約 528,505 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/788.html
※一部東方やゆっくりと関係の無いものを使っています。申し訳ありません。 一日の勤めを終え、自宅への道のりを歩いた時、ふと私はそれを発見した。 ゆっくりの家族だ。 西瓜程の大きさを持つ親れいむと親まりさ。 それに子れいむと子まりさがそれぞれ二匹ずつの、計六匹の一家だった。 既に日が沈んだ夜。 人間の時間が終わり妖怪の時間になろうかという時間。 一体何をしているのかと近づいてみれば、どうやら畑の野菜を狙っているようだった。 人間に気づかれないように気配を殺しているつもりなのか 「そろ~り、そろ~り」 などと間抜けにも口に出しながら歩いていた。 人間に気づかれないようにしているとは、このゆっくり達は人間の怖さを知っているのか。 私はゆっくり達の進行方向先へ視線を向け……嘆息した。 そこは私が子供の頃から知っているおじさんの家だった。 おじさんは家屋のすぐ隣に畑を作って野菜を育てているのだ。 「ゆっ、ついたよ。おいしいおやさいをおなかいっぱいたべようね」 「しずかにしなきゃだめだよ。にんげんにきづかれちゃうからね」 一家が畑に辿り着いた時、親まりさと親れいむが後続のゆっくり達に囁きかけた。 囁くといっても、二十歩も後方にいる私(ゆっくり達はどうやら私には気づいていないようだった)にすら聞こえるほどだったが。 だが日が沈んでもう家の中にいるおじさんには聞こえなかったろう。 「ゆっ、ゆっくりちずかにちゅるよ」 「れいみゅはいいこだもん」 「たべられなかったびゅんはおうちにもってかえりょうね」 親の言いつけどうり静かな声で返す子ゆっくり達。 親のいいつけを守る、随分といい子じゃないか。 しかしこのままではおじさんの野菜が食べられてしまう。 あのおじさんの作った野菜はおいしい。食べたらまさに「しあわせ~」だろう。 だが私は、ゆっくりの「しあわせ~」など糞喰らえだ。 私は最後尾の子ゆっくりれいむに狙いを定めた。 私はその中に潜り込むイメージを膨らませる。子ゆっくりれいむと自分の姿を重ね、皮を破る感覚を想像する。 頬にぴりぴりと電気のようなものが走る。 次の瞬間 「〝ゆっ!! ゆっくり静にちゅるよ!! みんなで美味しく人間のお野菜をちゃべようね!!〟」 一番最後尾の子ゆっくりれいむが、辺りに響き渡るほどの大声で叫んだ。 辺りに反響する子ゆっくりの声。 その響きが鎮まった時、親れいむが子ゆっくりれいむに向かって静に叫んだ。 「ゆぅぅぅぅ! なんでおっきなこえだすのぉぉ!」 「ゆっ? れいみゅおっきなこえなんだしちぇないよ? 突然怒られてわけのわからない、という反応を示す子ゆっくりれいむ。 当然だ。今のは私が言わせたのだから。 私にはちょっとした能力があった。 自分の考えていることを他人に喋らせる能力。 求聞史紀風に言えば『好きな言葉を喋らせる程度の能力』といったところか。 私はこれを『腹話術』と呼んでいるが。 人語を解すのならば人間はもちろん、妖怪や妖精だって能力の対象とすることができる。 もちろんゆっくりもだ。 そしてこの能力によって喋らされた相手はその間のことは覚えていないのだ。 「なんでうそつくの! うそつきはだいきらいだよ!」 「ゆっ、うそなんてちゅいてないよぉぉ!」 よって子ゆっくりれいむは現在自分に覚えのないことで怒られているのだ。 わけがわからないだろう。自分は喋ってもいないのに怒られているのだから。 うそをついた、ついていないの親子の問答に、他の家族まで混じり始めたその時。 バーン!! と大きな音を立てて畑の隣の家の扉が開かれた。 そして扉から飛び出してきたのは鍬を持つ家主。私のよく知るおじさんだった。 「こらぁぁぁぁぁ!! ゆっくりどもめぇぇぇ!!」 般若の形相でゆっくりの一家へと襲い掛かっていくおじさん。 当然、私がさっき叫ばせた子ゆっくりの声が聞こえたので飛び出てきたのだろう。 おじさんの姿を確認したゆっくりの親子が揃って青ざめた顔をすると、それまでの喧嘩を切り上げて一目散に逃げ出した。 「ゆゆっ、ゆっくりはやくにげるよ!」 「ゆっくりできなくなるよ!」 「ゆぶぅぅぅ、れいむのしぇいだよぉぉぉ!!」 「ゆっ、なんでしょんんなごどいうのぉぉ!!」 「れいみゅがおっきなこえだしゅからだよぉぉ!!」 「だちてないよぉぉぉ!!」 逃げながらも覚えのないことで姉妹に糾弾され涙目になる子ゆっくりれいむ。 やがて子ゆっくりれいむのすぐ前をはねていた子ゆっくりまりさが 「れいみゅのしぇいなんだかられいみゅがあしどめしてね!」 と言いながら子ゆっくりれいむを後方へ突き飛ばした。 「ゆぶぅぅぅ! なにしゅるのぉぉぉ!!」 コロコロと転がり体中泥まみれの涙まみれという酷く汚い状態になった子れいむ。 たった今自分を突き飛ばした姉妹へと恨みの視線を向けるがおじさんの事が気になるのかすぐに後ろを振り返る。 おじさんはすぐそこまで迫っていた。 「ゆ゛ぅぅぅぅ!! たぢゅげで! たぢゅげでよぉぉ!! だぢゅ────ゆぼっ!」 助けの声はおじさんの鍬で潰された。 真上から脳天へと振り下ろされた鍬によってグチャグチャになった子れいむ。 皮は無惨に潰れ、餡子は四散し眼球は勢いよく前方に飛び出て。 肉親に裏切られ、背後から最大の恐怖が迫ってくるという状況で絶望しながら死んでいったことだろう。 「れいむのあかちゃんがぁぁ!!」 「だめだよれいむ! にげないところされちゃうよ!」 「おかあしゃんにげよ!」 潰された子れいむへと駆け寄ろうとする親れいむを押しとどめ、畑から離れていくゆっくり一家。 おじさんは追っ払うことさえできればいいのか追撃はせずそのまま家の中へと戻っていった。 子ゆっくりの死骸はそのままだ。 もっとも、放っておいても蟻が勝手に片付けてくれるだろうが。 おじさんも帰り、ゆっくり一家も去っていった。 さて、私はというと────。 ゆっくり一家の後を尾行することにした。 どうせゆっくりのことだ。また別の人間の食物を狙うに違いない。 私はそのようなゆっくりの「しあわせ~」をぶち壊すため、ゆっくり一家の後方を静かに歩いていった。 間抜けなゆっくりは私に気づかない。 やがて子を失ったショックから回復したのか親れいむも大人しくなった。 ただ、流石に家族を失ったばかりだからだろうか、人里を歩く家族の口数は少なかった。 「ゆぅ……れいむのあかちゃんがぁ……」 「ゆっ、おかあしゃんきにすることないよ! あれはおっきなこえをだちたばかなれいむのしぇいなんだから!」 「そうだよ! そのばかなれいむはもうちんだんだからだいじょうぶだよ!」 「そうだよれいむ。 ほらげんきをだして、またばかなにんげんのたべものをいただこうよ!」 と、落ち込む親れいむに声をかけるのは子まりさ達と親まりさだった。 ……どうやら、落ち込んでいるのは同種のゆっくりれいむだけのようだった。 事実、子れいむを突き飛ばした子まりさを他のゆっくりまりさは糾弾していない。 親れいむと子れいむはZUN、と俯いて落ち込んでいるようだからそこまで今は気が回らないのだろう。 ぴょこぴょこと人里を闊歩するゆっくり達。 いくら日が沈んだとはいえ他の里の者に出会わないのはここが里の外れの方だからだろうか。 それとも気が早くもう飲みに行ったのか。 どちらにせよ、運良くゆっくり達は私以外の誰にも見咎められなかった。 見つかったら殺されていたことだろう。 やがて私はゆっくりより先にゆっくりの食べ物になりそうなものを見つけた。 民家縁側に干されていた柿だ。 ゆっくり達は次はこれを狙うだろう、と思って視線をゆっくり一家に戻す。 が、ゆっくり達はその柿に気づくことなくその民家の側を通り過ぎようとしていた。 いかん、このままでは今思いついた私の計画が狂ってしまう。 それを阻止するため、私は再び『腹話術』を使用した。 「〝ゆっ! お母しゃん。あそこに柿しゃんがあるよ〟」 子まりさの一体に『腹話術』をかけ思い通りの言葉を発せさせる。 子まりさのその言葉にゆっくり一家はぴたりと足を止めると、キョロキョロと辺りを見渡し始めた。 「ほんとうだ! かきしゃんがあるよ!」 やがて子れいむが柿の所在に気づく。それに続いて他のゆっくり達も柿を確認したようだ。 「あんなところにむぼうびにおいてあるなんて、あれはきっとまりさたちにたべてくれってにんげんがおいたんだよ!」 などとひどくゆっくり本位な考えをする親まりさ。 だが他のゆっくり達もその考えに異存はないとか「そうだね!」「だったらたべてあげないとかわいそうだね!」などと賛同の声をあげた。 ……まったく、呆れた屑どもだ。 私はその認識を一層強くすると、子まりさの一体に狙いを定め 「〝じゃあ柿しゃんとってきてね、お母しゃん!〟」 『腹話術』を使用した。 「ゆっ!?」 驚愕の声をあげる親れいむ。 さもありなん。てっきり他のゆっくりが取りに行くものだと思っていただろうからだ。 もちろん、それは他のゆっくり全てに共通する。 自分のために他が動くのが当たり前だと思っているのだ。 だからゆっくり達の柿を取りに行く役目の押し付け合いになる前に、私が流れを決める。 今度は子れいむに向けて『腹話術』を使う。 「〝お母しゃんなら出来るよ! がんばっちぇね!〟」 続いてもう一体の子まりさ。 「〝お母しゃんはあんなばかなれいみゅと違うもんね! ゆっくり取りに行ってね!〟」 「ゆっ、ゆっ~……」 愛しい子供達に揃って懇願され困り果てる親れいむ。 愛する子供達の願いとあっては断れないだろう。しかし怖い人間の家へと行くのは怖い。 助けを求めようと親まりさへと視線を向けるも 「〝バカな人間と違ってれいむは優秀だもん! れいむならできるよ!〟」 親まりさの口から出るのは、私の『腹話術』による私の言葉だけだった。 親れいむは親まりさから突きはなされたかのような驚愕の顔を見せるも、すぐに気をもちなおしたのか、キッと柿の方へと視線を向け、駆け出した。 「れいむがゆっくりかきさんとってくるからね! まっててね!」 勢いよく飛び出したが、もちろん人間に気づかれないように静かに這っていく親れいむ。 ゆっくり一家のいる道から縁側までは十メートル程の距離があった。 その距離を「そろ~り、そろ~り」とまたもや間抜けな声を出して這う親れいむ。 親れいむの姿を後ろから見守る他のゆっくりは「がんばっちぇね」と小声で声援を送る。 さっきの会話では親れいむ以外は意識が飛んでいて会話の一部内容を知らないはずだが、自分の都合の良い展開となっているので特に気にしていないようだ。 まさにゆっくりの餡子脳といえよう。 少しずつだが確実に縁側へと近づいていく親れいむ。 民家の明かりはついているようだから、住人は中にいるはずだが、やはり気づかないか。 ならば、次にとる手段は────。 「〝ゆっ!! 人間に気づかれなかったよ!! バカな人間だね、ゆっくり柿は頂いていくよ!!〟」 親れいむが柿のある縁側へと辿り着いた瞬間の『腹話術』。 もちろんさっき子れいむに発せさせたのと同等の大声だ。 当然 「ゆっくりかっ!!」 住民に気づかれる。 「なんでおおごえだすのでいぶぅぅぅ!!」 「おかあしゃんのばかぁぁぁぁ!!」 「やっぱりおかあしゃんもばかなんだにぇ!!」 スパーン、と障子を開き人間が現れた瞬間、大声を出した親れいむへと一斉に罵声を浴びせかけるゆっくりまりさ達。 当然れいむはそんなこと知らない。 「ゆっ、なにいってるの? れいむはおおごえなんてだして────」 踏み潰された。 死なない程度に餡子を吐き出させる見事な力加減だった。 「いだぁぁぁぁい……なんでごんなごどずるのぉぉぉ!!」 皮が変形し滝のような涙を流しながら後ろを振り返った親れいむは、後ろにいた青年を見つけ愕然とした。 「ゆっ……ゆっ……、ゆっくり……かきさんちょうだいね?」 発した言葉は恐る恐るといった感じで、できるだけ怒らせないようにとした結果だろう。 だが所詮は餡子脳。それで怒らない人間などあんまりいない。 むんず、と青年に髪をつかまれた親れいむ。 「ゆっ、ゆっ、ゆっくりはなしてね!」 パシーン! と、ゆっくりの言葉など無視する痛烈なビンタ。 右頬をはたかれたれいむはさっきよりも涙目になっていた。 「ゆぐっ……ごめんなさい、でもかき──」 パシーン! 左頬。 「ごべんなざいぃぃぃ! でもごはんたべないとれいむたち──」 バチーン! 右頬。 「ゆっ……ゆっぐりでぎ──」 バチーン! 左頬。 「おうぢがえぢ──」 バチーン! 右頬。 「ごべんなざ──」 ビターン! と痛烈に顔面から親れいむは床に叩き付けられた。 子ゆっくりなら即死だろうが親ゆっくりの弾力性なら大丈夫、死なない。 散々痛めつけられた親れいむだが 「ゆっ、ゆぐっ……」 と立ち上がろうとする。 しかし、青年はそれを許さなかった。 ドゴム! と親れいむを庭へと蹴り飛ばした。 破裂しない程度に吹っ飛ばされた親れいむは、餡子を飛び散らせながら空を舞い、地面へと落ちた。 ゆっくり一家はというと、一連の惨状をガタガタ震えながら見守っていただけだった。 だが地面へと落ちた親れいむへと歩み寄っていく青年を確認すると、親まりさが何事か子ゆっくり達に囁きかけた。 子ゆっくり達はそれを聞くと、親まりさと共にその場を駆け去っていった。 このまま青年が親れいむの許へと近づいていけば、庭の外にいる自分たちも気づかれると思ったのだろう。(道と庭がちょっとした柵があるため、しかも夜のため見難い) そんな薄情なゆっくり一家の行動に、親れいむは気づかなかった。 そんな余裕は既に無かったのだ。 「ゆぐっ……ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛っ゛ぐ……」 ボロボロになりながらもなお立ち上がろうとするが 「ゆ゙っっ!!!」 むんず、と髪を掴まれ顔面を地面へと叩き付けられる。 「も゛う゛や゛め゛でえ゛えええ!!!!」 顔面を地面につけたまま、ガリガリと家へと連れて行かれる親れいむ。 当然顔面は土や石によって削られていく。 親れいむが通った後は涙等によって濡れていた。 やがて縁側まで引きづられた親れいむは、そのまま青年に抱えられ 「い゛や゛だあああ! ゆ゛っぐり、じだいいいい!!!」 家の中へと連れ去られていった。 ピシャン、と障子が閉められ完全に親れいむの姿は見えなくなった。 それを見届けた私は、もちろん家族を放って逃げたゆっくり一家の後を追った。 つづく ───────── あとがきのようなもの 作中に出てきた『腹話術』とは、「魔王」という小説に出てくる能力です。 面白そうなので一度使ってみたかったのです。 はい、完全に自己満足です。本当に有難うございました。 他に書いたもの:ゆっくり合戦、ゆッカー、ゆっくり求聞史紀 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3887.html
いい天気ですねえ。 生い茂る緑。立ち上る入道雲。かしましく鳴く蝉たち。まさに夏真っ盛りといったところでしょうか。木陰の下、水辺にいても、満ちあふれるエネルギーは陰りを見せませんね。おお、暑い暑い。 しかし、あなたも釣りがお好きだとは意外でしたよ。なかなか理解されない趣味ですからねえ、これ。 え、他に誘ってみたんですか? ふぅん、そうですか。 群れの中で釣りに興味があるゆっくりというと、レティ種ですかね? 彼女の釣り好きは有名ですから。ワカサギ釣りのときに氷をぶち破った件は、衆知というか羞恥の出来事になってますし。 しかし、今は夏眠しているはずですよ。無駄足に終わったでしょう。違うのですか? レティじゃなくて。 長? 長を釣りに? 確かに長も休暇ですが、今度の収穫祭でやる演劇の台本を書いているはずですよ。役者との打ち合わせもこっそりやっているようです。何かと物議を醸す、特に参謀辺りが怒り出しそうな内容みたいですね。なんでわざわざ悶着起こすような……今に始まったことじゃないですけど。とにかく、長を誘ったのなら、それこそ無駄足でしたね。 こんな奇特な趣味を持つのは私たちくらいでしょう。それほど変だとは思いませんが、端から見たら時間の無駄でしょうからね。魚を得るのだけが目的なら、飛行種に任せておけば、いくらでもとは言いませんが、鮭くらいは捕ってきますし。 ……あー、いまの洒落は高度でしたか? まあ、あれですよ、単に魚が欲しくて釣りをやっているのなら、全ての釣り人は魚河岸へ向かわなくてはなりません。 そういうのじゃないでしょう、釣りの楽しみというのは。こうやってのんびり過ぎゆく時間に浸ったり、時折やってくる魚との駆け引きに熱くなったりするのがね、いいんです。漁獲の効率とは間逆にある価値観ですよ。手段こそが目的なんです。まあ、釣れるに越したことはありませんけど。 この沼で言うと、そうですね、ブルーギルなんて釣れますよ。幻想郷では珍しいでしょう。 食べてもそれほど美味しい魚ではないんですが、私は嫌いじゃないんですよ。威嚇するとき頬を膨らませるなんて、親近感湧きません? 海外から持ち込まれた魚で、在来種を食い散らかすというのも、野山の生態系を荒らす害獣としてのゆっくりそのものですしね。ええ、そう見る人間は多いのですよ、実際はともかく。 しかし、そんなブルーギルを放流したのは人間なのですがねえ。日本の釣り人が、力強く釣り糸を引くブラックバスやブルーギルを好んだわけです。日本の魚では物足りなかったのでしょうか。何だか角界を連想しますが、そうしてスカウトされた外来種は釣り人の期待に応えて繁殖し、今日も元気に日本の生態系をボロボロにしているのでしょう。 日本の釣り人が「自然を大切にね! キャッチ&リリース!」なんて言うのは、そう考えるとなかなかセンスあるジョークですね。見習いたいものです。 まあ、私たちは釣った魚はすぐに食べてしまいましょう。寄生虫などの耐性はありますよね? この前、カムルチーを生で食べてましたものね。ここは指定区域の外だから、いくらでも捕って、いくらでも食べることができますよ。 あ、釣りは苦手なんですか。ふふっ、そうですか。下手の横好きというやつですね。いやいや、構いませんよ。先ほども言ったように、釣果は問題じゃないんですから。 そうだ、良かったら、私の釣った魚を差し上げましょう。いいんですよ。気っぷの良さには定評がありまして。気前マルと呼んでください。 しかし、こうして沼を眺めていると、いろいろなことが頭に浮かびますねえ。人間には、こういうとき嫌なことばかり思い浮かぶので、音楽を聴いて紛らす事例は多いらしいですけど。あなたはどうです? え、私ですか? うぅん……そうですねぇ、やっぱりあのことでしょうか。 あー、ところで今日は何日でしたっけ? あはは、「時そば」をやるつもりはありませんよ。ただちょっと、ええ。 24日? そうですか……なるほど、思い出すわけです。 いえね、ちょうどこの日だったんですよ、あれがあったのは。「三方一両損」の話です。 私たちの群れにもいますから、ニトリ種のことは知ってますね。水に弱いとされるゆっくりの中でも、珍しく水棲の生態を持つ種です。 ええ、河童に属する性質を持っていると言われますが、あまり相関性はないんじゃないですか。私もカラス天狗の性質を有するとされてますけど、一切の面影がないでしょう? まあ、それはともかく。 目の前にあるこの沼、これよりもっと大きい湖沼にそのニトリたちは住んでました。いえ、「たち」と素直に呼んでいいものかどうか、少し説明が必要ですね。 「クダクラゲ」って知ってます? 