約 4,408,913 件
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/27.html
時空の海に浮かぶ 広大な次元世界 Majical girl Lyrical NANOHA 4th Series そこではかつて―― 世界を駆け巡る大規模な戦乱の時代があった ひとときの平和が築かれた現代においても 時に争いは巻き起こる 新暦0075年・JS事件 天才開発者ジェイル・スカリエッティによる大規模テロ 新暦0078年・マリアージュ事件 複数世界における連続放火殺人 ティアナ「厄介な事件ですが…フェイトさんと一緒に捜査できるのは嬉しいです」 フェイト「こちらこそ」「ティアナ執務官と一緒なら心強いよ」 ヴィータ「再会っつっても同窓会気分ってわけにはいかねーな」「今度もまた荒事(ライオット)だ」 リインII「ですね」 シグナム「フッケバインの連中は必ず捕まえる」「力を借りるぞ アギト」 アギト「おうよ!」 なのは「じゃ ごめんねーヴィヴィオ」「ママ ちょっと出張に行ってきます」 ヴィヴィオ「うん(ハート)」「いってらっしゃいママ がんばってきて」 スバル「思い出は大事だよ」「でも思い出だけじゃ生きていけないから」 「もっと自分を好きになれるように頑張らなきゃってさ」 ???「銀十字の禁書」ベルカ戦乱時代の消せない歴史の一つ」 始まりは禁忌の書と アイシス「わお!きれーなリング!」 誓約の輪(エンゲージリング) 少年トーマと少女リリィの巡り合い ディバイダー966「E.C.Divider Start up」 Record beginning ???「一緒だよ ずっとずーっと」 To be continued Record01 「Engage」
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1980.html
前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ トリステイン城下町で男は目を冷ました。 男は何故ここで気を失っていたのかを思い出そうとする。 たしか路地裏で衛士どもに追い詰められていたはずだ。 その後、目くらましにするつもりで掴んだ植木鉢から青い光が溢れて……その後はよく覚えていない。 だいたい、ここは路地裏ですらない。地面が剥き出しとなった広場ではないか。 辺りを見回せばこの広場は意図的に作られたものではないことがわかる。 瓦礫の中、この場所だけが不自然に開けているのだ。 城下町にはこんな廃墟のような場所はなかったはず。 男は軽い頭痛に悩まされながらも考え続けるが、路地裏にいた自分が何故こんな所にいるのかどうしても思い出せなかった。 この場所には城下町を破壊する原因となった巨木が生えていたのだが、気を失っていた男はそんなことはもちろん知らない。 「おお、こんな所にいたのか。随分探したぞ」 悩み続ける男を呼ぶ声がした。 聞き覚えのある声の主を見て、男はほっとした。 彼を手引きしたトリステインの魔法衛士隊の人間ではないか。 その衛士は彼らの思想に共感し協力者となっているのだ。 「すまない。どうも記憶がおかしい。頭でも殴られたのかもしれん」 トリステインからの脱出も衛士が手引きをすることになっている。 男はふらつく足で衛士の元まで歩いた。 「そうか。だが、急いで安全な場所まで行かねばならんな。すでにこのあたりにも私以外の衛士が多く来ている。私とてその全てをごまかすことはできん」 衛士は少々あきれた目で男を見ていた。 それも仕方はないだろう。こんなところで考えにふけっていたのだ。逃亡中の間諜のすることではない。 「それで、俺はどこに行けばいいんだ?」 男はようやく元にたどり着いた。その頃になっても、まだ頭痛は取れてはいなかったが足下はしっかりしてきていた。 「なに、すぐに着くさ」 瞬間、男は腹に耐えられない熱さを感じた。 いや熱いのではない。痛みが酷くて熱さと体が勘違いしているのだ。 その証拠に自分の腹には魔法衛士隊の使う鋭い杖が突き刺さっているではないか。 「君の逃げ場所はもう死者の国しかないのだからね」 衛士は呪文を唱えながら、男から引き抜いた杖を振る。 それにより作られた雷撃が降り注ぎ、男を地面に叩きつけた。 なおも雷撃は続く。男は雷撃を受ける度に痙攣し、自らの体を地面にぶつけた。 それが数回。男は地面に倒れ伏したまま、手足を炭化させている。 男が自分の力で動くことは二度と無かった。 形態を通常のデバイスモードに戻したレイジングハートがいくつかの開口部から水蒸気を吹き出す。 それに合わせてルイズも肺の中の空気を全て吐き出した。 ルイズはかなり疲れていた。 いきなり生えてきたジュエルシードの大木に振り回されたというのもあるが、ディバインバスターの負担がかなりこたえていた。 練習の時から負担のかかる魔法だと解っていたが、実際に使うと思ったよりも疲れが出てきた。 前にユーノが言ったとおりもう少しプログラムを変えてみた方がいいかもしれない。 ──そろそろ帰ろうか。 そんなことを考えていると 「ねえ、ルイズ。そんなとこで何してるのよ」 後ろから声が聞こえた。 聞き覚えのある声だ。しかも、あまりここで聞きたくない声だ。 顔面を紅潮させたルイズはおそるおそる振り返る。 ばっさばっさ きゅるきゅる すぐさま目にも止まらぬ速さで顔を元に戻す。 「ユーノ、私、今幻覚を見たの。とっても疲れているのかも知れないわ」 「あ……それはね」 「なに言ってんのよ。幻覚じゃないわよ。ミス・ヴァリエール」 ルイズは歌劇俳優のように大げさな身振りで手を額に当て、絶望にうちひしがれる貴婦人のように空を仰ぎ見る。 「あぁ、どうしましょう。幻聴まで聞こえてきたわ。私、もうだめかも知れない」 そう、幻聴に違いない。そうに決まっている。 「いいから、こっち見なさいよ。幻聴じゃないわよ」 だが無慈悲にも現実は変わらない。後ろからはっきりと聞こえてくる声は幻聴でも幻覚でも無いような気がしてくる。 ルイズは意を決しておそるおそる振り向いた。 ばっさばっさ きゅるきゅる 風竜、それに乗った赤い髪の女と青い髪の女。 もはやどうやっても否定できない。 「あ、あははは。あははははははははは」 シルフィード、それに乗ったキュルケとタバサがいた。 キュルケだけでなくタバサも本から目を離してルイズを見ている。 ルイズは焦った。それはもう焦った。 どうしようどうしようどうしようどうしようどうしょう。 「さぁ、ゼロのルイズ。何から何まで全部喋ってもらうわよ」 キュルケは胸を突き出し、シルフィードの背中からルイズを見下ろしていた。 キュルケ達がルイズを見つけたのはシルフィードに乗って壊れていく町から飛び立った後だった。 しばらく町の外縁を周回していたのだが、そのうち遠くに空を飛んでいる白いメイジと茶色いマントのメイジを見つけた。 フライはそんなに長時間使える魔法ではない。使っている間どんどん精神力が消費される。 あんなところで浮かんでいてはそのうち精神力切れで地面まで真っ逆さまだ。 おそらく地上の根から逃げているうちにあんな所に飛び上がってしまったのだろう。 誰かは知らないが手助けくらいはしてやってもいいかもしれない。 しかし近づけば地上から蔓や蔦が伸びてきて捕まってしまう。 どうしようか手を出しあぐねているいるうちに、キュルケは驚くものを見た。 そのメイジは空を飛んだまま魔法を使ったのだ。 系統魔法ではフライを使ったまま他の魔法を使うことはできないのに。 さらにそのメイジの使ったもう一つの魔法もすごいもので、一撃で町中に生えていた巨木を光に変えてしまった。 スクエアのメイジだって、あんな魔法を使う者は少ないだろう。 こうなるとキュルケはその謎のメイジに俄然興味がわいてくる。 タバサに頼んで謎のメイジ近寄ってみるとまた驚いた。 白いメイジはルイズで、茶色いマントのメイジはルイズの男ではないかと疑っている少年だったのだ。 まさに一石二鳥。面白いことになりそうではないか。 そのルイズは今、目の前で酷く慌てている。 ルイズの気持ちもわからないではないのでキュルケは待ってやることにした。 待っている間、キュルケはルイズをじっくり観察する。 まず、あの白いドレス。悪いものではない。それどころかとてもいいものだ。 裕福な貴族の生まれのキュルケの目から見ても感嘆を覚えるような一品だ。色も光沢もすばらしい。生地の質も一級品だ。 あれと同じものを揃えようと思ったらお金だけでは無理だろう。 続いて、杖。 全部金属で作っているようだ。どんな金属かは解らないが、かなりの技術で作られているように見える。 これも同じものを手に入れるとなれば相当腕のいい土系統のメイジを見つけなければならないだろう。 ──いいものを揃えたわね そこで、キュルケは閃いた。 