約 4,230,467 件
https://w.atwiki.jp/nanoharow/pages/332.html
大食漢走る 巨人の鼓動 ◆yZGDumU3WM 腹が減った。 如何なる環境であれ、人は腹が減っては動けぬ生き物だ。 武蔵坊弁慶——全身を筋肉で覆った縦横共に幅の広いこの男、馬鹿ではない。 その昔、寺の和尚に拾われ更生するまでは自動車やバイクの鍵をこじ開けて盗み、盗賊家業の足として使っていたし、 偶然墜落してきた戦闘機、ゲットマシンの修理をできなかった流竜馬を見かねて修理をしてやったこともある。 つまり、手先は器用、物覚えも悪くないのであるが、弁慶という男は単純な人間と見られがちだ。 まあ、実際問題、喋る蜥蜴を食料にしようとしたりと、本能に忠実でもあるが。 ゲッターロボという乗り手を殺す殺人マシンに適応する人間と言うのは「馬鹿か狂人」だとは盟友、神隼人の言葉だったか。 あれの基準で考えた場合、弁慶という人間はその中間。同じく盟友、流竜馬は馬鹿。神隼人は狂人だ。 決定的に世界に反抗する馬鹿でもなければ、ゲッターというモノに魅せられた狂人でもない。 あえていうなら、この二人の間でバランサーとして働く存在が弁慶だった。 かつてゲッターロボの危険性に誰よりも敏感に反応したのはこの男だったし、度々衝突する荒くれ者の竜馬と冷徹な隼人の間を取り持ったのも弁慶だ。 本人は気づいていないが、ゲッターチームと呼ばれた男達の中で一番常識人だったのは弁慶だった。 「腹が減ったぜ……あの銀色の奴、新手の<鬼>か? 馬鹿みてえにすばしっこかったな」 鬼——ゲッターロボに未来宇宙で滅ぼされた種族の末裔であり、人類の敵である生命。 御伽噺に出てくるような角の生えた、噛み付くことでゾンビのように仲間を増やす怪物ども。 弁慶の恩人である 寺の師匠を怪物に変えた仇であり、弁慶にとっては怨敵に等しい存在だった。 手に持った抜き身の日本刀を鞘に戻し、軽く宙を睨んだ。丸い顔が憎悪に歪む——普段はとぼけた悪人面が凶悪になる。 「もしも鬼だったら……ぶっ倒してやる。……ん?」 己が腰の鞘に収めた日本刀が、目に見えるようなただならぬ妖気を放っていることに気づいた。 青い妖気を放つ日本刀に煌きに、意識を吸い込まれそうになる。この刀、閻魔刀は悪魔に反逆した悪魔スパーダが息子に残した武具——所謂魔剣妖刀の類である。 並みの精神力の人間が持てば、その妖しく光る刀身に心奪われ、人を斬る悪鬼と化すであろう魔性の刀だ。 が、しかし。 弁慶はかつて妖刀の持ち主だった男である。 童子切丸。次元の彼方——異世界<黒平安京>で失われた筈の、ゲッター線を放ちあらゆる防御を切り裂く日本刀。 殺生丸という大妖怪と共に砕け、このフィールドの何処かに突き刺さっているであろうそれの存在を、弁慶は知らない。 なにはともあれ、その魔性は長い間、弁慶という人間の精神力を鍛えてきた。 ましてや、ミッドチルダに転移する前、異世界での最終決戦でゲッター線という総ての生命を取り込む<進化の意志>の支配に打ち勝った今の武蔵坊弁慶にとって、 閻魔刀の魔性は魅入られるほどのものではなかった。溜息をつきながら鞘に閻魔刀を押し込み、腰のベルトに差し込んだ。 今の弁慶は、ネオゲッターロボに乗っていたときの黄色いパイロットスーツを着た格好だ。耐圧服に似たそれは、並みの刃物や銃弾を通さぬ頑強さがあった。 とてつもなく重いが、常人離れした筋肉達磨の弁慶にはちょうどいいくらいだ。すばしっこい蜥蜴を追い回せたのだから、その異常な身体能力が窺える。 それにしても……この日本刀、超人的膂力で弄られてもびくともしない鋼の感触。まさしく妖刀の名に恥じぬ剛健さだった。 「こいつぁ……当たりの支給品なのかどうか、ってとこか。俺以外が持ったら危ねえかもしれねぇな……」 精神力の強い人間ならともかく、女子供が抜き身の刀身を持ったら危ういかもしれない。刀に心を喰われるかもしれぬのだ。 うんと太い見た目に反して運動神経のある弁慶は、背中のバッグから地図を取り出すと、それを読みながら小走りで走った。 周囲の警戒も怠らぬあたりに、この男がしぶとい事情があった。 と、地図の中心地を眺め、その動きが止まる。 声に出して呟く。 「地上本部だぁ?! やれやれ、ここはなんでも——」 弁慶の動きがさらにぴたりと止まり、地図のある一点に釘付けになった。 そこは、スーパーマーケット。あの、何でも揃う場所だ。弁慶は地上本部に向かっていた足を反対方向に返し、走り始めた。 じゅるり、とつばを啜りながら。 「なんだ、気が利いてるじゃねえか。食い物を見つけるなら、スーパーが一番だよなぁ……へへっ」 こうして、弁慶の足はスーパーマーケットに向かった。 目的——食い物を見つける為に。 (スバルたちと合流するのは、その後でもいいよな……) 男は歩むが——ふとある可能性に気づいた。 ネオゲッターロボ——その巨躯は、何処にあるのだろうかと。 四十メートルもの巨体が隠せる場所などない……いや、あるにはある。 「軍事基地か地上本部、だなぁ。後で確かめてみるとすっか」 【1日目 黎明】 【現在地 D-2 市街地西部】 【武蔵坊弁慶@ゲッターロボ昴】 【状態】健康 【装備】閻魔刀@魔法少女リリカルなのはStirkers May Cry 【道具】基本支給品一式、ランダム支給品0〜2 【思考】 基本:殺し合いを止め、プレシアを打倒する(どうやって戦うかは考えていない) 1.まずは食い物を確保するか。 2.スバル、ティアナと合流。 3.軍事基地か地上本部に行き、ネオゲッターロボの所在を確かめる。 【備考】 5話終了後からの参戦です。 ・自分とスバル、ティアナ、隼人の4人は、ネオゲッターロボごとここに送り込まれたのだと思い込んでいます。 また、隼人がどうして参加者の中に居ないのかという疑問を持っています。 ・隼人がこのゲームに関わっていないことを知りませんし、スバルの来た世界が自分とは違うことも知りません。 ミライが鬼ではないかと疑っています。 装備と今後の方針——都市部に近づきそれぞれの探し人を探す、ということを決め、下山するべく神社の階段を下りると、 驚くほど澄んだ空気が鼻腔に入り込み、男は久しく感じていなかった爽やかさを得られた。その体躯は筋肉で絞り込まれていて、贅肉が無い。 それから歩くこと半刻。 ふと、遠方に鳴り響く爆音に気づき、ゼストは足を止めた。 皺の刻まれた顔を歪め、都市を白夜の如く染め上げる閃光に気づいた。背後を歩く少女が怪訝な顔でそれを見て、呟く。 「なんだ、あれは……?」 「魔法の行使、か。なんと大規模な……」 銀髪の美麗な大妖怪、殺生丸が死の間際に放った、ゲッター線と共鳴せし命の輝きたる必殺。 絶大な<力>を持つプラント種、ナイブズに命の危機を感じさせるほどのそれは、都市の中心部を廃墟に変え、遠方からでも視認できる眩い光を放出していた。 続いて大規模な破壊がもたらす破砕音が二人の鼓膜を叩き、その強大な力を誇示するように鳴り響き——沈黙。 魔法、という聞きなれぬ言葉に、緑髪に金色の眼を持った美しい少女——CCが顔を顰めた。 「魔法?」 「……市街地では戦闘が始まっているようだな。生憎俺の使い慣れた武器は今ここに無い」 「危険だと?」 ぬ、と唸り、ゼストはそれを肯定。 今この男が所持している武器は、魔法を使える人間の為の端末——デバイスであるブリッツキャリバーだ。 最終リミッターが外され、ACSと呼ばれる強力かつ多大な負荷を使用者に強いるシステムの解放された武具の形状は、具足。 かつてゼストが率いていた部下も用いていた、車輪による加速を目的とした地上走破用の装備だ。 ローラーブーツとでも呼称すべき鋼鉄のそれは、陸上移動をする分には爆発的加速力を使用者に与えることだろう。 ゼストは空戦魔導師——飛行を長時間行える人間だったが、この広いフィールドを飛行で捜索するのは目立ち、得策で無いと判断。 また、CCに会う前に行った実験で、魔法の行使自体にかかる負荷も増大していることも確認済み。 ブリッツキャリバーの加速性能に頼ることは、戦闘行動を意味した——それゆえ今は装備せずに待機状態にしてある。 管理局屈指の実力者だったゼストは、体術でも後れを取るつもりはない——戦闘時に疲労を蓄積しない為の措置。 そして、この首輪。 プレシアへの服従を強いるこの首輪こそが、全ての元凶に違いなかった。 「さて、どうしたものか……CC、お前はどうするつもりだ?」 「ルルーシュを探す……と言いたいところだが、都市部の中心区は危険か。 人が集まる分、殺戮に乗った大馬鹿者もいるというわけだな」 「そういうことだ。咄嗟にお前を守りきれる保証も無い。それに……」 ゼストは、CCが無造作に拘束服のベルトに挟んでいるナイフ『スティンガー』の刃を見て呟いた。 黒光りするナイフは、かつてゼストが傷を与えた戦闘機人の武器だ。ナンバーズの五番目たるチンク——この戦いにも参加させられている少女。 スカリエッティの手下であり、この殺し合いに乗ることが容易に想像できる敵でもある。 「……お前では使いこなせんだろう、その武器も」 「文句があるのか?」 CCは艶やかな笑みを浮かべて言い返したが、ゼストは知らん顔をして先を急いだ。 この女と話すのは——どうも疲れる。あまり長い間相手をしたくは無いな、と思う。 「さあな……とりあえず、仲間を増やすのが先決か。我々だけではいかんともし難い」 「自分ではどうにも出来ない、か。役に立たない男だな」 「……」 無言。 男は、この少女の傲岸不遜ぶりに呆れ果てていた。 二人の足は、南西へ——己が復讐の為に刃を振るう悪鬼がその先に存在すると信じ、孤高の槍騎士は道を行く。 待ち受ける、己の知るそれと異なる“高町なのは”の存在に気づかずに。 【1日目 黎明】 【現在地B−3 平地】 【ゼスト・グランガイツ@魔法少女リリカルなのは 闇の王女】 【状況】健康 【装備】ブリッツキャリバー(待機状態)@魔法妖怪リリカル殺生丸 【道具】オリーブ抜きのピザ(11/12サイズ)@魔法少女リリカルなのはStylish、支給品一式 【思考】 基本:高町なのはを捜索、抹殺する。 1.プレシアの抹殺 。 2.ルーテシアの保護 を行う。 3.ひとまず行動を共にする仲間を増やす。 4.なのはと戦うことになれば、ギア・エクセリオンの発動も辞さない——己の命を削ってでも。 【備考】 ・なのはとルーテシアが『健全な』歴史(StS)から来たのを知りません。 市街地は危険だという認識を持ちました。 ・CCとの協力関係は、ギブアンドテイクという暗黙の了解の上に成り立っています。 ・ブリッツキャリバーは、十話での殺生丸戦後からの出典です。 原作とは異なり、ファイナルリミッターが解除され、ギア・エクセリオンが使用可能となっています。 ・ギア・エクセリオンがゼストにかける負担の程度は、未だ明らかになっていません。 ゼスト自身は、自分のデバイスのフルドライブ同様、自身の命を削る可能性もあると推測しています。 【C.C.@コードギアス 反目のスバル】 【状況】健康 【装備】スティンガー×10@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【道具】支給品一式、ランダム支給品0〜2個(確認済み) 【思考】 基本:ルルーシュたちと合流する。 1.ひとまずゼストに身を守ってもらう。 2.向かってくる者は基本的には殺す。 3.ピザの対価を払う方法を考える。 【備考】 ・スバルが『StS』から来たのを知りません。 ・ゼストとの協力関係は、ギブアンドテイクという暗黙の了解の上に成り立っています。 ・「ギアス提供」「精神干渉」「Cの世界との交信」が不可能となっていることに気付きました。 ・再生能力も制限されている可能性があると考えました。 Back 幻惑の銀幕 時系列順で読む Next Little Wish(前編) Back 幻惑の銀幕 投下順で読む Next Little Wish(前編) Back クロノは大変な超人達を集めていきました 武蔵坊弁慶 Next 敵か味方か? Back ギブアンドテイクの契約 ゼスト・グランガイツ Next 空腹の技法 Back ギブアンドテイクの契約 C.C. Next 空腹の技法
