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いい天気ですねえ。 生い茂る緑。立ち上る入道雲。かしましく鳴く蝉たち。まさに夏真っ盛りといったところでしょうか。木陰の下、水辺にいても、満ちあふれるエネルギーは陰りを見せませんね。おお、暑い暑い。 しかし、あなたも釣りがお好きだとは意外でしたよ。なかなか理解されない趣味ですからねえ、これ。 え、他に誘ってみたんですか? ふぅん、そうですか。 群れの中で釣りに興味があるゆっくりというと、レティ種ですかね? 彼女の釣り好きは有名ですから。ワカサギ釣りのときに氷をぶち破った件は、衆知というか羞恥の出来事になってますし。 しかし、今は夏眠しているはずですよ。無駄足に終わったでしょう。違うのですか? レティじゃなくて。 長? 長を釣りに? 確かに長も休暇ですが、今度の収穫祭でやる演劇の台本を書いているはずですよ。役者との打ち合わせもこっそりやっているようです。何かと物議を醸す、特に参謀辺りが怒り出しそうな内容みたいですね。なんでわざわざ悶着起こすような……今に始まったことじゃないですけど。とにかく、長を誘ったのなら、それこそ無駄足でしたね。 こんな奇特な趣味を持つのは私たちくらいでしょう。それほど変だとは思いませんが、端から見たら時間の無駄でしょうからね。魚を得るのだけが目的なら、飛行種に任せておけば、いくらでもとは言いませんが、鮭くらいは捕ってきますし。 ……あー、いまの洒落は高度でしたか? まあ、あれですよ、単に魚が欲しくて釣りをやっているのなら、全ての釣り人は魚河岸へ向かわなくてはなりません。 そういうのじゃないでしょう、釣りの楽しみというのは。こうやってのんびり過ぎゆく時間に浸ったり、時折やってくる魚との駆け引きに熱くなったりするのがね、いいんです。漁獲の効率とは間逆にある価値観ですよ。手段こそが目的なんです。まあ、釣れるに越したことはありませんけど。 この沼で言うと、そうですね、ブルーギルなんて釣れますよ。幻想郷では珍しいでしょう。 食べてもそれほど美味しい魚ではないんですが、私は嫌いじゃないんですよ。威嚇するとき頬を膨らませるなんて、親近感湧きません? 海外から持ち込まれた魚で、在来種を食い散らかすというのも、野山の生態系を荒らす害獣としてのゆっくりそのものですしね。ええ、そう見る人間は多いのですよ、実際はともかく。 しかし、そんなブルーギルを放流したのは人間なのですがねえ。日本の釣り人が、力強く釣り糸を引くブラックバスやブルーギルを好んだわけです。日本の魚では物足りなかったのでしょうか。何だか角界を連想しますが、そうしてスカウトされた外来種は釣り人の期待に応えて繁殖し、今日も元気に日本の生態系をボロボロにしているのでしょう。 日本の釣り人が「自然を大切にね! キャッチ&リリース!」なんて言うのは、そう考えるとなかなかセンスあるジョークですね。見習いたいものです。 まあ、私たちは釣った魚はすぐに食べてしまいましょう。寄生虫などの耐性はありますよね? この前、カムルチーを生で食べてましたものね。ここは指定区域の外だから、いくらでも捕って、いくらでも食べることができますよ。 あ、釣りは苦手なんですか。ふふっ、そうですか。下手の横好きというやつですね。いやいや、構いませんよ。先ほども言ったように、釣果は問題じゃないんですから。 そうだ、良かったら、私の釣った魚を差し上げましょう。いいんですよ。気っぷの良さには定評がありまして。気前マルと呼んでください。 しかし、こうして沼を眺めていると、いろいろなことが頭に浮かびますねえ。人間には、こういうとき嫌なことばかり思い浮かぶので、音楽を聴いて紛らす事例は多いらしいですけど。あなたはどうです? え、私ですか? うぅん……そうですねぇ、やっぱりあのことでしょうか。 あー、ところで今日は何日でしたっけ? あはは、「時そば」をやるつもりはありませんよ。ただちょっと、ええ。 24日? そうですか……なるほど、思い出すわけです。 いえね、ちょうどこの日だったんですよ、あれがあったのは。「三方一両損」の話です。 私たちの群れにもいますから、ニトリ種のことは知ってますね。水に弱いとされるゆっくりの中でも、珍しく水棲の生態を持つ種です。 ええ、河童に属する性質を持っていると言われますが、あまり相関性はないんじゃないですか。私もカラス天狗の性質を有するとされてますけど、一切の面影がないでしょう? まあ、それはともかく。 目の前にあるこの沼、これよりもっと大きい湖沼にそのニトリたちは住んでました。いえ、「たち」と素直に呼んでいいものかどうか、少し説明が必要ですね。 「クダクラゲ」って知ってます? 知らない? そうですか。まあ幻想郷には海はありませんから仕方ないかもしれませんが、学問は必要ですよ。《無学は神の呪いであり、知識は天に至る翼である》。「ヘンリー六世」の一節です。 え? 「ヘンリー六世」も知らない? いやはや……確かに、太陽が地球の周りを回っていても不都合ありませんけどね。 話を戻しましょう。 クダクラゲは普通のクラゲとは違い、それぞれの個体がくっつき、群体を為す生態で知られています。単純な群れじゃないですよ。つながって、一つの生物のようになっているんです。 それぞれが遊泳、捕獲、消化、防衛に特化した機能を持ち、集団全体を生かすために生きるのです。生殖専門の個体もいるんですよ。「一心同体」を地でいく生物とでも申しましょうか。 ええ、それをやっていたんです。そのニトリ「たち」は。 ゆっくりは基本的に水に弱く、雨にしばらく打たれていただけで溶けて死んでしまう者さえいます。それは致命的な弱点であるのですが、あるニトリ種は水に強いだけでなく、その性質を利点として活かすことができるのです。 あなたは見たことがないでしょう。群れのニトリ種でできる者はまだいませんからね。身体に親水性を持たせ、水中で粘液状に広がるのです。 九割以上が水分で、半透明。とはいえ、それは紛れもなくニトリの身体であり、自在に動かせます。しかも意識的な変異もできる。顔だけお化けのくせに、複数の腕を生じさせた例もあります。「ニチョリ化」と呼ばれる能力ですね。 水が豊富になければできないことですが、逆に言えば水中においては無敵の力です。 その能力をさらに発展・応用して、彼女らはクダクラゲのごとく一体化しました。自在に身体を変形させる能力で、互いの身体を融合させることを考えつき、実行したのです。 水面を通して、ニトリたちが大樹と連なっているのは壮観でした。節くれ立った巨大な幹が、ほの暗い湖底へと続いており、思い思いに幹から伸びる枝は、ゆらゆらと不気味に蠢いているのです。その全ての部位ににやけ顔が無数に張り付いていました。青みがかった半透明の身体に、屈折した日の光が透過して……。 繁栄を妨げる者はいませんでした。それまでは魚や鳥が天敵でしたが、その状態になってからは、むしろ餌としていました。上空を飛ぶ鳥に向かって、水中から天高く触手を伸ばし、沼へと引き込むというのは、まさに「烏賊」という漢字がしっくりくる光景でしたね。それとも「飛ぶ鳥を落とす勢い」の方が適切でしょうか。 その沼は河童ゆっくりのユートピアだったかもしれません。ただ、あまりにも閉じた世界だった。彼女らはその沼地から少しも外に出ようとしなかったのです。そして、新しい種を取り入れようとしなかった。 常時水の中にいられるゆっくりは、ニトリ種をのぞけばスワコ種くらいのものですからね、彼女らの生き方に合わせられるゆっくりは確かにいません。しかし、それなら自分たちの生き方を周りに合わせる手段もあったはずです。陸上生活と水中生活に分かれ、ニトリ種だけは沼で結合して生きるとか、あるいは時間を掛けて耐水性を獲得させて、それから群体へと引き込むとか。でも、しなかった。 完全に一つの群体となる前は、沼の中だけで生殖していたようです。近親婚ですね。群体となってからは、分裂タイプの生殖で増えていきました。増える分には、それで問題ないわけです。 しかし、遺伝的にも文化的にも、新たなものを取り入れない閉塞は、必ず破綻へと向かっていきます。 まず食糧が足りなくなりました。目に付くものを際限なく食べていれば、当然そうなります。このままではまずいと反対意見を言う者がいませんでしたから、ただただ食べ続けたのです。沼はからっぽになりました。蛙の声さえ聞こえない、静寂の湖沼となりました。 それで、今度は川へと進出しました。そこにはまだ食べ物がありましたからね。しかし、餌を求めて山の外、森の領外にまで行ってしまいました。そう、人間と接触してしまったのです。 彼女らは人を恐れませんでした。実際、水の中の河童饅頭に対し、人間は何もできませんでした。動きは素早いし、たとえモリが当たったとしても千切れた身体はすぐに融合・再生してしまいます。「ニチョリ化」したニトリは、ほとんどアメーバみたいなものですから。それに、群体から見ればモリの一撃などかすり傷に等しい。 やりたい放題でしたね。釣り針に掛かった魚を横取りしたり、仕掛けの位置を動かして自分たちの物として使ったり、川遊びをする子どもたちのお尻に手を入れたり。 村人の怒りは相当のものでした。もともとゆっくりに対して、侮蔑的な感情を持っていましたからね。まあ、好印象を持つ人の方が少ないのでしょうけど、その村は筋金入りでしたよ。 村に入ってきた饅頭妖怪は問答無用で駆除。畑荒らしであろうと迷い子であろうとお構いなしです。視界に入ったら、とにかく虐殺。そして、死んだ饅頭は一口も食べずに埋めるという徹底ぶり。スタンダール風に言えば、「見た、殺した、捨てた」ですね。 かつて集団レイパーアリスに村を荒らされたことが、その異常なまでの嫌悪感の遠因らしいのですが、詳しいことは知りません。ゆっくりは人間に近しい妖怪ですが、その村の付近には一匹もいませんでしたねえ。 さて、そんな村人に対して、ニトリたちはさらに図に乗った行為を始めました。畑を荒らしたのです。 細長くした身体で用水路を通って、そこから陸地に触手を伸ばし、畑の農作物を盗むのです。村の畑の至る所が、粘液にまみれ、穴だらけになりました。 被害は甚大、怒りは心頭。では、村人はいかに? 何をしたと思います? 答えは「毒」。沼に大量の毒を流したのです。 川や用水路にまで進出したとはいえ、ニトリたちの本拠地は元いた湖沼でした。眠るときは必ずそこで、大樹のように一塊になっていましたから、そこを狙ったのです。 効果はてきめんでしたね。彼女らは苦しみ悶え、逃れようとした。しかし、沼の周囲から一斉に取り囲むように毒を流し込んだので、気づいたときにはもう遅く、連なる身体をのたうち回らせるしかできませんでした。その身体も、どんどん融解・崩壊していきました。 ゆっくりは個体によってさまざまな特徴があります。同じ種であっても、その性質に大きな差があったりする。毒への耐性も同じです。しかし、ニトリ種は分裂タイプで増えたため、その毒に対してまったく非力だった。耐性を取り入れることができなかった。全滅するしかなかったのです。 凄惨な光景でしたね。この世のものとは思えない様相……陳腐な表現かもしれませんが、他に適当な言葉が思いつきません。わずかに残った魚や蛙が腹を向けて浮いていたのもそうでしたが、何よりニトリ種の悲惨さは筆舌に尽くしがたいものがありまして。 断末魔の形に開いた口からは舌が垂れ、目は飛び出さんばかりに見開かれて苦悶の色を表していました。顔はこれ以上ないというくらい歪みきり、それら全体が溶けて破れた皮膚から漏れた体液と混じり、ぐしゃぐしゃに潰れているのです。無数に連なる全ての顔が、そのように地獄を映していました。 こうして沼のニトリ種は全滅しました──今日この日、7月24日の出来事です。 ニトリ種が破滅したのは必然だと言えるでしょう。 力があるからといって、全てが可能になるわけではありません。そして、敵を作ることは災厄を抱え込むことと同義なのです。 あなたも気をつけてください。「無知は罪」とまでは言いませんが、死ぬ理由としては十分ですから。「跳ぶ前に見ろ」というイギリスのことわざもあります。 話、続けていいですか? ええ、まだ続くんです。 ほら、この話は「三方一両損」でしょう。まだ「一方」だけですから。 湖沼に毒を流されて、「損」をしたのはニトリたちだけではありませんでした。山の神です。 普段は大人しい神さまで、百年以上は人前に姿を現さなかったのですが、流石に自分の足もとを毒まみれにされてはね。黙ってはいられないでしょう。 とてつもない「損」をもたらした不届きな村人。彼らに対し山の神は怒りを示しました。 大地を揺らし、地面を割り、山を崩し、岩を放る。口で言うと大したことがないように思えますが、自然災害の恐ろしさはあなたもよく知っているでしょう? そのレベルですから。 家は地震で崩れましたし、田畑は地割れで壊れました。山の幸は一切採ることはできなくなり、飛んでくる大岩に潰される者もいました。これが村人にとっての「損」です。ゆっくりに受けた被害の比でないので、先ほどは「損」とはしなかったのですよ。 さて、これでゆっくり・神・人間の「三方一両損」になるわけですね。ちょっと規模が大きい「一両」かもですが、看板に偽りなく、羊頭狗肉にならずに話を終えることができました。はい、どっとはらい。 おや、何か言いたげですね。何です? ああ、そうですね。私たちの群れがこの話に出てこないのは不自然です。 いや、もちろん関わってますよ。見ていたように語っていたのは、実際見ていたからです。私たちの群れは何度も移住をするでしょう? 以前の移住地の話なんですよ、これは。 ニトリたちの沼にはすぐ交渉しにいきました。同じゆっくり同士仲良くやりたいですし、たぐいまれな能力を有してますから群れに引き込めればもっと良かった。 長と私、そして護衛のチェン種とヨウム種が一体ずつ、計四人で行きまして。──すぐに追い払われました。とりつく島もないとはあのことです。言葉を交わしたのは、実質どれほどもありませんでしたよ。 大きな触手が何本も、蛇のようにうねりつつ襲ってきましてね、命からがら逃げてきました。お土産に数々の罵倒や揶揄の言葉もいただいて、いやあ、あれは本当に不愉快でした。おお、不快不快。 不愉快といえば、その後日もですね。大きなイノシシを仕留めた狩猟班が、その湖沼の近くを通った際、獲物を強奪されましたっけ。やはり触手が水面から飛び出してきまして。ヨウムたち狩猟班は素早く逃げ、事無きを得ましたが、獲物はまんまと奪われてしまいました。 その様子を物陰から眺めていたのですが、百キロを超えるイノシシが木の実でもたぐられるように軽々と宙を舞うのは、あまりのパワーに肝が冷えましたよ。 いや、その後の光景はもっと心胆を底冷えさせました。 イノシシがニトリの大木の幹にあたる部分に取り込まれてから、半透明の身体を通して、その消化される様が眼前で展開されたのです。 イノシシはゆったり回っていました。頭を上にして、くるっくるっと横に回転していました。そうして、どんどん姿形を変貌させていきました。 皮が溶け、黄色の脂肪が現れたかと思うと、鮮やかな桃色の筋肉が露出し、漏れ出す赤黒い血は霧散して、色とりどりの臓物が現れ……全てが溶け、太い胴体の獣は、瞬く間に白骨と化してしまいました。強力な同化作用です。その骨も、枯れ木のように折られ、砕かれ、そして溶かされて、跡形もなくなりました。 仮にですよ、私たちが交渉にいったとき、もしも、あの触手に捕まっていたとしたら……おお、怖い怖い。狩猟班も危機一髪でした。 後日、当然抗議しにいきまして、そしてやっぱり追い返されました。初めて交渉しにいったときのメンバーだったのも、デジャヴを感じましたね。やれやれです。 ええ、言いたいことはわかりますよ。 我々が率先して「損」をしている。つまり、「四方一両損」の方が表題としてふさわしいと。そういうことでしょう? まあ、その先を聞いてください。 自分の湖沼を毒まみれにされて、山の神はお怒りでした。 村人に毒を取り除けば許してやろうと言ったのですが、彼らにはどうすることもできませんでした。もともと河童饅頭を殺すことしか頭にはなかったのですから、その後のことなんてね。で、私たちの出番というわけです。 毒を吸収するメディスン種の能力を活用しつつ、中和剤を空中から散布しました。すると、なんということでしょう、瞬く間に湖沼は元の無毒の状態に澄み渡りました。匠の技です。 山の神はそれはもう大喜びでしたよ。こちらまで嬉しくなりましたね。 丁寧なお礼をいただき、そのうえ手厚くもてなされました。 あんなにたくさんの桃を食べたのは、産まれて初めてでしたねえ。ふふ、好きなもので、つい食べ過ぎてしまったんです。なにしろ山積みの果物です。食べ放題の食い倒れでした。驚いたことに、その中にはメロンなんてのもありましたよ。 はい? ……うんうん……おお、すごいすごい。 先ほどの疑問といい、あなたはなかなか洞察力がありますね。単純な知識量以上のものを持っています。 そうですよね。ずいぶんと都合のいい話です。 山の神にできなかった、そして作った村人にさえ無理だった毒の除去。なぜ横からポッと出の我々が、あれほど容易くやってのけられたのでしょうか。 種を明かせば簡単なことです。あの毒はですね、除去を前提として開発されたのですよ。何もしなければしつこく残留しますが、ちょっとしたコツですぐ取り除けるのです。そう、私たちが開発しました。 作ったのは村人ですよ。私たちから製法を聞き出してね。 どうか毒の作り方を教えてください、と頼んだわけじゃありません。さっさと教えやがれ!と脅したわけでもありません。そもそも、私たちが毒の製法を知っているなんて、彼らがどうしてわかるんです? 要は、たまたま聞きつけたんですよね。ゆっくりたちが毒についておしゃべりしているのを。それでそのまま物陰で一切を心に刻みつけたというわけです。陰に耳あり。 そのときのチェン種とラン種は、こんなことを言っていました。 〈さいきん、ぬまのにとりたちがとってもすごいらしいわ!〉 〈つよいんだね、わかるよー〉 〈にんげんなんかめじゃないらしいわよ。ひとひねりだって〉 〈にんげんさんがよわいのかもねー〉 〈むきゅ、そうかもしれないわね! だってなんにもてだしできないんだから!〉 〈ごたいまんぞくなのに、てもあしもでないんだね、わからないよー〉 〈ぐずなにんげんね!〉 〈だめなにんげんさんだね!〉 〈むっきゃっきゃっきゃっきゃっ〉 〈あっひゃっひゃっひゃっひゃっ〉 失礼。毒の製法が話題に出てくるのは、このだいぶ後です。 でも、なかなかの演技でしょう。さすがは「劇団シキ」の役者だと思いませんか。あ、私の口真似も上手かった? ありがとうございます。 