ゼロのルイズがフライを使いながらも魔法を使っている理由、スクエアに匹敵するような魔法を使っているのはドレスと杖が強力なマジックアイテムだからに違いない! となると疑問はルイズが何故そんなものをルイズが持って使っているかと言うことになる。 ──何か面白そうな話が聞けそう 学校の授業や、ボーイフレンド達との逢瀬よりも面白いかも知れない。 キュルケは赤い唇の端を少しだけ上げた。 顔面の全ての汗腺から汗を吹き出しつつ、ルイズは脳をフル回転させていた。 どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう なんとかごまかさないといけない。 「あ、あの・・・・・・」 「ちょっと今は静かにして」 ユーノが何か言い足そうにしていたが、今は待ってもらう。 今は集中しないといい考えが浮かびそうにない。他のことに気を回している余裕もない。 「うん、わかった」 こうなってはルイズは聞く耳を持たない。アイデアはあったがユーノは黙っておくことにした。 「Knock out by buster.(砲撃で昏倒させましょう)」 レイジングハートの提案は少し心惹かれるものがあったが止めておく。 いくらツェルプストーでも学友相手には過激すぎる。 第一、解決になりそうにない。ここはもっと穏便な別の方法が必要だ。 ルイズはさらに考える。 そうえば、キュルケはさっき自分を「ゼロのルイズ」と呼んでいた。 ルイズはそこに光明を見いだす。 キュルケは自分をゼロのルイズと呼んでいる。 ゼロとは魔法を使おうとすれば全部爆発。成功率ゼロという意味のゼロだ。 だけど、今は違う。 空を飛ぶ魔法は爆発無しで使える。 ジュエルシード封印の魔法だって爆発しない。 ディバイバスターだって爆発……爆発……少し置いておくことにする。うん。 そう、自分は以前とは違う。魔法が使えるゼロではないルイズだと思わせれば、ルイズとは別人と思ってくれるかも知れない。 冷静に考えればかなり無理がある論理展開なのだが、ルイズはとにかくそう考えた。 ルイズはゼロではない二つ名を考える。そして見つけた。 これなら完璧。絶対に大丈夫に違いない。 「わ、私はルイズじゃないわ」 「はぁ?じゃあ、誰だって言うのよ。その髪、その顔、その胸。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール以外の誰だって言うのよ」 ──聞いて驚きなさい。 ルイズは自信満々に自分の名前を宣言した。 「私は、ルイズじゃない。私は魔法少女リリカルイズよ!!!!!」 ばっさばっさ きゅるきゅる シルフィードの鳴き声と羽音がよく聞こえてきた。 そういえば、いい天気ね。町まで遠乗りしてよかったわ。 小鳥の鳴き声も綺麗ね。だってキュルケとタバサ、それにユーノだって聞き惚れてこんなに静かじゃない。 ルイズの思考は体を離れかけていた。 キュルケは必死に口を引き結んでいた。 少しでも力を弱めれば決壊してしまう。 だが、それも無駄な努力で限界はすぐに来た。 「ぷっ」 唇の間だから空気が漏れる。 後はもう止められない。 「あはははははははははははははは、あはははははははははははははは、あはははははははははははははは」 笑い声で正常な思考を取り戻したルイズは頭を抱えそうになった。 「な、何よそれ、魔法少女って何よ。魔法少女って」 ホントは魔導師と言おうとしたのだ。ユーノはメイジのことを魔導師という。これだけでも印象はかなり変わるはずだ。 それが、どこをどう間違ったのか魔法少女になってしまった。 「そ、それに、リリカルイズ……リリカルイズって……あははははははははははははははは」 リリカルイズじゃないもん。リリカルルイズだもん。 ここでも滑舌が徹底的に悪かった。 あー、もー、どうしよう。というか、どうしようもない。 「ねえねえ、タバサ。聞いた?魔法少女ですって、魔法少女。しかもリリカルイズ……あははははははははあはははは」 タバサは小さく肯いた。そして笑い転げるキュルケに言った。 「彼女は魔法少女リリカルイズ。ルイズじゃない」 ばっさばっさ きゅるきゅる ルイズは固まった キュルケも固まった ユーノもついでに固まった 三人の魂はどこかに飛んでいった。 最初に魂を取り戻したキュルケはこめかみを押さえながら、ゆっくりとタバサに言い聞かせた。 「ちょっと。タバサ。冗談よね。まあ、あなたにしては面白い冗談だと思うけど。別にあの子につきあってあげなくていいのよ。あの子はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよね?」 タバサは首を横に少し大きく振った。 「彼女は魔法少女リリカルイズ。ルイズじゃない」 キュルケは思いっきりたじろいだ。 その時のタバサの目は真剣だったからだ。 本気だった。本気と書いてマジだった。大マジだった。 その瞬間、ルイズも魂を取り戻した。 「じゃ、じゃあそういうことだから。リリカルイズは次の戦いに旅立つわ」 言うが早いがルイズは未だ茫然自失のユーノの手をひっつかみ、空の彼方にダッシュ。 「待ちなさい!タバサ、ルイズを……」 「ルイズじゃなくてリリカルイズ」 「ああ、もう。なら、そのリリカルイズを追うわよ!!」 「無理」 「なんで?」 「もう、追いつかない」 ルイズの姿はすでに砂粒よりも小さくなっていた。 「……どんな速さしているのよ」 砂粒もすぐに見えなくなる。 そうなってもキュルケはまだ地平線を見つめていた。 城門前に止められたヴァリエール家の紋章の着いた馬車の中では桃色がかったブロンドの夫人が高貴さを漂わせていた。 誰であろう、ラ・ヴァリエール公爵夫人である。 ラ・ヴァリエール公爵はすでに軍務を引退しており、特別なことがない限り城に出る必要はない。 しかし、それでも公爵家ともなれば国政と全く無関係ではいられない。 そこで公爵夫人は内政で多忙な夫に代わり、衛兵に顔を知られる程度の頻度で登城をしていた。 待つこと数分。馬車の外より夫人を呼ぶ声がした。 「奥方様」 「入りなさい」 夫人の呼びかけに応じ、馬車に入ってきた人物もまた桃色がかったブロンドの女性であったが、その雰囲気は夫人とはかなり違う。 髪を後ろでしばり、剣を帯く姿は武人のそのものであり、高貴さよりも勇猛さがにじみでている。 「町の様子はどうでしたか?」 「は。町を占領していた木々は出現と同様に突如消滅。住民の混乱もひとまず収まりつつあります」 「そうですか。原因はやはり?」 「はい。私が見つけた不審者のようです。あの者が何らかのマジックアイテムを使ったと言うことです」 桃色のブロンドの武人は城内で不審者を見つけ、一太刀を与えていた。 「その者は捕縛されたのですか?」 「いえ、グリフォン隊が追い詰めたものの激しく抵抗したためやむなくライトニングクラウドで……」 「そうですか」 夫人はため息をつく。 ライトニングクラウドを使ったということは、持ち物は全て焼き尽くされているはず。 不審者の背後を探ることはもはや不可能であろう。 「奥方様。マンティコア隊隊長がお礼を申し上げたいと来ていますが」 「礼はあなたが受け取っておきなさい。私は何もしていません」 「しかし……」 「すでに言いましたよ」 桃色のブロンドの武人はもう一度外に出る。 つい昔の癖が出てしまった。すでに引退した身なら、もう少し遠慮をした方がよかったかも知れない。 それでも、この事件は気になった。最低限のことでも調べずにはおられなかったのだ。 夫人は柔らかい椅子に深く体を預け、目を閉じた。 やがて、馬車が動き出す。 夫人はトリステインの未来と自分の娘達、そして馬車の外を歩く武人に思いを馳せた。 全力で空を飛ぶこと数十分。ルイズは学院の近くに着地した。 飛んだまま帰ってしまってはみんなにばれてしまうので、直接学院には飛んで戻れない。ここからは歩きだ。 「ふう……今日は疲れたわ。なんでだろ」 とは言ったものの理由はわかっている。 町中に出現したジュエルシードの大木と戦ったからだ。 でも、それよりその後でキュルケと遭遇した事の方で疲れているような気がするのは何でだろう。 続けてユーノが着地する。いつものように姿をフェレットに変えようとしたときだ。 「あっ!」 ユーノが少し大きな声を上げる。 重大なことに気づいたのだ。 「どうしよたのよ、ユーノ。大きな声で一体」 「ごめん。でも、ルイズ大変だよ」 「どうしたの?」 まだこれ以上何かあるのだろうか。ルイズはうんざりした気分になった。 「馬を町に忘れている」 「あっ!!!!」 ルイズが目と口を大きく開ける。 そういえば、あの騒ぎですっかり忘れていた。 「どうしよう……」 「取りに行かないといけないよ。預けっぱなしはいけないんでしょ?」 「うん……」 疲れがさらにどっと出てきた。意味のない往復は疲れるだけだ。 「それでね、ルイズ。一つ聞きたいことがあるんだ」 「なに?」 「どうして、町に行くときに飛んで行かなかったの?馬よりずっと早いのに」 「!!!!」 喉から飛び出しそうになった驚きの声を抑える。 そういう発想はルイズにはなかった。 系統魔法のフライは長距離移動には適さない。少し長く使っただけで精神力がきれてしまう。 そのため、スクエアメイジであっても少し遠いところ、例えば学院から町に行くときには馬を使う。 こういうこともあって、ルイズには町まで魔法で飛んでいくという発想はなかったのだ。 だが、言われてみればその通り。 今ルイズが使う飛行魔法は系統魔法よりずっと疲れずにすむし、遠くまで早く飛べる。馬を使う必要はなかったのだ。 でも「考えてなかったわ」とはユーノに言いたくない。 主人としての沽券に関わるではないか。 だからルイズはこう答えた。 「そ、それはね。ほら、飛んで行ったらそれを人に見られちゃうかも知れないじゃない。だから馬で行ったのよ」 「あ、そうか。そんなこと考えてなかったよ。すごいよルイズ」 ──よかった。ごまかせた。 ユーノの感嘆の声を聞きながらルイズは額ににじみ出た汗を袖で拭き取り、もう一度バリアジャケット姿になる。 早く馬を取りに戻らないと帰りには夜になってしまう。ルイズはユーノと空に飛び上がり、町へ向かって速度を上げた。 その頃。 ルイズの馬は「ルイズが忘れて帰ってしまった」と判断したキュルケが乗って帰っていた。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2238.html
