約 431,444 件
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/566.html
47 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/04/12(火) 21 53 01.06 ID 1c6VWUb/0 [3/4] SS『婚姻届』 「お兄さんっ!」 「なんだよ、いきなりどうしたんだよ?」 学校からの帰り道、俺はいきなりあやせに呼び止められた。 つか、なんか怒ってねーか? 「お兄さん、あれは嘘じゃありませんよね?」 「な、何の話だよ!?」 「前に、わたしと結婚したいって言ったことですっ!」 「なっ―――!?」 ま、まて!? あやせたん?あれ、いくらなんでも冗談だって分かってるよね………? い、いや、あの当時は確かにいいかもなーとか思ってたけど。 でも、あれは相当に昔の事じゃねーか! 「わたし、よく考えてみたら、お兄さんの事いいかもって思っちゃいました。」 「ま、マジかよ!?」 「だから、この書類に名前を書いてもらいます」 そういうと、あやせは俺の前に『婚姻届』と書かれた紙を出してくる。 あ、あやせたん、本気と書いてマジっすか!? 「勿論、書かなかったらどういうことになるか分かってますよね?」 「ど、どうなるんだろうな………?」 「汚物は消毒(ボソ」 「ちょ、ちょっと待ったーーーっ!書いてくるっ!書いてくるからっ!」 「………それなら、とりあえずこの場は見逃してあげますね♪」 そういうあやせたんの顔は、これまでで、最も輝いていた……… それにしても、もう結婚するハメになるとはな………そういや――― 「これ、まだ白紙だよな?おまえはどうすんの?」 「えっ!?」 そこではじめてあやせたんが動揺した顔をする。 「そっ、そんなの、お兄さんが書いたことを確認してからに決まってるじゃないですかっ!」 「そういうもんか?」 「そういうものですっ!」 俺は何か不自然なものを感じたんだが――― まあ、ここで突っ込んで死んだら、元も子もねーもんな。 家に帰りつくと、何故か桐乃が玄関で待ち受けていた。 「おかえり………あ、あんた、何か妙な顔してない?」 「ただいま………よくわかるな………」 最近、俺と桐乃の関係は3年前とは比べ物にならないくらい良好で、 彼氏彼女の関係って言っても過言じゃない。 でも、俺たち兄妹なんだもんなー 「実はな………あやせに結婚しろって脅迫されたんだよ、どうしたらいい?」 「ふ、ふーん。あやせ、ちゃんと………あ、結婚すればいいんじゃない?」 「なっ、何っ!?」 お、俺はおまえと本当は結婚してーとか考えてるのによっ! いくら本当には結婚できねーからってひどくね!? 「あ、あんたも、あやせのこと可愛いとか思ってるでしょ?」 「そりゃ、可愛いかもしれねーがよ?」 「それにっ、書かなかったら殺されるんでしょ?」 「い、いくらなんでも冗談だとは思うんだが………」 「ううん。あの子は本気だから。あたし、兄貴もあやせも失いたくないし。 だから、ほらっ、さっさと自分の欄埋めるっ!」 「えっ、ええっ!?」 結局………何故か嬉々としている桐乃に圧されてしまって、 俺は婚姻届の自分の欄を埋めてしまった。 なんか、桐乃と別れたわけでもねーのに、すっげえ切ない気分だ……… 次の日の朝、いきなり桐乃に叩き起こされた。 「あんた、さっさと起きなさいってば」 「ん………なんだよ?」 「婚姻届、出しに行こっ!」 桐乃は何故かハイテンションだ。 俺の心は対照的に、深い海の底に沈みこんでしまったようだ。 つかよ?おまえ、俺と別れることになるんだぜ?悲しくはねーのかよ……… 俺たちは朝イチで区役所へと出向いた。 「というかよ?今ようやく気がついたが、 こういうのって本人が行くもんじゃねーの?」 「ん?あー、あやせ仕事で都合が悪いから、あたしが代理ね。」 「なるほど、代理人に任せてもいいのな。」 まったく、手抜かりのないやつらだぜ。 「そう。あ、婚姻届出しに来たんですけどー」 「婚姻届の提出ですねー………ってくんかたん!!」 何?何だって?くんかたん?誰だよそれは。 「おまえの知り合い?」 「えっ、あ、うん。あたしのファンみたいな感じ?」 「そうか、変なヤツじゃないんだったら、まあいいんだが………」 「兄貴嫉妬~♪こんなとこでもシスコンって、マジきもい~♪」 「う、うるさいっ!とにかくさっさと終わらせて帰るぞ。」 お、俺はこんなに悲しいってのによ、 おまえがそんなに楽しんでると、目から汁がでてきそうじゃねーか! 「えー、それでは、夫となる方は高坂京介さん、20歳。 身分証明書は………はい、おっけーですよ~」 えっ?これで終わり?なんか妙に軽くねーか? 「で、こちらはくんかたん。17歳。」 「ちょっ!?」 「何騒いでんのよ、恥ずかしいじゃない。」 いやいやいや。公的な機関でくんかたんはねーだろ!? 「で、こちらがご本人の書類ですね~、確認しました~」 いや、殆ど流してみただけじゃねーか?いいの?いいのかよ? つか、俺が確認する暇もなかったじゃねーか? 「書類に不備は何もありません!それでは、受理しました。 これでお二人は晴れて夫婦ですねっ!お気をつけてお帰りください。」 「あ、はい。」 「やったね!兄貴っ!」 ん?何か、おかしくねーか、今の会話。 「あ、念のため、婚姻届改めて見せていただけますか」 「はい。いいですよ~」 俺は差し出された婚姻届を見て……… 「お、俺と桐乃が夫婦だとっ!?」 「びっくりするじゃん?何大きな声だしてんの?」 「だ、だだ、だってこれっ!?あ、あやせたんはどうしたよっ!?」 「あ、お兄さん、桐乃ーおはようございます~♪」 ちょっ!?そして、何で区役所にあやせたんがいんだよ!? 仕事じゃねーのか!? 「桐乃っ!おめでとうっ!」 「うんっ!ありがと、あやせっ!」 狼狽する俺(殺されるかと思ったんだよ!)を余所に、 抱き合って喜ぶ桐乃とあやせ。 い、一体何だって………!!!ま、まさか……… 「桐乃、あやせ。まさかと思うが………」 「ふふっ、お兄さん鈍すぎですよっ! わたしがお兄さんと結婚したいなんて思うわけが無いじゃないですか。」 「ご、ごめんね兄貴。兄貴、すぐに悩んじゃうから………」 「た、確かにそうだが………」 つか、兄妹でなんで受理されんだ………? 「フフフ。この日のために、区役所内部を桐乃スレ住人で固めてたのですよ! 地道な公務員試験の勉強、そして、他の地方から無理矢理の異動!」 ばっ、バカ過ぎるっ、こいつら……… 「お兄さん。受理されちゃったものは、もう取り消しが出来ないんですよ」 「兄貴………お、怒った………?」 こいつらも、まったく。馬鹿じゃねーの! だけど……… 「怒るわけないだろっ! おまえと結婚出来るなんて、嬉しくって嬉しくって!」 「あ、兄貴………な、泣くことないじゃないっ!」 「うるせー!お、おまえだって………!」 俺が一番の馬鹿だもんな!馬鹿みてーに幸せだぜっ! End. -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/469.html
79 名前:一緒に…【SS】[sage] 投稿日:2011/03/25(金) 00 10 33.86 ID /8Z5cORTO [1/5] 西暦2000年代、とある小学校の授業風景 先生「みんなが生まれた頃に、大きな地震がありました。『阪神・淡路大震災』といいます。」 ビデオや写真などを使って先生は大震災を説明する。 ビルや高速道路が倒れ、大火事が起きてる様子に目を奪われる子供達。 「じゃあ、みんなに質問。みんなは、もし地震がきたら、何を持って逃げるかな?」 子供達は先生の問い掛けを受けてそれぞれの考えを発表する。 「はい、それでは高坂くん」 「僕は、妹を連れて逃げます。」 周りからは「やっぱりなあ」「言うと思ったよ」などと声があがる。 「はい、みんな静かに。高坂君、じゃあどうして妹を連れて逃げようと思ったの?」 「妹は、足が遅いから、僕が連れて逃げないと家の下敷きになっちゃったり、 火事にやられちゃうかもしれないからです。 それに、妹は怖がりだから、ビデオで見たような物凄い地震が起きても 『お兄ちゃんがいるから大丈夫。心配するな』ってついていて頭を撫でてやります。」 「なるほどね。」 ※※※ 現在、高坂家のリビング 「…なんてことを授業で京介が話してたって、 先生が保護者面談で話してくれたのを思い出したわ」 「うむ、まったくもって京介らしいな。」 という両親の会話があたしの耳に入ってくる。 兄貴の過去のシスコン度合いはホントすさまじい。 まあ、以前はそんな逸話に辟易してた頃もあったけど、 今では素直に、兄貴のあたしへの愛情を理解できる自分がいる。 今でも、兄貴は、あたしのことを真っ先に考えて一緒に逃げてくれるかな…… 「ねえ、兄貴」 「なんだ桐乃」 「もし大きな地震が来て、あたしが腰が抜けちゃったら、 あたしを連れて逃げてくれる?」 「お前が腰を抜かすとか、とても想像できないんだが。 それに足だって、お前のほうがずっと早いし」 「もしもって言ってるでしょ。真面目に聞いてんの!」 思うような答がかえってこなかったので、あたしはつい怒鳴ってしまった。 ※※※ 「…悪かった。まあ、今の俺でもいざとなったら お前をお姫様抱っこして逃げるくらいの力は出せるさ。何とかの馬鹿力ってやつで」 「シスコンの馬鹿力ですね わかりますw」 「それを言うなら火事場だろ、馬鹿…」 兄貴はちょっと恥ずかしそうな顔を見せた。 とその時 「地震?」 「そうだな、また余震みたいだ」 揺れがしばらく続く。 「怖い…」 あたしは思わず兄貴の身体に身を寄せる。 「心配するなよ、この家はしっかり出来てるし、それに、」 「それに?」 「俺がいるから大丈夫、心配するな」 兄貴は、お母さんが話してた子供の頃の気持ちそのままで、あたしに接してくれている。 あたしの頭を撫でる手は、やっぱり温かい。 こんな時だからこそ、兄貴が近くにいてくれることに、ほっとできる。 早く世の中が落ち着いて、みんなで笑える日がくるといいな -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1004.html
