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929 名前:【SS】:2014/07/07(月) 16 23 53.18 ID 2oNt78YAI SS『初夏のねがいごと』 日増しに強くなっていく日差しに、真夏の到来を感じるような、そんな初夏のある日の午後。 大学から帰ってきた俺は、冷蔵庫から取り出した麦茶を飲んで一息ついたあと、いつものように階段を上がって自分の部屋の扉をかちゃりと開いた。 「あ、おかえりー。」 、、、。 説明しよう。桐乃が俺のベッドに寝転がってゲームをしていた。 「えと、、、何やってんの?」 「ゲーム。見てわかるっしょ?」 「そうじゃなくてだな。なんでわざわざ俺の部屋で、俺のベッドに乗っかってゲームやってんのかって聞いてんだが?」 「はぁ?別にいいでしょ?」 「、、、この部屋、クーラーもないのに暑くねーの?」 そう口にしたあとで言うのもなんだが、、、自分で言ってりゃ世話ねぇな、ったく。 「あたしの部屋、クーラーが効きすぎて、ちょっと寒くなっちゃったの。だからこの部屋に来てたってワケ。」 、、、それって、扇風機を強にして風にあたりながら言うセリフじゃないだろ。 「じゃあ、俺は暑いから、お前の部屋に入っててもいいか?」 「ダメ。」 あいかわらず理不尽な妹様である。 しかたなく、俺は扇風機を自分に向ける。 「ちょっと!扇風機、自分にだけ向けないでよ!暑いじゃん!」 「寒かったんじゃないのか?」 「っ!もう寒くなくなったの!悪い!?」 やれやれ。 俺は扇風機を首振りモードに切り替えて、机に荷物を置きつつ椅子に座る。 「ふぅ。」 「ねぇ。」 一息つくやいなや、桐乃が声をかけてくる。 「なんだ?」 見ると、さっきまで寝転んでやっていたゲームを枕の横に置いて、ベッドの上にぺたんと座り込むような姿勢になっていた。 「あのさー、今日って七月七日なんだけどぉ。あんた知ってた?」 「あ、ああ。知ってるよ。それがどうかしたのか?」 「ふーん、へぇー、知ってたんだ。」 いつものようにニヤニヤしながらそう言ってくる。 「んで?」 そしてこれも、すでに恒例となった問いかけだ。 「、、、七夕だろ?」 「そ。短冊にねがいごとを書いて笹に飾ったりすんだよね~。」 「つってももう、短冊を飾る年でもないだろ?それがどうしたってんだ?」 「ふひひー♪あんたさー、商店街に出してあった笹にねがいごと書いた短冊つけたっしょ?」 「なっ!なぜそれを知っている、、、!」 「やっぱしw帰りに商店街を通ったときに笹にたくさん短冊が飾ってあんの見てさー。なんか懐かしくなって、その短冊を眺めて見てたワケ。」 「ぐっ!」 「そしたらその中に、こんなねがいごとが書いてあったんだよねーw」 「『妹がいつまでも幸せでありますように。』ってw」 「そ、それが何で俺のだって分かる?他の誰かが書いたのかもしれねーだろ?」 「裏に『京介』って書いてあったし。」 、、、バカだろ?俺?せめてイニシャルとかにしとけよ。 「ひひひ、シスコンw」 「うっせ。」 それを言うためにわざわざ、この暑い部屋のなかでずっと待ってたおまえもおんなじだと思うぞ? ------------------------------------- そして、その夜。 「そう言えば、今日は七夕ね。」 家族全員が揃う食事の席で、お袋がそう切り出した。 一瞬、俺と桐乃の箸が止まる。 「昔はこの時期になるといっつも桐乃が、笹を飾ってって言い出してたんだけどねぇ。いつ頃からかしら?そう言わなくなったのって?」 「べ、別にいいでしょ?お母さん。あたしだっていつまでも小っちゃい子供じゃないんだからさ。」 「でもあんた、結構大きくなっても言ってたような気がするんだけど、、、。」 「き、気のせいだってば。」 「そうかしら?まあいいわ。それで飾った笹に二人でねがいごと書いてたわよね、あんたたち。」 「そ、そうだっけ?」 「そうよー、京介。でもあんたはどうも七夕のねがいごとの意味を勘違いしてたようだったんだけどね。」 「え?どういう意味だ?」 「あんたのねがいごとって、いっつも『ミニ四駆が欲しい』とか、そんなのばっかりだったから。」 、、、幼き日の俺よ、それはクリスマスのお願いだ。織姫と彦星は、プレゼントはくれないぞ。 「ばかじゃんw」 桐乃がそう言ってとなりで笑う。 「で、桐乃はいっつもおんなじねがいごとだったわよね。」 「へ?」 「確か、『お兄ちゃんとずっと」 「わーっ!わーっ!わーっ!!!お、お母さん!そ、そんなの昔のことでしょ!」 「ふふふ、懐かしいわねー。ねぇ、お父さん。」 そう言って笑うお袋の横で。 「ふっ。」 晩酌をしながら、微かに微笑む親父なのだった。 ------------------------------------- そして、その翌日の朝。 大学に向かう途中の商店街で。 「まだ飾ってあんのか。」 そう言って、笹に結びつけてある自分の短冊を見た俺は。 同じところに寄り添うように結びつけられた、もうひとつの短冊を見つけたのだった。 その短冊にはこう、書かれていたよ。 『お兄ちゃんとずっと一緒にいれますように-きりの』 Fin かしゃ。たたたたたっ、、、。ぴっ。 宛先 桐乃 件名 ひひひ こんな短冊見つけたんだけど? 、、、ぴろりん。 差出人 桐乃 件名 Re ひひひ ちょ!な、なんでまだ飾ってあんのよ! 、ぴろりん。 差出人 桐乃 件名 Re ひひひ ってか、あたしじゃないかんね! ------------------------------------- そして、そのメールのあとで気付いたのだが--- ふと、その短冊の裏を見てみると。 そこに小さく小さくこう書かれていたのだった。 『ねがいをかなえてくれてありがとう-桐乃』 ----------