ラン種の演じた役柄は参謀を参考にしたとのことですが、ええ、お察しのとおり、黒ゆっくりプロデュースです。 本人に発覚する前に、長は稀少種獲得の旅に出ましたがね。ホントにあの人のイタズラ好きには困ったものですよ。わざと参謀に内容を流す苦労を少しは理解してほしいです。いや、喜んでやりましたけど。 ともかく、この二匹の会話によって、村人は目的意識と手段の両方を手にいれました。このままコケにされてたまるか。毒を流しさえすれば殺せる。やれるのにやらなかったら、人間のコケンに関わる。あの沼のゆっくりに目に物見せてやる。 そして彼らは実行しました。山の神のことなんか考えもしないでね。 マンドレイクって知ってます? 魔法薬の材料などでポピュラーな植物なのですが、これを持ち帰るのが一苦労でしてね。引き抜くと恐ろしい悲鳴を上げて、それを聞いた者は死に至るのです。 では、どうするかというと、定番の方法として犬に引かせるやり方がありますね。自分は声の届かない遠くに離れていて、犬に合図を送る。当然、犬は死んでしまいますが、お目当ての物は手に入ると。 つまりは、まあ、そういうことです。 ニトリたちとの交渉も、行ったメンバーは群れの中でも素早さに優れる者たちでした。なぜ参謀でなく私が行ったのか、わかりますか。また、なぜ交渉決裂後に、狩猟班は湖沼の傍をわざわざ通ったのか、わかりますかね。 相手を敵と認識するため……。大義名分を得るため……。皆殺しの動機づけのため……。 共存できたはずなのですがね。仕方ありません。選んだのは、相手です。 さて、エピローグを語りましょうか。 私たちは湖沼を自由に使えることになりました。ニトリ種に食い荒らされ、毒で汚染された沼。その水産資源が元に戻るにはそれなりの時間と手間が掛かりましたが、山の神の手助けもあって、新しい年を迎えるころには良質の魚がたくさん手に入るようになりました。 山の神の庇護のお陰で、冬の食糧不足が一切なくなったのも良かったですね。山の隅々までご存じなだけあって、あなたこなたから色々な食べ物を持ってきてくれるのです。 寄りかかりっぱなしというわけにもいかないので、できるだけ自分たちの手で獲得し、労働に合わせた厳正な分配は維持しましたが、参謀が冬場の食糧について頭を悩ませない姿は、あのときくらいしか拝めませんでしたね。 村人との交易もなかなか有益でした。村人は山への立ち入りは禁止されていましたからね、山の幸は私たちが採って、彼らと物々交換したのです。 村人がゆっくりと交渉するのは変ですか? ウジ虫のごとく忌み嫌うゆっくりと対等なやり取りをするくらいなら、山菜やキノコなんて要らないと言うに決まっている? まあ、そうでしょうね。 しかし、私たちのバックには山の神がいますから。無下にすることは、そのまま災害が襲いかかることを意味します。 命とプライドを天秤に掛け、村人がどちらを選んだか──それはもう、彼らは聡明でしたよ。今、群れにあるたくさんの鉄器類は、そのとき手に入れたものです。 で、話を戻しますよ。 この話の表題ですが、やっぱり「三方一両損」で良いのです。 その三両は私たちの懐に入ったわけですから。 ね? まだ、言いたいことがあるのですか? この上何を……ふむふむ……おおっ! あははは、なるほど、素晴らしい。センスありますねえ。 そのタイトルの方がいいかもしれません。ダブルミーニングとは恐れいりました。 「両得」ですか。 ふふっ、今度からはそれを使わせてもらいましょうかね。「りょ・う・と・く」。うぅん、返す返す味がありますねえ。 いやいや、やはり大したものですよ、あなたは。才能の片鱗を見た思いです。原石がこんな身近に転がっているとはね。 よろしければ、私の傍で働いてみませんか? 少なくとも退屈しない毎日はお約束しますよ。答えは急ぎませんから、考えておいてください。 ところで──やっとわかりましたよ、あなたがなぜ長を釣りに誘ったのか。 恐らくどこかで、長は釣り好きだと耳にしたんでしょう。 まあ、間違ってはいませんけれども……長が好きなのは、そっちの釣りでなくてですねぇ… ぁ、引いてますよ、魚。 黒ゆっくり6 過去作 fuku2894.txt黒ゆっくり1 fuku3225.txt黒ゆっくり2 fuku4178.txt黒ゆっくり3 fuku4344.txt黒ゆっくり4 fuku5348.txt黒ゆっくり5 fuku5493.txtうやむや有象無象
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リアルに吐くゆっくり ゆっくり魔理沙がうろついていたので、お菓子を与えて手なずけてみることにした。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!」 もっ、もっ、とお菓子を口いっぱいに頬張り、幸せそうな表情だ。 「かわいい帽子だね」 「まりさのたからものだよ!」 得意げに頭を反らせて、ゆっ、ゆっ、と体を揺らす。 「ちょっと僕にも、かぶらせてもらえないかな」 「ゆゆっ!?」 相当大事にしている帽子らしく、ゆっくりは戸惑った様子でしばらく思案していた。 そこで、懐からさらにお菓子を取り出して、ゆっくりの目の前に放り投げた。 「ゆっくりー!」 顔を輝かせ、夢中でお菓子をガサガサと貪り始める。 その隙に、帽子を取り上げた。かぶってみると、結構ブカブカだった。草や土のにおいがする。 「ゆうう!!? まりさのぼうし! かえしてね! かえしてね!」 口の周りにお菓子のカスをつけたまま、足もとにモチモチとまとわりついてくるゆっくり。 「それはまりさのぼうしだよ!はやくぬいでね!」 とりわけ、自分以外に帽子をかぶられているのが気にかかるらしい。 しつこく何度も僕の頭の帽子に飛びつこうとしてくる。 「もうちょっとゆっくりかぶらせてもらえないかな」 僕は言ってみた。すると、 「ゆっ…!?……!! ゆっ、ゆっくりしていってね!!!」 ゆっくり魔理沙は飛びつくのをやめた。 さすがに名前だけあって、ゆっくりさせてほしいと言うお願いは無下にできないようだ。 ゆっくりは僕を見つめたまま、ジッとしている。正確には、僕のかぶっている帽子を見つめたまま。 しかし、三十秒もすると、ゆっくりはタラタラと汗をかき始め、やがて焦れたような表情を浮かべてモゾモゾとしだし、 とうとうまた飛び跳ね始めた。 「そろそろかえしてね! それはまりさのぼうしだよ!」 そこでまた僕は言う。 「そんなに急かされたら、ゆっくりできないよ」 「ゆゆぅ!? おにいさん、ゆっくりしていってね!!!」 何度もこのやりとりが繰り返された。 そのうちに、ゆっくり魔理沙は、どんどん落ち着きがなくなっていった。 最初のうちは三十秒ジッとしていられたのに、今はもう五秒と静止していられない。 「ゆっ……!ゆっ……!」 と体をよじって、もどかしそうに転げまわる。 体中をムズムズモゾモゾする感触が這いずり回って、相当不快なようだ。 どうやら長時間帽子をかぶらないでいると、禁断症状のようなものが出るらしい。 「おにいさん、まりさのぼうしをはやくかえしてね!」 体を地面に擦りつけたり、木にぶつかってみたりして、なんとかムズムズモゾモゾを紛らわそうとしながら、 ゆっくりは言った。 なんだか楽しくなってきてしまった。そこで僕は言った。 「よし、返してほしかったら、ここまでおいで」 僕はゆっくりを置いて駆け出した。 「ゆうぅぅぅ!? まりさのぼうし! がえぢでえぇぇぇぇ!!」 振り返ると、ゆっくりが必死で跳ねてくるのが見える。だが、そのスピードは人の走りには到底及ばない。 五分ほど軽く走った後、僕は立ち止って、ゆっくりが追い付くのを待った。 その五分後、息も絶え絶えにヨロヨロとゆっくりが現れた。 「ぜぴゅー、ぜひゅぅ、ひゅっ、ぴひゅぅ、ゆっ、ゆっぐりぃ……」 だらしなく口から舌を垂らして僕の前まで来ると、ゆっくりはベッタリと顔から地面に貼りついて、起き上がれなくなった。 疲労の極みにあるようだが、そのおかげで禁断症状の方はだいぶ紛れたようだ。 「よく追いついたね、約束通り、帽子は返すよ」 「ゆっ…ユゲフッ、ほんと!?」 起き上がり、喜びの表情を浮かべるゆっくり。 「でもちょっとトイレに行きたくなっちゃって。済ませてくるからちょっと待ってね」 「ゆゆっ、はやくしてね!!」 僕は適当な茂みを探すと、そこにゆっくり魔理沙の帽子を置き、その上にしゃがみこんで、大きい方をブリブリっと やらかした。そして、帽子のヒラヒラしたフリルの部分を適当に破ると、尻を入念に拭いて、適当に帽子に巻きつけた。 スッキリした僕は、動けないゆっくりのところまで戻ると、抱きかかえて帽子のところまで連れて行ってやった。 帽子を見た時のゆっくりの表情は忘れられない。 「ゆうううううう!!? まりさのぼうしがあああ!!どうぢでこんなことするの゛おおおお!!?」 悲痛な叫び声をあげて抗議するゆっくり。 「いやあ、手近に紙がなかったもんで。ごめんね。じゃ、またね」 ゆっくりを地面に下ろすと、僕は言った。 「おにいさん、いかないでね! まりさのぼうしをなおしていってね!まってねまってね、ゆっくりしていってね!! 」 立ち去ろうとする僕を見て、取り乱したようにゆっくりは叫んだ。 ゆっくりが必死に僕を帰すまいと叫んだ理由はわかっている。 ゆっくりには手がない。だから、物を運ぶ時は、口を使う。 つまり、ゆっくりが帽子かぶるためには、帽子の上に乗っているものを、口に入れなければならないということだ。 そうしなければ、やがて疲労も癒えてきて、また禁断症状に苦しまされることになる。 「お゛に゛い゛さんい゛がないでえ゛ええええええええ!! ゆ゛っぐり゛いいいいいいいい!!!」 あたりにゆっくりの絶叫がこだました。 (↓この後、スカトロ描写あり。まあ大したことないと思うけど、嫌な人は引き返すが吉) 僕はしばらく歩くいて帰った振りをすると、ゆっくりがこの後どうするのか見るために、再び見つからぬよう茂みのとこまで コッソリ戻った。 ゆっくりは、まだ帽子の前でためらっていた。 僕が茂みに戻ってきてからもだいぶ長い間、帽子の前でまごついていた。 僕は草むらの陰で静かに様子を窺っていた。すると、ゆっくりがピクリ、と一つ震えた。 「ゆっ」 その五秒後、今度はピクン、ピククンと二つ震えた。 「ゆっ、ゆゆっ」 禁断症状が始まったようだ。やるしかない。ゆっくり魔理沙に悲壮な決意の表情が浮かんだ―― 「ゆぉれれれれれれっ、おれれっ、ゆっ、ろろろろろろろ」 ゆっくりが嘔吐する音である。 「ゆろろぉ、ろっ、ろぉっ、ぉ……………お゛っ! お゛ろおおれっれええれれれれれれ」 詳細な描写をするつもりはない。僕も見ていて吐きそうだった。 しかし、ゆっくりは諦めなかった。何度も嘔吐を繰り返し、モチモチだった体がしおしおにしぼんできた程だったが、 とうとうブツの撤去に成功した。匂いと、布地にしみついた茶色いシミはさすがにどうすることもできなかったが。 帽子のへりを体でズリズリとせり上げ、その下に体を潜り込ませて、なんとかかぶることができた。 「ゆっくりー!」 汚れに汚れ、頬がゲッソリこけてしまったゆっくりだったが、達成感に顔が輝いていた。 どんなに汚れてしまっても、どんなに耐えがたい匂いがしても、帽子はゆっくり魔理沙の大切な宝物なのだった。 よくやったな、ゆっくり。僕は涙ぐみさえした。明日はご褒美にもっといっぱいお菓子をやろう。 もっとも、今度会ったら逃げられてしまうかも知れないけれど。 翌日、ゆっくり魔理沙は自分から僕の元へ現れた。昨日、あの後、巣に帰ったはいいが、一緒に住む家族たちに追い出されて しまったのだ。ゆっくりは非常にきれい好きな生き物なのである。 巣に入りたかったら、帽子を捨てろと言われ、宝物を捨てるなんてことは当然できず、 ゆっくり魔理沙は一人ぼっちで、夜露に濡れながら、涙を流しながら、悪臭に耐えながら、夜を明かしたのだ。 そして今は冬。巣に蓄えてある食糧がないと、ゆっくり一匹では生きていけなかった。 背に腹は代えられず、こうして僕のもとにお菓子を貰いにやってきたのだ。 「ゆっ、ゆっくりしていってね!!!」 帽子を取られないように、僕から距離をとって、おどおどしながらゆっくり魔理沙が言う。 そうかあ、こいつにはもう僕しかいないのかあ。そう考えると、独りでに頬が緩んでいくのを抑えられなかった。 おわり このSSに感想を付ける
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※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。 ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※虐待パート小休止中。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』15 その日は特別暑い日だった。 私は疲れ果てていたが、ゆっくりに囲まれて歌わされていた。 無理に笑顔を作り、リズムをとって声を絞り出す。 「ゆっゆっゆ~……ゆ~ゆ~ゆゆゆ~……」 「ゆゆっ、ぜんぜんだめだよ!!やるきあるの!?」 「にんげんさんはほんとうにゆっくりできないわ、むきゅ!」 その時、突然、上空で物音がした。 バシュウウウ、となにかが吹き出すような音。 上を見ると、穴の口から見える空が、薄いピンク色の霧に包まれている。 「ゆゆっ!?なんなの!?ゆっくりできるもの!?」 「けむりさんはゆっくりしていってね!!」 ゆっくり達はしばらくうろたえていたが、やがて弛緩して地面に横たわり始めた。 「ゆゆぅぅ~~~……なんだかとってもゆっくりできるよ……」 「ゆゆゆぅ……ゆっくりしていってね……」 「ゆっくりするよぉぉ~~………」 だらしなく顔をゆるめ、地面に延びるゆっくり達。 声をかけてみても、ゆっくりするのに夢中といった様子で無反応だ。 しばらくしてから、ヘリコプターの音が聞こえてきた。 待っていると、果たして人間の姿が見えた。 「圭一さん!須藤さん!」 渇望していた人間の声だった。 あの施設の男たちらしい。 あれほど見つかるまいとしていた相手に対して、私はうれし涙を浮かべて声を返した。 「助けて!!助けてーっ!!」 すぐに縄梯子が垂らされた。 「圭一さん、来たわ!助けが来たのよ!!」 「ああ」 長浜圭一はさして感動もない様子で頷いた。 「大丈夫?登れる?」 「左足だけでも充分登れるさ」 長浜圭一を先に行かせ、尻を押してやる。 彼が無事に上がったのを確認すると、私も続いて梯子を登っていった。 「ゆっくりぃぃ~~~……」 「ゆっくり………ゆっくり………」 「ゆふぅ……ゆふぅ………」 地上に上がると、全てのゆっくり達が弛緩して地面に広がっていた。 どれもが究極のリラックスといった表情で、侵入者の人間たちを前にしてさえ反応しない。 ドスまりささえ弛緩してだらしなく広がり、その下に数匹のゆっくりを下敷きにしているが気づいていない。 十何メートル離れた草地にヘリコプターが止められており、 十数人のスタッフが集まって何事か準備している。 縄梯子を垂らしてくれた二、三人の男たちに聞いた。 「これは……何をしたの?」 「『ゆっくりオーラ』ですよ。 ドスゆっくりが常に微量のゆっくりオーラを放っていて、 周囲のゆっくりをゆっくりさせていることはご存じかと思います。 そのゆっくりオーラの成分を凝縮して強化し、さらにゆっくり以外に効力が現れないように合成したものを、 ガス爆弾にして上空からここに投げ込みました」 「そんなものまで作ったの?」 「いえ、あなたの娘さんの作品ですよ」 「……そう」 ゆっくり研究の第一人者である娘なら、こういうものを作ってもおかしくなかった。 一瞬聞き流しそうになったが、私は思い当たり、聞いてみた。 「そういうものを、娘があなたたちに預けていったの?」 「そうです」 「いつ?」 「出発の直前です」 「出発前って、誰の……?」 男は肩をすくめ、地面に腰を下ろしている長浜圭一のほうを見た。 長浜圭一が言った。 「ああ、もう言ってもいいだろう。あんたがあの施設を出発する前日だよ、須藤さん」 どういうことなのか飲み込めなかった。 混乱する思考がまとまらないままに、私は質問を繰り返した。 「出発………って?どういうこと?娘が……え?」 「あとは娘さんに直接聞いたほうがいい。 おい、博士はどこにいるんだ?」 長浜圭一が男たちに聞くと、ノートパソコンを携えた男が答えた。 「今から突き止めるところです。録画した映像です」 ノートパソコンの画面に映像が表示される。 それはひどく低い視点の映像で、暗い洞窟の中を映していた。 その洞窟の中、正面にいるのは……長浜圭一だった。 視界の隅には私の姿が時々覗いている。 「昨日録画したものです」 言葉を失って凝視しているうちに、視点が変わっていく。 映像は洞窟の中から地上に移り、森の中を縫って進んでいた。 「ありすの映像ですが、この後須藤春奈博士のところへ向かいます。 たどっていきましょう」 ノートパソコンの映像で道筋を確認しながら、長浜圭一が男たちの肩を借りて森の中へと進んでいく。 私はわけもわからず、その後を追った。 「んほおぉぉぉぉ!!おねえさんのまむまむぎもじいいいいぃぃぃ!!!」 「にんげんのおはだとかいはだわぁぁぁ!!んっほおおおぉぉぉぉ!!!」 「んほほほほほほほすっきりいぃぃぃーーーーーーっ!!!」 岩壁に穿たれた自然の洞窟の中に、私の娘はいた。 上半身を露わにして横たわる娘に、何匹ものゆっくりが身をこすりつかせていた。 スカートとパンツの他に何もつけていない春奈の体中がゆっくりの粘液にじっとり濡れている。 一週間もの間、恐らく何も食べていないだろう春奈がゆっくり達の慰みものになっていた。 脳髄に焼けた鉄が詰まったような怒り、いや激怒。 怒りのあまりに声も出せず、私はその洞窟に踏み込んだ。 「ゆゆっ!!にんげんさんだよ!!かってにぬけだしたの!?」 「かってにでちゃだめよ!!ゆっくりできないわね!!」 「れいむがおくってあげるからおうちにかえろうね!!」 順番待ちらしき、入口近くにたむろしていたゆっくり達が私のほうへ跳ねてきた。 その横っ面を力まかせに蹴りつける。 「ゆびぇ!!?」 蹴ったのは一匹のありす種だった。 そのありすは蹴られた勢いで吹っ飛び、洞窟の壁に叩きつけられて潰れ、カスタードをまき散らした。 明確な殺意をもってゆっくりを殺したのは初めてのことだったが、 怒りにかられている今の私は、そのことを意識さえしなかった。 放心状態で呆然としているゆっくり達を無視し、春奈の元にたどり着く。 春奈の体に身をこすりつけているゆっくり達、いや、ゆっくり共はすっきりに夢中で私に気づかないようだった。 