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2847.html
前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ 砲撃魔法ディバインバスターはいつまでも撃ち続けられるような魔法ではない。 短距離走にも似て、砲撃時間は長くはない。 その限界時間まで撃ち終えたルイズは、レイジングハートを上に向けて顔をしかめた。 「ルイズ?」 「駄目。届いてない」 暴走したギーシュのゴーレムを撃破したとき、城下町で暴れる木を撃ち抜いたとき、どちらもジュエルシードをつかんだ、という手応えがあった。 だが今は限界まで撃ち続けてもその手応えがない。 魔力がジュエルシードまで届いてないのだ。 「なら、もう一回!」 再び魔力を溜め直せばディバインバスターは撃てる。 ルイズは今度こそと再びレイジングハートを構える。 そのとき、またルイズは閃光を感じた。 ジュエルシードの力が高まっているのだ。 その証拠にむき出しのジュエルシードが輝き、その中でゴーレムが急速に復元していく。 復元が簡単な土のゴーレムであっても、あの速度は異常だ。 「その前に撃ち抜いてやるわ」 ルイズの呪文に応じて作られた光球──ディバインバスターの発射台となるそれは、ディバインスフィアと呼ばれる──が徐々に大きくなっていく。 その間もゴーレムは急速に復元していき、ついにはルイズの魔法が完成する前に復元を終えた。 そしてルイズに右腕を向ける。 ルイズは呪文を止めない。この距離ならゴーレムが手を出せるはずがないからだ。 それに砲撃魔法以外にルイズには選択肢がない。 「リリカル・マジカル」 魔法の完成まであと一回というときにゴーレムが突き出した手がぼろりと崩れた。 崩れた腕の中からは黒い筒が現れる。 それを見たユーノが顔色を青くして、なおも力ある言葉を唱え続けるルイズの前に出る。 ディバインスフィアの前にだ。 「ルイズ!駄目だよ!よけて」 ゴーレムが突き出す黒い筒から爆発音がする。 同時にユーノが右手に作り出したシールドと何かがぶつかって爆音をあげる。 「早く、ルイズ逃げて!」 ルイズは訳がわからない。 あのゴーレムが何をしたのか、何が爆発したのかさっぱりわからない。 魔法を使ったのというのもおかしい。即席のゴーレムがそこまで高度なことをするはずがない。 それでもユーノの言うことはわかる。 光るフライアーフィンで宙を滑り、ゴーレムとの距離を開けた。 さらに、ゴーレムの黒い筒から3回音がする。 高速で飛ぶルイズには、ゴーレムが黒い筒から火を噴くおかしな形の火矢を射出したのがわかった。 それは本当におかしな形の火矢という他はない。 鏃の代わりに口を貼り合わせた黒いカップみたいなものがついている。 いくら火矢でもあんな尖ってない鏃では意味がないだろうとは思うが、ユーノが警戒しているのなら、きっと危険なものなのだろう。 その火を噴く矢が三つ、ルイズめがけて飛んで来る。 「な、何よ!あれ」 このままでは火矢に当たってしまう。 ルイズはただ後ろに飛ぶのをやめ、右に滑る。 どんな矢でも横に避けてしまえば当たりはしない。 「えっ?」 ルイズは驚きとともに速度を上げる。 矢は普通、真っ直ぐにしか飛ばない。 だが、この火を噴く矢はルイズが避ける方向に向きを変えて追ってくる。 「何よ、こいつ」 ルイズは自分より少しだけ速い矢を振り切るべく、今度は地面に向けて加速した。 学院の品評会場であわてていたコルベールもゴーレムと、それと戦うメイジに気づいていた。 会場にいる他の生徒や教師と同様にコルベールも空を見上げる。 「あれは……」 コルベールもメイジを追跡する火矢を考えたことはあった。が、今はその研究は止まっている。 「ほう」 コルベールはほんの少しの間、危険を忘れて感嘆の声を上げた。 火矢はルイズを追い、地面に向きを変える。 肩越しにそれを見たルイズは、地面にぶつかる寸前で反転。地面を蹴って今度は急上昇する。 ルイズを追っている火矢も向きを変えてルイズ追い、上昇に転じようとするが、1本は間に合わなかった。 地面に激突し、そして…… かぜっぴきのではなく、北風のマリコルヌは人混みを外れて少し休んでいた。 そろそろ会場に戻ろうとしたところで、空気を切る鋭い音が聞こえてきた。 振り返ると何か白いものが落ちて、すぐに上に飛んでいく。 顔はわからないがスカートをはいた女の子にも見えた。 上に飛んでいく少女にマリコルヌはしばし注目する。 スカートはどんどん高く飛んでいき、マリコルヌは首をどんどん上に傾けていく。 「もうちょっと。ああっ、おしい」 しまいには体をのけぞらせてまで上を見る。 そしてマリコルヌは仰向けに倒れてしまった。 同時に爆発が起こり、土砂がマリコルヌの上に落ちてくる。 「うわ。ぺっ、ぺっ」 顔に落ちた泥をはたいたマリコルヌは見失ったスカートの代わりに足元を見た。 「ひぃっ」 そこにできていた大穴に腰を抜かしてしまう。 ──もし、あのまま立っていたら…… マリコルヌは歯をがちがち鳴らせた。 空にまで及ぶ爆風の圧力にあおられ、ルイズはわずかに上昇した。 その下をルイズほどにはあおられない火矢が二本、ルイズを追い越して走っていく。 ルイズはレイジングハートを前に向ける。 二本の火矢は方向を変えるために速度を落としている。 そしてルイズにはディバインバスターを撃つために溜めていた魔力がまだ残っていた。 「シュートっ」 一瞬の魔力光が火矢の一本を貫き爆発を起こす。 バリアジャケットで防ぎきれない熱い風になぶられ、顔を赤くしたルイズは後ろに飛んだ。 次に襲ってきたのは爆煙を突き破り飛んでくる最後の火矢。 あわてて速度を上げようとするが近すぎる。逃げられない。 「!!!」 ルイズは目をきつく閉じた。 爆発。 闇の中で予感した衝撃は届くことはなかった。 「ユーノ……」 彼女の使い魔が、また火矢をシールドで防いでいた。 衝撃も熱風も届かない。 ルイズはもし直撃したときのことを想像した。 地面にできた穴。バリアジャケットでも防ぎきれない炎。 「あんなのを、防いでいたのね」 ──ユーノが来てくれなかったら 背中が少し寒くなる。ルイズの体が少し震えた。 地上のゴーレムは空を見上げて動かない。 ルイズも少し休みたかった。 爆発のおかげで変な耳鳴りがするし。 ばっさばっさ。 きゅるきゅる。 訂正。耳鳴りではなかった。 いつかと同じように後ろに何かいる。 「ねえ、ルイズ」 空でもすっかり聞き慣れたキュルケの声。 「リリカルイズ」 訂正するタバサ。今日も真顔だ。 「わかってるわよ!で、リリカルイズ。なにやってるのよ」 ルイズはくるり振り向く。 「なにやってるのよ。じゃないでしょ。キュルケ。ここは危ないよの。タバサまで連れてきて。早く逃げなさい!」 「大丈夫よ。魔法少女リリカルイズがぱぱっとやっつけてくれるんでしょ。あのときみたいに」 「できるくらいなら、ぱぱっとやってるわよ」 「なんで?あのときみたいに、あなたの魔法でどーんと行けばいいじゃない」 「なんでって、あのね……えーと」 説明しようとするが詰まってしまう。 ルイズも感覚ではわかっているが、うまくは説明できない。 「それはね」 目が明後日の方向を向くルイズに変わってユーノが説明を始める。 「あのゴーレムを倒すには、ル……」 「ユーノ!」 「あ、うん」 あわてて言い直すユーノ。 「リリカルイズが十分な魔力をジュエルシードに当てないと行けないんだ」 「ジュエルシードって?」 キュルケが首をかしげる。 「あのゴーレムの中にある青い宝石だよ」 「あ、ユーノ!教えちゃっだめ!」 「あっ」 口を押さえるユーノを見て、キュルケがにやにや笑う。 ──ふーん、ジュエルシード。 言われてみれば、城下町のお化け大木にもそんなのがあった。 「ささ、言っちゃいなさいよ。手伝ってあげるから」 キュルケに促されて決まり悪そうなユーノが説明を再開する。 ルイズは止めたかったが、いい方法が見つからないのでキュルケに教えることにした。 「リリカルイズの魔法だったら一回の砲撃だとジュエルシードに十分な魔力が届かないんだ」 「だったら2回撃てばいいじゃない」 「2回目を撃つには魔力を溜めないと行けないんだ。でも、その間にゴーレムは復元してしまう。そしたら、またやり直しになるんだ」 「近づいて撃ったら?」 「あの質量兵器にやられると思うんだ。僕もあれを防ぎ続けるのは難しいと思うし」 「質量兵器って?」 「質量兵器というのはね、えーと」 本を何冊か読んだが、この世界には質量兵器という分類はない。 ユーノはとりあえずのわかりやすい説明を考える。 「大砲みたいな武器のことだよ」 「あれって、大砲なの?」 ルイズが問いただす。爆発でとばしているみたいだから、そうといえないこともないかもしれない。 「うん。でも、あのタイプは誘導の機能はないはないはずなのに。ジュエルシードの影響かな」 ユーノはそう言って考え込む。 キュルケも手伝うといってしまったので考えてみるがどうもいい方法が思い浮かばない。 遠ければ魔力が届かない。近ければ魔力を溜める間に大砲の的になる。 キュルケは自分の火の魔法でゴーレムを爆破するというのも考えたが、とてもではないが十分な威力はありそうにない。 「私に考えがある」 タバサが唐突につぶいた。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/742.html