知らない? そうですか。まあ幻想郷には海はありませんから仕方ないかもしれませんが、学問は必要ですよ。《無学は神の呪いであり、知識は天に至る翼である》。「ヘンリー六世」の一節です。 え? 「ヘンリー六世」も知らない? いやはや……確かに、太陽が地球の周りを回っていても不都合ありませんけどね。 話を戻しましょう。 クダクラゲは普通のクラゲとは違い、それぞれの個体がくっつき、群体を為す生態で知られています。単純な群れじゃないですよ。つながって、一つの生物のようになっているんです。 それぞれが遊泳、捕獲、消化、防衛に特化した機能を持ち、集団全体を生かすために生きるのです。生殖専門の個体もいるんですよ。「一心同体」を地でいく生物とでも申しましょうか。 ええ、それをやっていたんです。そのニトリ「たち」は。 ゆっくりは基本的に水に弱く、雨にしばらく打たれていただけで溶けて死んでしまう者さえいます。それは致命的な弱点であるのですが、あるニトリ種は水に強いだけでなく、その性質を利点として活かすことができるのです。 あなたは見たことがないでしょう。群れのニトリ種でできる者はまだいませんからね。身体に親水性を持たせ、水中で粘液状に広がるのです。 九割以上が水分で、半透明。とはいえ、それは紛れもなくニトリの身体であり、自在に動かせます。しかも意識的な変異もできる。顔だけお化けのくせに、複数の腕を生じさせた例もあります。「ニチョリ化」と呼ばれる能力ですね。 水が豊富になければできないことですが、逆に言えば水中においては無敵の力です。 その能力をさらに発展・応用して、彼女らはクダクラゲのごとく一体化しました。自在に身体を変形させる能力で、互いの身体を融合させることを考えつき、実行したのです。 水面を通して、ニトリたちが大樹と連なっているのは壮観でした。節くれ立った巨大な幹が、ほの暗い湖底へと続いており、思い思いに幹から伸びる枝は、ゆらゆらと不気味に蠢いているのです。その全ての部位ににやけ顔が無数に張り付いていました。青みがかった半透明の身体に、屈折した日の光が透過して……。 繁栄を妨げる者はいませんでした。それまでは魚や鳥が天敵でしたが、その状態になってからは、むしろ餌としていました。上空を飛ぶ鳥に向かって、水中から天高く触手を伸ばし、沼へと引き込むというのは、まさに「烏賊」という漢字がしっくりくる光景でしたね。それとも「飛ぶ鳥を落とす勢い」の方が適切でしょうか。 その沼は河童ゆっくりのユートピアだったかもしれません。ただ、あまりにも閉じた世界だった。彼女らはその沼地から少しも外に出ようとしなかったのです。そして、新しい種を取り入れようとしなかった。 常時水の中にいられるゆっくりは、ニトリ種をのぞけばスワコ種くらいのものですからね、彼女らの生き方に合わせられるゆっくりは確かにいません。しかし、それなら自分たちの生き方を周りに合わせる手段もあったはずです。陸上生活と水中生活に分かれ、ニトリ種だけは沼で結合して生きるとか、あるいは時間を掛けて耐水性を獲得させて、それから群体へと引き込むとか。でも、しなかった。 完全に一つの群体となる前は、沼の中だけで生殖していたようです。近親婚ですね。群体となってからは、分裂タイプの生殖で増えていきました。増える分には、それで問題ないわけです。 しかし、遺伝的にも文化的にも、新たなものを取り入れない閉塞は、必ず破綻へと向かっていきます。 まず食糧が足りなくなりました。目に付くものを際限なく食べていれば、当然そうなります。このままではまずいと反対意見を言う者がいませんでしたから、ただただ食べ続けたのです。沼はからっぽになりました。蛙の声さえ聞こえない、静寂の湖沼となりました。 それで、今度は川へと進出しました。そこにはまだ食べ物がありましたからね。しかし、餌を求めて山の外、森の領外にまで行ってしまいました。そう、人間と接触してしまったのです。 彼女らは人を恐れませんでした。実際、水の中の河童饅頭に対し、人間は何もできませんでした。動きは素早いし、たとえモリが当たったとしても千切れた身体はすぐに融合・再生してしまいます。「ニチョリ化」したニトリは、ほとんどアメーバみたいなものですから。それに、群体から見ればモリの一撃などかすり傷に等しい。 やりたい放題でしたね。釣り針に掛かった魚を横取りしたり、仕掛けの位置を動かして自分たちの物として使ったり、川遊びをする子どもたちのお尻に手を入れたり。 村人の怒りは相当のものでした。もともとゆっくりに対して、侮蔑的な感情を持っていましたからね。まあ、好印象を持つ人の方が少ないのでしょうけど、その村は筋金入りでしたよ。 村に入ってきた饅頭妖怪は問答無用で駆除。畑荒らしであろうと迷い子であろうとお構いなしです。視界に入ったら、とにかく虐殺。そして、死んだ饅頭は一口も食べずに埋めるという徹底ぶり。スタンダール風に言えば、「見た、殺した、捨てた」ですね。 かつて集団レイパーアリスに村を荒らされたことが、その異常なまでの嫌悪感の遠因らしいのですが、詳しいことは知りません。ゆっくりは人間に近しい妖怪ですが、その村の付近には一匹もいませんでしたねえ。 さて、そんな村人に対して、ニトリたちはさらに図に乗った行為を始めました。畑を荒らしたのです。 細長くした身体で用水路を通って、そこから陸地に触手を伸ばし、畑の農作物を盗むのです。村の畑の至る所が、粘液にまみれ、穴だらけになりました。 被害は甚大、怒りは心頭。では、村人はいかに? 何をしたと思います? 答えは「毒」。沼に大量の毒を流したのです。 川や用水路にまで進出したとはいえ、ニトリたちの本拠地は元いた湖沼でした。眠るときは必ずそこで、大樹のように一塊になっていましたから、そこを狙ったのです。 効果はてきめんでしたね。彼女らは苦しみ悶え、逃れようとした。しかし、沼の周囲から一斉に取り囲むように毒を流し込んだので、気づいたときにはもう遅く、連なる身体をのたうち回らせるしかできませんでした。その身体も、どんどん融解・崩壊していきました。 ゆっくりは個体によってさまざまな特徴があります。同じ種であっても、その性質に大きな差があったりする。毒への耐性も同じです。しかし、ニトリ種は分裂タイプで増えたため、その毒に対してまったく非力だった。耐性を取り入れることができなかった。全滅するしかなかったのです。 凄惨な光景でしたね。この世のものとは思えない様相……陳腐な表現かもしれませんが、他に適当な言葉が思いつきません。わずかに残った魚や蛙が腹を向けて浮いていたのもそうでしたが、何よりニトリ種の悲惨さは筆舌に尽くしがたいものがありまして。 断末魔の形に開いた口からは舌が垂れ、目は飛び出さんばかりに見開かれて苦悶の色を表していました。顔はこれ以上ないというくらい歪みきり、それら全体が溶けて破れた皮膚から漏れた体液と混じり、ぐしゃぐしゃに潰れているのです。無数に連なる全ての顔が、そのように地獄を映していました。 こうして沼のニトリ種は全滅しました──今日この日、7月24日の出来事です。 ニトリ種が破滅したのは必然だと言えるでしょう。 力があるからといって、全てが可能になるわけではありません。そして、敵を作ることは災厄を抱え込むことと同義なのです。 あなたも気をつけてください。「無知は罪」とまでは言いませんが、死ぬ理由としては十分ですから。「跳ぶ前に見ろ」というイギリスのことわざもあります。 話、続けていいですか? ええ、まだ続くんです。 ほら、この話は「三方一両損」でしょう。まだ「一方」だけですから。 湖沼に毒を流されて、「損」をしたのはニトリたちだけではありませんでした。山の神です。 普段は大人しい神さまで、百年以上は人前に姿を現さなかったのですが、流石に自分の足もとを毒まみれにされてはね。黙ってはいられないでしょう。 とてつもない「損」をもたらした不届きな村人。彼らに対し山の神は怒りを示しました。 大地を揺らし、地面を割り、山を崩し、岩を放る。口で言うと大したことがないように思えますが、自然災害の恐ろしさはあなたもよく知っているでしょう? そのレベルですから。 家は地震で崩れましたし、田畑は地割れで壊れました。山の幸は一切採ることはできなくなり、飛んでくる大岩に潰される者もいました。これが村人にとっての「損」です。ゆっくりに受けた被害の比でないので、先ほどは「損」とはしなかったのですよ。 さて、これでゆっくり・神・人間の「三方一両損」になるわけですね。ちょっと規模が大きい「一両」かもですが、看板に偽りなく、羊頭狗肉にならずに話を終えることができました。はい、どっとはらい。 おや、何か言いたげですね。何です? ああ、そうですね。私たちの群れがこの話に出てこないのは不自然です。 いや、もちろん関わってますよ。見ていたように語っていたのは、実際見ていたからです。私たちの群れは何度も移住をするでしょう? 以前の移住地の話なんですよ、これは。 ニトリたちの沼にはすぐ交渉しにいきました。同じゆっくり同士仲良くやりたいですし、たぐいまれな能力を有してますから群れに引き込めればもっと良かった。 長と私、そして護衛のチェン種とヨウム種が一体ずつ、計四人で行きまして。──すぐに追い払われました。とりつく島もないとはあのことです。言葉を交わしたのは、実質どれほどもありませんでしたよ。 大きな触手が何本も、蛇のようにうねりつつ襲ってきましてね、命からがら逃げてきました。お土産に数々の罵倒や揶揄の言葉もいただいて、いやあ、あれは本当に不愉快でした。おお、不快不快。 不愉快といえば、その後日もですね。大きなイノシシを仕留めた狩猟班が、その湖沼の近くを通った際、獲物を強奪されましたっけ。やはり触手が水面から飛び出してきまして。ヨウムたち狩猟班は素早く逃げ、事無きを得ましたが、獲物はまんまと奪われてしまいました。 その様子を物陰から眺めていたのですが、百キロを超えるイノシシが木の実でもたぐられるように軽々と宙を舞うのは、あまりのパワーに肝が冷えましたよ。 いや、その後の光景はもっと心胆を底冷えさせました。 イノシシがニトリの大木の幹にあたる部分に取り込まれてから、半透明の身体を通して、その消化される様が眼前で展開されたのです。 イノシシはゆったり回っていました。頭を上にして、くるっくるっと横に回転していました。そうして、どんどん姿形を変貌させていきました。 皮が溶け、黄色の脂肪が現れたかと思うと、鮮やかな桃色の筋肉が露出し、漏れ出す赤黒い血は霧散して、色とりどりの臓物が現れ……全てが溶け、太い胴体の獣は、瞬く間に白骨と化してしまいました。強力な同化作用です。その骨も、枯れ木のように折られ、砕かれ、そして溶かされて、跡形もなくなりました。 仮にですよ、私たちが交渉にいったとき、もしも、あの触手に捕まっていたとしたら……おお、怖い怖い。狩猟班も危機一髪でした。 後日、当然抗議しにいきまして、そしてやっぱり追い返されました。初めて交渉しにいったときのメンバーだったのも、デジャヴを感じましたね。やれやれです。 ええ、言いたいことはわかりますよ。 我々が率先して「損」をしている。つまり、「四方一両損」の方が表題としてふさわしいと。そういうことでしょう? まあ、その先を聞いてください。 自分の湖沼を毒まみれにされて、山の神はお怒りでした。 村人に毒を取り除けば許してやろうと言ったのですが、彼らにはどうすることもできませんでした。もともと河童饅頭を殺すことしか頭にはなかったのですから、その後のことなんてね。で、私たちの出番というわけです。 毒を吸収するメディスン種の能力を活用しつつ、中和剤を空中から散布しました。すると、なんということでしょう、瞬く間に湖沼は元の無毒の状態に澄み渡りました。匠の技です。 山の神はそれはもう大喜びでしたよ。こちらまで嬉しくなりましたね。 丁寧なお礼をいただき、そのうえ手厚くもてなされました。 あんなにたくさんの桃を食べたのは、産まれて初めてでしたねえ。ふふ、好きなもので、つい食べ過ぎてしまったんです。なにしろ山積みの果物です。食べ放題の食い倒れでした。驚いたことに、その中にはメロンなんてのもありましたよ。 はい? ……うんうん……おお、すごいすごい。 先ほどの疑問といい、あなたはなかなか洞察力がありますね。単純な知識量以上のものを持っています。 そうですよね。ずいぶんと都合のいい話です。 山の神にできなかった、そして作った村人にさえ無理だった毒の除去。なぜ横からポッと出の我々が、あれほど容易くやってのけられたのでしょうか。 種を明かせば簡単なことです。あの毒はですね、除去を前提として開発されたのですよ。何もしなければしつこく残留しますが、ちょっとしたコツですぐ取り除けるのです。そう、私たちが開発しました。 作ったのは村人ですよ。私たちから製法を聞き出してね。 どうか毒の作り方を教えてください、と頼んだわけじゃありません。さっさと教えやがれ!と脅したわけでもありません。そもそも、私たちが毒の製法を知っているなんて、彼らがどうしてわかるんです? 要は、たまたま聞きつけたんですよね。ゆっくりたちが毒についておしゃべりしているのを。それでそのまま物陰で一切を心に刻みつけたというわけです。陰に耳あり。 そのときのチェン種とラン種は、こんなことを言っていました。 〈さいきん、ぬまのにとりたちがとってもすごいらしいわ!〉 〈つよいんだね、わかるよー〉 〈にんげんなんかめじゃないらしいわよ。ひとひねりだって〉 〈にんげんさんがよわいのかもねー〉 〈むきゅ、そうかもしれないわね! だってなんにもてだしできないんだから!〉 〈ごたいまんぞくなのに、てもあしもでないんだね、わからないよー〉 〈ぐずなにんげんね!〉 〈だめなにんげんさんだね!〉 〈むっきゃっきゃっきゃっきゃっ〉 〈あっひゃっひゃっひゃっひゃっ〉 失礼。毒の製法が話題に出てくるのは、このだいぶ後です。 でも、なかなかの演技でしょう。さすがは「劇団シキ」の役者だと思いませんか。あ、私の口真似も上手かった? ありがとうございます。 ラン種の演じた役柄は参謀を参考にしたとのことですが、ええ、お察しのとおり、黒ゆっくりプロデュースです。 本人に発覚する前に、長は稀少種獲得の旅に出ましたがね。ホントにあの人のイタズラ好きには困ったものですよ。わざと参謀に内容を流す苦労を少しは理解してほしいです。いや、喜んでやりましたけど。 ともかく、この二匹の会話によって、村人は目的意識と手段の両方を手にいれました。このままコケにされてたまるか。毒を流しさえすれば殺せる。やれるのにやらなかったら、人間のコケンに関わる。あの沼のゆっくりに目に物見せてやる。 そして彼らは実行しました。山の神のことなんか考えもしないでね。 マンドレイクって知ってます? 魔法薬の材料などでポピュラーな植物なのですが、これを持ち帰るのが一苦労でしてね。引き抜くと恐ろしい悲鳴を上げて、それを聞いた者は死に至るのです。 では、どうするかというと、定番の方法として犬に引かせるやり方がありますね。自分は声の届かない遠くに離れていて、犬に合図を送る。当然、犬は死んでしまいますが、お目当ての物は手に入ると。 つまりは、まあ、そういうことです。 ニトリたちとの交渉も、行ったメンバーは群れの中でも素早さに優れる者たちでした。なぜ参謀でなく私が行ったのか、わかりますか。また、なぜ交渉決裂後に、狩猟班は湖沼の傍をわざわざ通ったのか、わかりますかね。 相手を敵と認識するため……。大義名分を得るため……。皆殺しの動機づけのため……。 共存できたはずなのですがね。仕方ありません。選んだのは、相手です。 さて、エピローグを語りましょうか。 私たちは湖沼を自由に使えることになりました。ニトリ種に食い荒らされ、毒で汚染された沼。その水産資源が元に戻るにはそれなりの時間と手間が掛かりましたが、山の神の手助けもあって、新しい年を迎えるころには良質の魚がたくさん手に入るようになりました。 山の神の庇護のお陰で、冬の食糧不足が一切なくなったのも良かったですね。山の隅々までご存じなだけあって、あなたこなたから色々な食べ物を持ってきてくれるのです。 寄りかかりっぱなしというわけにもいかないので、できるだけ自分たちの手で獲得し、労働に合わせた厳正な分配は維持しましたが、参謀が冬場の食糧について頭を悩ませない姿は、あのときくらいしか拝めませんでしたね。 村人との交易もなかなか有益でした。村人は山への立ち入りは禁止されていましたからね、山の幸は私たちが採って、彼らと物々交換したのです。 村人がゆっくりと交渉するのは変ですか? ウジ虫のごとく忌み嫌うゆっくりと対等なやり取りをするくらいなら、山菜やキノコなんて要らないと言うに決まっている? まあ、そうでしょうね。 しかし、私たちのバックには山の神がいますから。無下にすることは、そのまま災害が襲いかかることを意味します。 命とプライドを天秤に掛け、村人がどちらを選んだか──それはもう、彼らは聡明でしたよ。今、群れにあるたくさんの鉄器類は、そのとき手に入れたものです。 で、話を戻しますよ。 この話の表題ですが、やっぱり「三方一両損」で良いのです。 その三両は私たちの懐に入ったわけですから。 ね? まだ、言いたいことがあるのですか? この上何を……ふむふむ……おおっ! あははは、なるほど、素晴らしい。センスありますねえ。 そのタイトルの方がいいかもしれません。ダブルミーニングとは恐れいりました。 「両得」ですか。 ふふっ、今度からはそれを使わせてもらいましょうかね。「りょ・う・と・く」。うぅん、返す返す味がありますねえ。 いやいや、やはり大したものですよ、あなたは。才能の片鱗を見た思いです。原石がこんな身近に転がっているとはね。 よろしければ、私の傍で働いてみませんか? 少なくとも退屈しない毎日はお約束しますよ。答えは急ぎませんから、考えておいてください。 ところで──やっとわかりましたよ、あなたがなぜ長を釣りに誘ったのか。 恐らくどこかで、長は釣り好きだと耳にしたんでしょう。 まあ、間違ってはいませんけれども……長が好きなのは、そっちの釣りでなくてですねぇ… ぁ、引いてますよ、魚。 黒ゆっくり6 過去作 fuku2894.txt黒ゆっくり1 fuku3225.txt黒ゆっくり2 fuku4178.txt黒ゆっくり3 fuku4344.txt黒ゆっくり4 fuku5348.txt黒ゆっくり5 fuku5493.txtうやむや有象無象
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3776.html
