約 14,823 件
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1633.html
上琴の戦い 【本文】 上琴VS黒子 ◆ 上琴VS初春&佐天 ◆ 上琴VS舞夏 ◆ 上琴VS美鈴 ◆ 上琴VS美鈴 2回戦 ◆ 上琴VS土御門&青ピ ◆ 上琴VS通行止め ◆ 上琴VS木山 ◆ 上琴VS寮監 ◆ 上琴VS建宮 ◆ 上琴VS御坂妹 ◆ 上琴VS土御門&青ピ 2回戦 ◆ 上琴VS通行止め 2回戦 ◆ 上琴VS番外個体 ◆ 上琴VS婚后 ◆ 上琴VS垣根帝督 ◆ 上琴VS浜滝 ◆ 上琴VS絹旗 ◆ 上琴VS麦野沈利 ◆ 上琴VS固法 黒妻 ◆ 上琴VS小萌先生 ◆ 上琴VS吹寄 ◆ 上琴VS半蔵 ◆ 上琴VS黄泉川 ◆ 上琴VS通行止めVS浜滝 ◆ 上琴VS削板軍覇 ◆ 上琴VS食蜂操祈 ◆ 番外編 美琴のお泊り1週間 ◆ 美琴のお泊り1週間~7日目上条暴走ver~ ◆ 【著者】 ソーサ(14-457)氏 【初出】 2011/02/07 初投稿 2011/07/27 完 2012/05/23 上琴VS食蜂操祈 投稿
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/3172.html
ご挨拶 2 「なるほど、それで第3位と大将が一緒にいるのか」血で血を洗う水中バレー大会が終わり、それぞれが各自で遊ぶ中、3人はぷかぷか浮いている青髪、舞華とショチトルに攫われた土御門、海原をほっといて、プールサイドに座りゆっくりしていた。「お前たちは魔術のこと知ってるしな、隠す必要はねぇし」一方通行は視線すら向けることはなかった。「大将も大変だな、でも第3位がいるから、まだましか」「いやいや、面倒見るのが2人に増えたんだぞ?」「でも、きっと1人だときついぞ、育児なんて」「そんなもんかねー。……お前はまだみんなと住んでんだな」「まぁな、ぐだぐだとこのままでいるよ」「彼女と出て行ったりしないの?」「……アイツにとってもアイテムは家族だしさ」「ふーん」「で、なんで黄泉川と一緒にいんの第1位?」「……うるせェ、いろいろあンだよ」「打ち止めや番外個体と住んでるのは知ってたけどな」「なんだって!! ハーレムじゃんか!!」「……よし、ここがてめェらの墓場ってことでいいンだな!!」「ちょ、ちょっとした冗談じゃねぇか!!!」「上条さんに至っては冗談すら言ってないではあーりませんか!!!!」 黒翼を出すなんていうちょっと激しいごまかし方をする最強から、全力で逃げる負け犬やウニ頭をじーーーっと眺める人物がいる。佐天涙子だ。彼女はゆーーっくりと視線を隣に移す。もちろんそこにいるのは御坂美琴である。佐天の予定では御坂美琴はここではなく、上条家の妻としてプールサイドで上条といちゃいちゃしているはずである。ここで攻めないでどうするのだ御坂美琴よ!!「御坂さん、わたしたちのことは気にせずに上条さんのとこに行っていいですよ?」「どうして? 佐天さん?」笑顔である。「え、いや、上条さんのとこ行きたいんじゃないかなーって」「どうして? 佐天さん?」改めて言うが、笑顔である。「お、おう!!? いや、昨日あんなに気合い入れて水着買ったし、積極的なアプローチしてもええんやないかと?」言葉がおかしくなる佐天をよそに、「どうして? 佐天さん?」再三言うが、御坂美琴は笑顔であった。「お、おおおぉぉぉぉぉぅぅぅぅぅぅぅううううう!!?」「……あたふたすらしませんね、御坂さん」「あの類人猿のせいですの」「類人猿って、上条さんですか?」「そうですの。あれは、お姉様が水着に着替え終わった時のことです……」「あ、回想シーン使うんですね」 お姉様はもじもじと類人猿に近づきましたの。その時、わたくしはすでにハンカチを5つダメにしていましたわ。『お、遅くなって、ごめんね』体中真っ赤にして、類人猿に声をかけるお姉様は、それはもういじらしいものでしたの。ん? 白井さんってわたしたちより後に来たよね?わたしたちは上条夫妻より後に来たのになんでその状況知ってるの?……佐天さん、人の回想のモノローグに勝手に入らないでくださ……ってだれが夫妻ですのだれが!!……こほん、とりあえず、そのいじらしくもかわいらしいという超絶レアなお姉様に、あの類人猿はぬけぬけとこう言いましたの。『お、似合ってるな、かわいいじゃん』その瞬間お姉様もわたくしも、周りが心配するほど真っ赤になりましたの。わたくしに至っては、血管の破裂音すら聞こえましたわ!!え? それならもっと違う感じになりません?……いや、あの類人猿がこんなあほなことを付け足しましたの。『妹とプールに来るとこんな感じなんだろうな、今日は存分に遊びたまえ妹よ!!』「うわー」「なんと可哀想なお姉様、そのお心を考えると、黒子は、黒子は!! 言葉もありませんの!!」「ニッコリ笑顔のガッツポーズしてますけどね白井さん」「なに3人だけで話してるのよ、遊びましょ、せっかくのプールだし」「あはは……そういえば、このプール知り合いしかいませんね」初春は佐天のそのセリフを聞き、周囲を見回しながら思うのだ。確かに、浅くはない、広くもない、なんの変哲もないプールではあるが、人っ子一人こっちに来ないのはおかしいのかもしれない。しかしだ、バレー大会で電撃とビームを交差させた第4位と第3位、その余波から幼女を守るために不思議な翼を広げた第2位、さらに現在進行形でプールサイドをめちゃくちゃにしている第1位。これほどのメンツをそろえている中に無関係のものが紛れ込めば、恐ろしい悲劇に遭うだろう。それは、先ほど女性の体つきについて熱く語っていた金髪グラサン、上条さんに泣きながら今の御坂との関係を聞いていた理事長の孫、女性全員にナンパし、全てから攻撃されていた青髪の人、三人に降りかかった、いやそれ以上の惨劇に違いない。だれがこんな危険地帯に来ようというのか。「……そういえばインデックスさんはどうされてますの?」「ああ、黄泉川さんたちが見ててくれてるのよ」美琴が視線を向けた先に、その赤子は母性の塊と一緒にいた。それと、自分のそれとを比べ、関係ないところで落ち込む4人であった。「「「佐天さんは悲しむ必要なし(ですの)!!!」」」「えーーーー!!? なんで!!?」 「アイツら騒ぎすぎじゃんよ」少し懲らしめるかという空気読めない友人を、芳川はたしなめる。「まあまあ、もう少しだけ騒がしてもいいんじゃない? こんな経験が珍しいから、ちょっと自制しきれてないだけよ」怪我しなければいいんじゃない? と、相変わらず友人は甘いようだ。ため息を吐く黄泉川の手から、芳川がインデックスを抱き上げる。「見てごらん、これが渦巻よ」芳川は人差し指をくるくると回し、小さな渦巻を作っていた。「うずーき?」「そう、渦巻」インデックスは興味津々のようである。「じゃあ、こんなのはどうじゃんよ?」そういって、黄泉川は腕を使って先ほどより大きな渦巻を作って見せる。「あうっ!! うずーき!!」「お気に召していただいたみたいよ」「そいつはよかったじゃんよ」インデックスの指が渦巻を作るように宙でくるくる回る。その瞬間、なんの前兆もなく、プールのど真ん中に巨大な渦が出現した。
https://w.atwiki.jp/index-index/pages/3881.html
【種別】 学校行事 【初出】 名称の初出はSS 内容は食蜂操祈 フィギュア編、コールドゲーム 【解説】 二学期ごろに行われる学校行事で広域社会見学のような大規模なものではなく、 授業の一環であるため生徒全員参加である。 内容は学園都市内の各施設を見学するという地味なもの。 見学先は各学校ごとに違い、学校によっては『学校代表の挨拶』も行われる。 とある高校 10月3日の時点で街の入場制限が厳しくなるから、 社会見学がなくなるかもしれないという言及のみで詳細不明。 常盤台中学 11月に行われた。当初は人形館だったが中止になり、水族館に変更。 この時食蜂は学校代表に抜擢され挨拶のスピーチをすることになった。 柵川中学 いつ頃行ったかは不明。佐天、初春を含む100人以上の生徒が黄泉川の案内で警備員の中央詰め所を見学した。 佐天はあまり興味が無かったためか退屈そうにしていた。
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/340.html
------ ウィーーン 自動ドアが開き、病院独特のツンとした薬品のにおいが鼻をつく。 時刻はAM10:00を少しまわったくらいだが、総合病院だからだろうか、院内には多くの人がいた。 禁書「みこと、とうまの病室は?」 美琴「208号室よ。しかも個室」 禁書「なんでとうまは個室ばっかりなんだろう?」 美琴「そういや不思議ね。あいつ貧乏なのに」 清潔感あふれる廊下を、他愛ない会話をしながらゆっくりと進む。 こんなに早い時間でもすれ違う人は様々で、点滴をかたわらに移動する人、見舞い帰りとおぼしき人、白衣の看護師、真っ白な肌が印象的な男、 美琴「ちょっと待ちなさいよっ!!」 禁書「ひゃっ!」ビクッ! 叫びが静寂を切り裂き、新たな静寂を作り出す。 ??「?」クルッ 美琴「なんで…なんでアンタがここにいんのよ!!」バチバチ 帯電して威嚇しながら、地獄のような灼眼を睨みつける。 ??「あァ、お前…」 一方「オリジナルか」 美琴「質問に答えなさ」 禁書「あー!あくせられーただー!」 美琴「えっ?」 突然の第三者の介入。 予想外の方向からのジャブに美琴の思考は少し停止した。 一方「うォっ!暴食シスター!」ギクッ うろたえる学園都市最強。 目を輝かせ、よだれを垂らしながらにじり寄るちっちゃいの。 美琴の目の前でなんだかよくわからないまっしろ対決が繰り広げられていた。 美琴(……なんだこれ) ??「あ!お姉さまだーっ!」 美琴「は?」クルッ 後方からいきなり「お姉さま」と呼ばれて振り返ると、 ??「ってミサカはミサカははしゃいでみたり!」ピョンピョン 今より少し、幼い頃の自分がいた。 ??「お姉さまーっ!ってミサカはミサカは頬ずりしてみる!」ダキッ! スリスリスリス… 美琴(…状況が……) 美琴「こじれやがったぜ…」 一方「ちょっ!てめェやめろ!やめろー!」グギギギ… 禁書「奢って!奢って~!」グギギギ… ??「お姉さまいい匂い!ってミサカはミサカはもっと強くハグしてみる!」ギュッ! 美琴「………」 美琴「………」スタスタ ??「おおっ!お姉さま、あの人より力強い!ってミサカはミサカはあの人のもやしっぷりを情けなく思ってみたり!」ズルズル… 一方「いいかげンに離れろ!」グギギギ… 禁書「ご飯をくれるまで離れないんだよ! 」グギギギ… ポン 一方「あァ?」グギギギ… クルッ 肩を叩かれた一方通行が振り返ると、そこには御坂美琴が立っていた。 腰に小さい自分を巻きつけて。 美琴「説明を…要求するわ」 一方「お…おゥ」グギギギ… 一方通行が見た美琴は、悟りを開いたような目をしていた。 ------ 院内の談話室のすみの方に、妙な四人組がいる。 二人はそっくりで、もう二人はまっしろ。 しかもまっしろの片方は修道服、もう片方は妙な杖を持っている。 そのため、誰も寄せ付けない、もとい、寄り付きたくないようなオーラを放っていた。 美琴「で、」 一方通行「ハイ」 美琴「その子、だれ?」 目の前にいる少年を睨みながら、対角にいる妖気アンテナ娘を指差す。 ??「ミサカはミサカだよってミサカはミサカはミサカがミサカであることを主張してみる!」 美琴「元気ね~。ちょっと黙ってようか」 ??「むぅ…」 一方通行「コイツはまァ、あれだ、妹達だ」 美琴「それくらい見りゃ分かるわよ!」 ??「結局お姉さまは何がききたいのってミサカはミサカはやっぱりレベル5はどこかしらおかしいって再確認」 一方通行「だァれがおかしいのかなァァ?」ギュウウウウ ??「ほっへたつねりゃなひへっへみひゃかはみひゃかは」ギュウウウウ 禁書「たぶんだけど、みことは打ち止めの名前が知りたいんだと思うよ」 打ち止め「ああ!そーゆーことか!」 打ち止め「はじめましてお姉さま!検体番号20001、打ち止め(ラストオーダー)ですってミサカはミサカは自己紹介」 一方通行「先に言われてンじゃねェか」 美琴「……」 『検体番号』ということは、やはりあの実験の… しかも『20001』? たしか『絶対能力進化計画』の内容は20000通りの状況、方法で20000人の妹達の殺害…よって彼女は一方通行に殺されない。 じゃあ、この子は何のために作られたの? 打ち止め「…お姉さま、どうしたの?ってミサカはミサカはちょっと心配」 美琴「ん…? ううん。何でもないわ」 一方通行(…) 一方通行「おィ、白いの」 禁書「インデックスなんだよ!それにそっちの方が白いんだよ!」 一方通行「お?なんだとコラ?」ガタッ 禁書「あれあれ?見た目だけじゃなくて頭の中もウサギさんなのかな?」ガタッ 一方通行「カカカカカカカカカカッ上ォォォォ等ォじゃねェか!表来いやァ!」 禁書「言われなくても言ってやるんだよ! それと気持ち悪いからその笑い方やめてくれるかな!?」 ギャーギャー…………… 美琴「…なにあれ?」 打ち止め「さぁ…ってミサカはミサカは呆然…」 美琴「…!」 そうだ。これはチャンスだ。 一方通行という足かせが無い今、この子の本心からの声が聞ける、千載一遇のチャンスだ。 美琴「あの、打ち止め?」 打ち止め「なぁにお姉さま?」 聞きたいことは全て聞き、彼女の話も聞いた。 打ち止めが全妹達を束ねる役目を担っているということ、 実験終了後に処分される予定だったこと、 一方通行が何度も命を賭して救ってくれたこと、 そのせいで演算補助無しでは歩くどころかしゃべることすら出来なくなってしまったこと。 彼女の口からつむぎ出される一言一言が衝撃的だで、なにも知らずにのうのうと生きてきた自分がほとほとイヤになった。 美琴「アンタたち…10031人もアイツに殺されてるのよ?憎くないの?」 打ち止め「憎いよ」 少女は柔和な笑みを浮かべたまま、即答した。 打ち止め「今でもね、時々再生されるの。実験中の映像が。」 美琴「……ッ」 打ち止め「ミサカ達は感情ってのはよく分からないんだけどさ、殺される直前のあの感じが『恐怖』ってやつなんだとおもう。」 美琴「だったら!だったらなんで…」 打ち止め「それはね、あの人が優しいからだよ」 信じられない言葉を聞いた。 美琴「優しい?」 打ち止め「うん!」 一万人以上を殺したヤツが? 打ち止め「あの人はね、感情が無い妹達に話しかけるのを、10032回行われた実験の中で一度も欠かさなかったんだ」 打ち止め「まるでミサカ達が感情を持つのを待ってるような、懇願するような、そんな感じで」 打ち止め「たぶんあの人はやめたかったんじゃないかな?妹達の方からやめたいって言ってくれるのを待ってたんじゃないかな?」 美琴「もし…もし誰かがやめたいって言ってたら…」 打ち止め「片っ端から関連施設を関係者共々潰してたと思う」 打ち止め「その証拠に、ピストルに撃ち抜かれてまでミサカを助けてくれた」 打ち止め「しょせんは作り物だって心のどこかで思ってるミサカ達の存在理由になってくれた」 打ち止め「だから…」 すうっと大きく息を吸う。 溢れる想いを乗せた声が、美琴に届くように。 打ち止め「だから、ミサカ達は、一方通行のことが大好きなんだよってミサカはミサカは大胆告白!」 最初は一方通行による思想統制を疑っていた。 が、打ち止めは無邪気な笑顔を浮かべてそれを優しく否定した。 美琴「…そっか」 あぁ、この子は本当に 打ち止め「うん!ってミサカはミサカは即答してみたり!」 一方通行のことが大好きなんだ。 美琴「ふぅ…」ギシッ 肩の荷がほんの少し降りた気がして、木製のイスに身体をゆだねた。 打ち止めの後ろにある大きな窓から見えている晩秋の晴れやかな空が、心に染み渡ってゆくような感じがした。 美琴「ありがとね、打ち止め」 打ち止め「どういたしましてってミサカはミサカはニッコリしてみる」ニコッ 打ち止め「あ、二人とも、そろそろ出てきていいよってミサカはミサカは鋭い女ぶってみる」 美琴「え?」 談話室の入り口の方に目をやる すると照れ笑いを浮かべたインデックスがおずおずと出てきて、元の席に座った。 禁書「なんでわかったのか教えて欲しいかも」 打ち止め「なーんとなく、かな?ってミサカはミサカは第六感!それよりあの人は?」 禁書「あくせられーたなら今入り口の陰で泣いてるよ?」 美琴「」 打ち止め「もう、あの人ったら照れ屋さんなんだからってミサカはミサカは迎えに行ってみたり」ガタッ.タタタタッ… オ.オイ!ヤメロ! ハヤクデテキナサイッテミサカハミサカハヒッパッテミタリ! コンナカオミセラレネェカラ!ゼッタイバカニサレルカラ!ヤメテクレエエエエエ!! なんということでしょう。先ほどまでムスッとしていた悪人面が 一方通行「…グスッ」 今は止まっているものの、涙でぐっしょぐしょではありませんか。 一方通行「…あンだよ」グスッ 美琴「いや…アンタみたいなのでも泣くんだなぁって」 一方通行「泣いてねェよ。これは青春の汗だ」スズーッ 美琴「いや、泣いてるじゃん。目も真っ赤でほっぺたぐっしゃぐしゃじゃん。」 一方通行「泣いてねェって言ってんだろォが!これは…そう、青春の汗だ」 美琴「アンタの汗腺どうなってんのよ」 打ち止め「さすがに苦しいよってミサカはミサカは苦笑してみたり」 禁書「ところでさ、二人はなんでここにいるの?」 打ち止め「それはね、ミサカのちょうせモガッ」 一方通行「コイツの体調が悪かったンだよ」 打ち止め「ぷはぁ!いきなり口をおさえるなんてひどいってミサカはミサカは憤ってみたり!」 一方通行「それよりお前ら行かなくていいのか?」 打ち止め「あ!スルーしたってミサカはミサカはむきぃーっ!」ポカポカ 一方通行「やめろ、暴れンな」 美琴「行くって?」 一方通行「あ?三下の見舞いに来てんだろォ?」 美琴「え?」 一方通行「粉砕骨折とか、戦争が終わってもアイツはやっぱり不幸のままってなァ!」カカカッ! 禁書「ねぇ、あくせられーた…」 一方通行「あン?」 禁書「……なんで知ってるのかな?」 インデックスの的確な指摘は、打ち止めを除く3人の時間に足かせをはめる。 先ほどまで騒がしかった談話室が凍てつくような静寂に支配された感じがした。 打ち止め「どうしたの?みんななんか怖いよってミサカはミサカはなにやら不穏な空気を察知……」オドオド 一方通行「………」 美琴「………」 疑念が緊張を増幅させ、緊張が疑念を掘り下げる。 まさか一方通行が? しかし、もしそうなのだとしたら、なぜ突然公園にトラックが突っ込んできたのか、簡単に説明がつく。 彼にかかればトラックを弾丸に変えることなどたやすいからだ。 だが、メリットは? 上条当麻を殺す]ことの利点は? 幻想殺しの抹殺?敗北への報復?それとも暗部がらみの? しばし思考を逡巡させる。 一方通行「はン……」 張りつめた弦を最初に弾いたのは被告人、一方通行だった。 一方通行「看護師どものうわさ話をちょォっと小耳に挟んだだけですゥ」プイッ そっぽを向き、目を細め、口を尖らせ主張する。 まるでいたずら好きの少年のようだ。 禁書「なぁんだ、それだけかぁ」ホッ その様子に緊張から開放されたインデックスは、ヤレヤレというジェスチャーで安堵を示した。 が、 美琴(……) 灼眼のわずかなブレを、御坂美琴は見逃さなかった。 女のカンが告げている。 『コイツは何かを隠している。』と。 一方通行「さ、そろそろ帰ンぞォ」ガタッ 打ち止め「えーってミサカはミサカは別れを惜しむ」 小さな法廷からの脱出を試みる被告人。 