370 名前:真夏の祭典【SS】[sage] 投稿日:2011/08/06(土) 23 51 03.63 ID U7pU4BnBO [2/2] ※オリキャラ(高坂兄妹の子供たち)登場の未来話です。 「よし、出発だな」 「んじゃ、行くわよ」 「じゃあわたしも行ってきまーす」 「「み、京(みやこ)!!」」 まだ寝ている筈の娘が、俺達の目の前にいた。 「アンタ、何しにいくのよ?」 「ママが私の見てないところでパパとラブラブになりすぎないように監視に決まってるじゃん」 「ア、アンタって娘は」 「京、だけどな今回行くところは俺達二人しか入れないんだぜ。専用の通行証がいるからな」 「通行証って、これでしょ」 京が掲げるそれは紛れもなくコミックマーケットのサークル通行証だった。 話が遅れたが、俺と桐乃はこの夏のコミケにサークル参加する為に出かけるところだった。子供たちには話してなかったんだがなあ … 「京、コミケは未成年がうろちょろする場じゃないの。だからおとなしくチケットよこしなさい!」 「中学生で参加してたママが言っても説得力はゼロよ。 それに、私は、遊ぶためだけにコミケに行きたいわけじゃないし」 「ん、それじゃ京は何か他に目的があるのか?」 「だからパパとママの監視、じゃなくてパパとママのサークルの手伝い。 二人が出す本は、別に私が見れないような成人向けじゃないんでしょ。だからお願い、手伝わせて」 「桐乃、京がここまで言うんだ、やらせてやろうぜ」 「わかった、京介がそう思うならあたしも認めることにする」 「ありがとう、パパ、ママ」 「その代わり、今日一日アンタはあたしのしもべとして頑張ってもらうからね。覚悟しときなさい!」 やれやれ、桐乃の口の減らなさは相変わらずだな。まあ何はともあれ親子3人でビッグサイトに向かった。 ※※※ 電車の中で京が訊ねてくる。 「パパとママが初めてコミケにデートに行ったのはいつだっけ」 「あれはデートじゃないし!あたしを不快にさせた責任を取らせるために、遊びに連れていかせたダケ」 「でも、パパに誘って貰って、ママは嬉しかったんでしょ」 「……嬉しかった。まさか京介がコミケに行こうって言うとは思わなかったから…… だから、あの時はついドアをバタンて閉めたけど、ドアの向こうであたし、とっても嬉しかったの」 「パパやるねえ、この色男!」 「うるせえ」 あれから何年たつんだろうか。楽しかったよな。まあ、祭の後には凄まじいイベントが待ち構えていたが…… 「このコミケデートが、パパがママに『大好きだ』って告白するきっかけになったんだよね」 「京、なんでその話を」 「あやせさんが教えてくれたよ」 あやせの奴…でも、そうやって普通に話せるくらいに時は流れたんだよな… と、俺が感傷に浸る間もなく京はどこからか仕入れた俺と桐乃のイチャコラ話を喋り続け、 俺と桐乃は顔真っ赤にしながら国際展示場駅の改札を抜けたのだった。 ※※※ さて、準備も終わって開会。今日はどれだけの人が来てくれるだろうか? 「新刊下さい!」 「ありがとうございます。って、桐(とう)?」 友達と泊まり掛けで遊びに行ってたはずの息子が、俺達の目の前にいた。」 「何でお前ここにいるの?」 「せっかく二人が本出すんだから、一番最初の客になろうって決めてたんだ」 「桐……」 「それに京が一緒に参加するつもりなのを聞いてさ、 京じゃどんなヘマするか分からないからサポートをするつもりなわけ」 「ふん、馬鹿兄貴の世話になんかなりませんよーだ。んべえっ」 「……あのーお忙しそうなところ恐縮ですが、新刊頂けますか?」 「「「「ありがとうございます!!!」」」」 そうそう、今日は東地区のS‐**のaで『実録兄妹婚本』を頒布してるから、よかったら遊びに来てくれ。 俺の最高の嫁と子供たちで歓迎するよ。 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/15.html
掲載順 SS 一覧 1~20スレ 1スレ目 小さめのソファー:1スレ目409/小ネタ トランクス:1スレ目644/小ネタ 買い物:1スレ目716/小ネタ 2スレ目 下宿:2スレ目57,68/小ネタ 3スレ目 兄貴の看病:3スレ目489 シスコン車両:3スレ目576-577 兄貴の寝顔:3スレ目754 4スレ目 タッチペン:4スレ目632 5スレ目 兄貴汁:5スレ目489-490 二人羽織:5スレ目531,552 コタツ:5スレ目580,614 6スレ目 抱き枕:6スレ目53,73 ママレードボーイ:6スレ目98 7巻桐乃視点:6スレ目405,446 ※切ないお話 一緒に:6スレ目625,667 7スレ目 正夢?:7スレ目159,169 パンツ:7スレ目330,341/小ネタ 旅館でお泊り:7スレ目378,384,390 看病:7スレ目403,428/小ネタ 告白:7スレ目535/小ネタ 8スレ目 スレ立て乙(VIP兄パンスレ):8スレ目30,32-33 ヘアピン:8スレ目223/小ネタ ママレードボーイの薦め:8スレ目310,326/小ネタ 9スレ目 7巻アフター(桐乃視点):9スレ目189 兄貴のコート:9スレ目570,572 兄貴専用:9スレ目664 ダイエット:9スレ目736-737 10スレ目 兄専用:10スレ目438,457-458 11スレ目 最後のお願い:11スレ目940 ※切ないお話 12スレ目 スキー:12スレ目42,106,115,166,277-279 挿絵付き 13スレ目 アニメOP「雨の中の桐乃」妄想&12話Aパート予想:13スレ目35 ※切ないお話 シスシス吹き替えプレイ:13スレ目947,962 挿絵付き(挿絵は14スレより) 最後のお願い 改訂版:13スレ目997 ※切ないお話 14スレ目 兄萌え談義:14スレ目200 試着室:14スレ目537 続・シスシス吹き替えプレイ:14スレ目642-644 VIP兄パンスレ:14スレ目669,674,689,713 15の語呂合わせ:14スレ目886 15スレ目 妹ペロペロ:15スレ目352-355 VIP兄パンスレ その2:15スレ目536-537 VIP兄パンスレ その3:15スレ目555,565,572 ミスター妹道:15スレ目767-768,948 挿絵付き 8巻予想+過剰妄想:15スレ目819-821 兄ペロペロ:15スレ目519,947 16スレ目 ずっと子供のままでいて!:16スレ目213,237 ミスター妹道 後日談:16スレ目362 現実は緊急回避不可:16スレ目534 黒猫先生の恋愛相談:16スレ目570-571 俺の妹がこんなに可愛いわけがない(結婚):16スレ目134,660-662 挿絵付き 桐乃少佐の訓示:16スレ目696 アニメOPの歌詞をSSにしてみた:16スレ目879 17スレ目 行くなって言ってよ 視点一:17スレ目235-236 行くなって言ってよ 視点二:17スレ目301-302 行くなって言ってよ 視点三:17スレ目322 登録は「京介」:17スレ目468/小ネタ 行くなって言ってよ 返歌:17スレ目649,652,659 ズキュウウゥン:17スレ目468,904 挿絵付き 18スレ目 兄妹愛エンド:18スレ目64 あたしを食べて?:18スレ目94,105,265-266 このさくらんぼめ!:18スレ目133,233/小ネタ 挿絵付き 兄貴のベッド:18スレ目169,175,186/小ネタ 忘年会:18スレ目203 挿絵付き 桐乃の手料理:18スレ目264/小ネタ プレゼント:18スレ目308,312,314,315,316 はっちゃけた:18スレ目415,419.502 挿絵付き 兄妹愛エンド 聖夜風:18スレ目453 クリスマスデート:18スレ目463,468,474 くんかたんの下着選び:18スレ目548,554,568/小ネタ らぶり~まいえんじぇる:18スレ目577/小ネタ クリスマスプレゼント(VIP兄パンスレ その4):18スレ目625-629,663 挿絵付き(挿絵は19スレより) 兄専用メイド:18スレ目737-739 みらいのあたしへ:18スレ目754-755,757 メリー・クリスマス!:18スレ目794-796 きりにゃん:18スレ目832,836/小ネタ きりりんがる:18スレ目845,847,854,862,896-897/小ネタ集 プレゼントは俺だ!:18スレ目881 成長:18スレ目987誤爆ネタ:桐京:0.8KB 19スレ目 吸い込み:19スレ目52/レス小ネタ桐京:0.8KB VIP兄パンスレ その5:19スレ目53-56,153 スカートの中:19スレ目392/小ネタ 高坂大介の暴走:19スレ目555,560,561,573,568,588-589/小ネタ集 桐乃枕:19スレ目883,926-927 20スレ目 家族の挨拶:20スレ目218-220 桐乃に彼氏!?:20スレ目227/小ネタ 干支:20スレ目296,311 桐乃の手作りカレー:20スレ目355 好き人:お兄ちゃん:20スレ目362/小ネタ 嫉妬:20スレ目373,383 年越し:20スレ目765 今年もよろしく:20スレ目949,951-952
