約 431,391 件
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/877.html
495 :【SS】修学旅行 1/2:2011/06/29(水) 18 40 25.41 ID pin/Y6qC0 修学旅行とか、妄想が止まらない。 修学旅行前日: あやせ「どうしたんですか、お兄さん。 お兄さんから私に相談なんて・・・」 京介「お願いだあやせ!修学旅行の間、桐乃のことを守ってやってくれ!」 あやせ「お、お兄さん!?こんなところで土下座なんかしないでください!」 京介「頼む!」 あやせ「・・・はぁ。お兄さんに頼まれなくても桐乃のことはちゃんと守りますから・・・」 修学旅行一日目・夜: 京介「へっ。あいつがいないと勉強がはかどるぜ!」 修学旅行二日目・朝: 麻奈実「どうしたの、きょうちゃん? 元気がないよ?」 京介「・・・なんでもねえよ」 修学旅行二日目・昼: 桐乃(ひゃっほう!ご当地メルル3種類目発見! あとは、と) あやせ「桐乃は行く先々でお土産屋さんを覗いてるなぁ」 修学旅行二日目・夜: 京介「勉強が、手につかねえ」 桐乃「え?好きな人?そんな人いないよぉ~」 ランちん「本当?桐乃、行く先々でお土産を見てるじゃん。 本当は誰かにあげる気なんでしょ~」 桐乃「いつもお世話になってる人にあげるだけだって。 それよりあやせはさっきの神社で恋愛成就のお守りの前でボーっとしてたけど?」 あやせ「え?わ、私は素敵な恋がしたいなって思っただけだから。 お土産といえば加奈子もいっぱい買ってるよね」 加奈子「ん?ご当地メルルってのがあるみたいだからぁ、糞マネへのお土産にしようと集めてんの。 糞マネ喜ぶかなぁ。ひひっ」 あ桐「「・・・・・・」」 修学旅行最終日・朝: 先生「高坂は体調が優れないらしくて休みだ」 麻奈実(きょうちゃん平気かなぁ) 修学旅行最終日・昼: 桐乃「結局いいお土産見つからなかったな。 あいつの事だからどんなお土産でも喜んでくれると思うんだけど・・・ う~ん。でも、お守りだけだと寂しいよね? ・・・・・・早く帰りたいな」 あやせ(桐乃、すごい寂しそう・・・) 496 :【SS】修学旅行 2/2:2011/06/29(水) 18 41 07.47 ID pin/Y6qC0 修学旅行最終日・夜: 桐乃「ただいまー」 京介「おかえり」 桐乃「あんた、どうしてこんな時間にパジャマ着てるの?」 佳乃「京介ったら風邪引いちゃってねー。 ようやく直ってきたと思ったらずっとリビングで桐乃のこと待ってたのよ」 京介「待ってねえ!」 桐乃「ふ~ん。あんた、あたしに二日間会えないだけで免疫機構低下しちゃうんだぁ。 マジシスコンだね」 (・・・・・・こんなにすぐにダメになるんじゃ、一人じゃどこにも行けないじゃん) 京介「うっせぇ」 桐乃「はい、そんなあんたにもお土産買ってきてあげたんだから、感謝してよね」 京介「ハート型のストラップに・・・学業成就のお守りか。 ん?このお守り、なんか分厚くないか?」 桐乃「!!! ご利益のある紙でも入ってるんじゃないの? ・・・・・・あと、お守りの中、絶対に覗いちゃ駄目だからね?」 京介「覗かねえよ。 ・・・・・・お土産、ありがとうな」 桐乃「どういたしまして」 大介「・・・・・・俺には?」 桐乃「あ・・・ はい、生八橋」 大介「・・・・・・・・・」 桐乃「あ、そうだ。 あと一つ、あんたが好きそうなお土産があるんだけど」 修学旅行翌日・夕方: 麻奈実「きょうちゃん、今日は一日中携帯をいじくってたよね。 なにかあったの?」 京介「なんでもねえよ。ただ」 京介はポケットからハート型のストラップのついた携帯を取り出すと、待ち受け画像を確認して笑う。 京介「桐乃から『俺の好きなもの』をお土産に貰っただけだ」 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1282.html
839 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/11/20(日) 02 45 12.97 ID 2tMP6fLL0 タイトル:星に願いを・・・ 「まったくレンタカーなんて・・・・・ほんと甲斐性なしなんだから・・・」 俺は桐乃の言葉にちょっとムッとなる。 俺たちは、今レンタカーに乗って深夜のドライブをしている。普段は親父の車を使って桐 乃とドライブとかに出かけているが、たまたま今日は親父が車を使っていて、それでレン タカーになったわけだ。 「俺は大学生なんだから車なんて持てねーって」 「バイトやってんだったらさ、あたしが千葉マツダに口聞いてあげよっか?安くなるかも よ」 「おまえ、さりげなく営業すんじゃねーよ。てか車買っても駐車場とか税金とかいろいろ あんだから、社会人になるまでマイカーはお預けだ」 「ふん!そんじゃあんたが就職するまで我慢してあげる。まあレンタカーでもあんたのド ライブには付き合ってあげるから、感謝しなさいよねっ」 桐乃は助手席で踏ん反り返りながらそんなことを言う。しかしその横顔には薄っすらと笑 みを浮かべていた。 「そういやさ、今日はどこ行くのよ?」 「ああ、今日は何か流星群が見られるらしいんで、山のほうに行って見てみようかなって 思ってよ」 俺がそう言うと、桐乃は俺のほうに顔を向けて突然ニヤついた笑みを浮かべる。 「そんなロマンチックなこと言っちゃってさ、ほんとキモいんだから」 「バカ、別にいいだろ・・・・・そうじゃないと誘う理由なんて思いつかなかったし」 「マジキモい、どんだけあたしをドライブに誘いたいわけ?このシスコン」 「おまえだって、買い物とか遊びとかで俺に付き合えって言うじゃねーかよ」 「うっさいな、あたしは妹だからいいのっ」 「なんだよそれ・・・・・」 俺は桐乃の科白に突っ込みを入れる。まあ本気で言ってるわけじゃない。あくまで目的地 に着くまでの暇つぶしだ。桐乃もそれはわかっているのだろう、ツンっとしてはいるが本 気で怒ってはいないようだ。 いろいろ遠回りしてきたが、今の俺たちはいつもべったり引っ付いているちょっと変な兄 妹って関係だ。べったりっていっても、こうやってドライブしたりとか、買い物行ったり とか、まあその程度だけどな。 俺たちを知らないやつらが見たら、もしかしたら恋人同士に見えるかもしれない。しかし 俺たちは兄妹だ。 でもよ、兄妹と恋人の差って何なんだろうって俺は思うよ。 2時間くらい走ったであろうか、俺は街の明かりが遥か先に見える小高い山の山頂付近に 車を停める。そこは広い駐車場になっていて、周りを遮るものもあまりなく家とかの明か りもない。だから普段見ることができない小さな星々まで見ることができる恰好のスポッ トである。 「あんまり人いないな・・・」 「そうだね、こんな寒空に外出て星見ようなんて人もいないのかもね」 駐車場には数台の車が止まっている程度で閑散としている。車を止める場所もないかもと 心配していた俺であったが、この状況にちょっと拍子抜けしてしまう。 「どうする、俺たちも外出て見るか?」 「うーん、寒いから車の中でいいんじゃないの?」 「そっか、貸切とはいかねーがここでゆっくり眺めるか」 「そうだね」 俺は車のエンジンを切ると、少しシートを倒して寝転がりながら星空を眺める。それを見 た桐乃も同じようにシートを倒して星空を眺めている。 「桐乃、寒くないか?」 「うん、寒くない・・・」 「寒かったら言えよな。エンジンかけてやっからさ」 「なによ、あんたが暖めてくれんじゃないの?」 桐乃は俺のほうを向くと、ニヤニヤした顔でそんな冗談を言ってくる。俺はそんな桐乃に ちょっと呆れたような顔をすると 「バーカ、そんなこと言うとほんとにやるぞ」 と切り返してやった。 「キモッ!なに本気にしてんのよ、このシスコン」 桐乃はそう言ってツンっと口を尖らせると、星空に顔を向ける。 俺たちはそんな他愛もないやり取りをしながら星を眺める。もっと静かに見れないのかよ って自分でも思うが、まあこれが俺たちなんだろうよ。 しばらくすると、何となく桐乃が寒がっているような気がした。 「おい、エンジンかけるか?」 すると桐乃は 「エンジンかけると、回りに迷惑だからさ・・・あんたがこっち来てよ」 と言いながら、座席の片側に身を寄せる。 