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悪を断つ剣 夜の森は暗い。 微かに漏れる月明かりはあまりに頼りなく、枝の濃い地域はほぼ完全な無明状態となる。 そこを歩くのは、左目に傷を持った男――記憶喪失を騙る、通称Dボゥイ。 その手に握っているのは、何やら一振りの奇妙な日本刀。 本来刃である箇所が峰であり、峰である箇所に刃があるのだ。 本当にこんなものが使えるのか? 最初はそうも思ったのだが、どうやらこれは峰部分の強度もかなりのものらしい。 …本当に何故繊細な日本刀がそんなに丈夫なのかは不明だが。 (俺は間違いなく、アックスのボルテッカに飲まれたはずだった…) 今でもはっきりと思い出せる。 フェルミオンの眩い光が、アースラごと自身を包んでいくさまが。 それが何故か今こうしてここにいる。ふざけた爆破ショーを見せられて。 (何故、人間同士で殺し合わねばならない…!) 歯ぎしりと共に、左の拳が固く握られる。 見ず知らずの人間と命を奪い合えとほざく、馬鹿げた2人組。 自分にラダムの――あの憎むべき悪魔の真似事をしろというのか。 「俺は…心までラダムになりはしない。必ずこのゲームを止めてみせる…!」 命を弄ぶ者達への烈なる怒りを込めて。 望まぬ殺戮を強要された人々を救うため。 殺すのは自分だけでいい。そして自分が殺すのはラダムだけでいい。 「ッ!」 がさり、と。 背後で草の音がなる。 反射的に振り返ると、Dボゥイはその手の逆刃刀を構えた。 油断はできない。このゲームに乗った人間も、いないとは限らない。 「そう身構えるな。俺はお前の敵ではない」 野太い男の声が響いた。 闇の中に溶け込むことなく、堂々とした尊厳をもって、その声はDボゥイの耳に届く。 「…今の、聞いていたのか」 「これだけ静かだからな」 銀髪の武人・ゼンガー=ゾンボルトが答えた。 右手には、ところどころ彫金が彫り込まれた銃剣付ライフルを持っている。 彼はこの異常事態の中にあって、幾分か平静を保っている様子だった。 着ている服を見る辺り、管理局に所属している人間らしい。 そして顔立ちからも、修羅場をくぐって積み重ねられてきた年季が漂ってくる。 …彼はまだ29歳なのだが、Dボゥイには知る由もない。 「アンタも、この殺し合いを止めるつもりなのか?」 「無論だ」 古風な言い回しに揺らぎはない。 むしろ落ち着いている人間には敵の方が多いのでは、と感じて再確認したのだが、どうやら杞憂に終わったようだ。 「あのような連中を許すわけにはいかん」 ゼンガーは確固たる意志と共に言葉を発する。 「俺も、アイツらに好き勝手は――」 Dボゥイが言いながら近寄った瞬間、 ――ずどん。 「ぐぅっ!?」 灰色に光る銃撃が、肩を撃ち抜いた。 ゼンガーからではない。明らかに方向が違うし、何より彼の様子を見れば分かる。 「何奴ッ!」 周囲全体に響き渡るような、ゼンガーの怒声。 強烈な覇気と共に放たれた誰何の絶叫は、森の木々を震わすかのようだ。 銃撃音の反響が、水を打ったのように静まり返った。 静寂。 そしてそれを引き裂く足音。 「もうしばらく隠れていたかったが…」 現れたのは、漆黒のコートを身に纏った大男。 ゼンガーと同じ銀色の髪をロングにし、瞳は暗闇の中でなお妖しく光るように錯覚させる。 顔は至って端正。相当な美形だ。両手に握られた得物は、ガンズモードのクロスミラージュ。 「今のうちに食糧を調達しておきたくてな」 にやりと余裕たっぷりに微笑みながら、青年は言い放つ。 遂にこの男が――セフィロスが動いたのだ。 「…お前はこれを持って逃げろ」 セフィロスの姿を睨み付けながら、ゼンガーはDボゥイへと自身の銃を渡す。 「その代わり、その刀をよこしてくれ」 「っ…そんな無茶な…!」 撃たれた右肩を抑えながら、Dボゥイが口を開く。 どう考えても、彼の持っている銃剣の方がこんな逆刃の刀よりも強力なはずだ。 魔力の弾丸を放つピストル相手に、扱いづらい鉄の棒で戦うのは不利。 「そちらの方が慣れている」 しかし、ゼンガーはそれを一蹴した。 有無を言わさぬ強い口調は、Dボゥイの反論を許さない。 そして、恐らく殺人鬼と化したであろう男を前に、これ以上の口論は危険だ。 ついでに言えば、傷を負ったDボゥイは、今や足手まといでしかない。 「分かった…どうか、無事でいてくれ!」 せめてペガスがいれば。あの赤と白の魔人――テッカマンブレードになることさえできれば。 そんな苦々しい思いを抱えながら、Dボゥイは互いの武器を交換すると、全速力でその場を駆け出す。 ゼンガーはそれを見届けると、手にした逆刃刀をセフィロスに向けて構えた。 誇り高き武人の瞳に、鋭くも熱い眼光が宿る。 「いい度胸だ」 木の葉が舞った。 瞬時にダガーモードへと左の銃を切り替えたセフィロスが、疾風のごとき踏み込みでゼンガーへと迫る。 素早く、そして強烈な一撃。 鈍い灰色の輝きをたたえたダガーが、ゼンガーの逆刃刀へと振り下ろされた。 「ぬぅぅぅぅっ!」 凄まじい剣圧。 ゼンガーの両足が大地を踏みしめ、渾身の力と共に受け止める。 (ええい…鬼か魔物かこの力!) 慢心があったわけではない。 ただ冷静に、客観的に、彼は己の力量を評していた。 しかし、まさかただの斬撃で、自分を追い込むような腕力を持った人間がいるとは思いもよらなかった。 ゼンガーの角張った頬を冷や汗が伝う。 そして、それだけには留まらない。 ガンズモードを保っていた右側に魔力が収束される。複数の魔法陣が、さながら照準のように浮かび上がった。 「ファントムブレイザー」 冷たい声が発せられた。 同時に撃ち込まれる、魔力の奔流。 「うぉぉぉっ!?」 ゼンガーの身体が宙を舞った。 (この威力…ディバインバスターにも並ぶかっ!?) 思い出されるのは、あの白いバリアジャケットの幼女。 その思考と共に、彼の身体は地に叩きつけられる。 猛烈な砲火に、ゼンガーは完全に虚を突かれた。 セフィロスが一度に注ぎ込めるだけの魔力を乗せたファントムブレイザー。 確かにそれは、ゼンガーが何かの折に資料で見た、10年前のなのはの砲撃に匹敵する破壊力。 しかし能力制限がなければ、10年後の彼女のエクセリオンバスターにさえ近付くだろう。 そして、新人のティアナが扱うことを前提にしたデバイスは、その威力には耐えられない。 能力制限がクロスミラージュを救っていた。 (せめて、斬艦刀さえあれば…!) 立ち上がるゼンガーの瞳が、苦々しげにセフィロスを睨む。 対するセフィロスは、彼を嘲笑うかのようにその様を見下ろしていた。 こいつは相当な手練れだ。条件が同じでなければ、不利な方が負ける。 すなわち、自分が殺される。 (…否) そうではない。 いつから自分はそんな腑抜けた考えをするようになった? 武人は自問する。 自分を守る魔法の力がなければ戦えないのか? 斬艦刀がなければ何もできない腰抜けなのか? ――否。 断じて否! 「…非殺傷設定を使ったな」 射抜くような眼光が、ゼンガーの瞳から放たれる。 その先に立つのは、あの双銃を携えし男。 セフィロスのファントムブレイザーは殺傷設定ではなかった。 もろに食らったゼンガーに未だ外傷がないのが、その証拠。 殺す気がないとは思えない。 すなわち、遊んでいる。この一撃で決まっては面白くない、と。 「間抜けだな…そこまで言える余裕があるからには、この余裕につけこんでみればよかったものを」 「笑止!」 一喝する。 大地を揺るがすかのような、強く、気高き声で。 古の兵(つわもの)を統べる武将のごとき絶叫が響き渡った。 「本力でかからずして何のための戦いか! その程度の覚悟で、他者の命を奪おうなどと笑止千万!」 嘲笑するセフィロスに向け、ゼンガーは雄叫びを上げる。 「どっちなんだ」 やれやれと言った様子でセフィロスが言った。 殺し合いがしたいのかしたくないのか、と。 要するにゼンガーは、殺したいなら本気でやれと言っているのだ。対主催者側の立場を名乗ったというのに。 「貴様が殺す側に回るのは勝手だ。…しかし! その道を行くのならば、俺は貴様を連中同様の『悪』と見なす!」 ゼンガーは構えた。 一分の隙もなく、全身の随所に神経を走らせ、その闘志を研ぎ澄ませて。 逆刃刀の斬れぬ刀身ですら、彼にかかれば剣呑な刃と化す。 「悪? この狂った地で善悪などと…」 「黙れ!」 セフィロスの言葉を、強い語気をもって遮る。 最早問答は無用。たとえ相手が自分より強かろうと、自分は自分がそうと信じる悪と戦うだけのこと。 「そして聞けッ!」 悪にかける情けなどない。 勝てぬ戦であろうとも、悪に退く脚など持たぬ。 「我はゼンガー=ゾンボルト…」 故に、叫ぶ。 「――悪を断つ剣なり!!!」 【一日目 AM1 41】 【H-1 森林】 【ゼンガー=ゾンボルト@スーパーリリカル大戦(!?)外伝 魔装機神】 [参戦時間軸]17話終了後。ラミア達が「向こう側」のヴォルケンリッターの元へ向かった頃 [状態]健康 [装備]逆刃刀@魔法少女リリカルなのはStrikerS―時空剣客浪漫譚― [道具]支給品一式・ランダム支給品0~2個 [思考・状況] 基本 全ての悪を斬り伏せる 1.無為に他者の命を奪うのを、言葉で咎めはせん。ただ倒すだけのこと! 【セフィロス@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】 [状態]健康 [装備]クロスミラージュ@魔法少女リリカルなのはStrikerS [道具]支給品一式、「治療の神 ディアン・ケト」 [思考・状況] 基本 事態を静観し、潰し合うのを待つ 1.ひとまず今だけは食料を奪うためにこいつを殺す 2.随分喚く奴だ。拠点を移さねばならんな 3.向かってくるのならば、六課の連中だろうと容赦なく殺す 【Dボゥイ@宇宙の騎士リリカルBLADE】 [参戦時間軸]8話。アースラがボルテッカを食らった時 [状態]右肩を撃ち抜かれている。止血はまだされていない [装備]冥銃剣・逢魔ヶ刻@リリカルスクライド//G.U. [道具]支給品一式・ランダム支給品0~2個 [思考・状況] 基本 この馬鹿げたゲームを止める 1.あの人…頼む、無事でいてくれよ…! 2.そういえば、身体の調子が…? [備考] ※テックシステムに蝕まれた肉体は回復しています 025 本編投下順 027
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いきなりは変われない(後編) ◆HlLdWe.oBM 「だ、大丈夫ですか、こなた」 「うん、なんとか無事だよ。でもいったい何があったの?」 「リインにもよく分からないです。咄嗟に防御魔法を展開するだけで精一杯でしたから」 こなたとリインはお互いの無事を確認すると、周囲の様子を恐る恐る窺った。 まだ周囲には埃が立ち込めて様子は分からなかったが、辛うじて見えた近くの壁には縦横に亀裂が走っていた。 どうやらデュエルアカデミアの何処かで爆発か大きな衝撃があって建物に亀裂が入ったようだ。 つまり長居をすれば施設の倒壊に巻き込まれる可能性が高いという事になる。 「そうだ、ルルーシュとレイは!?」 「すいません。レイは離れていたので防御魔法の範囲外でした」 リインは己の未熟さを恥じるかのように弱々しい声で事実を述べた。 その答えを聞いた時、こなたの脳裏に最悪の状況が浮かんだ。 建物に亀裂が走って天井や壁が脆くなった挙句に瓦礫として降り注ぐ様が。 そしてその下にいたレイは為す術もなく潰れて、血だまりの中に肉片が――。 「そ、そんな……じゃあレイは……」 「……でも、どうやらあまり瓦礫は落ちていないみたいです。だから無事だと思いますよ」 「あ、そう言われてみれば……」 確かにリインの言う通りだった。 先程より少し埃が薄らいだために周囲の様子が分かるようになっていた。 一見すると縦横に亀裂が走って今にも崩れそうだが、意外だが今の時点で壊れている壁や天井は微々たるものだ。 周囲の様子を確認すると、こなたはほっと胸を撫で下ろした。 少なくともレイが死ぬという最悪の結果は見なくて済みそうだ。 そうなるともう一人の行方が気になってくる。 「ところでルルーシュは……」 「ルルーシュならこなたの足元で寝ているですよ」 周囲をキョロキョロと見渡していたこなたにリインが声をかけた。 どうやら周囲ばかり見ていたせいで足元を見落としていたみたいだ。 まさしく灯台もと暗し。 「あ、いたいた。ルルーシュ、もう大丈夫だ――」 ――ぴちゃ。 「へ?」 こなたは不思議に思った。 ルルーシュに目を向けるために少し足を動かした瞬間、水溜まりを踏むような音が聞こえたのだ。 だが周囲を見ても水道管が破裂している気配などない。 それならこの水溜まりはいったい――。 「こなた! それ血だまりです!!」 「え、ええ!? そんな、ルルーシュ! ルルーシュ! ねえ、起きてよ!!」 リインに遅れること数秒、ようやくこなたにも状況が分かってきた。 ルルーシュは真っ赤な血だまりの中に倒れていたのだ。 原因は右腕の傷口。 そこがさっきの衝撃で開いてしまったのだ。 その場しのぎの止血と応急処置だけで放置していた事が裏目に出た。 ずっと傷口を防ぐのに使っていたスバルの鉢巻きは長時間の使用で緩んでいたのだ。 「こなた、ルルーシュの右腕は化膿もしていたです! このままの状態が続けば命が危ないです!」 「それって結構ヤバいんじゃ。早く何とかしないと!」 「早く正規の治療を施さないと……ヒーリングだけではもう焼け石に水です!!」 リインの悲痛な叫びを聞いている内にこなたは今の状況に至る発端を思い出していた。 そもそもの始まりはこなたとレイが合流してルルーシュの元に戻っている最中に遡る。 途中いくつか今後について話しながら移動していると、廊下で倒れているルルーシュを発見したのだ。 エントランスで待っているはずのルルーシュがなぜ廊下で倒れていたのか不思議だったが、それ以上に大きな問題が判明した。 ルルーシュの右腕の傷口が化膿して発熱していたのだ。 おそらく応急処置だけでは細菌の侵入を食い止める事ができなかったのだろう。 しかも失血によって体力も相当弱っていたはずだ。 さらに右腕の傷口に巻かれたスバルの鉢巻きは未だに替えないまま今に至っている。 それでは細菌の良い温床になるばかり。 今までルルーシュはいくつもの緊張の中に身を置いていたので発熱の前兆を疲労だと判断して無視してきた。 それはただスバルを守りたいがため。 そのために多少の不調には敢えて目を瞑ってきたのだ。 だがそれが反ってルルーシュ自身の状態を悪化させる事となっていた。 実際は表面上の変化はないように見えたが、その実ルルーシュの身体は限界に達していたのだ。 ルルーシュの容態に気付いたリインが急いでヒーリングを施したが、リインの力もここでは制限されていて状態は芳しくなかった。 だが必死の治療が功を奏したのか、しばらくするとルルーシュは目を覚ましてくれた。 まだ焦点が定まらないのか目が虚ろだったが、意識を取り戻した時はほっとした。 しかしその後に事件は起こった。 なぜか目覚めたルルーシュはいきなり左目に紅い不死鳥の紋を浮かび上がらせたのだ。 それは絶対遵守の力であるギアスが発動する前兆だ。 なぜこのタイミングで、誰に、どんな目的で。 こなたとリインはその一瞬にいくつもの疑問が湧いた。 だからどうしていいか分からず結局ギアスの発動を止めさせる事ができなかった。 まさか化膿による発熱の影響で冷静な判断を逸しているなど思いもつかない事態であった。 だが結果的に『俺に従え』というレイへのギアスは不発に終わった。 あの瞬間に起こった爆発の影響で落ちてきた瓦礫によって。 それは今になってそれほど大きくなかったと判明したが、ギアスを遮るのには十分なものであった。 そして結果的にレイにギアスは掛けられなかったが、ギアスの発動自体は成立していた。 だから当然ギアスに掛けられた制限でルルーシュには多大な疲労が残る事になった。 それは辛うじて意識を取り戻していたルルーシュを再び昏倒させるのに十分だった。 しかも意識を失う際に無意識のうちに倒れる身体を支えようと腕を出したのが決定的だった。 身体の支えとして出した右腕は既になく、傷口をもろに床に直撃させる結果となった。 その衝撃で止血用の鉢巻きが取れて傷口が開くなど、まさに泣きっ面に蜂の状態だ。 これらの原因の一端がルルーシュにもあるとはいえ自業自得にはあまりにも不幸な出来事であった。 だがそもそもこなたとリインはルルーシュの行動の理由など知る由もない。 二人にとってはいきなり重症のルルーシュがレイにギアスを掛けようとした事ぐらいしか分かっていなかった。 だから二人は知らなかった。 「ルルーシュ……あなたのせいで十代様はアアァァァァ!!!」 ルルーシュが目撃した光景を。 レイが拳銃の銃口をルルーシュに向けている様子を。 ▼ ▼ ▼ もう迷わない。 ▼ ▼ ▼ きっかけは些細な会話だった。 リインが話していた時空管理局の救援に関する会話。 その中に出てきた一つの事実が他の内容を吹き飛ばすほどレイには衝撃的だった。 それは『パラレルワールドから参加者を連れてくるごとに時空管理局に発見される可能性が高い』という内容だ。 つまりプレシアにとってはパラレルワールドから参加者を連れてくる事は何らかのリスクを負う事になる。 