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31 名前:【SS】初めて会った時 1/2[sage] 投稿日:2011/08/17(水) 19 01 11.22 ID 7rR6+S2m0 [2/7] 実でも義理でもいい。 俺はこんな展開が見たい。 「ねえ、あんたさ、どうしてあたしのためにあんなに頑張ってくれたの?」 月が照らす夜道を歩いているとき、隣の桐乃がそんな事を尋ねてきた。 「前に黒猫に聞かれた時にも言っただろ。 俺たちが兄妹だからだよ。 お前だってそう答えただろ?」 俺が黒猫に振られ、二人で追いかけた時に、黒猫の問いに対して確か桐乃もそう答えたはずだ。 「そうだけどさ・・・・・・」 どうやら桐乃はこの答えだけでは納得いかないらしい。 「・・・・・・今だから言うけどさ」 桐乃は立ち止まり、真摯な声でそう言った。 俺も立ち止まり、正面から桐乃を見つめる。 「あの時頑張ったのは兄妹だからっていうのもあるけどさ、 それ以外に、京介にしてもらった事をやり返したいって想いもあったんだ」 俺にしてもらった事をやり返す? 「人生相談を通じてあんたに色々助けてもらってすっごい嬉しかった。 大人になっても忘れたりなんかしないって思った。 絶対に何時かやり返してやろうって思ってた」 桐乃のヤツ、そんなことを考えてたのか・・・・・・ 俺が桐乃のためにやってきた事は、何一つとして無駄じゃなかったんだな・・・・・・ 「ずっとずっと無視しあってた時、あんたはあたしのことなんかどうでもよくて、 あたしのことなんか要らないだって、必要ないんだって考えてると思ってた。 でも実際にはそうじゃなくて、あんたはあたしを必要としてくれてて、あたしのためにすっごい頑張ってくれて、 それがどうしようもないくらい嬉しかった」 「だからあたしはあんたのために頑張ろうって思ったんだよ」 穏やかな月夜の下で桐乃が俺に笑いかける。 この言葉、この笑顔だけで、俺が今まで桐乃のために頑張ってきたすべてが報われた気がした。 でもな、桐乃。本当はそうじゃないんだよ。 「桐乃、俺がおまえのために頑張った理由だけどな」 桐乃は俺に自分の心を吐露してくれた。 なら、俺も答えないと。 「う、うん」 桐乃の顔に緊張が走る。 「お前が今言った想いを、おまえが俺にくれたからなんだ」 「え?」 桐乃が呆けた様な顔をする。 「あれは俺が初めておまえに会った時だ」 そう。初めて桐乃を『見た』時と同じで、絶対に俺の記憶から消えない思い出。 32 名前:【SS】初めて会った時 2/2[sage] 投稿日:2011/08/17(水) 19 01 40.34 ID 7rR6+S2m0 [3/7] 桐乃を抱きかかえるお袋。 小さな桐乃は円らな瞳で俺をじっと見ている。 『ほら桐乃、お兄ちゃんですよー』 俺は桐乃へと恐る恐る手を近づけた。 『だぁ!』 近づいた手の指を、桐乃が掴む。 『きゃは!きゃは!』 桐乃は嬉しそうに俺の指を上下に振る。 『ふふ・・・・・・ よろしく、お兄ちゃん、だって』 桐乃とお袋が俺に笑いかける。 『京介はお兄ちゃんなんだから、これから桐乃のことをずっと助けるのよ?』 『おにいちゃん・・・・・・』 少し怖くなり桐乃に掴まれた指を引いてみるが、掴む力は思いの他強く離れない。 そのことが、桐乃が 『離れないで、ずっと守ってね』 そう言っているように思えた。 『よろしくね、きりの。 おにいちゃんが、ずっとまもってあげるからな』 「生まれて初めて、誰かに必要とされた気がしたんだ。 俺はな、桐乃」 「おまえに必要とされて嬉しかったから、おまえのために頑張ろうって決めたんだ」 初めて必要とされた気がして嬉しかった。 それはただの勘違いかもしれないが、それでもずっと俺の心に残り続けた。 だから、桐乃が俺を必要としてくれるなら、ずっと桐乃のために頑張り続けようと思った。 「初めておまえに会ったときから、俺はシスコンだったんだな」 三つ子の魂百まで。 これじゃあ、妹にシスコンと馬鹿にされるのも仕方がない。 「それじゃあ、あたしも初めて兄貴に会った時から、ずっとブラコンだったんだね」 桐乃が俺の腕にしがみついてきた。 「えへへー」 桐乃が俺の腕に頬を摺り寄せ、嬉しそうに笑う。 ・・・・・・俺はこれから、何度桐乃のこんな顔を見るんだろうか。 「あたしは、これからもずっとあんたが必要だからね」 しがみつく腕に力を込め、桐乃が言う。 「ああ。俺にもおまえが必要だ」 俺は桐乃に笑いかける。 「だからずっと守ってね」 「だからずっと守ってくれよ」 月夜に照らされ帰途につく中、桐乃が俺の指をきゅっと握った。 ----------
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754 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2010/11/01(月) 00 05 45 ID S2bRW7He0 京介「ありえねーだろ、壁に穴が空くとか」 桐乃「なに他人事みたく言ってんのよ」 京介「パソコン投げて穴開けたのお前だろ。最近のパソコンってスゲー固いのな」 桐乃「アンタが私にヤラしいことしようとするからでしょ!」 京介「はあ? 髪の毛にゴミが付いていたから取ってやろうとしただけだろ! それをお前が勘違いして暴れるからこの有様だよ!」 桐乃「ゴミがついてるなら、口でそう言えばいいじゃん! アンタ、なんだかんだいって私に触りたかったんでしょ! キモ!」 京介「うぐぐ……ああ、もう、わかったよ。俺が悪いってことでいいわ。 兎に角、親父に言ってくる。殴られる覚悟で」 桐乃「だ、黙ってればバレないでしょ! こ、こうやってカレンダーで隠したりサ」 京介「隠してもしょうがないだろ。穴空いてるんだぞ、穴。 俺とお前の部屋繋がっちゃってるんだぞ。見えなくても、音は聞こえるしな」 桐乃「キモッ! 