約 758,192 件
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/557.html
・5月5日スレ内の、徒然あきこと法然ちゃんの絵『赤ゆっくりIN風船』を元にしたSSです 『風船ゆっくり』 D.O 「ゆぁーん、だしちぇ~。」 「しゅーりしゅーりさせちぇ~。」 祭りの露店に、今年は多少珍しい商品が並んでいた。 ぱっと見では風船釣りの、いわゆる風船ヨーヨーのようだが、一つだけ違う点がある。 それは、水槽にぷかぷか浮かぶ風船の中に、 「ゆぁーん!おみじゅしゃん、こわいぃぃいい!!」 赤ゆっくりが入っている事だ。 「おっちゃん、一回。」 「おーし、ねーちゃん。上手く釣れよ!」 今挑戦しているのは、街に住む法然お姉さん。 浴衣がまぶしい和風美少女だが、ゆっくりが好きと言う話は聞かない。 ようするに、そんな人でも普通に遊ぶような商品だと言うことだ。 水に浮かぶ風船を釣り上げるには、50円払っておっちゃんから受け取った、専用の釣り具を使う。 ティッシュのこよりで作った釣り糸の先にはハンガーの針金で作ったのであろう釣り針がつけられている物だ。 周囲の客層は当然と言えば当然だが、子供が多い。 最近野良を見かけなくなったゆっくりの、しかも赤ゆっくりとなると、 興味深々なのだ。 そ~・・・ついっ! 「ふーん、れいむね。」 「ゆーん。おねーしゃん、たすけてくれちぇ、ありがちょー!」 「やったねぇ、ねーちゃん。んじゃおまけにもう一つ、まりさももってけ!」 「ゆぁーい!ゆっくちたしゅかっちゃよ!」 「へいへい、ありがと。」 こんなわけで、割と難易度は低めである。 「おにぇーしゃん!ゆっくちさせちぇにぇ!」 「まりしゃ、とっちぇもゆっくちできりゅんだよ!ゆっくちよろしくにぇ!」 「・・・あなた達、自分達がどんな状況にいるか、わかってるの?」 そう言うと、法然お姉さんは2匹の入った風船を高く持ち上げ、 その周囲で行われている事を、しっかりと見せてあげたのであった。 ------------------------------------------------------ 釣られていった赤ゆっくり風船はというと、その後の運命はさまざまである。 法然お姉さんの周囲、神社の周りでは、赤ゆっくり風船を使って少年達が、様々な遊びに興じていた。 「よーっし!今度はバッチリ潰すぜ!」 「ゆぴぃぃいいい!?ゆっくちやめちぇぇぇええ!!」 「せーのっ!」 びゅっ!ぱぁんっ!! 「ぴ・・・」 「よっしゃっ!」 「俺五勝目~。」 「くっそー。どうして潰れねぇんだよ。くっやしー!」 「ぴ・・・ゆびぇ・・・」 小学生達が、風船を石畳の地面や木の幹にぶつけて遊んでいる。 その足元には、風船の破片と餡子の染み、たまに潰れきれず半端に体の砕けた赤ゆっくりも落ちていた。 ハッキリ言って風船ヨーヨーで遊ぶ方法など大してないのだから、 赤ゆっくりが入っていたりすれば、こういう遊びに走るのも当然だろう。 当然、ここまで周囲を汚す遊びなど、周りの迷惑がわかる程度の子供たちならやらないのだが、 それはそれで、赤ゆっくり達にとっては不幸だった。 ばいんっ!ころん。ばいんっ!ごろりっ。 「ゆぴぇ?びぃ!?ゆぇぇ!?」 そういう子供達は、普通にヨーヨーとして遊んでいるのだが、 中に入っている赤ゆっくり達は、一回手から放たれるたびに風船の中を転げまわる。 ぱちゅりー種などは購入されて5分以内に風船内で嘔吐し、10分以上生きている者は一匹もいなかった。 「ゆびぇ・・・げびょ・・・えれえれっ・・・」 「うわ。きったねぇ。捨てよ。」 まあ、たまにはヨーヨーとしても、それ以外としても遊ばない、 中の赤ゆっくり達の事を考えてくれているのか、優しく持ってくれる少年達もいた。 「「ゆぁーい!ゆっくち!おにぇーしゃん、ありがちょー!」」 二つの風船には、可愛い赤れいむと赤まりさが一匹づつ入っている。 「あれ?遊ばないのか?正一、健一。」 「お父さん・・・そんな事したら中の赤ゆっくり、駄目になっちゃうでしょ。」 「わかってないな~。」 「ふぅん。そうかー。二人ともゆっくりに詳しいな~。」 翌日。 「・・・き・・・ぴ・・・」 「空気抜けちゃったみたいだねー。(棒読み)」 「あちゃー。これは予想外だったねー。(棒読み)」 「きゅ・・・ぴゅ・・・」 風船の空気は見事抜け切り、ぴっちり風船のゴム生地に包まれた赤れいむと赤まりさは、 空気を吸おうとゴムに包まれた口を必死にくぱくぱさせながら、ゆっくりと衰弱死したのであった。 「「・・・・ゆ、ゆゆ・・・」」 「見えた―?」 「「み、、みみみ、みしぇにゃいでぇえええ!!」」 法然お姉さんの手のひらに収まった2匹は、風船の中でプルプル震え、 身を寄せ合うように風船越しにすーりすーりしながら、現実をこれ以上見たくないと叫んだのであった。 ------------------------------------------------------ 祭りの翌日。 祭りに遊びに行った法然お姉さん宅では。 チョキチョキチョキ・・・ 「ゆぴゅるるぅ。ゆぁーい!まりしゃ、おしょとにでれちゃよ!」 「おにぇーしゃん、しゅーりしゅーり、ちあわちぇー。」 「ま、ちょっとイジワルしただけなんだけど。・・・あんたらも災難ねぇ。」 ちなみに・・・風船ゆっくりを風船から出して、ちゃんと飼ってくれた家はこの一軒だけだった。
https://w.atwiki.jp/anzmura/pages/13.html
【ハロー】杏園高校/臨海学校編【夏の空】 過去ログは↑のリンクからどうぞ。 更新時間:0時 編成:F国編成 使用セット:おかしな街/霧雨降る街/国史学園 ※役職希望は無効になっております。 エントリーからゲームの流れ あらすじ 言い換え 見学する方へ 宿泊場所と設備 杏園高校って?
https://w.atwiki.jp/amaterasu/pages/116.html
「この糞チビ!試合控えてるのに無茶してんじゃねー!!」 「ヒーー!!スイマセン!仕方がなかったんです!」 出るや否やいきなり罵声を浴びせるヒル魔という少年。逆立った金髪、釣り目、裂けた口元。それを見た美空の第一印象は…。 (悪魔…?) 「おい糞チビ、ちょっと立ってみろ。」 「え?あ、はい…。」 ――ズキンッ!! 「あぐ…!」 「だ、大丈夫!?」 言われて立とうとするセナだがやはり足の激痛に立つことさえままならなかった。 「チッ!不味いな…。とりあえずタクシー呼んで…」 「そんな暇ねぇっスよ!私が担いで行くよ!」 「何言ってやがる!そんな事…」 ヒル魔が止めようとした時美空は既にセナを担ぎ走っていた。 「待ちやがれ!この糞ショートヘアー!」 人を担いで行くなんて無謀だ。普通は車のを呼んだほうが速く付く。そう思いヒル魔は止めようと追いかけた。 「無理ですよ!車を待ったほうが絶対…」 「急ぐよセナ君。しっかり捕まってて!」 「へ…?」 だが彼女は普通ではなかった! 「かそくそーち!」 「ひいいいいいいいいいいいいい!!」 「な…!?」 あっという間にヒル魔の視界から遠ざかっていく二人。 (あのスピード…一体…?) 「ひいいいいいいいい!!降ろしてぇぇぇぇぇぇぇ!!」 何台も車を追い抜き何度も対向車をギリギリで回避しながら現在美空は道路を爆走ている。 「我慢して…お?あったあった!」 やっとの思いで整形外科を見つけた美空だが後ろのセナは既にぐったりしている。 二人は受付を済ませ待合室で待っていたがお互いまったく喋らずしばらく気まずい雰囲気が続いた。 (ん~…暇っスねぇ…。何か話題でも…) (どうしよう…。何か話さないと…。美空さん退屈そうだし…) 「「あ、あの!」」 お約束とも言うべきか、タイミングドンピシャにお互い口を開いた。 「あ、セナ君からいいっスよ。(うわぁ…ベタな展開…。今時恋愛ストーリーでもやんねっスよ…。)」 「え、あ…じゃあ美空さんってお幾つなんですか?」 「今15、中3だよ。セナ君は?」 「(僕より年下なんだ…。)僕は16歳、高校1年生。」 「ええ!?てことは先輩じゃないっスか!?」 美空が驚くのも無理はない。目の前の少年、小早川瀬那は体は小さく雰囲気もまだ子供っぽい所もある。 正直ネギより少し上くらいと思っていたくらいだ。 「そっか先輩か…そういえばさっきの金髪の人は何者?」 「え…と、あの人は蛭魔妖一さん。僕の部活の先輩で恐いけどすっごく頼りになる人なんだ。」 (もう名前がヤバイっスよ…。恐いって所しか同意できねっス。) あまりヒル魔には触れたくない美空はとりあえず話題を変えた。 「所でなんの部活やってんの?野球?サッカー?」 「アメフト…アメリカンフットボールです。」 「なんっスか、それ?」 「それはですね…」 「小早川瀬那さん。」 「は、はい。あ、スイマセンまた後で…。」 アメフトの説明をしようとした時丁度診察が回ってきた。美空が手を貸そうとするが心配ないと一人で診察室へ入っていった。 「はぁ…大丈夫っスかねぇセナ君…。」 誰もいなくなった待合室の椅子に一人ダラっと天井を仰ぐように座り待つ美空。 「アメフトってなんだろう?」 「パワー・作戦・スピード三拍子揃った最強のスポーツだ。」 「へ~…ってうわあ!!え…と、ヒル魔…さん!?」 何気なく呟いた一言に後ろから返され驚き、更にその相手がヒル魔だった事に更に驚く。 「おい糞シスター。」 「ファ、ファッキンって…、てか何故私がシスターだと!?」 「春日美空。Å型4月4日生まれ。麻帆良学園3年Å組出席番号9番。ほう…陸上部所属か。」 「な…!?」 質問に対してヒル魔はノートパソコンを開き美空の素性をどんどん喋っていく。 「趣味がいたずら、ジッとしてるのと神父の話しが嫌い…か。とんだシスターだなケケケ!何々…身長162cm、上から…」 「ちょーーー!!ストップストップ!!」 年頃の乙女には恥かしい数値を言われそうになり慌てて止めにかかる。 「はぁはぁ…で、何が目的っスか…?」 その言葉を待ってましたと言わんばかりに目を怪しく輝かせ、悪魔のように口の端を吊り上げて笑う。 その姿の恐ろしさに美空は唾を飲む。 「テメェーには今週の試合に出てもらう!」 しばらくの沈黙。 …… … 「えええええーーーー!!?」 「あの…院内ではお静かに…。」 「あ…す、すいません…。」 美空は今の言葉の意味を整理した。試合とは恐らくアメフト、その試合に中学生の女子に出ろと?高校生相手に出ろと? 何を無茶な事を言っているんだこの人は? 