「バカ、そんな冗談言うと本気にするぞって言っただろっ」 「うっさいな、あたしがいいって言ってんだから、こっち来なさいよね」 俺は桐乃に押し切られるまま、助手席に移った。シートは二人が並んで座れるような幅も ないので、俺たちは体を少し横にして抱き合いながらシートに収まる。 顔を横にするとお互い見詰め合ってしまい恥ずかしくなるので、俺たちは星空に視線を向 ける。 「あんたの体ってさ、暖かいね」 「おまえも何かいい匂いするな」 俺は桐乃の温もりと匂いを感じながら、星空を眺める。桐乃も俺の体温を感じているのだ ろう先ほどまで感じていた寒そうな雰囲気はなく、同じように無言で星空を眺めているよ うだ。 すると、星空の一角から幾筋もの光が流れ始まる。まるで線香花火の光のように流れては 消え、消えてはまた流れる。 「ほら、流れ星!」 突然桐乃が星空を指差しながらそう言った。 「ああ、そうだな」 俺は静かに答える。 「願い事言った?」 不意に桐乃がそんなことを言う。 「えっ?まあな・・・・・・桐乃は何か言ったのか?」 俺は戸惑いながらそう答える。 「うん、言った。あんたのお願い当ててあげようかっ」 「俺もおまえのお願い当てられるような気がする」 「それじゃ一緒に言ってみる?」 「そうだな・・・」 俺の言葉を合図にお互いタイミングを合わせると 「「ずっと一緒にいられますようにっ!」」 俺たちはお互いの願い事を当て合った。桐乃が言った俺の願い事は当たっていた。俺が言 った桐乃の願い事もきっと当たっているだろう。俺たちは、お互いの願い事が同じであっ たことに安心して微笑み合った。 「兄妹で、こんなお願いって何か変だな・・・・・」 「そう?あたしはいいと思うけどな」 「だってよ・・・・・恋人とかがお願いすることだろ?」 「あんたはさ、兄妹と恋人ってどこが違うと思う?」 桐乃はそう言うと、また星空に視線を向ける。 「兄妹と恋人の違いか・・・・・」 俺も星空に視線を向けながら、考えてみる。 桐乃のやつも同じこと考えてたんだな・・・ 血が繋がってるから兄妹なのか?血が繋がっていない兄妹だっているしな・・・ キスとかしてるから恋人なのか?そんなのしないでも恋人同士っていえるやつらだってい っぱいいるよ。 だから俺はよ・・・・・・・・ 「どうわかった?」 「ああ、なんとなくな・・・」 自分なりの考えがまとまった俺は桐乃にそう答えた。それを聞いた桐乃は、こちらに顔を 向け 「そんじゃさ、聞かせて・・・」 と言った。俺も桐乃に顔を向けると 「兄妹と恋人の違いってよ、お互いがどう思ってるかの差くらいしかないんじゃないかと 思うよ」 と答えた。 「あたしも同じっ」 「・・・なんだよ、おまえもかよ」 桐乃は微笑みながらそう返してきた。それを聞いた俺は『まったく似たもの同士だな』と 思ってしまう。 しかしその後に続いた桐乃の言葉は俺の予想を超えていた。 「だからさ、あたしたちだって・・・・・キスとかしてもいいんだと思う・・・」 そう言って、桐乃は目を閉じた。 「-----っ!」 俺は突然の桐乃の行動に一瞬固まってしまう。しかし真っ直ぐと向けられた桐乃の顔に自 然と引き寄せられて・・・・・・・・ この夜、俺たちのちょっと変な兄妹って関係は、新たな一歩を踏み出したのであった。 Fin -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1136.html
685 名前:【SS】プライベート・ファッションショー 1/4[sage] 投稿日:2011/09/21(水) 15 39 23.69 ID X+PQqFWx0 [10/19] 『カメラを持ってあたしの部屋に来ること!』 9月21日の夜、そんなメールを受け取った俺は、桐乃の部屋の前に立っていた。 「一体何の用なんだ?」 いつもならずかずかと俺の部屋に入ってきて、好き勝手に命令するだけだろうに。 しかもカメラって・・・・・・桐乃のコレクションの撮影でもさせる気か? 「まあ、考えても仕方ないか」 俺はカメラを持っていることを確認すると、桐乃の部屋の扉をノックした。 「桐乃、入っていいか?」 「う、うん! 入ってきていいよ」 どことなく緊張した桐乃の声が返ってきた。 不思議に思いつつも俺が扉を開けると、 部屋の中心に、浴衣姿の桐乃が立っていた。 「き、桐乃?」 わけがわからず、その言葉だけを搾り出す。 今日、これから花火大会とかあったっけ? 「今日はファッションショーの日なんだって。 だから、今日だけ特別に、あんたのためにファッションショーを開いてあげる」 浴衣を完璧に着こなす桐乃の顔は、どことなく赤い。 こいつ、照れてるのか? 「でも、なんでまた・・・・・・」 おまえ、俺のこと嫌いだろ? ファッションショーの日だからって、俺のためにファッションショーを開いてくれるなんてにわかには信じられねえんだが。 「その・・・・・・あんたさ、あたしのワガママのせいでこれからもずっと彼女が作れないじゃん? だからさ、一年に一回くらい、彼女の代わりにあたしの綺麗で可愛い姿を見せてあげないと可哀想かなって思ったの! あんたシスコンだから嬉しいでしょ?」 「桐乃・・・・・・」 そんなことを考えていてくれたのか。 俺が彼女を作れないのは、そもそも俺が桐乃にワガママを言ったからだって言うのに、こいつはそれを気にしてたのか。 そしてせめて、少しくらいは彼女の代わりに俺を楽しませてくれようと頑張ってるんだな。 その心遣いが、とても嬉しい。 「・・・・・・その、嬉しくない?」 桐乃が不安そうに尋ねてくる。 「そんなハズねえだろうが! これから毎年桐乃の個人ファッションショーが拝めるなら、一生彼女なんか要らないね!」 わりかし本気でそう言う。 「・・・・・・キモ」 桐乃がさらに顔を赤くし、そっぽを向いた。 むっ。さすがに引いちまったか? 「一生彼女が要らないなんて、こいつどれだけあたしのこと好きなのよ・・・・・・」 桐乃がポツリと何事か呟いたが、俺にはよく聞き取れなかった。 「なんか言ったか?」 「なんでもない! 今度せなちーのお兄さんに挑まれても勝てるように、あたしの可愛い姿、ちゃんといっぱい撮りなさいよね!」 こうして俺の夢のような時間が始まった。 浴衣。制服(夏)。制服(冬)。白いワンピース。 カジュアルな服から、パティードレスのようなきらびやかな服まで。 そして、ゴシックドレス、メイドさん、チャイナ服といったメジャーなコスプレ衣装。 極めつけはスクール水着。白のワンピース水着。赤いビキニ。競泳水着。そしてビキニエプロン。 その他もろもろ。 686 名前:【SS】プライベート・ファッションショー 2/4[sage] 投稿日:2011/09/21(水) 15 39 41.25 ID X+PQqFWx0 [11/19] 「ふぅ」 さすがに疲れてきたので一息つく。 8時くらいに始まったファッションショーだったが、気がつけば2時を超えていた。 撮影枚数は数えるのが馬鹿らしくなるほど。 もしかして赤城の瀬菜コレよりも多いんじゃねえか?と思うほどに撮りまくった。 「これから毎年桐乃の個人ファッションショーが拝めるなら、マジで一生彼女なんか必要ないな」 今までの写真を確認しながら、ポツリと呟く。 くそっ!何で去年の俺たちは仲が悪かったんだ? おかげでコレクションが一年分減っちまったじゃねえか。 桐乃と仲が悪くなる前から人生やり直したくなるが・・・・・・いや、今のこの状況はあの冷戦があったからこそ築けたんだよな。 「・・・・・・キモ」 桐乃が俺のほうを見ながらポツリと呟いた。 これで今日何度目の『キモ』だ? まあ、そこまで俺を気持ち悪がってるわけじゃないみたいだから気にしないでおくか。 「・・・・・・ねえ、今言ったのって本心?」 桐乃がエプロンの裾をいじりながら聞いてくる。 ちなみに今の衣装はビキニエプロンだ。 マジ最高。このまま時が止まればいいのに。 「今言ったのって・・・・・・一生彼女なんかいらないって事か?」 「うん」 「そうだな・・・・・・ もし俺が彼女を作らないで、おまえも彼氏を作らないで、年に一度でいいからこうやって一緒に楽しめたら・・・・・・ それで十分かもしれないな」 桐乃に恋人ができて欲しくないから、俺も恋人は作らない。 だからこうやって、時々お互いに慰めあう。 今の俺にはこのままでいいんじゃないかと思えてしまう。 きっと、目先の答えでしかないんだろうけどな。 「ふ~ん。 ・・・・・・それじゃあ、次で最後だから」 「おう」 次で最後か・・・・・・少し寂しいが、もう晩いし仕方がないだろう。 これから桐乃が部屋で着替えるため、俺は部屋の外に出た。 別に、俺的には部屋の中にいても問題ないんだがな。 今までの倍くらいの時間を外で待つ。 最後は何の衣装だ? どんどん過激になっていってるから、最後はこの間俺がプレゼントしたアレでアレな下着かも知れん。 いや、そうに決まってる。だがそうなると、部屋に入ってから俺は何秒間意識を保てるだろうか。 せめて一枚写真を撮ってから気絶したいもんだぜ。 「・・・・・・いいよ」 部屋の中から桐乃の呼び声が聞こえた。 随分と慣れてきたと思ったが、今回の声は初めよりも緊張しているように感じる。 まさか、本当にあの下着姿なのかそうなのか!!!??? 俺は期待に眼を輝かせ、ドアノブに手をかけ、扉を開けた。 部屋の中心には、花嫁衣裳の桐乃が立っていた。 687 名前:【SS】プライベート・ファッションショー 3/4[sage] 投稿日:2011/09/21(水) 15 40 05.42 ID X+PQqFWx0 [12/19] 「・・・・・・」 思いがけない光景に、何の言葉も出ない。 本当に、たった一つの感想が頭に浮かぶだけだ。 「・・・・・・どう?」 桐乃の言葉に、浮かれた頭のまま答える。 「綺麗だ。 ・・・・・・今までに見た、何よりも」 「え?」 俺の言葉に、桐乃の顔が真っ赤に染まっていく。 あの時は忙しくてちゃんと見てやることはできなかったが、こうやって改めて見ると、 ウェディングドレスを着た桐乃は、今まで見た誰よりも綺麗だった。 「おまえ、どうしたんだ、この衣装」 「これね、美咲さんが撮影が遅れちゃったお詫びにってプレゼントしてくれたの。 汚れたり、解れちゃったりしたところも修理してあるよ」 「そのくせスカートは破れたままなんだな」 「なんか、美咲さんがこのデザイン気に入っちゃったんだって。 今度このドレスとあの時の事をモデルにした新しい衣装を発表するみたいよ」 「そうか」 上の空の返事をする。 顔を赤らめながら俺を見つめる桐乃を見て、俺は改めて一つ決心した。 「絶対に、おまえを嫁になんか行かせねえからな。 おまえを誰かにやるくらいなら、俺が代わりに結婚してやんよ」 無意識のうちにそんな言葉がこぼれた。 「・・・・・・このシスコン」 俺の言葉に桐乃は俯いてしまい、その表情は伺えない。 「でも、ちょっとだけ嬉しかったから」 「え?」 ポツリと呟いた桐乃の声が聞き取れず、俺は聞き返した。 「なんでもない! とにかく、あたしが彼氏を作れないのはあんたのせいなんだから― あたしが大人になった時に結婚してなかったら、ちゃんと責任とってよね!」 そう言って顔を上げた桐乃の顔は綺麗というよりも― いや、感想を言うのはそれこそ野暮ってもんだろう? 689 名前:【SS】プライベート・ファッションショー 4/4[sage] 投稿日:2011/09/21(水) 15 40 27.27 ID X+PQqFWx0 [13/19] この後のことはよく覚えていない。 残っているのは脳裏に刻まれた桐乃の眩い姿と、百枚以上の桐乃の魅力的な写真、 そして最後のこのイベントだけだ。 「ねえ、最後に一つだけ、絶対にせなちーに勝てる写真を撮らせてあげる」 「なに!? キ、キスしてくれるの?」 「し、しないから! そうじゃなくてね・・・・・・」 「おい赤城、やっぱり俺の妹の方が数兆倍可愛いわ」 昼休み、俺は赤城に声をかけた。 「ハッ!高坂、おまえまだそんな世迷言を言ってるのか? おまえだって見ただろ? 瀬菜ちゃんのほっぺにちゅー。 あれに勝とうと思ったら、おまえのラブラブツーショットプリクラの三倍は持って来い」 「ほっぺにちゅー、か。 それはこれだな?」 俺はあの時の写メを赤城に突きつける。 「そうだった、高坂! それを俺の携帯に送りやがれ!」 赤城が俺に詰め寄ってくる。 「いいぜ。ただし、俺との勝負が終わったらな」 「面白い。高坂、瀬菜ちゃんにあって、おまえの妹にはない決定的な差、ブラコン力を教えてやるぜ!」 「ブラコン力、か。 くくく・・・・・・」 俺はこれから赤城に見せる写真を思い浮かべ、不適な笑みを浮かべた。 「高坂、何が可笑しい!」 「いや、ひとつ間違いがあったな。 これは勝負ではなく、俺が徹底的におまえを蹂躙し尽くすだけだった」 「なん・・・・・・だと・・・・・・? 何を隠している、高坂!」 「ククク・・・・・・フフフ・・・・・・フハハハハハハハ! 俺の新デッキ『プライベート・ファッションショー』の魅力を思い知るがいい! 俺の先行!俺は手札からこのカードを使用するぜ!」 俺は携帯を操作すると、待ち受け画面を赤城に突きつけた。 「こ、これは―! ぐわぁぁぁぁぁ!!!」 赤城が断末魔の叫び声を上げ、後ろに倒れる。 うむ。相変わらずノリのいいヤツだ。 「そ、そんな馬鹿な・・・・・・」 赤城のうめき声が聞こえる。 「ククク・・・・・・さすが女神に祝福されし力・・・・・・ 赤城程度では一撃か・・・・・・」 俺が赤城を睥睨すると、赤城はスクリと立ち上がり、 「せ、瀬菜ちゃーん!!」 と叫ぶと走り去っていった。 まったく、妹に泣きつこうとは相変わらず重度のシスコンだな。 恐れ入るぜ。 「ね、ねぇきょうちゃん、今度はどんな写真を見せたの?」 近くで俺たちの決闘を見ていた麻奈実が、恐る恐るといった様子で尋ねてきた。 「あー、ちょっとした『兄妹写真』だ」 俺は先ほど赤城に突きつけた携帯のディスプレイを確認する。 そこには緊張した面持ちで硬くなっているスーツ姿の俺と、 俺の腕に自分の腕を絡めしなだれかかり、幸せそうに微笑む花嫁姿の桐乃が写っていた。 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1344.html
496 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/01/02(月) 23 07 28.86 ID XDrOkqBe0 [1/2] 神田明神で、拙いながら高坂兄妹の痛絵馬を奉納してきましたよ 今年も桐乃と京介でたくさん2828できますように・・・!
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/885.html
191 名前:【SS】二人の予定・side桐乃[sage] 投稿日:2011/07/01(金) 21 22 40.34 ID GbD2GJoC0 [3/3] あたしはお気に入りのシステム手帳を広げ、今後のスケジュールを確認していた。 陸上に勉強にモデルにアニメにエロゲに毎日大忙しだ。 ふと思い立ち引き出しから一昨年の手帳を取り出す。 手帳に書かれている予定は違えど、内容はほとんど同じだ。 陸上に勉強にモデルにアニメにエロゲ・・・・・・ ただ、少しだけ違っているところがある。 『KLT』はなし。 『KKP』は週に一度、一時間。 『APK』はほぼ毎日、30分ずつ。 次に去年の手帳を取り出す。 『KLT』は週に一度、一時間。ただし、時々実行できなかった事を示す赤線が引かれている。 『KKP』は週に3回、一時間。 『APK』は週に3,4回、30分ずつ。 「この頃は、京介とこんなに一緒にいられるようになるとは思ってなかったな・・・」 一昨年なんてKLT―『京介とのラブラブタイム』は略称しかなかった。 KKP―『京介攻略プラン』はどうやって話そうか、何を話そうかしか考えられなかったし、ほとんど実行に移せなかった。 そのくせAPK―兄パンくんかは寂しさを紛らわせるためにほぼ毎日やっていた。むしろ、上限を決めておかなくちゃヤバかった。 「えへへ」 二つの手帳を引き出しの戻し、代わりに真新しい手帳を取り出す。 「さぁて、予定を立てようかな♪」 真っ白いページに予定を書き込んでいく。 明日は、来週は、クリスマスは、あいつと何をして過ごそうか。 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/40.html