海岸沿いに建つ真新しい建物――機動六課隊舎へと続く、舗装されたばかりの道を、エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエは並んで歩いていた。 卸したての制服は二人とも袖が余り、十歳という年齢相応の幼い顔立ちとも相まって、服を着ているというよりも服に着られているような印象を周囲に与える。 「スターズ隊の前衛って、どんな人達なのかな……?」 「上手くやっていけると良いね」 不安そうに俯くキャロに、エリオはそう言って笑いかけた。 右手でキャロの左手を取り、元気付けるようにぎゅっと握り締める。 初めての職場のまだ見ぬ同僚に、不安や緊張を抱くのは仕方がない……それはエリオも同じである。 しかし、自分達ならば上手くやっていけるという自信もエリオにはあった。 初めて会ってから数日しか経っていない自分とキャロはもう友達になれた、他の六課の仲間ともきっと一緒に頑張っていける。 「一緒に頑張ろう」 屈託なく笑うエリオにキャロも顔を上げ、「うん」と笑顔で頷いた。 握った右手がキャロからも握り返され、掌を通じて体温が伝わってくる。 いつの間にか足は止まり、互いにじっと見つめ合う少年少女……。 完全に二人だけの世界に入ってしまったエリオとキャロに、キャロの傍らを飛ぶ白い小さな龍――フリードは呆れたように火を吐いた。 往来の真ん中で人様に迷惑だとかお前ら初日から遅刻するつもりかとか、言いたいことは山程あるが、しかし今の二人の間に割って入るだけの度胸はフリードには無い。 どうしたものかと天を仰ぐフリードは、その時、蒼天の彼方でキラリと光る何かを見た。 流星だろうか……徐々にその大きさと輝きを増すその「光」に、フリードは現実逃避でもするようにぼんやりと思考を巡らせる。 段々と近づいてくる光を眺めながら、フリードはふと気付いた……あれ、これってもしかして直撃コースじゃね? 青ざめるフリードが警告の鳴き声を上げようとした、その瞬間、一枚の巨大な光の「壁」がギロチンのように二人と一匹の眼前に突き刺さった。 「うわっ!?」 「きゃあ!!」 地を揺るがす衝撃と舞い上がる土煙に、エリオ達は思わず悲鳴を上げる。 二人の目の前にそそり立つ巨大な「壁」――否、空を切り裂き、雲を貫き、轟音と共に地面に垂直に突き立ったそれは、巨大な、余りにも巨大な……「道」だった。 不測の事態はまだまだ続く。 空へと続く光の「道」――その向こう側から、何かが来る、何か巨大なものが駆け下りてくる。 「赤い、ロボット……?」 「顔のお化けだ……」 呆然と呟くエリオとキャロ、二人の言葉が全てを語っていた。 二人の頭上を飛び越え、地響きと共に着地した「道」の主、それは赤を基調とした鋼の巨人だった。 鬼を思わせる額の一本角、爬虫類のような尻尾、そして胴体部分を占領している第二の「顔」……。 その全てが、禍々しい。 混乱した思考は徐々に落ち着きを取り戻し、二人は接近する異形の巨人の正体を冷静に推測する。 凶悪な外見に、機動六課の正式稼動直前の隙を狙ったかのようなこのタイミング。 この「道」にしてもよくよく考えてみれば、自分達を狙った奇襲攻撃と思えなくもない。 敵であることは最早明白、ならば自分達のするべきことは一つ…… 「起きろ、ストラーダ」 エリオの呼びかけを受け、右手首に巻かれた腕時計――ストラーダの液晶が明滅する。 キャロの左手首を飾る二つの腕環――ケリュケイオンも、主の闘争の意思を感じ取ったように淡い輝きを発している。 エリオがキャロを見る、キャロもエリオを見ている。 軽く頷き合うだけで互いの意思を把握し、二人は固く握っていた手を離す。 「ストラーダ!」 エリオが右手で拳を握り、 「ケリュケイオン!」 キャロが左手を高く掲げる。 「「――セットアップ!!」」 凛とした主の声に応えるように、二つのデバイスは光と共にその真の姿を現す。 フリードも臨戦状態に入ったのか、可愛らしくも雄々しい咆哮を上げた。 機動六課は自分達が守る……熱い誓いを胸に抱き、少年少女とその他一匹の戦いが始まろうとしていた。 同時刻、機動六課隊舎部隊長室。 来客を告げるブザーの音に、はやてとリインフォースⅡは顔を上げた。 「はい、どうぞ」 はやての了承の声と共に自動扉が開き、機動六課の制服に着替えたなのはとフェイトが姿を現す。 「お、二人ともキまっとるやん」 「お似合いですー」 口々に褒めるはやてとリインフォースⅡに、なのはとフェイトは照れたように笑みを浮かべる。 「この部屋も、やっと隊長室らしくなったね」 そう言って部屋の中を見回すなのはに、はやても笑顔で頷く。 最初は何も無い、ただ広いだけの部屋だった。 そこにまず机が運び込まれ、続いて書類や他の備品、その他様々な物資が部屋中に無秩序に置かれていった。 山のように積み上げられた段ボール箱を一つ一つ開き、必要なものを必要な場所に整理していく――そうして漸くオフィスらしい体裁を整えきったのが、昨日の夜遅く。 この部屋がこの部屋らしくなるまでの一連の流れは、はやてが機動六課設立のために奔走したこの四年の月日そのものだった。 「……やっとや。やっとこれから、始まるんや」 感慨深そうに呟くはやてに、なのはとフェイトが同意するように首肯する。 「高町なのは一等空尉」 背筋を伸ばし、管理局員としての名を名乗るなのは。 「フェイト・T・ハラオウン執務官」 表情を引き締め、魔導師としての名を告げるフェイト。 「本日只今より、両名共機動六課へ出向となります」 「どうぞ宜しくお願いします」 そう言って敬礼するなのはとフェイトに、はやても敬礼と共にこう応える。 「こちらこそ、よろしくお願いします。なのは隊長、フェイト隊長」 形式通りの就任挨拶を終え、久々に同じ制服で揃った幼馴染三人は、懐かしさと気恥ずかしさに笑い合う。 中学校卒業と共に正式に管理局に入局した三人は、それぞれ別の道を歩き始めた。 なのはは教導官、フェイトは執務官、そしてはやては捜査官。 違う色の明日を目指して別たれた三つの道は、しかし再び一つに繋がった。 それが一瞬の交錯に過ぎなくても、目指す明日は違うままでも、もう一度三人で「今」を生きられる。 たったそれだけのことが、三人には堪らなく嬉しかった。 「頑張っていこーか!」 気合いを入れるはやてになのは達も力強く頷こうとしたその時、非常事態を告げるサイレンの音が隊舎中に響き渡った。 『緊急事態です。八神部隊長』 動揺する三人の前にウィンドウが開き、眼鏡をかけ落ち着いた物腰の青年――グリフィス・ロウランの顔が映し出される。 「グリフィス君! これは一体何事や!?」 絶妙なタイミングで現れた副官に、はやてが詰め寄る。 その剣幕に気圧されながらも、グリフィスは己の仕事を全うするべく口を開いた。 『報告します。機動六課敷地内で中規模の戦闘発生、現在隊舎前でライトニング隊前衛二人とスターズ隊前衛二人が戦っています』 グリフィスからの報告に、はやて達の間に緊張が走る。 正式稼動前とはいえ敷地内、それもこの隊舎前まで敵の侵入を許した上、迎撃に出ているのは経験の浅い新人四人……分が悪いにも程がある。 「これは、ちょっとマズいかもね……」 ぽつりと呟かれたなのはの言葉に、はやても青ざめた顔で頷く。 「グリフィス君、敵の種類や数は? エリオ達は何と戦っているの?」 はやての横からウィンドウを覗き込み、フェイトがグリフィスに問い質す。 エリオもキャロもまだ十歳、その上戦闘の経験も皆無である。 そして何より、フェイトにとって二人は部下である前に大切な家族なのである。 泣きそうな表情でウィンドウを見つめるフェイトに、グリフィスは何故か複雑そうな顔で目を逸らした。 