引き止めて言及しなければ。 美琴「ち、ちょっと!」ガタッ 一方通行「…あン?」 打ち止め「?」 美琴「ア、アンタ…」 そう言ってフリーズする御坂美琴。 引き止めたまでは良いが、何を根拠に言及するか決めていなかったので、頭の中は絶賛雪景色だ。 美琴(落ち着けアタシ。最っ高にクールに真相を暴くために。) 何と言えば効果的なのか、頭の中でシュミレートする。 ①『アンタの眼がブレた!だから何か知ってるでしょ!』 ↓ 『はァ?頭おかしいンですかァ?』 ②『看護師に聞いた?ウソね!』 ↓ 『はァ?頭おかしいンですかァ?』 ③『アンタがアイツを襲ったんでしょ!』 ↓ 『はァ?頭おかしいンですかァ?』 ………ダメだ。 自分の脳内ですら『頭おかしいンですかァ?』で一蹴された。 一方通行「おいおい、なァに固まってンだよ?」 打ち止め「お姉さまどうしたのってミサカはミサカは不審に思ってみる」 早く何か言わないと。早く何かを。 そう思えば思うほど、焦る気持ちは強くなっていく。 美琴「あーっと、あの、その、ええっとね、」ワタワタ 完全に混乱した。 ヤバイ。頭が回らない。 美琴「あの、ア、アンタ!」 一方通行「オォ?」ビクッ この際仕方が無い。言ってしまおう。 大きく息を吸って呼吸を整えることもなく、思っていることをそのままアウトプットした。 美琴「アンタの服、ウルトラマンみたいね!」 一方通行「」 言ってやった。 なぜだろう。 何かに打ち勝ったような、晴れ晴れとした気分だ。 「くきゃ。くかかここここ…」 晴れ晴れとした気分を妨害するようなノイズが聞こえる。 どうやら発信源は目の前の白髪らしい。 何やら不穏な気配がする。 一方通行「くかかかききゃきゃきゃ!上ォォォォ等ォォォじゃねェか!」 一方通行「俺をこれだけ待たせて『ウルトラマンみたいね☆』だァ!?ケンカ売ってンですかァ!?」 首の拘束具に似たチョーカーに手を触れる一方通行。 次の瞬間、ゴウッ!っという空気が変わる音と共に、 一方通行「dsagvcrhzreqfvygdv」ドシャッ!! いきなり地面に崩れ落ちる第一位。 笑い声しかり、意味不明な言語にしかり、なぜこんなに気持ち悪いのだろう。 顔は良いのに非常にもったいない。 地面で頭を強打し、ビクンビクンしている。 美琴(自分から頭ぶつけにいくとか、コイツ…マゾ?) もしもそうなら、こんな壮大な一人エッチを可愛い妹とインデックスに見せるわけには行かない。 美琴「打ち止め!見ちゃダメ!オトナになるまでダメ!」ガバッ 警告しようと、地面に転がる一方通行から視線を上げ、打ち止めを見る。 すると、 打ち止め「ダメじゃない、一方通行。こんなところで能力使っちゃってミサカはミサカは教育的指導」 のたうちまわる一方通行を見て、打ち止めはニヤニヤ笑っていた。 ああそうか。もう手遅れか。 我が遺伝子を分けた妹は真性のサディストなのか。 打ち止め「はぁい。オシオキしゅ~りょ~ってミサカはミサカは演算補助をオンにする」 幼女から発せられた『オシオキ』という言葉に、少し戦慄した。 そもそも、オシオキとはなんだろう。 一方通行「打ち止めァァァ…」ムクリ ゆらりと立ち上がるマゾ。 いまだにニヤニヤしている小悪魔的なサディスト。 なんだこれは。なんだオシオキとは。 一方通行「予告もなく演算補助切ってンじゃねェよ!」 打ち止め「あなたが病院で能力使おうとしたからでしょってミサカはミサカは指摘」 ああ、そうだったそうだった。 今、一方通行は演算補助を必要とする体だった。 それを切るとああなるのか。 一方通行「チッ…分かったよォ」スタスタ うなだれるように出口へ進む、マゾヒストじゃなかった第一位。 打ち止め「お姉さま、インデックス、またね!ってミサカはミサカは手を振って別れの挨拶!」ブンブン それについて行くサディスト幼女。 二人が出て行くと、嵐の後のように静かになった。 ------------ 打ち止め「ねぇ、」 一方通行「ン?」 談話室にどれほど居たのだろうか。 南中した晩秋の陽光が差し込む廊下を歩きながら、少女は白肌の少年を見上げている。 打ち止め「あなた、ミサカが調整してた時なにしてたの?ってミサカはミサカは質問してみる」 なにやら不機嫌そうな少女。 じとっとした目で少年を睨みつける。 一方通行「……なンでンなこと聞くんだァ?」 打ち止め「別に~ちょっと気になっただけだよってミサカはミサカはオトナの事情を考慮してみる」 一方通行「オイちょっと待て。なンですかァ『オトナの事情』って」 打ち止め「だってあなた来た時と感じが違うんだもん!ってミサカはミサカはむくれてみる!」プクー 『オトナの事情』というドロドロしたものに敏感なお年頃なのだろうか? ふくれた頬は、まるでフグのようだ。 一方通行「『感じ』ってなンだよ。『女のカン』ってヤツですかァ?」 『くっだらねェ』と吐き捨て、エレベーターのボタンを押す。 打ち止め「むぅぅ~!」プクー 一方通行「はァ…」 思わずため息をつく。 とにかく今はこの姫君のお怒りを鎮めようと、左手で小さな頭をなでる。 一方通行「なンにもねェよ。ねェから心配すンな」ナデナデ 頭を撫でられてくすぐったそうに顔をほころばせる少女。 何も言わないが、機嫌は良くなったようだ。 打ち止め「えへへ……」ナデナデ 一方通行「…」 女性というのは本当に不思議だ。 隠しごとをしていても、『女のカン』という非科学的なダウンジングマシンでおおよその予想を立ててしまう。 一方通行(『女のカン』か…) 無機質なアナウンスが聞こえ、ドアが開いた。 ------------ 一方通行に結局何も聞けず仕舞いだった美琴は、足取りの軽いインデックスと共に上条当麻の病室に向かっていた。 お見舞いといえばフルーツバスケットなどの果物や造花が好まれるが、今は何も無い。 談話室にて、見舞い用のフルーツバスケットはただのバスケットと化したからだ。 元凶は言うまでもないと思うが、目の前でぴょこぴょこ歩くまっしろシスターだ。 美琴「インデックス…」 禁書「ん?なぁに?」 まっしろな修道服をはためかせ、くるっと振り向くシスター。 銀髪が流れるようになびき、輝いていた。 美琴「これ…どうする?」 木で編まれた長細い鍋のような入れ物をくるっとひっくり返し、空っぽであることをアピールする。 美琴「どうする?」 禁書「う……し、仕方なかったんだよ!もうお昼だよ?おなかだって悲鳴をあげる権利くらいもってるかも!」 わたわたと両手を振って弁解するシスター。 腹の虫が悲鳴を上げる権利ってなんだよ。 シスター=禁欲だと思っていたおとといまでの自分に、バカヤロウと言いたい気分だ。 美琴「どうする?買いに戻る?」 我ながらなかなか良い提案をしたと思うが、 禁書「めんどくさい」 即答された。 もしかしてこの子、とんだ地雷かもしれない。 ------------ コンコン 「どうぞ」 病室に入る前というのは、誰の病室であっても例外無く緊張がつきまとうのはなぜだろう? そんなことを考えながら軽いドアをスライドさせる。 美琴「よっ。元気?」 禁書「お見舞いにきたんだよ」 病室に差し込むキラキラとした光の中に、腕を固定し、足を吊った少年がいた。 キレイな景観の中にはめ込まれた少年の姿は、ものすごくミスマッチだ。 上条「よっ!」 爽やかな笑顔と共に、晩秋の風がカーテンを揺らした。 上条「お!インデックスも一緒に来てくれたのか」 美琴「アタシが連れて来たのよ」 禁書「違うよ!ちゃんと自発的に来たんだよ!」 上条「ハハハ……インデックス、ごめんな。昨日、メシ作ってやれなくて」 美琴「いや、それはアンタのせいじゃな」 禁書「…ホントだよ」 美琴「…インデックス?」 禁書「ホントだよ。とうまはいっつもそう!」 上条「あ~…だからゴメンって。どんだけ腹減ってたんだよ……」 禁書「違うもん…」 上条「ん?」 禁書「……とっても怖かった。…とっても寒かった、とっても暗かった、とってもとっても寂しかった!」 内なる不満をブチまけながらじりじりとにじり寄るインデックス。 上条「お、おい、インデックス、」 禁書「とうま!!」 上条「はいぃ!」ビクッ 美琴「あっ…」 御坂美琴は見た。 怪我人に飛びかかるシスターを。 上条「あっ…」 上条当麻は見た。 いつも通り、飛びかかってくるシスターを。 ドサッと身体に重みが加わる。 ああ、屠殺前のニワトリとは、こんな気持ちなのかと悟りはじめた。 上条(こいよインデックス…。お前が俺に噛み付くことでストレスが晴れるってんならいくらでもくれてやる) 上条(だけどそれで良いのかよ!イヤなことがあったら噛み付くだけでお前は良いのかよ!) 上条(それでいいと思ってんならいいぜ!まずはーーその幻想を) ズキリと痛みが走る。 ギプスをした左腕に。 上条(ぶち殺………あれ?) 気がつくと上条当麻は、 禁書「とうま…」 禁書「とってもとってもとっっても、心配したんだよ…」ギュッ 抱きしめられていた。 上条「イ、インデックスさん…?」 禁書「わたし…とうまの帰りが遅いから、てっきり魔術師に襲われたんじゃないかと思って…」グスッ 禁書「でもわたし一人じゃ助けになるようなこと何も出来なくて……待つことしか出来なくて…」 禁書「わたしの存在のせいで死んじゃったらって……また傷ついたらって…思ったら」 上条「バカヤロウ!」 禁書「ひっ」ビクッ 上条「俺が襲われるのに、お前は関係ない。だからもうそんなこと言うな」 禁書「でも、わたしの10万3000冊の魔道書のせいで」 上条「それが狙いなら、敵はまず寮に向かうだろ?」 禁書「でも、でも!……でも………」 上条「インデックス」 禁書「ヒグッ…グスッ…」 上条「俺個人が狙われる時はお前のせいじゃない。おそらくこのクソったれな右手のせいだ」 上条「だからもうそんなこと言うな。お前の存在のせいなんて言うな」 禁書「だって、」 上条「だってじゃない。お前にもしもそんなことを言うヤツがいたら、俺が右手でぶっ飛ばしてやるよ」ギュッ 禁書「ふぇ…ふぇぇぇぇん!とうま!とうまぁぁぁ!」 美琴「……」 少女を護る約束をする少年。 それを涙で受け止める少女。 ドラマのワンシーンのような世界を見ていた御坂美琴は 美琴(昼間っからサカってんじゃないわよ) なにやらご機嫌ナナメだった。 美琴「お取り込み中だけどいいかしら?」 上条「おぉ、いたのか御坂」 禁書「やっほーみこと」 美琴「風穴開けるわよ?」 上条「冗談だよ冗談」 禁書「短気はダメだよ? みこと」 美琴「インデックス? 後でちょっと」 禁書「冗談なんだよ冗談」 禁書「昨日だよ」 上条「そうか、昨日御坂がメシ作ってくれたんだっけか」 美琴「ふふん。感謝しなさいよ?」 上条「ああ、マジで助かったわ」 禁書「みことね、案外料理上手なんだよ」 美琴「案外って何よ案外って」 他愛のない話は弾み、あっという間に時間は過ぎた。 上条「てか、お前らいつから名前で呼び合うようになったんだよ?」 ------------ 「じゃあね」と別れの挨拶をして病院を出た時には、真っ赤な斜陽が輝きかけていた。 午後4時近くの秋の暮れの空は、心なしかとても澄んでいるような感じがする。 清々しい気持ちのまま、二人でスーパーで食材を購入しそのまま寮に戻る。 土曜日夕方、穏やかな時間がそこにあった。 禁書「ただいま!」ガチャ 美琴「おかえり」 禁書「…」 美琴「?」 禁書「みこと」 美琴「なに?」 禁書「おかえり!」 美琴「ふふ。ただいま、インデックス」 ------------ 禁書「みことー、何か手伝おっか?」 カウンターからヒョコッと顔だけを出して問うインデックス。 背伸びをしているのか、心なしかぐらぐらして見える。 美琴「遠慮しとくわ。先にお風呂入って来なさい」 禁書「あー!遠慮しとくっていったね!?機械オンチだからってばかにしてるね!?」 美琴「今日はカレーよ」 禁書「わーい!」 先ほどまで腕をばたばたさせて猛抗議していたのに、『カレー』と聞くとあからさまに喜び勇んで風呂場に向かった。 銀髪少女の扱い方が、だんだんとわかってきた気がする。 単純…もとい、純粋な子なので、悪い人についていかないか心配だ。 美琴(ってアタシは母親かよ) 一人でツッコんで、一人で苦笑する。 どうやら私はやっぱり、あの子に母性を感じているのかもしれない。 美琴(アタシ何を悩んでたんだろ…バカじゃないの)フフッ ふっきれたように笑うと、心に余裕ができた。 ------------ 禁書「むむむ…」 何か、釈然としない。 なぜだろう? 先ほどまでの会話の、どこかがおかしい。 焼き付けられ、録音された記憶を巻き戻す。 『あー!遠慮しとくっていったね!?機械オンチだからってばかにしてるね!?』 『今日はカレーよ』 『わーい!』 そうか。 ここで御坂美琴の超巧妙かつ不可避の心理トリックが発動したんだ。 禁書「……やられたんだよ」 脱衣所で、うなだれる少女が一人いた。 禁書「しょうがないからおとなしくお風呂に入るんだよ…」 脱衣所と直結している浴槽へ入る。 ひたひたと冷たく硬い感触が足裏から伝わってくる。 だから冬はキライだ。 シャワーのヘッドを下に向け、180°回るレバーで温度を調節、お湯を出す。 ふわっとした暖かい湯気に包まれた身体が、たまらなく心地良い。 禁書「♪」 『湯』というのは不思議だ。 浴びるだけでほっこりとした気持ちになれる。 もしかしてその昔日本人たちが編み出した『湯治』というのは、こういう精神的安息、リラックスによる心理療法なのではないだろうか。 しかし、不満が一つ。 禁書「……湯量が少ないかも」 おそらく台所で、美琴が湯を使っているのだろう。 シャワーだけなのに水勢が弱いと、なんだか余計に寒く感じる。 なんとかして暖かいバスライフを味わうことは出来ないだろうかと思案すると、 禁書「!」 案外簡単に解決策が見つかった。 膝下まできているぬるま湯に、身をつけてしまえばいい。 今よりは幾分かマシだろう。 じゃばっ ぬるい湯に身を沈める。 いやぁしかしぬるい。 思ったとおり、先ほどよりは幾分かはマシだが。 禁書「………」 しかし、より良い環境を求めるのが人の常だ。 どうにかならないかと思っていると、急に水勢が強くなり、温かいお湯が勢いよく降り注いできた。 ザーーーーーーー 昨日も聞いた音。 その音に、否応無く記憶は叩き起こされた た。 ザーーーーーーー 『あの時はおかしかった』と結論付けた、あの記憶が、少女の目が、少女の身体が。 ザーーーーーーー 確かな熱を帯びた、確かな記憶として、不確かな感情に揺さぶりをかける。 ザーーーーーーー 私を押さえつける身体の熱。 私を射抜く瞳の熱。 私に向けられた激情の熱。 熱、熱、熱、熱、熱。 ザーーーーーーー その熱は次第に強く大きなうねりとなって少女の心に、容赦なく侵入する。 そのひとつひとつを大切にしたくて、味わいたくて、聴きたくて、感じたくて抱きしめたくて。 恋しくて。 薄れゆく意識の中で、熱を帯びほてった身体が大きくふらついた。 ------------ ばさっばさっ 冷たくて気持ちいい。 ばさっばさっ 肌が喜んでいるような気がする。 ばさっばさっ ううん、ちょっと寒いかも… ばさっばさっ いや、寒い。寒い寒い寒い 禁書「寒いんだよ!」ガバッ あまりの寒さに起き上がると、御坂美琴が窓を開けてタオルで自分を扇いでいた。 バスタオル一枚の自分を。 美琴「あ、気がついた?」 悪びれることなく言い放つ。 半裸の人間を冬の夜の外気にさらして扇ぐとは、新しいプレイか何かかな? と言いたかったが、いかんせん、頭が回らない。 ふわふわと宙を漂うような、気持ちの悪い感じだ。 美琴「びっくりしたわよ、まったくもう。浴槽で『ぐで~』ってなって『ぷか~』って浮いてるんだもん」 『もうちょいでココがいわくつきになるところだったわよ』と、シャレにならなかったかもしれないことを言う。 ああそうか、わたしはのぼせてたんだ。 美琴「今日はこのまま寝なさい」 『ヤダヤダ!ごはんが食べたいんだよ!』なんて言える気分じゃない。 吐き気とめまいがしてそれどころではないので、今日はおとなしく寝る事にした。 ------------ おでこの冷却シートがひんやりして気持ちいい。 なにか柑橘系の匂いがしていて、それが導眠の引きがねとなったのだろうか? すんなりと眠れた私は、夢を見た。 寝ている自分の頬に、そっとキスをする御坂美琴。 妙に生々しく、リアリティのある、ただの夢。 脳が創り出した偶像であり虚像。 そのニセモノの体験が、自分と同じシャンプーの香りと共に記憶に焼き付いた。 ------------ 購入した大量の食材を洗っていると、お湯の出が悪くなった。 おそらくインデックスが入浴したのだろう。 美琴(……インデックス、寒いだろうな…) こちらの水勢が弱いということは、シャワーの湯量が少ないということだ。 『インデックスが寒い思いをしている』。 そう思うとなぜかとてもそわそわしてきた。 美琴(うーん…) 気温のせいか少しためらい、 美琴(えいっ!)キュッ お湯を冷たい水に切り替えた。 冷水で野菜を洗いながら考える。 なぜあの子はあんなにも他人の庇護欲をくすぐるのだろうか。 同い年くらいだとは思うのだが、どうにも世話をやきたくなる。 あの子に関わった何人かは、この気持ちを理解してくれるだろう。 美琴(よしっ。下ごしらえ終了) 色々と思考するうちに、ゴロゴロとしたジャガイモと大きな角切りニンジンが仕上がった。 油をしいた大きな鍋の底で肉を炒め、赤みがなくなったら野菜を入れる。 そして湯を張り、煮込んでからルーを投入。 さらに煮込めば完成だ。 スパイスや隠し味を何にしようかと考えている間に野菜も良い色になってきた。 料理の最中は本当に何か悪いものでも取り憑いたのかと思うほど、暇だ。 だから妄想や独り言が増えるのは必然である。 それがたとえお嬢様でも、レベル5であっても例外はない。 美琴(…) 鍋の底の肉、野菜をじーっと見つめる美琴。 美琴(ぐへへ、いい色してんじゃねえかジお姉ちゃんたち…) 美琴(いやっ!やめてお肉男爵!何するの!) 美琴(うるせぇ大人しくしやがれ!) 木べらでひょいっとカレー用角切り肉をジャガイモと絡ませる。 美琴(おねぇちゃぁん!ジャガイモおねぇちゃぁん!) 美琴(逃げなさいニン子!早く!) 美琴(おおっと、逃がすかよぉ) 肉を木べらでニンジンへ突撃させる 美琴(きゃああ!) ジュワッという肉の音と共に、ニンジンにも肉汁が絡み付いた。 美琴(やめて!その子には…その子にはっ!) 美琴(ごちゃごちゃうるせぇぞぉ!) ジャガイモお姉ちゃんの悲痛な叫び。 それは木べらの一振りによってまんべんなく絡まる。 美琴(…) 美琴(何やってんだろアタシ…) そこでカムバックした。 名役者の食材たちはそろいもそろってとても良い色になった。 そろそろお湯を入れようか。 と思ったが、最初食材を洗ってから20分ほどが経過している。 当然化粧などしていないインデックスは、もう風呂場から上がって夜風にあたっているはずだ。 が、カウンター越しに見えるベランダには、人影はない。 嫌な予感がする。 火を止め、エプロンを取り、風呂場へ急ぎ、ノックをする。 美琴「インデックス~?何してるの~?」コンコン ……返事はない。 嫌な予感は増幅された。 美琴「…インデックス?開けるわよ?」 鍵がかかっているが、レベル5の前ではそんなもの関係ない。 ホテルによくあるボタンロック式のチャチ戸は、力任せに回すとイヤな音で叫び、開いた。 美琴「インデックス!」ゴチャッ! 勢いよく戸を開けるとそこには、 美琴「きゃぁぁぁぁ!」 禁書「ふにゃ~…」 グルグルと目を回したインデックスが、クラゲのように浮いていた。 ------------ のぼせた少女にバスタオルを巻き、フェイスタオルでばさばさと扇ぐ。 すると「寒いんだよ!」と言って覚醒した。 心底ホッとした。 ふらふらしていたので、今日は寝かせることにした。 明日の朝、この子は晩の分まで食べるだろう。 カレーを仕上げなくては。 体の熱を取るために、冷却シートを貼ってあげてから調理場に戻る。 カレーが完成した頃には、9時近くになっていた。 美琴(さて…) 風呂に入ろう。 のぼせないように、気をつけて。 ------------ インデックスがのぼせてから開けっ放しだった浴室は、すでにひんやりとした大気に支配されていた。 冬はやはり、服を脱ぐのがおっくうになる。 素早く服を脱いでざぶんと湯船に飛び込むと、 美琴「ひゃあぁぁぁぁ!」サバッ!! 言うなれば、ほんの少しぬるい冷水。 気休め程度のぬるさは、冷水につかるよりもキツいものがある。 となりから『うるさいぜよ!』と土佐弁が聞こえた気がしたが、肌寒さゆえの幻聴だろう。 気にしない気にしない。 栓を抜き、温かいシャワーを浴びる。 冷えた身体が徐々にほんわかとしてきた。 不意に、『充満する湯気が、浴槽を現実から切り離した』。 そんな気がした。 ザーーーーーーー 湯気で視界が白み、脳が視覚よりも思考を優先する。 思考の中を歩き回っていると、昨日の私がぶつかってきた。 ザーーーーーーー 欲望を剥き出した、醜悪な顔の自我。 それが私の腕にすがりつき、思い出せとささやく。 昨日の私を。 情欲に駆られた獣の姿を。 友人の一糸まとわぬ姿を。 ザーーーーーーー 私は必死で振り払ったが、『ワタシ』は一向に離れない。 それどころか、『ワタシ』が私に絡み付いてくる。 すがる程度だった『ワタシ』は、両腕で胸のあたりを締めつける。 ザーーーーーーー 胸が痛い。 締めつけ、ささやかれるたびにジュクジュクとした膿が心に広がっていく。 その痛みは記憶を叩き起こし、私になだれ込んでくる。 インデックスの恥じらう顔。 インデックスの潤んだ瞳。 インデックスの白さ。 インデックスの赤らんだ頬の色。 息遣い。 肢体。 髪。 におい。 全てが暴力的な渦となって、私の理性を飲み込んでいく。 ザーーーーーーー 思い出す。 今朝の私を。 理性から『母性』だと言い聞かせた私を。 恐れから『ワタシ』を封じ込めた私を。 いつの間にか理性的な『私』は頭から喰われていたのだろうか。 今、私は今朝の私を殺してやりたい。 ザーーーーーーー 今の私は『ワタシ』だ。 今の『ワタシ』は私だ。 理性の欠如したひどく動物的な自我であり、銀髪のシスターに見惚れた罪深き囚人なのだ。 ザーーーーーーー 私は結論に至った。 認めてしまうことが恐かった、一つのホントウを抱きしめた。 御坂美琴はーー ーーーインデックスに恋をしている。 ------------ 何も聞こえない。 何も見えない。 シャワーのレバーを回す音も、ドライヤーの音も。 居間に引き寄せられる。 歩くたびに世界がぐにゃりと歪んでいるような感じがする。 しばらくして視覚と聴覚が舞い戻ったとき、目の前には --インデックスの寝顔があった。 昨日と同じ体勢。 私が上で、彼女が下。 少女の目が覚めても構わない。 真正面から見つめていたい。 でも、覚めて欲しくなかった。 嫌われたくないから。気持ち悪いと思われたくないから。 どっちつかずの気持ちが不安定で、崩れそうで、泣き出しそうで。 美琴「インデックス…」 少女の名を呼ぶ。 熱を持った吐息。 熱を持った眼差し。 鼓膜をやさしく揺さぶる寝息が私を狂わせる。 禁書「ぅん……」モゾッ 美琴「ッ!!」ドキッ 心臓が爆発しそうな声を上げる。 『目よ覚めるな』とカミサマに祈る。 禁書「……」スースー 美琴「……」ホッ 禁書「えへへ……」 美琴「!!!」 起きたのか? 嫌だ。嫌われたくない。嫌われたくない。嫌われたくな 禁書「…みことー……」 美琴「イ、インデックス…?」ヒソヒソ 声を潜め問いかける。 ぐちゃぐちゃの頭の中で、ぐちゃぐちゃの 言い訳を組み立てては壊す。 『これは違うの』と言いたいが、声が出ない。 美琴「ち、ちが……これは…」ボロボロ 涙がでてきた。 止まれ。惨めな獣に成り下がるな。 脳が何度命令しても、涙は止まらない。 禁書「……みことー…」 美琴「~~~ッ」ボロボロ 禁書「………だいすき」 美琴「へっ?」 禁書「ぅぅん…」ムニャムニャ 寝言。 名前の後に『だいすき』。 美琴「…」 惨めな涙は止まった。 美琴「インデッ…クスぅ」グスッ そしてそっと、壊れてしまわぬように抱きしめ、 美琴「アタシも……だいすき」 やさしく頬にキスをした。 ------------ 禁書「んぅ…」モゾモゾ 禁書「……さむい」 右半身が冷えている。 体感温度は5℃前後といったところか。 毛布と布団はどこかに消え去っている。 禁書「…ん?」 眠気で回らない思考を無理やりに回す。 毛布と布団をかぶっていないのに、なぜ右半身だけが寒いのか。 そもそも毛布と布団はどこにいったのか。 その答えは、左半身にあった。 美琴「…」スースー 床を見ると御坂美琴が使っている、布団一式がある。 年季の入った、悪く言えば薄っぺらくてなんだか黄ばんだ上条当麻の布団。 その布団セットは暗闇の中でも分かるほど整然としていて、まるで使用感は無い。 禁書(……)スゥッ 息を吸うと、なんとも形容しがたい香りがする。 イヤなにおいではない。むしろいいにおいだ。 寒くないどころか、あたたかい左半身。 頭が回りはじめたので、現実を見よう。 禁書(…) 頭だけを左へ回す。 壁際に蹴っ飛ばされた毛布と布団が見える。 置き時計の午前五時を示した、蛍光色に光る長身と短針が見える。 そして、 美琴「くぅ…」スースー 左半身に密着している、御坂美琴が見える。 禁書(なんでみことがベッドに…?) 昨日は、のぼせて倒れてからすぐに寝た。 同時に、のぼせた理由は御坂美琴だという事実も思い出し、なんだが居づらくなった。 禁書(あの後、看護してくれてたのかな?)ペリペリ おでこから得体の知れないカサカサで少し柑橘系の匂いがするベタベタを剥がしながら考える。 考えている内に、ふと思い出す。 昨日見た夢。 頬にかかるくすぐったい吐息。 柔らかい唇。 リアリティのあるフィクションに過ぎない、ただの夢。 ただの夢とわかっているのに、どうしてこんなにもドキドキするのか。 どうして、右半身もあたたかくなるのか。 禁書(わたし…) 御坂美琴を見る。 禁書(わたし、ほんとうに…) 長いまつげ、整った顔立ちに、良い匂い。 小さく、心臓が脈打つ。 禁書(わたし、ほんとうに………気持ち悪い) 欧米では同性愛に寛容らしいが、今のインデックスには微塵も理解できない。 同性愛なんてものは歪んだ性欲に歯止めが効かなくなった、一番醜い愛の形だ。 加えて、仮にも主に仕える身であるシスターが、同性に対して恋慕の情を抱くのはいかがなものだろうか。 そう考えると、御坂美琴と一緒にいる時の自分が、理解不能の感情が湧き出る自分が、たまらなく気持ち悪い。 禁書「………わかんないや…」 ベッドを出よう。 とりあえず、この人から距離を取るために。 自分の心に、距離を取らせるために。 そっとすり抜け、毛布と布団をかぶせてあげた。 時刻は午前5時5分前。 まだまだ、外は暗い。 ------------ 美琴「ん…」パチッ あたたかい。 昨日とは比べものにならないほど、あたたかい。 美琴(何時…?) 頭の上に置いてあるはずの携帯電話をつかもうと、なかなかの速度で腕を持っていく。 と、 ゴッ! 美琴「ほぉぉぉぉぉん!」 中指と薬指が、勢いよく壁に激突した。 朝から、妙な声が出た。 美琴(なんで壁があんのよっ…!) 指先からの刺激で、完全に覚醒した。 びりびりとしびれる指をもう片方の手で握りしめながら、昨日を振り返る。 ああそうか。あのままベッドで寝てしまったのか。 あのまま… 美琴(………) また、自己嫌悪におちいった。 かってに頬にキスをして、かってに抱きしめて、かってに添い寝して。 美琴(…ハハッ。サイテーだわ、アタシ) 同性相手に向けるべきものではない感情。 同性相手にとるべきではない行動。 理解しているのに、わからない。 わかりたくない。 美琴(あれ?そういや、インデックスがいない…) そう、故意ではないとはいえ、昨日は一緒に寝たのだ。 不思議に思って身体を起こすと、 美琴「ッ!」 インデックスが、床の布団で寝息をたてていた。 美琴「そう…よね。やっぱり…イヤ……だよね」ギュッ はだけた布団と毛布を握り締める。 そりゃそうだ。 おとといは全裸で押し倒し、今回は添い寝だ。 気持ち悪くて当然だ。 こんな気持ちの悪い人間とは、別々に寝たいというのもうなずける。 美琴「なーにを考えてんだろアタシ。ホント…バカじゃないの」 自分を罵る。 溜まった涙が、こぼれて落ちない様に。 心が、崩れてしまわぬように。 美琴「ホント………バカだよ」ツゥ… 冷たい涙が流れたのを皮切りに、溜まった涙が流れておちる。 最近、泣いてばかりだ。 美琴「ひぐっ…ぐすっ……うぇぇ………」ボロボロ 下を向き、声を潜めて泣く。 あの子を見ていると、本当に自分を殺してしまいそうだから。 たった2日、それだけで、こんなにも苦しいのか。 などど思っていると、 禁書「…みこと?」 美琴「ふぇ…?」 一番見られたくない人に、一番見られたくないところを見られてしまった。 禁書「みこと…どうかしたの?」 布団からひょっこりと顔を出しているインデックスと目があった。 なんだか眠たそうに、布団からもぞもぞと這い出してくる。 美琴(やめて……) 身を切るような寒さで冷える涙。 パジャマの袖口で拭えどもども拭えども頬を切り裂く冷たい涙。 美琴(来ないで……) インデックスが再びベッドに戻ってきた。 ベッドの中央で泣く美琴の横でちょこんと正座をしている。 禁書「大丈夫?どこか痛いの?」 優しい言葉をかけてくれるシスター。 だが、私の心の弱いところが、それは偽りの優しさだと言っている。 この子は私のことがキライなんだと言っている。 美琴「……」 どうせなら、どうせ嫌われているなら言ってしまおうか。 『お前のせいだ』と。 そして『大好きだ』と。 隣にいる少女を思いっきり抱きしめて、言ってしまおうか。 その刹那、ふわりと背中があたたかくなった。 禁書「みこと…」 美琴「…うん」 禁書「大丈夫?」 美琴「…うん」 禁書「どこも痛くない?」 美琴「…うん」 安心感から、すうっと涙が引いていく。 気がつくと私は、 禁書「みこと」 美琴「うん?」 禁書「…落ち着いた?」 美琴「………うん」 逆に抱きしめられていた。 禁書「よかった…」ギュッ 美琴「ありがと。ゴメンね、心配かけて」 禁書「いいんだよ。…で、どうしたの?」 美琴「………ちょっと…」 禁書「うん」 美琴「………怖い夢を見ただけよ」 美琴「それだけ」 今日一日が、ゆっくりとはじまった。 ------------ 禁書「おなかへった…」グデー 小さなテーブルでぐでっとうなだれる銀髪。 寒さもあってか、完全に電池切れしている。 禁書「誰だよぅ、『冬はつとめて(キリッ)』とか言ったおバカはぁ…」 枕草子の冬の一節を全力で否定する欧米人。 清少納言もさぞかしビックリしているだろう。 美琴「しょうがないわよ。あいつらブルジョアなんだし」 平安のブルジョア、貴族たちは、早朝の寒さに対して趣があるといったのではない。 クソ寒い中、せわしなく動き回るメイドさんに趣を感じているのだ。 などという説明しながら、カレーをインデックスの前に置く。 禁書「うわぁ!いただきまーす!」 水を得た魚のように生き返る少女。 ちなみに本人は気付いていないが、私が動き回り、インデックスが毛布にくるまって朝食を待ち焦がれる光景は、まがうことなき冬の一節だった。 美琴「てか、よく知ってたわね、『枕草子』。」 禁書「うん。とうまの教科書に書いてあったんだよ」モグモグ 美琴「…え?読めるの?」 禁書「バカにしないで欲しいかも」モグモグ 美琴「はぁー…外国人なのに、スゴイわね」 禁書「それくらい当然なんだよ」フフン 無い胸を張って誇らしげにする少女。 口の端には白米がついている。 美琴(……いとをかし) 『いとらうたし』でもいいかなと考えたが、話の流れからして『をかし』の方がいいだろう。 禁書「わたしは古文でも漢文でもアラビア文字なんでも読めるんだよ」フフン 美琴「ふぅん、そりゃすごいや」 禁書「……なんかバカにされてる気がするかも」 美琴「いやいやめっそうもない」 禁書「…………ホントは?」 美琴「教科書の注釈見たのかな~と」 禁書「むぅぅぅ!やっぱり信じてないかも!本当に読めるんだよ!」ブンブン 美琴「わかったわかった。だからスプーン振り回すのやめなさい」 禁書「むぅぅぅぅ」プクー 美琴「ほら、ふくれないの」グイッ 禁書「ひゃあ!ほっへたひっはららいへぇ!」バタバタ おそらく、『ほっぺた引っ張らないで』と言いたいのだろう。 いやぁそれにしても… 美琴(かわいいなぁ…)ギュー 禁書「にゃがい!みひょと、にゃがい!(長い!みこと、長い!)」バタバタ 美琴「あっ、ごめん!」パッ 禁書「う~…じんじんするんだよ…」 美琴「いやぁちょっと考え事してて」 禁書「ふんだ!みことなんか嫌いなんだよ!」プイッ 美琴「え……えっ?」 禁書「えっ?」 美琴「えっ…………うえぇ…」グス 禁書「えっ!?えええええっ!?」 美琴「うぇ……ふぇぇぇ」グスグス 禁書「え!?ちょっとなんで泣いちゃうの!?冗談なんだよ!会話の流れの中の虚構なんだよ!」 美琴「………ほんと?」グスッ 禁書「当たり前なんだよ」 美琴「じゃあ……」 禁書「そりゃあもちろん………」 禁書(………ん?) インデックスは考える。 このまま『好きだよ!』って言ってしまってもいいものか、と。 なにか、なにかが心にひっかかる。 禁書(わたしの気のせいかな?なんだかニュアンスがおかしかったような……) 美琴「答えてよぅぅ」グスッ やばい、また泣く。 美琴「う、うぅぅ」グスグス -ー-ちゃんと考えろよ! まずスプーンを置け! カレーなんて食ってる場合じゃねえ! カレーなんてものにうつつをぬかしてる間にも目の前の女の子は泣き続けちまうんだろ!? だったらもっと考えろよ! お前だって望んでるんだろ!? 目の前のカレーよりもスパイスの効いた最高のレスポンスを! 含まれている可能性のあるニュアンスすべてに対応できる至極の返答を! いいかげん言っちまおうぜ! シスター! 禁書「み、みことはっ!」ガタン! 美琴「ふえっ?」 禁書「わたしの…」 美琴「わたしの…?」 禁書「……………た、」 美琴「た?」 禁書「大切な人なんだよっ!!」 美琴「…………」 禁書「…………」 美琴「……………えへ」 禁書「!」 美琴「えへへへ、そっか、『大切な人』か、えへへへへ」 ありがとう、脳内とうま! やってやったんだよ、最高のレスポンスを! ミッションコンプリートなんだよ! 美琴「えへへへへ」テレテレ 禁書「………ふぅ」 なんだか、ドッと疲れた。 ---------- 禁書「ごちそうさま!」 美琴「………」 禁書「みこと?」 美琴「へっ?あ、あぁ、うん、おそまつさまでした」 禁書「お水にお皿浸けてくるね」カチャカチャ 美琴「はーい……」 …言われてしまった。 美琴「『大切な人』…か」 美琴「~~~ッ」カァァァ 胸が苦しくて、身悶えする。 体の芯が、とてつもなく熱い。 美琴(『大切な人』って、『大切な人なんだよっ!!』って、~~~きゃー!)クネクネ その様子をキッチンの陰から覗くインデックスは、 禁書「………」 禁書(一回、病院とかに連れて行こうかな……) 美琴の頭のほうを心配していた。 美琴「ふぅ…」 禁書(なんだか晴れやかな顔をしているんだよ…) 美琴「さっ!洗い物しちゃお!」ガタッ 禁書(うわっ!こっちにきたかも!)ビクッ 美琴「あれ?インデックス、まだいたの?」 禁書「あ、ええと、その…て、手伝おうと思って!」 美琴「いいのよぉぅ別に~、テレビでもみてなさい☆」キャピッ なんだろう。 この得体の知れないハイテンションは。 なんだか気持ち悪い。 とにかく、今は離れよう。 なんだかこわい。 禁書「あ…わ、わかったんだよ」タタタッ 美琴「ふふん♪ふふふーふふふふーん♪」 キッチンからは、終始鼻歌が聞こえていた。 ---------- キュッ 静かなキッチンに、蛇口を閉める音が響いた。 カウンター越しに見えるインデックスは、ぼーっとした目でテレビを見ている。 おじさんが名目上『国民のため』の政治論を建築し、その他のおじさんたちがそれを取り壊す番組。 勧善懲悪もなければ正解不正解もない、そんな無味乾燥な番組。 そんな番組がつまらないのか、少女は大あくびをしている。 そんな光景を見た後、私はそっと外へ出た。 音もたてずにドアを閉める。 冷たい外気に抱きしめられると、私が私になっていくような、そんな感じがする。 美琴「……」 眼下に広がるのは無人の駐輪場。 一直線の廊下にも、人の姿は見えない。 私一人の空間。 目新しいものなんて無い、私を中心にまわる世界。 そんな何もない世界にいると、人はいつもより自分自身を客観視することができる。 冬の空は、私にノスタルジーに似たものをを運んできた。 ここに来て3日目だが、いろいろなことがあった。 私が知らない自分。 わがままな私。 いじっぱりな私。 意外と料理ができる私。 ちょっと寂しがりやな私。 そして、甘えん坊な私。 美琴「………」 甘えん坊な私… 甘えん坊な… 『アタシのこと…………スキ?』 美琴「…………」 『インデックスぅ、アタシのこと…………スキぃ?』 美琴「………………」 『ねぇ~ん、アタシのことぉ………………スキ?』(笑) 美琴(うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!やっちゃったぁぁぁぁぁぁ!!)ガバッ 寒空の下、男子寮の廊下で、女の子が一人。 美琴(うわぁぁぁぁぁぁどうしよぉぉぉぉぉ) 頭を抱え、懊悩している。 まるでどこかの原住民に捕らえられたイモムシのように、うねうねうねうねうねう ??「…………御坂?」 美琴「へあっ!?」ビクッ! 見られてしまった。 わたくし御坂美琴の人生でも最もドス黒く輝き続けるであろう歴史の片鱗を。 ??「あー………」 美琴「えーと、えーと………………ね?」 何言ってんだ私。 脳みそフル回転で導き出した言葉が『ね?』って。 ??「…………とりあえず、入るかー?」 美琴「…おじゃまします」クスン 間違いない。 今日は厄日だ。 舞夏「兄貴は仕事でいないから、ゆっくりしていけー」コトッ 美琴「アリガトウゴザイマス…」ズズッ 市販のものとは比べ物にならないほどおいしいカプチーノ。 だが今はそんなシロモノでさえも無味に感じる。 たくさんのトレーニング器具といかがわしいメイド系雑誌であふれかえっている部屋。 その部屋の中央のテーブル、私の対面に座るメイド少女、土御門舞夏は… 舞夏「ニヤニヤ」 二ヤケ顔で、私を見ている。 舞夏「で?」ニヤニヤ 美琴「…なにが」 舞夏「なんで部屋の前でうねうねしてたんだー?」 美琴「……直球で聞くわね」 舞夏「あんなの変質者くらいしかしないからなー。気になる」 美琴「はーい黙秘権ー。プライバシーの権利ー」 舞夏「あっ、こらー!耳をふさぐなー!」 美琴「答えなきゃ……だめ?」 舞夏「『だめ』って言ったらー?」 美琴「刺し違えてでも…」 舞夏「落ち着けー、変質者。」 美琴「変質者言うな!」 『姦しい』という言葉は女性が三人集まるとぎゃあぎゃあと騒がしいというのが由来らしいが、二人でも十分騒がしい。 