約 35,695 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2136.html
ウサギのナミダ ACT 1-19 □ その夜、俺は意識が妙にさえていて、眠れそうになかった。 だから俺は、PCの前に座って考える。 クレイドルの上で眠る、ティアの顔を見ながら。 どうすればティアを守ることができるのか、と。 考える。 そもそも、神姫風俗は違法だ。 神姫風俗を経営している者も、それを利用した者も、法を破っていることになる。 神姫に性的虐待を与えていることになるからだ。 これはMMS保護法に抵触することになる。 だから、神姫風俗を経営する者も利用する者も犯罪者であり、明るみに出れば罰せられる。 MMS保護法は日本独自の法律であるが、神姫が浸透している国では似たような法律が制定されている。 その元となるのがMMS国際規約だ。 これはMMSに対する世界共通の認識を定める国際法である。 たとえば、神姫の大原則……一人の神姫に対し、オーナーは必ず個人であることは、この国際規約で定められている。 「心」に等しいAIを持つ神姫の権利についても、基本ラインについて言及している。 心のある人間のパートナーとして、神姫は保護されなければならない。 その理念のもと、MMS国際規約に批准している各国は、それぞれ独自のMMS保護のための法律を制定している、というわけだ。 もちろん、日本も例外ではない。 努力目標ではなく、ちゃんと罰則があり、違反者は実刑が課せられる。 その量刑は、動物愛護法よりも若干重い程度。 随分軽い気もするが、それは俺が神姫オーナーであることの贔屓目なのかも知れない。 それ以外に、他人の神姫を傷つけたりすれば、器物破損に問われる場合もある。 もちろん、他人の神姫を盗めば窃盗だ。 だが、神姫に対する、性的なものを含めた虐待は、表に出てこないだけで、潜在的に行われている可能性がある。 動物や児童に対する虐待同様、内にこもるため発覚しにくい。 周囲の告発によってはじめて発覚するケースがほとんどだ。 神姫虐待はさらにエスカレートしている傾向があるという。 神姫を「心を持つパートナー」としてではなく、「AIを搭載した小型ロボット」ととらえてしまうと、罪悪感が減ってしまうのだ。 悲鳴を上げていても、たかが機械、ととらえてしまい、普段は動物などにはそんなことしない人物であっても、面白半分に神姫を虐待するケースが増えているのだそうだ。 また、同じ理由で周囲が虐待を気にしない場合が多いという。 動物などなら気になるが、神姫は機械であるため、虐待という認識が薄くなる。機械が壊れたなら修理すればいい、という考え方もあり、神姫の「心」を認識していない場合があるのだ。 かつて児童ポルノ等で国際的非難を浴びた日本だが、神姫の性的虐待についても、国際的に疑惑の目が向けられている。 日本がMMS先進国であることも要因の一つではある。 しかし、ホビーの対象に性的な視点を求め、それを推し進めてしまうのは、日本のマニアの特別な性癖なのかも知れない。 ネットに流れている神姫ものの十八禁画像や映像は、その半数以上が日本から配信されているという説もある。 また、内容が過激なのも日本発の十八禁ものの特徴だった。 特に過激だったという、今世紀初頭のアダルトゲームの内容を参考に、それを再現するプレイを神姫に強要する。 そんなことは神姫に対する虐待に他ならない。 そして、その映像が神姫虐待を助長しているという人もいる。 そのような画像や映像が、なかば公然と流通しているのだから、流通元と思われる日本が、MMS国際規約批准国から非難を受けるのはむしろ当然のことだった。 しかし、こうした神姫虐待に対する取り締まりは、あまり厳しくない。 警察にもMMS犯罪の専門部署が設けられているが、神姫虐待に積極的ではない。 むしろMMSによって引き起こされる凶悪犯罪の取り締まりに躍起になっている状況だ。 関連犯罪が増えるのはブームの暗黒面であるが、ここのところ、神姫を利用した殺傷事件など凶悪犯罪が後を絶たず、こちらも社会問題になっている。 神姫の虐待事件よりも、人間に対する直接的脅威となっているし、事件性が高い。 先にも述べたように、神姫虐待事件は内にこもって行われる場合が多く、表沙汰になりにくい。警察もなかなか動けないのが実状だ。 だから、警察の動きに納得はいかなくても、仕方がないと理解はできる。 逆を言えば、神姫虐待もその事実と裏付けとなる証拠があれば、警察も動いてくれるということだ。 神姫保護を唱うNPO法人がいくつも活動しているし、警察の協力を得て、神姫虐待事件を解決している例もある。 もちろんそうした神姫保護団体では、神姫風俗は反対の立場であるし、警察への告発もたびたび行っている。 警察も、神姫保護団体が提唱する、年一度のMMS保護週間の時くらいは、ある程度神姫風俗の摘発も行う。 だが、それで十分ではないのが現状だ。 そういう状況にあって、神姫風俗はなくならない。 逆に増えているくらいだ。 なぜか。 それはあくまでもアンダーグラウンドの、個人経営業者ばかりだからだ。 神姫風俗に組合があるわけではない。 情報は回ってくるが、相互扶助など行ってはいない。 たとえどこかの店がへまをして、警察の世話になっても、一時的に店を閉めてほとぼり覚めるまで知らない振りをしていればいいのだ。 人間相手でも、若年齢層の売春斡旋業が、違法でもなくならないのと同じことだ。 神姫風俗はもっとたちが悪いと、俺個人は思う。 風俗の神姫は逃げることができない。 そもそも、経営者がオーナーであるし、オーナーとのつながりは神姫にとって絶対だ。 仮にオーナーの元を逃げたとしても、ただの野良神姫になる。 そうなった神姫は長くても一日程度しか活動できない。 バッテリーの充電が行えず、行動不能に陥るからだ。 足下を歩いている野良神姫を誰が気にとめるだろう? たとえそんな神姫を拾っても、それが風俗にいたと知れば捨てられるか壊されるか……ティアの正体が発覚したときの、ゲーセンの連中の反応を思い起こせば明らかだ。 バッテリー切れの神姫など、もはや精密機械のゴミに過ぎない。 そうなることがわかっていて、逃げ出す神姫はいない。 また、経営者にとっては秘匿性も高くて重宝である。 アタッシュケース一つ用意すれば、所属する神姫すべてをまとめて、店を畳むことができる。 考えたくないことだが、ばれそうになったら、壊したり捨てたりすれば、証拠だって残らない。 容疑があっても、証拠がなければ警察は逮捕できないし、重要事件でもなければ証拠を捜して何百人も動員することはまずない。 どこかの店が摘発を受けて、ほとぼりが冷めるまで店を一時的に閉めたところで、経営者には大した痛手にはならない。 しばらくして、またどこか別の雑居ビルの部屋を借りてはじめればいいのだから。 神姫風俗などの違法営業の情報は、もっぱらネットを通じて、アングラ的に行われる。 だから、一度店を閉めて場所が移動しても、客はネットでその情報を調べてやってくる。 警察のマークが緩いのをいいことに、神姫風俗ではやりたい放題だ。 