「……グリフィス君?」 副官の不自然な行動にはやてが怪訝そうに眉を寄せる。 『いえ、ですから……「ライトニング分隊前衛二人とスターズ隊前衛二人が」戦っているんです』 言い辛そうに、本当に言い辛そうに繰り返されるグリフィスの報告――先程と同じ、しかし決定的に何かが違うその言葉に、なのは達は先程とは別の意味で息を呑んだ。 まさか……。 唖然とした顔で顔を見合わせる三人の前に、新たなウィンドウが表示された。 外の様子を映し出したそのウィンドウの中では、……確かに「ライトニング分隊前衛二人とスターズ隊前衛二人が」戦っていた。 「皆は僕達が守るんだああああっ!!」 槍型のデバイス――ストラーダのブースターを噴かし、怒号と共にラゼンガンに突撃をかけるエリオ。 砲弾のようにラゼンガンに体当たりし、そして吹き飛ばす。 全長20mの巨体が宙を舞い、土煙を上げて地面に叩きつけられる。 『ぁ痛たた……こらー! 話を聞きなさいよ、この馬鹿ガキ共!!』 『そうそう! あたし達を誰だと思ってるの!?』 憤慨したようにティアナとスバルの声で抗議するラゼンガンに、エリオは問答無用とばかりにデバイスを構え直した。 その足元に展開される魔方陣――加速と防御の呪の込められたキャロの補助魔法が、エリオに力を与える。 エリオの目つきが刃のように鋭くなり、瞳の奥では覚悟の炎が燃えている……再度突貫する気満々である。 『ティ、ティア! やっぱりウィングロードで人身事故起こしかけたのを怒ってるのかなぁ!?』 『アンタ馬鹿ぁ!? そんな悠長なこと言ってる余裕なんて無いでしょ!!』 狼狽える上の顔を一喝する下の顔、その一瞬の隙をエリオは見逃さなかった。 ストラーダのブースターを全開で噴かし、そして自身も全力で地を蹴る。 一瞬でトップスピード――キャロの魔法の加護でそれ以上の速度域まで加速したエリオが、弾丸のようにラゼンガンに迫る。 『この馬鹿ガキ……いい加減にしなさいよ!!』 怒髪天を衝く――寧ろ怒リル天を突く。 ティアナの怒声と共にラゼンガンの全身からドリルが突き出し、触手のようにうねりながらエリオに襲いかかった。 「うわっ!?」 咄嗟に防御陣を展開するエリオだが、迫り来る無数のドリルの触手の猛攻に抗しきれずに墜落、限界を超えた突進速度そのままで地面に叩きつけられた。 「エリオ君!?」 撃墜されたエリオにキャロが悲鳴を上げながら駆け寄る。 「だ、大丈夫……!」 そう言ってデバイスを杖代わりに立ち上るエリオだが、墜落のダメージで膝は震え、強がるような言葉とは裏腹に全然大丈夫そうには見えなかった。 ラゼンガンからの思わぬ反撃、その事実に一番動揺していたのは、他ならぬラゼンガン自身だった。 『ちょっと、ティア!? 何反撃してるの!?』 「黙れ馬鹿スバル! アンタこの状況が解ってないの!? 所長もはやて部隊長も言ってたでしょ? やらなきゃ殺られる、戦わなければ生き残れない……そう、これは戦争なのよ!!」 『その相手が根本的に間違ってるよーな気がするのはあたしの気のせいかなぁっ!?』 絶叫するスバルを無視して、ティアナはラゼンのモニター越しにエリオ達を睨みつけた。 この生意気なガキ共に灸を据えてやる……頭に血が上った今のティアナの思考は、その衝動一色に染まっていた。 「スバル、躾ってさ……ついハードになっちゃうものよね?」 静かな、まるで凍てついたように静かなティアナの声に、スバルは思わず身を震わせた。 ヤバい、このままじゃ洒落にならない……通信ウィンドウに映るティアナの顔から危険な何かを感じ取り、スバルはラゼンガンの制御を奪い取った。 「えーと、あのね……」 暴力はいけないと思うから話し合いで解決しよーと続く筈だったスバルの思いは、しかし言葉になる前に喉の奥で消滅していた。 キャロが――白い小さな龍を従え、傷ついたエリオを守るように立つ桃色の髪の少女が、ラゼンガンを――否、そのコクピットシートに座るスバルを、睨みつけている。 幼い瞳に浮かぶのは、大切な人を傷つけられた怒り、傷つけ合うことしか出来ない哀しさ、そして傷つき傷つけてでも大切なものを守る決意。 覚悟の炎が、燃えていた。 「フリード」 傍らを飛ぶフリード――卵の頃からずっと傍にいてくれている小さな「家族」に、キャロは優しい声色で語り掛ける。 「ごめんね、窮屈な思いをさせて……」 フリードのこの小さな身体は、本来の姿ではない。 大き過ぎるが故に恐れられ、偽りの器に押し込めた本当の力と姿――白銀の飛龍。 「私は自分の力が嫌いだった。フリードのことも、もしかしたら嫌いだったのかもしれない……」 それは偽らざるキャロの本心だった。 制御不能な力はキャロから居場所を奪い、孤独と恐怖を押しつけ続けた。 破壊しか生まず、奪うだけで何も与えてくれない己の力――そしてその象徴、フリードリヒ。 嫌わぬ筈が無い、憎まぬ道理が無い。 「でも……」 しかし今、嫌っている筈のフリードの力を、憎んでいる筈の自分自身の力を、キャロは何よりも欲していた。 奪われないために。 守り抜くために。 「私はもう逃げない! フリードからも、自分自身からも!!」 それは決意だった――自分自身と真っ直ぐに向き合う、そんな覚悟。 それは覚悟だった――どんなに大きな力でも背負ってみせる、そんな覚悟。 そしてそれは誓いだった――自分のこの力で優しい人を、自分に笑いかけてくれる人達を守り通す、そんな誓い。 故に少女は力を求める、傍らの半身に力を請う。 「だからお願い、力を貸して……フリードリヒ!!」 その言葉と共にキャロの足元に巨大な魔方陣が展開され、フリードが歓喜するように咆哮を上げる。 名前は力を持つ――地球やキャロの出身世界〝アルザス〟など、次元世界各地に残る伝承である。 魔法理論の発達した現代では迷信として廃れた思想だが、嘘の筈は無いとフリードは思う。 現に名前を、自分の本当の名前を呼ばれただけで、自分はこんなにも力が湧いているのだから……。 フリードの小さな身体が光と共に弾け、代わりに地上の魔方陣から巨大な影が浮上する。 「これが、フリードの本当の姿……?」 呆然と呟くエリオを一瞥し、キャロは最後の仕上げに入る。 名前は力を持つ――故郷アルザスに伝わる言い伝えを、キャロもまた信じている。 ここ一番の大舞台に名乗りは不可欠、名前を飾る口上も欲しい。 故にキャロは告げる、この名前を。 自分の力を、自分達の存在を、世界に宣言する。 「白き閃光蒼穹を奔り、銀の翼が天を翔ける! 龍魂召喚フリードリヒ、私達を誰だと思っているの!!」 凛としたキャロの名乗りに呼応して、白銀の飛龍――フリードリヒの咆哮が轟く。 宝石のような瞳に輝く、闘争の炎と理性の光――かつて幾度となく暴走し、その度に何もかもを壊し続けてきたフリードリヒの力を、キャロは完全に制御していた。 初めての龍召喚成功。 それはキャロにとっても、機動六課にとっても、本来喜ぶべき結果であろう。 惜しむらくはその矛先が、龍使いの少女とその半身が敵意の牙を向けるその先が、他ならぬ機動六課の仲間であるということである。 誤解という名の運命の皮肉に気付くことなく、指し手のいない盤上の駒達は最悪の結末へと進もうとしていた。 「ちょっとちょっとちょっとちょっとぉっ!?」 「何よアレ? 何よアレ!? あんなのアリ!?」 巨大化したフリード――フリードリヒの姿に、スバルとティアナはラゼンガンのコクピットで、狼狽えたように声を上げる。 フリードリヒの大きさはラゼンガンの半分程度、しかしその存在感は圧倒的である。 白銀の飛龍の口元に光と炎が集い、激烈な輝きが周囲を眩く照らす。 「……やるしか、ないっていうの!?」 血を吐くようなスバルの叫びと共に、ラゼンガンの全身から突き出したドリルが右腕に絡みつき、一本の巨大なドリルとして融合成長していく。 『ちょっとスバル、それはっ……!!』 通信ウィンドウに映るティアナが血相を変えて叫ぶが、スバルは止まらない、止まれない。 コンソール中央の渦巻き状のゲージ――スバルの螺旋力を示すそれは一向に上昇の気配を見せない。 それはある意味、当然である。 攻撃に迷いのある今のスバルに、自分を信じていない今のスバルに、螺旋力の発動など出来る筈が無いのだから。 にも関わらず、右腕のギガドリルは巨大化を続けている、膨張を続けている。 まるで風船のように外側だけが膨らみ続ける、中身の無い空っぽのドリル――それは今のスバルの心そのものだった。 しかしそれでも、砲撃を貫き飛龍の大きくも小さな身体を貫く程度のことは、この空っぽのドリルでも可能なのだ。 極限まで膨れ上がる二つの敵意と殺意が、次の瞬間、爆発した。 「ブラストレイ!!」 キャロの号令と共にフリードリヒが火球を放つ。 「ギガドリルブレイク!!」 スバルの絶叫と共にラゼンガンのギガドリルが咆哮を上げる。 駆け引きも何も無い、純粋な力と力――想いと思いの正面衝突。 そして次の瞬間……、 「え……?」 その気の抜けたような呟きは、果たして誰の発したものであったのだろう。 