約 14,844 件
https://w.atwiki.jp/indexorichara/pages/657.html
【名前】桃園 星太(ももぞの せいた) 【性別】男 【所属】科学サイド 【能力】なし 【概要】 とある高校の教師で警備員。ただし警備員なのに変態。24歳。 特別手当目当てでも、近代兵器を使いたいという理由でもなく、学生にナメられないようにという理由でもなく、 黄泉川愛穂・鉄装綴里といった美人で巨乳の警備員と一緒に働きたいという、警備員にあるまじき不純な理由で 警備員に入った男。無類のおっぱい星人で、自宅には大量のソレ系の本がありそれを用いて堅物な警備員をからかうことも。 隠れ同志もいるとかいないとか。胸が大きければ一般人や風紀委員にも色目を使うことがある。 何故こんな男が警備員に入れたのか、むしろ捕まる側じゃないのかとよく言われている。 ………実際、数年前は捕まる側だった。主に上記の女性警備員に捕まっていた。 何度も捕まり黄泉川に子供を守る大切さを含めた説教を受けるうち、「子供たちの無限の可能性を守る素晴らしさ」を知り ちょっと、いやかなり方向性は違うかもしれないが改心し「子供たちの無限の可能性を守れる警備員になろう!」と決意。 周囲にもそういった性格がバレバレなせいか、ほぼ全て男性警備員とシフトを組まされている。 変態だが女性を助けるためなら、無類の強さと根性を発揮する。「慎ましやかな女の子でも可能性は無限大だぜっ!」…だそうな。 男性警備員には「どこか憎めないヤツ」と思われていることが多いが、当然のことながらほとんどの女性警備員に嫌われており独身。 たぶんこれからも独身。 【特徴】 身長178cm、明るい色の茶色の短髪で細マッチョな「見た目だけは」さわやか系イケメン。 上記の理由から実際は残念なイケメン。格好つけだけでサングラスを警備員時にも愛用し、常に装備している。 私服は警備員とは思えないほどチャラい。むしろ私服だけで言えばスキルアウトに近い。 【台詞】 「女性に宿る母性の象徴……それは時として僕に生きる意味を教えてくれる」 「うん!いいおっぱ…ゲフンゲフン…いい風紀委員になるよ!君は!期待しているよ!」 「やあ、鉄装先生。これから僕と大人の時間を……いたたた!黄泉川先生!ギブギブ!あ、いやこれはこれで……だめだやっぱ痛い!」 【SS使用条件】 変態だけど殺さないであげてください。 かませになったり、死なない程度にイジってやるのはOKです。
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/127.html
アンチスキル・黄泉川部隊本部――。 黄泉川「………………」 トレーラー型の装甲車に設けられた司令部。その中に黄泉川の姿があった。 黄泉川「……どこだ」 彼女は今、ホワイトボードに貼られた学園都市全域の地図を前にして立っている。 黄泉川「………奴らはどこにいるじゃん」 腕を組み、地図を睨みながら黄泉川は呟く。 黄泉川「(今までの御坂美琴と上条当麻の逃走経路を振り返ってみたが、分かったのはやはり奴らは南に逃げているということ)」 背後で部下の警備員たちが忙しく動いているが、彼女はそれすらも意識の外にして考え事に集中している。 黄泉川「(白井たちを回収した時に、その場所の付近も捜索させた……)」 現在時刻午後4時過ぎ――。 今から約16時間前。黄泉川たちアンチスキルの部隊は黒子から連絡を受け現場に急行し、黒子と瞬間氷結を回収した。その時、黄泉川は隷下の部隊に付近の家や建物を徹底的に捜索させたが、終ぞ上条と美琴は見つけられなかった。 黄泉川「(『デーモンズ・ネスト』にも探りを入れてみた……)」 次いで『デーモンズ・ネスト』にも足を運んだ黄泉川だったが、店の責任者である仁科要に会うことは叶わず、黒服に「逮捕状を持ってきてから」と言われた上、半ば脅されるような形で店と繋がりのある上層部の存在を出されたため、渋々その場を後にするしかなかった。 黄泉川「(瞬間氷結は気絶していたと言う話だが、白井は奴らが逃げた時には意識があったはずじゃん。なら、白井が奴らの大体の行き先ぐらい知ってそうなものだが……)」 ……黒子は今、右足に怪我を負っているため、瞬間氷結に見守られながら病院で治療を受けている。なので今病院に行って彼女に話を聞くのは無理だ。 しかし……… 黄泉川「(まさかあいつ……御坂美琴たちがどの方面に行ったのか知ってて黙ってるんじゃ………)」 顎に手を添えながら黄泉川は1つの推論を組み立ててみる。 黄泉川「(……いや、白井に限ってそれはないか……)」 今思い浮かんだ疑念をすぐに払う黄泉川。 黄泉川「(しかし、半日以上奴らの足取りを見失ってるのはまずいじゃん……)」 黄泉川の表情に焦りの色が浮かぶ。 黄泉川「(何か手掛かりは……)」 と、その時だった。 警備員A「そういや、あれどうなったんだっけ?」 警備員B「あれって?」 背後から部下の警備員たちの会話が聞こえてきた。 警備員A「何でも学園都市の全域を囲む壁の数箇所に、対能力者用のキャパシティダウンを設置するとかなんとか……」 黄泉川「………………」 警備員B「ああ、能力者の脱走を塞ぐために東西南北8ヶ所に分けて配備されるってやつだろ? 確かこの間、キャパシティダウンを搭載した7台目のトラックが配備し終えたところって話だ」 警備員A「ん? じゃあ8台目は?」 黄泉川「………………」 背中越しに警備員たちの会話を耳に入れる黄泉川。 警備員B「もうそろそろなんじゃないかな?」 警備員A「どこに配備されるんだ?」 警備員B「南ゲート、って聞いたけど」 黄泉川「!!!!!!!!!!」 その瞬間、黄泉川の表情が変わった。 警備員A「でもそのキャパシティダウン、最新式らしいからレベル0から果てはレベル5まで効くらしいぜ?」 黄泉川「…………っ」 警備員B「何か学生たちが可哀想な気もするけど、上層部が決めたもんはしょうがねぇよなぁ…………え?」 警備員A「どうした?」 警備員Bの視線を辿る警備員A。その先に黄泉川の後ろ姿があった。何故か、肩を小刻みに震わせていたが。 黄泉川「くくくく……」 警備員AB「???」 黄泉川「なるほど、そういうことか……。だから奴らはわざわざ南に逃げていたのか……っ!」 1人、笑いを零す黄泉川。 警備員A「……隊長?」 心配した警備員Aが後ろから声を掛ける。 黄泉川「命令を達す!!!」 警備員AB「!!!!!!」 突如、黄泉川が大声を出して振り返った。 黄泉川「全部隊を召集!! 直ちに作戦行動に移る!!! 同時に、件の研究所に協力を申請!!! 今すぐキャパシティダウンを搭載したトラックを配備させるよう伝えるじゃん!!!!」 警備員AとBがポカーンと口を開ける。 黄泉川「何してる!? さっさと動くじゃん!!!」 警備員AB「りょ、了解!!!」 不適な笑みを浮かべて黄泉川は叫ぶ。 黄泉川「我々も南に向かうぞ!!!!」 その頃。某学区・某病院では。 黒子「…………」ボーッ とある病室。そのベッドの上に、窓から外の景色を眺める黒子の姿があった。 彼女は昨晩、美琴との戦闘後、黄泉川たちに回収されると右足の治療を受けるためこの病院に搬送されたのだった。 瞬間氷結「今頃黄泉川先生たちが頑張ってるところだよ」 黒子「…………そうですの」 瞬間氷結「………………」 側に座っていた瞬間氷結が話しかけるが、黒子は窓の外を見たまま心ここにあらずと言った口調で答える。 瞬間氷結「明日、君の友達が見舞いに来てくれるそうだよ」 黒子「…………そうですの」 彼女は病院に着いてからずっとこの調子だった。 瞬間氷結「…………」ハァ 瞬間氷結「…………飲み物を買ってくるよ。君はここで待っててくれ」 黒子「…………そうですの」 まるで壊れたロボットのように答える黒子。そんな彼女を見て瞬間氷結は一瞬やり切れない顔をすると、静かに病室を出て行った。 黒子「……………………」 再び病室が静かになる。 その瞬間だった。 「だからああああああ!!!! 金なんて持ってねぇええええんだって!!!!!!」 黒子「……………?」 病室の外から、静寂をぶち壊すような1つの下品でやかましい声が聞こえてきた。 「いえ、我々としても治療費を頂かないことには……」 「知るかよ!!! ここまで来た俺を勝手に治療したのはそっちだろうが!!!!」 何やら病院の医師と、態度が悪い患者が口論しているらしい。若干、後者の方が勢いで勝ってるようだが。 「では、その応急処置を施してくれた人の名前を……」 「施してくれただぁ? あっちが勝手に傷つけて勝手に応急手当しただけだよ!!! あのクソガキども……!!」 「ですから、その子供たちの名前は覚えてないんですか?」 「あああ? 確か『とうま』だの『みさか』だの言ってたなあ」 黒子「!!!!!!!!!!」 患者の言葉に目を丸くする黒子。病室の外もざわめついたようだった。 「そ、それは本当に『みさか』と名乗っていたのですか!!??」 医師が慌てるように訊ねている。 「もしかして下の名前は『みこと』ではありませんでしたか!?」 「ああ、そういやそんな名前も聞いた気が……」 「そ、その『みさかみこと』は今アンチスキルが全力で追ってる犯罪者ですよ!!!!」 「ああああ? 誰だよそりゃぁ。こっちは数年世俗とは離れてるんだっつーの」 「た、大変だ……まさか『みさかみこと』に会っていただなんて……!」 黒子「……………………」 ベッドから降り、黒子は僅かにドアを開けるとそこから外を窺った。 松葉杖をついた浮浪者らしき男と、慌てた様子の医師や看護士の姿が見えた。 浮浪者2「金はもういいのかよ?」 医師「そんなことよりアンチスキルに連絡せねば……!!」 黒子「(……御坂美琴。また怪我した他人を治療でもしたんですの……)」 外の様子を眺めながら黒子は胸中に思う。 黒子「(……ま、もう私には関係の無いことですわ……)」 ドアを閉め、ベッドに戻ると、黒子は再び窓の景色を眺め始めた。 黒子「(……それに……どうせ……私はもう………)」 彼女の生気のない目が、夕焼けに染まり始めた空を見つめていた。 学園都市・南ゲート――。 キキッと音を立て、大所帯でやって来た黒塗りの自動車や装甲車が慌てたように一斉にストップする。 バンッ!!! その中のうち、数台の装甲車の後部扉が同時に開き、中からザザザと規則正しい動きで黒ずくめ姿の武装兵たちが次々と飛び出してきた。胸にアサルトライフルを構え機敏な動きで部隊を展開する彼らの正体はアンチスキルだ。 黄泉川「行け行け行け行け行け行け行け!!!」 装甲車の側に立ち、車内から飛び出してくる警備員たちを促すのは指揮官の黄泉川だ。 黄泉川「事態は一刻を争うじゃん!!!」 彼女の指示により南ゲート付近はあっという間にアンチスキルの部隊によって埋められた。 黄泉川「……よし」 その様子を見て小さく頷くと黄泉川はスピーカーを取り出して叫び始めた。 黄泉川『アンチスキルじゃん!! 今からこの南ゲートは我々が封鎖することになった!! ここに並ぶ全ての自動車は今から我々の検分を受けてもらうじゃん!! その後異常が無ければUターンして、別ゲートから『外』に出て行ってもらって構わない!!』 それを聞いた途端、自動車を運転していたドライバーたちから不満の声が沸き上がった。何台かはクラクションを鳴らしている。 黄泉川『黙れ!!!!』 キーンとスピーカーがハウリングする。一斉にドライバーたちは静かになった。 黄泉川『御坂美琴を逃すわけにはいかない。協力してもらうじゃん』 言って黄泉川は側にいた部下にスピーカーを預けると、隷下部隊指揮官の下へ歩いていった。 黄泉川「5班と6班は自動車の検分、7班と8班はその護衛及び周囲の警戒。1班と2班はいつでも車をスムーズに動かせるよう配備しとくじゃん」 班長「はっ!!!!」 横に並んだ班長たちが一斉に返事をする。 警備員「隊長!!」 黄泉川「ん?」 と、そこへ1人の警備員が叫びながら走ってきた。 警備員「来ました!! 例のトラックが!!!」 言って警備員は指を指す。 黄泉川「来たか」 黄泉川が視線を向けた先……そこに、ごつい形をしたトラックが警備員の誘導によって近付いて来るのが見えた。 班長「おおお」 班長たちが感嘆の声を上げる。 警備員「あれが……」 黄泉川「最新型のキャパシティダウンを搭載した車両――『キャパシティダウンキャリアー』だ。無理を言った甲斐があったじゃん」 トラックを見て満足そうな笑みを浮かべる黄泉川。 そんな彼女に警備員は訊ねる。 警備員「しかし、話に聞くと御坂美琴は能力を失ってるようですが……わざわざ配備を早める必要があったんでしょうか」 黄泉川「『不安定な自分だけの現実(UPR)』は別に演算能力を失うわけではないじゃん。能力を実現化出来ないだけ。だからどの道効果はある。レベル0の無能力者なら話は別だが、奴は何だかんだ言ってレベル5の超能力者。能力を一時的に使えなくなってても特に問題は無いじゃん」 警備員「なるほど。これなら鉄壁ですね。今、アンチスキル最強の男もこちらに向かっていると聞きますし」 黄泉川「ふん。これで御坂美琴も終わり……忌々しい雷も、雨雲さえ消えてしまえば恐れる必要は無いってわけじゃん」 言って黄泉川は不適な笑みを浮かべた。 その頃・某学区にて――。 通りの端に設置された1台の公衆電話ボックスの中。 上条「ああ、そうか……分かった」 そこに、上条の姿があった。 上条「よし、じゃあそうしよう。こっちもそのつもりで動く」 受話器を耳に当て話しながら、上条は外を見る。 上条「ああ、頼む」 目を鋭くさせ、上条は答えた。 学園都市・南ゲート前――。 黄泉川「来ないな……」 組んだ腕の上で指を規則的に叩きながら黄泉川は呟いた。 黄泉川「一応この付近にも捜索部隊を出してるんだが……」 美琴と上条を待ち伏せるため、黄泉川の部隊が南ゲート手前で部隊を展開してから既に1時間と30分が経過していた。 警備員「例の医師から通報があった地下鉄ですが……結局ホームレス2人以外に何も見つからなかったようですね……。あ、拳銃は一丁見つかったようですが」 黄泉川「うむ……」 部隊を展開してから30分後のことだった。最寄りの支部経由で、美琴の目撃情報が入った。何でもその情報提供者によると、病院に足の治療を受けにきた浮浪者が、美琴と一緒にいた少年に拳銃で撃たれたとの話だった。 黄泉川「奴らめ……どこにいるじゃん」 それを聞いた最寄りの支部は直ちに隷下部隊を件の地下鉄に派遣、美琴と上条を捜索させたが、結局発見出来たのは怯えたホームレス2人と拳銃一丁のみ。美琴と上条の姿は既にどこにもなかったとのことだ。 黄泉川「今までの逃走経路に合わせて地下鉄のルート。それらの要素を合わせて考えれば、奴らは今すぐにでもこの南ゲートに現れる可能性が高いと思ったが……どこかで読み違えたか……」 夕焼けに染まっていた空には、群青色が混ざり始めている。なるべく早く美琴を捕まえたいと思っていた黄泉川は、これまでのことも相まって苛立ちが募りに募っていた。 黄泉川「早く来るじゃん」イライライラ が、目の前の道路には検問のことも知らずやって来た自動車が数台並んでいるだけで、それ以外には猫の子1匹すら見当たらなかった。 警備員「隊長、少し休憩を入れてみては?」 見かねた部下の警備員が提案する。 黄泉川「休憩してる間に、もし奴らが現れたらどうするじゃん」 警備員「………………」 何も言い返せなくなる警備員。 黄泉川「……………………」 黄泉川「………ま、休息あってこそ有事に動けるもんだな」 警備員「え、ええ」 表情を緩め、警備員にそう答えると黄泉川は踵を返した。 黄泉川「分かった。10分ほど休むじゃん。異常があったらすぐに呼べ」 警備員「了解」 言って黄泉川がトレーラー型の装甲車に向かおうとした時だった。 ィィィィィィィィィィ……… 黄泉川「ん?」ピタ ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン…… 黄泉川「待て」 警備員「は?」 ィィィィィィィィン……… 黄泉川「バイク?」 警備員「え?」 どこからともなく、バイクの走行音が聞こえてきた。 ィィィィィィィィィン……… 黄泉川「近付いてくるな……」 音は徐々に大きくなっている。 ィィィィィィィィィィィィン…… と、次の瞬間だった。 イイイイイイイイイイイイイイイン!!!!!!!!!! 黄泉川「!!!!!!!!」 背後から聞こえたバイクの音に驚き、振り返る黄泉川。 黄泉川「………………」 その一瞬、検問に並んだ自動車の横を通り抜けて、警備員の制止も無視してそのままU字路を駆け抜けていくオートバイが………そして、どこか見覚えのある姿格好でそれを運転する少年と後部座席に座る少女の姿が……… 黄泉川「…………っ!!」 ――目に入った。 黄泉川「いたぞおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」 警備員「えっ?」 黄泉川「御坂美琴と上条当麻じゃん!!!!!」 警備員「ええっ!!!???」 咄嗟に走り出す黄泉川。 黄泉川「1班2班、出動準備!!! 今逃げたバイクを追うじゃん!!!!」 走りながら黄泉川は無線に指示を入れる。 黄泉川「7班と8班も準備が整い次第、直ちに我々の後に続け!!! 5班6班は引き続きこの場に残って検問作業!!! 以上だ!!!!」 『了解!!!!』 ノイズに混じって、8人の班長たちが一斉に返答する。 黄泉川「来い!!! 奴らを追うじゃん!!!!」 そこら辺に立っていた警備員たちを走りながら叩き、促す黄泉川。 黄泉川「せっかく巡ってきたチャンス!! 逃すわけにはいかないじゃん!!!」 言って黄泉川は1台のアンチスキルの自動車の助手席に乗り込む。 黄泉川「他の連中は!?」 運転手「既に出発してますよ!!!」 黄泉川「さすが優秀な連中だ。我々も負けてられない。逃げたネズミを捕まえるじゃん!!!!」 運転手「了解!!!」 黄泉川を乗せた自動車が出発する。 『止まりなさい!!! 止まりなさい!!!!』 『そこのバイク!!! 今すぐ道の端に寄せて止まりなさい!!!!』 『止まりなさい!!! これは警告である!!!!』 けたたましいサイレンとスピーカーの声が鳴り響き、3台のアンチスキルの車が道路を驀進する。 上条美琴「………………」 イイイイイイイイイイン!!! 彼らが追うは、美琴と上条が乗る1台のオートバイ。 『止まれ!!! 止まれ!!! これは警告だ!!!!』 もちろんバイクは止まることなく寧ろスピードを上げつつあった。 警備員「こちら1班。現在、御坂美琴と上条当麻が乗車するオートバイを追跡中。発砲許可求む」 無線に吹き込む警備員。 黄泉川『周囲の安全を確認し、警告をした上でのみ認めるじゃん』 すぐに黄泉川から返事が返ってきた。 警備員「了解」 無線を切り、警備員は隣の運転手に話しかける。 警備員「なるべく市街から離れるよう奴らを追い詰めるぞ」 逃げる美琴と上条を確実に捕まえるため、3台の車は更にスピードを上げる。 イイイイイイイイイイイイン!!!!!! 美琴と上条が乗ったオートバイは十字路に差し掛かる。 と、そこでオートバイはまっすぐ進むかと思われたが、その直前……… キキィィィィーーーッ!!!! と甲高い音を発生させ、左に急カーブした。 警備員「何っ!?」 警備員「クソッ! 左だ!! 左に行けっ!!!!」 キキィィィッーーーー!!!! タイヤが悲鳴を上げるようにスリップし、車が無理矢理な姿勢で方向転換する。 ドォォォォン!!!! と、その1台目の車の後部左側部分に、続いて追ってきた2台目の車のバンパーが軽く衝突した。 警備員「チッ!!! 構わん行け!!!」 衝突したことを気にもせず、1台目の車はオートバイを追うため再び発進する。やがて2台目の車も同じく方向転換して後に続こうとしたが、それも叶わなかった ドォォォン!!! 道の真ん中で止まっていた2台目の車を避けようと、右ハンドルを切った3台目の車の横っ腹が、その後部に衝突したのだ。 そこからは芋ずる式だった。 ドォォォォォン!!! 対向車線に、垂直に車体を乗り上げるように停車していた3台目の車のバンパーの左側部分に、反対側からやって来た一般車両が衝突した。 キキィィッ!!!!! そして急停車したその一般車両を避けようと後からやって来たまた別の一般車両が右にカーブを切り……… ドォォォン!!!!! 動けずに止まっていた2台目のアンチスキルの車のバンパーに衝突した。 プププッーーー!!!! プアッ!!! プアッ!!!! プププーーーーーッ!!!! 四方面からやってきた何台もの自動車が、道を遮られたことでクラクションを鳴らし始めた。瞬く間にその場に渋滞が巻き起こり、取り残された2台のアンチスキルの車は身動きが取れなくなってしまった。 一方、無事渋滞に巻き込まれる前に一足早く十字路を脱出していた1台目のアンチスキルの車は、黄泉川を乗せた車と合流していた。 イイイイイイイイイイン!!!!!!!! 2台が追うのは、これだけの迷惑を起こしておきながらいまだ飄々と逃げ続ける上条と美琴が乗ったオートバイ。 黄泉川『これは警告である。これは警告である。そこのバイク、今すぐ止まるじゃん!!! 止まらなければ撃つ!!!!』 上条美琴「「………………」」 もちろん美琴と上条は聞いていない。寧ろわざと無視しているようにも見える。 黄泉川「チッ…舐めやがって……っ!」 黄泉川『これは警告だ!!!! そこのバイク止まれ!!!! 止まらないと撃つ!!!!』 上条美琴「「……………………」」 黄泉川「やれ」 警備員『了解』 無線を通して黄泉川から命令を受けた、1台目の車の助手席に座っていた警備員が、窓から身を乗り出しその両手に拳銃を構えた。 パァン!!! パァァン!!! パァァン!!!! 容赦なく警備員は、オートバイのタイヤを狙って発砲した。 イイイイイイン…… と、ほんの少しバイクの速度が緩んだ。 黄泉川「やったか!?」 イイイイイイイイイイイイン!!!!!!! が、追跡車両を嘲笑うかのようにバイクはまたもスピードを上げた。 黄泉川「クソッ!!!」 警備員「……しぶとい奴め」 パァン!!! パァァン!!! パァァン!!!! 再び警備員はタイヤを狙って撃つ。 イイイイイイイイイイン!!!!!! だが、バイクは僅かに蛇行するだけでスピードを落とす気配は無い。 イイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!!! 黄泉川「あっ!!」 と、そこでオートバイは歩道に乗り上げた。 黄泉川「クソッ……歩道は人が通るから撃てないじゃん!!」 黄泉川は苦虫を噛み潰したような顔になる。 イイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!!! 一方、オートバイは歩道を驀進する。最終下校時刻を過ぎていたため、人が少ないのは幸いだったが、歩道を歩く人々にしてみれば只事ではなかった。 「うわ!」 「ちょっ」 「きゃあ」 「ひょえっ」 「わああ!」 避ける通行人たちの間をバイクは華麗にすり抜けていく。 そのバイクに拳銃を向ける黄泉川だったが……… 黄泉川「チッ…ダメじゃん。これでは撃てん」 イイイイイイイン……… と、そこで歩道も途切れのか再びオートバイが道路に戻ってきた。 黄泉川「よし!!」 警備員「バカめ。わざわざ撃たれに戻ったか!!!!」 窓から身を乗り出し、警備員が発砲しようとする。 