約 906,657 件
https://w.atwiki.jp/fklab-2007/pages/12.html
小説提出用ページ ワードファイルで提出して頂きます。ファイルのアップロードとページ編集の流れは以下の通りです。 ①ファイルのアップロード方法 ページ下にあるプルダウンメニューから「アップロード」を選択 ②小説提出用ページを編集する ページ下にある「このページを編集する」をクリック ③編集用のフォーマット --[[名前>ファイルURL]] (←半角に直して入力) この形式でページを編集します。 ④ページ保存 編集をし終えたら、「ページ保存」をクリック。 皆さんは、非ログインユーザーですので指定の文字列を入力して「ページ保存」をクリックします。 (在籍生)明石陽介(序文のみ) 深沢祐一(40枚)(書き下ろし) 阿久津隆(100枚)(旧作加筆修正) 足達剛(40枚)(旧作加筆修正) 石原征爾(90枚)(旧作加筆修正)■修正版1 (卒業生)関根智恵(30枚)(旧作加筆修正) 杉浦みな子(30~40枚)(書き下ろし) 松浦由佳(50枚)(旧作加筆修正) 大八木航(20枚)(書き下ろし)■修正版1■修正版2■修正版3 最終校閲版 阿久津 足達 石原 ■あとがき 大八木 杉浦 関根 松浦
https://w.atwiki.jp/keitainijiura/pages/96.html
一言リレー小説1
https://w.atwiki.jp/marisa-kirisame/pages/52.html
東方の裏主人公 箒に鍔広の三角帽子という魔法使い風の出で立ちをした普通の魔法使い。 魔法はキノコを材料にして発動している。 付与天候は「霧雨」 スペルはパワー程度の天気 緋想天と同じくスペルカードの威力増加(約1.25倍)。 機動力と弾速が速いのが長所であり、リーチが短く弾幕の画面制圧力が低いのが短所 そのため、火力を押し付けるよりも立ち回りで相手を制すことが重要に。 通常技・スキル・スペル全体を通して、緋想天時代に便利すぎた技は下方修正、マイナーな技は上方修正の傾向。 B射撃の仕様変更に伴い緋想天で通じたコンボの大半が不可能となり、キャラ限コンボを基本にして覚える必要が生まれた。 緋想天時代のスタイルに捉われずに自分に合ったデッキや立ち回りを探していきたいところ。 格好良い、かわいい 使いこなしてる人はマジ格好良い
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/520.html
魔理沙6 6スレ目 59(うpろだ0067) 「印刷機、か? 年代物だな」 面倒事を運んできたのはそんな何気ない一言だった。 「おー! 判るか? じゃ頼むな」 --------------------------------------------------- 断っておくが、こんな昔の物をいじった経験なんて無い。 以前に何かの本で見かけた資料が、目の前にあったそれとよく似ていたから判別できただけだった。 だってのに俺は朝から工具を片手に、家に運び込まれたオンボロの修理なんかをやらされてる。 工具の出所は勿論、香霖堂。 「機械いじりなんて、元の世界でもやってねえっつの……」 分解され床一体を埋め尽くしたパーツ。 自分なりに書き残した汚い設計図。 オイルやインクの嫌な匂いを吸い込み、部屋に染みついたんだろうなとげんなりすること数回。 どうしてこんな事をせにゃならんのかと思ってはみてもダンス・オブ・後、愚痴っていても夜は明ける。 汚れて荒れた手にニッパを取って、また機械いじりに励む。 古いだけあって複雑な構造じゃないのが不幸中の幸いだった。 日もとっぷり暮れた頃、天狗との勝負に負け、修理を押しつけられたという全ての元凶が姿を見せた。 「おーす! そろそろ直ったかー?」 「毎度毎度、戸を蹴破らんばかりの勢いで入ってくんな」 「うげ、臭うぜこの部屋」 「帰れ」 誰のせいだ。 元凶こと霧雨魔理沙は興味深そうに部屋の中のパーツを見て回るが、その腕にまた何か抱えられているのが見えてうんざりする。 「まだ部品が何か残ってたのか?」 「ん? コレの事なら不正解だが、気になるか?」 「ならない。見たくもない」 設計図をボロ紙云々と言って確認も取らずにはたき落とし、テーブルの上に持っていた風呂敷を乗せる。 「後で後悔するなよ……どうだ見ろ! この私が手塩にかけて作り上げた弁当様の登場だ!」 楽しそうに何を言うかと思えばこいつは、人の気も知らずに。 「持って返ってくれるか。こんな手で食べ物になんか触りたくない」 「あー? 我が侭な奴だな」 「オイルの臭いで胸焼けして食欲が出ないんだ。悪い」 先端のゴム部分を切り落として剥き出しの銅線部を捩って纏める。 長年使っていたというだけあって随所の劣化がひどく、こういう部分を一つずつ直していくのは根気のいる作業だった。 「うげ、本当に汚い手だな。ちゃんと洗えよ」 魔理沙が背中から作業を覗き込んでくる。 軍手なんてのは不器用な俺が使っても、ただ能率を下げるだけの厄介者でしかない。 「明日の昼までには頼むぜ。ブン屋が催促に来てしまうしな」 今の誰かさんと同じだ。 「分かってる。気が散るから後ろに立つな」 「そういうわけにはいかないぜ。私には作業を確認する義務というものがある」 絶えず顔に貼り付けているにやにや笑いが、この時は妙に癪に障った。 「振った男をからかってそんなに楽しいか」 「魔理沙さんが素敵なのは今に始まった事じゃないんだが、まだそんな事気にしてたのか?」 何も言葉は返せなかった。 この幻想郷という世界に迷い込んできた時、初めに遭遇したのがこいつだった。 口では悪態をつきながらも面倒見のよい少女に、右も左も分からなかった当時の俺がどれだけ助けられたかは分からないし、今でも感謝してる。 だから告白に踏み切った時は、振られても文句を言うつもりなんてなかった。 『悪いな、私は自分で好きになった相手を捕まえる予定なんだ。他人様にどう言われたところで気持ちは動かないぜ』 じゃあ仕方ない、なんて簡単に諦められれば誰も苦労しない。 それ以降、彼女に近づくのはよそうと思い家を尋ねることもせず、たまの宴会などにも顔を出すのをやめた。 だが対する魔理沙はというと、前にも増して俺を訪ねてくるようになった。 生殺しなどと言えば大袈裟だし、子供すぎると笑われるかもしれないが、それだけ苦痛にしか感じられない日々が続いていた。 「つ、っ!?」 余計な事を考えてたせいだろう、接合用の熱されたはんだの欠片が手に落ちた。 「どうした! 大丈夫か?」 「何でもない! 座ってろ!」 自分の予想以上に大きな声が出て、魔理沙の表情が無機質なものに変わっていく。 「悪い」 「少しは休めよ」 箒を掴み、魔理沙は部屋を出ていった。 頭から抜けていた手の痛みで我に返り、桶の水に突っ込んで冷やす。 波間に浮かんだ自分の顔は汚れと疲れで酷い有様だった。 洗ってみても、汚れはなかなか落ちてくれない。 部屋に散らばってる機械も、テーブルの上で寂しげに佇む二人分の弁当箱も、まるで全てが俺を責めているように感じられた。 「ああ、どうせ俺が何もかも悪いんだよ!」 嫌われれば楽になるはずなのに、どうして余計に苦しむ必要があるんだよ。 綺麗になった手が元通りになるのに、三十分もいらなかった。 --------------------------------------------------- 再び元の形に組み上がった印刷機が見違えてしまう程の出来に映るのは贔屓目なんだろうか。 「あとは電源が入れば完璧、終了だ」 コンセントにあたる部分をよくわからない箱に繋ぐ。 曰く、電気の存在しない幻想郷での代替品。 奇妙な事柄など外にいくらでも転がってる世界なので詳しい話は聞かなかったがともあれ、緊張しつつスイッチを押す。 カチリ。 カチリ。カチリ。カチカチ。 最悪な日は何をやっても最悪に終わる。 「いや、組み立てに失敗しただけって可能性もある」 自分を励ましながら、物音一つ立てやしなかった機械を再びバラバラにして、目を擦りつつ自作の設計図と睨めっこ。 ……何か見落とした部分はないだろうか。 ……設計図自体の間違いは考えたくない。 ……あれ、なんか俺の名前が書いて……? 物音。 「だだだだいじょうぶですねてません!」 「何やってんだお前」 声の方を見れば、ドアノブに手をかけたままの魔理沙が呆れ顔。 「いや、びっくりした。そろそろ仮眠でも取るべきかね」 思わず苦笑すると、対する魔理沙はどこかいつもより暖かい雰囲気の笑みを見せた。 「やっと少し、笑ったな」 その言葉で意識が鮮明となる。 本格的に疲れが出たのか、以前の感覚で反応してしまったらしい。 「帰ったんじゃなかったのか」 「うんにゃ、夜の散歩に行ってきただけだぜ」 愛用の帽子をテーブルに置き、ソファーをずりずり動かしてこちらを向けてから、魔理沙は足を曲げてそこへ横になる。 「帰って寝ようにもサボられちゃたまらないからな」 「勝手にしてくれ」 言っても無駄なので、構わずに落ちていた殴り書きだらけの設計図を拾う。 部品を間違えてないか、余る部品はないかと何度も上書きを繰り返す作業は予想以上に神経を使った。 思い返せば明確に故障と見受けられる箇所などあっただろうか、 専門家でもない俺には対処不能な原因が隠れているのかもしれない。 ……直せないとやはり、困るんだろうな。 「すぴー」 あんのクソガキ寝てやがる。 となると困った、日付もとっくに変わってる事だし今から帰れとは言えない。 となるとソファーではなく奥の部屋のベッドを使わせるしかないのだが、となると二部屋しかない家に俺の寝床は残されてない。 「……俺はジョバンニじゃねえっつの」 完徹決定。 「魔理沙。寝るんなら向こう行け」 「ぐおー」 「おい」 「すぴー」 起きる気配なし。 膝を抱えるようにして丸まって眠る姿はネコのようだ。 こうして見れば華奢な体格といい、ふわりとした髪といい、なかなか見られないぐらいに可愛らしい女の子。 性格はともかくこんな顔してるのが相手じゃフラれて当然だわな。 俗に言われるあばたもえくぼではない、と思う。 ……寝てるなら、ちょっとぐらいいいか。手が汚れて使えないわけだし。 ひょい。 ぱさ、ずるり。 「あーもうミスった、って」 足で放ってやった俺の大事な一張羅はソファーの背もたれに引っかかってしまったが、魔理沙の腕が自分の体に包み直す。 「ちょっと喫驚したぜ」 「ウソ寝かこいつ」 「不逞な輩に嫁入り前の体を狙わては大変だしな。しかし器用な事するぜ、お前」 「やかましい。向こうに行って寝ろ」 「まあ聞け。一つ質問をしたい」 「何だよ」 さっさと移動してもらいたかったので適当に話を促す。 「今でも私の事を好きだと思ってるか」 質問の内容を聞くと自分の顔の筋肉が強張るのを感じた。 「性格の悪い奴。今でも好きではある。だから、どうした」 「いやぁ照れるぜ」 「………」 「冗談だ、そう変質者じみた顔をするな」 こいつの冗談は空気を読まないから非常に腹が立つ。 「お前は一度フラれたぐらいで諦めるのか?」 「……回りくどい。要点だけ言ったらどうだ」 「ふん、じゃあリクエストにお答えしてやるぜ」 魔理沙は寝転がったまま体を動かすと、 「目の前でいい女が寝てる。お前の惚れてる女だ。これはチャンスだと思わないか?」 上目遣いに俺を見上げ、いつもとは違う種類の笑みを作った。 今の自分は明らかに冷静でいられてない。 「自分が何言ってるのか分かってるか」 「今は私よりお前だ。押してダメならさらに押せ、中には開くドアだってあるかもしれないぜ?」 言葉はいつもと変わりない。 だというのに、今の魔理沙からははっきりと“女”を感じている。 心臓の音が、部屋中に響いてるんじゃないかというぐらい、うるさい。 挑発するような視線とと口調のまま、魔理沙はブラウスの一番上のボタンを、外した。 「馬鹿。自分がどういう状況にいるのかまだ理解できてないのかよ、甲斐性なし」 魔理沙が好きだという気持ちは嘘じゃない、本気だ。 それなら何を迷う必要があるんだ? 考えるまでもない事じゃないか。 「齢を考えてからモノ言えエロガキ。窓から放り投げるぞ」 そういう気持ちも否定しないが、流されて体を重ねるのとはきっと違う。 「なんだ腰抜け。女の扱い方が分からないならここでお勉強していけよ」 「本当に女らしくない奴だな。オイル臭い部屋の中、こんな手で撫で回されるのが趣味なのか? ムードって言葉の意味辞書で調べてこい。 ああ、それと」 「あ?」 「言葉をそのままお返ししとく。『他人様にどう言われたところで気持ちは動かないぜ』」 ベッドで寝て来い、と最後に言い残し、俺は機械のパーツが並べられた床に戻るべく、ソファーに背中を向けた。 ヤバい、顔が熱持ってる。 とか思ってたらボルトを踏んづけた。 「いだっ! 痛ぇじゃねえかこの野郎!」 とても痛かったが、そんな事よりとんでもなくなにか、さっき恥ずかしい行動を取った気がしてならない、うひぃ。 「まだ続けるのか?」 「終わらせたら寝る」 「私から言い出した事だが、別に一昼夜やり続けてもらわなくても結構だぜ?」 「そんなの俺の勝手だ」 「今さらかもしれないが、無理なら無理で文句も言わない」 「やかましい、寝てれ」 うあ、なんか偉そうな上に語尾が変になった死にてぇ。 「仕方ない、そろそろ私も手伝おうか」 「んぁ?」 変な声が出た、というかどうして今ごろ。 「度々失礼な奴だな。私は手先だって器用だし、道具の扱いなら一流だぜ」 「でも電気回路なんて分からないだろ」 「一から十まで全て分からない事尽くしの筈がないだろ。例えば足元に転がってるこれなんかは銅の」 ブツン。 なにか今、絶対に聞きたくなかった音が 「……じ、事故だぜ。私はその場に運悪く居合わせてしまっただけだ」 「あぁ?」 っていうかちょっと待て、そんな馬鹿な話があるか。 「す、すまん。でもまずい事もなにも、まだ私は何もしてないんだぜ?」 「魔理沙、お前アレか。そのワイヤーじみた代物を素手で引きちぎったつもりなのか」 「んあ?」 よくよく考えれてみれば、人の小指ほどもある銅線が人間の小娘ごときに引きちぎれてはたまらない。 元々限界一歩手前だったんだろう。 「ちょっと見せてくれ」 これがどこの部品なのかと、調べてみればなんと主電源との直結部。 そりゃ電源も入らんわな……。 「ウフフフフフフ、もっと早く気付いてたらなぁ」 「げ、不気味な笑い方するな」 何かが壊れる理由なんて些細なものなのかもしれないが、気が付かない俺は馬鹿。 もういろんな意味でギリギリらしかった。 --------------------------------------------------- 修理はあの後、すぐに中断した。 朝にでも新しい銅線を買ってきて繋げば恐らく解決する。 冷え切った弁当を摘みながらの問答の末、ソファーで寝ると言って聞かない魔理沙を放置してベッドで毛布に包まっていた。 疲れがたまっているはずなのに、寝つけない。 「何やってんだろうな」 今日一日でぼろぼろに擦り切れてしまった、臭いの取れない手。 どうしてガラクタなんかに必死こいてるんだか、自分でもよく判らない。 「何、期待してんだろうな。頭悪い」 「お邪魔するぜ」 扉が突然開き、入ってきたのは手足の生やした謎の布団妖怪。 「いや、いろいろと言いたい事はあるが、何しに来た」 「言われた通り、あそこは狭くて眠りづらかった。筋をおかしくするぜ」 「だから言ったろ。すぐ退くからここ使えぶしっ」 話の途中だったというのに抱えた布団で殴打された。綿が寄るからやめてほしい。 「しかし幸運なのはこのベッドが広かった事だ。二人寝るスペースは充分にあるな」 「あるにはある。でも問題もあぶしっ」 「就寝前に説教はノーサンキューだぜ。そもそも私みたいなガキにゃ手を出さないんだろ?」 「卑怯な言い方だ。というかどうしてそうすんなり入ってこれる」 「意識してないからだな。おお、てことはお前は私を意識してることになるか」 「自惚れるのも大概にしとけ」 「そんな離れた位置で何言ってんだ。布団も充分届いてないじゃないか。ほれ、取って喰いやしないからこっち来いよ」 俺は確かに腰抜けでした。 隣から聞こえる静かな呼吸。 喉の奥にコルク栓でも詰まってるんじゃないかってぐらい呼吸がしにくい。 駄目だ、どうにか気を紛らわさないと。 「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄、舎利子、色不異空空不異色色即是空空即是色」 「いきなり般若心経を読むな。三蔵法師かお前は」 こうでもしないと落ち着かないんだよ。 「まったく、いやぁしかし参るぜ。お前、本当に私の事好きなんだな」 「ああ?」 「どうとも思ってないのにそこまで緊張する奴はいないぜ」 「どうでもいいだろ、悪かったな」 「悪くはないさ。お前は見境なしって感じじゃないから、私としても悪い気はしない」 ちょっとくすぐったいけどな、と首を竦めてみせる魔理沙。 そして、それに自分が見惚れているのに気付く。 やはり向こうの部屋で寝たほうが、 「逃げるなよ」 上の布団をどかそうとした右腕をそのまま掴まれた。 「厠だ」 「嘘だな……もしかして、さっきのもビビって格好つけてただけか?」 「あそこでハイ僕嬉しいですと飛びつくような奴は最悪だ」 「まあな、こっちだってそんな奴なら願い下げだったぜ。さっきもほれ、この通り」 魔理沙がブラウスのボタンを上から二つほど外し、中に手を入れる。 そうして顔を出したのが必殺のミニ八卦炉。 「重ね重ね、俺をからかうのがそこまで楽しいか」 自分が遊ばれていた事を知らされ、苛つく。 「楽しいねえ。だってそうだろ? 自分の好かれてる相手なら多少の悪ふざけも許してくれるし、見返りも無しに無茶な事を頼んでも案外、手を貸してくれたりする」 「うるさい」 人の気も考えずに。 「感謝もしてる」 どうでもいいから寝てろよ。 「初めから嫌ってたわけじゃないが。今日だけでも結構、見直してるんだぜ」 「やめろ」 そんな事を聞かされたって、俺はどうすりゃいいんだよ。 戻った静寂。 部屋を支配する重い闇。 そして、握られたままの腕。 「なあ」 「何だ」 「もう一回、告白してみる気はないか?」 「答えが分かりきってるのにか」 「仕方ないぜ」 「バンザイしろってか。随分簡単にステキな事を言ってくれるな」 「一回も二回も変わらない気はするんだが、やっぱり嫌なもんか」 嫌も嫌だし、何より救いがなさすぎる。 つくづく自分は頭が悪いと思った。 「うまくは言えないけど、な」 ここまで結果が見えていて、それでも分の悪すぎる賭けに踏み切ってしてしまうんだから。 「お前が笑ってるのを見ると嬉しくて、それだけで幸せに感じられたんだ」 ありえる筈のない“もしも”。 そんな物に期待してしまうんだから、女々しいというのか執念深いというのか、ね。 「俺も一緒に笑い合っていたい。魔理沙、もしよければ付き合って欲しい」 二度目の告白。 この息の詰まる静寂も、前と何ら変わりがない。 「前より長かったな」 魔理沙はいつもの通り。 やはり前と同じ笑みを浮かべていた。 「すまん」 二度目の玉砕。 一人の女に二度フラれる男ってのは現実問題、なかなかいないと思う。 「キツいな」 「笑っていられるのは余裕がある証拠だぜ?」 なら、良かった。 こんな取り繕ったような見栄でも、役に立ってくれてるらしい。 「私も、お前を好きになれてれば良かったな」 やめろよ、聞きたくない。 顔を合わせていられなくなるだろ。 「両想いならきっと幸せになれただろうな。そんな気がする」 寝返りをうつ。 もう、駄目だった。 「馬鹿、言うな。余計な事を言うな。何で黙っててくれない?」 「え」 「きっぱり終わらせてくれなきゃ辛すぎる。これからどんな顔をお前に見せたらいいんだよ」 「お前はいい奴だぜ、本当にそう思ってる」 「嫌な奴じゃなきゃ直しようがないじゃないか。いくら足掻いても、もう好きになってもらえないって事じゃないのか。 俺みたいなの虐めて楽しいかよ。女と違うんだ、男が泣くのは見苦しいだけじゃないか。残酷な事ばかり言いやがって」 「違うぜ、違うんだ。私は」 「やめてくれ、もう」 信じられないくらいに震えた声での、最低の日の、最低な締めくくり。 「自分がみじめすぎて立ち直れなくなりそうなんだ。魔理沙、頼むよ、お願いだから」 震える体を掻き抱き、目をぎゅっと閉じ、口から漏れそうになる邪魔な声を噛み殺して、恥も外聞もなく俺は赦しを求めた。 「前の事なんか忘れろって、悪いのは私なんだぜって事を伝えたかった。ずっと苦しそうな顔してたからさ」 耳元で声が聞こえる理由も考えられない。 背中や体に回されたものから感じるほのかなぬくもりが心地よく、何よりも辛かった。 「お前みたいなのに惚れられるんだから、私はやっぱりいい女なんだろうな」 本当に、話を聞かない奴。 「お前よりいい奴を見つけられなかったら、指差して笑ってくれ」 これ以上みっともないところ見せたくなかったってのに、俺は、声を出して泣いた。 「おう。おはよう……寝惚けてんのか? 幻想郷の人間は朝の挨拶も満足にできないらしい」 朝。奥の部屋から似合わない及び腰で魔理沙が顔を見せた。 「……大丈夫なのか?」 ひどい顔なんだろう。 昨夜の出来事の上に結局一睡もできなかった事もあって、二つの意味で尋ねられているように聞こえる。 俺は努めて明るく、一度目の告白以前の調子で声を返した。 「正直ブッ倒れてもおかしくなさそうだが平気だ。昔は二徹、三徹とやってたからなあ。 むしろ家族でもない男に平気でよだれ跡つきの顔を晒すお前の将来のほうが不安……あ? お前まさか人様の布団によだれ落としたわけじゃなかろうな。不潔な奴め、ほら。拭け」 「ぷ、わ!? 冷たっ!」 「牛乳拭いた濡れ雑巾よかマシだろ。肌にゃいいらしいけどな」 流石の魔理沙も、今回ばかりは俺の言わんとしてる事を汲み取ってくれたのだろう。 顔拭きでごしごしやり、上げた顔に浮かぶ表情はいつもの快活なそれだった。 「顔に関しては今のお前に言われたかないぜ」 「そんなにヤバいか?」 「すっぴんのスキマ妖怪とならいい勝負だ」 「喩えはよく分からんが良しとしよう。朝飯はとっくに出来てるし、 食べたらちょっと香霖堂まで買い物に行って来てくれな。アレ仕上げるから」 --------------------------------------------------- 昼頃の霧雨邸前にて。 「うわぁーっ!? ででででたぁーーーっ!!」 何がだ。ていうか写真はやめれ。撮るな。 「遅かったじゃないか。こっちはとうに支度を済ませてたんだが」 「妖怪に助力を仰ぎ約束を力づくで反古にしようだなんて見損ないました! でもペンは剣より強し! 私には文々。新聞があります!」 「誰が妖怪なのかね鳥頭。人を見た目だけで判断するんじゃない」 「ああなんだ、外の。貴方がどうしてここに?」 「俺も修理に協力したからな。最終確認を終えた矢先だし」 返事が返ってくるまでにかなり間があったが、面倒なので触れずに台車を前に押し出す。 「え。じゃあ、まさか直ったんですか?」 問題なく動くようになった印刷機を見せる瞬間はちょっと鼻が高かった、相手が天狗だけに。 「直せって言い出したのはお前じゃないか」 「は、はい。その通りですが、瓢箪から駒が出てしまいました」 「私の辞書に不可能の文字はないぜ。今回のハナ差も、すぐに熨斗つけてお返ししてみせるさ」 「いいでしょう。次の勝負の折には他の機械も点検してもらいましょうか」 「ふん、小鬼に笑われるなよ?」 魔理沙とのやり取りを終えた鴉天狗、射命丸文がこっちを向く。 「しかしその顔は何事ですか。今夜がヤマだ、という感じですけど」 「ああ、ちょっとアレだ。フラれて寝てない」 いそいそと手帖を取り出す射命丸。