約 993,495 件
https://w.atwiki.jp/mousouyomi/pages/1662.html
【妄想属性】昔の妄想 【作品名】ご先祖様は凄かった 【名前】青い帽子の先祖(最終決戦時) 【属性】秘剣ナンタラカンタラーを持つ剣士 【大きさ】168cm 【攻撃力】剣の斬撃が山(富士山クラス)を貫通する。 厚さ10mの鉄の塊を真っ二つにした。 剣を大地に突き刺すと半径20mの範囲に地割れが起きる。 【防御力】130台以上の戦車に囲まれて砲撃されても大丈夫。 【素早さ】青い帽子の先祖(最終決戦時)が100m走ると、普通の人間の目にはまるで瞬間移動したかの様に見える。そのスピードで自由に行動可能。 1m離れた所から銃で撃たれてもギリギリ避けれる。 【特殊能力】 敵の攻撃を利用する攻撃:敵が放った攻撃を秘剣ナンタラカンタラーが受け止め、吸収、 その攻撃力を秘剣ナンタラカンタラーに上乗せできる。 一度攻撃すると上乗せされた攻撃力はリセットされる。 バズーカ130発分の攻撃力までなら吸収できる。それ以上はちょっと無理。 神がかり的幸運体質:青い帽子の先祖(最終決戦時)は信じられないくらい運がいい。 たまたま攻撃した所が敵の急所だったり、何の気無しにした行為が自分にとってプラス、相手にとってはマイナスになったり… そして何より、どんな攻撃をされても青い帽子の先祖(最終決戦時)はその攻撃を“何故か運よく回避している” どう回避するのかはその時の状況によるが、大体が本人も、敵も予想だにしない回避の仕方をする。 よく分からないけど、とにかく運がいい。それが能力。 【長所】力強く、そして流れる様に繰り出す剣技。我流。 仲間を傷つけられるか、もの凄くピンチになると1.5倍くらいパワーアップする。 【短所】青い帽子をけなされると泣く 【説明】脳内作品「ご先祖様は凄かった」の大怪獣ギラス編の登場人物(過去の主人公)。 青い帽子の500年前くらいのご先祖さん。 凶悪なモンスターを狩る「Mハンター」を生業としている。 青い帽子の先祖を含めた9人からなるハンターチーム「青い流星」のリーダー。 モンスターハントだけに限らず、世界的に有名な犯罪チームいくつもを壊滅させたり、 闇の世界から攻めてきた闇の軍勢と真正面から戦い敵軍の大将「闇魔王」を討つなど、信じられない様な大活躍を連発し、その名を世界中に轟かせている。 覚醒前で、この時はギラスにまったく敵わなかった。 一族の特徴である青色の帽子(ベレー帽っぽい)をかぶっている 【備考】多分19才 【戦法】積極的に攻めるけど無理はしない 502 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2009/03/02(月) 23 18 55 青い帽子の先祖(最終決戦時)考察 4km弱切断+戦車無傷+一瞬で100m+1m音速反応 ○レボルス6号 攻撃が遅いので勝てる。 ×シーサーマン 攻防高すぎる。 ×神崎冥 即死負け。 ○鋼鉄メイドさん 反応遅いのでいけるか? ○霧崎 大計 同上。 ×生徒会長エヴァンジェ 反応互角なので厳しいか? ×メテュール 速度互角なので手数分不利。 ×七賢者 微妙だが開始距離があるので負けか。 ○巨大化魔王様 余裕。 ×ラージュ 速すぎる。 ×オオオオオオスズメバチ 開始距離の関係で負け。 ×チーム喰霊(諫山黄泉☆土宮神楽) 強すぎる。 ×*4アスラン~ペタマン 速すぎる。 ×モアイマン 堅すぎる。 ×エネル 無理。 ○弱王 遅いのでどうにか勝てるだろう。 ×*11シルバー=マーガレット王妃~アイン 速すぎる。 ○*3飛行ハニワ~ミサイルハニワ 反応は互角以上。勝ち。 ×親部友子 通常攻撃しかない。 ○ヴェルロス=ルーザス 遅いので勝ち。 ○Z80 遅いので勝ち。 ×へんかまん 速すぎる。 ○ゼロゼロナンバーサイボーグ 反応防御低めなのでいけるか? ○黒塚 永時 反応遅いのでいけるか? ○ビル壊す人 攻防低いので勝ち。 △組曲『ニコニコ動画』 互いに決め手なし? ○ニトス=ジークフリード 遅いので勝ち。 アイン>青い帽子の先祖(最終決戦時)>飛行ハニワ
https://w.atwiki.jp/12odins/pages/749.html
装備可能ジョブ 駆出 戦士 魔術 僧侶 騎士 盗賊 大魔 神官 パラ 吟遊 部位 種類 コスト 売却値 最大Lv スキルと効果 進化 頭 軽装 6 3000 15 なし なし 基礎能力 HP - MP - 物攻 - 俊敏 2 魔攻 - 回避 - 回魔 - 命中 8 物防 1 会心 - 魔防 1 属性 なし 基礎能力(LvMAX) HP - MP - 物攻 - 俊敏 9 魔攻 - 回避 - 回魔 - 命中 41 物防 5 会心 - 魔防 5 属性 なし ルーン生成 生成結果 確率 生命のルーンⅢ 26% 精神のルーンⅢ 23% 拒乱のルーンⅢ 6% 拒盲のルーンⅢ 6% 拒幻のルーンⅢ 6% 拒眠のルーンⅢ 11% 拒封のルーンⅢ 11% 拒死のルーンⅢ 11% セット装備 セット効果 - なし - - - - 障害耐性 毒 0.0% 妨害 0.0% 混乱 0.0% 麻痺 0.0% 暗闇 0.0% 睡眠 0.0% 幻惑 0.0% 封印 0.0% 石化 0.0% 即死 0.0% 属性耐性 物理 0.0% 魔法 0.0% 火 0.0% 冷 0.0% 水 0.0% 雷 0.0% 土 0.0% 光 0.0% 風 0.0% 闇 0.0%
https://w.atwiki.jp/mosagehat/
なめこ大繁殖! 最近私は「なめこ大繁殖」にハマっています。 パソコンでできる無料版です。 ちなみに妹は3DS版を持っています。 私ですら3DSを持っていないのに……羨ましい限り。 で、話はパソコン無料版のゲームに戻ります。 最初はなかなかコツを掴めなかったのですが、色んなパターンを知ってルールを理解したことによって、そこそこコツを掴めました。 まだまだランキングに乗る程のうまさではありませんが、これからどんどん慣れて、頑張って行きたいと思っています。 http //www.free-roommate-search.net/
https://w.atwiki.jp/uncyclopediamabiwiki/pages/334.html
#shadowheader ファッション アイテム コレクション シリーズ Vol.1 帽子。 報酬:モンゴラージ魔道士の帽子(pre A 隠れた) ヒドゥン/隠れた(Hidden) Str 5減少 鍛冶B以上の場合、最大スタミナ2~4増加紡織B以上の場合、Dex 2~4増加 ページ画像 →[[別ページ ./Page]]に移動しました。 収集アイテム 価格は、種族支持による割引のない状態で「平日の購入費(曜日割引購入費)」と表記 アイテム名 NPC販売 裁縫型紙 ドロップ その他 1 リリナ商人帽子 4100G(3895G)マルコム,エレノア,レプス 釣り(漁船) 2 リリナキャップ 6500G(6175G)シモン,エフィー 巨大ワニ ランダムボックス 3 羽根つきアーチャーキャップ 9900G(9405G)ギルモア,エフィー,レプス 巨大ライオン コンヌース地下迷路宝箱 4 モンゴ帽子 22500G(21375G)シモン,エレノア,エフィー 11250G(10687G)ノラ,グラニテス ランダムボックス 5 トーク帽子 23000G(21850G)シモン,エフィー 6 魔法士の帽子(魔道士の帽子) 200G(190G)バルター,グラニテス,エフィー レッドスケルトンレッドスケルトン(アーマー)スケルトン(ヘビーアーマー) アルバイト報酬(ネリス) 7 革頭巾 1250G(1187G)バルター,エフィー 灰色キツネ 8 ボリュームベレー帽 ジャイアントヘッドレス 青ヘビ 釣り(ティルコネイル,ケアン港) 費用合計 可能な限りNPCから完成品/型紙を購入した場合、必要経費は以下のようになります。 モンゴ帽子は完成品も型紙も販売されている為、両方のケースを併記 価格は、種族支持による割引のない状態で「平日の購入費(曜日割引購入費)」と表記 モンゴ帽子入手法 NPC販売品購入費 型紙購入費 総計 完成品購入 66,000G (62,700G) 1,450G (1,377G) 67,450G (64,077G) 型紙購入,裁縫作成 43,500G (41,325G) 12,700G (12,064G) 56,200G (53,389G) これらの費用に加え、以下のものが必要となります。 ボリュームベレー帽(ドロップ品、釣り、裁縫(型紙はレアドロップ)等) 革頭巾(裁縫、もしくはドロップ品) 魔道士の帽子(裁縫、ドロップ品、アルバイト報酬等) モンゴ帽子を作成するならその材料(材料費) コメントフォーム 革頭巾は灰色キツネも落とすから、裁縫が面倒ならそっちも手 -- 2006-06-21 (水) 15 41 59 NPC販売品のほとんどはエフィーから購入できますね。(リリナ商人帽子を除く) -- 2006-07-27 (木) 16 22 20 そしてリリナ商人帽子はイリア遠洋漁船で釣る事も可能、と… -- 2006-08-06 (日) 12 58 41 どーでもいいけど、トーク帽子の収集後の性能表示が武器みたいなことになってたりする -- 収集アイテムを表にまとめました。また、費用合計の表は縦の段に曜日割引が割り振られ価格表記が「完成品購入時(型紙購入時)」となっていたので、組み直しました。 -- 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/meidaibungei/pages/277.html
2005年04月16日(土) 01時39分-木組 森を歩いていた。 白い森。幹も葉も透きとおった、白い森。 陽射しがきらきらと舞い、わたしの行く手をさえぎる。漆黒の髪も服も、繊維にほぐれて溶けてしまいそうだ。 迷っていた。けれど、どこへ行けばいいのかは、わかっている。 まばゆく浮かぶ水晶の木々、その先にかすかに灯る銀色の明かり。無秩序で無邪気な陽光の妖精とは明らかに違う、穏やかで静謐な銀の色。 それは遠ざかろうとしていた。ゆっくりと高く舞い上がっていく。 いけない。離れては、いけない。 空に右手をさしのべる。上向いたわたしの目に、踊り狂う透明な光たちが焼きついた。 さしのべた手を握る。握って、つかむ。引き寄せる。 風が吹いた。巻き上げられた髪が目隠しのように、銀色の明かりをおおい隠した。 メイズは身じろぎした。 ぼんやりと、目に映る茶色いうずを眺める。それが天井の木目だと分かって、ようやくメイズは自分が夢から覚めたことを確認した。 体の左側が暖かい。見なくても分かっていた。ビスのところのリオが、昨日は遊びに来ていたのだ。いつものように夜更かしして、いつものように自分と同じふとんで眠った――まだ、寝ている。 金髪に包まれるようにして寝息を立てている少女の頭をそっとなでると、メイズは音を立てないようにベッドから抜け出した。 寝台脇の姿見には、黒髪を腰まで垂らしたねぼけ顔の女が映っている。目をこすってみたがどうにも冴えないので、メイズはスリッパをはくと、ローブの裾から飛び出したしっぽでバランスをとりながら、あぶなっかしい足取りで玄関へと向かった。 メイズの家には、私室を兼ねている寝室の他には、居間と玄関しかない。 途中で棚に肩をぶつけ、輸入物の時計を落としそうになりながらも、メイズはなんとか玄関への扉までたどり着いた。この分厚いブロード材の扉は、狩人のビスがわざわざあつらえてくれたものである。牡羊のドクロが豪快に彫刻されていなければ、酔狂なレリーフが刻まれていなければ、もう少し彼のことが好きになれたのにと、これを見るたびにメイズは思う。 扉を開ける。とたんに吹いた強い風がメイズの髪を巻き上げ、はためかせた。 黒い髪―― メイズは夢を思い出す。 あの夢そのものは、たまに見る。あの日もあの夢を見た後、自分はいつものように目覚めた。いつもの場所――一本樹の丘、いつも薬草採りの帰りにまどろむ場所でだ。 いつものように。 けれどそれは、「いつものように」と称するには不可欠なものが、すっぽりと抜け落ちたものだった。転がっていた薬草の籠を拾い、手にしていた銀帽子をかぶって家に帰って……そこでメイズは、自分が夢を見るより前のことが思い出せないことに気がついたのだ。 いつものように。それは間違いない。一本樹の丘で昼寝するのも、そのとき薬草の籠をほっぽり出しているのも、なじんだ行動だった。朝起きてから顔を洗いに出るまでの動作のように、何も考えなくても体が覚えている、そんな行動だ。家に帰る道も覚えていたし、薬草を干すやり方も覚えていた。薬草籠の置き場所だって、そうだ。 ただ、帽子は置き場所に困って、あとで帽子掛けを買いに行った。 お気に入りの銀帽子なのに、それが今までどこにあったのか思い出せないというのは、やはり変だ。ずいぶん前にメイズはそう結論して、それきりそのことは考えなくなった。自分に何か奇妙なことが起こったとしても、別にそれで困ってはいないからだ。ビスにしてもリオにしても、顔をあわせた時には、初対面のころからこれまでの付き合いをもう全部思い出していたのだから。 冷水をたっぷり汲んだ桶を引き上げて、メイズはその中に手を突っ込んだ。びりびりと体の芯がしびれて、ローブの下でしっぽの毛が逆立った。ばしゃばしゃと顔を洗う。冷気が沁みとおり、頭脳の奥でがんばっていた睡魔を追い払ってくれる。 ふう、と息をつく。 メイズはようやく目を覚ました。 「メイズ! おはよっ。おなか空いた!」 戻ってみると、もうリオは起きだしていた。寝巻き用に着ていたメイズのマントを脱いで、シャツ一枚だ。 「おはよう、リオ。ごはんはビスに会ってからよ」 メイズは微笑み、それから昨日リオが脱いでそのままになっている上着を差し出してやった。着替え始めたリオの横で、自分も着替えることにする。クロークからズボンやシャツ、ドレスマントやコート、リボンタイを選び出す。どれもこれも魔法で生み出したものなので、メイズのオリジナルだ。色は全て黒。これらを全てまとえば、メイズはかつての二つ名“黒影の”に恥じない格好になる。もっとも今では、メイズの二つ名はそれではないのだが。 「……?」 ローブを脱ぎ去ったところで、横からじっと自分を見つめてくる視線を感じ、メイズはリオを見返した。かぶったセーターからこちらをのぞくようにしていたリオは、照れたようにそっぽをむいて、 「ううん、メイズって、きれいだなあって」 今度はメイズのほうが面食らった。ビス以外に自分をそう形容する人物を知らなかったからだ。けれど、すぐに思い当たった。リオは人間なのだ。獣人の審美眼では「論外」である自分も、彼女にとってはそうではないのだろう。 「ありがとう」 とりあえず、そう返す。ひょっとしたら微笑んでいたかもしれない。同じことをビスに言われたときは困惑するだけだったのに、不思議なことだ。 服は着終えた。最後の仕上げに、帽子台に載っている円筒形の銀帽子をかぶり、メイズは姿見に向き直った。先刻のねぼけた女はどこにもおらず、ゆるぎなく落ち着いた魔女がそこに映っている。これこそ“銀帽子の”メイズだ。三角耳としっぽをぴょこぴょこと動かしてみてから、メイズはリオに声をかけた。 「リオ、出かけるわ」 「はあい!」 元気のいい返事が、どたどたという足音と共に遠ざかっていく。その後をゆっくり追いながら、メイズは今日起こる出来事について思いを馳せていた。 「メイズー! 籠持ったよー!」 もう扉の外から、リオの声が聞こえてくる。 メイズは扉を開けた。 * 銀帽子。 というのは、メイズがかぶっている円筒形の帽子のことではない。今メイズたちが歩いている、この大陸のことである。銀帽子というのは、誰も知らない理由で、この大陸の名となっている。 メイズがそうと知ったのは、別大陸の商人と話す機会があったときのことだ。ドン・レオというおしゃべりなそのオウムは、商売そっちのけでいろいろな話を聞かせてくれた。この大陸の名もそう。彼の国にあるという生きた古代遺跡のこと、自動で動く鉄の乗り物のこと、空を飛ぶ巨大な銀色の竜のこと―― 作り話かと思うような話もあったが、それらの話は宝石のようなきらめきをメイズの心に残した。獣人の村が住みにくいとは思わない。リオだってビスだっている。むしろ宝石箱のように貴重な場所だ。けれど、空の彼方にある他の大陸に比べれば、それははるかに小さいように感じられるのだ。 立ち止まったメイズの視界に、悠然と青空を流れゆく大陸の姿が入った。 あれがここに最も近い大陸。ドン・レオもあそこにいるはずだ。彼は縦横無尽に空を駆け回り、今も自分の知らないどこかの光景を目にしているのだろう。 「メイズ?」 