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シムゆっくり・ちゅーとりある編 ──さて、あなたが見下ろす箱庭の中には、一組のゆっくりれいむの家族がいます。 大きなお母さんゆっくりが一匹に、成体のお姉さんゆっくりが三匹、赤ちゃんゆっくりが五匹。 箱庭の中には今はなーんにもありません。平坦な草っぱらに、辛うじて雨宿りができそうな木が一本。お母さんゆっくりよりずっと大きい岩が一つ。 ご飯になりそうなお花も虫も果物もありません。このままではれいむの家族は飢え死にしてしまいますね? あなたの役目は、このゆっくり達が全滅しないように、限られた資金でお世話してあげることです。 ゆっくり達は、あなたが見ていることを知りません。あなたも、ゆっくり達を見ていることを知られてはいけません。 あなたが箱庭に、ご飯を置いたり、木を植えたりしてあげられるのは、ゆっくり達が寝ている夜だけです。 日が昇っている間、あなたはゆっくり達を見守ることしかできません。そういうルールです。 ゆっくり達ができるだけ長くゆっくりできるよう、頑張ってくださいね? もちろん、ゆっくりをゆっくりさせたくないと言うのなら──それもまたあなたの自由です。 それでは、一日目を始めましょう。 ○一日目・朝 「ゆゆ~ぅ……」 まず最初に、お姉さんゆっくりの片方が夢から覚めました。 しばらくぼうっとしていましたが、やがてぱっちりと目を開けると、お決まりのあの言葉で叫びました。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ、ゆっくりしていってね!」 「しちぇいってね!」 応じるように、お母さんと姉妹達が目を覚まします。 お母さんはまだ眠そうな赤ちゃん達の顔を舐めてあげると、 「今日も一緒にゆっくりしようね!」 と言いました。 しかしその後すぐ、自分達がどこにいるのか気づきました。 お姉さん達もそれに気づいた様子で、慌ててぴょんぴょん飛び跳ねます。 「ゆ! ここれいむたちのおうちじゃないよ!」 「ごはんがないよ! たからものもないよ!」 「どうしよう! おかあさん、どうしよう!?」 こないだ生まれたばかりの赤ちゃん達は、まだよく事態を把握できていないようです。 「ゆゆ……」 お母さんも突然のことに戸惑っていましたが、そこは年の功、すぱっと思考を切り替えて、これからのことを前向きに考えます。 「しかたないから、ここでゆっくりしようね!」 「「ゆっくりしようね!!」」 お姉さんたちは、お母さんの頼もしい様子に安心したようです。 ともあれ九匹のゆっくり家族達は、新しい住処と、ご飯を探しにいくことにしました。 ○一日目・昼 でもゆっくり達は、すぐに壁にぶつかってしまいました。 比喩的表現ではなくて、本当に壁にぶつかったのです。 「でられない……」 お母さんが呟きました。 箱庭は、十五メートル四方の空間で、四方は白い壁に囲まれています。 不思議なことに、壁のせいで日陰ができることはありません。まるでお日様の光が壁をすり抜けるように差し込むのです。 ……勿論、そんなお日様が本当のお日様であるはずがありません。 箱庭のお日様は、毎日決まった周期で東から西へ流れる、小さな魔法の太陽なのです。 空だって、ただそう見えるだけの偽者に過ぎません。 でも本物の空が青い理由も、本物のお日様が燃え盛る火の玉だということも知らないゆっくりには、どうでもいいことです。 ゆっくりたちにとって重要なのは、自分達がどれだけゆっくりできるか、そのためのご飯と家があるかどうかなのですから。 さてゆっくり達は、二時間くらいずっと壁づたいに歩き続けていました。どこかに出口がないか探していたのです。 しかし出口がないと分かると、ゆっくり達は仕方なく、すごすごと最初いた場所に戻ってきました。 「ゆ?」 そのときです、お姉さんゆっくりの一匹が何かを見つけました。 箱庭の中に一本だけ生えていた木に、りんごがなっているのを見つけたのです。 「ゆゆっ! たべものがあるよ! りんごだよ!」 「ゆっ? 本当だ! りんごだりんごだ!」 ゆっくり達はいっせいに湧き立ちました。だって昨日の夜からもう何も食べていないのです。おなかぺこぺこでした。 早速、お母さんゆっくりが気に体当たりを始めました。ゆっさゆっさと木が揺れるたびに、娘達はおおはしゃぎです。 やがて、りんごが落ちてきました。 りんごは地面に当たって割れてしまいましたが、それでも貴重なごはんです。 おかあさんはもっとりんごを落としてやろうと、木に体当たりを続けました。 ……けれど、いくら頑張っても、もうりんごは一つも落ちてきません。 そう、この木には、たった一つのりんごしかなっていなかったのです。 ☆CHECK POINT! ------------------------------------------------------------------------------------ 箱庭に最初からあるこの木は、一日の朝に一度だけ、果物を実らせます。この木の場合はりんごです。 あなたは資金を消費して、木になるりんごの数を増やすことができます。 ただし、数を増やせば増やしただけ、どんどん資金が必要になります。 適当な数が実るようになったら、箱庭のどこか別の場所に、別の木を植えるのもいいでしょう。 果物の木は数種類あり、初期コストと実を増やすコストがそれぞれ異なります。 また同じ種類の果物がなる木を植えることはできないので、注意してください。 その他、敷地を広く取るかわりに最初からたくさんの実がなったり、二日に一度だけ大きな実がなる木などもあります。 木の種類は多種多様ですが、中にはデメリットが存在するものもあります。 上手く資金繰りをして、ゆっくり達に充分なご飯が行き渡るようにしましょう。 ゆっくり達は、しばらく、一個のりんごを囲んで黙っていました。どう考えても家族全員で食べるには足りない量です。 身体の小さな赤ちゃん達はともかく、お姉さん達だってせめて一日にこの半分、お母さんは丸一個食べなければ、とてもやっていけないでしょう。 それが分かっていましたが、お母さんは言いました。 「お母さんはいいよ! みんなでゆっくりたべてね!」 弾かれたようにお姉さん達も言いました。 「れいむもいらないよ!」 「おなかすいてるけどがまんするよ!」 「赤ちゃんたちでゆっくりわけてね!」 なんと美しい家族愛でしょう。 みんなおなかがすいていないはずがないのに、家族で一番弱い赤ちゃん達に、貴重なりんごを分け与えました。 「ゆゆぅ! おかあさん! おねえちゃん! ありがとう!」 「「「「ゆっくりたべるね!」」」」 五匹の赤ちゃん達は、我先にとりんごにかじりつきました。 その様子を、お姉ちゃん達とお母さんは微笑ましそうに見守っていました。 ○一日目・夕 日が沈み、ゆっくりたちもそろそろ寝る時間帯です。 「ゆ~……ゆ~……」 ご飯も食べて、赤ちゃん達はみんなすっかり寝入っています。 木のふもとで赤ちゃん達が寝たあとで、お母さんとお姉ちゃんは岩の裏側に生えていた柔らかい草と苔を少しだけかじりました。 「明日は、ゆっくりできるといいね」 「ゆっくりしたいね」 家族は、皆で身を寄せ合って眠りました。 ○一日目・夜 さて。 これからは、箱庭の管理人であるあなたの時間です。 ゆっくり達は寝入っていて、起きる様子もありません。今のうちに作業を済ませてしまいましょう。 あなたの手元には資金が10000あります。単位はとりあえず、円ということにしておきましょう。 これを消費して、あなたはゆっくりの生活環境を整えなくてはなりません。 まずゆっくりに必要なものといえば、家です。 家はグレードが石・木・藁とあり、広さも大・中・小とあります。 石製は頑丈で外敵の襲来にも耐えられますが、もちろんお値段が張ります。中サイズで2000円します。 藁製は最も安価ですが、強い風が吹くと大きく破損してしまう可能性があります。中サイズで500円です。 木の家は耐久性はそこそこですが、中サイズで1000円と、初期の家としては妥当なところです。 次に家のサイズについてお話をしておきましょう。 小サイズの家は、普通のゆっくり三匹分のスペースがあります。中なら六匹分、大なら九匹分です。 そしてお母さんサイズのゆっくりだと、一人で三匹分のスペースを占領してしまいます。 赤ちゃんは三匹で、普通サイズ一匹分といったところです。 今、あなたが飼育しているゆっくりは、お母さん一匹と普通サイズが三匹、赤ちゃんが五匹います。 普通のゆっくり換算で実に八匹分。これは中々に負担です。 家が狭いと、ゆっくり達の体力が落ちたり、酷いときには家族に押しつぶされて死んでしまうこともあります。 余裕のある広い家を買ってあげましょう。 ……買う家は決まりまったようですね? あなたが選んだのは大サイズの木の家。価格は2000円になります。 ちなみに家の値段は、小→中→大と倍々に推移していきます。 また家は、アップグレード、ダウングレードさせることが可能です。 アップグレードすると、差額分の金額が必要になります。中サイズの木の家を石の家にするなら、1000円必要ということです。 ダウングレードの場合は、差額の半分の金額が手元に戻ってきます。 また不必要になったものを売るとき、これは家に限ったことではありませんが、買値の半分の金額が手元に戻ってきます。 さて、あなたは木の家を買いました。それではこれをどこに設置しましょうか。 一番良いのは箱庭の隅っこのほうに建ててあげることです。周囲を茂み(200円)で覆ってやれば、外敵から見つかりにくくなります。 しかし隅っこのほうに建てると、果物の木から遠くなります。初期配置の木や岩は動かせません。 長雨が続いて外に出られないときなど、近くに食料がないとゆっくりが飢えてしまう可能性があります。 ここは岩の陰になるように、家を建ててあげましょう。もっと環境が整ってから、家は移動させれば良いでしょう。 設置したものの移動には100円かかりますが、100円払えばその夜の間はどのオブジェクトも自由に動かすことができます。 家が建ちました。明日ゆっくり達はびっくりすることでしょう。 さて、それでは次は何をしましょうか。残金は8000円です。 ……おや、木をアップグレードさせるのですね? りんごの木のアップグレードには200円かかります。これで翌朝からりんごが二つ実るようになりました。 次のアップグレードには400円、さらにその次には800円と、これも倍々に推移していきます。 あなたは三段階アップグレードし、1400円を使いました。これで翌朝から、四つのりんごがゆっくり達に与えられます。しばらくはこれで大丈夫でしょう。 残金は6600円になりました。さて次はどうしますか? ……お花を植えるのですね? お花は1平方メートルあたり100円です。お花には、時々蝶々が寄ってきます。ゆっくりの大切な栄養源です。 飢えたときには、お花そのものも食料になるので、ゆっくりの非常食にはもってこいです。 ただし強風が吹くと荒れてしまう可能性があります。安物の宿命です。 あなたは箱庭の隅のほうに6平方メートルお花を植え、お花畑を作りました。残金は6000円です。 果物がならない木も植えられます。価格は1本300円で、主に防風林としての役割を果たします。外敵からの隠れ蓑にもなります。 それでは、木が家を隠すように3本、植えましょう。残金が5100円になりました。 余裕があるなら、ところどころに茂みを作ってあげましょう。隠れ場所になります。 あなたは5つの茂みを植えました。残金は4100円。 さてさて、これで箱庭の中はだいぶ整ってきましたが……肝心な何かを忘れていませんか? そう、水がありません。ゆっくりにも水は必要です。 小さな池から大きな川までありますが、ここは小川を選択しましょう。残金が心もとなくなってきました。 最初の夜を終えたあと、不測の事態に備え、できれば5000円、最低3000円は残しておきたいところです。 というのも、この箱庭にはランダムで色んな出来事が起きるのです。 天候の変化や外敵の襲来もそれに含まれます。中には有料で対処可能なものもあるので、そういうときのために資金が必要なのです。 あなたは1000円で箱庭に小川を引き、ゆっくりが川を渡れるように100円の橋をかけました。 これで今夜は終了です。残金は3000円ぴったり。まぁ、なんとかなるでしょう。 最後に、あなたが作った箱庭の様子を見てみましょう。 箱庭概観 +───────────────+│ 川 ││ 川 花花 ││ 川 花花 ││ 川 茂茂 花花 │ 川の流れ│ 川 │ ││ 川 茂 │ ││ 橋 │ ↓│ 川 リ ││ 川 岩岩 ││ 川 家 ││ 川 家木 ││ 川 木木 ││ 川 ││ 川 茂 ││ 川 茂 │+───────────────+ ※「リ」はりんごの木です だいぶそれっぽくなりました。 それでは、二日目の朝を始めましょう。 ○二日目・朝 天候:晴れ 残金:3000円 「ゆっくりしていってね!」 今日も元気な掛け声と共に、ゆっくり家族は目を覚ましました。 「ゆゆっ!?」 最初に気づいたのは一番上のお姉さんれいむでした。 「たべものがあるよ! たくさんあるよ!」 ぴょんぴょん飛び跳ねて喜びを表現しながら、まどろみの中にある家族達を覚醒させていきます。 目を覚ましたゆっくり達は、りんごが四つもなっていることに気づいて大喜び。 早速お母さんゆっくりがりんごを木から落としました。 「みんなおなか一杯になれるね! ゆっくりたべようね!」 「「「ゆっくりいただきます!」」」 分け前は、お母さんが一つ、お姉ちゃん達が半分ずつ、残りを五匹の赤ちゃんで分けます。 「むーしゃ♪ むーしゃ♪」 「しあわせ~」 「しやわせ~」 喜びを表現するお姉ちゃんの真似をして、赤ちゃん達もキャッキャと騒ぎます。 お腹を満たした家族は、再びこの箱庭の探索に出かけました。 するとどうでしょう、昨日はなかった川や茂みが、いつの間にかできているではありませんか。 そして何よりも目を引いたのが、木に隠されるように建てられた小屋でした。 「ゆ! おうちだ!」 「広いよ! ゆっくりできそうだよ!」 「だれもいないよ!」 お姉ちゃん達が小屋の中を確かめると、今度はお母さんがゆっくり確かめに行きました。 長く生きているだけあって普通のゆっくりより慎重なのでしょう。ゆっくりにゆっくりを重ねた動作です。 お母さんは小屋の中を見回します。ここが人間のおうちだったら大変です。ゆっくり家族はゆっくりできなくなるまでボコボコにされてしまうでしょう。 でも小屋の中には、誰かがいたような気配はありませんでした。小石一つ落ちておらず、まるで新築です。……まぁ実際その通りなんですが。 「ゆーゆー……ゆっ! ここをれいむたちのおうちにしようね!」 「「「ゆっくりしていこうね!!!」」」 お母さんの安全宣言に、家族はみんな喜びました。 小屋の中は九匹で入って、ちょうど良くゆっくりできる広さです。入り口には押して開くドアがあって、出入りもしやすく雨風もしのげます。 「ゆっくり~」 「ゆっきゅりぃ~」 ご飯も食べられてご満悦のゆっくり達は、午前中ずっと『おうち』の中でゆっくりしていました。 ○二日目・昼 天候:晴れ 残金:3000円 ゆっくりするのにも飽きてきたので、お昼から家族は探検に出かけました。 昨日は何もない、まったいらな草原だったのに、そこかしこに茂みや川ができていて、子ゆっくり達はとても楽しそうです。 お母さんゆっくりは充分に周囲の安全を確認したあと、茂みから落ちた枝葉を拾い集め、家の周りを囲い始めました。 ☆CHECKPOINT! ---- 母体サイズのゆっくりは、オブジェクトの一部に対し干渉することが可能です。 今回のように、箱庭のオブジェクトを利用して何かすることがままあります。 オブジェクトには、ゆっくりが動かせるものと、動かせないものが存在します。茂みはそれ自体は動きませんが、枝を採取することができます。 他にも、中ゆっくりと同じサイズ程度の石など、あまり大きくなく地面に埋まっていないものなら動かすことが可能です。 また動かす以外にも、オブジェクトを破壊してしまう場合があります。 例えば、現在川にかけている橋は、細くて母体ゆっくりは渡ることができません。これを無理に渡ろうとすると、橋が壊れてしまう場合があります。 運が悪いとそのまま川に落ちてご臨終、なんてことになりかねません。 特に母体ゆっくりは、子ゆっくりが危機に瀕したとき周りが見えなくなることがあります。そういった事態には充分注意しましょう。 このお母さんゆっくりは、中々営巣能力に優れているようです。 家の屋根以外をすっかり枝で覆ってしまい、木と合わせて容易に中を窺うことはできません。 「もうこれでだいじょうぶだよ! 子どもたちはれいむが守るよ!」 おかあさんゆっくりは自分の仕事ぶりに満足したように息を吐きました。 子供達はお花畑で遊んでいます。お姉さんが赤ちゃんに蝶々の獲り方を教えたりして、微笑ましい光景です。 こうして二日目のお昼も、ゆっくり達はゆっくり過ごすことができました。 ○二日目・夕 天候:曇り 残金:3000円 空が曇ってきたので、お母さんゆっくりは子供達を呼び集めて家に入らせました。 過剰な水気はゆっくり達には大敵です。雨に濡れるなんてもっての他なのでした。 お母さんゆっくりは、集めた木の枝で家の入り口を覆い、雨に備えました。 こうしてこの日一日も終わりを告げました。 「明日もゆっくりしようね!」 ○二日目・夜 天候:曇り 残金:3000円 さて、あなたの時間です。 ゆっくり達が危惧していたような天気にはなりませんでしたが……おやおや、どうやらランダムイベント発生のようです。 箱庭の様子を見てみましょう。 ?───────────────+│ 川 ││ 川 花花 ││ 川 花花 ││ 川 茂茂 花花 ││ 川 ││ 川 茂 ││ 橋 ││ 川 リ ││ 川 岩岩 ││ 川 家 ││ 川 家木 ││ 川 木木 ││ 川 ││ 川 茂 ││ 川 茂 │+───────────────+ 左上に、「?」マークが表示されているのが分かるでしょうか。これは外敵襲来を示すマークです。 ランダムイベント『外敵襲来』が発生すると、夜、箱庭の四隅の天井から凶暴なゆっくりが降りてきます。今夜は左上から来るようですね。 外敵ゆっくりに襲われてしまったら、普通のゆっくりはひとたまりもありません。 あなたは管理者として、それをどうにかしなければならないのです。 ……あえて見過ごす、というのもアリと言えばアリですけどね? さて、外敵襲来が確定した場合、あなたには二回の行動権が与えられます。 通常の夜はオブジェクトの設置や撤去しかできませんが、外敵が襲来する場合は、設置→外敵襲来→設置と、二回に分けて行動することが可能なのです。 というのも、外敵捕獲・撃退のための罠を仕掛けることができるからです。 罠は、使用されるか撤去しない限り、ずっと設置されたままになります。 放置された罠には飼っているゆっくりも引っかかってしまうので、放置しておくわけにはいきません。 なので一度目で罠を仕掛け、二度目で罠を撤去する、というようなことになります。 撤去すれば代金の半分は返ってきますが、無駄な出費が出るのは確かです。できるだけ、効果的に罠をしかけましょう。 それでは、まずはあなたのターンです。 ☆YOUR TURN ……とはいえ、お母さんゆっくりが家の出入り口を塞いだお陰で、ゆっくり達の安全は充分確保されています。 今夜は曇りで視界も悪い上、襲撃は一匹だけのようですし、例えゆっくりゃやふゆらんが襲ってきても大丈夫でしょう。 ちなみに獲物が見つけられなかった場合、大抵の外敵ゆっくりは適当な場所で休んでしまいます。 二回目の設置行動で「虫取り網」を買って使用すれば、案外簡単に捕獲することができるので、ゆっくりの住居の防備が充分ならあえて一回目は何もしないのも手です。 とりあえず念のため、川にかかる橋だけ撤去しておきましょう。50円があなたの手元に戻ってきました。 では、ターンを終了します。 ☆YUKKURI S TURN 箱庭左上の天井が開いて、丸っこいものが落ちてきました。 「ゆべし!」 それは地面に当たって悲鳴を上げました。どうやら飛行型ではないようです。 「ゆぅぅぅぅぅ……まりさぁ~……れいむぅ~……ハァッ、ハァッ」 おっと、落下の衝撃にもめげていない様子。どうやら今夜の外敵ゆっくりは、発情期のゆっくりありすのようです。 他のゆっくりを捕食するわけではないので、そういった意味では危険度は低いのですが、何しろ発情期です。 飼っているゆっくりを無計画に妊娠させられては、食糧事情がすぐに大変なことになるのは目に見えています。できるだけ退治するのが好ましいでしょう。 「ハフッ、ハフッ、まりさっ、まりさぁー、ごづくりじまじょぉよぉぉぉおおおぉぉ」 普段『とかいは』を自称するありすも、発情期にはもはやケダモノです。血走った顔は人間の子供なら普通に泣きます。 と、そのありすが何かに気づいたようです。 「ゆっ! れ゛い゛む゛っ!! れいむのにおいだっ!!」 なんということでしょう。川を挟んで十メートルは離れている家の中のれいむ一家の匂いを、このありすはかぎ当てたのです。 「ゆっぐりまっででね! いまがられいむのありずがごづぐりにイグよぉぉっほぉぉぉぉぉ」 ありすは匂いの方向に向かって一直線。 しかし、何か忘れていませんか? 「ゆっ?」 ボチャン! ──そう、ありすが落ちてきた場所と、れいむ一家の住む家の間には、川があります。 飛行型ではないありすが、当然それを越えられるわけはありません。 哀れありすは、どんどん下流へと流されていきます。 「ぶげぇ! だじゅっ、だれがだじゅっ、げべっ、まびばああああばばばばばばばばば!」 助けを呼んでも、こんな時間帯に起きているゆっくりなどいませんから、誰も来ません。 むしろそうして叫んだことにより、口に水が流れ込んで、ありすの死期を早める結果となりました。 「……! ……! ……!」 ありすはとうとう、川に流され、箱庭の外にまで出て行ってしまいました。 ☆YOUR TURN 再び、あなたのターンです。二度目のこのターンでは、罠の撤去や、破壊されたオブジェクトの再設置を行うべきでしょう。 と、その前に、あなたは何かを手に入れているようですよ? 「ゆ……ゆっぐ……」 先程川に流されたありすが、今あなたの手元にあります。 