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1484.html
219 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/17(木) 18 06 36.04 ID OSszJKtk0 SS『帰り道』 「全く、今一歩締まらない奴だ・・・」 言うまでもなく俺の息子、京介のことだ。 マンションからの帰り道、俺の頭にあるのは二人の子供たちの今後だった。 「京介も京介だが、桐乃も桐乃だな・・・」 考える程に憂鬱な気分が頭をもたげてくる。 今回の件は、二人の疑いを晴らす目的も有ったわけだ。 だが、京介の一人暮らし二日目にして、桐乃は我慢が出来なくなってしまっていた。 京介も明らかに元気がない。間接的ではあるが、むしろ疑惑が強まってきた。 だが・・・ 京介は、それでも疑惑を晴らそうとしてくれている。 桐乃も・・・あの子は聡明な子だ。分かってないわけがない。 俺は親としてどうしてやるのが良いのだろうか・・・。 ふと窓の外を見る。夕暮れの太陽が目にまぶしい。 ・・・そう言えば・・・桐乃が生まれた時も、そんな事を思いながら病院に向かったのだったな。 懐かしい気持ちの中、俺は、当時の事に思いを馳せた。 ―――――――――――― あの日、いつものように職場にいた俺は、病院の方からもうすぐ生まれそうだとの連絡を受けていた。 だが、俺の仕事は途中で放り出していける類のものではない。 すぐにでも向かいたい気持ちを抑え、いつも通り業務をこなしていった。 幸いにも、上司に理解があり、定時で上がることができた。 職場を出て、家により、母から京介を受け取ってから病院に向かった。 (そうだ、この時の夕陽が強く印象的だったのだな。) 病院に着くと、すでに桐乃は生まれた後だった。 「元気な女の子ですよ」 看護師に言われ病室に向かい、桐乃と初めて対面した。 勿論、事前に分かってた事ではあったが、初の娘なだけに感動もひとしおであった。 そして、ベッドに座っているのは、俺の最愛の妻・・・ 「佳乃、よくがんばったな」 「ありがとう、大介さん。でも、もう二人目よ?そんなに心配そうな顔しなくてもいいのに」 そんなたわいも無い会話だったが、今でも覚えている。 「ところで、女の子だったそうだな?」 「ええ。ほら、見て?凄く可愛いでしょ?」 「ああ・・・そうだな」 「あたしなんかより、ずっと可愛らしく育つわよ~」 「むっ・・・むぅ・・・」 こういう場合、男は答えに詰まるものだ。 娘も可愛いが、妻だって当然可愛い。 「ところで・・・この子の名前、考えてくれました?」 「ああ」 一息おいて緊張を解く。 「桐乃だ。桐の花の様に清楚で、桐のように強く、真っ直ぐ育って欲しい」 「ええ、良い名前だと思います」 これで一安心だ。 思えば一月以上前から延々悩み続けてきた名前だ。 佳乃も気に入ってくれたようで、肩の荷が下りた気分だ。 そういえば・・・ ふと後ろを振り向くと、京介が所在なさそうに病室の入り口に立っていた。 「京介、こっちに来なさい」 「う、うん・・・」 俺は京介を佳乃の横に座らせ、京介の目をしっかり見据える。 「京介。これからおまえの妹になる、桐乃だ」 「えっ、いもうと・・・?」 「そうだ。これからお前は兄になる」 「あに?」 まだ良く分かってないような京介だったが、仕方あるまい。 「これから、おまえが桐乃の事をちゃんと守ってやるのだぞ?」 「う、うん!」 たぶん、今の言葉も半分くらいしか分かってはいないだろう。 だが、俺の雰囲気から察したのか、少しだけ大人になった雰囲気が感じられる。 こんな小さなことでも成長していく俺の子供たちに、胸が一杯になった。 「ねえ、おとうさん」 「なんだ?」 「きりのにさわってもいい?」 「ああ、だが、強くしたらだめだぞ」 「うんっ!」 早速、京介は桐乃に興味を持ってくれたようだ。 一通り顔や体を触った後、桐乃の手に、自分の手を重ね合わせる。 「き・・・きりの?・・・にぎったよ?ぼくのてをきりのがにぎったよ!」 大はしゃぎする京介に、俺と佳乃は目を見合わせ、微笑んだものだった。 そうこうしているうちに、主治医の先生が近づいてきていた。 「お父さん、ちょっとお話がありますので、別室に来ていただいてよろしいですか?」 「ああ。・・・佳乃、行ってくる」 「ええ、行ってらっしゃい」 主治医の先生に俺だけ呼ばれるとは、何か悪いことでも起こったのだろうか? 内心の動揺を何とか隠して、俺は診察室へと向かった。 診察室への道は短かったはずだが、今日はあまりにも長く感じる。 見た目は普通だったはずだが・・・ 心臓に問題があったのだろうか?何か特別な病気をもって生まれてきたのだろうか? いや、最近、生まれたときからがんを患っている子供の話も聞いたことがある、まさか、それなのでは・・・ 気が付いたときには、俺は診察室の椅子に座り、先生と対面していた。 「落ち着かれましたか?」 「あ、ああ・・・」 情け無い所を見られてしまって気恥ずかしい。 だが、今後を冷静に考える必要がある。 そう、考え直し、ようやく冷静になる事ができた。 「まず簡潔に、非常に簡潔に説明します」 「お願いします」 腹に力をいれ、ぐっと身構える。 「お子さん・・・桐乃さんに、非常に稀な先天性の疾患が見つかりました」 「先生っ!桐乃は・・・桐乃はいつまで生きられるのですかっ!」 気が付けば俺は立ち上がり、怒鳴るような声で、そう言っていた。 「高坂さん、落ち着いてください」 「ええ、すみません・・・ですが―――」 「ただ、この疾患は成長や発達に殆ど悪影響はありませんし、命の危険もありません」 「なっ・・・・・・・・・」 深呼吸をして、なんとか気持ちを落ち着かせる。 安心しすぎて気分が緩んでしまったのだ。 命の危険が無い・・・これだけでも、本当に安心できた。 佳乃も悲しまずに済む・・・ 「とりあえず、安心はできましたか?」 「ええ、なんとか・・・それより、教えてください。どういった問題が発生するんでしょうか?」 「では、少し複雑になりますが・・・」 そう言って、先生は説明し始めた。 「まず、この疾患は原因ははっきり特定されていません。 ただ、血中のビリルビン(Bilirubin)、リボ核酸(RNA)、女性ホルモン(英:Oestrogen)が複合体(Complex)、 通称ブラコン(Bro-Com)を作って大量に血液内に存在する事が知られています」 「・・・はあ」 「そして、そのブラコンが存在する人は、長じて超弩級のブラコンになる事が知られています。 これを、先天性兄婚症候群と呼んでいます」 「・・・よく、わからないのですが?」 正直なところ、医者の説明というのは、患者からするとあまりにも分からない事が多い。 専門用語の羅列を理解しろというほうが無理なのだ。 「まとめますと、桐乃さんは、お兄ちゃんの事好き好き大好き好き好きになってしまうということです」 ・・・・・・・・・まったくわからん。 兄と妹が仲良くしている事に何の問題が有るというのだ? 「・・・他に、何か症状が出てくるのですか?」 「いえ、これだけです。この症状さえ家族の方にフォローして頂けるのでしたら、普通の健常児と何も変わりありません」 ふむ・・・ どうやら、医者というのは大したことが無い事でも大げさに騒ぎ立てるものだという事だな。 俺は、ようやく完全に安心する事が出来た。 診察室から出て、病室に帰ると、なんとも微笑ましい光景が待っていた。 「き、きりのぉ~~~、てをはなしてよぉ~」 「あらあら?お兄ちゃん、よっぽど桐乃に好かれたみたいね?」 「で、でも、ぜんぜんはなしてくれないよぉ」 こんな、愛おしい空間が、今後も続いてくれるように・・・ そう思って、俺は決意を新たにしたのだった・・・ ―――――――――――― 「次は、千葉~、千葉~」 車内アナウンスに、ようやく目を覚ます。 昔を思い出す間に眠ってしまうとは、俺らしくもない。 自嘲しつつも、夢―――昔の事を思い返してみる。 そうだ。 桐乃が生まれたときから、こうなる事は分かっていたんだったな。 あの先生の言った通り、桐乃は京介の事が好きで好きでたまらなくなっているようだ。 そして京介もまた、俺がクギを刺したとはいえ、そろそろ決壊しそうなのが見て取れる。 だが、なぜか気分は晴れやかだ。 「・・・式場をそろそろ探し始めるかな・・・」 俺は一人呟き、駅のホームが近づいてくるのを見るのだった。 End. ----------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1012.html