イイイイイン…… と、その時バイクのスピードが急激に落ち、追跡車両との距離が縮まった。 警備員「?」 黄泉川「何だ?」 その様子を後ろの車から訝しげな目で窺う黄泉川。 上条美琴「「………………」」 警備員「?」 やがてバイクは1台目の車と並走するぐらいに、スピードを落としてきた。 警備員「!」 そこで警備員はバイクの後部座席に乗っていた少女と目が合った。 美琴「………」ニコッ 笑っていた。ヘルメットのバイザー越しだが、確かに彼女は笑っていた。 警備員「………っ」 警備員「……バカにしやがってえええええええええ!!!!!!!!!!」 パァン!!! パァァァン!!!! パァァァン!!!!! 窓から腕を出し、警備員は苛立ち紛れに発砲する。 が、バイクはスススとスピードを上げ、また車の前に躍り出てきた。 警備員「あのやろおおおおおおお!!!!!! 絶対捕まえてやる!!!! スピード上げろ!!!!」 怒り心頭した警備員は隣の運転手に怒鳴る。 黄泉川『1号車!!! 挑発に乗るな!!!! 今すぐ速度を落とせ!!!!』 黄泉川の声が無線からこだまする。 警備員「あいつを捕まえろ!!!! 追え!!!! 追え!!!! 追ええええええええ!!!!!! スピード上げろ!!!!!」 が、警備員は聞いていなかった。 と、その時だった。 黄泉川「!!!!!!!!」 黄泉川「危ない!!!!!」 警備員「!!!???」 プアアアアアアアアアアッ!!!!!!!! 再び十字路に差し掛かった時、バイクを追う1台目の車の右手から、トラックが飛び出してきた。 警備員「よけろおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!」 運転手「…………っ」 慌てて右ハンドルを切る運転手。車が右に曲がり車体の右半分が僅かに浮かび上がる。 運転手は一か八か、トラックの右手に滑り込もうとハンドルを限界まで回す。 ガァン!!! バンパーの右側部分がトラックの右ヘッドライト付近と衝突し、そのまま砕け散る。 キキキイイイイイイイッ!!!!!! と嫌な音が鳴り響き、その衝撃で横転状態となった車は道路を滑っていった。 ドォォォン!!!!!! やがてスピードを減らしていった車は電灯のポールにぶつかるとそこで停止した。 シュウウウウウウ……… 運転手「………ハァ…ハァ…ハァ…」 警備員「………クソッ!!!」ガンッ!! 警備員は悔しそうに、助手席のグローブボックスを叩いた。 ィィィィイイイイイイイイイン!!!!!!!! 一方、オートバイを追う黄泉川は。 黄泉川「4号車と5号車、現在位置を報告せよ」 『こちら4号車、現在123番通りを西に向かって走行中』 『こちら5号車、同じく123番通りを西に向かって走行中』 黄泉川「了解。なるべく早くこちらと合流せよ」カチッ そこまで言って無線を切る黄泉川。 黄泉川「さあ、ここまでやった分、落とし前つけてもらうじゃん!!! 御坂美琴!!! 上条当麻!!!」 彼女は前方を行くバイクを見据える。 イイイイイイイイン……バンッ!!!! ………ィィィイイイイイン!!!!!! 坂道を駆け上ったところでジャンプし、一瞬空中で停止すると再びバイクは地面にタイヤをつけ走り始める。 ブオオオオオオオン……バンッ!!!! ………ブォオオオオオオン!!!!!! 同様に黄泉川を乗せた車も坂道を駆け上ったところでジャンプし、一瞬空中で停止すると再び地面にタイヤをつけ走り始める。 パァァン!!!! パァァァン!!! パァァン!!!! 箱乗りし、バイクに向かって発砲する黄泉川。 イイイイイイイイイイイイン!!!!!! だが、バイクは一向に止まる気配は無い。 黄泉川「何故……当たらないんじゃん!!!!」 言って黄泉川は後部座席からアサルトライフルを取り出すと、今度はそれをバイクに向けて発砲し始めた。 ダカカカカカカカカカカカカ!!!!!! ダカカカカカカカカカカカカカン!!!!!! 容赦なく、黄泉川はライフルを掃射する。 黄泉川「チッ……もっとスピード上げろ!!!!」 車は更にバイクに近付く。 ダカカカカカカカカカ!!!!! ダカカカカカカカカカン!!!!!! 黄泉川「何であいつらには弾が当たらないんだ!!!!」 苛立ちを露にしながら身体を引っ込める黄泉川。 黄泉川「にしてもあいつら……南ゲートからどんどん離れていってるじゃん。いよいよ自棄になったか? ……ふん、まあどの道私の手から逃れられはしないけどな!!!!」 ィィィイイイイイイイイイイイイイン!!!!!! 逃走するオートバイ。 ブオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!! それを追跡するアンチスキルの車両。 黄泉川「地獄の底まで追いかけてってやるじゃん!!!」 上条美琴「「……………………」」 両者は決して譲らない。 と、その時だった。 カンカンカンカンカンカン……… 黄泉川「ん?」 カンカンカンカンカンカンカンカンカンカン……… 黄泉川「何だ?」 遠くから聞こえてくる機械的な音に気付き、怪訝な表情を浮かべる黄泉川。 黄泉川「あれは………」 逃げるオートバイの先――目をこらしてみると、そこに点滅する赤い光が見て取れた。 黄泉川「!!!!!!!!!!」 カンカンカンカンカンカンカンカンカンカン!!!!!!!! 黄泉川「踏み切り……っ!!」 彼女が叫んだ通り、進行方向に1つ、大きな踏切がその姿を現した。そして前を走るバイクは一直線にそこを目指していて……… 黄泉川「我々を振り切るつもりか……っ」 現状、電車はまだ遠くを走っているし、警報音が鳴ってるだけで遮断機は降りていない。タイミングが合えば黄泉川の車両を振り切ることが出来るが、失敗すれば恐らくは逆の結果が待っている。 どちらにしろ、黄泉川はここで諦めるつもりはなかった。 黄泉川「スピード上げろっ!!」 ブオオオオオオオオオオオオン!!!!!! イイイイイイイイイイイン!!!!!!!! 車とオートバイが同時に速度を上げた。前者は、オートバイを捕らえるため。後者は、踏切を利用して追っ手を振り切るために。 カンカンカンカンカンカンカンカン!!!!!!!! 遮断機がゆっくりと下りてくる。 イイイイイイイイイン!!!!!! バイクの速度が更に上がる。 そして……… ガタンゴトンガタン…… 遂に、電車が踏み切りに近付いてきた。 ゴトンガタンゴトン……ゴトンガタンゴトン…… 電車がレール上を走る音が徐々に大きくなっていく。 上条「…………っ」 イイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!!!!!!!! それと共にバイクも更にまだ速度を上げていく。 黄泉川「止まるな!!! 行けえええええええええ!!!!!!!!」 ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!! それと共に黄泉川を乗せた車も更にまだ速度を上げていく。 ガタンゴトンガタン!! ガタンゴトンガタン!!! ガタンゴトンガタン!!!! ガタンゴトンガタンゴトン!!!!!! けたたましい音を鳴り響かせながら、電車がその姿を露にした。踏み切りの赤いライトがそのボディに映える。 ゴンッ!! 黄泉川「!!!???」 と、その時、バイクに追いついた車のバンパーがその後部に衝突した。 イイイイイイイイイイイイイイン!!!!!!!! バキッ!!!! まるでそれを発射台にするかのようにバイクは遮断機を真っ二つに割り、踏切に突っ込んでいった。 黄泉川「―――――――――」 上条美琴「「―――――――――」」 電車の前を、飛ぶように横切る1台のオートバイ。そのシルエットが電車のライトによって暗闇に浮かび上がる――。 プアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!! 耳をつんざくような警告音が鳴ったかと思うと、オートバイは既に踏み切りの向こうへ着地していた。 黄泉川「止まれえええええええええええええ!!!!!!!!」 運転手「…………くっ!」 キキキキキキキイイイイイイッ!!!!!!!! 摩擦音を響かせながら、黄泉川を乗せた車が横滑りする。このまま突っ込めば、猛スピードで走る電車にまともに衝突するのは必至。 キキキキィィィィィィッ!!!!!! 黄泉川「……………っ」 キキキキィィィィィィ……… 車内が揺れに揺れ、窓の外の景色が遊園地のコーヒーカップに乗っているかのように巡る。 ィィィィィッ……… 黄泉川「…………っ!?」 ピタッ……… ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタン……… 黄泉川「………っ……ゼェ……ハァ……ゼェ……ハァ……ゼェ……」 顔から大量の冷や汗を流しながら、黄泉川は大きく肩で息をする。 運転手「ハァ……ゼェ……」 隣に座る運転手も同様だった。 黄泉川が乗る車は、線路に対して平行に並ぶように、踏み切りに立ち入るか否かの僅かな位置で停車していた。 カタンコトンカタンコトン……… 電車が走る音が小さくなっていく。 黄泉川「ハァ………ゼェ……」 生きている感触を確かめるように、黄泉川はただ、息を吐き続けた。 電車が過ぎ去った踏み切りは、今までの喧騒が嘘かのように静まり返っていた。 一方、追っ手を撒きに撒き、逃走を続けていた上条と美琴を乗せたバイク。 『止まりなさい!!! 今すぐ止まりなさい!!』 『これは警告である。 今すぐ止まりなさい!!』 遂に彼らも潮時を迎えたのか、新たに現れた2台のアンチスキルの車両に追い詰められていた。 イイイイイイイイイン!!!!! 横道を入っていくオートバイ。 ブオオオオオオオオオオオン!!!!! それを追いかける2台の車両。 イイイイイイン……… と、急にバイクが速度を緩めていった。 イイイイイン……… キキッ…… 軽く横滑りして唐突に停車するバイク。 上条「……………………」 美琴「……………………」 彼らが止まったのも無理も無かった。その先は行き止まりだったのだから。 キキッ……! 警備員「手を挙げろ!!!!!!」 と、追いついた2台の車から、完全武装したアンチスキルがざっと10人ほど降り立ってきた。 警備員1「手を挙げろ!!!! 挙げろ!!!!」 警備員2「挙げろ!!!! 手を挙げろ!!!!!」 警備員3「妙な真似をすると撃つ!!!」 停車したオートバイに一斉にライフルを向け、警備員たちは叫びまくる。 上条「…………………」 美琴「…………………」 バイクに乗っていた上条と美琴は互いの顔をチラッと見る。 上条「……………」コクッ 美琴「……………」コクッ 頷き合う2人。彼らはゆっくりと両手を挙げる。どうやら観念したようだった。 警備員「いいぞ! そのまま!! 手を挙げて…………おい! 何をしている!?」 カチャカチャカチャ……チャキッ!!! 班長らしき警備員の声に反応するように、10人の警備員たちがライフルを構え直す。 上条「……………………」 美琴「……………………」 と言うのも、一瞬、両手を挙げ観念するかと思われた上条と美琴はヘルメットに手を添えていたのだ。 警備員「みょ、妙な真似をすると撃つぞ!!!」 焦って怒鳴る警備員。 と、そんな警備員を嘲笑うように、ヘルメットを取りながら上条が久しぶりに口を開いた。 上条「いやー……まさかここまで上手くいくとはにゃー」 警備員「!!!???」 上条「わざわざアンチスキルの前に姿を見せた甲斐があったってもんぜよ」 警備員「…………は?」 警備員は咄嗟に思う。何かがおかしい。何か違和感があると。 と、後部座席に座っていた美琴が、上条の言葉に答えるようにヘルメットを取りながら言った。 美琴「ふふふ、私も褒めてほしいかも。これでもバイクに乗ってる時はドキドキしてたんだよ!」 警備員「……………え」 違う。明らかに違う。何が違うかと言われればすぐに説明は出来ないが、確かに何かが違った。 警備員「…………お前ら……何者だ……」 呆然と、警備員は率直に思ったことを訊ねる。 上条「………………」フッ 美琴「………………」クスッ やがて、上条と“思われた”少年と美琴と“思われた”少女はヘルメットを取りその素顔を露にした。 上条「どう見たって上条当麻ぜよ。それともちっとばかり変装が下手だったかにゃー?」 美琴「髪を切って染色までして変装した私の方が、上手だったってことなんだよ!」 警備員「…………な………」 確かに、そこには上条当麻と御坂美琴がいた。 服は捜査本部で渡された資料の写真と同じもので、髪にしても、上条当麻と思われる少年の方はツンツン頭の黒髪。御坂美琴と思われる少女の方はシャンパンゴールドの肩までかかるショートヘアと、両方とも本人のものだった。 しかし……… 警備員「顔が違う………」 上条「つまりはそういうことぜよ。ここまで追跡ご苦労さん」 警備員「じゃあ、本物は一体どこに………?」 美琴「さあ? でも2人ともここにいないのは確かなんだよ」 言って、上条と“思われる”少年と美琴と“思われる”少女はニヤリと笑みを浮かべた。 その頃・南ゲート付近――。 「……大分警備員の数も減ったわね」 「……ああ、インデックスと土御門が囮になってくれたお陰だ」 物陰から、ゲート近辺に展開するアンチスキルの部隊を窺いながら、1人の少年と1人の少女は顔を見合わせる。 上条「さあ、いよいよ脱出だ」 美琴「ええ」 本物の上条当麻と本物の御坂美琴――彼らは互いの顔を見て頷き合う。遂に訪れたその瞬間を目前にして――。
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/263.html
◇序章:不可能の実現化 Person_Of_Mirror 「んぁ?」 黒のキャンパスに数多の白点が穿たれた様な夜天。 目を開いて一番最初に視界に入ったのはそれだった。 大の字になって空を仰いでいる体を起こして寝ぼけ眼で辺りを見回す。 「……どこだ此処」 塵の山。 見てすぐさま浮かんできた感想はそれだった。 辺りを埋め尽くすのは、使う事が出来なくなった様な粗大塵達。 ハンドルの無い自転車、割れたCD、砕けたピアノ。 果ては真っ二つになった冷蔵庫まで塵山の一部として積まれている。 ……粗大塵置き場? 当たらずも遠からずと言ったところだろう。 寝ぼけた頭を右手で掻きながら思う。 ……確か、さっきまで地域の清掃活動中で……。 そう、今日は昼から高校全体の行事である地域清掃活動に参加していた筈だ。 空を見上げてみる。 ……今、何時だ? 満月が浮かぶ空はあまりにも、黒い。 間違いなく真夜中と呼べる時間帯には入っているだろう。 「痛っ」 左手に鋭い痛みが走った。 どうやら粗大塵の中に何か鋭利なものが混じっていたらしい。 しかし、その痛みをキッカケに思考が冴えて来る。目が覚め始めた証拠だ。 ……なんで俺、こんな所で寝てんだ? 取り敢えずの応急処置として左手を舐めつつ思う。 ……一体何が――まさかまたインデックスを狙って……。 魔術結社の類が攻めて来たのか。 有り得る。が、しかし――、 ……あそこには土御門も居たし、なんでこんな所に。 見回すが先程まで一緒にいた筈の金髪の男――土御門の姿は何処にも無い。 暫し腕を組んで黙考。 ……どうなってんだ? というか、 「寒っ!?」 睡眠で溜めた熱も全て冬の風に冷やされてしまった様だ。 両手で身を抱くと柔らかいが、すっかり冷め切った肉の感触が返って来た。 「こ、凍える……って、なんだこの感触」 感触の出所である場所へ視線を向ける。 あるのは線の細い白い肌が映える肩。 「……」 それを掴むようにしているのは、同じく白い少女の様な手。 月光に照らされるその色は青白く、一種の芸術作品の様な雰囲気を放っていた。 「……」 視線を下ろす。 「ぶっ!?」 思わず勢い良く噴き出した。 跳ね上げる様にしてすぐさま赤く染まった顔を上げる。お月様は丸かった。 「な、な、なぁ――ッ!?」 見えたのは――強いて表現するならば禁断の聖域としておこう。 真に遺憾ながら細かな描写は控えさせていただく。真に遺憾ながら。 「何か!何か隠すもの!?」 混乱した頭を振り回す様にして辺りを再度見回し、 「あった!」 手近にあった毛布を引き寄せ、急いで己の身を包み、 「ふぅ……」 安堵の溜息を一つ。 「って、落ち着いてる場合じゃねぇっ!」 叫ぶがその音も虚しく夜空に木霊するだけだ。 毛布から足を出して見てみる。 どう見てもその線、その肌の色は自分の体のものではない。 そして、先程見た光景から判断出来る事。それは――、 「あははは、どう見ても女の子ですよねー――……なんででせう?」 固まった笑顔で首を傾げてみるが答えが出る筈もない。 何せ判断材料が全くと言って良いほど無いのだから。 気が付いてみると確かに声も高く、明らかに男のものとは違っていた。 つまりこれは自分の体が女性のものとなっているわけで――。 「待て待て待て、落ち着け、俺。そんなわけがないだろう」 毛布を引き寄せて体を冬の冷たい風から守りつつ思う。 ……つまり夢!嗚呼、早く起きるんだ、俺!学校に送れちゃうぞっ☆ 頬を抓ってみる。痛かった。 そういえばさっき左手を怪我した時もそうだったが感覚はある。 「ということは」 夢ではない。 「まさか新手の魔術攻撃か――?」 有り得ない話ではないだろうが――その想像には一つの問題点があった。 右手を眼前へと持ってくる。 あるのは白い肌に月光を反射させるやはりか細い手。 ……幻想殺しで無力化出来ない魔術? そんなものが在るのだろうか。 「でもなぁ……」 実際にこうして異常事態が起きているのだから――あるのだろう。 ともあれ、 「という事はこれは現実。紛れも無いリアルなのである」 他人事の様に言ってみるが、冷たい風が吹いて毛布を揺らすだけだ。 しかも隙間から僅かに吹き込んできて寒い。流石粗大塵。見事に穴だらけだ。 「はぁ……」 浮かんで来る感想は唯一つ。ただひたすらに、 「不幸だぁ……」 肩を落として呟く様に。 声と共にホロリと落ちた液体が地面に跳ねて染み、消えた。 上条当麻。不幸に愛される男――現少女である。 ◇○◇ 何時までも落ち込んでいるだけでは何も始まらない。 それが考えた末に出した結論だった。 粗大塵の海の中響くのは、ぺたぺたという可愛らしい足音。 ……冷たいよー!?足の裏が!足の裏がぁっ! 歩く度に足の裏が冷え切ったアスファルトと接触して神経が絶叫を上げる。 寒いというよりも痛いという一線を見事に超えた感覚。 「いかん、マジで死ぬ。確実に死が近づいている。死神がくる……奴が来るぅ」 混乱ここに極まれり。 ぶつぶつと呟きながら裸体に毛布一枚、その上素足で歩いている人物。 確実に誰かが見たら変質者と間違われるに違いない。 幸い、粗大塵置き場には人の気配が無いのでその心配はなさそうだが。 だが、 「まず此処が何処だか確認しねーと……」 と、何か現在地を示す様な物はないかと探すが見つからない。 四方を囲むのは巨大な白亜の建物。 まるで隔離されているような気分になるが、建物と建物の間には少しの間がある。 どうやら此処は四方をビルに囲まれた路地裏のようなものらしい。 「……にしたって」 塵の山へと振り返ってみる。 ひしゃげた自動車なんかも積み重ねてあった。どうやって運んで来たんだ、あれ。 「ん?」 再び前を向いて歩いているととある物が視界に入った。 僅かだが端の方に罅の入ったスタンドミラーだ。 近づいて良く見てみると解かるが――、 「えらく古いデザインだな……でも、まだ使えそうなのに勿体ねー」 つくづく貧乏生活が染み付いた台詞だとは思うが、本音なのだから仕方が無い。 時代はエコライフなのである。 暴食シスターのせいで食費なんかも抑えないと辛いし。 前の持ち主への文句を垂らしつつ、鏡の前に立つ。 直後、 「――!」 目を見開いた。 其処に映るのは碧眼を宿した目を限界ギリギリまで見開いて呆然としている少女の姿。 黒髪の長髪は腰の辺りまで伸びており、癖毛一つ無く真っ直ぐとしていた。 「……」 動いてみる。 鏡の中の少女も動いた。 「……誰?」 解かりきった事だ。 所々に穴が開いた毛布に身を包んだその姿。明らかに現在の自分である。 映る顔は整っており、普段ならば可愛らしいとでも表現出来ただろうが、如何せん自分自身の事だ。 苦い顔は出来ても賞賛など出来る筈もない。 だが、解かっていても否定しなければ男としてのアイデンティティーが壊れそうなのである。 ダンディズムハートはデリケートなのだ。 「うぅ、お家に帰りたい……」 目尻に浮かんだ涙を目を擦る様にして拭う。 が立ち止まっている時間はあまり無い。 ビルとビルの隙間、路地裏へと肩を落としながら向かう。 取り敢えず、家に帰れば一〇万三〇〇〇冊とかいう馬鹿みたいに膨大な魔道書の知識を持つ少女が居るのだ。 彼女に状況を説明さえすれば何らか解決策を打ち出してくれるに違いない。 とことん人頼りだが仕方が無いだろう。 魔術知識の乏しい当麻にとって、頼れるのは彼女か友人の土御門のみなのだから。 しかし、 「……暗い」 夜の路地裏は勿論暗い。あと寒い。 不良達もこんな暗い所を集会所にする気はないようで、ただひたすらに当麻の足音が響くだけであった。 ぺたぺた。 ぺたぺたぺたぺた。 ……どこまで続いてんだ?この路地裏。 ぺたぺたぺたぺたぺた。 ぺたぺたぺたぺたぺたぺた。 足音が狭い路地裏に反響する。 上を見上げてみればそこあるのは満丸のお月様。実に美しい。 「お」 視線を元に戻してみれば光が見えた。 点の様な光だが、紛れもなく出口が近くなって来た証拠である。 後少し、後少し、と目を煌かせて歩を進めているうちに段々と光の点が大きくなってきた。 と、唐突に足が止まる。 原因は簡単。一つの問題に気付いたからである。 ……っと、やべえ。そういえばこんな格好じゃ人前に出れねえじゃねーか。 なんという構造的欠陥。 急に冷静な思考になってみるが時既に遅し。後ろを振り返っても暗闇しか見えない。 第一、粗大塵置き場に服が落ちているとは思えないし、恐らくは見つける前に凍死する。 事態は一刻を争うのだ。 「……」 そーっと路地裏から顔を出してみる。 思ったよりも――人通りは少ない。というか無かった。 街灯はついているものの、照らされる大通りらしき道路には一つとして人影が見えない。 ……そんな夜遅くなのか? 取り敢えず疑問は置いておく。今の当麻にそんな余裕は無いのだから。 「よし」 毛布を改めて強く身に纏わせ直す。 そして一歩を踏み出し、路地裏から脱出。 すると同時に街灯の光が身を照らし始めた。 久方ぶりに人工の光に身を晒すと何だか暖かかった。ビバ科学文明。 「後は、電光掲示板でもあればい――」 「おーい、そこの君~?」 「ひぃっ!?」 何か場所を示すものはないか、と探そうとした矢先に話かけられ、鼓動が一気に跳ね上がる。 声に壊れたカラクリ人形の様に振り向けば、そこにいるのは――、 「いよっす。一体こんな時間に何してんじゃん?」 緑色のジャージを着た、女性らしい女性だった。 何が女性らしいのかと言うとそのボリュームだったのだが。 擬音で表すとドカーン!とかドキューン!とか更に言うならボイーン!とかその辺りのボリューム。 人間というものはここまで進化出来るものなのか、恐るべし。 知り合いにも何人かロケットが居るが今は彼女らは関係ない故、割愛しておこう。 「何難しい顔して私の胸を凝視してるじゃん?私にそっちの趣味はないじゃんよ?」 ケラケラと笑う女性は笑顔を浮かべていた。 