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元スレURL 【SS】顔のない少女 概要 誰かの日記 そこにはダイヤ達が一年の頃から自分もスクールアイドルに憧れる心情が綴られていて… タグ ^Aqours ^シリアス 名前 コメント
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SS置き場です、新規ページ作成でssをWikiに載せたら、ここにリンクオナシャス 狼族の少年「不死と家族とファイアワークス」 作:ペガ 時には昔の話を 作:ティルダ 「あれは今から450年前.....」 作:イグニス 朱雀〜封印された記憶〜 作:朱雀 ヴィーニュの過去 作:ダリア 「僕」の物語 作:ニッケル 第13回ギルドマスター代理とギルド支部長の定例会議 作:イグニス アウターマンVSグラナート 作:イグニス 市議会の様子 作:モスマン 彼は疲れていた 作:ティルダ 爆発はイグニスの優しさ 作:ティルダ Border Line・prologue 作:モスマン ハーフエルフの少年「ぼくらは少年ファイアワークス隊」 作:ペガ 星空の物語 作:ティルダ 神の火を巡る戦いの真実の記録 作:モスマン レンターは知らない 作:イグニス Fireworks/Zero 作:ティルダ とある吸血鬼の休日 作:ヴラァーダ イグニス「劇団ファイアワークス」 作:ティルダ まな板ワークス 作:ダリア 団長戦のヴィーニュ視点 作:ダリア ちくわ魔導銃の記憶 作:ティルダ マトリエル君襲撃シナリオ予告 作:モスマン 不死身の魔女 作:蓬 【悪魔】 作:モスマン 【邂逅】 作:クレア アラキの普通飯 作:イグニス 卵が先か 作:モスマン The time to destination 作:ペガ 突撃!お前が晩御飯! 作 サバイバ 【暗殺刃】 作 ネル 【世界の終わり】 作 モスマン
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ノボバカラ(オス) 属性 副属性 タイプ 副タイプ レアリティ コスト 水 - バランス ダート SS☆6 28 レベル スピード スタミナ 根性 適性(重/芝/ダート) 距離/ベスト 1 435 653 218 普通/得意/苦手 1,200m~1,600m/1,400m 99 1958 2610 761 スキル ダークスピード(ダークを回復にブロック変化、2ターンの間スピードタイプのスピード2倍)/- Lスキル 水の恵み(【効果1】水属性の馬のスピード・勝負根性が1.8倍になる。)/- 入手方法 イベント限定
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SS35-1 午前六時半。私はいつも、これくらいの時間からエプロンをつけて朝食作りを始める。 今日のメニューは、ご飯、みそ汁、卵焼き、ほうれん草のおひたし、そして塩鮭というかなりオーソドックスな朝食だ。 とはいえ、近頃の過程の食生活は破綻しているとか何とかテレビでよく見るから、その点に関しては私はちゃんとしているほうだろう。 むしろ、こんなしっかりとしたものを朝から食べられて、私の相方は大いに果報者だ。 まさしくりっちゃんさまさま、と大げさに感謝してほしいくらいだけれど、生憎私の相方、つまり旦那様はまだ夢の中だ。 まあ、こんな時間に起きていることの方が珍しいので、とっとと二人の寝室に向かう。 朝食の用意をし終わって、旦那を起こしに行くのは、もうとっくに習慣となっていた。 最初のころは、憂ちゃんはこんなに大変だったのか、と彼女の妹の苦労をしみじみと感じたものだったけれど、今では特に苦に思わない。 「……完璧に、唯に毒されたなあ」 私の頬に自然に笑みが浮かぶ。唯と一緒にいることに慣れ切って、むしろそれが心地よくて、当然のように感じていることを自覚している。こういうときに、夫婦ってこんな感じなのかな、と考える。あ、夫婦じゃなくて、婦妻か。 寝室に辿りついて、開口一番。 「こらー、唯! おーきーろー!」 寝室にはダブルベッドが一つあって、いつもそこで唯と私は一緒に寝ている。 ベッドの上で、唯はむずむずと動きながら、「んむ……りっちゃーん、おいでえ~」なんて私が寝ていたスペースに手を伸ばしながら、寝言を言っていた。りっちゃんはここにいる。つうか、むしろお前がリビングに来い。 「お・き・ろっつうの! いつまで寝ぼけてんだよ?」 少し強めに言うと、唯がようやく覚醒したように大きく体を動かした。ゆっくりと体を起して、ドアのところに立っている私を見る。 「……なーんだ、夢かぁ」 失礼なことに、私を見るなりがっかりした声を上げて、またベッドに沈もうとする。 おいおいおい! なんだとはなんだ! せっかく起こしに来てやったのに! 私はずんずんとベッドに歩み寄り、唯が被った毛布をはぎ取る。すると、唯はびくっとして、大きい目をさらに大きくして、私を見た。 「おおおおきいいいいろおおおおおおお!」 唯の耳元で叫んでやると、「っわあああ!」とうめき声を上げて、飛び上がった。そそくさとベッドから下り、私をびくびくと見つめる。 起きられるじゃんか。まったく。手間かけさせて。 「お、おきました!」 「ん、ならよろしい。ほら、顔洗ってこい」 らじゃー! と敬礼を返し、唯はそそくさと寝室を出ていこうとする。 まったく、こういうところは、変わってないんだからな。 ふと、気になったことがあって、唯の背中に声をかける。 「唯、さっき見た夢って、どんなのだったんだ?」 聞くと、まさに洗面所にいこうとしていた唯は、パッと振り向いて、にへら、としまりのない笑みを浮かべる。……なんか、予想がついた。 「え、へ、へ。あのねえ、りっちゃんがねえ、私に裸でしがみついて、すっごく甘えてきたんだよお」 ほー。ほおお。 「『唯が欲しい、唯とずっと一緒にいたい』っていってねえ、もーう、すんごくかわいかったんだからあ」 ……唯、覚悟はいいな? 「それでりっちゃんを抱き寄せようと思ったら、エプロン姿のりっちゃんに邪魔されちゃったんだよね……ってうおあ!?」 「ばっかやろおお!」 唯に走り寄り、華麗なドロップキックを決めた。 唯はつんのめるように倒れたけど、いてて、と腰を押さえてすぐに立ち上がる。 付き合ったころから受けているからか、唯も耐性が身についてきたみたいだ。 「ふざけんな! 勝手にお前のエロ夢に私を登場させるなよ! それで『なーんだ』っていったのかこんちくしょー!」 「えええ、だってえ~、本当にいいところだったから」 「あほ、ばか、トロ唯! さっさと顔洗ってこい!」 しっしっと追い払うように手を動かすと、唯は、はたと気付いたように、意地悪な笑みを浮かべた。 「……なんだよ」 「……りっちゃん、ヤキモチ?」 「ぁあん!?」 「安心してよ。昨夜のりっちゃんも、夢の中のりっちゃんに負けないくらい、可愛かったから!」 ぷちん、と何かが切れる音がした。 「大体さあ、確かに私は寝坊しちゃうかもしれないけど、でも、それはりっちゃんにもちょっと責任あるからね」 ぶちぶち、とまた切れる。 「昨夜だって、なかなかりっちゃんが寝かせてくれなくて……うう~ん、眠いよお」 ぶちぶちぶちぶちぶちっ。 「もう、りっちゃんたら、お・さ・か・ん……」 「だあああ! おっまえが勝手にサカってただけだろ! 早く顔洗いやがれええ!!!」 鬼の形相で吠えると、唯は今度こそ青ざめて、そそくさと洗面所に向かった。 「鬼嫁だよ、鬼嫁がいるよ!」という嘆きが聞こえた気もするけど、気にしない。あの、どあほが悪いんだからな! 唯がぐちゃぐちゃにしたベッドを直しながら、ふとシーツを見る。 「……洗濯機、回すか……」 昨夜のことを思い出しそうになって、熱をもった頬をとっさに手で覆った。 「わあ! お~!!」 身支度を素早く終えた唯が、食卓にきて歓声を上げた。 そりゃそうだろ。これだけ完璧な朝食が揃っているんだからな。 ふふん、どうだ、と鼻高々に私がつつましい胸を張ると、唯が空気をぶち壊すような言葉を放り込んできた。 「今日は、パンの気分だったかも……」 言い終えると同時に、私はすぐに唯にチョーキングを決めた。 なんって、妻不孝な奴だ。 「ご、ごはん好きです。ごはん食べます」 「よろしい。っつか、日本人ならごはんだろ」 「1・2・3・4・ご・は・ん~♪」 調子に乗って歌い出す唯の頭をぺチリと叩くと、唯はえへへ、と笑って、行儀よく「いただきます」と手を合わせた。 唯の、こういうところが好きだ、とふとした拍子に想う。 いいかげんなようで、ちゃんと相手を想っているところ。 それは、りっちゃんも同じだよ、って前に唯にいわれたから、私たちは似た者夫婦なのかもしれない。 「おいしいい! どうやったら、こんな風に作れるの?」 「唯には無理だなー。やっぱり、りっちゃんの天才的センスがないと」 「むう、がんばるもん!」 「期待せずに、待ってるよ」 そんな軽口をたたき合いながら、私たちはぺろりと朝食を平らげた。 私は、いわゆる専業主婦ってやつだ。家事は嫌いじゃないし、近所の人たちともうまくやれているから、寂しいとかつまんないとか、あんまり感じない。 ローンで買ったこの一軒家に唯と一緒に住む前は、専業主婦にあまりいいイメージをもっていなかった。でも、唯と住むなら、自動的に家事をやるのは私になるから、なりゆきでそうなったけれど、意外に毎日は充実していた。 休日には唯とギターとドラムでセッションするのが楽しいし。暇を見つけて澪やムギ、梓とかと会ったりするし。 唯は、会社に行って、何とか働けているようだ。そこそこ忙しいようで、残業とか、休日出勤がないわけじゃないけど、それでも、私と話す時間は毎日つくってくれていた。 