嬉しそうな顔しやがって憎たらしい。 「そうでしたか、失恋とはお気の毒に。お相手はどこにお住まいの?」 「聞き回ってみればすぐに分かる。この程度も調べられずに何が新聞記者か、ってな」 「それもそうですね、では早速。これにて失礼します」 一礼の後、あっという間に射命丸は印刷機もろとも消え去ってしまったのが何故か名残惜しかった。まあとにかく勘の悪い奴。 「余計な事、言わないほうがよかったんじゃないのか」 会話を黙って聞いていた魔理沙が口を開く。 「知ってる。でも一番知られたくない相手の前であれだけ醜態晒せばどうでもよくなる。お相手不明の失恋話でも、話の種くらいにゃなるだろ」 「馬鹿だなお前」 「知ってる」 鼻で笑い、軽く背中を叩いてやる。 「お前がそんな顔してどうすんだよ。笑え笑え、いい女」 「馬鹿な、私の顔はいつだって他人を幸せにする笑顔に満ち満ちてるぜ」 「よだれつきだけどな」 「そこで知ってる、だろ? まったく気の利かない奴だ」 っと、眩暈がした。 そろそろ冗談抜きで倒れるかもしれん。 「んじゃ帰るわ。ありがとな性悪女」 「それはこっちの台詞だぜ化け物面。これからも茶菓子の用意を忘れるなよ」 「知ってる。そっちこそ、次は負けんなよ」 「知ってるぜ」 間抜けな男の失恋話、これにて閉幕。 ・私はネジの頭をバカにする天才です。機械まるでダメ。その辺の間違いや疑問についてはご容赦お願いします。 ─────────────────────────────────────────────────────────── 6スレ目 409 ガタガタと、周りの物を動かすたびに音が響く。 数多の道具に囲まれて生活していた自分は、ずっとこのままの家で暮らすと思っていた。 が、そんな今までの思いとは裏腹に、自分を囲っていた道具達は今「整理」という作業を遂行されていた。 理由?そんなの知らない。 だって気づいたらやらなくちゃ、と言い聞かせていたから。 片付けて綺麗にして、それで何なのか。 別段今まででも道具の場所は解るし、不便と感じたことはない。 むしろ片付けることによって場所が解らなくなる可能性だってある。 それなのに何故こんなことをしているのか。 決まっている、自分を良く評価してほしいから。 最後に大き目の水晶を退かして、どこぞの巫女が見たら呆れるほど不釣合いなお洒落なテーブルを置いた。 香森に頼んであしらって貰った物は自分も気に入っていた、似合う似合わないは放っておいて。 そこに色々と紅いトコロから”善意で”頂いてきた立派な紅茶の葉が入ってるティーポットを、そしてコースターとカップを置く。 ―――そこに並べられたカップの数は、二つ。 チラリ、と時計を見る。 時間まであと6分。 ソワソワ、と時計とテーブルに視線を行き来させて。 時間まであと2分。 ドクドク、と早くなった動悸を深呼吸で整えて。 時間まであと――― 「魔理沙ー、約束どおり遊びに来たぞー!」 一気に赤くなった頬を隠しながら、「いいぜ」と私は言った。 さぁ、私の「恋心」を受け止めてくれるか―――? ──────────────────────────────────────────────── 6スレ目 447 「○○、なんかしようぜ!」 彼女は俺の家に来るなりそう言った。 「メンドイからヤダ」 俺は瞬間そう答える。 「なぁ、そう言わずになんかしようぜ。私は暇で暇でしょうがないんだ」 しかし彼女は引き下がらない 「たく、仕方がないな。……なら、アレをするか」 仕方なく俺は、思いついた遊びをする事にした。 「なら、Draw Fourだ。そして色は赤」 彼女がそういったので、俺はカードを8枚引いた。 その時に、彼女は怪しく嗤いながら言った。 「ふ、ふ不不腐腐。 さっきから負け続きだが……今回はさすがに私の勝ちだな」 彼女は勝てると思ったのかそう言ったが、俺は強気に言い返す。 「さて? それはどうかな?」 俺は自分が引いたカードを確認する。 手持ちのカードは12枚。 内容は 記号は Draw Two 赤青緑の 4枚 と Wild Draw Four 2枚 Skipが赤と緑で2枚 そして青と黄の 1 が4枚 。 数は多いが内容はあほみたいに良い。 対して彼女のカードは6枚か…… すでに使ったカードの中で確か Draw Two は1枚 Wild Draw Four は1枚。 「これなら……いけるな」 俺はニヤリと笑いながら、彼女に聞こえない位の声で言った。 「今回はこれだ!」 彼女はそういい赤の6を出した。 そして俺の番だ。 さて、仕掛けますかね。 「まずはSkip3枚だ」 「ふん。1回位のSkipで私の優勢は変わりはしないさ」 彼女は俺がカードを出すとそう言う。 なので、さらに攻める事にする。 「なら、これならどうだ?」 俺はDraw Twoを1枚出した。 「お返しだぜ!」 すると彼女はDraw Two1枚出す。 「ふふ、ならこれで」 次に俺はWild Draw Four を1枚出す。 「○○、そろそろ勝負をつけようぜ」 そう言って彼女はDraw Twoを2枚出した。 「では、これで終わりだ!」 そう言い俺はDraw Twoを2枚出す。 「クックック。それはこっちの台詞だぜ! これで私の勝ちだ!!」 彼女は最後にWild Draw Fourを出した。 彼女は自信満々な顔で自分の勝利を宣言した。 この顔は彼女らしくて好きだ。もう少し見ていたいと思う。 しかし俺は言ってやった。 「実は……もう1枚あったりする」 「……え!?」 瞬間空気が凍りついた。 「は、はは○○。嘘はいけないぞ」 彼女はそう言う。 気持ちが解らなくは無いが…… そう思いながらも俺は最後の一枚を出す。 「ほれ、Draw Four 色は青」 最後のカード――Wild Draw Four――を俺は出した。 「は、はは……まだ終わって無いぞ……」 彼女は弱々しくそう言った。 Draw Four 7枚 Wild Draw Four 3枚で、計26枚のカードを引かなければいけないので、当然と言えば当然である。 そんな彼女の言葉に俺は、無情にもこう告げた。 「いや、もう引かなくても良いぞ」 「え、どう言うことだ?」 俺がそう言うと彼女は案の定そう聞き返してきた。 「ほれ」 俺はそう言い手札――青と黄の1――を4枚出した。 「あ!?」 「今回は勝てると思ったのに……」 彼女は不機嫌そうに言う。 「まぁ、俺も負けたらやばいんで」 そんな彼女に俺はそう言う。 すると彼女は小さく言った。 「だって……せっかく勝てると思ったのに…」 「え?」 正直驚いた。彼女が今にも泣きそうな声で言ったからだ。 だって、彼女はいつも元気で喧しいくらいだから。そんな彼女が今にも泣きそうなら誰だって驚くだろう。 俺は焦りながらも言った。 「なら、もう一回やろう」 すると彼女はこう言った。 「もう良いよ……。それに○○は、嫌々私に付き合ってくれてるんだろう?」 「違う。そんな事無いって」 俺は慌てて否定するが、さらに彼女は言う。 「違わない! 私が来たときだって嫌そうだっただろ!!」 どうやら彼女は勘違いしているようだ。アレは所謂照れ隠しなのに。 「○○はいつもそうだ。私の事を全然見てくれない」 「へ?」 なんだか雲行きが怪しくなってきた。 「私がこんなにも想っているのに、私の事を少しも見てくれない」 「なっ!?」 今日一番驚いた。今のは告白と取れるからだ。 しかしそんなことに気付かずに彼女はさらに続ける。 「お前は、私が居るのに、霊夢や紫ばかり見ていて私の気持ちに気付かない!」 彼女にここまで言わせては、俺もその気持ちに答えなければいけないだろう。 その前に彼女を止めないといけないな。 「それからおまえはっ!!?」 そして俺は、言葉を発し続ける彼女をしっかり抱きしめて言った。 「魔理沙、少し落ち着いて。それとこれが俺の気持ちだ」 「あ……うん……」 ────────────────────────────────────────────────
https://w.atwiki.jp/karanemi/pages/844.html
作品名: 使用者:霧雨 魔理沙 別呼称:魔法を操る程度の能力、主に魔法を使う程度の能力 東方Projectに登場する能力。 破壊特化の光と熱を発する魔法を使う。 能力についての詳細光と熱の魔法 燃料 使用者との関連性小道具の変容 関連項目 関連タグ リンク 能力についての詳細 光と熱の魔法 光と熱を発する魔法正確には「破壊特化の光と熱を発する魔法薬を扱う技能」である。 魔法を使う事が出来る。彼女は主に 光と熱を持つ魔法を得意とする。「派手で なければ魔法じゃない。弾幕は火力 だぜ」が口癖。 弱点が少なく威力が高い人間の中では最高の破壊力を有する。 人間にも妖怪にも有効な魔法。 魔法の何でも屋と言うが、実際の所 何でも出来るほど多彩な魔法が使える 訳ではない。 彼女の魔法は、物を破壊する程度に しか効果は無く、依頼出来る仕事も妖 怪退治が関の山だ。ただ、弱点の少な い魔法で、どんな妖怪にも人間にも同 等に効果があるので、純粋に破壊力だ け求めた場合は彼女の右に出る者はい ない※。 人間の中では。 燃料 魔法の森の化け茸化け茸を加工してスープに変えた後に固形にしたそれらに反応させて魔法を発現させる。 そんな彼女が使う魔法は見た目が派 手だが、それを使うまでは地味である。 まず、魔法の燃料は化け物茸であり、 これは地道に生えているのを探して摘 み取るしかない。 さらに、茸は独自の調理法で何日も 煮詰めてスープになる。 そのスープを数種類使ってブレンド し、数日掛けて乾燥させ固形物にする。 それでようやく魔法の実験開始であ る。後はその固形物を投げつけたり加 熱したり山の水で戻したり色々実験す る。そうするとごく稀に魔法らしい魔 法が発動する事があるのである。 使用者との関連性 小道具の変容 使っている道具に変容をきたす作中ではただの竹箒が空飛ぶ魔法の箒に変容した。 魔法の箒は、彼女が勝手に魔法使い に必須だと思って使っている乗り物で ある。 元は只の竹箒だったが、振り回しつ つ魔法を使っている内に影響を受け、 奇妙な成長を始めた箒である。 既に死んでいる筈なのに、柄の部分 から葉が生えてきたりするらしい。 関連項目 ミニ八卦炉 使用者の使うマジックアイテム。 関連タグ 能力 東方Project 術技 魔道 リンク
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/1564.html
共通ルート3 トンカントンカン、金槌の音。 小気味の良い響きが耳を打ち、俺は腕組みしながら、それに合わせて指でトントン腕を叩いてみた。 トンカントンカン。トントントン。 「おーい、釘持ってきてくれー」 「おー」 大工の親父さんの呼ぶ声に応え、魔理沙が釘の箱を持っていった。ガチャガチャという音が金槌のトンカンに紛れて聞こえる。 魔理沙はこういうことに慣れているのか、非常に楽しそうだ。 「そこの君。これはこれぐらいに削ればいいのか?」 「あ、そうですねえ。もう少しかけた方がいいですね」 他方で木材にカンナをかけているのは慧音さん。 チョークだけではなく刃物の扱いにも長けているのか、その手際は見事なものだ。 大工さんのアドバイス通りに、本職顔負けのなめらかさで木材を削りっていく。その音もまた小気味がよい。シャー、シャー。 「お、お茶、置いとくから」 「おー、ありがとよー」 そして妹紅は、大工さん達にお茶を出している。ぶっきらぼうだが、出してくれるタイミングがいいと好評だ。 はてさて、彼女だけ仕事の種類が少し違うが、それも仕方ない。 妹紅はこういう作業は不得手で、下手に金槌を持つと自分の指を打ちかねないのだから。 そして俺は設計図を持ち、作業の進展具合を確かめている。 目の前には、大きな木が幾重にも重なり合い、組み合っている光景があった。そう、家の建築だ。 どうしてこんなことをやっているのか? そもそも何を作っているのか? 今作っているのは俺の家。 つい先日、ちょっとした火災にあって全焼してしまった家を立て直しているのだ。 妹紅、慧音さん、魔理沙、そして里で依頼して来てもらった大工さん達によって、急ピッチに建設中。 「板とってくれ板ー」 「寸法違うぞー、これー」 大工さんの野太い声が入り混じる中、 「おい魔理沙。ここの釘の数が違うぞ」 「あー、すまん。今からやり直す」 「……やる事ない」 ちょっとばかし場違いな少女達。 妹紅達が手伝っているのは、彼女らが希望したから。 「私たちのせいだからな」と、魔理沙なんて珍しく殊勝な態度を見せ、みんなが大工さん達に混じって働いている。 俺も作業の手伝いをやりたいが……残念ながら俺は肉体労働ができない。 いや、やる気はあるのだが、妹紅達に手伝いを禁止されてしまったのだ。 なにせ、慧音さんの家での居候時代、大工や農業の仕事をやった際、ペンを持てなくなるほどぼろぼろになってしまったこともあるほど、俺の体はひ弱だ。 さらに小説の〆切がもうすぐで、まさかここで怪我をしてもいけないということで、こうやって監督役に従事することになったのだった。 情けない。非常に情けない。男として終わってるよ、俺。 「おーし、今日はこれぐらいにしとこう」 夕方、大工の親父さんの一声で、今日の作業はひとまず終了した。 俺は親父さんの所へ行き、最後の挨拶する。 「どうも、お疲れ様です」 「おー、○○さん。いやいや、手伝ってくれる方々のお蔭で、私らも楽できましたわ」 そう言ってガハハと漢らしく笑う親父さん。ねじり鉢巻に甚平と、職人気質丸出しの格好だ。 慧音さんの里の人らしく、「慧音先生の頼みですので」と格安で家造りを引き受けてくれたとても気の良い人だ。 そのあっけらかんとした雰囲気に俺は自然と笑みを浮かべた。 「どうです? どれぐらいでできそうですか?」 「そうですなー。このままのペースでいけるなら、残り1週間程度ですかね。骨組みはもうできてますし、簡単な作りの家なので」 「了解です。それじゃあ、また明日もよろしくお願いします」 俺は親父さんに頭を下げ、別れの挨拶を済ませた。 残り1週間、と聞いて、思ったよりも早いなと俺は思った。 今日でこの作業は3日目。さすがに木造のあばら家を作り直すぐらいなら、2週間程度でできるということか。 それとも慧音さん達が手伝ってくれているからなのか……と、俺は近くで木材の上に座り込んで集まっている彼女らの方を見た。 「なあなあ、慧音。お前、里の寺子屋は大丈夫なのか?」 「ああ、それなら大丈夫だ。ちゃんと代役は立ててきた」 魔理沙と慧音さんがお茶を飲んで一服している。 慧音さんは寺子屋を休んでまでこっちに来てくれているのか……なんだか申し訳なくなってくる。 「……はぁ」 一方で妹紅は、少し離れた所で俯きがちにため息をついていた。 疲れているのか気落ちしているのか……どうも後者のような気がする。 手伝いを買って出たのに、きちんと作業に参加できないと焦っているのだろう。 その気持ちはよく分かる。俺も本当は手伝いたいのだから。 俺は彼女らが座る方へと向かい、「おーい」と声をかけた。 3人共が一斉に俺の方を向いた。 「今日はこれで解散だってさ。伝えることも特になし。また明日だって」 「そうか。んー、疲れたんだぜー」 「お疲れさん、魔理沙」 そう労をねぎらってやると、魔理沙は少し照れくさそうに頬を掻いた。 「ま、好きで手伝ってるだけだからな」 「そうかい」 俺は腰に手を当ててクスリと笑った。 魔理沙がそうやって照れている様子を見るのは非常に微笑ましい。 さて、と俺は手を叩き、話を切り出す。 「で、これからだけど……まさかとは思うんだけど、またやる気じゃないよな?」 俺が不審げにそう尋ねると、魔理沙だけでなく慧音さんと妹紅も視線をわざとらしく外した。 「ははは、そりゃあ……なあ?」 魔理沙が慧音さんに問いかけると、 「……私はいつも、きちんとお前に時間と場所を与えたいと思っているんだ」 と慧音さんがため息をつき、 「……」 妹紅は暗い表情のまま、動かない。 どうしたものか、と俺は肩を落とす。 「やる」とは何のことか。それはここ2日間の夜に起こった出来事に関係ある。 まず、当たり前だが、今の俺には家がない。建て直し中だ。 なので夜眠る所もないし、食料もない。完全なホームレス。 しかし、まさか妖怪が跳梁跋扈している幻想郷で野宿をするわけにもいかないので、俺はここ2日、慧音さん達の家に泊めさせてもらっているのだ。 もちろんやましいことなんて何もなく、彼女らには食事を少し分けてもらいつつ、寝床兼、〆切の迫ってきた小説を書き進めるための部屋を提供してもらう……はずだった。 本来はそうだった。慧音さん達との話し合いにより、ようやく告白の台詞が決まった恋愛小説を、俺は今すぐにでも書かなくてはならなかった。 彼女らもその事は知っているので、快く場所を提供してくれていたはずなのに…… どうしてこんなことになるのだ、と俺はここ2日間の惨状を思い出すのだった。 ※ ケース1 慧音さんの家に泊まった場合 「お邪魔しまーす」 「ああ、入ってくれ」 建設作業1日目、慧音さんに招かれて入った里の一軒屋。 それは女性1人が住むにしては少し広めな、外の世界で言う2LDKの家ーーここが慧音さんの家だった。 もちろん俺の家なんかよりはずっと立派な作りだ。 里の守護者という役割もある彼女、地震や大雨が来ても崩れないよう、里の人達が一生懸命に建てたのだろう。 そして彼女がそれを思いやり、大事にこの家を使っていることもよく分かる。 なんとも慧音さんの人徳と性格がよく出ている家だった。 「好きな所に座ってくれ。勝手は分かってるだろう? 今茶を出す」 「あ、おかまいなくー」 慧音さんが台所に行くのを見送って、俺は適当に座布団を敷き、ちゃぶ台の前にドサリと座った。 矢庭にぐるりと部屋を見渡し、変わってないなあ、と懐かしい思いに捕らわれる。 俺は幻想郷に来た最初の頃、この家に居候させてもらっていた。 その頃のことを振り返ると、やはり慧音さんには感謝することしかできない。 幻想郷という未知の世界に放り込まれた俺に、この世界のルールを教えてくれた上に、身の振り方まで世話してくれた。 この部屋を見ているとあの頃のことがよく思い出される。慧音さんは厳しくも優しく俺に接してくれて、最早小説なんて書けないと思っていた俺を励ましてくれたものだ。 「珍しいものでもあったか?」 無作法にも部屋をじろじろと見ていた俺に、台所から戻ってきた慧音さんが優しい笑顔で尋ねた。 「いえ、やっぱり変わっていないんだなあ、と思いまして」 「そうだな。せいぜい妹紅や魔理沙の私物が増えたことぐらいか……これを。粗茶だが」 「ありがとうございます。いただきます」 慧音さんの入れてくれたお茶をおいしく頂き、ほっと一息。 作業場の統括という慣れない仕事に、思ったより身体が疲れていたようで、こうやって落ち着いた雰囲気の家にいるとそれが癒されていくのが実感できた。 「○○、それで、お前の部屋なんだが」 「あ、以前と一緒で、この部屋に毛布でも敷いて寝ることにします。小説も書きたいですし」 「そうか? 私は一緒の部屋で寝てもまったく、その……」 「はい?」 「いや、なんでもない」 慧音さんのささやき声が気にはなったが、結局別々の部屋で寝ることに決まった。 俺としてはそちらの都合が良かった。 小説を書くにはロウソクの灯りが必要で、もし一緒の部屋で寝でもすれば、慧音さんの安眠を妨害することになりかねない。 1人ならその心配もなく、全力で夜更かしができる。 「あれ、このクッション、最近買いました?」 「ああ、それは魔理沙が持ってきたものだ。座布団の上で正座するのが辛いからと言って、いつの間にか持ってきてな」 「へー、それならこれも? これは肘掛ですかね」 「それは私だな。試験の採点をする時にそういうものがあればいいと思って。そういえば、寺子屋の××という子が――」 それからしばらく、主に部屋の間取りや最近の寺子屋の事情についての世間話に興じていると、あっという間に時間は過ぎていき、 「む、もう陽が落ちたか……そろそろ晩御飯の支度をしよう。何がいい?」 「慧音さんが作ってくれるものなら、なんでも」 「ふ……そうか。では肉じゃがでも作ろう」 「おー」 慧音さんの肉じゃがは最高においしいので、これは楽しみだ。 割烹着を着た慧音さんがご飯の支度をし始める。 下手に手伝うと彼女の邪魔になりかねないので、俺は常備しているネタ帳に、小説の展開などについてのメモを取っていくことにした。 俺はネタ帳に文字を書き、慧音さんは台所で料理をしている。 鉛筆が紙の上を走る音と、包丁がまな板に当たる音と、沸騰する水の音だけが聞こえる。 俺と慧音さんは会話することこそなかったが、互いに互いの存在を認め合っているのが分かる。 非常にゆったりと落ち着く時間が過ぎていき、これなら仕事もはかどりそうだと思っていたのだが、その時。 悪魔のノックが鳴った。 「おーい、慧音ー、○○ー」 「いるー?」 この声は、と俺と慧音さんは顔を見合わせた。 明らかに、彼女らの声。 慧音さんが割烹着の前かけで手を拭きつつ、少し引きつった顔で玄関の扉を開けると、 「お、やっぱりいたかー」 「おーす」 「魔理沙、妹紅……何をしにきた」 慧音さんが呆れたようにため息をついた。 玄関に立っていたのは、魔理沙と妹紅。 今日の大工仕事が終わった後に別れたはずなのに、何故か慧音さんの家にやってきたのだ。 どうしてまた、と慧音さんが問い詰めると、 「慧音の家にある食料だけじゃあ、足りないと思ってな」 と魔理沙は、食料が入っているらしい風呂敷を取り出し、 「えーと、私は久しぶりに慧音の家に遊びに行きたいなー、って思って……あはは」 妹紅は手土産らしい魚を掲げ、何かを誤魔化しているのがバレバレな笑顔を浮かべていた。 「……はぁ、ちょっと来い、お前達」 じっと強引な来訪者を睨みつけていた慧音さんが、突然強引に彼女らを外に連れ出していった。 姿は見えなくなったが扉は閉められていないので、3人が何か話している声が少しだけ聞こえてくる。 「約束だったはずだ。各自が順番に○○を自分の家に泊める、と」 「ああ、そうだな。けど、私達も一緒に泊まっちゃ駄目だとは言ってないはずだぜ?」 これは慧音さんと魔理沙か。 「妹紅……」 「べ、別にいいだろ、慧音。そんな怒んなくても……たまには私も慧音のご飯食べたいし」 非難めいた声を出す慧音さんに対し、妹紅は可哀想になるほどか細い声で言い訳をしている。 ただ、慧音さんのご飯が食べたい、という部分には俺も同意しておこう。 それほど彼女の肉じゃがはおいしいのだ。売り出してもいいんじゃないかと思うぐらい。 「――しかし、今日は私1人が――しようと――」 「抜け駆けは――私だって――」 「○○は――多分一緒に――」 声が小さくなってしまったので会話の内容が聞こえづらくなってしまった。 しかしどうやら彼女らの間で何らかの決着がつけられたようで、数分後、姿を現した慧音さん達は三者三様の表情を見せ、家に入ってきた。 「○○、そういうわけだ。すまん」 慧音さんは納得がいかないのが半分、申しわけなさそうなのが半分という顔で俺に謝り、 「よーし、○○! 今日は宴会だ!」 魔理沙は心底楽しそうに風呂敷から食材を取り出し始め、 「えーと……その、と、隣座るから!」 妹紅は少々乱暴に座布団を引っつかみ、俺の横に座り込んだ。 ははは、と俺は心の中で力なく笑った。結局いつもの4人で集まることになったわけか、と。 しかしそれはそれで楽しいし、安心できる。気心の知れたメンバーが集えば、自然と場は和やかになっていく。 少々騒がしくなったが、つまらないよりはマシだと、最初は思ったのだが…… 「魔理沙。それはなんだ」 「ん? 酒だけど?」 俺の問いにさも当然のように答える魔理沙。 