「どーゆー事っスか!?」 「あの糞チビ実はうちのエースなんだよ。だから変わりにお前が出ろ。」 「だって外部の人間が出たら不味いでしょ!?」 「練習試合だから大丈夫だ。」 「練習なら代わりなんかいいじゃないっスか!」 「よく聞け糞シスター!エースが足を怪我をしたなんて知られて見ろ?敵は必ずそこに付け込んで来る。」 「でも顔見りゃ一発でバレるんじゃ…」 「心配すんな。あいつは色付きアイシールドを付けてるから顔がバレる事は絶対ない。」 「でもねぇ…」 「チッ…!」 なかなか説得に応じない美空にヒル魔は耳打ちをする。 「魔法が本当にあるとは驚いたな~。これを世界中にばらしたらどうなんのかねぇ?」 そう言ってパソコンを見せる。そこには武道会の動画と先程セナを担ぐためアーティファクトを使った動画が流れていた。 「……!!!まままま、魔法なんて、あああある訳無いじゃないっスか~。あは、ははは,はは…」 明らかに動揺しているのは誰の目にも明らかだった。ヒル魔は更に口元を吊り上げて続ける。 「他にもあるみたいだなぁ?あんなイタズラやこんなイタズラ、おお!これなんかバレたら停学もんだなぁケケケ!」 (悪魔だ…本物の悪魔だ。神は我を見捨てた…。もっとちゃんと祈っとけばよかった…。) 「な~に、ただ試合に出るだけで秘密にしてやるんだ。いい話しだろ?」 悪魔の囁きが美空の頭に駆け巡る。というよりもう拒否出来ないので答えは決まっていた。 「……わかりました…。出ますからそれだけは秘密に…。」 「YaーHaー!身代わりゲーーット!」 (はぁ…シャークティーになんて言い訳しよう…?ってそういえば…!) と言い訳の言葉を考えてると重大なことに気づいた。 「ココネ忘れてた!!」 「ミソラのバカ…」
https://w.atwiki.jp/megatenroyale/pages/83.html
123話 優しい悪魔と人間と人間 ごとりと音がしたので、彼女はそちらへ向け引き金を引いた。思慮も配慮もない、ただ恐怖からの反射的な行動だった。 強烈な光線が銃から飛び出し、ただの瓦礫を吹き飛ばす。ついでに建物の一部も破壊し、また新しい瓦礫を生み出した。 ごろりごろりと音が立つたび、彼女は半狂乱になって光線銃を乱射する。そのたびにまた新たな瓦礫が生み出され、また 新たな音を立てていく。彼女はこの単純な循環にも気づくことなく、ただただ銃を乱射するばかりだった。 ひとしきり撃って、引き金を引いても銃が反応しなくなった。弾切れではない。幸か不幸か、彼女の持つ銃は弾切れの 心配がない光線銃だ。連続で撃ちすぎてエネルギーの充填が間に合わず、一時的に使用不可能になっただけだった。 「落ち着け、落ち着け」 彼女はゆっくりと呟いた。これまた幸か不幸か、粉になった瓦礫と先ほど撒いた煙幕とが霧状になって、視界を塞いで いる。この隙に逃げよう。とにかく逃げて逃げて逃げまくろう、殺されるのはイヤだ、死にたくないなら逃げるしかない。 そう思い、振り返って走り出そうとしたら、目の前の壁に吸い寄せられるようにぶつかってしまう。背後に壁があった 記憶はないのに、なぜ? そう思っていると、地面もなくなってしまったことに気づく。壁がまるで磁石のように強烈な 力で自分を吸い寄せるため動けない。いったい何がどうなっているのか。 軽くパニックになりながら、力のほとんど入らない手足をばたつかせる。そのうち、これが壁ではなくて地面だという ことに気づいた。自分は、倒れたという自覚もないままに倒れてしまっているのだ。 早く逃げなければ、煙幕も埃も晴れてしまう。そうなったら殺される。逃げなければ、逃げなければ。その思いだけで 必死に手足に力を入れた。立てない。それでもなんとか逃げようと、必死で這い蹲って進んだ。視界が涙で歪み、呼吸が 嗚咽で乱れるのを感じたが、構っている暇はない。全身がしびれ、酷く寒いが、そんなことも気にしている余裕はない。 ぷにょ、ぷにょ、という奇妙な音と気配を感じた。ひいっ、と喉の奥で悲鳴を上げながら、彼女はそちらを振り返る。 「こないで、こないでぇえ!」 ロクに確認もせず、彼女は叫びながら引き金を引いた。大きくて重い銃を、片手で、しかも狙いも定めずに撃ったので、 まるで見当違いの方向に光線が飛んでいく。1発、2発。3発目を撃とうと引き金を引いたが、何も出なかった。 「ウォー! 撃た、撃た、撃たないで! 撃ったってモコイの死体ができるだけ、いいことなにもないよ!」 「いやぁぁぁあああ! こないで、こないで……こないでぇえええ!」 悪魔の言葉も耳に入らず、彼女はただひたすらに引き金を引き続けた。かちかち、とトリガー音だけがむなしく響くが、 そのことすら気づいていない。ただただ夢中で、目の前の脅威に対して銃を向けて引き金を引き続けている。 「ウォー! ウォー! やめ、やめ、やめ、やめて、撃たないでー!」 彼女に負けず劣らずのパニックになりながら、モコイは独特の柔らかい身体をくねくねと動かして彼なりの最大速度で のらりくらりと逃げ回る。そうこうしているうちに光線が飛び出てこないことにようやく気づいて、モコイは落ち着きを 取り戻した。独特の精神構造を持つ彼は、一度落ち着くとあっさり自分のペースを取り戻すことができる。 「イヤよ、やめて、こないで……死にたくない、死にたくないのよぉぉぉ!」 彼女の悲痛な叫びに、モコイの心は痛んだ。こちらに危害を加えてきたから敵だと思っていたけれど、こうして見ると 彼女も完全な被害者だ。むしろどっちかというと自分たちのほうが加害者っぽく見えてくる。そのちょっとした罪悪感と 憐憫の情から、モコイは彼女を説得してみることにした。 「……ねえ、チミ、泣いてるの?」 上半身を起こす力もなく、寝そべったまま必死で引き金を引き続ける彼女に、モコイはそう話しかけた。 「近寄らないでええっ! いやぁああああっ!」 「ウォー! ちょ、銃やめて! ボクやる気ないよ! ほら、武器捨てるよ、ね? これで安心、ラブアンドピース」 からん、と足元にトレードマークのブーメランを投げ捨てる。それを見たからか、彼女の引き金を引く指が止まった。 しかし震える銃口はモコイにしっかりと向けられている。そこからいつ光線が飛び出るかとビクビクしながら、けれども 表情に乏しい顔と口調でそれを隠すともなく隠したまま、モコイは交渉を続ける。 「これ、見てよ。キミの魔法でボロボロ、戦えっこないよ。無害だねボク、哀れな子羊、メーメー」 腰をくねくねさせながら伸びをひとつ。自分の傷ついた身体を見せつつ、武器を隠していないことを示すための姿勢の つもりだったが、ちょっと決めポーズっぽくなってしまったことにモコイは照れ笑いをする。 「ドゥフフフ」 「ひぃっ!」 「ウォーッ! やめ、やめて! なんでもないよ!」 また彼女の指がカチカチとトリガーを引く。モコイは今度は震え上がって腰をくねらせる。幸い、光線銃のエネルギー 充填がまだ終わっていなかったので、銃からは何も飛び出すことはなかったが、しかし彼女がまったく安心も信用もして いないことは明らかになってしまった。モコイはちょっぴり傷ついて、 「こんなにプリチーなのに、ボク……」 とぐったりと肩を落としてつぶやいた。場違いなまでのオーバーな感情表現はあるいは相手に安心感を与えることすら ありえる愛嬌のあるものだったが、しかし彼女にとってはそれすらも脅威であるのか、またびくりと肩を震わせて、手の 中の銃を激しく操作する。ただただ半狂乱になって、彼女はやみくもにトリガーを引きまくった。 かち、かち、かち。銃はなんの反応も示さない。 殺さなければ殺される、その思考に支配された彼女にとって、他者を殺すための武器が無力化したことはこのうえない 恐怖であった。反応しないのはなにかの間違いだ、といわんばかりに、彼女は盲目的に銃を操作し続ける。 かち、かち、かち。銃はなんの反応も示さない。 「いや……」 かち、かち、かち。銃はなんの反応も示さない。 「いや……いやぁぁ……」 かち、かち、かち。 「いやぁぁぁぁああああああああ!!」 ひときわ大きく絶叫し、銃を投げ捨て、頭を抱えて、彼女はうずくまり、そして、動かなくなった。 「……あれ?」 しばらく震え上がって固まっていたモコイは、ふと気づいて声を上げた。彼女の殺意とそれを体現する銃口が自分へと 向けられていないことに、ではない。いや、それにもいまさっきようやく気づいたのは確かだけれど、それともうひとつ、 彼女の意識が変化するときに、なんとなく、ブレのようなものを感じ取ったのである。 「もしかして、誰か、いる?」 みよん、と外法の力を全身から放ち、目の前で震える彼女の心を探る。「読心術」。夜魔に属する悪魔なら、ほとんど 基本技能と言ってよい技だ。さすがに低級夜魔のモコイの魔力では、彼女の精神世界の奥底まで潜り込んでいくことまで 要求されると酷なものがあるが、彼女の心の中に巣食っている同胞に挨拶するぐらいなら簡単なものだった。 《あらぁ、私に気づくなんて、誰ぇ?》 必要以上に色っぽい、気だるげな声が返事をした。この口調、正直モコイの得意なタイプではない相手のようだ。彼は 内心「やっちまった気味だねコレ」と思ったが、そんなことはおくびにも出さず、というか出したくても彼の粘土細工の 表情は変えられないし、動揺していたところで独特の口調ではそれが伝わりにくいのであるが、まあとにかく応じる。 「ボク、モコイさん。こう見えて、地元じゃけっこう大物ってことになってるんスよ」 《ふぅん? で、その大物さんが私に何か用なのぉ?》 ふわ、と、彼女の心の中に潜んだ悪魔が、その姿をあらわにする。四肢が虫のような節足のものに化した全裸の女性。 「あれ? 見ない顔だね、チミ。しかもなかなかストロング、今の時間に出歩くのはルール違反じゃないかな?」 片足を軸にくるりと回転しながら、モコイはこの街に集められた悪魔たちに下された命令について触れた。あの青白い 船長とメイドさんが言うには、最初は弱い悪魔から、だんだんと強い悪魔を放っていくということになっていたはずだ。 目の前にいるこのクモっぽい女悪魔は、ざっと見積もってモコイの3.2倍から7.4倍は強い。そんな強い悪魔がこんな早い 時間に外を出歩いていていいのだろうか。 《そんなこと言われてもねぇ? 私、さっき蘇ったばっかりでなにがなんだかわかんないし》 「お、今の発言、とってもストレンジ。興味しんしん君だね、ボク。詳しくプリーズ」 強いと褒められてまんざらでもないのか、体を揺すりながら応じた女悪魔に、モコイがテンポよく合いの手を入れる。 