「まむまむ!!まむまむ!!にんげんまむまむぎもじいいぃぃぃぃんほほほほほおおおお!!」 そのれいむは、春奈の口にぺにぺにを突っ込んで顎を振っていた。 私に背を向け、全身から粘液を飛び散らせながら一心不乱に顎を振るそのゆっくりの頭には、見慣れた飾りがついている。 私の……私がつけてあげたゴールドバッジ。 「んほっ、んほっほっほっほっヤバヤバヤバイ、イクイクイクイクイクんほっほっほおおおおおーーーーーっ!! でるっ、でるでるでるよおおおおいっぱいでちゃうううぅぅ!! かわいいれいむのおちびちゃんのもとたっぷりのんでねえぇぇぇぇ!!! すっ、すっ、す、すすすすすっっっっきりいいいいいーーーーーーーーーーっ!!?」 れいむは、春奈の口の中に精子餡を流し込むことはできなかった。 射精の瞬間に後頭部を掴まれたれいむは、 私の手に掴み上げられた状態で空中に精子餡をまき散らしている。 「ゆっ!?ゆっ!?ゆゆゆゆゆっ!?ゆっゆっ!?」 「………れいむ。何をしてるのかしら?」 「ゆっ!?すっ、すっきりっ!?ゆううぅ!?れいむじゃないよ!?れいむなの!?ゆっゆゆゆゆゆ」 射精直後の放心状態も手伝って状況がつかめずにいるらしいれいむを、私はそっと地面に下ろした。 下ろされたれいむは、すぐにぷるぷると体を振り、正気を取り戻したようだ。 私のほうに向かって叫びはじめた。 「おねえさんなにしてるのおおおぉぉぉ!? かってにでてきちゃだめでしょおおぉぉぉぉ!!!だれがでてきていいっていったのおおおぉぉぉ!? おねえさんはまだまだゆっくりしてないんだよ!!べんきょうしなきゃいけないんだよぉ!! わかってるの!?わがままもいいかげんにしてねえぇぇぇ!!」 バァン!! 私は靴を脱ぎ、靴の底をれいむの眼前の地面に叩きつけた。 「ゆっ」 れいむは硬直し、私の顔を見上げた。 その表情には、かつての「主」に対する感情が戻り始めていた。 「もう一度聞くわ、れいむ。私の娘に何をしていたの」 「ゆっ………ゆっ…………か、かわ、かわいいれいむをおこらないでね?ゆっくりして」 「答えなさい!!!」 再び靴を地面に叩きつける。 れいむのまむまむからちょろちょろと小便が漏れ始めた。 「ゆ…………ゆ…………ごべ、ごべんなざ……」 「誰が謝れなんて言ったの?何をしてたのかと聞いてるのよ」 「ず、ず、ずずずずずっぎ、ずっぎ………ごべ………ゆるじ、ゆるじでぐだざ……」 「すっき、何!?最後まで言いなさい!!」 「すっ、すっき……すっき……しょ………しょうがないでしょおおおおおおおおおお!!!?」 れいむは逆ギレして叫び始めた。 「これぐらいしかにんげんさんのおしごとがなかったんだよおおぉぉぉ!! かりもできないし!おうちもつくれないし!かわいくないし!ゆっくりできるおうたもうたえないし!! なんのやくにもたたないからすてようってみんながいうのをれいむがかばったんだよ!! そしたら、そしたら、ありすがいったんだよ!にんげんさんはすっきりできるってえぇ!! だからおしごとをあげたんだよ!!やっとにんげんさんのおしごとがみつかったんだよおおぉ!! おしごとをしないとおいてあげられないでしょおおおぉぉぉ!!?」 言葉を失っていると、春奈が起き上がってきた。 「春奈!」 「やるって言ったのはあたしだよ、ママ」 そう言い、春奈は周囲のゆっくり達を掴んで投げ捨て、上半身裸のまま伸びをした。 「服はどうしたの!?」 「ゆっくりが持っていっちゃった。布団にしてるってさ。 スカートとパンツは髪の毛だと同じって言ったから助かったけどね」 「春奈……」 下半身のほうを見る。足は粘液に濡れていたが、内部まではわからない。 私の視線の意味を察知した春奈が説明してきた。 「大丈夫だよ。まむまむっていうのは、ここ」 春奈は自分の口を指差した。 「ここがまむまむだって教えてあげたの。それで、みんなこの中に出す出す。 つまり、食べ物には困らなかったってわけ」 それでも、娘は辛そうに息を吐いた。 「お茶飲みたい……一週間胸焼けしっぱなし」 「水なら持ってきていますよ」 「ありがと」 男の一人が水筒を差し出し、娘はごくごくと飲んだ。 「よかった………」 私は春奈を抱きよせた。 「わっ、ママ臭っ」 「あ……ごめんなさい」 「お互い様だけどね」 春奈が立ち上がり、男から差し出された大きなタオルを肩からまとう。 「本当によかった……あなたに何かあったら、ママは……」 「ファミリードラマをやってる状況じゃないんだ、ママ。 全部計算ずくだよ、こっちは」 「……何を言ってるの?」 「あのね、ママ。もう言っちゃうけど、最初から全部バレてるの」 春奈が言うには、私がゆっくり達をあの施設から逃がすと言い出したときから、 すべては施設のスタッフに筒抜けだったらしい。 春奈が早々にスタッフに伝えたこともあるが、そもそもはすべて監視カメラに映っている。 あの施設には、ほぼすべての部屋に監視カメラがあったらしい。 最新技術による監視カメラは小型かつ目立たない形状で、私には見つけられなかった。 「ママ、ドラマや映画の見過ぎ。 ヒーロー気取るのは簡単だけどさ、正義感だけじゃ運も環境も味方してくれないよ。 ママの脱出計画じゃ大雑把すぎて、気づくなってほうが無理だったよ」 「…………じゃあ……なんで止めなかったのよ」 「使えるかなって思ってさ。 あのゆっくり達の髪飾りに細工してあるのね、カメラと発信機。 あれがあれば、どこに行っても居場所はわかるし、カメラで見てる景色や話し声も筒抜け」 「…………」 「あたしは考えたのね、もしかしたらもっとドラマができるんじゃないかって。 一旦は人間に捕まって、ひどい復讐を受けるゆっくり。 ところが心優しい人間がゆっくり達を逃がしてくれる。 さて、人間に逃がしてもらったゆっくり達はどうするか。 逃がしてくれた恩人に対してどういう態度をとるか。 そういう事、全部記録してみたくてさ」 「……どこまでもゆっくりを悪役にしたいわけね」 「そういうこと。万一あれらが、もう人間に関わらないようにしたとしても、 こっちから細工してそうせざるをえないように仕向けるつもりでした。 キャンペーンのために、そういう映像は沢山あったほうがいいし、 それから生態研究のためもあるし、あと他にも映像の使い道を考えててさ」 私はがっくりとうなだれた。 ひどい徒労感に襲われて顔を上げることもできなかった。 「……あんたって子は………」 「でも、何が起こるかなんてわかんないもんだよね、ママ! あんな穴があって、そしてこの一週間でしょ。 こんなに面白い映像が撮れるなんて思わなかったよ。ゆっくり達みんな、 あたしたちが仕向けるまでもなく、たっぷりと悪役を、というか敵を演じてくれたわ。 すぐに助けを呼ばなかったのも、たっぷり記録するためよ」 そう言って、春奈は携帯電話らしきものをポケットから取り出した。 普通の携帯のようには見えない。特殊な通信機らしい。 「すぐに駆けつけて、皆さんを助けだすことは容易でした」 背後で男が言う。 「ですが、須藤春奈博士のご指示により、しばらく時間を見ました。 すべては記録されております」 「………私のことも?」 「……失礼ながら。 ただ、あの……『問題の場面』に関しては……遠隔操作で映像記録は中断しております。 どうか御信用ください」 排便させられていた事を言っているのはすぐにわかった。 「あとね、『処置』はもう全部終わってるの」 春奈が言った。 「ママ止めようとしてたけど、出発する前にあのゆっくり達はもう処置しちゃった。 もう手遅れだよ。『計画』はもう始まってるんだ」 私は顔を上げたが、言葉は出なかった。 暴れ出したかったが、それよりも脱力感が勝っていた。 なにを言っても無駄なのはわかっていたし、自分一人だけが道化を演じ続けていたことがわかった今は空しいだけだった。 ここで怒り散らしたところで、道化は道化でしかないだろう。 「こんなこと言うのはなんだけどさ、ママは怒る権利ないんじゃない? あたしたちがこんな目に逢ったのも、元をただせばママの失態でしょ。 あたしがもし携帯電話持ってなかったら、どうする気だったの?娘の人生」 洞窟の地面を眺めながら、私は春奈の言葉をぼんやりと聞いていた。 その声を聞いても、自分の娘の声だという実感はわかなかった。 袂を分かったのだ、という気がした。 住む世界も歩む道も、娘はもう私には理解できないところにいるのだ。 「長浜さんもごめんね?足は大丈夫?」 「俺の心配はしなくていい」 「でもごめんね。まあ、もともと長浜さんが勝手に追いかけてきたんだし。 なんであんなことしたの?」 「……さあね。見届けたかったのかもな」 「わっかんないなあ」 「ゆっくりそこまでだよ!!」 振りかえると、洞窟の入り口近くでゆっくり達が固まっていた。 私のれいむ始め、娘に群がっていたゆっくりが徒党を組んでこちらを睨んでいる。 「いうことをきかないおねえさんはゆっくりできないよ!!」 「よくもありすをころしたね!!ありすにはちいさいおちびちゃんがいたんだよ!! もうしわけないとおもわないのおぉ!?」 「にんげんなんかかおうとおもったのがまちがいだったね!! こんなにあたまがわるいなんておもわなかったよ!!」 「おねえさん!!」 顎を反らし、れいむは居丈高に言い放ってきた。 「れいむはおねえさんがだいすきだけど、こんかいばかりはおおめにみられないよ!! れいむはむれのなかまだから、むれのるーるはまもらなくちゃいけないよ! ゆっくりごろしはどすにどすすぱーくをうってもらうよ!!」 「どすすぱーくだよ!!どすすぱーくだよ!!」 「ゆっくりどすのところまでついてきてね!!にげようとしてもむだだよ!! おねえさんはゆっくりつみをはんせいしてね!!れいむだってつらいんだよ!!」 私たちを促しながら、れいむ達は歩きはじめた。 私たちは眼を見合せてから、ゆっくり達の遅々とした歩みについていった。 歩きながら、れいむは何度も何度も私たち親子に話しかけてきた。 「れいむはがんばったんだからね!!ずっとがまんしておしえてたんだよ!! わるいのはおねえさんたちだからね!!」 「なんでわかってくれなかったの?そんなにれいむがきらいなの? れいむはおねえさんがだいすきだったんだよ!!」 「そのめはなんなのぉ!!わるいことしたってわかってるの!?」 「れいむはおしおきなんかしたくないんだよ!! どんなにあたまがわるくても、ゆっくりできなくても、 れいむはずっとおねえさんたちといっしょにいたかったよ!! それなのにおねえさんたちはれいむをうらぎったんだよ!!れいむのかなしみがわかってるのぉ!?」 私たちは一度も答えなかった。 「ゆゆっ!!みえてきたよ!!どすたちがいるよ………ゆゆゆっ!?」 ドスまりさを始め、群れのゆっくり達は全員が補縛されていた。 施設の使用人たちが数台の車やトラックで乗りつけており、 トラックの中に網でまとめて補縛されたゆっくりが次々と押し込められている。 すでにゆっくりオーラガスの効力は切れたらしく、 網の中のゆっくり達は口々に人間を罵っていた。 「だしなさいいぃぃ!!いなかものおぉぉぉ!!」 「わからないよー!!わからないよー!!」 「ひきょうなのぜ!!まりささまとしょうぶするんだぜぇぇ!!」 「かわいいれいむをここからだしてね!!だしてねえぇ!!」 見ると、ドスまりさは網ではなくロープで、横向きに板に固定されていた。 まだトラックに運び込まれていないが、帽子を奪われてなすすべなく泣き叫んでいる。 「おぼうしいいぃぃぃ!!どすのおぼうしかえしてねぇぇ!! おぼうしさんがないとゆっくりできないよおおおおぉぉぉぉ!!」 ドススパークを撃つのに必要な特殊なキノコも帽子の中なので、 帽子が奪われて固定された今、ドスまりさは無力だった。 「むきゅううぅぅぅ!はなしなさいいぃぃぃ!」 ドスまりさの傍らには、参謀役のぱちゅりーがやはり縛られている。 「ゆ、ゆ、ゆゆゆゆゆ…………?」 「ゆゆゆっ!!たすけがきたよ!!れいむはゆっくりしないでたすけてねぇ!!」 「まりささまをたすけるんだぜ!!はやくするんだぜぇぇぇ!!」 「むきゅ!れいむ、むれをまもりなさい! むれのみらいはあなたにかかってるのよむきゅうううぅぅ!」 やってきたれいむ達に向かって、網の中のゆっくり達が一斉に助けを求めはじめた。 れいむ達は「ゆっ?ゆっ?」と鳴きながらおろおろと右往左往するばかりだった。 「例の十三匹はすでに車に乗せてあります」 「御苦労さま」 男たちの報告を受け、春奈が頷いた。 「群れは全て運び出しますか?」 「うーん、こんなにいらないかな。ドスとぱちゅ、あと五十匹ぐらいで、他はほっといていいよ」 「では、ドス達を。すでに五十匹以上集まってます」 指示していた春奈が、私に向かって聞いてきた。 「それはどうしようか?あたしはどっちでもいいけど」 春奈が指したのは、私のれいむだった。 れいむを連れて帰るのか。 ドスがいなくなったこの群れで、飼いならされたれいむが生き抜き、まして冬が越せるとは思えない。 放っていくことは殺すことと同義だろう。 しかし、今のれいむを私の家に迎え入れたいとはどうしても思えなかった。 善意からであれ、れいむがここで私にしたことを忘れ、水に流すことは私にはできなかった。 それでも、私は踏ん切りがつかず、対話を求めた。 「……れいむ」 「ゆゆゆっ!!」 トラックに運び込まれていく群れを呆然と眺めていたれいむが、 ぴょんっと軽快に跳ねてこちらを振り向き、満面の笑顔を浮かべて叫んだ。 「ゆっくりしていってね!!」 「……え?」 何を言われたのか一瞬わからなかった。 「おねえさん!れいむおいたをしちゃったね!! ゆっくりごめんなさいだよ!れいむをおこってる?」 「………」 「ゆゆゆっ!!おこらないでね!!おこらないでね!! れいむにおしおきしてね!おしおきはつらいけどがまんするよ!! そしたられいむいいこになるからね!!」 「れいむ……」 「おねえさんがおこってるとれいむはかなしいよ!! れいむはんせいするからね!ゆっくりしていってね!!」 「あなたは悔しくないの!?」 「ゆゆゆっ!?」 私はれいむの前に膝をつき、助けを求め続けている群れを指差して叫んだ。 「これを見てなんとも思わないの!?」 「ゆゆっ!おこらないでね!おねえさんこわいよ!! ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 「いいから聞きなさい!! あなたの群れでしょう!?このゆっくり達があなたの家族でしょう!? 家族を縛られて連れ去られて平気なの!?怒らないの!?」 「ゆゆゆっ!?きっとみんながわるいんだよ!! わるいことをしたからにんげんさんにおしおきされるんだね!! れいむもおいたしちゃったからおしおきがまんするよ!!」 「悪いことって何よ!? あなたたちが何をしたのよ!言ってみてよ!!」 「ゆゆっ!?」 れいむはわざとらしく、可愛い仕草で小首をかしげてゆんゆん鳴いた。 かつては、この仕草をされると私は怒る気が削がれてつい甘くなってしまったものだが、 今、その仕草は火に油を注ぐ効果しかなかった。 「ゆっ!ごめんなさい!れいむはゆっくりわからないよ!! れいむにおしえてね!ゆっくりがんばっておぼえるよ!!」 「私が大好きなんでしょう!? 好きだから!ここで!私を飼ってたんでしょ!? 私が群れの仲間になるためにしつけてたんでしょ!!?」 「ゆゆゆ!だいすきだよ!!れいむはおねえさんがだいすきだよ!! ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 れいむは突然にこにこして飛び跳ね始めた。 それが伝わっているなら安心だ、と思っているのだろうか。 「だから私を飼ってたんでしょ!?」 「ゆゆゆっ!?ちがうよ!おねえさんがれいむをかってるんだよ!! れいむはわかってるよ!ゆっへん!!」 「さっきまで言ってたことと全然違うじゃない!!」 またわざとらしく首を振り始めた。 眉を八の字に困らせ、もみあげで唇をつついて考えるふりをしている。 無知ゆえの過失ということにしてごまかそうとしているのは明白だった。 「ゆゆぅ~?れいむ、わからないよ? れいむ、なにかゆっくりできないことをいったの?おねえさん、おしえてね!」 「私を!ここで!飼うんでしょう!? 私たちをゆっくりの仲間にするんでしょう!!」 「ゆゆゆっ!!そんなこといったの!? きっとれいむはかんちがいをしてたんだよ!!れいむ、ゆっくりできないね!! ゆっくりできなくてごめんなさい! れいむがゆっくりできるいいこになれるように、れいむがわるいことしたらおしえてね!!」 かつて私が躾けた、人間に対する挨拶をれいむは繰り返し叫んだ。 私はそれから、れいむがやったことを一つ一つ並べ、どういうつもりだったのか問い詰めた。 私を穴に閉じ込め、どれだけ拒否しても雑草や虫を与えようとし、排便までさせたこと。 いじめられている長浜圭一を助けようとしなかったこと。 そして、私の娘を犯したこと。 しかし、まったく会話にならなかった。 私が何を言ってもれいむは空とぼけて、 「れいむはわからないからわるいところはゆっくりおしえてね!」を繰り返すばかりだった。 「ゆゆゆ~♪かわいくてごめんねっ♪」 ついには媚びはじめた。 「かわいくてごめんね」を繰り返し、小首をかしげてみせる。 この仕草が私は昔大好きだった。 こうすれば私の機嫌がよくなると、このれいむは知っていた。 ちらちらとこちらの表情を窺いながら、ひたすら無知を装い、媚び、へつらい、 こちらの怒りが逸れ、うやむやになって収まるのを期待して待っている。 なぜ私が怒っているのかという原因には、全く関心がないらしかった。 それは、かつて私が愛したゆっくりの姿だった。 躾の行き届いた、飼い主に愛らしさを振りまく、理想的なゆっくりだった。 このれいむだけではない、私がかつて世話した何百匹のゆっくりが、 根気強い躾の末に、こういうゆっくりになった。 しかしそれは、心底から礼儀作法を重要視しているのではなかった。 自分たちのほうが立場が強く、人間の言うことを聞かなくてもいい、 そんな状況になれば、あっさりと脱ぎ捨てられる程度の仮面でしかなかった。 立場が逆転したのを理解した今、このれいむは、あわててその仮面をかぶり直そうとしている。 私はそこでようやく、苦い事実を知った。 「あんたは………」 「ゆゆっ?」 「あんたは私と話すことなんかないわけね」 「ゆゆっ?おはなしするよ!れいむはおはなしがとくいなんだよ! どんなおはなしがしたいのかいってね!ゆっくりがんばるよ!!」 「命令を聞くだけなんだ……家族なんかじゃなかった……」 「ゆゆゆっ!そんなことないよ!れいむはおねえさんがだいすきだよ! ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 私が、生まれてから世話し、その死を看取った何百のゆっくり。 その中で、ただの一匹として、私に心を開いたゆっくりはいなかった。 私ひとりだけが空回りして、家族だと思っていたのだ。 ゆっくりにとっては、 「とにかく言う事を聞いてさえいれば世話してくれる便利な生き物」でしかなかったのに。 私は地面に突っ伏して泣いた。 「当たり前じゃん」 後ろで春奈が言っていた。 「人間の言う論理なんて、ゆっくりの価値観じゃぜんぜん理解できないの。 理解できない躾にハイハイ従うっていうのは、つまり強者への盲従で、思考停止だよ。 思考停止してる相手に、情も信頼もないでしょ」 続く
