約 906,656 件
https://w.atwiki.jp/imatti/pages/312.html
小説書きに100の質問 2010/01/17完 1まえがき(あなたの意欲をどうぞ)。 最後まで諦めずに頑張ります 2あなたのペンネームを教えてください。 今は閑野水鳥です 3小説の中の人物として閑野水鳥を描写してください(自己紹介)。 大胆不敵にして天衣無縫、極度の現実主義者だが、ロマンを追い求める奔放な人物 人望は案外厚いが、交友関係は狭い 4あなたの職業は? まれに良くある職業です 5あなたのバイト遍歴を教えてください(あれば)。 四年間本屋勤め 6小説書き歴は。 小学三年時より 7小説書き以外の趣味を教えてください。 読書、ゲーム、アニメ鑑賞など 8好きな小説のジャンルは。 所謂ライトノベル、主にファンタジーを愛する 9好きな作家は。 一番影響を受けているのは芥川龍之介 10尊敬する作家は。 同上 11好きな小説は。 自己紹介のページを参照の事 12好きな映画は。 特に映画は見ない 13好きな漫画・アニメは。 同じく自己紹介を参照 14好きなドラマは。 最近はめっきり見ない 15良く聞く音楽は。 ゲーム音楽と一部の声優曲(アニソンという訳でもない) 16心に残る名台詞と、その出典は? 「寄らば、斬ります!」 ユグドラ・ユニオンのユグドラの台詞より 17月に何冊くらい本を読む? 非常に不定期 大体、十五冊ぐらい? 18小説以外ではどういう本をよく読みますか。 神話とか、宗教とかの軽く哲学入った本を 19読書速度は速い方ですか遅いですか。 恐らく、速め 三時間程で文庫本一冊は読んでいる気がします 20あなたは自分を活字中毒だと思いますか。 残念ながら…… 21執筆に使用しているソフトは。 サクラエディタ VerticalEditor BeatWord 22初めて書いた小説のタイトル・内容。 黒歴史過ぎて記憶の奥底に封じ込めてしまいました 23小説のタイトルはどうやってつけていますか。 大体、半分ぐらい書いてから、自分の感性で、かな 24あなたが書く小説のジャンルは。 ファンタジー、SF、ラブコメ その辺りです 25一人称と三人称、どちらで書くことが多いですか。 基本は一人称 ただ、途中で三人称視点になる事も稀に良くある 26短編と長編、どちらが多いですか。 短編。長編と銘打つものでも、オムニバス形式が多い 27どのくらいのペースで小説を書いていますか。 非常に不定期 28ストーリーと登場人物、どちらを先に決めるか。 登場人物を先に ストーリーは後からついてこい! 29ストーリーはどういう時に思いつきますか。 寝る直前 霊夢 起床直後 30ストーリーはどの程度決めてから書き出しますか。 プロローグとエピローグ、それからどんでん返しを考えてから 本文は後回し 31人物の名前はどのように決めますか。 日本名なら、好きな感じを使って、ありそうな名前を 英語名なら、歴史の偉人とか、聖書にある固有名詞を捩ったり 32資料をどのくらい集めてから書き出しますか。 資料を必要としない、ペラい話が多いですね 後、世の中は便利になったもので書き始めてからも、知りたい知識をネットから得られますからねぇ 特に集めません 33小説を書くときにあなたが気をつけていることは。 自然と倒置法を使ってしまう、酷く倒錯的な人間なので それを多用して、文章をややこしくしてしまわない様に 34小説を書く能力は、どのように磨きますか。 やはり、良き本は良き文章を作る 兎に角読書、そして下手でも良いので文章を書く、ですね 35ネタが無いときはどうしますか。 腹を切れ! 36あなたが小説を書く上で影響を受けたものはありますか。 やはり、神道の様な古代日本の世界観には深く影響を受けていますね 後、宗教の考え方も面白いので、その影響も 37他の人の書いた小説を読むとき、ついつい注目してしまうのはどういうところですか。 倒置法の有無 どうしてこう、倒置法しか書けない人間なんだ 38これから書きたいテーマは。 愛ではなく、友情 あんまりラブラブしてるのも、アレだからねぇ 39感想はどのように得ていますか。 友人に見せたり 40批評されても良いですか。 寧ろ、してください 赤ペン先生マジ募集 41あなたの未来予想図、22世紀の世界はどうなっていると思いますか? まあ、治安が良くなってくれると良いですな 後はもう、なる様になってるさ ドラえもんは居ないだろうがな! 42ますます発達する科学。人間のクローンについてあなたの考えは。 人間に限らず、嫌だなぁ だって、やっぱり気持ち悪いじゃない 43超能力やUFOを信じますか? 信じていません ただ、神性というものは少し信じています 困った時の神頼み、神頼み…… 44世界の終末はどのように訪れると思いますか。 まあ、氷河期とかで無難に人類滅亡 その後、数十億年後ぐらいには隕石がぶち当たって終わるんじゃないですかねぇ 45世界平和は実現しますか。 しないだろうなぁ いや、平和の基準を無犯罪、戦争根絶みたいな夢物語に設定した場合、だけど 46最近の凶悪犯罪についてどう思いますか。 そういう人が出て来る、環境が、なぁ まあ、資本主義国である以上、仕方がないとは思うけど 47政治家に物申す! 日本のイメージを悪くしないで ただでさえ、悪いのだから 48宗教についてどう思いますか すごく面白い 信じてはいませんが、発生や信仰の経緯は面白いですよねぇ 49一日は二十四時間ですが、ほんとは何時間くらい欲しいですか? それで十分 二十時間でも、二十五時間でもない 絶妙だね 50現代に生まれてきて満足ですか。現代以外ならいつ頃生まれたかった?(過去・未来どちらでも) 戦後に生まれられたのは、幸せだと思う 未来も、治安とか悪そうだからなぁ…… 51「ファンタジー」とは? ある一線を越えたSF 剣と魔法の世界でなくても、ファンタジーは成立し得ると考えています 52何処かに引越しをするとしたら何処へ引っ越しますか。 何処か、田舎 長野とか良いなぁ 53旅は好きですか。何処へ行きたいですか。 京都へは、何回でも行きたい 良い町や 54登場人物の死についてあなたの所見を。 無駄死にだけは嫌 何か、大きな意味があるのならばそれは必要 後は……悲劇の後に救いがあれば、最高かな 55メールや掲示板の書き込みなどで「顔文字」や「(笑)(爆)(死)」の類は使いますか? 酷く嫌悪しています 56昨今の日本語の乱れについてどう思いますか。 それはもう、しゃーない 語学者じゃないんだから、完璧に美しい日本語は使えん 外来語が使われるのも必然だね それを含め、雑食的日本文化、じゃないかな 57社会に不満を感じることはありますか?どういう時ですか? 別に、私は革命家じゃないからねぇ 天上のお人の考えはわかりませんわ 58小さい頃、将来何になろうと思っていましたか。 幼稚園児までは、無し 小学生からはもう、新聞記者を目指していました 59あなたの人生設計を教えてください。 まあ、三十までには安定させたいですわな 結婚のつもりはなし 何か劇的な恋がなければ、ね 60外はどんな天気ですか。風景も含めて少し描写してください。 えー、暗いし、外寒いしやだー 風景はまあ、向かいに三階建て、そのサイドに二階建て、ウチ二階建て ありふれた住宅街の風景ですわな 61読書感想文は得意でしたか。 大嫌いでした だから、頑張りもしませんでした 62国語は好きですか?好きだった学科を教えてください。 国語系は何でも 後、社会系も 63学校は好きですか。 授業を受ける為に、行きましたからねぇ 友人を求めちゃいない 64運動は得意ですか。 なに、なにをおっしゃる 65鉛筆の持ち方、正しく持ってますか? 箸でも何でも、持ち方だけは綺麗です そう、持ち方だけは…… 66実生活で「あぁ自分は小説書きだな……」と実感することはありますか?どういう時ですか。 まあ、ふとした電車の中とかでもネタを考えているのはサガ、ですわな 67新聞はどこまでちゃんと読んでますか。 ほとんど読みません 編集手帳ぐらいは読むかな 68購読している雑誌は。 ふっ、文学誌とか期待するなよ! コンプエース、アライブ、声優グランプリ、声優アニメディア、NewType、不定期でGファンタジーとかだっ! 69本は本屋で買いますか?古本屋?図書館派? まあ、本屋……だね(同人ショップの袋を隠しながら) 70詩・短歌・絵など、小説以外で創作をしていますか。 全てにおいて、駄目ですわ 71恋人はいますか。 御冗談を…… 72何をしているときが一番楽しいですか。 ただひたすら、小説を書いている時 73あなたの人生の支えはなんですか。 ココナッツサブレ 74懸賞小説に応募したことありますか?その結果は? 言うな……何も、言うんじゃない…… 75日記は書いていますか? まあ、ブログをば 76今までで一番衝撃的だったことは。 俺……左利きを矯正されてたのか…… 初めて知った十五の夜 77睡眠時間は何時間くらいですか? 4~12時間 幅広っ! 78夜、眠りにつく前に布団の中で何を考えていますか。 ……ふぅ 79長時間電車に乗る時、車内で何をしていますか。 音楽聴いたり、妄想に耽ったり、本読んだり 80ネタになりそうな実体験を教えてください。 そんなもの、ない 81どうして小説を書くのですか。 自慰目的 82小説を書いていて嬉しい・楽しいときはどんな時ですか。 書いている行為、そのものが楽しみだからなぁ 83小説を書くうえで苦労することはなんですか。 時間の工面、ぐらいだろうなぁ もっと書く時間が欲しい 84小説を書く時の状況は?(場所・時間・BGM等) パソコンで、書きたいときに BGMは適当 85周りの友人や家族などはあなたが小説書きであることを知っていますか。 嫌って程に 86あなたの周りに小説書きはいますか?何人くらい? まあ、一人おりますわな 87スランプに陥ったことはありますか?どう乗り切りましたか? そんなものは、ない 88長時間パソコンと向き合っていると目が疲れませんか?対策はしていますか? 一応、ドライアイ用の目薬ぐらいは 最近は打たんなぁ 89最近難解な漢字を使用する作家が多いようですが、あなたはどうですか? 難解……? 躊躇とか、智慧とか、ちょっとギョッとする漢字かな? なら、ちょい足を突っ込んでるかなぁ 90こういう小説は許せない! 自由に書けば良いと思うよ!よ! 91自分の小説に満足していますか。 ははっ、なにをおっしゃる 92他の人のオンライン小説、どれくらい読みますか? あんま読まんなぁ 文章は、本で読みたい 93同人誌に参加したことはありますか。 ございません 94将来的にプロ作家になりたいですか。 将来的には、ね 95それはどうしてですか。 ふっ、無粋な事を 96あなたの自作小説を一つだけ薦めてください。 そんなものは、ない 97構想中のネタをこっそり披露してください(言える範囲で)。 次のヒロインは巨乳でポニテでデレデレです 98いつまで小説を書き続けますか。 願わくば、散り逝くその時まで 99読者に一言。 オッポレ 100あとがき。 ほら、こんなもん
https://w.atwiki.jp/novel2ch/pages/25.html
【サイト名】怪姦小説 【h抜きURL】ttp //temp200x.muvc.net/ 【管理人】主催・時速15キロ氏/執筆・メイメイ氏 【コメント】
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/552.html
魔理沙(レス)1 ─────────────────────────────────────────────────────────── 1903年12月17日。人類が初めて空を飛んだ日。 そしてそれに遅れること約100年。俺は今、箒にまたがり空を飛んでいる。 「○○、気分はどうだ?」 「最高だよ! 俺、こんな感覚初めて」 そりゃ良かったと、黒白の彼女――霧雨魔理沙――は屈託のない笑顔を見せた。 「魔理沙、もっと加速できない?」 「出来るけど……振り落とされるなよ?」 「大丈夫だって。魔理沙につかまってれば平気だから」 「へっ、よく言うぜ」 魔理沙は満更でもないような顔をしたが、ごまかすように加速を始めた。 「○○、一気に加速するからしっかりつかまってろよ!」 魔理沙の言葉を合図に箒が一気に加速した。それにあわせて俺の体がグイと後ろに引っ張られる。 「っ!」 激しい風の音が聞こえ、景色が猛烈な勢いで流れていく。魔理沙は風で帽子が飛ばされないように手で押さえている。 「どうだ、○○!」 「凄い! 凄いよ!」 かろうじて聞き取れた魔理沙の声に答える。 「魔理沙!」 「どうした!?」 「大好きだ!!」 一瞬の間。聞こえて返答にこまっているのか、聞こえなかったのか。 「なんて!? 聞こえなかった!」 魔理沙の顔が一瞬ほころんだように見えたのは気のせいだろうか。 「もう一度言うぞ! 大好きだあああぁぁぁぁ!!!」 14スレ目 393 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ねぇ、魔理沙」 「なんだ」 「デコポン食べる?」 「デコポン? そらまた渋いな」 「渋いって……。一応糖度は高いはずだけど」 「○○。わざとらしいボケは鼻につくぜ」 「あはは、ごめんごめん」 「まったく……。で、その甘いデコポンは?」 「あぁ、今剥いてきてあげるから待ってて」 「お、皮剥きサービス付か。悪いな」 「良いってことさ。じゃあ台所借りるね」 「ふむ……。酸っぱくて旨いな」 「そりゃ良かった。じゃあ俺もいただこうかなっと――」 「あぁ、待て、○○。皮剥いてくれたお礼に私が食べさせてやる」 「え? い、良いよそんな」 「遠慮すんなって。ほら、あ~ん♪」 「もう……。(ぱくりっ)」 「どうだ? 旨いだろ?」 「本当だ、美味しいねこれ」 「じゃあ、今度は私の番だ。あ~ん」 「仕様がないな……。ほら、あーん」 「(ぱくりっ)」 「お、おい魔理沙! 俺の指まで口に含むなよ!」 「ぬふふー。ほんはほほひっへ、ふへひひんはろ……?」 「ひゃぁ! ゆっ、指舐め禁止!」 14スレ目 680 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「魔理沙、俺スペルカード使えるようになったぜ!」 「はあ? ○○がスペルカード? なんだ。霊夢にでも稽古をつけてもらったのか?」 「うん。まあ、そんな感じ」 「頼めば霧雨流弾幕術を教えてあげたのに……」 「まあいいから。とにかく、俺は魔理沙に見てもらいたいんだ。うけてくれるよな?」 「ok! いいぜ!」 「それじゃあいくぞ! 恋符「ラブレター」!!」 「なッ!? ラブレター!?」 「恋という名のスペルがつづってある。魔理沙、受け取ってくれ!!」 14スレ目 905 ─────────────────────────────────────────────────────────── 魔理沙「あの、○○って……その、私のどういうところが……その、好きなのかなーって」 ○○「ん? どうしたってんだ、唐突に」 魔理沙「い、いいだろ別に。ちょっと気になっただけだ」 ○○「ふむ。だけど、いきなりそんなこと言われても返答し辛いよなぁ」 魔理沙「じゃ、じゃあ! そのぉ……む、胸が無いこととか……」 ○○「気にしてたのか?」 魔理沙「…………」 ○○「そんなムスっとした顔するなよ。俺は気にしてないぞ」 魔理沙「それはそれで複雑」 ○○「いまのままで十分だと思うけど」 魔理沙「それが模範解答ってわけでもないよな……悪い」 ○○「いや、はっきり言わない俺も悪かったよ。その、なぁ?」 魔理沙「何だ?」 ○○「普段の黒白の魔理沙も、家でくつろいでるときの魔理沙も、寝巻き姿の魔理沙も――か、可愛いと思う、ぞ?」 魔理沙「――ッ!?」 ○○「こーいう台詞は、さすがに照れるな……らしくない」 霊夢「はっはっは、初々しいな若人。羊のぬいぐるみにしてやろうか」 ○○「はい?」 魔理沙「霊夢は引っ込んでてくれ……」 霊夢「気にしない気にしない。でも○○、あんたがこう、グっとくるのは無いわけ?」 ○○「例えば?」 魔理沙「嫌な予感しかしないんだが」 霊夢「想像してみてください。魔理沙の体操服。魔理沙のスク水。魔理沙の……うーんと、 そう、ぶかぶかの学ランだったり、魔理沙が部屋で○○のYシャツだけとか」 ○○「あなたが神か」 霊夢「ふっふっふ。全部ウチの箪笥にあるから、良さそうなのがあれば持っていく?」 ○○「是非とも」 15スレ目 52 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「魔理沙、結婚しよう。霧雨という姓は捨てて、ともに新しい人生を歩もう。 今までの何倍も、幸せにして見せるから。」 15スレ目 699 ─────────────────────────────────────────────────────────── 魔理沙に拉致されたい こう、一緒に箒に乗せられて 「ほらほら、頑張って私に掴まらないと落とすぜ?」 「落ちたら拾ってくれるんだろ?」 「気が向けばな」 「どうすれば気が向く?」 「取りあえず抱きしめろ、思いっきりな。話はそれからだ」 「ん」 ギュ 「ちょっとキツいぜ」 「箒の上だしな」 「じゃ降りるか?」 「意味ない話だな」 「私は魔法使いだぜ」 「俺は何かの恋人だ」 「じゃあ交代な」 ギュ 15スレ目 814 ─────────────────────────────────────────────────────────── 魔「○○、どうしたんだ。何か顔が変だぜ」 ○「顔色悪いって言ってくれよ……この間、魔理沙の箒に乗せてもらった時あったじゃん?」 ○ 「あの時から尻が物凄く痛い」 魔「……痔だな」 ○「……うむ、痔だな」 魔「私が見てやろうか?」 ○「おぉ、それは助かる ――って言うとでも思ったかこの大馬鹿野郎!」 魔「別におかしな事じゃないだろ?」 ○「充分おかしいだろ! 女の子にケツ見せる男なんか聞いた事ねぇよ!」 魔「男に尻を見せる女なら聞いた事あるんだな」 ○「今、目の前にいるからな」※事後です 魔「……何だか今日はマスタースパークを思いっきり撃てそうだぜ」 ○「すいません冷静さ欠いてました失言でした」 魔「とにかく、痔なら誰かに見てもらった方がいい。特に、私に見せると回復早くなるぜ」 ○「何でそんなに俺のケツを見たがる。そして、その根拠は何だ」 魔「恋の力だぜ」 ○「……恥ずかしい事平気で言ってくれるじゃねぇか」 魔「私も恥ずかしいぜ」 ○「まぁ、いいや。どうせ誰かに見てもらうハメになるなら魔理沙がいいや」 魔「よし、そうと決まれば早速私の家だ。箒に乗ってくれ」 ○「だから痔だっつの!」 15スレ目 818 ─────────────────────────────────────────────────────────── しくじったぜ・・・ 里で偶然霊夢見掛け後を付けていたらまさか店の中で○○と抱き合っている所を目撃するとわ・・・ あいつらいつのまにそんな関係になっていたなんて知らなかったぜ、○○も隅に置けないな 気づいたらエプロンドレスを握り締め俯いて涙を我慢する私に気づいた、あぁそうか私は○○に惚れていたんだなぁ 「よう、こんな所でなにやってんだ?○○の店になにか用か?」 そう声を掛けられ振り向いた所に△△が居た 「どうした?永琳に変な薬を勧められたような顔して店の中になんか変な物でもあったか?」 私の顔そして店の内部を見た△△の顔が呆れた物に変わる 「真昼間なのに店の中で抱き合うとは・・・、こりゃたしかに目の毒だな でもあいつらいつの間に付き合ってたんだか、すこしは自重してh」 △△の話を聞かず背を向けて箒に跨ることもせず駆け出した 「ちょ、魔理沙待てよ!」 「なんで私に付いてくるんだよ!私は今一人になりたいんだほっといてくれ!」 我武者羅に走り続けてもなお付いて来る△△に言い放つ 「そうはいくかよ泣いている魔理沙をほっとくなんて絶対にできん!」 その言葉に私は立ち止り顔に手を当てそこで初めて涙を流している自分に気づく 「なら尚更一人にしてほしいぜ・・・」 「言ったろそれは無理だって、目の前で好きな女が涙流しているのにおめおめと帰れるかってんだ」 え・・・?今こいつなんて・・・ 「丁度良い酒が入ったんだが一緒に飲まないか?嫌な事がある時は飲み潰れるのが一番だぜ?」 「っぷ、まだ酒を飲んでもいないのに顔真っ赤にして・・・」 「い、いやこれはあれだ!さっきまで走っていたからな!酸素が足りねぇんだよ!」 「まぁいいや、私は今むしゃくしゃしているんだ酔い潰れるまで付き合ってくれるんだろ?」 「おう、喜んでお酌させてもらうよ!」 16スレ目 398 ─────────────────────────────────────────────────────────── 今日もまた一日が終わり、さあ寝ようと思ったのだが。 先程敷いた布団が明らかに一人分盛り上がっている。 さすがにその大きさだけで判別はつかない。 が、心当たりはあったのでカマをかけてみることにした。 「いやあ、今日も一日楽しかった。 朝から慧音さんの処でお手伝い。 お昼は稗田のお家でご馳走になって。 霊夢に掃除を手伝わされたりもしたけれど。 チルノ達の相手もまあ、たまにはいいものだね。 ミスティアの店も繁盛で何より。 まさか映姫様と相席とは思わなかったけれども。 萃香の相手もペースさえ間違わなければいい酒は飲めるし。 しかし毎度入浴中に出てくる紫には閉口ものだなあ」 言葉を重ねる毎に布団から発せられるオーラが頑なになっていくのが見て取れるようだ。 苦笑を浮かべながら枕元に腰を下ろす。 頭まですっぽりと布団をかぶった彼女に聞こえるように呟く。 「でもまだ、今日は魔理沙に会ってないな」 ぴくりと布団の塊が揺れた。わかりやすいことだ。 「一目、逢いたいなあ」 顔だけ出して、恨めしげにこちらを睨む涙目が覗く。 「……見せてやったぜ。これで、満足か」 不足も不足、大いに不足だったので。 明日はお姫様のご機嫌取りも兼ねて、愛しい彼女と一日を過ごすことにしよう。 17スレ目 51 ─────────────────────────────────────────────────────────── 仕事を終え、今日も迎えに来てくれた魔理沙とともに帰路を行く。 道すがら、その日あった出来事などを話すのが今では日課となっていた。 「……なんてのがあってさ。全く馬鹿だよなあ」 「そうだな。それは酷い馬鹿だ」 自分は話し手となり、魔理沙は聞き手。 自然と話題は職場の雑談だったり、町の噂が主となる。 たまに逆のこともあるが、ここ最近は総じてそんなものだった。 「それで男衆の奴らが、春画の隠し場所なんて……魔理沙、魔理沙ー?」 「聞いてるぜ」 確かに相槌は打つし、要所で笑いはするものの、今日の彼女は気もそぞろといった風だ。 いや、違うか。 どうにも物足りなさそうな顔をしている。 「えーと……。ああ、そうだ。もし自分が看病してもらうなら、どんな風にして貰いたいとか……」 「つきっきりで夜も寝ずに看病してやるし、お粥だって食べさせてやるよ」 これも昼に誰かが言った話題。 見事に自分の要望を先に言われてしまったというのは、流石というべきだろうか。 「あー、なんだ。面白くなかったか?」 「面白いさ、○○の話は面白い。でもそれだけじゃ、な」 足りないだろ、と彼女は言う。 横を歩くその顔はむっつりと地面をにらんで、転がる小石を蹴り飛ばす。 「あるだろ。私に言うべきこととか、聞かせるべきこととか」 「今日の晩御飯は何か?」 「そうじゃない。もっと、こう、なんだ。……とか。……てる、とか」 顔を赤くしてごにょごにょと呟く。 その姿が可愛くて、つい意地悪してしまう。 「ごめん、よく聞こえない」 「――っ! もういい!」 今度は怒りに顔を染め、ずんずんと先に行ってしまった。 お前は釣った魚に餌をやらない人間だ、と吐き捨てて。 しまった、からかいすぎたか。 慌てて追いかけ、硬く握り締めたその手を掴んで引き止める。 涙目で振り向く彼女を抱きしめて、その小さな耳に口を当てて囁いた。 「魔理沙、大好き。愛してる」 「、ぅあ――」 それだけでしおしおと魔理沙から怒気が抜けていった。 へにゃりと力の抜けた彼女の体を支えてやる。 恨めしげにこちらをにらむ彼女の目はしかし、如何せん迫力に欠けていた。 「……ずるいぜ」 「ごめん、ごめんよ。からかいすぎたな」 胸に顔を埋める魔理沙に、ぽかぽかと駄々っ子のように殴られる。 「○○の話は嫌いじゃないんだ。でも私は、○○の言葉が聞きたい。お前だけの言葉が欲しい」 人から聞いた話ではなく。 自身の気持ちをそのままに。 「ごめん。毎日魔理沙といられるものだから、つい浮かれてしまってたんだ」 何よりも先に、何よりもたくさん言うべき言葉を。 その言葉が最初にあったから、今こうして二人でいられるのだから。 「今日から毎日、最低三回は言うように」 「仰せのままに」 「言葉だけじゃなくて行動に移せばなお良しだ」 「望むところだ。だって俺は――」 魔理沙への愛だけが全てで。 釣った魚は、骨まで美味しく頂く人間なのだから。 17スレ目 230 ─────────────────────────────────────────────────────────── 今朝の夢で魔理沙に告白された 魔「○○、お前の側にいると必ず何かが起きて飽きない。 近くで見ているだけでも楽しかったけど、私も一緒に色々やりたくなったんだ。 だから……ずっとお前の隣にいてもいいか?」 17スレ目 247 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「今日は七夕だぜ、○○」 「ああ、でも今日は天気が悪いから天の川でないんじゃないか? そうなると織姫と彦星は会えないんじゃなかったけか?」 「へへ♪まあみてなよ」 魔符「ミルキーウェイ」 「…すごい綺麗だな。霧雨と天の川ってのはいい光景だな。」 「綺麗だろ?」 「ああ。でもあれだ、やっぱり天の川が見劣りしちまうなあ」 「 ? どうしてだ?」 「霧雨が天の川より綺麗すぎるんだよ。」 「なっ……す、少し雨にあたりすぎたかな?ね、熱っぽいからか帰るとするぜ! ○○も風邪ひくなよ!」 「もうひいちまったよ。風邪じゃなくて恋の病だけどなー!」 「ばっ、バカ!声がでかいっつの…!」 「じゃーまた明日な!織姫♪」 「…ばか」 17スレ目 394 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「○○ーっ!おはようだぜ!」 「あー・・・」 時計を見るといつもより少し遅い時間 なぜか家の中に魔理沙が居て、何かを食べてる トースト、ベーコン、目玉焼き おかしいな、家に食い物はなかったはずだが 「あー・・・おはようまりさ」 「相変わらず朝が弱いな」 「低血圧だからな、てかお前、だぜ、ってつけるの止めれ」 「ん?なんで、だぜ?」 コイツのそういう子供っぽい所は、まぁまだ子供なんだが 「むかしお前の親父に怒られたのがトラウマだ」 むかし、家が隣ということもあり魔理沙と俺はよく遊んでいた ところがある日 酔った魔理沙父が、お前と遊んでばかりいるから男言葉がうつったじゃねぇか と、わけの解らん事を言いながら里中を追いかけられた しかも翌日そのことを覚えてないといいやがったあのおっさん ああ、虎馬だ 「○○、朝ごはんだぜ」 さっき魔理沙が食べていたのと同じメニュー 「おい、これどうした」 「ん?実家から借りてきた」 食い物は借りてきたと言わんだろ まぁいつもの事なんで遠慮なく食べる しかし、魔理沙は家を出てから家事が出来るようになった それは俺も同じだが、なんと言うか、いいことだ 幼馴染、か 何となく、違和感を覚える 「なぁ魔理沙」 「んー?なんだー?」 「昔した結婚の約束憶えてるか?」 「・・・」 「・・・魔理沙?まーりーさー?」 皿を洗いながら硬直してやがる これぞまさにエターナルフォースbじゃなくてパーフェクトフリーズ 「おい」 肩に手を置いてゆすった その瞬間 「○、○○!?そそそんなやくそくはおぼえてあqwせdrtgyふじこl」 嗚呼、だめだこりゃ 頭から湯気を出して混乱してやがる こういうところは昔から変わらないなぁ 「やっぱり魔理沙は可愛いな」 「な、う、あ、ぅあ」 日焼けでもしたように真っ赤になって、言葉も出ないらしい 「それじゃあ出かけてくるから、家出るなら鍵閉めてけよ」 そう言って素早く家を出た これ以上一緒にいるとちょっとたぶん恐らく調子に乗ってしまうからだ 今はまだ、あの初心な彼女をからかっているだけで十分なのだ それにせっかくこんなにも幸せなのだ ゆっくり噛み締めていたいと思うのが人間の常であろう 終ワル 17スレ目 406 ─────────────────────────────────────────────────────────── うだるような暑さの夏の日。小高い丘の木陰にて 魔理沙「暑い暑い暑くて死ぬぜ」 ○○「五月蠅い。暑いと言われると余計暑くなる」 魔「言おうが言うまいが変わるもんか。○○、なんとかしろよ」 ○「人に膝枕させといてなんつー言い草だ。そんなに暑けりゃ離れたらどうだ」 魔「やだね。膝枕やめるくらいなら暑さを我慢するぜ」 ○「じゃあ我慢しろ」 魔「くぅ。人の弱みに付け込みやがって」 ○「俺なんかに惚れたことを後悔するんだな」 魔「それはありえないぜ。あー暑いー……」 そよ風を感じながらだべるのも良いかなって思う 17スレ目 732 ─────────────────────────────────────────────────────────── この前魔理沙と人里に買い物に行った帰り 露天のアクセサリー屋で魔理沙がじっと指輪を眺めてたから ○「お!なかなか綺麗な指輪だな。値段は少し高いが買ってやろうか?」 妖怪から助けてもらったり空中ドライブしたりと日頃世話になってるからな。 魔「い、いいよ。私にはこんな可愛い指輪似合わないぜorz」 ○「そうかな?俺は似合うと思うんだけどな。まあいいや。おじさんこの指輪頂戴?」 魔「いいのか?あとで返せって言っても返さないからな?」 顔を真っ赤にしながら上目遣いで見る魔理沙 ○○と分かれた帰り道魔理沙は買ってもらった指輪を左手の薬指に 嵌めてみた 魔「○○からの結婚指輪だぜ!私は○○のお嫁さん。ウフフ」 都合のいい妄想をしてニヤニヤしてる魔理沙であった。 文「あややや。これはとんでもないスクープです。明日のトップは決まりですね!」 17スレ目 778 ─────────────────────────────────────────────────────────── ○○「熱いな。あいつらなんとかしてくれ。熱はお前の専門分野だろ」 魔理沙「無理だな。私は加熱専門だぜ」 ○○「ええい抱き付くな。暑いだろうが」 魔理沙「とかなんとか言いながら離そうとしないんだな」 ○○「そりゃあ、好きな娘に抱き付かれて振り払う男はいないだろ」 魔理沙「ふふっ、私も好きだぜ」ぎゅっ ○○「だから抱き付くなというに」 18スレ目 714 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ほら見てみろ○○。こいつ私の八卦炉で遊んでるぞ」 「大丈夫なのか?一応大切なものなんだろ?」 「大丈夫だって私と○○の子供だぜ?使い方なんてすぐ覚えるさ」 「恥ずかしいことをいいやがって…。こちらが恥ずかしいじゃないか」 「照れるなって。おっと、これはこうやって構えるんだぞ。そして『マスタースパーク』って言えばいいんだ」 「まだしゃべれないのに出るわけないだろ」 「とかいいつつ思いっきりにやけてんじゃないか。お前もかわいくて仕方がないくせに」 「だ、だから言うなって……」 「あぅーーー」 瞬間、○○が魔理沙の前で光に包まれた。 「さすが私の子だぜ」 18スレ目 966 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「○○ー、お邪魔するぜー」 「ん、魔理沙か。そこでゆっくりしてけよ」 「おう」 「○○、今日も泊まらせてもらうぜ」 「ん、」 「なぁ、○○。・・・好きな奴とか、いるのか?」 「ん、いるぞ」 「・・・そうか」 「何落ち込んでるんだ?」 「○○も好きな奴がいるんだなってさ」 「ああ、いるさ。好きな奴が目の前にいるんだからさ。」 「ああ、そうか。私も好きな奴が目の前にいるんだからな」 19スレ目 205 ─────────────────────────────────────────────────────────── (編者注:異変前、出かける時の置き手紙の話) 魔理沙は見送りして欲しそうなイメージ。 「じゃぁ、ちょっくら行って来るぜ」 「あぁ。……っと、ちょっとまて」 ちゅ 「…気をつけてな」 「……うん」 とかそんな感じの 19スレ目 758 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「そうだ! どうせ聞こえるなら、聞かせてやるさ! 魔理沙! 好きだぁー! 魔理沙! 愛しているんだ! 魔理沙ぁー! 君に話しかける前から好きだったんだ! 好きなんてもんじゃない! 魔理沙の事はもっと知りたいんだ! 魔理沙の事はみんな、ぜーんぶ知っておきたい! 魔理沙を抱き締めたいんだぁ! 潰しちゃうくらい抱き締めたーい! 心の声は心の叫びでかき消してやる! 魔理沙っ! 好きだ! 魔理沙ーーーっ! 愛しているんだよ! 僕のこの心のうちの叫びをきいてくれー! 魔理沙さーん! 幻想郷にやってきてから、魔理沙を知ってから、僕は君の虜になってしまったんだ! 愛してるってこと! 好きだってこと! 僕に振り向いて! 魔理沙が僕に振り向いてくれれば、僕はこんなに苦しまなくってすむんです。 優しい君なら、僕の心のうちを知ってくれて、僕に応えてくれるでしょう 僕は君を僕のものにしたいんだ! その美しい心と美しいすべてを! 誰が邪魔をしようとも奪ってみせる! 恋敵がいるなら、今すぐ出てこい! 相手になってやる! でも魔理沙さんが僕の愛に応えてくれれば戦いません 僕は魔理沙を抱きしめるだけです! 君の心の奥底にまでキスをします! 力一杯のキスをどこにもここにもしてみせます! キスだけじゃない! 心から君に尽くします! それが僕の喜びなんだから 喜びを分かち合えるのなら、もっと深いキスを、どこまでも、どこまでも、させてもらいます! 魔理沙! 君が紅魔館から本を盗んでこいというのなら、やってもみせる! 」 「な、何なのあなた!?」 「あ、あの馬鹿!?」 顔を真っ赤にするさとりと魔理沙。 書いといて何だがさとりカワイソス(´・ω・) 19スレ目 881 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「魔理沙、好きだ愛してる」 「ああ、私も○○のことが好きなんだ」 「魔理沙」 「○○」 -抱き合う二人- 「はい、カットー。良かったですよ二人とも。これで皆も満足して、見てくれます。それにしても、ビデオカメラですか? 面白いですねーこれ」 「まさかここにきて、ドラマをやるはめになるとはな。でも、文さん、なんで恋愛系で実名なんだ? 」 「恋愛系なのは慧音さんが主張したからで、実名なのは魔理沙さんへのサービスです」 「魔理沙への? ……うわっ」 「○○に抱きしめられた、○○に好きって言われた、○○に○○に……」 「魔理沙顔真っ赤だぞ、大丈夫か? 」 「ひゃい!? だ、大丈夫でしゅ! 」 「魔理沙、口調が崩れてるぞ」 「え、あ、やばっ。べ、別に嬉しかったわけじゃないんだぜ! 抱きしめられてドキドキなんかしてないんだぜ! 」 「? そうか、大丈夫ならいいんだ」 「わかってないのは○○さんだけなんですが……。あなたの鈍さも、カメラに撮る価値がある気がしますよ」 後の上映会で羞恥のあまり気絶した魔理沙がいたそうな 19スレ目 948 ─────────────────────────────────────────────────────────── 魔理沙に今日は何の日か知ってるか?って聞かれたんだ 考えてみたけど魔理沙の誕生日じゃないし魔理沙の特別な日でもないし魔理沙の知り合いにも特に記念日はなかったし・・・ それで聞いてみると、どうやら今日はきのこの日らしかったんだよ、魔理沙詳しいなあ 感心して聞いてたら、きのこの日だからきのこ狩りに行こうって誘われたんだ もちろん断れるわけがないよ、とりあえず身軽な服に着替えて出発したんだ きのこ狩りって初めてだけど、魔法の森にはきのこって沢山生えてるのかなあって思って聞いてみると、 どうやら魔理沙しか知らない沢山生えてる場所があるんだって 迷ってるときに偶然発見したらしいんだ だからこれを知ってるのは私とお前だけだ 二人だけの秘密だからな?なんて念押されちゃった とりあえずそこで魔理沙にどれが毒きのこか、どれが取っていいか、なんてのを教えてもらって収穫開始 これがなかなか難しいんだ、取るべききのこが中々見つからなくて目立つ色の毒きのこばっかり 魔法の森自体が暗くて、気づいたら足元にあったり・・・なんてことも その中から見つけて、慣れた手つきで持ってきた籠にきのこを入れてく魔理沙 凄いなあ、よく見えるね まあ、ざっとこんなもんだぜ なんて得意げに言いながらひょいひょいと取ってくんだ お前も早く見つけろよーって言われて、よーし取ってやるぞーなんて意気込んだら早速奥に見つけたんだ 取りに行こうとちょっと急ぎ足で進んでったら恥ずかしい事に木の枝にひっかかって転んじゃって おいおい、大丈夫か?ほら、立てるか って心配されちゃった ごめんね、みっともなくて そう思って立とうとしたら急にめまいがして倒れちゃって 魔法の森の瘴気にやられちゃったかな 霞む視界で魔理沙が慌てちゃって、俺の名前必死に叫んでて、迷惑かけちゃってごめんね そしたら魔理沙が背負ってくれて、走ってくれた 俺はそのまま意識がなくなったんだ 目を覚ましたら元いた俺の家の布団で、すぐ近くに魔理沙がいてくれたんだ 目を開けて、ゆっくり起きた瞬間に魔理沙がよかった、本当によかった って泣き出しちゃったから 迷惑かけてごめんね、何だか今日はみっともない姿ばっかり見せちゃってるねって そうしたら魔理沙が私のほうこそすまない、魔法の森なんかに誘っちまったせいで なんて言ってたから 魔理沙を抱きしめて、倒れて迷惑かけたのは俺の方なんだ、俺が弱かったからなんだ ごめんね だから、泣かないで 魔理沙が笑っていてくれたら、すぐに体もよくなるよ って言いながらぎゅっと抱きしめてあげた、けどそれでも弱々しかったと思う 魔理沙はそうか、ごめんな 早く良くなれよって頑張って作った笑顔で言ってくれた、抱きしめ返してくれた その時の俺にはとっても強くて、とっても暖かくて、とっても安心できた その夜、つまり今日は魔理沙に食べられるきのこでスープとか作ってもらったんだ きのこの料理に関しては魔理沙は専門?だからね とっても美味しかったよ こんなに美味しくて、栄養があって、魔理沙の気持ちも入った料理を食べたら、すぐ元気になるよ 早くよくなって、魔理沙と遊んで、魔理沙と笑っていたいな それから、迷惑かけちゃったけど今日はとっても楽しかったから、またきのこ狩りに行こうね ・・・今度は、時間制限をつけて、ね 20スレ目 117 ─────────────────────────────────────────────────────────── うー……夜は冷え込むな、ほら暖かいお茶だぜ なんて言葉と共に出てくる緑茶 ありがとね魔理沙、体の芯まで暖まるよ 気が利く子だなあ それにしても本当に寒くなってきたね、冬が近づいている証拠かな 魔理沙は冬が苦手らしい、俺も寒いのは駄目だなあ、家から出たくなくなっちゃうし けれど、その代わりに魔理沙と一緒に居られると思うと嬉しい気もするね 冬でも夏でも、私たちは年中無休で一緒にいるだろう? だって、確かにそうだね 春は太陽の暖かさを受けながら魔理沙とお昼寝したり、お花見したり 夏は照る太陽の下で魔理沙と遊んだり、家で団扇で扇ぎあってたり 秋は近所を散歩して紅葉を楽しんだり、お月見をしたり そして、冬は二人でこうして家でお茶飲んでたり、雪が降れば外で遊んだり こうして考えてみると、魔理沙とは本当に一年中ずっと一緒だね ああ、一緒だな これからも……ずっと一緒だぜ うん、もちろんずっと一緒だよ さて、そろそろ寝ようか お休み、魔理沙 ……なあ、……その、ちょっといいか……? 夜中に魔理沙の声がした、どうしたの? えっとだな……その……今日は寒いから……いや……あー…… 口ごもってる魔理沙も可愛いよ……じゃなくて、どうしたんだろう よ、よかったら一緒……いや……えっと って、小さい声で聞こえる 困ってる……よーし 魔理沙、何だか今日は普段より寒いね もしよければ、一緒に寝てくれない? 二人で寝れば、暖かいでしょ?それに、魔理沙と一緒に寝たい気分なんだ、お願い ってこっちから頼んでみた 一瞬戸惑う魔理沙、それで少ししてから嬉しそうに ……し、仕方ないな、き、今日は気分がいいから一緒に寝てやるぜ 光栄に思えよ? そう言っておずおずと布団に潜り込んでくる魔理沙 とっても暖かいよ その後に小さく ……ありがとな なんて聞こえた気がしたけど……気のせいかな? その日の夜は、暖かくて、隣に魔理沙を感じられて、とても幸せに寝ることが出来たよ 20スレ目 153 ─────────────────────────────────────────────────────────── よく絞ったタオルで拭いて乾かしておいた帽子を持ってくる。 丹念にブラシをかけ、仕上げにてっぺんのとがったところを少し折り曲げた。 まっすぐ伸ばしておいてもいいんじゃないのか、と一度言ってみたが、スタイルなのだそうだ。 陰干ししておいた黒い服と、洗濯してアイロンをかけたエプロンをセットにしておく。 キノコの匂いはともかく、アリスのところに行くとたまに付いてくる火薬の匂いはしばらく乾さないと取れない。 外にいた頃ならファ○リーズでも使うところだが、幻想郷にそんなものはないのだ。 ……そろそろ寒いし、ケープも出しておくか。 「○○、帰ったぜー」 香霖堂へ行っていた魔理沙が帰ってきた。 今の装いも支度しておいた服装と変わらない格好なので、 このまま出かけてもたいして問題はないのだが、 そこはそれ、心意気というやつだ。 「おかえり、魔理沙。八卦炉の調子どうだった?」 「ん、特に問題ないってさ。―さあて、今回の異変はどんな奴が黒幕なのかな?」 楽しそうに笑う魔理沙。恋人としては色々心配でもあるのだが。 「じゃ、着替えてくるぜ」 用意しておいた服を抱え、魔理沙は寝室に入ってドアを閉めた。 まあ、異変を解決するにしろ、途中で帰ってくるにしろ、 「疲れたぜー」とか言いながら道中の話を色々してくれることだろう。 お茶でも沸かしながら待つことにするか。 20スレ目 190 ─────────────────────────────────────────────────────────── 今日魔理沙と二人で普段より遠いところまで散歩に行ってきたんだ 魔理沙が今日は天気も気分もいいから散歩に出ようって提案してくれたんだけどね 普段より遠いって事は普段よりも長く魔理沙といられて、普段よりも長く話していられるんだよ 笑いながら昨日パチェがどうだったとか霊夢と話しててこんなことがあったとか話してくれて 俺も人里で近所の店に妖怪がいて盛り上がってたとか花屋に花の妖怪がいたとか話してたんだ それで話が盛り上がってきて、いい感じになってきたからすっと手を伸ばして繋いでみたんだ 最初は戸惑ってたけど、次第に慣れたのかな、魔理沙からもぎゅっと握り返してくれたよ 話してて楽しかったからか、手を繋いだからかはわからないけど魔理沙の笑顔が見れてとても幸せだったよ それで話の途中で遠くで何人かの子供があれってデートじゃないのー?とか話してて魔理沙が赤面しちゃうんだ こらーっ!何言ってんだー!って魔理沙が怒ったから俺もそうだぞー!これはデートじゃなくてデートの練習だー!って言ったの そうしたら魔理沙が顔真っ赤にして え?あ、わ、わ って返答に困っちゃって そんで恥ずかしそうに練習なんかしなくてもだな……えっと……別に私はいいんだが……って小声で言ってて 俺がえ?って聞くとな、何でもなーい!何でもないぜー!