しかも本来なら一度で済む作業を二度三度に分けるので手間もかかる。 ではなぜプレシアはリスクを負って手間をかけてまでそのような事をするのか。 それはもちろん参加者の間で誤解を生じさせて殺し合いを誘発してデスゲームを円滑に進めさせるためだろう。 だが参加者全員にそれが当てはまるだろうか。 確かに別世界の影響で知り合いだと思っていた者が自分の事を知らない、あるいは時間が違うせいで味方だと思っていた者が敵になる。 まさに誤解による殺し合いの促進だ。 だがこれによって殺し合いに影響を及ぼす者は何らかの力のある者に限られる。 例えばもし自分と十代の間に誤解が生じたところで大して力のない二人など他の参加者から見ればどうでもいい存在でしかない。 一応カードの扱いに一日の長があるが、そのような力はカードがなければ何の役にも立たない。 つまり自分達のような何の力もない一般人は誤解を生じさせてもあまり意味がない。 パラレルワールドから手間をかけてリスクを冒して連れてくるだけのメリットが無いのだ。 この結論に至った時、レイは絶望した。 先程の放送で呼ばれた遊城十代がレイの世界の十代で間違いないという事になるからだ。 本当はこのような結論など否定したかった。 だがどう考えても否定できる理由など見つからなかった。 だからレイは一人静かに恨んだ。 十代を殺した者を。 そして――。 ――レイの行動を阻んだルルーシュを。 ここに来てからレイは実に半分以上の時間をこのデュエルアカデミアで過ごしている。 その原因はルルーシュだ。 ルルーシュの疑いの目を警戒するあまり行動は慎重にせざるを得なくなり、結局のうのうと時間を浪費するだけだった。 確かにいくつか収入はあったが、それよりももっと会場を巡って十代のために何かできたはずだ。 ルルーシュさえいなければスバルやこなたを上手く言いくるめて別行動できたかもしれない。 だからこそルルーシュの存在が許せなかった。 だがいくら憎んでもレイの手持ちには人を殺せるような道具はない。 『レッド・デーモンズ・ドラゴン』は使用に関して不確定要素がありすぎる。 唯一確実な武器である拳銃はルルーシュに取られたままだ。 だからレイは一度生まれた負の感情を持て余していた。 だが好機は意外にもすぐ訪れた。 エントランスに向かう廊下の途中でルルーシュが倒れていたのだ。 しかも右腕の傷が化膿して発熱を引き起こすという重症になっていた。 すぐさまこなたとリインはルルーシュの応急処置に取り掛かり、レイはルルーシュやこなたの荷物を預かる事になった。 レイが治療に参加しないのはレイより年上のこなたの方が治療の助けには向いているからだ。 だから治療の邪魔になるようなデイパックや銃器を預かる役はレイになったのだ。 つまり図らずともレイの手に人殺しの道具が舞い込んできたのだ。 レイの目の前ではこなたとリインが床に救急箱やシーツなどを広げて必死の治療に当たっている。 もちろん二人が意識を向けているのは重症のルルーシュであって、仲間だと思っているレイは意識の外になる。 だからルルーシュから取り戻した銃を構えても何の反応もなかった。 もう照準は合わせたので後は引き金を引くだけだった。 だがいざ引き金を引こうとすると指が動いてくれなかった。 本当にこれでいいのか。 もしかして自分は間違っているんじゃないか。 こんな事をして結果的に何になるのか。 そんな疑問がレイの胸中に渦巻いた。 そもそもレイは十代を守るために危険人物を殺そうと決意したが、今に至るまで誰も殺していない。 しかも手違いで無害なフェイトを殺してしまったと思った時は一瞬たじろぎさえしていた。 誰かを殺す決意はしたが、まだ誰かを殺す覚悟は固まってはいなかったのだ。 だから銃口をルルーシュに向けたまでは良かったが、そのままの状態から一歩進む事ができなかった。 だが皮肉にもその最後の一歩を踏み出す一押しになったのはルルーシュであった。 確かにレイはルルーシュを撃とうとしたが、まだ覚悟は定まっていなかった。 だからルルーシュと目が合った時、自分の行動がばれたと思って身体が震えたのだ。 その時レイはもう全て打ち明けてしまおうかと思うぐらい実際には精神的に追い詰められていた。 しかしそんなレイにルルーシュは躊躇う事なくギアスを掛けようとした。 確かに銃を撃とうとしたレイに非がある。 だがただ銃口を向けただけでギアスを掛けるとは如何なものか。 こちらはまだ撃つ覚悟さえ固まっていなかったというのに。 しかもギアスの内容は『俺に従え』――レイを完全に従順させるものだ。 これがまだ『銃を捨てろ』や『撃つな』ならまだ納得がいく。 だが『俺に従え』などまるでレイがルルーシュの道具であるかのような言い草だ。 そしてレイは悟ったのだ――ルルーシュにとって自分は使い捨ての効く道具のような存在だと。 それに気付いた時、頭のどこかで何かが吹っ切れた気がした。 そして激しい怒りと憎しみが湧きあがってきた。 自分はこんな奴のために十代様を守る時間を浪費してしまったのかと。 だから二度目に銃を構えた時、もうそこに躊躇はなかった。 だがこの時は激情に突き動かされて声を上げたせいでこなたとリインに気付かれて失敗してしまった。 そして銃の反動に驚いている隙を突かれて、あまつさえ3人の逃亡を許してしまった。 一応逃げていった方角は北の裏口の方なのでどの方向へ行ったのかはだいたい分かる。 ここも自分が調べた範囲では目ぼしい物はなかったから長居する必要はない。 「ルルーシュ、あなたを殺して、次に十代様を殺した奴も殺す。そして――」 その時にはもう全てが終わるだろう。 「――私も死ぬ。ごめんなさい、十代様」 どうせ元の世界に十代はいない。 死者蘇生の可能性など先程考えた通り、期待するだけ無駄だ。 それなら生きているより死んだ方がいい。 もしかしたら天国という場所があって十代と再会できるかもしれない。 「……私――いやボクはもう恋する乙女なんかじゃない」 そこには恋する乙女の姿はなかった。 そこにあるのは悲しい復讐者の姿だけ。 【1日目 日中】 【現在地 G-7 デュエルアカデミア裏口付近】 【早乙女レイ@リリカル遊戯王GX】 【状態】健康、銃の反動で腕が少し痺れている、自暴自棄 【装備】SIG P220(8/9)@リリカル・パニック、 【道具】支給品一式×4、リインフォースⅡのお出かけバッグ@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS、フリーズベント@仮面ライダーリリカル龍騎、光の護封剣@リリカル遊戯王GX、情報交換のまとめメモ、レッド・デーモンズ・ドラゴン@遊戯王5D s ―LYRICAL KING―、投げナイフ(9/10)@リリカル・パニック、バスターブレイダー@リリカル遊戯王GX、レギオンのアサルトライフル(100/100)@アンリミテッド・エンドライン、洞爺湖@なの魂、小タル爆弾×2@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、インテグラのライター@NANOSING、医薬品一式、メス×3、医療用鋏、ガムテープ、紐、おにぎり×3、ペットボトルの水、火炎瓶×4、ラウズカード(クラブのK)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、シーツ数枚 【思考】 基本:目的(ルルーシュと十代を殺した者を殺す)を果たしてから死ぬ。 1.ルルーシュを追いかけて殺す。 2.十代を殺した者を殺す。 3.レッド・デーモンズ・ドラゴン……使えるかな? 4.フェイト(StS)、万丈目を強く警戒。 【備考】 ※フェイト(A s)が過去から来たフェイトだと思っています ※フェイト(StS)、万丈目がデュエルゾンビになっていると思っています(スバル達には「自分の世界のフェイトは敵に洗脳されているかもしれない」と説明しました)。 ※デュエルデュスクを使えばカードの効果をより引き出せると思っています。 ※カードとデュエルディスクは支給品以外にも各施設に置かれていて、それを巡って殺し合いが起こると考えています。 ※レッド・デーモンズ・ドラゴンが未来の世界のカードだと考えています(シンクロ召喚の方法がわかっていません、チューナーとチューナー以外のモンスターが必要という事は把握済みですがレベルの事はわかっていません)。 ※正しい召喚手順を踏まなければレッド・デーモンズ・ドラゴンを召喚出来ないかどうかは不明です。 ※レイの調べた範囲でデュエルアカデミアに目ぼしいものはありませんでした。 ※死んだ十代は自分と同じ世界の十代で間違いないと思っています。 ※かなり破滅的になっているので周りの話をあまり聞かない可能性が高いです。 ▼ ▼ ▼ 生き延びたいなら躊躇ってはいけない。 ▼ ▼ ▼ 「ダメですこなた! やっぱりさっきの衝撃で傷口が開いてヒーリングだけじゃ手に負えないです!!」 背中からリインの必死の訴えに危機感を募らせながらこなたは決死の逃避行に挑んでいた。 なんとか裏口からデュエルアカデミアを抜けて現在は先程確認した煙の方に向かっている。 大した理由はない、ただ咄嗟にその方角が思いついただけだ。 本当はスバルと合流したかったが、あの時デュエルアカデミアを襲った衝撃はエントランスの方からだった。 だからそこも安全とは言えない。 しかも今迂闊に戻ればレイと鉢合わせになる可能性もあるのだ。 今の状況は最悪だ。 まず近くに頼れる存在がリインしかいない上に、そのリインも治療で手が離せない状態。 ルルーシュは意識を失っていて右腕の怪我が悪化して急を要する事態。 そしてこなたはその重症のルルーシュを背負って懸命に走っている最中。 時々背丈が違い過ぎるから背負うのは大変だと泣き言を言いたくなるが、そんな暇などありはしない。 今は一瞬たりとも気を抜けない。 なぜなら気を抜けばたちまち背後から追いかけてくるレイに殺されるかもしれないからだ。 あの時なぜレイがいきなり発砲してきたのかは分からない。 だがレイの顔は相当追い詰められたものだった。 きっと何か深い事情があった事だけはなんとなく分かった。 おそらく今のレイに何を言っても聞く耳を持たないに違いない。 だから逃亡という選択をしたのだ。 最初の銃弾とその後の逃亡はリインのおかげで何とか上手くいった。 だがそうそう何度も上手い事いくわけがない。 今のこなたはデイパックさえ無い状態なのだ。 まさに頼れるのは己の身一つのみ。 【1日目 日中】 【現在地 G-7 北西部】 【泉こなた@なの☆すた】 【状態】健康、ルルーシュを背負っている 【装備】なし 【道具】なし 【思考】 基本:かがみん達と共に家族の元に帰るため、自分の出来る事をする。 1.とにかく逃げる(一応煙の方を目指して)。 2.落ち着いてからルルーシュに外の煙や調査結果について報告。 3.リイン、レイ、スバルが心配。 4.アーカード(名前は知らない)を警戒。 5.後でフェイトとプレシアの関係を確認してみる。 6.かがみん達……大丈夫だよね? 7.おばさん(プレシア)……現実とゲームを一緒にしないで。 【備考】 ※参加者に関するこなたのオタク知識が消されています。ただし何らかのきっかけで思い出すかもしれません。 ※いくつかオタク知識が消されているという事実に気が付きました(スバル達に話すつもりはありません)。 ※かがみ達が自分を知らない可能性に気が付きましたが、彼女達も変わらない友達だと考える事にしました。 ※ルルーシュの世界に関する情報を知りました。 ※この場所には様々なアニメやマンガなどに出てくるような世界の人物や物が集まっていると考えています。 ※地図に載っていない施設が存在する可能性があると考えています。 ※PT事件の概要(フェイトとプレシアの関係は除く)をリインから聞きました。 ※自分に割り振られた調査エリアを調べ終えました。何かを見つけたか否かは後続の書き手さんにお任せします。 【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反目のスバル】 【状態】左腕裂傷、右腕欠損(傷口化膿・再出血)、疲労極大、発熱による若干の錯綜、強い決意、深い悲しみ、気絶中 【装備】ブリタニア軍特派のインカム@コードギアス 反目のスバル、リインフォースⅡ@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS 【道具】なし 【思考】 基本:守りたい者、守るべき者を全力で守り抜く。 1.レイは危険だ。 2.チンクが目覚めたら彼女と話をする。 3.スバルを守るために、たとえ汚れ役を買って出てもスバルにとって最善と判断した行動を取る(もしもの時は殺害も辞さない)。 4.ディエチやカレンの犠牲は絶対に無駄してはならない。 5.ギアスの制限を確かめたい。 6.戦力の確保及びプレシアの関係者の捜索、首輪の解析を行う。 7.C.C.、クアットロと合流したい。 8.ゲーム終了時にはプレシアに報復する。またその後でシャーリーに自らの命の決断を仰ぎ、それに従う。 9.左腕が刃の男(=ナイブズ)、赤いコートの男(=アーカード)、殺し合いに乗った頭の切れる参加者を警戒。 【備考】 ※プラント自立種にはギアスが効かない事が確認されました。 ※ギアスを使った際の疲労は命令の強さに比例すると考えています。同時にギアスが効かない参加者が他にもいると考えています。 ※こなたの世界に関する情報を知りました。もっとも、この殺し合いにおいて有益と思われる情報はありません。 ※「左腕が刃の男」が既に死亡したナイブズである事に気付いていません。 ※ここにいるスバルを“本物のスバル・ナカジマ”であると認めました。 ※レッド・デーモンズ・ドラゴンは現状では使えない可能性が高いと考えています。 ※「月村すずかの友人」からのメールを読みました。ご褒美の話をどう捉えているかは後続の書き手さんにお任せします。 ※シャーリーが父の死を聞いた直後から来ている事に気付きました。また一緒にはいられないと思っています。 【リインフォースⅡ:思考】 基本:スバル達と協力し、この殺し合いから脱出する。 1.はやて(StS)や他の世界の守護騎士達と合流したい。殺し合いに乗っているならそれを止める。 2.ルルーシュの治療に専念する。 3.落ち着いてからルルーシュに外の煙や調査結果、こなたと話した他の施設や隠し施設の事について報告。 【備考】 ※リインフォースⅡの参戦時期は第四話ではやてと会話する前(つまり眠っている間)です。 ※自分の力が制限されている事に気付きました。 【チーム:黒の騎士団】 【共通思考】 基本:このゲームから脱出する。 1.デュエルアカデミア内部を調べる。 2.首輪解除の手段とハイパーゼクターを使用するためのベルトを探す。 3.首輪を見つけた時には機動六課か地上本部で解析する。 4.それぞれの仲間と合流する。 【備考】 ※それぞれが違う世界の出身であると気付きました。 ※デュエルモンスターズのカードが武器として扱える事に気付きました。 ※デュエルアカデミアにて情報交換を行いました。内容は守りたいもの本文参照。 ※「月村すずかの友人」からのメールを読みました。送り主はフェイトかはやてのどちらかだと思っています。 ※チーム内で以下の共通見解が生まれました。 要救助者:シャーリー、ヴィヴィオ、万丈目(注意の必要あり)、明日香、かがみ、つかさ、ルーテシア 合流すべき戦力:なのは、フェイト、はやて、キャロ、ヴィータ、シャマル、ユーノ、クアットロ、チンク、C.C.、(フェイト及びクアットロには注意の必要あり) 危険人物:赤いコートとサングラスの男(=アーカード)、金髪で右腕が腐った男(=ナイブズ) 以上の見解がそれぞれの名簿に、各々が分かるような形で書き込まれています。 ▼ ▼ ▼ どんな事をしても私は生き残ってみせる。 ▼ ▼ ▼ そこには少し前までは立派なエントランスがあったはずだ。 だが今ではその面影は見る影もなく廃墟と呼ぶのが相応しい状態になっていた。 まだ爆煙が晴れていないので一部しか見えていないが、全貌も推して知るべしというところだろう。 そんな光景を見てもかがみは何も思わなかった。 ただ自分が行った成果を他人のような目で見るだけだ。 最初かがみはスバルが言っている事が信じられなかった。 だがバクラに確認を取ったところ、それが真実であると知った。 つまり自分とこなたは別々の世界から連れて来られたという事実を認めるという事だ。 またバクラになぜこの事を黙っていたかと聞くと、宿主つまりかがみにこれ以上心労を掛けたくなかったと答えた。 その心意気は嬉しかったが、本音を言うともっと早く言ってほしかった。 実はバクラの本心は別にある。 本当はキャロと出会った時のかがみの反応が心配だったために言わなかったのだが、この際仕方なかった。 とりあえずいざという時は時間を稼いで精神を乗っ取って解決しようと思っている。 そしてかがみはなのはがあのような反応を取ってもおかしくないという事に行き着いた――だが、それだけだ。 世界が違おうと、時間が違おうと、かがみの身に降りかかった出来事に変化はない。 エリオが死んだのも。 クワガタの怪人に襲われたのも。 ピンクの髪の女侍を殺したのも。 片翼の剣士に死にそうな目に遭わされたのも。 Lに監禁されたのも。 モンスターに追いかけられたのも。 