仕事はできるというわけじゃなく、上司に怒られるのはしょっちゅうだ、といっていたけれど、それでも元気に毎日出社するから、それなりにがんばっていて、可愛がられているんだろう。 総合的に見て、私は幸せだと思う。波風立つことなんて、皆無といってもいい。 このままこの日々が続けばいいな、続くんだろうな、と思っている。 「唯、八時十五分発の電車に乗るんだろ? 間に合うのか?」 「だーいじょうぶ……ってうわぁ!!」 「ばか、だからさっさとしろっていったのに」 唯はどたどたと音を立てながら、バッグを肩にかけ、パンツスーツの裾をはためかせて、玄関へと向かった。 ああ、こりゃ、またごみ当番は私になりそうだな、と息をつく。 「りっちゃん、ごみごめんね! 行ってくる!」 「こおのやろー、明日こそ早く起きろよ」 「うう、ごめん、あっ、りっちゃん!」 「ん?」 首をかしげると、唯が目をつぶって、唇をつき出した。 「いってきますのちゅー」 無言でばしり。朝だけで、何回唯に突っ込みを入れただろう。 「いたい! ひどいよりっちゃん!」 「そんな暇あるなら、ごみ置いてこいって話だろ!」 いいながら、唯の背中をぐいぐいと押し、玄関のドアを開けて、外に出す。 唯は口をとんがらせながらも、小さな門を抜け、ドア先に立っている私に手を振る。 「いってきまーす!」 「いいから走れ! 早く行け!」 無邪気な唯の声が大きかったから、照れ隠しにぶっきらぼうに言った。 唯はぶう、と不満そうにしながらも、すぐに駆けだして行った。 唯の姿が見えなくなるまで見送り、私はごみ袋を手に、ごみ置き場まで歩いて行った。 ごみ袋を置くと、近所の誰かの旦那さんらしいサラリーマン風の男性が、急いで置き、早歩きで駅の方向に向かっていった。 「そうだよな、最近の旦那っていうのは、これくらいはやるよな」 独り言をつぶやきながら、家へと歩いて行くと、二、三人の主婦の集団とすれ違った。 げっ、と心の中で思う。私は、大抵の近所の主婦たちと上手くやれていると思うけれど、このベテラン主婦集団だけは、なんとなく苦手だった。 挨拶だけして、そのまま通ろうと思ったけれど、呼び止められた。 「田井中さん……でよかったかしら?」 「……あ、はい。おはようございます」 リーダー格っぽい天然パーマのおばさん主婦が、尊大な感じで話しかけてくる。 「あなたが、いっつもごみ置いてるの?」 「あ、いえ、えと、旦那が置いてくれることもあります」 「でも、いつも大体あなたよね」 「っ、は、はあ……ま、まあそうかもしれないですねえ」 人のごみ置くところを、毎回チェックしてんのかよ、と気味悪く思う。 「だめよ、甘やかしちゃ。最近の夫っていうのは、ごみ置きは最低限してるんだから」 「で、ですよねー、気をつけまーす。あはは……」 乾いた笑いを最後に、今度こそ家に戻ろうとしたとき、後ろからひそひそ声が聞こえてきた。 「でも、旦那っていってもね……」 「夫、ともいえないし……」 「若い人の恋愛って、分かんないわねえ」 何を言っているのか、分かる気もしたけれど、完全にシャットアウトして、家に急いだ。 気にしない。世の中、色んな考え方の奴がいるから。 それでも、幸せばかりだった私と唯の日々に、ちくりとケチがついたような気がして、少し不愉快だった。 朝の嫌な気分を振り切って、午後からは買い物に出かけた。 最初は迷ったりもしたけれど、ここの商店街の道は、もう慣れたものだ。たまに楽器店やスタジオを見つけるたびに、唯と一緒に行ったりもしている。 私は、馴染みの肉屋の前で足を止め、じっと肉を吟味していた。 すると、店の奥から、これまた馴染みの肉屋のおっちゃんがやってきて、私に二カッと笑いかけた。私も、笑顔で会釈をする。下手に自分で選ぶよりは、専門家に見つくろってもらった方がいい。 「奥さん、こんにちは! 今日はいい肉が入ってるよ!」 毎回、奥さん、と呼ばれる。そのたびに、くすぐったいような、照れくさいような気持ちが広がる。自分の、今の幸せを実感できているみたいで、嬉しくなるのだ。 「んー、どれがおすすめ?」 「そうだな、この黒毛和牛が、安く入ってるなあ。あとは、んー」 「じゃあ、それにする。……旦那に、元気つけてもらいたいし」 人前で、旦那、と呼ぶことに嬉しさを感じる。まあ、あの主婦集団の前で言ったのは、ノーカウントだけど。 「あいよお! これは、うまいぞお! 旦那も精ついちゃうかもなあ!」 「つってもなー、もともと元気だから別にいいような気もするけど……まあいいや」 「おっほう、ノロケかい? お・さ・か・んだねえ」 にやにやとしながら、おっちゃんは素早く肉を包んでいく。 唯、お前の言葉、おっちゃんと同じレベルだぞ。まったく。 「ばかいうなっつうの。ていうか、いまどきお盛んって」 「あっはっは。毎度! またよろしくなあ」 手を振るおっちゃんにお辞儀をし、私は家へと向かう。 おっちゃんは、旦那が女であることを知らないだろうけれど、それでも朝の嫌な気分は、すべてなくなった。 ビニール袋を下げながら、今日はステーキにしようかな、と軽くなった心で考えていた。 遅い。今日は、ずいぶん遅い。 大抵いつも残業で、帰ってくるのが八時くらいだから、それにぴったりと間に合うようにりっちゃん特製のビーフステーキを作ってやったというのに。 もう、時計は十時を過ぎていた。ビーフステーキはラップをして、唯が帰ってくるのを今か今かと待っている。 「……食べちゃおうかな」 いつも私は、唯と一緒に夕食を食べる。唯の食べる姿を見るのが好きだし、昼間はほとんど会話をメールで済ませているから、こういうときにいろいろ直接話す時間を作りたいのだ。 唯も、嬉々として仕事やいろんなことを話して、風呂に入って、で、ちょっといい雰囲気になったときは……まあ、昨夜みたいなことをするわけだけど。 「でもなあ」 唯も、食べながら私と話すのを楽しみにしていることを知っているから、そんな唯の気持ちを無駄にしたくはない。 まあ、いいか。一回ぐらい、夜中に食べて、脂肪ついちゃっても。 そう思って、暇つぶしにテレビをつけようとすると、ぴんぽんとインターホンが鳴った。 私は、急いで駆けだす。 「はい」 『えへへ、私』 受話器を耳に当てると、唯特有の幼い声が聞こえてきた。 ドアを開けると、少し疲れたような、でもいつものように笑っている唯が立っていた。 文句の一つも言ってやろうと思ったけれど、すぐにどうでもよくなった。 「おかえり、外寒いだろ」 「ただいまっ、マフラーしてたから平気だよ」 唯は、赤い手編みのマフラーを指さしながら答えた。付き合っているときに、唯がおねだりしたので、わざわざ私が編んでやったマフラーだ。それがいたく気に入ったらしく、寒いときには必ず巻いてくれていた。思わず、笑みがこぼれる。 「あれ? 朝行くときは、巻いてなかっただろ?」 「ふふふ、バッグに忍ばせておいたんだよ。寒いときに、りっちゃんマフラーは必須だからねっ!」 思わず和やかな空気になりかけたが、向こうにラッピングされたビーフステーキを見て、ぽかりと唯の頭を小突く。 「うわあん、いたあい」 「いたあい、じゃなくて、なんかいうことは?」 その言葉に、唯は食卓を見て、うつむいた。 「遅くなっちゃって、ごめんなさい」 殊勝な態度に、怒っているのがばからしくなって、ふっとほほ笑む。 「遅くなるのは、仕方ないだろ。仕事なんだし。そうじゃなくて、連絡ぐらいしろってこと。昼には余計なメールを送ってくるくせにな」 「ひ、ひえっ、余計!?」 「まー、こっちも暇つぶしになるし? 別にいいけどな」 言って、私は夕食の皿を電子レンジに入れて、温め始める。 後ろから、わあい、今日はステーキだ! と無邪気に喜ぶ唯の声が聞こえてくる。 「これ、りっちゃんがいってたお肉屋さんの?」 「そうそう。今日のおすすめだって。早く食べよーぜ」 最後に、ステーキの皿二つを電子レンジに入れると、唯が、うつむきながらもじもじとしていた。 「どうした?」 「あ、あのね」 唯が眉をハの字にして、私を見る。 「りっちゃん、今日みたいな日は、先に食べちゃってていいよ?」 おそるおそる、といった口調の唯に、はっ、と笑う。 「いーよ、大したことじゃないし。ま、連絡はしてほしいけどな」 「でも、りっちゃんがせっかくつくってくれたステーキが、冷めちゃったし」 「だあから、連絡さえすれば、間に合うようにつくるから。ほれ、とっとと食べる」 「また、これくらい遅くなること、あるだろうし」 「いいって。連絡はしろよ。まあ、あんまり遅くなるようだったら、私も腹減るし、食べる。それでいいだろ?」 私の言葉に、ゆっくり頷く唯の手を引いて、食卓につかせた。 「いただきます」 「……うん、いただきます」 私に続いて、唯が復唱した。 温めなおしても、ステーキは美味しくて、さすがにおすすめだな、と言うと、りっちゃんの腕とお肉屋さんの目利きのコラボがよかったんだよ、とわけわかんないことを唯は言った。 「ゆーめのっ、夢の、コラボレーション♪」 「調子にのるな」 こつ、とまた唯の頭を小突き、切ったステーキを口に入れる。唯も、もくもくと食べながら、仕事の話をして、私を笑わせた。 「まーた、ドジったのか?」 「うう、コピー太が言うことを聞かなくなっちゃって」 「いや、お前の操作ミスだろ。……ていうか、まさか会社でコピー太って言ってないよな?」 「え? 言ってるよ?」 「まじか! 周りはなんか言ってる?」 「最初はね、えっ、て感じだったけど、だんだん周りの人もコピー太っていうようになってきたんだよお」 「気付け! 誰か、おかしいことに気付け! 感染してるぞ!」 「ええ~、りっちゃんひどーい」 話しながらふと、あ、そうだ、と切り出す。 「唯、今日残業で遅くなったんだよな、まーた叱られたか?」 「……う、ん。そうだよ。