って叫びながら走ってっちゃった ごめんね魔理沙、今度は本当のデートに誘うよ 二人で一緒に色んな所行こう とりあえずその後追いかけてなかった事にする雰囲気だったからさっきの通りに笑いながら話してたよ 魔理沙の笑顔は太陽よりも眩しくてとっても可愛かったよ、また散歩に……いや、デートに行こうね 20スレ目 237 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「なあ○○。里帰りをしたいとは思わないか?」 魔導書から目をあげると、そこには文文。新聞を掲げる魔理沙がいた。 「○○もそろそろホームシックになっている頃だろ。だからその解消をして、ついでに外界の珍しい物をたんまり頂いてくる。おいしい話だろ?」 「お前は後半が目的だろ。大体3年もこっちにいてホームシックも何もあるか」 「ちっ。ばれたか」 悪びれもせずに笑いやがった。 だが、ふむ。久しぶりに外に行ってみるのも悪くはない。電化製品を持ち込んで河童に提供したら量産してくれるかもしれんし。 でも、素直に従うのも癪なので少しからかってみよう 「さあ、外に行くのか、一悶着起こしてから外に行くのか、はっきり決めてもらおうか」 「外に行くのは良いんだがな、魔理沙。外に行ったら郷愁の念に駆られてこっちに戻りたくなくなるかもしれないぞ」 「えっ……?」 「むしろその可能性の方が高いな。なにしろ外界には親戚とか昔の友人とかがいっぱい居るしな」 「そんな……」 「俺としてはそんなリスクを犯したくないが、魔理沙が行きたいと言うなら仕方がない。すぐにでも準備をして――」 「……行かない」 ふと見ると魔理沙が涙目になっていた。 「絶対に外になんて行かない。だから、居なくならないで……」 どうやら少しからかい過ぎたみたいだ。 これ以上はやり過ぎと判断し、魔理沙を抱き寄せると耳元で「冗談だ」と囁いた。 「へっ……!?」 ビクッと震えた魔理沙の体を更に強く抱き締めて 「だから今のは全部冗談だ。俺が魔理沙を置いてどこかに行く訳ないだろう。なにしろお前は俺が世界で一番愛してる人なんだから」 「え……あ、う……ええええええ~~~~~~!!!」 お、真っ赤になった。 パニックに陥っているようだったので落ち着かせるためにキスしてみた。 「ああああいあいはむっ……んん~~!」 「んっ……」 「んん……ぷはっ」 「はぁっ……は。落ち着いたか?」 「うん……落ち着いた……」 目が多少とろんとしているが、まあ大丈夫だろう。 「でも、なんであんなに取り乱したんだ。俺がお前を好きだって普段から言ってるじゃないか」 しばらく頭をなでた後、虚脱状態から復帰した魔理沙に訊いてみた。 「だって……○○が愛してるって……」 そう言うとまた赤くなる魔理沙。恥ずかしいのか胸に顔を埋めてきた。 「……コホン。それで、魔理沙は外界に行きたいんだな?」 いつまでもこの状態でいると理性が危ういので強引に話を元に戻す。 魔理沙も大分普段の調子を取り戻したようで、逡巡しながらも返事を返してきた。ただしこちらに抱き付いた姿勢のままで。 「でも、○○は本当に大丈夫なのか?」 「大丈夫って、何が?」 「ほら、いざ行ってみたら、やっぱり外の世界に残りたくなったりしないかってこと」 どうやら俺が外に未練があるのではないかと疑っているらしい。だから不安を解消するためにネタばらしをしてあげることにした。 「魔理沙。お前は重大な見落としをしている」 「見落とし……?」 「俺の言ったことをよく思い出してみろ。俺は『外に行く』とは言ったが『外に戻る』とは一度も言ってないぞ」 「へ……でもそれがどういう……あっ!」 どうやら気付いたらしい。元々頭の回転は良いやつなのだ。 「そう。つまり俺にとってすでにこの幻想郷の方がホームグラウンドなんだよ。だから俺がいなくなるなんて心配は最初から要らなかったんだよ」 そう言って頭を軽く小突いてやる。魔理沙は口を尖らせて抗議するような目線を送ってきたが、やがて諦めたのか ふっという溜め息と共に体を離し、くるりと一回転すると完全にいつもの調子で 「じゃあ外界旅行の準備を始めるか」 まったくとんだ無駄時間だったぜ。などとぶつくさ言いながら、机に鞄や道具を並べていった。 嬉しさを隠し切れてない様子に苦笑しながら、ゆっくり魔理沙の後を追う。 どうやってマジックアイテムの持ち出しを止めるかなんて、彼女の笑顔に比べれば些細な問題に過ぎなかった。 20スレ目 307 ─────────────────────────────────────────────────────────── 魔理沙。俺が人生で一番幸せだと思ったのは、お前と結婚できたことだ。 だから魔理沙、死ぬな。 20スレ目 612 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「もしもし、私魔理沙。今魔法の森にいるぜ」 「もしもし、私魔理沙。今里のはずれに……違った、もうお前の家の前に――」 ドグワァァァァン! 「ぐえっ!」 「私魔理沙。今お前の腕の中に……って大丈夫か○○!誰に殺られた!?」 「……」ピクピク 「待ってろ。すぐにこのエクステンドアイテムで回復してやるからな。ほら」 「……ごふげほっ!痛って何しやがる!」 「今流行のメリーさんごっこだぜ。知らないのか?」 「……俺が聞いたメリーさんごっこはもっと穏便だったはずなんだが」 「ごちゃごちゃ煩い奴だな。折角可愛い魔理沙さんが来てやったんだから、もっとするべき事があるだろ。 例えば抱きsんむっ……」 「……んぐ……はむ……」 「ん…んんっ……ぷはっ。いいいきなりななにすんだよ!」 「殺されかけた仕返しだ。それに魔理沙もこれが目的だったんじゃないのか?」 「わ、私はただ○○に抱き締めてもらいたかっただけで、いきなりキスされるとは思ってなかったから……」 「そうか。それは悪かったな。じゃあもう一度、今度はゆっくりな」 「ちゃんと、ぎゅってしてね」 「ああ。もちろん――」 20スレ目 907 ─────────────────────────────────────────────────────────── 親からみかんが届いた。ダンボール1箱ある。多すぎるんじゃないか…… というわけで魔理沙、一緒に食べよっか。 「お、いいな。でもみかんといえばこたつだぜ。そろそろ出さないか?」 うーん、確かに最近寒くなってきたし……よーし、出すか。 「確かそこの押入れに入ってたよな。……そっちちゃんと持っててくれよ。」 了解了解。でも何でうちの押入れ事情把握してるんだろう……漁られたかな? 「人聞きが悪いな。物色させてもらっただけだが。」 まったく、やっぱりそうだったか。でも前見たときより逆に整頓されてた気がするから言わない事にした。 「ふう。暖まるな……冬はこたつが一番だぜ。」 こ、これがまったりしてるってやつか。至福の一時って感じの笑顔だ。 漫画だったらぬくぬくとか効果音が入るんだろうなあ。だらーんとした魔理沙可愛い。可愛いよ。 おっと、忘れるところだった。みかん持ってこよう。 「ん~♪甘いな。やっぱりみかんは美味しいぜ♪」 おー、こりゃ甘い。魔理沙も上機嫌だしよかったよかった。 たくさんあるからどんどん食べてね。 「冬はまだまだこれからなんだ。長いもんだし、ゆっくり食べるぜ」 まあ、まだ11月だしなあ。よく考えたらクリスマスも正月もまだなんだ。 楽しい行事に期待しながら、こたつでゆっくり魔理沙と喋っているとしよう。 20スレ目 950 ─────────────────────────────────────────────────────────── 魔理沙、おめでとう!育児は大変だけど、二人で頑張っていこうね 「まあ、頑張るのは私一人になりそうだがな」 そんなこと言わないでよ、俺だって頑張るから 男の子かな、女の子かな?どちらにせよ魔理沙みたいに強気な子になりそうだけど 「そうだな、私は女の子がいいぜ。私みたいに落ち着いた乙女になりそうだからな」 俺も女の子がいいかなあ、魔理沙の可愛さが遺伝したら嬉しいしね って、まだ気が早いかな?ああ、後名前も決めなきゃ……魔理沙は何か案はある? 「そうだな、特には……そっちこそ何か案は?」 よーし、二人で一緒に考えようか。いい名前をつけてあげないとね とりあえず、今日はお祝いだ!美味しいものでも・・・ってつわりとか大丈夫だろうか? 「さあな。まあ、そんな豪勢なもんを食べなくても……お前と一緒にいられる。それだけで嬉しいんだ」 ありがとね、魔理沙。俺も魔理沙といられればそれだけで嬉しいよ 魔理沙これから大変そうだなあ、辛かったら何時でも言ってね、俺が助けてあげるから 「そうだな、そろそろ辛い。……くくっ」 ……え?どうしたの、魔理沙?そんなに笑って……まさか? 「あはは!こんなに簡単に騙されるなんて思わなかったぜ」 あー!騙したな!むー……結構期待してたんだけどなあ。 「……まあ、私だっていつかは子供が欲しい。これだけは事実だ。それから……さっき言った言葉もな」 まったく……でも許しちゃう。俺も何時か魔理沙の子供が見たいな 21スレ目 10 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「……なぁ、魔理沙」 「なんだよ?○○」 「テスト勉強を教えてくれとは言ったから教科書等は分かるんだ」 「おう、当然だぜ」 「何故、俺の家に泊まる準備が必要なんだ?」 「ああ、お前の学力じゃ一時間や二時間やったところで意味がないと思ってな」 「それなら、泊り込みでやった方がいいだろ?私だってする必要はあるし」 「いや、まぁ……たしかにそうなんだが……」 「そうと決まれば話は早い、ちょっと失礼させてもらうぜ」 「いや、ちょっと待て、いろいろと問題があるだろうが」 「無いぜ」 「……その根拠は?」 「私が言うんだからな、無いに決まってる」 「ええい、お前との会話は疲れてくる」 「そいつは大変だな、私が元気が出る料理でも作ってやるからゆっくり休んでろよ」 「だから何度も言うが待て、飯を作る必要は無いだろう」 「飯を食わねば戦はできない、そういうことだぜ」 「……そうか、なら最高級に美味いものを作ってくれよ」 「はっはっは、この魔理沙さんがお前に美味すぎて今まで食べたことも無いようなものを作ってやるよ」 21スレ目 307 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「お待ち遠さん、魔理沙さんのお手製料理の出来上がりだぜー」 「よ、待ってました」 食卓に着いている俺の前に、魔理沙の手で料理が次々と並べられていく。 俺が霧雨魔法店を住み込みで手伝うようになって、半月ほどになる。手伝いと言っても、魔法の店で俺に出来る事なんてたかがしれていて、実質は単純作業や家事を肩代わりする程度だった。 もちろん料理も俺の担当なのだが、たまに手が空いたときにこうして魔理沙が作ることがあった。 「いつもながら旨そうだな」 「当然だぜ。私の料理の腕前を知らないわけじゃないだろ?」 「ああ、よく知ってるよ」 魔理沙は得意げに笑うが、それは決して自惚れではないことを俺は知っていた。元々自炊をしていたためか、こだわる性格のためか、魔理沙は意外にも料理が上手い。 プロ顔負けとは行かないが、小料理屋くらいなら開けるのではないかと思えるほどだ。 魔理沙と食材に感謝して、俺は両手を合わせた。 「いただきます」 「いただきます、っとな」 きちんと手を合わせ、魔理沙は箸を持った。はすっぱなようで、こういうところはしっかりしている。 俺も箸を手にとり、食事にかかる。 まずは味噌汁を啜り、次は米の立った銀シャリを一口。うん、やっぱり旨い。 そして、玉子焼きを口に運び……あれ? 俺は心中で首をひねる。魔理沙の作った玉子焼きは、俺の期待した味ではなかった。不味くはないが、違うのだ。 「この玉子焼き、甘いな。あ、今一つだってんじゃなくて、砂糖の味がする」 俺がそう言うと、魔理沙は夜にこんにちはと挨拶されたみたいな顔をした。 「なに言ってるんだ? 玉子焼きは甘いものと有史以前から決まってるんだぜ」 そんなバカな。甘くていいのは寿司屋の玉子だけだ。 「いやいや、メシのおかずにこんなに甘いのはないだろ。こりゃお菓子の甘さだって」 「おいおい、和食ってのは基本的に塩分が高めなんだ。玉子焼きまでしょっぱくしたら成人病まっしぐらだぜ?」 「塩分が高めだからって、甘くする理由にゃなってないぞ。こんなに砂糖を入れたら糖尿病街道一直線だ」 一瞬の沈黙、そして張り詰める空気。空気が険悪になったのを肌で感じる。 次に魔理沙が言う一言は決まっていた。『文句があるなら食うな』だ。 表情を固くし、魔理沙は俺から視線を外した。 「文句があるなら食わなくていいんだぜ。ここは私の家でこれは私の作った料理だ。食べたい物があるなら自分でどうにかしろ」 予想通りだ。俺だってそう言う。 俺の次の一言、次の行動も決まっていた。 「ああ、そうさせてもらうさ」 俺は箸を置き、席を立つ。 部屋を出て行くときに聞こえた魔理沙が味噌汁を啜る音と、『バカ』という呟きが妙に耳に残っていた。 あれから一週間が経った。 あの事件から、俺は魔理沙とろくすっぽ口を利いていない。せいぜい、仕事上の事務的な会話くらいだ。 食事も入れ替わりに好きな物を作るか、外で済ませてくるかのどちらかだった。心なしか、魔理沙が店を空ける時間も増えている。 魔理沙と楽しく話せないのが辛い。魔理沙の笑った顔を見られないのが寂しい。謝ってしまえばどれほど楽なことか。 だが、悲しい哉。俺はくだらないプライドを捨てられないタイプの男だったらしい。 何も状況は改善されないまま、さらに一日が経った。 「メシでも作るか……」 二人で暮らしているのに、一人で食事をとるのは辛い。最近は食事をとる回数すら減っていたが、食べないわけにもいかない。 気が進まないながらも俺は厨房へと向かう。 すると、その途中で食事をしている魔理沙が目に入った。食が進まないのか、箸はまったくと言っていいほど動いていない。 魔理沙も俺と同じ気持ちなら……。そんな風に考えるが、やはり行動には移すことが出来ない。 自分の愚かさに溜息をつきつつ、俺は厨房で自分の食事を作った。 作った料理は、玉子焼き。 玉子焼きを含むいくつかの料理を盆に載せ、俺は食卓に向かった。食卓では、未だに魔理沙が食事を続けている。 気まずいものを感じながらも、向かい合わせに食卓に着く。 『げ』 俺は心の中で舌打ちをした。よりによって、魔理沙が食べているのも玉子焼きだったのだ。 だが、後に退くわけにはいかない。俺は手を合わせ、黙々と食事を始める。 何だか魔理沙が俺をチラチラと見ている気がする。言いたいことがあるならさっさと言えよ。……俺。 俺が聞き取れるぎりぎりの小さな声で、魔理沙はぼそりと言った。 「……旨いな」 ああ、そうかい。そりゃ魔理沙さんのお作り遊ばした甘ーい甘い玉子焼きは美味しかろうよ。俺は腹が立った。 怒りを感じつつ、俺は自分の玉子焼きを乱暴に口に運ぶ。旨いさ、ああ美味しいですとも。 そして、魔理沙は最後の一切れになった自分の玉子焼きにゆっくりと箸を伸ばした。 ……くそっ! 俺は素早く箸を伸ばし、魔理沙の玉子焼きを奪い取った。そして、一気に口に放り込んで咀嚼する。 唖然としている魔理沙の前で、俺は玉子焼きを飲み込んだ。 「あー、旨い! 甘い玉子焼きも旨いじゃねえか、こんちくしょう! ……って、あれ? しょっぱい!?」 そう、魔理沙の食べている玉子焼きはしょっぱかったのだ。 顔を伏せながら、魔理沙は言った。 「……だから言ったろ。旨いな、って」 「魔理沙……」 俺は自分の作った玉子焼きを箸で摘む。そして、それを魔理沙の眼前に突き出した。 「魔理沙、口開けろ」 訝りながらも魔理沙は口を開けた。俺はその口内に玉子焼きを放り込む。咀嚼し、飲み込む魔理沙。 「……甘い」 「……だから言ったろ。旨いな、って」 しばしの沈黙。そして、俺たちは同時に笑った。 俺は魔理沙の気持ちが手にとるように分かった。つまらない意地を張っていたのがバカらしくなったのだ。 「いや、甘い玉子焼きも旨いな! 魔理沙が作ったからかもしれないけどな!」 「しょっぱい玉子焼きも悪くないぜ。……お前が作ったからかもしれないけど」 どちらからも謝罪の言葉は出ない。そんなものはなくても通じ合っているから。 甘いのも存外悪くはない。これからは両方作ろうか。 甘いのもしょっぱいのも、俺と魔理沙の人生には必要だろうから。 21スレ目 590-591 ─────────────────────────────────────────────────────────── 何故そうなったのかわからない。 「どういう風の吹き回しかしら?」 「さぁ」 ありのままのことを話そう 「魔理沙がメイド服を着ている」 「パチュリーが「本を返さなきゃ呪い解かないって言ってたぜ」 話によれば、魔理沙が紅魔館へ本を狩りに行ったとき、出された飲み物を飲んだら体が動かなくなって その隙にパチュリーや妖精メイドの手で強制的に着替えさせられたらしい。 着替えても気がつけばメイド服に着替えてしまうらしい。 うん、パチュリーGJ。 「自業自得ね、ってか窃盗はれっきとした犯罪で・・」 「返す意思はあるぜ」 「嘘つけ、外の世界じゃ窃盗を繰り返すことは「病気」って言われてるんだぜ?」 「ひどいぜ」 「で?なんで私のところに来たの?」 「霊夢の力で何とかならないか?」 「なるわけ無いでしょ」 「ちぇー」 「まぁまぁ、ちゃんと本を返せば解いてくれるんだろ」 「ああ、らしいな」 「返そう」 「いやだ」 ごん! 「叩くぞ」 「いてて・・・叩いてから言うなよ・・」 「だったら書き写して写本作ればいいでしょ」 「めんどくさいぜ」 「まったく・・・でもメイド服姿も可愛いからな・・このままでもいいか?」 「え?」 「パチュリーには悪いけどね・・・メイド服似合っているぜ」 「ほ・・本当か?」 「ああ、これで「ご主人様何なりとご命令を」といったら最高だな」 「ご主人様、何なりとご命令を」 「パチュリーに本を返してきなさい」 「やっぱそうなるか?」 「ああ」 結局、魔理沙は本を返したらしい。 で、呪いは解いてもらったらしいのだが、メイド服はそのまま貰ったらしい。 「今日から私は○○のメイドだ、何でも言ってくれ・・主に夜伽とか夜伽とか・・」 「じゃあ境内の掃除お願いね」 「私は○○のメイドだぜ?」 「じゃあ境内の掃除お願い」 「ひどいぜ・・」 21スレ目 701 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ということで、魔理沙結婚してくれ」 「なにが『ということで』だ。鼻血撒き散らして悶えながら言っても 全然うれしくないんだぜ…。もうすこし、こう雰囲気をだな……」 「わかった、わかった。……魔理沙結婚しよう」 「切り替えの速さは随一だな。指輪を準備していたってことは決めて いたのか?」 「もちろんだ。今日はお前に『渡すぞ!』という心持ちでここにき た。いささか予想外の展開だったが」 「……」 「お前の気持ちを聞かせてほしい」 「そこまでストレートに言われて、指輪まで用意されたら断るわけに はいかないだろ。もちろんOKだぜ!むしろお前しかだめだぜ!」 「それならば遠慮なく――ガバッ」 「ちょっ!?いきなりか」 「あんたらここが神社だってこと忘れてない?」 『……』 21スレ目 706 ─────────────────────────────────────────────────────────── 幻想郷に来て随分と経ってしまうが、住み込めば何だかんだいって何とか なってしまうのは良いことであり、立派な利点であると思う。 眠くなるような春を過ごして魔理沙と出会い、飛び立てるような夏を乗り越えては 落ち佇む秋にすとんと落ち、やがては冬に抱かれる。季節は変われど、変わらないことが 一つ。 「俺、あの娘に告白するんだ!」 たったそれだけだったが、それ故に重要だった。魔理沙はいつもいつも「そうかそうか」 と適当に頷いたり、「まあ、頑張れ」と軽く流したりと、逆にそのアバウトさが ありがたかった。相談を持ち込めるほど、これといったプランも考えていなかったし。 そうして、意中のあの人と何度か話した、弾幕ごっこに巻き込まれたりもしたが 何とか生き残った。雑談をして笑わせたり、時には失敗したこともあったが、けして 赤の他人ではなかったはずなのだ。だから、 「俺、あなたのことが好きです」 と呟いた時は、恥ずかしくも「やった」と先走った。 「ごめんなさい。私には、好きな人がいるんです。本当にごめんなさい」 だからこそ、「返事をくださり、ありがとうございました」と誤魔化すほど ダメになっていた。 意中の人と別れたところで、雨が降った。こりゃあ実にありがたいと思って 走り回った、人気の無いところで笑って踊ったりもした。泣いてなんかいないと 意識したが、その時点であれなのだろう。 疲れたので、草むらの上に座った。よかった、あの人は真髄に応えてくれた、それが ひどく嬉しい、 ばさりと音がした。何事かと思えば、星柄の傘を差し向けられていた 「何をやっているんだ、お前は。風邪を引くぜ、そのまま死ぬ気か」 雨でよく見えなかったが、誰かはすぐに分かった。 「それだけは駄目だ、お前は大切な友人、いや、人なんだからな」 ため息をつかれて、 「カッコ良かったぜ、お前。さあ、今度は私が頑張る番だ」 それだけを言い、にかりと笑った。 21スレ目 734 ─────────────────────────────────────────────────────────── 日も沈みかけた頃、俺は自宅への道を急いでいた。 夜は妖怪が出て危ないからというのもあるが、今日は面白いものを見たから余計に足も弾む 「ただいま」 「おかえり○○。今日は早かったな」 扉を開けると、案の定魔理沙が当たり前のような顔をして寛いでいた。もはや見慣れた光景である。 脱いだコートをハンガーに掛けながら背中越しに返事を返す。 「ああ、さっき面白いものを見たからな」 「面白いことってなんだよ。詳しく話せ」 「いやぁ、今日村外れを歩いていたらな、たまたま見ちゃったんだよ」 「何をだ?」 そう言って身を乗り出してくる魔理沙。その隣に腰を降ろし、魔理沙の額を指でくいっと突きながら言ってやった。 「お前とアリスの恋人さんが話してる所をさ」 「へっ!? ま、待ってくれ○○! それは誤解だわわ私はただあいつの――」 言った途端に真っ青になって慌て始めた魔理沙。それをまあまあと手で制して。 「安心しろ。浮気だとは思っちゃいないさ。あいつの相談を受けていたんだろ?」 「そ、そうだぜ。焦らせるなよなまったく」 ほっとした顔で悪態をついてくる魔理沙。誤解された訳では無いとわかって安心したのだろう。 しかし俺はこの油断を逃さなかった。 「でも良い事を聞かせてもらったよ。『押しても駄目ならもっと押せ、それでも駄目ならもっと押せ』だっけ?」 「なっ……! 聞いてたのか!?」 不意を突かれて慌てる魔理沙に、とびっきりのにやにや笑いを付けて言ってやる。 「そうかそうか。お前にとって『差出人の書いてないラブレター』は押してるうちに入るのか」 「わーっ!! それはもう忘れろー!!」 「そんでもって押し倒すってのは俺の50m後を毎日尾行したことか?」 「知らん!! そんなこと私は知らない!!!」 耳まで真っ赤に染めて恥ずかしがっていたが、とうとう顔を炬燵布団にうずめてしまった。 「ぅぅ……あの時はどうかしてたんだ……あれは本来の私じゃないんだ……」 というか声も若干涙声になっていた。すこしやり過ぎたかな。 仕方がない。未だ突っ伏したままの魔理沙をそっと抱き寄せ、耳元で囁いた。 「でも、あの魔理沙も俺を好きなんだと分かった時は嬉しかったんだぜ?」 「……」 「まさか相思相愛だと思ってなかったから、もしあの時ラブレターを送られなかったら、一生お前に気持ちを伝えなかったかも知れない」 「……本当に?」 「ああ、本当さ。臆病で慎重だったからな、あの頃は」 「だから、あのときはありがとう。魔理沙」 ようやく顔を上げた魔理沙の、前髪を優しく梳いてやる。頬にはまだ少し朱が残っていたが、大分普段の調子を取り戻したようだ。 その証拠に 「それじゃあ私達が恋人になれたのは私の押しおかげだな。感謝しろ」 なんて軽口まで言い出した。 生意気な小娘の額をぺしっと打って、「馬鹿め。あれは押しの内に入らねえよ」と言い返すと 「うう……○○は意地悪だ……」 とわざとらしく胸に顔をうずめてきたが、すぐに堪え切れなくなったのかくつくつと笑い出し、 「くく、ふふふふふ!」 「くふっ、あはははっ!」 やがて二人で大爆笑していた。 「――はははは、はぁ……はぁ……一体なにしてんだろな、俺ら」 「全くだ。とんだ時間の無駄だぜ」 「いつの間にかこんな時間か。そろそろ晩飯つくるらないと」 「今日は私が作る。あ、でもその前に――」 ちゅっ 「じゃあな。とびっきりの料理を作ってやるから楽しみにしてろよ」 そう言って台所に駆けて行く魔理沙の頬はさっきと同じくらい、いやそれ以上に赤く染まっていた。 「……デザートは食後だっつうの」 料理ができるまでに、この頬を元に戻すのは大変そうだ。 21スレ目 963 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「なあ、お日様の香りって確かダnモガッ!?」 「しっ! そういう事は思っても言ったらダメだ それに、あれは単に 36の発想が単純なだけだろ」 「……○○の方が酷い事言ってないか ところで私はどんな香りがするんだ?」 「魔理沙の香りかぁ。そうだな、茸の胞子のにお……ちょっ!待て冗談だ! だからそんな涙ぐんで落ち込まないで!」 「じゃあ本当はどんな匂いなんだよ……」 「(グイッ)すぅ……。うん、女の子らしい甘い薫りがするな」 「なっ……!! お、お世辞言っても何も出ないぜ」 「お世話じゃないさ。その証拠に魔理沙の薫りならいつまでも嗅いでられるぞ」 「へっ? って馬鹿どこ嗅いでんだ! あっそこは駄目ひゃあっ!」 23スレ目 37 ─────────────────────────────────────────────────────────── その日魔理沙から伝えられた頼み事は、普段の突拍子もないお願いとは違う、 激しく素っ気無い内容だった 魔理沙『次の休みは体を貸してもらおう』 俺「どのようなご用件で?」 魔理沙『それはひみつなんだぜ』 俺「りょうかいなんだぜ」 妙な迫力に負けて、力仕事やらされるかもとガクブルしながら 返事した俺をよそに、休み当日の早朝、 異変明けの竹林から真っ直ぐ俺の家に来た魔理沙は、 ぽやぽやした顔で「やくそく、やくそく」と嬉しそうに呟きながら 俺をベッドに引っ張り込み、そのまましがみ付いて 幸せそうに眠ったのでした 23スレ目 136 ─────────────────────────────────────────────────────────── バレンタインに魔理沙からチョコもらったのはいいが、 「ホワイトデーは、3倍返しが基本らしいじゃないか。 乙女の気持ちの3倍なんだ、物なんかじゃ返しきれないぜ?」 って、言われたんだが……一体何で返したらいいのやら……。 ちょっと霖之助さんに相談してくるか。 23スレ目 373 ─────────────────────────────────────────────────────────── 魔理沙に不意打ちでキスしたらどうなるか、気になったので早速実行してみた 「魔理沙」 「どうしtんんっ!?」 振り向くと同時に抱きしめて唇を奪う。魔理沙は眼を大きく見開いて何が起きたか理解できない様子 小さい黒目が目まぐるしく動いているのがかわいらしい。あ、目が合った 「な、なにすんだよっ!!!!!」 「うわっ」 状況を理解した魔理沙にいきなり突き飛ばされた しかももんどりうって椅子に思いっきり頭ぶつけた 「痛ってぇ……何ってキスしたんだが」 「きっ……キスするにしてももっと雰囲気とかあるだろ! いきなりされたら私だって……その……心の準備とか……」 「いやぁ、不意打ちでキスしたら魔理沙がどんな反応するかながっ!?」 言いながら立ち上がろうとしたら急に視界が横に流れた 自分が倒れたと気づいたのは床に転がった後 「○○っ! 大丈夫か!?」 「あ……れ……? 立ち上がれない……?」 「ちょっと見せてみろ……うわ、瘤になってるぞ。急いで冷やさないと」 慌てたように台所に走っていく魔理沙 と、すぐに氷嚢を持って帰ってきた 「ほら、これで冷やしておけ」 そう言って俺の頭に氷嚢を当ててくる 一瞬ズキリと痛んだが、すぐに熱を奪われる心地よさにかわる しかし、いくら心地よいと言っても冷たいものは冷たいわけで 「魔理沙、冷たすぎる」 「少しは我慢しろ。冷やさないと大変なことになるぞ」 「せめて頭の反対側ぐらい温めてくれよ。具体的には膝枕で」 「なっ……! 何馬鹿なこと言ってんだよ!なんで私がひ、膝枕を――」 「魔理沙が突き飛ばさなければこんなことにはならなかったんだけどなー」 「そ、それはお前がいきなりキスなんかするから……!」 「ああ、床と氷嚢の両側から冷やされるのは寒いなぁ。このまま凍死しちゃうかもなぁ」 「そんな、この程度で凍死するわけが――」 「寂しいなぁ、たった一人の恋人に膝枕もしてもらえず死んじゃうのか。こんなことならもっと人生楽しんでおけば……」 「ああもうわかったよ!! 膝枕すればいいんだろ!!」 振り向いて見上げると、顔を真っ赤にした魔理沙が顔のすぐ横にすとんと座るところだった 「膝枕してくれるの?」 「おまえがやれって言ったんだろ!やらなくてもいいならやらなくてもいいん――」 「んじゃ遠慮なく」 言い終わる前にぽふっと音をたてて魔理沙の膝の上に移動する 打ち付けた後頭部には氷嚢が置いてあるので、当然うつ伏せになるわけで やわらかい感触と共にふわっとした香りが鼻腔いっぱいに広がった 「んー魔理沙の匂いがする」 「ちょっ!何やってんだこの変態!」 傷つくなぁ…… 「だって魔理沙いい匂いするんだもん。なんというか……女の子の薫り?」 「う、うるさい! すこし黙ってろ!」 黙ることにする そうすると、魔理沙の荒い息使いとか、魔理沙の心臓がドクドク脈打っている音が聞こえてきた その音をもっとよく聞こうと魔理沙のお腹にぎゅっと耳を押し付ける。びくっと震えた気がするが気にしない しばらくすると、魔理沙も落ち着いてきたのか脈もゆっくりしたものになり、呼吸と共に上下する腹部の動きも一定のリズムを刻み始める 「魔理沙」 「な、なんだよ」 「お前に膝枕されてたら眠くなってきた。というわけで寝る」 「へ? え、ちょっとまてまだ――」 まだ何か言っている魔理沙の声を子守唄に 俺は太ももに顔をうずめたまま意識を手放した。 23スレ目 909 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「いい湯だな」 「ああ、高いのを買ったからな」 今日はいい風呂の日ということで、俺と魔理沙は博霊神社の温泉に来ている 俺と魔理沙の間にはお猪口と徳利を載せたお盆が浮かんでいる 「酒の話じゃねえよ。お前ちょっと飲み過ぎじゃないか?」 「そんなことないぜ。私は酒に強いんだ」 「真っ赤な顔で言われても説得力がないな。風呂で温まってるとアルコールが回るのも早いんだから抑え気味にしとけ」 「分かったよ。なるべくそうする」 それからしばらくの間、二人でちびちびと飲みながら何を喋るでもなくゆっくりとした時間を過ごす 「なあ○○。もう少しそっちに寄っていいか?」 徳利が空になった頃魔理沙が尋ねてきた 普段なら聞きもせずに飛び付いてくるのに今回わざわざ尋ねてくるのはお互い裸だからだろうか。 「駄目なわけないだろ。魔理沙ならいつでも大歓迎さ」 「ん……ありがと」 身を寄せてきた魔理沙はそのまま腕を絡ませ、更にこてんと肩に頭を乗せてくる 空いている方の手でそっと頭を撫でてやる。濡れた髪は普段にも増して艶やかに見える 「○○……」 「どうした?」 「キス……して」 「……酔ってるか?」 「そんなことどうでもいいじゃないか。駄目?」 ああもう! そんな潤んだ瞳に見つめられて断れる訳ないだろ! 腕を魔理沙の腰に回して抱き寄せ、もう一方の手で顔を上向かせてぐいっと唇を押しつけた 後ろで茂みがガサリと揺れたが当面見なかったことにしよう 24スレ目 148 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「魔理沙ー、いるかー?」 「おう、いるぜ。どうしたんだ○○?」 「抱きしめにきた」ガバッ 「いいいいいいきなりどうしたんだ○○!?普段はこういうことしないのに」 「いや、お前が前にキスしないかって言ったから、ハグしにきた」 「どういう理屈だよ…」 「キスの方が良かったか?」 「あ、いや、その……うん」 そこまでよ!まではいかなかったものの部屋のなかは砂糖だらけ オマケに文屋にネタにまでされたけど気にしない 好きな人と一緒にいられるのだから 24スレ目 760 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「いい天気だ。なぁ魔理沙?」 「そうだな、○○。それにここには私たちだけ。いい天気、いい景色を独占だぜ」 「そうだなぁ・・・‥眠くなってきたな…ふぁ」 「お、おい。寝るなよ?」 「魔理沙ぁ、背中借りるよー」 そういうと○○は魔理沙と背中合わせになり眠りはじめた 「ちょ!?まて、寝るな……ってもう寝てる」 「Zzz……まりさぁ…まりさぁ…Zzz」 「! 私の夢を見ているのか!?」 「んむぅ…まりさぁ…かわいいよぅ…すきだぁ…zzz」 「!!!……回りに射命丸の気配はないな………よいしょっと。 それにしてもこいつの寝顔かわいいな」 ○○の頭を足の上におき、じっと寝顔を見つめる魔理沙 一方の○○はなんとも幸せそうな顔をしながら時々寝言を言っている 「油断しすぎだぜ……襲ってもいいのか?いやまて、外でそれはまずい。 しかしホントいい天気だ。私も眠くなってきたぜ…ふぁ」 しだいに魔理沙も睡魔に負け眠りについた。前かがみに 後日、文々。新聞には○○と魔理沙のキスシーンらしき写真が掲載され その日に妖怪の山からやたらとバカでかい光線が発射された 24スレ目 771 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「――よっと、ここなら見えるかな」 魔理沙は箒から降り、地面に足をついた。 互いに想いを伝えあった○○。外来人の彼の身体を、魔法の森の瘴気は確実に蝕んでいた。 永琳の診断と紫の伝手で、一度外の世界に戻って療養することになった○○は、今日博麗神社から外の世界に出る。 魔理沙は、見送りに行かなかった。行けなかったのだ。 「ちゃんと帰ってくるから」 と○○は言ったけれど、それでもきっと泣いてすがりついてしまう。 ○○の身体をきちんと治すためには、止めてはいけないのに。 上を向く。こぼれずにとどまった涙で、にじんだ青空が見えた。 空に向けて、八卦炉を構える。 (……○○) 想いを込めて、魔理沙はマスタースパークを放った。 (見てるか、○○。これが私の恋心だぜ) 光の柱は、きっと博麗神社からも見えているだろう。 (必ず、帰ってこいよ) 表面張力に耐え切れなくなった涙が、一筋頬を伝った。 元ネタは、昔つべで聞いた某曲の東方替え歌から。○○の位置には本来魅魔様が入るけれど、 ある意味では本来の歌詞より涙を誘うシチュだと個人的に思ったので、イチャスレ変換してここへ。 25スレ目 68 ─────────────────────────────────────────────────────────── 魔理沙遅いなぁ。 そう言えば向こうに居る金髪のポニテにキャミソールとミニの女の子、結構可愛いな……でも誰かに似てるような。 ……って見てたらこっち来たぞ? 「……あの……?」 「馬鹿、私だよ」 「魔理沙!?」 今の娘、魔理沙だったのか……気付けなかった。 「見た瞬間に気付いてくれよ、張りきってオシャレした私が馬鹿みたいじゃないか」 「普段のイメージと全然違うから気づけなかったよ……」 「それは私にはこんな格好似合わないって意味か?」 やば、怒ってる。 「違うよ! むしろ物凄く似合ってる。 それに魔理沙のイメージが凄くよい方向に変わったかも」 「今までどういうイメージだったのかは聞かないが……。 まぁ、気に入ってくれてるようでよし」 「うん、凄く可愛くて気に入った。 惚れ直したよ」 あ、魔理沙顔赤くなった。 そして誤魔化すために咳払いする。 「んじゃ、メシでも食おうぜ。 あ、○○のオゴリだからな」 「なんで!?」 「気づかなかった罰だ。 昼飯ひとつでチャラなんだから安いもんだろ」 「仕方ないか……」 「他の奴にばれないように口調も変えてみるかな。 ……うふふ、それじゃ行きましょっ、○○」 25スレ目 105 ─────────────────────────────────────────────────────────── 夜になると急に浴衣姿の魔理沙が尋ねてきて、近所の川まで連れ出された。 そういえば今日は七夕だったっけ。 橋の欄干に2人してもたれかかり空を見上げる。 世界を二分するかのような壮大な天の川、聞こえるのは川のせせらぎと蟲の声だけ。 まるで別世界にきたみたいだ。 「知ってるか? 天の川は愛する2人を分かつ哀しみの川なんだぜ」 「織姫と彦星? とてもロマンチックな話だよね」 「話を三途の川に置き換えたら、お盆が1年で1回だけ出会えるイベントってことになるのかね」 「似たような話はどこでもあるもんだね」 「なあ、2人でアホ面晒して星空を見上げるよりも、もっと大事なイベントがあるとは思わないか?」 「何かあったっけ?」 「……」 「ああ浴衣がとても綺麗だね! だから無言でミニ八卦炉を構えるのは止めようね!!」 「そうじゃなくて。まったく気の利かない奴だぜ……お?」 「どうしたの?」 「下を見てみろよ」 俺は言われた通りに欄干から下を覗き込む。 静かに流れる水面には、天の川を背景にして橋の上で寄り添う2人の姿が映りこんでいた。 「さしずめ今の私達は再会した恋人同士ってね、なかなかロマンチックじゃないか」 「うん、とても絵になってるね」 「鈍感なお前に期待したのが間違いだったよ……」 「……?」 「はぁ、こうなったらストレートにいくか……いいか、一回だけしか言わないぞ……」 「キス、して……」 25スレ目 264 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「○、○○ぅ」 「どうしたんだ魔理沙!?そんな今にも泣きそうな顔して!何かあったのか!?」 「○○は私のこと嫌いになっちゃうの?」 「へ?なんで俺がお前を嫌いになるんだ?」 「だって、この前『小さい胸の方が好きだ』って言ってたから。だから私の胸がヒック…大きくなったらヒック、嫌われ……うわぁぁぁん○○!!わたしのこと嫌いにならないでえええ!!お願いだからずっと側にいてえええ!もう、もう独りは嫌なんだよぉぉぉ!!」 「おい魔理沙落ち着け!」 「嫌ぁ!絶対離さな――」 ぎゅっ 「?!」 「落ち着いたか?ちゃんと俺の話聞こえてるか?聞こえてたら一回頷いて」 「よろしい。お前に言いたいことが2つある。第1に、俺が魔理沙を嫌いになるわけがないってことだ。そんなことは絶対にありえない」 「でも、小さい胸が好きだって――」 「それだよ。第2に、俺は小さい胸が好きなんじゃない。お前の胸が好きなんだ」 「じゃあ、私の胸が大きくなっても……」 「何度も言わせるな。俺が好きなのは胸の大きさじゃない。常に最新の魔理沙が大好きだ」 「じゃ、じゃあずっと私を好きでいてくれるの?」 「ああ」 「ずっと側にいてくれるの?」 「ああ」 「私を独りぼっちにしない?」 「ああ!」 「○、○○ぅ!!!」 「おい、また泣くのかよ……まあ、今度のは仕方ないか」 結局、泣き付かれた魔理沙はそのまま寝てしまった 手を放してくれなかったのでその日は何もできなかった。 後日談 「○○!見てみろ!」 「今度はどうしブッ!」 「私が○○を想う強さと胸の大きさが比例したんだな、Gカップはあるぜ。おっと、乙女の胸に気安く触っちゃダメだぜ☆」 「……」イラッ プスッ パァン! 「……」 「……」 「……右の風船も割ろうか?」 「……遠慮しとくぜ」 25スレ目 545 ─────────────────────────────────────────────────────────── ○○「なぁ魔理沙」 魔理沙「断るぜ」 ○○「無視して言うが、浴衣にトンガリ帽子はどうよ?」 魔理沙「だから断ると言っているぜ。これはわたしが魔女である証だ!わたしの魂だ!」 ○○「ま、確かにそのままでも充分カワイイけどね」 魔理沙「む、そりゃ含みが有る言い方だな」 ○○「風情と情緒を代償に奇抜さと斬新さを得たとだけ言っておく」 魔理沙「む~~………」 ○○「ちなみに、こちらにエプロンドレスと浴衣を感性に任せて合成した外界流ミニ浴衣がございます。 どうせやるなら行き着く所まで行ってしまうのも一つの手かと」 魔理沙「ハァ……わかったよ、ごまかされてる気がするがそれにするぜ」 25スレ目 723 ─────────────────────────────────────────────────────────── 月見と言ったらお月見団子だろ というわけで魔理沙と二人でお月見団子を作ってみた 小さくてきれいな丸型になのが魔理沙が作った団子 大きくていびつなのが俺が作った団子 団子の山を二つ並べると、その差は歴然としていた 魔理沙の作った団子はつやつやしてて美味しいな、と言ったら ○○の作った団子は食べ応えがあって美味しいぜ、と返ってきた 肌寒くなってきた夜空も、お互いの体温をより感じられるなら悪くはないな、と 肩に寄り添う頭を撫でながら思った 25スレ目 932 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「まさかあんたが結婚とはねぇ」 「なんだ、そんなに意外か?」 「意外よ。物凄く」 ここは魔法の森の人形館、つまりアリス亭。 「魔理沙みたいな奇特な子に結婚申し込むあの人は相当奇特ね」 「おいおい、私は普通だぜ?」 魔理沙とアリスは紅茶を啜りながら何気ない会話を交わしていた。 「……あとあいつへの悪口は許さないぜ」 「あら、冗談よ?」 「そうでなかったらこの家全部マスタースパークで消し飛ばすところだぜ」 「あなたが奇特、って所はわりかし冗談でもないけど」 「なんだと?」 軽く睨む魔理沙の視線をアリスは軽く受け流し、作り置きのクッキーに手を伸ばす。 むぅ、と魔理沙は一回唸ったあと睨むのをやめて自分もクッキーに手を伸ばした。 「魔理沙は」 「ん?」 「緊張しないの?」 「なにがだぜ」 「結婚よ」 魔理沙はアリスの問い掛けに少しだけ考えた。 「……うん、式は緊張するかもな」 「式だけ?」 「あいつとの生活自体は結婚してようがしてまいが変わらないからな」 「そういうものなの?」 「私はそう、ってだけで他人に当てはまるかどうかはわからないぜ」 「ふぅん……」 またクッキーに手を伸ばす二人。 少しだけの沈黙。 魔理沙が口の中に残っているクッキーを紅茶で流したとき、アリスが口を開いた。 「……ちょっと早いけどね」 「ん?」 「結婚祝い、作ったのよ」 「本当か?」 「本当よ。ちょっと待ってて」 アリスはタンスの一番下の段から大きな紙袋と、小さな紙袋を一つづつ取り出してテーブルの上に置いた。 「はい」 「早速開けていいか?」 「いいわよ」 「じゃあこっちの大きい方から開けるぜ」 「蝮とか百足とか毒蜘蛛入っていても知らないわよ?」 アリスの軽い皮肉を無視して魔理沙は袋の中身を確認した。 二つ、大きくYesと書かれた枕が入っていた。 「あはは、これイエスノー枕って奴か? 夜の意思表示が出来るって……い……う……」 「どうしたの?」 「なぁ、アリス? 何で裏面もイエスなんだぜ?」 「あら、ノーにしたい日なんてあるのかしら?」 「い、いや、確かに無いが……で、でもこれじゃあイエスイエス枕じゃないか!?」 「問題ないじゃない」 「いや、まぁそうなんだが……って何言わせてくれてるんだ! と、とにかく有り難く頂戴するぜ! 小さい方も開けるからな!」 「はいはい、どうぞ」 アリスの微笑に顔を真っ赤にしながら小さい紙袋を開けていく魔理沙。 「全く……これは人形?」 