妹の部屋盗聴するとか、変態レベル高杉!」 京介「んなこと一言も言ってねぇ!! ……とにかく、生活できないだろ、そんなんじゃよ」 桐乃「なによ、つまりアンタは人様に聞かせられないような生活しているってワケ? うっわ~鳥肌立ってきたんですけど! 私ってば犯罪者の隣で生活してたの? こっわ!」 京介「んなわけあるか! ……まあ、エロゲーやってる音は確かに聞かれたら不味いけどよ。 ま、まあそれ言ったらお互い様だろ。むしろお前が俺にエロゲー教えてるわけだし?」 桐乃「じゃ、じゃあ兄妹なら恥ずかしくない生活だって言えるのよね、アンタは」 京介「そ、それは……(そりゃ、俺だって健全な高校生男子なんだから、1人で隠れてすることぐらいあるっての!)」 桐乃「はん! やっぱりアンタ犯罪者なんじゃない」 京介「それぐらい普通だろうが!!」 桐乃「なら、別に穴はこのままでいいってことね! 変なコトしたらコロすから」 京介「しねーよ!! ……って、穴このままかよ!?!」 ZZZ…… 桐乃「……兄貴、寝た? 寝てるよね? よ、よし、兄貴、部屋入るよ…… …ゴクッ…兄貴の寝顔……はぁあぁぁぁん……ヤバイ、これヤバイ。 トンネルを抜けると、そこは兄貴の寝顔。国民的ネコ型ロボットの道具とか、裸足で逃げ出すレベル! スンスン……兄貴の寝息! 兄貴の口臭含んだ、保湿成分たっぷりの兄貴シャワー!! シスコン変態兄貴、妹の顔ペロペロしちゃってるの? キモ! 猫キモ! シスコン兄貴猫、妹の顔舐め回しすぎ! 人間なら通報される。でも兄貴、ネコなら仕方ないよね? む、むしろネコならご褒美あげなきゃ駄目って感じ? ご褒美? ほ、欲しいの兄貴? シスコン兄貴、妹にご褒美おねだりしてるの? 最低、最低、あんたそれでも兄貴? で、でもあげる、ご褒美あげちゃうから。優しい妹に感謝しないさいよね!! ほ、ほ~ら、喉ナデナデゴロゴロしちゃうから! 妹にゴロゴロされちゃうとか、マニアニックすぎ!キモ! ほ、ホントはご褒美なんか貰えないんだからね? 私、てっきり兄貴に、キ、キ、キスされると思ったんだから! 変態兄貴、私に襲いかかると思って、超キモかったんだから! 処刑されても文句言えないんだから! なのにゴミが付いてたって、バカなの?死ぬの? アンタが捨てるのは私の髪の毛に付いたゴミじゃなくて、妹のファーストキスでしょ! 信っじらんない! 犯罪者! 鬼畜! ヘタレ! 大好き! 変態! 強姦魔!」 京介「ん…んん……桐乃…明日にしてくれ……」 桐乃「ふぁあぁあぁぁぁぁぁぁ!?! き、き、き、桐乃ぉぉぉぉ~~~!?! な、なに、勝手に人の名前呼んでるのよ! ゆ、夢みてるの? 私の夢みてるの?! あ、ありえなくない? 妹が出てくる夢をみるとか、シ、シスコンすぎ! 私の出演許可なんて出してないんだからね! で、でもどうしても私の夢を見たいってんなら、アンタも私の夢の中に出てきなさいよ! もう2日も兄貴出てきてないじゃない! なのにアンタの夢に私が出てくるとか、不公平でしょ!! わ、わかった、枕でしょ!? 枕のせいでしょ! ハイ交換!! 私の兄貴の枕交換決定! ……スンスン……ああ、兄貴枕ぁ~ い、妹の枕で、妹の夢をみるとか、兄貴もう末期じゃん。そ、そのうち、枕だけじゃなく布団とか、パ、パジャマとかも奪われちゃう!? で、でも変態兄貴、寝不足で襲われたら私ヤバイから、だからこれからも交換してあげる! か、感謝しないさいよね!!」 -------------
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698 :白い日【SS】 :sage :2011/03/20(日) 22 53 55.30 ID qvTj4jOQ0 ある日コンビニから帰ってきてリビングに戻ると、妙にそわそわした桐乃が居た。 「ただいま」 「ん、お、おかえり」 おまけに素直に挨拶を返してくる。明日は雨か? その後も落ち着かなげにして、こっちをチラチラ見てくる。 というより、俺の手に提げられたビニール袋を見ているような……。 ははあん。なるほどな。 「ほらよ」 「え?」 俺は袋からクッキーの箱を出して渡してやる。 こいつお菓子が欲しくてこっちを見てやがったんだな。 まったく変に子供っぽいやつだ。 「な、なに? くれんの?」 「欲しかったんだろ?」 「なっ……!」 急に耳まで真っ赤にしだす桐乃。そんなに恥ずかしいか? 「そ、そんなワケないじゃん!? だ、誰が、アンタからなんかの……」 「んだよ、良いから受け取っとけ。ほら」 「……ま、まぁアンタがどうしてもって言うなら? 受け取ってあげなくもないケド」 「じゃあどうしてもだ」 しゃあないから、今日はこっちが折れてやるよ。 いつもとか言うなよ。悲しくなるから。 「ん……あ、ありがと」 消え入りそうな声でポツリと呟く桐乃。 そして両手で抱えるように箱を受け取る。 こいつそんなにクッキー好きだったかな。 俺はそのまま部屋に戻り、特にする事もないので明日の準備でもする事にした。 えーと明日は何日何曜日だったか……カレンダーを見ると3月15日の火曜日か。 時間割は~っと。 End -------------