最近幻想郷にゆっくりとかいう生物があらわれた。 その体は餡子でできてる故幻想郷の食糧事情に貢献したわけだが1つだけ被害を受けたところがあった。 それは菓子屋だ。 ゆっくり増えるよ!by昔話 そして俺は幻想郷で菓子屋を営んでるうちの1つ 名前はわざわざ言うまでもないだろう さて、どうして恩恵を1番受けそうなところが被害を受けているのかというと・・・ カランっ 「あ、いらっしゃいませ~」 「この店もまだお饅頭高いわねぇ 隣町の○○さんのところなんか~」 「はぁ・・・気をつけます」 「次くる時までに安くしておきなさいよね!」 っとこのとうり値段でしか物事を考えないババアに何かと言われるからだ。 利益目的で饅頭の中身をゆっくりにした菓子屋に 小豆から作っているうちの菓子屋が値段で勝てるわけないだろ 常識的に・・・ かと言ってもゆっくりを使っているところは値段をうちの半額ほどにしている (と言っても以前はうちのところくらいが適正価格だったのだが) そういう訳で物は試し 長い物には巻かれろという言葉もあるとうりうちの店も普通の饅頭の半分の価格の ゆっくり饅頭を作ってみることにした。 まず材料として当然ながらゆっくりが必要だ ゆっくりを捕まえるためのエサはうちの店の廃棄品でいいだろう ゆっくり自体はそこら辺の野原に行けばいる っとみつけた 日光がよく当たる位置でぼーっとしている 数は1匹しか見当たらないが自分で作ってみる分には1匹だけで十分だ 「ゆ?おにいさんはゆっくりできるひと?」 「あぁ、その証拠にあまあまを持ってきたんだ 食うか?」 「ゆっ! ゆっくりたべるよ!」 ほれっ そうやって俺は饅頭を作った時のあまりの餡子を放り投げる 「むーしゃむーしゃ しあわせー♪」 そりゃあうまいに決まってるだろ・・・ お前たちみたいにどこから湧いてきたかわからんような餡子じゃなくて 本物の小豆から作ってるんだからな そう思いゆっくりを計画どおり連れて帰ることにした あまあまをやったかどうか知らないが、簡単についてきたのでうるさく騒がれずにすんだ。 とりあえず・・・次は洗えばいいか 饅頭はもっとあまあまをよこせとかどうのこうの言っているけど無視をして 洗面所で軽く洗う 「ゆ? おふろなんだね! ゆっくりするよ!」 「ゆ~ゆゆ~ゆ~♪ ゆっくり~♪」 そういえば底部も洗わんとな そう思いれいむをひっくり返す 「ゆ~ゆ~ゆぎぇ!」 突然ひっくり返したせいか舌をかんだようだ 「どぼじでぞんなごとするのぉおおおぉおおお!!」 よし、次は餡子を取り出すだけだ 何かと喚いてるれいむを無視し台所まで抱えて行く 「ゆ?なんかあまあまの匂いがするよ! おにーさんかわいいれいむにもってきてね!!」 その前に味の確認をしてみないとな・・・ れいむを横に寝かせ髪など邪魔な物がない底部を切断してみる 「ゆぎゃぁぁぁあああああぁあ でいぶのあ゛んよがぁぁあ゛ああ゛ぁあ」 ん、意外とうまいじゃないか この味ならなかなか売れるんじゃないか? あの後ゆっくりから作った饅頭を売ってみたが意外とよく売れた 評判もなかなかよかったので新製品として取り入れようと思うのだが 問題はゆっくりの入手方法だ 加工所で購入するのはゆっくり饅頭の魅力である安さをなくしてしまう 自分で捕まえるのも毎日休みの時間をつぶしてまでやりたくはない 2匹捕まえて子供を産ませるのもエサ代や育つ時間で効率的とはいえない さて・・・どうしたものか そういえば昨日ゆっくりの餡をスプーンでえぐりとっていた時 たしか3分の2ほどまでとってもわずかに生きていたな・・・ もっとも「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」としか言わない壊れた玩具のようになっていたが そしてゆっくりの傷はオレンジジュースで回復する となれば・・・・ 一ヶ月後 裏庭には小屋が完成されてあった 河童の技術は本当に恐ろしいものがある。盟友でよかった。 それで小屋といっても普段想像するような粗末な小屋ではない 外からの見た目はまさにそのような物であるが中は違う まず扉を開けてすぐにボタンがあり、その足元すぐには階段1段分の段差がある そして床はタイル敷きになっていて水をいっさい逃さないようにしている 排水溝も開け閉めは可能だ そして1番の変化は壁にところどころ穴があることだ この穴が何かは後でわかるだろう ともかく今必要なのはゆっくりである 小屋の完成に合わせてゆっくりを1匹加工所から注文をしておいた 注文といっても何か特別なしつけをしたやつではないのだが どうせなら上質の餡子を持つやつがいい 自分で捕まえにいってもよかったのだが注文をした理由はそういうわけだ。 小屋の中に入り、目を覚まさせるために箱からだし声をかける 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆっ! ゆっくりしていってね!」 本能に従い目を覚ましたようだ 「ゆゆっ? おにーさんはゆっくりできるひと?」 「あぁ、その証拠におかしがあるのだが食べるか?」 「ゆ! ゆっくりしないでれいむのおかしをおいていってね!!」 適当に持ってきた失敗作をそこら辺に放り投げる 失敗作といっても砂糖が入っているし、食うだろ れいむが生ゴmいや、失敗作をむさぼっている隙を見計らって壁に移動する そう、穴ぼこだらけの壁だ この穴の中かられいむの身長にあわせ真ん中くらいのところの穴に指をいれる 先端がフック状になっており、引っ張ると人間でもよく見ないとわからないような糸がでてきた ピアノ線だ。 これを反対側の壁までひっぱりフックにひっかけると準備は完了だ。 「おにーさんこれじゃあ足りないよ! もっともってきてね!! のろまはきらいだよ!」 と、準備が終わったと同時にれいむは生ゴミを食いつくしたようだ。 そこで隠し持っていたチョコを3分の1ほど割って放り投げてやる 「むーしゃむーしゃ しあわせー♪ おにーさんこのあまあまがもっとほしいよ!」 そこで残りのチョコを見せてみる 「ゆっ! ゆっくりしないでれいむにわたしてね!!」 無視する。 「ゆっくりしないでね! れいむおこるよ!!」 と言って空気を頬に入れプクーっと膨れあがる。 そこでまた無視する。 「もうかんべんできないよ!! ゆっくりもらうよ!」 と、言ってジャンプをして奪いとろうとする それを待っていた。 「ゆっ! ゆっ!」と言いながら奪おうとするれいむをかわし ピアノ線をのりこえてれいむとチョコの中間にピアノ線がくるようにする。 「よし、これを食べれたられいむお前の勝ちだ」 そう言いチョコの位置も今までの人間の手の高さと違いれいむの正面に移動させておく。 「ゆゆっ! こんな高さにするなんてやっぱりにんげんさんはばかなんだね! ゆっくりたべられていってね!」 と言い最後の力をふりしぼり奪い取ろうとする。 がチョコに触れる前にれいむの体に触れたのはピアノ線であった。 「ゆぎゃぁぁあ゛あ゛ぁぁああ でいぶのおめめがぁあ゛あ゛ああ」 どうやら真ん中より少し高くちょうど眼球に位置するところに線はあったらしい それにしても何故まっぷたつにならないんだ・・・?と思いよく見てみるとわかった。 餡子の粘着性のおかげで両断されたのがくっついているだけであったのだ。 ようするに上にのっかっているだけなのだ。 少々遅れて理解し、まっぷたつになったのを手でつかみしっかりと2つに分けて床に置いておく。 そして小屋の外にあるボタンを押す これは維持費に少々金がかかるのだがゆっくりの再生に不可欠なオレンジジュースを 段差の半分ほど満たしておける装置なのだ。 こうして次の日様子を見に小屋にいった。 「「ゆっくりしていってね!!」」 うん、やはり2匹に増えている というか何で一晩ジュースにつかしておいただけで失われた臓器まで再生してるんだよ・・・ 物理的におかしいだろ・・・常識的に とりあえず1匹は捕まえておく すると当然ながらもう1匹の方も反応した 「ゆっ! れいむをはなしてあげてね!! ゆっくりしてないよ!!」 そりゃあ口を押さえているんだからゆっくりおしゃべり(笑)もできないだろ するとれいむの堪忍袋に触れたのかどうか知らないがポインポイン音をたて 足もとにむかって攻撃をしてきた。 「ゆっ! ゆっ! ゆっくりしねぇぇえええ!!」 …こんな饅頭の攻撃に痛みは感じないのだがオレンジジュースがズボンについて正直うっとうしい わざわざ相手にするのも煩わしいのでピアノ線でまた両断させてやることにした れいむの攻撃のタイミングを読み取りうまくピアノ線のところに誘導する 自分が切らないようにうまく足をむこうにどけて…と 「ゆぎぇぇええぇえ!! でいぶのめがぁあ゛ああぁあ どぼじでごうなるのぉぉおおお」 絶叫と共に 双眸は再び裂けた。 そんなわけで本格的に製品化をすることにしたのだが、正直これが売れて売れてたまらない きっとこれは他店に比べると高級店の位置に分類されるうちの店が他の店と同じような値段の新製品を出したことによる ブランド効果もさることながら、事実饅頭の皮と餡子の3分の1は普段使っているようなものと差し障りのない物を使用しているからだろう このことによって他の店と比べ利益率は劣るながらも味の低下は他店よりおさえられることになった これだけやれば例の値段ババアにも喜んでもらえるだろ・・・ 季節が変わりはじめ人々が長い休みを取ることができるような時期になってからそれは起こった。 トゥルルル トゥルルル 「はい? え、もうそんな時期ですか? わかりました… すぐ準備をします」 うちの店では代々店を継いだものは初めのうち数年間は1年間のある時期に1週間だけ 先代の者に教えを請いにいかなければならないという慣習がある これは後を継いだ者が独立したことをかさにして代々の技術を低下させないようにするためのものである そして毎年のことながらこの時期がきたのだ。 そんなわけで例年通りの閉店の準備をする。 一時閉店の張り紙よし バイト君の休暇宣告よし あと食材は・・・適当な菓子にでもしてバイト君へのお土産に持たせればよし 現金は・・・銀行にでも預けておいて あとは店の電気を消すだけで準備は完了。 そして週が変わり・・・ 「ふぅ…」 この日はやっと1週間に亘る技術の確認が終わり店へ戻ることができた日だ といってもまるまる1日休めるわけではなく次の日から再開ができるように準備をしなければならない 張り紙は・・・この日から再開することをかいてあるから問題なし バイト君たちには通達しているはずだが確認のために連絡をしなければならない 食材は・・・全部使い果たしたから改めて今日買わなければならない 現金は預けてあったのを材料費と小銭のためにおろさなければいけない 店の電気は・・・ん? 何で離れ小屋の電気が・・・? 「・・・ぁ・・・い・・・」 小屋に近づいてみると何やら声がする そういえばこの小屋はゆっくりを増殖させるための小屋であったのを忘れていた もしかして店の味の秘密を探るための侵入者であるかもしれない 物音をたてずに扉の前に立ち勢いよく開いてみる この光景はまさに圧巻であった 半身のないゆっくりが幾重にも重なり合い部屋を埋め尽くしている だがそれだけならばまだよかった 部屋の底がゆっくりの再生を促すオレンジジュースの絨毯になっており 再生したと同時に餡子がうごめきあいその衝撃で部屋中にひいたピアノ線で身を裂かれているのだ 「ゆぎぃぃいいいいいいいいいいいい!!!!!!」 「いだぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」 「でいぶのおべべがぁあああああああああああああああ!!!!」 「ごべんなざぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」 「あやばりまずがらぼうやべでぇええええええええ!!!!!!」 「い、いとさんでいぶのどごろにごなぃでねぇえええ!!」 「ゆ゛っゆ゛っ… ぼっど…ゆっぐりじだがった…」 ゆっくりは餡子が結合していれば痛みは共有する このゆっくり達の叫びは無駄だとわかっていても誰かに変わってもらいたいという嘆き そしてこのゆっくりと目があった瞬間触手のようなものが伸びてきて・・・ 目を覚ますと私は店の仮眠室で横になっていた バイトの話によると私は離れ小屋の前で倒れていたようだ 小屋について聞いてみたがバイトが来た時点では扉は閉まっていたようだ あれから一年 あの日私は離れ小屋のボタンを消して以来扉には近づいていない。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3241.html
※ご覧いただく前の注意書き※ すっきり描写あり ゆっくり現代入り 以上です。それでは、お楽しみ頂けると幸いです。 ※1/16 fuku4847を一部加筆して、再うp致しました。 by 作者 よし、天麩羅にしよう。 珍しくお金があったので、今日の昼食はリッチにいくことに決めた。 普通、大学の近くにはラーメン屋や定食屋など色々な店がある……はずなのだが、うちの大学の近くには何故か少ない。 電車で1駅行った、うちの大学より何倍も大きい大学の学生街や、反対方向へ1駅の大きな街には食事処が沢山あるのであまり不自由はしていないけど。 普段は学内のコンビニで調達するか電車で食べに行ってしまうが、今日は前から行ってみたいと思っていた天麩羅屋に行くことに決めた。 3限が休講だったので、授業は午前中で終わりである。昼休みに食べに行くと混むだろうから部室に寄り、1時間ほど潰してから店に向かった。 行こうと思っている天麩羅屋は、大学から少し行ったところにある。普段大学の近くで食べるときはファーストフードが殆どなので、なんだか新鮮な気分だ。 大学を出て10分ほど歩き、目当ての天麩羅屋に着いた。 天麩羅は美味しかった。野菜天や海老天をはじめ、どの天麩羅も衣がサクッとしており、塩にも天つゆにも良く合った。 食べ終わって何となくメニューを見ていると、ある文字に目が止まった。 『ゆっくり』 ゆっ……くり? あのゆっくりか? しばらく前に出現した人間の頭みたいな饅頭か? メニューを見てみると、餡子やカスタード、生クリームといった文字も見受けられる。 これはゆっくりの中身だ。ということは、この店はゆっくりの天麩羅も扱っているのだろう。 しかし……どういう物なんだろうか? とりあえず店主に聞いてみることにした。客は僕以外にいなかったので、聞いても営業に差し支えは出ないだろう。 「あの、すいません」 「はい、なんでしょう」 「この『ゆっくり』って奴なんですけど、やっぱりあのゆっくりなんでしょうか?」 「ええ、当店ではゆっくりの天麩羅を扱っておりまして、デザートとして好評を頂いております」 「そうなんですか。饅頭としては食べたことがあるんですが、天麩羅にしている店があるなんて初めて知りましたよ」 「扱っているのは、この辺だとウチぐらいなもんでしょうねー。この辺じゃなければ何軒かは取り扱っていると聞いています」 「へえー。あの、他のに比べて随分と安いんですが、これはどうしてなんですか?」 「ああ、それはですね、他の天麩羅と違って原材料がタダ同然、というか本当にタダなんですよ。捕まえてくればいいんですから」 「そうなんですかー。……じゃあ、餡子とカスタード、それと生クリームを1つずつ下さい」 「わかりました。ちょっとお時間を頂きますが、宜しいですか?」 「問題ないです」 「じゃあ、ちょっと待っててください」 店主は奥に入っていった。 携帯をいじっていたら、奥から声が聞こえてきた。ゆっくりの声だ。 「ゆっ、れいむすっきりしたくないよ! あかちゃんつれていかれるのやだよおおおおお!」 「いやああああ! あいのないすっきりなんてとかいはじゃないわああああ!」 「むぎゅー、ぱちぇもあかちゃんとられるのいやよおおおおお!」 「まりさだってすっきりしたくないんだぜ! でもぶるぶるされるとどうしようもないのぜ!」 「ほら、さっさと子供作れ」 「「「「んほおおおおおおお!!!」」」」 「「「「すっきりー!!!」」」」 「ゆう、ゆう……。またすっきりしちゃったよ……」 「でも……。やっぱりあかちゃんはかわいいわね! とかいはなこになってね!」 「そうだぜ! こんどこそあかちゃんをまもってあげるんだぜ!」 「むきゅー、みんなでちからをあわせれば、おじさんからあかちゃんをまもれるわよ」 「「「そうだね! えいえいゆー!!」」」 どうやら親ゆっくり達が強制的に子供を作らされているみたいだ。ということは、子供を使うのだろう。 強制すっきりから1分半ほど経過した。 「ゆゆっ! あかちゃんのおめめがあいたよ!」 「もうすぐうまれるんだぜ! うれしいんだぜ!」 「みんなにこにこしててかわいいわね! とってもとかいはよ!」 「むきゅん、あかちゃんたちゆっくりしていってね!」 もうすぐ赤ん坊が生まれるのだろう。親ゆっくり達は嬉しそうである。 だが。無慈悲にもその嬉しさを粉微塵に打ち砕く言葉が告げられる。 「はーい、談笑中の所た~いへん申し訳ありませんが、これより赤ちゃんを1匹残らず頂いていきまーす。 いつもの通り、必要な赤ちゃん以外はぜーんいんブチ殺しますので、皆ゆっくりしていってね!!!」 「いやぢゃあああああ!!! あがじゃんもっでいがないでえええええ!!!」 「ゆっ、まりさたちのあかちゃんはまもってみせるのぜ! じじいはあっちにいくんだぜ! ……ごべんなざいいいい!!! もっでいがないでええええ!!!」 ブチブチブチイッ 「いぢゃいよおおおおおおお!!!!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! ぐぎをどだだいでええええええ!!!」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛!!! ごんなのどがい゛ばじゃないわあ゛あ゛あ゛!!! ……あ、あがじゃんごろざないでええええ!!! おねがいじまずうううう!!!」 「むぎゅうううう!! ばぢゅりーだぢにぞだでざせでぐだざいいいい!!! おねがいでずがらああああ!!!」 グチャッ 「ゆぴっ」 「ゆぶっ」 「ゆぴゃっ」 「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!! あ゛がぢゃんんんんんんんん!!!!」」 「「ばだばじべでの゛ごあ゛い゛ざづもずりずりもじでな゛い゛の゛に゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」」 ――カウンターからは見えないが、どう考えても奥は阿鼻叫喚。 茎を引き千切り、まだ生まれていないゆっくりを一匹一匹握り潰す音。赤ん坊の短い断末魔、そして親達が泣き叫ぶ声。 生きてる赤ん坊は親と初めての対面ができないまま全て連れ去られ、他の赤ん坊は生まれる前に全て潰されてしまった。 ゆっくり達にとってはまさに地獄である。 「ほい、じゃあお前らは箱で大人しくしてろよ」 「あがぢゃんがえぢでええええ……」 「ゆぐっ、ゆぐっ……。ごべんねえええ……」 「あがぢゃんだぢ、おがあざんだぢをゆるぢでねえええ……」 「むぎゅー……」 「お待たせしました」 子ゆっくり3匹を持った店主が戻ってきた。すっごく良い顔をしているように見えるのは僕の気のせいか。 「「「ゆっきゅりちていっちぇね!!!」」」 子ゆっくり達は生まれて初めての挨拶をしてきた。……最後の挨拶になるのだろう。 「それを使うんですか?」 「はい、当店では生まれたてホヤホヤのゆっくりを使います。 れいむ種が餡子、ありす種がカスタード、ぱちゅりー種が生クリームです」 「いつも注文を受けてから作ってるんですか?」 「凄く混んでるときは冷凍のを使ったりもするんですが、なるべく生まれたてのを使うように心がけています」 なるほど。究極の産地直送というわけだ。 「ゆゆっ? おじちゃん、このまありゅいのなあに?」 「ああ、それはお鍋っていうんだよ」 「むきゅん、おにゃべしゃんのなきゃにありゅのはきっちょおふりょね!」 「そうそう。さすがぱちゅりーは頭がいいなあ」 「ゆゆっ! おふりょできれいきれいちゅるのはとっちぇもときゃいはにぇ!」 「さあ、お風呂に入る前にこの中に入ってくれ」 店主は3匹に衣をつけ始めた。 「ゆっ! にゃめりゅとおいちいね! ぺーろぺーろ……」 「でもべちゃべちゃできもちわりゅいわ!」 