川を流されたゆっくりは、無条件に箱庭管理者であるあなたのものとなります。 罠の設置が充分でないときは、あえて外敵ゆっくりを川に落としてしまうのもいいでしょう。 ただし──川に落とされたゆっくりは大きく損傷します。売却しても安く買い叩かれてしまいます。 ゆっくりゃなど、高額な外敵ゆっくりを売却目的で捕獲するときは、多少無理をしてでも無傷で捕らえましょう。 また売らずにストックしたり、箱庭に入れて住まわせることもできます。 今回のような発情ありすは、夜が明けると通常のありすに戻るので、仲間にしてあげるのも良いかもしれません。 ただし長期間・多数のゆっくりをストックしたい場合は、冷蔵庫や冷凍庫といったアイテムが必要になってきます。 まぁ、今はあまり考えなくても良いことでしょう。 とりあえずあなたは、瀕死のありすからカスタードクリームだけを取り出し、売却しました。 カスタードクリームは50円で売れました。先程の橋の売却額と合わせて、ちょうど100円の収入です。 あなたはその100円で再び橋を設置し、箱庭を元通りにしました。 これで、今夜の作業は終わりです。 ○三日目・朝 天候:晴れ 残金:3000円 「ゆっくりしていってね!」 さあ、れいむ一家が目覚めました。 昨夜、自分達に危険が迫っていたことなど露知らず、今日もゆっくりする気満々です。 これからこの家族の運命がどうなっていくのか……それはあなたの指先一つ。 ゆっくりさせるのも良し、させないのも良し。理想のゆっくり育成ライフを、心行くまでお楽しみください。 以上でチュートリアルを終了します。 あとがき 虐待、というよりも虐待のタネになりそうな燃料として。 いえ、本当は虐待するところまで書きたかったんですが、やたら長くなりそうだったので…… 続きは自分で書くかもしれないし、書かないかもしれません。 シムゆっくりとタイトルをつけてはいますが、実際にはシムピープル+アストロノーカといった感じです。 夜パートの、外敵襲来と罠設置あたりがアストロノーカな部分ですね。 ただ違うのは、トラップフィールドと畑が同じ場所にあったり、育成対象と害獣が同じものであったりするところです。 アストロノーカ楽しいですよね……バブーンも可愛くて。 今までに書いたもの ゆっくり実験室 ゆっくり実験室・十面鬼編 ゆっくり焼き土下座(前) ゆっくり焼き土下座(中) ゆっくり焼き土下座(後) おまけ(サンプルマップ)+───────────────+│穴花滝滝岩 壁 壁穴││花花川川岩 壁壁││花花川川 柿 茂庫茂││花花川川 家家││石石川川 桃 家家││ 川川 茂茂茂││ 川川 バ ││壁 橋橋 リ 壁││ 川川 岩岩 ││花花川川 ││花花川川 ││花花川川===池 ││花花川川 ││壁壁川川 壁壁││穴壁川川 壁 壁穴│+───────────────+ 題:「全自動ゆっくり牧場」 初期費用 家(石・大・4000円)×2 8000円 倉庫(石・中・1000円) 1000円 りんごの木Lv4(アプグレ基本値200円) 3000円 柿の木Lv4(初期400円・基本値200円) 3400円 桃の木Lv4(初期600円・基本値200円) 3600円 バナナの木Lv3(初期1000円・基本値500円)4500円 花(100円)×15 1500円 茂み(200円)×5 1000円 岩(400円) 400円 川(大・2500円)+滝(1000円) 3500円 橋(細・100円)×2 200円 壁(石・2000円)×13 26000円 石(中・250円)×2 500円 恒久落とし穴(2500円)×4 10000円 合計 66600円 説明 初期費用に尋常ではない投資が必要となりますが、長期的に見ればかなり良い箱庭といえるでしょう。 この箱庭で産まれたゆっくり達は、豊富な食べ物に囲まれ、すくすく成長していきます。 ゆっくりが通常サイズになると、橋の向こう側にある石を乗り越えられるようになります。 好奇心旺盛なゆっくりはすぐそこを遊び場として、そして、その日のうちに穴に落ちていくでしょう。 穴に落ちたゆっくりを自動的に売却するようにしておけばまさに全自動。 川にかかる橋は細いので、お母さんゆっくりは渡れません。なので石を動かされる心配もありません。 これにより、お母さんゆっくりや未熟な赤ちゃんゆっくりが誤って穴に落ちることはありません。 また四方の扉も塞いでいるので、他の箱庭のゆっくりに進入されることはありません。 これは通常サイズゆっくりのみを効率的に売却するための箱庭なのです。 また四隅から進入する外敵も、全て壁に阻まれ穴に落ちていきます。これも良い副収入となるでしょう。 唯一、育てたゆっくりを落とすための穴がある隅からは、飛行系の外敵が侵入する恐れがありますので、それだけ注意すれば大丈夫です。 もっともすぐ目の前に滝があるので、びっくりしてそのまま穴に落ちてしまうかもしれませんが。 ゆっくり二家族ぐらいを住まわせてやれば、勝手に増えて育っては、落ちて資金になってくれます。 お母さんゆっくりと赤ちゃんゆっくりのみが箱庭に残り、通常ゆっくりはすぐに穴に落ちてくれるのが、食糧事情的にも最高でしょう。 もし万が一全滅してしまったら、捕獲したありすと、れいむまたはまりさを放り込んでやればすぐに繁殖してくれます。 交尾したあとのありすは、これも勝手に穴に落ちてくれるので、手を煩わせることもありません。 ゆっくりが一匹5000円で売れたとしても、14匹売れれば完全にペイできます。 この箱庭で得た資金を元手に、さらなるゆっくり育成の道を開いてください。 仕様書 このSSに感想を付ける
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※一部東方やゆっくりと関係の無いものを使っています。申し訳ありません。 一日の勤めを終え、自宅への道のりを歩いた時、ふと私はそれを発見した。 ゆっくりの家族だ。 西瓜程の大きさを持つ親れいむと親まりさ。 それに子れいむと子まりさがそれぞれ二匹ずつの、計六匹の一家だった。 既に日が沈んだ夜。 人間の時間が終わり妖怪の時間になろうかという時間。 一体何をしているのかと近づいてみれば、どうやら畑の野菜を狙っているようだった。 人間に気づかれないように気配を殺しているつもりなのか 「そろ~り、そろ~り」 などと間抜けにも口に出しながら歩いていた。 人間に気づかれないようにしているとは、このゆっくり達は人間の怖さを知っているのか。 私はゆっくり達の進行方向先へ視線を向け……嘆息した。 そこは私が子供の頃から知っているおじさんの家だった。 おじさんは家屋のすぐ隣に畑を作って野菜を育てているのだ。 「ゆっ、ついたよ。おいしいおやさいをおなかいっぱいたべようね」 「しずかにしなきゃだめだよ。にんげんにきづかれちゃうからね」 一家が畑に辿り着いた時、親まりさと親れいむが後続のゆっくり達に囁きかけた。 囁くといっても、二十歩も後方にいる私(ゆっくり達はどうやら私には気づいていないようだった)にすら聞こえるほどだったが。 だが日が沈んでもう家の中にいるおじさんには聞こえなかったろう。 「ゆっ、ゆっくりちずかにちゅるよ」 「れいみゅはいいこだもん」 「たべられなかったびゅんはおうちにもってかえりょうね」 親の言いつけどうり静かな声で返す子ゆっくり達。 親のいいつけを守る、随分といい子じゃないか。 しかしこのままではおじさんの野菜が食べられてしまう。 あのおじさんの作った野菜はおいしい。食べたらまさに「しあわせ~」だろう。 だが私は、ゆっくりの「しあわせ~」など糞喰らえだ。 私は最後尾の子ゆっくりれいむに狙いを定めた。 私はその中に潜り込むイメージを膨らませる。子ゆっくりれいむと自分の姿を重ね、皮を破る感覚を想像する。 頬にぴりぴりと電気のようなものが走る。 次の瞬間 「〝ゆっ!! ゆっくり静にちゅるよ!! みんなで美味しく人間のお野菜をちゃべようね!!〟」 一番最後尾の子ゆっくりれいむが、辺りに響き渡るほどの大声で叫んだ。 辺りに反響する子ゆっくりの声。 その響きが鎮まった時、親れいむが子ゆっくりれいむに向かって静に叫んだ。 「ゆぅぅぅぅ! なんでおっきなこえだすのぉぉ!」 「ゆっ? れいみゅおっきなこえなんだしちぇないよ? 突然怒られてわけのわからない、という反応を示す子ゆっくりれいむ。 当然だ。今のは私が言わせたのだから。 私にはちょっとした能力があった。 自分の考えていることを他人に喋らせる能力。 求聞史紀風に言えば『好きな言葉を喋らせる程度の能力』といったところか。 私はこれを『腹話術』と呼んでいるが。 人語を解すのならば人間はもちろん、妖怪や妖精だって能力の対象とすることができる。 もちろんゆっくりもだ。 そしてこの能力によって喋らされた相手はその間のことは覚えていないのだ。 「なんでうそつくの! うそつきはだいきらいだよ!」 「ゆっ、うそなんてちゅいてないよぉぉ!」 よって子ゆっくりれいむは現在自分に覚えのないことで怒られているのだ。 わけがわからないだろう。自分は喋ってもいないのに怒られているのだから。 うそをついた、ついていないの親子の問答に、他の家族まで混じり始めたその時。 バーン!! と大きな音を立てて畑の隣の家の扉が開かれた。 そして扉から飛び出してきたのは鍬を持つ家主。私のよく知るおじさんだった。 「こらぁぁぁぁぁ!! ゆっくりどもめぇぇぇ!!」 般若の形相でゆっくりの一家へと襲い掛かっていくおじさん。 当然、私がさっき叫ばせた子ゆっくりの声が聞こえたので飛び出てきたのだろう。 おじさんの姿を確認したゆっくりの親子が揃って青ざめた顔をすると、それまでの喧嘩を切り上げて一目散に逃げ出した。 「ゆゆっ、ゆっくりはやくにげるよ!」 「ゆっくりできなくなるよ!」 「ゆぶぅぅぅ、れいむのしぇいだよぉぉぉ!!」 「ゆっ、なんでしょんんなごどいうのぉぉ!!」 「れいみゅがおっきなこえだしゅからだよぉぉ!!」 「だちてないよぉぉぉ!!」 逃げながらも覚えのないことで姉妹に糾弾され涙目になる子ゆっくりれいむ。 やがて子ゆっくりれいむのすぐ前をはねていた子ゆっくりまりさが 「れいみゅのしぇいなんだかられいみゅがあしどめしてね!」 と言いながら子ゆっくりれいむを後方へ突き飛ばした。 「ゆぶぅぅぅ! なにしゅるのぉぉぉ!!」 コロコロと転がり体中泥まみれの涙まみれという酷く汚い状態になった子れいむ。 たった今自分を突き飛ばした姉妹へと恨みの視線を向けるがおじさんの事が気になるのかすぐに後ろを振り返る。 おじさんはすぐそこまで迫っていた。 「ゆ゛ぅぅぅぅ!! たぢゅげで! たぢゅげでよぉぉ!! だぢゅ────ゆぼっ!」 助けの声はおじさんの鍬で潰された。 真上から脳天へと振り下ろされた鍬によってグチャグチャになった子れいむ。 皮は無惨に潰れ、餡子は四散し眼球は勢いよく前方に飛び出て。 肉親に裏切られ、背後から最大の恐怖が迫ってくるという状況で絶望しながら死んでいったことだろう。 「れいむのあかちゃんがぁぁ!!」 「だめだよれいむ! にげないところされちゃうよ!」 「おかあしゃんにげよ!」 潰された子れいむへと駆け寄ろうとする親れいむを押しとどめ、畑から離れていくゆっくり一家。 おじさんは追っ払うことさえできればいいのか追撃はせずそのまま家の中へと戻っていった。 子ゆっくりの死骸はそのままだ。 もっとも、放っておいても蟻が勝手に片付けてくれるだろうが。 おじさんも帰り、ゆっくり一家も去っていった。 さて、私はというと────。 ゆっくり一家の後を尾行することにした。 どうせゆっくりのことだ。また別の人間の食物を狙うに違いない。 私はそのようなゆっくりの「しあわせ~」をぶち壊すため、ゆっくり一家の後方を静かに歩いていった。 間抜けなゆっくりは私に気づかない。 やがて子を失ったショックから回復したのか親れいむも大人しくなった。 ただ、流石に家族を失ったばかりだからだろうか、人里を歩く家族の口数は少なかった。 「ゆぅ……れいむのあかちゃんがぁ……」 「ゆっ、おかあしゃんきにすることないよ! あれはおっきなこえをだちたばかなれいむのしぇいなんだから!」 「そうだよ! そのばかなれいむはもうちんだんだからだいじょうぶだよ!」 「そうだよれいむ。 ほらげんきをだして、またばかなにんげんのたべものをいただこうよ!」 と、落ち込む親れいむに声をかけるのは子まりさ達と親まりさだった。 ……どうやら、落ち込んでいるのは同種のゆっくりれいむだけのようだった。 事実、子れいむを突き飛ばした子まりさを他のゆっくりまりさは糾弾していない。 親れいむと子れいむはZUN、と俯いて落ち込んでいるようだからそこまで今は気が回らないのだろう。 ぴょこぴょこと人里を闊歩するゆっくり達。 いくら日が沈んだとはいえ他の里の者に出会わないのはここが里の外れの方だからだろうか。 それとも気が早くもう飲みに行ったのか。 どちらにせよ、運良くゆっくり達は私以外の誰にも見咎められなかった。 見つかったら殺されていたことだろう。 やがて私はゆっくりより先にゆっくりの食べ物になりそうなものを見つけた。 民家縁側に干されていた柿だ。 ゆっくり達は次はこれを狙うだろう、と思って視線をゆっくり一家に戻す。 が、ゆっくり達はその柿に気づくことなくその民家の側を通り過ぎようとしていた。 いかん、このままでは今思いついた私の計画が狂ってしまう。 それを阻止するため、私は再び『腹話術』を使用した。 「〝ゆっ! お母しゃん。あそこに柿しゃんがあるよ〟」 子まりさの一体に『腹話術』をかけ思い通りの言葉を発せさせる。 子まりさのその言葉にゆっくり一家はぴたりと足を止めると、キョロキョロと辺りを見渡し始めた。 「ほんとうだ! かきしゃんがあるよ!」 やがて子れいむが柿の所在に気づく。それに続いて他のゆっくり達も柿を確認したようだ。 「あんなところにむぼうびにおいてあるなんて、あれはきっとまりさたちにたべてくれってにんげんがおいたんだよ!」 などとひどくゆっくり本位な考えをする親まりさ。 だが他のゆっくり達もその考えに異存はないとか「そうだね!」「だったらたべてあげないとかわいそうだね!」などと賛同の声をあげた。 ……まったく、呆れた屑どもだ。 私はその認識を一層強くすると、子まりさの一体に狙いを定め 「〝じゃあ柿しゃんとってきてね、お母しゃん!〟」 『腹話術』を使用した。 「ゆっ!?」 驚愕の声をあげる親れいむ。 さもありなん。てっきり他のゆっくりが取りに行くものだと思っていただろうからだ。 もちろん、それは他のゆっくり全てに共通する。 自分のために他が動くのが当たり前だと思っているのだ。 だからゆっくり達の柿を取りに行く役目の押し付け合いになる前に、私が流れを決める。 今度は子れいむに向けて『腹話術』を使う。 「〝お母しゃんなら出来るよ! がんばっちぇね!〟」 続いてもう一体の子まりさ。 「〝お母しゃんはあんなばかなれいみゅと違うもんね! ゆっくり取りに行ってね!〟」 「ゆっ、ゆっ~……」 愛しい子供達に揃って懇願され困り果てる親れいむ。 愛する子供達の願いとあっては断れないだろう。しかし怖い人間の家へと行くのは怖い。 助けを求めようと親まりさへと視線を向けるも 「〝バカな人間と違ってれいむは優秀だもん! れいむならできるよ!〟」 親まりさの口から出るのは、私の『腹話術』による私の言葉だけだった。 親れいむは親まりさから突きはなされたかのような驚愕の顔を見せるも、すぐに気をもちなおしたのか、キッと柿の方へと視線を向け、駆け出した。 「れいむがゆっくりかきさんとってくるからね! まっててね!」 勢いよく飛び出したが、もちろん人間に気づかれないように静かに這っていく親れいむ。 ゆっくり一家のいる道から縁側までは十メートル程の距離があった。 その距離を「そろ~り、そろ~り」とまたもや間抜けな声を出して這う親れいむ。 親れいむの姿を後ろから見守る他のゆっくりは「がんばっちぇね」と小声で声援を送る。 さっきの会話では親れいむ以外は意識が飛んでいて会話の一部内容を知らないはずだが、自分の都合の良い展開となっているので特に気にしていないようだ。 まさにゆっくりの餡子脳といえよう。 少しずつだが確実に縁側へと近づいていく親れいむ。 民家の明かりはついているようだから、住人は中にいるはずだが、やはり気づかないか。 ならば、次にとる手段は────。 「〝ゆっ!! 人間に気づかれなかったよ!! バカな人間だね、ゆっくり柿は頂いていくよ!!〟」 親れいむが柿のある縁側へと辿り着いた瞬間の『腹話術』。 もちろんさっき子れいむに発せさせたのと同等の大声だ。 当然 「ゆっくりかっ!!」 住民に気づかれる。 「なんでおおごえだすのでいぶぅぅぅ!!」 「おかあしゃんのばかぁぁぁぁ!!」 「やっぱりおかあしゃんもばかなんだにぇ!!」 スパーン、と障子を開き人間が現れた瞬間、大声を出した親れいむへと一斉に罵声を浴びせかけるゆっくりまりさ達。 当然れいむはそんなこと知らない。 「ゆっ、なにいってるの? れいむはおおごえなんてだして────」 踏み潰された。 死なない程度に餡子を吐き出させる見事な力加減だった。 「いだぁぁぁぁい……なんでごんなごどずるのぉぉぉ!!」 皮が変形し滝のような涙を流しながら後ろを振り返った親れいむは、後ろにいた青年を見つけ愕然とした。 「ゆっ……ゆっ……、ゆっくり……かきさんちょうだいね?」 発した言葉は恐る恐るといった感じで、できるだけ怒らせないようにとした結果だろう。 だが所詮は餡子脳。それで怒らない人間などあんまりいない。 むんず、と青年に髪をつかまれた親れいむ。 「ゆっ、ゆっ、ゆっくりはなしてね!」 パシーン! と、ゆっくりの言葉など無視する痛烈なビンタ。 右頬をはたかれたれいむはさっきよりも涙目になっていた。 「ゆぐっ……ごめんなさい、でもかき──」 パシーン! 左頬。 「ごべんなざいぃぃぃ! でもごはんたべないとれいむたち──」 バチーン! 右頬。 「ゆっ……ゆっぐりでぎ──」 バチーン! 左頬。 「おうぢがえぢ──」 バチーン! 右頬。 「ごべんなざ──」 ビターン! と痛烈に顔面から親れいむは床に叩き付けられた。 子ゆっくりなら即死だろうが親ゆっくりの弾力性なら大丈夫、死なない。 散々痛めつけられた親れいむだが 「ゆっ、ゆぐっ……」 と立ち上がろうとする。 しかし、青年はそれを許さなかった。 ドゴム! と親れいむを庭へと蹴り飛ばした。 破裂しない程度に吹っ飛ばされた親れいむは、餡子を飛び散らせながら空を舞い、地面へと落ちた。 ゆっくり一家はというと、一連の惨状をガタガタ震えながら見守っていただけだった。 だが地面へと落ちた親れいむへと歩み寄っていく青年を確認すると、親まりさが何事か子ゆっくり達に囁きかけた。 子ゆっくり達はそれを聞くと、親まりさと共にその場を駆け去っていった。 このまま青年が親れいむの許へと近づいていけば、庭の外にいる自分たちも気づかれると思ったのだろう。(道と庭がちょっとした柵があるため、しかも夜のため見難い) そんな薄情なゆっくり一家の行動に、親れいむは気づかなかった。 そんな余裕は既に無かったのだ。 「ゆぐっ……ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛っ゛ぐ……」 ボロボロになりながらもなお立ち上がろうとするが 「ゆ゙っっ!!!」 むんず、と髪を掴まれ顔面を地面へと叩き付けられる。 「も゛う゛や゛め゛でえ゛えええ!!!!」 顔面を地面につけたまま、ガリガリと家へと連れて行かれる親れいむ。 当然顔面は土や石によって削られていく。 親れいむが通った後は涙等によって濡れていた。 やがて縁側まで引きづられた親れいむは、そのまま青年に抱えられ 「い゛や゛だあああ! ゆ゛っぐり、じだいいいい!!!」 家の中へと連れ去られていった。 ピシャン、と障子が閉められ完全に親れいむの姿は見えなくなった。 それを見届けた私は、もちろん家族を放って逃げたゆっくり一家の後を追った。 つづく ───────── あとがきのようなもの 作中に出てきた『腹話術』とは、「魔王」という小説に出てくる能力です。 面白そうなので一度使ってみたかったのです。 はい、完全に自己満足です。本当に有難うございました。 他に書いたもの:ゆっくり合戦、ゆッカー、ゆっくり求聞史紀 このSSに感想を付ける