「今日は『ハグの日』、ねぇ」 携帯を片手に寝転ぶ俺は、最近流行り(?)の記念日探しに没頭していた。 今見ているサイトによると、8月9日は「ハグの日」と制定されていて、自分の大切な人をハグして、想いを確かめ合いましょう!という意味合いを持つのだそうだ。 勿論、大切な人というのは恋人や家族だけに限定されず、自分の身近にいる人への感謝を伝えるのが大事だ、と示してある。 「俺にとって大切な人、か……」 ピンッ!とくる人物を脳内で浮かび上がらせると、最初に出てきたのは、不遜なウチの妹様だった。 「よりにもよって、桐乃かよ」 実に不本意である。 ここはラブリーマイエンジェルあやせたんを一番にピックアップし、俺の腕の中で頬を染める可愛らしい姿を堪能するのが得策のはずだ。 何が悲しくて桐乃が最初なのか。 「桐乃への気持ちを、ハグで表現――」 ……ねーよ。一応考えてみたけど、絶対に無いねっ! ここ最近仲が良くなってきて、黒猫とのいざこざの際も世話になったし、感謝の気持ちは持っているけど、ハグはなぁ。 実の妹と抱き合うシーンをイメージしてみると、それはそれは予想以上のインパクトがあったのだった。 「うがーっ!違う、これは違うぞっ!!」 俺は急いで自分の頭に描かれた、背徳的な光景を抹消する。 ど、どうして俺と桐乃が頬を染めて見つめ合っているんだ!? その桃色イメージは違うだろう、常識的に考えて……。 「ダメだ。少し、頭冷やそうか」 俺は体を起こし、部屋を出る。冷蔵庫に常備してある麦茶でも飲んで、この茹で上がった頭を冷却せねばなるまい。 己の煩悩を振り払いながら、リビングに入る。 するとそこには、先程俺の脳内で大活躍していた桐乃が、ソファーに座り雑誌を読んでいた。 ――コイツ、よくここで雑誌読んでるよな。自分の部屋にもクーラーあるんだし、部屋でくつろいでもいいだろうに。 そう思った俺だったが、当然口には出さずその場を素通りする。一方の桐乃はというと、雑誌に夢中なのか、俺が入ってきたことにすら気付いていないようだ。 普段なら特に気にならない光景なのだが、今の俺にはちょっと違っていた。 さっきまで俺は、兄×妹という、不謹慎なカップリングを妄想してしまったというのに、そんな事を桐乃はつゆ知らず、無邪気に雑誌なんぞ読んでいる。 それが無性に悔しくなってきて、何故か突発的に、イタズラをしてみたくなった。 うむ。今の俺の発想は、どう考えても理不尽だよな。それは分かっている。 しかし、一度そう決めたら嫌でも実行するのがこの俺、高坂京介だっ! 俺は忍び足で、桐乃の背後に回る。どうやら桐乃は、まだ俺の存在に気付いていない。 よし!これならいける! 静かに静かに深呼吸をし、心を落ち着かせる。 俺はこれから、 ~ハグの日にちなんで、イタズラついでに妹に抱きついちゃう~ という、一歩間違えれば家族会議に発展しかねないミッションを実行する。 しかも相手は、あの桐乃だ。ただで済むとは思っちゃいない。 だけどな、時には兄として、避けては通れない道というものがあるんだよ。 世のお兄ちゃん達なら、今の俺の気持ちをきっと分かってくれるはずだ。 今ここに、兄と妹の微笑ましい1ページをっ! 俺は意を決して、後ろから桐乃を抱きしめる。 「ほ、ほ~らっ!桐乃!お兄ちゃんだぞ~☆」 (ギュ~) 「きゃああああああああああ!!へ、変態っ!」 (ドゴッ!!) 「ウロボロスッ!!」 抱きついたのも束の間、俺は桐乃から繰り出された裏拳を顔面に喰らい、後ろによろめいてしまった。 あ、相変わらずバイオレンスな妹だぜ……。日に日に打撃精度が上がってやがる。 「あ、あ……」 ジンジンと痛みが引かない顔を擦りつつ、朧げな視界で桐乃を見る。するとそこには、耳まで顔を紅くした桐乃がいた。 おお、怒ってる怒ってる。俺を睨みつけるその視線は、不意を突かれたからか、普段より数倍増しで迫力がある。 しかし、その後桐乃の口から出てきた言葉に、俺は耳を疑ったね。 「あ、あ、アンタッ!!ついに、妹に手を出す気になったのねッ!?」 「ふっざけんな~!出さねぇーよっ!!」 ちょっとオチャメなイタズラじゃねぇか!なんで近親相姦上等な展開になるんだよっ! ってか、それに似たセリフ、以前どっかで聞いたぞ!? 「ハァ!?いきなり抱きついてくる……とか。……そ、それ以外になくないっ!?」 「どう考えても極端じゃねぇか、その理屈っ!俺はお前と、少しでも仲良くなろうとだな」 「ふぇ!?」 ……あれ?今の自分の発言を振り返ると、あまり良い言い訳にはなってないな。 俺は「ハグの日」の意味に則って、仲良くしたかっただけだ。けれど今の状況では、手を出す口実っぽく聞こえるよっ!? 全然違うのにっ! 「ば、バカじゃん!!そういうのは、ちゃんと、順序を守ってから……」 「き、桐乃!これを見るんだ!」 桐乃が何かブツブツ言っていたが、俺はそれを遮って、携帯を見せつける。 そこには、さっきまで俺が見ていた記念日サイトが映っていた。 桐乃に「ハグの日」を理解してもらえば、この窮地をきっと覆せるはずだ。 「……ハグの日?」 「そう、今日はハグの日なんだ。普段お世話になってる人に、感謝の意を込めて、ハグをする日、らしいぞ!」 「……ふ~ん。それで」 「そこで俺は、この前世話になった事もあるし、お前に感謝して、だな……」 桐乃がマジマジと俺の顔を見ているせいで、真面目に答えるのがえらく恥ずかしくなってきた。 「ハグを……ゴニョゴニョ……」 不覚にも言い淀んでしまった。面と向かって感謝するのって、こんなに照れくさいものだったとは。 そんな風に俺が口籠っていると、桐乃は状況を把握したらしく、いつものように強気な口調で、 「そういう事なら、あんな風にドッキリっぽくやってもダメじゃん」 そんな正論を俺にぶつけてきた。あぁ、まさにその通りである。 「大体さぁー、普段からアンタが超絶シスコンで超キモいのは丸わかりなんだしぃ、今更不意を突こうとしてもモロバレっていうかー……」 ペラペラ、ペラペラ。 すっかり調子を戻した桐乃は、本当に楽しそうに俺を論破してくる。 くそ~、毎度の事ながらイラッとくるぜ。イキイキし過ぎだろ、お前。 しかし、そんな俺の苛立ちが動揺に変わるまで、時間はかからなかった。 「だからさぁ、……もう一回、しなさいよ///」 「は?」 「だから!アンタの気持ち、ちゃんと受け止めるから!もう一回、ちゃんとやり直しなさいって言ってるのっ!!」 「はぁ~!?」 予想もしていなかった桐乃の要求に驚き、俺は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。 やり直し、だと?あれはイタズラとして実行したから意味があったものの、真正面を向いてやるとなると、さすがにキツいぞ。 しかし、どうしてこんな要求が来たのだろう。 「やらないと、……ダメ?」 「ダメ!」 「……絶対に?」 「絶・対・にっ!」 なんとかその場をやり過ごそうと逃げ道を模索するのだが、目の前の桐乃は、頬を染めながら力強い眼差しで俺を見ている。 その表情は普段見せるどの顔とも違っていて、簡単にあしらえるものじゃない。そう思えるくらいに、断固たる決意が滲み出ていた。 「桐乃……」 「……」 元はと言えば、俺がふざけた結果、招いた事態だ。俺が怖気づいてどうする。 それに、桐乃の言う通り、感謝しているなら面と向かって伝えないとダメだよな。 いつか、桐乃が俺に「ありがとう」と伝えてくれた時も、こいつは必死になっていたのかもしれない。 俺達二人はよく言い争うし、相手の本心なんてまるで分らないまま過ごしてる。 だからこそ、ここだ!という時には、ちゃんと素直にならないとダメなんじゃないのか。 少なくとも俺は、そう考えている。 なら、今度は俺の番だよな。 「桐乃……いつも、ありがとな」 「……うん。どういたしまして、京介」 いつもは言えない気持ちを、俺なりの精一杯で伝える。 そうして俺は、できるだけ優しく、桐乃を抱きしめた。 腕の中の桐乃は、最初こわばって小さく震えていたが、やがて安心したのか俺に体を預けるように脱力していった。 ……何だろうな、この感覚。 懐かしいようで、でもはっきりとは思い出せない。 そして、妙に心地良い。体と心が、じんわりと温まっていく。 この安心感、充足感を、桐乃も感じてくれているのだろうか? そう思い、桐乃の表情を窺おうとしたのだが、なんだか野暮な気がしたので止めておいた。 大丈夫、きっとこう思っているだろうよ。 「私の兄貴の腕の中が、こんなに温かいわけがない」ってな。 そうやって、俺達の「ハグの日」は過ぎていったわけだが―― 時間を忘れ抱き合っていたらしい俺らは、日も暮れた頃に帰ってきた両親に、その光景を見られてしまった。 お袋は例のごとく、 「京介っ!アンタ、今度こそ妹に手を出したのねっ!」 なんて言ってくるしよ。その場を説明するのが大変だったぜ。 それと、その情景を一歩後ろで見ていた親父が、 阿修羅のような形相で俺を見てい気がするけど、きっと見間違いだよな? ……そうさ、そうに決まってる。