その人形は、魔理沙と彼ににとてもよく似ていた。 「どうかしら、かなりうまく作れたと思うんだけど」 「……あぁ」 魔理沙から返ってきたのは生返事。 でもアリスは怒らない。 何故なら、魔理沙が自分の作った人形に見惚れてくれているから。 魔理沙が二人の人形の手を繋がせたり、背中合わせにしていたりしたから。 「……アリス」 「うん」 「ありがとう」 「……改まって言われると何か照れるわね」 「……帰るぜ。はやくあいつにも見せてやりたい」 「わかったわ、またね」 「ああ」 玄関に立て掛けてあった箒を手にとり、ふわりと浮き上がる魔理沙。 そして飛び立とうとした時、 「魔理沙!」 「ん?」 「言ってなかった。……結婚おめでとう」 「……ありがとう」 帽子の鍔で表情を隠した魔理沙は、そのまま大空に向かって加速した。 25スレ目 936 ─────────────────────────────────────────────────────────── ○「魔理沙、わかってるな」 魔「ああ、わかってる」 さわさわ ○「これ以上はヤバいぞ」 魔「わかってる。私だって蒐集物をおじゃんにはしたくない」 なでなで 魔「んっ……でもこれぐらいなら」スリスリ ○「おい馬鹿…!膝の上に座るだけでも危ないのにそんなことしたら……!」 カサッ ○「……なんか崩れ落ちたぞ」 魔「私と蒐集品……どっちが大事?」 くそっ……そんな切なげな目で見上げられたら応えないわけにはいかないじゃないかっ……! ○「悪いのはお前だからなっ――」 魔「んんっ!……ちゅ……はふぅ……」 ○「……ぷはっ。お前が一番大事に決まってるだろ」 魔「はぁ……はぁ……ばか」 ぎゅっ 26スレ目 183 ─────────────────────────────────────────────────────────── いくらトシを食っても、時折、一人で眠ることが怖いことがある。 特に電気があまり発達していない幻想郷は、暗くなると中々どうして明かりを確保しにくい。 「ああ、しまった。寝る前だから盛り上がるだろうと思って、怖い本を読んでしまったのは失敗だった」 そういうことだった。 無理矢理眠ろうとすれば寝られるのが人間の便利なところなのだが、割り切れるほど強くも無い。 「よう、お邪魔するぜ」 「うわッ、魔理沙か」 「何故に驚くのかが理解できないな。いつものことじゃないか」 ノックもしないのはどうなんだ、と反論したい。 だが、人が増えるのは都合が良かった。 「眠るところなのか?」 「こんな時間だしな」 「そうか、わかったぜ」 そうして、魔理沙が鞄から寝巻きを取り出す。へえ、と小さく頷き、 「え?」 「だから、一緒に寝るんだろ?」 「なんでそんな話になったのかが分からない。理解させてくれ」 「別に赤の他人と眠るわけじゃないんだから構わないぜ」 寝巻きにパッパと着替え、そのまま布団の中に入り込んでくる。 「……なんでここに来た」 「今日は一人で眠れる気分じゃなかったから来たんだぜ」 まあいいや、と思う。人の温かみがあるだけで、こんなにも違う。 「じゃあ、おやすみ」 「ああ、おやすみ――しかし、まいったな」 なにが。表情でそう質問する。 「やっぱり、好きな人と眠る方が気持ちがいいな」 ああ、 それなら、いいや。そうして、眠ることにした。 「一緒にいさせてやるからな」 魔理沙が手のひらを優しく握り締めてきたが、それでもよかった。 26スレ目 525 ─────────────────────────────────────────────────────────── 魔理沙が「白玉楼は12時以降は全員就寝か……」とぶつぶつ呟きながら良からぬ事を考えていたので 背後から抱き締めて耳元で 「おとなしく一緒に寝るか、一悶着あった後に無理矢理抱き枕にされるか、どっちか選べ」 って囁いてみたんだ。そうしたら 「む、無理矢理抱き枕が……いい///」 魔理沙さんそれもう無理矢理じゃない 26スレ目 621 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「○○いた~。といっくおあとひーと」 仮装パーティーと言う名の宴会が始まって早数時間 自称宴会マスターこと魔理沙は開始早々から酒瓶を片っ端から空けた挙げ句、呂律も回らない状態になって戻ってきた 魔理沙は黒を基調とした背中に羽と尻尾の付いた悪魔の仮装をしていた……はずなのだが どこから拾って来たのか頭にはジャックオランタンの帽子を被っていた 「何言ってるのか分からねえよ。とりあえず水を飲め」 「お菓子じゃないとだめだぜー。甘いものをくれないといたずらしちゃうぞ~」 座っている俺の膝に乗り、胸に顔をうずめてくる魔理沙。こりゃ完全に酩酊状態だな 水を飲ませる必要があるのだが、何度飲ませようとしても「甘いものじゃないとやだ」の一点張りで飲もうとしない こうなったら最後の手段を使おう。コップの水を口に含む用意をしておいて 「魔理沙、甘いものをあげるからこっち向け」 「甘いものってなんっ!?……ちゅ……こくっ……」 「……くちゅ……ん……」 肩に回した腕と頬に添えた手で逃げられないようにがっちりホールドして、魔理沙の口腔内に水を流し込む 最初は強張っていた魔理沙だが、すぐにコクコクと喉を鳴らして水を嚥下する 口に含んだ水が無くなっても、唾液すら飲もうとばかりにざらっとした舌を絡めてくる こっちも負けじと舌を絡める。魔理沙の歯の裏側をこそげとるように舌を動かすと 残っていた酒の味がじわっと舌先から伝わって来た 「ちゅ……ぷはっ。ふぁぁ……。っ…!い、いきなりなにすんだよ!」 「少しは酔いがさめたか? 顔真っ赤になってるぞ」 舌を離した後も放心状態だった魔理沙だが、回復したと思ったら顔を真っ赤にして怒り出した 「酔ってるのはお前だ!周りを見てみろ!!」 言われて辺りを見回すと…… あっけにとられている顔 顔を真っ赤にして目を逸らす顔 ニヤニヤ笑いながらこっちをみている顔 目線を下にやると、ますます顔を真っ赤にして涙目で見上げてくる魔理沙 本人としては睨んでいるつもりなんだろうけど、上目遣いでやられても迫力がない、どころか誘っているようにしか見えない 「……魔理沙」 「なんだよ」 「毒を食らわば皿までって知ってるか」 「…っ!!」 返事する間も与えずもう一度唇を塞いだ 周りからおおっという歓声がしたが気にしない。さっきより強く、さっきより深く口付け合った 翌朝、自分の取った行動の恥ずかしさにのたうち回るのは別の話 26スレ目 744 ─────────────────────────────────────────────────────────── ここは、とある魔法使いの家。その家の屋根の上で○○はボンヤリと景色を眺めていた 秋も深まって寒くなってきたが、たまにこんな暖かい日もある 今日は自分のほかにも、こうして日向ぼっこしている人がいるかもしれない そんなことを考え、起きるともなく寝るともなく、横たわっていた この家の主である恋色魔法使いは、現在研究に没頭している 一応、恋人同士であるが、このような場合も珍しくはない というと、何だか倦怠期を迎えているのかと思われそうだが、そうでもない 何も、四六時中ベタベタするだけが恋人というわけでもないだろう。 少し眩しいので目を細める。寝転がっている私の目には綺麗な青空が映っていた 所々に雲がのんびりと流れている。あたりは静かなので鳥の鳴き声や木々が風になびく音もよく聞こえるのである 「空は…青か」 ボンヤリとした頭で私は何となくそんなことを考えた 「雲は…白。葉っぱは緑。木は茶色……太陽は黄色で…」 とりとめもなくそんなことを考えていたとき、急に私の視界に影が差した ハッとして上を見ると、この家の主、霧雨 魔理沙がいつの間にかそこに立っている 「何だ、○○寝てるのか?風邪をひいても知らないんだぜ?」といって心配そうな顔をしている 「いや、大丈夫。ちょっとウトウトしていただけだよ」 私がそういうと、魔理沙は「そうか」と少し笑いながら言った。そして、おもむろに私の横に座った 「なかなか、屋根の上も気持ちがいいもんだな」といって、少し背伸びをした 風がまた優しく吹いている。魔理沙の綺麗な髪が風に吹かれてお日様にキラキラと輝いていた 何とはなしに見とれていると、「な、なんだよ。あんまり見つめないでくれ」と恥ずかしそうに帽子を目深くかぶってしまう そんな彼女を見ていると、ふと疑問がわいてきた 「魔理沙…恋は何色なんだ?」 「ふぇ?…な、急にどうしたんだ?」と真っ赤になって少しあわてている 「いや、何となくね。知らないのか?……恋色魔法使い様でも、わからないんだねぇ…」 と私がいうと、少しプライドに触れたらしく、さらに真っ赤になってこういった 「よーし、そこまでいうのなら教えたやるぜ!あ~……少し目をつぶってくれ」 言われたとおり目をつぶると、「ぜったいに目をあけるなよ?」と念を押してきた 「はいはい、わかったよ」と言いかけたとき、私の唇を魔理沙の唇が塞いできた そのまま、彼女の体を抱きしめながら、しばらくお互いの唇を重ねあっていた やがて、お互い名残惜しそうにゆっくりと唇を離すと、細い唾液の糸が光っていた 「どうだい、恋が何色かよ~くわかっただろ?」といって、少し赤くなりながら魔理沙はいった ああ、これが恋の色なんだなと私は思った。そして、答える変わりに、もう一度彼女を抱きしめたのだった え、恋は結局何色だったのかって? まあ……それは、秘密ってことd 26スレ目 757 ─────────────────────────────────────────────────────────── 人の里を歩き回ってはや数時間。ただの人間である○○と魔理沙は、休憩所で腰を下ろす。 それまで両者はずっと手を握っていて、そして今もなおそうしている。魔理沙は笑顔で、○○は やや緊張した面持ちで。 「なあ、魔理沙」 うん? と魔理沙が視線を傾けてくる。 ずっと肌と肌とが触れ合っていたからか、溜まっていた感情が爆発しただけなのか。 「おっ」 ○○は、魔理沙を抱き寄せる。そうしたくてたまらない、好きでどうしようもなかった。 「魔理沙。俺はただの人間だし、勇気もないし、能力もない。だからこそ、俺のことを好きでいてくれて 本当にありがとう」 きょとんとした表情の魔理沙だったが、やがては笑顔となり、 「なんだ、そんなことか。気にするなって、能力持ちの方が珍しいんだから」 多分、と言い加え、 「それにさ、お前はずっと私のことを見てきてくれたんだろ? なら、言うぜ」 そうして、魔理沙はいつも通りの笑顔で言うのだ。 「ずっと私だけを見ていればいいぜ」 目のゴミを取るかのような気軽さで、魔理沙は○○に小さな口付けをする。 「ずっと一緒にいてくれるんだろ?」 当たり前の回答をするはずなのに、口が動かない。何を考えているのか自分でも 全く分からなかったし、呼吸すら自然と忘れていたのかもしれない。そんなことも 把握できていなかった。 そうして数秒後に、 「ああ、当たり前じゃないか!」 言ってやった。 魔理沙は満足そうに、歯を見せながらにかりと笑っていた。 26スレ目 781 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「よし、ポッキーゲームをしようぜ」 「唐突だなー、突然だなー」 「人生そんなもんだ。さ、ポッキーがここに一本あるからやろうぜ」 「ほいほい」 しゃあないとばかりに、魔理沙から差し出されたポッキーを口に含む。 そんな○○を見て、魔理沙ときたらケラケラ笑っているのだ。 「んむう」 ポッキーゲームなんて遊びは始めてなもので、緊張してしまう。 ましてや相手は魔理沙、好きな相手も魔理沙。その魔理沙がほぼ近距離に いるのだからたまらない。 「んー」 ポッキーゲームっておっかないなぁとか思っていれば、既にポッキーの半分が 無くなっており、ぼりぼりという音とともに魔理沙が至近距離にまで突撃していた。 「!?!?!?!?」 バクつきながら○○に近づき、当たり前のように魔理沙と○○と唇とが触れ合う。しかも ちょっとした接触ではなく、深く、長く、味わうように口付けをされた。 「ん~~」 魔理沙が声を唸らせながら、その両手を○○の首に回す。 ○○も魔理沙のペースに飲まれたか、いつの間にか魔理沙の両肩を柔らかく掴んでいた。 「ポッキーゲームって楽しいな」 にっかりと、何事もなかったかのように魔理沙が笑っている。 全く、こいつは、 そんな魔理沙が好きだ。 26スレ目 862 ─────────────────────────────────────────────────────────── 145 :名前が無い程度の能力:2009/11/26(木) 01 20 37 ID koHwDvv20 炬燵に魅了されて行動範囲が狭まった魔理沙の眼前に蜜柑を差出し、 食べようと身を乗り出してくるのを見計らい徐々に引き寄せて、 蜜柑を食べたいが炬燵から出たくないというジレンマで悩む魔理沙を勢いの限り愛でたい 151 :名前が無い程度の能力:2009/11/26(木) 15 48 52 ID 5gDSVVwk0 145 やってみたらミニ八卦炉を突き付けられて「今すぐ蜜柑を渡すか黒焦げになってから渡すか選べ」と脅された しかも「反省の印として皮をむいて食べさせろ」って・・・ まあ、むき終わるのはまだかとこちらの手元をそわそわと覗きこむ様子が可愛いいから良いんだけどね はいむき終わったよ。え?食べさせるのがまだ? 『食べさせろ』ってそういう意味だったの!? 仕方ないな……ほら。あ、こら魔理沙それは蜜柑じゃなくて俺の指だ 27スレ目 145, 151 ─────────────────────────────────────────────────────────── ふむ。やってみる価値はあるな というわけで魔理沙に愛してると言ってみた 「知ってるぜ」 あれ、反応薄いな。顔真っ赤にして慌てるリアクションを期待してたんだけど 「そりゃあ、毎日毎日愛してるって言われたら流石に慣れる」 呆れたような視線を送り返してくる。そうか、同じ言葉を言われ続けたら飽きても仕方ないか 今日からは少し控えるようにするよ 「え!? あ、いやそんな意味で言ったわけじゃ――」 急に慌てはじめる魔理沙。その頭にぽんと手を乗せてくしゃくしゃと髪をかき回してやる 突然の出来事に「あ……え……」と間の抜けた声を出していたが、からかわれた事に気づいたのか顔を真っ赤にして手を振り払われた 「お前わざと言ったな!!」 はて何のことだか 「乙女心を弄んでおいて、このっ!」 うわ暴力はやめ―― すとん。と腕の中に軽い感触 思わず瞑った目を開けると、すぐ下に金色の髪と小さな体 「何度言われてもうれしいに決まってるだろ。ばか」 知ってるよ 本当?と見上げてくる魔理沙の頭をゆっくり撫でる。今度は振り払われなかった 愛してるって言う度にお前の口元がうれしそうに緩んでるんだ。わからないわけがないだろ? 「……もう一回だ」 ん? 「もう一回愛してるって言え。それで許してやる」 お安いご用で、と背中に回された腕をほどいて体を離し目線を合わせる 愛してるよ魔理沙 「……ふん」 ぷいっと後ろを向いて行ってしまった だが、その顔がさっきよりうれしそうだったのは見逃さなかった 27スレ目 375 ─────────────────────────────────────────────────────────── 魔理沙を訪ねてみればリボンでこんがらがって転がっていたという…… 「えーと……見なかったことにして立ち去るのと、記憶に焼き付くだろうけどこのまま助けるのとどっちにしようか」 「両方」 「無茶じゃね!?」 「そうだ! 目隠しで助けてくれればいい! それで万事解決だぜ!!」 「落ち着け!!」 その後何でこんがらがってたのかわからない振りして、魔理沙が自分で理由を言うまで問い詰めたい。 小一時間ほど問い詰めたい。 27スレ目 450 ─────────────────────────────────────────────────────────── 胡散臭い遺跡が見つかったから、そこに行こうと魔理沙に持ちかけられた。 勿論「危なさそうだから嫌だ」と断ったのだが、魔理沙ときたら引っ張り出してきた。こういう時は 人出が欲しい、とか言って。 そうして辿りついた場所は、幻想郷には似つかわしくない遺跡だった。極めてエジプト臭い。 アクション映画を少しかじった身からすれば、絶対的に嫌な予感がする。しかし魔理沙の足は止まらない。 「面白そうな場所だな。ここに宝が転がっていなかったら訴えられるんじゃないのか?」 「帰りてえよお」 「弱音を吐くなよ。山分けする程度の知能ならあるぜ?」 「山分けなんざいいから命をください」 そいつは出来ない相談だな、とばかりに魔理沙はすたこら。非難がましい目で見つめる、が。 そんな勇ましいひねくれ魔理沙が、○○は好きだった。 「スカラベだーッ!!」 「うわっ、なんだこれっ?」 「ッ! このっ、やめろっ!!」 魔理沙の衣服に貼りついたスカラベの一匹を、気合ではぎ取る。それを地面に投げ捨て がしがしとスカラベを踏みつける。 「悪い!」 「いいから何とかして!」 スカラベは、魔理沙のスペカでどうにかした。こんな場所でマスタースパークは着火出来ないが。 「魔理沙危ないッ!!」 魔理沙はとっさに箒を真横にし、スケルトン兵の剣を防ぐ。しかし魔理沙は細腕であり、力負けしているのだが、 「やめろーッ!!」 怖さを怒りで破壊し、スケルトン兵めがけタックル。意外とあっさりと吹き飛び、 「マジックミサイル!」 緑色の矢が発射され、スケルトン兵が粉砕される。あっけなかった。 「また助けられたな」 「いやいや」 「お前、こういうこと向いているんじゃないのか?」 「まさか」 苦笑する。でも、何だか体温が上がってきた。楽しくなってきた。 「二人同時にこのボタンを押さないと、焼かれるらしい」 と、石版には描かれてある。 「そうか」 そうして、○○はためらうことなく人差し指をボタンに向ける。 「なんだ、命はもういらないのか?」 「お前も押せ」 「へいへい。でも、何でそんなあっさりと、怖くないのか?」 確かに怖いことは怖い。 だが、ボタンを押す相手は、 「お前と一緒なら怖くない」 気取るように笑う。魔理沙はきょとんと眺めた後、 「ああ、私のことが好きなのか?」 にっこりと笑った。 「ああ」 「そうか、やっぱり私は想われていたらしい」 そうして、 あっさりとボタンを同時に押した。 28スレ目 626 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「異変解決に行かなくていいのか?」 「こんな寒いのに出かけるのは嫌だぜ」 「また霊夢に先をこされるぞ」 「手柄なんてくれてやるよ。それよりもっと強く抱きしめろ、寒い」 「はいはい」 「んっ……」 うちの魔法使いは駄目だ 28スレ目 758 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「魔理沙、これを着てくれ」 「ん」 水着だった。 「魔理沙、これを着てくれ」 「ん」 ワンピースだった。 「魔理沙、これを着てくれ」 「ん」 バニーガールだった。 「少しは照れるという風情はないのかぁ!?」 「ん? お前は私を見て喜んでくれるんだろ? なら、それでいいじゃないか」 そう言われると、その通りであるので仕方が無かった。 28スレ目 800 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「よー○○、お邪魔していたぜ」 他人の家にお行儀よく不法侵入するは、霧雨魔理沙である。 勿論これが初めてなどということはなく、手慣れた調子でこれを繰り返しているのだ。 およそ朝七時。まだ朝早く、○○が目覚める時間帯ではないことも魔理沙は知っている。 雀の声が空気に弾み、明るくなった世界に染まりきっていない冷たい空気の中で、 「まだ寝ているんだな。まあ知ってたが」 帽子をとり、そのまま○○が眠っている布団の中にもぐりこんだ。 「さて、寝るか」 ○○と向き合いながら寝転がり、自分の手を○○の手に重ねる。 「おやすみ」 そうして眠った魔理沙の顔は、随分といい笑顔だった。 28スレ目 806 ─────────────────────────────────────────────────────────── ○○「へぇ~魔理沙って料理も上手かったんだな」 魔理沙「へへっ、まぁ私も女だからな」 ○○「これなら男から引く手数多だろうな」 魔理沙「よせやい、褒めすぎだぜ」 ○○「いやいや、これなら毎日食べてても飽きないぞ」 魔理沙「……それなら、毎日作ってやろうか…? 」 ○○「からかうなよ、そういうのは未来の旦那様にやってやりな」 魔理沙「…そうだな、お前の言う通りだな」 次の日から魔理沙が弁当を作って俺のところに来るようになった。 こいつ、俺の言ったこと分かったんじゃないのかよ…。 28スレ目 857 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「出来たぁぁぁぁッ!!」 立体物が出来た、渾身の一作だ。 作業の最中は、怠惰にもなったし嫌にもなったし興奮したこともあった。しかし完成が 近づくにつれて、言いようのない高揚感と、睡眠時間をやけに気にするようになってしまったものだ。 「さて、寝よう」 喜ぶのは明日だ。今は体力が失われてしまっている。 「よお、一人で眠れないからここで寝、ん?」 脈絡のない来訪者にビビリが入るが、その本人、霧雨魔理沙も目を丸くして何かを見つめている。 視線の先は、間違いない。今完成したばかりの立体物だ。 「あ、それは、」 「お! 遂に完成したのか。いいなあ、凄く上手いじゃないか。完成品ってすこぶるたまらないよな」 魔理沙も何だかんだいってクリエイターであるから、こういうところは分かってくれているのだろう。 「少し触っていいか、少しだけ」 「ああ、構わない」 他でもない魔理沙の頼みだ。 ためらいはなかった。 「よし――よし、うん、満足だ」 「いいのかい? 凄く短かったけれど」 ああ、と魔理沙は頷き、 「お前が作ったものを最初に触るのは、私の役目だ。何といったって、お前は私のものであるし、私は お前のものなんだからな」 表情を変えず、一切こんなことを言える魔理沙は凄いと思う。もう大好きだった。 28スレ目 881 ─────────────────────────────────────────────────────────── 魔理沙は魔法の研究とかで俺が先に寝ることが結構多いんだ それで翌朝起きると俺の腕を枕にして寝てるわけ。当然魔理沙をどけて起きるなんて事できるわけ無いから 仕方なく二度寝を決め込むんだけど、そうすると次に目がさめたときに魔理沙はもう起きていて 「私より先に寝たくせに遅く起きるとはねぼすけだな」と得意げに言ってくるんだ その顔が可愛い過ぎるせいで俺はずっとねぼすけのままだ 28スレ目 913 ─────────────────────────────────────────────────────────── 魔理沙「よう、○○!」 ○○「魔理沙…その格好は…」 魔理沙「ああ、これか… 私の○○がさ…私の物のくせに浮気性だから… 取り戻そうと思って私も、強くしてもらったんだよ…」 ------弾幕ごっこ終了後------- 魔理沙「○○ーーーーーッ!」 魔理沙「○○、お前に…お前にだけは見捨てられたくないんだよ…」 魔理沙「さあ、こいよ○○!目ぇ覚ましてやるよ!」 そして魔理沙は落ちる。 (編者注:元になった 738~ 743の流れは「ブレスオブファイアⅤ」のものと思われる) 29スレ目 850 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「という訳で魔理沙。お前も能力使うの禁止な」 「嫌だぜ」 「やけにきっぱり言うな。それに普段から魔法をそれほど使ってるわけじゃないだろ?」 「だって……恋の魔法が解けてお前が私を好きじゃ無くなったら嫌なんだ……」 「……お前まさか、俺に精神干渉系の魔法かけて無理やり好きにさせてないだろうな」 「!? そ、そんなことしてない! 私はそんな卑怯なことしないぜ! 信じてくれ!!」 くすっと笑って、必死な形相の魔理沙を抱き寄せた 「冗談だよ。魔理沙はそんなことしないって、俺が一番分かってる」 「なっ…!こ、この馬鹿野郎!!」 「ごめんごめん。泣きそうな顔のお前を見たらついからかいたくなったんだ」 「このばか……。絶対許さないぜ」 「それは困るな。何でもするから許して欲しい」 「じゃあ、もう少しこのまま」 「お安い御用で」 ぎゅっ 30スレ目 225 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「へへっ、おじゃまするぜー」 「……魔理沙うちに泊まる時いつも人の布団の中に入りたがるよな」 「んー、実を言うとさ、昔香霖と一緒にこうやって眠ってたんだ。 で、懐かしくなったんだけど今更一緒に寝てくれなんて言えないだろ? だから○○なら許してくれるからこうやって一緒に眠ってるんだぜ」 「そうか……」 「そうだぜ。あ、寝てるからってヘンなことしちゃだめだぜ。胸揉むくらいなら許すけど」 「揉むほどないくせに」 「……そのうち大きくなるもん。じゃおやすみー」 (……俺、魔理沙に兄代わりにしか思われてないのかぁ。ちょっと悲しい。こっちは心臓バクバクで眠れそうにないのに) ――後日 「はぁ? 魔理沙がそんなこと言ってたのかい? 僕は一度もそんなことした覚えはないよ」 「えっ?」 「……まぁ、そのうち魔理沙もちゃんとお願いしてくると思うよ。そうか、もうそんな年になったんだな……感慨深いな」 その頃魔理沙は一人でほくそ笑んでいた。 (ふふっ、香霖には悪いけど、まだこの手は使わせてもらおう。……いつかはこんな言い訳せずに一緒に眠れるようになるといいなぁ) 30スレ目 458 ─────────────────────────────────────────────────────────── 探究心の強い魔理沙の場合、色々試してみるけど結局呼び捨てに戻る、ってのもいいな 「○○……じゃなかった。えーと、こほん……だ、ダーリン?」 「なんだいハニー」 「うあ、なんでそんなさらっと返せるんだよ。 あーだめだ、私には合わないぜ。やっぱり名前で呼ぶことにする」 なんてのを繰り返したりとか ※編者注:関係によって変化する○○への呼称、という話題で 31スレ目 863 ─────────────────────────────────────────────────────────── なんとなくそうめん食ってたけど 幻想郷じゃそうめんも簡単に食えないんじゃないかなぁとか思った 茹でるのにかまど使って汗だくになり 冷たい水確保するのに汗だくになり そうやって食べるそうめんのなんと旨いことか! と思ったら、いつの間にか家にいた魔理沙にあらかた食われていた とか 32スレ目 85 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「魔理沙、少しは片づけた方がいいよ」 「……後でやる」 「洗濯物もだいぶ溜まってるよ? ――洗濯しないでドロワを積んでおくと、ドロワタケが生えてくるよ」 「!?」 「さすがに自分の恋人がそんなことになるのは嫌だし、仕方ない、俺が……」 「い、いやいい! なんだか洗濯でもしたい気分になったし私がやる!」 「いくらなんでも自分のドロワをあいつに洗濯されるのは恥ずかしいな。 あ、でも二人で一緒に暮らすようになったら家事を分担したりして…… うん、なおさら駄目だ。嫁入り前からドロワ洗わせるなんてお嫁さん失格だぜ」 魔理沙は変なところで乙女だったりするような気がする 32スレ目 611 ─────────────────────────────────────────────────────────── 外でやるような愛情表現を幻想郷なりにやるとかもいいよね 魔理沙「ブレイジングスターを5回光らせて――」 あ・い・し・て・る 魔理沙「――のサインだぜ!」 ○○「嬉しいけど、妖精とか毛玉とか色々巻きこんでるぞー」 32スレ目 637 ─────────────────────────────────────────────────────────── さて・・・クリスマスイブだ。 ケーキよし、ワインよし、チキンよし、と。 おっと、来たな。 「おじゃまするぜ~」 いらっしゃい、準備は出来てるぞ。 「お、○○の料理はおいしいからな、楽しみだぜ」 毎回来ておきながら何を言うか。 ま、とりあえず 「「メリークリスマス!」」 32スレ目 661 ─────────────────────────────────────────────────────────── ふう、今日は暑かったぜ… 春になったと思ったらこれだもんなあ。 夜になれば肌寒いものの、もう春も半ば。 霧雨魔理沙は飛んでいた箒から降りて思った。 ふと見ると、思い人の◯◯が玄関先にいた。 「よう魔理沙。今日も遅かったな。」 「◯◯!でもこんな遅くにどうしたんだ?」 嬉しそうに声を弾ませる。◯◯もにこやかにこう言った。 「日頃お疲れの魔理沙ちゃんに腕枕でもしてあげようと思ったんだ。俺も魔理沙の近くで眠れるし、一石二鳥だろ?さ、中に入ろうぜ。」 「そりゃいいかもな。巷で流行りの腕枕かー。…て、はっ!」 「どうしたんだよ魔理沙」 (今日は森を歩き回ってすげえ汗かいたんだった…女のくせに汗臭いまま◯◯に腕枕なんてされたら…他の子はいい匂いとか言われてるのにかっこ悪いし恥ずかしいぜ…!) 「あっ、明日早いんだった!き、今日は悪いけど一人で寝たいなあ~なんて…」 「でも待ってたんだぜ?会いたかったから眠気を我慢して来たのに」 「でっでも…」 「じゃあ仕方ないからお姫様抱っこもつけてやるよ。意外と甘えん坊なんだよな魔理沙は。」 ひょい、と持ち上げる。 「きゃっ!」 普段は男言葉な魔理沙が、女の子らしい声を出す。しかも赤面付き。 「今日はやけにかわいいな!暴れると落ちちゃうぜ?さ、姫、ベッドへ…」 「◯◯のばかあー!!」 「うぐっ!?」 あわれ◯◯に右ストレートが入る。 家の中に走り去る魔理沙。 次の日から、魔理沙は体用の消臭剤の研究に入ったという。 (わたしだって、◯◯と腕枕したいんだぜ…) 33スレ目 112 ─────────────────────────────────────────────────────────── ○○「お前のリボン結構痛んでるな」 魔理沙「ああ、毎日つけてるしな」 ○○「このリボン・・・」 魔理沙「ん? 私にくれるのか、プレゼントか?」 ○○「そ、そうだ」 魔理沙「ありがとな」 ○○「ほら、結んでやるから。こっちこい」 魔理沙「こ、これでいいか」 魔理沙「どうだ似合ってるか?」 ○○「似合ってるよ」 魔理沙「なんで、ずっと顔真っ赤なんだ?」 ○○「し、知らん!」 紅魔館の図書館でのパチュさんとの会話 魔理沙「よう、また借りに来たぜ」 パチュ「盗みに来たんでしょ。前の持ってった本返しなさい」 魔理沙「また今度な」 パチュ「くっ・・・。ところであなた、リボン変えたのね」 魔理沙「○○がくれたやつだぜ。似合ってるだろ!」 パチュ「そうね」 魔理沙「○○は顔真っ赤にして結んでくれたけどな。なんでだろうな?」 パチュ「あなた魔法使いなのに『結び目の呪』を知らないの?」 魔理沙「なんだ、それ?」 パチュ「相手の意識を縛る術。相手を束縛するための魔術よ」 魔理沙「それって・・・」 パチュ「あなたがどこでもかしこでも飛んで行くから、飛んで行かないようにしたかったのね」 魔理沙「ちょっと、○○の所に行ってくるぜ」 パチュ「・・・・・・まったく・・・魔法使いのくせに知らないなんてね」 魔理沙はきっと攻撃系の術とか魔法以外は知らないと思うんだ。 いぬかみ!に目を通してたら『結び目の呪い』が出てきて、ちょっとだけ使って見たくなったんだ。 留まることのない豊作の風を縛って捕まえれるのだから、白黒の魔法使いも捕まえられない訳がないさ 33スレ目 380 ─────────────────────────────────────────────────────────── 里で目に付いた線香花火、何を思ったのか購入していた 家に帰り夕飯の支度中に居間から誰かが歩く音が聞こえてきた 夕飯の分量を一人前多くして調理続行、完成。 二人分の料理を盆に載せ居間へ戻ると案の定彼女がリラックスしたようすで座っていた 「お邪魔してるぜ」 「せめて家主に挨拶ぐらいしろよ」 「今したぜ?」 「言うと思ったよ」 「それじゃ、いただきます」 俺が作った料理を魔理沙は遠慮のかけらもなく食べ始める。 いつものことなので俺も気にせず食事を始める 食後、食器を運び終わった俺に魔理沙は満面の笑みを浮かべて昼間買った線香花火を俺へ見せてきた。はいはい、わかりましたよっと 家の前で俺と魔理沙の持った線香花火パチパチと火花を散らす。 その小さな花火に照らされた楽しそうな魔理沙の笑顔は… 33スレ目 383 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「膨大な知識の中に真実を探究する、それが魔法使いというもの ……だ、そうだ。パチュリーの受け売りだけどな」 「魔理沙はどう? 残酷でも不幸せでも、真実を追い求めるのかい? それとも真実から多少外れてでも幸せになりたい?」 「うんにゃ、どっちも違う。私の魔法は恋色だからな。 ○○、お前とずっと一緒に笑ってられるのが私の真実だ。 だから、残酷で不幸せな真実なんてものは初めっからないんだよ」 あれ、なんかどっちかというと魔理沙の方がギャルゲの主人公みたいに 33スレ目 405 ─────────────────────────────────────────────────────────── 俺の朝は、目の前で可愛らしい寝息を立てて眠る金髪の少女を揺り起こすことから始まる。 許されるならば、このまま寝顔をしっかり脳に焼き付けておきたいがそうも言ってはいられない。 「む、むぅ……うん?」 「おーい魔理沙、起床時間だぞ」 毎朝決まった時間に起こせと口うるさいクセに必ず寝起きが悪いのが彼女の特徴の一つだ。 「ぉあ……○○か。 ふわぁ……」 呑気に欠伸を一発かました彼女が、伸びをしてベッドから這い出てくるのはそれから少ししてからのことで、朝食の準備をしているタイミングである。 朝食、と言ってもバリエーションは決して豊富ではない。 今日は炊きたての白米に豆腐の味噌汁、形の悪い卵焼きに今日は少し厚めに切ったベーコンという和食に申し訳程度の洋食を加えた献立。 少し野菜が足りてないな、と自省する傍らで席に座った魔理沙はこれまたいつものように飯の催促を始める。 「○○ー、私はもう待てないんだぜー!」 「ほら、米と卵焼きはできてるから」 先に出来上がったメニューを配膳するなり、魔理沙は小さく笑った。 「どうした?」 「んー、やっぱまだ形が悪いな。 私はまぁ寛大だから目を瞑るけどな」 何を偉そうに……、と思わないでもないが、何を隠そう俺こと○○は魔理沙の家に居候という形で住まわせてもらっている。 交換条件として身の回りの世話や家事を担うことになったのだ。 「悪かったな。 でも、最初に比べればマシになったろ?」 「あれは流石の私も驚いたぜ? まさか、でろんでろんのバナナの皮みたいな物体が卵焼きだって言うんだからな」 最初の日、彼女のリクエストに応える形で初めて挑んだ卵焼きは見るも無残な見た目となったのは良い思い出である……と信じたい。 まさかあれほどに巻くのが難しいとは思っていなかったことで、かつて母が作ってくれたキレイに巻かれた卵焼きが如何に熟練された技術の上に成り立っているのかを、身を以て知ることとなった。 それからは、卵焼きだけは欠かさず毎日作っている。 「もう一息で綺麗に巻けるんだがな……。 やはりフライパンの形状が丸いと難しいな」 「長方形のフライパンか……香霖堂で借りて来よっか?」 「いや、いいよ。 というか、それ犯罪だから」 女は、何かと俺の不便を補おうといろいろな物品をどこからともなく調達してきてくれる。 あるときに出処は何処なのかと問うと、何やら歯切れの悪い返事だったことからさらに深く問い詰めると彼女曰く借りてきたという名の窃盗を働いていたことが露見。 そこから彼女の感覚が、俺の知る一般的な道徳とはズレていることを痛感し、盗みイクナイ!とひたすらお小言を続けていると次第に家の中の盗品も目につかなくなっていった。 増えないのは彼女の自制と俺の教育の賜物であって、減っているのは俺が持ち主(ほぼ香霖さん)に返却したからである。 「はぁ……。 なんか自分の家なのにやりづらいぜ」 「かと言って今更ほっぽり出されてもな」 「今だったら霊夢のとこでもどこでも住めるだろ?」 無関心を装う一方で、口を尖らせて拗ねる魔理沙はとてもじゃないが頭を撫でずには居られないほどに可愛い。 しかし居候と家主という関係から抜け出せていないうちは、迂闊に触ることは憚られる。 「……世話役、要らないか?」 代わりに少し意地悪な質問をぶつけると、今度はムッとした表情を浮かべる。 「どうしてもって言うなら、家出してもいいんだぜ?」 言葉はどこまでも可愛くない奴だと思いつつも、同時に意地を張る彼女に可愛らしさを感じるという奇妙な感情が俺の心を満たす。 「一人でろくに飯も作れないくせに。 正直助かってるだろ?」 「いつの間に偉そうな態度を取れるようになったんだぜ? 食費も私持ちなの、忘れたのか?」 「冗談だよ。 養ってくれて本当に助かる」 「……いきなりしおらしくなるのは反則だぜ?」 頬に僅かに朱が差し、目線を外される。 いつもなら帽子で顔を隠すところであったが、生憎朝食時には被っていない。 これが今の彼女の精一杯の照れ隠し、抵抗であった。 「……よし、飯食って今日も出かけてくる!」 先の態度から一転、活発な表情に切り替わった彼女にはもう照れや恥じらいのような感情は窺えなくなっていた。 「っておい、飯はゆっくり噛んで食え!」 そして、喉を詰まらせて俺が助けるのも毎朝のこと。 ごく僅かに変化していく彼女との日々がどんな結末になるのか、誰にも予測できないだろう。 34スレ目 335-336 ─────────────────────────────────────────────────────────── 魔理沙スレを見てたら幻視 場所はファミレスで 魔理沙「じゃあ私はこのステーキと、オムライスと…」 ○○「よく食うなー」 魔理沙「○○は頼まないのか?」 ○○「俺はドリンクバーだけでいいよ」 魔理沙「?」 魔理沙「うっぷ、もう食えない。○○、あとはやるよ」 ○○「こうなるだろうから頼まなかったんだ」 あれ、イチャってない 34スレ目 513 ─────────────────────────────────────────────────────────── 学校や会社でいじめられて帰ってきたら東方キャラが慰めてくれる・・・というのもいいな 俺が帰ってくる 魔理沙「またいじめられたんだろ?今日は何されたんだ?」 俺「魔理沙が作ってくれた…あの弁当、窓から捨てられたんだ…… ああ…魔理沙が作ってくれた弁当、食べたかったなあ…」 魔理沙「そう落ち込むんじゃないぜ。弁当なんてまた作ってやるぜ。 それにいじめられて傷ついたその心、私が癒してあげるぜ」 俺「ありがとう……魔理沙(号泣)」 34スレ目 787 ─────────────────────────────────────────────────────────── 別段逆でも全く構わないけれど、個人的に 霊夢はお弁当作ってもらう側、魔理沙は作ってあげる側のイメージ 魔理沙「うーん、和食派の私としてはやっぱり弁当箱だよな。 ……ご飯の上に紅ショウガでハートとか描いてみようか。 いやいや、待て。さすがにそれは○○も恥ずかしがるかもしれないぜ。 でもか、かか彼女なんだしそれぐらいやったって……いやしかし……」 パチュリー「あんたねえ、仮にも魔女なら惚れ薬を入れるか入れまいかとか、 そういうことで悩むところじゃないの?」 魔理沙「うわ、いつのまに!? 入ってくるならノックぐらいしろよ!」 パチュリー「うちの図書館から勝手に持っていった外界の本、 『彼氏に作ってあげちゃおう! お手軽お弁当レシピ』を返してもらいにきたんだけど」 魔理沙「まあちょっと待て。死んだら、いや、これ作り終わったら返すから。えーと……」 34スレ目 928 ─────────────────────────────────────────────────────────── 短編・魔理沙 空を見上げる。 夜空に浮かぶのは薄ぼんやりと輝く真ん丸な月。邪魔なネオンの光もないここでは、月の光が眩しくさえ見える。 季節は夏、しかし夜ともなれば昼間の暑さも少しは和らいでくれる。 月の光を見上げながらマッチをこすれば、灯った小さな灯りが寂しい夜を少しだけ照らしてくれた。 「ふぅ……」 ため息を一つついて、タバコに火を移す。ひと呼吸……口腔内に広がる、焦げたような香ばしさ。 博麗神社での宴会終わりの、一人の時間。一人だけの楽しみだ。 冗談で、月に届けと空に煙を吐き出す。白い煙は願い虚しく風に漂ってすぐに消え去った。 幻想郷にきてもうどのくらいになるだろうか? 外界生まれの外界育ち、オカルトめいた事とは何の関わりもなく、それなりに自由でそれなりに不自由な暮らしを送ってきた自分が何の因果か迷い込んだこの不条理な土地、最初は勝手のわからなかった暮らしだが、一応の仕事にこうして里の外れに家までもらって、大分慣れてきたところ。 分からない事だらけの見知らぬ土地だが、それでも外界時代から愛飲していた銘柄のタバコがあったのはある種の救いだ。両切りで短く、そのくせタールだけはバカみたいに高い安タバコ、知人友人からは怪訝な目で見られたものだが、ふかしても味わい良し、普通に吸っても楽しめる銘柄は他にない。 「おっす!って、げ。お前また煙草なんて吸ってのかよ?」 不意にかけられた声に驚いて、灰が地面にこぼれ落ちた。聞き覚えのある声に振り返れば、そこにあるのは案の定見知った友人の姿だった。 夜に溶け込むかのような黒装束を着た、金色の髪の少女、霧雨 魔理沙。こっちに来てからかなり早いうちに知り合った友人。 「よう。……別に良いだろ?誰に迷惑かけてるわけでもねぇし。」 「いーや。こうして見ている私が不愉快なんだ、迷惑被ってるぜ。」 「……わざわざ人の家の前まで来てよく言うぜ。」 そう言いながらも、タバコの先を上げた靴底に押し付けて鎮火する。 やはり、友人にこういう所を見られるのは好きじゃない。昔からそうだ。つまり自分はどこまで行っても人の目を気にしてしまう臆病者。 「で?何の用だ?こちとら久しぶりの休みでゆっくりしてんだ。用がないなら早く帰れ。」 しっしっ、と手を振って追い返す素振りを見せるも、魔理沙はニヤニヤ笑いながらこちらに寄ってくる。 「釣れないこと言うなよ。こんな美少女が来てやってるんだから少しは喜べ。」 「けっ……」 口の下手な自分が嫌になる。本当は友人が訪ねてきてくれて嬉しいのに、どうしてこんな風にしか言えないのだろう。 「しかし何だって寂しそうに月なんか見上げてため息なんてついてたんだ?そんなガラじゃないだろ?」 「まぁな……少し寂しくてな。」 言ってからしまったと思った。 見れば魔理沙は顔いっぱいに嬉しそうな表情を浮かべている。この少女に話のネタを与えてはいけない。 「寂しい?何が?ほら、お姉さんに言ってみろ。」 「えぇい、うっとうしい。誰がお姉さんだ、だいたい俺のがお前よか年上じゃねぇか。」 「こっちでの暮らしに関しちゃ私はお前の先輩だぜ?おっさん」 「誰がおっさんだ!そこまで歳くってねぇよ!」 こんな馬鹿な掛け合いも何度目になるのだろうか?魔理沙がからかって、自分が受けて、最後には自分が折れる。そんな空気が不思議と嫌いじゃなかった。 「ったく……」 思わず火のついて無い煙草を咥えなおそうとして、不意に手元からそれをかっ攫われた。 「おい。」 「一本よこせ。それと火。」 俺の吸いかけを何のためらいもなく咥えて悪戯げに微笑む。……どうでもいいがいい年した乙女がそれはどうかと思うぞ? 「嫌いなんだろ?」 「そんなことは言ってないぜ?お前が吸ってるのを見るのが不愉快なだけだ。ほれ、早く。」 渋々マッチを擦ってタバコに火を灯す。 そのまま彼女は息を大きく吸い込んで……盛大にむせた。 「やっぱそうなるよな。」 「げほっ……煙いし喉が痛い……よくこんなもん吸えるな。信じられないぜ。」 涙ぐむ彼女を見てちょっと可愛いとか思ってしまったのは秘密だ。苦笑しながら彼女から煙草を取り返すと、少しだけためらってそれを咥えて一度ふかす。……煙草だってタダではないのだ。 「慣れないことはするもんじゃない。こんなの百害あって一利なしだ。」 「う~……」 夜の闇、月の白い光に浮かび上がるのはふわりと漂う煙草の煙。 つかのまの静寂が訪れていた。 「さっきの、寂しいってのはな……」 先に静寂に耐え切れなくなったのは自分だった。 だが、その先を続けようとしたら魔理沙が唐突に口を開いた。 「宴会の後って、少し寂しいように感じるよな。……さっきまでみんなで盛り上がってたのに、騒ぎが終われば急に静かになって。なんだか一人だけ取り残されたような気分になるぜ。」 自分が言いたいことを、魔理沙が言ってくれたようだった。 「そっか……」 自分も彼女も結局は似たもの同志なのかもしれない。 人と離れた場所に居を構え、いつもはひねくれてみせる癖に、こうして宴会があれば必ず参加している。一匹狼を気取って見せても人恋しさには耐えられない、そんな臆病な人間。 そう考えて、小さくなってしまった煙草を地面に落として踏みつける。 「さて、と。」 「ん?」 急に伸びをして踵を返した自分を魔理沙が怪訝そうに見た。 「俺は家に引っ込んでもう少し飲むが……せっかくだし、お前も軽く一杯引っ掛けていくか?」 あいにくと自分は後ろに目なんてないから、彼女が今どんな顔をしているかなんて分からない。でもきっと、少しだけ驚いてすぐに…… 「あぁ!」 いつもどおりの明るい笑顔で駆けてくる足音が聞こえるのだ。 35スレ目 113-114 ─────────────────────────────────────────────────────────── 魔理沙とそばぜんざい食いたいなー 人里の蕎麦屋に行きたがらないから○○が作る事になるが 35スレ目 252 ───────────────────────────────────────────────────────────