万丈目にカードデッキを押しつけられたのも。 カードデッキを破壊されてモンスターに襲われたのも。 全て世界や時間の違いなどと関係のないことばかりだ。 結局のところ自分の不幸の原因に変化はない。 この事実を知ったからと言ってかがみの方針が変わる事などないのだ。 むしろ逆に踏ん切りが付いた。 なぜならここにいるこなたは自分の世界のこなたではない。 つまり優勝して元の世界に戻ればこなたは変わらずそこにいるのだ。 そうなるとこなたが別世界ならつかさも別世界だろう。 かがみは根拠もなくそう思っていた。 もうこなたとつかさを気に掛ける必要はないのだ。 だが可能なら自分の手で殺すのは避けたいというのが本心ではある。 つまりもう迷う事などないのだ。 だからこその選択、だからこその行動だった。 現状かがみの手持ちの武器で一番使えそうなのは王蛇のカードデッキだ。 だがそれにはいくつか制約があり、とりわけモンスターの暴走を止める餌の確保は急務だった。 だからかがみは餌としてスバルを選んだのだ。 こちらを警戒していないその隙に行動を起こせばいけると思ったのだ。 結果的にそれは失敗したが、代わりの餌は補充できたので結果オーライだった。 だがバクラの進言もあってこの際に殺しまおうと考え直して、外からEx-stでの砲撃を敢行した。 バクラがこのような誘導をかけたのはかがみに殺人を重ねさせて下手に説得されない事を狙ったからだ。 それに先程喰われた眼帯女が万丈目を襲った奴だと気付いた事も一因であった。 万が一でも眼帯女からの情報で自分の存在に辿り着けば厄介だからだ。 「このEx-stって使いどころ微妙ね……あ、これ弾の補充ってどうするの?」 『さすがに俺もそれは知らねえぜ。またあとで考えるか』 「そうね」 『ああ、それよりも……』 「ん?」 『気を付けろ、あの青髪まだ死んでないぞ』 「まだ、生きているんだ」 バクラの言う通りスバルは生きていた。 爆煙が晴れてエントランスの全貌が明らかになって初めてスバルが少し離れた場所に倒れている事に気付いた。 内心でこの隙にベノスネーカーを襲いに行かせれば良かったと思ったが、ベノスネーカーはあの一瞬で傷を負わされたらしい。 そのせいかスバルの服装が白の戦闘服っぽいものから茶色の制服に変わっていた。 『バリアジャケットが解けたのか? 何にせよ、チャンスだぜ』 「何か考えがあるの?」 『ああ、あの剣みたいなデバイスを今のうちに取り上げれば、後が楽になるぜ』 バクラはキャロと行動するうちに基本的な魔法の知識は身に付いていた。 だからスバルの姿の変貌を見た時にすぐにバリアジャケットが解けた事に気付いたのだ。 そしてまた魔導師にとってデバイスが必要な物である事も知っていたので今の内に奪取する事を提案した。 ざっと観察したところスバルのデバイスが剣だと盗賊王バクラの鋭い目は見抜いていた。 だがかがみはその意見に懐疑的だった。 「そんな上手い具合にいくわけ――」 『盗みのカードがあっただろ』 王蛇のカードデッキの中にあった「STEAL VENT」のカード。 確かにその盗みのカードなら首尾よくいきそうだ。 「じゃあ、さっさと済ませましょうか」 『ああ、俺と宿主でダブルライダーだな』 「それ、なんか意味違う気がするわよ」 かがみはバクラの軽口を適当に流しながらEx-stをデイパックに戻して、代わりに王蛇のデッキを制服のポケットから取り出した。 そして首に下げている千年リングにデッキを映した次の瞬間、かがみの腰にはライダーの象徴たるベルトが顕現していた。 「『変身!!』」 戯れで重ねてみた二人の声を同時にベルトにデッキが差し込まれる。 もうそこにいるのは柊かがみではない。 そこにいるのは戦う事を宿命づけられた戦士、仮面ライダー王蛇の姿であった。 そしてすぐさま左手に牙召杖ベノバイザーを、右手に「STEAL VENT」のカードを用意した。 (私は生き延びたい。誰だってそう思うわよ。だから私は間違っていない――) かがみはそう思いながら「STEAL VENT」を発動させた。 いや、そう思わずにはいられなかったのかもしれない。 異常な状況とはいえ少し前まで平和に日々を過ごしていた女子高校生が喜々として殺し合いに参加するなど普通なら考えにくい。 だが普通でなければ。 もしかしたらかがみは別々の世界や時間という免罪符の下で自分の行為を正当化しているのかもしれない。 本当のところは誰にも分からないが。 たとえ孤独でも命ある限り戦う、それがバトルロワイアルだろう。 「いったい、どうしてこんな事に……」 スバルは未だ状況が把握できていなかった。 紫の蛇が襲ってきた事も。 背後から放たれた直射系の砲撃魔法のようなものの事も。 かがみが紫のバリアジャケットのようなものを身に纏った事も。 頼みの綱のレヴァンティンがいきなり消えてかがみの手に現れた事も。 どれもスバルには分からない事ばかりであった。 だがこのままかがみを放っておけない事だけは分かった。 しかしスバルの状態は厳しいものであった。 チンクのデイパックは爆発のせいでバラバラになって中身があちこち散らばっている。 バリアジャケットの外装は爆発によるダメージを軽減するためにリアクティブパージして、アンダーも軽減できなかった衝撃で破損してしまった。 つまり今のスバルはバリアジャケット無しの上に、手元にあるのは爆発の最中掴んできた自分のデイパックだけ。 まさに頼れるのは己の身のみ。 それでもスバルは諦めようとはしなかった。 たとえどんな厳しい状況でも突破する、それがストライカーだろう。 ――そして静かに戦いの幕は上がろうとしていた。 【1日目 日中】 【現在地 G-7 デュエルアカデミア エントランス跡前】 【柊かがみ@なの☆すた】 【状態】健康、肋骨数本骨折、3時間憑依不可(バクラ) 【装備】ホテルの従業員の制服、ストラーダ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです、カードデッキ(王蛇)@仮面ライダーリリカル龍騎、サバイブ“烈火”(王蛇のデッキに収納)@仮面ライダーリリカル龍騎 【道具】支給品一式×2、Ex-st@なのは×終わクロ、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ランダム支給品(エリオ0~2)、レヴァンティン(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、カードデッキ(ベルデ・ブランク体)@仮面ライダーリリカル龍騎、柊かがみの制服(ボロボロ)、スーパーの制服、ナンバーズスーツ(クアットロ) 【思考】 基本:死にたくない。なにがなんでも生き残りたい。 1.バクラ以外の何者も信じない(こなたやつかさも)。 2.スバルを殺した後で映画館に向かう。 3.万丈目に対する強い憎悪。万丈目を見つけたら絶対に殺す。 4.同じミスは犯さないためにも12時間という猶予時間の間に積極的に参加者を餌にして行く。 5.メビウス(ヒビノ・ミライ)を警戒。 【備考】 ※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。 ※一部の参加者やそれに関する知識が消されています。ただし何かのきっかけで思い出すかもしれません。 ※「自分は間違っていない」という強い自己暗示のよって怪我の痛みや身体の疲労をある程度感じていません。 ※周りのせいで自分が辛い目に遭っていると思っています。 ※Lは自分の命が第一で相手を縛りあげて監禁する危険な人物だと認識しています。 ※万丈目の知り合いについて聞いたが、どれぐらい頭に入っているかは不明です。 ※王蛇のカードデッキには未契約カードがあと一枚入っています。 ※ベルデのカードデッキには未契約のカードと封印のカードが1枚ずつ入っています。 ※「封印」のカードを持っている限り、ミラーモンスターはこの所有者を襲う事は出来ません。 ※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間~1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。 ※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。 ※こなたとつかさの事は信用しないつもりですが、この手で殺す自信はありません(でもいざという時は……)。 ※千年リングを装備した事でバクラの人格が目覚めました。以下【バクラ@キャロが千年リングを見つけたそうです】の簡易状態表。 【思考】 基本:このデスゲームを思いっきり楽しんだ上で相棒の世界へ帰還する。 1.かがみをサポート及び誘導して優勝に導く。 2.万丈目に対して……?(恨んではいない) 3.こなたに興味。 4.可能ならばキャロを探したいが、自分の知るキャロと同一人物かどうかは若干の疑問。 5.メビウス(ヒビノ・ミライ)は万丈目と同じくこのデスゲームにおいては邪魔な存在。 6.パラサイトマインドは使用できるのか? もしも出来るのならば……。 7.かがみが自分の知るキャロと出会った時殺しそうになったら時間を稼いで憑依してどうにかする。 【備考】 ※千年リングの制限について大まかに気付きましたが、再憑依に必要な正確な時間は分かっていません(少なくとも2時間以上必要である事は把握)。 ※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました(もしも自分の知らないキャロなら殺す事に躊躇いはありません)。 ※千年リングは『キャロとバクラが勝ち逃げを考えているようです』以降からの参戦です。 ※かがみのいる世界が参加者に関係するものが大量に存在する世界だと考えています。 ※かがみの悪い事を全て周りのせいにする考え方を気に入っていません(別に訂正する気はないようです)。 【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】健康、全身にダメージ小、若干の不安、軽い混乱 【装備】なし 【道具】支給品一式(一食分消費)、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、炭化したチンクの左腕、チンクの名簿(内容はせめて哀しみとともに参照) 【思考】 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。ルルーシュを守る。 1.かがみを止める。 2.ルルーシュに無茶はさせない、その為ならば……。 3.こなたを守る(こなたには絶対に戦闘をさせない)。 4.アーカード(名前は知らない)を警戒。レイにも注意を払う。 5.六課のメンバーとの合流とつかさの保護。しかし自分やこなたの知る彼女達かどうかについては若干の疑問。 6.もしも仲間が殺し合いに乗っていたとしたら……。 【備考】 ※質量兵器を使う事に不安を抱いています。 ※参加者達が異なる時間軸から呼び出されている可能性に気付きました。 ※仲間(特にキャロやフェイト)がご褒美に乗って殺し合いに乗るかもしれないと思っています。 ※自分の存在がルルーシュの心を傷付けているのではないかと思っています。 ※ルルーシュが自分を守る為に人殺しも辞さない及び命を捨てるつもりである事に気付いています。 でもそれを止める事は出来ないと考えています。また、自分が死ねばルルーシュは殺し合いに乗ると思っています。 ※ルルーシュの様子からデュエルアカデミアから出て行ったのはシャーリーだと判断しています。 ※自分に割り振られた調査エリアを調べ終えました。何かを見つけたか否かは後続の書き手さんにお任せします。 ※万丈目とヴァッシュが殺し合いに乗っていると思っています。 ※アンジールが味方かどうか判断しかねています。 ▼ ▼ ▼ 時として人は個人の思惑が錯綜する事で思わぬ結果を生む事がある。 またその影響で誤った道を進む者が現れたとしても責める事は出来ない。 なぜならそれを選び取ったのは他ならぬその者自身なのだから。 そして往々として人はそれが正しいものであると信じこもうとする。 だからありきたりな説得程度では戻る事など不可能だ。 坂を転がり始めた球が止まれないように。 いきなりは変われない。 【チンク@魔法少女リリカルなのはStrikerS 死亡確認】 【全体備考】 ※デュエルアカデミアはもう一度強い衝撃を与えれば倒壊する可能性が高いです。 ※チンクが持っていたデイパックと支給品一式(共に高確率で使用不能)は砲撃の影響でバラバラになりました。 ※翠屋のシュークリーム@魔法少女リリカルなのはA sは完食しました。 ※チンクの死体はバニースーツとシェルコートと一緒にベノスネーカーに喰われました。 ※スバルのはちまきと救急箱は一連の騒ぎの中で紛失・使用不能となりました。 ※ギアスの持続時間は2時間でした。 ※以下のものが【G-7 デュエルアカデミア エントランス跡付近】に散らばっています。 料理セット@オリジナル、被験者服@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪×2(フェイト(StS)、ナイブズ)、大剣・大百足(柄だけ)@魔法少女リリカルなのはsts//音が聞こえる、ルルーシュの右腕 Back いきなりは変われない(前編) 時系列順で読む Next Nightmare of Shirley(前編) 投下順で読む Next Nightmare of Shirley(前編) ルルーシュ・ランペルージ Next Nightmare of Shirley(前編) スバル・ナカジマ Next 想いだけでも/力だけでも チンク GAME OVER 泉こなた Next Nightmare of Shirley(前編) 早乙女レイ Next Nightmare of Shirley(前編) 柊かがみ Next 想いだけでも/力だけでも
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ユーノ・スクライア司書長の女難 ◆9L.gxDzakI 時は流れ、暗黒の森にも微かな明度が差していた。 フィールド全体を覆っていた夜の闇はなりを潜め、僅かに顔を出した太陽の光が広がっていく。 朝靄漂う森の中、かさり、かさりと響く音。 朝露に濡れた草木を踏みしめながら、林間を進む者達がいる。 並んで立つ2人組はどちらもが女性であり、どちらもが白い服を身に纏い、どちらもが金色の瞳を持っていた。 とはいえ共通点はそれだけで、他の部分は大幅に異なっている。 まず、頭髪。片方は瞳と同じ金色だが、もう片方はむしろそれと対を成す銀髪。 続いて、外見年齢。金髪の方は10代後半の少女だが、銀髪の方はその10代に差し掛かるか否かと言った幼児。 特に金髪の方はというと、非常に整ったプロポーションを持った、グラマラスな女性だった。 豊かに胸元の布を押し上げる双丘、一級品の彫刻のごときラインを有した肢体。 隣の幼児体型の銀髪と並べると、これは一体何の嫌がらせですか、とでも言いたくなる。 とはいったものの、もはや銀髪の方はそれも気にならなくなったらしい。 傍らでふわふわと浮遊するガジェットを見ながら、何事かを思考している。 「まずいな……レリックの反応が移動を始めた」 微かに苦々しげな響きを込めながら、銀髪――チンクが呟いた。 片方を眼帯に覆われた黄金の隻眼は、レーダーの上で動くマーカーをじっと見つめている。 「レリックの持ち主が、病院を出たということ?」 「そうなるな」 金髪――明日香の問いに、チンクは答える。 「となると、結構厄介なことになりそうね……」 言いながら、明日香が嘆息した。 もしも目標が病院に篭ったままだったならば、ある程度はスムーズに事が進んだだろう。 しかし目標は動いている。となると、少々面倒なことになってくる。 もとより病院というものは、この舞台の中でも比較的安全な場所と言えた。 バリケードを設置すれば侵入者を遮断できるし、医療品を使った治療も行える。 もっとも、自分達戦闘機人のように、通常の人体とは異なる身体を持っている者の場合は、若干勝手が違ってくるのだが。 ともかくも、病院に篭っていれば、ある程度の安全性が確保できる。 つまりそこに居続ける者は、この殺し合いに消極的である者である可能性が高い。 だが、今回のようにそこから移動する人間は違う。 わざわざ安息の地を捨ててまでフィールドをうろつく理由は2つに1つ。 積極的に殺し合いを止めようとする人間か、積極的に殺し合いに乗ろうとする人間のどちらかだ。 特に後者であった場合、非常に始末が悪くなる。不用意に接触しては、そのまま戦闘になりかねない。 (もしも戦闘になった場合、レリックの回収と姉妹との合流……どちらを優先する?) そしてこの場において、もっともチンクが問題視していたのが、それだ。 既にメッセンジャーとして、2機のガジェットを街に放った。 これをクアットロとディエチが読めば、2人は日が昇りきるまでに病院に向かうだろう。 しかしそこに、自分がいなかった場合はどうなる。 時間の推移から察するに、2人が病院に着くのは最初の放送の後となる可能性が高い。 前ならばまだよかった。無人の病院に着いたとしても、後から流れる放送に自分の名前がなければ、ひとまず生きていると確認は取れる。 