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/543.html
527 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/04/09(土) 23 49 14.11 ID iF7UsAsd0 SS『妹姫』 「ふひ、ふひひひひっ!あ、あやかちゃんのぱんつはぁはぁ」 今日も隣の部屋から不審な音が聞こえてくる。 親が居ないからって全開すぎねーか? つか、いつもお前のエロボイス聞かされてる俺の身にもなってみろよ……… ………そういや俺がエロ本使ってる時って……… そ、そんなわけないよな、あいつの声がでか過ぎるだけだっつーの! 「ふぉぉぉぉぉっ!?あ、あやかちゃんっ!綺麗だよぉ………」 ……………………………… な、何を見てやがるんだ………? いや、想像すんな、想像すんなよっ、俺っ! だ、だから!あられもない姿になってんのは『あやか』であって桐乃じゃないっての! こ、これも、あいつがエロボイス垂れ流しなのがまずいんだよ! 「あやかちゃん、あやかちゃん、妹になってよぉ!」 「いくらなんでもうるさすぎだろっ!」 「なっ!?………あ、あんた、盗聴してたの!?」 「と、盗聴じゃねーよ!普通にうるせーんだよっ!」 「あんたっ、そこを動かないでよ」 「ん?」 ドタドタ………ガチャッ いきなり俺の部屋の扉が開け放たれ、何故か赤い顔の桐乃が姿を見せる。 「あ、あんたっ!や、やっぱり!?」 「ご、誤解だっ!」 ちなみに俺の状態はといえば、桐乃に文句を言うため、 桐乃の部屋との仕切りの壁に張り付いている状態だったりするわけだ、ハハッ……… 俺は天を仰ぎ見て、自分の取り返しのつかない過ちを後悔した。 違うんだよ!さっきまでちゃんと勉強して、机に向かってたんだよ! ど、どちらにしてもやべぇ、殺される。 俺は身の危険を感じつつも、桐乃に向き直ると…… 予想に反して、桐乃は体をモジモジとさせて(なんだ、この可愛い生物は!?) まるで恥らうかのような視線を向けてきた。 「も、もうっ、ほんとにシスコンなんだから………」 「ちょ、ちょっと待て。」 「あたしの声、そんなに聞いていたかったんだ」 「いや、その、つまり………」 やばい、この流れは何故か分からんがやば過ぎる気がする。 「それはともかく!さ、さっきまで何をプレイしてたんだ?」 「えっ?」 桐乃は一瞬急に顔を曇らせ、逡巡する様を見せた。 だが、それも一瞬のことで、ごく普通に楽しそうな表情が取って代わった。 俺は心にチクリと何かが刺さるような感じを受けたんだが……… 最悪の想像から逃れられた点については安堵していた。 「前さ、あんたに貸したラブタッチってゲームあったじゃん?」 「ああ、あのゲームか………」 知らない人のために補足しておこう。 ラブタッチとは、女の子と仲良くするタイプの携帯ゲームで、 ゲーム中の女の子と会話したりできるのが魅力だ。 何より、俺にとって重要なのは、 ゲームの女の子に桐乃を奪われたと勘違いしたあやせたんが、 俺に相談をしに来てくれたことだろう! あれがあやせたんの『相談』のはじまりだったな……… 「でさぁ、これは前代未聞の事なんだけどさっ! 携帯ゲームがパソコンに移植されて、しかも18禁版になってくれたのっ!」 せっかく俺があま〜い過去の追憶に浸っていたというのに、この妹様は……… 「そのうえ、キャラ設定も改変されて、全員妹になってくれたのっ!」 「む、無茶苦茶だな?」 「は?何か言った?」 「いえ、何でもありません!」 妹ゲーへのツッコミは野暮だったな。 つか、ゲームメーカー何考えてんだ? 妹しかいねーとか、どんだけコアなターゲット狙ってんだよ? 「それにねっ、キャラクターも追加されて、全部で12人になったの! その妹達がまた、全員呼び方を変えてくれるのがいいんだ〜 『お兄さん』でしょ?『お兄ちゃん』って無難なのもあるし〜『兄さん』とかぁ 『兄上氏』って変なのもあるよね〜」 「そ、そうか、よかったじゃねーか」 あぶねえ、また無駄に突っ込んじまう所だったぜ。 「まず、この子。前から出てるあやかちゃんでしょ」 桐乃はゲーム機を取り出し、俺の目の前に突きつけてきた。 「ああ、なんかあやせに似てる子な」 「あやせに?うーん、そう言われればそうかもしれないけど……… 似てる所っていえば、黒髪ロングで目が同じ藤色で、基本的には清純派だけど、 お兄さんの事が好き過ぎて、少しヤンデレっぽい所くらいかな?」 おまえも、あやせをヤンデレと認識しつつあるんだな……… 「それと、この子。真奈ちゃん!眼鏡っ娘で天然なのも可愛いよね! 英語をうまく喋れなくて棒読みになるところとか〜 家事万能で性格も優しいって、萌えポイント突いてくるよね〜」 「………麻奈実に似てねーか?」 「あんた目が悪いんじゃない?全然地味じゃないし」 「だから地味子ってのはやめろと」 「この子はカナミちゃん。ロリツインテって神の組み合わせだよね! 口はちょっと悪いけどさぁ、実はモデルもやってるちょう天才! ちっこいけど男気があって、他の妹たちがピンチなら助けてあげようとしてくれるし!」 聞いてねー………つか、これも加奈子に似てねーか? なんか、俺、すげー嫌な予感がしてきたぜ? 「この子、ルリちゃん。黒髪ロングもいいよね〜。 あ、それにこの子自身にも二人の妹がいて、それがまためちゃくちゃ可愛いの! それに〜、実はこの三人の正体は〜って、これは秘密なんだっけ?」 「よ、よくわかった。よく分かったから、この辺で終わりにしてくれ。」 「まだ半分しか言ってないじゃん?」 「プレイしての楽しみもあったほうがいいだろ?」 「そっか。そういう考えもあるよね!」 とりあえず納得してくれたらしい。 ………それにしたってよ? 「ちょっと疑問なんだが」 「何よ?」 「おまえ、友達に似てるキャラ………攻略してるんだよな?」 「は?何言ってんのあんた。」 「ちょっと想像してみろよ、例えばあやせがおまえの妹で、それを攻略―――」 「何それっ!あ、ああ、あんたっ………!」 や、やべぇ!?選択肢ミスったか!? 「あんた!実は天才なんじゃないっ!?」 「………おまえ、本当は馬鹿だろ?」 「妹………あやせや黒いのや加奈子を妹に………」 「聞いてねえ………」 桐乃は、これまで見たことのないような必死な表情で考え込んでいる。 おまえ、絶対に本気を出す所間違ってるぜ? まあ、それでもそういった表情は魅力的な……… いや、他のやつだったら魅力的に感じるかもな。 「よし、決めた。」 「な、何をだよ」 「あたし、12人の妹を作る!」 「………………………………」 「あやせでしょ、加奈子に〜、ランちんもいいなぁ。黒いのも妹セットなら美味しいしぃ」 「ところで、俺には13人の妹が出来ることになるわけか?」 「………アニメ版なんて、無かったんだから!」 何を言い出すんだよ、こいつは。 「そもそも、どうやって妹になってもらうんだよ?」 「お父さんの養子になってもらう?」 「無茶言うな!あの堅物親父がそんな事を認めるわけねーだろ?」 「そっかぁ………」 「それに、おまえより年上なら姉だぞ?」 「姉かぁ………」 そういや、姉モノってこいつ持ってないよな? 眼鏡かけたきつめのお姉さんキャラって、俺には結構ツボな所があんのになー 「そういや桐乃。俺が誰かと結婚したなら、そいつはおまえの姉になるぜ?」 「だ、だめっ!」 「な、なんだよ急に。」 「だっ、だからそのっ………い、妹じゃないとダメなのっ!」 そうか、こいつはどこまでも『妹』じゃねーとダメなのな。 それにしたって、これじゃどうしようもねーよな? ピンポーン―――ん? 「おじゃまします。お兄さん」 突然の来訪者は、ラブリーマイエンジェル、あやせたんだった! タイミングがいいのか悪いのか。 「それにしても、桐乃と一緒だなんて珍しいですね?」 「ああ、まあな」 「ちょ、ちょっとね」 その瞬間、あやせの目から光が消え、急に部屋の温度が下がり始める。 「お兄さん。一体桐乃に何をしたんですか?」 「待て、何を勘違いしているのか分からないが、俺は何もしてねーぞ!?」 「桐乃が答えに詰まるような事をしてたんですね?」 「あやせっ、ち、違うよ。あ、あたし、女の子が欲しいなって話してただけで!」 