えへへ、だめだなあ私」 「自分でいってりゃ世話ないな。ま、めげずにがんばれ」 「……うん」 微妙に、間があったことが気になったけれど、大したことじゃないだろ、とスルーした。 「このお肉、美味しいね。うふふ、精がついちゃうわん」 いやだから、お前の言語センス、おっちゃんと同レベルだから。 「でも唯、今日はエロいことなしな」 「っ! え、ええ!? なんで?」 声を張り上げて驚く唯に、ふん、と意地悪い笑みを見せる。 「連絡もなしに、こんな遅くまで叱られた罰だ、罰」 「ええ、いいよ、っていったくせに~」 「夕食抜きになんなかっただけ、感謝しろ」 「りっちゃんの鬼嫁!」 「第一さ、一応残業してきて、疲れてるだろ?」 本音を向けると、唯は感動したように、りっちゃん……ときらきら目を向けてきた。 けど、すぐにしまりのない顔になる。 「でもね、疲れてる時の方が、燃えるんだよ! ってうぼわっ!」 「どこのエロ親父だ、お前は! さっさと寝ろ!」 「せめて、お風呂! お風呂だけでも一緒に……」 「ごちそうさまっと。さー、皿洗い」 「りっちゃんの鬼畜!」 「どっちがだよ!」 そのあと約束通り、風呂は別々にして、二人で床に入った。 ふと、今朝のことが頭を過ぎって、ぎゅっとかたく目をつぶった。 すると、唯の腕が体に回されて、そのまま唯の体に引きつけられ、強く抱きしめられた。 「……唯」 「……ふふ、これくらいなら、いいよね?」 唯の顔は見えなかったけど、でも、優しく微笑んでいるような気がした。 約束通り、唯はエロいことはしてこなかったけど、朝までずっと抱きしめてくれていた。 唯の腕の中は、あったかくて、柔らかくて、いい匂いがして。 すごく安心して、ぐっすりと眠れた。 大丈夫、唯とだったら。 嫌な気分も、唯が全部消してしまったようだった。 翌日からも、私と唯の、慌ただしい朝は続いた。 唯をベッドから引っ張り出して、朝ごはんを食べさせて(一回、パンにしてやったら、「朝って、ごはん食べたくなるよね」と抜かしやがったので、頬をつねってやった)、 やっぱり時間ぎりぎりになって、「ごめんね」といいながらもごみを捨てに行けず、猛スピードで、それも騒がしく家を出ていく。 この繰り返しだったけど、いつものことと思えば、それなりに慣れてくるもので、ごみ置きもほぼ毎回私が行っていた。 そのたびに、少し白い目で見られたり、何かこそこそと言われるのは嫌だったけれど、唯と話していれば、自然にリセットできた。 だから、今まで以上に唯の帰りを待ち望むようになった。 だから、あの日以来、唯の帰りが極端に遅くなっているのが気にかかった。 八時どころか、この前のように十時、十一時が当たり前になって、一度は日をまたいだときもあった。 きちんと言い含めていた甲斐あって、何時に帰るかしっかりとメールはするようになったけれど、 唯と話す時間が減っていることの実感は日に日に積もっていった。 朝は朝で慌ただしいから、ゆっくりと話す余裕がない。 仕事だからしょうがないけれど、それでも忸怩たる思いがあった。 唯は、いいかげんに見えても、相手のことを想って行動できる奴だから。そういうところに、惚れたんだから。 だから、唯があまり話す時間を作れないことに、少しの不満と不安があった。 退屈だなあ、と思った。いつも当たり前にあると思っていた唯との触れ合いが減ると、こうも空虚感を覚えるものなのか。そういえば、エロいことも……最近していない、かも。 唯が疲れている、と思うから、私も言いだせないし。 家事をやって気を紛らわそうとしたり、澪やムギ、梓たちと会って色々話したりしても、どうしても埋められなかった。 なんか、なんか嫌だな、これ。 こんな不安定な状態だったから、あっけなく私の心も崩れてしまったのかもしれない。 今日も唯は、慌ただしく家を出ていった。 自分の当番なのに、ちゃんとしなくてごめんね、と行き際に言って、駅へと向かった。 いただきます、と言ってくれたし、美味しそうに食べていたし、起きるときも軽口程度の会話は交わせたけど。 それでもやっぱり、気持ちが沈む。 私はごみ袋を手に持って、歩き始めた。 今日も遅くなるのかな。 残業続きで疲れているだろうし、なんか胃に優しいものでもつくってやろっかな。 唯は、私が支えてやんないと。妻だし、さ。 少し元気を出して、夕食のメニューを考えながらごみ置き場までやってきた。 するとそこには、珍しいことに、私より早くあのベテラン主婦組がいた。 何か、嫌な予感がしたけれど、軽く会釈をして、ごみ袋を置く。 早く帰ろう。洗濯して、掃除して、買い物に行って……。 「またあなたがやってるの?」 鋭い声が飛んできた。私は、思わず振り返ってしまった。 「え、あ、まあ、そうです」 答えると、ふーん、と何か嫌な含みを持たせた口調で言った。 なんだよ、言いたいことがあるなら言え。 「旦那さん、よっぽどお忙しいのね」 「んー、そうみたいですね」 皮肉めいた言葉も、何とか受け流す。 「へえ、そうは見えないんだけどねえ」 私は、リーダー格の主婦の女の方を向いた。 「いや、忙しいみたいですよ。別に、私も置きに来るのは面倒じゃないですし」 「あはっ、本当に忙しかったら、あんなに騒がしく家を出ていかないでしょうよ」 その言葉に、私は顔を上げる。 「だって旦那さん、いつもあなた、田井中さんに背中を押されるようにして出ていくじゃない。単に、しっかりと起きていないだけでしょ? それでごみ置きくらいできないっていうのは、ただの甘えよ」 ……こいつ、いつも私たちの様子を見てんのか。 気味が悪くて、背筋が冷たくなる。 「あなたたち、新婚さんでしょ? そういうのは、最初にびしっといってやらないと、これからずるずるそうなっていくわよ、どんどんだめになっていくの」 「もう、手遅れかもしれないけどね。私だったら嫌だわ、そういう人」 「もしかして、忙しい、っていうのも、仕事ができないからどんどんやることが増えていってるんじゃないの? なんか、そういう人がいると、こっちにまで影響しそうでちょっとねえ」 三人が間髪をいれずに唯をなじっていく。 一理あることはあるかもしれないけど、そんなの私たちの勝手だ。 私は、唯にいうべきことはちゃんといってるし、こいつらに言われる筋合いはない。 「そういう人、連れ合いに選ぶ田井中さんもちょっと、どうなのかしらね」 「早いとこ、しっかり更生させてね。見ていると、いらいらするのよ」 「どうかしら。慌ただしいってことは、夫婦間の会話もあんまりないんじゃない?」 ずきっと、図星をさされた。 何も言わない私に追い打ちをかけるように、さらに三人は続ける。 「あらー、かわいそうに。せっかく家を買ったのにねえ」 「ローンを返すために、ただ働くだけが役割じゃないわよね、夫は」 「そうね、近頃は家事とか育児とかもやって当然だって言うし……あっ」 リーダー格の主婦が、わざとらしく口に手を当てた。 「ごめんなさいねえ。育児は、必要ないものね」 「えっ、どういうこと、どういうこと」 脇にいるやせぎすの主婦が、はしゃいだようにリーダーの主婦の方を向く。 「だって、ほら、ねえ、女性同士じゃ、子供なんて生まれないしねえ」 「あ、そうね。表札の名字も、別々だものね、同姓婚って禁じられてるし。旦那さんは平沢でしょ?」 「え、女性同士だったの。じゃあ、夫婦でも何でもないじゃない、単なるルームシェアっていうものかしら?」 知っていたくせに。唯が、女だということを。 体が、がちがちと震えて、動かない。 「ねー、実際にいるのね、そういう人たち。理解できないわ、何が楽しいのかしら」 「想像できないわ。それで、妻とか、旦那とか……なんかね」 「そういうのって、一瞬の気の迷いでしょ。熱病。どうせすぐ飽きて、普通に男性とくっつくものなんじゃないの?」 分かっていた。普通に、受け入れられる人間なんて、少ないということくらい。 分かっていて、どんと構えているつもりだったのに、それでもどんどん心が削られていく。 「もう破綻するんじゃない? 会話がないって、結構致命傷だもの。それに、あんなだめな感じの人じゃ、どっちみちね」 「だめな人ほど、あっちこっちに気持ちが行くし」 「家を買うの、もう少し待てばよかったのにねえ」 三人は好き勝手に言い散らし、ふふん、と鼻息荒く横を通り過ぎていった。 私はうなだれたまま、しばらくそこから動けなかった。 お前らに何が分かる。唯の、何を知っているんだよ。女同士の、私たちのこれまでの関係の何が分かるっていうんだ。 唯は旦那だし、私は妻だ。そんなの、当たり前だ。 心の中ではいくらでも言えるのに、悔しくて悔しくてしょうがなかった。 なのに、それらの言葉を口に出して言えなかったのは。「何をそんな、くだらない」と笑い飛ばすことができなかったのは。 心の中で密かに感じていた色んな心配や不安を、言い当てられたような気がしたから。 気丈だと思っていた自分が、こんなにもろいなんて、知らなかった。 机に突っ伏したまま、かなりの時間が過ぎた、と思う。 昼ごはんは、とてもじゃないけど食べられなかった。このままじゃいけないと思って、何とか体を動かして、夕食を作り、七時に出来上がった。 いつもは、唯が帰る時間に合わせて作っていたけど、何か体を動かしていなければ、気がまぎれなかったから、特に何も考えずに黙々と料理をしていた。 作ったら、すぐに食べた。初めて一人で食べる、夕飯だった。 唯に悪いな、という気持ちは、少しはあった。でもそれ以上に、とにかく口に入れなければ、もたなくなると思った。 食べ終えたら、暇で、何もすることがなかった。 何でだろう。昨日までは、そんなことを感じなかったのに。 唯と一緒に食べたり、話すことを楽しみにしていれば、いくら遅くなったって待つのは苦じゃなかった。 ふつふつと、朝の悪意のある言葉が、蘇ってくる。 唯をバカにし、私たちを否定した言葉。 