彼女の手には「水道水」というラベルが貼られた一升瓶がある。 「待て、まさか宴会ってのは、本当の宴会なのか?」 「本当の宴会ってのがどういうのかは知らないけど、宴会は宴会だぜ?」 どんどんと風呂敷から酒瓶を取り出していく魔理沙。いつの間にかその数はちゃぶ台の上を占領するほどになっていった。 「さあ、飲め! 今日はお前の家の完成前祝だ!」 「待て、まだ作業初日だろ、って、妹紅! いきなりそんな満杯に注ぐなって!」 「まあまあ、飲めば楽しくなるって」 もう宴会モードに入っている魔理沙と妹紅。 俺は慧音さんに救いの目を向けたのだが、 「……私も飲もう。今は無性に酔いたい気分だ」 こめかみに血管を浮かせている慧音さんは、ここにいる誰よりも早くコップ一杯を空けてしまった。 俺はここでようやく、最早あの落ち着いた空気は霧散してしまったことに気付いたのだった。 それからどうなったかは言うまい。 仲の良い者同士が酒を囲めばどうなるかなんて、外の世界も幻想郷も変わらない。 俺が小説を書く時間なんて、一瞬たりともありはしなかった。 ※ ケース2 魔理沙の家に泊まった場合 「で、今日もこうなる、と……」 2日目の作業が終わった夕方、俺は魔法の森を歩いていた。 今日は魔理沙の家に泊まることになっていた。 昨日のこともあり、俺はこのお泊りが平穏無事に済むはずがないとすでに予想していたが……ここまで見事に予想が的中するとは思わなかった。 「私は○○だけを連れてくるつもりだったんだぜ?」 魔理沙はそう言うが、風呂敷の中にある酒瓶を見るとそうは思えない。 「魔法の森って危ないし……なっ?」 妹紅、なっ?と呼びかけれても説得力はあまりないぞ。ただ単に宴会を楽しんでいるようにしか見えないんだ。 「この2人がいて私だけ仲間外れにするとは、ひどくはないか?」 そうですね慧音さん。俺はもう諦めているんですよ、あははは…… 魔法の森の中を進む俺達4人。それぞれが食料と酒瓶を持ち、最早宴会をやろうとしているのが見え見えだった。 今日も小説が書けないのか、と俺は落ち込むことしかできなかった。 あの恋愛小説を早く書いてしまいたいのに、いったい何時になったら万年筆を持てるようになるのだろうか…… 森を歩む足取りも重くなるというものだ。 「○○、安心しろ」 「え?」 気落ちする俺に、いつの間にか近づいてきた慧音さんが耳打ちしてくる。 前を歩く魔理沙と妹紅は気付いていない。 慧音さんは里の守護者然とした、堂々とした顔でこうささやいた。 「今日は時間を作ってやる。私が魔理沙達の相手をしているから、お前は他の一室にこもって小説を書けばいい」 「慧音さん……」 「私に任せろ」 そんなキリッとした顔で言われたら、胸がときめいてしまうじゃないですか、慧音さん。 ああ、俺はもうあなたにすべてお任せします、という気分になってきた。 慧音さんはこのためにわざわざ来てくれたのか……里での仕事が忙しいのに、なんという優しさ。 これでなんとかなると、若干浮ついた足で歩き続けていると、 「お、着いたぜ。ここが私の家だ」 魔理沙の指し示したのは、森の雰囲気にはそぐわない、洋風作りの一軒屋だった。 茶色い煙突に、白い壁、傍の畑に生えているよく分からない植物。 魔女の家だと言われればすぐに納得できる外観だった。 「ま、入ってくれ」 魔理沙はそう言ってドアを開けるのだが、しかし俺達3人はドアのむこう側を見て絶句した。 それはカオスだった。カオスすぎる空間だった。 テーブルと椅子があるのは分かった。暖炉と台所があるのもかろうじて分かる。 汚くはない。変な匂いもしない。その辺りの衛生管理は魔法なりできちんとしているのだろう。 しかしその空間には、ゴミなのか魔法道具なのか分からないものがごちゃまぜになり、重なり、混じりあって、わけのわからないものとなって散らばっていたのだ。 つまる所、片付いていない。散らかり放題の、それこそおもちゃ箱がひっくり返ったかのような家になっていた。 「……こりゃひどい」 俺は呆然とした声でそう呟き、頭を抱えた。 こんな家に泊まれるのか? 寝る場所はおろか座る場所すらあるのか? 魔理沙、お前の整理整頓の不得意さは知っていたが、まさかこれほどまでとは…… 「どうした? 入れよ」 しかし当の魔理沙はまるで気にしていない様子で家の中に入っていく。 魔理沙、俺はお前が心配だ。将来男性と恋仲になった時はどうするんだ、と。 俺なら「まあ魔理沙だし」とどこかで納得しているからまだいいが、普通の男性ならこの部屋を見ただけで幻滅することは間違いない。 細かいことを気にしない率直さが魔理沙の魅力とは言え、これはあまりにも…… さて、どうしたものかと俺は悩む。まずは座る場所だけでも確保しなければ。 そう思って部屋の隅の方に場所を確保しようとしたのだが、しかし、突然後ろから物凄いプレッシャーが感じられ、俺は背筋を振るわせた。 「……魔理沙よ」 地の底から響くかのようなその声。 一瞬にして悟った。これは慧音さんのものだと。 俺はすかさず妹紅に合図の声を送った。 「妹紅!」 「ああ、分かってる!」 次に来るであろう衝撃から逃れるべく、俺は妹紅と共に魔理沙の家を出て外へと避難する。 魔理沙には気の毒だが、部屋の中にいる彼女を助けることはできない。カタカタ震えて俺の方を見られても、助けられないものは助けられないのだよ。 数秒後、雷が落ちた。 「片付けんかこの大馬鹿者がぁああ!!」 「ひいいいい!」 その日の夜、俺と妹紅は、慧音さんに強制的に家を片付けさせられている魔理沙を一晩中見物することになった。 家の中すべてを大掃除していたため、座る場所が居間の隅の方しかなく、さらにドタバタ片づける音がうるさい上に妹紅の酒盛りの相手をしていたこともあり、結局小説は書けなかった。 あれ? 慧音さんに任せたら大丈夫だったはずなのに…… ※ ケース3 妹紅の家に…… そして作業開始から3日目の今日、順番的に言って妹紅の家に泊まる、はずだった。 「無理!」 建築作業場にて俺が「今日は妹紅の家で宴会か」と呟くと、妹紅が突然、必死の表情で首を横に振り始めたのだ。 「妹紅?」 「無理だ! 絶対に無理!」 妹紅の拒絶のしように、俺はとても驚いた。 このままの流れだときっと妹紅の家に泊まるのだろうと思っていたのに、これは予想外だ。 慧音さん達も驚いている。 「あー、そっかあ」 しかし俺はすぐに納得した。慧音さんと魔理沙のことがあって感覚がおかしくなっていたのだろう。 そもそも女性の家に気軽に泊まることの方がおかしいのだ。妹紅にもプライベートというものがある。 慧音さん達は俺が泊まることを気にしなかったが、妹紅が気にしてもおかしくはない。逆にそういう貞操観念もきちんと持っていたのかと安心した。 そうかそうかと、今日は別の家に泊まることを妹紅に告げようとしたのだが、 「何故だ、妹紅。約束だったはずだ」 しかし慧音さんが納得していないようだった。 彼女らの間で何の約束があったのかは知らないが、非常に厳しい顔つきで妹紅のことを睨んでいる。 その蛇のような視線に、妹紅は蛙のごとくたじたじになった。 「あ、う……」 「私達のせいで○○は家をなくしたんだ。その償いも含めて、各自の家に泊めると約束したな?」 「あ、ああ……」 「では、理由を聞こう。よもや、○○がホームレスになってもいいと言うまいな?」 怖い、慧音さん怖い。 いったい何をそんなに怒っているのだろうか。たかが俺の寝床がないだけのことなのに……いや、俺にとっては重要な問題だけれども。 このままでは妹紅が気の毒だ。 俺は助け舟を出すことにした。 「慧音さん、構いませんよ。妹紅だってプライバシーを覗かれたくはないでしょうし、今日は里の宿屋にでも、」 「○○は黙っていてくれ」 「はい……」 怖い、慧音さん怖い。 「妹紅、理由を言ってみろ」 「その……」 妹紅がちらりと俺の方を見た。よほど言いにくい事情があるのだろうか、口をもごもごとさせている。 俺達は妹紅が話してくれるのを待った。俺としてはそこまで詰問しなくてもいいとは思うのだが、慧音さんが怖くて迂闊なことは言えなかった。 「――んだ」 妹紅がぽつりと言った。しかし内容はよく聞こえない。 慧音さんが腕を組み、妹紅を叱咤する。 「大きな声で、もう一度!」 「う――わ、私の家は汚いんだ! 狭いし、○○を泊められるような場所じゃない!」 やけくそ気味に発せられたその言葉に、慧音さんを含め、俺達は目を丸くした。 しかし、同時に納得もした。 妹紅は……こう言ってはなんだが、家事全般の能力が皆無に等しい。 炊事洗濯掃除、全てが苦手。通知表はオール1。 米を洗ってくれと頼めば、石鹸を使うほどのレベルだ。 「あー……すまんな、妹紅」 あれほど怒りのオーラを発していた慧音さんも、素直に非を認めて謝っている。 恥ずかしいことを言わせてしまった、と本当に申しわけなさそうだった。 妹紅は憮然とした表情で続ける。 「最初に断ろうと思ってたんだ。けど、なかなか言い出せなくて……掃除すれば少しはマシになるかと思って、この2日頑張ったんだけど……」 「余計にひどくなった、って所か」 魔理沙の余計な一言で、妹紅がさらに落ち込んでしまった。 まあまあ、と慧音さんが慰める。妹紅、元気を出せ。これから学べばきっと――大丈夫だ、多分。 「では、今日の○○が泊まる場所だが……また私の家にするか?」 話題を変えるように慧音さんがそう提案するが、俺としては少々複雑な気分だった。 確かに慧音さんの家はとても綺麗で安全だ。それは間違いない。 しかし、このまま慧音さんの家に行けば、確実に魔理沙達もやってくる。 そしてまた酒盛り、乱痴気騒ぎで朝まで宴会のお決まりルートに入るだろう。 それは避けたい。そろそろ小説が書きたかった。加えて慧音さん達にお世話になりすぎるのも気が引ける。 里の宿屋が一番いいかと思い、俺はそう答えようとしたのだが、 「だったら良い場所があるわよ」 突然の第3者の声に、俺達はその声が聞こえた空に目を向けた。 そこには、紅白そのものの衣装を着た、黒髪の女の子が降り立つ姿があった。 「霊夢さん!」 「久しぶり、○○さん。色々と苦労しているようね」 博麗霊夢。里の近くの山に居を構える、博麗神社の巫女さんだった。 どうして彼女がここに、と俺が疑問に思うと、今までずっと黙り込んでいた魔理沙が「来たか」と動き出した。 「遅いぜ、霊夢」 「そう言われてもねえ。こっちにも色々と準備があるのよ」 会う約束でもしていたのかと思える2人の会話。なんだろうか、彼女は魔理沙と世間話でもしに来たのだろうか。 しかし彼女らの会話は長く続くわけでもなく、霊夢さんはふと俺の方を見て、「まあ、○○さんなら別にいいわ」とよく分からないことを言った。 「何がです?」 尋ねると、霊夢さんはにこやかな笑顔を浮かべた。 「家がないんでしょ? 私の神社に泊まってもいいわよ」 「へ?」 話が急展開すぎて、よく理解できなかった。 どうしていきなり、霊夢さんの神社に泊まるなどという話になるのか? 確かに霊夢さんとは他人というわけでもない。以前の「銭湯騒ぎ」の際に顔見知りになり、それからちょくちょく俺の本を贈ったりもしていた。 だが、いきなり家に泊めてもらえるほどの仲かと言えば、そうでもなし。 なぜ霊夢さんがそんな提案をしてくるのか、まったく理解できない。 「だ、駄目だ!」 今まで落ち込み気味だった妹紅が、急に大声を張り上げて俺と霊夢さんの間に立った。 まるで獰猛な犬のように「ガルルル」と霊夢さんに唸り声を上げている。妹紅、そんなことをしたら失礼だぞ。 「どうどう、落ち着けって妹紅」 魔理沙がなだめるが、妹紅の唸り声は止まらない。 「どうして巫女の家に泊まるんだよ! 慧音の家でいいじゃないか! まさか、魔理沙の差し金か!?」 「まあ聞け。これは○○のためでもあるんだよ」 「○○の……?」 ぷしゅーという音でも立つかのように、妹紅の怒りが収まった。まるで風船だと、俺は思った。 妹紅が落ち着いたのを見計らい、魔理沙が説明をし始める。 「○○は小説が書きたいけど、私や慧音の家じゃ落ち着いてできないんだろ?」 「主にお前が宴会をぶちあげるせいだけどな」 「あははは」 笑っているがな、魔理沙。大半はお前のせいで小説が書けないってことが分かってるのか、本当に。 「でだ。私はご親切にも、○○に静かな場所を提供してやろうと思ったってわけだ」 「それで霊夢さんの家、ってことか……」 「そういうこと」 確かにあの神社なら、四方八方が山に囲まれて静かなものだろう。 社務所の奥にでも部屋をもらえれば、その静けさに集中力が増すに違いない。 非常に魅力的な提案ではあるのだが、しかし…… 「霊夢さんはそれでいいんですか?」 「んー、まあ、静かにしてくれるなら別にいいわよ。食事代ぐらいは払ってもらうけど」 「それぐらいなら構いませんが……」 どうにもしっくり来ない。あまりにも急だし、出来すぎた話のような気がする。 慧音さんと妹紅も納得が言っていないのか、魔理沙のことをジト目で見つめている。 魔理沙は俺たち3人から向けられる疑いの視線にうろたえ始めた。 「な、なんだよ。私は○○のことを思って言ってるんだぜ? なっ、○○。静かな所で小説書きたいよな!」 「そりゃあ……」 「なら善は急げだぜ! 霊夢、後は頼んだ!」 魔理沙は突然俺の腕をひっぱり、霊夢さんに向かってポンと押した。 俺は転びそうになるが、なんとか姿勢を立て直して霊夢さんの横に立つ。紅白の彼女は少し困った顔をしていた。 「いきなりねえ。まあいいわ。○○さん、行きましょう」 「え、あ、うわ!」 霊夢さんは俺の腕を掴むと、おもむろに空中に浮かび始めた。 「○○!」 「おっと、待て待て」 妹紅が追いかけてこようとするが、魔理沙に止められてしまった。 いったいなんなんだ、これは。どういうんだ? そうこうしている内に地面も離れてくる。 「お、おわわ!」 「ほら、○○さん、そんなに暴れないで。落ちるわよ」 突然空を飛ぶことになった俺は、慣れない浮遊感と遠く離れた地面に次第に怖くなり、声が出せなくなってきた。 彼女の言う通り、ここで暴れても何も解決しない。霊夢さんが再び地面に降りるまで、俺は大人しくしている他なかったのだった。 ※ ○○のいなくなった作業場。結局○○は霊夢に連れられて、空の彼方へと消えてしまった。 最初は呆然と夕日の射す空を見つめていた妹紅だったが、ハッと気がつくと、隣で鼻歌を歌っている魔理沙をこれでもかと睨みつけた。 「魔理沙。どういうことか説明してもらおうか」 静かな声ながら、その内にはマグマのような怒りが秘められていた。 ポケットに手を入れ、鋭い視線で魔理沙を突き刺す今の妹紅からは、今にも炎がほとばしってもおかしくない。 不死鳥の翼すらうっすら見えてきて、このままでは建設中の家すら燃やしかねないほどの怒り様だった。 「そうだな、魔理沙。霊夢を呼んだのはお前だろう?」 慧音も妹紅の横に立ち、キッと睨みつける。 微妙に彼女の髪が緑色になってきているのが、オレンジ色の太陽の下でもよく分かった。 「おー、怖い怖い。まあ聞けって。さっきも言ったが、これは○○のためなんだ」 魔理沙はひょうひょうとした態度でそう答え、懐から何やら取り出し始めた。 それはミニ八卦炉……ではなく、それに似た、アクセサリーのように小さな八角形の物体だった。 「なあ、妹紅、慧音。この場所って危険だと思わないか?」 魔理沙がそう尋ねると、妹紅と慧音は顔を見合わせて、「ああ」と同時に答える。 この場所、つまりこの竹林の傍の敷地は、人里から離れた場所で誰かの守護があるわけでもなく、絶対に安全とは言いがたい。 竹林の主である永遠亭や、竹林の案内兼パトロールもしている妹紅の存在もあって、それほど妖怪が寄ってくることはないが、それでも100パーセント安全とは言い切れない。 「だからなんだ? 危険だから巫女の神社に○○を住まわせるとか言うんじゃないだろうな」 妹紅が敵意丸出しに言うと、魔理沙はチッチッと指を振る。 「違う違う。要はな、私達で○○の家を改造してやろうってことだぜ」 例えば、と魔理沙は先ほど取り出した小さな四角い物体を地面に置いた。 「これはただの人間に対しては何も反応しない。けど、妖怪がこれに近づけば……妹紅、これに向かって火の玉を撃ってくれ」 頼まれた妹紅は、訝しげながらも手の平から炎を出し、地面に置かれた物体に向かって妖力の火を放った。 途端に炎が地面に舞い上がり、そのまま物体を焼ききるかと思われたが、しかし突然、その物体から強烈な光が発せられた。 「うわっ!」 「むっ!」 妹紅と慧音が驚く中、その小さな物体からはなんと、魔理沙が撃ったかのようなマスタースパークが、小出力ながらも放たれたのだ。 もし妹紅がその物体の上にいれば、そのマスタースパークに直撃し、ピチューンだっただろう。 光が消えてしまった所で、魔理沙が得意げな顔を浮かべた。 「とまあこんな風に、妖怪や敵意を持った相手に反応するトラップを家とか周辺に設置する。そうすれば家の中は安全になるだろ?」 「魔理沙よ、まさか、そのために○○を霊夢の所にやったのか?」 「ああ。あいつには内緒にしときたいからな」 物騒なもん置くなって怒られるだろうし、と魔理沙はそのミニミニ八卦炉を拾い上げて、ほがらかに笑った。 「ちなみに宴会をやったのは○○をうんざりさせて他の場所に行きたいと思わせるためだぜ。 昨日のあれは予定外だったけど……ま、結果的に上手くいったからよし! これから一週間ぐらいは○○を博麗神社に泊めさせて、私たちは夕方から夜にかけて家を改造するって寸法だ!」 妹紅と慧音は、また魔理沙のろくでもない思いつきか、と頭を抱えた。 人の家に勝手にトラップを仕掛けるだなんて……いったい何を考えているのか。 ここが少々危険な場所だということには同意するが、それにしても考えが突飛すぎる。 「くだらない」 慧音が吐き捨てるようにして言った。 「するならするで○○に相談してからにするべきだ。私たちが勝手に罠を置くなど、言語道断」 なあ、と慧音は妹紅に同意を求める。しかし妹紅がそれに頷くより先に、魔理沙が「妹紅」と口を挟んだ。 妹紅は憮然とした表情で「なに?」と答えると、からかうような表情を浮かべる魔理沙。 「想像してみろよ。ここは竹林のそばだろ?」 「ああ、だから?」 「○○に襲いかかるのは妖怪だけとは限らないんだぜ? 例えば……永琳が『薬の実験台がほしい』とか言って○○を無理やり拉致したりとか」 ありえそうなので笑えない、と妹紅は顔をひきつらせる。 さらに魔理沙は矢継早に続ける。 「他にもいたずら兎が○○を詐欺にかけたり」 「うっ……」 「さらに、あの月のお姫さまが○○に急接近! ○○はなすすべもなくお姫様に篭絡され、永遠亭の地下室に閉じ込められたり、とか」 「なっ!」 魔理沙の戯れ言に対して妹紅がオーバーに反応している中、慧音はやはり冷静な顔でため息をついた。 「やはりくだらない。○○だって直接忠告されれば、防犯意識を高めるだろう。わざわざ内緒にしてまで……」 「だめだ……」 妹紅が急にわなわなと震えだした。 慧音は何事かと驚き、魔理沙はニヤリを口元をゆがめた。 妹紅は握り拳を作り、怒り心頭に言い放つ。 「あいつなら、あいつなら本当にやりかねない! ○○が抵抗できないことをいいことに、やりたい放題、あんなことやこんなことを○○に……ああ! そんな! そんなことまで!」 「お、おい、妹紅」 慧音が落ち着かせようと声をかけるも、妹紅は頬に両手を当てて、世界の終わりが来たかのように顔を歪ませながら、妄想の世界に旅立っていた。 「か、かぐやあ! ○○のそんな所に手を入れるな! 私だってまだ触ったことないのに!」 少々行き過ぎた妄想を繰り広げる妹紅に、魔理沙はそろそろかと声をかける。 「さあ、妹紅、どうする?」 その一言で、ハッと妹紅が現実に戻り、炎をまとった拳を力強く掲げた。 「魔理沙! 私も協力する!」 「おお! おまえならそう言ってくれると思ったぜ!」 がしりと握手をする2人に、慧音はふぅ、とため息をついた。 仕方ない、○○を守ってやりたいという思いには同意できる。危険なのは事実だし…… あとでこっそりと○○にこの事を教えてやればいいだろう、と常識人の慧音さんは考えるのであった。 「けど、○○は大丈夫なのかな……あの巫女に襲われたりとか」 妹紅が心配そうに呟くと、魔理沙が「ははっ!」と盛大に笑った。 「それはない。絶対にない。霊夢はそういうことにはまるで興味がないからな。○○が襲いかかる方がまだ可能性としてありえる」 「ないな」「うん、ない」 おそらく○○は小説を書くことに夢中になって、そういうことを思いつきもしないだろう。 彼はそういう人だ。何かに熱中し始めると他のものが目に入らなくなる。 そもそも○○が霊夢を襲ったとして、あの貧弱な身体で果たして博麗の巫女に勝てるかどうか……チルノが妹紅に挑むようなものである。 「ま、ともかく、さっさと始めようぜ。この夜の間に仕掛けないと」 魔理沙がそう言って、懐からミニミニ八卦炉をいくつも取り出していく。この時のために自作でもしていたのだろうか…… 妹紅と慧音は顔を見合わせ、頷きあう。そして互いに札や神器を取り出していく。 「○○の家改造計画! 始まるんだぜ!」 魔理沙の一声で、その作業は始まるのであった。 ※ 「何してんだ、俺……」 俺は机に肘をつきながら、頭を抱えていた。 ここは博麗神社の社務所。霊夢さんが日々生活を送っている家屋だ。 その一室を借り、俺は原稿用紙に向かって握っていた万年筆を放り投げ、思い悩んでいた。 小説は書けた。これまでの鬱憤を晴らすかのごとく、すべて仕上げてしまった。 博麗神社に連れてこられて「好きに使っていいわよ」と部屋を与えられ、ようやく書けるという喜びのあまり、時間も忘れて書いてしまった。 ご飯も食べず、誰とも話さず。真夜中まで時間はかかったが、いいものができたと自画自賛している。 だがその後、頭の中に浮かんできたのはここが博麗神社であったということ。 ほぼ強制的に連れてこられ、困惑するべきなのに小説に夢中になってしまったということ。 さらに霊夢さんに今回の事情も聞いてなければ、お礼も言っていない……彼女とは神社に連れてこられてから一度も話していなかった。 ほんと、俺って周りのことをよく見ていない。 自分のことが嫌になってきて、俺は頭を抱えるのだった。 「はぁ、もう寝たかな、霊夢さん」 とりあえず俺は部屋から外に出ることにした。 霊夢さんがいつも使っている居間に向かうも、そこには誰もおらず、灯もない。 さすがにこんな夜中だと寝たかな、と俺は思いながら、縁側に向かう障子を開けた。 「あら」 「あ」 いた。霊夢さんだ。 いつもの紅白の巫女服ではなく、白いパジャマのようなも のを着て、縁側でお茶を飲んでいた。 突然現れた俺に驚いた顔を見せる霊夢さんだが、すぐにいつものそっけない態度に変わる。 「小説、書けたの?」 「あ、はい、ありがとうございます、部屋を貸してもらって」 いいのよ、と答える霊夢さんは普段と変わらず、とてもあっさりとしていた。 俺がここにいることに何の感慨も持っていないようだった。 しかし冷たいわけではなく、ただあるがままを受け入れる、無限大の優しさを感じる。 彼女と話していると、とても落ち着く。 「座ったら? お茶でも淹れるわよ」 「あ、どうも……」 手早く俺にお茶を淹れてくれる霊夢さん。 ふと、その膝に誰かが眠っていることに気がついた。 小さな女の子だった。頭に大きな角があり、手にはなぜか枷がはめられている。 この子は…… 俺の視線に気がついた霊夢さんが「ああ」と小さく声をあげて女の子の頭を撫でる。 「こいつはね、萃香っていうのよ。時々この神社に居候してくるの」 「その角は……」 「見ての通り、鬼よ。ああ、○○さんは妖怪とか苦手だったからしら?」 「いえ、そんなことはありませんが……」 鬼娘はとても気持ちよさそうに、巫女さんの膝枕で眠っていた。 