずに、店に入る。 「……日暮店長!」 カウンターから少しはずれた位置にいる、エプロン姿の青年を見つけて、俺は思わず叫んでいた。 店長はそばにいた男性から目を離すと、 「おお、遠野くん。早かったな」 と言った。 やはり。俺の出現を予期していたということは、今回の件は俺の依頼が大本ということに他ならない。 「たっちゃん、彼が例の……情報提供者だ」 そう声をかけられた、店長の傍らにいた男性が俺を見た。 鋭い視線。厳しい表情。 スーツ姿のその男性は、全身に緊張感をまとっているように見えた。 ところが、意外にも、俺に左手をさしのべてきた。 「警視庁MMS犯罪担当三課の地走達人だ」 俺は地走刑事と握手をした。 日暮店長と同じ、固い握手だった。 「遠野貴樹です」 名乗った声は緊張に震えていた。 警視庁の刑事である。俺の今の状況を考えれば、疑り深く地走刑事を見てしまうのも仕方がないことだろう。 それを悟ったのか、地走刑事は幾分柔らかな表情になり、緊張を解いた。 「君が証拠品を提供してくれたおかげで、今回の捜査は大成功だった。礼を言うよ」 「いえ……」 刑事さんに礼を言われるのはとても面映ゆかった。 なぜなら…… 「俺は……何も、していませんから……」 そう。 俺は何もしていなかった。 こんな、全国レベルの大事に関わっただなんて、どの口で言えるのか。 俺はただ、自分の神姫が大切で、守りたくて、警察にわがままな条件を願い出るようにし向けただけだった。 だが、うつむいた俺に、地走刑事は言った。 「それは違う」 「……え?」 「何もしなかっただなんて、そんなことはない。君は誰よりも大切な役割を果たしたんだ」 「やくわり……?」 「そう。 君は、覚悟をした。 神姫のために、すべてを賭ける覚悟をした。 それは誰も考えもしなかった、大切なことだ」 「そんな……」 そんなことは、ただ俺がそう思いこんだだけに過ぎないのではないか。 「なあ、遠野くん。人を動かすには、何が必要だと思う?」 日暮店長は唐突にそんな質問をしてきた。 俺が戸惑って、何も言えずにいると、彼は笑ってこう言った。 「それはな……想いだ。 想いによって人は動く。 君は、神姫のためにすべてを賭けてもいい、と言った。 俺たちはその想いを受け取った。 だから、俺たちにできることをした。 ……それだけさ」 地走刑事も頷いていた。 俺は……何と言っていいかわからず、黙ってしまった。 日暮店長は軽く吐息をついた。 「まあ……これで君の依頼は成し遂げられた。 もう、君の神姫が、風俗店から追われることもない。 あの店は情報源だったから、特に厳しい検挙が行われたからな。復活することもないだろう」 ■ その店長さんの言葉に、わたしははっとなった。 詳しいことはよく分からなかったが、マスターが店長さんに何かお願いをして、今回の事件に至ったようだ。 全国の神姫風俗が一夜にしてなくなった。 どんなことがあったのかは、想像がつかない。 また、マスターが「自分の神姫」のために、すべてを賭ける覚悟を決めた、という。 ……それはわたしのことなのだろうか? そんな決意を本当にしたというなら、マスターの気持ちも、わたしの考えうる範囲からかけ離れていて、さっぱり現実味がなかった。 だけど、さきほどニュースで流されていたとおり、わたしがいた店『LOVEマスィーン』がなくなったことは事実みたいだった。 わたしはどうしても一つだけ、聞きたい、聞かなくてはならないことがあった。 「あ、あのっ……!」 思わず口をついた。 三人の男性が、わたしに注目する。 怖い。 でも、その恐怖以上に、聞かなくてはならないという義務感が勝った。 「あの……『LOVEマスィーン』にいた神姫のみんなは……ど、どうなるんですか……?」 かつての仲間たち。 自分の存在を番号で決められた、名もない神姫たち。 彼女たちの行く末が、わたしはどうしても心配だった。 すると、刑事さんが少し姿勢を低くして、マスターの胸ポケットを……わたしの顔をのぞき込んだ。 わたしは思わず、ポケットの縁で顔を隠してしまう。 でも、刑事さんは微笑していた。 「君がティアだね?」 「は、はい……」 「あの店にいた神姫は、いったん警察に預けられて、メモリーのバックアップを受ける。今回の事件の証拠としてね。 それから、神姫保護の活動をしているNPO法人に預けられる。 そこで、素体を換装され、メンテナンスを受け、メモリーを……記憶を消去されて、次のオーナーを捜すことになる、予定だ。 そんなに心配することはない」 「そ、それじゃあ……」 「そう。店の神姫は新しいマスターのもとで、新しい生活を送ることになる」 ああ……。 あの店で、共に苦しい日々を過ごした仲間たちは、救われた。 たとえ、過去の記憶が……仲間たちの記憶も失ってしまうとしても。 わたしと偶然出会ったときに、覚えていないのだとしても。 彼女たちは人間のパートナーとして歩み出すことができる。 神姫としての幸せを、ようやく掴むことができるんだ……。 そう思うと胸がいっぱいになった。 涙が。 もう、止められなかった。 嬉しくて。 そう、涙は嬉しくても流れるのだと。 わたしははじめて分かった。 「ありがとうございます……ありがとうございます……」 マスターの胸ポケットの縁で涙を拭く。でも、止まらなくて、瞼にポケットの縁を押しつけ続けなくてはならなかった。 刑事さんは優しい声で言ってくれた。 「そのお礼は、君のマスターに言いなさい。 彼の想いが、君だけでなく、多くの神姫を救うことになった。 そんな素晴らしいマスターの神姫であることを忘れてはいけない」 わたしは頷いた。 何度も何度も頷いた。 そしてこのときわたしは覚悟を決めた。 マスターがわたしにしてくれたように。 わたしも、マスターのためにすべてを賭ける、その覚悟を。 □ 「それじゃあな、夏彦。俺は仕事に戻る」 地走刑事はそう言って、俺たちに背を向けた。 だが。 「ま、待ってください!」 俺はその背中を引き留めた。 地走刑事が、出口のところで振り向いた。 「俺は……俺は罪に問われないんですか?」 「罪?」 「俺は、風俗店の神姫を無理矢理自分の神姫にしました。 ボディは違法製造のボディで、今までそれを所有していました。 それは、犯罪ではないんですか」 地走刑事は日暮店長と顔を見合わせた。 そして二人は笑い出した。 「生真面目だな、君は。 ……ゴミ捨て場に捨てられていたゴミを拾って、何か罪に問われるのかね?」 俺はその答えに唖然とした。 地走刑事は頷くと、今度こそ背中を見せて、店を出ていった。 地走刑事は知っていた。俺が言ったことを、日暮店長が伝えたのだろう。 それでもなお、俺に罪を問わないと、そう言ってくれたのだ。 「……なぜ……」 見ず知らずの学生のために、なぜそこまでしてくれるというのか。 すると、日暮店長が小さなため息をついた。 「遠野くん……君は分かっちゃいねぇなぁ」 俺が振り向くと、店長は苦笑しながら俺を見ていた。 「……なにを……?」 「いいか? すべてを賭けて神姫を守る。それは立派だ。俺も感動しちまった。 けどな、もし君に何かあったら……君が警察に連れて行かれて、神姫と離ればなれになるようなことがあったら…… それが自分を守るためだと知ったら…… 君の神姫は、ティアちゃんは、笑えるか?」 「……!」 そんなことは、考えもしなかった。 俺は、ティアが安心して暮らせるようにすることだけを考えていた。 だから、俺がいなくなったりして、ティアがどう思うかなんて、思い至ることもなかった。 確かに、俺が警察に捕まったりすれば、ティアは自分のせいだと気に病むことだろう。笑顔をなくしてしまうかも知れない。 だが。 「そんなことのために……警察と連携して、全国の神姫風俗を摘発した……って言うんですか!?」 「そうさ」 日暮店長の返事に、俺は唖然とする。 「言っただろ。俺は神姫とマスターが笑い合う姿が好きなんだ。 だが、君の希望そのままだと、君とティアちゃんが一緒に笑えねぇ。 だから……俺たちがちょっと苦労して、二人で笑えるようにしてみた。 ただ、それだけのことなんだよ。 しかも、それで、たくさんの神姫が虐待から助けられるんだ。一石二鳥じゃないか。なぁ?」 日暮店長は、事も無げにそう言った。 途方もない話だった。 『LOVEマスィーン』だけを摘発したら、俺は証人として呼ばれるかも知れないし、違法ボディの所有者としてあるいは罰せられたかも知れない。 だが、神姫風俗店全部が摘発されれば、店も客もすべて警察の手中となる。 神姫風俗自体が下火となり、『LOVEマスィーン』が復活することもないだろう。 俺が提供した証拠資料は、一斉摘発後には同様の資料が大量に手にはいるのだから、些末なものになってしまう。 警察が俺に目を付ける理由がなくなるのだ。 確かに筋は通っている。 しかし、全国の神姫風俗を一斉捜査なんて、いったいどれほどの労力が費やされただろう。 想像もつかない。 それを、さも当たり前のことのように言ってみせるのだ、目の前の男性は。 久住さんは、頼りになるなんて言っていたが、そんな言葉じゃ追いつかない。 俺は感謝してもしきれなかった。 「日暮店長……ありがとうございました。 感謝してもしきれません。 地走刑事にお礼が言えなかったんで……よろしく伝えてください」 俺は日暮店長に頭を下げた。 気持ちが入ったお辞儀は、自然と深いものになった。 店長は照れくさそうに微笑んだ。 「実のところ、結構大変だったんだ。おかげでここ数日寝不足よ。恩に着てくれ」 「はい……何かお礼をさせてください。俺にできることなんて、たかが知れてますけど……」 「そうか? 頼んでもいいか、君に?」 「俺にできることなら、なんでも」 「なら、俺から一つ頼みがある。君にしかできないことだ」 「なんでしょう……?」 真顔になった日暮店長の言葉は、意外なものだった。 「菜々子ちゃんを……助けてやってくれ」 え……? 