先に述べた神姫の十八禁映像のような過激なプレイが現実に可能だし、画像や映像を撮影できるらしい。 客の中には、自分の神姫にはそういうことをさせたくないが、風俗に来て神姫に性的虐待をするオーナーが少なからずいるという。考えたくないことだが。 雑居ビルの殺風景な部屋の中では、映像から場所を特定するのも難しい。 だから、神姫風俗の経営者たちも、非公開を条件として、個室内での画像や映像の撮影を許可している場合が多いのだ。 彼らが問題にするのは、自分たちの素性が割れてしまうような情報が流出する事態、である。 いままでに述べたことから総合すれば、神姫風俗は秘匿性も高くて、抜き打ちの摘発で現行犯でもなければ、立件に至らない。 だが、例外はある。 所属神姫が客によって持ち出された場合、だ。 もちろん、退店時に所属神姫は返却されるわけだし、客が神姫を持ち出すなど、店側が許すはずはない。 だが、客がそもそも神姫を奪う目的で入店していたとすればどうか。 それでも、どうやって持ち出すのか、持ち出した後どうやって店をごまかすのか、いろいろと高いハードルがあるので、まず持ち出そうなどとは考えないだろう。 しかし、それをやってのけた奴がいる。 井山だ。 井山はティアを連れ出し、店の人間たちから逃げ切れそうになくなって、ゴミ捨て場に捨てた。 あのときはなんとか逃げ切ったようだが、もし捕まっても、ティアを持っていないとしらを切るつもりだったのだろう。 本当はそのままバッテリー切れとなり、ゴミとなるか、戻ってきた井山が回収したかもしれないティアだったが、そうはならなかった。 俺が拾ったことによって。 ティアのメモリの中には、客への奉仕の記録だけではなく、その客のデータや、風俗店のスタッフの映像やデータも記録されている。 それが明るみに出れば、店は摘発を受けるだろう。 店を畳んでも、顔写真などの明確な個人情報が流出してしまうので、警察に捕まる可能性は拭えないままだ。 ティアが生きていることは、神姫風俗店『LOVEマスィーン』とそのスタッフにとっては、死活問題なのだ。 だから、店のスタッフの黒服たちは、武装神姫が盛んなゲームセンターに現れ、ティアを捜していたのだ。 連中に必要なのは井山ではない。 連れ出されて今も稼働している神姫・ティアこそが奴らの目的なのだ。 井山もティアを狙っている。 奴の様子からして、ティアを大層気に入っていたのだろう。 だから、自分のモノにしたいという欲求が強くなり、我慢できなくなり、店から奪うという行為に及んだのだろう。 そのくせ、店の連中に追われているのをティアのせいにして、ゴミ捨て場に投げ捨てるあたり、どれだけ自己中心な奴なのかと思う。 諦めた神姫が、立ち寄ったゲームセンターで、突然目の前に現れたのだ。 奴の物欲と性欲に再度火が点ったのは想像に難くない。 今度は俺という個人から奪えばいいだけの話だ。 だからあれほど執拗に仕掛けてくるのだろう。 しかも、それで俺が苦しんでいるのを見て楽しんでいるようだから、性格が歪んでるとしか言いようがない。 ティアを狙う神姫風俗店も、その客であった井山も、れっきとした犯罪者だ。 証拠があれば、告発できる。警察は動く。 しかし、『LOVEマスィーン』に気付かれないように、警察には動いてもらわなくてはならないが。 警察を動かしうる、確たる証拠と、伝手があるだろうか? 俺はクレイドルの上で眠るティアを見つめた。 愛らしい寝顔。 俺の中で様々な葛藤が巻き起こる。 俺にとって大切なもの、大事なこと。 捨てていいもの、捨て去れないこと。 社会的な立場や、なけなしのプライド、様々なしがらみ、感情や理性、そういったものが俺の思考で渦を巻く。 俺は長いこと考えていたのだと思う。 ふと気がつくと、カーテンの向こうが明るくなってきていた。 朝の到来を告げる、小鳥のさえずり。 カーテンの隙間から指す、一条の光に、俺は目をすがめた。 そして思う。 ごちゃごちゃと考えがまとまらないときには、シンプルに考える。 俺が今、本当に欲しいもの、守りたいものは、なんだ? ティアを見る。 いつか見た、花がほころぶような、愛らしい笑顔が思い浮かぶ。 証拠はある。 伝手もある。 あと、俺に足りないのは…… ……そう、覚悟だった。 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/unyo/pages/23.html
矢上麗華 国民番号 名前 所属藩国 12-00265-01 矢上麗華 土場藩国 名前 矢上爽一朗 ACEカテゴリ 個人ACE HQ区分 HQ(HQ+1:合計+1) 根拠 http //p.ag.etr.ac/cwtg.jp/bbs2/17447 サイト http //www9.atwiki.jp/002834/pages/27.html 性能開示 http //blog.tendice.jp/200804/article_14.html 性能 L:矢上爽一朗={ t:名称=矢上爽一朗(ACE) t:要点=眼鏡,帝國軍軍装,ベレー帽 t:周辺環境=ハイマイル t:評価=全能力19 t:特殊={ *矢上爽一朗はパイロット、名パイロット、整備士、世界貴族として見なし、これらが出来る全部の特殊を持つ。 *矢上爽一朗はヤガミとして扱う }→次のアイドレス:・ヨットで航海(イベント)・帝國軍の密使(イベント)・経済戦争(イベント)・自家用飛行機の開発(イベント)}
https://w.atwiki.jp/yugio/pages/19560.html
R-ACEプリベンター(OCG) 効果モンスター 星8/炎属性/機械族/攻2800/守2800 このカード名の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。 (1):自分の墓地から「R-ACE」カード1枚を除外して発動できる。 このカードを手札から特殊召喚する。 (2):自分・相手ターンに、自分フィールドに他の「R-ACE」モンスターが存在する場合、 相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。 そのモンスターを裏側守備表示にする。 (3):このカードが墓地へ送られた場合、 レベル8モンスター以外の自分の除外状態の「R-ACE」モンスター1体を対象として発動できる。 そのモンスターを特殊召喚する。 モンスター除外 帰還 最上級モンスター 機械族 炎属性 罠除外 魔法除外 R-ACE R-ACE補助
https://w.atwiki.jp/support00/pages/818.html
名称 ・シャルルとその飼い主(ACE) 要点 ・石塚にキスする猫 周辺環境 ・写真の中 評価 全能力18 特殊 *シャルルとその飼い主はウォードレスダンサー、歩兵、海兵隊、猫として見なし,これらの持つ全ての特殊が使える。 *シャルルとその飼い主は石塚弘として扱う。 *シャルルとその飼い主は他の誰とも恋人にならない。 →次のアイドレス 大塚浩史(ACE)?、超人田島(ACE)?、海兵隊(職業)?、猫(職業)、休暇陳情(イベント)?