ほのかな刺激臭……これは酒の匂いだろうか。 この鬼は酔った勢いで眠ってしまったという所か。さすが幻想郷、こんな簡単に鬼を見かけるとは。 「ここは神社なのに妖怪が集まるっていう噂は本当だったんですね」 「何それ」 「噂ですよ、噂。人里のみんながそう言ってました」 「んー、困るわね。だから参拝客が減ってきてるのかしら」 ははは、と俺は笑い、お茶をいただいた。けっこうおいしい。 霊夢さんも穏やかにお茶を飲んでいる。お礼を言うにはいい機会かな。 「今日はありがとうございました」 「ん?」 「部屋を貸してもらえて、ですよ。本当によかったんですか?」 「別に気にしなくていいわよ。あいつが私に頼みごとするなんて珍しいし、何よりおさい――げふんげふん」 魔理沙……お前もしかして、巫女さんに罰当たりな提案をしていないだろうな。 「俺を泊めれば宿泊代と称してお賽銭ぼったくれるぜ」とか。そりゃあ、食費とお礼のお金ぐらいは渡すつもりだが…… 霊夢さんは誤魔化すかのように「そういえば」とお茶を淹れながら言った。 「あなたの家って燃えちゃったのよね? なんでまた? それにどうして魔理沙達も手伝ってるの?」 「ちょっとした事故がありまして……魔理沙達に原因の一端があるということで、まあ、手伝ってもらってます」 「ふーん……あいつがそんな面倒なことをするなんて、珍しいわね」 「魔理沙はこの神社にもよく来るんですか?」 「ええ。勝手に来て、勝手になんか食べて、勝手に帰るか泊まっていくわ」 食費ぐらい払えっていうのに、と霊夢さんはため息をつく。 その光景が容易に想像できる。魔理沙……お前はどこでも変わらないんだな。 「ははっ、俺の所でも同じような感じですよ」 「あいつはねえ……居心地のいい場所を見つけるとすぐに居座りたがるのよ」 「じゃあ、この神社はとても居心地がいいということですね。それはよくわかります」 静かな神社に、優しい巫女さん。この鬼娘のように穏やかな表情で眠ってしまってもおかしくはない。 霊夢さんはふふっ、と朗らかに笑った。 「○○さんの所も、きっとそうなのよ」 「んー、狭い家ですからねえ。ただ単にご飯をたかりにきてるだけかも」 「……ふーん」 「な、なんですか?」 霊夢さんが急に俺の顔をじろじろと見始めた。 何か変なことを言ってしまったのだろうか。 視線がむずがゆくなってきて、俺は逃げるようにお茶を飲む。おいしい。 「ねえ、○○さん」 「はい?」 「好きな人っているの?」 「なっ! げほっ、ごほ!」 お茶が気管に入った。霊夢さん、あなたはいったい何をいきなり、そんな質問を! 咳を繰り返しながら視線でそう訴えると、霊夢さんは「あら」と意外そうな顔をした。 「その様子だと、好きな人はいないみたいね」 「げほっ、げほっ、そ、そうですね。けど、どうしていきなりそんなことを……」 「気まぐれよ」 「さいですか……」 なんとも自由な巫女さんだ。魔理沙と仲が良いのもよく分かる。 霊夢さんはお茶をまた一口飲み、「けど」と暢気な声で続けた。 「どうしてそんなに動揺するの? 別に普通でしょうに、これぐらい」 「いや……なんというか、そういう話題って恥ずかしくなりませんか?」 「全然」 あっけらかんと言う霊夢さん。本当に恥ずかしくないのだろう。 なんとも自由というか……何ものにも縛られない感じが、特徴的な人だと俺は思った。 俺の物珍しそうな視線に居心地が悪くなったのか、霊夢さんは少し眉をひそめた。 「恥ずかしいっていうのは、人里に降りた私のことをじろじろ見てくる男達の方だと思うわ」 「そういうのとはまた違ってですね……そうですね、こういう話があります」 俺はこほんと息を整え、ある話を頭の中で思い返した。 どう話せばいいかをまとめあげ、小説を書くかのように言葉にしていく。 「だいたいほとんどの男の心の中にはですね、それぞれその人が求める『理想の女性』がいるんです」 「あら、何かの小説の話かしら?」 「まあ、知っている話の一つというか、ただの話の種です」 「へぇ……『理想の女性』ね。どういう人?」 「そうですねえ、例えばある人の『理想の女性』は、男にとって非常に都合の良い、大人しくて、清楚で、なんでも受け入れてくれる、母性の溢れる人」 それを聞くと霊夢さんは呆れた顔をした。 「なによそれ。そんな女がいるとでも思ってるのかしら」 「ですよね、だからこそ男の心の中にしかいない『理想』なんですよ。男の深層意識にはそういう女の人がいるんです。 で、小説って人が作るものでしょう? だからどうしても作者の心の中が作品に反映されてしまう。それゆえに、作者の『理想の女性』が小説の中で出てくることも多いんです」 「ふーん」 気のない返事をする霊夢さん。一方で俺は弁に熱が入ってきてしまったようだった。 「小説家によってはそういう女性を描けるかに実力が……あれ? すみません、話がずれました」 話が変な方向にシフトしそうなのを、俺は頭の中で修正する。 「俺が言いたかったのは『男って結構センチメンタルなんだ』ってことなんですよ、はい。 どんなに男気溢れる人でも、そういう『理想』をどこかで追い求めている。精神がとても繊細で、女性に夢を抱いているんです。 だから女性ほど恋愛話に聡くない。霊夢さんをじろじろ見るのも、あなたに話しかける勇気が持てないだけだと思いますよ」 「気楽に話しかけてくれればいいじゃない」 「それができる人もいるでしょうけど、そういう人は開き直ってるというか…… 本当に好きだったり憧れてたりする人に対しては、視線も合わせられないものです」 「へー、なるほどねえ……」 話の筋がけっこうめちゃくちゃになってしまったが、伝えたいことは伝わったのだろうか。 霊夢さんは少し考え込んでいる。こういう繊細な「恋心」は、彼女には分かりにくいのだろうか、と俺が思った時、 「ねえ」 「はい?」 「○○さんにも『理想の女性』っているのかしら?」 そう尋ねられ、俺は少し戸惑った。そういう質問を返されるとは思わなかった。 『理想の女性』……自分で説明してなんだが、どうにも実感のわかない言葉だった。 「うーん……」 「私、○○さんの小説を何冊か読んでるけど、話の中に出てくる女性って皆、性格もタイプも違うじゃない?」 「まあ、そうですね。同じような人はいないと思います」 「あなたの『理想の女性』とやらはいないってことなの?」 俺は腕を組み、考えて見る。 『理想の女性』……確かに小説の中に出てくる女性達には、そういうものを込めたことはない。 だったら『理想の女性』なんかいないのかというと、それもまた違うような気がする。 「……どうでしょうか」 結局出てきた答えは曖昧なもので、霊夢さんはそれを聞いて落胆したようだった。 「なんだかはぐらかしてない?」 「いえ、本当に分からないんですよ。どうなんでしょう……外の世界にいた時には、そういう人を追い求めていたかもしれませんが……」 「けど、いなかった?」 「恋人がいたことがないので、そうなんでしょうかね」 他人事のように言う俺に対し、何それ、と霊夢さんが笑う。 自分のことが本当に分からなくなってきた。うーん…… 俺が悩んでいると、霊夢さんがとても楽しそうに「じゃあ、そうねえ」と人差し指を立てた。 「外の世界にいなくても、ここにならいるかもね」 「ここ?」 「幻想郷よ。ここなら『理想の女性』もいるかもしれないわ」 どうして? という疑問が俺の顔からあふれ出していたのだろう。 霊夢さんはお茶を淹れながら説明する。 「あなたの『理想の女性』とやらは、外の世界では空想の産物で、実際にはいない、忘れられてさえいる存在なんでしょ?」 「まあ、そうですね」 自分の『理想の女性』とやらがどんな人か分からないし、忘れられていると言ってもいいかもしれない。 霊夢さんは「だったら」と楽しそうに続ける。 「幻想郷は、そういう存在が最後に行き着く場所。あのスキマ妖怪じゃないけど……『全てを受け入れる』のよ。 だったら、忘れれられたあなたの『理想の女性』が幻想郷にいてもおかしくないと思わない?」 目から鱗。幻想郷に慣れたとは言え、この世界そのものについて詳しく知らなかった俺にとって、その言葉はとても印象深かった。 鬼や魔法使い、妖怪が当然のようにこの世界にいるのは、忘れられた存在だから。そういう存在が行き着く先が幻想郷である。 ここはそういう世界なのか…… とても興味深いが、しかし一方でとても。 「『全てを受け入れる』ですか……なんだかとても残酷だ」 「あなた、スキマ妖怪と同じようなことを言うのね」 「それがどちら様かは知りませんが……けど、そうですね、残酷な一方で、とても美しいと思います。とても」 「そう……」 霊夢さんはとても優しい笑みを浮かべた。『全てを受け入れる』とはまるで彼女であったかのように。 「で、よ」と彼女は先ほどの説明の続きをする。 「もしかしたらあなたの『理想の女性』は幻想郷にいるかもしれない、ってわけよ。もうあなたの身近にいるのかも、ね」 「ははは、だったら霊夢さんである可能性もあるわけですね」 霊夢さんの最後の言葉が軽口であったと判断し、俺も軽口を返してみた。 しかし彼女は途端にばっと目を見開き、俺のことを驚いた目で見つめた。 「なっ、な……」と声も出ない様子で、あたふたと手を振っている。 「霊夢さん?」 「な、何を馬鹿なことをっ! ま、○○さんはだって、あいつが……」 「はい?」 「なんでもないわよっ! この馬鹿!」 これまでの彼女には見られなかった厳しい口調に、俺もいささか驚いた。 もしかしたら霊夢さんは、他人の恋愛話には慣れていても、自分のことになるとてんで弱くなるのかもしれない。 ただの軽口だというのに、とても顔が赤くなっているのがその証拠だ。 恋心というものをどこかで持っているのかも。 そこにつけいる気もないし、彼女もそれを望まないであろうことは分かっているが……なんだかとても面白い人だと、俺は思った。 「んー……れーむー?」 と、そこで霊夢さんの膝で眠っていた鬼娘から声があがった。 頭の上で流れる話し声に目が覚めてしまったのだろう。 しょぼしょぼと目をかき、霊夢さんの名前を読んでいる。 「あ、起こしちゃったみたいですね」 「そうみたい。そろそろ布団で寝かしつけてくるわ……○○さんも、もう寝なさい」 「はい、今日はありがとうございました」 「いいのよ、私も面白い話聞かせてもらったし……明日からはご飯食べるでしょう? 早めに起きてきなさいよ」 「了解です。じゃあ、おやすみなさい」 「おやすみ。ほら、萃香。部屋に行くわよ!」 「うぅー、れーむー、酒飲めれー」 ろれつの回らない寝言をあげる鬼娘に、その彼女を抱え上げる霊夢さん。 まるで母娘だ。と実際に言ったら怒られそうなので、口には出さないけど。 霊夢さん達が部屋の中に入っていくのを見送り、俺はもらったお茶を全て飲み干す。 「好きな人か……」 そう聞かれた時、思い浮かんだのは仲良くしているいつもの3人。 しかしすぐに自分の中で否定した。自分達はそういう仲ではない……それに、俺は彼女達にはふさわしくない。 彼女らにはもっと男らしい人の方が、いい。 「言い訳かなあ、はぁ」 ため息をつき、俺は静かな社務所の庭に目を向ける。 月明かりに照らされているこの場所。落ち着きはするものの、昨日おとといのあの騒がしさが少し懐かしかった。 ※ それから1週間。昼は大工仕事の統括、夜は霊夢さんの家にて執筆作業という日々が続き、俺の新居は無事完成。 ただし以前と同じように狭くて小さな木造の家で、決して豪奢とは言えない。ボロ屋を完全再現したようなものだ。 なんとも、まさかこんなにも早く出来上がるとは思っておらず、頑張ってくれた大工さん達には感謝感謝だ。 「お疲れ様、3人とも」 大工さん達が帰っていった後、俺は家の前で座り込んでいる妹紅達に声をかけた。 「お疲れー」 お茶を飲んで休んでいる妹紅。彼女は作業後半になると、簡単な手伝い程度なら任せてもらえるようになった。少しは手先が器用になっただろうか。 「やれやれ、これでようやく寺子屋に戻れるな」 慧音さんは獅子奮迅の活躍で、大工さん達をおおいに助けた。ありがたやありがたや、後日こちらも寺子屋の手伝いに訪れるとしよう。 「なあ○○、宴会しようぜ、宴会」 時々サボりがちな魔理沙だったが、おおむね今回の建築作業の助けになったのは間違いない。 霊夢さんは「気まぐれなあいつにしては珍しいわね」と最後まで驚いていた。 「宴会はまた落ち着いたらな」 俺は苦笑しつつ、小説も完成したし、万々歳だと喜んだ。 あの恋愛小説は、1週間霊夢さんの家で気合を入れて第2稿、3稿と書き上げ、校正や見直しを経て完成の日の目を見た。 部屋を貸してくれた霊夢さんにも感謝だ。 霊夢さんの家では、与えられた一室にほぼずっと引きこもっていた。 食事の時や息抜きの時ぐらいしか霊夢さんとは話していないが、けっこう仲良くなったのではないかと思っている。 「そろそろ敬語はやめてくれてもいいんじゃない?」と言われたが、どうも癖になってしまったようで、直すのは難しそうだ。 ちなみに初日に見た鬼娘は2日目以降、姿を消した。「また適当にくるわ」と霊夢さんはけだるげに言っていた。 「○○、小説は? 書けた?」 妹紅が俺にお茶を渡しつつ、目をらんらんと輝かせて聞いてきた。 「ああ、もちろん」 「後で読ませてくれるよな? なっ!」 「時間があったらね」 「やった!」 妹紅は今回の恋愛小説がとても楽しみらしく、いつもの粗野な態度もなりを潜め、喜びの声をあげている。 彼女もまた恋話の好きな少女の一人というわけか…… もしくはこの小説、彼女のような幻想郷の強者にはよく読まれたりするのかもしれない……題材が「妖怪と人間の恋」だし。 いや、少し自画自賛が過ぎるか。 「あ、射命丸さんが来るのは今日だったっけ……」 あの原稿、あとは射命丸さんに渡して、編集者としての意見を聞かせてもらうだけだ。今日が彼女の訪問予定日なはず。 それを思い出したのを見計らったかのように、空から「○○さーん!」という女性の声が聞こえた。 見上げると、猛スピードでこちらに近づいてくる影がひとつ。白いシャツに黒いスカート。射命丸さんに間違いなかった。 「よっと。どうも、お久しぶりです。清く正しい射命丸です!」 射命丸さんは俺の目の前に着地すると、ぴっと手を額に当ててかわいく挨拶する。 俺も「どうもです」と軽く頭を下げた。 「あややー、家はもう完成したみたいですね」 「お蔭さまで。原稿、遅れてすみません」 「いえいえ、こちらはまだ余裕がありますから。小説、できました?」 「はい。できてますよ。ちょっと待ってくださいね、あそこのカバンの中に」 「ああ、あれですか。だったら私が取りますよっと」 射命丸さんが新築の家の方に向かって一歩踏み出したその瞬間。 「あっ」 魔理沙の声が聞こえたような気がしたが、それも耳をつんざく爆音にかき消された。 視界が真っ白になった。 身体を震わせる爆発と爆音。それを感じ取った時、すでに射命丸さんは目の前からいなくなっていた。 地面から噴き出した白い光によって、彼女は空高く吹き飛ばしてしまったのだ。 「あやややああ!!」 悲鳴と共にそのまま空へと消えていく射命丸さん。彼女なら空を飛べるので大丈夫だろうけど…… ぱらぱらと砂粒が落ちてくる中、俺は呆然としていた。 「い、いったいこれは」 「○○、これはだな」 慧音さんが後ろから労わるかのような声をかけてくれるが、俺はそれに答えるよりも怒りの方が先立っていた。 「誰かのいたずらか! まったく、こんな危ないものを仕掛けて……犯人を見つけたら叱らないと! って、慧音さん、どうかしました?」 「い、いや、なんでもない」 慌てた表情で後ずさる慧音さんに、俺は首を傾げる。何かあったのだろうか。 魔理沙も腕を組んで何事か考え込んでいる。 「……要調整って所か。無差別に妖怪に反応するのはさすがになあ」 「魔理沙? なんか言った?」 「いんや、なんでもないぜ?」 ニカリと笑う魔理沙。どうにも場の雰囲気が変だ……妹紅なんてあからさまに顔を背けてるし。 うーん……よく分からん。 射命丸さんがボロボロの姿になって戻ってくるまで、この妙な空気は漂い続けているのであった。 新ろだ919 ─────────────────────────────────────────────────────────── ※幻想郷にはクリスマスという概念がないという設定にしております これは「もこけーねまりさ」のお話が始まるよりも以前の出来事。 幻想郷が真冬に突入し、冬の黒幕が雪を降らそうか降らすまいか迷っているだろう、師走の下旬。 ある一冊の雑誌を読んだ少女達の、面白おかしくも少々の叙情の感じられる、短き奮闘記である。 「こ、これは……!」 竹林の傍の一軒屋。ボロ屋とも言うべき木造建築の中にて、魔理沙の目は1冊の雑誌に釘付けになっていた。 現在、この家の家主である○○は留守である。 そこに魔理沙は遊びに来たのだが、彼女は留守であろうとも関係なく、いつものごとく勝手に上がりこみ、勝手に家の中をあさり、勝手に本を読んでいたのだ。 しかし、少々盗癖もあるその小さな手は、ある雑誌のページをめくることに夢中になっていた。 ○○の家は本屋敷だと言ってもいい。 外の世界からやってきた時に持っていたものだけでなく、知り合いから譲り受けたり、道具屋で買い集めたりした本が所狭しと積み上げられている。 大抵は外の世界の本であり、○○はこれらを小説の題材にしたり、寺子屋での授業で役立てたりしているらしい。 最初魔理沙は、ただの暇つぶしにでもなるかと思って、薄くて文字が大きく、絵がたくさん載っている本を選んで読み始めた。 だが、そこに書かれていたことは彼女にとって衝撃的と言う他なかった。 その本の表紙には大きくカラフルな文字でこう書かれている。 『これで決まり! 彼との聖夜必勝法!』 「ふむふむ……『夜景の綺麗な所でムードを盛り上げると、彼にも勇気が湧いてくる!』か」 最初は「聖夜ってなんだ?」と疑問に思うだけだった。 だがページをめくるにつれて、師走のこの時期に外界では大きなお祭りがあるらしいということと、 「くりすます」と呼ばれるこの日は、恋人達にとって仲を深めるきっかけになるのだということが、よく分かった。 本の中では、その「くりすます」にどうやったら男性との距離を縮められるか、女性視点で事細かに指南しているのだ。 「『手を繋ぐ時は自然に、かつ少しだけびっくりさせるように。男性から握り返してくれたら成功!』……なるほど」 あまりにも具体的な指南だったため、魔理沙は家にいる間、ずっと読みふけっていた。 時々その頭の中に浮かぶのは、気になる「あいつ」と、本の中で紹介されているような行為に及ぶ光景…… 「……ふへへ」 にへらと顔を緩ませた魔理沙。 「はっ!」 だがすぐに、こうしてはいられない、と顔を引き締めた。 この本は外界の書物。ここまで大きく取り上げられている「くりすます」を、○○が知らないわけもない。 幻想郷では馴染みのないイベントだが、彼との仲を縮められるとなると乗らない手はない。 「ふ、ふふふふ! やってやる、やってやるぜえ!」 そう決意した魔理沙が、さっそく外へ飛び出そうとしたその時、家の扉が突然開いた。 「おーい、○○ー」 「お邪魔するぞ、と、魔理沙、いたのか」 入ってきたのは、○○の友人であり、自分にとってはライバルでもある女性達、藤原妹紅と上白沢慧音だった。 彼女らも遊びに来たのだろう、その手には食料らしき風呂敷袋がさげられていた。 2人共、家の中にいた魔理沙を見て驚いている。 「よ、よう、こんな所で奇遇だな」 魔理沙はすかさず雑誌を背中で隠し、ぎこちない挨拶をする。 それを不審に思ったらしい慧音が、怪訝そうな顔で魔理沙のことを見つめた。 「こんな所も何も、ここは○○の家だが……」 「は、はは、そうだったなー」 まずい、と魔理沙は慌てて表情を取り繕った。慧音は勘がいい。不自然な動きは出来ない。 万が一この雑誌が見つかれば……少々面倒なことになる。 魔理沙は慧音の視線の動きに最大限注意を向けた。慧音はまだ魔理沙のことをじっと見つめている。よほど不審に思っているのだろう。 一方、妹紅は部屋の隅々まで見渡した後、○○がいないことに落胆したのか「はぁ……」とため息をついていた。 「魔理沙、○○は?」 「さ、さあな。私が来た時もいなかったぜ」 「なんだ……じゃあ散歩かな。残念。で、ところで魔理沙」 突然、妹紅がずいっと近づいてきた。急な接近に魔理沙はびくついてしまう。 「後ろに持ってるそれ、何?」 うっ、と魔理沙は言葉を詰まらせる。思ったよりも妹紅が目ざとかった。 「ん? まさか○○の家のものを盗むつもりではないだろうな?」 きらりと輝く慧音の目。こうなるとどんな言い訳も誤魔化しも通じないことを、魔理沙は今までの経験で分かっていた。 もはやこれまで。じーっと見つめてくる2人の前に、魔理沙は諦め顔で本を差し出すのだった。 数十分後…… 隠していた本は皆で回し読みすることになってしまった。 「なるほど。つまる所、外界の祭りの一種というわけか」 「へー」 慧音が一言で内容をまとめあげ、妹紅はまだ関心深そうに本を読んでいる。 魔理沙は失敗した、とばかりに頭を抱え、「そうだぜ」と答えた。 「これだけ大々的に本で取り上げられてるんなら、多分、○○も知ってると思ってな」 「で、抜け駆けして○○とそのお祭りを楽しもうとしたわけか」 「うっ」 慧音の鋭い突っ込み。その通りだった。やはり彼女を誤魔化すのは難しかった。 「○○と雪の中をデート……」 妹紅が本の読みながら、うわごとのように呟いた。その頭の中では色々な妄想が繰り広げられているのだろう。 「ふむ」 その呟きに反応した慧音がぴくりと眉を動かした。 「……ん」 魔理沙も同じく肩を揺らし、2人が次に何を言い出すか身構える。 そして妹紅もまた、他の2人の様子がおかしいことに気付き、妄想を広げるのを止めた。 「……」 「……」 「……」 こう着状態に陥ってしまった。 各自、「くりすます」に関する何らかの思惑があるのは明らかだった。 ○○と一緒に過ごしたい、だが、それを実現させるためには確実に他の2人が邪魔になる。 戦いだ。戦いが始まった。先に手の内を明かせば、後々不利になる。どうやって相手の思惑を探るか、3人はお互いの様子を伺っていた。 (「くりすます」とやらの時間を共にできれば、○○にとって私がある程度特別な存在になる……これだけは譲れん……) 慧音はぎゅっと握りこぶしを作り、 (私が最初に見つけたんだ。ここで退いては霧雨魔理沙の名が廃るんだぜ……) 魔理沙は箒の柄を軽く持ち、どうやって本を奪取するか模索し、 (○○とデート、○○とデート……か、顔が熱い) 本を死守している妹紅は、まだ妄想の中から抜け切れていない。 睨み合いはしばらく続いたが、ふと慧音が握りこぶしを解いて、ふぅ、と息をついた。 「2人共、ここはお互いに妥協案を採らないか?」 「……例えば?」 魔理沙が尋ねると、慧音は「簡単なこと」とまっすぐな目をして答えた。 「誰か1人が○○と『くりすます』を共にし、他の2人は1人寂しくその日を迎える。それは少々、酷だ」 「……まあ、全員がその『他の2人』にはなりたくないだろうしな」 魔理沙の言葉に、こくこくと妹紅も頷いた。 だったら、と慧音は続ける。 「魔理沙、お前の好きな宴会を開けばいい」 「……ま、それが一番妥当な線だな」 「ふぅ、良かった」 ほっと妹紅が息をついた所で、睨み合いがようやく終わった。宴会を開く、つまり皆で一緒に騒いで楽しんでしまおうというわけだ。 妹紅は持っていた本を広げる。ここからは共同戦線、この本を参考にして、○○との「くりすます」を皆でどう楽しく過ごすかを検討するのだ。 「それでは」 慧音が手を前に出し、 「協力して」 魔理沙が手をそれに重ね、 「頑張る、か」 妹紅も重ねる。 