久住さんを、助ける? 「……菜々子ちゃんは……彼女も、一人で戦っている。もう、ずっと一人で」 「……それはどういう……?」 「それは彼女の口から聞いてくれ。それが筋ってもんだからな。 俺たちは、菜々子ちゃんを助けてやることができなかった。 なんとか、彼女の心を、今みたいにすることができただけだ。 あの子は、まだ何も救われていない。 ずっと一人で戦い続けてる。 だが……菜々子ちゃんが心通わせている君なら……きっと彼女も救うことができるはずだ。 だから、もしそのときが来たら、菜々子ちゃんの力になってやってくれ」 そんなことは…… 「言うまでもありません。彼女は俺の恩人ですから」 俺は頷いた。 思いを寄せる女性の力になりたくない男など、この世にいるだろうか。 久住さんが戦っているというその出来事と、俺は深く関わることになる。だがそれは、もっとずっと後の、別の話のことである。 「……頼む」 日暮店長の一言が終わるのと同時、携帯電話が鳴った。俺のだ。 取り出して、液晶表示を見る。 いままさに話題にしていた人物からだった。 「久住さんからです」 日暮店長に言って、俺は通話ボタンを押した。 「もしもし、遠野です」 『あ、久住です……いま、大丈夫ですか?』 「ああ、大丈夫。なに?」 『いますぐ、ゲームセンターに来れますか?』 「……ちょっとまずいな。いま、エルゴなんだ」 『あ……いまね、ティアを助けてくれた人が来ているの。それで連絡したんだけど……』 「ここからだと、二時間ぐらいかかるけど……待っててもらえるかな」 ティアを助けてくれた人がいることは聞いていた。 ぜひともお礼は言いたいところだった。 『ちょっと待ってね』 電話のマイク部分を隠す気配。 電話の向こうで誰かと話しているようだ。 すぐに久住さんの声が返ってきた。 『大丈夫。待っててもらえるから……必ず来て』 「わかった」 『ティアを連れて、武装も持って来て』 「え?」 それは……できない相談だった。 ティアを連れ、武装を持って行ったところで、俺たちがバトルできる環境にはないはずだ。 「……そういうわけには、いかないだろう?」 『ゲーセンのことなら、大丈夫だから』 「いや、しかし……」 『お願い』 電話先の久住さんの声は、俺が息を飲んでしまうほどに、真剣そのものだった。 それで久住さんにお願いされてしまっては、断れるはずもない。 久住さんのことだ、よほどの理由があるのだろう。 「……わかったよ。武装を持って行く」 『ありがとう……ごめんね』 「君が謝ることないよ。それじゃ、あとで」 『うん、待ってる』 俺と久住さんは、同時に電話を切った。 ◆ 「ハイスピードバニーは来ます。必ず」 菜々子は携帯電話をしまいながら言った。 ゲームセンターの喧噪が、菜々子の耳に戻ってくる。 彼女の周りには、友人になった四人の少女たちがいる。 傍らには大城も立っている。 「それはよかった。わざわざ出向いてきた甲斐があります」 にこにこと人の良さそうな笑顔を浮かべながら言ったのは、高村優斗。 彼の向こうに、三強の姿が見える。 高村の肩にいた美貌の神姫が言う。 「それではまずは、あなたがた……『エトランゼ』とです」 菜々子の肩に座る神姫が答える。 「こちらこそ、お手並み拝見といくわ。『クイーン』雪華」 ミスティの言葉が終わった瞬間、ゲームセンターは歓声に包まれた。 武装神姫コーナーには、バトルロンドのプレイヤーたちが集まり、菜々子と高村を取り囲んでいた。 誰もがバトルせずに、二人のバトルを今や遅しと待ちかまえている。 秋葉原チャンピオン『アーンヴァル・クイーン』と、三強を凌駕する実力の『エトランゼ』の対戦。 全国大会レベルの実力者同士のカードである。 草バトルとしては贅沢すぎる組み合わせに、その場にいた神姫プレイヤーの誰もが期待に胸を膨らませていた。 □ ティアが俺を見上げて尋ねてくる。 「マスター……菜々子さんは、なんて……?」 「……おまえを助けてくれた人が来ているらしい。会いに行こう」 「はい」 俺は日暮店長に向き直ると、もう一度礼を言った。 「今日は、ありがとうございました。 ちょっと用ができたので……またお伺いします」 「おう」 「……次は、お客として」 「頼むぜ?」 俺と店長は目を合わせ、そして互いに笑った。 久しぶりに、心から笑えた気がした。 「菜々子ちゃんによろしくな」 「はい!」 俺は身を翻し、エルゴを後にする。 今日は土曜日。 バトル目当てのお客さんたちが、俺と入れ違いに、店内に消えてゆく。 急いで戻らねばならない。 俺は駅までの道のりを駆け出した。 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/magamorg/pages/1742.html
地縛神CcapacApu コモン 水文明 コスト10 パワー22000 アースイーター ■自分のバトルゾーンに、地縛神と名の付いたクリーチャーは 1体までしか出せない。 ■自分のバトルゾーンにクロスギアがない時、このクリーチャーを破壊する。 ■このクリーチャーは攻撃されない。 ■このクリーチャーはブロックされない。 ■このクリーチャーがバトルによって、相手のクリーチャーを破壊した時 破壊されたクリーチャーが、1度の攻撃でブレイクできるシールドの数だけ 相手のシールドを選び、そのシールドをこのクリーチャーがブレイクする。 作者:mpedm 地味に壊れてるな満足神・・・。mpedm 評価
https://w.atwiki.jp/rene_r/pages/56.html
SS撮影会【ACの聖地?】 最後はみんなでSS撮影☆ ACの聖地?に集まってSS。 個人的にはイベント成功だったと思います。 また、やりたいです! 参加していただいた沢山のACさん、 また参加できなかったACさん、 次回のご参加お待ちしております。 ありがとうございました。by Rebe
https://w.atwiki.jp/yugio/pages/19112.html
R-ACEタービュランス(OCG) 効果モンスター 星9/炎属性/機械族/攻3000/守3000 このカード名の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。 (1):自分の墓地から「R-ACE」カード2枚を除外して発動できる。 このカードを手札から特殊召喚する。 (2):自分メインフェイズに発動できる。 [[デッキ]]から「R-ACE」速攻魔法・通常[[罠カード]]を4枚まで選んで自分フィールドにセットする(同名カードは1枚まで)。 (3):自分フィールドの他のカードが相手の効果でフィールドから離れた場合、 フィールドのカード1枚を対象として発動できる。 そのカードを破壊する。 デッキサーチ モンスター破壊 モンスター除外 最上級モンスター 機械族 炎属性 罠破壊 罠除外 魔法破壊 魔法除外 R-ACE R-ACE補助
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2123.html
ウサギのナミダ ACT 1-10 □ 今の状況に置いて、俺に打つべき手はなかった。 噂の否定と拡大阻止などは、一介の大学生には手に余る代物だ。 何かヒントになることはないかと、一度ネットの掲示板なども覗いてみたが、すぐにやめた。 ゲーセンの連中よりも面白半分な書き込みが大半を占めていて、当事者の俺はとても読む気にはならなかった。 もし俺がネット上で否定的な発言をしても、すぐにログは流れてしまうだろうし、「本人降臨」とか言われて、火に油を注いで面白がらせるだけだろう。 ネットだけではなく、ペーパーメディアの情報も入れるのをやめた。 隔週刊誌の「バトルロンド・ダイジェスト」は毎号楽しみに購読していたが、それすらも手に取るのをやめた。 その雑誌には、様々な武装神姫達が誌面を彩っているが、そんな神姫達が妬ましく思えてしまう。 その近くには、例のゴシップ誌が置いてある。 バトロンダイジェストに掲載されている、きらめくばかりの神姫達と、俺達をどん底の状況にたたき落とした雑誌に掲載されているティア。 お前達の現実はこれだ、と、コンビニの雑誌棚にさえ責められているような気がする。 俺はおとなしく大学に通い、上の空で講義を聴き、家に帰っては課題を適当にこなし、時々ティアの様子を見る、という生活を淡々と続けた。 ティアはひどいスランプに陥っていた。 原因は明らかだったが、俺はあえて何も言わないことにしていた。 と言うよりも、かけてやる言葉の持ち合わせがなかったのだ。 いつ復帰できるかわからない、復帰の可能性すら絶たれている今、ティアに訓練をさせる理由がない。 虎実との約束は確かにあるが、それだっていつのことか決まっているわけではないのだ。 だから、ティアには好きにさせていた。 ティアは訓練をやめようとはしなかった。まるで何かに憑かれたように。 課題の消化は遅々として進まなかったが、それでも叱ったりすることはなかった。 俺のモチベーションの方が、もう折れそうだった。 そんな風に過ごしていた木曜日、携帯電話が鳴った。 海藤からだった。 「ネットで、君たちの状況を知ったよ。きっと落ち込んでいると思って」 古い友人はそうのたまった。 ああそうさ、海藤、君の言うとおりになったよ。 俺達はただいま絶賛嘲られ中の身の上さ。 「それで、きっと、ネットもチェックしてないだろうと思ってさ……。 君たちの身の上の問題とは別件で、相談したいことがあるんだ」 なんだそれは? 海藤はよくわからない、もって回った言い方をしている。 俺は意味を尋ねたが、 「ああ、映像を見てもらった方が早いから……土曜日、うちに来ないか? 気分転換も兼ねて、さ。ティアを連れてきてもいいし」 と言った。 そんな気になる言い方をされては、行かざるを得ないではないか。 