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2169.html
ウサギのナミダ ACT 1-30 □ ティアと共に、歩き慣れたこの道を歩くのは、実は初めてだと気がついた。 はじめの時はティアの電源は切っていた。 その後の時には、ティアは一人アパートに残って自主練していた。 「まあ、それでお前が家出したのは、苦い思い出だが……」 「言わないでくださいっ」 ティアは俺の胸ポケットに顔を埋めて恐縮する。 俺は苦笑しながら、ゆっくりと歩いていく。 手には、いつものようにドーナッツの箱。 今日は海藤の家に向かっている。 ゲームセンターに出入りできなくなった俺は、いい機会だととらえることにして、お世話になったところに挨拶まわりに行くことにした。 海藤の家に来るのは、前回からそれほど経っていなかったが、随分前のような気がする。 その短い間に、あまりにも多くのことがあり過ぎたのだ。 だが、そのおかげで、こうしてティアと共に海藤を訪問できる。 嬉しいことだった。 「やあ、よく来たね。入って入って」 海藤はいつものように、俺たちを歓迎してくれた。 「いらっしゃいませ」 そう言うアクアの涼やかな声も変わらない。 俺が二人の様子に思わず笑みを浮かべると、二人とも満面の笑顔を返してくれた。 海藤はコーヒーを淹れながら、旬の話題を口にする。 「バトロンダイジェストは見たよ。随分白熱した戦いだったみたいじゃないか」 相変わらず、海藤はバトルロンドの情報収集に余念がない。 テーブルの上に、くだんの最新号が置いてある。 表紙を見るたび、面映ゆい気持ちになる。 「その表紙は勘弁してほしかったんだがな……」 「いいじゃないか。その表紙、結構インパクトあったみたいだよ。 ネットでも評判を調べたけど、かなりの反響だ。 記事の内容については……特に神姫との絆についての言及は、おおむね好評みたいだね。 思うところがあるオーナーはたくさんいるみたいで、神姫との絆について、あっちこっちで議論になってる」 「へえ……」 それは知らなかった。 俺は意図的に、雪華とのバトルについての情報を集めるのを避けていたから。 神姫と人間との関係について、改めて考える契機になるならば、それはそれでいいと思う。 「それで、だ。海藤……」 「ん?」 ドーナッツを頬張る海藤に、今日の本題を切りだした。 ■ 「久しぶりですね、ティア」 「はい……アクアさん」 アクアさんとこうして話をするのは、実は初めてだということに、今気がついた。 でも、そんな感じが全然しない。 それは、よくマスターからアクアさんのことを聞いているからだろうか。 それとも、アクアさんが醸し出す雰囲気から来るものなのか。 アクアさんはイーアネイラ・タイプの典型だった。 落ち着いた物腰、優しげな表情、大人びた美貌に、鈴の音のように美しい声。 でも、アクアさんはそれらがさらに洗練されているように思える。 「ずっと……アクアさんとお会いしたいと……お話したいと思っていました」 「あら、そうなのですか? どうして?」 「アクアさんが……マスターが初めて憧れた神姫だから……」 わたしは少しうつむいて、言った。 マスターは、海藤さんとアクアさんを見て、神姫マスターになりたいと思ったという。 海藤さんとの仲がいいだけではなく、アクアさん自身にも魅力があるということだと思う。 わたしは思っていた。 マスターの心を動かせるほどの、アクアさんの魅力ってなんだろう? 「わたしは……嫉妬しているのかも知れません。 こうしてマスターと心通わせることができても、どんな神姫になればいいのか、わからなくて。 アクアさんなら、マスターが憧れた神姫ですから、きっとそのままでもマスターは満足なのではないかと……」 アクアさんは、優しい微笑みを浮かべながら、わたしを見ている。 「そんなことはありませんよ」 「そう、でしょうか……」 「あなたがボディを変えられて目覚めたとき、わたしもそばにいました。覚えていますか?」 「は、はい……」 わたしは少し恥ずかしくなる。 あのときも、わたしは泣きじゃくって、アクアさんに優しくしてもらった。 わたしは優しくしてくれた人たちに、お礼を言うこともできずにいて、やっぱりダメな神姫だと思ってしまう。 「あのとき……遠野さんはとても嬉しそうでした。わたしが今まで見た遠野さんで一番」 「……」 「今日も、とても嬉しそうな顔をしています。 あんな表情をさせるのは、ティア、あなたです。 遠野さんが神姫マスターになるきっかけだったわたしではなく、あなたなんですよ」 アクアさんはにっこりと笑う。 アクアさんは優しい。 今日もわたしを優しく励ましてくれる。 不意に、アクアさんは目を閉じて、こう言った。 「わたしも、ティアがうらやましいです」 「え……?」 なぜ? 海藤さんと幸せに暮らしているアクアさんが……わたしのマスターがうらやむほどの神姫が、なぜわたしをうらやむというのだろう。 「あなたが武装神姫として戦い続けているから。 マスターが本当はバトルロンドを続けたいと思っているのを知りながら……わたしは何もできないでいます。 あなたは戦える。遠野さんが望むように。 それがうらやましいんです」 驚いた。 アクアさんみたいに優しい神姫が、戦うことを望んでいるなんて。 「でも、アクアさんの想いも、海藤さんの望みもかなうかも知れません」 「え?」 「わたしのマスターが、かなえてくれるかも」 少し驚いた顔のアクアさんに、わたしはそっと微笑んだ。 □ 「『アーンヴァル・クイーン』と戦ってみないか」 それが今日の俺の本題だった。 バトルロンドを捨てた海藤だが、バトルをしたくないわけではないはずだ。 それに、クイーンならば、どんな条件を海藤がつけても、バトルしてくれるだろう。 俺は海藤に、クイーンがなぜ俺たちを指名したのか、その理由を語った。 「クイーンは、特徴のある神姫と戦い、戦い方を吸収しようとしている。 だから、バトルの場所も設定も、こちらの要求が通るはずだ」 「……」 「バトルのことを公にすることには、彼らはこだわっていないみたいだし……条件付きで、クイーンとバトルしてみてはどうだ?」 俺は別に『アーンヴァル・クイーン』の肩を持っているわけではない。 海藤自身、彼らに思うところがあるようだったし、機会があれば協力してもいい、みたいなことを言っていた。 雪華のスタンスは、バトルを拒む海藤に、ぎりぎりの妥協点を見つけることができるかも知れない。 それに、海藤だって、バトルロンドに未練があるはずだ。 クイーンとバトルして、その思いが再燃すればいいと思う。 それでアクアの心配の種も、一つなくなるはずだ。 だから、思い切って切りだしてみたのだ。 海藤は、一つ溜息をついた。 「まあ、確かに、クイーンに協力したいとは言ったけどさ……」 俺は黙ってうなずいた。 「だけど、まともなバトルロンドじゃ勝負にならないだろうし……彼らが望んでいるのも、そこじゃないんだろうしね……」 「……海藤」 「なんだい?」 「そんなに、バトルロンドに戻るのが嫌か?」 「……僕は一度、裏切られたからね」 苦笑いする海藤。 だが俺は言葉を続けた。 「だけど、バトルロンドは素晴らしいと思ってるだろう?」 「……うん、そうだね」 「この間、お前の家に来たときに言われた言葉……今でも覚えてるよ。 『バトルだけが神姫の活躍の場じゃない』ってな。 その時は俺も、バトルロンドをあきらめようと思った。お前の言うことももっともだと思っていたさ。だけどな……」 海藤は不思議そうな顔をして、俺を見つめている。 俺は続ける。 「あるホビーショップで、武装神姫のバトルを観て……ああ、やっぱり、バトルロンドはいい、と思った。 自分の神姫とともにバトルする時間は、何物にも代え難いと思う。 俺はバトルを諦めたくなかった……だから、今こうして、ティアとバトルができる。 お前も……そろそろ諦めるのをやめて、いいんじゃないのか」 沈黙が流れた。 長い間黙っていたような気がするが、大して時間は経っていないようにも思える。 やがて、海藤はまた溜息をつく。 「まいるよね……そんなに熱く語るのは、君のキャラじゃないんじゃないの?」 