どちらかを必ず滅ぼす筈の二つの必殺の一撃は、しかしどちらを滅ぼすことも、それも互いに届くことすらなく、両者の中間で止まっていた。 ……否、止められていた。 背中合わせにラゼンガンとフリードリヒの間に立つ、二人の乱入者によって。 『なのはさん……?』 桜色の防御陣でギガドリルを受け止める、亜麻色の髪の魔法少女がいた。 「フェイトさん……?」 金色の防御陣で火球を押し止める、金の髪の魔導師がいた。 「皆……少し、頭冷やそうか」 能面のように無表情な顔で、氷のように凍てついた声で、なのはがラゼンガンー―スバルを見下ろし、そう口にする。 「やんちゃが過ぎる子には、おしおきが必要だよね……?」 額にうっすらと青筋を浮かべ、フェイトがエリオとキャロ、そしてフリードリヒを順番に眺め遣り、そう告げる。 それは実質的な死刑宣告だった。 「「フルドライブモード」」 二人の号令と共に、レイジングハートが槍型に、バルディッシュが大剣型に変形する。 そして間髪入れずに魔力の充填を始める二人のオーバーS級魔導師に、四人の顔から血の気が引いた。 慌てた四人が言い訳する余裕も、逃げ出す隙も与えることなく、二つの必殺を超えた超必殺魔法が、解き放たれる。 「エクセリオンバスター!!」 「トライデントスマッシャー!!」 その瞬間、桜色の光の奔流と金色の雷が、二人と一匹と一体を呑み込んだ。 「……まさか運用初日から、しかも味方相手に限定解除使う羽目になるとは、流石に思わへんかったよ……」 ウィンドウに映し出される、焼け焦げ、大きく穿たれた地面。 その中心で目を回すライトニング隊前衛の二人と一匹と、ガラクタ同然まで破壊されたスターズ隊所属の巨大ロボの姿に、はやては万感の思いを込めて嘆息した。 ウィンドウに映るグリフィスも呆れたような表情を浮かべている。 四年越しで実現したはやての夢――機動六課。 しかし待ちに待ったその船出は、早速悪天候どころか嵐に見舞われることとなった。 新人四人への説教やら本部への始末書やらを思い遣り、はやてはもう一度大きく息を吐いた。 「……色々と波乱万丈やね、うん」 現実逃避するようにそう零しながら、はやては手元のメモ用紙にペンを走らせる。 ――第一回機動六課分隊対抗ガチンコバトル。 ――結果:両分隊隊長の独り勝ち。 「負けんでぇ……ウチはこの程度では折れへんでぇーっ!!」 自棄になったようなはやての空虚な雄叫びが、部隊長室に響き渡った。 天元突破リリカルなのはSpiral 第6話「色々と波乱万丈やね、うん」(了) 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/cwc_dat2/pages/505.html
METAL GEAR SOLID PORTABLE OPS [US] ID+ゲーム名 _S ULUS-10202 _G METAL GEAR SOLID PORTABLE OPS [US] 2006/12/17(日) 17 55 34 ID wTEZgOxo _C0 ITEM ALL 999 _L 0x8022442E 0x004B0001 _L 0x100003E7 0x00000000 デバグ品も出るから、気になるなら各自アドレスバラして修正すること 弾薬は最大値9999だがシリアル化するのに面倒だから999固定 そっちも嫌ならそっちも各自で対応
https://w.atwiki.jp/cwcwiki/pages/86.html
METAL GEAR SOLID PORTABLE OPS [US] ID+ゲーム名 _S ULUS-10202 _G [[METAL GEAR SOLID PORTABLE OPS]] [US] 2006/12/17(日) 17 55 34 ID wTEZgOxo _C0 ITEM ALL 999 _L 0x8022442E 0x004B0001 _L 0x100003E7 0x00000000 デバグ品も出るから、気になるなら各自アドレスバラして修正すること 弾薬は最大値9999だがシリアル化するのに面倒だから999固定 そっちも嫌ならそっちも各自で対応
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1271.html
リリカルなのはFeather 第二話 「天使VS戦乙女」 「……ねぇ、ティア……何なんだろう?……あれ?」 スバルがイーグルを指し、ティアナに答えを求める。 「知らないわよ、こっちが聞きたいぐらいなんだから?!」 ティアナは混乱していて、冷静な判断力が失われていた。 ( わからない。 いま、起こっているすべてが、あたしの理解を超えてる。) 「大丈夫だよね? エリオくん」 キャロはエリオの片腕をつかみエリオに問いかける、そのエリオは。 「……すごい……」 イーグルの気高さと強さに憧れと羨望の眼差しを向けてる。 そしてヴィータはこの状況を今ひとつ掴みきれてなかった。 「なんだ、あれ? どっかの特撮の撮影か?」 ヴィータは辺りを見て、ある筈の無いカメラがあるかどうか探し、コンサートホールの上を視た時、一瞬でイーグルがスバル達の上空に現れた。 「 ど、ど、ど、どうしよう?」 スバルは急にイーグルが現れた事に驚いていた。 「嘘でしょ? 何でいきなり……現れるのよ」 ティアナは悲愴の表情でイグールを見つめて言った。 「……カッコイイ……」 「ねぇ、エリオくん、エリオくん。 お願いだか聞いてよ!」 もうイーグルの事しか考えていないエリオにとってキャロの必死の叫びは届いてはいない。 ヴィータは正常な状態ではない、スバル達を落ち着かせようとしていた。 「いいか、もしあいつが敵だとしても、あたしらが敵わないって決まってねぇから落ち着け。 それともあたしがアイツに負けるとでも想っているのか?」 そう言って、ヴィータはスバル達を見つめる。スバル達も日頃から感じてるヴィータの強さがイーグルに対する不安や恐れを消してゆく。 そしてイーグルがスバル達に所に近づいて来た。 「来やがったな、よしお前らッ! デバイスを起動させるぞ!!」 「はい!」 「グラーフアイゼン」 「マッハキャリバー」 「クロスミラージュ」 「ケリュケイオン」 「ストラーダ」 「set, up」 半壊したコンサートホールにスバル達の声が響き、それぞれのバリアジャケットとデバイスを展開した。 デバイスを構え、イーグルを迎え撃とうした時、イーグルは、一瞬でスバル達の視界から消え、スバル達の後ろに回った。 「え、そんなのあり? 」 スバルが驚きながら、後ろのイーグルに向かって言った。イーグルは気絶してる、つばさを抱きかかえ、 淡い光を発しながら飛翔の姿に戻った。決して裸ではなく服を着た状態で戻った。飛翔は辺りを見回し、一際に目立つ格好をしてるスバル達の方を見つめ、 数秒の沈黙の後、つばさを地面に置き、飛翔は恐る恐るスバル達に問いかける。 「あのー、貴方達は、何なんですか?」 飛翔の問いにスバルが必死に説明をする 「えっと、 あたし達は時空管理局本局 古代遺物管理部 機動六課のスターズ分隊とライトニング分隊で、 あっちのから、ティアナ、エリオ、キャロ、ヴィータ副隊長で、あたしがスバルだよ」 スバルは満足そうに説明を終え、飛翔を見つめる、対する飛翔は恐怖が頭を渦巻いている、 普通の一般人の飛翔がこの説明を聞いても、とても理解出来るものではない、そこにヴィータが面倒くさそうに飛翔に言い。 「はぁ~。 とりあえず、一緒に来い」 言い終えた時、シグナムがバーサーカとの戦いで出来た天井の穴から現れ、その事により飛翔の恐怖は更に増した。 シグナムも飛翔の様子を見て、状況の確認と飛翔の事をヴィータに聞く。 「なぁ、ヴィータ。そいつは誰だ、先程から今にも死にそうな顔をしてるのだが。 あと、ここで暴れて居た怪物はどうした?」 「あぁ、コイツ?変身ヒーロで怪物もコイツが倒した」 ヴィータの答えにシグナムは困惑した。 シグナムの眼から見ると、怪物を倒せると到底理解出来る物では無く、更にヴィータの変身ヒーロとゆう言葉が寄り困惑を招いた。 「ちょと待て、ヴィータ。その変身ヒーロとは具体的に何だ?」 「えっと、めちゃくちゃ速いスピードと炎使いで剣も使ってたぞ」 「なに、それは本当か」 シグナムから困惑は消え、変わりに歓喜と好奇心がシグナムを支配した。 自分と同じ炎使いで剣も使う物、その言葉にシグナムはとっては行けない行動を起こした。 レヴァンティンを飛翔に向けた、その事により飛翔は錯乱状態に陥り、勝手に左手のゴッドフェザー が覚醒し、 飛翔をライディーンイーグルに成った。 「おお、これがお前の力か?なかなか強そうだな!」 そお言い、嬉しそうにレヴァンティンを構えるシグナムの視界からイーグルが消え、次の瞬間シグナムの騎士甲冑ごとを斬られいた。 「何しやがんだ、テメェ!」 ヴィータはイーグルを激しく睨んだ。対するイーグルは冷たい視線でスバル達を見つめ。 