長い髪を後ろでまとめた雑な髪型の持ち主。 しかし、なんだかその髪型が緑色のジャージという衣装と相俟って妙に色っぽい雰囲気を醸し出していた。 「いや、あのそういうわけでは――って」 言葉が途中で止まる。 何故ならその笑顔を向ける女性は――、 「黄泉川、先生?」 「ん?」 手に持った警棒で肩を叩きながら女性――黄泉川愛穂は首を傾げる。 いかん、まさかこんな時に知り合いに遭遇するとは予想外だ。 しかも黄泉川は"警備員"だった筈。 どう見ても補導対象である格好の当麻を見逃す、という展開にはなりそうにもない。 「いえ、あの、その、えっと」 「私の名前知ってる、と先生って事はウチの生徒じゃん?」 「え、あ、そ、そうです、はい」 いかん、どう対処すれば良いのか解からない。 というか、向けられる笑顔が逆に怖い。 なんというか、『先生は怒らないから言ってみなさい?』と言われている様な気がするのだ。 ……うう、悪い事はしていないのにこの追い詰められた感は一体なんですかー!? 思わず後退る。 しかし、黄泉川はというと笑顔のまま一歩前へ。 「うぁ……」 「なんで毛布なんて被ってるんじゃん?」 「そ、それは……」 当麻一歩後退。 黄泉川一歩前進。 「……さ」 「さ?」 「さむがりなもんで……」 空気が硬直した。 しかし、 「どわっ!?」 冬の風はそんな嘘など許してくれなかったようだ。 突如起こった突風により、毛布が見事なまでに捲れ上がり顔に覆い被さる。 そして、風が止むと同時に、 「……」 落ちて元に戻った。 「ほほ~……寒いのに中身裸なんて凄いじゃん?」 口調は軽いが笑顔に影がかかってる黄泉川。 「あ、あは、あははは」 「あはははは」 一息。 体に先ほどよりも強く毛布を巻きつけ、準備は万端。 「それじゃ!急いでますんで、失礼をば!」 「待つじゃん?」 「ふげっ!?」 逃げようとした途端に毛布の襟首部分を掴まれてつんのめる。 同時に首が締まる様な状態となり、 ……息が!息がぁっ! 暴れるが、逃げようとしていると思われたのか拘束は弱まらない。 まずい、死ぬ。というか、視界が白くなってきた。 酸欠だ、と気づいた時にはもう遅い。 「あ……」 白が埋め尽くす視界の中、誰のものか解からない声が響く。 それは自分だったのかも知れないし、黄泉川のものだったのかもしれない。 ただ確かな事は、上条当麻の意識が失われた、という事だけだった。 ◇○◇ 「んぁ……?」 体を起こし、目を擦りながら辺りを見回す。 小さな部屋。 一片が三、四メートル程の四角い部屋の端にはベッドが置かれ、中央には丸いテーブルが設置されていた。 その内のベッドの上に自分が居るのだと再確認しつつ、上条当麻は思う。 ……連れてこられた? 寝て起きたばかりだというのに、どうしてか記憶は鮮明だ。 首を締められて意識を失った当麻を黄泉川がこの部屋まで連れてきた、そんなところだろう。 「ん?」 見れば、体は緑色のジャージに包まれていた。 黄泉川が着せてくれたのだろうか。 どちらにしろ、彼女には礼を言わねばなるまい。まずは、この状況を解決してからだが。 ……大きいな。 サイズが合わない。 なんというか、これなら下を穿いていなくても上着だけで最低限は隠せそうだ。 取り敢えずはベッドから降り、立ち上がろうとする。 「っと、うお」 少しバランスを取るのに失敗。 が、なんとか立ち直り、テーブル付近まで歩く。 体がガラリと変わったせいか色々不具合が出ていそうだったが、意外に簡単に修正する事が出来た様だ。 取り敢えずはテーブルに手を置く。 ……さてと、ここは、警備員の詰め所かなんかか? まさかいきなり牢獄に投げ入れられる事はないと思うが。 「でもなぁ」 裸で真夜中の街をうろつく女。どう見ても不審者だ。 牢獄にぶち込まれてもなんら不思議ではない。 「取り敢えず、黄泉川先生には悪いけど――」 この建物から脱出しなければ。 何だか暖かい湯気を上げる紅茶の乗ったテーブルの誘惑を無視して扉へと駆け寄る。 その際にジャージのズボンの裾が若干長い事に気づいたので捲り上げておく。 準備万端。 いざ出陣。 「あ、起きたじゃん?」 出陣した途端に全軍全滅とはまたシュールな。 「ん?何、遠い目して呆けてんじゃん?」 「いやー、三日天下っていうのもこういう気分だったのかなぁ、と」 「?」 疑問詞ばかりだが当麻の手かけていたドアノブを反対側から先に回して現れた黄泉川にイラついた様子は無い。 むしろ面白い子だなぁ、と興味津々の視線で見られている様な気がする。 というか、絶対にそうだ。 「まぁ、元気そうで何よりじゃん」 彼女は腰に手を置き、 「で、だけど」 声音を変えて告げた。 急に場の空気が変化する。 変化は朗らかなものから緊張した、真剣と呼べる空気へとだ。 何時の間にか紅茶から上がっていた湯気も消えていた。 「なんであんな事してたの」 「へ?」 間抜けな返事と表情を返してしまうが、黄泉川の表情は眉を立てたものだ。 彼女は言葉を続け、 「年頃の女の子があんな事しちゃ駄目じゃん?」 「あ」 彼女の感情の理由を漸く理解出来た。 それは、 「確かに君みたいな年頃は勉強ばっかりでストレスとかも溜まるかもしれないけど――」 怒りと心配。その両方を合わせた様な感情だ。 「って、あ、ちょ、誤解です!違うんです!」 その真摯な感情を向けられていると悟った瞬間、言葉は紡がれていた。 「違う?」 「あ、えと」 しまった。 無意識の内に出て来てしまった台詞故、後先を考えていなかった。 今更になって後悔するが、時既に遅し。黄泉川は怪訝な表情でこちらの言葉を待っている様だった。 仕方が、無い。 「その、実は――」 しどろもどろになりつつも取り敢えずの回避策として重要なところを伏せて話していく。 当麻が黄泉川に話した内容はこうだ。 今日、友人達と共に地域清掃活動に貢献していたら突如意識を失い、起きた時には既に深夜だった。 しかも、起きた場所は路地裏の粗大塵捨て場で、その上素っ裸で放置されていたのだ、と。 「それで仕方なくあんな格好で……」 「ふぅん……」 こちらを品定めする様な眉を立てた半目。 ……やっぱりきつかったか? とてもではないが、当麻の話した内容は信じられるものではなく、咄嗟に考えた言い訳感が拭えない。 黄泉川は暫く半目をこちらへと向けた後に僅かに身を屈め、 「ちょっと失礼」 「え?って、ひゃぁ!?」 当麻の着ているジャージを捲り上げた。 視界が緑色に染まる。 「って、ひょぁー!?」 ペタペタと体が触られる感触。 どうやら着せられたのはジャージだけで下着はつけていなかったらしい。 暫くそのまま触られ続けた結果、満足したのか黄泉川は身を持ち上げてから満足そうに、 「よし、暴行された痕とかはないようじゃん?良かった良かった」 ご機嫌そうな顔で自分の言葉に頷いた。 一方、当麻はというと、 「うぅ、もうお嫁にいけない……」 俗に言う女の子座りの状態でよよよ、と床を涙に濡らしていた。 「裸でそんなところに放置されたなんて聞いたら、なんかあったと思っちゃうじゃん?」 「それはまぁ……」 そうだけど、こちらにも心の準備とかそういうものが必要な訳でして。 ……だけど。 黄泉川は納得してくれた様だ。 これならなんとか何事もなく開放されるかもしれない。勿論、そう簡単に行くとは思っていないが。 腕を組んで頷く彼女は、 「そんじゃ、今日のところは良し!」 「へ?」 拍子抜けするように口をポカンと半開きにしてしまう。 対する当麻は困惑した表情を作り、 「……良いんですか?」 疑問の言葉を投げかけるが、彼女は動じない。 「良いも何も、もう夜遅いし。事情が聞けて問題ないなら拘束しておく必要が無いじゃんよ」 「でも――」 と、続けようとしたところで頭に手を乗せられた。 黄泉川は悪戯っぽい笑みを浮かべ、 「それに、生徒の言葉を教師が信じないでどうするんじゃん」 絶対の自信を込めた一言を放った。 「あ――」 改めて思い知らされた。 彼女はどれだけおちゃらけてても、やはり教師だったのだ。 「だから」 彼女は当麻の頭を撫でつつ、 「今日のところは、取り敢えず名前だけでも教えてくれておいたら良いじゃん?」 「え?」 言われると同時に思考が停止する。 「そしたら、後からでも色々聞けるし」 それは仮釈放というのではないでしょうか。 まずい。これは限りなくまずい事態だ。 素直に『上条当麻です』等と言ったら再び不審な目で見られるに違いない。 彼女と自分は知り合いだ。 少なくとも黄泉川愛穂という人物は知り合いの名前を忘れる様な性格ではない。 「どうしたんじゃん?」 一切の邪気がない表情。 どうする、と考えるが一向に良い案が思い付かな――否、あった。 「上条です」 「かみじょう?」 その案とは――苗字だけを言って誤魔化してしまおうというものだ。 上条という苗字だけならばそんなに珍しいものでもないし、これならば本名を言わなくても済む。 「名前は?」 駄目でした。 「うぐっ」 「名前は?」 黄泉川先生、笑顔に影がかかっていらっしゃいます。 彼女のその笑みを見るのは本日二度目だがやはり恐い。 これが大人の実力か。なんというプレッシャーだ。 「と、とうこ」 「とうこ?」 見事なまでの安直さだと思うが許していただきたい。 何せこの場凌ぎの口から出任せである。というか、これで信じられたら奇跡だ。 「かみじょう、とうこ、っと」 が、彼女はメモを取り、 「よし、メモ完了じゃんよ。それじゃあ、帰ってよし。良ければ車で送るけど?」 奇跡が起きた。 ……あいむうぃなぁあああああああああああああああ! 神よ、この時ばかりはアナタを信じよう。 「何、天に向かって拳を突き出してるんじゃん?」 「いえ、ちょっとラオウ様が降臨しまして」 「?」 いかん、変な子に見られたかもしれない。 ここでまた目を付けられるのも厄介だし、早く脱出しなくては。 「あ。あと、大丈夫です。第七学区まで帰ってこられれば後はどうにでもなりますから!」 「そう?」 ドアノブに手をかけて開く。と、同時に冷たい風が全身を撫で上げた。 さっきは黄泉川の身に遮られて気付けなかったが、どうやら此処は小さなプレハブの中だったようだ。 しかし、先程よりは寒く感じない。何せ今の自分には身を覆う緑ジャージがあるのだから。 「あ、そういえばこのジャージ……」 「学校で返してくれればいいじゃんよー」 振り返ってみればテーブルの上にカップラーメンを乗せている女教師の姿。 一体何処から出した。 ◇○◇
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1938.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/上琴の戦い 上琴VS黄泉川 ・夜道にて 上条「飯も食ったし、じゃあ最後に展望台に行くか。」 美琴「それいいわね!早速行きま「そこまでじゃ~ん!」しょ……」 黄泉川「上条と常盤台のお嬢さん?完全下校時刻はとっくに過ぎてるじゃんよ?」 美琴「よ、黄泉川さん……」 上条「なんで今日は邪魔ばっかりはいるんだ……(半蔵のほうに行ってくれよ……)」 黄泉川「デートはいいけど遅くなり過ぎじゃん。」 上条「すいません……」 黄泉川「ほら、送ってってやるから車に乗った乗った!」 上琴「「ッ!?」」 美琴「(そんな!それじゃ展望台行けないし送ってもらったら当麻の寮に泊まれないじゃない!)」 上条「……乗らなきゃ…ダメですか……?」 黄泉川「いや?別に乗らなくてもいいじゃん。」 上条「ええ!?いいんですか!?」 黄泉川「そのかわり明日から1ヶ月ほど彼女と会えなくなっても知らないけど?」 上条「……乗ります…」 美琴「!?の、乗っちゃうの……?」 上条「そりゃ1ヶ月も会えなくなるのは嫌だしここはおとなしく従っとこうぜ。」 美琴「……じゃあ当麻がそう言うなら私も乗ろっと。」 黄泉川「2人とも素直でよろしい!じゃあこの車に乗るじゃんよ。」バタンッ←乗った 美琴「(今だ!!)」バチッ 黄泉川「……あれ?」 上条「?どうかしたんですか?」 黄泉川「さっきまで動いてたのになぜかエンジンがかからないじゃん?」 黄泉川「おっかしいなー……ちょっと待ってるじゃん。」バタンッ←降りた 上条「何があったんだろ……ん?どうした美琴?」 美琴「行くわよ当麻、展望台に。」 上条「はぁ!?お前明日から俺と会えなくなってもいいのか!?」 美琴「意地でも会うから大丈夫♪それとも当麻は私と展望台に行ったりお泊まりデートしたくないの?」 上条「超行きたいし超泊まってほしいです。」 美琴「じゃあほら!逃げるわよ!!」 黄泉川「いや~参った、どうやら配線がショートしちゃったらしいじゃん、今他の車呼んだからもう少し待って……え」 黄泉川「い、いない!?まさか逃げられた!!?……上条…覚えとくじゃん!!」ゴゴゴ… WINNER 上琴 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/上琴の戦い
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/171.html
これは『街』や『428~封鎖された渋谷で~』と『とある魔術の禁書目録』『とある科学の超電磁砲』をぐちゃぐちゃに混ぜた物です。 と言っても、参考にした部分は所謂ザッピングというところだけですが。 分からない人は、『キャラAが行動を起こさないとキャラBが進めない』って風に考えてください。 そしてこの物語は閲覧者の人たちが鍵です。安価ですから。 まずは主人公選択です。 1、上条当麻 2、御坂美琴 では先ずは 3からお願いします。 3 なにこれ期待 安価なら2 御坂美琴 御坂美琴は歩いていた。 特に何するわけでもないのだが、御坂は何となく街中を歩いていた。 そして偶然にもいつも喧嘩を吹っ掛けている少年に会う。……予定だったのだが。 不幸にもその少年は補習であった。 「……不幸ね」 そう呟いた御坂には、周りの人から見ても不幸なオーラが漂っていた。 (やっぱ、皆とお茶してたほうがよかったかな……) そして頭を垂れる。その約束を強引になくしたのは、御坂だからである。 やはり行っておくべきだった。彼に会える日などごく限られているからである。 今日彼に会える気がしたのは、何となく、そう思ったから。 (やっぱなんとなーくじゃ、駄目よね) もうこのまま帰ろうかな?と考えていた時だった。 ふと、路地裏に見覚えのあるツンツン髪が見えた。 (……まさか、ね) 今だって補習の時間だ。 こんなところにいるわけが――そう考えたが、彼の性格からすると当然か、と思った。 (あのバカはまた人助けね……バカはやっぱバカね) そして、今度は路地裏に、顔にスカーフを巻いた大男が入っていった。 御坂は少し考えたあと、走って路地裏に近づく。 御坂が見た光景は、少年の後ろに立つ大男がバットを振りかぶっているところだった。 上条当麻 上条は、走っていた。 普段から入退院を繰り返し、このままでは高校三年生にならなくても留年決定だから、補習を受けるように担任から言われていた。 が、不幸にもアラームは鳴らず、不幸にも服は乾いておらず、不幸にも食材は居候シスターで全滅。 色々あーだこーだしているうちに、補習の時間十分前になっていた。 上条の寮から高校まで、結構な道のりで、当然走っただけでは間に合うはずもないのだが、上条はとにかく走っていた。 「くそっ、ふこおおおおおおおだあああああああ!!!」 彼はとてつもなく走った。 全身に汗が噴き出る。気持ち悪いがそうも言ってられない。 そして馬鹿な上条は考えた。路地裏を通れば近いのではないのだろうかと。 急がば回れを知らない上条にとって、これとない考えだった。 すぐに路地裏に入る。そして彼は見てはいけないものを見てしまった。 女性が、三人ほどの男に連れていかれるのを、見てしまった。 行動選択 1、放ってはおけない。女性を助ける。 2、今は厄介ごとに巻き込まれるのはゴメンだ。引き返す。 3、何とか説得できないか。話しかける。 では 11にお任せします。 11 上条さんだし1 (たまたま居合わせたとはいえ、女性は困っているんだ。助けよう) 上条は男たちにぶつかっていった。 「グゥ……!?」 男たちは、呆気無く倒れる。 しかしそれは上条にとってどうでもいいことで、考えるのをやめた。 「大丈夫ですか!?」 上条は女性に近寄る。 女性の顔は恐怖に固まっていた。 (……?この人は何をぶつぶつ言ってんだ……?) 女性はガクガクと震え、何かを言っていた。 そして上条は気づく。女性は、一切上条に関心を向けていないことに。 むしろ、その後ろを見る感じだった。 慌てて振り返って、上条は血の気が引いた。 バットを持った大男が、今まさに上条に向かって振り下ろしていた。 (ヤバい――) そう思った時には遅く、上条の頭にバットが振り下ろされる―― はずだった。 何時までも痛みが来ないことを感じた上条は、恐る恐る大男を見た。 「グッ……アッ……ガッ……!!」 大男は、激しく痙攣していた。 数秒経ったのち、大男は膝から倒れる。 逆光の中、上条が見たものは 「……御坂?」 上条がよく知る、超能力者である御坂美琴の姿があった。 御坂美琴 ――いやいや、これはマズイって。 御坂は反射的に電撃を放出した。 御坂美琴の能力は電撃使い(エレクトロマスター)。 超能力者である御坂にとって、失神レベルの電撃を出すなど容易いことだった。 数秒遅れて大男が倒れる。 そして彼女の想い人で、ツンツン頭の不幸少年――上条当麻――は素っ頓狂な声をあげた。 「……御坂?」 「アンタねぇ……どんだけ厄介ごとに首を突っ込めば気が済むのよ?」 「いや、路地裏を通りかかったところにこの人が……あれ?」 上条は辺りを確認する。落とし物を探しているかのようだった。 「……アンタとうとうボケ始めた?良い医者がいるから紹介しよっか?」 「いやいや!確かにさっきまで女性が……あれー?」 「んで、アンタはこんなところで油を売ってる暇はあるのかしら?」 「あ!補修!またな御坂!」 上条はダッシュで路地裏を突き進む。 (……あっちって、アイツが通ってる高校と逆方向じゃ無かったかしら……?) 伝えようにも上条の姿は見つからないので、諦めて路地裏を出ようとした。 その後ろに、男が一人立っているのを知らずに――。 Chapter1 終了。 次の主人公選択。 1、上条当麻 2、御坂美琴 3、一方通行 4、浜面仕上 5、その他(ちょっとした小ネタなど) 安価 15ぐらいで。 15 4 浜面仕上 「『アイテム』全員で大掃除を始めるわよー」 「……は?」 本日も、アイテムの朝はとんでもない始まり方だった。 「……超起きてそうそう何言ってるんですか麦野さん」 「そうよー。朝イチはちょっと厳しいわよー」 愚痴を漏らすのは絹旗最愛とフレンダ。彼女たちはまだパジャマ姿である。 「でも、このままじゃこの部屋が汚いだけだと思ってるのよ!」 拳を振って演説しているのはアイテムリーダーの麦野沈利。 「……」 そして頭が船を漕いでいるジャージは滝壺理后。このアイテムの重要な役割を担っている。 「……」 一方、黙って新聞を呼んでいる男は浜面仕上。このアイテムの雑用兼運転手。 ちなみに何も発言しないのは、発言しても無視されることが分かっているからだ。 「だから、今日は大掃除をしようと思ってるわけよ!」 「確かに、ここは超汚いですけど、だからって今すぐは超無理じゃないですか?準備とか」 「そう思ってすでに準備は万全よ」 「で、でもでも、私たちまだ朝ごはん――」 「朝飯なんて後々!それよりちゃちゃっと片付けたほうがいいわよ!」 「「……はぁ」」 いつもと何かが違う麦野に対して、二人は溜息をついた。 「ってわけで私がリビング。絹旗とフレンダは玄関や廊下、あと、使ってない部屋を。滝壷と浜面は……っと」 そこで麦野の声が途切れる。 「……もしかして超考えてないんですか?」 「あっはっは、何しろ思いついたのは今日の朝だったしね。んーじゃあ滝壷と浜面はちょっと買出しに行ってもらおうかな」 走り出したら止まらない。麦野の性格を表すならばこれが似合うだろう。 ろくに考えていないことが発覚したが、もう半ば諦めていたので素直に従うことにした。 「じゃあ浜面、よろしくねー」 「はいはい。滝壷、起きろ」 「むっ……ごめん寝てた」 まだ半覚醒の滝壷を引っ張って、車に乗る。 「どこいくの?」 「買出しだ。つっても、買うものはいつもより少ないけどな」 買う商品がメモされた紙をひらひらと見せる。 滝壷はちょっとだけ納得した。 「なるほど。じゃあ私寝てていい?」 「……」 どうすべきか? 1、いざという時に困る。起きておけ。 2、流石に何も起こらないだろう。寝てもいいぞ。 安価 21 21 2 (……流石に何も起こらないだろう) 「寝てもいいぞー」 「分かった。おやすみ」 すぐに眠り始める滝壷。どっかの小学生のようである。 とにかく、浜面は車を走らせて、どこか適当なデパートによろうと思っていた。 「……ん?なんだ、あれ」 ふと歩道を見てみると、小さめのアタッシュケースが落ちていた。 そして、目の前が真っ白になった。 気がついたら車は転倒し、どうやっても脱出はできそうにない。 「たき……つぼ……」 滝壷は無事だろうか。最後の力を振り絞って見回すが見当たらず、結局そのまま気を失った。 BAD END 爆発に巻き込まれる。 車でデパートに向かっていた浜面は、途中で爆発に巻き込まれる。 もし、浜面があの近くを通りかからなかったら、違った結末になったかもしれない。 浜面を無事にデパートに到着させるには、他の人物の行動が鍵となる。 主人公選択 1、上条当麻 2、御坂美琴 3、一方通行 4、浜面仕上(始める場合は選択肢からです) 5、その他(ちょっとした小ネタなど) 安価 23 23 3で 一方通行 「……ったァっくよ。なンで俺がお使いなンざ……」 一方通行(アクセラレータ)は、同居人から買出しを頼まれていた。 「これも躾のうちじゃん?」と同居人は言っていたが、一方通行にとっては非情につまらなかった。 「まァ、あのクソガキがいねェ分だけマシかァ」 誰に言うでもなく、独り言を呟いた一方通行は、さっさと終わらせてコーヒーを飲みたい気分だった。 「えェっと、買ってくるものは、っと……」 書いてあるものは人参、白菜などの野菜や、ビール、オレンジジュースと言った飲み物などが書かれてあった。 「……この量はちィっと多すぎるンじゃねェの?」 メモは、二枚に渡って書き綴られていた。 記憶能力は結構自信のある彼にとって、このメモはすでに紙切れと化していた。 「つゥかよ、言ってくれりゃあ全部覚えるっつーの」 杖を突いている彼にとって、スーパーまでの道のりは地獄だった。 能力は、とある事情により常に使えるわけでは無くなった。 能力を常に使っていた彼は、これだけが不便に感じた。 「ハァ、ったくよォアイツの言葉借りるのも癪だが……不幸だァ」 ふと、見覚えのある顔が視界の隅に映った。 「……あァ?」 振り返る。 そこにはゴミ箱があるだけだった。 (……まさかなァ、あの超電磁砲がいるわけがねェ) (普段から気にしすぎだっての……クソが) 一方通行は、再び行こうとしたのだが――。 急に手を掴まれる。 「うォ!? なンだなンだよなンなンですかァ?!」 手を振りほどいて怒鳴ってやろうと思っていたのだが――そこには見知った顔がいた。 一方通行はなんでここにといった表情で。 もう一人は疲れきった顔で。 「……なンでここにいる?