魔法少女リリカル湾岸ミッドナイト ~永遠にわからない答え~ 世の中には答えのない問題がいくつも存在する。 その答えを見つけ出すのもひとつの人生の楽しみ方とも言えるだろう。 SERIES 1 運命(フェイト)① 西暦20XX年、第97管理外世界 ―地球― 東京 首都高速道路 都心環状線 ブロロロロ… 静かでシャープな排気音と共に白いすらっとしたメタリックボディの車が大きな橋を超える。 「この世界の車は元気がいいわ、まるで生きているみたいね…」 車の名は『フェラーリ・テスタロッサ』。 高級車らしく平べったいボディが目を引く390馬力で280キロ出るスポーツカーである。 フェラーリを操る金髪のドライバー、機動6課ライトニング分隊隊長『フェイト・T・ハラウオン』は機動6課の課長、八神はやてより出された任務のためにこの世界に来ていた。 任務の内容は「時空管理局より突然異世界に消失したロストロギアを回収せよ」であるが、正直「遊びに行け」の間違いだと長い付き合いの友人には言えない。 今回回収するロストロギアは驚くことに自分達の身長の半分も無い小型であり、時々暴走もするようだが大して驚く攻撃を放ったりしないそうだ。 つまり言い換えると、 『ほっとけば見つかる』程度の甘い考えでも見つかるのである。 滞在期間も(この世界において)1ヶ月と思ったより長い。 これはもうある意味「長期休暇」である。 個人的には早く終わらせたいのだが、忙しい激務をこなす毎日で少し羽を伸ばすのも悪くないだろう。 『はやて、ありがとう』 楽な内容だとわかって任務を選んでくれたはやてに罪悪感を思いながらも心の中で最愛の友人に感謝する。 初日の今日は周辺地域の聞き込みを夜まで行い、せっかくなのでパンフレットに書いてあったドライブコースとして話題のこの首都高速に乗ることにした。 「うわ……」 大きな橋、レインボーブリッジを抜けると、そこには美しい光の模様を描く大きい観覧車や0時だというのにやけに明るい町並みは、ミッドチルダよりは劣っているものだが、やはりここにはここ特有の『100万ドルの夜景』が広がっていた。 「綺麗……なのは達もここに来ればよかったのに。」 この楽に仕事ができる機会は滅多に無いので同僚のなのはを誘ってみたが、運悪く別の仕事が入っていたようで、仕方なく今回はフェイト一人で参加することになる。 ガラガラガラ…… 某所、静まりかえったガレージのシャッターが上がる音がする。 真夜中の闇に溶けるような2シートの藍色の車。 その前に立つのはリーゼントに近い髪型が特徴の優しい顔立ちの少年だった 服装はジーンズに純白のTシャツ。 どう見てもこれから車に乗ると言う行為を浮かべると何だか納得できない。 「油圧OK、水圧OK、アイドルOK……OK」 少年は車に乗ると、4点式のベルトを締め、キーを挿し、凄まじい轟音と共にエンジンをかける。 「さあ、今夜も走ろうか……Z」 少年は躊躇無くアクセルを踏み、ギアをローからセカンドに入れた。 首都高速道路 湾岸線 湾岸環八ランプ付近 「ここを回っているだけでも結構時間が潰れたわ。でももうそろそろ降りようかな」 時間は12時30分。 そろそろ事前に予約してた高級ホテルへ向かう時間だ。 帰るまで退屈なので何か音楽を掛けようと左手で中央のプレーヤーに手を伸ばす、 その時 グオオオオオ……! 「・・・」 それは一瞬の出来事、 背筋を伝う身の毛もよだつ寒さにも似た圧迫感 彼女の横を通り過ぎた、氷のように冷たいミッドナイトブルーの『それ』は強烈でまるで猛獣の勝利の雄叫びのような排気音を響かせながら、凄まじい勢いでフェイトがまだ見ぬ闇の世界へと消えていった。 「…なに……今の?車……?」 普段は冷静沈着で優しいフェイトの目は魔法をかけられたかのように見開いたまま凍っていた。 ハンドルを持つ手もマスターに動揺したのか、少しガタガタ揺れている。 あの車には別に悪い魔力は感じない。 しかし、あの車だけが放つ魔法とは違う独特のオーラが冷静なフェイトを動揺させていた。 『……ター……、マスター!起きて下さい』 「はっ!ぐっ…」 フェイトの魔法デバイス、『バルディッシュ』の一言で現実に引き戻され、目の前に映った大型トラックを手のひらに力を込めたハンドルさばきで左にパスする。 しまった、運転中だった。 もしバルディッシュが目覚めさせなかったら、自分は車と共にあのトラックの下敷きになっていただろう。 自分ならバトルジャケットを展開して無傷で生還するが、車などの質量が大きい物はそう簡単には元に戻らない。 と言うより魔法が存在しない世界で魔法を使うのはやはりルール違反。よほどの緊急時を除いて使用しない事にしている。 下手をすると魔法を使うことによりここから歴史が変わってしまう可能性があるからだ。 「ありがとう、バルディッシュ。助かった……」 すぐ近くのPA(パーキングエリア)にて車を停めると、さっきの出来事が気になって仕方ないのか疲労困憊のフェイトがシートに全体重を預ける。 『現在のマスターのコンディションからして、少し休んでみてはどうですか?』 「うん。そうするわ。予約してたホテル、キャンセルしてからね。これだと無事に行けそうに無いから」 そう言うと、携帯電話を取り出し、予約先のホテルへと電話をかける。 『はい、こちらは帝○プリンスホテルであります……』 「そちらのホテルへ予約を入れましたフェイト・T・ハラウオンと申しますが…」 キャンセルの手続きをするだけなのに長々と話が続く。さすが高級ホテル。手続きどころかキャンセルも長い。 ピッ。 「ふう…」 電話を切ると同時に糸が切れた人形の如くハンドルにのめり込むと目を閉じ、 「zzz…」 そのまま眠り込む。 眠り込んだと同時に車の中にあらかじめかけておいた防犯用の『プロテクション』の魔法が発動した。 このフェラーリ、外見は古いが、中身は最新型のエンジンを積んだ代物。 排気ガスではなく水蒸気を放出して大気中に放出する、クリーンな車、ようするに『エコカー』である。 流石に元の世界からほぼ毎日使う自家用車(モーター・モービル)を持ち出すわけには行かないので、ミッドチルダに新しく出来た解体屋にて万が一壊れてもいいようにこのフェラーリを破格の安値で購入。 しかも値段の割には見た目や足が良かった(普通に走れるレベル)ので中身だけを最新のエンジンに取り替えてもらった。 明日はロストロギアの調査を続行すると共に、あの車についても調査してみよう。 シート特有のベッドと似て非なる感じの感触に悩みながらも、今夜はここでゆっくりと眠ることにした。 (次回予告) その車は くるおしく まるで、身をよじらせるように 走るという…… 幾多の人間の魂を地獄へと送った『悪魔のZ』と恐れられる車。 機動6課からロストロギアの回収のために派遣されたフェイトはある日、偶然通りかかった奴の姿を目に焼き付けてしまう。 それを発端にフェイトの周りに集う走り屋達。 『ブラックバード』の異名を持つ腕利きの外科医、『島達也』 その柔らかな走りから最高のR乗りと呼ばれるモデル『秋川零奈』 そしてただ一人、悪魔に愛された男『朝倉アキオ』 今、湾岸を舞台に新たな物語が、始まる…… 次回、 魔法少女リリカル湾岸ミッドナイト 運命(フェイト)② 「くくく……、お前も魅せられちまったか、あのZに」 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanoharow/pages/424.html
変わる運命(後編) ◆HlLdWe.oBM カードデッキに設けられた猶予は初期設定で12時間つまりは720分。 そして王蛇のカードデッキの場合、エリオという参加者がベノスネーカーに喰われたのでそこが起点となる。 その時点から今まで約8時間つまり480分が経過している。 この時点で残り時間は約4時間つまり240分。 だがカードデッキの時間制限にはある特殊条件が存在する。 変身やモンスターの命令にかかる時間1分が本来の10分に相当するのだ。 つまり残り時間が240分なら換算すれば24分になる。 そして王蛇のカードデッキはここまでに様々な命令さらに変身も行われてきている。 しかも現在進行中でメタルゲラスへの命令は継続中であった。 その結果―― ――猶予切れという最悪の展開が起こってしまった。 ▼ ▼ ▼ 地面に散らばったガラスの破片の中で蠢く毒々しい紫色のメタリックな蛇。 キィィィンというミラーモンスターが出現する時に聞こえる怪奇音を耳にして異変に気付いた探偵。 蛇は所有者に牙を向け下方から容赦なく襲いかかる。 探偵は咄嗟に僅かな牽制になればと考えて懐に入れていたサバイバルナイフを取り出す。 鎧袖一触。 探偵は蛇とトレーラーに挟まれながら身体を甚振られ、胸に入れていた手鏡の破片を舞い散らせながら宙へと舞う。 蛇は探偵の咄嗟の抵抗で狙いを当初とは違う右足に逸らされる結果となり、口から不気味な息を漂わせながら不満を露わにする。 それはまさしく一瞬の出来事だった。 Lは確かにこのような最悪な展開も予想はしていた。 だが、そもそもLはかがみが電撃を放った事から今までデルタギアを使っていたと予測していた。 デルタギアの方がカードデッキに比べてリスクが少ないのは説明書を見れば分かる事だ。 だからLはかがみがカードデッキをほとんど使用していないと予測した上で残りの猶予を計算して、ミラーモンスターへ命令を下していた。 だが、さすがのLでもかがみがかなりの時間ミラーモンスターへの命令とライダーへの変身を行った事には外見だけでは予想できていなかった。 ミラーモンスターが傷ついていたのも精々防御用に咄嗟に出したぐらいの認識だった。 世界一の探偵であってもこのような状況でいつも通り頭脳を働かせる事が出来る訳がない。 どこかで小さなミスをして当たり前だ。 それが今回は最悪な展開に結び付いた。 ただそれだけだ。 ▼ ▼ ▼ 「――遅かったか!!」 ザフィーラとアレックスがLに追いついた時、最悪な事態は起こっていた。 二人が見た光景。 それは貧相なLが下から飛び出したベノスネーカーによって上に弾き飛ばされる光景だった。 細いLの身体は赤い血飛沫を周囲に撒き散らせながらまるで木の葉のように空中を舞っていた。 「間に合え!」 間一髪。 地面に激突する間際だったLをザフィーラが滑り込んでキャッチする事に成功した。 ザフィーラは一安心してLの身体を見て、次の瞬間思わず声を失った。 最も酷いのは右足が粉砕している事だが、それを抜いても最初の激突おそらくはトラックと挟まれながら弾き飛ばされたせいで全身ズタボロだった。 誰がどう見てもすぐにでも治療を施さなければ死んでしまうような状態だ。 だが問題がある。 カードデッキの存在だ。 この状況からしてカードデッキの猶予が切れた事は二人も既に分かっていた。 つまりこのままでは目の前のベノスネーカーは現所有者のLを狙い続ける事は確実だ。 そうなれば落ち着いて治療などできるはずがない。 一見してもLの容体は一刻を争う程の重体でベノスネーカーに構っている時間は僅かばかりもなかった。 今はアレックスが牽制のブリューナグの槍を放っているが、このままでは動きが取れない。 「……これしかないか。L、アレックス、後は頼んだぞ」 そう呟いたザフィーラの表情はいつのなく真剣なものだった。 例えるなら覚悟を決めて死地に赴く戦士の顔だった。 そしてザフィーラはいきなりLの懐に手を入れてある物を取り出した。 「アレックス! Lを頼む!」 「ザフィーラッ! お前、まさか――」 ザフィーラが手にしたのは王蛇のカードデッキだった。 