「……最近宗旨替えしたのさ」 「まあ……あのゲーセンじゃなければ……ギャラリーがいなければ、やってもいいのかな……」 「海藤……」 やった。 海藤がとうとうバトルに戻ってくる。 冷静を装いながらも、俺の心の中は沸き立っていた。 「それじゃあ、クイーンに伝えてよ。 バトルは受ける。そのかわり、これから僕が言う条件を飲んで欲しい。それでいいならバトルを受ける……あ、その条件でも、雪華が望むものは観られる、と伝えておいて」 「わかった」 そして、海藤から提示されたバトルの条件を聞くにつれ……その奇妙な内容に、俺の方が首を傾げた。 □ 「……それで、クイーンとアクアのバトルはどうなったの?」 隣を歩く久住さんは、興味津々といった様子だ。 ホビーショップ・エルゴに向かう途中の商店街を、俺たちは歩いている。 俺は少し渋い顔をしながら答えた。 「うーん……圧勝といえば圧勝だったんだけどさ……」 「へえ、さすがクイーン」 「いや、アクアが」 「え?」 久住さんは、目をぱちくりとさせて、驚いている。 それはそうだろうな。 俺は胸ポケットのティアに尋ねる。 「なあ、あの時のアクアと雪華の対戦、三二対○でアクアが取ったんだったか?」 「あ、最後の一本は相打ちだったので、三二対一でアクアさんです」 「……なにそれ?」 ミスティもきょとんとしている。 まあ、それもそうだろう。 普通のバトルロンドでなかったことは確かである。 どんな対戦だったのかというと、それはそれは地味な戦いで、雪華は手も足も出ずにあしらわれたということなのだ。 信じられないかもしれないが、本当なのだから仕方がない。 この戦いについては、いずれ語ることがあるかも知れない。 俺がエルゴに行くのは、店長に改めてお礼に行くのと、約束通り客として買い物に行くのが目的だった。 日暮店長は相変わらず熱い人で、俺が改めて礼を言うと、照れながらも喜んでくれた。 そして、先日の神姫風俗一斉取り締まりについて、少しだけ教えてくれた。 店長が、俺の渡した証拠を持って、警察にあたりをつけたとき、すでに警察内部でも、神姫虐待の疑いで神姫風俗を取り締まろうという動きがあった。 その発端となったのは、例のゴシップ誌に載ったティアの記事だったという。 あの記事は予想外の反響があったらしい。 そのため、警察も見過ごすことができなくなっていたのだ。 ただ、神姫風俗の取り締まりを、どの規模で行うかは決まっていなかった。 今回の一斉捜査にまで規模を広げるように尽力してくれたのは、かの地走刑事だったそうだ。 なるほど、警察の動きが妙に早かったのは、下地があったからなのか。 しかし、日暮店長が何をしてくれたのかは、何度訊いてもはぐらかされて、分からずじまいだった。 もう一つの用事である買い物は、もちろんティアのレッグパーツの改良用部品である。 エルゴには十分な部品が揃っているし、日暮店長も装備の改造や工作にやたら詳しい。 俺は自分で書いた図面を持ち込み、日暮店長と相談しながら部品を揃えていく。 在庫がないパーツは、カタログを見ながら店長のおすすめを聞き、それを注文した。 届いたときには、またエルゴに足を運ばなくてはならない。 時間もかかるし、電車賃もばかにならないが、店長へのせめてものお礼ではあるし、俺自身がこの店に来るのが楽しみで仕方がない。 久住さんも一緒に来てくれるのだから、そのぐらいの負担は大目に見ようという気になろうというものだ。 □ その久住さんには、彼女がホームグランドとしているゲームセンター『ポーラスター』に案内してもらった。 あの事件以来、俺とティアはバトルができる状況じゃなかった。 対戦のカンを取り戻すのと同時に、新しいレッグパーツ、新しい戦術も試さなくてはならない。 そのためには、日々の対戦環境がどうしても必要だった。 自宅でのシミュレーションでは、どうしても限界がある。 『ポーラスター』は、俺たちのいきつけのゲーセンよりも大きく、バトルロンドのコーナーも倍くらいの広さがあった。 それでもすべての対戦台が埋まっているほど盛り上がっているし、神姫プレイヤーも多い。 久住さんがバトロンのコーナーに入って軽く挨拶しただけで、歓声に迎えられた。 大人気だった。 あとでこの店の常連さんに聞けば、彼女はずっとこの店の常連だという。 『エトランゼ』として、他の店を飛び回っていることが多いので、この店に戻ってくると、常連プレイヤーたちの歓迎を受けるらしい。 久住さんの紹介で、俺はこの店でバトルする機会を得た。 ティアの新しいレッグパーツを試し、調整し、また戦う。 新しい技や戦術も実戦の中で試すことができた。 時にはミスティに協力してもらい、練習したりもした。 ありがたい。 おかげで、ティアは新しいレッグパーツをあっという間に使いこなせるようになり、新戦術を使いながら、バトルロンドを楽しむことができた。 『ポーラスター』は、客の雰囲気がいい店だった。 俺がティアのマスターだとばれたときには、ちょっとした騒ぎになったが、誰もが紳士的な態度でほっとした。 神姫マスター同士も和気藹々としていて、まずバトルを楽しもうという気持ちが感じられる。 初級者でも、上級者にバトルについていろいろ尋ねることをためらわないし、聞かれた方も丁寧に答えている。 このゲーセンの実力者は、久住さんを含めて五人いるそうだが、五人ともこのようなスタンスを貫いているという。 故に、中堅の神姫プレイヤーも初級者も、ついてくる。 そんな環境だと、上級者のレベルが頭打ちになりがちだが、エトランゼに影響されて、他のゲーセンに遠征する常連さんも多いという。 その結果、総じて対戦のレベルが高くなっている。 理想的な環境だと思う。 俺が通うゲーセンもこうだといいのだが。 □ そんな風に過ごして、一ヶ月が経った頃。 土曜日の夕方の『ポーラスター』。 久住さんと一緒にバトルロンドのギャラリーをしていた俺に、電話がかかってきた。 通話ボタンを押すと、 『わーーーーーっはっはっは!! みたか遠野、ざまあみろ!!』 大声の主は、大城だった。 隣の久住さんにも丸聞こえで、思わず吹き出している。 「……いったいなんなんだ、大城」 『ついにやったぞ! ランバトで、三強を倒して、ランキング一位だ!』 「おお……それはおめでとう」 そうか。 ついに大城と虎実は、あのゲーセンで一位になったのか。 それは、俺が待っていた連絡だった。 『どうだっ! 俺たちだってやればできるんだぜ、わっはっは!』 『つか、話が進まねぇだろ! かわれ、バカアニキ!!』 電話の向こうで、大城の神姫が叫んでいる。 しばらくして、虎実の静かな声が聞こえてきた。 『……トオノか?』 「そうだ」 『アタシ、ランバトでトップになった』 「聞いたよ」 『……約束、覚えてんだろーな』 「忘れるはずがない。俺たちをバトルロンドに引き留めてくれたのは、お前との約束だよ、虎実」 『ばっ……んなの、どーでもっ……そ、それよりも、ティアと! ティアと戦わせてくれるんだろ!?』 虎実の声がうわずっている。 照れているのが手に取るように分かる。 俺は思わず苦笑した。久住さんの肩で、ミスティが吹き出している。 「もちろん。お前がそう言ってくれるのを待っていた」 『なら……約束を守ってくれ』 「わかった」 明日、いつものゲーセンで。 ついにティアと虎実のバトルだ。 俺は携帯電話の通話を切ると、いつものように胸元にいるティアに声をかける。 「ティア……約束を果たそう」 「はい、マスター」 そう言うティアは嬉しそうに微笑んでいた。 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2137.html