https://w.atwiki.jp/sumacha-suma/pages/36.html
伝言リレー小説 ルール 一人一文 シンキングタイム1分、できれば20秒以内で。 地の文、セリフ、どちらでも自由。 登場人物や展開は自由。むしろカオスで。 登場人物は一覧にして提示します。 お題「管理人代理」 現在の登場人物:春、「俺」、ライ、レイムス、黒葉さん、黒葉さんを追いかけている女装男、小雪、小太郎 maki→銀河→空気→EL→neo→紅月 むかしむかし・・・でもない頃、管理人代理たちがとあることについて話し合っていました。 代理たちは「2011年の目標」について話し合っていましたと。 そして床にはみかんが転がっている。 俺は確信した――これはみかんを食べるしかない! ミカンと言えばコタツが相場だ……そう考えるとその者はコタツへと向かう しかし今年のコタツは一味違った……ヒーター部分が、何者かによって盗まれていたのだった! 春「ちょっと、あんなでかいもの盗んだのだれ!?」 春「それと私はみかん派じゃなくてりんご派だから」 「は?」馬鹿じゃねーの、と俺は嘲笑した。 その時、別の誰かの気配を感じた。 春があわててコタツの中を覗きこむと、中からあのヒューマノイドがにゅるりと這い出てきた。 レイムス「何か出てきたですぅー。」 レイムスの視線の先には巨大なエレベーターに積まれたみかんが! 「くろばじゃないの! こくようなの!」みかんダンボールから現れたのは―― 「黒葉さん、どうしてミカンのダンボールの中にいたのですか?」 ライは不思議そうに尋ねた。 「実はアタシ、とある女装男に追われてて……みかんの皮を投げつけてやったら滑って転んだんだけど、『なぜバナナではなくミカンの皮で転ばなくてはならない!』って相手がキレちゃって……で、怖くて、急いでダンボールの中に隠れてたの……」 訳が分からないので、とりあえず、ダンボールを再び被せて何も見てなかったという事にした。 小雪「………何だったのかしら?」 床にはたくさんのみかんが散乱している。 「俺はすべてのみかんを食べつくす!」床のみかん目掛け俺の逆襲はじまた。 「落ちているモノを食べるな、はしたない」 そう言われて俺はミカンに届く前に床に叩き付けられた。 「お前は……小太郎! チッ、ここで会ったが100年目、みかんの白い皮と共にぶっ潰してやんよ!」俺はコタツを掲げて、小太郎に向かって超突進した。 小太郎は突進してくる彼の前にみかんの皮を投げた! そのみかんの皮はなぜか空高く飛んで行った! 実際にはみかんの皮は地面に落ちているのにそんな幻覚が彼には見えていた。 「そんな装備で大丈夫か?」俺はそう言って奴に向けてかめはめ波を――「大丈夫だ、問題ない」「!?」 「あれ? ルシフェルそのネタカバーしていないって言ってなかったっけ?」春は純粋に尋ねた。 「きっとルシフェルさんの中で大きな心変わりがあったのでしょう。非常に清々しい気持ちです」ライは吐き捨てるように言った。 ライは、笑って「まあ、実際は私にも分かりませんが」と続けた。 レイムス「これで一件落着ですぅ?」 レイムスの手にはみかんの皮の山が。 「あーーー!」俺たちはそう叫び、ミカンの皮の山を指さし絶望に包まれた。 「和ぅ……」春がすがるような目で俺を見てきたのは、ミカンの皮の中に埋もれたコタツのヒーター部分を見つけてしまったせいだろう……それはすっかりとみかんの香りに包まれてしまっていたのだった。 和は春をみつめ、「すまなかった」と春を抱きしめた。
https://w.atwiki.jp/keitainijiura/pages/90.html
無念 としあきNo.6605 としあき3「そのパワーを制御するためのシステム作りに、俺達は散々苦心したんだ」 としあき5「そして作りあげたのが…この、その名もズバリ『有明2号パワー制御装置』だ」 としあき6「そいつを有明に組み込め…ん?…ちょっとまてとしあき、『この』ってなんだ?」 無念 としあきNo.6610 としあき①「いや、この極太バイブを俺たちのけつに挿せばいい!そうすれば有明2号は我を取り戻す」 彼は実践してみた としあき①「アーッ!」 無念 としあきNo.6611 としあき群「「アーッ!」」 無念 としあきNo.6612 何百という大勢のとしあきたちが一斉に巨大バイブをそのケツというケツに差し込んでいるというこのすさまじい光景に有明2号も驚き固まっている… 無念 としあきNo.6617 フォウ・ムラあき「…そろそろ、攻撃していい?」 有明2号「全滅させる方向で、お願いします…」 無念 としあきNo.6622 としあきA「しまった!有明2号を冷静にさせすぎた!」 無念 としあきNo.6625 としあき群「うっぎゃああ!お助けー!」 サイコガンダムは攻撃を開始した 無念 としあきNo.6627 としあきAA「こ、こうなったら…危険だが有明1号を起こすしかない!」 無念 としあきNo.6629 長老あき(有明2号よ…思い出せ、お前が何のために造られたのかを) 何者かの声が彼女の頭の中で響く 有明2号「私の使命…ハッ!」 無念 としあきNo.6630 だが、我を取り戻したのもつかの間、危険兵器有明1号が目覚めてしまった 無念 としあきNo.6631 としあき1「ちょっ!何で有明1号が!?」 としあき2「この世の終わりだー!」 無念 としあきNo.6632 有明1号…有明2号の姉にあたる彼女は破壊の心のみを植え付けられた大量殺人兵器 その全長は1000メートルはある 今それがゆっくりと地上へ降り立つ 無念 としあきNo.6633 サイコガンダムは有明1号に踏み潰された 無念 としあきNo.6638 otintin 無念 としあきNo.6639 まさにその部分を…だ! 無念 としあきNo.6649 散り際の一瞬、感情などあるはずもないサイコガンダムの顔面に泣きそうな苦痛の表情が一瞬浮かんだような気がする… 無念 としあきNo.6654 有明2号「思い出しました、私の使命、それは無職童貞のご主人サマ達をお守りすること!」 長老あき(そうじゃ!今こそお前の全パワーを開放するのじゃ!) 無念 としあきNo.6655 有明2号「リミッター解除!ゲッター線炉心最大出力!…お姉様、すみませんが倒させていただきます!」 無念 としあきNo.6656 その間、有明1号はとしあき達の下へ向かっていた 彼女が歩を進めるごとに周辺の建物、地面そして人間達が蒸発していく 無念 としあきNo.6660 としあきA「ああ、俺たちがあんな化け物を造らなけりゃ…」 としあきB「!!、みんな!有明2号を見ろ!」 としあきC「ゲッター線を開放している!?」 としあきD「あの力を使えば勝てるかもしれない…だがそれは同時に彼女の、有明2号の死を意味する!」 無念 としあきNo.6664 有明2号「ご主人サマ…短い間でしたが、楽しかったです…有明2号は幸せ者です」 としあき1「…本気なんだな?」 有明2号「はい、…サヨウナラ!」 としあき達「有明2号ー!!」 無念 としあきNo.6667 シャイン・スパァァァク!! 一筋の光が有明1号を貫いた みるみる内にその巨体はゲッター線の中へ溶け消えていく 無念 としあきNo.6669 こうして人類滅亡の危機は回避された だが、としあき達の前に遺されたのは、1人のメイドロボのぼろぼろのメイドキャップのみだった…… 完 リレー小説 第2話『としあきの高校生活1』へ リレー小説 トップへ リレー小説トップへ戻る
https://w.atwiki.jp/godmaster/pages/13.html
ここでは今までのオリジナルノベルの概要を書く。 きちんと設定を詳しくかいて次回の作品を良きものにしていこう。
https://w.atwiki.jp/kawards/pages/18.html
- 目次を開く 目次を閉じる 概要 第一回大暴力小説大会 2024年03月01日 ~ 2024年03月22日 概要 立談百景氏主催の小説賞。暴力描写を含むバイオレンス小説を募集する。 第一回大暴力小説大会 2024年03月01日 ~ 2024年03月22日 テーマ:最初の日 文字数:1600字以上3200字以下 闇の評議員 暴力JK/暴力忍者/暴力海老 開催地:カクヨム自主企画 選考結果及び全作講評 大暴力大賞 『おれの華麗なる一日』 フカ 暴力金賞 『握って・掴んで・離さないで』 獅子吼れお 暴力金賞 『五つ目の化物』 月見 夕 暴力銀賞 『濾過』 姫路 りしゅう 暴力銀賞 『Gratuitous Violenceを忘れない』 君足巳足@kimiterary 暴力銅賞 『われを畏れよ』 きょうじゅ 暴力銅賞 『夜明け前』 真狩海斗 暴力銅賞 『セーラー服とチェーンソー』 真狩海斗 暴力銅賞 『けだものタクシー』 外清内ダク ✊ 暴力✊ JK賞 『きみたちはぜつぼうをしりたい』 狂フラフープ 激エモ忍者賞 『解散前夜』 押田桧凪 グレートエビ賞 『パティシエのとっておき』 馬村 ありん
https://w.atwiki.jp/vipthmj/pages/384.html
リレー小説1 リレー小説2 リレー小説3 リレー小説4 リレー小説5 リレー小説6 リレー小説関連コメントページ 62話現在の現在位置票 1.神社 あお 篠秋 霊夢 2.プリズムリバー家 ○○ プリズムリバー3姉妹 3.魔法の森 (魔理沙の家) 魔理沙 [[きーご]] 4.霧の湖 5.[[アリス]]の家 [[CAST.er]] アリス 三月精 6.幻想郷のはしっこ [[狐ノ連]] [[BBRC]] 文 7.魔界 ロリス*3 神綺 8.人里 つゆくさ WATA 慧音 妹紅 パルシィ [[外来人in無縁塚]] [[なおきん]] DY 9.彼岸 [[ぞうちんちん]] 映姫 小町 (メディスン) 10.永遠亭 [[鈴仙とウサ鍋]] 鈴仙 永琳 輝夜 11.紅魔館 [[RSC]] [[まだら]] 紅魔館メンバー ⑨ [[チルノ]] 12.妖怪の山 [[金木犀]] [[いーあるさん]] 烏天狗 13.灼熱地獄跡 [[Nowe]] 空 14.白玉楼 湊 [[ダメギ]] 幽々子 妖夢 15.地霊殿 [[長き童貞]] 第63話 黒幕達の暇つぶしと衣装チェンジ 第63話担当皇束篠秋 + ... 「迷った」 開口一番にこれである。皇束篠秋は迷いの竹林で迷っていた。目的地は言うまでもなく永遠亭である。ひとまず中間報告に向かうためだ。 実は彼はいちどここに来たことがあるのだが、そのときは輝夜の部屋からのスタートだったので、道順は全くわからなかった。 ちなみに左手法も試してみた。バカである。 「こうなりゃ妬けですな」 そういうと目をつぶって一直線にかけだした。 10分後 「いやあすいませんな」 「バカでしょあんた」 輝夜から頭をたたかれていた。 輝夜の部屋には人型の穴があいている。超ド級のバカである。 「……片づけはうまくいったのかしら?」 「ええ、結構弱ってたみたいで」 「それはよかったわ。あれは人を攻撃するために用意したんじゃないもの」 「あ、そうだ。帰ってくるときに神社の破壊と、その上の結界の一部を弱くしておきました。あと皆の向こう側での生活場所も」 「上出来よ」 輝夜は立ち上がると部屋にかかっていた掛け軸に近づくと掛け軸を外した。後ろには扉が隠されていた。 「ほらこっちにきなさい」 言われるがままにその扉の中へ入ると、武器や衣装があふれんばかりに無造作に散らかっていた。 機関銃、ピストル、槍、鉄砲、竹刀そのほかにもいろいろある。 「八雲紫が酔ったときにいろいろ出させてここに運んどいたわ。好きなのを選びなさい。あと……」 そういって取り出したのはタキシード服とシルクハット、まるで夜の闇のようにまっ黒な。 「これは?」 「火鼠の皮衣で作った服よ」 「もったいねえええええええええ!」 「……口調がえらく変わるのね」 「あ、ちょっと仰天してしまって」 「まあいいわ。間違いなく大妖怪クラスが貴方を妨害しに来るから、私の宝物の一つを加工してあげたわ。ちょっとやそっとじゃ傷一つつかないわよ」 「……ありがとうございます」 服を受け取ると彼は一瞬で着替えた。別に書く描写を省いたのはめんどくさかったからじゃないんだからね! 「で、武器は決まった?」 「ええ」 そういって彼が手に持っているのは、ギザギザした刃、真っ赤な取っ手、垂れ下がった紐。いわゆるチェーンソーというものだ。 ちなみに永遠亭には電気があるので充電はばっちりだ。 「なぜそれを?」 「古来から神殺しといえばこれですので」 「ふーん……よくわからないわね。まあその程度なら袖にいれてごらんなさい。その袖はいろんなものが入るから」 言われるがままにチェーンソーの刃を袖に近づけると、一瞬にしてチェーンソーは袖へと消えた。 「ちなみに取り出す時は念じれば出てくるわよ」 「これってなんて四次元ぽ」 「しゃーらっぷ」 これ以上はかなりまずいので輝夜は言葉をさえぎる。 「ま、まあとにかく次の仕事は夕方からよ。貴方にはがんばってもらうからね」 「了解です。それまで何しましょうか」 「……なにしましょうか」 「麻雀なんてどうでしょうか」 「そういえばあったわね。じゃあそれでいいわ」 場所:【永遠亭/2日目・朝】 名前: 篠秋 永遠亭住民 備考: 幻想郷と現実を結び付けているのは輝夜のパソコン 永遠亭の技術は幻想郷の中でもトップなので電気くらいはあるとおもう。 幻想郷にやってくるもの(一部例外)以外は現実には無いものなので不老不死はないので消える。はす。 第64話 付けるならば……なんだろうね…… 第64話担当⑨ + ... 「あら?あいつはどこに?」 朝がきて霊夢はようやく帰って来た。 その様子はいつものように飄々としていて ただ篠秋がそこにいなかったから聞いた、その程度の言葉だ。 「別にどうでもいいんじゃないか?もともとあいつは良く分からん奴だったしな メッセでも気が向いた時に来て気が向かない時は別のことをしていた」 「そうね、別にどうでもいいわ」 「ところで弾幕のうちかたのことなのだけれど――」 === 「まずスペルカードを用いた弾幕はあくまでお遊びだということは理解している?」 「知識としては、ただしそのお遊びでも死ぬ可能性があると」 「なら、なんで弾幕ごっこ以外でもスペルカードは扱われるの?」 「分からないな」 霊夢の言葉に素直に分からないと答えるあお。 そんなあおに霊夢は分かってないわねと言ったようなしぐさをしながら 「単純なかっこつけよ、普通に打つより必殺技宣言したほうがかっこいいじゃない それに声を出したりした方がより多くの力が出せるしね」 「なるほど」 と。言ったのであった。 あおもあおでそれに納得しているがお前本当にそれでいいのか? 「ではここで本題、その弾幕やスペルカード。それを放つには具体的に何が必要?」 「……霊力とか妖力って奴か?」 「正解。ならその力をあなたは持っていると思う?」 「外の世界では持っていなかったし、力は持っていないだろう」 「それは不正解ね。あなたは間違いなく弾幕を放つための力を持っている」 「どういうこと?」 霊夢とあおの間で質問とそれに応える行為が繰り返される。 霊夢の質問にあおが応えるという形で。 「外の世界には霊力や妖力、魔力が存在していないらしいけれど、それはなんで存在していないの?」 「存在しない理由……考えたこともなかったな。 ”カガク”でそんなものは存在しないと教えられていたし、最初からそんな存在は―――あ」 「気が付いた?外の世界で霊力や魔力というものは忘れられたものなの、その”カガク”というものによって 忘れられたものは一部の例外を除いて全ては幻想郷に流れ着く それは”カタチ”として存在しない不定形の力でも同じ」 そしてその質問のなかであおは気が付く。 自分達がその魔力という幻想を忘れていたことに。 「ならば流れ着いた力はどうなるか――力は寄り代を求めて人に憑く 即ち幻想郷の住民には例外なく大なり小なりなにかしらの力を持っているということ でないと商家である霧雨家から生まれたマリサが人間の魔法使いをやっていることに説明がつかないでしょう? マリサはその持っていた力を真摯に磨き上げて妖怪にも匹敵する力を手に入れたというだけ まぁ、全部紫の受け売りだけどね、嘘か本当かは分からないわ」 最後に八雲紫の受け売りであるということ。 そう付け加えて霊夢は”チカラ”についての説明を終えた。 それをあおは興味深げ考える。 「つまりその力は今現在幻想郷の住民である私も持っているということか」 「そういうこと、あとはあなたが持っている力が大きいか、それとも小さいか、ね こればかりは生まれついての才能。もし大した力がなければ諦めることね」 「たいした力がなければその時でまた新しい何かを考えるさ」 「それじゃちょっとついてきなさい、アミュレットや護符の扱い方を教えるから それを扱ってるうちにあなたがどれだけの力を持っているかわかるでしょう」 そうして霊夢は崩壊した神社の中に足を踏み入れアミュレットや護符を探し始める。 大きな木材などは弾幕で恐しながら――お前本当にそれでいいのか? あおはそんな霊夢の姿を見ながらひとり考える。 力を持つ物への対抗策――即ち弾幕のことや 自身がこの幻想郷にきた意味 そして自身と同じDYやきーご、篠秋のようなVIPの雀士のこと―― そして彼女はそこで気が付いた。 「まて――私はメッセで篠秋と初めて会話というかチャットをしたはずだ。きーごやDYはskypeを介して一応声も聞いていたとはいえ実際にあったことはないはず」 呟いて頭を振りながら考える。 自身の思考、頭に突如としてかかったモヤ。 消えぬ違和感。 「なのに――私は――なぜ――知っている」 場所:【崩壊した神社/2日目・朝】 名前: レムー あお 備考: レジェンドが違和感に気がつきました。俺設定いっぱいでごめんなさい。 崩壊した神社がレムーのアミュレット等を探す作業によりさらに破壊されます 第65話 闇の始動 第65話担当外来人in無縁塚 + ... 「紅魔館とか欲しいな」 「……え?」 烏天狗が自ら進んで鎖につながれてから一夜明け、主従は人里のとある茶屋に腰を下ろしていた。 「やはり、ああいう童話に出てくるような洋館と言うのは人にノスタルジィを抱かせるのかな。無意識のうちに昔読んだであろう、そして空想の中で夢見たであろう『お屋敷』が見られるという状況が、忘却されていた記憶を呼び起こすのかもしれない。湖の傍なんて最高のロケーションとも言えるしな」 そんなことを呟きつつ、天狗の新しい主は茶碗を傾ける。その姿は昨日までの一般的な洋服ではなく、ボロボロの翅の揚羽蝶があしらわれた和装に包まれている。 髪も丁寧に結われており、小柄ながら異質な雰囲気を纏ういーあるさんにはよく似合った退廃美で彩られていた。 烏天狗はそんな主の姿を礼を失さない程度によく目に焼きつけ……無茶振りな言葉にどう返すか必死に思案する。 「……紅魔館は、その、にわかには落ちないでしょう。吸血鬼としての身体の他に強力な能力を持つレミリア・スカーレット、フランドール・スカーレットは言わずもがなですが、メイド長の十六夜咲夜は時間を操ることができますし、館の主の友人であるパチュリーノーレッジはよく精霊魔法を用いると聞きます。また門番の紅美鈴も外見は愚鈍に見えますが弱点らしき弱点が無く、外柔内剛と言うべき人材でしょう……ここはご忍耐が肝要かと」 なんとか思いとどまってもらいたい思いから、烏天狗は若干脚色を加えた住人の説明をする。 それは決して自分の命が惜しいからではなく、主の身に何かあってはという危惧からくる、忠誠心に満ちたものだったのだが、いーあるさんは不可解な笑みを浮かべるだけであった。 もう一言、と言葉を紡ごうとする天狗を遮るように、彼女は口を開いた。 「……レミリアスカーレットは誇ることしか知らないただの雌獅子だ。自分の妹を495年も監禁したことからも代表される、問題を後回しにしようとする悪癖もまた見逃しがたい。フランドールも著しく情操と理性に欠けているし、パチュリーのような魔法使いは魔法の持つ特性から咄嗟の対応には弱いだろう。まあそれでもその知性は侮るべからず、と言ったところだが……ああ、あとあの門番なんかは言うに及ばず、だ」 くくく、と面を伏せ笑いを漏らす姿を見て、天狗は戦慄と共に理解した。 決して戯れではなく、自身の力に酔っているのでもない。 冷静に事実を見据えた上で、主は悪魔の館を盗ろうと言っているのだと…… 絶句する下僕の前で、いーあるさんはま、そうは言っても……と茶をあおりながら続きを語る。 「殴り込みをかけるつもりはない。心配せずとも。……ところで、私は賭け事において大切なことが一つあると考えている。それは勝つことでも負けない事でもない。それは勝負がおぼつかない素人の考え方だ……それじゃ何か分かるか?」 波打つ茶碗をしげしげと眺める主を見ながら、数秒後天狗は最後の言葉が自分に向けられたものだと気がついた。 「いえ……私ごときの凡庸な者には、とても……」 その言葉にいーあるさんは唇を舐めながら、その答えを口の端へと上らせる。 「『いかに賭けの内容を履行させるか』なんだよ。どんなに勝っていても無いものは無いってケツ捲くられたら博打の天才だってどうしようもない。痛めつけたってそれで財布が膨れるわけじゃないからな……だけど、この幻想郷には『悪魔の契約』とかいう素敵な制度があるみたいじゃないか。こいつがあればそんな心配は無用だ……」 なんでそんなこと知ってるのか。天狗は思わず言葉に出しそうになり、やめた。別に自分が知らなければならない事柄だとも思わなかったからだ。 ――悪魔の契約。それは吸血鬼条約に代表される『破る行動がとれない誓約』だ。勿論日常的に行われるものではない。幻想郷においては異変クラスの事件でも無い限り、破れない制約を設ける必要性があまりないからだ。 ……そこまで考えて唐突に、天狗はいーあるさんが何を言わんとしているかを理解した。 「まさか、レミリアスカーレットと……」 「そうそう。麻雀を打ってさ、館の登記証を賭けさせるんだ。そうとう負けがこまなきゃ出してはこないだろうが……なに、あの性格じゃどうせ引かないだろう。私にとっちゃ嚢中から物を出すようなものだ」 とん、と軽い音を立てて茶碗を置くいーあるさん。主の絶対的な自信に再び胸を打たれる烏天狗。 会計を済ませるために立ち上がる主従は知らなかった。 件の館にはVIP雀士が滞在している事。茶屋だと思っていたのが実は雰囲気の明るい居酒屋で、外来人によって切り盛りされている『妬み屋』であった事。 ……その密談がある人物に漏れてしまっていた事を。 場所:【人里・妬み屋/2日目・朝】 名前: いーあるさん、烏天狗 備考:個人的にいーあるさんはルミさんっぽいイメージ(え 第66話 ヒーローは動かない 第66話担当外来人in無縁塚 + ... 「なんだか変だな」 夜。里の外に比べれば問題にならないようなレベルであるが、科学力が惜しげもなく使われている現代社会に比べれば心もとない光量と言わざるをえない。 ふっと目を転じれば、そこにあるのは底の知れない闇ばかり。 生気を感じさせない、ねっとりとした濃密な昏黒がたゆたっていた。 「……ふむ」 そんな状況を興味深そうに眺めるのは、腕を組みながら何事か思案する上半身裸体の男……DYと。 「……フン?」 周りに広がる玄夜に負けず劣らず暗い瞳を持つ少女のようなナニカ……なおきんと。 「何々、どうしたの」 痩せた体にボサボサの髪を乗っけて落ち着かない素振りで辺りを見回す青年……無縁塚であった。 ――彼ら3人は結局のところそれぞれ腹に一物抱えながらも停戦協定を結ぶ事になり、とりあえずは行動を共にしようということで話がまとまっていた。表向きはまず魔理沙をどうにかしようという理由であったが、当然それは建前。ライバルを野放しにしておくよりは視界に納めていたほうがなにかと都合がいいだろうという現実的な理由があった。 互いに牽制しあいながらも宿をとろう、と里の入り口付近に足を運んだのであったが…… まるでゴーストタウンのように静まり返った一帯を目にしては、計画を変更せざるをえなかった。 「何があるんだろうな……古い民家の取り壊し工事?」 軽い口調で言葉を紡ぐのはDY。だがその眼には笑みが無い。 彼の額にうっすらと浮かぶ汗も、決して暑いだけが理由では無いだろう。 漠然とではあるが危機を悟るDYに、華奢な体をした少女もぼそりと言葉をこぼす。 「子供ガ、攫ワレテイルラシイナ。今日ケイネとその助手ガ討伐スルラシイガ、オソラクハ……」 なおきんの推測に、DYは頷くだけで大きな反応を示さない。 無論、あらかじめ知っていたわけではないが、彼にとっては驚くに値しない情報であった。 里といえど幻想の郷であれば、そういった生臭い事件も起こりうるだろうという考えだ。 そんな平常と変わらぬ男の隣でリアクションがあったのは無縁塚。 「えぇ!じゃ、じゃあさっさと逃げないと……」 不吉なものから逃れるように後ずさり、上ずった声で二人に言葉をかける。 攻撃手段を持たない彼にしてみればある種当然の反応であったが……それはいささか無様であった。 そんな青年を一瞥した後、DYは短く息を吐くと、逞しい腕を解き指を鳴らす。 ぽきり、ぽきりといくたびに、目の前の闇を慄かせるような音が響く。 言わずもがな、それは慧音の手助けを意味する挙措だ。 そして心の準備が整い、一歩踏み出そうとした瞬間――服に小さな手がかかった。 「……なんだ?」 せっかくの出陣を邪魔され、多少むっとなりながら振り返るDYに、なおきんは表情を変えずにわけを話す。 「行クベキデハナイ。……ルーミアガ見エタ」 途端、残りの二人の眉が曇る。 「見えたって……真っ暗だぞ?」 「チラリト見エタンダ……相手ガルーミアなら行ッテモ邪魔ニナル」 その言葉に、出鼻をくじかれた形のDYはそのまま足をとめる。 ルーミアは人食いの妖怪だ。当然、……子供だって食べるだろう。 ならばこの決着は弾幕ごっこなんてぬるいものではつかない。それでは里の人間が黙っていない。 そんな東方キャラの命をかけた戦いに肩入れする必要があるのか否か。 「……宿を探すか」 対局中、まるで未来を見通したかのように、残り少ないアガリ牌を見送り同順に暗カン後リンシャンで倍マンまで引き上げた男、なおきん。確かに、そういう能力を身に着けていたところでおかしくは無い。 くるりと踵を返すDYに、相変わらず冷たい顔のなおきんとどこかほっとした表情の無縁塚が続く。 ……ここでDYが後数歩闇に踏み入れていれば、あるいは何かが変わったのだろうか。 その時の3人には知る由も無かった。 場所:【人間の里/1日目・夜】 名前:無縁塚、なおきん、DY 備考:なんかジョーカー氏の見てたら書きたくなっちゃったんだ。……続けてもいいのかな……。 第67話歓喜後困惑 第67話担当外来人in無縁塚 + ... 昼下がりの日差が、金木犀の体に容赦なく照りつける。 地球温暖化なんてどこ吹く風、という幻想の郷でも、じわりと汗が浮かんでいくのが分かる。 加えて彼は妖怪に見つからないように常に気を張り続け、水分も摂らずに歩き続けたのだから、その消耗はばかにならない。 「まずいな。どこもかしこも良くない『気』に満ちている……。休憩したいところなんだがな……」 呟きながらも、それが叶わない望みである事を彼は重々承知している。 能力が無ければ、もう15回は見つかっているだろう。リアルイライラ棒状態のわが身を思い、思わず舌打ちしてしまう。そして、直後に、そんな感情のおさえが効かなくなり始めている自分に不安を抱く。 このままいけばいずれ致命的なミスをおかしてしまう。ならばリスクを負っても少し体を休めるべき。 後2分歩いたら立ち止まろう。そう金木犀が考えた直後であった。 鬱蒼と茂っていた木々が唐突に終わりを告げ、視界が大きく開ける。 「……!」 思わず走り出す彼の目に飛び込んできたのは、蓮の葉が浮いた澄んだ池。 金木犀は更に神経をぴんと張り詰めて……そしてどっとその場に腰を下ろした。 「つ、ついてる……こんなラッキーなことがあるなんて」 大蝦蟇の池。山の中腹に存在するそのスペースに偶然にたどりついたのだ。 すかさず彼は水辺に寄り、透き通った水を心ゆくまで乾いた体に取り込んでいく。 ひとしきり飲み、癒され、己の幸運をかみ締めながら浮かべる喜悦の表情。……しかし。 「ん、なんだあれ」 ふと興味を惹かれたように、その双眸は手近な木に引っかかった紙の束へと焦点を合わせた。 罠か。そう思い蜘蛛の巣のように気を張り巡らせるも、こちらへの害意をとらえることは出来ない。 ならば……情報は少しでも多い方がいい。そんな心持で金木犀は紙の束へと歩み寄り、手にとってみる。 目を落とした瞬間、彼は本日2度目の衝撃に胸を打たれていた。 「放課後の……JOKER!?」 日付はかすれてしまって読めないが、それはまごうことなき文々。新聞であった。 だが彼の驚きのポイントは勿論そんなところにはない。 スポーツ新聞ばりのでかでかとしたタイトルが、視線を捕らえて放さなかった。 「『レミリア・スカーレット破れる!?相手は外来人の剣客【放課後のJOKER】!!』……なに、これ」 足元の力が抜けてくる。本当に自分は意識があるのだろうか。ひょっとしてこれは夢で、今現在自分の本体は麻雀中に寝オチとかそんな状態なんじゃないだろうか。そんな益体もない考えに陥ってしまいそうになるくらい、金木犀は混乱していた。 ……自分を取り戻し下山をはじめるまでの20分間、彼の頭の中には記事の内容がぐるぐると回り続けていた。 場所:【妖怪の山/1日目・夕方】 名前:金木犀 備考: 第68話 カリスマブレイク 第68話担当外来人in無縁塚 + ... ゆとりというものは、意識して時間を取らなければ養われないものである。 それは意図せずとも他者の自我を冒涜してしまう妖怪――――古明地さとりもまた例外ではない。 彼女は毎日、どれほど忙しくとも必ず時間をみつけ、お茶を楽しむようにしていた。 立場、義務からといったあらゆるしがらみから開放されるひと時。現代人が忘れがちな優雅な過ごし方を、さとりは今も大切にしていた。 その日もさとりは仕事をはやめに切り上げ、自分の部屋へと戻ってくると、鼻歌交じりに戸棚へと手を伸ばした。 あまり物の無いその中に、一筋きらりと光る茶葉の缶。 それを手に取ると、いそいそと彼女は紅茶を淹れる。 しばらくすると立ち上ってくる匂いに、滅多に変わらない冷たい容貌を緩ませつつ、ティーカップへと注ぎ、口元へと運ぶ。 途端に口から鼻へと抜けていく芳醇な香り。 「……ああ、幸せ」 椅子へとゆったりともたれかかり、リラックスしきった表情でそう呟く。彼女の妹やペットが見ればきっと驚きを隠せないであろう程に、今のさとりは無防備であった。 否が応でも他者の精神に触れ続け、ともすると己と他者の感情が区別できなくなりそうな普段の彼女。それに対するただひとつの救済が、このティータイムなのだ。 ――――しかし、その日の彼女の有意義な時間は、たったの一口で幕を閉じた。 「さとりさまー!玄関に変な人がー!変な人がー!」 どたどたどたと廊下を駆けてくる音に、さとりの聖女のごとき豊かな笑みはドロドロと崩れていく。 私のティータイムを邪魔すんじゃねえよ。……心の中だけでそう呟くと、彼女は普段の冷静さを装い、勢い良く扉を開け部屋に飛び込んできたお燐へと顔を向けた。 「どうしましたかお燐?」 「あ、え、えーとさとり様。そのーえーと……」 わたわたと落ち着き無く腕を動かす彼女を冷めた目にならないよう気をつけながら眺め、一拍後に大体の事態を察する。 「……死体が息を吹き返した可能性は?」 玄関前に裸の男。……となると、普通に考えればそれが一番ありそうだ。 「そ、それは無いです!いくら私でも死体と生き物の区別はつきますよ!」 ……しかし彼女の思惑に反し、お燐は「しまった!」という顔にならない。本当に心あたりがないっと言った様子でさとりに弁明する。 そんな彼女を見てふむ、と一考すると、さとりはカップを置き静かに立ち上がる。 「お燐、下がっても構いませんよ。その男は私が応対します」 もし害意を持っていたらその場で始末すればいいし、なんらかの理由があってこの地霊殿を訪れているのだとしても自分が出て行った方が事情を理解しやすい。 そんな実利的な考えから紡がれた言葉であったが、何故かお燐は引き止めたそうな顔でこちらを見ている。 そんな表情を、彼女は疑問に思った。 自分のことを心配してくれているのだろうか。だとしたら喜ばしい事だが、彼女と過ごした時間は決して短くない。手間取らないで一番安全なのは自分が出て行くことだと分かっているはずなのだが…… 心を読もうとしても、正体不明の火照りが伝わってくるばかり。 ペットとの間に相互不理解があってはならないと、さとりは素直にお燐へとたずねた。 「何か、私が出て行くと不都合なことが?」 「え、あ、あの……は……」 「……?」 「裸……なんですよ?その男の人。それでさ、さとり様が不愉快な思いをされたらと思うと……」 ……そんな初心な乙女のように恥ずかしがって言われたらこちらまで想像してしまい顔が赤くなってしまうではないか。 さとりはさばさばとした彼女の意外な一面を見た気がして、そしてそんな様子につられて顔色を変えてしまった自分を悟られたくなくて、さとりは気がつかれないよう素早くドアへと向かう。 「私は別に殿方の裸を見ても特別な感情を抱いたりはしません」 冷静な声色。かつ敢えてストレートな語句を用いる事で普通の人間との格の違いをアピールする事も忘れない。 そのまま彼女はごくごく自然にノブへと手をかけ、自室の扉を開けた。 古明地さとりは そこに ……そこに ひどいものをみた。 一瞬、自分の目の前に何があるのか分からなかった。 そして数瞬後に理解する。丁度顔の高さにあるものは、男の下腹部なのだと。 「お、さとりんじゃん。いや勝手に入ってすいませんちょっと火傷がうずいt」 「きゃあああああああこの変態ぃぃぃぃぃぃ!!」 ……それからゆうに四半刻、地霊殿の主、古明地さとりは子供のように泣きじゃくってたという。 場所:【地霊殿/1日目・夜】 名前:長き童貞 備考:色々とごめんなさい。 第69話 第69話担当外来人in無縁塚 + ... この世の終わりを想起させる程の光と破壊に満ちた狂騒から一夜明け。 wataは休業にしようと準備中の札を取り上げ、外に出たところで不思議な二人の客に出会った。 一人はやや小柄な女性。独特の模様を持つ和装や、整った顔立ちが目を引く人物であった。 そしてその連れは、あまり人里では見ない烏天狗。どことなく尊大な雰囲気が感じられる男性だ。 客が来た、と思った瞬間にはwataは顔にいつもの人好きのする笑みを浮かべていた。 「やっ、いらっしゃい!……と言いたいところなんですが、申し訳ありません。誠に勝手ながら本日は休業とさせていただいております」 よどみ無く告げられる口上。だがそれを聞いた天狗の顔が剣呑なものとなる。 「ほう……この店は客を選ぶのか?」 言いがかりも同然のセリフに、しかしwataは笑みを崩さずにやんわりと応対する。 「そんな、滅相もありません。昨日、あんなことがあったばかりですから、よんどころなくそうさせていただいている次第です」 どう捉えても悪く解釈できない返答だったはずだが……天狗の顔に子供じみた笑みが浮かぶのを見て、wataは心の警戒を強めた。 「昨日、か……私が聞いたところでは、この店はその騒ぎのあった時間帯にも営業を続けていたようだが」 しまった、と妬み屋の店主は唇を噛む。 それは本来ならあり得ないような凡ミス。意識はなくとも、騒ぎの渦中の人物を献身的に看ていたことによる疲れが招いてしまった失言だった。 言葉に詰まるwataに、それまで口を開かなかった女性がつ、と前に出る。 ……途端、彼の背中に電流のような寒気が走った。 「まあまあ……店主がいつ店を閉めようが勝手だろう?それにとやかく言うのは、野暮だよ」 「は……申し訳ありません。心得違いでありました」 形の良い唇から漏れる言葉に、天狗は軽く頭を下げる。 ……その光景がどれほど異質なものであるか、wataはよく知っていた。 明文化されていなくとも、妖怪のヒエラルキーの中で天狗がかなり高い位置を占めているのは周知の事実。 その天狗が人間に従属しているというのは幻想郷においてはあり得ない事だ。 これは一体どういうことなのか。 いぶかしげに向けられる視線をいなすように、女性は微笑し、wataへと語り始める。 「ただ、こちらもどうも長距離を移動したためか喉が渇いて仕方が無い。茶を一杯とほんの四半刻程の時間をもらえるだけでいいんだが……駄目かな?」 ごくごく友好的な姿勢。言葉。 だというのに、wataの背中を冷や汗が伝ってしまう。 彼女から発散される、言いようの無い『気』。それが、彼の精神を、己が気がつかぬほどにゆっくりと締めていく。 その不快感に突き動かされ、思わず、彼は口を開いてしまった。 「……そういうことでしたら、たいしたおもてなしは出来ませんが……」 何が己の意志を曲げたのか、悟ることなく引き戸を開ける店主に気がつかれないよう、女性……いーあるさんはにたりと口角を吊り上げた。 いくばくかの時間が流れ、二人連れの話が核心に入ったとき、つゆくさが覚醒したのは偶然か天意の表れか。 ビリビリと痛む体を引きずりつつ、厠に向かう途中、彼は二人の間に交わされる言葉をはっきりと聞いていた。 「まさか、レミリアスカーレットと……」 「そうそう。麻雀を打ってさ、館の登記証を賭けさせるんだ。そうとう負けがこまなきゃ出してはこないだろうが……なに、あの性格じゃどうせ引かないだろう。私にとっちゃ嚢中から物を出すようなものだ」 眠けの残る頭でその言葉をバラバラのピースとして認識し、組み立て、意図を読み取った瞬間彼は用を足しに行く途中だということも忘れ、雷に打たれたように静止してしまった。 ―――――紅魔館って確か、霧の湖の近くの……。本気なのかな。主が吸血鬼って聞いたけど……ってちょっとまてよ!? 違う、驚くべきことはそんなことじゃない。つゆくさの心臓が早鐘のように脈を打つ。 ――――俺はどうして『レミリア・スカーレットが吸血鬼だ』ということを知っている……?先生の話には名前は出てきていない。 曖昧な綻び。そこから見える決定的な矛盾。 ――――そうだ、俺は戦闘中にメイドの姿をした女性を見た途端、それが「十六夜 咲夜」だと断定した。会ったはずがない人物の姿をどうして知っているんだ? 幻想の郷に迷い込む寸前の記憶の混濁。 ――――もしかして、俺は…… 本来、到達し得なかったはずの結論へと辿りつく。 ――――迷い込む前から、幻想郷のことを知っていたんじゃないか? 沈黙するつゆくさを、いつの間にか上がった朝の日差しが照らし出していた。 場所:【妬み屋/2日目・朝】 名前:wata いーあるさん 烏天狗 wata 備考: 第70話 第70話担当外来人in無縁塚 + ... 時折森から聞こえてくる鳥の鳴き声に、霧雨魔理沙は今日も快適な目覚めをむかえた。 ふぁっと可愛らしくあくびをすると、ぐっと背筋を伸ばして立ち上がり、カーテンへと手をかける。 小気味いい音と共に朝の日差しが魔理沙の寝巻き姿と、艶やかな金髪を照らし上げる。 しばらく、そうして外の景色を眺める魔理沙。 それは一幅の絵のように美しく、日常の一こまにも関わらず幻想的な美しさに溢れた光景であった。 そのまますっと右手を挙げる。 手で髪を梳りでもすれば、女性的な魅力が更に倍増する事間違いなしのこの状況で……しかし、彼女は傍らの箒を手にとった。 唐突に、幻想郷最速と噂されるに相応しいスピードで箒をベットへと振り下ろす。 親の仇とばかりに2度、3度と渾身の力で振り下ろした後……大きく安堵のため息をつく。 「まあ、あの馬鹿も添い寝なんて真似はしないか……」 その場で箒をうち捨てると、服を着替えてキッチンへと向かう。 例えどんな傾奇者といえど、一度面倒を見てやると言った以上、その意思を変えるつもりは無い。 無論、もし朝起きたときにベットに潜り込んでいるのを発見しでもすれば容赦なく半殺しにするつもりであった。 だが奴は自分の言われたとおりにした。あの変態的な格好からするとなんだかそれだけでも奇跡的な感じがするが、もしかすると一種のファッションのように、変でいることに一種の美意識を見出しているだけで、その本質はごくごく普通の人間なのかもしれない。 ならば、彼を泊めることにデメリットは無い。どこぞの道具屋の主人ほどではないにしろ、霧雨魔理沙は外の世界に対してそれなりの興味を抱いている。もしかしたら何か有益な話が聞けるかも。 そんな期待を胸に秘め、知らず知らずのうちに鼻歌をこぼしながらてきぱきと料理を作る。 長い間の一人住まいに、包丁を持つ手が自然に動いていき、皿がひとつ、またひとつとテーブルに乗せられていく。 朝の光に晒された食器は淡い光を反射し、その中身はある種芸術的なまでに美しく盛り付けられている。 調理を終えた魔理沙は並べられた朝食を見回し、満足げな笑みと共に一人頷く。 「これでよし!」 後は起こしに行くだけ……そう思い歩き出そうとした瞬間であった。 「魔理沙ったらまた一人で……言ってくれれば手伝ったのに」 ビクッとして振り返れば、そこには上半身だけ服を着込んだ青年がテーブルへとついていた。 幸いにも、彼女からの角度では下半身のオンバシラは丁度隠れていて見えない。……だが見えなければいいというものでもない。 「隊長さんよ……ちゃんと下も着ろって昨日言わなかったか?」 呆れと怒りを織り交ぜた口調で話しかける魔理沙。だが青年――――きーごはまったく悪びれる様子も見せない。 「寝るときは蒸れるといけないから脱ぐことが多いんだよね。こんな季節だし、構わないだろ?……っとそんなことより」 「ん?なんだ?」 もう何も言う事は無いと疲れたようにどっかり卓につく魔理沙に、きーごは内ポケットから革製の小物を取り出した。 「これ……どこで手に入れたんだ?」 どこかで見たな、と思った瞬間、彼女は目を大きく見開いていた。 「あ、ちょ、それは私の財布なのだぜ!」 素早く伸ばされた魔理沙の腕は、しかしきーごの手により優しく掴まれていた。 「これは外来人が持っていたものだろう?中に学生証が入っていた。……盗んだのか?」 いつになく真剣な口調の彼に少し驚きを滲ませながら、魔理沙は首を横に振った。 「違う。そいつは賭けのあがりだ。いくら私でも迷い込んできた外来人の命綱を切るような真似はしないさ」 ――――いや、理由の如何に関わらず巻き上げた時点で切ってるでしょう。 そんな突っ込みは胸にしまっておき、きーごは会話を続けていく。 「これの持ち主はどんなやつだった?」 「不健康そうな男だったな。なんか無縁塚から命がけで里までたどり着いたとか聞いたけど」 「……賭けの種目は麻雀か?」 「ん、なんで分かったんだ?幻想郷じゃまだ賽の方が一般的だが……」 きーごは何かを考えるように口元に手を当て……ぼそりと呟いた。 「……こりゃ思ったよりも規模が大きいのかな」 なんの話だ。そう魔理沙が言葉を返す前に、きーごは遮るように「いただきます」と箸を手に取り朝食を始めたのであった。 場所:【魔法の森 マリーサの家/2日目・朝】 名前:きーご 魔理沙 備考:
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/1649.html
―妹紅― やっぱり今日は餌のかかりが悪い、と私はため息をついた。 川に垂らした糸も、掴んでいる釣り竿もぴくりとも動かない。水面に浮かぶウキは川の流れに漂うだけだ。 澄んだ水には魚の姿がちらほらと見えるのに、彼らは餌を啄ばもうとはしなかった。 ここは妖怪の山の麓にある川。私はここで朝から釣りをしている。 しかし成果は散々だ。いったい何刻をこの川辺で浪費しただろうか。 「あー、もう。今日は本当にだめだめだ」 頭をがしがしと掻き、苛立ちを紛らわせる。 白い髪がぱらりと自分の胸にかかったのを、腹立たしく振り払った。 いつもなら2、3匹の魚を桶に入れているはずなのに。 1日かければ、最低でも自分の食べる分ぐらいは楽に釣ることができるはずなのに。 あわよくば、釣り過ぎたからお裾分けするという名目で○○の家に行けるのに。 捕らぬ狸の皮算用と化した今日の予定。イライラが募るばかり。 唸り声を上げそうなほどに嫌な感情が積もった時、私は己の短気を自省し、ふぅと息を吐く。 「……落ち着こう。焦ると余計に釣れなくなるし」 魚は水面の様子に敏感だ。人の足音がしただけでも水際から逃げてしまう。 ましてや大声をあげれば、釣れる魚も釣れなくなる。 私は釣り竿をぎゅっと握り直し、自分の気配を極力消すように努めた。 釣りに大事なのは何よりも忍耐。我慢我慢だ。 「……」 目を瞑り、さらさらと流れる水の音に私は身を任せた。 風音を聞くことに意識を集中させると、イライラは川と時の流れと共に消えていく。 身体をゆったりと弛緩させる。私の頬を、手を、身体を、足を、風が通り抜けていく。 ふいと吹いたつむじ風が髪を巻き上げ、私は瞼を開いた。何本もの白い髪が宙に舞っている。 緑の草原と青い空に白は映える。もし、この場面を天狗のカメラに撮られたら、とても綺麗に写ったのではないだろうか。 私はゆったりとした動作で髪を押さえつけ、手櫛で毛先を整えた。 座れば地面に触れてしまうこの長い髪。幻想郷の少女たちの中でも、私のものはかなり長い方だろう。 よく「うっとうしくないか?」と聞かれることがあるが、私は決してそうは思わなかった。 何故だろうかと考えると、○○の顔が思い浮かぶ。 それはもういつことだったか。まだ私が○○と出会わず、魔理沙とも友人にはなっておらず、竹林にてひっそりと暮らしていた頃。 私はこの長い髪を邪魔だと思っていた。普段の生活にも弾幕ごっこにも、よく髪が顔にかかって視界を奪っていたからだ。手入れも面倒くさい。 しかし切ることもできない。自分は蓬莱人だから、たとえ切ったとしても気がつけば元に戻っている。 不便な身体だ。髪の毛すら私の思い通りになってくれない。 慧音にこのことを愚痴ると、こう言われた。「綺麗な髪をしているのだから、もったいない」と。 その時の私は「綺麗ねえ」と大して喜びもしなかった。 もし今、慧音に逆のことを言われたら――「長い髪が邪魔じゃないか?」と問われたら、私はどう答えるか? 決まっている。「そんなことはない」だ。 「……私って現金な奴なのかな」 どうしてこんなにも自分の髪が大事になったのか。 それはきっと思い出があるから――○○が私の髪を「綺麗だ」と誉めてくれたからだ。 とても単純だけど、私には大切な理由だった。 「……○○」 ぽつりと呟く愛しい名前。 もう何度この名を呼んだか分からない。 竹林で彼と出会ってから、彼の小説を実際に読んでから、彼と友人になってから。 私の口は先んじて彼の名前を形作り、声は喜びに満ちた調子を帯びてしまう。 『藤原さん、ですか。以前はどうもありがとうございました』 『……』 『ところで、1つお願いしてもよろしいですか?』 『……?』 『藤原さんの髪はとても白くて綺麗なので……よければ触らせていただけないかな、と』 それは○○の好奇心ゆえに発せられた言葉なのかもしれない。私の髪が物珍しいから触りたかっただけなのかもしれない。 しかし、私にとっては……。 初めて、男性に髪を触られ、頭を撫でられた出来事だった。 「……」 風と水の音を感じながら、私は○○を想う。 私は彼の近くにいることができているだろうか。 彼の役に立ちたい、一緒に笑い合いたい、互いに支え支えられるような関係になりたいという目標は、どれだけ達成できているだろうか。 ○○の助けになれるのは嬉しい。だから彼が行きたい所には喜んで着いていくし、してほしいと頼まれればなんでもしたい。 たとえ慧音に「甘やかしすぎている」と言われても、魔理沙に「溺愛だ」と言われても、私は○○の側に居続けていたい。 「……」 ちゃぽんとウキが沈んだ。 私はそれに気付きながらも竿を掴むことをしなかった。 頭が変なことを考えていて、釣竿のことなんてほとんど忘れていた。 今のところ、私は○○と一緒にいることができている。 しかし、いったいいつまでそうしていられるのか。 寿命の問題ではなく、もっと別の問題として、私が○○の隣に立てる日はどこかで終わってしまうのではないか。 つまり、私ではなく、他の誰かが隣に立つ日が来るかもしれない。 そう考えると、なんだか怖くなってきて、腕が動かなくなった。 『なっ! お前らも○○が好きなのか!?』 『……これは驚いたな。妹紅も魔理沙も、とは』 かつて○○の家の前でばったりと顔を合わせてから、私たちは仲間になり、ライバルになった。 彼を慕っているのは私だけじゃない。あの2人も彼とずっと一緒にいたいと思っている。 ならば3人のうち、1人がその願いを叶え、2人は叶えられず。 私はいつか、○○の側を離れなくてはいけなくなる可能性がある。 ○○がいなくなることはとても怖い。身体が震え、絶望に身をよじらせるほどに。 「……けど」 けれど、怖がってばかりもいられない。 恐怖で二の足を踏めば、それだけ前に進む時間がなくなる。○○と一緒にいられる時間は少なくなる。 時の流れは不可逆だ。無駄になんてしていられない。そのことを誰よりも分かっている。 私は、戻らない過去に悔いを残さないために、永遠の未来に暗い影が落ちないように、今を生きる。そう決めた。 起きてもいないことに恐怖してなんかいられない。 ○○の隣にいられないかもしれない? だったらそうならないようにすればいい。 生きるというのはそういうことだ。 「……よし!」 私は竿を掴み、釣り糸を引き上げた。 案の定、餌は取られてしまっていたが気にしない。 ○○の家に行こう。たまには食料のお裾分けなんて理由を使わず、ただ会いたいから会いに行けばいい。 私は竿を担ぎ、歩き出す。 白い髪がまた風でたなびいていた。 ―慧音― 今日はやけに忙しいな、と私はため息をついた。 寺子屋の授業が終わり、里の雑貨屋で買い物をしようと歩いていたところ、 「これは……財布か」 落とし物の財布を見つけ、 「あ、慧音先生! すみません、これを阿求様に渡しておいてほしいのですが」 知り合いに届け物を頼まれ、 「うえーーん! おかーさーん!」 迷子の子供を見つけた。 「ふむ……手がたりん」 私は財布をポケットに入れ、届け物の紙袋を左腕で担ぎ、右手で子供の手を引いて、里の中をてくてく歩いていた。 まさか仕事終わりに3つも用事が重なるとは思わず、私は忙しさにため息ばかりが出てしまう。 もはや買い物どころではなくなってしまった。 「ぐすんぐすん」 目下の解決すべき事項は迷子の子供だろう。 先ほどからぐずぐずと鼻を鳴らしている男の子。早く親を見つけてやらねば、この子がかわいそうだし、私も動きが取りづらい。 「母親と買い物に来ていたのか?」 「……うん」 子供は親と一緒に買い物をしていたが、途中ではぐれてしまったようだ。 私は商店が並ぶ通りに親がいると当たりをつけ、その周辺を先ほどから歩き回っていた。 (知らない子だな……) 男の子は寺子屋の生徒ではなかった。いや、そもそも寺子屋に来るような年齢に達していなかった。 おそらく年は3、4才だろう。身体はとても小さく、手は赤子のように柔らかい。黒髪の男の子。 瞼は赤く腫れ上がっているが、涙は出ていない。泣きそうではあるが泣いていなかった。 「大丈夫か?」 「うん……」 この年で母親とはぐれるのは相当恐ろしいはずなのに、子供は気丈にも受け答えし、一緒に母親を探してくれている。 たくましいものだ、と思う。幼くとも、この男の子には勇気があった。 「ふむ、どうにも人が多い。これでは見つけにくいか」 「……お母さん」 「ああ、心配するな。私が必ず見つけてやるからな」 「うん」 安心させるために頭を撫でてやると、男の子はくすぐったそうに目を瞑った。 私たちはまた手をつなぎ、商店の間を歩き続ける。 しかし、どうも私は人里では有名人でありすぎる。 「おやまあ、慧音先生、ついに子供が生まれたのかい?」 「冗談は言わないでください。この子は迷子ですよ」 八百屋のおかみさんにはからかわれ、 「ぎゃー! 先生! まさかあの小説家と!? なんてこった!」 「ば、馬鹿を言うな!」 若い男には悲鳴をあげられ、 「せんせー、おさかんだねー」 「だねー」 「子供がそういう言葉を使うんじゃない!」 通りすがりの寺子屋の生徒たちからも煽られる始末。 「まったく、里の者は私をなんだと思っているのだ」 4半刻が過ぎて、里の人間に散々からかわれて疲れた私は、男の子と一緒に茶屋で休むことにした。 子供がおいしそうに団子を食べている横で、私はがくりと肩を落とし、考え込んでしまう。 子供を連れているだけで子持ちに見られるとは……私はそんなに年を取っているように見えるのだろうか。 まあ確かに、実年齢はなかなか言うのもはばかられるが……そういう経験があるように見られるのはどうも心外だ。いや、ない方がおかしいのか? 「おねーさんは、せんせーさんなの?」 ぶつぶつと考えごとをしている私に、団子を食べ終えた男の子が無邪気な笑顔を向けてくる。 彼はもう泣いていない。人懐っこい笑顔で私に親しくしてくれるようになった。 私は笑顔を浮かべて答える。 「ああ、そうだぞ。子供に勉強を教えている」 「そーなんだー。すごいねー」 「君もあと数年すれば、私のところに来るようになるさ」 「……そっかー」 「勉強は嫌か?」 「ううん、おねーさんがおしえてくれるなら、いいよー」 「ははは、そうか」 勉強を嫌わない子供は珍しくて、私はついつい男の子の頭を撫でてしまう。 男の子はくすぐったそうに私の手を受け入れる。ああ、こういう子供を――生徒ではなく実子として――持つのも、悪くはない。 「そういえば、まだお互いに自己紹介していなかったな。私の名前は慧音という。君は?」 「僕はねー、○△っていうんだよ」 「ほう、そうか」 驚いた。私の知っている男となかなか名前が似通っている。 それに顔つきも……普通なところが似ていないこともない。 彼が幼い頃はこのような子供だったのかもしれない。いや、もしくは彼の子供が…… 「じゃあ僕、おねーさんのことをけーねせんせーってよぶね」 「ああ、いいぞ。一足先に君は私の生徒だ」 「わーい、やったー!」 無邪気にはしゃぐ子供。実際に寺子屋に来てもこのように喜んでくれたら、と私は微笑む。 まあ、最近は子供たちが私の授業をつまらなさそうに聞くことも少なくなった。 以前、彼――○○にアドバイスを貰って以来、私の授業に不平不満を言う者は減った。それどころか評判が広がり、里の大人も見学にくるようになった。 勉学が広まるのは喜ばしいことであると同時に、教え甲斐をとくとくと感じる今日この頃。 「ねーねー、けーねせんせー、せんせーはなにをおしえてるのー?」 「ああ、私の専門は歴史だな。歴史とはだな」 男の子に説明しながら、私は心の端で別のことを考えていた。 顔が彼と似ているから、思い出してしまったのかもしれない。 『……げん、そうきょう? それはいったい』 この子供のように、○○も最初は表情の無い、暗い顔をしていた。 それは突然異世界に放り込まれたからなのか、何日か飲まず食わずで流浪していたからなのか。 彼の生気のない目は今もよく覚えている。 『この世界でやれることはなんだろう、って考えると、やっぱり俺には小説を書くことしかできないんだなと思ったんです』 しかし、幻想郷に慣れるにつれ、彼は笑顔を浮かべるようになった。 ある日見せてくれた小説を私が褒めると、○○は照れたように笑った。 私がご飯を作ると、「おいしいです!」と手放しに褒めてくれた。 『上白沢さんは寺子屋を? すごい。どのようなことを教えているのですか?』 そして私が行う様々な説明を、彼は目を輝かせて聞いていた。 どんなことでもよく見て、よく聞き、よく理解し。 彼は己の見識をどこまでも広げていった。 そして今も彼は進み続けている。 その姿の、なんと眩しいことか。 「せんせー。僕ね、もう数を数えられるんだよー」 「それはすごいな。やってみせてくれないか?」 「いいよー。まずはねー、いーち、それでそれで、にー、さーん」 かわいらしく数を数え始める子供を、私は目を細めて見つめる。 この子もまた、成長する。前に進んでいる。数だっていつかはどこまでも数えられるようになる。 小さな足で先へ進む姿は、○○と同じように眩しい。私はその眩しさを守りたいと思うから里を守護する。 ○○の眩しさも、もっと近くで見守りたい。 だが、そう思っているのは私だけではない。 『なっ! お前らも○○が好きなのか!?』 『こんなことってあるんだ。信じられない』 妹紅と魔理沙。約2年前だっただろうか、約束事を交わした少女たち。 私は彼女らを敵視しない。むしろ仲間だと思っている。 共通の目的を持った仲間。戦友だ。私達はお互いを邪魔しないし、疎ましくも思わない。 それでもいつかは、この関係が変わり、全てが定められる日が来てしまうのだろう。 その日を恐れてはいない。私としては、○○を見守ることができるならそれでいい。 しかし欲を言えば、私を選んでほしくもあった。 「あら? 慧音先生ではないですか?」 道の向こう側から、背の低い儚げな少女が私に声をかけてくる。 和服に身を包み、紫色の髪に花飾りをつけ、おしとやかな笑顔を浮かべているその少女。 人里に住む人間、稗田家当主。稗田阿求だった。 「阿求か。こんにちは」 「はい、こんにちは。慧音先生も団子を? そちらの子供さんは……」 私の隣に視線をやる阿求。男の子はいつの間にか数を数えるのをやめ、団子を頬張っていた。 阿求はどう思い至ったのか、ぽんと手を叩き、にっこりと笑う。 「お子さんですか?」 「……お前もか。お前もなのか」 私が眉間に皺を寄せると、阿求はさらに楽しそうに微笑んだ。 「冗談ですよ。寺子屋の生徒さんですか?」 「いや、迷子だ。母親を探していたのだが」 「ああ、それでしたらあちらに子供を探している女性がいましたよ」 「なに、どこだ?」 「ええと、それほど離れていないはずですが」 「○△!」 遠くから、女性の高い声がこちらに届いた。 見れば、一人の女性が涙目で走り寄ってくる。 「お母さん!」 私の隣に座っていた子供も、勢いよく走り出した。 「どこにいってたの! 心配したのよ!」 「ごめんなさい、ごめんなさーい!」 親子は再会し、抱き合う。 ようやく出会えた大切な人の存在を確かめ合うように、しっかりと。 「よかった……」 私はほっと胸をなで下ろした。 ※ 「ありがとうございます。本当にありがとうございます」 母親はぺこぺこと頭を下げ、何度もお礼を述べる。 私はまあまあと彼女をなだめ、顔を上げてもらった。 「次からは気をつけてください」 「はい、それはもちろん。○△を見てくれたのが慧音様で本当にありがたいことでした」 「私はただ一緒に母親を探していただけですよ。なあ、○△?」 「うん! けーねせんせーは一緒に遊んでくれたよ!」 母親のそばにいることで男の子はきらめくような笑顔を浮かべている。 見ているとほんわかとした気持ちになった。やはり子供は笑顔が1番だ。 「それでは、これで失礼します。また改めてお礼を……」 「いえいえ、結構です。これからも仲良くしてください」 「ありがとうございます。○△、さよならを言いなさい」 「もう、けーねせんせーと会えないの?」 男の子が寂しそうな目で私を見つめる。 私に懐いてくれているのだな、と嬉しくなり、優しい手つきで男の子の頭を撫でてやった。 「そんなことはない。私は寺子屋にいるから、いつでも来なさい。いろいろと教えてやるから」 「うん! じゃあ、僕、けーねせんせーのおむこさんになりたいから、そのほーほーをおしえて!」 「そ、それは……あー」 子供はなんとも無邪気に大胆なことを言う。 これには私も母親も苦笑いを浮かべるしかなかった。 「こら、○△。変なことを言わないの。では、これで」 「ばいばーい」 そうして母子は手をつなぎ、去っていった。 いつまでも手を振っている子供。遠くからでも頭を下げる母。 夕焼けに照らされ、消えていく2人の姿。 人の母子とは、こんなにも美しく見える。 「ふぅ……」 「あの子供もかわいそうに。憧れの先生が1人の男性に心を奪われていると知れば、幼い瞳を涙で濡らすことに」 「阿求、からかってくれるな」 阿求の軽口を、私はなるべく平然と受け流す。 しかし阿求の追い込みは止まらない。 「おや、では『彼』以外の方からの求婚を受け入れるのですか?」 「……だからからかってくれるな」 答えなんて決まっていると、阿求も分かっているだろうに。 私は誤魔化すように苦笑いを浮かべるしかなかった。 それから、私と阿求は連れ立って歩きだした。 残りの用事を済ませるためだ。お届け物の配達と、落し物の財布の処理。 その内、お届け物に関してはすぐに終わった。届ける相手が目の前に現れたからだ。 「阿求、古本屋の主人がお前にと」 「ああ、注文していた本ですね。これから大図書館の主と会うので、ちょうどよかったです」 「『動かない大図書館』に?」 「はい。○○さんに紹介していただきました。お互いに本の貸し借りをしていまして……この本はおススメのもので、パチュリーさんに差し上げようかと」 「そうか」 色々と人の縁は広がっているものなのだな、と私は思った。 さて、これで残りは落とし物の財布を自警団に届けるだけだ。 私が自警団の詰め所に向かって早々に歩き出すと、阿求がついてくると言い出した。 どうやら私と話したいことがあるらしい。 里の中を歩いていると、阿求がさりげない調子で質問を繰り出す。 「○○さんとはどうなのですか? 進展は何かありましたか?」 やはりか、と私はうんざりとした気持ちになった。 「いつも通りだ。変わりない」 「そうですか」 ここで私は疑問を抱く。 阿求にしてはやけにあっさりと引き下がったのだ。いつもは「半妖と人間との恋を書き留めたい」と言っては、根ほり葉ほり私と○○との関係を問いつめてくるというのに。 もっと別の話をするつもりなのだろうか。もしや、人里の治安に関してか? 私は少し身構えた。 「もう1つ、お聞きしたいのですが」 彼女の顔は真剣だ。やはり何か重大な話をするのか。 阿求の口から出てくる言葉に、私は意識を集中する。 しかし予想は外れた。 「○○さんはこれから新しく本を出すご予定はありますか?」 「本?」 「はい、本です」 ほとんど世間話の域を出ていない質問に、私は拍子抜けする。 ただ、阿求の表情は確かに真面目なものだったので、答えなくてはいけないような気にさせられた。 最近の○○の状況を思い返し、答える。 「どうだろうか。最近はそれほど忙しくしていないようだが……天狗の新聞での連載が続いているぐらいだな」 「そうですか。でしたら構いません」 落胆半分、安心半分といった調子で阿求が肩を落とす。 私はその様子にやはり疑問を抱く。 「……○○の本が気になるのか?」 「はい。私と○○さんはライバルですから」 ぐっと拳を握る阿求。彼女にしては活発的なポーズを取る。 ああ、そういえば似たようなことを前にも聞いたことがあった。あれは○○と阿求が連れ立って私の家にやってきた時のことだったか。 ○○と阿求、どちらの本が皆に読まれているのか調べてみたい、云々と。私に統計の依頼をしてきたのだ。その時も何故と問うて、『ライバルですから』と阿求は言っていた。 結局その依頼は「里人にアンケートをとる」という、私が提案した単純な方法が採用された(結果として、2人に大きな差はなかった)。 他にも、2人がある本の内容について白熱した議論を交わす光景を目撃したことがある。 ある資料の解釈を巡って、手紙の上で大喧嘩をしたこともあったか。 つまるところ、どうも2人は文筆家としてお互いを意識しているらしい。 「なあ、阿求」 「はい?」 「ジャンルが違うのにライバルになるものなのか? あちらはフィクションばかり書いているぞ」 「お互い文を書く者同士、どうしても競い合ってしまうものなのです。幻想郷には文筆家が少ないですし、己の書いたものを人に読んでもらいたいという欲求ぐらい、私も持ち合わせています」 「少ないのだからこそ、仲間意識はないのか?」 「ありますよ? しかし、仲間でありながらライバルなのです」 「そういうものか……」 作家でない私にはこのあたりのことはよく分からない。 私も歴史を書物に記すことはあるが、彼らのように文章に命をかけているというわけでもない。 文筆家には文筆家なりの、何かプライドのようなものがあるようだ。歴史家にはよく分からない。 「そう言えば、○○がこう言っていたな。『阿求さんのウィッティに事実を伝えている文を読んでると嫉妬してしまう』と」 「……彼は幻想郷縁起を読み進めているんですね」 『幻想郷縁起』。 阿求の家が代々編纂している、幻想郷についてのあらゆることを記した書物。 そこには幻想郷の成り立ちから地理、天候、人物等、様々なことが資料としてまとめられている(私も恥ずかしながら登場する)。 稗田家の中でも『特別な子』が作るその書物も、阿求で9冊目(一代につき一冊出るのが普通らしい)。 まだ編纂途中ではあるが、一部が皆の読み物として発刊されてもいる。評判は上々。 ○○には阿求から未発刊の原稿も送られているようで、時折読んでいる姿を見かける。 「○○もなかなか全部は読めないようだがな。何せ、あれは今でも十分長い」 「ええ、私もそう思います。しかし、幻想郷の成り立ちからまとめるとなると、どうしてもああなってしまうのですよ。幻想郷の人々は個性的ですしね。 ああ、そういえば、彼はやはりまだ、幻想郷に住む者を扱う項目を読んでいないのですか?」 「『実際にその人と出会うまでは、人物評はなるべく読まないようにしている』と言っていた」 「彼らしい。本の意図とは外れていますが」 「その通りだ。妖怪を知り、危険を避けるためにも、きちんと読んでほしいものだ」 「相変わらず心配性ですね、慧音さんは」 阿求はくすりと笑った。 「では彼にはこう伝えてください。『○○さんの的確な描写にはいつも舌を巻きます。しかし、時に幻想郷の常識を無視していることがある』と」 ああ、確かに彼は幻想郷の常識を無視している。 妖怪を恐れず。危機を恐れず。いつも小説を第一に考えている。 だから私は彼から目が離せない。 「妖怪の心理描写や行動様式に少々荒が目立ちますから、その点も伝えていただければ」 「わかった」 阿求の言葉は○○の本をきちんと読んでいなければ出てこないものだ。 きっと○○の本を細かく読み込んでいるのだろう。 ○○も幻想郷について知るために幻想郷縁起を精読している。 互いの作品を読み合い、批評し、切磋琢磨する。文学を通じて、彼らは交流を深める。 これがいわゆる文学サロンというものなのだろう。 私には入り込めない世界だ。 「……少し阿求がうらやましくなるよ」 「なぜですか?」 「私の場合、歴史の『記述』はできても『描写』はできないからな。歴史家としてそれは当たり前ではあるが、時々○○と私との間に大きな壁があるように思う」 「壁など得意の頭突きで壊せばいいではないですか。文学を知れば、彼を深く知ることもできるかもしれませんよ」 「……そうだな」 阿求の言うことも最もだ。 私は○○を見守りたいと思っている。 ならば、もう少し○○の仕事について勉強するべきではないか。 ○○は小説を書く。時に喜び、時に悩む。 さらには自己嫌悪と自信喪失の波に襲われ、家に引きこもり、己を罵り続けることもある。 彼はいつでも、いつまでも文章と戦い続けている。 ならば私は? 彼を助けたいと思うなら、私は何を知るべきか? 「慧音さん、お財布を届けた後はどこへ?」 考え込む中、阿求が的確な質問をしてくる。 彼女はめざとい人間だから、きっと私がどんなことで悩んでいるか理解しているのだろう。 嫌には思わない。友人が自分を応援してくれているのは、よくわかっている。 私は落ち着いて答えた。 「○○の家へ」 もっと彼の近くにいるために。 彼を理解するために。 彼を見守るために。 私は彼と話がしたかった。 ―魔理沙― 今日は厄日なんだろうな、と私はため息をついた。 目の前に出された紅茶もクッキーも、手をつける気が起こらない。 ただただ力ない笑みを浮かべることしかできなかった。 「クリスマスはツリーを作ってプレゼントをあげて、それで終わり? あなたにしては珍しく大人しいのね。もっと積極的にいくのかと思ったわ」 動かない大図書館は、いつもの「動かず話さず」はどこに行ったのやら、熱心に語っている。 曰く「もっと押せ」と。 「いいじゃないそれで。むしろ、最後に○○さんによりかかって眠っていたなんて……ちょっと無防備すぎると思うわ」 7色の人形遣いは、いつものスマートでクールな様は消え失せ、熱心に語っている。 曰く「もっと慎みと恥じらいを」と。 「なぁ……いい加減、私の話はやめにしないか? もう飽きてきたんだぜ」 「何を言ってるの」 「まだまだこれからよ」 パチュリーとアリス、2人に断言されてはぐうの音も出ない。 いつもなら本を「借りていく」はずの大図書館は、今では女達の恋愛談義の場になってしまっていた。 「うぅ……」 私は耳を塞ぎ、追及から逃れようとする。 「「魔理沙、もっと話してちょうだい」」 しかし彼女らは許してくれない。どこまでも私を追い詰めてくる。 どうしてこんなことになってしまったのだろうか。 発端は、アリスからのお茶会のお誘いだった。 「たまにはおしゃべりでもしない?」と、アリスが誘ってきたのが昨日のこと。 私は珍しいなと思いながらも、おいしいケーキがあるという甘言に乗ってしまった。それがいけなかった。 大図書館で始まったお茶会。お茶とお菓子。どちらも咲夜が用意したもので、とてもおいしかった。 「さあ、飲みなさい。もっと食べなさい」 「魔理沙、今日はいくらでも食べていいのよ?」 パチュリーとアリスはなぜかとても機嫌がよかった。ニコニコしていた。いや、ニヤニヤだったかもしれない。 それで気付くべきだった。これは私をはめるための罠だということを。 なのに私はのんきに出されたお菓子をもぐもぐ食べていた。 そして、 「そう言えば、○○さんの誕生日っていつだったかしら?」 というパチュリーの質問から全てが始まった。 「んあ? 誕生日?」 お菓子を食べることに一生懸命だった私は、さっさと誕生日を教えてやった。 しかしそれで終わらなかった。パチュリーは矢継早に質問を繰り出してきた。 「去年の誕生日は何かあげたのか」「お返しはもらえたのか」 という話題からさらに、 「他のイベント事では何かあったのか」「○○さんと週何日会っているのか」「普段はどんな話をしているのか」 と、話題がピンポイントで私的なものに移っていき、 「○○さんと手を繋いだことはあるのか」「お出かけやデートは?」「彼のどこが好きなのか」 というように、いつの間にか赤裸々告白をさせられる羽目になったのだ。 そうして今に至る。もはや途中から私の顔は赤くなりっぱなしだ 「よく頭を撫でられたりするみたいだけど、そういう時ってやっぱり幸せ?」 耳を塞ぐ私の手を無理やりどかしたパチュリーが、また恥ずかしいことを聞いてくる。 これ以上答えられないと思った私は、もごもごと口ごもった。 「うぅ……もう何も言いたくないんだぜ」 「まあまあ、魔理沙、この紅茶を飲みなさいよ」 アリスがまた1杯、カップに紅茶を入れた。 砂糖1つにミルクを数滴入れた紅茶。私の好きな味だ。 目の前にカップを置かれると、手が勝手に取っ手を掴んでしまう。 一口含み、飲み込む。やっぱりおいしい。 「で、どうなの?」 アリスの問いに、私の口が勝手に答えてしまう。 「○○の手はなんだか暖かくって、頭を撫でられると、ぽわぁってする……って、ち、ちがっ、今のは!」 私ははっと気付き、口を抑えた。 なんだかおかしい。この紅茶を飲むと、なぜか心がほんわかとしてきて、口が軽くなってしまう。 普段なら言葉にするのも恥ずかしい単語も、簡単に出てきてしまう。 「そのまま抱きついてしまえばいいのに」 パチュリーがまた過激なことを言う。 私は自分があいつに抱きついた場面を想像し、赤面してしまった。 「そ、そんなこと無理だって……やりたくはなるけど」 すらすらと出てくる自分の欲望。どうしてこんなにも素直になってしまうのだろうか。 きっとこの紅茶に何か入っているに違いない。 そうだ。そうに違いない。 決して、日頃の欲求不満をここで打ち明けたいなんて思っちゃいない。決して……多分。 「それにそんなの私のキャラじゃないぜ……」 私がため息混じりに呟くと、パチュリーが納得行かない様子でびしっと私を指さした。 「魔理沙は誰でも彼でも突撃していくもんでしょ。私やパ――もとい、レミィにもよく後ろから飛びかかってくるじゃない。○○さんにだって色々と性質の悪い冗談言っているんでしょ?」 「そ、それは結局冗談であって……」 「気軽に真正面から抱きついてやったらいいのよ」 「お、男にそんなこと気軽にできるわけないだろ!」 私にできるのは、せいぜいからかい調子で○○を挑発するか、冗談混じりに○○の腕にしがみつくことぐらいだ。 それだって平然を装っているだけで、本当はドキドキしっぱなし。 真正面から抱きつく? ○○に? できるわけがなかった。 私が顔を赤くしてもぞもぞしていると、アリスが私の肩を叩き、うんうんと頷いた。 「それでいいじゃない。女ががつがつするのはよくないわ」 「人形遣いの言うことは面白くない」 「あなたが過激すぎるのよ、パチュリー」 アリスが苦笑混じりに言い、また私のカップに紅茶を注いだ。 淹れたての紅茶の香りが私の鼻をくすぐる。この香りが心の平穏をもたらしてくれた。 「で」 とんっとパチュリーがテーブルを指で叩き、私たちの視線を集めた。 「魔理沙。あなたと○○さんとの出会いって聞いたことがないわ。教えてちょうだい」 「え」 「聞かせて」 私が動揺して口を噤めば、身を乗り出してくるパチュリー。 今までの彼女にはあまり見られないことだった。いつもなら人の話に興味を示してこないはずだが。 何にしろ、パチュリーの質問をきっかけにして、私は過去に思いを馳せる。 「○○との出会い?」 「そうよ」 「……もう結構前だな。2年以上前か」 思い出すのは、魔法の森の傍にある平原。あそこに1本だけ高く延びた木。 私と○○は―― 『っと、箒に乗って空を飛ぶって、まるで魔法使いみたいですね』 『まるで、じゃなくて私は魔法使いだぜ?』 ――出会って 『霧雨さんは魔法の森に住んでるんですか。あそこは入っちゃいけないって、慧音さんに言われてるんですけど、俺はすごく興味あるんですよね』 『……なあ』 『はい?』 『霧雨さんって呼び方はやめてくれないか? こう、背中がかゆくなるっていうか』 『んー、じゃあ魔理沙さんで』 『魔理沙でいいって』 『いや、さすがに呼び捨てはちょっと』 ――言葉を交わして 『では、魔理沙さん』 『だからさん付けはやめろって。敬語もやめてくれ』 『けど、うーん』 私はあいつの距離の取り方が不満だった。 いくら近づこうとしてもあいつは逃げていく。少し親しくなったらすぐに離れていく。 だから私は無理にでもこいつを捕まえたくなって、捕まえると、今度は一緒にいたくなった。 楽しい時間を共有したくなった。 そうしていつの間にか私は―― 「秘密、だな」 パチュリーとアリスがこちらを凝視してくる中、私は懐かしい思い出を口から外に出さず、そっと胸にしまった。 あの思い出は人に話したくない。私と○○との間だけにある、大切な思い出だ。 「なにそれ。いいじゃない、出会いぐらい聞かせてくれたって」 眉をひそめて怒ったのはパチュリーだ。 まるで拗ねた子供のように口を尖らせている。 私は「勘弁してくれ」と申し訳なく言った。 「恥ずかしいんだって」 「それでも聞かせなさいよ」 「んんー……おいおい、どうしたんだ、パチュリー。やけに突っかかるんだな」 「別に……なんでもないわ」 ぷいっと顔を背け、机の上に置いていた本を開くパチュリー。 そう言えば、今日初めて、パチュリーが本を読む姿を見た気がする。 それもおかしな話だ。彼女はたとえお茶会でも本を読むのをやめないはず。今日ばかりは本以上に私と○○の話に興味があるのだろうか。そんな彼女ではないはずだが。 「じゃあ、質問を変えましょう」 場の空気を変えるように、アリスがポンっと手を叩いて言った。 「○○さんに思いを寄せてる人って、あなただけじゃないでしょ?」 「……まあな」 「焦ったりしないの?」 純粋に疑問に思ったらしいアリスの質問に、私はまた過去のことを思い出す。 焦る。 確かに少し焦ることはある。○○は優しいし、人当たりもいい。人にも妖怪にも好かれやすい。 私は顔を俯けながら呟く。 「そりゃあ、な。○○って霊夢やレミリアにも好かれてるみたいだし」 「誰があんな人間を」 「ん? パチュリー、何か言ったか?」 パチュリーの呟き声はよく聞こえない。何か文句でもあったのか。 「いーえ、何も」 「そうか? だったらいいけど……うん、焦ることもある。けど、そんなにだな」 昔はもっと焦っていた。 特に、○○の家の前で「あの2人」と鉢合わせした時は、本当に焦った。 『……これは驚いたな。妹紅も魔理沙も、とは』 『こんなことってあるんだ。信じられない』 あの出来事があってから、私たちは共通の目的を持つようになった。 最初は本当にただの共同戦線でしかなかった。持ちつ持たれつな関係でしかなかった。 しかし私達は仲良くなり、4人一緒にいることが当たり前になった。 いつしか、あの空間が随分と居心地よくなってしまった。 焦りも嫉妬も生まれない私たちの間柄。 これが長くは続かないことも、私たちは知っている。いつか、○○の横に立つ人が決まってしまうだろうから。 それでも私は焦らない。 自分が選ばれなくても、納得できるだろうからだ。 たとえ望む未来にならなくとも、その未来を受け入れられるなら、焦りなんて生まれない。 「ま、じっくりいくさ。焦る必要はないと思ってる」 この私の答えに、本を読んでいたパチュリーが顔をあげ、しかめっ面をした。 というか、パチュリーの手元の本は全くページが進んでいない。読んでいなかったのか。 「ああ、もう、さっさと抱きつくなり、いそしむなり、なんなりしてしまえばいいのよ」 「もう……自重しなさい、パチュリー」 「うー」 アリスに諌められると、口をすぼめて拗ねるパチュリー。 やはり今日のパチュリーはおかしい。異様なまでにアクティブだ。 イメチェンでもしたのだろうか。首には珍しくネックレスをかけ、おめかししている。 ぷんぷん怒った顔も、イメチェンの成果か? 「魔理沙なら、図書館の本を奪っていくみたいに、○○も奪っちゃえばいいのよ」 鼻息荒いパチュリーに、私は苦笑する。 「そりゃ、押して押して押しまくろうとは思うぜ? けどな、奪うってのはちょっと違うと思ってる」 「違うって?」 「恋愛は、自分と相手との気持ちの重なり合いが大事だってことだ。無理やり自分のところにつなぎ止めるのは、なんか違うと思う」 例えば、好色な物語によくあるような『既成事実を作る』だとか『自分の所におらざるを得なくする』だとか、そういう愛を強いるのとは違う。 私はそんなことで心が通じ合うことを望まない。 もっと、精神的なつながりが大事だと思う。特に○○相手には。 きっと妹紅も慧音も一緒だろう。 「恋はじっくりたっぷりと、だぜ?」 恋色の魔砲使いとして良い事を言ったのではないか、と自画自賛する。 しかしパチュリーにとっては納得のいかない答えだったようだ。 「似合わないことを言うのね。紅魔館の不法侵入常習者とは思えないわ」 「本当に恋する乙女になってしまっているのよ」 「ふーん」 アリスが苦笑気味に言うのを、パチュリーは拗ね顔で相づちを打つ。 私はその間に一口、紅茶を飲んだ。心をリラックスさせるこの紅茶は、やはりおいしい。 「それに、○○はさ」 また私の口が勝手に動き出してしまう。 紅茶のせいで、愚痴を言いたくなったのだろう。 「○○は、鈍すぎるんだぜ。何をやってもスルーされてる気がする。手を握っても何もないし」 「そうかしら、○○さんはけっこう意識してると思うわよ?」 軽くのたまうアリスの言葉に、私はむっとした。 こいつは現実を分かってない。 「嘘つけ」 「嘘じゃないわよ。私たちと話をする時と、あなたと話をする時じゃ、全然違うわ」 あくまでアリスは真剣な顔で説明する。 「私たち相手だと、彼の目は観察のそれに近いのよ。私たちに興味を持って、細部までを知ろうとしているの。けれど、あなたを見つめる目は違う。もっとこう……親しみがあるわ。そして明らかに女性としても意識している」 アリスの言葉に、私はぽかんとしてしまった。 ○○が私を意識している? 「ほ、本当か?」 「本当って言ってるでしょ。そもそもね、女の子に傍に寄られて意識しない男なんていないわよ」 「……○○にそんな風に見られてるなんて、そんな、そんなだったら」 もしアリスの言うことが本当だったら…… 想像して、ぼわっと心に火が灯る。 もし、○○の瞳に私が映っているならば。 考えるだけで物凄い喜びが湧いてきて、思わず手で顔を覆ってしまった。 「……う、嬉しい」 自分でも顔が熱くなっているのが分かる。 嬉しかった。もっと見てほしかった。 恋しい人に愛でてほしかった。 いつだって、私はそう思っている。 それでもつれないあいつが、憎たらしくなる。 「はぁ……」 ため息ひとつ。 今日の私の心はどうにも乙女ちっくになっているようで、○○への想いばかりが募っていく。 と、アリスとパチュリーがなにやらひそひそ話をしていた。 「や、やばいわね、今の魔理沙は。女の私でも襲い掛かりたくなっちゃったわ」 「魔理沙がここまで『落ちた』とは……なかなかの誤算ね。これもあの人間の魅力というものか」 「ちょっと、パチュリー、口調」 「っと、ごめんなさい。気を抜いてしまったわ」 2人がこちらを見ながら話している中、私はざわつく心を押さえつけるのに精一杯だった。 まずい。 今、すごく○○に会いたくなってる。 「ちょ、ちょっと行ってくるんだぜ!」 「え? 行くってどこに?」 「○○のところ!」 アリスの当惑する声を背に、私は箒を取り出してまたがる。 会いたい。すごく会いたい。 会って、私と話してほしい。私を見てほしい。私を意識してほしい。 恋い焦がれる想いが私を突き動かす。 「行くぜ!」 室内だろうとも構わず箒に乗る。 扉を押し開け、妖精メイドや門番を吹き飛ばし、私は夕焼け空へと飛び上がった。 目指すは○○の家。今なら幻想郷最速になれそうなほど、気分が高揚していた。 ※ 「行っちゃった、わね」 魔理沙が飛んでいった名残からか、図書館には今も風が吹いている。 机の上に置いている本がパラパラとめくれていくのを、アリスは手で押さえて止めた。 「はあ、あのままの勢いで変なことになったりしないかしら、心配だわ」 「お前は魔理沙とあの男が付き合ってほしくないのか?」 「そういうわけじゃないけど……勇み足になりすぎて魔理沙に傷ついてほしくないだけよ」 アリスと話をしているのはパチュリー。けれど口調はパチュリーとは似ても似つかない。 そう、アリスと話しているのはパチュリーではない。 「いつまでその格好をしているのかしら、吸血鬼さん」 「そうだった。えーと、この魔法を解くには、と」 パチュリーの身体からパッと光が放たれる。 瞬きする間に、紫色の服を着た魔術師は、蝙蝠の黒い翼を持つ幼い吸血鬼へと変化した。 レミリア・スカーレット。 紅魔館の主がパチュリーの姿に変装していたのだ。 「協力、感謝するわ。ここまで完璧な幻覚魔法は、パチェ以外はお前しか使えなかったでしょうね」 「別にいいわよ。人形の素材をあんなに貰えたんだし。安いものだわ」 ひらひらと手を振るアリス。 レミリアは首にかけていたネックレスを彼女に手渡しする。 これが幻覚魔法の種。アリスによって魔力が込められた、望む姿に変身できる便利アイテムだ。 アリスがネックレスを鞄にしまうのを眺めつつ、レミリアがふと尋ねた。 「ねえ、そんなアイテム、どうして作ったのよ」 「人形の首にかけるのよ。新しい人形を作る時、完成品のイメージを固めるためにね。幻覚魔法で作り出した人形をモデルにするの」 「なるほどね。てっきり自宅で魔理沙にでも変身してるのかと思ったわ」 「どうしてそんなことしなくちゃいけないのよ」 「だって、魔理沙にはすごく過保護に見えるのよ。変な感情でも持ってるんじゃない?」 ニヤニヤと笑うレミリアに対して、アリスは憮然とした表情を返す。 「だったら聞くけど、あなたもどうしてこんなことを計画したのかしら、吸血鬼さん?」 「そんなこと、決まっているわ」 レミリアは薄い胸を大きく張り出した。 「面白いからよ!」 「面白い?」 「不死鳥娘に半妖、そして白黒。その3人に好かれている○○という人間。面白いじゃない。ただの人間が幻想郷の女を惚れさせるなんて」 「……○○さんに気があるの?」 その一言に、レミリアは途端に顔を赤くした。 「そ、そういうのとは違うわ! これは知的好奇心という奴よ!」 「本当かしら?」 「本当よ!」 レミリアの羽がぴんっと硬直している。 これはどんな感情を表していたのかな、とアリスは微笑む。もしかしたら図星を指されるとこうなるのかもしれない。 レミリアの機嫌を悪くしすぎるのもよくないので、アリスはそこで追求を止め、紅茶を1杯淹れてやった。 カップに紅茶が注がれた所で、図書館の扉からノックの音がする。 すかさずレミリアが「誰?」と問いた。 「私です」 「ああ、咲夜、どうしたの?」 扉の開く音もせず(そもそも『本当に』開く場面だけが見えなかった)、紅魔館のメイド長の姿がレミリアの横に現れた。 彼女は少々申し訳なさそうな顔をして、己の主に頭を下げる。 「お話し中、申し訳ありません。図書館から轟音がしたもので……また魔理沙ですか?」 「ええ。何か壊されたの?」 「図書館の窓と門番が1人。どちらも大した損害ではありませんが」 「窓は妖精メイドに直させなさい。門番は晩ご飯抜きよ」 「かしこまりました」 うやうやしく頭を下げる咲夜。相変わらず瀟洒だ。 そのまま去ろうとする背中を、レミリアが呼び止めた。 「そうそう。咲夜、あの紅茶、なかなか良かったわ。魔理沙があんなにしゃべってくれたのは紅茶のおかげね」 「ありがとうございます」 「何か薬でも盛った?」 「いえ、特には。リラックス効果の成分は元々入っていますが……おそらく魔理沙自身に、いろいろとため込んでいたものがあったのではと」 「ふむ、だとしたらパチェの格好をしたのはやはり正解ね。私相手だと絶対に話してくれなかったでしょ」 「そうですね。お嬢様相手だと警戒するでしょうから。そのご様子ですと、収穫があったようで」 「ええ、盛りだくさんよ」 そう言って笑うレミリアは、相当あくどい顔をしていた。 収穫と言っても、魔理沙と○○の蝸牛の歩みのような関係を延々と聞かされていただけのはずだが。 もしかするとレミリアは相当な出歯亀根性の持ち主なのかもしれない。例の裏新聞を書いている天狗と同族なのではないか? 「今度は小説家の家に突撃してみるのもいいわね。いそしんでる現場を押さえるっていうのもアリだし」 なんとも過激な吸血鬼だ。お茶会の最中もそうだったが、外見の幼さとのギャップが激しい。 「ねえ、メイド長さん」 「なにか?」 「ご主人様の教育方法、どこか間違ってないかしら」 「そうね。私も最近、そう思っているところよ。