この強奪によりデッキの現所有者はLからザフィーラへと変更になり、ベノスネーカーもザフィーラを新たな獲物と定めた。 自分が囮となってその隙にアレックスによってLを安全な場所まで運んで治療してもらう。 それがザフィーラの考えた最善の行動だった。 互いに接した時間は少しだったがアレックスは一応信用のできる者だとザフィーラは感じていた。 それにアレックスの方が戦闘力も頭脳も自分より勝っている事をなんとなく肌で分かっていた。 だからこの場はアレックスを信じてベノスネーカーを遠ざける。 ザフィーラはカードデッキと中身を素早く確認してデイパックを一つ持って北へ向かって駆けだして行った。 アレックスはすぐさま異を唱えようとしたが、それは既に遅かった。 獣形態になったザフィーラはベノスネーカーを引き連れて、もう走り去ってしまった後だったからだ。 「……ザフィーラ。生きて帰って来い」 そんな願いが知らず知らずの内にアレックスの口から洩れていた。 ザフィーラが自分に何をしてほしいのかは痛いくらいに分かる。 だからこそ迅速な行動が必要だ。 「機動六課隊舎まで生きろよ」 重体のLをトレーラーの助手席に乗せてアレックスは急いで運転席についた。 エグリゴリで軍隊を指揮する立場にあった者として車の運転はLやザフィーラに比べて慣れていた。 このトレーラーの大きさでは大通りしか走れない故に隊舎までは少々迂回する事になるが、それでも怪我人を運ぶには向いている。 だがアレックスは知らない。 ベノスネーカーとの接触によってトレーラーのエンジンに深刻な被害が出ている事に。 さらに目指している機動六課隊舎が既に焼け落ちている事に。 そして、このまま進めばミラーモンスター以上に危険な人物と遭遇する可能性がある事に。 【1日目 午前】 【現在地 F-3 南部大通り上】 【アレックス@ARMSクロス『シルバー』】 【状態】健康、疲労(中)、トレーラー運転中 【装備】黒の騎士団専用トレーラー@コードギアス 反目のスバル 【道具】支給品一式 【思考】 基本:この殺し合いを管理局の勝利という形で終わらせる。 1.機動六課隊舎へ向かいLを治療する。 2.六課メンバーと合流する。 3.キース・レッドに彼が所属する組織の事を尋問する。その後に首輪を破壊する。 4.このまま行動していてキース・レッドに出会えるのだろうか。 【備考】 ※身体にかかった制限を把握しました。 ※セフィロスはデスゲームに乗っていると思っています。 ※はやて@仮面ライダー龍騎は管理局員であり、セフィロスに騙されて一緒にいると思っています。 ※キース・レッド、管理局員以外の生死にはあまり興味がありません。 ※参加者に配られた武器にはARMS殺しに似たプログラムが組み込まれていると思っています。 ※殺し合いにキース・レッドやサイボーグのいた組織が関与していると思っています。 ※他の参加者が平行世界から集められたという可能性を考慮に入れました。 ※ザフィーラから第1放送の内容とカードデッキに関する簡単な説明を聞きました。 【黒の騎士団専用トレーラーの状態】 ※内部のコンピューターのOSは地球及びミッドチルダのものと異なります。 ※機械設備や通信機能は全てコンピューター制御です(ただし居住スペースはその限りではない)。ギアス世界のOSを知る者もしくはOS自体を書き換えない限り使用不可能です。 ※ベノスネーカーとの接触でエンジン部に多大なダメージを負いました。このまま走らせるとエンジン部が爆発する可能性が非常に高いです。アレックスはこの事にはまだ気づいていません。 【L@L change the world after story】 【状態】全身打撲、全身裂傷、中程度の出血、右足粉砕、トレーラー(助手席)乗車中、気絶中 【装備】なし 【道具】支給品一式×2、首輪探知機、ガムテープ@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ、ランダム支給品(ザフィーラ:1~3) 【思考】 基本:プレシアの野望を阻止し、デスゲームから帰還する。デスゲームに乗った相手は説得が不可能ならば容赦しない。 ※以下気絶前の思考。 1.機動六課隊舎でザフィーラ達を待ちながら、首輪の解析。 2.メタルゲラスがかがみを連れてきたら、改めて拘束するなり、落ち着かせるなりして、尋問。 3.10時までにザフィーラ達が来たら、ミラーモンスターを倒しにかかる。来なかったら、鏡のない部屋に引きこもる。 4.以上のことが終わったら、船を調べに、その後は駅を調べにいく。 5.通信で誰かと連絡がついたら、その人と情報交換、味方であるなら合流。 【備考】 ※参加者の中には、平行世界から呼び出された者がいる事に気付きました。 ※クアットロは確実にゲームに乗っていると判断しています。 ※ザフィーラ以外の守護騎士、チンク、ディエチ、ルーテシア、ゼストはゲームに乗っている可能性があると判断しています。 ※首輪に何かしらの欠陥があると思っています。 ※アレックスからセフィロスが殺し合いに乗っているという話を聞きました。 ▼ ▼ ▼ 「はぁ……はぁ……はぁ……」 今まで静かだったF-1の浜辺に久方ぶりに波の音以外の不協和音が混じり始める。 F-3からずっと西に疾走してきたザフィーラが行きついた先がそこだった。 途中で川を飛び越える際に持ってきたデイパックの中からデイパックが一つ落ちたが、気にしてはいられなかった。 囮になる覚悟をしたザフィーラだが、だからと言って死ぬつもりなどなかった。 ミラーモンスターはミラーワールドからこちらの世界に出てくる時は反射物からしか姿を現す事は出来ない。 ザフィーラはその性質を利用してここを選んだのだ。 浜辺の周囲にはミラーモンスターが出てくるような反射物は一つだけ。 それは眼前に広がる海だけである。 前もって出てくる場所さえ分かっていれば対処のしようはある。 だからこそザフィーラは有利な場所で待ち受ける事ができるように全力でここを目指したのだ。 「さあ、来るなら来い!」 程なくベノスネーカーの影が海面にチラつき始めた。 餌を欲しているベノスネーカーは襲いかかるタイミングを計っているかのように機会を窺っているようだった。 だがここまで餌を喰わずにただ命令に従い続けてきたベノスネーカーは我慢の限界だった。 浜辺に張り詰めた緊張感が頂点に達した時、ザフィーラの目に映る海面が揺らいだ。 『ッシャァァァァァアアアアア!!!!!』 目の前に迫るのは毒々しい毒牙を光らせるベノスネーカー。 それが鏡の世界からこちらの世界に出てきたのを確認すると、ザフィーラの顔に笑みが浮かんだ。 「食らえ、鋼の軛ィィィ!!!」 ザフィーラの声と共に地面より突き出る光の拘束条。 それが見る間にベノスネーカーを空中に固定していく。 ベノスネーカーは拘束から逃れようともがくが、ザフィーラが渾身の力を込めて展開している魔法をすぐに外すのは無理だった。 その間にザフィーラは持ってきたデイパックからあるものを取り出した。 ストレージデバイス機殻杖Ex-st。 自分の思い通りに出力が調整できる概念兵器を肩に乗せ、ザフィーラは急いで照準を合わせにかかる。 制限下のザフィーラの実力ではベノスネーカーを倒せるかは確信が持てない。 だがこのEx-stで自壊レベルの砲撃を放てば、もしそれで無理でも砲撃で弱ったところなら倒せる可能性が高まる。 鋼の軛はあくまでEx-stを確実に当てるための布石だ。 そして、ザフィーラの指がEx-stの引き金に掛かった。 だが―― グサッ ――聞こえた音は砲撃が放たれる音ではなく、何かが肉を貫く音。 「……が……ぁ……な、ぜ――」 最初衝撃のあまりEx-stを取り落としたザフィーラは腹から突き出る銀色の槍のようなものを目にしても何が起こったか理解できなかった。 だがすぐに腹から伝わる痛覚と背後に見えた銀色の影によって何が起きたか教えられた。 「……メ、タル……ゲ……ラ、ス……!?」 ザフィーラを背後から刺し貫いた下手人。 それは王蛇のカードデッキのもう一体の契約モンスター、メタルゲラスであった。 かがみを連れてくるよう命令されていたメタルゲラスだが、それも当然ながら猶予切れと共に無効となった。 だからメタルゲラスは目の前まで迫っていたかがみを放置して、餌となったデッキの所有者の元へとやって来たのだ。 ザフィーラは当然ながらLがメタルゲラスに命令を出している事は全く知らない。 だから最初にLがベノスネーカーに襲われている場面に出くわした時、王蛇の契約モンスターはベノスネーカー一体だけだと思い込んでいたのだ。 その勘違いがザフィーラの運命を決定づける事になった。 「ベ、ル……カの、しゅ、ご……じゅ、うぅ……を、なっ……めるな――」 それがザフィーラの最期の言葉となった。 腹から流れ出る血はもうとっくに致死量を超える程にまでなっていた。 それでもザフィーラがまだ意識を保てているのは、盾の守護獣としての誇りによるものだった。 死ぬ前にこの2体のモンスターを倒す。 そう自分の身体に喝を入れようとしたが―― 『ッシャァァァァァアアアアア!!!!!』 『グゥォォォォォオオオオオ!!!!!』 ――傷ついた身体は言う事を利かず、最期まで何もできないままだった。 そしてついに鋼の軛を振り払ったベノスネーカーがザフィーラの頭から上半身に喰らい付き、同時にメタルゲラスもザフィーラの下半身に喰らい付いた。 一瞬にして目の前に広がる何もない虚無。 それがザフィーラの最後に見た光景となった。 ▼ ▼ ▼ 「これで、良かったんだよな」 D-2南部に位置するスーパー。 C-3にある商店街を目指して北へ向かったはずの万丈目準はなぜかそこにいた。 その理由はつい先程出会った紫髪にセーラー服を着た少女、柊かがみがそもそもの発端だった。 全身ボロボロになりつつもこちらへ向かって来たかがみに気付いたのはちょうど商店街に向かおうとした瞬間だった。 万丈目は久しぶりに出会う参加者しかもボロボロの状態だと分かるとすぐさま保護しようと思って急いで駆け寄ったが、結果は散々だった。 万丈目が近寄るや否や今までの緊張と警戒のせいか初対面のかがみは万丈目に気付くなり…… ――Lが私を殺そうと! わ、私は、悪くない!! ――や、やっぱり……あ、あんたも私を殺そうと……!! ――いや、来ないで! お願い、私は死にたくないだけなんだから!! ……というような事を言い続けるので名前を聞き出す事さえ一苦労だった。 万丈目の外見は独特な髪形に鋭い目付きに黒い制服というもので、お世辞にも第1印象がいいとは言い難い。 だからと言って初対面の少女にストレートに怯えられる事は万丈目にとってショックな事だった。 とりあえず少し戻って落ち着けそうなスーパーに入ってみたが、一向に進展はなかった。 だが落ち込んでいては先に進まないと思い直し、改めて話そうとするが怯えるかがみとの会話は一向に進まなかった。 どうすればいいんだと嘆いていた万丈目だったが、助け船は意外なところから現れた。 