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※妄想シーンがあります ※お兄さんがキモく、ウザくなります ※ゆっくりが木から生えます 「ゆっくりが実る木」 ある家の玄関に種が入っている袋が落ちていた。 「うん?」 何じゃこりゃと袋を拾い上げるお兄さん。 すると種のほかに紙が置いてあった。 「この種を植えてください 追伸 おなかがすいているのであればこの木から育った実を食べてください」 それしか書いてなかった。 「へぇ・・・ なんかの果物か? ちょうどいい、腹も減ってるし、金もないから、植えてみるか。」 早速中庭に種を植える。 水とか肥料はバッチリだ。 「へへ、そう簡単にならないのは知ってんだよ。 ま、気長に待ちますか。」 実はこの男、前に木を育てたのだが一ヶ月足らずで駄目になってしまった経験がある。 そんなことは関係ないか。と思い家の中に入る。 そして夜。 何か変な音がした。 「何だ?ゆっくりが忍び込んできたか? いや、違う。ゆっくりがこんな時間帯にくるはずがない。」 なんだってんだよー、ったく と思った後、外を見つめた。 すると植えたはずの木があっという間に育っているではないか! 「な・・・なんじゃこりゃアアアアあアアアアあアアアアアアアアアアアアアアあアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」 しかも立派に育っている。 「やばいってこれ。夢だよ、夢だって、そうさ!いつだってッ!!」 とあわてて家の中に戻り 布団に飛び込む 「だからお休みー」 布団を再びかぶり眠りにつく。 で、翌日。 ぱっと目を覚ました俺は中庭を覗いた。 すると目の前にあったのは・・・ やはり立派な木だった。 「何で夢じゃないのおおおおおおおおお!!!」 ゆっくりのような悲鳴を上げたお兄さん。 さらによく見るともう実がなっている。 「はぇぇ・・・はぇぇよぉ・・・」 この木の成長振りにびびるお兄さん。 よく見ると、その実はどこかで見たような気がする形だった。 「なんかこうウザい感じがするな・・・」 はぁーと、溜め息をした次の瞬間。ぷちりという音がした。 「ん?何の音だ?木の裏側っぽいな、見てみるか。」 と覗くと、黒い髪に赤色リボン。これってまさか・・・ 「ゆっきゅりちていっちぇにぇ!」 一口サイズの小さなゆっくりれいむだ。 「さっきまでいなかったはずのれいむがなぜここに・・・ まさか!」 お兄さんは木の実を見る。 よく見ると、ほかの木の実には黒い帽子、カチューシャ、猫耳帽子、ナイトキャップなどがついている。 これでもう明らかになった。 この木はゆっくりが実る木。 「なんてこった。 俺は大変なものを・・・ あ。」 お兄さんは懐に合った紙を取り出した。 『この種を植えてください 追伸 おなかがすいているのであればこの木から育った実を食べてください』 と書いてあった。 食っていいから大丈夫だよなと思った俺はまりさと思われる実に手を伸ばす。 「よし・・・」 と実をくいっと引っ張った。 すると実は簡単に取れた。 まりさは悲鳴を上げることもなく絶命した。 次に帽子をぽいっと捨てる。 「ゆぅ~にゃにしょれぇ?おいちいにょ?」 と木の実から生まれたれいむがたずねてくる。(以下実れいむ 実まりさなど) 「ん~どだろ。」 ぽいっと口の中へ放り込む。 味はいまいち まだ成長が未発達のせいかそんなにおいしくなかった。 「これ以上増えてもらってはこまるな・・・ 何かいい策はないもんか・・・」 と頭を抱え悩みこむ。 するとお兄さんの家の近くから声がした。 よく見ると一人のお兄さんがれいむとまりさを籠につめ歩いているところだった。 「何してるんですか?」 と問いかけると、お兄さんは苦笑し。 「お前知らないのか。 こいつらを加工所に売り飛ばすんだよ。 そうすりゃ金になる。」 「かごうじょいやあああああああああああああああああ!!」 加工所という単語を聞き暴れるれいむとまりさ 「るっせーな、今楽にしてやるから覚悟しとけ。」 なんてやり取りの後お兄さんはすたこらさっさと逃げていった。 サイドビジネスの予感。 お兄さんは将来の自分を想像した後、とんでもないことを考えてしまった。 「いや、待てよ。 ぽんぽーんと連れて行ったら怪しいって思われて家宅捜索されるんじゃ!?」 創造というよりモロ妄想である サイドビジネスはあきらめた。 金を渡す加工所の気持ちも少しわかった気がする。 「そうだ!木!」 俺はあわてて庭の中へ。 すると実がぽろぽろ落ちてきている。 そしてお兄さんのほうを向いて 「「「「「「「「「「ゆっきゅりちていっちぇにぇ!」」」」」」」」」」 オウ、ノーもう生まれてる。 しかも十匹近く。 でも、こいつらを飼うわけにはいかない 野生に離してもれみりゃが現れるだけ。 どーすんのよ。 殺しまくってストレスを処理しても ぽんぽん増えるやつだから飽き飽きになるだろう。 なので。 数週間後。どこかのマンション トントンとドアのノック音がする。 「うるせーなぁー朝から。つーかチャイムがあるからそれ押せよ。 どんだけレトロな人間だ?お前。」 「すまないなぁ・・・お前が一流の虐待お兄さんとして折り入って頼みがあるんだ。」 「はぁ?」 「友達のよしみってことで・・・ こいつら全部殺してもかまわないぞ」 と差し出されたのは大型サイズの籠にゆっくりたちが無造作に押し込まれている。 「んな!何匹いるんだよ!こいつら」 「んー、50匹くらいかな。」 「キャッホオオオオオオオオオオオオオオオオオオウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!」 友達が歓喜の声を上げる。 「まさかこんなにゆっくりを大虐殺する日が来るとは!!」・・・と。 「あ、こいつら5000円な。 あと前に貸した10000円返せ。 それとこのことは誰にも言うな。」 すると友達はマッハの速さで財布を持ってきて。 15000円を渡した後、強くドアを閉めた。 「・・・いよっし!」 とお兄さんはルンルンと笑顔で帰った。 つまり加工所ではなく友達に売り飛ばせばいい。 秘密にさせておけば家宅捜索なんてないんだぜ!(モロ妄想です) そんな簡単なことに早く気づかなかったんだろ。 なんて思いお兄さんは家に帰る。 そして家に帰り木の本へ戻るお兄さん。 実ゆっくりたちのお帰りコールがあったので適当に返事をし木の本へ行く 「やっほ~ぅ。わがいとしのきよぉ~ かえったぞぉ~」 とでれでれと戻ってみると新しい実が実りつつあった。 「おお、金が実る。金が実る。」 お兄さんは次から次へと実を確認しました。 「おお、今日はちぇん・・・みょん・・・ おお、れみりゃだ。 フランまで。 むふふ・・・ お兄さんはうれしいどぉ~♪」 思わずれみりゃの真似をしたお兄さん さらには踊りまで真似する始末。 「うっうー♪うあ♪う・・・うん?」 お兄さんが何かに気がついた。 見たこともない実がはえていたのだ。 すると近くにいた実ちぇんが現れ実を見るなり 「ら・・・らんしゃまあああああああああああああああ!!」 「・・・は?」 「らんしゃまだ!まちがいないよ-わかるよー」 「なにいってんだここにらんがいるわけ・・・」 といい木の実を見ると 確かにいた。 らんがいた。 他にもゆゆことか、えーりん、ゆかりとかも生えていた。 「てかえーりんがここから生まれてもいいのか!?」 なんてお兄さんは思っていたがそれはどうでもいいとして。 まさに希少種のラッシュ。 売れば相当の金額になるだろう。 あと、どうでもいいができればゆゆこは早く生まれてきてほしい お兄さんのほしいゆっくりランキングナンバーワンだからだ。 お兄さんはルンルンとしていた。 まさかあの木からゆゆこが生まれてくるとはと。 翌日には生まれてくるんだ。 楽しみだな・・・ そして翌日。 お兄さんはウキウキしていた。 早くゆゆこうまれねーかな。 その隣にはちぇんがいた。 早くらんしゃま生まれないかな。 お互いはそんなことを考えていた。 すると実がゆれる。 ついに・・・ついに・・・ ゆゆこが(らんしゃま)が生まれるんだ! 実がぽとりと落ちる。 生まれてきたのは・・・ 「どうも、ゆっくりしていってください わたしはきよくただしい きめぇまるです」 きめぇ丸だった。 場の空気が凍りつく。 ついでにきめぇまるは生まれてきてから言語能力が発達しており生まれたにもかかわらず成体ゆっくりに近いような話方をする。 「なんでらんしゃまがうまれないのおおおおおおおお!?わからないよおおおおおおおおお!?」 ちぇんが半狂乱になっている。 「大丈夫だ!落ち着けちぇん!次こそはらんが生まれるって!多分!!」 「ゆ・・・そうだねーおちつくよー」 (さぁこい!ゆゆこ!!生まれたらお兄さんとゆっくりしようね!) お兄さんはそう思い妄想を開始した。 それはお花畑じゃなくてゆっくりたちのゆっくりプレイス 俺はゆゆこと手(?)を取りながら嬉しく虐待をしていた。 「あはははははははは・・・」 「こぼねー」 ゆっくりたちを踏みつけ、蹴飛ばす俺。 ゆっくりたちを容赦なく食らいまくるゆゆこ まさに俺の人生薔薇色! かもぉーん!ゆゆこ!! しかし、木に変化が起きた。 木が見る見ると枯れ、木が朽ち果ててしまったのだ。 当然実は栄養を受け取ることができなくなり黒ずんでしまった。 らんも、ゆゆこも。 「「うっ、うわああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 すると玄関近くにチャイムの音が 「はい・・・」 それは郵便局の人だった。 「いたいた。実はあなたにこれを渡すように頼まれまして。では。」 一通の手紙を渡した後、郵便局の人はバイクにまたがり去っていった。 その手紙には 「遅れてすいませんでした。 この木はゆっくりを実らす木ですが 一ヶ月たつとかれてしまいます。 お手数をかけすみませんでした。」 と書いてあった。 それを見たお兄さんは 「なんてこったい。俺のゆゆこがあああああああああああああああああああああああ!!」 ちぇんはもう息もしていないらんに泣き縋る。 「うわああああああああん!らんしゃまあああああああああああ!ゆっくりしてええええええええ!わからないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 お兄さんはその後怒りに身を任せ手紙を力いっぱいに破り捨てた後 、枯れ木などに八つ当たりをはじめ。 最後、暴れすぎたせいか意識がブラックアウトする。 「・・・はぁっ!!」 俺はがばりと起き上がった。 「な、・・・なんだ。」 お兄さんは起き上がり庭を覗く。 気はない、ゆっくりたちの死体もないし、ちぇんもいない。 まさか・・・これは 「夢オチかよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 あとがき 最後は夢オチでした。 ゆっくりの出産方法に茎による植物性出産を考え 木からから生まれたらどうなるだろうかと考え作りました。 夢じゃなかったらどうなることかと俺は思う。 byさすらいの名無し 過去作品 いじめ系2850 ゆっくり油火踊り祭 いじめ系2889 ゆっくりべんじゃー いじめ系2932 すぃー吶喊 いじめ小ネタ542 ゆっくりジェットコースター いじめ小ネタ545 ゆっくりボール いじめ小ネタ546 ゆっくり太郎 いじめ小ネタ553 ゆっくりできない川さん いじめ小ネタ562 ゆっくり草野球 いじめ小ネタ567 ゆっくり瞬殺されるよ! いじめ小ネタ573 金バッチがほしいよ! このSSに感想をつける
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出勤前にモーニングコーヒーと洒落込むべく、今日は早めに家を出た。 会社最寄り駅近くの喫茶店は出勤者向けに早くからやっている。 そこでトーストにスクランブルエッグで軽く朝食を取って、それからブラックをゆっくり味わおう。 しょせんは大したものではないが、こういうのは気分が大事なのだ。その程度の事で優雅さを味わえるのだから、素直に味わった方が利口だ。 時間は十分にある。 今日は随分と暖かく晴れていて良い気分である。俺と同じように駅に向かう出勤者も何となしに起源良さそうに見える。 橋に差し掛かると対岸の道路に何やら人だかりが出来ているが見えた。 あれは何だろうか。電柱の周りで、十四五人ばかり各々その先の方を見上げている。 よく見ると電柱のてっぺんには一匹のゆっくりがおり、「わからないよー!わからないよー!」と泣き叫んでいた。 本当に分からない。 猫が登って降りられなくなるというのは良く聞く話だが、何で饅頭生命体があんな所に登る事が出来るのだ? しかし……俺は考え直した。そもそもゆっくりなのだ。饅頭が動き、言語を解するのだ。 それを思えば電柱に登るなど大した事でないのかもしれない。 マンションだろうと這い上がってくる奴らだ。 それにしても、馬鹿は高い所が好きと言うが、わざわざ表現してみせる事もないだろう。 橋を渡り、人だかりに近付くと、その輪の中、電柱の根本にはもう一匹のゆっくりが泣き叫んでいた。 「ちぇえええん!ちぇえええええんッ!」 何やら尻尾のようなものを沢山生やらかしたゆっくりが、電柱を見上げてひたすら叫んでいる。 その顔は傷だらけで、帽子は薄汚れ所々すり切れた後が見える。そして近くにこいつのものと思しき尻尾が二本ほど転がっていた。 俺は不思議に思い足を止めた。そうして人だかりに加わってしまった。 なぜこのゆっくりは傷だらけなのだろう。二匹はどういう間柄なのだろう。 一方の疑問は直ぐに解消された。 真下で泣いていたゆっくりは突然泣き止むと、その場を後ろに下がり、勢いを付けて電柱に突進したのだ。 助走を付けてジャンプし、ゆっくりらしからぬ見事な跳躍を見せ、そのまま電柱に激突した。 傷だらけになるわけだ。 「らんしゃまあああ!」 電柱の上から「ちぇえん」と呼ばれたゆっくりの泣き声が聞こえる。 「らんしゃま」と呼ばれたゆっくりは痛みにぐるぐる回っていたが、そのうち止まってまた泣き出した。 俺は素早く見物人の顔を見回した。 饅頭とはいえ、他者の不幸を見て機嫌良くなる奴というのは気持ちの良いものではない。 まあ俺もよくゆっくりを不幸にしているのだが、それとて仕方なしに投げ込んでいるのだ。 だが皆の顔は真剣そのものだった。老若男女、一様に真面目な顔をしている。 沿線の私立の制服を着た小学生達など、「頑張れ!」と声を掛けている。 世の中捨てたものではないらしい。 まあここの住民はよくゆっくりを不幸にしているのだが。 「らんしゃま」は再び電柱に距離を取った。 小学生のうち一人が電柱に向かって飛び、一歩二歩駆け上がる動作をしてみせる。登り方を教えているらしい。 ゆっくりは再度助走を付けた。 「ちぇええええん!」 今度は角度も良く飛び付く事が出来た。その勢いで電柱を駆け上がる。 そして二メートル程登ったところで勢いが尽きてそのままずり落ちてきた。 頭を地面に打ってひたすら回り続けるゆっくり。今度はさっきより回る時間が長い。 その傍らには新たにもげた尻尾が落ちている。 上の方からは相変わらず「わからないよー!」と泣き声が聞こえてきた。 三回目。 今度は電柱との距離を倍にとって勢いを稼ぐつもりのようだ。 相当早いスピードで電柱に飛び付く。角度も上々。 「らんしゃま」は、これならてっぺんまで上れるだろうという勢いで、電柱に刺さっている足場の鉄棒に激突した。 尻尾が何本かバラバラ降ってくる。 そのうちの一本が、登り方を教えていたのとは別の小学生の頭に落ちてきた。 その子供は帽子の上にのっかった尻尾を手に取りまじまじと見つめ、「おいなりさんだ。」と言って食ってしまった。 「おいしい。」 そんなもの食って大丈夫なのか。 それはともかくとして、苦痛から立ち直った「らんしゃま」はまじまじと電柱を見やっている。 障害物の位置を確認しているらしい。 段々上達しているし、こいつはそれなりに学習能力があるようだ。 見物人は一人として立ち去る者もなく成り行きを見守っている。 会社とか学校とか大丈夫なのか。 四回目。 既に満身創痍な「らんしゃま」だったが、尻尾が減ったせいか俊敏になった気がする。 今度は更に早いスピードで飛び上がって、螺旋を描くようにして電柱を駆け上がっていった。 鉄棒も見事にかわしてゆく。 三メートル、四メートル、どんどん登ってゆく。 そして電線や変圧器などの構造物も難なくかわした。 見事としか言い様がない。 だが回避行動よって勢いが無くなってきた。 九割がた登ったところでほとんど止まってしまった。 「らんしゃまあああッ!」 見物人は、俺も含め固唾をのんで見守っている。ここから落ちたら助からないのではないか? 「もう一息だ」と、全員の心が一つになったような気がした。 「ちぇええええんッ!」 「らんしゃま」は叫ぶと最後の力を振り絞って蹴り出した。 そうして残りの一割を一気に飛び越え、とうとう頂上に辿り着いた。 「らんしゃまあ!」 「ちぇえん!」 周りからは拍手喝采が沸き起こっている。 増えて二十人になった見物人達は、良くやった、頑張った、と皆満足そうだ。 だが全員すぐに不安顔になった。見るとゆっくりは不安定にゆらゆらゆれている。 「わからないよ!わからないよー!」 「わからないよー!」 あー。 あいつも降りるときの事考えてなかったんだな。 電柱の頂点に二匹は狭すぎたようだ。 ゆっくりはしばらくゆれていたが、そのうち耐えきれなくなって、ふっ、と落下してきた。 「わ゛がら゛な゛い゛よ゛!」 「ヴュッ」という生々しい断末魔と共にゆっくりは揃って地上に還ってきた。 「あーあ」と、全員の心が一つになったような気がした。 「ちぇえん」は「らんしゃま」の下敷きになってしまった。 「らんしゃま」は下敷きからころんと転がって、仰向けで「ゆっ……!ゆっ……!」と呻いている。 「ちぇえん」は俯せになって身じろぎもしない。 しばらくすると「らんしゃま」は横目で「ちぇえん」を見つめ、何か語りかけだした。 しかし素人目に分かるが即死である。どうも惨い結果になってしまったようだ。 「行こっか。」 ばつの悪い顔で即死と瀕死の二匹を眺めていた見物人は、小学生を先頭に早々と立ち去っていった。 ここの住民はドライだなあ。 現場には俺と二匹だけが取り残されてしまった。 歩行者が何人かこちらを見たりもするが、特に関心も示さず通り過ぎてゆく。 「ちぇ……えええん……」 「らんしゃま」はひたすら語りかけているが、当然のように反応は無い。 なんだか見るに忍びない姿だ。仕方ない。 死体をひっくり返せば一目瞭然なのだろうが、さすがにそれは酷な気がする。 俺は傍にしゃがみ込んで、既に分かっている事だが、改めて死体を確認してから瀕死のゆっくりに向かって首を振って見せた。 「ちぇえん……」 どうやら理解出来たらしい。手間が省けて助かる。 こいつも尻尾を全部失った上に、頬や額が裂けていて助かる見込みは無いだろう。 俺は立ち上がって右足を上げた。武士の情けとか仏心とか、そんなところだ。 俺を眺めていた「らんしゃま」は怯える事もなく、むしろ急かすように目を閉じた。 間抜けな割に妙に理解の良い奴だ。 止めを刺した後、あの世で仲良くやってくれと思いつつ二匹を川に投げ込んだ。 潰れた死体はすぐさま水に溶けてゆく。 そして俺は駅とは反対の、家に向かって歩き出した。 革靴が随分と汚れてしまったのだ。 こんな格好では会社に行けない。家に帰って靴を磨き直さなければならない。 モーニングコーヒーなどしている時間はもう無いだろう。 俺は陰鬱な気分で家に向かった。 By GTO
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※注意 現代ゆっくりモノ。 オリジナル設定あり。 ゆっくりまりさの中味が黒蜜になっていますが、俺設定です。 SS初挑戦です。 ブザーが鳴り響いた。 ゆっくりたちが目を覚ますと、そこは箱のなかだった。 「……ゆ!」 箱は天井低く、狭く、暗かった。そこに饅頭サイズの子ゆっくりばかりが8匹ほど入れられていた。 箱は横広の長方形だが、壁の一方が外に繋がっている。そこから見える景色は陽光きらめく新緑の森。 外に気づいたゆっくりたちが跳ね寄るが、箱と外界は鉄格子によって隔てられていた。 箱はゆっくりの牢屋だった。 「ここはどこ? せまくてゆっくりできないよ!」 「おそとはゆっくりできそうだよ! ゆっくりだしてね! おそとにだしてね!」 がちゃり、と音がして、鉄格子が自動的に外へと開いた。 「!? ――ゆ!」 「ゆ!?」 顔を見合わせるゆっくりたち。しかし警戒することはなく、自分達の行動が結果に繋がったのだと 結論付け、われ先にと光り輝く草原の中へと飛び出していった。 自分達の背後、先ほどまで入っていた箱牢が、静かに地面に沈みこんだ事に気づかないまま。 ※ 『さあ始まりました全国高校ロボットバトル・準決勝、第一試合です』 『バトルフィールドは森。舗装されていない草原と木立のステージです。二足歩行とローラーダッシュ が移動手段の西日暮里高校には若干不利な状況です』 屋内に作られた人工の森林。天井には青空が映し出され、太陽代わりの照明が森を明るく照らして いる。森のあちこちには状況を確認するための隠しカメラが設置されており、そのうちの数台が森の 地面から浮き上がったゆっくり牢から、ゆっくりの群れが飛び出すのを映し出した。 『各地点でゆっくりがリリースされました。数は合計で31体。れいむ種とまりさ種です。全て同じ親から生まれた姉妹となっております』 『子ゆっくりしかいないのにはなにか理由があるんですか?』 『親ゆっくりですとバレーボールほどにもなりますから、体当たりでロボットが破損してしまう可能性 があるわけですね。それは競技目的からすると望ましくない』 『なるほど。事故による不戦勝は好ましくないと』 『そういうことです。では解説席にお越しいただいている、親ゆっくりまりさ・れいむ両氏にコメントをいただきましょう』 解説の男はそういうと、足元から透明な箱に収まった二匹の親ゆっくり持ち上げ、解説席の上に置いた。 『やべでねぇぇっぇぇぇ!!』 『ゆっぐりじないでね! みんなにげで!』 だくだくと涙を流し、鼻を赤くして自らの子供らを案じている。 『おっほ! これは……』 『キモイですね~。では試合を見てみましょう。最初に群れを捉えるのはどちらになるのでしょうか!?』 ※ 「ゆっゆ~♪」 「ゆっ、ゆ~♪」 子ゆっくりの群れが楽しそうに移動している。 いずれもまりさ種で、心地よい自然のなかをきょろきょろしたり蝶を捕らえたり三つ葉をくわえたりしながら跳ねていた。 『おっとー。鼻歌を歌っている。のんきに鼻歌を歌っているのは? 6番グループのまりさ群ですか?』 『ひーふーみーよー・・・・・・10体? これは多いです』 『よくみると8番グループのまりさもいます。2グループ、2グループいます』 『これは大漁ですね。全体で31匹ですから、三分の一がここに集まっていることになります』 まりさの群れが移動しているのは茂みと茂みの間に不自然にあいた道だ。 獣道でもないのに歩きやすく道が出来ていることに何の疑問も感じないまま、群れは目的もなく進む。 やがてゆっくりたちは開けた草原に出た。 人間にしてみれば狭い、しかしゆっくりにとっては大草原ともいえる空間だ。しかもその中央、木漏れ日の直下には畑がある。 『6番8番がたどり着いたのは、畑。ゆっくりが好む野菜をゆっくりが好んで荒らす畑を模して配置しています』 『状況を把握しているわけがないですから、これは間違いなく喰いつ――、!? あぁっと、これは!!』 嬉々として畑に駆け寄るまりさの群れ。しかし、その畑の作物の間から見える赤白のリボン。 『ゆっくりれいむです! これは2番グループ総勢・・・6匹!』 『これは……』 畑で食事中のれいむ群が、来客に気づく。跳ね寄っていたまりさ達も先客の存在に気づき、歩みを遅めた。 畑のそばに揃って、まりさ種が言った。 「「「おじゃまかな!?」」」 れいむ種は畑を見回し、れいむ種同士で頷きあった。 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 にこやかな挨拶が取り交わされ、まりさ種は畑に入ることを許された。 大根を掘り出し、薩摩芋にかじりつき、白菜に包まりながら、暴食の宴が繰り広げられる。 