「くりすます」は1週間後。それぞれが役割分担して頑張っていこうと誓い合うのだった。 ※ 『これで決まり! 彼との聖夜必勝法!』 ポイント1「ケーキはなるべく手作りで!」 「……そもそもケーキとやらがよく分からんな」 自宅の台所にて、慧音は腕を組んで悩んでいた。 慧音の担当は料理だった。魔理沙と妹紅は料理があまり得意でないため、自然にこの役を振られてしまったのだ。 パーティ用の料理を1人で用意するのはなかなか大変だったが、そこは慧音の類稀なる家事能力でカバー。 しかし、問題が1つだけあった。本に書いてあった料理は外の世界独特のものが多く、特に「ケーキ」は知識として知ってはいても、実物など見たこともない代物だった。 さすがに調理法も知らないものを作るのは難しい。 「確か、洋風の菓子の一種だったな。○○の本に載っていたことがあるが……ふむ、洋風か」 紅魔館の従者辺りなら知っているだろうが、あいにくあの館の者との仲はあまりよろしくない。 妖怪の実力者と里の守護者とでは、立場というものもありおいそれと懇意にできるものではないのだ。 あとは魔法の森に住んでいるとかいう人形師ぐらいか……彼女ともあまり接点はない。 「待てよ、魔理沙の奴ならケーキのことを知っているんじゃないのか?」 しまった、と慧音は舌打ちする。あらかじめ魔理沙に聞いておくべきだった。 今、彼女は別の役割を果たすために、どこか遠い山に出かけている。パーティ直前になって帰ってくる予定だ。 どうしたものか、と慧音は頭を抱える。 本の指南によると、『手作りケーキは女の子の真心が詰まったもの! 一生懸命作るだけでも彼のハートをわしづかみ!』らしい。 (わしづかみ……私が○○の心を?) 『慧音さん……こんなに大きなケーキを1人で作っただなんて』 『下手くそだろう? 君の口に合えばいいが』 『慧音さんの作ったものだったら、喜んで頂きますよ』 『そ、そうか。では、今フォークを……』 『けど、慧音さん、俺はこのケーキだけじゃなく、慧音さんまで食べてしまいたい』 『だ、駄目だ、○○! そういうことは正式に夫婦になってからでなければ……!』 『慧音さん』 『あ、ああっ!』 「……うっ」 思わず鼻血が出てしまいそうになった慧音。私らしくない、と自重する。 「仕方ない。本の知識を頼りに私流に作ってみるか……」 確かふわふわしたものが下地になっているんだな、と慧音は冷蔵室から木綿豆腐を取り出すのだった。 ※ ポイント2『キラキラ光る巨大ツリーの前でムード作り!』 妖怪の山の冬は厳しい。風は冷たく土は乾き、まだ雪は降っていないものの、まともな防寒具がなければ空も飛んでいられない。 魔理沙は箒を操りながら、首をすくめて寒さをこらえる。吐く息がとても白い。 コートとマフラー、手袋に毛糸の帽子と、完全防備でいるというのにまだ寒く、唯一肌がさらされている顔は痛くて仕方なかった。 「うぅー、早く見つけないとまずいぜ……」 魔理沙が探しているのは、「くりすますつりー」と呼ばれる木だった。 本では、それを意中の人と眺めることで雰囲気を良くすることができると書いてあったのだ。 「木なんてそこら中で生えてるんだから、ちょっと探したら出てくるはずだぜ」と、役割分担を決める際に真っ先にこれを選んだ魔理沙だったが、それが失敗だった。 「どこにもない……本当にあるのかよー」 魔理沙は鼻をすすりながら、妖怪の山を上空からぐるりと眺める。 「くりすますつりー」は、枝や葉っぱがキラキラと光り、時には降ってもいない雪がその枝に積もることもあるらしい木だ。 本の写真では、確かにそんな木がいくつも映し出されていた。どれもこれも何十メートルもある巨大な木で、葉が七色に光っていた。 こんなに大きくて目立つ木だったらすぐに見つかると思ったのだが……これが全然見つからない。 「これは困ったぜ……くぅー、寒っ!」 下に見えるのは普通の緑の木ばかり。キラキラに光る木なんて本当に存在するのだろうか……黄金色に光る竹なら心当たりがあるのだが。 「くりすます」まであと5日ほどだというのに、なんだか不安になってきた魔理沙。 「そこの野良魔法使い、はいはい止まって止まってー」 「うん? ああ、なんだ、ブン屋か」 突然目の前に現れた黒い影。 頭に白いボンボンのついた帽子をかぶり、マフラーを巻いた射命丸文だった。 憮然とした表情の彼女は、いつものカメラは持っておらず、かわりに大風を起こす扇を魔理沙に向ける。 「相変わらずの不法侵入、反省する気はないわけ?」 「まあ気にすんな、珍しく天狗モードのブン屋さんよ」 今日の文は妖怪の山を守る者の1人なので、やけに威圧的な口調だった。 しかし魔理沙にとってはからかいのネタでしかなく、にししと笑うだけで引き返す気配すら見せなかった。 文は頭が痛いとも言いたげに手を額に当てる。 「ふぅ……何の用? さっきからこの辺を飛び回ってるけど」 「ああ、『くりすますつりー』って奴を探してるんだ」 「何それ」 「何もしなくてもキラキラ光る木だ。あと、雪も積もってる」 「……ほうほう、興味ありますねー」 文の表情が変わった。いきなり懐からメモ帳を取り出し、キラキラと顔を輝かせている。 魔理沙は舌打ちする。記者モードに入った文は少々面倒な存在になる。今は木を探す時間が惜しいというのに。 が、待てよと魔理沙は考え直す。妖怪の山に住む文なら「くりすますつりー」についての情報も持っているかもしれない。 この寒い中探すのもつらくなってきたし、見つからなければ人に頼った方がいい。 そう思い、魔理沙は文に「くりすます」について詳しく話し始めた…… が、 「そんな木、本当に存在するんですか?」 「なんだ、お前も知らないのか」 文の疑問符たっぷりの答えに、魔理沙は落胆のため息を吐いた。 どうやら妖怪の山にも生えていない木のようだ。 「○○の持ってた本には、ちゃんと写真があったんだがなー」 「ふむふむ、それはいずれ○○さんに見せてもらうとして……魔理沙さん、その木を探してるのはもしかして、○○さんのためですか?」 「んー、まあな。ちょっとした宴会を開こうかと思ってな」 「いいですねー。私も『くりすます』のお祭には興味ありますが……さすがにそちらのお邪魔をする――あー、わけにはいきませんね、その様子だと」 「ああ、そうしてくれ」 魔理沙がミニ八卦炉を構えているのはご愛敬。 これ以上妖怪の山にいても仕方ないため、魔理沙はそのまま別の山へと向かうことにした。 文は最後まで「くりすます」に興味津々で、しつこく追いすがってきたが、そこはブレイジングスターを発動させて無理矢理引き離すのだった。 「あれ? けど○○さんって確か、別の仕事でいっぱいいっぱいだったはずよね」 遠く離れた文の小さなつぶやきは、到底魔理沙には聞こえなかった。 ※ ポイント3『彼へのプレゼントは、日頃の会話でさりげなく聞きだそう!』 藤原妹紅は緊張していた。 目の前にある木製の扉をいつまで経っても叩けず、四苦八苦、おろおろしながら立ち尽くしていた。 「○○の欲しいものを聞き出すだけなんだ……さりげなく、さりげなく」 妹紅の役割は○○へのプレゼントを用意することだった。 本の指南の通りに、○○と世間話をしつつそれを探り出すのが彼女の役目。 なおかつ「くりすます」当日の○○の予定を聞きだし、できるなら宴会にお誘いする。 その任務を果たすために妹紅は○○の家に来たのだが、いかんせん彼女はそういう心理的駆け引きが苦手だった。 (直接聞けばいいのに、なんでそんな回りくどいことするかなあ……) 魔理沙の「サプライズが必要だぜ!」という意見が通ってしまった末の任務。 慧音ですら、「まあ、たまには彼を驚かせるのもいいだろう」と賛同してしまった。 こういう人を騙すようなやり方は好かない妹紅だったが、取り決めとあっては仕方ない。多数決の末の決定だ、逆らって仲間外れにされるの嫌だし…… 妹紅は意を決して、コンコンと軽くノックをした。 「……」 応答がない。部屋の中には誰かがいる気配がするのに、扉は一向に開こうとしなかった。 「○○ー?」 疑問に思って声で呼びかける。やはり応答がない。まさか、食料がなくて餓死しているとか…… 心配になって扉を開けようと手を伸ばした時、ちょうど中から引き戸がゆっくりと開けられた。 腕1本だけが通るぐらいの狭い隙間から、人の目がこちらを見つめていた。 「ま、○○?」 「……」 確かに○○の目だった。わずかな隙間からこちらを覗くその目。隈に縁取られていて、顔色もえらく悪かった。 「あ、あのさ」 再度声をかけようとすると、扉がぴしゃりと閉まった。 突然だった。○○は一度も喋らなかった。それどころか、こちらと会話することすら拒絶した。 もはや開きそうにもない扉の前で、妹紅は呆然と立ち尽くす。 こういう時の○○に心当たりがある。おそらく……○○は今、小説の〆切前なのだ。しかもかなりせっぱ詰まっている。 こうなると、○○は外の世界との交流を一切断ってしまう。家の中に引きこもり、食事も睡眠もまともに取らなくなる。 一度無理矢理家の中に入った魔理沙によると、この状態の○○はぶつぶつと独り言を呟きながら一心不乱に万年筆を走らせているらしく、そのあまりの鬼気迫る様子に声なんてかけられないのだとか。 「ど、どうしたら……」 これでは、○○の欲しいものを聞き出す所か、宴会に誘うことすらできない。 妹紅は途方に暮れ、すごすごと○○の家から撤退するのだった。 ※ 「くりすます」まであと3日。 中間報告を行うために、慧音、魔理沙、妹紅の3人は一度慧音の家に集まることとなった。 「……」 「……」 「……」 全員、すっきりしない顔をしていた。それぞれの仕事がはかどっていないことがありありと分かるが、とにかくも経過報告を行うこととなった。 まず、慧音の報告。 「まあ、料理に関しては問題ない。ただな……」 「なんだ?」 魔理沙が続きを促すものの、さえない表情を浮かべる慧音は「これを見てくれ」と1つの皿を差し出した。 そこには巨大な円筒状の物体が乗せられていた。 「……慧音、これはなんなんだ?」 「ケーキだ」 「これが?」 魔理沙の疑問も最もだった。 慧音が出した「ケーキ」。全体が白っぽくてイチゴが乗っているのはいい。形は完璧だ。しかし問題は、中も外もすべて白いことだった。 加えてその物体には生クリームのようなふわふわ感は全くなく、まるで何か重たいものを重ね合わせたような質感を漂わせている。 魔理沙はその「ケーキ」を凝視する。まったくおいしそうに見えない、と彼女は思った。 「材料は?」 「……豆腐、おから、羊羹、きな粉と、後は苺だ」 「ちょちょちょ、ちょっと待て! なんで豆腐なんだ? 甘くもなんともないだろ!」 「しかし、他に白い塊になるようなものがなかったのだ」 「……くはー」 魔理沙は手で自分の頭を叩く。合っているのは苺だけで、あとは全て間違った材料だった。 アリスの家でよく食べる、甘くておいしいケーキとはほど遠く、まさか慧音がこんな失敗をするとは思わなかった。 「はぁ、慧音がケーキのことを知らなかったとは」 「すまんな……和菓子なら作れるのだが」 「逆に豆腐でここまでケーキを再現するのがすごいぜ……」 魔理沙が妙な感心をしている中、妹紅がふと指を伸ばしてその「ケーキ」の表面をすくいあげ、舐めると、 「あ、おいしいな」 と呟いた。 なんでもとてもヘルシーで、甘すぎないのが逆にいい、だとか。 (しかしケーキとしては論外なので、結局この「ケーキ」は後で3人がおいしく頂きました) 次に魔理沙の報告。 「キラキラ光る木なんて、見つからなかったぜ!」 胸を張って言い切る魔理沙に対し、慧音と妹紅は「はぁ」とため息をついた。役目を果たせなかったのに何を威張っているんだか、と。 「本当に探したのか?」 慧音が疑いの目を向けると、魔理沙は憤慨したように息を荒くした。 「探したって! 幻想郷中を駆け回ったぐらいだぜ! でも見つからなくてな…… こうなったら紫に頼んで外の世界まで捕ってきてやろうかとマヨヒガに行ったけど、ちょうど冬眠中でさあ、あいつ」 腹いせに狐と弾幕ごっこしてきたぜ、と吐き捨てるように言う魔理沙。八つ当たりはよくない。 「本当にあるのかどうかも疑わしくなってきたぜ」 「ふむ……外の世界にしか生えていないものなら、どうしようもないな」 「どうしたらいいやら、だぜ」 魔理沙と慧音が腕を組んで考えている中、妹紅が「えーと、あのさ、魔理沙」と手をあげた。 「なんだ?」 「なかったら、作ればいいんじゃ? 得意の魔法で」 「……おお!」 盲点だったとのたまう霧雨魔理沙。「くりすますつりー」を3日で自作することに決まったのだった。 最後、妹紅の報告。 「なに? ○○が引きこもっている?」 驚いた口調で慧音が聞き返すと、妹紅はこくりと頷いた。 〆切が近い時によく見られる○○の引きこもり現象。3人はその大きな問題に頭を抱えた。 「まいったな……アノ時の○○かよ」 〆切前の○○を見たことがある魔理沙は、ぶるりと身体を震えて顔をしかめた。 慧音も恐る恐ると言った様子で妹紅に尋ねる。 「妹紅、○○はどんな様子だった?」 「隙間から私のことをじっと見た後、すぐに扉を閉めた。めちゃくちゃ疲れた顔してたよ」 「やはりか……」 慧音もアノ時の○○を見たことがあるのだろうか、暗い顔をしている。 あんな状態の○○を宴会に誘い出すなんてこと、可能なのか。 いや、できるわけがない、と3人とも結論づける。 「しかしおかしいな。前に彼と会った時、『やっと年末の仕事が終わりました』と言っていたぞ」 慧音が首を傾げると、魔理沙が「○○が?」と確かめる。 慧音はしっかりと頷いた。 「年明けまで仕事がないから、年末はゆっくり過ごせると言っていたな」 「けど、あれは〆切前の○○だったって」 妹紅が嘘をついているわけではない。 ならば、と魔理沙は顎に指を当てて考える。 「もしかして、〆切が早まったとかか? もしくは急な仕事が入ったとか」 「この師走の忙しい時にか? それは○○に死ねと言っているようなものだと思うが……」 慧音の言うことも最もだ。誰だって年末は忙しい。○○も色々と仕事が重なっていたはず。 そんな時期に急な〆切の変更なんてされたら、身体の弱い○○は軽く死ねる。 「……ちょっと○○に仕事を依頼した人に会ってくる」 魔理沙と慧音が考え込む中、妹紅がぽつりと呟いた。 「それが誰なのか知ってるのか?」 魔理沙が驚きつつ尋ねると、 「分からないけど、このままじゃ○○がかわいそうだ。なんとか〆切を延ばしてもらう」 「妹紅、あまり乱暴なことはするなよ?」 「……分かってるよ」 慧音の忠告は、果たして機嫌の悪そうな妹紅に耳に届いたのか? 不安な点はあるものの、ここは妹紅に任せてみることとなった。 「しかし、○○の欲しいものを聞き出すのは難しくなったな」 慧音の言葉に他の2人も頷いた。 「くりすます」まで後3日。各自が自分の役割を果たしている間にすぐにその日はやってくる。 もはやさりげなく聞き出すことは不可能だ。 「んー、勝手に用意してみるか?」 魔理沙が軽い口調で提案するが、慧音は首を横に振る。 「下手なものをプレゼントして、印象が悪くなるのもまずい。私たち3人共同でのプレゼントだからな、慎重に選ばなくては」 「あ、そういえば」 何かを思い出したのか、妹紅がはっと顔を上げる。 慧音と魔理沙が何事かと見やると、妹紅は記憶を掘り返すように上に視線をやる。 「万年筆が最近へたってる、って○○が前に言ってたような」 「万年筆か……」 ふむ、と慧音が考え込む。そう悪くはないプレゼントだと彼女は思っていた。 「けどさ、○○がもう新しいのを買ってると無駄にならないか?」 魔理沙の心配事にも、慧音はすかさず「いや」と反駁する。 「外に持っていったり、寝ころびながら書けるものだったり、用途はいくらでもある。万年筆はものによってその書く手応えが違うものらしいしな」 あって困るものではない、という結論に達し、プレゼントは万年筆に決定。 時間が空いた時に、皆で道具屋に買いに行くこととなった。 「では、あと3日」 慧音が手を前に出し、 「○○を驚かせて」 魔理沙がそれに手を重ね、 「えー、皆で楽しむために」 妹紅も遠慮がちに手を出し、 「「「がんばろう!」」」 再び誓い合ったのだった。 ※ 「ふむ……なるほど、生クリームとはこういうものなのか」 魔理沙からもらったケーキのレシピ片手に、慧音はしきりに感心の声をあげていた。 すでに彼女の自宅の台所は甘い匂いに満ちており、台の上にはケーキの材料が所狭しと並べられている。 今作っていたのは生クリーム。 魔理沙にもらったクリームとやら(牛乳を特殊加工したものらしい)をボウルに入れ、ひたすら、それこそ何十分もかき混ぜた末に、ようやくできあがった代物だ。 ふわふわとしながらも、ちゃんと塊になる不思議な物体。舐めてみると、とても甘い。 痛む腕をいたわりつつ、慧音はその苦心の作を口金がつけられた絞り袋に入れていく。 「あとはこの生クリームを塗っていくだけか」 すでにケーキの土台はできあがっている。石窯で焼いたものだが、上手くスポンジ状に焼けていた。 「……しかし、全て塗ってもまだ余りそうだな」 じっと絞り袋に入った生クリームを眺めていた慧音に、ふと他の料理に応用できないものか、という知的好奇心が湧き出てきた。 すでに宴会用の料理はできがっているが、この未知の材料を使えば、さらに良いものができるのではないかと。 例えば、焼き鳥のソースに混ぜてみたり……なかなかユニークな味になりそうだった。 知的好奇心を抑えきれず、慧音はおもむろに焼き鳥ソースに生クリームを混ぜそうになったが…… ふと、冷たい風が頬を撫ぜた。 「……いや、料理は普段通りでいこう。変なことをしてせっかくの宴会を壊すこともない」 珍しく好奇心を押さえ込んだ慧音。そのまま順調にケーキを作っていくのだった。 頬を撫ぜた冷たい風。窓が全て閉められているその部屋の、どこから吹いてきたものなのか。 ※ 「おっし! こんなもんだろ!」 魔法の森の一画、魔理沙宅の前。 そこには今、巨大な光る木がそびえ立っていた。 「星と雪は作りもんでいいとして……おお、完璧に再現できたんじゃないか?」 魔理沙は地面からその木を見上げ、満足そうに笑みを浮かべた。 その辺から適当に取ってきたモミの木。高さが10メートルほどで、青々と葉が生い茂っている綺麗な木で、今では色々な飾りつけがなされている。 魔法によって作られた光る玉がロープに通されて繋がり、それが木に巻き付けられて、全体がきらびやかに輝いていた。 さらに天辺には大きな星、枝の所々に雪を模した綿が飾られていて、まさしくあの本の中にあった「くりすますつりー」と瓜二つだった。 これでポイント2はクリアだ! と魔理沙は仕事を終えようとしたのだが、 「……うーん、もっとこう、ドワーッ! というか、ぐわー!って感じの方がかっこよくないか?」 魔理沙の悪い癖が出始めた。何事もパワーと派手さを好む彼女は、この「くりすますつりー」をもっと改良したい、という欲求に駆られ出したのだ。 どうせならビームを出す木の方が派手だよな、と考えた魔理沙は、ミニ八卦炉を木の天辺に置こうとしたが…… その時、ふと冷たい風が頬を撫ぜた。 「ん……待てよ、外界の『くりすます』を再現するんだから、ビームは駄目か」 ミニ八卦炉を持って今にも箒にまたがりそうだった彼女は、そう思い直す。 せっかくの宴会、変なことはせず、皆で楽しむのが一番だ。 魔理沙にしては珍しい謙虚な気持ち。 それを抱けたのは、今にも雪の降りそうな空のお蔭なのか。 ※ 「ここが依頼人の家か……」 人間の里のある家の前で、妹紅は落ち着きながらも引き締まった顔で立っていた。 ○○が今抱えている仕事を依頼した人間。それがこの家の中にいるという情報を掴み、一目散にやってきたのだ。 さて、どうするかと扉の前で腕を組む妹紅。 情報によると、この人間が依頼した仕事は本来年明けが〆切だったはずなのに、何かの事情があって早めたのだという。 どんな事情かは知らないが、年末で忙しい○○に鞭打つような真似だということは間違いない。 ○○はあんなに身体が弱いのに、もし倒れたらどうするんだ。 そんな思いが怒りと共にふつふつと湧いてきて、妹紅は「よし」と手の平からすっと炎を出した。 相手はただの人間。少し脅してやれば、きっとなんでも言うことを聞くはず。 ○○にひどいことをしたんだ。これぐらい乱暴なことをやっても許されるというもの。 怒りに若干我を忘れている妹紅は、その炎を目の前の扉に向かって放とうとしたが…… ふと、冷たい風がその炎をかき消し、同時に彼女の頬を撫ぜた。 「……よし、落ち着け私。ふー」 大きく深呼吸する妹紅。煮えた頭が急速に冷めていき、自分がやろうとしたことの愚かさを自覚する。 ここで力に訴えて相手に言うことを聞かせるのは簡単だ。しかし、それは結果的に○○に迷惑をかけることになる。 危険な存在と関わりを持つとして、中にいる人間が今後○○に仕事を持ってこなくなる可能性があるからだ。 そんなことになってはいけない。あくまで、穏便に事を済ませなければならない。 「……うん、そうするしかないか」 妹紅は頷き、覚悟を決める。 生来、頭を下げるのは苦手な性分だが、ここは誠意を持ってお願いしなければいけない所。 ○○のためだ、頭のひとつぐらいいくらでも下げてやろう。 意を決した妹紅は、ゆっくりと扉をノックする。 妖力によって起こされた炎。それをかき消す風など、どこから吹くものか。 ※ 「おや、いらっしゃい。魔理沙はともかくとして、珍しいお客さんも来たものだ。確か、上白沢さんと藤原さんだったかな?」 「って、僕の話も聞かずに商品を見るのかい……まあ、かまわないけどね。お探しの品があればいつでも聞いてくれ」 「魔理沙、勝手にお茶菓子を取っていくんじゃない。そんなに行儀の悪い子だと、男の子に好かれないぞ」 「うん? どうしてそんなに動揺してるのかな? ああ、彼のことか。それなら気にしなくていい。彼なら魔理沙のそんな所を見ても、幻滅なんてしないさ。何せ慣れてるだろうからね」 「痛い、痛いって。すまなかった、少し口が過ぎたね。それにしても、あっちの2人はえらく真剣に商品を探してるね」 「そこの君。藤原さんだったかな? 店内で火を出すのはできればやめてほしいんだけど……え? ガラクタばかりだから邪魔だった? ははは、これは手厳しい」 「あ、どうも、上白沢さん。彼女を止めていただいてありがたい。さすがにガラクタでも商品なんでね、大切にしてもらいたいよ」 「なんだって? 魔理沙、もう一度言ってくれ。……○○が最近ここに来たか? いや、ここ1カ月は見ないね。最後に見たのは、新しい本と万年筆を探しに来た時ぐらいかな」 「おっと、3人とも、どうしていきなり……待ってくれ。机が壊れる。そんなににじり寄らなくても、ちゃんと話すから」 「あれは1カ月半ぐらい前だったかな。今使ってる万年筆の先がへたってきたから、新しいものに代えたいとこの店にやってきたんだ」 「けれどその時は万年筆の在庫がなくてね。彼は残念そうな顔をして帰っていったよ」 「今かい? 今なら1本だけ在庫があるよ。昨日見つけた品なんだ。滅多に見ない品なんだけどね、万年筆は」 「ちょ、ちょっと待ってくれ。そんなに慌てなくても……え? 代金? これぐらいだけど……」 「いや、これは3人で割り切れない数字だね。1人が少し多めに払わないと……ああ、どうも、上白沢さん」 「魔理沙、君もお金を持っていたんだね。少し驚いたよ。おっと、藤原さん、このお金はえらくしわくちゃだね……まあ、別に構わないけど」 「プレゼント包装? なるほど、これは彼に贈るものなのか。少し待ってくれ、この辺りにプレゼント用の箱があったはず……ああ、あった」 「よし、これでいいだろう。3人とも、運が良かったね。万年筆は本当に珍しい品なんだ」 「お買い上げありがとう。今後とも香霖堂をごひいきに」 ※ 師走の25日目。 