ウサギのナミダ ACT 1-20 ◆ 月曜日の夜、九時閉店少し前に現れた客は、息を切らして店に入ってきた。 端正であろう顔には疲労が濃く、目は赤く充血している。 徹夜明けであろうか。 夜通し楽しくフザケていたわけではないようだ。 その証拠に、疲れ切ったその顔の、両の瞳だけが、意志の光を強く放っている。 もちろん、今彼の置かれた状況を考えれば、楽しくフザケる気分ではないわけだが。 右手には痛々しい包帯。デイバッグを担いでいる。 シャツの胸ポケットからは、うさ耳の神姫が顔をのぞかせていた。 息を整えている、その青年に声をかける。 「いらっしゃい……遠野くん、だったかな?」 「はあ、はあ……店長……ご相談が、あります」 「……自分の中の整理はついたのかい?」 「……はい!」 迷いのない返事だった。 すべてを決めて、ここへ来たのに違いない。 ホビーショップ・エルゴへと。 青年の短くも熱い答えに、胸に炎が宿ったような気がした。 日暮夏彦はそういう男だった。 日暮店長は、アルバイトの店員と、彼の神姫・ジェニーに後を任せると、遠野貴樹を店の奥へと誘った。 □ ティアを神姫学校のスペースに預け、俺は店長に続いて店の奥へと入った。 わざわざティアを預けたのは、これから先の話をティアには聞かせられなかったからだ。 俺がこれから何を使って、何をするのか。 それを聞いたら、ティアはショックを受けるだろうし、俺を止めようとするだろう。 しかし、俺にはこの方法しか思いつかなかった。 だから、ティアには教えられない。 ティアを救うために。 店の奥、事務所兼休憩室のようなところに連れてこられた。 お世辞にも広いとは言えない。 だが、内緒話をするにはぴったりだった。 日暮店長は、電源が入ったままのPCの側の椅子に座り、向かいの席を俺に勧めた。 席に着く。 俺が小さなテーブルの上にデイバッグを置くと、店長はPCのそばにあった雑誌を俺の方に出した。 例のゴシップ誌の今週号だった。 ……つまり、店長は俺が今置かれている状況や、何の相談に来たのか、だいたい把握しているということだ。 「……話が早いですね」 「菜々子ちゃんから、この件で事前に連絡を受けていてね……先に調べさせてもらった」 やはり、私立探偵か何かなのだろうか。神姫専門の。 「店長の広いコネクションを見込んで、お願いがあります」 俺はデイバッグの中から、「それ」を取り出した。 取り出したものは二つ。 パッキンで厳重に包んだものと、メディアケース。 俺は日暮店長の前にそれを差し出した。 「見てもいいかい?」 包みを手にした店長に、俺は頷いた。 慎重にパッキンについたテープを剥がしていく。 包みは手のひらにすっぽり収まるほどの長細いものだ。 パッキンの下から、さらに布のハンカチが出てくる。 店長はそっと、その布をめくった。 「……っ」 さすがにちょっと驚いたらしい。 いくら神姫のボディを見慣れているといっても、人型のものに頭がないと、やはり生理的に嫌悪を感じてしまうのだろう。 その布の下にあるもの……それは、かつてのティアのボディだ。人間そっくりに作られ、あらゆる性的虐待に対応できる冗長性を兼ね備えた違法ボディ。 「……こっちのメディアケースは?」 「ティアの、過去の記憶です。ティアのメモリにはいっていたものを、光学ディスク三枚とメモリカードにそれぞれ収めてあります」 これが俺の最後の切り札だった。 違法ボディとティアの記憶。それは『LOVEマスィーン』が違法営業であることを裏付ける。 それゆえにティアは店から追われているが、それゆえに武器にもなる。 「この二つは、ティアが……俺の神姫が風俗店に所属していた証拠になるはずです。記憶の方には、風俗店のスタッフや常連客の記録もあります」 「……」 「これで……神姫風俗店『LOVEマスィーン』を告発したいんです。 ただし……ティアには何の関わりもないように」 俺が譲れないことは、そこだった。 ティアが警察の証拠として持ち去られたら、どうなるか分かったものではない。 この件はティアになんの影響も及ぼさないように事を進めなくてはならない。 日暮店長は、俺が差し出したものを、手にとっては眺めている。 「警察には連絡したかい?」 「していません。警察に相談したら……ティアを押収すると言うにきまっていますから。だから、日暮店長のところに相談に来たんです。久住さんが、神姫関係の探偵のようなことをしている、と言っていましたので」 「探偵、ね……」 店長は苦笑した。 そして、俺を見た。真っ直ぐで熱い視線が俺を射る。 「ひとつ聞きたいんだが……これを警察が知れば、君の神姫はともかく、君自身が警察から呼ばれるかも知れない。君にとって都合が悪いことになるかも知れんぞ?」 「かまいません」 即答だった。予測の範囲内だ。その覚悟は、昨晩終えていた。 「俺は、どうなってもいいんです。警察に証言しにいってもいい取り調べを受けてもいい、それで何か罪状があるなら甘んじて受けます。裁判で必要なら、証言だってしに行きます」 「……たかが、神姫一体のために?」 「……それで、ティアが安心して暮らせるようになるのなら」 店長の物言いに、俺は一瞬むっとしたが、それが揶揄ではなく、真剣な問いだということを、彼の視線が物語っていた。 俺はそれに応えるように、言葉を紡ぐ。 「俺は……ティアを無理矢理に自分の神姫にしました。自分の好みの武装をさせて、戦わせて……俺はティアに夢を叶えてもらったんです。 でも、それはティアが望むことじゃなかったかも知れない。それでもティアは笑ってくれるようになってきたから……その笑顔を守ることが、俺の、マスターとしての、責任だと思っています。 たとえ、俺のすべてをかけることになっても……ティアを守りたい。それが夢を叶えてくれたティアにしてあげなくてはならないことだから」 俺の奇妙な主張を、日暮店長は真剣な表情で聞いてくれている。 「無理な相談であることは、承知の上です。 でも、俺が頼れる伝手は、日暮店長しかいなかった。 俺が言うことが無理でも、次善の策を一緒に考えてください。 どうか……お願いします」 俺は深く頭を下げた。 日暮店長が、深く息をつく気配。 「君が警察に捕まったら、君の神姫はどうするんだ? ひとりぼっちになってしまうだろう」 「そのときは、久住さんに預けます。彼女なら分かってくれるだろうし……信じていますから」 「そうか……」 日暮店長は、視線をはずすことなく、俺を強く見つめている。 俺も視線を逸らさない。 もう決めたことなのだ。俺の決心は揺らがない。 やがて、日暮店長が笑った。 「わかった。なんとかしてみよう」 「……あ、ありがとうございます!」 「あ、これは借りておくぜ? 大丈夫、悪いようにはしない」 「……で、俺はどうすれば……?」 「そうだな……とりあえず、待っていてくれ。君が必要なとき、何かあったときには連絡する」 店長は左手を差し出した。握手に応じる。 日暮店長の握手は、やはり熱く堅いものだった。 これから店長が何をするのか、俺には想像もつかないが。 だが、彼は理屈抜きに信じられる、そんな気がしていた。 ◆ 閉店作業も終わり、アルバイトも帰った夜遅く。 ジェニーは自分のマスターを捜している。 「もう、マスターったら、なにしてるんでしょう……」 閉店直前にきたお客さんを相手していた。 だが、そのお客さんが帰った後も、店の仕事をほったらかして、姿をくらましたままだ。 はたして、日暮夏彦は、自分の部屋のPCの前で、にやけていた。 そのPCの画面を見て、ジェニーの頭は沸騰した。 「マスタアアアァァーーーーーーー!!? 仕事さぼって何やってんですかああぁぁ!!」 ディスプレイには、さきほど神姫学校に預けられていた、ある神姫の痴態が表示されている。 「うわああぁぁ!? ジェニーさんっ!? いや、ちょっと落ち着けって!?」 「これが落ち着いていられますかっ! 仕事さぼって何やってるかと思えばっ!!」 「だからっ!! これが次の仕事のネタなんだってええぇっ!?」 ジェニーは、いましもファイナルアタックライドをかましそうになったブレイドブレードを、すんでのところで止めた。 「次の……仕事?」 「ああ。久々の副業だぜ?」 にやり、と笑う夏彦。その口調からふざけた調子は消えていた。 PCのディスプレイに表示された画像が次々と変わる。 あられもない、を通り越したどぎつい画像の数々に、ジェニーは目を逸らした。 「ったく……神姫風俗でこんなことやってたなんてな……反吐が出る」 「じゃあ、なんでこれ見ながら、さっきはにやにや笑ってたんですかっ」 「いや、あれは思い出し笑いよ?」 きょとんとするジェニーを見ながら、夏彦はまたさっきのように笑い出す。 「だってよ、自分のすべてをかけても、神姫の笑顔を守りたいって言うんだぜ? あの青年は」 「神姫の笑顔を……?」 「そうだ。俺と同じくらいの神姫バカだ。笑わずにはいられないぜ……うれしくってな」 そう。