「ありちゅ、きっとすちぇきにゃれでいになるちゃめにはひちゅようなことにゃのよ」 「ゆ、ゆん! ちょっととぼけちゃふりをちただけよ!」 衣をつけ終わり、いよいよ高温の油にダイブする時間がやってきた。 「れーみゅがいちばんしゃきにおふりょにはいりゅよ!」 「れいみゅはれでーふぁーちゅとっていうこちょばをちらにゃいのね! ありちゅがちゃきなにょよ!」 「れーみゅがしゃきだよ!」 「むきゅー、おふりょはおおきいんだきゃら、みんないっちょにはいりまちょうよ」 「ゆう……。ごめんにぇ、ありちゅ! いっちょにおふりょにはいりょうね!」 「ゆ、ゆん! ときゃいはにゃありちゅがいちびゃんちゃきにはいりゅのがのぞまちいけど、どうちてもっていうにゃらいっちょにはいっちぇあげちぇもいいわよ!」 「むきゅん、ふちゃりとも、なきゃよくちゅるのがいちびゃんよ」 饅頭たちの漫才を眺めている間に、揚げる準備が整ったようだ。 「それじゃあ、皆一緒にお風呂に入れるからな。仲良く温まれよ!」 「ゆっ! わかっちゃよ!」 「はやきゅいれちぇね! おふりょできれいきれいちて、もてきゃわちゅりむのぱーへくとぼでーになるんだきゃらね!」 「むきゅー、みんにゃではいりゅのはたのちちょうね!」 「じゃあ、行くぞ」 「「「ゆゆーん♪」」」 「じゃあな」 ボチャン 「「「ゆっ?」」」 「あ゛、あ゛じゅいよお゛お゛お゛お゛お゛!!!」 「や゛べぢぇえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「ぶぎゅう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!」 「よしよし、ちゃんと揚がれよー? おいっしい天麩羅になるんだぞおー?」 うおー、すげ。見て楽しむ面もあるのか。まあ、これを楽しいと思うかは人によるんだろうけど。 「ゆるじでぐだざい゛い゛い゛い゛!!!」 「ごんな゛の゛どがいばじゃないばあ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「ぶぎゅう゛う゛う゛!! みゃみゃだじゅげでえ゛え゛え゛!!!」 「お母さんは助けになんて来てくれないよお? お前らを喜んで差し出したんだから。 君たちは親にとっていらない子なんだよ! ゆっくり諦めてね!」 「ゆえ゛え゛え゛え゛ん!!!」 「ぞんなのう゛じょよお゛お゛お゛!!!」 「ぶぎゅう゛う゛う゛ん……」 揚げられるとやっぱり死ぬんだろうか。聞いてみよう。 「あの、揚げるとやっぱりゆっくりは死ぬんですか?」 「それは個体によりますね。体力の無いぱちゅりー種なんかはほとんどが死にます。 れいむ種とかまりさ種なんかは体力もありますし、衣で保護されてるので意外と死なないんですよ。 踊り食いみたいで食べていて楽しい、と仰るお客さまもいらっしゃいますよ」 「ゆ゛ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」 「ぢぬう゛う゛!! ぢんぢゃう゛わ゛あ゛あ゛!!!」 「ぶぎゅう……。ぶぎゅーん……」 そーなのかー。しかし、店主楽しそうだなー。顔が生き生きしてるよ。 「お待たせしました。こちらがゆっくりの天麩羅です。左かられいむ、ありす、ぱちゅりーとなっております」 揚げたての天麩羅が出てきた。生まれたばかりなので小さくて丸っこい。 「では、頂きます」 れいむから食べることにした。 パクッ 「い゛じゃい゛よお゛お゛!!!」 うおっ、まだ生きてんのかよ。衣で包まれているため、声はくぐもっていた。 ――そうだ。塩塗ってみよ。 「ゆぎゃあ゛あ゛っ!!! ぢみるう゛う゛う゛う゛!!!」 おお、こいつは面白い反応だ。 パクッ 「やべじぇえ゛え゛え゛え゛!!!」 中身が餡子だから当然甘いのだが、しつこくない甘さだ。衣もサクサクしてるし、はっきり言って旨いな。好評というのも頷ける。 パクッ (ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ……) 口の中からかすかに呻く音が聞こえてきた。なるほどなあ。踊り食いかあ。 いやあ、旨かった。次はありすにしようかな。 ありす天を食べようかと思った時、思いついたことがあったので衣をはがしてみた。 すると、中には目を一杯に見開き歯を食いしばっている、『苦悶の表情』という言葉を絵にしたらまさにこれだという顔をしているありすがいた。 ゆっくりに苦痛を与えると甘くなると言うが、これは相当甘くなってるだろう。ただでさえ赤ん坊は甘くて旨いと言うし。 では、いただきます。 ぱくっ 「ゆぎゃあああああ!!!」 意外とカスタードもいけるね。 パクッ 「ごんなのどがいはじゃないばああああ!!!」 ぱくっ (もっちょ、ゆっ、きゅり、ぎゃああ、ゆうっ、ゆっ……。) 奥歯ですり潰してやった。さて、最後はぱちゅりー。 パクッ 「……」 ……おや? 反応が無いぞ? 衣を取って、ぱちゅりーをつついてみても反応が無い。 店主が言っていた通り、体力の無いぱちゅりーは耐えきれずに死んでしまったのだろう。 パクッ これも美味しかった。ただ、他の2匹より甘みが幾分強いので、もしかしたら口に合わないと言う人もいるかもという感想だった。 「ごちそうさまでした。いやあ、予想以上にゆっくりは旨かったですよ」 「そうですか! 捕まえさえすればお家でも出来ますので、是非やってみてください。 調理法は普通の天麩羅と同じです。ゆっくりの繁殖法は分かりますか?」 「大丈夫です」 「それはよかった。毎月1回ぐらいの限定で目玉や飾り、もみあげの天麩羅なんかもお出し致しますので、宜しければまたお越しください」 「目玉……ですか?」 「はい、目玉です。目玉といっても寒天なので、食べても大丈夫ですよ。独特の触感がお客様にウケてます。他のも美味しいですよ」 「色んなのがあるんですねー。ありがとうございます、また来ますよ」 「ありがとうございましたー」 お金を払って店を出た。思ったより値段が良心的だったのでまた来ようと思う。 帰りに天麩羅粉まで買ってしまった。そのうち家でも試してみよう。 家に着いた。っと……? 窓が割れてる? 急いで鍵を開けて中へ入る。中には……いた。ゆっくりれいむとゆっくりまりさ、そしてその子供。 「ここはまりさたちがみつけたゆっくりぷれいすだよ! おじさんはでていってね!」 「でていっちぇね!」 「たべものをくれたらいてもいいよ!」 「おきゃねでもいいよ! いちまんえんだよ!」 ――どうやら、夕飯も天麩羅を食べることになりそうだ。 おしまい あとがきのようなもの お読み頂き、ありがとうございました。 前回書き忘れましたが、感想をくれた方、ありがとうございます。今後も精進していきたいです。 元ネタはアイスクリームの天麩羅です。一回だけ食べたことがありますが、まあアリかな、という感想でした。 それにしても、「天麩羅」とか「蕎麦」って字は旨そうです。書いてて食べたくなってきたので、明日食べに行きたいと思います。 あとがき追記 うpした後に天麩羅を食べに行ったんですが、行くつもりだった店が無くなっていました。ガッカリです。 さらに追記 何回か読んでいたら加筆できそうなところがあったので、一部加筆致しました。 あと、作者名も決めました。今後とも宜しくお願い致します。 今までに書いたもの お星様になってね! すぃーチキンレース by 天麩羅蕎麦
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1427.html
※このSSはfuku1450の続きというか、アナザーストーリーです。 ※作者の762さん、勝手に設定を使ってしまい、すいません。 その日、フラワーマスターの異名を持つ風見幽香は酷く機嫌が悪かった。 ゆっくりゆうかのせいである。 本当は違うのかもしれないが、ゆっくりゆうかのせいだと思わなければ、彼女はやっていられないのだ。 苛立ちを、近くにいるゆっくりを全て叩き潰す事で僅かに晴らしつつ、幽香はそこら辺をぶらぶらと散歩し続けた。 『ゆっくり後悔し続けてね!』 その数日前。 幽香は、好奇心に満ち溢れた顔で、道を急いでいた。 自分に似たゆっくりがおり、そのゆっくりは花畑を作っていると言われたためである。 花の妖怪である自分に似ているのだから、ゆっくりだとしても花畑を作り出すのは当然という思いから、幽香は道を急いでいた。 ――ここはこの花よりこっちが良いわ。それに、あそこはもっと肥料をあげないと。あなたが肥料になるかしら? ――あぁ、こんな所に肥料をやっちゃダメじゃないの。あなた、本気で花を育てる気があるのかしら? そんな、大量のダメ出しを夢想している幽香は、自分の口が笑いの形に歪んで来ているとは思いもしなかった。 このフラワーマスター、真性のドSである。 ともあれ、幽香は目的の花畑にたどり着いた。 「なにこれ……」 口だけが笑っていた幽香の表情が、驚愕のそれに変わった。 小さい。 いや、ゆっくりが育てると考えると、大きめなのだろう。そもそも、花畑の大小はその美しさに関連はないと幽香は考えている。 種類が4種類しかない。 これも、ゆっくりが育てている事とここの土壌の質を考えると、これが限界だろう。下手に手を加えては自然の美しさが損なわれてしまう。 全体的に肥料が少ない。 ここに肥料をぶちまけようとする者がいたら、幽香によるマスタースパークでチリと化すだろう。肥料はこのままで良い。 そして、美しい。 幽香が驚いてしまうほどに、多数の花が、最も美しく見える様に考え抜かれた配置で置かれている。 その真ん中にいるゆっくりゆうかを見て、幽香はより驚いた。 泥だらけになりながら、本当に楽しそうに、大事な宝物を扱う様に花を慎重に手入れしている。 ――似ているなんてもんじゃないわよ、あれ。 それは、ただ花と一緒に生きられる事だけで嬉しかった、数百年前の風見幽香そのものの姿だった。 幽香は、無言でその場を後にした。 ダメ出しも何もない。ここは、既に完成した花畑である。 確かにフラワーマスターとしての目から見るとまだアラはあるが、それでも、一個の完成しようとしている作品に手を入れる事はできなかった。 その一時間前。 幽香は、何となく面白くない顔で、道を急いでいた。 自分に似たゆっくりが作り続けている作品の果てを見届けるためである。 果てと言っても、マスタースパークをブチ込んで破壊しようという意味ではない。 むしろ、そんな事をしようとする相手に幽香自身のマスタースパークが5発ほど打ち込まれるだろう。 幽香は、一個のまだ荒削りな芸術作品の完成を見届けようとしているのである。 完成後のダメ出しならばいくらでもするつもりだ。自分が手本を見せても良い。何なら連れ帰っても良い。 太陽の畑を、まだ荒削りなその技術で整えようとして何度も失敗を繰り返し、涙を流しながらも何度もやり直すゆっくりゆうか。 そして、叱りつつも段々と成長を遂げていくゆうかを眺めて良い気分になる自分……幽香の脳裏に、そんな未来が現実感を持って迫っていた。 叱る想像をしたから機嫌が直ったのか、笑顔になって更に道を急ぐドS……もとい、幽香。 だから、幽香は途中で5つの饅頭とすれ違った事に気が付かなかった。いや、気が付けなかった。 その数分後。 幽香は、その場に立ち尽くしていた。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~♪」 「こっちもうめぇよ! ゆっくりできるよ~♪」 「ここはさいこうのゆっくりプレイスだね!」 「ちがうよ! でんせつのゆっくりぱらだいすだよ!」 「ゆっくりぱらだいす!?」 「しっているのかみょん!」 「ちちんぽ……ぜんぜんしらないちーんぽ!」 「じゃあなんでしってるみたいなこといったの? わからないよーwww」 饅頭どもの爆笑に包まれるそこを見た時、幽香は記憶違いだったかと思ってしまった。 それほどに様変わりしてしまった元芸術作品の片隅で、幽香はただ立ち尽くしていた。 ――そう。 4つあった花畑は、全てが色とりどりの薄汚い饅頭どもによって食い荒らされていた。 ゆっくりゆうかはいない。どのゆっくりがやったのかは分からないが、恐らくは殺されたのだろう。食われたのかもしれない。 ――あの子は、もういないのね。 「あれ、そういえばあのこたちとめーりんは?」 「しらなーい、まだいじめてるんじゃない?」 「あのこたちもめーりんいじめがすきだよねーw」 「ほんとーw ゆっくりするほうがたのしいのにねーw」 ――『ゆっくり』理解させてもらったわ。 「そういえば、ここをかってにせんりょうしてたゆうかはどこ?」 「ゆっくりこっちにすてたよ! あれ、いないよー?」 「あのこたちがつれてったよ、きっと、ゆっくりたべるんだよ!」 「れいむたちもたべたいなー」 「あとでもらいにいこうね! よにんだけなんだから、おねがいしたらすぐくれるよ!」 食べる。あの子を『四人組』が食べる。 太陽の畑へと連れ帰る予定だったあの子を。こいつらが、食べる。 ――お礼に『ゆっくり』させてあげるわ。永久にね。 幽香の頭のどこかから、ブチンと何かが切れる音が聞こえた。 同時刻、ゆっくりの群れ。 「あのこたちはすごくゆっくりしてるよね! こんなにいっぱいごはんあるところをしょうかいしてくれたんだもん!」 「だよね! ほんとにあのこたちはゆっくりしてるよ! おれいに、みんなでゆっくりしてあげようね!」 このゆっくりの群れは、今、心の底から幸せだった。 たくさんのごちそうがある。たくさんの仲間と一緒にいる。たくさんゆっくりできる。 それだけの状況が揃っていて、幸せじゃないゆっくりなんてゆっくりじゃない。そう思うほどに、幸せだった。 不意に、パチンと手を叩く音が響いた。 それと同時に、何か粉の様な物体が辺りを舞う。 日の光で美しく輝くそれは、ゆっくり達が初めて見るものだ。 「うわー、あれなにー?」 「ゆっくりしてるね! すごくきれいだよ!」 「ここはみんなのゆっくりプレイスだけど、ゆっくりできるこならたくさんゆっくりしていってね!」 キラキラと輝くそれを、ゆっくり達は幸せそうに眺めていた。 また、ぱちんと手を叩く音が響く。 影が、それに応じてゆっくりの群れの方へと近づいてくる。 ゆっくり達は、自分の願いが聞き入れられたと思い、嬉しくなって飛び跳ねた。 「ゆっくりしていっぐびゅぅ!?」 気の早いゆっくりがそれに頬をすり寄せようと近づいた……と思った直後、突然その場でぶるぶると震え出す。 異様なその状況に、群れのゆっくり達はざわざわと騒ぎながら近づいていった。 「どうしたの? ゆっくりしてよ!」 「どこかいたくしたの? ゆっくりすればなおるよ!」 「なんでなにもいわないの? おくちのなかいたくしたの……ゆびゃぁぁぁ!!! なにごれぇぇぇ!!!」 近づいたゆっくり達が、一斉にその場から飛び跳ねて逃げる。 そこに「あった」のは、もうゆっくりではなかった。 真ん中に杭が打ち込まれた様に、みっちりと何かが詰まっている何か。 仲間だったものの目から口から、皮を突き破ってどんどんと成長を遂げていくそれを見て、ゆっくり達の群れは恐慌に襲われた。 「ゆぎゃぁぁぁ!!!」 「なにごれぇぇぇ!!!」 「ごわいよぉぉぉ!!!」 それぞれに泣き叫ぶゆっくり達。 だが、真の恐怖はこれから始まるのである。 「ゆぎゅっ! ……ぺっぺっ! けむいよ! なにこれ!」 「くちゅん! ゆっくりできないよ! くちゅん!」 仲間だったそれは、今や完全に樹木と化している。 それの先端からぶわっと煙の様な何かが撒き散らされ、周囲は大量の花粉に覆われた。 「ゆぎゃぁぁぁ!!! いだい! いだいよぉがぶぅ!!!」 「なにごれ! なにごれぇぇぇぎゃらっば!!!」 「だずげで、ゆっぐりざぜでぇぇぇえひぃぃ!!!」 ばつんばつんと、音を立ててゆっくり達の体内から、柔らかい饅頭の皮を突き破って樹木が生えていく。 ゆっくり達の群れは、ほどなく樹木の群れへと生まれ変わったのである。 フウバイカ 「風媒花。どう? とてもゆっくりできるでしょう?」 ぽつりと、無表情に幽香は呟いた。 風媒花とは、その名の通り風を花粉の媒介として利用する種類の植物である。 虫を引き付ける必要がないために花びらがないものもあり、またあっても目立たず、香りもほとんどない。花と言えるかどうかも怪しい。 「本当、生物としても食物としても中途半端なこいつらにはお似合いの墓標ね」 その一言を残して、幽香はその場を後にした。 その一時間後。 幽香は、無表情に道を歩いていた。 その目は暗く光っており、下手に触れると消滅させられてしまうのではないかと思われるほどの恐ろしさに満ちている。 幽香は、時々立ち止まっては何かを探す様に周囲を眺めている。 本来ならば、どんな奥地に潜むものであろうと、草花ですぐに探し出す事が出来る。 だが、幽香はあえて自力で見つけ出そうとしていた。 頭に浮かぶのは、僅か数日前に見つけた、泥だらけで楽しそうに花の世話をする数百年前の自分の姿。 その頃は、自分はここまでの大妖怪ではなく、花との関係も友達のそれであった。 数百年前の幽香は、花の妖怪ではなく、花の世話をするのが好きなだけのただの妖怪未満の少女であった。 ならば、花を利用して探し出すなどできっこない。 幽香は、道の途中途中で見つけたしおれた草花を優しく癒してやりながら、無表情に道を歩き続けた。 「見つけた」 呟きが、風に溶けていく。 目の前には、やけに楽しそうな四匹のゆっくり達と、一匹の四角いゆっくり。 幽香は、誰が見ても分かるだろう作り笑顔で憎むべき饅頭どもの前に降り立った。 「こんにちは、ゆっくりしているかしら?」 「ゆっ! おばさんだれ?」 「ゆっくりできるひと? ゆっくりできないならさっさとどっかいってね!」 「ありすはとかいはなんだからさいこうにゆっくりしてるにきまってるでしょ!? おばさんばかなの?」 「むきゅーん! ばかなおばさんとはゆっくりできないよ! さっさとどっかいってね!」 「うーうー♪」 ただ笑顔で話しかけただけの幽香にここまでの暴言を吐く四匹のゆっくりと、何が楽しいのか分からないが、ただ笑っている四角いゆっくり。 だが、ここまでの腐れた根性の持ち主が良く生き延びられたものだと感心するのはまだ早いだろう。 もうすぐ、五匹は終わる。完膚なきまでに。 幽香は内心の感情を押し込めて、張り付いた様な笑顔のままで誘いをかけた。 「残念ね。もっとゆっくり出来る場所に案内しようと思ったのだけれど」 「ゆゆっ! ゆっくりできるところならいきたいよ! さっさとあんないしてね!」 「ゆっくりプレイスはみのがさないよ! さっさとつれていってね!」 「いなかものはむだにもったいぶるからきらいよ! でも、ゆっくりできるならいってあげなくもないわよ!」 「むきゅきゅん! ゆっくりできるところならぱちぇもたくさんしってるけど、おばさんのいってるとこはもっとゆっくりできるでしょうね!?」 「うーうー♪」 早く早くと急かすゆっくり四匹をなだめながら、幽香はゆっくりと歩き出した。 後ろからフラフラと追いかけてくるうーパックも、せっかくだから連れて行く。 その方向は、太陽の畑。 その二時間後。 「「「ここがゆっくりできるばしょなの!?」」」 「うー、ううー♪」 太陽の畑。 そこは、ひまわりが咲き誇る幽香の庭であり、故郷であり、砦でもある場所。 四匹のゆっくりにうーパックを含めた五匹は、珍しそうに辺りを眺めていた。 「ええ、あなたたちにはここで永遠にゆっくりしていただくわ」 そんなゆっくり達に、幽香はキラキラと光る何かを振り掛けた。 