間延びした声が、優秀なペースメーカーとしての役割りをしているのだろうか? 舞夏「で?」 美琴「今度は何よ…」 舞夏「なんで3日前から隣に住んでるんだー?」 美琴「あれ?よく3日前からってわかったわね?」 舞夏「実はそこに穴が空いているのですー」 美琴「それホント?本当なら今粛清しちゃうけど」バチバチィ! 舞夏「キレやすい若者はダメだぞー。冗談に決まってるだろー?」 美琴「じゃあなんで知ってるのよ?」 舞夏「だってお前ら、うるさいからー」 美琴「…そんなにうるさい?」 舞夏「うるさいぞー。うるさすぎて兄貴と イチャつけないんだぞー」 美琴「えっ」 舞夏「ん?」 美琴「いや、アンタの兄貴って確かアイツと同い年じゃ…」 舞夏「そんなことより、」 美琴「露骨だけどすごくキレイなスルーね」 舞夏「御坂ー、なんか悩んでないかー?」 美琴「………え?」 舞夏「どうなんだー?」 美琴「……いや、悩みなんて何も…」 舞夏「あーウソついたー」 美琴「ホ、ホントよ!ウソじゃないもん!」 舞夏「………メイドさんはなー、」 美琴「ん?」 舞夏「ご主人様の身のまわりのお世話だけじゃ無くて、表情から気分や体調、その他もろもろを察せなきゃいけないんだぞー?」 美琴「………」カチャ‥ 冷えたカプチーノを口に含む。 空気を介して侵入してくるマイルドな香り。 食道を通過した冷たい液体が、噴門を通り、するりと胃に落ちる。 舞夏「で、御坂自身はどうありたいんだー?」 すべてを見透かしたような目を向ける少女。 このまま、すべてを話してしまおうか。 シスターではなく、メイドに。 ぶちまけるように、懺悔してしまおうか。 美琴「アタシは…」 無意識に、ギュッと服を握りしめる。 私は、インデックスのことが好きだ。大好きだ。 あの子を見るたび話すたび、好きな気持ちが膨らんで、張り裂けそうで、苦しくて。 でも、私は、私はまだ、 上条当麻のことも、大好きだ。 今朝の情緒不安定な行動。 それは優柔不断な情けない私が、心の奥から這い上がってきたものなのではないだろうか。 そもそも、アイツとインデックスを同じ天秤に乗せる勇気が、私にあるのだろうか。 私は、『どうありたい』のだろうか。 美琴「アタシは…」 美琴「アタシは…」 臆病で優柔不断な私の、小さな決断はまだ、 美琴「姫で、いたい」 秘めていたい。 舞夏「…そうかー」 舞夏「じゃ、これ以上は詮索しないわー」 美琴「………あの」 舞夏「んー?」 美琴「今日は……ありがとね」 舞夏「どういたしましてー」 心の奥に、想いの炎をそっと隠した。 優柔不断なお姫様の、ささやかな秘めごと。 私は、上条当麻が大好きだ。 でも、 泣いた顔。 笑った顔。 怒った顔。 眠そうな顔。 不安そうな顔。 空腹の顔。 満腹の顔。 私と同じ髪の匂い。 触れていたい体温。 かわいらしい仕草。 そのすべてが臆病者の私を勇敢にしてくれた。 守って、護って、目ってあげたい。 たとえ彼女が私のことを好いていても、嫌っていても。 全力であの子を笑顔にしてあげたい。 この想いがばれないように、姫でありながら。 美琴「じゃあ、そろそろ行くね」 優柔不断な私の心よ。 もう今朝のように迷うことはないだろう。 今の私には選択肢が一つしか無いんだから。 ---私は、インデックスを愛してしまったんだから 舞夏「おー。気をつけてなー」 美琴「気をつけてって、すぐ隣じゃない」クスッ 舞夏「…御坂ー」 美琴「ん?」 舞夏「選んだ道は、けわしいぞー」 美琴「……メイドさんってのは、みんな読心能力者か何かなの?」 舞夏「さぁなー。ま、一応応援するぞー」 美琴「ありがとね。一応でも、うれしいわ」 舞夏「じゃ、暴食シスターによろしくー」ヒラヒラ ひらひらと手を降るメイド少女を後ろにその部屋を出ると、冬の朝の清々しい風が私を迎えた。 ---------- まぶたに光を感じる。 朝の冷たい空気。 深い眠りからゆっくりと、しかし確実に覚醒へと向かう脳。 階段を一歩一歩登るような感覚。 毎朝の楽しみの一つだ。 この階段を登り切った後、いつものように俺は ??「あなたー!!」ピョーン 一杯のブラックコー…ドスン!! ??「うが…ァァァァァァ……!」 とんだ思い違いをしていた。 今まで階段だと思い込んでいた段差は、クソったれなエスカレーターだったらしい。 ??「ふぐゥゥゥゥゥ…うァァァァァ…」ゴロンゴロン 打ち止め「あれ?もしかして入っちゃった?ってミサカはミサカはもやしっ子なあなたを心配してみたり」 10歳くらいの女児一人の体重を30㎏弱だと考えよう。 人体におけるの弱点一つであるみぞおち。 そこに10歳前後の女児が突っ込んでくるというのは、先のとがった米俵をみぞおちにぶつけられたのとほぼ同義なのだ。 悶絶、どころの騒ぎでは無い。 一方通行「死ンだ……俺今絶対死ンだァァァ………」 たとえ、学園都市トップの男であってもだ。 打ち止め「大丈夫!生きてるよってミサカはミサかは体を丸めてるあなたに全力エール!」フレーフレー ああもう最高に黙らせたい。 ガムテープでもはってやろうか。 一方通行「こンのォ…………アホガキがァァァァ!!」ガバッ 打ち止め「あ、起きた!」 一方通行「『起きた!』じゃねェよクッソガキィィィ! お前やっていいことと悪いことの」 打ち止め「おはよう!あなた!」ニコッ 一方通行「……………おゥ」 その後すぐにタタタッと部屋を出て行ってしまった。 怒鳴った時は恐がっているそぶりを見せなかったが、やっぱり、恐かったのだろうか。 正直、少しもの寂しい。 方法はどうであれ、起こしてくれたことにはかわりない。 なにも怒鳴ることなんて無かっ 打ち止め「ヨミカワ隊長! ねぼすけウサギを起こしてきました!」ビシッ 黄泉川「よくやった! 打ち止め一等兵!」ビシッ 打ち止め「ありがとうごさいます! あいかわらずのモヤシでした!」フンス よし、シバく。 打ち止め「う~~~、痛い~ってミサカはミサカは非難がましい目であなたをギロリ」 一方通行「ほォう、まァーだチョップされてェのかァ?」 打ち止め「う~~~! あなたのいじわるっ!ってミサかはミサかはポカポカ!」ポカポカ 一方通行「反し…」カチ 打ち止め「えいっ」ビリッ 一方通行「sdffgvdjsefyvdjb!!!」ボフッ 打ち止め「えへへへへーってミサカはミサカはソファーでもぞもぞしてるあなたに頬ずりしてみる」スリスリ 一方通行「ぶっはァ! てンめェェェェェ! まァた予告無しに」 黄泉川「うるさいじゃん!」カッ!! 一方通行「……………ハィ」 芳川「ふふ…朝からアツいわね」ズズズ‥ 一方通行「コーヒーだよな? そのコーヒーのことなンだよな?」 芳川「あら、あなたが一番よくわかってるんじゃないかしら?」 一方通行「ニートこじらせて頭おかしくなったンですかァ?」 芳川「………ロリコン」ボソッ 一方通行「今なンて言ったコラもういっぺン言ってみろやニートコラァァァ!」ガタッ! 黄泉川「一方通行…?」ニコッ 一方通行「…………ゴメンナサイ」 黄泉川「桔梗も煽らないじゃん」 芳川「うふふ。自宅警備員に説教は効かないのよ」ズズズ‥ 黄泉川「もう、桔梗もさっさと職探したらどうじゃん?」 芳川「間に合ってるわ」ズズ‥ 黄泉川「何が間に合ってんじゃん…」 芳川「………愛穂」 黄泉川「なんじゃん?」 芳川「そんな小言ばっかり言うなら、もうよがらせてあげないわよん」ウィンク☆ 黄泉川「なっ……///」カァァァ 一方通行「」 芳川「ま、それでも探せっていうならしょうがないわね」 黄泉川「あ! いや、その…なんじゃん…ゴニョゴニョ///」 芳川「んー?なぁに聞ーこーえーなーいー」 黄泉川「そ、そんなこと…言わないで欲しい…じゃん………///」 芳川「うふふ、しょうがないわねぇ愛穂は」 黄泉川「///」 打ち止め「ねぇあなたー、ヨガラセルってなぁに?ってミサカはミサカは好奇心をあらわにしてみる」 一方通行「ダルシムのことだよ。ヨガを極めたすごいやつだよ」 打ち止め「そうなんだ!ってミサカはミサカはまた一つ賢くなったぜイェイ!」 黄泉川家の朝はあわただしく過ぎてゆく。 ---------- 芳川・黄泉川「ごちそうさま」 打ち止め「ごちそうさまってミサカはミサカは何も言わないあなたをじ~~~っ」ジロジロ 一方通行「…………ごちそうさま」ボソッ 芳川「よくできました一方通行」 黄泉川「エライじゃん一方通行」 打ち止め「やればできるじゃん一方通行ってミサカはミサカはヨミカワの口調をまねてみる」 一方通行「おまえらバカにしてンだろ」 芳川「ええ」 一方通行「……クソレズニート」 芳川「レズじゃないわよ。ただ可愛い人が好きなだけよ」 芳川「打ち止めは今日どうするの?」 打ち止め「今日は服を買いに行くのってミサカはミサカは漠然としたプランをさらしてみたり」 一方通行「ほォう、誰と?」 打ち止め「あなたに決まってるでしょってミサカはミサカはまたまた不満!」 一方通行「ハッ、お出かけは夢ン中だけで十分だろォが」 打ち止め「えー!そんなのヤダヤダってミサカはミサカは足をバタバタして猛抗議!」バタバタ 一方通行「バタバタしてもダメなもンは ダァメですゥー」 打ち止め「ヤダヤダヤダヤダ!」バタバタ 黄泉川「一方通行、いじわるしないで連れてってやるじゃん」 一方通行「……チッ、しゃァねェなァ…連れてってやるよォ」 打ち止め「ホント!?やったー!ってミサカはミサカは感謝感激!」 黄泉川(最初から連れてってやるつもりだったクセに…素直じゃないじゃん)クスッ 芳川「最初から連れて行ってあげるつもりだったクセに…素直じゃないわねぇ」 黄泉川「なんで言っちゃうじゃん…」 打ち止め「そうだったの?ってミサカはミサカはあなたの顔をのぞき込んでみる」 一方通行「バッ…! ン、ンなワケねェだろォが! 思い上がンな!」 打ち止め「……そうだよねってミサカはミサカは意気消沈…」 芳川「あーあ。やっちゃった。あーあ!」 黄泉川「桔梗…いつもよりなんかかがやいてるじゃん…」 一方通行「だァァ! もォうっせェ! オマエも早く着替えてこいクソガキ!」 打ち止め「! うん!ってミサカはミサカはあなたの優しさを再確認!」タタタタタッ! 一方通行「優しさ、ねェ…」 芳川「……一方通行」 一方通行「あン? まァたなンか嫌味ですかァ?」 芳川「違うわよ。あなた、気づいていないの?」 一方通行「はァ?」 芳川「いや、気づいていないフリをしてるのかしら?」 一方通行「はン。なンのことだかサッパリだぜェ」 芳川「あの頃のあなたと今のあなたが、ぜんぜん違うってことよ」 一方通行「……ハッ、意味わかっンねェな」 芳川「結論から言わせてもらうと、あなた、そうとう人間らしくなったわ」 一方通行「俺が…?」 芳川「あなた以外に誰がいるのよ」 一方通行「俺が…人間らしくなっただァ?」 芳川「ええ」 一方通行「………くきゃ…くきゃくかかかかかか!」 一方通行「この汚れた手のクソッタレなクズヤローが人間らしいだァ?」 一方通行「笑わせンじゃねェよ!」 一方通行「俺は…俺は汚れてなきゃいけねェンだよ…キレイじゃダメなヤツなンだよ!」 黄泉川「一方通行、それはちが」 芳川「それは違うわ」 一方通行「!」 芳川「一方通行、あなたが鏡に映った自分を汚らしいと思おうが思うまいが、正直どっちでもいいわ」 芳川「でもね、打ち止めと出会って、打ち止めと一緒にいて、打ち止めを護って、何か変わったと思えるものが心のどこかにあるんじゃないかしら?」 一方通行「…っ」 芳川「一方通行、あなたはもっと胸をはって、堂々と生きるべきよ。」 一方通行「…でも、俺なンかにそンな資格は」 芳川「資格って何よ。生き方に資格が必要なら、日本全国のニートはみんな死んでるわよ」 芳川「もう一度言うわ。もっと胸をはって生きなさい、一方通行。そうでなきゃ打ち止めにも失礼だわ。」 芳川「あなたは昔より、ずっとずっと優しくなったんだから」 一方通行「芳川…」 黄泉川「桔梗…」グスッ 芳川「幼女だけには、ね」 一方通行「芳川ァ………!」 黄泉川「台無しじゃん…」 ガチャ! 打ち止め「おまたせーってミサカはミサカは……ってあれ? どうしたの?」 黄泉川「なんでもないじゃん……」 打ち止め「ふーん? それよりあなた!早く早く!ってミサカはミサカはあなたをエスコート!」 一方通行「チッ…エスコートの意味わかってンのか………よっと」グイッ 黄泉川「///」ボンッ 打ち止め「ヨミカワ!ヨシカワ!行ってきますってミサカはミサカは元気にあいさつ!」 一方通行「じゃ、行ってくる」カツ.カツ. 芳川「うふふ…いってらっしゃい」 黄泉川「車に気をつけるじゃん」 一方通行「…………芳川ァ」 芳川「ん?」 一方通行「その……ありがとな」ボソッ 芳川「さぁ、なんのことかしら」 一方通行「…….ケッ」 カッ.カッ.カッ...バタン! 芳川「……さて、愛穂」 黄泉川「は、はい!」ビクッ 芳川「私たちは私たちで……楽しみましょうか」グイッ 黄泉川「ひゃ、ひゃあい……///」 芳川「うふふ…」 ---------- ガチャ 鋭く冷えた金属のドアを、私はためらい無く開けた。 嗅ぎ慣れた甘い匂いが、鼻腔から全神経を占領していく。 大好きな匂い。 いつの間にかカレーの匂いはどこかに消えてしまったようだ。 美琴「ただいま」 外出が悟られないよう小さな声で、かつ帰宅を知らせるよう大きな声で。 二つの背反した目的がぶつかって、最終的には不自然な大きさの変な声が出た。 がやがやとしたテレビの音。 その波に混じって「おかえり」という帰宅を歓迎する言葉は聞こえない。 「おかえりは?」という風に必要以上に耳をすましてしまうあたり、私はまだまだ小さいようだ。 生活スペースまで一直線に伸びる冷たい廊下。 その先にいるであろう少女は、どんな顔で、どんな目で、どんな体勢で私を迎えるのだろうか。 玄関で少し立ち止まって考る。 もしもイヤそうな、「来ないで下さい」という空気で迎えられたら、私はどうなってしまうのか、と。 おじさん達の保守的な政論をBGMとした、静かな部屋。 私はためらいながらも、凍るようなフローリングに降り立つ。 一歩、また一歩と進むたびに悪魔が囁く。 『お前のことがキライだから、「おかえり」と言ってくれないんだ』 『同性愛者かもしれない人間に、優しくしたら何をされるかわからないだろう?』 臓物を直接犯されたような吐き気が、突然襲ってきた。 自分の弱いところを圧迫されて、水鳥みたいにキーキーもがく。 足取りは、重い。 こんなにも、こんなにも自分が弱いとは思わなかった。 パジャマを着た、小さな背中が見えた。 ドクン、と鳴くチキンハート。 あいかわらず退屈そうな感じで、テレビのある方向を向いている。 打ち立てた被害妄想。 さっき私が悪魔の囁きと言い換えた、脆弱な自分の心。 それがより現実味を帯びて、私にのしかかってきた。 もう一度、『さっきのは何かの間違いかも知れないから』と言い聞かせ、 美琴「………ただいま」 すがるように、言葉を発する。 返事はない。 キッチンカウンター越しに見えるインデックスの背中。 机に身を預けているので、柱に顔が隠れて見えない。 一歩進めば、目が合うだろう。 さっさとそうすればいいのに。 そうすれば全部、全部悟ることができるのに。 私の足は鉄球を付けた囚人のように、動くことを拒んだ。 美琴(やっぱり…か) ハハッと乾いた笑いがでた。 諦めの混じった、卑屈な笑い。 返事は、ない。 打ち止め「ねーねーあなた、レズってなぁにってミサカはミサ」 一方通行「気にすンな。おまえには一生縁のねェもンだ」 打ち止め「むぅってミサカはミサカはちょっぴり不満」 パジャマの少女の背中は動かない。 息をするたびに、膨らみ、しぼむ。 ただそれだけ。 美琴(………ん?) 何かがおかしい。 カウンター越しに見える背中は、とても覚醒状態にある人間のものとは思えない。 打ち立てられる一つの仮定。 それの最も簡単な証明方法は、一歩前へ進むこと。 美琴(もしかして…) 仮定にすがりつく形で一歩、前へと進む。 するとそこには、 美琴(やっぱり)クスッ 天使のような顔をした、ねぼすけがいた。 ーー真実は時に人を殺し、時に蘇生する。 どこかで聞いた格言を簡略化したものだが、その通りだと思った。 さっきまで私の中であぐらをかいていた悪魔はもういない。 弱い心が、少し強くなったような気がした。 くぅくぅと寝息を立てるインデックス。 がやがやと騒がしいおじさん達の怒号。 机に上半身をあずけ、すやすや眠る少女。 それはまるで彼女だけがどこか別の場所から切り取られ、貼り付けられたような異質さを漂わせていた。 美琴「もう。こんなところで寝てちゃ、風邪ひくわよ」 母親のようなことを言い、近寄る。 すると机には、 美琴「うおっ!」ビクッ 世界地図が、具体的に言うとユーラシア大陸が、唾液で描かれていた。 ---------- 湯で温めたタオルで顔を拭いてあげる。 少女は『いやいや』をしたが、「構うものか」と強引に、だが優しく肌を滑らせる。 美琴「ほら、だらしないことしないの!」フキフキ 禁書「う~~~!」イヤイヤ 「ベッドで寝なさい」とたしなめ、テレビを消すためにテレビに近寄る。 カチッというプラスチック的な音と共にテレビの電源が落ちた。 「まったくもう」と言って振り返ると、 禁書「うゆ……」フラ~ 美琴「うおおおおい!」キャッチ! また、粘液の海にダイブしようとしていた。 その頭を必死でキャッチする。 美琴「はぁ…」 ため息をつく美琴。 その顔はどこか嬉しそうで、ニヤニヤとしていた。 美琴「まったくもう…よいしょ」グイッ 本日二度目の『まったくもう』の後、俗称:『お姫様抱っこ』でベッドまで運ぶ。 禁書「ふふ…」スリスリ 『思ったより軽いな』などと思っていると、胸に頬ずりをして甘えてきた。 美琴「あ~もう、猫かお前は」 本来ならばそのまま抱きしめて頬ずりをしたいほど愛らしいが、もし起きてしまった時を想定して、悪態をつく。 終始、二ヤケながら。 ---------- 禁書「ぅん…ん?」パチ ありのままに起こったことを話そう。 『私はテレビを見ていたのに、いつの間にかベッドで寝ていた。』 何を言ってるかわからないと思うが、私にもわからない。 禁書「………」 くだらないことがスラスラと出てくるあたり、私の脳はきちんと覚醒しているようだ。 ムクリと起き上がり、辺りを見回す。 が、御坂美琴の姿は無い。 禁書「………みことー…」 …返事がない。 出かけているのだろうか? 禁書「むぅ…またわたしを放ったらかしに…」 そこまで言って思い出す。 あの変な御坂美琴を。 トチ狂ったテンションの、絡むとめんどくさいランキング上位に君臨しそうな御坂美琴を。 私の優れた記憶力は、瞬時にフィードバックさせた。 禁書「何だったんだろ…アレ」 この時ばかりは、『夢だった』で片付けられる人間が羨ましい。 私の優れた記憶力は、夢オチを許さない。 うんうんと考えていると、 美琴「ただいまー」ガチャ ドアの音が聞こえた。 ベッドから跳ね起き、裸足でペタペタと玄関までかけて行く。 禁書「お、おかえり!」 「また変なみことだったら変装を疑おう」と、アステカ辺りの原典を脳内で開く。 見た感じ魔翌力は無いな、と思っていたら、 美琴「あ、起きたの」 美琴「ただいま、インデックス」ニコッ そこには 禁書「う、うん」ドキッ いつもの、御坂美琴がいた。 美琴「『コンビニ行って来ます』って書き置きして行けばよかったわね。寂しかった?」 禁書「むっ!子供扱いしないで欲しいかも!」プクー ここに来て何度も見た仕草。 この子は気に入らないことがあった時、 頬を膨らませるクセがあるようだ。 美琴「そうよね。インデックスはオトナだもんね」 禁書「そうだよ。 