だが生憎と、それは望めそうにない。情報も何もないままに、姿を現さないチンクの安否への不安に囚われることとなる。 叶うことならばレリックを後回しにし、姉妹との合流を急ぎたいとは思う。 しかし、それではそのタイムロスの間に、聖王の器が殺害されてしまうかもしれない。 脱出のための鍵を取るか、共に脱出すべき家族を取るか。 答えが出るとも到底思えない、究極の二者択一。 「……天上院、ひとまずお前の支給品を見せてくれないか? いざ戦闘となった場合のために、使える手札は把握しておきたい」 だがどちらを選ぶにせよ、まずはしておかなければならないことがあった。 時間を破ってまでレリック確保に専念するにせよ、時間を守って敵前逃亡するにせよ、武器は必要だ。 「分かったわ」 言いながら、明日香がデイパックの口を開け、中の物をあさり始めた。 無論、ケースに入れられた3つのカプセルについては伏せながら。 「一番目立つのはこれね」 最初に取り出されたのは、大仰な兜だった。 煌びやかな宝石がちりばめられた豪奢な造形に、両脇からせり出した猛牛のごとき凶悪な角。 中央には黄金の翼を生やした、コブラのレリーフが取り付けられている。 見るからに剛健な兜が、明日香の両手に抱えられていた。 「確かに防御力はありそうだが……頭だけ守ってもな」 「ええ……それにこれ、すごく重いし」 互いに険しい表情を浮かべるチンクと明日香。 これがまだ鎧だったならば、まだ防御手段としては有効だっただろう。 しかし、この支給品は兜単品。頭狙いの攻撃以外は防げない。その上一般人が扱うには凄まじく重い。 これでは装備したとしても、ただの重りにしかなり得ないだろう。 もっとも、このインパクトに見合うだけの人物が装備すれば、それなりの威圧感を与えられたのだろうが。 ともあれ少なくとも、これは明日香には見合わない物だ。現状において役立たずとなったそれを、デイパックにしまう。 そうして続いての支給品を取り出した。 「これは……籠手、か?」 外気に晒されたのは、またしても黄金色に輝く物体だった。 緑色の宝石を煌かせ、獅子の顔を象ったようなそれは、見たところ左腕に嵌めるためのガントレットらしい。 「ここに……ほら」 怪訝そうな表情を浮かべるチンクの目の前で、明日香がそこから何かを引き抜いてみせた。 現れたのは1振りのナイフ。エメラルドのごとく透き通った、見事な刀身を輝かせている。 他に機能はないようだ。要するに、これはそのナイフの鞘らしい。 「また随分と大仰な鞘だな」 もう少しデザインセンスはなかったものか、と、呆れながらチンクが言った。 ともあれその鞘――彼女らは知る由もないが、名を「ガオーブレス」と言う――を、明日香の左腕に嵌める。 頑丈な金属で作られている以上、籠手としても一応扱うことはできるだろう。 おまけに、それほど重くない。戦闘が控えていると分かった以上は、装備しない手はない。 そして、取り出された最後の1つは、 「……トランプ?」 絵札52枚に、ジョーカー2枚。ケースに収められた、54枚組1セットのトランプだった。 何の変哲もない、ただのカード。おおよそ意味があるとは思えない。要するに、ハズレ。 どうやら明日香に支給された物のうち、役に立つのはガオーブレスぐらいだったらしい。 もっとも、先の兜などは、最悪ランブルデトネイターで爆弾へ変えることもできる。ただ、それはあくまで最終手段。 考えても見てほしい。それほどまでに大きく重いものを、わざわざしんどい思いをしてまで誰が投げようか。 「まぁ、何にせよ、このレリックの持ち主と相対した時には……、!」 言いかけたチンクが、そこで言葉を切った。 「どうしたの?」 「しっ……誰かが近寄ってきている」 首を傾げた明日香に向かって囁くと、木陰に隠れるように指示を出した。 戦闘機人の鋭敏な聴覚は、唯人たる明日香には捉えられないような音でさえも聞き分ける。 彼方から迫ってくる車輪の音。すなわち、何者かの気配。 可能性は薄いだろうが、あの緑の鎧の男かもしれないのだ。明日香を庇いながら戦える相手ではないことは、先の戦闘で重々承知している。 やがて音量は彼女の耳にもはっきり聞き取れるようになり、そのまま通り過ぎた。 ぶぅぅぅぅぅん。エンジン音が疾走し、彼女らのすぐ傍を走り抜ける。 一瞬しか見ることはできなかったが、確かローラーブーツを履いた少女だったか。 ちょうどチンクと外見年齢は同じくらい。紫の髪に、赤い瞳が特徴的だった。 感情に乏しい表情で、コートをたなびかせながら脇を通過していき―― 「――ってちょっと待ったぁぁぁぁぁ!」 思いっきり見覚えのある人間を、チンクは身を乗り出して呼び止めた。 ◆ 自分は何をやっているのだろう。 心底、ユーノ・スクライアは呆れ返っていた。 自分の保身のために人間の男としての尊厳を捨て、彼は1匹の雄フェレットとしての道を選んだ。 そもそもそれが、自分が小さくなれば首輪も外れるだろうという、馬鹿馬鹿しい判断ミスに端を発している辺りが情けない。 おかげで自分は、人間として行動することを許されなくなった。少なくとも、この少女と同行している限り。 この身体では支給品を扱うこともできないし、仲間との合流にも支障をきたす。何より、獣として振る舞うのは居心地が悪い。 そしてそのユーノだが――今は所在なさげに、小さな顔を真っ赤に染めていた。 現在地、幼女の胸元。扇情的なバニースーツと、暖かな体温に挟まれている。 確かルーテシアと名乗ったか。この少女は現在の状況に、微塵も羞恥心を抱いていないようだ。 これだから、獣というのはやってられない。人間じゃないからということで、すぐにこんな風に扱われる。 自分はれっきとした男なのに。男なりに恥ずかしくてたまらないのに。 どぎまぎしつつも、しかし一切の抵抗もできないまま、ユーノは疾走するルーテシアの胸に身を預けていた。 ……いやいやちょっと待て。自分は一体何をどぎまぎしているんだ。 いかに女性とはいえ、この子はまだ幼い女の子じゃないか。 これが成熟したセクシーな女性ならまだしも、何を自分は子供相手にこんなに過剰反応しているんだ。 まさかなのはと初めて会った、ガキの頃の自分じゃあるまいし。変態嗜好のロリコンでもあるまいし。 相手は子供。慌てることはない。自分にそっち方面の趣味は絶対ない! そんな風にして、必死に平静を保とうとする。 「――ってちょっと待ったぁぁぁぁぁ!」 そして次の瞬間、それは唐突に打ち切られた。 「え?」 背後から声がする。自分達を呼び止める叫びが響く。 ユーノにとっては聞き覚えのない声。しかし、ルーテシアには覚えがあったのだろう。 反射的にマッハキャリバーにブレーキをかけると、数秒の思考の後、踵を返して再度加速する。 緩やかな速度で後退すると、そこには1人の銀髪の幼女と、1人の金髪の女性の姿があった。 「ご無事でしたか、ルーテシアお嬢様」 歩み寄ったのは銀髪の方で、発した声音も先ほどの制止と同じ。 片方しか開いていない金色の瞳に安堵の色を映し、外見の割には幾分か落ち着いた口調で言った。 「チンク」 いつも通りのぽつりと呟くような声で、ルーテシアがその名を呼ぶ。 チンク、という名前には聞き覚えがあった。ルーテシアと面識のある人間として、紹介された名前だったはずだ。 「知り合いなの?」 「まぁ、そんなところだ」 金髪の明日香の問いかけに答えたことからも、その様子が伺えた。 (……うん? ちょっと待てよ?) と、その時、不意に浮かんだ疑問が1つ。 ルーテシアの仲間は見つかった。彼女を「お嬢様」と呼ぶ隻眼の幼女が。 (で……この人は一体何?) このチンクという少女は一体何者で、一体ルーテシアとどういった関係にあるというのだ。そもそもルーテシアは何者なのだ。 普通に考えるならば、それこそ良家のお嬢様で通るだろう。 旧時代の貴族の家系。かの有名なモンディアル家のような富豪の令嬢。あるいは管理局高官の娘とも。 異様に幼いチンクの容姿も、使用人の娘だとか、乳兄弟だとかといった線で説明はつく。 そう。普通ならば。 だがこの少女の容姿の何としたこと。片目に眼帯をした少女など、真っ当な家庭ではまず見られない。 ましてや、それが医療用の白いものでなく、レザーでできたいかにも悪そうな黒眼帯なら尚更だ。 こんな見るからに怪しい娘に「お嬢様」と呼ばれる少女が、普通の良家の子供なわけがない。 更に引っ掛かるのは、例の「アジト」という言い回し。 本当なら信じてやりたい。こんな想像はしたくない。でもそう思わずにはいられない。 こうした情報から想定しうるルーテシアの身分を、不幸にもユーノは知っていた。 すなわち――マフィアの娘。 ヤクザのボスの子。 極道の世界のお嬢様。 ドコノクミノモンジャワレスマキニシテシズメタルゾコラ、とか、そういう世界の人。 背筋が一気に粟立った。全身の毛皮が逆立った。 ひょっとすると自分は、とんでもない子を見つけてしまったのではなかろうか。 まして自分が人間であるとばれ、こんな破廉恥な行いに出たと知れた時には―― 「――それでお嬢様、その動物は?」 がちがちと震え上がるユーノの思考を、チンクの問いが遮った。 「ユーノっていう……喋るイタチの子」 「……フェレットです……」 本当はフェレットですらない。人間です。それも貴方よりも大分年上なんです。 そうだと気付いてほしい。 ああいや、微妙。そうは気付いてほしくないかもしれない。少なくとも、この極道っぽい子にはバレない方がいい。 簀巻き、指詰め、ロシアンルーレット。想定されるありとあらゆる「けじめのつけ方」。 どれもこれも、できれば味わいたくない。最も、チンクは極道の人間ではないのだが。 「へぇ……こんな子まで参加させられてるのね」 ルーテシアの胸元のユーノを覗き込みながら、明日香が言った。 周囲が周囲なだけに、彼女の抜群のプロポーションはよく目立つ。 所在なさげにユーノは視線を逸らした。 どうもここに来てから、自分はこんな目にばかり遭っているような気がする。 この殺し合いから脱出できたら、しばらく女の子とは距離を取りたい。割と本気でそんなことを思っていた。 「それでお嬢様は、どちらに向かわれるおつもりで?」 「ドクターのアジトに、ゼストやチンク達を捜しに……」 「我々もそこから来たのですが、特に他には誰も……」 ユーノがどぎまぎしてたり肝を冷やしている間にも、ルーテシアとチンクは話を進めていく。 どうもこの2人もそのアジトという場所を目指し、そこで何らかの収穫があってここまで来たらしい。 それがチンクの横でふよふよと浮いている、楕円型の機械。ガジェットとか言っていたか。 それにはレーダーがついていて、レリックという、ここからの脱出のために使える物を探知できるのだそうだ。 そして今、それが反応を示している。すなわち、脱出の鍵が見える範囲にある。 「あとは聖王の器……それを捜すために、既に姉妹達にも、アジトから連絡を入れてあります。とはいえ、こちらから一方的にですが」 「ちょっと待って! そんなの聞いてないわよ」 「ああ、すまなかった。言うのが遅れていた」 隠し事をされた明日香の憤慨を、チンクがさらりと流す。どうやらこの2人、あまり友好的でもないらしい。 「いかに貴方と言えど、ガリューや地雷王なしでは危険すぎる……我々と共に病院へ向かい、姉妹の保護を受けてはもらえないでしょうか」 最後に、チンクがルーテシアへと懇願した。 これはユーノにとっては知る由もないが、チンクは彼女の存在によって、ようやく決心をつけることができたのだ。 脱出の鍵となるレリックと器を探すのが先か、共に脱出すべきクアットロとディエチと合流するのが先か。 彼女が選んだのは、後者。 強力な召喚術の使い手たるルーテシアだったが、この場ではどうやら下僕達を呼ぶことはできないらしい。 すなわち、召喚こそを戦闘の肝とする召喚士にとっては、あまりにも危険すぎる状況。 彼女はスカリエッティの大事な協力者だ。家族同様、無事に連れ帰らなければならない。 そのためにも、今レリックを持っている相手との戦闘に巻き込むことはできなかった。 だから、病院に集まるであろう姉妹にルーテシアを預ける。必然的に、朝までの集合の約束を守ることもできる。 「うん、分かった」 ゆっくりとルーテシアが首を縦に振ったことで、この場の協力関係は確定した。 ルーテシア、ユーノ、チンク、明日香。以上3名と1匹(厳密には4名)で病院を目指す。 「じゃあ、行きましょうか」 女性陣の中でも最年長と思われる明日香が、率先して先へと進む。 一方、ルーテシアの胸に抱えられたユーノはというと、何やら難しそうな表情を浮かべていた。 どうにも引っかかるのだ。ルーテシアの反応が。 (さっきの、レリックって言葉を聞いた時……この子の目の色が変わった) 今までぼんやりとしていた彼女の赤い瞳に、ほんの少しだけ感情が見えた。鋭さが増した。 そのレリックという何かに対して、彼女が強い執着を見せたのだ。 つまりそれは元々ルーテシアにとって、とても重要な意味を持つものであったのだろう。 ではそのレリックというのは、一体何なのだろうか。 ルーテシアが求めていたもの。それでいて、この殺し合いからの脱出さえも可能とするもの。 であればその力を、彼女は一体何のために使おうとしているのだろう。レリックの確保とはあくまで手段であり、目的ではないはずだ。 一体彼女は―― 「うわっ!?」 瞬間、ぐらり、と。 身体が揺れた。ユーノだけではない。ルーテシアの身体も。 すとんと足場の高度が落ち、衣服の隙間からフェレットの身体が落下する。 足並みをチンク達と合わせるべく、ルーテシアがマッハキャリバーを解除したのだろう。 結果、ローラーの分の身長が縮まり、それによって振動が生じたのだ。 それによって地面に投げ出されたユーノは、そのままチンクの足元へと落下する。 「いてて……」 小さな呻きを漏らしながら、毛皮についた土埃をふるふると払った。 そして、視線を戻す。 ちょうどその先にはチンクの身体。衣服の裾から覗くもの。 そこにあったのは、 「――ッッッ!!?」 「……そういえば、貴方……下着つけてなかったわね」 きょとんとしたチンクと動揺するユーノを見て、明日香がため息をついた。 【1日目 早朝】 【現在地 E-9】 【ユーノ・スクライア@L change the world after story】 【状態】健康、幸せ?、混乱、フェレットに変身中 【装備】なし 【道具】なし 【思考】 基本 なのはの支えになる、ジュエルシードの回収 1.ルーテシア、チンク、明日香と共に病院を目指す 2.ルーテシアの保護 3.くぁwせdrftgyふじこ!? 4.Lや仲間との合流 5.首輪の解除 【備考】 ※JS事件に関連したことは何も知りません ※プレシアの存在に少し疑問を持っています ※ルーテシアがマフィアや極道の娘だと思っています 【ルーテシア・アルピーノ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】健康 【装備】バニースーツ@魔法少女リリカルなのはStrikers-砂塵の鎖― 、マッハキャリバー(待機形態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS シェルコート@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【道具】支給品一式×2、ジュエルシード@魔法少女リリカルなのは、バリアのマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、夜天の書@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【思考】 基本 ナンバーⅩⅠのレリックの捜索 1.ユーノ、チンク、明日香と共に病院を目指す 2.仲間との合流 3.ジュエルシードの回収を手伝う 【備考】 ※参戦時期はゆりかご決戦前です ※ユーノが人間であることを知りません ※殺し合いに全く興味がありません 【天上院明日香@リリカル遊戯王GX】 【状態】健康 【装備】ガオーブレス@フェレットゾンダー出現! 【道具】支給品一式、ラオウの兜@ティアナが世紀末にやって来たようです、 トバルカインのトランプ@NANOSING、ゾナハカプセル@なのは×錬金 【思考】 基本 殺し合いには乗らない。仲間達と合流し、プレシアを打倒する。 1.ユーノ、ルーテシア、チンクと共に病院を目指す 2.チンクっていうこの子は……信用し切れない 3.チンクとは協力するけど、何があっても対応出来る様に隙は見せない様にしよう 4.ゾナハ……って何? 5.全くもう、この子は…… 【備考】 ※転移魔法が制限されている可能性に気付きました ※万丈目にバクラが取り憑いている事を知りません ※チンクの「万丈目に襲われた」という情報は、嘘か誤りだと思っています ※ガオーブレスのギャレオンを呼び出す機能は封印されています ※トバルカインのトランプが武器として使えることに気付いていません 【チンク@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】健康 【装備】被験者服@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【道具】支給品一式、ガジェットドローンⅠ型@魔法少女リリカルなのはStrikerS、工具セット@オリジナル、 料理セット@オリジナル、翠屋のシュークリーム@魔法少女リリカルなのはA s 【思考】 基本 姉妹と一緒に元の世界に帰る 1.ユーノ、ルーテシア、明日香を伴い、病院に向かって医療品を集め、姉妹との合流を図る 2.姉妹と合流した後に、レリックを持っている人間を追う 3.姉妹に危険が及ぶ存在の排除、及び聖王の器と“聖王のゆりかご”の確保 4.こいつ、獣のくせして何を驚いてるんだ? 5.クアットロと合流し、制限の確認、出来れば首輪の解除 5.Fの遺産とタイプ・ゼロの捕獲 6.天上院を手駒とする 【備考】 ※制限に気付きました ※高町なのは(A s)がクローンであると認識しました ※この会場にフェイト、八神はやてのクローンがいると認識しました ※ベルデに変身した万丈目(バクラ)を危険と認識しました 【チーム:ユーノとハーレム】 【共通思考】 基本 仲間達を集め、聖王のゆりかごで殺し合いから脱出を図る 1.病院に向かい、クアットロ、ディエチと合流する 2.その後は戦闘可能な面々でヴィヴィオとレリックを探す 【備考】 ※それぞれが違う世界から呼ばれたということに気づいていません。 Back やわらかな温もりに瞳閉じ 時系列順で読む Next 戦いの嵐、再びなん? Back やわらかな温もりに瞳閉じ 投下順で読む Next 敵か味方か? Back 遠い声、遠い出会い ユーノ・スクライア Next Reconquista(前編) Back 遠い声、遠い出会い ルーテシア・アルピーノ Next Reconquista(前編) Back されど嘘吐きは救済を望む(後編) チンク Next Reconquista(前編) Back されど嘘吐きは救済を望む(後編) 天上院明日香 Next Reconquista(前編)