「うっめ! めっちゃうっめ!」 「むーしゃむーしゃ」 「んっがぐっぐ」 「「「しあわせー!」」」 ゆっくりたちはこの世の春を謳歌した。畑の中央にある立て看板「にんげんのはたけ ゆっくりしたらしぬ」には見向きもしない。 『これは思ってもみない展開。この畑に過半数のゆっくりが集合してしまいました』 『総ゆっくり数31体ですからね。この16体が一つのチームに一網打尽にされると、その時点で逆転が不可能になります』 『そしてこの畑はF大付属のスタート地点近く――』 突然、畑近くの茂みが大きく動いた。 その音と動きにゆっくりたちが1匹また1匹と食事を止め、ついには全員が注目しだした。 茂みはなおも揺れ動き、その音を大きくする。まるで何かが隠れているかのよう。 ゆっくりたちは一向に姿を現さない何者かに痺れを切らし、茂みを囲むようにして待ち受ける。 その顔には友好的な笑みがうかんでいる。何かを示し合わせるように互いに視線で合図する。 ついに一匹のゆっくりが茂みから跳び出した。 「「「ゆっくり――・・・・・・」」」 サプライズをねらった子ゆっくりたちが、その闖入者を見上げた。 それは親ゆっくりよりも大きい、バランスボールほどもあろうかという・・・・・・ゆっくりゆゆこだった。 「「「――していかないでねええええぇぇぇ!!!」」」 瞬間、ゆっくりの春は終わりを告げた。 『キターーーー!!』 『F大付属工業高校のメカゆゆこがここで登場です! おおきい! でかい! いたしかたない!』 『下馬評ではゆっくりの警戒心を煽りすぎるとしてベスト16にも残れないと酷評されたメカゆゆこ! しかしふたを開けてみればどうでしょう! 並み居る強豪を押しのけての準決勝進出! ストイックなまでに削減された機能とこだわりぬいたゆっくりゆゆこへの偏愛! 幾重にも織り重ねられた狂気という名の錦が、この準決勝の舞台にも飾られてしまうのか!!?』 『にげでえぇぇぇあがじゃんんんんんんんん!!』 『だずげであげでよ"尾"お"お"おおおぉぉぉぉぉぉおぉ!!』 蜘蛛の子を散らしたよう――――。メカゆゆこを前にした子ゆっくり達の様は、そう表現すべきものだった。 統率もなく、策もなく、ただ泣き叫び散り散りに逃げ出すゆっくり。しかし1匹のれいむが取り残されていた。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆ・・・」 地面に仰向けに倒れ、笑顔のままひきつけを起こしている。 その目に光る涙の粒が流れ落ち、土に吸い込まれるかと思われた刹那、メカゆゆこの開きっぱなしの口から 飛び出した銀色の触手が逃げ遅れいむを貫き上げた。 逃げながら後方を窺っていたゆっくり達、あまりの光景に立ち止まる。 触手の先でいまだ痙攣するれいむ。その涙をにじませた微笑みが――、瞬きのうちにメカゆゆこの口内に消えた。 咀嚼の動作を行い、嚥下したような震え。 1匹を飲み込んだ機械仕掛けのゆゆこは、舌なめずるように銀色の触手を口から出した。 見せ付けるように突き出した触手の、餡子にまみれた先端が今、ゆっくりと三股に分かれる――。 「ひぎいいいいいいいいいいいいいいい!」 「い"やべでええぇえぇぇぇっぇぇぇぇぇぇ!!!」 「どうじでぞんなごどずるのおおおおおおおおおお!!」 『これは酷い! ノリノリの精神攻撃! あぁーと! メカゆゆこ動いた。回転しながら高速で移動し、 ゆっくりたちを取り囲む軌道! 徐々に輪を縮めてゆっくりの群れをひとつ所に集めてゆく!! ゆっくりは恐慌状態です!!』 『メカゆゆこの触手ですが、医療用のロボットアームを改造したもので自在に動きます。 現在メカゆゆこが見せている武装はこの触手1本。あとは転がりによる体当たり攻撃のみです。美しいまでのシンプルさ!』 『なんでごんだごどずるのおおおおおおおおおお!!! ・・・・・・まりざだずげであげでっ!』 『ゆっぐううううううううううううううううっ!!』 透明箱の中、おもいっきり膨らんで箱を破ろうとする親まりさ。息を止め顔を赤くし、箱の中で体をほぼ四角形にしながらがんばる。 しかし解説役ふたりが動じることなく実況を続けている事が、箱の信頼性をあらわしていた。 メカゆゆこの包囲旋回によって逃げ場を失ったゆっくりたち。身を寄せ合うようにしてかたまり、 恐怖に身を震わせながら泣き喚いている。その目の前で、メカゆゆこが止まった。土に汚れた顔面は、 ゆっくりたちには目元に影が浮かんだ凶悪な表情に映る。 「ひいいいぃぃぃぃっぃいいい!!」 円陣を組むように集まったゆっくりの群れから、数匹が先んじて離れた。 「まりさはおいしくないんだぜ!」 「そこのれんちゅうとよろしくやってるといいんだぜ!!」 「ゆっくりしね!」 仲間を見捨てたのはいずれもまりさ種。珍しくもない行動だ。 しかしメカゆゆこは見逃さない。閃光となって駆け抜けた触手が、逃げ出そうとした3匹のまりさを滑らかに襲った。 「けぺっ!」「ぉぶろっ!」「ゆっぐ……! やめえええぇぇぇ!」 細身の触手はゆっくりの形状を保ったまま貫いた。 触手はそのまま地面に先端を突き刺し、ずぶずぶとめり込んでいく。 触手のまちまちな位置に刺さっていたまりさたちは地面に押され、一列に並んだ。 そうしてから触手を抜いたメカゆゆこ。まりさ3体を並べるようにして口にくわえると、一気に触手を引き抜いた。 「だずっ、だずげっ・・・ぺええぇ!!」 「おがじゃ! おがぢゃあああぁぁぁぁん!」 「やめえぇ! かえりゅ! かえりゅぅぅぅぅぅぅ!!!」 べそをかき、絶望に塗れ、裏切った仲間達に命乞いをしながら、傷口から黒蜜を垂れ流すまりさ。 そのまりさたちが、ゆっくりとひしゃげてゆく。苦悶、懺悔、後悔。中身と共に流れ出すさまざまな感情。 その全てを絞り抜かれ、まりさたちは絶命した。触手の先が残骸を口内に招きいれ、念入りな咀嚼が始まる。 それが終わると、そこには口元を黒蜜で濡らしたメカゆゆこが残った。 「…………」 子ゆっくりたちは声もない。 あるものは髪と瞳を白く変色させて放心し、 またあるものは涙にまみれた顔をこれ以上ないほどゆがめたまま自身の舌を喉に詰まらせて窒息しつつある。 諦観にくすんだ微笑でその場の草を食む者や、 なぜかヘブン状態に至った者。 違いはあれど、皆逃走への意志を失っていた。 それを確認すると、メカゆゆこは一際おおきく口を開けた。 そのときである。 鉄のかたまりが、横合いからメカゆゆこを突き飛ばした。 『こ、これはーーーー!!』 『これ以上ないタイミングで! そして瀬戸際のタイミングで! かけつけました西日暮里高校、間に合ったーっ!』 鉄塊。 それは無骨なロボットだった。左手にドリル、右手にはサブマシンガン。 足短く、横広で頭部がない。骨格をむき出しにしたような外観はお世辞にもスマートとは言い難い。 その機体の上半身が、ゆっくりと子ゆっくり達の群れを向く。 ほぼむき出しのコックピット。 そこに鎮座しているのは一匹の子ゆっくりれいむだった。 「ゆっくりあんしんしてね!!」 その力強い言葉に、ゆっくり達の瞳に希望が点った。 ゆっくりをのせた機体『テイクイットEZ8』は向き直る。 いましがた突き飛ばした敵、メカゆゆこへ。 いまだ転がり続けている球体は木にぶつかって止まった。逆さまのメカゆゆこ。その両眼が鈍い輝きをもってEZ8を捉えた――。 後編に続く このSSに感想を付ける
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ゆっくりと共同生活 ソファにもたれてテレビを見る俺の周りで、ゆっくり一家がくつろいでいる。 「ゆゆぅ……ゆぅ……」 鼻息を漏らして寝ている、拳ぐらいの子まりさもいれば、 「ゆー……ゆっくち! ゆっくち!」 「ゆんゆん! ゆきゅっ♪」 にらめっこをして、にこにこ笑っている、ピンポン玉ぐらいの赤れいむもいる。 そしてあぐらをかいた俺の膝の上には、母れいむと母まりさが居座る。 「ゆぅ……すーりすーり! ……ゆぅ」 呼吸に合わせておだやかにふくらみ、ときどき頬ずりしている。 その様子は、幸せそのもの。 「れいむ、とってもゆっくりしてるね……」 「ゆー、まりさもだね……」 「赤ちゃんたちも、ゆっくりしてるね……」 「ゆっくち!」 ゆーゆーという相槌が上がる。あふれんばかりの団欒っぷり、ラブラブっぷりだ。 二匹の母親は、ほっぺたをもちっと押し合いながら、俺を見上げる。 「おにーさん、ありがとうね……」 「こんなにゆっくりできるお兄さんのおうちにいられて、れいむしあわせだよ!」 「「ゆっくりしていってね!」」 「そうだね」 俺は左右のゆっくりを交互に撫でる。 饅頭たちがぽよぽよと嬉しそうに揺れる。 「ちょっと降りてな。飲み物、持ってくるから」 「ゆうっ!」 二匹は、ぼよんと跳ねて、だぷっとカーペットに降りる。 バスケットボールぐらいある成ゆっくりだから、かなりの存在感だ。 「おかーしゃんだ!」 「まりさとゆっくちちてね!」 「だめだよ、れーむとゆっくちちゅるの! ゆっくち!」 集まってきた子供たちが、ゆっくちゆっくち、と声を上げる。 「ゆー、みんなでゆっくりするよ! おちびちゃんたち!」 「ゆーん!」 「おかーしゃん、ありがちょう!」 「ゆっくちちゅるー!」 母れいむもご満悦だ。すりすり、すりすりと頬をこすり付けあう。 ゆっくりにとって、「ゆっくり」は命のことば。 ゆっくりするのが大好きだし、それを言うだけでも幸せになれるのだ。 これからの人生で、ずうっと使うことば「ゆっくり」。 だから、なんでもないときでも、どんどん口にしてしまう。 ゆっくりを飼っていると、一日に千回ぐらいゆっくりを聞くことになる。 もちろん飼い主の俺も、その言葉が大好きだ。 そうでなければ、ゆっくりなんか飼ってられない。 「おかーしゃん!」「まりちゃも、まりちゃもー!」 机の陰や棚の下からも、ぞろぞろ、ころころと赤ちゃんたちが出てきた。 母れいむだけではすりすりが追いつかず、母まりさも出動する。 「みんな、まりさもゆっくりしてあげるんだぜ!」 「わーい!」「まりさおかーしゃん、だいちゅき!」「すーりすーり♪」 盛大なゆっくり大会になった。 そこらじゅうが小さな丸いころころで一杯。まるでスーパーのトマト棚だ。 それもそのはず、うちには30匹以上の子ゆっくりたちがいるのだ。 これだけ多いと、親たちも数を把握していない。 俺は立ち上がりながら、三匹ほどの赤れいむと赤まりさを摘み上げた。 広げた手のひらに乗せて、なるべく周りが見えるように運んでやる。 「ゆゆっ? ゆっくりのぼっていくよ!」 「おちょら、おちょら!」 「すーいすーい!」 喜ぶ赤ちゃんたちを連れて、にぎやかなゆっくり大会から離れ、キッチンに入る。 引き戸を閉めて、流しへ向かった。 手鍋をコンロに置き、ころころんと三匹を入れる。 「ゆっくちころがるよ!」「まぁるいおへやだよ!」 「はーい、おちょこだよー」 キャッキャと喜ぶ赤ちゃんたちの真ん中に、お猪口をひとつ、逆さまにして置いた。 「おちょこ、おちょこ!」「れいむたちみたいだね!」 形が気に入ったのか、赤ちゃんたちはさらに喜ぶ。 俺はカチンとコンロの火をつけて、食器棚へ向かった。 「ゆっ? ぽかぽかだよ!」 「あっちゃかくなってきたよ!」 グラスを選び、冷蔵庫から氷を取り出して、入れる。 スコッチの蓋を開けて、注ぐ。 トクトクと溜まる琥珀色の液体を、適当なところで止めて、蛍光灯にかざした。 いい色だ。そんなに高い酒じゃないが。 「ゆっ、ゆっ、あちゅい、あちゅいよ!」 「ゆっくちできない、ゆっくちできないよ!」 「つまみはー、っと」 水割りにしてから、菓子箱を漁った。いいものがない。 食べかけのスナック菓子があったが、開けたらしけっていた。 「あぢゅいい! あぢゅいよぉぉ!」 「たしゅけて、おにーしゃん! かぢだよぉぉぉ!」 「ちんぢゃう、まりちゃ、ちんぢゃうう!」 ぴょむ、ぴょむ、と小さな音の聞こえる鍋の横を通って、冷蔵庫の前に戻った。 その上のかごを下ろして調べると、チキンラーメンが見つかった。 ちょっと塩分とカロリーが高すぎだが、まあ仕方ない。 俺はチキラーを割って、皿に盛った。 饅頭側の焼ける香ばしい匂いが漂い始めている。 「どいて、どいでねっ!」 「れいむの! れいむのゆっくりぷれいちゅだよ!」 「ゆーっ、まりちゃのだよ! どかないとまりちゃがちんぢゃうよ!」 ぽにょん、ころん、びちょっ、ぷにょっ、びぢょん ぢゅうぅぅぅぅぅっ……。 「ゆぎゃぁぁぁぁ!」 「おかあぢゃぁぁぁん!」 最後はもちろん、ゆっくりたち用の飲み物だ。 俺はれいむやまりさたちの喜ぶ顔が見たくて、二日に一度はオレンジジュースをやる。 もちろん無果汁の激安品だが、これほどゆっくりを可愛がっている飼い主はそういまい。 「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆぢっ、ぢゅっ」 「もっちょ、ゆっくちちたかっ……ばぢゅっ」 ゆっくりは便利だ。セリフで焼け具合がわかる。 広い皿にオレンジジュースを満たして準備を終えると、ちょうど赤れいむたちの断末魔が聞こえてきた。 俺は火を止め、手鍋を覗いた。 赤れいむと赤まりさが一匹ずつ、焼きあがっていた。 全身ほどよく焦げ目がつき、ほこほこと湯気を立てている。 開いたままカリカリに焦げた口の中からは、沸騰した餡子がミチミチと漏れていた。 お猪口の上という、一箇所だけの安全地帯を巡って、壮絶に体当たりしあったのだろう。 そのゆっくりプレイスには、生き残ったまりさが一匹。 五分前まですりすりしあっていた姉妹たちの、凄絶な死にざまに、恐怖の顔で固まっている。 最愛の姉妹たちとの醜悪な争いは、無垢な心に、一生残る傷をつけたことだろう。 もっともその一生とは、あと一分もないのだが。 「ゆっ?」 わなわな震えていたまりさが、ふと俺の顔に気づいた。 その顔がくしゃくしゃと崩れ、愛くるしい泣き顔になる。 「ゆっ……ぇぇぇん! ゆえぇぇぇぇん! ゆえぇぇぇぇん!」 「おうおう、まりさ」 俺は手を伸ばしてまりさを救ってやる。ぴょんと飛び乗った赤まりさが、手のひらにすりすりする。 「れいむもまりさも、ちんぢゃったよお! バチバチってはねて、ちんぢゃったよお!」 「よしよし、こわかったな……」 「おにーしゃん、おしょかったよぉぉぉ! もっとはやくたちゅけてよぉぉ!」 生き残ったまりさの、涙に濡れた頬。 そのプニプニした感触を、指でつついて楽しみながら、俺は声をかける。 「ごめんな……俺、おまえたちのことが大好きなんだわ」 「ゆぇぇぇぇん! ゆぇぇぇぇぇん! ……ゆっ?」 まりさが不意に、ぴたりと泣き止む。 その目が、口が、恐怖に見開かれる。 つぶらな二つの目に映るのは、大きく開かれた俺の口腔。 白く硬い歯並び。 はむっ。 <なにちゅるのっ? ゆっくちやめちぇね!> 閉じた口の中で、もたもたと小さな球が跳ね回る。耳骨に叫びが伝わってくる。 <ちゅぶれりゅ! まりちゃ、ちゅぶれりゅよ! だちてね! ゆっくちだちてね!> ぱくっ、と口を開けてやった。「ゆっ!」と赤まりさが飛び出してくる。 すかさず俺はそれを手のひらで受け止める。 ぺちゃん、と着地したまりさが、振り向いてほっぺたをふくらませた。 「ぷくぅううう! おにーしゃん、ゆっくちあやまってね!」 「はっはっは、ごめんごめん」 「まりちゃ、こわかっちゃよ! おにーしゃんのばか! ばか!」 「そっか、こわかった?」 「ちゅっごくこわかったよ! おかーしゃんにちかってもらうからね!」 「ほんとごめんな。もうしないからな」 指先でころころとくすぐってやると、黒帽子のちいちゃな金髪まりさは、 「ゆふっ、わかればいーよ♪」 と微笑んだ。 「ありがとな」 俺はそう言うと、そのまりさをもう一度口に入れて、前歯でプチンと五分の一ほど齧り取った。 そして、凄まじい悲鳴を上げて舌の上でピクンピクンと跳ね回る感触を楽しんだ。 焼けまりさと焼けれいむをつまみ、口に入れてもぐもぐと咀嚼しながら、酒とつまみとオレンジジュースのトレイを手に取った。 それから、引き戸を足で開けてリビングへ戻った。 遊んでいた親ゆっくりたちが振り向く。 「ゆっくりよういしてくれた?」 「まりさたちも、のどがかわいたんだぜ!」 その声が聞こえたのかどうか、口の中の生まりさが、ビクンと強く跳ねた。 俺はそれをよく噛んでこね回し、とても甘い餡を味わった。 ごくんと飲み込む。 「おう、お待たせ。いつも通り五匹ずつね」 そう言って、床にトレイを置いた。 「みんな、ゆっくりのもうね!」 「「「ゆ~~~!」」」 母れいむの指示通り、赤ゆっくりと子ゆっくりたちが広い皿の周りについて、行儀よくぺーろぺーろと舐めだした。 甘いジュースに喜んで、ぱあっと感動の顔になる。 「「「「ちあわちぇー♪」」」」 涙を流し、ぷるぷる震える。母れいむが俺にすりすりする。 「こんなにおいしいじゅーすをのめて、れいむたちほんとにしあわせだよ!」 俺はいやいやいやと手を振って聞き返す。 「俺の幸せはおまえたちのゆっくりだよ。どう、子供たちはみんなゆっくりできてる?」 子供たちを振り向いたれいむが、力強くうなずく。 「ゆっくり! ゆっくりしているよ!」 「いっぱいいるけど、みんな大丈夫?」 「だいじょうぶだよ! このおうちは、こどもがいっぱいふえてもゆっくりできる、ふしぎなゆっくりプレイスだよ!」 「そうかあ、よかったなあ」 俺はにっこり笑って、腰を下ろす。 「これからも、どんどんすっきりして子供産んでいいからな」 「ゆっ、ありがとう!」 「ありがとうだぜ!」 「「「ありがちょうね!」」」 子供たちもいっせいに声を上げる。 俺は水割りを口にして、残っていた甘味を飲み込んだ。 fin. ============================================================================= 何かこう自然体のホラーを書きたかった。 YT このSSに感想を付ける
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※この作品の中の幻想郷は、河童達の頑張りもあって比較的文明が進んでいます 「ゆっ!おにいさん、今日はどこにあそびにつれていってくれるの?」 「それは着いてからのお楽しみだよ。とっても楽しい所だからゆっくり待っていてね」 「ゆゆ~、楽しみ~~!!」 ごきげんなゆっくり霊夢を腕に抱えて、大きな荷物を背負い、私は林道を歩いていく。 この霊夢は数日前、単独で我が家に侵入しようとしていたところを捕獲したものだ。 その場でブチ殺してやることもできたが、肉体的な拷問は今まで散々やってきていささか芸がない。 少し考えた末、私はある計画を思いつき、そのためにしばらくこの饅頭を生かしておくことに決めたのだ。 準備が整うまでの間「親切なゆっくりできるお兄さん」を演じ続けたため、今ではすっかり私に懐いている……まぁこの関係も今日で仕舞いだがな。 「おにいさん、いっぱいゆっくりしようね!」 「ああ、たっぷりとゆっくりさせてあげるよ……」 虐待おにいさんとゆっくり霊夢が贈る、そんなとある夏の日のお話。 ーーーゆっくりダイビングーーー 「ゆっ!すっごくおおきなみずたまりがあるよ!」 「ああ、ここが紅魔湖だよ。綺麗だろう?」 私達が訪れたのは、幻想郷の中心に位置する紅魔湖と呼ばれる巨大な湖だった。 全長数キロ、中心には紅き悪魔の住む古城がそびえる、風光明美な場所だ。 今日のような暑い日には、涼をとりに来た周辺の人間や妖精達の憩いの場所となっている。 「ゆゆー!ひろいね、すごいね!!」 「それじゃぁ、近くに寄ってみようか」 わーわー五月蝿い饅頭を抱えて水場に近寄る。 環境汚染とは無縁の幻想郷の中でも、一際透き通った水面が涼しげに揺れている。うーん泳ぎたい。 「ゆゆー、おみずがすっごくあおいよ!きれいだねー」 「この透明度は反則だよなぁ……それじゃあ早速泳いでみようか!」 「ゆっ!だめだよおにいさん、れいむはみずにはいるととけちゃうよ!」 ほう、この饅頭頭も流石にその程度のことは知っていたのか。感心感心。 「ああ、それなら安心してね。このスプレーをかけると君の体は水を弾くようになるんだ」 そう言って荷物から取り出したのは、加工場で最近発売された新商品「ゆっくり撥水スプレー」だ。 これをゆっくりに噴射すると特殊な薬品で体がコーティングされ、最低数時間は水中に入っていても体が溶け出さないようになっている。 用途はゆっくりを使った水仕事用や遊戯用といったほのぼのとした物から、水を使った長時間の拷問用まで様々。 もちろん今回は後者である。折角今まで長い時間をかけて準備してきたんだ。すぐに終わっちゃ勿体無いだろう? 「ハイ、おしまい!これで君も湖の中で遊べるようになったよ」 「ゆゆっ、からだがなんともないよ!つめたくてきもちいい~」 スプレーを終えたれいむを水面に浮かべてやると、最初はビクビクしていたがすぐに大はしゃぎで遊び始める。 水面でくるくる回転したり、水を口に含んで吹出したりしてキャッキャと笑っている姿は正直殺したくなるが、まぁまだ我慢我慢。 一緒に水に入り、一通り遊ばせてやってから、私は再び声をかけた。 「ねぇ、折角だからもっと広いところに出てみないかい?もっと面白い遊びがあるんだ。」 「ゆゆっ、こんどはなにをしてあそぶの?」 あれから私達はボートを借りて、紅魔湖の中心付近へと移動していた。 「ああ、ダイビングといってね、水の中で泳ぐ遊びだよ。それじゃ必要な機械をつけようね。」 言いながら私は、荷物の中から小さめのボンベと水中眼鏡、レギュレーターを取り出す。 これらはゆっくりの体型に合わせて、河童に作ってもらった特注品だ。 「ボンベは背負えたね?じゃ、次にこのレギュレーターを咥えて。離すと水が入ってくるから口を開いちゃ駄目だよ! あと、ここについている計器に気をつけて。ここにはボンベの中の酸素の量が表示されているんだ。 この目盛りが0になるまで潜っていちゃあ駄目だよ。酸素が切れて死んでしまうからね!」 物覚えの悪いアホ饅頭相手に忍耐強く説明しつつ、なんとか器具の装着を終える。 そのままボンベを手で支え、ゆっくりを水中に沈めた。 「ゆゆー!みずのなかでもいきができる!すごいよ!!」 うん、どうやら機械は正常のようだな、さすが河童。 それにしてもはしゃぐのは結構だが、口を離すなと……ってあれ、こいつレギュレーター咥えたままだな。どうやって話してるんだ? 「ゆ?れいむはいわれたとおりにしているよ?」 ……どうやら河童の超科学の賜物らしい。ゆっくりなんぞに使うのは豚に真珠以外の何物でもないが…… まぁいいや、クリアな悲鳴が聞けるのはよい事です。 「じゃ、しばらく一人で遊んでいてね。お兄さんは準備をするから」 饅頭を再びボートの上に引っ張り上げ、私は仕置きの最後の仕上げを進めた。 モニターを立ち上げ、ゆっくりのボンベについていたパネルを開き、あるボタンを押す。 「よし……カメラも異常なし、と。上手く行きそうだな。」 「おにいさんがなにをしているかわからないよ!はやくれいむをみずにいれてね!!」 私が調整を済ませている間も、ゆっくりは五月蝿く喋くり続ける。この腐れ万頭が…… 沸騰しそうになる頭を必死で落ち着かせる。そうだ、この下等生物に付き合うのもこれで最後なんだ。なんと素晴らしいことか。 「まぁ慌てるな。すぐに連れて行ってあげるよ……地獄にね」 「ゆぅ?」 すべての準備が整ったことを確認すると、私は理解できていない様子の霊夢(+ボンベ)をゆっくりと抱え上げ…… 「それじゃぁ…………ゆ っ く り 沈 ん で い っ て ね !!」 「ゆっ!?」 今までのストレスを込めて、水面に叩きつけた。 「ゆぶッ!」 ドボンッ!! 「ふぅ……清々したぜ」 水柱が立ち、ゆっくりれいむの姿は水の中へと消えていった。 ============================================ 「水深5M」 「……ん……ゆっ!?」 水面に叩きつけられてから数十秒後、ゆっくり霊夢は意識を取り戻した。 どうやらショックで少し気絶していたらしい。早く上がって、お兄さんに文句を言わないと 「ゆゆ?からだがうかばないよ!」 浮上しようと願う彼女の意識とは裏腹に、彼女の体は水中を急降下していた。 通常のゆっくりの体は水に浮くが、くくりつけられたボンベが錘の役割を果たしているのだ。 「ゆゆ~~っ!おにいさん!ふざけてないで引き上げてね!!」 自力で水面に上がることを諦めた霊夢は、お兄さんが助けてくれるのを待つことにした。 この期に及んでも誰かが自分を助けてくれると考えているそのゆっくり脳には、流石におめでたいとしか言いようが無い。 暢気に魚を探したりなどしながら、ゆっくり霊夢は、沈んでいった。 「おにいさん、はやくたすけてね!!」 「水深20M」 「ゆっ!はやくれいむを引き上げてね!今ならおこらないでいてあげるよ!!」 呼吸ができるということもあり、ゆっくりれいむの声にはまだ余裕があった。 もっともわずかな焦りも感じている。体に感じる水温が徐々に冷たくなっているからだ。 一般に太陽光によって海水が温められているのは、赤色光が届く深度十数Mの辺りまで そこから先は深くなればなるほど極低温の深層水の世界に入っていくということを、霊夢はまだ知らない。 「こんなにさむくちゃゆっくりできないよ!ばかなおにいさんははやくひきあげてね!!」 「水深40M」 「ゆゆっ!寒いよ……それになんだかくらくなってきたよ!」 沈みながら、心細げに辺りを見回す霊夢。 繰り返しになるが、海の中で満足に光が届くのはごくごく浅い位置に限られており 十数Mも潜ればライト無しのダイビングはほぼ不可能になる。 流石のゆっくり脳も不安を訴えてきていたが、まだ彼女はおにいさんが助けてくれるという妄想にすがり付いていた。 「水深60M」 コバルトブルーだった水の色は、今では薄暗い青に変わっている。 先程までは木の葉ほどの大きさに見えていたボートは、今では点のようにしか見えない。 ここでボンベを捨てて力を抜き、水面に上がればまだギリギリで助かったかもしれない。だが彼女はもはやそれどころではなかった 「ゆぐぅ……からだがいたいよぉおお!」 先ほどから、彼女の体に締め付けられるような痛みが加わっていた。水圧である。 10M潜るごとに1気圧ずつ増加するその力は、徐々に霊夢の体を締め上げていく。 だがゆっくりの体は水圧に最も強い球形をしており、中身も水分が豊富な餡子で出来ている。 その特性が、結局彼女の苦しみを長引かせることとなった。 「水深100M」 「いだいいいいいい!もういやだあ゛あ゛!おうぢがえるうううううう!!」 既にボートの姿はとっくに見えない。先ほどまでちらほら見えていた魚影も無くなっている。 沈み始めて数分、霊夢はようやく自分の置かれた状況の深刻さに気付いていた。 だがもう遅い。もはや普通に浮上したとしても間に合わない深度まで、霊夢は降下してしまっていた。 「水深120M」 「水深140M」 「水深160M」 ………… …… … 「だずげでぇえええ!!おにいざんんんんんん!!!!!」 140Mを越えた辺りから、もはや周りは暗くて殆ど見えない。 なぜ水遊びなんかしてしまったのか、などなぜもっと早くボンベを外し水面に出ようとしなかったのか、 後悔だけを繰り返し、彼女はひたすら奈落の底へと落ちていった。 ………… …… … 「水深200M」 「ゆぎゅっ!」 衝撃とともに、れいむは自分の体が何か堅い物に叩きつけられたのを感じた。とうとう紅魔湖の底に着いたのだ。 痛みをこらえ、状況を確認しようと周りを見渡すと 「ゆ゛っ……」 そこは数十センチ先すら見えない、完全な闇の世界だった。 この深度になると、水面からの太陽光の到達率は0.5%を切る。深海魚でもない限り光を感知するのは不可能だ。 身を切るような寒さ。体を締め付ける水圧。そして耳を済ませても自分のレギュレーターの音だけしか聞こえぬ静寂。 この世で最も過酷で、孤独な世界に、彼女は一人で取り残されていた。 「いやあああああああ!!だずげでぇえええええええええ!! ぐらいぉおおおおおお!!ざむいよおおおおおおお!!ごわいよぉおおおおおおおお!!」 パニックを起こし、泣き叫ぶ霊夢。その声は何処にも反響することなく暗い空間に消えていった。 だれか、だれか自分を助けてくれるものはいないのか。 ワラをもすがる気持ちで辺りを見回す彼女の視界に、何かぼんやりと光るある物が映った。 「酸素残量:50%」 それは、ボンベについていた酸素残量メーターの蛍光盤だった。 食い入るようにその微かな光を凝視する彼女の耳に、ふいに湖上でお兄さんが話した言葉が甦る。 『ここにはボンベの中の酸素の量が表示されているんだ。 この目盛りが0になるまで潜っていちゃあ駄目だよ。酸素が切れて死んでしまうからね!』 「いやぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 その数字の意味する所に気がついた瞬間、彼女は絶叫した。 この計器は自分の死刑宣告。ここに書かれた数字が0になった時、自分は窒息し、死ぬのだ。 「だずっ げでっ だれがあ゛あ゛っ!!」 半狂乱で全身を動かし、少しでも水面に浮かび上がろうとするれいむ。だがその体は無情にもボンベで湖底に縫いとめらている。 彼女に出来たのは、刻一刻と無くなっていく酸素の量に怯えながら、芋虫のように湖底を這いずり回ることだけだった。 40%…… 30%…… 「いやあ゛あ゛だあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!じにだぐないいいいいいいいいいい!!」 20%…… 10%…… 「おにいざん゛ん゛ん゛ん゛ん゛だずげでぇぇえ゛え゛え゛え゛!!!」 5%…… 0% 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ…………ガぼぁッ!!」 数十分後、しかし彼女の中では無限に思える恐怖の時間の末に、目盛りはとうとう0に重なった。 それと同時に大量の水が彼女の口に流れ込んでくる。計器の光も消え、辺りには真の闇が訪れる。 「ゴぱッ みずっ いぎが でぎなっ」 ゴボゴボと気泡を吐き出し、湖底をのたうち回るれいむ。 浸入した水で鼻や喉は焼けるように痛み、窒息の苦しみは彼女の餡子を生きたまま掻き回すようだった。 「いやだぁあ゛ゴブッ じにだぐないあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ゲぼッ」 死への恐怖が、彼女を最後の瞬間まで足掻かせる。その時、奇跡的にボンベと体を結ぶベルトが緩み、彼女の体は開放された。 だが酸欠と恐怖でパニック状態となったゆっくり脳は、もはや上下の感覚すら解らなくなっていた。 浮かび上がろうともがけばもがくほど体は逆に地面に突き刺さり、辺り一面に砂埃が舞い上がる。 そしてゆっくりと、ゆっくりと、もがく体は動きを止めていった。 クライ クルシイ サムイ イタイ どうして自分がこんな目に会わなければならないのか。自分はただ優しいお兄さんと楽しく遊びたかっただけだったのに。 薄れる意識の中でれいむは問う。だがどう考えても答えは見つからない。 やがて完全に体は動きを停止し (ゆぐっ……じだ……がっ……た……) お決まりの台詞を残して、彼女の意識は闇の中へと消えていった。 「……あっはっはっはっはははは!!いやぁ傑作だったな!!!腹が痛い!」 ボートの上で、私はモニターを眺めながら大爆笑していた。 霊夢が沈んでから湖の底で悶死するまでの映像、その一部始終を私はボンベに付いていた小型カメラで見ていたのだ。 録画も可能な優れモノなので、家に帰ったらもう一度見直すことにしよう。全く河童の技術力は大したものである。 「さてと……ボンベを回収しないとな。なんたって特注品だ」 ボンベには釣り糸程の細さしかない頑丈なロープが結び付けてある。それを巻き上げて回収し、 そのついでに死体となって浮かび上がってきたゆっくり霊夢もボートに引き上げる。 絶望と窒息の苦しみでグロテスクに歪んだそのデスマスクは、なんとも笑える代物だった。額に入れて飾っておきたいようだ。 兎も角、今年の夏はこれのおかげ楽しめそうだ……高い金を出した甲斐があったといえる。 次はゆっくりれみりゃでも沈めてみるか……あの再生力なら死ぬまでじっくり楽しめるだろうな。 撮った映像は稗田のお嬢さんにでも売りつければいい小遣い稼ぎになるだろう。 新しい遊びの成功に心を弾ませながら、私はゆっくりとボートを岸へ戻していった。 ======== 蛇足なあとがき こんにちは。以前ゆっくり改造職人の前編を書かせて頂いたものです。 後編を書いている最中、ふと電波を受信してこんなものを書いてしまいました。色々と突っ込みどころはあるかと思いますがご勘弁をorz 海とか湖って美しくも怖いですよね。足のつかない不安定な体勢、下を見ると光すら届かぬ冷たくて広大な空間が広がっている…… そこで何者かに突然足を掴まれ、引きずり込まれたら……そんな想像をしてしまい、自分は浅い所でしか泳げません。 暑い夏の夜に、ちょっと涼しいゆっくりいじめを。読んで頂きありがとうございました。 書いた人:ケイネスキー このSSに感想を付ける
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『真冬のゆっくり対策 3』 「へえ…そんなものがあるんですか」 「外の世界から流れてきたものです。透明なビニールの中で野菜を栽培するようです」 「でもビニールハウスだと風通しが悪くなるのでは?温度とか湿気とか」 「そこなんですよ。ですから我々は屋根を取っ払って実際に育ててみました。大丈夫なようです。外の世界ではどう使ってるのかは不明ですが」 「いくつかの畑に使ってみましょう。他に何かありませんか」 「そうですね、商品ではなくアイデアなのですが畑の周りに毒草を生やしておくというのはどうでしょうか?」 「春の毒草といえばトリカブトやスイセンとか有名ですね。ドクウツギなんて昔は農村でよく被害が出たものです。今から生えてきますかね?」 「そこなんですよねえ…あとは青唐辛子を用意して仕込んでおくとか」 「周りの村から苗木を調達するとか検討してみましょう」 「さて私も何か少し手伝わせてくれませんか?」 「ありがとうございます。今から壁を作るのですがお手伝いお願いできますか?」 「任せてください」 「「「「「「むーしゃむーしゃ…しあわせぇ♪」」」」」」 洞窟の中は宴会だった。冬篭りというゆっくりにとって厳しい時期にドスが来てくれたのだから。 数分前 「ドスとみんなの約束だよ。ゆっくり理解してね!」 ドスまりさの帽子を被った女性が言った。 「おきてなんだね。わかるよー!!」 「「「「「「ゆっくりりかいするよ!!!」」」」」」 「1つ、無闇にすっきりしないこと」 「ゆ!どす、まりさたちはすっきりしてもだいじょうぶなんだぜ!」 「まりさ!さっき食糧を見せてもらったけどこの数じゃもうギリギリよ。それともまりさが食糧になってくれるの?」 「ご…ごめんなさい!!!!まりさがわるかったですううう!!!!」 「はるになったらすっきりしほうだいよ!それまでがまんしようね」 「1つ、………」 「1つ、…」 「みんな分かった?」 「「「「「「「ゆっくりりかいしたよ!!!」」」」」」」 「約束を破ったら死刑かこの群から出て行ってもらうわ。わかったわね?」 「「「「「「「はーい!!!!」」」」」」」 「じゃあみんなご飯にしようね!」 「「「「「「「やったね!えんかいだね!!!!」」」」」」」 こうしてゆっくり達の宴会が始まったのだ。 「ご飯だよ」 れいむのリボンを付けた虐待お兄ちゃんは親ゆっくりに食事を与えた。 「おきゃあしゃん!いっちょにたべよ!」 「赤ちゃんはドスから貰ってね。これは赤ちゃんには美味しくないんだ」 「ゆっふっふ、これはおとなのあじなんだよ。あかちゃんにはまだはやいよ。ごめんね」 「ゆっくちりかいちたよ!あとでゆっくちちようね!」 「赤ちゃんはこれを食べようね」 彼女は赤ゆっくり達に親ゆっくりとは別の食事を出していた。 「「「「むーちゃむーちゃ…ちあわせぇ♪」」」」 「「「「ちちちちちあわせええええ♪」」」」 赤ゆっくり達が完食した直後異変が起こった。 「ゆ!にゃんだきゃむずむずしてきちゃよ!」 「ゆ?にゃんだかぽかぽかしてきちゃよ!!」 「ありちゅもー」 「りぇいみゅもー」 「ゆゆゆゆゆ?あちゅくなっちぇきちゃよ」 「にゃんだきゃへんだよ!」 赤ゆっくりは頬を赤らめ体からぬとぬととした粘液を出していた。発情したのだ。 「ま…ま…まりしゃああ~しゅ~りしゅ~りぃ」 「しゅ~りしゅ~り…な…なんだかへんだよ。しゅ~りしゅ~り」 「しゅりしゅりしてたらきもちよくなってきちゃよぉ」 「な…なにしてるの!あかちゃん!すりすりしたらしんじゃよおお!!!!」 親ゆっくり達が気付いた時は遅かった。 「ゆっぎりやめぢぇええ!!まりしゃじんじゃうよおおお!!!!」 「にゃんだぎゃへんだよおおおお!!!!」 「まりじゃああああ!!!!!ちょっちぇもきもちいいわああああ!!!!!!」 「ぎぼぢわるいよおおお!!!!やべじぇえええ!!!!」 「ありじゅうう!!!!やべでよおおお!!!!」 「わぎゃらないよおおお!!!!!!らんじゃまああああ!!!!!!」 「やべでええええええ!!!!あがじゃんじんじゃうよおおおお!!!!!!」 「どぼじでええええ!!!!!!!」 「貴方達!!!なにしてるの!!!!早くとめなさい!!!」 何とか半分ほどは親ゆっくりが赤ゆっくりを咥えて離すことができた。それでもかなりの赤ゆっくりはまだ交尾をしたままだ。 「「ゆぎゅっ!ゆぎぃ!やめちぇ!やべじぇええええ!!!ゆげぁぁぁ!!!!」」 「「「「「んほおおおおぉぉおおおおぉおおお!!!!!」」」」」 「「「「だ…だめだよおおお!!!!それいじょうはああああぁぁ!!!」」」」 「「「「「「しゅっきりぃー!!!!」」」」」」 「「「「「「じゅっぎりぃ……」」」」」」 発情した半分の赤ゆっくりは頭から茎を生やしみるみるうちに真っ黒な塊へと化していった。 「でいぶのあがじゃんがあああああ!!!!」 「ばりざああああ!!!!!どぼじでうぢのばりざがああああ!!!!!」 黒い塊と化した赤ん坊に必死に呼びかけるが何も答えてくれない。 「何てことをしてくれたのよ!!!!!」 彼女は未だに発情している赤ゆっくりを集めた。 「この子たちの親は誰?前に出てきなさい!!!」 「ゆうううう…」 「他のゆっくりはれいむに従ってね。今からこの子達の裁判をするわ」 「じゃあみんな、こっちにおいで。後はドスに任せよう」 彼は残りのゆっくりを連れその場から離れた。レイプをした赤ゆっくりとその親を一列に並ばせて彼女は言った。 「まったく、貴方達は子供にどういう教育をしているの?」 「ご…ごべんなざいい…」 「なんであがじゃんがすりすりなんてじってるのお…おじえでないよぉ…」 「おきゃあしゃん、しゅりしゅりぃ」 事態を分かっていない赤ゆっくりは側にいる親にすりすりしている。 「どす!おねがいじまず!!ゆるじでくだざい!!!ぢゃんどおじおきじますがらああ!!!」 「ごべんなざい!ごべんなざいい!!!」 「そこのれいむ!」 「ゆ!!」 「私との約束を忘れてはないよね?」 「ゆ!ゆ!ゆ!ゆ!」 「言って御覧なさい」 「むやみにすっきりー!したらだめ…だよ…」 「そうね。さっき言ったもんね」 「あかちゃんたちを…どうするんだぜぇ…」 「そこのぱちゅりぃ!!!!」 「むきゅ!!」 「掟を守れない場合はどうなるんだっけ?」 「しけいかこのむれから…でていく…」 「そうね。死刑か追放よ」 「「ぞ…ぞんなあああ!!!!!」」 「「おでがいじまずううう!!!!!ゆるじでぐだざいいい!!!!」」 「「おでがいじまずう!!!!ありずはいながものでいいでずがらごのごだけはゆるじでええ!!」」 「「まだごのごは……おでがいじまずうううう!!!ゆっぐりざぜであげでぐだざいいいい!!!!」」 「黙りなさい!!」 「「「「「ゆぴいいいい!!!!」」」」」 「ドスとの約束を初日から破っちゃうの?そんな悪いゆっくりは潰すよ!!!」 「ゆぅ…ぐずっ…」 「ぁかちゃ…ん…なんでぇ…」 「今すぐこの子達を殺すかもしくはこの子を連れてここから出て行くか決めなさい!!」 「ぞんなのえらべないよおお!!!」 「ゆええ"ぇえ"えん!!!!」 「仕方ないわね…」 「ゆ!どす…もしかして…」 「死刑だけは許してあげるわ」 「「あじがどうございまずうう!!!!!」」 「「よがっだねえ…あがじゃん!!!!!ごれでゆっぐりでぎるよお!!!!」」 「ハア?」 彼女は壁を強く蹴った。 「「「ゆううう!!!!!」」」 「誰が許すなんて言ったのかしら?」 「じゃ…じゃあどうずるの…」 「これを口に咥えなさい」 彼女は木の枝を数本親ゆっくりの前に投げた。 「それで赤ちゃんの目をくり抜きなさい」 「ゆ!!!!」 「どす…いまなんていったの…」 「聞こえなかった?その枝で!!!赤ちゃんの目を潰しなさい!!!!」 一瞬場が静まった。 「そ…ぞんあああ!!!!!」 「いやだああああ!!!!!!あがじゃんがゆっぐりでぎないよおおお!!!!」 「ぞんなのどがいはじゃないわあああ!!!!!!」 「ゆえ"えぇえぇえん!!!!!!そんなのいやだよおおお!!!!」 「どっぢもいやだよおおお!!!!」 「この子達にレイプされて死んでいった赤ちゃんたちはどんな思いだったのかな?死んじゃった赤ちゃんのお母さんは今どんな気持ちなのかな?」 「ぞ…それは…」 「ゆぅ…ぐずん…だげどぉ…」 「早く決めなさい!早く決めないと貴方達全員潰すからね!!」 「ゆう"う"う"う…」 「あがじゃん…どうじよぅ…」 「時間よ。れいむから聞くわ。どうするの?」 「ゆううう…どぅじよぅ…」 「おきゃあしゃんとしゅりしゅりい~」 泣きながら悩むれいむと対照的に赤れいむは嬉しそうに頬擦りをする。 「殺すの?ここから出て行くの?それとも目を潰す?」 「ゆうううう…ぐ…ずっ…あがじゃあん…ごべんねえ…」 「ゆ?」 れいむは赤れいむに思いっきり圧し掛かった。 「ゆびぇえええ!!!!おがあじゃんにゃんでえええ!!!!」 「ごべんねえ!!!ごべんねええ!!!!おぞらでゆっぐりじでねええ!!!!!」 「ぎゅえええええ!!!!……もっちょ…ゆっきゅりちたきゃったよ……」 赤れいむは死んでしまった。 「ゆあ"あ"あ"あん!!!!ばがなおがあざんでごべんねええ!!!!ごべんねええ!!!」 「「ゆひいぃぃぃ…」」 「「どうじだらいいのぉ…」」 事態を飲み込めていなかった赤ゆっくり達もようやく自分達が置かれている状況を理解した。 「お…おきゃあしゃん…まりしゃ…いいこだ…よ…だきゃら…」 「うるさいよ!!」 「ゆぎゃあああ!!!!」 「れいぷするゆっくりはわるいゆっくりだよ!!!!ゆっくりしないでしね!!」 「ゆびぇええええ!!!!!!まりじゃじにだぐないよおおお!!!!」 吹っ切れて赤ん坊を潰す親ゆっくり。 「みゃみゃぁ…ありちゅ…ちにたくにゃいよお…」 「ごめんなしゃぃ…ごめんなしゃぃ…」 「ごべんねえええ!!!!!!ごべんねええ!!!!」 「あがじゃんのぶんまでゆっくりずるがらああ!!!!!ままをゆるじでええええ!!!!!」 「いじゃいよおおお!!!!!やびぇでえええ!!!!!!」 「ぢにだくにゃいよおおおお!!!!たじゅげでえええ!!!!!」 泣きながら我が子を潰す親ゆっくり。 「おぢびじゃああん…ごべんねえ…すぐずまずがらがばんじでねえ…」 「ゆぴゃああ!!!!」 「いじゃいよおおおお!!!!!」 「りぇいみゅのおべべが!!!!おべべぎゃあああ!!!!」 「ぐらいよおおお!!!!!!なにもみえないよおおおお!!!!」 「ごべんねええ!!!!!」 「おぎゃあじゃんが…ゆっぐりざぜてあげるがらあ…ごべんねええ!!!!」 泣きながら目を潰していく親ゆっくり。赤ゆっくりとともにここから出て行くゆっくりはいなかった。 「そう。それでいいのよ。辛いけど掟を守らないとみんなゆっくりできないのよ。貴方達は反省してゆっくりしなさい」 「わがっだよお…」 「なにもみえにゃいよお…おぎゃあじゃん…どごにいるのお…」 「ぐらいよお…まりしゃあ…ありちゅううう…ちぇえええん…どごにいるのお…」 「あがじゃあん…ゆっくりじでねえ…」 親ゆっくり達は潰れた赤ゆっくりを食べていた。これがゆっくりの中での供養だという。目を潰された赤ゆっくりは親ゆっくりとともに巣へ帰っていった。 一方彼女は先ほどの虐待お兄ちゃんとの会話を思い出していた。 『俺が持ってきているモノだとこれですかね』 『それは?』 『これは精子餡ですよ。通常の何百倍も濃縮してます。こっちは妊娠促進剤と媚薬です』 『ええ』 『精子餡をゆっくりに注入したり肌にすり込むと妊娠しますよね。この濃縮した精子餡と妊娠促進剤と媚薬を混ぜるととんでもない薬ができるんですよ』 『霧吹きを取り出してどうするんですか?』 『精子餡と促進剤と媚薬を混ぜたものをお湯で溶かして…よっと、よく振って……これで完成です』 『これをゆっくりに噴きかけるんですね』 『ええ。噴きかけるだけでゆっくりは妊娠するんですよ。大抵は植物型ですね』 『それは確かにとんでもない薬ですね。発想は私と同じですよ』 『貴方は?』 『私も媚薬を持ってきてます。かなりのやつを。あとは睡眠薬ですね。火攻めする気だったんで用意はこれくらいなんです』 『妊娠で体力を奪わせて黒い塊にするか食糧を一気に減らす作戦…ですね』 『媚薬の方は私がやるわ。そうね、赤ゆっくりを発情させましょう』 『じゃあ霧吹きは俺がやります。あ、睡眠薬くれませんかね』 (彼はうまくやってるかしら…) 「ゆふう…ゆふう…」 「ゆゆ~ん…ゆゆうう…」 「ゆぴーゆぴー」 ゆっくり達は眠っていた。満腹して眠くなったのではなく虐待お兄ちゃんが盛った睡眠薬で眠っているのだ。 「もう!たべたらすぐねるなんてとかいはじゃないわ!!」 「あかちゃんがたいへんなことになってるときにねないでよぉ」 「あがじゃんがあ…ゆええぇえん…」 全てのゆっくりに盛ったはずなのだが先ほどの騒ぎで眠気が吹っ飛んでしまったようだ。といっても半分は寝ている。 「いいよ。寝かせてあげな。さっきの事はドスに任せなさい。この子達もショックだったんだ。落ち着かせてあげよう。君達もゆっくりしなさい」 「うん…じゃあれいむにまかせるわね」 起きているゆっくりは巣の中に帰っていった。彼の周りは眠っているゆっくりだけになった。 「(じゃあ始めますか)」 彼は霧吹きを眠っているゆっくり達に噴きかけた。さらに辺り一面にも霧吹きを噴きかけた。 「(これくらいかな。あとは少し待てばいい)」 彼は一旦彼女がいる所へ向かった。この後戻ってきた時に偶然ゆっくりが妊娠しているのを見つけたふりをして皆を集めるつもりだ。 つづく by 虐待おにいちゃん