リオの声が聞こえた。足を止めた自分に気づき、戻ってきたらしい。メイズの視線を追って、すぐにそれを見つける。 「あ、お空の島だ。なんだっけ、す、す、す……座ろうって言ってる?」 「スワロウテイル」 苦笑気味に、メイズは返した。昨日の夜にも教えたのに、まだ覚えきれないようだ。 「うん、それ。すごいよね。あんな大きな島が浮いてるんだもの。どうやってるんだろ。向こうにいる人たち、飛び降りたら浮いちゃったりしないかなあ」 「そうね……浮いちゃうかもね」 歩みを再開しながら、メイズは答えた。あのオウムは「あの島はキュウリをすりつぶして飛んでるんだぜ、レディ」などと言っていたが、さすがにそれは冗談だろう。 「向こうにはオウサマとかオヒメサマとかいう人たちがいるんでしょ? きらきらした大きなおうちに住んで。うらやましいよね。あ、でもリオはビスとメイズのおうちが一番だけどさ」 リオはえへへと笑ってメイズの腰に抱きついてきた。かわいらしいけれど、ビスと自分の家をいっしょにするのはやめて欲しいものだ。 メイズの家は、狩人のくせに多芸なビスが建てたものだ。ビスはこの村でも多いファング系の獣人で、狼の頭部とたくましい体躯を持っている。リオは彼の養子だ。ほとんど娘といってもいい。それなのに、ビスはなぜだかメイズに熱を上げていて、彼の彫った扉のご大層な彫刻には「あなたの愛の僕、ビス」などというとんでもないレリーフが残されている。メイズはビスを嫌ってはいないが、あからさまな好意にはよく困惑させられる。 家を建てたのはビスだが、場所を選んだのはメイズである。このあたりの地形は山を背に段々畑のようになっているのだが、その一番高いところにあるのがメイズの家だ。本業が薬草採りなので、山に近いところを選んだわけだ。 「おーい! リオ、メイズ!」 メイズの三角耳がぴくりと動いた。 段々になった階段の下で、小さな影が手を振っている。リオが「あ、ビス! こっちこっち!」と手を振り返し、メイズは小さく嘆息した。 影はみるみるうちに大きさを増した。地響きも聞こえる。走ってきている。階段もどんどん飛び越えて、灰色の巨体があっという間に目の前に諸手を広げ―― 「おはようメイズ! 食らえ愛の抱擁おおおおお!?」 身をかわしたメイズの真正面を飛んでいって、ビスは地面に抱きついた。砂煙を上げて沈黙する。「ビスったら、またそれ?」と言いながら駆け寄っていくリオの背を見ながら、メイズは再度嘆息した。出会いしなに抱きついてくる神経も謎だが、それより「食らえ」とはなんだ? 「あいてて……おう、おはようリオ。よく眠れたかい」 「うん。ビス、リオ、おなか空いた」 「よしきた。今日はラリーが金払ってくれる日だから、二人前は食えるぞ。メイズ、君もどうだ?」 まるで悪びれない様子で、ビスは言ってきた。メイズは怒る気も失せ、 「わたしは」 「そうか、決まったぞリオ。バーニィの店に行こう。あそこのステーキはソースが絶品なんだ。朝は出してないけど、俺が頼めばなんとかなるだろう」 「ホント! やったあ、ビス、すごい!」 「わははは。なに、あいつの店を建てたのも俺だからな」 「……」 上機嫌でリオを肩に乗せ、先へ行こうとするビスの尻尾に向かって、メイズは指をはじいた。 ぼっ。 「お? うわちゃちゃちゃちあちあち!」 火のついた尻を抱えて、走り回るビス。それでも決してリオを落とさないのは立派だ。リオのほうは大喜びでビスの耳にしがみついている。やがて尻餅で鎮火させたビスは、涙目で、 「ダメ?」 「駄目」 えー、と不満そうな声を上げたリオの頭を撫でて謝ってから、メイズは転がった薬草籠を拾った。 「いつもの薬屋に用があるの。ごめんなさいね」 「くう……仕方ないな。リオ、メイズは夕食をいっしょしてくれるってさ」 「わーい!」 「あなたって人は……」 ビスは牙を歯茎まで見せて笑うと、起き上がり、リオを担ぎなおした。 「まあいいじゃないか。食事は一人より三人だ。バーニィのステーキは夕方が一番うまいんだぜ」 「わかったわよ。……リオに免じて」 ビスとメイズは連れ立って村へと下りていった。はしゃぐリオを間に挟んで、他愛のない会話を楽しむ。それは確かに、メイズにとってかけがえのない時間だったのだ。 ラリーの肉屋に向かったビスたちと別れ、メイズは村の薬屋を目指して歩いていた。 クロウ系の店主アーネスが経営する薬屋は、メイズのお得意だ。傷薬や解熱剤といった一般的な薬を扱う店で、他に化粧品や各種スパイスも置いている。 からころ鳴るドアベルの音を聞きながらメイズがドアを開けると、中の話し声がやんだ。店内にいたのはクロウやファングを取り合わせた老人たちが数名。手足のしびれや頭痛などの薬を買い求めに来たのだろう。彼らはしばらくメイズに視線を向け、いささかぎこちなく会釈してくると、かなりわざとらしいタイミングで雑談を再開した。 そんなに異質だろうか――もうかなり長いことここには通っているのだが。老人たちの顔には見覚えのあるものも多い。それでも彼らは、メイズと対すると言葉に困った様子を見せるのだ。 「あら、メイズ。持ってきてくれたのね」 「ええ。頼まれていたものは全て」 メイズが口を開くと、老人たちの雑談がまた止まった。 たしかに異質なのだろう。容姿もそう、衣装もそう、帽子もそう。体全体が毛むくじゃらという獣人が大半のこの村で、メイズひとりが耳としっぽを付けただけの人間型をしている。だから、他の獣人よりも多くの服を着ているし、帽子もかぶっている。帽子などかぶっているのは、ここではメイズだけかもしれない。着ている服にしても、粗末な貫頭衣が主流である獣人たちのなかで、黒で統一したスーツを隙なくまとっているメイズは、彼女自身浮いていると思う。 服は自分がイメージして生み出したものだ。それがこれほど周囲と違うというのは、そのまま本質的な違いを映し出しているのではないだろうか。 アーネスの薬屋から出て、ワンドの食堂で朝食を摂ったあと、メイズは当てもなく市場を歩いていた。 取り立てて珍しいものは何もない。輸入品好きのメイズは自宅に多くそれらを飾っているが、彼女の購買欲をそそるような商品は、どの店の先にもなかった。もう一年以上、ここでは食料以外の買い物をしていない。 小間物屋の軒先から出てきたところで、メイズは頭の奥がうずくのを感じた。 眉をひそめ、銀帽子の横に手を当てる。刻まれた複雑な意匠の感触。 うずきは治まらない。いや、これはうずきというよりも、前兆――? 唐突に閃いて、メイズは空を見上げた。銀帽子は頭にすっぽりはまっているので落ちはしない。メイズの瞳は、何かを探してさまよった。 銀色の光が―― 見えた。メイズの瞳が、陽光を受けて細くひきしぼられる。まぶしい。見えない。邪魔だ。手をかざし、凝視する。 それは突然姿を現した。 空をおおい隠すほどに巨大な物。メイズには最初、それがなんだかわからなかった。生き物だと分かったのは数秒後のことで、竜だと分かったのはさらに後のことだった。 空の端から端まで収まるのではないかという翼を広げ、腹が家の屋根に触れるのではないかという低空を、銀色の竜はゆっくりと飛翔していった。 メイズは我知らず、胸の高鳴りを覚えた。こぼれた嘆息は、これまでのどれよりも熱い。 あれが竜か。でも変だ。これほど近くに竜を見て、村人たちはなぜ騒ぎ出さない? ――くしゅん! 陽光が目に沁みて、メイズはくしゃみをした。とたん、竜の姿は輪郭だけ残して消えてしまった。目に残る白くぼやけた残像が消えた後は、空は普段の青い空だった。 メイズはしばらく呆然とその場に立っていた。 白昼夢? そうかもしれない。村人たちは竜を見ていない。くしゃみをした時も、陽光が目に沁みたからだ。陽光! あれほど巨大な竜であれば、日など翳って当然であるのに。 メイズはもう一度空を見上げた。青い空には、銀色の名残は何もない。白昼夢というよりも、ずっと遠くを飛んでいた竜を、メイズの瞳がはっきりと捉えたものだと、そう信じたかった。 ――そういえば、あのなんとかいうオウムが言っていた。空を飛ぶ巨大な銀色の竜のこと。大陸から大陸へ、悠々と空を渡るもの。 大陸か……。 「メイズ?」 いきなりかけられた声に、メイズはびくりと肩を震わせた。出かかった悲鳴を口元でこらえ、振り返る。 「ビ、ビス……」 「どうした? 道の真ん中で突っ立ってるなんて珍しいな。一輪の黒薔薇みたいでカッコいいけど」 言い返そうとして、メイズは口ごもった。ビスがさらに目を丸くするのがわかる。咳払いして、メイズは話をそらした。 「リオは?」 「そこの服屋だ。あいつ帽子がほしいっていうから、わざわざあつらえてもらったんだよ。今日できあがりなんだ」 「そう……ビス、あなた、竜を見たことある?」 「竜?」 完全に面食らった声で、ビスは聞き返した。 「話に聞いたことはあるな。空飛ぶトカゲのことだろう? でも、それがどうしたんだ」 メイズはさらに話題を変えた。というよりも、その言葉が自然と口をついたのだ。 「わたし、いつかここを出るつもりだったの」 声に出すまで、メイズは自分が何を言おうとしているのか知らなかった。けれど、口に出してしまうと、それは自然な流れをもってメイズの口からこぼれ出た。もっと早くに決断していてもいいことだった。自分の家を村はずれの高台に建てたことも、そこに輸入品ばかり飾っていることも、どれもメイズが精神的に異邦人であることを告げていたではないか。 「明日、発つわ」 「明日!? 待てよ、そりゃ急すぎるぞ。準備だって――」 慌てるビスの様子を見て、メイズは胸奥のざわめきを感じた。リオの顔が脳裏に浮かぶ。 「リオによろしく」 それだけ言って、メイズは足早に立ち去った。ビスの声が追ってきたけど、振り返らなかったので、その表情は見なかった。リオがいなくてよかった。彼女の顔まで見てしまったら、とてもじゃないが別れを告げることなどできなかっただろう。 また帰ってくるだろうか? いや、それはない。一度村を出てしまえば、後は進むだけだ。 とりあえず――銀の竜を探そう。 ※ 旅立ちの荷物は、小さなトランクひとつに収まってしまった。家中を飾り立てている輸入品の類は、腕時計くらいしか実用的ではなかったし、寝具などはちょっと疲れるけど魔法で出せば済むことだ。 この小さな滑車つきのトランクに、ここでの生活があらかたしまいこまれている。たったこれだけかと思うと、少し感慨深い。戸口に立ったメイズは、家を見渡すと、玄関の扉に目を向けた。趣味の悪い牡羊の彫刻がこちらを見つめてくる。 ビスの彫刻と、彼の建てたこの家だけは、トランクに詰めていくわけにはいかない。置き去りにしていく輸入品にはもはや一片の興味さえもなかったが、それだけが心残りだった。 「さよなら」 この家はこのまま、朽ちていくのに任せよう。ごくかすかに別れを告げて、メイズは扉を開けた。 一歩出たところで、動きを止める。 「よう、愛しのメイズ。待ったぜ」 薄闇にぼんやり浮かぶその巨体は、ビスの声でしゃべった。 「び、ビス。あなた、その格好……!」 メイズの掌から生まれた光が、狼男の全身をほのかに照らす。分厚いブーツに分厚いマント、それは獣人族は滅多に着ることのない、旅装束だった。 「これか? 昼の服屋でついでに仕立ててもらったのさ。ありあわせだが、見てくれなどどうでもいい。とにかく、君を一人で行かせたくはないんだ」 「だめよ。あなたにはリオが――」 「メイズ!」 ビスの肩口から顔を出したのは、こちらも分厚い皮帽子をかぶったリオだった。 「勝手にいなくなっちゃやだ! リオもビスも、メイズについて行くもん!」 背負われたままリオは主張する。養父のほうは飛んできたつばに苦笑しながら、 「実はもうラリーとも契約解除して、家財道具も売ってきちまったんだ。今の俺たちは天涯孤独さ。ま、家なんざなくたって造ってやれるがね。なあメイズ、露払いくらい喜んでするから、いっしょに行かせてくれないか」 メイズは黙っていた。 一日に二度も言葉につまるなんて、初めてのことだ。それでも彼女はゆっくりというべき言葉をしぼり出した。 「わかったわ。いっしょに行きましょう。アーネスたちに挨拶を済ませたら、西の街道から首都エルドレイクに向かう。大陸から出るには、パスポートが必要だから」 それから、そっとつけ加えた。 「……ありがとう、ビス」 こうして三人は、故郷の村を後にした。彼らの当面の目標は「銀帽子」の首都エルドレイクだが、そこまでの道のりに何が待ち受けているのか、そして浮遊大陸の果てに何があるのかは、まだ語られることはない。 夜の闇を映す銀帽子の真上で、銀光が一筋、夜空を切った。 今にも降って来そうだった。雨ではなく、星が。空を見上げれば散りばめられた星の瞬きがある。ところどころにある、星空に穿たれた不自然な暗い穴は、おそらくは島の影なのだろう。しかし地上では、星空に穿たれた穴どころの暗さではなかった。村から続く道はすぐに森に入って行くのだが、数刻も経たぬうちに、もうこれ以上進むのは得策ではない、という結論に達してしまった。そこには闇が、どっかりとあぐらをかいて居座っていたのだ。先客を退かせるために、心許無い光を頼りにするのはエネルギーの無駄遣いというものだ。 となれば、野宿である。二度と家には帰るまいという決意を胸に村を出た以上、引き返してメイズの家に泊まってから明日改めて出発、ということには出来なかった。戻ればまた、今までの日常が始まってしまう。それは何としても避けなければならなかった。 そういう経緯で、今、旅の初日の一夜が過ぎようとしているのだが。 「わぁーい! 野宿野宿! のッじゅッく!」 「おう、リオ、火ぃ気を付けろよ」 ぴょんぴょんと、焚き火の周りを文字通り跳ね回るリオの姿を見て、メイズは思わず苦笑いがこぼれた。いつもならとうに寝入っている時間だからだろうか、ほんの少し前まではビスの背で舟を漕いでいたのだが、それがまるで嘘のようだった。 「ねぇねぇ、メイズ」 「え?」 今夜の寝床を作る手を止め、メイズは視線を下げる。いつの間に近寄って来たのか、リオがメイズの前でそわそわと落ち着き無く体を動かしながらにっこりと笑っていた。 「野宿って、楽しいね」 えへへ、と無邪気にそう言って、リオはメイズを見上げた。初めての体験に心を躍らせている、実に子供らしい反応だ。 「……でも、これからは大変よ。いろいろと」 夜露を凌ぐための寝床は、決して快適とは言えない。それに食事もそうだ。幼い子供に耐えられるものかどうか、自信は無かった。だが。 「だいじょぉぶだよ!」 リオはむん、と顔を引き締めて――少なくとも彼女にとってはそうなのだろう――頭に乗っかっていた皮帽子を両手で正した。 「がんばるもん! それに、メイズもビスもいるもん! だいじょぉぶ!!」 皮帽子が大きく後ろにずれて落ちそうになっているまま、リオは両手でガッツポーズを決めると顔いっぱいに笑顔を広げた。 「そう、期待してるわね」 メイズが皮帽子を正してやりながらそう笑い返すと、 「リオ! ちょっと“アレ”持ってきてくれぇ!」 「はぁい!」 向こうからのビスの声に返事をして、リオは自分が持ってきた小さな荷物と養父の大きな荷物をごそごそと探り始めた。案の定、不安定に頭に乗っていただけだった皮帽子はぽてっと地面に落ちた。 「明かり、いる?」 「へーきへーき」 片腕をズボッと突っ込んで何やら袋の中をかき回しているリオだったが、中身がグチャグチャになって後が大変だろうにというメイズの心配をよそに、ようやく触った“アレ”を掴み上げると――どうやらそれは小瓶のようだ――ひと抱えもあろうかという皮袋をしっかりと両手で支え、ビスの待つ火の方へと蛇行しながら走って行ってしまった。メイズは周囲に散乱してしまった荷物を片付けるべきか、それとも先に寝床を確保してしまう方がいいかしばらく悩んでいたが、再び寝具を出す仕事に戻ることにした。 しかし、ものの数分でその集中力は途切れることになってしまった。 何故なら彼女の背後で――そこにはビストリオがいるはずなのだが――突如、獣の吼え声のような叫び声が聞こえたからである。彼女が何事かと慌てて振り返るとそこには、一日に二度目となる、尻尾への火の攻撃を受けながら走り回っているファング系の獣人の姿があった。 晩ご飯、というにはいささか遅すぎるような時間だったが、三人は赤々と燃える焚き火の周りで食事をとることにした。ただし、目の前に置かれている黒い物体を食事と呼ぶのであれば、の話だ。 「……いやあのな、本当にすまなかった」 かなり貧相になってしまった尻尾を申し訳無さそうに垂らしながら、ビスは皿に盛られた黒っぽい塊に目をやった。彼が謝っている相手はメイズではなく、そっぽを向いて膨れているリオである。彼女は呆れているだけのメイズとは違い、楽しみにしていた“野宿の晩ご飯”を台無しにされてしまったことに非常にご立腹だった。 「ほら、そうだあれ、他にも持って来た肉あっただろ、あれを焼こう」 「ヤだ」 彼女の決意は固い。 