約 1,952,162 件
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4070.html
『邪悪なる者達・前編』 19KB 制裁 ゲス 希少種 愛護人間 24作品目、前編です。 注意書きです。 1 希少種が出ます。 2 ゲスいゆっくりが多く出ます。 3 作者の独自設定が含まれています。 4 若干ギャグ要素が含まれています。 5 前編・中編・後編に分かれているので、順番に読む事をお勧めします。 それでもOKという方のみ、どうぞ。 「うぉー、まってくれごしゅじーん!」 「ほら!ゆっくりしないではやくなさい!」 ……そこは、どこにでもあるような、普通の山の中。 その山の中の道中に、見慣れない風貌の二匹のゆっくりがいた。 二匹の内、先頭にいるゆっくりは滑らかな蒼い髪の毛に、頭にかんざしのようなお飾りが付いていて、薄い羽衣のような布を身に纏っていた。 もう一匹のゆっくりは中華帽のような帽子をかぶっており、額にお札のようなものが貼られ、何やら顔色が悪いようだった。 どうやら二匹のゆっくりは、どこかへと急いでいる最中らしい。 「よしかはからだがかたくて、あんまりはやくうごけないんだよぅ!」 「あれほどせーがが、からだをやわらかくするたいそうをしておきなさいっていったじゃないですか!」 ……が、よしかという名前のゆっくりは跳ねるのが遅いらしく、せーがという名前のゆっくりが、そのよしかを急かしていた。 「あれ?そうだっけ?……ところで、なんでよしかははねるのがおそいんだっけ?」 「あなたのからだがかたいからですよ!」 二匹の様子は、さながらデコボココンビといった感じだった。 「うーさうさうさっ!おふたりとも、まーた『あそこ』にいくきうさっ?」 ……そんな二匹の背後がら、何者かが声を掛けた。 二匹が後ろを振り向くと、そこには頭に兎の耳が生えたゆっくりがいた。 「おぅ?ごしゅじん、あのゆっくりだれだっけ?」 「てゐさんですよ、てゐさん。あなた、なんかいもかのじょがつくったおとしあなにはまっていたじゃないですか」 「うーん……、……おぉ!そんなきがしてきた!」 「しっかりしてください……。それで?せーがたちになにかようですか?てゐさん?」 てゐと呼ばれたゆっくりは、不敵な笑みを浮かべた。 「てゐはなんかいもちゅうこくしたうさ!……それでも、まだ『あそこ』にいくのをやめないうさ?」 「ふふん、やめるわけがないでしょう?……せーがには、やぼうがありますので」 「そううさか。まぁ、そのやぼうとやらにつぶされないよう、きをつけるうさ。うーさうさうさっ!」 てゐは高笑いをすると、近くの茂みの向こうへと消えて行った。 「ごしゅじん?ごしゅじんのやぼうってなんだっけ?」 「……せーが、なんだかなきたくなってきました」 「ぽんぽんがいたいのか?よしかがすりすりしようか?」 「もういいです……。ほら、いきますよよしか。あしもとにきをつけてくださいね」 「はーい!」 そんなこんなで、二匹は再び道を進み始める。 二匹の目指す場所とは、山を下った麓にある、『あそこ』であった。 「ふっふっふ……。みていなさい、てゐさん!せいがはぜったいに、やぼうをかなえてみせますよ!」 せいがはある野望を胸に秘めていた。 その野望の第一歩として、今日も日課となる『あそこ』へと赴く。 せいがの道のりは、はるか遠く険しい。 それでもせいがは、己の野望を叶える為、その道を踏み外そうとは考えていない。 「ごしゅじーん、なにかたべたいぞー」 「……」 ……時々、踏み外してしまいそうには、なる。 邪悪なる者達・前編 作:ぺけぽん 「ごしゅじーん、なにかたべたいぞー」 「しーっ……。よしか、しずかにしなさい……」 ……あれから数十分後。 二匹は山を下り、目的地へと辿り着いた。 二匹は今、その目的地の近くにある草むらの中に隠れていた。 ……二匹の視線の先には、小さな村があった。 「おーい、たご作ー。一服すんべー」 「んだなー。朝から畑仕事してて、腕が痛えだよー」 「俺の婆さんが作ったイナゴの佃煮でも食うべー」 村の中では、七十~八十代位の年齢の老人達が畑仕事を終えて一服している最中だった。 ……そう、てゐが言っていた『あそこ』とは、この山の麓にある小さな村の事だった。 この村には、若い年代の村人が一人もいなかった。 若い村人達は人里での暮らしに憧れ出て行ってしまい、村は老人ばかりとなったのだ。 「ふっふっふ……。きょうもいつもどおりですね……」 せーがは草むらの中から老人達の様子を伺い、悪い笑みを浮かべていた。 「ごしゅじーん、なんでよしか、ここにいるんだっけ?」 「……あのですねぇ、よしか。せーがたちはあのにんげんたちにわるいことをするためにきたんですよ?」 「なんで?」 「きまってるじゃないですか!あのむらを、せーがたちがのっとって、ゆっくりするためです!」 せいがはいい加減にしてくれとばかりに叫んだ。 ……声を最小限に抑えて。 せーがはある野望を胸に秘めていた。 ……それは、この村を自分が乗っ取り、その村の老人達を自分の専属にする事だった。 せーがは以前から村を訪れては偵察や妨害などの工作活動を行っていたのだ。 少しずつ、ゆっくりと、自分が村を征服しやすい要素を増やしていく為に。 そして今回、自分の第一の専属であるよしかに工作活動のイロハを学ばせる為に初めて村に連れて来たのだ。 「ほわぁ、そうだったのか!」 「はぁ……」 ……が、このよしかは物覚えが致命的に悪く、比較的頭が良いせーがでも教えるのにかなり苦戦していた。 それでもよしかには自分が何をしているのかを覚えてもらわないと困ると、せーがは考えていた。 「よしか、あれ、ちゃんともってきました?」 「おぉ!それはばっちりだ!」 せーがに促され、よしかは軽く身を震わせた。 すると、よしかが被っていた帽子から何かがスルリと落ちた。 ……それは、ゆっくりれいむ種のお飾りのリボンだった。 以前せーがが山の中を散歩していた際に、痩せこけて餓死しているれいむを見つけて、それを頂いたのだ。 せーがはそのリボンをよしかに命じて、自分の頭に付けさせた。 「ふっふっふ……。かんぺきですね……」 「ごしゅじーん、なんでほかのゆっくりのおかざりをつけているんだー?」 「それはですね、にんげんたちのめをごまかすためですよ」 「ごまかす?」 「そうです。ほかのゆっくりのおかざりをつけていれば、せーがだとおもわれないでしょう?」 「うはぁ!ごしゅじんはあたまがいいなぁ!」 「ふふ、もっとほめてください」 ……二匹は色々と盛り上がっていたが、人間に対してそんなカムフラージュは通用しないという事には気付いていなかった。 「ごしゅじん、よしかはどうすればいいんだ?」 「あなたはしょはんだからだいじょうぶでしょう。つぎからごまかすようにすればいいのです」 「わかったー!」 「それじゃあ、ゆっくりいきましょうか」 二匹はそう言って、村に近付き、老人達がいない場所を探し始めた。 「ここからはいりましょう」 「しずかにはいればいいんだよね!」 適当な場所を発見し、二匹は村の中へ侵入した。 ここから、二匹の工作活動が始まるのだ。 「そろーり、そろーり」 「そーろーそーろー!」 「ちょっ、よしか!こえがおおきいですよ!?」 「あ、ごしゅじんごめんなさい!」 「ごしゅじんじゃなくて、れいむとよびなさい!」 二匹は最初の段階で、思いっきりつまづいていた。 「うーん?九太郎、何か変なゆっくりがおるぞぉ?あんなゆっくり初めてみるぞい」 「お前呆けとんのかぁ?いつも村に入ってくる、せいたっちゅう名前のゆっくりだべよ」 「清太……、村に帰ってこんかのぅ……」 「清太はお前じゃろう。……ん?もう一匹変なのがおるぞ?」 「孫じゃろ」 老人達はそんな二匹を眺めながら休んでいた。 「さぁ、さっそくこうさくかつどうのはじまりですよ……!」 「おー!」 せいがは小声で、よしかは大声でそう宣言した。 「あのせいた、今日は何して遊ぶんかいのぅ?」 「あん時、清太を怒鳴らんかったら……。清太は出て行かずにすんだんじゃぁ……!!」 「だから清太はお前じゃ」 「イナゴの佃煮は飽きたべぇ。誰か柿ピー持ってきてくんろ」 老人達は柿ピーをつまんでいた。 「それで、よしかたちはなにをすればいいんだー?」 工作活動は始まったものの、初めて村に来たばかりのよしかは何をすればいいのか分からなかった。 「ふふふ……。よしか、あれをひっこぬくのです!」 れいむに扮した(つもり)せーがの視線の先には、村人の清太さん(息子の名前はとめ吉)の大根畑があった。 「えー?なんでひっこぬくのー?」 「ふふ……。よしかはしらないようですが、あれはおやさいさんといって、にんげんはそのおやさいさんをひとりじめにしているんです」 「なんと!」 「えぇ。あのつちからはおやさいさんがはえてきます」 「おいしいのか!?よしかもたべたい!」 「まぁまちなさい。まずせー……、いや、れいむがおてほんをみせますから」 「ごしゅじん、いませーがって」 「いってません!……とにかくいってきますからね!」 せーがはそろーり、そろーりと言いながら大根畑へ近付いて行った。 大根畑に到達したせーがは、悪い笑みを浮かべた。 「ふふふ……。きょうもきれいさっぱりぬきとってあげますからね!」 そう言ってせーがは口に咥えて、思いっきり抜き取った。 ……大根畑に生えている雑草を。 「ゆんしょ、ゆんしょ……。ふぅ、まだまだたくさんありますね……」 「ごしゅじーん、なんでそんなちいさいくさばっかりぬくのー?」 雑草ばかり抜き取り、肝心の大根をさっぱり抜かないせーがに対して、よしかは疑問の言葉を投げかけた。 「ふふふ……。よしか、そんなのきまってるでしょう?……このくさも、しょうらいはりっぱなおやさいさんになるからです!」 「え?そうなの?」 当然、そうではない。 「えぇ。こっちのでっかいおやさいさんは、そのうちにんげんがぬきとってしまうでしょう。……それでいいんですよ」 「なんで?」 「さきにこっちのちいさいおやさいさんをたくさんとってしまえば、またおやさいさんがはえてくるまで、じかんがかかるでしょう?」 「えーと、どゆこと?」 「ふふ……。つまり、にんげんたちのごはんさんのりょうをへらしてしまおうってかんがえです!」 「うおぉ!それはこわい!ごはんさんがへっちゃったら、ぽんぽんがぺこぺこになっちゃう!」 「ふふふふ……。せ……、れいむたちはこのむらをのっとったあとに、おなかいっぱいおやさいさんをたべればいいのです」 「すごいすごい!ごしゅじんはてんさいだぁ!」 「ふふん、たくさんほめてください」 せいがはドヤ顔で畑の雑草を抜き取り続けた。 「おぉ、今日もせいたは畑の雑草を抜いとるわい」 「働きもんじゃのぅ。助かるのぅ」 「おらの人参畑の雑草も抜いてくれるしのぅ」 老人達はせいがの働きぶりに感心していた。 「ごしゅじーん、つぎはなにをするのぉ?」 「うーん、そうですねぇ……」 せーがが次は何をしようか考えていた、その時だった。 「ふごわぁっ!?こ、腰がぁっ!?ワシの腰があぁぁぁぁっ!?」 畑を耕していたオハラさん(趣味はアーチェリー)が四つん這いになって悲鳴を上げていた。 どうやら畑を耕している途中でギックリ腰になってしまったようだ。 「だ、誰か助けてくんろおぉぉぉぉっ!?」 オハラさんは村の老人達に助けを求めるが、全員都合よく耳が遠かった為、オハラさんのSOSは届かなかった。 「嫌だあぁぁぁぁっ!畑のど真ん中で孤独死は嫌だよおぉぉぉぉっ!」 このまま誰もオハラさんの以上に気付かなければ、延々とギックリ腰の痛みに耐え続けなければいけない。 ……それは齢八十を超えるオハラさんにとって拷問でしかなかった。 「っ……」 それを見たせーがはオハラさんの所へ跳ねて行き……。 「ゆんっ!」 「おふっ……!」 オハラさんの腰に渾身の体当たりをかました。 「お……、おぉ……」 せーがに体当たりされたオハラさんはプルプルと震え……。 「ワシ、こんてぃにゅーできたぞいっ!!」 満面の笑みを浮かべて立ち上がった。 今のせいがの一撃で、骨のズレを矯正する事が出来たようである。 「助かったわい、せいた!次またギックリ腰になっちまった時も、よろしくたのむぞい!」 「えぇ、よかったですね!(なんで、れいむじゃなくて、せいたなんでしょうか?)」 せーがは少々疑問に思ったが、それは口には出さないでおいた。 鼻歌交じりで畑仕事に戻ったオハラさんを見届けたせーがは、よしかの元へ戻って行った。 「ごしゅじん、いまのはすごかったけど、なんでにんげんをたすけたの?」 「ふふ……。よしかにはそうみえますか……」 「え?」 「あのにんげんをたすけたおぼえなんて、これっぽっちもありません。……むしろ、わるいことをしてやったといったかんじですよ」 せーがはニヤリと笑った。 「ほら、みてみなさい。あのにんげん、さっきあんなにひどいめにあったというのに、またうごいてますよ?」 「それは、なおったからじゃないの?」 「ふふふ……。あのようすだと、またいたいおもいをするかもしれないですねぇ……」 「え?うん、そうだね」 「あのにんげんはきづいていないのです!ちょうしにのれば、いたいおもいをまたするということに!」 「ま、まさか……、ごしゅじん……」 「えぇ、そうです!せーがはあのにんげんがいたいおもいをするのをふやすために、わざとあんなことをしたのです!」 「ひゃあ!ごしゅじんはわるいなぁ!あくどいなぁ!」 「えっへん、もっとののしってください」 せーがもよしかも、せーがの一人称がれいむになっていない事を気にしなくなっていた。 「ヒャアァァァァッ!?足攣ってもうたわいぃっ!?」 オハラさんは地面を転げ回っていた。 「ごしゅじーん、よしか、ねむくなってきたぞー」 「がまんしなさい!まだおひるなんですから!」 せいがはぐずり始めたよしかをたしなめていた。 ……と、その時。 「ワン、ワン!」 向こうから白い毛の犬が二匹に向かってきた。 「うおぉ!?なんだ!?なんだ!?」 よしかは突然の事態に戸惑ってしまった。 「あら、しろじゃないの、おいでー、しろー」 それとは正反対に、せいがは落ち着いた表情で犬を迎えた。 「ワンワン!」 「やん、くすぐったいですよ、しろ!」 シロと呼ばれた犬は、せいがの頬をぺろぺろと舐めていた。 「おぉ!ごしゅじん、そのいきものとなかがいいのか?」 「えぇ、このしろはほんとうにあまえんぼなんですよ」 「ワン!」 「でも……、なんでそのいきものとなかよくしてるの?にんげんといっしょにすんでるんでしょ?」 「ふふふのふ……。よしかはそうおもっていますか……」 「はい?」 「しろとはただなかよくしているだけではありません……。これもりっぱな、ぼうがいこうさくなのですよ?」 せいがはシロには聞こえないよう小声でよしかに話しかけた。 「どういうこと?」 「ほんかくてきにこのむらののっとりをはじめるとき、せんりょくはおおければおおいほうがいいわけです」 「おぉ、かずのぼうりょくというやつか!?」 「まぁ、そうですね。……それは、てきのうちがわにもいたほうがいいわけです」 「ま、まさか……、ごしゅじん……」 「そうです。いざというとき、このしろもせーがたちのなかにひきいれるのですよ」 「ほわぁ!ごしゅじんはちもなみだもないなぁ!」 「えぇ、そうでしょう?しろもそうおもいますよね?」 せーがは邪悪な笑みを浮かべ、シロに笑いかけた。 (ワシ、その名前はあんま好きじゃないのぅ。ぱっとせんのじゃ) シロ(本名:源之信)はとりあえずワン、と鳴いてみせた。 「さて……。きょうはこんなところでしょうか」 「おぉ、かえるのか?ごしゅじん」 「えぇ。ここのにんげんたちはせーがたちにたいしてけいかいしんをもっていませんが……。ふかいりはきんもつです」 せーがはやる事は終えたとばかりにそう言った。 「さぁ、かえりますよ、よしか。そろーり、そろーり」 「そーろーそーろー!」 二匹は山へと帰って行った。 「おぉ、せいたが帰って行くぞい」 「明日も来いよー、せいたー」 「確か、孫の名前はよしぞうっちゅうたかいのぅ?」 「よしぞうもまた来いよー。柿ピー食わせちゃるからのー」 老人達は次第に遠くなっていく二匹の背中を見送った。 (やれやれ……。やっとかえったうさか……) 山へと戻っていく二匹の姿を、村の家の陰から覗く者がいた。 (あんなのがぼうがいこうさくとか……。わらえるうさ) ……それは、冒頭で二匹の前に現れた、ゆっくりてゐだった。 あれからてゐは二匹の後に村に侵入し、ずっと物陰に隠れていたのだ。 (このむらは、てゐのいたずらしほうだいのゆっくりぷれいすにするうさ。さきをこされるわけにはいかないうさ) ……このてゐも、せーがと同じようにこの村を自分のものにしようとしていた。 簡単に言えば、せーがは同業者兼ライバルなのだ。 (うさうさ……。まぁ、てゐのやりかたはひとあじちがううさよ……) てゐは悪い笑みを浮かべ、家の陰から飛び出した。 「おじいちゃーん!こんにちはうさーっ!」 てゐはさっきの悪い笑みから一転し、天使のような満面の笑みで老人達に挨拶をした。 「おぉ、てゐちゃんじゃないか」 「今日も遊びに来たんじゃのう」 「てゐちゃん、クズ野菜じゃが、人参食うかい?」 老人達はそんなてゐを快く出迎えた。 ……てゐはせいががこの村に目を付ける以前から、村の老人達と接触していた。 てゐの人懐っこい性格(表)もあり、てゐは老人達の孫のような存在となっていた。 老人達がせいがとよしかに警戒心を抱かなかったのも、てゐに対して慣れていた為である。 「にんじんさん?おじいちゃん、ありがとうさっ!」 てゐは満面の笑みで人参を頬張った。 (うさうさうさ……。きょうもぜっこうちょううさ……) ……てゐは最初の内から、この村でいたずらをしようとは考えていなかった。 もしいたずらがバレて、自分が捕まれば間違いなく酷い目にあってしまう。 なのでてゐは、まず老人達とじっくり仲良くする事にした。 そうすれば、てゐに対する警戒心も薄まるし、隠れていたずらをすれば、てゐがやったと思わせづらくなる。 「てゐちゃんや、さっきせいたが来てたんじゃ。よしぞうっちゅう孫を連れてのぅ」 「じゃが、いつも話しかけようとすると、逃げちまうんじゃ。シャイなのかのぅ」 「働きもんじゃが、何を考えとるかちょっと分からんのじゃ。のう源之信」 「ワン!(そんな事はどうでも良いんじゃい。この村には女っ気がないから、せーがちゃんがワシの心のオアシスじゃい)」 「へぇー、そううさかー(せーが、まったくわるくおもわれていないうさね)」 「何故かは知らんが、いつもてゐちゃんと入れ違いで来るんじゃよ」 「タイミングっちゅうもんが悪いんだべよ」 「ふーん、てゐもいつか、あってみたいうさ!(そりゃあ、わざとあわないようにしているうさからねぇ)」 「てゐちゃんもせいたも良い子じゃのぅ。どっちもめんこいのぅ」 「ありがとううさ!(あいつといっしょにはしないでほしいうさ)」 ……そんな感じでてゐと老人達はお喋りに華を咲かせ続けたのだった。 「おじいちゃん、またくるうさっ!」 「気ぃ付けて帰れよー」 「せいたとよしぞうに会ったら、よろしく言っといてくれー」 「たまには帰ってきてくれと伝えといてなぁー」 「清太はお前言うとんじゃろが!!」 老人達とのお喋りを終えたてゐは、老人達に見送られながら山へと戻って行った。 「うんうん、やっぱりてゐちゃんは良い子じゃい」 「せいたも働きもんで、助かるしのう」 「……ゆっくりも皆、あの子達のようじゃったらのぅ……」 「そういう事を言うでないわい。そう言うと、前の事を思い出しちまうじゃろがい」 「そうじゃそうじゃ。ワシらは変わると決めたじゃろ?」 「まぁ……。そうじゃがのう……」 老人達はそんな事を言いながら、徐々に遠くなっていくてゐの背中を眺めていた。 (うさうさ、じゅんちょう、じゅんちょううさ。このちょうしで、どんどんなかよくなるうさ) てゐは内心ほくそ笑んでいた。 もう十分仲良くなっていると思うのだが、てゐにしてみればまだまだなのだろう。 てゐが村でいたずらを実行に移すのはまだ先のようである。 (そういえば、おはらさん、あしがつったっていっていたうさね……。ちょっぴりしんぱいうさ) ……訂正、村人の心配をしている時点で、まだまだ先の話のようである。 「おやぁ~?そこにいるのは、てゐさんじゃありませんか?」 「おぉ、てゐだ!はじめまして!」 「え?……あっ、おまえたち……」 ……すると、てゐの目の前に何故かせいがとよしかの二匹が現れた。 「な、なんのよううさ?またてゐにいちゃもんでも……」 「いぃえ~?いちゃもんだなんてそんな~」 「そんな~」 二匹の態度はどうも腑に落ちなかった。 「よ、ようがないなら、てゐはこれでしつれいするうさ!」 何か嫌な予感がしたてゐは、さっさとこの場から離れようとした。 「まぁまぁ、まってくださいよ、て~ゐちゃん♪」 ……てゐは、せーがのその一言で体が動かなくなってしまっていた。 「え?あ、ま、まさか?そんな……」 てゐは明らかに動揺していた。 (もしかして、みられていたうさ……!?) てゐはもしかしてと思いながらも、半ば確信していた。 「せーが、いままでてゐちゃんのこと、ごかいしていました。てゐちゃんはとってもいいこなんですってね?」 「おぉ、てゐちゃんはわるいやつじゃなかったんだな!」 「あ……」 「えぇ、そうですよ、よしか。『おじいちゃん、てゐにあーんしてほしいうさ!』なんていうこが、わるいこなわけありません」 「あのにんげんたちと、とってもなかがよさそうだったもんね!」 「う……」 「えぇ、えぇ。きっとてゐちゃんは、ほんとうはやさしくて、はずかしがりやなんですよねぇ」 「あぁ!だからよしかたちが、あそこにいくのをいやがっていたのか!」 「ひ……、ひぃ……」 見られた。 全部、見られてしまった。 よりにもよって、こいつらに。 「う、うさ……、て、てゐはようじがあるうさ……。こ、このへんで、しつれいするうさ……」 「あら?そうですか?ざんねんですねぇ、よしか」 「ようじがあるなら、しょうがないね!」 「う、うさ……」 てゐは体がガチガチになりながらも、とにかく一刻も早く、この場を離れたかった。 今のてゐの頭の中は恥ずかしさで一杯だった。 「それじゃあ、またこんどあいましょう?とってもかわいいて~ゐちゃん♪」 「て~ゐちゃん♪」 「う……、うさあぁぁぁぁんっ!!」 二匹のその一言がトドメとなり、てゐは顔を真っ赤にして泣きながらどこか遠くへ行ってしまった。 「ふふ……。むらからてゐさんのこえがきこえるとおもってもどってみたら……、いやはや、いいものがみれましたねぇ……」 せーがはゾクゾクと震えながら、危ない笑みを浮かべていた。 当然、自分達がここにいたのも偶然ではなく、最初からからかうつもりで待っていたのである。 「でも、てゐないてたぞ?ちょっといいすぎたんじゃないか、ごしゅじん?」 よしかはせーがに一緒にからかうよう命令されてやったものの、少し後悔していた。 「いいんですよ、らいばるはつぶせるときにつぶしておかないと……、ねぇ?」 「ごしゅじんは、くずだなぁ……」 「そうそう、もっとたっぷりほめてください」 「ほめてないぞ……」 よしかはそう突っ込むも、せーがは全く気付いていないのだった。 ……同時刻。 「ゆっへっへ……。これは……。いいところをみつけたのぜ……」 ……せーががてゐを馬鹿にしていた頃、麓の村を遠く離れた草むらの陰から覗く、一匹のまりさがいた。 「さっそく、むれのみんなにもしらせるのぜ……」 まりさはそう呟き、草むらに紛れながら山へと戻って行った。 まりさの姿を見ていた者は、誰もいなかった。 続く 挿絵:
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4553.html
『続・邪悪なる者達・起』 22KB 戦闘 群れ ゲス ドスまりさ 希少種 独自設定 26作品目、その1です。 注意書きです。 1 この作品はanko4028~4030「邪悪なる者達」の続編となっていますが、知らない方でも読めると思います。 2 希少種が出ます。 3 ゲスいゆっくりが出ます。 4 若干ギャグ要素が含まれています。 5 全4編に分かれているので、順番に読む事をお勧めします。 それでもOKという方のみ、どうぞ。 「う、う~ん……、う~ん……」 「ZZZ……、ZZZ……」 ……そこは、どこにでもあるような、普通の山の中。 日は既に沈んでおり、辺りは暗闇と静寂に包まれていた。 そんな山の中で、二匹のゆっくりが木の根元で眠っていた。 その内の一匹は滑らかな蒼い髪の毛に、頭にかんざしのようなお飾りが付いていて、薄い羽衣のような布を身に纏っており、何やらうんうんとうなされていた。 もう一匹は中華帽のような帽子をかぶっており、額にお札のようなものが貼られており、うなされている方のゆっくりとは対照的に、熟睡していた。 ……普通なら、ゆっくりという生き物は巣穴など外敵から身を守る事が出来る場所で寝るものである。 「う~ん……、せ、せーがのゆんしーおうこくがぁ……、……はっ!?」 すると、先程までうなされていた方のゆっくりがガバッと起き上がった。 「ふぅ……、ゆめですか……」 そのゆっくりは全身に脂汗をかいており、相当嫌な夢を見ていた事が一目で分かる。 「むにゃむにゃ……、ごしゅじん、ぽんぽんすいたー……」 隣りで寝ていたもう一匹のゆっくりが、寝言を言いながら口から涎を垂らしていた。 「はぁ……。よしか、あなたはおきらくでいいですねぇ……」 寝言でせーがと呼ばれたゆっくりは、寝ている方のゆっくりに対して呆れ顔で呟いた。 「うへへー……、ごしゅじんはもちもちしてて、おいしいなぁ……」 よしかと呼ばれたゆっくりは、幸せそうな寝顔でさらに口から涎を垂らしていた。 「……ほんとうにたべちゃ、やーですよ……?」 よしかの夢が正夢にならない事を祈りながら、せーがは二度寝するべく瞼を閉じた。 「はぁ……、どうして、こんなことに……」 せいがは満たされていた。 己の野望と欲望に忠実に生きて、自分らしいゆん生を送り、満たされていた。 その筈だった。 満ち足りた日々は、ある日突然、失われてしまった。 続・邪悪なる者達・起 作:ぺけぽん ……それは、今から大体半日ほど前の事だった。 「ふふふふふ……」 せーがは広場らしき場所を眺め、とても悪い事を考えていそうな笑みを浮かべていた。 隣りには自分の第一の専属であるよしかがいた。 「ごしゅじーん、どうしたんだー?なにかかなしいことでもあったのかー?」 「なんでそうなるんですか!?わらっているんですから、うれしいことがあったにきまってるでしょう!?」 「そーなのかー。それで、うれしいことってなんだー?」 「ふふふ……。よしか、みなさい、このゆんしーおうこくを。すばらしいでしょう?」 「へ?ゆんしーおうこく?なにそれ、おいしいの?」 「たったいまつけた、このむれのなまえです」 「えー……。そのなまえはどうかと……」 「ふふふ。みなさい、よしか。このゆんしーおうこくのたみたちを」 せーがの視線の先には、広場で思い思いにゆっくりしている、せーがとよしか以外のゆっくり達の姿があった。 ……が、そのゆっくり達は、何やら様子がおかしかった。 「ウヴァ……」 「ユッグヂィ……」 「ドガイハァ……」 「ヂンボォ……」 そのゆっくり達の目は虚ろで、片言の言葉をうわ言のように何度も呟いていた。 しかも肌が紫や青色に変色しており、その内の何匹かは肌が溶けかかっていた。 明らかに普通のゆっくりとは違う、異形の存在。 しかしせーがとよしかはそんなゆっくり達を目の当たりにしても全く動じる事はなかった。 ……それもその筈、このゆっくり達は、せーがが意図的に生み出した存在なのである。 せーが種には、ある特別な能力がある。 それは、ゆっくりの死体を『ゆんしー』という名のゾンビとして蘇らせるというものだ。 ゆんしーは親であり主であるせーが種の絶対服従のしもべとなるのである。 よしかもまた、せーがによって生まれ変わったゆんしーであった。 「ふふふ……、かずおおくのあくぎょうをかさねてかさねて……、このゆんしーおうこくを、ここまでおおきくしましたよ」 「うん、よしかも、ともだちがたくさんできてうれしいぞー」 「きょうふをおそれぬ、ぜったいふくじゅうのゆんしーたちに、てきなんぞありません」 「すごいぞー、つよいぞー、かっこいいぞー」 せーがはありとあらゆる手段を用いて、ゆっくりの死体を集め、時には『作り』、ゆんしー達をどんどん増やしていった。 それ故に、他の群れのゆっくり達からは『化け物達の長』や『ゲスの中のゲス』などと忌み嫌われ、ゆんしーおうこくを潰そうとする者達も少なくはなかった。 当然せーがは、売られた喧嘩は全て買い続けた。 滅ぼした群れや殺したゆっくり達は数知れず。 餡子を餡子で洗う日々を送り、ついにせーがのゆんしーおうこくの周辺には、せーがの敵達は存在しなくなっていた。 無論、この山の全てのゆっくりの群れを滅ぼした訳ではない。 しかし、残った群れのゆっくり達のほとんどがは皆せーがを、ゆんしーおうこくを恐れ、喧嘩を売るような真似だけは絶対にしなかった。 ……事実上、せーがはこの山の頂点に君臨する事となったのである。 「あらそいとさくりゃくにあけくれるひびでした……。ですが、これでせーがのじゃまものはだれもいなくなりました!」 「これで、おもいっきりゆっくりできるなー」 「このせーがこそが、このすばらしきゆんしーおうこくの、おうなのです!」 「あ、ごしゅじーん、よしか、そのゆんしーおうこくってなまえは、どうも……」 「あーっはっはっは!!」 (きいてないぞー。なんか、そのなまえははずかしいようなかんじがするのになー) ……ゆんしーおうこくの王、せーがは今、幸せの絶頂にいた。 数多くの同族達の命を犠牲にし、踏み台にし続け、己の満足のいく幸せというものを手に入れた。 せーがは、幸せであった。 「どすすぱーっくっ!!」 ゴオオオオォォォォッ!! 「ユグギャアァァァァッ!!」 「オゲェアアァァァァッ!!」 「ワガラナイィィィィッ!!」 ……そして次の瞬間には、その幸せは呆気なく消え失せていた。 「……へ?」 「?」 せーがとよしかは、一体何が起きたのか訳が分からなかった。 突如、自分達の目の前の広場を光線のような光が通り過ぎ、広場にいたゆんしー達の大半が消滅してしまった。 消滅を免れたゆんしー達も、体の半分が吹っ飛んでいたり、潰れていたりと被害が大きかった。 「な、なんです!?なにがおきたんです!?」 「うわー!?よしかのともだちがー!?」 二匹は突然の事態にパニックになっていた。 目の前で群れのゆっくり達が突然消えたりすれば、当然の反応だろう。 (はっ……!?さ、さっきのまぶしいひかり……、ゆんしーたちがきえてしまった……、ま、まさか!?) せーがは目の前の状況から得られる情報を元に、ある一つの可能性を見出していた。 ……こんな事が出来るのは、『あの』ゆっくりしかいない。 「ゆーっへっへっへっ!!どすのどすすぱーくのまえには、てきなしなのぜぇ!」 ……広場の向こうから、下品な笑い声が聞こえる。 その声の持ち主は、全長4メートル程の大きさのドスまりさだった。 ドスまりさの後ろには、普通のゆっくりまりさ達が数十匹程いた。 「あ、あれは、もしや、どすまりさ……!!」 「しっているのか!?ごしゅじん!!」 「えぇ……。じっさいにみたことはありませんが、うわさだけはきいています……」 せーがはドスまりさをこの目で見た事は一度もなかった。 風の便りで、普通のまりさの何倍も体が大きい、どすすぱーくと呼ばれる技を使う、位の話しか聞いていなかった。 正直たかが噂と思っていたが、今その技の破壊力をせーがは痛感していた。 「しかし……、このやまには、どすまりさなんていなかったはず……。いったいどこから……」 「それにしても、あのまりさ、でけえ!!ごしゅじん、よしかもあんなふうになりたい!」 「ごはんがたりなくなるからだめです」 「えー」 二匹はドスまりさを目の当たりにしながら、緊張感があるのかないのか分からない会話を繰り広げていた。 「おい!そこのげすせーが!どすをむしするとは、いいどきょうなのぜ!!」 ドスまりさの怒鳴り声により、二匹のコントのような会話は中断された。 「……あなたは、どすまりさですね?このちかくには、どすまりさはいないはずですが。……よそのやまからきたのですか?」 せーがはなるべく平常心を保つような形でドスまりさに語りかけ、少しでも情報を得ようとした。 最も、引越しの挨拶をしに来ただけというのは、まず考えられないとは思っていた。 「ゆっへっへ……、くそせーが。どすのことをわすれたのかぜ?」 「はい?」 「どすは、ちゃ~んとおぼえているのぜ!!そのよゆうぶっこいたかお……、わすれたくてもわすれられないのぜ!!」 「……?」 せーがはドスまりさの返答に疑問を感じていた。 こちらは相手の事をほとんど知らないのに、向こうは自分の事を知っているとはどういう事なのか。 「……せーがは、あなたにあったのは、はじめてのはずですが」 「とぼけるんじゃないのぜぇ!!どすのむれをほろぼしたくせに!!」 「むれをほろぼした?なにをいって……、……!?ま、まさか、あなたは……!!」 「ゆっへっへ……、ようやくおもいだしてくれたのぜぇ?」 「このまえほろぼした、でいぶばっかりのむれにいた、どれいまりさですか!!いやぁ、あのときはすっかりやせこけていましたから、きづきませんでした!」 「おちょくるんじゃないのぜ!!ぶちころされたいのかぜ!?」 「……じゃあ、あなたはだれなんです?せーが、ほんとうにわかりませんよ」 「だったらおもいださせてやるのぜ!『しっこくのけもの』……、このむれのなまえをおぼえているかのぜ!?」 「『しっこくのけもの』……?……あ。そういえば……」 ドスまりさから中二病臭漂う群れの名前を聞いたせーがは、やっと思い出した。 その『しっこくのけもの』とは、ゆっくりまりさばかりで構成された群れで、数ヶ月前にせーがのゆんしーおうこくに宣戦布告をした。 威勢よく攻め込んだものの、わずか数分足らずでゆんしー達になぶり殺しにされ、見事にしっこく(笑)っぷりを見せて滅ぼされた。 しかし群れの長だけは捕まえる事が出来ず、逃げられてしまったのだ。 「ん……?なおさらおかしいですね。あのむれにはどすまりさなんていませんよね?」 「そうだぞー!あのむれのまりさたちは、みんなまずそうだったから、はっきりおぼえてるぞー!」 「あなたはほんとうに、ごはんのことにかんしてはものおぼえがいいですねぇ」 「えへへー、それほどでもあるなー」 「ほめてません」 せーがの記憶が正しければ、『しっこくのけもの』にはドスまりさのような規格外のゆっくりは存在していなかった。 「それに、あのむれのおさは、ふつうのまりさだったはず……。……!!」 せーがはようやく、このドスまりさの正体に気付いた。 「ま、まさか、あなたは、あのおさまりさなのですか!?」 「ゆっへっへ……。ようやくおもいだしてくれたのぜぇ?そうなのぜ!!どすは、『しっこくのけもの』の、もとおさなのぜ!!」 「で、ですが、あなたはどすであって、むかしはまりさで……、あれれ?」 「ごしゅじーん、なにをなやんでるんだー?きっと、ごはんをたくさんたべたから、あんなにでかくなったんだぞー」 「そんなわけがないでしょう!?」 ドスまりさの正体に気付いたものの、何故その長まりさがドスまりさになっているのか、せーがには分からなかった。 「おまえにむれをほろぼされて、どすはひっしになってにげのびたのぜ!ふくしゅうするきかいを、かくれながらずっとまっていたのぜ!」 「できれば、ずっとかくれたままでいてほしかったんですが」 「ゆへへ……、ゆっくりのかみさまは、ちゃんとどすをみていてくれたのぜ!あるひとつぜん、からだがおおきくなって、どすになったのぜ!」 「はぁ!?いきなりおおきくなったんですか!?なんという、ごつごうしゅぎ……!!」 「ごしゅじんもよしかも、にたようなものだとおもうぞー」 「むむむ……」 ゆっくりまりさの中には、ドスまりさに成長する事が出来る遺伝子を持っている個体が僅かに存在する。 このまりさも、その遺伝子を持っていたのだろう。 「ゆっへっへ……、どすになったしゅんかん、かくしんしたのぜ。ふくしゅうのときがきた……、と!」 「……なるほど。そのうしろにいるのは、あたらしいおなかまさんというわけですか」 「どすのなのもとに、かずかずのもさたちがあつまったのぜ!