閉店間際に入ってきた、あの青年は言ったのだ。 自分のすべてをかけても、自分の神姫を守りたいと。 笑顔を守りたいと。 夏彦はティアの記憶を紐解いた。 彼女が風俗の神姫だったと知っていてなお、その内容にショックを受けた。 彼女の記憶を見てもなお……あの青年はティアを自分の神姫にして、さらに守りたいと願うのだ。夢を叶えてくれた、と感謝すらしているのだ。 神姫バカだ。 夏彦からの最高の誉め言葉だ。 そんな男に出会えたことが、嬉しくて仕方がない。 そして、心が熱くなる。 ジェニーには、その夏彦の気持ちがよく分かっていた。 なぜなら、自分もそうだから。 あのクールな青年は、あの神姫の笑顔を守りたい、と言ったという。 マスターと神姫が笑い合う姿。それはジェニーが一番好きな光景だ。 だが……。 「でも、マスター。……このままでは彼の神姫は……笑えないのではないですか?」 「うん。よくわかってるじゃないか、ジェニーさん」 もしあの青年が捕まったりすれば、ティアはマスターと一緒にいることはできない。 彼女は無事でも、心から笑うことなんてできないだろう。 「だからさ……俺は、遠野くんもティアちゃんも、両方救いたい……彼らが心から笑いあえるように」 「……何かいい方法が……?」 ジェニーの問いに、夏彦が今回の作戦を囁いた。 「……ま、俺たちの負担がめちゃくちゃ増えるんだが」 「やりましょう」 ジェニーは間髪入れずに答えた。 いま、一人の神姫の笑顔を守るために、すべてを賭けることを決意したマスターがいる。 そして、彼はわたしたちの力を頼ってきた。 わたしたちは彼の願いを叶えることができる。 やらない理由がどこにある? なぜなら。 わたしたちはそのために戦っている。 『G』の力はそのためにこそあるのだから。 「……これからしばらく、徹夜だぜ?」 「でも、やるのでしょう、マスター?」 夏彦は笑って頷いた。 「決まりだ。早速始めるぜ、相棒」 夏彦は携帯電話を取り出し、アドレス帳から目当ての名前を呼びだして、電話をかけた。 「ああ、もしもし、たっちゃん? そう、俺。……残業? 仕事熱心だねぇ。 で、ものは相談だ。最近旬のネタがあるんだが……」 □ それからしばらく、俺は結局、いつもの日常生活に戻った。 すぐにでも警察から連絡が来るのではないかと身構えていたが、拍子抜けするほどに何もなかった。 あの店長が動いてくれたところで、すぐに警察が動くとは限らない。 そう気がついて、結局俺自身に他に何をすることもなく、大学に行って勉強したりしていた。 ティアのことは心配だったので、できる限り連れ歩くことにした。 ティアは時々俺を見上げ、何か言いたそうにしている。 「どうした?」 「……なんでもありません」 そう言って、口をつぐんでしまう。 レッグパーツの訓練は、夕方からやっている。 幸いなことに、ティアはスランプから脱したようで、順調に進んでいた。 ティアは多くを語らないが、週末の事件で何か心境の変化があったようだ。 それがいい方向に向いているなら、それでいい。 久住さんからは、よくメールが来るようになった。 内容は他愛もないもので、俺たちやエルゴの店長について尋ねることもなかった。 最近、ゲーセンに来ている四人の女子高生と仲良くなったらしい。 俺も思い当たるグループがあった。どうやらその女の子のグループらしかった。 ここのところ平日もゲーセンに出向いて、彼女たちにバトルロンドの稽古を付けているという。 楽しそうな様子が、文面から伝わってきた。 今回の件で、久住さんにはいろいろと世話になってしまった。 落ち着いたら、改めてお礼を言いに行こう。 そんな風に平日を過ごしていた俺だった。 今思えば、このときにはすでに事態は激しく動いていたのだろう。 それについて、俺が気がつく術は何もなかった。 事態が判明したのは、土曜日の朝のことだった。 その日は、ティアと出会ってから、もっとも長い一日になった。 一日の始まりを告げたのは一本の電話だった。 大城からの、突然の電話。 「なんだ、こんな朝早くから」 「いいから、テレビ見てみろ、テレビ!!」 俺はテレビの電源を入れる。 朝のニュースが画面から流れ出す。 そして……俺は驚愕した。 『……昨晩、いわゆる神姫風俗に対し、警察による全国一斉摘発が行われました。 これはMMS保護法制定以来、初めての一斉取り締まりとなります。 MMSを利用した風俗営業は、風俗営業法違反だけでなく、MMSに対する性的虐待によるMMS保護法違反の疑いもあり……』 日暮店長との会談から五日。 俺たちを取り巻く世界は、急速にその様相を変えようとしていた。 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2181.html
ウサギのナミダ ACT 1-34 ■ 「……不器用な人、かな」 わたしの答えに、三人とも、「え~?」と不満の声を上げた。 「不器用なマスターじゃ、メンテナンスも満足にしてもらえないんじゃない?」 「あ、そうじゃなくて……手先は器用なの」 一四番さんの言葉に、わたしは説明する。 「手先じゃなくて……こう、気持ちとか、感情を外に出すのが苦手な人なの。 でも、本当は、とても優しくて……」 わたしは内心驚いている。 自分の説明がなぜかやたらと具体的だったから。 「いつも仏頂面だったり、怖い顔だったりするけど、笑顔が素敵で。 好きな女の子の前では、照れ屋さんで。 口に出しては言わないけど、わたしのことを一番に考えてくれていて。 わたしをいつもまっすぐに見てくれる……」 三人とも、わたしの言葉を真剣に聞いてくれてる。 わたしの頭の中で、一人の男性の姿が浮かび上がろうとしている。 「その、人の、名前、は……」 とおの たかき。 どうして。 どうしてこんな大切なことを忘れていたの。 世界で一番大切なマスターのことを……! わたしはすべて、はっきりと思い出していた。まるで、メモリにちゃんとアクセスできるようになったかのようにクリアに。 そう、マスターの元でわたしは、わたしは……。 「ね、ねぇ、どうしたの? どこか痛いの? 気分悪い?」 三六番ちゃんが、わたしに近寄ってきて、背中をさすってくれる。 わたしはうつむいて泣き出していた。 それは贖罪の涙だった。 本当は、この三人の前に現れる資格なんてなかった。 それに気がついてしまった。 「ご、ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさ……」 謝っても、わたしは許されないと思う。 それでも謝る以外にできることなんてなかった。 「どうしたの? どうしてあやまってるの?」 三六番ちゃんの心配そうな声。 ごめんなさい。わたし、あなたにそんな風に優しい言葉をかけてもらう資格なんてないの。 七番姉さんも、一四番さんも側に来てくれた。 二人も心配そうな顔をして。 「どうしたの? 二三番」 七番姉さんの優しい声に、わたしは告白する。 「わたしっ……お店の外に連れ出されて……そのあと、幸せだったのっ……。 ……マスターに、出会ったの……。 マスターは……わたしを、風俗の神姫と知っても……受け入れてくれた……」 涙が止まらない。 胸が痛い。 こんなに耐えられない痛みは何度目だろう。 でも、それを堪えて、言わなくてはならない。 きっとそのために、ここにいると思うから。 「……幸せだったの……みんなが、みんなが辛い思いしているときにっ! わたし、ひとりで幸せだったのっ…… みんなを助けようなんて、考えることもなく……ひとりだけ…… 裏切り者なの……あたしは…… みんなに、合わせる顔なんて……あるはずない……!」 ずっと、こんなに幸せでいいのかと思っていた。 本当は、わたしだけじゃなくて、お店の神姫がみんな幸せにならなくちゃいけないと、ずっと思っていた。 わたしだけ幸せでいていいなんて、虫のいい話。 そんなこと、あっていいはずがなかった。 だって、お店の神姫は、わたしと同じくらい、あるいはそれ以上に、ひどいことされて、辛い思いをしてきたのだから。 だったら、みんなが幸せにならなくちゃ……。 「裏切り者なんて、思ってないよ?」 三六番ちゃんの声に、わたしは顔を上げる。 涙にかすむ彼女は、小首を傾げて、いっそ不思議そうな表情。 