ただ、あんなお嬢様を見ているのも楽しいわ」 こらえきれなくなったかのようにため息をつく咲夜。 しかしそれは呆れているというより、和んでいるような感じだった。 「……あなたも相当ね」 「ありがとう。ああ、それと、しつける役目は私ではなく、他にいるのよ」 他とはどういうことかとアリスが聞き返す前に、図書館の扉が今度は正真正銘開いた。 夕焼けを背に立つのは、紫色の魔法使いと、その使い魔。 パチュリーと小悪魔だ。 「……」 パチュリーは眉をひそめ、かつかつとこちらへ歩いてきた。 どうやら彼女は珍しく外出していたようだ。その手には紙袋がいくつか抱えられている。 「お邪魔しているわ、パチュリー」 「……そ」 アリスはパチュリーに手をあげて挨拶するも、相手はちらりと目配せしただけ。 その紫がかった瞳はレミリアをジトリと見つめていた。怒っているのか呆れているのか、不機嫌であるのは間違いない。 一方でレミリアは、目に見えて慌て始める。 「あ、あら? パチェ、もう帰ってきたの? 稗田の当主と会ってきたらしいけど、どうだった?」 「……レミィ」 パチュリーの重くて低い声に、レミリアの翼がぴんっと跳ねる。 睨みを効かせた顔がどんどんと近づいてくると、レミリアは椅子から立ち上がり、後ずさりし始めた。 しかしパチュリーが逃がすわけもない。 「私ね、図書館の本をとても大事にしているの」 「そ、そうね」 「勝手に持っていかれたりしないよう、色々と防犯対策をしていて」 「そう、それは初耳ね」 「その中にはね、このテーブルに人が近づくと作動する魔術式があって」 「え、え?」 「音と映像を自動的に拾って私に届ける魔法」 「あ、あー、えーとね、これには深いワケが」 「今日外出するって言ったら、やけにニヤニヤしていたけど、こういうことなのね」 わなわなと震えているパチュリーが、とんっと、テーブルの上に紙袋を置く。 何気ない仕草にも、レミリアはびくりと身体を震わせていた。 「ぱ、パチェ、落ち着いて?」 「私の姿を勝手に使って、あんな、あんな恥ずかしい言葉をたくさん……稗田阿求の前で何度倒れそうになったことか」 『そういうこと』への道徳観念の強いパチュリーのことだ。 どれだけの恥ずかしさに耐え、ツッコミを我慢していたのか、想像に難くない。 「とりあえず、私から一言、言わせてもらうわ」 すぅ、と息を吸い込むパチュリー。 病弱な身体だとは思えない、相当量の怒気と共に、一喝。 「色々とそこまでよ!」 びしぃ!とパチュリーチョップが炸裂した。 あれは痛い。 「まったく!」 怒り心頭のパチュリーは、そのまま図書館の奥へと引っ込んでいった。 それを見送ることもなく「うーうー」と半泣きで頭を押さえているレミリア。 そんな主をかわいいものを見る目で眺めている咲夜。 あははと小さく笑っている小悪魔。 加えて、今遠くで「また晩御飯抜き!?」という悲鳴に近い声も聞こえた気がした。 「あらあら」 さすが紅魔館、変人が多いのだな、とアリスは笑うのであった。 ―○○― 今日は最悪な1日だ、と俺はため息をついた。 身体はだるく、咳が出て、鼻水はじゅるじゅる。頭はがんがんと痛む。 布団に入っているのに寒気は止まらず、気分は最悪。 そう、俺は風邪をひいてしまっていた。 「あ゛ー」 絞り出した声もかすれ気味だ。 もぞもぞと身体を動かし、枕そばに置いているコップの水を飲み干す。 しかし気分は晴れず、むしろ空っぽの胃をいたずらに刺激するだけだった。 体調は昨日から優れなかった。寒気と咳が止まらず、風邪の初期症状が明らかに出ていた。 しかし俺はまあ大丈夫だろうとタカをくくり、何も対策をせずに就寝。 すると、今日は朝から高熱と節々の痛みでダウン、だ。 そうして今日は一度も起き上がっていない。いや、起き上がれない。 なんとか這って水場に赴き、水分だけは補給しているが、栄養は何も取っていなかった。 今はもう夜になる刻。栄養不足の脳は機能停止寸前で、意識は朦朧していた。 「あ゛ー……」 無意味に出た声が、誰もいない部屋にむなしく響いた。 こういう時、一人暮らしは不便だし、寂しい。 俺は布団を頭から被り、風邪からくる寂しさに耐える。 身体が弱れば精神も弱る。俺は隣に誰かいてほしいと、柄にもなく思った。 外の世界にいた時からずっと1人暮らしだったのに、今更そんなことを願ってしまうのは、おそらく人が傍にいる温かさを知ったからなのだろう。 この家に集まる彼女たち。食卓を囲み、談笑するあの時間は、俺を強くも弱くもした。 「……」 そう言えば、と俺は思い出す。 まだ幻想郷に来たばかりの、慧音さんの家に居候していた頃も、風邪をひいてしまったことがあった。 あの頃はまだ、慧音さん、妹紅、魔理沙とも知り合ったばかりで、今ほど仲良くしてはいなかった。妹紅と魔理沙に至ってはほとんど顔見知り程度だっただろう。 けれど、 『風邪か。今日は1日寝ておけ』 慧音さんは優しい笑顔でおいしいお粥を作ってくれたし、 『ほんと貧弱だね。ほら、これでも食べなよ』 妹紅は呆れながらもお見舞いの果物をくれたし、 『お、この林檎うまいなー。ほれ、○○も』 その果物を勝手に食べた魔理沙が、笑顔を振りまき気分を明るくしてくれた。 ちょっとした知り合いだっただけの俺に対し、彼女たちはあんなにも優しくしてくれた。 その優しさが身に染みて、いつしか幻想郷に残る決意をして。 「……えあ゛ー」 急激に沸き立つ孤独感を吹き飛ばすように、俺はかすれた声をあげる。 昔を思い出して感傷的になるなんて、そろそろ本当に身体がまずいのかもしれない。 燃え尽きる前の蝋燭、もしくは走馬燈。 通信手段もろくにないこの世界では、助けを呼ぶこともできない。 「……うぅ」 怖くなる。このまま1人寂しく、この家で朽ちてしまうのだろうかと。 せめて書きかけの小説を全部仕上げてしまってから、と思うものの、もはや指1本動きそうになかった。 何も成せず、何も残せずに消えてしまう。なんという恐怖と孤独感だろうか。 俺は涙が出そうになるのを堪えて目を瞑り、消えていく意識に身を任せようとした。 だがその時、ふと家の外から物音がした。 誰かの足音。それも複数。扉の前で歩き回っているようだ。 「――お前たちも――なのか?」 「――釣りが――それで――」 「私はちょっと―――だぜ」 この声はまさか。 俺は弱々しい手つきで布団を顔からどかしつける。 まさかとは思う。もしかしたら幻聴や幻覚なのかもしれない。 しかし確かに扉は開いた。人影が見えた。声がした。 俺は荒々しく呼吸をしながら、その先を凝視する。 そこにいたのは見知った女性たち。 「失礼するぞ」 慇懃な調子で家に入ってきた慧音さん。 「○○? って、あれ、もう寝てたんだ」 布団に入っている俺を見て、首を傾げる妹紅。 「寝るったって、まだ早くないか? それになんか顔が赤いような」 部屋に入るなり俺の横に座る魔理沙。 3人が、来てくれた。 「みん゛な……」 俺はなんとか座位に移ろうとしてみるものの、叶わず、中途半端に肘を立てたまま、また布団に突っ伏してしまった。 呼吸が苦しい。声をひねりだそうとすればするほど、胸がつかえる。 「風邪を゛……はぁはぁ……ひい゛て」 「か、風邪? 大丈夫?」 妹紅がすかさず寄ってくる。心配そうに俺の顔をのぞきこみ、とても驚いた顔をした。よほど俺の顔色が悪かったらしい。 「ちょ、ちょっと、○○! ○○!」 「あ゛ー……」 妹紅の声ががんがんと頭に響く。静かにしてくれと言いたいものの、もはや声が出ない。 だめだ、本格的に頭が働かない。彼女たちに助けてもらいたくても、何を頼めばいいのかが思いつかない。 「しっかり!」 「落ち着け妹紅。○○、失礼するぞ」 慧音さんがしゃがんで俺の顔をのぞき込み、額に手を当ててくる。その手が冷たくて気持ちよかった。 少しすると、慧音さんは難しい顔をする。 「熱が高いな。とりあえず寝ておけ」 慧音さんはそのまま俺を寝かしつけ、静かに布団を被せてくれた。 俺はふぅと息を吐く。横になると呼吸の苦しさもなくなった。 「……○○」 慧音さんがさらりと俺の髪を撫ぜる。その顔はとても優しげだった。 だが次の瞬間、きりと引き締まり、魔理沙と妹紅の方へと向き直った。 「魔理沙、水を汲んできてくれないか」 「おっし、任せろ」 「妹紅は薬だ。私の家から取ってきてくれ」 「わかった! 全速力で行ってくる!」 魔理沙と妹紅はそれぞれものすごいスピードで外へと出ていった。 慧音さんはそれを見送ると、「よし」と俺の布団をぽんっと叩いた。 「私は家のことをやろう。○○、台所を借りるからな」 わかりましたと答えたくても、口が動かない。 いや、もう答えなくてもいいのだ。彼女たちに任せておけば大丈夫。 俺が一番信用している人たちが来てくれた。その安心感は寂しさを簡単に吹き飛ばしてくれた。 ※ 魔理沙と妹紅は5分もしないうちに戻ってきた。 妹紅なぞ、慧音さんの家までかなり遠いであろうに、いったいどれほどのスピードを出したのか、3分ほどで戻ってきた。天狗を越えたのではないか。 「ほれ、○○。これでいいか?」 「ん……」 魔理沙が布を水に浸し、十分冷えたところで俺の額に乗せた。 火照った頭にはちょうどいい冷たさで、俺は彼女に視線でお礼を言う。 魔理沙は照れくさそうな顔をして、「じゃな」と炊事場に行ってしまった。慧音さんの手伝いにでも行ったのだろう。 「……」 妹紅はずっと俺の横で心配そうな顔をして座り込んでいた。 話しかけてくることはない。慧音さんに静かにしておくように言われたからだ。 時々俺が横に視線をやると、妹紅は無理したような笑顔を浮かべる。安心させようとしてくれているのだろう。それがまたありがたく、安心して目を瞑る。 額の冷たさと、妹紅の気持ちの暖かさのおかげで、徐々に気分がよくなっていった。 しばらくして喋られる程度に回復する頃になると、炊事場で作業していた慧音さんと魔理沙がくるりとこちらを向いた。 「○○、お粥ができたが、どうだ。食べられるか?」 「はい゛……」 慧音さんがお粥の入った鍋をテーブルの上に置く。 俺が何も食べていないことを分かっていたのだろう、さすが慧音さんだ。 食欲はあまりなかったが、食べなくては身体が弱る一方だ。 俺は起きあがろうと力を入れた。 しかし、身体はやはりぴくりとも動かない。 「無理するなって。ほら、ゆっくり」 妹紅が俺の身体が支えてくれたおかげで、なんとか上半身を起こすことができた。 俺は妹紅に礼を言いつつ、今度はテーブルの上に置かれているレンゲに手を伸ばすも、やはり身体が言うことを聞かず、うまくつかんでくれない。 これでは1人で食べられそうになかった。 「おっし、私が食べさせてやるよ」 俺の困った様子に気づいた魔理沙が、意気揚々とレンゲをつかんだ。 「あ、ずるい」 「へへ、早いもの勝ちだぜ」 「ぅー」 俺の背中を支えている妹紅が悔しそうに唸っている。何がずるいのだろうか? ともかく、魔理沙は適量のお粥をすくって俺の口へ運ぼうとする。 魔理沙もこんなことをやるのは初めてなのだろう、少し手元がおぼつかない。 「ほれ」 「ん……」 俺がひな鳥よろしく口を開ける。 が、そこで慧音さんが魔理沙の手を止めた。 「待て。そのままでは熱いだろう。冷ましてからにしろ」 「おっと、すまん。ふーふー」 魔理沙が一生懸命お粥を冷まし始めた。 「わ、私もする!」 なぜか妹紅まで加わる。2人でやれば早いと思ったのだろうか。 「ふーふー」 「ふーふー」 少女2人にご飯を冷ましてもらう。 普段なら見ているだけで動揺してしまいそうな光景だったが、体調が最悪な今はぼーっと眺めていることしかできなかった。 と、俺の視線に気付いた魔理沙と妹紅は、 「な、なんだよお。見るなって」 「み、見られると恥ずかしくなるから」 2人しておろおろし始め、背を向けてしまう。 それでも彼女らはお粥に息を吹きかけるのをやめなかった。 そうして十分冷めきったお粥の乗ったレンゲがやってくる。 俺は小さく口を開け、ついばむようにしてお粥を口の中に入れた。 久々の食事に口が驚き、思わずむせそうになったが、そこは我慢して飲み込む。 味はよく分からないが、塩味が効いていて身体に染みる。 「どうだ?」 「お゛いしいです……」 簡潔な感想しか出なかったものの、慧音さんは「そうか」と嬉しそうな笑顔を浮かべた。 何口か食べて食事は終わった。 次に慧音さんが水を持ってくる。妹紅が取ってきた薬を飲むためだ。 「妹紅、これはどこから持ってきた薬だ? 私の家のものではないようだが」 「えーと、慧音の家まで飛んでる途中、薬師の弟子兎に会ったから、そいつの持ってた薬を」 「まさか、力づくに奪ったのか?」 「○○のための薬なのに、そんなことしない。後でお金は払うって言っておいたよ」 「……まあいい」 慧音さんが薬包紙を開き、俺に渡す。 「粉薬だが、飲めるか?」 俺はこくりと頷く。 たどたどしい手つきで薬を口に含み、水で飲み込む。 少し苦かったが、効きそうだった。 「あーあ、私が口移しでもしてやったのに」 「魔理沙……変な冗談は言うんじゃない」 「冗談じゃないぜ?」 にやりと笑う魔理沙に、ため息をつく慧音さん。 妹紅は「必要なら私が」と隅っこで顔を赤くしている。 魔理沙が調子にのり、慧音さんが戒め、妹紅が変にのっかってしまう。 いつもの温かさを感じながら、俺はどさりと布団の上に力なく寝ころんだ。 「ああ、寝るのか、○○」 「はい゛……」 慧音さんが俺の頭の下に枕を挟み込み、 「布団は3枚ぐらいで大丈夫かな」 妹紅がかけ布団をかけてくれて、 「ネギでも首に巻いとくか?」 魔理沙が冗談混じりにネギを取り出す。 俺は下から彼女らの顔を順番に見ていく。 慧音さんの病状を伺う誠実な顔、妹紅の心底不安そうな顔、魔理沙のこんな時でも人を明るくしてくれる笑顔。 三者三様な表情を浮かべる彼女たち。 共通しているのは、彼女たちが、ただの風邪だというのに献身的に看病してくれていること。 それが嬉しくて、自然と笑顔が出てきた。 「○○?」 もう寝てしまいそうだった。 薄れゆく意識では、今の声が誰のものなのかは、もうわからない。 けれど、とても大事な人の声だというのは分かる。 寂しさも孤独感もなくなった。また明日から生きていこうという気力も湧いてきた。 それはきっと彼女たちのおかげ。 ああ、俺は。 「大好きだ……」 小さな呟きを残し、俺の意識はそこで途切れた。 ※ 釣りを切り上げた妹紅。 用事を済ませてきた慧音。 衝動に突き動かされた魔理沙。 それぞれ共通の目的を持ってこの家にやってきた3人の女性たちは、目の前で眠りについた男を見つめながら、一様に顔を赤くしていた。 「な、なあ。最後に○○が言ったことだけど」 耳まで赤くなった魔理沙が他の2人に確認する。 先ほど、○○が呟いた言葉。 確かに○○は「大好きだ」と言った。 それが誰に対してのものなのか……皆か、それとも? 「な、何か言っていたか?」 慧音も珍しく慌て、 「わ、わわ私は聞いてない、うん、聞いてない」 妹紅に至っては顔から火が出かねない始末。 「……」 「……」 「……」 3人はそれぞれ顔を見合わせる。 全員が顔を赤くしている様はなんだかおかしくて、3人はふっと笑った。 「明日になっても熱が下がらないようなら、永遠亭に連れていこう」 「……ん、だね」 「だな」 慧音の提案に妹紅と魔理沙が同意する。 結局、3人は話をそこで打ち切った。 もやもやを抱えたまま、それぞれ後片づけと家事を始める(3人共今日は泊まり込むつもりだ)。 さっきの言葉が誰に向けてのものなのか、○○が眠ってしまっては確かめようもない。 それにあれは、ただの感謝の言葉かもしれない。風邪の上でのたわ言かもしれない。 何にしろ、あまり本気に取らない方がいいのは確かだ。○○は恋愛ごとに疎い人だから。 けれど、と3人は同じ思いを抱く。 慧音は洗い物をしながら、妹紅は薪割りをしながら、魔理沙は掃除をしながら、夢想する。 それが自分に向けての言葉なのだとしたら。 どれだけ幸せなのだろうか、と。 Megalith 10/12/12 ─────────────────────────────────────────────────────────── 2月3日、節分。 竹林へと向かう道を行く2人の女性がいた。 「確か昨日が〆切だったから、今日はもう仕事休みに入ってると思うよ」 1人は藤原妹紅。白い髪をたなびかせ、ウキウキとした笑顔を浮かべる彼女の背中には風呂敷が担がれていた。 「そうか。ここ1週間は相当の修羅場だったようだが、体調は崩していないだろうか」 もう1人は上白沢慧音。右手に布鞄を持つ彼女は、先行く妹紅の後を追いつつ、今から向かう家の主に思いを馳せる。 向かう先は通い慣れた○○の家だ。 2人がいつになく浮き足だっているのは、○○に会うのが久しぶりのことだからだった。 直近1週間、○○は小説の仕事に追われ、家の中に缶詰め状態となってしまったため、会おうにも会えなかったのだ。 そもそも会ったとしても、小説に没頭している○○とまともに話などできない。ブツブツと思い詰めた顔で万年筆を走らせる彼に、いったいどんな話ができるだろうか。 しかしそれも昨日まで。今日から彼は休みに入ったはずだ。 奇しくも本日節分の日。イベント事という建前でもって○○に会えるこの日を、彼女らが利用しないわけがなかった。 「○○、また泥のように眠ってるんだろうなあ。もしかしたら、まだ起きてないかも」 妹紅の予想に、慧音は驚いた顔をする。 「まさか。もう昼は過ぎているぞ」 「〆切後の○○だもん。ありえるって」 「ふむ……だとするとこの恵方巻きは夕飯になりそうだな」 彼女らの風呂敷の中にあるのは、節分を過ごすための必須アイテム「恵方巻き」だった。 卵やかんぴょうなどの具材を酢飯の中に入れ、海苔で丸める。シンプルながら奥の深い料理だ。 幻想郷には存在しないものだが、2人はかつて○○に教えてもらったことがあり、今日のために作ってきたのである。 これを彼の家に持っていき、あわよくば一緒にご飯でも食べる。それが2人の計画であった。 「ふんふーん。○○とごはんー♪」 妹紅など、よほど会いたい思いが積み重なっていたのだろう。 普段のぶっきらぼうな態度からは想像もできない浮かれよう、鼻歌まで歌いだす始末だ。 「おいしいと言ってくれるといいのだが……」 慧音もどことなくソワソワしていた。歩きながら、何度も自分の髪を撫でて髪型チェックをしている。 (いつもの服ではなく、もう少し節分らしい服装の方がよかったか、しかし節分らしいとはいったいどういうものだ?) などと、果てなく意味のない思考を繰り広げる彼女の頭も、やはり浮かれきっていた。 2人の歩くスピードは徐々に上がっていく。 ほどなくして、彼女らは竹林傍の○○宅に到着した。 木造小屋はいつもと変わらず、ひっそりと冬の寒空の下に建っている。 「ふう、やっと着いた」 「歩くのが速いぞ、妹紅……ん? 家の前にいるのは○○じゃないか?」 ちょうど2人が玄関に向かおうとした時、家の中から1人の優男が出てきた。 まさしく家の主であり、2人の目的地である○○だった。 「あれ? 妹紅に慧音さん、こんにちは」 ○○は2人が玄関前にいたことに驚きつつ、きちんと挨拶をする。 妹紅は「やほー」と、慧音は「こんにちは」と挨拶を返す。 気安い間柄の彼らでも、この辺りの礼儀は忘れていない(妹紅は少々慇懃さが足りていないが) と、慧音が○○を見て、おやと疑問符を浮かべた。 ○○の服装がお出かけ用のジャケットだったのだ。 「もしや、どこかに出かけるのか?」 「あー、はい。ちょっとばかし人の家にお呼ばれしてまして」 「そうなのか……」 これはタイミングが悪かったな、と慧音は落胆する。 ○○が出かけるとなると、今日の予定は一気に破綻する。彼の用事が仕事関係であった場合は、夕飯すら一緒に食べられないかもしれない。 非常に残念だった。今日を期待していた妹紅なぞ、さぞ落ち込むだろう。 そう思い、落ち込む友人を励まそうとする慧音だったが、妹紅は何やら口を半開きにしてぽかんと呆けていた。 「妹紅?」 声をかけても反応がない。 彼女の白い頬は赤く染まり、目は潤んでいる。何かに目を奪われているような、そんな顔だった。 「妹紅、どうした?」 肩を叩く。すると妹紅はびくりと飛び上がり、赤い顔をさらに赤くした。 「あ、その、ち、違う! いつもと違う雰囲気の○○に見とれてなんかいないっ!」 慌ててまくしたてる妹紅だが、語るに落ちるとはこのことか。 手をぶんぶんと振る彼女に、慧音は落ち着けと声をかけてやる。 彼女の気持ちは分からないでもない。いつもは外見に無頓着な彼が正装をしていれば、こうもなる。 慧音がよしよしと頭を撫でてやると、妹紅は恥ずかしそうに顔を俯けた。 「? いきなり何を?」 1人、○○だけが事情を把握できていない。やはり彼は鈍かった。 話を変えるために、慧音は用事のことを尋ねてみた。 「それで、○○はどこの家に招待されているんだ?」 「あ、はい。実は……1週間前の手紙にこんなものがありまして」 ○○が取り出したのは赤い封筒に入った手紙だ。 裏面を見ると、差出人として「レミリア・スカーレット」の名前があった。 「これって……あの吸血鬼か!」 妹紅はたいそう忌々しそうに手紙を睨みつける。妹紅とレミリアにはいろいろと因縁があるようだ。 対して○○はあっけらかんとした顔で封筒を開け、中の手紙を取り出した。 「いやー、さっき手紙の束を整理してたら見つけて……郵便受けって1週間放置すると満杯になるものなんですねー。初めての経験です」 「あまりしてはならない経験だろうがな」 慧音はため息をつく。もう少し彼は自分のことを気に掛けるべきだった。 「○○、これ、読んでいい?」 「ん、いいぞー」 妹紅が早速手紙を読み始めたので、慧音も便乗して横から覗き込んだ。 手紙には筆ペンで書いたらしい達筆な文字が並んでいた。 ※ ―レミリアからの手紙― 『来る2月3日、私たち【吸血鬼】にとっても因縁深い節分の日がやってくるわ。 鬼は外に追いやられ、不当な迫害を受けてしまうこの恒例行事に、私は断固として抗う。 よってこの度、紅魔館にて、 【鬼は内、福も内、悪魔も内。あー、なんでもいいから「ウチ」に来い! けれど一番多く豆に当たった奴は罰ゲーム大パーティ(命名:咲夜)】 を開くことにしたから、あなたも来なさい。 P.S.このパーティにはパートナーが必要なのだけれど、用意できなくてもいいわよ。こちらでパートナーをあてがってやるから』 ※ 「ふーん、罰ゲーム大パーティねえ」 手紙を読み終えた妹紅は、予想していた内容(紅魔館に住めとかそういうもの)と違って若干安堵しながらも、よく分からないパーティへのお誘いに首を傾げる。 「おそらく2人タッグになって、弾幕の代わりに豆をぶつけ合うとか、そういう類の遊びだろう」 慧音の予想に、○○と妹紅は「なるほど」と納得する。 いかにもどんちゃん騒ぎの好きな幻想郷の少女たちが考えそうな遊びだ。 「で、○○はこれに参加するってこと?」 「レミリアさんにはお世話になってるからな。断る理由も特にないし」 「けど……私と恵方巻きを……うー」 妹紅がぶつぶつと何か言っているが、○○の人付き合いにそこまで口出ししたくないのか、はっきりと言葉にはできないでいるようだ。 慧音は妹紅の謙虚さに感心しつつ、○○に手紙の一文を指さし示した。 「パートナーが必要と書いているが、誰と行くつもりなんだ?」 「あー、こういうことを頼める人って、俺にはそんなにいないわけでして」 「ということは?」 ○○は申し訳なさそうに頬を掻く。 「今から慧音さんの所に行こうかと思ってました、はい。だめなら妹紅か魔理沙に頼もうかなと」 「そうか。では、行こうか」 はっきりと○○が誘ったわけでもないのに、慧音は迷うことなくパーティに参加することを了承してしまった。 これには妹紅も○○も驚いていた。2人ともポカンとしている。 「どうした? パーティに行かないのか?」 「えーと、いいんですか?」 「私をパーティに誘ってくれているんだろう? 受けないわけがないよ、○○のお誘いならな」 このままさよならするよりは、摩訶不思議なパーティに参加する方がずっといい。それが慧音の本音だった。 慧音が微笑むと、○○も照れ臭そうに笑った。 「ありがとうございます。けれど、2人は何か用事があって来たのでは?」 「今日は節分だから、恵方巻きを作ってきたんだ。これは○○にあげるよ。また食べてくれ」 「これは……すごいですね。以前話した作り方を覚えてたんですか?」 「ああ。うまくできているといいんだが」 「大丈夫ですよ。慧音さんが作ったものなら、きっとおいしい」 ○○が微笑み、柔らかな雰囲気が漂う。 彼が笑っていると自然と嬉しくなるのはどうしてだろうと、慧音は自分の単純さに呆れもした。 「わ、私も作ったんだぞ! それに、私だってそのパーティ、一緒に行くんだからな!」 良い雰囲気を振り払うかのように、慌てた様子で宣言する妹紅。 慧音と○○はその慌て様に、顔を見合わせて笑うのであった。 ※ 紅魔館までは徒歩で向かうことにした。 ○○が飛べないのも理由の一つだが、この日は冬にしてはとても良い天気で気温も高く、散歩するのにぴったりだったからだ。 枯れ木に暖かい陽光が当たる草原を抜け、大きな湖に氷精が浮いているのを横目にしつつ、赤い館が見えてきたのは半刻ほど経った頃だった。 大図書館によく訪れるという○○の先導で、紅魔館の門へと足を運ぶ。 大きな鉄製の門にたどり着くと、そこには1人の女性が立っていた。 「あ、みりんだ。久しぶり」 妹紅がさっそく声をかけるも、門番の女性――紅美鈴は掴みかからん勢いで声をあげる。 「みりんじゃありません! 美鈴です! ほん・めい・りん!」 「わかった、本みりん」 「違う! 何か似てるけど違います! あーもう……毎回毎回わざとじゃないんですか?」 「さあ?」 釈然としない様子の美鈴と、意地の悪い笑みを浮かべる妹紅。 慧音はそんな2人のじゃれ合いを見て、この2人はこんなに仲が良かっただろうかと訝しんだ。 確かに2人は知り合いだ。以前、呉服屋でなんやかんやとやっていた時は、自分も一緒にいたのでよく知っている。 だが、美鈴が「毎回毎回」と言っていることから推測するに、どうやらあれ以降も付き合いがあったようだ。 妹紅とは長らく友人をやっているが、こんな風に自分たち以外の相手とじゃれ合う姿を見ると、少々驚く。 これもまた人の縁の広がりか、それとも妹紅が変わろうとしているのか。嬉しくもあり、どこか寂しくもある。 「はぁ……それで、今日はどうしたんですか? ○○さんと上白沢先生も一緒で……図書館ですか?」 美鈴の問いに、○○が懐から手紙を取り出し、答えた。 「いえ、今日はこの手紙でパーティのお誘いを受けたのですが」 「パーティ? えーと……あれれ?」 美鈴は腕を組み、奇妙な声をあげた。 どうも様子がおかしかった。パーティがあるのなら門番は客を中へと案内するはずなのに、そんな素振りを見せない。 美鈴は手渡しされた手紙を受け取ると、中身を確認し、うーんと唸る。 「この手紙は○○さん宛てですね。今日届きました?」 「えーと、一応読んだのは今日ですが……」 「おかしいなあ。お嬢様の気が変わったのかも……すみません。ちょっと咲夜さんに確認を取ってみますね」 「あ、だけど投函されたのは、って、あ」 ○○が説明を付け足そうとするも、その口は突然の出来事に止まってしまった。 美鈴の後ろに、メイドカチューシャが現れたのだ。 「美鈴」 「うわぁ!」 肩に手を置かれた美鈴が、大仰に驚く。 それを呆れた目で見つめているのは、紅魔館のメイド、十六夜咲夜だった。 どうやら時間停止の能力を使って、ここにやってきたようだ。 気配すら感じなかったことに慧音は感嘆した。弾幕ごっこの時と違い、彼女の能力がフルに使われると攻撃に反応すらできないのかもしれない。 そう感心しつつも、思わず攻撃しそうになっている妹紅を止めておくことも忘れない。 「さ、咲夜さん、どうしてここに?」 まだ驚きで声が震えている美鈴。 「あなたの大声が館まで聞こえてきたからよ。もう少し静かにするよう注意しにきたのだけど」 大声とは、先ほど美鈴が妹紅に詰め寄った時のことだろう。 咲夜は訪問者を確認すると、すぐに居住まいを正し、深々とお辞儀をした。 「これは○○様。今日はどのようなご用件でしょうか。あいにく今日は図書館にパチュリー様はおられませんが」 「いえ、今日は図書館ではなく、この手紙を貰ったので訪ねさせていただいたのですが」 「これは……節分パーティですか? しかしこれは中止になったのですが……」 「中止?」 「はい」と咲夜は答えた。 ○○が説明を求めると、咲夜はとつとつと語り始める。 「この手紙をお嬢様のお知り合いの方々にお送りしたのは5日前のことなのですが、招待した方々がことごとく不参加の返事をされてきたのです。 博麗霊夢は妖怪退治の依頼があるため。アリス・マーガトロイドは人形制作で忙しいため。 マヨヒガの方々は八雲紫が冬眠中なので辞退。永遠亭の方々はお姫様の作業の手伝いで余裕がない、などなど……」 「輝夜が作業? なにそれ」 妹紅が口を挟むが、咲夜はさあ?と答えるだけ。 説明は続く。 「参加率は2割を切り、どういう形でパーティを開くか私どもも悩んでいたところ……その」 咲夜には珍しく、言葉の歯切れが悪い。 ○○たちが黙って続きを促すと、彼女は観念したように呟いた。 「お嬢様が、拗ねてしまわれて」 「『来ないなら、パーティなんて開いてやらない!』って、部屋に籠っちゃったんですよね」 美鈴が付け足すも、咲夜が「余計なことを言わない」ときつくとがめる この理由には、○○たちも乾いた笑い声をあげるしかなかった。 友達を遊びに誘い、断られたら怒る。まるで子供の怒り方だ。 500歳を超えてもまだまだ精神的には幼いのか、それとも断られたことがよほどショックだったのか。 呆れる○○たちに、咲夜がさらに申し訳なさそうに続けた。 「よって、今日のパーティは中止。その旨を3日前、手紙で皆様に送ったのですが、○○様のお宅には届いていませんでしたか?」 「あー、もしかしたら……」 ○○の言いたいことは、慧音にも妹紅にもよく分かった。 1週間分の溜まりに溜まった手紙の束の中にあるかもしれない、ということだろう。 手紙があまりにも大量にあったため、見逃したのかもしれない。 ○○は申し訳なさそうに頭を下げる。 「俺が2通目の手紙を見落としてたみたいですね。すみません」 「いえ、もしかしたら本当に届いていないのかもしれません。今日はとりあえず館にお越しいただき、できる限りのおもてなしを」 「そんな、悪いですよ。手紙を確認せずに来たこちらの不手際ですし、今日はこのままお暇させていただきます」 「そうですか……あ、それなら良いお土産がありますわ。少々お待ちを」 少々は本当に「少々」だった。 咲夜がまた時間を止めたらしく、一瞬にして消えた彼女は瞬きする間もなく再び現れた。 右手に1人の少女をつまんで。 「おお? なんだなんだ、○○じゃないか」 咲夜に首根っこを掴まれているのは恋色魔法使い、霧雨魔理沙だった。 彼女の身体は白い袋に入れられ、首だけが表に出されていた。 多少の飾りのつもりなのか、袋口の紐はリボン結びにされている。 ○○は突然現れた友人の奇妙な姿に、目を丸くした。 「お土産って、魔理沙がですか?」 「ええ、どうぞ。お持ち帰りしてください」 営業スマイルと共にさらりと言う咲夜。彼女の『お持ち帰り』には別の意味も込められているようだ。 お土産扱いされている魔理沙はというと、まんざらでも顔をしている。 「私が○○にお持ち帰りされるのか? おいおい、そういうのはもっと雰囲気を重視してだな」 雰囲気が良ければお持ち帰りされてもいいようだ。 しかし○○はその『お持ち帰り』の意味を理解していないのか、ただただ不思議そうな顔をしている。 「どうしてまた、魔理沙がこんなことに?」 「今日のパーティのために用意していた食べ物を、ことごとくつまみ食いしてくださりまして」 「中止になったんだから、別にいいだろ? お前たちだけじゃ食べきれないだろうしな」 むしろ感謝してくれ、とでも言いそうな魔理沙の態度。 袋に詰められたのはつまみ食いの犯人として捕まったためなのに、まるで反省していない。 ○○も含め、全員が呆れ気味だ。 咲夜が軽く袋口の紐をきつく縛ると、魔理沙が「ぐえ」とカエルような声をあげる。 「そもそも、あなたには手紙を送っていないのに、どうしてパーティがあると知っていたのかしら?」 「うー、首が痛いぜ……どうして知ってたかって? フランが教えてくれたぜ? だいたいな、どうして今回のパーティ、私には手紙が来なかったんだ? 霊夢には来たのに」 「そういえば、私も来てないや。まあ、それほど仲がいいわけじゃないけど。んー、それでも魔理沙には来てないっていうのはちょっとおかしいね」 妹紅の言葉に、慧音も同意する。 咲夜の話では、手紙はレミリアの知り合い全員に送られたそうではないか。 自分や妹紅はまだ紅魔館とのつながりは薄い。しかし、魔理沙は違う。彼女はレミリアの妹のフランドールと懇意にしていると聞く。 だというのに手紙が来ないというのはおかしい。 疑問をぶつけられた咲夜は、何やら言いにくそうに手を口に当てている。 「それについては……お嬢様の考えですので、私の関知するところではありません」 「その顔は『知ってる』って顔だぜ?」 袋に入れられたままの魔理沙が揺さぶりをかけるも、咲夜は口を割るつもりがないようだ。 この話題はこれでおしまいとばかりに「ともかく」と○○の方へ向き直る。 「○○様、どうぞ魔理沙をお持ち帰りくださいませ」 咲夜の『お持ち帰り』には「さっさと疫病神を引き取ってください」という意味も含まれているようだ。 魔理沙(in白袋)を差し出され、○○は困ったように笑う。 「それは構いませんが……魔理沙、とりあえず俺たちと一緒に帰るか?」 「おう、帰るぜ。だから早く私をお持ち帰りしてくれよ」 「では、私が持とう」 代わりに白い袋を受け取ったのは慧音だった。 すぐに魔理沙のブーイングが入る。 「ぶーぶー、私は○○に背負ってもらいたいぞー」 「私で我慢しろ」 「体力のない○○に重い荷物を担がせるなんて、なんて酷いこと言うのかなあ、魔理沙は」 妹紅がからかい気味に言うと、魔理沙が「なんだとー!」と頬を膨らませて拗ねる。また喧嘩が始まりそうだ。 一方で慧音は、手にかかる重みに驚いていた。重いわけではない、とても軽いのだ。 魔理沙が小柄な少女であることを今更になって実感する。そうだ、小動物のような可愛さが魔理沙にはあるのだ。 そんな魔理沙を『重い』とからかう妹紅も、全体的に細く、可愛らしい。 2人とも自分とは違う。最も身長の高い自分は一番可愛げがないのではないか。いやしかし…… 「それでは、今日はこれで失礼させていただきますね」 考え込んでいる間に、○○が咲夜と美鈴に別れの挨拶をしていた。 慧音も慌てて頭を下げ、妹紅もそれにならう。魔理沙はまだ抗議をあげていた。 そうして3人と1つの袋は紅魔館を後にした。 ※ 「それで、咲夜さん、実際のところ、あの3人に手紙を送らなかったのはどうしてなんでしょうか?」 「……お嬢様が『あの男が誰を連れてくるのか見てみたい』とおっしゃったからよ」 「ああ、なるほど。○○さんがパートナーとして誰を選ぶのか、興味があったと」 「お嬢様にも困ったものだわ。あの人にちょっかいを出しすぎている。要らぬ騒動を持ち込んでほしくはないのだけれど」 「今までこういう恋愛話ってなかったですもんねー。天狗の裏新聞にもあんなにハマっちゃいましたし」 「はぁ……胃が痛くなりそうだわ」 ※ 幻想郷の草原の上を、○○たち4人が歩いていた。 すでに魔理沙は白い袋から外に出されており、4人は横に並んで歩を進めている。 紅魔館を後にして四半刻ほど経ち、太陽は西に傾き始めていた。 ○○の家に到着すれば、おそらく夕方になるだろう。 4人の間では晩御飯についての話題が上っていた。 「慧音さん、帰ったらウチで晩御飯食べますか? いただいた恵方巻き、一緒に食べましょう」 「ああ、そのつもりだ。1人増えたが、まあ量はあるから大丈夫だろう」 提案を快諾した慧音は、○○の家に保管している恵方巻きが何本だったかを思い出す。 慧音と妹紅が持ってきた恵方巻きは、彼の家の冷蔵箱(氷を入れた木の箱)に保管してあった。 恵方巻きは全部で6本。すべて同じ具材で作られたもので、○○1人で食べるにはつらい量だっただろう。 今日の節分パーティが中止になって、むしろ良かったのかもしれなかった。 「お、恵方巻きか。去年も食べたなあ。○○が作ったんだったっけか?」 魔理沙が涎を垂らしそうになっている。紅魔館でも色々とつまみ食いしたくせに、まだ食べられるらしい。 ○○はそんな魔理沙に苦笑しつつ、答える。 「そうだな。幻想郷は海がないから、なかなか寿司は作りにくいけど……卵とかきゅうりとかでも、十分巻物にはなるからな」 「今日作ってきたのには八目鰻も入ってるよ。知り合いからもらったんだ」 「へえ。ありがとな、妹紅。その知り合いにはよくお礼を言っといてくれ」 「ん、分かった」 妹紅は○○から顔を背けて答える。 ○○からは見えていないだろうが、今の妹紅はたいそう嬉しそうな顔をしていた。 彼女は○○に感謝されると、見ていてびっくりするぐらい顔を赤くする。そして物凄く良い笑顔になるのだ。 だが、彼女はその照れを隠すためにそっぽを向く。曰く「恥ずかしい」らしい。 その可愛らしい笑顔をまっすぐと○○に向けられたら、どうなるだろう。 慧音は想像して、少し焦る。 きっと○○の目が奪われてしまうと思ったから。 そう考えてしまうのは自分に自信がないからか、と慧音は自嘲する。 「ねえねえ、その恵方巻きっていう食べ物はおいしいのかしら?」 物思いにふける慧音の横から、自分たちのものではない声がした。 ○○たち全員が驚き、声の主へと視線を向ける。 そこにはネグリジェのような青色の服を着て、ふわふわと宙に浮いた女性――いや、亡霊がいた。 「さ、西行寺幽々子殿……!」 「あらら? あなたは人里の守護者さんね。お久しぶり」 冥界の管理人、死を操る程度の能力を持つ亡霊、西行寺幽々子。 白玉楼という彼岸の地にいるはずの彼女が、どういうわけか此方側にいた。 「うふふ」 幽々子は妖艶に微笑むと、○○たちの顔ぶれを興味深そうに見回していく。 ピンク色の髪の周りには青白い人魂がいくつか浮いている。此岸では滅多に見られない珍しい光景だった。 慧音は彼女の目的を推察し、魔理沙は大して興味もなさそうに事態を見守り、妹紅は警戒心を隠すことなく闖入者の動向を注視している。 そうして一同の注目を集めている幽々子は、子供のように輝く瞳を熱心に○○へと注いでいた。 「ねえ、そこのお兄さん。私に恵方巻きという食べ物をちょうだいな?」 「はあ、えーと……あなたはどちら様でしょうか?」 ○○は幽々子のことを知らないようだ。 それもそうだろう。特別な事情でもない限り、こちら側の人間が彼岸の亡霊のことを知っているはずもない。 彼は幻想郷縁起の人物欄を読まない主義でもあるし、博麗神社の宴会に出たこともない。知り合う機会があるはずもなかった。 名前を尋ねられた幽々子は、にんまりと笑い、手に持っていた扇子を意味もなく広げた。 「私は幽々子。見ての通り、亡霊よ」 「亡霊? 亡霊がご飯を食べる……ご飯を……」 慧音は嫌な予感を覚えた。 「あの、少しお聞きしたいのですが」 ○○の声の抑揚が強くなり、若干張りつめたものが混じるようになった。 それは、彼が好奇心に支配されたことを示している。よく慧音に歴史のことを尋ねる際に聞かれる声色だ。 このままではまずい。 そう思って彼を止めようとするも、遅かった。 「亡霊というのはご飯を食べるものなのですか? そもそもご飯を食べる行為はエネルギーや栄養の吸収と密接に結びついているのですけれど、亡霊になれば肉体的な器をなくすはずですから、エネルギーの消費はなくなるはずではないですか? もしや霊魂がその存在を維持するためにエネルギーが必要なのだということなのでしょうか。だとすれば生者であっても霊魂の維持にエネルギーが必要であり、食物から得られるカロリーを人間の身体は何らかの方法で霊的エネルギーに変換しているということになるわけで――」 「……あ、あらあ? 何だか、変なところを刺激しちゃったみたいねえ」 ○○の豹変ぶりに、幽々子も面喰らっている。。 このように好奇心を刺激されると、相手を質問攻めにしてしまうのが○○の悪いところだ。 一度スイッチが入れば、彼の頭の中には色々な質問・話題が渦巻き、カオスフルになる。本人曰く「とめどなく話が溢れる」らしい。 「弾幕を撃つにも魔力や霊力等の力が必要らしいですが、亡霊の身体でもそれを放てるとなると、やはり弾幕エネルギーの根源は魂や精神に因っているということで」 「落ち着け、○○」 慧音が○○の頭を軽くはたく。 それでようやく自分の無礼に気付いた○○は、すかさずいつもの調子に戻り、「すみません……」と頭を下げた。 気にしていない風の幽々子は優雅に微笑み、○○の顔を上げさせる。 「気にしなくていいわよ~。それよりも、恵方巻きという食べ物についてを教えてくれない?」 「……あの、答えたいところですが、まずどうして腕に抱き着いているんでしょうか」 早業だった。○○が顔を上げたその瞬間に、幽々子は朗らかな笑顔と共に○○と腕を絡ませたのだ。 これには慧音、妹紅、魔理沙の3人の顔がこわばり、引きつる。 彼女らは嫉妬のこもった目で幽々子を睨みつけるが、当の本人は気にせず、○○に向かって笑いかけている。 「殿方にご飯を奢ってほしければ、色気で誘惑するのが良いと紫が」 「は、はあ。なんだか非常に偏った知識のような」 ○○がさほど嫌がるそぶりを見せていないことも、慧音たちをさらに不機嫌にさせた。 まさか、幽々子の豊満な身体の感触を楽しんでいるとでもいうのか。 いや○○に限ってそんなことは、と思いたいものの、彼もまた男だ、女性を求めてもおかしくはない。 「うふふ」 「あー……そろそろ離していただけないかと」 ○○はあくまでスマートに幽々子から逃げようとする。 それは初めて会った人への遠慮からか、それとも冷静なフリをして感触を楽しんでいるだけなのか。 (○○は、ああいう女性が好みなのか?) 話し合ったわけでもないのに、3人は同じことを懸念し始めていた。 「幽々子さまー!」 また闖入者が1人現れた。 腰に刀を2本差した銀髪の少女が、幽霊を引きずりながら飛んでくる。 「あら、妖夢。どうしたの、そんなに息を切らせて」 「ゆ、幽々子様が、いきなり消えてしまうからじゃないですか、もう」 彼女は魂魄妖夢。幽々子の従者で、庭師兼剣術指南役。小さな身体をして2本の太刀を操る凄腕の剣士だ。 生真面目な性格で、主人に対しても遠慮なく忠言する、というのが慧音たちの持つ彼女への印象だった。 今も息を切らせながら、「勝手に消えたりしないでください」と主人に注意している。 しかし幽々子はにへらと笑うだけでどこ吹く風。 さすがに自分の部下相手に体面は気にするのか、妖夢の声が聞こえた途端に○○の腕から離れていたが。 「いったい何をして……あ、これはどうも。魔理沙さんに慧音さん、妹紅さんも」 妖夢が頭を下げて会釈してきたので、慧音たちも同じように返す。 妖夢は冥界を出てきた幽々子を護衛兼案内するためについてきたのだろう。 しかし幽々子が1人で勝手に行動して、慌てて探していたというところか。 相変わらずこの従者さんは苦労しているようだ。 「妖夢、恵方巻きという食べ物を聞いたことがある?」 「なんですか、それ。知りませんよ……とにかく行きましょう。紅魔館のパーティ、もう始まってますよ」 「あらあら、もうそんな時間? 料理がなくなるかもだわ、行きましょう」 この2人も紅魔館のパーティに参加するつもりでやってきたようだ。 しかし、中止になったことは知らないらしい。また手紙の行き違いでもあったのか。 慧音は彼女らに事情を話してやることにする。 「幽々子殿、そのパーティなのですが」 「妖夢。全速力で行くわよ」 話を聞いていない。 その瞳は遠く蜃気楼のように浮かび上がる食べ物たちを捉えているようで、もはやこちらに意識が向いていないようだ。 「あ、はい。それでは皆さん、今日はとりあえずここで失礼します」 「ごめんねえ。また恵方巻きのこと、教えてね」 そうして妖夢と幽々子は急いだ様子で宙に浮き、空を飛んでいってしまったのだった。 声をかける暇もなく、慧音たちは飛んでいく彼女らを見送ることしかできなかった。 「……結局、どういう人たちだったんだろう」 ○○がぽつりと呟いた。 女性陣は険しい顔のまま、ついさっきまで幽々子が抱き着いていた○○の腕を見つめ続けていた。 ※ 「あれが例の男ねえ。噂通り、複雑な人間関係を持っているようね」 「幽々子さま、あの方を知っているのですか?」 「ええ。直接会ったことはないけれど、話だけは聞いているわ。