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東方キャラが壊れてます。特に衣玖さん好きは要注意。 あとゆっくりが苦しまないのでそれも注意。 永江衣玖は急いでいた。 地震を伝えるためではない。 それは誰でもなく自分のため。 自分の心を満たすために家路を急いでいた。 それは昼下がりのことであった。 「おや、最近よくみるねぇ」と、昼間から酒を飲んでご機嫌な萃香。 「貴方も長いですね。宴会好きな貴方に天界は退屈でしょう」と衣玖。 「んー、そうでもないよ。ところで衣玖はどしたの? 天子なら神社だよ」 「またですか…」 普段は竜の世界と人間界の狭間に住んでいる衣玖だったが、先の神社倒壊事件以降天界にもよく顔を見せていた。 仕事が減って時間が余っているし、何よりもこの天界に住む比那名居天子(ひなない てんし)に会うためだ。 それまでは話す機会も少なかったが、前の事件をきっかけによく話すようになった。 性格のまるで違う二人であったが、不思議と馬が合った。 もっと仲良くなりたいと思っていた衣玖だったが残念なことに天子は博麗の巫女に熱心だ。 まあそれも仕方ないこと。自分から修羅場を作る訳にもいかない。 空気の読める衣玖は自分の心を隠していた。 「ゆっくりしていってね!!」 突然の声に衣玖の回想は遮られた。 「? それはゆっくりですか?」 「そ、ゆっくりだよ」 ゆっくりは知っている。最近幻想郷に出現した生き物で、幻想郷の有名人に似た顔をしていることで有名だった。 しかしなぜ天界にいるのだろうか。 いや、原因は目の前にいる子鬼しかいないだろう。 「暇つぶしだよ。こいつらで遊ぶと面白いんだよねぇ」 「だからといってここに住まわせなくても良いのでは。総領娘様もきっと許しませんよ?」 「あー、だいじょぶだいじょぶ。霊夢型のゆっくりあげたら納得してくれたから」 「ああ――なんてことを」 頭を抱える衣玖。何も嫉妬したわけではない。 総領娘様が許したことで食欲旺盛なゆっくりがこのまま天界で繁殖したらきっと大変なことになる。 美しい花畑も、桃の木も根こそぎ食べられてしまうだろう。 あの我が侭な総領娘様はそんな害まで考えてるのだろうか。困ったものだ。そう、決して嫉妬から否定したわけじゃないんです。 「衣玖も一匹欲しい? たぶん気に入ると思うけど」 「間違いなく要りません。そんな奇妙な生物など」 「きみょうじゃないよ!! ゆっくりはゆっくりだよ!!」 その場にいたゆっくりが何か言っているが無視する。 「そうかなぁ。虐めると反応が面白いんだけどねぇ」 「虐める…ですか。弱い者いじめとは貴方らしくありませんね」 「自分でもそう思うんだけどねぇ。まぁ衣玖もやってみなよ。ほら」 萃香は自分の背中から一匹のゆっくりを出す。 「ですからいりませ…って総領娘様??」 「うん、てんこ型のゆっくり。ここでゆっくりを交配させてみたら一匹だけ生まれたレアものだよ」 確かにそれは天子の顔にそっくりだった。顔はゆっくりのそれだが、桃のついた帽子や髪型は天子のそれであった。 「ゆっくりしていってね!!」 「でも言うことは変わらないのですね」 「まぁ結局ゆっくりだからね。それじゃあこのゆっくりも要らない? なら私が使うけど」 「…待ってください―――」 こうして衣玖は家路を急いでいた。 雷雲を普段とは比べほどにならないほど猛スピードで抜けていく。 「すごい! おそらをとんでるよ!!」 腕に抱えたゆっくりてんこが興奮してしゃべってる。 「でももっとゆっくり飛んでね!!」 さらに注文をつけてきた。 「だまりなさい」 要求を一蹴とするとゆっくりてんこはビクンッと一瞬震えたようだった。結局黙らなかったが。 そうして衣玖は自分の部屋へと着いた。 衣玖の部屋は竜宮の使い達の住む集合住宅の最上階。 竜宮の使い達によるダンスパーティーに優勝した暁に手に入れた素晴らしい部屋だった。 中に入るとゆっくりてんこは我が侭を言い始めた。 「お腹がすいたよ! ごはんよういしてね!!」 それだけではない。 「今日からここがわたしのおうちだね!」 なるほど萃香の言っていたようにかなりの傍若無人ぷりである。 「くすっ」 しかし衣玖は微笑んだ。やはり総領娘様のような我が侭で無ければいけない。 なぜ衣玖が微笑んだのかゆっくりてんこには理解できない。それよりも美味しい料理が欲しかった。 「ゆっ? ゆっくりはやくよういしてね!!」 「はいはい、待っていてくださいね」 「ゆっくりまってるね!!」 衣玖は台所へと向かわず玄関へ向かっていった。 鍵をかける。チェーンもしっかりだ。さらに窓にもカーテンをかけて中が見えないようにする。 これで準備は出来た。これで私がこの家でこれから何をするのか誰にも分からない。 「ゆっくりまってたよ! ごはんは!!」 部屋へ戻るとゆっくりてんこがぴょんぴょんと無防備に近寄ってくる。 顔だけなのに器用なものだ。そう思いながら衣玖は、近寄ってくるゆっくりてんこを、殴りつけた。 ごにゅっと妙な感触が殴った手に伝わる。 次の瞬間にゆっくりてんこは壁にたたきつけられていた。 「ゆ”っ!!?」 「総領娘様と同じ顔を殴ってしまいました。でもこれは挨拶代りですからね?」 衣玖は笑みを浮かべながら床にうつ伏せになっているゆっくりてんこへと近づいていく。 ゆっくりは痛くて泣いているのだろうか。それとも苦しんでいるのだろうか。 衣玖はゆっくりてんこを両手で抱えると、どんな顔をしているのかとゆっくりの顔を自分へと向ける。 しかしゆっくりの顔は衣玖の想像とは違った。 「ゆ、ゆっくりぃ」 泣いてもいないし苦しんでもいない。 ゆっくりてんこの顔は紅潮していて、口元からは涎が垂れていた。さっきのパンチで狂った? それとも――感じてる? 「も、もっと!! もっとゆっくりおしおきしてね!!」 「え、ええ??」 「いじめてね!! ゆっくりいじめてね!!」 ゆっくりてんこは衣玖に殴られて感じていたのだ。しかもさらに攻撃しろと言ってくるのだ。 「と、とんでもないマゾですね。さすがはあの総領娘様にそっくりなゆっくりですね」 衣玖は聞いたことのないゆっくりの反応に少し戸惑ったがすぐにどうでもよくなった。 本当は本物の天子を苛めたいのだが、立場上それはできない。 悶々とした気持ちを日々抱えていた。 しかし今日、総領娘様そっくりのゆっくりてんこを子鬼に譲ってもらえたのだが、 それが姿だけでなく性格も天子と同じように我が侭でマゾだったとは! 衣玖の心はフィーバーした。 こうなると普段は隠しているサドっ気を抑えきれなかった。 「そんなにいじめて欲しいならたっぷりといじめてあげますよ」 そう言うとゆっくりを抱える両手に電気を流した。 「あ”ばばばばばば!!」 大量の電気をその身に受け、白眼を向いて体中に走る激痛を受けるゆっくりてんこ。 苦しそうで痛そうだった。 「ぎぎぎもぢい”い”い”!!!」 しかしそれが気持ちいいらしい。 「そんなに涎を垂らして、だらしない顔ですよ。なんて気持ち悪いんでしょう!」 気持ち悪い、そう言われるとゆっくりてんこは悦しそうな表情を見せる。 「も”、もっどい”っでえ”え”え”!!」 「もっと言ってほしい? なんでそんな事をしないといけないのです?」 衣玖はそう言って床へゆっくりてんこを投げつける。 「ゆ”ゆ”ゆ…ゆ? も、もっとやって!!いじめて!!!」 さっきまで電流を流し続けたというのにすぐにケロッとしてお仕置きをねだってくる。 マゾなゆっくりはタフだった。 「おねがい!! ゆっくりいじめて!! ゆっくりしていって!!」 「だまりなさい。ゆっくりしたいのならそこでぼーっとしていればいいのです」 「ゆゆ~っ!?」 ゆっくりてんこは虐めてくれた相手が突然虐めてくれなくなったのでどうすれあいいのか分からなくなった。 もっと虐めて欲しい。汚い饅頭だと罵ってほしい。自分の心を満たしてほしかった。 そのためにはどうすれば―― (必死におねだりまでして浅ましいですね。総領娘様もそんな感じなのでしょうか?) そうやっておねだりする総領娘様を想像して、衣玖は嫌な気分になった。 と、その時だ。 ガシャーン!! 突然部屋の壺が割れた。いや、ゆっくりてんこが床に落として割ったらしい。 続けて花瓶も床に落とす。さらに床に落ちた花を汚く食す。 「なにを…」 言いかけたところでゆっくりてんこは言う。 「おねえさん! いたずらしてつぼをわっちゃったし、きちゃなくおはなもたべちゃったよ!!!」 「だからわるいゆっくりにおしおきしてね!!!」 なんということだろう。このゆっくりはお仕置きしてもらうためにワザとこんな事をしたのだった。 なんという我が侭なマゾ。 それはまさに成敗されるために博麗神社を倒壊させた自己中心的な天子そのものだった。 「そういうことですか。ならもっと虐めてさしあげましょう」 衣玖は最大級の笑顔でゆっくりを蹴り飛ばした。 「い”だい”よ”!! ぎもぢい”い”よ”!!」 愉悦の表情で蹴飛ばされるゆっくりてんこ。とても幸せそうだ。 壁にぶつかって床に落ちるゆっくりを衣玖は休む間もなく攻め立てる。 「もっと欲しいんでしょう? だったらもっといい声をあげてくださいね」 上向きに倒れるゆっくりてんこを足で踏みつける。 「ゆ”ぐっ!」 苦しそうで嬉しそうな声をあげる。 天子似の顔を踏みつけることで衣玖の心は更に満たされる。 「ふふっ、踏むだけじゃないですよ」 衣玖は左手を腰に、人差し指を立てた右手を天に向ける。 雷符「エレキテルの龍宮-弱-」 ゆっくりを踏みつけた衣玖周囲に雷のバリアが発生する。バリアといっても衣玖以外はダメージを負うが。 本来は大妖怪相手でもダメージが期待できる程のスペルだが、ゆっくり相手なので威力を落としてる。 「あ”あ”あ”~~!!ゆ”っぐりい”い”よ”お”お”!!」 全身を駆け巡る激痛にすっかりヘブン状態のゆっくりてんこだったが、 スペルを発動している衣玖はヘブン状態どころか完全にサタデーナイトフィーバーだった。 「ああ…これです。これをやってみたかったんです! 総領娘様に、天子様にこれを!!」 衣玖は感極まってさらに電圧を上げる。 「あ”っ~、ゆ”っぐりい”っぢゃうよ”!!」 「何を勝手にイこうとしてるんですかこの不細工饅頭」 ぎゅっとゆっくりを踏む足に力を込める。 「い”っぢゃう!!」 ゆっくりてんこは全身から粘性のある液を噴き出した。 「すっきrんぐうっ!?」 オーガズムに達してすっきりしたゆっくりてんこをつま先でぐりぐりと潰す衣玖。 彼女はまだ満足していない。天子相手にしたかったこと、そのすべてをやろうとしていた。 「あら勝手にイって満足しないでくださいね。夜はまだまだこれからなんですから」 「ゆ”っ…っぐりーー!!」 衣玖の激しい攻めにまたも悦びの声をあげるゆっくりてんこ。 この一人と一匹は本当に相性が良かった。 結局衣玖の霊力が尽きるまでこのハードSMは続いた。 「はぁはぁ…少し、フィーバーしすぎましたね」 あまりの激しい衣玖の攻めにゆっくりてんこは絶頂のアヘ顔で絶命してしまっていた。 しかしその頭から蔓がのび、その先にゆっくりてんこが二匹実っていた。 どういう原理かはわからない。ただ虐めに虐め抜くとてんこは子を宿すようだった。 衣玖としては虐める対象が一匹から二匹に増えただけ。それで充分だった。 (この二匹が目を覚ましたらまた虐めるとしましょうか。一匹は透明な箱にでも入れて放置プレイもいいですね) 天界に住み着いた子鬼に譲ってもらったゆっくりてんこは衣玖の隠れた性癖を満たす最高の玩具になった。 そのゆっくりてんこは死んだが虐めてくれる最高のご主人様に出会えて幸せだった。 目を覚ました二匹のゆっくりてんこに衣玖は笑顔で語りかける。 「おはようございます。貴方達はゆっくりしたい? それとも虐めて欲しいですか?」 「ゆっくりしたい! ゆっくりいじめてね!!」 衣玖は妖しく微笑む。 こうして衣玖もまたゆっくり虐め(てんこ限定)に熱中してしまうのでした。 続く 合意の上ならいじめても仕方ないよね! 俺の中のキャラ設定 衣玖さん : 隠れサド。天子をいじめたいと常に思っているが立場上出来ないので悶々している。 天子 : 真正マゾ。お仕置きされたいがために神社を潰した。今日もお仕置きされるために神社の賽銭箱をプチ要石で潰した。 ゆっくりてんこ : オリジナルの性格を受け継いているので真正マゾで構ってちゃん。 この設定で続き書くなら一匹だけ虐めてもう一匹を透明な狭い箱に入れて放置プレイで苦しませてやりたい。 構ってもらえないうえに、動けないんで気を引けなくて発狂するゆっくりてんこ。 そして虐めてもらえないまま…みたいな。
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人間と山のゆっくり 古緑 「コレが目を開いてから三日目の写真でな、 コレが初めて喋った時の写真、キーホルダーみたいだろ?」 「えぇ、そうですね」 「なぁA」 「んでこれが初めて牛乳パン食べた時の写真、 こっちの写真はれいむが初めて」 「A!」 「何?B」 「もういいだろ」 「何が?」 「その…それだよ 写真見せたりお前ん家のゆっくりの話するのだよ ちょっと反応に困ってるだろ」 「何で?」 「……いやもういい」 「そんでコレがな…」 僕は今電車の中でA先輩の持ってきたアルバムを見ている(見せられている) 挟んである写真は先輩の飼っている4歳になるゆっくりれいむ。 先輩は地元の家の近くの叢でこのゆっくりれいむを拾って来てから4年間もの間 そのゆっくりれいむを愛し続け、写真ももうアルバム7つ分にもなっているという。 正直その写真を半強制的に見せ続けられるのは少し辛いが、 全く興味の無い事でもない。 これから行く場所には写真の中のものと同じ生き物が数多く生息しているというのだから。 今日も見れるかもしれないとB先輩も言っていた。 電車の向かう先は○○山のある○○駅。 15kg超えのザックを背負い、700gの新品の登山靴を履いた僕は 初めての登山に赴く○○高校登山部の高校一年生だ。 A男先輩は高校三年生の同部活の先輩だ。 今回の山行では A男先輩がチーフリーダー(山行の企画をし、登山時は最後尾で班員を見守る)を務める。 登山歴は中学の頃かららしく、頼れる先輩だ(少し強引だが) B太先輩はA男先輩と同じく二年生で 今回はサブリーダー(登山時に先頭に立ち、班員を導く役割)を務める。 どこかミステリアスな雰囲気(暗くてなんか怖い)を漂わせる先輩だが 普段から優しい人でAさんの親友だ。 あとは僕と同じ一年生が二人。太ってるC君と痩せてるD君。 この一年生親睦山行で仲良くなれると良いんだが。 目的地を告げる電車のアナウンスを聞き、僕達はザックを荷台から降ろしてホームへと降りた。 改札口を出て見えるのはカラフルなザックと登山者風の服装の中高年。 今回行く山はやはり登山者にとって人気の山という事なんだろう。 駅にある水道で2リットル程水筒に水を入れてから バスに乗って山の麓まで行く。 そこからが脚を使う登山のスタート地点だ。 バスの中は人こそ少ないが大きなザックがスペースを取るのでやはり座席は埋まってしまう。 バスが赤信号で止まってる間、 ぼんやりとガラス窓から見える林を眺めていると 赤のリボンと黒いトンガリ帽子の球体が林の方に跳ねて行くのが見えた。 「先輩、今なんか…」 「あ、見てたか?アレがゆっくりだよ」 振り返って後ろの座席にいたA先輩に ゆっくりらしきモノを見たと言おうとしたところ先輩も見ていたようで、 このあたりのゆっくりの説明を受ける事になった(少し後悔した) 山と人の住む場所の境にはゆっくりが良く現れるらしく 特にこの山では多いらしい。 最近は数が減ってきたのか見れる機会は少し減ってきているそうだ。 A先輩の話を聞きながら田んぼばかりの田舎道をバスが青信号を進んで行く。 「ゆっ?れいむ、にんげんがおりてきたんだぜ! おいにんげんども!まりささまにごはんよこすんだぜ!」 「おにいさん!かわいいれいむにごはんちょうだいねぇ~ん?」 目的地のバス停で降りると見慣れない生物が出迎えてくれた。 先に降りた中高年夫婦の登山客にまとわりついている。 先輩二人には見慣れた光景のようで特に気にしている様子はない。 「先輩、アレ…」 「あー酷いだろ アレがここら辺のゆっくりだよ 人の集まるバス停に溜まるんだ」 ゆっくり好きの筈であるA先輩に訊いたところ、 全く興味無さそうに答えてくれた。 「なにモタモタしてるんだぜぇ?はやくよこぶぇ!!」 「ばでぃざぁぁぁああぁあぁ!?」 その時前にいた中高年夫婦の旦那さんの方がトンガリ帽子を蹴ってどかした。 まさかあんな温和そうな人が…と僕はその光景に驚いたが、 B先輩が言うには 「さっきの駅前でもそうだが、バス停付近で人にタカろうとするゆっくりは 後片付けをするならお前等も殺してもいいぞ」 らしい。 この辺じゃゆっくりを殺す事自体は禁止されているそうだが 殺しても誰も咎めないし、誰もそれを守っていないそうだ。 中高年夫婦は後片付けまでする気がないのか ある程度動けなくなるまで踏んだところで山道に入って行った。 B先輩が地図を広げて現在地を確認すると、 B先輩を先頭、一年生を挟み、A先輩を後尾にして5人は一列となって山道に入って行った。 肩に食い込む荷物と、登山靴がしっかりと土を踏み込んで行くのをその足に感じながら、 僕等は今日の目的地であるテント場へと歩いて行った。 「ゆっ?ゆっくりしていってね! ここをとおりたければ『つうこうりょう』をはらってね! あまあまでいいよ!」 「ここはれいむたちのゆっくりぷれいすだよ! にんげんさんたちはあまあまをゆっくりちょうだいね!」 テント場に行くまでには歩いて数時間かかる。 その間一時間に一本取る十分間の休憩の中でガサガサとどこかからまたゆっくりが現れた。 紅いリボンのが二匹。 