どちらにせよ、ゲームセンターに行くことも出来ないし、週末はまったく予定が空いている。 土曜日に訪問する約束をして、電話を切った。 ■ マスターが海藤さんと約束している土曜日は、瞬く間にやってきた。 「一緒に行くか?」 判断をわたしに委ねてくれたマスターに、しかしわたしは、断った。 「あの……やっぱり、練習します……」 「そうか……」 その一言だけで、マスターは出かけてしまった。 最近、マスターはわたしに命令することをしない。叱ることも、もちろん笑うこともしない。 もう、何もかもを諦めてしまったかのように、わたしには感じられた。 スランプから未だに脱出できないわたしが原因であることは間違いない。 だからつらかった。 もう、わたしに愛想を尽かしているだろうマスターと一緒にいるのがつらかった。 そして、あろうことか、わたしはマスターに嘘をついた。 一人家に残ったのは、練習の為じゃなくて。 確認したいことがあったから。 電源をつけっぱなしの、マスターのデスクトップPC。 神姫のわたしには大きすぎる、そのキーボードとマウスに歩み寄った。 □ 前回、海藤の家に来たのは、ティアのボディを交換してもらうためだった。 あれからすでに四ヶ月ほども経っている。 その間、俺は夢中でティアと向き合っていたのだ。 急に、左の胸ポケットのあたりが軽く感じられた。 いつもそこにあった、いつもちょっと不安そうな表情は、今日はない。 久しぶりの道を一人歩く。 手にしたドーナッツの箱はお約束だ。 「よく来たね。さあ、入って入って」 旧友はいつものように俺を迎え入れてくれた。 変わらない態度が、今の俺の心に染みた。 「……その手、どうしたんだい?」 俺の右手にはまだ包帯が巻かれている。 まあ、普通気になるよな。 俺は曖昧に笑っていった。 「ああ……ちょっとドジってさ。階段で転んだ」 「ふぅん?」 海藤はそれだけ言って、深く追求しなかった。 「いらっしゃいませ」 鈴の鳴るような声で、海藤の肩から挨拶してきたのはアクア。 彼女も変わらない。 だけど、彼女は不意に気遣わしげな表情になり、 「あの……ティアは?」 俺に尋ねてくる。 二人は変わらない。 この四ヶ月の間に、俺の方にいろいろありすぎたのだ。 「ティアは……一人で自主練」 自分の言葉に、急に寂しくなる。 やっぱり、無理にでも連れてくればよかった。 アクアは少し眉根を寄せて、気遣わしげに俺を見つめている。 俺は安心させるように笑おうとしたが、うまくいかなかった。 海藤は何も言わなかった。 海藤の家の広いリビング。 壁を水槽に占領された反対側の壁に、大型の薄型テレビがかかっている。 海藤はリモコンを手に取り、電源を入れ、目的の映像ファイルを指定した。 「早速だけど、これを見て」 俺達がソファに腰を落ち着けるのももどかしく、海藤は映像をスタートさせた。 何気ない行動であるが、普段の海藤からすると、そうとうせっかちだ。 コーヒーを淹れないどころか、ドーナッツの箱を開こうともしないなんて。 それよりも、今は映像だ。 そんなに急いで見せたい映像とは何なのだろうか。 大型のディスプレイに映像が映し出された。 深い、青。 果てしない蒼穹。 細く、白い雲がたなびいている。 突如、高速で現れた二つの影が、その糸のような雲を切り裂き、翔けていく。 アーンヴァル。 白と黒、二機の武装神姫が、自らもジェット雲を細く引きながら、舞っていた。 ■ わたしは、マスター愛用のキーボードとマウスを操作しながら、ネットを徘徊した。 本来、神姫がPCを操作するには、身体を載せてアクセスするアクセスポッドを使用する。 クレイドルには、アクセスポッドの機能が付加されているものもあるけれど、わたしのクレイドルはごく普通の、最小限の機能しか付いていない。 仕方がないので、こうして巨大な入力デバイスと格闘しているわけなのだ。 なぜネットを調べようと思い至ったのかと言えば、わたしが、いまわたしとマスターを取り巻く状況を何も知らないからだった。 マスターは何も言ってくれない。 だけど、マスターがつらい顔を見せたり、怪我をしたりするのは、外で何かが起こっているに違いない。 ……きっと、わたしの過去のことで。 それを知って、わたしに何が出来るわけではないけれど。 それでもわたしは知りたかった。知らなければならなかった。 懸命にキーボードと格闘し、ようやく武装神姫の話題が豊富な大型掲示板にたどりつく。 武装神姫だけでも、数多くの話題をあつかっているみたいだ。 スレッドと呼ばれる個々の話題の掲示板が、その名称だけでディスプレイの画面が埋め尽くされていた。 わたしはちょっと途方に暮れた。 この無数とも思われる掲示板の中から、自分の知りたい話題のものを探せるだろうか。 だけど、わたしの心配は杞憂だった。 そのスレッドは、リストの一番初めの方にあったのだ。 『袋とじ風俗神姫のスレ 137ページ目』 ……明らかに、あの雑誌の、わたしの写真のことを指しているタイトルだ。 胸が苦しくなる。不安になる。 ここにはきっと、わたしたちのことを知らない人達が、あの記事をどう思っているか、が書きつづられているはずだ。 わたしは意を決し、マウスカーソルをずるずるとスレッドタイトルに移動すると、マウスをクリックした。 □ ステージは超高高度の空中。 繰り広げられているのは超音速のドッグファイトだ。 二機のアーンヴァルは、いずれもカスタマイズされている。 黒の方はトランシェ2のリペイントバージョンがベース。 近・中距離戦を得意とするトランシェ2を基本装備としながらも、デフォルト装備とは異なるロングレーザーライフルも装備し、いかにもアーンヴァルらしいカスタム。 一方、白い方は、こちらもトランシェ2ベースに見えるが、様々なパーツを使用したカスタム機のようだ。ノーマルのアーンヴァルとは異なる、長い銀髪が印象的。 錫杖のような武器を持つきりで、装備は相手に比べて軽量に見える。 この白いアーンヴァルはどこかで見覚えがあった。 「セカンドリーグ全国大会、東東京地区の決勝戦だ」 海藤の言葉に、俺は思わず喉を鳴らした。 参加する神姫の多い東京は常に激戦だ。 東東京地区は、都心から東よりの都内を中心としたエリアで、決勝大会は秋葉原で行われる。 武装神姫のメッカ・秋葉原からの代表ということで、東東京代表は常に優勝候補と目される。 そういえば……俺がどうしようもなくなっていた、先週の日曜日、その秋葉原の決勝大会が行われていたはずだ。 この映像は、その決勝戦、東東京代表が決まる試合なのか。 どうりで、どちらのアーンヴァルも、戦い慣れているはずだ。 動きに迷いがない。 超高高度の空中戦、と言えば聞こえはいいが、戦いにくいフィールドでもある。 障害物はせいぜい雲くらいで、お互い丸見えの状態だ。 また、高度が高い故に、空中機動の装備へのダメージは即致命傷となる。 飛べなくなったら、そのまま落下して負け、というわけだ。 ティアの主戦場、廃墟ステージなら、飛べなくなっても地上戦に持ち込む手もある。 だが、超高高度空中戦では、それはできない。 しかも、そこをフィールドとする神姫の性質からいって、超高速のドッグファイトになるのは間違いない。 そんな状況で、手練手管を駆使し、勝利を目指すというのだ。 画面で舞う二機のアーンヴァルの動きは、無駄なものがそぎ落とされ、シンプルで精緻な機動になっている。 しかし、二機の間には、様々な戦術戦略が火花を散らしているようだ。 まさに激戦区の決勝戦にふさわしい。 だが、勝負はそれほど長く続かなかった。 白のアーンヴァルの方が一枚上手のようだ。 黒のアーンヴァルの方が手数が多いが、白の一発の精密射撃が黒の翼を捕らえた。 急速に移動力を失った黒天使に勝ち目はない。 白天使は的確なショットを決め、黒天使の飛行能力を奪い、勝利した。 ウィンメッセージが画面を埋める。 そして、大写しになる白いアーンヴァル。 カスタムなのか、可愛いというより美しいという形容が似合いそうな、神々しさすら感じる顔立ち。 不意に浮かんできた言葉と、その神姫の通り名が一致した。 俺はその武装神姫を知っていた。思い出した。 「クイーン……アーンヴァル・クイーンの雪華か……!」 海藤は無言で頷いた。 ■ 黒い言葉がディスプレイの画面を埋めていた。 恨み、憎しみ、悲しみ、怒り、それのどれでもなく、ただ「悪意ある」としか形容のしようがない、言葉の羅列。 もう、わたしの名前は知られていた。 マスターからもらった名前が、黒い悪意で汚されているように見えた。 『今週号の袋とじも、ティアちゃんエロス』 『今週のティアは神。エロ神』 『ていうか、ティアは漏れの性奴隷』 『漏れの神姫もティアみたいに性奴隷調教したい』 『ティアに白濁液かけたい』 『自慰用コネクタでマスターにレイプされる画像希望』 改めて思い知る。 わたしは、男の人に奉仕する事ばかりを望まれている神姫なのだと。 胸の奥が痛む。 昔は感じたことのない痛み。 お店にいる頃は、男の人に奉仕することしか知らなかった。 だから、自分が汚れた神姫だと言われても、そうなのだとしか思わなかった。 わたしは、マスターの下で少しだけ変わってしまった。 思い上がっていた。 自分が人並みの、武装神姫だなんて、そうなれるなんて。 あるはずがない。 この痛みは、わたしの思い上がった自信過剰の証だ。 わたしはさらに読み進めていく。 例の雑誌は週刊で、今週号にも、わたしの浅ましい姿が掲載されたらしい。 死ぬほど恥ずかしい。 嫌がりながらも、悦楽に屈し、あられもない痴態をさらした自分の姿。 それを不特定多数の人達が見ているのだと思うと、頭の回路が焼き切れそうな思いだ。 わたしはさらに掲示板の表示をスクロールしていった。 そして……愕然とする。 □ 『クイーン』の二つ名で呼ばれる神姫は有名だ。 彗星のように現れた期待の新人、というふれこみで、半年ほど前から雑誌に載っている。 