「貴様らは、敵だ」 虚ろな声で言い、イーグルは又スバル達の視界から消え、エリオ、キャロ、ティアナを炎を纏った拳で殴り、バリアジャケット でも吸収できない、衝撃が3人を襲い、気を失った。その光景を見たヴィータは怒りの儘にイーグルに向い、イーグルも天井の穴から屋外に出て ヴィータを迎え撃つ。 「テメェだけはゆるさねぇ!!」 ヴィータの怒声とコッキング音が響き、ハンマーフォルムからラケーテンフォルムへ変形し、イーグルに攻撃を仕掛ける。 「はぁぁぁ!」 「ハァッ!」」 ヴィータの怒りに任せた攻撃は全てイーグルにかわされ、隙を突いてヴィータの騎士甲冑を切り刻んでゆく、 その事にヴィータの怒りが増し更に隙が多くなるとゆう悪循環が続く。 スバルは斬られたシグナムに駆け寄り、シグナムを気遣った 「大丈夫ですか?シグナム副隊長」 「あぁ、大丈夫だ、斬られた傷もそれ程、深くはない。私達もアイツを倒す」 「は、はい」 シグナムとスバルはイーグルとヴィータが戦っている、コンサートホールの上空に向う。 イーグルはヴィータに止めを刺そうとしてた。 「イーグルフレアー」 そう叫んだ瞬間、背後からシグナムとスバルの攻撃を受け、イーグルフレアーは軌道を反れ、ヴィータに当たらなかった。 シグナムが叫んだ。 「ヴィータ、スバル一気に方をつけるぞ!」 「おう」 「はい」 そして3人、それぞれの必殺技に撃つ。 「飛竜……一閃」 「ラケーテンハンマー」 一撃、必倒! ディバイン……バスタァァー!!」 三つの必殺技がイーグルに迫る、イーグルは虚ろの声で囁く 「ゴッドバードチェンジ」 イーグルは一瞬で炎の鳥に変わり、その姿にスバル達も驚いていた。 三人の必殺技とイーグルのゴッドバードアタックがぶつかり合い、相殺して4人は気を失なう。 少し時間経ち、コンサートホールにロングアーチの隊員が証拠隠滅と気を失っている、スバル達の回収を行っている。 「急げ、時間がない」 上司の男が部下を命令してる時、ある隊員が飛翔を発見し上司の男に報告する。 「隊長、この者に魔力で攻撃された箇所が多数見受けられます」 上司の男も困惑気味で話す。 「と、とりあえず、この男をクラウディアに連れて行く」 部下は飛翔を運び出そうとしたがつばさを抱きしめてた腕が解けずに上司の男に相談する 「隊長、この男が抱きしめている女の子は如何すれば良いのでしょうか?」 上司の男は焦りながら 「もう時間が無い、一緒に連れてけ!」 そして飛翔はクラウディアの客室で眼を覚ました。 「おはよう、鷲崎飛翔くん」 はやては微笑みながら、飛翔の名を呼んだ。 「何で俺の名前を知ってるんですか?」 飛翔は平常心を装っているが内心は気が気ではない。 「別に、ただ、君のことを調べただけや。名前以外の事も知ってるよ」 はやては笑顔で飛翔の質問に答えた、その答えに飛翔は驚き、ある言葉が頭に浮かんだ、時空管理局。 「貴女もあの人達の仲間なんですか?」 飛翔はあの時の恐怖が甦り始めた。はやてはそれに気付き、飛翔に謝りだした 「あー、あれはこっちが悪いはかんにんな。あないな事が遭った、後にいきなり管理局やら剣を向けって、本当にごめんな」 不思議そうにはやてを見る飛翔。 「で、物は相談なんせやけど、時空管理局に入ってみない?」 飛翔は突然の勧誘に驚き、思考が数秒間停止した。 「あー、ごめんな、いきなりこんな事、言うて。でも良い話と想うけどな」 はやては飛翔に何か言いたそうにしている、それに気づき飛翔は、はやてに尋ねる。 「何ですか、良い話って」 「プライベートな事に口を鋏むのはあまりしたく無いけど……飛翔くんの両親、交通事故にあって 意識不明の重体でしょ。」 はやての言葉に飛翔は驚愕する、はやても話を続ける。 「そして、今は親戚の叔母さんの所に住んでるけど、あまり迷惑は掛けたくない? でも、つばさちゃんを面倒見るには衣食住とお金が要る、だから叔母さん家に居なきゃいけない、でも管理局に来れば お金と衣食住すべて手に入るんや、良い話と想わないかな?」 はやては問い掛ける、飛翔も叔母さんに迷惑をかけずに居られるならそれで良いと想い。 「分かりました、管理局に入ります」 「ありがとう、飛翔くん」 はやては飛翔と握手をして、満面の笑みであった、ただ一瞬、邪な笑顔がちらついていた。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2722.html
切り替わる仮面。 自らを映し出す心の鏡。 映るのは自分だけとは限らない。 02 Montage AM12 53 機動六課、隊長室。そこでは、現在重苦しい空気が流れていた。 「――で、この人に助けてもらったと」 「うん……」 世界が時間を取り戻し、六課のシステムが復旧した頃、なのはと青年は六課に保護され、現在部隊長であるはやてに事情を説明していた。 しかし、その内容はとても信じられるようなものではなく、はやては頭を抱えたくなった。 当事者の一人である青年は連れてこられてすぐは物珍しげに辺りをキョロキョロと見回していたが、今は大人しくなのはの隣で、フェイトとデスクに腰掛けたはやてに向き合っていた。 はやては青年の顔を見つめる。この青年も訳が分からない。 六課に保護したはいいが、何故か腰に銃を下げていた。質量兵器が禁止されているというのにどうやってそれを入手したのかは知らないが、押収してみるとその正体はアンティークのようなもので、弾丸は出ない仕様になっていた。 着ている制服らしき服はタイまで締められ、首から提げていたのは携帯型の音楽プレーヤー。 戦地にいたとしてはおかし過ぎる格好だ。浮世離れした奇妙な存在感を、彼は放っていた。加えて、 「シャドウに影時間、か……」 隠された時間。止まっていた時間。映像記録の繋がりの不自然さも物語っている。 確認した映像記録では、ほんの一秒前まで存在していなかった青年がなのはの隣に立っていたのだ。 自身も体験している以上、影時間というものの存在については認めざるを得ないだろう。 しかし、なのはの言う「化け物」はどうにも要領を得なかった。それを語るなのは自信も困惑した様子で、「手が沢山生えた影のような化け物」とこれだけだ。 しかしなのはの言葉からは嘘は感じられなかったし、隣の青年の証言も合わせて考えるに、それはどうやら事実であるらしかった。 証拠がないからと言って十年来の友の言葉を軽く扱うはやてではない。 シャドウと呼ばれる怪物にどう対応すればいいのか……。 鍵は、目の前の青年が握っているらしい。 AM12 00 時間は影時間に遡る。 「あの、さっきはありがとうございました」 「……気にしなくていい」 あの後、なんとか立ち上がったなのはは、彼に話を聞いていた。 彼が道に迷っていたこと、偶然なのはを見つけたこと。そして、影時間のこと。 「影時間?」 「そう。一日と一日の狭間に存在する、隠された時間。 この時間の中では特殊なものを除いて一切の機械が動かなくなり、人間も、一部の人たちを除いて、「象徴化」し、棺型のオブジェになる」 青年の話は胡散臭いことこの上ない。 しかし、異常なこの現状や、先ほどの恐怖が拭い去れずにいるなのはは、それ併せて考え、青年を信じることにする。 頷いて、続きを促した。 「その一部の人たちは、「ペルソナ使い」と呼ばれる。 僕がさっきして見せたように、精神の力を具現化させることができる、素質を持った人たち。 さっきの怪物…僕が「シャドウ」と呼んでいるアレは、その素質を持った人を襲う」 「それって……」 なのはの呟きに、今度は彼が頷いた。そう、と呟いて、言葉を続ける。 「あなたにも、ペルソナを使う素質がある」 青年の言葉から数分後、影時間が終わり、周囲があるべき時を取り戻し始めた。 ガジェットもこれまでと同じように活動を再開する。 ちょうど一時間前と変わらない光景に、なのはは気を引き締めると、レイジングハートをセットアップした。 「それは……?」 驚きに目を見開く彼に微笑みかけると、残るガジェットを殲滅すべく、なのはは空に戻って行った。 青年は、魔導師を見たことは無論なく、ましてやこの世界の常識が一切分からない。 とりあえず目の前の女性が壊している機械を見て、自分も参戦して手伝おうかと思ったが、どうやら必要なさそうだ。 一気に手持ち無沙汰になってしまった青年は傍若無人にもズボンのポケットに両手を収めると、戦闘を傍観し始めた。 彼女に話を聞かない限りは自分はここで行き倒れるかもしれない。 転生してすぐそれはごめんだった。ならばここはこの戦いが終わるのを待つしかない。 なのはとしても、青年が下手に動かない方がやりやすかったこともある。 しかしそんな判断がその事態を招いたのかも知れない。 なのはから遠く離れ、射程から離脱していたガジェットは、近くにいた青年の後ろに回り込むように旋回していたのだ。 なのはが気づいた時には既に遅く、ガジェットは青年に攻撃を仕掛ける寸前だった。 「危ない、後ろ!」 なのはの声に咄嗟に振り返った青年は、ガジェットの攻撃をかろうじて回避した。 なのはは安堵の溜息をつき、しかし彼の矛盾に内心首を傾げた。 