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思念通話 ミッドチルダ式の「念話」に相当する、ベルカ式の遠隔精神通話。術式は違うがシステムはほぼ同様で、異なる術式間でも通信は可能。 騎士甲冑 騎士が身に纏う、魔力で生成する防護鎧。 シグナムらの甲冑ははやてのイメージによるもので、それぞれの役割や戦闘スタイルに合わせて形状を、 髪や瞳の色に合わせて配色を、それぞれ丁寧に考えてデザインしたようである。
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仮面ライダーリリカル電王sts第三話「ソレより僕に釣られてみる。」 イマジンのことなど、様々な事を聞かれた、良太郎とハナは、良太郎は、隊舎の一室で、ハナは、スバル達の部屋にしばらく泊まることになった。 その訳は、簡単だ。 元の世界に戻れないということだ。(ちなみにハナが何故泊まってるかというとスバルに誘われたから) そして、翌日の朝のことである。 食堂にいつも以上に、人(それも女性)がいたのだ。(まぁ6課は元々女性が多いのだが)そして、その中心には、何故か、眼鏡をかけた、エリオが女性達と楽しそうに話していた。 エリオは、普段からは考えられない口調で喋っていた。 「君、可愛いね。魅力で溢れてるよ。」 そう言うとニコッとそのての女性がいたら、一発で卒倒するような笑みを振り撒いていた。さらにはキャロの方をむくと 「キャロ、今日の君は一段と可愛い。まるで輝きに満ちているみたいだ。」 「えっ、そ、そうかな。」 言われたキャロは、顔を真っ赤にして答えた。 しかしエリオはその時呟いた。 「ほらね。簡単でしょ。自分の利点は最大限に使わなきゃ。魚に、餌を取られるだけさ。」 「エリオ君!そろそろ、朝練の時間だよ。」いつもと違い面倒くさそうに 「分かった。今、いくよ。やれやれ、面倒だな。」 良太郎が見てるとなのはが 「良太郎君も、ハナちゃんも、模擬戦を見学したらどうかな。」 「ハイッじゃあ、ぜひ。」 しかし、今日の模擬戦はいつもと違った。 特に、エリオである。「ふぅ、僕は、モモと違って戦うのは好きじゃないんだけど、仕方ないか。じゃ、いくよ。」 ストラーダをガジェットに向けて連続で突き出したかと思うと、広いリーチを活かし振り回し、更に、それに次々と蹴りを叩き込むという、いつもとは、違うスタイルだった。 最後のガジェットが、接近してくると、ストラーダを投げて突き刺したかと思えば亀甲状の網が相手を絡みとり、動きを封じた後、足に電撃をためて飛び蹴りをぶつけた。 「終わりっと。さて、子猫ちゃん達の相手でも…、うわっ。」 喋り終わる前に、エリオへと網が投げられた。 そして、そこには、憤怒の形相のハナがいたのである。 「ハナちゃん!?」 フェイトが驚くなか、ハナはエリオへとズンズンと音が鳴りそうな勢いで詰め寄った。 「ちょっと、ウラタロスどういうつもりよ!」 「どういうって、ただ女の子を口説いただけさ。」 「ウラタロス?」 皆が、疑問に思っているとスバルに突如モモタロスが憑き、エリオに怒鳴りちらした。 「おい、亀、どういうつもりだ!何で、こんな所に居やがる!」 「失礼だな。僕も先輩と同じで良太郎を探しに来たのさ。」 ウラタロスとは何者かそして、良太郎とのつながりは、次々と集まっていくイマジン達。良太郎、そして機動6課の運命は、次回を、待て! 次回予告 Mスバル「お前らが出て来ていろいろごちゃごちゃになってきたな。」 Uエリオ「先輩気にしすぎですよ。ソレより次回仮面ライダーリリカル電王sts第四話「蒼き仮面の戦士」ヨロシク!」 はやて「最近、うちの出番がなくなってるような。」 シャ「はやてちゃんはまだ、マシよ。私達なんか。」 リイ「一回も出番ないんですよ。」 シャ・はや・リイ「出番くださ~い!ヘボ作者~!」 戻る 目次へ 次へ
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仮面ライダーリリカル電王sts第九話 「ドラゴンズ・ダンス」 二匹の龍がオウルイマジンRに迫るなか、倒れているティアナに迫る影。名はオウルイマジンL、つまり同型の二号実験体である。 「見てろよ、電王。」 そしてオウルイマジンLは突如、ティアナを無理矢理掴むと大声で叫んだ。 「こいつがどうなってもいいのか!」 「ティア!」 「電王、これで手を出せまい?」 余裕の笑みを浮かべながら喋るオウルイマジンL。しかし二人共まるで何かに気付くと微笑んだ。 「何がおかしい?」 「あなたは、何処を見てるの?勝ち誇るなんて馬鹿げてる…」 「ふ、フザケンナァ!」 『sonic move』 「な、しまった!」 そう言って右手のガトリングガンを向けるオウルイマジンL。しかしその時、蒼き閃光がその場を駆けティアナを助け出した。 その閃光の正体は赤き髪に青のメッシュを入れ、眼鏡を掛けた少年。 「全く、何で僕が…。ま、楽だったけど」 名はエリオ。いや、今は、Uエリオと言うべきだろう。 「仕方ないなぁ。なのはちゃん達はそっちを片付けてよ。僕がこっちをやるから」 「分かった…」 Uエリオは勝手に宣言するとオウルイマジンLの前に立ち塞がった。 そしてクルリと一回転して一言。 「お前、僕に釣られてみる?」 「ざけんなぁ!」 こうして、二つの戦いの火蓋が切って落とされた。 《UエリオVSオウルイマジンL》 UエリオはオウルイマジンLを持ち前のスピードで撹乱していたが今一つ攻めきれない。 何故か?それは簡単だ。エリオは元々スピード型の為、防御力はそこまで高くない。その為相手が連射型の武器を使っている場合、接近が困難となるのだ。 つまり相手がガトリングという点と防御力さえあればいいのだ。 「やはり、今使える防御じゃ足りない…。エリオ、アレ使うよ」 『でもアレはまだ搭載されたばかりでテストも…』 「でも、やるしかないでしょ?それに上手くやればテストの代わりになるし」 『そうですね、やりましょう!』 エリオと話をしたあとUエリオは立ち止まり、魔力を集中させた。 「ハァァァッ、ストラーダ!」 『aurasystem set up』 その音声と共に放たれるは蒼きフリーエネルギー。それはアーマーへと変換、装着される。 オーラシステム、それはすなわち、電王のフォームチェンジの魔導師版フリーエネルギーを肉体の強化及びアーマーとして使用するというものである。 「さあ、いくよ!一度釣り上げかけた獲物は逃がしたくないんでね」 その声と共に腰につけられた四つのパーツを組み立て、長いロッドにする。それはデンガッシャーに酷似していた。名はオーラロッド。 Uエリオはロッドとストラーダを巧みに使い、相手にガトリングを撃たせない。 それは槍とロッドの蒼き二重奏。 右のロッドを避ければ左のストラーダが裂き、左のストラーダを避ければ右のロッドが突く。 一方的に攻めたてるコンビネーションであった。 一気加勢に攻めたて距離を少し取ると腰からパスの様な物を取り出す。すると腰にベルトの様な物がセットされる。 ベルトにパスをセタッチさせると電子音が響いた。 『fullcharge』 音声と共にロッドにチャージされるフリーエネルギー。 「ハァァァッ!」 Uエリオはフリーエネルギーがチャージされたロッドを振りかぶると気合いと共に投げた。 ロッドはオウルイマジンLを貫くと亀甲の網で動きを封じる。 そして、Uエリオはストラーダを構え、自身最速の魔法ソニックムーブを使用しオウルイマジンLへと突撃、そのまま激突する寸前で地面にストラーダを突き刺した。 超高速からの急激な減速。それにより発生する暴力的なまでのエネルギー。 それを全て自らの身体にのせ、UエリオはオウルイマジンLへと回し蹴りを放つ。 解放されたエネルギーはオウルイマジンLを爆散させた。 「フゥッ、終わった。さて、後はティアナちゃんを届けるだけか」 そう言ってティアナを抱き抱え医務室へと運ぶUエリオであった。 《なのは 電王GUNformVSオウルイマジンR》 さて、白き魔王と紫の狂人の戦いは一方的に戦いであった。 オウルイマジンRは右手をライフルからマシンガンに切り替え、乱射する。 しかし、掠めさえもしない。 電王は、ダンスのステップを踏むように飛んでくる弾丸を全弾かわしていく。 それは、まるで楽しむように…。 それでいながらさながら暴れ狂う龍のごとく無数のエネルギー弾を叩き込んでいた。 一方のなのははというと空中にて乱射された弾丸を天使が舞うかのようにかわしていく。 しかし、ひとたび攻撃に転じればたちまち悪魔の様な砲撃を放つ。 それは天地を支配する魔王のようで天を翔ける龍のごとく。 二匹の龍はもはや暴龍の如く暴れ狂い、オウルイマジンRを破壊しようとしていた。 「クソッ、クソッ、クソォォ!お前らはなんなんだ?」 「あなたは許されない。だから質問する権利はないから…」 「お前は僕達を怒らせた…。だからここで倒す!」 「だから何…ウグッ、ウググッ」 「うるさい…」 オウルイマジンRが喋ろうとした瞬間、桜色のバインドで口が塞がり喋ることが出来なくなった。 そのバインドはなのはが睨み付けながら発動させていた物。 そして、ここからが、怒り狂う暴龍のステージ。 「限定解除…」 『exceed mode』 全力のなのはの魔力のオーラはまさに白き魔王。 「許さないよ。絶対に」 怒り狂う電王の放つオーラはまさしく狂人。 二人はユラリとオウルイマジンRに近づく。 そして、なのはは幾重にもバインドを張り巡らす。 「いくよ、なのはお姉ちゃん…」 「うん、分かってる…。レイジングハート、カートリッジ全弾ロード…」 『cartridge load』 鳴り響くコッキング音。増大する膨大な魔力。そして精製されるは50発以上の魔力弾! そして、その魔法は放たれる。 『クロス…ファイヤァァーシュゥゥトォォ』 50発以上の魔力弾は全てオウルイマジンRへと一直線に向かっていた。 何とか避けようと動きまわる姿はまるで踊り狂う人形。 レイジングハートにマガジンをセットしたなのはとパスを取り出した電王は二人同時に己の得物をつきつけた。 「これで終わり…」 「決めるから…」 「ウンッウグッ!」 『最後いくよ、いい?』 「ウググ、や、め…」 『答えは聞いてない…』 「レイジングハート…」 『cartridge load』 「ディバィン…」 『fullcharge』 収束される魔力。セタッチされるパス。激しくうねる怒りのオーラ。それは即ち死刑宣告! 「バスタァァァッ!」 「いっけぇぇぇ!」 放たれる桜色の奔流と紫の光弾は一つとなり破壊の奔流とかす。 「ウアァァァッ!」 そして叫びをあげながら、オウルイマジンRを灰塵ときした。 「終わったね…」 「うん…」 「ティアナのことも気になるし、帰ろっか!」 「うん、分かったよ。なのはお姉ちゃん!」 戦い終わり、BJを解除したなのはと変身を解除したR良太郎は帰路へとついた。 夕日をバックに歩くその姿はまるで本当の姉弟のようであった。 「へぇ、私が倒れてる間にそんなことが…」 「うん、大変だったんだからね」 ここは医務室。ティアナはここで眠っていた。 傷が思ったより浅かったことと早めに治療したことが重なり大事にはいたらなかった。 そしてティアナはたった今、目を覚ましたのだ。 「でも、ティアナさん傷が浅くてよかったですね」 「ホント。ティアが倒れた時はどうしようって思ったんだよ」 スバルは本当に心配してたらしく、倒れた後、運んだ後もずっとついていた。 「もう、大丈夫だから」 「でもぉ」 「でもじゃない」 「本当二人は仲がいいね!」 二人が話していると、Uエリオが二人の様子を見て呟いた。 「でも凄かったなぁ、なのはちゃん」 「へぇ~、どんな風に凄かったの?」 「うん、なんていうのかなぁ。怖い?」 「怖い?」 「おい、亀公!珍しく気があうな」 ティアナとUエリオが話しているとMスバルが話しに入って来た。 「あれは、怖いよ。もしかしたら怒ったハナちゃんより怖いかも」 「あ、あぁ…、確かにな…」 「聞いた話何だけど、なのはちゃん、『白い悪魔』とか『魔王』とか呼ばれてるらしいよ」 「マジかよ…」 「でもよ、あれ魔王なんてもんか?そうだな『破壊神』とかどうだ!」 「先輩にしては格好いいね」 「だろ!」 『二人共、いい加減にして下さい』 『そうだよ!なのはさんは天使みたいな人何だから!』 「いや、それもどうかと思うぜ…」 「二人共、まったく…」 二人の話を聞き、ため息をつく、ティアナ。 ここで仮定しよう。 もし、この話をしなかったら… もし、もう少し時間をずらしていたら… この後、二人に振りかかる地獄はなかっただろう…。 しかし、不幸なことに偶然は重なり、二人の後ろには地獄が迫っていた…。 二人が話している途中、ティアナはふと二人の後ろを見た。 そして、目があった。恐怖の根源と…。 「あ、あああ…」 「どうしたの?ティアナちゃん」 「どうした、傷が痛いのか?」 「ふ、二人共。う、後ろ…」 「後ろ?」 「何がある…、あ、ああ…」 「先輩!?何が…、嘘、な、なのはちゃん!?」 二人の後ろ、そこには膨大な魔力と怒気を剥き出しにしながら、満面の笑みを向けている高町なのはの姿があった…。 「魔王?悪魔?あげくのはてには破壊神?」 「やべぇ!」 「もしかして、僕達危険なんじゃあ…」 「ティアナ。少し、こっちに来て…」 「は、はい!」 「お、おい、見捨てんのかよ!?」 「自業自得…」 ティアナはなのはの後ろへと行って、呟く。 それを確認し、いつの間にかセットアップしたレイジングハートをMスバルとUエリオに向けた。 「二人共、覚悟はいい?」 「ま、待てよ」 「答えは聞いてない。少し、頭冷やそうか…」 『ギャアァァァッ!』 その日、機動6課に二人の悲鳴と爆音が轟いた。 さて、これにて二匹の龍の闘争は終わり、機動6課に再び平穏が訪れる。 次回はそんな休日ともう一人の仮面の戦士の物語。 次回予告 ハナ「度重なるイマジンの襲撃。疲弊していく機動6課」 なのは「でも、そんな日々に訪れた一日限りの休日」 ハナ「そして、暗躍するイマジンの影と一人の少女」 なのは「二つは新たな出会いを呼ぶ」 ハナ なのは『次回仮面ライダーリリカル電王sts第十話「機動6課のある休日《前編》」お楽しみに』 Mスバル Uエリオ『二大魔王揃い踏み…』 なのは ハナ『何か言った?』 Mスバル Uエリオ『ヒッ!』 なのは ハナ『少し、頭冷やそうか…』 Mスバル Uエリオ『ギャアァァ!』 戻る 目次へ 次へ