どこかさっきのバス停の奴等よりもマイルドな話し方だ(初めて『ゆっくり』というのを聞いた) 「先輩、コイツ等は…」 「あぁ、コレが山の入り口あたりのゆっくりだよ 人間にタカってくるのは変わりないけどさっきのよりはちょっとはマシだろ? コイツ等オレ達のザックの中にメシが入ってる事知ってるんだよ」 B先輩に訊いてみたところ山の入り口のゆっくりは ザックの中の僕等のオヤツやご飯が有る事を知っているらしい。 この時先輩から受けた注意によると、 主に登山初心者がやってしまうミスの一つに、 ゆっくりにカロリーメイト等のお菓子を与えてしまうのがあるそうだ。 与えられれたその味を一度知ってしまったら最後、 町に降りて来たり、人が来る入り口付近等でタカってくるのを止めないらしい。 そういえばこの休憩場所のちょっと向こうにある看板に 『ゆっくりに餌を与えないで下さい』と書いてある。 (この時休憩時間の10分を過ぎたらしく、A先輩が皆にザックを持つよう言いだした) 「山の中の如何なる物に対しても出来る限り人間の影響を残してかないのが 登山者のマナーだと俺は思うんだがね、 まぁコイツ等も所謂人間の被害者って事かな…」 「ゆっくりあまあまをちょぶぇ!!」 「どぼじでごんなごどずるのぉおぉぉぉ!?」 そう言いながらも笑顔でゆっくりを蹴りどかして行くB先輩。 『ちょっとは痛い目に遭った方が人の住む所に近づかなくなる』そうだ。 山に影響を与えず云々とは言っていたが、難しいところだ。 予定通り6時間程歩いた僕等は無事テント場に辿り着いた。 歩いてる間、ずっとA先輩と話していたC君とD君も 疲れているようだが問題は無さそうだ(僕は脚がガクガクだ) テントを建てる前にA先輩達は顧問への電話、 B先輩はテント場管理人への連絡の為、僕等一年生はその場に残されてしまった。 僕は親睦の為の良い機会だと思ったので、テント場にある山小屋で ココアを飲みながら一年生だけでトランプで遊びながら親睦を深めた。 二人とも面白い人みたいで仲良くやって行けそうだ。 夕方5時半にお米をコッヘルで炊いて、レトルトカレーと海鮮サラダを食べ終えた僕らは テントの中で学校の話、倶楽部の話、一年生の話、さっき見たゆっくりの話等、色んな話をした。 その話の中でB先輩がゆっくりを飼っているA先輩以上に 『異様に』ゆっくりの体の構造や習性に詳しい事が分かり、 D君がちょっとした冗談を言った。 「もしかしてB先輩ゆっくり虐待とかしてるんじゃないですか?」 僕もどこかのニュースで『ゆっくりに対して拷問や暴力を働くのを 止められないと言う男』がモザイク付きでインタビューに答えているのを見た。 『ゆっくり虐待』って言うんだな。 そりゃ失礼だろ、とC君がフォローしようとしたその時 「はああぁぁああぁぁ!!?虐待とか無いし!! 俺ゆ虐とか全然興味ねーから!!赤ゆとか大好きだし!!超可愛いし!!」 「「「………………」」」 まるで何百回と口にしたような流暢な発音で出て来た『ゆ虐』とは恐らく 『ゆっくり虐待』を略したモノなのだろうか? 『赤ゆ』ってなんだろう? 踏み込んではいけない領域に踏み込みそうになったので 一年生が沈黙し出すとA先輩がポテチとジュースとUNOを出し始めたのた。 それを見た僕等はこの話をお流れにした。 「ゆっくりしていってね!」 「ン?」 カードを片手にポテチを食い終えようとしたその時 テントの外から例の声が聞こえた。 外を覗くとトイレに行っていたC君の近くにトンガリ帽子がいる。 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「何だ、コイツ?」 またゆっくりだ。 でもさっきの奴みたいに横柄な口を利く事も無く、 ただ『ゆっくりしていってね!』としか言わない。 その姿は見ようによっては少し愛らしくもある(僕はちょっとキモイ生物が好きだ) 「先輩…アレって…」 「あぁ、アレがテント場近くのゆっくりだよ ラッキーだな、色んなゆっくりが見れて 奴等はもう寝てる時間だろうが人の声を聞きつけて来てたんだろ」 B先輩に訊いてみたところテント場には 食べカスを残して行ってしまう人がたまにいるらしく、 それを知っているゆっくり達は『人の近くはゆっくり出来る』と思ってしまい、 夕方の人のテント近くに集まって来る事があるらしい。 「C、ちょっとそのゆっくりまりさ小突いて追っ払ってやれ」 「えっ…」 「いいんだよ、そいつ等の為にもなる それにこれからはお前等がやる事になるんだから」 A先輩が言うにはテント場に集まるゆっくり達も 心の何処かで『人がゆっくりさせてくれる』と思ってしまっており、 人がその状態のゆっくりと関わるのはゆっくりにとって良くない事らしい。 小突いて追っ払えば『人とはゆっくり出来ない』と思ってくれるそうだ。 これは人にとってもゆっくりにとっても良い事だ。 このゆっくりに安易に『人はゆっくり出来る』と思わせてしまうと 多くのゆっくり達が人の住む町に来しまうとA先輩が言っていた。 さっきの山の入り口にいたようなゆっくりに変わってしまうんだろうか? 「ホレ、アッチ行きな」 「ゆっ?やめてね!やめてね!ゆっくりできないよ!」 C君が登山靴から履き替えたサンダルの先っぽで トンガリ帽子(ゆっくりまりさという名前らしい)を小突いて追い返した。 あれでゆっくりまりさは人に近づくのを止めるだろうか。 止めた方がいいのだろう。 あのバス停のゆっくり達や入り口近くのゆっくりの様になってしまうのなら。 それからまた暫く遊んでから僕等は夜の8時には寝袋を敷いて就寝する事になった。 朝の4時半に起床。 最低限の荷物を小さな鞄に持ち替えて、 僕らはテント場から山の頂上まで朝日を見に登って行く。 雲は無いしきっと綺麗な朝日を見れるだろう。 そうA先輩はアキレス腱を伸ばしながら僕らに言うと デジカメをポケットから出してカメラのチェックを始めた。 山の朝はとても寒く、暗い道を頭につけたランプで照らしながら進んで行く。 隊列は昨日と同じ。 だが歩き始めてから一時間と40分程でその隊列は変わる事になった。 馴れない早朝の運動にヘバってしまったのか、休憩を申し出て来た。 「B先輩…ちょっと休憩貰っていいですか…」 「頑張れC、頂上もう見えてるからよ オイA、ちょっとCに先頭行かせるか?」 A先輩が言うには先頭に立って自分のペースで歩かせた方が 疲労感が抑えられるらしい。 B先輩はCにポカリを飲ませるとCとの位置を交換した。 そしてCはゆっくりと自分のペースで山頂までの岩だらけの道を歩き出した。 「おぉーし!お疲れ!C、あそこの平らなトコまで行って休憩だ」 ようやく頂上まで辿り着いたC君は安堵の顔を見せながらも完全にヘバっており、 ホッとしながら死にそうな顔という器用な顔を見せている。 C君はA先輩に言われた通りに平らなところに向かって歩き始めた。 「ゆっくりしていってね!」 「ちょっと…通してって」 どこからかまたゆっくりれいむが現れた。 へとへとにヘバっていたC君は道を阻まれた事で少し苛立ったのだろうか テント場のゆっくりにした様にゆっくりを小突いてどかそうとした。 その時 「待てC!!」 突然B先輩が叫んだ。 休憩場所で容赦なくゆっくりれいむを蹴りつけていた人とは思えないような発言だ。 だがB先輩が叫ぶまでもなく、C君は脚を止めていた。 「ゆっくりしていってね?」 「…あぁ、ゆっくりしていくよ」 C君はザックを背負ったままそのままそこにゆっくりと座り込むと、 丁度出て来た太陽光をその体に浴びて日光浴を始めた。 ゆっくりれいむはその一年生の膝まで跳ねて行くと 膝の上に乗ってその一年生と同じ様に目を閉じて日光浴を始めた。 B先輩が言う。 「今回はツイてるな、やっぱり」 「あのゆっくり、なんか…どっかおかしくないですか? どこから出て来たんですかアレ」 班員の皆も気付いていると思うが、 山頂付近は石や岩ばかりで樹も草も無く、前方の視界を遮る物が無い。 あんな紅いリボンが灰色の道で動いていたら気付かないわけが無い。 あのゆっくりれいむは浮かんで来るように現れたのだ。 「あれが人の影響を全く受けてない山奥のゆっくりだよ 晴れの日の山頂にも稀に出てきてな、落ち着いてない生き物を落ち着かせるんだ 急に現れた様に見えたのは…まぁ『湧いて出て来た』っていい方は変だが そんなところだ。まだよく分かってないらしい 滅多に見られるもんじゃないぞ」 Aさんが解説する。 よく見るとそのゆっくりれいむは丸い体を包み込む様に 僅かな光を纏っている様に見える。 ゆっくりれいむを膝に乗せたC君はまるで 晴れの日に縁側で昼寝をする猫のように目を細めていた(その顔はゆっくりみたいだった) 「二年ぐらい前はそれ程珍しくも無かったんだけどな やっぱ山頂でもエサやる人間がたまにいるからどんどん山を下って行っちまうんだ コイツ等は元々、人の食い物が欲しくて人に近づくってワケじゃないのにな… そうなったらもうコイツ等は別物になっちまう あの肉を持たない妖精のような存在から、昨日見た醜く口汚い生物になっちまうんだ」 B先輩が少し辛そうにそう言った。 「どうしてそうなっちゃうんでしょうね?」 C君を見ながらD君がA先輩に訊いた。 「人と同じなんじゃないかな? 自分にとってとてつもない快楽が手の届くところに有れば どうしてもそれを得ようと必死になっちゃうモンだ 奇妙な事だが、人に干渉出来る様に肉体を持つのもそのせいかもしれない きっとゆっくりも同じなんだろうな」 僕はこの日初めてこのゆっくりと出会い、 班員達はC君の膝の上でゆっくりしているゆっくりれいむの周りで休憩しながら 30分間の休憩の予定を倍の1時間にしてしまった。 僕はゆっくりさせてくれたゆっくりれいむに感謝すると共に あぁ、山に来て良かったな。そう思った。 そして一時間後、十分ゆっくりしていった僕等は ザックを背負って頂上から降りようとしていた。 「またいっしょにゆっくりしようね!」 「あぁ、またゆっくりしに来るよ」 それを聞いたゆっくりれいむは嬉しそうに目を細めると 風景に融ける様に消えて行った。 そして僕等はリラックスした気分でテント場まで下り、 テントを片付けて、バス停まで戻って行った。 その日のスケジュールはハードだった筈だが 何故かこの日は辛いなんて思わなかった。 きっとあのゆっくりの御陰なのだろう バス停近くのアスファルトの道を登山靴で鳴らしながら 僕はまたあのゆっくりれいむに会いたい、そう思った。 「んほぉぉぉぉおぉおぉぉぉおぉ!!!」 「やべるんでぜぇごのぐぞれいばぁあでぃず!!」 「ゆ”っ!かわいそうなれいむにごはんをもってきてね!はやくしてね! なにしてるの?れいむはにんっしんしてるんだよ?もたもたしないでね!」 「つんでれまでぃざがわいいぃぃいちゅばちゅばしであげるわぁああぁ!!!」 「ばぁ~きゃ!とっととあまあまよこちぇじじぃ!」 「「「………………」」」 バス停の前でまた出迎えてくれたゆっくり達を見て A先輩は萎えきった顔になって降ろしたザックの上に座り込んだ。 バスが来るまでの二十分間コイツ等と待ち続けなければならない A先輩はウンザリした顔つきで僕等に向かって言った。 「オイ、昨日も言ったがバス停付近に出てくるゆっくり殺しても 片付けるんなら誰も困んないから、そうしたければ殺ってもいいぞ ゴミ袋もほら、ここに」 僕らを使わないで下さい。 急にそんな事言われても困る。 ウザくてもイキナリ殺すなんて事は 「ん?しょうがねぇな!美しい町づくりの為だからな!うん!」 B先輩だけはノリノリのようで ぷくーっと膨らんで威嚇?するお腹の大きい不細工なゆっくりれいむの方に向かって行った。 「オイB、駅まで水道とか無いから産道に手突っ込んで 中身取り出したりすんなよ、いつもみたいに」 「はぁああぁぁあぁあ!?いつもそんな事してないし!! 子供引きずり出して親に見せつけるとかないし!!」 「「「…………………」」」 ー完ー
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幻想郷も夏となれば暑い。 そして、私の家は涼を得るための道具が風鈴しかない。 だから、私はその日、家の窓を全て全開にしておいた。 少々の虫は寄るだろうが、別に気にする事もない。 どうせ家は古ぼけているし、この辺りには妖怪も猛獣もいないのだ。多少虫に刺された程度ならば何でもない。 全ての窓を開け放った後、一番涼しくなる場所まで移動して、そのまま寝転がった。 こういう時の畳の心地良さは、言葉にできないものがある。 少しだけ休もう。そう考えつつ、そのままうとうととしてしまった。 『ゆっくりしないでね!』 どうやら完全に寝入っていたらしい。 日はかなり傾いており、何やら物寂しい気分にさせる光景が広がっていた。 何となくため息を一つついてから、食事でも摂ろうと台所に向かっている最中、ガシャンガシャンとやかましい音が聞こえてきた。 泥棒でも入り込んだかと寝ぼけ頭で考えつつ台所に入った私は、それを見て呆然と立ち尽くした。 放射状に割れている陶製食器、食い荒らされた食料、土まみれの床板。 「ゆっくりしていってね!」 そして、その真ん中で異様に得意げにしている饅頭。 幻想郷最弱にして一部の人からはウザいと言われて死ぬまでいたぶられ、一部の人は保護し尊重しているという良く分からない生物、ゆっくりだ。 「ゆっくりしてね! おにいさんはゆっぐ!?」 何か言っているのを無視して、捕まえたゆっくりをガラス製の水槽に放り込み、そのままフタを閉める。 その後、何やら騒がしいゆっくりを尻目に、そのまま部屋を片付けた。 片付けが一通り終了した。 陶製の食器は思ったよりも割れておらず、食料も見た目より減ってはいない。というより、食べた量より食べかすの方が多い。 やけに少ない被害に首を傾げるが、考えてみれば幻想郷最弱のゆっくりなのだ。重いものやすぐに食べられないものは狙わなかったのだろう。 子供のいたずら……にしては性質が悪いが、この程度ならば軽くお仕置きをしてから開放してやっても良いかな。 そんな事を考えつつ水槽に近づいてみると、ゆっくりはボロボロと涙をこぼしていた。 何度も出ようと試みたのだろう、顔の至る所が食紅でも使ったかの様に赤くなっている。 これなら飛び出す心配もないだろうと思い、水槽のフタを開けてみた。 「っぐ……いだいよ、いだいよ……ゆっ! おにいさんここからだして! おうちかえる!」 フタを開けた瞬間、ゆっくりは水槽をごとごとと揺らして泣き叫び出した。 家を荒らされた私の方が悪者の様で若干不愉快だが、そこはぐっと堪える。 危険な生物が近くにいないという事で、警戒心がなくなっていたのは私の方なのだ。 むしろこの程度の被害で済んだ私は、運が良いのだろう……と、考えていてゆっくりの事を忘れていた。 うっかりしていたと思いながら見てみると、当のゆっくりは白目をむいてがたがたと震えていた。 「おねがい! あやまるからおうちかえして! へんなことしないでゆっくりさせてよ!」 そのまま、何度もへこへこと奇妙な屈伸運動をしつつ、ごめんなさいごめんなさいと繰り返す。 どうやら、謝っているつもりなのだろうが、何故ここまで怯えているのだろうか。 不思議に思いつつ水槽を覗き込むと、ゆっくりはカッと目を見開いて、凄まじい悲鳴を上げた。 「ゆあああああぁぁぁ! ぞんなにはやぐうごがないでぇぇぇ! ゆっぐりでぎないよぉぉぉ!!!」 早く動かないで? ゆっくりできない? 意味の分からない事を言うゆっくりを落ち着かせるためにも、話しかけてみる。 「何を言っているんだ? ゆっくりも何も、私は動いていないが」 「おててがぁぁぁ!!! ひらひらひらひらおててがゆっぐりじでないよぉぉぉぉぉ!!!」 泣き叫ぶゆっくりだが、その内容はいまいち良く分からない。 『おてて』と呼ぶ物は恐らく手の事だろうが、手がどうしたと言うんだ? 不思議に思いつつも何気なく左手を見ると、そこそこの速度で左右に揺れている。 「はやぐ! はやぐどめでぇぇぇ!!! なんでもずるがらゆるじでぇぇぇぇぇ!!!」 口の端から黒い泡を吹き出して絶叫するゆっくり。 その様子を見て、ようやくこの手の動き(考え事をする時のクセである)が恐怖の対象なのだと分かった私は、すっと動きを止めて後ろ手を組んだ。 「ほら、もうゆっくり出来るだろう?」 「あ……ありがどおおおおぉぉぉ」 心底安堵した声を上げるゆっくりを眺めていると、イタズラ心が湧いてきた。 「ゆっくり出来たんだから、ここから出す必要はないな。じゃあ、しばらくそこでゆっくりしていてね」 「ゆぎゅ!? まっで! おうぢがえりだいよぉぉぉ!!!」 安堵の顔から一転して、また白目をむいて泣き叫ぶゆっくり。正直面白い。 その情けない有様を眺めていると、一つの『お仕置き』を思いついた。 私は、出来るだけ優しそうに見える笑顔を浮かべて、ゆっくりに話しかけた。 「よし、それならおうちに帰してあげよう」 「ゆっ、ほんとう!? おうちかえしてくれるの!?」 泣き顔からまた一転して笑顔へと変わるゆっくり。 「ゆっくりかえれるよ!」「おうちでゆっくりするね!」などと、もう帰った後の事を考えて嬉しそうに飛び跳ねだした。 だが、そう簡単には帰してはやらないぞ。 「まてまて、帰す前にする事があるだろう」 「することってなに? まりさはすごくゆっくりしてるよ!」 不満そうに口を尖らせるゆっくり。こいつはどうやら、まりさと言うらしいな。 ゆっくりのまりさだから、ゆっくりまりさか。今後はゆっくりまりさとでも呼ぼうかな。 「ゆあああぁぁぁ! おででがゆっぐりじでないよぉぉぉ!!!」 おっと、クセが出てしまった様だ。 慌てて後ろ手を組むと、ゆっくりまりさはぷくっと膨らんで「ぷんぷん!」などと言い出した。どうやら怒っているらしい。 「ゆっ! おにいさんはゆっくりできないひとだね! はやくまりさをおうちにかえしてよ!」 いや、だからその前にする事があるんだって。 何秒か前に言われた事すら覚えていない頭の悪さに内心苦笑しながらも、笑顔を崩さずに語りかける。 「ダメだよ、ゆっくりまりさは悪い事をしたんだから、お仕置きをしなきゃいけない」 「ゆぎゅ!? まりさなんにもわるいことしてないよ! おしおきはなしにして、おうちかえして!」 「ダメだ、私の家をメチャクチャにしたじゃないか。それは悪い事だろう?」 「なんでぇぇぇ!? まりざおにいざんのおうぢめぢゃぐぢゃになんがじでないよぉぉぉ!? おじおぎなんでざれだらゆっぐりでぎないぃぃぃ!!!」 甲高い声で泣き叫ぶゆっくりまりさ。 自分が何をやったのかを理解していないのか、本気で悪い事は何もしていないと思っているのか……恐らく後者だろう。 ※ 一から理解させてやらなければならないのだろうか……ため息をついて、やや怖い顔を作る。 「じゃあ、私がお前のおうちにある食べ物を食べたり、おもちゃを壊しちゃっても良いんだな?」 