俺が購読している「バトルロンド・ダイジェスト」で密着取材を行っており、バトルの細かい内容まで毎号掲載されている。 その凛とした佇まい、ストイックな性格、そして特徴的な装備と、圧倒的な実力から、誰からともなく『アーンヴァル・クイーン』と呼ばれるようになった。 その神姫の名前は雪華という。 今シーズン、雪華はセカンドリーグの全国大会にエントリーすると公言した。 正直、密着ドキュメントは雑誌の企画だと思っていた読者も多い。 だから、強いといくら書かれていても、あまり信じられてはいなかった。 だが、バトロンダイジェストに掲載された、公式戦での結果は、俺をも戦慄させるのに十分だった。 いまやクイーン・雪華は、全国大会チャンピオン候補の筆頭だ。 「無冠の女王」の名を廃するべく、真の女王への階段をかけ上がっている、というわけだ。 「……それで、クイーンの決勝戦に何があったって言うんだ?」 俺は海藤に向かって首を傾げる。 海藤はテレビの方を指さした。 「まあ見ていてごらんよ。問題はこの後さ」 釈然としない気持ちで、俺はテレビに向き直る。 ちょうど、クイーンとそのマスターに勝利者インタビューが行われるところだった。 『優勝、おめでとうございます!』 インタビュアーの月並みな祝福に、笑顔で応えるマスターと、あまり笑みを浮かべずに『まだ通過点です』とストイックに応える神姫。 いくつかの質問がかわされた後、インタビュアーはこう言った。 『全国大会本戦まで、あと一ヶ月半あります。その間、どのようなトレーニングをされますか?』 また当たり障りなく答えるだろう、と思っていた。 人の良さそうなマスターは言った。 『そうですね……各地のホビーショップやゲームセンターに出向いて、武者修行しようかと思っています。公式戦に出ていない神姫と戦ってみたいので』 『たとえば、T県の『ハイスピードバニー』ティア、K水族館所属の、イーアネイラのアクア……』 「な……!?」 マスターの言葉を引き継いだ雪華の言葉に、俺は思わず腰を浮かせた。 『S県の『不倒要塞』ゼラーナ、『木の葉落とし』の楓(かえで)。 東京T市の『風の守護者』シリウスに、放浪の神姫『エトランゼ』のミスティ……他にも戦ってみたい神姫はいます』 『なるほど、首都圏各地で、チャンピオンの戦いが見られるかも知れませんね!』 インタビューが終わっても、俺は腰を降ろすことが出来なかった。 背を伸ばして立ち上がり、海藤を見る。 「見せたいと言ったのはこれか、海藤……」 海藤は頷いた。 「やはり知らなかったみたいだね。それで……どう思う?」 「どう思うも何も……」 一介のバトルロンドプレイヤーにすぎない俺達を、東東京チャンピオンが直々に指名? 映像を見せられても、にわかには信じがたい。 しかも理由がわからない。 公式戦に出ていない神姫とはいえ、公式戦上位の神姫達に実力で勝っているとは思えない。 チャンピオンは何が目的だ? 「まったく信憑性がないというか……意味がわからない」 「……やっぱり、君にも心当たりはないか……」 「海藤もないのか? いまバトルロンドやってないアクアも呼ばれていたのに」 「まったくないよ。もしかしたら、昔のころの噂を聞きつけたのかも知れないけど、それだったら、そのころの二つ名を呼ばれると思うし」 確かに、雪華はご丁寧に、神姫の二つ名も一緒に言っていた。 しかも、アクアには「K水族館所属」と言っていたから、現在のアクアと手合わせしたい、ということなのかも知れない。 「だけどなぁ……」 俺はソファにどっかりと座り直した。 「俺達はいま、ゲーセンにも出入り禁止の身だ。それに……チャンピオンが今の状況を知っても戦いたいとは思わないだろうな……」 海藤もため息をついて言った。 「僕は、たとえ対戦を挑まれても、断るつもりだよ。もう、長らくバトルロンドはやっていないし、もうやる気もないしね……」 お茶を淹れよう、と言って、海藤は立ち上がった。 俺は考える。 東東京代表にして、優勝候補最有力の神姫とバトル出来る、というのはとても魅力的に思う。 だが、今の映像をみただけでも、勝負になりそうにないことはわかる。 クイーンの戦闘力は圧倒的だ。あらゆる局面において、実力を発揮できる。 ティアのように、都市のステージだけでしか戦えない神姫とは違うのだ。 そもそも、今俺達が置かれている状況からして、対戦などかなうまい。 クイーンはそのことを知らないのだろう。 ……そこで俺はふと疑問に思うことがあった。 海藤がコーヒーを持って戻ってきた。 俺は、ドーナッツの箱を開けながら、その疑問を海藤にぶつけてみる。 「なあ、海藤」 「なんだい?」 「なんで海藤は……バトルロンドをやめたんだ?」 コーヒーを配る海藤の手が、一瞬止まった。 ■ 「なんで……どうして!?」 思わず声に出た。 見上げた視線の先、ディスプレイに表示された掲示板の書き込み。 そこに書かれていたのは…… 『使用済みの「中古」神姫のオーナーになるなんてマジあり得ない』 『遠慮なく神姫にぶっかけられるからじゃね?』 『いやいや自慰コネクタで直結中出しだろ』 『ティアのオーナーはHENTAI』 『ティアと毎晩エロエロできるマスターうらやましい』 『マスターは神姫陵辱犯でタイーホ』 ……マスターのこと何にも知らない人達が。 勝手にマスターのことをけなして、嘲笑ってる。 やめて。 やめてやめて。 マスターは何も悪くない。 わたしは、マスターに嫌なことなんて何もされてない。 あんなにまっすぐ、わたしを見てくれる人、他に知らない。 わたしに、武装神姫としての喜び、ランドスピナーで走ることの自由さ、世界の色、そして風の心地よさを教えてくれた。 マスターはいつだって、正しくて、まっすぐなのに。 後ろめたいことなんて、何もしてないのに。 なぜ、傷つけるの。 どうして言葉で貶めるの。 胸が、さっきとは比べものにならないほど、痛くなる。 まるで心を鷲掴みにされて、握りつぶされるかのよう。 いままで、さんざん痛い思いをしてきたけれど。 どんな痛みより辛くて。 こんな痛みには耐えられない。 涙が止まらなかった。 わたしが責められるのはいい。汚いって言われるのは仕方がない。ほんとうのことだから。 だけど、マスターが責められるのは違う。間違ってる。 みんな、間違ったことを口にして、平気で盛り上がってる。 悔しい。 わたしは、こんなに間違っていることに、反論の一つもできない。 無力すぎて。 泣いてしまう。 涙腺が壊れてしまったかのように、雫は次から次へと溢れてきて、わたしの顎から玉となって落ちてはじけた。 そして、わたしは泣きながら、考える。 マスターを、こんな目に遭わせているのは、だれ? あんなにまっすぐな人をねじ曲げている、憎い相手はだれ? そして。 思い至る。 わたしだ。 まるで、泥に汚れた手で、白いハンカチを掴んでしまったように。 マスターを汚しているのは、このわたしだ。 マスターを敬愛していた。尊敬していた。 マスターと共にいるのが嬉しかった。認められることが喜びだった。 そのすべてが、マスターを汚し、貶めていた。 そして神姫を取り巻くすべてを、マスターの敵にした……。 ああ、だから。 最近のマスターは、あんな冷たい目でわたしを見るんだ。 だから、何も言わず、すべてを諦めてしまっているんだ。 そして。 痛みに耐えられなくなって。 わたしの心はつぶれてしまった。 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/sougohankoku/pages/275.html
蒼梧藩国の立国ゲームで登場してACEとなった、原作のないキャラクターの紹介です。 (登場順) 蓮花 名前:蓮花 職業:ラジオパーソナリティ? 性別:女 出身:蒼梧藩国 蒼梧藩国の内戦中にナイアル・ポーの身の周りの世話をしていた女性。元は湯城で働く盆踊りダンサー。貧しい大家族の長女で、子供のころは教育の機会を得られなかった。 蛇神さまと親交が深く、蒼梧一時平定後に始まった蒼梧デルタラジオで蛇神のアシスタントとしてラジオパーソナリティを務める。 かつてクロス・アクシャに狙われ、聖銃によって存在を消されたことがある。目的は未だ不明。詩歌藩国の鈴藤と時間警察カレン、ダガーマンによって救い出され、負傷の治療をしてくれた華佗という人物に恋心を抱く。 セタ・R・モモヤマ 名前:セタ・R・モモヤマ 職業:I=Dパイロット 性別:男 出身:星鋼京 内戦中に藩王勢力への援軍として蒼梧に現れたI=Dパイロット。国の派遣に先んじて借金してまで私費で馳せ参じ、蒼梧の危機を救った。その際詩歌藩国出身のパイロット氷雨たかこと出会い、蒼梧への帝國義勇兵同士として交流を持つ。 たかこがテロ被害に遭って重傷を負い、見舞いに行くも振られ続けて傷心の内に旅に出る。蒼梧に異常な環境汚染をもたらしていたB士季号(詳細はakiharu国資料参照)をそれと知らず保護、以降連れ立って旅をしていたが、士季号の根源力を吸い取るという性質にあてられ衰弱死寸前となっていたところを捜索隊に発見され、治療のためとして蒼梧に連れ帰られたのちたかこと再会。蒼梧で結婚式を挙げ、現在は子宝にも恵まれている。 藩王・摂政から軍事顧問(教導隊勤務)就任要請中。 氷雨たかこ(たかこ・モモヤマ?) 名前:氷雨たかこ(たかこ・モモヤマ?) 職業:バトルメード 性別:女 出身:詩歌藩国 内戦中に詩歌藩国から藩王勢力への援軍として現れたバトルメード。単独出撃したセタを叱りつけるという出会いから始まり、交流を深める。 セタと微妙な中に発展したころテロの被害に遭い、再生医療が必要なほどの重傷と共に心にも傷を負う。見舞いに来るセタと顔を合わせる気になれず追い返していたところ、拒まれたセタが現れなくなり、怪我が治ってからも一人悔悟と失意にさいなまれて蛇神大神宮で廃人と化していた。 蒼梧の民の手回しにより、蒼梧に戻ったセタと再会。