――超電磁砲」 KEEP OUT 主人公選択 1、上条当麻 2、御坂美琴 3、一方通行(始める場合はKEEP OUT直前から) 4、浜面仕上(始める場合は選択肢から) 5、その他(ちょっとした小ネタなど) 安価 27 27 2だなァ 御坂美琴 「ハァッ、ハァッ……!」 御坂美琴は何者かに追われていた。 いつもなら電撃で対処できるが……その相手に電撃が効かなかった。 どういうことか分からない。 しかし、相手は御坂を襲ってきている。 相手の手には、刃渡り10cm程のナイフが握られていた。 (一体、何だってのよ!?) 走りながら考える。 (あれに電撃は効かなかった。……というよりも、弾いたって感じだった。あのバカみたいに) (冗談じゃないわよ……!あんなのが二人もいられたら困るっつーの!) 路地裏を走る。 走る。 走る。 それでも追跡者は御坂についてくる。 路地裏の出口が見えた。 しかしそこも人気がないところ。逃げてもついてくる可能性はあるが…… 行動選択 1、路地裏には結構自信がある。出ない。 2、狭いところより広いところ。出て行く。 安価 29 29 2 (狭いところよりも、広いところよね……!) 御坂は一気に走る。 追跡者もそれは想定外の事だったようで、若干ながら遅れた。 (いける!) そして出て行く際に、ゴミ箱を蹴散らしてしまった。 バランスが崩れる。御坂は、白い棒のようなものを咄嗟に掴んだ。 「うォ!? なンだなンだよなンなンですかァ?!」 棒のようなものは人だったようで、手を振りほどきこちらを振り向く。 そこには見慣れた――御坂にとっては忌むべき相手がそこにいた。 「――!?」 「あァ……?」 男か女か分からないような顔立ち。 アルビノのような真っ白い肌。 血のような紅い瞳。 御坂は、固まった。 (――なんで、ここに……!?) 「……なンでここにいる?――超電磁砲」 「なんでここにいるのよ……一方通行……!」 目の前の男――一方通行と呼ばれた男――は口元を不気味に歪ませた。 「俺ァちょっと買い物してるだけだぜェ?オマエこそ、俺に突っ掛ってどうするってンだァ?」 「わ、私は別に好きで突っ掛った訳じゃないわよ!今さっきだってナイフで殺されそうに……」 御坂は言って気がつく。早く逃げなければ。 「……!!!」 「あ、オイ!」 御坂は気がつけば走っていた。早く遠くへ。 追跡者から逃げなければ、殺される。 御坂は恐怖を心に閉じ込め、一心不乱に走った。 (誰か……助けて……!) TO BE CONTENUED… 主人公選択 1、上条当麻 2、一方通行 3、浜面仕上(始める場合は選択肢から) 4、その他(ちょっとした小ネタなど) 安価 33 33 1 上条当麻 「ぐおおおおおおおお!!!」 走る。 走る。 転ぶ。 立ち上がる。 走る。 このテンプレみたいな行動を、上条はすでに何回もしている。 その方向が、高校と別の方向であることは知らずに。 「……あーもうっ!やっぱ出よう!」 しかし、周りは知らない場所。どこをどう行けば出口かなんて分からない。 彼には一刻の猶予もない。とりあえず何ふり構わず走った。 「あーもうどこだよここ!やっぱ安直な考えするんじゃなかったっ!」 そうは言うがすべて後の祭り。とにかく上条は走る。 全力で走った結果、何とか出口までたどり着いた。 「よっしゃ!後はこのまま高校に……!」 もうすでに高校から1km離れていることなど、彼には知るはずもなく、上条は走った。 信号は赤になっている。 しかしもう時間がない。 どうする? 行動選択 1、警備員が怖いし、大人しくしとくか。 2、もう時間がないんだ!早くいかなくては! 安価 35 35 1 (警備員が怖いし、大人しくしとくか) 流石にそこまでの度胸は上条にはなく、ただ普通に待っていた。 「ハァハァ……!どこだよここ!」 (不幸だ……) そこは上条には見慣れぬ場所だった。 もう今から高校へ行ったって間に合わないかもしれない。 下手をすれば、家に帰れないかもしれない。 「こりゃ……マジでやばいな」 頭を抱える。 今日の補習を逃せば、次の休みも返上しなくてはならない。 この日で終わらせたかった上条には、それは死活問題だった。 (……明日は……) (明日は、特売が山ほどあるっていうのに……!) もし特売を逃せば、居候に食べられる。それだけは避けたい。 (ならどうする……?考えろ!) (金はあるが……タクシー?いや、無理だ。そこまで金がない) (ならバス……!) 「よっしゃあああああ!いくぜええええええ!」 「着いたっ!時間は……あと五分!間に合った!」 ガッツポーズをとる上条。残りは待つだけだ。 だが、不幸体質である上条にこのような幸運があるはずもなく…… この時上条が持っていた時計は十分以上遅れており、とっくにバスは出ていた――。 TO BE CONTENUED… 主人公選択 1、一方通行 2、浜面仕上 3、すでに終わった主人公(名前も添えて) 4、その他(ちょっとした小ネタなど) 安価 39 39 4 その他 と言っても今までに潰れたBAD ENDをいくつかご紹介。 16で言っていたの上条BAD (たまたま居合わせたとはいえ、女性は困っているんだ。助けよう) 上条は男たちにぶつかっていった。 「グゥ……!?」 男たちは、呆気無く倒れる。 しかしそれは上条にとってどうでもいいことで、考えるのをやめた。 「大丈夫ですか!?」 上条は女性に近寄る。 女性の顔は恐怖に固まっていた。 (……?この人は何をぶつぶつ言ってんだ……?) 女性はガクガクと震え、何かを言っていた。 そして上条は気づく。女性は、一切上条に関心を向けていないことに。 むしろ、その後ろを見る感じだった。 慌てて振り返って、上条は血の気が引いた。 バットを持った大男が、今まさに上条に向かって振り下ろしていた。 (ヤバい――) そう思った時には遅く、上条の頭にバットが振り下ろされた。 痛みと言うより熱さが上条の頭を襲う。 その後、何度も滅多打ちにされた。 どこかで聴いたことのある悲鳴が聞こえたが――上条はすでに聞こえていなかった。 まだあります。 23の行動選択2の場合 (路地裏は結構使ってるし、この辺りは余裕よ!) 御坂は迷わず路地裏を走った。 相変わらず追跡してくる。が、相手にも疲れが溜まってきたようだ。 (いける!?) そう思ったが――。 御坂の目の前には、壁があった。 (――ッ!?) 追跡者が追いついてきた。 じりじりと後ずさる。 とうとう、背中が壁についた。 気がついたときには倒れていた。 何が起きたのか分からない。ただ、体温が奪われていく感じと――自分は死ぬということだけは分かった。 こんな感じです。 では 37の1、2、3から選んでください。 安価は 43 43 3 上条当麻 行動選択2の場合 「もう時間がないんだ!いいぜ、赤信号に止まらなきゃ捕まるってんなら、そのふざけた幻想をぶち殺す!」 上条はかけ出した。 車が走る中を、一気に突っ切った。 後ろで車の衝突音が響くが、構わない。 上条はそのまま全力で走った。 そして 36「ハァハァ……!どこだよここ!」に続く。 主人公選択 1、一方通行 2、浜面仕上 3、すでに終わった主人公(名前も添えて) 安価 46 46 1 一方通行 「……なンでここにいる?――超電磁砲」 「なんでここにいるのよ……一方通行……!」 超電磁砲と呼ばれた少女――御坂美琴は一方通行を睨みつける。 彼と彼女には、決して切れない縁があった。 『一方通行絶対能力進化実験』 一方通行は、学園都市最強の超能力者であり、唯一絶対能力(レベル6)に辿りつける存在だった。 絶対能力に辿りつくには、超電磁砲――つまり、御坂美琴を128回殺すことだった。 当然、御坂を128人も用意はできない。 そこで研究員たちは同時に進めていた超能力者量産計画『妹達(シスターズ)』に着目した。 これを用いた場合、一方通行は妹達を20000人殺すことにより、絶対能力に進化する。 そして一方通行は約10000程の妹達を殺した。 この計画は、ある無能力者(レベル0)によって阻止され、そして凍結した。 その後は街中で顔をあわせることがたびたびあり、その時はかなり気まずくなっていた。 「なんでここにいるのよ……一方通行……!」 御坂は睨みながら聞いてくる。 おかしな事を聞くものだ。この辺りは一方通行のマンションから少し歩いたところなので、散歩とか思わないのだろうか。 一方通行は少し笑いながら、質問に答えた。 「俺ァちょっと買い物してるだけだぜェ?オマエこそ、俺に突っ掛ってどうするってンだァ?」 よく見ると、御坂の息は上がっていた。 心なしか疲れた顔をしている。 「わ、私は別に好きで突っ掛った訳じゃないわよ!今さっきだってナイフで殺されそうに……」 そこで御坂はハッとした顔になった。 そして、すぐ後ろを向いて、走り始めた。 「……!!!」 「あ、オイ!」 一方通行の声も聞かず、全力でどこかに行った。 (オイオイ、なンなンですかァ?ありゃワケありみてェだけど……) (それに、ナイフっつってたな。どういうことだァ?) これは、追いかけるべきなのか? 行動選択 1、超電磁砲とはいえ心配だ。追いかける。 2、いくらなんでも死にやしないだろう。追いかけない。 安価 53 53 1 (超電磁砲っつったって、何でも対処できるわけじゃねェ。心配だし、追いかけるか) 一方通行は、杖を上手く使いながら追いかけた。 一度、後ろのほうをちらっと見たが、あるのは散乱したゴミ箱だけだった。 「……アイツは、どォやらただ闇雲に逃げまわってるだけみてェだな」 御坂は、人混みの中を突き進んだり、かと思えばまったく人気のない道に行ったりと、その行動パターンは決まっていなかった。 「追いかける身にもなってみろっつゥの」 今度は人気のないちょっとした小道だ。よく体力が持つものだと感心する。 すぐ手前の曲がり角を曲がった。 一方通行も追いかけるが――曲がったところで自分はとんでもないことに首を突っ込んだと反省する。 そこには、ナイフを持った男が御坂の前に立ち塞がっていた――。 TO BE CONTENUED… 残り一人なんで、安価は取らずに続けます。 浜面仕上 「なるほど。じゃあ私寝てていい?」 「……」 どうすべきか? 行動選択 1、いざという時に困る。起きておけ。 2、流石に何も起こらないだろう。寝てもいいぞ。 安価 57 57 1 「……何かあってからじゃ遅いし、一応起きといてくれ」 「了解」 その後は、適当に滝壷と談笑していた。 「……ったく、なんだよ渋滞か?」 つい数分前から、車の進みが一向に悪い。 少し覗いてみるが、車がずらっと並んでいてよく分からない。 「はまづら、ここの小道使おうよ」 「ん、そうだな。このままじゃいつ着くか分かんねーし」 滝壷の助言を参考にして浜面はハンドルを左に切る。 いつも裏道を使っている彼にとって、このような抜け道を何本も知っていた。 「はぁい着きましたよっと」 「ありがと、はまづら」 滝壷側のドアを開ける。 「よし、じゃあデパートにレッツゴー」 「ごー」 滝壷と浜面は肩を並べてデパートの自動ドアをくぐった。 TO BE CONTENUED… Chapter2終了。 主人公はたびたび変わります。二、三人入れ替えたりします。 ってわけで、主人公選択 1、一方通行 2、浜面仕上 3、黄泉川愛穂 4、土御門元春(短編) 5、芳川桔梗(短編) 6、その他(ちょっとした小ネタなどなど) 安価 60 60 5 芳川桔梗 これは少しだけ前に遡る。 「……じゃ、気をつけて行きなさいよ」 「うん!ってミサカはミサカは元気よく返事してみたり!」 「愛穂も、ちゃんと打ち止めのこと見てるのよ?」 「任せるじゃん!ほら、行くじゃん打ち止め」 「はーい!ってミサカはミサカはヨミカワの手を握ってみたり!」 今日は一日平和になりそうだ。少なくとも、芳川はそう考えていた。 一方通行は買出し。そして黄泉川愛穂と打ち止めは一緒に結構離れたデパートまで出かけていた。 (そろそろ仕事を見つけないとね……) そう思って求人雑誌を読む。 ……無理だ。どうも色々引っかかる部分がある。 読み始めてたった数分で投げ出した。 「けふも元気だコーヒー牛乳が美味い、っと……」 コーヒー牛乳を一気に飲む。冷蔵庫にはブラックしかなかったので、たまには甘いものを飲みたくなっていた。 「……あら、メールかしら」 携帯にメッセージが出ていた。すぐに取る。 「……何これ。イタズラメール?にしては質が悪いわね……」 差出人:(無し) 件名:(指定なし) 本文:妹達を使った実験を秘密裏に開始。 内容は、妹達の学習装置を一時的に入れ替え、放置す ることで、特定の条件下で妹達は人を殺し始める。 効果は今のところ数時間程度。 本日も、この学園都市の数ヵ所で実験を開始する。 (……実験?学習装置?なによこれ……) 気味が悪くなったので、メールを削除しようとしたのだが――。 (新着) 差出人:(無し) 件名:(指定なし) 内容:これが、前日の実験の記録である。 短いメールと、動画ファイルが添付されていた。 「……」 嫌な予感がしているが、とりあえず開いてみる。 そこには、大きな刃物を持った妹達が、一般人を殺害しているところを撮った映像だった――。 TO BE CONTENUED… 主人公選択 1、一方通行 2、浜面仕上 3、黄泉川愛穂 4、土御門元春(短編) 5、その他(ちょっとした小ネタなどなど) 安価 64 64 3 黄泉川愛穂 「着いたじゃんよー」 「うわー!とてもとても大きいね!ってミサカはミサカははしゃいでみたり!」 今日はとても天候がいい。 日差しは強いが、どことなく心地良い日差しだった。 今日は、打ち止め(ラストオーダー)と一緒に出かける約束をしていた。 無理に警備員(アンチスキル)から休みを取ったので、今日はとにかく打ち止めを喜ばせようとした。 「んじゃ、最初はどこいくじゃんよ?」 「遊びたい!ってミサカはミサカは提案してみる!」 「遊び……じゃあゲームセンターにでも行くじゃん」 「わーい!それじゃあ、レッツゴー!」 「あ!こら打ち止め!そんなに走ったらこけ――」 見事なスライディング。盛大にこけた。 しかも頭からいったので、おそらく打ち止めには表現できない痛みが伴っているだろう。 「――!?――!!!――!!!!」 「まったく、そんなにはしゃぎすぎて怪我でもしたら、楽しみが減るじゃん。心配しなくても、逃げていかないじゃんよ」 頭をさする。それで打ち止めの痛みは少しだけ和らいだ。 「うー、ごめんなさいってミサカはミサカは素直に謝ってみたり……」 「ほらほら、さっさと行くじゃんよ?」 打ち止めと手を握って、ゲームセンターに向かって行った。 「うわー!ここがゲームセンターなんだね!ってミサカはミサカは周りが大音量なのでもっと大声で言ってみたり!!」 ゲームセンターは今日も賑わっている。 レーシングゲームで発狂する者、コインゲームで喜ぶもの、カードゲームで騒ぐものと多種多様で、その様は中々面白いものだった。 「まーここは結構うるさいからな。じゃあ先ずはUFOキャッチャーから行くじゃん?」 「うん!ってミサカはミサカはヨミカワの提案に乗ってみたり!!」 「結構遊んだじゃん。疲れたじゃん」 「えー?遊び足りないよってミサカはミサカは愚痴ってみたり」 「もうそろそろ切り上げるじゃん。おもちゃ売り場に連れて行ってあげるから」 「いいの!?ってミサカはミサカは確認と取ってみる!」 すごい喜びようだ。 それもそのはずである。 打ち止めは、普段一方通行と一緒に行動を共にしているのだが、一方通行が玩具を買うなど、明日空から槍が降ってくるぐらいありえないことなのである。 「いいよいいよ。今日は存分に甘えたらいいじゃん?」 「わーい!ってミサカはミサカはテンションアップ!!!」 飛んだり跳ねたり、忙しい子供である。 そんな様子を見て黄泉川は笑顔を浮かべていた。 「じゃあしゅっぱーつ!ってミサカはミサカはヨミカワの手を引っ張ってみたり!」 「こらこら、そんなに引っ張ったら駄目じゃん。まったく……」 しかし手を振り解こうとしない。 「打ち止め、楽しいか?」 「うん!とっても楽しいよ!ってミサカはミサカは感想を述べてみたり!」 打ち止めは眩しいぐらいの笑顔で言ってくる。 それを聞いた黄泉川は、一安心した。 おもちゃ売り場の近くを通りかかった時だった。 「……あ、アイツは……」 KEEP OUT 主人公選択 1、一方通行 2、浜面仕上 3、土御門元春(短編) 4、その他(ちょっとした小ネタなどなど) 安価 69 69 1 一方通行 一方通行は息を呑む。 これは何かの企画なのか。 いや、それにしては質が悪い。 もしやこれは本当に御坂を[ピーーー]のか。 様々な思考が頭を巡る。 ナイフを構えている人物は、そこを動こうとしない。 当然、御坂も動けない。 (オイオイ、俺ァどうすればいいんだよ) 行動選択 1、御坂と一緒に逃げる。 2、その場を離れる。 3、相手にタックルをする。 4、身代わりになる。 安価 78 81 1 (ちィ、仕方ねェ――) 「オイ、逃げンぞ!」 御坂の手を引っ張る。 後ろに一方通行が居るとは思わなかった御坂は、一方通行の思うがままにされた。 「ふィ、ここまで逃げれば大丈夫だろォ」 一方通行と御坂は近くの公園に着いた。 辺りを見回すが、追跡者はいない。 ホッと胸を下ろしたのだが―― 「あ、アンタ!なんであそこにいたの!」 当然、御坂に事情を説明しなければならない。 「オマエが血相を変えて逃げる様が面白かったンで、付いて行ったンだよ」 ツンデレである一方通行は、『心配だから』とは面と向かっては言えず、適当に嘘をついた。 御坂は口々に言う。 「だ、だからって誰もあそこまでしろって言ってないわよ!」 「アーアーうっせェ。俺だってまさかあンなことになるなンて思わねェよ」 「そもそも、アンタは用事があったんじゃないの!?」 「たった今取り消しましたァ。残念だったなァ」 言い争いは、10分に及んだ。 「ハァ。ンでェ、オマエはこれからどうするンだァ」 「……どうするって言われてもね……」 とりあえず、その場はクレープで収まった。一方通行はもちろんブラックコーヒーである。 そのブラックを一気飲みする。程良い苦味が口全体に広がった。 「アンタって、ホントブラックが好きよね。カフェイン中毒なんじゃないの?」 「あァ?一日30本しか飲んでねェんだから中毒じゃねェだろォ?」 「十分中毒だっての……お、これ美味しいわね」 御坂が頼んだクレープは、一般的な苺と生クリームが入ったクレープである。 それを口一杯に頬張る。とてもお嬢様学校に通っている生徒とは思えない顔だ。 「よくそンな甘ェもん食えるよなァ。女ってのは分かンねェ」 「こっちからしたら男って奴はよく分からないわよ」 「あァ……三下かァ」 御坂は噴出す。 ゴホッゴホッと咽てちょっとヤバい感じである。 そして涙目になりながら一方通行の耳元で叫んだ。 「あ、アイツは関係ないでしょーが!!」 「アーアー分かった分かったうっせェ!!耳元で叫ンでンじゃねェェェェェ!!!」 「ハァ……つっかれたァ。オイ、もうそろそろ行くぞ」 「?」 御坂はキョトンとしている。 一方通行は手を差し伸べながら、 「だから、行くぞっつってンだろォ」 とさも当然のように言った。 御坂は一方通行の行動の理由がようやく分かった。それと同時に少し煽った。 「あらあら、今更ヒーロー気取り?」 「別にそンなンじゃねェよ。ただなァ、オマエが危険な目にあってっと、クソガキが悲しむからなァ」 「ふーん。そう」 御坂はニヤニヤしている。 とても気不味くなった一方通行はチッ、っと舌打ちしながら強引に手を引っ張った。 「とっとと行くぞっつってんだろ耳が腐ってンですかァ?」 「あ、ちょっと!いや自分で歩くから引っ張らないでー!」 突然、携帯の音が響き渡る。 「……すまねェ、ちょっと出るぞ」 「はいはい、行ってらっしゃい」 御坂から離れるが、大体見えるぐらいの場所に行った。 携帯の着信は、芳川桔梗からだった。 「……あァもしもしィ」 どうせ買い物の追加だろう。そう思っていた一方通行だけに、この報告はそれこそ卒倒するぐらい驚いた。 「――打ち止めが、攫われた――?」 TO BE CONTENUED… 主人公選択 1、浜面仕上 2、土御門元春(短編) 3、その他 安価 88 88 1 浜面仕上 デパートに無事着いたが、ちょっとここでとある事情を説明しなければならない。 今日は買出しということで来ているのだが、実は本来の目的はそれではない。 浜面は、今日出かける際にちょっと小声でこんなことを言われていた。 『今日一日滝壷を楽しませること』 最近、滝壷はどこか思いつめているところがあるようで、常にボーッとしていた。 それを見かねた麦野は、買出しという口実で浜面に今日の朝の前日から言っておいた。 しかし、まさか絹旗とフレンダが犠牲になるとは思わなかったが。 絹旗とフレンダにも別の用事でも与えてやればと言えればよかったが、生憎と浜面にそんな度胸は無い。 話は逸れてしまったが、事情を説明するとそういう事なのだ。 「さて、今日は買出しに来たわけだが……実を言うと麦野から夕方まで掃除は終わらないだろうから適当にブラブラしてろと言われたんだ」 「むぎのが?」 「ああ……というわけでだ、今日は半日ゆっくり遊んでようぜ」 「うん。じゃあはまづら、どこに行く?」 「そうだな……」 行動選択 1、小腹が空いたし飲食店でも。 2、遊びといえばやっぱゲーセンだろう。 3、そういえば滝壷はぬいぐるみが欲しいとか言ってたっけ…… 4、あ、今ハマってる小説の新刊出たかな? ちなみにこれはどれを選んでも結果的には同じですので、気楽に選んでください。 安価 96 96 3 浜面はつい先日のアイテム内での会話を思い出す。 以下回想 麦野「はい、第三十四回アイテム会議を始めまーす」 絹旗「いえー」 滝壷「いえー」 フレンダ「いえー」 浜面「……いえー」 麦野「今日の議題はズバリ、この部屋に必要な物よ」 絹旗「確かに日常生活で使うには超殺風景ですからね」 麦野「てわけで一人ずつ言ってもらいましょう。じゃあフレンダから」 フレンダ「結局、見ていて落ち着くものがいい訳よ。花とか鯖缶タワーとか」 麦野「待って、花は百歩譲って良いとして鯖缶タワーって何?新たなオブジェでも建設するつもり?」 絹旗「それに鯖缶タワーって、匂いが超ヤバいんじゃないですか?」 滝壷「鯖缶タワー……外宇宙からの通信が――」 浜面「あったら困るっての」 フレンダ「うーん、気にいると思うけどなぁ」 麦野「誰も鯖缶を積み重ねたのなんて見ても面白くないわよ。じゃあ次絹旗」 絹旗「皆が超楽しめるものを希望します。つまり映画のDVDを――」 麦野「……どうせアンタの映画ってB級やC級でしょ。あんなもの皆は楽しめないわよ」 滝壷「私は結構いいと思うけどなぁ」 フレンダ「私も反対な訳よ。マニアックすぎるのよ」 麦野「じゃあこれも無し、っと」 絹旗「うーん、何で皆B級C級映画の魅力が分からないんでしょう……」 浜面「一部の人だけだろそんなもん」 絹旗「誰もバカ面の意見なんか聞いてません」 浜面「やっぱり俺に発言権は無いのかよ……」 フレンダ「だったら麦野の意見も聞いてみたい訳よ」 麦野「あー私は自分で分かってるから言わないでおくわ」 絹旗「……まあ麦野の趣味は超分かりますね」 麦野「そゆこと。じゃー次滝壷」 滝壷「私はぬいぐるみとかがいいと思うの」 麦野「ぬいぐるみかぁ。まあ女の子の部屋には必須だよね」 浜面「女の子……か」 麦野「何か文句があるのかにゃーん?