ノリのよさの中に知性のひらめきも見え隠れするモコイの口説き術に、女悪魔も警戒心を解いてか饒舌に答えた。 《私は鬼女アルケニー。このヒロインちゃんのメシア覚醒を邪魔しろって命令を受けてね》 「ふむふむ。あ、誰に、は言わなくていいッスよ」 とモコイは必要のない気配りを見せる。悪魔に対して命令を出せるような存在など、言わずとも限られている。 《まぁ、命令じゃなくたって、こんな高貴な魂ほうっておく手はないじゃない?》 「気持ちはわかるね。う~ん、見るからにテイスティ」 モコイは口を腕でぬぐうそぶりを見せた。女悪魔の話をスムーズに聞きだすためのオーバーな相槌ではあるが、実際 彼も悪魔だから、半分以上は本気で"救世主"の清らかな魂を味わいたいと思っているのは仕方がない。 《で、まぁこの子の心の奥に網を張って、じっくり頂こうと思ってたんだけどね》 「清らかな乙女の危機、そこに颯爽と現れる一人のヒーロー、その名は!」 《ザ・ヒーロー》 「安直だね」 ちょっと拍子抜けしてモコイはがくりと肩を落とすが、まぁ田中太郎とかよりはマシだったということで我慢しよう、 と意味のわからないポジティブシンキングで再び顔を上げた。 「で、そのヒーローくんに殺されちゃった、と」 《そう。ただ、完全には死にきらなかったみたいね。いまこうして蘇ってるってことは》 とアルケニーはまるで他人事のように言った。実際、彼女自身にも実感はないのだろう。なんとしてもという意地と 執念で蘇ってきたわけではなく、なんか気がついたら蘇っていたのだ、投げやりになるのも無理はない。 《原因はこの子たち、でしょうね、きっと》 アルケニーは自分の体にたかる虫を追い払うようなしぐさをした。その言葉と動作の意味がわからず、モコイは少し 首をかしげながら目を凝らす。すると、うすぼんやりとだが、白い糸くずのようなものがアルケニーにまとわりついて いるのが見えた。いや、同化している、というか、アルケニーの肉体を形作っている、というほうが正しいか。 「なにそれ」 《あら、知らないの、夜魔のクセに》 「同属仲魔にウトいんスよ、ボク。タラスクくんとかは仲いいんだケド」 つい最近まで死んでいた悪魔に勉強不足を指摘され、モコイはフクザツな気分でポリボリと頭を掻いた。 《"虫"よ。あなたみたいな夜魔になりきれなかった、弱い弱い"虫"。それがこの子に憑いて、いっぱい増えちゃって、 それでなんかいろいろあって私を蘇らせたみたい》 そのなんかいろいろってなんなのかな、と思ったが、それを指摘すると「そんなの知るか」と逆ギレされそうだった のでモコイはただ「へぇ」と感心だけすることにした。 《正直、いい迷惑よ。このままじゃ、また怖ぁい怖ぁいお兄さんに神経弾ハメされちゃうわ》 「外道だね、ヒーローくん」 《外道ね》 モコイの独特の言語センスから見事な形容表現が飛び出して、アルケニーはくつくつと笑った。外法の悪魔から外道 よばわりされるのは、ヒーローくん的にはどう思うところなのかな、とモコイは場違いなことを考える。悪魔より悪い ド外道という意味なのか、それとも裏の裏は表でまっとうなことだと胸を張れることなのか。ま、名前からしてかなり イケてない系だから、どっちでもいいのかな、という結論に達して、彼はシニカルな微笑みを浮かべる。もっとも彼の 体の構造の都合上、いつもの口をポカンとあけた表情からほとんど変わっていなかったが。 「それで、どうするのチミ?」 《どうって?》 モコイの漠然とした問いに、アルケニーが取り付く島もない返事をした。そのニヤついた表情から察するに、なにに ついて聞かれたかわからなかったわけではないだろう。むしろ「そういう質問だと、たくさん答えがありすぎるのだが どの答えをお望みかしら?」と言わんばかりの、底意地の悪い反応と受け取るほうが自然だ。 「とりあえずなんとかしないと、その子死んじゃうよ。左手ないし」 と、モコイはそもそも最初の目的であった少女について触れた。彼が指差したアルケニーの足元には、彼女の宿主で あるところの少女が、頭を抱えて丸まっている。顔は覆われていて表情や顔色はわからないが、体が痙攣に近いような 震え方をしているのを見るだけでも相当危ないことはわかる。 《そうなのよねぇ》 とアルケニーも表情を曇らせる。普通なら「死んじゃえばいいじゃない、ていうか死んでくれたほうが手間が省けて 好都合」と答える場面なのだが、なにせいま現在アルケニーの生命を支えているのは、足元の彼女の精神の中に残って いるアルケニーの残滓に"虫"がたかったエネルギーだ。彼女が死んでその精神が消滅したら、アルケニーも運命を共に せざるを得ないだろう。望まぬ蘇生とはいえ、再度死ぬのもごめんだ、と彼女は不快そうに手足を揺する。 《実体化できるだけのMAGがもらえれば、とっとと出てくのもやぶさかじゃないわよ?》 と提案はしたものの、モコイは顎に手を当てて首をひねるばかりである。そんな持ち合わせがあるならば、初めから 「どうするの」なんて聞きはしないのだから、当然といえば当然の反応だ。もちろんアルケニーだって期待して言った わけではなかった。 「う~ん」 《冗談よ。間に受けたならごめんなさい》 妙に熱心に考え込んでいるモコイに、アルケニーは優しい声をかけた。傲慢さゆえに女神の怒りを買ってクモに転生 するハメになった悪魔らしからぬ行動は、彼女は彼女なりに今の状況に混乱と後ろめたさとを覚えている証拠だった。 「うん、外にいるボクの仲間なら、そのMAG持ってるかも」 とその思いやりを知ってか知らずか、モコイは勝手に話を進めて、ひとり外へと出て行く。 《ちょ、ちょっ? どこ行くの?》 「ドンウォーリー、そこで待っててよ」 あくまでマイペースな小さな悪魔は、彼特有のふらふらとした足取りで外に出て行く。その背中が、妙に頼りがいが ある大きいものに見えて、アルケニーは思わず前肢で両目をこすった。 ぷよん、ぷよん、と気の抜けた足音を立てて(ウォー! 立てたくて立ててるんじゃないよ!)、建物の外に出る。 視界もいつのまにかずいぶんと晴れており、きょろきょろと見渡すと、先ほどの看板の陰に二人の人影が見えた。 ……あれ、二人? と疑問を抱きつつも、悩んだ所で意味がないためモコイはさっさとそっちへ向かって歩き出す。 ぷよん、ぷよん、と気の抜けた足音を立てて(しつこいねチミ、ボクは大真面目なのに、失礼だよホント)、一直線に 看板の陰へと向かっていき……がしりと掴み上げられた。 「ウォー! なんなのチミ! 暴力反対!」 先ほど同じようにして衝撃魔法をブチ込まれた記憶が蘇り、モコイはバタバタと手足を動かして、精一杯抵抗する。 頼れる武器であるところのブーメランをついうっかり置いてきてしまったことが悔やまれてならない。 「……放してあげて、私の仲魔よ」 と横から救いの女神の助け舟が入る。ナオミの呼びかけに応じて、学生服の男はモコイをぼとりと地面に落とした。 ずいぶんと無礼な扱いにさすがのモコイも憤慨するが、とりあえずそれはそれとして、今は大事な用件を優先だ。 「チミ、チミ、チミ! そのパソコンの中、MAGのいい香りがするね」 といろいろすっ飛ばしていきなり本題に入られて、学生服の男……中島朱美は反応に困って眉をひそめる。その顔を 見て、はっと気づいたモコイは最初から丁寧に説明しなおすことにした。 「じつはかくかくしかじか。これで全部説明終わりってことで、小説のお約束ね、コレ」 「……つまり、その子が誰彼かまわず攻撃していたのは、アルケニーという女悪魔のせいだってこと?」 モコイのメタフィクショナルかつ抽象的な説明に、ナオミがうまいことフォローの会話を入れる。さすが、フリーの エージェントとして世界を股にかけて活躍するサマナーはコミュニケーション能力が高い。 「うーん……えっと……あー……その通りだね、ザッツライト」 「今の間はなんだ」 とモコイの下手な嘘はあっさりと見破られ、中島の冷たいツッコミに晒される。 事実、彼女が暴走していたのは、あながちアルケニーだけのせいでもないのだ。もともと彼女の心に「他者を殺して でも生き残る」という思想の片鱗があり、それがアルケニーや"虫"のせいで増幅した、というのが正確なところである。 その意味では「彼女は自分が生きるために他人を殺そうとしている」のは事実と言わざるを得ない。 だが、そういう思いを抱かない人間なんかいるのか? 他人より自分が大事だと思うのはしごく当然、当たり前だ。 そういう当たり前の思いを、無理やり増幅させられてしまったという意味では、やはり彼女が攻撃的になっているのは アルケニーのせいだというのも、同時に事実ではあるのだ。 そのへんの複雑なニュアンスをなんとかして伝えたいのではあるが、モコイの知恵と語彙ではかなり難しいのだった。 どうやってこの男を説得しようか、モコイは首と、ついでに体をくねくねと捻って考える。 「……いいだろう」 と、モコイがグッドアイディアをひねり出す前に、中島があっさりと承諾した。 「もっとも、ロハでMAGだけくれてやるつもりはない。契約して仲魔になるぐらいはしてもらう」 「うーん、まあ確かに妥当なトコだね」 しごくごもっともな中島の主張に、モコイは同意を示してうなずいた。アルケニーだって、あの女の子と心中をする ハメになるぐらいなら、その程度の条件なら呑むのは覚悟の上だろう。 「交渉成立、ってことでいいかしら?」 ナオミが看板の陰を出て、親指でクイッと先を指差しながら微笑んだ。無防備に姿を晒しても攻撃が来ない、と確信 していなければできない振る舞いだった。彼女が攻撃してこない、というのは事実ではあるが、それを証明するものは なにもなく、モコイの証言があるだけだ。それでもナオミはそれを信じてくれている。それだけ仲魔を信用してくれて いるということに、モコイは感激して涙を拭った。涙は出ない体だが、まあ気分で。 「……ああ」 と言いながら、中島はまだ半信半疑な様子がありありで物陰から体を出す。失礼なヤツだね、とモコイはちょっぴり 不満になった。せめてナオミみたいに、全身に緊張感は張り巡らせているけれどそういうそぶりは見せない、ぐらいの 洒落た対応はできないものか。 「じゃ、レッツゴー。こっちだよ、こっち」 と、ぷよん、ぷよん、と気の抜けた足音を立てて(ウォー! まだひっぱるのそれ?)モコイは先導して歩いていく。 もっとも彼のそんな気配りなど必要もなく、すでに煙も埃もすっかり晴れており、明らかに不穏な気配が漂う店が一軒 あることはそこにいる全員にはっきりと見えていた。不自然なまでに壊れた店先、あちこちに残る焦げ跡。