紫とか新聞とか本とか、色々とね」 「そうなんですか。普通の人間に見えましたが、有名な方なのでしょうか」 「あなたもあの人の本を読んだことがあるんじゃないかしら。ほら、人間と大妖怪の恋物語を書いた人よ」 「え! あの小説のですか!? うわあ……サインでも貰えばよかったです」 「ふふふ。まあ、縁があればまた会うことになるわ。彼という支柱に結ばれた縁は、大きな広がりを見せるでしょうから」 ※ 前を歩くのは白髪と金髪の少女。妹紅と魔理沙。 「魔理沙はさ、そういう盗人猛々しい態度は改めた方がいいんじゃない?」 「妹紅は可愛げがないな。もっと女の子らしくしてみたらどうだ?」 彼女らは先ほどから口喧嘩を繰り広げている。 紅魔館の門前で妹紅が魔理沙を『重い』と言ったことが、今更になって争いの種になっているようだ。 先ほどまで仲良くしていたのに、いきなり少し前のことを蒸し返しているのは、○○のことで機嫌が悪くなってしまったからなのか。 「あの人たち、今頃パーティが中止になってるって知って、落ち込んでるんでしょうね」 「そうだな……」 後ろを歩くのは○○と慧音。 先ほどから○○が幾度か話しかけているが、話相手はどうにも上の空で、なかなか会話が続かなかった。 慧音は何事かを考えこんでいて、そのため○○も気を遣い、いつしか話を振るのを止める。 前を歩く妹紅と魔理沙の口喧嘩だけが聞こえる中、慧音がふと、足を止めた。 「なあ、○○」 「はい、なんですか?」 「○○は、スタイルの良い女性の方がいいか?」 皆の足が止まった。 「……それは、女性の好みでということですか?」 ○○の問いに慧音はうなずく。彼女の目はあくまで真摯な色に染まっている。 いつの間にか口喧嘩を一時休戦したらしい妹紅と魔理沙も、じっと○○を見つめている。 皆、真剣な顔で○○の答えを待っている。 「えーと……」 3人の女性の鋭い視線に囲まれ、戸惑う○○。 彼はどうしてこんな質問を投げかけられたのか、理解できていないのだろう。 けれども、慧音たちが答えを待っている。ならば誠実な態度でもって答えなくてはいけない――それぐらいの空気なら、○○も読めているに違いない。 しばらく考え込む○○。結局その口から出てきたのは、 「……特にない、かな。多分好きになった人の容姿が、一番好きですよ」 けっこう無難な答えだった。 「そうか。なら、いい」 慧音はまだ何かを考えているような難しい顔をし、 「んー、なんかなあ」 魔理沙は納得できないように唸り、 「……ふぅ」 妹紅は気を緩めたように息をついた。 彼女たちは○○がそういう答え方をするのではと、どこかで予想していた。 ○○は、あまり自分の「好み」というものに興味を持っていないし、明確に「~~が好きだ」と言葉にすることも少ない。 それが彼の美点の1つだし、色々な人と分け隔てなく付き合える所以でもある。彼はその好奇心でもってどんな人とも話を合わせられる。 「鬼は内、福も内、悪魔も内」とは彼のための言葉のようにも聞こえる。 しかし、そのような態度は時に掴みどころがなく、本心が窺えないこともあって不安になる。 もう少し距離を縮めて彼の心に触れられたら。3人はずっと以前からそう望んでいた。 そんな彼女たちの気持ちに気付いているのかいないのか、 「帰ったら豆まきでもしよっか?」 剣呑な雰囲気を入れ替えたかったのか、○○は明るい口調で提案する。 こちらの気も知らずに、と彼女たちはため息をつきつつ、 「ああ、そうだな」 慧音は微笑み、 「魔法で豆を撃つのはありか?」 魔理沙は早速物騒な考えを抱き、 「それはなしでしょ、普通にやろうよ……○○と豆まきかあ」 妹紅は嬉しそうに顔を赤くする。 もう少し彼らのこんな関係は続きそうだった。 Megalith 2011/02/14 ─────────────────────────────────────────────────────────── 魔法の森の入り口近くには、一軒の道具屋がぽつんと建っている。 周囲の木々に溶け込めていない、存在感ばっちりの異国風の雑貨屋だ 通常、魔法の森は瘴気に包まれているため人が簡単に立ち入ることはできないが、その道具屋周辺だけは土地が整備されており、普通の人間でも気軽に立ち寄ることができた。 ただし場所が人里からも妖怪の山からも離れているという交通アクセスの悪さから、「空を飛ぶ」という移動手段を持つ特別な者ぐらいしかやって来ない。 そんな立地で経営が大丈夫なのか、とよく人から思われているが、趣味で店をやっているらしい店主はこの集客能力のなさも気にしていないようだ。 店の名は「香霖堂」。お得意様は巫女や魔法使いやメイドや妖怪ネズミ、その他変な人ばかり。 ある人にとっては宝の倉庫であり、またある人にとってはガラクタの山でもあるような、そんなアンビバレンスな一戸建ての店舗兼住宅。 そんな香霖堂の戸を叩く開く若者がいた。1人の人間、それも純朴そうな普通の男だ。 ちりんちりんと鳴るベルの音に、奥のカウンターで本を読んでいた店主が顔を上げる。 「おや、君は確か人里の……えーと、すまない名前は聞いていなかったね。けれど、以前野菜を貰ったことは覚えているよ。あの時はありがとう」 店主の素っ気無いながらも誠意のこもったお礼に、青年は照れくさそうに頭を掻いた。 「それで、今日はどうしたんだい? 何かご入用かな?」 青年は店内をぐるりと見渡すと、この辺ぴな店にやってきた目的を話す。 曰く、農作業用の道具が欲しい、いつもは里の農具屋で買っているが今は在庫切れだったのでここに来た、と。 「なるほど。それは急ぎのものかい?」 青年はこくりと頷いた。 「分かった。ちょっと待ってくれよ」 店主ががたがたと立ち上がり、色々な物で溢れかえっている棚の一つに手を伸ばす。 一見雑然としているように見えて、店主はどこに何があるのかをおぼろげに把握しているのだろう。 彼は鉄同士がこすれる音をたてながら、棚の商品をさらい始めた。 「確か、この辺りに暇つぶしで作った農具があるんだ」 店主が、腰の丈ほどある円柱型の赤い物(値札には『コーン』と書いてある)を隅に追いやり、棚に乗せているものをどかしていく。 はぁ、と青年は相づちを打った。 「その農具は、チャージされた魔力を解放すると10平米の土地を耕せる代物でね、魔法使いの補助さえあれば1日100平米ぐらいは――」 聞いてもいないのに、店主は農具の説明をし始める。魔法や道具の話だ。青年には生返事しかできない。 だが店主は青年がまともに話を聞いていなくとも、一人で勝手に話し続けていた。説明が楽しくて仕方ないのだろう。 接客業として褒められた態度ではないが、店主の楽しそうな様子を見ていると止める気にもならない。ただただ変な人だと思うばかりである。 青年は密かに、客が少ないのは店主にも原因があるのでは、と思った。 「一振りで半径5メートル弱の範囲の稲を刈り取る鎌もあったんだけど、あれは失敗だった。まさかカマイタチまで呼んでしまうとは思いもよらなくてね、危うく僕の腕が――」 店主が店の中をうろうろしている間、青年は椅子に座って商品が出てくるのを待つことにした。 お茶も出してくれていたので、それを一口飲んで息をつく。 そうしてしばらく休んでいると、ただ座っているだけなのも暇だったので、適当に近くの商品棚を観察してみることにした。 棚には色々なものがごちゃ混ぜになって置かれていた。商品であるはずなのに、値札がついていないものもある。 見たこともない文字で書かれた本、キラキラと輝いている透明な玉、麦藁帽子……とここまではいい。 青年にはよくわからないものもたくさんあった。例えばあの小さな箱がよく分からない。手の平に乗るぐらいの白い箱で、黒色の透明な板がはめ込まれ、板の下には数字が規則正しく並んでいる。 何に使うものなのかてんで分からない。おそらく妖怪の山や外の世界由来のものなのだろう。 青年がその箱を手に取ろうとすると、ちょうど近くにあった窓が突然割れた。 驚いたなんてものじゃなかった。静かな店内に響くガラスの砕け散る音に、青年は大きく身体をびくつかせた。 落ち着いて状況を確認する。まさか白い箱に触れようとしたから割れたのかと思ったが、違った。 どうやら外から何かが飛んできて、それが窓を突き破って店内に入ってきたようだった。 恐る恐る床に落ちているものを見る。 紙。 そう、紙だ。 筒状に丸めた紙が、床に突き刺さっていた。紙なのに。 青年は勇気を出して近づいてみた。 つんっと突くと、柔らかくしなった。 紙であることに間違いはなく、到底ガラスを突き破るような代物に見えない。 「何かあったのかい?」 音を聞きつけた店主がやってきたので、青年は床に突き刺さる紙を指差して答えた。 空から紙が降ってくるなんて、博霊の巫女を呼ぶべき事態ではないか。そう店主に告げようともした。 だが、店主は驚くわけでもなく、 「ああ、新聞か。まったく、窓はやめてくれと言ってるんだけどね」 ため息混じりに紙――曰く新聞を拾い上げ、パンパンとガラスを掃う店主。 「天狗のお嬢さんに会ったら言っておかないと……あ、君、ガラスの破片が危ないから、動かないでくれ。今掃除するから」 店主は慣れた手つきで箒を操り、ガラスを集めていく。 青年はその場で立ち尽くし、店主の持つ新聞とやらをじっと凝視していた。 新聞があんなやり方で投函されるということに、ただただ驚いていた。 おそらく妖怪の山に住む天狗が発行している新聞なのだろう。 人里でもたまに見かけることがある。「号外ー号外ー」と空飛ぶ少女が無造作に紙を振り撒くことがままあるのだ。 大抵は「博霊の巫女、実は冬が寒かった!」「鬼と天人の飲み比べ、鬼の勝利!」といったような、どうでもいい話題ばかりだが、読めば楽しい。 「ん? これに興味があるのかい?」 店主が青年の好奇心に気付いたようだ。 青年はこくりと頷く。 「そうか……けれどこの新聞は、普通のものとは少し違っていてね。果たして君が読んで楽しいものかどうか」 店主は掃除を終えると、難しい顔をして元いたカウンターに座り、新聞を広げた。 「これは『裏文々。新聞』と言ってね。射命丸文という天狗は知っているかい?」 青年は頷いて応えた。射命丸文という天狗はなかなかの有名人だ。 「幻想郷最速」「妖怪の中でも随一の強さ」など、色々と言われているが、彼女の名が広まっている最たる理由は『文々。新聞』という新聞を作っていることにある。 この新聞は彼女が取材した幻想郷についての面白おかしい出来事を記したものだ。天狗の新聞の中でも有力なものの1つで、号外が幻想郷の空を舞うのを目撃しない者はいない。 幻想郷に住んでいれば、嫌でも目にする新聞だ。 しかし、『裏』と付く新聞は聞いたことがない。普通の新聞とは違うのか。 「そう、違うんだ……君は上白沢慧音、霧雨魔理沙、藤原妹紅という3人の女性を知っているかい?」 店主が口にした名前には、青年もいくらか心当たりがあった。 まず、上白沢慧音。彼女は青年にとってもよく知る存在だった。 彼女は恩師だった。幼い頃、青年は慧音先生の寺子屋に通っていた。 青年となった今でも、寺子屋ことはよく覚えている。彼女の授業は難しかったが、それでも文字の読み書きや計算、幻想郷の歴史などを教えてもらえたのは感謝している。 それに、慧音先生は綺麗だった。青年自身、幼いながらも彼女に恋心を抱いていた時期もあった。少年特有の、年上のお姉さんへの憧れの気持ちだ。 今の青年はもう寺子屋に通うような年齢でなくなったが、慧音先生はまだまだ身近な存在だ。 彼女は今も俺のことを1人の生徒として見ているようで、人里で顔を合わせた時にだらしない格好をしていると「居住まいを正すように」と軽く注意される。ただしそこに嫌味などなく、暖かな心配りが感じられる。 昔のような恋心は抱いてはいないが、多少の憧れと尊敬の念はまだある。大人のお姉さんとは彼女のような人のことを言うのだろう。 霧雨魔理沙、という少女はよく聞くが、人里で見かけることは少ない。 人間にして魔法使いである彼女は、里に居を構える霧雨道具店の一人娘ではあるものの、親とは絶縁状態であるため、里に来ることがあまりないのだ。 それでも友人が里にいるようで、彼女の姿を見かけたことは度々ある。箒に乗って空を飛ぶ金髪少女は、まさしく魔法使いだ。 霧雨魔理沙についての有名な話と言えば、里の本屋の本を盗んでいくことだろう。 本人は「借りていくぜ」と言っているようだが、返ってきたことは一度もないらしい。本屋の店主が居酒屋で恨めしげに愚痴を言っていたのを、よく覚えている。 しかし一方で妖怪退治に手を貸すこともあり、善人なのか悪人なのかよく分からない人、というのが青年の持つ彼女に対しての印象だった。 最後に藤原妹紅。名前だけは聞いたことがある。確か、迷いの竹林に住む案内人だったはずだ。 彼女は妖怪に襲われた迷い人を助けたり、急病人を竹林の中にある病院に運んだりしているらしい。青年の友人も一度世話になったことがあった。 だが、それ以上のことは知らない。とにかく謎が多い少女だった。 青年は藤原妹紅の姿を見かけたことは一度もない。だが世話になった友人の話によると、大層綺麗な白髪の持ち主で、炎を自在に操る幻想少女なのだとか。 普通の人間のようで少し違う、謎に満ちた少女。どうやら慧音先生と交友があるようなので、半妖や妖怪の類だと思われた。 「おや? 君はあまり人の噂に敏感というわけでもなさそうだね。この3人の名前を聞いても分からないなんて」 感心深げに笑う店主。青年はぽりぽりと頬を掻き、苦笑いを浮かべた。 普通はこの3人の名前を聞けば、新聞の内容を推測することができるらしい。 だが、青年は噂話に耳ざといわけではなかった。青年は農家を営んでおり、毎日が土と草との格闘の日々だ。 よって人里の中心部、商店路などを訪れることもあまりなく、世間話に興じることもない。 農作業に従事する身としてはそれが当たり前。流行にも疎いという自覚はあった。 「小説家の○○という人を知っているかい?」 尋ねられ、青年は、はて?と首を捻る。 普段から本を読まない性質なので、小説家と言われてもぴんと来ない。 そういえば、外の世界からやってきた小説家の本が面白いと聞いたことはある。その人のことだろうか。 青年は、よく知らない、と答えた。 「そうか。だったらこの新聞を読むと新鮮に思うかもしれないね。うん、一度読んでみるといい」 店主はそう言って、新聞を差し出した。 そんな気楽に読ませてもらってもいいものなのだろうかと思いつつも、好奇心を抑えることはできず、青年は『裏文々。新聞』とやらを読み始めたのだった。 ―― 裏☆文々。新聞 第百二三季 卯月の三 『三途川の河原に空いた大穴! 原因は恋の炎!?』 先日未明に見つかった、三途川の河原の巨大な穴に関して、是非曲直庁は『河原の地下を通る水脈が崩壊したことによる地盤沈下である』と正式な発表を出した。 河原は現在も急ピッチで修復されており、三途川の一部区域は立ち入り禁止となっている。 船の発着場所が狭くなったことで、河原には船待ちの幽霊の行列ができているという話は、読者の方々も知るところだろう。 冥界と中有の道関係者を大いに騒がせた今回の事件であるが、この話には裏があるとの情報を取材班は掴み、急いで聞き込みに回った。 そうしていくつかの事実を掴み、やはり今回の大穴発生の原因が別にあることが判明した。 賢明な読者の方々ならばもうお分かりだろう。そう、今回の事件もまた、彼ら「四人」が引き起こしたものだったのだ。 まずは、人里で本屋を営んでいる人間Bさん(三十五歳)の証言。 『あの日は慧音先生と○○さんに、本の追加発注をかけにお伺いしたのです。ええ、最近は妖怪の方々もお買い求めくださるので、すこぶる売上が好調でして。 しかし、慧音先生も○○さんも家にはいらっしゃいませんでした。慧音先生の家の扉には【所用により留守とする。夜までには帰宅する】という張り紙がありました。 いえ、そこまで珍しいことではありませんよ。最近の慧音先生はそうして家を留守にすることがよくあります。先生はこれまで里のために身を粉にして働いてくださりましたから、自分の時間を持てないのではと里人も心配しておりました。 しかし、○○さんとの付き合いなのか、どこかに出かけられることも多くなり、笑顔を絶やしておりません。私たちはホッと胸を撫で下ろしています。 おそらくあの日も○○さんとどこかへお出かけになっていたのでしょう』 次に、中有の道で地獄銘菓「溶岩ゼリーパイ」を販売している罪人Aさん(外見年齢五十歳)の証言。 『ああ、確かに空を飛んでる人間を見かけたよ。女三人と男が一人だったはずだ。 特徴? あー、女の一人は箒に乗ってて、男がその下を飛んでて……いや、ありゃ、箒にぶら下がってたのかもな。 おう、そうだそうだ。白髪の女もいたな。くそなげえ髪だったからよく覚えてる。 連れ立って三途の川方面に飛んでったぞ』 どうやら、その日○○氏他三名が三途川を訪れていたことは間違いないようだ。 そうして聞き込みを続けている内に、取材班は決定的な情報を入手した。 なんと、冥界の関係者O・K氏(年齢不詳)へのインタビューに成功したのだ! O・K氏は、○○氏、上白沢慧音氏、藤原妹紅氏、霧雨魔理沙氏が三途川を訪問したと証言してくれた。 『いやー、最初はただの見学だったんだよ。地獄の。 ああ、おかしい話だね、生きてる人間が地獄を見たいだなんて』 O・K氏によると、どうやら○○氏は小説の資料を求めて、地獄見学を是非曲直庁に申し込んだらしい。 心配性の女性三人はその付添いだったのだと言う。(読者の方々はすでに彼女らの心配性がどれほどのものか、ご存じだろう) だが、O・K氏は言う。『あたいらはあの子たちを甘く見ていたんだ』と。 『対応をした閻魔様がちょいとばかし意地悪しちゃってね。 【地獄はピクニック気分で来るような場所ではない。一度お灸を据えなくてはいけません】なんて言って…… 木偶人形を使ってあの人間の男を拘束しちゃったもんだから、さあ大変だ』 なんと○○氏に危害を加えてしまったのだ。無謀である。 『付添いの子の怒りようったら、すごかったよ。いやあ、あたいは生きた心地がしなかった。 閻魔様ですらちょっと震えてたぐらいだ。あの子ら、本当に妖怪とか神様の類じゃないのかね。ありゃ修羅だよ修羅』 愛しい人を傷つけられ、怒り心頭に発した恋する乙女三名は、巨大木偶人形(推定六十尺)を破壊。 その余波で地面にも大きな穴が空いてしまった。そう、あの大穴の真実はこれだったのである。 『あれがトラウマになったのか、閻魔様は最近、若い男女が一緒にいるのを見ると、妙にびくびくしちゃうようになっちゃってねえ。 【恋する人間とは恐ろしいものなのですね】って、いやいや、そんだけ長生きしてて何おっしゃるのかと(笑)。 まあ、魂を裁く閻魔様が愛を知らないってのもどうかと思うし、あたしゃ良い傾向だと思うよ、うん』 どこの世界でも、人の恋路を邪魔すれば馬に蹴られてしまうものらしい。 それにしても、乙女の恋のエネルギーは冥界の裁判官ですら焼くことができるのか。 これまでにも、いたずらで○○氏の原稿を墨で塗りつぶした妖精三人組が、藤原妹紅氏にお仕置きされたなどの出来事があったが、彼女らは閻魔様ですら『お仕置き』できるようだ。 くわばらくわばら。雷より恋の炎の方が怖い。被災したくなければ、距離を取るか友好関係を築くかである。 いや、○○氏の住宅に逃げ込むのもアリかもしれない。(彼女らは彼の前だと女の子らしくなるし、あの家は色々な意味で『要塞』なのだから) なお、O・K氏は○○氏らの関係についてこのように言及している。 『最初はただの友人同士かな、って思ったよ。もしくはあの小説家さんが護衛を頼んだのかね、とか。 けどねえ、全員が――あの霧雨のお嬢ちゃんですら何の騒ぎも起こそうとしないのを見て、あたいは気付いたのさ。 だってねえ、片時も離れようとしないんだよ? あたいらの目がなければ、三人同時に腕とか背中に抱き着いてたんじゃないかって思うぐらい。 帰りも、気絶した小説家さんの頭撫でたりして気遣ってたしさ……あの子ら、相当惚れ込んでるみたいだね』 彼らはどこに行っても甘い空気を振りまくようだ。 (射命丸 文) ―― 裏表にまたがる長い記事をきちんと読み終えた青年は、書かれている内容を幾度も反芻した上で、なんだこれ、と呟いた。 「どうだい? 面白かったかい?」 香霖堂店主にそう問われ、青年は答えに窮した。 これはただの新聞ではなかった。ある1人の男と、3人の少女&女性の関係を、つまびらかに暴いている――艶聞新聞だったのだ。 「驚いているみたいだね。こんな新聞がどうして作られているのか不思議だと思っている顔だ」 その通りだった。こんな、人の色恋だけを扱った新聞を作ってどうするのだろうか。 店主は苦笑いを浮かべつつ、説明してくれた。 「需要があるんだよ。驚いたことに、けっこう人気があるんだ。これは購読希望者にしか配達されないんだけど、発行部数は表の新聞に匹敵するんじゃないかな。 それに表の新聞は妖怪の山ぐらいにしか購読者がいないけど、この新聞の購読者層は幅広い。 僕が知っているだけでも、博麗神社、紅魔館、マヨヒガ、永遠亭、白玉楼、人里の一部、妖精の集まり、妖怪の山と……人妖様々な存在がこの新聞を買っているんだ」 そしてこの店主も購読者の1人なのだろう。 幻想郷でも有名な人間・妖怪がこの新聞を読んでいることに、青年はただただ驚くばかりである。 「購読する理由は人それぞれだ。単に人の恋物語に興味があるから、笑い話の種にでもなるから、この新聞に登場する人間と個人的な知り合いだから、などなど」 では、あなたがこの新聞を取る理由は? 青年が目でそう問いかけていることに気付いたらしく、店主は優しい笑顔を浮かべて、新聞上に書かれている1人の名前の上に指を置いた。 指は「霧雨魔理沙」の文字をなぞっている。 「この子とは昔から仲良くしていてね。僕の娘か妹のようなものなんだ。娘や妹が男と仲良くしてるとなると、父や兄は気になるものじゃないかな? まあ、僕が心配するまでもなく、彼女は楽しくやってるようだけどね。新聞を読んでいるだけでも、あの輝くばかりの笑顔が想像できるよ」 店主の柔らかな微笑みには父性すら感じられる。よほど霧雨魔理沙のことを大事に思っているようだ。 他人に興味のなさそうな店主の意外な顔に驚きつつ、青年は新聞を改めて読み直し、確認する。 どうやら、新聞の中に出てくる『上白沢慧音氏』とはあの慧音先生であることに間違いはないようだった。 慧音先生がこの小説家と良い関係にある、という事実に、青年は少なからずショックを受けていた。 青年にはすでに恋仲となっている女性がいる。将来結婚しようと思っている、大事な恋人だ。 だが、それとはまた別の問題で、憧れの女性の男女関係を目の当りにするというのは複雑な気分だった。 だからこそ新聞記事に多少なりとも興味が湧いてしまうのも事実だったが。 「興味があるなら、バックナンバーも読んでみるかい?」 青年はこくりと頷いた。 すると店主が店の奥から大量の新聞を持ってきてくれて、青年はその量に辟易しながらも、内容をかいつまんで読み進めていった。 ―― 裏☆文々。新聞 第一二二季 如月の八 『太巻き寿司に願いを込める』 如月の三は節分の日。読者の方々はいかがお過ごしだっただろうか。 鬼に豆まき福を呼び、鰯の頭を玄関先に飾られた方も多いだろう。ちなみに博麗の巫女は小鬼に宴会を開かされて、たいそう苦労したらしい。 さて、そんな鬼と戯れる日である節分の日だが、外の世界では少々勝手が違う、との話を如月の五日に取材班は掴み、早速外界出身者に話を聞きにいった。 なんでも外界では『恵方巻き』という太巻き寿司にかぶりつく習慣があるとのことである。 新聞に載せるために詳しく話を聞きたかったものの、外来人でも由来や歴史といった詳細な話を知っている者は少なく、取材は難航。記事することは不可能かと思われた。 しかし、人里の人間から『実際に恵方巻きを作った人間がいる』という情報を得て、その人物のお宅へ直行した。 今回裏新聞にこの記事が載っていることから、もう予想できている方もいるだろう。そう、作ったのは外界出身者である○○氏だ。 「恵方巻き? ああ、うん、食べましたよ」 ○○氏は節分の日のために恵方巻きを自分で作り、友人たちと一緒に食べたのだという。 「恵方は、歳徳神っていう神様がいる場所で、その方向に向かって色々やれば吉と言われてるんです。その年ごとに方角は変わります。 由来としては元々外の世界の大阪で――」 恵方巻きの由来については割愛する。○○氏の話は時々長すぎるきらいがある。 「で、恵方に向かってまず目を閉じます。それから一言も喋らず、願い事を頭に浮かべながら恵方巻きを食べれば、願い事が叶うと言われてます」 願い事、と言われてピンとこない記者がいないはずがない。 早速、○○氏に「どのような願い事をしたか」と尋ねてみると、 「いい小説が書けますようにと。あと、皆が平和に暮らせますように、ですね」 非常に面白くない答えが返ってきた。彼には恋愛願望が存在しないのだろうか。 これでは何の趣もないので、取材班は次に上白沢慧音氏、藤原妹紅氏、霧雨魔理沙氏を訪問し、いったいどのような願い事を(おそらく恋愛絡みであると記者は推測した)、恵方巻きに込めたのかを尋ねることにした。 裏新聞の存在を悟られないように取材するのは難しかったが、なんとか聞き出せた答えは次の通り。 『日々平穏無事。加えて大願成就』(上白沢慧音氏) 『○○が良い小説を書けますように。それとできればもう少し私を……って、何言わせるんだバカ!』←この後弾幕ごっこに発展 (藤原妹紅氏) 『欲しいものを手に入れる、だな』←取材料としてお昼ご飯を要求される (霧雨魔理沙氏) 色気のない言葉ばかりだが、その裏には『○○氏への想い』が隠されていると当記者は見る。 彼女らの大きな願い事。叶う日が来るのは何時のことだろうか。 (射命丸 文) ―― ……新聞を読み進めること半刻ほど。 青年は全ての記事を読んでいるわけでない。斜め読みして気になった記事だけをピックアップしているだけだ。 それでも総勢2年分の新聞を読むのはなかなか一苦労。店主の用意してくれた紙の山は簡単に崩せない。 他に気になった記事としては、 ・○○氏と慧音氏、人間の里会議で言い争い。後の八目鰻の屋台で仲直り。 ・藤原妹紅氏、紅魔館門番の紅美鈴氏と密かに会っている模様。 ・霧雨魔理沙氏、山の上に新しくできた神社にて縁結びのお守りを買う ・○○氏の新居が、どういうわけか対妖怪に特化した要塞になり、取材班も被害に会う。 と、彼氏彼女らの色々な話は、読んでいてとても面白い。 射命丸文という記者は何年もかけて彼らのことを追いかけているらしく、新聞内で「彼らが結ばれるまで追いかけ続ける所存である」とまで宣言している。 出歯亀もここまでくると尊敬の域に達する。よくこんな根性があるものだ。 青年は興味深く大量の新聞を流し読みしていく。 と、ある1枚の新聞に目が留まった。これは1年前の夏の新聞のようだ。 社説欄に掲載された『○○氏の正体』と題された小さな記事。青年は多少の興味を引かれ、詳しく読み込んでいくことにした。 ―― 『○○氏の正体? 噂の彼はどのような人間なのか』 結論から言おう。○○氏は謎に満ち溢れた人間だ。 もちろん、外の世界の人間であることは確か。物珍しい服装、開明的な知識、農作業の1つもできないひ弱な身体と、典型的な外来人の特徴を兼ね備えている。 だが、外来人であること以外に彼の素性はとんと分からない。 小説を書くことが上手なので、外の世界でもそういう仕事についていたのか――だが、幻想郷にいる外来人に「○○という小説家を知っているか」と尋ねても、一様に「知らない」と答えるばかり。 では○○氏に直接素性を尋ねればいいのか――容易ではない。彼は外の世界の知識についてなら色々語ってくれても、彼自身については表面的なことしか教えてくれない。 例の3人の女性ならば何か知っているのか――彼女らも多くを語ってくれない。いや、そもそも彼女らでさえ知らないのかもしれない。 そもそも彼がどうして幻想郷にいるのかさえ定かではない。色々と取材を重ねても、彼が幻想郷にやってきた理由が分からないのだ。 外来人が幻想郷にやってくる理由としては主に、 1:神隠しにあう 2:結界のスキマを偶然通り抜けてしまう 3:自発的に結界を抜ける・破る の3つのパターンがあるが、彼はそのどれでもないようだ。 これは結界の管理人に取材して判明した事実なので、まず間違いない。 ならばどうやって幻想郷に来たのか、それがまったく分からない。 彼はどこからともなく幻想郷に現れた、正体不明の小説家――害はなくとも謎は満ち溢れている。 私はこれからもこの問題について取材を続けていくつもりだ。何か有力な手がかりを持っている方は、是非協力をお願いしたい。 (射命丸 文) ―― 幻想郷のブン屋が調べても判明しない、○○という男の正体。これにはとても不気味な感じがした。 はたして慧音先生はこんな男と関わっていて大丈夫なのだろうか。 今までの新聞記事を読む限り、この男が悪い人間でないことは分かる。 しかしそれでも……恩人の身を心配してしまうのは、行き過ぎだろうか。 「ようやく見つけたよ。ほら、お望みの品だ」 店の奥に引っ込んでいた店主が、肩にクワを抱えてやってきた。 ようやく目的の品を見つけ出してくれたようだ。 青年は新聞を閉じ、店主からクワを受け取る。持った感じは普通のクワと違いがなかった。 だが、先の店主の発言から考えて、これには何か不思議な力が込められているに違いない。 知らずに使って魔法を暴発させたくはない。青年は詳しい話を聞こうとしたが、チリンチリンという鈴の音に阻まれる。 店に新しい客がやってきたようだ。この店に客とは珍しい。 緩やかな足音と共に、新しい客が青年たちの前に姿を現した。 「どうも。お久しぶりです、森近さん」 「やあ、いらっしゃい。○○君」 青年は驚きで言葉を失う。 着流しの袖に両手を入れ、柔らかな笑みを浮かべて店主に挨拶したその人物。 男にしてはとても線が細いが、背筋はピンと伸びていて芯が入っている男。 これが新聞の中に出てきた小説家、のようだ 今まで紙上でしか見られなかった人間が突然目の前に現れたことに青年は動揺しつつも、興味を持って彼を観察してしまう。 新聞の写真でも何度か顔を目にしたが、間近で見ると本当に普通の男だった。 特に顔がいいわけでも、男らしさに溢れているわけでもない。むしろひ弱。 だというのに、幻想少女3人の心を奪っている……どこにそんな魅力があるのか、疑問に思う。 青年が目を丸くしているのを尻目に、店主と○○氏が和やかに会話を始めた。 「それで、今日はどうしたんだい? いつもの子たちは一緒じゃないみたいだね」 「ええと、万年筆のインクが切れてしまったんです。在庫はまだありますか?」 「ああ、あるよ。ちょっと待ってくれ。インクは確か倉庫の方にあったはずだ、取ってくる」 「すみません、お願いします」 店主が再び店の奥に消えてしまった。残されたのは青年と小説家のみ。 青年は意識的に○○氏と目を合わせないようにした。 とても気まずかったのだ。先ほどまで彼の艶聞話を読んでいただけに、彼を見ているとどうも気恥ずかしい。 だがそんなことも知らない○○氏は、気楽な調子で声をかけてきた。 「それは農作業のクワですか?」 青年は目を合わせないまま、そうだと答える。 すると○○氏は顎に手をやり、興味深そうな声をあげた。 「なるほど。となると人里で農業を営んでいる方ですね。今年の夏は陽射しがきつくて、作物の管理が難しかったのでは?」 さらりと出された話題の意外性に、青年は驚いた。 確かに今年の夏は陽射しが強すぎて、水の量の調整が難しかった。ともすれば土壌が干上がり、収穫量に被害が出かねなかった。 「今年は客土したのに、水不足とは災難でしたね。ご苦労をお察しします」 客土。「栄養のある土を余所の土地からもらってくること」。土壌改良の1つだ。 今年はこれを行ったおかげで収穫量の増加を見込めたのに、水不足の被害は確かに運が悪かった。 だが、この男はどうしてそんなことを知っているのだろう。農作業でもしているのだろうか。 青年がそう尋ねると。 「俺には農作業ができるほど体力はないですよ。ただ知っているだけです」 不思議だった。どうして自分には何の関係もない農業の知識を、彼は得ているのだろうか。 勉強した? 何のために? 分からない。そんな何の役にも立たない知識を得て、何になるのか。 理解に苦しんでいると、ちょうど店主が店の奥から戻ってきた。 「おやおや、○○君は相変わらずだね。小説家としての勉強を続けているようだ」 「勉強しないとやっていけませんからね」 「ふむ、幻想郷にやってきた頃とは大違いだ」 「あ、そのことは……」 「ねえ君、○○君は今でこそ1人で暮らしていけてるけど、外の世界からやってきた時はそれはもう、失敗続きだったんだよ」 店主が楽しそうに笑い、秘密めいた顔で青年に耳打ちする。 ○○氏が慌てた様子で止めようとするも、店主の口は塞げない。 「例えば、彼は最初洗濯の仕方が分からなくてね。居候していた頃は、家主に自分の下着までも洗われてしまいそうになって」 「あ、あーあー! 森近さん! その話はやめっ!」 「さすがに恥ずかしいからと服を自分で洗ったはいいけど、失敗して下着とズボンを破ってしまったからさあ大変だ。 その日1日、家主が代わりの服を買ってきてくれるまで、布を腰に巻いて過ごしていたらしいよ。とても恥ずかしかったみたいだね」 くくっと笑う店主と、顔を赤くする○○氏。 青年は小説家のうぶな反応を意外に思った。 新聞を読んだ限りでは、3人の女性にモテモテだという○○氏はよほどの完璧人間なのかとも思ったが、どうも違うようだ。 最初の落ち着いた雰囲気と、今の恥ずかしそうな顔のどちらもが彼の人となりを示していた。 子供のような大人のような。つまるところ、とても人間臭い。 「はぁ……もうあの時のことは消し去りたい歴史ですよ、ほんと」 「それならちょうどいい人がいるんじゃないかな?」 「いえいえ、本当に消し去るのも惜しい経験ですので……恥ずかしくとも耐えます、はぁ」 苦笑する○○氏。店主が差し出したインクを受け取り、代金を払う。 そういえば、いつの間にか机に置かれていた新聞の山がなくなっている。○○氏にばれないよう、店主が片づけたのだろうか。 「ああ、そうだ。○○君。近く魔理沙と会う予定はあるかい?」 「え? そうですね……俺が会おうとしなくても、あいつは勝手に家に来ますからね。もしかしたら今日も来るかも」 「そうか。だったら、伝言をお願いするよ。『八卦炉の調整がしたいから店に来てくれ』とね」 「分かりました。魔理沙はあまりここに来ないんですか?」 ○○氏のこの質問に、店主はニヤリと笑った。 「君と遊ぶことに夢中のようでね。まあ、彼女をお守りしなくて済むのは楽でありがたいよ」 「はあ、そうなんですか……」 「いっそのこと君が魔理沙をもらってくれたら、僕としても安心できるのだけどね」 おおっ、と青年は心の中で感嘆の声をあげた。 店主はやけに踏み込んだ話をしているではないか。○○氏はさぞかし反応に困るはず。 そう予想したが、しかし○○氏の反応は鈍かった。 「だったら、俺は魔理沙のパワーについていけるだけの体力をつけないとですね。今はとてもとても」 肩をすくめる○○氏。普通なら店主の言葉に何かしら感づいてもおかしくないのに、○○氏は冗談交じりの笑顔で答えている。 おそらく店主が言葉の裏に込めた意味――「霧雨魔理沙のことはどう思っているのか?」という意味も悟っていないに違いない。 これが新聞で言っていた○○氏の「鈍さ」というものなのだろうか。 「そろそろ失礼します。時間があれば、俺が魔理沙を連れてきますね」 「ああ、頼むよ」 「では」 最後に頭を下げた○○氏は、青年にもきちんと笑顔を残し、扉の外へと消えていった。 たった1人の人間が去っただけなのに、場の雰囲気がやけに寂しげなものに変わったような気がした。 それは○○氏の持つ温かさがなくなったからかもしれない。 「どうだった?」 店主に問われ、青年は何のことかと問い返す。 「実際に見た彼はどうだったかなと。新聞通りというわけでもなかっただろう?」 確かにそうだった。 新聞上であれだけ騒がれているのだから、もっと堂々としたオーラに溢れていると思った。 それこそ博麗霊夢やアリス・マーガトロイドといった、幻想郷の有名人たちと張り合えるような。 しかし、実際の彼はそんなことはなかった。 「彼は何も特別なところなんてない普通の人間だ。だからこそ、彼は努力しているのだろうけど」 父性溢れる笑顔を扉に向ける店主。柔らかな視線の先に、おそらく○○氏を思い浮かべているのだろう。 「ああいう前へ進む姿を見ていると、人外の存在としては少しばかり……見習わなくちゃいけないと思うね」 それは人外だけでなく、同じ人間としてもそう思う。 外来人であるあの小説家は、幻想郷で今の生活を送るために、どれだけの努力をしてきたのだろうか。 決して読書人口の多くないこの世界で、彼は数多くの試行錯誤を繰り返してきたに違いない。 人外の存在のように先天的な才能に恵まれているわけでもないのに、彼は妖怪や精霊にも認められる男になった。 そんな努力をしている人を見ると、自分もやらなければ、という思いに駆られる。 手始めに、帰ったら頑張って畑を耕そう、新しいクワで。 そう青年は決意する。 ただ1つ、○○氏に言いたいことがあるとすれば。 「ほんと、早く魔理沙を安心させてあげてほしいものだよ」 店主の言葉と同じく。 『さっさと3人の誰かを選ぶなり、全員振るなり、全員ものにするなりしてしまえばいいのに』。 そういう野次馬根性だけが青年の胸にもたげたのだった。 ※ (以下、裏☆文々。新聞の一部を引用) ※ 裏☆文々。新聞 第一二一季 睦月の七 『雨降れども既に地は固く』 睦月の五、夕方にさしかかろうとしていた時分、当記者は正月ボケの頭を奮い立たせ、取材のため人里を訪れた。 先日八年ぶりに復活した幺樂団の演奏について、人間側の感想を聞くためだった。 しかし、期待していたほどの成果はなく、どうやって記事を埋めようかと悩みつつ、妖怪の山へ帰ろうと空を飛んでいたところ、妙な光景が目に入った。 人里の人間が、ある一軒家の窓や扉の前にたむろし、一様に中を覗いていたのだ。 それも皆が眉間に皺を寄せ、難しそうな顔をしている。 のどかなこの里ではあまり見かけない光景だった。 興味を引かれ、私は近くの物陰に降り立ち、背中の翼を隠して人混みの中に紛れた。 「―――!!」 「!!―――!!」 家屋に近づくにつれて、誰かの怒鳴り声が聞こえてきた。言い争いをしているようだ。 私は集まる人を押しのけつつ、窓からそっと中を覗き込んでみる。 そこには見たこともない光景が広がっていた。 「そんなことは分かっている! だからこそ計画的に木を伐採しつつ、苗木を植えるという対策を取ろうと私は再三言っているだろう!」 なんと里の守護者――上白沢慧音氏が物凄い剣幕で声を張り上げ、 「植林活動は慎重にやらないと! 里の人たちでも比較的育成しやすいスギやヒノキは、単一に植えすぎれば生態系を破壊するんです! 外の世界でも環境問題になっているんですよ!」 かの小説家――○○氏が、彼のイメージに合わない大声で反論している。 そう、二人は珍しく、本当に珍しく、口論を繰り広げていたのだ。 家の中には他にも里の長老や商工会の代表者がいたが、皆、慧音氏と○○氏の言い争いに気後れしているのか、口をはさめないでいるようだった。 二人の口論は続く。 「ならば調べた上で行えば、何も問題はないだろう!」 「調べるにしても資料が足りなさすぎます! 中途半端にやれば、幻想郷の森が『緑の砂漠』と呼ばれかねません!」 「しかし資料を集めている暇はない! 今伐採しなくては、今年の冬を乗り切れなくなるんだぞ!」 「薪が足りなくなったのは今年に限ってのことでしょう! だったら妖怪の山と材木のやり取りをすれば済むことです! どうしてその選択肢を避けるんですか!?」 「里と山が交流するのは難しいんだ! 個人としてならともかく、里という共同体が妖怪と交われば人妖のバランスを崩す!」 すさまじい光景だった。普段は仲のいい二人が、この時ばかりは互いを親の仇のようににらみ合っている。 いったい何が起こっているのか。私は困惑するばかりだ。 「新聞記者さん、こんなところで何を?」 そんな私に声をかけてきたのは、幻想郷の情報記録人、稗田阿求だった。 部屋の中にいた彼女が窓から顔を出し、私の困惑顔をニコニコと眺めている。 私は早速、中で起こっている出来事について尋ねてみた。 「中ですか? 里の長会議を行っているところですよ」 ――慧音さんはともかく、どうして○○さんが? 「○○さんは有識者として里の長から頼まれて参加しています。彼はいろいろな知識を持っていますから。 今は里の燃料の確保について話し合っていたのですが、少々こじれてまして」 ――燃料の確保? 「今年の冬は厳しいですからね。里に保管していた薪や藁が底を尽きてしまいそうなのですよ。 よって新たに近隣の森を伐採しようという提案が出たのですが、○○さんがそれに異を唱えまして…… ええと、確か『すでに自然回復の限度を超えた伐採を行っているため、これ以上木を伐れば環境を壊しかねない』と」 ――なるほど。 「しかし慧音先生は『対策を立てれば影響は少ない』と主張して、○○さんがさらに反論して……それから強烈な口論に発展してしまいました。 どちらの言っていることも正しいように聞こえますので、私も含め、里の人間はどちらにもつけないでいる状況です」 そう言って阿求氏は困った顔をし、怒声渦巻く部屋を振り返り見てため息をつく。 周囲の人間が事態を見守る中、慧音氏と○○氏は互いの主張をぶつけ合っている。 結論が出るまでまだまだ時間がかかりそうだ、と阿求氏は苦笑いを浮かべた。 私もしばらくは二人の様子を観察していたが、話が平行線のまま進展しそうにないのを見て取り、その場を後にした。 あの二人でもあんな喧嘩をすることもあるのだなと、その時は思っていた。 後日、私は興味深い情報を得た。 情報源は最近幻想郷で人気が出始めた八目鰻の屋台を経営する、ミスティア・ローレライ氏だ。 彼女によると、あの論争があった日の夜、慧音氏と○○氏は連れ立って彼女の屋台へやってきたらしい。 あんな口喧嘩の後ならば、屋台で一緒にいる間も相当気まずい空気が流れたに違いない。もしかしたらまた言い争いをしたのかも。 私はそう予想したが、違った。ミスティア氏はこう証言してくれた。 「二人とも楽しそうに飲んでいたわよ」 ――楽しそうに? 本当ですか? 「もちろん。詳しい話の内容までは覚えていないけど……確か、木材がどうのっていう話だったかな」 ――燃料の話ですか? 「そうそう。『資料を集める』とか『商店を通して妖怪の山から燃料を仕入れる』とか、そういう話だったわね。 けど、固いお話をしていたのも最初の方だけで、あとは普通の世間話。ちなみにお客さんのプライベートをこれ以上話せません」 ――二人は仲が良さそうでしたか? 「こっちが辟易しそうなぐらいにね。あれだけ仲がいいのに恋人同士じゃないんだから、男と女ってよく分からないわね。 ああそうそう、男の人の方がお酒に酔っちゃって、頭がぐらんぐらんとなってたの。それを女の人が介抱しようとしたんだけど…… その時、男の人が突然『慧音先生に会えてよかったです』とかなんとか言って、女の人の頬に口づけをしたの」 ――ほう、それは楽しい場面ですね 「多分あれだけ酔ってたら、男の人は覚えてないんでしょうけどね。男の人はそのまま地面にダウン。女の人は顔を真っ赤にして呆然としてたわ」 この取材の後、私は○○氏に口づけの件をそれとなく尋ねてみたが、やはり彼は覚えていなかった。 一方、上白沢氏にも取材を試みたが拒否されてしまった。『会議の夜』という単語を出しただけで顔を真っ赤にしていたので、覚えているに違いない。 ちなみに二人ともお互いを嫌っているような様子はなかったため、会議でのいざこざが彼らの仲を悪くしてはいないようだ。 多少の言い争いも、彼らにとっては交流の一つ。雨は降れども既に地は固く、なのだろう。 (射命丸 文) ※ 裏☆文々。新聞 第一二二季 神無月の二三 『妹紅氏、紅魔館の門番と密会。その理由は……』 この情報を得たのは本当に偶然だった。 ある日、幻想郷を駆け回って取材を行っていた当記者は、迷いの竹林に入っていく紅美鈴氏を目撃した。 当記者はまず驚き、そして訝しんだ。美鈴氏は紅魔館の門番として、四六時中あの館の前で立っている。時々昼寝はすれども、その勤務態度は比較的真面目。 たとえ非番の日であっても、侵入者に備えて紅魔館にいることが多いという彼女が、どうしてまた迷いの竹林に入っていくのか。 当記者はここに事件の匂いを感じとり、彼女を追跡することにした。 迷いの竹林は隠れる場所に事欠かない。