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絶望の罪人~大災害、そして終わらない宴~ ◆jiPkKgmerY 「ふはっはっはは……は、はははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」 破壊の権化が占領する空に最強の吸血鬼が吸い込まれていく。 その破壊を待ち望んでいたかのように両手を広げ、明確な死へと向かって、距離を詰めていく。 「――だがな」 不死王は不意に動いた。 先程までの爆笑は一瞬で鳴りを潜め、虚しげな笑みを浮かべたまま、男は右腕の十字架を構える。 縦棒の短い方を、近くに飛ぶ瓦礫へと向けた。 「貴様に殺される訳にはいかんのだよ」 まるでロケットランチャーを発射するかのように十字架を構え姿勢で、男は呟く。 ――そして十字架から黒い流星が発射された。 流星は狙いすました通りに瓦礫に直撃、周囲に真紅の花を咲かせ烈風を巻き起こす。 その真紅に全身を舐められながらも不死王は烈風に弾き飛ばされ、地面へと落下、易々と着地した。 同時に破壊の権化が急速に空気の中へ溶けていき、消滅。 不死王は死の光球からの脱出に成功した。 「化物を倒すのはいつだって人間だ……人間でなくてはいけないのだ!」 その言葉は誰に向けられたものか。 男、アーカードは破壊が消え再び広がった青空へと叫んだ。 「……さて大分飛ばされたな」 瓦礫の山と化した市街地を見渡す。 周りにあの素晴らしい闘争を与えてくれた人間達は居なかった。 だが、アンデルセンやあの剣士があれで死ぬとは思えない。 という事はあの場所に再び集結する可能性もあるか? 「……まぁ良い、時間は山のようにある。何をしても無駄ということは無いだろう」 アーカードは十字架を片手に握り空を見上げる。 十字架―――これにはガトリングとランチャーが備え付けられている。 このドクロの持ち手がトリガー、回転させる事により切り替えを行うらしい。 気付いたのは先の剣士との戦いの直前。 十字架を包む小汚い布を取り去った時だ。 明らかに通常の十字架とは違った風貌、少し観察するだけで気付いた。 早速、光球の脱出に利用させてもらったが、成る程、凄まじいまでの破壊力を有している。 「だがこれでは面白くないな……」 吸血鬼さえも殺しきるであろう兵装。 人間相手に振るうにはあまりに過ぎた兵器。 だからこそ、アーカードは先のセフィロスとの戦闘でパニッシャーの真の力を使わなかった。 それでは余りにつまらないからだ。 それでなくともアーカードは異常な力を持っている。 力を出し惜しみするつもりでは無いが、この武器は強すぎる。 アーカードの身体能力でパニッシャーを扱えば、それこそ誰が相手であろうと戦闘を楽しむ暇すら与えられないだろう。 だからこそアーカードはパニッシャーを銃器としては使用しなかった。 使うとしたら、それは更なる強者が現れた時のみ。 セフィロスやアンデルセンのような、いやそれすらも越えた強者。 それは更なる力を発揮した彼等自身かもしれないし、また全然関係のない別の人物かもしれない。 アーカードはパニッシャーから延びた紐を肩に掛け、空を見上げる。 彼の大嫌いな太陽がそこにはあった。 「十字架の武器とはな……この武器の持ち主は吸血鬼ハンターか?」 吸血鬼ハンター――自身の口から出た言葉にアーカードは自分を従えるマスターの姿を思い出した。 ――主人、お前は今どこで何をしている? お前が命じない限り私は止まらない。 ヘルシングの狗としてではなく、ただの吸血鬼として人間達へ平等に死をばらまく。 お前の事だ。誰かと手を組み主催者の打倒を目指しているのだろう。 だが、どうする? お前が俺を止める前に全てを滅ぼしてしまったら? お前の仲間の仲間を殺してしまったら? お前はどうするのだ? 迅速に行動しろ、インテグラ。 ヘルシング局長として。 奴の血を引く者として。 我が主人として。 この遊戯を打ち破ってみせろ。 「期待して待っているぞ」 一笑と共に吸血鬼は歩き始める。 十字架を持ち、日光に照らされてもその吸血鬼は眉一つ動かすことはない。 彼を止めるのは、化け物か、人間か、それとも主か。 吸血鬼は崩壊の市街地を闊歩する。 果てぬ夢はまだ終わらない。 【1日目 朝】 【現在地 G-5】 【アーカード@NANOSING】 【状況】疲労(中) 【装備】パニッシャー(砲弾残弾100%/ロケットランチャー残弾80%)@リリカルニコラス 【道具】首輪(アグモン)、拡声器@現実、基本支給品一式 【思考】 基本:インテグラルを探しつつ、闘争を楽しむ。 1.戦場に戻る。 2.Devil May Cryにて、自分に闘争を挑む人間が来るのを待つ。 3.アンデルセンとスバル達に期待。 【備考】 ※スバルがNANOSINGのスバルと別人であると気付きました。 ※パニッシャーが銃器だという事に気付きました。が、相当な強者にしか使用するつもりはありません。 ※放送を聞き逃しました。 ■ 飛行と言うには余りに無理矢理な方法で、アンデルセンは空を飛んでいた。 着地法など考えていない、というか思い付かない。 この噴出に掛けたカートリッジ一発分の魔力が尽きるまで、アンデルセンはグルグルと回りながら待つことしか出来ないかった。 グラーフアイゼンのラケーテンフォルムによるロケット噴射。 それがアンデルセンの考え付いたエンジェルアームからの脱出方法であった。 宙に巻き上げられてるなか、驚愕に頭を沸騰させながらも迅速にカートリッジを装填し、直ぐにリロード。 ラケーテンフォルムへと移行させ、その推進力で脱出する。 操作不可、カートリッジの消費、不明な着地点、数々の難点があったが、あの時点でアーカードが思い付いた脱出方法はコレしかなかった。 もう一分近く、高速で回り続けている。 流石のアンデルセンと言えど、そろそろ停止を願いたいところであった。 そして空の旅は不意に終わりを告げる。 アンデルセンの行く手に破壊を免れた一棟のビルが現れたのだ。 アンデルセンには避けようが無い。 ただ片手で顔を覆い、衝撃に耐える事のみ。 数瞬後、轟音と共にビルへと突っ込むアンデルセン。激突した箇所がガラス窓だったのは幸運と言ったところか。 「チッ、ここは何処だ……」 ガラスにより負った切り傷の治癒はもう始まっていた。 アンデルセンは立ち上がり元の姿に戻ったグラーフアイゼンを拾い上げる。 部屋を見渡すが人の気配は無し。 アンデルセンは近くに置いてあった椅子を寄せその上に腰を下ろすと、デイバックから水を取り出し喉を潤した。 次いでカラー印刷された地図を取り出し、目を通す。 「駄目だな、目印になる建物がねぇ」 だが数秒で地図を仕舞う羽目になる。 地上本部など、目印となる建築物が見えない状況で位置を把握できる程アンデルセンは測量に詳しくない。 「さて、どうする……」 位置確認を諦めたアンデルセンは、椅子を揺らしながら思考を巡らす。 現在の第一目標はアーカードの討伐。 だが、今から先程の場所に向かうにしても瓦礫だらけとなり目印が一つもない状況で辿り着ける気がしない。 ならば先の光弾が発射された方に向かうか。 あの光弾は南東から飛んできた。 おそらく化け物の一人が狙い撃ったのだろう。 異常な破壊力、異常な射程、おそらくはアーカードにも迫る化け物の仕業。 コイツから狩るのもまた一興。 その次いでにはぐれたヴァッシュの探索でもすれば良い。 「待ってろよ、化物(フリークス)共」 光弾を撃った人物、アーカード、ミレニアム――――この場には塵に返すべき塵が多すぎる。 いや、これ程の量の化物共を一層できるのだ、寧ろ好機と受け取った方がいい。 これもまた神の導き。憐れな狂信者はそれに従うのみだ。 「Amen」 数分にも満たない休息の後、アンデルセンは日に満ちた市街地へと足を踏み出した。 彼の目には僅かな迷いも存在しない。 神のため、法皇のため、何より自分が自分であるため、アンデルセンは進み続ける。 【1日目 朝】 【現在地 G-6】 【アレクサンド・アンデルセン@NANOSHING】 【状態】疲労(中) 【装備】グラーフアイゼン(0/3)@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【道具】各種弾薬(各30発ずつ)、カートリッジ(23/30)、レイトウ本マグロ@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER 杖@ゲッターロボ昴、基本支給品一式。 【思考】 基本:この場から脱出する。売女(プレシア)の言う通りにするつもりはない。 1.南に向かい、光弾を放った化物を殺す。ついでにヴァッシュを探す。 2.仲間を集める。また、優しい神父として振る舞う。 3.最後の大隊は皆殺し。 4.異教徒共と化け物については一先ず保留。ただし、殺意を抑えられるか……? 5.脱出に必要な情報を集める。 6.脱出が不可能な場合は優勝を狙う。 【備考】 ※第九話終了後からの参戦です。 ※制限に気付きました。 ※クアットロが魔法少女リリカルなのはStrikerSからの参戦とは気付いていません。 ※グラーフアイゼンはアンデルセンを警戒しています。 ※アンジールを最後の大隊の構成員だと判断しました。 ※放送を聞き逃しました。 ■ 覚醒を果たした時、セフィロスは既に空中へと舞上げられていた。 瞬時にセフィロスは事態の異常に気付き、状況の理解に努めた。 ――白色の世界。 ――宙に巻き上がる瓦礫、そして自分。 ――その先には、凶々しい光を放つ巨大な球体。 ――あの光球はマズい。 そう判断したセフィロスは、宙に翻弄されつつも片翼を発動し、服を掴んだまま気絶しているはやて毎、空を疾走した。 そして辿り着いたのは一つのビル。 しかし片翼発動の疲労、アーカードから受けたダメージが重なりセフィロスは屋上に舞い降りると共に気を失った。 数分後、目を覚ましたのは八神はやて。 また助けられたことに気付き、再び自己嫌悪に陥りかけるが、頬を叩き無理やりに活力を注入。 セフィロスを引き摺る形でビルの中に身を隠した。 それからはやてのしたことは、自分、そしてセフィロスのデイバック漁り。 どんな些細な物でも良いから、セフィロスの治療を促進できる道具が無いか確かめるためだ。 だが、セフィロスのデイバックには武器と基本支給品しか入っていない。 自分のデイバックもそう。 前に確認した通り、マハとデュエルディスク以外の支給品は入ってなかった。 何も出来ない――――再び自分の無力さを思い知らされる。 失いたくないのに。 リインや、シグナムのように、もう誰も失いたくないのに。 自分は何も出来ない。何が夜天の主、何が歩くロストロギアだ。 大切な人さえ救えない私にそんな大層な名前を名乗る資格なんてない。 はやては傷心を抱え、ただうなだれることしか出来なかった。 ―――この時、幸運の女神が笑い掛けてくれていることにはやては気付いていなかった。 俯くはやての足元に転がっている古ボケた小さな巾着袋。 つい先程、はやてが引っくり返したデイバックから転がり落ちた物だが、はやてはそれに気付けなかった。 それは先に行った支給品の確認の際にも、あまりの小ささに気付く事がなかったアイテム。 はやては知る由も無いことだが、その中には大豆のような豆が二個だけ入っている。 食糧の一種、という訳ではない。 それは食した者の身体を完全に回復させる魔法のような代物。 名は仙豆という。 制限により全快とまではいかないが、一粒食べさせるだけセフィロスの身体は大幅に回復する筈だ。 だがはやては気付かない。 思考を止め、自己嫌悪の殻に閉じこもってしまっている。 「セフィロスさん……」 喉から手が出る程に求めている物が直ぐ足元にあるのに、少女はただ涙を流し続ける。 罪悪感がその純粋な心を蝕み続ける。 螺旋階段を一段一段降りていくように、少しずつ少しずつ増していく自責の念。 それは真綿で首を締めるようにはやてを苦しめていく。 苦心のはやてはそれに気付き、セフィロスを救うことが出来るのか? それは神のみぞ知る、だった。 【1日目 朝】 【現在地 F-5 ビルの中】 【セフィロス@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】 【状態】疲労(大)、魔力消費(大)、体中にダメージ 、気絶中 【装備】バスターソード@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、 【道具】支給品一式×3、 トライアクセラー@仮面ライダークウガA’s ~おかえり~、ランダム支給品0~4個 【思考】 基本 元の世界に戻って人類抹殺 0.気絶中 1.状況が落ち着いたら、八神はやてと共に機動六課隊舎へ向かう 2.アレックスに会ったら誤解を解く 【備考】 ※現在行動を共にしている八神はやてが、本物の八神はやてであると認識しました ※機動六課でのことをはやてに自ら話すつもりはありませんが、聞かれれば話します ※身体にかかった制限を把握しました ※アレックスが制限を受けていることを把握しました ※八神はやてが無事なことから、アレックスはゲームにのってないと判断しました ※殺し合いを止めるというスタンスは尊重するが、不可能と悟った時には殺すことも辞さない つもりです ※参加者同士の記憶の食い違いがあることは把握していますが、特に気にしていません ※トライアクセラーで起動するバイク(ビートチェイサー2000@仮面ライダークウガA’s ~おかえり~)は、立体駐車場に埋もれていると思っています。 とはいえ、運転はできないので、無理に探すつもりはありません。 ※「リリカル龍騎」における仮面ライダーの情報を得ました ※デスゲームと仮面ライダーの殺し合いに関係があるのではないかと思っています ※放送を聞き逃しました。 ※ランダム支給品0~4個の中に、治療に使えそうアイテムは入っていませんでした。 ※正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使はG-5・市街地に落ちています。 【八神はやて(A s)@仮面ライダーリリカル龍騎】 【状態】疲労(小)、魔力消費(小)、自己嫌悪 【装備】デュエルディスク@リリカル遊戯王GX、憑神刀(マハ)@.hack//Lightning 【道具】支給品一式 【思考】 基本 殺し合いを止め、誰にも悲しい思いをさせない 0.ごめんな……セフィロスさん 1. セフィロスが目を覚ますまで、見守る 2. 仲間たちと合流 3. アレックスに会ったら、殴ったことを謝る 【備考】 ※セフィロスが自分を知っていることを知りません ※憑神刀のプロテクトは外れました ※憑神刀の中にシグナムの面影を見出しました。憑神刀にシグナムを投影している傾向があります ※デスゲームと仮面ライダーの殺し合いに関係があると思っています ※足元に仙豆が入った袋@ドラゴンボールZクロスが落ちています。気付くか、気付かないは後の書き手さんに任せます。 ※放送を聞き逃しました。 ■ アンジールは呆然と虚空を見詰めていた。 意識はとうの昔に回復した。身体も、ダメージはあるが動けない程ではない。 なのに行動を開始できない。身体に力も気合いも入らない。 遠方にて発生した、超常的な破壊を成した光弾にも、身体は反応しない。 その原因は数分前に流された放送であった。 いや、放送にて呼ばれた一人の名前と呼んだ方が正解か。 『――ディエチ』 感情に乏しい面があったが優しい妹だった。 誰もが当たり前の事だと思っていた戦いという行動に対し、一人迷いを見せていた少女。 機械仕掛けとは思えない「心」を持った少女であった。 「何故だ……」 小さな呟きが小さな応接間に霧散する。 強く握り込まれたアンジールの右手は僅かに震えていた。 「何故だッ!」 テーブルが真っ二つにへし折れた。 アンジールの右手が、感情に任せ叩き付けられたからだ。 だがそれでもアンジールの心は晴れない。心に空いた穴が塞がることはない。 「何故あいつが死ななければいけないんだ……!」 涙は流れなかった。 ただ自分に対して憤怒が湧き上がる。 何もできなかった自分に、何もしていない自分に、怒りだけが募る。 非運などではない。 単純に自分の力が足りなかったのだ。 自分がもっと迅速に行動していれば、自分があの男達を退け先に進めていれば、 もしかしたら助けられたのかもしれない。 ―――何がいけない? ―――何を間違えた? ―――自分はどうすれば良かったのだ? 「俺は……俺は……」 目を覚ました時、奴らは消えていた。 拳銃一丁を残し、全ての武器を奪い、奴らは消えた。 身ぐるみを剥ぎ取り、気絶している自分を放置して何処かへ去っていた。 俺を止める為、わざわざ追い掛けてきてまで自分と戦ったヴァッシュからは考えられない行動。 これが―――気絶した者から武器を奪い、放置する事が、奴の言う殺し合いを止める為の手段なのか? 分からなくなる。 自分は奴を買い被りすぎているのか? これが奴の本質なのか? 「俺が甘かったのか……?」 元々あの狂人とヴァッシュは手を組んでおり、自分はヴァッシュが演じた仮の姿に騙され、殺意が挫かれ、力の全てを出し切れずに敗北。 そして武装を解除され、放置された。 考えてみれば、狂人が行った最後の不意打ちも充分な殺意が込められたものであった。 残された拳銃は精々足掻いてみせろとの嘲りか。 分からない。 ヴァッシュが身を呈し自分と狂人の戦闘を止めたのも事実。 ヴァッシュが自分を殺すつもりがなかった事も事実。 だが最後の狂人が行った不意打ちに殺意が込められていたのも事実。 最終的に、武器を奪うだけ奪って見知らぬ場所に放置したのも事実。 どちらかが偽で、どちらかが真。 ―――長い長い思考の後、アンジールは答えを出した。 「……俺が間違っていた」 それだけ呟き、アンジールは拳銃を片手に立ち上がり、外へと退出した。 ―――俺が甘かったのだ。 奴らは手を組み、参加者を騙し陥れる卑劣な害敵。 最初にヴァッシュが戦闘の間に入ったのも、そういう段取りだったのだろう。 身を呈し、命を賭けたように見せ、信用を買う、それが奴らの手段。 今考えれば可笑しな点もあった。 ヴァッシュは狂人の一撃を腹に受け、口から血を流した。