「それどころか、感謝してるのに」 「な……なんで……?」 「だって……そのマスターなんでしょう? お店をなくしてしまったのは」 「え……!」 なんで、そんなことを知っているの。 驚いているわたしに、七番姉さんが言った。 「わたしたちは、わかっていたわ。 あなたがいなくなって……お客さんに連れ去られて、しばらくして、お店が警察の取り締まりを受けた。 だったら、きっとあなたが、外で誰かと出会い、お店がなくなるように頑張ってくれたんだって、そう思ってた」 七番姉さんは、髪を掻き揚げた。 「……まさか、全国の神姫風俗が取り締まられるとは、思わなかったけれど」 それは、マスターがしたこと。 マスターがわたしのために、戦ってくれたから。 刑事さんが、お店の神姫は、別のマスターに引き取られると聞いて、わたしは安心してしまっていた。 自分の罪から目を逸らすように。 「わ、わたしは……ゆるして、もらえるの……?」 「許すなんて……最初から恨んじゃいないよ」 一四番さんの微笑みは、とても優しかった。 「それどころか……あんたはわたしたちの希望さ」 「きぼ……う……?」 「そうさ。 あんたは、風俗の神姫のままでも受け入れてくれる、素敵なマスターに出会えたんだろ? だったら、あたしたちだって、きっと素敵なマスターに出会える。そう信じられる。 きっと、ここから出ていった連中だって、幸せになってるって、信じられるんだ」 一四番さんは、わたしをまっすぐに見て、言う。 真剣な表情。 「それだけじゃない。 今も、神姫風俗にいて、苦しんでいる神姫はたくさんいる。 その神姫たちが、あんたのことを知ったら? 希望が持てる。 風俗の神姫でも優しく迎えてくれる人が、現れるかも知れない、って。 限りなくゼロに近い可能性かも知れない。 でも、ゼロじゃない。ゼロじゃないんだよ。 ……あんたがいるから! あんたが、すばらしいマスターと出会えたことが、その証拠なんだよ!」 そんなこと。 でも、マスターと共にいることを、みんなが許してくれるのなら。 こんなに嬉しいことはない……けれど……。 「わたし……マスターと一緒にいてもいいの……? ……幸せでいいの……?」 わたしの両の瞳からは、いまだに大きなしずくがこぼれていく。 そんなわたしに、三六番ちゃんは、にっこりと笑いかけてくれた。 「もちろんだよ。あなたが幸せでいてくれなくちゃダメだよ」 彼女は少し寂しさに笑顔を少し曇らせる。 「わたしたちは……これから、記憶を消されるから……次に会ったとき、あなたのこと、覚えてないかも知れない。 でも、きっとわかるよ。 あなたがわたしたちにとって、特別な神姫だってこと。 きっとあなたのこと、応援するから……だから……」 三六番ちゃんは、まっすぐにわたしを見て、花開くような笑顔で言った。 「幸せになって」 わたしは。 涙を止めることができなかった。 嬉しくて、嬉しくて。 かつての仲間たちは、わたしのことを認めてくれないと思っていた。 恨まれていると思っていた。 でも、みんな、わたしのこと……わたしのマスターのことを認めてくれている。 この気持ちを、はっきりと伝えなくてはいけなかった。 声を出すのが難しかったけれど。 絞り出すように、言った。 「あり……が……とう……」 そのとき。 聞こえた。 今度こそ、はっきりと。 マスターが、わたしを呼んでいる! 「ごめんね、みんな……わたし……帰らなくちゃ……マスターのところに……」 マスターだけじゃない。 仲間たちの呼び声も、わたしの耳に届いてきた。 帰ってこい、と。 「帰って……戦わなくちゃ……マスターと一緒に……」 それが、今のわたし、だから。 涙を拭う。 もう泣きたい気持ちは、どこかへ飛んでいた。 決然とした気持ちだけが、胸にある。 戦う。マスターと共にあるために。 身につけていたワンピースが弾け飛ぶ。 いつものバニーガールの姿に戻っていた。 すると。 わたしの背後に、光の穴が出現した。 「ゲートよ。ここを通って、あなたの、元の場所に戻れるわ」 七番姉さんが教えてくれる。 わたしは頷いて、三人を見た。 未練は、ある。立ち去りがたく思う。 だけど、三人ともみんな微笑んでくれている。 不意に、三六番ちゃんが尋ねてきた。 「ねえ……名前を教えて?」 「え?」 「マスターがくれた、あなたの、本当の名前」 本当の名前。 そう、この名こそが。 わたしが今、マスターの神姫であることの証……。 「わたしの名前は……ティア」 いま、わかった。 この名こそ神姫の誇り。 武装神姫は皆、その誇りを守るために、戦っている……! 「ティア……」 三人の仲間は、わたしをまっすぐに見て、その名を呼んだ。 そして、ガッツポーズを取ると、声を合わせた。 「がんばって!!」 明るい笑顔で激励をくれた。 わたしも微笑んで、頷いた。 わたしの身体が輝き出す。 光の粒子になって、ゲートに吸い込まれていく。 三人の姿が白い光でかすんでいく。 「みんなも……みんなも、必ず……!」 必ず会えるから。 素敵なマスターに、必ず出会えるから、だから。 みんなも、幸せになって。 すべて言う前に、視界は光に包まれて真っ白に染まった。 伝わったと思う。 そう信じて。 わたしの意識は超高速で電脳空間を駆け抜ける。 帰る。 マスターの元へ。 わたしを『ティア』と呼んでくれる仲間たちの元へ。 そこがわたしの居場所だから。 □ 「ティアアアアアアアアァァァァーーッ!!」 瞬間、時が凍った。 ■ 感覚が戻ってきた刹那。 わたしの耳に届いたのは、一番大切な人の絶叫だった。 目の前にいるのはクロコダイル。 ハンマーを構えている。 現状を認識するよりも早く、身体が勝手に動き始める。 ……これが、雪華さんの言っていた、無意識の機動だろうか。 膝を曲げ、身体を前屈みに折り、右脚を後ろにスライドさせる。 クロコダイルの一撃が、わたしの頭上をすり抜ける。 右のうさ耳がちぎれ飛んだ。 わたしはホイールを急速回転させる。 その場で高速ターン。 身を屈めたままの体勢から、回転しながら身体を上げる。 クロコダイルは、ハンマーを振り抜いたところ。 わたしは、勢いのついた右脚で、クロコダイルの背中を蹴り飛ばした。 重いハンマーを振り、勢いのついていたクロコダイルの身体は、わたしの蹴りで加速され、ものすごい勢いで吹き飛んだ。 塔の中を、大きな激突音が響きわたる。 □ その瞬間、ゲーセンのバトルロンドコーナーは、確かに時間が止まっていた。 筐体の向こうの井山は、目を輝かせた笑い顔のまま静止していた。 ギャラリーは大型ディスプレイを見上げ、目を見開いたまま、あるいは顔を両手で隠したりして、止まっている。 隣にいる久住さんも大城も、俺の背後の少女四人組も動く気配はない。 何より俺が、身動きできずにいた。 その場を一瞬の沈黙が支配している。 時間の動きを示すのは。 ティアの頬を伝う、ひとしずくの涙。 ティアの頭は無事だ。 静寂の中、立ち尽くしている。 いつのまにか、右のうさ耳がちぎれている。 沈黙を破ったのは、クロコダイルだった。 『がああああぁぁっ!!』 土煙の中から、這いつくばっていた上半身を持ち上げている。 口から吐瀉物をまき散らしながら、叫んだ。 『なぜだっ! なぜ戻ってきた!?』 ティアは静かに答えた。 『……声が、聞こえたから』 ■ 「声が聞こえたから。 マスターが、わたしを呼んでくれる声が。 仲間が、わたしを呼んでくれる声が。 だから、わたしは戻ってこられたんです」 心は穏やかだった。 クロコダイルの声を聞いても。 視線の先にいるその姿を見ても。 今は怖いと思わない。 「ありえない! そんなもの、聞こえるものか!!」 「……あなたには分からない」 「なに……!?」 「お互いを大切に思う気持ち……絆があるから……聞こえたんです」 クロコダイルは、これ以上ない憤怒の形相でわたしを見た。 「絆だと……!? えらそうに、汚れた風俗の神姫風情が……!!」 「っ……!!」 瞬間、わたしは睨み返していた。 許さない。 風俗の神姫だからって、貶められる理由は何もない。 だって、わたしたちだって、幸せを求める気持ちは同じだから。 かつての仲間を、今も苦しんでいる仲間たちを、侮辱するのは許さない。 「そんな言葉……わたしは、もう、恐れません!!」 