しんせい『しっこくのけもの』なのぜ!!」 「みごとにまりさばかりですものね」 「ゆへへ……。ここにくるとちゅうで、なまいきなふらんたちのむれがあったから、かるーくほろぼしてやったのぜ!」 「えー!?ふらんたち、しんだのかー!?あそこのふらんたちは、つよくてかっこいいのにー!おしいゆっくりをなくしてしまったー!」 「つよさじまんですか。すごいですね。まんぞくしたらかえってください」 「ゆっひゃっひゃっひゃ!!このまえのふらんのむれのように、このむれもほろぼしてやるのぜ!!この『しっこくのけもの』が!!」 「……そのむれのなまえは、なんとかなりませんか?なんか、きいていて、はずかしいので」 「ゆんしーおうこくもにたようなものだぞー。なんか、きいててからだがかゆくなってくるんだぞー。なまえかえようよー」 「えっ、なにそれこわい」 「ゆがあぁぁぁぁっ!!おちょくるんじゃないのぜえぇぇぇぇっ!!」 せーがとよしかの子馬鹿にした態度に激怒したドスまりさは、二匹を潰すべく飛び上がった。 「あぶないっ!」 「おわぁっ!?」 ズシイィィィィンッ!! 二匹はドスまりさの踏み潰し攻撃を避ける事が出来たものの、ドスまりさの着地の衝撃で地面が大きく揺れ、危うく転びそうになる。 「ゆっへっへ……!ぶちころしてやるのぜ!」 「くっ……!よしか!にげますよ!」 「わ、わかったぞ!」 二匹は何とか態勢を立て直し、一刻も早くこの場から逃げる事を最優先とした。 いくら他の群れを滅ぼしてきたとは言え、それはゆんしー達による数の暴力があってのこそ。 ドスまりさのような規格外のゆっくりに対しては、一匹二匹のゆんしーはもちろん、せーがやよしかでは太刀打ちなど出来る筈もない。 「ゆっへっへ!おまえたち!そのにひきはにがすんじゃないのぜ!」 「「「「「「ゆっくりりかいしたのぜ!」」」」」」 ドスまりさの号令により、その場から逃げ出そうとした二匹の前に、配下のまりさ達が立ち塞がった。 「ゆへへへ……、このままにげられるとおもったのぜぇ?」 「どすのてをわずらわせるほどでもないのぜ!まりさたちでなぶりごろしにしてやるのぜ!」 「くっ……!!ゆんしーたち!せーがたちのみちをきりひろげなさい!」 せーがはまだ動けるゆんしー達に向かって叫んだ。 「ウウウゥ……!!」 「ユガアァ……!!」 せーがの命令を受けたゆんしー達は、一斉にまりさ達に飛び掛かった。 「ゆぎゃあっ!?まりさのほっぺがぁっ!!」 「このぉっ!!じゃまするんじゃないのぜっ!!」 「ユッグヂィ……!!」 せーがとよしかの目の前で、まりさ達とゆんしー達による乱戦が始まった。 「ちっ!ばけものゆっくりなんざ、どすすぱーくでふきとばして……」 「ち、ちょっとまつのぜ!どす!」 「ゆあぁ!?なんなのぜ!?」 ゆんしー達をどすすぱーくで再び消し去ろうと、ドスまりさは大口を開けたが、近くにいた配下のまりさに止められた。 「どすすぱーくをうっちゃったら、むれのみんなまでまきこんじゃうのぜ!」 「ゆぐっ!そうなのぜ……」 幸い、乱戦になったお陰でドスまりさはせーが達に手出しは出来なくなっていた。 ……が。 「……いや、もんだいないのぜ。あのばけものゆっくりたちよりも、どすたちのほうが、かずはおおいのぜ」 ドスまりさの顔は余裕のある表情に戻っていた。 「しぬのぜっ!!ばけものゆっくり!」 「ユグゥ……!」 「ゆっへっへ!こっちもばけものゆっくりをにひきころしたのぜ!!」 ……ドスまりさの言う通り、配下のまりさ達とゆんしー達の数は3:1程の差があった。 皮肉にも、ゆんしーおうこくの得意とする数の暴力をゆんしー側が受ける形となっていた。 一匹、また一匹と、ゆんしー達が潰されていき、もはや数える位のゆんしーしか残っていなかった。 「よしか!あそこににげますよ!」 「おぉ!」 せーがとよしかは乱戦の中を掻い潜り、群れの外へあと少しの所まで来ていた。 「ゆっへっへ!にがさないのぜ!」 「くそせーが!おまえはここでおわりなのぜ!」 「つぶしてやるのぜ!」 ……しかし、三匹のまりさ達が、二匹の退路に立ち塞がる。 その口には鋭い枝が咥えられている。 「いくのぜ!」 「「おう!!」」 先頭に立っているまりさが、自分の後ろにいる二匹のまりさに呼び掛ける。 後ろのまりさ達はそれに応え、先頭のまりさの後ろ一列に並んだ。 「「「まりさたちのひっさつわざをくらうのぜっ!!」」」 三匹のまりさ達はそう叫び、縦一列に並んだまませーがとよしか目がけて突っ込んだ。 「ゆっへっへ!!まりさのこうげきをかわしたら、すぐうしろのまりさがこうげきをしかけるのぜ!」 「そのこうげきをかわされたら、いちばんうしろのまりさがさらにこうげきをしかけるのぜっ!」 「さんびきのれんぞくこうげきっ!かわせるもんならかわしてみせるのぜぇっ!」 「あ、あのわざは……!な、なんと、おそろしい……」 「しっているのか!ごしゅじん!」 「えぇ……。あれはほんとうにおそろしいわざです。……よしか!むかえうちますよ!」 「お、おぅ!」 せーがはそう言うと、髪に挿してあったかんざしを取り出し、口に咥えた。 「ゆーっへっへっへっ!!しぬのぜぇっ!!」 先頭のまりさが勝利を確信し、せーがに飛び掛かる。 「よしか!」 「ふんっ!」 対するせーがはよしかの頭の上に跳ね、よしかの頭上に乗り、そして……。 「とうっ!」 先頭のまりさ目掛けて思い切りジャンプした。 「ぶべぇっ!?」 せーがは先頭のまりさの頭上に着地し、先頭のまりさはその重みにより動きを止める。 「な、なにぃっ!?」 「ま、まりさをふみだいにしたぁっ!?」 先頭のまりさの後ろにいた二匹のまりさは、攻撃が止められた事に驚きを隠せなかった。 ……せーがはその二匹の油断を見逃さなかった。 「とーうっ!!」 「「!?」」 せーがは再び跳躍し……、二番目にいたまりさの脳天目掛け、口に咥えていたかんざしを深く突き刺した。 「ぎゃあぁぁぁぁっ!?」 中枢餡にまでかんざしが到達したまりさは絶叫した後……、グリンと白目を向いて、それっきり動かなくなった。 「ま、まりさがやられた!?」 「ま、まりさあぁぁぁぁっ!?」 (なんという、おそろしいくらいにばかばかしいわざ……。あれではうしろのにひきのまえがまったくみえないでしょうに……) 先頭と最後尾にいたまりさ二匹は、仲間があっさりと殺された事に動揺しきっていた。 「いまのうちです!よしか!」 「おう!」 せーがとよしかはそんな二匹を尻目に、近くの茂みへと向かい、その茂みの中へ潜り込んだ。 「まりさあぁぁぁぁっ!!しっかりするのぜえぇぇぇぇっ!!」 「せ、せーががいないのぜ!!」 「あ……、あのくそせぇがあぁぁぁぁっ!!こんどあったときはかならずころしてやるのぜえぇぇぇぇっ!!」 ……その場に残された二匹のまりさは、せーがに復讐を誓うのだった。 「ゆっへっへ!ざまぁみろなのぜ!!」 「まりさたちのかちなのぜ!!」 ……そして、まりさ達とゆんしー達による乱戦も決着を迎えていた。 勝ち誇るまりさ達の周辺には、動かなくなったゆんしー達が転がっていた。 「せーがはどうしたのぜ?」 「ど、どす!……せーがはにげたのぜ!」 「ちっ……。まぁ、いいのぜ……。あいつをころせなかったのはざんねんだけど、ここまでたたきつぶせればじゅうぶんなのぜ……」 配下のまりさからせーがの逃走を知らされたドスまりさは、憎々しげに舌打ちをしながらも、せーがの群れを壊滅させた事には満足していた。 そしてドスまりさは群れのまりさ達を自分の前に集めた。 「せーがをにがしたのはざんねんなのぜ!けれど、どすたちはせーがにかったのぜ!!きょうというひを、しっこくのけもののきねんのひとするのぜ!」 「「「「「「えいえいゆー!!えいえいゆー!!」」」」」」 「「「「「「どすばんざーい!!」」」」」」 「「「「「「しっこくのけものばんざーい!」」」」」」 ドスまりさの高らかな勝利宣言に、群れのまりさ達は歓喜の雄叫びをあげる。 ……こうして、せーがはこの山の頂点の座から転がり落ちる事となったのである……。 ……そして、今に至る。 「はぁ……、どうして、こんなことに……」 あれから、何とか逃げ延びたせーがとよしかは、雨風を凌げそうな木を見つけ、その根元で一夜を過ごす事となった。 「うぅ、さむいですねぇ……」 「ぐがー……、ぐごー……」 夜は山の気温が自然と下がり、せーがは時折吹く冷たい風を一身に受け、ブルっと身を震わせる。 そんなせーがとは裏腹に、よしかはグースカと寝ていた。 「ゆんしーはあつさやさむさをかんじないから、そこはうらやましいですねぇ……」 「ずびびー……、ぷしゅるるる……」 「……ほんとうに、このこは……。せーががこんなにおちこんでいるというのに……」 「ぐごぉー……、ぐげぇー……」 「……はぁ。ねましょう」 夜明けまでまだ時間はある。 これ以上悲観的になって精神的にまいる前に寝てしまおうと、せーがは二度寝を決め込む事にした。 (……これから、どうしましょうか……。……あてはあるのですが……) 「うおぉ~……、ごしゅじ~ん……。よしかのおなかのなかで、あばれるな~……」 「……」 ……よしかの寝言を聞きながら、せーがの意識はまどろみの中へと落ちていくのだった……。 ……翌日。 「ふぁ……」 「ぐごー……、ぐごー……」 辺りは既に明るくなっており、せーがは目を覚ました。 昨日の悪夢のような一日が過ぎ去り、新しい一日が始まるのだ。 「ほら、よしか、あさですよ。おきなさい」 「うぉ……。……お!?ごしゅじん!?せーがのぽんぽんのなかにいたんじゃなかったのか!?」 「かってにたべないでください。……それじゃ、よしか。いきましょうか」 「え?ごしゅじん。いくってどこへ?」 よしかがせーがにそう尋ねる。 ゆんしーおうこくは今は昔の帰るべき場所。 それなのに、一体どこへ行くというのか。 「ゆんしーおうこくは、もうありません。……せーがはかなりつかれました。ここいらでやすむひつようがあります」 「ごしゅじん、やすむならここでもうひとねむりしようよ」 「いいえ。ここではやすみません。……せーがたちは、いまからかえるんですよ」 「かえるってどこに?むれはもうないんだぞー?」 「わすれたんですか?よしか。せーがたちには、もうひとつ、かえるばしょがあるんですよ?」 「うぇ?……あ!そーかそーか!」 せーがのその言葉に、よしかは何かを思い出したようだ。 せーがの言った事は、間違いではなかった。 自分が築き上げたゆんしーおうこくの他に、もう一つ、帰る場所があるのだ。 「よしか、かえりましょう。……せーがたちのほんとうのおうちへ。……『じゃせんていこく』へ」 ……それから数日後、ドスまりさの群れにて。 「どす!どす!まりさたちのむれにはいりたいっていうやつらがきたのぜ!」 「きのうにきたやつらよりかずがおおいのぜ!」 「どうするのぜ?どす!」 広場にいる数匹のまりさが、ドスまりさからの指示を仰いでいた。 ……ドスまりさがせーがのゆんしーおうこくを滅ぼしてから数日が経った。 せーがに代わって新たな山の支配者となったドスまりさの下に、群れに入れてほしいと他のゆっくり達がやって来るようになった。 山の支配者の下で、甘い汁を吸おうという魂胆なのだろう。 日に日に来るゆっくりの数は多くなり、それだけドスまりさの噂が広まっている事を意味した。 「ゆっへっへ。きまっているのぜ。そのゆっくりたちのなかから、まりさだけをえらんでいれるのぜ!」 「「「りょうかいしたのぜ!どす!」」」 ドスまりさの指示を受けたまりさ達は、広場を離れた。 「ゆっへっへ……、ほかのゆっくりなんかひつようないのぜ。まりさだけの、まりさによるむれ……、それが、どすののぞむむれなのぜ」 ……ドスまりさは群れの一員に志願するゆっくり達は、全てまりさ種だけを引き入れた。 一種の選民思想である。 その内、まりさ種のゆっくりだけが群れに入れてほしいとやって来るようになるだろう。 「どす~!ただいまなのぜー!」 「たいりょうなのぜー!」 すると、ドスまりさの指示を受けたまりさ達と入れ違いで、帽子をパンパンに膨らませたまりさ達がドスまりさの前に来た。 「どうだったのぜ?」 「かんたんだったのぜ!どすのなまえをだしたら、あいつらたべものさんをおとなしくさしだしたのぜ!」 「こっちもおなじなのぜ!みるのぜ!たくさんあるのぜ!」 まりさ達が帽子を頭から下ろすと、帽子の中には大量の食糧が入っていた。 ……ドスまりさは付近の群れのゆっくり達に、脅しをかけていたのである。 『群れを滅ぼされたくなければ、食糧を献上し続けろ』……と。 その脅しの効果はてきめんで、ドスまりさに対して恐れを抱いたゆっくり達は食糧を献上したのである。 恐らく、食糧が尽きるまで絞り取られ続けるのだろう。 「それで、ふもとのかわのほうはどうだったのぜ?」 「だめなのぜ!あいつら、かわをあけわたそうとしないのぜ!」 「まったく!かわのみずをひとりじめにするなんて、とんでもないげすどもなのぜ!」 「……まぁいいのぜ。そういうばかは、このどすがすこしいたいめをみせてやるのぜ」 ……そして、自分達の要求を少しでも飲まない者達に対しては、即暴力に訴えていた。 実際、ドスまりさは食糧の要求に応じなかった群れを一つ滅ぼしていた。 ……ドスまりさ自身の自分勝手な性格と、ドスという分かりやすい立場と実力が、ドスまりさの知名度を悪い意味で早く広めていた。 あと何日かすれば、もはや誰も逆らわなくなるだろう。 「ゆっへっへ……。どすはこのやまのしはいしゃなのぜ……」 ドスまりさは自分自身に酔いしれていた。 誰も自分に敵わない、誰も自分に逆らわない、これからは全て自分の思い通りになる。 ドスまりさはそう信じていた。 「いくのぜ!おまえたち!そのばかどもにおもいしらせてやるのぜ!」 「「「「「ゆっゆっおー!」」」」」 ……ドスまりさとその配下達による、暴虐の一日が始まろうとしていた。 ……こうして、せーがは表舞台から姿を消した。 あるゆっくりは、『せーがはどこかで野たれ死んだ』と噂した。 あるゆっくりは、『せーがはれみりゃに食われた』と噂した。 あるゆっくりは、『せーがは別の山へ逃げ出した』と噂した。 様々な噂が飛び交ったが、真相は誰にも分からなかった。 「ごしゅじーん、そのほっぺをすこしだけかじらせてー」 「すこしでもだめです!ほら!きゅうけいはおわりです!」 「ごしゅじんのけちー」 ……そして、全てを失った支配者とその専属は、山を越え、谷を越え、とある場所を目指していた。 ……自分達が生まれ育った、懐かしい故郷へと。 ……自分達の、もう一つの帰る場所へと。 続く
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4556.html
『続・邪悪なる者達・結』 25KB 戦闘 ゲス ドスまりさ 希少種 独自設定 26作品目、その4です。 ……翌日。 「さぁ、あなたたち、じゅんびはいいですか?」 「じゅんびはいいぞー!ごしゅじーん!」 「ンボォ……」 「ガッバァ……」 「ウー……」 「それはよろしいことです。では、いきましょうか。……すべてのけりをつけに……、ね」 続・邪悪なる者達・結 作:ぺけぽん ……ドスまりさの広場にて。 「ど……、どすーっ!!どすーっ!!どこにいるのぜえぇぇぇぇっ!?」 「ゆぁ~ん?いったいなんなのぜ?」 ドスまりさは群れの広場で、群れのまりさ達が他のゆっくり達から略奪してきた食糧を堪能していた。 そこへ、群れの外へ狩りに出掛けていた一匹のまりさが、慌ただしく声を荒げながら戻って来た。 「そ、そとに!むれのそとに!!」 「おちつくのぜ!そとにいったいなにがあるのぜ!」 「そ、そとに……!ば、ばけものゆっくりがいたのぜ!!」 「!?」 「そ、それもいちひきやにひきじゃないのぜ!!たくさんいたのぜ!!」 ばけものゆっくり。 その単語を聞いたドスまりさの脳裏に、一匹のゆっくりの姿がよぎった。 (ま……、まさか……、せーが……!?) ドスまりさは、かつて自分が敗れ、そして自分が破った因縁のゆっくりの事を思い出していた。 「どすーっ!!たいへんなのぜえぇぇぇぇっ!!」 「ばけものゆっくりたちが、こっちにむかってくるのぜぇっ!!」 「なんとかするのぜえぇぇぇぇっ!!どすうぅぅぅぅっ!!」 そして、他にも外に出掛けていた群れのまりさ達が、次々とドスまりさの元へ駆け込んできた。 「お、おちつくのぜ!!これはきっと、あのせーがのしわざなのぜ!」 「せ、せーが!?せーががしかえしをしにきたのぜ!?」 「そうなのぜ!ばけものゆっくりといえば、あのせーがしかおもいつかないのぜ!」 「そ、そういわれれば、そうなのぜ……」 「おまえら!あのせーがと、ばけものゆっくりたちには、いちどかっているのぜ!!まけいぬなんざ、こわくないのぜ!」 ドスまりさは恐れ慄く群れのまりさ達を必死に鼓舞し始めた。 「どすのむれは、つよいまりさたちのむれなのぜ!おまえたちはつよいのぜ!!どんなてきでも、けちらせるのぜ!!」 「そ、そうなのぜ!あんなきもちわるいやつらなんか、こわくないのぜ!」 「やってやるのぜ!!」 「かえりうちにしてやるのぜ!!」 ドスまりさの鼓舞は効果があったようで、群れのまりさ達は次第に戦意が湧き上がっていた。 せーが達には一度大勝しているという事もあるのだろう。 「おまえら!いますぐにぶきをよういするのぜ!あのせーがを……、さいっじゃくっどもをむかえうつのぜ!!」 「「「「「「ゆっゆっおー!!」」」」」」 ドスまりさの号令により、群れのまりさ達は戦いの準備をし始めた。 (くそせーが……!あいつは、こんどこそころしてやるのぜ……!!) ドスまりさは因縁の相手を今度こそ殺すべく、闘志と殺意をたぎらせていた。 ……そして、数分後。 ドスまりさと群れのまりさ達は、群れの入口付近でせーが達を待ち構えていた。 「き、きたのぜ!」 群れのまりさ達の内の一匹が、声を上げた。 ……見ると、大分遠くの方から、沢山のゆっくり達らしき集団が、こちらにやって来ていた。 その集団は次第に近くなり、段々とその集団の詳細が見れるようになっていた。 先頭を勤めるのは、ゆんしー達の親玉、せーが。 「ンボオォ……」 「バリザァ……」 「ズッギリィ……」 ……その背後には、二十匹程の、金髪のゆんしーありす達がいた。 それは、生前のれいぱーありす達だった。 死してもなお、まりさ種に対する歪んだ愛と性欲は変わらずであった。 「せーが……!」 己の宿敵と再会したドスまりさは、顔を歪めた。 ……徐々に二つのゆっくりの集団の距離は縮まり、そして、せーが達はドスまりさ達の目前まで辿り着いた。 「ひさしぶりですね。どすまりさ」 「せーが……!おまえ、あれだけどすにぼろまけしておいて、よくふくしゅうするきになれたのぜ!」 「えぇ。せーがはあきらめのわるさだけがとりえなので」 「はっ!あきらめのわるさも、ここまでくるとあわれなのぜ!かずはこっちのほうがうえなのぜ!」 ……ドスまりさの言う通り、ドスまりさ達とせーが達の戦力の差は、歴然としていた。 大雑把に言うなら、3:1の比率で、せーが達の方が分が悪かった。 数で負けている上に、ドスまりさという規格外の存在が加われば、勝負どころの話ではなかった。 「そうですね。どうみても、こっちのほうがまけていますね。……ところで、どうしてどすすぱーくをうとうとしないのですか?」 「ゆっへっへ……。さいしょはそのままぶちかましてやろうかとおもっていたけれど、そんなことをしなくてもいいときづいたのぜ!」 ドスまりさがそう言うのと同時に、群れのまりさ達が一斉に口に咥えていた木の枝を向けた。 「いくらおまえがばけものゆっくりをみかたにしても、このかずで、いったいどうするのぜ?」 「……」 「かりに、ほかにもなかまがいたとしても、どすのどすすぱーくでけちらしてやるのぜ!おまえのことなのぜ!ほかにもなかまがいるのぜぇ?」 「う……!……なるほど。すっかりおみとおしというわけですか」 「ゆーっひゃっひゃっひゃ!!おまえがかんがえそうなことなんざ、おみとおしなのぜ!ほれほれ、さっさとなかまをよぶといいのぜ!」 「う、うぅ……」 「どうせ、そこらへんにかくれているのぜぇ?でてきていいのぜ!このままじゃ、けんかにもならないのぜ!」 ドスまりさは完璧にせーがの事を馬鹿にしていた。 こちらの動きを看破され、焦っているせーがを見て、内心良い気分になっていた。 「……だそうですよ?ありすさん?」 「ンンンンンンボオオォォォォォォォッ!!!!」 「……あ?」 ……焦りの表情から一転、黒い笑みを浮かべたせーがと、自分の背後から聞こえてくる、おぞましい声を聞くまでは。 「ゆ、ゆひゃあぁぁぁぁっ!?」 「な、なんなのぜ!?あれはあぁぁぁぁっ!?」 「ゆぎゃあぁぁぁぁっ!!こわいのぜえぇぇぇぇっ!!」 群れのまりさ達の驚愕と恐怖の入り混じった悲鳴を聞き、ドスまりさは背後を振り返った。 「ンボオワアァァァァッ!!バアァァァァリイィィィィザアァァァァァッ!!」 ……群れの広場の方から、肌がベロンベロンに溶けかかり、腐臭を漂わせ、口から大量の唾液を流して、こちらに突っ込んでくる『敵』の姿があった。 その『敵』は、ドスまりさ位の大きさの体格の持ち主であった。 その『敵』とは、とても形容しがたいものであった。 ……もし、その『敵』に名前を付けるなら、まさにそれは、『悪夢』と呼ぶに相応しいだろう。 「ゆ……、ゆわあぁぁぁぁっ!!」 ……ドスまりさは理解していた。 目の前の『悪夢』は、自分が普通のまりさであった頃、自分にとって最大のトラウマである存在であるという事を。 ドスまりさになった今では、そのトラウマは克服したかに思えたが、そんなトラウマを軽く超える程の恐怖であるという事を。 「ワダジヨオォォォォッ!!アリズヨオォォォォッ!!ドガイハナアイヲ、イッジョニワガヂアイマジョオォォォォッ!!」 ……自分と同じ大きさの『悪夢』は、ドスまりさだけを見ていた。 「く……、くるんじゃないのぜえぇぇぇぇっ!!」 ドスまりさは『悪夢』に対して、半ば半狂乱になりながら、どすすぱーくを放った。 「ンゴオォォォォッ!?バ、バリザアァァァァッ!!」 ……どすすぱーくは『悪夢』の横腹を抉ったが、それでも『敵』は突っ込んで来た。 「んぎゃあぁぁぁぁっ!!くるなくるなくるなあぁぁぁぁっ!!」 ドスまりさは何回も、何回も迫りくる『悪夢』に対してどすすぱーくを放った。 「んギョオォォォォッ!!ズッギリジマジョオォォォォッ!!バリザノアガヂャンガホジイノオォォォォッ!!」 「あがあぁぁぁぁっ!?くるなあぁぁぁぁっ!!こっちにくるなあぁぁぁぁっ!!」 どすすぱーくは何度も『悪夢』の体に命中した。 頭を、顔を、腹部を、あんよを、光線の熱によって吹き飛ばし、消滅させた。 「ン……、ボ……、オォォ……」 ……そして、体の大半を吹き飛ばされた『悪夢』の歩みは、ようやく止まった。 『悪夢』は口から腐りきったクリームを垂れ流し、その場に崩れ落ちた。 「はぁ……。はぁ……。はぁ……!」 ピクリとも動かなくなった『悪夢』の姿を見て、ドスまりさはやっと、心の底から安堵した。 「あらあら……。どすまりさともあろうものが、ずいぶんとひっしですねぇ?」 「せ……、せーがあぁぁぁぁっ!!よていへんこうなのぜぇっ!!いますぐっ!!そっこく!!ぶっころしてやるのぜえぇぇぇぇっ!!」 己のトラウマを呼び覚まされたドスまりさは、せーがを消し炭にすべく大きく口を開けた。 遊びは終わりだ、今すぐに永遠にゆっくりさせてやる。 ドスまりさはそう思い、どすすぱーくを放とうとした。 ……が。 「あ……!し……、しまったのぜえぇぇぇぇっ!!」 ……どすすぱーくは放たれなかった。 「どうしたんですか?はやくどすすぱーくをうてばいいでしょう?……あぁ、もしかして、できないんですか?」 「ゆ……、ゆぐっ……!」 「……あなた、どすすぱーくをうつには、とくべつなきのこがひつようなんですってね?……もう、そのおくちのなかには、きのこはないんでしょう?」 「な……、なんでそれをしっているのぜ!?」 ……せーがの言う通り、ドスまりさ種はどすすぱーくを放つ為に必要な、特別なキノコを口の中に忍ばせている。 つまり、そのキノコがなければ、どすすぱーくは全く使えないのだ。 「ふふ……。せーがはあなたのことについて、あまりくわしくしらなかったので……、あなたのしりあいに、いろいろとおしえてもらったんですよ」 「だ……、だれにおしえてもらったのぜ!?」 まさか、自分の群れの誰かが寝返って情報を漏らしたのだろうか。 ドスまりさは群れのまりさ達を疑い始めた。 「あらぁ?いるじゃないですか。……あなたがどすまりさになってから、いちばんさいしょにころしたゆっくりですよ」 「ま……、まさか……!?」 「ねぇ?そうでしょう?……ふらんさん?」 せーがは上を見上げながら、そう言った。 「……ウー……」 ……せーがの視線の先には、近く木の枝に止まってこちらを見ている、沢山のゆっくりふらん達がいた。 そのふらん達は、ドスまりさ達に殺され、せーがによって蘇ったゆんしー達であった。 ゆんしーふらん達は、せーが達がここに来る前からずっと、近くの木で待ち伏せていたのだ。 そのゆんしーふらんの中に、一匹だけ胴付きのふらんがいた。 ……あの長ふらんである。 「ふらんさんから、あなたのきのこのことをおしえてもらいましてね……。なので、ありすさんをさしむけて、きのこをつかいきらせたんですよ」 「ウー……」 長ふらんは、その手に長い木の枝を槍のように構えていた。 長ふらんを初め、全てのゆんしーふらん達が、ドスまりさ達を睨みつけていた。 「あ、あんなところに、ふらんたちがいるのぜぇっ!?」 「こ、こわいのぜぇっ!!」 異形として蘇ったゆんしーふらん達の存在に気付いた群れのまりさ達は、その姿に怯えていた。 「お、おまえら!おちつくのぜ!いくらふらんたちがみかたでも、このどすがついているのぜ!」 「で、でも!どすはもう、どすすぱーくをうてないのぜ!?」 「があぁぁぁぁっ!!おまえっ!どすはどすなのぜっ!どすがあんなれんちゅうにまけるとでもおもっているのかぜ!?」 ドスまりさは群れのまりさ達を落ち着かせようとしたが、なかなかうまくいかなかった。 ……れいぱーありすならともかく、通常種の天敵の捕食種、しかもそれがふらん種となれば、話は別だろう。 「あらあら、こわがってくれて、なによりで。ですが、これだけではありませんよ?」 「あ……、あぁ!?」 ドスまりさがどういう事か尋ねようとしたが、その必要はすぐになくなった。 「ここにいるぞー!!」 ……ドスまりさ達の背後から、気合が入っているのか間が抜けているのかよく分からない声が聞こえた。 ……見ると、そこにはせーがの第一の専属、よしかを始めとする、たくさんのゆっくりの集団がいた。 「ガッバッバァ……」 ……よしかの背後には、顔が緑色に変色し、よく分からない鳴き声を発しているゆっくり達がいた。 それは、ドスまりさ達に殺された、ゆっくりにとり達だった。 「ふふふ……。どうやらいちぶをのぞいて、みんながあなたたちにふくしゅうしたいようですねぇ?」 「せ……、せーがあぁ……!」 「わかりませんか?このゆんしーたちのひょうじょう。ひつよういじょうのみれんやうらみがみえますよ?……あなた、そうとうきらわれているんですねぇ?」 「があぁぁぁぁっ!!だまれえぇぇぇぇっ!!どすすぱーくがなくても、おまえらなんか、ひとひねりなのぜえぇぇぇぇっ!!」 「さぁ、いきなさい、わがせんぞくたち。おのれのおもうがまま、うばい、おかし、ころしなさい。そのねがいをかなえなさい」 「おまえらっ!!ふらんたちはどすがやるのぜぇ!!おまえらはほかのれんちゅうをやるのぜぇ!!にげたらころすのぜえぇぇぇぇっ!!」 「「「「「「ユガアアァァァァッ!!」」」」」」 「「「「「「ゆおぉぉぉぉっ!!」」」」」」 ……こうして、せーが率いるゆんしー軍団と、ドスまりさ率いるしっこくのけものが、激突した。 「おらぁっ!!しぬのぜぇっ!!」 「このばけものゆっくり!!」 「おまえらをころさないと、まりさたちがどすにころされるのぜ!!」 「だからさっさとしぬのぜぇっ!!」 大量のまりさ達による数の暴力に対し、ゆんしー軍団は個々の力を存分に発揮していた。 「バリザアァァァァッ!」 「ズッギリイィィィィッ!」 「ゆんやあぁぁぁぁっ!!ずっぎりじだくないいぃぃぃぃっ!!」 「あがぢゃんうみだぐないいぃぃぃぃっ!!」 ゆんしーありす達は、まりさ達に木の枝で体を抉られたり、踏み潰されたりしながらも、まりさ達を犯し、すっきりー殺していた。 その異常と呼べる愛の表現は、もはや感心に値する程である。 「みんなー!やっちまえー!」 「ガッバァッ!!」 「ゴッバァッ!!」 「ゆぎゃあぁっ!?なんなのぜこれはぁっ!?くさいのぜえぇぇぇぇっ!!」 「ゆ、ゆっぐりできないのぜえぇぇぇぇっ!!」 「え、えれえれえれ……」 ゆんしーにとり達は、よしかの号令で、口から緑色の液体を発射し、まりさ達にその液体を浴びせていた。 腐臭やら死臭やら漂うその液体を浴びたまりさ達は、その臭さに阿鼻叫喚し、中には命の餡子を吐いて絶命する者もいた。 「ウウゥゥゥゥッ!!」 「ウガアアァァァァァッ!!」 「あぎゃあぁぁぁぁっ!!ふらんだあぁぁぁぁっ!!」 「だ、だずげでほじいのぜえぇぇぇぇっ!!」 「おそらをとんでいるみたいいぃぃぃぃっ!!」 ゆんしーふらん達は、生前と優るとも劣らぬ凶暴性と素早さを活かし、まりさ達を容赦なく狩っていた。 ただのまりさ種では、ゆんしーふらん達に敵う筈もなく、一方的な虐殺と化していた。 「な、なんなのぜぇっ!?こいつら!?」 「ゆひゃあぁぁぁぁっ!まりさはしにたくないのぜっ!だれかおとりになるのぜえぇぇぇぇっ!!」 「どぼじでそんなことをいうのぜえぇぇぇぇっ!!」 数で勝っていようとも、その大半がゲスまりさ達。 こちらを本気で殺しにかかっているゆんしー達とは、実力も覚悟も全くの別物だった。 まりさ達はあちこちでゆんしー達に殺されたり、その場から逃げ出したりなど、徐々に押されていた。 「せーがっ!なかまのかたきなのぜっ!」 「まりさたちのかおをわすれたとはいわせないのぜっ!」 「あなたたちは……。……えーと、だれでしたっけ?」 ……一方、せーがは二匹のまりさと対峙していた。 「ふざけるんじゃないのぜぇっ!!あのひっさつわざは、まりさがさんびきでなければできないわざなのぜ!!」 「そのひっさつわざをやぶって、なかまをころしておいてわすれたとか、なめているにもほどがあるのぜぇっ!!」 「あぁ……。あの、さんびきいちれつにならんでつっこんでくる、ふざけたたたかいかたをしていたかたたちですか」 「「ゆがあぁぁぁぁっ!!」」 自分達の存在や技を否定され、復讐に燃える二匹のまりさはせーがに突っ込んで来た。 「こんどはまったくべつのあたらしいわざをかんがえたのぜ!」 「そのわざでしとめてやるのぜぇっ!」 二匹のまりさはそう言うと、せーがの周りをぐるぐる回り始めた。 「これは……」 「ゆーっへっへっへ!めのまえのまりさのこうげきをかわしても、すぐうしろのまりさが、こうげきをしかけるのぜっ!」 「まえとうしろのふたつのこうげきっ!かわせるものならかわしてみるのぜっ!」 二匹のまりさは口に咥えた枝をせーがに向けながら、ドヤ顔で回り続けた。 「あー……。もういいです、はい」 「「ウー!」」 せーががそう言うのと同時に、二匹のまりさの頭上にゆんしーふらんが舞い降り、二匹を咥えて空中へと飛び立った。 「「おぞらをとんでるみだいぃぃぃぃっ!!」」 ……あの二匹の運命は、語らずとも分かるだろう。 「……ごしゅじーん、なんか、あっさりすぎないかー?」 せーが達の方へ合流して、近くまで来ていたよしかがそう言った。 「いいんですよ。どうせ、にひきいっぺんにつっこんできて、せーががかわしてりょうほうくしざしっておちですから」 「なんか、とことんざんねんだなー、あいつら」 徐々に遠くなっていく二匹のまりさの姿を眺めながら、よしかはそう呟いた。 ……その頃、ドスまりさの方では。 「ウウゥゥッ!!」 「ウガアァァッ!!」 「このおぉぉぉぉっ!!しつこいのぜえぇぇぇぇっ!!」 自分の宙を回りながら攻撃を仕掛けてくるゆんしーふらん達に対し、ドスまりさは自分の髪の毛のお下げを振り回して反撃していた。 数匹は叩き落とす事が出来たものの、どすすぱーくが使えない今、ジリ損であった。 「ウウゥ……!ドスウゥ……!!」 ……丁度そこへ、周囲のまりさ達を狩り終えた長ふらんが飛んできた。 「ゴロスッ!!ゴロズウゥゥゥゥッ!!」 「ゆがあぁぁぁぁっ!!このばけものふらんがあぁぁぁぁっ!!」 ドスまりさは長ふらんを叩き落とすべく、長ふらん目がけてお下げを振り降ろした。 ……が、お下げは長ふらんには当たらず、長ふらんはドスまりさの懐に入り込んだ。 「ウアアァァァァッ!!」 ……そして、雄叫びを上げながらドスまりさの右目に、木の枝を突き刺した。 「ぎゃあぁぁぁぁっ!?どすのりりしいおめめがあぁぁぁぁっ!?」 ドスまりさは右目に長い木の枝が刺さったまま、激しい痛みにより暴れ出した。 「どっ、どすっ!!あばれたら……、ぶべぇっ!?」 「や、やめるのぜっ!!どすっ!!あびゅっ!?」 「に、にげ……、ひでぶっ!?」 それにより、ドスまりさの近くにいた群れのまりさ達が何匹か踏み潰されてしまった。 「ど、どすがむれのみんなをころしたのぜえぇぇぇぇっ!?」 「も、もうおわりなのぜぇっ!!こんなどすについていたら、いのちがいくつあってもたりないのぜぇっ!!」 「た、たすけてくれなのぜえぇぇぇぇっ!!」 その光景を目の当たりにしてしまった、その場に残っていた群れのまりさ達は、戦いを放棄して我先にと逃げ出してしまった。 「お、おまえらあぁぁぁぁっ!!にげるんじゃないのぜえぇぇぇぇっ!!」 ドスまりさは必死に呼び止めるものの、群れのまりさはドスまりさの制止を聞く事はなかった。 ……群れのまりさ達の大半は潰され、逃げ出し、辛うじて残っている者達もゆんしー達に次々と血祭りに上げられていた。 もはや、勝負は決しているようなものだ。 「あらあら……。たいしょうをみすててにげだすなんて、へたれにもほどがありますねぇ?」 ……そして、この戦いの勝者であるせーがは、ドスまりさを見ながらクスクスと笑っていた。 その周辺にはまりさ達の死骸が転がっており、口には餡子が付着しているお飾りのかんざしが咥えられていた。 「せ、せーが……!!」 「ふふ……、ゆんしーたちばかりにまかせているわけにはいきませんからね。ひさびさにはげしいうんどうをして、つかれましたよ」 せーがはそう言いながら、頬に付いた返り餡子をペロリと舐めた。 「……どすまりさ。あなたはほんとうにわかりやすいですねぇ」 「どういういみなのぜぇっ!?」 「そのままのいみですよ。つよいからこそ、ほしいものをなんでもてにいれることができるからこそ、あいてをみくびり、ゆだんする……」 「ぐっ……!!」 「このまえもそうですよね?ゆんしーたちをどすすぱーくでふっとばされて、きゅうちにおちいっているせーがをみて、あなたはわらっていました」 「このどすが……!!おまえみたいな、ざこに……!!」 「……せーがをあざわらうひまがあったら、さっさところすべきだったんですよ。むれのなかまをまきこもうが、かんけいなしに」 「だったらいまころしてやるのぜえぇぇぇぇっ!!」 ドスまりさはせーが目がけて巨体を震わせて突っ込んで来た。 「おまえさえころせばっ!!どすのかちなのぜえぇぇぇぇっ!!」 「……どうして、そのさついをあのときにむけなかったんですか?そうすれば、こうはならなかったでしょうに」 「だまれえぇぇぇぇっ!!」 ドスまりさはせーがの目前という所まで近付いていた……、が。 「「「「「ウウゥゥゥゥッ!!」」」」」 「ぐへぇっ!?」 数匹のゆんしーふらん達が、ドスまりさの死角となっている右側から体当たりをしてきた。 右目を潰されていなければ、すぐに気付く事が出来ただろう。 「ゆ、ゆぎゃあぁぁぁぁっ!?い、いだいのぜえぇぇぇぇっ!?」 ……ドスまりさの右側の顔や体に、何本もの木の枝が突き刺さっていた。 ゆんしーふらん達は殺したまりさ達から木の枝を回収しており、それを体当たりした時に突き刺したのだ。 それにより、ドスまりさは一瞬動きを止めた。 ……その瞬間を、ゆんしーふらん達は見逃さなかった。 「「「「「ウーッ!!」」」」」 ゆんしーふらん達は、ドスまりさの右目に刺さっている長い木の枝を口に咥え、思い切りその木の枝を抜いた。 