わかればいいんだよ、わかれば」フフン 腕を組んで胸を張り、仁王立ちをする銀髪の少女。 しかし私の知っている仁王様はこんなにちんちくりんではない。 美琴「じゃあこの……」ガサゴソ 禁書「?」 美琴「子供に大人気のホイップクリームプリンはいらないわね」 禁書「………」ジ~ッ 何だかギラギラとした視線がホイップクリームプリンを持つ右手に突き刺さる。 まるで『おあずけ』をくらった犬のような表情だ。 禁書「ま…まぁ、今日くらいはお子様気分を味わってあげてもいいかななんて思ったりしちゃったりするんだよ」 美琴「なに錯乱してんのよ。 そんな無理しくても、アタシが食べるからいいわよ」 禁書「で、でもでも! いつまでも若々しい気持ちを保つにはこういうのも必要だって、主様が言ってたり言わなかったりしてたんだよ!」 美琴「カミサマはそんなこと言わないわよ。 それ以前に今のはシスターとしてどうなのよ」 禁書「でもでもでも! そのホイップクリームプリンはわたしの胃袋に入ることを望んで止まない感じかも!」 美琴「どんだけマゾなのよこのプリン。そんな危なっかしいものならアタシが食べてあげるわよ」 禁書「むむむむむ……!」 美琴「もう終わり?」ニヤニヤ 禁書「む~~~!」ジワッ 美琴「へ!? いやいやプリンくらいで泣かないでよ!」 禁書「罪悪感に…ヒグッさいなまれると…いいんだよっ……!」ウルウル 美琴「なに小者っぽいセリフ吐いてんてよ! わかったから! わかったから泣き止んで! ね?」 禁書「ほんと……?」ウルウル 美琴「ホントホント。ほら、居間に行きなさい」 禁書「…わかった」ゴシゴシ 美琴「ほんとにお子様ね…」クスッ 禁書「違!…わないけど違う…ことも無いっていうか…」ゴニョゴニョ 美琴「もうイジメないから素直に『違う!』って言いなさいよ」 ---------- テーブルを挟んで対面する二人。 ベッド側にはインデックス、テレビ側には美琴が座っている。 先程からインデックスは落ち着きが無い。 禁書「さぁみこと………さぁ!」バッ! 片ヒザを立て両手を広げ、キラキラした目でプリンを迎えようとする。 なんだか、テンションがおかしい。 美琴「わかったから、ちょっと落ち着きなさい」ガサゴソ 禁書「わくわく」 美琴「はい」トン テーブルの真ん中に、赤いパッケージで長方形のおかしが置かれた。 禁書「…………へ?」 そう、 美琴「おいしいわよ?」 ジャパニーズ・トラディショナル・スイーツの代表、『都こんぶ』である。 禁書「」ズゥーン 突然鉛のように沈んだインデックス。 まるで地球が終わるかのような表情をしている。 美琴「そ、そんなに沈まないでよ。 はい。 」コトッ 今度はちゃんとプリンを置いた。 すると、 禁書「はぁぁぁぁ」キラキラ 花が咲いたように元気になった。 この子はとてもからかい甲斐がある。 禁書「みこと! ありがとう!」ニコッ 美琴「ふふっ、どういたしまして」 さっきまでイジメていた人間に、懐いてきた。 この子がDV野郎に引っかからないか、とても心配だ。 ---------- 禁書「~♪」モチャモチャ 美琴「……それ、そんなにおいしい?」 禁書「うん!」モッチャモッチャ 美琴「そ、そうなんだ」 禁書「なんていうのかな、この味付けがたまらないよね! 」モッチャモッチャモッチャ 美琴「…うん」 禁書「これがエキゾチックジャパンなんだね! ううん、そうに違いないかも!」モッチャモッチャモッチャモッチャ どうやら、いたく気に入ったようだ。 禁書「ごちそうさま! もう無いの?」ズイッ 美琴「寄るな。 酢昆布くさい」 嫌がらせのために購入した、『みやここんぶー』を。 禁書「えー! なんでもっと買わなかったの? 『みやここんぶー』!」 美琴「そんなにおいしかったの?」 禁書「うん! なんていうのかな、あのビネガーの」 美琴「わかった。 わかったから『都こんぶ』に『ビネガー』なんて小ジャレた言葉を使わないで」 禁書「あー! 『みやここんぶー』をバカにしちゃダメなんだよ! カミサマの天罰が下るかも!」 美琴「力の使い所を間違えたクソくらえな神様ね」 禁書「はぁ…これだからニッポン文化を知らない人は」ヤレヤレ 美琴「アタシ日本人。 あなた外国人。 OK?」 美琴「だいたい何よ、『みやここんぶー』って。『ぶー』って何よ?」 禁書「『みやここんぶー』は『みやここんぶー』なんだよ」 美琴「とろろ昆布は?」 禁書「とろろ昆布だよ」 美琴「なんだかややっこしいわね」 禁書「えへへー」 美琴「褒めてないわよ?」 禁書「むぅ…」 禁書「とにかく、『みやここんぶー』は『みやここんぶー』であって、それは『みやここんぶー』以外の何者でもないっていう『みやここんぶー』が創り出した『みやここんぶー』独自の『みやここんぶー』」 美琴「あーもう、ぶーぶーうるさい!」 禁書「ぶぅ」プクー 美琴「てかなんで都こんぶだけ『みやここんぶー』になるのよ…」 禁書「それだけじゃないよ。 『けいたいでんわー』もあるよ」 美琴「………へ? 携帯電話?」 禁書「うん。けいたいでんわー」 美琴「持ってるの?」 禁書「うん。 なんと! ぴかぴか光るんだよ!」フフン! 美琴「残念ね。 アタシのも光るわ」 禁書「むぅぅ」ムスッ 美琴「ていうかさ、そういうのは先に言いなさいよ。今どこにあるの?」 禁書「………行方不明なんだよ」 美琴「携帯電話を携帯しない人って、ダメだと思うの」 禁書「う~~~! だって! わたしのけーたいでんわーはブルブル震えるんだよ! ぴかぴか光って、大きな音が出るんだよ! 明らかに怪しいでしょ!?」 美琴「残念ね。アタシのもブルブル震えてぴかぴか光って大きな音が出るわ」 禁書「まねっこ無しなんだよ!」 美琴「そういうモンなのよ」 禁書「なんだ。そういうものなんだ」 美琴「ちょっと待って、すぐ探すから」 禁書「? どうやって?」 美琴「こうやって」バチッ! 美琴「ベッドの下辺りから不自然な電波が出てるわね……」 禁書「えーっと」ゴソゴソ 禁書「あ! 何かあるんだよ!」グイッ 美琴「お!見つかった?」 ばさっ! 『週刊:オトコの世界 ~今月はノンケ祭り~』 禁書「……………」 美琴「……………」 禁書「で、電波が…」 美琴「出てないから早く戻しときなさい」 禁書「うん………」 禁書「あ! これっぽいかも!」ゴソゴソ 美琴「あなたの切り替えの早いところ、好きよ」 禁書「あった!あったよみこと!」 美琴「よかったわね。じゃ、赤外線で交換しよっか」 禁書「せきがいせん? なんだか強そうかも!」 美琴「残念ながら強く無いわ。 たとえ強かったとしても不可視光だから見えないのよ」 禁書「不可思考? 考えちゃダメってこと?」 美琴「誤認して漢文にシフトしちゃったか。 まぁいいわ、貸して」 禁書「…………大切に、してあげてね」 美琴「数十秒で返すわよ」 ピッピッピ……ピロリン♪ 美琴「はい。登録しといたから」 禁書「ありがとう! おかえり、けーたいでんわー!」 美琴「もうなくしちゃダメよ?」 禁書「うん!」 美琴「…………それよりさ、」 禁書「?」 美琴「あの本……インデックスの本?」 禁書「『月刊:オトコの世界 ~今月はノンケ祭り~』のこと?」 美琴「素晴らしい記憶力ね。うん、それ」 禁書「そんなわけないんだよ。わたしは腐女子じゃないし」 美琴「赤外線知らないのになんで腐女子は 知ってんのよ。どんだけかたよった知識よ」 禁書「まいかに教えてもらったんだよ」 美琴「あのメイドは一回オシオキしないといけないみたいね」 美琴「ん?」 ということは、あの本は必然的に上条当麻の所有物ということになる。 アイツが?アイツがあんなの買うの? いやいやそんなワケない。 こんなに可愛らしい白人ロリシスターがいるのに、あんな色々とゴツい雑誌買うワケない。 おおかた、あの友達たちにもらったんだろう。 そうだ、そうに違いない。 禁書「おーい、みことー?」 美琴「ふえっ?」 禁書「話聞いてたー?」ムスッ 美琴「あー、ごめん。ぼーっとしてた」 禁書「もう。もう一回言うから、聞き逃しちゃダメなんだよ。今日、どこか行かない?」 美琴「ああ、そんなことか。いいわよ。どこ行きたい?」 無理やりに自己解決して、早々に忘れ去ることにした。
https://w.atwiki.jp/parabura/pages/20.html
GM名 GM 使用チャンネル 「#ストパラ」「#ジャスパラ」 ルール解釈 ルールブックを読みこめていません。 マスタリング方針 セッション履歴 日付 タイトル 経験値 参加者 10/07/21 学園と平和と悪魔 100+4 大城・秀久/桜井 花梨/片柳蓮華/日宮 夕那 10/07/31 デモニックチルドレン 100+15 真城 凛央奈/久遠寺 塞/天王寺 闘吾/御堂 沙耶 10/08/02 悪魔が笑う遊園地 100+15 四十川 彩/黒井 陽太/天王寺 闘吾/蒔絵/御巫 櫻子 10/08/22 都会の砂漠 100+25 ブラム/斑目 和喜/望月 光/南部 華音 10/08/26 秋の咆哮 100+17 熱田・智/御堂 沙耶/ひなた/高繰 狐助/黄泉川 電波 連続落選回数による優先枠(一点以上を記載。)8/26含む 優先度 PL様のお名前(敬称略) 四点 四点貯まりますと次回自動当選とさせていただきます 三点 zeff 二点 アルト 一点 両生金魚/Ryo/凪紗/よーか/つちのこ/深風/オズ/ぐりこ/KAI―FX
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1250.html
★★★★★★★★★★★★ 「お姉さんチョコケーキ1つ」 「姉ちゃんショート1個」 「店員さんスマイル下さい」 「あの………ゲコ太ケーキ1つ」 「はい、はい。少々お待ちを。えーと……」 神裂火織は目が回る程の忙しさの中にいた。 (あぁ、ステイルは一体何をやっているんですか!) 心中で愚痴りつつも手は止めない。 そして忙しく立ち回る神裂は、上条当麻がインデックスと待ち合わせた場所に戻ってきたものの、インデックスの姿が見当たらないことに首を傾げながら向こうに行ってしまったことに気付くことは出来なかった。 ★★★★★★★★★★★★ 「っかしーな。おい、インデックスさーん?隠れてないで出てきなさーい。そしたら上条さん奮発してケーキの1つも買ってあげるよー。…………食べ物で釣っても出てこないとは、本格的にどこかに行ったか?」 インデックスがその食べ物に釣られて消えてしまったことを知らず、暢気に呟く当麻。 すると、 「よ、お兄ちゃん」 という声が後ろから聞こえた。 「んぁ?舞夏ちゃん?」 振り返った当麻の視界に映ったのは、清掃ロボの上に座り込み移動している土御門元春の妹、土御門舞夏だった。 「どうしたんだ?こんなところに一人で、土御門はどうした?」 「そう、それが問題なのだー」 舞夏はびしりと当麻に人差し指を突き出す。 「?」 「兄貴が消えたのだー」 「消えた?土御門が?」 「クリスマスだから待ち合わせて外をラブラブ……ブラブラする予定だったんだけど、いつまで経っても待ち合わせ場所に現れない。アパートに行ってもいない。そこでこうして街まで兄貴を探しに来たのだー」 「成る程、そっちも人探しか……」 「も?」 「あぁ、実はインデックスがどっかいっちまってな」 「そうなのかー。つまり、私達は同胞ということになるだなー。よーし、ここは協力して探すというのははどうだー?」 「……ん、そうだな。一人より二人の方がいい。よろしくな舞夏ちゃん」 「了解」 そうして奇妙な二人組は捜索を開始した。 ★★★★★★★★★★★★ 「ブローチが……」 「初春が……」 口をあんぐり開けてゲコ太が見えなくなるまで見届けた後で、ようやく佐天とステイルは正気を取り戻した。 ステイルはまずインデックスに告げる。 「すまないインデックス。トラブルが発生した。ひとまず大通りまで連れていくから、そこで上条当麻と合流するか、暫く神裂のところに……」 「あれ?私名前言ったっけ?」 「いや、その、プレゼントの送り主を通じてだな……」 「あぁ、そういうことだったんだね」 「あ、あぁ。そういうことだったんだよ」 適当にはぐらかすと、ステイルは佐天に向き直り詰問する。 「おい、何故あの少女は攫われた?」 「そ、そんなの私にもわかりませんよ!」 「あのカエルに心当たりは?」 「ゲコ太の着ぐるみだとは思いますけど……中身が誰かなんて見当もつかないです」 「くそっ!何なんだ一体!」 ステイルは苛立ち混じりに懐から煙草の箱を取り出そうとし、 「……ちっ」 丁度切らしていたことに気付いた。 「あぁくそ、最悪だ。最悪のクリスマスだよ………」 小さく呟いてから、ステイルは再びインデックスを視界に入れる。 「はぁ……まぁいい。とりあえず行こうかインデックス」 「うん」 言ってインデックスは、 ステイルの手を握った。 「~~~~~~」 「? どうしたの?」 「いや………何でもない」 (最悪のクリスマスというのは撤回しよう) 思い、ステイルはインデックスの手のひらの感触に緊張しながら大通りに出た。 一通り見回してみたが、どうやら上条当麻はいないようだ。 (仕方ない、神裂に頼もう) ステイルはその足で神裂のいるケーキ屋へ赴く。 「ステイル、ようやく帰ってきましたか。早く手伝って……何故インデックスが一緒に?」 「緊急事態だ。暫く預かっていてくれ」 「は、はい?」 神裂が理解するより先に、ステイルはインデックスを強引に押しつけ(但し手を離すのには少し間があった)走り去ってしまった。 (な、何だと言うのですステイル!いきなりこの子と二人というのは少し困りますよ!) 神裂は突然の状況にそう考えるも (………あ、でもこの子がいてくれたら仕事が楽に) と思い直し 「このケーキが欲しいの?はい。お代?いらないんだよそんなの。他者に施しをするのがシスターの……」 そしてすぐに後悔した。 ★★★★★★★★★★★★ ステイルが大通りを突っ切っていると 「あ、あの」 と後ろから少女の声がした。 「何た?」 振り返ったステイルはそこに先程の少女――佐天の姿を認めた。 「あなたは、ゲコ太を……初春を追いかけてるんですよね」 「初春……あぁ、あの花の少女か。そのつもりだが」 「だったら」 佐天が一歩踏み出して言う。 「だったら私も一緒に行きます!」 佐天の提案にステイルは暫し思考する。 (足手まといになるかもしれないが……見たところこの少女は初春という少女と友人らしいし、得られる情報はあるかもしれないな。何のヒントもない今は連れていった方が賢明か) 「分かった。一緒に行こう。僕はステイル・マグヌス。君、名前は?」 「あ、はい。佐天、佐天涙子です」 お互いに簡単に自己紹介を済ませると、奇妙な二人組は追跡を開始した。 ★★★★★★★★★★★★ 「お、おおお、降ろして下さいっ!」 「………」 ついに大通りに出たゲコ太に初春が抗議するも、ゲコ太は一言も応じず、一向にその足を緩めない。 「お願いですから!こ、このままだと、パ、パンツが……」 顔を真っ赤にする初春の言う通り、荷物の様に肩に担がれている初春のスカートは、ゲコ太のスピードが生み出す風によってひらりひらりとめくれあがっている。 その上パンツ見せ中学生とカエルの着ぐるみという珍妙な組み合わせに、通りを歩く人たちは何事かと視線を向けてくるため、初春の羞恥心はピークに達していた。 「…………」 するとゲコ太は一度立ち止まると、初春の身体を肩から引き下ろし、初春の肩と腰に手を回すようにして抱え直した。 即ちお姫様だっこに。 「いやいや、それは確かにスカートはめくれ上がりませんけど、別の意味でかなり恥ずかしいと言いますか………ひゃんっ」 初春の言葉を聞かず、ゲコ太は再び走り出す。 そして通りを突っ切り、先の行き止まりになっているビルとビルとの小さな隙間に身を滑りこませると、ようやく初春を地面に下ろした。 続いてゲコ太は辺りを見回し、近くに誰もいないことを確認しだした。 「あ、あ、あの……何の御用でしょうか…」 初春がおそるおそる聞くと、周囲に人がいないことを確認したゲコ太がずんずんと初春に歩み寄り、その肩に両の手を置いた。 「ひっ……」 表情の変化のない着ぐるみというものの顔面のアップは結構心臓に悪く、思わず声をあげてしまった初春に 「頼みがある。助けてくれ」 ようやくゲコ太は口を開いた。 ★★★★★★★★★★★★ 「何?」 「せやから―。身分証がないと煙草は売れないんやって」 「身分証だと?何故煙草を買うのにそんなものが必要なんだい?」 ステイルは青い髪にピアスをし、クリスマスらしくサンタコスを着たコンビニ店員にニコチン不足で苛々しながら詰問する。 サンタコスの男同士がカウンターを挟んで言い合う様子は、端からはコメディにしか見えない。 「そういう規則なんやって。えーやんえーやん、お兄さんはクリスマスを一緒に過ごすロリーな彼女がおるんやもん。それ以上求めるなんて欲張りやっちゅうに。こっちはクリスマスもバイトな独り身高校生なんやで」 「……話にならんっ」 ステイルは青髪ピアスサンタ吐き捨てるように言うと、コンビニを出る。 「くそっ、何だっていうんだ本当に……」 佐天という少女と連れ去られた花の少女――初春は友人関係らしく、まず最初に初春と連絡を取ることを考えたのだが、少し外に出るだけの予定だった為に両者共に携帯電話も置いてきたという話だ。 初春が連れ去られた理由も分からず仕舞いで、追跡は早速難航していた。 「はいっ」 と、後ろから声がした。 振り返ったステイルが見たのは下からステイルに向かって腕を精一杯に伸ばしている佐天。 「何だそれは?」 ステイルが問うたのは、佐天の指の先に摘ままれ、また佐天が口にくわえている棒状のスナック菓子についてだ。 「ポッキーだよ」 佐天はフランクな口調で自分の口に含んだそれをカリカリとかじりながら言う。 先程までステイルに敬語を使っていた筈の佐天だったが、会話の中でステイルが佐天と年の差が一つしかないと知るや唐突に距離が近くなった。 「禁煙するのに別の物くわえとくとか、よく聞くし」 「禁煙……」 「未成年なんでしょ、煙草はイカンよ君。悪いことはダメ。その内自分にしっぺ返しが来るんだから」 「………」 まるで年下の子供をあやすような口調だ。 だが口淋しいのは事実なので、取り敢えず突き出されているポッキーを頂こうとして 「む……」 邪魔な付け髭に気が付き、取り去る。 と、 「へ?」 佐天が手に持っていたポッキーを取り落とした。 「どうした?」 「な、なな、なんでもないよ?」 どもる様に言って新しいポッキーを取り出そうとしている佐天の顔は心なしか赤くなっている。 「は、はいっ。どぞ」 再びポッキーを突き出され、今度こそステイルはそれを食べた。 口を伸ばし、ケースの中の煙草を口で引き出す様な動作で。 「ちょ、手!手使って!」 わたわたしながら叫ぶ佐天。 「さっきからどうしたんだ?」 「いや、だから、その………はぁ。落ち着こう私、うん。…………何ていうか、意外とイケメンだったから、ちょっとビックリしたって言うか……」 顔を背けながら言う佐天に、ステイルは軽い調子で返した。 「イケメン……………………それはどういう意味の言葉なんだ?」 ★★★★★★★★★★★★ 「……成る程、わかりました」 初春はゲコ太から一通りの事情を聞いた。 発端はゲコ太――ゲコ太の中の人――の携帯に送られてきた一件のメール。 知らないアドレスから来たそれにはゲコ太の彼女(と本人は言っていた)が縄で縛られて転がされている画像が添付されており、 『この女を返して欲しくば今日の20時、3000万を持って以下の場所まで一人で来い。』 