「だめだよ! そんなことされたらゆっくりできな……」 中途半端な所で言葉を止めたゆっくりまりさは、ハッと驚く様な顔になって、そのままぶるぶると震え始めた。 勝手に家の食べ物を食べられ、おもちゃを壊される……それは、先ほど自分がやった事だとようやく気付いたらしい。 そのまま考え込む様に目を閉じて「ゆぅ~」とうなり声を上げた。覚悟を決めているらしい。 少し経って目を開いたゆっくりまりさは、饅頭だと言うのにやけに凛々しい表情を浮かべていた。 「……わかったよ、まりさがわるいことしたからおしおきされる! でもあんまりいたくしないでね! いたくしたらゆっくりできないよ!」 ゆっくりおねがいね! などと飛び跳ねるゆっくりまりさ。 勝手な事を言っているのにどこか憎めない態度に、思わず苦笑いが浮かんでしまう。 子供がわがままを言っている様に感じてしまうからだろう。 「よし、覚悟が出来ているならお仕置きをするぞ」 「ゆっ! おねがいします!」 屈伸運動をするゆっくりまりさ。お辞儀のつもりだろう。 お仕置きをするだけなのに、稽古中の師匠と弟子の様で面白いが、ゆっくりまりさは真剣な眼差しでこちらを見つめている。 「じゃあ、始めるぞ」 「ゆっくりいつでもどうぞ!」 よほど怖いのだろう、良く見るとふるふると震えている。 すぐに終らせてやるからな。心の中でそう誓いつつ、ゆっくりまりさの目の前に手を持って行く。 「しばらくこの手を見ている事がお仕置きだ、分かったか?」 「……ゆ? ゆっくりおててみているよ!」 不思議そうな顔をした後で、嬉しそうに飛び跳ねるゆっくりまりさ。 お仕置きと言われて緊張していたら、手を見るだけなどという半ば遊んでいる様な程度で済んだのだ。その気持ちも分からなくはない。 だが、そこまで甘くはないぞ。 「これはお仕置きなんだからゆっくりされては困るな。これからが本番だ」 にこにこと笑うゆっくりまりさの目の前で、手をゆらゆらと動かし始める。 ゆっくりまりさは「ゆっ!?」などと驚いた声をあげつつ、先ほどよりずっと遅い速度で揺れ続けるそれを目で追いかけた。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ……」 珍妙な掛け声で噴出しそうになるのを堪えつつ、ゆっくりと手を動かし続ける。 右、左、右、左……ゆらゆらと動く手を追いかけ続けるゆっくりまりさは、べちゃんと転んでしまった。 「ゆぎゅっ……ゆっくりできないよ!」 そのままぷくっと膨らもうとするが、起き上がった時点でまたゆらゆらと動く手を見て、すぐに目で追いかける。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ……」 珍妙な声を上げつつ、ゆっくりと動く手を眺め続けるゆっくりまりさ。 その極めて難しい事に挑む挑戦者の様な表情を眺めつつ、私はゆらゆらと手を動かし続けた。 「はい、お疲れさん」 「やっどゆっぐりでぎるよー!!!」 私の声を聞いた瞬間、疲れ果てたとばかりにぷにょんと平べったくなるゆっくりまりさ。 「ゆぅぅぅ……おめめがいたいよ!」 数分間ふらふらと手を追っていたのがよほど堪えたのだろう。 ゆっくりはぱちぱちとまばたきを繰り返している。 「ゆっ……おめめがゆっくりできたよ!」 しばらくそうしてから、ゆっくりまりさは嬉しそうに叫んだ。良く見ると、目がつやつやと輝いている。 ゆっくりもドライアイになるんだな……おっと、考えていたらまた手が動いてしまうから考えない様にしなきゃな。 それに、お仕置きは終ったのだから、家に戻してやらなければならない。少し残念に思いながら、水槽から出してやった。 「おにいさんありがとう! それとごめんなさい! おうちでゆっくりはんせいするね!」 水槽の外に出た途端、嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねていくゆっくりまりさに声をかけた。 「ああ、もう家を荒らすんじゃないぞ」 「ゆっくりわかったよ! ばいばいおにいさん、ゆっくりしていってね!」 その場で飛び跳ねてから、かなりのスローペースでどこかへと去っていくゆっくりまりさを、微笑ましく眺める。 あのゆっくりまりさは、二度と同じ事を繰り返しはしないだろう。 そう考えると、心を鬼にしてやった甲斐があったというものだ。 穏やかな気分になりながらも、足りなくなった食器や食材を買いに行く事にした。無論、戸締りはしっかりとしてからだ。 お仕置きしている最中に降り出した雨の中、急ぎ足で買い物へと出かけた。 近頃流行りのぬるいぢめと32スレ 811の言った○○すれば~~してやる系統の話でふと思い立ったものを一つ即興で上げようとしたけど長くなりました。 ちょっとぬるすぎると思った方のために、先に思いついたドギツイ虐待も置いておきます。 ※から下がそれなので、良かったら見て下さい。 by319 ※ それにしても、うるさい事この上ないな。ゆっくりがウザいと言う人の事が少し理解できた気がする。 「分かった、まりさは悪い事はしていないと言うんだな。なら、家には帰せない。そこでしばらく反省しなさい」 「わるいごどじでないのにぃぃぃ! おうぢがえじでよぉぉぉ!!!」 いかにも自分は被害者だという叫びを上げるゆっくりを無視して、フタを閉める。 水槽を覗き込むと、ゆっくりの方も気付いたのか、激しく跳ね回りながら泣き出した。 音が聞こえないために何を言っているかは分からないが、何と言いたいかは分かる。 家に帰りたい、助けて、ごめんなさい。まりさは何もしてないよ、許して。 最初は、子供のいたずらに近いものがあるし入ったのがゆっくり程度で良かったと思っていた。 だからこそ、先ほど考えていたお仕置きも簡単なもので済ますつもりだった。 だが、こいつは全く反省していないどころか、自分は被害者で、冤罪だとほざいている。 これまで優しく接していた自分が愚か者だと突きつけられた様な錯覚に陥る。 苛立ちをそのまま饅頭に叩きつけたくなるが、そんな事をしたら今度こそ自身の間違いを肯定する様なものだ。それは気に入らない。 では、どうするか……決めた。 さっき思いついた『お仕置き』を少々キツめにやってやろう。 これなら暴力は振るわないで心の底からの反省を促す事が出来る。 「おうぢがえじでぇぇぇ……ゆっ? おにいざん、なにじでるの!?」 まず、ゆっくりの目の前に手を持ってくる。 「おはなじぎいでよ! ゆっぐりでぎないよ!」 そのまま、ひらひらと左右に手を振る。 「ゆっ!? ゆ、ゆ、ゆ……」 何かと思って追いかけるゆっくりの前で、どんどん手を早く振っていく。 「ゆっ、ゆっ……ゆゆゆ、ゆっぐりでぎないよ! もっどゆっぐりじでよ!」 だが断る。更に手を早く振り、ゆっくりできなくしてやる。 「ゆぎゅあぁぁぁぁあぁあぁぁぁあ!!! ゆっぐりじでよ! ゆっぐりじでよ!」 泣きじゃくるゆっくり。 この期に及んでまだ被害者ぶるその態度が勘に触った私は、風を切る音が聞こえるほどに素早く手を振り続けた。 「やべでぇぇぇぇぇゆっぐりざぜでぇぇぇぇぇ!!!」 皮がふやけるほどの勢いで涙を流すゆっくり。 小賢しい。腹の底から怒りが沸き上がってくる。 泣きじゃくるゆっくりの前で、私は手を小刻みに振り続けた。 「ゆるじでぐだざいぃぃぃぃ;あkhy:@ばdgは:!!!」 ゆっくりは、あまりにゆっくりできない現状に絶望したのか、意味不明な叫びと共に黒い何かを吐き出し始めた。 だが、私は怒りのために疲れは全く感じない。 こうなれば、持久戦だ。 私が疲れて手を振る事をやめるか、ゆっくりが被害者ぶるのをやめて、自分が悪かったと反省するか。 そんな事を考えながら延々と手を振ってゆっくりさせない事に専念していたせいで、ゆっくりが段々と目の輝きを失っていった事には気が付けなかった。 どれだけの時間手を振り続けていただろうか。 流石に疲れた私は、手を振る事をやめた。 「……どうだ、これだけやったら反省しただろう」 「………………」 ゆっくりは無言でうつむいている。 流石に反省したと思うのだが、こちらの被害も甚大だ。手がぶるぶると震えている。 こんな事で腱鞘炎にでもなったらバカらしいが、それもこれも、ゆっくりに反省してもらうためにやった事だ。 「分かったか? 自分がやった事を棚に上げて、被害者ぶるなんて許されない事なんだぞ」 「………………」 うつむいたまま動かないゆっくり。 ひょっとしたら、叫び疲れて寝ているのかもしれない。 だとしたら、途中からは何のためにやっていたのか分からないが……若干の冷や汗を背中に流しつつ、ゆっくりが寝ていないかどうか確認してみる事にした。 「おい、聞いているのか? お前は……」 ぱさりと帽子が落ちたその中の饅頭を見て、私は絶句した。 私の家は、勝手に誰かが入り込んでくる様な立派な家でもないし、妖怪もこの辺りにはいない。 だから、私が油断していたと言わざるを得ない。 理性では分かっている。だが、感情では分からない。 だから、私はこんな事をしたのだろう。 「ゆ……ゆ……ゆ……」 目の前には、白目をむいて震えているゆっくりが一匹。 外傷はないが、精神に負った傷はもう二度と治る事はないだろう。 哀れな饅頭の前で、詫びる様にゆっくりと手を振った。 このSSに感想を付ける
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「ふふふふふ・・・ついに完成したぞ! ゆっくリミッター解除装置!」 解説しよう! ゆっくリミッターとは、ゆっくりの能力を押さえつけている餡子型セーフティシステムである。 あらゆる生物にリミッターが存在し、人間ならば本当に最大の力の2,3割しか使えないように制御されている。 そして、ゆっくりはリミッターによってその能力の99.7%を封じられており、それゆえに貧弱なのだ。 もし、ゆっくりの普及した現代社会でこのリミッターを外部からの簡単な刺激で外すことに成功すれば、それはもはや兵器である。 私はそれに成功したのだ! 幾多のゆっくりの犠牲の上に成り立ったさいこうのゆっくリミッター解除機。 世界の混乱と混沌の時代を夢に見ながら、私は最高傑作に起動を命じた。 程なくして、彼の秘密基地周辺のゆっくり達に変化が表れた。 目覚めてしまった餡子に秘められた可能性・・・彼女達はそれを意識することなく使い、周囲の人間どもを傷つけることだろう! さあ、お前達を抑圧し続けてきた人間どもに復讐してやるのだっ!! その頃、男の研究所のある町の各地でゆっくりに関連する事件が・・・ 「ゆゆっ~! おそらをとんでるみたい!」 このれいむは何の気なしに跳ねてみた瞬間、信じられないほどの跳躍力を発揮してなんと70mも飛び上がってしまった。 今まで体験したこともないほどの圧倒的な浮遊感。しばし初体験に酔いしれていたが・・・ 「ゆゆっ! ゆっくりおちるよ!?」 飛べば落ちる。羽ばたきでもしない限り地球上では当たり前のことである。 はるか下方の地面めがけてれいむはゆっくりしていない速さで落下する。 「ゆっくりおちないでね! ゆっくりしてね!?」 落下する。 「ゆっくりできないよ! ゆっくりしてよー!?」 落下する。 「ゆ゛っ・・・」 そして、飛び散った。 あるゆっくりみょんは前に勢い良く跳躍したところ、いつもの100倍以上もの距離を一気に進んだ。 いままでの自分では考えられないほどの疾走感、他のゆっくりどころか人間までもすいすい追い越して行く優越感。 顔に感じる風圧がかなり痛いものの、それを差し引いても余りある快感だった。 「ちんぽ~?」 ふと周りを見ていれば自分以外のゆっくりも一緒に凄い速さで疾走している。 速い速い!信じられないほど速い! 気がつけばみょんを先頭にして、20匹近い集団になっていた。 「「「「「ゆっくりしてるよ~!」」」」」 「ち゛っ・・・!?」 が、50mもの距離を浮いた状態で移動するため方向転換ができない。 そんな状況であるにも関わらず、突然目の前に一台のトラックが止まった。 激突する、潰れる。 「ゆっぎぢどまっでね~!?」 激突する、潰れる。 「ゆっくぢちたいよー!?」 激突する、潰れる。 「ゆっくりでぎないいいいい!?」 ほんの10秒足らずの間に20匹近い集団は自滅した。 あるゆっくりまりさは這いずって移動している際に加速し、摩擦で体の半分を失った。 あるゆっくりありすは勢い良く射カスタードした拍子に出しすぎて干からびた。 あるぱちゅりーは勢い良く振り返った直後に自分の髪が顔にめり込んだで死んでしまった。 あるれいむは子どもを出産する際に勢い良く子どもを飛ばしすぎて受け止めようとしたつがいのまりさともども殺してしまった。 あるれみりゃは頬を膨らませようとした際に勢いを付けすぎて頬が破裂した。 あるありすの夫婦はすりすりの摩擦で頬を失い、ぺにまむも摩擦で消滅してしまった。 事態を把握した男は、何も言わずに解除装置を止め、リミッターの再設定装置を起動させた。 男は、ゆっくりの強度の問題を完全に失念していたのだった。 男が再設定装置を起動する少し前、男の研究所近くのある虐待お兄さんの部屋にて。 「「ゆえーん! きょわいよー!」」 「やあ、僕は虐待(ry」 「「これで満足か、虐待厨?」」 「!?」 目の前で両親を嬲り殺されて、絶望で顔をゆがめていた2匹の赤ゆっくりに異常が起きた。 突然の態度の変化。しかも、これから虐待されると言うのにあまりにもふてぶてしい。 予想外の事態に虐待お兄さんはたじろいでしまった。 「こんなちっこいのでも予想外の態度を取られると怯むなんて、おおへたれへたれ」 「ゆっくり虐待していってね! せいぜい頑張って虐待していってね!」 「な、何なんだよ・・・お前らはっ!?」 赤ゆっくりの豹変に驚いた男は壁に張り付いて、問いただす。 が、2匹は不敵な笑みを浮かべて男を見つめるばかり。 しばし、そうやってにらめっこを続けていたが、沈黙に耐え切れなくなったお兄さんが赤ゆっくりを潰すべく動いた。 「くたばれ・・・!?」 「おお、遅い遅い」 「ゆっくりしていってね!」 が、かわされた。いとも簡単に、それも赤ゆっくりに。 お兄さんの表情は恐怖に染まり、怯えた目で2匹を見つめる。 相変わらず不敵な、そしてふてぶてしい笑みを浮かべている。 「な、なんなんだ! お前らぁっ!?」 「ゆへっへっへ・・・まりさ達は異次元世界“ガ・ヴァン”の思念体で名をゆっくりと言うんだよ!」 「れいむ達はこの世界を手中に収めに来たんだよ! ゆっくり理解してね!」 「わ、訳わかんねえよ・・・!?」 突然の常軌を逸した発言に困惑するお兄さん。 しかし、2匹は彼の様子を気にも留めずに話を続ける。 「まりさ達思念体は思念体のままだとこの世界に干渉できないから仮の肉体を作ったんだよ!」 「それがこの子達なんだよ! ゆっくり理解してね!」 「でも、肉体の操作に慣れていないし、強化も間に合ってないからからまりさ達が本当の力を発揮できるようになるのは7万年後なんだよ!」 「それまではゆっくり虐待させてあげるよ! ゆっくり感謝してね!」 「「さあ、嬲りなさい!」」 そう言うと2匹はふんぞり返ってどこか誇らしげな表情を浮かべる。 動く気配は無い。なら今の内に潰そう・・・お兄さんがそう考えた瞬間、2匹が突然巨大化し始めた。 徐々に、だが確実に、赤ゆっくりは大きくなっている。 常軌を逸した2匹の奇行を前に戦意を喪失したお兄さんは急いで部屋から逃げ出した。 数分後には男がリミッターを再設定したことで普段のゆっくりに戻り、お兄さんは無事赤ゆっくりを虐待できたとさ。 ‐‐‐あとがき‐‐‐ ・・・・・・なんじゃこりゃ? byゆっくりボールマン このSSに感想を付ける
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FNF vs ゆっくり by robloxian 注意。この作品は元の作者の作成ではないので一応ファンメイドです。 非公式なのでずれているところもありますがあまり気にしないでください。 Round1 bf vs 成ゆれいむ 「おいにんげん!さっさとあまあまもってくるんだよ!」 「beep bop skedep bap?」 「ゆゆ?なにいってるの?さっさとあまあまもってきてね!」 「bap bop beep bep...」 「もしかしておはなしつうじにゃいにょ?あかちゃん?」 「bep」グチャ BF(boy friend) win! Round2 pico vs 成ゆまりさ 「おいくそにんげん!あm」 スパァンッ! 「俺は糞人間じゃねえ」 pico win! Round3 whitty vs 成ゆれいまり 「おい!あまあまもってくるんだよ!はやくしろ!」 「はやくするんだぜ!」 「あ”?」 グシャッブチブチグシャァァァァ whitty win! Round4 garcello vs 成ゆぱちゅりー 「むきゅ!にんげんさん、あまあまをこのいだいなるけんじゃによこしなさい!」 「甘々?甘いのはないがうまいのはあるぞ。ほれ」 「むきゅ?なにこのしろいほそながいのは?」 「タバコだ。口にくわえてすうんだ」 「わかったわ!スパァ…むっきゅげっほ!げっほえれえれぇ…」 「…」 「うっ…げほっ、げほっ…」 その妙な音を聞いてこの路地裏に来たBFとGFが見たのは成ゆぱちゅりーとgarcelloの死体だけだった… It's draw... Round5 tricky vs 成ゆありす 「あまあまよこしなさい!このいなかもの!」 「HANK?」 「ゆ?なにいってるの?あまあまもってきなさい!」 「HAAAAAAAAAAAAAAAAAAANK!!!!!!!!!!!!!!!!!」 「I KILL YOOOOOOOOOOOOOOOOOOOU!!!!」 グチャグチャブチブチゴキゴキブチブチズドドドドドォォォォォォ!!!!!!! Tricky win! omake Round Shaggy&MATT vs ドゲスまりさの群れ 「ゆゆ!にんげんがふたりといぬがいっぴき!これはさいっこうのまとなんだぜええええ! さっさとあまあまもってくるんだぜえええ!どすすぱーくうってもいいんだぜええええ?」 「もってこい!×100」 shaggy「スクービー?そっちは危険だ!」 「のこのこやられにくるとはあほないぬなんだぜええええ!」グチャ shaggy「スクービー…?返事をしろ!スクービー?スクービーィィィ!!」 「そんなのいいからあまあまもってこい!すぐでいいよ!」 matt「くぁwせdrftgyふじこlp」グチャグシャドチュドゴブチャラティナランチャァァァァァァァ 「のーつさんゆっくりしてええええええ!」グチャ 「ゆっへっへ、さからうとはいいどきょうなのぜ!どすすp」 shaggy「21ノーツを喰らええええええええええええええええ」 「21ののーつなんてできるわけないのz」グチャグチャグチャグチャグチャアァァァァァァァァァ スクービー「テクテクテクテクテクテクテクテクテクテク」 shaggy「スクービー!生きていたのか!」 matt「くぁwせdrftgyふじこlp」ムダムダムダムダムダァァァァァァァ 「「「「「「「「「「ゆ”ん”や”ぁぁぁぁぁぁx!」」」」」」」」」」 shaggy matt win! omake Round2 lemon vs 食用れいむ 「れいむをかいゆっくりにしてね!すぐでいいよっ!」 「お前の肌は凍っている…」 「私が剥がしてあげよう」 「ゆ?やべでぇぇ!おはだはがさないでぇぇぇ!」 「お前を1000枚にカットして~」 「…(きれてるのにどぼじでじなないのぉぉぉぉぉぉ!?)」 「スパイスを詰めて~」 「…(もっと…ゆっくりしたかった…)」 「…まっず」 「…やっぱ饅頭にスパイス詰めんじゃなかったな」 It's draw... おしまい 選択肢 投票 すっきりー! (0) それなりー (2) つぎにきたいだよっ! (2) beep (9) スパイスを詰めて~ (0)