「ゆゆっ!? このきらきらしたのなに? きれー」 「あまくないけど、きれいでしあわせー」 「むきゅん! これはきんぱくね! きらきらしてきれいだわ!」 「きんぱくくらい、とかいはのアリスはしってるわ! とかいのマナーのひとつだわ! おばさんにしてはわかってるじゃない!」 「うーうーうー♪」 キラキラと光る何かを振りかけられて、うーパックは素直に喜び、四匹のゆっくり達も口調が悪いが嬉しそうにしている。 「本来ならばあなた達には絶対に寄生しない菌類なのだけど、特別にあなた達のために性質を変えさせてもらったわ」 嬉しいでしょう? と微笑む幽香に、ゆっくり達は大喜びで跳ね回りだした。 「ありがとう! じゃあ、おばさんにはもうようはないからゆっくりどっかいってね!」 「ゆっくりしたかったらべつのところでしてね! ここはまりさたちのゆっくりプレイスだよ!」 「ここはとかいはのアリスたちのゆっくりプレイスにしてあげるわ! ありがたくおもいながらどっかにきえなさい!」 「むきゅ、にんげんがいたらゆっくりできないから、さっさときえてね!」 「う、ううー?」 豹変する仲間についていけないのか、オロオロとしだすうーパック以外のゆっくり達が口々に出て行けと叫ぶのを聞いて、幽香は穏やかに頷いた。 「分かったわ、じゃあ、私はこれで失礼させてもらうわね。あなた達は、永久にそこでゆっくりしていきなさい」 じゃあね、と口の端のみに浮かべた笑顔を残して消える幽香。 「ゆぎゅっ、きえちゃったよ!?」 「にんげんはゆっくりしてないね!」 「むきゅ、これはてじなね、あのおばさんはマジシャンなんだわ」 「ま、まじしゃんくらいはとかいのじょうしきよね! もちろんアリスもおせわしてあげたわ! あのおばさんもアリスをそんけーしてるはずよ!」 ゆっくり達は目の前からいきなり消失した人間に少々面食らったが、ゆっくりできるのだから言う事はない。 お腹が空いたらそこら辺にあるひまわりをかじれば良いし、この辺りには危険な捕食種もいない様だ。 ゆっくり達は、思い思いにゆっくりし始めた。 うーパックはまだオロオロとしていたが、仲間がゆっくりしているのを見て、一緒にゆっくりしたくなったようで、大人しく近くに羽を休めた。 その二時間半後。 「「「ゆっくりしていってね!」」」 ゆっくり達は、ゆっくりするのにもう飽きたらしく、跳ね回って遊んでいた。 「ゆっくりたのしいねー!」 「すごくゆっくりできるよ! さすがまりさたちのゆっくりプレイスだね!」 「むきゅ、ゆっくりできるね。おばさんにごほんもってきてもらえたらもっとゆっくりできたんだけどね。きがきかないわねあのおばさん」 「パチェはほんだいすきなゆっくりだからね! とかいはのアリスは、ほんがなくてもゆっくりできるよ!」 「むきゅ、ただのうてんきなだけよ。アリスは」 「アリスはどっかのゆっくりと『ゆきずりのすっきり』ができたらいいんだもんね! ゆっくりしようよwww」 げらげらと笑い合うゆっくり達。 その様子をのんびりと見守っているうーパックは、ゆっくりしているためか、自分の体内に不思議なかゆみが出てきた事に気付けなかった。 それが、自分の生命を左右するとも知らずに。 その三時間後。 「うー……うー……うぐっ!」 「ゆぎゅ!?」 「ゆあっ!?」 「あぎゃ!?」 「むぎゅ!?」 びくんと、五匹同時にその場に立ち止まった。 異常な何かが、物体となって自分の内側からどんどんと膨れ上がっていく感触。 おぞましいその感覚に、五匹は身を震わせた。 「おばざん! まじじゃんのおばざん! なんがへんだよごれぇぇぇ!!!」 「なにごれ、ぎもぢわるいぃぃぃ! おばざん、ざっざどだずげでよぉぉぉ!!!」 「ぎもぢわるいぃぃぃ! ぎもぢわるいよぉぉぉ! どがいはになんでごどずるのぉぉぉ!!!」 「むぎゅ……きぼぢわどぅい……げほっ、エ”ホッ! ばぎぞうだよぉ……」 「うぐぐぐ……うー! うー! うー!!!」 いくらもがいても、自分の内側から膨れ上がってくる感触が押さえられない。 四匹は、泣き叫んで様々な者に助けを求めた。うーパックは、感触を少しでもどうにかしたくて、ただただ暴れまわっている。 「「「おばざん! おがーぢゃん! ……ぐずめーりん! ざっざどだずげろ!!!」」」 ゆっくりめーりん。ずっとバカにしていたそいつは、先ほど自分達の手で二度とゆっくり出来なくした。 だが、そんな事もアンコ脳には残っていないのか、ゆっくり達は延々と文句を喚き続ける。 「なにゆっぐりじでんのよぉぉぉ! ざっざどごっぢぎでだずげろばがめーりん!!!」 「おまえにやれるのはぞれだげなんだがら、まりざだぢのやぐにだであほめーりん!!!」 「ありずのがわりにいながもののおまえがどうにがじろまぬげめーりん!!!」 「むぎゅ……いらないごっていわれだぐながっだらざっざどだずげにごいぐずめーりん」 口々に怨嗟の声をあげるゆっくり達の目はにごり、もうどれだけの愛好者であってもこんなゆっくりだけは愛せないだろうと思えるほどに醜かった。 そんな中、症状の重かったうーパックが、凄まじい悲鳴を上げた。 「うぎゅあぁぁぁぁぁ!!!」 「「「ゆ……ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!!」」」 がくがくと震えるうーパックの口から目から、様々な場所から、黒色の植物の芽の様なものが次々にはみ出してくる。 そのおぞましい光景に、ゆっくり達は悲鳴を上げる。 だが、慌てて口を閉じ、目を硬くつぶった。 いつ、自分からもあの芽が伸びてくるかわからない。それを考えると、目を開ける事も口を開く事も恐ろしかった。 「無駄よ、それはあなた達の体を突き破って出てくる。口を閉じようが目を閉じようが結末は何も変わらない」 不意に、近くからニンゲンの声が聞こえてきた。 その声が先ほどのマジシャンだと分かったまりさは、即座に口を開いて抗議しだした。 「おばざん! ざっざどまりざだぢをだずげでよ! おばざんがごごにづれでぎだんだがら、おばざんがなんどがじろぉぉぉ!!!」 抗議と言っても、ゆっくりではダダをこねる程度の事しか出来ない。 幽香は、笑顔で一言だけ答えた。 「あなた達を助ける気なんて毛一本ほどもないわ」 更に何か言おうとしたまりさの口から、数本の芽が飛び出してくる。 まりさは、文句を言う気など消えうせ、芽が様々な場所から生えだそうとするその感触を耐える事しか出来なくなった。 四匹のゆっくり達は、完全に寄生植物の宿主と成り果てたのである。 トウチュウカソウ 「冬虫夏草。あなた達に植え付けたのは、そういう名前の植物よ」 あえぐゆっくり達に対して、無表情なままの幽香は、独り言を漏らす様に告げた。 冬虫夏草とは、虫や植物に寄生して成長するタイプの菌類……キノコやカビなどの一種……である。 普通の冬虫夏草ならば、ゆっくりに寄生する事はありえないし、宿主を殺してから成長するのだが、これは幽香の特製である。 このゆっくり達は、もう死ぬ事も動く事も出来ず、冬虫夏草の奇妙な茎部分としてこれからずっと生き続けるのだ。 「あなた達に潰された草花の気持ち、そこでゆっくり理解すると良いわ」 じゃあ、さよなら。一言だけ残して、幽香はその場を後にした。 「まっでぇぇぇ! ゆっぐりざぜでよぉぉぉ!!!」 「おば……おねえざんんん! まりざだげでもだずげでよぉぉぉ!!!」 「ありず、いながものでいいでずがらだずげでぇぇぇ! おねがいでずぅぅぅ!!!」 「むっぎゅー!!! ばぢぇじんじゃう! ほんもよめないごんなどごじゃじんじゃうぅぅぅ!!!」 「うぎゅ……うー……」 五匹がそれぞれに境遇を嘆くその姿を、ひまわりがあざ笑うかの様にゆらゆらと揺れながらただ眺めていた。 花を食べたゆっくりは花に仕置きされるという事で、幽香りんにいじめてもらいました。 このゆっくりは、うーパックも含めて永久に苦しみ続ける事でしょう。 by319 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2048.html
ここはとあるゆっくりプレイス。辺りは草原に囲まれ、近くを川が流れています。 ここに数日前、ゆっくりれいむとゆっくりまりさのつがいが辿り着きました。 彼女達は朽ちかけた木の根の作った穴に暮らしていましたが、その木は腐っていて今にも崩れてしまいそうです。 また、穴自体とても小さく、れいむとまりさ二匹でぎゅうぎゅうでした。 最初はそれでも良かったのですが、今はそうは行きません。れいむの頭には、小さな芽が出ているのです。 そう、家族が増えるのです。 「ゆゆ~、このおうちも、もうながくすめないよ…」 「うん、そうだね…」 「まりさ、あしたからはがんばってね!」 「おっけー、まりさにまかせて!」 巣の中にはたくさんの食料が集めてあります。この数日、二人で頑張って集めたのです。 これで数日は、餌を集めなくても、あることに集中できるでしょう。 「まりさがおうちのつくりかたをしってるなんて、れいむすごいうれしいよ!」 「れいむとあかちゃんのために、せかいいちゆっくりできるおうちをつくるよ!!」 翌朝。まりさは河原から石を運んでいます。植物の蔓を石に巻きつけ、端をしっかり噛んで引きずっているのです。 「ゆーっくり!ゆーーっくり!!」 今運んでいるのはゆっくりの半分もありそうな大きな石。皆さんも、自分のお腹の大きさまである石を運ぶのは大変でしょう。 それを、まりさは新しいお家のためを思い、一生懸命運んでいるのです。 「ゆゆっ!?まりさ、がんばりすぎだよ!れいむもてつだうからね!!」 それを見たれいむはまりさをたすけようと、石の後ろに回りこみます。後ろから押してあげれば、まりさが楽になると思ったのです。 「だめだよっ!!!」 「ゆっ!?どぼじでぞんなごどい゛う゛の゛お゛お゛お゛!?」 しかし、まりさは喜ぶどころかれいむに怒り出します。れいむはまりさを助けたいだけだったのに、怒られてしまって涙を流しています。 「ゆっ、れいむ、よくかんがえてね!れいむはおかあさんなんだよ!!れいむだけのからだじゃないんだよ!!」 「ゆっ、ゆぅ…」 「もしれいむがけがをして、あかちゃんがしんじゃったらどうするの!あかちゃんがかなしむよ!まりさだってかなしいよ!」 「まりさ…ごめん…」 「それに、まりさはこんなのぜんぜんたいへんじゃないよ!れいむががんばれー!っていってくれたら、まりさはひゃくにんりきだよ! だかられいむはゆっくりまりさをおうえんしててね!」 「ゆっ…わかったよ!れいむ、ゆっくりおうえんするよ!!」 それから、まりさは頑張って石を運びました。れいむはまりさを応援し、まりさの為に美味しい草や蟲を持っていってあげました。 「ゆふーーーっ!!んひーーーっ!!んふーーーっ!!」 夕方。まりさは頑張って石を運んだので、とっても疲れてしまいました。 汗まみれの身体で、白目を剥いて、舌を突き出し、激しく空気を吸い込んでいます。 それを見たれいむが慌てて近寄ります。 「ゆゆっ!!まりさ、ゆっくりしなさすぎだよ!!」 「ゆー、れいむの、ためなら、これくらい、あっと、いうまだよ!!」 「ちゃんとやすまないとだめだよっ!!まりさがたおれちゃったらどうするの!?あかちゃんたちがかわいそうだよ! それに、れいむだってとってもかなしいよ!!」 「ゆ…!ご、ごめんね、れいむ!」 「ゆっ、はんせいしてるならいいよ!それにれいむもおひるにおこられたし、おあいこだよ!」 「ゆ…れいむぅ~!」 二匹は赤ちゃんのため、れいむのために、静かに、身体を大きく動かさないように頬ずりをしました。 れいむの頭の芽が少し大きくなっています。 その夜、二匹は狭い木のお家の中で、寄り添って眠りました。 「ゆーっくり!ゆーっくり!」 翌朝、朝ごはんを食べてすぐに、まりさは新しいお家を作りにきました。河原から拾ってきた大きな石を、円形に並べているのです。 大きな石は十分に集めたので、もうまりさが河原まで大きな石を探しに行くことはありません。 まりさはれいむのために、一生懸命働きました。 お昼になると、まりさが頑張っているおかげで、円の3/4ほどがすでに出来上がっています。高さは一メートルほどでしょうか。 一方、れいむはその様子を見守りながら、日向ぼっこをしています。頭の芽はまた少し伸び、蔓と呼んでも良いくらいです。 「ゆ、まりさ!もうおひるだよ!すこしきゅうけいしようね!」 「わかったよ、ゆっくりやすむよ!!」 まりさはれいむの傍に寄り添いました。ずっとお日様に当たっていたれいむはポカポカ暖かく、まるでお日様のような匂いがします。 「ゆゆっ!?れいむ、あたまのつるがすこしふとくなってるよ!」 「ほっ、ほんとう!?」 「ほんとうだよ!こぶみたいになってるよ!」 まりさの言うとおり、れいむの頭の蔓には数箇所のふくらみが出来ています。ここのふくらみが大きくなり、やがて赤ちゃんになることを二匹は知っていました。 嬉しそうなれいむを見て、まりさもやる気が沸いてきました。 「れいむとあかちゃんのために、りっぱなおうちをつくるよ!!」 その日の夕方、石垣で作られた円はほぼ完成。大人ゆっくり一匹が通れるくらいの隙間を残していました。 ここは、れいむやまりさの玄関となるのです。 まりさは石の上によじ登り、慎重に石の隙間に木の枝や木の葉を渡していきます。そして、両端の上から石を置いて固定しました。 その上にいくつか石を置いてみましたが、崩れることはありません。これで玄関の完成です。 「ゆゆーーー!!すごいよまりさ!ひとりでここまでつくっちゃうなんて!!」 家の中ではれいむが大喜びしています。まだ屋根もなく、石は隙間だらけですが、それはこれから埋めるだけ。 家の広さはれいむとまりさ、たくさんの赤ちゃんが入ってもさらに余裕がありそうです。 「まっててね、れいむ!あとはかべとやねをつくるだけだよ!!」 「ゆゆ~!まりさといっしょになって、ほんとうによかったよ!!」 今日の作業はここまでにして、二匹は木の根元の家に戻ります。しかし、頭の中は新しいお家のことで一杯でした。 れいむの頭の蔓には、小さな実がプツプツと出来始めていました。 次の日も、朝からまりさはお家作りに励みます。昨日作った石の壁の隙間に、小石や砂、枯れ草を詰めていきます。 今日はれいむもお手伝い。お家の外で泥と藁を噛み砕き、唾液を混ぜて吐き出しています。 ゆっくりの中身は甘い餡子。その唾液は水あめのような成分が含まれています。 この成分と泥を混ぜ合わせ、藁をつなぎに使うことで、泥は乾くと強固な壁となるのです。 「くっちゃくっちゃ…ゆぺっ!」 「れいむもおてつだいできるよ!くっちゃくっちゃ…」 「ゆぺっ!!」 その頃、まりさは石で出来たの隙間に藁や草を詰めていました。口を使って器用に石の隙間に押し込んでいきます。 「ゆっ!ゆっ!ここまできたらあとすこしだよ!ゆっくりがんばるよ!」 しばらくして、石の隙間は全て埋まりました。後は泥で固めていくだけです。ここでれいむの声が聞こえました。 「まりさ!いわれたとおりにまぜおわったよ!」 「ゆっ!もうできたんだね!あとはそれをかべにぬりぬりすればおわりだよ!」 「ほんとう!?じゃあはやくおわらせておうちにはいろうね!あかちゃんももうすぐうまれそうだし、はじめてのゆっくりはおうちのなかでさせてあげたいよ!」 「ゆ、ゆゆっ?」 ふと、まりさの餡子の中を子供の頃の記憶がよぎります。 物知りなお母さんぱちゅりー、働き者のお父さんまりさがお家を作っていたときは、くっちゃくっちゃした泥を、藁や草で隙間を完全に塞いだ壁に塗っていました。それも一日ではなく、数日に分けてちょっとずつです。 確かお母さんぱちゅりーは、泥を少し塗って、乾いたらまた少し塗って、と言っていたような… 「ゆー、でもまりさはいそぐんだよ!あかちゃんがうまれるまえにおうちをつくりたいんだよ…」 まりさは誰とも無しに呟きます。そこに、れいむが入り口から顔を覗かせました。 「まりさ、ゆっくりしすぎだよ!あかちゃんもはやくおうちをみたがってるよ!」 みると、れいむの頭の蔓には目や口、リボンや帽子もしっかり出来た赤ちゃんゆっくりが実っています。 先端の一匹などは自分の力で動いていて、今にも蔓から離れることが出来そうです。地面に落ちて元気な産声を上げるときも近いでしょう。 そんな赤ちゃんを見て、まりさの懸念は吹き飛びました。 「ゆっくりりかいしたよ!まっててね、もうすぐできるからね!」 「うん、まりさがんばってね!」 そうと決まれば作業再開です。まりさは泥を口に含み、壁に吹き付けた後ほっぺですりすりしていきます。れいむは塗り込む泥が乾かないよう、口内で充分くっちゃくっちゃしたあとまりさに渡します。 内壁が終わったら今度は外壁です。 「おうちのかべには『れいむとまりさのおうち』ってかこうね!」 「きれいないしもかざりたいよ!きっとすごくゆっくりできるよ!」 「れいむのおかあさんといもうとたちをしょうたいしてあげたいよ!」 れいむはすっかりご機嫌です。そのせいか、赤ちゃんの小さな顔もとても嬉しそうです。それを見るだけでまりさの疲れは吹き飛ぶのでした。 ようやく、外壁が泥で埋め尽くされます。さあ、ここからが仕上げ。お家に屋根を取り付けるのです。 「ゆっしょ、ゆっしょ…」 まりさは持てるだけの枝や葉、藁を持って外壁を登ります。 「ゆっ!ゆっ!」 そして口を器用に使い、穴に木の枝を渡していきます。木の枝の両端は泥で外壁に埋め込みます。縦横十本も渡すと、しっかりと格子が出来ました。そこに葉っぱ、藁を被せたあと、ゆっくり泥を乗せていきます。一カ所に重みが集中しないよう、薄く、満遍なく。 その上にもう一度木の枝で格子を作り、さらに泥を被せ、葉っぱ、藁を乗せます。この葉っぱと藁はよく水を弾くので、屋根に最適なのです。 あたらしいお家も完成まで後一歩。大きな円柱型をした、泥の塊が出来上がりました。 まりさが屋根から下を見ると、れいむがどきどきしながら見守っています。それを見ながらまりさはゆっくりと屋根の上に乗っかりました。屋根が崩れてこないかのテストです。ゆっくりが乗った程度で崩れる屋根では、いずれ屋根が壊れて潰れてしまうでしょう。 「そろーり、そろーり…」 まりさはゆっくりと屋根の上を這います。れいむの見守る中、半分…残り少し…と距離を伸ばし…やがて、反対側の壁に足が着きました。 「ゆっ……ゆーーー!!!できたよ、れいむ!まりさたちのおうちだよ!!」 大喜びで壁を駆け下り、れいむの元に跳ね寄るまりさ。れいむは頭に赤ちゃんが居るので飛び跳ねたりして体で喜びを表現する事は出来ません。でも、その頬は感動の涙で光っています。 「ゆうぅ…ん!こんなすてきなおうちにすめるのはまりさのおかげだよ…!」 「なにいってるの!れいむのためだからがんばれたんだよ!」 「ま、まりさ…!ずうっとれいむとゆっくりしてねぇ…!」 れいむは頭の蔓をぶつけないよう、細心の注意を払ってお家に入りました。 一方まりさは古いお家に残った食べ物を全て新しいお家に運び込みます。れいむの作った苔のベッド、木の枝で作った椅子もです。 二匹の宝物、まりさがれいむにプレゼントした押し花や、二匹で見つけた綺麗に光る小石、赤ちゃんの為に作った綿の布団も持ち込みました。 全てを運び終えたときには、辺りは真っ暗になっていました。 「ゆゆ、まりさはばんごはんはすこしでいいよ。のこりはれいむがたべてね!」 「ゆっ!?だめだよ、ゆっくりするならまりさもいっしょだよ!?」 「そうじゃないよ、れいむがごはんをたべると、くきにえいようがいくんだよ!それはあかちゃんのさいしょのごはんになるんだよ!