「やっぱりバクラに任せたのは不味かったか」 助け船を出したのは意外な事にバクラだった。 会話が成立しない状態を万丈目の中で知るとバクラはある提案をしてきたのだ。 それは千年リングを柊かがみに渡せというものだった。 そうすればバクラはかがみと会話する事が可能となり、上手く話を付けると言ってきたのだ。 確かにバクラは長い時を経験しているだけあって口は達者だ。 もしかしたらかがみと上手く会話できるのかもしれない。 そう考える一方で果たして素直にバクラの提案を受け入れる事が正しいのか万丈目には判断できなかった。 結局、ものは試しという事でかがみに千年リングを渡して現在は別室で待機しつつ朝食を取っている万丈目だった。 (まあ、これで上手くいけば万々歳か。それにしてもLか) 万丈目はカレーには一切手を付けずにデイパックの中にあった質素なパンを齧りながら、バクラの首尾を待ちつつ先程少し耳にした単語の意味を考えていた。 Lというのは参加者なのはまず間違いない。 かがみはLの元から逃れてきたらしいので、当然Lはかがみが走って来た方向である南にいる可能性が高い。 そして万丈目はさらに考える。 Lという者がもし本当に危険な存在なら放って置いていいのかと。 だが、万丈目は知らなかった。 Lはこの会場で随一の頭脳を持った仲間になり得る存在である事に。 そして、もう一つ―― ――別室で行われているバクラによるかがみへの説得は万丈目にとって思いもよらない内容である事に。 (……えっと、整理するわね。まず、あの万丈目とかいう奴は――) 『ああ、年端もいかない銀髪眼帯少女を甚振る極悪人さ。しかも普段はそんな素振りを微塵も見せないっていう厄介な奴だ』 (正直信じがたいんだけど? あなたがこの千年リングの声とかいうのも。でも、私を心配してくれている点には礼を言うわ) 『な~に、俺はあんたを見かねて忠告してやっただけさ。俺だって、いつまでもあんな野郎と一緒なのは御免だからな』 別室で行われているバクラとかがみによる心の中での会話。 そこでは万丈目が悪人だとかがみに吹き込むバクラの策略が着々と進行していた。 バクラは既に万丈目に見限る気になっていた。 強い力を持っていながらそれをむざむざ捨てるなどバクラには理解不能な行動だった。 元々バクラの目的はバクラが知るキャロとの合流、そしてこのデスゲームを楽しむ事だ。 つまり他に参加者がどうなろうとバクラにはどうでもいい事であり、万丈目も当然その中に入っている。 それでも今まで一緒にいたのはバクラが自力では行動できないためであった。 だが、それも解決した。 柊かがみ。 バクラが次の宿主に選んだ少女だ。 かがみの記憶を知った時、バクラはこの少女を利用しようと考え付いたのだった。 この生への執着と周囲への恨みは上手く誘導すれば万丈目より扱いやすい。 その判断が付いたからこその行動だった。 『(よし、ここまでは順調だな。もう少し話し合ったら、その後には……悪いな元・宿主サマよ。大人しくカードデッキへの生贄になってもらうぜ)』 そのバクラに目を付けられたかがみは別に完全にバクラを信用した訳ではない。 気づいた時にはメタルゲラスは消えていて代わりに人相の悪そうな少年が近付いてきた時は混乱したが、今は少し落ち着いている。 万丈目が近付いて気付く前にストラーダは逃げる途中で教えてもらった通りに腕時計型の待機状態にしているが、いざとなれば起動させる気でいた。 だが、バクラの言葉巧みな言い回しを聞くうちに徐々にかがみの中にあったバクラへの疑心は小さくなっていた。 それと並行してかがみはバクラを信じ始め、いつしかバクラの言う通りにすればいいような気にさえなっていた。 これらはかがみが現状から逃げたいがための逃避とも言える行為だったが、かがみ自身はそのような自覚は微塵も存在しなかった。 (そうよ、誰だって生きていたいって思うわよ。そう、そうよ。これは仕方のない事、いやむしろ当然の行いよ。 万丈目って奴なんて死んで当然の奴なんだから! 私は正しいのよ!) 柊かがみはただ死にたくないだけだ。 だが、その考えは悪しき盗賊王の魂によって歪められていく。 彼女の運命はどう変わっていくのだろうか。 【1日目 午前】 【現在地 D-2 スーパー】 【万丈目準@リリカル遊戯王GX】 【状態】健康、30分バクラ憑依不可 【装備】なし 【道具】支給品一式、カードデッキ(ベルデ)@仮面ライダーリリカル龍騎、ルーテシアのカレー@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、考察を書いたノート 【思考】 基本:殺し合いには乗りたくない。仲間達と合流し、プレシアに報復する。 1.バクラの首尾を待つ。 2.このままD-3に注意しながら商店街に向かうか、それともLのいる南に行くか。 3.カードデッキを破壊してミラーモンスターを倒す程の力を持つ者を捜す。 4.キャロを捜し出して千年リングをどうにかする。 5.仲間(理想は明日香)達との合流。 6.余裕があればおじゃま達を探したい。 【備考】 ※チンク(名前は知らない)を警戒しており、彼女には仲間がいると思っています。 ※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。 ※デスベルトが無い事に疑問を感じています。 ※パラレルワールドの可能性に気づきました。 ※柊かがみはLという危険人物から逃げてきたと思っています。 【柊かがみ@なの☆すた】 【状態】疲労(中)、肋骨数本骨折、強い周りに対する敵意、バクラへの僅かながらの信頼 【装備】ストラーダ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです 【道具】なし 【思考】 基本:死にたくない。なにがなんでも生き残りたい。 1.バクラを信じてしばらくバクラと話す。 2.悪人である万丈目を殺すのは間違った事ではない。 【備考】 ※デルタギアを装着した事により、電気を放つ能力を得ました。 ※参加者名簿や地図、デイパッグの中身は一切確認していません。 ※一部の参加者やそれに関する知識が消されています。ただし、何かのきっかけで思い出すかもしれません。 ※「自分は間違っていない」という強い自己暗示のよって怪我の痛みや身体の疲労をある程度感じていません。 ※周りのせいで自分が辛い目に遭っていると思っています。 ※Lは相手を縛りあげて監禁する危険な人物だと認識しています。 ※第一放送を聞き逃しました。 ※千年リングを装備した事でバクラの人格が目覚めました。以下【バクラ@キャロが千年リングを見つけたそうです】の簡易状態表。 【思考】 基本:このデスゲームを思いっきり楽しむ。 1.万丈目には見切りを付けて、かがみをサポート及び誘導する。 2.頃合いを見計らって万丈目をバイオグリーザーへの生贄に差し出すように仕向ける。 3.可能ならばキャロを探したいが、自分の知るキャロと同一人物かどうかは若干の疑問。自分の知らないキャロなら…… 【備考】 ※千年リングの制限について大まかに気付きましたが、再憑依に必要な正確な時間は分かっていません。 ※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました。 ※千年リングは『キャロとバクラが勝ち逃げを考えているようです』以降からの参戦です ▼ ▼ ▼ 全てが終わった浜辺に静寂が訪れる。 後に残ったのは砂浜に打ち付ける波の音と辺りに散乱するいくつかの道具だけだった。 もう既にザフィーラの影も形もどこにも残ってはいなかった。 【ザフィーラ@魔法少女リリカルなのはStrikerS 死亡確認】 【全体備考】 ※ザフィーラは首輪諸共ベノスネーカーとメタルゲラスに喰われました。 ※【F-3 壊れた橋付近】に柊かがみのデイパック(支給品一式、デルタギア一式@魔法少女リリカルなのは マスカレード、デルタギアケース@魔法少女リリカルなのは マスカレード、ランダム支給品0~1)が放置されています。 ※【F-1 浜辺】に以下の道具が放置されています。 支給品一式×2、ランダム支給品(エリオ1~3) Ex-st@なのは×終わクロ カードデッキ(王蛇)@仮面ライダーリリカル龍騎、サバイブ“烈火”(王蛇のデッキに収納)@仮面ライダーリリカル龍騎 ※王蛇のカードデッキには、未契約カードがあと一枚入っています。 ※サバイバルナイフ@オリジナル、手鏡@オリジナルはベノスネーカーとの接触で破壊されました。 ※ベノスネーカーとメタルゲラスはザフィーラを喰った事で傷はほぼ癒えました。 【Ex-st@なのは×終わクロ】 新庄・運切の武器。白い砲塔に似た杖型のストレージデバイス(という名の概念兵器)。 砲門を取り換えて多様な砲撃ができる。威力は使用者の意志に比例する設定となっており、望みさえすれば自壊する程の大威力も発揮できる。 【レリック(刻印ナンバーⅥ)@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 ヴィヴィオが鎖で引きずっていた一つで第12話にてナンバーズが奪取したと思いきやティアナの活躍で奪われなかったレリック。 見た目は幻術のおかげで可愛らしい花をしている(激しい動作や衝撃を受けない限り数時間~丸一日は偽装が維持されます)。 説明書には「レリック 可愛らしいでしょう」という馬鹿にしたような言葉のみ。 Back 変わる運命(前編) 時系列順で読む Next 夢と誇りを胸に全てを終わらせるため……! 投下順で読む Next Paradise Lost(前編) L Next 這い寄るもの アレックス Next 這い寄るもの ザフィーラ GAME OVER 柊かがみ Next 渇いた叫び(前編) 万丈目準 Next 渇いた叫び(前編)
https://w.atwiki.jp/ga-rand1310/pages/15.html
unison
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2181.html