外の世界でいう12月25日。 幻想郷は寒さで凍えていた。 ※ 「うー、さむっ」 その日、俺は人里の中を練り歩いていた。 寒風どころか凍風が吹く中、少々の厚着だけで対抗することもできず、俺は身体をさすりながら歩き続けている。 往来も人の出歩きが非常に少ない。年末だというのに市場もそれほど賑わっていなかった。全て寒さのせいだろう。 こう寒いと、瞼がどんどんと重くなってきて…… 「あー、やっぱり寝足りないのかなあ」 俺は頭をぶんぶんと振って、眠気を覚ます。 昨日ぐっすり寝たはずなのに、まだまだ眠気が身体の中に残っていた。 ここ最近、俺は仕事漬けだった。それこそ家の中に引きこもりっ放しだった。 ある人から依頼された仕事の〆切が急遽前倒しされてしまい、徹夜で小説を書き上げなくてはならない事態になったからだ。 ここ1週間は本当に死にそうだった。寝不足と疲労が積み重なりながらも万年筆を動かしていた俺は、ほとんどゾンビのようなものだっただろう。 その間に誰かが訪ねてきたような気もしないではないが、あまり覚えていない。応対する気力すらなかった。 そうして俺は息も絶え絶えに机に向かっていたのだが、しかし、どういうわけか昨日になってその依頼者が「〆切を延ばす」と再度手紙を送ってきたのだ。 こう短期間に〆切を変更するなんて、いったいどういう事情があったのか。 およそ理解に苦しむが、とにかくも地獄から解放された俺は昨日からついさっきまでずっと眠り続けていた。 今日の昼になってそんな俺を起こしたのが、家の扉をノックする音。 眠たい目をこすりながらも、起き上がって扉を開けてみるが誰もおらず。 疑問に思っていると、玄関前に1枚の紙が置いてあるのに気付いた。 『慧音の家まで来ること! by 魔理沙』 そうして、よく分からない呼び出しを食らい、今こうやって人里の中を歩いているというわけだ。 「この寒い中呼び出すだなんて……くだらない用事だったら怒るぞ、魔理沙」 今までにこんな呼び出しを受けたことはなく、何か重要な用事なのかと思い渋々外には出た。 しかし空腹と疲労で気が立ってしまっていて、俺はいつになくイライラしていた。 「あそこだな……けど、どうして慧音さんの家なのかねえ」 首を傾げながら目的地である慧音さんの家を見つけ、俺は一直線にそちらに向かう。 だが、その家の傍に大きな影があることに気付き、俺は目を見開いて驚いた。 木だ。高さがマンションの2,3階分ぐらいはありそうな、巨大な木が家の傍に立っている。 「……こんなのあったっけ?」 緑の葉で生い茂る木。何やらロープのようなものが巻かれている。 慧音さんの家の傍にこんな木があった記憶はなく、俺は戸惑いながらも、家の扉をノックした。 「○○です。魔理沙に呼ばれてここに来たんですが」 呼びかけるが、返答はなし。 いつになく静かな慧音さんの家。家主の返事ぐらいはあってもいいものだが…… 「入ってくれ」 とても小さくて聞き取りづらかったが、確かに慧音さんの声だった。いつもは彼女が扉を開けて迎え入れてくれるのだが…… 俺は引き戸に手をかけ、ゆっくりと扉を開ける。 瞬間、吹雪が俺の顔を襲った。 「「「おめでとうー!!」」 顔に当たるこそばゆい感覚。細かく切った紙片――紙吹雪が俺に向かってふりかけられていたのだ。 目の前には明るい笑顔を浮かべている女性が3人。慧音さん、魔理沙、妹紅。 その後ろの大きな机には様々な料理が並べられていて、部屋も星や色のついたテープで飾り付けられている。 突然のことに、俺は呆然とその場に立ち尽くした。 何が起こっているのか。というか、この部屋の状況は一体何なのか。 反応のない俺の様子に、笑顔だった3人もいつしか心配そうな気色に変わり、じっと俺を見つめてきた。 奇妙な間が空いた。 「えーと、ちょっと待ってくれ。状況を判断する時間がほしい……今日は誰かの誕生日だったっけ?」 いきなりのお迎えに混乱した俺は、「おめでとう」という言葉から推測してその結論を出す。 しかし、3人が驚きと心配の混じった表情を浮かべるのを見ると、どうやらそうではないらしい。 3人は俺から少し距離を取って、ひそひそと話し始めた。 「やっぱり『おめでとう』じゃなかったんだって」 紙吹雪を腕からぼろぼろこぼしている妹紅は慌てていて、 「そうは言っても祭りだぜ? 何かを祝う行事じゃないのか?」 魔理沙が『何を間違ったのか』と不思議そうにしていて、 「それならそれで何か特別な掛け声があるのだろう。『ええじゃないか』や『えいさー』や」 奇妙な掛け声を提案する慧音さんはとても冷静で。 あー、状況が段々と分かってきた。外にある大きな木、豪勢な食事、3人が言う『お祭り』。 今日は……師走の25日だったか? だったらクリスマスじゃないか。なるほど、そういうことか。 ふっと笑みを浮かべた俺は、場を引き締めるためにパンッと手を叩いた。 その音にびっくりした3人は、素早く俺の方へ顔を向ける。 俺は満面の笑みを浮かべて言った。 「3人がどうしてクリスマスのことを知っているのかは置いといて……こういう時は『メリークリスマス』って言うんだ」 ほー、っと3人が興味深そうに聞き入っている。俺はそれをとても微笑ましく思った。 そして3人は、互いに目で合図をし合った後、改めて、 「「「メリークリスマス!!」」」 とても輝いた笑顔で、今日この日を祝福した。 どうして3人がクリスマスのことを知っていたのか、そんなことはもうどうでもいい。 楽しい楽しい宴会の始まりだ。 鳥の丸焼きを食べ、シャンパンを空け、慧音さんの料理に舌鼓を打つ。 酒を飲んで飲ませ、外の世界の本当のクリスマスについて話をしたり、彼女らが考えていた「くりすます」も説明してもらったり。 そういえば妹紅の全体的な色合いが「サンタ」にそっくりだということに気付き、試しに白い袋を担いでもらうと思った以上に似合っていて、俺1人が爆笑してしまったり。 なんと楽しい時間だろうか。 「え、このケーキ、慧音さんが作ったんですか?」 「あ、ああ。どうだろうか、口に合えばいいんだが……」 慧音さんの作ったケーキは、外の世界のパティシエが作ったかのような出来栄えで、俺は非常に驚いた。 まさか幻想郷でこんな本格的なケーキを味わえるとは思えず、一口食べただけで勝手に笑顔になってしまうほど、甘くておいしかった。 「うん! すごいですよ、慧音さん! 外の世界のケーキにもひけを取りませんよ!」 「そ、そうか。良かった……」 慧音さんのホッとした表情を見ていると、なんだかどきっとしてしまった。 「○○、外の木をよーく見とけよー」 「うん? 魔理沙、何を……」 酒が入って気分が高調気味な魔理沙に窓の傍へ連れてこられ、外にそびえ立つ木に目を向けさせられる。 魔理沙はいたずらっ子の笑みを浮かべながら、パチッと指を鳴らした。 瞬間、光が溢れる。 「お、おおお!」 「へへへー、すごいだろ?」 これには脱帽だ。まさか外界のクリスマスツリーをここまで再現してしまうとは。 電球の代わりに魔法の玉でも使っているのだろうか、全ての葉が色とりどりに光り、カチカチと点滅する様は綺麗と言う他なかった。 「いやはや……お前って本当に魔法使いなんだなー」 「本当にって、私はいつだって魔法使いだぜ? これぐらい、お茶の子さいさいだ!」 「おー、すごいすごい」 ぐりぐりと頭を撫でてやると、「なんだよー」と魔理沙は首を振って嫌がるが、誉められて悪い気はしないのか、その顔はとても晴れやかだった。 「ま、○○、これなんだけど……」 「え、これって……もしかして?」 皆が座って酒を飲んでいる中、おずおずと妹紅が差し出したその箱。長細い小さな箱だが、丁寧にラッピングされている。 いつの間にやら慧音さんと魔理沙も妹紅の後ろに座り、俺が箱を受け取るのを凝視していた。 3人の視線に圧倒されながら、俺は箱を受け取り、妹紅に確認を取って開けてみた。 中にあったのは、新品の万年筆だった。 「これは……」 手に取り、細部を眺める。感触や持った時の手触りがいい。手にフィットするような感じだ。 俺が万年筆をじろじろと見ていると、妹紅がためらいがちに口を開く。 「万年筆が最近駄目になってきたって、言ってただろ?」 「あ、ああ。確かに話してたけど……覚えてたのか?」 驚きだ。世間話程度にしか話したことがないはずなのに。 「妹紅が思い出して、私達3人で買いに行ったんだぜ?」 「どうだ? 使えそうか?」 魔理沙、慧音さんが促す中、俺は改めて手に合う万年筆を見て笑い、「もちろん」と答えた。 感激で涙でも出てきそうだった。 「ありがとう。本当にありがとう。大切にする」 泣きそうな顔を無理やり笑顔に固めて、俺は3人にできるかぎりのお礼を述べた。 慧音さんは年長者らしくほのぼのとした笑みを浮かべ、魔理沙はニヒヒと笑い、妹紅は鼻の上を掻いて照れた顔をしている。 「どこにしまっとこう……壊さないようにしないと」 「万年筆なんだから、書くために使わないと駄目じゃないか」 「あ、確かに」 妹紅の突っ込みに、皆が笑った。俺も笑った。とてもすがすがしく、こんなにも嬉しい気分になったのはそうないことだった。 楽しい時間は光のように過ぎていく。 食事はとうの昔に食べ終え、酒も段々と尽きていき、おしゃべりに歌にミニゲームにと騒がしかった部屋も静かになっていく。 このパーティを演出してくれた3人は、準備と本番に疲れてしまっていたようで。 「……動けないな」 肩には慧音さんが、膝には魔理沙が、背中には妹紅がそれぞれ身体を寄せていて、俺は身動きできなくなっていた。 彼女達は酒か場にでも酔ったのか、俺の周りで散々騒いだ挙句、いつの間にか眠ってしまったのだ。 3人共穏かな顔をして寝入っており、当分は目覚めそうにない。 「ま、いいか」 もう夜も更けて長い。普通なら床についている時間だろう。囲炉裏の火だけを絶やさないように、俺が起きていれば大丈夫だ。 四方から襲い掛かる柔らかい感触に少々精神が削がれそうだが……まあ、友達と雑魚寝していると思えば何ともない、はず。 「……プレゼント、俺も何か用意しないと」 パーティは終わったが、このまま彼女達にばかり色々と頂いては、あまりにも申し訳ない。 忘年会でも開いて、その時の料理や酒を俺が全部用意すればいいだろうか……料理は不得手だが、彼女達のためならどんなこともできそうだ。 「さむっ、薪、薪」 部屋の中だというのに寒風がそよいでいる。慧音さんの家の建て付けが悪いというわけではないはずだが…… 風が流れてくる先を見る。窓だ。魔理沙作のクリスマスツリーが光っているのが見えた。 「あ……」 雪だ。ツリーの灯りに照らされて、白い塊が空からふわふわ落ちてくるのが見えた。 七色の魔法の玉の光が、雪の色を玉虫色に変えていき、まるで上から下に虹がかかったかのように錯覚する。 「こんな日に雪って、またおあつらえ向きな」 ホワイトクリスマス。冬の黒幕とやらは分かってこの雪を降らせたのだろうか。 「……んんっ」 「ぐあー……」 「すぅすぅ……」 傍にいる彼女達にも見せたいが、心地よく眠っているのを起こすのも忍びない。 これから徹夜する自分への役得だと思って、ここは幻想的な雪景色を独占させてもらおう。 手を伸ばし、最後に残ったシャンパンのグラスを持ち上げる。 「メリークリスマス」 一気に飲み干し、今日この日、聖なる夜を彼女らと過ごすことができたことに感謝するのだった。 ※ ちなみに魔理沙達が参考にしていた外の世界の雑誌。 そこに書かれていた4番目のポイントは、 『後は雪が降るよう空にお祈りしましょう! ホワイトクリスマスになれば最高!』 だったとか。 ※ 新ろだ934 ───────────────────────────────────────────────────────────
https://w.atwiki.jp/shin-hn/pages/11.html
概要 概要として、干渉・協力・対立また真意不明の謎のキャラや改造人間、組織… そして事件に巻き込まれていく芸人・怪獣・高校生・一般人・情報屋・傭兵・宇宙人・軍人・お偉方・オタク・非凡人・光の巨人・ニート・オカマ・ホモ・ブラコン・ロリコン・シスコン・ファザコン・マザコン・偉人・変人・害児・改造人間等が壮絶な戦闘を繰り広げたり日常を過ごしたり性別、年齢の壁を軽く越えたりとするリレー小説である。 基本ルール これは参加者のハンドルネームを使用してのリレー小説です。用法を守り正しくご参加下さい。 1.キャラジャックは禁止です。参加したい方は自キャラを作成し、空気を読んで書き込んで下さい。 2.話の流れをつかめる程度に過去ログは読んでおきましょう。 3.参加自由、脱退自由です。 4.話の流れを無視したような発言や書き込みは多分スルーされますのでご注意を。 5.あんまり強すぎるキャラクターはチートと言われるので気を付けましょう。 6.戦闘は、あくまでも話を盛り上げるものです。自キャラを勝たせるためのものではありません。 7.会話についてですが、何か言ったら相手の返信を待ちましょう。
https://w.atwiki.jp/hisouten-aahokanko/pages/60.html
霧雨 魔理沙2 霧雨 魔理沙 返信用 ______ ´ `ヽ、 .. _,.'-=[><]=..,_ 【IP Port】***.***.***.*** 10800 . ヽi レノλノ)レ〉'. 【対戦回数】3 ノレ§゚ ヮ゚ノiゝ 【天候】続行 `k'_.〉`=' !つ 【使用キャラ】魔理沙 i_ノ'i! ̄i! 、 【その他】 ~'i,ンT,ン"~--------------------------------------------------------------------------------------------- ______ ´ `ヽ、Σ_,.'-=[><]=.,_ ヽi レノλノ)レ〉' ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ノレ§n゚ ヮ゚ノiゝ;;;''''【IP Port】***.***.***.*** 10800 `k'_!_|=⊂)) ''''';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; _ノ'i! ̄i! 、 ~'i,ンT,ン"~ --------------------------------------------------------------------------------------------- ,.-ー-、 / \ , ' \ /, _,.へ、_ ,.ヘ、 ´7 ゝ、 _,.r⌒i´ 〈ヘ ,'-'"く__ィ__,.-=ニ=ニ=-=`ヽ、 「ヘハ、_ / _,.イノ´ ', `'、_ | Vレ/ レヘ ,!ィ,.ィ´ γ ハ i ハ-_ i ハ> .| |l/イ/// ,.' .イノ / ハ_ニ、.ハノ,ィ'ハi イ i ,ゝ | l/ /// 、 i イレ/イト ´ i ` ヒノ' i ハノ ! |l/Y// `ヽ) .(、ハ.,,'ー' ___ "从ハノ 'r、_イ ノ Yヽ、 (´ ノ ,.イ ハi_ゝ くハ」 〈 i / ',ヘ i`=rー=ニ´Y)ヽイ // )ハ γ `(ヽヘ、_,.〉} {〉、_,.//、 ´〈,ヘハ、_,.、_ノ i〉、____つ(ノ / ,.イk 、_,,...-='iヽ、 /7´ ,〈 J´ Yi´ 'イ '., / i ー' Y !' _ゝ, 【IP Port】 ゝ)、 _/ `ー-= ´ イン 【対戦数】 `ーr=ゝ、____ハ、__,.イ'´ 【天候】 ヽ__/´ `ー´ 【その他】 --------------------------------------------------------------------------------------------- _,,.. --、 ,.. ''"´ ; \ |`'ー‐--< _;; -‐ ''"´ ̄`7 ,' 、_ `ヽr‐r'"´ _ / __/ _,,..>=-‐'─'─-<..,,_ ,!> }>''"´ _;;;; ;;;;;__ `"'<./ / ;; -‐'"´ `"''ヽ; `ヽ. 【IP Port】***.***.***.*** 10800 ;' /´ ,' / i ! __! イ i\ \ 【希望対戦回数】3戦 `ヽ、 ! i | メ_ ハ ハ_」,_ ハ '., Y 【天候】続行 )ヘハ !/7´ハ' |/ '´i´ハ`Y! ) ', / 【その他】ビタミンA不足で目が痛いぜ ,ハレ7! iソ !___ソ ノ! / V / ,/''" ' "'' ,レ')ノ ,ハ ノ ハ、 ー-‐-' u ノメハ i / i ( / レ\ ,. ィメノ ハ ノ `ヽ!/`ヽ),ノ`'iァ-r /メノ>-ァ‐-、ヘ( ' )へ!_,.イゝ-イ(X)/ / \)、 (/´ ./ レ'iヽ}>く_]/ Y / 7 !_/__」,ハ ;i ,ノ r! ! !/ レ' ゝ、 _,ゝ-へ --------------------------------------------------------------------------------------------- , - ´ ̄`ヽ、_ | `ヽ、 || /⌒_ゝ \ .|| __/_ _ヽ `- 、 || >_-X- _<=- 、 ) .||─´__, -- 、--、`' > ( ||__イ´イ、ル/_レルイi- ´ 【IP Port】***.***.***.*** 10800 |L レリrij ´し'r,iレ ヽ 【希望対戦回数】3戦 / ) ルi、 '、フ,イyルリ 【天候】続行 ト||.ヽノリレ`,- イ⌒ 、 【その他】 (⌒ヽ 、_r/ ヽ ,イi L|`,イノ ` / `----´-⌒`ヽ,--------------------------------------------------------------------------------------------- i \ / ヽ | / _, ─ ⌒>))<⌒ 、_ / / / ~~~~~~~-- | ,,,,;;;;;; ''''''''''''''''''''''' _,/i(ノ ノ\ Vノ,_ ルノ´ / / ,,,,;;;;; '''''"" ,ノ /ノ)i i.TO Oア.(ノヽ // ⌒ヽヽゝi ー ノ§,-、 i/, ´;;; ''''" 【IP Port】***.***.***.*** 10800 ノノ/⌒`/ー─ ´ ( 【希望対戦回数】3戦 ゝ_,/── ─ ´ iヽ`、''''' ;;,,,, 【天候】続行 , ->ヽノ__λ__ii ̄ ヽ\ 【その他】  ̄`/ / | ヽ | .\ ""'''''' ;;;;,,,,,, ,<´__/__i__,ゝ ヽ \ \ ""''''' ;;;;,,,,,,,,,,,, ,~イ__/`~~~´ヽ__ヽ´ | \ \ i_,ノ ゝ___) ---------------------------------------------------------------------------------------------【IP Port】***.***.***.*** 10800 ,.-ー-、 / \ , ' \ // _ _ _,.へ、_ ,.ヘ、´ 7 、 _ _,.r⌒i´-〈 ヘ、 ,'-'"く__ィ__,.-=ニ=ニ=-=_ヽ、. / ,.イノ´レァ予 伝yリ|', / ,..、 ///| fr| 《{_丿 Ljハ||./_,ノ/`il /【希望対戦回数】3戦 | ゞ| |、/// r-ァ ツ イイ´ i ハ il 【天候】続行 ̄| i i ,フ 云'I「|{ { { V リ \【その他】 || N /`ヽー弋イノ`衣√`ヾノ \ 从 |、ハ___Y ゜ ヘ\,イ乍} `ヽVリ| ! ゜ Y´ア´ .,| | ̄ ̄「 /i i  ̄ ~、 / {,,,,'〉 ノ i .、 ん i j ,i --------------------------------------------------------------------------------------------- / _> / ヽ 「 ̄`ヽ; ,. --‐─ァヘヽ.__,. -く7 =-」ゝ-く-=ニ /-、 ヽ、 _,.へ、____r、_____,.へ___ !、 `ヽ、_ ヽ.>r、____rヽ、____,.ヘ____ヽ`ヽ_!__ヽ、___< ヽ、ハ/ !__,!ィハ ! ハ `ヽハ、___ヽ___ >ヽ.レ、 i rt、/ レ' 、,!_ハ ヽ. `ヽ_二フ ノ) ハ ヒ_! ,r'-=!、! ハ ハ! i ヽハY!// , ヒ__rハ (ソ)/ i / 〉【IP Port】***.***.***.*** 10800 ノ .人 _ ///(ノン ハ ( 【希望対戦回数】3戦 〈へr V>、.,____ ,.ィ(Yノヘ / ! ハ〉..【天候】続行 .イ/ヽ/ヽ} { /V レ' 【その他】 c /7 ! ! /-イ ム ヽ. r〈/ 'ー' ! _r〉 7/ ヘr'"´ ヘ ---------------------------------------------------------------------------------------------【IP Port】***.***.***.*** 10800【希望対戦回数】3戦【天候】続行 ,.. ' ´ `"'' 、, / ,__ ヽ, ,イ'‐-、 __,.-‐'´i ' ,`' , '-‐〉 i__} 〈‐--ヽ, ,.-‐ゝヘ-‐'ヽ、,'´`"ヘ`r-‐、,ヘ、 ,'´ , ' ,' / / ,ハ ハ /ヽ, ハ ( `ヽ, `'ー ! i レ'‐- レ' V -‐ iメ、iノ, )‐'" ヽハi ○ ○ (ソ) i 対戦しようぜ! i ! '''' r─┐ ''''(ノ) ヽ, ノヘ > 、,_ヽ__ノ_,. <(X),ヘノ ノ | | ol | | { }、 --------------------------------------------------------------------------------------------- /~ ̄~⌒\ ,-_、 ‐ ‐― ‐ ‐― <. ;i ... ( (__ ‐ ‐― ‐ ‐― ‐ ‐―  ̄ノ;;;;; ... `¬´ ‐ ‐― ‐ ‐― _l二二二∑>lコ<了 ‐ ‐― <;;;;;;;;;;;;;______> ..... ( l i | .. ............. ....... ............. ( l ・ | ... ................. ............... ( l l |) .. 【IP Port】***.***.***.*** 10800 ( l tェェェ ヽ l //v, 【希望対戦回数】*戦 ( l | - ○ =====/=========K======= === == ( ,,,;;;ヽ lェェ / l ヽ\ 【天候】続行 \Y _ ヾv_ ヾ;;;/ /`―´ .... 【使用キャラ】 ヽ ∧ ........ Z /⌒ヽヽ^^ヽ [ O ] ... .......... ...................( )|;;;;;;ヽ (ノ) /) ... .............. .....