何故あれ程の怪物を倒せておきながら、攻撃に参加しないのだろうか? 彼はただ単にこの世界がどういうものか分からなかったし、戦う必要も思い当たらなかったので手を出さなかっただけなのだが、それでも今の不意打ちには思うところがあったらしい。 ホルスターの銃を抜くと、その銃口を躊躇うことなく、自らの頭に向けた。 「何を……!?」 するの、となのはが言い終わる前に、そのトリガーは引かれた。体を銃身に、精神を火薬にして。 果たして放たれた弾丸は、彼の心の仮面。自らを守護する精神の鎧であり、剣。 「オルフェウス……!」 最も目を引くのは背に背負われた巨大な竪琴だ。 そして、異様に細長い付け根と、その先に円筒を取り付けただけのような異形の手足。 腹部にはスピーカーのようなへこみがあった。アンバランスなシルエット。 青年に似ているようで、細部で大きく異なる異人。 「あれが……ペルソナ」 現れ出でし幽玄の奏者は、その背に背負う竪琴を後ろに振りかぶると、か細い腕のどこにそんな力があろうかという勢いで、思い切りガジェットに叩きつけた。 凄まじい衝撃にガジェットは地面にたたきつけられ、外郭である装甲がひしゃげる。 その一撃はガジェットの内部に損傷をきたしたらしい、ガジェットの機能は完全に沈黙した。 実験とも言えるオルフェウスでの物理的な攻撃の結果は予想通り。 シャドウ以外にも、この世界の機械にペルソナの攻撃が通用することがわかった。 それだけを確認すると、彼は自らの内で心の仮面を付け替える。 更なる標的のガジェットを見定めると、再びトリガーを引く。知らず、彼の口元には微笑すら浮かんでいた。 放たれたのは、兜を頂く隻眼の男。北欧神話の主神、 「オーディン!」 マントと雷をその身に纏う雷神、オーディン。その姿はまごうことなき王者たる威光を放っていた。 オーディンはその手に持つ槍「グングニル」を天に掲げた。 万雷を孕む黒雲が辺りに立ち込め、周囲に雷鳴を轟かせながら雷を降らし始める。 「マハジオダイン」。強大な雷は周囲に散らばっていたガジェット全てを貫き、撃ち洩らすこともなく破壊していった。 大規模な雷の嵐が静まり、黒雲が消えうせると、オーディンの姿もそれに伴うように露と消えた。 彼は周囲を見渡すと、呆然としているなのはを見上げた。 「終わり?」 「う、うん」 あっけなくガジェットを殲滅してみせた青年の能力は、なのはの想像以上だった。 青年は銃をクルクルと手で回転させてみせ、ホルスターに収める。 気障なパフォーマンスだが、青年はそれを自然体でやっているらしい。見惚れるほどさまになっていた。 正直彼には驚かされっぱなしで呆然自失のなのはだったが、その後、とりあえず彼を保護するとともに六課へ帰還、事の経緯をはやてに説明し、今に至る。 「で、あの「力」はなんや?魔法か?」 はやての言葉は、青年に向けられたものだった。 映像記録に残されていた彼の戦闘の映像は、すでに眼を通していた。 常ならざる能力であることは確かだが、その正体は不明のままだ。 見た感じでは、キャロの召喚術に似ていないこともない。 彼は少し思案し、やがて首を横に振った。そして、一言だけ単語を口にする。 「ペルソナ」 「え?」 「『ペルソナ』という能力。シャドウに対抗し得る、唯一の力」 「……詳しく聞かせてもらえる?」 フェイトが続きを促した。はやても頷く。彼は逡巡する様子を見せた。 自分の中で考えを纏めているような感じだ。 「これは、僕の主観ですが」 やがて彼は自分の心臓の位置に手を置き、そう前置きしてから話し始めた。 「……皆さんの使う魔法とは、全く別のものです。 潜在意識にある心の力を具現化したもの。言葉に表すならそんな感じです」 ……ペルソナについて一通りの説明を終えた彼は、もう話すことはない、とでも言うようにポケットに手を収めた。 「つまり…別の次元から何かを呼び出す召喚術とは、違う召喚術ってことかな?」 フェイトの問いかけに、彼は頷いた。 「ペルソナは内なる心の力。引き出すのに必要なのは技術じゃない。 魔法は技術、ペルソナは能力。そう解釈してもらえれば分かりやすい。 召喚器で頭を打ちぬき、仮想の中で内なる力を引き出す。 安定した召喚を行うにはこのプロセスを行う必要がある。でも、必ずしも必要な訳じゃない」 青年は頭のこめかみに手で作った銃を押し当て、引き金を引く真似をした。 「……それで、君はなんでそんなに事情に精通してるんや?」 はやての質問は、核心を突くものだった。彼は物思いに耽るように眼を瞑ると、やがて口を開いた。 「……僕は、この世界の人間じゃない」 三人は一様に驚く。薄々、この世界の人間ではないのでは、と思ってはいたが。 職業柄、次元漂流者というものにはまま、遭遇することがある。 しかしその殆どは自分の身に何が起こったのか理解していない。 しかし彼は自分が別世界にいることを明確に理解していた。 彼は、自分と自分の居た世界、そしてここに来ることになった経緯を説明する。 「――その後、僕は気づいたらこの世界にいた」 ユニバースの力の事や、デスを封印してからの経緯の事など、自分が向こうの世界では死んだ身であることは黙っていた。 自分でもうまく説明できる自信がなかったし、何故か彼は、目の前にいる人たちに自分は死んでいたのだということを知られたくなかったのだ。 「んー、なんやとてつもない話やなぁ……」 「それじゃあ、なんでこの世界に影時間があるのかは、分らないの?」 「……はい、僕もこちらに来たばかりで事情がよく……。次は、僕の質問に答えてもらえますか?」 この世界について、彼はまだ殆ど何も知らなかった。 目にした魔法にも興味があったし、この世界を知ることは不可欠だ。 その後も情報交換のようなやり取りは続くが、当然のように話はペルソナに帰結した。 この世界に影時間とシャドウがある限り、その脅威を退けられるのはこの力だけなのだ。 「基本的にペルソナは一人一体。僕のように、同時に複数のペルソナを所持することができる人も稀に存在します」 「私たちがペルソナを出すには、どうしたらええの?」 「……多分、召喚器で頭部を撃ちぬくことで、僕と同じようにペルソナを引き出すことができます。 でも、不安定なままの力を無理やり形にして引き出すようなものなので、下手をすれば暴走する」 自分にも経験があるのでわかる。 暴走を避けて安定して引き出したいならば、自然に覚醒するのを待つしかない、ということになる。 そんな悠長な、とはやては言うが、こればかりはどうしようもない。 「それで、これからのことだけど……」 そんな中、フェイトが言い難そうに話を切り出した。 「しばらくはここで身元預かりってことになると思う。 自由な行動ができなくなるから、申し訳ないんだけど……」 「いえ、是非お願いします」 身一つでこの世界に放り出された彼にとっては、衣食住もままならない状況が好転したといえる。 フェイトはすまなそうにしているが、制限がつくとはいえ、身元預かりとは願ってもない待遇だ。 「そういえば、自己紹介もまだだったね。私は高町なのは。」 確かに。なのはの言葉に漸く気づいた。苦笑を洩らしながら、彼は名乗った。 「僕は……藤堂、綾也です。」 なのはに送ってもらい、宛がわれた自室に入ると、綾也はベッドに倒れこんだ。 久しぶりに力を行使したからだろうか、眠気が酷い。 この世界で目覚めた時、気づいたら影時間の只中だった。 混乱するも、ここが別の世界だということを思い出し、とりあえずあてもなく歩きだす。 途中で見つけた人影と、今まさに襲いかからんとするシャドウ。咄嗟だった。 定位置である腰のホルスターに手を伸ばすと、召喚器を手に取りペルソナを召喚した。 今になって考えると不思議である。 なぜ自分はこの月光館学園の制服を着て、携帯音楽プレーヤーを身に着け、あまつさえ召喚器を持っていたのか。 思考は眠気にかき乱される。 気を抜けば失いそうな意識をなんとか繋ぎ留め、残ったなけなしの気力で起き上がった。 もぞもぞとブレザーを脱ぎ、タイを解いてそれらを床に放り出すと、綾也は再びベッドに倒れこみ、今度こそ意識を手放した。 違和感に目を覚ますと、そこは一面藍色だった。 ベルベットルーム。夢の中にいながら、これは夢だと自覚しているように、矛盾を感じる時がある。ベルベットルームにいるときは、そんな感覚に襲われる。 「また、お目にかかりましたな」 呼び出しておいてよく言う、と思うがそれは黙っていた。 「さて、今宵あなたを呼び出すのは二回目ですな。先ほど、と言ってよろしいものか、話の続きがございます」 「僕も聞きたいことがあった」 それはそうでございましょう、とイゴールは笑いながら頷いた。 「さて、何からお話致しましょうか……。そういえば、紹介がまだでしたな。」 イゴールが示したのは隣の麗人だった。 「初めまして。マーガレットでございます」 「……エリザベスさんじゃないんですか?」 イゴールに視線を送るが、老人はただ黙して笑みを深めるだけだった。 