店先に放り 出されていた光線銃を、中島はそっと拾い上げた。ところどころに染み付いた血は、おそらく彼女自身のモノだろう。 その血なまぐささと生暖かさ、ぬるぬるとした感触……そして銃そのものの重みが、中島になんともいえない不快感を 与える。軽く舌打ちをして、モコイのうしろについて店内に入った。 「こっちこっち、紹介するよ、マイフレンド」 モコイが手招きする。その先には、クモのような姿の悪魔と、その足元でうずくまった姿勢でガタガタと震える少女。 これはモコイにしか分からぬことだが、その姿勢はさきほどこの店を後にしたときからほとんど変わっていなかった。 唯一と言っていい違いはといえば、服と地面とに広がった血の染みが大きくなっていること。 「かくかくしかじか、面倒な交渉は中略。小説のお約束ね、コレ」 「誰に話してるの?」 「それは聞かない約束だよ、マイスウィート」 奇妙なコンビの奇妙な会話を聞き流しつつ、中島はCOMPを開き、プログラムを操作、契約モードに切り替える。 「こっちの準備はいいぞ。いつでも入れる」 《ありがとう、助かったわ。……いちおう言っておこうかしら。コンゴトモヨロシク、ね?》 中島の言葉を受けて、アルケニーは新たな主に向かって科を作った。この出会いを仲介してくれた小さな同胞に向け ちらりと感謝の視線を送る。モコイは照れくさそうにブーメランを持った手を顔の前でぶんぶんと振った。 では早速、とCOMPの中に入り込もうとしたアルケニーを、中島が片手を上げて静止した。 《……?》 「まずその前に一仕事だ」 言いながら、中島は前に出した手をすっと腰の後ろに回す。 「……!? あなた、まさかッ……」 ナオミの表情が変わる。なにが起こっているのかわからず、モコイは不安げに二人の顔を交互に見渡した。その目が、 見覚えのある"それ"に吸い寄せられるのは無理からぬことだ。"それ"はあの女の子が持っていた光線銃。禍々しく光る 銃身は、中島の手から女の子の頭へと一直線に伸びて…… ど し ゅ っ 。 「なッ、なにするのッ……」 突っかかろうと一歩前に出たとたん、モコイは重量のある何かに真上から踏み潰された。アルケニーがモコイの体に 前足の一本をのしかけてニヤニヤと意地の悪い笑顔を浮かべている。先ほど心安く会話していたときとはまったく違う 表情。なにが彼女を豹変させたのか、とモコイは説得すべく大声を上げた。 「ウォーッ! ど、どいてよッ!」 「それは無理ね、命令だし」 アルケニーの笑顔がいっそう邪悪にゆがむ。もうニヤニヤというよりニタニタという感じだ。それを見てモコイは、 自分が大きな考え違いをしていたことに気がついた。そう、そもそも最初の最初、根本から間違っていたのだ。 「命令とかッ……! こいつは、あの子をッ、せっかく、助かりそうだったッ……!」 「アンタ、悪魔のクセになにズレたこといってるのぉ?」 アルケニーが前足にぐっと体重をかける。その重量と筋力たるやすさまじく、モコイに骨があったらバキバキと音を 立てて折れているところだ。 「確かに、ズレてるわね」 背後から、冷たいツッコミの言葉が降りかかる。ナオミだった。 「チミまでそういうことッ……」 信じていた契約相手にまで自分の意見を否定されモコイは小さからぬショックを受けるが、しかしナオミの表情と、 そして全身から立ち上る感情の気配に気づいて抗議の言葉は中断された。 「ここでは殺し合いが正義。殺せる相手を殺すことで、文句を言われる筋合いはない。それは認めるわ」 「あらぁ。そっちの召喚師さんは分かってるじゃな……い、がッ!」 ナオミの細腕が、見た目からは想像できないような握力でアルケニーの顔面を締め上げる。 「あなたがその子を撃ったことに関しては、不愉快でも我慢してあげる。でもそれとは別に我慢できないことがある」 もう片方の手で、モコイの上に載っている足を掴み、こちらもまた万力のように締め上げる。ミリ、ミリ、ミリ、と 肉が軋む音が、荒れ果てた店内に響く。それは死霊の泣き声のようにモコイには聞こえた。 「私が怒っているのは……あなたが、私の仲魔を傷つけたこと」 アルケニーが声にならない叫びを上げながら、前足に絡みついた万力を必死で振りほどいた。顔面のほうも剥がそう と、前足両方をナオミの手首に必死に引っ掛けるが、クモの節足が災いして無駄な抵抗に終わっている。 「足蹴にしただけじゃない……私の仲魔の、真剣な行動を……侮辱した」 顔面の拘束が急激に緩んで、アルケニーの姿勢が軽く崩れる。その瞬間に、ナオミの拳が無防備な顔面にめりこむ。 巨体が、浮き、吹っ飛び、壁に激突した。 重石のなくなったモコイは、よろよろと立ち上がった。ナオミの顔を見る。なんと表現すればいいのだろう、怒り、 悲しみ、自省、同情、虚無感……いろいろなものが混じりすぎていて、その表情を一言で表すことができそうにない。 その鬼神のような表情を見て、モコイにはなぜか、優しい、という表現が頭に浮かんだ。 「侮辱、ね。たかがそれしきのことで戦うのか、君は」 端正な顔を不気味な微笑みで歪めながら、中島が呟く。片手にパソコン、片手に光線銃という姿は、戦うには非常に アンバランスな格好に見えるが、誰知ろうこれこそが中島にとっていつもの戦闘スタイルだった。 「たかが? 名誉と信用は何より重いのよ。あなたもサマナーなら覚えておきなさい、ボウヤ」 対するナオミは徒手空拳。だが拳法使いでもある彼女にとっては決して戦力不足の状況ではないし、なにより彼女は 酸いも甘いも噛み分けてきた歴戦の戦士であり、その経験という武器がある。 一触即発の空気が、荒れ果てた店内に張り詰める。 [午前10時半] 【ナオミ(ソウルハッカーズ)】 状態:左肩に抉られた傷(出血なし)、全身に軽い打撲、頭から少し流血。憤慨中 武器:なし 道具:日傘COMP、黄金の蜂蜜酒、酒徳神のおちょこ 仲魔:夜魔モコイ 現在地:港南区・シーサイドモール 行動指針:呪印を無効化する、情報を集める、レイホゥを倒す 中島を不快な敵と認識、戦闘態勢 【中島朱実(旧女神転生)】 状態:右腕にレーザーによる傷、頬に軽い傷 武器:ジリオニウムガン 道具:封魔の鈴、COMP、MAG2550 仲魔:ロキ、ゴブリン、アルケニー他2体(ロキは現在別行動中) 現在地:港南区・シーサイドモール 行動指針:弓子の安否を確かめる、弓子との合流、弓子以外の殺害 ナオミが仕掛けてくるなら、自分の身を守る 【夜魔モコイ(ナオミの仲魔)】 状態:けっこう大ダメージだが、問題なく動ける 行動指針:それなりにナオミを助ける 【鬼女アルケニー(中島の仲魔)】 状態:MAGをもらって実体化、健康 顔面にダメージ 行動指針:中島の指示に(いちおう)従う 【ヒロイン(真・女神転生)】 死亡 道具:ロイヤルポケット(残弾なし)、毒矢×4、煙幕弾×3は近くに放置中 Back 122 Next 124
https://w.atwiki.jp/newani4/pages/301.html
悪魔と吸血鬼! 恐るべき変身! ◆45MxoM2216 ここは、バトルロワイヤルの会場にある隠された地下通路。 そこに展示されていた『ジョースターの系譜』 DIOの義理の兄弟にして宿敵、ジョナサン・ジョースターを始めとする様々な『ジョジョ』たちの様々な『奇妙な冒険』 それを見てしまった吸血鬼DIOは、自らが空条承太郎に敗れるという未来を知ってしまう。 そんな認め難い真実を知ってしまったDIOは…… 「フハハハハハ!!!空条承太郎、恐るるに足らず!」 DIOは、中々にハイテンションであった。 何故先ほどまで自らの敗北の未来を知って暴れていたDIOが、このようにハイテンションになったのか? それは…… 「よもやネズミ如きに遅れを取るような男だとはなぁ!なまっちょろい奴め!」 『ジョースターの系譜』の続き―――DIOを倒した後の空条承太郎を見たからだ。 最初は自分の死んだ後の歴史なんぞ見るまでもなく壊そうとし、実際結構な量の展示品を壊したのだが、その途中で承太郎がスタンドに目覚めたネズミ相手に無様を晒しているのを見て、破壊を止めた。 いくらスタンド使いだとはいえ、たかがネズミ相手に嵌められる姿は滑稽の一言にすぎる。 しかもダサい頭をした学ランの男に助けられる始末。 この空条承太郎の無様な姿を見たDIOは、大きく溜飲が下がった。 「挙句の果てに勝てるはずの戦いで娘なんぞを庇ってプッチに殺されるとはな!」 さらに歩を進めると、自分と親しいプッチ神父が空条承太郎を殺し、自分の敵討ちをしていたのを知り、DIOの暗い気持ちは吹っ飛んだ。 しかも記憶DISCとスタンドDISCを奪われ、散々娘の足を引っ張った上での無様な死だ。 その上庇った娘までもがプッチに殺されたのだ。 これが愉快でないはずがない。 途中で何やら自分と似た男の活躍も展示されていたが、見ず知らずのジョースター家の活躍なんぞ見てもしょうがないとろくに見もしなかった。 今のDIOには空条承太郎の無様な姿しか見えないのである。 「ジョースターのファンからすれば、これも美しい親子愛といった所か……」 しかし、吸血鬼としてパンを貪り食うが如く人間を襲って血を吸っていた際、どれだけ大切な我が子であろうと吸血鬼化した途端に襲いかかる母親を見ていたDIOにしてみれば、親子愛なんぞプリンの上に乗った硬貨のように不安定なものだとしか思えない。 「所詮、このDIOに勝てたのも、ジョナサン譲りの火事場の馬鹿力にすぎないというわけか!」 子供の頃からここぞという時に度々発揮された、ジョナサンの火事場の馬鹿力。 それに散々煮え湯を飲まされたDIOからすれば、同じような火事場の馬鹿力に敗北したというのは、納得はしたくないが理解できなくはないことだ。 「スタープラチナ・ザ・ワールドなどという大層な名前を付けておきながら、承太郎はせっかく覚えた時止めもこのDIOのようには成長させられなかった―――どころか弱体化までさせたようだし…… 所詮二番煎じは、オリジナルを越えることなどできんのだ!」 よって、DIOはこう結論付けた。 星は世界をほんの一瞬覆ったが、星の煌きはやがて日が昇ってくればどんどん衰える。 反して世界はどんどん成長する。 たった百年足らずで、馬車しか走っていなかった世界が自動車が走りジェット機が飛び交う世界に変わったように。 そして世界が発展すればするほど、朝など待たずとも星の煌きは弱まるのだ。 「人間には『世界』など使いこなせはせん!吸血鬼にして帝王であるこのDIOでなければな!!」 こうしてDIOは一応は前に進んだ。 