「なっ、桐乃っ、何言ってやがる!?」 桐乃。『ゲームの中の』って言葉を省くと大変な勘違いを……… って、あ、あやせの後ろにどす黒いオーラがっ!? 「お兄さん」 あやせは背中のオーラと裏腹に、とても可愛らしく天使のような表情で話しかけてくる。 そうだったんだな。俺を天国に連れて行くから、天使だったんだな! ふ、普通に怒ってるのの数万倍こえーよ! 「今日は運が良かったですね。私、ナイフも包丁も鋸も持ってきていないんです。」 「ふ、普段持ってんの!?」 可哀想に、桐乃は部屋の片隅でガタガタ震えてしまっている。 お、俺がなんとかするしかないのか!? 「今日は………加奈子から取り上げたライターしかないんです……… 火炙りにしましょうか?それとも………?」 「げ、ゲームだよっ!」 「この期に及んでゲームの話ですか?」 「だ、だから、桐乃が欲しいのは、ゲームの中の女の子だって!」 あやせのオーラは雲散霧消して、ようやく部屋が温かみを取り戻す。 あやせ自身もぽかんとした表情で、とりあえず今回も助かった事を知った。 「なあ、あやせ、おまえからも言ってやってくれよ。 ゲームの中の女の子は手に入らないんだってな。」 「え、ええ、わ、わかりました。」 メルルの抱き枕を抱きかかえて、うずくまってる桐乃は、 何故か妙に可愛らしく、抱きしめてやりたいような気分になってしまった。 あやせも同じような気持ちのようで、手をわきわきさせながら桐乃に近寄っていく。 つーか、あやせたん?それじゃおまえもエロオヤジの仲間入りだぜ? 「桐乃〜、ちょっとお話しようか〜?」 「う、うん?」 「お兄さんの言うとおり、ゲームの中の女の子が欲しいって本当?」 俺って信用ねーのな。 「う、うん。半分は………」 「それじゃ、残りは?」 「え、えーと………ゲームに出てくるキャラクターにあやかって子がいるんだけどぉ」 「あ、あやかって………ま、まさかラブタッチ………?」 「えっ!?あやせ知ってるの!?」 「え、ええ、一応」 ゲーム内のキャラクターになりきる特訓までしたもんな! 「なんだー、それならそうと言ってくれればいいのに〜」 「で、でもっ、あのゲームは」 「あやかって、あやせにちょう似てるじゃん? だから、あたしもあやせみたいな妹が欲しいな〜って話してたの!」 普通、本人を前にして言うか? 「桐乃………あたしが妹じゃ、だめ………かな?」 「って、あやせたん何言ってんだよ!?」 「うるさい、兄貴は黙ってて。つか、ホントに妹になってくれるの!?」 「うん………桐乃がお姉さんだなんて、私、嬉しくて涙がでちゃう………」 「あ、あやせ………」 おいおい、いいのか?いいのか? それ以前にどうやって姉妹になるんだよ? 「そ、それじゃ、桐乃っ、ロザリオを………ください」 「………………………へっ?」 ………これは、あれか。 桐乃を理解するため、と思って買ったアイテムが、明後日の方向だったわけだな? 「えっ?き、桐乃と姉妹になるって言うから、姉妹の契りを………?」 「姉妹の契りって………何だっけ?」 「おまえは見てねーかもしれないが、マリみての姉妹制度だろ?」 「もしかして、私はとんでもない勘違いを………」 「あたしの言ってるのは、マジの妹の事。」 もうやだ、オタク脳ってなんでこうなんだよ。 つか、俺のあやせたんまでオタク化するなんて、この世には神も仏もねえってのかよ!? あの純真で穢れない俺の天使を返してくれよぉ……… 「それじゃあ、桐乃の本当の妹になってもいいの!?」 「う、うん。あたしはあやせが妹になってくれると嬉しいよ!」 「二人とも落ち着け、第一どうやって妹になるってんだよ?」 「そ、それは………」 「あやせがうちの養子になれば簡単じゃん?」 こいつ、まだその考えを捨ててなかったのかよ? 「そんなに簡単にいくものかよ………」 「そ、それに桐乃。誕生日、私のほうが先だから………」 「それじゃ、このままじゃあやせがお姉ちゃんになっちゃう?」 「う、うん。」 「ほれ見ろ。そんなに簡単に妹を増やせたら、エロゲーライターだって苦労しねーよ。」 「あんた、さっきからずっと否定することばっかじゃん? ちょっとは方法を考えて見なさいよ。」 俺が何も得しねーのにか!? いや、あやせたんが俺の妹か……… ちょっとは考えてもいいかもしれねーが、でもなぁ? 「いや、だって、ぜってー無理だろ? そもそも、年齢が上で妹ってのがあるわけねー………いや、一応あるか。」 「な、何っ!?」 うおっ!?すげー食いつき? だけどよ、これ考えてるとなんか気分が悪くなるんだよな……… 「いや、例えばおまえが結婚したとしてだ、 その相手の妹は、年上であってもおまえを『お義姉さん』って呼ばねーか?」 クソッ、なんでこんなに胸くそわりーんだよ……… 「つまりだ、あやせに兄貴がいたとして、おまえがその相手と……… いや、俺はぜってー認めねーからな!」 「なに興奮してんのよ、あんた。」 「そ、そうです。それに、私にはお兄さんはいませんし………」 「そうか、それならよかった」 あれ?何で俺、安心してんだ? 「でも、それで良いなら簡単じゃん?」 「おまえ、今、あやせに兄貴はいねーって聞いたばかりだろ?」 「要は、あやせに兄貴が居れば良くって、そいつとあたしが結婚すればいいんでしょ?」 「無茶苦茶いってんじゃねーよ!」 なんだよ、おまえそんなに結婚してーってのかよ! ああそうかよ!そんなに俺と離れてーっていうのかよっ! 「つまりぃ、あやせがうちの養子になって、あんたの妹になった後、 あたしがあんたと結婚すれば、あやせはあたしの妹になってくれるんだ!」 「………………………はい?」 俺と桐乃が結婚? あーそっか、その手があったか、それなら俺も桐乃と一緒でいられ……… 待て!?俺っ!?何を考えてやがる!? 「き、桐乃!?」 「しょ、しょうがないじゃん! べ、べつにあたしだってこいつと結婚なんてゴメンだけどっ、 あやせが妹になってくれるんだったら、少しくらい我慢できるしっ!」 「待て、その話は何かおかしいぞ!?」 「あ、あやせだって、こんなやつと結婚したくないでしょ!?」 「うん!私、こんな変態お兄さんと結婚してまで桐乃の妹にはなれないです。」 「だ、だからっ、その話は論理的にだな!?」 「あんた、あたしと結婚するの?しないの!?」 「お兄さん。もし、断ろうものなら………わかってますよね?」 「なんで、こうなっちまうんだよぉぉぉぉ!?」 結局、この後散々桐乃とあやせに脅されて(嬉しくなんかねーぞ!?) 桐乃との結婚を承諾させられてしまった。 その後も、桐乃は妹候補を丸め込み、なんと12人もの妹を作る事に成功する。 ………親父がどうして許可したのか、 それ以前に相手の親はどうしたのか激しく疑問点は残るんだが……… そういや、あやせはずっと桐乃と行動してたが………関係あんのか? ともかく、俺たちはめでたく結婚。(これだって何故できたのか疑問だ) 桐乃との間に12人もの子供が生まれ、妹たちと一緒に子供の世話や仕事と、 忙しくも楽しい毎日を送っている。 「桐乃、俺は今でもたまに疑問に思うんだが………」 「何よ」 「あの時、妹を作りたいってのがお前の本音だったのか? それとも、俺と結婚するための口実だったのか?」 「それは、ないしょ!」 「ざ、ざんねんだなぁ………」 「でも、分かってるんでしょ、本当は?」 「そうだな。お前は昔からそうだったものな」 庭で戯れる子供達を見つめながら、桐乃は俺の肩に体を預けてくる。 その姿を見て、俺はこう思わずにはいられないのさ 俺の妹がこんなに可愛いわけがない ってね。 End. -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1132.html
613 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/09/21(水) 09 35 54.56 ID Bh62OIjY0 [1/10] 俺の名前は高坂京介。桐乃という3つ下の妹がいる。 今でこそ普通の兄妹らしくなってきたが,1年半前―桐乃が自分の趣味を打ち明けるまでは,俺たちの関係は本当に酷かった。 同じ家に住んでいるのに,お互いのことはほとんど知らない。口をきかないどころか,目も合わせない。なんでこんなやつが家族なんだ ろうって―そんな風に思ったこともあったっけ。 とまあこんな感じで,当時の俺たちは冷め切っていたんだ。温かみなんて欠片もない,殺伐とした毎日。思い返すと今でも,苦虫を噛み つぶしたような気持ちになる。 でも一度だけ……たった一度だけ,こんなことがあったんだ。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 高校に入学して半年ほど経ったころ,俺は車に轢かれた。 図書館から帰る途中だった俺と麻奈実に,前方不注意の乗用車が突っ込んできたんだ。 とっさに俺は麻奈実をかばったから,幸いあいつにケガはなかったけど……俺はスパーンと足の骨を折っちまったのさ。 今にして思えば,足の骨だけで済んだのが奇跡的だったんだが……まぁそれは良いとして。 