フェイトの雷撃が最後のムガンを粉砕し、戦闘は時空管理局側の勝利に終わった。 歓声轟き、放っておけば祝宴でも始めてしまいそうな程の異様な熱気の中、その男は独り彫像のように佇んでいた。 先程までの獅子奮迅の活躍とは別人のようなその静かな姿は、他の男達の熱狂の中、まるで別世界の住人のように周囲の景色から乖離している。 「時空管理局の高町なのは一等空尉です。ご協力ありがとうございました」 管理局局員ではない、恐らく地元の民間魔導師であろうその男――ロージェノムの傍に降り立ち、なのははそう言って敬礼する。 間近で改めて見てみると、こう言っては悪いが……異様な風体の男だった。 3m近い長身、鍛え上げられた逞しい肉体。浅黒い肌の胸と背中に残る、まるで巨大な何かに穿たれたような傷痕。 その外見も然ることながら、何よりも男から滲み出る気配――オーラとでも言おうか――が、一般の人間とは明らかに一線を画している。 ……この人は、只者ではない。 胸の奥の何か――心臓ではない、リンカーコアでもない何かのざわつく気配を、なのはは感じていた。 「……時空管理局?」 なのはの言葉にロージェノムは無表情のまま、しかし怪訝そうな声で問い返す。 何か後ろ暗いことがある――というよりも、初めてその名前を聞いた、そんな響きだった。 ロージェノムの呟きを聞き取り、なのはは眉を寄せる。 ミッドチルダは時空管理局のお膝元、この世界の人間で管理局の名を知らないということはありえない。 一部の例外を除いて。 まさか……? 一つの可能性に辿り着き、なのははロージェノムを見上げ、口を開いた。 「ご存知……ないんですか?」 「いや……」 なのはの問いにロージェノムは言葉を濁し、 「――ああ、初耳だな」 そう言い直した。 一瞬、ロージェノムの表情が動いた――ように、なのはには見えた。 その表情の変化と歯切れの悪い言動に僅かばかりの違和感を覚えながらも、なのはは己の推測に確信を抱き始めていた。 「……こちらも一つ質問して良いだろうか?」 頭三つ分以上高い位置から見下ろすように問うロージェノムに少し威圧されながら、なのはは「答えられることならば」と言葉を返した。 ロージェノムは首肯し、なのは達にとっては常識的な、しかしなのはの推測する人間にとっては非常識的な疑問を口にする。 「先程お前達は何の機械的な補助も無しに空を飛んでいたが……あれは、何だ?」 その問いに、なのはは自分の推測の正しかったことを知った。 この男は、時空漂流者――何らかの理由でこの世界に飛ばされた、次元の迷子だ。 ロージェノムと名乗る時空漂流者の移送、並びに時空管理局本部での事情聴取はフェイトが行うこととなった。 本当はなのはがやりたがっていたのだが、被害状況の調査や街の復興計画などの細々とした処理の指揮を任されてしまい、仕方なくフェイトにお鉢が回ってきたのである。 臨時の助っ人が何故そこまで……と思わないでもないが、これは一等空尉という肩書きが仇となったとしか言いようがない。 日々仕事に忙殺されているもう一人の親友のことを思い出し、偉くなるのも考え物だなぁーとフェイトは他人事のように思うのだった。 管理局本部への任意同行をロージェノムが二つ返事で了承したことに、フェイトは少なからず驚いていた。 これまでにも時空漂流者を保護した経験はあるが、こんなにもあっさりと了解を得られたことは少ない。 殆どの場合、何らかの形で抵抗されてきたし、それが当然であるともフェイトは思っていた。 右も左も分からないような場所に突如放り出され、その上訳の分からない組織に連行されようとしている……。 寧ろ抵抗しない方がおかしいだろう。 にも関わらず、ロージェノムはこちらの要求を何の迷いもなく受け入れた。 魔法の「ま」の字も知らないこの男にとって、時空管理局の名も馴染みがある筈などない。 警戒心というものがないのか、自分の実力に絶対的な自信でも持っているのか、何か管理局に近づく裏でもあるのか、……それとも、何も考えていないだけなのか。 表情一つ変わらぬロージェノムの顔からは何も読み取れない。 管理局本部への移送に、ロージェノムは一つの条件を出した。 ロージェノムが搭乗していた質量兵器――〝ラゼンガン〟というらしい――を本部に持ち込みたいというロージェノムの要求に、どうしたものかとフェイトは悩む。 時空管理局は質量兵器の保有、及びその使用を禁じている。 時空漂流者とはいえその規制に例外は無い。 そして第一……目の前のガラクタがまともに動くとはフェイトには到底思えなかった。 四肢は潰れ、尻尾は千切れ、胴体も崩れかけた、元は人型だったであろう質量兵器。 辛うじて無事と言える部分はコクピットのある頭部付近だけである。 ……どう見ても、粗大ゴミとしか思えなかった。 「あの……やっぱりこれで本部まで行くのは、幾らなんでも無理があると思うんですけど……」 危ないですよーやめましょうよーと安全性の面から説得を試みるフェイトだったが、ロージェノムは大破したラゼンガンのコクピットに足をかけ、一言。 「首から下など飾りに過ぎん」 ……無茶苦茶な科白だったが、何故かこの男が言うと物凄く説得力があるような気がした。 そしてその直後、フェイトはロージェノムの言葉の意味を知ることになる。 「ぬ……おおおおおおおおっ!!」 操縦桿を握り咆哮を上げるロージェノムに応えるように、ラゼンガンの両眼に光が灯る。 瞬間、ラゼンガンの頭部両側面、人間で言えば耳に当たる部分から腕が生えた。 両腕で首筋をがっちりと掴み、左右に捻りながら頭を引き抜くラゼンガン。 ……傍から見ていると、物凄くシュールな光景だった。 そうして苦労して首から引き抜かれた頭部には、やはりと言うべきか、小さな脚がしっかりと付いている。 「ほ、本当に飾りだったんだ。首から下……」 予想の斜め上をいくラゼンガンの驚くべき正体に、フェイトはただ唖然とするしかなかった。 「……どうした? 管理局とやらに行くのではなかったのか」 一頭身のラゼンガン――この形態は暫定的に〝ラガン〟とでも呼ぼう――のコクピットから、ロージェノムが怪訝そうにフェイトを見下ろす。 すっかり可愛くなってしまったその機体を眺め、フェイトは諦めたように息を吐いた。 武装も無いようだし、これならば問題ないかもしれない……と、思いたい。 「あの……貴方は、何者なんですか?」 問いかけるフェイトを一瞥し、ロージェノムは目を眇めた。 「事情聴取は管理局に着いてからではなかったのか?」 「私の純粋な好奇心から訊いているんです」 本部に着いてから色々とドッキリさせられる前に今の内に心の準備を……という本音は隠して、フェイトは答える。 ロージェノムは黙り込んだ。 表情こそ動いていないが、しかしその内心では物凄く困っていた。 自分は一体何者なのか――実のところ、その明確な答えをロージェノムは持たない。 螺旋王――否。 この身はクローン培養によって造られたコピー、記憶や知識は受け継いでいるが決してオリジナルの『ロージェノム』と同一の存在ではない。 大グレン団旗艦超銀河ダイグレン生体コンピュータ――否。 既に超銀河グレンラガンとは切り離され、再び一つの個体として活動している。 誰でもない、俺は俺だ――論外。 そもそもこの娘の疑問への回答になっていない。 消去法で次々と選択肢を消していき、ロージェノムは遂に一つの答えに辿り着いた。 「わしは……」 言いかけて、ロージェノムは自嘲するように唇の端を歪めた。 何様のつもりだ、「わし」などと……。 あの時、あの宇宙で、最後の最期まで共に戦ってくれた忠臣に自分は何と答えた? ――王ではない、今はただの戦士だ。ヴィラル……お前と同じ、な。 そうだ、自分は戦士だ。 たとえこの身が仮初の肉体、造られた人格だとしても、自分が一人の戦士として、螺旋の戦士として戦ったことに変わりはない。 シモン達と共に、大グレン団の一員として戦ったことに偽りはない。 吹っ切れたように小さく笑い、ロージェノムは改めて口を開く。 「――私は戦士。螺旋の戦士、ロージェノム」 威風堂々、胸を張ってそう言い切った。 宇宙とは、認識されて初めて確定する――それがこの宇宙の理である。 ならば自分自身の存在も、自分自身が認識した姿に確定するのではないか。 自分の信じる自分の形に……。 故にロージェノムは全力で信じる。 戦士としての自分自身を、自分の信じる自分自身を。 ロージェノムの示した回答に、フェイトは虚を衝かれたように目を瞬かせていた。 なのはが管理局に戻った時には、既に夜は明けかけていた。 ロージェノムはどうしているだろうか、フェイトの事情聴取は上手く済んだだろうか。 報告書を提出し、自分達の保護した時空漂流者について問い合わせたなのはは、事情聴取は依然継続中という答えに目を見開いた。 フェイト達がいつ頃本部に戻ったのかは知らないが、少なくとも日の入り前には着いていただろう。 そこから事情聴取にどれだけかけているのか、何時間時空漂流者を拘束しているのか。 管理局員としての常識を外れたフェイトの行動が、なのはには信じられなかった。 「フェイトちゃ……ん!?」 取調室の扉を蹴破るような勢いで入室したなのは、室内に揃った予想外の顔の前に思わず踏鞴を踏んだ。 「あ、なのはちゃんお帰りー」 にこやかな笑顔でなのはを迎える、八神はやて二等陸佐。 「君はもう少し落ち着きというものを持った方が良いな、なのは」 渋い顔でなのはを振り返る、クロノ・ハウラオン提督。 「うぉっ!? ……って、何だなのはかよ。ビックリさせんな!」 居眠りでもしていたのか、挙動不審なヴィータ。 他にもシャマルやシグナムなどの守護騎士の面々、ユーノ・スクライア司書長やアルフなど、なのはにとって馴染みの深い面々が狭い取調室に勢揃いしている。 そして極めつけは……、 「あらあら、まるで同窓会みたいね」 「リンディさんまで……」 湯呑み片手にほけほけと笑う管理局総務統括官の姿に、なのはは呆れを通り越して脱力した。 「もう……皆揃って何やってるんですか!?」 時空漂流者への長時間の不当拘束だけでも許せないというのに、こんな大人数で事情聴取など理解出来ない。 否、理解したくない。 これではまるで尋問である。 なのはの糾弾にはやて達はばつの悪そうに視線を逸らした。 「いや、まぁ……最初はフェイトちゃんだけで普通に事情聴取やってたんやけどなぁ……」 「ちょっと事情が変わって……というかわたしだけじゃどうしようもない展開になっちゃって、それで無理言って皆に来て貰ったの」 言い訳するはやてとフェイトに、なのはの眉が剣呑そうに吊り上がる。 「事情って……皆が一度に集まらなきゃ駄目な位大事なことなの?」 リンディを始めとして今この場に集まっている面子は、皆時空管理局の中でも重要な場所を任されている者達であるとなのはは思っている。 時空漂流者一人の事情聴取などという些事にかまけ、こんな所で油を売っている暇などない。 そういった意味でも、なのはは怒っているのだ。 はやてはフェイトとアイコンタクトを交わし、「驚かんでよ?」と前置きした後、真剣な顔でこう切り出した。 「なのはちゃん。ウチらな……今、アンチスパイラルへの対抗策話し合ってんねん」 「…………へ?」 はやての口にした予想外の言葉に、なのはは面食らったように間の抜けた声を上げた。 アンチスパイラル。 アンチスパイラルとは……あのアンチスパイラルだろうか? 四年前、ミッドチルダ北部の空港爆破テロと共に全次元世界に宣戦布告し、以来次元世界各地で質量兵器による破壊活動を行う謎のテロ組織。 目下、なのは達時空管理局にとって最大最悪の「敵」……! そのアンチスパイラルとロージェノムの間に、一体何の関係があるというのか。 なのはの疑問に答えるように、はやては部屋の奥に座るロージェノム――腕を組み、なのは達のやり取りを黙然と見守る異邦の戦士を一瞥し、そしてこう言った。 「とんでもないジョーカーやで、あの人は……」 天元突破リリカルなのはSpiral 第1話「貴方は、何者なんですか?」(了) 戻る目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanoharow/pages/231.html