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※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。 ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※虐待パート小休止中。虐待のほかにもいろいろ書きたいことはある。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』14 この群れの中で、私たちは飼われることになった。 どれだけ懇願しても聞き入れられなかった。 群れはもとより、私のあのれいむさえ、私の懇願に耳を貸さなかった。 「おねえさん、いいかげんにしてね! むれのみんながそろそろおこりはじめてるんだよ!! ききわけがわるいとおもわれるとおしおきされちゃうよ!!」 「れいむ。本当に、お世話してくれるのは有難いと思うわ。 だけど、私たち人間は、あなたたちゆっくりとは違うの。ここではゆっくりできないわ」 「おねえさんはまだほんとうのゆっくりをしらないんだよ!! にんげんさんのむれより、ここのほうがずっとゆっくりできてるよ! ほんとうのゆっくりをおしえてあげようって、おねえさんのためにみんながんばってるのに、 おねえさんがすなおにいうことをきかないからみんながおこってるんだよ! ゆっくりりかいしてね!!」 「れいむ……」 「きょうのごはんだよ!!ゆっくりたべていってね!!」 上から落とされるのは、私たちの食事だった。 野草、茸、芋虫、蝶の死骸。 とてものこと食べられる代物ではない。 「こんな……食べられないわ。人間はこういうものは食べないのよ」 「もんくをいわないでね!! むれのみんなが、とくべつゆっくりできるごはんをおねえさんたちのためにわけてくれてるんだよ!! ごはんはそれしかないからね!すききらいをいうともうあげないよ!!」 れいむのその言葉を、私は苦い気持ちで聞いていた。 それは、かつて私がれいむに言っていた言葉だった。 『ご飯はそれしかありませんからね。好き嫌いするならもうご飯はあげませんよ』 『ゆゆぅ~!ごみぇんなちゃい!!むーちゃむーちゃ、それにゃりー……』 『わあ、ちゃんと残さず食べられたじゃない。偉いわよれいむ!』 『ゆっへん!れいみゅはしゅききりゃいしにゃいよ!』 『いい子のれいむはなでなでしてあげましょうね』 『ゆゆっ!おねえしゃんのなじぇなじぇだいしゅき~!』 「れいむ……お願いよ、せめてここから出して。逃げたりしないわ」 「ゆっ!おねえさんはまだゆっくりできてないからだめだよ!」 「でも……」 「くちごたえしないでね!むれのなかには、にんげんさんをきらってるゆっくりもいるよ!! ゆっくりできないままでそとにでたら、ほかのゆっくりにいじめられちゃうよ!! いいこになったらおそとにつれていってあげるからね!!ゆっくりいっしょにがんばろうね!!」 『おしょとにでちゃいよ!!おしょとにでちゃいよ!!おしょとでゆっきゅりしちゃいぃ!!』 『まだ駄目よ、れいむ』 『なんじぇえぇ!?おしょとであちょびちゃいぃ!!おちょもだちちゅくりちゃいいぃ!!』 『お外には、野生のゆっくりを嫌っている人もいるの。 今のままで外に出たら、そういう人たちに苛められちゃうわよ』 『ゆゆっ!?いじめりゃれるのはいやぢゃよ!!ゆっきゅりできにゃいよ!!』 『そうね。でもね、れいむが言うことをよく聞くいい子になれたらバッジをもらえるわ。 バッジをもらえば、もう人間さんにいじめられないの。 そうしたらお外に連れていってあげられるのよ』 『ゆっ!!ゆっきゅりわかっちゃよ!!れいみゅがんばっちぇいいきょになりゅきゃらね!!』 『うふふ、一緒に頑張りましょうね』 毎日、ゆっくり達は丈夫な蔓を垂らし、 その蔓に掴まってこの穴の底まで下りてきた。 その蔓を奪って上に登る手も考えたが、蔓がどこに繋がれているかもわからない。 ゆっくりが地上で蔓を掴んでいるだけかもしれず、だとしたら、 ゆっくり程度なら支えられはしても、人間が体重をかけたとたんに蔓ごと落ちてきかねない。 何より、そういう時は決まってドスまりさが笑顔で見守っていた。 ドススパークという兵器を備えているドスの監視下では、どんな抵抗も無意味だろう。 「ゆっゆっ!!おねえさんはゆっくりできてる?!」 「だめだよ!きょうもごはんさんをたべてないよ!!」 「ゆっくりできないね!!おねえさん!ぐずぐずしないでごはんをたべてね!!」 群れのゆっくり達は、降りてくるたびに食事をすることを要求した。 私はその度に首を振ったが、ゆっくり達の苛立ちは日増しにつのるようだった。 「なんでごはんさんたべないのおぉぉ!!?ゆっくりできないでしょおおぉぉ!!」 「わかるよー、すききらいするにんげんさんはゆっくりできないよー」 「むきゅう、あまやかされてしたがこえちゃってるのかしら? みんな、しんぼうづよくしつけましょう!」 「ゆっくりわかったよ!おねえさん!!さっさとごはんをたべてね!!」 施設から運び出したあのゆっくり達も毎日降りてきていた。 この子達の目的は明確に長浜圭一だった。 「ゆっへっへ!!ごみくず!!きょうもかわいがりにきてやったんだぜ!! かんしゃするんだぜ!!どげざしておれいをいうんだぜええ!!」 「ひきょうなてをつかってまりささまにかったぐらいでかんちがいするなだぜぇ!! いまこそけっちゃくをつけるんだぜ!!ゆっ!!ゆっ!!ゆっくりしね!!」 「しね!!しね!!あかちゃんかえせぇぇぇ!!!ゆっくりするなあぁぁ!!!」 「ごみくず!!よくもよくもあんなことができたね!!なんとかいってねぇ!!」 「すっきりするな!!ゆっくりするな!!いなかものおぉぉぉ!!!」 「あやまれ!!あやまれえぇぇ!!」 十三匹のゆっくりが、寄ってたかって長浜圭一に体当たりを浴びせる。 本来なら人間にとってたいした痛手ではないが、 折れた脚をかばっている状態では相当辛いらしく、 長浜圭一は黙って受けながら、しばしば苦痛に顔をしかめていた。 「ゆっ!ころしちゃだめだよ!!つがいがしんだらおねえさんがゆっくりできないよ!!」 群れのゆっくりは止めるでもなく、遠巻きに声をかける。 「ゆっくりわかってるよ!!」 「いわれなくてもすぐにはころさないのぜ!!いっしょういじめぬいてやるのぜぇ!!」 長浜圭一は何も言わず、うつむいたままただ黙って耐えていた。 この男があのゆっくり達にしてきたことを考えれば、止める気は起こらなかった。 ざまあみろ、という子供じみた心情がなくもなかったが、 しかし、正直、見ていて楽しい光景でもなかった。 「ゆっ!!おねえさん、よくみててね!! ゆっくりをいじめたにんげんさんはああいうめにあうんだよ!!ゆっくりりかいしてね!!」 「ああなりたくなかったら、とかいはなありすたちのいうことをよくきいてせれぶなにんげんさんになりましょうね!!」 「ゆぅ~、れいむのおねえさんはだいじょうぶだよ!!あんなふうにはならないよ!!」 「でもこのおねえさん、わがままだよ!!いうことをきかないよ!!」 「ゆっ、とまどってるだけなんだよ!!そのうちおちついたらいうことをきくはずだよ!!」 群れのゆっくり達が諭してくる。 しかし、私は頭上に開いた穴から覗きこんでいるドスまりさに向かって今日も訴えた。 「ねえ、私の言うことを信じて! 本当に危ないの。もうすぐここに人間さんがやってくるわ!」 「ゆゆぅ~、それはききあきたよ!!もういいよ!!」 「取り返しがつかないことになるのよ! あのゆっくり達が、いいえ、もしかしたら他のゆっくり達も巻き添えになるかもしれない。 次に人間に捕まったら、本当の地獄の苦しみを与えられることになるわ! それこそ、あのお兄さんがやったことなんてままごとよ!それぐらいの目に逢うのよ!!」 「ゆふぅ~、どすはにんげんさんなんかにまけないよ!! ゆっくりできないにんげんさんはどすがどすすぱーくでやっつけるよ! どすのむれはどすがまもるからね!ゆっくりあんしんしてね!!」 「ゆぅぅ、どすはゆっくりできるね!!」 「どす!!どす!!ゆっくり!!ゆっくり!!」 この話を持ち出すたびに、いつもこのパターンでうやむやにされる。 威勢のいいことを言うドスに、群れのゆっくり達は興奮して飛び跳ね騒ぎ、私の言うことになど耳を貸さない。 無力感に襲われながら、私はもう一つの訴えを口にした。 「ねえ、春奈はどこ!?」 「ゆっ?ちいさいおねえさんのこと?」 何度も名前で呼んでいるが、人間の名前は覚えてくれない。 「私の子供、おちびちゃんなのよ。お願いだから子供に会わせて!」 「むきゅ、なんどもいってるわよ!!だめよ!!」 今度はぱちゅりーが口をはさんでくる。 周囲のゆっくり達がひそひそと言葉を交わした。 「ゆぅ、やっぱりにんげんさんはあたまがわるいんだね!」 「なんどもいってるのにおぼえられないみたいだよ!かうのはむりだよ!!」 「ゆゆっ、れいむのおねえさんならだいじょうぶだよ!! なんかいもいっていればおぼえてくれるよ!みんな、がんばってしつけようね!!」 ぱちゅりーは私に向かって続けた。 「おねえさんのおちびちゃんはほかのところにかくりして、むれのためにはたらいてもらってるわ! だからあんしんしなさい、むきゅ!」 「一目でもいいから会わせて!食べるものもないのよ!」 「むきゅ、ちゃんとたべてるからしんぱいしなくていいわ!」 「たべてないよ!」 群れの中から、口を挟むゆっくりがいた。 「ごはんはあげてるけど、ちいさいおねえさんもたべてないよ!」 「むきゅ、よけいなことをいわないでね!! よけいなしんぱいをさせたってなんにもならないでしょ!!あんしんさせようときをくばってるのに、むきゅ!!」 「ゆゆっ!!ゆっくりごめんなさいだよ!!」 ぱちゅりーの一喝でそのゆっくりは口をつぐんだ。 「ねえ、食べてないの!?お願い、会わせて!!ここじゃ生きていけないのよ!!」 私はそのゆっくりにすがったが、そのゆっくりは口をつぐんだままそそくさと群れの後方へ引っこんでしまう。 代わりにぱちゅりーが言葉をかぶせてきた。 「おだまりなさい、むきゅ! かんたんなことよ!にんげんさんがいいこでいれば、すぐにこんなところはだしてあげるし、 おちびちゃんにもあわせてあげるわ! いまおちびちゃんにあわせたら、にんげんさんだけでゆっくりしすぎて、むれではいきていけなくなるおそれがあるのよ! ゆっくりりかいしてね!」 群れの他のゆっくり達が、ぱちゅりーに同調して飛び跳ねる。 「おねえさん!れいむたちだって、おねえさんにおちびちゃんとゆっくりしてほしいよ!!」 「そうだよ!!かぞくでいっしょがいちばんゆっくりできるよね!!」 「だけど、いまゆっくりしすぎたらゆっくりできるにんげんさんになれないよー。 ちぇんたちだってつらいんだよー、わかってねー」 「ねんをおすけど、すっごくかんたんなことなのよ、むきゅ! みんなのいうことをすなおにきいて、ゆっくりできるにんげんさんになればいいだけよ! おちびちゃんにあいたかったらよくかんがえなさい!」 夜になれば、穴はふさがれた。 ドスまりさが蔦を結び合わせて作った大雑把な網が穴の口に差し渡され、 葉の多い木の枝が何本も網にかけられてカモフラージュされた。 この穴は、もともとゆっくりの巣だったらしい。 地下に掘られていた巣が、天井が崩れて大穴があいたために捨てられたのだろう。 空腹と心労で眠るどころではなかった。 ここに来てからもう三日が経つ。その間何も食べていないし、飲んでもいない。 腹がぐうと鳴り、みじめな気分になる。 穴の壁にもたれかかり、私は呻いた。 「腹が減ったか?」 見ると、長浜圭一が近付いてきていた。 暗がりでよくわからなかったが、片膝立ちでこちらににじり寄ってきたらしい。 「あなたは?」 「俺はいい。あんたは?」 「お腹すいてるわよ」 「食うものならあるぞ」 そう言って、長浜圭一は右手に何かを載せて差し出してきた。 暗くてよくわからなかったが、近付いて目をこらすと、餡子らしかった。 「あなた……どうしたの、これ?!」 「別にゆっくりを潰したわけじゃない。 昼の間、あのゆっくり共が俺をいじめていたろう。 その時に糞もかけられた。それを集めたんだ」 「………うんうんなの?」 「人間にとっちゃ、ゆっくりの排泄物はただの餡子だ。問題なく食えるだろう」 「……あなたは食べないの?」 「俺の分はもう食った。食え」 差し出されるまま、私はその餡子を受け取って口に入れた。 水がほしかったが、それでも餡子はとてもおいしかった。 私が食べるのを見届けると、長浜圭一はすぐに離れ、 穴の反対側の暗がりに引っこんでしまった。 すでに三日目の夜がふけようとしていた。 進退きわまり、私はこの穴の底で思い悩んでいた。 予想していたよりも遅すぎる。 あの車の発信機で、長浜圭一はバイクですぐにここをつきとめた。 長浜圭一と須藤春奈、計画の首謀者が二人行方不明となっている今、捜索が始まっていないということはないだろう。 捜索が始まったなら、足跡を辿るなり付近のゆっくりを問い詰めるなりして、 一日もかからずにここは突き止められるはずだ。 しかしすでに三日が経とうとしている。 想像していたよりも捜査が困難なのか、 それとも、考えにくいことだが、なにかの事情で見捨てられたか。 携帯電話があれば知人に連絡がとれるのだが、 悔しいことに、携帯を含めた荷物はすべて車の中に置いてきてしまった。すぐに戻ってくるつもりだったからだ。 長浜圭一はといえば、目隠しをしている間になにかの拍子に落としたと言っている。 外界と連絡する手段は一切が立たれていた。 本来、望ましい成り行きのはずだった。 あのゆっくり達を追っ手から逃がすためにここまで来たのであり、 探しても見つからないのであれば喜ぶべきなのだ。 しかし、私はどうなる? 穴の底から這いあがれず、ドスまりさに見張られてどうすることもできない。 助けがこないなら、私と長浜圭一は、ここでどうすればいいのか。 いや、どうなるのか? ゆっくりの排泄物を口にしながら、ここでずっとゆっくりに飼われながら生きていく? その可能性に思い当たり、私は心底ぞっとした。 悪寒、屈辱、閉塞感。 冗談じゃない。 「おねえさん…」 暗闇の中に、声が響いてきた。 見上げると、穴の口をふさぐ枝の一部をどかし、一匹のゆっくりが見下ろしているようだ。 声のニュアンスで、私のれいむだと知れた。 「おねえさん、ゆっくりできてる?」 「…………ゆっくりできてないわ」 「ゆゆ~、ゆっくりしていってね……」 私は立ち上がって叫んだ。 「れいむ!お願いだから話を聞いて!!」 「ゆゆっ?なんでもいってね!」 「今すぐここから出して!春奈にも会わせて! ドスまりさのいない今ならできるわ!」 「ゆっ!だめだよ、おねえさん!! ここじゃないとほんとうにゆっくりできないんだよ!!おねがいだからゆっくりりかいしてね!!」 もしかしたら助けに来てくれたのではないかという淡い期待はもろくも裏切られた。 本心から、このれいむは私をペットだと思っている。 「おねえさん……どうしてみんなのいうことをきかないの?」 「人間はここじゃ暮らせないのよ。 あなたたちゆっくりの食べ物は私たちは食べられないわ!」 「ゆっくりがまんしてね!ここのごはんさんはそれしかないよ!」 「私の家に住んでいた時は、あなたももっとおいしいご飯を食べていたでしょう?」 「ゆゆっ!あまあまはゆっくりできたよ! でもむれのみんなとむーしゃむーしゃするほうがもっとゆっくりできるんだよ!! にんげんさんのむれはゆっくりできなかったよ!!」 「にんげんさんはゆっくりできる」、それがこのれいむの口癖だった。 そのれいむが今、人間はゆっくりできなかったと断定していた。 いざという時のことを考え、日頃から甘くない食事をする訓練をしていたことを、 私は初めて後悔した。 いっそのことあまあまばかりを食べさせて舌を肥えさせておけば、 野生の群れに溶け込むこともできず、私の脱出に協力してくれただろう。 「そんなにここがゆっくりできるの?」 「ゆっ!あたりまえだよ!!ここはさいこうのゆっくりぷれいすだよ!! おねえさんもすなおになってこころをひらけばすぐにわかるよ!!」 「群れは楽しいことばかりじゃないのよ?冬籠りは辛いわよ。 森の食べ物なんてすぐに食べつくして、いつも移動しているのがゆっくりの群れ。 れみりゃやレイパーに襲われることだってあるのよ?」 「ゆゆぅ~、だいじょうぶだよ!みんなとちからをあわせればのりこえられるよ!!」 ゆっくりの群れに初めて参加したばかりのれいむは舞い上がっているようだった。 大勢の同種の仲間ができたことを今はひたすら喜んでいるが、 自然の厳しさがまるで実感できていない。 人里に近い群れでは、冬籠りを初めとした自然の厳しさに苦しみ、人里に下りてくるゆっくりが後を絶たないというのに。 冬が来れば、人家の庇護に慣れきったれいむが早々に根をあげることは目に見えている。 しかし、今は夏だった。 どれだけ言葉をつらねても、「みんなとちからをあわせればへいきだよ」の一点張りで一蹴された。 「おねえさんはゆっくりできてなかったよ!」 れいむはそう言った。 「にんげんさんのむれは、みんないつもいそがしそうにうごきまわっててゆっくりしてないよ! おねえさんだって、まいにちおそとにいって、れいむたちとあそんでくれなかったよ!!」 「それは……しょうがないのよ、れいむ。 人間の群れでは、みんな働かないと御飯が食べられないのよ。 ゆっくりだって狩りをするでしょう?」 「そんなのおかしいよ!ゆっくりよくかんがえてね!! かぞくやおともだちといっしょにゆっくりするのがいちばんだいじなおしごとでしょお!? かりもだいじだけど、それがおわったらみんなずっとゆっくりしてるんだよ!! おねえさんのかりはながすぎるよ!!ぜったいおかしいよ!!」 『おねえしゃん!!どきょいきゅのおぉぉ!?』 『お姉さんはお仕事よ。いい子でゆっくり待っててね』 『いやぢゃ!!いやぢゃ!!ここにいちぇよおぉ!!あしょんでよぉぉ!!しゅーりしゅーりしちぇえぇ!!』 『めっ!わがまま言わないの。おしおきよ?』 『ゆうぅ!おしおきはやめちぇぇ……ゆっきゅりわかっちゃよぉ……』 『いい子ね。帰ってきたらたっぷり遊んであげるわ。お土産買ってくるからね!』 『ゆうぅぅ!!はやきゅ!はやきゅかえっちぇきちぇにぇぇぇ!! おねえしゃんもゆっきゅりしちぇねえぇえ!!』 「……れいむ、ごめんなさい………」 「ゆっ!だいじょうぶだよ!!ここならおねえさんもゆっくりできるんだよ!! たっぷりゆっくりしていってね!!」 私は首を振るしかなかった。 れいむはそれからも説得を重ねてきたが、私はうなずくわけにはいかなかった。 こんなところで一生を過ごすなんて考えられない。 ついにはれいむが癇癪を起した。 「いいかげんにしてよおぉ!!なんでわかってくれないのおぉぉ!!? れいむやむれのみんながきびしいことをいうのはぜんぶおねえさんのためなんだよぉ!! にんげんさんなんてゆっくりできないのに、 みんなはやさしいからおいださないでめんどうをみてくれてるんだよ!! おねえさんがわがままをいってもがまんしてかってくれてるのに、 なんでおねえさんはじぶんのことしかかんがえられないのおおぉぉぉ!!?」 「れいむ…………」 れいむは怒鳴り、そのまま穴の淵から消えてしまった。 『わがままを言うんじゃありません!なんでわからないの?』 『ゆゆっ……』 『おねえさんはれいむには厳しく見えるかもしれないわ。 でも、れいむが憎いわけじゃないの。 れいむがいじめられたりしないように、れいむにはバッジが必要なのよ。 今はつらいけど、一緒にがんばりましょう』 『ゆゆぅ~……ばっじしゃんはゆっきゅりできりゅ?』 『ええ、とっても!』 『ゆっ!れいみゅ、がんばりゅよ!』 『そうね。そのためには自分のことばかり考えてちゃだめよ? 他の人やゆっくり達がゆっくりできるにはどうするかを考えられるのが本当のゆっくりなの』 『おねえしゃん……でも、れいみゅにはわきゃらにゃいよ……』 『それはこれからお姉さんが教えてあげるわ。少しずつ覚えていきましょうね』 『ゆっ!!みんにゃをゆっきゅりさせりゅよぉ!!』 苦い回想を噛みしめていると、数分後にれいむが再び顔を出した。 れいむは言った。 「……おねえさん。 