はーまづらぁ」 浜面「何も無いです。だからその手を引っ込めて」 絹旗「バカ面の発言は超見逃せませんけど、確かにぬいぐるみなら超場所を取らないですしね」 フレンダ「でも、ぬいぐるみって子供っぽくない?」 麦野「アンタの鯖缶タワーに比べるとマシってもんよ」 滝壷「ここに置くのもいいけど、自分の部屋にも置きたい」 浜面「自分の部屋にか」 フレンダ「まあ買うときに一緒に買えばいいわけだしね」 絹旗「ですね。まあお金はそこのバカ面に超出してもらうとしましょう」 麦野「ってわけで、会議おしまーい」 (……前に欲しいとか言ってたっけ。ぬいぐるみ) (まあどの道俺が出すんだから、買ってやるか) 「よし、じゃあぬいぐるみを買おうじゃないか」 「ぬいぐるみ?部屋に飾るやつ?」 「それもだけどな。まあぬいぐるみぐらいおもちゃ売ってるところにあるだろ。行くぞ」 「おー」 今日は休日なので、デパートの中は結構一杯だった。 これでは身長の低い滝壷とはぐれてしまうかもしれない。 「滝壷、はぐれるなよ」 「うん」 一応滝壷に警告は出しておくものの、どうも辿々しい足取りで非常に危なっかしい。 「……大丈夫か?」 「大丈夫だよ」 「本当か?」 「本当だよ。……あ、そうだ」 急に立ち止まって手をポンとする仕草をする滝壷。 はて、と思った浜面はその様子を見守っていた。 すると、急に滝壷は浜面の腕を掴んで自分の胸もっていき、そのまましがみついた。 「た、たたた滝壷さん!?」 「ほら、こうすれば離れないよ?」 浜面の腕に滝壷の福良かな胸が当たる。離れるとか離れないとかの問題ではない。 周りから「おい、あれ……」とか「リア充爆発しろ」とか怨嗟の声が聞こえてくる。 「ほら、早く行こう?」 「え、あ、ああ……」 「おお、ここのおもちゃ屋って結構広いんだね」 「そうだな……」 (どっと疲れた……) 結局玩具店に着くまであの状態だった。 その間にも怨嗟の声は聞こえており、浜面は寿命が数十年縮むのではないかと冷や汗をかいた。 気を撮り直していざ突撃、という時に、浜面にとっては天敵と言える存在が現れた。 「よう、なにしてるんじゃん?」 「げげ、アンタは……」 浜面がスキルアウト時代の時に何度も『お世話』になった警備員の、黄泉川愛穂だった。 傍らには小さい幼女を引き連れている。 「そんな邪険に扱わないでほしいじゃん?今はもうスキルアウト抜けてるんだろ?」 「まあそうだけど……」 流石に暗部に関わってるとは言えない。 適当にお茶を濁しつつ、今度は浜面から話しかけた。 「それより、そのちっさいのは誰だ?」 「ミサカは打ち止めって言うんだよ!ってミサカはミサカの説明をしてみたり!」 「打ち止め……?変わった名前だな」 (顔は、何処と無く常盤台の超電磁砲に似ているけど……) 前に襲ったことのある人物を思い出す。 結局失敗に終わったが、今振り返ればいい思い出だ。 「あーまあこっちも紹介しておく。こいつは滝壺理后って奴だ」 「よろしく」 「うんうん。いい彼女じゃん?隅におけないじゃん」 誰が彼女か。 そう言おうと思ったが、その前に黄泉川は「じゃあ私たちは行くじゃん」と玩具店に入っていった。 「ねえねえはまづら。彼女だって」 「ああ……何か変な誤解されちまったみたいだな」 「そうだね。私たちも入ろうか?」 「うーん……」 1、超気不味いんで近くにあるゲーセンにする。 2、結局、何か食べたほうがいいって訳よ。 3、関係ねえよ!! カァンケイねェェんだよォォォ!! 安価 103 103 2 (流石にもう一度会うのは俺の精神が持たない) 「よし、じゃあ何か腹に入れとくか」 「うん。じゃあ……」 もう一回抱きつこうとする滝壷。 またアレをされたら周りの視線が痛いので止める。 「抱きつくの駄目」 「えー」 「えーじゃない、えーじゃ」 「じゃあ手を繋ごうよ。それならいいでしょ?」 「ああいいぞ」 抱きつかれるよりは遥かにマシだったので受け入れる。 浜面は今日はやけに積極的な滝壷に疑問を感じながら、どこか食べれるところを探した。 ……しかし、結局は周りから強烈な視線を感じることとなったのだが――浜面は気付かなかった。 TO BE CONTENUED… 主人公選択 1、黄泉川愛穂 2、土御門元春(短編) 安価 106 106 2 土御門元春 土御門元春は、義妹を愛していた。 彼の義妹に対する愛情は、普通のそれとはかけ離れており――所謂『変態』と呼ばれる人間だった。 彼は、義妹を愛していた。 ――なので、義妹の言う事にはどうしても逆らえなくなって、現在義妹に必要な物を探して走り回っていた。 彼は、義妹を愛しすぎていた。 事は数分前に遡る。 「兄貴ー。ちょっと頼みたいことがあるんだがー」 今日は休日。いつもはメイドの研修を受けて兄の部屋に戻らない義妹も、何故か兄の部屋にいた。 そんな兄はというと、別に何をするわけでもなく、いつも通りちょっと危ない本を片手に義妹特製デザートを食べていた。 前述の通り、彼は義妹なら何でもするので、直ぐ様話に喰いついた。 「どうした改まって。お兄ちゃんにどんと任せなさい」 自分の胸を叩く兄。無駄に爽やかだ。 「いやなーちょっと今度の実習でデザートを作るんだけど、材料が足りなくてなー。それとそろそろ器具も新調したかったところだし」 「ふむふむ。つまりはお使いをしてこいと」 「いいかー?」 「お兄ちゃんに任せなさいと言ってるぜよ」 義妹の顔が明るくなる。 兄はこれを見る為に生きているようなものだった。もっと重要な仕事があるにも関わらず、だ。 「じゃあこれらを買ってきてくれー」 義妹からメモを手渡される。 そこには、清楚な字でずらずらと文字が羅列してあった。 しかし兄にとってはそんなことは苦にならず、ちょっと身支度をしてすぐ出かけていった。 「ええっと、次は――」 そんな訳で土御門は絶賛疾走中である。しかし無駄に爽やかで、気持ち悪い。 彼の手にはすでに買い物袋が五つほどぶら下がっていた。 何度も言うが彼にとってこんなもの苦でもなく――実際その表情は恍惚とした顔だった。 その数十分後には肩から買い物袋、手にも買い物袋とで、その姿は見る人を圧倒した。 というより、避けられていた。 彼は義妹を愛しすぎた故に、世間体を犠牲にしたのだった。 もう数十分にはすべての物を買い揃えていた。 学園都市内を、たった二十分程度で回ったのである。 流石というかなんといか、正直変人でしかないのだが、もう深くは突っ込まないことにする。 場所は大通りである。 人の邪魔になっている土御門だが、そんなことは一切考えず、家に帰ったら義妹にナニをさせようかとあまり義兄妹らしからぬことを考えていた。 人々が行き交う交差点で、事件は起こった。 土御門が周りを見ていれば、あるいはこんなことは起きなかったかもしれない。 彼の対面に分厚いコートを着た人物が現れる。 その人物とすれ違った時には――土御門は倒れていた。 それは悲鳴の元凶と代わり、やがてはこの交差点を閉鎖させる原因となった。 そしてこの事件は、学園都市全体の日常を壊すきっかけとなってしまった―― TO BE CONTENUED… 残り主人公は一人なんで安価は取らずに進みます。 人物は黄泉川愛穂。KEEP OUT直前からいきます。 黄泉川愛穂 「打ち止め、楽しいか?」 「うん!とっても楽しいよ!ってミサカはミサカは感想を述べてみたり!」 打ち止めは眩しいぐらいの笑顔で言ってくる。 それを聞いた黄泉川は、一安心した。 おもちゃ売り場の近くを通りかかった時だった。 「……あ、アイツは……」 黄泉川の目についた人物は、スキルアウトとして何度も捕まえた、ある意味知り合いである浜面仕上だった。腕には誰か抱きついている。 「ヨミカワどうしたの?ってミサカはミサカは尋ねてみたり」 「いや、ちょっと知り合いにあったじゃん。ちょっとだけ声をかけて行くじゃん」 今はもうスキルアウトから抜けたと聞く。 それなら警備員としてではなく、ただの知り合いとして声をかけれるだろうと黄泉川は考えていた。 もっとも、浜面はアンチスキルよりもっとヤバいところに属しているわけだが、そんなことは黄泉川が知るはずもなく。 「よう、なにしてるんじゃん?」 突然の声に驚いたのか、恐る恐る振り返ってくる。 そして黄泉川を見た瞬間、顔が激しく歪んだ。勿論それは好意的な意味ではない。 「げげ、アンタは……」 「そんな邪険に扱わないでほしいじゃん?今はもうスキルアウト抜けてるんだろ?」 「まあそうだけど……」 口籠もる。何か言えない訳でもあるのだろうか。 黄泉川は疑問に思っていると今度は浜面の方から話を切り出した。 「それより、そのちっさいのは誰だ?」 浜面は、黄泉川と手を繋いでいる打ち止めを指さした。 打ち止めは、あくまで普通に自己紹介をした。 「ミサカは打ち止めって言うんだよ!ってミサカはミサカの説明をしてみたり!」 「打ち止め……?変わった名前だな」 当然と言えば当然の疑問である。 元々名前がない打ち止めは呼ばれていた名前でしか自分を名乗れなかった。 ので、この名前を使用しているのだが、周りからは偽名程度にしか思われなかった。 今度は浜面が傍らにいたジャージを着用した少女を紹介する。 「あーまあこっちも紹介しておく。こいつは滝壺理后って奴だ」 「よろしく」 ペコリとお辞儀をする。 どこか抜けている少女だが、顔は中々良かった。 「うんうん。いい彼女じゃん?隅におけないじゃん」 瞬間、浜面の顔が紅色に染まる。 まずいことをしたと思い、黄泉川は打ち止めの手を引っ張ってすぐに玩具店に入っていった。 「ねーねーどうしたのー?ってミサカはミサカはヨミカワの行動に驚いてみたり」 「あっはっは……何でもないじゃん。まあ打ち止めも大人になれば分かるじゃん?」 適当なことを言っておく。 打ち止めはよく分からなかったが、とりあえず納得はしてくれた。 「よーし、じゃあ適当に何か選んでくるじゃん」 「わーい!じゃあ行ってくるねー!」 「またコケるなよー」 玩具店に来て、打ち止めがまず見るのは『ゲコ太』グッズだった。 ゲコ太と言うのは、カエルを模した人形(ある人曰く紳士)のことだ。 カエルのどこがいいのか、黄泉川含め通常の人には分からないが、あるところの姉妹(中学生ぐらいの)にはとてつもない支持が得られている。 打ち止めもその一人だった。 本日もゲコ太のグッズを見ていたのだが、次の瞬間、視界がブレる。 「ガッ……!」 何が起きたのだ。何をされたのだ。 辺りを確認する暇もなく、黄泉川に二撃目が加えられる。 視界が完全に堕ちようとしたとき、打ち止めの声が聞こえたが――その直後には痛みが体を襲った―― TO BE CONTENUED… Chapter3終了です。 今回も大幅な主人公入れ替えです。 主人公選択 1、上条当麻 2、一方通行 3、打ち止め 4、御坂妹(10032号) 5、その他(子萌先生の失態や青髪ピアスの話等々) 安価 119 119 3 打ち止め 打ち止めは今起こっている状況が把握出来ないでいた。 今日は居候先である黄泉川愛穂と一緒に、デパートまで着ていた。 そして奇妙な二人組(少なくとも打ち止めにはそう見えていた)に出会い、玩具店に入った。 ここまではいいとしよう。問題はその後だ。 突然厚手のコートを纏った人が、突然黄泉川を殴ったのである。 あまりのことに打ち止めは呆然としていた。 黄泉川はこれでも警備員である。危険な気配に気づかないわけがない。 それに黄泉川は体術に長けている。その力は強能力者(レベル3)なら武器を使わずに抑えれる。 にも関わらず、この見るからに怪しい人物は黄泉川にダメージを与えたのである。 打ち止めはじりじりと後ずさる。 彼女の体は軽いので、一気に駆け抜ければ逃げ切れるかもしれない。 しかし、その体の軽さが仇となる時もある。 もし、打ち止めを連れ去ることが目的なら、簡単に運ばれてしまう。 それが厄介だった。 突然、打ち止めと襲撃者の間に人が現れた。 空間転移の能力者なのだろうか。その人物は腕の腕章を示す。 「風紀委員(ジャッチメント)ですの!大人しくしてください!」 風紀委員だ。 風紀委員は警備員とは別の組織で、主に生徒(能力者)で形成される、警察的組織である。 しかし、その活動場所は主に学校内で行われており、このような校外活動では始末書を書かされることになっている。 まあそんなことは抜きにしてだ。 この時の打ち止めにとってはとても助かることであり、その風紀委員の姿は後光が指していた。 その場に静寂が訪れる。 襲撃者はそこから一歩も動こうとはせず、また風紀委員のツインテール少女も相手の出方を伺っていた。 打ち止めは、ただ見守るしかできない。 次の瞬間、襲撃者は一歩動き出した。というよりも風紀委員に掴みかかった。 突然のことで風紀委員は混乱した。 決して油断などしてはいない。相手の動きはほぼノーモーションで繰り出されていた。 だが、風紀委員もただ捕まるだけではない。相手の脇腹に一撃加える。 しかし襲撃者はピクリともせず、ただ風紀委員に捕まっていた。 もう一度殴る。しかし動かない。 もう一度。しかし動かない。 次の瞬間には風紀委員は空を舞っていた。 攻撃を加えることに専念していた彼女は、相手の動きに気がつかなかった。 棚が揺れる。 風紀委員はその場から動けなかった。 一連の動きを見ていた打ち止めはもはや絶望しか感じない。 気がつけば、打ち止めは全力で走っていた。 「ハァ、ハァ、ハァ……」 辺りを見回す。彼女の視点からは分からないが、とにかく逃げ切れたようだ。 息を整える。 打ち止めは黄泉川を心配していた。 あのままにしておいて、本当に大丈夫なのだろうか。 一度戻ったほうがいいのではないだろうか。 しかし、このまま逃げたいという気持ちもある。 でも、何処に?誰に助けを求めればよいのだろうか? この場に留まるというのも考えた。 もうどうすればいいのか分からない。 打ち止めは―― 行動選択 1、逃げる。 2、ここに留まる。 3、戻ってみる。 安価 129 129 3 打ち止めは、とりあえず戻ってみることにした。 玩具店は警備員で封鎖されていた。あれだけ派手に騒げばそうなるのも当然だ。 打ち止めは黄泉川を探す。が、入り口で追い払われた。 警備員の話を盗み聞きしたら、どうやら黄泉川と風紀委員は保護されたらしい。 打ち止めは安心した。 おそらく襲撃者は捕まっただろう。 そして、今度は行く宛がないことを思い出した。 安心して気が緩んだのか、彼女はフラフラとさ迷っていた。 そうこうしているうちに、人気のない、どこか倉庫の前まで来てしまった。 そして、後ろから口を抑えられる。 「――ッ!んんー!んー!!」 あの襲撃者は捕まったと思っていた。 その思い込みが彼女の警戒心を緩めてしまった。 そして打ち止めは、気を失った。 ――次のニュースです。 ――昨日、午後六時ごろ、〇〇デパート裏で一人の児童の死体が見つかりました。 ――児童は体中を刃物で刺されており、凶器は刃渡り10cmのナイフということが分かりました。 ――犯人は依然逃亡中です。 ――児童の名前は、打ち止め―― BAD END 打ち止めの死亡 黄泉川の無事が確認できた打ち止めは行く宛もなくさ迷っていた。 犯人は捕まった。その思い込みが彼女に油断を誘った。 もし、他の行動をしていれば――黄泉川の無事を信じていたら、或いは違った結末だったかもしれない。 つづく
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/610.html
あれから、また三日後…… 「こっちに避難するじゃん!!」 「せ、先生! あっちからも来ました~!」 街に、逃げ惑う人々の悲鳴と、彼らを守ろうと奔走する警備員達の怒号が飛び交う。 重装備で街を駆けていた警備員の一人が、足を止め、暗くなった空を見上げた。 「くっ……! 馬鹿でかい芋虫の次は空飛ぶライオンじゃん!?」 太陽を隠していたのは獅子。 体長3メートルを越す巨大な獅子だ。 だが、ただの獣ではない。 背中から生えた白い翼が、羽ばたくたびに突風を巻き起こす。 その風が、巨体を蒼穹に舞わせていた。 獅子は警備員の一人に狙いを定め、威嚇する様に吼えると、凄まじい速度で地上に落下する。 「そうだ! やるならこっちを狙え! ケダモノ相手なら容赦しないじゃん!!」 迎え撃とうと、警備員は重火器を構える。 しかし分かっていた。 そんな装備で太刀打ちできる相手ではないと。 それでもそうせざるを得ないのは、彼女が子ども達を守る警備員であり、教師だからだった。 「せめて……! せめて手傷を負わせるくらいは……!!」 彼女が覚悟を決めた、その瞬間だった―― キンッ―――――― 何かを弾いた様な小さな金属音。そして―――――― 【第二話・音速! 常盤台の超電磁砲!!】 ある日の昼下がり。 そこは、ひと時の安らぎを求め学生達が集まる、古風な雰囲気の喫茶店。 コーヒーの芳醇な香りに誘われ店内に入ると、そこに流れるのは今どき珍しいレコードの音。 そしてそれを引き裂く―― 「フッザけんじゃないわよおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」 怒号。 店の角に位置する四人掛けのテーブルを両手で叩き付け、御坂美琴は立ち上がった。 黒子「お姉さま。落ち着いてくださいまし。お静かに――」 美琴「はぁ!? これが落ち着いていられるかってのよ!!」 黒子「いえ……あの……店内ですの」 そう言われ、美琴は我に返り店内を見回した。 何事かとこちらを伺う学生たちと、訝しげな表情のマスターが視界に入る。 コホンッ。と、一つ咳払いして、美琴はイスに座った。 美琴「……でも、納得いかないわよ……」 こころなしか小さい声で、美琴は不満を口にする。 美琴「どうしてこんな状況なのに、何の対策も打たれないワケ?」 黒子「確かに……風紀委員の方にも、巡回の強化以外の許可が下りませんの」 それは、不可解なことだった。 あの日、あの『アルカイザー』と名乗った紅い『ヒーロー』が現れたあの日。 あれ以来、学園都市に堂々と現れるようになった怪物たち。 自分達を『ブラッククロス』と名乗る奴らは、日々その活動を活発にしていた。 黒子「わざわざ名前を名乗るだなんて。まるでこちらを馬鹿にしているようでムカつきますわ」 美琴「そう。『お前達如きに止められるものか』ってね……!」 今まではコソコソしていたクセに…… たった一度姿を見られた程度のことで、今度は逆に自分達から表舞台に出てくるなんて! その挑発的な態度が、御坂美琴の精神を逆撫でした。 そこへ、カランカラン……とベルの音を立て、二人の少女が入店してきた。 初春「こんにちわー。待ちました?」 黒子「遅いですわよ初春」 白井黒子の相棒。風紀委員所属の花飾りの少女。初春飾利。 そして―― 佐天「どうもー。『佐天』さんが喫『茶店』に舞い降りましたよー」 レベル0の無能力者。佐天涙子。つまり私だ。 美琴「こんにちわ初春さん。それと――」 佐天「それと……?」 美琴「今のは無いと思う。佐天さん」 佐天「ガーン! 鉄板ネタなのにぃ~!!」 四人が知り合ったのは、そう昔の話ではない。 ある日、同僚である白井黒子の紹介で、初春と私は、憧れのレベル5である御坂美琴と出会った。 最初こそ超能力者に反感を持っていたけど、共に過ごすうちにその悪感情は消えていった。 そして何よりも。あの一連の事件が、私達の距離を劇的に縮めた。 佐天「へー……また御坂さんお手柄じゃないですか~」 美琴「まあね」 黒子「まあね……ではありませんの! お姉さまは一般人ですのよ!」 初春「そうですよ~! もう『怪人』に向かっていったりしちゃ駄目ですよ!」 『怪人』とは、ブラッククロスが街に放っている怪物達の総称だ。 怪物を『怪人』。それに従う大勢のタイツの男達を『戦闘員』と呼ぶらしい。 美琴「なによ……じゃあ、あの時あの警備員を見殺しにすれば良かったっての?」 黒子「いえ……そうは言いませんが……」 美琴「ふん……私はそこら辺の、誰かが不良に絡まれてても見てみぬふりする様な奴らとは違うのよ」 佐天「……」 御坂さんは、真っ直ぐで真っ直ぐで真っ直ぐな人だ。 絶対に曲がらない。 曲がらないがゆえに、努力に努力を重ねて学園都市の頂点に立ったような人なのだ。 美琴「そもそもおかしな話なのよ! 生徒が何人犠牲になってると思う?」 初春「数えるのも嫌になります……」 美琴「そう。それなのに、学園都市の上層部は動こうとしない」 黒子「ですが……」 美琴「だったら。私たち自身が自分で動くしかないでしょう?」 佐天「…………」 レベル5。常盤台の超電磁砲。第三位。 どこまでも快活に大胆に、自分がコレと決めたことを貫き通す、物語の主人公。 私のともだち。 私の憧れの人。 私の目標。 美琴「でもさ。あいつは一体なんだったのかしら?」 初春「あいつ?」 美琴「アルカイザーよ!」 佐天「ブッ!!?」 初春「さ、佐天さん!?」 佐天「ゲホッゲホッ!? い、いや何でも……! 気管に入っちゃっただけ……!」 な、何で御坂さんが私のことを!? 美琴「あいつ……あれからぜんっぜん姿を現さないじゃない!」 黒子「いえ、ですから一般人の方は……」 美琴「あんな恥ずかしい格好の一般人がいるはずないじゃない!!」 …………ですよねー。 美琴「つーか! アイツの所為じゃないの!? 今の状況って!!」 初春「どうしてですか?」 美琴「だってあいつが街中で暴れたから、連中は開き直って暴れるようになったわけでしょ?」 佐天「そ、それはちょっと~……言いすぎじゃ……」 美琴「そう? でもさ~。あいつヒーロー名乗ったのよ?」 初春「ヒーローですか」 美琴「そうよヒーローよ! アルカイザーよ! 恥ずかしげも無く!!」 ごめんなさいごめんなさいもう許してください。 あの日もベッドの中で「あああああああああああああ~」ってなったんです。 黒子「いいえお姉さま。いずれにせよ、連中が活動していたのは間違いありませんの」 初春「そうですよ。むしろ表面化した分こちらも対処できますし……」 美琴「むぅ~……まぁ……でも、ヒーロー名乗るなら責任ぐらいは取って欲しいわよね」 佐天「……です……かねぇ…………?」 そこで、御坂さんの怒りは一段落した。 その後は、とくに当たり障りのない現状報告と、ケーキとお茶の感想。 最近流行っている都市伝説『バイオ肉』のことなんかを話し、完全下校時刻に合わせて解散となった。 御坂さん達と別れ、私と初春は自分達の寮へ向かう。 楽しい時間は早く過ぎるもので、いつのまにか、空は赤く染まっていた。 初春「御坂さん荒れてましたね~」 佐天「しょうがないよ。最近、ずっとこんななんだもん」 きっと。御坂さんのことだから、自分達に降りかかる火の粉は残らずぶっ飛ばす気なんだろうな。 佐天「ねぇ……もう、鼻大丈夫なの?」 ――先日の一件。あのベルヴァと名乗った巨人が、初春の顔面を蹴り飛ばした。 実際に戦った私には分かる。あの巨人の一撃は半端じゃない。 それが、手を抜いていたとはいえ女の子の顔を捉えたのだ。 初春「大丈夫ですよ~。包帯も取れましたし~」 佐天「ならいいけどさ……」 初春「私は風紀委員ですから。怪我をすることぐらい覚悟の上です」 佐天「……」 初春「でも。佐天さんは無茶しちゃ駄目ですよ?」 佐天「うん。大丈夫だよ! 御坂さんじゃないんだから!」 ごめんね初春。 あの時戦ったことは、初春には聞かせられないね。 また秘密ができちゃったね。 でも大丈夫だよ。 私はもう変身しない。 私は無能力者の佐天涙子。 