189 名前:156[sage] 投稿日:2010/11/22(月) 22 25 02 ID 937ly3Dx0 今日はあたしが起こした騒動のせいで食卓がすごく気まずかった。 お父さんはご機嫌だったけど、お母さんは不機嫌だし、アイツはあたしとは違う意味で気まずそうにしてた。 さすがのあたしもエロゲーをする気にもなれずにベッドでごろごろしている。 今ごろお父さんはお酒が回っていきて眠っているだろう。 お母さんはそろそろ夕食の片付けが終わる頃か。 アイツは今頃あの騒動のことを思い出して 「うわああああぁぁぁ(ry」ってなって悶えているのが壁越しでもわかる。 アイツのそんな姿を想像するとちょっとだけ気が楽になる。 『桐乃ー!ちょっと下まで来なさい!』 お母さんの声だ。内容は大体察しがつく。あたしが起こした騒動のお説教だろう。 お母さんにお説教されるなんて何年振りだろう。 渋々下のリビングへ行くとお母さんだけが居た。 「あれ?おとうさんは?」 あたしが聞くと、「飲み過ぎてもう寝ちゃった」と返ってきた。 続けてお母さんが切りだしてきた。 「呼ばれた理由はわかってるわね?」 やっぱりその件だ。あたしは素直に謝罪する。 「ごめんなさい・・・」 「桐乃が反省してるのはわかってる。私が聞きたいのはなんであんな事をしたのかをきいてるの。」 お母さんは相当怒っているようだ。ここは洗いざらい話すしかない。 「アイツが悪いんだもん・・・」 「やっぱり京介が悪いのね。」 『きょうs・・・・』 「ちょっ・・・ちょっと待って!言い方が悪かった!」 お母さんは怪訝な顔をしてあたしの方を見る。 それにしても、アイツはホントに信用ないな。あたしが知らないところで何かしたのかな? お母さんももう少し自分の息子を信用するべきだと思う。アイツはアイツでそれなりに・・・ 「ちゃんと説明するね。悪いのはあたし。でも、原因はアイツ。そういう意味なの」 「どういう事なの?ちゃんと順を追って話しなさい」 こうなったお母さんは誰に似たのか言っても聞かない。あたしは素直に事の顛末を離した。 「はぁ・・・・・」 怒られると思ったら呆れられた。これは普通に傷つくものだ。 「全く・・・『あの時』以来兄離れが出来たと思ったんだけどな・・・またお兄ちゃん子に戻っちゃったか・・・」 「うん・・・」 お母さんに嘘を言っても通用しない。 それにしても顔が熱い。多分化粧越しでも顔が真っ赤なのがわかるだろう。 「まあでも、どこの誰だかもわからない彼氏に入れ込んでるよりはいいのかもね」 やっとお母さんの機嫌が普段どおりになってきた。 「ちっちゃい時みたいに『あたしおにいちゃんのおよめさんになるー!』とか言い出しちゃ駄目よ。」 「い、言えないよ!そんな事!」 っ・・・!今の失言は聞かれなかったことを祈ろう。 「わかったわかった。京介も男の子なんだから気を付けなさいよ。それと、もう二度とあんな事しちゃ駄目よ。」 まったくお母さんの前なら素直になれるんだけどな。あたしのこの性格は誰に似たんだろうな。 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/491.html
588 名前:【SS】土手を歩く[sage] 投稿日:2011/03/29(火) 20 48 05.97 ID JZcyli1r0 [2/2] あの日、俺は学校のあと、お袋が封書を書留で出しておけって言うもんだから郵便局に行った。 その帰りに、土手を見上げた。 特に理由はないが、なんとなく土手を歩いて帰ろうと考えた。 ――なんか、こう、大きい川をたまに見るのもいいもんだな。 そんなことを考えながら、歩いていたところ、 ……タッタッタッ。 後ろから駆け足する音が聞こえた。 土手でジョギングか。 最近、世間で流行ってるっぽいからな。 そして、そのまま俺の横を駆け抜ける……と思ったらそいつは歩き出した。 疲れたのか? ……横を向いたら 桐乃だった。 「……なによ? ふん」 じろっと一度睨み付けて、すぐにそっぽを向きやがった。 ――しばらく、そのまま俺たちは歩きつづけた。 ……ふと、小さな疑問が浮かんだ。 そのまま、前を向きながら俺は聞いた。 「……おい、桐乃」 「……なに? 外なんだから慣れなれしくしないんでくれない?」 「おまえ、俺を探してたの?」 「はあっ!? なんでそうなるわけ?」 「だって、お前、俺のところに来たら走るのやめたじゃねえか? なんか用事なんじゃねえの?」 「ふ、ふん、土手で走りたくなって、そしたらたまたまあんたのところで疲れて歩きなくなっただけだっつーの! 何、勘違いしてんの? キモいんですけど」 なんかいつにもまして攻撃的だな。 ってか、もし疲れてたら、ゼーゼー息がもっと切れてるだろ。 ぜんぜん切れてねーじゃん、お前。 ……なんてことを言ったら、またギャーギャーうるせえから言わないがな。 「……そうかよ」 こいつの行動は良く分からないが、それはいつものことだ。 俺は適当に返した。 ――俺たちは歩く。 どちらかが遅くも速くもなく、そのまま並んで歩いた。 俺は何気なく呟いた。 「……綺麗だな」 「え!?」 「……いや、川が」 「あ、あ、あ、そう、かもね。」 よく分からない反応をしやがる。 何か別のことでも考えたのか? その別のことだか分からないが、桐乃が視線だけを俺に向けながら何かを話しかけた。 「あのさ……」 「ん?」 「い、いや、なんでもない」 気になるが、言えよ!っていうとまたうるせえだろう。 その替わりにこう返事した。 「変なやつ」 「いま、なんて言った、あんた!?」 「なんでもありません! すいませんでした!」 「……ったく」 ――いつものようなやりとりのあとは、俺たちは特になにもしゃべることもなく、しかしやはりそのまま並んで家に帰った。 ――誰が見ても、仲の良い兄妹とは絶対に見えないだろう。 しかし、以前の俺たちだったら、一緒に帰るということすらもなかったはずだ。 桐乃だったら、そのまま俺を無視して走りすぎたか、あるいは俺を見かけただけで土手を走ることもなかったたかもしれない。それに比べたら、ずいぶんとよくなったのかもしれないな。だからと言って、妹が大嫌いであることは変わらないけどな。あいつだって俺のことが嫌いだろうしな。 「「ただいま」」 別にあわせるつもりもなかったが、俺たちは同時に帰宅したことを告げるあいさつをした。 ――そして、今日も俺は土手を歩く。 なんてことない。 また土手を歩きたくなった気分になったからだ。 ……横を向く。 もちろん、誰もいない。桐乃もいない。 ――そういや、あいつ、あの日何を言おうとしてたんだろうな。 留学のことだったのか……。 それとも別のことだったのか……。 ふと俺は思った。 まあな、俺はぜんぜんっ、あいつのことなんて気にしてもいないがな。 何も言わないで行っちまった妹のことなんて知ったことか。 せいぜい向こうでがんばりやがれ、ばかやろう。 ――また、あいつとここを歩くことはあるのかな。 歩きながら、ふと俺は思った。 おわり。 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1831.html
SS『ある朝の日常(桐乃Ver.)』 ん、、、? 「zzzzzzzzzzz。」 ん、、、ん!? へっ!? 説明しよう。朝起きたら、兄貴の胸に埋もれてた。 いやいや、マジでマジで。エロゲーの話じゃなくてさ。 朝起きたら、京介があたしを抱きしめるように、ぎゅっとして寝ていた、っつー状況なワケ。 どうやら寝ぼけてやってるみたいだケド、、、。 ゆ、夢じゃないよね、コレって。 頬をつねってみる。痛っ!やっぱり夢じゃない!うれ、、、じゃなかった、やばいっしょ! いくら無意識っつっても、妹を抱きしめて眠ってるとか、どんだけシスコンなんだってーの!抱き枕か!あたしは! ど、どうすりゃいいのよ、コレ、、、? お、落ち着け、あたし。落ち着いて、深呼吸、深呼吸。 すーはー、すーはー、す、、、すんすんすん、、、じゃなくて! ダメだ、どんだけテンパってんだか、あたしってば。 どうしよう。 どうしよう。 いつもみたいにひっぱたいて起こすか、、、? う~~~~~~~~ん。 で、でも。でも、でも。 ぐっすり寝てるのに、起こしたりしちゃ可哀想だよね、、、。 うん、、、しょーがないよね。 うん、しょーがない、しょーがない。 、、、それに、、、。 これは夢じゃなくって、、、でも"夢"だったんだしね、、、。 うん、、、。 だよね。そうだよね。ちょっとくらい、いーよね。 もうちょっとだけ。 もうちょっとだけ、"夢"の続きを見ていようっと♪ Fin ----
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/354.html