「あぎゃあぁぁぁぁっ!?」 ドスまりさの眼球が突き刺さったまま抜けたが、そんな事はお構いなしだった。 ……そこへ、ゆんしーふらん達の背後にいた長ふらんが、ゆんしーふらん達から長い木の枝を受け取り……。 「ウアアァァァァッ!!シネエェェェェッ!!」 ……それを、ドスまりさの左目に突き刺した。 「いっ……、いぎゃあぁぁぁぁっ!?いだいぃぃぃぃっ!?みえないぃぃぃぃっ!?なにもみえないのぜえぇぇぇぇっ!?」 ……両目を潰され、視力を失ったドスまりさは痛みのあまり転倒し、その場で転げ回った。 「いぎゃあぁぁぁぁっ!?せえぇがあぁぁぁぁっ!!どこにいるのぜえぇぇぇぇっ!!があぁぁぁぁっ!!」 ドスまりさは何も見えないまま転げ回り……、近くの木に思い切り激突した。 「ごへぇっ!?」 ボキリ……。 ……しかも、運の悪い事に、ドスまりさがぶつかった衝撃により、木が折れてしまったのだ。 その折れた木は……。 グサッ……。 「あ……、があぁぁぁぁっ……!?」 ……ドスまりさの腹部に、深々と突き刺さってしまった。 木はドスまりさの背中を貫通しており、地面に縫いつけられる形となった。 「ガッバッバァ!!」 「ゴッパァ!!」 ……そして、近くにいたゆんしーにとり達が、追撃とばかりにドスまりさの傷口に、あの緑色の液体を浴びせた。 傷口はグジュグジュと腐り出し、そこから命の餡子が漏れ出した。 「お……、げぇ……」 目は見えず、全く動く事が出来ず、腹部からは命の餡子がボダボダと漏れ出ている。 ドスまりさは、完全に詰んでいた。 「……どすまりさ。……なぜ、いちどはまけてしまったせーがが、なぜあなたに、ふたたびたたかいをいどんだのか、わかりますか?」 「が……、あ……?」 ドスまりさの近くで、せーがの声が聞こえる。 せーががどこにいるのかまでは、ドスまりさには分からなかった。 「ふくしゅうしたい、というのもあるのですがね……。……あなたはをみていると、まるで、ついこのあいだまでのせーがをみているようなのですよ……」 「な……、に……、を……」 「あなたはこのやまのちょうてんにたつことで、かんぜんにまんぞくしていた。……むかしのせーがのように……」 「ど、どす……は、お、おまえ、なんかじゃ……」 「……あなたのことはわすれて、あらたにゆんせいをやりなおしたほうが、いちばんりこうなんでしょうね。……でも……」 「ご……、お……」 「……あなたをたおさなければ、せーがは、まえにすすめないのですよ。……さようなら、どすまりさ。……さようなら、かつてのせーが……」 「……」 ……ドスまりさは、何も言葉を返さなかった。 (なんで……、こうなってしまったのぜ……?) ……ドスまりさは、何も見えていなかった。 (どすはただ……、ゆっくりしたかった、だけなのに……) 自分の何が間違っていたのか、何故、こうなってしまったのか。 (もっと……、ゆっくり、したかった、のぜ……) その理由を考えられぬまま、その答えを見いだせぬまま……、ドスまりさの意識は、闇に包まれた。 「……」 せーがは事切れたドスまりさの死骸を、じっと見つめていた。 ……こうして、この山の古き暴君と、新しき暴君との戦いは幕を閉じたのだった……。 「せーがー」 「なんですか?あなた」 「……せーがは、だいじょうぶかなー」 「あらあら……。だいじょうぶですよ。あのこはじぶんのやりたいことを、なしとげることができますよ」 「……しんぱいだぞー」 「だいじょうぶですってば。だって……」 「だってー?」 「あのこは、だれよりもじぶんかってで、わがままで、ごうつくばりで……。……だれよりも、おろかなくらいに、じゅんすいですもの」 ……数週間後、とある山にて。 「むきゅう!みんな!きょうこそは、けっせんのひよ!」 「みんな!もうすぐここに、『あいつら』がやってくるよ!あんなやつらは、れいむたちでおいかえしてやるよ!」 「「「「「「ゆっゆっおー!」」」」」」 とある広場にて、数十は超える数のゆっくり達が、大声を上げていた。 「むきゅ!れいむ、わかっているわね!ここで『あいつら』にかたないと、あとがないわよ!」 「わかっているよ、ぱちゅりー!そのために、どうっめいっをむすんだんだからね!」 「もうすぐここに、ありすたちもやってくるわ。ありすたちがとうちゃくすれば、さらにみかたのかずがふえるわ」 ……この山は、つい最近までは比較的平和な山だった。 しかし、何の前触れもなく、隣の山から化け物と呼ぶに相応しいゆっくり達が侵略を開始したのだ。 ……その為に、その山の群れのゆっくり達は手を組んで、そのゆっくり達を迎え撃とうとしているのだ。 「ゆっ!きたよ!」 そう言ったれいむの視線の先には、こちらにやって来るゆっくり達の姿があった。 「ごしゅじーん、おなかがすいたぞー。ごしゅじんのおかざり、かじってもいいかー?」 「だめです!じぶんのぼうしでもかんでいなさい!」 「けちー」 ……こちらにやって来る侵略者達の集団の先頭に、何やら騒いでいる二匹のゆっくりの姿があった。 恐らく、その二匹が侵略者達のボスなのだろう。 その侵略者達の数は、山のゆっくり達より少ないようだ。 「むきゅうっ!!みんな!あいつらをおいかえしなさいっ!!」 「みんな!あいつらをやっつけるよ!!」 「「「「「「ゆおぉぉぉぉぉっ!!」」」」」」 山のゆっくり達は、その集団目がけて真正面から突っ込んで来た。 「あら……、このまえみたときよりも、かずがおおいですね。これはすこしまずいですね。こちらのほうが、かずがすくないです」 「ごしゅじん、どうするんだー?ひとまずにげるのかー?」 「ふふ、そんなことはしませんよ。……このやまには、おいしいたべものや、きれいなかわや、すみごごちのいいばしょがたくさんありますからね」 「そうだなー。このやまは、くらしやすいよなー。……それでー?」 「めのまえにそういうものがあるのに、それをおあずけされたら、しゃくにさわるでしょう?それに、あなただって、にげるきはないでしょう?」 「あたりまえだぞー!むこうから『ごはんさん』たちがやってくるのに、にげるわけがないぞー!」 自分達が窮地に立たされているというのに、その二匹のゆっくりは笑っていた。 ……二匹にとって、こんな事は些細な事に過ぎないのだ。 一番大事な事は、邪魔をする者達を殺して、自分達の欲しいものを手に入れる。 ……ただ、それだけの事なのだから。 「さぁ、いきなさい、よしか。せーがのだいいちのせんぞくよ。……そのくうふくを、おもうぞんぶんみたしなさい」 「おーっ!!」 よしかと呼ばれたゆっくりは、他の仲間達と共に威勢良く山のゆっくり達に突っ込んで行った。 自らをせーがと呼んだゆっくりは、その場に立ち止まった。 ……今日もまた、せーがは誰かから何かを奪う。 ……今日もまた、せーがの心は何一つ満たされない。 ……今日も、明日も、明後日も、この命が続くまで、永遠に奪い続ける。 ……他者を踏みにじり、己の欲望に従い、求め、欲しがり、手に入れる。 ……ゆっくりとしての本質に、せーがは逆らわない。 ……それが、ゆっくりとしての、自分自身のあるべき姿なのだから。 「さぁ……。きょうも、ぞんぶんにうばいつくしましょうか。……せーががゆっくりするために……」 ……今日もまた、罪深く、欲深く、愚かで純粋な、せーがと言う名のけだものは、その悪意と欲望を心に秘めて静かに笑うのだった。 END あとがき どうも、知らない方は初めまして、知っている方はお久しぶりです。 ネタ切れに定評のあるぺけぽんです。 今回は何を書こうかなーと考えながら、自分の過去作品を見直している時に、「あ、せーがのその後でも書こう」と思い、書いたのでした。 ……何でこう、ズルズルと長くなる上に、時間が掛かっちゃうんでしょうね、自分。 「ヒャア!せーがネタは古いぜ!」とか「ヒャッハァ!!続編なんざいらねぇんだよ!」と思っている方は、お許し下さい。 ご意見、ご感想、お待ちしております。 作者:ぺけぽん 感想用掲示板はこちら http //jbbs.livedoor.jp/otaku/13854/ ミラーはこちら http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/1.html 今までに書いたSS anko1656 クズとゲス anko1671 うにゅほのカリスマ求道記 anko1767 あなたは、食べてもいい○○○○? anko1788 そんなの常識ですよ? anko1926~1928 二人はW ~Yは二度と帰らない~ anko2079 しんぐるまざー anko2750 無意識だから anko2786 ともだち anko3189 おちびちゃんは大切だよ! anko3210 バクユギャ anko3221 根本的な間違い anko3249 お兄さんは興味が無い anko3261 それぞれの願い anko3319 好みは人それぞれ anko3330~3331 HENNTAI達の日常~メスブタの家出~ anko3343 HENNTAI達の日常~駄メイドの休日~ anko3360 可哀想なゆっくり anko3419 優秀or無能 anko3469 たまたま anko3528 悪いのは誰? anko3885 可愛いは正義 anko3983~3984 それぞれの冬ごもり anko3996 野良ゆが消えない理由 anko4028~4030 邪悪なる者達 anko4335 そこにいなかったのにいた
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4071.html
『邪悪なる者達・中編』 31KB 制裁 自業自得 飾り 戦闘 同族殺し 群れ ゲス 希少種 24作品目、中編です。 「ぐすん……。ぐすん……。はずかしいうさぁ……」 ……あれからてゐは、自分の巣穴に戻ってメソメソと泣いていた。 「せーがのばかぁ……。いっていいことと、わるいことがあるうさぁ……」 自分の恥ずかしい姿を、一番見られたくない相手に見られただけに、ショックも大きかった。 この先延々とせーがにおちょくられる日々を送るのかと思うと、それだけで気が重くなっていた。 「うぅ……。きぶんてんかんに、おとしあなでもほるうさ……」 いつまでもメソメソ泣いても仕方ないと思ったのか、てゐはズルズルと巣穴の中から出てきた。 巣穴から少し離れた所に来たてゐは、口で土を掘り始めた。 「ゆんしょ、ゆんしょ……」 てゐは嫌な事があったり、寂しい時などはこうして落とし穴を掘って気を紛らわしていた。 既に他にも巣穴の周りに数ヶ所落とし穴が掘られており、もしもの時の備えの役割も果たしている。 「はぁ……。こまったうさ……。せーががおじいちゃんたちによけいなことをしゃべるかもしれないうさ……」 てゐは、せーがが村の老人達に自分の本性を喋るのではないかと考えていた。 何だかんだ言って、てゐは村の老人達の事を気に入っていたのだ。 本性を隠していたとは言え、老人達はてゐに色々と良くしてくれた。 イタズラ好きで他のゆっくり達からの嫌われ者のてゐだけに、老人達の優しさが純粋に嬉しかった。 「あーあ、もうあそこにはいけないうさか……」 これから一体どうしたものかと、てゐはぼんやりと考えていた。 「ゆっへっへ……。いいものみたのぜ、いいものみたのぜ……」 ……と、そんな時、草むらの向こうから誰かの声が聞こえてきた。 「うさ……?」 何だろうと思ったてゐは落とし穴掘りを中断し、声がする方へと行ってみた。 「……?」 草むらを抜けたものの、そこには誰もいなかった。 「ゆっへっへ、いそぐのぜ、いそぐのぜ……」 ……いや、少し離れた場所に、一匹のまりさの姿が見えた。 「あのまりさ……、このへんではみかけないまりさうさね……」 まりさはてゐには気付いていないようだった。 「……ついていってみるうさ」 あのまりさは、何かをしようとしている。 イタズラ好きの勘がそう告げ、てゐはまりさの後をつける事にした。 邪悪なる者達・中編 作:ぺけぽん ……数分後。 「おさーっ!おさはどこにいるのぜーっ!」 ……まりさが辿り着いたのは、広場のような場所だった。 そこにはまりさ以外にも、十数匹のゆっくり達がいた。 広場の周りにはゆっくりの巣穴がいくつもあるので、他にもたくさんのゆっくりがいるのだろう。 「ゆ?どうしたの、まりさ?」 その内の一匹のれいむがまりさに話しかけた。 「おさはどこにいるのぜ?」 「おさ?おさなら、ほら、あそこ……」 れいむの説明を聞き終えぬ内に、まりさはれいむの視線の先へと跳ねて行った。 「おさーっ!」 「むきゅ、なんなの?そうぞうしい……」 まりさに長と呼ばれていたのは、一匹のぱちゅりーだった。 「おさ!いいものをみつけたのぜ!」 「むきゅ、いいもの……?」 長ぱちゅりーは怪訝そうな表情でまりさを見ていた。 「そうなのぜ!このやまのふもとに、にんげんたちのむれがあったのぜ!」 「むきゅ、にんげんのむれ、ねぇ……。まさかまりさ、そのにんげんのむれに、せめこもうなんていうんじゃないわよね?」 「ゆ?なんでわかったのぜ?」 「もうわすれたの?ぱちぇたちはこのあいだ、ひどいめにあったじゃないの」 長ぱちゅりーは呆れた感じでまりさにそう言った。 ……まりさ達はつい最近、隣りの山からこの山へ移り住んだばかりだった。 いや、移り住むと言うより、『逃げ込んだ』と言うべきか。 「ぱちぇたちはまえに、べつのにんげんのむれにせめこんで、ぎゃくにやられちゃったじゃない」 ……そう、まりさ達の群れのゆっくりは、隣りの山の近くにある村の人間達に喧嘩を売って、逆に悲惨な目にあったのだ。 喧嘩を売った理由は、その村に住む人間達が作っている畑に生えている野菜を、人間が一人占めしていると思い込んだ為だった。 「ぱちぇたちには、おやさいさんをとりかえすという、たいぎめいぶんがあったわ。……それなのに」 長ぱちゅりーは苦虫を噛み潰すような表情で話を続ける。 「おおぜいのむれのなかまをころされて……。にんげんたちにみつかるとまずいから、ここにきたんじゃないの」 「まぁ、それはわかっているのぜ。けど、こんかいはまえのようにはいかないのぜ!」 「むきゅ?」 「そのむれには、よれよれのおいぼれのくそじじいしかいなかったのぜ!わかいにんげんなんて、ひとりもいないのぜ!」 「むきゅ……、それはほんとう?」 「このめでちゃーんと、みてきたのぜ!むれのみんなでいっせいにかかれば、かんたんにぶちころせるのぜ!」 「……おやさいさんも、ちゃんとあるのよね?」 「もっちろんなのぜ!」 「……むきゃきゃ、それはちょうどいいわねぇ。……きめたわ!」 長ぱちゅりーはそう言うと、広場の中央に置いてある岩の上に乗った。 「むきゅ!みんなきいてちょうだい!」 「ゆ?」 「なんなのー?わからないよー」 「なにかしら?」 長ぱちゅりーの声に、他のゆっくり達が反応した。 「さっきまりさが、このやまのふもとに、くそじじいばかりしかいないむれをみつけたそうよ!」 「ゆっへっへ!みんな!そんなくそじじいなんて、まりさたちのてきじゃないのぜ!みんなでくそじじいどもをぶちころすのぜ!」 長ぱちゅりーの後に、まりさが続く。 「そのむれには、おやさいさんもあるそうよ!」 「ゆっ!?おやさいさん!?」 「とかいはなおやさいさんがあるの!?」 「えぇ、そうよ!そこをぱちぇたちのあたらしいゆっくりぷれいすにして、むれをまえいじょうにおおきくするの!」 「そして、まりさたちのなかまをころした、あのにんげんたちにふくしゅうするのぜ!」 長ぱちゅりーとまりさが高らかに宣言した。 「ゆっ!!かわいいおちびちゃんのかたきをうてるんだね!」 「わかるよー!おいぼれなんか、こわくないんだねー!」 「ありすたちのてで、とかいはなむれをきずきあげましょう!」 「にんげんたちにふくしゅうするよ!せいぎは、れいむたちにあるよ!」 「「「「「「ゆっゆっおーっ!!」」」」」」 長ぱちゅりーとまりさの宣言に煽られ、群れのゆっくり達も全員その気になった。 「むきゅっ!!あしたのあさ、くそじじいたちのむれにせめこむわよっ!!」 「「「「「「ゆっゆっおーっ!!ゆっゆっおーっ!!」」」」」」 ……群れの広場には、ゆっくり達の勇ましい声が響いていた。 「……」 まりさの後をつけ、広場の近くにあった木の陰に隠れていたてゐが、一部始終を見ていた。 ……数十分後。 「ごしゅじーん、なにかたべたいぞー」 「さっききのみさんをたらふくたべたばかりでしょ!?」 ……あれからよしかが、お腹が空いたとぐずり始め、せーがは仕方なくよしかの為に木の実を集めた。 しかしよしかは木の実を食べた事を忘れ、再びせーがに食べ物をねだっていたのだった。 「ほんとうに、もう……。さいきんあなた、わすれっぽくなりましたよねぇ……」 「お?そうか?ところで、ごはんはまだ?」 「……やれやれ、そろそろしおどき……、かわりがひつようかしらねぇ」 「?」 せーがは冷ややかな眼差しでよしかを見ながら、そう呟いた。 よしかはせーがのその言葉の意味が分からず、きょとんとしていた。 「うーさうさうさっ!!おふたりとも、こんなところにいたうさかっ!」 「「?」」 どこからともなく、聞き覚えのある声が聞こえてきた。 「こっちうさっ!」 すると、二匹の近くの茂みの中から、てゐが飛び出してきた。 気のせいか息が荒く、汗をかいていて顔色も少し悪かった。 「あら……、てゐさんじゃありませんか。どうしました?」 「おぉ、てゐだ!」 せーがは先程の一件で十分に満足したらしく、てゐちゃん呼ばわりはしなかった。 よしかはそんな事があった事はすっかり忘れていた。 「いやぁ、じつはちょっとしたはなしをみみにしたうさよ」 「ちょっとしたはなし?」 「なんでも、さいきんこのやまにすみついたゆっくりたちが、あのむらをおそおうとしているらしいうさ」 「……」 「どううさ?ここはひとつ、きょうりょくしないうさか?」 「……きょうりょく、ですか?」 「そううさ。おたがい、あのむらをじぶんのものにしたい、それはわかるうさ。……だからこそうさよ」 「……よそものにうばわれないように……、ですか?」 せーがのその言葉に、てゐは頷いた。 ……てゐはせーがに協力を仰ごうとしていた。 今、この状況で自分に力を貸してくれそうなゆっくりはーがしかいないと思ったからだった。 どちらも村を奪われたくないという利害が一致しているからこそ、てゐはせーがにこの話を持ちかけたのだ。 「……わかりました。そのはなし、のらせていただきましょう」 ……そして、その話を聞いたせーがは、てゐの話に乗る事にした。 「せーがも、あのむらがなくなってはこまりますからね。それに……」 「それに?なにうさ?」 「……いえ、こっちのはなしです。それで、いったいどうするつもりですか?」 「それならきまってるうさ。あいつらのとおりみちに、おとしあなをたくさんしかけて……」 「ちょっとまってください、いまからですか?」 「そううさ。じかんがないうさ、さっそくてつだって……」 「まぁ、まってください。それよりもいいかんがえがあるのですが……」 せーがはそう言って、てゐに耳打ちをし始めた。 (よしか、なんかくうきじゃね?) よしかは何となく、置いて行かれてるなぁと感じていた。 ……翌日。 「むっきゅ!みんなそろった?」 早朝、長ぱちゅりーは広場に群れのゆっくり達を集めた。 「ゆっ!みんなそろってるのぜ、おさ!」 「ゆ~ん、おさ!はやくくそじじいたちをせいっさいっしにいこうよ!」 「れいむ、おやさいさんをはやくたべたいよ!」 「わかるよー!たのしみなんだねー!」 広場にはまりさを始めとする、数十匹のゆっくり達が集まっていた。 その全員が気の枝を咥えて武装している。 「むっきゃっきゃ!まえとくらべると、すこしすくないけど、くそじじいたちがあいてならもんだいないわね!」 「ゆへへ、そうなのぜ、おさ!だれもくそじじいなんかにまけやしないのぜ!」 まりさは長ぱちゅりーの命を受け、村を襲撃するゆっくり達を選抜した。 ……と言っても、ただ単に大人のゆっくりを片っ端からメンバーに入れただけなのだが。 「むきゃきゃきゃっ!それじゃあみんな、いくわよ!!」 「「「「「「ゆっゆっおーっ!!」」」」」」 長ぱちゅりーを先頭に、群れのゆっくり達は山を降り始めた。 「おとーしゃん、おやしゃいしゃんをもっちぇきちぇにぇ!」 「まりちゃ、たのちみにちてるのぢぇ!」 「ゆゆ~ん、おなかのおちびちゃんといっしょにまってるからねぇ!」 赤ゆやにんっしんっしているゆっくり達は、留守番をする事となり、村へと向かったゆっくり達を見送った。 「むきゅきゅ……。くびをあらってまっていなさい、くそじじいども!」 群れのゆっくり達を引き連れ、長ぱちゅりーは意気揚々と山を降りて行った。 「いったうさね」 「そうですね。さきまわりしましょうか」 木の陰から、二匹のゆっくりが長ぱちゅりー達の様子を窺っていた。 ……数十分後。 「むっきゅ、まりさ、もうそろそろつくの?」 「もうそろそろなのぜ!」 あれから長ぱちゅりー達は順調に村へと進んでいた。 「もうすぐで、くそじじいたちをせいっさいっできるね!」 「おやさいさんがたのしみだねー、わかるよー」 群れのゆっくり達も、人間への報復や野菜を食べる事を今か今かと待ち望んでいた。 「むきゅ……?」 ふと、先頭を進んでいた長ぱちゅりーが止まった。 「おさ、どうしたのぜ?」 「まりさ、あれはなにかしら……?」 「?」 長ぱちゅりー達の視線の先には、道の真ん中で何やら騒いでいるゆっくり達がいた。 「なにかしら、あのゆっくりたちは……」 「あそこにいられるとじゃまなのぜ!どくようにいってくるのぜ!」 まりさは道の妨げになるからと、そのゆっくり達に抗議しに行った。 「おい!そこのゆっくり!じゃまだからどくのぜ!」 「え?」 「うぉ~い!たすけてくれー!」 ……道の真ん中にいたゆっくりは、てゐとよしかだった。 見ると、よしかの体の半分は道に出来た穴に埋まっていた。 「ちょっとまってほしいうさ、いまこいつをひっぱっているとちゅううさよ」 「だしておくれよー!」 てゐはよしかの髪の毛を引っ張ったりするが、なかなか抜け出せないようだった。 「もたもたしないではやくするのぜ!」 「うーん……、てゐだけじゃむりうさ!まりさもてつだってほしいうさよ!」 「はぁ!?なんでまりさがてつだわなきゃいけないのぜ!?」 まりさは何で自分がとばかりに嫌な顔をした。 「むきゅ!まりさ、てつだってやりなさい!」 すると、後ろから長ぱちゅりーがまりさにそう命令した。 「おさ!?なんでまりさが……」 「このままじゃ、そいつらがじゃまですすむのにじかんがかかるわ!」 「え?おまえたち、このさきにようじがあるうさ?」 てゐが長ぱちゅりーにそう尋ねる。 「おまえにはかんけいのないことなのぜ!」 「あー……。なにをしたいのかはわからないけど、やめといたほうがいいうさよ?」 「ゆぁ~ん?なんでなのぜ?」 「このさきにはにんげんのむらがあるけど、そのみちにはたくさんわながしかけられているうさ」 「わな……?」 てゐのその言葉を聞いた長ぱちゅりーは、以前村を襲撃した時の事を思い出した。 (むきゅ……、そういえば、まえのにんげんのむれにも、おとしあなとか、するどいきのえだがとんできたりとかしていたわね……) その時は人間が仕掛けた罠のせいで、群れのゆっくり達の大半が犠牲になったのだ。 「いやはや、おまえはうんがいいうさねぇ……。ふつう、おとしあなにはするどいきのえだがしかけているうさよ」 てゐは溜め息混じりによしかに話しかけた。 「え?そうなの?」 「そういうもんうさ。このさきには、にんげんがしかけたえげつないわながたっくさんあるうさ」 「た、たとえばどういうの?」 「まるたがころげおちてきたり、うえからいわがふってきたり、ひどいときにはぎゃくたいおにいさんがつちからかってにはえてきたりするうさ」 「うひぇ~!それはこわい!」 「そうそう、ここのにんげんたちは、ゆっくりをつかまえてくしざしにして、ゆっくりのひものをたべるらしいうさねぇ……」 「こわい~!こわいからはやくここからだしてー!!」 「そううさ。わかったらもう、こんなところにはちかづかないほうがいいうさよ。ほら、いまだしてあげるうさ……」 そう言っててゐは再びよしかの髪の毛を引っ張り始めた。 「お……、おさぁ……、どうするの……?」 「そんなこわいわながたくさんあるなんて、きいてないよ……」 「くそじじいたちが、そんなおそろしいれんちゅうなんて……」 てゐの話を聞いた群れのゆっくり達は怖気づいた。 「みんな!だまされるんじゃないのぜ!こいつのいっていることは、ぜんぶでたらめなのぜ!!」 ……が、まりさだけは全く怖気づいていなかった。 「このうそつきゆっくり!まえにもこのさきにいったことはあるけど、そんなものはなかったのぜ!!」 まりさは昨日行ったとは言わずにてゐを問い詰めた。 「あぁ……。そりゃあそううさ。だってそのわなはきのうのうちにつくられたからうさねぇ」 「でたらめいうんじゃないのぜ!そんなこわいわなをいちにちでつくれるわけが……」 「きのう、あのむらにいたずらをしにいこうとしたら、にんげんたちがみちにおとしあなをほりながらこんなことをいっていたうさ」 てゐはまりさの後ろのゆっくり達を見ながらこう言った。 「『きのう、へんなゆっくりがむらにやってきたのう。もしものために、わなをたくさんつくっておくかのぅ』」 「「「「「「……!」」」」」」 「『なんねんぶりかのぅ、ほんきでひゃっはーできるのは……』」 「「「「「「……!!」」」」」」 長ぱちゅりーを含む群れのゆっくり達がビクリと震えた。 「『くひひ……、ひさびさにゆっくりまりさのひものがくえるわい……』」 「……!?」 その言葉に、まりさは一瞬寒気を感じてブルリと身を震わせた。 「……まぁ、そんなことをきいて、もうこんりんざいにんげんにかかわらないほうがいいなぁとおもったうさ」 「「「「「「……」」」」」」 「しにたいならてゐはとめたりなんかしないうさ。どうぞ、ごじゆうにうさ」 「よしかのことをわすれてないか!?はやくだしてくれよぅ!」 「……というわけで、しににいくなら、そのまえにてつだってほしいうさよ」 てゐはニッコリと笑いながらそう言った。 「おさ!やっぱりやめようよ!」 「れいむたち、たべられたくないよ!」 「こわいよ!ころされるよ!」 群れのゆっくり達はこのまま前に進む事を恐れ始めた。 恐ろしい罠や老人達を相手にして、自分が生き残れる保証はないと感じたからだろう。 「む……、むきゅ!だいじょうぶよ!わながしかけられているなら、それいがいのみちをとおればいいじゃない!」 長ぱちゅりーは何とか群れの混乱を収めようとしていた。 「で、でも!どこにそんなみちがあるの?」 「ありすはよくわからないわ……」 「むきゅう……」 ……が、誰も肝心の別の道が分からなかった。 群れのゆっくり達はこの山に移り住んでから日が浅く、まだ山の中を詳しく知らないのである。 「よしか~!?よしか~!?どこにいるんですか~!?」 ……その時、茂みの向こうからゆっくりの声が聞こえてきた。 「よしか~!?……あっ!よしか!どうしてこんなところに……!?」 茂みの向こうから出て来たのは、せーがだった。 せーがは穴に半分埋まっているよしかに駆け寄った。 「ごしゅじ~ん!あなにうまっちゃたよぅ!たすけておくれよぅ!」 「いやぁ……。てゐだけじゃどうもひっぱりだせないうさ」 「そんな……。そ、そこのまりささん!どうか、たすけてくれませんか!?」 せーがが助けを求めたのはまりさだった。 「ゆっ!?ま、まりさは……」 「あんた、そいつらにたすけをもとめてもむだうさ。どうやらこのさきのにんげんのむらにようじがあるみたいうさからねぇ」 「え!?だってこのさきには、おそろしいわながたくさんあるんじゃ……?」 「どうもこいつら、それをしんじていないみたいうさ」 「……まりささん……。おねがいします、どうかよしかをたすけてもらえませんか?そうすれば……」 せーがは目を涙で滲ませ、間近でまりさを見つめた。 (ゆっ……。こ、こいつ、けっこうびゆっくりなのぜ……) まりさは間近に迫るせーがの整った顔付きを見て、思わずドキリとしていた。 「そうすれば、にんげんのむらへのあんぜんなみちを、おしえてあげますから!」 「ゆっ!?おまえ、みちがわかるのぜ!?」 「は、はい……。いちおうは……」 「むきゅ……。まりさ、たすけてあげなさい。もともとそのつもりだったからね」 「わ、わかったのぜ!」 長ぱちゅりーに命じられ、まりさはてゐと共によしかを引っ張り、穴から救出した。 「ふぃ~。たすかったぁ~」 「いやぁ、よかったうさねぇ」 「ほんとうに、どうもありがとうございます……」 「むきゅ、それじゃあ、やくそくどおり……」 「えぇ。おれにみちあんないをしてあげます。どうぞ、こちらへ……」 せーがはそう言って、茂みの奥へと入って行った。 「ゆっへっへ……。いくらくそじじいたちがこわくても、ふいうちしてやればいちころなのぜ……」 まりさは罠にかかる心配がなくなり、大分余裕を取り戻したのかせーがの後をついて行った。 「むっきゅ!みんな、くそじじいたちからまっしょうめんにたちむかわなければだいじょうぶよ!」 「そ、そうだよね!」 「おさやまりさのいうとおり、ふいうちすればいいよね!」 「これだけなかまがいるなら、だいじょうぶよね!」 群れのゆっくり達も最初の頃の勢いを取り戻し、せーがとまりさの後に続いた。 ぞろぞろと群れのゆっくり達が、茂みの奥へと消えて行く。 「ゆっ!れいむもいくよ!」 群れの最後尾にいたれいむが、茂みの奥へ行こうとした、その時。 ガッ! 「ゆうぅっ!?」 「おまえには、ねてもらううさっ!」 突然、れいむは誰かに後ろから突き飛ばされてしまった。 ……後ろから突き飛ばしたのは、てゐだった。 「ゆべしっ!!」 れいむは地面に顔面を打ちつけ、そのまま気絶してしまった。 「……ほんとうに、せーがのいうとおりにしてだいじょうぶうさ……?」 「ごしゅじんはあたまがいいから、きっとだいじょうぶだぞ!」 てゐとよしかはそう言って、気絶しているれいむにゆっくりと近付いた。 ……十分後。 「みなさん、だいじょうぶですか?ちゃんとついてきてますか?」 「ゆへへ、だいじょうぶなのぜ!」 「むきゅう……。むきゅう……。すこしつかれてきたわね……」 せーがに案内され、長ぱちゅりー達は林の中を進んでいた。 長ぱちゅりーは元々体力がないので疲れが見えているようである。 (へっ……。おさはだらしがないのぜ。これくらいでつかれるなんて、はなしにならないのぜ) ……そんな長ぱちゅりーを見て、まりさは内心馬鹿にしていた。 (ちょっとあたまがいいからって、いつもいばっているくせに、こういうときはなさけないのぜ) 「ねぇ、まりささん?」 「ゆぇっ!?な、なんなのぜ!?」 急にせーがに小声で話しかけられ、まりさは声が裏返っていた。 幸い、自分達と長ぱちゅりー達との距離は離れていたので聞こえる事はなかった。 「まりささんって、たくましいんですね。さっきよしかのことをあっというまにたすけてくれたんですもの」 「ゆ……、ゆへへ、それほどでもないのぜ……」 「それに、けつだんりょくもあって、こうどうがはやくて……、よしかとはおおちがいです」 「あ、あのよしかってやつは、せーがのつがいなのぜ?」 まりさは気になっている事をせーがに尋ねた。 明らかに下心が丸見えである。 「まぁ、そんなものです。……ほんとうに、まりささんとちがって、のうてんきで、のんびりやで、あっけらかんとしていて……」 せーがはちらりとまりさを見た。 その視線に、まりさは思わずドキリとしてしまった。 「まりささんがよしかのかわりになってくれたら、とてもたすかるのに……」 せーがは溜め息混じりに呟いた。 「せーが、まりさはそれでかまわないのぜ?」 「えっ……?」 「せーががそうのぞむなら、まりさはよろこんでそうさせてもらうのぜ……」 「ほんとうですか……?……ありがとうございます。まりささんは、いいゆっくりなんですね……」 せーがは優しく微笑んだ。 (ゆへへのへ……。ちょろい、ちょろいのぜ。こういうびゆっくりは、ちょっとあまいことをいえばかんたんにおちるのぜ……) まりさは内心してやったりと喜んでいた。 「ゆぅっ!?」 ……その時、列の最後尾から何か驚いたような声が聞こえてきた。 「ゆっ?なんなのぜ?」 「むきゅ?どうしたの?なにかあったの?」 長ぱちゅりーとまりさは歩みを止めて、最後尾へ呼びかけた。 「なんでもないわ」 ……最後尾にいる数匹のゆっくりの内の一匹のありすがそう言った。 「むきゅ……、おどろかせないで」 「やれやれなのぜ」 特に何事もないと分かった長ぱちゅりーとまりさは安心して再び前へと進んだ。 群れのゆっくり達も、それに続く。 「むきゅ……、それにしてもせーが、ここはいったいどこなの?ほんとうに、このみちであっているの?」 「えぇ。だいじょうぶですよ。すこしじかんがかかりますけど」 「むきゅう……、はやくつかないかしら……」 長ぱちゅりーは若干うんざりしながらせーがの後に続いていた。 「ゆぎっ!?」 「ゆぁっ!?」 「むきゅ!?」 ……すると再び、最後尾の方からまたしても群れのゆっくりの声が聞こえてきた。 「どうしたの!?こんどはいったいなんなの!?」 長ぱちゅりーは声を荒げながら最後尾の方へ向かった。 「ごめんね、なんでもないよー」 「うん、れいむたちはだいじょうぶだよ」 最後尾にいたちぇんとれいむの二匹が、長ぱちゅりーにそう言った。 確かに、二匹はどこも怪我をしている様子はなかった。 「むきゅ!なんでもないなら、へんなこえをあげないでね!!」 長ぱちゅりーはイライラしながら前の方へと戻った。 「おさ……、だいじょうぶなのぜ?どうもおかしいのぜ」 まりさが長ぱちゅりーに駆け寄り、そう言った。 「あんなへんなこえをあげてなにもないなんておかしいのぜ。もういっかい、ようすをみにいったほうが……」 「ゆぐっ!?」 「ゆぇっ!?」 「「!?」」 ……まりさが言い終わらない内に、またしても最後尾から声が聞こえてきた。 「むきゅ……!!まりさ!!ようすをみにいってきなさい!!」 「わかったのぜ……」 まりさはお前が行けと内心思っていたが、言われた通りに最後尾へと行った。 「いったいなにがあったのぜ!?」 「……」 「……」 ……今度は、先程とは別のありすとちぇんがぼんやりとした表情でその場に立っていた。 「なにがあったのか、しょうじきにいうのぜ!」 まりさはありすとちぇんを問い詰め……、ある事に気付いた。 「「「……」」」 つい先程変な声をあげた三匹のゆっくりが、生気のない目で群れのゆっくり達を見つめていた。 「……」 そして、沈黙を守り続けるゆっくり達の後ろで同じように、俯いて黙っている一匹のれいむがいた。 「れいむ!これはいったいどういうことなのぜ!?なにかしっているのぜ!?」 「……」 まりさはそのれいむを問い詰めるも、そのれいむは黙っているだけだった。 「こいつ……!」 まりさは帽子から木の枝を取り出し、それを咥えた。 「みんな!このれいむはなにかをかくしているのぜ!すぐにつかまえるのぜ!」 まりさの呼びかけに応じ、他のゆっくり達も順々に木の枝を構える。 「いまからでもおそくないのぜ!いたいめにあいたくないなら、かくしていることをぜんぶはなすのぜ!」 「……」 まりさは最後の通告をするも、そのれいむは何も答えなかった。 「「「「「ユ……、ユグガアァァァァッ!!」」」」」 ……そのれいむの代わりに答えた者達がいた。 ……それは、先程から様子がおかしかった五匹のゆっくり達だった。 五匹は焦点の定まらない眼差しで、一斉にまりさに飛び掛かった。 「ゆうぅっ!?」 まりさは寸での所で五匹の体当たりを回避した。 「ど、どうしたのぜ!?おまえら!?」 「ユグギイィィィィッ!!」 「ユゴワアァァァァッ!!」 五匹はまりさの問い掛けには答えず、奇声を発して身近にいた自分の群れの仲間のゆっくり達に襲いかかった。 「ゆわあぁぁぁぁっ!?なにをするのおぉぉぉぉっ!?」 「こ、こないでえぇぇぇぇっ!?」 「やめてえぇぇぇぇっ!!こんなのとかいはじゃないわあぁぁぁぁっ!!」 突然群れの仲間に襲われ始めたゆっくり達は混乱していた。 「ジネエェェェェッ!!」 「ゆぎゅぶっ……!」 中には正気を失った五匹に潰され、噛み千切られて絶命したゆっくりもいた。 「こ……、ころせえぇぇぇぇっ!!