それは内臓にダメージを受けた証拠だ。 なのに、奴は俺と戦闘をする為に駆けて来た。そしてダメージを全く感じられない動きで、自分と同等の戦闘を繰り広げた。 ―――おかしい。狂人の一撃を受け、ダメージを負ったにも関わらず、何故あんな動きが出来た。 ―――考えられる答えは一つ。 ―――つまり、あれは演技。 ―――ヴァッシュは事前に決められたタイミングで間に入り、狂人は事前に決められたように力を緩める。 ―――ヴァッシュは口から血を流しダメージを負った風に見せ、死さえ厭わずに殺し合いを止める戦士に見せ掛けたのだ。 ―――つまり自分は騙されたのだ。 「学ばせてもらったぞ、ヴァッシュ」 そして後は二人で協力し、ヴァッシュは不殺を貫く戦士として戦い自分の油断を誘い、狂人はその油断につけ込み自分を仕留めた。 生きていたのは幸運だっただけ。 奴らもからかいを込めて拳銃だけを残し全てを奪って、何処かに消え失せた。 「俺は甘かった。甘かったから遅れを取り、甘かったから妹を助けられなかった…………だがな、もう二度と間違えない」 ディエチの死を知り、奴らの姦計に気付き、目が覚めた。決意が、固まった。 どんな奴だろうと、妹達以外の参加者は全て敵だ。 妹達に危険が及ばぬよう、全てを排除する。 ヴァッシュも、狂人も、セフィロスも、先程の異常な光弾を放った奴も―――全て殺す。 「これ以上の犠牲は決して出さん。それが俺のできる全てだ」 ―――ヴァッシュがアンジールを放置した理由は、ナイブズとの戦いに巻き込ませない為。 武器を置いていかなかった理由は、アンデルセンが持っている為。 銃を置いていった理由は、せめてもの償いの現れ。 ヴァッシュの行動、その悉くを悪い方、悪い方へと剣士は捉えてしまった。 もし、あの放送で妹の名が呼ばれなければ、まだ冷静な判断ができたのかもしれない。 だが、今のアンジールにはそれが出来ない。彼の中で答えはもう形成されてしまっている。 その考察の殆どが間違っていることなど知らずに、剣士は修羅の道へと一歩を踏み出した。 【1日目 朝】 【現在地 G-6 ビルの中】 【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】 【状態】疲労(小) 、頭部打撲(小)、右脚と左肩に銃創、決意 【装備】アイボリー(7/10)@Devil never strikers 【道具】支給品一式、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【思考】 基本:妹達(クアットロ、チンク)を守る。 1.チンクを保護するためにも、スカリエッティのアジトを目指す。 2.妹達以外の全てを殺す。 3.武器を手に入れたい。 4.ヴァッシュ、アンデルセンには必ず借りを返す。 5.セフィロス…… 【備考】 ※第七話終了~第八話、からの参戦です。 ※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。 もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。 ※制限に気が付きました。 ※ヴァッシュ達に騙されたと思っています。 ■ 「あ、あああ、あ……」 様々な戦乱に耐えてきた病院、その残骸の中心にてヴァッシュは一人涙を流していた。 過去に殺した大都市の住民達を思い、泣いているのか? 死んでしまった仲間を思い、泣いているのか? 禁忌の力を発動してしまった事に対して泣いているのか? おそらくどの候補に対しても男は涙を流すだろうが、今の涙はそのどれにも当てはまることは無かった。 「フェイト、フェイト……」 涙に覆われた男の視線は、目の前の死体へと向けられていた。 それは、数十の肉片へと斬り刻まれた惨たらしいバラバラ死体。 ただ不思議なことに頭部だけは傷一つ無く、その死体の正体が誰なのか、男には分かってしまった。 それはフェイト・T・ハラオウン―――厳密に言えば、男が知っている姿から十年の年月を重ねているフェイト・T・ハラオウン―――の死体であった。 しかし錯乱状態にいる男はそれが大人となったフェイトの姿だと気付けない。 ただ自分の手で大切な仲間を殺したことに呻き、涙を流し続きることしか出来なかった。 ―――殺してしまった。 ―――自分の手で、フェイトを、仲間を、なのはの親友を、苦しむ自分を助けようと近付いてきたフェイトを、斬り殺してしまった。 「うあぁぁぁあああああああああああああああ………」 壊れてしまったかのように声帯は意味を成さない音しか出さない。 封印されていた記憶が、自分を支えてくれた仲間の死が、人を――仲間を殺害してしまった事実が、男の精神を押し潰す。 ―――男は怖かった。 ―――また自分の力が制御不能になることが。 ―――自分の意志に反し行動する左腕が。 ―――遭遇する人をまた殺害してしまうことが。 不意に男は立ち上がりその場から立ち去る。 涙を流し続けたまま、左肩を潰すかのように握り締め、人に遭遇しないように――――ただそれだけを望み男は走り始めた。 その両肩から生える翼が、逆光に照らされる。まるでその姿は羽根を生やした天使の如く見えた。 【1日目 朝】 【現在地 H-6】 【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@リリカルTRIGUNA s】 【状態】疲労(大)、精神疲労(大)、悲しみ、錯乱 、融合、黒髪化三割 【装備】ダンテの赤コート@魔法少女リリカルなのはStylish 【道具】なし 【思考】 基本:どうしたら良いか分からない。 1.誰にも遭わないように逃げる。 【備考】 ※第八話終了後からの参戦です。 ※制限に気付いていません。 ※なのは達が別世界から連れて来られている事を知りません。 ※ティアナの事を吸血鬼だと思っています。 ※ナイブズの記憶を把握しました。またジュライの記憶も取り戻しました。 【フェイト・T・ハラオウン(StS)@仮面ライダーカブト 死亡】 ※病院が崩れ落ちました。 ※フェイトの死体、デイバッグ、基本支給品、大剣・大百足@魔法少女リリカルなのはsts//音が聞こえるがH-6・病院跡地に放置されています。 Back 絶望の罪人~双翼~ 時系列順で読む Next 牙を持つカード 投下順で読む Next 牙を持つカード アーカード Next XANADO セフィロス Next 月蝕 八神はやて(A s) Next 月蝕 アレクサンド・アンデルセン Next Burning Dark(前編) ヴァッシュ・ザ・スタンピード Next Face アンジール・ヒューレー Next 月蝕 キース・レッド Next Reconquista(前編) フェイト・T・ハラオウン(StS) GAME OVER
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ゼロ因子適合者(ドライバー)その1 「EC感染者の完成形」とも呼ばれる、特殊な病化形態発動者。 ECウィルスに含まれる「ゼロ因子(ファクター)」は、通常休眠状態のままで起動しないか、あるいは排出されてしまうが、 適合体質をもつ者のみがゼロ因子の起動を行なうことが可能になる。 この「ゼロ」の起動により、使用者自身は通常のEC感染者をはるかに上回る肉体強化と、生体魔導融合による物理エネルギー生成能力をもつことになる。 ゼロ因子適合者(ドライバー)その2 ただしその強大な力の代償として、使用者は通常の視覚・聴覚・触覚(痛覚を含む)といった五感を失い、 ディバイダーあるいはリアクターによる索敵能力・危機感知能力に頼った行動をとるようになる。 トーマの場合は銀十字の書がトーマの感覚認識を代替し、危機感知によって攻撃・防御行動を自動的に行なっている。 感染 ECウィルスの感染は、通常はリアクターの接触によってなされている。 (なお、「人間型」を取るリアクターは、現在確認されているものでは「シュトロゼック」シリーズのみで、通常は無機物である) リリィとの接触によってECウィルスに感染した人々が死亡したのは、ECウィルスが起こす肉体の強制強化に耐え切れなかったため。 CWコネクト カレドヴルフ(CW)社製の武装端末に装備された通信技術。 CW社の特許技術によって、強度の魔力・電波遮断状況下でも通信可能。独自の暗号化技術により、傍受による解析も困難になるよう設定されている。 CW社が「管理局の通信機材」という膨大なシェアをもつ市場への食い込みを狙って立案・設計された、最新式の通信システムである。 Record11初出 特別救助チーム(レスキューチーム) 管理局で、災害対策を主に行なう「防災担当」。 その中で災害現場での救助活動を行なう、防災担当の選抜隊である。 特別救助隊メンバーに支給される「銀制服」【シルバー】(実際にはホワイトグレーだが、正式名称として「シルバー」が採用されている)は、 防災担当を志す局員たちにとってはあこがれの対象である。 レイジングハート・エクセリオン 単独飛行形態 ストライクカノンと「フォートレス」装備によって両手が完全にふさがってしまうなのはのため、 レイジングハート自身が申請してなしとげられた形態。 第五世代端末のシステムを一部組み込んでおり、魔力阻害状況下でも(若干のパフォーマンス低下は否めないものの)活動が可能となっている。 Silver Sters“Hundred million” トーマと銀十字の書、ディバイダー996による広域殲滅射撃。 圧倒的なエネルギー量は、銀十字の書に蓄積されたエネルギーとトーマ自身の生命力によって生み出されている。 ディバイダー996は砲身としてエネルギー生成の反動を吸収し、強大なエネルギー放出によってトーマの体を破損させない働きをしている。 ディバイダー718 リアクテッド グリップ下部に巨大銃器が生成され、実弾兵器の射撃が可能となる独特なリアクト形態。 左右のディバイダーはそれぞれ独立しており、別々の兵器をセットすることも、同時に同じ兵器を使用することも可能。 さまざまな兵器をセットできるが、多連装ロケットランチャーとガトリングガンが、アルが好んで使う組み合わせ。 Record12初出 AEC-00X「フォートレス」 CW社製の、航空魔導師用総合支援ユニット。 魔力非結合状況化での飛行制御・火砲制御を行なうメインユニットと、3機の「多目的盾」で構成される武装で、 それぞれの盾は「砲撃用の大型粒子砲」「中距離戦用プラズマ砲」「近接近用実体剣」を内蔵している。 いずれの盾も独立飛行が可能で、腕部に装着して使用することもできる。 パフュームグラブ アイシス自作の「コンバットギア」。 手首の先に装備されたバルーンから、粉塵や気化液を放出するための装備。 バルーン内には複数の「ボトル」をセットすることが可能で、複数の原料をバルーン内部で調合して、任意の効果を発生させることができる。 短距離瞬間移動(ショートジャンプ) 「瞬間移動」に該当する魔導技術自体はさほど珍しくない。 ただし、それらの術式は「移動開始/出現」には、通常「フェイズタイム」と呼ばれる、他の行動を取ることのできない時間が存在する。 「短距離瞬間移動者」は、鍛錬や術式調整によってフェイズタイムを「戦闘に使えるレベル」にまで短縮した者を指す。 特務六課部隊長・八神はやて二佐 管理局の魔導騎士であり、莫大な魔力とベルカ・ミッドハイブリットの魔導を使いこなす、通称「歩くロストロギア」。 独特すぎる魔法発動システムの弊害でAEC装備との相性が悪く、現時点では専用装備が準備されていないが、 蒐集行使型ストレージ「夜天の書」には、「魔導殺し」への対策が準備されているとのこと。 Record13初出 バルディッシュアサルト・ライオットブレードⅡ 「第五世代デバイス」の運用理論および素材技術における実験稼働機。 「魔力無効」状況における活動を行なえるよう、CW社系とは異なる変換技術を採用し、術者の魔力を機体内に蓄積、 変換して活動するシステムを搭載している。「二刀」「大剣」に加えて、「連結二刀」の形態も用意された。 ディバイダー695ランゲ・リアクテッド 巨大戦斧の姿をとるディバイダー。ディバイダー695は、アルの718と同じくリアクター内蔵型のため、 ディバイダーによる血液認証でリアクトが可能となっている。全身を覆う鎧化装甲とドゥビル自身の病化特性「高速再生」によって、 接近戦では不落の戦力となる。 ヘイムダル 八神はやてによる氷結魔法と、氷塊を利用した重量攻撃。 管理局法における魔導運用の可否に照らし合わせれば「極めて黒に近いグレー」に該当する魔法のため、 使用には「必要となる状況」の確認と複数の認可が必要となる。 再氷結および「ファランクスシフト」の使用時には、自己強化術式「ブラスターシステム」を使用し、魔力倍加をかけている。 カレン・フッケバイン フッケバインの首領。年齢不詳・素性不明の存在。 管理局が彼女の存在を認識したのは「フッケバイン一家」の活動開始後であり、それ以前のデータは存在していない。 事件発生時のデータからは、彼女も強度のEC感染者であり、ディバイダー・リアクターの保有者であるらしいということは確認されている。 Record 14 初出 マッハキャリバーAX スバル・ナカジマ防災士長の愛機「マッハキャリバー」は、前所属である遺失物管理部機動六課時代に支給された専用機であり、 移動支援魔法「ウィングロード」と格闘戦技「シューティングアーツ」を最大限に生かすために開発された機体でもある。 特務六課配属にあたり、後述のAEC07Xとの連携も含めて機体設計の見直しがなされ、大幅改良が行なわれた。 CW-AEC07X「ソードブレイカー」 他のCW社製AEC装備とは設計思想も機体構造も大きく異なる、独自の「防護装備」。 防刀・対衝撃機能をもつ外皮(アウタースキン)の中に、使用者の力を補助・増強するパワーサポート機能を内蔵している。 スバルの個人技能「震動破砕」を対鋼破砕用にチューニングして出力することで、対象の武器を破壊する機能ももつ。 銀十字の書 使用者の「武装端末及び独立管制ユニット」として機能する銀十字の書。 その行動思想はただひとつ、「自身と使用者にとっての危険を排除する」ことである。 使用者が危険にさらされれば、いかなる手段を用いても使用者を守る。 シュトロゼック 反応触媒(リアクター)・シュトロゼック4thとして生まれたリリィ。 誓約者と「銀十字」を救う方法は、彼女だけが知っている。
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次元世界の平和を守る時空管理局 いくつのもの部署に分類されるこの複合組織のうち防衛任務を担当する『武装隊』と その出身者には一軍に匹敵する能力を誇る一流の魔導師が多く在籍する そしてそんな魔導師たちの戦闘技術を『模擬戦闘』という形で披露するイベントが存在する それが――本局武装隊名物『戦技披露会』である! AfterDays 「戦技披露会」 セレナ「さあ今年も絶好調で進行しております戦技の祭典! 次はいよいよ空戦の部・エリートクラスの最終試合(ファイナルマッチ)です!」 「さて、ただいま最終戦用の戦闘空間の固定を行っております。試合開始までの時間、今しばらくお待ち下さい」 「実況は私、武装隊広報部セレナ・アールズ。解説はこの試合のために特別に来ていただきました。 本局海上警備部八神はやて捜査司令です」 はやて「こんにちはー」 セレナ「こちら、ミッドチルダ地上本部航空隊所属シグナム一等空尉。 真正古代(エンシェント)ベルカの騎士が航空剣技の真髄を見せてくれます」 はやて「セコンドの二人もやる気十分ですねー」 セレナ「そして、本局教導隊・高町なのは一等空尉。ミッド式の正統派空戦魔導師にして威風堂々のエース・オブ・エース! 八神司令高町教導官のセコンドは?」 はやて「親友の副官をやってる子ですね。シャリオ執務官補です」 セレナ「高町教導官の親友と言うとあの方ですね。フェイト執務官!?」 はやて「はい、救護班のフェイト・T・ハラオウンです」 セレナ「フェイト執務官はお2人のお友達でいらっしゃるとのことで」 フェイト「はい、2人とも10年来の間柄です。Sランク2人の試合ということで万が一の事態にも対応できるよう、 こちらで待機してます」 セレナ「なるほどー!」 ミッドチルダ北部ベルカ自治領聖王教会本部 セレナ「救護体制も万全のようです!あ、戦闘空間の固定が終了したようです…チェックが進んでいます」 カリム「2人とも晴れ舞台ですねえ」 ユーノ「はい、ほんとに」 ヴェロッサ「シグナムも高町一尉も調子良さそうだ」 セイン「それになんか楽しそうだね」 シャッハ「こういった場所で戦技を披露するのは多くの後進のためになりますし」 ディード「私も勉強させてもらいます」 ヴェロッサ「さてどっちが勝つか」 クロノ「難しいところだなあ」 カリム「ここはやっぱりどっちも応援しましょ」 セレナ「地形条件は『海上・浮遊岩礁』。開始位置は有視界範囲200m。この200mという距離は八神司令?」 はやて「魔導師も騎士の一撃必勝がやりづらい距離ですねぇ。初手の攻防注目です」 セレナ「そしてカートリッジは『使用制限無し』となっております。派手な撃ち合いになりそうです」 「さあ試合準備も完了しました!