美鈴氏にばれないよう、当記者は彼女の後ろをついていく。 「ふんふふーん」 美鈴氏は鼻歌交じりに歩いていた。ちなみに鼻歌は下手だ。音程がかなりずれていた。 四半刻ほどして、彼女が訪れたのは、 「妹紅さーん、来ましたよー」 竹林にひっそりと建てられている、藤原妹紅氏の家だった。 美鈴氏が大きく声をあげると、家の扉が開き、中から白髪の頭が現れる。 「やっときた……遅い、みりん」 「すみません。ちょっと咲夜さんに捕まってまして。それと、私はみりんじゃなくて美鈴ですからね」 「分かった、みりん」 「……わざとですよね? 私、怒っちゃいますよ? いいんですか? キックしちゃいますよ?」 「はいはい。いいから、さっさと始めよう」 「うー、私が教える側なのに、なんだか立場が逆転してるような」 漫才もそこそこに、二人は連れだって家の中へと消えていく。 この意外な組み合わせにますます興味を引かれ、気配を消して窓の前にスタンバイ。 さすがに中を覗けば、実力派である二人に見つかってしまうため、壁越しの会話を聞き取ることに専念する。 以下、聞こえてきた会話である。 「野菜は、料理の種類によって切り方が変わります。炒め物なら火が通りやすいように、煮物なら煮崩れしないように、と。 大根ひとつをとっても、千切りやぶつ切り、桂剥きなどがありますから、全部覚えていきましょうね」 これは美鈴氏の声だ。 「……こんなの、焼けば全部同じじゃ」 次に妹紅氏の声。困惑しているようだ。 「全然違います。切り方1つでおいしさも変わってくるんです。妹紅さん、おいしい料理を○○さんに食べさせたいんですよね?」 「そ、そりゃあそうだけど……わかった。覚える、覚えるよ」 「それでいいんです。花嫁の基本は料理です。男は胃袋で捕まえろ、ですよ。さあ、人参を切りましょう!」 どうも二人は料理をしているようだった。 包丁の音やかまどに火が灯る音だけが聞こえ、会話は料理に関するものだけになる。 いったいどうして料理を、と不思議に思っていると、ちょうどよくそれに関する会話が聞こえ始めた。 「以前教えたお裁縫、役に立ちましたか?」 「ああ……ちょうど○○の服で破れてたのがあったから、直してみたけどさ……失敗して、逆に穴が大きくなっちゃって」 「初めてですから仕方ないですね。もっと練習していきましょう」 「……こんなことで私、本当にちゃんとした嫁になれるのかな」 ぽつりと呟く妹紅氏。かなり気落ちしているようだ。 「なれますよ」 美鈴氏が明るい声で答えた。 「恋する乙女は誰だって花嫁になる資格があります。あとは相手を惚れさせるために、自分を磨くのみ! 武術と同じです。何事も日々の努力が大切なんですよ」 「……そっか。みりんの言う通りかもな」 「そうです、だから頑張って花嫁修業をしましょう。それと私は美鈴ですからね」 ここで当記者は合点がいった。 藤原妹紅氏は生活能力が皆無。このままでは、もし○○氏と結ばれて一緒に暮らし始めた時、絶対に苦労する。 そう思い、彼女は美鈴氏に助力を乞うて花嫁修業をしているのだろう。 なんともいじらしい。妹紅氏の思いの強さが見えるようではないか。 「では、次の野菜も切りましょう。この籠の野菜を洗ってください」 「分かった。石鹸はこれでいいかな?」 「妹紅さん、食べ物は石鹸で洗わない、という基本を忘れてますよ」 「あ、そうか。忘れてた」 しかし「花嫁」への道はとても遠いように、当記者は思うのであった。 (射命丸 文) ※ 裏☆文々。新聞 第一二二季 師走の一二 『恋色魔砲使いの恋はボム!』 今年の長月、妖怪の山に新しく神社ができたことは読者の皆さんもご存じだろう。 主に妖怪相手の信仰を得ており、最近は人間の中でもお賽銭を入れる人が出てきたため、博麗神社の巫女さんは大層ご立腹のようだが、それはともかく。 守矢神社ではお守りも売られている。これはただの気休めではなく、実際に神通力やら何やらが込められているようで、なかなかの御利益があるとの噂だ。 いくつかお守りの例を上げてみよう。 『弾幕安全』……弾幕ごっこでの身の安全を祈るものらしい。低威力の弾なら防御してくれるようだが、妖精の本気の弾すら防げないので、弾幕ごっこ上級者には実用性がない。 『奇跡成就』……守矢神社の巫女さんの力が込められていて、ちょっとした偶然や奇跡を起こしてくれるらしい。 他にも色々とあるが、一番売れているのは『縁結びのお守り』だとのことだ。 さて、このお守りをどのような人物が購入しているのかという話を、守矢神社の緑髪の巫女さんに聞いてみたところ、意外な人物の名前が挙がった。 霧雨魔理沙氏、恋色魔砲使いで神様や御利益なんて全然信じていなさそうな彼女が買っていったというのだ。 私は巫女さんに詳しく話を聞いた。 「はい、確かに買っていかれましたよ」 ――彼女が1人で買いに来られたんですか? 「そうですね。私が境内の掃除をしていると、突然砂埃が舞い上がり、空から誰かが降りてきたんです。 私が風を操って砂埃を吹き飛ばすと、お守り売り場に魔理沙さんが立っているのを見つけました」 ――そこで『縁結びのお守り』を? 「そもそも魔理沙さんはお守りがどういうものか分からなかったようで、説明をしても最初は『本当に効くのか?』と疑っていました。 しかしこのお守りは本当に御利益があるのです! 私が神奈子さまと諏訪子さまのお力をお借りし、護符に限界ギリギリの神通力を込めているため、妖怪は滅殺し、幽霊が持てば成仏なのです!」 ――……それは『お守り』というよりむしろ『武器』なのでは? 「ともかく、御利益は絶対にあります!」 そんなに御利益があるのなら外の世界でも売れて、信仰も確保できたのではと当記者は思ったが、黙っておいた。 ――その説明を聞いた魔理沙氏は? 「半信半疑でしたが、『縁結びのお守り』の説明だけはとても興味深そうに聞いていました。 外の世界で実際にこのお守りによっていくつものカップルが誕生したことを教えると、『まあ、気休めにはなるか』と言って買っていかれましたよ。 私の熱心な説明の成果ですね!」 ――そうですね。魔理沙氏は、お守りを買う目的について何か話していましたか? 「目的……ああ、お相手の話ですか。尋ねてみましたよ。けれど教えてくれませんでしたね。 とても熱心な恋をされているようですけど……誰なんですか?」 ――裏☆文々。新聞の購読をおすすめします さて、当記者はこの取材の後、霧雨魔理沙氏と弾幕ごっこを行った。理由はなんてことはない、当記者が弾幕の写真を撮るためだ。 霧雨魔理沙氏は会う度に新技を披露してくるのが常だが、その日に繰り出してきた技を見た時、私はギョッとした。 恋符『ラブダイナマイト』 これは強烈な弾幕だった。守矢神社で購入したお守りを媒介にし、局地的な爆発を何度も起こしてくるため、非常に避けにくい。 おそらくお守りに込められた神通力が魔力を増幅しているに違いないのだが、魔理沙氏は「私の愛は爆発なんだぜ!」と発言しており、詳しい仕組みを理解していないようだ。 きっと○○氏への愛が強ければ強いだけ、弾幕の威力が上がると思っているのだろう。ひどい勘違いだが、実際に威力が高いのだからそう思うのも仕方ない。 ……やはりこのお守りは武器として売り出した方がいいのではないかと、当記者は思うのであった。 (射命丸 文) Megalith 2011/04/06 ───────────────────────────────────────────────────────────
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/2086.html
俺設定があります。特に魔理沙とゆっくり。 幻想郷では月日の数え方が現代日本と違いますが、作中ではわかりやすさのために~月~日と表記させていただきます。 霧雨魔理沙は「ただいま」という言葉が嫌いだ。 魔理沙は基本的に日中は外出する。 例外は魔法の研究が立て込んでいるときとよほど天気の悪い日くらいで、 普段は神社に図書館に人形遣いの家に妖怪の山など、幻想郷のありとあらゆる所を飛び回り、 今の生活を謳歌して生きる事を精いっぱい楽しむ。 そんな彼女も日が暮れると当然家に帰る。 帰る家の無い子供は妖怪の家に招かれディナーにされるからだ。 けれども魔理沙の帰る家は人里の中ではなく、暗い暗い魔法の森の中。 実家から勘当されつつ自らも絶縁をしたために自業自得の境遇。 当然、家の中には誰もいない。 強がりな彼女がそのことを指摘されると否定することは言うまでも無いが、 まだ十代の半ばも過ぎていないような多感な少女にとって、 家路に着いたとき誰からも迎えてもらえないということは心の奥がちくりと痛む。 それは特に自宅の扉を開けて「ただいま」という瞬間に強くなる。 その一言は愛する家族に帰りを待ってもらっている少女ならばあまり嫌な響きを持たないが、 家の中に帰りを待ってくれる人がいない者にとってはそうではない。 暗く無音の室内に帰ったそのとき、誰かが作った温かい食事が用意されているわけではなく、 外の寒さに凍えた体を温めてくれる風呂が沸いているわけではなく、 何よりも温かい言葉で出迎えてくれる者がいない。 そんな冷たいものだらけの世界に入ると、ふと自分がその世界で一人ぼっちなのではないかと錯覚してしまう。 だったらそんな言葉を言わなければいいのに、幼い頃に身につけた習慣というものは中々消えないものだ。 だから自宅に帰り、誰もいないこと場所に移る「ただいま」という瞬間がすごく嫌いだった。 【大丈夫、扉を開ける瞬間がどれだけ寂しくても、家の中で戦利品を物色していればまたすぐに楽しい気分になれる】 魔理沙はいつもそう自分に言い聞かせるながら自宅の玄関を開ける。 当然家の中は真っ暗。食事のときに一日の事を話す相手はいない。自分以外に音を発する存在はいない。 それが彼女の日常だった。だがしかし、そんな状況から転機が訪れた。 魔理沙がある日「ただいま」と家のドアを開けると、『――ね』と、返す声が聞こえた。 【そいつら】が何物であるか詳しく知るものはいない。 実験の事故で生まれた新生物? 未知の侵略者? 新種の妖怪? はたまた幻想郷の神の気まぐれ? 【そいつら】は正体不明。そして幻想郷のいたるところで出没した。 _人人人人人人人人人人人人人人人人_ > ゆっくりしていってね!!!<  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^YY^Y^Y^ ̄ ,,.. -―- ..,, /\ /\ ./ (ヒ] ヒン) ヽ { '" ,__, "' .} \ ヾ_ノ / `ー-----ー^ 『ゆっくりしていってね!』『ゆっくりしていってね!』と繰り返し鳴き続ける饅頭顔共。 幻想郷の住人達によって安直に名づけられた名前は【ゆっくりしていってね!】。縮めて【ゆっくり】。 ゆっくり達は自分達が何者であるか自分達でもわからなかったが、そのゆっくりの本能の赴くままにポンポンポンと飛び跳ねながら幻想郷中に拡散していったという。 魔理沙の家の中にもゆっくりが現れた。 最初は追い出すことも考えたし、実験用に取っておくことも考えた。 そうしてどう扱うか考えながら家の中に住ませているうちに、 結局紆余曲折を経て、魔理沙はゆっくりをペットとして飼う事にした。 家の中で帰りを待ってくれる生き物が欲しかったのかもしれない。 だから毎日声をかけた。触れた。育てた。 そしてゆっくりという存在は育て主や観察対象に似るものらしく、 他のゆっくり達も拾った主やよく触れ合う妖精や妖怪と似た姿をするようになっていった。 そういう場合はゆっくり○○と、そのモデルになった者の名前がつく。 わかりやすさは大事だ。それは魔理沙のゆっくりにも同じ事が言えた。 _,,....,,_ -''" `''-、 ヽ ヽ | ;ノ´ ̄\ \_,. -‐ァ | ノ ヽ、ヽr-r'"´ (.__ _,.!イ_ _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7_..,,-" rー''7コ-‐'"´ ; ', `ヽ/`7"-..,,_r-'ァ'"´/ /! ハ ハ ! iヾ_ノ `!イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ ,' ,ゝ `! !/レi' (ヒ_] ヒ_ン レ'i ノ ,' ノ !'" ,___, "' i .レ' ノノ ( ,ハ ヽ _ン 人! ( ,.ヘ ,)、 )>,、 _____, ,.イ ハ 魔理沙のゆっくりだからゆっくりまりさと呼ばれるようになった。単純である。 魔理沙は一緒にごはんを食べてくれる存在が出来た。寝る前に話しかけられる存在が出来た。 家の中は騒がしくなった。楽しくなった。 だがもちろんいい事ばかりではない。 ゆっくりは魔理沙の言葉を覚えて語彙が増え、生意気になった時期があった。 その際魔理沙はゆっくりのことを疎ましく思った事もある。 面倒に思った事もある。喧嘩をした事もある。 けれども、ゆっくりが家に居なければ互いに喧嘩することさえも出来ずにいた。 誰もいなければ喧嘩は出来ない。だから喧嘩出来るだけ幸福なのかもしれない。 何よりも魔理沙が「ただいま」と言ったら、ゆっくりは『ゆっくりしていってね!』と返してくれる。 自分を出迎えてくれる存在は心の隙間を埋めてくれた。 今日も魔理沙の家には明かりが灯っている。ゆっくりがいる。出迎えてくれる奴が居る。 魔理沙はいつしか家のドアを開けることが怖くなくなっていた。 「ただいま~」 霧雨魔理沙は「ただいま」という言葉が嫌いだった。 今は―― 『おかえりまりさゆっくりしていってね~。あ、コーラと今週のジャンプ買って来てくれた?』 扉を開いた先の広間。 その一角を支配する大量のラノベや漫画、同人誌、散らかったティッシュ、鉄アレイ、 電力回線世界観その他諸々について突っ込みどころ満載な蛸足配線のゲーム機とパソコン。 そして背を向けたままのゆっくりまりさ。 ゆっくりまりさはニートになっていた。 今、霧雨魔理沙は「ただいま」という言葉が別の意味で怖い。 ◇ 「どうしてこうなったァァァッ!」 『ゆっ?』 ダムが突如決壊するかのように、魔理沙はとうとう耐え切れなくなって叫んだ。 ちゃぶ台をひっくり返しながらの魔法の森中に響く大絶叫である。 「ゆっくり! お前何か違うよ! これ絶対に何か違うよ!」 『何が?』 「上手くいえないけど、何かお前の『おかえり』と『ゆっくりしていってね』はどこか投げやりって言うか、愛がないよ!」 ゆっくりの『おかえり』は今日も魔理沙に背を向けたまま振り返ることすらないで、 モニターに目を釘付けにしながらの『おかえり』であった。 冷めているにも程がある。 「それにお前の趣味ってペットの生態じゃないだろ! ペットってのはこういう駄目人間臭い一日の過ごし方しない! ゲームやんなパソコンいじんな! その丸っこい身体でどうやってそんな繊細な操作してるんだよ!」 魔理沙は間欠泉地下センター入り口(天則のお空ステージ)を見てからは幻想郷の科学力について突っ込む事をやめたが、流石に自分の家で世界観崩壊されると黙っていられなかった。 そもそもどこから電力を引いているかわからない。ここは魔法の森なのに。電線はどこにあるんだよ。 『えー、ゆっくりってペット扱いだったのー。家族って言ってくれよ家族って』 「何偉そうなこと抜かしてるんだよ! ご飯作るのも風呂を沸かすのも洗濯する(ゆっくりの帽子も含む)のも全部私ばかりじゃないか! せめて家事ぐらい手伝えよ!」 『いいじゃんそれ魔理沙の仕事だろ。それにゲームとか漫画ないと暇なんだもん。ペットって結構暇なんだよ』 「暇なら暇なりに時間の使い方あるだろ? なぁゆっくり、お前今日何してた?」 『一日中家でパソコン使ってネットサーフィンしてた。ISDNはゆっくりしてるんだよ』 「外出ろよ! せめて友達と遊べよ!」 『寒いんだよ。寒死するって』 「それを言うなら凍死だ!」 『だからおうちでゆっくりするのさ』 今は二月。幻想郷は冬真っ盛りである。 『それにまりさだって天気悪いときは家の中に引きこもって研究してるときあるじゃん~。だからこれは研究なの。ゆっくりの研究』 「一緒にするな! お前がしてるのは怠惰と堕落の研究だ! せめて罪悪感とか感じろよ! 何家の中に居て穀潰しやってて当たり前のようにしてるんだよ! 外出ろよ!」 『ゆっくりはインドア派の生き物なんだよ~。家の中で出来る仕事をして、家の中で出来る趣味をするんだよ。そう、ゆっくりの仕事はその家の主人にゆっくりを提供することさ! ゆっくり癒してあげるからこっちおいで!』 そうゆっくりまりさが言った瞬間、チリンチリンと魔理沙の家の呼び鈴がなった。 間の悪いことこの上ない。一体誰だよと魔理沙が毒づく。 一方ゆっくりまりさは魔理沙を放ってすぐさま玄関のドアを開けに向かう。 するとそこにはゆっくりれみりぁとダンボール型ゆっくりのうーぱっくがいた。 ,. -───-- 、_ rー-、,.'" 〒 `ヽ、. うー♪うー♪ _」 i _ゝへ__rへ__ ノ__ `l ~ く `i / ゝ-'‐' ̄ ̄`ヽ、_ト-、__rイ、 ~ \ ゝイ/__,,!ヘ ハ ト,_ `ヽ7ヽ___ }^ヽ、 ~ .r'´ ィ"レ'ノ‐! ヽ ! レ ヽ-ト、ハ〉、_ソ ハ } \ /ヽ/ ハ ⌒ ,___, ⌒ )/| ハ / }! i ヽ ~ / / ハ ! /// ヽ_ ノ /// / / |〈{_ ノ } _」 ~ ⌒Y⌒Yハレ!ヽ、 //レ'ヽハヘノ⌒Y⌒Y´ `⊥ー-.⊥´ __/│ヽ / |\_____ / / /| ♪ / / / |/ あまぞーん♪ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ..| | 18禁ゲーム ...| ..| | . .| ..| | ⌒ ,___, ⌒ | ..| | /// ヽ_ ノ /// ..| ..| | ロリコン .| / |__________|/ 『うー♪(宅急便だよ~♪)』 『ゆっくりしていってね!』 『う~(あ~、ごめんね。仕事がまだ残ってるの)』 『そうですかわかりました。じゃあこれ御代です』 『う~♪ う~♪(まいどありがと~ね♪ それじゃおたっしゃで~♪)』 魔理沙はゆっくりまりさの外面のよさに若干イラつきを覚えつつも、 置いていかれたダンボールに視線が向く。 「……ナニコレ?」 手癖の悪い魔理沙は極自然な動きでがさがさとダンボールを開けた。 ここでひとつ幻想郷について説明するべきことがある。 幻想郷とは外の世界(俗に言う現代社会)から忘れ去られ幻想と化したものが流れ着く世界だ。 骨董品、妖力を持った武具、朱鷺などの絶滅動物、果ては古いゲーム機など、様々なものが流れ着く。 “外の世界から追い出された存在”も例外ではない。 追い出され忘れ去られ無き物として扱われるような、そんな存在達。 規制という名の権力による暴力にて追いやられた悲しい存在達。 その名はロリポルノと呼ばれていた。 ぶっちゃけるとうーぱっくの中身は幻想入りしたエロリ漫画、エロリゲーであった。 幻想郷では外の世界で追い出されたエロスでネチョでグログロな創作物が溢れかえっているのである。 ゆっくりまりさの趣味はその収集であった。 幻想郷に住むその手の趣味を持つ輩にとってはア○ネスは救いの女神となる。 そう、今幻想郷で最も信仰を受けているのは博麗神社の巫女でも守矢神社の風祝でも命蓮寺の尼僧でもない。 外の世界のロリコン殺し、ロリコンブレイカーのアグ○ス・チャンだ。 ハイル○グネス! アグ○スマンセー! アグネ○ハラショー! 幻想郷にやって来たら住民の総力を挙げて殲滅すっけどな! 「こんなにたくさん、一体何を買って――」 魔理沙が手に取った本の表紙に写るのは身長140cm程度の金髪の可愛らしい少女が醜悪な男によって組み伏せられている絵だ。 どことなく魔理沙に似ている。魔理沙は思わず興味本位でパラパラとページを捲る。 内容は少女に男達が群がり―― 「アウアウああああああうああああはうああああ――」 あまりにも刺激が強すぎた。魔理沙は目を回し顔を真っ赤にしながらあたふたとうろたえる。 魔術は性との関連が強いため、知識だけは人一倍あるが実践とは程遠い生娘の魔理沙。 それに知識だけはあるといっても、オブラードに包まれたものだ。 がさつさを表に出して強がってはいるが、その根っこは人里の良家のお嬢様である。 同年代の少女達よりもずっと初心なのだ。 『キャベツ畑やコウノトリを信じてる可愛い女の子に 無修正のポルノをつきつける時を想像するような下卑た快感さ……ゾクゾクするねぇ』 「ヘンタイ! へんたいッ! 変態っ!」 魔理沙は顔を真っ赤にしたまま瞳に涙を浮かべて叫ぶ。 対するゆっくりまりさは表情をあまり変化させないがその実恍惚の笑みを浮かべているのが魔理沙もわかった。 『さぁ気を取り直して、ゆっくり癒してあげるからこっちにおいで!』 「癒しっていうか厭らしいよ! ッ――ゆっくり……ゆっくり……お前はッ」 認めたくは無い。けれど現状を認めるしかなかった。 「ゆっくり! お前はペットじゃない! ニートだ! ニートなんだ!」 ニート。 労働の義務を全うすることなく朝から晩までネチョい妄想して過ごす寄生虫だ。 あああ、まさか自分の身近な存在がニートになるなんてと魔理沙は頭を抱える。 しかもロリオタプーの三重苦である。最悪である。 「何でッ! 何でお前はニートなんかになっちゃったんだよ! 成長したといえるのは語彙ぐらい! 趣味は何だかわけわかんないしッ! 外で遊ばないし! どうしてこうなっちゃったんだよぉ!」 魔理沙は号泣した。ひたすら滂沱の涙を流す。 育て方を間違えたのだろうか。そのうち犯罪でも犯すのかもしれない。 いいえ、あの子はそんな子じゃないわ。魔理沙の中の女神が「うふふ」と慈愛の微笑を浮かべて言った。 「ひっく……何見てんだよッ……?」 『ロリの泣き顔ハァハァ♪ ハァハァ♪(softolkボイスで)』 そんな子なんだよいい加減認めろ。魔理沙の中の女神が「へっ」と煙草をふかしながら言った。 「でてけぇ! お前もう出てけぇ! 出てけっ! 出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけぇ!」 『ゆっゆっゆっゆ♪』 「もうやだぁぁぁぁぁぁ! おうちかえるぅぅぅぅ!」 家出少女霧雨魔理沙。実家に帰りたいと心から思ったのは久しぶりだった。 ◇ ゆっくりとの関係がギクシャクしてから数日が経った。 魔理沙はあれからアリスや霊夢、早苗などの友人の家を梯子するように泊めてもらっていて、 魔法の森にある家には帰っていない。 そして当然人里にある実家は候補にすら上がっていない。 ゆっくりの前ではああ叫んではしまったが、勘当された手前実家には帰れないし帰る気も無い。 けれどいつまでも誰かを頼り続けるわけにはいかず、 ゆっくりとの問題を解決して自分の家に戻らなくてはならない。 だからこそ、今日催されている博麗神社の宴会はある意味うってつけだった。 酒の席では普段疎遠な奴とも気兼ねなく相談することが出来る。 そして魔理沙はとある人物の前に居る。 あいつだったら、あいつだったら今のゆっくりにどう対処すればいいかわかるかもしれない。 「永琳、ニートの扱い方を教えてくれ!」 「一体何よ藪から棒に」 八意永琳は魔理沙の突然の申し出に眉を顰めた。 「お前のとこの輝夜って引きこもりっていうかニートだろ? 今日だって宴会に来てないし、妹紅も最近見かけないって言ってたぞ」 その途端永琳が怒りを露にし、大魔神のように表情をくぁっと変えた。 「何一時期の悪評を真に受けたような失礼な事を言ってるの! 今時姫の事をニート呼ばわりだなんて風評被害もいいところだわ!」 魔理沙は思わず気圧される。流石に人をいきなりニート呼ばわりは失礼だったのかもしれない。 「あ~……まぁ貴族とかそういった身分にいた人間が外で働くことはおかしかったらしいしな。あいつの価値観が違うだけなんだろ……。悪かったよ」 「姫はニートなんかじゃないわ! 私が監禁してるだけよ!」 「お前が元凶かよ!」 「監禁調教事件の犯人、八意永琳逮捕しました。霧雨魔理沙さんご協力に感謝します」 「クッ、謀ったわね霧雨魔理沙。この恨み一生忘れないわ」 「お前が勝手に自白しただけだろ!? 永遠に恨むなよやめろよ!?」 魔理沙は通報を受けてやってきた警察にドナドナと更迭される永琳を見送る。 意図せずして一つの事件が終わりを迎えたが、幻想郷ではこのようなこと日常茶飯事だった。 「はぁ…………しょうがない、次は教育の線から当っていくか」 次に魔理沙が頼りにしたのは人里にて寺子屋の教師をしている上白沢慧音である。 「なるほど、教育について悩んでいるのか。わかった、少し話を聞こう」 慧音は快く魔理沙のお願いを聞き受けた。 普段交流の無い者と立ち入った話をする勢いが持てる。これだから酒の席というものはいい。 酒が入り饒舌になって、魔理沙の言葉を促す。 「――そういうわけだから最近ゆっくりと上手くいってないんだよ」 魔理沙は視線を外に向ける。 霊夢とそのペットのゆっくりれいむがどたばたと宴会場を駆け回っている。 『ゆっくりのんでいってね!』 「ゆっくり~、つまみ持ってきて~」 『まかせとけ!』 霊夢と共に宴会の手伝いをする、霊夢のゆっくりである、ゆっくりれいむ。 器用にも頭の上にお盆を載せて右に左に大忙しだ。 魔理沙はその光景を羨ましく思った。いいなぁ、仲良くて。 そんな魔理沙の傍で、話を聞いていた慧音が頷いた。 「なるほどな。ところで参考になるかわからんが、人間の年頃の子供にも家族との間に距離を作ろうとする時期があるんだ。思春期ってやつだな」 思春期。いわゆる家族との仲が上手くいかなくなる時期のことを示すと慧音は言う。 「ゆっくりにこれが当てはまるかは知らんが、ゆっくりとその飼い主の関係は、ペットと飼い主と言うよりも親子の関係に通じるものが多い。ゆっくりは見た目など飼い主に影響を受ける面も多いしな」 「え~親子~、そりゃないぜ」 「いや、お前はつまるところ、ゆっくりと自分の関係が変わるのではないかという事に対して不安なのだと思うが、どうだ? 親子仲が悪くなってしまうことが嫌だとか――」 「………………」 魔理沙の沈黙。 慧音も失言をしたと気付き申し訳なさそうに顔を伏せて目元を歪ませる。 人里では良家である霧雨家の家庭事情はそれなりに有名であるためだ。 そんな中、二人の間にぬぅっと入り込む影。 「ねぇ魔理沙、ゆっくりが家の中で引きこもってることが不安なのは何となくだけど理解できるわ。確かに家族が引きこもっていたら不安になるのはしょうがないわよ」 真顔でやってきたのはアリス・マーガトロイド。魔理沙の友人の魔法使いだ。 いつ頃から聞いていたのか、すんなりと会話の中に入ってきた。 アリスが話の流れを変えるように魔理沙に声をかける。 「アリス……」 「だけどゆっくりが家の中で漫画読んだりゲームやったりしてるぐらいどうってことないじゃない。私のゆっくりもフィギュア(ぶっかけ)が趣味だけど、周りの人が不快にならないようにある程度自重してるわ。魔理沙が泊まりに来たときもそうしてたしね。他人に迷惑を掛けなければ趣味は誰だって自由だと思わない? 自分の家の中にいる存在とはいえ、ある程度の妥協は必要よ」 「だけどあいつ、いつか他人に迷惑掛けそうじゃね?」 「いいえ、漫画やゲームで発散出来ているうちはそれにこしたことはないわよ(現実では不可能なシチュエーションも楽しめるし)。他人に迷惑は掛からないわ」 「そっ、そうなのか?」 「えぇ、第一どんな趣味も心の中に秘めているなら自由よ。妄想まで縛られたら皆生きていけないわ(嗜好はエスカレートするものなのよねぇ)」 「うちのゆっくりはああいう趣味なのに隠さないでオープンなんだけど……」 説き伏せるアリスとゴニョゴニョと口ごもる魔理沙。その間に更にすっと入る者が一人。 「心の中に秘めているだけなら自由? 馬鹿いうなこのやろー。こちとらその考えてるだけでもセクハラうけてるようなものなんじゃー」 「さとり!?」 古明地さとり。心を読む程度の能力を持つ覚り妖怪である。次から次へと今日は色んな奴が魔理沙に絡んでくる。 いつものような陰気さはまるで見られず、子供のように喚いている。 さとりは泣きながら訴えているところを見ると、大分酒が入っているらしい。 いつものように心を読む程度の能力を使う余裕さえもないようだ。 「霧雨魔理沙、貴方は甘いれす。お砂糖の上にハチミツをぶっ掛けてコンデンスミルクを加えたぐらい甘い甘すぎる!」 「何がだよ! 何でそこまで言われなきゃいけないんだよ!」 「ペットというものは年がら年中発情してるものなのです。可愛い子猫やチワワでさえも、女の子を見たら人間だろうがなんだろうが『獣姦してぇニャ~』『孕ますワン孕ますワンうへへへへ』とまず確実に思っています」 「知りたくも無かったよそんな事実!」 ママーこれかってーワンちゃん買ってー。 あらまぁどうしましょ~? 奥様、その犬はバター犬としてお子様の性教育にもぴったりですよ。 あらまぁ素敵さっそく買うわ~。名前はチーズがいいかしら~。 「どうしても気になるならさっさと去勢すればいいじゃないですか。そりゃもうざっくりと」 「グロいよ!」 真顔で言い放つさとりに魔理沙が突っ込む。慧音が脱線した話を戻す。 「え~と……話をまとめると結局のところ、相手を自分の都合のいいままにしておきたいって言うのは我侭の一種なんじゃないか? 互いの落としどころとなる妥協点を見つけて、関わっていくしかないだろう」 「ペットもいもーともずっと自分のものにしておいていいじゃないれすかー! あの子達は私のしょゆーぶつなのれす! 私のものなのれす! 世界で一番可愛い大事なペットなの家族なの~!」 「もういいお前黙れ」 「さとりは参考にしない方がいいわね(さとりを落せばペットも付いてくるわね)」 「同感。愛が重すぎる」 酒が入ると素になるものだ。 放任主義者のさとりだが、実は物凄く束縛したがっているのかもしれない。 そうしないのは自らについて知っている上での計算か、あるいはペット達の事を考えての良心ゆえか。 魔理沙はゆっくりとの日々を思い返す。自分もゆっくりには自由にさせていた。 昔は外で遊ぶのが大好きな奴だった。外に出て友達に『ゆっくりしていってね!』と挨拶して、 森の中でキャッキャと遊んで、暗くなる前に家に帰って魔理沙を出迎え、 その日何があったかを食卓で話していた。 「最近ゆっくりがわかんない……」 その一言にはやるせなさと切なさが混ざり合っていた。 宴会はそろそろいい時間になってきた。 ここで一旦お開きにして、二次会をする者はそのまま残り明日仕事や用事がある者は帰る。 幹事役である霊夢が魔理沙の傍にやってきた。 「大分夜も遅くなったことだし今日泊まってく?」 帰り支度をする者が居る。 泥酔しているさとりはペット達に担がれて帰る。慧音は明日に備えて帰る。 残って宴会を続けるものが居る。 鬼達はまだまだ夜はこれからだ酒もってこいと残る。 自分はどうしようかと魔理沙は考え込んだが、ふと視界の中に入るものがあった。 霊夢のゆっくり。ゆっくりれいむは帰る者にも残る者にも『ゆっくりしていてね!』と声をかけている。 それを見ていると、魔理沙は自らのゆっくり、ゆっくりまりさのことを思い出す。 「……いや、今日は帰るよ。いい加減家の中には洗い物が溜まってるだろうしな」 「そっか、わかった。まぁアンタのことだから帰り道は大丈夫だろうしね」 自宅には帰らなかったが、蓄えは十分にあった。 ゆっくりまりさはそれを食べて過ごしているだろうが、洗い物が溜まっているだろう。 理由がなければ帰ろうとは思わなかった。理由があるから帰る。 「霊夢、アリス、またな~」 「じゃあね、魔理沙」 「気をつけて帰るのよ(性的な意味で)」 魔理沙は星の輝く夜空を飛んでいった。 ◇ 慧音がゆっくりは子供のようなものだと言っていた。 魔理沙は口では否定したものの、納得できる面もある。 ゆっくりが一緒にいると面倒くさいときは山ほどあったが、 その一方で自分の庇護の元で育っていくのは、とてもとても嬉しかったものだ。 ゆっくりまりさは最初から流暢に喋るわけではなかった。 「ゆっくりしていってね!」という言葉を鳴き声のようにベースにして、 魔理沙達周囲の人妖の言葉遣いを真似て覚えていった。 魔理沙は今でも覚えている。ゆっくりまりさが初めて喋った日の事を。 それはゆっくりが魔理沙の家に居つくことになってしばらく経ったある日のことだった。 「ただいま~」 『ゆっくりしていってね!』 「言われなくてもゆっくりしていくぜ」 家に帰った魔理沙は荷物を下ろし、夕食の支度をしながらゆっくりに話しかける。 最近新しく加わった日課だ。 これまでは楽しくなかった家の中に帰ってからの時間で、楽しくてたまらない日課。 「ほらゆっくりご飯だぞ~」 『ゆっ!』 「全く、ご飯の時間になったら現金にも嬉しそうにしやがって。畜生の恩義なんて所詮そんなものだよな~。食事と寝床を提供する奴ぐらいにしか思ってないんだ」 とひどい事を言ってはいるものの、その頬はゆるんでいた。 自分の作ったご飯を美味しそうに作ってくれる者が家の中にいる。 そいつの分のご飯まで用意しなければいけないのは面倒だが、 その苦労も美味しそうに食事をしてくれる者がいると軽く吹き飛ぶ。 「な~どうなんだゆっくり~。美味しいかほれほれ~」 『ゆっくりしていってね♪』 む~しゃ、む~しゃ、しあわせ~と間の抜けた擬音でもしそうな様子でゆっくりまりさは魔理沙が与えたご飯を食べていく。 「おかわりが欲しかったら魔理沙さんおかわり下さいって言ってみろ饅頭顔め~」 『ゆ~?』 「魔理沙だよまりさ! ま・り・さ!」 それはただの気まぐれだったのかもしれない。 魔理沙はそうするだけで楽しかった。返事まで高望みしていなかった。 だが―― 『ま…………り………さ?』 途端、魔理沙は目を丸くした。 ゆっくりが人の言葉を覚える。このような話は他のゆっくりを飼っている奴等からも聞いていない。 そう、その頃のゆっくり達はまだ言葉を覚える固体がいなかったのだ。 だから魔理沙はそれが信じられなかった。 「おいゆっくり!? お前喋れるようになったのか!? そうだよ、ま・り・さ! ほら言ってみろ、ま・り・さ!」 『ま……り・さ、ま・り・さ……。まりさ。まりさ! まりさ!』 「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!」 『まりさ! ゆっくりしていってね!』 まりさ。自分の名前を呼んだ。 魔理沙は思わずゆっくりまりさを脇に抱えてその頬を拳でグリグリと押し付けた。 その動作の速度は物凄く速く、ゆっくりまりさを抱えるその腕でぎゅううと締めて、拳には慈しむように力が入っていた。 人の親が、我が子が言葉を発した瞬間の気持ちとはこのようなものなのかもしれないと魔理沙は思った。 自分のこれまで過ごしてきた日々が実を結び花開いたような、途方もない充実感。 祝杯でも挙げたくなるほどだ。 「ははっ! お前私の言ってる事わかるか? 私の言ってる事通じるか?」 『ゆっくりしていってね! まりさゆっくりしていってね!』 「通じるようだな! すげー! なぁゆっくり、私の作ったご飯って美味しかったか?」 『ゆっくりしていってね♪』 「よしッ!」 かいぐりかいぐりとゆっくりまりさの頭を思い切り撫でる。そう、力の限り思い切り。 『まりさゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね!』 「そうかもっとやってほしいかこのドMめほれほれ~もっと力を込めてやる~」 『ゆ゛~~』 「あははっ冗談だよ冗談~よしよし~~」 魔理沙はゆっくりまりさがこの先言葉を覚えたら『ゆっくりやめていってね!』とでも嫌がりそうなくらいの力加減で撫でていた。 だが、それも無理のない事だった。 まさかここまでうれしいことがあるとは思わなかった。 自分にこのような面があるとは意外だったと魔理沙は感じていた。 『ゆっくりしていってね♪』 ◇ 「ただいま~」 魔理沙は数日振りに日課である帰宅の挨拶を行なった。 けれども家の中からは声が返ってこない。 『ゆっくりしていってね!』も『おかえり』もない。無言無音そのものだった。 ゆっくりは家の中にいるのならばたとえ背を向けていても返事だけは返す。 帰ってきてないのだろうか? 家の中に明かりが灯っているのに? 外で遊んでいる? あの出不精がこんな時間まで? 「ゆっくり~! ゆっくり~! 主人の帰還だぞ~! 何も言う事ないのか~!」 返事は無い。 魔理沙は気がついたら早足になり、家中をキョロキョロと見回していた。 あまり広くない一軒屋の魔理沙邸である。 その結果、ゆっくりはすぐ見つかった。 部屋の隅。タンスのすぐ横だ。 ゆっくりまりさは餓死しかかっていた。 「ゆっくり!? ゆっくり! 起きろよ! おい! しっかりしろよ!」 『ゆ゛……ゆ゛……って゛…………いっ……てね……』 衰弱しているゆっくりまりさを見て、魔理沙は大急ぎで台所に向かい、 栄養価が高く衰弱していても食べられる食材である蜂蜜を持ってきて、すぐさまゆっくりまりさの口の中に放り込む。 ゆっくりまりさは最初は真っ青な顔をしていたが、段々と顔色がよくなってきた。 でたらめな生き物だけあって回復力もでたらめだ。 「何で何も食べてないんだよ!? 食料の蓄えぐらいあったろ!」 『ご飯作ってくれると思って……』 思わずずっこけた。心配した自分が馬鹿だった。 「食事ぐらい自分で作れよ!」 『料理出来ないんだよぉぉぉ』 魔理沙は呆れながら苦笑する。もはや苦笑する以外になかった。 料理を作れないなら食材をそのまま丸囓りするぐらいのことはしろ。 生活能力が無いどころの話ではない。 「このままでは本格的にマズイんじゃないかコイツ」と、危機感が募った。 「ん?」 ふと視線をすぐ傍のタンスに向けると、なにやら漁った後のようなものがあった。 「……なぁゆっくり。私のドロワが全部無くなってるんだけど知らないか?」 『ごちそうさまでした』 「…………は?」 『ゆっくりの主食は乙女のドロワなの☆ 生でも美味しいドロワの刺し身♪』 「餓死しろ!」 『本当はパンツ派なんだけどね~』 「パンツが無かったらドロワを食べればいいじゃない」聖者ガンジーの格言である。 ◇ 月は二月。日は十日。二月十日。通称ニートの日。 魔理沙はある決心をした。 このままだとゆっくりはどんどん駄目になる。 「ゆっくり、お前働け」 『はぁ?』 ネチョ同人誌を読みながら眉を顰めて不満を露にするゆっくりまりさに魔理沙はレーザーを叩き込んだ。 こんがりといい匂いを発しているゆっくりまりさに、魔理沙は話を続ける。 「なあゆっくり、お前なんでニートになったんだ?」 『家族会議っすか?』 更にレーザーを叩き込んだ。 ゆっくりまりさは黒焦げになって、食したら癌になりそうなこんがりとした匂いが部屋中に広がる。 「お前せめて他のゆっくりと一緒に遊びに行ったりとかしないのか?」 『あのリア充どもがっ。へっ。趣味合わないんすよああいうのとは』 駄目だこりゃ。 結局のところ、誰かに苛められたというわけでも何でもない。ニートになった理由なんてないのだ。 元々そういう気質があって、要するに根っからの社会不適合者なだけ。 こんな奴でも昔は森の中で昆虫採集をして、河原で遊んで、友達の家に行ってと、 健全な日々があったことを懐かしく思う。 『そもそも幻想郷ってニートだらけじゃないっすか、妖怪とか。 ※ニート 就業、就学、職業訓練のいずれもしていない人を示す。ほらね』 「反論させてもらけど妖怪は人間を驚かしたり怯えさせるのが仕事だしなぁ。小傘だって人間を驚かそうと頑張ってるし、ルーミアだってめんどくっても人間襲ってるし」 『だったら引きこもりでもいいじゃない! あの紫もやしな魔女のゆっくりなんて引きこもってても何にも言われないんだよ! ただ飯ぐらいのくせに!』 「お前パチュリーの耳に知られたら実験材料にされるぞ」 社会不適合でもいいじゃない。幻想郷にはニートだらけじゃないのとゆっくりまりさは抗議する。 紫が聞いたら泣くぞお前。 (むしろ働かせることが主目的じゃないんだよなぁ……) 魔理沙はゆっくりが働かなくてもある意味構わない。 元々ペットだし、働くことが主目的の存在ではない。 だが、ゆっくりまりさがこのままの生活スタイルだと更に堕落してしまうのではないか、自分無しでは生きていけなくなることに不安を感じるようになったのだ。 「いいかゆっくりよく聞けよ。お前は今ここな」 毎日が夏休みだ 2chって楽しいな ←この辺。 「そのうちこうなる」 何をしてたんだもう手遅れだ 「こうなりたくなかったらキチンと働け。仕事しろ。お前このままだと本格的に駄目になるぞ」 『子供は遊ぶのが仕事っていうじゃない!』 「それは友達と遊んで社交性を身につけたり家の中で嗜好品を楽しむ事で将来の役に立てろって意味だ。お前のような将来性のない遊びは違うんだよ」 『わかったよ! だったらラノベ作家目指すよ!』 「ヤメテ! お願いだから身の程を知って!」 反論するゆっくりまりさに対して魔理沙は本気で止めた。 その道だけは決して選んではならないと本能が告げていた。 「ほんっとうに暇な奴っていうのはロクなことをしないものだな」 『自分の事は棚にあげてるよこの小娘』 「やかましい。私は結構忙しいんだよ、外によく出るしな」 『へっこのリア充気取りめ。女の子のところばかりに行ってる百合予備軍の小娘が』 グリグリグリ。取り敢えず両拳でゆっくりまりさのこめかみをねじくり回す。 『じゃあ家事手伝いでどうっすか?』 「手伝ってないだろお前」 『自宅警備員舐めないで下さい。侵入者が来たら永遠にゆっくりさせてあげますよ』 「どこからその自信は来るんだよ……」 ハァ……と、魔理沙は深いため息をついた。 これは筋金入りである。いつの間にか我が家のゆっくりは骨の髄までニート体質が染み付いてしまった。 どうするべきかと頭を悩ませる。 「なぁゆっくり、お前今日から奴隷になれ」 『はぁ? 何言ってるんスか先輩? ――――あ~、ペットじゃなくて愛玩用の性奴隷にしたいわけっすね? いっすよ。自分受けもいけますから』 「何馬鹿な事いってるんだよ!? 奴隷型の弾幕ってあるだろ? アレだよアレ!」 奴隷型の弾幕。使い魔となる者を用いて弾幕を張るスペルカードの一種だ。 『え~。身内で就職すると色々不都合が出るからやだ~。やめるとき大変だし~』 「……気を使ってあげた私が馬鹿だったよ」 『それに今十分仕事してるじゃん』 「何の仕事だよ?」 『魔理沙をゆっくりさせる仕事だよ』 「言っておくが最近の私はお前にゆっくりさせてもらった覚えはないぞ」 途端ゆっくりの顔色が青く染まり、ガクガクと震える。 『え……マジ? ホント? 冗談抜き? 冗談だよね? そうだよね? ね?』 「ちょっ、お前なんでそんなに焦ってるんだよ?」 『ねぇマジ? 本当にゆっくりした覚えないの?』 「あぁ、お前がニート化してて気が休まらなくって――」 『ウボアー』 「うわああああああああああああ! ゆっくりどうしたああああああ!」 粒子状になって消えてゆくゆっくりまりさ。 幽霊が成仏するか雑魚モンスターがニフラムを受けたらこのような消滅の形を迎えるのかもしれない。 それもそのはず、精神的な存在である妖怪達にとって自らの存在意義を否定されるということは死に等しい事。 ゆっくりが妖怪というカテゴリーに含まれるかは定かではないが、自らの存在を否定されることによるダメージは計り知れない。 ゆっくりまりさは怒り狂った顔で怨嗟の声を叫び続けた。 『ぐぬぅぅぅぅぅぅ! 呪ってやるぞおオオオオ! この世全てを呪ってやるゥゥゥ! ゆっくりを否定したこの世界をォォォォォ! そして私も消えよう永遠ニィィィィ!!』 「わかった! わかったよ! お前に十分ゆっくりさせてもらっているよ!」 『ユ楡ユ楡遊柚湯油ゆ愉……』 「お前のゆっくりは幻想郷一だよ! だから頼むから回りに迷惑をかけるなよ!」 『え、やっぱそう思う? さっすが~。魔理沙もゆっくりの大事さをわかるようになってきたね~♪』 瞬時に表情と体を元に戻らせたゆっくりまりさが質問する。変わり身の早さには定評がある。 「(うわ、マスパぶっ放してぇ……こいつ本当にめんどくせぇ…………)」 魔理沙は自らを抑えるための妥協点として取り敢えずゆっくりまりさを足でグリグリと踏んづける。 自暴自棄になって周囲に迷惑を掛けられたらたまらない。 扱いにくい事この上ない。反抗期の子供というのはこういうものなのだろうか? 全く中途半端に力と知恵をつけているから尚更性質が悪い。 次ページへ 名前 コメント