蒼梧で結婚式を挙げ、夫と子供と共に蒼梧で暮らしている。 藩王・摂政から軍事顧問(教導隊勤務)就任要請中。 スクエア=タサン 名前:スクエア=タサン 職業:メードガイ 性別:男 出身:よんた藩国 内戦中に帝國王女陸軍歩兵部隊の指揮官として現れた女装(メード服)の紳士。魔法を使うマジカルメード+戦闘を行うバトルメード、だが男。鍛え上げた筋肉を纏う男である。鏡常備。 情勢が落ち着いた際にメード学校を設立。蒼梧の教育がメード教育一色になることを恐れ、メードはほどほどでお願いしますと言いに行った蒼梧国民犬森を説教する。 メード学校がテロ被害に遭い一度は蒼梧を離れたが、学校を再建した犬森と再会、謝罪と要請を受け蒼梧への滞在を決める。その後犬森を弟子に迎えた。 参考:http //cwtg.jp/bbs3/wforum.cgi?pastlog=0004 no=10207 act=past mode=allread#10207 ヒカル 名前:ヒカル 職業:現在不明 性別:男 出身:不明 内戦の後処理が裏目裏目に出ていたころ、藩王補佐官の役割を負っていた国民羽黒が雇った執事。茶を淹れさせて資料整理や調査を手伝わせるくらいのつもりの求人だったのに、なんだかえらいのが来た、と当時の羽黒は語っていたが、その通り崖っぷちから転がり落ちかけていた国政の動きにストップをかけ、国民の真の声に目を向けさせるという方法で蒼梧を持ち直させる。 その後セタを探しに向かった先でクロス・アクシャの構成員であることが発覚。仇敵とみなした羽黒に手ひどい仕打ちを受け、一時は命の危機に陥るが、宰相府の医師和錆の助けを受け蒼梧に戻る。 蒼梧立国~現在(T20)の間、難を逃れて多くの国民・ACEが眠りに就く中、蒼梧を守って奮闘。詩歌藩国の鈴藤とカレンの手を借りて化け物の襲撃をしのぎ、特異な能力で他藩国を砂漠と化した是空砲からも蒼梧を守った。 現在はよくわからないが羽黒の周辺に出没する模様。蒼梧には滞在している。たまに設問になる。 (文責:羽黒)
https://w.atwiki.jp/mangaroyale/pages/85.html
Contact ◆ozOtJW9BFA 拳を交え互いの正義を確かめ合った二人防人衛と劉鳳は、二人ともが総合公園の木に寄り添っている。 朝日の降り注ぐ総合公園は住宅街から外れており、澄んだ空気に満ちており樹木の温もりも人肌に心地良い。 だが残念な事に防人と劉鳳は、公園の安息を満喫出来る状態に無い。 彼等は行動方針を話し合う間も無く見付けた、オールバックの少年を木の陰から見張っていた。 「手に持つショットガンの引き金に指を掛けてはいるが、あの少年の動きは策敵のものじゃ無い。 こうして見ているだけじゃ、殺し合いに乗っているかは判断が付かないな」 「だから、様子を見ずとも直接問いただせばいいと言ってるだろう」 「そう焦るな劉鳳、それでまた俺達みたいに話がこじれたら不味い」 「あれは、お前が遊具を破壊したからだ」 「…………ま、まあとにかく接触のチャンスが来たみたいだぞ」 オールバックの少年が総合公園内に在る、コンクリート製の小さな建物に向かっていく。 「公衆トイレに入るみたいだな……お前まさか、トイレの中で接触するつもりか!?」 「ああ、どんな用であの中に入ったにせよ相手の隙を付いて近付く事が出来る。 もし待ち構えていれば、出方によって殺し合いに乗っているかも確かめられるしな。劉鳳は外で周囲を見張りながら待っていてくれ」 「待て! それなら俺が行く」 「いや、ここは俺に任せろ、考えが有る」 防人には特に少年との接触の際の、考えは無かったが 劉鳳が相手の人間性を見極めて交渉するという事に向いていないと感じ、一人で接触に当たる事とした。 防人は足音を殺し、オールバックの少年が入っていった男子用トイレの入り口に立つ。 (一番奥の清掃用具入れ以外の個室のドアは全て内側に開いているが、ここからでは中に人が隠れているかは判らないな) トイレの中に気配を感じ取る事は出来なかったが、それだけでは人が居ないとは判断出来ない。 防人は手前の個室から、一つ一つ順番に覗いて行く。 (全ての個室を見てみたが誰も居なかった、他に隠れられる空間も無い。となると後は……) 防人は入り口と反対側の壁にある、窓の前に立つ。 (あの少年の体格だと、通り抜けられそうだな……) 窓を押してみると、抵抗も無く外に開いた。 ◇ ◆ ◇ 「動くな」 劉鳳に背後からショットガンの銃口を押し当て、オールバックの少年―――桐山和雄は抑揚の無い声でそう警告した。 (この俺が背後に立たれるまで、接近に気付かないとは!!) 劉鳳の居る場所は公園内でも木が密集して生い茂っている為、周囲に死角が多く存在するとはいえ ホーリーで訓練と実戦経験を積んだ劉鳳は、気配や音だけでも周囲の敵を察知する事が出来る。 しかし桐山がショットガンを突き付けるまで、劉鳳はその存在に気付かなかった。 「何故、俺を尾けてきた?」 「銃を突き付けての問いになど、答える筋合いは無い!」 ショットガンを突き付けられても劉鳳は動じず、むしろ威圧的に返答する。 「答えなければ、撃つ」 「それはこっちの台詞だ! 銃を下ろさなければ、お前を断罪する!!」 更に威圧的な、劉鳳の言葉を無視して 桐山はショットガンの銃口を、劉鳳の右腕に移す。 ドン!! 桐山が放ったショットガンの弾は、両者に割って入る様に現れた 銀色の物体に銃身を逸らされた為、地面に撃ち込まれた。 「絶影!!」 銀色の物体から伸びる触手を、桐山は前に転がり込みながらかわし 起き上がりながら、劉鳳にショットガンの狙いを付ける。 「ブラボチョップ!」 そのショットガンが、防人に横合いから叩き落された。 拾い上げようと伸ばした手を、防人に掴まれ捻り上げられる。 「間に合ったみたいだな」 「礼を言うぞブラボー。もっとも、俺一人でもこいつを退けられたがな」 ◇ ◆ ◇ 桐山は自身の学ランで両手を縛られ、防人と劉鳳の間に座らせられていた。 「……つまり何故尾行してきたのかを問うてきた後、腕を撃とうとしたんだな?」 「ああ、だがそんな事を確認してどうするつもりだ?」 劉鳳にとって目の前の少年は危険な毒虫であり、一刻も早く断罪する以外に無い。 それゆえ防人が何を悩んでいるのか、理解出来ないでいた。 「事情は分かった、君を信用して開放しよう」 防人は桐山の戒めを、解きにかかる。 「何故だ!? こいつは俺を撃とうとしたんだぞ!!?」 「だが彼は、殺し合いには乗っていない」 「だからその根拠を言え!」 「彼は最初質問をして、すぐに撃とうとはしなかったんだろう? つまり単純に、俺達を殺すつもりは無かった訳だ」 「無害を装って、俺達に近付くつもりだったのかもしれん」 「それなら質問に答えないからといって、腕を撃とうとはしない筈だ」 「…………お前の言う通りかも知れないが、その男が俺達を信用出来まい」 「……ではこちらから、信頼を態度で示そう」 桐山を開放した防人は、ショットガンの引き金を桐山に向け差し出した。 「これは君に返そう」 「止めろブラボー! 自分が何をしているのか、分かっているのか!!?」 劉鳳は何時でも桐山を攻撃出来るよう、絶影を形成する。 ショットガンの銃口を自分に向けたまま、防人は桐山の目を見続けた。 変化の無い表情の中僅かに目を細めた桐山は、ショットガンを掴む。 「…………そうだな。俺もお前達を信じよう」 「ありがとう。俺は名簿には本名の防人衛で載っているが、キャプテン・ブラボーと呼んでくれ! 君の名前は?」 「自己紹介は後だ。もうすぐ放送が始まる」 桐山はデイパックから、地図と名簿を取り出す。 「もうそんな時間か、メモを取る用意をしないとな」 「…………何でキャプテン・ブラボーなんだ?」 「ブラボーな質問だ! 何故ならその方が、かっこいいからだ!!!」 「…………そうか……」 【A-6 総合公園/1日目/早朝】 【桐山和雄@BATTLE ROYALE】 {状態}健康 {装備}レミントン M31(3/4)@BATTLE ROYALE {道具}支給品一式 レミントン M31の予備弾24 {思考・状況} 1 放送を聴き、その後防人や劉鳳と情報交換する 2 A-6の西端に向かい、境界を確かめる。その後、変電所へ向かう 3 乗ってない人間を見つけ協力するなら仲間にする 4 襲ってきた人間に対しては一切の手加減をしない 5 首謀者を倒す。 基本行動方針 首謀者の思惑を外すべく、死者が一人でも減るように行動する 【A-6 総合公園/1日目/早朝】 【防人衛@武装錬金】 [状態]:健康、顔面に若干の腫れ [装備]:シルバースキン形コート@武装錬金 [道具]:支給品一式、ランダムアイテム(1~2、本人未確認) [思考・状況] 基本:弱い者を守る 1:放送を聴き、その後劉鳳や桐山と行動方針を話し合う 2:自分の知り合い、核鉄を探す 3:勇次郎と拳王には警戒 【A-6 総合公園/1日目/早朝】 【劉鳳@スクライド】 [状態]:健康 、顔面に若干の腫れ [装備]:なし [道具]:支給品一式、ランダムアイテム(1~3、本人未確認) [思考・状況] 1:放送を聴き、その後防人や桐山と行動方針を話し合う 2:悪は断罪、弱者(シェリス)は保護 3:カズマ、ジグマールについて考えるのは後回し [備考] ※絶影の制限による攻撃力の低下には気づいていません 059 ダイ・ハード――大胆に命の術を磨け!―― 投下順 061 偽りの共闘 059 ダイ・ハード――大胆に命の術を磨け!―― 時系列順 061 偽りの共闘 040 去るものは追わず 桐山和雄 078 フライトコードなし! A-6/ホテルへ向かえ! 038 拳の雨降って地固まる 防人衛 078 フライトコードなし! A-6/ホテルへ向かえ! 038 拳の雨降って地固まる 劉鳳 078 フライトコードなし! A-6/ホテルへ向かえ!