338 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/02/24(木) 15 49 21.11 ID WAxX6Bgd0 [2/2] SS『赤城兄妹の会話―ある兄妹について』 俺の名前は、赤城浩平。近所の高校に通う18歳。 自分で言うのもなんだが、ごく平凡な男子高校生である。 サッカー部に所属していて、趣味はエロサイト巡回。 流行の音楽も聴くし、漫画、小説も見る。 放課後は部活をしたり、友達とだべりながら町をぶらついたりする。 勉強することは………あまりないが………。 だいたい普通の高校生ってのはそんなもんだろう? それなりに楽しく、それなりに苦しい毎日だが、まあ、俺なりに満足している。 平凡とか普通ってのは、まあ、そんな程度のもんだろ? 勿論俺にだって、口には出せない秘密の1つや2つくらいは有る。 でもまあ、そんなものがあることもまた『普通』ってもんだよな? 実は、そんな事を考えていたのには、理由がある。 俺の高校での親友―――高坂京介。こいつが原因だ。 高坂は、趣味から何から俺とは違うところが多いヤツだ。 だけどまあ、ウマが合うっていうのかな?いつの間にやら、親友になってたのさ。 だが………俺が、ヤツについて、決して理解できない事が一つだけある。 高坂は―――自分が『普通』であると思っているという、その一点だっ! そもそもな?お前、可愛い幼馴染がいるとか、ど・こ・が、『普通』なんだよっ!? で、さらにだ。勉強ができて、我らが地方大学に楽々入れるレベルだとっ!? まだまだある。深夜のエロゲ販売に並ぶだとっ!?『普通』じゃねーよっ!? そのうえ、これは俺の天使から聞いた話なんだが……… 何人か後輩から、愛の眼差しを受けているっだとっ!?しかもJCからもだとっ!? ど・の・あ・た・り・が、『普通』なんだよっ!? あ、挙句の果てにっ!俺の妹がモデルで?成績優秀で?スポーツ万能だぁ? そんな風に、妹を自分の彼女みてーに誇らしげに語ってんじゃねーよ!? ………………………ちょっと興奮しすぎたようだ。 「お兄ちゃん?どうしたの?机を叩くような音がしたよ?」 部屋の外から、心配そうな声をかけてくれたのは、この俺の天使、瀬菜ちゃんだ。 「すまん。おどろかせちまったな。まあ、入れよ。」 「うん。それじゃ、失礼します。」 瀬菜ちゃん。 俺と同じく赤みがかったショートヘア、すらりと背が高く、 それなのに、胸は人一倍大きく、大人っぽい色気をかもし出している、俺の天使。 本当に、本当に、可愛らしい、俺の妹だ。 「それで、どうしたの?お兄ちゃん。」 「実は、高坂のこと考えてたんだ。お前も知っているだろ?」 瀬菜ちゃんは、急に頬を赤らめ、俯いてしまう。 な、何!?お、お前、高坂の事気になってんのか!? 「お、お兄ちゃん………」 「ゆ、許さんぞ?大事なお前を高坂のヤツなんぞに渡せるかっ!」 「ええっ!?何それ!?」 「お、お前、こ、高坂の事好きで、顔、赤くしたんじゃ………?」 「ご、ごめんね。お兄ちゃん。私、お兄ちゃんが高坂先輩の事気にしてるって言うから………」 あー………そうだった。瀬菜ちゃんは、天使だけど腐女子だったな。 ってことは、今、瀬菜ちゃんの頭の中では、俺と高坂が裸になってくんずほぐr おぇぇぇえぇぇぇぇっ! そ、想像しちまったじゃねーかっ! 「そ、そういう意味じゃなくってな?」 「ご、ごめんね。」 「いや、瀬菜ちゃんは悪くないからね。」 「うん。ありがと。お兄ちゃん。」 ほら見ろよ? これが俺の天使だ。 「俺が気にしてるのは………高坂のヤツが、妹の事、どう思ってるのかなって事だ。」 「桐乃ちゃんの事?」 「おっ?瀬菜ちゃん、あいつの妹知ってんの?」 「うん。この前の夏コミで会ったの。」 そうなのか。 意外と世間。せめーもんだなー 「それでね、お兄ちゃん。桐乃ちゃんすごいんだよ〜」 「ああ、高坂のヤツから、何度も何度もきかされて、耳にタコが出来そうだ。」 「えっ!?お兄ちゃんも聞いてたの? 桐乃ちゃんが、お兄ちゃんのコト大好き、愛してるって!」 ぶーーーーーーっ!? あ、愛ぃ!? 「お兄ちゃん。汚いよ?」 「お、俺の聞いたのはだな? 高坂のヤツが、お前の妹なんざ比べ物にならんくらい可愛いとかな、 その他色々と自慢し続けている事くらいだ。 いや、もちろん、瀬菜ちゃんの方が可愛いからな。」 「うん。ありがとう、お兄ちゃん。 でも、高坂先輩は、具体的にどんなことを話してるの?」 「具体的に?そうだな………」 あまり思い出したくも無いが、瀬菜ちゃんの頼みなら仕方ない。 この一年間、高坂に聞かされ続けたからなっ! 思い出したくなくても思い出しちまうぜ! 「まず、妹は読者モデルだの勉強も優秀だの、スポーツ万能だの、自信満々に喋ってくるんだよなー。 別にあいつ自身がスゲェわけじゃねーだろ?」 「う、うん。」 「ああ、そうだ。でも、それだけじゃ、俺の妹の凄さわかんねーよな?とか言い出してな。 『まず、目が綺麗だ。お前の妹みたいに腐ったりしてねー』とか 『あの柔らかほっぺ。男なら誰だってキスしてーくらい柔らかいんだぜ?』 『丸顔?女はちょっとくらいふくよかな方が魅力あるってんだよ!』 『おめーの妹、ただの牛じゃねーか、俺の妹のおっぱいがベスト!』だとかな? なんかムカついてきたな。それに、 『化粧のセンスがちげーよ?モデルだぜ?』 『染め毛?だったら、黒に戻したら、今の差が10倍に広がるっての!』 『ただの天才じゃねー、努力でここまできたっての!』 『足や尻も程よく引き締まって、脂肪の塊とはちげーよ?』だとぉ? 高坂のヤツ、後で、ぜってー殺す。他にも、 『あのさらさらの髪から、ほのかに漂うシャンプーの香りとか、他の女じゃありえねー』 『下着だって、マジ可愛い。清楚な色ばっかだぜ?ビッチとはちげーよ?』だの 『普乳?ちげーよ、十分に大きいし、弾力も十分。まじやわらけー』 『お前の妹のように腐っちゃいねー、俺の妹はそばに居るだけでいい香りがしてくる』 だとか、まだいくらでも挙げられるが、怒りがおさまらねえ。」 「うわあ………………」 さすがに、俺の瀬菜ちゃんも引きまくってる。 つーかよ?いちいち俺の妹に対抗してんじゃねーよ!? いや、俺も『たまに』瀬菜ちゃんのことを話題に挙げちまうんだけどさ? 「お兄ちゃん。それ、やばいね。」 「瀬菜ちゃんもそう思うだろ?シスコンもここまでくれば―――」 「それ、シスコン超えてるよ。お兄ちゃん。」 「えっ?」 「例えば、下着とか、おっぱいのやわらかさとか………」 ………そうだ。たしかにそのときはあまり気にしてなかったが、 妹の胸の弾力を知ってるとか、下着の種類わかってるとか……… 「完璧に変態じゃねーか」 「う、うん。」 「警察に通報すべきか!?」 「そ、そうじゃなくってね。 ちょっと、私の話を聞いてから、考えてみて。」 「お、おう?」 なんか、瀬菜ちゃんらしくもなく、すこし恥ずかしがってるようだが……… 「私のほうは、桐乃ちゃんから聴いた話なんだけどね。」 「なるほど。妹との話と照らし合わせるんだな?」 「うん。それでね。桐乃ちゃん。いつもこんなこと言ってるの。 『あいつほんっとシスコンっ』 『あいつ、あたしの胸とかガン見してるしー、あーマジきもい』 『あいつ、あたしの下着みて興奮してんの最っ低じゃない』 『あいつってさー?あたしに会えないだけで泣きそうになってんの、ちょうキモいじゃん』 こんな感じ………」 「あー………とんでもねー………妹だな? なんか、さっきの大好きだとか愛だとか、全然ちげーよな?」 こんなこと、瀬菜ちゃんが言い出したら、さすがに俺も泣くぜ? 「うん。でもね、喋ってるときの口調は全然違って楽しそうなの。」 「この内容でかっ!?」 「そう。本心と全く違う言葉だから、言葉と表情や口調が合ってないの。 某掲示板なんかだと、桐乃語って呼ばれてて、これを読み解く能力をきりりんがる って言ってるんだけど。実際に解読すると、こうなるみたい。 『お兄ちゃん!もっとあたしを愛してっ!』 『お兄ちゃん………あたしの胸、そんなに見たいの?もっと見て♪』 『お兄ちゃん………あたしの下着によくじょーしてるの?うん、いいよ♪』 『お兄ちゃん、あたしと会えないと泣くぐらい寂しいんだね。一生一緒にいてあげるね♪』」 「できれば、解読前の状態でとどめてほしかったな!?」 「他にもね、例えばこんな事を言ってるの。 