あかちゃんのためにたくさんごはんをたべてね!」 「ゆゆ!まりさすごい!ぱちゅりーみたいだよ!」 「ゆっへん!まりさのおかあさんぱちゅりーがおしえてくれたんだよ!」 こんな会話のあと、れいむは運んだ食料を食べ尽くしました。もちろん、赤ちゃんの為を思ってです。 「む~しゃむ~しゃ、しあわせ~♪れいむのあかちゃんもよろこんでるよ!」 そんなれいむを見つめる内に、今日の疲れが出たのかまりさは眠ってしまいました。 「ゆゆゆ!まりさ!まりさおきて!」 「ゆ…ゆゆっ?」 悲鳴のような声でまりさは目を覚ましました。れいむの身に何かあったのでしょうか?いえ、この状況でれいむが大声を出すとしたら理由は一つしかありません。 「れいむ!うまれそうなの!?」 「そうだよ!ふたりのあかちゃんだよ!!」 見ると、子供達は全員体を振り子のように揺らし、蔓から離れようとしています。 「ゆっ!あかちゃんがんばってね!いっしょにゆっくりしようね!」 れいむが声をかけると、赤ちゃんのうち一匹が一際大きく体を揺らしました。その反動で体が蔓から離れ、地面に落ちます。 両親の見守る中、しばらくもがいたあと、赤ちゃんは自分の足で立ち上がり… 「ゆっくいしていってね!!」 舌足らずな産声を上げました。とても元気なれいむです。 「ゆうーっ!すごくゆっくりしたあかちゃんだよ…!」 「すごいよ!れいむそっくりのびじんになるよ!!」 感動の涙を流す二匹。それに連動するように、次々赤ちゃん達が蔓から離れ、 「ゆっくいしちぇいっちぇね!」 「ゆっきゅりー!」 「ゆゆーん!」 思い思いの産声を上げます。れいむが四匹、まりさが三匹のかわいい赤ちゃん達です。 「あかちゃんたち!れいむがおかあさんだよ!ゆっくりしていってね!!」 「ゆっ、おかあしゃんだ!」 「おかあしゃん、うんでくれてありがとうね!」 お母さんになったれいむとお父さんになったまりさは、赤ちゃん達と頬をすりすりします。頬擦りはゆっくり達の愛情表現。それを繰り返すことで、家族の絆を深めるのです。 「おかあしゃん、れーみゅおにゃかがすいたよ!」 「ゆみゅっ!まりしゃもおなかしゅいてきちゃよ!」 「「「ゆっくいごはんちょーだい!!」」」 ひとしきりの頬擦りが終わると、赤ちゃん達は空腹を訴えます。すると、丁度良くお母さんれいむの頭から蔓が抜け落ちました。 「それがあかちゃんたちのごはんだよ!ゆっくりたべてね!」 お父さんまりさが言うと、赤ちゃん達は蔓に群がり小さな口でかじりつきます。 「ゅー!とてもゆっくいしたごはんだにぇ!」 「うっみぇ、めっちゃうみぇ!」 「「「「「むーちゃむーちゃ、しあわしぇ~♪」」」」」 瞬く間に蔓は食べ尽くされました。みんなお腹一杯そうにしています…が、おや?赤ちゃんまりさ三匹は物足りないような顔でお父さんまりさに跳ね寄ります。 「おとうしゃん!まりしゃ、まだおなかいっぱいにならないよ…」 「もっとごはんたべさせてね!」 「おとうしゃん、おねがい!」 どうやら赤ちゃんまりさ達はお腹一杯にならなかったようです。お家の中の食べ物は昨日、お母さんれいむが全て食べてしまいました。 「ゆっ、わかったよ!おそとにくささんをとりにいくから、ゆっくりまっててね!れいむ、あかちゃんをちゃんとみててね!」 「わかったよ、まりさ!はやくかえってきてね!あかちゃんたちとたくさんおはなししようね!」 お父さんまりさはお家の入り口から飛び出しました。 赤ちゃん達にはなにを食べさせてあげよう?野いちごは赤ちゃんにはまだ酸っぱいかもしれません。でも、ただの草ではおいしさに欠けるというものです。 「そうだ!おはなをあつめるよ!あかちゃんはまだちいさいから、おはなのみつでもあまあま~♪だよ!こんないいことおもいつくなんて、やっぱりまりさはかしこいよ!だって、ぱちゅりーからうまれたんだもん!」 自分の思いつきに顔を緩めながら、お父さんまりさはお家の近くのお花を片っ端から摘み始めました。 一方、お家の中ではお母さんれいむが赤ちゃんたちにお歌を歌っています。入り口からお父さんまりさの姿が見えるたび、お母さんれいむと赤ちゃん達はお父さんまりさに声援を送ります。 しかし、お歌が好きな赤ちゃんれいむに比べて元気一杯な赤ちゃんまりさ達はお歌ではもの足りず、お父さんまりさの持ち込んだ綺麗な石や、お母さんれいむの作った椅子に興味津々。早くもお母さんれいむの側を離れ、お家の中を跳ね回っています。 「ゆゆっ?かべからくさしゃんがはえてりゅよ?」 一匹の赤ちゃんまりさが、泥の壁から一本、ぴょこんと出ている藁に気付きました。 この藁、お父さんまりさが石の隙間を埋めるために使ったものです。完全に泥に塗りこめていなかったのでしょう。 「しゅごい!おうちのなかに、くさしゃんがはえてりゅよ!」 「これならおしょとにいかにゃくても、ごはんがたべられりゅね!」 赤ちゃんまりさ達は大はしゃぎ。さっそく一匹が飛びつきます。しかしその草は壁から抜けず、噛みついた赤ちゃんまりさは壁から宙ぶらりん状態になりました。口だけで体重を支えている状態です。 「おねえちゃんしゅごい!おしょらをとんでりゅみたい!」 「はやくくさしゃんをとってね!まりしゃたちでたべようね!」 お姉さんの赤ちゃんまりさも一生懸命体を振って、なんとか壁から草を引き抜こうとします。少しずつ動いてはいますが、なかなか引っこ抜けません。 「まりしゃたちもてちゅだうよ!」 「ゆゆー!」 見かねた妹まりさたちも抜けかけの藁に飛びつきます。一匹より三匹で引っ張れば抜けると思ったのです。 二匹分の重量が加わった瞬間、赤ちゃんまりさ達の体が大きく動きました。確かに藁は抜けました。しかし、一緒に泥の壁まで剥がれ落ちてきたのです。 お父さんまりさは自分のお母さんのやり方と違い、一度に沢山の泥を塗りつけました。その結果、壁の表面は乾いても内側はゆっくりの唾液や泥をこねるのに使った川の水でじっとり湿っていたのです。 もしもお父さんまりさがぱちゅりーと同じように泥を乾かしながら作業をしていれば、ここまで壁が大破することは無かったかもしれません。 湿った泥は互いにくっつきあい、壁から剥がれ落ちる面積を広げてしまいました。 「ゆみ゛ゅ゛っ゛!」 「びゅげぇ゛っ!」 「ぎゅ゛びっ!」 背中から床に倒れ込んだ赤ちゃんまりさ三姉妹。その上からは剥がれ落ちた壁が落下してきます。まだ体の柔らかい赤ちゃんがその衝撃に耐えられるはずもなく、小さなまりさ達は生まれてわずか十数分で潰れて死んでしまいました。 さらにその衝撃で、剥き出しになった石が崩れ落ちます。一カ所が崩れた途端、付近の支えを失った石の重量は脆い壁にかかります。その衝撃で再び内壁が剥げ落ち、さらに壁の石が崩れ、崩壊を広げます。 天井の縁を固定していた部分が壊れた途端、泥でできた重さたっぷりの天井が抜け、れいむ達の頭上に降りかかりました。赤ちゃんまりさが壁を壊してしまってから、おそらく三秒もかからなかったでしょう。 「これだけあつめればあかちゃんもよろこぶよ!」 一方こちらはお父さんまりさ。お口の中にはお花が一杯です。このお花はそのまま食べることもできますが、茎を千切ると甘い蜜が溢れてくるのです。お父さんまりさの頭の中は、愛しい伴侶とかわいい赤ちゃんに囲まれてゆっくりすることで一杯でした。 お家の方を向くと、入り口から赤ちゃんまりさ達が壁にぶら下がって遊んでいるのが見えます。 が、次の瞬間。 「ゆ?…ゆ゛あああああぁあ!!!?」 お父さんまりさは絶叫しました。せっかく作った自慢のお家が瓦礫の山に変わってしまいました。しかもその中には大切な奥さんと赤ちゃん達がいるのです。 お父さんまりさはお花を放り出し、急いでお家だったものに駆け寄りました。 「いやああああああ!!まりさのおうちがあああああ!!!れいむがああああ!!!」 お父さんまりさ、本日二度目の絶叫です。それもそのはず、大切な奥さんは瓦礫に埋もれて今にも潰れてしまいそうなのですから。お父さんまりさは必死にお母さんれいむに話しかけます。 「だいじょうぶれいむ!?いまたすけてあげるからね!」 「ゆ゛っ…まってまりさ…さきにあかちゃんをたすけてあげてね…!」 言われてまりさは赤ちゃんのことを思いだし、急いで瓦礫の中をのぞき込みます。 瓦礫の奥底で三つ並んだ黒帽子、それにこびりついた餡子と皮…赤ちゃんまりさは全滅でしょう。 瓦礫の隙間には二匹の赤ちゃんれいむが挟まれています。その隙間も一センチ程しかなく、赤ちゃんたちはピクリともしません。 もう一匹の赤ちゃんれいむは後頭部から顔面にかけて、木の枝が貫通していました。どう見ても手遅れです。 お父さんまりさが三度目の悲鳴を上げかけたそのとき、微かなうめき声が聞こえました。見ると、まだ小さな赤ちゃんれいむが瓦礫の隙間でがたがた震えています。 奇跡的に瓦礫に押しつぶされずにすんだのでしょうか、けれど頭上の壁の残骸は今にも崩れそうです。 「ゆゆっ!!あかちゃん、そこはあぶないからはやくおとうさんのところにきてね!」 急いで呼びかけるお父さんまりさ。しかし、赤ちゃんは白目を剥いたままガクガクと震えるばかり。それは恐怖から来る震えではなく、瀕死の痙攣でした。 「もっちょ…ゆっくい…ちたかっ…」 赤ちゃんれいむは断末魔を残し、うつ伏せに倒れ込みます。石にぶつかったのでしょうか、その後頭部は半分近くが失われていました。今度こそお父さんまりさの三度目の絶叫が響きました。 「まりさ、どうしたの!?はやくあかちゃんをたすけてね!」 瓦礫の下から声を上げるお母さんれいむ。彼女は瓦礫に押さえつけられ、周りを見ることができません。赤ちゃん達の惨状が目に入らないのです。 しかし、隠すわけにもいきません。お父さんまりさは苦い顔をしながら告げました。 「れいむ、あかちゃんはたすからなかったよ」 「ゆ゛っ!?まりさ、わらえないじょうだんはやめてね!ゆっくりできないよ!」 「ほんとうだよ!ぜんぶしんじゃったよ、ゆっくりりかいしてね!」 「どぼじでぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛お゛お゛ぉ゛お゛!!!?」 お母さんれいむにとってはお腹を(頭を?)痛めて産んだ赤ちゃんです。お父さんまりさと違って死んだものは死んだと割り切ることなどできません。 逆にお父さんまりさは死んだ赤ちゃん達にあっさりと見切りをつけていました。ゆっくりは死に易い生き物。事故で命を落とすことは日常茶飯事です。 ならばこそ、死んだ赤ちゃん達の分までゆっくりしなくてはと考えました。 「しんだものはしかたないよ…とにかくれいむのことをたすけるから、ゆっくりまっててね!」 「どに゛がぐじゃ゛な゛いでしょお゛お゛ぉ゛お!!?」 どうやらお母さんれいむはお父さんまりさの言い方が気に障ったようです。 お父さんまりさもお父さんまりさで、死んでしまった赤ちゃんにこだわり続けるお母さんれいむに少しむっとしました。 「このままだとれいむまでしんじゃうよ!いまはれいむをたすけるのがせんけつだよ!」 「だがら゛さぎに゛あ゛がぢゃん゛をだずげでっでい゛っでる゛でしょ!!?ばかな゛の゛!?じぬ゛の!!?」 「だから!あかちゃんはみんなしんじゃったよ!ゆっくりりかいしてね!」 「うぞだあ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛!!」 何を言ってもヒステリックに叫び続けるお母さんれいむ。次第にお父さんまりさのイライラも募ります。 「だいたい、れいむがちゃんとあかちゃんをみてなかったからだよ!まりさはれいむに、あかちゃんをみててね!っていったのに!」 「なにいってるの!?そもそも、まりさがこんなぼろいおうちをつくったせいだよ!!あかちゃんがひっぱっただけでこわれるおうちなんてきいたことないよ!!」 「ゆっ!!?ちがうよ、れいむがまりさをいそがせたからだよ!!もっとじかんをかければがんじょうないえになったんだよ!!」 「れいむのせいにしないでね、このくず!!!こんなごみみたいなおうちならつくらないほうがましだよ!!」 「ゆゆっ!!?」 だんだんお母さんれいむの口調がヒートアップしてきました。どうやらお母さんれいむ、ゲスの素質があったようです。 「まりさのおかあさんのほうほうなんてためさなければよかったよ!ふつうにつちをほればよかったよ!!どうせまりさのおやも、ごみみたいなおうちをつくってごみみたいにつぶれたんでしょ!!」 「ゆ゛っ!!?ちがうよ、まりさのおとうさんとおかあさんは、ふらんにたちむかっていったんだよ!」 「うそだよ!まりさはおやがごみみたいにつぶれたのがはずかしいからうそをついてるんだよ!どうせくずみたいなおやなんでしょ、まりさをみてればわかるよ!!」 「ばかなこといわないでね!さすがのまりさもおこるよ!!」 「ごみみたいなおやからうまれたくずまりさがなにえらそうにしてるの!?くずはさっさとれいむをたすけたらじさつして、くずしかうめないごみおやにあいにいけばいいんだよ!!」 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!だま゛れ゛え゛え゛え゛え゛!!!!!」 お父さんまりさの両親がふらんに殺されたというのは本当のことでした。まりさが子供の頃、体付きのふらん三匹が一家を襲ったのです。 まりさのお父さんのまりさは怖じ気付くことなく、勇敢にふらんに立ち向かいました。 お母さんのぱちゅりーは知略を駆使してまりさを逃がし、自らは囮となりました。 まりさは両親のお陰で体付きのふらん、しかも三匹から逃げおおせたのです。お父さんとお母さん、姉妹達は死んでしまいましたが、まりさはそんな両親を尊敬していました。その両親が目の前のゲスれいむに貶められている…お父さんまりさの視界が真っ赤に染まりました。 「ゆっくりしないでしねええええええ!!!!!!」 手近にあった、屋根の柱に使った枝。お父さんまりさはそれをくわえ、瓦礫の隙間からお母さんれいむの体に突き刺します。 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!ま゛り゛ざの゛ゆ゛っぐり゛ごろ゛しい゛い゛い゛!!!」 「しね!!しね!!まりさのおとうさんとおかあさんをばかにするれいむはいますぐしねぇぇえ!!!」 「だれ゛があ゛あ゛あ゛あ゛!!たずげでえ゛え゛え゛!!くずま゛り゛ざに゛ごろ゛ざれ゛る゛う゛う゛う゛!!!」 お父さんまりさの枝が、お母さんれいむの体を何回も突き刺していきます。その度にお母さんれいむの悲鳴があがりますが、それもだんだん小さくなり、やがてピクリとも動かなくなりました。 「きゃははははははははは!」 平原に高笑いが響きました。声を上げたのはお父さんまりさ。以前のお家が壊れた近くで新しく石を積み直しているようです。 「れーむもあかちゃんも、みーんながゆっくりできるおうちをつくるよ!きゃははははははハははハハ!!」 とても楽しそうに笑いながら、石を積み上げていくお父さんまりさ。その傍らには大事な家族が勢ぞろいしています。 なくなった両目の代わりに綺麗な石をはめ込んでいるお母さんれいむ。 後頭部をごっそり失った赤ちゃんれいむ。 前から後ろに木の枝が貫通している赤ちゃんれいむ。 ぺたんこになっている二匹の赤ちゃんれいむ。 皮の切れ端だけの赤ちゃんまりさ達。 風が吹くたびにゆらゆらと揺れ、みんながお家の完成を心待ちにしています。 「おっけー、まりサにまカせて!!きャはははははハハははは!!!」 尖った石で体が傷つこうとも、そのせいで致死量に近い餡子が流れ出そうとも、お父さんまりさは勢いを緩めません。 ひょっとしたら、そのことにも気づいていないのかもしれません。 お父さんまりさは餡子を失い過ぎて命を落とすまで、石を積み上げ続けました。 /**** 子供の頃は、蟻の巣を水攻めとか爆竹で爆破とか殺虫剤攻めとかしたもんです。 ゆっくりの巣でやったらどうなるんだろう… by 町長 /****今までに書いたもの fuku2120 電車.txt fuku2152 大岡裁き.txt fuku2447 ゆっくりセラピー.txt fuku2539 頭.txt このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/115.html
最近つくられたその施設は、甘い香りで満たされていた。 「ようこそ、おいでくださりました」 年配の男が一人、立ち上がって少女を迎え入れる。 その出迎えに、少女は恐縮気味にぺこりと頭を下げた。 「すいません、ご多忙の折に無理をいってしましまして」 「いえいえ、構いませんよ」 営業用の笑顔が男の唇に浮かぶ。 「では早速ですが、先日のお約束どおり、今日はうちの施設についてご案内いたしますね」 「お願いします」 簡潔な了承を得て、男は施設の奥へと少女を伴って歩き出した。 ついていこうとする少女。 ふと、真鍮のプレートが視界に入る。 『ゆっくり加工所』 そこが、少女の目的の場所だった。 「ここが、捕獲した『ゆっくり』の貯蔵庫です」 男が背の高い柵を指差していた。 柵の隙間には、押し付けられて膨らんだ顔が並ぶ。 「ゆゆゆ……」 少女が上から覗くと、中にひしめき合う「ゆっくり霊夢」と「ゆっくり魔理沙」の一群。三十匹はいるだろうか。 これは、最近幻想郷で見かけるようになった奇矯な生き物たち。 発生源や種のあらましもまったく不明だが、よく似た顔の実在人物とは関係がないことと、中身が餡子などでできていることだけは知られていた。 幻想郷の甘いものが好きな庶民にとっては、甘味を手の届きやすい値段に押し下げた恩人たちといっていい。 そのゆっくりたちは押し込められ、柔らかい体をひしゃげながら、視線の定まらない瞳で虚空を眺めていた。 「ゆっくり?」 が、その瞳に少女の姿が映し出されるなり、一斉に騒ぎ出す。 「おねーさん、ここからだして! おなかすいたよ! おうちかえる!」 ぽろぽろと涙をこぼしながら、柵をぎしぎしと揺らすゆっくりたち。 「ここにいるのは、全て捕獲したものですか?」 「ええ、お客さんの中には天然ものがいいという方もいるので」 少女と男の会話に、ゆっくりの必死の言葉を意に介した様子はない。 「私なんぞは味にうといものですから、繁殖したものと天然ものの違いなんてわからないのですがね」 ハハハと乾いた笑い声を上げる男。 少女も、お愛想の微笑で応じる。 男は冗談が通じたことに一応の満足。 「では、次はその繁殖場面へご案内します」 「はい」 二人、ゆっくりに背を向ける。 「ゆ! ゆっくりしていってよー!!!」 柵をびりびりと震わす声も、扉を閉めるとかすれて消えていった。 「繁殖の成功と効率化は、この事業が成り立つための最大の課題でした」 しみじみと男は呟く。 男と少女の二人が並んで立つのは、背の低い柵の前。 その中には、ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙が一匹づつ紐で結ばれて転がっている。 「最初に繁殖に成功したのは、この組み合わせです。ですが、問題がありまして」 言うなり、男は無造作に柵に手をつっこむ。 「ゆっ!?」 そのまま、二匹をわしづかみにするなり、手首をぶるぶると小刻みに振るわせ始める。 「ゆー!!! ゆー!!!」 揺すられるがまま、甲高い声を上げ始める二匹。 「ゆー、ゆー、ゆーっ!」 やがて、声がとろんと艶をはらんでいく。 男の手首がさらに激しく蠢動を重ねると、ゆっくりの口がだらしなく開かれ、赤みが濃い色彩を帯び始めた。 「ゆゆゆゆゆゆゆ」 目つきが熱を帯びたところで、男は手を止めた。 