「このステーキがよかったんだもん」 最早、謝ってどうこうなるような状況ではなかった。 簡単に言ってしまえば、今日の晩ご飯の予定は、飛び入り参加のはずのビスとリオによって秘密裏に計画されていたものらしかった。晩ご飯にバーニィのステーキを食べる、という約束は無下にするわけにはいかなかったようで、彼に頼み込んでステーキ肉の塊と特製ソースを特別に購入させてもらったようなのだ。道理で、ビスが中くらいの別の袋をわざわざ用意していたり、メイズが切り出す前にビスが野宿ついでにご飯にしようと言い出したりしたはずだ。 まぁ、そこまではいいとしよう。問題はここからだ。 当然、メイズを驚かせるために計画したものである以上、食事はビスとリオが担当することになる。だが、リオはまだ子供だ。手伝いは出来るだろうが、肉を焼かせるとなるとどうも危なっかしい。となればビスが焼くことになるのだが、家での料理とは勝手が違う野宿の料理だ、ついうっかりと――彼の名誉のためにも言っておこう、ビスは決して料理が出来ないわけではない――少し余所見をした隙に、肉槐から黒い煙が立ち昇り始めてしまったとこういうわけだ。従って、メイズの前に置かれている黒い物体はステーキ肉の成れの果てということになる。ちなみに尻尾の小火は、咄嗟に肉を取り出した時に誤ってついてしまったものらしい。大事に至らなくて何よりではあったが、今はそれどころではないといった状態だ。 「ほかのなんて食べないもん」 「なぁ、リオ、そろそろ機嫌を直して――」 「やだ」 先程からずっとこの調子だった。リオはビスの方を見ようともしないし、ビスはビスで進退窮まった顔付きをしていた。食べ物の恨みは恐ろしいと言うが、子供の場合は特にそうだと、メイズも改めて思い知らされた。そして運命の一言。 「ビスなんて嫌い」 ――悪気があっていったわけではあるのだが、子供の言うことだ。何か他に嬉しいことでもあればすぐに機嫌を直すだろう――そのくらい、ビスも考えられないわけではない。わけではないのだが、 「……ビス、あなたまで拗ねないでよ」 この獣人にはリオのこの一言は効果が抜群らしく、ガックリと肩を落として枝で灰を突付く作業にのめり込み始めてしまった。 こうなれば自分が何とかするしかないか、とメイズは嵐の中心を収めることに決めた。 「リオも。ビスを困らせちゃだめでしょ」 「……だって」 口を尖らせたままむくれているリオの前に、メイズは座り込んだ。リオはメイズの顔を避けるようにいっそう地面に視線を落とした。 「……だって、どうしたの?」 リオはしばらく黙っていたが、唐突に顔を上げると、 「だって、せっかくメイズといっしょに晩ご飯食べれるって、楽しみにしてたんだもん」 と言って再び下を向いてしまった。 それを聞いて、メイズは思わず言葉に詰まった。ビスが一方的に取り付けてしまった約束とはいえ、リオにとっては楽しみだったんだと。そう思えることが、何故だかとても、温かかった。メイズはふっと表情を和らげると、リオに向かって笑い掛けた。 「それなら大丈夫よ、外は焦げてるけど中は大丈夫だったから」 「……ほんと?」 「そうよ。だからもう機嫌を直して、ね。ステーキが冷めちゃうから」 「……メイズはステーキこげちゃっててもいい?」 「気にしないわ」 本当は気にするところだが、何と言っても旅の途中だ。今のメイズにはその位のことに目をつぶるだけのゆとりがあった。 「それに、みんなで食べれば――」 はっとしたようにメイズは口を閉じたが、リオは気付かなかったようだ。 「そっか、うん、リオもメイズとビスといっしょに食べればおいしいよね!」 ぱぁっといつもの笑顔に戻ったリオは、ほんの数秒前まで不貞腐れていたとは思えない復活ぶりを見せた。それを見たビスが、恐る恐る会話に入る。 「……リオ、その……俺も、一緒でいいのか」 「うん! ビスもいっしょだよ。ね、メイズ」 「……え、ええ」 少しぼんやりしていたメイズは、上の空でそう返事をしたが大事には至らなかった。リオはすっかり機嫌を直していたし、ビスはリオの笑顔に顔を輝かせていた。二人は、今までのいざこざはどこ吹く風、同時に立ち上がると顔を見合わせて笑った。 「よぉし、じゃあメイズ、愛しの君よ、肉を切り分ける間もうちょっと待っててくれよ」 「リオも手伝うよ」 「ああ、君は今日の主役だ。じっくりと腰を下ろして待っててくれればいいからな」 「これ以上お肉こがさないようにリオが見張ってるからだいじょうぶだよ」 「わ、わかったわ」 行くぞー、という掛け声をかけながら肉に向かった二人を見るともなしに眺めていたメイズは、そっと、 「みんな、か」 呟いた。 “みんな”。口に出た、何気ない言葉。自分で言っておいておかしなことだが、メイズはその言葉に驚いた。“みんな”なんて言葉がこんなにも簡単に自分の口から出たことが、不思議でならなかった。これから先の旅は、そんな言葉を口にしないものだったはずなのだ。一人で道を歩き、一人で町を巡り、一人で多くのものを見、一人で何かを見付ける旅。家を出るまでは、そうなると信じて疑いもしなかった。 それが今は。 「リオ、バーニィにもらったソースの瓶、こっちに置いてくれ」 「はーい」 「おお!? 思ったよりもおいしそうじゃないか、なぁ?」 「うーん……」 あはははは、と楽しげに笑っている二人がいる。 たったそれだけのことで。 こんなにゆっくりと進んで、こんなにご飯を食べるのに時間がかかって、こんなにお互いにぶつかり合って、こんなに余計な労力を使ってしまう。 でも。 だからこそ。 「メイズー、ごはんできたよ」 「今行くわ」 だからこそ、こんなにも。 「じゃあ愛しのメイズと俺たちの旅を祝して、いただきます!」 「いただきまーす!」 「……いただきます」 ――あたたかいのだろう。 まだ旅は、始まったばかり。 「……なんだ、これは?」 妖精、という種族がいる。すべてがそうだと言うわけではないのだが、彼らは他の種族に比べて極端に小さいと言われている。手のひらサイズ。 言われている、という言い方をしたことには理由がある。妖精族はあまり他種族の前に姿を現さず、文化交流もほとんどないからだ。文献の示すところによれば、銀帽子を含め周辺の島にも妖精族は存在するらしく、銀帽子付近の島に妖精王の統べる島があるのは間違いのないこととされている。しかし、いまだその島の存在を確認したものは誰もいない。 いずれにせよ、当然メイズらも見たことはなく、上記のような特徴を伝聞で知っているのみだ。 「うわ、ちっちゃくてかわいいーっ!」 さて。妖精族の特徴として伝えられていることとして次に有名なのが、飛行能力を有している、という点だ。といっても、ごく低空での飛行に限られるのだけれども。どちらかといえば中空を漂っているといった方が正しいのかもしれない。 「浮いてるなー。すげー」 その他、発光しているとか耳がとがっているとか、色々と諸説はあるが、はっきりと確認されてはいない。目撃したら幸運だとか、逆にさらわれるだとか、そういう無責任な俗信も色々とある。 というわけで。 「「もしかして、妖精―!?」」 異口同音にビスとリオが叫んだのも、無理はなかったのかもしれない。 「こら、お前らー! 軽々しくワシに触るな!」 その浮遊生命が不機嫌そうに言う。もともと赤い体が赤みを増す。 「うわ、しゃべった!?」 「しゃべるわよ妖精だもの! すごく頭いいのよ!」 「待て! もしほんとに妖精だとしたら、俺らさらわれる!?」 「違うわ、お菓子の国に連れて行ってもらえるのよ!」 「やかましいわー!」 なにやら騒がしくやっている二人(と一匹?)を、メイズは一歩離れて見ている。その様子は驚いているようでもあり、呆れているようでもある。 「ワシを怒らせると後悔するぞ! いいのか!」 浮遊生命体は、その八本の足を広げ、威嚇するようなポーズをとる。しかし全体的に丸みを帯びたボディと、短すぎる足のせいで、それはどことなくかわいらしい。 というか。 「いや。タコでしょ、それ」 メイズはポツリとつぶやいた。 「タコ? なにそれ」 リオが首をかしげる。メイズはビスに視線を送るが、彼もまた知らないらしい。 「頭足綱八腕目の軟体動物よ。大抵は水中にいるけどね。鋭い牙と敵を絡め取る吸盤、それに墨を吐くことによって敵と戦う奇魚」 「サカナちゃうわいボケェ」 すかさずタコが突っ込みを入れる。だがいささか無礼なこの突っ込みは、彼にとっては薮蛇であった。 「それと」メイズが付け加える。「――究極の珍味のひとつ」 「なんだって!?」 「そうよ、王侯貴族も涎を垂らすと聞くわ」 ビスの脳裏を、黒焦げのステーキがかすめる。ここで究極の珍味と呼ばれるタコを捕らえることができれば、先ほどの汚名を晴らしてあまりあるというもの。メイズの好感度も上昇するに違いない。 タコは、ビスの眼に危険な光が宿ったのを見てぎょっとする。それからリオの顔を見やったが、彼女の表情に至っては戦慄以外の何物も感じさせないほどだった。眼は据わり、口は耳元まで裂け(少なくともタコにはそう見えた)、真っ赤な舌と真っ白な歯が覗いている。そして彼女はおもむろに、懐からナイフを取り出した。 「なんや……無礼者……妖精を喰う気かいな……」 タコは逃げ出す算段を始める。 リオが可愛らしい(客観的には。しかしタコにはそうは見えていまい)ナイフを手ににじり寄る。 タコは浮き足立つ。 ノド元を狙ってナイフが一閃、慌てて腕でかばったタコは、七本足となってしまう。 「ひあっ……」 七本足を駆使しナイフをからめとろうとするが、慌てふためくあまり逆に足を互いにからませてしまう。壮絶な笑みを浮かべてリオが近寄る。タコは一縷の望みをかけ、墨を吐き出す。 「あう!」 思わぬ攻撃にリオはたじろぐ。足をほどいたタコはその隙に逃げ出す。 ――が、ビスの銛が彼の生涯を閉ざした。メイズはハンカチを出して、墨だらけのリオの顔を拭いてやる。 目ざましい成果をあげた最初の冒険のエピローグは、むろん食事である。焚き火を囲んだ三人は、タコの足を炙っている。メイズがビスに言う。 「ビス、ステーキのソースはまだ残ってた?」 「おう」 「じゃ、それをかけてみよう」 「ほらリオ、もう食べられるぞ」 「ん、熱つ……」 「本当は生で食べるのが良いらしいけど、旅先であたると大変だしね……どう、リオ」 「今まで食べたことのない変わった味……でも凄くおいしいよ」 リオの顔がほころぶ。ついでタコを口にしたビスも、思わずうなる。 「うまい。これを食べられただけでも旅に出た価値があったじゃないか」 メイズは二人の顔を見やり、にこりと笑う。 「まだまだよ。私たちの行く先には、きっともっと素敵な出来事が待ってるわ」 エル・ドレイク。聖なる竜の街。銀帽子の首都はそんな名前だ。人口は一〇万人を数える、大陸最大の都市である。七つの衛星都市を持ち、高度に発達した重工業は飛空挺さえ造り上げるという。魔力を力源としない明かりは夜でも消えることがなく、井戸がなくとも栓をひねるだけで供給口から飲料水があふれだす―― そんな街らしい。 「嘘だな」 とビスが言下に否定するのも、無理はない話だ。 「それ、この道の先にあるの? リオ見てみたい」 寝具から顔だけ出して、リオが言った。つぶらな瞳はたき火の炎を映じて、夢見るように輝いている。 たき火とはいえ、これはメイズの生み出した魔力の炎。煙はなく、ただ熱が天幕内を温めている。 「真に受けるなよ、リオ。どうせおしゃべりなオウムの大法螺か、じゃなけりゃ別の大陸とやらの話さ」 ブーツの紐を結びながら、ビスが笑った。笑われたメイズも、特に反論は返さない。 帽子掛けの銀帽子が揺れる炎を映すのに目をやりながら、微笑を浮かべる。 「そうね。私も半信半疑よ」 「だろ」 ビスは踵のネジを締める作業を始めた。道がひどく荒れていたため、緩んでしまっているのだ。おまけにリオをずっと肩車していたので、数分おきにぐりぐりと首を回している。 「首都がそんなに発展してるんなら、街道の整備くらいしやがれってんだ。それに飛空挺だって? ンなもんどこを飛んでるってんだ。おりゃあこれで目はいいが、見たことなんかねえっつの」 ビスはこの大陸が平面であることを知っている。そしてその大きさも。村にいたときから、メイズの話を直接、あるいはリオ経由で聞いてきているからだ。丸い大陸もあるらしいとメイズは聞いていたが、そちらは言っていない――半信半疑どころか、まるで信じられないからである。 「魔力に拠らずに絶えない明かりを灯す――素敵だけど、やっぱり、ね」 「そうそう。火は起こしてこそだ」 「このたき火は私がつくったのだけど?」 「ああ、ちょっと待て――よし、これで明日も歩けるぜ。もう寝るのかい? なら俺が――」 途端に勢いを強めたたき火を見て、ビスは咳払いした。 「俺が、見張りを買って出よう」 西の街道は長い。そう聞いてはいたが、何しろ外に出ない生活をしていたので、「長い」というのがどのくらいかを三人が実感したのは、ドロップカイトを出て三日ほど経ってみてからだった。 昼でもまだ肌寒い。春の女神の到来はまだ遠く、冬の女神の長い裾がまだ見えているような時期だ。灰色の山脈や黒一色の木々、ちびた雑草など、街道の景色も殺風景。旅の賑わいとしては不足に過ぎた。リスやヒイズナなどの小動物も巣穴に引き篭もっているようで、活気がないこと夥しい。空を舞うのも鴉ばかりだ。 おまけに昨日からは道と荒野の区別も付かなくなっていて、しかも直線が延々続く。リオでなくとも三日で飽きるというものである。 四日目。 唸りながら地図を睨んでいたビスが、大きく白い息の塊を吐き出して、目を離した。 「ちきしょう、線がまっすぐ一本あるだけだ。方位はともかく距離が分からんのでは、地図も役に立たんぞ」 「そうね。……妖精を食べてしまったのは、短慮だったかしら」 「タコさん? あれ、おいしかったよねぇ。ちょっとかわいそうだったけど」 リオが口を挟んできた。五色の毛並みを持つ仔犬と追いかけっこをしていたのだが、もう飽きたようだ。 メイズは苦笑して仔犬を招き寄せると、そっと息を吹きかけた。仔犬の身体が霞むように消え、代わっていくつもの蛍火が掌中からこぼれ出て、きらきらと曇天へ吸い込まれていく。 「お、リオ。見てみろ、きれいだぞ」 「わわ、ホントだ。いいなメイズ、手から仔犬出せるし、きらきらも出せるし」 「リオにもできるわ――大人になれば」 ぶう、とリオは声に出してむくれてみせた。しかし、魔法が息吹の練成である以上、体内の息吹の総量がまず魔法の成否を決定づける。実際はその上に息吹の質やら術者の技量やらが関係してくるのだが、大前提として、息吹の少ない者は魔法が使えないのである。「無い袖は振れぬ」と、どこかの諺では言うそうな。 息吹というものは体組織を構成する原質でもあるから、つまり体が未熟な者はそれに比して息吹も少ない。こういった理屈を、メイズは教えられるでもなく知っていた。 (けれど、教えられずに学ぶ知恵はあっても、知識はそうはいかない。どこかで学んだはずなのに) 失われた記憶を蘇らせる魔法。それは原理的に不可能だった。服やウサギはイメージできても、失われた記憶をイメージすることはできないからだ。できたとすれば――それはもはや失われた記憶ではない。 「わ! すごいよメイズ。なんか白くなってきた。ほらビス!」 「おう。霧だな」 先頭を行くビスが答えた。答えてから、首をひねる。 「変だなあ。明けや暮れならともかく、昼前だぜ」 言ううちにも、濃い牛乳のような霧が、音もなく街道を包み始めた。前も後ろも乳白色のレースのうちに閉ざされてしまい、足元まで霞み始める。 「すごい、雲みたい!」 リオがぴょんぴょんと跳びはね、小走りに駆けはじめた。 「おい、転ぶんじゃないぞ。あと、あまり離れるなよ。これじゃすぐ見えなくなるから」 脇を抜けていく小さな皮帽子に、ビスが気づかわしげに声をかける。ファングのビスは嗅覚も優れてはいるが、この霧の粒ときたら、匂いも音も吸い取ってしまいそうにずっしりしているのだった。まっすぐに進めばいいだけなので迷う心配がないというのが、せめてもの慰めだ。 小一時間ほど歩いただろうか。 メイズの三角耳がぴくりと動いた。 「ビス」 「ん?」 「誰か来る」 ビスは眉間にしわを寄せ、前方を凝視した。鼻をひくひくとさせてみる。どちらも何も感じない。が……。 「リオ、ちょっと来い。誰か来るってよ」 「はーい」 それでも、ビスはメイズの忠告に従った。彼女の超感覚に信頼を置いているというのもあるが、狩りの最中茂み越しに生物の気配を感じたときの感覚が、背筋を走ったこともある。リオの前に立つその横に、メイズが並んだ。 リ―――……ン 鈴の音。 聞こえてきたのは前方からだ。 リ―――……ン 二度目。その音が消えるころには、規則正しい足音も聞こえるようになっていた。数人か、十数人か。団体でこちらに歩いてくる。姿はまだ見えない。 「誰かなあ」 こころもち声を潜めるようにして、リオがメイズのコートを引っぱった。 