『真実』を受け入れた。 そして乗り越えようとはしている。 しかしそれは空条承太郎の『未来』―――それも屈折した目線で見ての『未来』を見た上でのことだ。 わざと不覚を取った場面だけをことさら注視し、「これなら勝てるのではないか?」と思い込む。 そんな後ろ向きな乗り越え方でしかない。 それで実際に自分が強くなるわけでも、相手が弱くなるわけでもないのに。 『残り4時間です』 しかし自分が後ろ向きなどとは露ほども思わないDIOは、一時間半もの間暴れていたことを内心で少し恥じつつも当初の予定であった地下通路の探索に戻ろうと―――― 「DIO様!無事でしたかい!」 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 音の正体を確かめるべく地下通路を進んでいたラヴァレイは、音が急に止んだのを訝しく思っていた。 戦闘をしていたのだとしたら戦闘が終了した。 個人が暴れていたとしたら気が済んだといったところだろうか。 どちらにせよ、音の正体を確かめ「処理」をしなければ安心できない。 (それはそうと、『ジョースターの系譜』……中々面白い見世物だな) 波紋法やスタンドといった特殊な能力は個人的にかなり興味がある。 人を悪魔に変えたり、自身の姿を変える自分の魔術にも応用できるかもしれない。 さらにこの殺し合いにおいても有益だった。 参加者である空条承太郎、花京院典明、ジャン=ピエール・ポルナレフ、ホル・ホース、ヴァニラ・アイス、DIOの情報を手に入れることができたのだ。 先の放送でも誰一人名前の呼ばれていない彼らの情報を手に入れたことは大きなアドバンテージだ。 そしてラヴァレイにしてみれば、ただ情報を手に入れただけでなく、変身して彼らを騙ることまでもできるのだ。 ・・・・・ (最も、あくまで『ジョースターの系譜』 ジョースター一行はともかく、DIOの勢力はなりきれるほどの情報はないか) それでも容姿やスタンド能力が分かるというだけで充分なアドバンテージである。 そんなことを考えながら歩いていると、大きな音が聞こえてきた。 だがそれは、先ほどまで聞こえていた暴れるような音ではなく、人の声が反響した音だった。 「所詮、このDIOに勝てたのも、ジョナサン譲りの火事場の馬鹿力にすぎないというわけか!」 ……どうやら、本部以蔵の末路を見るのを半ば諦めた甲斐はあったようだ。 『ジョースターの系譜』で情報を得た後、ジョースターの宿敵であるDIOを発見する。 些か出来すぎているぐらいに幸運だ。 とはいえ、ここで取れる選択肢はそこまで多くはない。 話の通じない相手だと思っていたが、展示されていた情報を信じるならば、DIOは中々できる男のはずだ。 大方、自分の末路を知って思わず暴れていたといったところだろう。 話の通じる相手で、かつ殺し合いにほぼ乗っている相手をここで処理する必要はない。 となれば取れる選択肢は、二つだ。 一つは、音の正体は確かめたことだしさっさと戻って本部以蔵の末路を見ること。 一つは、せっかくだからこのまま進んでDIOと情報交換すること。 個人的にはさっさと戻る方を選択したいが、DIOが東側にいるということは、彼はホテル―――北東方面にいたことになる。 この殺し合いが始まって以降、ずっと北西の端っこの方にいたラヴァレイとしては、他の方面の情報も知りたいところだ。 一応は聖女ジャンヌの副官として、オルレアン騎士団の高官をやっていたのだ。 情報の重要性は嫌というほど理解させられている。 また悪魔マルチネの姿で集めた情報を騎士ラヴァレイとしてオルレアン騎士団に流し、騎士団を自分に都合良く動かしたこともある。 情報があったからこそ、ラヴァレイは神も悪魔も騙しきり、バハムート復活の目途を立たせることができた。 さらに、ここでDIOと情報交換すれば、先ほど手に入れた情報の有用性がさらに上がることは間違いない。 ベストなのは情報交換を手早く済ませ、さっさと戻って本部以蔵の後を追うことだ。 しかし、あらかじめDIOの人となり(吸血鬼だが)を知っているラヴァレイはともかく、こちらを知らないDIOはそう物分かりよく情報交換とはいかないだろう。 さらに、一応は本性を隠して行動している以上、この顔で危険人物と遭遇するのは避けたい。 そんなラヴァレイの要求を全てクリアする方法は……一つだけある。 ラヴァレイの顔が歪む。 比喩でもなんでもなく、本当に顔が歪んだのだ。 そして歪んだ顔が形を変えて――― 「『銃は剣よりも強し』 ンッン~名言だなこれは」 ジョースター一行以外の、DIOの勢力の人物はなりきれるほどの情報はない。 出会ったら戦闘になり、ジョースター一行に敗れるからだ。 しかし、何事にも例外はある。 その例外こそがこの男―――ホル・ホースなのである。 ホル・ホースはDIOの刺客の中で唯一、ジョースター一行と三回もの遭遇をしているのだ。 他の刺客は基本的に一回で敗れ去っているのにも関わらずだ。 自然と『ジョースターの系譜』にも他の刺客と比べて多くの情報が展示されている。 それこそ、ラヴァレイがなんとかなりきれる程度には。 そんなホル・ホースがこのバトルロワイヤルに参加していることも、また幸運であった。 DIOと接触し、手早く情報交換。 そしてなるべく急いで戻り、本部以蔵の末路を見る。 ラヴァレイ自身の顔は見られたくない。 ホル・ホースの姿ならば、無茶とも言えるラヴァレイの望みを叶えられるのだ。 最悪同行を命じられるかもしれないが、口八丁で切り抜けられるだけの自信はあった。 かつてアーミラが、何をどう勘違いすればそうなるのか分からないが、ラヴァレイを父親だと勘違いした時も、その状況を最大限利用してアーミラを上手くヘルヘイムに誘導した。 しかも、自分が父親などという厄介な誤解だけは解いた上で。 自分の演技力とアドリブの上手さに絶対の自信を持っているのだ。 「人間には『世界』など使いこなせはせん!吸血鬼にして帝王であるこのDIOでなければな!!」 (どうにも落ち着きがない男だな) そんな内心を微塵も見せず、ラヴァレイはホル・ホースとしてDIOに迫る。 「DIO様!無事でしたかい!」 「ホル・ホースか 主人の危機に馳せ参じるのはヴァニラ・アイスの方が先だと思っていたが……」 「たまたま地下通路を見つけて探索してたら、DIO様の声が聞こえたもんでして……」 「それでここまで来たというわけか」 バレてはいない。 このまま情報交換を済ませ、あわよくば都合良く誘導する。 まぁ、DIOは日中は自由に動けない以上、もし誘導できたとしてもすぐには芽は出ないだろうが…… ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 「……それでこの地下通路を見つけ、ここまで来たというわけか」 「ええ、そうです……それでDIO様は?」 上手くいった。 ホル・ホースへと化けたラヴァレイは、自分に都合の良い嘘の情報をDIOに伝えた。 この嘘が芽を出るか、それとも無意味な行動になるか、はたまた巡り巡って自分に不利益をもたらすのか、それはまだ分からない。 しかしこれだけは言える。 嘘の情報を信じさせた時点でラヴァレイは情報戦に勝ち、DIOは情報戦に負けたのだ。 「私はだな……」 DIOの話の要点を纏めるとこうだ。 言峰という男と出会ったこと。 仲間に引き込もうとしていたらポルナレフが乱入してきたこと。 その二人に逃げられたこと。 本能寺学園で大勢を相手にしたこと。 日本刀を使う女学生は殺したが、銀髪の侍、長髪の侍、格闘家の娘、三つ編みの男に不覚を取ったこと。 ホテルでセイバーという少女と遭遇し、一時的な同盟関係を結んだこと。 地下通路を探索し、いざという時の退路にできるか確認しようとしていたこと。 地下通路で見たものについては一切触れない辺り、意外と器の小さい男なのかもしれない。 「ポルナレフか……あいつには俺もJ・ガイルの旦那をやられてるんでね、次会ったら俺の『皇帝』でケリを付けてやりますよ」 「……そうだな、だが先ほど言った四人に対しては手出しは許さんぞ」 「分かってますよ、どっちみちDIO様の『世界』に一矢報いるような連中とはやりあいたくねぇや」 「……今日は珍しく良く喋るな。いつもはこのDIOを前にすると緊張して固くなっていたというのに」 「あー、特殊な状況なもんで、ちょっとハイになってるのかもしれませんね」 「……まぁいい、先ほども言ったように、このDIOの体には制限が課せられているようだ。 試しにホル・ホース、君に肉の芽を―――」 「ちょっと待って下さいよ、肉の芽なんて試しに埋めるようなモンじゃないでしょう! DIO様を妄信するだけの人形にさせられるのは勘弁ですぜ! 俺を花京院やポルナレフみたいに無理矢理従わせる必要はないでしょう!」 「……いやすまない、どうやら私の考えすぎだったようだ」 「……?よく分かりませんが、ヒヤッとするようなことは止めて下さいよ」 今ラヴァレイは喋りすぎたことにより、一瞬DIOに疑われた。 しかしそれは、ラヴァレイがミスをしたわけではない。 勿論、ホル・ホースがDIOを前にすると緊張することなど知らなかった。 しかし仮に知っていたとしても、彼は先ほどと同じように喋っただろう。 (あれだけホル・ホースしか知らないようなことを言ったんだ……多少は疑われても、確信にまで変わることはないだろう) 彼としては、情報交換さえ済めば良いのだ。 多少疑われようと、決定的な確信に至らせないうちに別れさえすれば良いのだ。 「それでDIO様、俺はDIO様が動けない日中は外を動き回るつもりですが……」 「ほう、ホテルを動けない主人を守ろうという気はないのか?」 「DIO様は俺が守るまでもないぐらい強いじゃないですかい…… それにまだまだ参加者の多い今は、動き回った方が結果的にDIO様のためになりますぜ」 「ふ、その通りだよホル・ホース それで、地下闘技場には太陽の光は届かないのだな?」 「地下なんだから当たり前でしょうDIO様 まぁずっと棺桶の中にいたんですから、その辺に疎いのは致し方ないことですがね」 「言ってくれる…… そうそう、このDIOから餞別をやろう しばらくはホテルにいる私には無用の長物だからね」 DIOがホルホースに黒いカードを手渡す。 「こいつぁありがたい それでは俺はこれから南下するので―――」 「ああ、励めよホル・ホース」 「……?なんだったのだ?さっきのホル・ホースは」 DIOはどことなく違和感を感じながらも、よもやホル・ホースが偽物とは思わない。 