ついきびしいことをいったけど、ほんとうにおこってるんじゃないよ。 れいむはいつもおねえさんのみかただからね。 みすてないからあんしんしてね。……ゆっくりおやすみなさい」 それきり、れいむは本当に行ってしまった。 私は泣いた。 悔しかった。 生まれたときから何年も躾け、愛し、人間との上下関係を教えてきた。 生来プライドの高いゆっくりを辛抱強く訓練し、 私の方が飼い主であり、人間に飼われているという立場を自覚させ、 その線引きをわきまえてこそゆっくりできるのだと教えてきた。 ゆっくりの本能に打ち勝ち、れいむの心身に沁み込んだと思いこんでいたその教えが、 ゆっくりの群れに入ったとき、一瞬でたやすく覆されてしまった。 今、私のれいむは、大勢の仲間たちに同調し、私をペットとして下に見ている。 理性では、当然のこととして理解できていた。 違う種族よりも、自分と同じ種族の言うことに従うのは生物として自然なことだろうし、 人間のもとで躾られ、様々なことを我慢させられてきたれいむにとって、 ゆっくりすることが何より優先され、正義とされるこの群れはまさに天国だろう。 今のれいむがやっていることに、生物として、不自然なところは全くなかった。 しかし、理屈でそう理解できても、感情まではコントロールできなかった。 私は地面に突っ伏して泣きじゃくった。 「あらゆるゆっくりと、考えうるかぎりの接し方を経験し、ゆっくりと仲良くなる方法を研究してきた」 長浜圭一が、暗がりの奥で喋っていた。 「あんた、そう言ったな」 「…………」 「ゆっくりに飼われる、というパターンは試さなかったのか?」 返答する気力もなく、私は泣きつづけた。 四日目の昼が訪れようとしていた。 「ゆっ!!ゆっくりしないでごはんさんをたべてね!!」 「おちびちゃんたちもおしえてあげてね!!」 「ゆゆっ、おねえしゃん!!ごひゃんしゃんはゆっきゅりできりゅんだよ!! みちぇちぇにぇ!!むーちゃむーちゃ、ちあわちぇ~♪」 「ほら、おちびちゃんにだってできるんだよ!おねえさんもがんばろうね!!」 ゆっくりに囲まれながら私は苦しんでいた。 服の下を脂汗がしたたる。 切実な問題が私の体を襲っていた。 便意だ。 もともと多少便秘気味ではあったが、いいかげん限界だった。 オシッコの方は、真夜中に暗がりの奥でなんとか気付かれないようにすませたが、 大きいほうは気付かれないようにというわけにもいかない。 なにしろ証拠が残るのだ。 とうは立っているが、女として、排便を見られるのだけは避けたい。 そんなところを見せるぐらいなら死んだほうがましだ。 そう思って耐えてきたが、もう限界だった。 痛む腹を抑えながら、私はゆっくり達に訴えた。 「お願い……お願い、ここから出して……」 「またわがままいううぅぅ!!」 「いいきゃげんにしちぇにぇ!!れいみゅもおきょるよ!!」 「駄目よ。本当に駄目なの………あの、あれ、うんうんしなきゃ……」 「ゆゆゆっ!!」 ゆっくり達が顔を見合わせた。 「ゆっ!おといれさんをおしえるちゃんすだね!!」 「おねえさん!うんうんはきめられたところでしかしちゃいけないんだよ!!」 「いまおといれさんをつくってあげるからね!!」 見る間に数匹のゆっくりが、上から草の束を運んで洞窟の端に積み上げた。 「ちょっと……何、それ……?」 「ゆっ!おといれさんだよ!!うんうんはここでしてね!!」 血の気が引いた。 どうあってもここでしろというのか。 「い、嫌!嫌よ!絶対に嫌!!」 「なんでいうこときかないのおぉぉ!!?」 「おねえさんのためにせっかくつくってあげたんだよおぉ!!もんくいわないでつかってねえぇ!!」 私は拒否したが、拒否したところで事態は好転しそうになかった。 私は、せめてもの譲歩を願った。 「わかった……そこにするわ、するから……見ないで。みんな上に上がって待ってて」 「ゆっ!!だめだよ!!」 「そうだぜ!!まりさたちがおしえてあげないと、きっとまちがえるのぜ!! なれるまではうんうんのしかたをおしえてあげるんだぜ!!」 「間違えない……間違えないから!!」 「いいかげんにしてねぇ!!さいしょからじょうずにできるわけがないでしょおぉぉ!!? だまってれいむたちのいうとおりにしてねぇ!!」 ゆっくり達が意地になって飛び跳ねる。 私は長浜圭一の方を見た。 長浜圭一はいつもの様に、施設のゆっくり達に取り囲まれて体当たりを受けていたが、 今の話を聞いていたのか、こちらには完全に背を向けてうずくまっていた。 気遣いはありがたかったが、それでも踏ん切りがつかなかった。 わめきたてるゆっくり達に、私は首を振り続けた。 その時、施設のありす達が蔦に捕まって降りてきた。 今日も長浜圭一を苛めにきたようだが、遅れてきたのは珍しかった。 「ゆっ!おそかったね!」 施設のまりさがありす達に声をかける。 ありすは紅潮した頬を震わせて答えた。 「ゆふぅ~……きょうもたっぷりすっきりしちゃったわ! にんげんはやくたたずのいなかものだけど、おはだとまむまむだけはとかいはね!!」 人間? すっきり? 「どういう事?」 私は思わず聞いていた。 「ゆゆ?かちくのくせにありすにはなしかけないでね! ごみくずとちがってありすはこうきなせれぶなのよ!」 「すっきりって何!?人間って誰のこと!?」 「ゆゆっ、きまってるじゃない。おねえさんのおちびちゃ――」 「よけいなことをいわないでね!!」 私のれいむが遮った。 「むれになれて、けいかいしんがとけるまでいっちゃだめっていってるでしょおぉ!? せっかくおねえさんがなつきそうなのにいぃ!!」 「ゆふんっ、おしえてあげればいいじゃない!」 嗜虐を顔に浮かべて、ありすは言い放った。 「おねえさんのおちびちゃんは、むれのすっきりようにんげんとしてはたらいてもらってるわ。 にんげんのおはだはとってもすべすべですっきりできるってことを、 とかいはなありすがみんなにおしえてあげたのよ! それからみんなあのおはだとまむまむにむちゅう。 やくにたたないくそどれいだったけど、むれでのおしごとができてよかったじゃない。 にんげんがあいてならあかちゃんはできないから、めんどうごとがなくてべんりよね!」 「いいかげんにしてね!おねえさん、ぜんぶうそだからね!!ね、みんな!!」 私のれいむが群れに賛同を求めると、不自然に統一された返答が返ってきた。 「ゆゆっ!れいぷなんてしてないよ!おねえさんはあんしんしてね!!」 「まりさもしてないのぜ!!あんしんするのぜ!!」 「しんぱいしないでおねえさんはゆっくりにしゅうちゅうしてね!!」 「にんげんさんはきもちいいけど、れいむはしてないよ!!あんしんしてね!!」 「おねえさんはしんぱいしなくていいから、みんなのいうことをきいてね!!」 ドスまりさも頭上から叫んでいる。 春奈。 まだ十一歳になったばかりの私の娘。 私の春奈が、おそらく食事もできないまま、何十匹ものゆっくりの慰みものにされている。 私は生まれて初めて、ゆっくりを潰したいという強い衝動にかられた。 しかし自分の力では穴から出ることもできず、ドスまりさが見張っている状況下ではそれもできなかった。 「私の子供には手を出さないで!」 「ゆゆっ!だからなにもしてないよ!!ゆっくりしんじてね!!」 「だいじょうぶだよ!! にんげんさんはほかにおしごとがないからしかたないんだよ!!」 「おしごとをしないにんげんさんはおいておけないよー、わかってねー」 「そうなんだぜ!!でもまりさたちはなにもしてないのぜ!!」 「すっきりしたいなら私がしてあげるから!子供は許してよ!!」 私は叫んだが、あの施設のありすが断定してきた。 「くそばばあじゃすっきりできないわよ!いなかものね! おちびちゃんのおはだのほうがすべすべですっきりできるわ!! いちばんすっきりできるのは、うまれたばかりのおちびちゃんよ!! わかったらもっとあかちゃんをつくりなさい!!」 「そんな……!」 「ゆゆっ!!」 群れのゆっくり達が色めきたった。 「おねえさん!!あかちゃんつくってね!!」 「れいむたちはなにもしないよ!!あんしんしてあかちゃんつくってね!!」 「あかちゃんはすっきりできるよ!!……まちがえたよ!!ゆっくりできるよ!!」 「おちびちゃんにはなにもしないからね!!あかちゃんつくってね!!」 満面の笑顔で、ゆっくり達は要求しつづけていた。 一縷の望みでもあれば、土下座でもなんでもして懇願しただろう。 悪意からの監禁であれば、相手の気がすむように自分を貶めてみせただろう。 しかし、このゆっくり達は、善意で私を監禁していた。 こうしたほうが私のためになると、心底から信じこんでいた。 私が何を懇願しようと、万が一にも聞き入れられることはないだろう。 私の願いを聞けば、私のためにならないと思っているのだから。 道は一つしかなかった。 このゆっくり達に服従し、群れのペットとして言われるままに従う。 そうやって安心させれば、ここから出られる。 出られさえすればチャンスもあるだろう。 長浜圭一が依然として背を向けているのを確認した後、 私は泣きながら、ズボンのベルトに手をかけた。 「やったよおぉぉ!!うんうんできたよおおおぉぉ!!!」 群れのゆっくり達が飛び跳ね、はしゃいでいる。 「ここがおといれさんだからね!!うんうんはいつもここでしてね!!ゆっくりおぼえてねぇ!!」 「みんな!れいむのおねえさんはやっぱりいいこだったでしょ!!ゆっへん!!」 「みんなでがんばったかいがあったねえぇ!!」 「えらかったね!!えらかったね!!」 「すーりすーりしてあげるね!!すーり、すーり!」 「おねえさん、そのちょうしだよ! これからもいうことをよくきくいいこでいれば、いつもすーりすーりしてあげるからね!!」 「ごほうびをあげるね!!まりさのだいじなたからもののいしさんだよ!! おねえさんがはじめていうことをきいたきねんだよ!! これからもみんなのなかまになれるようにがんばろうねぇぇ!!」 「ゆゆぅ~、くちゃいよ!!にんげんしゃんのうんうんはゆっきゅりできにゃいよ!!」 「ゆゆっ、そんなこといっちゃだめだよ!!おねえさんはがんばったんだよ!!かわいそうでしょ!!」 自分たちの努力と勝ち取った美談に酔い、互いに頬を取り合って屈託なくはしゃぐゆっくり達。 そのどれもが、一点の曇りもない善意と達成の確信に満ちた表情を浮かべ、満ち足りている。 私は、うつむいてただ泣いていた。 泣いても無駄だとわかっていたが、どうしても涙を止めることができなかった。 その日から、私はゆっくり達の命令に服従した。 虫はどうしてもだめだったが、それ以外の食事はなんとか口に押し込んだ。 「うぶ……うぐっ」 「ごはんさんをたべたらむーしゃむーしゃしあわせーしてね!! しあわせーをしないとゆっくりできないよ!!」 「む……むーしゃ、むーしゃ、しあわせー……」 「もっとおおきなこえでわらいながらいってね!!ゆっくりできるよ!!」 「むーしゃむーしゃしあわせー!!」 「よくできたね!えらかったね!!ごほうびにすーりすーりしようね!!」 『むーちゃむーちゃ、しあわちぇー!』 『こら!しあわせーはまだ駄目!黙って食べなさい』 『どぼちちぇえぇ!?むーちゃむーちゃちあわちぇーちにゃいとゆっきゅりできにゃいよ!!』 『食べながらしあわせーを言ったらご飯がこぼれちゃうでしょ? ほら、こんなに散らばっちゃってるじゃない』 『ゆゆっ!!でもちあわちぇーちにゃいとおいちくにゃいよ!!』 『しあわせーは全部食べおわってからならしてもいいわ。 たくさん我慢してから最後にしあわせーしたほうがゆっくりできるわよ?』 『ゆぅぅ……ゆっきゅりわかっちゃよ……むーちゃ、むーちゃ』 『むーちゃむーちゃもだめよ。静かにお行儀よく食べてね。お行儀のいいゆっくりになればバッジがもらえるわよ』 『ゆゆぅ~………しあわせー!!』 『はい、よくできました!明日は「ごちそうさま」を覚えましょうね』 『れいみゅがんばっちゃよ!!なーでなーでしちぇにぇ!!』 「うんうんちゃんとしてるね!!いうことをきくおねえさんはゆっくりできてるね!!」 「うんうんをかたづけてくるからね!!おといれさんをきれいにしてあげるよ!!」 「おにいさんもおねえさんをみならってね!!そんなところにうんうんしちゃだめだよ!!」 長浜圭一のほうは、さすがに私の傍で便を処理するわけにもいかず、 夜中に反対側の壁に穴を掘ってすませているらしかった。 「おうちのなかでおといれさんいがいにうんうんするとゆっくりできないよ!!」 「おねえさんはいいこだからもうわかってるよね!!」 「ゆっくりできるね!!」 『これは何!?』 『ゆっ!おねーしゃん、おきょっちぇるにょ?れいみゅわりゅいこちょしちぇにゃいよ!』 『いいから答えて。これは何かしら』 『ゆゆっ!きゃわいいれいみゅのうんうんだよ!!』 『こら!決まったところ以外でうんうんしちゃいけません!』 『ゆっ!?れいみゅはうんうんがしちゃかっちゃんだよ!!ゆっきゅりきゃいしちぇにぇ!!』 『言い訳になってません!謝らないとおしおきよ?』 『ゆゆっ!やめちぇにぇ!やめちぇにぇ!!ごめんなちゃいぃ!!』 「ゆっくりおうたをうたおうね!!れいむがうたうからよくきいてね!! ゆっゆっゆ~~♪ゆゆゆゆゆ~♪ゆ~ゆ~♪」 「れいむのおうたはゆっくりできるんだぜ!! おねえさん、まねしてうたってみるんだぜ!!」 「……ゆっゆっゆ~~♪」 「ゆゆっ!やめてね!ゆっくりできないよ!!」 「きたないこえだね!!ゆっくりしたおうたをうたえないとなかまにはいれないよ!!」 「ゆっくりおしえてあげるからね!!がんばってゆっくりうたえるようになろうね!!」 「ゆっゆっゆ~~♪ゆゆゆゆゆ~……」 「きくにたえないんだぜぇぇ!!まじめにやるんだぜぇ!!」 『ゆゆ~ゆっゆ~♪ゆゆゆゆ~ゆ~♪』 『れいむ、静かにしなきゃだめよ。お隣さんの迷惑になっちゃうでしょ?』 『ゆゆっ!!れいみゅはおうちゃをうちゃいたいよ!!おうちゃはゆっきゅりできりゅよ!! おねーしゃんもれいみゅのおうちゃでゆっきゅりしちぇにぇ!!ゆっゆっゆ~♪』 『だめよ!むやみに歌っちゃだめ。ゆっくりのお歌が嫌いな人間さんもいるんだから』 『にゃんでぇぇぇ!?うちょいわにゃいでにぇ!!』 『嘘じゃないわ。これからは、お姉さんがいいと言った時だけ歌うようにしてね。 明日は広い野原に連れていってあげるから、そこで一杯歌ってね』 『ゆゆゆっ!たのちみ~♪』 いつまでたっても助けはこなかった。 夏場の洞窟はひどく蒸し、服を変えることもできず、 汗や便の悪臭が洞窟内に充満した。 その悪臭のために、ここに下りてくるゆっくりはやや減少したが、 教育熱心なゆっくりや、長浜圭一への復讐にかられた施設のゆっくりは毎日やってきた。 一週間が過ぎたころ、私の心にはあきらめの影が差しこみはじめていた。 本当に、一生をこの群れの中で過ごすのかもしれない。 よしんば仲間と認められて外に出られたところで、私に割り当てられる仕事は何になるのか。 まさか本気で、私に子供を産ませ、それをすっきりに使う気でいるのか。 人間の常識も倫理もここでは一切通用しない。 まして家畜の子供など、鶏の卵のように利用されるだけだとしても不思議はない。 自殺の可能性さえ頭をよぎる。 助かりたかった。 この地獄から一刻も早く抜け出したかった。 同時に悲しかった。 自分の中でのゆっくり像が、憎々しいものに変わっていくのをどうすることもできなかった。 毎日ゴミ同然の雑草を食べさせられ、大勢の注視のもと排便させられ、罵られながら喉が涸れるまで歌わされた。 この生き物を、もはや前のように愛することはできないだろう。 そしてまた、自分自身も悲しかった。 確かに、私が今されていることは、かつて私がゆっくり達にしてきたことなのだ。 食事中の「しあわせー」を禁じ、歌も制限し、好き嫌いを許さなかった。 ゆっくりの要求を殆ど抑えつけ、一方的に人間に都合のいい常識を押し付けてきた。 それでも、ゆっくり達は曲がりなりにも私になついてくれた。 私のれいむがここで私の躾をしているのも、私を愛しているからこそだろう。 意趣返しというか、上に立つことの優越感は十分楽しんでいるようだが、私にそれを責める権利はない。 ここで世話をされながら、私はゆっくりに感謝することができなかった。 かつて私のゆっくりたちがしてくれたようには、自分の常識を曲げてまで相手の善意に報いることができない。 あれほどゆっくりを愛していたはずなのに、その善意に応えることができない。 ゆっくりのように、自然に無邪気に、強者の膝元に這いつくばることができればどれだけ楽か。 明らかに相手より弱い立場にいながら、私は弱肉強食という自然の摂理に逆らい、 人間としてのプライドに縛られて相手を怨むしかできない。 あれほど、ゆっくりを愛しているつもりでいた。 それは結局のところ、自分のほうが上に立っているという安全地帯での傲慢なままごと遊びでしかなかった。 いまや私は、 はやく見つけ出してもらい、娘ともども助け出してほしいというただそのことのみを願い、 ゆっくりをあの悪魔のような計画から守るという当初の大義は雲散霧消してしまっていた。 そんな私の弱さが何よりも悲しかった。 やがて八日目の昼になると、助けが現れた。 続く
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ここはとあるゆっくりプレイス。辺りは草原に囲まれ、近くを川が流れています。 ここに数日前、ゆっくりれいむとゆっくりまりさのつがいが辿り着きました。 彼女達は朽ちかけた木の根の作った穴に暮らしていましたが、その木は腐っていて今にも崩れてしまいそうです。 また、穴自体とても小さく、れいむとまりさ二匹でぎゅうぎゅうでした。 最初はそれでも良かったのですが、今はそうは行きません。れいむの頭には、小さな芽が出ているのです。 そう、家族が増えるのです。 「ゆゆ~、このおうちも、もうながくすめないよ…」 「うん、そうだね…」 「まりさ、あしたからはがんばってね!」 「おっけー、まりさにまかせて!」 巣の中にはたくさんの食料が集めてあります。この数日、二人で頑張って集めたのです。 これで数日は、餌を集めなくても、あることに集中できるでしょう。 「まりさがおうちのつくりかたをしってるなんて、れいむすごいうれしいよ!」 「れいむとあかちゃんのために、せかいいちゆっくりできるおうちをつくるよ!!」 翌朝。まりさは河原から石を運んでいます。植物の蔓を石に巻きつけ、端をしっかり噛んで引きずっているのです。 「ゆーっくり!ゆーーっくり!!」 今運んでいるのはゆっくりの半分もありそうな大きな石。皆さんも、自分のお腹の大きさまである石を運ぶのは大変でしょう。 それを、まりさは新しいお家のためを思い、一生懸命運んでいるのです。 「ゆゆっ!?まりさ、がんばりすぎだよ!れいむもてつだうからね!!」 それを見たれいむはまりさをたすけようと、石の後ろに回りこみます。後ろから押してあげれば、まりさが楽になると思ったのです。 「だめだよっ!!!」 「ゆっ!?どぼじでぞんなごどい゛う゛の゛お゛お゛お゛!?」 しかし、まりさは喜ぶどころかれいむに怒り出します。れいむはまりさを助けたいだけだったのに、怒られてしまって涙を流しています。 「ゆっ、れいむ、よくかんがえてね!れいむはおかあさんなんだよ!!れいむだけのからだじゃないんだよ!!」 「ゆっ、ゆぅ…」 「もしれいむがけがをして、あかちゃんがしんじゃったらどうするの!あかちゃんがかなしむよ!まりさだってかなしいよ!」 「まりさ…ごめん…」 「それに、まりさはこんなのぜんぜんたいへんじゃないよ!れいむががんばれー!っていってくれたら、まりさはひゃくにんりきだよ! だかられいむはゆっくりまりさをおうえんしててね!」 「ゆっ…わかったよ!れいむ、ゆっくりおうえんするよ!!」 それから、まりさは頑張って石を運びました。れいむはまりさを応援し、まりさの為に美味しい草や蟲を持っていってあげました。 「ゆふーーーっ!!んひーーーっ!!んふーーーっ!!」 夕方。まりさは頑張って石を運んだので、とっても疲れてしまいました。 汗まみれの身体で、白目を剥いて、舌を突き出し、激しく空気を吸い込んでいます。 それを見たれいむが慌てて近寄ります。 「ゆゆっ!!まりさ、ゆっくりしなさすぎだよ!!」 「ゆー、れいむの、ためなら、これくらい、あっと、いうまだよ!!」 「ちゃんとやすまないとだめだよっ!!まりさがたおれちゃったらどうするの!?あかちゃんたちがかわいそうだよ! それに、れいむだってとってもかなしいよ!!」 「ゆ…!ご、ごめんね、れいむ!」 「ゆっ、はんせいしてるならいいよ!それにれいむもおひるにおこられたし、おあいこだよ!」 「ゆ…れいむぅ~!」 二匹は赤ちゃんのため、れいむのために、静かに、身体を大きく動かさないように頬ずりをしました。 れいむの頭の芽が少し大きくなっています。 その夜、二匹は狭い木のお家の中で、寄り添って眠りました。 「ゆーっくり!ゆーっくり!」 翌朝、朝ごはんを食べてすぐに、まりさは新しいお家を作りにきました。河原から拾ってきた大きな石を、円形に並べているのです。 大きな石は十分に集めたので、もうまりさが河原まで大きな石を探しに行くことはありません。 まりさはれいむのために、一生懸命働きました。 お昼になると、まりさが頑張っているおかげで、円の3/4ほどがすでに出来上がっています。高さは一メートルほどでしょうか。 一方、れいむはその様子を見守りながら、日向ぼっこをしています。頭の芽はまた少し伸び、蔓と呼んでも良いくらいです。 「ゆ、まりさ!もうおひるだよ!すこしきゅうけいしようね!」 「わかったよ、ゆっくりやすむよ!!」 まりさはれいむの傍に寄り添いました。ずっとお日様に当たっていたれいむはポカポカ暖かく、まるでお日様のような匂いがします。 「ゆゆっ!?れいむ、あたまのつるがすこしふとくなってるよ!」 「ほっ、ほんとう!?」 「ほんとうだよ!こぶみたいになってるよ!」 まりさの言うとおり、れいむの頭の蔓には数箇所のふくらみが出来ています。ここのふくらみが大きくなり、やがて赤ちゃんになることを二匹は知っていました。 嬉しそうなれいむを見て、まりさもやる気が沸いてきました。 「れいむとあかちゃんのために、りっぱなおうちをつくるよ!!」 その日の夕方、石垣で作られた円はほぼ完成。大人ゆっくり一匹が通れるくらいの隙間を残していました。 ここは、れいむやまりさの玄関となるのです。 