「分からないわ。けれど、礼儀正しくね」 こくこくとリオはうなずいた。背筋を伸ばす。左手でメイズのコート、右手でビスのマントを、それぞれしっかり掴んではいるが。 リ―――……ン 三度目の鈴の音は、その所有者の姿を浮かび上がらせた。 石英色のヴェールをかき分けるようにして現れたのは、痩せた長身の人物だ。その後ろにも似たようなシルエットがいくつも、ゆらゆらと揺れている。先頭の人物はフードを深く被っており、右手を前に差し出している。ぶら下がっている丸いもの――鈴が揺れて、四度目の音を立てた。 リ―――……ン 「これはこれは、こんにちは」 メイズら一行の左側に歩みを進めながら、その人物は会釈した。 「ご機嫌よう」 メイズが頭を下げ、「こんちは」とビスも軽くうなずく。その下で「こ、こんにちわ!」とリオが膝に頭をつけた。 「ご家族でご旅行ですか。けっこうですね」 「ええまあ」 とビスが返す。 「家族じゃありません」 と言いたくなるのを喉もとでこらえて、メイズも微笑した。 フードの人物は笑ったようだった。肩がかすかに揺れる。すると、その姿はずっと遠くへと遠ざかったように見えた――いや、錯覚だ。まったく、手を伸ばせば触れる距離にいるというのに、まるで立体感がつかめない。声も聞こえはするが印象に残らない。手にした鈴のほうがよほど響くくらいだ。 コートが強く引っぱられるのを感じ、メイズは目の端でリオを見た。少女は固い表情のまま、ビスの赤茶けたマントを凝視している。緊張を押し殺しているときの仕草だ。 それもそのはず、先頭の人物以外の人影は、ここまで近づいてもなお、シルエットのままだった。 杖をついているものがおり、箱をかついでいるものがいる。髪の長い娘がおり、腰の曲がった老婆がいる。それはわかるのに、彼らには輪郭というものが一切なく、足音以外の音を――衣擦れさえ立てない。 「私どもは、この先に用がありまして」 フードの人物が言った。 「幸い好天にも恵まれましたし、道なりにずっと……まっすぐ進むつもりでございます」 好天? 表情には出さず、メイズはいぶかしんだ。横ではビスが片眉だけ跳ね上げるという器用な真似をやっている。目の隅でそれを捉え。メイズはコートの奥でビスの脇腹を突付いた。ビスが咳払いする。 「それでは」 フードの人物はもう一度会釈して、歩みを再開した。シルエットたちも静々とその後に続く。その背に向けて、メイズは右手を差し出し、撫でるように印を切った。 「旅に父なる息吹の加護を」 その文句は、旅人に導きを祈るものとして挨拶代わりに用いられる、祈りの言葉だった。メイズはこれがはじめての旅なのだが、なぜだろうか、一行の背を見たとたん、眠っていた知識が勝手に口をついて出てきたのである。 フードの人物は足を止め、振り返った。何人ものシルエットたちが間にはいたのだが、まるで眼前の人物の発したものであるかのように、声はメイズの元に届いた。 「母なる息吹の導きを――お嬢さん。鈴がもう一度鳴ったら、振り返って御覧」 それだけ言うとフードの人物は踵を返し、シルエットの一行と共に、霧の奥深くへと姿を消した。 メイズは前を向いた。 「おい、なんだって?」 声が聞こえなかったらしいビスが聞いてくる。 「……鈴が鳴ったら振り返れって。何かしら」 「メイズぅ。まだぁ」 リオの声。見るとまだしゃちほこばって気をつけのままだ。メイズはそっとその帽子を撫でた。 「もう行ってしまったわ。私達も行きましょうか」 「そうだな。だが霧が――」 リ―――……ン 遠くで澄んだ音が響いた。 三人は顔を見合わせ、それから一斉に振り返った。 霧の奥深く、すでに遠く隔たったあの一行の姿が小さく浮かんだ。彼らは向きを変えると、静々と左に進んでいく。ほどなくしてその姿は消えた。 「ん……もうあんなところか。やけに速いが、あいつら道を曲がったのかな」 呟いたビスの横で、メイズは低く囁いた。 「そのようね。けれど、西の街道は直線のはず。『道なりに進む』と言った通りに彼らが進んでいったとすれば、彼らが曲がった地点で街道が終わったことになるわ」 「んなバカな。歩いた距離は少なくとも四日分あるはずだぜ。あんな近くのわけがあるか」 「じゃあ」 話しながら、メイズは自身の尻尾の毛が逆立つのを感じた。一行の動きが意味するところを悟ったのだ。 「あそこから街道が始まったのよ」 「は?」 メイズは人差し指を動かし、霧を白板代わりに光の軌跡を走らせた。 「地図を見ても分かるけれど、西の街道はこれまで直線の一本道。私たちはそこを進んでいて、あの一行に出遭った。彼らは街道を真っ直ぐ進むと言ったけど、ある地点で左に曲がった」 「それは分かる」 「導き出される答えは二つ――彼らが曲がるまで歩いていった道が街道なのか、彼らが曲がってから歩いていった道が街道なのか。前者が有り得ないのは明らかだから、答えは後者よ」 「すると……どういうことになる?」 「簡単よ。私たちは街道を外れた荒れ地に突っ立っていて――」 メイズは先刻シルエットたちが左折した辺りを指し示した。 「あの辺りに本物の街道があるんだわ。彼らはそこで正しい道に乗り換えたのよ」 「……マジかよ?」 ビスは呻いた。 「まっすぐ歩いてきたはずだぜ。あいつらと出会った時点で、もう道を外れてたってのか」 ビスはもう一度呻くと、下で不安そうにこちらを見上げているリオをひょいと抱き上げた。しがみついてくるリオの帽子を軽く叩いてやりながら、問いかける。 「じゃ、どうする? このいまいましい霧が晴れるまで待つか?」 「いえ。この霧はたぶんしばらくは晴れない。この子たちに案内してもらうわ」 メイズは黒皮の手袋に包まれた手のひらをそっと胸元であわせ、しゃがみこむとそこで開いた。五色の毛並みを持つ仔犬と、いくつかの蛍火が掌中から飛び出す。 「この子はさっきの街道の匂いを覚えているから」 蛍火に足元を照らされて、仔犬はとことこと走り始めた。リオを抱いたビスとメイズがその後に続く。 ややあって、ビスが口を開いた。 「しかし腑に落ちんな。俺は霧中での狩りだって何度も経験してるんだ。この程度であんな派手に道を間違えるなんてよ」 「ええ。この霧は少しおかしい」 メイズは応え、睫毛についた水滴を人差し指で弾いた。手足に執拗に纏わりついてくるそれは、乳白色の魔物のようでもあった。周囲の景色をぼんやりと溶かし、どこかで見たような、それでいてどこにもない光景を演出する。目の前、地面すれすれを浮遊している蛍火でさえ、あらぬ彼方へ一行を誘っているかのようだ。 二人は黙って歩き続けた。リオでさえ目を見開いて仔犬を見つめたまま、一言も口をきかない。 こんな夢を見たことがあったかな、とメイズは思った。似たような夢だ。よくは思い出せないが、迷っていて――手を伸ばし、何かを掴んだ。 傍らで、ビスが小さくくしゃみをした。湿気で鼻をやられたらしく、盛大に洟をすする。 「全く……」 手を一振りして、ハンカチを放ってやる。 「ぐすっ、ずまん」 「ビス、鼻が濡れるとすぐそれだもんなあ」 養父の顎の下で、リオが言った。 「あら、犬は鼻が湿っているほうが健康なのよ」 「メイズちゃんメイズちゃん。おでばこれでも狼……っぐし!」 またくしゃみ。その語尾に、犬の吠え声が重なった。五色の仔犬が何かを拾ったらしく、口にくわえて駆け寄ってくる。 「あら……これは」 リオの拳ほどもある、それは鈴だった。見覚えがある。シルエット集団の先頭、フードの人物が手に提げていたものだ。 その鈴は銀色で、赤い飾り紐がついていた。表面には短い文が浮き彫りになっている。 『旅に父なる息吹の加護を 母なる息吹の導きを』 メイズは声に出して文を読み上げた。 「メイズ、その鈴、なに?」 「これはね、遭難――迷子にならないためのお守りよ」 リオに答えてやりながら、メイズはふと、視線をさまよわせた。仔犬はここから進もうとしない。どうやらここが本当の街道らしい。あの一行に出くわさなければ、自分たちはどこまで歩いていってしまっただろうか。 シルエットの中に混じって延々と歩き続ける自分の姿を想像して、メイズは少し首を縮めた。そんな未来図は真っ平御免だ。迷うことは構わない――けれど、出口のない迷路にだけは落ち込みたくなかった。 仔犬が吠えた。じっとしているのに飽きたらしい。するとこれまたじっとしているのに飽きたらしいリオが、「降りる」と駄々をこね始めた。地面に靴を付けるや、蛍火と犬を追いかけて走り出す。 「やれやれ、元気がないんだかあるんだか」 ビスがぼやき、歩き出す。メイズは鈴を帽子に結わえると、その後ろをいつものペースでゆっくりとついていった。 晴れる気配のまだない深い霧の中に、鈴の揺れる澄んだ音色が二度三度と響き、遠ざかっていった。 街道を歩いていると、時として妙なものに遭遇することがある。 それはちょうど、エル・ドレイクにたどり着くほんのわずか前の場所でのことであった。 「……馬?」 街道の近くを流れる清水を汲みに、一行が『沸き出ずる水晶』と称される場所――無論、古ぼけた看板は読める状態ではなかったので、この水場の名を知ったのはエル・ドレイクに到着した後のことではあるのだが――へ来た時のこと。そこには、一頭の白馬がいた。 「うわあ! おうまさんだぁ!」 「あ、リオ……」 メイズが止める間も無く、リオはその馬の元へと駆け出していた。それが普通の馬であれば、首都に近いこともあり――首都の交通手段の一つとして馬が利用されていると聞いたことがある――メイズも不思議がることはないのだが。 しかし。 「おおぅ、旅の方っすか。え? どっからおいでに?」 「えっとねぇ、リオはドロップカイトからきたよ」 「ほほー、そりゃまた……いや、ゴメン知らない場所だ。なんせここにはまだ着いたばっかりでさ――」 おどけたような調子で、リオと会話している声があった。辺りを見回してみても、メイズ達以外に誰もここにはいない。 ということはつまり―― 「……馬って喋るのか?」 ビスが、ポツリとそう呟いた。メイズは、そんなはずはないと首を横に振る。 しかし。 「けど、タコも喋ったから」 「なるほどなぁ……」 よくわからない納得をし合って、二人は頷き合った。 水場は旅人の憩いの場。 街道には、必ずと言っていいほど、水場への道のりが示された看板が立っている。時には水のせせらぎが聞こえるほど、街道から近い場所に水場がある。というのも、街道を作る際に、旅人が水を得やすいようにと水場の近くを道が通るように森を開拓していったからであるわけで。 それはともかくとして、水場には先客がいた。白い馬。とても美しく、陽光に照らされるその姿は古代神話の天馬を思わせる。 だが、やはりというかなんというか、妙な馬だった。 「いや申し遅れまして、オレッチはハグレリュウの、フラスクエアーって言うっす。フラって呼んでくだされ」 「フラちゃん、おうまさんじゃないの?」 「いやー、馬といえば馬だけれどもそうじゃないといえばそうじゃないような……」 答えに困ったような顔をして、そのフラと名乗る馬はそっとリオのそばに顔を寄せると、ヒソヒソ話の口調でこう言った。 「秘密だけど、オレッチは飛べるんだ」 なかなかフラの背から離れたがらないリオをなだめながら、ビスは「すんませんねぇ……」と妙ちくりんな馬に向かって詫びの言葉を伝えた。 「そろそろ行かなきゃならないもんで……」 「エル・ドレイクへ?」 「ええ、そうです」 メイズが、リオにぽこぽこ叩かれて困惑しているビスの代わりに答えた。 「他の大陸に行こうかと」 「へえー、お若いのにねぇ、いや勘違いしないでくれよ、そりゃとってもいいことさ。何といっても、新しい出会いがあるから。今日みたいに」 「はあ……」 「まぁ、旅はいいもんだよ。俺のマスターもね、ああ、アスって言うんだけどもさ、歴史に魅せられたってーの? 大陸から大陸へと飛び回っちゃってさー、もぉ、その都度荷物をン十倍にしてくれるもんで背中が痛くってさ。いや、これは背中に者を乗せる輩の宿命なんだけど」 紫水晶の瞳をいたずらっぽくウインクさせながら、フラはこう笑った。 「あははー、つまんなかった? よく言われっけど、どーもしゃべりたがりで……いや、こんなこと言おうと思ってたんじゃないんだって」 「はあ……」 ビスの、「早くしないと今日中に着けなくなるぞ」という言葉を背中に受けながら、メイズは、 「それでは、また……」 と頭を下げた。と、「ちょい待ち」とフラがメイズの帽子を鼻で突付く。 「銀帽子さん、これだけは聞いといて。もし、もしも、手っ取り早く空に出たいっていうなら――」 「え……?」 「ばいばい、フラちゃん!」というリオの声が遠く聞こえる。その声は先だってとは打って変わって、外見に相応しい神秘的な声だった。 「――空港にいるオスの三毛猫にこう言うといい。『空の翼は飛ぶか沈むか』ってさ」 「おーい、メイズ! もう行こうぜ!」 「今行くわ! どうもありがとう、フラさん、貴方のご主人にもよろしく」 「んー、意外とすぐにまた会えるかもね。あ、あと、そいつ一見フツーのネコだけど、獣人でも言葉が通じないからきっとすぐわかるはず。幸運を祈るよ」 きしし、と子供っぽくそう笑うフラを後にして、メイズは道を戻る。その後ろから、声が聞こえた。 「魚は持ってかない方がいいよ、あの辺りの猫に食べられちまうから! あ、あともう一個だけ! 外来品のお値段は十分の一にまけさせないと損するよー!」 ガサガサ、と音を立てて、メイズは街道との道を隠している木立を突き抜けた。 「ったく……何だったんだ、あの馬は……」 「すごいね、おうまさんってしゃべるんだ!」 違う違う、と首を振るビスに、リオは「でもしゃべってたよ?」と鋭く返す。 メイズは、自分の通ってきた小道を見ていた。 そこには確かに看板もある。ここの先に水場があるらしいということが書かれているのだろう。 しかし、首都エル・ドレイクはもう目と鼻の先だ。 どうして、ここに立ち寄ろうと思ったのか。 「……どうした? メイズ、ぼーっとして」 「ううん、何でもないわ」 もう一度振り返って、メイズは耳をそばだてた。もう、あのお喋りな馬、フラの声も聞こえない。 「さ、行きましょうか。エル・ドレイクはもうすぐよ」 「わあー! どんなところなんだろ? ね、ね、夜になっても光ってるってほんとかな?」 「どうだかねぇ……」 再び三人並んで――正確には、リオがビスの背に負ぶさっているのだが――歩き始める。日の暮れる前には、きっと首都にたどり着いていることだろう。 そう、銀帽子の首都、エル・ドレイクに。 ----------------------------------------------------------- 変化は、いっそ劇的といってもよかった。 それまで砂利道だった街道が、一歩踏み出した先は石畳で舗装された綺麗な道になっており、その両脇には柱のようなオブジェが一定間隔で並んでいる。 夜が近づいているはずなのに、向かう先に光が見える。風と草の音しかしなかった街道に、世界中の音を集めて混ぜたような音が流れてくる。 カツカツという足音が面白いのか、それともその先の光に惹かれたのか、急に元気になって走り出したリオを追って、メイズとビスも走り出す。その先に、城壁に囲まれた街が見えた。 そう、メイズ達はついにたどり着いたのだ。銀帽子の首都――エル・ドレイクに。 「うわぁ…」 「んな…」 「へえ…」 三者三様な驚きと感嘆のため息が、メイズたちの口からこぼれた。 簡単な入都検査を通過したメイズらの目の前に現れたのは、真昼と見紛うような光を纏う広場だった。その周りに商店が並んでおり、行き交う人が活発に会話を交わしていた。 あまりの人波にちょっと気圧されたメイズの目に、光源のひとつが目に入った。リオもつられてそちらを見る。 「ホントに光ってるんだ…」 「不思議ね…。どういう仕組みかしら?」 街道脇にあったオブジェと似たデザインの柱、その頂点が光を放っていた。 まじまじとそれを見ていると、露店を開いていた店主が話しかけてきた。 「おう、あんたたち旅人か? それを見るのは初めてだろ?」 「ええ、そうよ…。よくわかったわね?」 「なぁに、初めてここにきたやつは、皆それを見て立ち止まっちまうのさ。はは、かく言う俺もそうだったクチでね」 「まあ、そうでしょうね。噂には聞いていたけど、この眼で見てもやっぱり信じがたいわ。どういう造りになっているの? やっぱり魔法?」 「さぁな。工房の連中なら知ってるだろうが、俺にはさっぱりさ。ただ、魔法じゃなくて科学っていうもののおかげって話だ」 「ふぅん、科学、ね…」 「メーイズーっ! こっちこっちー!」 メイズが灯りの構造に興味を惹かれている間にも、リオたちの興味はさまざまなものにめぐっていたようだ。見ると、また別の露店の前で二人が手を振っているのが見えた。 「あまり無駄遣いしては駄目よ。肝心の船代がなくなるわ」 「でもだってほらほらこれ。