『地味子や黒猫や沙織とさあ?ベタベタしちゃってさあ?死んだ方がいいよね?』 『妹の言うことが聞けないってわけ?マジ最低ー』 『デレデレすんなってのっ!キモっ、キモキモキモっ!』 『………バカ兄貴………』 解読………できるよね?」 「ああ、さっきの話を前提にすると、あまりにも分かりやすすぎるな。 『他の女の子とお話しないでっ!あたしとお話してよっ!』 『あたしの事が一番でしょ?ねえ、ちゃんと聞いてってば!』 『あたしの方が可愛いでしょ!?もっと、あたしだけを見てよっ!』 『お兄ちゃん………大好き………(はぁと』 というわけだな?」 なんつーこっぱずかしいことを人前で喋ってる妹だよっ!? つーか、兄妹共にこれって……… 「お兄ちゃんも、分かるよね?」 「ああ、これは、ただのブラコンシスコンじゃねーな? 完璧に、『た・だ・のバカップル』だな。」 「どうしよう………もう、胸とかパンツとか、AtoZな感じで突き抜けてるのかな? 目を見て話せるか心配になっちゃうよ。」 「ああ、俺も、心配になってきたほどだ。………パンツ?」 「あっ………」 「他にも何かあるのか………」 「こ、これは、絶対他の人に言っちゃダメだよ?お兄ちゃん。」 「お、おう」 「実は、この前チャットで会話中に、 『せなちー、兄貴のぱんつってどう思う』って聞かれたの………」 「………もう、だめだわこの兄妹。」 結局、さらにまだまだ、沢山のダメなエピソードが確認できたんだが……… ここで、みんなに確認したいことがある。(みんなって誰だ? なあ? 高坂にとっての『普通』ってなんだ? 高坂のヤツが『普通』なわけねーよな!? -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/392.html
790 名前:妹の授業参観に兄が出るわけがない(とある初夏の金曜日)【全編】[sage] 投稿日:2011/03/05(土) 15 57 28.08 ID hVI6kwFL0 [2/2] 妹の授業参観に兄が出るわけがない(とある初夏の金曜日) ※オリキャラ有り ――――前編―――― ・・・パァーン! とある初夏の金曜日、俺は微睡からビンタで覚醒させられた。これは間違いなく桐乃、あの野郎…、今回はガツンといてやる!! 「おい、桐乃。何度寝ている兄を深夜に叩き起こせば気が…、え、お…や…じ?」 「桐乃?深夜に?何度も?一体、何の事だ京介」 えっと、何で親父と…、お袋もいるし。どうして両親が俺の部屋に居んの? 「えーと、何度も夢の中で桐乃に起こされる夢をみて…さ、その」 「ふん、まあいい。今回はそういう事にしておいてやる」 あれ、何でこんなにあっさり引いてくれるの、実はまだ夢の中なのか? 「それよりだ、京介、頼みがある。今日はお前も知ってのとおり、桐乃の授業参観だ。だが、俺は出れん…!牡蠣に当たったようで家から出れそうにない」 どうやら、親父は不運にも昨日、家に届いた頂きものの牡蠣を生で食べて食中毒になってしまったようだ。 桐乃とお袋は当たると怖いからという理由で、かくいう俺も明日は学校の創立記念日で休みだから真奈美と1日みっちり勉強する予定があるわけで、金曜の夜にでも食べようという話になり無事だった。 「母さんに代わって出てほしいところだが、俺がこの様だ」 全身に悪寒が走る、この流れはヤバい、絶対にまずい!! でも、常識的に考えてありえないだろうと思って親父に聞いてみた。 「親父、まさか、俺に出ろと…?」 「無論だ、お前に拒否権はない」 マジかよ、ありえねー、俺が桐乃に超嫌われてるの知ってるだろーが! 「えぇー、妹の授業参観に兄が出るなんで聞いたことねーよ!」 「馬鹿者め、何を言うか。桐乃が学業に勤しむ姿を見守れる残り少ない機会なんだぞ…!ぐっ、すまん、不浄へ行ってくる…!」 腹を押さえつつ、とても情けない恰好で親父が俺の部屋を飛び出しトイレに向かっていった。 「ねぇ、京介。お父さんの願いを聞いてあげてくれない?あの人、そうでないと這ってでも行くよ、学校に」 「だがな、お袋、いくら何でもさ…」 「へぇ、京介。そういう態度を取るのね。なら、さっきお父さんが聞けなかったことを代わりに尋問しましょうか?」 「へっ!?」 「桐乃?深夜に?何度も?このキーワードから推理すると、アンタたちは深夜にア・イ・ビ…」 「んがー!!わーったよ、俺が行く。っていうか桐乃の授業参観に行かせてください、お願いします!!」 「分ればよろしい、なら、このカメラを貸すわね。でも授業中に撮ったら締め出されるから、ちゃんと授業が終わって先生の許可をもらってからにしてね!」 「えーっ、写真も撮るのかよ」 まぁ、あの親馬鹿共(桐乃限定)なら仕方ない。それに、デュフフ、ラブリーマイエンジェルも盗撮、いやいや撮影出来るじゃないか!! ほら、きっと俺が桐乃を撮影しようとしたら、あの豚を見るような目で『お兄さんのような変態に桐乃だけの写真は撮らせません』とか言って、フレーム内に割り込んでくるよね…。 なんだ、そうだよ俺、桐乃のクラスにはエンジェルがいるんだよ。 エンジェルのうなじを1時限中、見つめ続けても問題無いんだよ。グ、沈まれ、俺のリヴァイアサン!! 両親の仕掛けた超ブービートラップにより、麻奈美と朝から図書館で勉強と思っていたが予定を強制的に変更させられた。 とりあえず、牡蠣に当たって死にそうだから今日の予定はキャンセルさせてくれ、という感じのメールを送った。すぐ返事が来て、看病しようかといってくる幼馴染の優しさに罪悪感を覚えつつも、牡蠣の食中毒は感染しやすいノロウイルスの可能性があるから遠慮しておく、と返信しておいた。 本当にごめんな、麻奈美。ってか、これで桐乃の学校に行く前にあいつにばれたらどうしよう!? ふふふ、嘘の皮が剥がされるのも時間の問題だな…。 現在、イチイチゼロゴー、こちら高坂京介、妹の学校に侵入した。現在、教員用男子トイレの鏡前で最終チェック中だ。 鏡に写る超イケメンに対して、これで俺を高坂京介だと直ぐに判る人間は余程俺を見ている奴だけだ、と自画自賛している。 フフフ、やはり俺はコスプレなどしなくてもイケメンではないか! 詳細は割愛するが、親父からヘソクリ10万円を頂戴して、某所で店員にすべてを任せつつスーツ他一式&伊達メガネを購入し、グーグル先生でも評価の高い人生初体験となる美容院(極力カットしない様お願いした)を経て今に至っている。 丁度、今は昼休みが終わる直前、生徒たちが急いで教室に向かっている廊下を急く音が聞こえる。 さて、俺もそろそろ行くか、わがエンジェルの待つ部屋へ!! 教室に入り桐乃と目が合うと、こちらに向かって地響きのする位の強い歩みで近づいてきた。 「よぉ、桐乃。親父とお袋がどうしても出れなくて仕方なく…」 「ねぇ、オニイチャン。ちょっと、廊下でお話ししようか?」 今、お兄ちゃんって言ったなこいつ、豪く棒読みだったおかげで死ななかったが。なるほど、あれですか、学校だと『品行方正』でも通っていらっしゃるわけですね?ふむ、兄に残存な対応はできないと。 「ねぇ、なんでここにいるワケ…!?それに、なにその恰好…ッ!!」 小声で威圧しつつ、顔を真っ赤にして怒る桐乃。 似合わないとでも言いたいようだな!!だがな、仕方がなかった、どうしようもなかった、俺にはどうすることもできなかった…、と必死に目で訴えるが、首まで真っ赤にして全身を震わせて視線を外されてしまった。 こりゃ、絶対、後で説教だな…。 「もういい、来ちゃったものは仕方ない。あんた、絶対にジッとしてて。そんで、授業が終わったら、さっさと帰って…!!」 「へいへい、言われんでもそうするつもりですよ」 「ふん、どうだか。言っとくけど、無防備だからって、あたしを後ろから視姦したら殺す」 「…ッ、気を付けます、桐乃さん」 言いたいことを言って満足したのか桐乃は教室へ戻っていった。 さっきは場所が場所だけに声に出して言えなかったが、心の中で叫ばせてもらおう。んなこと、しねーよ馬鹿!!! 第一、視姦するなら…。ゾク…、この全身を走る悪寒は、エンジェルアイ!! 何ですかその恰好は、まるで某掲示板のキジョのAAみたいじゃないですか!! いいね、その目、グッドだよ。隠し持った彫刻刀で今にも切り刻みそうなその目…。 うん、わかるよ言いたいことは『お兄さん、とうとう桐乃の学校にまで来たんですね。そんなに学校でも桐乃といかがわしいことがしたんですか。そうですか、なら、少し頭冷やしましょうか?』