火神——マーズ—— ◆Qpd0JbP8YI グリーンの部屋のドアを開け、彼との邂逅を得ようとしていた。 ――その筈だった。だが、 「ここは……何処だ……?」 いきなり見知らぬ場所に連れてこられての拘束/高町なのはの友人らしき人物の死/そして殺しあえ。 その次の瞬間には、また違う場所へ。 チェシャキャットのイタズラだろうか――否/動機が不明。 またヴァイオレット/マーチヘア/バロールの魔眼のように幻覚を見せる能力を有していない。 それに向こうもこちらの情報を欲しがっていたと思われる。 そのチャンスを見逃すほど、グリーンも愚かではない。 二つ目の可能性――管理局――先の戦闘で見せたARMSの能力を恐れての強行。 それも否――もう一つのARMS/キース・レッドの存在に対抗するために自分は有用。 また処分を考えての行動にしても目的達成には迂遠すぎる。 三つ目の可能性――管理局の敵対勢力/列車上にいたサイボーグ。 動機/目的/いずれも不明。だが、前者の二つよりは可能性が高い。 彼らについて、顎を手に当て考える。 ――思考は空白を維持――情報が不足。 より詳しい情報/あの場で主催者らしい女と接していた高町なのはとフェイト・T・ハラオウンに会う必要がある。 と、いつの間にか手に持っていたバッグに気がつく。 恐らくはあの女/プレシアの仕業――意図が不明。 確認のために中を開ける。 食料/水/ランタン/時計/筆記用具/コンパス/地図/名簿/車の鍵/そしてカードが数枚。 これで殺しあえというのか。思わず失笑が漏れる。 だが、自分にはARMS/人を殺すには十分なものがある。問題はないのだろう。 中にあった地図を広げ、この場を形成しているであろう地形を覚える。戦略や戦術において地理の把握は必要不可欠。 今後、どう行動するにしても、覚えておいて損はない。 続いて名簿に目を移す。 その内容に目が開く――キース・レッドの名前を確認。 このゲームの主催者/レッドを含む組織との等号が崩れる――それともレッドは廃棄処分にされたのか。 ――だが、これは好都合かもしれない。 首輪が爆発したところで、コアが大丈夫な限り、その傷はARMSの能力によって再生される。 よって、死を脅迫材料にして、行動を強要するのは無意味。 しかし、未だ全容を把握出来ぬミッドチルダの科学技術に魔法技術。 もしかしたら首輪だけによってARMSを殺すことが可能なのかもしれない。 その確認のためにもレッドの首輪を、彼が生きている状態で破壊することが必要となってくる。 そこまで考えて、一度名簿から目を離す。 そしてこれからの行動の指針を考える。 闘争は自分のプログラムの核/己の存在意義/故に殺し合いに忌避はない。 だがキース・ブラックの呪縛/戦闘生命としての生は終わりを告げた。 今更、また他人にその呪いの戒め/戦闘の強要をされる謂れはない。 今は自分の意志で闘いを選び、自分の道を歩いていくと決めたのだ。 ――それが管理局に入局した理由。 ならば、この闘争を管理局の勝利として終わらせるのが自分の道/自分の闘い――そして自分の意志。 まずは六課のメンバーと合流して、情報を纏めるべきか。 立体駐車場に並んでいる数台の車に順々にバッグの中に入っていた鍵を指していく。 ――やがてジープを思わせる車に鍵がはまる。 軽快なエンジン音、スムーズなハンドリング、安定したホールディング――悪くない支給品だ。 目的地/機動六課隊舎へ向かう。 他のメンバーが向かっている可能性、彼らがいなくとも何かの情報/武器がある可能性。 ――それらを考慮しての判断。 だが、思いの外、すぐに機動六課のメンバーとの再会を果たす。 車を出して数分後、車のライトに照らされた後ろに束ねられたピンク色の長い髪/ それと調和するようにあしらわれた騎士甲冑/右手に持つ剣/機動六課所属ライトニング02副隊長/烈火の騎士/シグナム。 ジープを降りて歩み寄る。 「シグナム、無事だったか?」 同じ職場の仲間を案じての発言――だが彼女の顔に浮かぶ微かな疑問/眉間に皺が寄る。 「……お前は私を知っているのか?」 質問の意図が不明/何かの冗談だろうか。 「知っているも何も同じ機動六課のメンバーだろう」 その言葉によって彼女の表情が正される。 自分の存在をちゃんと認識してくれたのだろう。 ――だが、返ってきた彼女の言葉は自分の予想とは、またかけ離れたもの。 「お前のことは知らん。悪いが記憶にはない。 ……だが、例え本当にお前とは知り合いであったとしても、私のやることには変わりはないはだろう」 どういうことだ――その疑問を口にする前に彼女が剣を構え、それを振りかぶり、迫ってくる。 「死ねっ!」 彼女の手には不似合いな大きな剣が、激昂の言葉と共に振り下ろされる。 切るという言葉は生易しく、正に破壊の体現/衝撃と共に破砕されるアスファルト。 それを跳んでかわし、確認のために問う。 「お前は本当にシグナムか?」 「……ああ、私は烈火の騎士、シグナム。だからこそ、お前には死んでもらう」 再び振るわれる大剣/明確な殺意を含み、命を摘まんと迫ってくる。 理由は分からないが、彼女はこのゲームに乗ったようだ――故にこちらも戦闘態勢に移行する。 それと同時に死と破壊を内包する剣が目前に迫らんとする。 だが、その迫力とは裏腹にそれは存外に見切りやすい。 その大きさゆえの初動の遅れ/その重さゆえの二撃目/斬り返しの遅れ。 ――容易にかわすことが出来る。 加えて、先の模擬戦において愛剣/レヴァンティンを持つ彼女との対峙。 それと比べれば、遜色は明らか。 隙を見つけ、そこに蹴りを入れ、更に怯んだ隙に起動したARMSの腕を叩き込む。 しかし、流石はシグナムといったところか――致命傷は避ける。 そこに驚きはないが、一つに気にかかる点――ARMSを起動した瞬間、シグナムが見せた表情/驚愕/戸惑い ――そこに生まれる疑問。 「本当に俺を知らないのか?」 返答は沈黙――恐らくは肯定を意味。 より詳しい情報を望むが、今の彼女からそれを得るのは難しいだろう。 それならば情報は惜しいが、他の管理局員に被害が及ぶ前にシグナムを殺すことが得策か。 滲み出たその殺意に呼応するように、彼女は剣を手に襲い掛かる。 だが、それは無意味。 シグナムの能力/戦い方は既に知っている。 反対にシグナムはアレックス/シルバー/ARMSの能力/戦い方を知らない。 それは戦闘における一つ一つの判断速度に差をもたらし、時間の経過と共に二人の優劣をより明らかにしていく。 そして再びシグナム身に刻まれるARMSの爪痕――出血と共に堪らず片膝をつく。 それを悠然と見据え、左腕に力を込め、ブリューナクの槍/荷電粒子砲の発射態勢に入る。 しかし、心に感じる躊躇い――眼前にいるのは間違いなくシグナム/管理局員。 故に確認のために最後に問う。 「お前は管理局員ではないのだな?」 シグナムは瞑目し、その答えを考える。 騎士としての矜持/命の重さ/使命感を天秤に載せながら……。 そして紡がれる言葉。 「……お前ほど強さを持っているものと出会っていれば、覚えている。 出来ればレヴァンティンを持って、お前と戦いたかったがな……」 答えは否定――それならば容赦する必要はない。 細められるシグナムの双眸からは、諦観とも取れる言葉とは反対に、折れることのない意志が見受けられる。 だが、それがどうしたことか。 ブリューナクの槍/焦点温度数万度――触れずとも、その熱と衝撃の余波だけで殺害は可能――必死は免れられない。 だが、光の槍はARMSからは放たれず、代わりに横合いから女性の甲高い声と共に 幾つもの固まりとなった光弾がアレックスに襲い掛かる。 「クロスファイヤー、シュートォッ!」 舌打ち一つ/発射プロセスを中断――急いで被弾圏内から離れる。 しかし誘導制御を受けた高密度の魔法弾にその対処法は無意味――距離を取って尚、威力を損なうことはなく、対象を狙う。 仕方なくARMSの腕を盾代わりに使用――衝撃と共に訪れる倦怠感/疲労/非殺傷設定の魔力弾の効果。 その射手は橙色の髪/ツインテール/手に持つ銃/機動六課スターズ03/ティアナ・ランスター。 彼女はこちらに銃を向けながらシグナムとの間に立った。 ■ 「大丈夫ですか?シグナム副隊長?」 支給されたデバイス、アンカーガンを油断なく構えながら、 シグナムのもとに歩み寄る。 「……ああ、すまん……助かった」 その一言は決死の覚悟で舞台に降り立ったティアナの心を沸き立たせ、喜ばせた。 シグナムを圧倒する存在。その前では間違いなく自分の実力などたかが知れている。 もしかしたら、シグナムの助けになるどころか、足手まといになってしまうかもしれない。 そういった不安は六課での経験、執務官補佐としての働きを経て尚、感じるものだった。 だけど、現状は予断を許さない。 その緊迫した状況は大切な仲間を失いたくないという一念により軽挙とも言われる行動に移させた。 私の行動は余計なものだったかもしれない――シグナムの元に近づきながらも、感じる僅かな不安。 だけど、それを綺麗に取り払ってくれるかのようにかけられる感謝の言葉。 自分の行動は正しかったのだ。 ――知らず知らずの内に頬が緩んでしまう。 とはいえ、いつまでも喜悦に浸り、油断をしている暇などはない。 表情に緊張を与え、アンカーガンを握る手に力を込める。 2対1になったからといって、相手が大人しくなる理由にはならない。 「私は時空管理局執務官補佐、ティアナ・ランスター。あなたを傷害及び殺人未遂の現行犯で逮捕します」 ハラオウン執務官の元で働き、身についた口上。 犯罪者に対して、ましてこの状況において、どの程度効果があるかもしれないけれど、 ある程度は脅しになる――そう思っての行動。 だけど、返ってきた彼の言葉は余りに予想とはかけはなれたものだった。 「俺は時空管理局機動六課所属、アレックスだ。このゲームには乗っていない」 耳に届けられる言葉は余りに馬鹿げたものだった。 よりにもよって自分がかつて所属し、既に解散してしまった部隊名を名乗りあげる。 その明白すぎる嘘は、思わず笑ってしまいたくなるものだった。 だけど、その滑稽な嘘に不思議と笑いは込み上げてこなかった。 代わりに感じたのは、かつてないほどの怒り。 犯罪者が、それも今、目の前で尊敬すべきシグナム副隊長の命を奪おうとしたものが、 自分が信じた正義を体現し、尊敬と愛着を感じていた部隊の名を騙る。 それは自分の過ごした思いを汚し、自分が築き上げた大切なもの全てを侮辱するようなものだった。 故に相手がどんなに自分を超える強さをもっていても、それは決して許せるものではない。 「ふざけんじゃないわよっ!!あんたなんかにっ……!」 我先にと口から飛び出す怒号。彼にぶつけられる怒りの言葉。 だけど最後までそれを吐き出す前に、中断を余儀なくされる。 胸に違和感――そこには何故かシグナムが持っていた剣が生えていた。 「……な……ん……?」 さっきまでの勢いが嘘のように言葉が生み出せない――何故だろう? だけど、言葉の意が伝わったのか、後ろにいるシグナムは答えてくれた。 