すっごく甘い匂いがするんだよ!」 「待てよリオ、あっちのほうから香ばしい匂いが!」 「やれやれね…」 ため息をつくが、確かに空腹なのはメイズも同じだった。露店の食べ物にばかり目が行くのも仕方がない。 「じゃあ、どこかちゃんとした店を探して食事にしましょう。宿探しは、そのあとね」 「はーい!」 喧騒の中にあって、二人の声は見事に唱和した。 そんな三人を、遠くから見つめる影二つ。 「…深淵より来たる銀帽子のクロウ、その手をかざし世を乱す、か…。どうせまた黄泉に片足突っ込んだばあさんの戯言かと思ったんだがな…」 「ビンゴですね。日付までぴったりですよ」 「あー、めんどくせえ。仕事がないのがこの部署の特権じゃなかったのかよ」 「まあまあ。たまには労働するのも悪くないですよ」 「け、優等生ぶりやがって。まあいいや――行くぞ」 「了解です」 そして首都に風が吹く。 ----------------------------------------------------------- <雲のほとり>は多少高級な感じのする居酒屋で、店主は気のいいファングの老人だった。昔は冒険者として鳴らした男で、旅人には特に愛想がいい。 「なんとお客さん、タコを食べたことがあるのかね」 リオはオレンジジュースをちびちびとすすりながら、満面の笑みで頷く。 「ふむう、そいつは凄えな。俺も昔は大概の珍味は食って歩いたが、タコを食べたことはない。タコを食べたやつに会うのも、これでようやく二度目だ。……あいよ、できたぜ」 料理は一切、この老人に任せた。予算と、折角だから珍しいものをいろいろ、とだけ注文をつけて。 「うまい、舌先でとろけるな。……親父さん、これはどういうものなんだ?」とビスが聞く。 「それは牡蠣」と老人が答える。「ここじゃあ揚げるのがはやりだが、どうせなら生で食べてみてくれ。異大陸からの輸入ものさ」 異大陸、という言葉を聞いて、メイズが顔を上げる。 「マスター、あなたもひょっとして、異大陸へ行ったことがあるの?」 「あるぜ」その質問を待っていたかのように、老人は答えた。 「三つの異大陸へ行ったことがある。鳴き蛍、迷い剣、小夜峠だ。その牡蠣は小夜峠からの輸入ものだな。小夜峠は珍味を多く産するから、多く行き来がある。……ほら、次の料理だ」 続いて出てきたのは、ずっしりしたステーキだ。ビスとリオが眼を爛々と耀かせる。 「これは何の肉?」とメイズ。 「ワニ。小夜峠で産する珍品だな。……そう、小夜峠じゃ色んなものを食べたぞ。タコはさすがに食べていないが、青クラゲ、ヒカリガエル、大鋏エビ、十足ムカデなんかはみな味わった。コカトリスを食べて死にかけたこともあったっけな……へい、いらっしゃい」 そこで入ってきたのは人間の若い楽師。帽子を目深にかぶり、ギターを背負っている。 「よう、タントリスさん。鳴き蛍はどうだったよ?」 楽師のタントリスは低い声でぽつぽつと答えた。 「……勉強になった……面白い話も……聞けたしな」 老人がグラスに酒を注いで出すと、タントリスは一息で飲み乾す。そこで思い出したように、メイズが老人に尋ねた。 「迷い険、小夜峠のことは聞いたことがあるけど、鳴き蛍というのはどんなところなの?」 老人はその質問を待ってましたと言わんばかり。 「名前の通り不思議な島だな。空は碧緑。草木はいつも紅く、枯れかけたときだけ緑になる。食べられるわけじゃないが、珍獣も多い。ヒッポグリフ、カトブレパス、ユニコーン……それにドラゴンも」 メイズは眼を見張った。楽師が言った。 「客を騙すな。……詩に歌われているだけだ」 老人は笑った。 「ほら、そこの――と言って、彼は店の入り口の飾り棚を示した――棚に色んな木製品があるだろ。あれはみんな鳴き蛍で買ったやつさ。扱いは難しいが、良い音が出る」 リオが走っていって、棚から楽器を一つ取り出した。リオの両手にあまるほどの丸い大きさのそれには、穴がいくつか開いている。どうやら笛のようだった。 「吹いてみてもいい?」リオが聞く。 「いいとも」老人が答える。 そこでリオは笛に口をつけ、おそるおそる吹いてみたが、音は鳴らない。不思議なことに息の音すら漏れなかった。リオは三度も四度も吹き、五度目は思い切り息を吹き込んだが、やはり鳴らなかった。老人は言った。 「難しいだろう。コツがあるからな。ほら、お嬢ちゃん、ちょっと貸してみな」 老人はリオの手から笛をとると、口に当てた。はじめは低い唸りが――やがて、丸い音質の音が漏れてきた。 「そうだ、楽師さんよ、一つ合わせてくれんか。この子たちに鳴き蛍の音を聞かせてやりたい」 楽師はうなずくと、ギターを手にとり、老人の笛に和した。 低くて丸い、静かな調べは、メイズたちに異郷の風景を思い描かせた。その光景に、メイズは心躍った。時間がゆっくりと、ゆっくりと流れていく。龍のように。 ――曲が、終わった。 「一番簡単で、一番愛されている曲さ。向こうへ行けば、毎晩でも聞ける」 三人は恍惚としていた。 間もなく、楽師の声によって現実を思い出した。 「表にいる連中は……あんたたちの連れか?」 言われて見てみると、入り口のところに二つの影が立っている。 「私たちに連れはいないわよ」とメイズ。 「ありゃ、カタギじゃなさそうだな……ドアをへだててるのに、嫌な気配が伝わってきおるわ」と老人。 ノックの音。入り口の二人がドアを叩いているのだ。料理屋に入るのにノックをする客などいない。いよいよ様子が怪しくなってきた。 「こちらに銀帽子のクロウはいらっしゃってますか」 とうとう向こうが喋りかけてきた。 「出たほうが良いと思う?」とメイズは老人に聞く。 「いや逃げたほうが良いだろう。あんたがたが何をしたか知らんがね。裏口はあっちだ」と老人。 ビスがメイズの肩に手を置いて、早く立ち去ろうという意図を伝えるが、メイズは思案顔のまま行動を起こさない。やがて、メイズはビスに言った。 「リオをつれて裏口から出て。私は彼らに会うから」 「正気か?」 「あら、彼らは私を訪ねてきているんだから、会うのは別におかしくないでしょ……ほら、早く」 ビスは舌打ちした。確かに、もし相手に害意があったなら。自分とメイズ二人だけなら、どんな相手からでも大抵逃げられるだろう。だがリオをかばいながらとなれば話は変わってくる。 「メイズを頼むぜ」とビスは楽師に言った。返事を待たず、ビスはリオを抱えて裏口から飛び出す。 同時に二人が入ってきた。 ともにクロウだが、体つきや毛並みは全く異なる。一人はビス以上の巨漢で、金色のたてがみとひげは見事というほかなく、首・腕・腰・脚、いずれも丸太のように太い。今一人はリオと同じくらいの背丈しかなく、真っ黒な毛並み。金色の瞳はずるそうな光を見せている。 メイズは一筋縄ではいかないと感じた。 「あなたたちが呼んでいた銀帽子というのは、私のことかしら? 何の用で、私に会いに来たの?」 「貴女を捕縛せよとの命令を受けているんですよ――大人しく捕まってくれませんか」と、黒毛のチビ。 「誰が私を?」 「さる高貴な方――それ以上は言えません」 「なんのために?」 「風のため――これもあまりはっきりとは言えません」 「じゃあ、大人しくは捕まれないわね。私には夢もあるし。――これ以上は、表へ出て相談しましょうか」 首都に風が吹く。金の巨漢と黒毛のチビは、メイズを挟んで立っていた。 「まあ、最初からそうなるとは思っていた」と金の巨漢。口中でぶつぶつと文句を唱えると、手に大斧が握られていた。それをメイズに向かって振り下ろす。避けたメイズの代わりに、道路が割れた。 ――当たったら痛そうね。 金の巨漢は、意外にも軽い身のこなしで攻め立ててきた。メイズは逃げる機会を探ったが、この男に、ただ背を向ける度胸は無かった。斧が一閃する。メイズは身をひねり、ステップを踏み、跳躍し、身体をすくめて避ける。が、やがて壁際に追い詰められた。 「抵抗できぬよう、まずはその脚を落としてやろう」 金色の巨漢は斧を振り上げ、――その瞬間、思いがけない強い力で引っ張られて、後ろへ吹き飛んだ。 メイズが魔法で、巨漢の背後に強力な磁気を発生させたのだ。振り上げられた鉄の大斧が引っ張られ、巨漢も飛ばされたのである。 「そこまでです」 メイズは首筋に金属冷感を感じた。黒毛のチビがのどにナイフを押し当てていた。 ――気づかなかった。ぞっとしてメイズは、ここまでかもしれないと諦めかけた。 だが、突然「ぐえっ」という悲鳴とともに、チビはナイフを取り落として倒れた。メイズが後ろを見やると、あの楽師がギターでチビを打ったのだった。 ――助けてくれた。 「頼まれた……からな」楽師はメイズの心を読んだかのように、言った。 「こっちだ」 楽師がメイズの手を取り、走っていく。気を取り戻した黒毛のチビと金の巨漢が追ってくる。公園、劇場、店屋、住宅街……首都じゅうをめぐっての追跡行が演じられた。やがて、二人は空港に出た。そこで金の巨漢と黒毛のチビに追いつかれ、一太刀・二太刀を交えたが、かなわなかった。二人は埠頭に追い詰められた。 「逃げ場はないぞ」と金の巨漢。 メイズは助かる要素を探した。人気の無い空港の中を、二つの眼で見回した。 そのとき、一匹の三毛猫が、じっと見ているのに気づいた。 メイズの脳裏によぎるものがあった。 「『空の翼は飛ぶか沈むか?』」 「行き先は?」三毛猫が喋ったのではなく、頭の中に直に響いた。 「鳴き蛍!」とっさに、メイズは答えた。 メイズと楽師の足元が、ふいに揺らいだ。 ----------------------------------------------------------- 「な、何だ?」 斧を振り上げた姿勢のまま、金毛の巨漢がわずかに視線を泳がせた。その隙をついて楽師が飛び出し、ギターを巨漢の腰に叩きつける。鈍い破砕音が響いて、ギターの胴板が割れた。巨漢のほうは一歩よろめいただけで、怒りの視線を楽師に射こんだ。 「おのれ小僧、叩き潰してやる!」 その宣言を、巨漢は実行できなかった。メイズが両腕を突き出す。その掌から炎がほとばしり、巨漢の鼻面をなで上げた。 「っぎゃアァァァッッッ!」 「ガウルっ!?」 巨漢ガウルは燃え上がる顔面を抱え、石畳の上をのたうちまわった。相棒のほうは慌てて上着を脱ぎ、はたいて消火しようとしたが、直後にギターの残骸で殴りつけられて沈黙した。暴れるガウルから少し距離をとって、メイズがもう一度両腕を突き出した。 目を閉じる。視覚、聴覚、嗅覚の順に閉ざしていく。イメージするのは炎ではない。その逆だ。 軽い脱力。 そして、目をあける。聴覚が回復しても、巨漢の唸り声は聞こえない。 「……たいしたものだ」 ひざまずき、黒毛の失神を確認してから、楽師が呟いた。 巨漢は動かない。見事に氷漬けになっていた。 一方、ビスたちは。 裏口から飛び出して三歩と走らないうちに、ビスは逃走の失敗を悟っていた。 そろいの黒服を着た8人ほどの人間が、抜き身の剣を手に行く手を塞いでいたのだ。あらかじめ包囲していたらしい。 「ビス!」 「なに、心配するな……と言いたいが、戻るぞ!」 「うん!」 右腕で娘をすくい上げると、ビスは石畳を蹴って店の扉めがけて逆走した。半ば開いたままの木戸を蹴りあけ、店内に転がり込む。 「な、なんじゃ?」 勢いよく扉を閉めたので、驚いたのだろう。厨房から老ファングが顔をのぞかせた。洗い物でもしていたらしく、濡れたステーキ用の大皿を片手に持っている。 「囲まれてやがった。爺さん、すまねぇがこの子を預かっちゃくれねぇか」 扉にもたれかかったまま腕を伸ばして、リオをカウンターの上に乗せる。背中の向こうで扉が激しく揺れた。数人が体当たりを仕掛けてきたようだ。怒声が響く。 「ならんな。この分じゃ、あんたが出てっても家捜しに遭うのは知れておる。ちと待っとれよ」 老ファングは言うなり、奥に向かって「ヤム、イル、カン! お前たち、しっかり店を守っとれ!」と怒鳴り、自身はカウンター内の床をこじ開けて、地下へ下りていってしまった。 「ビス、どうするの?」 と、リオが聞いてくる。怯えていないのは感心だ。 「まあ……待ってみるさ」 右手でカウンター、左手で柱を握り、全体重を背後に預けながら、ビスは答えた。みしみしと音を立てているのは矢筒か扉か。 どしん。どしん。どしん。 ビスの体が激しく揺れる。つかんでいるカウンターの端がびしりと割れた。腕がぶるぶる震えはじめる。踏みしめた床に、深い爪跡が刻まれていく。 「くそ……8人はさすがにキツいな……」 さきほどから蝶番がひどく軋んでいる。おそらく剣かなにかでこじ開けられようとしているのだ。長くはもたない。 気配を感じ、ビスは首をかたむけた。扉を破り、耳の横――さっきまで頭があったところから、剣の切っ先が顔を出す。それはすぐに引っ込んだが、別の切っ先が今度は膝のすぐ横から生えた。 ビスの額に汗がにじんだ。このままでは串刺しにされてしまう。 「あっ……じーさんが出てきた」 その声に、ビスは横目を使った。なるほど、灰色の指が四角い穴から出て、縁をつかんでいる。 指の次に出てきたのは、巨大な――枝みたいな角を生やした頭蓋骨だった。 『うわあ!?』 「はっはっは。心配無用。こいつは3年前俺が仕留めた、アレイオスオオツノカンムリジカの頭骨よ」 くぐもった笑い声は、頭蓋骨の中から聞こえた。笑いつつ、「よっこらしょ」と地下倉庫から体を引きずり上げる。そのいでたちのほうも飛びぬけていて、あちこち金属板を縫いこんだ服を着込み、背中に斧と槍、腰に肉厚のナイフと小型の盾を巻きつけている。 「あ、あんた、そいつは一体……」 「言うたろうが、俺は冒険者だったのさ。それも凄腕のな」 厨房から赤毛の少年が顔を出して、 「マスター、またですか? あまり竜牙兵に眼をつけられると――」 「もう遅い!」 老人は嬉々とした様子で叫んだ。 「義を見てせざるは臆病者のからっ風だ。さあでかいの、そこをどけ。突っ切るぞ!」 「お、おい爺さん。正気かい」 一応はそうたしなめたものの、ビスのほうも限界だった。分厚い一枚板だからまだこらえてはいるが、繰り返し体当たりされた上に蝶番を外されて、扉というよりもう単なる板である。ビスは二度ほど深呼吸し、三度目で一気に前に飛び出した。リオを抱え込み、左に飛んで身を伏せる。 扉が弾けとんだ。黒衣の男たちがなだれ込んでくる。バランスを崩して何人かは転んだ。その上を、 「がはははははは!」 シカの頭蓋骨をかぶり完全武装した老ファングが、謎の高笑いと共に踏み越えて、外へと突進していく。 「な、なんだ!?」 「不審者だ! 手配書とは別の――!」 そこまで叫んだところで、哀れな男は突進の巻き添えを食って戸外に吹っ飛び、石畳の上に転がった。「貴様!」と剣を向けた別の一人は、背後からビスに「ごめんよ!」と蹴り倒されてこちらも吹き飛ぶ。厨房では「わー強盗めー許さないぞー」と赤毛の少年が叫んで、ビスたちに皿を投げつけるふりをして黒衣たちに命中させる。 「いてて、何をするか、この小僧!」 「変な骨をかぶった人が盗みを働いたんですー。正当防衛ですよー」 「フリッツ、そんな奴にかまうな!」 「いかん、手配犯も逃げたぞ!」 「どっちだ!」 「こっちだ!」 「右だ!」 「左だ!」 「だああ、ややこしいから黙ってろ小僧ども!」 ……野次馬の歓声まじりの喧騒をようやく抜けて、ビスは大きくため息をついた。カンガルーの子供みたいにその懐に張りついていたリオも、同じように息をつく。 裏路地と思われる道の一本である。 柱の明かりもここにはない。建物と建物の間に挟まれた細い通りで、頭上には数本のロープが渡されており(布が何枚かぶら下がっていた)、足元には木箱やら割れたビンやらが転がっている。 「はっはっは。実に痛快」 シカの角を揺らして、老ファングが笑った。夜の静寂に声が吸い込まれていく。 「いいのかい、あんなことをして」 「構わんさ。俺ぁ昔から役所と保健所が大嫌いでな」 「役所? するとやつら、役人か」 「そうさ。知らずに追われておったのか?」 老人はかぶっていた頭蓋骨を脱ぐと、首筋を叩きながら解説してくれた。それによると、ビスたちを包囲していた集団は、竜牙兵と呼ばれる都内巡視隊なのだそうだ。酔っ払いの取り締まりやら万引き犯の逮捕やらといった微罪から強盗や殺人といった重罪犯の捕縛まで、手広く活動しているらしい。 「リオたちはなにもしてないのに!」 少女が憤慨して、ビスの胸を叩いた。 「奴ら手配とか言ってやがったな……。街に入ったときに目をつけられたわけか」 「妙だな。手配犯なら街に入れるはずがない。入都管審局のチェックは迅速だが甘かないぜ――かといって人違いってわけでもないみたいだが」 「!」 リオを抱えて、ビスは頭上を見上げた。洗濯用のロープのその上に、3人ほどの影が立っている。 「わ、すごい」 リオが無邪気に手を叩いた。老ファングが骨をかぶり、ナイフを構える。ビスは背の矢筒から左手で矢を一本抜き取った。 「――銀帽子の連れか?」 