∧ ノ  ̄ ̄)V /丿つ 恋符「マスタースハ゜ーク」 ‐ ‐― ‐ ‐― ‐ ‐― ---------------------------------------------------------------------------------------------【IP Port】【対戦数・天候】 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄)/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ______ ´ `ヽ、 _,.'-=[><]=.,_ ヽi レノλノ)レ〉' ノレ§^ ω^j、 _, ‐'´ \ / `ー、_/ ' ̄`Y´ ̄`Y´ ̄`レ⌒ヽ{ 、 ノ、 | _,,ム,_ ノl\ \`ヽ-‐'´ ̄`冖ー-く ∧_∧||\ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ ( ;´Д`) (オイ、なんか恐ぇのがいるぞ)||\\ \ / ヽ. || \\ / .| | |. \∧_∧ (⌒\|__./ ./ ( ´,_・・`)すげームキムキ \ ∧_∧ . _/ ヽ \ ( )関わらない方がいいよ・・ --------------------------------------------------------------------------------------------- _, -――――- 、 ゝ´ \ / /l∧ l`ヽ、 ヽ ヽ / ∧/┃ \l .┃\! ', lイ// ┃ ┃ }ハ ハ! i 【IP Port】000.000.000.000 10800. /! r―――- 、 (ソ)/ i / 〉 【対戦数】 l∧、_ l ○ ノ (ノン ハ ( 【天候】 //>ー―<ィー(Y ノヘ/ ! ハ〉 【その他】 ○/、_________,.ヾr‐} {_/V レ' , -──-- 、. {__l ノー ヽノ / 〈 __>----○-‐≦__ /____ ________ ヽ、 . | /、__i__ __i_ノ`ヽ | _,,,r=..)_ __Y´___ _〈===ゝ、 | 、 ( Y ) ノ .| ,,,__、イ_ノuヽ、__ゝ__,,>! .|  ̄ ̄`´`~´ ̄ ̄ |---------------------------------------------------------------------------------------------【IP Port】000.000.000.000 10800【対戦回数】0【強さ表】0 .,__ ., \ ‐-;-.,_ "''=;- .,_\ \\ "‐ニ‐-> "`"'-' \ ______二) ______ ヽ  ̄"'''─-、 ´ `ヽ、 ヽ__ ____-─ _,.'-=[><]=.,_ ヽ,  ̄ ̄ ̄ ̄ 三 ヽi レノλノ)レ〉' ヽ ――= ノレ§゚ ヮ゚ノiゝ | .`k'_.〉`=' !つ .| ―― ミ≡=_、 _i_ノ(,,i!_,-、i! __ ! _____ .彡≡=-'´ ̄ ̄ `~し'ヽ). ̄ ̄ ./ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ヾ、_、 / ヾ./_ _ // 、ー`、-、ヾ、、, 、, /i/ // ./// / / / / /今日も元気にブレイジングー! --------------------------------------------------------------------------------------------- __ r―‐- .._ , ,,,;;;;;´;;;;;;;;;;;`丶、 〉 ` <;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ;;\ 〈 r―- ヽr―-、;;;_... --―‐'―‐┐ , ,-―┴――‐┴――┴- ..j-――ォ 〈 【IP:Port】 /;;;;;;;;;;;;;;;;, イ二⌒Y⌒ T ⌒ヽr‐-、¨;;‐,,,.._ } 【対戦数・天候】 ヽ ;;;;;;;;;;;;ノヽ-'  ̄ヽ--ヘ _ノ-、 ヽ⌒ヽ ;;;‐,,,_ j 【その他】 \;;;;;{上/ / { ヽ ~-‐、j__ゝ-、;;<_ ヽ ;;_;j ノ ハ ヽ } i マ人;;;;;;;;ヽ ノ j / ヽ }、 ハ _ ヽ ヽ ソ;;;;;;;;;;;;\ / イ{ 大7 ‐-、\j \斗弋ヽ .._ j }ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;) (( lヽ イ ,ィ云テミ ィテ云ハ !ヽノヽ l_ ... ‐ } .Vハ! トュ リ トュ リll メ、 ノノ ノ l ゝ ー''′ ー''′!ハメト、ヽ { ハ ゝ._ __,,ィ . イノ(メjハノ ヽ' ハ j ‐-r -- ァ ' ノ{>O<} ヽj /丁  ̄ 丁 ̄ヽ イノノ {;;;;;;;ll-―-/!;;;;; ノ 〃 ト=イ ト=イ | _j -―-、l | ィ三三三三三三 _____ノ/ ノ.} j_zzィ 三三三三三三三 〈_____∧7ニニニ.ソ{ _ノ_ZZ}}三三三三三三三 7;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;〉 ≠ヽ三三三三三三三 {;;;;;;;;;;;;;;;;_ イ ー‐ ヘ ;;;};;;;l ゝ'ゞ' --------------------------------------------------------------------------------------------- __ r―‐- .._ , ,,,;;;;;´;;;;;;;;;;;`丶、 〉 ` <;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ;;\ 〈 r―- ヽr―-、;;;_... --―‐'―‐┐ , ,-―┴――‐┴――┴- ..j-――ォ 〈/;;;;;;;;;;;;;;;;, イ二⌒Y⌒ T ⌒ヽr‐-、¨;;‐,,,.._ }.ヽ ;;;;;;;;;;;;ノヽ-'  ̄ヽ--ヘ _ノ-、 ヽ⌒ヽ ;;;‐,,,_ j \;;;;;{上/ / { ヽ ~-‐、j__ゝ-、;;<_ ヽ ;;/, / / / ,ハ l | l l \ 人;;;;;;;;ヽ. // / /lィ7ナメ| | lハL_| | | } ,;;;;;;;;;;;;\. l /|l Nイ,ィ≠zハ | \l 「`ト | |;;;;;;;;;;;;;;;;;). |/ |l |〃{ i| V ィ*≠z【l / | |_ ... ‐ ハ| {i j| {i ji|》リ ノ / l! / |! `ー′ 辷zり ノ /i}. | 【IP Port】***.***.***.*** 10800 | | """ r── 、 """/ / ノ | 【希望対戦回数】*戦 、 l 、 ゝ ノ ∠_/イ// | 【天候】続行 / と__/> ..__ .. セ升/ ./// ハ. 【[[その他]]】. { /. ,// / /l l/ /// l / | 〈rヘヽ.,.へニゝ!_ィァ'-‐く__ン<]___ / ヽ.. ,i´___/ / /ム /|/ / / ' , /,i__ァ' i/ ハ// ノ」 レ'/ ヽ. ,'! / rく / ';_/ /、! .〉 〈 イ ヽヘニ7二 ! ,ヘ ヽ. 、_,..-、_!ン !_,ハ; 、 Y_,.ゝ-、.,__,r'"´ ヽ. /`''-ゝ; ハ 'レ' // `ヽ. ヽ. / ;7 ;'---‐=ァ , ''" ノ' r'/; _,.イ!_,,...-‐ ''´ _,,.. ''´ --------------------------------------------------------------------------------------------- ,,;;;;;" / > _人人人人人人人人人_ ,,;;;;'" || .|.| / l > ドラゴンメテオ!! < ,,;;;;;" | |.| .| ___/ l  ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄ ,|ヽ;;;" ||.| | | |. <´` `[><];;;;;;; l‐、_ ,;; | `, | | | | | | `ノフ-、__ >..,,;;;" l `、/ ! |j |j ( ll (,j' 'ヘ.!' ', 丁ヽ-;一´ ヽ,.-´,;;;;" l | ヽYl..l`|,.i_,j!l!==;;,`y,.;ヽミ_,='";|` ,/ ,、/| | _、- ´´ /´ ヾ ; _;'_`'='".;'∫l(、、、 丿 ィ===三三三彡,;| .,/ | | <、 ,ゝ `y ヽi=;/_,/`イ_/ / zィ = ==三三三彡; \ \ | !===r '`ヽ、 ,ノ_゙=-‐{´} .y' j' ;_ /====ZZ}}===三三 ミ ; \ ヽ, | | r"ヽ-'" k_'''"`y (.._,`k_,i~.{,.' ,,' `i;j"゙`ヽ、_ ≠ヽ===三三三三ミ \j .| .| l`='フ"nl {.} /.7 ,-. { k.,.∠_ `> .| .| ,'_,. " ..{.}」,{メ./,.'.丿 .k,__, 、= __ノ _ノ´ .| | { ,..-;,.` .r'´ ./`-; , `‐;ヽ;;┬-´ . | | `‐-..,,___`-、 . `'' ヽ=Y {j .'.' .`-" ! ./, .' ..'.'.' .'.' ,' `'';; .' .' .' ., 、;;;; ,,; .' .,-、 ./ / ,;;;;;;;;;;,, ,;;;" .\\ ./ ./ ,,;;;;;;;'.`;;;;;;;;;" \\ / / ,;;;;;;;' ,;;;;" ヽ、` `,. ,,;;;;;;;'. ,,;;;" ,;; / ヽ ,,;;;;;;;',;;;;" ,;;; / .∧ ヽ ,,;;;;;;;" ,;;;; ./ ./ | .i` 、 ..\ ,,,,;;;;;;;;" ,;;;;;;,,,,,,, ./ / | .| `,,、 \ ,,,,,,;;;;;;;;''" ,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ /;;;;;;;;;;;| |;;;;;;;;;;;; \_\ '' .,;;;;;;;;;" '''''''''''//゙''''''''''''''| |''''''''''''''''" \\ ,,;;;;;;;;;'" | .| `'" .. ,;;;;;;;;;;'" .| | 【IP Port】***.***.***.*** 10800 霧雨 魔理沙2 霧雨 魔理沙 返信用 カテゴリー別へ戻る
https://w.atwiki.jp/vipthmj/pages/259.html
リレー小説1 リレー小説3 リレー小説4 リレー小説5 リレー小説6 リレー小説7 リレー小説関連コメントページ 15話現在の現在位置票 1.神社 篠秋 霊夢 2.プリズムリバー家 ○○ プリズムリバー3姉妹 3.魔法の森 DY あお [[きーご]] 三月精 4.紅魔館の湖 ⑨ [[チルノ]] 5.[[アリス]]の家 [[CAST.er]] アリス 6.幻想郷のはしっこ [[狐ノ連]] 7.魔界 ロリス*3 神綺 ? [[放課後のJOKER]] レミリア ? [[鈴仙とウサ鍋]] ? [[ぞうちんちん]] ? [[BBRC]] 文 第16話 妬み屋、やってます。 第16話担当⑨ + ... WATAが幻想入りしたのは他の雀士と比べて早かった。 それがVIPで最高レベルの知名度を誇り、入るのは都市伝説とまで呼ばれる定期卓を運営するためが故なのかは分からないが。 彼が送られたのは地下666階だった。そこで出会ったのは当然の如くパルスィである。 パルは俺の妹!5分藍パル!!(ss)と言ってやまない彼は初対面なのにも関わらずパルスィに突撃ー^o^した。 まぁパルスィからカウンターパンチを貰い頬を抑える羽目になったのだが。 パルスィにあえて無茶苦茶テンションが上がり楽しそうなWATAなのだが そのテンションが上がっている理由が自分にあるということで邪魔はどうにもできないのだった。 むしろ多少自分の存在でテンションが上がっているWATAを見て多少こういうのもいいかも……とさえ思ってしまうパルスィなのだった。 んで、その他の人よりも早く幻想入りしたWATAが何をやっていたのかというと―― 「いらっしゃいっ。妬み屋やってるよっ!!!」 人間の里で”居酒屋 妬み屋”を経営していた。 麻雀卓も置いてあり常連になると経営者であるWATA&パルスィと打てるということでなかなか好評であった。 普段はパルスィパワーでハイテンションなWATAが表で運営し 嫉妬してほしいだとか、他の人に嫉妬しているとかそういったわけあり(?)の客をパルスィが相手をする。 居酒屋ということで人生に疲れたような人も来るのだ。そういう人にとってパルスィはいい話相手(?)になるのだった。 また、WATAよりも先に幻想入りした一般人もよく来店する。 外の世界の話で盛り上がったりするためである。 妖怪も多く来店する。 唐揚げを食べにルーミアが来たり焼き芋を納入するために稔子が来たりと―― そんな中で明らかに異質な来店者――八雲紫 いかに人間と友好的だろうとわざわざ式神に任せずわざわざ自らが人里に下りてくる。 そんなことは滅多にないのだ。 「あなたが来るなんて珍しい……」 「地底の妖怪がわざわざこちらに出てきていることが幻想郷のバランスを崩すことではありませんの?」 まぁ、出てきたところでこんなである。 確かに地底の妖怪が地上に出てくることは滅多にない、出てきているのは単純にWATAの強引な説得のかいあってである。 実際のところそんな強引に連れてこられて経営を始めた妬み屋の運営を愉しんでいる節も見えるが。 「でも、今日はそんなことをいいに来たわけじゃないの。」 紫はいつものような遠まわしな言い方をせずに直接、本題を言った。 多少、悲壮な顔となって。 「放課後のJOKERって知ってる?彼は幻想郷のバランス、そして結界を崩す恐れがある」 その言葉にWATAもパルスィも顔を凍りつかせる。 WATAはWATAで放課後のことをほんの少しだけ知っている。 パルスィは結界の崩壊の可能性に驚く。 「あの力は……次元を超えている。」 そう言い残して紫はスキマへと消えた。 実際何がというわけでもない。単純な警告である。 何かをしてくれと頼むわけでもない、ただの警告。 「結局何を言いたいのかよくわからなかったねっ☆ さ、今日も頑張ろうっ!パルッ☆」 その警告を受けWATAは多少顔を暗くしながらも 次の瞬間には元に戻っていつものテンションで店を開けた。 「……」 パルスィはいつものように妬み屋において自分の定位置に戻った。 あとは、いつも通り妬み屋を運営するだけだ。 だが、2人の心には僅かではあるが――紫の警告が残った。 そんな他のVIP住民が幻想入りするちょっと前のある時の話 第17話 無題 17話担当祐希 + ... 彼が目を覚ました時は既に家に着いた後だった 「改めて見ると…家でかいな」 思うと同時に口をついて出た言葉がそれだったのだが三人は気にした様子もない 「とりあえずあがったら?紅茶でも用意するわ」 「あ、あぁ、うん、お邪魔します」 そういって僕が家に上がろうとすると上の方から誰かがものすごい勢いで降りてきた。 「おっと、それよりも前に聞きたい事があるんだがな っと、こいつも外来人か?」 急に現れたその少女は黒を基調とした服に魔法使いのような帽子を被っていた。 「『も』?魔理沙の方にも誰か来たの?」 リリカが「マリサ」と呼んだ少女は面倒臭そうに帽子をかぶり直しつつ言う 「私の所にではないんだがな、何か大声でアリスーとか叫んでた奴がいたんだよ 他にも外来人が来ていたようだし、もしかしたらと思ったがやっぱり来ていたのか」 どうやら僕以外にも『外』から人が来ていたらしい。会えるといいなぁ 「しかしそいつ全裸で叫んでたんだ、気持ち悪いことこの上なかったぜ あぁ、私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだ」 「僕は○○、よろしく。」 軽く自己紹介を済ませてから聞きたい事を尋ねる。これ次第でいろいろ変わるかもしれない。 「今、僕以外にも『外』から人が来てるのかな?」 「あぁ、そうだ。結界の調子が悪いみたいだし、何か関係あるのかも知れないな。 他にもいるかもわらかないし、もう少し飛んで回ってくるぜ」 僕以外にも外から来た人がいる。 これは少し、異世界で希望の光が見えてきたのかもしれない。 「そう、いってらっしゃい」 「何かあったら教えてね~」 と、ルナサとメルランが二人を見送る。リリカはもう家に入っちゃったのかな? 「私たちも家に入りましょう その外来人さんたちには後でも会いに行けるわ」 そういうとルナサは僕の手をとって家に入る 「そうね、ここが貴方の家、になるのかしら。 ゆっくりしていってね!」 メルランの満面の笑みが少し横に長くなった気がしたけど気のせいだろう。 「じゃあお邪魔しまー「違うわ」」 不意にルナサの声が僕の声に重なった。 急に遮られて意味が分からず、何が違うのだろうと一人首をひねっているとルナサは 「あなたの家よ」 とだけ告げてくすくす笑うメルランを連れて先に入っていってしまった。 ――あぁ、そういう事か ようやく彼女たちの言いたかったとことに気付いて苦笑いしつつ、僕はドアを押し開けた。 「ただいま、ルナサ、メルラン、リリカ」 第18話 無題 18話担当ぞうちんちん + ... ――夢を見た、昔の夢、懐かしい夢、知らない夢、夢? ・・・これは夢? そこで俺はふと目が覚めた。 相も変わらず目の前はどこまでも続く草原だった。 人間はピンチになるととんでもない力を発揮すると言うが俺には立ち上がる気力すらなかった。 こんな事ならもっと親孝行しておくべきだったかな・・・。 俺は再び目をそっと閉じた。 (・・・さい・・・。・・・せん・・・。・・・です・・・。) ああ、ついに幻聴まで聞こえてきたか。 俺は妖怪の餌にされて死ぬんだな・・・。 俺のお肉って美味しいのかな・・。 死を覚悟した俺は何故だかとても清清しかった。 「いつまで寝てるんですか!!」 「っ!?」 頭に衝撃が走ると同時に俺は飛び上がった。 目の前には貴族のような衣装を着た小さな女の子が立っていた。 なんにしろ初めての人間と出会えて俺は歓喜した。 「あなたは・・・?」 「私の名は四季映姫・ヤマザナドゥ 。ヤマは閻魔、ザナドゥは桃源郷の意。この世界の閻魔をやっています。」 ――閻魔? 閻魔ってこう髭がモジャモジャで凄く大きくて・・・。 しかし目の前にいるのは閻魔と言うには明らかに見た目が不釣合いな女の子。 色々と突っ込みたかったが間髪いれずにその閻魔と名乗る子が口を挟んでくる。 「そう、大体貴方は現実に目を背けすぎている。もっと自分の(以下略)」 「はぁ・・・。」 「はいはーい!!四季様そこまでー!!」 「やめなさい小町!!まだお話は終わっていません!!」 その小町と呼ばれた女の子は背が大きく大きな鎌のような物を持っている。 「あたいの名は小野塚小町。四季様に就いて死神をやってるよ。」 ――今度は死神か。 死神と言えば髑髏だろう。 今更人間でない事にはなんの驚きもなかった。 「小町からこの幻想卿に異界の人間が迷い込んだと聞いたので様子を見に来ました。」 「幻想卿・・・?」 「細かい事は順を追って説明します。とにかく今は私の所に来て休みなさい。何日間も食してないんでしょう?」 「パトロール中に倒れてるあんたを見つけてやったんだ。あたいに感謝しなよ!!」 「パトロールとは偉いですね、小町。でもその職務中に寝ていましたね?」 「え!!ばれてた・・・じゃなくて、いやそれはですね。なんていうかその事情がありまして・・・。」 「言い訳以前の問題です。説教は後でたっぷりします!!」 「きゃんっ!!」 閻魔、死神。俺はこれからどうなってしまうのだろうか。 色々な不安が渦巻く中、逆に安心感もあった。 そこで俺はまた力尽きた。 第19話 人里にて 第19話担当外来人in無縁塚 + ... ――人里、というと現代社会では人の集まり住んでいるところを表す一般名詞でしかないが、 ここ幻想郷ではある一点の場所を意味する。 即ち、幻想郷の中で最も多くの人間が住む「人間の里」である。 幻想郷の中で人間にとって一番安全なこの場所は、しかし同時に妖怪の賢者によって保護され、 なんと妖怪退治を生業にする一家の真横に妖怪向けに夜中にあける店が存在するという、ちぐはぐな空間でもある。 「……こここそ、幻想郷の曖昧さ、妖怪と人間の共存という本来ならあり得ない奇跡を端的に象徴している場所なのかもしれないな」 そんな風にとある店の前でぼやくのは一人の青年。 ぼさぼさの髪によれよれのシャツ。ポケットのふくらみから財布が入っているのが見て取れるが、 それが無ければ浮浪者と見られても文句は言えない、とてもだらしの無い格好である。 彼は道行く人のちらちらとこちらに向けられる視線を感じながら、ため息を一つつき、目の前の暖簾を潜る。 途端に、勝負の熱気が体中を包み込む。 「幻想郷に、雀荘。……幻想郷に突如雀卓が現れた異変の影響ではやりだしたらしいけど……なんかなー」 とは言いつつも、顔はともすると緩みそうになるのを必死で抑えている。 ……別に稼ぎに来たわけではない。いや、もししばらく帰れなさそうなら当然そういった目的も含まれてくるのかもしれないが、 余裕のある今は断じて違う。 「……お?いたいた」 視線の先には、蜂蜜を想起させる流れるような金髪に快活そうな表情の一人の少女がいた。 彼女の目線は目の前の雀卓へと注がれている。 その油断の無い目つき、明らかに勝負に慣れた人間のそれであった。 「……確か求聞史紀には半丁賭場の予想も請け負うって書いてあったよな。てことは鉄火場には慣れっこなわけだ」 丁度終わったらしい少女の卓へと歩み寄りながら、無縁塚から命からがらたどり着いた外来人は考える。 彼の目的はずばりアリス。 だがあの怜悧な知性を持つ彼女のところへ一人で出かけていったところで、体よく追い返されるのがオチ。 知り合いになるにはどうすればいいか。と考えた結果、一つの結論に至った。 「……入っても?」 あまり元気の無さそうな声に、少女は振り返る。 「ん?ああいいぜ……?」 振り返りざまにその鼻先に突きつけられるのは一枚の証文。 「霧雨魔理沙、あんたと勝負がしたい。もし君が勝ったら俺の全財産をやる。……ただし君が負けたら……」 卓にいる者全員が、その異様な流れに身を硬くし、次の言葉を待つ。 そんな雰囲気を感じつつ、重い口調で外来人は告げる。 「俺をアリスに紹介して欲しい…………?」 周りの人間がずっこける音を聞きながら、彼は不思議そうに首を捻ったのだった。 そして、捻った拍子に、入り口にいた人影を認めた。 (ん、あれ、もしかして、あの雰囲気はVIP雀士……?) その人影と目が合い、外来人は漠然と、己のかなり厄い未来を思い、長いため息をつく。 そして彼は聞き逃していた、霧雨魔理沙の大切な呟きを。 「またアリスか……全裸で叫んでた男といい、いったいなんだって言うんだお前らは」 「ん?」 「いや……なんでもないさ」 TO be continue……? 第20話 題名をつけるとしたら腹黒 20話担当皇束篠秋 + ... 