という短い文章と第7学区にある廃ビルの住所が書かれていた。 身代金目的の誘拐、ということなのだろう。 初春は風紀委員の身として、警備員に任せることを提案したのだが、 「この場所はスキルアウト共の溜まり場だ。つまり犯人は不良学生………指定の時刻まで何もされずに無事である保証なんて1ミリたりともない」 とゲコ太は言った。 事実ゲコ太はキャンペーンをしていたとある店からゲコ太の着ぐるみを拝借して正体を隠した上で、単身その廃ビルに強襲をかけたらしい。 「だがビルはもぬけの殻。そこで裏通りを巡って不良共を殴りながら情報を集めていたんだが、どいつもこいつも知らないの一点張りだ。かと言って警備員に任せたら連中が何をしでかすか分からない。街のどこにいるかも知れない連中だ。警備員に告げ口したことが奴らの仲間にバレたら……最悪の状況だってありえる。だが手がかりがない。不良共を何人も倒したが、そんなんじゃ何にもならない。そんな時にあんたを見つけた。その花には見覚えがある。俺の記憶が正しければ、あんたは風紀委員だ。それもただの風紀委員じゃない、他人を守るために身を投げ出せるような、そんな風紀委員の鑑みたいな奴だ。だからあんたに手伝って欲しい。――――『守護神(ゴールキーパー)』の力を貸して欲しい」 「あなたは……一体…」 「悪い、今は俺の言うことを聞いてくれ。頼む」 ゲコ太はただ頭を下げる。 初春にはゲコ太の正体も何もかも分からなかった。 だがその真摯な様に、ゲコ太はきっと悪い人ではないのだろう、と思い 「分かりました。お手伝いさせてもらいます」 初春はゲコ太についていくことを決めた。 ★★★★★★★★★★★★ 「オイ、チビ。それで用事ってのは何なンだ?わざわざこんな騒がしいトコまでよォ」 「んー、強いてあげるなら、こうしてあなたとクリスマスの街を何の目的もなくぶらぶらと散策することかも、とミサカはミサカは心持ちはしゃぎながら言ってみる」 「…………………帰る」 「えぇっ!?とミサカはミサカはあなたにしがみつきながら今の発言の撤回を求めてみたり!」 一方通行と打ち止めはクリスマスの街の中にいた。 一方通行としてはクリスマスなどという企業の戦略でしかないお祭り事に興味の欠片もありはしないのだが、打ち止めに引きずられるようにして外に出てしまったのだ。 「用事がねェンなら帰るぞ。こんな人ゴミを何を好き好んで歩かなきゃならねェンだよ」 「待って!ストップ!カムバック!とミサカはミサカは………」 と、不意に打ち止めの声が途切れた。 「おいどうした?」 「あの店のケーキクレープ……もともとスイーツであるクレープに更にケーキをトッピングするという発想には感服するしかないかも。そしてあわよくばその味をこの舌でもって確かめてみたいな、とミサカはミサカはあなたに上目遣いで頼み込んでみたり」 弾んだ声を上げ、目をきらきらと輝かせて言う打ち止め。 一方通行は大きく溜め息をついてから財布を取り出し、千円札を打ち止めに手渡しながら言う。 「それ食ったら帰るぞ」 「わぁいありがとう、とミサカはミサカはクレープ屋まで全速力で駆けながら……わぷっ!」 走り出した打ち止めが通行人にぶつかった。 「ったく……?」 一方通行はその通行人を知っていた。 「おぅ、一方通行じゃん」 「黄泉川愛穂…」 黄泉川は打ち止めの身体を立たせてやりながら一方通行に言う。 「丁度よかった。実は今ある店からゲコ太の着ぐるみが盗まれたって通報があって。しかもその着ぐるみを着た何者かは街の学生達を襲って回ってるって話じゃん。まぁ襲われてるのは言ってしまえば不良の学生なんだけど……だからって放っとけないじゃん。悪いけど、暇だったらゲコ太探しを手伝って欲しいじゃん」 「あァ?何でンな面倒なこと……大体そういうのは警備員や風紀委員のオシゴトだろうがよォ」 「んじゃ、これでいいじゃん」 言い、黄泉川は懐から風紀委員の腕章を取り出すと一方通行の腕につけた。 「おい、一体何のマネ…」 「じゃ、よろしくじゃん」 一方通行の抗議を聞かず、黄泉川は走り去ってしまう。 「ったく……」 再び大きな溜め息をつく一方通行に、クレープを買って帰ってきた打ち止めが言った。 「その腕章、あり得ない位似合ってないかも、とミサカはミサカは出来るだけあなたを傷つけないように今のあなたの外見について述べてみる」 「…………ほっとけ」 ★★★★★★★★★★★★ 「もしもし?風紀委員177支部ですけど………あら、初春さん」 固法美偉は177支部の固定電話を取った。 『固法先輩…あの、白井さんはいませんか?携帯に掛けても繋がらなくて。確か今日は詰所にいる筈ですよね?』 「あぁ、白井さん。さっきまでいたんだけど……なんか御坂さんから電話がかかってきたと思ったら物凄いスピードで仕事終わらせて出ていったわよ」 『そうですか……』 「何か用だった?風紀委員のことなら私でも代われると思うけど」 『あ……、いえ。大した用事じゃないんです。ありがとうございました』 「……そう。わかったわ。じゃ、メリークリスマス」 『メ、メリークリスマスです』 固法は通話の切れた受話器を戻すと 「初春さん、何の用事だったんだろう」 としばし思案したものの 「あぁ、これじゃいつまで経っても片付かない」 再びパソコンに向かう。 だが、打鍵を始めるより先に再び電話が鳴った。 今度は自分の携帯電話だ。 「もう、今度は何なのよ。…はい、もしもし…………え?」 ★★★★★★★★★★★★ 「……すいません、駄目でした。白井さんが協力してくれたらと思ったんですけど、連絡がつかなくて」 初春は携帯を閉じながらゲコ太に言う。 「私だけじゃ力不足かもしれませんけど……彼女さんの為にもゲコ太さんの為にも、私精一杯頑張りますので!」 「あぁ、助かる」 両手でガッツポーズを作る初春に、ゲコ太は苦笑混じりの感謝を述べる。 「では早速」 初春はとある店舗を指差した。 「ネカフェに行きましょう」 ★★★★★★★★★★★★ 「いねーなぁ。インデックスも、土御門も」 当麻は舞夏を連れて、再びインデックスと別れた大通りに戻ってきていた。 「舞夏ちゃん、土御門の居場所に心当たりとかないのか?」 「んー、兄貴に限って私との約束をすっぽかして何処かに行くとは考えられないんだがー」 「なのに待ち合わせの場所には居なかった……何か事故か事件にでも巻き込まれちまったのか……?あぁ、分からねぇ」 頭を掻きむしり視線を走らせる当麻を 「上条当麻!!」 大音声で呼ぶ声がした。 「この声……神裂か?」 果たして、神裂火織はいた。 ケーキ屋の店頭で寒そうなコスチュームに身を包んだ売り子として。 「………………えーと、神裂さん?一体それは何の罰ゲームなのでしょうか?」 「こ、これは報酬に対する正当な対価です!…………そんなことより、あなた先程インデックスとはぐれたでしょう」 「あぁ、そうそう。待ってるように言ったんだけどなぁ」 「…はぁ。あなたがそんなことだから………まぁ、いいです。ステイルが彼女を保護してくたのです。そこにいますから、どうぞ連れて帰ってください」 「あぁ、そうだったのか。サンキューな………それで、どこにいるんだ?」 「どこって、すぐそこに」 「いや、売り子やってる小萌先生しかいねーぞ?」 「まさか……」 神裂は横を振り返る。 神裂はまず先程ヘルプで駆けつけてきてくれた(様子見と言ってケーキを買いに来たところを引き込んだ)月詠小萌がビール箱を2つ積んだ上に立ち、ケーキを客に手渡しているのを視界に収める。 そこから視線を奥へ遣ったが――その向こうで大人しくケーキ(売り物)を頬張っていた筈のインデックスは、皿とフォークを残してどこかに消えてしまっていた。 ★★★★★★★★★★★★ 「はいはい~…はいっと」 軽い調子で2分程初春が鍵打を続け、最後にポンとエンターキーを押すと、ネットカフェのパソコンの画面にこの近辺の監視カメラの映像が次々に現れた。 「詰所のコンピュータに繋いで、そこからハッキングをかけて監視カメラの映像を持ってきました」 「…………凄いな」 初春とゲコ太はネットカフェに入店していた。 受付のバイトには変な顔をされながらも何とかやりすごし、二人は狭い個室の中で大きな液晶に映る街の様子に目を向けている。 「裏通りの方の映像ですと……はいっと。んー、それっぽい様子の人たちはいますけど………」 目的の女性はどこにも見当たらない。 「……くそ、どこにいるんだ」 ゲコ太が身を乗り出して画面に目線を走らせる。 結果ゲコ太の身体は初春に乗り掛かるようになる。 (あわわ……ゲコ太さんって、男の方ですよね。それによく考えたら狭い個室に二人きり……) 初春が一人場違いな妄想を働かせて顔を赤らめていると、耳元で聞こえるゲコ太の荒い息が首筋にかかった。 「あ、ひゃん……」 着ぐるみを着用していることで温度の上がっているそれの生暖かい感触に首を竦めて抵抗する。 「? どうした?」 様子のおかしい初春の顔を覗き込むように更に体重をかけてくるゲコ太。 それによって着ぐるみの布が初春の首をくすぐり始める。 「ふ……や、ん…」 「お、おい――」 その時、ガチャリと個室の扉が開いた。 「ぬっぽぁ!」 初春はゲコ太の顎に頭突きをかまして遠ざけ、椅子を回して扉に向き直ると音の主を確認するより先に上ずった声で話し出す。 「すいません使ってます!いや、使ってるって別にいやらしい意味ではなくて!単にこの部屋を使用中だという……いえ、ですから使用っていうのはそういう意味では………!」 そこでようやく初春は音の主を見た。 「見つけたじゃん。ゲコ太の着ぐるみ」 「あなたは……警備員の……」 黄泉川愛穂は初春の言葉に答えず 「んじゃ、そこのゲコ太。ちょっと一緒に来てもらおうじゃん」 ゲコ太に手を伸ばそうとする。 が、 「なっ――」 ゲコ太はするりと身をかわすと、 「へっ?」 呆けている初春を抱っこし、立ち塞がる黄泉川をすり抜けて個室を出ると、そのまま店を後にする。 「くそっ、警備員か。こんなに早く嗅ぎ付けてくるとは……この格好、目立つのが難点だな……」 呟きつつ、人ひとりを抱えているにも関わらず物凄い速度で駆けるゲコ太を 「逃がさないじゃん!」 黄泉川もまた自慢の脚力でその後を追いかけていく。 ★★★★★★★★★★★★ 「くッそ……何で俺がこんなことを………」 一方通行は毒づきながら右腕を狭い隙間の中に滑らせる。 自動販売機と地面の間にあるその隙間の奥には一枚の100円硬貨が光っている。 「あァもうウッゼェ!!」 一方通行は痺れをきらしたように叫ぶと首に巻かれたチョーカー型電極のスイッチをオンにし、能力発動モードに切り替える。 そして地面を人差し指でちょんと叩くと、触れてもいない100円硬貨が、文字通り弾かれるように隙間から飛び出してきた。 「わぁ!ありがとう風紀委員さん!」 出てきた硬貨を拾い上げた小さな女の子が、一方通行にちょこんと礼をして去っていく。 「面倒くせェ。こんなモンつけてっから……」 一方通行は風紀委員の腕章を外そうとするが、それより先に 「ねー、風船が飛んでって木の枝に引っ掛かっちゃったの。風紀委員さん。お願い、取ってください」 別の少女が一方通行の袖を引っ張る。 「知らねェよ!テメェでやれ!」 キリがないことに苛立ち叫ぶが 「見て、あの風紀委員。小さな女の子に向かって……」 「あらまぁ。風紀委員の腕章をつけてるのに、何て態度なのかしら……」 というマダム達のひそひそ声を聞き、渋々能力を使って木の枝にジャンプし、風船を取ってやる。 「風紀委員さん、ありがとうございましたっ」 礼を言うと少女は風船を手に母親の許に帰っていく。 「ッたく……」 それを見て溜め息をつく一方通行に打ち止めが声をかける。 「面倒くせェ、とかウゼェ、とか言いつつ、満更でもない顔に見えるよ、ってミサカはミサカは今のあなたの表情を客観的に述べてみたり」 「うるせェよ。つーか食ったんなら帰るぞ」 「風紀委員のお仕事は?ってミサカはミサカはにやにや顔で聞いてみる」 「知るかよ、ンなモン」 と一方通行が言った矢先、 「一方通行ァ!!そこのゲコ太を捕まえるじゃん!」 遠くから声が聞こえた。 そちらを振り返ると、何やら少女を抱えたゲコ太の着ぐるみとその後ろから二人を追う黄泉川がいた。 「だから俺は風紀委員じゃねェッてのによォ」 状況を理解した一方通行は毒づきながらも突撃してくるゲコ太に向き直る。 どうせここで逃げたら風紀委員なのにと陰口を叩かれるのだろうし、何より逃げたと思われるのが癪だ。 「来いよ三下ァ。10秒で終わらせてやるぜェ」 ★★★★★★★★★★★★ 「一方通行か……どういう風の吹き回しかは知らないが、厄介だな」 「あれ?あの女の子って……」 追われている初春とゲコ太も、前方に立ちはだかる一方通行に気付いた。 「悪い、少しどいててくれ」 ゲコ太はそう言うと初春を降ろし、一人一方通行目掛けて突進する。 「あ、あの!大丈夫なんですか!?」 背中からの初春の声に 「心配するな、10秒で終わらせる」 ゲコ太は軽い調子で答えた。 ★★★★★★★★★★★★ 単身突っ込んでくるゲコ太。 「初手は譲ってやるぜェ。もっとも、俺に当てられたらだがなァ」 一方通行は構えもせずにだらりとした姿勢を取る。 ゲコ太は右腕を振りかぶり、拳を一方通行の顔面めがけて振り下ろす。 ゴッ という音と共に 「ガッ……?」 一方通行が吹き飛んだ。 一方通行は直ぐ様立ち上がったが、その顔は驚愕の色に染まっている。 「反射が……働かねェだと?いや、違ェ。こいつはまさか……」 ★★★★★★★★★★★★ 「ぬぅ……あれは」 「知っているのか半蔵!」 大通りで繰り広げられる戦闘。 当然のように道行く人々はギャラリーと化し、距離をおいてゲコ太と一方通行に視線を集中させている。 そんなギャラリーの中の男二人組が何やら叫んでいる。 「あぁ、あれは木原神拳……一方通行の育ての親である木原数多、通称木ィィィ原くゥゥゥゥゥゥゥゥン!!が使用した秘拳だ。一方通行の反射が通常は自動でベクトルを逆向きにしていることを逆手に取り、放った拳を寸止めの要領で反射の直前に引き戻すことで『遠ざかる拳』を内側に反射させる攻撃……ッ。原理は簡単だが、光すら反射する一方通行の能力を逆手に取るってお前最早人間じゃねぇだろ、というぶっちゃけありえなーい神の如き技だ!」 「そんな技を使いこなすとは、あのカエル……何者なんだ……ッ!?」 ★★★★★★★★★★★★ 「ッハ……下らねェ小細工仕掛けやがって。いいぜェ。そっちがその気なら、こっちも手加減なしだァ!」 叫び地を蹴る一方通行はベクトルを操作し、その身を弾丸の速度で飛ばす。 だが、 「何ッ!?」 ゲコ太は上半身を反らしただけで一方通行を避け、更にその腹に膝を撃ち込む。 「ぐはァッ……!?」 当然のように寸止めされたそれは一方通行自身の能力を借りてその身体を上空に舞い上がらせた。 「……ッハ、ハン!今のもハンデだ。こ、今度こそ容赦しね………」 吹き飛ばされた状態で平静を装って言う一方通行は、そこで眼下にゲコ太の姿が無いことに気付いた。 「どこいきやがっ……!」 果たしてゲコ太はいた。 一方通行の目の前に。 通りに建つ建物の壁面に次々に足をかけ、吹き飛んだ一方通行の高さまで一気に駆け上がったのだ。 「何モンなンだ……テメェは…………」 「……………通りすがりの、ゲコ太の着ぐるみだ。別に覚える必要はない」 言葉と共にゲコ太の寸止め頭突きが炸裂し、一方通行は地面に叩きつけられた。
https://w.atwiki.jp/voicetwitter/pages/34.html
東京西部の大部分を占める巨大な都市。総人口二三〇万人の約八割が学生というところから、そこは『学園都市』と呼ばれており、住民である生徒達には、超能力を開発する特殊なカリキュラムが組まれていた。学園都市のとある高校生・上条当麻(かみじょう・とうま)の評価は落第寸前の無能力(レベル0)。なぜなら彼の右手には、“異能の力ならなんでも打ち消す”謎の力が宿っていたからだ。そして彼はこの右手のおかげで、"神のご加護"まで打ち消し、常に不幸な人生を送っていた。そんな夏休みのある日。上条の部屋に純白のシスターがいきなり空から降ってきた。そして、その少女はこう言った。自分は“魔術”の世界から逃げてきた──と。 ■キャスト 上条当麻:阿部敦 インデックス:井口裕香 御坂美琴:佐藤利奈 アクセラレータ:岡本信彦 神裂火織:伊藤静 ステイル:谷山紀章 月詠小萌:こやまきみこ 黄泉川愛穂:甲斐田裕子 シスターズ:ささきのぞみ ラストオーダー:日高里菜
https://w.atwiki.jp/index-index/pages/24.html
ヤ ユ ヨ ヤ 薬丸医月(やくまるいつき) 薬味久子(やくみひさこ) 八城 野人Nのゾンビ脱出大作戦 野洲 屋台尖塔 ヤッキンとボアズ 柳迫碧美(やなぎさこあおみ) 山川(やまかわ) 山手(やまて) 山根(やまね) 闇咲逢魔(やみさかおうま) ユ 唯閃(ゆいせん) 勇者の洞窟 有人火星探査プロジェクト 悠里千夜(ゆうりせんや) 営巣部隊(ユースフルスパイダー) 夢肖(ユニ) 連合の意義(ユニオンジャック) 杠林檎(ゆずりはりんご) 弓箭入鹿(ゆみやいるか) 弓箭猟虎(ゆみやらっこ) 赤き洪水(ユミルズオーシャン) 夢崎彩尾(ゆめさきさいび) ヨ 夜明細魚(よあけさより) 夜明けの目覚ましフライングボディアタック 宵闇の出口 妖精化 五行ノ黒、水龍ノウネリヲ以テ障壁ヲ取リ除ク可!!(よおヤンキー、ねぼけてねえでしごとをしやがれ) 横須賀(よこすか) 横須賀抄絢 芳川桔梗(よしかわききょう) 寄木美郷(よせぎみさと) ヨセフの聖杯 四葉(よつば) ヨハネの迎撃術式 自動書記(ヨハネのペン) 『自動書記』の遠隔制御霊装 誉望万化(よぼうばんか) 黄泉川愛穂(よみかわあいほ) ヨルムンガンド 四大属性 四枚羽
https://w.atwiki.jp/meteor089/pages/122.html