影の一人が聞いてきた。若い男の声。質問というよりも確認に近い口調だ。 「答えて欲しいなら、まず相手と同じ目の高さで話すんだな」 ビスが返す。別の影が声を発した。 「ならば聞くを止めよう。その身柄、預からせていただく」 夜空よりもなお暗い三つの影が、一人は前、二人は後ろに降り立つ。いずれもフードを被っていて、表情は分からない。ただ敵意だけを濃く放射している。 「こやつらは竜牙兵ではないな。あんな器用な芸を持つ奴らは、役人にはそうおらん」 老ファングがそう言って、ビスの腰をつついた。 「でかいの、どうする? こいつらは手ごわそうだぞ」 「ああ、逃げる」 ビスは即答した。なにしろメイズと離れたままだ。見つける当てはないが、一刻も早く再会しなければ。 ----------------------------------------------------------- とはいえ、いったい何処に――考えられるのは、表通りだった。裏口から出た自分達が店内に戻った時間はそう長いわけではない。だが、店内にそれらしき形跡はない――というか、メイズの匂いは強くなかった。もっとも、鼻が利くのは自分だけではなく、あの竜牙兵とかいうファングの奴等もそうなのだろうが。 ビスは嫌な汗が噴き出してくるのを感じながら、じりじりとあとずさった。 とにかく、まくしかない。 とりあえず何処でもいいから、裏道から出なければならない。感じからするに、光の当たるところまでは追っては来ないだろう。 「さて、と。では捕縛開始」 そう呟きが聞こえたかと思うと、三人の姿が消えた。 だが、好機をうかがってダッシュの準備をしていたビスよりも早く、彼らは動き、そして―― 「はい、おしまい」 「きゃあ!!」 「リオッ!!」 ビスが動く間も無く、全てが終わっていた。 「てめ――」 「あ~っと? 動かないでくださいね~♪ でないと・・・」 一人が、フードの下でにやっと笑った。その隣にいる影の腕には、ビスにしっかりとつかまっていたはずの、あの、リオが、いた。 「でないと、この子消しちゃうよ?」 ビスに選択権は、無かった。 <雲のほとり>のマスターである老ファングは、己の目を疑った。 かつての冒険者としての勘が、ヤバいことが起こったのだと告げてくれる。 人が消えた。 そういう表現が正しいのだろうか、ともかく、先程まで自分のすぐ傍らにいた巨躯のファングの青年と、その連れである人間の女の子が、あっという間にいなくなってしまったのだ。 無論、勝手にいなくなったわけではなく、あの黒い影が――そう、それは影だとしか思えなかった――少し動き、あの女の子を人質にとったから、あの彼は歯向かえずにそのまま何処かに連れ去られたのだと考えていいだろう。 「まさか・・・?」 年老いた冒険者・ダクスは目を見張った。まさかだとはおもうが、まさかあの、『死装束』だったのではないか? 「こうしちゃおれん!」 ただの推測でしかないが、かつてかの有名な人間の冒険家・アストラと共に旅をしたことがある(といっても一度だけだが)と自負する己の冒険者としての勘が、間違い無く『死装束』だと告げている。 だとすれば、ここ銀帽子ももはや安全な場所ではなくなってしまう。この美しいエル・ドレイクが、あの廃墟ルリシェイダのようにならぬとも限らないわけだ。 ここは急いで店に戻り、まぁ信じはしないだろうが、一応はあの役人どもに言っておく必要がある。 あのクロウの嬢ちゃんも無事に逃げ切れただろう、なんといってもあのタントリスがいるのだ、おそらくは心配は要らないだろう。出来ればヤムかイルにでも言伝を頼みたいところだ。 老ファングはシカの頭蓋骨をかぶったまま、裏路地を疾駆した。 明日にはこの都市中が、驚きの渦中にあることだろう。 矢は既に放たれた。 暗いところは好きではない。昔を思い出すから。あの嫌な嫌な昔の事を、思い出さざるを得ないから。だから夜は大嫌いだし、星の美しさもその慰めにはならないのだ。 とはいえ、ダチの頼みとあらば、夜の闇だって怖くは無い。 だが―― 「リュ~ウにまったが~り そっらを駆けぇ~ 狙うはかっなた~の新天地ぃ~♪」 まあ、歌ぐらいは許してもらおう。 「た~どりつっけるぅか落っこち~るかぁ~ 飛ぉんでみっない~と わっからっない~♪」 フラことフラスクエアーは、調子っぱずれの歌を歌いながら、薄暗い裏道を歩いていた。 表通りとは異なり、夜道を照らすのは星の光のみ。暗躍するにはぴったりだ。 だが、今夜は妙に騒がしい。 割とちょくちょく顔を出す<雲のほとり>の裏を通りかかったところ、あの竜牙兵が――もちろん、フラは慌てて隠れたが――いたのだ。しかも一人や二人ではない。店の中にいたお客に何か聞いており、店のマスターであるダスクが、『死装束』がどうのこうの言っているのが聞こえた。元気な爺さんで、取調べしているほうがたじろいでいる感じだ。 あとは、店の裏口付近で、金色をしたデカイの(ガウル)と黒いチビ(ゲイグ)が、上司らしき銀色の奴――馴染みの顔だ、名前はジェッツ。いつの間に部下持ちになったんだろう――に叱責されているのも見た。流し聞きしたところによると、かの銀帽子とその連れであるファングの青年と人間の女の子を取り逃がしたから包囲を狭めて徹底的にいぶり出せだの生きて捕まえろだの云々。これだから役人は頭が固いのだ。追い詰めれば捕まえるというのはあくまでも一般常識でしかないのに、それを強固に押し通そうとするから、今でもフラは牢にぶち込まれずにすんでいるのだから。 聞くべきことはあまり無かったが、ひとつだけ。 そう、『死装束』だ。 誰も信じちゃいなかったが、フラは確信した。やっぱりダチの言ったことは本当だったのだと。まったく嬉しくは無いのだが、悔しいぐらいあの男の先見の勘は当たる。 とはいえ、竜牙兵では死装束に対抗出来まい。そんな伝説の組織に立ち向かえるのは、そっちの筋のものだけだ。だから役人である竜牙兵に追い回されなければならないのだが。 ともあれ、馬の利点は最大に生かす必要がある。入都管審局のチェックが素通りなのは楽でいい。無論、喋ったらダメなのがつらいところではあるが。 とにかく、フラは歩いた。カパカパと、妙な音を立てながら。あくまでも、自然に。 「きょ~おもゆっけゆ~け そっらのはてぇ~ あっした~もとっべと~べ どっこま~でもぉ~♪ ども、お疲れさんっす」 にっと笑って、フラは唐突に闇に向かって頭を下げた。 気配なんて無い。 だが。 「そこにいるんでしょ」 なめてもらったら困るのだ。これでもアイツの相棒を自称しているだけのことはあるのだから。 「恥ずかしがらずに出てきてくださいって」 沈黙。 「出る気ナッシング?」 辺りはあまりにも静かだ。フラは大袈裟にため息をつくと、 「じゃ失礼」 ドグバキシッ そのままの姿勢で、思いっきり後ろ足を跳ね上げた。こん身の一撃だ。確実に何かが砕け散った嫌な音と、しっかりした手応えを感じ取りながら、フラは振り返った。 案の定、そこには影が、いた。動けそうなのが二つと、動けないのが一つ。 「どーもどーも、お仕事ご苦労さんっす。つっても労災降りないんだよね~ケガしても。闇社会ってのはつらいっすよねぇ~。ま、ハイリスクハイリターンっての? 博打っすよね~」 「「フラ!」」 何処からともなく、女の子の声と男の声が聞こえてくる。 「や、どーもおひさっす。っても、涙と感動のお別れをしたのは日が沈む前だったり。いや? 大切なのは離れ離れになっていた時間というよりもむしろ、離れ離れになったという体験であるらしいとはダチの話」 あはー、とフラは馬の顔で笑った。その周囲を、二つの黒い影が音も無く取り囲む。 「貴様、よくも・・・」 「あーあーあー! 大切な手駒なのに、使えなくなっちゃったらどーすんのよッ! ムカつくわ! マジでムカつく!」 ふっと、影の前に女の子が現れた。 「きゃ・・・」 「お、リオちゃん」 「お、ってあんたね、状況分かって言ってんの? 馬鹿じゃないあんた、っていうか馬鹿でしょ」 女声の影が言うとおり、リオの首筋には銀色の光る刃が押し付けられていた。 「言わなくても分かると思うけど、あんた馬鹿そうだから言ったげる。動けばこの子、消すよ」 「放せー! ばかー! 放せってばー!!」 「うっぜぇんだよこの人間が!!」 女だと思われる影は、目に映らない動きでリオの頬をぶった。 「この――」 「あー、動かない焦らない怒らない、今しばしの辛抱っすよ」 包囲の分からぬ場所からビスの怒り声が聞こえたので、フラは努めて軽く流した。 「んで? 動かないことによるオレッチのメリットは?」 「楽に死ねる」 言うよりも早く、影は動いた。確実に首筋を狙って、飛ぶ。 「ヤだね」 だが、影が一撃を振り下ろした先に、馬鹿馬の首は無かった。いつの間にか、影の背後へと回り込んでいる。 「だぁ~ってぇ~、オレッチまだまだ旅してたいし~、もっと自由を満喫してたいし~、何より――」 影が構えるより早く、フラは行動した。 ガンッ 軽く影の後頭部に頭突きを見舞うと、そのままもう一つの方へと疾走する。 「な」 不意をつかれ、影はリオを手放した。咄嗟の判断で身を守ったが、それも徒労に終わった。馬の体当たりをまともに受け、影は路地裏に積んである箱の中に突っ込んだ。 「何より、もっと飛びたいのさ」 驚いて目をぱちくりさせているリオの前で、フラはぱちっとウインクをして見せた。 「ありがとよ、フラさん」 「フラでいいっすよ、疾風のビスさん」 ようやく戒めの解けたビスの前で、フラはグルングルンと首を回してぼやいた。 「あーったくもー、慣れない戦闘で首が痛いわー。あのですなー、これだけは信じといてもらいたいんっすけどもね、オレッチはもともと温厚な、それこそ仏のフラって呼ばれるほど心の広~い雄でして、だからいっつもいっつもこんなことばーっかりしてるとか思われると心外なんすよ。普段はこーゆーのはダチの役目なんで、そこんとこヨロシク」 「お、おう・・・」 言いながらも、ビスはこの変な馬もどきをまじまじと見つめた。慣れないとは言っていたものの、動きが捉えられないほどの影を瞬殺するということはかなりのてだれだとしか思えなかった。いや、馬にてだれもへったくれもありゃあしないと言えばそのとおりなのだが。 とにかく、助けてくれたのは嬉しいが、そもそも竜牙兵といいさっきの影といい、エル・ドレイクに来てから妙なことばかり起こる。 そして今度は、そんな馬もどきと無邪気に戯れるリオを見た。 「――けどね、リオ泣かなかったよ。えらいでしょ」 「おお、マジで!? やー、リオちゃん強いなー、オレッチがガキだった頃とは大違いだ。そりゃもー、ピーピー泣いてたから目が真っ赤になっちゃって、ある日言われたんだよ、ウサギさんですか、って!」 「えー? フラちゃんウサギさんなの?」 「あーでもほら、ニンジン嫌いだから」 「好き嫌いしたらダメなんだよ。全部おいしく食べなきゃ!」 「じゃー今度からリオちゃんを見習って、食べてみるっすよ」 そう、彼女は人間だ。そして、幼い。 今度こそは、守らなければならない。この子の父として。 「・・・で?」 「はい~? どうしたっすかビスさん」 やる気がそがれる緊張感の無い笑顔で、フラは振り返った。本当にこんなのに助けてもらったのだろうかという気がしてきたが、ビスはともかく続けた。 「フラ、メイズを見なかったか?」 「いんにゃ~、見てないっすねぇ、やっぱはぐれたんで?」 二人が黙ってしまったのを見て、フラもさすがにやばいと思ったのか、明るい声でこう言った。 「だぁ~いじょぉ~ぶッ! 絶対に見つけたげるから、このフラ様を信じなさいって!」 「しくじったな・・・」 影は悔しそうに、白い馬もどきがビスとリオを連れて表通りに出てゆく様を、じっと睨み付けていた。 「とりあえずゼキスさん、どうします? あのお役人どもはとにかく、『あいつら』も動いてるみたいなんですけど~。ってか面倒なんですよね~、邪魔されると」 「何も知らぬ輩に何が出来る? 分かりきったことだ。せいぜい醜く足掻いてみせるだけだろうよ。放っておけ」 「ま、アレでしたっけ? 『深淵より来たる銀帽子のクロウ、その手をかざし世を乱す』っていう・・・」 「・・・」 「あっちゃ~、知りたがりは命が縮みますかね? じゃここまでで。じゃあとっとと帰り――」 「ああもう何なのよムカつくッ! 何あの馬、何あの馬鹿馬、うざいうざいうざいうざいうざいッ!! あーもー何あれ!? ねぇゼキス、あれ消しちゃっていいでしょ!?」 イライラと爪を噛みながら、女の影が叫んだ。 「やめておけ、ラクセラ。光の下に姿を現す気か? いずれ消せばいいだろう。とりあえず、帰還するぞ」 「ふん! ちょっとアックス! あんたのせいよこの馬鹿! あんたがあの馬鹿馬に蹴られるから駒が減ってこうなっちゃったんでしょうが!」 「そぉ言うなよ、ラクセラちゃん、可愛い顔が崩れるよ~♪ それに先輩呼び捨てにしちゃダメっぽくない?」 「煩いわね! 今気が立ってるのよ!! マジ消えて!」 声が響いたが、辺りには人の気配も何も無い。 そう、彼らは影。 存在しないもの。 そして突然に。 光の下に、現れるもの。 ----------------------------------------------------------- 「それで、これはどういうことかしらね?」 「まあ――、こっちに来いって…ことだろう?」 二人の視線の先に、先ほどの三毛猫が歩いている。行き先を聞かれ、とっさに鳴き蛍と応えたメイズだったが、とりあえずの危険の去った今では、このまま鳴き蛍に行くことになっても困るというのが正直なところだった。ビスとリオと離れ離れになったままなのだ。 改めて、自分のいる場所を見渡す。ここが空港だとわかったのは、単にここへ来る途中に跳び越えたフェンスに、そう看板があったからとうだけのことだった。そもそもメイズには、空港がどういったものなのかもわからない。 「楽師さん。ここ、空港――よね? わたし、空港って具体的にどういうものか知らないんだけど。猫に案内されるのって普通なの?」 「…タントリスだ」 多少の不安要素を残しつつも、とりあえずは猫についていく二人。その脇には、カマボコ型の倉庫が並んでいる。警備員の一人や二人いるんじゃないだろうか、とは思う。 「……エル・ドレイクを上空から見ると…、大小の円を重ねたような形している」 「? それ、空港と関係あるの?」 「…おおいに。実のところ…、その大きい円というのは……巨大な、穴だ。驚くことには…、エル・ドレイクの都よりも、直径が大きい。それに、穴というか――正確には、地底湖、というのか。深い深いその穴の底には、さらに深い湖が広がっている。――そして、そこに棲んでいるのが、…“神獣”モービーディック・スカイウォーカー」 「…神獣?」 「そう。言ってみれば――まあ、巨大なクジラだ。それも……翼の生えた、だ」 「翼のあるクジラ!?」 「そうだ…。空港は、それを利用している。いや……正確には、協力してもらっている……と言ったほうが正しいのか。まず利用客は、…おおよそ一般的な住宅くらいの大きさの、卵型の乗り物に乗り込む。それ自体も多少は動くんだが…、そいつを神獣に飲み込んでもらう。それで、そのまま別の“島”に運んでもらうんだ」 淡々と語るタントリスの話に、メイズは驚きを隠せなかった。 「それは、ちょっと予想外だったわ…。――いえ、というか、それ、飛ぶの? 翼があれば飛ぶってモノじゃないと思うけど…」 驚きを通り越してさすがに信じられず、メイズはついそんなことを言った。 「そういわれてもな…」 「この目で見なきゃ、信じられそうもない話ね…」 と。 「お~い~。ちょお~っと~、待って~」 「メーイズー!」 「え?」 唐突に、上から声がした。名を呼ばれて一瞬警戒しかけるメイズだったが、その声には馴染みがあると気づいた。 「メイズ! 無事だったか!?」 「…ビスに、リオ…!? それに――」 「フラスクエアー、っすよ~。お久しぶり――ってほどでもないっすねえ。まあしかし、大切なのは離れ離れになっていた時間というよりもむしろ、離れ離れになったという体験であるらしいとはダチの話」 「フラちゃんそれ二回目」 「お~、リオちゃん記憶力いいっすね~」 場にそぐわないほどに軽い会話をしながら、メイズとタントリスの前に、フラスクエアーは降り立った。その背中から勢いよく飛び降りたビスが、そのままメイズに飛び込んでくる。 「ん……、飛んでたな。翼付きの…馬」 タントリスが、小さく笑いながら言った。 「そうみたいね」 メイズは肩をすくめてそう言った。 ----------------------------------------------------------- 空港『空の翼』は、首都に点在する非公認空港の一つだ。非公認とは言うものの、警備の厳格さと設備、価格の安さでは郡を抜いており、信頼度は公認のどの空港にも勝る。