まりさは石の上によじ登り、慎重に石の隙間に木の枝や木の葉を渡していきます。そして、両端の上から石を置いて固定しました。 その上にいくつか石を置いてみましたが、崩れることはありません。これで玄関の完成です。 「ゆゆーーー!!すごいよまりさ!ひとりでここまでつくっちゃうなんて!!」 家の中ではれいむが大喜びしています。まだ屋根もなく、石は隙間だらけですが、それはこれから埋めるだけ。 家の広さはれいむとまりさ、たくさんの赤ちゃんが入ってもさらに余裕がありそうです。 「まっててね、れいむ!あとはかべとやねをつくるだけだよ!!」 「ゆゆ~!まりさといっしょになって、ほんとうによかったよ!!」 今日の作業はここまでにして、二匹は木の根元の家に戻ります。しかし、頭の中は新しいお家のことで一杯でした。 れいむの頭の蔓には、小さな実がプツプツと出来始めていました。 次の日も、朝からまりさはお家作りに励みます。昨日作った石の壁の隙間に、小石や砂、枯れ草を詰めていきます。 今日はれいむもお手伝い。お家の外で泥と藁を噛み砕き、唾液を混ぜて吐き出しています。 ゆっくりの中身は甘い餡子。その唾液は水あめのような成分が含まれています。 この成分と泥を混ぜ合わせ、藁をつなぎに使うことで、泥は乾くと強固な壁となるのです。 「くっちゃくっちゃ…ゆぺっ!」 「れいむもおてつだいできるよ!くっちゃくっちゃ…」 「ゆぺっ!!」 その頃、まりさは石で出来たの隙間に藁や草を詰めていました。口を使って器用に石の隙間に押し込んでいきます。 「ゆっ!ゆっ!ここまできたらあとすこしだよ!ゆっくりがんばるよ!」 しばらくして、石の隙間は全て埋まりました。後は泥で固めていくだけです。ここでれいむの声が聞こえました。 「まりさ!いわれたとおりにまぜおわったよ!」 「ゆっ!もうできたんだね!あとはそれをかべにぬりぬりすればおわりだよ!」 「ほんとう!?じゃあはやくおわらせておうちにはいろうね!あかちゃんももうすぐうまれそうだし、はじめてのゆっくりはおうちのなかでさせてあげたいよ!」 「ゆ、ゆゆっ?」 ふと、まりさの餡子の中を子供の頃の記憶がよぎります。 物知りなお母さんぱちゅりー、働き者のお父さんまりさがお家を作っていたときは、くっちゃくっちゃした泥を、藁や草で隙間を完全に塞いだ壁に塗っていました。それも一日ではなく、数日に分けてちょっとずつです。 確かお母さんぱちゅりーは、泥を少し塗って、乾いたらまた少し塗って、と言っていたような… 「ゆー、でもまりさはいそぐんだよ!あかちゃんがうまれるまえにおうちをつくりたいんだよ…」 まりさは誰とも無しに呟きます。そこに、れいむが入り口から顔を覗かせました。 「まりさ、ゆっくりしすぎだよ!あかちゃんもはやくおうちをみたがってるよ!」 みると、れいむの頭の蔓には目や口、リボンや帽子もしっかり出来た赤ちゃんゆっくりが実っています。 先端の一匹などは自分の力で動いていて、今にも蔓から離れることが出来そうです。地面に落ちて元気な産声を上げるときも近いでしょう。 そんな赤ちゃんを見て、まりさの懸念は吹き飛びました。 「ゆっくりりかいしたよ!まっててね、もうすぐできるからね!」 「うん、まりさがんばってね!」 そうと決まれば作業再開です。まりさは泥を口に含み、壁に吹き付けた後ほっぺですりすりしていきます。れいむは塗り込む泥が乾かないよう、口内で充分くっちゃくっちゃしたあとまりさに渡します。 内壁が終わったら今度は外壁です。 「おうちのかべには『れいむとまりさのおうち』ってかこうね!」 「きれいないしもかざりたいよ!きっとすごくゆっくりできるよ!」 「れいむのおかあさんといもうとたちをしょうたいしてあげたいよ!」 れいむはすっかりご機嫌です。そのせいか、赤ちゃんの小さな顔もとても嬉しそうです。それを見るだけでまりさの疲れは吹き飛ぶのでした。 ようやく、外壁が泥で埋め尽くされます。さあ、ここからが仕上げ。お家に屋根を取り付けるのです。 「ゆっしょ、ゆっしょ…」 まりさは持てるだけの枝や葉、藁を持って外壁を登ります。 「ゆっ!ゆっ!」 そして口を器用に使い、穴に木の枝を渡していきます。木の枝の両端は泥で外壁に埋め込みます。縦横十本も渡すと、しっかりと格子が出来ました。そこに葉っぱ、藁を被せたあと、ゆっくり泥を乗せていきます。一カ所に重みが集中しないよう、薄く、満遍なく。 その上にもう一度木の枝で格子を作り、さらに泥を被せ、葉っぱ、藁を乗せます。この葉っぱと藁はよく水を弾くので、屋根に最適なのです。 あたらしいお家も完成まで後一歩。大きな円柱型をした、泥の塊が出来上がりました。 まりさが屋根から下を見ると、れいむがどきどきしながら見守っています。それを見ながらまりさはゆっくりと屋根の上に乗っかりました。屋根が崩れてこないかのテストです。ゆっくりが乗った程度で崩れる屋根では、いずれ屋根が壊れて潰れてしまうでしょう。 「そろーり、そろーり…」 まりさはゆっくりと屋根の上を這います。れいむの見守る中、半分…残り少し…と距離を伸ばし…やがて、反対側の壁に足が着きました。 「ゆっ……ゆーーー!!!できたよ、れいむ!まりさたちのおうちだよ!!」 大喜びで壁を駆け下り、れいむの元に跳ね寄るまりさ。れいむは頭に赤ちゃんが居るので飛び跳ねたりして体で喜びを表現する事は出来ません。でも、その頬は感動の涙で光っています。 「ゆうぅ…ん!こんなすてきなおうちにすめるのはまりさのおかげだよ…!」 「なにいってるの!れいむのためだからがんばれたんだよ!」 「ま、まりさ…!ずうっとれいむとゆっくりしてねぇ…!」 れいむは頭の蔓をぶつけないよう、細心の注意を払ってお家に入りました。 一方まりさは古いお家に残った食べ物を全て新しいお家に運び込みます。れいむの作った苔のベッド、木の枝で作った椅子もです。 二匹の宝物、まりさがれいむにプレゼントした押し花や、二匹で見つけた綺麗に光る小石、赤ちゃんの為に作った綿の布団も持ち込みました。 全てを運び終えたときには、辺りは真っ暗になっていました。 「ゆゆ、まりさはばんごはんはすこしでいいよ。のこりはれいむがたべてね!」 「ゆっ!?だめだよ、ゆっくりするならまりさもいっしょだよ!?」 「そうじゃないよ、れいむがごはんをたべると、くきにえいようがいくんだよ!それはあかちゃんのさいしょのごはんになるんだよ!あかちゃんのためにたくさんごはんをたべてね!」 「ゆゆ!まりさすごい!ぱちゅりーみたいだよ!」 「ゆっへん!まりさのおかあさんぱちゅりーがおしえてくれたんだよ!」 こんな会話のあと、れいむは運んだ食料を食べ尽くしました。もちろん、赤ちゃんの為を思ってです。 「む~しゃむ~しゃ、しあわせ~♪れいむのあかちゃんもよろこんでるよ!」 そんなれいむを見つめる内に、今日の疲れが出たのかまりさは眠ってしまいました。 「ゆゆゆ!まりさ!まりさおきて!」 「ゆ…ゆゆっ?」 悲鳴のような声でまりさは目を覚ましました。れいむの身に何かあったのでしょうか?いえ、この状況でれいむが大声を出すとしたら理由は一つしかありません。 「れいむ!うまれそうなの!?」 「そうだよ!ふたりのあかちゃんだよ!!」 見ると、子供達は全員体を振り子のように揺らし、蔓から離れようとしています。 「ゆっ!あかちゃんがんばってね!いっしょにゆっくりしようね!」 れいむが声をかけると、赤ちゃんのうち一匹が一際大きく体を揺らしました。その反動で体が蔓から離れ、地面に落ちます。 両親の見守る中、しばらくもがいたあと、赤ちゃんは自分の足で立ち上がり… 「ゆっくいしていってね!!」 舌足らずな産声を上げました。とても元気なれいむです。 「ゆうーっ!すごくゆっくりしたあかちゃんだよ…!」 「すごいよ!れいむそっくりのびじんになるよ!!」 感動の涙を流す二匹。それに連動するように、次々赤ちゃん達が蔓から離れ、 「ゆっくいしちぇいっちぇね!」 「ゆっきゅりー!」 「ゆゆーん!」 思い思いの産声を上げます。れいむが四匹、まりさが三匹のかわいい赤ちゃん達です。 「あかちゃんたち!れいむがおかあさんだよ!ゆっくりしていってね!!」 「ゆっ、おかあしゃんだ!」 「おかあしゃん、うんでくれてありがとうね!」 お母さんになったれいむとお父さんになったまりさは、赤ちゃん達と頬をすりすりします。頬擦りはゆっくり達の愛情表現。それを繰り返すことで、家族の絆を深めるのです。 「おかあしゃん、れーみゅおにゃかがすいたよ!」 「ゆみゅっ!まりしゃもおなかしゅいてきちゃよ!」 「「「ゆっくいごはんちょーだい!!」」」 ひとしきりの頬擦りが終わると、赤ちゃん達は空腹を訴えます。すると、丁度良くお母さんれいむの頭から蔓が抜け落ちました。 「それがあかちゃんたちのごはんだよ!ゆっくりたべてね!」 お父さんまりさが言うと、赤ちゃん達は蔓に群がり小さな口でかじりつきます。 「ゅー!とてもゆっくいしたごはんだにぇ!」 「うっみぇ、めっちゃうみぇ!」 「「「「「むーちゃむーちゃ、しあわしぇ~♪」」」」」 瞬く間に蔓は食べ尽くされました。みんなお腹一杯そうにしています…が、おや?赤ちゃんまりさ三匹は物足りないような顔でお父さんまりさに跳ね寄ります。 「おとうしゃん!まりしゃ、まだおなかいっぱいにならないよ…」 「もっとごはんたべさせてね!」 「おとうしゃん、おねがい!」 どうやら赤ちゃんまりさ達はお腹一杯にならなかったようです。お家の中の食べ物は昨日、お母さんれいむが全て食べてしまいました。 「ゆっ、わかったよ!おそとにくささんをとりにいくから、ゆっくりまっててね!れいむ、あかちゃんをちゃんとみててね!」 「わかったよ、まりさ!はやくかえってきてね!あかちゃんたちとたくさんおはなししようね!」 お父さんまりさはお家の入り口から飛び出しました。 赤ちゃん達にはなにを食べさせてあげよう?野いちごは赤ちゃんにはまだ酸っぱいかもしれません。でも、ただの草ではおいしさに欠けるというものです。 「そうだ!おはなをあつめるよ!あかちゃんはまだちいさいから、おはなのみつでもあまあま~♪だよ!こんないいことおもいつくなんて、やっぱりまりさはかしこいよ!だって、ぱちゅりーからうまれたんだもん!」 自分の思いつきに顔を緩めながら、お父さんまりさはお家の近くのお花を片っ端から摘み始めました。 一方、お家の中ではお母さんれいむが赤ちゃんたちにお歌を歌っています。入り口からお父さんまりさの姿が見えるたび、お母さんれいむと赤ちゃん達はお父さんまりさに声援を送ります。 しかし、お歌が好きな赤ちゃんれいむに比べて元気一杯な赤ちゃんまりさ達はお歌ではもの足りず、お父さんまりさの持ち込んだ綺麗な石や、お母さんれいむの作った椅子に興味津々。早くもお母さんれいむの側を離れ、お家の中を跳ね回っています。 「ゆゆっ?かべからくさしゃんがはえてりゅよ?」 一匹の赤ちゃんまりさが、泥の壁から一本、ぴょこんと出ている藁に気付きました。 この藁、お父さんまりさが石の隙間を埋めるために使ったものです。完全に泥に塗りこめていなかったのでしょう。 「しゅごい!おうちのなかに、くさしゃんがはえてりゅよ!」 「これならおしょとにいかにゃくても、ごはんがたべられりゅね!」 赤ちゃんまりさ達は大はしゃぎ。さっそく一匹が飛びつきます。しかしその草は壁から抜けず、噛みついた赤ちゃんまりさは壁から宙ぶらりん状態になりました。口だけで体重を支えている状態です。 「おねえちゃんしゅごい!おしょらをとんでりゅみたい!」 「はやくくさしゃんをとってね!まりしゃたちでたべようね!」 お姉さんの赤ちゃんまりさも一生懸命体を振って、なんとか壁から草を引き抜こうとします。少しずつ動いてはいますが、なかなか引っこ抜けません。 「まりしゃたちもてちゅだうよ!」 「ゆゆー!」 見かねた妹まりさたちも抜けかけの藁に飛びつきます。一匹より三匹で引っ張れば抜けると思ったのです。 二匹分の重量が加わった瞬間、赤ちゃんまりさ達の体が大きく動きました。確かに藁は抜けました。しかし、一緒に泥の壁まで剥がれ落ちてきたのです。 お父さんまりさは自分のお母さんのやり方と違い、一度に沢山の泥を塗りつけました。その結果、壁の表面は乾いても内側はゆっくりの唾液や泥をこねるのに使った川の水でじっとり湿っていたのです。 もしもお父さんまりさがぱちゅりーと同じように泥を乾かしながら作業をしていれば、ここまで壁が大破することは無かったかもしれません。 湿った泥は互いにくっつきあい、壁から剥がれ落ちる面積を広げてしまいました。 「ゆみ゛ゅ゛っ゛!」 「びゅげぇ゛っ!」 「ぎゅ゛びっ!」 背中から床に倒れ込んだ赤ちゃんまりさ三姉妹。その上からは剥がれ落ちた壁が落下してきます。まだ体の柔らかい赤ちゃんがその衝撃に耐えられるはずもなく、小さなまりさ達は生まれてわずか十数分で潰れて死んでしまいました。 さらにその衝撃で、剥き出しになった石が崩れ落ちます。一カ所が崩れた途端、付近の支えを失った石の重量は脆い壁にかかります。その衝撃で再び内壁が剥げ落ち、さらに壁の石が崩れ、崩壊を広げます。 天井の縁を固定していた部分が壊れた途端、泥でできた重さたっぷりの天井が抜け、れいむ達の頭上に降りかかりました。赤ちゃんまりさが壁を壊してしまってから、おそらく三秒もかからなかったでしょう。 「これだけあつめればあかちゃんもよろこぶよ!」 一方こちらはお父さんまりさ。お口の中にはお花が一杯です。このお花はそのまま食べることもできますが、茎を千切ると甘い蜜が溢れてくるのです。お父さんまりさの頭の中は、愛しい伴侶とかわいい赤ちゃんに囲まれてゆっくりすることで一杯でした。 お家の方を向くと、入り口から赤ちゃんまりさ達が壁にぶら下がって遊んでいるのが見えます。 が、次の瞬間。 「ゆ?…ゆ゛あああああぁあ!!!?」 お父さんまりさは絶叫しました。せっかく作った自慢のお家が瓦礫の山に変わってしまいました。しかもその中には大切な奥さんと赤ちゃん達がいるのです。 お父さんまりさはお花を放り出し、急いでお家だったものに駆け寄りました。 「いやああああああ!!まりさのおうちがあああああ!!!れいむがああああ!!!」 お父さんまりさ、本日二度目の絶叫です。それもそのはず、大切な奥さんは瓦礫に埋もれて今にも潰れてしまいそうなのですから。お父さんまりさは必死にお母さんれいむに話しかけます。 「だいじょうぶれいむ!?いまたすけてあげるからね!」 「ゆ゛っ…まってまりさ…さきにあかちゃんをたすけてあげてね…!」 言われてまりさは赤ちゃんのことを思いだし、急いで瓦礫の中をのぞき込みます。 瓦礫の奥底で三つ並んだ黒帽子、それにこびりついた餡子と皮…赤ちゃんまりさは全滅でしょう。 瓦礫の隙間には二匹の赤ちゃんれいむが挟まれています。その隙間も一センチ程しかなく、赤ちゃんたちはピクリともしません。 もう一匹の赤ちゃんれいむは後頭部から顔面にかけて、木の枝が貫通していました。どう見ても手遅れです。 お父さんまりさが三度目の悲鳴を上げかけたそのとき、微かなうめき声が聞こえました。見ると、まだ小さな赤ちゃんれいむが瓦礫の隙間でがたがた震えています。 奇跡的に瓦礫に押しつぶされずにすんだのでしょうか、けれど頭上の壁の残骸は今にも崩れそうです。 「ゆゆっ!!あかちゃん、そこはあぶないからはやくおとうさんのところにきてね!」 急いで呼びかけるお父さんまりさ。しかし、赤ちゃんは白目を剥いたままガクガクと震えるばかり。それは恐怖から来る震えではなく、瀕死の痙攣でした。 「もっちょ…ゆっくい…ちたかっ…」 赤ちゃんれいむは断末魔を残し、うつ伏せに倒れ込みます。石にぶつかったのでしょうか、その後頭部は半分近くが失われていました。今度こそお父さんまりさの三度目の絶叫が響きました。 「まりさ、どうしたの!?はやくあかちゃんをたすけてね!」 瓦礫の下から声を上げるお母さんれいむ。彼女は瓦礫に押さえつけられ、周りを見ることができません。赤ちゃん達の惨状が目に入らないのです。 しかし、隠すわけにもいきません。お父さんまりさは苦い顔をしながら告げました。 「れいむ、あかちゃんはたすからなかったよ」 「ゆ゛っ!?まりさ、わらえないじょうだんはやめてね!ゆっくりできないよ!」 「ほんとうだよ!ぜんぶしんじゃったよ、ゆっくりりかいしてね!」 「どぼじでぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛お゛お゛ぉ゛お゛!!!?」 お母さんれいむにとってはお腹を(頭を?)痛めて産んだ赤ちゃんです。お父さんまりさと違って死んだものは死んだと割り切ることなどできません。 逆にお父さんまりさは死んだ赤ちゃん達にあっさりと見切りをつけていました。ゆっくりは死に易い生き物。事故で命を落とすことは日常茶飯事です。 ならばこそ、死んだ赤ちゃん達の分までゆっくりしなくてはと考えました。 「しんだものはしかたないよ…とにかくれいむのことをたすけるから、ゆっくりまっててね!」 「どに゛がぐじゃ゛な゛いでしょお゛お゛ぉ゛お!!?」 どうやらお母さんれいむはお父さんまりさの言い方が気に障ったようです。 お父さんまりさもお父さんまりさで、死んでしまった赤ちゃんにこだわり続けるお母さんれいむに少しむっとしました。 「このままだとれいむまでしんじゃうよ!いまはれいむをたすけるのがせんけつだよ!」 「だがら゛さぎに゛あ゛がぢゃん゛をだずげでっでい゛っでる゛でしょ!!?ばかな゛の゛!?じぬ゛の!!?」 「だから!あかちゃんはみんなしんじゃったよ!ゆっくりりかいしてね!」 「うぞだあ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛!!」 何を言ってもヒステリックに叫び続けるお母さんれいむ。次第にお父さんまりさのイライラも募ります。 「だいたい、れいむがちゃんとあかちゃんをみてなかったからだよ!まりさはれいむに、あかちゃんをみててね!っていったのに!」 「なにいってるの!?そもそも、まりさがこんなぼろいおうちをつくったせいだよ!!あかちゃんがひっぱっただけでこわれるおうちなんてきいたことないよ!!」 「ゆっ!!?ちがうよ、れいむがまりさをいそがせたからだよ!!もっとじかんをかければがんじょうないえになったんだよ!!」 「れいむのせいにしないでね、このくず!!!こんなごみみたいなおうちならつくらないほうがましだよ!!」 「ゆゆっ!!?」 だんだんお母さんれいむの口調がヒートアップしてきました。どうやらお母さんれいむ、ゲスの素質があったようです。 「まりさのおかあさんのほうほうなんてためさなければよかったよ!ふつうにつちをほればよかったよ!!どうせまりさのおやも、ごみみたいなおうちをつくってごみみたいにつぶれたんでしょ!!」 「ゆ゛っ!!?ちがうよ、まりさのおとうさんとおかあさんは、ふらんにたちむかっていったんだよ!」 「うそだよ!まりさはおやがごみみたいにつぶれたのがはずかしいからうそをついてるんだよ!どうせくずみたいなおやなんでしょ、まりさをみてればわかるよ!!」 「ばかなこといわないでね!さすがのまりさもおこるよ!!」 「ごみみたいなおやからうまれたくずまりさがなにえらそうにしてるの!?くずはさっさとれいむをたすけたらじさつして、くずしかうめないごみおやにあいにいけばいいんだよ!!」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!だま゛れ゛え゛え゛え゛え゛!!!!!」 お父さんまりさの両親がふらんに殺されたというのは本当のことでした。まりさが子供の頃、体付きのふらん三匹が一家を襲ったのです。 まりさのお父さんのまりさは怖じ気付くことなく、勇敢にふらんに立ち向かいました。 お母さんのぱちゅりーは知略を駆使してまりさを逃がし、自らは囮となりました。 まりさは両親のお陰で体付きのふらん、しかも三匹から逃げおおせたのです。お父さんとお母さん、姉妹達は死んでしまいましたが、まりさはそんな両親を尊敬していました。その両親が目の前のゲスれいむに貶められている…お父さんまりさの視界が真っ赤に染まりました。 「ゆっくりしないでしねええええええ!!!!!!」 手近にあった、屋根の柱に使った枝。お父さんまりさはそれをくわえ、瓦礫の隙間からお母さんれいむの体に突き刺します。 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!ま゛り゛ざの゛ゆ゛っぐり゛ごろ゛しい゛い゛い゛!!!」 「しね!!しね!!まりさのおとうさんとおかあさんをばかにするれいむはいますぐしねぇぇえ!!!」 「だれ゛があ゛あ゛あ゛あ゛!!たずげでえ゛え゛え゛!!くずま゛り゛ざに゛ごろ゛ざれ゛る゛う゛う゛う゛!!!」 お父さんまりさの枝が、お母さんれいむの体を何回も突き刺していきます。その度にお母さんれいむの悲鳴があがりますが、それもだんだん小さくなり、やがてピクリとも動かなくなりました。 「きゃははははははははは!」 平原に高笑いが響きました。声を上げたのはお父さんまりさ。以前のお家が壊れた近くで新しく石を積み直しているようです。 「れーむもあかちゃんも、みーんながゆっくりできるおうちをつくるよ!きゃははははははハははハハ!!」 とても楽しそうに笑いながら、石を積み上げていくお父さんまりさ。その傍らには大事な家族が勢ぞろいしています。 なくなった両目の代わりに綺麗な石をはめ込んでいるお母さんれいむ。 後頭部をごっそり失った赤ちゃんれいむ。 前から後ろに木の枝が貫通している赤ちゃんれいむ。 ぺたんこになっている二匹の赤ちゃんれいむ。 皮の切れ端だけの赤ちゃんまりさ達。 風が吹くたびにゆらゆらと揺れ、みんながお家の完成を心待ちにしています。 「おっけー、まりサにまカせて!!きャはははははハハははは!!!」 尖った石で体が傷つこうとも、そのせいで致死量に近い餡子が流れ出そうとも、お父さんまりさは勢いを緩めません。 ひょっとしたら、そのことにも気づいていないのかもしれません。 お父さんまりさは餡子を失い過ぎて命を落とすまで、石を積み上げ続けました。 /**** 子供の頃は、蟻の巣を水攻めとか爆竹で爆破とか殺虫剤攻めとかしたもんです。 ゆっくりの巣でやったらどうなるんだろう… by 町長 /****今までに書いたもの fuku2120 電車.txt fuku2152 大岡裁き.txt fuku2447 ゆっくりセラピー.txt fuku2539 頭.txt このSSに感想を付ける