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955 名前:【SS】1/5[sage] 投稿日:2011/04/12(火) 16 40 40.25 ID 1i0uQxzy0 [4/11] 小鳥囁く月曜の朝。カーテンを大きく開き、兄貴の部屋に陽光を誘い入れる。 それは起床時間になっても起きる気配の無い兄貴の顔にも容赦無く照り付けるが、ほんの少し眉を顰めるだけ。 チッ。これで起きれば面倒が無いのに。 「ほら、とっとと起きなさいよ!」 我ながら不機嫌な声。っていうか何であたしがこんな面倒な事しなくちゃいけないワケ? それというのも、この変態ダメ兄貴がだらしないせいだ。普段のだらしなさに目ぇ瞑ってやってるんだから、朝ぐらいはしっかり起きろってのよ。 あー……考えれば考えるほどムカついてきた。 このあたしが貴重な朝の時間を使って起こしに来てやってんのに、なんでこのシスコン兄貴は気持ちよさそうに寝てんの? ほんっと有り得ないんですけど!?シスコンなら可愛い妹様の一言目で飛び起きて、拝め奉った上で足の1つも舐めてみせろってのよ! 「いいっかげんに、起きろ!」 ベッドのシーツを引っ掴み、テーブルシーツの要領で引き抜く。 勿論あたしの場合はその上に乗っかってる異物を引き摺り落とすのが目的なわけで、テーブル芸とは対照的に、よりバイオレンスに、より乱暴に引き抜いたのは言うまでもない。 「どあああああ!?」 これはこれで芸になりそうなキリモミを見せ、兄貴が頭から落下した。ふんっ。あたしに起こしてもらえるんだから、この位はご褒美だと思って欲しいもんね。 しかし、兄貴は一向に動かない。 ……え?いや、ちょっと、冗談だよね?確かに頭は打ったけど、こんな大した高さも無いベッドから落ちたくらいでそんな……。 「ちょ、ちょっと……?」 うそ。起きない。おきない。オキナイヨ?なんで?もしかして、本当にヤバイ?やだ、やだやだやだ。こんなはずじゃないのに。ホントは起こしてやった事にちょっと感謝とかしてもらって、おはようとか言えれば幸せだなとか考えてただけなのに……。 「……つつつ。どうした、今日はやけに乱暴だな、桐乃」 言いつつ、兄貴がゆっくりと体を起こす。 よ、良かったあああああああああああああ。良かったよぉ神様!ホント怖かった! 何?こんなに妹に心配させるとか、本当にシスコン失格なんだからこの変態! 心配って言っても、勿論あたしがこんな変態を殺した程度の些事で罪に問われるような事が無いかどうかが心配だったのであって! 別にこのシスコン兄貴がどうなろうが知ったこっちゃないというか。 「まあいいか、桐乃が起こしに来てくれたんだからな」 そ、そうよ!このあたしが起こしに来てやったんだから、このくらいはご褒美……って、へ? な、なによこの笑顔。違うでしょ? いつものあんたなら、「てめぇ!ベッドから叩き落す前に、もっと平和的な起こし方があるだろ!」とか怒鳴るでしょ? 何でそんな、や、優しい王子様みたいな笑顔であたしを見てるの? 右手!右手差し出してきた。な、何するつもり?分かった!そうやって油断させておいて、何か復讐するつもりですねわかりまs……。 「おはよう桐乃。今日も可愛いな」 956 名前:【SS】2/5[sage] 投稿日:2011/04/12(火) 16 42 00.70 ID 1i0uQxzy0 [5/11] 優しく呟くと、兄貴は差し出した右手をあたしの頭に載せ、愛でるように撫で始める。 ――――っ!……っちょ!ぬぁ、なあ、なああああああああああ!? 何で、よりバイオレンスに、より乱暴に兄貴を引き摺り落とそうとしたあたしが兄貴に王子様スマイルで撫で撫でしてもらってるの? ゆゆゆゆゆゆ夢?潜在願望?むしろ本能?意味が分かんない。 恥ずかしくて嬉しゲフン気持ち悪くて顔が熱くて爆発しそう。ってかする。爆発する。このままじゃ爆発して鼻血出る。 や、ヤバイ。ヤバイヤバイヤバイ――。 気が付いたらあたしは、あらん限りの力で平手打ちを決めていた。 「……っにすんのよこの変態!シスコン!強姦魔!マジ有り得ないんですけど!?キモイ!宇宙開闢以来1番キモイ!死ねっっっっっ!」 桐乃が、何故か顔を真っ赤にして出て行ってしまった。 な、なんでだ!?俺、何かおかしいことをしたのか!?俺はいつも通りだったはずだ! 確かに俺は普段寝坊しないから、桐乃が朝起こしに来てくれるなんてイベントは殆ど起きない。 だが、……なんか最近の記憶が曖昧な気がするが……桐乃と俺は、あのくらいのスキンシップは当然に行っている、超仲良し兄妹だったはずだ。 桐乃は中学生になってもまだ「将来は兄貴のお嫁さんになる」といって憚らない可愛すぎる妹だし、俺は俺で桐乃の一生の相手は自分以外には居ないと思っている超絶シスコン兄貴。 だけどそんな俺の気持ちを聞いて、桐乃はいつも「じゃあ両思いだね♪兄貴ぃ☆」なんて言って甘えてきて、俺はいつも理性と本能の狭間で我慢を強いられてきた。……はずだったよな? なのに、さっきの桐乃の反応は何だ?ちょっと頭を撫でただけで変態扱い?果ては強姦魔?俺の桐乃が、あんな事を言うはずが無い。……そうだ。 俺の妹が、こんなに可愛くないわけがない!! あたしの兄貴が、こんなにデレデレなわけがない!! ご飯もそこそこに家を出たあたしの頭の中で、そんな言葉がぐるぐると回っている。 お、おかしい。やっぱりおかしい。殴られた後の表情1つ見ても、あたしをからかおうとしてたような態度じゃなかった。 あたしはいつも兄貴の気の無い態度にヤキモキさせられてきたのに、今日に限ってあの態度は一体なに!? あ、あんな笑顔で撫で撫でなんて……うひゃあああヤバイヤバイヤバイヤバイって!ちょ、ほっといたらあの後どうなってたの?どうなっちゃってたの? これはちゃんと帰って真偽を確かめないと……! からかってるだけだったとしたら……死刑。私刑。刺刑。 で、でももし……本当だったとしたら……あたしはどうするんだろう。 その夜、何事も無かったかのような声色で、兄貴のただいまが響いた。 (――キタッ!) あたしは勢い良く立ち上がり、気合を入れるために持っていたブツを、兄貴に見つからないようベッドの下に隠す。 階段を上がる音を聞きながら、タイミングを図る。兄貴が部屋に入ったタイミングで乗り込む!そう決めていた。 しかし、兄貴の足音は期待とは裏腹に、私の部屋の前で止まる。 957 名前:【SS】3/5[sage] 投稿日:2011/04/12(火) 16 44 49.19 ID 1i0uQxzy0 [6/11] コン、コン…… ノックの音。 返事を聞かずに、扉が開く。 