人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえというが、彼の役割はそれを応援することだ。よっぽどのことがないかぎり馬に蹴られることはないだろう。 「さってと……」 彼、篠秋は空を見上げて呟いた。 太陽は真上に昇っている。とにかく恋路を応援するにしても、偵察にしてもまずは情報の確保をすることが最優先。 そういうわけで彼はまずは情報を集めることにした。 ちなみに彼は霊夢から意中の相手は聞いてある。 「この新聞記者に会えればいいんだろうけど」 服の中から大きな紙を取り出すと広げる。文々。新聞と書かれていた。 「といってもこの世界じゃ中々見つかりそうに……」 「何かをお探しですか?」 不意に後ろから声をかけられた。振り向くと青いスカートと緑色の髪、そして透明な羽が印象的な少女がそこにいた。 「確かに自分は迷っていますが……貴女は?」 「人に名乗る前に自分から名乗れと教わりませんでした?」 確かにもっともな話だ。 「なるほど、自分は篠秋と申します」 彼は霊夢にしたように深々とお辞儀をした。 「私は大妖精と言います」 大妖精と名乗った少女は彼の体をじろじろと見る。 「外から来た人ですか」 「わかりますか?」 「ええ、よくわかります。で、何を探してたのですか?」 「情報を探していたんですよ」 「情報……ですか」 少し悩んだあと大妖精は手をたたいた。 「ここから少し行った場所にお店があるんです。そこのマスターに聞くといいですよ。狐耳の人です」 「……そうですか。ありがとうございます」 「いえいえどういたしまして」 「で、何をお求めでしょうか?」 大妖精の気配が変わった。 おっとりとした彼女はうってかわってまるで獲物を狙う獣のような眼をしている。 「貴方の依頼主を教えてほしいんです」 ニッコリと大妖精は笑った。 その笑顔の裏にはなにかとてつもないものが隠れているような気がした。 「……それはお断りします。依頼主の情報を渡すということは信用を崩すことになりますので」 しかし彼は言わなかった。 少しの間互いににらみ合う二人。先に折れたのは大妖精のほうだった。 「冗談です」 「悪質な冗談ですね」 「……次会ったときは教えてもらいますがね」 大妖精はそのまま森の中へ消えていった。 「生きた心地がしませんね……」 安心したのかため息をひとつつく。 とりあえず大妖精の言った通りその店へ向かうことにした。 第21話 取材の下僕 21話担当BBRC + ... 今の状況を確認する オレ、BBRCは今、空を飛んでいる…いや、飛ばされているのか? まさか本物の射命丸文とは思わなかった ここは本当に幻想郷らしい 彼女の風を操る程度の能力ってこんなこともできるのか 射命丸の操る風に乗って空を飛びながらオレはそんなことを考える そしてこうなった経緯を思い出す… 落下中に意識を失い、次に目が覚めたら陸の上だった オレを助けたと思われる人物がこちらを見ていたので話をしてみる 彼女は空から落ちるオレを風でここまで吹っ飛ばしたらしい …そんなことされてよく死ななかったなオレw 色々と考えてたら彼女が自己紹介を始めた 「射命丸文です。空から降ってきた人間という大スクープを記事にする為 貴方に取材しようと思いまして」 記事…と言われてオレは思い出す 「もしかして、文々。新聞とかいうデタラメゴシップのことか?」 そのセリフに射命丸はムッとする 「デタラメとは失礼な。文々。新聞は真実を伝える為に存在するのですよ!」 オレが突っ込む間もなく射命丸は質問に移る 「貴方の名前と、どこから来たのか教えてください」 幻想卿に初めて来た…と言っても通じるのか? 「オレはBBRC。ここに来る前はゲリラ的にファッカー…いや、普通に働いてた」 「あやや、ゲリラ的にファックするのがお仕事なんですか」 そのセリフにオレがずっこけそうになる 普通に納得すんなよw 性戯の英雄ですとかこんなところで言えないだろw 「続きを話すと、オレは突然幻想卿にやってきた それも気がついたら空から落ちてた」 射命丸がキョトンとしている 「…それだけですか?それだと記事になりませんねぇ」 オレへの取材対象としての興味をなくしたらしい 射命丸は考えこむ、そしてオレへ別の興味を抱いたらしい 「貴方、ゲリラと言ってたわね?」 突然、口調を変えてきた つまりオレへの興味が取材ではなく別の意味になっている 「それがどうかしたか?」 「言い方を変えれば神出鬼没…私に協力してもらうよ」 突拍子もない展開にオレは驚く 「協力?いったい何の協力だよ?」 「決まってる、他の人への取材協力よ 貴方以外にも突然やってきた人はいるはず その人たちを探して真実を確かめるのさ」 なるほどな、オレがいるとそいつらともコンタクトが取りやすいと読んだわけか 「一応聞きたいんだが、拒否権はないんだよな?」 無言の圧力を感じた 拒否したら最悪この場で喰われ、喰われなくてもここでのたれ死ぬよとの脅しだな 「わかった、協力する」 「期待しているよ、ゲリラファッカーさん」 そう言って射命丸はオレの胸を指さす オレは自分の胸を見る Tシャツを着ている、そこまでは良い そのTシャツにデカデカとプリントされていた文字にオレは唖然とする 『ゲリラファッカー』 …なんぞこれw というかさっき普通に納得したのはこれが原因かw というわけでオレは射命丸の取材助手(というか下僕?)として 彼女の取材に付き添っている 「で、何処に向かってるんだ?」 風に乗ってるだけなので余りに暇なオレが聞く 「貴方みたいな人間がいそうな所」 その返答に全然心当たりが思い浮かばないオレは 射命丸の操る風に乗って彼女についていくことしかできなかった… 「さあ、取材開始よ」 第22話 こまっちゃんの詮索 22話担当⑨ + ... 「で、結局この子は誰なんだい?」 「ただの外来人です。」 眠るぞうちんちんを見ながら小町と四季は話していた。 まぁいつも通りの二人の会話である。 普段と違うのはぞうちんちんの寝息があることぐらいだろうか 「四季様らしくないねぇ、わざわざあたいに連れてこさせるくらいの意味はあるんだろう?」 「ただの外来人。彼はそれ以上でもそれ以下でもありません」 四季の言葉に小町は質問をするが、四季はそれをピシャリと撥ね退ける。 閻魔の尺で小町をさしながら。 「最近外来人が多いからパトロールをしてきなさいなんて言ってそしたら死ぬ寸前のこの子がいたなんて出来すぎてないですか?」 「本当にただの外来人です。今はそれよりも別のことが心配です。」 「その心配にこの外来人は関わっているのか……」 詮索を続ける小町。 尺でさされてもお構いなしのマイペースである。 「小町」 今度は多少怒気を含んだ声で四季が呼んだ。 それでも小町は別段変わった様子はない。 「この子はあだの外来人です。余計な詮索はしない様に」 「はいはい」 流石にここまでピシャリと締め切られるともう無理である。 今度は素直に小町は引きさがった。 「しばらくこの子は目を覚まさないでしょう。その間この子を見ておいてあげてください」 「普段の仕事はしなくていいのかい?」 「特例です」 普段の仕事をせずにぞうちんちんちんを見ているだけでいい。 やった!サボれる!と言うのが顔から伝わるほどの笑顔の小町と それを困った顔で見つめ出る四季なのだった。 この死神サボリしか考えてはいないのではないだろうか? 「で、四季様はどちらへ?」 「この子のために色々と準備をします」 そういって四季はその場から立ち去った。 後に残るのはすーすーと寝息を立てるぞうちんちんとそれを見つめる小町だけ。 「普段の四季様じゃ考えられないねぇ、なにかこの外来人にはやっぱり秘密があるんだろうか?」 小町は一人黙考するようにして語りかける。 いつものように幽霊に語りかけるようにしながら――ぞうちんちんへと―― それをぞうちんちんが聞いているはずはないのだが小町はそんなのを別に気にするそぶりは見せなかった。 「それとも本当にただの外来人?どちらにしても面白くなりそうだねぇ」 幻想郷は、なにかを中心として動き始めているのかもしれない。 第23話 23話担当ぞうちんちん + ... ――サンタクロース 小学生の時の話。 冬になると周りの奴らがサンタサンタと騒いでいる光景がよく目に留まる。 そんな中俺は一人鼻で笑っていた。 ましてや天国や地獄なんて信じるはずもない。馬鹿馬鹿しい。 今思えば厨二病の類だったのかもしれないが。 「ようやく目が覚めましたね。」 「・・・ここは?」 「ここは彼岸。あらゆる煩悩から脱した悟りの境地です。」 「はぁ。」 「改めて自己紹介をさせていただきます。私の名は四季映姫・ヤマザナドゥ 。二つ名は地獄の最高裁判長。貴方のお名前は?」 そういえば閻魔様だったな。 俺はハハッと苦笑いをしながらそれとなく返事をした。 「ぞうちんちんです。」 「珍しい名前をしていますね。とにかく朝食の準備はもう既にできています。小町もお腹空かせて待っていますよ。」 ――朝食? 俺がこの人達と会ったのはお昼過ぎだったはずだ。 俺は半日以上倒れていたのか。 ふらついた足で俺は必死に立ち上がった。 「四季様おそーい。あたいもうお腹ペコペコだよー。」 「えっと貴方は・・・。」 「小野塚小町 だよ。もう忘れちまったのかい。」 そういえばそうだったな。 俺は今閻魔様と死神と食事をしている。 なんて変な話だろう。 そんな事を考えながらお腹が減っていた俺は目の前のご飯を口にした。 「貴方達、食事中は口を慎みなさい。そう、大体貴方達は・・・(以下略)」 「・・・いつもこんな感じなの?」 「うん。ひどい時は朝食だけで二時間ぐらいかかるからねぇ・・・。」 「こら!!ちゃんと人の話を聞きなさい!!」 「「きゃんっ!!」」 ~数時間後~ 「つまりこの世界は幻想卿と言う場所でここはその一部の彼岸という天国や地獄に近い場所と・・・。」 にわかには信じがたい話だが俺は現に羽の生えた妖怪などを見ている。 あまりに衝撃的すぎて信じたくなくても信じざる得なかった。 「それで貴方は外の世界からなんらかの理由でこっちの世界に転移されたと。」 「はい。」 しばらくの間沈黙が入りようやく閻魔様が重たい口を開いた。 「事情はわかりました。しばらくはここに住みなさい。その代わりしっかり仕事をこなしてもらいますからね。」 「あ、ありがとうございます!!」 「映姫様の下で働くのはきついぞ~。まあ、ぶっ倒れてもあたいが骨ぐらいは拾ってやるよー。」 「小町!!」 こうして俺は寝所と食事を提供してもらう代わりに閻魔様の下で働く事になった。 二人とも癖があるけど現実に誰かと話をするのも悪くない・・・ちょっとだけそう思えた。 第24話 題名をつけてもやっぱり腹黒 24話担当⑨ + ... 「あやややや、これは珍しい。霧の湖からこんな離れた所に妖精がいるなんて」 「お久しぶりですね、射命丸文さん。そちらこそ人間と一緒にいるなんて珍しい」 オレが文に連れてこられたのは幻想郷の端の方だった。 どこか尋ねても端の方、としか答えてくれなかったので微妙にへこんでいたりする。 そんなところで出会ったのは大妖精だった。 オレの知識ではチルノと一緒に霧の湖周辺で遊んでいるという程度のものしかない。 なぜこんな所にいるのかは謎である。 「チルノちゃんが怒ってましたよ、またおおがまに食べられたことを記事にされたって」 「真実を伝えるのが文々。新聞です」 チルノが蛙に喰われた記事か…… 確かに聞き覚えがあるな。つまり少なくとも文花帖のエピソードよりあとの時なのか。 いきなり幻想入りしてしまったが東方やっててよかったなぁ 「まぁ確かに事実ですしね」 あれ?大ちゃん意外と毒舌? チルノの保護者やってるってイメージが強かったけど やっぱり実際にくると違うんのか…… 「それで今日はわざわざ人間を連れてこんな辺鄙な場所まで?」 「それは秘密ですね、今回は記事のネタになりそうなものを探しにきたので」 「ネタですか……この当りだと狐ノ茶屋ですかね?」 大妖精の質問に素知らぬ顔で文は返したが大妖精は場所の候補を挙げた。 その候補を聞いた瞬間文の顔色が微妙に変わった。 多分図星だったのだろうw 「あややや、秘密があっさりとバレてしまいましたね」 「ここら辺で取材するところなんて狐ノ茶屋以外にありませんから」 文が頭をかいて舌を出す。 それに大妖精も微笑で返す。 なんか怖いぞwこの2人w 「では、私はこの辺で失礼しますね」 大妖精はそのあと文と少しだけ喋ってその場を後にした。 その後ろ姿を文は射るような眼で見つめていた。 「さっきのこは……大妖精?」 「ええ。妖精にしてはとても良く頭が回ります」 一応大妖精だということを確認してみる。 もしこれで大妖精じゃなくて他の種族でしたとかだったらなかなかに泣けたが確かに大妖精だった。 でもなんかオレが知っている大妖精とは少し違うような…… まぁ実際にあったわけじゃないしこの違和感は当然なものだろw 「⑨しかいないとも言える妖精の中では間違いなく異端です」 そんな楽観的に考えるオレとは違って多少真剣に文はつづけた。 なんかおかしいところでもあるのかねぇ? とりあえず空気が重いし話を変えてみるかw 「へぇ……ところで取材って言ってたけどどんな風にするんだ?」 「貴方にあの狐ノ茶屋にゲリラ潜入してもらいます」 「え?」 オレの質問に潜入捜査とあっさりと文は答えてきた。 オレまだここにきてほとんどたってないのにいきなり潜入?w それは流石につらいぜw 「私は新聞記者として顔が売れていますから私相手では話してくれないことも多いでしょう。 ですがあなたは外来人。あなたならば外の世界の話をしながら色々聞きだせるでしょう」 なるほど。オレの知識でも文の名前は幻想郷に知れ渡っている。 そんな新聞記者の文が言ったところで相手の口は固くなるだけだろう。 そこで外来人であるオレが言って色々聞きだすということか。 「聴きだすってどんなことを聞きだせばいいんだい?」 「狐ノ茶屋の常連やお勧め、あとは噂などについてでしょうか あんな茶屋には噂は多くあるものですし」 噂……ねぇ……w ファッキンゲリラなんていううわさが広まったら大変なことになるなw 余計なことは言わないで捜査してこよう 「把握した。とりあえず行って色々取材してくるw」 「取材ってことと私がいるってことはばらしちゃいけませんからね」 狐ノ茶屋へ行くオレの背中に声がかかる。 分かってるってwさぁ、オレの幻想郷初仕事、頑張るぜw 第25話 ステルスは闇を祓うか 25話担当wtt + ... 薄暗く閉ざされた木々の間を、幾筋もの光がなぎ払う。 光を媒介に紡ぎ出しされた魔法は、量子物理的に存在の許されない程のポテンシャルエネルギーを、一極した空間へと与え続けているのだろう。 励起したイオン状態へと存在の書き換えがなされた空間物質が、指向性を与えられ牙を剥き、亜空間の歪みを伴い襲いかかってくる。 プランクのうねりが観測出来るほどの短時間に、空間は圧倒的熱量を与えられる。 新たな光と熱量を振りまきながら膨張した大気は、数瞬の後に爆ぜた轟音を響き渡らせる。 色を変えた世界は、瞬きの間だけ、その彩りを切り取らせる。 これこそが、弾幕。 先ほどまで対峙していた妖精達のそれを、遙かに上回る密度で繰り広げられる、星型の火力。 八に分けられた概念の中で、それぞれに世界を構築して現世を変質させる魔法具『八卦炉』。 最大火力をもって世界を変質させ続ける目の前の魔法少女は、どうやら僕のことがお気に召さないらしい。 ステルス性能を遺憾なく発揮して窮地を――3人のふくらみを十二分に堪能しながらも――逃げ切ったと思った瞬間、僕の意識は光条に曝された。 騒ぎを聞きつけたのか現れたのは、黒い帽子に金色の髪をたなびかせた、魔法少女(推定)だった。 彼女はどうやら状況証拠のみで僕に対する敵愾心――明らかに誤解だ――を抱いたようで、二言三言の会話すらもせず、弾幕を繰り出してきたのだ。 箒にまたがる彼女の機動は剛胆にして緻密であった。 空間連結構造をステルスする力業で相対速度を稼ぐだけの現状では、直に追いつかれてしまうことが目に見えていた。 世界を意味的にステルスさせる僕の能力では、攻撃性能としては期待出来ないし、己を紳士たるよう戒める意味でも、少女に攻撃の手を加えることなど出来ようもない。 だが使い方によっては、圧倒的火力、絶望的火力であっても、つつがなくかわしきることも、不可能なことではない。 とは言え、紳士として振る舞わざるを得ないこの性が、今だけは恨めしい。 そもそも何ら後ろめたいことなどしていないのであるから、この戦闘は無意味でしかない。 ここは会話という人類の叡智を以て、終止符を打つに限るだろう。 「待ってくれ、待ってくれよそこの可愛い魔法少女! 僕は人を探していただけなんだ!」 「……下半身を露出して人探し? どう考えても犯罪者だな」 「え、ていうか、僕の姿が見えるの?」 「見えるんじゃない、感じるんだ。あんたからは犯罪者の匂いがぷんぷんと感じるな。そして犯罪者は、弾幕を以て殲滅されるべきなのぜ?」 「だから誤解であってさ! 決して下心があったわけでなく、それはとても気持ちよかったんだ!」 人類の叡智も、大してあてには出来ないと言うことが、現時点を以て実証的に明かとなったようだ。 あらん限りの会話を搾り尽くしたと言うのに、なぜだかより険悪な雰囲気が場を支配したように思う。 急激に大気を震わせ始めた八卦炉が、返事の代わりに輝条を絞らせる。 耳元を掠める荷電粒子のプラズマの勢いを見るに、そろそろ脅しの域を超えてきたように思える。 魔法少女の認識覚からステルスしているというのに、この精度。 もしかしたら、初めから威嚇のつもりなどさらさらなかったのかもしれない。 決して華麗とは言えない足裁きで避け続けるには、あまりにも弾幕が密に撒かれすぎているため、このままではそろそろ限界が近いことを予感させる。 僕も本気を出さなくてはいけないと、そういうことだろうか。 やれやれ、この「力」は、”レジェンド”か、せめて”DY”を相手にするまでは使うつもりはなかったのだけれども。 それはすなわち、紳士として。 グレイズし続ける僕を不思議そうに見ながら――通常弾幕が軒並み偶数弾になるのだからさすがに気がついたか――魔法少女は八卦炉の動作を緻密化させているようだ。 八の世界で足りないのなら、その世界を更に八に分けてブーストさせればよい、そういうことなのだろう。 僕は知っている。 八卦は世界を八に分け、炉の内部でそれぞれに再構築を行い、複雑に絡み合わせることで物理空間をねじ曲げる、純粋数学理論の一種だ。 僕は知っている。 綿密に練り上げられた世界を、幾重にも干渉させることで生じた余剰エネルギーで物理現象を書き換える、純粋魔法理論の一種だ。 僕は気づいている。 それはすなわち、空間そのものの認識を書き換えてステルスする僕の能力とは同質であり、かつ対極の位置に存在する、純全たる火力そのものなのだ。 魔法少女が支配する擬似世界の、五百十二卦に及ぶ収束を認識したところで、逃げることを諦めた。 大規模火力による壊滅的蹂躙の気配を読み取ったのだ。 和紙が、与えられるとしよう。 これで大砲の砲撃を防げと言われても、不可能だ、そう答えるしかあるまい。 放たれた砲弾を防ぐのに、紙は無力でしかなく、ただ破られるだけだ。 ……否。 放たれた砲弾を防ぐのに、紙は無力でしかなく、ただ破られるだけなのだ、が、しかし。 それでもわずかであれば、砲弾の軌道を変えることならば、出来るのだ。 何万枚、何億枚の紙を次々に繰り出したのならば、被弾することなく完全に防禦が出来るだろう。 ステルスにより、擬似的に相転移させた時空膜を以って空間の連続性を断絶させ、ほんの少し、本当に少しづつ、火線軌道を屈折させ続けるのならば。 それを刹那のうちに何千、何万と試行するのであれば。 これから彼女が放つであろう、恒星爆発並の火力を防ぐことすら不可能ではない。 魔法少女に悟られぬよう、周囲の空間位相をもステルスさせたが、超高出力のプラズマ励起が絞り出すエネルギーを逸らすことが出来るかどうかは、とは言え、それこそもはや卦でしかないのだ。 八卦炉のうなりが限界を超えようかと言うその刹那、魔法少女の瞳が鋭く光った。 僕の脇へと視線を移し、一切の攻撃行動を放棄した彼女が駆け寄った先には、一人の少女が倒れて居た。 少女、なのだろう。 蒼い髪に禍々しい翼を備えて意識を失っているその少女は、薄暗い森の中で、とても儚く、輝いて見えた。 「こいつが倒れているとなると、ただごとじゃあないな。お前のしまt……話は後で聞くことにするぜ。……とりあえず、隠せよ」 これで茶番はお仕舞いのようだ。 この邂逅が、やがて全てを巻き込むに違いないのだと、頭でなく心が、確信している。 蝶ネクタイとワイシャツ以外を脱ぎ捨てて、ジェントルスタイリッシュに立ちつくしていた僕……紳士きーごは、ここにきてようやく息をつくことが出来たのだった。 第26話 アリスはヤンデレ 26話担当⑨ + ... 「アリスアリスアリスアリスアリス……」 vip住民がここにも一人幻想入りしていた。 現在位置は人間の里。 無縁塚が麻雀に置いて魔理沙に勝負を挑んだ建物の前である。 ちなみに先ほどのアリスの情報を懸けた戦いは魔理沙が無縁塚をドラ爆で飛ばし、有り金全部を奪うという結果だった。 無縁塚乙と言わざるを得ない。 当然その光景を彼ずっと”彼女”は見ていたわけで賭けの内容も全て知っている。 魔理沙が戦利品を掲げながら暖簾をくぐり出て行ったのを確認すると彼女は入れ替わるようにして暖簾をくぐった。 多少好奇の目で他の客から見られるが別にそんなのは気にしていない。 ただブツブツとうわごとのように一人の名前を呟くだけである。 呟きながら有り金全部を失い意気消沈する無縁塚のもとに歩み寄る。 そして有無を言わさずその首根っこを掴むとそのまま彼を引きずり裏路地の中へ連れ込んだ。 「アリスアリスアリスアリスアリス……」 「お……お前は誰だよ……」 アリスアリスとつぶやき続ける”幼女”に恐れを抱く無縁塚。 彼女と表記したが実際は幼女である。年のころは10ぐらいだろうか? 想像してみてくださいいきなり幼女に凄まじい力で裏路地に引きずり込まれアリスアリスとつぶやかれる様子を…… な ん と い う ホ ラ ー 恐らくもうこの幼女が誰かは皆さん気が付いているだろう。 アリス争奪戦を繰り広げるvip住民のうち一人なおきん――いや、「ふたなり幼女☆ミ」である。 形式的に名前はなおきんにしておくが(ふたなり幼女☆ミとか書きにくいので)言わずと知れた変態の一人である。 「アリスアリスアリスアリスアリス……アリスは俺の嫁……」 当然であるが見た目は幼女でも名前のとおりふたなりである。 あれ?ふたなり幼女ってたばこの人もじゃね……? アリス好き=ふたなり幼女ですね、分かります っと、そんなことは置いておく。 とりあえず今無縁塚は魔理沙に負けて有り金全部取られた挙句 ふたなり幼女となったなおきんに追い詰められているのだ。 本当に無縁塚乙。アリス争奪戦はどこでも地獄なようだった。 「アリスアリスアリスアリスアリス……」 (幻想麻雀で調子よかったしきっと勝って情報もらえるだろ!⇒(゜д゜)……あ こんなこと思ったからだよな……orz) 無縁塚は今絶体絶命の窮地に立たされていた。 なおきんが少しずつ呟きながら無縁塚に近づき…… 続き
https://w.atwiki.jp/gensouiri/pages/2765.html
なんていうか、東方心仮面と同じ臭いがする気がする・・・? -- (名無しさん) 2011-04-18 00 15 55 …一話リンクの所が56話に飛ぶようになってるぞw -- (名無しさん) 2011-06-14 04 10 31