いますぐにゆっくりごろしのげすをころすのぜえぇぇぇぇっ!!」 ……群れの仲間を訳も分からず殺されたまりさは、そう叫んでいた。 まりさも半ば冷静さや正気を失っていたのかもしれない。 「ゆうぅぅぅぅっ!!このげすゆっくりがあぁぁぁぁっ!!」 「よくもちぇんをころしたわねえぇぇぇぇっ!!」 「しねえぇぇぇぇっ!!」 その号令が合図となり、群れのゆっくり達も正気を失っている五匹に襲いかかった。 「ふふ……」 ……そのゆっくり達の中から、誰かが笑ったような声が聞こえたが、他のゆっくり達の怒号や悲鳴によってかき消された。 ……数分後。 「グゲアァァァァッ!!」 「なんでこいつ、えだがなんぼんもささってるのにしなないのおぉぉぉぉっ!?」 「ギュグウゥゥゥゥッ!!」 「ゆっがあぁぁぁぁっ!さっさとしねえぇぇぇぇっ!!」 ……老人達の村への通り道は、阿鼻叫喚の場と化していた。 あれから群れのゆっくり達は正気を失った五匹を殺すべく、その体に何本もの木の枝を何回も付き立てた。 ……が、五匹の動きは全く止まる事はなかった。 まるで痛みがないように、皮の一部や目を無くそうが、傷口から餡子が漏れようが、群れのゆっくり達に襲いかかるのを止めなかった。 「ぐっ!?……ジ、ジネエェェェェッ!!」 「ゆぎゃあぁっ!?あ、ありすぅ、なんで……!?」 しかも突然、群れのまとも側のゆっくりが一転し正気を失い、五匹同様群れのゆっくり達に襲いかかり始めた。 「ゆひいぃぃぃぃっ!?いだいよおぉぉぉぉっ!?なんででいぶがごんなべにあうのおぉぉぉぉっ!?」 「だまれえぇぇぇぇっ!!おまえがむれのみんなをころしたからだろうがあぁぁぁぁっ!!」 それだけでなく、正気を失っていた側のゆっくりが一転し正気に戻り、訳が分からないと叫びながらリンチを受けていた。 「な、なんなのぜ!?いったい、なにがどうなっているっていうのぜぇっ!?」 一体何が起きているのか、現状が全く把握出来ていないまりさはそう叫んだ。 最初は何かを隠しているれいむと、ゆっくり殺しの五匹のゲスを殺すはずだった。 ……しかし、この現状は何だ。 突然仲間が裏切りだしたり、自分が何をしたのか全く分からないと言ったり……、とにかく滅茶苦茶だった。 「なんでこうなっているのぜ!?……おさ!?そういえば、おさはどこにいるのぜ!?」 まりさは長ぱちゅりーの姿が見えない事に気付き、その姿を探し始めた。 ……が、姿どころか死骸すらも見つけられなかった。 「ま、まさか!にげたのぜ!?……くそがあぁぁぁぁっ!!なにがおさなのぜぇっ!!」 自分達が見捨てられたと思ったまりさは、長ぱちゅりーに対する憎しみが湧きあがった。 ……そして、まりさはあるものを目にした。 「がぶっ!」 「ゆいっ!?……ギュゲアァァァァッ!!」 「ゆわあぁぁぁぁっ!?なにしてるのちえぇぇぇぇんっ!?」 一匹のれいむが群れの仲間のちぇんにガブリと噛み付くと、ちぇんは奇声を発しながら、別の仲間のゆっくりに襲いかかったのだ。 ……それは、最初にずっと沈黙を守っていた、あのれいむだった。 それを見てまりさは確信した。 「み……、みんな!!あのれいむなのぜ!!あのれいむが、ほかのみんなをおかしくしているのぜ!!」 「「「「「ゆっ!?」」」」」 「あのれいむをころすのぜ!!おかしくなったむれのなかまにはかまわないで、あいつだけをねらうのぜ!!」 「「「「「ゆっゆっおー!!」」」」」 あのれいむに噛みつかれると、あの五匹のように頭がおかしくなってしまう。 だったら、あのれいむを殺してしまえばいい。 まりさはそう考え、他の群れのゆっくり達にそのれいむを殺すよう呼びかけた。 「グ……、ビュ……」 「ゲ……、ゲ……」 「ワガ……、ラ、ナイ……」 「ドガイ……、ハ……」 ……先程の五匹を含む、正気を失っている側のゆっくり達のほとんどが動けなくなっていた。 いくら痛みを感じないとはいえ、体の方に限界がきているのだろう。 「あいつをまもるやつは、だれもいないのぜっ!!ころすならいましかないのぜぇっ!!」 「ゆわぁぁぁぁぁっ!!」 「ゆっくりごろしのくずがあぁぁぁぁっ!!」 まりさを先頭に、まりさ達はそのれいむ目がけて突進した。 「……」 自分が狙われていると気付いたれいむは、ノロノロと遅い動きで近くの茂みの中に消えた。 「にがすかなのぜ!!」 まりさ達はれいむの後を追いかけ、順々に茂みの中へと入って行く。 「どこなのぜ!?どこにいるのぜ!?」 ……が、すぐにれいむの姿を見失ってしまった。 「ま、まりさ!あそこ!」 一匹のありすの視線の先には、別の茂みの方へ逃げているれいむの姿があった。 れいむは先程とは違い、素早い動きであっと言う間に茂みの中へと消えて行った。 「あ、あいつ、あんなにはやかったのぜ!?……まぁいいのぜ!とにかくおいかけるのぜ!!」 まりさはれいむが突然早く動く様になった事に驚いたが、すぐに気持ちを切り替え、れいむの後を追いかける。 茂みをかき分けガサガサと進むが、進んでも進んでも茂みを抜ける事は出来なかった。 「ゆぐぅっ……!あいつはぜったいにこのさきにいるのぜっ……!」 まりさは半ば自棄になりながら先頭を進んでいた。 ……すると、視線の先に小さな茂みの抜け穴が見えた。 「ゆへへっ……、ようやくぬけられるのぜっ……!」 まりさは茂みから抜け出せる事に僅かながら安堵し、茂みをかき分けながら進んだ。 進むと同時に、徐々に抜け穴に近付いていく。 「れいむうぅぅぅぅっ!!ぜったいににがさないのぜえぇぇぇぇっ!!」 まりさはそう叫び、茂みから思い切り飛び出した。 「……ゆ?」 ……思い切り飛び出し、ある違和感を感じた。 (……なんで、まりさはとんだままなのぜ……?) ……そう、飛び出したは良いものの、一向に地面に着地する気配が全くなかったのだ。 それは、一種の喪失感とも言えるものだった。 ならば、この喪失感は一体……? ……まりさの疑問は、すぐに解決する事となった。 その答えはとても簡単だった。 「な……、なんでじめんさんがないのぜえぇぇぇぇっ!?」 喪失感の正体は、自分が着地するはずだった地面。 まりさが飛び出した茂みの先は……、断崖絶壁だったのだ。 その先には地面どころか、何もなかった。 つまりまりさは飛んでいるのではなく……、落ちているのだ。 「ゆわあぁぁぁぁっ!?」 まりさは叫びながら下へ、下へと落ちて行った。 (こ、このままじゃおちるのぜえぇぇぇぇっ!?) そう思ったまりさの下に、崖から生えた一本の木の枝があった。 まりさにとってそれは、神からの救いの手に見えた。 「ゆぐうぅぅぅぅっ!!」 まりさは木の枝に噛み付き、それ以上の落下を食い止めた。 (た……、たすかった、のぜ……) これ以上落下せずに済んだまりさは安堵し、チラリと下を見て凍りついた。 ……崖の下は河川敷となっていて、まりさが噛んでいる枝からずっとずっと下の方にあったのだ。 「ゆひゃあぁぁぁぁっ!?」 「おそらをとんでるみたいぃぃぃぃっ!?」 「わからないよおぉぉぉぉっ!?」 ……そんなまりさの目の前を落ちて行く者達がいた。 それは自分の後ろを進んでいた仲間達だった。 「びゅっ」 「べっ」 「わぎゃら」 河川敷の地面に落下した仲間達は辞世の句を言えずに餡子の染みと化していた。 「だずげでばりざあぁぁぁぁっ!!」 「じにだぐないぃぃぃぃっ!!」 まりさと同様、その先が断崖絶壁だという事に気付いていなかったのだろう。 「ありずがおすからこうなったんでじょおぉぉぉぉっ!?」 「ありずのぜいにしないでえぇぇぇぇっ!?」 それとも途中で止まる事が出来なかったからだろうか。 「いやだあぁぁぁぁっ!!」 「だずげでよおぉぉぉぉっ!!」 ……理由は定かではないが、どんどん上から仲間達が落ちてきて、地面にぶつかり、餡子の染みとなっていった。 「ゆぎゃあぁぁぁぁっ!!」 「ひいぃぃぃぃっ!!」 一匹、また一匹と地面に吸い込まれるように落ちて行き、その命を散らせていく。 ベチャリ、ベチャリと餡子の染みが広がっていく。 ……まりさはそんな光景を見て、宙にぶら下がりながらおそろしーしーを漏らし、ガチガチと震えていた。 ここまで来れば、まりさも自分の運命を悟るしかないのだろう。 ただ、仲間のように自分も餡子の染みとなる事が恐ろしかった。 長ぱちゅりーへの憎しみも、あのれいむへの殺意も、とうの昔に忘れ果てていた。 死にたくない……、まりさの頭の中には、それしかなかった。 「あら……。まりささん、あなた、こんなところでなにをしているんです?」 ……そんなまりさの頭上で声を掛けてきた者がいた。 まりさが上を見上げると、そこには崖から自分を覗いているせーがの姿があった。 まりさはせーがに助けを求めたかったが、叫べば木の枝を離す事になるのでそれは出来なかった。 「あらあら……。まりささんのおともだちは、みんなじめんにおちちゃったんですね……」 それがどうした、早く自分を助けろ。 まりさの必死な眼差しは、そう物語っていた。 「もう、だめじゃないですか。いっしょにおちてくれないと……」 ……せーがのその言葉を聞き、せーがを見る眼差しの意味は変わっていた。 「あら……、どぼぢでそんなごどをいうのぜぇ!……というかおをしていますね」 せーがはまりさを見下ろしてクスリと笑った。 ……が、その目は全く笑っていなかった。 「きまってるじゃないですか。あなたたちぜんいんをこうやって、ころすためですよ」 「!?」 まりさは信じられないといった表情を浮かべ、目を見開く。 「あなたたちが、にんげんのむらをおそうとこまってしまうゆっくりがいるわけです。だからこうしたんですよ」 「……!!」 「えぇ、そうですよ。せーがはまりささんたちにたくさんうそをついたんです。こんなところがあんぜんなみちなはずないでしょう?」 「……!!」 「あぁ、でもあんしんしてください。まりささんが、よしかのかわりになってくれたらってはなしは、うそじゃありませんから」 せーがのその言葉に、まりさの未来に一筋の希望が見えた。 「……なんです?そのめは。まさか、せーががたすけるとおもっているんですか?……なんで、せーががまりささんをたすけるんです?」 ……そして、一瞬でその希望は閉ざされた。 「まりささんには、とくにしんでもらわないとこまるんです。だからせーがはたすけません。というより、たすけれらません」 「……!!」 「りゆうもおしえません。おしえたって、まりささんがわかるわけがありませんもの。……あら?」 せーがはまりさのある事に気付いた。 「まりささん……、あなた、はがぼろぼろですよ?」 「!?」 まりさの全身に寒気が走った。 ……せーがの言う通り、まりさの歯はほとんどがヒビが入っていた。 落下している最中に木の枝を咥えようものなら、その衝撃に飴細工の歯が耐えられる訳がなかったのだ。 せーがのその言葉が合図かのように、まりさの歯がピキピキと音を立て始めた。 「……!?」 まりさは自分の口の中に、飴細工の破片の甘味が広がっていくのが分かっていた。 そして自分の歯が一本一本砕けたり、抜け落ちていく感触を十二分に味わっていた。 「そんなにおびえたかおをしないでくださいよ。ただ、おちるのがはやくなちゃっただけじゃないですか」 上からせーがのそんな声が聞こえ、まりさはこれ以上ない憎しみのこもった眼差しでせーがを睨んだ。 徐々に歯茎に入る力も抜けていった。 ……そして、まりさの歯と木の枝は完全に離れ、まりさは再び宙を舞った。 「さようなら。むこうでおなかまがまってますよ」 せーがは宙を舞うまりさに対してニコリと微笑んだ。 まりさの最後の言葉はせーがに対する憎しみでも生への執着でもなく……。 「おぞらをどんでるみだいぃぃぃぃっ!?」 ……ゆっくりとしての、本能の叫びだった。 続く 挿絵:
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4072.html
『邪悪なる者達・後編』 32KB 制裁 飾り 戦闘 同族殺し 群れ ゲス 希少種 愛護人間 独自設定 24作品目、後編です。 「いやぁ……、まさかほんとうにうまくいくとはおもわなかったうさ……」 「ひい、ふう、みい……、たくさんいますね」 「うぉ!じめんがちゃいろくなってるぞ!すげぇ!」 ……あれからせーがとよしかとてゐは、崖の上から河川敷を眺めていた。 河川敷にはゆっくりの餡子や皮が飛び散り、死骸が散乱していた。 「それにしても……。そこのよしかはとんでもないやつうさねぇ……」 「ふふ……。だからこそ、このけいかくがうまくいったんじゃないですか」 「まぁ、そりゃそううさ。でも、いまでもしんじられないうさ」 てゐは河川敷を興奮して見ているよしかを眺めながら呟いた。 「よしかにかみつかれたやつは、よしかのなかまになってしまうなんて……」 邪悪なる者達・後編 作:ぺけぽん よしかは体が硬く、他のゆっくりのように、思うように飛んだり跳ねたりする事が出来なかった。 体が弱いという訳ではないのだが、その運動神経の鈍さはぱちゅりー以上だった。 ……しかし、そんなよしかには、ある特別な能力があった。 それは、『自分が噛んだゆっくりを、自分の仲間にしてしまう』というものだった。 その能力は一時的なものだが、少しの間だけよしかはそのゆっくりを自分の仲間として操る事が出来る。 そして操られている間、そのゆっくりにはその時の記憶は全く残らない。 操られたゆっくりは、どんな事でも実行してくれる。 よしかの身を守る盾にも、よしかの敵を殺す剣にも、何にでもなる。 簡単に言えば、期限付きの便利な手下が出来たようなものだ。 それが、このよしかの特別な能力だった。 「てゐさんだって、よしかがそんなちからがあるとわかったから、せーがのていあんにさんせいしたんでしょう?」 最初、てゐは落とし穴を沢山掘って群れのゆっくり達を足止めして、その間に老人達にこの事を知らせようと考えた。 それが一番懸命な方法だと思っていた。 ……が、せーがはその案には反対していた。 「にんげんたちにこのことをしらせても、あのにんげんたちが、むれのゆっくりたちをぜんいんあいてにできるとおもいますか?」 村にいるのはほとんどが老人達で、せーがは群れのゆっくり達を全員対処出来るとは思っていなかった。 殺される事はないにしても、村を好き放題荒らされるのがオチだと考えていた。 ……だからせーがは、老人達にこの事を知らせる前に、群れのゆっくり達を自分達の手で出来る限り始末しようと言い出した。 「なにいってるうさ!?てゐたちだけであいつらをどうにかできるとはおもえないうさ!」 当然てゐはせーがの案に猛反対した。 たった三匹だけで長ぱちゅりーの群れを相手に出来る訳がなかったからだ。 ……しかし、せーがにはある確証があった。 自分の専属のよしかの力をフル活用すれば不可能ではないと思っていた。 せーがの頭の中の作戦はこうだった。 1:群れのゆっくり達を言葉巧みに騙して、自分が本来の道とは別の道へと案内する。 2:てゐとよしかは隙を見て群れのゆっくりからお飾りを奪い、それをよしかに付け、てゐは群れより先回りして隠れる。 3:後から群れの最後尾に追い付き、群れのゆっくりの一員に化けたよしかは気付かれない限り自分の能力で仲間を増やしていく。 4:適当な数の仲間が揃ったら、その連中を群れのゆっくり達にけしかけ、場を混乱させる。 5:生き残りのゆっくり達を断崖絶壁の崖へと誘い込む為に茂みに隠れ、先回りしていたてゐとお飾りを交換する。 6:後はてゐが囮役となり、ゆっくり達が崖下に落ちるのを待つだけ。 ……それがせーがの作戦だった。 「……しょうじき、よしかのちからがでたらめだったら、せーがたちをみすててにげていたうさよ」 ゆっくり達を崖へとおびき寄せるには、動きののろいよしかでは不十分だった。 だからこそ途中でお飾りを交換する必要があったのだ。 てゐは最初半信半疑で言われた通りに嘘の演技をしたり、先回りして様子を見たりしていた。 ……そして、せーがの言う通り群れのゆっくり達が同士討ちを始めたのを見て、本気で協力しようと思った訳だった。 「えぇ。このさくせんはせーがたちのうち、だれかがかけてはぜったいにせいこうしませんでした」 「ちーむわーくってやつだな!ごしゅじん!」 「か、かんちがいしないでほしいうさ。ただたんに、もくてきがおなじだから、てをくんだだけうさ……」 思った以上の成果を上げる事が出来た事に、三匹は満足していた。 「あっ!しまったうさ!」 「どうしました?」 「ぱちゅりーうさ!おさぱちゅりーのすがたがどこにもみえなかったうさ!」 「あぁ、そういえば……。どうしうちをしたときも、がけしたにもいませんでしたねぇ……」 「まずいうさ……。きっとほかにもなんびきかにげているうさ!」 「でも、おおかたかたづけたから、そんなにかずはおおくないとおもいますよ?」 「だったらむれにもどっているかもしれないうさね。……せーが!てゐはおじいちゃんたちのようすをみてくるうさ!」 てゐはそう言って、山を降り始めた。 「……せーが!ちからをかしてくれて、ありがとううさ!あとはてゐだけで、なんとかしてみせるうさ!」 山を降りるてゐの姿は段々遠ざかり、やがて見えなくなった。 「ふふ……。やっぱりてゐさんは、おおうそつきですねぇ……」 「ごしゅじん、どういうこと?」 「よしかにはわからないかもしれませんね。そうですね……、もうすこしおつむがよくなったら、わかるかもしれませんね」 「?」 その場に残されたせーがとよしかは、そんな会話を交わしていた。 ……数十分後。 「むきゅあ……。むきゅあ……。こ、ここまでくればだいじょうぶね……」 「ゆぅ……、そ、そうだね……」 「なんであんなことになったのかしら……?」 ……山の麓に近い場所で、ゼイゼイと息を荒くして疲れ果てているゆっくり達がいた。 それは先程の混乱した場から逃げ出した長ぱちゅりーと、十匹程の側近達だった。 「むきゅう……。こまったわ。むれにもどるのがいいんだけど、みちがわからないわ……」 長ぱちゅりー達は無我夢中で山を降りてきたので、どうやって戻れば良いか全く分からなくなっていた。 唯一老人達の村から、自分達の群れの道を知っていたのはまりさだけだったので、はぐれてしまった以上下手に動けなかった。 「むきゅう、どうしたものかしら……」 「あれ……?おさ、あれはなに?」 「むきゅ?」 側近の一匹の遠い視線の先に何かがあった。 「おさ!あれ、まりさのいってたくそじじいのむれじゃない?」 ……そこにあったのは老人達の村だった。 「よかったねおさ!さっそくのりこもうよ!」 側近の内の何匹かが老人達の村に行こうとした。 「むきゅ!やめなさい!これだけのかずでいっても、かえりうちになるだけよ!」 ぱちゅりーは村へ行こうとする側近達を制した。 「くそじじいといえども、にんげんよ!……いまはぱちぇたちがふりよ!へたにうごくのはやめなさい!」 「ゆ、ゆぅ……」 (しかし、いったいどうすれば……?このままじゃ、ずっとここでなやんでいるはめになるわ……) 長ぱちゅりーはこの状況を打開する方法を考えていた。 「おさーっ!ここにいたのねっ!!」 「ゆっ!さがしたよ!」 ……すると、山の方から自分を呼ぶ声が聞こえてきた。 それは群れのゆっくり達が数匹山から降りて来ていた。 「むきゅ!あなたたちもぶじだったのね!……むきゅ?あなたたち、そいつは?」 見ると、群れのゆっくり達は一匹のゆっくりに木の枝を突き付けながら山を降りていた。 「おさ!こいつはあのうそつきどものなかまだよ!」 「うそつきでわるかったうさね……」 ……それは、先程長ぱちゅりー達を騙したてゐだった。 (まったく……、むれのゆっくりにみつかるなんて、どじをふんだうさ……) てゐは村の老人達に群れのゆっくりの事を知らせる途中の道で、逃げ出していた群れのゆっくり達に見つかり、捕まってしまった。 「むきゅ……!!あなたたち、よくやったわ!……てゐ!このうそつきゆっくり!!」 「なにをいっているうさ?てゐはこれっぽちもうそなんて……」 「なにがあんぜんなみちよ!!あんた、あのせーがとぐるだったんでしょ!?」 「さぁ?てゐはしらないうさ」 「むきゅうぅっ……!!こいつぅっ……!!」 長ぱちゅりーは側近に命じててゐを殺そうとしたが……、ある事を思いついた。 「むきゃきゃ……。てゐ、いまはころさないでおいてあげるわ!そのかわり、ぱちぇたちのやくにたちなさい!」 「……てゐになにをしろっていううさ?」 「あんた……、ぱちぇたちがくそじじいたちのむれにせめこまれるとこまることがあるんじゃない?」 「……」 「むきゃきゃ……、ずぼしのようね。あんたはくそじじいたちとしりあいじゃないの?じゃなきゃ、こんなことはしないわよね?」 「……」 「むきゅ……、てゐ。あんたはあのくそじじいたちにともだちだとかうそをついて、ぱちぇたちをくそじじいたちのむれのなかにいれさせなさいな」 「そんなこと……」 「むきゅ、だったらここでころすだけよ」 長ぱちゅりーがそう言うと、てゐに枝を突き付けていたゆっくりが木の枝の先を強く押し当てた。 「……わかったうさ」 「むきゃきゃ。それでいいのよ、それで。……あなたたち、てゐをとりかこみなさい。にげられないようにね」 長ぱちゅりーに命じられ、側近のゆっくり達数匹がてゐを取り囲む。 「あぁ、あと、えだはかくしておきなさい。くそじじいたちにあやしまれるわ」 木の枝を咥えている側近達は、帽子をかぶっているゆっくりの帽子の中に木の枝を入れた。 「むきゅ、それじゃいくわよ。てゐ、へんなまねをするんじゃないわよ」 「……」 長ぱちゅりー達はてゐを取り囲んだまま、村の方へと進んでいく。 (むきゃきゃ……、むれのなかにはいればこっちのものよ。てゐをひとじちにして、あばれるだけあばれさせてもらうわ……) 長ぱちゅりーがそう思った頃には、すでに村の入口の前まで来ていた。 「おんやぁ?そこにいるのは、てゐちゃんじゃないかの?」 「本当じゃ。おーい、てゐちゃーん」 畑仕事をしていた老人達が、てゐ達の存在に気付き、てゐ達の元へ近付いた。 「ん……!?てゐちゃん、そのゆっくり達は?」 「と、友達かいのぅ?」 (むきゅ、わかってるわね?ちゃんとごまかすのよ?) 長ぱちゅりーはてゐに小声で囁いた。 「……おじいちゃん、きょうはてゐのおともだちもつれてきたうさよ」 てゐは何事もないかのように振舞いながら、そう言った。 「お、おぅおぅ、いつもてゐちゃんだけじゃったからのぅ」 「そうじゃ、せいたとよしぞうはどうしたんじゃい……?」 「うーん……。そのふたりには、やっぱりあっていないうさ」 「そ、それはそれは、残念じゃのう。柿ピーでも、ご馳走しようと思ったんじゃが……」 「ま、まぁ、クズ野菜でも食べさせちゃるからな。こっちおいで」 老人達はてゐの話を信じたようだ。 (むっきゃっきゃっきゃ……。すきをみて、くそじじいのだれかをひとじちにとってやるのもいいわね……) 長ぱちゅりーは物事が順調に進んでいる事に満足していた。 (なんか……、おじいちゃんたち、いつもとちがうさ……) てゐは老人達の態度が、いつもより妙に余所余所しく、焦っているように見えた。 ……それ以外は、老人達はいつも通りだった。 「のぅ、みんな……。ワ、ワシ……、もう駄目じゃ……」 ……老人達の内の一人が、妙な事を言い出すまでは。 「む、むきゅ……?」 長ぱちゅりーはその老人の様子が何やらおかしい事に気付いた。 ……まさか、ばれてしまったのか? 長ぱちゅりーの脳裏にそんな考えがよぎった。 「ば、馬鹿!お前何言っとんのじゃ!?」 「やめぃ!変な気は起こすんじゃないわい!」 「し、しかしのぅ……!もう三カ月じゃ……!!かなり待っとったんじゃぞ!?」 「それ以上言うんじゃないわい!てゐちゃんの前で……!」 「お前までそんな事言ったら、ワシまで辛抱出来んじゃろうがい!」 「あん時もそれで揉めて、清太が出て行っちまった事を忘れたんか!?」 「清太はワシ言うとるじゃろうがダラズ!!」 何やら老人達は言い争いを始めてしまった。 どうやら長ぱちゅりー達の嘘がばれた訳ではないようだが、何やら雲行きが怪しかった。 「お、おさ、なんかへんだよ……」 「む、むきゅ……、そうね。ここは、いったんにげたほうが……」 長ぱちゅりー達は嫌な予感を感じ、逃げ出そうとした。 「ヒ……、ヒャアァァァァッ!!やっぱり我慢できんわいっ!!」 ……一人の老人が、手に持っていた草刈り鎌を長ぱちゅりー達に投げつけるまでは。 サクッ。 「む……、きゅ?」 ……老人が投げた草刈り鎌は、長ぱちゅりーのすぐ横にいた側近のゆっくりの眉間に突き刺さっていた。 草刈り鎌は中枢餡まで刺さっていて、側近のゆっくりはすでに絶命していた。 「「「「「「ゆ……、ゆんやあぁぁぁぁっ!?」」」」」」 その光景を目の当たりにしたてゐ以外のゆっくり達は悲鳴を上げた。 「馬鹿!!お前何しとんじゃ!!てゐちゃんの友達じゃぞ!!」 「無理じゃ!!我慢するなんぞ無理じゃ!!こいつらのふてぶてしい面見たらヒャハりたくなるのも当然じゃ!!」 「阿呆!!相当荒れとった時にてゐちゃんに出会ったから、ワシらは真人間になろうと決めたんじゃろうが!」 「ワ……、ワシもじゃ!!すまん!!」 「オハラ!?どこに行くんじゃオハラ!!」 老人達は言い争ったり、走って家に戻ったりと場は既に混乱を極めていた。 「お、おじいちゃん!?これはどういう……!?」 てゐも何故こうなったのか分からず、そう叫んでいた。 「てゐぃぃぃぃっ!!このうそつきゆっくりがあぁぁぁぁっ!!よくもばらしたなあぁぁぁぁっ!!」 その時、側近のゆっくりの一匹が木の枝を咥え、てゐに突っ込んで来た。 てゐがばらした訳ではないのだが、そのゆっくりは完全にそう思い込んでいた。 「ヒャアァァァァッ!?お前てゐちゃんに何しとんじゃあぁぁぁぁっ!?」 「ゆぶえぇぇぇぇっ!?」 ……が、老人の一人が素早い動きでそのゆっくりの顔面を蹴り上げ、木の枝は突き刺さらずに済んだ。 「見たじゃろ!?こいつらてゐちゃんを殺そうとしとったぞい!!つまり、殺ってOKの部類じゃわい!!」 「ヒ……、ヒャッハアァァァァッ!!仕方ないんじゃ!!これは仕方ない事じゃからのう!!」 「キルユー!!キルユーじゃわいっ!!」 老人達はつい先程の優しい表情から一変し、目を血走らせ、訳の分からない事を叫びながら鎌やクワを手に取り、てゐ以外のゆっくり達に襲いかかった。 「ゆぎゃあぁぁぁぁっ!?なんでえぇぇぇぇっ!?」 「ヒャア!!汚物は消毒じゃい!!」 「どぼぢでごうなったのおぉぉぉぉっ!?」 「糞饅頭に産まれた事、後悔せいっ!!」 「おさあぁぁぁぁっ!?だいじょうぶじゃなかったのおぉぉぉぉっ!?」 側近のゆっくり達は一匹、また一匹と老人達に斬られ、潰されていった。 「GO!!源之信!!」 「グルアァァァァッ!!」 「ゆんやあぁぁぁぁっ!!こっちこないでえぇぇぇぇっ!!」 別の場所では白い毛の犬……、源之信が飼い主に命じられ、側近のゆっくり達を追いかけ、鋭い爪や牙で獲物を抉り、仕留めていた。 「む、むきゅわあぁぁぁぁっ!?」 長ぱちゅりーは襲われている側近達に目もくれず、一目散に逃げ出そうとした。 「ヒャア!逃がさんぞい!!」 ヒュッ……、グサッ!! 「むっぎゃあぁぁぁぁっ!?」 ……が、逃げ出そうとした長ぱちゅりーの底部に何かが突き刺さり、あまりの痛さに転げ回ってしまった。 見ると、長ぱちゅりーの底部には木の矢が突き刺さっていた。 「中枢餡を狙ったつもりじゃが……。ワシも歳じゃのう……」 少し離れた所で、先程家の中に戻っていたオハラさんが立っていた。 その手には弓が握られており、オハラさんが長ぱちゅりーに矢を射った事が一目で分かった。 「……」 てゐはもはや訳が分からず、放心状態でポツンと取り残されていた。 「あぁ~ん?何だ?この騒ぎは……?」 「うさ……?」 てゐの背後から、老人達とは違う若々しい声が聞こえてきた。 ……見ると、てゐの背後には屈強な身体つきをした、二十代位の男が立っていた。 「と……、とめ吉!?お前何でここにいるんじゃい!?」 「あ、親父。久々に里帰りしてみりゃ……。何だ、もしかしてゆっくり達をSATUGAIしてんのか?」 「そうじゃ!お前も手伝え!……あ!そこのてゐちゃんは駄目じゃぞ!」 「あ!?何でだよ!?」 「村のアイドルだからじゃ!!」 「訳分かんねぇな……。まぁ良いや。俺も久々にヒャッハーさせてもらうぜ!!」 とめ吉と呼ばれた男はそう言って、老人とゆっくり達の中へと飛び込んだ。 「……もう、どうにでもなれうさ」 てゐの呟きは虚しくも、誰にも聞こえる事はなかった。 ……数分後。 「ふぃ~。良い汗かいたわい!!」 「とめ吉ぃ……。よく帰って来てくれたのぅ……」 「まぁ、俺も言いすぎたよ」 「あちゃー……。クワが餡子でベトベトじゃ。ヒャハりすぎたのぅ」 ……あれから老人達は爽やかな顔をしたり、メソメソと泣いたりといていた。 地面には先程のゆっくり達の惨たらしい死骸が散乱していた。 「むきゅうぅぅぅぅ……。だ、だずげでぇ……」 唯一生き残っていた長ぱちゅりーは老人達に髪の毛を掴まれ持ち上げられ、命乞いをしていた。 「とめ吉、あん時は本当に言いすぎたわい。お前がまりさを虐待するのが好きだと知っとったのに、獲物を横取りするななんて言ってのう……」 「いや、いいさ。俺も親父がゲロ饅頭を甚振るのが好きと分かってて、腹いせに俺が先にゲロ饅頭を潰してたから……」 「とめ吉、家ん中にまりさの干物があるんじゃ。お前好きじゃったろ?後で食おう」 「それは良いな。だったら俺は、里で教わった『けーき』ってやつを作ってやるよ。そこのゲロ饅頭を使ってな」 「おぉ。すいーつが食えるのは良い事じゃのぅ」 「じにだぐないわあぁぁぁぁっ……!!」 長ぱちゅりーは自らの未来を悟り、涙を流した。 「……」 てゐは未だに状況を理解しきれていなかった。 いつも優しい老人達が、何故こんな事をしたのか分からなかった。 ―なんねんぶりかのぅ、ほんきでひゃっはーできるのは……― ……てゐは長ぱちゅりー達に言った、自分の嘘を思い出していた。 あれはその場をごまかす為の嘘だった。 ……そのはず、だった。 「てゐちゃん、凄まじいもんを見せちまったのぅ」 「すまんのぅ、ワシら、ずっとてゐちゃんの事を騙しとったんじゃわい」 「ワシら……、昔からの虐待人間なんじゃよ」 大分興奮から醒めた老人達がてゐにそう語りかけた。 「え……?」 突然の告白に、てゐは面喰うしかなかった。 「ワシらはてゐちゃんに会うまでは、村に来たゆっくり達をSATUGAIしとったんじゃ」 「連中、ワシらの畑の野菜が目当てじゃったり、この村を乗っ取ろうとしたり、ロクでもない連中でのぅ」 「だからこっちも遠慮なくヒャッハー出来たんじゃよ」 「……そんな時、てゐちゃんと出会ってのぅ……」 「こいつ、最初はヒャッハーしようと思ったんじゃぞ?」 「じゃが話してみると、なかなかいい子でのう……。SATUGAIロードを歩んどったワシらは、違う意味で癒されたんじゃ」 「……」 「そのうち、せいたも村に来るようになってのぅ。……ゆっくりにも良い奴はおるんじゃって思い始めての」 「せいた……?なぁ、親父。そんな名前のゆっくりなんかいたか?」 「ワシらももう歳じゃ。いい加減静かに余生を過ごすべきじゃないかって思ってのう」 「そん時決めたんじゃ。これからは、出来るだけ静かな、落ち付いた余生を送ろうっての」 「血圧が高くなっちょるって、医者にも言われたしのぅ」 「……しかし、あのゆっくり共の面を久々に見て、体ん中の血が疼いたんじゃ」 「フッ……。これが、虐待人間のサガってやつかいのぅ」 「……すまのぅ、てゐちゃん。連中がてゐちゃんの友達じゃないからOKと思って殺った訳じゃが」 「ぴゅあな心を持つてゐちゃんにはキツすぎたようじゃ。……もう、ワシらと関わらん方がええ」 「……」 老人達の独白を聞いて、てゐは思った。 世の中には、常に上がいるものだと。 自分は老人達を騙していたつもりだったが、最初から自分が騙されていたのだ。 今回の一件がなければ、恐らく永遠に気付かなかっただろう。 老人達の表情の奥底にある本心に。 (……てゐも、まだまだみじゅくものうさねぇ……) ……そして、てゐは決心した。 「おじいちゃん……。じつは、てゐも……」 ……老人達は、全てを自分に話してくれた。 だから今度は、自分が全てを話す番だ。 自分だけが腹の奥底に一物抱えているのは、どうも気分が悪かった。 自分は今まで猫を被っていたという事。 自分が老人達を騙そうと思っていた事。 それがその内、老人達と一緒にいたいと思うようになっていた事。 ……本当は、ただ単に一人ぼっちが寂しかったという事。 ……全てを話し、老人達が何を思うのかは分からないが、どうしても話しておきたかった。 「てゐも……、かくしていたことがあったうさ」 ……数日後、村の中にある源之信の犬小屋の隣りに、もう一つ小さな小屋が出来たのだが、それはまた別の話である。 「ごしゅじーん、なんでここにきてるんだー?」 「ここにはようじがあるからですよ、よしか」 ……てゐと別れた後、せーがとよしかは山を降りて、河川敷の所まで来ていた。 河川敷には先程崖から落下したゆっくり達の餡子や死骸が飛散・散乱していた。 「よしか。……せーがはもう、あのにんげんのむらをてにいれることはあきらめました」 「ほぇ?なんで?ごしゅじん、あんなにやるきがあったのに、なんでやめるの?」 「さっき、てゐさんがむらにいくっていったでしょう?このことをしらせるために」 「うん、そうだね」 「あのにんげんたちはきっと、てゐさんにかんしゃするでしょう。よくしらせてくれた……、と」 「きっと、いっぱいほめてもらえるね!」 「にんげんたちは、てゐさんにかんしゃすることになります。おんぎというものがあるんですよ」 せーがはそう言いながら、遠い目で空を見た。 「もし、てゐさんがむらにすまわせてほしいといったら、にんげんたちはこころよくてゐさんをむかえいれてくれるでしょうね」 「うーん……、つまり、どゆこと?」 「わかりませんか?てゐさんはあのむらの、ほんとうのあいどるになったわけです。……せーがにとって、すごくやりづらくなりました」 「?」 「もしてゐさんが、せーがたちがわるいゆっくりだといえば、にんげんはてゐさんのいうことをしんじるでしょう?」 「……あっ!そうか!そしたらよしかたちが、にんげんにひどいめにあわされるんだ!いやぁ、てゐはすんごいわるだなぁ!!」 よしかは納得したらしくウンウンと頷いた。 「まぁ……。ほんとうは、ほしかったものはべつのものだったのかもしれませんがね」 「え?」 「こっちのはなしですよ」 「でも、ごしゅじん、これからどうするんだ?このままおうちにかえる?よしか、なにかたべたいぞー」 「……このままおうちにはかえりません。よしか……、せーがたちは、あたらしいおうちにひっこしましょうか」 「え?おひっこし?でも、どこへ?」 「ふふ……。そのまえにじゅんびをしましょうか」 せーがはそう言って、近くにあったゆっくりの死骸に近付いた。 「ごしゅじん、もしかして、まさか……!」 よしかはせーがが何をしようとしているのか、大体理解し始めた。 そして、どことなくその目が輝いていた。 「えぇ。いまからせーがが、よしかのなかまをつくってあげますよ。だからよしかもてつだってくださいな」 せーがはニコリと微笑みながら、そう言った。 ……数十分後。 「ふふ……。まぁ、こんなものでしょうか」 「うほわぁ!すごいすごい!!」 せーがとよしかは、『あるもの』を眺めて満足していた。 二匹共体中が餡子で汚れていたが、どちらも怪我などしておらず、それは自分の餡子ではなかった。 『あるもの』を準備する段階で、汚れてしまったのだ。 「ウゥ……」 「アァ……」 「ユッグリ……」 「ドガイハ……」 ……そして二匹の目の前に、体が紫色で、目の焦点が定まらず、生気が全く感じられない、十匹程のゆっくり達がいた。 その『あるもの』とは、このゆっくり達の事だった。 「ほらよしか。あなたとおなじ『ゆんしー』たちですよ」 「おはよう!!よしかはよしかだぞ!!」 せーがは希少種だが、特別強いゆっくりという訳ではない。 身体能力は、そこら辺の普通のゆっくりと大差なかった。 ……しかし、せーがにはよしか同様、ある特別な能力があった。 それは、『ゆっくりの死骸を蘇らせ、自分の専属にする』というものだった。 蘇ったゆっくりは『ゆんしー』と呼ばれ、ゾンビに近いような存在となる。 自分の第一の専属であるよしかも、せーがによって産み出されたゆんしーだった。 