「桐乃」 「な、なななな何っ!?勝手に開けないでよね!変態!」 気持ちの準備が出来てないうちに開けるな馬鹿っ!超どもった!恥ずかしい……! あたしの声に、兄貴は一瞬驚いたように瞳を見開く。が、すぐに眉間にしわを寄せ、ため息をついた。 「桐乃。話があるから部屋に来るんだ」 「いやっ!あんたみたいな変態の部屋、何されるかわかんないもん。話があるならここでしなさいよ」 「桐っ……!」 間髪入れずに答えるあたしに一瞬何かを言い返そうとするが、またため息で押し殺す。 「わかった……ここで話そう」 あたしと兄貴は、テーブルをはさんで向かい合っていた。 なんとしてでも……兄貴の真意を聞き出してやるんだから……! 「まず桐乃……お前、何かあったのか?」 「はぁ?それあたしの台詞。いきなり妹の頭撫でるなんて、シスコンこじらせて犯罪者になっちゃうんじゃないの?マジキモイ」 兄貴が絶句しているのが容易に見て取れる。 驚く事に……兄貴は、どうやら本気であたしのあの態度が信じられないらしい。 「……お前、どうしちまったんだよ?昨日まではあんなに俺に甘えてくれていたじゃないか!それとも、何か俺に悪いところがあったのか?」 「は、はぁ?あたしが、あんたに、あ、甘えてた……?」 う、嘘だ!あたしは絶対に甘えてなんていない。声を大にして弁解したい!絶対に、絶ぇ対にありえない! 何を言い出すんだこのシスコン兄貴!妄想と現実の区別がつかなくなっちゃったんじゃないの?夢でも見てたとしか思えない。 ん?夢……? ……もしもあの時、あたしが兄貴にバイオレンスな振る舞いをした時……兄貴がこんな夢を見ていたとしたら? そして今も、その夢と現実の区別がつかなくなってしまっているんだとしたら!? あ、あたしのせいってこと!? 「あ、兄貴。あのさ……」 「なんだ」 「あんたの記憶にある……あたしのこと、ちょっと教えてみて?」 「はあ?」 訝しみながらも、兄貴はとつとつと語り出した。 「そうだな。まず家に帰ってきたら必ず桐乃は俺の部屋に遊びに来るんだ。そして、「ただいまのキス」のおねだりだ。 その後は俺の膝枕で漫画を読んで、俺の手が頭に乗っかっていないと気がすまない。 ご飯のときには食べさせっこ、お風呂の時には洗いっこ、寝るときには一緒に寝ると言って聞かないが、俺の理性が危ないので部屋で寝かせている. それでもたまに桐乃は俺のベッドに潜り込んできて」 「にゃあああああああああ!もおやめてぇぇぇぇぇぇ!」 958 名前:【SS】4/5[sage] 投稿日:2011/04/12(火) 16 45 50.22 ID 1i0uQxzy0 [7/11] ちょ、ちょちょちょちょちょっとこいつやっぱり変態だ! 変態だ変態だと思ってきたけど、まさか夢の中でここまであたしと……なんというか、イチャラブしてたとは思わなかった。 だ、だって、もうあたし中学生だよ!?あ、あ、あ、洗いっこって!どこ!?ねえどこを洗っちゃってたの兄貴!? それに、理性が危ない!?もうその夢の時点で理性なんて欠片も残ってないでしょ!?もう理性捨てて禁断の果実コース一直線だって! た、食べられちゃう……!あたしの禁断の果実が兄貴に食べられちゃうよぉぉぉ! 「……ど、どうした?桐乃」 「ちょっと!ちょっと黙ってっ……!」 「……いいや、黙らねぇ。聞けっ!桐乃!」 「!?」 「お前は、今朝から何かおかしくなっちまってる……。初めは冗談か、ちょっとしたイタズラ心なのかとも思ったが、違うみたいだった」 「ばっ!おかしくなってんのは明らかにあんたでしょぉ!?」 「いいや違う!お前は覚えてないのかもしれないが、俺達は確かに二人だけの思い出を沢山刻んだんだ!桐乃、お前忘れちまったのかよ!?俺の部屋で初めてした、ちゅーの味を!」 「やぁぁめぇぇてぇぇぇ!勝手にキモイ記憶捏造してんじゃないわよ!信じらんない!つーかちゅーって言うなぁ!キモイエロイ気持ち悪い!」 「捏造なんかしてねぇ!思い出してくれ桐乃!俺とお前はあんなにも通じ合っていたじゃねぇか!?」 「死ね死ね死ね死ね!ま、マジも一発ぶん殴るわよ!?そうすりゃ元に戻るよね!?」 「あーいいとも!殴りたいなら殴ればいい!だけどな、俺には分かるんだよ!憎まれ口を叩いていても、お前も本心は俺と一緒だってなぁ!」 「……え?」 強く肩を掴んで叫んだ兄貴のひと言に、あたしは言葉を失う。 「そうさ。お前と思いを重ねてきた今だから分かる。乱暴な言葉の裏に、俺を思う気持ちが隠れてやがるんだ。お前だって気付いているんだろ?……自分の気持ちに」 「あ……兄貴……」 「確かにお前は、俺との思い出を無くしちまったのかも知れねぇ。だけど、そのくらいで桐乃のことを嫌いになるような男じゃ、断じて無い!」 「だ、だからそれは……」 「桐乃。今からでもやり直そう。記憶をなくしても、思い出をなくしても、俺達の思いは、何ひとつ変わったりしないんだから!」 「……う、あ、兄貴ぃ……」 なんで?なんでだろう。 兄貴は間違ってる。あたしと兄貴のイチャラブな思い出なんて、一個も無い。悲しいくらい一個も無いんだ。 なのに、あのニブチンの兄貴があたしの気持ちに気付いてくれてる。全力で答えようとしてくれてる。 それなら……それなら、もう、良いんじゃないだろうか。 このまま、兄貴に全てを委ねても。 「あ、兄貴。ありがとう……あたし、あたしね……!本当は兄貴の事……!」 959 名前:【SS】5/5 fin[sage] 投稿日:2011/04/12(火) 16 47 33.79 ID 1i0uQxzy0 [8/11] 目覚ましを止める。 ……なんだか頭が痛い。昨日の記憶が曖昧だ。 良く晴れた火曜日の朝。カーテンからもれる陽光に、俺の気分も自然と明るくなる。 (今日は良い一日になりそうだ) そう思った瞬間、ふと隣に何かがあることに気づく。 見慣れた茶髪。 甘くとろけるような、女の子の香り。 