佐天「あの人、かっこよかったなぁ……」 ① ② 戻る 次へ 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 11 22 20.09 ID pMSjZlik0 初春「佐天さん、どうしたんですか?」 佐天「いやぁ、ちょっとね」 初春「何か嬉しいことがあったみたいですけど」 佐天「それ聞いちゃう? 仕方ないなー、特別に教えてあげよう!」 佐天「実は昨日、カッコイイ人みちゃってさ……」 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 11 25 30.66 ID pMSjZlik0 初春「もしかして、あの上条さんですか?」 佐天「いやいや。あの人はダメでしょ。御坂さんが怒っちゃうし」 初春「ですよねー。いい加減、付き合えばいいのに」 佐天「本当に御坂さんも御坂さんだけど、上条さんも上条さんだよねー」 初春「ですね。で、佐天さん何があったんですか?」 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 11 29 38.43 ID pMSjZlik0 昨晩午後6時 佐天(帰ろうと思って近道したら不良に絡まれるなんて……) 不良「君、中学生? 俺らと一緒に遊ばない?」 佐天「い、いえ……」 不良「いいじゃん、いいじゃん。ほら、カラオケでも行こうよ」 佐天「遠慮させてもらっても……」 不良「はァ? こっちが誘ってんだから付いてくるのが普通だろ?」 佐天「で、でも……」 ドンッ。 不良「っ痛ぇな。人に肩ぶつけといて何もなしかよ?」 「はァ? てめェ、誰に向かって物言ってンのか理解してンのかァ?」 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 11 32 59.75 ID pMSjZlik0 不良「何だぁ? お前、生意気なんだよ」 「生意気ねェ……それがどうした? 俺ァ、少なくともてめェみてェなンよりかはまともだぜェ?」 不良「て、てめぇ!」 不良が置いてあった金属バットを手に取り、少年に向かって振り下ろす 「ンな物が効くと思ってンのかァ!?」 不良「ぎゃァッ!?(コイツ……能力者!?)」 「いいぜェ? てめェが俺とやりたいってンなら幾らでも相手してやらァ……」 不良「ひっ……」 「その代わり、だ。命の保障は出来ねェけどなァ!」 不良「す、すいませんでしたぁ!」 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 11 38 59.19 ID pMSjZlik0 「行ったか……オィ、そこの」 佐天「は、はい?」 「こンな時間にこンな場所歩いてンじゃねェよ。ガキはさっさと家に帰りやがれ」 佐天「わ、わかってますよ! 帰る所だったんです!」 「アァ、そうか。ったく、これだからガキは……」 佐天「あ、ありがとうございました!」 「てめェを助けた訳じゃねェよ。アイツが勝手に挑ンで来て勝手に逃げただけだ」 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 11 42 14.57 ID pMSjZlik0 佐天「……という訳なんだよ」 初春「へぇ。カッコイイですね。能力者、ですよね。その人」 佐天「うん。金属バットの直撃防いでたから……念動力とかかな?」 初春「どういうカッコだったんですか?」 佐天「えーっとね。白い髪に、カラコンかな、紅い眼だった」 初春「へー。また会えるといいですね(何処かで見た気がしますね……)」 佐天「そうだねぇ。それじゃ、私はそろそろ帰りますか。じゃあね、初春!」 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 11 46 11.00 ID pMSjZlik0 佐天「やっぱり金属バット防いだぐらいだし……高レベルの能力者なんだよね」 佐天「凄いなー。レベルが高いとあんな事まで出来ちゃうんだもん」 佐天「私もレベル上げたけど……所詮、はかない夢だよねー」 佐天「さーて、気を取り直してジュースでも飲もうか。お、あそこに自動販売機が……!」 「……くそッ! 珈琲買おうとしたら壊れやがった…どうなってンだァ?」 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 11 50 45.46 ID pMSjZlik0 「第一、コレ何年前の自動販売機だァ?」 「電子マネーにすら対応してねェし……いっその事、ぶっ壊すか」 「……警備ロボぐれェなら片付けられるが……面倒だな、諦めるか」 佐天「何やってるんですか?」 「あ」 佐天「あ」 「テメェは昨日の……ちゃんと家に帰れたのかァ? 良かったなァ」 佐天「し、失礼ですね。で、どうしたんですか? 自動販売機の前で」 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 11 55 37.58 ID pMSjZlik0 「コレが金吸い込んだまま動かなくなりやがってなァ……」 佐天「あ、そんな事ですか。ちょっと待ってて下さい。今出しますよ」 佐天(御坂さん直伝、常盤台式自動販売機術……!) 佐天「せいやぁっ!」 ドカッ がらんごろんがらんごろろんがらん 「何だァ?」 佐天「知り合いの人から教わった技ですよ」 佐天「さ、お好きなのどうぞ。昨日のお礼です」 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 11 58 15.97 ID pMSjZlik0 「あァ、アレか。俺は何もしてねェけどな」 佐天「何言ってるんですか。私を助けてくれたでしょ? そのお礼ですよ」 佐天「ささ、あのベンチにでも座って」 「お、オィ、待ちやがれ……」 「……家に帰ってもガキがうるせェし、仕方ねェなァ……ったく」 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 12 02 45.70 ID pMSjZlik0 佐天「美味しいですねー」 「……あァ。(ンだこの味……蜜柑珈琲とかふざけてンのかァ?)」 佐天「あなたの髪とか眼の色って天然ですか?」 「違ェよ。能力で色ンな物除いてたり、実験受けてたらこうなりやがったンだ」 「何処の世界にこンな奇抜な格好を好き好んでする日本人がいるかよ?」 佐天「でも、それも中々カッコイイと思いますよ?」 「そうかい。おめェも変わった奴だなァ、俺みてェなのに近づくなんてよ」 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 12 07 00.67 ID pMSjZlik0 佐天「何言ってるんですか。あなた、能力者ですよね!? どんな能力持ってるんですか?」 「……一方通行。」 佐天「あ、あくせられーたー?ってどんな能力ですか?」 「あらゆる向き(ベクトル)を観測し、触れただけで操る能力」 佐天「……はぁ。で、それはどんな使い方があるんですか?」 「ベクトルの反転、反射にして何でも跳ね返しす。髪の色とかはコレで紫外線跳ね返した結果だ」 佐天「……す、すごいですね! 髪の色変えられるなんて!」 「お前、理解してねェだろ?」 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 12 10 59.58 ID pMSjZlik0 佐天「り、理解してますって! 要するに凄い能力ですよね!?」 「それには違いねェなァ……」 佐天「レベルは幾つなんですか? やっぱ大能力者とか……」 「レベル5の超能力者だよ」 佐天「れっ、レベル5ゥ!? って学園都市に七人しかいない、あの!?」 「あァ。レベル5第一位、通称『一方通行』って聞いた事ねェか?」 佐天「き、聞いた事ありますよ! 最強の能力者じゃないですか!」 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 12 14 40.48 ID pMSjZlik0 一方通行「それが俺だよ。まあ能力名が通称になってるンだがな」 佐天「レベル5第一位って事はあの、超電磁砲の御坂さんよりも強いんですか!?」 一方通行「御坂美琴を知ってンのか……あァ。第三位と第二位とでは圧倒的な差があるからなァ」 佐天「凄いですね……本当、私とは別次元って感じ」 一方通行「何だァ? てめェは無能力者か?」 佐天「はい。レベル0。使えない事もないんですけど、何の役に立つかと」 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 12 24 10.74 ID pMSjZlik0 一方通行「そンな事か。……確かよ、超電磁砲はレベル1からレベル5に上り詰めたンだろ?」 一方通行「テメェももしかしたら、レベル5になれるかもしれねェじゃねェか」 一方通行「そンな簡単に諦めてンじゃねェぞ」 佐天「そう……ですかね」 一方通行「俺が言っても嫌味にしか聞こえねェか」 佐天「そ、そんな事ありませんて。……能力をあげるかぁ……」 一方通行「何なら、俺が教えてやろォか?」 62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 12 30 23.81 ID pMSjZlik0 一方通行(家にいてもガキがうるせェし……ちょうどいいか) 佐天「い、いいんですか!? 私なんかを……!」 一方通行「あァ。いいっつたらいいンだよォ!」 佐天「ありがとうございます! まさか学園都市最強の人に教えてもらえるなんて……」 一方通行「礼なンざ、いらねェよ」 64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 12 36 06.55 ID pMSjZlik0 佐天「それじゃあ、明日から。私が学校終わる四時ぐらいからでいいですか?」 一方通行「あァ。構わねェよ。……じゃァな」 一方通行「……ったく。帰るか」 一方通行「佐天涙子、か」 69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 12 44 20.19 ID pMSjZlik0 一方通行「行ってくらァ。夕飯までには帰るって芳川に伝えとけ」 打ち止め「私も行きたい!ってミサカはミサカはあなたにしがみついてみたり」 一方通行「離しやがれェ! テメェがいると面倒なンだよォ!」 打ち止め「何!? もしかして恋人でもいるの!?ってミサカはミサカはあなたを問い詰めてみたり」 一方通行「アイツは恋人なンかじゃねェよォ!」 70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 12 50 28.14 ID pMSjZlik0 一方通行「これだからガキは嫌ェなンだよ……」 佐天「こんにちは」 一方通行「あ、あァ。さァ、始めンぞ」 一方通行「温度操作ねぇ……使い方次第では十分強ェ能力だなァ」 佐天「でも今の私じゃあコップの水の水温を1~2℃上げられる程度で。実用性はほとんど……」 一方通行「……まァ、水温が1~2℃上がろうが大して関係ねェからなァ」 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 12 59 41.26 ID pMSjZlik0 一方通行「ようは熱量限定の向き変換か……」 一方通行「応用によっては対流で風起こしたり、火ィ出したりも出来ンなァ……」 佐天「そうなんですか!?」 一方通行「あァ。俺も似たような能力だからなァ」 一方通行「まァ、最も基礎的なレベルが上がんねェ事にはどうにもならねェが」 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 13 07 12.69 ID pMSjZlik0 一方通行「まず自分だけの現実を身に着けねェと話にならねェ」 一方通行「水を火にかけなくても沸騰すると思うか?」 佐天「何言ってるんですか。無理でしょ」 一方通行「それが悪ィンだ。テメェで信じられねェ事をテメェが出来るハズがねェ」 一方通行「つまりだ、「水は火にかけずとも沸騰する」と思いこむンだ」 佐天「は、はあ。凄いですね。やっぱり、色んなこと知っていて」 82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 13 23 29.41 ID pMSjZlik0 一方通行「少し休憩するか」 佐天「……少し前に幻想御手っていうのがありましたよね」 一方通行「あァ。使用者のレベルをあげるっつー代物か」 佐天「……実は私、アレ、使ったんですよ」 佐天「どうしても能力を使いたくて。でも、やっぱり代償はあって」 佐天「たくさんの人に迷惑かけちゃったんですよね」 一方通行「能力手にしてェっつーのは悪ィ事じゃねェよ。学園都市にいるンだ。当たり前の感情だろ」 84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 13 28 35.09 ID pMSjZlik0 佐天「でも……やっぱりズルって……」 一方通行「あァ。いけねェ事だなァ。そりゃァ、代償も付いてくる」 一方通行「ただな、これだけは覚えとけ。素質以前の問題だ。やる気がねェ奴は何をやろうと無駄だ」 一方通行「そンな奴らに比べれば、テメェはマシなほうだろォ」 90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 13 39 10.23 ID pMSjZlik0 一方通行「……つっても俺も似た様なもンだけどなァ」 一方通行「……能力に対する執着心は異常なまでだったンだ」 佐天「え……? だってあなたは最初から……」 一方通行「絶対能力進化(レベル6シフト)っつーのがあってだなァ……」 …………。 一方通行「―――……っつー訳だ。俺もテメェと同じなンだよ」 佐天「う、嘘……御坂さんのクローンを……」 一方通行「残念ながら全て本当だ。幻滅か?」 佐天「す、すいません……私……」 一方通行「行っちまったか……仕方ねェよなァ」 95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 13 48 28.39 ID pMSjZlik0 打ち止め「おかえりー!元気がないけどどうしたの?ってミサカはミサカはあなたを心配してみる」 一方通行「……何でもねェよ」 打ち止め「彼女と喧嘩でもしたの?」 一方通行「……何でもねェって言ってンだろうがァ!」 芳川「どうしたの? そんなにイラついて。何かあったのかしら? 夕飯、どうする?」 一方通行「いらねェ。寝る」 黄泉川「今日は一段と機嫌が悪いじゃん」 96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 13 58 50.46 ID pMSjZlik0 佐天「あの人が……そんな……」 佐天「私、どうしたらいいかわからないよ……」 佐天「学校、休んじゃった。……初春心配してるよね。どうしよっか」 佐天「……午後四時、か。…………」 一方通行「出かけてくる」 99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 14 03 15.04 ID pMSjZlik0 一方通行「来る訳ねェよなァ……」 一方通行「……下らねェ事、しちまったなァ」 佐天「いる訳無い、よね」 佐天「……私、何やってるんだろ」 佐天「何すればいいかなんて……わからないよ」 106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 14 15 46.07 ID pMSjZlik0 一方通行「……珈琲でも買うか」 ガチャ。ガコ。ピー。ピー。 一方通行「なッ!? クソッ! またぶっ壊れやがったァ!」 佐天「もう。何やってるんですか。……せいやぁっ!」 ガランゴロンガランゴロンガランゴロン。 一方通行「お……オメェ!?」 佐天「何変な顔してるんですか? 学園都市最強一方通行、さん?」 109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 14 22 30.25 ID pMSjZlik0 佐天「……来てくれたんですか。ありがとうございます」 ギュッ 一方通行「なっ……!?」 佐天「話してくれて、ありがとう」 佐天「黙っていられるよりも、ずっと嬉しかった。それがどんな事でも」 佐天「あなたのやった事は確かに悪い事だけど……許されない事だけど」 佐天「私には……あなたを責めることは出来ない」 佐天「だから……また教えてくれますか?」 一方通行「……あァ。やってやらァ。今度は途中で逃げンじゃねェぞ」 112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 14 32 01.21 ID pMSjZlik0 プルルルルルルルル♪ 佐天「ひゃ、ひゃぁっ!」 一方通行「俺の携帯だ。テメェは何つー声出してンだ」 一方通行「あァ、芳川か。……あァ、……わかった。……はァ!? ふざけてんじゃねェぞ!?」 佐天「どうしたんですか……?」 一方通行「……何でもねェ。始めンぞ」 116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 14 41 12.40 ID pMSjZlik0 一方通行「随分とコツもつかめて来たみてェだなァ」 佐天「はい、あなたのお陰ですよ」 一方通行「六時か……そろそろ終わらせるぞ」 佐天「それじゃあ、また明日」 一方通行「待て。俺も付いていってやらァ」 佐天「え?いいですよ、一人で帰れますって」 一方通行「他に用もあるしなァ……テメェの為じゃねェからなァ!」 120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 14 49 20.37 ID pMSjZlik0 佐天「用って何ですか?」 一方通行「コンビニだ。買い物してェしなァ」 佐天「もしかして……夕飯買ったり?」 一方通行「あァ。よくわかったなァ。居候が揃って出かけるっつーから飯がねェんだ」 一方通行「ったく。何が「悪いじゃん。この料理店三人用なんだじゃん」だ……クソ」 123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 14 53 54.60 ID pMSjZlik0 佐天「それなら……私が作りに行きましょうか?」 一方通行「はァ? 何言ってんだ?」 佐天「何って……。私だって一人暮らししてるんですから。料理ぐらい作れますよ」 佐天「よし! 決めました! 今日は私があなたの家に行って、美味しいご飯を振舞います!」 一方通行「勝手に決めてんじゃねェよ!」 佐天「そうとなればまずは買出し! スーパー行きますよ!」 128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 14 58 23.86 ID pMSjZlik0 「ねーとーま! 今日はお肉が食べたいんだよ!」 「何言ってんだ! おまえ、一昨日も肉だったろ!? そんなに肉が喰えると思うなよ!?」 「なんで!? とーまはそんなに貧乏なの?」 「インデックスさん。あなたが来てからうちの家計は火の車ですよ」 佐天「何がいいですかねぇ……好きなモノとかありますか?」 一方通行「珈琲」 佐天「食べ物ですよ。無いんだったら……ハンバーグとかでいいですか」 一方通行「あァ。好きにしやがれ」 144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 16 10 27.82 ID pMSjZlik0 佐天「お邪魔しまーす!」 一方通行「あンまり騒いでンじゃねェぞ」 佐天「いやいや、これがあなたのお家ですか」 もぞもぞ。がさごそ。 一方通行「下手にいじくってンじゃねェぞ……」 佐天「お宝発見!」 一方通行「て、テメェは何で人の秘蔵DVDを見つけてンだァ!」 佐天「何々……ふむ。巨乳好きですか。うわーこんなにー」 一方通行「返しやがれェ!」 151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 16 17 12.52 ID pMSjZlik0 一方通行「普段居候が住み着いてるからよォ……その、観る機会がねェンだよ」 佐天「へぇ。それにしても大きい子が好みなんですか?」 一方通行「悪ィかよ!?」 佐天「それじゃあ、私はどうですか? 中一にしたらある方ですよ~」 一方通行「なっ!? ば、バカ言ってンじゃねェよォ!」 佐天「あれあれ? 紅くなってますよ~?」 一方通行「うるせェ! オメェはここに何しに来たンだァ!?」 155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 16 21 17.62 ID pMSjZlik0 佐天「はいはい。