ゆっくりを自分の思い通りに操るという点ではよしかの能力と似ていたが、決定的な差があった。 よしかの能力は一時的だが、せーがの場合は半永久的にその効果が続くのだ。 主であるせーがが死ぬか、ゆんしーの体が限界を迎え、朽ち果てるその日までは。 それが、このせーがの能力だった。 「ふふ……。てゐさんにはかんしゃしないと。そうでなきゃ、こんなにたくさんのしたいはてにはいらなかったでしょうから」 ……てゐに村を守ろうという提案を持ちかけられた時、せーがはそれを利用して、ゆっくりの死体を大量に手に入れようと思ったのだ。 それと同時に、村を乗っ取ってしまおうという考えは半ば捨てていた。 何故なら、『もう一つのゆっくりぷれいす』というものを知ったからである。 てゐには村をやり、自分はそのゆっくりぷれいすを手に入れようと考え、その為にてゐに協力したのである。 今こうしてゆんしーを作っているのは、そのゆっくりぷれいすへ行く為の準備でもあった。 「さて、こんどはどうしうちをしたゆっくりたちも、ゆんしーにしてしまいましょう。……でも、そのまえに」 せーがはそう言って、足元にあったある物を口に咥えた。 ……それは、落下したゆっくりが咥えていた木の枝だった。 「おろ?ごしゅじん、それでなにをするんだ?」 「なにをする?きまってるでしょう?」 せーがはそう言って、よしかへと近付き……。 「こうするためですよ」 よしかの頬に木の枝を突き刺した。 「え……?」 よしかは何が起きたのか分からず、間の抜けた声を出していた。 ……数十分後。 「ふふ……。まりささん。あなたがいてくれて、ほんとうにたすかりましたよ」 そう言ったせーがの足元には、あのまりさの死骸があった。 その死骸には餡子がほとんどなく、ペラペラのデスマスク状態だった。 「あなたみたいなゆっくりがいてくれて、かんしゃしています」 せーがはまりさに話しかけるが、当然まりさは死骸なので、何も答えない。 「あなたはゆんしーにはしません。だって、あなたはとくべつで、ひつようなそんざいですもの」 せーがもまりさが返事をする事はないと分かっていながら、話し続ける。 「あなたがよしかのかわりになってくれるといったとき、ほんとうにうれしかったんですよ?」 せーがはまりさのデスマスクの中に顔を突っ込み、中から僅かに残っている餡子を口に咥えた。 「ごしゅじーん、まだー?はやくしてくれよぅー」 ……少し離れた場所から、頬を一文字に斬られているよしかがせーがを呼んでいた。 傷口からは中身の餡子が見えているのだが、よしかは全く痛がっていないようだった。 ゆんしーは痛覚などもないようである。 「あら、ごめんなさいねよしか。すぐいきますからね」 せーがはそう言って、よしかの元へと戻った。 「これでさいごですからね」 せーがはそう言って、よしかの傷口に自分の口を付け、その中にまりさから取った餡子を移した。 そしてよしかの傷口をペロペロと舐め始めた。 「まっていなさいね、きずぐちをとじますから」 ……せーがが傷口を舐め終えると、よしかの傷口は大分塞がっていた。 「しばらくきずぐちがふさがるまで、じっとしていてくださいね」 「はーい!」 よしかは元気よく返事をした。 「まりささんのしつのいいあんこをいれましたからね、きっとまえよりもうごきやすくなってるとおもいますよ」 ……せーがは時々、自分のゆんしー達の体のメンテナンスをする。 それは同じゆんしーであるよしかに対しても行われていた。 傷が増えていたら傷口を塞ぎ、体が腐り始めていたら別のゆっくりの皮を新しく貼り……、餡子が駄目になっていたら、新しい餡子と取り換える。 ……あの時、せーががまりさに言った言葉に嘘偽りはなかった。 せーがは最初から、身体能力の高いまりさの餡子を、よしかの古い餡子と取り換えたくてあんな事を言ったのだった。 よしかは最近動きの鈍さや物覚えの悪さが酷くなってきたので、誰か別のゆっくりの良質な餡子が欲しいと思っていた。 ……それが、てゐに協力した一番の理由でもあった。 「ごしゅじん!よしか、まえよりあたまがよくなるかな!?」 「えぇ、たぶんよくなるとおもいますよ(どうでしょう?まりささんはあたまはよくないようでしたし……)」 せーがはその点は誤魔化すように言った。 ……そんな二匹を、まりさのデスマスクが恨めしそうに見つめていた。 「あら……。やっぱりおこってます?……それはそうでしょうねぇ。あんこをとられたら、おこりますよねぇ」 せーがは物言わぬまりさのデスマスクに話しかける。 よしかは前より頭が良くなる(確証はない)嬉しさに頭が一杯で、せーがの呟きは頭に入っていなかった。 「わかっていますよ。せーがはとってもわるいことをしています。だからおこられてもとうぜんですよね」 ……まりさは何も語らない。 「いつかせーががしんだら、そのときはいっぱいもんくやうらみつらみをきいてあげますよ」 せーがはよしかに向き直った。 「どっちも、さいごにたどりつくばしょは、おなじですからね……」 ……その言葉は誰に語ったものなのか、それはせーがにしか分からなかった。 ……数時間後。 「ゆーん!おとーしゃんおしょいねー!」 「ありちゅ、おにゃかしゅいたー!」 「ゆぅ……、みんなおそいね!れいむもあかちゃんもおなかぺこぺこだよ!」 ……そこは、長ぱちゅりー達の群れの広場。 広場には留守番をしていた赤ゆ達やにんっしんっしているゆっくり達がいた。 「ぴゅんぴゅん!れいみゅにごはんしゃんをたべしゃせにゃいくちょじじいはちにぇ!!」 「まったく……、ありすのだーりんはほんとうにむのうね!ありすをがしさせるきかしら!」 中にはいつまで経っても帰って来ない親や番に対して苛立ちを隠さない者もいた。 「ゆっ!みんながかえってきたよ!」 広場にいた植物にんっしんっをしているれいむが、遠くに見えるゆっくり達の姿に気付いた。 「ゆっ!おやしゃいしゃん!おやしゃいしゃん!」 「はやきゅたべちゃいのぢぇ!」 赤ゆ達は野菜を食べる事が出来ると思い、跳ねたり涎を垂らしたりして今か今かと待っていた。 「ゆ……?」 ……が、広場にいたゆっくり達は、ある事に気付いた。 「おぉ!ごしゅじんのいっていたゆっくりぷれいすって、ここのことか!」 「えぇ、そうですよ。ここはまえのおうちよりも、ずっとひろいですからね」 ……こちらにやって来るゆっくり達の先頭を、見ず知らずの二匹のゆっくりが歩いていた。 それはゆんしーを作り終えたせーがとよしかだった。 「ウウゥ……」 「ワガルヨオォ……」 「ユッグヂ……」 その後ろには数十匹程のゆんしー達がいた。 中には目玉が飛び出ていたり、口から餡子がボタボタと漏れていたりするゆっくりもいた。 「ゆうぅっ!?な、なんなの!?」 「あのふたりはいったいだれなの!?」 「あれ、れいむのだーりんだよ!?なんであんなふうになっているの!?」 「ゆぴぃっ!?きょわいよぉっ!!」 「ぷきゅうぅぅぅぅっ!!あっちいくのぢぇ!!」 広場にいるゆっくり達は変わり果ててしまった親や番に対し、恐れ、怯えていた。 ……そうこうしている内に、せーが達は広場に辿り着いた。 「よしか、ここならゆんしーたちをいれるおうちがたくさんありますね」 「おぉ!よしか、ぽんぽんがぺこぺこだぞ!はやくごはんさんをたべたい!!」 「まぁまぁ、ちょっとまちなさいな。まず、あいさつをするのがれいぎですよ?」 せーがはそう言って、怯えた眼差しでこちらを見るゆっくり達の前に来た。 「みなさん、はじめまして。せーがはせーがです。ゆっくりしていってくださいね」 せーがは丁寧に挨拶をした。 「な、なんなの!?れいむたちになんのようなの!?」 「ちぇんやありすになにをしたの!?」 「へんにゃゆっくちは、はやくでていっちぇにぇ!!」 群れのゆっくり達は口々にせーがに対して文句を言ったり、問い詰めたりしていた。 「まぁまぁ、あわてないでくださいな。ひとつずつせつめいしますから」 せーがはそう言って、コホンとわざとらしく咳払いをして、こう言った。 「まずさいしょに、ここをせーがたちのゆっくりぷれいすにさせてください!というか、します!」 「「「「「ゆ……?」」」」」 「あなたたちのだんなさんやおとうさんは、みんなせーがのしもべにしちゃいました!」 「「「「「ゆうぅぅぅぅっ!?」」」」」 「とうぜん、ここはせーがたちのゆっくりぷれいすなので、でていくきはありません!」 「「「「「はあぁぁぁぁっ!?」」」」」 ……せーがの言っていたゆっくりぷれいすとは、長ぱちゅりーの群れの棲み処の事だった。 てゐと様子を見に行った時に、留守番をしているゆっくり達はほとんどが非戦闘員ばかりだった事は確認していた。 なのでゆんしー達を引き連れて行けば、簡単に制圧出来ると思ったのだ。 「いやぁ、ここはいいところですねぇ。せーがとよしか、ゆんしーたちがすむにはじゅうぶんすぎるくらいですよ」 「ふざけないでねえぇぇぇぇっ!?」 「かってなことをいうんじゃないわあぁぁぁぁっ!!」 「ちにえぇぇぇぇっ!!へんにゃゆっくちはちにえぇぇぇぇっ!!」 「まりちゃがせいっしゃいっしてやるのぢえぇぇぇぇっ!!」 群れのゆっくり達は勝手な事を言うなとばかりに騒ぎ始めた。 「そんなことをいわれてもこまりますよ!せーががそうするといったら、そうするんです!」 「ごしゅじん、ごしゅじん!」 「ん?どうしました?よしか」 「ここにすむのはよしかたちだけじゃないぞ!もっと、べつのものもおけるぞ!」 よしかがドヤ顔でそう言った。 「あら、それはなんです?」 自信満々の態度を見せるよしかに対し、せーがが尋ねた。 「めのまえにいる、たくさんのごはんさんたちがはいるあなも、ちゃーんとあるぞ!」 よしかは群れのゆっくり達を見ながら、舌舐めずりをした。 ……その目は同族を見る目ではなく、獲物を見る目だった。 「ひいぃっ……!!」 「ゆひゃあぁっ……!?」 「ぴいぃっ……!」 よしかのその目を見た群れのゆっくり達は皆、言葉を失ってしまった。 「あら……、あなた、そんなかおもできたんですねぇ。さすが、せーがのだいいちのせんぞくです」 「いやぁ~、それほどでもあるぞぅ」 「それに、おつむもよくなっていますね。かしこいかしこい、いいこいいこ」 せーがはそう言って、よしかに頬ずりをし始めた。 「うへへ~……てれるなぁ……」 よしかは照れていたが、まんざらでもないようだった。 「じゃあ……、とりあえず、おとなのゆっくりたちはうごけないていどにいためつけましょうか」 「ウグゥ……」 「ウアァ……」 「あぁ、にんっしんっしているゆっくりのあかちゃんはころさないようにしてくださいね。あとでたべますので」 せーががそう言うと、後ろにいたゆんしー達が群れのゆっくり達にジリジリと近付き始めた。 「「「「「ひっ……!」」」」」 群れのゆっくり達は恐怖で体が動かなかった。 仮に動いたとしても、数十匹はいるゆんしー達の包囲網から、赤ゆや重身の体力で逃げ出せるはずもなかった。 「あー、はやくごはんさんをたべたい!よしか、あかゆがだいすきだから、よしかがたべてもいいよね!」 「はいはい、おなかをこわさないていどにたべなさいね」 「はーい!」 ……そして、そんなゆんしー達の後ろにいるせーがとよしかに対して言い知れぬ恐怖を抱いていた。 自分達の群れを乗っ取る事も、自分達を食べようとする事も、全く悪い事だと考えていない。 群れのゆっくり達は皆、そう考えていた。 「みなさん、さいしょにあやまっておきますね。せーがのわがままのせいで、みなさんがゆっくりできなくなることを」 ……いや、実際は違っていた。 せーがはきちんと理解していた。 自分の行いの数々が許されざる行為である事を。 「でも、せーがもゆっくりですので、ゆっくりしたいんですよ。そこらへんは、みなさんもおなじでしょう?」 それでもせーがは、自分の欲望の為ならば、どんな事でも実行に移してきた。 己の欲望、願望、全てを満たし、叶える為に。 ……それはまるで、己の欲望の底を知らない、赤ゆのようでもあった。 「では、あらためさせてじこしょうかいしますね。せーがはせーがです。ここを、せーがたちのゆっくりぷれいすにします」 ……その先にあるのは更なる欲望か、あるいは破滅か、それは誰にも分からないし、もちろんせーが自身にも分からない。 それでも、その末路がどんな形にせよ後悔などはせず、最後には笑って死ぬのだろう。 ……そう思い、せーがは己のゆん生の中で何度目になるか分からない笑みを浮かべた。 今日もせーがは嬉しそうに笑う。 その笑顔の裏には、ただただ純粋な悪意があった。 そんな笑顔を見せて、せーがは己の欲望の犠牲者達に語りかけるのだ。 「それじゃあみなさん……、ゆっくりしていってくださいね?」 END あとがき このSSを書き終えた時、純粋に『糞長かった』と感じました。 ふたばの方でせーがは悪い子みたいに書かれていたので、じゃあ俺も!みたいな感じで書いた結果がこれでした。 書いたは良いけど、あんまり悪く書けなかったかなーとも思います。 これからも何か思いついたら書いていきたいと思うので、よろしくお願いします。 ご意見、御感想、お待ちしています。 作者:ぺけぽん 感想用掲示板はこちら http //jbbs.livedoor.jp/otaku/13854/ ミラーはこちら http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/1.html 今までに書いたSS anko1656 クズとゲス anko1671 うにゅほのカリスマ求道記 anko1767 あなたは、食べてもいい○○○○? anko1788 そんなの常識ですよ? anko1926~1928 二人はW ~Yは二度と帰らない~ anko2079 しんぐるまざー anko2750 無意識だから anko2786 ともだち anko3189 おちびちゃんは大切だよ! anko3210 バクユギャ anko3221 根本的な間違い anko3249 お兄さんは興味が無い anko3261 それぞれの願い anko3319 好みは人それぞれ anko3330~3331 HENNTAI達の日常~メスブタの家出~ anko3343 HENNTAI達の日常~駄メイドの休日~ anko3360 可哀想なゆっくり anko3419 優秀or無能 anko3469 たまたま anko3528 悪いのは誰? anko3885 可愛いは正義 anko3983~3984 それぞれの冬ごもり anko3996 野良ゆが消えない理由 挿絵:
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4554.html
『続・邪悪なる者達・承』 21KB 群れ ゲス ドスまりさ 希少種 独自設定 26作品目、その2です。 「ごしゅじーん、まだかなー?」 「もうすこしですよ。もうすこしでつきます」 「それにしても、さっきからくさがあんよのほうにあたって、くすぐったいぞー」 「そうげんなんですから、あたりまえですよ」 ……せーがとよしかは今、大草原の中をただ前へ、前へと進んでいた。 「このそうげんをぬければ、すぐにみえてきますからね」 「うーん……、きをつけないと、まいごになりそうだー」 「なんでなにもないそうげんで、まいごになっちゃうんですか!?」 ……あれからせーがとよしかは、ゆんしーおうこくがあった場所とは反対の方向へ進んで行った。 途中でよしかが転んだり、よしかが迷子になったり、よしかが空腹で動けなくなったりしたが、何日もかけて、とにかく二匹は進み続けた。 道は思ったより険しかった……、主に、よしかのせいで。 それでも二匹はひたすらに前へと進んだ。 自分達の本当の故郷へと帰る為に。 そして、二匹は何事もなく草原を抜ける事が出来た。 ……それから、どれ位進んだだろうか。 「あ……」 「おー!ごしゅじん!あれ、あれ!」 二匹のはるか視線の先には、ゆっくりの群れらしき集落が、小さいながらも見えていた。 「……かえってきたんですね……。せーがのうまれこきょうに……」 「ごしゅじん!はやくいこう!」 「えぇ……」 そんな会話を交わしている二匹の歩みは、自然と早くなっていた。 ……二匹は今、本当の故郷に辿り着いたのである。 せーがの生まれ育った群れ……、『じゃせんていこく』に。 続・邪悪なる者達・承 作:ぺけぽん 「……みなさん、ただいまかえりました」 「たーだーいーまー!」 数分後、『じゃせんていこく』の入口に辿り着いたせーがとよしかは、そのまま広場のある場所へと向かった。 広場には懐かしい顔ぶれの群れのゆっくり達がいて、せーがとよしかの声に気付き、皆が一斉に二匹の方を見た。 「え……、せーが?せーがなのですか!?」 「まぁ……!それに、よしかも……」 「おぉ!よしかー!ひさしぶりー!」 「げんきだったかー!」 ……群れの広場には、二匹と同じ、せーが種とよしか種のゆっくりが十匹程いた。 二匹の姿を見て、ある者は驚き、ある者は喜び、その反応は様々だった。 「こうしてはいられませんね!さっそくおさにほうこくしなくては!」 「おーさー!ごしゅじんににているごしゅじんがかえってきたぞー!」 そう言って、広場にいた群れのせーがとよしか数匹が、広場のさらに奥の方へと跳ねて行った。 「せーが。ほんとうにひさしぶりですね」 「いろいろはなしたいことがやまほどありますが……。まずは、おさにあってからにしましょう」 「はやくー!」 「え、えぇ……。よしか、いきましょう」 「おーう!」 二匹は群れの皆に後押しされて、広場の奥へと進む。 「ウヴゥ……」 「ゼーガダァ……」 「ヨジガァ……」 「オガエリィ……」 広場の奥には、様々な種類のゆんしー達が軽く数十匹はいた。 「おかえりなさい。せーが。それによしか。……だいぶ、おおきくなりましたね」 そのゆんしー達の集団の中央に、一匹のゆっくりせーががいた。 「ただいまかえりました。……おかあさま」 「おさー!!ひさしぶりー!」 「ふふ……」 三匹は再会の挨拶を交わし、共に再会の喜びと懐かしさから自然と表情に笑みが浮かんだ。 ……『じゃせんていこく』。 それは、数十匹のゆっくりせーがとゆっくりよしか、そして百は軽く超えるゆんしー達のみで構成された群れである。 その規模はせーがの築き上げたゆんしーおうこくを遥かに超える大御所であった。 そんなじゃせんていこくの長を務めるのは、先程せーがが母と呼んだせーがである。 つまり、せーがはじゃせんていこくの跡継ぎでもあったのだ。 せーがはこのじゃせんていこくで生まれ、多くの仲間とゆんしー達に囲まれ、様々な知識を学び、経験を積んだ。 その過程の中で、せーがは一番最初のゆんしー……、つまりよしかを創り出し、自分の第一の専属としたのだ。 ……そして、せーがはある決意を心に秘め、よしかと共にこのじゃせんていこくを離れ、新天地へと旅立ったのである。 「そういえば、おかあさま」 「どうしました?」 「……おとうさまは、どうなさったのです?」 「そういえば、どこにいったんだー?」 ……せーがはある事に気付いた。 こうして母せーがが出迎えてくれたのに、『父』が一向に姿を現さないのである。 せーがの記憶にある、いつも元気で明るくて、ちょっとドジだけど、せーがの大好きな『父』の姿。 ……もしや、『父』の身に、何かあったのではないだろうか。 せーがの脳裏に、一瞬そんな不安が過った。 「うふふ……。だいじょうぶよ、よしか。おとうさんはげんきですよ。ちょっとおひるねしていて、なかなかおきないだけですから」 母せーがのその言葉に、せーがはほっと安堵した。 「ただ……」 「?」 「おとうさんをみたら、けっこうおどろくかもしれませんね」 「え?それはどういう……」 「すぐよんできますからね」 『父』の姿を見て驚く理由を尋ねようとしたせーがだったが、母せーがはそのままゆんしー達の間を通り抜け、ゆんしー達の後ろにある、巣穴の中へと入っていった。 その巣穴は高さが数メートル、横幅もかなりの長さがあり、結構な数のゆっくりが入れる位の大きさだった。 「ほら、あなた!おきてください!あなたのむすめのせーががかえってきましたよ!」 巣穴の奥から、母せーがの声が聞こえる。 すると、「ふわぁ~」という間の抜けた欠伸が聞こえた。 『父』の声である。 そして母せーがが巣穴から出て来た。 「まっててください、いまでてきますからね」 母せーががそう言うと、巣穴の奥からズシン、ズシンと大きな音が響く。 ……そして。 「せーがー!おーかーえーりー!!」 ……中から、一匹のゆっくりよしかが出て来た。 このよしかが、せーがの実の父親であった。 父よしかは、母せーがによって作られたゆんしーである。 従来のケースならば、せーが種とよしか種の関係は、主と専属というものが一般的である。 だが、極稀にその一線を超えて、夫婦になる個体も存在する。 母せーがと父よしかが、まさにそのお手本であった。 「……」 「うっわー!すげぇ!」 「どーしたー?せーがー?」 ……一方、せーがは久々に再会した父よしかの姿を見て、開いた口が塞がらなかった。 逆によしかは父よしかの姿を見てとても興奮していた。 「え……、と……。お、おとうさまですよね?」 「そーうーだーぞー!!」 「あのー……。ちょっといいですか?」 「?」 せーがは父よしかの姿を見て、どうしても聞かずにはいられなかった。 「……なんで、そんなにでかいんです?」 ……父よしかの体は、全長3メートルは軽く超えていたのである。 もはやドス級ではないかと思う位の巨体だった。 しかも、せーがの記憶が正しければ、昔の父せーがはそんな規格外のサイズではなかったのだ。 どこにでもいるような、普通のゆっくりと同じ位のサイズであったのだ。 「お、おかあさま?なんでおとうさまがこんなにおおきくなったんですか?」 せーがは母せーがに父よしかの体が大きくなった理由を尋ねた。 「えぇ。それは……」 「それは……?」 せーがはゴクリと固唾を飲んで母せーがの言葉を待った。 もしや、先日のドスまりさのように、突然変異で体が大きくなったのだろうか。 それとも、母せーがが父よしかの体をいじくりまわしてこうなったのだろうか。 まさか、父よしかの体の中に、何匹ものゆっくりが入っていて、体を乗っ取っているのではないだろうか。 ……せーがの頭の中に、様々な可能性が廻り廻っていた。 「ごはんをたべすぎて、ふとっちゃったんですよ」 「ふとったー!!」 その原因は、実に残念なものであった。 「あれはどうみても、たべすぎのはんちゅうこえてますよね!?」 「え~……、だって、ごはんをたべているときのおとうさんのかお、とってもかわいいんですもの~」 「こそだてにしっぱいしたでいぶみたいなかんがえですよね、それ!?」 「おーなーかーすーいーたー!」 「もういっしょうたべなくてもいいんじゃないですかね!?」 「ユグゥ、ガワイイナラショウガナイネ」 「ウン、ジガダナイネ」 「なんであなたたちがかいわにはいってくるんですか!?しかもむだにりゅうちょうにはなしているし!!」 「ごしゅじーん!よしかもくっちゃねするぞー!!」 「なんでだめなてほんをぜんりょくでみならおうとするんですか!?」 周囲の意識も、実に残念なものであった。 「もうっ!みんな、ほんとうに……、ほんとうに……」 そう言ったせーがの目から、ホロリと涙が落ちた。 ……母せーが、父よしか、群れの同族やゆんしーの仲間達……。 自分の故郷で待っていた者達は、何一つ変わっていなかった。 いや、父よしかの体格だけは変わっていたが、それでも、自分の大好きな父に変わりはなかった。 自分の大好きな者達は、今も昔も変わらず、そこにいたのだ。 「……ほんとうに、なにも、かわっていないんですね……」 せーがの故郷は、確かに、そこにあったのだった。 ……同時刻、ドスまりさの群れにて。 「どす!どす!たいへんなのぜ!」 「ゆぁ~ん?いったいどうしたのぜ!?」 自分の巣穴で寝ていたドスまりさは、巣穴の中に入って来た配下のまりさに起こされた。 寝起きと、気持ち良く寝ていた所を邪魔された事もあり、ドスまりさは不機嫌さを隠さなかった。 「むれのまりさのなんびきかが、れいぱーありすたちにおそわれたのぜ!」 「あぁ……、となりのれいぱーありすのむれの……」 ドスまりさの群れの近くには、ドスまりさ並みの大きい体格の、くいーんありすが長を勤めるれいぱーありすの群れがあった。 れいぱーありす自体の数はそれ程多くないもの、今までに何匹ものゆっくり達が性欲の吐け口として犠牲になっていた。 ……どうやら、ドスまりさの群れのまりさ達も例外ではなかったようである。 「かりにでかけているさいちゅうに、まりさのなかまたちが、なんびきかすっきりーされて、えいえんにゆっくりしちゃったのぜ!」 「……まさか、それでおまえはおめおめとにげだしたわけじゃないのぜぇ?」 「け、けど、れいぱーありすはこわいし、ふつうはにげるのが……」 「だまるのぜっ!!」 「ひっ!?」 ドスまりさに一喝された配下のまりさは身を震わせた。 「おまえはこのどすのむれのいちいんなのぜ!!つよいまりさがあつまるむれのいちいんなのぜ!!ちがうのぜ!?」 「そ、そうなのぜ……」 「れいぱーありすごときぶちころせないやつなんざ、このむれにはいらないのぜ!!」 ドスまりさはそう言って、配下のまりさを踏みつぶした。 「びぇ……」 配下のまりさは辞世の句も言えずに、餡子の染みと化して仲間の後を追う事となった。 「やくたたずが……。おい!だれかいないのかぜ!?」 ドスまりさは外にいた他のまりさ達を呼び出した。 「このよごれをきれいにするのぜ!」 「「「わ、わかったのぜ!」」」 巣穴の清掃を命じられたまりさ達は、葉っぱなどの道具を探しに蜘蛛の子を散らすように飛んでいった。 「ちっ……!れいぱーありすなんか、おそれるにたらずなのぜ!ほんとうに、こんじょうなしなのぜ!」 ……ドスまりさは、かつては自分もれいぱーありすを恐れていた事を棚に上げ、既に死んでいる配下の事を罵っていた。 「しかし……、しょうじき、れいぱーありすはめんどうなのぜ……。……ちかいうちに、あいつらもつぶしておいたほうがいいのぜ……」 これ以上先程のような弱音を吐くような奴が、群れの中から出ては困ると考えるドスまりさであった……。 ……それから、数日の月日が流れた。 せーがはじゃせんていこくで昔の仲間達と共に、懐かしく、楽しい日々を過ごしていた。 ドスまりさは群れのまりさの数を増やし、他のゆっくり達から略奪の限りを尽くしていた。 山のゆっくり達は、そんなドスまりさの横暴に耐えていた。 その間は、餡子を餡子で洗い流すような、大きな争いは起きていなかった。 ……しかし、そんな日常は、簡単に過ぎ去るものだった……。 ……じゃせんていこくにて。 「あらぁ、おとなりのせーがさん、こんにちは」 「よんばんめのすあなのせーがさんも、かわりありませんか?」 「えぇ、えぇ。みてくださいな、このゆんしー。きのうあたらしくつくったんですよ?」 「ゴンヂワァ……」 「まぁまぁ……、おはだのくさりかげんに、しんだでいぶのようなめつきがなかなかいいですねぇ」 「それはそうですよ。でいぶからつくったんですもの」 「ふふふ……」 「ほほほ……」 群れのゆっくりの巣穴の前で、数匹のせーが達がゆんしーを入れて井戸端会議をしていた。 群れのせーが達は時々近くで野垂れ死んでいたり、捕食種に襲われて食いかけの死体となっているゆっくりを調達して、ゆんしーを生み出している。 今日も今日でゆんしーの事について話がはずんでいるのだった。 「ドズー、アレヤッデー」 「おねがいだぞー!どすー!」 「ヤッデー、ヤッデー」 「おー!いーいーぞー!」 一方、群れの広場で数匹のゆんしーとよしか達が、父よしかに対して何かをせがんでいた。 父よしかはそれを快く承諾し、その場に寝そべった。 「ウワーイ、ダノジミー」 「のぼるぞー!」 ゆんしーとよしか達は、父よしかの体を登り始めた。 そして全員が父よしかの腹部に到達すると、父よしかは大きく息を吸い始めた。 「ふんっ!」 父よしかが頬を膨らませ、腹部に力を入れると、腹部がポッコリと膨れ上がった。 その反動で、父よしかの腹部に乗っていたゆっくり達が空中へ浮いた。 空中へ浮いたゆっくり達が父よしかの腹部に落ちると、父よしかは再び腹部に力を入れ、再びゆっくり達を浮かせる。 ……父よしかの日課は、こうして群れのゆっくり達に対して、擬似トランポリンとして遊び相手になってあげたり、頭上に乗せて高い高いしたりする事だった。 「オゾラヲドンデルミダーイ」 「ダノジー」 「おぉー!すっげーたのしー!」 体が大きく、心優しい父よしかは、群れの守護者兼巨大遊具として、己の職務を全うしている。 ……と言う事にしておこう。 「よしかー、よしかー、どこにいますかー?」 ……すると、母せーがの呼ぶ声が聞こえた。 母せーがは父よしかの近くまで来ていた。 「おさー!どうしたんだー?」 父よしかのお腹でトランポリンを楽しんでいたよしかは、そのまま母せーがに対して返事をする。 「あら、そこにいたんですか。あなたのごしゅじんさまはどこにいきましたかー?」 「しらないぞー!ごしゅじん、ここにきてから、ふらっとどこかへいくときがあるんだぞー!」 「そうですか……。もしかして、あそこでしょうか……?よしか、ありがとうございますね」 「おー!」 母せーがはよしかに礼を言うと、どこかへと行ってしまった。 「そーれー!」 「ウヴァーイ」 「ウギャー」 「すっげーたかーい!」 よしかは他のゆんしー達と共に、父よしかの腹部で遊ぶのだった。 「はぁ……」 じゃしんていこくから少し離れた場所に、天気の良い日は日当たりの良い丘があった。 ……そこに、せーがが溜め息を吐きながらぼんやりと宙を眺めていた。 心そこに有らずといった感じである。 「……せーがは……。……せーがは、どうすればいいのでしょうか……」 そんな事を呟いていた、その時。 「やっぱり、ここにいたんですね、せーが」 「……おかあさま」 後ろから誰かが声を掛けてきた。 声を掛けてきたのは、母せーがであった。 「ここは、あなたがちいさいころに、おかあさんとおとうさんといっしょになんかいかきたところなので、ここじゃないかなとおもっていました」 「……」 「となり、いいですか?」 「……いいですよ」 母せーがはそう言って、せーがの隣に来た。 「せーが。……なにか、なやみごとがあるんですね?」 「……やっぱり、かくせませんね」 「それはそうですよ。おかあさんは、せーがのおかあさんですもの。せーがのことは、よくわかっているつもりです」 「おかあさま……」 「あなたがこのじゃせんていこくにかえってきてから、しだいに、くらいかおをすることがおおくなってきたようなきがするんです」 「……」 「せーが。……なにがあったのか、はなしてくれますか?」 「……はい……」 母せーがに促され、せーがは己の口から、今までの事をポツリ、ポツリと母せーがに打ち明けた。 自分が移り住んだ山で、自分の群れを持つ事が出来た事。 その群れをいとも簡単に滅ぼされてしまった事。 逃げ出すような形で、ここに戻って来た事。 全てを打ち明けた。 母せーがは、それを黙って聞いていた。 「おかあさま。……せーががどうして、このじゃせんていこくをはなれたのか、そのりゆうをおぼえていますか?」 せーがは母せーがにそう尋ねた。 「えぇ。おぼえていますよ」 「……おかあさま。このじゃせんていこくは、おおむかしに、いちひきのせーがとよしかがつくったんですよね?」 「そうですよ。ごせんぞさまたちが、がんばってくださったおかげで、むれのみんなはへいわにくらすことができるのですよ」 「せーががちいさいころ、ちょうろうがなんかいもそういっていましたね。……もう、ちょうろうはえいえんにゆっくりしちゃいましたけど」 「そうですね。……ここは、まわりにてきがいなくて、たべものもたくさんあって、とてもいいところですね」 「……ごせんぞさまのはなしは、せーがのこころのなかにのこりつづけました」 せーがはそう言いながら、空を見上げた。 太陽の光の眩しさに目を細めながら、話を続ける。 「……せーがは、おおきくなるにつれ、おもうようになったんです。……そとのせかいというものは、どういうものなのかと」 「……」 「ごせんぞさまたちは、そとのせかいから、このじゃせんていこくのちにやってきました。……せーがは、しりたくなったのです」 「……」 「そとのせかいをみたい。そとのせかいをしりたい。……そして、そとのせかいで、じぶんのやりたいことを、やってみたい……、と」 「……あなたはむかしからわがままなこでしたけど、あのときは、ずいぶんなわがままをいいだすものだとおもいましたよ」 「えぇ。おとうさまなんか、わんわんなきながら、せーがをとめようとしましたものね」 「おとうさんをなだめようとするあなたをみて、どっちがこどもなのか、わからなかったですよ」 「……あのとき、おかあさまはとめようとはしませんでしたよね?じぶんのあとつぎが、むれをでていくといったのに」 「えぇ。おそらく、あなたのことですから、いってもきかないだろうなとはおもっていたので」 「ふふふ……」 せーがは視線を戻し、母せーがの方を見た。 「……よしかとともに、このじゃせんていこくからたびだって、やまをいくつかこえて、そこからいろいろあって……、じぶんのむれをもつことができました」 「……」 「ですが、それもあっというまにうしなって、ここへもどってきて、……せーがは、ほんとうにちっぽけなそんざいだと、おもいしらされたのです」 「せーが……」 「せーがは……、いともかんたんにうしなってしまうものに、まんぞくしきっていて、それでじぶんのねがいをかなえたつもりになっていました」 「……」 「おかあさま……。せーがは……、せーがは、ほんとうは、なにがほしかったのでしょうか?」 せーがは母せーがに問い掛ける。 かつては自分の心の中にあったものが何であったのか、それを尋ねる。 ……それは、自分しか知らないものであったという事を、分かっていながらも。 それでも、聞かずには、いられなかった。 「……ごめんなさい。おかあさんには、わかりません」 「……そうですよね」 母せーがの返答は、せーがが予測していたものだった。 「それは、せーががもういちどおもいださなければいけないことだとおもいますよ?」 「……」 「せーが。あなたはあなたです。……あなたがおもうがまま、あなたのこころがめいじるまま、あなたはあなたらしくいきればいいのです」 「……」 「だれよりもわがままで、よくぶかくで、じゅんすいで、じゆうなせーが。やりたいことをやりなさい。てにいれたいものをてにいれなさい」 「……」 「このじゃせんていこくでしあわせにくらすことも、もういちど、そとのせかいへもどるのも、あなたのじゆうです」 「……」 「おかあさんは、あなたがじぶんでかんがえて、そうしたいとおもったのなら、それをとめません」 「……」 「せーが、きかせてください。……あなたののぞみを」 母せーがの言葉を、せーがは黙って聞いていた。 ……そして、ゆっくりと口を開いた。 「……せーがは……」 ……翌日。 「やーだー!!いっちゃやーだー!!」 「……やはり、いってしまうのですね?」 「えぇ。ごめんなさい、おとうさま。おかあさま」 「ごしゅじーん……」 せーがとよしか、母せーがに父よしか、そして群れのゆっくり全員が、ゆんしーていこくの入口に集まっていた。 ……せーがは、再びこのじゃせんていこくから旅立つ事を望んだ。 母せーがは、それを受け入れた。 父よしかは、べそをかいていた。 「うわーん!せーがー!」 「あぁ、もぅ、おとうさん、なかないでくださいな。あとでおいしいきのこをあげますから」 「やーだー!」 「……せーがたちのむすめが、えらんだみちです。……もういちど、みおくってあげましょう?……あなた……」 「うー……」 「それが、おやであるせーがたちにできることですよ?」 「……せーが。……また、かおをみせにくるんだぞー?」 父よしかは泣くのをやめて、せーがにそう言った。 父として、精一杯せーがを見送ろうとしているのだった。 「……はい。いつか、かならず。……みなさんも、どうか、かわらずに……」 「おさー!ありがとー!どすー!またあそんでねー!みんなー!げんきでなー!」 せーがとよしかは皆に別れを告げて、じゃせんていこくを、生まれ故郷を後にした。 「せーが。……あなたのねがいがかなうことを、のぞんでいますよ」 「せーがー!よしかー!またくるんだぞー!!」 「ふたりともー!じゃせんのなまえにふさわしいゆっくりになってくださいねー!」 「よしかー!またこいよー!」 「ゲンキデネェー」 「ワガレッデ、ヤッバリザミジイネ」 じゃせんていこくの皆が、二匹の姿が見えなくなるまで見送り続けた。 「ごしゅじん、いいのかー?」 「いいんですよ。せーががそうしたいときめたのですから。……よしか。あなたはどうだったんですか?」 「よしかは、ごしゅじんがどっちをえらんでも、ごしゅじんについていくぞー!」 「ふふ……、たまにはうれしいことをいってくれますね」 「うおぉ、なんだかばかにされたきぶん」 「なんで!?」 じゃせんていこくが完全に見えなくなる頃には、二匹はいつもの調子を取り戻していた。 「ところで、ごしゅじん。これからどうするんだ?」 「きまってるでしょう?……あのどすまりさに、おれいまいりをしにいくんですよ」 「おれーまいり?なにか、かんしゃするようなことをしたのかー?」 「……まぁ、だいたいあっていますかね。このままやられっぱなしでおわらせるのは、どうもむしゃくしゃするので」 「でも、ゆんしーたちはもういないぞー。むかしみたいに、こつこつふやすのかー?」 「それはじかんがかかりすぎます。……まぁ、あてはありますよ」 「おぉ、そーか!ごしゅじんがそういうなら、ほんのすこしだいじょうぶだな!」 「ほんのすこし!?」 そんな会話を交わしている内に、二匹は既に大草原を渡っていた。 「さー!そーときまったら、どすまりさをやっつけにいくぞー!」 「……よしか。せーがたちがやることは、それだけではありませんよ?」 「そーだな!あたらしいむれをつくって、そこでゆっくりしよう!」 「……いいえ。それだけではありません」 「おぉ?……うーん……。……おぉ!そうか!ごしゅじんは、もういちどやまのてっぺんにもどるんだな!」 「……それではたりません」 「……わからないぞー。ごしゅじんはほかになにをしようとしているんだー?」 せーがの言葉の意味が分からず、よしかは足りないおつむで必死に考えるが、完全にお手上げだった。 「……よしか。せーがはおもいだしたんですよ。……はじめてそとのせかいへとたびだったとき、せーがはなにがほしかったのか……」 「せーが、きかせてください。……あなたののぞみを」 母せーがの言葉を、せーがは黙って聞いていた。 ……そして、ゆっくりと口を開いた。 「……せーがは……。……せーがは、『すべて』がほしいです」 ……せーがは、思い出したのだ。 「せーがはほしいです。おいしいごはんさんを。りっぱなおうちを。たくさんのなかまを。それをてにいれるためのちからを」 ……かつて、己が何を欲していたのかを。 「だれかをだませることばを。だれかをおとしいれるちえを。だれかからうばいつくすどんよくさを。そのはてにえられるものを」 ……いつの間にか、忘れてしまった、本当の欲望を。 「げすといわれようが、くずといわれようが、ゆっくりごろしといわれようが、あきらめたり、おれたりすることのないこころのつよさを」 ……己がゆっくりであるが故の、本質というものを。 「じぶんでてにいれたい。じぶんでみつけたい。じぶんでうばいたい。せーががほしいから。ほしくてほしくてたまらないから」 「まんぞく、なっとく、だきょう、そんなものはいらない。そうすれば、それいじょうなにかをてにれられないから」 「いまいじょうのゆっくりを。それいじょうのゆっくりを。はるかうえのゆっくりを。さいこうのゆっくりを。……ほんとうのゆっくりを」 「せーががほしいとおもったものは、ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ……。……ぜんぶ、てにいれたい……」 「……それが、せーがののぞみです」 「よしか。せーがたちは、すべてをてにいれにいくのですよ」 「ごしゅじん……」 「そして、あのどすまりさにみせてやりましょう」 せーがはそう言いながら、己が逃げた来た山の方角を一点に見つめた。 ……その目には、揺るぎない決意が秘められていた。 「いったいどっちが、ほんとうによくぶかくて、あきらめがわるいのかを」 続く