「ゆ? ……ゆっくりしていってー!!!」 切なげな声が男の手を追いかけるが、すでに男は少女と向き合っていた。 「こうやって発情させた後、二匹だけにして暗がりに放置しないと繁殖を始めないので、手間がかかる上、数を増やせないという欠点がありました」 「なるほど」 「ですが、ここで繁殖力旺盛なゆっくりアリスという新種を発見したのが事業の転機となりました。今日、ちょうどその繁殖予定日となっています」 男が部屋の奥に視線を投げると、その視線を受けた従業員らしき男が両手にゆっくりを二匹抱えて近づいてくる。 ゆっくり魔理沙より短めの金髪で、赤いヘアバンドが目を引く、珍しいゆっくりだった。 従業員は、柵の中へゆっくりアリスを放り投げる。 「ゆっくりしていってね!!!」 本能なのだろうか。 突如あらわれた同類を見るなり、ゆっくり魔理沙は大きな声でご挨拶。 だが、次の瞬間、表情が固まる。 「まっまっまっ、まりさ!!!」 弾けるように、二匹のゆっくりアリスは魔理沙の元へ。 「ゆ゛っく!?」 定番の台詞も、密着したアリスの頬に邪魔されて満足に動かない。 「ゆ゛っ……ゆ゛っゆゆっ!!!」 それでも懸命に台詞を口にしようと足掻くゆっくり魔理沙の上に、もう一匹のゆっくりアリスが容赦なくのしかかる。 もはや聞こえてくるのは、ゆっくりアリスの荒い息遣いのみ。 ほほをすりあわせて、よだれをこぼしていたアリスも、ぐいぐいと魔理沙を壁際に押さえつけて動けなくする。 壁に押し当てられた魔理沙は、苦しいのかようやく涙がぽろりとこぼれ、間近でその様子を見るはめになったゆっくり霊夢は柵の隅でガタガタと震えだす。 「い゛、い゛や゛あああ」 ゆっくりしていられない、ゆっくり魔理沙の悲鳴。 それも、アリスの声でかき消されていた。 「ゆっくりイってね!!!」 紅潮した声でそろって叫ぶアリスたち。 途端に、ぶるぶると小刻みに震えだした。 「あ、ちょうど繁殖がはじまりましたね」 こともなげに解説をはじめる男。 「もうすぐ、押さえつけられている方が白目を見開いて、裂けそうなほど口を開いた驚愕の表情で固まってしまいます。 そうなると、この個体は徐々に黒ずんで朽ちるのみですが、その頭から蔓のようなものがのび、その先に複数の同種が実ります。ゆっくりアリスの素晴らしい点は、そうなるとすぐに次にゆっくり霊夢で生殖行動を続行することですね」 手馴れた口調で説明を重ねるが、一向に少女の反応はない。 「あ、お嬢さんにはちょっと嫌な光景でしたか。申し訳ありません」 少女の肩が心持ち震えていることに気づいて、男は慌てて謝罪する。 気丈に、少女は微笑んだ。 「いえ、そのことではありません。それに、お願いしたのはこちらですから、お気遣いなく」 男は頭をかきつつ、少女の気遣いに痛み入る。その間にも「ゆっゆっ」と気ぜわしい声が聞こえていた。 「では、こちらはここで切り上げましょう。次は繁殖に成功して増産したゆっくりを使った飼育事業についてご案内します」 異存はない。 「んほおおおおおおおおおおおおお!」 切なげな絶叫が響く部屋を後にする二人だった。 男に案内されたのは、屋外の小屋だった。 いや、二階建ての家屋に等しい大きさでは小屋と言い難い。むき出し木の骨組みと、壁の代わりに金網で覆っただけの粗末なつくりは、小屋そのものではあったが。 男は、ここを厩舎と呼んだ。 「今日は曇り空なので何も覆っていませんが、この生き物は日差しに弱いので、晴天時は上にシートをかぶせています」 そんな説明を聞き流しながら少女が厩舎に近づくと、中から獣のうなり声が聞こえてきた。 「うー! うー!」 奇怪かつ陽気な声に近づいてみれば、ゆっくりの顔の両脇に蝙蝠の翼を生やした、謎の生き物がふわふわと飛んでいる。 「肉まん種の、ゆっくりれみりゃです。ご覧の通りある程度飛べるので、この厩舎は全体を金網で覆っているのですよ」 「ずいぶんと機嫌がよさそうですね」 少女の言葉のとおり、れみりゃは鼻歌が出そうなニコニコ顔で飛び回っている。 「さっき、餌のゆっくり霊夢を与えたからでしょう」 「ゆっくりを?」 「ええ、出荷間近なのでゆっくり霊夢を餌に与えています。味がよくなるとのことで。れみりゃは高級食材などで引く手あまたですから、十分元がとれるといわけです」 なるほど、少女はれみりゃの毛並みの良さの理由がなんとなくわかった。 「大切に育てられているのですね」 「ええ、肉の質を高めるために運動も欠かさずやっています」 男の言葉が合図だったかのように、突然れみりゃが動きを止めた。 れみりゃの視線の先には、れみりゃよりも一回り小さな金髪のゆっくりが一匹。異様さでは類を見ないゆっくりだった。 翼らしきものはあったが、宝石を並べたような代物。瞳は見開いた真紅。 「ゆっくりフランです。」 男にその名を紹介された異種は、れみりゃの周りを満面の笑みで飛び回る。 れみりゃもあどけない笑顔で向き合ってはしゃぎまわっていた。 傍目には、仲睦まじい姉妹かナニカのように見えるのだが。 しかし、それは突然だった。 「ゆっくりしね!!!」 フランの口から拳のようなものが伸び、れみりゃの顔面中央に突きささる。 その拳に顔面をへこまされたれみりゃは呆然と身動き一つしない。 拳がフランの口に戻ってから、ようやくぽろぽろぽろと、とめどなく流れる涙。 「……! ……!!」 口は嗚咽にゆがんで、動転を言葉にする術を知らぬよう。 「うー! うー!」 ただ一匹、フランのみが楽しげに笑っていた。 フランは、再びれみりゃの正面に向きなおる。 「うあー! うあー!」 泣きながら逃げ回るしかないれみりゃ。 「ご覧の通り、なぜかフラン種の方が強いので、フランにはれみりゃを追っかけ回す役をさせています。他にもれみりゃの誘導など、とても助かる存在ですよ」 「牧羊犬みたいなものですか」 少女の言葉に、我が意を得たりといいたげな男の微笑み。 「さて、お次は最後。ゆっくり霊夢、魔理沙からの餡子の回収方法です」 ついにその時がきた。 少女は腕に抱えるそれをぎゅうと抱きしめる。 遠めにもわかる、巨大なゆっくりが部屋の中央の檻に鎮座していた。 その体躯は、高さだけでも少女の背を越していた。 横幅も広く、その重量は計り知れない。 「あれが、巨大種。ゆっくりレティです」 ぷっくりと膨らんだその生物を、男は指差す。 「雑食性ではゆっくりユユコに及びませんが、許容量ではゆっくり一でしょう」 この巨体を前に、男の声は説得力に満ち溢れている。頷くしかない少女。 ゆっくりレティは眠っているのか、目を閉じてくうくうと静かな呼吸音を奏でていた。 遠目には可愛らしいのだが、巨体の異様さは拭いがたい。 「今、先ほどの食料を消化中なのでしょう。そろそろ、お腹が空いて起きる頃です。ちょっとお待ちください」 その言葉を残して、男が部屋から姿を消す。 しばらくして、男はゆっくり霊夢を一匹抱えて戻ってきた。 「おじさん、今日もゆっくりしようね!!!」 その言葉と、黙って抱えられている様子に、ゆっくり霊夢の男への信頼が伺える。 恐らく、その無垢な信頼感は繁殖から育てたゆえだろう。 推察を重ねる少女へ、男は静かに語りかけてきた。 「では始めますよ」 少女の頷きを確認するなり、レティの檻に放り投げられるゆっくり霊夢。 「ゆっ、ゆっくり!?」 遠ざかっていく、ゆっくり霊夢の驚愕の表情。 レティの体躯にあたり、ぽよんとはねて転がる。 同時にのっそりと動き出すレティ。 「ゆゆゆゆゆゆっくりしていってね!!!」 一目散に檻の入り口へ。 しかし。 「早く扉を開けてね!!! 」 すでに男によってロックされた後だった。 地面が揺れる。 ゆっくりレティが飛び跳ねながら近づいてきていた。 「おじさん! ここから出して! もっと、ゆっぐりじだい゛いいいい!!!」 「レティ種は鈍重なので扱いやすいのが利点となります」 扉越しの哀願も、男の穏やかな眼差しを動かすことはできない。 やがて、ゆっくり霊夢の上に差す巨大な影。 レティが、真後ろにいた。 ゆっくり霊夢の顔がくしゃくしゃに歪むのと同時に、開けっ放しのレティの口から分厚い舌がのびる。 霊夢は瞬時に舌に巻き取られた。 「ゆっくりした結果がこれだよ!!!」 悲しげな絶叫を残して、ぺろんとレティの口の中へ。 少女は見た。 飲み込もうとしたレティの口の中にうごめく、何匹ものゆっくりたちを。 レティのベロに抑えられて身動きもできず、滂沱の涙を流して視線を男に向けている。 「レティ種は、リスのように食べきれない分を頬に貯蔵して蓄える癖があるんです。最長で二週間は保存されていますね」 ゆっくりたちの視線に、男は興味を示さない。少女に自らの事業を説明することの方に傾注している。 「餡子の回収は、レティが熟睡した後に、後ろに穴をあけて搾り出します。定量を絞ったら、塞いでまたゆっくりを与えるのです。秘伝のタレを継ぎ足し、継ぎ足し使っている焼き鳥屋を思い浮かべてください」 言われてみれば、寝床に戻るレティの後頭部に隆起部分が。 「ちなみに、一度レティ種に消化させることで、甘味がまろやかになって質がよくなることと、混ざり合うことでの品質の均一化が図れます。生産者にとって大切なことは、量産性と高品質、そしてその維持です。このシステム構築は、私の ゆっくり業者としての矜持なのですよ」 誇らしげな男の言葉が少女の印象に強く残っていた。 職業人魂。 男の言葉を、少女は強く理解できる。 なぜなら、自分も人形という分野で職人的な魂に触れているからかもしらない。 そう。少女は、アリスだった。 可憐な彼女には場違いなその加工所を後にしたアリスは、夕焼けの空に時間の経過を知る。 「今日はずいぶんと大人しかったわね」 一息ついて、見学の間中、両手に抱えていたソレに今日初めて話しかける。 「それにしても、いいお話が聞けたわ、魔理沙」 アリスの腕の中でぶるぶる震えているその生き物は、正確には魔理沙ではない。 数ヶ月前、魔法の森で捕まえたゆっくり魔理沙だった。 「でも、今から震えてどうするの? 魔理沙をあそこに預けるのは、明日よ」 アリスの真顔に、冗談のニュアンスは欠片もない。 「い゛や゛あ……」 ゆっくり魔理沙からこぼれる弱弱しい悲鳴を聞きつけて、アリスは嬉しげな顔を紅潮させる。 「だって、私があんなに優しくしてあげているのに、あなたは逃げ出そうとするんですもの」 言いながら、息も荒くなる。 「だったら、あそこでゆっくりしていってもらうだけよ」 「い゛や゛だあああ! ゆ゛っぐり、じだくない、じだぐないよおおおお!」 「あらあら、ゆっくりにあるまじき言葉ね」 涙やらなにやらで醜く濁ったゆっくりの言葉を、恍惚の表情でまぜかえすアリス。 「どうしても嫌だというのなら、仕方ないわね。その代わり、わかっているかしら?」 「うん! つねったり、踏んだり、……しても、いいから!」 しゃくりあげながらのゆっくり魔理沙を、アリスは一転して慈母の笑みで見つめる。 ぎゅうと、愛情をこめて抱きしめつつ話しかける。 「そこは『いいんだぜ』にしなさい」 「わっ、わかったぜ!!!」 「ああ、本当に可愛い、魔理沙!」 宵闇が迫る夕べを背景に、一つに重なる影。 何やら、それなりに幸せそうな一人と一匹であった。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1013.html
※注意 現代ゆっくりモノ。 オリジナル設定あり。 ゆっくりまりさの中味が黒蜜になっていますが、俺設定です。 SS初挑戦です。 ブザーが鳴り響いた。 ゆっくりたちが目を覚ますと、そこは箱のなかだった。 「……ゆ!」 箱は天井低く、狭く、暗かった。そこに饅頭サイズの子ゆっくりばかりが8匹ほど入れられていた。 箱は横広の長方形だが、壁の一方が外に繋がっている。そこから見える景色は陽光きらめく新緑の森。 外に気づいたゆっくりたちが跳ね寄るが、箱と外界は鉄格子によって隔てられていた。 箱はゆっくりの牢屋だった。 「ここはどこ? せまくてゆっくりできないよ!」 「おそとはゆっくりできそうだよ! ゆっくりだしてね! おそとにだしてね!」 がちゃり、と音がして、鉄格子が自動的に外へと開いた。 「!? ――ゆ!」 「ゆ!?」 顔を見合わせるゆっくりたち。しかし警戒することはなく、自分達の行動が結果に繋がったのだと 結論付け、われ先にと光り輝く草原の中へと飛び出していった。 自分達の背後、先ほどまで入っていた箱牢が、静かに地面に沈みこんだ事に気づかないまま。 ※ 『さあ始まりました全国高校ロボットバトル・準決勝、第一試合です』 『バトルフィールドは森。舗装されていない草原と木立のステージです。二足歩行とローラーダッシュ が移動手段の西日暮里高校には若干不利な状況です』 屋内に作られた人工の森林。天井には青空が映し出され、太陽代わりの照明が森を明るく照らして いる。森のあちこちには状況を確認するための隠しカメラが設置されており、そのうちの数台が森の 地面から浮き上がったゆっくり牢から、ゆっくりの群れが飛び出すのを映し出した。 『各地点でゆっくりがリリースされました。数は合計で31体。れいむ種とまりさ種です。全て同じ親から生まれた姉妹となっております』 『子ゆっくりしかいないのにはなにか理由があるんですか?』 『親ゆっくりですとバレーボールほどにもなりますから、体当たりでロボットが破損してしまう可能性 があるわけですね。それは競技目的からすると望ましくない』 『なるほど。事故による不戦勝は好ましくないと』 『そういうことです。では解説席にお越しいただいている、親ゆっくりまりさ・れいむ両氏にコメントをいただきましょう』 解説の男はそういうと、足元から透明な箱に収まった二匹の親ゆっくり持ち上げ、解説席の上に置いた。 『やべでねぇぇっぇぇぇ!!』 『ゆっぐりじないでね! みんなにげで!』 だくだくと涙を流し、鼻を赤くして自らの子供らを案じている。 『おっほ! これは……』 『キモイですね~。では試合を見てみましょう。最初に群れを捉えるのはどちらになるのでしょうか!?』 ※ 「ゆっゆ~♪」 「ゆっ、ゆ~♪」 子ゆっくりの群れが楽しそうに移動している。 いずれもまりさ種で、心地よい自然のなかをきょろきょろしたり蝶を捕らえたり三つ葉をくわえたりしながら跳ねていた。 『おっとー。鼻歌を歌っている。のんきに鼻歌を歌っているのは? 6番グループのまりさ群ですか?』 『ひーふーみーよー・・・・・・10体? これは多いです』 『よくみると8番グループのまりさもいます。2グループ、2グループいます』 『これは大漁ですね。全体で31匹ですから、三分の一がここに集まっていることになります』 まりさの群れが移動しているのは茂みと茂みの間に不自然にあいた道だ。 獣道でもないのに歩きやすく道が出来ていることに何の疑問も感じないまま、群れは目的もなく進む。 やがてゆっくりたちは開けた草原に出た。 人間にしてみれば狭い、しかしゆっくりにとっては大草原ともいえる空間だ。しかもその中央、木漏れ日の直下には畑がある。 『6番8番がたどり着いたのは、畑。ゆっくりが好む野菜をゆっくりが好んで荒らす畑を模して配置しています』 『状況を把握しているわけがないですから、これは間違いなく喰いつ――、!? あぁっと、これは!!』 嬉々として畑に駆け寄るまりさの群れ。しかし、その畑の作物の間から見える赤白のリボン。 『ゆっくりれいむです! これは2番グループ総勢・・・6匹!』 『これは……』 畑で食事中のれいむ群が、来客に気づく。跳ね寄っていたまりさ達も先客の存在に気づき、歩みを遅めた。 畑のそばに揃って、まりさ種が言った。 「「「おじゃまかな!?」」」 れいむ種は畑を見回し、れいむ種同士で頷きあった。 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 にこやかな挨拶が取り交わされ、まりさ種は畑に入ることを許された。 大根を掘り出し、薩摩芋にかじりつき、白菜に包まりながら、暴食の宴が繰り広げられる。 「うっめ! めっちゃうっめ!」 「むーしゃむーしゃ」 「んっがぐっぐ」 「「「しあわせー!」」」 ゆっくりたちはこの世の春を謳歌した。畑の中央にある立て看板「にんげんのはたけ ゆっくりしたらしぬ」には見向きもしない。 『これは思ってもみない展開。この畑に過半数のゆっくりが集合してしまいました』 『総ゆっくり数31体ですからね。この16体が一つのチームに一網打尽にされると、その時点で逆転が不可能になります』 『そしてこの畑はF大付属のスタート地点近く――』 突然、畑近くの茂みが大きく動いた。 その音と動きにゆっくりたちが1匹また1匹と食事を止め、ついには全員が注目しだした。 茂みはなおも揺れ動き、その音を大きくする。まるで何かが隠れているかのよう。 ゆっくりたちは一向に姿を現さない何者かに痺れを切らし、茂みを囲むようにして待ち受ける。 その顔には友好的な笑みがうかんでいる。何かを示し合わせるように互いに視線で合図する。 ついに一匹のゆっくりが茂みから跳び出した。 「「「ゆっくり――・・・・・・」」」 サプライズをねらった子ゆっくりたちが、その闖入者を見上げた。 それは親ゆっくりよりも大きい、バランスボールほどもあろうかという・・・・・・ゆっくりゆゆこだった。 「「「――していかないでねええええぇぇぇ!!!」」」 瞬間、ゆっくりの春は終わりを告げた。 『キターーーー!!』 『F大付属工業高校のメカゆゆこがここで登場です! おおきい! でかい! いたしかたない!』 『下馬評ではゆっくりの警戒心を煽りすぎるとしてベスト16にも残れないと酷評されたメカゆゆこ! しかしふたを開けてみればどうでしょう! 並み居る強豪を押しのけての準決勝進出! ストイックなまでに削減された機能とこだわりぬいたゆっくりゆゆこへの偏愛! 幾重にも織り重ねられた狂気という名の錦が、この準決勝の舞台にも飾られてしまうのか!!?』 『にげでえぇぇぇあがじゃんんんんんんんん!!』 『だずげであげでよ"尾"お"お"おおおぉぉぉぉぉぉおぉ!!』 蜘蛛の子を散らしたよう――――。メカゆゆこを前にした子ゆっくり達の様は、そう表現すべきものだった。 統率もなく、策もなく、ただ泣き叫び散り散りに逃げ出すゆっくり。しかし1匹のれいむが取り残されていた。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆ・・・」 地面に仰向けに倒れ、笑顔のままひきつけを起こしている。 その目に光る涙の粒が流れ落ち、土に吸い込まれるかと思われた刹那、メカゆゆこの開きっぱなしの口から 飛び出した銀色の触手が逃げ遅れいむを貫き上げた。 逃げながら後方を窺っていたゆっくり達、あまりの光景に立ち止まる。 触手の先でいまだ痙攣するれいむ。その涙をにじませた微笑みが――、瞬きのうちにメカゆゆこの口内に消えた。 咀嚼の動作を行い、嚥下したような震え。 1匹を飲み込んだ機械仕掛けのゆゆこは、舌なめずるように銀色の触手を口から出した。 見せ付けるように突き出した触手の、餡子にまみれた先端が今、ゆっくりと三股に分かれる――。 「ひぎいいいいいいいいいいいいいいい!」 「い"やべでええぇえぇぇぇっぇぇぇぇぇぇ!!!」 「どうじでぞんなごどずるのおおおおおおおおおお!!」 『これは酷い! ノリノリの精神攻撃! あぁーと! メカゆゆこ動いた。回転しながら高速で移動し、 ゆっくりたちを取り囲む軌道! 徐々に輪を縮めてゆっくりの群れをひとつ所に集めてゆく!! ゆっくりは恐慌状態です!!』 『メカゆゆこの触手ですが、医療用のロボットアームを改造したもので自在に動きます。 