だよね。 俺が本気で身構えていることを悟ったのか、あやせは恐ろしいまでの冷笑を見せつけつつ桐乃の元へ向かっていった。 ―――中編――― いきなり気の滅入る事が起きたせいで、すっかり高まっていたテンションが下がっちまったよ、クソが! 仕方ない、おとなしく見学して帰るか…。さて、教室の隅にでも居ますかね、目立たないように。 一応、桐乃の座席を確認するため、教室を見渡すと一瞬で発見した。 俺でなくてもライトブラウンの長髪だから直ぐわかるぜ。それにオーラが違うね、輝いている気がするしよ。 んっ、あいつ、何やってんだ? 桐乃は髪留めをカバンから出して手慣れた手つきでロングヘアをきれいに纏め始め、あっという間にロングヘアを束ねてアップにしやがった。 学校だと、そうしているってわけじゃなそうだ…。さっきまでは、いつもと同じく髪おろしていたし。 なるほど、あれですか、気合を入れているワケですか。 大嫌いな俺の前で無様な姿を見せないようにってか。 俺は得心し、教室の時計を確認すると、あと授業開始まで3分位だった。 …そうそう、実はさっきから気になって仕方がない事がある。言わなくても分るだろうが、桐乃の事ではない。 奥様旦那様からの視線を感じるのは仕方ないとして、どうも入室してからチラチラとこっちをのぞき見るような視線を前方から感じるわけで…。 ―ねぇ、あの隅っこの、廊下側にいる人― ―だよね、私も― ―うそー、あっ、ホントだ。結構― ―あの人、お父さんじゃ― ―でも、兄はふつう授業参観にはで― ―だれのお兄さんだろ― ―もし、そうなら私、絶対に自― うーん、何か囁いているのが聞こえる。違和感があるのは理解している。明らかに俺は浮いている。 でも、よってたかって酷いぜ、ミンナ。 両親に脅迫され、イケメン化して桐乃に見せつけてやろうと思ったら罵られ、妹の友人には殺意を向けられ、女子中学生の笑いのタネにされて…。いかん、すこし眩暈が…。あぶねぇ、後ろに壁がなかったら倒れてたぜ、マジで。 もう、良いよ。こういう目に遭っているのも、らしいことはするなっていう神からの啓示だったんだ。 俺らしく、イケメン高坂京介ではなくピエロ高坂京介として今日は立ち合おう。 心の中で葛藤していたらいつの間にか女教師@おばさまが入ってきて授業を始めていた。 授業内容は数学だった。桐乃の学校はすげぇな、これ高校一年でやる内容だぜ。あいつの学力は、日頃の授業によるところもあるんだな。俺、この学校でやっていける自信ないわ。 本当にすげぇな、あいつ。 …、と感心しきりの中、回答者に指名され、黒板にすらすらと算式記入。ふむふむ、なるほど、俺の中で出した答えと一緒だ。きっと、合っている。 「うん、正解だ、高坂。途中経過も完璧。それでは席に戻ってください」 「ありがとうございます」 沸き起こる拍手。当然、俺も拍手をした。そういえば、桐乃に向かって拍手したことなんて初めてのような…。 自席に戻る桐乃と目が合ったが、一瞬で顔が真っ赤になり、視線を外されてしまった。 『妹に向かって拍手とか超キモいっての!!もう、恥ずかしいことすんな、このシスコン!!』とでも言いたいわけね。へへん、わかってるって。 でも、そんなに怒るなよ、うなじまで真っ赤だぜ…。 ゴクリ…、ずっと黙っていたんだが、あの綺麗なうなじは反則だと思う。どうしても視線が向いてしまう。 ってか、綺麗なとか馬鹿か、俺は!! いかん、いかん、だめだ京介。あれは妹のうなじだ、ノーカンだ!! ―キンコンカンコーン。授業が終了するチャイムが鳴り響いた。 「これで本日の授業参観は終了です。生徒の親御様、お忙しい中、ご参加いただき誠にありがとうございました。」 はぁ、やっと終わった。結局、両親がきているであろう、あやせを後ろから見守ることなど出来るはずもはなく、本当に仕方なく桐乃ばかり見ていた…。 さぁて、帰るか。そういえばお袋に写真を撮ってこいなって言われてたっけ…。 常識的に考えて無理な話だし、どうやって写真撮るんだよ。そもそも、被写体に断固拒否されんぞ。 もういい、授業風景を詳細に報告すりゃ満足すんだろ、親馬鹿共は。 「桐乃のお兄さんなんですか?」 「ふヘっ!!」 唐突に女子中学生から声を掛けられた俺は変な声をあげてしまった。 「先生に聞いたんです。あの廊下側の隅にいた若い人はだれですかって。そしたら、桐乃の兄さんだって。両親が急に出れなくなったから出席したんだよって教えてくれたんです!」 ああ、成る程ね。先生に聞いたわけですかい。 「でも、今日は平日なのに大丈夫なんですか?」 「俺の高校は偶然にも今日が休みでね」 「わざわざ桐乃の為に休日を潰したんですか?」 「えーと、妹のため、だからね」 どこかで見たような記憶がある女子中学生に捲し立てる様に俺に質問をされ、回答をしていると。 何故か俺は壁を背に女子中学生に三方を囲まれてしまっていた!! 某RPG風に例えるならば、京介は逃げ出した、しかし女子中学生の群れに囲まれていて逃げられない!!ハッハッハ、訳が分からない状況だぜ!! 「こんなにカッコ良くって優しそうなお兄さんがいるなんて知らなかった私」 「それに落ち着いてて、大人って感じがするし」 「うらやましいよね、桐乃が」 「うんうん、私なら超自慢する!!」 今、『カッコ良い』って言った!?マジで!?って、いかん、いかん、舞い上がるな!! 焦るな、落ち着け、これは俺を陥れるための罠なのだ。 「君たち、勘違いしているようだがね。俺は全然カッコ良くないし、まだまだ子供だよ。君たちだって、授業参観が始まる前、俺を見てニヤニヤしていたじゃないか」 「あれは、みんなでカッコ良くてイイ感じの人がいるけど誰だろうって噂してたんです。」 「ねーっ!」 「うんうん!!」 夢であってもいい、暫く覚めないでくれ!!女子中学生に囲まれて褒めちぎられるシチュエーション。エロゲでも中々お目にかかれないだろう。デュフフフ、いかん、顔面が崩壊してしまう。 「もう、お兄ちゃん、すぐに帰ってって言ったでしょ!!」 猫かぶり声で桐乃が急に女子中学生の輪の中に入ってきた。うぅ、気持ち悪い。でも、お蔭で顔面崩壊が防げたぜ。 「桐乃のお兄様ぁ!あの時は失礼な態度を取ってしまってごめんなさぁい。」 桐乃に続いて来た子は俺にペコリと頭を下げた。見ると、あのチンチクリン加奈子じゃねーか! 「ちょっと、加奈子。なにらしくないことやってんの!?」 「ほら、あの時は超恥ずかしくてキチンと挨拶もできなかったからだよぉ。ねぇ、お兄様、彼女っているですかぁー?」 「いや、いないけど…」 「なら、加奈子なんてどうですかぁー?」 といって、腕を絡めてきやがった。でもな、相手がチンチクリンじゃ全然嬉しくねーよ!! 「加奈子!!」 桐乃が加奈子の名を叫んだ直後、急に腕に当たる温もりが消えた。 加奈子を俺の腕から無理やり引っぺがした桐乃が俺の正面に立ち、両手を精一杯広げ、背を向けた姿勢をとっていた。 「みんなで寄って集って…。こいつはあたしの兄貴なのっ!!だからあたし以外、近づくのも触るのも絶対禁止!!!」 「おまっ、今なんて…」 「うっさい、バカ!!」 ゆでダコ桐乃は自分が発言してしまった内容に気づいたのか、逃走してしまった。 「お兄さん、桐乃を追いかけて!!」 放心状態になってしまった俺に突如現れたあやせが俺にハッパをかけてきた。 「おう、じゃ悪い、これ持っててくれないか。落とすとヤバいし!!」 「えぇー!!何でカメラを持ち込んでいるんですか!?お兄さん、まさか桐乃を…!?」 一瞬で目から光彩が消えたよ!!この女、やっぱりエンジェルだけど超こえー!! 「事情は後で説明すっから!!」 そう言って俺は教室を飛び出したわけだ。 ―――後編――― 桐乃のやつ、自分以外兄にだれも近づくな、触るな…か。 ふぅ、一瞬、あいつが本当にブラコンなんじゃないかと思って焦ったぜ。 安心しろ桐乃、分っているよ。ここは学校だ、家族思いの優等生という設定なんだろ? だから俺がお前との約束を守れずにいて激怒してでもそれは守ったんだな。 ふふふ、だが、甘い。俺の呼び方が『お兄ちゃん』から『兄貴』になってしまったことと、その後の罵声は減点もんだぞ。 闇雲に探しても埒があかないので、廊下にいる中学生諸君に桐乃の行方を聞いてみたら屋上に向かった事がすぐに分り、俺は急いで向かった。 学校の屋上といえばエロゲでは告白の王道シチュエーション。だが現実は非情である。探し人は妹であり愛しい人じゃない。 おお、いたいた。