制限時間は25分一本勝負!」 なのは「じゃあシグナムさん、よろしくお願いします」 シグナム「ああ20分間は互いの戦技を披露するとしよう」 セレナ「それでは1ラウンドマッチ。時間いっぱい……!試合開始ですっ!!」 レイジングハート「CrossFire」シグナム「――紫電一閃」なのは「アクセル…!シュートッ!」 レヴァンティン「Explosion」シグナム「陣風烈火」 セレナ「いッ……一瞬!閃光!今の攻防ご覧いただけたでしょうかッ!? かたや先天資質に大きく依存するがゆえに時代の波に消えていった古代ベルカ式魔法。 片や「傷付けることなく制圧する力」の代名詞ともなったものの、 一対一の決戦能力においては同格の真正騎士に敵わぬとされてきたミッドチルダ式魔法。 このお2人の戦いは真正騎士と正統派魔導師、それぞれの威信を賭けた戦いともいえます!」 なのは「あ――も――大げさだなあセレナは」 シャーリー「ですねー」 シグナム「まあ、間違ってはいないだろう。そういうものもあるといえばある」 アギト「おうよ!」 セレナ「さあ、オープニングアタックを終え、戦いは第2幕!飛行技術の粋を尽くした追跡戦が繰り広げられています!」 はやて「この手の空戦では管制能力も問われますよ」 セレナ「なるほど!」 シャーリー「好調ですよ、なのはさん。そのまま間合いに入れず回していっちゃいましょう」 なのは「オーライ!」 リインII「どっこいこっちは真正ベルカ!」 アギト「ガチンコ騎士の突破力。いくらなのはさんだってさばき切れるもんか!」 シグナム「そうとも」 セレナ「激戦!まさに激戦です!」 スバル「なのはさんもシグナム副隊長も改めてすごいねぇ」 ティアナ「……ほんと……」 ノーヴェ「ディエチは…あのモードのなのはさんと戦ったんだよな」 ディエチ「まあ10秒ともたなかったけど」 セレナ「さあ、カウント20分を越えました…!残り時間わずかです」 なのは「……ラスト4分……じゃあ、そろそろですかね」 シグナム「ああ、隠し球も遠慮もなしといこう」 セレナ「おおっと…?2人とも何か会話を……」 セレナ「八神司令これは?」 はやて「えー手元の資料によりますと。2人の相談で20分は時間いっぱい基本に沿った戦技の披露を、 ラスト3分程度、双方の「全力戦闘」をお見せいしたいと」 シャマル「今日のコレはちゃんと聞いてたんだ?」 フェイト「これ聞かされてなかったらいくら私でも怒ります」 「なのは!ブラスターは1までだからね!」 なのは「はぁ――い」 フェイト「シグナムも、アギトが一緒じゃないんですからあまり無茶しないように」 シグナム「わかっている。心配症め」 「まあしかし、テスタロッサの心配症とあれの負けん気には私たちも随分救われてきた。 だが私はこれでも夜天の騎士の将なのでな。こと個人の戦技においてはそうそう抜かれるわけにもいかんのだ」 なのは「フェイトちゃんと初めて戦ったあの日から、いろんな事件や機動6課での日々、それから今の毎日、 全部を乗せた一撃を素直な気持ちでぶつけさせてもらいます」 なのは「せ―――のっ!」 しぐなむ「はぁぁああッ!」 セレナ「これは…!双方最大火力!!熱気と衝撃が実況席まで…!」 「!あ――っと!!シグナム一尉弾幕を切り抜けたッ!そして一撃ィィ――!」 スバル「なのはさん!?」 ティアナ「あれってまさか……ッ!!突撃も捕まえさせるのも戦術のうち――!?狙いは零距離バインド!」 なのは「マニューバS-S-A(シューティングアサルト)ッ!ストライク・スターズッッ!!ファイア―――ッ!!」 セレナ「直撃ィィィ――――ッ!!」 ウェンディ「うわ!こりゃあ…!」 なのは「――ちがう、まだっ!」星よ――ッ!!」 シグナム「駆けよ隼、シュツルムファルケン」 なのは「…ッ!――ッとッ!!」 シグナム「煌牙」 なのは「ディバイン」 シャマル「フェイトちゃん出動!」 フェイト「了解ッ!」 セレナ「双方、直撃~~ッ!!そして試合終了ッ!その結果は……!?おお…シグナム一尉は無事で意識もあるようですが…」 「ん?高町一尉はちょっと怪しいか…?」 なのは「へ…へーきれ~す…」 はやて「だそうです」 セレナ「ということは……ファイナルマッチの結果は「引き分け」です!ッ!」 「素晴らしい試合でした。この後休憩を挟んで、お2人を交えての感想戦に移りたいと思います。 八神司令、引き続きよろしくお願い致します!」 はやて「はい♪」 戦技披露会 打ち上げ会場 はやて「それでは、スターズ1とライトニング2のちょっと過激な健闘ともと機動6課+αの同窓会に」 全員「かんぱーいっ!」 シグナム「まったく怪獣め。殺されるかと思ったぞ」 なのは「それはこっちのセリフです。シグナムさんすぐ熱くなるんですから」 シグナム「なんだと貴様生意気な」 なのは「あやや、やめてくださいぃ~」 ヴィータ「ま、たまにはこーゆーのもいいんじゃねーの」 フェイト「ホントに「たまに」ならね」 はやて「あははー」 スバル「はーい、じゃあせっかくですから写真撮りますよ~♪みなさんこっち向いて~スマイル!」 END
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火照った身体に夜風が心地よい。 灼熱地獄からどうにかこうにか這い出してきた彼は、ふと空を見上げる。 月だ。 自分の知るものと寸分違わぬ、淡い燐光を闇夜に示す円。 安堵しかけて、 ―――ちょっと待てよ 気付いた。 間違いであって欲しいという願いを込めて再度天を見上げる。 ああ、そんなに要らないのに。 ――――――果たして月と言う物は二つもあったのだろうか? リリカル.exe 第二話 それはミッドチルダのどこか。深い深い闇の底。機械の起こす、獣の唸り声にも似た重く低い音が充満するそこに、蛍火のような灯りが一つ。写し出されるのは、二つの人影。 大柄な壮年の男と、幾分か禿げ上がった白髪の老人だ。壮年の男は目を伏せたまま微動だにしない。寝ているわけではなく、瞑目といったほうが正しい。 老人は空間に浮かぶコンソールを一心に叩いている。接続先は、一つのデバイス。槍にも似たポールウェポン――――――壮年の男の持ち物である。 何も知らぬ一般人が見たとしても速いと感じられるほどの速度で、老人はその槍の調整を行っているのだ。 無音。 静寂が淀み、澱み、どこまでも積み重なっていく。 「―――――――――――」 声を発するものは居ない。 次々と空間に走るデータの羅列へと視線を送りつつ、老人がただただタイプを続けるだけ。 時間の感覚が麻痺してしまいそうな光景。何分か、何十分か、それとも何時間か経った頃か。 ―――――――――――静寂を破るコール。 不愉快極まりない表情で眉を上げた老人は、しかし作業を中断する事も無くそれを無視。こんな時間に連絡を取ってくる者など分かりきっているからである。 と、瞑目していた壮年の男が目を開く。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・出ないのか」 「フン、こんな夜中に連絡してくるヤツなど決まっておるじゃろう。あんな奴と話したところで一文の得にもならんわ。・・・・・・・・・それよりゼスト、調整が終わったぞ」 「そうか。・・・・・・いつもすまんな、ワイリー」 小気味いい電子音と共にデバイスとコンソールをつないでいたバイパスが外れる。ゼストと呼ばれた男はそのデバイスを手に取ると、試し振りを数回。大気を裂く鋭利な音が鳴った。 ワイリーと呼ばれた老人はわずかに眉尻を下げ、しかしそれも一瞬。尊大さと妄執を足して二で割ったような表情に戻ると、淡々と言う。 「阿呆、お前のデバイスを弄るようになって何年経ったと思っておる。そのデバイスの事ならお前や開発者よりもよく知っておるわい」 「・・・・・・・・それもそうか。月日が経つのは早いものだ・・・・・・・・・・・もっとも、俺の中の時間は既に止まってしまっているが」 「一々面倒な奴じゃな。何のためにワシがあの変態科学者とわざわざ手を組んだと思っておる。さっさとあのレリックとやらを回収して嬢の・・・・・・・・・」 ―――――――――――またもコールが響く。 大きな舌打ちを一つ、ワイリーはコンソールを叩く。無数に展開されていたスクリーンが掻き消え、後に残るのはたった一つの大きめなもの。 「ゼスト、お前はそのデバイスの試運転に行ってこい。あんなのと話しておったら余計にお前の命が縮まる気がするのでな」 「・・・・・・・・・・・・・・そうか、それでは行ってこよう。何かあったならすぐに連絡をくれ」 背を向けたままワイリーは答えない。さっさと行け、といわんばかりの態度だ。が、ゼストはそれに気を害する事も無く歩を進める。相変わらず感情が読めない表情のまま、その姿は外へと消えていった。 息を吐くと、ワイリーはうんざりしたような表情で点滅しているパネルを叩く。 ● 数刻後。 ―――――空調の効いた部屋。机があり、ソファがあり、まともな空気のある場所だ。 腰を下ろしたロックマン.exeの対面には同じようにソファに腰掛けた、制服姿の茶のショートカットの女性―――――八神はやてがいる。 机には広げられた資料――――紙、データファイルなど様々――――が散らばっており、ここに来てからそれなりの時間が経っている事が分かる。 「・・・・・・・・ええと、とりあえず今のロック君の状況なんやけどな」 いきなり人の名前を短縮しますか、などと突っ込む人は居ない。開幕の問答で「ロック君でええ?」と聞いてきたからロックマンは二つ返事でOKしただけである。 はやては続ける。 「次元漂流者・・・・・・・・・・・・簡単に言えば世界単位の迷子、ってことなんよ」 「迷子、ですか?」 「そ。たまーにあることなんやけどな、大規模な次元震とか巨大なエネルギーの暴走とかそんな感じのに巻き込まれたときに、何らかの作用が起こって次元世界を移動してしまった人の事を言うんや。 まあ、モノとかそーゆうのもあるんやけど、全部ひっくるめてそういうのを保護するのがウチ等――――――時空管理局の仕事やから安心してな」 一息。 「・・・・・・でな、なんで迷子って言われとるかはちょっとした事情があってな。次元世界ってのはそりゃもうぎょーさんあってな、転送だけならぱぱっと済むんやけど、その中から少ない情報で一つの世界を探すのは結構 難しいんよ。あ、難しい言うても調べきれへんってわけやなくてな、絞り込むのに必要な情報が漂流者本人からしか得られへんから時間がかかる、ってことなんやけど」 「・・・・・・・・つまりすぐには帰れないってことですか?」 「御免な、こればっかりはウチが発破かけてもどーにも出来へんのよ」 そう言ってふう、とため息をつくはやて。ロックマンの目には何故かそれが連日徹夜の後ようやく家に帰ってきた多忙な父親とダブって見えた。 ――――――まさかこの年でハードワーカーなのかな 時空管理局は実力主義。二十歳以下のまだ少年少女と言っても差し支えの無いような年齢のものであっても、有能であれば迷わず教官クラスに任命する事もあるという。 その点で言えばロックマンの世界のオフィシャル―――――とは言っても該当するのはあの伊集院炎山くらいなものだが―――――と似ているのかもしれない。通常警察とは一線を越した戦力を持ち、有事の際には被害を抑えるべく 惜しみなく戦力をつぎ込む。犯罪者達の取引の妨害、摘発。その他にも、要請を受ければ警護なども行う。 使うものが魔法かネットナビか、その違いがあるだけだ。 もっともオフィシャルは非常に門戸が狭く、魔導師で無い人間でも役職に就くことの出来る管理局と違って精鋭のみが集まっているという点があるのだがそこはあえて無視をしておく。 人海戦術というのは非常に有効なものであるし、何より一人一人の負担を減らす事が出来るのは良いことだからだ。。 閑話休題。 とりあえずロックマンは出された冷たい茶を飲み、落ち着いたところで口を開く。 「あの、一つ聞きたいんですけど、帰るまでの間僕はどうすればいいんでしょうか?」 「衣食住の心配はせーへんでええよ。遠足は帰るまでが遠足、うち等は保護したものを無事に帰すまでが仕事やからな。・・・・・・・・時々ここに残りたいとか言う人もおるんやけどね」 「へ?そういう人もいるんですか?」 「うん。なんか嫌ーな事があった人とか、魔法に魅せられた人とか、そんな感じの人ばっかりやね。ま、それは本人の意思やからうち等としては止める理由もあらへんしな。逆に戦力とか人手が増えてラッキー、とまで思う人もおるで」 「色んな人がいるんですね・・・・・・・・・・・・・・・・・と、そういうことじゃなくて。その間何か僕に出来る事って無いですか?」 「・・・・・・・・・・・どういう意味や?」 「いや、その、流石にここまでしてもらって何もしないっていうのは、なんかこう良心が痛むというか・・・・・・・・・・・と、とにかく一方的に好意を受け取るってのは何か間違ってる気がするんです!」 思わず声を張り上げる。なんというか上手く表現できなかったが、これはロックマンの本心だった。本気で『いい子』である。 しばらく考え込んでたはやてだったが、顔を上げるとまっすぐにロックマンを見て、優しい笑顔を浮かべる。 「・・・・・・・・・・・ほんまにええ子やなぁ。そこまで言うならロック君、管理局に入ってみる気はあらへん?」 「え、いいんですか?」 「別に魔法が使えなくても仕事は色々あるから、そこならロック君でも働けるはずや。最低限ミッドの言葉覚えてしまえば後はどうとでもなるしな」 と、はやては思い出したようにポンと手を打ち、 「そや、なら早よ身分証明書とか作らなあかんな。健康診断とかちゃっちゃっと済ませよか」 「そ、そうですね。それじゃ、案内してもらってもいいですか?」 「ん。任せとき!」 そういって立ち上がったはやてを追って、ロックマンも歩き出す。 ――――――この話し方する人って皆テンション高いのかな? 自分の世界に居たアキンドシティ出身者も基本的にテンションがアッパー入ってた事を思い出して苦笑いする。親近感を感じた理由はそれか、と思いながらも歩は緩めない。 元の世界に帰るまで、やれることをやろう。 ● 「・・・・・・・・・・・・・・・・」 暗闇にて、一人思考に耽る老人が居る。アルバート・W・ワイリー。その年からは考えられぬほど覇気に満ちたその視線の先にあるのは、中空にて固定された一つのモニタ。 先程『変態科学者』から送られてきた、消滅寸前のフレイムマンの記憶データ。二、三の嫌味を言った後、ワイリーはその中から抜き出した動画に集中すべく会話を打ち切り回線を閉じた。 そこに映っているのは、最後の戦闘。 最初のほうはどうでもよさそうな表情で見ていたワイリー。しかし、後半に差し掛かった頃、その目が大きく見開かれる。突如乱入してきたその青い影。的確にフレイムマンの弱点をつき、背に燃える蝋燭を破壊する。 そのブレード状だった腕は一瞬で姿を変える。バスターと呼ばれるエネルギー弾を発射する兵器。連射しながらフレイムマンの視界を塞ぎ、そこでまた右腕を変形。朧のように揺らめく不定形の刀身が出現する。 連続して四回振り抜かれたそれから放たれるのは、四色の斬閃。 画像が乱れる。だが音声は生きている。聞こえて来るのは声ではなく音だったが、それでもワイリーの耳にはそれが誰のものであるか理解できた。 あの速さ。あの強さ。――――――自らの生涯のライバルであった科学者、光正の孫が操るナビだと、ワイリーは確信した。 くつくつと、喉が鳴る。堪えきれぬ歓喜を抑えることなく、ワイリーは哄笑を上げはじめた。 「・・・・・・・・・・・・・・く、はははは、はははははははは・・・・・・・・・そうか、ようやく、ようやく来おったか!あの時プロトに飲まれてこの世界へやってきてから何年たったかのう!? しかもこやつ、おそらくはこちらへ来たときにフルシンクロしておった影響かの、自分一人でバトルチップまで使っておる!成程、なんたる僥倖と言うべきか! 楽しくなってきたのう・・・・・・・・・・・・貴様もそう思うじゃろう、カーネル!」 暗闇へと声を投げかけるワイリー。その先にいるのは―――――――否、あるのは黒一色の外套に身を包んだ、堂々たる体躯を持つヒトガタ。カーネルと呼ばれたそれは機械仕掛けの重く低い声で答える。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は。ワイリー様が楽しいのならば、私もそうですから」 「そういう意味ではない、カーネル。お前はロックマンと戦ってみたいと思わんのか?」 「・・・・・・・・・いえ、思いません」 即答。清々しいほどの否定にしかしワイリーは気を悪くする事無く問いを重ねる。 「・・・・・・・・・ほう、何故じゃ?」 「私は将です。将とは負ける事を許されぬもの。故に、敗北などありえません」 カーネルが答える。抑揚の無い、しかし強い声だ。ふむ、と満足したような口調でワイリーは頷き、動画を終了。またも空間にコンソールを展開し、作業を始める。 モニタに映るのはデータの羅列。C、S、B、D、F、N、M、Q、と表示されたアルファベットには様々なタグが付いている。 ワイリーはFのタグに『Delete』と入力する。しばし思案し、 「・・・・・・・・・次は何を使うべきかの?」 答えるものなどいない闇の中に、その声は響いていった――――――― 戻る 目次へ 次へ