私は、頭を振って、その考えを消そうとした。 やめろ。こんな風に悩んでたら、ますますあいつらの思うつぼじゃんか。 それでも、どんどん心が苦しくなってくる。 どれくらい頭を抱えていたんだろう。不意に、インターホンの鳴る音がした。 ゆっくりと立ち上がり、受話器を手に取る。 「……はい」 『わたしだよー』 ふと時計を見ると、十一時を回っていた。 唯のお気楽そうな声に、ピクリと何かが刺激された。 ドアを開けると、そこには、いつもと同じように、少し疲れながらもにこにことしている唯の姿。 今まではそれに癒されていたはずなのに、少し、気に障った。 「……おかえり」 「ただいまー。うふふ、おなか減っちゃったあ」 私を通り過ぎて、唯はリビングへと入って行った。食卓にラップされた皿があるのを見て、唯がん? と声を上げる。 「あれ、先に食べたんだね」 「……ああ」 「そっかあ。メールしたんだけど……」 「……別に、先に食べたっていいだろ」 投げやりな私の口調に、唯が目を丸くする。 何やってるんだ、私。 「……え、あ、うん。そうだよ、そうだよね」 「先に食べてていいって言ったのは、唯だろ。こっちだって、疲れてるんだよ」 「う、ん。ごめんね、ちょっと気になって言っただけだから」 こちらをうかがいながら、気遣う唯の声。 唯の顔から、いつもの笑みが消えている。 こんな顔させて、どうするんだ。 何言ってるんだよ、私。 それでも、私の中にどんどん嫌な気持ちが生まれていく。 「すごい、疲れてるんだね、りっちゃん」 「……見りゃ分かるだろ」 「ご、ごめんね」 座ったまま動かない私を見て、萎縮して小さくなった唯は、ラップをされた皿をもって電子レンジに向かった。ぴ、ぴ、と電子音が聞こえる。 料理も、温めるのも、ほとんど私がやってきたから、唯は家の電子レンジの操作に慣れていない。試行錯誤しながら何とかやろうとしている気配が伝わってくる。 唯、大皿のやつは、二分くらいに設定して、他の小鉢はまとめて温めるんだぞ。 ほら、みそ汁も温めないと。一応、いつもどおり上手く出来たつもりだからさ。 言葉にしようとしても、一向に口から出てこない。 「り、りっちゃん。あのね」 少し温めすぎた大皿を食卓に置きながら、唯が探るように声をかける。 「明日、私帰り遅くならないかもしれないんだ」 唯は全部の食器を置いて、席についた。 唯は、この空気を変えようとしているのか、いつもみたいに明るく話そうと努めていた。 「ううん、頑張って絶対早く帰るよ、だからね、明日――」 「じゃあ、何で今まで遅かったんだよ!」 気付いた時には、大声で唯にあたっていた。 「……り、りっちゃん?」 「頑張れば、早く帰れるんだろ!? だったら、今まで何してたんだよ!」 仕事に決まってんだろ、何言ってんだよ、私。 「お前が仕事できないから、ぐだぐだ働いているから、だめな奴だから、叱られたり、無駄な残業が増えてるんじゃないのかよ!?」 唯が、ちゃんと頑張っていること、知ってるよ。 「仕事がだめなうえに、ちゃんとした生活しようとしないし、いろんなとこ私任せにしてるし!」 やめろ、やめろ。 そうは思っても、自分の本音とはかけ離れた言葉が、次から次へと出てくる。 「……自分だけ、気楽な顔して、人のことほっといて。私が、どれだけ頑張って、どんな思いしてるかなんて、考えてないだろっ……!」 朝に、あいつらにぶつけてやりたかった胸のむかつき。 受け流せばいいのに。ちゃんと、自分の中で、消化するべきなのに。 唯を見た途端、ふいにそれが破裂していく。 「り、りっちゃ、りっちゃん」 唯が、おろおろしながら私を見ている。 頬を何かが伝っているのを感じて、私は初めて自分が泣いていると分かった。 馬鹿だ。泣き叫んでる子供かよ、私。 唯がそっと手を伸ばしてきたけど、それを避けるようにして、私は席を立った。 「……もう、寝る」 それだけ言い残し、すぐさま部屋に行き、ベッドに飛び込んだ。 パジャマに着替えもせず、そのまま眠りたかった。 唯は、追いかけてこなかった。追いかけても無駄だと思ったんだろう。 しばらく物音がしなかったけれど、かちゃ、かちゃという食器の音がして、夕飯を食べてくれているんだろうと分かった。それから、水を流す音。いつもは私がしている皿洗い。慣れない手つきで懸命にしているに違いない。そして、水音が止まった。 唯が、ベッドに来てくれないかな、と思った。急に、唯に抱きしめてほしくなった。 こんな、鬱屈とした気分を打ち消すぐらい、強く、強く。 散々に言っておいて、都合のいいことを考える自分が嫌になる。 でも、唯に抱きしめてもらったら、色んな事がどうでもよくなるんだ。そうすれば、また普通の私に戻れるから。いちいちあんなことで、くじけたりなんて、しないから。 だから、早く来てよ。 ――それでも、唯は来なかった。 隣がいないベッドは、それだけで、寒かった。 SS35-2へ
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野試合SS・厨房その2 人はパンのみにて生きるにあらず、人は神の口から出るすべての言葉によって生きる。 ――マタイによる福音書より 「……」 痩身の男は起き上がると、辺りを見回した。いや、見回したというのは不適切な表現かもしれない。 その両の目は未だに閉じられていたからだ。 「……存在するものは毅然としてあり、空間の中に一点の消滅を生み出す……」 己の座右の銘とも言える一文を呟きながら、肩や膝、関節部をほぐす。 少なくとも、致命的な負傷や筋力の低下は見られない。 「……はて」 男は思わず首を傾げる。 自分の記憶が確かであれば、自分は大都会の真ん中で希望崎学園最強の男の手によってビルごと吹き飛ばされ、 地面に叩き付けられ――自らが描いた白黒の芸術の最後に、紅い染みを残したはずだったからだ。 「……あるいは、存在を失ったものは異界へと流れ…… 考えるだけ無駄か」 男は嘆息すると、芝居がかった口調を止めてその眼を開く。 穴の空いた眼帯はその視線を一切遮ることなく、周囲の視覚情報を男に明け渡す――色だけを除いて。 その目に映るのは、巨大な灰色の森だった。 「さて、ここは果たして天国なのか地獄なのか――異界であることは、確かだろうが」 男の名は、ストル・デューン。 色盲の画家にして、色彩を侵す者である。 ~~~~~~~~~~~~ 「……What?」(一体何が、という意味の英語) 初老を過ぎた外国人の男は周囲の風景に戸惑いを覚え――懐中時計を取り出す。 時計には、本来なら彼がもう目にすることはなかったであろう情報が表示されていた。 全てを無に還すものによって心を折られ、敗れた彼には最早与えられるはずのない情報。 対戦相手と、対戦場所。 対戦相手は自分を除いて二人、ストル・デューンと――もう一人の人物。 対戦場所は【現代】厨房。 だが、目の前に広がるのは――“森”である。 長い芝を敷き詰めたような地面、どこか無秩序に生える色鮮やかな草木。 見覚えがないはずなのに、何故か既視感を感じる風景であった。 「これが、Mr.Sikiの言っていた“Bugってハニー”という奴でしょうかー…… ンン、少々Styleを変える必要があるかもしれませんネ」 事前に知り得た情報――現代社会における厨房での戦闘を想定していた彼は、意識を切り換える。 『TAI-kansoku』。 彼の“能力”は、五感を操作する力である。 事情は不明だが、屋内ではなく屋外であるならばまずは索敵。聴覚と視覚を引き上げて、周囲の状況の把握力を上げる。 『リスニングは要点を聞き逃さず、リーディングは要点を見逃さないことが肝心』、英検3級参考書にもそう書いてある。 「とはいえ、流石にこの柔らかいGrass fieldでは、足音もしないでしょうガ…… Hum?」 そんな彼の耳が、奇妙な物音を捉えた。 何か液体を吸い込むような、それでいて固形物も諸共に吸い込むような…… 「……Udon?」 (うどんを食べる音だろうか? という意味の英語) 外国人の名は、リークス・ウィキ。 またの名を、ウィッキーさん――英検の完全熟練者(オーバーアデプト)である。 ~~~~~~~~~~~~ 「……こりゃまた、妙げなとこじゃのう」 手にした丼から乳白色の太い麺を啜りながら、青年が独りごちる。 彼の最後の記憶は、全身を駆け巡る塩辛さと、冷たい水の感触――自らの命が消える感覚。 だが、気付けば――この奇怪な樹海にいた。 「じゃったら、ここが彼岸っちゅうことかいの…… っと、ごちそうさん」 うどんを食べ終え、食後の一礼を済ませると周囲を改めて確かめる。 地元“四国”でも、辿り着いた希望崎でも見かけなかった植物群。少し肌寒い外気。 鬱蒼とした森はその全容を見通すことは難しいが、一つ奇妙な点がある。 他の生物らしき気配が、一切ないことだ。 小動物や鳥はおろか、虫一匹すらいない。 「こんばあの森やったらもうちっと、動物がおるろうに……」 青年の名は、善通寺眞魚。 “四国”88結界の管理人である。 「人の気配は、微かにするけんど……ん?」 善通寺が辺りの捜索を一通り終えた――その時。 上空から、青年の目の前に巨大な塊が落ちてきた。 人間の頭ほどもある、黒い物体―― 「!? 何じゃあ!?」 すんでの所で衝突を免れた青年は、慌てて空を見上げる。 ――巨塊が、次々と落下してきている! (誰ぞの攻撃か、何らかの現象か――わからんが、こうしちゃおれん!) 背中に背負った大筆を抜き、構える。 降り注ぐ塊は無差別に降り注いでいる――少なくとも自分だけを狙っている様子はない。 だが、決して自分に当たらないというわけでもない。 「セイッ!」 頭目掛けて飛んできた礫を、筆の“払い”で逸らしながら――近くの木陰へと逃れる。 幸いにも、木々を貫通するほどの破壊力はないらしく、避難は容易に済んだ。 