「すまない……主のためだ」 耳に入る言葉に何故か納得。 意味が分からないが、彼女がここまですることなら仕方ないことなのかもしれない。 だけど、胸を貫く剣を見つめていても、何故か死の実感は湧かなかった。 胸に痛みはない――それが原因かもしれない。 そして、自分の気持ちを裏付けるもう一つの理由 《やっぱりシグナム副隊長が人を殺すなんて出来ないよね》 そう考えて安心 ――六課で過ごしたみんなとの日々が走馬灯のように映し出され、 その辛くとも楽しかった思い出が自分の考えにまた保証を加える。 やはり自分が感じた死の懸念は間違い。 シグナム副隊長に殺されたかと思ったなんて話したら、また彼女に殴られてしまうかもしれない。 そんな未来を思い浮かべて、ほんの少しの微笑を漏らす。 そして振り向き一瞬でもシグナム副隊長を疑ったことを謝ろうとするが、何故か身体が動かない。 彼女に殴られるという恐怖により身体が竦んでしまったのだろうか。 こんなことを知られたら、スバルはおろかエリオやキャロにまで笑われてしまうかもしれない。 そんな未来はごめんごうむりたい。 だから身体が動けるようにと、気を引き締め、 更に深呼吸をして身体を落ち着けてみようとするが、何故か息を吸うことができない。 代わりに自分でも驚くくらいの血を口から吐き出される。 《あれ?何で?》 心に浮かぶ疑問。それに対しての答えを思い浮かべようとするが、 内臓が擦れるこそばゆい感触――剣が引き抜かれていく感覚がそれを邪魔をする。 《何なのよ、こんな時に!》 思わず悪態を吐く。 人が必死になって考えようとしている時に、横槍を入れてくるのはスバルに決まっている。 また彼女が暇を持て余して、私のところにやってきたんだろう。 全く傍迷惑な子だ。 いい加減きつく言ってやらなければいけないかもしれない。 そう思いはするが、目に映るのはスバルではなく、近づいてくる地面の姿。 訳が分からない。取り合えず、受け身を取ろうと手を伸ばそうとするが、その暇もなく顔から着地。 痛い、と心の中で叫ぼうとするが、痛みなどなかった。 何なのだろう。状況に理解が及びつかない。 ひょっとしたら、夢を見ているのかもしれない。 この所、訓練づけだったし、疲れがたまっていたのだろう。そのせいかもしれない。 そういえばスバルにも早朝に、深夜にと、訓練をつき合わせてしまった。彼女もきっと疲れていることだろう。 今度の休みの日に、訓練のお礼として、いつものお店でアイスクリームでも奢ってやるとするか。 そうすればきっとスバルのことだ。喜んでくれるに違いない。 それにこんなに訓練ばっかしていたら、またなのはさんに怒られてしまう。 あの時は怖かったなぁ。まあ、でも自分が悪かったのだし、仕方ないか。 だけど、あれがきっかけでなのはさんともっと深く知リあえて仲良くなった。 情けなくはあるけれど、私の大切な掛け替えのない思い出……。 でも、何か変だなぁ。なのはさんに怒られたのは無茶な訓練して、模擬戦をやった後で、今じゃない。 あれ…………?今っていつだ? なのはさんに怒られて…………そう、ゆりかごでJS事件の決着がついて、それから六課が解散して……、 確か……フェイトさんの……補佐として働いていたはず。 その後は……八神特別捜査官に……呼び出されて、久しぶりに……えーと、六課の終結と喜んで…………それから……なんだっけ? ……ダメだ……。今は眠い。考えがうまく纏まらない……。 今日はゆっくり寝て、また明日考えることにしよう…………。 時間はまだたくさんある…………………………………………………………………………………………………………。 【ティアナ・ランスター@リリカル遊戯王GX 死亡】 ■ 現れたのは同じ機動六課メンバー/ティアナ・ランスター。 同じ管理局員と思った以上に早く会えるというのは好都合だが、状況が芳しくない。 恐らくシグナムと対峙している自分を敵と誤認。 また入局して浅い自分よりかはシグナムの方が信頼がある――それは自明。 ――故に誤解による戦闘を避けるために、ARMSを解除し、彼女に伝える。 「俺は時空管理局機動六課所属、アレックスだ。このゲームには乗っていない」 だがこの言葉を受けて、彼女の顔は怒りに染まる。 「ふざけんじゃないわよっ!!あんたなんかにっ……!」 言葉の中断――彼女の胸に刺さるシグナムのバスターソード それと共にもたらされる結論――ランスター二等陸士の死 「すまない……主のためだ」 微かに届けられるシグナムの言葉を思考。 今までの彼女の言動を思い返し、主と呼称していた人物を思い出す。 ――そして導き出す答え。 「……八神はやてのためか?」 この返答も沈黙。 だが、険しさを増す彼女の瞳は紛れもない肯定を示す。 動機が分かれば説得の道筋は立てやすい。彼女の行動を改めることが出来るかもしれない。 しかし、同時に疑問/自分にそれが可能か? 八神はやてとの付き合いの浅い自分に彼女を語る資格はない。 それにシグナムはもう仲間であり、部下であったランスター二等陸士を殺した。 後戻りは出来ないだろう。 ――故に説得ではなく、自分の認める強者としての会話を続ける。 「……何故殺した?」 幾重にも意味を込めた質問。 「……愚問だな。元より主以外は全て殺すつもりでいた。それが守護騎士である私の役目だ。 私の躊躇いや逡巡によって、主に危険が及ぶことは避けねばならない。 相手がお前のようなものやこの女のような管理局員であるというのならば、事は尚更だ。 主の命に比べれば、私の騎士としての誇りなど、何と軽いことか……」 饒舌とも言える回答/ランスター二等陸士の支給品を確認するための時間稼ぎ/阻止は可能 ――だが、彼女の言葉/思いの方が気になる。 言い終えると同時にシグナムはティアナが持っていたバッグから新たな刀を取り出す。 そしてその剣先をこちらに向け、不敵に笑う。 「レヴァンティンとはいかなかったが、これならお前にも遅れをとることはないだろう」 バスターソードと同じく規格外の武器。 しかし、それよりは彼女に馴染む剣/長大な日本刀 状況は最悪/仲間の死/仲間との戦闘 だが、目の前の彼女との闘いに喜ぶ自分がいる。 それを意識しながら再びARMS/マッドハッターを起動。 「いいだろう。俺もお前とは決着をつけたいと思っていたところだ」 【1日目 深夜】 【現在地 F-3】 【アレックス@ARMSクロス『シルバー』】 【状態】健康 、疲労(小) 【装備】なし 【道具】支給品一式、はやての車@魔法少女リリカルなのはStrikerS、サバイブ"烈火"のカード@仮面ライダーリリカル龍騎、 ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード 【思考】 基本 この殺し合いを管理局の勝利という形で終わらせる 1.シグナムの排除 2.1の後、機動六課隊舎へ向かう 3.六課メンバーとの合流 4.キース・レッドの首輪の破壊 【備考】 ※シグナムに多少の違和感を覚えています ※キース・レッド、管理局員以外の生死には余り興味がありません 【シグナム@魔法少女リリカルなのはA s】 【状態】疲労(小)、胸に裂傷(我慢できる痛みです) 【装備】正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使 【道具】支給品一式×2、バスターソード@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、ランダム支給品0~3個 【思考】 基本 はやてを優勝させるため、全ての敵を排除する 1.アレックスの排除 2.はやてとの合流 3.ヴォルケンリッターの仲間達との合流 【備考】 ※アレックスとティアナとのやり取りに多少の違和感を覚えていますが、さして重大なこととは思っていません 【支給品情報】 ※アンカーガン@魔法少女リリカルなのはStrikerSはF-3にあるティアナの死体が手にしています Back 柊つかさは殺し合いの夢を見るか? 時系列順で読む Next SWORD DANCER meet TYPOON Back 柊つかさは殺し合いの夢を見るか? 投下順で読む Next アイズ GAME START アレックス Next 舞い降りた翼 Back Wolkenritter シグナム Next 舞い降りた翼 GAME START ティアナ・ランスター GAME OVER
https://w.atwiki.jp/ga-rand1310/pages/8.html
動画(youtube) @wikiのwikiモードでは #video(動画のURL) と入力することで、動画を貼り付けることが出来ます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_209_ja.html また動画のURLはYoutubeのURLをご利用ください。 =>http //www.youtube.com/ たとえば、#video(http //youtube.com/watch?v=kTV1CcS53JQ)と入力すると以下のように表示されます。
https://w.atwiki.jp/nanoharow/pages/265.html
【名前】新庄・運切 【出典】なのは×終わクロ 【声優】釘宮理恵(「魔法少女リリカルなのは」のアリサ・バニングス) 【種族】人間 【性別】昼:切(男性)/夜:運(女性)《5 30~6 00の間に性別が入れ替わる》 【年齢】17歳 【外見】 華奢な体格に黒の長髪。右手に男物の指輪を嵌めている。白い装甲服を着込んでいる。 【性格】 やや引っ込み思案だが温和で倫理観の強い性格。6歳以前の記憶を失っている事もあってかなりの世間知らず。意外と毒舌で要らぬ事を言う。 【原作での設定】 異Gと戦い、戦後は移民達の管理も行う組織『UCAT』に所属する戦闘員。その特異な素性から秘蔵っ子扱いされている。 敵を殺害する事に臆していたが、佐山・御言との出会いで成長していく。 【『なのは×終わクロ』での設定】 大筋において原作と大差無し。ただし作品内でキャラの代替があるので、一部原作で出会うキャラを知らない。 Exーstはストレージデバイス、UCATは時空管理局という事になっている。 出雲&風見=なのは&フェイト&はやて ジークフリード=ギル・グレアム 趙・晴=リインフォース 三明=シャマル という具合に認識している。なので = の左手に記したキャラは知らない。 【面識のある参加者】 名前 呼び名 関係 [[]] 【技能・能力】 能力名 内容
https://w.atwiki.jp/ga-rand1310/pages/5.html
まとめサイト作成支援ツールについて @wikiにはまとめサイト作成を支援するツールがあります。 また、 #matome_list と入力することで、注目の掲示板が一覧表示されます。 利用例)#matome_listと入力すると下記のように表示されます #matome_list