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4555.html
『続・邪悪なる者達・転』 20KB 群れ ゲス ドスまりさ 希少種 独自設定 26作品目、その3です。 ……数日後。 「……とうとうもどってきましたね」 「うぉー……、なんだか、きんちょうするぞー」 あれからせーがとよしかは、再び山を越え谷を越え、かつて自分が頂点に立っていた山へと戻った。 途中でよしかがれみりゃにさらわれかけたり、あんよを滑らせて坂から転げ落ちたり、谷から落下しかけたりしたが、なんとか無事だった。 「さて……。いまこのしゅんかんから、せーがたちのぎゃくしゅうがはじまるわけです」 「おー!」 「ですが、むこうはどすまりさと、たくさんのまりさたち。こっちはせーがとよしかのみ。……このままでははなしになりません」 「うあ、あ……」 「まずは、じょうほうからあつめましょう。むれのばしょや、てきのかずなど……、しらなくてはいけないことがたくさんあります」 「お、おぉ……」 「だいじょうぶですよ。かずをかぞえたりするのは、せーががやりますから」 「おー!」 「さぁ……、どすまりさのむれをさがしましょう。たぶん、やまのあちこちにまりさたちがいるはずですから、みつからないようにいきましょう」 「おー!!」 「こえをちいさくしましょうね」 「わかったー!!」 「ちいさくなってない!!」 ……少々の不安要素を残しながらも、せーがとよしかは、目立たないようにドスまりさの群れを探し始めた。 ……欲深い敗北者の、復讐劇の幕が開ける。 続・邪悪なる者達・転 作:ぺけぽん ……数時間後。 「ふむ……、あれがどすまりさのむれですか……」 「まりさたちがたくさんいるぞー」 身を隠しながら山のあちこちを探したせーがとよしかは、ドスまりさの群れ……、しっこくのけものを見つける事が出来た。 二匹は今、茂みの奥から群れの様子を伺っていたのだ。 「おまえら!きょうこそはけっせんのひなのぜ!!あいつらにめにものをみせてやるのぜ!!」 「「「「ゆっゆっおー!!」」」」 「てきぜんとうぼうはゆるさないのぜ!!にげるやつは、このどすのむれにひつようはないのぜ!!」 「「「「ゆっゆっおー!!」」」」 二匹の視線の先には、あのドスまりさと、ドスまりさの群れのまりさ達がいた。 どうやら、二匹の存在には気付いていないようだった。 ドスまりさは今、自分の前にいる群れのまりさ達に、何やら激を飛ばしていた。 「どすまりさ……」 せーがは数日前の出来事を思い出していた。 自分の築き上げたものが、このドスまりさによって全て崩壊してしまった。 「どすまりさ……。……こんどは、せーがのばんですよ……」 せーがのその呟きには、揺るぎない決意が込められていた。 「さぁ、いくのぜ、おまえたち!!どすについてくるのぜっ!!」 「「「「ゆっゆっおー!!」」」」 ドスまりさはそう言って、どこかへと出かけ始めた。 ドスまりさの後ろを、数十匹のまりさ達が付いて行く。 「ごしゅじーん、あのどすまりさ、どこへいくんだろう?」 「ふむ……、きになりますね。こっそりあとをつけましょう」 「わかったぞー」 二匹はドスまりさ達に見つからないように、こっそり後をつける事にした。 「しかし……」 「おぉ?どうしたんだ?ごしゅじん」 「このまえみたときよりも、むれのまりさのかずがふえていますね……」 せーがの言う通り、群れのまりさ達の数は数日前と比べ、倍以上は増えていた。 先程、ドスまりさ達に付いて行ったまりさ達以外にも、群れで留守番をしているまりさ達がいた。 留守番をしているまりさ達の数を数えても、十分な位の数だった。 恐らく、これから先も増え続けるだろう。 「どすまりさもやっかいですが、あのかずのまりさたちもおなじようにやっかいですね……」 「ごしゅじーん、あいつら、そんなにふえたのかー?」 「あなたは、さんいじょうのかずはかぞえられないですからねぇ。あなたにしてみれば、どっちもおなじですか」 「うへへー、てれるぞー」 「ほめてません。……まぁ、どうするかはあとでかんがえましょう。いまはどすまりさたちのあとをおいかけるだけです」 「おー」 そんなこんなで、二匹がドスまりさ達の追跡を始めてから、数分後……。 「おい!!そこのれいぱーども!!どすまりささまのおでましなのぜ!!」 ドスまりさ達は、ある場所へと辿り着いた。 「んほぉっ!?まりさっ!?」 「んほわぁっ!!でっかいまりさ!!」 「うしろにも、たくさんのまりさたちがいるわぁっ!!」 ……ドスまりさ達が目指していた場所とは、れいぱーありす達の群れだった。 ドスまりさはこのれいぱーありす達が、群れのまりさ達に悪影響を及ぼすと考え、近々排除しようと考えていた。 そして、今日決行に至ったのである。 「んほおぉぉぉぉっ!!まりさあぁぁぁぁっ!!ありすのとかいはなあいにこたえてくれたのねえぇぇぇぇっ!?」 ドスまりさ達の来訪に、れいぱーありす達の長、くいーんありすは興奮を隠さなかった。 「じょうだんいうんじゃないのぜっ!!きょうはどすまりささまみずから、おまえらをぶちころしにやってきたのぜっ!!」 「ひどいっ……!!ひどいわあぁぁぁぁっ!?ありすたちが、なにをしたのおぉぉぉぉっ!?」 「むれのまりさたちをれいぽぅしておいて、なにをいうのぜっ!!おまえら!!あのれいぱーどもをぶっころすのぜっ!!」 「う……」 「ど、どす……、どうしても、いかなくちゃいけないのぜ?」 群れのまりさ達は、目の前のれいぱーありすの前に怖気づいていた。 まりさ達にとって、れいぱーありすはトラウマものなのだろう。 「なきごとをいうんじゃないのぜっ!!おまえら、このままずっとこいつらにれいぽぅされつづけるのかぜ!?」 「そ、それは……」 「ここであいつらをころさなければ、あいつらはおまえらをれいぽぅしつづけるのぜ!!」 「そ、それはいやなのぜ……」 「だったらころすのぜ!!ふもとのかわのれんちゅうをころしたように、あいつらもころすのぜ!!」 「う……、や、やってやるのぜっ!!」 「れ、れいぱーども!かくごするのぜ!」 ドスまりさの言葉により、群れのまりさ達の戦意は少しだが湧いた。 ……ここで逃げれば、後でドスまりさに殺されてしまうという事もあるのだが。 「みんなあぁぁぁぁっ!!えんりょはいらないわあぁぁぁぁっ!!このまりさたちに、とかいはあいをおしえてあげなさあぁぁぁぁいっ!!」 「「「「んほおぉぉぉぉっ!!」」」」 「「「「まりさあぁぁぁぁっ!!」」」」 「「「「すっきりいぃぃぃぃっ!!」」」」 くいーんありすの号令により、れいぱーありす達はヨダレやら何やら分からない液体を口やぺにぺにから流しながら突っ込んで来た。 「おまえらっ!!いまこそれいぱーどもをつぶしてやるのぜっ!!」 「「「「ゆ……、ゆわあぁぁぁぁっ!!」」」」 「「「「い、いくのぜえっ!!」」」」 「「「「おらあぁぁぁぁっ!!」」」」 ……こうして、ドスまりさ達とれいぱーありす達の戦いが始まった。 「んほわあぁぁぁぁっ!!すっきりいぃぃぃぃっ!!」 「やべでえぇぇぇぇっ!!にんっしんっしたくないぃぃぃぃっ!!」 「しねえぇぇぇぇっ!!」 「んぎょわあぁぁぁぁっ!?ありすのぺにぺにがあぁぁぁぁっ!?」 あるゆっくりは犯し、あるゆっくりは殺し、色々な意味で餡子やクリームが飛び交っていた。 「おー!いいぞ!れいぱー!やっちまえー!」 「よしか、こえがおおきいです!」 ……せーがとよしかは、近くの木の陰から、その戦いの様子を伺っていた。 「ふふ……、これはつごうがいいですね……」 「これはきっと、れいぱーたちのかちだな!なんか、いろんないみですげぇもん!」 「いいえ。これはれいぱーありすたちのまけです。どすまりさたちのほうががずがおおいですし、なによりどすまりさがいますから」 「あー……、そうなのかー……」 「ですが、これはなかなかおいしいですね。さいさきのいいはじまりですよ」 「え?なにかおいしいたべものがあるの?」 「……」 二匹がそんな会話を交わしている間に、戦いの決着はすぐ目前まで来ていた。 「ん……、ほぉ……」 「もっど……、すっき、り……」 まりさ達の必死の攻撃を前に、れいぱーありす達のほとんどは潰され、永遠にゆっくりしていた。 「み、みんなあぁぁぁぁっ!?」 「れいぱーのおやだま!のこるはおまえだけなのぜっ!!」 「ん、んほおぉぉぉぉっ!!まりさあぁぁぁぁっ!!」 「どすすぱーくっ!!」 「んぎょほわあぁぁぁぁっ!?」 残ったくいーんありすも、ドスまりさのどすすぱーくにより顔の半分を撃ち抜かれ、れいぱーありす達の後を追う事となった。 結果的にドスまりさの方にも数匹被害が出たが、ドスまりさ達の大勝だった。 「ゆっへっへ!!さぁ、おまえたち!かえるのぜ!!」 「「「「ゆっゆっおー……」」」」 疲れ果てたまりさ達を従え、邪魔者をまた一つ潰したドスまりさは意気揚々と群れへと引き返して行った。 ……ドスまりさ達の姿が完全に見えなくなり、せーがとよしかは木の陰から出て来た。 「ふふふ……。さっそくゆんしーのざいりょうがてにはいりましたよ、よしか」 「おぉ!なかまがふえるぞ!やったね!ごしゅじん!」 「おい、やめなさい」 苦労せずにゆんしーの材料を手に入れる事となり、二匹はれいぱーありす達の死骸を見て喜んでいた。 「あ、ごしゅじん、このでけぇありすはどうするんだー?」 よしかの言う通り、死骸はれいぱーありすだけでなく、くいーんありすのものもあった。 体格はドスまりさ並みの為、ゆんしーに出来れば役に立つだろう。 ……だが。 「……かおのはんぶんがふっとんでいますね。なおすには、このれいぱーありすたちのからだをつかわなければ……」 くいーんありすの顔の損傷が激しく、ゆんしーにするなら他のれいぱーありす達の皮やクリームを使う必要があった。 しかもサイズがサイズなだけに、れいぱーありす達の半分はゆんしーにする事を諦めなければいけない。 「うーん……、しかたがありません。このくいーんありすをなおしましょう。こっちのほうがやくにたちますし」 せーがはくいーんありすの体を修復し、ゆんしーにする事にした。 「ですが、これだけではまだまだたりません。もっとゆんしーがひつようです。なにか、いいほうほうはないでしょうか……」 「あ、ごしゅじんごしゅじん、さっきどすまりさが、こぶんのまりさたちに、ふもとのかわがなんとかっていってたぞー」 「あぁ、そうですね。どすまりさのはなしだと、ふもとのかわで、ゆっくりたちをころしたようですが……」 「いってみよう!ごしゅじん!」 「そうですね、そうしましょう。そこにしたいがあるのなら、いまはそこにいくだけです」 二匹はその情報を頼りに、麓の川へ行くべく山を降りるのだった……。 ……数十分後。 「ふもとについたぞ!」 「……ここにくるのも、ひさびさですね」 二匹は山の麓に辿り着いた。 「よしか、おぼえていますか?むかし、やまのふもとにある、にんげんたちのむらをのっとろうとしたことがありますよね?」 「おぉ、そうだったな!でも、たしか、あきらめたんだよな?」 「えぇ……。いまは、あのむらはどうなっていますかね……」 せーがはそう言って、かつて自分が人間達から奪おうとした村のある方角を懐かしい眼差しで眺めていた。 「だったらごしゅじん、こんどにんげんのむらにあそびにいけばいいとおもうぞ!」 「できるわけないでしょう?せーがはさんざん、あのむらでぼうがいかつどうをおこなったのですから、めのかたきにされています」 「おぉ!そういえばそうだった!あのむらでは、きっとごしゅじんはゆうめいになっているぞ!」 「えぇ、えぇ。そうでしょう、そうでしょう」 「きっと、ずるがしこくて、あくどくて、いがいとうたれよわくて、ほんとうはやさしいゆっくりとして、かたりつがれているぞ!」 「……ん?なんかひっかかりますが、まぁ、いいでしょう。よしか、かわのほうへいきますよ」 「おー!」 二匹は川の方へと向かい、ゆんしーに出来そうなゆっくりの死骸を探し始めた。 その最中、せーがはある事に気付いた。 「あら……?このかわ、こんなによごれていましたっけ?」 「おぉ、ほんとうだ!まえはけっこうきれいだったのに!」 川が以前見た時と比べ、茶色く汚れていたのだ。 数ヶ月前までは、川の底が見える位に透き通っていて綺麗な川だったのだが、今ではその面影すら感じられない位に汚かった。 「もしかして、ゆっくりのしがいのあんこでよごれてしまったのでしょうか?」 「うおぉ、もしかしたら、とけてなくなっちゃったのかも!」 「うーん……、そうかもしれませんね。もうすこしさがしてみましょう」 この川の付近には、死骸はもうないのではないかという不安を抱えながら、二匹は死骸探しを続けた。 ……すると。 「……ぁ。……ぱぁ……」 どこからか、ゆっくりの声が聞こえてきたのだ。 その声色から、どうやら泣いているようだ。 「むこうのほうからきこえますね。よしか、いってみましょう」 「おー!」 二匹は声の聞こえる方へと急いだ。 「かっぱっぱぁ……。かっぱっぱぁ……。どこにあるのぉ……?」 ……そこには、一匹のゆっくりが河原で泣きながら何かを探していた。 「あのゆっくりは……。もしかして、ゆっくりにとりでしょうか?」 「しっているのか?ごしゅじん」 「はい。みずべにすんでいるゆっくりです。よくげんきにかっぱかっぱいっているんですが……。ここににとりはいないはずですが」 せーがの記憶が正しければ、この川の付近には、ゆっくりにとりは住んでいなかった。 「さいきんここにやってきたのかな?」 「とりあえず、はなしかけてみましょうか」 とりあえず、二匹はにとりに話しかけてみる事にした。 「あの、どうなされました?」 「こんにちはー!」 「ひゅいっ!?な、なに!?なんなの!?」 二匹の存在に全く気付いていなかったにとりは驚きの表情を隠さなかった。 ……いや、驚き以外に、必要以上の恐怖が現れていた。 「あぁ、ごめんなさい。えーと、せーがたちは……」 「よしかたちは、このやまにひっこしてきたんだぞ!よろしく!」 「え?あぁ、はい。ひっこしのあいさつにきたんですよ。はじめまして」 よしかの嘘に合わせながら、せーがはにとりを落ち着かせる事にした。 「……あのどすまりさのなかまじゃないの?」 「はい。そうですよ。……あの、つかぬことをおききしますが……」 「このかわで、ゆっくりがころされなかったかー?」 「ちょ、よしか……、たんとうちょくにゅうすぎますよ」 「み、みんなは……、みんなは……。かっぱっぱあぁぁぁぁ……!」 にとりはわんわん泣き出してしまった。 (これは……。どんぴしゃですね) せーがは内心そう感じていた。 恐らく、このにとりはドスまりさに殺されたゆっくり達の生き残りなのだろう。 でなければ、こんな反応は見せない。 (こうもなかれては、はなしをきけませんね。すこしおちつかせましょう) せーがはさらに話を聞くべく、にとりを落ち着かせるのだった。 ……数分後、ようやくにとりはある程度落ち着いた。 そして、ここ数日で何があったのかポツリ、ポツリと話し始めた。 「……にとりたちは、さいきんこのかわにひっこしてきたんだよ……」 にとりの話だと、このにとり以外にも、二、三十匹程のゆっくりにとりがいたらしい。 にとり達は自分達に合った水辺の住処を探しており、長い旅の末、ようやくこの川を見つけたそうだ。 「このかわで、おもいおもいにゆっくりしていたんだよ。……でも、なんにちかまえに、あのどすまりさが……」 ……せーが達がこの山から離れていた時に、ドスまりさの群れのまりさがこの川にやって来た。 そして、『この川はまりさ達の物にするから、お前達は出て行け』と言ったのだ。 にとり達は、せっかく見つけたゆっくりぷれいすなのだから、出て行くのは嫌だと返した。 すると、使いのまりさはにとり達を川を一人占めにするゲスと罵った。 にとり達は別に川を一人占めにしている訳でなく、ただこの川に住んでいるだった。 だから、この川を使いたいならそれを止める権利は無いし、一緒にゆっくりした方が良いとも言ったが、使いのまりさは全く聞く耳持たずだった。 ……結局、一方的な交渉は決裂し、つい二、三日前にドスまりさと群れのまりさ達がやって来て、にとり達を虐殺し始めたのだ。 「にとりはなんとかにげたけど……、ほかのみんなは……。う、うぅ……」 「そうですか……」 「あのどすまりさ、このかわにどすすぱーくをうちこんで、かわをめちゃくちゃにして……」 「……」 「こんなよごれたかわは、もう、いらないっていって……、かえっちゃったよ……」 「……」 「そりゃあ、こっちもやりかえしたよ。むこうもなんびきかしんじゃったよ。……でも、こんなの、ひどいよぉ……」 「うおぉ……。ごしゅじん、なける、なけるぞぉ……」 「……」 よしかはにとりにすっかり同情し、一緒に涙を流していた。 「それで……、あなたはここでなにをしているんですか?」 「……おねえちゃんのぼうしをさがしているんだよ。おねえちゃんのしたいはみつからないけど、せめて、ぼうしだけは……」 「そのぼうしって、いったいどんなんだー?」 「……にとりがかぶっているぼうしとおなじだよ」 「おぉ!それはそうか!」 「……そういえば、ここにくるとちゅうのみちで、みどりいろのなにかをみかけました」 「えっ!?どこ!?あんないして!おねがい!」 にとりに懇願されたせーがは、その緑色の何かのある場所へと案内した。 「あ……、あぁ……。これ、これだよ……。おねえちゃんのぼうしだよ……」 それは、にとりの姉の帽子だったようだ。 「にとりさん。おなかまのしがいは、どうなりましたか?」 「にとりがあつめられるだけあつめて、さっきのばしょに、うめたよ。いしをつみあげて、おはかをつくったよ……」 「そうですか。……それで、あなたはこれからどうなされるのです?」 「……もう、あそこにはすめないよ。……にとりは、しずかにくらせるばしょをさがすよ。……ありがとう。ぼうしをみつけてくれて……」 にとりはそう言って、フラフラと去って行った。 「……さて。よしか、いきますよ」 「お、おぅ……」 にとりの後ろ姿を見送ったせーがとよしかは、先程にとりがいた場所へと戻った。 「ここですね。にとりさんがいっていたおはかとは……」 二匹の目の前には、土が盛り上がっていて、石が何個か置かれている、出来合いの墓らしきものがあった。 「さぁ、ほりますよ、よしか」 「おぅ……」 二匹は顔を土まみれにしながら、土を掘り返し始めた。 ……十分程は経っただろうか。 土の中から、にとりの仲間達と思われる死骸が出た。 「……ふふ……」 「……ごしゅじん?」 せーがはどこか乾いているような笑みを浮かべた。 「せーがたちは、ほんとうにゆるされないことをやっていますね……」 「……」 「このすがた、あのにとりさんにみられたら、ぜったいにころされていますね……」 「……そうだな」 「せーがも、あのどすまりさも、ほかのゆっくりからみれば、どうしようもないくずなのでしょうね」 「ごしゅじん……」 「ですが、せーがは、せーがのいきかたをこうかいしません。それが、せーがののぞむみち。それが、せーがのいきるみちなのですから」 「……」 「……しかし、これだけではまだたりません。もっときょうりょくなゆんしーがほしいですね」 「……ごしゅじん。だったら、あそこにいってみないかー?」 「あそこ?」 せーがはよしかが何を言っているのか、分からなかった。 「ほら、あそこだよ。……つよいゆっくりが、しんじゃったばしょだよ。どすまりさにころされた、ゆっくりたちの……」 ……一時間後。 「なるほど。……ここのことを、すっかりわすれていましたよ。よくおぼえていましたね」 「ここのみんなには、まえにいろいろとあったからだぞー」 二匹は山の中へ戻り、ある場所へと赴いていた。 そこには、無数のゆっくり達の死骸が転がっていた。 ……それは、どれも捕食種ゆっくりの……、ゆっくりふらんのものだった。 他にもまりさ種の死骸もいくつか転がっていたが、大半がふらんの死骸だった。 よしかは覚えていたのだ。 せーがとドスまりさが対峙した時、ドスまりさが言っていた事を。 『ゆっくりふらんのむれをつぶした』……という事を。 「このふらんたちは、よしかがかりにでかけたときに、たまにあっていたんだぞー」 「そうだったのですか……」 「よしかにかぶりついてあそんでくれたり、ほうりなげてたかいたかいしてくれたり、おそらをとんでふらんたちのすみかにしょうたいしてくれたり……」 (それは、あそんでくれたというんでしょうか?……よく、いきてかえってこれましたね。いちどしんでいて、まずくてたべられないからですかね?) よしかの話に色々と疑問を感じたせーがだったが、敢えて聞かない事にした。 「まさか、こんなふうにしんじゃうとはおもわなかったぞー……」 ふらん達の死骸を眺め、よしかは寂しそうに言った。 「そういうものですよ、よしか。……ちからをもっていても、それいじょうのちからをもつゆっくりがあらわれる……。このまえのときのように……」 「……」 「ですが、このようにしがいがのこっていたのはよかったです。さっそくゆんしーにしましょう」 「……おぅ!」 気持ちを切り替え、ふらん達の死骸をゆんしーにしようとした、その時。 「うー……、……そこにいるのは、だれだ?」 「「!」」 突然、近くの木の方から声が聞こえて来た。 見ると、一匹の胴付きのゆっくりふらんが、息絶え絶えに木にもたれかかっていた。 ……そのふらんの両足は千切れかかっており、羽も片方は完全に折れていた。 「あなたは……。このふらんたちのいきのこりですか?」 「ごしゅじん!このふらん、ふらんたちのおさだぞ!ふらん!よしかだぞ!おぼえているか!」 「う……、おまえは……。……そういえば、なんかいか、ここにつれてこられたな……」 「そのせつはどうも。うちのよしかと、いろいろあそんでくれたそうで……。……だいじょうぶですか?」 せーがは長ふらんにそんな言葉をかけたが、明らかに大丈夫そうではなかった。 「うー……。……なにしにきた」 「どすまりさにやられたんでしょう?……どすまりさからききました」 「……わらいにきたのか?」 「いいえ。ちからをかりに。……ふらんさん。ほかのふらんさんたちのしがいを、ゆずってください」 「……」 「あなたのこころのなかには、どすまりさにたいするにくしみであふれているのでしょう?……それは、せーがもおなじです」 「……みんなをどうするきだ」 「もういちどよみがえらせて、どすまりさとたたかうせんりょくにします」 「……おまえ、みんなをりようするきか……!」 長ふらんは憎悪の眼差しで、せーがを睨みつけた。 「はい。せーががいちばんきらうのは、つかえるものをつかわないことです」 「……」 「あなたのおなかまがもっているきばも、つめも、はねも、せーがにはないものです。せーがのもっていないちからです」 「……だから、じぶんのものにすると……?」 「はい。そのきばで、すべてをかみちぎるために。そのつめで、すべてをえぐるために。そのはねで、すべてをおいつめるために」 「……あのどすまりさを……、ころすきなんだな?」 「はい。せーがはあきらめのわるさだけがとりえなので」 「……ふ……、あはは……。……いいよ、それで。……むれのみんなも、きっと、ふくしゅうしたいだろうから……」 「ありがとうございます。……みたところ、あなたも、ながくないようで」 「……ころしたまりさのしがいをたべて、いきながらえていたけど……。……もう、だめだな……」 そう言った長ふらんの口元から、デロリと餡子が流れ出す。 「……ふらんがしんだら、ふらんも、おまえのどうぐになるのか?」 「はい。いったでしょう?つかえるものをつかわないことは、いちばんきらいなことなので」 「あ……、あはは……。げぶぅっ……!!……ぐ……、ほ……ほんとうに、おまえは……、げ……、す、だ……な…………」 そう言い残し、ふらんは口から大量の餡子を吐き出して、事切れた。 ……その表情は、安らかなものだった。 「よしか」 「……ほいよ」 「これで、じゅんびはととのいました」 「……みじかいようで、ながかったなー」 「えぇ。……そして、これからが、ほんとうのはじまりです。……あしたのそうちょう、どすまりさのむれにせんせんふこくをします」 せーがは誓う。 己の欲望に忠実に従う事に。 今はただ、憎きドスまりさを倒す為に。 その復讐の、欲望の為に。 全てを賭す事に。 「まっていなさい。どすまりさ」 続く
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/104.html
anko4505 続・邪悪なる者達・転 ※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。 『続・邪悪なる者達・転』 20KB 群れ ゲス ドスまりさ 希少種 独自設定 26作品目、その3です。 ……数日後。 「……とうとうもどってきましたね」 「うぉー……、なんだか、きんちょうするぞー」 あれからせーがとよしかは、再び山を越え谷を越え、かつて自分が頂点に立っていた山へと戻った。 途中でよしかがれみりゃにさらわれかけたり、あんよを滑らせて坂から転げ落ちたり、谷から落下しかけたりしたが、なんとか無事だった。 「さて……。いまこのしゅんかんから、せーがたちのぎゃくしゅうがはじまるわけです」 「おー!」 「ですが、むこうはどすまりさと、たくさんのまりさたち。こっちはせーがとよしかのみ。……このままでははなしになりません」 「うあ、あ……」 「まずは、じょうほうからあつめましょう。むれのばしょや、てきのかずなど……、しらなくてはいけないことがたくさんあります」 「お、おぉ……」 「だいじょうぶですよ。かずをかぞえたりするのは、せーががやりますから」 「おー!」 「さぁ……、どすまりさのむれをさがしましょう。たぶん、やまのあちこちにまりさたちがいるはずですから、みつからないようにいきましょう」 「おー!!」 「こえをちいさくしましょうね」 「わかったー!!」 「ちいさくなってない!!」 ……少々の不安要素を残しながらも、せーがとよしかは、目立たないようにドスまりさの群れを探し始めた。 ……欲深い敗北者の、復讐劇の幕が開ける。 続・邪悪なる者達・転 作:ぺけぽん ……数時間後。 「ふむ……、あれがどすまりさのむれですか……」 「まりさたちがたくさんいるぞー」 身を隠しながら山のあちこちを探したせーがとよしかは、ドスまりさの群れ……、しっこくのけものを見つける事が出来た。 二匹は今、茂みの奥から群れの様子を伺っていたのだ。 「おまえら!きょうこそはけっせんのひなのぜ!!あいつらにめにものをみせてやるのぜ!!」 「「「「ゆっゆっおー!!」」」」 「てきぜんとうぼうはゆるさないのぜ!!にげるやつは、このどすのむれにひつようはないのぜ!!」 「「「「ゆっゆっおー!!」」」」 二匹の視線の先には、あのドスまりさと、ドスまりさの群れのまりさ達がいた。 どうやら、二匹の存在には気付いていないようだった。 ドスまりさは今、自分の前にいる群れのまりさ達に、何やら激を飛ばしていた。 「どすまりさ……」 せーがは数日前の出来事を思い出していた。 自分の築き上げたものが、このドスまりさによって全て崩壊してしまった。 「どすまりさ……。……こんどは、せーがのばんですよ……」 せーがのその呟きには、揺るぎない決意が込められていた。 「さぁ、いくのぜ、おまえたち!!どすについてくるのぜっ!!」 「「「「ゆっゆっおー!!」」」」 ドスまりさはそう言って、どこかへと出かけ始めた。 ドスまりさの後ろを、数十匹のまりさ達が付いて行く。 「ごしゅじーん、あのどすまりさ、どこへいくんだろう?」 「ふむ……、きになりますね。こっそりあとをつけましょう」 「わかったぞー」 二匹はドスまりさ達に見つからないように、こっそり後をつける事にした。 「しかし……」 「おぉ?どうしたんだ?ごしゅじん」 「このまえみたときよりも、むれのまりさのかずがふえていますね……」 せーがの言う通り、群れのまりさ達の数は数日前と比べ、倍以上は増えていた。 先程、ドスまりさ達に付いて行ったまりさ達以外にも、群れで留守番をしているまりさ達がいた。 留守番をしているまりさ達の数を数えても、十分な位の数だった。 恐らく、これから先も増え続けるだろう。 「どすまりさもやっかいですが、あのかずのまりさたちもおなじようにやっかいですね……」 「ごしゅじーん、あいつら、そんなにふえたのかー?」 「あなたは、さんいじょうのかずはかぞえられないですからねぇ。あなたにしてみれば、どっちもおなじですか」 「うへへー、てれるぞー」 「ほめてません。……まぁ、どうするかはあとでかんがえましょう。いまはどすまりさたちのあとをおいかけるだけです」 「おー」 そんなこんなで、二匹がドスまりさ達の追跡を始めてから、数分後……。 「おい!!そこのれいぱーども!!どすまりささまのおでましなのぜ!!」 ドスまりさ達は、ある場所へと辿り着いた。 「んほぉっ!?まりさっ!?」 「んほわぁっ!!でっかいまりさ!!」 「うしろにも、たくさんのまりさたちがいるわぁっ!!」 ……ドスまりさ達が目指していた場所とは、れいぱーありす達の群れだった。 ドスまりさはこのれいぱーありす達が、群れのまりさ達に悪影響を及ぼすと考え、近々排除しようと考えていた。 そして、今日決行に至ったのである。 「んほおぉぉぉぉっ!!まりさあぁぁぁぁっ!!ありすのとかいはなあいにこたえてくれたのねえぇぇぇぇっ!?」 ドスまりさ達の来訪に、れいぱーありす達の長、くいーんありすは興奮を隠さなかった。 「じょうだんいうんじゃないのぜっ!!きょうはどすまりささまみずから、おまえらをぶちころしにやってきたのぜっ!!」 「ひどいっ……!!ひどいわあぁぁぁぁっ!?ありすたちが、なにをしたのおぉぉぉぉっ!?」 「むれのまりさたちをれいぽぅしておいて、なにをいうのぜっ!!おまえら!!あのれいぱーどもをぶっころすのぜっ!!」 「う……」 「ど、どす……、どうしても、いかなくちゃいけないのぜ?」 群れのまりさ達は、目の前のれいぱーありすの前に怖気づいていた。 まりさ達にとって、れいぱーありすはトラウマものなのだろう。 「なきごとをいうんじゃないのぜっ!!おまえら、このままずっとこいつらにれいぽぅされつづけるのかぜ!?」 「そ、それは……」 「ここであいつらをころさなければ、あいつらはおまえらをれいぽぅしつづけるのぜ!!」 「そ、それはいやなのぜ……」 「だったらころすのぜ!!ふもとのかわのれんちゅうをころしたように、あいつらもころすのぜ!!」 「う……、や、やってやるのぜっ!!」 「れ、れいぱーども!かくごするのぜ!」 ドスまりさの言葉により、群れのまりさ達の戦意は少しだが湧いた。 ……ここで逃げれば、後でドスまりさに殺されてしまうという事もあるのだが。 「みんなあぁぁぁぁっ!!えんりょはいらないわあぁぁぁぁっ!!このまりさたちに、とかいはあいをおしえてあげなさあぁぁぁぁいっ!!」 「「「「んほおぉぉぉぉっ!!」」」」 「「「「まりさあぁぁぁぁっ!!」」」」 「「「「すっきりいぃぃぃぃっ!!」」」」 くいーんありすの号令により、れいぱーありす達はヨダレやら何やら分からない液体を口やぺにぺにから流しながら突っ込んで来た。 「おまえらっ!!いまこそれいぱーどもをつぶしてやるのぜっ!!」 「「「「ゆ……、ゆわあぁぁぁぁっ!!」」」」 「「「「い、いくのぜえっ!!」」」」 「「「「おらあぁぁぁぁっ!!」」」」 ……こうして、ドスまりさ達とれいぱーありす達の戦いが始まった。 「んほわあぁぁぁぁっ!!すっきりいぃぃぃぃっ!!」 「やべでえぇぇぇぇっ!!にんっしんっしたくないぃぃぃぃっ!!」 「しねえぇぇぇぇっ!!」 「んぎょわあぁぁぁぁっ!?ありすのぺにぺにがあぁぁぁぁっ!?」 あるゆっくりは犯し、あるゆっくりは殺し、色々な意味で餡子やクリームが飛び交っていた。 「おー!いいぞ!れいぱー!やっちまえー!」 「よしか、こえがおおきいです!」 ……せーがとよしかは、近くの木の陰から、その戦いの様子を伺っていた。 「ふふ……、これはつごうがいいですね……」 「これはきっと、れいぱーたちのかちだな!なんか、いろんないみですげぇもん!」 「いいえ。