今作るから待ってて下さいね」 一方通行「……ったく」 佐天「それじゃ、料理作りますので待ってて下さい」 一方通行「あァ」 佐天「はい、出来ました!」 一方通行「お、おォ……」 佐天「さあどうぞ! 召し上がれ!」 156 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 16 22 55.83 ID pMSjZlik0 佐天「どう、ですか……?」 一方通行「不味くはねェなァ……」 佐天「そんな言い方ないじゃないですかぁ」 一方通行「上手ェよ。……これでいいか」 佐天「はい。ありがとうございます。残りあるので、食べちゃってくださいね」 160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 16 28 03.08 ID pMSjZlik0 佐天「ご馳走様でしたー!」 一方通行「あァ、上手かったなァ」 佐天「それじゃ、そろそろ帰りますね」 一方通行「送ってやらァ。行くぞ」 佐天「はい、ありがとうございますっ!」 162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 16 34 56.69 ID pMSjZlik0 佐天「わざわざ、ありがとうございます」 一方通行「じゃァな。……今日は俺が悪かった」 佐天「それについては謝ったじゃないですか。それじゃあ、明日もお願いします」 一方通行「あァ。待ってるぜェ」 佐天「おやすみなさい。それと、秘蔵DVD、居候の人たちに見つからないといいですね」 163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 16 39 19.89 ID pMSjZlik0 一方通行「開いてる……アイツら帰ってきやがったか」 一方通行「……今帰ったぞォ」 バチンッ 一方通行「痛ッ!?」 打ち止め「あなたには幻滅したよ!ってミサカはミサカはビンタしてみたり!」 164 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 16 41 21.61 ID QYbzJvf30 なんでビンタできんの 167 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 16 44 42.59 ID pMSjZlik0 一方通行「いきなり何だってンだ……」 芳川「あら、おかえり。ちょっと、ここに座りなさい」 一方通行「はァ?」 一方通行「てかどうしたァ? オメェら全員、よそよそしィぞ?」 芳川「座りなさい」 一方通行「あ、あァ……」 174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 16 50 35.30 ID pMSjZlik0 芳川「……これ、何かしら」 一方通行「……ッ!?(こ、これは俺の秘蔵DVD!? か、片付け忘れたァ!)」 芳川「あなただって年頃の男の子だもの。興味を持つなとは言わないわ」 芳川「最近、あなただってする機会が無くて溜まってたのかもしれないわ。だけれども」 芳川「せめて、あの子の手の届かない場所に置いてくれないかしら?」 芳川「ちょっと早すぎるし……それに真似でもしたら、あなた責任取れるの?」 一方通行「そ、それは……」 芳川「取れないわよね。なら普段は隠しておいてくれないかしら」 芳川「何なら……隠す場所、用意しましょうか?」 一方通行「……すいませンでしたァ!」 176 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 16 55 40.17 ID pMSjZlik0 一方通行「芳川の野郎……テメェは俺の母親かァ!?」 黄泉川「やっ、巨乳フェチ少年!」 一方通行「誰が巨乳少年だァ!?」 黄泉川「いやいや。そんなに怒っちゃ嫌じゃん」 一方通行「テメェらはいちいち勘に触ることばかりしやがってェ!」 黄泉川「怒りで私を襲ったら彼女が悲しむじゃん」 一方通行「はァ!?」 178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 16 59 51.90 ID pMSjZlik0 黄泉川「いやァ、アンタみたいのに彼女がいるとは思わなかったじゃん」 一方通行「……テメェ、どこまで見ていた?」 黄泉川「ごく一部じゃんよ。帰る時、車から見えたじゃん」 黄泉川「あの制服は……柵川中学じゃんね。中学生に手出すとは君もやるじゃん」 黄泉川「それに胸も中学生にしてはあったし……将来性を見越してじゃんか?」 180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 17 04 55.43 ID pMSjZlik0 一方通行「誰にまで言った……?」 黄泉川「まだ誰にも言ってないじゃんよ。もちろん打ち止めちゃんにも」 一方通行「……よし」 黄泉川「黙ってあげてもいいけど……風呂上りのコーラが飲みたいじゃん」 一方通行「はァ? ンな物テメェで……」 黄泉川「実は私、"コーラ飲まないと居候の少年の秘密を喋っちゃう病"じゃんよ」 一方通行「行ってくりゃァいいンだろォ!? 行って来てやらァ! コカ・コーラだなァ!?」 黄泉川「コカでいいじゃんよ。よろしくじゃん」 183 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 17 11 21.25 ID pMSjZlik0 一方通行「やってらンねェなァ……」 一方通行「アイツが彼女だァ……? 別にあんな奴……」 一方通行「あァ! クソ! 全部あのジャージ女のせいだァ!」 一方通行「アレは……」 「とーま! このポテチっていうのは美味しいんだよ」 「ダメだって。俺は最低必要な物だけ買いに来たんだ。お前に買う物は無い」 「なんでー!? なんで買っちゃいけないの!?」 「……仕方ないから買ってよし!」 187 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 17 15 45.41 ID pMSjZlik0 一方通行「よォ、上条当麻」 上条「て、テメェは一方通行!?」 一方通行「聞きてェ事がある。ちょっと付き合えや」 上条「ちょ、まだ会計が……」 「4330円になりまーす」 一方通行「カードで。……行くぞォ」 189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 17 17 02.00 ID lrlKGFry0 金欠病上条さんには、この4000円は大きな恩である 193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 17 19 16.80 ID pMSjZlik0 上条「……おおふ(流石レベル5の財力……4000円を軽く……だと……?) 一方通行「行くぞォ……そこのガキは置いてけェ!」 禁書「ひどいんだよ! 私はヒロインなんだよ!」 上条「お菓子買ってもらった分際で何言ってるんだ。先に帰ってろ」 禁書「あなたがお菓子買ってくれたの? ありがとう! それじゃあね!」 一方通行「……テメェも大変だなァ」 195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 17 21 50.41 ID pMSjZlik0 上条「で、話って何だ? まさかまた戦おうなんていうんじゃないだろうな」 一方通行「今やれば結果が見えてンだろォ、意味ねェのは嫌ェなンだァ」 上条「そうか。それはよかった。で、何だ?」 一方通行「……テメェは付き合ってる女とかいンのかァ?」 上条「はぁ? 何言ってるんだお前?」 197 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 17 27 42.03 ID pMSjZlik0 一方通行「テメェは見る度に違ェ女引き連れてンだろォ?」 一方通行「誰と付き合ってンのか聞いてンだよ」 上条「い、いや。誰とも付き合ってないって。マジで」 一方通行「はァ? 何抜かしてやがンだァ?」 上条「本当に。むしろ出会いが欲しいぐらいですよ。マジで」 一方通行「ダメだなァ……もういい。邪魔して悪かったなァ」 201 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 17 31 04.34 ID pMSjZlik0 一方通行「使えねェなァ……ったく」 一方通行「帰るかァ……」 黄泉川「これじゃダメじゃん。暖かくなったコーラはコーラと呼ばないじゃんよ」 一方通行「何言ってんだァ!? 冷蔵庫にしまっとけやァ!」 黄泉川「すぐに飲みたいじゃんよ! アンタの能力でどうにかするじゃん!」 一方通行「……面倒くせェ」 207 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 17 33 45.13 ID pMSjZlik0 一方通行「寝るか……」 佐天「あの人って……大きいのが好きなんだ」 佐天「私ぐらいじゃまだダメだよね……どうすれば大きくなるんだろ……固法さんに聞いてみようかな」 佐天「……迷ってても仕方ないかな。寝よ」 208 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 17 39 37.81 ID pMSjZlik0 固法「胸が大きくなる方法……?」 佐天「はい! 固法さんぐらいになる為にはどうすればいいんですか?」 美琴「ぜ、是非私にも教えてください!」 固法「どうって……どうなのかしらね。揉むと大きくなるって聞いた事あるけど……」 佐天「揉むぅ!? そ、それって自分で、ですよね……?」 固法「も、もちろんよ!? 人に頼める訳がないじゃない」 209 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 17 41 55.24 ID pMSjZlik0 美琴(揉んでもらう……?) ~~~~~~~~~~~~~~ 上条「美琴、これでいい……のか?」 美琴「い、いいから! さっさと続けなさいよ!」 上条「……美琴の胸って小さいなりに柔らかいんだな」 美琴「そ、そう……?」 上条「あぁ。すんごく気持ちいいぜ」 美琴「わ、私も……当麻に揉まれて……気持ちいいよ」 ~~~~~~~~~~~~~~ 美琴「な、ないんだから!」 215 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 17 44 54.08 ID pMSjZlik0 佐天「ど、どうしたんですか!?」 美琴「な、なんでもないわ! なんでもない! 関係ないんだからぁ!」 黒子「お姉様、その役目は私が……」 美琴「アンタは呼んでないでしょう!」 ビリビリ 黒子「ひぎっ……あ、ああん! い、いいですわぁ! あんっ!」 固法「………………。」 初春「………………。」 佐天「………………。」 217 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 17 48 54.94 ID pMSjZlik0 固法「何か悪い事しちゃったみたいね……」 佐天「白井さんにとっては悪い事かどうか……」 佐天「ちなみに……固法先輩は今いくつなんですか?」 固法「え、えっとね……え、えふ……かな」 佐天「……まるで富士山ですね。凄いですよ」 220 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 17 55 43.52 ID pMSjZlik0 初春「あれ? 佐天さん、今日は用事ないんですか?」 佐天「何言ってんの? あるに決まってるでしょ?」 初春「もう四時半ですよ」 佐天「え? 本当? 行かなきゃ! じゃあね。初春! 固法さん、参考になりました!」 固法「え、ええ。……用事って何なの?」 初春「最近、佐天さん、いつも学校終わると誰かと会ってるんですよ」 固法「彼氏かしらね」 初春「彼氏、でしょうね」 黒子「お、お姉様ぁ! 黒子、い、イッちゃいますわぁ!」 221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 17 56 56.01 ID Gf4eB5D20 黒子www 224 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 18 00 17.00 ID pMSjZlik0 一方通行「遅ェなァ……何してやがンだァ?」 佐天「す、すいませーん。遅くなっちゃって……」 一方通行「何してやがったンだァ?」 佐天「い、いやぁ……先輩たちに胸が大きくなる方法を聞いていて」 一方通行「ぶっ……!?(な、なんつー事を……やはり、揉むのかァ!?)」 佐天「すいません!」 一方通行「し、仕方ねェなァ。始めンぞォ」 225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 18 02 01.12 ID lrlKGFry0 つーか、一方さんが定期的に体の栄養の流れるベクトルを調節して胸に多く栄養がいくようにしたら巨乳になるよな 226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 18 02 02.68 ID rv3bzQC80 待って一通さんのベクトル変化で成長ホルモンを変化させれば(ry 229 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 18 05 41.75 ID pMSjZlik0 佐天「はぁぁぁ~~……!」 一方通行「……! よし、いいぜェ!」 佐天「はぁっ……幾つあがってますか!?」 一方通行「……10度だなァ。大した成長だなァ」 佐天「あなたのお陰ですよっ! ありがとうございます!」 235 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 18 14 13.66 ID pMSjZlik0 一方通行「……喜ぶのは早ェぞ。ンな物レベル1に到達すらしてねェよ」 佐天「ですよね。もっと頑張らなきゃ……!」 一方通行「その感覚を忘れンな」 佐天「は、はい!」 一方通行「……そしたら、家でも適当に練習しとけ。行くぞ」 佐天「また送ってくれるんですか?」 一方通行「……テメェの為じゃねェっつってンだろォ!」 242 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 18 23 02.33 ID pMSjZlik0 初春「佐天さん、最近機嫌いいですね」 佐天「そうかな~? わかっちゃう?」 初春「はい。とっても嬉しそうな顔してますよ。やっぱり彼氏のお陰ですか?」 佐天「か、彼氏? あの人は違うって!」 初春「そうなんですか? それじゃ、佐天さんにコレあげますね」 佐天「コレって……遊園地のチケット?」 初春「はい。佐天さんと行こうかと思ってたんですけど、佐天さんが使ってください」 初春「ちなみに私はその日に予定があるのでいけませんけど」 245 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 18 26 31.16 ID pMSjZlik0 佐天「遊園地一緒に行きませんか!?」 美琴「ごめん、私、その日学校の行事で。ちょっと行けないかな」 黒子「私もお姉様と同じく行事がありますの」 固法「ごめんなさいね。その日は偶然、用事があって……」 アケミ「ごめーん」 むーたん「ごめん、無理なんだ」 マコちん「その日は予定があって……」 248 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 18 31 59.93 ID pMSjZlik0 美琴「これでよかったのかしら?」 初春「ええ! 完璧ですよ!」 固法「全く。あなた達の行動力は凄いわね」 黒子「それではお姉様、今度、私と遊園地に……」 美琴「皆で行きましょうね。楽しみだわ」 343 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/04(月) 20 54 48.97 ID pMSjZlik0 佐天「むー。皆無理か……どうしよっかなあ」 佐天「となると……やっぱり……い、いつものお礼としてならいいよね」 一方通行「遊園地だァ?」 佐天「はい。友達からチケットもらったんですけど、どうですか?」 一方通行「……面白そうだなァ。付いていってやるよォ」 490 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 10 20 10.53 ID swAtw4xO0 佐天「それじゃあ、明日の9時に駅集合でいいですか?」 一方通行「あァ。勝手にしやがれェ」 佐天「楽しみにしてますから。遅れないで下さいね」 一方通行「……わかってらァ」 佐天「それじゃ、また明日」 494 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 10 23 45.12 ID swAtw4xO0 佐天「やった……! 明日かぁ……」 佐天「どんな格好してこうかなぁ……」 佐天「遊園地……男の人と行くのって初めてだよね……」 佐天「まるでデートみたい……ち、違うよね!」 佐天「あー、もう! 緊張して眠れない……!」 496 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 10 31 27.79 ID swAtw4xO0 黄泉川「どうしたじゃん? 何か様子が変じゃんよ?」 一方通行「はァ?」 芳川「明日、例の彼女とデートでもあるんでしょう?」 一方通行「ち、違ェよォ! 第一、何でテメェがそれを……! 黄泉川ァ!」 黄泉川「てへっ☆ じゃんよ」 一方通行「てへっ☆じゃねェぞォ!」 打ち止め「彼女とデートなんだ。楽しそうだよね……」 戻る 次へ
https://w.atwiki.jp/index-index/pages/3976.html
【種別】 人名 【初出】 創約三巻 【解説】 ドレンチャー=木原=レパトリの下で暮らしていた『置き去り』達の一人。10歳程度の少年。 よく物を盗んでしまう癖があり、加えてそれを自分の秘密基地に隠したまま忘れてしまう性格。 リサコ(未編集)は、どこかへ行った共用のボールや薬用石鹸は彼が盗んだのだと考え、 それを見つけるためにニコラウスの金貨でマンホールの蓋をこじ開けたために、 学園都市の地下に迷い込んでしまうこととなった。 その後、レパトリに率いられてカキキエ隧道へ行き、 学園都市外へ通じる電動トロッコに他の『置き去り』達と一緒に乗せられる。 しかし、レパトリ達が自分たちを人体実験で殺そうとしているのではないかと疑い、 リサコを連れてトロッコから飛び出してしまう。 そこを木原端数とレディバードに狙われたが、 浜面に助けられ、レディバードの撃破にも貢献した。 最終的には浜面・滝壺・リサコと一緒に学園都市に帰還し、黄泉川に保護された。