そのためカタギの民間人も多く利用している。経営しているのはアーダという空賊上がりの女クロウで、度胸ときっぷの良さで聞こえている。 「やあ、お客さんを連れてきたね、ミケ太郎」 三毛猫は女主人を見上げて「なー」と鳴く。アーダは視線を持ち上げ、焦点を三毛猫から客の一行に移す。 「ふむ、タントリスにフラスクエアー。それに見ない顔が三人ね」 「メイズです。こっちはビスとリオ」 「あん。スカイウォーカーは、ちょうど今『小夜峠』から戻ってきたところだ。出発するなら、すぐにでもどこにでも行ける。――もっとも、ルリシェイダとかだったら別だけど」 「それならちょうどいい……この三人を、『鳴き蛍』まで送り届けてやってくれないか」と楽師が言った。 アーダは、ふと思案顔になった。 「『鳴き蛍』? ――ふむ」 「何か問題でも?」とビス。「空賊とか」 「いや――逆さ。鳴き蛍までの航路を縄張りにしてる空賊が突然壊滅したって、昨日伝わってきたんだよ」 「竜牙兵の仕業じゃないんすか? あのあたりの空賊は、よく役所のスカイウォーカーを襲ってましたから」とこれはフラ。 「だったら何も心配はないんだけどね。どうも『死装束』じゃないかって、噂が立ってるんだよ」 「『死装束』が空賊などを?」と楽師。 「連中のやる事は分からないさ。第一、連中の仕事だって決まったわけでもないしね。――でもメイズさん、これは言っておかなきゃならないが、はっきり確認ができるまで、鳴き蛍への航行はやめたほうがいい」 ビスがメイズを見た。リオが手をぎゅっと握る。 メイズは視線を落とした。 「では、こうしたらどうだろう」と沈黙を破って楽師が言った。「まずは迷い剣へ。それから赤鎖群島を経由して、鳴き蛍へ行く」 「それなら、方角も反対になるね」とアーダ。「ただ、かなり大回りになるから時間もかかるし、赤鎖群島の空港設備はあまり整ってないし、数も出ないけど……どうするんだい、メイズさん」 「もともと、鳴き蛍へ行くことが目的じゃないし……多くの場所を見てまわれるなら、それも良いかなと思います。ビスもリオも良いよね?」 「おう」とビス。リオもにこりと笑う。 「そいじゃ決まりだ」アーダが口笛を吹くと、空を巨大な魚が泳いでくる。いや、魚ではない。鯨――翼の生えた鯨だ。 「さ、こっちだ」アーダは三人を案内し、卵型ポッドに乗り込ませた。このポッドは宿屋の小さめの部屋ほどあり、三人が楽に座ることができる。メイズたちが乗り込むと、ポッドは動き出した。 「迷い剣へ行ったら、雪に気をつけな」という声が、最後に聞き取れた。 旅立つスカイウォーカーを見送りながらパイプをふかす。それがアーダの、ここに居を構えてから十年来の習慣だ。だがこの日だけは、パイプを手に取るのも忘れ、腕を組んで考え込んでいた。 ――深淵より来たる銀帽子のクロウ、その手をかざし世を乱す。 ふと、予言の詩の一節が、続いて故郷・ルリシェイダの最期の日の光景が、彼女の脳裏をよぎったのだった。 「そういえば、迷い剣からルリシェイダまでは空路で数日の距離だったわね」 ----------------------------------------------------------- 「……あの島は無人の廃墟だと聞く。時が経った今でも……な」 タントリスの低い呟きが、風に乗ってアーダの耳をくすぐった。女港主は横目で楽師を見やると、また空に視線を移した。トンネル状にくり抜かれた水路の奥に、ぽっかりと口を開けた青空を。 「あんたは何であの子たちと?」 「……さてね」 振り向くと、楽師は苦笑に似たものを口元に漂わせていた。アーダと目が合うと、帽子をかぶりなおして表情を陰にする。 「……俺もお人よしが抜けきっていなかったらしい……あなたのように」 「あたし? あたしの何がお人よしだい」 「……だって、請求しなかったろう。……料金」 指摘されて、アーダは口をあんぐりと開け、目を瞬かせた。「あ」と漏れる声。タントリスも目を見開いて、 「まさか……本気で忘れていたのか?」 アーダは答えずに、ずかずかと港の岸壁に作られたドアに向けて歩き出す。そこから先はアーダの私的なアジトになっていて、密貿易の輸入品だの空賊時代の戦利品だのがいくつかの部屋に収められているのだ。「おい、どうした――」追いかけてくるタントリスの声は無視して、アーダは『あーだのおへや』と刻まれた扉を開け、猛然とタンスを漁り始めた。 「『死装束』だと……!」 牙をむき出しにして、男は唸った。銀色の剛毛に覆われた拳がぶるぶると震える。握られていた羽ペンが折れ、羊皮紙にインクが点々とにじんだ。 「はっ。何分深夜ということもあり、目撃証言の信頼性という点では疑問が残りますが」 直立不動の姿勢で報告しているのは、黒地に銀の竜を配したデザインの制服をまとった、こちらは人間の男だ。フリッツという彼の個体名より、竜牙兵という彼の官名のほうが今は重要である。彼が報告している相手についても同じことで、ジェッツという名前よりも北部竜牙兵長という肩書きのほうが大切だった。 「『死装束』が首都に……」 竜牙兵長は浮き上がらせた腰を椅子に沈めた。大きく息をつき、机上に置かれた鳴き蛍産のパイプを手に取る。しかしそれをくわえることはせず、部下に命じた。 「3人の捜索は打ち切る。代わりに北部全域を厳戒体制で警備しろ。主要街路には非常線を張れ。現場レベルの判断はゲイグに一任する。その旨を本人に伝えろ。いいか、第一種だと伝えるんだ、わかったな」 「はっ!」 竜牙兵が退出した後、竜牙兵長は宮殿内線で同格の南部竜牙兵長に連絡を取り、さらに軍務大臣の控え室に走ってその扉を叩いた。許可はその場で下りた。こうして10分後には街に竜牙兵たちが散らばり、竜鱗兵たちが外壁を固め、竜騎兵たちが翼竜を駆って防空任務に当たることになった。 この第一種厳戒態勢は、これまでは訓練上の指令でしかなかった。仮想敵はだいたいが未知の大陸か謎のテロリストであったが、今回、ついに後者が現れたのだ。それも「伝説級」というおまけつきで。 「くそ……なぜこのような時に……」 自らも現場に向かいながら、竜牙兵長は毒づいた。宮殿を出ると、赤い光が白っぽい闇のあちこちに瞬いている。竜牙兵の腰に巻かれた識別灯の光だ。常夜灯の弱い白色光のもとでそれを見ると、奇妙に現実離れした印象がある。その中に駆け込みながら、兵長は大声で陣頭指揮を執り始めた。 「……入るぞ、ミス・アーダ」 タンス漁りを始めてからしばらくして、後ろから声が聞こえた。タントリスだ。ドアは開いているのに、律儀な男である。アーダは目当ての道具――古ぼけた飛行帽と風防眼鏡――を引っ張り出すと、楽師のほうに顔を向け、 「ちょっと留守にするから、あんた、あと頼むわ」 「……なんだって?」 「留・守。港主のアーダさんが勘定もらい忘れるようなぼんくらじゃ、先の稼業に響いちまう。うちじゃツケは効かないことにしてるしね。追っかけるのさ」 「スカイウォーカーをか? だが、ここには幼生が一頭いるだけだろう」 その幼生は、ついさっきメイズたちを運んで飛び立ったばかりである。 「あたしゃ空賊あがりなんだよ。古い船が倉庫に――」 アーダは言葉を切った。耳がぴくりと動く。 リリリ……と、ドア脇にぶら下げてあるベルが涼しい音を立てて揺れた。20回。 「……上の扉が破られたか。あまりいい客とはいえないようだな」 タントリスが言う。アーダは再びタンスに上半身を突っ込んで、もう一組の飛行帽と風防眼鏡を探し出した。タントリスに放ってやる。楽師はあわててそれを受け止め、 「……これは?」 「ダクスが前に使ってた奴」 タントリスはそれだけで諒解したようだ。帽子を替え、ゴーグルをつける。アーダは宝石棚からありったけの装身具を選び出して身に付け、それから部屋を飛び出して猫の名を呼んだ。やってきた猫を肩に乗せると、今度はふたつほど離れた部屋の扉を蹴り開けて、 「タントリス! 火!」 「あいよ」 楽師が背嚢から取り出した火口箱を受け取り、ランプに火を入れる。ほのかな光円に照らし出されたのは、台車に乗ったままほこりをかぶった飛行機械――飛翔機だ。尾翼も両翼も折りたたまれ、金属製の巨鳥が頭を抱えて縮こまっているように見える。はげた塗装の上からアーダが適当に塗りなおしたせいで、派手にまだらだ。 「おい、動くのか、これは」 「さあね。それより時間がない。20人の団体さんが来る前に、こいつを運んじまうよ。そっち持って」 あごで台車の前を指示し、アーダは台車を後ろから押し始めた。鈍くきしんで、車輪が回り始める。ドアを出て左に方向転換し、一直線に突き進む。台車の横幅は人間4人分ほどもあるが、入れるときにも同じ道を通っているので、つっかえる心配はない。走る足の一歩ごとに、台車の車輪のきしむ音と、アーダのアクセサリーの触れ合う音が響いた。 開けっ放しの扉を通って港に出ると、アーダは慣れた手つきで飛翔機を組み立て始めた。「おい、来たぞ!」とタントリスが叫ぶ。ちらりと見ると、竜牙兵の制服姿がはるか階段の上にひしめいている。「いたぞ」「私設空港か……こんなところに」「おいお前ら、そこを動くな!」「現在は第一種厳戒体制下だ、ここは閉鎖する!」などと、口々にわめいている。 どうやら真面目に階段を下りてきたらしい。地下まで100メートルぶんの螺旋階段をだ。ごくろうなことである。フラスクエアーのように抜け道を知っているわけもないので、仕方がないのだろうが。 「ま、そいつも徒労ってことさね。えーと、あら、錆びちまってる……」 蓋を開けて内燃機関を点検し、アーダはつぶやいた。備え付けのてぬぐいも乾ききってまるで軽石だ。液体洗浄剤は開けてみると粉になっていた。思わずため息をつく。 「日ごろから整備はしとくべきだったかねえ」 「何を暢気な……奴ら、もうそこまで来てるぞ!」 アーダは舌打ちし、操縦席に頭を突っ込んだ。とっとと乗り込んでいた猫をどかし、転がっていた筒をいくつか拾う。ポーチに突っ込んだままだったタントリスの火口箱で、筒から伸びたひもに火をつけると、 「タントリス、耳ふさいで伏せな。……そら!」 「な……お、おい!」 アーダが放り投げた筒は、竜牙兵たちの真上で爆発した。激しい振動が床と鼓膜を震わせ、突風が人間たちをなぎ倒す。竜牙兵たちの姿は、濛々たる黒煙の中に没した。 「……ば、爆弾だと……。落盤したらどうする!」 「しやしないよ。どうせ湿気ってる。それより乗りな、逃げるから」 「う、動くのか? 燃料は?」 「前に入れたのが残ってるよ。あんたも意外と気が小さいね、大きく構えてなって」 言いながら前部操縦席に飛び乗って、アーダは後ろに声をかけた。猫は胸元に押し込む。 「タントリス、そのへんに取っ手のついたワイヤーがあるだろ。そいつを何回か引っぱってくれ。エンジンがかかるから」 「……わかった」 五度ほど空振りしたが、六度目で機体が大きく揺れ、振動音が響き始める。倒れていた竜牙兵が起き上がり、風から顔をかばいながら、それでも阻止しようと近寄ってくる。サイズを合わせてゴーグルを下ろしたタントリスが、後部座席で怒鳴った。 「何をしてる! 回り込まれたぞ、ミス・アーダ!」 「おかしいね……タントリス、エンジン蹴飛ばしてくれる? あんたの下にあるから」 言われた楽師は額に汗を浮かべて足元のはずれた蓋を見つめたが、包囲の輪が縮まってきているのを見て意を決した。床下に足を突っ込み、かかとで思い切り蹴りつける。とたん、真っ黒な煙を噴き上げ、おんぼろ飛翔機は矢のように前にすっ飛んだ。 『うわあ!』 急な加速に乗組員2人が悲鳴を上げる。同じような悲鳴を上げて、立ちはだかっていた竜牙兵たちが飛び離れる。彼らの鼻先を、飛翔機は跳ねるように飛んで、水路に着水した。水切りの石のように何度もバウンドする。 「お、おい、と、飛ば、な、ない、じゃ、じゃな、いか!」 「れ、レバ、れ、レバー、か、固、くて、うごか、ない!」 びしょぬれになり、激しく揺さぶられながら、タントリスのクレームに返答する。舌を噛みかねないので危険極まりない。いや、それよりも、徐々に大きくなっていく青空のほうが問題だった。この空港はスカイウォーカーの棲む地下水路まで縦穴をくりぬいて作られている。むろんその穴はスカイウォーカーが通るには狭すぎるし、ここからだと街中に出てしまうので、くじら用の出入り口は、水平にトンネル水路を作ってある。その先は空だ。その出入り口は、大陸の中腹に開いた穴なのだ――空中に浮かぶ大陸の。 「お、落ちる!」 タントリスの悲鳴。アーダは渾身の力を込めて機体を起こそうとしたが、錆びているのか抵抗が強いのか、レバーはぴくりとも動かない。このまま離水できなければ、出口から飛び出して奈落の底にまっさかさまだ。 「くっ……」 跳ねるときの水音が激しくなってきた。水深が浅くなっているのだ。つまり、出口はもう近い。顔を上げると、思ったよりもはるかに大きく、青い空が、広がっていた。 (と、飛び方忘れて墜落死なんて、そんな間抜けな空賊が――あってたまるか!) 思い出した。アーダはレバー脇のハンドルを回し、ロックを解除した。両手で桿を握り、一気に引き倒す。 「そぉ……れ!」 体が座席に押し付けられるような感覚。水しぶきが遠ざかった。と思った直後、飛翔機は真っ青な空間の中に投げ出されていた。 黒い煙を吐き出して、飛翔機は飛ぶ。後部座席のタントリスが、気の抜けた声で何かつぶやいたようだが、風音で聞き取れなかった。 もう、大陸の半分が一望できる。首都の近くにちらほら見える小さいのは、おそらく竜騎兵たちだろう。小さいののいくつかは、大陸を離れて何かを追うような動きをしている。 どうやら、スカイウォーカーには護衛が要りそうだ。ちょうどいい。アーダは笑った。ひょこんと猫が胸元から顔を出す。 「さーて、まくってくよ! タントリス、歯ぁ食いしばれ!」 そのころのスカイウォーカー内。 眠り込んでしまったリオをそっと壁に持たせかけると、ビスはメイズと向き合って牙をきらりと輝かせ、 「さあ、やっと二人きりになれたな、メイててて!」 「ビス、静かにしないとリオが起きるわ」 「たたた! 分かっは。悪かっははらヒゲをひっはらなひへ!」 暢気だった。 ----------------------------------------------------------- 問題なのは、と彼は自問した。問題なのは、何であるかと。 「――無知だな」 青年はそう呟くと、軽く頭を振った。 何も知らないことは幸せである。知らずに済むことを、そして知るべきではないことを知ってしまったがために、己が身を滅ぼすことなど数知れない。 だが、何も知らぬことはまた、不幸でもあるのだ。 そして今は。 知る時である。 「――というわけで、オレッチとしては街道の整備に金を回すよりも、宿場に水桶を増やすほうがよほど経済的にもいいと思うわけであって、決してこれは自分が馬モドキだからというわけではなく――」 「もういい静かにしろぉッ!!」 「口を閉じて黙ってられんのかこの馬鹿馬はッ!!」 二人の兵卒が同時にそう叫び、耳を塞いだ。そのイライラの元凶である馬モドキはその叫びを意に介することなく、水が流れ落ちるが如くベラベラと流暢に喋り続けている。 「いや、というよかアレっすよ、そもそも何故に、同じ獣人であるはずなのに動物とヒトとが別れるのか!! 喋れるということを知能の発達と見るのであればオレッチはまさしくヒト! であるにもかかわらず、オレッチの扱いはあくまでも馬と同等であって、これはいわば知能に対する差別であり――」 「うーるーさーいーいいい!!!」 たまりかねて、フリッツが叫び直した。 つくづく、災難続きだった。 たまたま今日は非番であったのだが、上層部の命令だか何だか分からないが謎の三人組を追えと言われ、その次は空港の封鎖だ。安眠を貪ろうとベッドに倒れた意味は全く無かったというわけだ。休日を返せと言いたい。 しかも私営の空港に踏み込んでみれば、謎の飛行艇は飛んでいってしまうし、しかもその前に例の三人組は逃走したようであるし、虱潰しに探してみれば見付かったのがこの白馬モドキの喋る馬だ。しかも息つく間も無く喋り倒して、耳を塞いでも声が聞こえてくる。捕まえろという命令で無ければ今すぐにでも放り出してしまいたい代物だ。 「――つかオレッチはただ単にあそこに流れ着いただけであって、あの船が何処に行ったかまでは知らないと何度も何度も言って口が酸っぱいでしょーが!! そっちもお疲れのようだし、オレッチももう眠いし、ここらでお互いに手を打って放置ということじゃダメなんですかいね!?」 「・・・フリッツ、この馬を黙らせろ」 「え? 何すか? 黙らせろ? 口に轡を噛ませるなんて、そりゃあんた尋問する気あるんすか? ってか、そりゃ拷問でしょ、拷問! 人馬差別で訴えるっすよ!?」 フリッツは、もう勘弁してくださいといった面持ちでうなだれた。最早、答える気力も無い。 