憎たらしい……筈の我が妹が、同じベッドで気持ちよさそうに眠っていたのだ!! 「き、きききき桐乃ぉぉぉ!?」 「ふゃ……?兄貴……?」 とろんとした瞳で俺を見る。 な、何だこの可愛らしい仕草は。いつもの小悪魔的な笑みと汚物を見るような視線はどこに行った!? そ、それどころじゃねぇ、なんでこいつ俺に抱きついて離れないんだ!?ま、まて、俺のリヴァイアサンが熱くうねりを上げて大変な事になっちまう! 「あーにきぃ~♪」 ぐりぐり。 「どどどどどどどどうしちゃったんですか桐乃さん!?いや、あ、ちょっとまって、ヤバイ!ヤバイって桐乃!」 俺の気も知らず、桐乃はうるうると輝きを帯びた瞳で上目遣い。そしてねだるようにこう言うのだ。 「ねぇ兄貴ぃ……おはようのちゅー、してぇ♪」 「き、き、き、桐乃……!」 「ねぇ……兄貴ぃ~♪」 「りょ、了解しましたぁ!」 そのとき流石に、俺は思ったね。 俺の妹がこんなに可愛いわけがない!ってな。 終わり -------------
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65 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/11/21(月) 18 57 12.24 ID t3Q3vPHS0 [2/2] ぬ~べ~はトラウマレベルの怖い話がいっぱいあったなぁ。 桐乃「今日怖い噂を聞いちゃって眠れないの……」 京介「怖い噂?」 桐乃「うん。 聞いたら三日以内に夢に出てきて、答えを間違えると攫われちゃうってやつ」 京介「俺が中学生の時にも流行ってたなぁ。 ただのでまかせだとは思うが、桐乃のことが心配だな。 仕方がない、いっしょに寝るか」 桐乃「ありがと。 ……ごめんね」 京介「いいってことよ」 ・・・その夜・・・ 桐乃「すーすー きょうすけぇ……」 京介「んん…… きりのぉ……」 ???「ククク……グッスリ寝てやがる…… これから読モの丸顔をたっぷりと堪能してやるぜ。 おっと、その前に定例の質問をしなきゃな。 『おまえは、よだそうか?』」 ???「いいえ、あなたこそヨダソウです」ゴゴゴゴゴゴ ヨダソウ「な、き……貴様は!?」 ???「あなたが変な噂を流すから、桐乃がお兄さんと一緒に眠ることになったじゃありませんか。 あなた…『覚悟して来てる人』……ですよね。 桐乃を『攫おう』とするという事は、 逆に『始末』されるかもしれないという危険を、常に『覚悟して来ている人』というわけですよね……」ゴゴゴゴゴゴゴゴ ヨダソウ「た、助け……」 ???「いいえ、ダメです♪」 ヨダソウ「ギャァァァァ!」 ・・・次の日の朝・・・ 桐乃「おはよう」 京介「おはよう。 やっぱり何もなかったな」 桐乃「そうだね。まあ、ヨダソウだし。 ……でも、後二日あるから、ちゃんと最後まで責任とってよね!」 -------------
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484 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/10/17(月) 16 29 46.57 ID l3vntX4M0 [2/9] 480 親バレを考えたらこうなった。 京介(俺はもしかして、桐乃を女として愛しちまってるのか? 桐乃も満更じゃねえみたいだし…… ……桐乃と二人で生きていくのも、それはそれでいいかも知れねえな。 けどよ、親父たちになんて言えばいいんだ?) 大介「おい、京介。 俺の部屋に来い。話がある」 京介「話?」 大介「………………」 京介(親父、滅茶苦茶怒ってるんだが……一体どうしたんだ?) 大介「……京介、お前とうとう桐乃に手を出したそうだな」 京介「は?」 大介「惚けるな。お母さんに聞いたぞ。 街中で腕を組んで歩いたり、抱き合ったり、人目も憚らずキスしたり、 ウェディングドレスを着せて連れまわしたり、ラブホテルに行ったり、 二泊三日の泊りがけで熱海に行ったりしたらしいな」 京介「親父!それは―」 バキッ 大介「言い訳をするな!見苦しいぞ、京介!」 京介(駄目だこの親父!頭に血が上って人の話を聞きやしねえ! そもそも、泊りがけの旅行なんてしてないって親父も知ってるはずだろ!) 大介「……おい、京介。 桐乃のことは好きか?」 京介「ああ。世界中の誰よりも大好きだ」 京介(まだ、この気持ちがただの兄妹愛なのかはわからねえんだけどな) 大介「そうか……そこまで言うのなら仕方がない。 お前たちの関係を認めてやる」 京介「え?」 大介「血が繋がっていないとはいえ、お前は俺の自慢の息子だ。 お前になら桐乃を任せられる」 京介(え?血が繋がってないって?桐乃を任せられるって? あれ?あれ?) 大介「孫か……桐乃に似て可愛いのだろうな…… 顔を見るのが楽しみだ」フフフ 京介(えー?) 桐乃「お父さん、なんだって? って、どうしたのその顔! すごい腫れてるよ!?」 京介「親父に殴られた」 桐乃「あんた、何かお父さんに怒られるようなことしたの? ほら、こっち来て。手当てしてあげるから」 京介「悪いな」 桐乃「それで、何があったの?」 京介「よくわからんが…… 俺と親父は血が繋がってなくて、桐乃を任せるから早く孫の顔が見たいらしい」 桐乃「なにそれ……わけわかんない」 京介「俺だってわけわからんぞ。 ……だが、桐乃を任せると言われて、悪い気分じゃないな」 桐乃「……シスコン」カァァァ 京介(確かに俺はシスコンなのかも知れねえけどな、それだけじゃなくて……) 京介「……なぁ桐乃、一つお前に言いたいことがあるんだ」 桐乃「なに?」 京介「俺は、おまえを―」 -------------