「まったく、なんじゃありゃ……」 「ワカリマセン。ですが今Checkするのはsuicidal act,自殺行為でショウ」 「ほーじゃな、雨霰が止むまでは動けん……ん?」 漏らしたつぶやきに答える声あり。 思わずそちらを見るが――誰もいない。 と、次の瞬間。 「How (把 ――掴むという意味の英語)」 「!」 振り向いた逆側から、何者かが善通寺の襟首を掴み、身体を強引に向き直らせる。そして。 「Do(胴)!You!(有)Do!(胴) ――胴体に有効打!そしてもう一回胴!と言う意味の英語)」 「がっ……!」 正拳の二連撃が善通寺の鳩尾を捉え、その身体を吹き飛ばす。 しばし苦悶の表情を浮かべる善通寺だったが、即座に筆を取ると“払い”で受身を取って体勢を立て直す。 筆は流れる様に、相手の追撃が来れば“止め”が刺さる真正面を向いていたが――襲撃者はそれ以上動かず、名乗りを上げた。 「ドーモ、My name is Wicky.ハジメマシテ、Mr.善通寺。手荒なAISATSUにて失礼します」 「うぃっきー……なんじゃ、外人さんかいの。ちゅうか、いきなりコレはないじゃろ」 「ソーリー。噂に聞く“ショドー”のワザマエを見たくてTAWAMUREてしまいました。 ですがこれ以上危害を加えるつもりはありまセンのでご安心ください」 ウィッキーが深々とお辞儀をするのに合わせ、善通寺も会釈を返す。警戒は解いている。 敵意や害意を発してはいないことを、すぐに感じ取ったからだ。 「貴方に一つ、Questionがあります。できれば正直にアンサーを頂けるとうれしいのですが」 「くえす……ああ、質問か。わしがわかることでよけりゃかまんけんど」 「Okay,簡単な質問です。 貴方は“迷宮時計”を巡る戦いで負けましたネ?」 「ああ……そのはずじゃ。夜雀のにいちゃんに、塩漬けにされた……はずじゃ」 「Thank you very much for asking me.(答えてくれてありがとう、という意味の英語)」 「おまさんも負けてここへ来た、っちゅうことでええんかい?」 「Nmm……負けたのは確かですが、少し事情がありまして。その辺りを説明しますので…… ……そちらに隠れている、Mr.Sutolも是非聞いてくれませんか?」 ウィッキーがくるりと振り向き、森の奥の方を見る。 そこには暗闇しかなく、とても人影などあるように思えなかった――が。 その暗闇が、ほどけるようにかき消え――男の右目へと吸い込まれていく。 ストル・デューンその人である。 「……やれやれ。英検使いというのは、騙し絵を解さないのかね」 「いえいえ、Trick artは大好きですよ。尤も、DAMASHIUCHIは嫌いですがね」 肩を竦める画家に、英検使いが気さくに返す。 こうして、三人の敗者は集められ―― 迷宮時計に起きた“異変”を知ることとなる。 ~~~~~~~~~~~~ 『ウィッキーさん、グッドモーニング!』 「Good morning,Mr.Siki. どうしました?」 話は少し前――おおよそ二十四時間前に遡る。 ウィッキーが『転校生派遣サービス』へと、ミッション失敗の報告をしてから数日。 既に迷宮時計の件はウィッキーの手を離れ、『彼』へと引き継がれた――筈だった。 故に、こうして向こうから連絡が来ること自体がイレギュラーである。 『んー、ちょっと困ったことになりまして。ウィッキーさん、お暇ですか?』 「暇……と言えるかどうかはワカリマセン。ですが、復旧作業も一段落して手は空いてます」 『それはよかった! ……実は、迷宮時計の件で一つ気になることが出てきまして』 「Hum? ……ですが、私はMission Failedしてます。あまりお役には立てないかと」 『いえ。負けた貴方だからこそ、手を貸して貰いたいんですよ。 ……迷宮時計が、どうもBugってハニーしちゃったみたいで』 「アーハン……つまり、何かErrorが起きた、と?」 『ええ。現状では、深刻な影響は与えないとは思うのですが……今から説明しますけど』 電話の主、Mr.Sikiと呼ばれた人物が語ったところによると、異変は大きく分けて二つ。 一つは、迷宮時計の戦いに敗北した筈の人物の蘇生や再転移のような兆候が観測されたこと。 『もちろん、最後に勝った者が跳んで敗者の蘇生などをしているという可能性もありますが―― 少なくとも、今の段階ではまだ勝者は決まっていないことを観測しています。 現地の人が通りすがりに、という線もまずないでしょう。そこで疑われたのが』 「迷宮時計の誤作動……Bug、ですか」 『ええ。といっても、その原因を探るのは『彼』の領分ですので、ウィッキーさんには URADUKE……もとい、裏付けを取ってきてほしいんです』 「アーハン……つまり、実際に敗者にInterviewしてきてほしい、と」 『イエース。InterviewはウィッキーさんのOHAKO、ですからね! 行く方法は心配しないで下さい。こっちがなんとかしますから』 「わかりました。……もう一つのBug、というのは?」 『んー、実はそっちが本題です。その“もう一つ”が何か、を調べて欲しいんですよねー。 前者に関連してなのか、また別の問題が発生しているのかでこっちも対応が変わりますし。 あ、もちろんこっちも原因は構いません。何が起きてるかだけ調べてくれれば』 口調こそ軽いが、電話口の相手からはこの件に関する困惑が伝わってくる。 ……“転校生”時逆順の能力が発端でありながら、既に“転校生”である彼らにも予測のつかない事態へと拡散している。 そのことが、少なからず不安なのだろう。 「……All right.引き受けましょう。では、何かあればまたYOROSHIKUお願いします。ハヴァナイスデ~ィ!」 こうして、リークス・ウィキは――自ら、この世界に飛ぶに至ったのだった。 ~~~~~~~~~~~~ 「……成程。やはり、私の芸術は……終焉という一点に収束を迎えていたのだな」 「ようわからんこと言いなや……ちゅうことは、やっぱりわしは死んじゅうのか」 「YesともNoとも言えます。おそらくは、何らかの形で“生き延びた”という形で迷宮時計に認識され、 しかし既にDEADでなくてはならないのにALIVEしていることでエラーと見なされ、再度戦うことで そのErrorを正すようにした…… といったところでしょうかね」 敗者二人が、どこか諦観したような感想を漏らす中、ウィッキーが独自の推測を披露する。 もしここに探偵がいたならば、もう少し正鵠を射た推理をしたかもしれないが…… 今のところ、この推測が当たっているかどうかはこの場にいる誰にもわからないことである。 「……それで。Mr.ウィッキー。貴方は我々に二度目のピリオドを打つのかね?」 「そうしたいならば、説明せずに攻撃してますヨ。……貴方方がどうしてもReviveしたい、のであれば 全力を持って立ち向かう所存ではありますが……」 「いや。わしゃあいっぺん死んだ身じゃ。ほんならしゃあない」 「……同じく。私も、一度終わらせた芸術作品に加筆修正を施すほど蒙昧な画家ではない」 二人の割り切りの良さに、ウィッキーが拍子抜けして肩を竦める。 「Fmm,困りましたネ。力ずくで来るなら、撃退もやむNothing,でしたが…… そうも素直に言われてしまうと、救いたくなってしまいます」 「……何、気にするな。私はこの森で、未発表作でも描いているさ」 「気持ちばあ受けとっちょくよ。 ほんなら、この森からわしらが出ていきゃええんじゃな」 ウィッキーの良心に、死者(?)の二人が笑顔で返す。 だが、善通寺の言葉でウィッキーが再び思案顔に戻った。 「……そういえば、それが気になってました。もう一つのBug……どうやら戦闘空間の設定が、間違ってるようですね」 「厨房じゃ言うとったな、そういや。……しっかし、どう見ても森にしか見えんぞね」 「……芸術家にとって万物がキャンバスであるように、食材の宝庫である森を広義の厨房と見なした、のだろうか」 三人が疑問を感じ、奇妙に一致したタイミングで空を見上げた。 三人は、思わず声を失った。 ~~~~~~~~~~~~ 「……」 「ありゃあ……ダイダラボッチかえ……?」 「……なるほど。Bugとは――こういうコト、でしたか……」 三人が見上げた先。そこには――“何か”がいた。 三人よりも遙かに、遙かに、遙かに巨大な“生命体”であるが故に“何か”という表現しかできない“何か”である。 善通寺やウィッキーが気配を感じ取れなかったのも無理はない。 あまりに巨大すぎて、それが生物であると――今の今まで、認識すらできなかったのだから。 視点をもっと引いて見てみれば、大きさ以外何ら変わることのない『人間』かもしれないし、 或いは古の伝承に記されるような『龍』かもしれないし、外宇宙より降り立った『古の神々』かもしれない。 だが、そのあまりな巨大さ故に、その全容を彼ら三人が知ることは出来ない。 どころか――この記述を読んでいる貴兄らにも、これを記している筆者にすら、それを知ることは出来ない。 それほどに巨大で、だが“生命体”であることだけは確実に分かる――そういう存在が、彼らの頭上にいるのだ。 最早、この存在が何であるかを解明する意義は存在しない。 それでも、ある程度の推測は――三人にも、出来た。 「つまり、今我々が居るPlaceは―― “盛り付け中のサラダボウルの中”……」 この“何か”は――少なくとも、人間が料理・調理と呼ぶ行動を為し得るだけの知性らしきものがあるということ。 先程の巨塊は、おそらく何らかの香辛料をふりかけたのだろう―― 「……成程。そして、そのサラダは現時点で“厨房”に毅然として存在している、と」 「Yes,Mr.Sutol――迷宮時計の“情報”には間違いは、なかった。 