俺はそのまま救急車で運ばれて,数週間の入院生活が決まったんだ。 「でもほんとによかったぁ……きょうちゃん死んじゃうかと思った」 「ったく,大げさなんだよお前は」 「だ,だって~」 涙目で麻奈実が抱きついてくる。 ミシミシとベッドが軋み,痛みで思わず「おうっ」と声が漏れた。 「こ,こら!痛い!痛いって!」 「ふえっ?ご,ごめん」 慌てて俺から身を離し,ぺこりと頭を下げる麻奈実。 俺は息を一つついて,改めて自分の姿を見つめた。 折れた右足はギブスで固められ,その上から包帯がグルグルと巻かれている。服は簡素な入院着に替えられ,釣り上げられた右足のおか げで身体の自由がきかない。 ……まさに絵に描いたようなケガ人だ。 俺が心の中で苦笑していると,麻奈実が怒ったような口調で言った。 「それにしてもひどいよ,あの運転手!きょうちゃんを轢いてそのまま逃げちゃうなんて!」 「ああ,それなら心配いらねえよ。もう親父が取っ捕まえたから」 「ええっ,京ちゃんのお父さんが!?」 「おう。ついさっき俺の前に引っ張り出してきて,『この卑怯者!今すぐ謝れ!』って,無理やり俺の前で土下座させたんだぜ」 「ほぇぇ……」 まったくあのときの剣幕たるや……思わず加害者に同情しちまったよ。 俺が身震いしていると,麻奈実がすっと立ち上がった。 「あ,私そろそろ帰らなきゃ。また来るね,きょうちゃん」 「おう,わりぃな。こんな時間まで付き合わせちまって」 「ううん,これは私のせいでもあるんだから。欲しいものがあったらすぐに言ってね」 麻奈実はそう言って,病室を後にした。 またあいつが来てくれるなら,この入院生活も退屈しないで済みそうだ。 そんなことを考えながら,俺はベッドで癒しの余韻に浸るのだった。 病室の入り口に人の気配を感じたのは,しばらく経ってからのこと。 「麻奈実か?」 忘れ物でもしたんだろうか……そう思った俺だったが,その人影は麻奈実じゃなかった。 ドアの陰からのぞく,ライトブラウンのロングヘア…… え?あれって……まさか。 「チッ」 盛大な舌打ちをしてズカズカと病室に入ってきたのは,他でもない俺の妹だった。 桐乃は部屋に入るや,目の前の椅子にズドンと腰かけた。 歯がゆそうに舌打ちを連打して,組んだ足をしきりに動かしている。 ……なんだよこいつ。 黙ったままの桐乃に痺れを切らして,俺はぼそっとつぶやいた。 「何しに来たんだよ」 それを聞いた桐乃は何故か目を見開いて――それから吐き捨てるように言った。 「チッ,別に……お母さんがあんたのお見舞いに行けってうるさいから,仕方なく来てやっただけ。 し・か・た・な・く」 イラッ,イライラッ。こめかみの血管が切れるかと思ったぜ。 桐乃はそのまま俺を流し見て,ぼそぼそと口を開く。 「派手にぶつかったって聞いたけど,全然大したことないじゃん。チッ,大げさすぎるっての……」 だぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!! 何なんだよこいつ,わざわざ俺を苛つかせるために来たのか? だとしたらよっぽどの性悪女だな!それでも本当に家族なのかよ! 胸に渦巻くどす黒い感情。その胸クソ悪さのせいで,俺は口を開くこともできなかった。 それからどのくらい経っただろうか。 相変わらず,俺たちはむっつり押し黙ったままだった。 こんなときに限って,病室には誰もいない。まさに兄妹ふたりきりの空間。 気まずい……というか,息苦しい。とっとと帰ってくんねぇかな…… 俺がそう思い始めたころ,桐乃がおもむろに口を開いた。 「で,結局なんでそうなったワケ?」 「は?」 「地味子が言ってた……『私のせいでもあるんだから』ってどういうこと?なんか関係あんの?」 ああ,そのことか。 「別に……俺たち二人に車が突っ込んできたから,俺が麻奈実をかばったんだ。多分あいつはそのことに負い目を感じてるんだろうよ」 そんなの,気にする必要ないのにな。まったく,あいつのお人好しも筋金入りだぜ。 俺が一人苦笑していると,何故か桐乃はイライラを最高潮に募らせていた。 「ばっかじゃないの……地味子なんかかばって,そんな大怪我するなんて」 その言葉に,俺はピクリと反応する。 「……今なんつったてめぇ」 そこで桐乃はキッと俺を睨みつけ,まくし立てるように言った。 「地味子なんかかばって,自分だけそんな大怪我するなんてバカじゃないのかっつってんの! 一歩間違えれば死んでたくせに!」 ドンッ,ドンッ。桐乃が俺の胸を叩いてくる。 「いてっ……や,やめろ!」 「うっさい!」 桐乃が俺を叩くたび,ミシミシと足が痛む。 「ッ!!やめろっつってんだろ……この!」 俺は桐乃の手首をガシッと掴み,すぐ近くまで引き寄せた。 ――おい,なんでそんな顔してんだよ。なんで泣いてんだよ。 「離せ!」 ぶんっと手を振って俺の拘束から逃れると,桐乃は叩き付けるように言った。 「あんたなんて,そのまま死んじゃえばよかったのに!あんたなんて……あんたなんて!」 桐乃はそのままバッと踵を返し,逃げるように病室を去っていった。 それからおよそ1時間後……今度はお袋がやってきた。 「あんたの着替えはここに入れとくわね。あとは洗面用具と,勉強道具と…………ってどうしたの京介,何かあった?」 「…………」 その時の俺は,信じられないほど落ち込んでいた。 『死ねばよかったのに』なんて言われたからだろうか。それとも…… 「さっき桐乃が来てさ……」 「ええっ,桐乃が!?」 驚いたように目を見開くお袋。ったく,とぼけてんじゃねーよ…… 「お袋が言ったんだろ?俺の見舞いに行けって……」 「そんなこと言うわけないじゃない。大体あの子,今日は部活の大会で遠征に行ってるはずよ」 え,何言ってんだ?じゃあ俺がさっき見た桐乃は偽物だとでも? 俺が混乱した頭で考えていると,お袋がため息をついて言った。 「仮に私が行けって言ったとしても,あの子が来るわけないでしょ。寝ぼけたこと言ってないで,さっさと元気になりなさいよ」 結局―― あのとき俺が見た妹は,ただの幻だったんだろうか。 俺が退院するまで,桐乃は一度も姿を見せなかった。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「どうしたの?ぼーっとしちゃって」 桐乃が不思議そうな顔でのぞき込んでくる。 季節は9月の半ば。下校中にばったり桐乃と会って,そのまま一緒に帰ることにしたのだ。 「ん?ああ,なんでもない」 思い返せば,この1年半で俺たちは随分変わった。 大嫌いな妹の世話を焼いて,俺も妹に世話を焼かれて……俺たちはやっと気持ちを分かり合えた。 ようやく……本当の兄妹になることができた。 もうあの頃には戻りたくない。 「なぁ,桐乃……」 俺はふと,あの時のことを聞こうとして――やめた。 「ん?なに?」 「……なんでもね」 あの時のこいつが幻だったかどうかなんて……今さらどうでもいい。 俺の傍らには,こうして確かな存在がいるのだから。 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/34.html
378 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2010/11/16(火) 10 06 36 ID gYdlt+sDO 素直になったくんかたんのネタはよく見るけど 逆に京介が素直ヒートなみにくんかたんに思いをぶつけまくったらどうなるんだろう 「あぅあぅあぅ」って真っ赤になったくんかたんが見たい 384 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2010/11/16(火) 11 29 33 ID S+rITJ3R0 [1/3] 378 京介の逆襲は確かに見たい。 二人きりで旅行とか行けばいいよ。 お約束通り、旅館の人に恋人に勘違いされればいいよ。 桐乃が慌てて否定しようとしたら肩抱いて「大切な奴なんです」とかマジ顔で言えばいいよ。 390 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2010/11/16(火) 11 59 03 ID w3c9jYc00 384 「いくら地方イベントで星野くららの握手会があるからってわざわざでかけなくてもよかったんじゃね?」 「分かってないわね・・・。ファンにとって握手会っていうのはそれだけで重要なイベントなの! これだからニワカは困るのよ。アンタちゃんとメルルちゃん見たの?生くららちゃんだよっ!?生っ!」 「へーへー分かったよ。おいそろそろ旅館着くぞ」 「バカじゃん?見たら分かる事いちいちドヤ顔で言わないでくれる?バカが移る」 「・・・・・・(抑えろ、抑えろ京介)」 「いらっしゃいませ。ご予約の高坂様ですね。お荷物の方こちらでお預かりしますね」 「はい・・・。あ、ありがとうございます。ほら桐乃、荷物よこせ」 「い、言われなくても分かってるってば・・・」 「あらあら、仲良しさんですね。恋人さんですか?」 「なっ!?ちっ・・・ちが」 「ええ、凄く大切な奴なんです。俺にとっていなくちゃならない大切な存在っていうか・・・」 「・・・・・・・・・」 「あらあら。お熱いですわ・・・(くすくす)」 「ちょっと!?アンタどこまでシスコンなわけ!?変な勘違いされたじゃん!?超キモッ!」 「別にそう思わせておけばいいだろ!?兄妹で同じ部屋で寝るなんて他人にいえないだろうが!?」 「だからってなんでアンタと・・・その恋人なのよ!?いくらシスコンだからって妹をそういう眼で見るのやめてくんない?」 「ホント、サイアクなんですケド・・・・あーもうキモッ」 「ぐっ・・・・・・トイレいってくるわ」 「二人っきりだからって変な想像しないでよね。変態シスコン兄貴」 「しねーよっ!」 「・・・・恋人か・・・えへへ・・・」 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1064.html