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261 名前:【SS】影送り 1/2[sage] 投稿日:2011/08/06(土) 16 01 18.10 ID VNV1NBp70 [1/3] 「京介、起きて」 身体を揺さぶられる感覚に目を覚ませば、何時かのように桐乃が俺に馬乗りになっていた。 ビンタで起こされなかっただけマシだよな、と思いつつ、ふと違和感を覚えた。 違和感の対象は桐乃の表情。あの時のような不機嫌そうな顔ではあるが、一点だけ違っている。 「おまえ、泣いてるのか?」 少しだけ、目じりに水滴が見えたような― 「~~~~!」 俺の言葉に、桐乃は慌てたように腕で顔をぬぐう。 「平気か?」 身体を起こしながら桐乃に尋ねる。 「うっさい!とにかく早く起きて」 桐乃はそう言うと俺の上から降りた。 俺に見られたくないだろう顔を見られたっていうのに、桐乃はあまり怒っていないようだ。 一体どうしたっていうんだ。 俺は桐乃に言われた通りにベッドから起き上がる。 それと同時に、桐乃が部屋のカーテンを開けた。 今日は晴天だ。青い空が寝起きの目に眩しい。 「ちょっとこっち来て」 桐乃に促され、窓際に立つ。 温かな陽光に体が包まれる。それ自体は気持ちがいいんだが、桐乃の様子がおかしいので気分は良くならない。 「・・・・・・ちゃんと影はある」 影?影がどうかしのか? 「おい桐乃、何のことだか説明してくれ」 「黙ってて」 桐乃はピシリとそう言うと、俺の体を触り始めた。 頭、顔、首、肩、腕、胸、腰、足・・・ そして最後に俺の手を強く握った。 「触れる」 そう言うと、桐乃はふぅと一息ついた。 桐乃が俺の手を握って安心してくれるのは嬉しいんだけどよ、何を心配していたのかわからなきゃ俺のほうが安心できねえじゃねえ か。 「一人で納得してないで俺にも説明しろ」 俺の言葉に、桐乃は言い辛そうに目をそらす。 「・・・・・・言いたくねえなら、無理には聞かねえけどよ。 でもな、俺はおまえの兄貴なんだから、おまえの力になってやりてえんだよ」 俺の言葉に、桐乃はおずおずと視線を俺に返した。 「・・・・・・変な夢を見たの」 桐乃がポツリと話し始める。 「変な夢?」 「うん。あたしと兄貴が公園で遊んでるんだけど、空がピカッと光ったと思ったら、兄貴が影だけ残して消えちゃったの」 「俺が影だけ残して消えた?」 「それでね、あたしはワケが分かんなくてずっと残った影を見てたんだけど、ふと空を見たらその影が空に浮かんでいっちゃったの 」 「・・・・・・」 「怖くなって家に帰ったんだけど、家に帰ってもお父さんとお母さんどころか家も無くなってるし・・・・・・ 寂しくなって一人で泣いてたら目が覚めたの」 それで不安になって俺のところに来て、俺の体と影を確認したのか。 子供っぽいと言っちゃそうなんだけどよ、夢の事を気にして俺を確かめに来るなんて、意外と可愛いと思ってやらなくもないな。 262 名前:【SS】影送り 2/2[sage] 投稿日:2011/08/06(土) 16 01 51.49 ID VNV1NBp70 [2/3] それにしても、今の話どっかで― 『桐乃、いっしょに十まで数えるんだぞ』 晴天の空の下。他に誰もいない公園で。 そこで俺と桐乃は二人で手をつないで地面を見ていた。 『うん! いーち、にーい、さーん』 『しーい、ごーお、ろーく』 『しーち、はーち、きゅーう』 『『じゅう!』』 空を見上げると、空には仲良く手をつないだ二人の影が空に映し出されている。 『お兄ちゃん、すごーい!』 『桐乃、これは『影送り』って言ってな―』 そうか。今日は八月六日だから、そんな夢を見ちまったのか。 「ねえ京介。 京介は黙っていなくなったりしないよね」 桐乃は俯き、俺の手の感触を確かめるように、握ったままの手に少しだけ力を込めた。 「桐乃・・・・・・」 俺たちはずっと無視しあって来たけれど、俺たちはよく喧嘩するけれど、それでもこいつを不必要に思ったことは一度もない。 昔は煩わしく思ったこともあったけど、今はもう離れたいとは思わない。 そう、なにがあっても。 俺の手を握る桐乃の手。その手を握り返す。 「京介?」 「桐乃、俺は黙っていなくなったりしねえから。 もしどこかに行っちまっても、絶対におまえのところに帰ってくるから」 だから、おまえはそんな顔すんな」 もう一度、桐乃の手を握る手に力を込める。 「・・・・・・わかった。 あんたが帰ってくるって言うなら、あたしもずっと待ってるから」 桐乃も、握る手に力を込める。 あの戦争で、一体どれだけの恋人が、親子が、兄妹が、こんな約束を立てたんだろうか。 そして、一体どれだけの約束が果たされたんだろうか。 俺たちは、この約束を生涯守りきれるだろうか。 そんなことを考えながら、握る手に力を込めた。 「京介ー、桐乃ー、ご飯よー」 下からお袋が呼ぶ声が聞こえる。 「それじゃあ下に行くか」 「うん」 桐乃の手を握る手から力を抜く。 でも、握り合う手は放さない。 ご飯を食べたら、二人であの公園に行ってみよう。 そして、あの日のことを話しながら、あの日のように影送りをしてみよう。 空にはあの時のように、仲のいい兄妹が映るだろうか。 -------------