現在メカゆゆこが見せている武装はこの触手1本。あとは転がりによる体当たり攻撃のみです。美しいまでのシンプルさ!』 『なんでごんだごどずるのおおおおおおおおおお!!! ・・・・・・まりざだずげであげでっ!』 『ゆっぐううううううううううううううううっ!!』 透明箱の中、おもいっきり膨らんで箱を破ろうとする親まりさ。息を止め顔を赤くし、箱の中で体をほぼ四角形にしながらがんばる。 しかし解説役ふたりが動じることなく実況を続けている事が、箱の信頼性をあらわしていた。 メカゆゆこの包囲旋回によって逃げ場を失ったゆっくりたち。身を寄せ合うようにしてかたまり、 恐怖に身を震わせながら泣き喚いている。その目の前で、メカゆゆこが止まった。土に汚れた顔面は、 ゆっくりたちには目元に影が浮かんだ凶悪な表情に映る。 「ひいいいぃぃぃぃっぃいいい!!」 円陣を組むように集まったゆっくりの群れから、数匹が先んじて離れた。 「まりさはおいしくないんだぜ!」 「そこのれんちゅうとよろしくやってるといいんだぜ!!」 「ゆっくりしね!」 仲間を見捨てたのはいずれもまりさ種。珍しくもない行動だ。 しかしメカゆゆこは見逃さない。閃光となって駆け抜けた触手が、逃げ出そうとした3匹のまりさを滑らかに襲った。 「けぺっ!」「ぉぶろっ!」「ゆっぐ……! やめえええぇぇぇ!」 細身の触手はゆっくりの形状を保ったまま貫いた。 触手はそのまま地面に先端を突き刺し、ずぶずぶとめり込んでいく。 触手のまちまちな位置に刺さっていたまりさたちは地面に押され、一列に並んだ。 そうしてから触手を抜いたメカゆゆこ。まりさ3体を並べるようにして口にくわえると、一気に触手を引き抜いた。 「だずっ、だずげっ・・・ぺええぇ!!」 「おがじゃ! おがぢゃあああぁぁぁぁん!」 「やめえぇ! かえりゅ! かえりゅぅぅぅぅぅぅ!!!」 べそをかき、絶望に塗れ、裏切った仲間達に命乞いをしながら、傷口から黒蜜を垂れ流すまりさ。 そのまりさたちが、ゆっくりとひしゃげてゆく。苦悶、懺悔、後悔。中身と共に流れ出すさまざまな感情。 その全てを絞り抜かれ、まりさたちは絶命した。触手の先が残骸を口内に招きいれ、念入りな咀嚼が始まる。 それが終わると、そこには口元を黒蜜で濡らしたメカゆゆこが残った。 「…………」 子ゆっくりたちは声もない。 あるものは髪と瞳を白く変色させて放心し、 またあるものは涙にまみれた顔をこれ以上ないほどゆがめたまま自身の舌を喉に詰まらせて窒息しつつある。 諦観にくすんだ微笑でその場の草を食む者や、 なぜかヘブン状態に至った者。 違いはあれど、皆逃走への意志を失っていた。 それを確認すると、メカゆゆこは一際おおきく口を開けた。 そのときである。 鉄のかたまりが、横合いからメカゆゆこを突き飛ばした。 『こ、これはーーーー!!』 『これ以上ないタイミングで! そして瀬戸際のタイミングで! かけつけました西日暮里高校、間に合ったーっ!』 鉄塊。 それは無骨なロボットだった。左手にドリル、右手にはサブマシンガン。 足短く、横広で頭部がない。骨格をむき出しにしたような外観はお世辞にもスマートとは言い難い。 その機体の上半身が、ゆっくりと子ゆっくり達の群れを向く。 ほぼむき出しのコックピット。 そこに鎮座しているのは一匹の子ゆっくりれいむだった。 「ゆっくりあんしんしてね!!」 その力強い言葉に、ゆっくり達の瞳に希望が点った。 ゆっくりをのせた機体『テイクイットEZ8』は向き直る。 いましがた突き飛ばした敵、メカゆゆこへ。 いまだ転がり続けている球体は木にぶつかって止まった。逆さまのメカゆゆこ。その両眼が鈍い輝きをもってEZ8を捉えた――。 後編に続く このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2208.html
妄想乙な内容です コケコッコー ゆっくりしていってね!! 「あ?……あー、あさか」 にわとりとゆっくりの鳴き声に目を覚ます。 まだ日が出たばっかりだが田舎なんてこんなもんだ。都会では日が沈んでも起きてるらしいが。 顔を水で洗うといつものように朝の作業。窓を開けて畑の見回り。 そして裏庭の鶏小屋に向かう。 コケーッ 「お前は朝から元気だね」 鶏にそうぼやくと小屋の中を覗く。そこには卵が一つ。今日の朝食決定。 四羽いるんだからもう少し生んでほしいものだが、餌をやらずに卵だけを失敬してる身なのでここは潔く引く。 そしてもう一つの小屋に向かう。 「ゆ~、ゆっくりしていってね~」 調子っぱずれの歌声が聞こえる小屋の屋根をはずす、そこにはゆっくりのつがいが入っていた。 れいむ種とまりさ種のありがちなやつだ。 こいつらは飼っているゆっくりだ。まあ飼っているとはいっても餌はやってない。 その辺にいたゆっくりを捕まえてこの柵で囲った庭に放りこんだだけのものだ。 餌は庭の雑草。草取りしないですむので便利だ。そしてなにより生まれたゆっくりはお菓子になる。 まぁ分かりやすくいうなら家畜である。 そして予想通りれいむの頭には植物が生えており、七匹の赤ちゃんゆっくりがくっついていた。 「ゆっ!ゆっくりできないじじいはたべものおいてしんでね!!」 「あっちいってね!!そしてしんでね!!」 「はいはい」 ぶちぶち 「あがぢゃんがああああああ!!!!!」 「どうぢでごんだごどずづのおおおおおお!!!!!」 文句をいうゆっくりを無視してくっついている赤ゆっくりをちぎる。 全部手のひらに収まるくらいでちぎりやすい。そしてさっさとはずした屋根を元に戻す。 屋根を取り外しできるのは簡単にゆっくりから赤ゆっくりを奪えるため。こいつらは上からの攻撃に弱いのだ。 まあやろうと思えば横からでも簡単だが。 回収したゆっくりと卵を持って俺は家の中に戻っていった。 「うーし、今日の予定は…肥料作りだったな」 朝食を食べて簡単に畑と田の手入れをした後、近くの広場に移動する。 そこでは大量のゆっくりが檻に入れられていた。周りでは他の大人達が作業の準備をしている。 俺はいとこの姿を探す。いた。 「おっさん手伝いに来たぞ」 「ん?ああ、来たか。早速だが作業を始めるから木箱を運んでくれ」 「おいーす」 こいつはいとこのおっさん。実際年上なのと見た目がふけてるのでおっさんと呼んでいる。 ちなみに妻帯者だ。それなりに村では発言力があり、結構世話になってる。 まぁこの話の中ではあんまり関係ない設定だが ある程度作業場が整うと早速肥料作りが始まった。 「せまいよ!!ここからだしてね!!」 「れいむをだしてね!!ゆっくりできないよ!!」 「ここからだしてくれるならかんしゃしないこともないわよ!!」 やり方を説明すると、まずこの檻の中で騒ぐゆっくりが材料。 こいつらは近くの山にいるやつを村の子供と猟師が三日くらいかけて集めてきたやつだ。 下の方にいるやつは飢えて死に掛かってるが肥料には使えるので問題ない。 まずこいつらの飾りをはずす。これは断熱にすぐれた布なので冬にそなえ取っておく 「でいぶのおでぃぼんがえじでね!!!!」 「ばでぃざのぼうじがああああ!!!」 ハンマーで一撃でつぶす。 「ぶぎゃ!」 「やめでる!!」 そして餡子の塊を木箱に入れる。このとき藁や牛糞などを混ぜ込み、運びやすい木箱に入れて保存する。 しばらく置いとけば立派な肥料の完成。実に簡単で、しかも作物がよく育つ。 ただ、全ての畑に撒くのに必要な量を作るのに、村中総出でやって半日くらいはかかるのが難点ではある。 まぁ冬に飢えるよりましだ。 「やめてね!!ゆっくりできないよ!!」 「つぶさないでね!!みんなでゆっくりしようよ!!」 「れいむはどうなってもいいからまりさはたすけてね!!」 その光景を見た檻の中のゆっくりが騒いでいる。うるさいがこっちは作業中、黙らせるのもめんどくさい。 しばらくやってると日が上にまで昇り、昼の時間。 俺はおっさんの家族とともにその辺に座って昼食をいただく。しばらく昼食休憩だ。 のんびり談笑しながら食事をするがその間も檻の中のゆっくり達は騒いでいる。 「れいむにそのたべものよこしてね!!ついでにここからだしてね!!」 「ざっざどよごぜぐぞじじいいいいい!!!!!」 「とかいはなありすにたべものをよこさないなんてとんだいなかものね!!」 ここは田舎です。関係ないがその田舎にすんでるありすはどう考えても都会派ではないよなぁ。 しばしの休憩の後また作業を開始。当たり一帯に叫び声が響くが誰も気にせずもくもくと作業する つぶし続けて日がやや傾いた頃、全部のゆっくりをつぶし終える。 「おつかれさま」 「あーくたびれた。饅頭ある?」 「はい饅頭。お茶もあるわよ」 「お、感謝感謝」 おっさんの奥さんから饅頭をもらう。もちろんゆっくりだ。 ゆっくりの飾りと邪魔な髪の毛をとって縦に紐で縛ったものが渡された。 ゆっくりは苦痛を受けることで甘くおいしくなる。そのために変形する程度にきつく縛ってある。 一応逃げるのを防ぐ意味合いもあるが、飾りも髪もないので逃げても仲間につまはじきされるのがオチだろう。 「ゆぎぎぎ…」 髪の毛がないので元々の種族すら分からないが、まぁどうでもいい話だ。うまいなら問題ない。 ゆっくりの紐をはずすと早速一口。 「うめぇ」 適度に苦痛を与えていたみたいで結構うまい。これだからゆっくりはやめられん。 「まだまだたくさんあるからたくさん食べていいわよ」 「じゃあ遠慮なく」 俺はこの後さらに三匹食べた。労働の後の一服とはいいもんだ。 夕方、空が赤く染まる頃。 畑の周りの罠を点検する。 ゆっくりがかかってることがあるため大体日が沈むころに確認するのだ。 仕掛けてあるのは落とし穴とゆっくり用トラバサミ。 ゆっくり用トラバサミはそれほどバネが強くなく刃も鋭くない、人間が踏んでも痛いだけの代物だ。 しかしゆっくりには十分な武器、手がないゆっくりにはバネが弱くても解除できないのだ。 こういった対ゆっくり用トラップを仕掛ける人は多い。 単純にゆっくりが畑を荒らさないようにするのはもちろん、ゆっくりそのものを売って副収入にするからだ。 また、畑を荒らすゆっくりは大抵ゆっくりの中でも性格が悪いので、そういったやからの駆除にも役立つ。 「いだいいいいいいい!!!!!はやぐだずげろおおおお!!!」 「はずしかたがわからないよー」 「まりさがんばってね!!れいむもがんばるからね!!」 早速かかってた。罠にかかったゆっくりまりさと、その周りにいるれいむとちぇんの三匹。 叫び声からまりさはゲスかもしれん。 「お前らなにやってるんだ?」 「ゆゆ!!にんげんさんがきたよ!!」 「にげるんだね、わかるよ!!」 「どうじでにげるんだぜ!!さっさとばりざざまをだずげるんだぜ!!」 あっという間に逃げるれいむとちぇん。こいつらの判断は正しい。 圧倒的に自分より強いやつが現れたらすぐに逃げるのは野生種の基本だ。 さて、ゆっくりに逃げられたまりさはどうするのかな 「じじい!!ばりざざまをだずげろ!!」 どうやら自分の立場を分かっていないらしい。やれやれ。 俺はまりさを罠からはずすと帽子をとって籠の中に放り込む。 解放しろだの帽子かえせだのおいしいものよこせだの叫ぶまりさを無視して罠の点検。 これ以外にかかっているゆっくりはいなかった。まぁそんなしょっちゅうゆっくりも来るわけではない。 ちなみにこのまりさは適当に痛めつけて保存箱に入れた。 夜 「ふー、満足満足」 ガタガタ おっさんの家に行って晩飯をたらふく食って家に帰ってきた俺。 お前もそろそろ嫁をもらったらどうだと言われてどうしたもんかなと考える。 田舎は結婚するのが当たり前だ。しかもいろんな村とつながりがあるから相手にも困らない。 「あー、でもなー」 しかしそういったことにいまいち乗り気になれない俺。 「ゆうううう!たべものがみつからないよ!!!」 「どうしてえええ!!??」 「おにゃかちゅいたよー」 いつものように寝室に行くとゆっくりのつがいがいた。ついでに子供もいる。 ありきたりなれいむとまりさだ。遭遇率が高いのは単純にこいつらが一番多いのだ。 たぶん俺が出かけている間に潜入して人間の食べ物を奪うつもりだったに違いない。 しかしそういったゆっくりのありがちな行動の対策など当に出来ている。 食べ物関係は全部上の方の棚だし、大量に収穫した野菜は鍵つきの倉の中にしっかり保管しているのだ。 地面に近いところにあるのはゆっくりの飾りや人間用の生活用品ばっかりである。 「しかたないからゆっくりたべものをもってこようね!」 「ゆうう…さすがにまりさもあきらめるよ…」 「れいみゅたちはここでゆっくりしてるね!」 「おい」 俺が声をかけると飛び上がって驚くゆっくり一家。今まで気づかなかったのだろう。 本当に野生種かと疑問に思ってしまう。 「ゆっ!!ここはまりさがみつけたいえだよ!!ゆっくりでていってね!!」 「そうだよ!!ついでにたべものもよういしてね!!」 「でていっちぇね!!」 「…あー」 相手にするのめんどくさいし適当に追い返そう。 俺はゆっくり一家をつかむと縁側から外に投げ捨てた。 『ゆべぇ!!』 見事につぶれた。 「なにするの!!もうおこったよ!!こうかいしながらゆっくりしんでね!!」 「まりさがんばってね!!」 「がんばっちぇね!!」 ふぅ、やっぱり痛めつけないとだめか。 こっちに向かって体当たりしてくるまりさを容赦なく蹴り上げる。そして落ちてきたところをもう一発。 「ばぎらべっ!!!」 見事に決まった。 べりょんべりょんと跳ねて家族の所に転がるまりさ。はやくも虫の息といった感じだ。 「まりざあああああ!!!」 「どうちでごんだごどずづのおおお!!!」 攻撃してきたから反撃しただけですがなにか? 「これ以上痛い目にあいたくなかったらさっさと山に帰れ。そして二度とここに来るな」 「ゆぎ!!」 ここで一発脅しておく。そうすれば二度とこいつらもこないだろう。たぶん。 「だめだよ!!よるはれみりゃがでるんだよ!!ゆっくりできないよ!!」 「ここでゆっきゅりさせてね!!」 村の適当な家を占領するつもりだったのか…なんというだめ饅頭。 「あー、面倒な」 ゆっくり一家どもを裏庭に放りこむ。例のゆっくりを飼ってる庭だ。そこなら少なくとも野獣に襲われはしない。 たまにれみりゃが入り込んで食われてることはあるけど。 「いたいよ!!やめてね!!」 「しったことか。お前らはそこでずっとゆっくりしてろ」 「ゆっくりするからおかしよこしてね!!」 「お前らの死体ならやるが?」 「ごめんなさい!あやまるからゆるしてね!!」 こぶしをぽきぽき鳴らすとあっさり謝るれいむ。最初からこんなだと楽なんだが。 そんなこんなで俺の庭にはゆっくりが増えることになった。 「まりさしっかりしてね!!」 「しっかりしちぇね!!」 「ゆううううう…」 「…」 ふむ、家族か…。 やっぱ俺を気遣う嫁はほしいかもしれん。ちらりとそんなことを思う。さすがにアホはいらんが とりあえずうるさいゆっくりどもをそれぞれ一発ずつ殴ると俺は寝ることにした。 ~~~~~~ 田舎にゆっくりがいたらこんな感じかなぁと妄想してみた。 一応ゆっくりメインになるように書いてます。つーか日常会話が書けん 別に書いてるSSのネタがかぶったのに少し困ってたりします。途中まで書いたやつどうするかな… しかも最近ちょっと書いてなかったせいか実力が落ちてきてる気がする…元々そんな無いけど 過去作品 巨大(ry 餌やり ゆっくり対策 巨大まりさ襲来 ゆっくり埋め どすまりさの失敗 原点 ゆっくり駆除ありす まきぞえ なぐる このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/5111.html
多分既出ネタです、すみません それに加えて色々と俺設定が入ってます。 俺はゆっくりの虐待が好きだ 三度の飯よりも虐待が好きだ しかし、本当に虐待ばかりでは、生計を立てられない そこで、俺は考え付いた 趣味と実益を兼ねるのだ 「ゆっくり菓子職人」 今日も俺のゆっくり菓子製作が始まる。 ゆっくりはそもそもお菓子じゃないか、と思いの貴方、それは間違いである。 ゆっくりが恐怖・絶望を与えると甘くなるのは周知の事実でしょう。 これを利用することによって、至高のお菓子を作り上げることが俺の使命。 さあ思う存分虐待を…いや、菓子作りを始めることとしましょうか。 まず用意するゆっくり。これは野生のなるべく元気なゆっくりを選びましょう。 頭がお幸せで、世界は自分を中心に回っていると思っているような奴を。 早速、1匹のゆっくりれいむを捕まえてきました。 おお、頭にゆっくりが生っています!これは貴重な料理素材です。 赤ゆっくりは味に変化を持たせることができるので、とても重宝します。 しかし、親子でないと味が反発しあうことがあるんですねー。 今回捕まえたゆっくりはちょうど出産直前ですので、最適なわけです。料理のし甲斐がありますね! とりあえず、生まれてきた赤ゆっくりには、発情させたゆっくりありすの出す透明な粘液を塗って放置しておきます。 こうすることで、表皮が柔らかくしておくのです。 さて、親のゆっくりれいむですが、今の状態では髪の毛やリボンが邪魔です。 そこで、まずリボンを取り外しておきます。このリボンは後で使うので取っておきます。 髪は雑味の原因となるので、火で炙って、全て燃やしてしまいます。 こうして見事にハゲゆっくりが出来上がります。 あ、そうでした。今後の調理がしやすいように、あんよもしっかりと焼いておきます。 こうしておけば調理中にゆっくりがテーブルから落ちて潰れる心配がありませんね。 こうしてゆっくりを安定させたら、ゆっくりありすを取り出します。 もちろん発情した状態のありすです。 これを置いておくと、勝手に行為を始めてくれるので、しばらく待ちます。 おっとすっきりしてしまいそうでした。危ない危ない。 すっきりしてしまうと台無しです。ありすはもう使わないので捨てておきましょう。あ、食べますか? 適度にホクホクになったハゲゆっくり。 つぎはいよいよ赤ゆっくりを使います。 赤ゆっくりは丹念に潰していきます。これには力の調節が必要です。ゆっくりと、握るように潰していきます。 一気に力を入れると形が崩れてしまうので、力を徐々に入れていき、餡子をひねり出すのです。 握りつぶした餡子をハゲゆっくりに塗ります。丁寧に、目と口の周りにも、擦りこむように塗っていきます。 餡子は少し残しておいてください。これも後で使います。 完全に塗り終わったら、上から小麦粉を練って作った生地を被せて、形を整えます。これで元通り。 さらに、れいむの髪型を、赤ゆっくりの餡子を使って再現します。そして、取っておいたリボンをつけます。 これでとりあえず出来上がりました。 しかし、まだお出しするわけにはいかないんです。 最後の仕上げ、今回調理したれいむのお相手のまりさです。 こちらはあんよを焼いてあるだけなので、割と正常です。 これらを一緒に二つセットで皿に乗せて完成! 最後に一つ。 お召し上がりになる際は、れいむのリボンを解き、髪の毛(の形をした餡子)からお食べください。 これには理由があります。 ゆっくりは、主に装飾品や外見で仲間を認識します。 よって、禿げゆっくりになったれいむは、もうまりさに相手にされません。 これによって、食べられる最期までお互いを支え合っていた2匹の関係は一瞬にして無くなります。 自分の子供を失い、パートナーも失った、絶望の渦中のゆっくりはさぞかし美味しく頂けるようになっていると思われます。 では、ごゆっくりお楽しみください。