正確にはほんの一瞬疑ったが、DIOの僕でなければ知りようもないことを多々言っていたため、その可能性は低いと踏んだのだ。 「まぁホル・ホースはヴァニラ・アイスとは違ってこのDIOに心から忠誠を誓っているわけではないからな 大方、何か隠し事でもしているのだろう」 一応、ホル・ホースが何か怪しい動きをしたらすぐに『世界』を発動できるようにはしていたものの、結局何事もなく情報交換は終了し、ホル・ホースはDIOが動けない間は外を積極的に動き回ることになった。 『残り3時間半です』 「ふむ、そうゆっくりもしてられんな」 ただ戻るだけならば充分な時間があるが、時間には余裕を持った方が良いだろう。 「いやしかし、地下なのだから太陽の光など最初から気にする必要もなかったとはな」 自分の心配は杞憂だったと知り、ホテルへと戻りながら一安心するDIO。 これでホテルにてどっしりと構えられるというものだ。 DIOがラヴァレイの変身に気付かなかったのには、ラヴァレイ自身の能力の高さもさることながら、DIOの精神状態にもあった。 当然だ。 自分が死ぬという未来を見せられて平然としていられる人間などいない。 例え吸血鬼であっても、それは変わらない。 一応は立ち直ったものの、DIOの精神状態は普段と比べて格段に乱れていた。 もしもDIOが万全であれば、ほんの少しの違和感からホル・ホースが偽物だと確信できたかもしれない。 頭脳戦にてラヴァレイに一泡吹かせることもできたかもしれない。 しかし、傷心のDIOを置き去りにして、『世界』は動き続ける。 たくさんのもしもを置き去りにして動き続ける。 DIOは、ついてゆけるだろうか――― 止まらない『世界』のスピードに。 【B-4/地下通路/一日目 午前】 【DIO@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】 [状態]:精神的疲労、右腕と胴体にダメージ、全身にダメージ(小) [服装]:なし [装備]:サバイバルナイフ@Fate/Zero [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(9/10) [思考・行動] 基本方針:主催者を殺す。そのために手っ取り早く他参加者を始末する。 0:空条承太郎、恐るるに足らず! 1:夕刻までホテルで体を休める。その後、DIOの館でセイバーと合流。 2:ヴァニラ・アイスと連絡を取りたい。 3:銀髪の侍(銀時)、長髪の侍(桂)、格闘家の娘コロナ、三つ編みの男(神威)は絶対に殺す。優先順位は銀時=コロナ=桂>神威。 4:先ほどのホル・ホースの様子、少しおかしかったが……? 5:切嗣、ランサー、キャスターを警戒。 6:言峰綺礼への興味。 7 承太郎を殺して血を吸いたい。 [備考] ※参戦時期は、少なくとも花京院の肉の芽が取り除かれた後のようです。 ※時止めはいつもより疲労が増加しています。一呼吸だけではなく、数呼吸間隔を開けなければ時止め出来ません。 ※車の運転を覚えました。 ※時間停止中に肉の芽は使えません。無理に使おうとすれば時間停止が解けます。 ※セイバーとの同盟は生存者が残り十名を切るまで続けるつもりです。 ※ホル・ホース(ラヴァレイ)の様子がおかしかったことには気付いていますが、偽物という確信はありません。 ※ラヴァレイから嘘の情報を教えられました。細かい内容については、後続の書き手さんにお任せします ラヴァレイは変身を解き、なるべく急いで地下闘技場へと戻りながらも、自分に風が吹いていることを確信していた。 DIOへ教えた嘘の情報が活きるかどうかは分からないが、それを差し引いても有意義な遭遇だった。 これで、その気になればDIOになりきることもできるだろう。 DIOの言っていた人物と遭遇した際には、また自分に都合の良いような嘘を言って上手くコントロールするのもいいかもしれない。 しかもDIOから手渡された黒いカードの中身は、管楽器のような形状をした機械だった。 テレビさえ知らぬラヴァレイだが、効果欄を確かめることでそれの使い方を理解した。 どうやら、自分の声を増幅させる物らしい。 そもそも凶器ではないし、大声を出せば周囲の人物を無害、有害問わずに引き寄せてしまう。 かなり扱いの難しい支給品だ。 しかし、ラヴァレイにとってはそれだけではない。 色々な人物に変身できるラヴァレイならば、ただ声をあげるだけでも、色々な効果が見込める。 『残り4時間です』 いくら手早く情報交換を済ませたとはいえ、結構な時間を使ってしまった。 本部以蔵の末路を見れるかは五分五分といったところか。 だがここまで幸運が続いている自分ならば、本部以蔵の末路すら上手く見れるかもしれない。 風はどっちに吹いている? 明日か?いや違う。 自分にだ! 【B-4/地下通路/一日目 午前】 【ラヴァレイ@神撃のバハムートGENESIS】 [状態]:健康 [服装]:普段通り [装備]:軍刀@現実 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10) 黒カード:猫車 拡声器@現実 [思考・行動] 基本方針:世界の滅ぶ瞬間を望む 0:地下闘技場へ戻り、放送局へ向かう 1:本部の末路を見届ける 2:蒼井晶の『折れる』音を聞きたい。 3:カイザルは当分利用。だが執着はない。 4:DIOの知り合いに会ったら上手く利用する。 5:本性は極力隠しつつ立ち回るが、殺すべき対象には適切に対処する [備考] ※参戦時期は11話よりも前です。 ※蒼井晶が何かを強く望んでいることを見抜いています。 ※繭に協力者が居るのではと考えました。 ※空条承太郎、花京院典明、ジャン=ピエール・ポルナレフ、ホル・ホース、ヴァニラ・アイス、DIOの情報を知りました。 ヴァニラ・アイス以外の全員に変身可能です。 時系列順で読む Back そして騎士は征く Next 変わる未来 投下順で読む Back そして騎士は征く Next 誰かの為の物語 100 それでも『世界』は止まらない DIO 134 無辜の怪物 105 溢れ出る瑕穢 ラヴァレイ 135 ルールなんてあってないようなもの
https://w.atwiki.jp/akatonbowiki/pages/12928.html
このページはこちらに移転しました とれない風船 作詞/規制用2スレ951 あの日とれなかった風船を いつかとってきてみせるから あの日とれなかった風船は きっと今頃エベレスト 俺のツバサをみたいのかあああああ 俺の勇気がみたいのかああああ とってくるぜ風船を 絶対とってくるからな そこで待ってろ 昔の俺よ
https://w.atwiki.jp/keroro00innovator/pages/6030.html
ケロテレビランキング CDシングル週間ログ/2024年 ←2023年 | 総合シングル | アルバム | DLシングル 月 週 CD名 アーティスト タイアップ 発売 推定売上 1月 第1週 光の跡/生命体 星野源 SPY×FAMILY 主題歌 23/12/27 3238 第2週 シェキラ☆☆☆ Liella! ラブライブ! スーパースター!! キャラソン 1/10 13846 第3週 Link to the FUTURE 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ ラブライブ! 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ キャラソン 1/17 10641 第4週 FREEDOM 西川貴教 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM 主題歌 1/24 18968 2月 第1週 オトワ 太陽と踊れ月夜に唄え 愚かな天使は悪魔と踊る OP 1/31 4741 第2週 ディア・パンタレイ 上坂すみれ SHAMAN KING FLOWERS ED 2/7 2974 第3週 Special Thanks/青とシャボン/ミルク スリーズブーケ/DOLLCHESTRA/みらくらぱーく! ラブライブ! 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ キャラソン 2/14 21814 第4週 Use Your Body/E-NERGY BOYS DA PUMP ぶっちぎり?! ED 2/21 14635 第5週 PRI☆LOVE∞UNIVERSE♪ ST☆RISH/QUARTET NIGHT/HE★VENS うたの☆プリンスさまっ♪ キャラソン 2/28 20836 3月 第1週 Eye s Sentry UVERworld 青の祓魔師 OP 3/6 11736 第2週 Biri-Biri YOASOBI ポケットモンスター テーマソング 3/13 12224 第3週 Days of Birth LINKL PLANET ガンダムビルドメタバース ED 3/20 15625 第4週 以心☆電信 みらくらぱーく! ラブライブ! 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ キャラソン 3/27 23569 4月 第1週 抱きしめる花びら 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ ラブライブ! 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ キャラソン 4/3 8913 第2週 虹ヶ咲学園校歌 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 にじよん 主題歌 4/10 7108 第3週 Stormy Nissy×SKY-HI ブルーロック 主題歌 4/17 10834 第4週 ADRENALIZED 水樹奈々 HIGHSPEED Etoile OP 4/24 9619 5月 第1週 両翼のBrilliance Morfonica BanG Dream! キャラソン 5/1 3458 第2週 ビリミ ICEx 逃走中 グレートミッション ED 5/8 37553 第3週 運命 sumika ダンジョン飯 OP 5/15 10775 第4週 Shouted Serenade LiSA 魔法科高校の劣等生 OP 5/22 9223 第5週 Take my rose/Chameleon/Good Good Games/ネバーグリーン TEA takeほか アイドリッシュセブン キャラソン 5/29 7892 6月 第1週 はじまりの物語 すとぷり すとぷり はじまりの物語~Strawberry School Festival!!!