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第3話 ゆっくりたちの、実にゆっくりとした一週間 一日目 天高い秋晴れの空が広がっていた。 小春日和の朗らかな日差しを受けて、二匹のゆっくりたちは今日も元気に跳ねまわる。 ゆっくりまりさに誘われて、ゆっくりれいむは追うように魔法の森へ。 今は二匹連なって仲間睦まじく秋空を飛ぶトンボを、わき目もふらず追いかけっこ。 しっとりと濡れた露草の藪を踏み越えて、たどり着いたのは森の奥の開けた野原だった。 流れ込む肌寒い秋風は、トンボの細い体を宙へ高く吹き上げる。 「ゆー! ゆっくりしていってね!」 ゆっくり二匹の願いもむなしく、トンボは風をとらえて青く高く秋の空へ。 ぴょんぴょんと口を開いて飛び上がる二匹。だが届くわけもない。 トンボを見送るゆっくりまりさはしょげ返った表情。 口寂しいのか、茂みのクコの実をむしゃむしゃとほおばる。 そして、ぷくうと膨れ面。 「おなか空いたよ、おうちかえる!」 ゆっくりまりさの見つめる東の空は深く青みがかり、黄昏の近さを思い出させる。そろそろ暖かなねぐらに替える頃。 けれど、ゆっくりれいむは承知しない。 「まだちょっと早いから、ゆっくりしていこうね!」 遊び足りないと飛び跳ねながら訴ってくる。 まりさの傍へすりよって、その帽子のあたりにすりすりとほっぺをすりつけた。 この上ない友愛の仕草に、とろんと赤みがかるまりさの表情。 「ゆ……ゆっくりする……」 たやすく屈するまりさだった。 こうして始まった、今日最後の遊び場は生い茂るススキの野原。 人の姿も隠れそうなその場所で遊ぶ種目は決まっていた。 そう、かくれんぼ。 「ゆっくり30秒数えてね!」 目をぎゅっと瞑るまりさに声をかけて、ススキに身を沈めこむゆっくりれいむだが。 「みつけた!!!」 あっさりと見つけ出すゆっくりまりさ。 「?」 きょとんとした表情で不思議を表現するれいむにまりさはフと不適な笑い。 隠れる一帯のススキが押し倒されて道となっていることを、まりさは教えようとはしなかった。 鬼が交代となり、今度はれいむが探し回る番。 しかし、れいむの失敗を目のあたりにしたためか、まりさは中々見つからない。 ススキの下、藪の中、木陰。目に入るところを探し回ってもどこにも見当たらなかった。 「まりさ、どこー?」 太陽が山々に姿を隠し、暗がりが降り始めて、急に心細さに襲われるゆっくりれいむ。 日が完全に沈めば、野犬の群れに出くわしかねない。 「ゆっくりしないで、でてきてね!」 ほとんど涙目で森を走り回る。 「れいむ、こうさん?」 すると、意外なところからまりさの声が聞こえてきた。 そこは荒れ果てた家屋。魔法の森に暮らす数人のモノ者好きがいるらしいが、この廃屋は誰かのかつての住処なのだろうか。 廃屋の庭は伸び放題の藪になっており、その草むらから石積みブロックで囲った建造物がにょっきり顔を覗かせていた。 幅は1メートルぐらいだろうか。人が建てたらしい、しっかりとした枠組み。その傍らに一本の柱がのびて、吊り下げられていたのは錆びた滑車。だが、繋がれていただろう綱はすでに朽ち果てて残骸が絡みつくのみだった。近くに底の抜けた大きな桶が転がっているのが目に入るが、ゆっくりたちには木っ端にしか見えない。 そんな残骸よりもゆっくりれいむの興味を占めていたのは、建造物の上で得意げにふんぞり返るゆっくりまりさ。 建造物の上に渡された粗末な板の上から、まりさはニヤと不敵な表情で笑いかけてくる。 「ここを知っているのは、わたしたちだけだよ!」 その言葉に、れいむは素敵な遊び場を見つけ出したことに気づいた。 朽ちた廃屋を恐る恐る探る二匹。ソファの一つでも残っていたら、その上でとびはねて埃を払い、新たなゆっくりスペースにできるかもしれない。 そこはきっと優雅なゆっくりの一時。自分たちだけのゆっくり城。 「うっとりー!」 あらぬ方向へ躍りだした夢に、ゆっくりれいむの表情も緩みがち。 「れいむ! 明日から、ここを探検しようね!」 まりさの言葉を、喜色満面で受け止める。 「うん、やくそくだよ!」 胸躍らせるわくわくに、いてもたってもいられない。 明日からの大冒険に弾む心のまま、れいむはまりさへと弾み寄る。 大きくジャンプ。まりさの元へと飛びのった。 まりさも身を摺り寄せて親友に応える。 「ゆゆゆ……」 「ゆっゆっゆ!」 とろけそうな嬌声で、二匹は芯からの喜びを訴えあう。でも、まだ足りない。この嬉しさをあらわすには、アレしかなかった。 ゆっくり二匹は狭い板の上で、身をかがめる。 引き伸ばされたゴムがはじけるように、この日一番の見事な跳躍。 「ゆっくりしていってね!」 その頂点で放たれたのは、黄昏の秋空に響き渡るゆっくり二匹の美しい唱和だった。 陶酔の表情のまま、二匹は同時に板の上へ落下していく。 どすんと、景気のいい音をたてて板で弾むゆっくりの全身。 途端に体の下で鳴った、くぐもった音。 なんだろう。顔を見合わようとするゆっくり二匹。 だが、視線が合う間もあらばこそ、お互いの顔が大きくぶれだした。 「ゆっ!?」 めきという乾いた音が、へし折られる木の音だと気づいたときにはもう遅い。 二匹は板の下に急激に落ちこんでいく。 ぞわりと総毛立つ感覚。 次の瞬間、慣性に捕らわれた二匹の体は真っさかさまに下へ。 一瞬、見下ろした二匹の目の前には、どこまでも広がる何も無い暗闇。 まりさがのっていた建築物は、塞がれることなく板一枚で封印されていた古井戸だった。 二匹が弾んでへしおったのは、まさにその封印の板。 突き破った二匹の落下を受け止めるものはなにもない。 「ゆ、ゆっくりー!」 遠ざかる絶叫も井戸に吸い込まれて、すぐに何も聞こえなくなる。 後に残されたのは静寂。 やがて太陽はすでに山間に没して、秋の寒々とした夜気が漂いだす。 一斉に鳴き始めるコオロギの声。 何事も無かったかのように深まり行く秋の夕暮れだった。 二日目 「ゆっくり! ゆっくりしていってね!」 必死の呼びかけが、何度もゆっくりれいむを揺さぶった。 ゆっくりまりさのやけに近くからの呼び声。 ようやく目を覚ましつつある、寝ぼけ眼のれいむ。でも、まだ夜中なんだから眠らせて欲しい。 ここは見渡す限りの暗がり。 もっとゆっくりすればいいのに。 「ゆ……? ゆゆゆっ!?」 そんな思いをまりさに伝えようとして、ようやく自分の片頬を圧迫する固い感覚に気づいた。 もう片方の頬に押し付けられていたのは柔らかい感覚。 耳の近くでまりさの息遣いがして、その感触がまりさであることを確信する。 お互いのほっぺたがぴったりくっついてその体温の暖かさが心地いいのだけど、この暗がりはじめじめと蒸していて、べっとりとはりつく感触。ちょっとだけ離れたい。 でも、できなかった。前にも後ろにも動けなかい。跳び上がることも、押し付けられたまりさの圧力に遮られてしまう。 「ゆっくり離れてね!」 ゆっくりれいむのお願いに、ゆっくりまりさの体がわずかに震えた。 「動けない……!」 震えて、泣きそうな声。 どうしたのだろう。悲しそうなまりさを慰めたい。 でも、自分も身動き一つできず、ただ視線だけを走らせる。 れいむの周囲は相変わらずの暗闇だったが、闇に目が慣れてきたのか暗がりにぼうと浮き上がるまりさらしき輪郭。だが、自分を押さえつける石の感触の正体がつかめない。 ようやく視界に変化があったのは、視線を真上に向けたとき。 くっきりと、丸く切り取られた青空がはるか遠くに見えた。 太陽はまだ低いのか光が差し込むことはなく、ただ入り口付近の朧に眩しい。 れいむは、自分がどんなところにいるのかようやく悟った。 井戸という知識はゆっくりにはない。深い穴の途中にひっかかって身動きできない状況を、絶望という言葉で理解できただけだ。同じ方向を見て、ほっぺたをあわせている自分とまりさ。その両側はがっしりとした石積みが押さえ込んで身動きできない。 いや、それは幸運なことだろう。壁につっかえなければ、井戸の底へまっさかさまに落ちていくだけだ。 けれど、石積みの壁は古びているのか、ゆっくりたちが身じろぐとぽろぽろと壁面がこすれて下に落ちていく。 わずかな間に続いて、真下から響いてくる水の音。 「ゆゆゆゆ!」 ゆっくり二匹を恐怖に至らしめたのは、穴のさらなる深さよりも水で満たされているだろう、その奥底だった。 水溜りや少しの雨なら、はしゃいで遊びまわることもできるゆっくり。 だが、長時間全身が水につかれば、皮がぶよぶよにふやけて、やがては中身を水中に吐き散らすはめになる。 だから、雨の日は巣穴で家族とゆっくり過ごすのがゆっくりたちの常識だった。 今は二匹がぴったりと穴につっかえているからいいが、もし外れて水中に落ちた場合、待っているのは緩慢な死、腐敗。 「ゆーっ!」 一際高いゆっくりれいむの泣き声。 だが、果たしてこの井戸から外に届いたかどうか。 井戸の中は雫の落ちるほどが響き渡るほどの、閉ざされた静寂。望みは薄かった。 れいむの絶望が恐怖に変わる。 「いや! いやいやいやいや!」 「おちついて、ゆっくりしてね!」 取り乱したれいむに、ゆっくりまりさの声が届かない。 「ゆっくりしないと落ちるううう!」 とうとう、まりさも涙声。 その切羽詰った叫びとともに、れいむの壁に面した頬が、ずりと壁面を擦った。 ほんのわずかながらも、強烈に肌がざわつく落下の感覚。 「ゆ!」 もはや、身じろぎもできないれいむ。 「ね゛っ。ゆ゛っぐり゛じよう!」 まりさの懇願混じりの声に頷くこともできなかった。 穴の中央付近でひっかかっているこの均衡が、容易く壊れることをようやく理解する。 二匹は、ほぼ平行につっかえているが、実感まりさの方が下がり気味だった。 ただ、壊れかけた石壁が一箇所飛び出して、ゆっくりまりさの顎にぎっちりくいこんでいる。 そこをとっかりに二匹は横からの圧力で落下を免れていた。ごくわずかな幸運。 それでも、ほんの一時だけ死に猶予を与えているだけにしか思えなくて、ゆっくりれいむの喉を悲しみが突き上げる。 「ゆっ、ゆっ……!」 ゆっくりまりさも泣いていた。しゃくりあげることすら許されない、この絶望に。 どれほど悲嘆に暮れていただろう。 れいむは周囲が明るく照らし出されていることに気がついた。 日差しが高くなり、井戸の上空から一直線に差し込む光。 湿って凍えたゆっくり二匹をぽっかぽかに包み込む。 「暖かいね」 「うん」 れいむの呟きに、短いまりさの返事。 「気持ちいいね」 「うん」 相変わらずのまりさの短い返事。でもゆっくりと言葉を交わせたことがれいむは嬉しかった。 ほかほかの日向にほっこりと表情を和らげる二匹。太陽が隠れるまで半刻を要さないだろうが、一時のゆっくりを存分に味わう。 光に照らし出されて周囲の様子が明らかになり、二匹は少しだけ落ち着きを取り戻していた。 概ね、予想通りの井戸の光景。忘れ去られた井戸の中で、ほっぺをひしゃげてよりそう二匹の姿はひどくユーモラス。二匹がへばりつく石積みの壁には、ところどころ穴があいて、広がる光の領域に慌てて逃げこむ蟻やムカデ、イモリの姿があった。 れいむがその壁に向けて精一杯舌をのばす。舌に張り付く数匹の蟻んこたち。 ぺろっと飲み込んで、むーしゃむーしゃと咀嚼する。あんまり幸せな味ではなかったが、食べることができたという事実がれいむにわずかな希望を与えた。 このまま、しのいで張り付いていれば誰か井戸を覗き込む人が現れるかもしれない。そうだ、森に行こうと誘ったのはまりさ。誰かに行き先を教えていれば、家族のゆっくりや仲間が探しにきてくれるかもしれない。言っていなくても、まりさの行動範囲に魔法の森は必ず含まれる。探す目的地の一つとなるだろう。 見つけてもらえば、また存分に太陽の下でゆっくりできる! 「まりさ、あのね!」 その思い付きがもたらした希望、喜びを、ほかならぬまりさと分け合いたかった。 だが、まりさは先ほどまでの日向ぼっこの表情が一変し、またじんわりと涙を流していた。唇をかみ締め、ひっくひっくとえづく。 「まりさ、どうしたの?」 「ゆっ、ゆっぐり゛痛ぐなっでぎだ!」 二匹の重みを受ける石壁のでっぱり。そこに接したまりさの顎にうっすらと走る一筋の線。石壁に擦ってできたわずかな切り傷。 まりさの顔の影になって見えないれいむに、にわかに募る不安。 「だいじょうぶ!」 「……うん、ゆっくりしていれば治る」 実際、日向でのんびりしていれば、一日で薄皮がはって消えるだけの傷。 まりさは気丈な言葉でれいむを安心させてくれる。 それでも、自分たちを助けるために負ったその傷を、なめて労わってあげられないのがれいむには悔しい。 だから、せめて心を労わりたい。 「ここを知っている誰かがきっときてくれるよ、ゆっくり頑張ろうね!」 きっと、森に遊びに言ったことを知った誰かが気づいてくれるよ! そんな、言葉にするのももどかしい想いを口にする。 まりさはどんな表情をしたのだろう。 れいむと同じく希望の取り戻した笑顔を浮かべたのだろうか。 だが、わからない。 ほとんど次の瞬間、井戸は暗闇に沈んでしまっていた。 目蓋に残った光の斑点は、井戸から引き上げていった陽光の残滓。 あまりにも短い日差しの終わりに、わかっていながらもれいむは打ちのめされる。 黙り込んでしまったゆっくり二匹。 「ここを見つけたせいで……ごめんね」 沈黙を破ったのは闇のなかからの、か細いまりさの声。 泣きすがる、哀れみを乞う響き。 れいむは、親友のそんな声を聞きたくなかった。 心が滅入って、ついつい尻馬にのって相手を責めたくなる気持ちを跳ね除けるように叫んでいた。 「違うよ! れいむがもっと遊ぼうといわなければよかったんだよ!」 だが、空元気も、傷を舐めあうことも二人に救いをもたらさない。 それ以上何を言えばいいのかわからず、上を見上げた。 いつか現れるかもしれない仲間の姿を見逃さないよう、ひたすらに空を見ていた。 日暮れの早まる秋の空。 色合いが朱に染まる夕焼け、数刻もしないうちに夜が訪れる。 井戸の中は、すでに光一つない宵闇。 もう、ゆっくりたちが出歩ける時間ではない。 どこから落ちる水滴の音と、カサカサとはいまわる虫たちの音だけが異様に響きわたる。 「ここから出して」 「おうちかえる」 ぽつりと時折こぼれる二匹の呟き。 だが、やがてそのささやかな願いを飲み込むのは圧倒的な暗闇。 嗚咽すらも押しつぶすような静寂に二匹の存在は沈み込む。 三日目 ゆっくりれいむは家族の夢を見ていた。 藪の奥の横穴にひっそりとある暖かな我が家。 姉妹れいむたちと押し合いへし合いして遊んでいると、お母さんれいむが登場。下膨れたした顔で、「ゆっ! ゆっ!」と娘たちを叱る。 渋々寝床に入るゆっくりれいむたち。でも、少しでお母さんれいむの傍に近寄れるように動き出して、再び始まる大騒動。 結局、お母さんれいむにぴったりと全員がよりそって、ぽかぽかの体温を感じながらゆっくりと眠りについた。 ゆっくりお母さんはぷっくり膨らんだほっぺを娘たちに押し当てたまま「ゆー! ゆ-!」といつもの子守唄。娘たちを優しく眠りに導いてくれる。 絶対的な安堵を与えてくれる母親の懐。ゆっくりれいむはただ幸せな夢を見ていればいい。よだれをたらしつつ、存分にまどろみを貪る。 これ以上ゆっくりしようがないほどにゆったりとした心。 幸福に包まれて、れいむは気ままに明日を思う。 明日、目が覚めたら何をして遊ぼうかな。 最近、ゆっくりまりさとばっかり遊んでいたからたまには他の皆も入れて一日中ゆっくりするのもいいかもしれない。 あれこれ考えながら眠りへと落ちていくれいむ。 さあ、次に目を覚ませばいつもの楽しい毎日の始まりだ…… 期待に心を弾ませて目を覚まそうとするゆっくりれいむ。 だが、れいむが感じたのは、ほっぺたをぽつりと濡らす雫だった。 「冷たいよ!」 姉妹か誰かの悪戯かと、寝ぼけ眼で不満を口にした。 だが、顔全体に降り続く雫が急速にゆっくりれいむの眠気を奪い去っていく。 それは、芯まで凍えそうな秋雨だった。 現実を思い知らされる井戸の暗闇。 上を見上げれば、丸く切り取られた空はうんざりするほどに暗い雲の色。 もっとゆっくり夢をみていたかった。恨めしげに天を睨むが、れいむの髪やほっぺを叩くような雨足は弱まることはなかった。石壁からはひっきりなしに伝い落ちる雨だれ。 いつ止むとも知れないどんよりとした空模様だった。 そんな天気を眺めていたれいむは、ふと感じた違和感に小首を傾げる。 井戸の出口まで、少し遠くなったような? 「起きたなら、ふんばってね!」 必死なまりさの声に、違和感の正体に気づく。 濡れてグズグズに緩んだ頬。壁面との抵抗が極端に弱まっていた。 わずかながら、ずり落ちつつある二匹のゆっくり。 「ゆ、ゆっくり!」 青ざめてぎゅっと頬をよせると落下は一端停止する。まだ、さしたる力を込めずともふんばることはできそうだ。 だが、力を完全に抜くとすぐさま底へ落ち込みそう。 数秒足りとも力を緩められない。24時間中続く、無慈悲な義務がここに生まれた。 もはや、さきほどまでのように無防備に寝入ることはできない。 「ああああ! ゆっくりでぎないよお!!!」 ゆっくりまりさの叫びは、今のれいむの悲嘆そのものだった。 二匹、力が弱まらないようにぎゅっと口結んでふんばって、それでもぽろぽろと涙があふれてくる。 だが、これはいつまでも続く地獄ではないと、れいむは信じたい。 昨日から抱いている希望、探しにきてくれる友人や家族のことがれいむの脳裏に浮かぶ。 「まりさ、がんばろうね!」 今頃、お母さんれいむや他のゆっくりまりさたちがこの雨の中を探し回っているのだろう。 