「そういやジェッツ、いつから部下持ちに昇進したんすか? しかも、え? お偉方!? うっひゃこりゃまた水の鳥と波の都がひっくり返ったんじゃないすか? マジでマジで!?」 「――フラスクエアー、お前は――」 「つっても嬉しくもなんとも無いのはお互い様ってか、実はこの状況は大ピンチだったりするのはオレッチだけの秘密。いやー、オレッチとしたことが、お役人に捕まるなんてドジ踏んだなーなんて。にしても狭くないすか? この部屋って」 言われるまでも無く、その部屋は狭かった。作戦本部、と呼ぶのもあつかましいような狭い部屋を緊急に本部に仕立て上げたのだからしかたがない。だが問題は狭い部屋のことではなく、目の前にいるこの喋る馬のことなのである。 「フラスクエアー!」 冷静に話を聞こうと務めてきたジェッツも、ついに言葉を荒げて叫んだ。 「お前の主は何処だと聞いているんだ! 答えればよし、さもなくばどうなるか分かっているのかッ!!」 青筋が手の甲にまではっきりと浮かび上がっている。その拳をそのままフラの目の前に突き出した。 「お前の主、アストラル・エックスは幾つもの大陸で悪名を馳せた極悪人! それを運ぶお前は同罪として処刑されても当然なのだぞ!」 「主~? 知らねーすわ。アイツと俺とはダチなんでねー」 額を割りそうな勢いで突き出された拳に動じることも無く、フラはあくび交じりでだるそうに返した。 「ま、この銀帽子のどっかにはいるんじゃないすかねー?」 知らずにいることは、時として己にとって悪い方向へと作用する。そうなる前に、知るべきことは、知らねばなるまい。 青年は、立ち上がった。純白の外套が、風に煽られてバタバタとはためく。 「アースー」 「ああ、フラか。意外と遅かったな」 遠目からでも目を引く真っ白な馬を手招きしながら、彼、アスは笑った。 「役人も我慢の仕方を覚えたとみえる」 「そりゃどーゆー意味っすか? ん?」 フラは意地悪そうにニヤリと笑いながら、コツコツと道を進む。 「――やはり、いたな」 その白馬の後ろに、黒い制服を着込んだ竜牙兵がズラリと隊をなしていた。 「――『闇夜の月エックス』、大人しく我々と共に来て貰おうか? 伺いたいことがあるのでね」 「その名はとうに捨てたよ。今の自分は、『暁の星アス』だ」 笑いながら、アスはじゃりっと一歩後退りした。竜牙兵がギョッとするのが手に取るように分かる。 「アスー、もったいつけずに飛び降りるっすよー」 ニヤニヤと笑ったまま、フラが茶化す。 「そうすりゃオレッチは自由の身だ」 アスは苦笑しながら、遥か後方に広がる黒い闇に振り返った。吹きつける風が身にしみて心地良い。 そう、明日の足元には、空が広がっていた。無慈悲なほど広く、そして近い空が。 「で、どうするつもりだ?」 隊長らしき男が、彼に声をかける。気のせいか、声が震えているようにも聞こえた。彼は静かに笑う。 「里帰り」 死ぬ気か――誰もがそう確信し、次にアスが行うであろう行動と、それに対応して自身がなすべき行動を待った。 彼の故郷、『暗き宮の月』は――かつては『光る宮の月』と呼ばれ、首都『ルリシェイダ』を筆頭に繁栄を極めた浮遊大陸だ――既に、この世には無い。あの、『闇月の呪い』と呼ばれる、災厄によって。 「ともかく、自分は知らなければならないことがある」 アスは、微笑をたたえたまま口を開いた。 「『彼ら』の真の狙いを」 言葉が終わる前に、彼の姿が消えた。誰かが叫び声を上げ、同時に包囲網は崖の先へと集中した。だが当然の如く、そこには誰もおらず。 「あーあ、いっちゃったっすか」 ただポツリとそうフラは呟くと、身を躍らせて闇夜の空へと飛び去っていった。 アストラル・エックス――彼はしてやったりといった顔で、親友に向かって笑った。 空はあまりにも広い。 落下とは、翼の無いもののすることだ。そして飛翔とは。 「ってアス! あんた笑ってるとホントにどこぞの大陸にぶつかって死ぬっすよ!?」 親友でもあるフラは、彼が体中で風を感じて悠々と闇夜を飛ぶ様を見て、呆れたように叫んだ。容赦無く身体に吹き付ける風は、切り裂くほど厳しいものであり、同時に抱かれているかのように優しいものだった。その空の恵みを一身に受けながら、ヒトではないヒトは笑った。 「その時はその時だ」 「相変わらず無茶すんだから・・・」 だが友人は、少しも反省した様子も無く軽く胸に手を添えてみせた。 「それぐらいしないと、かつての仲間は欺けないさ」 『死装束』はね――と呟いて、アスは笑顔に殺気の色を浮かべた。 「それに、空は誰のものでもない。誰にでも広く、大きく、無慈悲だ。そして、たったひとつ」 空を仕切る役人には分かるまい。この空の大きさは。この空の高さは。 そして分かるまい。この空を、奪おうとするものには。 そう、飛翔とは。それは翼のあるものがすることではない。 風を感じるものが、することなのだ。 ----------------------------------------------------------- (黒) 初めての空旅というのは感慨深いものがあるものだ――と思ったのは最初の数分だけだった。なにしろ外の景色も見えない狭いポッドの中では、空を飛んでいるという実感も薄い。すぐに退屈になってしまったメイズら、真っ先に落ちたのはリオで、その後数分とたたずにメイズにも眠気が訪れた。 考えてみれば、首都に着いてからろくに休息を取れていなかった。旅の中にあって、ある意味では非常に安全といえる場で眠れるのだから、これはこれで貴重なことなのかもしれない。 そんなことを考えているうちに、メイズは眠りの世界へと落ちていった。 ----------------------------------------------------------- (穂永) 眠りは――沈黙の闇の中の安らぎは、メイズにとってはるか昔から親しい存在だった。 現実的で奇怪なイメージが、脈絡無く現れては消えていく。 これもまた、古くからの馴染み相手。 古くからの。 ――いつから? ……びいぃぃぃぃぃん…… 気持ちが悪い、吐き気がする。 深淵の底に漂う、強烈な違和感。 メイズは感じる。そこに”いるはずのないモノ”の存在。 ……びいぃぃぃぃぃん…… ひどい耳鳴り。真っ赤に染まる視界。ぴくりとも動かない四肢。 それでもなお、いつにもまして鋭敏な五感。 ……びいぃぃぃぃぃん…… 「あなたは誰なの? どうしてそこにいるの?」 声は出ない。だが相手に伝わっていることは感じ取ることができる。 ……びぃん……びぃん……びぃん…… ――鳴き蛍のザヴィン。 簡潔な答え。 「名前なんか聞いてないわ。私が聞きたいのは」 ……びぃん……びぃん……びぃん…… 相手は、それを無視する。 ――おいでよ、メイズ。待ってるからさ……。 ”それ”が大きく遠ざかる。 ……びぃぃ……ん…… 「……待って!」 答えはなかった。かわりに肩をがっきとつかまれる。メイズは心臓が躍り上がるのを感じた。途端に、身体の機能が戻ってきた。 額に汗が浮かんでいた。 リオが寝息をたてている。ビスが頭をこくりこくりと揺らしている。 メイズにはなぜか、迷い剣がまだ遠いことが分かった。 ――もう一度。 そしてメイズは、恐怖より強い感情に誘われて、目を閉じる。 再び、深淵の中へ。 ちょっと書き急ぎすぎの観ありかな。 いきなり終わっています。もっといろいろ書きたかったのですが。空港の状態とか、組織構成とか。By百川。 2005/2/8百川追記。銀帽子のメイズ本体が消えていたので、補完しました。 どこかで見たような展開になってる気がする・・・そしてフラちゃん再び。今回は珍しく新キャラ無し(のはず)です。 追記。 竜牙兵に訂正。(藤枝) 急いで書いたんでなんか色々と甘いですごめんなさい。空港の設定については21日の例会でー。(鴉羽黒) さりげなく行き先が変わっていたり。 13話。なんか物語によって話数がちがう気がします。(百川) 第十四話。やっちまいました。(R) 第15話? 例によってまたも短すぎです。そして遅れまくりまして申し訳ありません。(黒) 第十六話ですか。またも短く、しかも意味不明。(穂永)
https://w.atwiki.jp/purosupi2010wiki/pages/187.html
俺は、俺と礼【ひろむ】のキャラクターを作る、亮と竜輝と穀彰と先輩達と後輩達の授産所のキャラクターを作る、後、それから、俺と礼【ひろむ】は、同じ障害者友達だ、亮と竜輝と穀彰も、友達だ、後輩達も、先輩達も、俺、3ds本体とds本体もマリオカート7とマリオカートds、スマブラ3dsとマリオテニスオープンとマリオスポーツスーパースターズ、のやり方、礼【ひろむ】に教えてもらいたい、友達として、3ds本体とds本体でマリオカート7とマリオカートdsで勝負する、後、俺と礼【ひろむ】 と亮と竜輝と穀彰と先輩達と後輩達全員で桃の実の仕事をすることだ、後、俺、礼【ひろむ】にメールアドレス交換と電話番号交換したい親友としてな、これからも、パワプロ14決定版で俺達全員のキャラクターを作る、最後の最後までな、酒井恒輔
https://w.atwiki.jp/vocamylist/pages/292.html
ランクイン回数 1 登場回 順位 曲名 マイリスト数 #9 17 深海魚 259
https://w.atwiki.jp/madeinore_friend/pages/475.html
コメントログ3(メイドイン俺次回作 応援所) メイドイン俺次回作 応援所に移動 下へ もうバンブラでやれとは言わせない!! ↑自分が作ったんですが、任天堂側は絶対につけないキャッチコピーですねww -- (puttyogamu) 2011-02-13 10 59 16 連符は欲しい -- (イプシロン) 2011-04-08 21 00 04 いや、今のメイドイン俺でも工夫しだいで三連符は再現できるぞ。 ただしゲームに使うと中途半端なところでループするのが問題点。 -- (デマー) 2011-09-06 22 34 44 3Dで出したらどうだろう? -- (アガタ) 2011-10-10 10 09 43 引ク押スやクリエイトーイを見習ってQRコードでゲームを交換できるようにする。情報量が多すぎるか…いや、そこはワイドQRコードで! -- (上弦の月) 2011-12-03 23 27 11 選択肢に メイドイン僕があるww 俺じゃないじゃんww -- (竜騎士) 2011-12-14 18 55 43 まあ、僕は次回作がでたら100%買いますw -- (アッキー) 2011-12-22 23 02 56 いや、次回作きたら10個くらい買っちゃうww -- (上弦の月) 2011-12-27 13 35 15 次回作のメイドイン俺ができたら買うぞ~!! -- (しょうでん) 2011-12-29 20 09 46 すれ違い通信で商品を交換できるとか。 いつの間に通信でサンプルゲームを受け取れるとか。 3DSならではの機能があればさらにいいかも。 -- (アッキー) 2012-01-12 16 05 51 ↓↓すれ違い通信が出来たら嬉しいですね -- (リオレウス) 2012-01-14 18 11 08 次回作には、スライド機能やマイクなども欲しいですね。 それと、AIの数を5個以上にして、売れたゲームの儲けた金でなんか新しい機能を買えたりしたいですね。 次回作は100%買いです!それと、商品のパッケージとか、音楽の音取り効果(マイクに向かって音←ここ重要 を聴かすとその音を音色と同時におんぷだまにしてくれる機能)も欲しい! -- (ゆうなま) 2012-06-18 14 47 52 また新しいページが出来てる! 凄いテンションあがる~!!!!! -- (カズー) 2012-06-18 21 28 37 僕的にはタッチペンでなぞったところを移動させる機能欲しいな だって今だとカクカクした動きしか出来ないからね、 -- (カズー) 2012-06-18 21 30 52 ごっつんこさせる時に複雑な形も書きたい 今はどうしてもAIがいっぱいになるしぶったい使ってもポイントとか圧迫するし… 丸も描きたい 写真をドットにしてくれる機能とか…ってどんどん追加したら値段がハンパなくなるなww -- (ゆうなま) 2012-06-18 22 05 23 連コメすみません。 任天堂がここみたら出る可能性… 零じゃあないっっ!!!!!(るろうに剣心のマンガの一部をパクらせてもらいましたというかまんま) すいません、それが言いたかっただけですw -- (ゆうなま) 2012-06-18 22 08 54 ここ初めて来ましたけど何か面白いところですね。 投票しときますた。 -- (T・Uもじゃ) 2012-06-19 15 59 52 僕も欲しいです。 -- (クウイーTOKKIN) 2012-06-19 16 42 52 なんで最新作を欲しがっている人がたくさんいるのに出さないんだろう…。 僕もゲームクリエイターになったら分かるかな…。じゃあ将来任天堂にでも頑張って入るかな…。 -- (ゆうなま) 2012-06-20 08 12 55 僕がインテリジェントシステムズの社員だったらもうちょっと3DSが普及してから出しますね。 -- (上弦の月4513-4724-1963) 2012-06-22 00 48 51 ていうか3DS固定なんですかww まわるもさわるも出たことがあるので「まわる!さわる!マイクもつかえる新しいメイドイン俺」というタイトルでは出ないと予想。 でも据え置き機ではなかったのは嬉しい。どこにでも持って行ってプチプチ作っていくということはしませんが。 -- (ゆうなま) 2012-06-22 16 00 02 どう考えてもそのタイトルはその前作の名前を意識して投票してますよ… -- (上弦の月4513-4724-1963) 2012-06-22 17 53 56 無駄のない洗練された無駄な機能って性能が未知数なのは分かるけど意味が分からないww まわるは暇つぶしにもじっくりにも向いてる(多分)のでオススメですよ。→これ忘れて結構です 壊れやすいのは愛嬌ではなく形のせいなので無視してください。 -- (ゆうなま) 2012-06-22 18 07 10 真面目に不真面目みたいなことだろ -- (上弦の月) 2012-06-22 23 38 47 知らないうちに「もっと作る!メイドイン俺+(DS用)」が36投票になってる…。 昔、私がその他にテーマを考えて投票した選択肢です。 -- (水スワン) 2012-07-10 21 29 35 へぇー、水スワンさんが考えたんですか!才能ありますね。RPGツクールDS+みたいなのも勇なま好きの僕としては(個人的に)好きです。 ちなみに僕もこれに投票しました。 -- (ゆうなま) 2012-07-10 22 14 43 フレンド募集中です -- (ジャックスパロウ) 2012-07-30 11 12 55 ここで募集するのやめないか -- (上弦の月4513-4724-1963) 2012-07-30 12 04 16 すごいなぁ -- (ワリリオ) 2012-08-23 12 12 33
https://w.atwiki.jp/maddhattar/
逝かれ帽子屋さんのwikipediaへようこそ ここは逝かれた管理人のフリーページ(自己満足ページ)です。 管理人が歌うときに歌詞を探すのが面倒なので歌える歌の歌詞を勝手にうpしたものです。 各歌詞の著作権は各p様に所属致します。 歌詞掲載ページへドン→☆目次☆ まとめサイト作成支援ツール
https://w.atwiki.jp/anime_wiki/pages/18899.html
廉価版 とんがり帽子のメモル DVDメモリアルパック 廉価版DVD-BOX発売日:11月26日 1980年代にテレビ朝日系で放映された名作ファンタジーアニメのメモリアルパック。 リルル星からやって来たヤンチャだけど心優しい小さな女の子・メモルと 病弱な人間の少女・マリエルの触れ合いと、 周囲の人々との交流を描く。全50話を収録。 1985年7月発売。とんがり帽子のメモルの短編OVA。2014年11月26日、廉価版DVD-BOXが発売。 http //www.toei-anim.co.jp/tv/memole/ 演出・美術監督 土田勇 作画監督・原画 名倉靖博 演出助手 佐藤順一 撮影 白井久男 編集 望月徹 録音 池上信照 音響効果 大平紀義 音楽 青木望 アニメーション制作 東映動画 ■関連タイトル 廉価版 とんがり帽子のメモル DVDメモリアルパック とんがり帽子のメモル アートワークス とんがり帽子のメモル SONG MUSIC コレクション ANIMEX 1200シリーズ とんがり帽子のメモル BGMコレクション とんがり帽子のメモル ファンタジーワールド 名倉靖博の世界 }