間違っている、すなわちBugというのハ―― このような生物がいる世界に飛ぶこと自体が、デス」 「確かにの……いくら並行世界のどっかじゃ言うたち、こりゃてにあわんちや」 いかに迷宮時計といえど、ここまで異世界じみた並行世界に飛ぶのは――なるほど、想定外だろう。 バグと表現されるのも納得がいく話だが、納得したところで事態は解決しない。 「ほんで、どうするがじゃ。このままじゃ、みんな食われてしまうぞ」 「……あの巨大存在を倒すというのが、手っ取り早いだろう」 そう言うが早いか、ストル・デューンが両目を開き――白と黒の奔流を生み出す。 『赤×黒白』の黒化(ニグレド)と白化(アルベド)の同時発動による、モノトーンの暴力―― だが。その試みがすぐさま無駄であることを、画家は悟った。 「……全容を見渡すには、この空は狭く、そして描くべきキャンバスは広大……」 「つまり“相手の全身が見えんき塗りつぶせん”ちゅーことか?」 そう。知覚すらやっとな巨大な“何か”相手では――そもそも黒化・白化による攻撃が通じているかどうかも分からない。 「……おまさんはどうなんじゃ、英検とやらでどうにかならんか」 「Sorry……エゾヒグマ程度なら兎も角、あれはKIKAKUGAI過ぎます」 「そうじゃな……わしも歯が立たん」 ウィッキーの完全熟練者としてのワザマエを全力にしたとして――攻撃が通る保障がない。 善通寺の書道、そして能力“筆を選ばず誤りて帰る”でも同様だ。 「……だが、これがサラダならば、いずれ“食べる者”に供されるのではないかね?」 「! ほーか、流石にそんときは“厨房”から出て行くことになる!ほいたら場外やき、誰か一人が……あ」 「Yes……サラダボウルがどういう向きなのかが分からない限り、私が出られる保障がありません」 ストルの指摘は光明に思えたが、それではウィッキーを確実に帰すことができない。 仮に生き残った者が連絡する、という方法を選んだとしてもストル・善通寺は“転校生”に連絡することが出来ない! ――万策、尽きたか。 三人が諦めかけた、その時だった。 “眞魚!おんしの力じゃ!おんしの力を使うんじゃ!” 謎の声が、三人の元へと届いた。 神秘的なエコーがかかった不可思議な声だが、言っている内容はハッキリと聞き取れる。 「!? 誰じゃ……?」 「Mr.善通寺、心当たりは?」 「わからん……じゃが、いくらわしの力言うたち……」 「! ……だが、最早猶予はなさそうだな」 善通寺が戸惑う中、地響きと奇妙な浮遊感が三人を、サラダの森を襲った。 ――サラダボウルが持ち上げられ、いよいよ出されようとしているのだ。おそらくは、客である“何か”に。 “早く!……の……物に――じて――” がちゃり、がちゃり――声が、轟音に掻き消される。 厨房内の他の物音だろうか、その音の出所はようとして知れない。 「いかん……声がよう聞こえん……!」 「……Mr.善通寺、ちょっとKUSUGUTTAIですよ!」 「!?」 ウィッキーが咄嗟に動き、善通寺の胸へと手を当て――何かKIAIのようなものを送るような仕草を見せた。 その瞬間、物音に遮られていた声が再びハッキリと届く! 「『TAI-kansoku』……Mr.善通寺のhearingを強化しました」 「すまん、恩に着るぜよ!」 “早く!懐の巻物に二人を封じて――” 「封じる…… そうか!それじゃったら…… 二人とも、ちいとこらえてや!」 そう言うと、善通寺は筆を振るい字を中空に描き始める! “封”の字を二つ―― 対象を絵巻物に閉じ込める、能力と書道の合わせ技! 書き上がった“封”の文字は、ウィッキー・ストル両名へと引き寄せられ――身体にそのまま張り付いていく! そして、二人の身体が墨絵の如く溶け――善通寺が構えた巻物の中へと吸い寄せられる。 全ての墨が吸い込まれた時、巻物には――ストルとウィッキーの姿があった。 そして、善通寺は――二人が試合場から“消えた”ことで“勝者”と見なされ。 二人が描かれた巻物ごと、この世界から転移した。 ~~~~~~~~~~~~ “動物園”の世界、N.Y―― 朝日が差し込む公園の傍らで、善通寺はウィッキーとストルに頭を下げていた。 「すまん!本当ならわしと画家のおんちゃんが巻物になって、ウィッキーさんに持っていってもらえたら良かったんじゃが……」 「No problem,Mr.善通寺――巻物に封じた人を戻せるのは貴方だけ、である以上仕方ありません」 「……どのみち、説明している暇もなかっただろうからな」 さて。飛び先がなぜ此処になったか、蛇足ながら説明しておくと―― 善通寺とストルの両名は“迷宮時計”を所持していなかったのだ。 それもまた、迷宮時計に発生したバグの一部……一度でも迷宮時計に関わった者に降りかかる、何らかの影響らしかった。 その為、“勝者”となった善通寺はウィッキーの持っていた迷宮時計―― 厳密に言うならば、Mr.Sikiが用意した迷宮時計の“模造品”をそのまま引き継いだ格好となり。 その時計にとっての基準――即ち、ウィッキーが敗れたこの世界へと帰還することとなったのである。 その後、巻物から二人を解放して今に至る、というわけである。 「ともかく、私のMissionはひとまずの完了ですが…… 今後の結果次第では、また何かあるかもしれませーん。 その際にSupportして貰えれば、Win-WinでCHARA-HEAD-CHARA!という奴です」 「そうか……そう言うてもろうたらありがたいちや」 「……しかし、私と善通寺君は……果たして此処に“戻って”良かったのだろうか?」 「ほうじゃな……本当ならもう死んじゅう筈じゃに」 「まあまあ。命あってのMONODANEですから! 早速ですがお二人とも、瓦礫撤去のボランティアお願いしますヨ!」 困惑する黄泉帰りの二人をよそに、ウィッキーさんは往年の気楽さで――再起に向けて、歩み出した。 「……ところで。あの声、結局誰だったんじゃろな?」 ~~~~~~~~~~~~ ――どこかの世界、“四国”―― “……どうやら、うまくいったようじゃの” 清浄な空気が張り詰めた、“四国”の中央に聳える霊山――中腹に穿たれた洞穴の奥に、二つの影。 一つは人、もう一つは――彫像である。 『いやあ、一時はどうなることかなあと思ったけどなんとかなったね! これも僕の日頃の行いの御陰だね!やっほう!』 “……お主の日頃の行いはともかく。お主の報せがあればこそ、 我が声を遥か彼方の異界へと届けるに至ったのは紛う事なき事実よ” 『まあね。たまたまシキ君が電話してるの聞いて、なーんか面白そうだなって思ってね。 僕がしゃしゃり出ると事態がメチャクチャになるから何もするなって言うから、貴方に動いて貰ったまでさ』 どこか空々しい響きではしゃぐ青年を窘めつつも誉めるように、彫像は念話で語りかける。 “しかし、珍しいこともあるものよのう。よもや、世を壊すのが望みのお主が世を護らんが如くに動こうとは、な” 『……やだなあ。僕はただ、ぐっちゃぐちゃにしたいだけだよ。 今回の場合だってそうだよ。時逆ちゃんの企みを引っかき回したかっただけさ! だって、僕がしっちゃかめっちゃかにする前に――先に更地にされちゃたまらないからね』 “……ふん。数百年経とうというのに、相も変わらず本当の心音を語らぬ男じゃな” 『それでいいんだよ、僕は。何もかも、済し崩しに台無しにしていく――それが、僕だ』 そこまで言うと、青年はもはや会話を続けるのは無意味だ、と言わんばかりに彫像に背を向けて 洞穴の出入り口の方へ向かって歩き始めた。 『ま、今度僕が来るまで頑張って“四国”遺しといてね、“金剛大師”様』 “お主も、息災であれよ。 久万高原よ” 彫像――“四国”88結界の開祖“金剛大師”は、 青年――“転校生”の一人、久万高原戻の背中を静かに見送った。 このページのトップに戻る|トップページに戻る
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オリスタSS作品一覧表 最終更新 2011/07/28(木)現在のSS板 連載中の作品 更新順 (連載基準:6月1日以降) 40 ◆79EFR1u8EY 【オリスタ】セクター9の世界【SS】 2011/07/27(水) 15 ◆U4eKfayJzA 【インハリット】オリスタSSスレ「宝石の刻(とき)」【スターズ】} 2011/07/26(火) 41 ◆XYGGp0uo6g 【オリスタ】フレイム・スカール【SS】 2011/07/26(火) 44 ◆MJxgI59AoE ◆Break A Law◆ 運び屋『OWL』 2011/07/26(火) 11 ◆LglPwiPLEw 【ガーネット】「柘榴石の心(グラナート・クオーレ)」【クロウ】 2011/07/25(月) 28 ◆XBKLFVrvZo 【オリスタ】パラレル・ユニヴァース【SS】 2011/07/23(土) 31 ◆WQ57cCksF6 【オリスタ】アークティック・モンキーズSS 2 -ソウルメイト-【SS】 2011/07/20(水) 29 ◆AXS9VRCTCU 【オリスタ】小さな正義は夢を見る【SS】 2011/07/16(木) 43 ◆U4eKfayJzA 貧乳たちの奇妙な生活 2011/07/15(金) 26 ◆R0wKkjl1to 【ジョン】オリジナルスタンドSSスレ【万】 2011/07/10(日) 42 ◆929Wc4MY.g 【ヴァニシング】オリジナルスタンドSSスレ【ライト】 2011/06/18(土) 39 ◆トリップ無し 【オリスタ】ウルフマザー・ウルフハート【SS】 2011/06/01(水) 完結済みの作品 完結順 01 ◆WQ57cCksF6 【アークティック】オリジナルスタンドSSスレ【モンキーズ】 2009/09/11(金) 13 ◆9X/4VfPGr6 【ワム!】