https://w.atwiki.jp/nouryoku/pages/45.html
過去箱庭に所属していた剣士。 現在、勝利王の騎士。 大会でも優勝を果たすなど、強力な戦力である。 それによってテレビや新聞など、多くの媒体に露出したことによって知名度が高い。 本人はそれがわかっていないようだが――。 白い外套、白銀の甲冑、鈍色の義足。 金髪と柔和な外見で、穏やかな性格。 だが戦時に於いては容赦なく後述する『断空』を振るい、敵を殺害する。 なお、カンパニーとの戦闘において代役『ダブル』と交戦。 戦いの果てに彼女の記憶を呼び起こすが、下半身を失い生死の境を彷徨う。 勝利王と米軍、そしてエア(記憶を取り戻した代役)本人の協力により蘇生。 ただしその下半身は米軍ASACSの物と同様である。 飛躍的な機動力の向上を見せ、さらに勝利王の騎士として活動を始めている。 以降、彼の戦闘スタイル、能力について記述する。 『刃の上の選択、見出す光明』 効果は「発動中、わずかでも勝利の可能性が存在するのならその未来を手繰り寄せる」というもの。 ――とはいうものの、コレは確実に勝利する、ということではない。 つまり効果の発動中、彼が認識しうる攻撃ならばそれをかわし、相手の懐へと潜り込む。これは一般の能力者の能力とは意味合いが異なり、彼自身の経験と天性により使用される『技術』である。 発動すると認識、回避、判断能力が飛躍的に向上し、瞳孔が一度大きく収縮する。 あくまで彼の『技術』であるため、コンディションによって精度が大きく上下する。 『断空』 「断空」はその名の通り、空間を切断する。 最大出力時の「断空」によって切断された空間は一定時間、切断されたままとなり――つまり、その部分にあった物体はこの世界から消滅する。 剣による攻撃しか強力な攻撃手段を持たないウェインの最大の強み、「再生不可能、防御不可能な一撃」が行使されるのだ。 あくまで空間を切断することによる物体の切断であり、魔力、結界、意味――といった、物体に在らざるものを切ることはできない。 なお、断空は概念として物体を切断する。ウェインが魔力を使用し、断空の出力を上昇させた時点でその刀身は魔力となる。 そしてその刃が通り抜けるであろうあらゆる物体を、硬度や特性に関わらず空間ごと断絶させる。 このとき、その斬撃を飛ばしたり、刃の範囲を伸ばしたりすることはできない。 これは断空、剣自身の能力である。しかし今代において、ウェイン以外の魔力ではこの刀は作動しない。 第二回大会において自身の能力が『看破の魔眼』であると発言する。 彼曰く『自分に害なす偽装、変装、罠の類を見抜く』魔眼であるらしい。 戦闘そのものには役に立たないが、仕掛けられた罠などを看破する。 能力チャート(あんま役にたたねーけどな!)
https://w.atwiki.jp/karishooterwiki/pages/1918.html
福岡県 北九州市 住所福岡県北九州市小倉南区北方4-1-11 ロイヤルインテリジェンス1F 最寄駅北九州モノレール 競馬場前駅から徒歩約6分 料金1プレイ100円 設置タイトルALL-Net Plus MULTI 対戦台 ネシカクロスライブ対戦台1セット&一人用1台 ダライアスバーストアナザークロニクルEX(100円3機設定、残機無限モード400円) 営業時間10:00 ~ 24:00 駐車場有り (第二駐車場が裏手にあり) TEL093-941-9022 URLhttp //amtac.dip.jp/index1.html 地図Google Yahoo! 備考 最終更新日2013年005月19日
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2135.html
ウサギのナミダ ACT 1-18 ご注意: この物語には、ツガル戦術論の若干のネタバレが含まれます。 こちらをお読みになる前に、ツガル戦術論をお読みになることをオススメいたします。 ■ 「わたしのこと、知っているのね」 『レッド・ホット・クリスマス』のシルヴィアさんは、わたしにそう言う。 わたしは素直に答える 「はい……わたしのマスターから聞いたことがあります。ツガル・タイプではとても有名な神姫だと」 「有名ね……」 シルヴィアさんがそっぽを向いた。 ミスティが吹き出した。 「そりゃ有名よね。いろんな意味で」 まわりの神姫も笑い出した。 シルヴィアさんは、ばつが悪い顔をしながらも、まんざらでもない様子。 よくわからない。 ミスティが笑いながら、わたしの肩を叩いた。 「どうしたの? きょとんとした顔して」 「あの……ウェブで公開されている「ツガル戦術論」というレポートがとてもよかった、所有している神姫は違うけど、バトルへの取り組みには共感する、ツガル・タイプとならぜひレッド・ホット・クリスマスとバトルしてみたい……とマスターは言っていたのですが……」 どこにそんなに面白い要素があるのだろう? そうしたら今度は、みんながきょとんとした顔をしていた。 「あなた……知らないの?」 「……なにを?」 わたしの知らないことが、シルヴィアさんにはあるらしい。 ミスティは深いため息を一つついて、またわたしの肩を叩いた。 「あなたのマスターは……本当に堅物ねぇ……。 それじゃあ、教えてあげる」 にひひ、と変な笑いをするミスティ。 その笑い顔、ちょっと怖いんですけど。 「シルヴィアはね……自分のマスターと、恋人同士なのよ!」 ……は? □ 久住さんの真っ直ぐな視線に、俺は身体を射抜かれ、身動きできずにいた。 ふう、と一つため息をつき、なんとか顔を伏せ、視線をはずす。 久住さんは本気だった。 今の俺たちに、本気で踏み込もうとしてくれている。 それはよく分かった。 だが、そうすることで、彼女たちも俺たちと同じような立場に追い込んでしまうのではないか? それはまったく俺の本意ではない。 なのに、軽々しく、俺たちのすべてを、久住さんに話してしまっていいものなのか。 俺は少し顔を上げ、久住さんを見た。 いまも俺を真っ直ぐに見つめ、その美貌に必死さを滲ませている。 ああ、そうだ。巻き込んでしまうとか、そういうことではなくて。 結局のところ、俺は……。 「話したら……久住さんに嫌われてしまうかも知れない……」 それが怖かっただけだ。 久住さんは小さく頭を振る。 「そんな簡単に、嫌うなんて、ない」 俺はため息をまた一つ。 観念した。逃げ場はない。 本気の彼女に答えることができるのは、本当のことを話すことだけだった。 「俺はさ……結局のところ、エゴのかたまりなんだ、と思う」 そんなふうにして、俺は話し始めた。 ■ マスターと神姫の関係性において、神姫がマスターに従属するということ以外の方法による関係を、わたしは想像できない。 わたしが過去にいた場所はその関係性が曖昧だったけれど、結局はマスターに見立てられた人に暴力によって強制的に従属させられていた。 いまのマスターになってからは、マスターの命令に従い続けて暮らしてきた。 後者のありかたこそは、神姫として普通であり、マスターに奉仕できることこそ幸せなのだと考えている。 だけど、シルヴィアさんとそのマスターの関係は……恋人同士? それはお互いが異性として意識し、相思相愛となり、同等の関係を築く、ということではないのだろうか。 つまり、わたしが考える普通の神姫とは全く違うあり方だ、ということなのか。 いや、上記の関係性から言えば、ミスティのマスターに対するあり方も、通常のものとはかなり違っているように見受けられ…… 「ちょっと、ティア? なにを固まってるの?」 ミスティがわたしを揺さぶってくれたおかげで、思考の縁から戻ってこれた。 「あ、その……そういう関係が築ける、というのがよく分からなくて……」 「まあ……うちのマスターが特殊なのよ。神姫バカって言うか……」 言葉は辛辣だったけど、シルヴィアさんの頬がうっすらと赤くなっているのが、ちょっと可愛い。 でもやはり、シルヴィアさんのマスターが特別な人であるらしい。 「そりゃあ、特殊よね」 「シルヴィのマスター、全国放送で愛の告白しちゃったんだもんねー!」 ミスティの言葉を引き継いで、神姫の一人がそう言うと、きゃー、とそろって黄色い歓声が上がった。 ……ぜんこくほうそうで、あいのこくはく? この単語の羅列が、文字通りの意味を持っていると、わたしには認識できなかった。 「あなたたち! いいかげんにしてよね!?」 シルヴィアさんの顔は怒っていたが、目と口調は笑っていた。 否定をしないところを見ると、本当のことらしい。 その事実こそが『レッド・ホット・クリスマス』の名を轟かせているということを、わたしは後で知った。 マスターと神姫の関係にも様々な形があることを知った、はじめての出来事だった。 「まあ……わたしとマスターの関係は、良好ってことね」 シルヴィアさんはそんなふうにまとめた。 まだ頬が赤かったけれど。 「うらやましいですね……」 「ん? あなたのマスターはどうなの?」 「わたしは……マスターに嫌われていますから……」 わたしはうつむいて言う。少し胸が痛い。 わたしの言葉に、不思議そうな顔をしている、シルヴィアさんと神姫たち。 