「妹は行方不明でございます」 「妹!?」 以外だった。エリザベス……彼女に姉妹がいたなんて。マーガレットと名乗った彼女に初めて会った気がしないのも、納得できる気がした。 しかし、行方不明とは。この世界の住人にも、そんなことが起こりえるのだろうか。……ありえそうだ、彼女なら。 「ずっと興味を惹かれておりました。妹を打ち倒す程の力を持った殿方……。一度、手合わせ願いたいものです」 「……ッ」 マーガレットは微笑んだ。綾也は肌が粟立った。一瞬だったが、自分に向けられたプレッシャーは凄まじかった。 無意識に、反射と無効を持たないペルソナにチェンジしてしまう程に。 間違いない、この人は強い。これまでに培ってきた経験が、警鐘を鳴らしていた。 「それほどにしておきなさい、マーガレット」 「これは私としたことが、つい」 冷汗が頬を伝う。内心、イゴールにこれほど感謝したのは初めてだった。 「それでは、本題に入りましょう。あなたはこの世界に誕生した際、ユニバースの力を失いました」 「!」 「いかにユニバースの力といえど、ここまでの奇跡は無理があったようですな。 大いなる奇跡の反動にか。それは定かではありませんが、今のあなたはユニバースを使えません」 なんとなく、気がついてはいた。自分の中にあった、あの「不可能な気がしない」感覚が抜け落ちていたのには。 だからと言って何か問題があるかと言われれば、答えはノー。今までが異常だったのだ、ただ元に戻っただけ。 「……僕はこれからどうすれば?」 「あるいは、意味や目的などないかもしれませんな。人生そのもののように曖昧で、あなたの行く末は私にもわかりえません。 深い漆黒の闇に覆われ、見通すことのできない前途。多難でございますな」 イゴールはフフ、と笑った。笑いごとではない。 「とりあえずは日々を気ままに過ごしてはいかがでしょうか。いずれ来るであろう試練に」 自分がここ来た事。そこに意味あるのだろうか。イゴールの言うとおり、意味などないのかもしれないが。 それでも、やるべきことはある。 「今は休まれるのがよろしいでしょう。そろそろ目覚めの時間ですな」 またもあの感覚だ。意識が浮上し、ベルベットルームを離れるのがわかる。 「それでは、ごきげんよう……」 綾也は夢とベルベットルームに別れを告げると、ひどい空腹とともに目を覚ました。 とにかく朝食を口にしようと部屋を出ようとして、どこで食べればいいのか分からない事に気づき、途方に暮れる。 ちらと視界の端に映った部屋の隅には、見覚えのある青い扉があった。 「こんなところに作らなくても……」 軽い眩暈を感じたのは、憔悴のせいか、空腹のためか。 とりあえず廊下を歩いて出会った人に聞こうと、部屋を後にぶらぶらと廊下を進む。何度目かの角を曲がろうとして、意外な人物に出くわした。 「君は……綾也君」 「確か、フェイトさん……?」 眠気も一瞬で醒めるほどの美女が、驚いた様子で綾也の名を呼んだ。 昨夜の自己紹介で教えられた名を確認するように言う。 「よかった、探していたんだけど……」 「あの。朝食って……どこで食べられますか……?」 フェイトの言葉を遮る綾也の言葉が以外だったのか、フェイトは瞬きを繰り返した。 「ごめんなさい、きちんと伝えておくべきだったよね……」 「いえ……」 綾也は外見通り、基本的には小食だが、食べる時は食べる。そして今は、食べる時だった。 彼は食堂のメニューを開き、彼のスタイルを考えると信じられない程の量を注文し、黙々と平らげ続けた。 フェイトはそれを余程お腹が空いていたのだろうと解釈したらしく、すまなそうにしている。 その光景は食堂の一角において、かなり異質な取り合わせだった。見慣れない青年と六課が誇る敏腕執務官が食事を共にする。 それだけでも周囲の視線は付きまといそうなものだが、六課の職員はほとんどが女性である。 その視線の中には、明らかに綾也へ向けられる好奇の視線が含まれていた。本人には自覚がなくとも、コーヒーを口に運ぶ彼の姿はカリスマ級だ。 しかし、当の二人はその視線には全く気付かず、妙な空間を形成し続けていた。 「よく食べるんだね」 「食べないと力が出ない」 漫画の食いしん坊キャラのようなセリフを吐きながらも、走り出した食は止まらない。あっという間に三人分はあろうかという量の朝食を取り終えると、食後のデザートへ入っていった。 「食事の最中悪いんだけど……」 フェイトの声のトーンが下がり、デザートを口元に運ぶ手は休めずに、綾也は目線をパフェから外した。 「この後、呼び出しがあるの。ここの部隊長から」 「部隊長?」 「昨日、私の横にいた人」 あの人か。独特のイントネーションで話す、女性。 「昨日の部屋……部隊長室に来てほしいって。私も同行する予定だから、探してたの」 「何の要件なんですか?」 「わからないけど、大事な話って言ってたよ」 やはり影時間やシャドウ、ペルソナに関することなのだろう。綾也はパフェを食べ終えると席を立った。 呼び出されている上、待たせているとなれば長居は無用だ。フェイトの案内され、部隊長室へ向かう。 そこで、ある意味綾也の予想は肯定された。 「僕が、六課に?」 「そや。うちらはまだシャドウに対抗する力を持ってない。君の力が必要なんや。 その力を貸してほしい」 予想の中でも、かなり望ましい位置にあった申し出だ。 自分はこの世界においてエキストラではなく、役職を得ることになるし、生活にも困らない。 「僕の力でよければ、いくらでも」 「ありがとう、そう言ってくれると思っとったよ」 綾也の言葉を聞くと、はやては笑って言った。 「よろしくな、綾也くん」 差し出された右手を、綾也は握り返した。 「こちらこそ、お世話になります」 六課への入隊。それは暗闇に包まれたこの世界での一筋の光明のように感じた。 これからの旅路、行く手に何が待ち受けるのか。分からなくても、それでも何とかなる気がしていた。 ユニバースの力がなくても、自分には残っている。ペルソナと、絆が。色褪せることのない確かな輝きを放つそれが、行く手を照らしてくれように感じて。 元の世界に未練がないわけじゃない。還ることができたらどんなにいいだろう。 しかしここにも僕の居場所ができた。無責任に捨てることはできない。 今は尽力しよう。この世界の闇を晴らすことに。それが、僕のすべきことだと感じていた。 そして、夜が来る――。 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/cwcwiki/pages/435.html
新世紀エヴァンゲリオン バトルオーケストラ PORTABLE 新世紀エヴァンゲリオン バトルオーケストラ PORTABLEID+ゲーム名 ID+ゲーム名 _S ULJM-05480 _G EVA BATTLE O C0 money L 0x20395C14 0x05E69EC0
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/3621.html
辺り一面に広がる広大な荒野…その中になのはとユーノの二人が風に乗って舞う砂埃を 浴びながら立ち尽くしていた。しかし、直後に突如として彼方此方で爆発が起こった。 そして戦闘が始まった。地平線の彼方から続々と現れる大軍団。第一作目魔法少女リリカルなのはから 最新の魔法戦記リリカルなのはForceまで、なのはとユーノの二人を除いた全シリーズのキャラクター… 戦闘・非戦闘キャラを問わず、敵・味方を問わず、過去・未来を問わずに全てが徒党を組み、一方へ向けて 一斉攻撃を仕掛けていたのだった。 なのはとユーノの二人があたふたする中、大勢のモブ武装局員…ジュエルシードで巨大化した猫の背に 乗ったすずか…A sに色々出て来た巨大生物…ガジェットⅠ~Ⅳ…日本刀持った恭也やら美由希やら… バイクに乗ったティアナ…フッケバインの皆さん…等々、シリーズや時代の分け隔てなく、 様々なキャラが一斉に一つの方向へ向けて突撃して行く…が…相手側からの反撃によって次々に倒されていく。 上空ではアースラ・時の庭園・聖王のゆりかごが横に並び激しい砲撃を加えて行くが… これも相手側からの反撃によってあっという間に轟沈させられ、中からそれぞれリンディ&クロノ、 プレシア、聖王ヴィヴィオが飛び出して突撃して行く。 なのはとユーノの二人が不安げな表情で何もせず見つめて行く中、次々に倒れされ屍の山が築かれて行く。 最終的には戦いに加わらなかったなのはとユーノの二人を除く全てのリリカルなのはシリーズキャラが 倒されてしまい、同じく倒され崩れ落ちたヴォルテールの向こう側に見える、屍の山の上に立つ者の姿を なのはとユーノの二人は呆然と見つめていた… 「ディケイド…………。」 魔法少女リリカルなのは&仮面ライダーディケイド 超百合大戦
https://w.atwiki.jp/sukige/pages/67.html
METAL GEAR SOLID PORTABLE OPS 配信された人 メタルギア主