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395 【SS】父の日の夕食 2012/06/17(日) 23 06 52.35 ID bzD+hXBY0 [2/2回発言] 桐乃「ほら、あ~ん」 京介「お、おう。 あ、あ~ん」パク 桐乃「どう?」 京介「ああ、大分マシになったんじゃないか? 少なくても吐き出すくらいじゃないな」 桐乃「は? 随分偉そうだね。 そういうあんたの作った春巻きはどうなの?」 京介「食ってみるか? ほい、あ~ん」 桐乃「あ~ん」パク 桐乃「……マズくない」 大介「……おい、二人とも。 どうして今日はそんなに仲が良いんだ」 京介「ああ、昨日の夜な……」 ・・・・・・ 大介「なあ、母さん」 佳乃「なあに?」 大介「最近の京介と桐乃のこと、どう思う」 佳乃「そうねぇ、去年より良くなってるのはわかるんだけど、なんと言うか…… ちょっとどうにかならないかしらねぇ」 大介「やはりおまえもそう思うか…… だが俺たちが口出ししても、あるいは逆効果かも知れん」 佳乃「そうなのよね。 どうにか二人とも自分達で気づいてくれないかしら」 京介「…………」 桐乃「…………」 ・・・・・・ 大介「二人とも、聞いていたのか」 京介「おう。 それで二人で話し合ってな」 桐乃「今日は父の日だし、いつものお礼をこめて、二人で夕ご飯を作りつつ、 もうあたし達はお父さんとお母さんが心配しなくてもいいくらい仲が良いんだって所を見せようと思ったの」 京介「ちょっと前まで親父とお袋に心配かけさせちまってたからな。 でもこれからはもっと仲良くなるし、心配しなくてもいいんだぜ」 大介「そ、そうか」 大介(俺が心配なのは二人が仲が良すぎることなんだが……) 桐乃「京介、あたしよりも料理できるみたいだし、専業主夫になったら? あたしがあんたの分も稼ぐからさ」 京介「……勘弁してくれ。 俺はヒモになる気はねえよ」 大介(とても言い出せん) 桐乃「で、お父さん。 今日の夕飯はどう?」 京介「二人で仲良く頑張ったんだぜ」 大介「二人ともまだまだ精進が足りん。 だが……子供達の料理というのは、とてもいいものだな」ボソリ 大介(……今日のところは見逃してやるか) ----------
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83 名前:反転銃【SS】1/2[sage] 投稿日:2011/03/25(金) 01 13 32.12 ID BnGnzQsA0 [1/2] 説明しよう! 今、俺の手にある近未来チックな光線銃。 これはなんと、光線を当てた相手の好き嫌いが反転してしまうという未来道具なのだ! おぉっと、どこから手に入れたなんて野暮な事は言いっこなしだぜ。 で、誰に使うのかって? そりゃもちろん……。 「アンタそんなトコで何突っ立ってんの? 邪魔なんですケド」 この小生意気な妹・桐乃に使って、お兄ちゃん大好きな可愛い妹に変えてやるぜ! ……あ、もちろん後で治すから、そんな冷たい目で見ないでくれ。ちょっとした悪戯だ。 「ちょっと、聞いてんの?」 桐乃は相変わらずの蔑んだ目でこっちを見ている。 だがそんな目をしていられるのも今のうちだぜ……くらえ! ビーーーーーーーッ 「きゃっ!」 よし当たった! さあ、効果のほどは……? 「……ウザ。何してんの? マジ迷惑なんだけど」 あれ? なんで? 普段と変わらない……いやむしろ悪化しているような。 ええいもう一度だ。 ビーーーーーーーッ 「ちょっ、ほんと何してんのアンタ。意味わかんないんだけど」 ビーーーーーーーッ 「……だからウザいって言ってんでしょ? 何? 耳聞こえなくなったの?」 ビーーーーーーーッ 「ちょっと、さっきから子供みたいな事して……。ア、アンタそんなにあたしに構って欲しいワケ?」 な、何故だ……。何度やっても変化が見られない。 なんでだ? 故障か? 不良品なのか? そんな事を考えているうちに桐乃が詰め寄ってくる。 「何無視してんのよ! 大体なに? その子供っぽいデザインのオモチャみたいなの」 「あ、ああ。これな……」 もう計画はご破算のようだし、素直に白状する。 「うわ、マジありえない。それであたしをエロゲみたいな妹にしようっての? バッカじゃないの?」 「いやその、ほんの悪戯心でな……いや悪かったよ」 「……でも、そっか。それでさっきは、あんな……」 ん? 桐乃は何か思うところがあるのか、考え込むような仕草を見せる。 と思いきや、 84 名前:反転銃【SS】2/2[sage] 投稿日:2011/03/25(金) 01 14 08.74 ID BnGnzQsA0 [2/2] 「ちょっとソレ貸して」 「あっ、おい!?」 「ふっふーん。これでおあいこでしょ?」 そうして俺に光線銃を向けて……。 ビーーーーーーーッ その瞬間。 俺の中で何かが劇的に変化した。 なんだ? この沸き上がる感情は。 この……この……これは……。 「どう……かな?」 目の前には、愛しい妹がこちらを覗き込むような仕草をしている。 なんて……なんて可愛いんだ! 思わず力一杯抱き締める。 「ちょっ! な、な、なにして……」 「ああ、なんで今まで気付かなかったんだ! 妹が……こんなに可愛いだなんて!」 「え、マ、マジ? ほんとに?」 「本当だとも! お前は俺の愛しい愛しい、この世で唯一無二の妹だ! 愛してるぞ!」 「あ、うあ、あ……」 「ああ妹って良いなぁ……。妹ってだけで、もう他に何もいらないぜ……」 「………………は?」 「む、どうした? 我が愛しい妹よ」 「ねえ、あくまで仮定の話だけど……もしあたしが妹じゃなかったらどうなの?」 「何を言うんだ! 妹ってのは最重要のファクターだろう! それがなかったら全てが色褪せる……妹好きのお前なら分かるだろう?」 「…………ウザ」 ビーーーーーーーッ あ、あれ? 俺は何をやって……。 視線を下ろすと、なにやら不機嫌そうな顔の桐乃が俺の腕の中に居る。 腕の、中……。 「うおわっ!」 慌ててザザザッと距離を取る。 さっきまで平気だったのが嘘みたいだ。 そんな俺の顔面にガンッ!と光線銃が投げつけられる。 「イッテエなおい!」 「……ふん。壊れてんじゃないの? ソレ」 だからって投げつけなくても良いだろ。この可愛くねえ妹様はよぉ……。 でも確かに桐乃の言う通り壊れてんだろうな。 だってさっき、好みが反転したはずなのに全然『桐乃』を好きになんてならなかったし。 「……ねえ」 「どうした? 桐乃」 「ん……やっぱ、こっちで良い」 そう言う桐乃の顔は、少しだけ満足げに見えた。 End -------------