彼女たちは、わたしの身の上を知らないようだった。 誰もがわたしの汚れた過去を知っていると思ってしまうのは、自意識過剰なのだろうか。 わたしの言葉に反応したのはミスティだった。 「はあ? まだそんなこと言ってるの? あなたのマスターはあなたが大好きに決まってるでしょ!」 そんなわけはない、と思う。 あれだけのことをされた神姫を、好きで自分の元においているだなんて……。 「わ、わたしはもう……愛想尽かされているはずだし」 「だったら、昨日の雨の中、必死で神姫を捜したりしないわよ」 「マスターは……論理的で冷たい人だから」 「タカキはどんだけ優しい人なのよ、ってくらいだわ」 「ちょ、ちょっと……矛盾してない? なんで本人と親友の言う、マスターの評価がぜんぜん違うのよ?」 シルヴィアさんが困ったように口を挟んだ。 困っているのはわたしだった。 本当はわたしもその矛盾に悩んでいる。 マスターはわたしのことを、本当はどんなふうに思っているんだろう? 「まあでも……」 シルヴィアさんは、髪を掻き揚げながら言う。 「ティアのマスター、自分の神姫を扱うっていうのに、手の甲を出してたじゃない? あれはちょっとないわよね」 「わたしも、それは思ってた。わたしとティアが会った頃から、ずっとああなのよね」 「手乗り文鳥じゃあるまいし。あれはちょっとひどいわ」 シルヴィアさんとミスティが、わたしのマスターに文句を付ける。 確かに、普通の神姫の扱いではないのかも知れない。でもそれでわたしは助かっているから。 「あ、それは……」 理由があって。 わたしが、男の人の手を怖がるから。 むしろ、マスターの思いやりなのだ……。 ……理由? それは、思考の鍵だった。 シルヴィアさんたちは、わたしの、次の言葉を待って、見つめている。 なのに。 わたしの思考はもっと別の方へと加速していく。 □ 久住さんに、いままでのことを包み隠さず話をした。 ティアと出会ったときのことから、この間の日曜日、右手をつぶしたことまで。 ティアを掴まない理由も、ティアの前で表情を変えない理由も、すべて。 話しているうちに、だんだんと思考がマイナス方向へと逸れてゆく。 言ってみれば俺は、かわいそうな神姫を拾ってきて、脅迫同然、無理矢理武装させて、俺の思い描く戦闘スタイルを押しつけて、戦わせた。 ひどい話だ。 そんなエゴイストに、一神姫のマスターであることが許されるのか。 知らず、口調が自虐的になっていたようだ。 俺の自虐的な独白を、久住さんは口を挟まず聞いていた。 久住さんの顔をまともに見ることができず、うつむいたまま話し、ちらちらと表情を伺った。 はじめは真剣な表情だったが、だんだんと呆れ顔になっていく。 話の最後の方には、とうとう呆れ果てた、という表情になった。 やはりそうか。そうだろうな。 こんなしょうもない男と一緒にいるのも嫌になったろう。 俺なんぞ、久住さんみたいな素敵な女の子に好かれるはずもなく、むしろ嫌われて当たり前なのだった。 「俺は……結局、ティアがやりたくもないことを押しつけて楽しんでいたエゴイストなんだ……あの、井山のこと、悪く言えた義理じゃないかも知れない……」 俺は言うことを言い尽くして、そう結んだ。 しばらくの沈黙。 久住さんがため息を一つついた。 「遠野くん……あなたね……」 これ以上ないという、呆れ顔。 久住さんの次の言葉は、俺たちの関係を断ち切る決定的な言葉…… 「生真面目すぎ」 ……は? 少し驚いて、久住さんを見た。 形のいい眉を逆立てて、いきなり身を乗り出すと、俺の胸のあたりを指さしながら、まくしたてた。 「あのね! マスターが神姫に自分好みの武装させるなんて、当たり前でしょ!? それがエゴだって言うなら、世の中の神姫のマスターは、みーーーんなエゴイストよ! ていうか、わたしなんか、イーダ・タイプにストラーフの戦闘スタイル強要してるわよ! どんだけエゴイストなの、って話よね!?」 く、久住さん、顔近い近い! 「ティアの特性考えて、それにあった武装させて、なにがエゴなのよ。そんなの、普通よ、普通!」 「……そ、そうかな」 「そーよ! それに何? 戦いたくもない神姫を無理矢理戦わせた? そんなやる気のない神姫に、わたしたちが負けたと!?」 「い、いや……そこまで言ってな……」 「言ってるも同然よ! 毎日イヤイヤ修練して身につけた戦闘スキルで、あそこまで戦えるはずないじゃない! もうね、自虐的にそういうこと言ってるのがイヤミったらしいというか!」 「ご、ごめんなさい……」 「謝るくらいなら、最初から、ちゃんと考えて話しなさい!」 ……久住さんに完全に言い負かされた。 彼女は椅子に背を預け、腕を組み、プンスカ怒りながら、あさっての方向を向いて、何事かブツブツと呟いている。 「……だいたい、真面目すぎるのよ。もっと相手の気持ちを考えなさいよ、ティアとか、わたしとか……」 「え?」 「なんでもないっ」 くわっ、と目を剥いて叱られた。 ……どうすればいいんだ。 俺は所在なげに、久住さんの向かいに座り、肩をすくめながら、上目遣いに彼女を伺うことしかできなかった。 やがて、彼女はまたひとつ、ため息をつくと、苦笑するように微笑んだ。 「……でも、遠野くんが、ティアにひどいことしてないっていうのは、よく分かったわ」 「当たり前だよ……自分の神姫を虐待するなんて、ありえない」 俺は即答する。 自分の所有物だからといって、意志あるものを虐待するなんて、俺には考えられないことだ。 自分の神姫だというならなおのこと。 「ティアが、大切?」 「もちろん……あいつの代わりになる神姫なんていない。 たくさんの神姫を見てきたけれど……それでも俺は、ティアじゃなくちゃ、だめなんだ」 「ティアは幸せね……うらやましいくらい」 「え?」 「な、なんでもないっ」 久住さんはさっきと同じ言葉で否定したが、険はなく、焦った表情で首を振っている。 ……女の子はよくわからない。 そんなやりとりをしているところで、俺たちのテーブルに誰かやってきた。 「ごめん、そろそろいいかな?」 「あ、店長」 久住さんが立ち上がる。 俺も久住さんに合わせて立った。 俺よりも少し年上の、若い男性だった。 ロゴマーク入りのエプロンをしている。 熱い眼差しが印象的な青年だ。 「俺は日暮夏彦。この店の店長だ」 彼は大きな左手を差し出した。 俺は包帯のない方の手を出し、握手した。 ぎゅっと握られる感触。 「よろしく」 力のこもった、熱い握手だ。 思わず握り返してしまう。 これがこの、神姫の聖地みたいな場所の店長か……。 「俺は……遠野貴樹といいます。よろしくお願いします」 俺がそう挨拶すると、日暮店長はにかっ、と笑った。 俺たちに座るように勧めると、自らも近くから椅子を引っ張ってきた。 そして、久住さんの方を向いた。 「彼が……例のマスターかい?」 「はい」 久住さんは頷くと、俺の方を向いた。 「ごめんなさい。店長には、あなたたちのこと話しておいたの。 今日は、遠野くんと店長を、引き合わせたくて、それで」 日暮店長は笑顔で頷いている。 「まあ、こんな店をやっているおかげで、いろいろと顔が利くし、オーナーからの相談も受けたりするんでね」 「わたしも……店長にお世話になったことがあるの」 「もし困ったことがあれば、相談に乗るぜ?」 「……」 俺は日暮店長と久住さんを見比べた。 そもそも、久住さんが俺たちの身の上のことをすでに話していると言った。 それを知りながら「相談に乗る」と請け負っているのは、つまり、あの雑誌の件について話を聞く準備がある、ということなのだろう。 久住さんは随分と日暮店長のことを買っている様子だ。 だが、俺はまだそこまでこの人を信じることができない。 久住さんが信頼しているにしろ、俺にとっては初対面なのだ。 俺が考えを巡らせて黙っていると、日暮店長が不意に口を開いた。 「この店はどうだい。気に入ってくれたかい?」 「え、ええ……はじめて来ましたけど、近くにあったら通い詰めてます、きっと」 「かーっ、嬉しいこと言ってくれるねぇ!」 日暮店長は、感情表現がいちいちストレートだ。 裏表がないってことだろうか。 彼は俺を真っ直ぐに見る。 その視線に、揺らがない信念のようなものを感じた。 「俺は、武装神姫が好きでね……。 特に、神姫とそのマスターが笑い合ってる姿が好きなんだ。 神姫にも心がある。人間と神姫は心でつながり合うことができる。 二つの心がつながり合ったとき、生まれるのが……笑顔なんだ。 俺はそう信じてる。 ……そんな笑顔がたくさん見たくて、エルゴをはじめたんだけどな」 最後の台詞で、日暮店長は照れくさそうに頭を掻いた。 青臭くて熱い言葉だった。でも嫌な感じはせず、日暮店長の誠実な思いが伝わってくる感じがした。 笑顔、か……。 「だから、もし君が神姫のことで困っていて……神姫と笑い合うことができないなら、相談しに来いよ。 俺にできることなら力になる。 菜々子ちゃんたってのお願いだしな」 悪い人じゃない。こんなこと、真っ正直に話せる人なんて、そういない。 しかも、俺が何に困っているのか知った上で、申し出てくれているのだ。 それでいて、俺に強制しようとはしない。あくまで俺の意志に任せるようにしてくれているのだ。 懐の大きい人だ。 