しょんぼりと柵に手をかけ景色を見てやがる。 本当に見た目だけは俺の知る中では一番の美人だからな、その姿は良く映えやがる。エロゲならこの光景は間違いなくイベントCGが用意されているね。 「おーい、桐乃ー!」 「ふん…」 せっかく超爽やかに声を掛けてやったのに、ソッポを向かれてしまった。 「なぁ、俺が悪かった。さっさと帰れって言われたのによ…」 「っさい。なら、さっさと帰って。今すぐ!!」 こらえろ俺、ここは桐乃の学校だ。兄妹喧嘩をしていい場所じゃねーだろ。 「分った、じゃぁ帰るわ。ホントにごめんな。俺のせいで恥かかせちまって」 「あたしの中学生活の中で一番の超大恥だから、あれ。後で絶対にセキニン取ってもらうからね。覚悟しときなさい!!」 「わーったよ。っと、せっかくだ、帰る前に一言だけ言わせてくれ」 「ハァ…、何!?それ言ったら直ぐに…」 「おまえ、やっぱり凄いな。」 「えっ…!?」 「桐乃は凄い。噂では聞いちゃいたけどこの学校の授業って本当にレベル高いんだな。俺だったら付いていくだけで精いっぱいだ。それなのに、お前は塾にも行かず、独学だけでこの学校でもトップに居続けている。」 「うん…」 「学業、趣味、仕事、部活と、まったく、どこからそんなパワーが出てくんだよ」 「そんなの、あたしが好きなことを思いっきりやれば幾らでも湧いてくるし!!」 理由はよくわからんが機嫌が直った桐乃の頭を自然と撫でていた。 「へへへ」 桐乃の照れ笑いを見ていたら、大昔こんな事があった事を思い出した。冷戦状態から脱したとはいえ、未だ超仲の悪い兄妹である。昔の様な関係は無理だろうけど、もうちょっと位は仲良くなったほうがいい気がする。 桐乃との関係を思い起こす内に、すこーしだけ、こそばゆい感情が沸きだしてきた。 ・・・カシャ!! 「えっ!?」 桐乃と俺は同時に静寂を突如切り裂いたシャッター音が聞こえた方向を向いた。 センチメンタリズムを感じていた俺たちを現実に呼び戻した犯人を見つけるために! 「へっへーん、この加奈子様が、最高の一枚を撮ってやったぜ!!」 「加奈子!!勝手に撮らないでよ!!ってか、それ誰のカメラ!?」 「お袋に頼まれて俺が持ってこさせられたブツだ」 「お…、お母さんが!?あんたに!?ウソ、絶対あたしを盗撮するつもりで勝手に持ってきたんでしょ!?」 「違ぇーよ、バカ。ってかもう良いのかよ、すっかりいつもの調子に戻りやがって。仮面が崩壊してんぞ…」 「あっ…」 必死で怒りを抑える桐乃に対し、メルル@ダークウイッチは追撃を仕掛けてきた。 「桐乃が彼氏を作んない理由って、理想が高すぎるからじゃなくってぇ。やっぱり、あn」 「加奈子、お遊びはその位にしようか?」 「うげっ、あやせ…」 加奈子の後ろから音もなくスッとあやせが現れた。暗殺者かよ、お前は!! 「加奈子がそれ以上、踏み込んだ話しちゃったら、私どうしようかなと思ってたの」 今までの出来事がトラウマとなっているのか、あやせに凄まれた加奈子はすっかりおとなしくなった。 わかるぜ、その気持ち。俺も被害者の一人だからな!! 「加奈子、今、なんて言おうとしたワケ?ねぇ、怒らないから教えてよ?」 桐乃にも追撃で攻め立てられている加奈子について更に同情してしまった。 あやせは、つづいて俺にとても丁寧な言葉で牽制をしかけてきた。 「お兄さん、桐乃の機嫌をなおしていただきアリガトウございます。これで用件はすみましたので、お帰りください。それに、もう授業参観は終了していますし。」 「おお、どういたしまして。じゃあな、あやせ」 「そういえば、お兄さん」 あやせの横をそそくさと通り過ぎようとした時、不意に呼び止められた。そして、例のあの目で俺を見つめてきた。 「んっ、何かな、あやせ?」 「さっきの二人は認めたくないですけど、とてもいい雰囲気でした。私たちがとめていなかったら、あのまま…」 「おい待て!!ここは妹の学校だぞ!!」 ありえないことを口走りそうになったあやせに言葉を重ねて制した。まったく、近親相姦上等野郎でも妹の学校でなんてハードル高すぎんだろ!! 「フフフ、折角、授業参観が始まる前に忠告しておいてあげたのに…。きっと、カメラも桐乃のいやらしい写真を撮るために持ってきたんですよね?」 「違うって、だから、カメラはお袋が…」 「分りました、そういう事にしておきましょう。さよなら、この変態!!」 桐乃が介入するまでは女子中学生に黄色い歓声を受けていたのに、何で罵声を浴びさせらて帰ることになってんの?もう、わけがわからん。 俺はガックリと肩を落としつつ、麻奈美や黒猫に出くわさないようなルートを通って帰路についた。 あっ、カメラ回収すんの忘れてた…。 学校に戻るのはもういやだし、仕方ねぇ、桐乃にメールして加奈子から分捕るように依頼しておくか。 ――エピローグ―― 家に帰り、居間にいたお袋に授業参観の光景と、カメラは桐乃が持って帰ってくる事を説明した。 お袋の話では、どうやら写真が撮れないのは想定済みだったようだが、建前上だけ持っていかせたんだと。桐乃のためだけに購入したブツを一緒に持っていけば、少しくらいは親父が満足してくれると思ったとか何とか。 おいおい、おかげでこっちは実妹とその親友に犯罪者呼ばわりされたんだぜ…。本当に勘弁してくれよ!! 居間を出て、自室に戻りベッドに倒れこんだ。 もう、色々と疲れ果てていた俺は、せっかく買った一張羅が皺くちゃになるのが嫌だったんで普段着に着替えてから昼寝をした。 ・・・パァーン! 頬に衝撃が走り、夢の中から強制的に呼び戻された。最悪だ、日に二度もビンタで叩き起こされるなんてよ!! 同じ轍は踏まんぜ、こんどは、お袋か!? 慎重に目を開け、相手を確認してから俺は第一声を発した。 「桐乃!?てんめぇ、寝ている兄を何度叩き起こせば気が済むんだ!!」 よかった、今度は桐乃だった。いや待て、良くねぇよ、俺!! 「あんた、よくも今日あたしに恥かかせたくれたわね」 「あん?悪かったよ、んで、何をすればいいんだ?」 「それは……。これから考える………」 バツが悪そうに、弱々しく答える桐乃。 「じゃぁ、何で兄に馬乗りになってんだよ!!」 「キモッ、バカ、変態!!馬乗りとか言うな!!」 罵声を浴びせつつ、バチンと再度強烈なビンタを食らわせてきやがった! 「…ってぇな。分ったから先ず、ベッドから降りろ。そんで用件をさっさと言え」 訝しげにベットから降りて、仁王立ちになり俺を見下す桐乃。 「あんたが今日着てた服、メガネ、靴を回収しに来たの!!」 「なんでだよ!!」 「もう、今日の出来事はトラウマになったから!!あんたがそれを着てるのを見たら…、それだけでフラッシュバックするし!!それに、お父さんにお金出してもらったんでしょ!!」 「そうだけどよ…。でも俺が買ったもんだろ?」 「うっさい、そもそも、お父さんがあたしの授業参観に出るつもりだった→出れなくなった→お母さんも出れない→残る一人に任せた→でもそいつにはまともな服がない→仕方ないからお父さんがお金を出した→その金で色々買った→それは実質あたしのもの。ほらこんなもんよ。」 「なんだ、その超理論は!?」 「問答無用!!あたしのものだから、これは回収していくかんね!!」 あっという間に店で買った時の袋ごとブツと回収されてしまった…。 相変わらず理不尽な女だ。もういい、さっさと出ていけ!! 「あと、ひとつ忠告しておくから」 桐乃は、俺の部屋のドアノブを握りながらか細い声でそう言った。 「…なんだよ?」 「その髪型、気合入れすぎ。ワックスでセットしても、どーせ、あんたは自分じゃ再現できないでしょうケド!だから、諦めて明日から今まで通りの髪型に戻すこと。」 「おい、今の発言は超傷付いたぜ…。」 妹様は俺に死ねとおっしゃっているんですか!? 「………。…似合ってないとは言ってないじゃん、…バカ」 「あぁ、なんか言ったか?」 桐乃がボソボソと何かを言った気がするんだが良く聞き取れなかった。 「……、キモッ。何でも無いっての!!」 バタンと勢いよくドアを閉めて桐乃が部屋から出て行った。 ほんの少しの淡い体験の代償に、多大なイライラをため込んだこの日、俺は誓ったよ。 もう二度と妹の授業参観に出るものかってな!! 終 252 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/03/07(月) 21 59 08.66 ID vjIsHAjrP [4/4] オリジナルサイズ