~ 主題歌 6/5 223731 第2週 KIR☆MEKI EMOTION/SONG LETTER/GLORIOUS ANGELS ST☆RISHほか うたの☆プリンスさまっ♪ テーマ 6/12 27179 第3週 視界の隅 朽ちる音 トゲナシトゲアリ ガールズバンドクライ 劇中歌 6/19 7296 第4週 僕らの海でまた会おう Aqours ラブライブ! サンシャイン!! テーマソング 6/30 7281 7月 第1週 3241 第2週 空白とカタルシス トゲナシトゲアリ ガールズバンドクライ 劇中歌 7/10 9752 第3週 Bloom the smile, Bloom the dream! 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ ラブライブ! 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ キャラソン 7/17 29571 第4週 KO. DA. MA./ロマンスが舞い降りて来た夜 THE ALFEE シンカリオン チェンジ ザ ワールド ED 7/24 27573 第5週 Life’s Side Menu! S.E.M THE IDOLM@STER SideM キャラソン 7/31 2414 8月 第1週 ORIGAMI Little Glee Monster 天穂のサクナヒメ ED 8/7 14021 第2週 4599 第3週 ブラックボックス LiSA NieR Automata OP 8/21 7503 第4週 レナセールセレナーデ ももいろクローバーZ 転生したらスライムだった件 OP 8/28 6368 9月 第1週 月夜見海月 スリーズブーケ ラブライブ! 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ キャラソン 9/4 30563 第2週 Proof DOLLCHESTRA ラブライブ! 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ キャラソン 9/11 22066 第3週 Bring the LOVE! 渡辺曜(斉藤朱夏)ほか ラブライブ! テーマ 9/20 18609 ←2023年 | 総合シングル | アルバム | DLシングル 週間
https://w.atwiki.jp/stand/pages/57.html
https://w.atwiki.jp/supergirl121/pages/198.html
「ねぇ、ちょっと良いかな?」 「え?」 下校途中、私は背後から呼び止められた。良く見ると、私に声を掛けたのはクラスメイトの男子だった。 私は所謂、クラスではどちらかといえば目立たない方だが、この男子はその真逆。 校則ギリギリの茶髪に、やや焼けた浅黒い肌。如何にも遊んでいそうな、チャラ男系男子。 少なくとも、私に声を掛けて来るようなタイプではないし、今までもそうだった。接点らしい接点も無い。 「・・・はぁ・・・はぁ。歩くの、早いんだね・・・」 「・・・あ、うん・・・まあ」 私としてはゆっくり歩いていただけだが、一般人からすると早足並みの速さになっていたかもしれない。 「最近、どうしたの? 体育とか、凄いじゃん。あんな運動神経良かったっけ?」 「ここのところ、ちょっと身体の調子が良いだけよ」 本当のところ、調子が良いなんてレベルの話ではないのだが、そこの説明は面倒だしするつもりもない。 「・・・ふーん、そっか。まあ、良いや」 チャラ男はやけにアッサリ納得した。他のみんなもこんな感じの受け取り方なのかな? 「・・・で、私に何か用?」 「いや、俺のダチがさ・・・って言ってもウチの学校じゃないんだけど。君に興味があって会いたい、って言ってるんだよ」 どういうことだろう。そもそも下校途中とはいえ、チャラ男とこうやって学校外で話すことすら初めてなのに。 「何かさ、外でたまたま見掛けてビビッと来たって言ってたよ」 「・・・はぁ?」 外で見掛けた・・・ねぇ。・・・・・・・・・・・外。・・・外? それって、いつの話?いや、そもそも私を見掛けたのは"何時頃"の話・・・? 今の私にとって黄昏時が一番、危ない。【OFF】から【ON】へ近付く時間だからだ。 だから、大抵の日は真っ直ぐ家に帰る。買い物に繰り出したのは、衣装と測定器具を買う時ぐらい。 休みの日も、そんなに頻繁に出掛ける方じゃないし。お世辞にも、普通にしてる昼間の私は目立たない。 クラスの中でもそうなのだ。外なら尚のこと。・・・・・だとすると。 「・・・私のこと、何処で見た・・・のかな?」 「・・・さぁ? そりゃあ、それはソイツに聞いてみなよ。直接会えばわかるんだし」 それもそう・・・ね。しかし、これでその見ず知らずの男に会わないといけなくなった。 何処で、"どんな状態"の私を見たかによっては・・・。まあ、それは確認すればわかること。 チャラ男に連れて来られたのは、町外れにあるクラブハウスだった。 「・・・え? ここ・・・なの?」 所謂、スペースだけを借りてDJが曲を流しながら酒を飲む、そういう場所。 近くには民家は無く、周りに店舗らしき建物は幾つかあるが、そのどれもシャッターが降りていた。 「その・・・友達はこんなところに居るの?」 「ああ、大丈夫だって。早く入んなよ」 私は渋々、中に入った。扉を開けると中から音が漏れて来る。意外と防音はしっかりしてるみたい。 中は結構、広い。しかし、広さの割りに人は疎らだった。 「△△さん、連れて来ました」 「・・・・・△△・・・?」 チャラ男が口にした、名前。 「おう」 と答えた男。 私は確かに、"その男"と会ったことが在った。いや、"遭った"ことが在るといった方が正しいかもしれない。 会ったのはたった1回。たった数時間。だけど、忘れるはずなかった。 ソイツ・・・いや、コイツはパパとママを殺し、ママと私を犯した男、その張本人だった。 「よう? 久し振り・・・かな? ハハハ」 「・・・う、あ・・・何・・・で」 憎い仇。私が思い描いた"悪い男"の原点。・・・なのに、身体が動かない。 歯がガチガチするし、手はブルブル、足もガクガクと震えている。 余りにも唐突な対面に気が動転してる?心の準備が出来ていない? ・・・いや、違う。きっと、これが本当の意味での"トラウマ"なんだ。 「どうし・・・て」 私は、隣に居るチャラ男を見遣った。 「あー、ごめんごめん。"友達"ってのは嘘。でも、△△さんが君に会いたがってたってのは本当だよ」 「おいおい、俺らは友達だろ? ただ、ちょっと俺の方が立場が強いってだけでよ、ハハハ」 どう見ても、友達同士には見えない。 この△△は、ヤクザのドラ息子であると同時に、地元でも一大勢力の"グループ"のボスだった。 この町の暴走族、不良グループ、走り屋集団、そのどれもが例外なく皆、コイツの傘下。 チャラ男は、まるで自分のことのように私に話して聞かせた。チャラ男は、△△の舎弟みたいなものなのだろう。 「いやぁよぉ、俺はブタ箱に居る間もお前のアソコの具合が忘れられなくて、よ」 そう言いながら、何と△△はズボンのチャックを開け、自分のイチモツを取り出した。 「・・・っ!!?」 私は"それ"を見た途端、目の前が真っ暗になり、フッと意識が遠のくの感じた。 ――――――。 「オラ、そろそろ起きろ」 「・・・・・うっ」 私は、ベッドのようなところで目を覚ました。どうやら、気を失ってたみたい。 そこは壁だけの空間のど真ん中にベッドがある、そんな無骨な部屋だった。 「チッ、これからってとこで気ぃ失いやがって」 「・・・?」 男の顔が近い。 「・・・・・!?」 何と、私は下着姿で、ベッドに手錠で縛り付けられていた。しかも何と、△△が私に跨っている。 ここは、△△専用の所謂、"犯り部屋"だった。防音も完璧、叫んでも助けなんて来ない。 「この辺一体は俺が買い取ってゴーストタウンにしたから、外に逃げたって助けなんて来ないぜ」 △△は、自分の金で買い取ったと豪語した。クスリの"上がり"、つまり売り上げがあるのだという。 「お前をまた犯したいな~って思ってたら、舎弟のクラスメイトだって言うじゃねぇか。世間は狭いな」 ハハハ、と△△は卑しく嘲笑した。 「・・・・・・・・」 「まあ、そんな怖がんなって。徐々にクスリ漬けにして行って、俺無しじゃ生きられなくしてやっから」 ママを死姦した上、私を犯し捲くった男はのうのうとそう言い放ち、自分のイチモツを取り出す。 「・・・い、いやっ!」 私のショーツをズラし、△△は私の"中"に無理矢理、自分のイチモツを捩じ込んで来る。 相手は、私の"初めて"を奪った男。なのに、身体中を駆け巡る、凄まじい異物の挿入感。嫌悪感。 「あの日、学校帰りのお前を一目見て"良い"と思った俺の目に狂いは無かった!」 私に構わず、勝手にピストン運動を始めた男はそう言った。 「1年ブタ箱に入っても良かったって思えるぐらい、お前ら母娘(おやこ)は"名器"だったぜ」 強姦殺人を犯しながら、その被害者である私を再び、犯し始める。 もし、私が外道だとしたら、コイツなんてド外道・・・いや、悪魔だ。 ・・・悪魔? それに、私が外道に堕ちたのは・・・。 「・・・ありがとう。やっと、"正気"に戻れたわ」 「・・・あ? 何を言っ・・・うぎゃあぁぁぁっ!!」 私は、アソコを力一杯締め上げた。そう、スーパーガールの全力で。 ミチミチミチ・・・ブチッ・・・ブチブチッ。 それは、海綿体がグチャグチャに潰れる音だった。力を緩めると、男は慌てて自分のイチモツを引き抜いた。 「お、俺の~、俺の~っ!」 辛うじて千切れてはいないものの、血みどろになりグチャグチャに潰れた"それ"は最早、機能しないだろう。 私はクイッと、軽く腰を持ち上げると、男はたったそれだけでベッドから振り落とされた。 「このアマっ! よくも・・・。・・・・・っ!?」 △△は、追い掛けるようにベッドから降りて来た私を見てギョッとした。 「く、鎖はどうした? 手錠で縛ってあったはずだ!」 「ん? ああ、これ?」 私は、そういって両手に嵌ったままの手錠の"輪っか"を示した。