905 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/08/30(火) 16 11 58.98 ID ahTdjWSM0 プロ野球千葉ロッテの本拠地QVCマリンフィールドで、こんなイベントがあるそうな 千葉ロッテは、9月3日の楽天戦の始球式で、プロポーズができる権利を1組のカップルにプレゼントすると発表した。 当日は男性がマウンドに上がり、ロッテの選手が打席に入る。 男性が「プロ野球選手からストライクが取れたら結婚してください」と隣にいる女性に宣言し、投球に入るという。 球界初の試みに、営業担当者は「空は夕暮れで、ロマンチックな時間になるのではないか」と笑顔を浮かべていた。 地元の千葉市にある球場だし、京介がきりりんにプロポーズしたりとかはアリなのだろうか ってか、ロッテ何やってるんだw 931 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/08/30(火) 19 49 49.90 ID VJVTGfdy0 [2/3] 【SS】プロポーズ始球式 9月3日。俺は千葉マリンフィールドのマウンド上に立っていた。 どよめく観客。カメラが隣に立つ桐乃をオーロラビジョンに捉えたらしい。 「う、うわ、あんなにおっきく映っちゃってる……」 桐乃は緊張の為か、プロモデルと思えないほどぎこちない愛想笑いを浮かべている。 と思ったら、俺の元へ走り寄るとユニフォームの裾をきゅっとつまんで俯いてしまった。 「おい、投げるのは俺なんだから、おまえが緊張してどうする。それに、勝手に応募したのはおまえだぞ?」 「スタジアムってこんな凄いと思わなくて……あ、あんたは、何で平気そうなの?」 はっ。事を知ってから、俺がどれだけ死に物狂いで投球練習したと思ってるんだ。 「俺はこれからプロのバッターからストライクを奪わなきゃいけないんだぜ?観客の声なんてそれに比べりゃ屁でもねぇ」 「プロからって……始球式ってのは相手が勝手に振っ――」 ワアアアアアアアアアアア!!! 「始まるみたいだ。桐乃、見ててくれ」 俺は全身の気を奮い起こすような感覚で、精神を研ぎ澄ませる。 いよいよ、一世一代の大勝負だ。絶対に失敗はできない。 『それでは、高坂京介さん、どうぞー!!』 来た!持ちうる全ての声量で、その名を叫ぶ! 「桐乃おおおおおぉぉぉおおおおお!」 「ひゃあっ、きょ、京介?」 「プロ野球選手からストライクが取れたら結婚してください!!!」 「――は、はいっ!します!結婚します!!」 ワアアアアアアアアアアアアアアア!!!!! 桐乃、打ち合わせの科白と全然違うじゃねーか。緊張しまくって色々飛んでしまってるようだ。 本当は今すぐベンチ裏の静かな場所に連れて行ってやりたいが、俺にはまだ仕事が残ってる。 宣言した以上、絶対ストライク取らないとなぁ! 胸いっぱいに息を吸い込む。大きく天高く振りかぶり、モーションを開始する。 グアッ! 右足が身体を押し出し、左足が地面へ深く突き刺さる。 膝、太もも、腰、背筋、肩、腕、指先へと、自分の体重の何倍にも思える荷重を伝えていく! ビッ!! シュォォォオオオオ バシイッ!!! 球はど真ん中、キャッチャーミットへ吸い込まれた。 バッターは微動だにしていない。 や……やった、やったのか!? 「硬球を啼かせるとは、なかなかやるな、京介」 んな!?こ、この声は……!? バッターの巨きな身体が、のしりとこちらを向く。 「だが、桐乃が結婚は早すぎる!ワシが何としても阻止してやるわ!!」 「親父ぃぃぃぃ!? 何で親父がバッターやってんの!?」 「ええっ!? お、お父さん!?」 親父はその体躯のせいで小さく見えるバットを俺に突きつけ、叫んだ。 「プロといえど、一球勝負ではビギナーズラックがあるやも知れぬ。 だからワシが代わりだ! ワシはプロではない!1球ストライク取ったくらいで桐乃は嫁にやらんわああああああ!!」 ワアアアアアアアアアアアア!! 「なんっ、だと、お……!?」 さらにヒートアップする観客。電光掲示板にはストライクの黄色電灯が1つ灯った。 「野球ルールで1打席、勝負だ京介!!」 「ンのヤロォ……面白いじゃねぇか」 「ちょ、京介、受ける気なわけ!?」 「大丈夫だ、見ていてくれ、桐乃。土下座で鍛えた俺のバネを見せてやるぜ」 とは言ったが最初の1球だって紛うことなく入魂だったんだ。 遊び球はなし、残り2球でケリをつける。 「いくぜ親父! 娘!さんを! 俺に!くださあああああああああああああいッ!!」 ドゲザアッ!!!!! 「やらんわああああああああああああ!!」 グァラガキイイイン!! ワアアアアア!!ザワザワザワ レフトポールすぐ左に突き刺さる大ファールに、観客がどよめく。 だが直後、さらに大きな歓声が上がった。 「ちょ、電光掲示板! 123km/hって、あ、あんた素人じゃなかったっけ?」 桐乃さんよ、兄貴は妹の為ならいつでも火事場力を引き出せるんだぜ。 と格好つけて笑い返したはいいものの、今のは腕が抜けるかと思ったぜ。 それを引っ張ってあわやホームランの大ファールって、親父……。 改めてバッターボックスを見やる。そこには―― 鬼がいた。 全身から妖気……と言うと殴られそうなのでオーラ、という名の湯気を出し 筋肉を溢れんばかりに膨張させ、全身がその激しい血流で赤黒く見える。 「京介、おまえを見くびっていた。次は容赦せん」 見た目と裏腹に静かな言葉は、しかし腹の底をゆすられるような低い響きをもって威圧してくる。 俺は今――親父の本気と対峙している――! 「きょ、京介!ヤバイって!コレ殺されるって!!」 「桐乃、大丈夫だ。次の1球で決める」 「やれるものならやってみろ。来い、京介!」 親父がバットを構える。 その姿はまさに無双震撃斬を放つ直前の壬無月斬紅郎。 鬼か。だがな、例え鬼相手でも、俺は負けるわけにはいかねぇ! 振りかぶる。とその時、桐乃の叫びが耳に届いた。 「がんばれ京介……っ! 負けるなぁ――ッ!」 ドクン!心臓が跳ねる。同じく、身体の全ての筋肉が、骨が、まるで新品に生まれ変わったかのように躍動する! 「あたしはファザコンじゃないっ! シスコンでもないっ! ブラコンだからあぁぁ――――ッ! 勝てえぇぇぇぇぇッ! 京介えぇえぇぇェェエェェェッ!」 全身が火にでもつつまれたかの様に熱い。全身がフルボトムのバネになったかのように力強く、速く、弾ける! 「あたしをお嫁さんにして!!!!!!!!!!」 「おおおぉぉおぉおぉぉおおおおおお!!!!!」 ジズゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!! 放たれた呻りは ブァラゴォォンッ!!! 盛大な音を立てて キャッチャーミットへ収まった。 か、勝った…………またも親父を倒したぞ……! ん……あ、あれ、緊張が抜けて……。 というか、桐乃にプロポーズ始球式に当選しちまったって旨を聞いてからずっと張り詰めていたモノが抜けちゃったような……。 ん?……え、待て、俺、あの時からずっとテンパりモードだったのか? 地獄の投球土下座特訓から今の今まで、数日間ずっと本気モード継続し続けてた? 理由は…… 桐乃が、プロポーズを受けなきゃならないとか言い出したからで……そんなん俺がやってやると言って……。 え…………俺、何か凄いこといっぱい言ったような……? 「京介ぇ!!!!!」 「ぐは!! ちょ、桐乃、強い、力入れすぎだって!!」 「京介!京介京介京介っ!! あたし、あたし嬉しいよ!!!」 熱暴走から醒めたばかりで色んなことを整理できてない俺。だが桐乃は余裕なんてくれなかった。 「京介!!約束通り、結婚しよ!!!!!!!」 満面の笑みの桐乃が、その潤んだ瞳を閉じ、顔を近づける。 マウンドの上で俺たちは、強く深く、お互いを確かめ合う。 あぁもう、細かいことはなんでもいいや。俺今、最高の気分だ。 千葉マリンフィールド満杯の観客が、一斉に今日一番の歓声を上げる。 \ ウヘェ~~~ッ!!! / happy end. -------------