ヒーロー・アルカイザーじゃない。 だから大丈夫だよ。 もうこんな力、本当にいらないんだ。 望んで得た力じゃない。 記憶と日常を犠牲にした力なんて、私の身に余る。 だから―――― 今は、無力な無能力者の佐天涙子。それでいい。 そう、夕日に照らされた彼女の顔を見て、誓った。 ある日の夜。 そこは、ひと時の安らぎを求め一仕事終えた教師達が集まる、場末の屋台。 焼酎の芳醇な匂いに誘われて暖簾をくぐると、そこに聞こえるのは別に珍しくも無い酔っ払いの愚痴。 そしてそれを引き裂く―― 「フッザけんじゃないじゃああぁぁぁぁぁぁん!!!!!」 怒号。 「黄泉川先生……呑みすぎですよぉ……」 「鉄装! これが呑まずに居られるか!!!」 眼鏡をかけた女性が、先輩にあたる黄泉川に注意し、逆に怒られた。 鉄装綴里(てっそう つづり)と黄泉川愛穂(よみかわ あいほ)。 この学園都市を守る警備員『アンチスキル』に所属する教師である。 二人とも、抜群のプロポーションをもつ若い女性だが、自ら志願して危険に身を晒している。 能力を持つ生徒で構成される風紀委員と違い、全員が無能力者の教師で構成される警備員。 次世代兵器が配備された彼らは風紀委員よりも権限が高く、より踏み込んだ危険な捜査を任されている。 黄泉川「ってぇ! その私らにさえこれ以上の深入りを許可しないってどういうことじゃんっ!!!」 鉄装「ひぃえええぇぇぇ……!? あ、暴れないでくださいぃぃぃ!!!」 「本当ですよね~。一体どうなっちゃうんでしょう……」 黄泉川「そうじゃん! 小萌先生もそう思うじゃん!」 黄泉川に同意したのは、同じく教師の月詠小萌(つくよみ こもえ)。 一見こどもにしか見えないが、れっきとした成人女性である。 小萌は警備員には所属していないが、黄泉川と同じ学校で教鞭を振るう同僚であり、 彼女達三人はこうして集まっては酒を呑んでいる。 小萌「うちの生徒も怪人に一人襲われて、不幸だぁ~! って言いながら逃げ帰ってきたんですから」 黄泉川「これ以上生徒に被害が広がるのは許せないじゃん!」 鉄装「それは……そうですけど……」 黄泉川「………………」 鉄装「黄泉川先生?」 黄泉川「決めた」 鉄装「な、何をでしょう?」 黄泉川「鉄装。私等だけでも連中を調べ上げるじゃん!!!」 鉄装「はいぃ!!?」 黄泉川「そうと決まれば今日は景気づけじゃん! オヤジ! もう一杯!!」 小萌「おじさん! ワニのお刺身ですー!!」 鉄装「まだ呑むんですか~!?」 黒子「キャンベルカンパニー?」 風紀委員第一七七支部。 その事務所のデスクで報告書を処理しつつ、白井黒子は固法美偉の話に耳を傾けていた。 固法「そう。例の巨人の破片の一つが見つかってね。私が能力で透視してみたの」 固法美偉の能力はレベル3の透視能力『クレアボイアンス』。 視覚に頼らずに物を見る能力で、彼女の場合は主に透視を行う。 黒子「あの巨人の……? あれはどこかの研究機関が根こそぎ回収したと……」 街中で赤い鎧の人物と死闘を繰り広げた謎の機械仕掛けの巨人。 あれがブラッククロスの一員であることが判明し、警備員がその破片を回収したが、 上層部からの命令で、その全てを研究施設に渡してしまった。 固法「ええ。でも、その回収作業から漏れた物が残っていてね」 黒子「それを固法先輩が? 一体どういう経緯で……」 固法「たまたま。取り押さえたスキルアウトが隠し持っていたのよ」 スキルアウトとは、能力を持たない無能力者たちが徒党を組んだ武装集団のことである。 学校に通わず、集団で行動して問題を起こす、いわゆる不良たちの総称だが、 犯罪行為に手を染めることが多いため、度々風紀委員によって補導されていた。 固法「でね。あの巨人の人工筋肉の下、骨格の部分だと思うんだけど。そこにロゴがあったのよ」 黒子「それがキャンベルカンパニーの……」 だとしたら、その会社がブラッククロスと関わっている可能性が高い。 今後の調査の方針が決まった。 報告書も仕上がり、黒子は一息つこうと、美琴から差し入れられた、缶ジュースを一口飲んだ。 ちなみに新製品の「無農薬キャベツソーダ」である。 初春「ただいま戻りました」 そこへ、巡回を終えた初春飾利が戻ってきた。 黒子「ああ、初春。いいところに戻ってきましたわ」 初春「何ですか?」 黒子「あなた向けの仕事が出来たところですの。キャンベルカンパニーについて調査して下さいな」 初春「キャンベルカンパニーですか? どうして……」 黒子「例の巨人の部品がそこで作られていましたの。おそらく、兵器か何かの製作に携わっているはず」 普段踏み込まないような、重大な学園都市の暗部に調査を進めようとしている。 黒子は、自分達がとんでもないことに首を突っ込もうとしているのではないかと、内心震えていた。 しかし、見過ごすわけにはいかない。 『だったら。私たち自身が自分で動くしかないでしょう?』 敬愛する先輩。御坂美琴の言葉。 彼女の言うことは常々正しいと、黒子は思っていた。 自分達にできることを。学園都市を守るために……! 美琴の勇気を分けてもらおうと、差し入れのジュースをもう一口―― 初春「でもそれって、白井さんが飲んでるそのジュースを作ってる会社ですよね? ほらロゴが」 黒子「ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」 固法「汚いわよ白井さん」 黒子『ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!』 美琴「きったないわねぇ……あの子……」 御坂美琴は、あるオープンカフェのテラスでケーキを食べていた。 くつろいでいるわけではない。 耳につけているのは小型の盗聴器。マイクは黒子の持つ缶ジュースの裏側だ。 美琴「まさかこうも早く情報が出てくるとはね……」 黒子を問い詰めても情報は得られない。 戦う力があろうと一般人は一般人。 事件に巻き込んでいけないというのが白井黒子のルールだ。 特に突っ走りがちな美琴になら尚更だ。 美琴「さて。それじゃあこの先は、私の個人的な喧嘩よね……」 理由は、そうだなー。 あの馬鹿みたいにでかいビルが目障りだから――とか。 美琴「乗り込んで、社長でも専務でもいいや。このくだらない騒ぎに加担した連中を――」 ビリビリっと。 ――――叩きのめす。 美琴は立ち上がり、振り返って空を見上げた。 いや。そこにそびえ立つ、キャンベルカンパニー本社ビル。 通称キャンベルビルの最上階を睨み付け、右手で作った指鉄砲で狙いを定めた。 美琴「――――――バン!」 「お引取り下さい」 美琴「………………」 あれから、御坂美琴は調子よく店を出て、鼻歌交じりに真っ直ぐビルへと向かった。 威風堂々といった様相で自動ドアをくぐると、屈強な守衛の見守る中、臆することなく突き進み―― 「申し訳ございませんが、本日の面会者リストに御名前がございません」 受付のお姉さんに笑顔で止められた。 美琴「いや……あのね? 私は別に怪しいものじゃぁ……」 受付「お引取り下さい」 美琴「ただね? ほら? 最近物騒じゃない? そのね――」 受付「申し訳ございませんが」 美琴「そこを……さ? ………………ね?」 受付「本日の面会者リストに御名前がございません」 潜入。 失敗。 守衛「来い」 美琴「……っ!」 仕方が無い……こうなったら……! と、美琴が実力行使に出ようとしたその瞬間。 「ちょーっといいじゃん?」 武装した二人の女性が乱入した。 受付「おはようございます。どちら様でしょうか?」 「警備員の者じゃん。2,3聞きたいことがあるんだけど」 「お時間は取らせませんので、社長さんにお目通り願えますか?」 受付「お待ちください……」 受付嬢は表情を崩すことなく受け答えし、何処かへ内線で連絡する。 会話の内容から、どうやら社長に直接繋がっているらしい。 受付「お待たせいたしました。そちらのエレベーターをご使用ください」 促され、警備員を名乗ったうちの一人がエレベーターへ向かう。 しかしもう一人はその場で振り返り―― 「来るじゃん」 と、美琴に声をかけた。 美琴「え?」 「うちに協力してくれてる子なんだけど、一人で先行しちゃってね……放してやって欲しいじゃん」 こうして、美琴はキャンベルビルに潜入することに成功した。 美琴たちは指定されたエレベーターに乗り込んだ。 エレベーターガールがパネルを操作すると、社長室のある最上階を目指し上り始める。 エレベーターは広く、直径十メートルほどの円形。 全面ガラス張りで、夕焼けの、オレンジの光が差し込んでいる。 美琴「あ、ありがとうございます。でも……どうして?」 「そうですよ。見ず知らずの子どもをどうして……」 美琴が疑問を投げかけ、眼鏡の警備員がそれに同意した。 「ん? 覚えて無い?」 美琴「あ! いえ! この間の空飛ぶライオンの時の警備員さんですよね?」 それに、あー! と、眼鏡の警備員が納得したように手を打った。 「それだけじゃないじゃん……前の幻想御手事件とか、テレスティーナ木原の件とか」 美琴「はい。覚えてます。その節はどうも……」 「お。流石は。まぁ、学園都市の第三位がそんな記憶力じゃ困るじゃん?」 なぁ鉄装? と、隣で激しく頷く眼鏡の警備員に目線を送る。 睨まれて、彼女は「す、すみません……」と呟いて小さくなった。 「オホン……じゃあ改めて、私は黄泉川愛穂。で、こっちが鉄装」 美琴「は、はい。よろしく……」 鉄装「あれ? じゃあこの子を連れてきたのはその時のお礼ってことですか?」 黄泉川「ま。あれだけ活躍されて、命まで救われたらちょっと恩返ししたくなるじゃん?」 美琴「あはは。そんなつもりは無いんですけど……情けは人のためならず……って奴ですか?」 黄泉川「そういうこと」 鉄装「へー……それってどういう意味でしたっけ?」 空気が『フリーズバリア』―― 鉄装「あ、あれ?」 黄泉川「私が教育委員会だったら、お前今すぐ免許剥奪じゃん?」 鉄装「え、ええ~~~!!?」 黄泉川「まあ冗談は置いといて。本当に危なくなったらこの子は逃がすじゃん」 美琴「な…………!?」 黄泉川「当たり前じゃん。連れて来たのも、あのままだと暴れだしそうだったってのがデカイじゃん?」 美琴「……それは…………」 言い返せないけど…… 黄泉川「それだったら目に付く場所に置いといたほうが安全じゃん」 鉄装「流石黄泉川先生……そこまで考えてたんですね~……」 黄泉川「……本当に免許剥奪するじゃん?」 と、敵地に乗り込んだという緊張感もないまま、美琴たちの乗るエレベーターは上り続けた。 エレベーターが上っている間、美琴は思案していた。 もし、ここが敵の中枢だったら? 街にあふれ出した、あの怪人達が山のようにいるのだろうか? だとしたら…… 黄泉川「安全装置のチェックは?」 鉄装「は、はい! 大丈夫です!」 この二人はどうする? きっと、先ほどの言葉の通り、彼女達は自分を守ろうとするだろう。 しかし、正直言って守られる筋合いはない。 むしろこちらが守る側だろうと、美琴は自惚れではなく、事実としてそう判断した。 人を二人守りながらの戦い。 それは真剣勝負の場において、どうしても不利だ。 あの日の、紅い鎧と巨人の戦いを思い出す。 あのレベルの敵が相手だとしたら。 自分はどの程度戦えるだろう? 勿論。負けるつもりなどさらさらないが………… その時だった―― 美琴「!!?」 黄泉川「な、何!?」 鉄装「ひゃあぁぁぁぁ!!!!??」 エレベーターが揺れ――――止まった。 黄泉川「ど、うやら……落下はしないみたいじゃん……?」 鉄装「じ、事故でしょうか?」 そんなはずがない。 このタイミングで、自分達の乗ったエレベーターが偶然止まるなんてそんなはず―― 『ようこそ、警備員の皆さん』 美琴「誰!?」 エレベーター内に声が響く。 どこかにスピーカーが仕掛けられているのか。 『私はキャンベル。キャンベルカンパニーの社長取締役であり、このビルのオーナー。そして――』 『ブラッククロス四天王の一人――妖魔アラクーネよ……!!』 次の瞬間。エレベーターの天井が開き、十を超える影が飛び降りてきた。 鉄装「ひゃああぁああ!!!?」 黄泉川「戦闘員……! ちっ! 本当にブラッククロスの基地だったじゃん!!!」 黄泉川は銃を構え、迫り来る戦闘員に向かって引き金を引いた。 バララララッ! と、リズミカルに打ち出される弾丸が、戦闘員に命中しその度破裂音を響かせる。 その衝撃で弾き飛ばされた戦闘員は、手足をあらぬ方向へ投げ出し、二度と動かなくなった。 黄泉川「ちっ……! 人間を撃ち殺してるみたいで気分が悪いじゃん……!!」 鉄装「ひっ! こ、こっちこないでぇ!!」 鉄装も同じように銃を乱射するが、狙いが甘くかわされる。 戦闘員の一人が素早く鉄装に接近し、手の甲から延びた鉤爪を突き出した。 黄泉川「鉄装!!!」 閃光。 否、稲光。 戦闘員の鉤爪が鉄装の腹を引き裂こうとした瞬間。 エレベーター内に激しい雷鳴が轟き、十体近くいた戦闘員が残らずショートした。 美琴「上等じゃない……騙まし討ち。不意打ち。それでこそ悪党ってもんよね……!」 黄泉川「御坂美琴……」 御坂美琴。 世界に七人しか居ない超能力者、レベル5の第三位。 常盤台中学の誇る、学園都市最強の電撃姫。 その能力は電撃使い『エレクトロマスター』。 体から電気を発生させ、それを自在に操る能力。 常に発せられている微弱な電磁波はレーダーとして機能し、危険を察知する。 磁力を操り、鉄くずや砂鉄を自在に武器に変える。 電気信号を制御し、プロレベルのハッキングをもこなす。 そして、音速を超える、彼女の代名詞ともいえる必殺技―― 鉄装「あ! 危ない! 御坂さん頭の上――!!」 エレベーターの遥か上から降ってくる、黒服の男の姿が見えた。 交差した両手に機関銃を持ち、周囲に円柱形の清掃用ロボットを三機引き連れている。 頭上十メートルほどまで落下し、明らかに美琴に狙いを定めていた。 黄泉川「怪人……!!? 避けるじゃん! 御坂美琴ぉ!!」 キンッ―――― 美琴が右手を頭上に向け、親指でコインを弾く。 黒服の怪人は銃を構え、清掃用ロボットの前部からも銃口が飛び出した。 男と三機のロボットによる頭上からの一斉射撃。 しかし――間に合わない……! 御坂美琴の、代名詞ともいえる必殺技。 彼女の通り名でもある、その一撃が放たれた―――― 『超電磁砲』 その轟音を聞いたときにはもう遅い。 音速の三倍の速度で撃ち出されたコインは、頭上から襲い掛かって来た黒服の怪人を粉々にした。 その破片が、一旦風圧に巻き込まれて上昇し、再び落下してきた。 血液ではなくオイル。筋繊維ではなく金属繊維。 美琴「よかった。やっぱりこいつも機械仕掛けだったのね。一瞬人を殺しちゃったかと思ったわ……」 床に散らばったオイル塗れの金属片を確認し、美琴は溜息を洩らした。 鉄装「す、すごい……これがレベル5……」 黄泉川「はは……相変わらずとんでもないじゃん……」 黒子「やられましたの…………」 白井黒子は、自分の不注意を悔いていた。 黒子「まさか盗聴器とは……お姉さまも狡いことをしますの……」 初春「ど、どうしましょう!? きっと御坂さん、今頃キャンベルビルに乗り込んでますよぉ!!」 黒子「あそこがブラッククロスの関連施設だとしたら……」 ジュースの裏に仕掛けられていた盗聴器に気付いたのは、美琴がビルに乗り込んだ直後だった。 固法「……実はね? 警備員にも、この情報は回しておいたの」 黒子「警備員に?」 固法「今頃、向こうさんも調査に乗り出してるはず。ひょっとしたら、御坂さんと鉢合わせしているかも」 初春「な、なら! その人たちに――」 固法「言われて止まると思う? あの御坂さんが……」 黒子「こうしてはいられませんわ! 黒子もお姉さまの手助けに!!」 固法「駄目よ! まだそうと決まったわけじゃない……私達には、待つ以外に出来ることは無いわ」 黒子「……っ!」 沈黙。 人を助ける風紀委員でありながら、待つしか出来ない。 いつもいつも後手後手に回るのは、風紀委員のいつもの悪習慣だった。 初春「……………………?」 黒子「どうしましたの?」 初春「いえ……気のせいです」 佐天「大変だ……」 とんでもないことを聞いてしまった。 私は、初春達に差し入れでもと思い、いつもの調子で一七七支部を訪れた。 そこで―― 黒子『ああ~……それにしてもお姉さまが黒子に差し入れだなんて……』 黒子『黒子……感激ですの~~~!!!』 黒子『そうですの! この空き缶は大切に大切に保管して――……?』 黒子『これは……缶の裏に何か……マイク? …………まさか盗聴器ですの!?』 初春『はい!? ……た、たしかにこれは……』 固法『ちょっと待って! じゃあまさか……さっきの話を御坂さんが!?』 黒子『やられましたの…………』 黒子『まさか盗聴器とは……お姉さまも狡いことをしますの……』 初春『ど、どうしましょう!? きっと御坂さん、今頃キャンベルビルに乗り込んでますよぉ!!』 黒子『あそこがブラッククロスの関連施設だとしたら……』 どうする……? 佐天「どうする……って……」 どうする……? どうする……? どうする? どうする? どうする………………? 気付けば、夜の街を走り出していた。 どうして……? あの御坂さんだよ? それを私なんかが心配して駆けつけるなんて…… 佐天「どうかしてる……どうかしてるよ……私……!」 でも止まらない。 『何処へ行くんだ?』 ――――――! 佐天「貴方は……」 聞き覚えのある声に振り向くと、あの黒い男が立っていた。 相変わらず、風にマントをなびかせ、仰々しく、厳しく、そして優しく。そこに立っていた。 アルカール「何処へ行くんだ? 佐天涙子……」 佐天「アルカール……さん」 アルカール「また戦う気かね?」 佐天「……私は……」 アルカール「ヒーローに、なる気はあるのかね?」 佐天「……」 アルカール「正直に言おう。君には才能がある」 佐天「……!」 才能……? 私に……? アルカール「だが。同時に危うくもある。私では判断しかねる所だ……」 佐天「え? 危うく……?」 アルカール「だから、君が自分で決めなさい。進むか。それとも辞めるか」 私に……才能が……ある……? 無能力者の……私に? レベル0で、落ちこぼれで、いつも守ってもらっていた私に? アルカール「辞めるのなら。今すぐ力を返してもらうことも出来る」 佐天「え? 今……?」 アルカール「いや。今のこの街は危険だ。ブラッククロスを打倒し、しかるべき日にもう一度来よう」 佐天「……」 アルカール「その際には、君からヒーローに関する記憶を消去することになるが――」 佐天「待って下さい――――」 佐天「できるん……ですか?」 アルカール「……」 佐天「私が、御坂さんを助けることが……出来るんですか?」 アルカール「ああ。出来る」 佐天「…………!!!」 守れるんだ…… 私でも、御坂さんを…… 佐天「やり……ます……」 ゴメンね。初春。 佐天「私……もう一度……!!」 だって。御坂さんは……私の…… 大切な友達だから…… アルカール「……分かった。君がそう言うのなら」 じっとなんて…… していられない……!! アルカール「持って行け」 そう言って、彼は何かを投げてよこした。 両手で受け止めて確認したけど、それが何なのか分からなかった。 佐天「? これは……?」 アルカール「私が使うつもりだったが、やはり君が使うんだ」 佐天「あの? コレって一体……」 アルカール「必要なものだ。走りながら話そう。すでに戦いが始まったようだ……」 佐天「!?」 御坂さん、どうか無事で。 私も、すぐに行きますから……! アルカール「行こう。露払いは引き受ける。君は友人の下へ」 佐天「はい!!!」 もう。記憶を失う恐怖なんて、頭の片隅に追いやられていた。 落ちこぼれのヒーローは、再び走り出した。 【次回予告】 遂に姿を現したブラッククロス四天王・妖魔アラクーネ!! アラクーネの予期せぬ攻撃に、美琴は窮地に陥る!! 急げ佐天! 急げアルカイザー! その魂が燃え尽きるまで!! 次回! 第三話!! 【凶悪! キャンベルビルの蜘蛛女!!】 ご期待ください!! 【補足という名の言い訳のコーナー】 キャンベルカンパニーについて。 原作でのキャンベルの会社はこんな名前じゃありません。 そもそも何の会社なのかよく分からないんですけど…… BUCCIが社名? アパレル関係の会社に偽装してるってことでいいのかな? なので当然ジュースは売ってません。 (裏解体は持っていないので確認できません。違ったら教えてください) 黒服+ロボットについて。 原作では黒服さんロボットじゃありません。 でも美琴に殺させないといけなかったので怪人にしました。 連れているのも「オートポリッシャー」ですが、折角だから学園都市の清掃用ロボにしました。 空気がフリーズバリア。 サガフロに出てくる状態異常です。 分かりにくいボケでした。
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1340.html
誰もが幻想殺しの死を知った。 名前は伏せられて、ニュースにもなったほどだった。 ただし、「上条当麻」が死んだのではなく、「学園都市最大の防御壁」が無くなった、と。 ローマ正教との戦争、そしてつい先月の「0930」事件。 上条当麻の死は、学園都市の防御力をガクンと下げてしまった。 「……というわけなのって、ミサカはミサカは10032号からの連絡を包み隠さず伝えてみたり」 打ち止め、と呼ばれる見た目10歳の少女が、白髪の少年に伝えた。 その横には黄泉川愛穂と芳川桔梗もいる。 ここは、黄泉川の家のリビングだ。 「ああ、それで小萌先生がここ最近、ずっと休暇を取ってるじゃん?」 黄泉川は納得したように言うと、うつむいてしまった。 「あの少年とは、9月の初めに地下都市で戦ったじゃん。正直、死んだなんて信じられないじゃん」 黄泉川はそう言ったあと、黙った。 「あンだ?そういやお前、アイツが死ンだって言ってから、色々と司令みたいなンを出してっけどよォ。そりゃなンでだ?」 「そ、それは……」 打ち止めは黙った。しばらく無言の状態が続く。 「……彼の死に、妹達が精神的ショックを受けて、暴走をし始めちゃったから止めてるだけだよってミサカはミサカは強がってみたり」 「はァ?」 白髪の少年は黙った。 彼がこの生活を手に入れたのは、何を隠そう上条当麻のおかげだ。 上条がこの白髪の少年に勝たなければ、この生活はなかった。 そして、今暴走し始めている妹達の命もなかった。 その場がまた、無言になる。 (オレには、何もできない……) 白髪の少年は、自分の悲しみを悟られないように、静かにリビングを後にした。 「まさか」 神裂火織は上条当麻の部屋で座り込んでいた。 (上条当麻が、亡くなるとは……) イギリスのローラが出した指令は、「治療部隊を派遣する」ということだった。 (間に合う訳が、ないのに……) 神裂は自らの頬を伝う、水滴に気付いた。 (涙……) 自分も相当なショックを受けていることを、神裂は悟った。 止めようと思っても、止まらない。 (お礼を、言い損ねましたね…) 神裂は天を仰ぐ。 (流石に、失礼なことをしてしまいました) それ以上に、神裂は思う。 (私は、この魔法名を名乗っていてよいのでしょうか) 救われぬものに、救いの手を。 魔法名に従うなら、今しかない。 でも、神裂にはどうすることもできなかった。 余談だがその頃、天草では、五和が自殺しようとしているのを建宮が必死に止めている最中だった。 上条刀夜、同じく詩菜、そして竜神乙姫の3人は学園都市の入口に立っていた。 上条当麻の、亡骸を見るために。 「当麻……」 声を出せたのは刀夜だけだった。 詩菜はずっと泣き続け、乙姫に関しては、泣き疲れて寝てしまった。 そんな3人の前を、身長の高い一人の少年が走っていく。 「これで、第一段階は成功や。あとは、西に逃げ切れば……」 青い髪でピアスを付けた少年は走っていってしまった。 しかし、3人にそれを気にする余裕はなかった。 その時、 「すみません。学園都市って、ここであってますよね?」 上条と同い年ぐらいの少年が、刀夜たちに尋ねた。 「そうですが……何かご用でも?」 刀夜が尋ねると、少年は頭をかきながら、 「いやあ、インターネットで知り合った友達が学園都市に居るって言ってて、今日会う予定なんですよ」 「そうなんですか……」 少年は刀夜の言葉に対して、こういった。 「まあ、ウチのクラブのサイトにコメントを残してくれてた人なんですけど、何度かメールで愚痴りあってたんですよ。んで、会おうってことになって」 刀夜は言う。 「でも、最近学園都市では、色々な現象が起こってるらしいですよ。気を付けてくださいね」 「ご忠告、ありがとうございます」 少年は、最後にこう言った。 「色々な現象、か。アイツが喜びそうな街みたいだな」 「ううぅぅ、白井さんがさぼったぁぁぁ」 パソコンのキーボードをカタカタと鳴らしながら、風紀委員の初春飾利が言う。 初春も、ショッピングモールで上条に助けてもらった経験があるが、名前を知らない初春は「上条当麻」がその少年だということを知らない。 「こういう時に限って、仕事は多いんですよぅぅぅぅ」 もう、半泣き状態の初春は「もう、いいですっ」と言って、仕事を一旦止め、とあるサイトにアクセスした。 (そういえば、今日はここの人と会うんだったなぁ) 仕事を終わらさないことには、後で固法の痛いお仕置きが待っている。 「ふぇぇぇ、あと一時間で終わらさないと……」 初春はキーボードを打ち続ける。 約束の時間に間に合わせるために。 待ち合わせは第七学区の常盤台中学の前。 時間まで、あと1時間ちょっとだ。