その先には千切れた鎖の欠片。 スーパーパワーの前では、鉄の鎖なんて紙屑も同然。 残った"輪っか"も引き千切り、グニグニと捏ねてビー玉ぐらいの大きさに丸めて見せた。 「・・・ひっ、ひぃっ! バ、バケモノ!」 「何ですって?」 私が一睨みすると、△△は慌てて部屋から逃げるように出て行った。 「凄い逃げ足の速さね・・・」 とても、イチモツを潰された男の逃げ足には見えなかった。 後を追い掛けると、△△は最初に居た入り口がある広いスペースに逃げ込んでいた。 「おい、お前ら! アイツを取り押さえろ!!」 股間を血塗れにした△△が、舎弟の男たちに命令する、 しかし、周りの男たちは事態が飲み込めていないのか、下着姿の私を見付けると渋々近寄って来た。 「ホントに良いんですか?」 「ああ! ・・・おい! そこのお前らも何やってる!? 全員で取り押さえろって言ってんだよ!!」 激昂する△△に気圧される形で、残りの男たちも寄って来た。 「おい、女!止まれ!」 しかし、私は気にも留めず、ゆっくりと△△へ向かって歩いて行く。 「おい! 止まれって言って・・・」 一番近くの男が私の右肩を掴んで止めようとする。・・・しかし。 「・・・うおっ!」 私の右肩を掴んだ男は、私の前進に引っ張られるように後ろに引き摺られて行く。 それを見た別の男が、今度は私の左腕を掴んで止めようとする・・・が、私は止まらない。 「・・・お、い・・・止ま・・・れ!」 「ぐぅ・・・な、何て力・・・だ!」 私は、二人の男を引き摺りながら、構わず△△に向かって歩いて行く。 さすがに異様な事態に気付き始めたのか、残った男たちも私を取り囲むように集まって来た。 「う・・・あ・・・あ」 「う、嘘だ・・・ろ」 私は構わず歩いて行く。 私は、左肩、右肩、左上腕、右上腕、左前腕、右前腕、左太腿、右太腿、左脛、右脛を男たちに掴まれていた。 私は、計十人の男たちに身体中を掴まれながらも、歩くペースは一向に変わる気配は無かった。 私の歩行に合わせて、十人もの男たちがズル、ズルと引き摺られて行く。 私は、ただ歩いているだけ。別に力なんて入れてない。恐らく、時間的にはもう夜。 夜の私のスーパーパワーの前には、この程度の男たちなんて、それこそ埃みたいなもの。 今は、身体にこびり付いた"埃"なんてどうでも良い。それどころじゃない。 今、私の怒りはこの男たちのボスに向いていた。そう、私を『バケモノ』呼ばわりした△△に。 十人の男たちを引き摺りながら下着姿で仁王立ちする私を、△△は見上げていた。 私はそこでやっと、"埃"を手で払った。私に払われた男たちは、叫び声を上げながらその場に倒れ込む。 私は普通に、パンッパンッと払っただけなんだけど、そこは私のスーパーパワー、 尋常じゃない力が掛かった男たちの手や腕は、切断されたり、骨がボロボロに砕けていた。 「・・・ひぃっ、バ、バケモノっ!」 「あー、また言っちゃうんだ・・・」 へー。私みたいな可憐な女の子を拉致っておいて、そんなこと言っちゃうんだ。 何よ、ちょっと『スーパーガール』ってだけじゃない。『スーパーガール』を怒らすと、もう酷いんだから。 「女の子の扱いが成ってないあなたに、私が女の子との接し方をレクチャーしてあげる」 いきなり襲い掛かって、犯したりなんかしないように、ね。 壁を背にしてへたり込む△△を、私は無理矢理立たせる。 その時、掴んだ肩が潰れたけどまあ、気にしない。 「先ずはこう、ね? わかる? 軽く手を握ってあげるんだよ?」 私はそう言って、右手で△△の左手を握った。 グシャッ。 「うぎゃあぁぁぁっ!」 一瞬で男の手は裂け、肉が潰れ、骨が粉砕された。あっという間のミンチ。 「次はこう。軽く、腕を組んであげると良いかな」 今度は、男の左腕を私は抱え込むようにして右腕を組んだ。 メリメリ・・・メキョ・・・グチャグチャ・・・グシャッ! 「ぐぎゃあぁぁぁっ!」 私に腕を組まれるということは、私の腕と身体のスーパーパワーで挟み込まれるということだ。 万力どころか、プレス機にも負けない自信がある。勿論、男の腕が原型を留めているはずもなく。 まるで枯れ枝のように何箇所も折れ、その内の幾つかは折れた骨が外に飛び出していた。 「もう、悲鳴がワンパターンだよ?そんな奴にはキスしてあげない!」 私は出来るだけ、"ぶりっ子"風にそう言った。勿論、キスなんて嘘だけど。こんな奴とキスなんて、吐き気がするわ。 「・・・だから、キスは飛ばして・・・次は胸」 といっても、私のを揉ませるんじゃなくて、私が揉むんだけど、ね。 私は、指を男の胸に這わせる。鉄を捏ね、引き千切る指。それが、男の胸を這い回っている。 閉鎖された空間で壁を背にした男に、下着姿の女が指を這わせている。何て、官能的なのかしら。 一昔前の官能小説ならここから数十ページに亘って描写が続くんだろうけど、残念ながらそんなことにはならない。 わたしがちょっと指に力を入れると、それに呼応するように男のアバラが胸筋の上からミシッ、ミシッと軋む。 「や・・・やめ、助け・・・て」 イチモツを潰され、肩を潰され、手と腕を潰された町の一大グループのリーダーが命乞い。 もし、これが不良同士の抗争なら、ここで土下座なり何なり詫びを入れさせて終わりだろう。・・・でも。 「そう、わかった。助けてあ・げ・る」 「・・・え、じゃあ」 △△の顔が一瞬、パアッと明るくなる。 「これに耐えられたら、ね」 「・・・え」 私は、男の胸に這わせた指を、閉じた。 ブチブチブチ、バキッ・・・バキバキ、グチャ、グチャ・・・リ。 私の指は、胸板を胸筋ごと引き裂き、アバラを全て砕き、その中にあった肺と心臓を、潰した。 「「「うわあぁぁぁぁっ!!」」」 周りに居た男たちの絶叫。ボスを失い、敵討ちにいきり立った声・・・ではない。 恐怖に駆られ、みんな逃げようと一斉に出口に逃げ始めたのだ。 「はぁい♪」 「・・・げぇ! な、何で・・・」 私を背に出口に向かった男たちを、私はスーパースピードで回り込んだのだ。 「まあ、そんなに逃げたいっていうなら、別に逃げたって良いけど~」 そう言って、私はワザと道を開けた。あっという間に、出口に殺到する男たち。しかし。 「・・・っ!? 何だこれ? あ、開かねぇ!!」 私は後ろ手に、ドアノブを握り潰していた。当然、ドアノブが回らないので、ドアは開かない。 「あれぇ? 逃げないのぉ? 早く逃げないと・・・」 私は出口に殺到している男たちの背後に回り、手近な男の胸に背後から手を回す。 「こうなるよぉ?」 「ぐぎゃ」 短い断末魔。背中から私に抱き締められた男は、私の胸の感触を味わうことは無かった。 胸部を潰されて既に事切れた男の後ろから、私は残りの男たちにニッコリと笑い掛けた。 そこからは、阿鼻叫喚の地獄絵図だった。 完全に密閉された空間に、スーパーガールと十人かそこらの男たち。防音も完璧、叫んでも助けなんて来ない。 「ヒップアターック!」 単に、お尻からぶつかって行っただけ。それだけで、男は壁に血のペンキをぶちまけた。 「波●拳」 両手を胸の辺りで構えて、そのまま突き出しただけ。"気"は飛ばなかったけど、男の胴体には風穴が空いた。 ビュウ・・・ゴオォォォォッ!! 深呼吸してから思い切り息を吐いた。男は反対側の壁まで吹っ飛ばされ、グチャッと潰れた。 「一人、大●越前」 男の右上腕を左手で、左上腕を右手で持ち、そのまま左右に引っ張った。勿論、男はブチッと真っ二つ。 「あー、愉しい♪」 私は一人、また一人と男たちを屠って行った。残るは・・・そう、あと一人。 「あんたには感謝しないと、ね。お陰で、もっと後に取っとくはずだった『メインディッシュ』を殺っちゃった」 「・・・う、あ・・・あ、た、助け・・・」 最後の残ったのは、チャラ男だった。どうやら、隅っこで震えていたので、今まで無事だったらしい。 「お、俺はただ、命令されて・・・」 「・・・ふぅん、命令されたらクラスメイトの女の子を売っても良いんだ? へぇ、そうなんだ」 真っ赤に染まった下着姿のまま、私はチャラ男に一歩、また一歩と近付く。 「前に読んだ『お話』なんだけどね、クラスメイトがいきなり居なくなっちゃうの。でも、みんなは転校した、って言う」 「・・・・・・あ、う・・・」 「後からわかることなんだけど、その転校した子ってクラスのみんなを裏切ってたの。だから、"転校"」 「・・・わ、わかった。俺も明日、転校するよ。両親も説得するから、さ。今日のことは誰にも言わない!」 「別に、誰かに言っても良いよ? だって、あんたの"転校先"はもう決まってるんだから」 「・・・・・え、それって・・・う、わあぁぁ・・・く、来るな・・・こ、来ない・・・・・うごぉっ!」 私は、チャラ男の口を文字通りの意味で塞いだ。私の指は、チャラ男の頭の下半分を削り取っていた。 済し崩しで仇を討っちゃったけど、私には何の感慨も無かった。 初めてクラスメイトを殺っちゃったけど、それについても同じ。 むしろ、そんな些細なことよりも、私にとってのクリプトナイトがまさか自分自身のトラウマだとは思いもよらなかった。 スーパーガールになってから気絶するなんて、恥かしい。 まだまだ、スーパーガールをやってくんだから、次からはこんなことが無いよう気を付けないと。 私は、"悪い男たち"の為れの果てを前に、心に固くそう誓ったのだった。
https://w.atwiki.jp/kitsch/pages/65.html
勝ったのね 勝利だ 俺の 私 他人に認めさせた 世界は動いているんだ 俺の思うまま 誰のためでも 俺だけのために ないわ 自分のためにしたの 確かにお前は 敵を出し抜いて 勝ち誇る 人形のように 踊らされた私が 自分の道を見つけた ひとりでも 私は踊るわ 踊りたいままに 好きな音楽で 踊るときは 命果てるその刹那も ひとり舞う あなたの前で 飛ぶがいい 飛ぶわ 鴎よ 私 嵐の夜も そばにいよう もうひとりだけで飛べるわ 自由になるのよ 俺だけが あなたが 自由を 自由を 与えることができる やっと歩き出した 私だけの道を 邪魔しないで どんなに強く 拒んで見せても いつか俺を求める 手を取って 俺と踊るんだ 俺が望むときに 好きな音楽で 踊るときは 命果てるその刹那も ひとり舞う あなたの前で 歩いて行けるわ おー前には俺が必要なんだ ひとりでも もうすぐに 愛し始めたの 憎みだす 人生を 踊るときは 選んだ相手と 踊りたいままに 好きな音楽で 踊るときは この世終わるその刹那も ただひとり 愛する人と 踊るときは 全てこの私が選ぶ -