噂にへこまされてる俺とは、人としての器の大きさが違う。 俺は信じてしまいそうになる。 だが。 「……まだ、俺にも……何を相談してもいいのか、わかりません」 「……」 「だから、落ち着いて、俺なりに考えをまとめたら……相談させてください」 「……そうか」 店長は小さく吐息をついて、立ち上がった。 「俺はいつでもいい。待ってるぜ」 「……ありがとう、ございます」 俺は頭を下げた。 彼は、どうしてこんなに親身になってくれるのだろう。 見ず知らずの俺なんかを助けて、なんの得があるというのだろう。 「店長はね……困っている神姫を放っておけないの。そういう性分なのよ」 「……自分に、得が無くても?」 「ええ……」 久住さんはあっさりと頷いた。 うつむいた視線はテーブルに向いているが、別の……過去の出来事を見つめているようだ。 「本当に、頼りになる人なの。顔も広くて……神姫メーカーやサポート業者、警察にも顔が利くらしいわ。 たぶん、そういう人脈を使ってなんだろうけど、大小いろんな相談事を解決しているみたい」 「……探偵みたいだな」 「そうね……ふふふ、そんなものなのかも」 久住さんは優しい顔で笑っていた。 ■ 理由。 そう、理由だ。 マスターの行動には、いつも理由の裏付けがあった。 それをいつもわたしに説明してくれた。 レッグパーツを装着したときも。 はじめて公園を自由に走ったときも。 初めてバトルに勝ったとき、すべてのアーマーをはずしたときも。 マスターは理由無く行動する人じゃない。 マスターがわたしを厳しく叱るのは、バトルに勝てないからじゃない。わたしが自分を大切にしないから。『わたしなんか』って卑下するから。 マスターがわたしを掴もうとしないのは、わたしが男の人の手を怖がるから。その後の仕打ちを思って、身体をすくめてしまうから。 じゃあ、マスターがわたしにいつも無表情なのは……? いつも冷たい態度に見えるのは……? わたしに愛想を尽かしているから。 ……違う。 それでは前の行動の理由と矛盾する。 そう、マスターはいつだって、わたしのために、いろいろなことをしてくれる。 ……わたしにために……? いけない、と思った。 それ以上は考えてはダメだと思った。 でも、そこが確信に違いなかった。 すべてに矛盾しない、本当の、マスターの思い。 それは。 わたしのために、わたしの前では無表情でいた。 なぜ? わたしが、人間の男の人を、怖がるから。 でも、なんで無表情でいるの? 努めて事務的な表情であれば、少なくとも、わたしが怯えることはないから……。 そんなばかな。 わたしはわたしの考えを否定する。 だって、毎日毎日顔をあわせている。 そんな相手に無表情でい続けるなんてことができるだろうか。 そんなことできるわけが……だって、マスターは機械じゃない。人間なのだから。 『タカキはどんだけ優しい人なのよ、ってくらいだわ』 マスターは優しいから。 わたしが怯えるから。 だから、無表情でいたの? って…… わたしのせい? 違う。 わたしの、せい、じゃない。 わたしのしでかしたことが、マスターの意志と無関係に、害を及ぼしたのじゃない。 わたしが、マスターの笑顔を奪っていたのじゃなくて。 わたしの、ために。 マスターは自らの意志で、わたしのために、無表情を貫いていたというの? 優しいから? わたしがマスターの神姫でいるために? それこそが、矛盾しない……真の答え。 そんな…… そんなことって……!! 「ちょ、ちょっと……どうしたの、ティア!?」 ミスティがわたしの肩を揺さぶる。 わたしは気がつかないうちに、涙を流していた、らしい。 でも、それどころじゃなかった。 わたしは両手で顔を覆って、前屈みになった。 「ティア、大丈夫!? どこか、おかしいの?」 「……ちが……っ……わ、わたし……う、っく……う、あぁ……」 ごめんなさい、ミスティ。 いま、あなたに答えてあげられる余裕がなくて。 わたしは思う。 マスター。 わたしはそこまであなたの優しさに包まれていたんですか? あなたの何もかもをわたしのために費やされていたんですか? みんなにあそこまで罵られてなお、わたしを自分の神姫にしたいのですか? わたしは、あなたにそこまでしてもらう価値のある神姫ですか!? 「ねえ、ちょっと……わたし、何か悪いこと言った?」 シルヴィアさんのうろたえる声。 ちがう、ちがうんです。 わたしがただ、答えにたどり着いてしまっただけ。 マスターの優しさに、気がついてしまっただけ。 そう、わたしはなんと愚かだったのだろう。 マスターの優しさにも気付かず、自らを葬り去ろうとしていたなんて。 それこそが、真にマスターの気持ちと努力を無に帰する行為だと、知りもしないで。 菜々子さんが言っていたこと。 『あなたは何も分かっていない』 ようやくその意味が分かった。 わたしは何も分かっていない愚か者だった。 だったら、その愚かなわたしは、マスターのために何をすればいいのですか? そこまでしてくれるあなたに、わたしは何を返せるのでしょう? わかりません。 わたしにできることはあまりにも少なくて。 わからないからまた、泣いてしまう。 わたしの名前が意味するように、ただ涙のしずくをこぼすことしかできない。 誰か、誰か教えて。 この愚かなわたしに、してあげられることを。 あの優しい人を助けてあげられる術を……。 マスターが迎えに来る直前まで、わたしはずっと泣いていた。 ミスティはその間、ずっと肩を抱いていてくれた。 シルヴィアさんは、初対面のわたしを、やさしく気遣ってくれた。 ありがとう。 自分の気持ちにいっぱいいっぱいで口に出すことができなかったけれど。 優しくしてもらえたことが、とてもとても嬉しかった。 「ティア、帰るぞ」 久住さんと一緒に現れたマスターは、いつものように無表情だった。 そして、いつものように手の甲を差し出された。 わたしはその上に乗る。 「あ、あなたねぇ! ティアはあなたの神姫でしょう!? その扱いは……!」 シルヴィアさんは、わたしのために怒ってくれている。 ミスティも気遣わしげな表情で、こちらを見ている。 結局、みんなに説明することはできなかった。 シルヴィアさんの激しい言葉にも、マスターは無言だった。 でも、ほんの少しだけ、眉根を寄せているのが分かる。 マスターも本当は、他のマスターと同じように、わたしを掴むことができれば、こんなことを言われなくてもすむのに。 シルヴィアさんも、他のみんなも、いつか分かってくれる時が来るだろうか。 手の甲を差し出す優しさもある、ということを。 □ 帰り道。 久住さんと並んで歩きながら、今日あった出来事を反芻してみる。 ……なんだか、よくわからなかった。 ただひとつ言えることは、俺の中に筋道のようなものが見えてきた、ということだった。 まだはっきりとは分からない。だが、自分の中できちんと整理をつければ、道が開けるような気がしていた。 それにはやはり、あの店長との出会いが必須であったし、間違いなく隣を歩く人のおかげだった。 「……どうかした?」 横顔を盗み見ていた俺に振り向き、久住さんは微笑みかけてくる。 心臓がどきり、と鳴った。 ……とんでもなく、可愛かった。 このとき俺は強烈に自覚した。 俺はもうとっくに、久住さんに恋してしまっていたんだ。 俺は一瞬にして平常心を失い、どぎまぎとしながら、答える。 「き、今日は……ありがとう……たすかった、いろいろと……」 「ちょっとは、前向きに考えられた?」 あ……。 そうか。 それもこれも、全部久住さんの作戦か。 昨日の気持ちのままティアを渡されたら、俺はティアにどんな言葉をかけていたろう。 激情に駆られ、久住さんの誘いも断り、部屋に引きこもって、ティアを尋問したりしていたかも知れない。 だから、彼女はわざと、いつもと違う服装をして、いつもと違う興味深いロケーションで話をしたのだ。 俺は頭の中は、いままでの暗い状況などを一端押しやって、他のことをいろいろと考えさせられた。 それで、かえって自分を客観的に、前向きに見つめることができたのだ。 かなわない。 俺の心の中まで全部見切られて、彼女の手の内で転がされていたのだ。 でもそれが不快だったわけではなく、俺はもう降参、といった具合だった。 「それで……」 久住さんがいたずらっぽい微笑みを浮かべた。 まだ続きがあるんですか!? 勘弁してください。 「今日のわたしの服、どう?」 どう、といわれましても。 「え、あぁ……ええと……いつもと、ちがう感じ……だな、と……」 俺みたいな男に、気の利いたことが言えるはずがないじゃないか。 これはどういう罰ゲームなんだろうか? 「おそーい」 久住さんは、少し拗ねた様子で言った。 「本来は、今日会ったときに言うことよ?」 「は、はぁ……すみません」 「それで、ご感想は?」 「あ、ええと……よ、よく似合ってる……」 久住さんは上目遣いに俺を見ている。 だから、その可愛さは反則だろう? くそっ、もうこうなったらヤケだ。 俺が思ってること、素直に一言でまとめて、言ってしまえ! 「みとれたよ」 そうしたら彼女は、驚いたように目を見開いて、顔を真っ赤に染めた。 こうして俺は、ようやく久住さんに一矢報いたのだった。 次へ> トップページに戻る