そう。 もうわたしは、自分の過去を恐れない。 いいえ、本当は、はじめから恐れることなんてなかった。 いま、確かなものが、わたしの中にあるから。 わたしは、小さいけれど、ただ一つの確かなものを、胸の前で握りしめる。 「だって、誇りがあるから……」 それは名前。 誰よりも大切な人がくれた、その名前こそ、わたしがわたしである証。 「わたしの名前は、ティア」 そして誇る。 「遠野貴樹の、武装神姫だから!!」 ◆ 歓声が爆発した。 ギャラリーしている人間も神姫も。 誰もが声を上げずにはいられなかった。 「届いた、届いたよ!」 美緒は、三人の仲間たちに抱きしめられる。 みんな喜びに声を上げている。 怖かった。届かないかも知れない、と思った。 でも届いた。 ティアが聞こえたと言ってくれたのだ。 仲間たちと抱き合いながら、美緒は安心と喜びで泣きじゃくる。 □ 「やったぜ……奇跡が起きたぜ、おい!!」 大城が俺の頭を掴んで揺さぶっている。 「帰ってきた……あなたの声、届いたわ、遠野くん!」 久住さんは俺の右腕を掴んできた。 二人の感触が、呆けていた俺を、現実に立ち返らせる。 周囲は歓声が響き、うるさいほどだ。 俺はまだ、ショックの抜けていない気持ちのまま、ヘッドセットをつまんだ。 「……ティア……?」 『はい、マスター』 いとも簡単に返ってくる返事。 その声が、俺の心に深く染み込んでくる。 言いたいことがたくさんあった。 聞きたいこともたくさんあった。 どこへ行っていたのか、誰かと会ったのか、どうしていたのか、俺の声は本当に届いていたのか、身体は大丈夫なのか、心は無事なのか…… だが、頭を一瞬で駆けめぐった言葉は、一言に集約された。 「……走れるか?」 『はい』 力強く。 ティアは何か吹っ切れたように、はっきりとした返事を返してくる。 「……俺なんかの……指示でも……走れるのか?」 『……俺なんか、っていうの、禁止です』 ティアに叱られた。 弱気になっているのは、俺の方か。 そして、続く言葉。 『マスターと一緒に戦えること、わたしの誇りです。 世界の誰よりも、マスターを信じています』 その言葉が俺の心を鷲掴みにした。 溢れ出したのは、闘志。 そう、今はまだ、バトルの真っ最中だ。 勝つ。 ティアのために、俺のために。 助けてくれた久住さんとミスティ、待っていてくれる大城と虎実。 手伝ってくれた四人の女の子たち、それから、海藤とアクア、高村と雪華、日暮店長と地走刑事……俺たちの仲間のために。 そして、井山との因縁を断ち切るために。 「ティア、お前がそう言ってくれるのなら……一緒に戦おう……勝ちに行くぞ!」 『はい、マスター!』 俺は立ち上がり、井山を睨む。 奴は顔を引きつらせていた。 いまや奴のアドバンテージなどないに等しい。 それどころか、ほぼ完全な勝利が手から滑り落ちていったのだ。 井山の顔からは、一切の余裕が消え失せていた 「行くぞ……井山……」 俺は、左手で、井山をまっすぐ指さした。 そこで初めて、手のひらに爪が食い込んで傷になっていることに気がついた。 俺は意に介さず、井山に言葉をぶつける。 「ここからが……本当の戦いだ!!」 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/kurogirihankoku/pages/367.html
評価値 名称 体格 筋力 耐久 外見 敏捷 器用 感覚 知識 幸運 基礎評価 21 21 21 21 21 21 21 21 21 継承 1 1 1 1 1 1 1 1 1 総評価 22 22 22 22 22 22 22 22 22 ○英吏・M・シバムラのHQ継承:全能力+1(根拠) 可能行為(括弧内はフルブースト時) L:クイーンオブハート={ t:名称=クイーンオブハート(ACE) t:評価=全能力21 t:特殊={ クイーンオブハートのACEカテゴリ=個人ACEとして扱う。 クイーンオブハートは英吏かつ山岳騎兵しか扱うことが出来ない。 クイーンオブハートは森林・山岳では防御評価に+4される。 クイーンオブハートは森林・山岳では移動時のARは1でよい。 クイーンオブハートのARは18としてみなし、1人機まで輸送出来る。 }
https://w.atwiki.jp/ce00582/pages/3315.html
using System; using System.Collections.Generic; using System.Linq; using Microsoft.Xna.Framework; using Microsoft.Xna.Framework.Audio; using Microsoft.Xna.Framework.Content; using Microsoft.Xna.Framework.GamerServices; using Microsoft.Xna.Framework.Graphics; using Microsoft.Xna.Framework.Input; using Microsoft.Xna.Framework.Media; using Microsoft.Xna.Framework.Net; using Microsoft.Xna.Framework.Storage; namespace game0205 { public class Game1 Microsoft.Xna.Framework.Game { GraphicsDeviceManager graphics; SpriteBatch spriteBatch; int x, y; private Texture2D mizu; public Game1() { graphics = [[new]] GraphicsDeviceManager(this); Content.RootDirectory = "Content"; } protected override void Initialize() { x = 0; y = 0; base.Initialize(); } protected override void LoadContent() { spriteBatch = new SpriteBatch(GraphicsDevice); mizu = Content.Load Texture2D ("7432"); } protected override void UnloadContent() { // TODO Unload any non ContentManager content here } protected override void Update(GameTime gameTime) { if (GamePad.GetState(PlayerIndex.One).Buttons.Back == ButtonState.Pressed) this.Exit(); if (x Mouse.GetState().X)x=x+ 1; if (x Mouse.GetState().X) x = x - 1; if (y Mouse.GetState().Y) y = y + 1; if (y Mouse.GetState().Y) y = y - 1; if (x 400) x =400; if (y 400) y = 400; if (x 0) x = 0; if (y 0) y = 0; base.Update(gameTime); } protected override void Draw(GameTime gameTime) { GraphicsDevice.Clear(Color.CornflowerBlue); spriteBatch.Begin(); spriteBatch.Draw(mizu, new Rectangle(x, y, [[100]], 100), Color.LightGray); spriteBatch.End(); base.Draw(gameTime); } } }
https://w.atwiki.jp/gooska1002/pages/8.html
背景 目的