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/858.html
~第九学区・『黄色い家』~ 手塩「数が、多過ぎる。このままでは、弾丸(タマ)が尽きるぞ!」 黄泉川「持たせるじゃん!今救援を呼んだじゃん!!」 姫神「ッ!」 2 06分。芸術と工芸に特化した第九学区の学生街、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホがかつて作り上げようとした芸術家達だけの村に由来する『黄色い家』と名付けられたアトリエに四人は立て込もっていた。 特殊兵A「吸血殺し(ディープブラッド)を連れて投降しろ!そうすれば命だけは保証してやる!」 狭い路地を擦り抜け、所構わず据え置かれたオブジェを掻き分け、満月が照らす石畳を駆け抜ける敵兵。しかし―― オリアナ「イヤねえ?ここにこーんなイイ女がまだ三人もいるのにお目当てさんしか口説かないだなんて――」 ピッ!とワードレジスターの形を模した『速記原典』の内一枚を噛みちぎると ドオオオオオオン! 特殊兵A「がはっ!?」 手榴弾でも炸裂したかのように突入部隊の先陣を切った特殊兵を閃光と共に吹き飛ばす。 そしてその閃光の一撃から身を踊らせ飛びかかるは―― オリアナ「お姉さん拗ねちゃうわよ?」 バキィッ! 特殊兵B「ぐべぇっ!」 急角度に跳ね上がる右ハイキックで特殊兵の顎骨を蹴り砕くオリアナ=トムソン 黄泉川「生徒じゃないなら――キッツいお仕置き、お見舞いするじゃんよ!」 ゴッ!と全身を覆う防盾をハンマー代わりに横殴りにフルスイングする黄泉川愛穂 手塩「だから、足を、すくわれる!」 ガウン!ガウン!とオートマチック拳銃で物影から四人を伺っていた特殊兵の一人の右腕と右膝を撃ち抜く手塩恵未。 ステイル=マグヌスが魔術師を引きつけている間に少しでも距離を、時間を稼がねばならない。だが―― 姫神「(どうすれば。私は。私はどうしたらいいの)」 アトリエのマホガニーデスクの下に身を隠し、頭を庇いながら姫神秋沙の顔色は蒼白になっていた。 耐えざる緊張、絶えざる銃声、堪えざる重圧に押し潰されてしまいそうだった。 姫神「(また。私のせいで。誰かが。命を落としたら)」 三沢塾では死に絶えていた感情が、上条当麻との出会いで、月詠小萌との巡り会いで、吹寄制理との語り合いで、結標淡希との触れ合いで芽吹いた感情が寒風に晒される。 姫神「(お願い。誰も死なないで。お願い。お願い)」 今や姫神にとって、周囲の誰かが自分のために命を落とすという現実はあの寒村での惨劇を想起させる。 吸血鬼であろうと人間であろうと、自らの『吸血殺し(ディープブラッド)』が招く災厄がもたらす『死』は。 姫神「(――淡希――)」 ギュッと結標淡希の赤髪から形見分けのように引き取った髪紐を握り締めながら姫神は耐えた。 破綻しそうな叫び声を、決壊しそうな涙を、辛うじて踏みとどまる。 微かに香るクロエの残り香、つい数時間前に離れたばかりなのに、今生の別れを告げたばかりなのに―― 姫神「(無事で。いて。逃げて。生きて。淡希)」 姫神にはオリアナやステイルのような魔術も、黄泉川や手塩のような戦闘技術も使えない。 頭を低くし、背を屈め、声を出さないという『耐える戦い』しか出来ない。 避難所で決めた、姫神秋沙の戦いはまだ終わらない。終わらせる事など出来はしない。 『生きる』のではなく『死なない』事…それだけが今姫神に出来る全てだった。 ~第七学区・学舎の園~ 結標「秋沙…!」 2 07分、結標淡希はとある高校から旧学舎の園まで座標移動を繰り返しながら第九学区を目指す。 火を飲み込む思いで、無尽蔵とすら思える敵の進軍の真っ只中を突っ切る! 魔術師d「屋根だ!狙え!一人も生かして出すな!」 轟ッッ!とミサイルのような氷柱が円陣を描いて結標の周囲を旋回する。 同様に地中海風の石畳を直走る魔術師が、次々と氷飛礫を雨霰とばかりに結標目掛けて撃ち放つ! ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ! 結標「いい加減しつこいのよ!私の道に――立ち塞がらないで!!」 座標移動・座標移動・座標移動―! 窓ガラスを粉々に打ち砕く氷の弾丸を 石造りの壁面を軽々と貫通する氷の矢を 屋根瓦に易々と風穴を開ける氷柱を 繰り返す空間移動で 地面を転げ回って 物影に飛び込んで死に物狂いで回避する! 結標「キリがないわ!ゴキブリの方がまだ慎みがあるわよ!」 既に避難所を覗いて第七学区の至る所に『原石狩り』の魔術師が、『能力者狩り』の傭兵が次から次へと侵攻してくる。 それだけならまだ良い。問題は――その後に次から次へと虚空より出現してくる―― 魔術師d「チャリオッツだ!チャリオッツを投入しろ!一気に踏み潰せ!」 魔術師e「“六枚羽”を展開させよ!制空権を奪って虱潰しだ!」 魔術師f「テルス=マグナ=オルデン(白銀近衛騎士団)!押し潰せ!」 見た事のない白銀の戦車が瓦礫の山すら押し潰し、見た事のある無人戦闘ヘリが宙を舞い、見たら忘れられない白銀の騎士が次々に学舎の園を埋め尽くして行く…! 結標「ゴキブリじゃなくてネズミ算式ね…こっちは!時間がないのよ!」 結標は知らないが、垣根帝督が撃破し、ステイル=マグヌスが交戦している今はその白銀錬成(テルス=マグナ)は大幅にその力を削られている。 しかしそれでも一個中隊を下らない軍勢に、結標は―― 結標「―――!!!」 迷う事なく、地面を蹴った ~旧学舎の園~ 安っぽく命を懸けて、馬鹿っぽく身体を張る。 闇の底(暗部)に身を置いていたクセに、偽善者ぶって避難所のボランティアまでやってる。 誰かの笑顔って、お金より尊い物? 感謝されるのって、気持ち良い事? 恋をするのって、幸せな気持ち? わからない。 わかりたくもない。 理解しようとも。 理解したいとも思わない。 そもそも、興味が無い。 そもそも、関心が無い。 他人がどうとかよりも。 自分がどうしたいかの方が大事。 なのに。 何で一度も言い訳しないかな。 あんな酷い事言われて、何で続けられるかな。 ああ――そうか 馬鹿なんだ。 頭が悪いんだ。 レベル4の癖に。 ああ――そうか 馬鹿なんだ。 私も。 ―――――――結局―――――― ――「みんな馬鹿ばっかって訳よ!!」―― ~第七学区・学舎の園2~ ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!! 結標「!?」 魔術師def「「「!?」」」 結標が地面を蹴り出した瞬間、侵攻していた戦車部隊の先頭部分が『爆破』された。 キャタピラー部分が吹き飛ばされ、底部から炸裂した爆発が下から上へ吹き抜けて炎上して…! 魔術師d「――対戦車地雷だと!?引け!この瓦礫はカモフラージュだ!前進止め――」 しかし――それを見やっていた少女 「ブービートラップって知ってる?」 闇夜の中にも光輝く金糸の髪をちょこんと乗せたベレー帽 「この国じゃ“馬鹿”とか“間抜け”って意味なんだけど」 学園都市ではやや珍しい碧眼を、飛びっきりの悪戯が成功したように輝かせ 「私も麦野から馬鹿とか間抜けとか詰めが甘いとか口が軽いとか言われるんだけど――結局、爽快な訳よ」 伸びやかな脚線美を振り上げ――踏み鳴らす!!! フレンダ「自信満々の馬鹿(マヌケ)を嵌めたこの瞬間が最っ高ーに快感な訳よ!!!」」 ドガンッ!ドオンッ!ボオンッ!ズガアアアアアアアアアアン!! 魔術師def「「「何だとオオオオオオオオオオオ!!?」」」 爆発、爆破、爆裂。フレンダが手にした着火装置をオンにした瞬間、学園都市の科学技術を結集させた対戦車地雷が次々に戦車部隊を誘爆させて行く! フレンダ「あっはっはっは!どや顔で突っ込んで来た自慢のやわらか戦車が木っ端微塵!って訳よ!」カチッ ズガン!ズガン!ズガンズガンズガンズガンズガンズガン!!! さらに廃虚と化していた学舎の園の地中海風の建築物にまで爆弾を仕掛けていたのか、次々に石造りが雪崩となって後続の戦車隊の行く手を塞ぐ! 結標「貴女…どうして…」 突如として始まった、フレンダの手による火祭りに茫然自失気味に口を開く結標。 それをそっぽを向きながら狂乱状態の戦車隊を見やり―― フレンダ「どうしたもこうしたも、避難所外部の守りは“アイテム”の仕事って訳よ。そういう貴女こそどうしてここにいる訳よ?」 そう。避難所の外の『狩り』はアイテムが担当する。オリアナが手渡したハザードマップを元に、フレンダは待ち構えていたのだ。 突如として現れた白銀錬成の騎士団に出鼻こそ挫かれたものの。 結標「あ、貴女には関係な――」 フレンダ「フレンダ」 結標「―――?」 フレンダ「私の名前。結局、私達お互いの名前も知らない訳よ」 そう…四日目に無理矢理組まされた時は険悪を通り越して最悪の空気のまま物別れに終わったのだ。 お互いの名前すら知ろうとしない、暗部同士の流儀。 結標「――保健所に連れて行かれそうな馬鹿猫を奪り還しによ、フレンダさん…私は淡希、結標淡希」 フレンダ「ふーん。変な名前――」 魔術師d「キサマらァァァァァア!!」 そこに、戦車隊の大半を壊滅させられた魔術師が 結標「危な―――」 魔術師d「死―――」 目を見開く結標目掛けて何やら魔法陣の描かれたカードを取り出す―― ズギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! 「背中ガラ空きでしょうが、この馬鹿」 …より早く、その魔術師の上半身は闇夜を切り裂いて放たれた… 結標「…えっ…」 アイスブルーの閃光により『食いちぎられた』。まるでライオンに頭から喰われたように フレンダ「馬鹿だねー…結局」 彼方から放たれた光芒の御手…有象の障壁など、無象の防壁などものともしない――魔弾の射手 麦野「フーレンダぁ…」 レベル5第四位『原子崩し』麦野沈利 絹旗「フレンダ超油断大敵です」 レベル4『窒素装甲』絹旗最愛 滝壺「ふれんだ、余所見はめっ」 『八人目のレベル5』滝壺理后 フレンダ「結局――“アイテム”は一人じゃない訳よ」 そして――フレンダ 学園都市暗部『アイテム』…再集結―― ~第七学区・学舎の園3~ 結標「(これが)」 赤々と燃え盛る学舎の園、口の中の飲み込めない唾液、鼻につく火薬と人間の焼ける匂い、産毛がチリチリと焦がれるような感触、阿鼻叫喚の断末魔。 結標「(これが―――アイテム)」 男所帯だった『グループ』とは違い、『アイテム』は噂に聞いていた通り女所帯だった。 だが実際目にすると――その若さ、統一性のなさ、そして―― 麦野「パリイ!パリイ!パリイ!てかァ?笑わせんじゃねえぞ糞袋が!!戦争ごっこのケンカ程度でこの街の闇(暗部)をどうにかできると思ってんのかァ!!?」 暗部に身を置いていた結標ですら目を背けたくなるような残虐性に戦慄する。 特に今、『元リーダー』らしい麦野沈利の『制裁』は群を抜いて凄惨だった。 小萌と約束した焼き肉の時に思い出したら嘔吐を催すほどに。 フレンダ「今日の麦野は気分ルンルンな訳よ!一人生かして帰すみたいだし。あんなんなっちゃってるけど」 結標「…あれで機嫌悪かったらどうなるのよ…」 フレンダ「大丈夫大丈夫!だって今日――」 麦野「フーレンダぁ…余計な事言わないの…」 3 36分。アイテムと結標淡希の一時的な共闘によって侵入して来た敵軍は全滅した。 戦車部隊はフレンダが 戦闘ヘリ部隊は麦野が 騎士団は絹旗が 魔術師は結標がそれぞれ撃破した。 同時に敵の包囲網も解け、後は突破を残すのみ。 結標「…ありがとう、私だけじゃ突破出来なかった」 滝壺「避難所は、みんな助け合いだよ」 絹旗「超ついでです」 フレンダ「目障りだったんで一緒に吹き飛ば…人助けって訳よ!」 麦野「フレンダ、アンタしゃべるととことんダメな娘ね…」 結標「(………………)」 結標もふっ…と思う。もし避難所で水先案内人などという仕事をしていなければ、今頃自分はどうなっていただろうか。 白井黒子と出会わなければ、あの場から月詠小萌や生徒達を救出する事など出来なかった。 削板軍覇が迎え入れてくれなければ、そもそも水先案内人になどなろうとしなかっただろう。 フレンダとぶつかり合わなければ、自分は今この場で敵陣を突破する事など不可能だった。 木山春生と話し合わなければ、姫神秋沙への恋心を認められず、今の自分などありえなかっただろう。 黄泉川愛穂と差し向かなわなければ、誰かを守るために、もう一度立ち上がろうなど思いもよらなかった。 そこへ―― 『ヒトミニウツス ミライニダッテ イツモツヨクテ コンナキミハボクサ キミハマダマブシイケド オナジキモチデ コノテノバシテ~♪』 鳴り響く、着信音 結標「…出て良いかしら?」 アイテム「「「「ご自由に」」」」 携帯を取り出し、開かれた画面 発信者――『ナンバーセブン(削板軍覇)』―― ~第七学区・全学連復興支援委員会本部~ 削板「オレだ!!」 結標『着信見ればわかるわよ。それで何かしらナンバーセブンさん。私今忙しいんだけど』 雲霞の湧き出る敵対勢力が避難所目指して侵攻してくる。 削板「うむ!頼みと言うのは他でもない!」 減らしても減らしても止む事のない魔の手 削板「お前に、迷子の案内をしてもらいたい!さっきアンチスキルの黄泉川先生から援軍要請があってだな――」 結標『ちょっ、ちょっと待ってちょうだい!私今――』 何度『幻想(ぜつぼう)』をひっくり返しても、何回でも押し寄せてくる『現実』 削板「――迷子は第九学区を抜けて第二十三学区を目指してる。女の尻ばっかり追い掛けてる根性無しどもから逃げながらだ!!」 結標『―――!!!』 単騎で軍隊と渡り合えるレベル5が全員結集してすら、支えられるギリギリの限界点。 削板「水先案内人!仕事だ!迷子(姫神)を案内(導いて)してやれ!右も左も敵ばかりだが――根性でなんとかしろ!!」 結標『…!貴方…どこまで知って…』 削板「返事はハイかイエスだ!!」 夜明けまで持ちこたえられるかなど誰もわかりはしない。敵も味方も誰も彼も。 結標『――やってやるわよ!!根性で!』 削板「よしよく言った!!お前の根性、確かに受け取ったぞ!!」 通話を切る。携帯をしまう。戦う相手は倒せば終わる軍隊などではない、敵は終わらない絶望(げんじつ)だ。 ~避難所・表口~ この世界に英雄(ヒーロー)はいない。 いるのは 災誤「吻ッッ!!」 寮監「破ァッ!!」 鍛え抜かれた身体で生徒を守るべく兵士達に拳を振るう大人。 月詠「もっと重いものを!このままでは破られてしまうのです!」 戦う力がなくとも、バリケードを築き上げて生徒達の盾になろうとする教師。 禁書「杜撰だね!外側にばかり意識が向いているから簡単に割り込まれるんだよ!」 謎の力で魔術師の魔法から避難所の狙いを逸らせるシスター 初春「だ、第27番カメラに異常!来ます!」 固法「私が行くわ!初春さんはここにいて!」 鉄装「わ、わっ、私だっています!行きます!」 白井「出ますわ!…これで最後ですの!!」 戦えない生徒達の代わりに闘う風紀委員(ジャッジメント)と警備員(アンチスキル) 佐天「て、てりゃー!!」 金属バットを振り回して戦う無能力者(レベル0) 坂島「こ、ここは通さないぞ!!く、くっ、来るな来るなー!」 ハサミに代わって日曜大工のトンカチを握って虚勢を張る美容師 黒妻「スキル」 郭「アウトを」 服部「舐めんじゃねえええええええええええええええ!!」 侵入して来た兵士を袋叩きにして放り出すスキルアウト(武装無能力者集団) 絶対等速「やっとこ見つけたオレの居場所に入ってくるんじゃねええええ!!」 刑務所帰りの能力者までいる。 芳川「この中に隠れなさい。大丈夫、ここの守りは甘くないから」 木山「みんな、終わるまで出てきちゃダメだ」 吹寄「大丈夫、お姉さんがいるからね」 子供達を地下収納室へと隠れさせ、そこを守る女性達もいる。 心理掌握「――――――」 心理定規「えげつない力ね。敵が可哀想になるわ」 人間の深層心理に働きかけ、自我と人格が崩壊するような心の傷を広げて兵士達を昏倒させる少女達―― この世界に、ヒーロー(英雄)はいない。 ~避難所・裏口~ 雲川「お馬鹿の大将」 削板「おお?」 体育館の裏手より、迎撃に移るべく歩を進める削板の背にかかる声音。 非常用避難口のライトグリーンの光の下、カチューシャにまとめられた髪を退屈そうにいじるは…全学連復興支援委員会副委員長、雲川芹亜。 雲川「行くの?」 削板「決まってるだろう!オレは根性を決めたぞ!女が根性を見せたってのに、男のオレが根性を見せん訳にはいかん!」 雲川「…普通リーダーはどっしり構えるもんだと思うんだけど?」 削板「机の前であれこれ頭を悩ませるのはお前に任せた!オレに出来る事は身体を使う事だけだ!なんせここが――ここが根性の見せ所だからな」 削板は振り返らない。鳴り響く轟音がパラパラと体育館の壁から粉を散らす。 その背を見つめていた雲川は、リノリウムの床に落ちる影に視線を落として 雲川「…お前みたいなお馬鹿な大将でも一応居てもらわなきゃ困るんだけど。だから――」 雲川の表情は俯き加減であり、薄暗がりで伺う事は出来ない。しかし削板には背中越しにも 雲川「だからとっとと片付けて――さっさと帰って来て欲しいんだけど」 雲川がどんな表情をしているのか――見ずともわかるようで。 削板「任せとけ!!!」 そう言って削板は駆け出す。外に広がる『戦場』へ向かって。 一度も――そう、今の表情の雲川を見まいと、見られたくはなかろうと。 雲川「…戻ってきたら、覚えておけバカ大将。言いたい文句が山ほどあるんだけど。溜まってる書類、全部押し付けてやりたいんだけど」 そして…雲川は独り言ちた。 雲川「――前ばっかり見てないで――たまには振り返って欲しいんだけど」 ~削板軍覇~ 削板「だァァァらっしゃァァあああああああああああああああああああああああああああ!!」 削板軍覇は駆け抜ける。 グラウンドを、敷地内を、残す所1000を切った白銀錬成の兵団目掛けて。 削板「最低だな、オマエら。やる事為す事闇討ち紛いの根性無しめ。たかだか“能力者狩り”のために――オレ達にケンカを売るってか」 根性(なかみ)のない白銀の騎士などものの数ではない。 何故ならば――削板軍覇は知っているからだ。 削板「見せてやるよ!本物の根性ってヤツを!!」 ――かつて魔術サイド全てを敵に回し―― 削板「大それた理由なんかいらねえ!」 ――学園都市最暗部にたった一人で喧嘩を売り―― 削板「曲がらず!腐らず!正面を行く男は!!」 ――さらに自分を打ち破った男――『北欧玉座のオッレルス』を知っているからだ。 削板「赤の他人だろうが…何だろうが!」 オッレルスの力は、強さは、優しさは、こんなものではなかった。 削板「傷つけられた女の子のために立ち上がる事が出来るんだ!!」 そう、この世界に英雄(ヒーロー)はいない。 いるのは、傷付きながらも今日を生きようとする者達 痛みに耐えながら明日を目指す人々がいるだけだ。 削板「――来い!!さもなきゃこっちから行くぞォォォォォォ!!!」 英雄(ヒーロー)に救われなければならないほど――自分達の世界は、弱くなどないと 削板「お 前 ら の 根 性 叩 き 直 し て や る ! ! ! ! ! ! 」 そして――削板は敵軍の真っ只中へ、敵陣の真っ正面から、敵兵を真っ向から打ち破って行く。 『世界最高の原石』と『人工の白銀』の戦いへと―― ~第九学区・『黄色い家』~ 黄泉川「いっ…生きてるじゃん?」 手塩「死、死んでは、いない」 4 16分…黄泉川愛穂と手塩恵未は追っ手を全滅させ、黄色い壁面から屋根の上半分が消失するまで戦い抜き… 今、二人は流血の後も生々しい満身創痍の状態で瓦礫の山に寄りかかっていた。 黄泉川「あ…あいつら…無事空港…ついたじゃん?」 手塩「恐らく、な。そうだと、信じ…たい」 姫神秋沙をオリアナ=トムソンに託し、二人は今頃第二十三学区まで辿り着いているかと…二人は言った。 絶え絶えでの青息吐息の中…黄泉川はニカッと笑った。 黄泉川「これで…あいつらに顔向け出来るじゃん?」 壊滅させられた第十五学区のアンチスキルの隊員達の顔が浮かぶ。 彼等は『被害者』ではなく『殉職者』と黄泉川は呼びたかった。 同時に自分に問い掛ける。彼等の無念を万分の一でも晴らせたかと。 手塩「そう、ありたい、ものだな」 徐々に白み始めようとしている初夏の夜明けを探すように手塩は空を仰ぐ。 暗部にいた頃、眩し過ぎて見上げられなかった空を、疲労困憊の中で―― フッ… 手塩「…ああ」 見上げた夜明け前、空を舞う赤髪、あの時と違う二つ結びでは無くポニーテールを靡かせ、空を見えない階段でも駆け上がるような…少女の姿が見えた 手塩「全く、眩しいな」 かつて少年院で対峙した時と似た露出度の高い服装。忘れようにも忘れられない、自分達を打ち倒した…あの能力者…名前は確か―― 黄泉川「なに寝ぼけてるじゃん?寝たら永眠確実じゃん」 そう手塩がかつて激闘を繰り広げた少女がテレポートして行った後ろ姿を見やっていると…黄泉川が肩を貸して手塩を立ち上がらせた。 手塩「そう、だな、もう、夜が明けるのに、寝てはいけないな」 そして二人の女性(アンチスキル)は互いに肩を貸し合いながら瓦礫の中を歩み始める。 黄泉川「さっ、行くじゃん」 手塩「ああ、行こう」 間もなく昇る、朝陽に向かって――