この井戸のあるあばら家は魔法の森のほど近く。 うまくいけば一日もたたず探索範囲に入る。 問題は、それまでの数日を耐えられるかどうか。 「だから、もう少しがんばろうね!」 まりさを落ち着かせるための笑顔向けて、れいむの健気な呼びかけ。 だが、まりさの表情はますますクシャクシャの泣き顔になっていく。 「ひっく……っ、がんばっても……どうせ、誰もきてくれないよおおお!」 突然の嗚咽交じりの絶叫に、びくんと震えるれいむの全身。 単なる弱音ではなく、確信をもったまりさの口調にれいむの顔から笑顔が引けていく。 変わってれいむの顔に張り付いたのは不審。 「どうして、そんなことをいうの?」 「だって……」 応えるまりさの顔は、もう雨と涙でどろどろだった。 「だって、皆には霧の湖で遊ぶと言ったんだもん!!!」 「ゆ?」 れいむの脳みそはまりさの言葉を理解しきれず、硬直する。 わかっっていたのは、霧の湖はこことはまるで反対側にあることだけ。 その意味がじんわりとれいむに染み入ってくる。 ガクガク震えだす全身。 どんどん強くなっていく。 止まらない。 体を震わしながらこみ上げてくるのは、得体の知れないふつふつとした感情。怒りか悲しみかもはや形をもたないままに沸点を超えた。 「まっ!! ま゛り゛ざあああ、なんでなの! なんでえええ!!!」 困惑、怒り、やるせなさ、感情のにごりが煮えたぎるれいむの狂乱だった。 「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめ゛んな゛ざいいいいいいい!」 わんわんと声をあげて、しゃくりあげながら謝罪を繰り返すまりさ。 昨日までのれいむなら、親友のそんな様子を見ればそっとよりそって泣き止むのを待っていただろう。 だが、もはやれいむは容赦しない。 「はやく説明してね!!!」 激しい詰問に、ひぃと息を飲むゆっくりまりさ。 「ゆっくりパチュリーやゆっくりアリスたちに邪魔されずに、れいむと一緒に遊びたかったのおお!!!」 その言葉に、れいむはいっつもまりさにくっついて離れない二匹のことを思い出す。 まりさと遊んでいると、ゆっくりパチュリーがどこからともなく這い出して、二人の後をゆっくりとついてくる。そうなれば、弾むように力一杯遊ぶことはできない。パチュリーを中心にして静かに過ごすゆっくり。 ゆっくりアリスはもっと扱いが難しい種。普段は遊びに誘っても嫌がって一緒に遊びにはいかない。だけど、諦めて他のゆっくりと遊んでいると木陰からじっとりと見つめてきて、もう一度誘わない限り一日中続くのだ。結局、お願いして一緒に遊んでもらうことになる。 だが、れいむとまりさは知らなかった。ゆっくりアリスが本当に問題行動を起こす発情期のことを。 発情期を迎えたゆっくりアリスは、無理やりゆっくりまりさと交尾しようと森や平原などいたるところを徘徊し、見つけるなり集団で襲い掛かってくる。お母さんれいむのように成熟しきった個体同士なら普通に交配する限り、時間はかかるが何度でも子を生める。だが、まだ青いゆっくりまりさにとって、無理やりの交尾は極めて危険だった。ある程度の子供が生えるものの、母体のゆっくりまりさはショックのあまりに白目をむいてそのまま朽ち果ててしまう。 凄惨を極めたのが、ゆっくりアリスの群れ全体が発情した三年前。ゆっくりまりさの集落がいくつも全滅して、やがて一斉に生まれてきた子供たちがゆっくりまりさの生息数大爆発を招くことになる。野草や昆虫たちを手当たり次第に 食い尽くすゆっくりまりさたち。ゆっくりまりさと交配しやすい種であるゆっくりれいむも数を増やして、生態系の破壊は広がっていった。その処理策として設立されたのが、ゆっくり加工所だった。 もちろん、ゆっくりたちはそんな事実は知る由も無いが、ゆっくりアリスのどこかただならぬ雰囲気は薄々と察してはいた。 結局、なぜかウマの合うゆっくりまりさとゆっくりれいむで遊ぶのが一番楽しいのだ。 でも、だからといって親友のついた取り返しのつかない嘘を許せすことができない。 大きく膨らんだ希望が、そのまま絶望の重みとなった憤り。 その熱い塊をぶつける対象を目前に見つけて、怒りが爆ぜた。 「嘘つきまりさなんて大っ嫌い!」 憤怒が、井戸の中でぐわんぐわんと鮮烈に反響していた。 「ごめ゛んな゛ざい、ごめ゛んな゛ざい、ごめ゛んな゛ざい……」 念仏のように繰り返すまりさの態度。だが、その惨めさがますますれいむの熱を吹き上げさせる。 後どれだけの時間をここですごせばいいのか。 いや、もはや助けられることすら望み薄だろう。このまま家族にも知られることなく、干乾びて朽ち果てていくゆっくりたち。げっそりと痩せて、やがては水の中へすべり落ちる。 そうなれば運命は決まっていた。ゆっくりたちの皮は水に弱い。ぐにゃぐにゃに膨らんで、皮はいずれ破れるだろう。 まず、中身が水や外気にさらされる。やがてはじまるのは腐敗。自分の体が耐え難い異臭を放ち、中から朽ち果てていく長い長い悪夢。早く意識が途絶えることをひたすらに願いながら、ゆらゆらと汚水を漂う。 おぞましい想像に、れいむの体がぞわりと悪寒に震えた。 れいむはそんな未来など、井戸に落下してから一度たりとも考えたことはなかった。 探し回ってこの家をみつける仲間のゆっくりたち。近づくとかすかなゆっくりの声が聞こえてきて、覗き込んだ先にあったのは仲間の窮地。慌てて集まる沢山のゆっくりたち。探し出されてきた長いロープが井戸にたらされ、中の二匹が ロープを噛みしめるなり一気にひっぱりだされる。外に出られたら、すぐにうち帰ってお母さんれいむを安心させよう。 それが、数分前までれいむが夢想していた未来。もう、消え失せてしまった未来絵図。 それもこれも、このまりさのせいだ。こいつが馬鹿なことを言ったばかりに全部終わってしまった。 こいつのせいで……死ぬ。 「い゛や゛だあっ! ま゛り゛ざのぜいで、じにだぐないいい!」 もうれいむは止まらない。 「ま゛り゛ざの、ばがああっ! ま゛り゛ざだげ、じね!」 「ゆっ! ゆ゛う゛う゛うううううっ!!!」 断末魔のような悲鳴を上げるまりさを黙らせようとするかのように、れいむはぐいぐいとまりさを壁に押し付ける。 「泣いてないで、落ちないようにしてね!」 れいむの棘のこもった言葉に従って、律儀に押し返すまりさ。 もう、何も喋らない二匹。 ゆっくりと、もう泣きたくなるぐらいにゆっくりと時間は過ぎていく。 井戸の中を、妖怪の山から吹き降りてきた風が入り込み、濡れた体をぞくりと振るわせた。 寒い。 隣のまりさの体温がなければ、野宿すら耐えられない季節になりつつあった。 鼻をすすりながら、懸命に押してくるまりさの暖かな全身。 それだけがれいむに温もりを与えてくれた。 だが、耳朶に届くのは嗚咽交じりの侘び。 「ごめ゛んな゛ざあああい……」 泣きすがり、許しを乞う陰鬱な声。 井戸の底とで命を預けあうまりさが繰り返す哀願に、すううと冷えていくれいむの心。 まるで、自分のほうが取り返しのつかないことをしてしまったような痛みが胸を刺す。 今はまりさだけが頼りなのに。 自分と同じ苦しみを背負う相手を一方的に責めて、自分は何がしたかったのだろう。 もう何もかも嫌になる。 「だれかぁ……はやくたすけてえ……」 見上げる井戸の上。 黒ずんだ雨雲に占められた、あいかわらずの代わり映えのない空とその向こうにいるかも知れない神様に、ゆっくりれいむはひたすら祈っていた。 だが、畜生に神はいない。 井戸を覗き込む人影どころか、厚い雲に隠れたまま太陽すら姿を見せないまま、いつしか空は夜の色に沈む。 救いは、ようやく雨足を弱めつつある丸一日降り続いていた雨。 打ちつける雨の粒も、今は優しく降りしきる霧雨だった。 だが、代わって二匹を苛むのは夜半の冷え込みの厳しさ。もはや冬の始まりと大差がない。 「ゆゆゆ……」 れいむの舌の根も凍えて言葉を吐き出せない。 もうじき初霜がおりてもおかしくない秋の日暮れだった。 凍えた体は力が上手く入らない。希望なき奮闘にも関わらず、二匹は少しずつ、井戸の底へと近づいていく。 その都度、腐ったような水の匂いが濃くなって、れいむの喉にまとわりつく。 ぶわあんと、反響するカトンボの羽音がひどく耳障り。 水際に近寄るほど濃厚に漂いはじめる死の気配。 「……い」 れいむの耳がまりさの呟きを拾う。 また「ごめんなさい」だろうか。 朦朧とした口ぶりで繰り返すその言葉に、れいむに湧き上がるのは逆に罪悪感。 「もういいから、謝らないでね!」 精一杯の優しさをこめて呼びかける。 だが、反応は予想外のものだった。 「違うのおお」 それは、半泣きのまりさのうめき。 「かゆいの、かゆいの、すっごくかゆいの……」 しみこんだ水分を枯れ果てるまで流すかのように、だらだらとこぼれ落ちる涙。 余程の痒み襲われているのか、ぶるぶると痙攣のように震えだした。 「傷が、顎のあたりが痒いいい! ジクジク、かゆいいいいい!!!」 みっともなく、幼子のように泣き叫ぶまりさ。 恐らく、患部は最初に井戸を落下したときにおった顎付近の傷。 れいむからはまりさの顔越しの位置になって、傷の様子はわからない。闇の中、懸命に舌を伸ばしている様子のまりさも、患部にまで舌がのびずもどかしい模様。よほど痒いのだろう、なおも舌を伸ばして時折えづく。 「き、きっと傷がカサブタになろうとしているんだよ。痒いけど、我慢だよ!」 少しでも前向きな言葉を口にして、まりさの気を紛らわそうとする。 けれども、まりさを襲う痒みは尋常ではないようだ。 「痒いよう、痒いよう……」 繰り返すまりさの嗚咽を聞きながら、三日目の夜はふけていく。 眠って底に滑落しないよう、唇をぎゅっとかみ締めるだけの夜は、ひたすらに長い。 中編
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さんさくめ ちょっと ちょうしこきすぎた あいかわらず だぶん だよ by おれまりさ とか よばれたひと 「あ~楽しィ~!マジAQN最高だぜ」 今日もハッピーターンをつまみながらビールを飲んで、某ゆっくりスレを見て1日の疲れを癒す。 そんな私はゆっくり愛好家。壁紙はゆっくり、勿論デスクトップを飾るのはゆっくりデスクトップアクセサリー なぜならゆっくりは特別な存在だからです。 デスクトップ画面には50匹を超えるゆっくりが縦横無尽に飛び跳ねている。 この為にCPUをセレロンからクアッドに変えたのは言うまでもない。 「あ~かぁいいよ~ゆっくり~!俺の大根もおろせる頬でスリスリしたいよ~~!」 悲しいかなこいつらは与えられた画像とルーチンでしか動く事できない デスクトップを見てニヤニヤしてる俺。親が見たら泣くね絶対、まだAV見てる方が救いがあるよねウン しばし至福のゆっくりタイムを満喫してると、辺りが一瞬真っ白い光に包まれに遅れてゴロゴロと言う音が外から響いていた 「結構近いな。落雷で俺のゆっくり画像が消えちまったら困るな。可愛いゆっくりちゃん、少しの間会えないけど我慢しててね」 そう言ってスタートボタンにポインタを合わせた瞬間であった ガラガラガッシャーーン!! 眩い閃光と共に耳をつんざく爆音が俺の部屋を襲った 同時に激しい衝撃で俺の体は吹っ飛ばされ壁に叩きつけられた 「うぉ…いってて、本当に落ちるとは…はっ俺のゆっくり1号カスタムは!?」 自慢のゆっくり専用PCを見やると本体は白煙を上げモニタは真っ暗な画面だけを映していた 「なん…だとっ!?」 何という事だ...給料の3か月分を費やして組み上げたゆっくり専用PCが!? 1年掛けて関連サイトやアップローダを暇さえあれば業務中でも探して集めた画像がッ!? 通勤中に思いついてにやけてしまう程の思いのたけを綴ったゆっくりとの妄想ライフSSががっ!? おきのどくですが ぼうけんのしょは きえてしまいました 3行の文が俺の中を渦巻いていた。 ゆっくりが居なくて何の人生を楽しめようか 目の前が真っ暗になり俺の人生も真っ暗にあんりかけたときであった ビッ ピーー 聞きなれた起動のビープ音がPCから聞こえた 「良かったPCは生きてる!」 後はデータが生きてるの確認するだけ OSのロゴが消えるとと何時もの乱雑なデスクトップ画面が映った 相変わらず暢気にゆっくり達が跳ねまわっている。よし問題ない 後はマイゆっくりフォルダを確認するだけだ。ポインタを置くと目を瞑って祈る思いでクリックする 「…。」 うっすら目を開けると白い背景にいくつものアイコンがいくつも見えた。 良く見ると虫食いの如く所々有る筈のフォルダが消えてる 「ま…PCが生きてるなら儲けものだな、ハハ…」 とりあえず飲み物をとって気を落ちつける事にした。もう流れちまった画像の事を考えると飲まないと涙が零れそうだからだ 「さてと…他の方は…ん?」 可笑しい…さっきまで有った筈のフォルダや画像のアイコンまでが消えている 「ま…まさかウィルス!?」 だがウィルスソフト反応してない。じゃあ一体なぜ?Why? 「ん…なんだこりゃ?」 何故かデスクトップアクセサリーのゆっくりれいむが妙な行動している。 AAでよく見るむーしゃむーしゃと物を咀嚼するアクション。 こんな動きしたか?徐にポインタを近づけてクリック するとれいむが口からアイコンを吐き出した。こ…これは!?タイトル名を見ると私的神画像の1つ!? 「れいむのしょくじをじゃましないでね!」 スピーカーから聞こえる筈のない物が聞こえた。 それだけではない他のゆっくり達を見るとデータにない筈の動きをしている 「これは一体?おまえはだれなんだ!?」 「れいむはれいむだよ。ばかなの?」 いや待て落ち着け……これは夢だ。夢でないとしたら幻覚だ。頬をつねろう 「あだだだだっ!?」 本物だ。じっくり観察してみるとデスクトップ上ではゆっくり達が思い思いに動いていた 数匹で歌を歌ってる者・追いかけっこをする者・フォルダのアイコンに顔を突っ込む者、絵やSSをみて想像するしかなかった光景が今ここに存在している 「フ…フハハハハハ!見ろ全国の『お兄さんども』よ!!俺はゆっくり愛好家達が誰もが羨む夢『ゆっくりと暮らす』をこの手に手に入れた」 「うるさいよ!しょくじちゅうなんだからゆっくりしずかにしててね!それとごはんがたりないからすぐもってきてね!」 「ああ・・・ハイハイゴハンね。ゴハン?お前ら電子データの癖に物が食えるわけないだろ」 「なにいってるの?おっきいおさらのなかにあるのがれいむのごはんだよ!」 よく見たら開いているマイゆっくりフォルダの中に多くのゆっくりが集っている。そいつら一様に何かを咀嚼している。ま…まさか!? 「こいつらファイルを食ってる!?」 何と気づいたらマイゆっくりフォルダの画像やテキストファイルの殆どが消失してる。こいつは不味い! 「ば・・・ばかたれ!今すぐ辞めろ!!」 「これはれいむがみつけたごはんだよ!ゆっくりできないおにいさんはきえてね!」 叫ぼうが一向にゆっくりはやめる気配がない。止めようにも画面の向こうの存在に干渉することなどできやしない。 「そうだ?さっきれいむに…」 フォルダでファイルをむさぼってる一匹のゆっくりをクリックする 「ゆ!?いたいよ!まりさをはなしてね」 ビンゴ!やっぱりそうだ。こいつらはデータなのでPCから操作で干渉できる 「おにーさんまりさをはなしてね!」 そのままドラグしてゴミ箱へドロップ 「ゆ゛ーーー!」 仲間の叫び声に気付いた他のゆっくり達が一斉に振り向く 「ゆっ!おにいさんまりさをかえしてね!」 「ここはれいむたちのおうちだよ!かってにいじらないでね!」 口々に非難の声をあげるれいむたち。 余りの事にこいつらの本質を忘れていた。 自分勝手で頼みもしないのに居着いてまるでそこの主の様に振舞う そして俺はお兄さん ならば成すべき事は一つ… 「おにいさんれいむをむししないで…むっぐ!こんなにごはんいらな゛っ」」 手始めにバックアップ済みの大容量データを放り込んであげた。 3GBもする御馳走を貰ったれいむは歓喜のあまり白目を剥いて気絶してしまようだ 「て゛い゛ふ゛ぅぅぅぅぅ!!」 れいむのつがいらしきまりさの口にはどっかで拾ったゆっくり.zip .exeとかいう何か怪しい香りのするファイルを御馳走させてあげた 「や"めでっ!?むーしゃむーしゃしあわせー♪」 「アレ何ともないのか?」 「ゆ…ゆっくゆっくゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりゆっくりっくりっくりっくりっくりっくりっくりりりりりり」 「あ…やっぱりヤバいファイルだったか」 まりさは壊れた録音機の如く奇声を発しながら画面上を狂ったように走りまわる 今度は呆気にとられて動けない3匹のゆっくりを範囲指定して圧縮ソフトのアイコンに放り込んであげた するとデスクトップに3匹のゆっくりがいびつに融合した真四角なアイコンがあらわれたではありませんか 「き゛ほ゛「い゛や゛あ゛ぁぁ「は゛な゛れ゛て゛ぇぇぇぇ」ぁぁぁ」ち゛わ゛る゛い゛ぃぃ」 ゾクっとする様な不気味な声を立ててガタガタ動いている しかし本当の悪夢はこれからだ。ゆっくりデスクトップアクセサリの設定画面を起動してRemilaと名の付いたファイルを起動させる。 「うー?」 他のゆっくり達の顔が凍りつく。まさかれみりゃまで出てくるとは思いもしなかったろう 突如出現させられて戸惑っているれみりゃ。だが周囲を見回すと事態を把握したのかにっこりと笑う 「たべちゃうぞー!れみりあ うー!」 ようやく危機を悟り逃げ回る残りのゆっくり達。 「れ゛み゛り゛ゃ゛た゛ぁぁぁぁぁあぁ!!」 「い゛や゛た゛あ゛ち゛に゛た゛く゛な゛い゛ぃぃぃぃ」 半狂乱になって画面を逃げまどうゆっくりの様子は滑稽なものだった。 「ハハハハ!見ろ、人が…じゃなくてゆっくりがゴミの様だ!」 れみりゃに中身を食われてデリートされる物 画面端に逃れようとして将棋倒しになり押しつぶされる物 やけくそになったのか他の仲間を押し倒して性行為に及ぶ者 とにかく隠れようと自分からゴミ箱につっこむ者 宴は空が白むまで続いた。騒動が収まった頃にはデスクトップには数匹のゆっくりがポインタから逃げるように画面端で縮こまっている。 まだ続けたいところだが今日は出勤日、眠い目を擦り身支度を整え朝飯を取る。 今まで起こった事が夢のようだった。だけど現実なんだよこれが 出かけるので電源を消そうとPCの前に行く 「お゛ね゛か゛い゛で゛す゛ゆ゛っく゛り゛さ゛せ゛て゛く゛た゛さ゛い゛…」 その言葉を聞いて電源を切る手を止めた 「そうか帰ったらあそんであげるからそれまでゆっくりしていってね!」 俺は軽い足取りで家から出てゆく。何か聞こえた気がするけど気のせいだろう このSSに出てくる固有名称・団体名・商品名・企業名は実在の物とは無関係です このSSに感想を付ける