オリジナルスタンドSSスレ【Wham!】 2010/02/20(土) 12 ◆R0wKkjl1to 【スター】オリジナルスタンドSSスレ【ゲイザー】 2010/06/18(金) 18 ◆70nl7yDs1. 【オリスタ】U2 -黒い森で啼く蒼い鳥-【SS】 2010/08/07(土) 07 ◆XBKLFVrvZo 【ヒート】オリジナルスタンドSSスレ【ウェイヴ】 2010/11/10(水) 15 ◆U4eKfayJzA 【インハリット】オリスタSSスレ「宝石の刻(とき)」【スターズ】 2011/01/29(土) 17 ◆U4eKfayJzA 虹村那由多の奇妙な日常 2011/07/07(木) 見方 SSスレッドタイトル No. ◆作者のトリップキー 連載開始日時 連載状況 (変更時は上方の酉が最新) (連載終了日時) Wiki化の有無 以下は連載開始日時順にソートされています。 現SS板時代 2011年 ◆Break A Law◆ 運び屋『OWL』 44 ◆MJxgI59AoE 2011/07/26(火)01 49 40 連載中 貧乳たちの奇妙な生活 43 ◆U4eKfayJzA 2011/07/09(土)23 31 39 連載中 【ヴァニシング】オリジナルスタンドSSスレ【ライト】 42 ◆929Wc4MY.g 2011/06/18(土)13 18 46 連載中 ◆qb6cW/IIus 【オリスタ】フレイム・スカール【SS】 41 ◆XYGGp0uo6g 2011/06/10(金)22 27 32 連載中 【オリスタ】セクター9の世界【SS】 40 ◆79EFR1u8EY 2011/05/10(火)19 43 40 連載中 【オリスタ】ウルフマザー・ウルフハート【SS】 39 ◆トリップ無し 2011/04/11(月)21 05 47 連載中 【オリスタ】21th century breakdown【SS】 38 ◆gyA66GZtj. 2011/03/10(木)22 23 08 【オリスタ】イエスタデイ・ワンスモア【ss】 37 ◆9O3ahcMo86 2011/02/22(火)14 46 35 No Doubt 36 ◆トリップ無し 2011/01/09(日)05 28 47 2010年 ジャジャとジュジュの珍妙な冒険 35 ◆LglPwiPLEw 2010/11/26(金)20 12 51 OBJECT WAR 34 ◆ElemtaR8vc 2010/11/20(土)13 45 25 【学園企画】いとしのエリー【オリスタSS】 33 ◆OLAi9VIw7M 2010/10/01(金)02 31 25 【オリスタ】リンキン・パークは曲がらない【SS】 32 ◆XksB4AwhxU 2010/09/04(土)18 00 46 【オリスタ】アークティック・モンキーズSS 2 -ソウルメイト-【SS】 31 ◆WQ57cCksF6 2010/08/22(日)02 45 39 連載中 【オリスタ】豊穣の女神は穢れない【SS】 30 ◆ufmHeBWBMM 2010/08/16(月)23 51 13 【オリスタ】小さな正義は夢を見る【SS】 29 ◆AXS9VRCTCU 2010/08/15(日)22 28 24 連載中 【オリスタ】パラレル・ユニヴァース【SS】 28 ◆XBKLFVrvZo 2010/08/04(水)21 23 08 連載中 【オリスタ】偉大なる足跡【学園企画SS】 27 ◆t3A/bYwid6 2010/07/27(火)23 47 35 【ジョン】オリジナルスタンドSSスレ【万】 26 ◆R0wKkjl1to 2010/07/17(土)00 59 21 連載中 【ジャッジメント・デイ~交差するスタンド使い~】 25 ◆neHjiUQ7Jo 2010/05/23(日)20 11 00 「JOJO Extra Story」 24 ◆KUymlgWJVo 2010/05/23(日)01 57 10 【オリスタ】不可能大怪盗銭形妙【SS】 23 ◆トリップ無し 2010/05/13(木)17 04 06 【S・W】オリジナルスタンドSSスレ【C・B】 22 ◆9X/4VfPGr6 2010/05/05(水)17 59 27 【“都心でも田舎でもない何処か”】 21 ◆C4Y..EhV8I 2010/04/23(金)00 09 10 【オリスタ】シャングリラ【SS】 20 ◆トリップ無し 2010/04/06(火)00 05 26 【オリスタ】或るホテルでの出来事【SS】 19 ◆6JEWITNnHo 2010/02/04(木)00 19 18 【オリスタ】U2 -黒い森で啼く蒼い鳥-【SS】 18 ◆70nl7yDs1. 2010/02/03(水)00 38 50 完結 2010/08/07(土)15 25 03 虹村那由多の奇妙な日常 17 ◆U4eKfayJzA 2010/02/02(火)09 27 37 完結 2011/07/07(木)18 06 21 Wiki済 第1編 第2編 第3編 第4編 第5編 第6編 第7編 第8編 第9編-前編 第9編-後編 第10編 第11編 第12編-前編 第12編-後編 第13編 第14編 第15編 第16編 第17編 第18編 第19編 第20編 第21編-前編 第21編-中編 第21編-後編 第21編-おまけ 第22編 第23編 第24編 第25編 2009年 【オリスタ】「RS -超常犯罪捜査班-」【SSスレ】 16 ◆WQ57cCksF6 2009/12/29(火)09 00 13 【インハリット】オリスタSSスレ「宝石の刻(とき)」【スターズ】 15 ◆U4eKfayJzA 2009/11/14(土)01 10 14 完結 2011/01/29(土)13 06 53 Wiki済 第一話 第二話 第三話 第四話 第五話 閑話休題 第六話・Aパート/Bパート 第七話 第八話 第九話 第十話 第十一話 第十二話 第十三話 第十四話 第十五話 第十六話 第十七話 第十八話 第十九話 第二十話 第二十一話 第二十二話 第二十三話 第二十四話 第二十五話 第二十六話・前編/後編 第二十七話 第二十八話 第二十九話 第三十話 第三十一話 第三十二話 第三十三話 第三十四話(分岐) ノーマルエンド 第三十五話-A 第三十六話-A 第三十七話-A 最終話-A トゥルーエンド(IF) 第三十五話-B 最終話-B スタンド紹介 【ジョジョ】浮沈する英国【オリスタ】 14 ◆PAPdncwh4c 2009/11/14(土)23 35 55 【ワム!】オリジナルスタンドSSスレ【Wham!】 13 ◆9X/4VfPGr6 2009/11/14(土)13 11 08 完結 2010/02/20(土)14 57 34 Wiki済 第一話 『Who Wham I ?』 第二話『il mio nome egrave; jojo』 第三話『杜王町』 第四話『目覚める能力(ちから)』 第五話『Squadra “GIOGIO”』 第六話『蠢く影』 第七話『強襲!殲滅チーム』 第八話『進むべき未来(みち)』 第九話『人生における我が立ち位置』 第十話『闘え!少女達』 第十一話『石地図 其の1』 第十二話『石地図 其の2』 第十三話『無限の進化!』 第十四話『ヒーローは遅れてやってくる』 第十五話『The Edge Of Heaven』 最終話『ライフ・ゴーズ・オン』 登場キャラ・スタンド紹介 【スター】オリジナルスタンドSSスレ【ゲイザー】 12 ◆R0wKkjl1to 2009/11/10(火)20 15 22 完結 2010/06/18(金)01 23 11 Wiki済 第一話 第二話 第三話 第四話 第五話 第六話 第七話 第八話 第九話 第十話 第十一話 第十ニ話 第十三話 第十四話 第十五話 第十六話 第十七話 第十八話 第十九話 第二十話 第二十一話 第二十二話 第二十三話 第二十四話 第二十五話 第二十六話 第二十七話 第二十八話 第二十九話 最終話 登場スタンド紹介 【ガーネット】「柘榴石の心(グラナート・クオーレ)」【クロウ】 11 ◆LglPwiPLEw 2009/10/31(土)10 53 25 連載中 【オリスタ】グローブアンドスターズ-地球儀と星々【SS】 10 ◆UmE8XZc4I. 2009/10/30(金)22 29 51 【電気】キャッツ・グローブとスタンドの遭遇【ちゅみみーん】 09 ◆e.pe2rP3sU 2009/10/22(木)14 33 53 【ビッチェズ】オリジナルスタンドSSスレ【ブリュー】 08 ◆トリップ無し 2009/10/16(金)16 44 46 【ヒート】オリジナルスタンドSSスレ【ウェイヴ】 07 ◆XBKLFVrvZo 2009/10/12(月)17 03 42 完結 2010/11/10(水)19 22 56 Wiki済 1話 2話 3話 4話 5話 6話 7話 8話 9話 10話 11話 12話 13話 14話 15話 16話 17話 18話 19話 20話 21話 22話 23話 24話 25話 26話 26話 28話 29話 30話 31話 32話 33話 34話 35話 36話 37話 38話 39話 40話 41話 42話 43話 44話 45話 46話 47話 48話 49話 50話 登場キャラ・スタンド紹介 年表 【ピース】オリジナルスタンドSSスレ【メイカーズ】 06 ◆cWCiSuePTk 2009/10/12(月)00 17 35 旧避難所時代 【オリスタ】クリスタルオブメモリーズ【SSスレ】 (旧題 同名 ※削除済み) 05 ◆LLLLLLLLL. 