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/409.html
――――― 学校 教室 ガラララララ 青髪「お~、カミやん~おはよ~さん~」 上条「お~、お前ら早いな」 土御門「おはようにゃ~」 上条「そう言えば聞いたか? 文化祭が後2週間で始まるんだってよ」 青髪「……」 土御門「……」 上条「あ、あれ? この空気は何ですか?」 青髪「何言ってるんや? カミやんここ学園都市なのに文化祭なんて無いやん」 上条「は?」 土御門「そうぜよ、カミやん。文化祭なんて元々ないぜよ」 上条「(結標さん?)そうだっけ?」 土御門「そうぜよ、大覇星祭でも色々大変なのに、これ以上苦労を背負うことはしないぜよ」 上条「そうなのか……」 青髪「でも文化祭があったら僕は文句は無いのにな~」 上条「文化祭か~」 土御門「どうしたにゃ~」 上条「文化祭と言えば……何だ?」 土御門「そりゃあ喫茶ぜよ」 青髪「僕もそれに同意!」 土御門「メイドが付いたら尚よしにゃ~」 上条「土御門、お前の妹メイドじゃねぇか! それ以上贅沢言うんじゃねぇ!」 土御門「分かって無いにゃ~、素人のやるメイドにも味があるぜよ」 青髪「カミやんの言うことにも賛成やけど、土御門の言う事もわかるわ~。慣れない感じが何とも言えないんや! 水とかこぼしちゃったり!」 上条「はっ! なるほど! 慣れない作業に戸惑うなんちゃってメイド! そこに付け込む悪質な客!」 土御門「あ、すみません」 青髪「おい、姉ちゃんどうしてくれるんだ?このズボン高かったんやで?」 土御門「い、今すぐお拭きします」 青髪「今拭いたって遅いんよ、ほらここ! シミになってるやん」 土御門「じゃ、じゃあ弁償します…幾らですか?」 青髪「10万や」 土御門「そ、そんな…そんなお金払えません」 青髪「いやいや~立派なもん持ってるやん」 土御門「え……そ、それはどう言う意味ですか?」 青髪「こういう意味や!」 土御門「あ~れ~」 上条「なんと打ち合わせ済み!?」 土御門「カミやんはどんなのやりたいんぜよ?」 上条「俺? う~ん、無難に露店かなぁ~」 青髪「露店か~」 上条「そうですよ、露店……焼きそばとかたこ焼きとか作りてぇな~」 土御門「気持ちは分かるぜよ」 青髪「まぁ文化祭があればの話なんやけどね」 キーンコーンカーンコーン 上条「そろそろ席に着くか」 土御門「じゃあまた後でにゃ~」 青髪「僕はこのまま立ってて小萌先生に怒られるんや!」 上条「……、勝手にしろ」 ガララララ 小萌「みなさ~ん、おはようございま~す」 皆「おはようございま~す」 小萌「早速ですが、一大ニュースがあるんですよ~」 上条「(青髪は無視ですか!?)」 小萌「学園都市文化祭の準備をしないといけない事なのです!!」 皆「!?」 吹寄「え? で、でも先生、文化祭って今までありませんでしたよね?」 小萌「はい、ですから今年から試験的にですよ~。なんでも中央のお偉いさんが決定したらしいですよ~」 土御門「カミやんの言ってた事本当だったぜよ(アレイスターの仕業かにゃ~?)」コソコソ 上条「だろ?」コソコソ 小萌「それで、このままタイムアウトも困るので、今日から文化祭まで準備のため授業は無し、と言う校長の命令がありましたのです!!」 上条「え? 本当ですか!?」 小萌「はい、本当なのですー!」 皆「「「「「お~!!」」」」」 青髪「よっしゃ! これで高校生としての憧れの行事を堪能できるんや!! 夕日が射す教室で二人っきりで作業する俺達! そこから始まるラヴストーリーや!」 土御門「泊まり込みでの作業も忘れちゃいかんぜよ」 上条「いや、問題ははこっからだ」 土御門「まぁ、せいぜい頑張るんだなカミやん」 小萌「はい、ということでまずはクラスの出し物を決めたいと思うのです、進行は吹寄ちゃんお願いしますね~」 吹寄「はい、じゃあ書記を……」 姫神「私がやります。」 吹寄「ありがとう」 吹寄「じゃあなにか、案がある人は挙手を……」 青髪「ハイハイ!!」 吹寄「どうぞ」 青髪「やはりここは、メイド喫茶がいいと思いまぁす!」 姫神「メイド喫茶。」カキカキ 吹寄「そう……まぁ無理だと思うけど……」 上条「即答!?」 吹寄「だって、ここにはメイド養成学校があるんでしょ? その学校がやるに決まってるじゃない」 青髪「で、でも素人がやるメイドにも味があるんや!」 吹寄「私がさっきの会話聞いてなかったと思うの?」 青髪「……」 上条「おい、聞かれてたぞ」コソコソ 土御門「俺はメイドだったから関係ないにゃ~」コソコソ 上条「いやいや、そういう問題じゃないだろ!?」コソコソ 吹寄「まぁ、候補には入れとくわ……じゃあ他に」 上条「はい」 吹寄「どうぞ」 上条「ここは露店なんていいんじゃないでしょうか?」 小萌「あ、言い忘れましたけど、これも大覇星祭みたいに点数がありますよ~」 吹寄「う~ん……却下」 青髪「カミやんも即答されてやんの」 上条「何で!? 僕は明確な説明を求めますよ!?」 吹寄「それ普通じゃない?」 上条「まぁそうだけどですね?」 吹寄「点数を取るなら、もっと珍しい出し物がいいじゃないかしら?」 姫神「露店。」カキカキ 吹寄「まぁ結局は多数決で決めるんだけどね」 土御門「は~い、は~い」 吹寄「どうぞ」 土御門「じゃあ、オーダーメイドカフェがいいぜよ」 上条「言ってる事違うじゃねぇか、メイドカフェじゃねぇのかよ」 青髪「裏切り者~!」 吹寄「オーダーメイドカフェ?」 土御門「そうそう、お客が全部決めれるシステムっていいと思うにゃ~」 吹寄「全部決める?」 土御門「そうそう、誰にどんな服でどんな接客して欲しいかを決めれるみたいな感じぜよ」 吹寄「なるほど……」 ざわ…ざわ… 土御門「男女楽しめるって感じかにゃ~」 青髪「これなら男女構わず楽しめるやん!」 上条「おい、お前も寝返るの早いな」 姫神「オーダーメイドカフェ。」カキカキ 吹寄「なるほど……、他に案がある人いる?」 皆「……」 吹寄「じゃあ、多数決で決定しましょう。まず……」 吹寄「それじゃあ、うちのクラスはオーダーメイドカフェに決定します」 パチパチパチパチ 吹寄「では、早速内容を詰めて行きましょう」 吹寄「それじゃあ……まずは服についてね」 小萌「それは私に任せて下さい、知り合いに頼んで色々みつくろって来るのですよー」 吹寄「小萌先生ありがとうございます」 吹寄「それじゃあ、服については先生に任せるとして、私達は内装を作って行きましょう」 皆「は~い」 吹寄「じゃあ……まずは……」 小萌「あ、土御門君と青髪君は先生の手伝いです~」 青髪「ハイハイハイ! 僕先生のためなら何でもやるで~!」 土御門「そう言う訳だカミやん」 上条「あぁ、小萌先生に迷惑かけんなよ?」 土御門「それは、青髪に言うべきぜよ」 青髪「ハハ、ダイジョウブ、ダイジョウブ~」 上条「本当かよ……」 小萌「と、言う訳ですよ~」 黄泉川「任せるじゃん」 青髪「じゃあ俺達は?」 小萌「荷物持ちです~」 土御門「まぁ、薄々感づいてたぜよ」 黄泉川「まぁ、あんた達見るからにでかいからじゃんよ」 青髪「でかくても、モテないんや!」 黄泉川「それはあんたに責任あるじゃん? てかあんた怖いじゃん」 小萌「まぁ確かに。身長が180ある上に青髪ピアスですもんねぇ~」 土御門「自業自得ぜよ」 青髪「お前には言われたく無いわっ! 金髪サングラスとかどこの外人かなんや!」 土御門「俺は義妹がいるから充分ぜよ」 青髪「あ~っ! 羨ましい! 俺にも義妹もしくはそれに準じる肉親が欲しい!」 黄泉川「(妹……ねぇ)そう言えば、知り合いに不登校的な奴が居るんだけど、そいつも仲間に入れてやってくんないじゃん?」 小萌「学校的には問題ですがOKですよ~、やっぱり人が多い方が盛り上がりますからね~」 青髪「で、その子は女の子なん?」 黄泉川「勿論じゃん」 青髪「ヤッホー! やっとボクにも出番がやって来ましたよ! 人見知りなその子の面倒を見る俺!そして始まるラヴストーリー!」 土御門「問おう、ラヴストーリーはお前の何ぜよ」 青髪「青春……かな……」 黄泉川「じゃあちょっと待ってて、電話して来るじゃん(何、こいつら……小萌のクラスが羨ましいじゃん)」 Prrrr,Prrrr 一方通行「あァ、何だよ」 黄泉川「あぁ、一方通行。暇じゃん?」 一方通行「何でそんな事言わねェといけねェンだよ」 黄泉川「じゃあ、今から言う所に来るじゃん」 一方通行「あァ? 何でだよ、それに今打ち止めが居るから無理だァ」 黄泉川「一緒でも問題無いじゃんよ」 一方通行「はァ?」 黄泉川「とにかく来るじゃん」 一方通行「チッ……で? どこに行けばいいンだよ」 黄泉川「第七学区の……」 Prrrr,Prrrr 黄泉川「もしもし」 芳川「久しぶりだね」 黄泉川「早速何だけどさ、なんか服持ってないじゃん?」 芳川「早速すぎるわね……で? 服ってどんなの?」 黄泉川「ん~、例えばメイド服とかそういう感じのじゃん」 芳川「私を何だと思ってるの? そんな服持ってる訳……」 黄泉川「どうしたじゃんよ?」 芳川「(確か……皆、研究費で妹達に着せる服を買い占めてた気が……)」 黄泉川「お~い」 芳川「(その後……没収して家に持ち帰ったわね……)あるかも知れないわ。どこに持って行けばいいの?」 黄泉川「学校に直接でいいじゃん」 芳川「わかったわ……それじゃあ一時間もあれば着くから」 黄泉川「待ってるじゃん」 黄泉川「って事だから、校門で待つとするじゃんよ」 小萌「わざわざありがとうですー」 黄泉川「いいってことじゃんよ」 小萌「そう言えば、黄泉川先生のクラスは何するんですか?」 黄泉川「……」 小萌「?」 黄泉川「歴史じゃん」 小萌「え?」 黄泉川「だから、歴史。学園都市の歴史とそれに伴う科学技術の進歩だってじゃん」 小萌「……」 土御門「マジかにゃ~」 青髪「うわ~マジな内容や~」 黄泉川「何じゃん!? その憐れみの目は! 私だってバカやりたいじゃん! 騒ぎたいじゃん! でも私のクラス真面目すぎるじゃんよ!」 黄泉川「しかも、皆真面目だから私居なくても成り立つじゃん……」 小萌「え、えっと」 青髪「ご愁傷様~」 土御門「励ましの言葉も見つかんないぜよ」 黄泉川「それ以上言うんじゃ無いじゃん!」 上条「買い出しって……なんで俺が……」 吹寄「役割分担なんだから文句言わないの! 他の人は食材の買い出しとか行ってるんだから」 上条「まぁそうだけど……で、俺達が買うのは?」 吹寄「色紙とか、工具とか、装飾を作成するための材料ね」 上条「また……、重そうな物ばかりだな……」 吹寄「ほら、文句言わずについて来る」 上条「へ~い、分かりましたよ~」 ――― デパート 上条「え~と、まずは色紙だな」 吹寄「へぇ~色紙にも色々種類があるのね」 上条「何だこれ……」 吹寄「え~と、見るだけでリラックスする色紙……」 上条「いやいや、そんなの別に色紙じゃなくても良いじゃん!? 何で色紙をチョイスしたのか聞きたい!」 吹寄「そうよね~、マッサージ器で十分よね」 上条「あれ? そう言えばあのヘンテコマッサージ器まだ使ってんのか? ……ってその拳を静かに! そして穏やかに下ろしてくだい!? ほ、ほら、し、深呼吸、深呼吸」 吹寄「な/// 何思い出してんのよ!///」カアァ 上条「開いてはいけない記憶の扉が開いちゃったようですよ!?」 吹寄「元はと言えばあんたが急に教室に入って来たから! ……、こうなったら思いっきり殴ったら記憶飛ばせるかしら」 上条「今何を口走りましたか!? その痛みしか生み出さない怒りを早く沈めて! これ以上記憶が飛ぶのは勘弁ですよ!?」 吹寄「これ以上って、大したことなんて覚えて無いでしょ!」 上条「いやいや、覚えてますとも! 再現しようと思えばあの大きさだって……ひっ!?」 吹寄「やっぱり、忘れさせないといけないようね」 上条「何物騒なこと呟いてるんですか!?」 上条「お、重い……」 吹寄「何か言った?」 上条「いえ、何にも言ってませんよ?」 吹寄「えーと、次は」 上条「まだあるんですか!?」 吹寄「何? 文句ある?」 上条「何もありません」 吹寄「色紙買って、ハサミ、カッター、のり、ボンド、板、工具も買った……」 上条「……、もう殆ど買ったんじゃないか?」 吹寄「……」 上条「……」 吹寄「そ、そうね、じゃあさっさと帰りましょう」 上条「あ……(あそこは……雲川先輩と行った所だな……)」 吹寄「何? なんか買い忘れた物でもあるの?」 上条「あぁ……」 吹寄「なら、早く行きましょう?」 上条「いいのか!?」 吹寄「あんたは私を何だと思ってるのよ!」 吹寄「(何ここ……キーホルダーに、小物……こんな所に何の用なの?)」 上条「(あった、あったこのキーホルダーだな)」 吹寄「(ウサギのキーホルダー!?)ね、ねぇ」 上条「ん? どうした?」 吹寄「そのキーホルダー自分で使うの?」 上条「んな訳無いですよ!? ウサギのキーホルダー付けてる知らない男が居たら流石の上条さんでも引きますよ? ちょっとお世話になった人にあげるだけです」 吹寄「ふ、ふ~ん(お世話になってる人は女みたいね……)」 上条「じゃあちょっと買って来るから待っててくれ」 吹寄「(これは……その人も味方に引き入れるべきね)」 吹寄「(あ、このキーホルダー可愛い……)」ジーッ 上条「なぁ」 吹寄「何かしら?」 上条「吹寄は何か欲しいのは無いのか?」 吹寄「な、なんで?」 上条「いや……そう言えば吹寄に迷惑かけて来たなぁ~ってしみじみ思ってさ……(それに、多分今日から文化祭まで迷惑掛けるよな~)」 吹寄「い、いいわよそんな」 上条「遠慮するなって」 吹寄「……」 上条「ほら」 吹寄「え……じゃあ……これで……///」 上条「了解、ちょっと買って来るから待っててくれ」タタタッ 吹寄「何よ……急にそんなこと言い出して……恥ずかしいじゃない///」 上条「ほら、後改めて言うけど、これからも委員長としてよろしくな?」 吹寄「あ、当り前じゃない! あんた達が嫌だって言ったって委員長の座は渡さないんだから!」 上条「安心しろ、嫌だなんて思った事は無いぞ? 多分クラス全員もな」 吹寄「(な、急にどうしたの/// )」 上条「ほら、皆待ってるから早く帰ろうぜ」 吹寄「え、えぇ///」 一方通行「ここか……」 打ち止め「ねぇ、急にどうしたの? ってミサカはミサカは聞いてみるよ!」 一方通行「分かんねェ……俺も黄泉川に急に呼ばれらだけだからなァ」 黄泉川「お、一方通行じゃん」 一方通行「おい、急に呼び出してなンも用」 打ち止め「久しぶり! ってミサカはミサカは抱きつくんだよ」 黄泉川「おぉ、いい子にしてたか?」ナデナデ 土御門「おう、一方通行」 一方通行「あァ? って土御門じゃねェかァ」 青髪「なぁなぁ、あの娘知り合いなん?」 土御門「あぁ、ちょっとした知り合いぜよ」 青髪「白い肌、白い髪、細い身体……これはボクの想像してた病弱な娘にそっくりや!」 一方通行「おィ、初対面の人に向かって病弱とは言うじァねェかァ!」 青髪「そして、それを補う乱暴な言葉使い! もう最高や!」 一方通行「おィ!」 土御門「言い忘れてたけど、あいつ男だにゃ~」 青髪「なんやって!?」 一方通行「あ、あァ……」 土御門「?」 青髪「そしてこっちの娘は!!」 打ち止め「え? ってミサカはミサカは怯えてみる」 青髪「ロリや! カミやんの居候よりロリや! 小萌先生よりロリやぁぁぁぁぁ!」 一方通行「おィ、打ち止めに手ェ出したら……」 青髪「おぉ……ロリを庇う病弱な娘も何も言えない感じがあるんや」 上条「あぁ、ライオンから子供を庇う草食動物を想像させるな(学園都市第一位だけど、草食動物なんてレベルじゃ無いけど)」 青髪「そうや! それだ! 流石カミやん!」 上条「ただいま、お前ら校門の前で何してるんだ?」 一方通行「(な、なんでここに三下が!?)」 打ち止め「久しぶり!! ってミサカはミサカは話しかけてみる」 上条「おぉ打ち止めか、久しぶりだな」ナデナデ 打ち止め「へへぇ///」 吹寄「あら、一歩通行さんじゃない」 一方通行「あァ、吹寄さン久しぶりですね」 上条「なんだ、知り合いなのか?」 吹寄「えぇ、ちょっとね」 一方通行「三下ァ、なンでお前がこンな所に居るンだァ?」 上条「何で……ってその台詞は上条さんの物ですよ? ここは俺の通ってる学校ですからね」 一方通行「……はァ? どう言う事だァ黄泉川ァ!」 黄泉川「あれ? 言って無かったじゃん? 今度の学園祭ここで参加する事になったんじゃんよ」 一歩通行「なン……だと……」 キキーッ 芳川「お~い」 黄泉川「お、やっと来たじゃん」 芳川「荷物が多くてね、ちょっと運ぶの手伝ってくれない?」 青髪「な、な、なんと! 白衣のお姉さん!?」 上条「あぁ、欲を言えば学校の保険医になって欲しい、さらに欲を言えば寮の管理人になって欲しい」 土御門「その気持ち分かるぜよ」 黄泉川「ほら、そこのバカ3人、バカ話して無いでさっさと運ぶ」 上条「俺は荷物があるからなぁ」 吹寄「私が荷物持って行くから大丈夫よ」 上条「そうか? なら頼むよ」 吹寄「えぇ」 青髪「なぁ、なんか委員長変じゃあらへん?」ヒソヒソ 土御門「あぁ、さっきの突っ込みもいつもは委員長の役目だにゃ~」ヒソヒソ 青髪「……」 土御門「……」 二人「「ついに要塞を落としたか」」 青髪「……ついに、あの対カミやんの鉄壁の要塞を攻め落としたんか……」 土御門「あぁ、委員長の反応が遅れるなんてそれしか考えられないぜよ」 上条「土御門~、青髪~さっさと運ぶぞ~」 青髪「あいよ~」 土御門「今行くぜよ」 吹寄「ほら、一方通行さんも」 一方通行「あ、あァ」 打ち止め「早く、早く~ってミサカはミサカは急かしてみるよ!」 一方通行「分かったって(学園祭かァ……初めて……だな……。緊張するンだけどォ……)」 上条「……(あいつ大丈夫か?)」 芳川「じゃあ、よろしくね」 上条「どれどれ……!? なんで一個だけ冷蔵庫が入りそうな段ボールな訳!?」 芳川「段ボールがそれしか無かったのよ」 土御門「残りは普通の大きさの段ボールぜよ……ここは冷静にジャンケンで決めるにゃ~」 上条「は!? おい土御門!? お前は俺のジャンケンの弱さを知っててそんな事を言うんでせうか!?」 青髪「嫌やな~、んな訳無いじゃん? ジャンケンこそがこの世で唯一公平な決め方なんよ」 上条「青髪!? いやいや、そんな事聞いたこと無いから!」 黄泉川「そんなに弱いんじゃん?」 青髪「そりゃもう、一発負けがデフォですよ」 黄泉川「へ~面白そうじゃん」 土御門「じゃ~んけ~ん、ポン」 青髪「やった~じゃあボクはこのダンボールー」 土御門「じゃあ俺はこれにするにゃ~」 上条「なぁ!? 反射的に出してしまった! ちょっ! 今のは無し! もう一回!!」 青髪「カミやん~後はよろしゅう~」 上条「あ、あいつら本当に行きやがった……」 芳川「見事に一発負け……」 黄泉川「奇麗に決まったじゃん」 上条「……、まぁもう見慣れてる結果ですけどね」 上条「はぁ……どうやって運ぶか……」 黄泉川「私が手伝うじゃんよ」 上条「いえいえ!? 先生に迷惑なんて掛けれませんよ!?」 黄泉川「先生だから頼るんじゃんよ、生徒は難しい事なんか考えなくてもいいじゃん」 芳川「遠慮しなくてもいいのよ? 彼女、一人でこれ運べるんだから」ニヤニヤ 黄泉川「何言ってんじゃん」 上条「?」 黄泉川「まぁほら、そっち持つじゃん」 上条「あ、はい」 上条「そう言えば先生達ってどういう知り合いなんですか?」 黄泉川「どういう知り合いって言われても困るじゃんよ」 芳川「まぁ昔馴染み、学生の頃から知り合いだったとしかねぇ」 上条「へぇ~」 芳川「懐かしいなぁ、あの頃は好きな人が出来たら報告し合う! なんて言ってたのに一回も報告無いしねー」 黄泉川「あんただって報告無いじゃんよ」 芳川「う、うるさいわね! 私は研究で忙しかったのよ!」 黄泉川「へぇ~どうだか……怪しいじゃん? 周りは男だらけの職場なのにそんな事言っても説得力無いじゃん」 芳川「あ、あんただって、屋上に呼び出した相手をOKじゃ無くてKOして帰って来たじゃない」 黄泉川「だ、だって屋上って言ったら決闘じゃん……相手相撲部部長だったし……」 上条「いやいや! そんな少年漫画今どき珍しいですよ!?」 芳川「それから、黄泉川伝説が語り継がれる事に」 黄泉川「そんな事言ったら、あんたは告白された事無いじゃん」 上条「え? ……てかそれって、今まで彼氏とか居なかったんですか?」 黄泉川「な、何じゃん? そのスーパーで売れ残った惣菜を見る目は!」 上条「どんな目ですか!? どんな目をしたらそんな具体的なヴィジョンが見れるんですか!?」 芳川「わ、私は研究者だからいいの! 理系の女だからいいの! それより未婚の余裕が無い女教師の方が迷惑よね?」 黄泉川「上条君?」 上条「いやいや!? そんな事全然思ってませんよ!? てか先生達美人なんだから心配しなくても大丈夫です!」 黄泉川「び、美人!?///」 芳川「か、上条君? 大人をからかうと大変な事になるわよ?」 上条「いえいえからかってなんて無いですよ!! 先生達に言い寄られたら誰だってそれこそKOです!」 芳川「へぇ~、じゃあ上条君も?」 上条「そりゃあもう一男子高校生としてはこれ以上ないイベントですよ!」 芳川「……」 黄泉川「……」 上条「(……って先生相手に何言ってんだ俺は!)いやいやそう言う事では無くていやそう言う訳ですけど何といいますか本心ですけど本心と知られると気まずいといいますか先生達が美人なのは事実でイベントを望んでるのも事実ですけど!?」 芳川「結局どうなの? 嬉しいの? 嬉しく無いの?」 上条「(いやいや、先生の前でそんな事言えるはず無いでしょ!?)」 黄泉川「」シュン 上条「勿論です! この上条さんが思っても無い事言う訳無いですか!」 黄泉川「え///」カァーッ 芳川「そ、そう///」カァーッ 上条「えぇ、だから大丈夫です、自信持って下さい」 芳川「そう(なら売れ残ったら責任取って貰おうかしら///)」 黄泉川「へぇ(何生徒のくせして生意気言ってんじゃん///)」 上条「(な、何ですか!? 先生達不機嫌ですよね!? 俺の責任なのか!? 俺みたいな若者が分かった様な口訊いたのが間違えだったのか!?)」 上条「あ、あの黄泉川先生?」 黄泉川「何じゃん(あぁぁぁぁ、意識し始めたら普通に返事できないじゃん///)」 上条「な、何でも無いです(お、怒ってらっしゃる!?)」 小萌「あ、上条ちゃん! 待ってましたよ~」 上条「あ、つ、着きましたね」 黄泉川「ええ(なぁぁぁ、何て言えば良いのか分からない///)」ツン 芳川「じゃあ(上条当麻ね……黄泉川に詳しく聞いてみようかしら)」 上条「あ、はい。ありがとうございました(お、怒ってますよね!? てか明らかに怒ってます! 黄泉川先生のフレンドリーが無くなってますよ!? あのフレンドリーは何処に!?)」 青髪「お~カミやん、来たか~」 土御門「早かったにゃ~」 上条「お陰で様で……はぁ……不幸だ……」 黄泉川「ちょっと話があるじゃん」コソコソ 芳川「偶然ね、私もよ」コソコソ
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/115.html
· 黄泉川家の華麗なる日々 その1 · 黄泉川家の華麗なる日々 その2 · 黄泉川家の華麗なる日々 その3