これはれいぱーありすたちのまけです。どすまりさたちのほうががずがおおいですし、なによりどすまりさがいますから」 「あー……、そうなのかー……」 「ですが、これはなかなかおいしいですね。さいさきのいいはじまりですよ」 「え?なにかおいしいたべものがあるの?」 「……」 二匹がそんな会話を交わしている間に、戦いの決着はすぐ目前まで来ていた。 「ん……、ほぉ……」 「もっど……、すっき、り……」 まりさ達の必死の攻撃を前に、れいぱーありす達のほとんどは潰され、永遠にゆっくりしていた。 「み、みんなあぁぁぁぁっ!?」 「れいぱーのおやだま!のこるはおまえだけなのぜっ!!」 「ん、んほおぉぉぉぉっ!!まりさあぁぁぁぁっ!!」 「どすすぱーくっ!!」 「んぎょほわあぁぁぁぁっ!?」 残ったくいーんありすも、ドスまりさのどすすぱーくにより顔の半分を撃ち抜かれ、れいぱーありす達の後を追う事となった。 結果的にドスまりさの方にも数匹被害が出たが、ドスまりさ達の大勝だった。 「ゆっへっへ!!さぁ、おまえたち!かえるのぜ!!」 「「「「ゆっゆっおー……」」」」 疲れ果てたまりさ達を従え、邪魔者をまた一つ潰したドスまりさは意気揚々と群れへと引き返して行った。 ……ドスまりさ達の姿が完全に見えなくなり、せーがとよしかは木の陰から出て来た。 「ふふふ……。さっそくゆんしーのざいりょうがてにはいりましたよ、よしか」 「おぉ!なかまがふえるぞ!やったね!ごしゅじん!」 「おい、やめなさい」 苦労せずにゆんしーの材料を手に入れる事となり、二匹はれいぱーありす達の死骸を見て喜んでいた。 「あ、ごしゅじん、このでけぇありすはどうするんだー?」 よしかの言う通り、死骸はれいぱーありすだけでなく、くいーんありすのものもあった。 体格はドスまりさ並みの為、ゆんしーに出来れば役に立つだろう。 ……だが。 「……かおのはんぶんがふっとんでいますね。なおすには、このれいぱーありすたちのからだをつかわなければ……」 くいーんありすの顔の損傷が激しく、ゆんしーにするなら他のれいぱーありす達の皮やクリームを使う必要があった。 しかもサイズがサイズなだけに、れいぱーありす達の半分はゆんしーにする事を諦めなければいけない。 「うーん……、しかたがありません。このくいーんありすをなおしましょう。こっちのほうがやくにたちますし」 せーがはくいーんありすの体を修復し、ゆんしーにする事にした。 「ですが、これだけではまだまだたりません。もっとゆんしーがひつようです。なにか、いいほうほうはないでしょうか……」 「あ、ごしゅじんごしゅじん、さっきどすまりさが、こぶんのまりさたちに、ふもとのかわがなんとかっていってたぞー」 「あぁ、そうですね。どすまりさのはなしだと、ふもとのかわで、ゆっくりたちをころしたようですが……」 「いってみよう!ごしゅじん!」 「そうですね、そうしましょう。そこにしたいがあるのなら、いまはそこにいくだけです」 二匹はその情報を頼りに、麓の川へ行くべく山を降りるのだった……。 ……数十分後。 「ふもとについたぞ!」 「……ここにくるのも、ひさびさですね」 二匹は山の麓に辿り着いた。 「よしか、おぼえていますか?むかし、やまのふもとにある、にんげんたちのむらをのっとろうとしたことがありますよね?」 「おぉ、そうだったな!でも、たしか、あきらめたんだよな?」 「えぇ……。いまは、あのむらはどうなっていますかね……」 せーがはそう言って、かつて自分が人間達から奪おうとした村のある方角を懐かしい眼差しで眺めていた。 「だったらごしゅじん、こんどにんげんのむらにあそびにいけばいいとおもうぞ!」 「できるわけないでしょう?せーがはさんざん、あのむらでぼうがいかつどうをおこなったのですから、めのかたきにされています」 「おぉ!そういえばそうだった!あのむらでは、きっとごしゅじんはゆうめいになっているぞ!」 「えぇ、えぇ。そうでしょう、そうでしょう」 「きっと、ずるがしこくて、あくどくて、いがいとうたれよわくて、ほんとうはやさしいゆっくりとして、かたりつがれているぞ!」 「……ん?なんかひっかかりますが、まぁ、いいでしょう。よしか、かわのほうへいきますよ」 「おー!」 二匹は川の方へと向かい、ゆんしーに出来そうなゆっくりの死骸を探し始めた。 その最中、せーがはある事に気付いた。 「あら……?このかわ、こんなによごれていましたっけ?」 「おぉ、ほんとうだ!まえはけっこうきれいだったのに!」 川が以前見た時と比べ、茶色く汚れていたのだ。 数ヶ月前までは、川の底が見える位に透き通っていて綺麗な川だったのだが、今ではその面影すら感じられない位に汚かった。 「もしかして、ゆっくりのしがいのあんこでよごれてしまったのでしょうか?」 「うおぉ、もしかしたら、とけてなくなっちゃったのかも!」 「うーん……、そうかもしれませんね。もうすこしさがしてみましょう」 この川の付近には、死骸はもうないのではないかという不安を抱えながら、二匹は死骸探しを続けた。 ……すると。 「……ぁ。……ぱぁ……」 どこからか、ゆっくりの声が聞こえてきたのだ。 その声色から、どうやら泣いているようだ。 「むこうのほうからきこえますね。よしか、いってみましょう」 「おー!」 二匹は声の聞こえる方へと急いだ。 「かっぱっぱぁ……。かっぱっぱぁ……。どこにあるのぉ……?」 ……そこには、一匹のゆっくりが河原で泣きながら何かを探していた。 「あのゆっくりは……。もしかして、ゆっくりにとりでしょうか?」 「しっているのか?ごしゅじん」 「はい。みずべにすんでいるゆっくりです。よくげんきにかっぱかっぱいっているんですが……。ここににとりはいないはずですが」 せーがの記憶が正しければ、この川の付近には、ゆっくりにとりは住んでいなかった。 「さいきんここにやってきたのかな?」 「とりあえず、はなしかけてみましょうか」 とりあえず、二匹はにとりに話しかけてみる事にした。 「あの、どうなされました?」 「こんにちはー!」 「ひゅいっ!?な、なに!?なんなの!?」 二匹の存在に全く気付いていなかったにとりは驚きの表情を隠さなかった。 ……いや、驚き以外に、必要以上の恐怖が現れていた。 「あぁ、ごめんなさい。えーと、せーがたちは……」 「よしかたちは、このやまにひっこしてきたんだぞ!よろしく!」 「え?あぁ、はい。ひっこしのあいさつにきたんですよ。はじめまして」 よしかの嘘に合わせながら、せーがはにとりを落ち着かせる事にした。 「……あのどすまりさのなかまじゃないの?」 「はい。そうですよ。……あの、つかぬことをおききしますが……」 「このかわで、ゆっくりがころされなかったかー?」 「ちょ、よしか……、たんとうちょくにゅうすぎますよ」 「み、みんなは……、みんなは……。かっぱっぱあぁぁぁぁ……!」 にとりはわんわん泣き出してしまった。 (これは……。どんぴしゃですね) せーがは内心そう感じていた。 恐らく、このにとりはドスまりさに殺されたゆっくり達の生き残りなのだろう。 でなければ、こんな反応は見せない。 (こうもなかれては、はなしをきけませんね。すこしおちつかせましょう) せーがはさらに話を聞くべく、にとりを落ち着かせるのだった。 ……数分後、ようやくにとりはある程度落ち着いた。 そして、ここ数日で何があったのかポツリ、ポツリと話し始めた。 「……にとりたちは、さいきんこのかわにひっこしてきたんだよ……」 にとりの話だと、このにとり以外にも、二、三十匹程のゆっくりにとりがいたらしい。 にとり達は自分達に合った水辺の住処を探しており、長い旅の末、ようやくこの川を見つけたそうだ。 「このかわで、おもいおもいにゆっくりしていたんだよ。……でも、なんにちかまえに、あのどすまりさが……」 ……せーが達がこの山から離れていた時に、ドスまりさの群れのまりさがこの川にやって来た。 そして、『この川はまりさ達の物にするから、お前達は出て行け』と言ったのだ。 にとり達は、せっかく見つけたゆっくりぷれいすなのだから、出て行くのは嫌だと返した。 すると、使いのまりさはにとり達を川を一人占めにするゲスと罵った。 にとり達は別に川を一人占めにしている訳でなく、ただこの川に住んでいるだった。 だから、この川を使いたいならそれを止める権利は無いし、一緒にゆっくりした方が良いとも言ったが、使いのまりさは全く聞く耳持たずだった。 ……結局、一方的な交渉は決裂し、つい二、三日前にドスまりさと群れのまりさ達がやって来て、にとり達を虐殺し始めたのだ。 「にとりはなんとかにげたけど……、ほかのみんなは……。う、うぅ……」 「そうですか……」 「あのどすまりさ、このかわにどすすぱーくをうちこんで、かわをめちゃくちゃにして……」 「……」 「こんなよごれたかわは、もう、いらないっていって……、かえっちゃったよ……」 「……」 「そりゃあ、こっちもやりかえしたよ。むこうもなんびきかしんじゃったよ。……でも、こんなの、ひどいよぉ……」 「うおぉ……。ごしゅじん、なける、なけるぞぉ……」 「……」 よしかはにとりにすっかり同情し、一緒に涙を流していた。 「それで……、あなたはここでなにをしているんですか?」 「……おねえちゃんのぼうしをさがしているんだよ。おねえちゃんのしたいはみつからないけど、せめて、ぼうしだけは……」 「そのぼうしって、いったいどんなんだー?」 「……にとりがかぶっているぼうしとおなじだよ」 「おぉ!それはそうか!」 「……そういえば、ここにくるとちゅうのみちで、みどりいろのなにかをみかけました」 「えっ!?どこ!?あんないして!おねがい!」 にとりに懇願されたせーがは、その緑色の何かのある場所へと案内した。 「あ……、あぁ……。これ、これだよ……。おねえちゃんのぼうしだよ……」 それは、にとりの姉の帽子だったようだ。 「にとりさん。おなかまのしがいは、どうなりましたか?」 「にとりがあつめられるだけあつめて、さっきのばしょに、うめたよ。いしをつみあげて、おはかをつくったよ……」 「そうですか。……それで、あなたはこれからどうなされるのです?」 「……もう、あそこにはすめないよ。……にとりは、しずかにくらせるばしょをさがすよ。……ありがとう。ぼうしをみつけてくれて……」 にとりはそう言って、フラフラと去って行った。 「……さて。よしか、いきますよ」 「お、おぅ……」 にとりの後ろ姿を見送ったせーがとよしかは、先程にとりがいた場所へと戻った。 「ここですね。にとりさんがいっていたおはかとは……」 二匹の目の前には、土が盛り上がっていて、石が何個か置かれている、出来合いの墓らしきものがあった。 「さぁ、ほりますよ、よしか」 「おぅ……」 二匹は顔を土まみれにしながら、土を掘り返し始めた。 ……十分程は経っただろうか。 土の中から、にとりの仲間達と思われる死骸が出た。 「……ふふ……」 「……ごしゅじん?」 せーがはどこか乾いているような笑みを浮かべた。 「せーがたちは、ほんとうにゆるされないことをやっていますね……」 「……」 「このすがた、あのにとりさんにみられたら、ぜったいにころされていますね……」 「……そうだな」 「せーがも、あのどすまりさも、ほかのゆっくりからみれば、どうしようもないくずなのでしょうね」 「ごしゅじん……」 「ですが、せーがは、せーがのいきかたをこうかいしません。それが、せーがののぞむみち。それが、せーがのいきるみちなのですから」 「……」 「……しかし、これだけではまだたりません。もっときょうりょくなゆんしーがほしいですね」 「……ごしゅじん。だったら、あそこにいってみないかー?」 「あそこ?」 せーがはよしかが何を言っているのか、分からなかった。 「ほら、あそこだよ。……つよいゆっくりが、しんじゃったばしょだよ。どすまりさにころされた、ゆっくりたちの……」 ……一時間後。 「なるほど。……ここのことを、すっかりわすれていましたよ。よくおぼえていましたね」 「ここのみんなには、まえにいろいろとあったからだぞー」 二匹は山の中へ戻り、ある場所へと赴いていた。 そこには、無数のゆっくり達の死骸が転がっていた。 ……それは、どれも捕食種ゆっくりの……、ゆっくりふらんのものだった。 他にもまりさ種の死骸もいくつか転がっていたが、大半がふらんの死骸だった。 よしかは覚えていたのだ。 せーがとドスまりさが対峙した時、ドスまりさが言っていた事を。 『ゆっくりふらんのむれをつぶした』……という事を。 「このふらんたちは、よしかがかりにでかけたときに、たまにあっていたんだぞー」 「そうだったのですか……」 「よしかにかぶりついてあそんでくれたり、ほうりなげてたかいたかいしてくれたり、おそらをとんでふらんたちのすみかにしょうたいしてくれたり……」 (それは、あそんでくれたというんでしょうか?……よく、いきてかえってこれましたね。いちどしんでいて、まずくてたべられないからですかね?) よしかの話に色々と疑問を感じたせーがだったが、敢えて聞かない事にした。 「まさか、こんなふうにしんじゃうとはおもわなかったぞー……」 ふらん達の死骸を眺め、よしかは寂しそうに言った。 「そういうものですよ、よしか。……ちからをもっていても、それいじょうのちからをもつゆっくりがあらわれる……。このまえのときのように……」 「……」 「ですが、このようにしがいがのこっていたのはよかったです。さっそくゆんしーにしましょう」 「……おぅ!」 気持ちを切り替え、ふらん達の死骸をゆんしーにしようとした、その時。 「うー……、……そこにいるのは、だれだ?」 「「!」」 突然、近くの木の方から声が聞こえて来た。 見ると、一匹の胴付きのゆっくりふらんが、息絶え絶えに木にもたれかかっていた。 ……そのふらんの両足は千切れかかっており、羽も片方は完全に折れていた。 「あなたは……。このふらんたちのいきのこりですか?」 「ごしゅじん!このふらん、ふらんたちのおさだぞ!ふらん!よしかだぞ!おぼえているか!」 「う……、おまえは……。……そういえば、なんかいか、ここにつれてこられたな……」 「そのせつはどうも。うちのよしかと、いろいろあそんでくれたそうで……。……だいじょうぶですか?」 せーがは長ふらんにそんな言葉をかけたが、明らかに大丈夫そうではなかった。 「うー……。……なにしにきた」 「どすまりさにやられたんでしょう?……どすまりさからききました」 「……わらいにきたのか?」 「いいえ。ちからをかりに。……ふらんさん。ほかのふらんさんたちのしがいを、ゆずってください」 「……」 「あなたのこころのなかには、どすまりさにたいするにくしみであふれているのでしょう?……それは、せーがもおなじです」 「……みんなをどうするきだ」 「もういちどよみがえらせて、どすまりさとたたかうせんりょくにします」 「……おまえ、みんなをりようするきか……!」 長ふらんは憎悪の眼差しで、せーがを睨みつけた。 「はい。せーががいちばんきらうのは、つかえるものをつかわないことです」 「……」 「あなたのおなかまがもっているきばも、つめも、はねも、せーがにはないものです。せーがのもっていないちからです」 「……だから、じぶんのものにすると……?」 「はい。そのきばで、すべてをかみちぎるために。そのつめで、すべてをえぐるために。そのはねで、すべてをおいつめるために」 「……あのどすまりさを……、ころすきなんだな?」 「はい。せーがはあきらめのわるさだけがとりえなので」 「……ふ……、あはは……。……いいよ、それで。……むれのみんなも、きっと、ふくしゅうしたいだろうから……」 「ありがとうございます。……みたところ、あなたも、ながくないようで」 「……ころしたまりさのしがいをたべて、いきながらえていたけど……。……もう、だめだな……」 そう言った長ふらんの口元から、デロリと餡子が流れ出す。 「……ふらんがしんだら、ふらんも、おまえのどうぐになるのか?」 「はい。いったでしょう?つかえるものをつかわないことは、いちばんきらいなことなので」 「あ……、あはは……。げぶぅっ……!!……ぐ……、ほ……ほんとうに、おまえは……、げ……、す、だ……な…………」 そう言い残し、ふらんは口から大量の餡子を吐き出して、事切れた。 ……その表情は、安らかなものだった。 「よしか」 「……ほいよ」 「これで、じゅんびはととのいました」 「……みじかいようで、ながかったなー」 「えぇ。……そして、これからが、ほんとうのはじまりです。……あしたのそうちょう、どすまりさのむれにせんせんふこくをします」 せーがは誓う。 己の欲望に忠実に従う事に。 今はただ、憎きドスまりさを倒す為に。 その復讐の、欲望の為に。 全てを賭す事に。 「まっていなさい。どすまりさ」 続く 選択肢 投票 しあわせー! (11) それなりー (0) つぎにきたいするよ! (1) 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/103.html
群れ ゲス ドスまりさ 希少種 独自設定 26作品目、その2です。 「ごしゅじーん、まだかなー?」 「もうすこしですよ。もうすこしでつきます」 「それにしても、さっきからくさがあんよのほうにあたって、くすぐったいぞー」 「そうげんなんですから、あたりまえですよ」 ……せーがとよしかは今、大草原の中をただ前へ、前へと進んでいた。 「このそうげんをぬければ、すぐにみえてきますからね」 「うーん……、きをつけないと、まいごになりそうだー」 「なんでなにもないそうげんで、まいごになっちゃうんですか!?」 ……あれからせーがとよしかは、ゆんしーおうこくがあった場所とは反対の方向へ進んで行った。 途中でよしかが転んだり、よしかが迷子になったり、よしかが空腹で動けなくなったりしたが、何日もかけて、とにかく二匹は進み続けた。 道は思ったより険しかった……、主に、よしかのせいで。 それでも二匹はひたすらに前へと進んだ。 自分達の本当の故郷へと帰る為に。 そして、二匹は何事もなく草原を抜ける事が出来た。 ……それから、どれ位進んだだろうか。 「あ……」 「おー!ごしゅじん!あれ、あれ!」 二匹のはるか視線の先には、ゆっくりの群れらしき集落が、小さいながらも見えていた。 「……かえってきたんですね……。せーがのうまれこきょうに……」 「ごしゅじん!はやくいこう!」 「えぇ……」 そんな会話を交わしている二匹の歩みは、自然と早くなっていた。 ……二匹は今、本当の故郷に辿り着いたのである。 せーがの生まれ育った群れ……、『じゃせんていこく』に。 続・邪悪なる者達・承 作:ぺけぽん 「……みなさん、ただいまかえりました」 「たーだーいーまー!」 数分後、『じゃせんていこく』の入口に辿り着いたせーがとよしかは、そのまま広場のある場所へと向かった。 広場には懐かしい顔ぶれの群れのゆっくり達がいて、せーがとよしかの声に気付き、皆が一斉に二匹の方を見た。 「え……、せーが?せーがなのですか!?」 「まぁ……!それに、よしかも……」 「おぉ!よしかー!ひさしぶりー!」 「げんきだったかー!」 ……群れの広場には、二匹と同じ、せーが種とよしか種のゆっくりが十匹程いた。 二匹の姿を見て、ある者は驚き、ある者は喜び、その反応は様々だった。 「こうしてはいられませんね!さっそくおさにほうこくしなくては!」 「おーさー!ごしゅじんににているごしゅじんがかえってきたぞー!」 そう言って、広場にいた群れのせーがとよしか数匹が、広場のさらに奥の方へと跳ねて行った。 「せーが。ほんとうにひさしぶりですね」 「いろいろはなしたいことがやまほどありますが……。まずは、おさにあってからにしましょう」 「はやくー!」 「え、えぇ……。よしか、いきましょう」 「おーう!」 二匹は群れの皆に後押しされて、広場の奥へと進む。 「ウヴゥ……」 「ゼーガダァ……」 「ヨジガァ……」 「オガエリィ……」 広場の奥には、様々な種類のゆんしー達が軽く数十匹はいた。 「おかえりなさい。せーが。それによしか。……だいぶ、おおきくなりましたね」 そのゆんしー達の集団の中央に、一匹のゆっくりせーががいた。 「ただいまかえりました。……おかあさま」 「おさー!!ひさしぶりー!」 「ふふ……」 三匹は再会の挨拶を交わし、共に再会の喜びと懐かしさから自然と表情に笑みが浮かんだ。 ……『じゃせんていこく』。 それは、数十匹のゆっくりせーがとゆっくりよしか、そして百は軽く超えるゆんしー達のみで構成された群れである。 その規模はせーがの築き上げたゆんしーおうこくを遥かに超える大御所であった。 そんなじゃせんていこくの長を務めるのは、先程せーがが母と呼んだせーがである。 つまり、せーがはじゃせんていこくの跡継ぎでもあったのだ。 せーがはこのじゃせんていこくで生まれ、多くの仲間とゆんしー達に囲まれ、様々な知識を学び、経験を積んだ。 その過程の中で、せーがは一番最初のゆんしー……、つまりよしかを創り出し、自分の第一の専属としたのだ。 ……そして、せーがはある決意を心に秘め、よしかと共にこのじゃせんていこくを離れ、新天地へと旅立ったのである。 「そういえば、おかあさま」 「どうしました?」 「……おとうさまは、どうなさったのです?」 「そういえば、どこにいったんだー?」 ……せーがはある事に気付いた。 こうして母せーがが出迎えてくれたのに、『父』が一向に姿を現さないのである。 せーがの記憶にある、いつも元気で明るくて、ちょっとドジだけど、せーがの大好きな『父』の姿。 ……もしや、『父』の身に、何かあったのではないだろうか。 せーがの脳裏に、一瞬そんな不安が過った。 「うふふ……。だいじょうぶよ、よしか。おとうさんはげんきですよ。ちょっとおひるねしていて、なかなかおきないだけですから」 母せーがのその言葉に、せーがはほっと安堵した。 「ただ……」 「?」 「おとうさんをみたら、けっこうおどろくかもしれませんね」 「え?それはどういう……」 「すぐよんできますからね」 『父』の姿を見て驚く理由を尋ねようとしたせーがだったが、母せーがはそのままゆんしー達の間を通り抜け、ゆんしー達の後ろにある、巣穴の中へと入っていった。 その巣穴は高さが数メートル、横幅もかなりの長さがあり、結構な数のゆっくりが入れる位の大きさだった。 「ほら、あなた!おきてください!あなたのむすめのせーががかえってきましたよ!」 巣穴の奥から、母せーがの声が聞こえる。 すると、「ふわぁ~」という間の抜けた欠伸が聞こえた。 『父』の声である。 そして母せーがが巣穴から出て来た。 「まっててください、いまでてきますからね」 母せーががそう言うと、巣穴の奥からズシン、ズシンと大きな音が響く。 ……そして。 「せーがー!おーかーえーりー!!」 ……中から、一匹のゆっくりよしかが出て来た。 このよしかが、せーがの実の父親であった。 父よしかは、母せーがによって作られたゆんしーである。 従来のケースならば、せーが種とよしか種の関係は、主と専属というものが一般的である。 だが、極稀にその一線を超えて、夫婦になる個体も存在する。 母せーがと父よしかが、まさにそのお手本であった。 「……」 「うっわー!すげぇ!」 「どーしたー?せーがー?」 ……一方、せーがは久々に再会した父よしかの姿を見て、開いた口が塞がらなかった。 逆によしかは父よしかの姿を見てとても興奮していた。 「え……、と……。お、おとうさまですよね?」 「そーうーだーぞー!!」 「あのー……。ちょっといいですか?」 「?」 せーがは父よしかの姿を見て、どうしても聞かずにはいられなかった。 「……なんで、そんなにでかいんです?」 ……父よしかの体は、全長3メートルは軽く超えていたのである。 もはやドス級ではないかと思う位の巨体だった。 しかも、せーがの記憶が正しければ、昔の父せーがはそんな規格外のサイズではなかったのだ。 どこにでもいるような、普通のゆっくりと同じ位のサイズであったのだ。 「お、おかあさま?なんでおとうさまがこんなにおおきくなったんですか?」 せーがは母せーがに父よしかの体が大きくなった理由を尋ねた。 「えぇ。それは……」 「それは……?」 せーがはゴクリと固唾を飲んで母せーがの言葉を待った。 もしや、先日のドスまりさのように、突然変異で体が大きくなったのだろうか。 それとも、母せーがが父よしかの体をいじくりまわしてこうなったのだろうか。 まさか、父よしかの体の中に、何匹ものゆっくりが入っていて、体を乗っ取っているのではないだろうか。 ……せーがの頭の中に、様々な可能性が廻り廻っていた。 「ごはんをたべすぎて、ふとっちゃったんですよ」 「ふとったー!!」 その原因は、実に残念なものであった。 「あれはどうみても、たべすぎのはんちゅうこえてますよね!?」 「え~……、だって、ごはんをたべているときのおとうさんのかお、とってもかわいいんですもの~」 「こそだてにしっぱいしたでいぶみたいなかんがえですよね、それ!?」 「おーなーかーすーいーたー!」 「もういっしょうたべなくてもいいんじゃないですかね!?」 「ユグゥ、ガワイイナラショウガナイネ」 「ウン、ジガダナイネ」 「なんであなたたちがかいわにはいってくるんですか!?しかもむだにりゅうちょうにはなしているし!!」 「ごしゅじーん!よしかもくっちゃねするぞー!!」 「なんでだめなてほんをぜんりょくでみならおうとするんですか!?」 周囲の意識も、実に残念なものであった。 「もうっ!みんな、ほんとうに……、ほんとうに……」 そう言ったせーがの目から、ホロリと涙が落ちた。 ……母せーが、父よしか、群れの同族やゆんしーの仲間達……。 自分の故郷で待っていた者達は、何一つ変わっていなかった。 いや、父よしかの体格だけは変わっていたが、それでも、自分の大好きな父に変わりはなかった。 自分の大好きな者達は、今も昔も変わらず、そこにいたのだ。 「……ほんとうに、なにも、かわっていないんですね……」 せーがの故郷は、確かに、そこにあったのだった。 ……同時刻、ドスまりさの群れにて。 「どす!どす!たいへんなのぜ!」 「ゆぁ~ん?いったいどうしたのぜ!?」 自分の巣穴で寝ていたドスまりさは、巣穴の中に入って来た配下のまりさに起こされた。 寝起きと、気持ち良く寝ていた所を邪魔された事もあり、ドスまりさは不機嫌さを隠さなかった。 「むれのまりさのなんびきかが、れいぱーありすたちにおそわれたのぜ!」 「あぁ……、となりのれいぱーありすのむれの……」 ドスまりさの群れの近くには、ドスまりさ並みの大きい体格の、くいーんありすが長を勤めるれいぱーありすの群れがあった。 れいぱーありす自体の数はそれ程多くないもの、今までに何匹ものゆっくり達が性欲の吐け口として犠牲になっていた。 ……どうやら、ドスまりさの群れのまりさ達も例外ではなかったようである。 「かりにでかけているさいちゅうに、まりさのなかまたちが、なんびきかすっきりーされて、えいえんにゆっくりしちゃったのぜ!」 「……まさか、それでおまえはおめおめとにげだしたわけじゃないのぜぇ?」 「け、けど、れいぱーありすはこわいし、ふつうはにげるのが……」 「だまるのぜっ!!」 「ひっ!?」 ドスまりさに一喝された配下のまりさは身を震わせた。 「おまえはこのどすのむれのいちいんなのぜ!!つよいまりさがあつまるむれのいちいんなのぜ!!ちがうのぜ!?」 「そ、そうなのぜ……」 「れいぱーありすごときぶちころせないやつなんざ、このむれにはいらないのぜ!!」 ドスまりさはそう言って、配下のまりさを踏みつぶした。 「びぇ……」 配下のまりさは辞世の句も言えずに、餡子の染みと化して仲間の後を追う事となった。 「やくたたずが……。おい!だれかいないのかぜ!?」 ドスまりさは外にいた他のまりさ達を呼び出した。 「このよごれをきれいにするのぜ!」 「「「わ、わかったのぜ!」」」 巣穴の清掃を命じられたまりさ達は、葉っぱなどの道具を探しに蜘蛛の子を散らすように飛んでいった。 「ちっ……!れいぱーありすなんか、おそれるにたらずなのぜ!ほんとうに、こんじょうなしなのぜ!」 ……ドスまりさは、かつては自分もれいぱーありすを恐れていた事を棚に上げ、既に死んでいる配下の事を罵っていた。 「しかし……、しょうじき、れいぱーありすはめんどうなのぜ……。……ちかいうちに、あいつらもつぶしておいたほうがいいのぜ……」 これ以上先程のような弱音を吐くような奴が、群れの中から出ては困ると考えるドスまりさであった……。 ……それから、数日の月日が流れた。 せーがはじゃせんていこくで昔の仲間達と共に、懐かしく、楽しい日々を過ごしていた。 ドスまりさは群れのまりさの数を増やし、他のゆっくり達から略奪の限りを尽くしていた。 山のゆっくり達は、そんなドスまりさの横暴に耐えていた。 その間は、餡子を餡子で洗い流すような、大きな争いは起きていなかった。 ……しかし、そんな日常は、簡単に過ぎ去るものだった……。 ……じゃせんていこくにて。 「あらぁ、おとなりのせーがさん、こんにちは」 「よんばんめのすあなのせーがさんも、かわりありませんか?」 「えぇ、えぇ。みてくださいな、このゆんしー。きのうあたらしくつくったんですよ?」 「ゴンヂワァ……」 「まぁまぁ……、おはだのくさりかげんに、しんだでいぶのようなめつきがなかなかいいですねぇ」 「それはそうですよ。でいぶからつくったんですもの」 「ふふふ……」 「ほほほ……」 群れのゆっくりの巣穴の前で、数匹のせーが達がゆんしーを入れて井戸端会議をしていた。 群れのせーが達は時々近くで野垂れ死んでいたり、捕食種に襲われて食いかけの死体となっているゆっくりを調達して、ゆんしーを生み出している。 今日も今日でゆんしーの事について話がはずんでいるのだった。 「ドズー、アレヤッデー」 「おねがいだぞー!どすー!」 「ヤッデー、ヤッデー」 「おー!いーいーぞー!」 一方、群れの広場で数匹のゆんしーとよしか達が、父よしかに対して何かをせがんでいた。 父よしかはそれを快く承諾し、その場に寝そべった。 「ウワーイ、ダノジミー」 「のぼるぞー!」 ゆんしーとよしか達は、父よしかの体を登り始めた。 そして全員が父よしかの腹部に到達すると、父よしかは大きく息を吸い始めた。 「ふんっ!」 父よしかが頬を膨らませ、腹部に力を入れると、腹部がポッコリと膨れ上がった。 その反動で、父よしかの腹部に乗っていたゆっくり達が空中へ浮いた。 空中へ浮いたゆっくり達が父よしかの腹部に落ちると、父よしかは再び腹部に力を入れ、再びゆっくり達を浮かせる。 ……父よしかの日課は、こうして群れのゆっくり達に対して、擬似トランポリンとして遊び相手になってあげたり、頭上に乗せて高い高いしたりする事だった。 「オゾラヲドンデルミダーイ」 「ダノジー」 「おぉー!すっげーたのしー!」 体が大きく、心優しい父よしかは、群れの守護者兼巨大遊具として、己の職務を全うしている。 ……と言う事にしておこう。 「よしかー、よしかー、どこにいますかー?」 ……すると、母せーがの呼ぶ声が聞こえた。 母せーがは父よしかの近くまで来ていた。 「おさー!どうしたんだー?」 父よしかのお腹でトランポリンを楽しんでいたよしかは、そのまま母せーがに対して返事をする。 「あら、そこにいたんですか。あなたのごしゅじんさまはどこにいきましたかー?」 「しらないぞー!ごしゅじん、ここにきてから、ふらっとどこかへいくときがあるんだぞー!」 「そうですか……。もしかして、あそこでしょうか……?よしか、ありがとうございますね」 「おー!」 母せーがはよしかに礼を言うと、どこかへと行ってしまった。 「そーれー!」 「ウヴァーイ」 「ウギャー」 「すっげーたかーい!」 よしかは他のゆんしー達と共に、父よしかの腹部で遊ぶのだった。 「はぁ……」 じゃしんていこくから少し離れた場所に、天気の良い日は日当たりの良い丘があった。 ……そこに、せーがが溜め息を吐きながらぼんやりと宙を眺めていた。 心そこに有らずといった感じである。 「……せーがは……。……せーがは、どうすればいいのでしょうか……」 そんな事を呟いていた、その時。 「やっぱり、ここにいたんですね、せーが」 「……おかあさま」 後ろから誰かが声を掛けてきた。 声を掛けてきたのは、母せーがであった。 「ここは、あなたがちいさいころに、おかあさんとおとうさんといっしょになんかいかきたところなので、ここじゃないかなとおもっていました」 「……」 「となり、いいですか?」 「……いいですよ」 母せーがはそう言って、せーがの隣に来た。 「せーが。……なにか、なやみごとがあるんですね?」 「……やっぱり、かくせませんね」 「それはそうですよ。おかあさんは、せーがのおかあさんですもの。せーがのことは、よくわかっているつもりです」 「おかあさま……」 「あなたがこのじゃせんていこくにかえってきてから、しだいに、くらいかおをすることがおおくなってきたようなきがするんです」 「……」 「せーが。……なにがあったのか、はなしてくれますか?」 「……はい……」 母せーがに促され、せーがは己の口から、今までの事をポツリ、ポツリと母せーがに打ち明けた。 自分が移り住んだ山で、自分の群れを持つ事が出来た事。 その群れをいとも簡単に滅ぼされてしまった事。 逃げ出すような形で、ここに戻って来た事。 全てを打ち明けた。 母せーがは、それを黙って聞いていた。 「おかあさま。……せーががどうして、このじゃせんていこくをはなれたのか、そのりゆうをおぼえていますか?」 せーがは母せーがにそう尋ねた。 「えぇ。おぼえていますよ」 「……おかあさま。このじゃせんていこくは、おおむかしに、いちひきのせーがとよしかがつくったんですよね?」 「そうですよ。ごせんぞさまたちが、がんばってくださったおかげで、むれのみんなはへいわにくらすことができるのですよ」 「せーががちいさいころ、ちょうろうがなんかいもそういっていましたね。……もう、ちょうろうはえいえんにゆっくりしちゃいましたけど」 「そうですね。……ここは、まわりにてきがいなくて、たべものもたくさんあって、とてもいいところですね」 「……ごせんぞさまのはなしは、せーがのこころのなかにのこりつづけました」 せーがはそう言いながら、空を見上げた。 太陽の光の眩しさに目を細めながら、話を続ける。 「……せーがは、おおきくなるにつれ、おもうようになったんです。……そとのせかいというものは、どういうものなのかと」 「……」 「ごせんぞさまたちは、そとのせかいから、このじゃせんていこくのちにやってきました。……せーがは、しりたくなったのです」 「……」 「そとのせかいをみたい。そとのせかいをしりたい。……そして、そとのせかいで、じぶんのやりたいことを、やってみたい……、と」 「……あなたはむかしからわがままなこでしたけど、あのときは、ずいぶんなわがままをいいだすものだとおもいましたよ」 「えぇ。おとうさまなんか、わんわんなきながら、せーがをとめようとしましたものね」 「おとうさんをなだめようとするあなたをみて、どっちがこどもなのか、わからなかったですよ」 「……あのとき、おかあさまはとめようとはしませんでしたよね?じぶんのあとつぎが、むれをでていくといったのに」 「えぇ。おそらく、あなたのことですから、いってもきかないだろうなとはおもっていたので」 「ふふふ……」 せーがは視線を戻し、母せーがの方を見た。 「……よしかとともに、このじゃせんていこくからたびだって、やまをいくつかこえて、そこからいろいろあって……、じぶんのむれをもつことができました」 「……」 「ですが、それもあっというまにうしなって、ここへもどってきて、……せーがは、ほんとうにちっぽけなそんざいだと、おもいしらされたのです」 「せーが……」 「せーがは……、いともかんたんにうしなってしまうものに、まんぞくしきっていて、それでじぶんのねがいをかなえたつもりになっていました」 「……」 「おかあさま……。せーがは……、せーがは、ほんとうは、なにがほしかったのでしょうか?」 せーがは母せーがに問い掛ける。 かつては自分の心の中にあったものが何であったのか、それを尋ねる。 ……それは、自分しか知らないものであったという事を、分かっていながらも。 それでも、聞かずには、いられなかった。 「……ごめんなさい。