2009/09/18(金) 20 41 43 【クリスタル】オリジナルスタンドSSスレ2【エンパイア】 (旧題 オリジナルスタンドSSスレ2) 04 ◆vhN/DYhgyA 2009/09/15(火)07 44 48 【期待】オリジナルスタンドSS【厳禁】 03 ◆ys2bT29ok. 2009/09/15(火)00 29 47 オリスタSSスレ「JOJO Another Story」 02 ◆KUymlgWJVo 2009/09/14(月)23 58 36 【アークティック】オリジナルスタンドSSスレ【モンキーズ】 (旧題 オリジナルスタンドSSスレ) 01 ◆WQ57cCksF6 2009/09/11(金)22 34 01 完結 2009/11/14(土)01 10 14 Wiki済 01話 運命の日(Stand Up To) 02話 太陽と弓矢とツイスター(When The Sun Goes Down)1/2 2/2 03話 ガラス(Fairy Tale) 04話 眠れる森の午後(The Zombie's Hour) 05話 魔女狩り(The Crimson Rains)1/2 2/2 06話 裏切りと駆け引きの応酬(Taking Over)1/2 2/2 07話 ニュー・フレンズ、ニュー・エネミーズ(The New Friends,New Enemies)1/2 2/2 08話 パレード(The Parade Started Late) 09話 思い出との対話 その1(The Reliving Part1) 10話 思い出との対話 その2(The Reliving Part2) 11話 フー・ザ・ファック・アー・アークティック・モンキーズ?(Who The Fuck Are Arctic Monkeys?)1/3 2/3 3/3 登場キャラ・スタンド紹介
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【初出】 禁書SS自作スレ>>699-700 ゴミを全て捨て終わり、戦争の跡地と化した部屋は妙に平然としていた。 「んー、スッキリしたわ」 結標は肩に手を当てて首を何度か鳴らしたり、ついでに改めて伸びをして、腰を曲げたりしてみる。 それと同時に気づいた事があった。 脇腹。 そこに接している寝間着の生地に少し変化がある。 そこだけ、赤く変色しているのだ。 「………ッ」 それを見た直後、結標の身体が嫌な汗を出しはじめた。 急いで押入れに押し込んであった救急箱を取り出し、寝間着を捲り上げる。 赤の色がこびり付いた白い自分の肌。 どうやらほとんど固まっているようだが、あの事件で白井につけられた傷が開いたようだ。 少し何も考えずに動きすぎたか、と結標は眉を顰めつつ救急箱を開けて治療を始める。 傷が痛むのを我慢して傷に薬を塗りつけ、その上から包帯を巻きつけるだけの簡易作業。 こんな状態ではあの最強の能力者に勝てる筈が無い、などという弱音は吐かない。 万全を期すまで待てばいい、などという作戦をとることも無い。 というよりもそもそも、結標は"それすら"も思いついてはいないのだ。 重度とは言えないが、決して結標が心に負った傷は浅くは無い。 あの事件を境に、色々な意味で結標は既に"壊れている"のだから。 治療を終え、余った包帯を鋏で切り取って救急箱に収めて蓋を閉める。 「お気に入りだったんだけど……ねぇ」 脇腹部分が生地の青色に反逆するように赤くなった寝間着を見て結標はため息をつく。 クリーニングに出すわけにもいかないし、結標には残念ながら衣服についた血痕を落とすような技術は無い。 何故かテーブルの上に置いてあった【爆熱殺菌掌】という商品名の上にむさ苦しい男性がプリントされた洗剤は、 使うと落とせるとか落とせない以前に、生命の危険とかそういう方向でやばい気がする。 というか、何故そんなものを買ってきたのか。 思い返すが、見事なまでに記憶に無い。 恐らくあの事件から数日も経っていない錯乱した精神状態の時に買って来たのだろう。 明らかに混ぜるな危険の雰囲気を醸し出すサムズアップした筋肉質な男性の絵が目立つ洗剤を横目で見やり、 一瞬見た後視線を逸らすと、服を手に入れるため結標は一枚扉を挟んだ隣の部屋へと向かった。 扉を開ければ、そこはクローゼットだけが一つ隅に置いてある寂しい部屋。 そこにも達磨の形をしたカキ氷機や他にも使用法不明の謎の商品が幾つか床に転がっていた。 錯乱状態の自分は本当に何を考えていたのだろうと今更ながら自己嫌悪に陥る。 ……大丈夫。私は大丈夫。 罅割れた心に何とか言い聞かせて立ち直るまで数秒。 すぐに気持ちを切り替えて、クローゼットの扉を開けた。 即座に閉めた。 「……他の服、あったかしら?」 今日は絶好の買い物日和だ。 対一方通行用の作戦を考えるついでに服を調達するのも良いだろう。 向きを変えて歩き出した結標の後ろには、どす黒い空気を放つクローゼットがただ静かに鎮座していた。 結局他の服は見つからず、床に落ちていた学校で使う様な紺色のジャージを着る事となった。 今日何度目の溜息かしら、とぼんやり考えつつ他に必要なものをチェックする。 布団などは問題無し。寝間着とクローゼットの服は捨てるしかないだろう。 と、冷蔵庫を覗いてみれば、丁度食料もほとんど切れて居る状態だった。 恐らくは昨日食べたものでまともな食材は最後だったのだろう。 なんともタイミングが良いものだ、と結標は偶然に感謝する。 「お腹もすいたし……っと?」 自らの腹に手を当てたトコロで結標は気づく。 そういえば最後にお風呂に入ったのは何時だろう、と。 その日数を考えて戦慄しつつ恐る恐る自らの髪に触れる結標。 触れた髪はとてつもなく乾燥しており、手入れも何もあったものではない。 何かに例えるとするならば、それはミイラの様な状態だった。 髪は女の命というが、結標もその例を漏れずそれなりに大切にしていたのだ。 まずはお風呂か、と肩を落とし項垂れつつ風呂場へと向かう結標。 最近項垂れる回数まで多くなっている様な気がする、と更に落ち込むような事を考えつつ足を動かす。 ふと自分の脇や肩に巻かれた包帯を見やる。 包帯は表面防水仕様なので問題無いとしても、まだ湯船に浸かるのは控えたほうが良いだろう。 そんな事を思っている間に脱衣所に到着。 すぐさまジャージと下着を脱いで風呂場へと足を運ぶ。 そして、扉を開けて正面に設置してあるシャワーを手に取りお湯を出し始めた。 温度を調整して、近場に置いてあったシャンプーを取り、頭を濡らしてからそれをつければ準備完了だ。 瞬く間に頭の上半分が白い泡に包まれる。 暫くの間。 その間はずっと丁寧に、それでいて豪快に洗う音が風呂場に響き渡っていた。 更に水の勢いを強くしたシャワーで勢い良く髪を洗い流す。 その際に泡が目に入ったりして少々痛くなったが、それもご愛嬌というものだろう。 余韻に浸りつつ、ついでとばかりに検討していた対一方通行用の作戦を改めて頭の中に走らせる。 ……真っ向勝負では間違いなく一瞬でやられる。かと言って人質作戦も私のプライドに反するのよね。 一番簡単なのは、恐らくだが一方通行を支える少女を人質に取る事だ。 だが、それは僅かばかり、情け程度に残った結標のプライドが許さない。 戦いの場にあるものは何でも利用するのが結標の基本的なスタイルだ。 しかし、流石にこの様な少女を人質に取るまでは落ちぶれてはいないと結標は自負している。 ……まあ、利用する事には変わらないんだけど……となると他に考え付く方法は……。 少女を手なずけてコッチの味方にしてしまう。 ……。 少しでも良いかも、と思ってしまった雑念を振り払うようにガシガシと音を立てて頭を強く掻く。 というか、場合によっては人質に取るよりもかなり情けない様な気もする。 「まぁ、取り敢えずは……買い物しながら考えるとしましょうか」 軽い足取りで風呂場から出て、下着などを入れる棚の上に積んだバスタオルを一つ取り身体を拭い始める。 ドライヤーを使って髪を乾かして櫛を入れて念入りに整え、お気に入りの後ろで二つに結う髪型に整える。 よし、と最後に脱衣所に設置してある鏡で何度か左右を向いておかしいところは無いか確認。 問題無し。 下着を付けてジャージを着込み準備完了。 ジャージの上着の方は前を開けておくのがポイントだ。 中には白のインナーを着込んでいるので、動きやすさの面でも他人の目の面でも問題は無い。 後は財布を持って買い物に行くだけだ。 そういえば財布はどこにやっただろうか、と多少御機嫌になりつつ脱衣所を出て行く結標であった。 ...To Be Continued
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SSはここへ。 編集→このページにファイルをアップロード→#ref(画像名) SSは、メニューが消えてしまうのでサイズを半分にして投稿してください。 広場が正月仕様になったよ クリコヒが初コロでもナギナギやらかしたようです 毬藻夫妻 やんのかゴルァ ナギッ ナギナギッ ナギナギナギッソマ×2「なんだあいつら…」サンタ「…ナギの団体さんですか」ルコ「にゃー」 アトラクションのお姉さんとマスコットとお客さん マツノキさんが他ギルドの集会に殴りこみ モドだよ~ 魔法少女…? 眠兎さんマジかわいい ほむほむちゃんが可愛すぎて幸せ ピンコちゃんマジ天使 イリシアさんマジ天使 喫茶エルテイルの店員4人娘+オーナー 信号!(あまり意味はない 武士A「必殺!千槍千撃ッ!」 武士B.C.D.E「ぐわああああああ!!」 槍トラップが縦に沸いてたんで撮ったらこうなった(・ω・) 誕生日はたいせつ! スカート穿き忘れ……
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