おかあさんには、わかりません」 「……そうですよね」 母せーがの返答は、せーがが予測していたものだった。 「それは、せーががもういちどおもいださなければいけないことだとおもいますよ?」 「……」 「せーが。あなたはあなたです。……あなたがおもうがまま、あなたのこころがめいじるまま、あなたはあなたらしくいきればいいのです」 「……」 「だれよりもわがままで、よくぶかくで、じゅんすいで、じゆうなせーが。やりたいことをやりなさい。てにいれたいものをてにいれなさい」 「……」 「このじゃせんていこくでしあわせにくらすことも、もういちど、そとのせかいへもどるのも、あなたのじゆうです」 「……」 「おかあさんは、あなたがじぶんでかんがえて、そうしたいとおもったのなら、それをとめません」 「……」 「せーが、きかせてください。……あなたののぞみを」 母せーがの言葉を、せーがは黙って聞いていた。 ……そして、ゆっくりと口を開いた。 「……せーがは……」 ……翌日。 「やーだー!!いっちゃやーだー!!」 「……やはり、いってしまうのですね?」 「えぇ。ごめんなさい、おとうさま。おかあさま」 「ごしゅじーん……」 せーがとよしか、母せーがに父よしか、そして群れのゆっくり全員が、ゆんしーていこくの入口に集まっていた。 ……せーがは、再びこのじゃせんていこくから旅立つ事を望んだ。 母せーがは、それを受け入れた。 父よしかは、べそをかいていた。 「うわーん!せーがー!」 「あぁ、もぅ、おとうさん、なかないでくださいな。あとでおいしいきのこをあげますから」 「やーだー!」 「……せーがたちのむすめが、えらんだみちです。……もういちど、みおくってあげましょう?……あなた……」 「うー……」 「それが、おやであるせーがたちにできることですよ?」 「……せーが。……また、かおをみせにくるんだぞー?」 父よしかは泣くのをやめて、せーがにそう言った。 父として、精一杯せーがを見送ろうとしているのだった。 「……はい。いつか、かならず。……みなさんも、どうか、かわらずに……」 「おさー!ありがとー!どすー!またあそんでねー!みんなー!げんきでなー!」 せーがとよしかは皆に別れを告げて、じゃせんていこくを、生まれ故郷を後にした。 「せーが。……あなたのねがいがかなうことを、のぞんでいますよ」 「せーがー!よしかー!またくるんだぞー!!」 「ふたりともー!じゃせんのなまえにふさわしいゆっくりになってくださいねー!」 「よしかー!またこいよー!」 「ゲンキデネェー」 「ワガレッデ、ヤッバリザミジイネ」 じゃせんていこくの皆が、二匹の姿が見えなくなるまで見送り続けた。 「ごしゅじん、いいのかー?」 「いいんですよ。せーががそうしたいときめたのですから。……よしか。あなたはどうだったんですか?」 「よしかは、ごしゅじんがどっちをえらんでも、ごしゅじんについていくぞー!」 「ふふ……、たまにはうれしいことをいってくれますね」 「うおぉ、なんだかばかにされたきぶん」 「なんで!?」 じゃせんていこくが完全に見えなくなる頃には、二匹はいつもの調子を取り戻していた。 「ところで、ごしゅじん。これからどうするんだ?」 「きまってるでしょう?……あのどすまりさに、おれいまいりをしにいくんですよ」 「おれーまいり?なにか、かんしゃするようなことをしたのかー?」 「……まぁ、だいたいあっていますかね。このままやられっぱなしでおわらせるのは、どうもむしゃくしゃするので」 「でも、ゆんしーたちはもういないぞー。むかしみたいに、こつこつふやすのかー?」 「それはじかんがかかりすぎます。……まぁ、あてはありますよ」 「おぉ、そーか!ごしゅじんがそういうなら、ほんのすこしだいじょうぶだな!」 「ほんのすこし!?」 そんな会話を交わしている内に、二匹は既に大草原を渡っていた。 「さー!そーときまったら、どすまりさをやっつけにいくぞー!」 「……よしか。せーがたちがやることは、それだけではありませんよ?」 「そーだな!あたらしいむれをつくって、そこでゆっくりしよう!」 「……いいえ。それだけではありません」 「おぉ?……うーん……。……おぉ!そうか!ごしゅじんは、もういちどやまのてっぺんにもどるんだな!」 「……それではたりません」 「……わからないぞー。ごしゅじんはほかになにをしようとしているんだー?」 せーがの言葉の意味が分からず、よしかは足りないおつむで必死に考えるが、完全にお手上げだった。 「……よしか。せーがはおもいだしたんですよ。……はじめてそとのせかいへとたびだったとき、せーがはなにがほしかったのか……」 「せーが、きかせてください。……あなたののぞみを」 母せーがの言葉を、せーがは黙って聞いていた。 ……そして、ゆっくりと口を開いた。 「……せーがは……。……せーがは、『すべて』がほしいです」 ……せーがは、思い出したのだ。 「せーがはほしいです。おいしいごはんさんを。りっぱなおうちを。たくさんのなかまを。それをてにいれるためのちからを」 ……かつて、己が何を欲していたのかを。 「だれかをだませることばを。だれかをおとしいれるちえを。だれかからうばいつくすどんよくさを。そのはてにえられるものを」 ……いつの間にか、忘れてしまった、本当の欲望を。 「げすといわれようが、くずといわれようが、ゆっくりごろしといわれようが、あきらめたり、おれたりすることのないこころのつよさを」 ……己がゆっくりであるが故の、本質というものを。 「じぶんでてにいれたい。じぶんでみつけたい。じぶんでうばいたい。せーががほしいから。ほしくてほしくてたまらないから」 「まんぞく、なっとく、だきょう、そんなものはいらない。そうすれば、それいじょうなにかをてにれられないから」 「いまいじょうのゆっくりを。それいじょうのゆっくりを。はるかうえのゆっくりを。さいこうのゆっくりを。……ほんとうのゆっくりを」 「せーががほしいとおもったものは、ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ……。……ぜんぶ、てにいれたい……」 「……それが、せーがののぞみです」 「よしか。せーがたちは、すべてをてにいれにいくのですよ」 「ごしゅじん……」 「そして、あのどすまりさにみせてやりましょう」 せーがはそう言いながら、己が逃げた来た山の方角を一点に見つめた。 ……その目には、揺るぎない決意が秘められていた。 「いったいどっちが、ほんとうによくぶかくて、あきらめがわるいのかを」 続く 選択肢 投票 しあわせー! (10) それなりー (0) つぎにきたいするよ! (0) 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/105.html
……翌日。 「さぁ、あなたたち、じゅんびはいいですか?」 「じゅんびはいいぞー!ごしゅじーん!」 「ンボォ……」 「ガッバァ……」 「ウー……」 「それはよろしいことです。では、いきましょうか。……すべてのけりをつけに……、ね」 続・邪悪なる者達・結 作:ぺけぽん ……ドスまりさの広場にて。 「ど……、どすーっ!!どすーっ!!どこにいるのぜえぇぇぇぇっ!?」 「ゆぁ~ん?いったいなんなのぜ?」 ドスまりさは群れの広場で、群れのまりさ達が他のゆっくり達から略奪してきた食糧を堪能していた。 そこへ、群れの外へ狩りに出掛けていた一匹のまりさが、慌ただしく声を荒げながら戻って来た。 「そ、そとに!むれのそとに!!」 「おちつくのぜ!そとにいったいなにがあるのぜ!」 「そ、そとに……!ば、ばけものゆっくりがいたのぜ!!」 「!?」 「そ、それもいちひきやにひきじゃないのぜ!!たくさんいたのぜ!!」 ばけものゆっくり。 その単語を聞いたドスまりさの脳裏に、一匹のゆっくりの姿がよぎった。 (ま……、まさか……、せーが……!?) ドスまりさは、かつて自分が敗れ、そして自分が破った因縁のゆっくりの事を思い出していた。 「どすーっ!!たいへんなのぜえぇぇぇぇっ!!」 「ばけものゆっくりたちが、こっちにむかってくるのぜぇっ!!」 「なんとかするのぜえぇぇぇぇっ!!どすうぅぅぅぅっ!!」 そして、他にも外に出掛けていた群れのまりさ達が、次々とドスまりさの元へ駆け込んできた。 「お、おちつくのぜ!!これはきっと、あのせーがのしわざなのぜ!」 「せ、せーが!?せーががしかえしをしにきたのぜ!?」 「そうなのぜ!ばけものゆっくりといえば、あのせーがしかおもいつかないのぜ!」 「そ、そういわれれば、そうなのぜ……」 「おまえら!あのせーがと、ばけものゆっくりたちには、いちどかっているのぜ!!まけいぬなんざ、こわくないのぜ!」 ドスまりさは恐れ慄く群れのまりさ達を必死に鼓舞し始めた。 「どすのむれは、つよいまりさたちのむれなのぜ!おまえたちはつよいのぜ!!どんなてきでも、けちらせるのぜ!!」 「そ、そうなのぜ!あんなきもちわるいやつらなんか、こわくないのぜ!」 「やってやるのぜ!!」 「かえりうちにしてやるのぜ!!」 ドスまりさの鼓舞は効果があったようで、群れのまりさ達は次第に戦意が湧き上がっていた。 せーが達には一度大勝しているという事もあるのだろう。 「おまえら!いますぐにぶきをよういするのぜ!あのせーがを……、さいっじゃくっどもをむかえうつのぜ!!」 「「「「「「ゆっゆっおー!!」」」」」」 ドスまりさの号令により、群れのまりさ達は戦いの準備をし始めた。 (くそせーが……!あいつは、こんどこそころしてやるのぜ……!!) ドスまりさは因縁の相手を今度こそ殺すべく、闘志と殺意をたぎらせていた。 ……そして、数分後。 ドスまりさと群れのまりさ達は、群れの入口付近でせーが達を待ち構えていた。 「き、きたのぜ!」 群れのまりさ達の内の一匹が、声を上げた。 ……見ると、大分遠くの方から、沢山のゆっくり達らしき集団が、こちらにやって来ていた。 その集団は次第に近くなり、段々とその集団の詳細が見れるようになっていた。 先頭を勤めるのは、ゆんしー達の親玉、せーが。 「ンボオォ……」 「バリザァ……」 「ズッギリィ……」 ……その背後には、二十匹程の、金髪のゆんしーありす達がいた。 それは、生前のれいぱーありす達だった。 死してもなお、まりさ種に対する歪んだ愛と性欲は変わらずであった。 「せーが……!」 己の宿敵と再会したドスまりさは、顔を歪めた。 ……徐々に二つのゆっくりの集団の距離は縮まり、そして、せーが達はドスまりさ達の目前まで辿り着いた。 「ひさしぶりですね。どすまりさ」 「せーが……!おまえ、あれだけどすにぼろまけしておいて、よくふくしゅうするきになれたのぜ!」 「えぇ。せーがはあきらめのわるさだけがとりえなので」 「はっ!あきらめのわるさも、ここまでくるとあわれなのぜ!かずはこっちのほうがうえなのぜ!」 ……ドスまりさの言う通り、ドスまりさ達とせーが達の戦力の差は、歴然としていた。 大雑把に言うなら、3:1の比率で、せーが達の方が分が悪かった。 数で負けている上に、ドスまりさという規格外の存在が加われば、勝負どころの話ではなかった。 「そうですね。どうみても、こっちのほうがまけていますね。……ところで、どうしてどすすぱーくをうとうとしないのですか?」 「ゆっへっへ……。さいしょはそのままぶちかましてやろうかとおもっていたけれど、そんなことをしなくてもいいときづいたのぜ!」 ドスまりさがそう言うのと同時に、群れのまりさ達が一斉に口に咥えていた木の枝を向けた。 「いくらおまえがばけものゆっくりをみかたにしても、このかずで、いったいどうするのぜ?」 「……」 「かりに、ほかにもなかまがいたとしても、どすのどすすぱーくでけちらしてやるのぜ!おまえのことなのぜ!ほかにもなかまがいるのぜぇ?」 「う……!……なるほど。すっかりおみとおしというわけですか」 「ゆーっひゃっひゃっひゃ!!おまえがかんがえそうなことなんざ、おみとおしなのぜ!ほれほれ、さっさとなかまをよぶといいのぜ!」 「う、うぅ……」 「どうせ、そこらへんにかくれているのぜぇ?でてきていいのぜ!このままじゃ、けんかにもならないのぜ!」 ドスまりさは完璧にせーがの事を馬鹿にしていた。 こちらの動きを看破され、焦っているせーがを見て、内心良い気分になっていた。 「……だそうですよ?ありすさん?」 「ンンンンンンボオオォォォォォォォッ!!!!」 「……あ?」 ……焦りの表情から一転、黒い笑みを浮かべたせーがと、自分の背後から聞こえてくる、おぞましい声を聞くまでは。 「ゆ、ゆひゃあぁぁぁぁっ!?」 「な、なんなのぜ!?あれはあぁぁぁぁっ!?」 「ゆぎゃあぁぁぁぁっ!!こわいのぜえぇぇぇぇっ!!」 群れのまりさ達の驚愕と恐怖の入り混じった悲鳴を聞き、ドスまりさは背後を振り返った。 「ンボオワアァァァァッ!!バアァァァァリイィィィィザアァァァァァッ!!」 ……群れの広場の方から、肌がベロンベロンに溶けかかり、腐臭を漂わせ、口から大量の唾液を流して、こちらに突っ込んでくる『敵』の姿があった。 その『敵』は、ドスまりさ位の大きさの体格の持ち主であった。 その『敵』とは、とても形容しがたいものであった。 ……もし、その『敵』に名前を付けるなら、まさにそれは、『悪夢』と呼ぶに相応しいだろう。 「ゆ……、ゆわあぁぁぁぁっ!!」 ……ドスまりさは理解していた。 目の前の『悪夢』は、自分が普通のまりさであった頃、自分にとって最大のトラウマである存在であるという事を。 ドスまりさになった今では、そのトラウマは克服したかに思えたが、そんなトラウマを軽く超える程の恐怖であるという事を。 「ワダジヨオォォォォッ!!アリズヨオォォォォッ!!ドガイハナアイヲ、イッジョニワガヂアイマジョオォォォォッ!!」 ……自分と同じ大きさの『悪夢』は、ドスまりさだけを見ていた。 「く……、くるんじゃないのぜえぇぇぇぇっ!!」 ドスまりさは『悪夢』に対して、半ば半狂乱になりながら、どすすぱーくを放った。 「ンゴオォォォォッ!?バ、バリザアァァァァッ!!」 ……どすすぱーくは『悪夢』の横腹を抉ったが、それでも『敵』は突っ込んで来た。 「んぎゃあぁぁぁぁっ!!くるなくるなくるなあぁぁぁぁっ!!」 ドスまりさは何回も、何回も迫りくる『悪夢』に対してどすすぱーくを放った。 「んギョオォォォォッ!!ズッギリジマジョオォォォォッ!!バリザノアガヂャンガホジイノオォォォォッ!!」 「あがあぁぁぁぁっ!?くるなあぁぁぁぁっ!!こっちにくるなあぁぁぁぁっ!!」 どすすぱーくは何度も『悪夢』の体に命中した。 頭を、顔を、腹部を、あんよを、光線の熱によって吹き飛ばし、消滅させた。 「ン……、ボ……、オォォ……」 ……そして、体の大半を吹き飛ばされた『悪夢』の歩みは、ようやく止まった。 『悪夢』は口から腐りきったクリームを垂れ流し、その場に崩れ落ちた。 「はぁ……。はぁ……。はぁ……!」 ピクリとも動かなくなった『悪夢』の姿を見て、ドスまりさはやっと、心の底から安堵した。 「あらあら……。どすまりさともあろうものが、ずいぶんとひっしですねぇ?」 「せ……、せーがあぁぁぁぁっ!!よていへんこうなのぜぇっ!!いますぐっ!!そっこく!!ぶっころしてやるのぜえぇぇぇぇっ!!」 己のトラウマを呼び覚まされたドスまりさは、せーがを消し炭にすべく大きく口を開けた。 遊びは終わりだ、今すぐに永遠にゆっくりさせてやる。 ドスまりさはそう思い、どすすぱーくを放とうとした。 ……が。 「あ……!し……、しまったのぜえぇぇぇぇっ!!」 ……どすすぱーくは放たれなかった。 「どうしたんですか?はやくどすすぱーくをうてばいいでしょう?……あぁ、もしかして、できないんですか?」 「ゆ……、ゆぐっ……!」 「……あなた、どすすぱーくをうつには、とくべつなきのこがひつようなんですってね?……もう、そのおくちのなかには、きのこはないんでしょう?」 「な……、なんでそれをしっているのぜ!?」 ……せーがの言う通り、ドスまりさ種はどすすぱーくを放つ為に必要な、特別なキノコを口の中に忍ばせている。 つまり、そのキノコがなければ、どすすぱーくは全く使えないのだ。 「ふふ……。せーがはあなたのことについて、あまりくわしくしらなかったので……、あなたのしりあいに、いろいろとおしえてもらったんですよ」 「だ……、だれにおしえてもらったのぜ!?」 まさか、自分の群れの誰かが寝返って情報を漏らしたのだろうか。 ドスまりさは群れのまりさ達を疑い始めた。 「あらぁ?いるじゃないですか。……あなたがどすまりさになってから、いちばんさいしょにころしたゆっくりですよ」 「ま……、まさか……!?」 「ねぇ?そうでしょう?……ふらんさん?」 せーがは上を見上げながら、そう言った。 「……ウー……」 ……せーがの視線の先には、近く木の枝に止まってこちらを見ている、沢山のゆっくりふらん達がいた。 そのふらん達は、ドスまりさ達に殺され、せーがによって蘇ったゆんしー達であった。 ゆんしーふらん達は、せーが達がここに来る前からずっと、近くの木で待ち伏せていたのだ。 そのゆんしーふらんの中に、一匹だけ胴付きのふらんがいた。 ……あの長ふらんである。 「ふらんさんから、あなたのきのこのことをおしえてもらいましてね……。なので、ありすさんをさしむけて、きのこをつかいきらせたんですよ」 「ウー……」 長ふらんは、その手に長い木の枝を槍のように構えていた。 長ふらんを初め、全てのゆんしーふらん達が、ドスまりさ達を睨みつけていた。 「あ、あんなところに、ふらんたちがいるのぜぇっ!?」 「こ、こわいのぜぇっ!!」 異形として蘇ったゆんしーふらん達の存在に気付いた群れのまりさ達は、その姿に怯えていた。 「お、おまえら!おちつくのぜ!いくらふらんたちがみかたでも、このどすがついているのぜ!」 「で、でも!どすはもう、どすすぱーくをうてないのぜ!?」 「があぁぁぁぁっ!!おまえっ!どすはどすなのぜっ!どすがあんなれんちゅうにまけるとでもおもっているのかぜ!?」 ドスまりさは群れのまりさ達を落ち着かせようとしたが、なかなかうまくいかなかった。 ……れいぱーありすならともかく、通常種の天敵の捕食種、しかもそれがふらん種となれば、話は別だろう。 「あらあら、こわがってくれて、なによりで。ですが、これだけではありませんよ?」 「あ……、あぁ!?」 ドスまりさがどういう事か尋ねようとしたが、その必要はすぐになくなった。 「ここにいるぞー!!」 ……ドスまりさ達の背後から、気合が入っているのか間が抜けているのかよく分からない声が聞こえた。 ……見ると、そこにはせーがの第一の専属、よしかを始めとする、たくさんのゆっくりの集団がいた。 「ガッバッバァ……」 ……よしかの背後には、顔が緑色に変色し、よく分からない鳴き声を発しているゆっくり達がいた。 それは、ドスまりさ達に殺された、ゆっくりにとり達だった。 「ふふふ……。どうやらいちぶをのぞいて、みんながあなたたちにふくしゅうしたいようですねぇ?」 「せ……、せーがあぁ……!」 「わかりませんか?このゆんしーたちのひょうじょう。ひつよういじょうのみれんやうらみがみえますよ?……あなた、そうとうきらわれているんですねぇ?」 「があぁぁぁぁっ!!だまれえぇぇぇぇっ!!どすすぱーくがなくても、おまえらなんか、ひとひねりなのぜえぇぇぇぇっ!!」 「さぁ、いきなさい、わがせんぞくたち。おのれのおもうがまま、うばい、おかし、ころしなさい。そのねがいをかなえなさい」 「おまえらっ!!ふらんたちはどすがやるのぜぇ!!おまえらはほかのれんちゅうをやるのぜぇ!!にげたらころすのぜえぇぇぇぇっ!!」 「「「「「「ユガアアァァァァッ!!」」」」」」 「「「「「「ゆおぉぉぉぉっ!!」」」」」」 ……こうして、せーが率いるゆんしー軍団と、ドスまりさ率いるしっこくのけものが、激突した。 「おらぁっ!!しぬのぜぇっ!!」 「このばけものゆっくり!!」 「おまえらをころさないと、まりさたちがどすにころされるのぜ!!」 「だからさっさとしぬのぜぇっ!!」 大量のまりさ達による数の暴力に対し、ゆんしー軍団は個々の力を存分に発揮していた。 「バリザアァァァァッ!」 「ズッギリイィィィィッ!」 「ゆんやあぁぁぁぁっ!!ずっぎりじだくないいぃぃぃぃっ!!」 「あがぢゃんうみだぐないいぃぃぃぃっ!!」 ゆんしーありす達は、まりさ達に木の枝で体を抉られたり、踏み潰されたりしながらも、まりさ達を犯し、すっきりー殺していた。 その異常と呼べる愛の表現は、もはや感心に値する程である。 「みんなー!やっちまえー!」 「ガッバァッ!!」 「ゴッバァッ!!」 「ゆぎゃあぁっ!?なんなのぜこれはぁっ!?くさいのぜえぇぇぇぇっ!!」 「ゆ、ゆっぐりできないのぜえぇぇぇぇっ!!」 「え、えれえれえれ……」 ゆんしーにとり達は、よしかの号令で、口から緑色の液体を発射し、まりさ達にその液体を浴びせていた。 腐臭やら死臭やら漂うその液体を浴びたまりさ達は、その臭さに阿鼻叫喚し、中には命の餡子を吐いて絶命する者もいた。 「ウウゥゥゥゥッ!!」 「ウガアアァァァァァッ!!」 「あぎゃあぁぁぁぁっ!!ふらんだあぁぁぁぁっ!!」 「だ、だずげでほじいのぜえぇぇぇぇっ!!」 「おそらをとんでいるみたいいぃぃぃぃっ!!」 ゆんしーふらん達は、生前と優るとも劣らぬ凶暴性と素早さを活かし、まりさ達を容赦なく狩っていた。 ただのまりさ種では、ゆんしーふらん達に敵う筈もなく、一方的な虐殺と化していた。 「な、なんなのぜぇっ!?こいつら!?」 「ゆひゃあぁぁぁぁっ!まりさはしにたくないのぜっ!だれかおとりになるのぜえぇぇぇぇっ!!」 「どぼじでそんなことをいうのぜえぇぇぇぇっ!!」 数で勝っていようとも、その大半がゲスまりさ達。 こちらを本気で殺しにかかっているゆんしー達とは、実力も覚悟も全くの別物だった。 まりさ達はあちこちでゆんしー達に殺されたり、その場から逃げ出したりなど、徐々に押されていた。 「せーがっ!なかまのかたきなのぜっ!」 「まりさたちのかおをわすれたとはいわせないのぜっ!」 「あなたたちは……。……えーと、だれでしたっけ?」 ……一方、せーがは二匹のまりさと対峙していた。 「ふざけるんじゃないのぜぇっ!!あのひっさつわざは、まりさがさんびきでなければできないわざなのぜ!!」 「そのひっさつわざをやぶって、なかまをころしておいてわすれたとか、なめているにもほどがあるのぜぇっ!!」 「あぁ……。あの、さんびきいちれつにならんでつっこんでくる、ふざけたたたかいかたをしていたかたたちですか」 「「ゆがあぁぁぁぁっ!!」」 自分達の存在や技を否定され、復讐に燃える二匹のまりさはせーがに突っ込んで来た。 「こんどはまったくべつのあたらしいわざをかんがえたのぜ!」 「そのわざでしとめてやるのぜぇっ!」 二匹のまりさはそう言うと、せーがの周りをぐるぐる回り始めた。 「これは……」 「ゆーっへっへっへ!めのまえのまりさのこうげきをかわしても、すぐうしろのまりさが、こうげきをしかけるのぜっ!」 「まえとうしろのふたつのこうげきっ!かわせるものならかわしてみるのぜっ!」 二匹のまりさは口に咥えた枝をせーがに向けながら、ドヤ顔で回り続けた。 「あー……。もういいです、はい」 「「ウー!」」 せーががそう言うのと同時に、二匹のまりさの頭上にゆんしーふらんが舞い降り、二匹を咥えて空中へと飛び立った。 「「おぞらをとんでるみだいぃぃぃぃっ!!」」 ……あの二匹の運命は、語らずとも分かるだろう。 「……ごしゅじーん、なんか、あっさりすぎないかー?」 せーが達の方へ合流して、近くまで来ていたよしかがそう言った。 「いいんですよ。どうせ、にひきいっぺんにつっこんできて、せーががかわしてりょうほうくしざしっておちですから」 「なんか、とことんざんねんだなー、あいつら」 徐々に遠くなっていく二匹のまりさの姿を眺めながら、よしかはそう呟いた。 ……その頃、ドスまりさの方では。 「ウウゥゥッ!!」 「ウガアァァッ!!」 「このおぉぉぉぉっ!!しつこいのぜえぇぇぇぇっ!!」 自分の宙を回りながら攻撃を仕掛けてくるゆんしーふらん達に対し、ドスまりさは自分の髪の毛のお下げを振り回して反撃していた。 数匹は叩き落とす事が出来たものの、どすすぱーくが使えない今、ジリ損であった。 「ウウゥ……!ドスウゥ……!!」 ……丁度そこへ、周囲のまりさ達を狩り終えた長ふらんが飛んできた。 「ゴロスッ!!ゴロズウゥゥゥゥッ!!」 「ゆがあぁぁぁぁっ!!このばけものふらんがあぁぁぁぁっ!!」 ドスまりさは長ふらんを叩き落とすべく、長ふらん目がけてお下げを振り降ろした。 ……が、お下げは長ふらんには当たらず、長ふらんはドスまりさの懐に入り込んだ。 「ウアアァァァァッ!!」 ……そして、雄叫びを上げながらドスまりさの右目に、木の枝を突き刺した。 「ぎゃあぁぁぁぁっ!?どすのりりしいおめめがあぁぁぁぁっ!?」 ドスまりさは右目に長い木の枝が刺さったまま、激しい痛みにより暴れ出した。 「どっ、どすっ!!あばれたら……、ぶべぇっ!?」 「や、やめるのぜっ!!どすっ!!あびゅっ!?」 「に、にげ……、ひでぶっ!?」 それにより、ドスまりさの近くにいた群れのまりさ達が何匹か踏み潰されてしまった。 「ど、どすがむれのみんなをころしたのぜえぇぇぇぇっ!?」 「も、もうおわりなのぜぇっ!!こんなどすについていたら、いのちがいくつあってもたりないのぜぇっ!!」 「た、たすけてくれなのぜえぇぇぇぇっ!!」 その光景を目の当たりにしてしまった、その場に残っていた群れのまりさ達は、戦いを放棄して我先にと逃げ出してしまった。 「お、おまえらあぁぁぁぁっ!!にげるんじゃないのぜえぇぇぇぇっ!!」 ドスまりさは必死に呼び止めるものの、群れのまりさはドスまりさの制止を聞く事はなかった。 ……群れのまりさ達の大半は潰され、逃げ出し、辛うじて残っている者達もゆんしー達に次々と血祭りに上げられていた。 もはや、勝負は決しているようなものだ。 「あらあら……。たいしょうをみすててにげだすなんて、へたれにもほどがありますねぇ?」 ……そして、この戦いの勝者であるせーがは、ドスまりさを見ながらクスクスと笑っていた。 その周辺にはまりさ達の死骸が転がっており、口には餡子が付着しているお飾りのかんざしが咥えられていた。 「せ、せーが……!!」 「ふふ……、ゆんしーたちばかりにまかせているわけにはいきませんからね。ひさびさにはげしいうんどうをして、つかれましたよ」 せーがはそう言いながら、頬に付いた返り餡子をペロリと舐めた。 「……どすまりさ。あなたはほんとうにわかりやすいですねぇ」 「どういういみなのぜぇっ!?」 「そのままのいみですよ。つよいからこそ、ほしいものをなんでもてにいれることができるからこそ、あいてをみくびり、ゆだんする……」 「ぐっ……!!」 「このまえもそうですよね?ゆんしーたちをどすすぱーくでふっとばされて、きゅうちにおちいっているせーがをみて、あなたはわらっていました」 「このどすが……!!おまえみたいな、ざこに……!!」 「……せーがをあざわらうひまがあったら、さっさところすべきだったんですよ。むれのなかまをまきこもうが、かんけいなしに」 「だったらいまころしてやるのぜえぇぇぇぇっ!!」 ドスまりさはせーが目がけて巨体を震わせて突っ込んで来た。 「おまえさえころせばっ!!どすのかちなのぜえぇぇぇぇっ!!」 「……どうして、そのさついをあのときにむけなかったんですか?そうすれば、こうはならなかったでしょうに」 「だまれえぇぇぇぇっ!!」 ドスまりさはせーがの目前という所まで近付いていた……、が。 「「「「「ウウゥゥゥゥッ!!」」」」」 「ぐへぇっ!?」 数匹のゆんしーふらん達が、ドスまりさの死角となっている右側から体当たりをしてきた。 右目を潰されていなければ、すぐに気付く事が出来ただろう。 「ゆ、ゆぎゃあぁぁぁぁっ!?い、いだいのぜえぇぇぇぇっ!?」 ……ドスまりさの右側の顔や体に、何本もの木の枝が突き刺さっていた。 ゆんしーふらん達は殺したまりさ達から木の枝を回収しており、それを体当たりした時に突き刺したのだ。 それにより、ドスまりさは一瞬動きを止めた。 ……その瞬間を、ゆんしーふらん達は見逃さなかった。 「「「「「ウーッ!!」」」」」 ゆんしーふらん達は、ドスまりさの右目に刺さっている長い木の枝を口に咥え、思い切りその木の枝を抜いた。 「あぎゃあぁぁぁぁっ!?」 ドスまりさの眼球が突き刺さったまま抜けたが、そんな事はお構いなしだった。 ……そこへ、ゆんしーふらん達の背後にいた長ふらんが、ゆんしーふらん達から長い木の枝を受け取り……。 「ウアアァァァァッ!!シネエェェェェッ!!」 ……それを、ドスまりさの左目に突き刺した。 「いっ……、いぎゃあぁぁぁぁっ!?いだいぃぃぃぃっ!?みえないぃぃぃぃっ!?なにもみえないのぜえぇぇぇぇっ!?」 ……両目を潰され、視力を失ったドスまりさは痛みのあまり転倒し、その場で転げ回った。 「いぎゃあぁぁぁぁっ!?せえぇがあぁぁぁぁっ!!どこにいるのぜえぇぇぇぇっ!!があぁぁぁぁっ!!」 ドスまりさは何も見えないまま転げ回り……、近くの木に思い切り激突した。 「ごへぇっ!?」 ボキリ……。 ……しかも、運の悪い事に、ドスまりさがぶつかった衝撃により、木が折れてしまったのだ。 その折れた木は……。 グサッ……。 「あ……、があぁぁぁぁっ……!?」 ……ドスまりさの腹部に、深々と突き刺さってしまった。 木はドスまりさの背中を貫通しており、地面に縫いつけられる形となった。 「ガッバッバァ!!」 「ゴッパァ!!」 ……そして、近くにいたゆんしーにとり達が、追撃とばかりにドスまりさの傷口に、あの緑色の液体を浴びせた。 傷口はグジュグジュと腐り出し、そこから命の餡子が漏れ出した。 「お……、げぇ……」 目は見えず、全く動く事が出来ず、腹部からは命の餡子がボダボダと漏れ出ている。 ドスまりさは、完全に詰んでいた。 「……どすまりさ。……なぜ、いちどはまけてしまったせーがが、なぜあなたに、ふたたびたたかいをいどんだのか、わかりますか?」 「が……、あ……?」 ドスまりさの近くで、せーがの声が聞こえる。 せーががどこにいるのかまでは、ドスまりさには分からなかった。 「ふくしゅうしたい、というのもあるのですがね……。……あなたはをみていると、まるで、ついこのあいだまでのせーがをみているようなのですよ……」 「な……、に……、を……」 「あなたはこのやまのちょうてんにたつことで、かんぜんにまんぞくしていた。……むかしのせーがのように……」 「ど、どす……は、お、おまえ、なんかじゃ……」 「……あなたのことはわすれて、あらたにゆんせいをやりなおしたほうが、いちばんりこうなんでしょうね。……でも……」 「ご……、お……」 「……あなたをたおさなければ、せーがは、まえにすすめないのですよ。……さようなら、どすまりさ。……さようなら、かつてのせーが……」 「……」 ……ドスまりさは、何も言葉を返さなかった。 (なんで……、こうなってしまったのぜ……?) ……ドスまりさは、何も見えていなかった。 (どすはただ……、ゆっくりしたかった、だけなのに……) 自分の何が間違っていたのか、何故、こうなってしまったのか。 (もっと……、ゆっくり、したかった、のぜ……) その理由を考えられぬまま、その答えを見いだせぬまま……、ドスまりさの意識は、闇に包まれた。 「……」 せーがは事切れたドスまりさの死骸を、じっと見つめていた。 ……こうして、この山の古き暴君と、新しき暴君との戦いは幕を閉じたのだった……。 「せーがー」 「なんですか?あなた」 「……せーがは、だいじょうぶかなー」 「あらあら……。だいじょうぶですよ。あのこはじぶんのやりたいことを、なしとげることができますよ」 「……しんぱいだぞー」 「だいじょうぶですってば。だって……」 「だってー?」 「あのこは、だれよりもじぶんかってで、わがままで、ごうつくばりで……。……だれよりも、おろかなくらいに、じゅんすいですもの」 ……数週間後、とある山にて。 「むきゅう!みんな!きょうこそは、けっせんのひよ!」 「みんな!もうすぐここに、『あいつら』がやってくるよ!あんなやつらは、れいむたちでおいかえしてやるよ!」 「「「「「「ゆっゆっおー!」」」」」」 とある広場にて、数十は超える数のゆっくり達が、大声を上げていた。 「むきゅ!れいむ、わかっているわね!ここで『あいつら』にかたないと、あとがないわよ!」 「わかっているよ、ぱちゅりー!そのために、どうっめいっをむすんだんだからね!」 「もうすぐここに、ありすたちもやってくるわ。ありすたちがとうちゃくすれば、さらにみかたのかずがふえるわ」 ……この山は、つい最近までは比較的平和な山だった。 しかし、何の前触れもなく、隣の山から化け物と呼ぶに相応しいゆっくり達が侵略を開始したのだ。 ……その為に、その山の群れのゆっくり達は手を組んで、そのゆっくり達を迎え撃とうとしているのだ。 「ゆっ!きたよ!」 そう言ったれいむの視線の先には、こちらにやって来るゆっくり達の姿があった。 「ごしゅじーん、おなかがすいたぞー。ごしゅじんのおかざり、かじってもいいかー?」 「だめです!じぶんのぼうしでもかんでいなさい!」 「けちー」 ……こちらにやって来る侵略者達の集団の先頭に、何やら騒いでいる二匹のゆっくりの姿があった。 恐らく、その二匹が侵略者達のボスなのだろう。 その侵略者達の数は、山のゆっくり達より少ないようだ。 「むきゅうっ!!みんな!あいつらをおいかえしなさいっ!!」 「みんな!あいつらをやっつけるよ!!」 「「「「「「ゆおぉぉぉぉぉっ!!」」」」」」 山のゆっくり達は、その集団目がけて真正面から突っ込んで来た。 「あら……、このまえみたときよりも、かずがおおいですね。これはすこしまずいですね。こちらのほうが、かずがすくないです」 「ごしゅじん、どうするんだー?ひとまずにげるのかー?」 「ふふ、そんなことはしませんよ。……このやまには、おいしいたべものや、きれいなかわや、すみごごちのいいばしょがたくさんありますからね」 「そうだなー。このやまは、くらしやすいよなー。……それでー?」 「めのまえにそういうものがあるのに、それをおあずけされたら、しゃくにさわるでしょう?それに、あなただって、にげるきはないでしょう?」 「あたりまえだぞー!むこうから『ごはんさん』たちがやってくるのに、にげるわけがないぞー!」 自分達が窮地に立たされているというのに、その二匹のゆっくりは笑っていた。 ……二匹にとって、こんな事は些細な事に過ぎないのだ。 一番大事な事は、邪魔をする者達を殺して、自分達の欲しいものを手に入れる。 ……ただ、それだけの事なのだから。 「さぁ、いきなさい、よしか。せーがのだいいちのせんぞくよ。……そのくうふくを、おもうぞんぶんみたしなさい」 「おーっ!!」 よしかと呼ばれたゆっくりは、他の仲間達と共に威勢良く山のゆっくり達に突っ込んで行った。 自らをせーがと呼んだゆっくりは、その場に立ち止まった。 ……今日もまた、せーがは誰かから何かを奪う。 ……今日もまた、せーがの心は何一つ満たされない。 ……今日も、明日も、明後日も、この命が続くまで、永遠に奪い続ける。 ……他者を踏みにじり、己の欲望に従い、求め、欲しがり、手に入れる。 ……ゆっくりとしての本質に、せーがは逆らわない。 ……それが、ゆっくりとしての、自分自身のあるべき姿なのだから。 「さぁ……。きょうも、ぞんぶんにうばいつくしましょうか。……せーががゆっくりするために……」 ……今日もまた、罪深く、欲深く、愚かで純粋な、せーがと言う名のけだものは、その悪意と欲望を心に秘めて静かに笑うのだった。 END あとがき どうも、知らない方は初めまして、知っている方はお久しぶりです。 ネタ切れに定評のあるぺけぽんです。 今回は何を書こうかなーと考えながら、自分の過去作品を見直している時に、「あ、せーがのその後でも書こう」と思い、書いたのでした。 ……何でこう、ズルズルと長くなる上に、時間が掛かっちゃうんでしょうね、自分。 「ヒャア!せーがネタは古いぜ!」とか「ヒャッハァ!!続編なんざいらねぇんだよ!」と思っている方は、お許し下さい。 ご意見、ご感想、お待ちしております。 作者:ぺけぽん 選択肢 投票 しあわせー! (15) それなりー (0) つぎにきたいするよ! (0) 名前 コメント すべてのコメントを見る